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女性活躍(その8)(実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠、東京医大の女性差別 背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる、「現場優先で女性減点」は 正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの) [社会]

女性活躍については、6月15日に取上げた。今日は、(その8)(実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠、東京医大の女性差別 背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる、「現場優先で女性減点」は 正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの)である。

先ずは、作家の伊与原 新氏が7月29日付け現代ビジネスに寄稿した「実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠 ラボ・フェイク 第6回」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56740
・『人はなぜ、「科学らしいもの」に心ひかれてしまうのか……? 東京大学大学院で地球惑星科学を専攻、大学勤務を経て小説デビューし、「ニセ科学」の持つあやしい魅力と向き合うサスペンス『コンタミ 科学汚染』を上梓した作家・伊与原新氏。同氏が生み出した、ニセ科学に魅せられた科学者・Dr.ピガサスが今回、語るのは、巷に溢れる「脳」にまつわる「伝説」たち。「男脳」と「女脳」は実在するのか? 「人間は脳の10%しか使っていない」は本当か? ……誰もが耳にしたことがあるであろう、脳に関するさまざまな言説。そこからは、科学とフェイクのゆらぎが見えてくる──』、初めはトンデモ科学かと思ったが、読んでみると、俗説・通説の誤りを解説しており、面白い。
・『差別される「脳」、差別する「脳」  お茶の水女子大学が、「性自認が女性であるトランスジェンダー学生を受け入れる」と発表した。以前から女子大にはそうした受験希望者からの問い合わせがしばしば寄せられていたそうだが、国立大学として真っ先にこの決定を下したのは、やはり英断だと思う。 世間も概ね好意的にこれを受け止めているように見える。心と体の性別の不一致は、その人の生得的な性質の一つ。そんなとらえ方が一般的になりつつある証左だろう・・・だがこの問題は、実は諸刃の剣でもある。生まれつき心と体の性別が一致しない人々が存在するということは、脳に属性として性差があることを意味するからだ。 トランスジェンダーが先天的なものかどうか、結論が出たわけではない。ただ、人間の心には生後かなり早い段階で性差があり、性自認も芽生えているという研究結果が蓄積されつつある。体の性差は妊娠初期に、脳の性差は妊娠後半に形成され始めると主張する研究者もいる。 とくに、前視床下部間質核と分界条床核という脳部位は、それぞれ性的指向と性自認に関わっていると考えられており、どちらも男性のほうが大きい。ところが、同性愛の男性においては前視床下部間質核が、トランスジェンダー男性(性自認が女性)においては分界条床核が女性並みに小さいという報告がある。 こうした事実がジェンダー論に(ときに強引に)結びつけられるであろうことは容易に想像がつく。卑近な言い方をすれば、「男脳・女脳」問題である。 以前、『話を聞かない男、地図が読めない女』という本がベストセラーになったのをご記憶の方も多いだろう。男女の考え方、行動、能力の違いを単純に脳の性差に押しつけるこの手の言説は、女性差別を助長する方向に悪用されないとも限らない』、なるほど。
