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トランプ大統領(その32)(米国が「世界の暴力団」となった国際社会を日本が生き抜く道、伝説の記者が暴くトランプのヤバすぎる内実 新著でホワイトハウス奥の院の混乱を暴露、側近の相次ぐ裏切りと政権内部からの抵抗でトランプは一人、トランプ弾劾が絡んで風雲急を告げる米中間選挙) [世界情勢]

トランプ大統領については、7月26日に取上げた。今日は、(その32)(米国が「世界の暴力団」となった国際社会を日本が生き抜く道、伝説の記者が暴くトランプのヤバすぎる内実 新著でホワイトハウス奥の院の混乱を暴露、側近の相次ぐ裏切りと政権内部からの抵抗でトランプは一人、トランプ弾劾が絡んで風雲急を告げる米中間選挙)である。

先ずは、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が8月28日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「米国が「世界の暴力団」となった国際社会を日本が生き抜く道」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/178350
・『「アメリカファーストの嵐」が世界中に猛威を振るっている。ドナルド・トランプ米大統領は、2017年1月の大統領就任後、「北朝鮮ミサイル危機への介入」・・・「エルサレムをイスラエルの首都と認定」・・・「イラン核合意からの離脱」・・・など、大統領選時の公約通りに「アメリカファースト(米国第一主義)」を推進してきた。 そして、中国、トルコ、イランに対して、次々と経済制裁を課した。この連載は、米国が「世界の警察官」をやめて「世界の暴力団」となったと評した・・・まさに、気に入らない国があれば、後先考えず「モグラ叩き」のように潰す「暴力団」のような振る舞いになってきたのではないだろうか』、「「世界の警察官」をやめて「世界の暴力団」となった」とは言い得て妙だ。
・『米国が「世界の暴力団」となった国際社会をどう生き抜くか トランプ大統領が就任した時、多くの識者が「大統領になれば変わる」という「願望」を持っていたと思うが、見事に裏切られた。現在、彼らは、「アメリカファースト」で米国が築いてきた国際社会の秩序が崩壊していくことを憂い、米国が「トランプ以前」に戻ってくれることを必死に祈り、右往左往しているように見える。 この連載では、「トランプ大統領が当選した日、国際政治学のすべての権威は失墜した。これからは、なにが起こってもおかしくない時代になった。権威も、しきたりも、常識も全く通用しない時代になった。自分の頭で考えていくしかない時代だ」と書いた・・・現状は、その通りになってきていると思う。 この際、常識に捉われず、新たな発想で考えてみたらどうだろうか。「トランプ以前」の「世界の警察官」だった米国にはもう戻らない。本稿は、米国が「世界の暴力団」となってしまった国際社会を、どう生き抜いていくかを考える』、答を早く見たいものだ。
・『トランプ政権の中国、トルコ、イランへの経済制裁による混乱  「貿易赤字」を「企業の損失」だと勘違いしているとしか思えないトランプ大統領は、中国に対して、ほとんど言いがかりでしかない「貿易戦争」を仕掛けた。まず6月、中国の知的財産権侵害への制裁措置との名目で、500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課す方針を発表した。 そして、実際に7月6日、340億ドル分(818品目)の追加関税を課し、7月23日、残りの160億ドル(約1.8兆円)相当の中国製品に、追加関税を上乗せした。同日、中国も、同規模の関税を米国製品にかける「報復合戦」になっている。 一方、中東においても「アメリカファースト」による混乱が広がっている。「イラン核合意」から離脱した米国は、8月7日、自動車や貴金属の取引停止という対イラン経済制裁の第一弾を再発動した。 米国は、米企業だけでなく欧州などの企業にも制裁発動を求めている。11月4日には第二弾の経済制裁として、イランとの原油取引の停止を欧州や日本に求めるという。