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相次ぐ警察の重大ミス(その4)(発生から逮捕まで1週間 新潟女児殺害で警察は何をしていた、「新潟女児殺害事件」 それでも性犯罪者の監視はタブーですか 元事件記者の悔悟と提案、大阪をザワつかせる「樋田容疑者逃走事件」はなぜ起きたか 原因と対策を犯罪心理学者が考察する) [社会]

相次ぐ警察の重大ミスについては、2016年10月5日に取上げたままだった。その後もミスは続いたが、最近は余りに酷いので、今日は、(その4)(発生から逮捕まで1週間 新潟女児殺害で警察は何をしていた、「新潟女児殺害事件」 それでも性犯罪者の監視はタブーですか 元事件記者の悔悟と提案、大阪をザワつかせる「樋田容疑者逃走事件」はなぜ起きたか 原因と対策を犯罪心理学者が考察する)である。

先ずは、5月17日付け日刊ゲンダイ「発生から逮捕まで1週間 新潟女児殺害で警察は何をしていた」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/229232/1
・『新潟小2女児殺害事件で逮捕された小林遼容疑者(23=新潟市西区)の車から練炭が見つかっていたことがわかった。逮捕があと少し遅れていれば、小林容疑者が自殺し、事件は迷宮入りしていた恐れもあった。 新潟県警は事件直後から小林容疑者をホンボシとみていたようだ。直後から小林容疑者の会社に在籍を確認する電話をしているのだ。小林容疑者の勤務先の代表取締役がこう言う。「事件翌日の8日の午前中に警察から『小林遼というのはお宅の社員ですか』と電話がありました。『はいそうです』と答えたら、『今日出社してますか』ということで、『いや出社していません』と答えました。電話は逮捕されるまで連日ありました」 小林容疑者は4月に女子中学生を連れ回し書類送検された「前科」があっただけに、すぐに捜査線上には浮かんだのだろう。なのに事件発生から逮捕まで1週間もかかっている。警察は何をやっていたのか』、自殺寸前で逮捕とはまたまた警察不信のネタが1つ増えた。
・『7日の午後5時ごろに女児が行方不明になったという通報があってから、新潟県警は100人態勢で捜索をしたが、小林容疑者は警察の目をかいくぐって線路上に遺体を遺棄している。もし、女児が行方不明になった直後に小林容疑者に話を聞いていれば、遺体が電車にひかれることもなかったのではないか。 殺人事件が起きた時、警察は通常、現場近辺にローラーをかけるものだ。なのに、新潟県警は小林容疑者の会社に電話をするだけで聞き込みも熱心にやっていなかった。女児が持っていた傘も見つけられていない』、驚くほどの不手際だ。
・『犯罪捜査に詳しい元刑事の飛松五男氏はこう言う。「車から練炭が見つかったということは、自殺する恐れがあると知って警察は慌てて逮捕したのでしょう。女児の傘が見つかっていないのは、小林容疑者が自供してから傘を見つけた方が証拠能力が高いと考えたからではないか。いわゆる秘密のバクロです。事件現場の草を刈っていないことからも警察の余裕ぶりがうかがえます」 もし、小林容疑者に自殺されていたら新潟県警はどうするつもりだったのか』、その通りだ。

次に、ライターの河野 正一郎氏が7月6日付け現代ビジネスに掲載した「「新潟女児殺害事件」、それでも性犯罪者の監視はタブーですか 元事件記者の悔悟と提案 」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56402
・『事件発生後にたまたま見たテレビ番組では、コメンテーターらが「なぜ、事件を未然に防げなかったのか」「遺族の無念さを思うと言葉がない」などと言っていた。 本当にその通りなのだが、なんだかしっくりこない。似たような事件が起きるたびに、同じことを何十年間も言い続けているのではないか。私たちはこれまでに、幼い子が犠牲になる事件を未然に防ぐために真剣な議論をしてきたのだろうか・・・殺人と強制わいせつ致死、死体遺棄・損壊などの罪で起訴された小林遼被告(23)は女児殺害事件を起こす1カ月前、未成年の女子を連れ回し、書類送検されていた。この書類送検の事案について、マスメディアは詳細を報じてこなかったため、ご存じない方も多いかもしれない。 だが、私は、この事案が気になって仕方がなかった。この事案をもっと慎重に扱っていれば、今回の痛ましい事件は起こらなかったのではないか、と思ったからだ。』、問題意識は納得できる。