・『「脳科学」の歴史は、差別の歴史と重なっている。例えば、19世紀前半に活躍したアメリカの医師で科学者、サミュエル・モートン。彼は、コレクションしていた人間の頭蓋骨に散弾銃の鉛玉を詰めて容積を測り、その値をもとに人類を人種別に五つの階層に分けた。 階層の頂点を占めるのは、もっとも脳の容積が大きい白人。その下に東アジア人、東南アジア人、アメリカ大陸先住民と続き、最下層に黒人を押し込んだ。奴隷制度によって繁栄していた当時のアメリカにおいて、モートンの主張は広く歓迎された。「科学」の名を借りた人種差別が公然とおこなわれていたのである。 現在、「人種」という概念に意味を感じている科学者はいない。どうしてもラベルを貼りたいというのであれば、貼れるものはただ一つ。我々はみな“アフリカ人”である。ホモ・サピエンスという種をそれ以上細かく区分するような遺伝的差異は、存在しない。 最新の遺伝学によれば、「人種」という従来の固定されたイメージは、まるっきり間違っているらしい。人類は先史時代から、我々が想像する以上に流動的で、集団間で盛んに遺伝子のやり取りをしている。西ヨーロッパ人の肌が白くなったのは、たった8000年前。それを引き起こしたのが中東の人々だったというから、驚きである。 一方で、我々の脳に「私たち」と「彼ら」を積極的に区別しようとする働きが備わっていることも、また事実のようだ。 fMRI(機能的磁気共鳴画像法)によって脳の活動をリアルタイムに観察してやると、自分と同じ(と被験者が考えている)集団に属する人の顔を見たときには、そうでない人間を見た場合と比べて、好感に関連する眼窩前頭皮質がより活発になるという。 重要なのは、この現象が本人の意識とは無関係に起きているということだ。残念なことだが、科学の光をあまねく灯すだけでは、この世界から完全に差別をなくすことはできないのかもしれない』、「我々はみな“アフリカ人”である。ホモ・サピエンスという種をそれ以上細かく区分するような遺伝的差異は、存在しない」にも拘わらず、人種偏見がいまだにはびこっているのは困ったことだ。「我々の脳に「私たち」と「彼ら」を積極的に区別しようとする働きが備わっている」ことの影響なのかも知れない。
・『脳の性差は「生まれ」か「育ち」か?  話を「男脳・女脳」に戻そう。OECD(経済協力開発機構)がある報告書の中で、「神経神話(Neuromyths)」なるものを提唱している。脳にまつわる科学的根拠のない言説を列挙し、批判しているのだ。「人間は脳全体の10%しか使っていない」「人間は右脳型と左脳型に分かれる」「脳において重要なことは3歳までに決まる」など、巷でよく耳にする話ばかり。「男女の脳には違いがある」というのもそこに含まれている。 ということは、やはり「男脳・女脳」はただのニセ科学なのだろうか。確かに、まともな脳研究者がそんな言葉で何かを説明するようなことは、さすがにない。だがその一方で、彼らの多くは「構造にも働き方にも、脳には何らかの性差がある」と考えている。 つまり、その「差」をどうとらえるか、どう表現するかが、研究者によって大きく異なるのだ。主流をなす意見は、時代によっても振り子のように大きく揺れ動く。その流れをたどってみると、科学というものが様々な信条をもつ人間の営みであることが垣間見えて、興味深い。 今から100年ほど前まで、科学的事実として知られていた男女の脳の違いは、その大きさと重さだけであった。男性の脳は女性のそれより平均140gほど重い。男女の体格差を補正すれば消えてしまうその差のみをもって、男性は女性より知力に優るとされていた。 1960年代に入り、「人権」や「平等」というものの価値が高騰し始めると、脳科学もその流れに引き寄せられていく。人間の脳には生まれつき、人種差や男女差はおろか、個人差さえない。誰もが“空白の石板”として同じ脳を与えられて生まれてくる。知性も性格も、育つ環境と教育がすべて決める。そんな考えが幅をきかせ始めた。』、脳科学の「主流をなす意見は、時代によっても振り子のように大きく揺れ動く」というのは、その成果を利用する我々も心すべきだろう。
・『「男脳・女脳」の真実とは?  物事が極端なほうへ振れると、揺り戻しも大きい。それに勢いを与えたのが、1990年代から広く用いられるようになったfMRIやPET(陽電子放射断層撮影法)といった新技術だ。 生きた人間の脳をのぞき見ることができるこれらの手法は、男女の脳の“違い”を次々と見つけ出した。感情、記憶、視聴覚、顔認識処理、ナビゲーション能力、ストレス耐性。性差が見られるとされた領域は、多岐に及ぶ。 よく知られているのは、左右の脳をつなぐ脳梁という部位だろう。一般に、左脳は論理的で分析的、右脳は直感的で包括的だと信じられている。