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金融業界(その3)(銀行の「旧型エリート」が没落する5つの新旧交代場面、地銀や信金が「運用のプロ」を雇うのが非常に危険な理由、北欧の銀行 日本と同じマイナス金利なのに5年で株価9割上昇の理由) [金融]

金融業界については、5月17日に取上げた。今日は、(その3)(銀行の「旧型エリート」が没落する5つの新旧交代場面、地銀や信金が「運用のプロ」を雇うのが非常に危険な理由、北欧の銀行 日本と同じマイナス金利なのに5年で株価9割上昇の理由)である。

先ずは、7月23日付けダイヤモンド・オンライン「銀行の「旧型エリート」が没落する5つの新旧交代場面」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/175309
・『エリートの代名詞だった銀行員の社会的地位の凋落が止まりません。国内の人口減少に超低金利時代の長期化、さらには異業種からの“領空侵犯”――。業界が直面している“産業革命”によって、保守的な業界の代表である銀行もついに時流にあらがえなくなり、高学歴・高年収の金融エリートたちは荒波に翻弄されています。ただ、時代に取り残される「旧型金融エリート」が仕事を奪われかねない危機に陥る一方で、新時代の寵児である「新型金融エリート」が台頭してきている側面もあります』、歴史的にみれば、銀行への逆風は、企業部門が資金不足から資金余剰に転じた、つまり過去の設備投資の減価償却の方が新規設備投資を上回るようになった2000年代から始まっていた。ただ、その後は、投信や保険の窓販で食いつないできたのが、いよいよどうにもならなくないと銀行経営者が危機感を高まらせたのが、最近である。
・『大リストラ時代──。昨年11月、3メガバンクグループが合計で3.2万人分の業務量を削減することを打ち出すと、銀行業界の苦境がいよいよ世間全体に知れ渡った。 国内の人口減少という構造問題に、日本銀行の異次元金融緩和政策による超低金利環境の長期化が重なり、銀行業界は構造不況に陥っている。その上、金融とITを掛け合わせたフィンテックの分野を足掛かりに、異業種の企業が銀行に対して次々に“領空侵犯”を仕掛けてきており、今のコスト構造では生き残れるかどうか分からない。そんな状況が背景にある。 そこで銀行は、業務量削減のために人工知能(AI)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれるソフトウエアロボットの導入を進めている。すると、「銀行員vsAI・ロボット」という対立軸が注目を浴びる。金融エリートである銀行員が機械に仕事を奪われるという構図は刺激的で、耳目を集めた・・・こうした影響が端的に表れたのが、就職活動生の銀行離れだった・・・就活人気ランキングの上位から転げ落ちてしまったのだ』、遅ればせながら経営陣も重い腰を上げ、就活生たちも気づき始めたようだ。
・『若手から中堅やベテラン、さらには支店長や銀行の役員、頭取に至るまで、銀行というピラミッド型組織のあらゆる層において、遅ればせながら変革が起き始めている。 その変革は、新しい時代が求める「新型金融エリート」と、時代に取り残される「旧型金融エリート」を同時に生み出すという、残酷なコントラストを描いている。 そこでこの特集では、金融業界で本格化している5パターンの「新旧交代」をご覧いただく』、なるほど。
・『一つ目は、「純国産」から「逆輸入」への新旧交代・・・海外経験がトップの必要条件という機運が近年急速に高まっている。 二つ目は、「平時の殿様」から「戦国武将」への新旧交代・・・構造不況業種と化した今は、戦場で改革の陣頭指揮を執る頭取が求められている。 三つ目は、「金利商売」から「手数料商売」への新旧交代・・・考え方や働き方を手数料商売にシフトできない銀行員は、営業現場であっても経営会議の場であっても、生き残れなくなりつつある。  四つ目は、「紙・アナログ」から「デジタル」への新旧交代・・・ITを使いこなす側に回らなければ生き残れない時代が来た。 最後の五つ目は、「文系・画一」から「理系・多様」への新旧交代・・・今までとは違った理系分野や海外からの人材獲得をもくろんでいる』、三つ目から四つ目は、とっくに始まっている変化ではあるが、遅まきながら始まった変化を今後注視していきたい。

