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「保育園落ちた」(待機児童、「保活」)問題(その6)(命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために、7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは?、保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき) [社会]

「保育園落ちた」(待機児童、「保活」)問題については、2月6日に取上げた。今日は、(その6)(命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために、7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは?、保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき)である。

先ずは、ジャーナリストの猪熊 弘子氏が7月6日付け現代ビジネスに寄稿した「命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために 」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56432
・『ジャーナリストとして「保育」の問題について長らく取材・執筆し、現在は保育学の研究者でもある猪熊弘子さんはこう言う。「日本では、一人ひとりの子どもにていねいに寄り沿い、暖かく成長を見守っている多くの素晴らしい幼稚園・保育園がある一方で、残念ながら子どもの成長にとってはあまり良いとは言えない保育を行っている園もあります。また、決して起きてほしくない悲しい重大事故や、子どもが被害者となる事件もあとを絶ちません」 猪熊さんは、現状に大きな危機感を感じ、弁護士の寺町東子さんと共著で『子どもがすくすく育つ幼稚園・保育園』を刊行した。そこで、保護者が園探しを始める夏休みの前に、わが子を守るためにぜひ知っておいてほしいことについて、短期集中連載で「危ない保育所・幼稚園」の見分け方をお伝えする』、なるほど。
・『第一回は、最も大切な「子どもの命を守る」園とは何か。 都市部には待機児童が多く、なかなか園を「選ぶ」ということはしにくい状況でしょう。そんな中でも絶対譲れないのは、子どもの生命が最優先だということです。厳しい状況の中で、子どもの生命を守るため、親は何を基準に「選ぶ」べきなのでしょうか? 生きていればさまざまな悲しみや苦しみを味わうことがありますが、中でもわが子を亡くすという体験は、この世の中で最も悲しい出来事ではないでしょうか。しかも、通わせていた幼稚園や保育施設で亡くなったとしたら……。親にとっては、自分たちが「選んだ」園で、最愛のわが子を亡くしたことで二重の苦しみになってしまいます。 内閣府(2014年までは厚生労働省)では、2004年から2017年までの保育施設での死亡事故を含む重大事故について、報告があったものを元に公表しています・・・これは「子ども・子育て支援新制度」に入っている施設についての数字であり、新制度に入っていない私立幼稚園については、文科省に報告するよう通達は出ているものの、ここには含まれていません・・・公表された資料によれば、残念なことに、日本では毎年、保育施設での事故で10数人の子どもが亡くなり、2004〜2017年までの14年間に亡くなった子どもは少なくとも198人に上ることがわかっています(表1参照)。年齢別にみると、0歳99人、1歳58人、2歳16人、3歳6人、4歳8人、5歳5人、6歳6人となり、0〜1歳の赤ちゃんが全体の8割を占めます。ついで2歳が多く、3歳以上になるとその数は少なくなります。 認可保育所と認可外保育施設とでは、圧倒的に認可外施設での事故の数が上回っています。見学に行ってもいろいろな理由を付けて保育中の様子を一切見せてくれないような施設は、「見せられない理由があるのかもしれない」と考えて、避けた方が無難でしょう』、年齢別ではやはり0歳児が多いようだ。