両者の連絡係である脳梁は、女性のほうが男性より太いという論文が出たのだ。 この話が市井まで下りてくると、どういうわけか、「女性はマルチタスクに、男性は一つのことに集中する仕事に長けている」ということになった。“お茶の間脳科学”ではお決まりの、曲解と飛躍である。 まだある。空間知覚に関わる頭頂皮質は、男性のほうが女性より大きい。これが、「男は女より地図が読める」という俗説を生んだ。言葉の記憶や感情に関わる海馬、言語中枢のニューロン密度は、女性のほうが大きい。このことが、「女は男より言語感覚に優れている」というテストの結果と短絡的に結びつけられた。 こうなると、差別的論調が再び盛り返してくる。女性の脳はマルチタスクだから、家事や子育てに向いている。一つの分野を極めることができるのは、結局は男性。2005年にはハーバード大学の学長が「科学の世界で大きな成功をおさめる女性が少ないのは、脳の構造による可能性がある」とスピーチし、顰蹙を買った。 その反動もあるのだろう。ここ数年はかなり冷静な議論が増えているようだ。2015年にイギリスのグループが報告した大規模な調査によれば、脳のサイズを補正すると、脳梁にも海馬にも、従来言われていたような男女差はほとんど見られないという。 構造だけでなく、脳の働き方の性差についても新しい見方が出てきている。例えば、「すべての人の脳は、男性的特徴と女性的特徴とが様々な濃淡で組み合わさった『モザイク脳』である」という説もそうだ。この見方に立てば、確かに、脳を性別による2つのタイプに明確に分けるのは難しい。 だがこの「モザイク脳」に対しては、脳の性差を研究する他の科学者たちから、「これは科学ではなく、イデオロギーだ」と反発が出ている。濃淡や組み合わせに個人差はあれ、(至極当然ながら)男性の脳は総じて男性的特徴を多く持ち、女性の脳は女性的特徴を多く持つ。脳に性差があることの否定にはならない、というわけだ。 議論はまだまだ尽きそうにない。ただ、大半の脳研究者が同意していることはある。脳においては、男女差よりも個人差のほうがはるかに大きい、ということだ。 男女の能力差が一番顕著にあらわれるのは、空間知覚だという。そのテストの成績を男女別にヒストグラムにすると、どちらも平均点付近に頂上をもつ山型の分布になる。女性の山は男性のそれよりも点数の低いほうにややずれているが、その差はほんのわずかだ。 つまり、あなたが平均点付近の男性だとすれば、女性の半数近くはあなたより空間認知能力が高い。女は地図が読めないなどと偉そうな口を叩いていると、恥をかくことになるだろう。「男脳・女脳」というのは、所詮その程度の話なのである』、「脳においては、男女差よりも個人差のほうがはるかに大きい」という説は違和感なく納得した。
・『「脳は10%しか使われていない」は本当か?  最後に、他の「神経神話」にも触れておこう。「人間は脳全体の10%しか使っていない」という話は、最近もテレビドラマやSF映画の設定として使われていたところをみると、まだまだ影響力がありそうである。 藤田一郎著『脳ブームの迷信』によれば、この言説もまた、20世紀初頭から信じられていた伝統あるニセ科学だという。かのアインシュタインが言ったという説まであるそうだから、なかなか格式も高い。 藤田氏によると、この説が広まった根拠と思われるものは、二つ。一つは、かつて「サイレントエリア」と呼ばれていた領域の存在だ。大脳皮質にあるこの領域は、過去の動物実験において、電気刺激などを与えても動物の行動に変化が見られなかった。 この事実が、「脳には働いていない部分がある」と誤解された可能性があるという。現在この領域は「連合野」として知られ、高度な精神活動に関わっていると考えられている。 もう一つは、グリア細胞だ。脳内には神経細胞の他にグリア細胞というものがあり、その量比は1対10。グリア細胞は情報のやり取りにこそ関与していないが、神経細胞の働きを支える重要な機能を担っている。 脳は、体全体が使うエネルギーの実に20%を消費している。それだけのエネルギーを投じて維持している器官の90%が使われていないというのは非常に考えにくい、と藤田氏は指摘する。説得力のある話である。 では、「右脳型・左脳型」はどうか。巷では「ウノウ・サノウ」と読まれているが、脳研究者は「ミギノウ・ヒダリノウ」と呼ぶそうだ。この一事だけでも、この言説の俗っぽさがよくわかる。 左右の大脳半球の性質に違いがあるのは科学的事実だ。先ほども述べたように、(やや乱暴な)通説としては、左脳は論理的で分析的、右脳は直感的で包括的な働きをするということになっている。 だが当然ながら、すべての人の脳は、左右の半球で信号をやり取りしながら働いている。個人の脳において、どちらの半球が優勢かを判定する根拠や基準はない。論理的(直感的)な人を「左脳(右脳)型人間」などと呼ぶのは勝手だが、それは脳科学とは何の関係もない』、脳にまつわるニセ科学に我々も随分、惑わされてきたものだ。それをクリアに解明したこの記事は、大いに参考になった。