欧州やロシア、中国は、現行の「核合意」の枠組みを維持しようとしているが、トランプ大統領の強硬姿勢で困難な情勢だ。 イランは、バラク・オバマ米政権によって進められた2015年の「核合意」後に、2ケタの経済成長を実現していた。だが、トランプ政権による制裁の再発動で通貨安に拍車がかかり、経済が急激に悪化している。 イラン国内では、イラン革命防衛隊高官が「イラン産原油の輸入停止を求める米国の呼び掛けに各国が応じるならば、ホルムズ海峡の封鎖に踏み切る」と警告するなど、「強硬派」が勢力を増している。また、イランと、イスラエル、サウジアラビアなどの対立が激化している。 さらに、米国とトルコの対立が深まっていることも、中東地域の政治・経済を混乱させている。トランプ政権は、トルコが2016年のクーデター未遂事件に関連して自宅軟禁状態にしているブランソン牧師の解放を求めてきたが、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が応じなかった。これに対してトランプ大統領は、トルコに対してアルミニウムと鉄鋼の関税率を2倍に引き上げると発表した。トルコ・リラは1ドル=7.2リラの市場最安値を記録し、年初からのリラの下落率は4割に達した。 エルドアン大統領が「金利は搾取の道具」と考えて中央銀行を支配し、利上げを認めないことが、経済危機をより深刻にしている。利上げという通貨防衛の鉄則を無視しているのだ。トルコの中央銀行は独立性を担保されておらず、政策金利を上げることができない。なんとか市場金利の利上げ誘導でしのごうとしているが、その限界は明らかだ。 さらに、エルドアン大統領が「政治主権の放棄になる」と主張し、国際通貨基金(IMF)の支援を頑なに拒否している。支援の見返りに厳しい財政緊縮を要求されるのを嫌がっているのだろうが、その代わりに、サウジアラビアとの断交で孤立しているカタールと直接投資などで関係を深め、通貨スワップ協定を結んだりしている。 結局、エルドアン大統領のいかにも付け焼刃的に見える対応によって、リラ売りは加速してしまっている。そして、その影響は世界に波及し始めている。新興国からの資金流出が加速し、アルゼンチン、インドネシアなどが利上げを実施した。 しかし、トランプ大統領はツイッターで「われわれのトルコとの関係は、現在は良くない!」と発言し、経済制裁に加えて、F15のトルコへの売却の当面禁止を発表し、さらに追加の経済制裁の可能性も示唆した。 これに対して、トルコは報復関税を導入するなど対抗措置を強化し、報復合戦が加速している。トルコはNATO加盟国だが、ロシアと接近を図るなど、安全保障上の問題に発展する懸念も広がっている』、今朝の日経新聞によれば、トルコ中央銀行は、政策金利を一気に6.25%引き上げて、24%にしたが、これに対するエルドアン大統領の反応は不明のようだ。エルドアンが「金利は搾取の道具」と考えているのは、いかにもイスラム主義者らしいが、金融制度は曲がりなりにも欧米流なのに、大統領ともあろう人物がこんな考えで中央銀行に介入していたとは困ったことだ。
・『米国が第二次大戦後の同盟体制を築く以前を振り返ってみる  このように、米国が「世界の警察官」をやめて、気に入らない国を「モグラ叩き」してしまう時代にどう行動すべきかを考えたい。それには、米国が「世界の警察官」になる前のことを振り返ってみることだ。 この連載では、ピーター・ゼイハンがまとめた、「多くの国が米国の同盟国になることで得たメリット」を紹介したことがある(第170回)。これを裏返して、「米国の同盟国になる前」がどういう状況だったか整理してみよう。 (1)フランスとドイツは、お互いに相手を警戒して武装し、何度も戦っていた。(2)スウェーデンやオランダなどの中規模の国家は、防衛に最大限の努力を割かねばならず、貿易に焦点をあてて自国の強みを活かすことなどに集中できなかった。(3)世界中の貿易路の安全が保障されないため、自ら軍隊を展開して、さまざまな土地を占領する必要があった。最古の小麦生産地であるエジプトは、過去2000年ずっと、他国の侵略を恐れ続けていた。(4)英国、フランス、スペイン、ポルトガル、オランダなどは、世界中に植民地を確保した。