・『危険なのは「くう・ねる・みずあそび」の時間 場面ごとでみると、もっとも多いのは0〜1歳の赤ちゃんの「睡眠中」(午睡=お昼寝中をはじめ、夜の睡眠中も含む)です。死亡事故の約7割が、この「睡眠中」に起きています。その次に多いのが1〜2歳児の「食事中」です。「食事」にはおやつも含まれます。食べているものを喉に詰まらせて窒息することが多いのです。もうひとつ多いのがプールなどでの「水遊び中」の死亡事故で、3歳以上で多く起きています。 これらの死亡事故が相次いでいる場面について、Safe kids Japan代表で小児科医の山中龍宏先生は「くう・ねる・みずあそび」という言葉で注意喚起しています。たとえば最も事故が多い「ねる」の場面では、部屋の中を真っ暗にせず、顔の表情が見えるくらいの明るさで寝せることが重要です。もし、見学に行った園で、遮光カーテンで部屋の中を真っ暗にして午睡させているようだったら、睡眠中の死亡事故が多いことを知らないのかもしれないと疑った方が良いかもしれません。 また「くう」の場面では、子どもの口に入って喉に詰まりやすい食べ物やおもちゃなどが、提供されていないことが重要です。時間にゆとりをもたせてゆっくりと、水分をとりながら食べさせることが大切です。年末年始に、お年寄りがお餅を喉に詰まらせて亡くなる事故はよく報道されますが、同じように小さな子どもにとっても食べ物の飲み込み(嚥下)は、生命に関係することです。保護者は子どもがどのようなものを食べられるか、きちんと飲み込みができているかどうかを確認して、保育者と共有しておくことが必要です。 「みずあそび」の事故は主に3歳以上の子どもに起きていますが、これまでには満1歳の子どもが園庭にある排水溝に顔を入れてしまい、意識不明になった事例もあります。10cm以上の深さがあれば、水は容易に子どもの生命を奪うことを覚えておきたいものです。2011年には神奈川県大和市の幼稚園の水深20cmのプールで、3歳の子どもが亡くなった事故も起きています。 その事故以来、幼稚園・保育園・こども園でのプール遊びでは、必ず「監視」をする人を2人以上つけることが定められています。もし、園の人員配置がギリギリで「監視」する人を置けない場合には、プール遊びは中止することになるでしょう。川遊びなど、自然の中での水遊びにはプール遊びよりもさらに多くの危険があります。水深が浅くても、上流でゲリラ豪雨が降れば水位が急上昇する可能性もあります。 2012年7月20日、愛媛県西条市の加茂川で、幼稚園のお泊まり保育中に、5歳の男の子が急に増えた川の水に流されて亡くなった痛ましい事故も起きています。「うちは毎年ここでやっているけれど、何もなかったから」という慢心から、幼稚園教諭たちは下見もおろそかにし、お泊まり保育前日と当日の午前中の大雨の情報も得ていませんでした。また、子どもたちはライフジャケットも着けずに活動させられていました。 自然の中で「今まで何もなかった」のは、ただラッキーな偶然が続いていただけに過ぎません。そういった危険を伴う行事を行うのであれば、必ず下見や事前準備を行い、確実にライフジャケットを付けることが必要です。園でそのような行事がある場合には、どのような準備をしているのか、保護者も知っておくべきでしょう』、西条市の加茂川での事故では、「幼稚園教諭たちは下見もおろそかにし、お泊まり保育前日と当日の午前中の大雨の情報も得ていませんでした」というのは、信じられないような重大な過失だ。
・『「自由遊び」と「放置・放任」の違い 保育の中では「一斉保育」といって、子どもたちがみんなで一緒に同じ活動をする時間と、「自由保育」「自由遊び」などといって、子どもたちが自分の好きな遊びをして探求活動をしていく時間とがあります。子どもの「主体性」が大切とうたわれる時代にあっては、「自由保育が良い」と考えられることが多くなってきていますが、この「自由保育」がときには「放置」「放任」になってしまっている園もあります。 2005年8月10日、埼玉県上尾市にある市立上尾保育所で、4歳の男の子がかくれんぼの際に薄暗くて見通しの悪い廊下の隅に置いてあった本棚の下の引き戸の中に入り込み、誰にも気づかれないで熱中症による心肺停止で亡くなりました。上尾市では遺族の求めに応じて第三者による事故調査委員会を発足させ、『上尾保育所事故調査委員会報告書』を公表しました。 そこには、子どもたちが「自由保育」という名の「放置」「放任」の保育をされている中で、行くあてもなくさまよっている姿が報告されていました。 保育所では「子どもの主体性に任せる自由な保育」を標榜していました。しかし実際には「保育士に園内での人数確認や子どもの動静を把握する習慣が身についていない」「職員全員で児童全員を見ようという取り組みができていない」など、基本的なことが何もできていなかったことが指摘され、「防ぎようもなく起こった事故ではない」と結論付けられています。「自由保育」と言いながら、その実、行われていたのは「放置」「放任」であったことがわかっています。 さらに・・・保育士同士の関係性が悪く、担任と副担任が口をきかないような状態だったこと、事故があったクラスにまるで「モンスターペアレント」のような保護者がいて、保育士達が担任になりたがらなかったこと、「モンスターペアレント」のせいで保護者同士の関係性が極めて悪かったこと、同じように子どもたちの関係性が悪かったことなどについても記しています。 つまり、子どもを放置・放任していてきちんと動静を把握していなかったことのほかに、園内での大人同士の関係が悪かったことも、この事故の要因のひとつにあげられます』、「「自由保育」と言いながら、その実、行われていたのは「放置」「放任」であった」とは、恐ろしい話だ。園内での大人同士の関係が悪いというコミュニケーション不足も問題だ。