次に、精神科医の和田 秀樹氏が9月7日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「東京医大の女性差別、背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600095/090500036/?P=1
・『東京医大の不正合格問題が思わぬ波紋を呼んでいる。私立大学支援事業の対象校の選定で便宜を図ってもらった見返りに、文部科学省の事務次官候補とも言われるキャリア官僚の子弟を医学部に不正な形で合格させていた。それをきっかけにした調査で、女性の受験生を一律に減点していたことまで発覚し、世間を驚かせた。 医学界の裏側に精通する医師であっても、女性の一律減点について知っていた人はほとんどいなかったはずだ。今回は東京医大の不正合格問題が示唆する、日本人のサバイバルにかかわる大問題を私なりに考えてみたい』、興味深そうだ。
・『女子一律減点に理解示す医師  意外なことに医師の間で女子受験生の一律減点に関して、「仕方ない」という声が強い。医師向けの人材紹介会社「エムステージ」が男女の医師を対象に実施した緊急アンケートによれば、「東京医大の入試において女子を一律減点していることについて」という問いに「理解できる」と回答した人は18.4%、「ある程度理解できる」とした人は46.6%に上り、合計65%が一定程度の理解を示した。私も一律減点が発覚してから2人の女医とお話しする機会があったのだが、2人とも仕方がないという言いぶりだった。 女医の西川史子さんはテレビ番組で「(入試の成績順に)上から取っていったら、(男性より優秀な)女性ばかりになってしまう。体重が重い股関節脱臼の患者を女性医師が背負えるかと言ったら無理だ」「外科になってくれるような男手が必要とされている」と、医学界の実情を説明した。 医師は体力が求められる仕事なので、男性医師を優遇して当然だ。これが日本の医学界の「常識」だとすれば、本末転倒だと私は考える。女医は体力的に劣るという事情は万国共通だ。それにもかかわらず欧米では女医は十分な戦力になっているのである。 経済協力開発機構(OECD)の調査によると2015年時点で、OECD諸国の女医比率は平均46.5%だ。女医の比率は旧社会主義国で高い傾向にあり、最も高いラトビアは4分の3近くに達する。欧州諸国は軒並み4割を超えており、女医が比較的少ないとされる米国でも34.6%だ。それに対して日本は20.3%で、韓国の22.3%にも抜かれて最下位である。 米国では女医が仕事しやすいように保育施設を設けている病院も多く、体力面の弱さをカバーするシステムもある。 私が米国の精神病院に留学中に驚いたのは、患者さんが暴れたときだ。日本だと医師と看護師が総出で患者さんを抑えにかかるのだが、米国では屈強な「セキュリティ」と呼ばれるガードマンが代わりに抑え込んでくれる。医療スタッフが直接制圧するとその後、患者との関係性が悪くなるというのが理由だったが、体力に劣る女医や女性看護師も安心できる職場環境だと感心したことがある。 西川氏が言うように、重たい患者を背負うのは女医には無理だとしても、医師が力仕事を担わなくても済む分業体制が、米国の病院では確立していた。 女医が体力的に戦力にならないのなら、女子受験生を差別するのではなく、女医を戦力にするシステムを構築するべきであろう。女性の労働力を十分に生かせないようであれば、日本で医師不足は一層深刻になる。まさに日本人全体のサバイバルの問題と言える』、女医比率が欧米のみならず、韓国より低いのはやはり問題だ。
