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自衛隊が抱える問題(防衛問題)(その8)(防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中…、超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国、「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ) [国内政治]

自衛隊が抱える問題(防衛問題)については、4月15日に取上げた。今日は、(その8)(防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中…、超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国、「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ)である。

先ずは、東京新聞論説兼編集委員の半田 滋氏が7月19日付け現代ビジネスに寄稿した「防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中… 変わりゆく「国防」と若者の心」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56590
・『独自入手した防衛省の内部資料がある。 将来の幹部自衛官を養成する防衛大学校の学生や卒業生の退職状況をまとめたもので、(1)危険を伴うイラク派遣の最中や、(2)実質的に軍隊としての活動を規定した安全保障関連法の制定時、大量に退学したり、任官後に早期退職したりしていることを示す興味深いデータである。 資料を読み解く前に、防衛大学校とは何か、知る必要があるだろう・・・入校した学生は特別国家公務員となり、全寮制で被服と食事が提供されるほか、毎月11万4300円の学生手当と、年2回で合計約37万7190円の期末手当が支給される。学費や生活費が足りずアルバイトする一般の学生が多い中、勉学環境は恵まれている。 卒業後、任官と同時に曹長となり、幹部候補生学校を経て、いきなり幹部の3尉(少尉)に任命される。その後も昇進は早く、大半の卒業生は30代で佐官(3佐以上=少佐以上)となり、早ければ40代後半で将官(将補以上=准将以上)に抜擢される。 陸海空自衛隊ごとに設置されている幹部候補生学校には、防衛大学校の卒業生とほぼ同数の一般大の卒業生も入校して幹部自衛官となるが、防衛大学校の卒業生が陸海空各幕僚長に就き始めてからは、同ポストは全て防衛大学校卒で占められ、一般大卒はひとりもいない。まさに自衛隊のエリート養成校なのだ。 そのエリート養成校に異変が起きたのは、2003年だった。この年から7年連続して、超特急の出世街道から自らの意志で外れていく学生や卒業生が続出したのである。 防衛省は防衛大学校の在校中と卒業後の早期退職状況をまとめており、入校者数(A)、退校者数(B)、卒業者数(C)、任官辞退者数(D)、早期退職者数(E、幹部候補生学校非入校者および同校入校後、8月末までの早期退校者)ごとに集計している。 重視しているのは「入校しながら、自衛隊に定着しなかった学生の人数」だ。B+D+Eの合計をF(筆者注:「退職者数」という)として入校者数のAで割り、その数値を一覧表にまとめている。 入校者数は年度によって増減しており、毎年450人から550人といったところ。うち女性が40人前後と約1割を占める。 「退職者数」は毎年100人前後で推移するが、入校者の約2割が辞めていることにまず驚かされる。 問題の03年以降をみると、前年02年の「退職者数」は99人だったのに対し、03年は139人に急増。04年はさらに増えて152人、05年は最多の163人、06年157人、07年139人、08年142人、09年126人となっている。 03年から「退職者数」が急増し、高止まりした理由は容易に推測できる。イラク戦争への自衛隊派遣が影響したのではないだろうか。 イラク戦争は「フセイン政権が大量破壊兵器を隠し持っている」とウソをついた米国が始めた。米政府から「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(陸上自衛隊を派遣せよ)」と求められた小泉純一郎政権は03年7月、自衛隊をイラクに派遣するイラク特別措置法を制定する。 