・『人間同士のつながりが、事故を防ぐ園を作る 「保育園には、ただ預けられれば良い」とばかりに、保護者同士の関わりを持とうとせず、ときには保護者同士が挨拶もしないような殺伐とした関係の園も少なくないようです。処遇や人間関係の悪さなどから保育士が次々と辞める園では、保育士同士の関係も殺伐としているかもしれません。 保育は人間が行うものなので、いくらマニュアルを作っても、機械のように完全に事故を防げるものではありません。むしろ「人間」という不安定でファジーな存在を、お互いの結びつきによって確実なものにしていくことの方が安全につながるのです。 保育の現場では、たった1人の先生が致命的なミスをおかしたので子どもが亡くなったり大きなケガをした、というようなことは少なく、多くの人のミスが重なった場合に起こることの方が大きいのです。誰かがミスをしても、他の人が気付いて食い止められるような環境を、お互いに作っておくこと。それが子どもの生命を守るために大切です。保護者もその一員として、動かなければならないのです。 冒頭で挙げたように「園の中を見せようとしない」「午睡を真っ暗な部屋で行う」「きちんと嚥下できるような食環境を作っていない」「水遊びに監視がいない」というチェックをすることは安全な園を選ぶうえでとても大切です。ただ、入った後に「自分たちが一緒に安全な園を作る」という意識も必要なのだといえるでしょう』、預け放しの親やモンスターペアレンツなども問題で、親、保育士などのコミュニケーションを日頃から良くしておく必要もありそうだ。

次に、ジャーナリストの小林 美希氏が7月5日付け現代ビジネスに寄稿した「7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは? 」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56361
・『国家戦略特別区域諮問会議で新たな保育の規制緩和について示された。 地域を限定し、保育士資格をもつ人材が確保できない場合でも保育所を作りやすくする特例を設け「地方裁量型認可以降施設(仮称)」の設置が認められるが、有資格者の配置が緩和されることへの懸念は大きい。 もともと認可保育所には、保育士の配置について子どもの年齢ごとに最低基準が設けられている。 0歳児では子ども3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児は「6対1」、3歳児は「20対1」、4~5歳児は「30対1」となる。 これは、あくまで最低基準で、戦後まもなく作られたもの。保育の質を守るため、配置基準の引き上げは長年に渡る課題となっている。 しかし、安倍晋三政権の下、待機児童対策が政策の目玉となって急ピッチで保育所が作られるなか、保育士確保が困難になり、配置基準の引き上げはタブー視されるようになった。 そればかりか、待機児童対策のためにこの特例が提案されたのだ。特区では、配置基準の6割以上が有資格者であれば認可保育所と同等の補助金が受けられることになる。5年間の時限措置とはいうものの、自治体の判断によっては延長が可能とされる。 保育現場からは「保育の質どころか園児の命の安全を守ることができるのか」と波紋を呼んでおり、保育現場を揺るがす“事件”が起こったと言っても過言ではないだろう』、安倍政権は質を落としてでも、量を確保しようとしているようだが、保育現場から安全性を危惧する声が上がっていることは、都合よく無視しているようだ。