・『「連れ去り事案」の中身(・・・被害者は女子中学生。住所は特定されていない。小林被告は女子中学生を連れ回し、みだらな行為をした。結果、新潟県警は4月に青少年健全育成条例違反で書類送検した・・・捜査関係者の話を総合すると・・・被害者は新潟県内に住む女子中学生で、小林被告とはもともと面識はなく、ネット掲示板で知り合った。その後に待ち合わせ、小林被告は女子中学生を新潟県内や山形県内で連れ回したうえで、みだらな行為をした。女子中学生は自殺願望があったが、小林被告が思いとどまらせた。 これまでの報道にあった通り、新潟県警は連れ回し事案で小林被告を逮捕せず、書類送検にした。この判断は適切だったのだろうか。 元最高検検事の郷原信郎氏に尋ねると、「事実関係がはっきりしていないので、なんとも言いようがない」と答えが返ってきた。ただ郷原氏はこう付け加えた。 「性犯罪についての日本の刑事政策は、残念ながら諸外国と比べてかなり遅れている。今回の事件(本件)について考える意味でも、今後の裁判で、連れ回し事案の経緯が明らかになるのが望ましいが、経緯を明らかにすることが新潟県警にとってメリットがないから、明らかになる可能性は低いだろう」』、「連れ回し事案で小林被告を逮捕せず、書類送検にした」ことの是非が問われることもなく、闇に葬られるのであれば、何ら教訓にならず残念だ。
・『私が連れ回し事案にこだわり、詳報しようとするのは、小林被告の行状を暴露しようとしているからではない。連れ回し事案について、小林被告の人権があることも承知しているつもりだ。では、なぜ、この原稿を書こうとしているのか。 ここで突然ながら、今回の取材の動機を説明するために、少し私事を書くことをお許しいただきたい。 私は新聞記者時代、2年間、大阪府警の捜査1課担当をした。来る日も来る日も殺人事件を追い、早朝と深夜には刑事の家に行って捜査状況を聞き、昼間は事件現場周辺で事件の状況を聞いて回る仕事だった。ライバル社にいつも先を越され(業界用語でいうと「抜かれ」)っぱなしで、かっこいい事件記者ではなかった・・・そんなダメ記者でも、事件が起きるたびに、「ああ、また忙しくなるなあ」とうんざりしつつ、逆に「さあ仕事だ」というちょっとした高揚感も覚えていた。 こう書いて、事件取材に高揚感とは……と呆れた読者もたくさんいることと思う。いま考えれば、ひどい話だ。懺悔したい。 ひとつひとつの事件には被害者と加害者がいて、その周囲には限りない無念と悲劇がある。にもかかわらず、私はその程度の認識で事件を追いかけ、特ダネをものにしようとしていた・・・新聞社を退社したいま、事件をもっと客観的に見られるようになったと思う。そして今回の新潟の事件を繰り返さないために、特ダネを追うのではなく、本当に事件の再発を防ぐようなきっかけを見つけたい。そんな願いを込めて、この原稿を書こうと思った』、なるほど。
・『性犯罪を厳しく「監視」する国々 今回、新潟の事件が報じられている最中、14年前に岡山県津山市で小学3年生の女児が殺害された事件の容疑者が逮捕されたと報じられた。 逮捕された勝田州彦容疑者は、3年前に兵庫県内で中学3年生の女子生徒をナイフで刺した殺人未遂容疑で逮捕・起訴され、実刑判決を受けて服役中の身だった。この勝田容疑者は少なくとも2000年から少女への暴行事件や強制わいせつ事件を繰り返し起こし、逮捕・起訴され、有罪判決を受けている。一言で表現すると、未成年の女子を対象とした性犯罪の「常習者」だったのだ。 前出の郷原氏が指摘するように、他国では、性犯罪者の再犯を防ぐため、加害者が服役を終えたあとも動向を監視しているケースもある。 最も有名なのは、ミーガン法だろう。アメリカ・ニュージャージー州で94年に起きた少女殺害事件の容疑者が過去に性犯罪を繰り返していたことがきっかけで、性犯罪者の住所などの個人情報が公開されるよう定められた。同様の法律を制定する国も多い。 さらに常習者に対してGPS端末をつけさせる国は米国や韓国など数カ国に及び、韓国では性犯罪者にGPS付きの足輪をつけるようになって、性犯罪の再犯率が88%減ったという報道もある』、性犯罪者の個人情報を公開したり、「常習者」にGPS端末をつけさせるというのは、人権の問題があるとはいえ、いいアイデアだ。