陸上自衛隊600人のイラク派遣は、04年1月から06年7月まで2年半続いた。小泉首相が「非戦闘地域」への派遣を約束したにもかかわらず、04年4月から自衛隊宿営地へ向けたロケット弾攻撃が始まり、撤収するまでに13回22発のロケット弾攻撃にさらされた。仕掛け爆弾により、車両が破損する自衛隊を狙ったテロ攻撃も起きた。 陸上自衛隊が撤収した後、クウェートに残った航空自衛隊は、06年9月からC130輸送機で武装した米兵の空輸を開始。米軍と武装勢力が戦闘を続けるイラクの首都バグダット上空に到達すると、毎回のように携帯ミサイルに狙われていることを示す警報音が機内に鳴り響き、C130はその都度、アクロバット飛行のような退避行動を求められた。 この空輸活動は08年4月、名古屋高裁から「米軍の武力行使と一体化しており、憲法違反」との判決を受けている。航空自衛隊は08年12月、クウェートから撤収。翌09年8月にはイラク特措法が失効し、自衛隊がイラクへ派遣されることはなくなった。 すると、どうだろう。イラク派遣の可能性が消えた10年、「退職者数」は92人とイラク戦争が始まる前の02年の水準に戻ったのである』、給料までもらってきながら、もともと入校者数に占める「退職者数」の割合が約2割と高水準なのに驚かされる。さらに、戦争が身近になると退職者割合が上昇、遠のくと低下するとは、ずいぶんドライなものだ。
・『2014年に起きた2度目の異変 「退職者数」がもっとも多かった05年、入校者数に占める「退職者数」の割合は38・4%にのぼり、ほぼ5人に2人が自衛隊を忌避したことになる。同年、女性は入校した34人のうち19人、割合にして実に55・0%が退職しており、2人に1人も自衛隊に定着しなかった。 幹部自衛官は、己の生命を危険にさらすにとどまらず、部下に命懸けの任務を命じなければならないことがある。 イラク特措法が制定され、施行されていた期間は、まさに自己と部下の生命を危険にさらす可能性が高い時期にあたる。過酷な任務を伴うようになった「自衛隊の変化」を目の当たりにして嫌気が差し、高い「退職者数」となったのではないだろうか。 次に異変が起きるのは14年以降である。14年の「退職者数」は143人と前年13年の106人から一気に増え、15年157人、16年141人、17年131人となっている。 こちらは第二次安倍政権下での「退職者数」の高止まりである点に注目しなければならない。 「退職者数」が増え始めた14年は、歴代政権が違憲としてきた集団的自衛権行使について、一部合憲とする閣議決定があり、海外における武力行使が解禁された。15年9月には集団的自衛権行使や他国軍への後方支援拡大を含む安全保障関連法(安保法制)が制定され、16年3月から施行された。 そして16年12月には、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊350人に対し、安保法制の適用第1号として武器使用を伴う「駆け付け警護」「宿営地の共同防護」が命じられた。17年には朝鮮半島情勢をめぐり、同法制による米軍防護が開始された。 このように安倍政権下で始まった「自衛隊の軍隊化」が、「退職者数」の増加につながったと考えられないだろうか。 イラク特措法が4年で消滅する期限付きの法律だったのに対し、安保法制は恒久法である。今後、防衛省はよほどの方策を打ち出さない限り、防衛大学校で起きている「自衛隊忌避」の流れをとめるのは難しいだろう』、15年以降の「退職者数」の高止まりが今後どうなるかは注目点だ。
・『憲法に自衛隊が明記されれば…  これほど「退職者数」が多いにもかかわらず、なぜ若者は防衛大学校を目指すのだろうか。 防衛省の出先機関である自衛隊茨城地方協力本部のホームページには、茨城県出身で防衛大学校へ入った1年生10人が紹介されている。志望動機に「自衛隊への憧れ」を挙げた学生がいるほか、「東日本大震災の際、自衛隊の活動を見て感銘を受けたため」といった災害救援を動機とした学生もいる。 ただ、彼らが志望動機を「自衛隊への憧れ」と答えたとしても、踏み込んで聞かなければ、海外で生命を落とす危険性や米国のための活動について、どれほど理解して答えているのかはわからない。