・『長時間労働の解消が急務  さらに日本の場合、医師の労働時間が長く、体力的にきついことが、病院が女医を敬遠する要因になっているようだ。長時間労働は医師不足が原因である。 8月26日付の日本経済新聞朝刊によると厚生労働省は医師に限定した残業規制を2024年度に導入する。一般の労働者に19年4月から順次適用する年720時間よりも上限を緩くする。一般労働者と同じ規制では医師不足で現場が混乱しかねないというのがその理由だ。医師が不足しているのなら、医師の供給を増やせばいいだけのはずだが、安倍政権は医学部の新設を制限している岩盤規制に切り込もうとしない。獣医学部に関する規制は安倍首相の鶴の一声で崩れたのとは対象的だ。 残業を長い時間続けると体力や集中力が落ちる。医療ミスや、おざなりな診察を誘発するなど、患者のサバイバルに直結する問題である。ついでに言うと、現場の多くの医師が勉強をする時間が取れないことも、海外の最新の治療法がなかなか日本に導入されない遠因になっているはずだ。 医師の供給量を国家が過度に管理する日本の特殊な政策にメスを入れれば、女医にとって働きにくい悪質な労働環境は改善され、医者不足も解消に向かうと思えてならない』、医師不足は事実だとしても、単なる数の問題だけでなく、偏在の問題、さらには医師と看護師などのスタッフとの役割分担の問題、など多面的に検討すべきだ。数は足りているとの見方もある。もっとも、女性医師が働き易い環境を整えるべきとの主張には賛成だ。

第三に、みずほ証券チーフ・マーケットエコノミストの上野 泰也氏が9月18日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「現場優先で女性減点」は、正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/091300157/?P=1
・『東京医科大学を舞台とする「裏口入学」・文部科学省幹部の汚職(受託収賄)事件は、8月に入り、女性合格者を減らすため得点を一律減点していたという驚くべき事実の、読売新聞によるスクープ報道につながった。しかも、他の大学の医学部においても、男女で合格率の差が大きいケースが目立つ。 女性が苦手とすることが多い数学の配点を高くしたり、面接を重視したりすることで男女比を調整する(女性合格者を減らす)というテクニックが用いられることもあるという・・・医学部合格を目指して必死に勉強してきた女性受験者には、憤懣やるかたない話だろう。ところが、上記のスキャンダルに関して、世の中の盛り上がり方は今一つである。その最大の理由は、実際に医療業務に従事している女性医師の側から「女性合格者を大学が減らそうとするのは現場の状況からすればやむを得ない話だ」というような、あきらめに近い感想が少なからず聞こえてくる(しかもそれが報道されている)からだろう。実際、筆者が知人(医学部4年女子)にたずねてみたところ、そうした反応だったため、拍子抜けしてしまった』、なるほど。
・『物分りのよい女性医師たち  女性の医師を応援するWEBサイトが8月上旬に行ったアンケート(回答した医師103人のほとんどが女性)では、東京医科大の不正入試についての回答「理解できる」「ある程度理解できる」の合計が65%に達し、「理解できない」「あまり理解できない」の35%を大きく上回った(AERA 8月27日号)。 私大医学部の入試には同時に、その大学の大学病院の採用試験という意味合いもあるとされている。医師国家試験に無事合格できれば、医学部卒業生の多くはその大学の医局に入り、大学病院や系列・提携先の病院などに勤務先が決められる。勤務実態が特にきついとされているのが外科である。外科の男女比を見ると、女性の比率が目立って低い。 05年頃に東京医科大の系列病院に1年半ほど勤務した女性外科医は、午前7:30~午後10:00の勤務が週6日、入院患者を受け持つ期間は休日も出勤していたという。非常にきつい職場であり、結婚・出産を機に仕事と育児の両「現立をあきらめて、医師を辞める女性が少なくない。 同大学幹部によれば、「学内には、以前から女性が増えると外科が潰れるとの声があった」。「どの大学も同じはずだ」「感情論では国民の役に立てない」「女子の合格者が増えれば、医局で戦力になる人員が減り、必ず現場にしわ寄せが来る」といった幹部のコメントも、合わせて報じられている(8月30日 読売)。「現場にしわ寄せ」という言葉を聞くと、日本の中堅以上の現役サラリーマンなら誰しも、どことなく尻込みしてしまう面があるのではないか。筆者も例外ではない。有給休暇を完全取得したいと思っていても、同僚・部下にしわ寄せがいって迷惑をかけてしまうから、使い残しが毎年生じるという、よくあるパターンにも通じるものがある。 さらに言えば、医療というのは人間一人ひとりの健康状態さらには生命そのものにも直接関わってくる非常に特殊な業務分野であるだけに、他の職場と異なる面があってもある程度まではやむを得ないのではないかという心理が、その良し悪しは別にして、どうしても働きやすい』、確かに「現場にしわ寄せ」は、思考停止させてしまうマジックワードだ。