・『では、日本ではどのような対策がとられているのだろうか。 日本では、2017年7月から強姦罪が「強制性交等罪」と犯罪の名称が変わり、懲役刑の下限を3年から5年に引き上げる厳罰化がなされ、被害者の刑事告訴がなくても警察が事件捜査を始められるようになった。また、法務省は2006年度から性犯罪者の一部を対象に「性犯罪者処遇プログラム」を実施している。 だが、プログラムの指導者が足りないなどの理由で、性犯罪者のうちプログラムの受講者は1割程度しかいない。 また、ミーガン法に代表される性犯罪者の個人情報の公開や、韓国などで始まっているGPS端末についての議論は起きていない。識者の間でも、ミーガン法に象徴される「服役後も加害者を監視する」という対策に対しては、人権上の問題が多いとして批判的な見方が強い。なかでも、批判の理由として、「性犯罪は再犯率が低い」ことを挙げる人が多い』、性犯罪者の個人情報の公開や、GPS端末についての議論すら起きていないというのには、驚かされた。
・『実際に再犯率を調べてみた。 2017年版の犯罪白書によると、2016年に刑法犯で検挙(逮捕だけでなく書類送検も含む)された成人のうち、過去に同じ罪名で検挙されたことがある・・・人の割合は、+窃盗=20.1% +恐喝=20.0% +詐欺=14.3% +傷害・暴行=12.3% +強制わいせつ=8.2% +強盗=7.5% +強姦=5.3% +放火=5.2% +殺人=2.6%、 の順で、強制わいせつと強姦の再犯率は確かに、窃盗や恐喝に比べて高いとは言えない。 だがそもそも、窃盗や覚醒剤犯罪と、性犯罪を同じ土俵で論じていいのだろうか。窃盗の被害者や覚醒剤に依存せざるを得なかった人たちを軽んじるわけではないが、被害者が心身に受ける苦痛の大きさを比較すれば、強姦と強制わいせつを合計した性犯罪者「13.5%」という数字を、私たちはもう少し重く受け止め、社会として何か対策を考える必要があるのではないだろうか。 さらに、識者らを取材していくと、小林被告と同様の「子どもに対する性犯罪」については、驚くべきデータがあることを教えてもらった』、その通りだ。
・『子どもへの性犯罪は常習性アリ ・・・法務省の法務総合研究所が犯罪白書とは別に2016年に発表した「性犯罪に関する総合的研究」の中にあった。この調査は、2008年7月から09年6月までに有罪が確定した性犯罪者1484人が5年後にどうなっていたかを追跡調査したもので、例年発表される犯罪白書より精緻な調査結果だ。 1484人のうち、調査時点で性犯罪を再犯していた207人について、調査時点での犯罪ごとに、過去に同じ犯罪をしたことがあるか(強制わいせつを例に挙げれば、調査時点で強制わいせつ罪を犯した人が過去にも強制わいせつ罪をしていたか、という意味)どうかの再犯率を調べたところ、結果はこうなった。 +単独強姦(集団ではなく1人で強姦したケース)=63.0% +強制わいせつ=44.0% +13歳未満の小児に対するわいせつ=84.6% +痴漢=100% つまり、痴漢はもちろんのこと、小児に対する性犯罪は常習性、反復性が高いことがデータでも裏付けられているのだ。現実に、本件の小林被告は、女子中学生に続き、女子小学生を犯罪の対象に選んでいた。幼い子どもを対象とした性犯罪の再犯率の高さは、「一種の病気」といったら言いすぎだろうか』、再犯率は信じられないほど高く、小児に対する性犯罪は常習性、反復性が高く、確かに「一種の病気」なのだろう。