次に、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏が7月25日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「地銀や信金が「運用のプロ」を雇うのが非常に危険な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/175562
・『筆者が現在最も心配しているのは、収益面で追い込まれた金融機関が資産運用で大失敗することだ。 現在、多くの地方銀行を始めとする地域金融機関が、有価証券の運用方針を国債中心のものから、私募投信などを利用してリスクを取った運用にシフトしている。リスクを取って運用するので、失敗があり得るし、その場合に経営が不安定化する可能性もある。 こうした状況でしばしば検討されるのは、外部から「運用のプロ」を採用して資産運用やリスク管理などに当たらせることだ。採用人数は、金融機関のサイズによって異なるだろう。地方銀行の場合1〜2名ということもあるだろうし、メガバンクや公的金融機関の場合、数十名に及ぶこともあるだろう』、確かに心配すべき状況だ。
・『筆者がもっと危惧するのは、地方金融機関が日頃、取引のある証券会社や投資顧問会社、あるいは経営的に縁のあるメガバンクのグループなどに運用人材の紹介を依頼するケースだ。 後者の場合、例えば証券会社(ないしその子会社の投資顧問会社)のとても運用のプロとは言えないOBなどを紹介されることが心配だ。運用の知識・技術が不十分であることに加えて、将来、紹介者(もしくは紹介社)と癒着することも気がかりだ。 そもそも、1人で運用計画を策定できて、リスク管理の仕組みなどもアドバイスできるような・・・見識のある人材が、おそらくは、(1)ネームも劣れば、(2)仕事も小さく、(3)多分報酬もよくなく、そして(4)周囲の理解と協力を得にくいであろう、地方金融機関に移籍するだろうか。 個々人の能力と事情には大きな差があるので一概には言えないが、いい運用人材の採用自体が相当に難しいと考えることが、多くの金融機関にとって妥当だ(実は、メガクラスの金融機関でもそうなのだが)。 加えて、いい人材に出会ったとしても、本人に納得してもらえる経済的提示ができるか、入社してもらった場合でもその人が上手く組織に定着できるか、さらにその人に対して十分なコントロールを利かせることができるかといった、「人事管理」一般の問題が残る。そして、これは日本の金融機関があまり得意としない分野だ』、さすが運用のプロの筆者だけあって、鋭い指摘だ。
・『(運用のプロの)彼らが、雇われた先で「運用のプロ」らしく振る舞うためには、外部の金融機関の協力を必要とすることが多い。その場合、外部金融機関の“水先案内人”のような役割を果たすことになってしまう。雇った側にとって不都合でも、雇われた個人の利害を考えると十分にあり得ることだし、当座は雇った側も満足する場合が多いのだ。 こうした状況を考えると、三顧の礼をもって迎えた運用のプロが、トロイア戦争の故事で伝えられる“木馬”のごとく金融機関の内部に入り込んで、外部の金融ビジネスを中に招き入れる役割を果たす可能性が小さくない。 例えば元証券会社などの財務担当者が、取引先の証券会社にすっかり籠絡されて、リスクを取った運用(相手先にとっては手数料の大きい運用)にのめり込んだ結果、大きな損失を作ったような、過去の学校法人などのケースと同類のことが起こるのではないかという点に大きな心配がある』、なるほど。
・『資産運用に注力しようと思っている金融機関の経営者に、是非覚えておいてほしい5ヵ条をお伝えしておこう・・・その一 甘えを捨てて「本業」として運用に取り組む(できなければやるな!)  その二 許容できるリスクを自分で計算して運用する(できなければやるな!)  その三 完全な時価評価ができない対象への投資は避ける  その四 「運用は分からないが、人は判断できる」ことはあり得ないと知る  その五 市場の条件以上の「うまい話」などないとわきまえる』、こんな5ヵ条を満たすような運用をしている地域金融機関などないのではないかと思われるような厳しい条件である。