・『この規制緩和の過程では、2018年2月9日に、大阪府と大阪市から待機児童対策についてのヒアリング(国家戦略特区「提案に関するヒアリング」)が行われたことが影響した。 「大阪府・大阪市がめざす新たな保育人材の活用について」によれば、保育士は高い専門性があり、保育士の代替とするのではなく、保育士業務を分解して高い専門性が求められるもの以外の業務を保育支援員が協働。 3分の2は保育士を配置するため、質は維持できることとし保育支援員を基準数に入れるよう要望している。 その際、保育支援員は、ゆくゆくは保育士資格を取得することを目標としつつ、保育支援員1.5人で保育士1人に換算して人員配置すると提案していた。 大阪の提案を受けて厚生労働省が対応案を出す格好となった。 特区では、配置基準の6割以上は保育士という基準に緩和しつつ、待機児童解消までの時限措置として「地方裁量型認可移行施設」(仮称)を設置。 具体的な内容として、①保育士不足で運営が困難などの緊急的な場合に限り、認可保育園からの移行も可能、②「地方裁量型認可移行施設」にも、国の運営費の基準額にならって運営費を補助、③認可化移行の計画期間は5年間とし、自治体の判断で延長も可能、④保育事業者と利用者の直接契約、⑤保育の質の確保のため、指導・監査の実施や運営状況の見える化、都道府県の協議会による人材確保の実施・公表――となる。規制緩和派が従来から主張してきた、利用者との直接契約まで盛り込まれている』、なるほど、維新の会が言う通りにして、恩を売る狙いもあったとは・・・。
・『こうした提案は、過去にもされている。 2014年9月26日、国家戦略特区ワーキンググループでは、「提案に関するヒアリング」として、保育大手のポピンズから「特区における保育士・保育所制度に関する改革提案書」が出された。 東京都が先駆けて、配置基準の6割以上が保育士であればいいとする認証保育所を2001年から実施している。 同提案書では、「認可保育施設での保育士要件の7割化」が提案されている。基準の3割は保育士以外でいいというのだ。 さらに、議事録を見るとポピンズ社の中村紀子代表取締役会長は「認可保育所より、全て保育士でない認証保育所のほうが利用者からの満足度が高い」と言及さえしていた。 ちなみにポピンズ関連では、2016年度に認可保育所「ポピンズナーサリースクール市ヶ谷」で「保育士が適正に配置されていない」、2015年度に認証保育所「ポピンズナーサリースクール一之江」で「保育料の徴収額が要綱に定める限度額を超えている」と東京都による監査で文書指摘されている。 また、東京都大田区による2016年度の指導検査でも、認可保育所「ポピンズナーサリースクール長原」は、「重要事項の掲示が未実施」」「保育士が適正に配置されていない」「献立表(補食)が未作成」「虐待への対応が不適切」「事故報告が速やかに行われていない」「経理規定に従って会計処理が行われていない」と問題を文書で指摘されている。このような事業所の提案を是としていいものだろうか。 実際、認証保育所の現場からは悲鳴があがっている』、ポピンズ社の創業者会長は大口を叩いているが、相次いで当局から業務運営の問題点を指摘されているとは初めて知った。
・『7割が新人の保育所もある これまでの筆者の取材から、認証保育所で働く保育士が無資格者と一緒に担任になると「オムツの替え方も知らない状態で、いちから教えなければならず、負担が大きい。もう認証では働けない」と認可保育所へ転職していった例もある。 現場を見れば、大阪の提案のような「チーム保育」はまだまだ絵に描いた餅に過ぎない。 さらに、保育士確保が困難とされるケースでは、確保できたとしても新卒採用で経験の浅い保育士が多い。 厚労省の調べでも、現場は経験年数が低い層の保育士が多く、2012年時点でも7年以下の保育士が半数を占めている。 ある認可保育所の園長は、「ここ数年、新卒も奪い合い。大手がごっそり持っていくので、採用が難しい。中途採用で面接に来てくれれば、保育士であれば資質がなくても雇わなければならない状態。そこから育てていくしかない。うつ病で服薬中でも採用している」と困り顔だ。 ある自治体の保育課では「新規開設する保育所には、3割は経験のある保育士でとお願いしている」という。裏返せば、7割は新人でもやむなしというわけだ。 こうした状況では、保育の質を担保することは難しく、日常的に保育士による園児への虐待も起こり始めている。 身体への暴力ならあざなどから発見されやすく問題が明るみになる可能性もあるが、保育士が暴言を吐く、子どもに冷たく当たるなどの心理的虐待は問題視されにくい。 たとえ保護者が実態を掴んで保育課に助けを求めたとしても、泣き寝入り状態だ。複数の行政関係者が証言する。「保育の内容が悪いと分かっても、役所は厳しく監査も指導もできない。やり始めれば、事業者を打ち切るようなケースが多すぎる。園児の受け皿がなくなってしまうことを恐れ、うやむやに終わらせる」』、保育士による園児への虐待、行政も見て見ぬふりとは恐ろしいことだ。
