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トランプ大統領(その36)(冷泉氏:中間選挙直前、激しい動きの中で) [世界情勢]

昨日につづいて、トランプ大統領(その36)(冷泉氏:中間選挙直前、激しい動きの中で)を取上げよう。来週に中間選挙の投票日が迫っており、内容的にも極めて興味深いので、あえて続けたものである。

在米作家の冷泉彰彦氏が10月27日付けメールマガジンJMMに掲載した「「中間選挙直前、激しい動きの中で」 from911/USAレポート」を紹介しよう。
・『今回11月6日(火)に投票日の迫るアメリカの中間選挙ですが、現時点までの状況は簡単に整理すると次の通りです。
 1)現有議席は上下両院ともに共和党が過半数。当初、つまり今年2018年の春頃までは、逆転は難しいと言われていた。
 2)だが、トランプ大統領をめぐる「ロシア疑惑」「不倫もみ消し疑惑」などにより、ジリジリと民主党が党勢を拡大、夏場までに下院の形勢を逆転。現時点での焦点は上院過半数の行方に。
 3)ちなみに、下院を民主党が制すると下院議長や各委員会の委員長が民主党に行くので、ホワイトハウスとの関係は「ねじれ議会」になる。それどころか弾劾の発議が可能になる。
 4)7月までは、共和党内で各予備選における「主流派」と「トランプ派」の激しい泥仕合が続いていた。
 5)形勢が激しく動き出したのは9月に入ってから。予備選が終わり、共和党内が落ち着いたところへ加えて、最高裁判事カバナー指名から承認へというプロセスで、「トランプと福音派」「トランプと共和党主流派」という水と油の関係が「結束」に向かうと同時に、大統領の支持率が上昇。
 6)こうした動きを受けても、下院の情勢は民主党優位で変わらず。一方の上院は、ジリジリと共和党有利という展開に』、なるほど。
・『というのがこの10月20日頃までの状況でした。ところで、アメリカの国政選挙というのは、ごく一部の補選を除いて、必ず11月の第一火曜日に行うと決められています。その場合に、大統領選を含む総選挙にしても、中間選挙にしても、だいたい10月の末ギリギリに「何か」が起きるわけです。 過去の選挙についても、2004年のブッシュとケリーの対決では、10月末のギリギリにの時点で「ほとんどデマ」と言ってもいい、ケリー氏のベトナム戦争当時の悪評が飛び出して(「スイフト・ボート事件」)選挙戦を左右したと言われています。 また、2012年の場合は、ハリケーン「サンディ」が10月末に大きな被害を出した際に、現職のオバマが復興支援に動けたのに対して、挑戦者のロムニーは何も出来なかったことが勝敗に影響したと言われています。 そうした「魔の10月末」ということでは、何と言っても記憶に残るのが2016年の場合です。この時はまずトランプの「わいせつ発言疑惑」つまり「自分はミスコンの主催者だから楽屋は覗き放題」だとか「女性に触り放題」などという会話のビデオが出て、これで彼も「終わり」と思われたのですが、その後に「ヒラリーの第二次メール疑惑」というのが飛び出して、こちらの方が大きな影響を持ったと言われています。 その「魔の10月末」が今回の中間選挙でも起きつつあるようです』、「魔の10月末」があるというのでは、米国の選挙は最後まで目が離せないようだ。
・『まず先週末から今週の初頭にかけての「1つ目」は、中部アメリカのホンジュラスから出発した「移民キャラバン」という問題です。ホンジュラスでは、経済の低迷と、麻薬ギャングの暴力が深刻化しており、多くの国民が「生命の危険」を避けるために、難民として国外脱出を続けています。 そんな中で、登場したのが「中米移民キャラバン」という市民団体でした。彼らはSNSを通じて「キャラバン隊」を編成して、メキシコ経由でアメリカを目指す運動を行っています。この団体が有名になったのは、今年、2018年の3月から4月にかけてでした。この際の「キャラバン隊」は、メキシコ移動中はそれほど大きなニュースにはならなかったのですが、4月にアメリカとの国境の町であるティファナに着いて、難民申請を出すことになって大きなニュースになっています。国境の状況が連日報道された中で、トランプ政権は越境を拒否しており、難民や支援者の中には逮捕者も出ています。 半年後のこの10月、第二回の「移民キャラバン」が企画されました。今回は、第一回とは様子が違いました。まず規模が大きく、ホンジュラスから途中のグアテマラに入った後には4000人に膨れ上がっていたのです。メキシコへの国境を越えた頃には、5000名ということになっていました。 それとともに、前回とは全く違う大規模な報道がされていたのです。アメリカのケーブルTVや三大ネットワークは、徒歩移動するキャラバン隊に同行取材の体制を組んで、連日報道したのでした。先週末から今週の初頭には、連日トップ扱いになっていました。 キャラバン隊や多くのメディアの思いは単純なものだと思います。つまり「アメリカの中間選挙に合わせて行動を起こすことで、アメリカの世論に人道危機を知ってもらいたい。トランプの移民政策にストップをかけて欲しい」という思いです。選挙のタイミングに合わせた行動には批判もありますが、少なくとも主催者の思いは分からないでもありません。 ところが、今週の半ば、23日の火曜日から24日の水曜日ぐらいまでは、全く逆の効果、まさに政治的には逆効果としか言いようのない現象がアメリカでは起きていました。そもそも、トランプ政権のこの「キャラバン」への対応は一貫していました。 これまでの発言などを確認しておきますと、「(移民の送出国である)ホンジュラス、エル・サルバドル、ニカラグアの3カ国の政府には援助を停止する」「民主党はこうした移民を歓迎しているので許せない」「アメリカには絶対に入国させない。入国阻止のために軍を出動させる」「キャラバンにはアラブのテロリストが入っていて危険」というのがその主張です。これはデマの類と思いますが、この「移民キャラバン」に資金提供をしているとして、投資家のジョージ・ソロス氏へは「小包爆弾」が送られたなどという物騒な話もあったぐらいです』、確かに、第二回の「移民キャラバン」は規模が大きく、ジョージ・ソロスが資金提供したのではとの噂もうなずける。しかし、明らかに逆効果で馬鹿なことをしたものだ。
・『更に、これは25日の時点ですが、トランプ政権の閣僚であるキルステン・ニールセン国土保安長官は、FOXニュースのインタビューに対して、「軍が国境を警備する中で、キャラバン隊への発砲を行う可能性」について問われたところ、「移民が暴徒化した場合など、正当な理由があれば(発砲する)」という示唆もしています。 とにかく、この24日の時点までは、トランプ大統領とトランプ派の候補たちは「移民キャラバンを絶対に許さない。絶対に国内に入れない。これに反対している民主党は許せない」というキャンペーンを「一方的に盛り上げ」ていたのでした。 ところが、24日から25日にかけて状況に変化が生まれます。まず、キャラバン隊の方ですが、アメリカから駆けつけたボランティアなどが「時期が悪い。難民を救えないどころか政治的には逆効果になっている」として、解散する方向に説得を開始したようなのです。その結果として、5000人のキャラバンが、一部報道では1000人まで減ったという説も出てきています』、難民への食事提供などは沿道の住民たちがしているのかと思っていたが、「アメリカから駆けつけたボランティア」がやっていたとは・・・。しかも、政治的に逆効果として解散させようとしているとは無責任で、難民たちこそ道具に使われた被害者だ。とんでもない愚行である。
・『更に、この週には、前述のソロス氏だけでなく、NY市内のコロンバス・サークルにあるCNNのビルをはじめ、オバマ夫妻、クリントン夫妻、バイデン夫妻など名だたる民主党の政治家たち、そしてトランプ批判を続けている俳優のロバート・デ・ニーロなど著名な「アンチ・トランプ」の人々に対して、小包爆弾が送りつけられるという事件が多発していました。 CNNのビルでは、全員を避難させて爆発物取締班が処理活動を行うというようなことが、一週間に2回も起きるという事態になっています。これを受けて、25日ごろからトランプ大統領は、急に「国内融和」ということを言い出したのです。 そんな中で、26日(金)フロリダ州メルボーンで、一人の男が逮捕されました。 名前は、シーザー・サヨックという56歳の男性で、大学に二回入学したものの結局は卒業できずに、親元で暮らし、最後は両親からキックアウト(日本でいう勘当というところでしょうか)されて白い自動車(バン)を寝場所にしていたという人物でした。 報道によれば、生活の糧を得ていたのは男性ストリッパーの仕事で、ボディビルを続けており、プロレスラーを志望しているものの、年齢を重ねる中でその可能性が薄くなっていたのを悩んでいたそうです。そして、このサヨックという男は、熱心な「トランパー(トランプ派)」でした。 まず、寝泊りしていたバンには、「トランプ礼賛」のステッカーや写真がベタベタ貼ってあり、また「CNN批判」のスローガンもあり、異様な状態になっていました。FBIは、車両を証拠として押収してレッカー移動する際には、ブルーシートをかけていましたが、その前に各メディアはこの「異様なステッカーだらけの状態」を撮影していますから、今となっては隠しようもありません。 また、2017年に大統領が来て行われた政治集会には、「CNNを潰せ」という大きなプラカードを持って参加している写真があります。更には、ツイッターには、トランプを礼賛し、今回の一連の事件でターゲットになっていた人々への批判を繰り返していたのでした。 移民キャラバンがトランプ派の「ヤラセ」という噂があったように、今回の小包爆弾騒動も、一部にはリベラル派のヤラセという噂もありました。ですが、これでトランプ派の犯行ということは明らかとなりました』、「移民キャラバンがトランプ派の「ヤラセ」という噂」まであるとは、真相は完全に闇のようだ。
・『興味深かったのは、26日のFBIの記者会見です。本来であればFBIの会見でいいものを、セッションズ司法長官がわざわざ出てきて「これは政治的、党派的動機の犯罪」と断言したのです。また、FBIのレイ長官は「ニセの爆弾ではない」と明言していました。司法省は「正直ベース」で深刻視することにしたようです。 このFBIの会見の際には、ケーブル・ニュース局だけでなく、三大ネットワークも午後の通常番組を中断して特番を組んでいました。中でもCNNは自分たちがターゲットになっていたこともあり、強い批判報道を続けています。 さて、これは複雑な状況となってきました。この「トランプ派による小包爆弾事件」は政治的なモメンタムの転換になるのでしょうか? とりあえず、投票日までは「週末が2回」あります。近所の人や家族との雑談のネタになるチャンスは2回ありますし、日曜の政治討論番組や、新聞の週末特集もまだ2回あります。こうした事件を契機として、投票行動が動くだけの時間はあります』、よくぞ次々と事件が起こるものだ。
・『1つの可能性は、共和党には不利に働くという流れのシナリオです。例えば、これで極端なトランプ派候補は中道票を取り逃すという可能性は否定できません。流石にエキセントリックな右派ポピュリストは危険だとして敬遠される、そんな可能性です。 例えばですが、犯人の地元フロリダの知事選と上院選には影響はあると思います。 また、トランプ大統領は、これから先は「過激な政敵叩き」は封印せざるを得ないでしょう。「感情論を煽る手法が爆弾テロ事件を生んだ」という批判を浴び、自身が「世論の和解を」などと言った以上は、この手は当分使えません。そうなると、残り10日間の遊説効果などは変わってくると思います。 決定的なのは、「移民キャラバンがトランプの追い風」という現象が「このニュースで上書きされた」ということです。キャラバンそのものが解散へ向かっているという要素もあると思いますが、一旦は「反移民モメンタム」で盛り上がっていた流れには完全に水がさされました。 もう1つの可能性は、影響は意外に限定的というシナリオです。例えば、トランプ大統領自身が「分断ではなく、国民の和解を」などと言っても、そんなに説得力は持たないわけです。それは説得力がないから信用されないのではなく、支持派にしてみれば「事件の余波でイヤイヤ言っているだけ」ということになり、別に失望も反省もしないし、影響は少ないという可能性です。 興味深いのは、サヨック容疑者の「家族の弁護人」が出した声明です。その声明によれば、「容疑者は、(破綻した親子関係、破綻した人生の帰結として)ドナルド・トランプに父性を見出し、狂信的になっていった」という説明がされています。現在の世相、そして、この人物の何とも言えない経歴を考えると、不思議に納得させられてしまう説明です。勿論、罪は許せないにしても、こうした説明をされると、中道から右の人には「爆弾テロ未遂」という凶悪事件でありながら、元凶とも言えるトランプへの憎しみは感じない、そんなことになるかもしれません』、爆弾テロ事件の見方がこれだけ分散しているとは、難しいものだ。