東南アジアは欧州の支配下に置かれ、搾取され続けた。後発のドイツは植民地が少なく、資源確保のために、ロシア(ソ連)や英仏に戦いを挑んだ。(5)日本は、朝鮮半島、台湾を植民地とし、中国東北部(満州)と東南アジアから搾取しようとした。中国は、外部の干渉を受け続けて、国の基盤を固める安全な環境を得られなかった。 要するに、米国が第二次大戦後の同盟体制を築く以前とは、それぞれの国が、領土の安全の確保、資源の確保、市場の確保のために、お互いを「敵」として警戒し合う必要があった。米国が「世界の警察官」をやめて、世界各地から撤退しつつある現在、少しずつ昔に戻りつつある感じがしないだろうか』、「感じ」はあるとはいえ、実際には、一旦、グローバル化した世界経済の枠組みを昔に戻すことなど不可能に近い、或はその過程で大混乱に陥るのではなかろうか。
・『さまざまな国が米国抜きで稼ぎ米国を「食べさせる」仕組みを作るべきだ  しかし、米国が「世界の警察官」をやめるから、その他の国々は昔に戻る、というだけでは芸がない。米国に守られ、米国市場に自由にアクセスできたことで、奇跡的な高度経済成長を達成した日本やドイツのみならず、韓国、台湾、オセアニアの諸国、北米大陸、西ヨーロッパ、そして後には共産主義の大国である中国までもが、歴史上前例のない安全と豊かさを享受しているのだ。それをただ失うだけというのでは、もったいではないか。 米国に「守ってもらい」「食べさせてもらう」ことで多くの国が生きられるということを超えた、新しい国際社会を築かねばならない。まず変えるべきは、それぞれの国が米国の方ばかりを見ていることだ。端的な例が、日本と韓国である。両国とも、米軍が国内に駐留し、東西冷戦期には、米国が共産主義と対峙するフロントラインの役割を果たした。 だが、日本も韓国も、米国と対話しようとするばかりで、お互い直接対話することには積極的ではないのではないか。米軍に依存してきた安全保障についてなら、それも理解できる。しかし、歴史認識問題のような、純粋に日韓の間の懸案事項でさえ、米国が間に入らないと、まともに話し合えないことがある。 これは、中東におけるサウジアラビア、イラン、イスラエルの関係にも当てはまるだろう。欧州は、経済に関してはEUという話し合いの枠組みがあるが、安全保障についてはNATOがありながら、実際は英国もフランスもドイツも、米国の方を向いて頼りにしている。 米国は「世界の警察官」をやめたとはいえ、軍事力においてはいまだに圧倒的な世界最強の座に君臨している。世界中の同盟国に軍隊を駐留させ続けているし、「世界の暴力団」として、気にいらない国があれば介入する意欲も満々だ。 一方、経済については、これまでのような米国市場への自由なアクセスは許さないという。「米国のモノを買え」とトランプ大統領は明確に言っている。それならば、まずは経済で、米国に輸出することばかりではなく、米国抜きで、お互いに仲良く儲けることを考えてはどうだろうか。 そして、儲けたお金を、米国に投資してあげればいい。米国内に工場を建てるのもよし。「シェールガス」「シェールオイル」に投資するのもいいだろう。米国は今後、「米国に守ってもらい、食べさせてもらう同盟国」は必要としない。しかし、米国は、「米国を食べさせてくれる同盟国」は必要とする(第150回)。米国を儲けさせ続ける国に対しては、米軍は「用心棒」を務めてくれるだろう。 日本は、TPP11、RCEP、EUとの経済連携貿易協定(EPA)など、様々な自由貿易体制の枠組みを使うべきである。また中国が主導する「一帯一路」への積極的な参加(第120回)や、TPP11への英国の参加なども仕掛けていくべきである。TPP11のうち、6ヵ国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)が英連邦加盟国だ。英国のTPP11参加は、日本と英連邦という「巨大経済圏」を結び付けることを意味する(第134回)。 日本は、さまざまな国々が「米国抜き」で互いに儲けて、米国を「食べさせる」仕組みづくりを主導すべきである』、もっともらしいが、よくよく考えると、「「米国に食べさせてもらう同盟国」、「米国を食べさせてくれる同盟国」」という概念はあと1つ明確ではない。貿易関係というものは、こうした一方的な関係ではないからだ。いつもは、説得力ある記事を書く筆者にしては、最後の部分はいささか期待外れだ。