防衛大学校に夢を抱いて入校する若者がやがて失望し、去っていく現実がある以上、「自衛隊をめぐる政策の右傾化についていけない」という若者が多いと考えるほかない。 9月に行われる自民党総裁選で安倍晋三首相の3選が実現すれば、憲法に自衛隊を書き込む憲法改正をめぐる国民投票の実施が濃厚になる。今でも「自衛隊は合憲」と明言する安倍首相が、あえて憲法改正にこだわるのは「自衛隊という名の軍隊を認めること」(立憲民主党の枝野幸男党首)にあるのではないだろうか。 憲法への自衛隊明記について、自衛隊のトップに立つ河野克俊統合幕僚長が「ありがたい」と述べたことから「自衛隊は歓迎ムード」ととらえる向きがある。安倍首相の思惑通りに憲法改正が実現すれば、自衛隊の任務は日本防衛にとどまらず、海外での危険な活動にまで広がるのは必至だ。 さらに、自衛隊が憲法に明記されたとすれば、自衛隊は絶大な権限を持つことになる・・・堂々と軍事力は強化され、それに伴う予算の増加が始まるだろう。そうなれば、防衛大学校に入校したり、一般隊員として入隊したりする若者の質も変化するかもしれない。 災害救援やPKOといった「人助け」よりも、武力行使に関心を示す若者が自衛隊を目指すとすれば、政策が右傾化するたびに増える「退職者数」の問題は解消するだろう。 それでも人材が不足するなら、徴兵制が現実味を帯びてくる。日本が平和国家の看板を返上しなければならない日がくるのかもしれない』、憲法への自衛隊の明記で退職者数の問題が解消するとは必ずしも言えないと思うが、場合によって「徴兵制が現実味を帯びてくる」とは穏やかではない。

次に、戦争平和社会学者の 北村 淳氏が8月2日付けJBPressに寄稿した「超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53724
・『日本国防当局がアメリカからの輸入を決定していた地上配備型弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」の本体価格が、防衛省が見積もっていた1セットあたり800億円から1340億円へと跳ね上がった。約1.7倍の増加である。 価格が跳ね上がるのは、秋田県と山口県に配備することになるであろうイージス・アショアに、最新のレーダーシステム「LMSSR」(Lockheed Martin Solid State Radar)を搭載するためである。さらに、それぞれのイージス・アショアを設置するための施設取得建造費や教育訓練費などを加えると、防衛省が手に入れようとしている2セットで5000億円ほどになるものと考えることができる』、恐らく当初からLMSSR導入を決めていたのに、当初の価格を低目に見せようとした小細工だとすれば、ずいぶん姑息なことをするものだ。
・『540億円で飛躍的に広がる監視範囲 1セットにつき1340億円・・・を支払い、高性能LMSSRを採用することで、確かにより広範囲を監視できるようになる。 たとえば日本政府が予定しているように山口県と秋田県の日本海沿岸地域にイージス・アショアを設置した場合、朝鮮半島全域だけでなく、ロシアの沿海州、中国の遼寧省東部、吉林省南東部、黒竜江省南部、などの監視が(理論上は)可能となる。そのため、北朝鮮の弾道ミサイルだけでなく中国の弾道ミサイルに対してもイージス・アショアで対抗することが可能となる。 北朝鮮でも中国でも、日本攻撃用弾道ミサイルは地上移動式発射装置(TEL)から発射される。動き回るTELの補足は困難だが、自衛隊がLMSSRを採用すると北朝鮮全域がLMSSRのカバー圏内にすっぽり収まってしまうため、イージス・アショアの対北朝鮮弾道ミサイル防衛能力は飛躍的に高まることになる。 一方、中国人民解放軍ロケット軍が手にしている対日攻撃用弾道ミサイル東風21(DF-21)の射程圏は(搭載する弾頭によって変化するものの)1500~2200kmである。そのためLMSSR探知圏外から、日本側に発射状況を感知されることなく対日攻撃が可能だが、イージス・アショアのレーダー探知圏が600~1100km程度へと延長されれば、30秒程度でも早く対処することが可能になる。満州地方から発射された弾道ミサイルが日本列島に到達するのには10分前後であり、自衛隊が迎撃ミサイルを発射するための持ち時間は最大3~4分であるため、30秒の時間短縮は貴重である』、持ち時間は最大3~4分で30秒の時間短縮にどの程度の意味があるかは疑問もあるが、ここれはよしとしよう。