・『反対に民主党の方は「激怒モード」でトランプ批判を加速するかもしれませんが、それはそれで「分裂の片棒を担ぐ」ことになるわけで、中道派、つまりトランプへの消極的批判票などを取れるかというと、投票行動への影響は限定的という可能性もあります。いずれにしても、犯人逮捕というドラマが、どのような政治的リアクションを生むのかは、週明けの29日以降の動向にかかって行くことになります』、投票日前にこれだけ波乱があるとは、いくら「魔の10月末」とはいえ、なかなか興味深いことだ。投票結果が楽しみだ。
タグ:トランプ大統領 (その36)(冷泉氏:中間選挙直前、激しい動きの中で) 冷泉彰彦 JMM 「「中間選挙直前、激しい動きの中で」 from911/USAレポート」 アメリカの中間選挙 夏場までに下院の形勢を逆転。現時点での焦点は上院過半数の行方に 下院を民主党が制すると下院議長や各委員会の委員長が民主党に行くので、ホワイトハウスとの関係は「ねじれ議会」になる それどころか弾劾の発議が可能になる 9月に入ってから 、「トランプと福音派」「トランプと共和党主流派」という水と油の関係が「結束」に向かうと同時に、大統領の支持率が上昇 下院の情勢は民主党優位で変わらず。一方の上院は、ジリジリと共和党有利という展開に 10月20日頃までの状況 「魔の10月末」 だいたい10月の末ギリギリに「何か」が起きるわけです 「移民キャラバン」 第二回の「移民キャラバン」 5000名 ケーブルTVや三大ネットワークは、徒歩移動するキャラバン隊に同行取材の体制を組んで、連日報道 キャラバン隊や多くのメディアの思いは単純 中間選挙に合わせて行動を起こすことで、アメリカの世論に人道危機を知ってもらいたい。トランプの移民政策にストップをかけて欲しい 今週の半ば、23日の火曜日から24日の水曜日ぐらいまでは、全く逆の効果、まさに政治的には逆効果としか言いようのない現象がアメリカでは起きていました 「移民キャラバン」に資金提供をしているとして、投資家のジョージ・ソロス氏へは「小包爆弾」が送られた トランプ大統領とトランプ派の候補たちは「移民キャラバンを絶対に許さない。絶対に国内に入れない。これに反対している民主党は許せない」というキャンペーンを「一方的に盛り上げ」ていたのでした アメリカから駆けつけたボランティアなどが 解散する方向に説得を開始したようなのです 5000人のキャラバンが、一部報道では1000人まで減ったという説も出てきています 名だたる民主党の政治家たち、そしてトランプ批判を続けている俳優のロバート・デ・ニーロなど著名な「アンチ・トランプ」の人々に対して、小包爆弾が送りつけられるという事件が多発 サヨックという男は、熱心な「トランパー(トランプ派)」 移民キャラバンがトランプ派の「ヤラセ」という噂があったように、今回の小包爆弾騒動も、一部にはリベラル派のヤラセという噂もありました FBIのレイ長官は「ニセの爆弾ではない」と明言 1つの可能性は、共和党には不利に働くという流れのシナリオ 流石にエキセントリックな右派ポピュリストは危険だとして敬遠される、そんな可能性 決定的なのは、「移民キャラバンがトランプの追い風」という現象が「このニュースで上書きされた」ということです もう1つの可能性は、影響は意外に限定的というシナリオ 「家族の弁護人」が出した声明 ドナルド・トランプに父性を見出し、狂信的になっていった 犯人逮捕というドラマが、どのような政治的リアクションを生むのかは、週明けの29日以降の動向にかかって行くことになります
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トランプ大統領(その35)(「トランプは選挙の勝ち方をよく知っている」マイケル・ムーア監督が警告、米中間選挙:「反トランプ」が一枚岩になれない理由 トランプ関税が民主党を封じ込めた?、中国の報復関税にあえぐ農業州はトランプを見放すか?、経済冷戦から新冷戦に踏み出すトランプ大統領 INF条約破棄が招く核危機) [世界情勢]

トランプ大統領については、10月5日に取上げたばかりだが、今日は、(その35)(「トランプは選挙の勝ち方をよく知っている」マイケル・ムーア監督が警告、米中間選挙:「反トランプ」が一枚岩になれない理由 トランプ関税が民主党を封じ込めた?、中国の報復関税にあえぐ農業州はトランプを見放すか?、経済冷戦から新冷戦に踏み出すトランプ大統領 INF条約破棄が招く核危機)である。

先ずは、ジャーナリストの矢部 武氏が10月9日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「トランプは選挙の勝ち方をよく知っている」マイケル・ムーア監督が警告」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/181532
・『トランプ大統領誕生を予言していた監督  2016年の大統領選の前に多くの人がトランプ候補について、「こんなまぬけに誰も投票するはずはない」と指摘し、「民主党のヒラリー・クリントン候補が勝つだろう」と確信していたなかで、アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したことのあるマイケル・ムーア監督は、トランプ氏の勝利を予想していた。 ムーア氏は2016年7月末に発表した「ドナルド・トランプが当選する5つの理由」という記事のなかで、こう述べていた。 「この浅ましくて無知で危険な、パートタイムのクラウン(道化師)兼フルタイムのソシオパス(社会病質者)は米国の次期大統領になるだろう。さあ、みんな、“トランプ大統領”と言ってみよう。これから4年間そう呼ぶことになるのだから」 5つの理由については後述するが、要するにトランプ候補は過激な言動で物議を醸しているが、実は他の候補より選挙の勝ち方をよく心得ていることをムーア氏は見抜いていた。だから、民主党やメディアの関係者などに「トランプを真剣に受け止めないと大変なことになる」と、警告を出していたのだ。しかし、彼らはそれに耳を傾けることなく、2016年11月9日、トランプ大統領勝利宣言の日を迎えてしまった。 あれから2年近くを経てムーア監督は、トランプ大統領を標的にした新作「華氏119」を引っさげてスポットライトの下に戻ってきた。 9月21日の映画公開に合わせて出演したテレビ番組で、トランプ大統領の2年間について問われたムーア氏は、「想像していたよりもはるかにひどい状況だ。民主主義や法の支配への敬意がまったくなく、外国の独裁的な指導者を称賛している。もし国家の非常事態が起きたら、国民の人権や報道の自由はどうなるかわからない」と述べ、こう警告した。「民主党の関係者や支持者は11月の中間選挙で下院の過半数を奪還できると自信を持っているようだが、私には少し楽観的すぎるように思える」 さらにムーア氏はトランプ大統領が2020年に再選される可能性にまで言及した。民主主義や法の支配を守ろうと訴えている人々にとっては悪夢のシナリオだが、それにしても米国はなぜ、こんな状況になってしまったのか、そしてこれからどうなるのか』、「パートタイムのクラウン(道化師)兼フルタイムのソシオパス(社会病質者)」と見抜き、その当選を警告していたムーア監督はさすがだ。
・『選挙の勝ち方を心得ている「悪の天才」  2016年の大統領選で、トランプ候補は得票数でヒラリー・クリントン候補を約290万票も下回ったが勝利した。それができたのは得票数で負けても、「ラストベルト」(さびついた工業地帯)と呼ばれる中西部の4州と、他の共和党が優位な州「レッドステート」を全て押さえれば勝てるとの計算があったからだろう。 ムーア氏は前述の記事のなかで、「トランプはミシガン、オハイオ、ウィスコンシン、ペンシルベニアのラストベルト4州に意識を集中させるだろう」と書いていたが、その指摘通り、トランプ陣営は選挙戦の終盤にラストベルトでの活動に全力を注いだ。 ムーア氏がトランプ候補の勝利を予想できたのは、彼自身がラストベルトの一つ、ミシガン州フリントの出身であることと無関係ではないだろう。同州はかつて自動車産業など製造業の中心地として栄えていたが、近年は産業の空洞化で取り残され、とくに白人労働者の怒りや不満が高まっていた。「強いアメリカを取り戻す」などのスローガンを掲げたトランプ氏が、彼らの不満をうまく取り込み、支持を増やしていたことをムーア氏はよく知っていたのだ。 一方、クリントン陣営は、ラストベルトは伝統的に民主党が強かったこともあって多少油断したのか、選挙活動にあまり力を入れていなかったようだ。それが勝敗を分けたと言っても過言ではないだろう。 ムーア氏はトランプ大候補が勝つ理由として、他に、女性やマイノリティの台頭によって追いつめられた怒れる白人男性の支持を増やしていること、「有権者の約70%がヒラリーを信用できない」というクリントン候補の不人気の問題などをあげた。 しかしムーア氏は「自分の考えが間違いであってほしい」と強く願いながら、この記事を書いた。「こうなってほしい」と思ってではなく、「現実に何が起きているのかを人々に認識してほしい」と願って書いたのだという。 とくにその時は、民主党全国大会でクリントン候補が正式指名された直後で、関係者は皆、「あんなまぬけに負けるはずはない」という感じで舞い上がっていた。残念ながら、ムーア氏の警告は最後まで民主党の関係者に届くことはなく、クリントン候補はラストベルトの4州すべてを僅差で落としてしまった。 もちろんトランプ候補が勝利した理由としては他に、コミー前FBI長官が投票日の11日前にクリントン候補の私用メール問題の捜査を再開したことを無視することはできない。それによって、それまで10ポイント前後あったクリントン候補のリードが一気に縮まってしまったのだから。 とはいえ、トランプ氏が最初からラストベルトの票読みや選挙人票(得票数ではなく)に意識を集中させていたことは明らかであり、その点では選挙の勝ち方を心得ていたと言えるだろう。さらにムーア氏は、トランプ大統領が11月の中間選挙や2020年の大統領選でも勝利する可能性があると警鐘を鳴らす』、中間選挙のみならず2020年の大統領選でも勝利する可能性があるとは、恐ろしい警告だ。
・『「人の心を惑わせ、混乱させる達人」  トランプ大統領はいつも嘘を言ったり、狂気じみたことを言って人を驚かせ、混乱させたりしているが、そうすることで人を巧みに操り、大事なことから人の注意をそらし、自分のペースに持ち込もうとしているのではないか、とムーア氏はみている。 しかし、このような大統領の問題行動によって、政権内が大混乱に陥っていることが、匿名の政府高官によって書かれたニューヨーク・タイムズ紙(9月6日付)の論説記事から明らかになった。 この高官は、「大統領は衝動的で敵対的で考え方が狭く、無能である。問題の根本は大統領に道徳心が欠如していることにある」と述べ、「私は大統領のために働いているが、同じ考えを持つ同僚とともに、大統領の最悪の性向からくる無謀な意思決定を阻止するべく懸命に努力している。政権内で密かな抵抗運動が起きている」と、驚くべき実態を暴露した。 さらに衝撃的だったのは、職務不能を理由に大統領を強制的に解任できる「憲法修正第25条」を適用すべきかについて閣僚内で検討されたということだ。結局、憲法の危機を回避するために見送られたそうだが、そのような事が検討されただけでも異常な事態という他はない。 トランプ政権内の混乱ぶりについては、これとほぼ同時期に発売された著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏の新著『Fear: Trump in the White House』(恐怖:トランプのホワイトハウス)でも詳細に述べられている。 ウッドワード氏によれば、経済担当大統領補佐官だったゲーリー・コーン氏は「大統領から国を守るために机の上の書類を隠して、大統領が署名できないようにした」という。また、マティス国防長官は大規模な在韓米軍の費用を大統領から何度も聞かれて苛立ち、「第三次世界大戦を防ぐためです」と不愛想に答えた。その後、長官は同僚に「大統領の理解力は5年生か6年生レベルだ」と語ったとされる。 トランプ大統領は「本は作り話だ」と批判しているが、ウッドワード氏によれば、新著は政権内の人々への綿密なインタビューに基づいて執筆されたものだという。 この本と前述の論説記事がともに指摘しているのは、大統領の精神状態や執務能力、国内外の諸問題についての理解力に不安を感じている職員が少なくないということだ。このような人物が大統領を務めているのは多くの米国人にとって不幸だが、さらに悪いことにトランプ氏は長く大統領職にとどまることに執念を燃やしているように見えることだ。 たとえば、2018年3月、トランプ大統領は共和党の資金集めのイベントで、中国共産党の国家主席の任期を撤廃して無制限に務められるようにした習近平主席を褒め称え、「米国でもいつか試したい」と語っているのである』、「長く大統領職にとどまることに執念を燃やしている」、というのも困ったことだ。