次に、国際ジャーナリストの高橋 浩祐氏が9月7日付け東洋経済オンラインに寄稿した「伝説の記者が暴くトランプのヤバすぎる内実 新著でホワイトハウス奥の院の混乱を暴露」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/236529
・『アメリカのドナルド・トランプ大統領のことを、ジム・マティス国防長官は「小学5、6年生並みの振る舞いと理解力」の持ち主と憤慨する一方、ジョン・ケリー大統領首席補佐官は「彼は馬鹿だ」と陰口を叩く――。 1970年代のウォーターゲート事件をめぐる調査報道で、リチャード・ニクソン大統領を退陣に追い込んだワシントンポスト紙のカール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの両記者。この事件を描いたノンフィクション『All the President’s Men』(大統領の男たち)は映画化され、アカデミー賞4部門を受賞する名作となった。邦題は『大統領の陰謀』で知られる・・・そのウッドワード氏(現・ワシントンポスト紙編集局次長)が、9月11日に新著『Fear: Trump in the White House』(仮訳:恐怖─ホワイトハウスの中のトランプ)」を出版する。その本では、安全保障をめぐるトランプ大統領の無知や衝動的な性格、気に入らない部下を怒鳴り散らすワンマンぶりを暴露、さらにはホワイトハウス内での支離滅裂な政策決定過程をあらわにしている』、トランプはこの出版に怒り心頭のようだ。
・『トランプ政権の「神経衰弱」 この本の刊行に先立ち、ワシントンポスト紙は9月4日、「ボブ・ウッドワードの新著、トランプ政権の’神経衰弱’を暴く」との見出しの記事で、内容を紹介した。 これを受け、トランプ大統領やマティス国防長官、ケリー大統領首席補佐官、ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は早速、一斉に「ウッドワードは民主党の工作員か?」「作り話だ」などと反論。アメリカ稀代の調査報道記者が書いた内幕本だけに、政権内でも事態を深刻に受け止めている様子をうかがわせている。 ウッドワード氏は、何百時間にも及ぶ関係者へのインタビューや会合のメモ、日記、政府文書など、自らが直接入手した一次情報の事実に基づいて書いたと自信満々だ。トランプ政権の危うさを改めて世に問うた形で、内外で波紋が広がりそうだ。 ワシントンポスト紙の記事によると、この新著のメインテーマは、「大統領個人と彼が率いる国の双方のために、大統領の衝動を抑えて惨事を防ごうと、ホワイトハウスの奥の院で繰り広げられている数々の権謀術数」についてだ。 大統領側近が大統領執務室の机から政府文書を意図的に引き抜き、大統領に見せないようにしたり、署名させたりしないようにしている。ウッドワード氏はこれを「行政クーデター」、そして、ホワイトハウスの神経衰弱(ノイローゼ)と呼んでいる。 例えば、大統領は2017年春、北米自由貿易協定(NAFTA)から撤退することに躍起になっていた。ホワイトハウスの秘書官だったロブ・ポーター氏は大統領の指示を受け、撤退通知書を作成。しかし、アメリカのNAFTA撤退は経済外交関係で危機を招きかねないことから、国家経済会議(NEC)委員長を務めていたゲイリー・コーン氏と相談のうえ、大統領の机から通知書を抜き去ったという。 また、コーン氏は、大統領が韓国との自由貿易協定を正式に離脱するために署名する予定だった公式文書を、大統領の机から抜き取った。大統領は、文書がなくなっていることに気づかなかったという』、「行政クーデター」があるというのは、僅かとはいえ安心材料ではある。