・『コストパフォーマンスは精査されているのか? こうして日本政府は、イージス・アショア2セット、そしてイージス駆逐艦も弾道ミサイル防衛用に改修したり、弾道ミサイル防衛用を新造したりして、合わせて8隻も保有することによって、北朝鮮や中国の弾道ミサイルに対抗しようとしている。  多数の自衛隊員、それに駆逐艦をはじめとする超高額防衛装備をつぎ込むことで、国防費は莫大な金額に達する。だが、国防当局自身はもとより、シビリアンコントロールの責務を担っている国会において、弾道ミサイル防衛にそれらの防衛アセットを惜しげもなく投入することのコストパフォーマンスが、果たして真剣に検討されているのであろうか?』、コストパフォーマンスを真剣に検討せよとの主張はもっともだ。
・『イージス艦による弾道ミサイル防衛から手を退く米海軍 アメリカ海軍は、弾道ミサイル防衛能力を保持したイージス駆逐艦やイージス巡洋艦を日本海に展開させて、北朝鮮や中国からグアム方面や日本の米軍基地(そして日本)へ発射される弾道ミサイルを探知し、場合によっては撃破する任務を帯びている。 しかし、ちょうど1カ月前の本コラム(「日本周辺の弾道ミサイル防衛、米海軍の大きな負担に」)で紹介したように、アメリカ海軍はそうした任務がもはや「極めて大いなる負担」であると言い出した。そして、日本周辺だけでなくヨーロッパにおいても、軍艦ベースのイージス弾道ミサイル防衛を地上ベースの弾道ミサイル防衛に置き換えるべきであると主張している。 日本周辺を地上ベースの弾道ミサイル防衛システムで防衛する場合、日本列島にイージス・アショアを設置することになる。その場合、もちろん、アメリカ海軍がイージス・アショアを購入して、日本で土地を借り受けて設置して、日本周辺の弾道ミサイル防衛を行うわけではない。日本が、高価なイージス・アショアを購入して、北朝鮮や満州方面から発射され日本やグアムに飛来する弾道ミサイルに備えなければならなくなるのだ』、これでは米軍を肩代わりするだけだ。
・『アメリカにとっては「願ったり叶ったり」  このようにアメリカ側で、イージス艦による弾道ミサイル防衛を(日本が日本に設置する)イージス・アショアに切り替えるという話が持ち上がり、それに対応するように、防衛省がアメリカから調達することになっているイージス・アショアに最新鋭高性能レーダーシステムを搭載することが決定された。 日本周辺でのイージス艦による弾道ミサイル防衛から手を退くアメリカにとっては、日本ができるだけ高性能なイージス・アショアを配備してくれればそれに越したことはない。 もちろん、2セットのLMSSRを装備した最強イージス・アショアの設置費用5000億円は日本国民が全額負担し、アメリカ企業(ロッキード・マーチン社)とアメリカ政府(4%の手数料収入がある)の懐が潤うことになる。日本政府の決断がアメリカにとってはまさに願ったり叶ったりということになるのは言うまでもない』、これだけ日本政府がアメリカの言いなりになっているのに、通商関係では手加減せずに責め立てられるのでは、全く筋が通らない。日米関係を抜本的に見直すべきだろう。

第三に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が9月13日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/179620
・『防衛省は8月31日、2018年度予算の概算要求を発表した。過去最大の5兆2986億円で、今年度当初予算に比べ「2.1%増」と報じられている。 だが実はこの概算要求には、沖縄の米軍のグアム等への移転など、米軍再編経費(推定約2200億円)が「事項要求」とだけ書かれ、金額は計上されていない。年末の予算編成で金額を入れることになる。 今年度当初予算は5兆1911億円にはそれが当然含まれているから、それと今回の概算要求を比べて伸び率を2.1%と言うのは非合理だ。今年度予算からも米軍再編関連経費を除いて比較すると7.2%という驚異的な伸び率になる。2015年度から今年度までの毎年度の伸び率はずっと0.8%だった』、見え透いた小細工にはあきれ果てる。