・『今こそ身を挺して民主主義を守る時だ!  米国では法の支配、憲法、三権分立など民主主義の制度がしっかり確立されているので、中国のようにはならないであろうことは容易に想像できる。 しかし、ムーア氏は、「民主主義は“自己修復メカニズム”を持たない。“邪悪な指導者”によってシステムが崖っぷちに追いやられた時、それを元に戻すものがない。我々の民主主義は単に紙に書かれた約束事にすぎない」と警告する。 具体的には、前述したように大統領が国家非常事態を宣言して国民の権利を奪ったり、報道の自由を制限したりということだ。実際、トランプ大統領はNBCの放送免許剥奪の可能性に何度も言及しており、「政権に批判的な報道をするテレビ局の放送免許を取り消す権限が自分にある」と信じているようだ。 このようにムーア氏は、民主主義の制度が邪悪な指導者によって危機にさらされていることを繰り返し指摘する。しかし、米国の民主主義を支えているのはシステムだけでなく、民主主義を守ろうとする人々の意識や文化、勇敢な行動などである。たとえば、トランプ大統領の就任翌日には全米で大規模な抗議デモが展開され、強硬な反移民政策や白人至上主義擁護発言などに抗議する活動も頻繁に行われている。 米国社会は現在、保守派の共和党支持者とリベラル派の民主党支持者で真っ二つに分断されている。しかし、半数以上の米国人は移民や銃規制、同性婚などの問題でリベラルな政策を支持している。つまり、彼らは全ての国民が医療保険に加入できる皆保険を求め、アサルトライフルの販売禁止など銃規制に賛成し、移民は米国のために良いと考え、LGBTの権利と同性婚を認めるべきだとしているのだ。 にもかかわらず、共和党が行政府(大統領)と議会の上下両院を握っているのはなぜか。理由はおそらく、トランプ大統領が選挙の勝ち方を心得ていることに加え、民主党支持者の多くが投票に行かないからではないかと思われる。 そこでムーア氏は、「民主主義は家のソファーに座って楽しむ観戦スポーツとは違う。皆がソファーから立ち上がり、自ら参加しなければならない」と、中間選挙での投票を呼びかけている。 さらに民主主義が危機にさらされるなか、オバマ前大統領も立ち上がった。オバマ氏は「前大統領は現職を非難しない」という伝統を破り、トランプ大統領の偏見と分断に満ちた政治を名指しで非難した。 そしてシャーロッツビルでの白人至上主義者と反対派の衝突で死者が出た事件にも言及し、トランプ大統領が白人至上主義者を明確に非難しなかったことについて、「ナチスの信奉者に対して立ち上がり、明確に意見を言うべきです。“ナチスは邪悪だ”というのがそんなに難しいことでしょうか?」と批判した。 オバマ氏は9月初めから民主党候補の応援に加わり、「今こそ、政治に正気を取り戻そう。下院の主導権を奪還するチャンスだ」と、有権者に訴えかけている。 現職と前任の大統領が真っ向から対立しながら、中間選挙に向けて遊説を展開するのは異例の事態だ。米国ははたして邪悪な指導者から民主主義を守ることができるだろうか』、「民主主義は“自己修復メカニズム”を持たない」とのムーア監督の警告は、米国のみならず、日本にも当てはまるものだ。今後の推移を注視したい。

次に、北海道大学准教授の渡辺 将人氏が10月24日付け現代ビジネスに寄稿した「米中間選挙、「反トランプ」が一枚岩になれない理由 トランプ関税が民主党を封じ込めた?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58102
・『「ハイブリッド」な大統領  米調査機関ピューリサーチが中間選挙年の夏に実施している世論調査によると、民主党支持者で「大統領の不信任で投票する」割合は過半数の61%だった。「反トランプ」熱の象徴と思いきや、同じ共和党政権下のブッシュ息子政権の2006年に「大統領の不信任で投票する」とした65%より少ない。 また、共和党支持者で「大統領の信任投票と考える」とした回答は、トランプ政権下の今年(52%)のほうがブッシュ政権下の2006年(33%)を20ポイントも上回っている。 中間選挙での民主党の反共和党大統領票は、イラク戦争が泥沼化した時期の「反ブッシュ」を凌駕するものではなく、ブッシュ政権末期に比べれば、共和党支持者の大統領信任はまだ堅い。 トランプが保守でもリベラルでもない「ハイブリッド」な大統領であることが関係している』、「ハイブリッド」な大統領、とは言い得て妙だ。
・『トランプ関税が民主党に与えた衝撃  中間選挙は左右両極のイデオロギー的な層だけが熱心に投票し、投票率もおおむね低い。そこで大統領は「トランプの選挙」と印象付けるシグナルを送り続けている。 そのハイブリッド性を駆使した「隠し球」は保護貿易色の強い貿易政策だ。結果、民主党全般と共和党農業州の選挙現場で、違う理由で貿易がある種の扱いが難しいテーマにもなっている。 民主党に衝撃を与えたのはトランプ関税だった。 今年3月、全米の労働組合の顔である米労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)会長が、トランプ政権の鉄鋼・アルミニウム関税について、労働者にとって素晴らしい政策だと褒めちぎった。政権の努力を賞賛し、「偉大なる第一歩」とまで呼んだ。 議会民主党幹部らも同調を示し、シューマー上院総務は政権の対中関税を高く評価している。 リベラル系の下院議員の中には「ライトハイザー通商代表は、オバマ政権のフロマン通商代表より有能」との声まであがり、「結果を出す通商代表」「タフな交渉者」と評判だ。 民主党がリベラルな選挙区で世論調査をしても、「トランプ関税は必要で労働者のためになる」との回答が多い。 結果、選挙現場では貿易論は棚上げの姿勢を余儀なくされている。貿易に触れると、どこかでトランプ政権を多少は褒めざるを得ず、「反トランプ」で結束できない』、従来は民主党が保護主義、共和党が自由貿易主義だったので、「お株」を奪われた民主党は苦しいだろう。
・『民主党が選んだ戦略は?  民主党は手探りで世論調査の聞き方に工夫を凝らしている。 中西部選挙区の調査では「新たな貿易交渉が必要だが、トランプ政権の欧州やカナダと激突する方法はスマートではない」という別項目を設けてみたところ、この項目を選ぶ回答が、単なるトランプ関税賛成を10ポイント以上も上回ったという。 「カナダやメキシコについて尋ねる場合と、中国について尋ねる場合では、回答に20から30ポイントの差がある」と民主党系シンクタンクNDNのサイモン・ローゼンバーグも述べる。単に「自由貿易か保護貿易か」ではなく、「相手国次第」で有権者の反応が決まる傾向が浮き彫りになっている。 そこで民主党の選挙現場は貿易政策を(1)トランプ流保護貿易、(2)グローバリスト的な自由貿易、(3)企業利益ではなく労働者の雇用改善に留意した対欧州・カナダと対中国の交渉を峻別する貿易政策、に分類して、3つ目が民主党の道として差異化を目指している。 だが、貿易問題を苦手としている候補者は上手に説明ができない。説明の仕方を誤ると(3)は(1)の洗練されたバージョンにしか聞こえず、根本的な違いが曖昧だからだ。 いきおい「Me Too」、LGBTの権利、包括的な移民制度改革、気候変動などの環境問題で演説を埋め尽くす候補者が増えている。視察した民主党の対話集会ではどれも判で押したように同じ光景だった。 それが一番確実に手っ取り早く「反トランプ」で聴衆を味方にできる方法だからだ。「関税はいいこと。でも、このトランプ関税は少し間違っている」と言っても歯切れが悪くなる』、相手国別の貿易政策は確かに分かり難いので、その他の問題を論点にする民主党候補者の立場は理解できる。
・『NAFTA再交渉は評価せざるを得ない  どの集会でも支持者から「非大卒の白人労働者の票はどうするのか」との質問がでるが、多くの民主党候補者は「インフラ投資を頑張る」しか言えない状況にある。「解決策はインフラ投資。それもしっかりした雇用を生む投資で、トランプのインフラ投資のような特定企業に利益を誘導するだけのパッケージは阻止する」と苦しい。 しかも、9月30日、トランプ政権がカナダとの交渉で妥結し、NAFTA再交渉に成功した。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に対して、民主党リベラル派と労組は、案の定、中途半端な反応しか示せていない。 民主党リベラル派も労組も「NAFTAは大企業を利する協定で労働者の雇用には害悪」との立場を20年以上貫いてきたからだ。政権の再交渉と妥結自体には好意的にならざるを得ない。「新協定は製薬会社の独占力を増し、薬価引き下げに役立たない」など散発的な批判にとどまっている。 TPP反対運動では、労組、環境団体、消費者団体のリベラル派3者が、奇妙な暫定連合を組んだ(拙著『アメリカ政治の壁』)。TPP賛成だったヒラリーを憎み、サンダースに望みをかけた彼らの多くは、トランプ勝利でTPPが潰れたことをひそかに喜んでいた。 2016年民主党大会でサンダース応援団の掲げたプラカードは「ノーTPP」だった。民主党を崩すには貿易政策のくさびを打ち込んでおくに限る。そう学んでいるトランプは、中間選挙でも貿易球を放り込んでいる』、民主党の弱味につけ込むトランプはさすがだ。
・『新たな羅針盤を持てない民主党  貿易論の棚上げは、民主党が経済の何をゴールにするのかコンセンサスが党内で得られていないことが遠因だ。 長年、労組の闘争を支援してきた60代のベテラン民主党系戦略家は次のように言う。 「炭坑もどんな仕事もgood jobになり得る。good jobの定義は、高い賃金だ。それしかない」 グローバリゼーションへの認識と危機感はあるが、民主党で集まって議論をしても大企業批判と賃金の問題に帰着する。そしてある時点で必ず議論は止まる。 筆者が同席したシカゴ民主党の討議の場では、あえて空気を読まないロースクール教授が「成長や大きいことはいいことだという考えがもう通用しないのではないか」と発言した。 案の定、周囲から集中砲火を浴びた。「大きいことはいいこと」「大きい医療保険制度はいいこと」。しかし、その先を詰めにくい。生き甲斐の問題に帰着するからだ。何をアメリカが目指し、アメリカ人の幸せは何なのかを政治的に問い直すことになる。 かつて炭坑労働者が相当な高収入を得るなど、成長期に労働者が中産階級でいられた過程で、ニューディール以来の米民主党はこの問題を詰めることを本質的には避けてきたともいえる。 ワシントンの民主党系シンクタンクには、産業構造の変化への柔軟な対応を目指しTPPに賛同した流派もいるが(旧NAFTA推進派と重なる)、地方の選挙現場では「賃上げが究極のゴール」という古典的流派が議論と動員力を支配している。 中間選挙で民主党が勝利しても、そして勝利すればなおさらこの問題は残存する。対する共和党はどうか。トランプ関税への反応について、農業州の有権者に焦点を絞って次回考える』、「中間選挙で民主党が勝利すればなおさらこの問題は残存する」、この問題は長年放置されてきただけに、簡単に答えが出るとも思えない。民主党はどうするのだろうか。

第三に、上記の続きを、10月28日付け現代ビジネス「米中間選挙、中国の報復関税にあえぐ農業州はトランプを見放すか? 貿易戦争の主戦場で起きていること」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58111
・『中国の報復関税にあえぐ農業州の動向  上・下2回にわたって中間選挙でトランプが投げ込む貿易の変化球について考えている。2回目は共和党側だ。 一連のトランプ関税に対し、「自由貿易の党」共和党の内部はどうか。 中国が報復として米国産大豆に関税を課し、大豆価格が下落する中、大豆産地のアイオワ州は米中貿易戦争の間接的な主戦場になっている。 現時点では、共和党内には「短期の痛みに耐え、長期の利益を得る」というトランプの貿易政策に表立った反発は少ない。農業州の共和党候補も貿易争点については黙して語らない。 アイオワ州の保守派会合でも、共和党の州知事、連邦議員、地方議員らは登壇しても、誰ひとりとして関税について語らなかった。共和党下院候補の支持者向け会合では、プレス非公開であっても、ラストベルトなど労働者を多く抱える地域以外では、貿易については避けたがる。 共和党の有権者、とりわけ農家に「痛み」が生じるトランプの貿易政策をさすがに褒めるわけにはいかないが、批判もできないからだ』、保護貿易の米国にとっての「痛み」が出てくるには一定のタイムラグがある筈で、まだそれが出切らないうちに、中間選挙を迎えるというのも、トランプの良く練られた戦略なのだろう。