・『世界情勢をめぐる知識の欠如  世界情勢をめぐる大統領の好奇心や知識の欠如に加え、大統領が軍事・情報当局幹部の主流な見方を軽視することによって、いかにして大統領の外交安全保障チームが動揺しているかを、ウッドワード氏は新著で延々と述べているという。 例えば、大統領は2018年1月19日の国家安全保障会議(NSC)で、北朝鮮からのミサイル発射を7秒で探知できる特殊部隊を含む、在韓米軍の重要性をまったく軽視。なぜアメリカ政府が朝鮮半島で資源を費やしているかと質問したという。 これに対し、マティス国防長官は「第3次世界大戦を防ぐために、我々は行っています」と答えた。 ワシントンポスト紙によると、ウッドワード氏は、トランプ大統領が会議場所から去ると、「マティスは極めて憤慨して動揺していた。そして、側近に大統領は、小学5、6年生の振る舞いと理解力しか持ちえていないと述べた」と説明している』、トランプに限っては、意外性はなく、我々が想定していた通りの展開だ。
・『対北朝鮮政策の実情 トランプ大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を国連総会で「リトル・ロケットマン」とののしり、金委員長が大統領を「狂った老いぼれ」と言い返す。本の中では、そんな米朝の緊張が一気に高まった2017年秋の舞台裏も描かれている。2017年後半は、2人の常軌を逸した罵倒合戦が日に日にエスカレートし、日本の一部の「専門家」の間でも、アメリカによる北朝鮮への先制攻撃は避けられないと主張する人々が少なからずいた。では、実情はどうだったのか。 ウッドワード氏によると、大統領は秘書官のポーター氏に対し、事態を金正恩氏との「意志の競争(a contest of wills)」ととらえ、「これは、すべて指導者対指導者という話だ。男と男の対決だ。私と金の対決だ」と述べたという。要は、大統領も核攻撃を辞さない軍事オプションをちらつかせながらも、内実は「はったり合戦」だったことが描かれている。これは筆者が昨年春先以来、東洋経済オンラインに何度も書いた内容と一致する・・・このほか、シリアのバッシャール・アサド大統領が2017年4月に民間人への化学兵器攻撃を行うと、マティス国防長官に「奴を殺せ!」などと電話で指示。マティス氏は「直ちに取り掛かります」と述べたものの、電話を切った後に側近に「我々はそのようなことはしない。もっと慎重な姿勢で臨む」と述べたという。これで結局、通常の空爆におさまったという。 首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏と、トランプ氏の長女で大統領補佐官のイヴァンカ氏の激しい口論のシーンも描かれている。大統領首席補佐官だったラインス・プリーバス氏を介さずに、仕事を遂行するイヴァンカ氏に対し、「君はスタッフの1人だ」などとバノン氏は怒鳴り散らした。これに対し、イヴァンカ氏は「私は決してスタッフではない。長女だ!」などと反論したという。 トランプ政権の中心メンバーの間では、こうした緊張が沸点に達しており、プリーバス氏は、彼らの関係についてライバルではなく、「天敵」同士と説明したという。 「ヘビ、ネズミ、ハヤブサ、サメ、アザラシを壁のない動物園に入れたならば、事態は悪化し、血みどろになる」とプリーバス氏は述べたとされる』、あきれる内容だが、動物園の比喩はなかなか面白い。
・『電話での直接対決 トランプ大統領とウッドワード氏は2018年8月14日に電話で「直接対決」した。ワシントンポスト紙が9月4日に公開した、その録音音声も生々しい。 ウッドワード氏は、大統領に直接取材をするために、大統領顧問のケリーアン・コンウェイ氏や、ホワイトハウス広報部長だったホープ・ヒックス氏、ラジ・シャー副報道官、リンゼー・グラム上院議員ら6〜7人に接触したことを明らかにした。だが、大統領への事前の直接取材は叶わなかった。 これに対し、大統領は「ネガティブな本になるんだね」などと言いながら、事態を受け止め、雇用の回復や北大西洋条約機構(NATO)加盟国への防衛費負担増といった自らの業績を必死にアピールしている。本の中では、マティス国防長官が、安全保障を議題にしていても、大統領はすぐに移民やニュースメディアの話題に脱線するきらいがあると指摘しているが、そうした脱線傾向は、ウッドワード氏との電話の中でも十分にあらわになっている。 トランプ大統領の常軌を逸した言動や、マティス国防長官とケリー大統領首席補佐官の辞任観測はこれまでも至る場で指摘されてきたが、この本はトランプ政権の危うさを改めて世に示した格好だ。 大統領をはじめ、政権幹部は早速、「でっち上げの作り話」などと反論し、ウッドワード氏とその本の信用を貶めることに躍起になっている。しかし、ウォーターゲート事件をめぐる調査報道でも、ウッドワード氏は当初からホワイトハウスに報道を一貫して否定されていた。 ベテランの調査報道記者による著作なだけに、事実確認に抜かりはないと推測できる。本の出版を契機に、政権幹部間の相互不信が高まり、さまざまな「大統領の男たち」がさらにうごめき始めるかもしれない』、中間選挙を控えているのに、政権内で足の引っ張り合いとは、面白い展開になってきた。