・『認可保育所を維持するだけの保育士確保が困難ではなかったとしても、株式会社や社会福祉法人が利益重視の姿勢をとれば、賃金の低い層を雇って補助金はそのまま入る仕組みを利用したほうが、利益が残る。 有資格者の保育士を雇うより、無資格者を雇ったほうが人件費はかからないからだ。補助金収入の8割が人件費という労働集約型の保育事業でコストカットを目論むのであれば、人件費に手をつけるしかない。 認可の看板を地方裁量型認可移行施設に掛け変えるうま味は大きい。特区とはいえ、このような大欠陥のある制度を国が認めたのは、失政といえよう。保育士の処遇改善が叫ばれる中で、逆行して賃金が抑制されてしまう』、ポピンズのような業者が強力に働きかける筈だ。
・『真に現場で求められていること 第一に考えなければならないのは、預けられる子どもの処遇だ。内閣府「平成29年教育・保育施設等における事故報告集計」を見ると、保育士がいないことによる弊害が伺える。 調査の対象施設数が認可保育所は2万3410ヵ所に対して認可外保育所は6923ヵ所と、認可外が少ないにもかかわらず、「死亡」は、認可保育所で2件、認可外保育所では4件と多い。経年で見ても認可外のほうが死亡件数は多い。 また、同調査で注目すべきは、認可保育所であっても負傷等の事故が多く、年間に727件もあることだ。うち、意識不明は7件、骨折が587件となっている。保育士がきちんと配置されているはずの認可でも、重大な事故が多いのが実情だ。 年齢別で死亡・負傷等を見ても、1人当たりの保育士が見る子どもの人数が各段に増える3歳以上で多くなる。0歳では4件、1歳では31件、2歳で58件だが、3歳で96件、4歳で170件、5歳で250件、6歳で120件という実態だ。 こうした現状があるなかで、安倍首相は、国家戦略特区の議長として6月14日の諮問会議で「従来の認可保育園の枠組みでは実現しなかった、自治体の創意工夫による柔軟かつ適切な保育士の配置が実現します。これまで長年実現しなかった大胆な規制改革が、国家戦略特区において、今、次々と実現しています」と評している。しかし、これは規制改革を叫び営利を求める企業の声をくみ取っているだけに過ぎない。 企業が考えているのは、いかに人件費をかけずに利益を上げるか、だ。今、この国に子どもたちの声は届いてはいない。特区のような配置基準の事実上の引き下げによって犠牲になるのは子どもたちだ。一体、誰のための規制緩和なのか――』、安倍はキレイ事を言っているだけで、まさに業者のための規制緩和だ。
・『内閣府「平成29年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」から、配置基準より多く保育士を雇っていることが分かる。 公定価格(保育所を運営する費用)の基準だけで保育士を配置すると、つまり、保育士配置基準通りで保育士を配置すると、平均利用定員92人の場合、常勤換算で12.3人となるが、実施の配置状況は、私立では常勤が13.9人、非常勤が2.2人となり、合計4人も多く保育士を配置している。 無資格の保育補助者は、常勤で0.3人、非常勤で0.6人であり、必要とされているのは保育士だということが伺える。 厚生労働省は、「財源さえ確保されれば」という前提で、配置基準の引き上げを予定している。 すでに、3歳児の職員配置「20対1」については、現場で「15対1」にしている保育所には補助金が加算され支払われている。今後、1歳児の「6対1」を「5対1」に、4~5歳児の「30対1」を「25対1」へ引き上げられる見込みだ。 実際に、各自治体ではこうした上乗せ基準を設けており、より多くの保育士の配置が重要視されている。 これこそ、今、真に現場で求められていることで、決して、保育士配置の規制緩和ではない。 保育士の体制強化がおろそかになれば、かえって保育士の負担が増して離職につながるという悪循環に陥りかねない』、「保育士の負担が増して離職につながるという悪循環」というのは大いにあり得る話だ。

第三に、東京大学大学院教授の秋田 喜代美氏が7月13日付け東洋経済オンラインに寄稿した「保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/228749
・『幼児教育の無償化政策は、幼児期の教育がその後の学校教育だけではなく、成人以降の職業や生活満足などにも影響を与えることが明らかにされて以来、国際的にもホットなトピックである・・・日本における幼児教育の無償化は、国際的に見ても、必要かつ重要な政策であるのは間違いない。しかしながら、多くの人がすでに指摘しているように、問題はその条件にある』、なるほど。