・『米国製兵器輸入が5倍増 日本の防衛産業は窮地に  特に米国の「有償軍事援助」(FMS)による新規契約が今年度より約70%増え、6917億円にもなることには愕然とせざるをえない。 2012年度は1372億円だったから、安倍政権の7年間で5倍になる。 前回の本コラム(8月9日付)「イージス・アショアが吹っかけられた『高い買い物』に終わる理由」でも書いたが、FMSは防衛省が米国防総省の「国防安全保障協力局」を通じて装備や部品などを発注する。 来年度予算の概算要求での装備購入費、艦艇建造、航空機購入費は合計約1兆2379億円だから、その56%程が米国に召し上げられると考えられる。 米国側は懸命に売り込みを策す一方、旧来の「援助してやる」姿勢は変わらず、代金は前払い。価格や納期などは米側の見積もりだから、米国は拘束されず後に高騰したり、部品の納入が何年も遅れるなど問題が続発してきた。 日本の防衛産業は各企業の事業のごく一部であることが多く、将来性が乏しいと見切って手を引く企業も続出している。日本による米国製装備の直接輸入が増大することは米国にとって一石二鳥だ。日本への武器輸出が拡大するだけでなく、日本は安全保障での米国依存をますます強め、他の面でも一層米国の意向に従わざるをえなくなるからだ。これが「同盟強化」の現実なのだ』、「米国側は懸命に売り込みを策す一方、旧来の「援助してやる」姿勢は変わらず」というほどにまで、日本は「属国」になってしまったとは腹立たしい限りだ。
・『来年度の目玉陸上イージス 防衛力の「抜本的向上」はウソ  今回、来年度の概算要求を押し上げた最大の費目は秋田、山口に配備する陸上イージス本体2基の2352億円だ。 これは初年度分で、将来の交換部品購入などの維持費、要員の米国による教育・訓練費などを含む総額は4664億円と発表されている。これには迎撃用ミサイル(1発約40億円)は含まれない。 1基当たりの定数は24発だから2基に48発だと1900億円以上になる。さらに一部の用地取得や整地・宿舎などの建設、周辺対策も入れれば、総経費は約7000億円に達しそうだ。 日本のミサイル防衛の最大の弱点はミサイル迎撃用のミサイルの弾数が極度に少ないことだ。 イージス艦の垂直発射機には90発(新型艦は96発)の各種ミサイルを入れられる。対潜水艦ミサイル、対空ミサイルを16発ずつ入れても、50発余のミサイル迎撃用ミサイルを搭載できる。だが実は8発しか積んでいない。 旧型のミサイルでも1発16億円だから多くは買えないのだ。相手が核付きと通常弾頭付きの弾道ミサイルをまぜて発射すれば、最初の8目標にしか対処できない。 地点防衛用の「PAC3」(射程20km、新型は30km)も同様だ。自走発射機には16発を積めるが4発しか弾道ミサイル迎撃用のミサイルを入れておらず、不発、故障に備えて1目標に2発ずつ発射するから、1両で2目標にしか対処できない。ミサイル防衛は形ばかり、気休めでしかない。 ミザイル防衛に関わってきた自衛隊の幹部たちに「陸上イージスに巨費を投じるよりは、弾数を増す方がまだしも合理的では」と私が言うと、ほぼ例外なく「おっしゃる通り」との反応がある。 だが、安倍政権は日本に輸入拡大を迫るトランプ政権の意向を呑み、2013年12月に決めた「防衛計画の大綱」(約10年を見通す)にも「中期防衛力整備計画」(5年間)にも入っていなかった陸上イージス配備を昨年12月に決めた。 本来自衛隊が全く望んでいなかった巨額の装備を、突然「政治主導」で押しつけるのだから、その必要性を説くには詭弁を弄さざるをえない。 8月に出た今年版の「防衛白書」の326ページの「解説」では、陸上イージス導入で「我が国を24時間・365日、切れ目なく守るための能力を抜本的に向上できる」と書いている。 323ページでは「北朝鮮はわが国のほぼ全域を射程に収めるノドン・ミサイルを数百発配備している」と脅威を強調している。 だが、仮に陸上イージスが将来、定数の24発の迎撃ミサイルを保有しても、北朝鮮が持つ弾道ミサイル数百発に対しては焼石に水だ。防衛能力の「抜本的向上」になるはずがない。明らかな誇大広告だ』、「本来自衛隊が全く望んでいなかった巨額の装備を、突然「政治主導」で押しつける」とは、よほどアメリカからの圧力が強かったのだろう。それを詭弁で説くとは、政治家の矜持も地に落ちたものだ。