第三に、グレッグ・プライス氏が9月7日付けNEWSWEEK日本版に掲載した「側近の相次ぐ裏切りと政権内部からの抵抗でトランプは一人」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/post-10927_1.php
・『この世で信用できるのはもう自分の子供たちしかいない──ドナルド・トランプ米大統領は、匿名の政府高官の論説が9月5日の米紙ニューヨーク・タイムズに掲載されたとき、そう悟ったようだ。同高官は、トランプには「道徳観念がない」などと批判し、彼が国を滅ぼさないよう政権幹部や高官が内部から悪政を止めている、と暴露した。 以前は、トランプには信頼できるごく少数の側近がいた。だが、米紙ワシントンポストが知人の話として伝えたところでは、彼はもはや自分の子供たちしか信用できないと確信したと言う。 トランプは2016年の米大統領選で勝利に貢献した長女イバンカとその夫ジャレッド・クシュナーをホワイトハウス入りさせた』、身内しか信用できなくなったというのは、まさに末期的だ。
・『元側近は寝返り 政治経験のないイバンカとクシュナーをホワイトハウス入りさせたうえ、彼らを女性の権利や中東和平交渉、刑務所改革といった中核的な政策の責任者にしたことで、トランプはさんざん批判された。 しかもイバンカとクシュナーは、トランプ周辺への権力集中と政敵の排除を狙ってメディアに情報をリークした疑惑を持たれている。彼らと激しく対立して標的にされたよい例が、2017年8月に更迭されたスティーブン・バノン前首席戦略官だ。 トランプが部下の忠誠心を重視することは有名だが、彼は最近、最も忠実だったはずの側近に相次いで裏切られた。元顧問弁護士で汚れ役もやったマイケル・コーエンは8月21日、ニューヨーク連邦裁判所で選挙資金法違反など8つの罪について有罪を認めたうえで司法取引に応じ、トランプの不倫相手とされる元ポルノ女優ら2人に「口止め料」を「トランプの指示で」支払ったと証言した。 事実なら、トランプは当選するために選挙資金法に違反したことになる。トランプが司会を務めた人気テレビ番組「アプレンティス」に出演した黒人女性で、昨年末に更迭されたオマロサ・マニゴールド元大統領補佐官も、8月14日に暴露本を出版し、トランプの精神状態は衰えているなどと酷評した。 ワイセルバーグもトランプを裏切ったもようだ。彼はコーエンがトランプの指示で口止め料を支払ったとされる疑惑をめぐり、米検察当局の捜査協力に応じる代わりに刑事免責を受けた、と米メディアが8月24日に一斉に報じた。 トランプはニューヨークタイムズの論説に激怒し、ホワイトハウスは犯人探しや内容確認で大混乱に陥っているという。 その高官は論説で、政権内の少なからぬ政権幹部が団結して、今後もトランプに税制改革や国防費増額といった保守的な政策課題を積極的に実現させる一方、彼が民主的な制度を損なうのを阻止するためにできる限りのことをやる、と誓った。 自分たちは政権内部の「レジスタンス(抵抗勢力)の一員」だと主張。トランプの統率力には道徳的な基盤がない、と批判した。 「問題の根本は、道徳観念がないことだ。トランプの下で働く誰もが、彼には意思決定に至るための原理・原則がないと知っている」』、「政権内部の「レジスタンスの一員」」とは、第二の記事の「行政クーデター」に近いものだ。「彼が民主的な制度を損なうのを阻止するためにできる限りのことをやる」というのは、頼もしそうだが、所詮、限界はあろう。