・『いずれも、素人の富裕顧客などの他人のことだと思うと、金融マンとしては納得できる話ばかりだろう。一つでも理解できないものがあれば、その人は、資産運用だけでなく、金融機関の経営そのものにあって能力不足だ。「運用のプロ」を雇うよりも、自分をクビにすることの方が、会社には大きな貢献となるにちがいない。 金融機関の資産運用にあって最大の問題は、プロ人材の採用よりも、経営者の運用に対する理解なのだ』、その通りで、残念ながら理解できている経営者など極く少数だろう。

第三に、東短リサーチ代表取締役社長の加藤 出氏が7月26日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「北欧の銀行、日本と同じマイナス金利なのに5年で株価9割上昇の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/175405
・『地方銀行、第二地方銀行の約4割が、本業の収益において2018年3月期決算で3期以上の連続赤字に陥ったという・・・直接的な要因は長期化する日本銀行の超金融緩和政策にある。短期金利と中期金利がマイナス圏にあり、10年金利もほんのわずかなプラスでしかない、というイールドカーブ(金利曲線)の下では、特に日本の場合、銀行が利ザヤを確保することは非常に困難である・・・これまでは過去に購入した有価証券を売却(益出し)してしのいできたが、それも限界に近づきつつある』、確かに地域金融機関の窮状は待ったなしだ。
・『北欧でも多くの中央銀行がマイナス金利政策を実施している。しかし、かの地の銀行はそこまで追い詰められていない。例えば、ダンスケ銀行(デンマーク)のROE(株主資本利益率)は13年に5%だったが、昨年は13.6%。同行の株価はこの5年で9割も上昇した。なぜなのだろうか。  第一に、北欧の銀行はマイナス金利政策で被るコストを顧客に転嫁している。同政策の下では、銀行が中銀に多めに資金を預けると、その分の利息を中銀に支払う必要が生じる。銀行はその費用を取引先に押し付けているのである。 例えば、デンマーク中銀の今年4月のデータによると、同国の預金は次のような構図になっている。個人の預金にマイナス金利は適用されていないが、保険会社・年金基金の預金の92%はマイナス金利だ。一般企業の預金は59%、政府の預金も61%がマイナス金利である』、マイナス金利政策で被るコストを顧客に転嫁している、とは日本の銀行マンからみるとうらやましいような環境だ。
・『また、デンマークでは銀行の貸出金利が高い。この5月の貸出残高の平均利回りは、企業向けが2.4%、個人向けの住宅ローンが3.3%、個人向けの他の貸し出しが5.3%だ。日本の国内銀行の5月の貸出平均金利は0.9%と大幅に低い』、これなら儲かって当然だ。
・『北欧の銀行はフィンテック(金融デジタル技術)を世界最速のスピードで導入している。北欧最大手のノルデア銀行(スウェーデン)は、数年前に「真のデジタル銀行になる」と宣言。それ以来、キャッシュレス化やモバイルバンキングを大胆に推し進めてきた。それによる店舗や人員の削減も収益向上に貢献している・・・急速なデジタル銀行化は、ITリテラシーが低い高齢の利用者を切り捨てる問題がある。また、社会保障制度が非常に手厚く、大規模な解雇を行っても地域経済に問題を起こさないという環境が、北欧の銀行にフリーハンドを与えてきた面もある』、というのは事実なのだろうが、彼我の環境の相違は予想以上に大きく、邦銀が学べる点は残念ながらそれほどなさそうだ。
タグ:山崎 元 五つ目は、「文系・画一」から「理系・多様」への新旧交代 「銀行の「旧型エリート」が没落する5つの新旧交代場面」 その五 市場の条件以上の「うまい話」などないとわきまえる 三つ目は、「金利商売」から「手数料商売」への新旧交代 いい運用人材の採用自体が相当に難しい 「地銀や信金が「運用のプロ」を雇うのが非常に危険な理由」 3メガバンクグループが合計で3.2万人分の業務量を削減 人口減少という構造問題に 異次元金融緩和政策による超低金利環境の長期化が重なり 時代に取り残される「旧型金融エリート」が仕事を奪われかねない危機に陥る一方で、新時代の寵児である「新型金融エリート」が台頭してきている側面もあります フィンテックの分野を足掛かりに、異業種の企業が銀行に対して次々に“領空侵犯”を仕掛けてきており 高学歴・高年収の金融エリートたちは荒波に翻弄 北欧でも多くの中央銀行がマイナス金利政策を実施している。