・『第1に、対象とする時間である。日本では、保育標準時間(1日11時間)までの無償を想定しているが、端的にいって長すぎる。 一方、先進的に幼児教育無償化を進めたイギリスでは、週30時間年38週の無償化となっている。フランスでも「幼児教育の時間」とされる時間以外は、保護者から保育料を徴収している。他の欧州各国でも英仏同様である。 日本と同じように保育標準時間までの無償を想定しているのは韓国だけである。 現在のように1日当たり11時間を無償化するのではなく、短時間と長時間での無償化によって、どのような効果に違いがあるかを明確にし、長時間の無償化にかかる経費を削減し、それらを質の向上に回すべきである。 小学校教育でも授業の時間数が問題とされるように、子どもにとって教育の効用を考えるときには、教育をする「意味ある時間」というのが重要な要因である』、確かに1日当たり11時間は教育をする「意味ある時間」からは長すぎる。
・『第2に、対象となる施設範囲である。 今回、幼児期のナショナルカリキュラムである「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」では、3歳以上の教育内容について整合性が図られ、ほぼ同一の内容となっている。 その内容に基づいて教育に当たれるのは、専門の資格としての幼稚園教諭や保育教諭、保育士の人のはずである。ところが、認可外などの保育施設では、この資格の基準を満たす人員やその教育を行うにふさわしい施設基準が満たされていない。 それがそのまま、時には無資格者も含めてのシフト勤務のなかで、幼児教育という名のもとに無償化される。 さらに、研修する権利があり、免許更新制度も準備されている教諭に対し、保育士には研修の権利が法律では認められていない。ようやくキャリアアップ研修制度が準備されたが、それも常勤専任の保育士で年数も園での受講人数枠も決められている』、保育士には研修の権利が法律では認められていなかった、というのは驚いた。
・『幼児教育は、教育の専門家が行うべき事柄である。 だが、それが無償化の範囲となっている対象施設や時間すべてにあてはまらない状況になっている。つまり、無償化しても幼児教育の質はこれまでと何も変わらない。これで無償化の効果があると言えるだろうか。 他国では無償化により、就園していない子どもが就園できるようになり、小学校以上の基礎部分が形成される。一方、日本ではすでに3〜5歳で多くの子どもたちが就園しているため、無償化の効果は小さいとみられる。 今回の無償化政策は、保護者の保育ニーズに応える目先の人気取り政策であり、長期的な人材育成への政策になっておらず、「恵まれない子どもたちに優れた教育を」ということにもならない状況になりかねない』、目先の人気取り政策でしかないというのは、その通りだろう。
・『第3には、無償化だけが議論され、施設を評価する仕組みがないことである。 幼児教育無償化を長時間で実施している韓国であっても、幼児教育の無償化にともなって、質向上のための教育評価制度を同時に設けている。それによって、説明責任を果たす構造を有している。これに対して日本では、その施設を評価する仕組みがない。 保育所の第三者評価制度や幼稚園の学校評価制度はあるが、いわゆる経営や監査ではなく、幼児教育の内容やプロセスの質を問うた評価制度にはなっていない。つまり、無償化の資金投入だけを続けても、質が高まる保証のないままに投入することになる。 老人福祉などの制度でも評価制度は導入されている。モニタリングなしに認可外保育所なども含めた幅広に対象範囲を広げることが、制度的にも不十分であることは目に見えている。 ▽質向上に資金を投入すべき(無償化はすでに閣議決定されている。 それでもできることがあるとしたら、保育者の研修や幼児教育の質向上のための評価制度を導入することだろう。教育無償化などに使われる予算2兆円の5%でも10%でもいいから、質向上に必要な制度のために資金を充てることである。そして、政策効果を検証する調査研究を同時に行うべきである。 少子化に向かう日本において、累積負債世界一のわが国に必要なのは、さらなる負債を増やして、現在の子どもたちが成人になったときにその重荷を背負わせることではないはずである。 今ここでより良質の幼児教育を行えるような制度を整え、それと無償化をセットにしていかなければならない。認可外施設が無償化になることの有無の議論ではなく、認可外施設の数を減らし、認可施設の数を増大していけるようにするべきである。 さらに、待機児童の解消が先か幼児教育の無償化が先か、という優先順位の議論ではなく、子どもたちの人材育成のための政策を、防衛政策に多額のお金を投じるよりも優先していくような議論が必要なのである。 民間保育所、私立幼稚園の多いわが国であるからこそ、そこでの独自の乳幼児教育の質の向上政策に向けて公的資金を賢く投入すべきなのではないだろうか』、「幼児教育の内容やプロセスの質を問う評価制度にはなっていない。つまり、無償化の資金投入だけを続けても、質が高まる保証のないままに投入することになる」とは、何たる馬鹿らしさだ。もっとも、保育園と幼稚園の所管官庁すら一本化できない役所の壁の下では、統一的な評価制度など、夢のまた夢なのかも知れない。