・『では、こうした性犯罪の再犯について、どんな対策が考えられるだろう・・・かつて法制審議会・・・の刑法部会幹事だった加藤久雄弁護士は「日本の刑事政策では、性犯罪者に対して刑期を与えるだけ。起訴に至らなかった容疑者は事実上野放しになっているのが現状です」と指摘する。 ドイツの事情に詳しい加藤弁護士は「ドイツでは性犯罪を犯した人は裁判所の判断でほぼ全員が精神鑑定を受けるようになっていて、鑑定の結果で再犯の可能性が高いと判断されれば、病院などの更生施設に隔離されます。一種の異常者、病人と判断されるからです。再犯の可能性が消えない場合は一生涯、施設内で隔離されるケースもあります」と話す。 心理学からのカウンセリングなどを実施した結果、ドイツの性犯罪の再犯率は6割から3割に減ったという・・・世界各国では、アメリカで薬物療法が取り入れられるなど、性犯罪者を病気のように扱って治療を施すケースも出てきた。だが、日本では薬物療法についても、副作用や、服用にあたって同意が得られるかなどの問題があって慎重な考え方が根強い。 加害者が更生し、社会復帰するのが最も望ましいという意見に異論はないだろう。ただ、社会復帰を果たすためには、性犯罪者を支える周囲の人のバックアップが欠かせない。 ところが、性犯罪を繰り返してしまう容疑者は「家族からも見捨てられ、社会に友人すらいない人が大多数」(加藤弁護士)という。加害者の多くが、周囲のバックアップをさほど期待できない環境に置かれているのも現実なのだ。 そうであるなら、性犯罪者は事件の悪質性を問わずに全員、精神鑑定をしたらどうか。予算的に難しいのであれば、せめて、未成年者に対する性犯罪を犯した者は、全員鑑定できないものだろうか。鑑定して再犯可能性があるうちは隔離し、隔離をやめたあとも適度に監視しながら治療経過をチェックし続ける必要があるだろう。 加藤弁護士によると、ドイツでは性犯罪者1人あたり、年約2千万円のコストをかけて、性犯罪者の再犯を抑えようとしているという。安い金額ではない。ただ、幼い子どもの命や尊厳を力任せに侵害する犯罪をこのまま野放しにしておけない。治療がうまくいって、凶悪な性犯罪者が1人でも少なくなれば、事件で苦しみ悲しむ人の数はそれだけ少なくなるはずだから』、「起訴に至らなかった容疑者は事実上野放しになっている」というのは恐ろしいことだ。ドイツの精神鑑定やその後のフォロー体制は、カネがかかるにしても、いいアイデアで、前向きに考えるべきだろう。

第三に、筑波大学教授(臨床心理学、犯罪心理学)の原田 隆之氏が8月30日付け現代ビジネスに掲載した「大阪をザワつかせる「樋田容疑者逃走事件」はなぜ起きたか 原因と対策を犯罪心理学者が考察する」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57260
・『お粗末な逃走事件 大阪府の富田林警察署から樋田淳也容疑者が逃走してから2週間以上経った。 容疑者の足取りが一向につかめないなかで、大阪府内では、容疑者によると思われるひったくり事件などが複数件起こっている。 付近の住民は、さぞかし不安な毎日を過ごしていることだろう。実際、大阪府警には抗議の電話が3千件近く寄せられているという・・・警察官が事件に気づいたのは、逃走したと思われる時刻から1時間以上も経過した後のことだった。 樋田容疑者が逃走したのは、いくつもの警察の不手際が重なっていたことが理由として挙げられている。まず、面会室のアクリルの遮蔽版の取り付けに不備があり、それを蹴破って外に出ることができたのだという。 そして、本来なら面会室の外で待機しているべき警察官が不在であった。 また、弁護士が退室したことを知らせるために、ドアにはセンサーが設置されていたが、それを不要だと判断した警察署が電池が抜いていたこともわかっている。 さらには、敷地内に脚立が放置されており、それを使って塀の外に逃げたのではないかと推測されている。 このどれか1つでもきちんとした対処がなされていたならば、逃走は未然に防げたはずだ。逆に言えば、これだけ多くの不手際が重なっていたことに唖然とするほかない』、警察のミスがこれだけ重なって脱走につながったというのは、開いた口が塞がらない。
・『多忙を極める警察官と弁護士 この事件の背景には、警察官が常態的に多忙であり、署の人手が十分でなかったという問題があるのかもしれない。特に当日はお盆休み前の日曜日で、出勤している職員が手薄だった可能性は大きい。 そもそも警察官の仕事は、その性格上労働集約的にならざるを得ず、機械やAIなどに任せることがむずかしい部分が多分にあるだろう。 多忙な弁護士も、休日でなければ接見に来ることができなかった事情があるのかもしれない。むしろ、平日も休日もなく、治安のために働いている仕事ぶりには頭が下がる思いがする。 今でも十分に多忙な警察官や弁護士に、これ以上もっと働けというのは、たしかに酷な気もする。しかし、かといって手抜きをされては、このような事件が生じてしまうし、もっと取返しのつかないことになっては困る』、なるほど。