第四に、在米作家の冷泉彰彦氏が9月8日付けNEWSWEEK日本版に寄稿した「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代| :トランプ弾劾が絡んで風雲急を告げる米中間選挙」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2018/09/post-1028_1.php
・『11月のアメリカ中間選挙までちょうど1カ月となり、選挙戦はいよいよ本格化してきました。まず大枠で見ると、半年前の春の4月ごろと比較しますと情勢が一変していると言えます。大きな変化としては2つあります。1つは大統領側近の有罪などを契機として「弾劾(Impeachment)」という言葉が、明確に語られるようになったことです。 大統領自身までも再三にわたって「自分が弾劾されたら......」などと口にするようになり、この言葉へのタブー感は消えました。民主党の候補の多くは、公約に「大統領弾劾」を掲げるようになっています。 2つ目は選挙情勢です。春先には「共和党が絶対多数の下院をひっくり返すのは不可能」で、「問題は民主党が上院の過半数を奪い返すか」だと言われていました。ですが、現在の情勢は全く違っています。下院では、多くの選挙区で民主党が議席を奪う構えとなっている一方で、主戦場は再び上院になっているのです。 多くの世論調査データを集計している有名な政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」によれば、現時点での世論調査集計に基づく情勢分析としては、 ▼上院......民主44、共和47、拮抗9(非改選含む、過半数は51) ▼下院......民主201、共和191、拮抗43(過半数218) となっています。 下院では、司法委員会の議決を経たのちに、単純過半数すなわち218票で「弾劾発議」つまり、大統領を罷免する弾劾裁判の起訴ができてしまうわけで、これは深刻な事態です』、下院選挙結果如何では弾劾が現実味を帯びてきたとは、興味深い展開だ。
・『そんな中で、先週アリゾナとワシントンで行われた一連のジョン・マケイン議員の葬儀では、トランプ大統領の「不在」が目立ちました。ペンス副大統領、マティス国防長官、ケリー首席補佐官などが列席して存在感を見せる一方で、「招待されていない」こともあって葬儀の時間にゴルフをしていた大統領は、これで明らかに中央政界における、そして全米においても「存在感のなさ」を印象付けたように思われます。支持率も、ここへ来て40%ギリギリのところまで急落しています。 一方で、9月11日に発売予定とされるボブ・ウッドワード著のドキュメント『恐怖(FEAR)』が大変な話題になっています。ウッドワードといえば・・・ニクソンを追い詰めた伝説のジャーナリストです。 その後も、ブッシュ政権の内幕暴露本でも政界に激震を走らせた実績もある人物です。そのウッドワードの今回の本は、ホワイトハウスの周辺に徹底取材を仕掛けて、その膨大な内容から「ホワイトハウスの混乱」を暴き出しているそうです。 特に、マティス国防長官が「大統領はシリアのアサドを暗殺しようとしたが、私は反対して止めさせた」とか「大統領の思考能力は小学校6年生、いや5年生レベルだ」などと発言したとか、ケリー首席補佐官は大統領のことを「バカ」といっていたなど、生々しいことが書かれているのです。ある側近は、ホワイトハウスのことを「クレージータウン」と称しているそうで、この「クレージータウン」というのは流行語になりそうです。 トランプ政権の暴露本といえば『炎と怒り』が有名ですが、こちらは主として政権をクビになったスティーブ・バノンの「放言」がネタ元で、著者は無名のライターだったわけです。ですが、今回の『恐怖』の場合は、著者は超大物でネタ元は膨大な人数による膨大な証言の蓄積ということで、インパクトは比べ物にならないと思われます。 大統領の「コアの支持者」については、このぐらいの「攻撃」ではビクともしないのかもしれませんが、中間層であるとか、共和党支持者の中でも穏健派の人々については、ここへ来て大統領への支持は下がってきていると見ていいでしょう』、マケイン議員の葬儀では、「招待されていない」トランプ大統領が葬儀の時間にゴルフをしていた、というのは身から出たサビとはいえ、やはり寂しい思いを噛み締めていたのではなかろうか。ホワイトハウスのことを「クレージータウン」とは、よくぞ上手い表現をしたものだ。