・『経済利益よりも信仰?  現地の共和党幹部らの説明を総合すると、4つの理由がある。 1つ目は、宗教・社会争点だ。アメリカの有権者は、経済利益と社会要因が天秤にかかると後者を選ぶ。中絶の非合法化を悲願とするキリスト教保守は、最高裁の保守化を熱望している。 多くの有権者はクリスチャンであり農家だ。カバノー最高裁判事就任は、福音派の農家に関税による不利益感を棚上げさせる力はある・・・2つ目は、共和党の公職者や候補者が、純粋に「トランプに逆らえない」という事情だ。大統領の政策について少しでも異論を唱えれば、大統領に反撃される。そのことでトランプ支持者からの評価も下がる。 トランプ大統領は、内政、外交について閣僚や補佐官にあれこれ指南される中、経営者としては経験せずにすんでいた不愉快な経験をしている。そのビジネスマンの大統領が、周囲に「これは自分の得意分野だ」と自負し、自尊心を回復できる数少ない分野が貿易だ。 つまり、貿易で大統領に異議申し立てするのは、他の分野での進言とは意味が違う。誰もそのリスクをとらない。トランプを共和党内で批判するのは、失うものが無い引退を決めている政治家だけだ。 3つ目は、タイミングである。今年度の収穫の季節のうちに中間選挙が終わる。中間選挙が来年だったら、農家の感情も違っていたかもしれない。ただ、地域や産品により事情が異なるため、急速に不満が広がる可能性もある』、やはりタイミングが絶妙なようだ。
・『中国の選挙介入騒動?  4つ目は、トランプ政権の厳しい対中姿勢だ。アイオワ州の共和党幹部は、「中国側に問題の原因がある」と農家に吹き込んでいるとして次のように述べる。「為替、中国での米企業の不利益、知的所有権の3つが重要だ。自由貿易は大切だが、それはフェアである限りにおいてだ。中国とは貿易戦争をしているのではない。フェアな貿易をしてもらう説得だ」 一方の中国はトランプの膝元を揺るがそうと、「大豆州」に揺さぶりをかけた。 9月23日付のアイオワ州地元紙「デモイン・レジスター」に、トランプの貿易戦争がアメリカの農家のためにならないという「記事」を差し込んだのだ。 筆者はこの「記事」を現地で発売日に目にした。同日、アイオワ州デモイン泊だったからだ。キリスト教保守の会合を前夜に終え、共和党幹部と州東部に移動し、下院候補陣営を回るところだった。 報道では「広告」とされていて、トランプ大統領もツイッターで「中国がニュースに見えるようにプロパガンダを投下した」として紙面写真を紹介した。この騒ぎに驚いたのは当のアイオワ州民だった。 問題の記事は、中国共産党系英字紙「チャイナ・デイリー」からの転載だった。「チャイナ・デイリーのスポンサーでお届けしているセクション」と頁上に記してあるが、「レジスター」本紙に4頁そのまま組み込まれていて、つい記事だと思ってしまう。「広告」にはとても見えない。 米中貿易戦争が激化すれば、中国の巨大な市場を失いかねず、アメリカの農家が損をする悲惨な結末がやんわりと示唆されている内容だ。ただ、体裁は中立的な記事で、中国政府や中国のオピニオンリーダーの意見の形をとっていない。米中経済の相互依存の実例が淡々と列挙される。 巧妙なのは、ワシントンの著名シンクタンクのエコノミストの理詰めのトランプ批判を紹介する方法をとっていることだ。アメリカ国内の党派対立と政策エリートのトランプ蔑視を上手に利用している格好だ。 アメリカの大都市のホテルには無料で「チャイナ・デイリー」が置かれるようになったが、大半のアメリカ市民はそれがどういう新聞なのかまでは知らない。地方紙への転載は、提携海外紙の国際情報欄と思うようだ。 案の定、「記事」を自然に見過ごし(読み飛ばし)、大統領のツイートで知った人が多かった。「レジスター」紙も騒ぎの拡大に心底戸惑っている。 新聞衰退の中、地方紙はどこも経営難だ。広告は喉から手が出るほど欲しい。この手の「スポンサー記事」を「疑似的な記事」と見るか、「広告」と見るかは、メディア倫理における新たな課題だ。 メディアは政府と完全に一体化しているものではない(FOX Newsですら共和党と一枚岩ではない)という、自由社会におけるジャーナリズムの原理原則が通じないメディアが、海外に自由社会と同じ独立系メディアを装って進出してきたとき、アメリカのメディア、とりわけ地方メディアは恐ろしくナイーブで脆弱である』、中国のやり方は巧妙だが、余りやり過ぎると反発を招くリスクもあるだろう。
・『元アイオワ州知事の大使が北京から特別寄稿  トランプ政権の反応は続いた。在中国アメリカ大使が翌週、「レジスター」紙に、アメリカの自由なメディアを悪用する行為だと批判寄稿したのだ。メディアを舞台にした「空中戦」にあえて同じ土俵での反撃を選んだ。 この大使は他でもない、ブランスタッド前アイオワ州知事だ。習近平国家主席と友人との触れ込みの米大使の批判に中国も驚いたかもしれない。 大使の反応は過剰ではない。地元アイオワでの面子が丸つぶれになっているからだ。 彼は米大使である前に、アイオワの政治家である。「レジスター」紙は大統領選にも強い影響を持つ特別な地元紙で、自分の庭を荒らされたに等しい。 ブランスタッド大使には、州知事時代に筆者も2回ほど面会している。親中派というよりはビジネス派で、日米姉妹州県関係1号(昭和35年)の山梨県との交流に入れ込み、豚・トウモロコシの輸出に熱心だった。知事が農業利益を何よりも重視していることを州民は知っている。 超党派で愛されていた元知事の北京発の寄稿は目立った。「チャイナ・デイリー」記事の有料転載が、対中関税の正当性を説明する機会をトランプ政権側に与えたような結末になっている。 無論、これはアイオワ内での話で、先のトランプのツイートは要らぬ波風も立てている。反トランプのアカウントから、お前がフェイクニュースだという反論を招き、共産党系新聞の転載の件まで「大げさな自作自演」と勘違いされている向きもあるからだ。 外国政府系の宣伝的記事の米紙での曖昧な扱われ方のジャーナリズムの問題と、トランプ賛否を切り分けた議論が起こらず、「反トランプ」の憎悪がそのまま「チャイナ・デイリー」に加勢している格好だ。 無論、そうした「反トランプ」の英語ツイートの主が、すべて実在するアメリカ人民主党支持者なのかどうかは分からない(逆に、「親トランプ」のツイートも同様)。 中国人も中国語(簡体字)でトランプのこの件のツイートへの反応に参戦しているが、ずっと大統領でいてくれると有り難い、など間接的にトランプを小馬鹿にする冷笑的なものが多く、貿易論に切り込んだ反論は抑制気味だ』、ブランスタッド在中国アメリカ大使にしてみれば、黙っていられないと北京から特別寄稿するのもうなずける。
・『乳製品に利得を嗅ぎ取ったトランプ政権?  「ブランスタッドが北京からわざわざ地元紙に寄稿して言うのだから、対中関税の必要性もよほどのことかも。彼がアイオワを見捨てるはずないから」という共和党系の声と「何のために在中国大使になったのか。役立たず」との民主党系の声が伯仲し、同州の知事選に影響を与えかねない空気だ。 アイオワでは、ブランスタッド州知事時代の女性副知事レイノルズが、後釜として州知事を務めているが、カリスマに欠け、今年の改選では民主党の猛追を受けている(民主党ハベル候補が「デモイン・レジスター」の9/20世論調査では2ポイント優勢)。 トランプ政権は周知のように農家に最大120億ドルの支援策を打ち出しているが、「小さな政府」を信じる保守系の農家にとって、それは「施し」に映るらしく、トランプ支持が維持されている大きな理由ではない。 もちろん、日米物品貿易協定(TAG)の交渉開始はトランプ政権にある程度は好材料だ。同協定はTPPの日米部分だけを外に出すような形だが、TPP水準となると、EUとの協定水準が日米にも適用される解釈の余地があるからだ。米側がとりわけ利得を嗅ぎ取っているのは乳製品だ。酪農州のウィスコンシン関係者は既に鼻息が荒い。 しかし、こうした細かい貿易交渉の詳細が農業州の有権者に隅々まで行き渡っているわけではない。あくまで「文化戦争」が鍵だ。人工妊娠中絶をめぐり最高裁の保守化の風が吹いている要因は小さくない。 カバノー最高裁判事就任でも飽き足らず、選挙直前に満を持してトランスジェンダー排除の検討まで持ち出すなど、トランプ政権はキリスト教保守への念押しに全力を注ぐ。 報復関税と選挙戦が同時並行で進む今年の中間選挙における「信仰カード」は、2004年選挙でブッシュ陣営が掲げた「反同性婚」キャンペーンとは根本的に次元の異なる切迫した事情で切られている』、今回の「信仰カード」がそれほど重要な意味を持っていたというのを再認識した。

第四に、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が10月25日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「経済冷戦から新冷戦に踏み出すトランプ大統領 INF条約破棄が招く核危機」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/102400084/?P=1
・『トランプ米大統領が冷戦終結と核軍縮を導いた歴史的な中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄する方針を打ち出した。ロシアが条約を履行せず、条約の枠外にある中国が核増強に動いているとみたためだが、米中「経済冷戦」は米ロ中の「新冷戦」に足を踏み入れる危険がある。 これは、オバマ米前大統領の「核兵器なき世界」を葬り去ろうとするものである。米朝首脳会談は朝鮮半島の非核化をてこに、核軍縮にはずみをつけてこそ歴史的意義がある。トランプ大統領によるINF条約破棄は、核軍拡競争を再燃させ、世界を再び「核の危機」にさらしかねない。新冷戦を防ぐため、唯一の被爆国である日本の責任は重大だ』、トランプのオバマ路線否定もここまでくると異常としか、言いようがない。
・『冷戦終結と核軍縮を導いた歴史的条約  1987年、当時のレーガン米大統領と旧ソ連のゴルバチョフ書記長が調印したINF廃棄条約は、1989年のベルリンの壁崩壊から両独統一、ソ連解体につながる冷戦終結への突破口となった。それは、START1(第1次戦略核兵器削減条約)、START2(第2次戦略核兵器削減条約)にも波及し、世界の核軍縮を軌道に乗せた。 トランプ大統領はこの歴史的な条約について、「ロシアや中国が戦力を増強しているのに、米国だけ条約を順守することは受け入れられない」とし、「合意は終わらせる」と表明した。さらに「我々は戦力を開発する必要がある」と核増強をめざす方針を示した。 たしかにロシアが条約を順守していないという疑念はオバマ政権時代からあった。2014年の米議会への報告で、条約違反が指摘されている。米国が問題にするのは、ロシアが実戦配備したとされる新型の巡航ミサイル「SSC8」だ。射程500~5500キロメートルの地上発射型の巡航ミサイルの開発や配備を禁じるこの条約に違反しているとみている。ハチソン北大西洋条約機構(NATO)大使は「このミサイルを排除することだ」と述べている』、なるほど。
・『ゴルバチョフ氏の怒り  問題は、ロシア側に疑念があるからといって、ロシアに条約順守を徹底させる前に、この歴史的条約を一挙に破棄してしまうのかという点である。レーガン氏とともに条約に調印したゴルバチョフ氏は怒る。トランプ大統領の方針について「危険な後退であり、歴史的な前進を脅かすものだ」と警告している。歴史的条約の当事者だけに重みがある。 訪ロしたボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談したプーチン・ロシア大統領は「ロシアは何もしていないのに、米国の取る手段には驚かされる」と皮肉交じりに批判した。中国外務省の報道官は、トランプ大統領がINF廃棄条約破棄の理由に中国の核増強をあげたことに「完全な誤りだ」と反発した。フランスのマクロン大統領はトランプ大統領に電話を入れ「条約は欧州の安全保障にとって重要だ」と懸念を表明した。米国にも与党・共和党内に「歴代大統領の功績をくつがえすのは間違いだ」という批判がある』、仮にロシア側に疑念があっても、条約順守を徹底させる前に、条約を一挙に破棄するというのは、余りに乱暴極まりない。新兵器増強に邁進したい産軍複合体の利害を反映したものなのだろう。