・『医療施設に従事する医師の女性比率は韓国を下回る  したがって、女性当事者の側から「これはどう考えてもおかしい」「状況を変えなければ」といった意志が明確に表明されなければ、改革の機運は盛り上がりにくい。 しかし、気付いている人があまりいないのかもしれないが、不思議なことも1つある。 厚生労働省が17年12月14日に公表した「平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、16年12月31日現在で医療施設に従事している医師の総数は30万4759人で、うち女性は6万4305人(21.1%)<図1>。この女性比率は経済協力開発機構(OECD)諸国の中で韓国を下回る、最も低い水準である。 一方、外科や内科のような救急医療や入院患者のケアが基本的にないと考えられる歯科医師のうち医療施設に従事している人の総数は10万1551人で、うち女性は2万3391人(23.0%)。比率は医師とほとんど変わらないのである。本当に「現場の事情」だけが理由で医師に占める女性の割合が抑制されているのだろうか。歯科医師には歯科医師に特有の事情があるのかもしれないが、いささかの疑念が生じてしまう。 なお、勤務時間が基本的に守られ、資格さえ有していればパートタイマーでの勤務もやりやすいと考えられる薬剤師の場合、薬局・医療施設に従事している総数は23万186人で、うち女性は15万1754人(65.9%)である』、歯科医師でも女性比率が低いというのは、確かに謎だ。
・『結局、医療現場における女性比率の低さについて、どう考えるべきなのだろうか。すでに述べた「現場重視論」と、その対極に位置している「理想論」の2つがあるように思われる。 「理想論」の代表と言える論説が、評論家・哲学者である東浩紀氏がAERA 8月27日号のeyes欄に寄稿した「医大入試の女性差別 現場の論理は万能なのか」である。以下がその主張の根幹部分。性別・世代を問わず、傾聴に値する内容である。 「差別はなくなると信じたいが、楽観的になれないのは、今回マスコミでもネットでも大学擁護論がかなりの数、現れたからである。(中略)擁護者には女性も含まれている。おそらくは、これはこれでリアルな『現場感覚』なのだろう。その感覚があるかぎり、見えない差別は続くことになる」「ここには日本社会の抱える困難が典型的に現れている。男女平等はいいけどさ、実際はそれじゃ回らないんだよという『現場の論理』は、この国ではきわめて強力だ」「現場を理念に優先させる。それではあらゆる改革は挫折するほかない。けれどもほんとうは、理念は現場を変えるためにこそある。必要なのは現場万能主義からの卒業だ。これは男女平等の話に限らない」』、「必要なのは現場万能主義からの卒業だ。これは男女平等の話に限らない」との東浩紀氏の主張は、さすがに深く、説得力がある。
・『とにかく前に進むしかない  結婚や出産から30代が岐路になって女性医師が離職することが多い医療現場。そうした風潮を変えようとする試みもある。 日本経済新聞が9月3日朝刊に掲載した「女医、私は辞めない 補い合って両立」は、「現場重視論」のカベを打ち破って「理想論」に近づこうとする試みが東京女子医科大学病院で行われていることを大きく取り上げた。短時間勤務制度のほか、院内には保育所もある。救急救命センターは20人の常勤医師のうち8人が女性で、短時間勤務の制度を使ってお互いをカバーできるようにしているのだという。 人々の意識の面を含め、改革を進めていくには相当の時間が必要になりそうな状況だが、「やればできるはずだ」と信じながら地道に前に進もうとするのが、今回取り上げた問題への正しい対処法・解決策ではないか』、確かに「理想論」に近づける努力が必要との主張には、全面的に同意する。