・『イージス艦は近く8隻に陸上イージスは「不要」だ  また白書の「解説」は「現在のイージス艦では整備・補給で港に入るため隙間の期間が生じる。乗組員の勤務環境は極めて厳しい」として陸上イージス導入の必要を説いている。 たしかに現在、保有するイージス艦6隻のうち、ミサイル防衛用の迎撃ミサイルを搭載するのは4隻。艦艇の4分の1は定期整備にドック入りしているから、出動可能3隻のうち常に2隻を弾頭ミサイルの警戒配置に付け続けるのは無理があった。 だからこそ「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」ではイージス艦を8隻にすることを決めたのだ。 「あたご」「あしがら」の2隻は新型の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を運用するように改装され、7隻目のイージス艦「まや」は今年7月30日進水、2020年に就役予定だ。その2番艦は2021年に就役し、8隻態勢が完成する。 一方、陸上イージスの納期は当初の米側の話よりすでに2年遅れ「契約後6年」だから配備は2025年以降になる。 8隻態勢になれば出動可能の6隻のうち4隻は2交代でミサイル警戒配置に付き、日本列島全域を守れる。他の2隻はイージス艦の本来の任務である艦隊防空に向けられる、というのが海上幕僚監部、防衛省の元来の考えで、陸上イージスは不要だった。 防衛白書の解説ではイージス艦が近く8隻になりつつあることに言及せず「現在では苦しいから陸上イージスが必要」と主張するのは、いかにも作為的で、防衛省の信用を失墜させる。 一般の人々の防衛に関する知識の不足に乗じたこうしたまやかし説明が、陸上イージス配備予定地の地方自治体への回答書にも記載されている。これは公文書を尊重しない風潮の拡がりを示している』、まやかし説明を回答書に記載するような公文書を尊重しない風潮は、まさに民主主義の危機だ。
・『なぜ秋田と山口に配備なのか ハワイ、グアム防衛に理想的  「なぜ秋田と山口に配備するのか」は、陸上イージス導入に関する最大の疑問といえよう。 北朝鮮の弾道ミサイルは主としてその北部山岳地帯のトンネルに隠されているとみられ、首都圏に向けて発射されれば能登半島上空を経由する。近畿地方に向かえば隠岐島付近を通る。 弾道ミサイルに対しては、その真正面から迎撃するのが理想的だ。目標の角度が変わらないから命中率が高く、こちらに接近して来るから迎撃ミサイルのロケットの推力を無駄にせず、高い高度で撃破できるとされる。 従って、陸上イージスを導入するにしても、日本の防衛が目的なら能登半島と隠岐島に配備するのが合理的だ。 東京へ向かう弾道ミサイルを例えば秋田から迎撃することもできなくはない。レーダーが捉えた軌道から目標の未来位置を計算し、そこに迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」(射程2500km、射高1000km以上)を向かわせる。だが、斜め方向に秒速5キロ前後(射程により異なる)で飛ぶ物体に側面から当てる形になるから、正面から当てるよりは難しい、命中率が低いのは当然だ。 新型の迎撃ミサイルの射高は1000km超だから、ハワイ、グアムへ向かう北朝鮮の弾道ミサイルが加速を終え、惰力で放物線を描いて上昇中のところを迎撃することが可能だ。そのために米国にとっては真正面から迎撃できる秋田と山口は理想的な配備地点だ。 防衛省の担当幹部に「なぜ秋田、山口に固執するのか。能登半島、隠岐島の方が日本防衛に有効ではないか」と問い詰めると、結局は「種々の条件を勘案して、その2ヵ所が最適と判断した」と言うだけで、具体的には答えず、押し問答になる。 防衛省は陸上イージス導入について「誠心誠意、1つ1つ丁寧に説明する」と標榜しているが、「そこがハワイ、グアムへの軌道の下だから」と正直に答えるわけにはいかないのだろう』、ハワイ、グアム防衛のため秋田、山口に固執というのは初耳だが、こうした不都合な真実を伝えない一般のマスコミも情けない。