・『こうしたジレンマを埋める1つの答えは、科学的な知恵を刑事司法に携わる人々の職務に活用することだ。 犯罪者と一口に言っても、彼らは皆、一様ではない。その危険性、リスクには大きな個人差がある。どのような特徴を持っている者が、より危険でより注意を払うべきか、それはこれまでの研究データの蓄積でわかっている。 第1は、幼少期(おおむね10歳以前)から、多種多様な非行・犯罪を繰り返しているような者たちだ。 彼らは、「生涯継続型犯罪者」と呼ばれており、早期から強力な指導、教育、治療をしなければ、一生涯犯罪を繰り返す。 数としては、犯罪者のうちの数パーセントにも及ばないこの少数の人々が、世の中の犯罪の6割以上にかかわっている。 つまり、その犯罪初発年齢と犯罪の多種方向性に着目すると、簡単にスクリーニングができる。より詳細なアセスメントのためには、専門的な診断ツールを活用する必要があるが、これも数十項目の質問で判定できる。 また、当人が粗暴犯罪に関与しているかどうかも重要なポイントである。世の中の犯罪の大多数は、窃盗などの財産犯罪と交通犯罪、そして薬物犯罪だ。この3つで、犯罪発生件数の80%近くを占める。 一方、殺人、強盗、傷害、強制性交のような粗暴犯罪は、発生件数がはるかに少なく、そうした犯罪に手を染める者は、病理や問題性が深刻でリスクが大きい。 彼らは、われわれが生得的に有している脳の「暴力抑制装置」が機能していない人々であり、刑罰の効果もあまり期待できない』、「生涯継続型犯罪者」は数としては、犯罪者のうちの数パーセントにも及ばないが、世の中の犯罪の6割以上にかかわっているというのは驚かされた。筆者の考え方は、企業のリスク管理にも通じるもので、確かに合理的で実効性も期待できそうだ。
・『これらの要因を考慮しながら、樋田容疑者をアセスメントしてみると、少年のころからさまざまな非行に手を染めていたという情報がある。 また、今回の容疑も窃盗のほか、強盗致傷や強制性交など4つの容疑であった。しかも、これらは別の事件で受刑していた刑務所を出所して、間もなく起こしたものだという。 つまり、比較的早期から犯罪傾向が見られ、粗暴犯罪を含む多種多様の犯罪を次々と行っていることが明らかであり、リスクが大きい危険な犯罪者である可能性が高いということだ ほかにも犯罪者のリスクを心理学的に査定する際には、「セントラルエイト」という要因を用いることが望ましく、それは、①過去の犯罪歴、②不良交友、③反社会的態度、④反社会的パーソナリティ、⑤職業・学業(無職であることなど)、⑥アルコール・薬物乱用、⑦家庭の問題、⑧建設的な余暇活用ができないことの8つである。 これが当てはまるほど、本人のリスクは大きいことになるが、樋田容疑者の場合、報道等でわかっていることから判断しても、ほぼすべてに当てはまると言えるだろう。 だとすると、逃走中も引ったくりにとどまらず、これまでの犯歴にあるように強盗や強制性交などの粗暴犯罪に及んでも何の不思議もない。おそらく、機会さえあれば、ためらいなくそのような犯罪に至ってしまう人物像が推測される』、樋田容疑者を事前にアセスメントしていれば、警察の対応も厳格化し、脱走にはつながらなかったろう。。
・『逃走事件と聞いて、記憶に新しいのは、本年4月に松山刑務所大井造船作業場から逃走した受刑者の件である・・・このときの受刑者と今回の容疑者では、まったくリスクの程度が違う。 松山刑務所のケースでは、これまで窃盗しか行っておらず、粗暴犯罪の前歴はなかった。 つまり、もっぱら財産犯のみの単一方向犯である。実際、23日間に及んだ逃走中も、バイク窃盗や車上荒らし等以外の犯罪は行っておらず、粗暴犯罪には至っていない。そこにはやはり深い溝があるのだ。 したがって、そのような溝を易々と越えてしまう樋田容疑者のような人物を逃がしてしまった責任はきわめて大きい』、なるほど。。