しかし、かの地の銀行はそこまで追い詰められていない。例えば、ダンスケ銀行(デンマーク)のROE(株主資本利益率)は13年に5%だったが、昨年は13.6%。同行の株価はこの5年で9割も上昇 例えば元証券会社などの財務担当者が、取引先の証券会社にすっかり籠絡されて、リスクを取った運用(相手先にとっては手数料の大きい運用)にのめり込んだ結果、大きな損失を作ったような、過去の学校法人などのケースと同類のことが起こるのではないかという点に大きな心配がある 金融機関の資産運用にあって最大の問題は、プロ人材の採用よりも、経営者の運用に対する理解なのだ 二つ目は、「平時の殿様」から「戦国武将」への新旧交代 就職活動生の銀行離れだった 第一に、北欧の銀行はマイナス金利政策で被るコストを顧客に転嫁 雇われた先で「運用のプロ」らしく振る舞うためには、外部の金融機関の協力を必要とすることが多い。その場合、外部金融機関の“水先案内人”のような役割を果たすことになってしまう。雇った側にとって不都合でも、雇われた個人の利害を考えると十分にあり得ることだし、当座は雇った側も満足する場合が多いのだ。 こうした状況を考えると、三顧の礼をもって迎えた運用のプロが、トロイア戦争の故事で伝えられる“木馬”のごとく金融機関の内部に入り込んで、外部の金融ビジネスを中に招き入れる役割を果たす可能性が小さくない いい人材に出会ったとしても、本人に納得してもらえる経済的提示ができるか、入社してもらった場合でもその人が上手く組織に定着できるか、さらにその人に対して十分なコントロールを利かせることができるかといった、「人事管理」一般の問題が残る その三 完全な時価評価ができない対象への投資は避ける 一つでも理解できないものがあれば、その人は、資産運用だけでなく、金融機関の経営そのものにあって能力不足だ。「運用のプロ」を雇うよりも、自分をクビにすることの方が、会社には大きな貢献となるにちがいない (その3)(銀行の「旧型エリート」が没落する5つの新旧交代場面、地銀や信金が「運用のプロ」を雇うのが非常に危険な理由、北欧の銀行 日本と同じマイナス金利なのに5年で株価9割上昇の理由) 四つ目は、「紙・アナログ」から「デジタル」への新旧交代 加藤 出 資産運用に注力しようと思っている金融機関の経営者に、是非覚えておいてほしい5ヵ条をお伝えしておこう 外部から「運用のプロ」を採用して資産運用やリスク管理などに当たらせることだ その四 「運用は分からないが、人は判断できる」ことはあり得ないと知る その二 許容できるリスクを自分で計算して運用する(できなければやるな!) 金融業界 その一 甘えを捨てて「本業」として運用に取り組む(できなければやるな!) 後者の場合、例えば証券会社(ないしその子会社の投資顧問会社)のとても運用のプロとは言えないOBなどを紹介されることが心配だ。運用の知識・技術が不十分であることに加えて、将来、紹介者(もしくは紹介社)と癒着することも気がかりだ ダイヤモンド・オンライン 銀行員vsAI・ロボット 社会保障制度が非常に手厚く、大規模な解雇を行っても地域経済に問題を起こさないという環境が、北欧の銀行にフリーハンドを与えてきた面もある 筆者が現在最も心配しているのは、収益面で追い込まれた金融機関が資産運用で大失敗することだ 一つ目は、「純国産」から「逆輸入」への新旧交代 新しい時代が求める「新型金融エリート」と、時代に取り残される「旧型金融エリート」を同時に生み出すという、残酷なコントラスト 北欧の銀行はフィンテック(金融デジタル技術)を世界最速のスピードで導入 また、デンマークでは銀行の貸出金利が高い。この5月の貸出残高の平均利回りは、企業向けが2.4%、個人向けの住宅ローンが3.3%、個人向けの他の貸し出しが5.3%だ 筆者がもっと危惧するのは、地方金融機関が日頃、取引のある証券会社や投資顧問会社、あるいは経営的に縁のあるメガバンクのグループなどに運用人材の紹介を依頼するケースだ 「北欧の銀行、日本と同じマイナス金利なのに5年で株価9割上昇の理由」
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