・『懸念される電波被害や落下事故  陸上イージスは秋田市の陸上自衛隊新屋(あらや)演習場と山口県萩市の同むつみ演習場に配備する計画だ。 だが新屋演習場は秋田市の中心から西へ3km、海岸に近いが秋田商業高校とは背中合わせで、演習場の東、北、南は住宅地や公共施設に囲まれている。 迎撃ミサイルは一般的には西の海上方向に発射されるだろうが、1発目が当たらない場合、市街地がある東方の「未来位置」に向け2発目を発射することになるから、ロケットの噴射やブースター(ロケットの第1段)の落下による被害も考えられる。 その南東約12kmの秋田空港の滑走路は東西方向で、離着陸時には日本海上を飛ぶことも多いからレーダーとの電波干渉も起きそうだ。 山口県萩市のむつみ演習場は日本海岸から約10km南の丘陵地帯で、その北約1kmには同県阿武町に属する集落がある。 ミサイル防衛用レーダーは、通常は水平線上に現れる弾道ミサイルを探知するため、ほぼ水平方向に強い電波を出し続けるから、電波による健康への影響が案じられる。 防衛省は地元住民に「Sバンド(波長7.5ないし15cmのマイクロ波)は無線LANも使っていて危険はない」と説明した。だがSバンドは電子レンジにも使われ、人体にも浸透して熱を出す。 無線LANの出力は10ミリワット(1ワットの100分の1)だが、探知距離500kmのイージス艦のレーダーの最大出力は400万ワットで4億倍だ。800ワットの電子レンジの5000倍に当たる。陸上イージスのレーダーの探知距離は1000km以上だから、さらに強い電波を出す。 これを「無線LANと同じ」と言って住民を安心させるのは「ワニとトカゲは同じ爬虫類。危険はない」と説くようなものだ。 自衛隊には「レーダー電波を浴びると男性の生殖機能に障害が生じ、女の子しか生まれない」との言い伝えがあり、イージス艦は入港前にレーダーをオフにし、港内や市街地への影響を防いでいる。阿武町は設置に反対を表明しているが、その心配はもっともだ』、陸上イージスのレーダーの電磁波がこれほどまでに強力なのに、「無線LANと同じ」と強弁するとは、住民を馬鹿にし切った話だ。ここまで政府が不誠実なのであれば、一般マスコミも取上げるべきだろう。
・『人件費節約にもならない 他国では米国が全額を負担  秋田、山口では「陸上イージスが攻撃の対象にならないか」との懸念も出ている。 湾岸戦争やイラク侵攻など近年の戦争では、最初にレーダーサイトや対空ミサイル陣地を叩くのが定石となっているのは事実だ。 だが北朝鮮には日本を攻撃する航空戦力はないし、北朝鮮の弾道ミサイルの誤差(弾の半数が落ちる半径)は少なくとも1kmはあるから、通常弾頭なら200発も撃ち込まないと確実に目標を破壊できない。数少ない核弾頭をその種の目標に対して使うことも考えにくい。 ただ特殊部隊が潜入し、破壊を目指すことはありえよう。レーダーの平面アンテナ(イージス艦用で4350素子)を銃撃するだけで機能は喪失する。特殊部隊の1チーム(米陸軍なら12人)をレーダーから500m以内(小銃の射程)に入れないため、警備兵50人を4交代で配置するとして、200人は必要だろう。 イージス艦の乗組員300人のうち艦を動かす要員が約200人だから、「イージスシステムを陸上に置けば人件費が節約できる」との説も以前聞いたが、その分、警備兵が必要だから結局は帳消しになる。 イージス艦は相手の海岸から200kmほどの海上を巡航していれば、高い山頂のレーダーでも水平線の下になるから位置が分からず、巡航ミサイルで攻撃されることはない。 米国はルーマニアに陸上イージスを配備、ポーランドにも建設中で、韓国に「サード」を置いたが、その経費は全額米国が負担し、運用も米軍人が行っている。 イージス艦が8隻になれば、陸上イージスは日本防衛に不可欠ではなく、むしろハワイ、グアムの防衛に大きな効果があるから、少なくとも半額は米国が出すように求めるべきだろう。 だがひたすら「アメリカ第一」のトランプ氏に取り入ろうと努める日本政府にはそんな「畏れ多い」ことを言う度胸はなく、自国民をたぶらかしても、日本を米国の盾にしようとしているようだ』、「ルーマニアに陸上イージスを配備、ポーランドにも建設中で、韓国に「サード」を置いたが、その経費は全額米国が負担」というのも初耳だ。「陸上イージスは日本防衛に不可欠ではなく、むしろハワイ、グアムの防衛に大きな効果があるから、少なくとも半額は米国が出すように求めるべきだろう」というのは正論だ。
・いずれにしても、日本の防衛の実効性よりも、米国の顔色ばかり伺っている安倍政権の姿勢には腹が立つ。その意味では石破の方がましなのかも知れない。