・『欧州「核危機」の悪夢  冷戦時代、米ソ合わせて6万発を超す核弾頭は、世界を核の脅威にさらしていた。とりわけ冷戦末期、欧州は「核危機」の悪夢にさいなまれていた。ソ連が中距離核ミサイルSS20を配備したのに対抗して、NATO加盟の西欧諸国には米核ミサイルの配備計画が進行していた。この核危機のなかで、西欧には反核運動が広がった。この反核運動はソ連の誘導ではないかという説もあったが、それは欧州の市民運動そのものだった。そこには、米ソ対立の余波をまともに受ける西欧の社会の苦悩があった。 冷戦末期、日本経済新聞のブリュッセル特派員として、西欧社会をおおう米ソ緊張は大きな取材対象だった。とりわけ反核運動のなかの米ソ核軍縮交渉の取材には緊張させられた。1987年11月23日、スイス・ジュネーブの米ソの欧州INF削減交渉を取材したときのことだ。 ジュネーブの朝は冷え込みが厳しく、分厚い靴底からも冷たさが伝わってきた。レマン湖に近い雑居ビルで開いた米ソINF交渉は、わずか30分で終わる。雑居ビルから出てきたソ連のクビツィンスキー代表は記者団に取り囲まれる。「交渉継続か」との問いに、代表は「ノー」と大声で答えた。西独議会が米国の核ミサイル・パーシングⅡの配備を議決したのに抗議した、交渉からの退出だった。 「欧州INF削減交渉が中断」という記事を送稿した。日本経済新聞1面に掲載された記事は米ソ緊張がピークに達したことを示していた。しかし、この「交渉中断」に米側のポール・ニッツェ代表は冷静だった。「これは完全な交渉停止ではない。ソ連が応じるなら、いつでもジュネーブに戻る」と語った。 「ソ連封じ込め」論のジョージ・ケナン氏の後継者で伝説の外交官として知られるニッツェ氏はあくまで冷静だった。クビツィンスキー代表との「森の散歩」でINF削減交渉の打開の道を探ってきた。ニッツェ氏には何らかの展望があったのだろう。 もちろんINF交渉の中断で米ソ緊張は一気に高まった。米核ミサイルの配備を求められたオランダのルベルス首相は悩んでいた。NATOの一員としての役割と、反核運動にみられる市民の意識のはざまで対応に苦慮していた。ルベルス首相と会見した際のことだ。ハーグの狭い首相執務室で若き首相が頭をかきむしっていたのを見た。ルベルス首相は結局、核ミサイル配備の延期を決断することになる。 このルベルス首相の苦渋の決断は、米ソの歩み寄りに道を開くことになる。1985年3月、ソ連にゴルバチョフ政権が誕生したのが大きな転機になる。米ソ首脳会談はレイキャビクを皮切りにワシントン、モスクワと毎年続けられた。そして、ついに米ソはINF廃棄条約の調印にこぎつけた。ニッツェ氏の冷静な分析は現実化した。しかし、それには4年を要したのである』、INF交渉の難航ぶりを思い出した。それを西欧諸国に相談もせずに一気に破棄するとは、傍若無人そのものだ。
・『深まるNATOの亀裂  INF廃棄条約とそれによる冷戦の終結で「欧州の悪夢」は消えたが、トランプ大統領の登場でNATOの亀裂は深刻になっている。大統領のNATO不信は米欧同盟を根幹から揺さぶった。それに、今回のINF廃棄条約の破棄方針である。 ドイツのマース外相は「条約は過去30年間、欧州安全保障の柱だった」とし、「過去にはロシアの条約違反の疑いを指摘してきたが、今は米国に結果を考えるよう促さなければならない」と再考を求めた。これに対して、英国のウィリアムソン国防相はトランプ大統領の方針を「毅然として支持する」と指摘している。 ドイツは天然ガスパイプライン事業などでロシアとの協力関係が深い一方、英国は元ロシア情報機関員の暗殺未遂などにより、ロシアとのあつれきが深まっている。トランプ方針に対する対応の差で、NATOの運営はさらに難しくなる恐れもある』、英国はいくら元ロシア情報機関員の暗殺未遂があったとはいえ、米国を支持するとは、目先の問題と長期的問題を混同しているとしか思えない。EU離脱問題でそれどころではないのだろうか。
・『新次元の米中対立  INF廃棄条約破棄をめぐるトランプ大統領の方針は、対ロシアだけでなく、貿易戦争さなかの中国にも照準を合わせている。オバマ政権下で進んだ核軍縮でも、中国はひとり蚊帳の外にあった。核増強の大半は中距離核戦力にあてられた。たしかに米ロ間のINF廃棄条約の外にあるのは、中国にとって好都合だったのかもしれない。 トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争は、先端分野での米中覇権争いの様相をみせている。いわば「経済冷戦」である。 それが核軍拡競争に点火すれば、「経済冷戦」にとどまらず「新冷戦」になりかねない。安全保障をめぐって米国と中ロがにらみ合う世界は危険そのものである』、「経済冷戦」であれば、解決は比較的容易だが、「新冷戦」となるとそうはいかない。世界にとってトンデモなく危険なことをしてくれたものだ。
・『米朝首脳会談は核軍縮の好機だった  米朝首脳会談が真に歴史的会談になるとすれば、朝鮮半島の非核化を確実に実行するだけでなく、それを核軍縮につなげることだった。米ロ中はもちろん、英仏、インド、パキスタン、それにイスラエルも含めてすべての核保有国に核軍縮を求め、「核兵器なき世界」への道筋をつけることだった。 しかし、INF廃棄条約の破棄をめぐるトランプ大統領の方針で、米朝首脳会談の歴史的意義は大きく減殺されることになった。それどころか「新冷戦」のなかでの次回の米朝首脳会談は、肝心の朝鮮半島の非核化が揺らぐ危険もある。いまや北朝鮮の後ろ盾であることが鮮明になった中ロが、態度を硬化させる恐れもあるからだ』、「朝鮮半島の非核化が揺らぐ危険もある」というのは、確かにその通りだろう。
・『唯一の被爆国、日本の責任  核軍拡競争が再燃し「新冷戦」の時代が到来すれば、世界は核による大きなリスクにさらされる。世界経済にも影響は避けられなくなる。こうしたなかで、唯一の被爆国である日本の役割は決定的に重要である。 米国の「核の傘」のもとにあるという配慮から、日本が核兵器禁止条約に加盟しないのは大きな問題だ。日米同盟は重要だが、唯一の被爆国としての「地球責任」はずっと重い。核兵器禁止条約にNATO諸国が参加しないことが日本の不参加の理由にはならない。日本はまずこの核兵器禁止条約に加盟することだ。それをてこに、外交の軸を立て直すべきである。 そのうえで、米ロ中に核軍縮を徹底するよう求める必要がある。米朝首脳会談を朝鮮半島の非核化にとどめず、「核兵器なき世界」につなげるうえで、日本の外交力が試される。この欄で再三、問題提起しているが、2019年に大阪で開く20カ国・地域(G20)の首脳会議の機会に、首脳たちの広島訪問を計画することだ。トランプ大統領もプーチン大統領も習近平国家主席も、世界の指導者として核兵器の悲惨さを知るべきだ。唯一の被爆国の指導者として、安倍晋三首相の地球的責任は、これまで以上に重い』、説得力に富んだ主張で、大賛成だ。
タグ:トランプ大統領 (その35)(「トランプは選挙の勝ち方をよく知っている」マイケル・ムーア監督が警告、米中間選挙:「反トランプ」が一枚岩になれない理由 トランプ関税が民主党を封じ込めた?、中国の報復関税にあえぐ農業州はトランプを見放すか?、経済冷戦から新冷戦に踏み出すトランプ大統領 INF条約破棄が招く核危機) 矢部 武 ダイヤモンド・オンライン 「「トランプは選挙の勝ち方をよく知っている」マイケル・ムーア監督が警告」 トランプ大統領誕生を予言していた監督 ドナルド・トランプが当選する5つの理由 他の候補より選挙の勝ち方をよく心得ていることをムーア氏は見抜いていた 民主党やメディアの関係者などに「トランプを真剣に受け止めないと大変なことになる」と、警告を出していたのだ トランプ大統領の2年間 想像していたよりもはるかにひどい状況だ。民主主義や法の支配への敬意がまったくなく、外国の独裁的な指導者を称賛している。もし国家の非常事態が起きたら、国民の人権や報道の自由はどうなるかわからない トランプ大統領が2020年に再選される可能性にまで言及 選挙の勝ち方を心得ている「悪の天才」 ラストベルト クリントン陣営は、ラストベルトは伝統的に民主党が強かったこともあって多少油断したのか、選挙活動にあまり力を入れていなかったようだ コミー前FBI長官が投票日の11日前にクリントン候補の私用メール問題の捜査を再開 人の心を惑わせ、混乱させる達人 ボブ・ウッドワード 『Fear: Trump in the White House』 トランプ氏は長く大統領職にとどまることに執念を燃やしているように見えることだ 今こそ身を挺して民主主義を守る時だ! 民主主義は“自己修復メカニズム”を持たない。“邪悪な指導者”によってシステムが崖っぷちに追いやられた時、それを元に戻すものがない。我々の民主主義は単に紙に書かれた約束事にすぎない」と警告 渡辺 将人 現代ビジネス 「米中間選挙、「反トランプ」が一枚岩になれない理由 トランプ関税が民主党を封じ込めた?」 ハイブリッド」な大統領 トランプが保守でもリベラルでもない「ハイブリッド」な大統領 トランプ関税が民主党に与えた衝撃 民主党が選んだ戦略は? NAFTA再交渉は評価せざるを得ない 新たな羅針盤を持てない民主党 「米中間選挙、中国の報復関税にあえぐ農業州はトランプを見放すか? 貿易戦争の主戦場で起きていること」 中国の報復関税にあえぐ農業州の動向 経済利益よりも信仰? 今年度の収穫の季節のうちに中間選挙が終わる。中間選挙が来年だったら、農家の感情も違っていたかもしれない 中国の選挙介入騒動? デモイン・レジスター トランプの貿易戦争がアメリカの農家のためにならないという「記事」を差し込んだのだ 「チャイナ・デイリー」からの転載 元アイオワ州知事の大使が北京から特別寄稿 乳製品に利得を嗅ぎ取ったトランプ政権? トランプ政権はキリスト教保守への念押しに全力を注ぐ 「信仰カード」 岡部 直明 日経ビジネスオンライン 「経済冷戦から新冷戦に踏み出すトランプ大統領 INF条約破棄が招く核危機」 米中「経済冷戦」は米ロ中の「新冷戦」に足を踏み入れる危険 冷戦終結と核軍縮を導いた歴史的条約 1987年、当時のレーガン米大統領と旧ソ連のゴルバチョフ書記長が調印したINF廃棄条約 世界の核軍縮を軌道に乗せた 問題は、ロシア側に疑念があるからといって、ロシアに条約順守を徹底させる前に、この歴史的条約を一挙に破棄してしまうのかという点 ゴルバチョフ 危険な後退であり、歴史的な前進を脅かすものだ マクロン大統領 「条約は欧州の安全保障にとって重要だ」と懸念を表明 欧州「核危機」の悪夢 深まるNATOの亀裂 ドイツのマース外相は「条約は過去30年間、欧州安全保障の柱だった」とし、「過去にはロシアの条約違反の疑いを指摘してきたが、今は米国に結果を考えるよう促さなければならない」と再考を求めた 英国のウィリアムソン国防相はトランプ大統領の方針を「毅然として支持する」と指摘 新次元の米中対立 米朝首脳会談は核軍縮の好機だった 米朝首脳会談の歴史的意義は大きく減殺 中ロが、態度を硬化させる恐れもあるからだ 唯一の被爆国、日本の責任 日本はまずこの核兵器禁止条約に加盟することだ それをてこに、外交の軸を立て直すべきである 米ロ中に核軍縮を徹底するよう求める必要 、「核兵器なき世界」につなげるうえで、日本の外交力が試される 大阪で開く20カ国・地域(G20)の首脳会議の機会に、首脳たちの広島訪問を計画
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南シナ海の緊張(その3)(南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい 人工島で爆撃機離発着訓練 軍事的プレゼンス誇示、潜水艦の南シナ海派遣 安倍首相は知っていたか 防衛戦略は難しい局面に、海上自衛隊が南シナ海で異例の「対潜水艦戦訓練」を決行した事情 実は初めての「単独訓練」だった) [世界情勢]

南シナ海の緊張については、2016年10月8日に取上げたままだった。2年以上経った今日は、(その3)(南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい 人工島で爆撃機離発着訓練 軍事的プレゼンス誇示、潜水艦の南シナ海派遣 安倍首相は知っていたか 防衛戦略は難しい局面に、海上自衛隊が南シナ海で異例の「対潜水艦戦訓練」を決行した事情 実は初めての「単独訓練」だった)と、キナ臭いテーマである。

先ずは、元産経新聞北京特派員でジャーナリストの福島 香織氏が5月23日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい 人工島で爆撃機離発着訓練、軍事的プレゼンス誇示」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/052200153/?P=1