・なお、9月25日付け朝日新聞は「東京医大、初の女性学長承認 不祥事受け、立て直しへ」と報じた。専門は病態生理学とのことで、医師の最前線でこそないが、抜本的な見直しに着手してくれることを期待したい。
タグ:「脳は10%しか使われていない」は本当か? 我々の脳に「私たち」と「彼ら」を積極的に区別しようとする働きが備わっていることも、また事実のようだ 日本の場合、医師の労働時間が長く、体力的にきついことが、病院が女医を敬遠する要因になっているようだ (その8)(実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠、東京医大の女性差別 背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる、「現場優先で女性減点」は 正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの) 「男脳・女脳」問題 米国では女医が仕事しやすいように保育施設を設けている病院も多く、体力面の弱さをカバーするシステムもある 韓国の22.3%にも抜かれて最下位 「男脳・女脳」の真実とは? 必要なのは現場万能主義からの卒業だ。これは男女平等の話に限らない とにかく前に進むしかない 差別される「脳」、差別する「脳」 東京医大、初の女性学長承認 不祥事受け、立て直しへ 上野 泰也 日本は20.3% 「脳科学」の歴史は、差別の歴史と重なっている 男女の考え方、行動、能力の違いを単純に脳の性差に押しつけるこの手の言説は、女性差別を助長する方向に悪用されないとも限らない 『コンタミ 科学汚染』 人間の心には生後かなり早い段階で性差があり、性自認も芽生えているという研究結果が蓄積されつつある お茶の間脳科学 「現場重視論」 女性活躍 生まれつき心と体の性別が一致しない人々が存在するということは、脳に属性として性差があることを意味 歯科医師でも女性比率が低い 脳のサイズを補正すると、脳梁にも海馬にも、従来言われていたような男女差はほとんど見られないという 「女は男より言語感覚に優れている」 伊与原 新 「実は女性の半数は「地図が読める男脳」より地図が読める科学的根拠 ラボ・フェイク 第6回」 米国でも34.6% 現在この領域は「連合野」として知られ、高度な精神活動に関わっていると考えられている OECD諸国の女医比率は平均46.5% 朝日新聞 物分りのよい女性医師たち 「医大入試の女性差別 現場の論理は万能なのか」 「サイレントエリア」 欧米では女医は十分な戦力になっている 医師は体力が求められる仕事なので、男性医師を優遇して当然だ。これが日本の医学界の「常識」だとすれば、本末転倒 長時間労働は医師不足が原因 脳科学の「主流をなす意見は、時代によっても振り子のように大きく揺れ動く 「現場にしわ寄せ」 脳の性差は「生まれ」か「育ち」か? 「「現場優先で女性減点」は、正しいことなのか 先進国最低「女性医師比率」21%のニッポンに足りないもの」 「学内には、以前から女性が増えると外科が潰れるとの声があった」 女子一律減点に理解示す医師 「やればできるはずだ」と信じながら地道に前に進もうとするのが、今回取り上げた問題への正しい対処法・解決策ではないか 女性の受験生を一律に減点 「理想論」 過去の動物実験において、電気刺激などを与えても動物の行動に変化が見られなかった 現代ビジネス 「男は女より地図が読める」という俗説 東京医科大の不正入試についての回答「理解できる」「ある程度理解できる」の合計が65% 最新の遺伝学によれば、「人種」という従来の固定されたイメージは、まるっきり間違っているらしい 安倍政権は医学部の新設を制限している岩盤規制に切り込もうとしない 東浩紀 「東京医大の女性差別、背景に劣悪な医療現場 医学部新設が問題解決につながる」 日経ビジネスオンライン 和田 秀樹 脳においては、男女差よりも個人差のほうがはるかに大きい すべての人の脳は、左右の半球で信号をやり取りしながら働いている。個人の脳において、どちらの半球が優勢かを判定する根拠や基準はない グリア細胞 「右脳型・左脳型」 神経細胞の働きを支える重要な機能を担っている 我々はみな“アフリカ人”である。ホモ・サピエンスという種をそれ以上細かく区分するような遺伝的差異は、存在しない
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