タグ:自衛隊が抱える問題 (防衛問題) (その8)(防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中…、超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国、「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ) 半田 滋 現代ビジネス 「防衛大学校で「自衛隊に就職したくない」学生が激増中… 変わりゆく「国防」と若者の心」 「退職者数」は毎年100人前後で推移するが、入校者の約2割が辞めている 03年は139人に急増。04年はさらに増えて152人、05年は最多の163人、06年157人、07年139人、08年142人、09年126人 イラク戦争への自衛隊派遣が影響 イラク派遣の可能性が消えた10年、「退職者数」は92人とイラク戦争が始まる前の02年の水準に戻った 「退職者数」がもっとも多かった05年、入校者数に占める「退職者数」の割合は38・4%にのぼり、ほぼ5人に2人が自衛隊を忌避 14年の「退職者数」は143人と前年13年の106人から一気に増え、15年157人、16年141人、17年131人となっている。 こちらは第二次安倍政権下での「退職者数」の高止まり 憲法に自衛隊が明記されれば… 北村 淳 JBPRESS 「超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか? 日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国」 「イージス・アショア」の本体価格が、防衛省が見積もっていた1セットあたり800億円から1340億円へと跳ね上がった 最新のレーダーシステム「LMSSR」 540億円で飛躍的に広がる監視範囲 コストパフォーマンスは精査されているのか イージス艦による弾道ミサイル防衛から手を退く米海軍 日本周辺だけでなくヨーロッパにおいても、軍艦ベースのイージス弾道ミサイル防衛を地上ベースの弾道ミサイル防衛に置き換えるべきであると主張 米軍を肩代わりするだけ アメリカにとっては「願ったり叶ったり」 田岡俊次 ダイヤモンド・オンライン 「「陸上イージス」の説明は誇大広告とまやかしの連発だ」 2018年度予算の概算要求 米軍再編経費(推定約2200億円)が「事項要求」 今年度予算からも米軍再編関連経費を除いて比較すると7.2%という驚異的な伸び率になる 米国製兵器輸入が5倍増 日本の防衛産業は窮地に 日本への武器輸出が拡大するだけでなく、日本は安全保障での米国依存をますます強め、他の面でも一層米国の意向に従わざるをえなくなるからだ。これが「同盟強化」の現実なのだ 来年度の目玉陸上イージス 防衛力の「抜本的向上」はウソ イージス艦の垂直発射機には90発(新型艦は96発)の各種ミサイルを入れられる。対潜水艦ミサイル、対空ミサイルを16発ずつ入れても、50発余のミサイル迎撃用ミサイルを搭載できる。だが実は8発しか積んでいない 地点防衛用の「PAC3」 16発を積めるが4発しか弾道ミサイル迎撃用のミサイルを入れておらず、不発、故障に備えて1目標に2発ずつ発射するから、1両で2目標にしか対処できない 北朝鮮が持つ弾道ミサイル数百発に対しては焼石に水だ 防衛能力の「抜本的向上」になるはずがない。明らかな誇大広告だ 本来自衛隊が全く望んでいなかった巨額の装備を、突然「政治主導」で押しつける イージス艦は近く8隻に陸上イージスは「不要」だ まやかし説明が、陸上イージス配備予定地の地方自治体への回答書にも記載 公文書を尊重しない風潮の拡がりを示している なぜ秋田と山口に配備なのか ハワイ、グアム防衛に理想的 陸上イージスを導入するにしても、日本の防衛が目的なら能登半島と隠岐島に配備するのが合理的 懸念される電波被害や落下事故 防衛省は地元住民に「Sバンド(波長7.5ないし15cmのマイクロ波)は無線LANも使っていて危険はない」と説明 無線LANの出力は10ミリワット(1ワットの100分の1)だが、探知距離500kmのイージス艦のレーダーの最大出力は400万ワットで4億倍だ。800ワットの電子レンジの5000倍に当たる 陸上イージスのレーダーの探知距離は1000km以上だから、さらに強い電波を出す これを「無線LANと同じ」と言って住民を安心させるのは「ワニとトカゲは同じ爬虫類。危険はない」と説くようなものだ 人件費節約にもならない 他国では米国が全額を負担
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