・『米中通商協議で貿易戦争を暫定的に回避する合意が出た。この駆け引きの内幕に関する情報がそこはかとなく出てくるには、おそらくあと数日必要だろう。だが、その裏側で行われている様々な米中の駆け引きが影響を与えていることは間違いないと思われる。例えば6月に予定されている米朝首脳会談であり、もう一つ考えうるのは南シナ海情勢である。最近、南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい。この機会に整理しておこう。 南シナ海の島嶼の中国による実効支配が進んでいることはすでに何度もこのコラム欄で紹介してきた。これはオバマ政権下での痛恨の外交ミスともいえる。このしりぬぐいを任されている米トランプ政権だが、目下の関心は、中東と朝鮮半島に集中しているように見えて、実は南シナ海情勢については4月以降、急激に温度が上昇している。 最近注目されたニュースは南シナ海の人工島に、中国解放軍初の爆撃機離発着訓練が行われたことだろう。中国国防部が5月18日に発表した。訓練を行ったのは中距離ミサイルや核搭載が可能な轟6K(H-6K)爆撃機。具体的な場所は不明だが、米軍事専門誌によればパラセル(西沙)諸島のウッディー島(永興島)だと見られている。この島はベトナムと台湾が領有権を主張している。 中国国防部の発表によれば、「この訓練によって全辺境へいかなるタイミングの、全方位的な攻撃能力を向上できた」としており、「西太平洋進出をひかえ、南シナ海をめぐる戦いに向け、研ぎ澄ませた剣を掲げ、新たな航路を常に切り開く」と南シナ海で戦争を仮定した訓練であることも隠していない。さらに、この訓練について「宇宙と一体化した攻防を兼ね備えた戦略目標に着眼し、空軍が全辺境作戦の現代化戦略性に向かって前進するもの」と位置づけている。 爆撃機の所属先は発表では南方の某基地としか記されていないが、郝建科という師団長の名前とH-6K配備の空軍師団という条件を考えると、北部戦区の西安基地を拠点とする中国空軍第36爆撃機師団(空36師団)でほぼ間違いないと見られている。空36師は原爆・水爆投下試験任務を2017年までに完遂しており、習近平政権においては重点建設部隊として注目されている。 また自主開発爆撃機H-6Kは2011年の試験飛行を経て実戦配備が始まったばかりだが、すでに100機以上が製造・配備されていると報道されており、習近平政権下の軍事戦略において非常に重視されていることがうかがえる。台湾メディアによれば、東シナ海や宮古海峡あたりにしばしば飛んでくる爆撃機も空36師のH-6Kらしい。今回は単発の訓練ではなく、事実上のH-6K配備と考えるのが普通だろう。爆撃訓練も行われた、と一部で報じられている』、恐ろしい爆撃が配備されたものだ。
・『この訓練発表が発信するメッセージは結構重要だ。一つは「南シナ海の実効支配は中国が握っており、すでに軍事拠点化も既成事実化している」という現実を見せつけている。環礁を埋め立てた人工島に突貫工事で作った滑走路は軍事利用に耐えられないのではないか、という多くの人たちの希望的観測を裏切って「人工島に作られた滑走路は爆撃機の離発着に利用できる強度がある」ということも示された。さらに「南シナ海を拠点にすればH-6Kは全アジアを作戦空域に入れることができる」「南シナ海の軍事拠点化の目的が西太平洋に打ってでることであり、そのための南シナ海をめぐる作戦を想定している」といった含みもある。 H-6Kの能力について、私自身は専門家ではないので正確に評価できないのだが、この爆撃機が実戦配備された当初、ロシアの軍事専門家ワシリー・カシンは「飛行距離は8000キロ、さらに射程距離2000-2500キロの巡航ミサイルCJ-10Kの搭載も可能であり、いままでグアムを含む第二列島戦までとされていた攻撃範囲がハワイより先に広がる」「10年たってH-6Kの配備が増えた場合、アジアにおけるパワーバランスが中国有利に傾く」と分析していた』、「人工島に作られた滑走路は爆撃機の離発着に利用できる強度がある」というのは、人工島建設を黙認したオバマ前大統領の罪も深い。
・『米国に対して挑発を繰り返す理由  そう考えると、この訓練は米国に対してのかなりきわどい挑発、あるいは牽制だともいえる。では、なぜ今、南シナ海で中国はこうした派手なパフォーマンスを伴って米国を刺激しているのか。単に米海軍の「航行の自由作戦」に対する牽制、というだけなのか。 この爆撃機訓練だけでない。その翌々日には、中国海警船と海軍艦艇がパラセル諸島海域で合同パトロールを行ったことも発表された。公式発表ではないが、5月上旬、南シナ海の七つの人工島のうちにファイアリークロス礁、スービ礁、ミスチーフ礁に地対艦ミサイル、地対空ミサイルを配備したと米国の情報機関をソースとしてCNNが報じている。このときは中国外務省としては事実確認を避けていた。4月12日には南シナ海で空母「遼寧」を含む48艦艇と戦闘機76機、将兵1万人を動員した建国以来最大規模の海上閲兵式が行われた。海軍迷彩軍服に身を包んだ習近平がミサイル駆逐艦「長沙」に乗船し閲兵。海軍の増強を訴えた』、本格的な示威行動が始まったようだ。
・『トランプ政権誕生後しばらくは、中国側も南シナ海の人工島における軍事拠点化については、あまり刺激しないように気を付けていた。半島問題で中国が米国に協力的である代わりに南シナ海問題を一旦棚上げする水面下の約束があったのではないか、という説も流れた。だが中国は今年4月半ばごろから南シナ海における軍事的プレゼンスを見せつけるような動きに出ている。 背景として考えられるのは、一つは経済力と軍事的脅威を武器に、着々と囲い込んできたASEAN諸国の対中感情に4月になって変化の兆しが見えてきたことがある。たとえば、マレーシアにはアンチ中国のマハティール政権が誕生した。マレーシアは2004年以降のナジブ長期政権下でアジア最大の中国の投資先となっている。特に一帯一路戦略関連だけでもマレーシア・シンガポール高速鉄道計画や東海岸鉄道計画など40以上のプロジェクトを受け入れており、その額は1350億ドル、マレーシアのGDPが3100億ドルであると考えれば経済が乗っ取られかけているといっても過言ではない。 中国は東南アジアの国々にその国の経済規模に見合わない大規模融資を行ってインフラ建設を行い、その融資が返済不能に陥ると、現物を差し押さえるという「悪徳金融」さながらの手法で、要衝地に軍事利用可能な港や土地を獲得してきた。パキスタンのグワダル港やスリランカのハンバントタ港の借地権・運営権の取得手法がいい例だろう。マレーシアもナジブ政権下では、そうなりかねない状況だった。 そういう状況で、92歳のマハティールが選挙によって首相に返り咲いたのは、中国への経済依存脱却を公約として掲げたからだ。ナジブ政権はチャイナ・マネーまみれで腐敗しており、有権者から愛想をつかされていたのは事実だが、その巨額のチャイナ・マネーをバックにした与党を破ることは、アジア的金満選挙においてはかなり難しい。マハティール率いる野党が勝ったということは、有権者の反中感情が相当強い、ということでもある。また、中国と直接領有権問題を抱えているフィリピンもながらく大統領のドゥテルテが開き直るように中国マネーに期待し中国へのすり寄りぶりを隠さなかったが今年4月末、中国系ロビー団体が建てたマニラ市内の慰安婦像を撤去させた。これはドゥテルテがささやかながら中国への抵抗の意を示した、と言う風にもみえる』、中国が軍事力を誇示すると、アジアでの反中国の動きを高めるだけなのではなかろうか。
・『ASEAN全体に高まる中国への抵抗姿勢  4月のシンガポールでのASEAN首脳会議では昨年11月の議長声明では盛り込めなかった南シナ海問題への「懸念」の言葉が復活した。中国を名指しすることは避けたものの、ASEANなりに頑張って中国を牽制しようとている。南シナ海問題は当事国およびASEANを丸め込むことでコントロールできるとタカをくくっていた中国だが、押さえ込んでいたはずのASEAN全体に中国への抵抗姿勢が復活しそうな気配なのだ。 そういえばベトナムも、ロシアの石油会社ロスネフチのベトナム部門が南シナ海で石油掘削を始めることを認めている。3月にこの鉱区に隣接する海域でスペインのエネルギー会社レプソルが掘削を始めようとしたときは、中国の抗議でベトナム政府は掘削の許可を取り消した。スペイン企業に石油掘削を認めず、ロシア企業に認めるのは、もちろんロシアという国自身の国力、強さがあるだろうが、やはりベトナムが3月の時点より今の方が中国に対して強気になっているのではないか』、中国の動きは政治的には不可解だが、別の背景があるのだろう。
・『背景に米中駆け引きでの劣勢?  もう一つの背景は、やはり米国との通商協議、半島問題、台湾問題での駆け引きで、中国がかなり劣勢に立たされているのではないか、ということだ。二回目の米中通商協議では貿易戦争の暫定的な回避を含む合意が発表されたものの、その合意の中には米国が中国に突き付けた2000億ドルの貿易黒字削減ノルマや中国通信端末大手のZTEへの7年間の米国製チップ禁輸措置など具体的な部分への言及は避けられている。 ムニューチン財務長官は「一旦保留」といっており、問題解決とはいっていない。単に米国経済への悪影響を避けるため、というものではなく、おそらくは来る6月の米朝首脳会談における中国の役割が米国にとって協力的であることを期待しての保留ではないか。そうなってくると、中国は唯一の同盟国・北朝鮮を説得するか、裏切るか、という難しい状況に直面することになる』、米国の対中姿勢はこの記事後、ますます厳しいものになっている。
・『また、米国が台湾旅行法を可決し、米国在台協会(米大使館に相当)新庁舎の落成式にトランプ政権から誰が出席するか、という問題もある。台湾旅行法の可決自体が、中国にとっては当初は宣戦布告に相当する米国からの挑発であるうえ、新庁舎の落成式にドラゴンスレイヤーこと大統領補佐官ボルトンを派遣するとかしないとかという情報も流れた。4月の海上大閲兵式は台湾旅行法可決に対する牽制が目的だったとみられる。 ちなみに、落成式を6月12日の米朝首脳会談と同日にしたのは、ボルトンの派遣はない、というメッセージを込めた中国側への配慮ではなかったか。米朝首脳会談と同日であれば、落成式へのメディアの注目度、ニュースバリューは薄れる。もっとも中国としては年明けから一気に進んだ米台関係の深化に気が気ではないはずである。 こういう国際情勢と突き合わせて考えると、中国の南シナ海の軍事プレゼンスアピールは、ASEANに対する牽制、台湾に対する牽制、航行の自由作戦に対する牽制と同時に、多極的な米中駆け引きで劣勢に立たされている状況を、国内の人民や国際社会に悟らせないための関心の分散を狙ったものではないか、という気もする。もし、米国とのこれら駆け引きでの失点を負わされた習近平政権の求心力が揺らいだとき、南シナ海でのプチ紛争によって国内世論や軍内、党内の不満不平批判を外に向けることもできそうだ。 南シナ海がすでに中国の実効支配地域であり軍事基地群が形成されているという現状は、はっきり言って米国が軍事力を行使する以外は変えようがない段階にきている。だが、米国マッドマンのトランプも中国と直接軍事対決を選択するはずがない、と習近平は思っているだろう。だからこそ、南シナ海の戦争をちらつかせることができるのだ。だが、戦争とは、こうした危険な挑発や牽制を繰り返しているうちに、偶発的に起こることもある。半島問題、そして貿易戦争が一段落つけば、次は本当に南シナ海のホットウォーが起こりうるかもしれない』、「南シナ海でのプチ紛争によって国内世論や軍内、党内の不満不平批判を外に向けることもできそうだ」とは、納得できる説明だ。中国には冷静な対応を期待したいものだ。

次に、政治評論家の田原 総一朗氏が9月21日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「潜水艦の南シナ海派遣、安倍首相は知っていたか 防衛戦略は難しい局面に」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/092000087/?P=1
・『9月13日、防衛省が海上自衛隊の潜水艦を南シナ海へ向けて極秘で派遣。東南アジア周辺を長期で航海中の護衛艦部隊と合流させ、訓練を実施したという。海上自衛隊の訓練は、通常は日本の周辺海域で行われる。南シナ海での訓練は初である。 一体、何のためにこんなことをしたのか。 今、中国が南シナ海で軍事拠点化を進めていることに対し、日本は危機感を抱いているといわれている。確かに例えば、中国の南シナ海進出によって、日本の船舶の往来が阻害されているなら確かに問題である。しかし、そんなことは起きていない。日本の船舶は、南シナ海を自由に移動している。 僕は先日、防衛省の元防衛大臣ら2人に「こんな訓練をやる必要はあるのか」と問い質した。すると、2人とも「その必要はない」と答えた。日本は、対中国戦略をどこまで進めるのか。 さらにいくつか気になる報道があった。9月18日、エジプト東部のシナイ半島で、イスラエル軍とエジプト軍の活動を監視している多国籍監視軍(MFO)に、陸上自衛隊2人の派遣が検討されていると報じられた。 また、日本政府が導入を決めた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」が、北朝鮮が2017年8月に予告した米領グアム島周辺への弾道ミサイル発射の迎撃に使われる可能性があるという話もある。 僕は元防衛相らに、「自衛隊は、どこまで防衛戦略を推し進めるのか。特に対中戦略は、どうなっているのか」と聞いた。すると彼らは、「日本政府は、対中戦略をほとんど持っていない」と答えたのである』、軍事面では対中戦略を構築できないほど、彼我の格差は大きくなっていることから、元防衛相らの本音の回答は理解できなくもない。