・『では、共和党全体に動揺が見られるなかで、民主党が中道層や無党派層をまとめ切れるのかというと、そこにも不安要素があります。民主党陣営では、今回の中間選挙の候補者を選ぶ予備選を通じて「左シフト」とでも言うべき現象を起こしているからです。最新のケースとしては、9月4日に行われたマサチューセッツ(MA)州7区の民主党下院予備選です。 この「MA7区」ですが、現在はマイク・カプアーノというベテラン議員が10期連続で(区割り変更を含む)当選しています。そこに今回チャレンジャーとして登場した、アフリカ系女性のアヤナ・プレスレー候補が、59%対41%という大差で勝利しています。 プレスレー候補の政策は、バーニー・サンダース上院議員に大きく影響を受けた民主党左派で、公約には「メディケア・フォー・オール(欧州や日本タイプの国民皆保険の実現)」「トランプ大統領の即時罷免」「ICE(移民取締官制度)の廃止」といった内容を掲げています。 こうした民主党の「左シフト」には、2016年の選挙でサンダース候補を応援した30代以下の熱狂的な支持がある一方で、せっかく「トランプ離れ」を起こしている中道票を取り逃がす危険もあるわけです。ただ、こうした左派が躍進する格好で、民主党が大勝すれば、時代の歯車は大きく動くことになるのは間違いありません。中間選挙ではそこが大きな注目ポイントになります』、中道票を取り逃がす危険性の方が大きそうだが、アメリカ国内の分断がますます進んでいるようなのは、気になるところだ。
明日もトランプ大統領を取上げる予定である。
タグ:トランプ大統領 (その32)(米国が「世界の暴力団」となった国際社会を日本が生き抜く道、伝説の記者が暴くトランプのヤバすぎる内実 新著でホワイトハウス奥の院の混乱を暴露、側近の相次ぐ裏切りと政権内部からの抵抗でトランプは一人、トランプ弾劾が絡んで風雲急を告げる米中間選挙) 上久保誠人 ダイヤモンド・オンライン 「米国が「世界の暴力団」となった国際社会を日本が生き抜く道」 「アメリカファーストの嵐」が世界中に猛威を振るっている 世界の警察官」をやめて「世界の暴力団」となった トランプ政権の中国、トルコ、イランへの経済制裁による混乱 米国が第二次大戦後の同盟体制を築く以前を振り返ってみる さまざまな国が米国抜きで稼ぎ米国を「食べさせる」仕組みを作るべきだ 高橋 浩祐 東洋経済オンライン 「伝説の記者が暴くトランプのヤバすぎる内実 新著でホワイトハウス奥の院の混乱を暴露」 ジム・マティス国防長官は「小学5、6年生並みの振る舞いと理解力」の持ち主と憤慨 ジョン・ケリー大統領首席補佐官は「彼は馬鹿だ」と陰口を叩く ワシントンポスト紙のカール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの両記者 恐怖─ホワイトハウスの中のトランプ トランプ政権の「神経衰弱」 世界情勢をめぐる知識の欠如 対北朝鮮政策の実情 グレッグ・プライス Newsweek日本版 「側近の相次ぐ裏切りと政権内部からの抵抗でトランプは一人」 この世で信用できるのはもう自分の子供たちしかいない 彼が民主的な制度を損なうのを阻止 政権内部の「レジスタンス(抵抗勢力)の一員 冷泉彰彦 「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代| :トランプ弾劾が絡んで風雲急を告げる米中間選挙」 1つは大統領側近の有罪などを契機として「弾劾(Impeachment)」という言葉が、明確に語られるようになったことです 2つ目は選挙情勢です 下院では、多くの選挙区で民主党が議席を奪う構えとなっている一方で、主戦場は再び上院になっているのです 支持率も、ここへ来て40%ギリギリのところまで急落 ホワイトハウスのことを「クレージータウン」 民主党の「左シフト」 「トランプ離れ」を起こしている中道票を取り逃がす危険もある こうした左派が躍進する格好で、民主党が大勝すれば、時代の歯車は大きく動くことになる
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