・『科学的エビデンスを基にした提言 警察の人手を増やすことが現実的に不可能に近いとすれば、犯罪心理学の知見を活用して、もっとメリハリのある犯罪者処遇ができないものだろうか。 つまり、生涯継続型犯罪者や多種方向犯、粗暴犯に対しては、十分な人手を割き、密接な監視や対応が必要であることは言うまでもない。犯罪心理学では、これを「リスク原則」と呼んでいる。リスクが大きな者ほど、より濃密な処遇が必要だということである。 さらに、リスク原則によると、治療や教育などの「ソフト」な処遇も、彼らには有益である。手を掛ければ掛けるほど、その効果は現れやすい。 一方、リスクが低い犯罪者には、手を抜いていいわけではないが、たとえば薬物事犯者などは、警察や刑務所ではなく、刑事司法の枠外での処遇を考える時期に来ているのではないだろうか。 ヨーロッパを中心に、薬物の自己使用以外の犯罪には加担していない者に対しては、「非犯罪化」の動きが加速している。 これは「薬物の合法化」ではなく、法律上はあくまで違法であるが、犯罪として罰するよりもまず、社会内での治療を優先させるというものである。 わが国も加盟している国連の麻薬単一条約では、「締約国は、薬品の濫用者が……犯罪を犯した場合には、有罪判決若しくは処罰に代わるものとして又は有罪判決若しくは処罰のほかに……治療、教育、後保護、更生及び社会復帰の措置を受けるものとすることができる」と規定されている。 欧州共同体では、それを一歩進めて「加盟国は、薬物使用の罪を犯した者に対し、それが適切な場合はそれぞれの国の法的枠組みに照らし合わせて、強制的処罰に代わる代替措置(教育、治療、リハビリテーション、アフターケア、社会再統合)を提供すべきである」としている。 このような動きは、犯罪心理学などの科学的な研究知見に即したものである。薬物事犯を抑制するには、刑罰よりも治療のほうに効果があり、しかも刑務所などの施設に拘禁しての治療よりも、社会内で日常生活を送りながらの治療のほうが、効果が大きいという確固たるデータがあるからだ。 さらに、経済的コストという観点からも、刑務所よりも外での治療のほうがはるかに安上がりである。実際、先進国のなかで、違法薬物使用だけで刑務所に入るのは、日本くらいのものである。 粗暴犯罪や重大犯罪と薬物犯罪に対して、「リスク原則」に従ってメリハリの利いた対処をすることは、警察、裁判所、刑務所など、刑事司法に携わる人々の負担を軽減し、われわれの税負担というコストを下げるだけでなく、再犯を減らす上でもはるかに効果が大きい。そして、その分をリスクの大きい犯罪者への処遇に振り分けることができる。 労働集約型で、まじめに地道に働くのは日本人の美徳であるかもしれない。しかし、そればかりに頼っていては、今回のようなほころびが出てしまう。今回の事件は、ほころびと言うにはあまりにも大きな失態である。 このような事件を繰り返さないためにも、犯罪心理学の知見をもっと有効に活用し、より科学的で効果的な治安対策を望みたい』、極めて説得力に富んだ好論文である。司法の世界は前例主義に囚われ極めて保守的だが、犯罪心理学の知見をもっと有効に活用し、「リスク原則」に従ってメリハリの利いた対処をするというのは、大いに前向きに検討すべきだろう。
タグ:河野 正一郎 ドイツの性犯罪の再犯率は6割から3割に減った 殺人、強盗、傷害、強制性交のような粗暴犯罪は、発生件数がはるかに少なく、そうした犯罪に手を染める者は、病理や問題性が深刻でリスクが大きい 世の中の犯罪の大多数は、窃盗などの財産犯罪と交通犯罪、そして薬物犯罪だ。この3つで、犯罪発生件数の80%近く 相次ぐ警察の重大ミス 再犯率 警察の人手を増やすことが現実的に不可能に近いとすれば、犯罪心理学の知見を活用して、もっとメリハリのある犯罪者処遇ができないものだろうか 弁護士が退室したことを知らせるために、ドアにはセンサーが設置されていたが、それを不要だと判断した警察署が電池が抜いていた 警察は通常、現場近辺にローラーをかけるものだ。