・『最大の問題点は、ここからだ。 冒頭に挙げた海上自衛隊が潜水艦を南シナ海へ極秘派遣した訓練について、報道には「防衛省の指示」とある。しかし、元防衛相らの話によると「防衛省はこんなことを許可していない。当然のことながら、安倍首相も知らないだろう」と言うのである。 つまり、この訓練は、海上自衛隊が独自の判断で実施したということである。さらに言えば、日本では海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊、3者の連携も弱いという。これでは戦前の状況に重なるのではないか。 それほど重要なことを、なぜ歴代の防衛大臣は総理大臣に問題提起しないのか。元防衛相に尋ねると、「あまりにも大変な問題で、触れるのがこわいから」と答えた』、安倍首相が本当に知らなかったとすれば、大問題だが、第三の記事では報告があったようだ。
・『難しい問題、困った問題は、なかったことにする  日本人は、大変なことは「なかったことにする」傾向がある。その典型例が、原発問題だ。かつては原発は「絶対に事故は起こらない」といわれていた。事故を想定しなかったから、東京電力はしっかりした避難訓練すら実施しなかった。 なぜ、やらなかったかといえば、そうした避難訓練をするということは、事故の可能性があると同義になってしまうからだ。そんなことがあれば、地元の原発反対の声が高まりかねない。こうして東電は、事故が起きる可能性を否定したのである。 しかし、実際はどうだろうか。2011年3月、東日本大震災の影響で福島第一原発の事故が発生した。いまだに、事故の収束は見込めない状況だ。 このように、日本は同じようなパターンを繰り返している。困ること、大変なことは、「ない」ことにするのである。 太平洋戦争時にも、同様のことは言える。米国と戦争をして、勝てると思った日本人は誰もいなかった。しかし、なぜ日本は米国との開戦に踏み切ったのか。 軍隊というものは、勝てないと分かっていても、戦えるなら戦うものなのだ。 これに対して、竹下登氏が首相になった時、僕は「日本には自衛隊というものがあるけれど、戦えない軍隊じゃないか。それでいいのか」と尋ねたことがある。すると、竹下氏は、「だからいいんだ。だから日本は平和なんだ」と答えた』、「難しい問題、困った問題は、なかったことにする」として、正面から向き合うことを回避する日本人のクセは、本当に困ったことだ。それを許している野党やマスコミにも責任がある。
・『自立論はあまりリアリティがない  今、日本の防衛戦略は、非常に難しい局面に差しかかっている。 日米安保条約が結ばれたのは、冷戦時代のことだ。当時、日米はソ連と敵対していたが、日本だけでは軍事的にソ連に対抗することはできない。そこで、日本が他国から攻められたら、米国は日本を守るという約束をした。ただし、米国が他国から攻められたら、日本は何もしない。 なぜ、このような内容が成立したかといえば、米国は日本ではなく、「極東」を守るという思惑があったからだ。日本は、完全なる対米追従の構図となる。 そして冷戦が終わると、風向きが変わる。「日本は対米従属から自立すべきではないか」という声が上がり始めたのだ。一方で、「冷戦が終わったから、米国は日本を守る必要がなくなったのではないか。このままでは日本は米国に見捨てられる可能性がある。対米関係を強化しなければならない」という主張も出始めた。 自立論と日米関係強化論の対立が起こり始めたのである。ただし、自立論はあまりリアリティがない。 では、日米関係を強化するのであれば、どこまでやるべきか。 オバマ大統領の時代は、安保関連法の成立により、米国からの要求は収まった。ところが、トランプ大統領は「米国第一主義」を掲げ、日本に防衛費の引き上げや米国からの高額な武器の輸入などを要求されている。そのトランプ大統領からの要求に、日本はどこまで応えるのか』、「自立論はあまりリアリティがない」と一刀のもとに切り捨てているが、そのために必要な膨大な防衛費などを指しているのだろうか。
・『大変な問題で、このまま放置できる話ではない  一方で自衛隊におけるシビリアンコントロールには大きな問題がある。潜水艦の南シナ海への派遣だけでなく、2003年12月から09年2月までのイラク派遣、2012年1月から17年5月までの南スーダンの派遣も同様だ。 これは大変な問題である。このまま放置できる話ではない。自民党幹部らも問題視しているが、解決策を見出せないようだ。 大きな問題ほど、皆、ふたをする。日本の防衛戦略をどのようにしていくのか。自衛隊におけるシビリアンコントロールが全く利いていない状況をどうしていくのか。もっと議論すべきではないかと思う』、「シビリアンコントロールが全く利いていない」とすれば、深刻な問題だが、イラクや南スーダン派遣も例示しているが、具体的説明がないので、理解しかねる。せっかく「難しい問題、困った問題は、なかったことにする」と興味深い問題提起しておきながら、後半は多少ズッコケた。

第三に、元東京新聞論説委員の半田 滋氏が9月22日付け現代ビジネスに寄稿した「海上自衛隊が南シナ海で異例の「対潜水艦戦訓練」を決行した事情 実は初めての「単独訓練」だった」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57618
・『極めて異例の「自衛隊単独訓練」  海上自衛隊は13日、護衛艦3隻、潜水艦1隻が参加する対潜水艦戦訓練を行った。これだけなら珍しい話ではないが、訓練を行った場所が南シナ海だったのである。 海上自衛隊は「専守防衛」の原則から、海外で行う他国軍との共同訓練を除き、これまで日本周辺で訓練してきた。日本からはるか離れた海域で、かつ自衛隊単独で本格的な訓練を実施するのは極めて異例だ。 南シナ海では、南沙諸島、西沙諸島の環礁を埋め立てて軍事基地化を進める中国に対し、米国が駆逐艦などを両諸島へ派遣する「航行の自由作戦」を展開、8月には英国も揚陸艦を西沙諸島へ派遣している。今回の訓練は、日本が米英と足並みを揃えつつあることを示した。 中国はどう反応したか。外務省の耿爽副報道局長が17日の記者会見で、「域外国は慎重に行動すべきで、地域の平和と安定を損なわないよう促す」と反発したものの、「日本」を名指しせず、「域外国」との表現にとどめた。これは中国が権利を主張する「領海」への侵入がなかったこと、訓練の狙いが分かりにくかったことが要因とみられる。 だが、日本政府にとって今回の訓練の位置づけは明確である。安倍晋三首相が2016年8月、ケニアで開催されたアフリカ開発会議(TICAD)において打ち出した「自由で開かれたインド太平洋戦略」に基づき、中国を牽制するという狙いだ。 訓練は海上自衛隊の独断だったわけではない。防衛省はもちろん、首相官邸、国家安全保障会議、外務省も了解している』、第二の記事が「海上自衛隊の独断」としているのとは正反対の見方だが、確かにこれだけの作戦を独断でやるというのには無理がありそうだ。
・『外務省によると、「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは、アジアとアフリカ、また太平洋とインド洋を結び、新たな日本外交の地平を切り開くことだという。そのためには、「法の支配」に基づく国際秩序の確保が欠かせないことから、南シナ海で環礁を実効支配し、「航行の自由」を認めない中国に対する事実上の封じ込め策となっている。 17年11月に来日したトランプ米大統領は、安倍首相との間で「自由で開かれたインド太平洋戦略」について合意し、早速、アジア・太平洋方面軍である「太平洋軍」を「インド太平洋軍」に名称変更した。 一方、海上自衛隊は17年、1992年から続く米印共同訓練の「マラバール」に継続して参加することを表明。日米印共同訓練に格上げされた「マラバール2017」には、海上幕僚監部ナンバー2の山村浩海上幕僚副長を筆頭に、隊員約700人と海上自衛隊最大の空母型護衛艦「いずも」と汎用護衛艦「さざなみ」を派遣し、インド東方海域で日米印三カ国の艦艇による対潜水艦戦訓練などが大々的に実施された。 「特定国を想定した訓練ではない」(海上自衛隊幹部)というが、中国海軍の潜水艦はインド洋を航行している様子が確認されており、パキスタンやスリランカにも寄港している。中国の潜水艦への対処を意識しているのは明らかだ。 また17年11月には、タイで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)創立50周年記念の国際観艦式に、護衛艦「おおなみ」を1カ月間にわたり長期派遣して、日本の存在感を示した。 このように海上自衛隊は昨年、マラバールと国際観艦式への参加を通じて「自由で開かれたインド太平洋戦略」に「具体的に貢献した」(同)ものの、今年の「マラバール2018」はインド洋とは無縁のグアム島周辺海域での実施となったうえ、国際観艦式もなかった』、さすがに防衛庁取材を担当してきただけに情報通だ。
・『これまでの訓練とはまったく違う  そこで新たな対中戦略として浮上したのが、護衛艦をインド洋や南シナ海に派遣して各国と共同訓練を実施する案だ。 海上自衛隊は「平成30年度インド太平洋方面派遣訓練部隊」を編制。「いずも」と同様、最大の空母型護衛艦「かが」、汎用護衛艦「いなづま」「すずつき」の3隻と隊員約800人が8月26日から10月30日まで2カ月以上にわたり、インド、インドネシア、シンガポール、スリランカ、フィリピンの5カ国を訪問する。 海上自衛隊のホームページには「『自由で開かれたインド太平洋』の前提は、地域の平和と安定であり、海上自衛隊はこの実現に向け、各国との協力を推進していきます」と派遣の目的が記されている。 だが、行動内容に関しては「インド太平洋地域の各国海軍等との共同訓練を実施」とあるだけで、自衛隊単独の訓練には触れていない。 本来、海上自衛隊による単独訓練は四国沖など日本周辺海域で行われ、在日米軍との共同訓練の場合でも、沖縄本島近くの米軍への提供水域で実施している。また自衛隊による警戒・監視活動の南限は、尖閣諸島を含む東シナ海までとなっている。「専守防衛」を踏み越え、他国に脅威を与えることがないよう抑制的に振る舞ってきた過去がある。 そうした経緯からすれば、場所を南シナ海に移して行われた海上自衛隊の単独訓練は、極めて異例というほかない。日本周辺海域とは水深、潮流、海水の濃度など条件の異なる南シナ海で行う訓練が「日本防衛」に直接、役立つのだろうか。 今回の訓練に参加したのは「平成30年度インド太平洋方面派遣訓練部隊」の護衛艦3隻と、ベトナム海軍への親善訪問のため、広島県の呉基地を8月27日に出港した潜水艦「くろしお」の合計4隻だ。 先行する護衛艦3隻に追いついた「くろしお」が「他国(おそらくは中国)」の潜水艦を模擬した「敵」となり、護衛艦3隻が搭載ヘリコプターを動員して探知し、攻撃する対潜水艦戦訓練を実施した』、「専守防衛」原則を踏み越えるのであれば、国民にも丁寧な説明が必要な筈だ。
・『南シナ海は中国が領有権を主張して引いている「九段線」の内側にあり、中国大陸近くには、中国海軍の原子力潜水艦を含む潜水艦の基地が置かれた海南島もある。中国側を刺激する訓練となったのは間違いない。 小野寺五典防衛相は記者会見で「訓練の海域に南シナ海を選んだ意図」を問われ、「南シナ海において潜水艦が参加する訓練は15年以上前から幾度となく行っているものであり、昨年度、一昨年度にも実施しております」と答えた。 「15年以上前」の訓練とは、海上自衛隊のパイロットを養成する教育航空隊を卒業した飛行幹部候補生を潜水艦に乗せ、フィリピンを訪問したことであり、「昨年度、一昨年度」の訓練とは、やはり飛行幹部候補生を潜水艦に乗せてマレーシアを訪問したことを指すとみられる。今回のような本格的な対潜水艦戦を想定した訓練ではない』、小野寺防衛相の回答は殆ど虚偽に近い。それにツッコミを入れなかった、記者クラブも情けない。