・『無償化はすでに閣議決定されている。 それでもできることがあるとしたら、保育者の研修や幼児教育の質向上のための評価制度を導入することだろう。教育無償化などに使われる予算2兆円の5%でも10%でもいいから、質向上に必要な制度のために資金を充てることである。そして、政策効果を検証する調査研究を同時に行うべきである。 少子化に向かう日本において、累積負債世界一のわが国に必要なのは、さらなる負債を増やして、現在の子どもたちが成人になったときにその重荷を背負わせることではないはずである。 今ここでより良質の幼児教育を行えるような制度を整え、それと無償化をセットにしていかなければならない。認可外施設が無償化になることの有無の議論ではなく、認可外施設の数を減らし、認可施設の数を増大していけるようにするべきである。 さらに、待機児童の解消が先か幼児教育の無償化が先か、という優先順位の議論ではなく、子どもたちの人材育成のための政策を、防衛政策に多額のお金を投じるよりも優先していくような議論が必要なのである。 民間保育所、私立幼稚園の多いわが国であるからこそ、そこでの独自の乳幼児教育の質の向上政策に向けて公的資金を賢く投入すべきなのではないだろうか』、説得力に富んだ主張だ。
タグ:「保育園落ちた」(待機児童、「保活」)問題(その6)(命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために、7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは?、保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき) 猪熊 弘子 現代ビジネス 「命を落とすかもしれない「危ない保育所・危ない幼稚園」の見極め方 二度とこの悲劇を繰り返さないために 」 日本では毎年、保育施設での事故で10数人の子どもが亡くなり、2004〜2017年までの14年間に亡くなった子どもは少なくとも198人に上ることがわかっています 圧倒的に認可外施設での事故の数が上回っています 危険なのは「くう・ねる・みずあそび」の時間 自由遊び」と「放置・放任」の違い 人間同士のつながりが、事故を防ぐ園を作る 小林 美希 「7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち 真に現場で求められていることは? 」 「地方裁量型認可以降施設(仮称)」の設置 安倍晋三政権の下、待機児童対策が政策の目玉となって急ピッチで保育所が作られるなか、保育士確保が困難になり、配置基準の引き上げはタブー視されるようになった 大阪府と大阪市から待機児童対策についてのヒアリング(国家戦略特区「提案に関するヒアリング」)が行われたことが影響 保育大手のポピンズから「特区における保育士・保育所制度に関する改革提案書」が出された ポピンズ関連では、2016年度に認可保育所「ポピンズナーサリースクール市ヶ谷」で「保育士が適正に配置されていない」、2015年度に認証保育所「ポピンズナーサリースクール一之江」で「保育料の徴収額が要綱に定める限度額を超えている」と東京都による監査で文書指摘されている。 また、東京都大田区による2016年度の指導検査でも、認可保育所「ポピンズナーサリースクール長原」は、「重要事項の掲示が未実施」」「保育士が適正に配置されていない」「献立表(補食)が未作成」「虐待への対応が不適切」「事故報告が速やかに行われて 7割が新人の保育所もある 秋田 喜代美 東洋経済オンライン 「保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき」 第1に、対象とする時間である。日本では、保育標準時間(1日11時間)までの無償を想定しているが、端的にいって長すぎる 第2に、対象となる施設範囲である 第3には、無償化だけが議論され、施設を評価する仕組みがないことである 教育無償化などに使われる予算2兆円の5%でも10%でもいいから、質向上に必要な制度のために資金を充てることである。そして、政策効果を検証する調査研究を同時に行うべきである
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