なのに、新潟県警は小林容疑者の会社に電話をするだけで聞き込みも熱心にやっていなかった 批判の理由として、「性犯罪は再犯率が低い」ことを挙げる人が多い 性犯罪者の個人情報の公開や、韓国などで始まっているGPS端末についての議論は起きていない 日刊ゲンダイ 面会室の外で待機しているべき警察官が不在 アクリルの遮蔽版の取り付けに不備 科学的な知恵を刑事司法に携わる人々の職務に活用 犯罪者と一口に言っても、彼らは皆、一様ではない。その危険性、リスクには大きな個人差がある。どのような特徴を持っている者が、より危険でより注意を払うべきか、それはこれまでの研究データの蓄積でわかっている 薬物事犯者などは、警察や刑務所ではなく、刑事司法の枠外での処遇を考える時期に来ているのではないだろうか 敷地内に脚立が放置されており、それを使って塀の外に逃げた ログラムの指導者が足りないなどの理由で、性犯罪者のうちプログラムの受講者は1割程度しかいない ヨーロッパを中心に、薬物の自己使用以外の犯罪には加担していない者に対しては、「非犯罪化」の動きが加速 リスクが大きな者ほど、より濃密な処遇が必要 定の結果で再犯の可能性が高いと判断されれば、病院などの更生施設に隔離 犯罪心理学では、これを「リスク原則」 ドイツでは性犯罪を犯した人は裁判所の判断でほぼ全員が精神鑑定を受ける 日本の刑事政策では、性犯罪者に対して刑期を与えるだけ。起訴に至らなかった容疑者は事実上野放しになっているのが現状です 原田 隆之 樋田淳也容疑者 女児が行方不明になった直後に小林容疑者に話を聞いていれば、遺体が電車にひかれることもなかったのではないか 韓国では性犯罪者にGPS付きの足輪をつけるようになって、性犯罪の再犯率が88%減ったという報道も 常習者に対してGPS端末をつけさせる国は米国や韓国など数カ国に及 犯罪者のうちの数パーセントにも及ばないこの少数の人々が、世の中の犯罪の6割以上にかかわっている 逮捕があと少し遅れていれば、小林容疑者が自殺し、事件は迷宮入りしていた恐れもあった 新潟小2女児殺害事件 「発生から逮捕まで1週間 新潟女児殺害で警察は何をしていた」 性犯罪者の住所などの個人情報が公開 単独強姦(集団ではなく1人で強姦したケース)=63.0% +強制わいせつ=44.0% +13歳未満の小児に対するわいせつ=84.6% +痴漢=100% 富田林警察署 犯罪心理学の知見をもっと有効に活用し、より科学的で効果的な治安対策を望みたい 性犯罪に関する総合的研究 「大阪をザワつかせる「樋田容疑者逃走事件」はなぜ起きたか 原因と対策を犯罪心理学者が考察する」 (その4)(発生から逮捕まで1週間 新潟女児殺害で警察は何をしていた、「新潟女児殺害事件」 それでも性犯罪者の監視はタブーですか 元事件記者の悔悟と提案、大阪をザワつかせる「樋田容疑者逃走事件」はなぜ起きたか 原因と対策を犯罪心理学者が考察する) ドイツでは性犯罪者1人あたり、年約2千万円のコストをかけて、性犯罪者の再犯を抑えようとしているという いくつもの警察の不手際が重なっていた ミーガン法 今後の裁判で、連れ回し事案の経緯が明らかになるのが望ましいが、経緯を明らかにすることが新潟県警にとってメリットがないから、明らかになる可能性は低いだろう 性犯罪についての日本の刑事政策は、残念ながら諸外国と比べてかなり遅れている 警察官が事件に気づいたのは、逃走したと思われる時刻から1時間以上も経過した後 子どもへの性犯罪は常習性アリ 「生涯継続型犯罪者」 先進国のなかで、違法薬物使用だけで刑務所に入るのは、日本くらいのもの 郷原信郎 女児殺害事件を起こす1カ月前、未成年の女子を連れ回し、書類送検 「「新潟女児殺害事件」、それでも性犯罪者の監視はタブーですか 元事件記者の悔悟と提案 」 被害者が心身に受ける苦痛の大きさを比較すれば、強姦と強制わいせつを合計した性犯罪者「13.5%」という数字を、私たちはもう少し重く受け止め、社会として何か対策を考える必要があるのではないだろうか アメリカで薬物療法 薬物事犯を抑制するには、刑罰よりも治療のほうに効果があり、しかも刑務所などの施設に拘禁しての治療よりも、社会内で日常生活を送りながらの治療のほうが、効果が大きいという確固たるデータがある 現代ビジネス
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