・『中国はどう出るか?  もちろん、中国軍はこの訓練を黙って眺めていたわけではない。中国海軍の駆逐艦による護衛艦3隻への追尾が続く中で、訓練は強行された。一触即発の危険を抱えての訓練だった。 注目されるのは、中国側が潜水艦「くろしお」を探知できていたか否かである。 中国海軍は空母「遼寧」や原子力潜水艦、スホイ30戦闘機といった「強そうで派手な武器」を揃える一方、対潜水艦戦の能力は極めて低いというのが海上自衛隊幹部の一致した見方である。 逆に海上自衛隊は冷戦期から「西側の防波堤」としてソ連の潜水艦を探知し、攻撃する対潜水艦戦に力を入れてきており、潜水艦の探知は得意中の得意。現在も東京、グアム、台湾を線で結んだ「TGT(東京・グアム・台湾の頭文字)三角海域」を密かに航行しようとする中国潜水艦の「悉皆(ことごとくの意味)探知」を目標に掲げているほどだ。 今回、派遣された「くろしお」は、特殊なエンジンを積んで長時間潜行できる最新鋭の「そうりゅう」型潜水艦ではない。それでも「今後、海上自衛隊の潜水艦が南シナ海に潜む可能性がある」とのメッセージを送ったことになり、中国海軍にとっては脅威となるのではないだろうか。 もとより米海軍は、中国の海軍基地近くの海中に潜水艦を常時、派遣しているとみられる。現に2004年11月、石垣島周辺の日本の領海を潜水したまま通過して国連海洋法条約に違反した中国の漢級原子力潜水艦は、青島の潜水艦基地を出港した時点から、米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦によって1カ月にわたり、追尾された。 米海軍は、冷戦時にソ連の潜水艦に対して行ったのと同じように、中国の潜水艦を恒常的に追尾している。南シナ海も例外ではない。海南島近くの海中に米海軍の潜水艦が潜んでいるのは確実だろう。 すると中国海軍の艦艇は、米国の原子力潜水艦によって常時監視され、今後、海上自衛隊の南シナ海への進出が本格化すれば、海上自衛隊の潜水艦も意識することを与儀なくされる。潜水艦に狙われた艦艇は「死に体」と変わりなく、そうなれば中国海軍は日米の「手のひら」に乗ったも同然となる。 中国はこうした不利益を唯々諾々と受け入れるだろうか。 米本土が中国から遠いのに対し、日本列島は中国の目と鼻の先にある。対抗措置として、(1)日本周辺海域への中国軍艦艇の派遣を激増させる、(2)尖閣諸島をめぐる東シナ海の緊張状態をあえて高める、などの手段に踏み切ることが考えられる。 小野寺防衛相の会見をみる限り、日本政府が覚悟を決めているとは到底思えない。 だが、海上自衛隊は17年6月、護衛艦「いずも」「さざなみ」と米空母「ロナルド・レーガン」との日米共同訓練を初めて南シナ海で行ったのを皮切りに、18年3月にも護衛艦「いせ」と米空母「カール・ビンソン」が、やはり南シナ海での日米共同訓練に踏み切っている。 これらの日米共同訓練を南シナ海進出の足掛かりとし、その延長線上にあるのが今回、海上自衛隊が単独で行った対潜水艦戦訓練である。 「専守防衛」を踏み越えた訓練を続けるならば、いずれ南シナ海の緊張は高まり、ひいては日本の安全保障に直接影響を及ぼす事態を呼び込みかねない。 政府は南シナ海で行った訓練の意図を正直に語り、世論の審判を受けるべきである』、説得力ある主張で、同意できる。「専守防衛」原則がなし崩し的に変質していくとすれば大問題だ。
タグ:米国に対して挑発を繰り返す理由 」「南シナ海の軍事拠点化の目的が西太平洋に打ってでることであり、そのための南シナ海をめぐる作戦を想定している」 飛行距離は8000キロ、さらに射程距離2000-2500キロの巡航ミサイルCJ-10Kの搭載も可能 攻撃範囲がハワイより先に広がる 南シナ海で空母「遼寧」を含む48艦艇と戦闘機76機、将兵1万人を動員した建国以来最大規模の海上閲兵式が行われた 南シナ海で戦争を仮定した訓練 南シナ海の人工島に、中国解放軍初の爆撃機離発着訓練が行われた 福島 香織 は今年4月半ばごろから南シナ海における軍事的プレゼンスを見せつけるような動きに出ている ASEAN全体に高まる中国への抵抗姿勢 台湾旅行法の可決自体が、中国にとっては当初は宣戦布告に相当する米国からの挑発 着々と囲い込んできたASEAN諸国の対中感情に4月になって変化の兆しが見えてきたことがある 多極的な米中駆け引きで劣勢に立たされている状況を、国内の人民や国際社会に悟らせないための関心の分散を狙ったものではないか 背景に米中駆け引きでの劣勢? トランプも中国と直接軍事対決を選択するはずがない、と習近平は思っているだろう。だからこそ、南シナ海の戦争をちらつかせることができるのだ 南シナ海情勢については4月以降、急激に温度が上昇 「南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい 人工島で爆撃機離発着訓練、軍事的プレゼンス誇示」 (その3)(南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい 人工島で爆撃機離発着訓練 軍事的プレゼンス誇示、潜水艦の南シナ海派遣 安倍首相は知っていたか 防衛戦略は難しい局面に、海上自衛隊が南シナ海で異例の「対潜水艦戦訓練」を決行した事情 実は初めての「単独訓練」だった) 日経ビジネスオンライン 南シナ海を拠点にすればH-6Kは全アジアを作戦空域に入れることができる 中距離ミサイルや核搭載が可能な轟6K(H-6K)爆撃機 南シナ海の実効支配は中国が握っており、すでに軍事拠点化も既成事実化している 南シナ海の緊張 戦争とは、こうした危険な挑発や牽制を繰り返しているうちに、偶発的に起こることもある 田原 総一朗 「潜水艦の南シナ海派遣、安倍首相は知っていたか 防衛戦略は難しい局面に」 海上自衛隊の訓練 南シナ海での訓練は初である 防衛省の元防衛大臣ら2人 2人とも「その必要はない」と答えた 彼らは、「日本政府は、対中戦略をほとんど持っていない」と答えたのである 「防衛省はこんなことを許可していない。当然のことながら、安倍首相も知らないだろう」 この訓練は、海上自衛隊が独自の判断で実施 あまりにも大変な問題で、触れるのがこわいから」と答えた 難しい問題、困った問題は、なかったことにする 典型例が、原発問題 事故を想定しなかったから、東京電力はしっかりした避難訓練すら実施しなかった 困ること、大変なことは、「ない」ことにするのである 太平洋戦争時にも、同様のことは言える 日本は対米従属から自立すべきではないか」という声 自立論と日米関係強化論の対立が起こり始めたのである 自立論はあまりリアリティがない 自衛隊におけるシビリアンコントロールには大きな問題 半田 滋 現代ビジネス 「海上自衛隊が南シナ海で異例の「対潜水艦戦訓練」を決行した事情 実は初めての「単独訓練」だった」 極めて異例の「自衛隊単独訓練」 訓練は海上自衛隊の独断だったわけではない 防衛省はもちろん、首相官邸、国家安全保障会議、外務省も了解している 自由で開かれたインド太平洋戦略 、「法の支配」に基づく国際秩序の確保が欠かせないことから、南シナ海で環礁を実効支配し、「航行の自由」を認めない中国に対する事実上の封じ込め策となっている 「太平洋軍」を「インド太平洋軍」に名称変更 海上自衛隊は17年、1992年から続く米印共同訓練の「マラバール」に継続して参加することを表明 中国の潜水艦への対処を意識しているのは明らかだ 東南アジア諸国連合(ASEAN)創立50周年記念の国際観艦式 護衛艦「おおなみ」を1カ月間にわたり長期派遣 護衛艦をインド洋や南シナ海に派遣して各国と共同訓練を実施する案 最大の空母型護衛艦「かが」、汎用護衛艦「いなづま」「すずつき」の3隻と隊員約800人が8月26日から10月30日まで2カ月以上にわたり、インド、インドネシア、シンガポール、スリランカ、フィリピンの5カ国を訪問 。「専守防衛」を踏み越え、他国に脅威を与えることがないよう抑制的に振る舞ってきた過去がある 日本周辺海域とは水深、潮流、海水の濃度など条件の異なる南シナ海で行う訓練が「日本防衛」に直接、役立つのだろうか 小野寺五典防衛相 中国海軍は空母「遼寧」や原子力潜水艦、スホイ30戦闘機といった「強そうで派手な武器」を揃える一方、対潜水艦戦の能力は極めて低いというのが海上自衛隊幹部の一致した見方 「専守防衛」を踏み越えた訓練を続けるならば、いずれ南シナ海の緊張は高まり、ひいては日本の安全保障に直接影響を及ぼす事態を呼び込みかねない 政府は南シナ海で行った訓練の意図を正直に語り、世論の審判を受けるべきである
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働き方改革(その18)(鴻上尚史×河合薫対談 その1「不死身の特攻兵」からみる「残念な職場」、その2 個を殺す残念な日本型組織を抜け出そう、河合 薫:働かされすぎた人が「自殺」を選ぶ本当の理屈) [経済政策]

働き方改革については、7月25日に取上げた。今日は、(その18)(鴻上尚史×河合薫対談 その1「不死身の特攻兵」からみる「残念な職場」、その2 個を殺す残念な日本型組織を抜け出そう、河合 薫:働かされすぎた人が「自殺」を選ぶ本当の理屈)と、3つとも河合薫氏が登場する形になった。

先ずは、9月25日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者の河合 薫氏と、作家・演出家の鴻上尚史氏の対談その1「「不死身の特攻兵」からみる「残念な職場」」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/082900178/?P=1
・『『残念な職場』を書いた河合薫さんがベストセラー『不死身の特攻兵』の著者、鴻上尚史さんと対談。9回出撃して9回生還した特攻兵、佐々木友次氏の生き方、現代の職場に通じる課題などを語った。 鴻上:河合さんの『残念な職場』は興味深い点が多数ありました。なかでも印象に残ったのは、女性が「職場でポジティブな気分を感じている」のに対して、男性は「家庭でポジティブな気分を感じている」という部分です。一方、ストレスを感じると上昇する「コルチゾール値」は男性、女性ともに家庭よりも職場のほうが低い。つまり職場のほうがストレスは小さいのですね。すると、男性は家庭でポジティブな気持ちであると同時にストレスを抱えていることになります。 河合:ストレスのような生体反応が、気分と矛盾するのは実はよくあることです。「たいへんだけど仕事にやる気がみなぎってくる」ように、ストレスがかかっていても、気分のうえでは満足感が高いことがあります。ストレスがあることと満足感を持つことは必ずしも一致しないのです。女性の場合、職場のほうがストレスは小さく、気分もポジティブな状態にあります。男女でなぜこうした違いがあるのかといえば、男性は職場でたいへんなことがあっても、家庭ではくつろぐことができる面があります。女性は職場を出て家庭に戻ってからも、今度は家庭での仕事がある、などの理由が挙げられます。 鴻上:男性、女性ともに家庭のほうがストレスが大きいとは、なかなか複雑ですね。 河合:職場では「頑張った」「君のことを必要としている」と言ってもらえることがあるのに対し、家庭ではあまりほめてくれないことがストレスにつながっていると思います。家庭に比べてストレスの小さい職場ですが、そこには階層社会があります。そして、階級社会の特徴はその場の状況に染まると、外から見たときに「それはおかしいだろう」ということが見えなくなることです。『残念な職場』を通じて伝えたかったのは、おかしいはずのことが「当たり前」になる理不尽さです』、河合氏の指摘はいつもながらうなずける。
・『(河合:)鴻上さんの『不死身の特攻兵』を読んでまず感じたのは、「ここにも残念な職場があった」ということです。この本で鴻上さんが書いたように、戦前の日本軍において佐々木友次さんは優秀なパイロットであるにもかかわらず、特攻隊に任命されました。軍はせっかく佐々木さんを育てたにもかかわらず体当たりをしたら、もう飛べなくなります。これはあまりにもおかしなことです。次に感じたのは、鴻上さんによるインタビューに対して佐々木さんの感情がすごく「割れている」ところです。特攻隊として「絶対に突っ込もう」と思っていたとする一方、「なにがあっても生き延びてやる」でもあったという。組織の人間としての感情と一人のパイロットとしての感情の両方があり、もっと知りたいと思いました。 鴻上:まず『残念な職場』について、組織がブラックになればなるほど、所属する人は本音が言えなくなる、ということではないでしょうか。当時の状況に対して、佐々木さんにはやはり「残念だ」という気持ちがあったと思います。では、そんななかで佐々木さんはなぜ、9回特攻に出て9回帰って来られたのか。なせ生き延びたのか。それが知りたくて、僕は何回も佐々木さんとお会いしました』、「9回特攻に出て9回帰って来られた」、そんなケースがあったとは驚かされた。
・『飛行機で飛ぶことが好きで本当にワクワクしていた  (鴻上:)そもそも佐々木さんは「人間はそんなに簡単に死ぬものではない」と思うところがありました。佐々木さんの父親は日露戦争を生き残り、勲章をもらっていましたし、佐々木さんが所属していた部隊長は「死ぬな」と言っていました。ただし、もっとポジティブでプリミティブな理由があったと思います。それは佐々木さんが空を飛行機で飛ぶことが好きで本当にワクワクしていた、ということです。乗っていたのはあまり性能がよくない飛行機でしたが、その飛行機も佐々木さんは大好きだったのです。にもかかわらず、飛行機で体当たりをすれば当然壊れるし、もう飛べなくなります。それが嫌だというのが一番の理由だったのではないかと思います。それでも組織が大きくなるほど、階層が厳密になるほど、「好きだ」という原初的な言葉は通じなくなります。だから、佐々木さんはそうした言い方をしなかったのではないか、という気がします』、なるほど。
・『河合:特攻隊は「死ぬのが当たり前」とされていたと聞きますが、佐々木さんは特攻隊についてどうとらえていたのでしょうか。 鴻上:やはり「死ぬ覚悟はあった」とおっしゃっていました。飛行機乗りになった以上、どこかで死ぬことはわかっていましたが、いざ死ぬときには「効率的な死に方をしたい」「意味のある死を迎えたい」と考えていたのだと思います。特攻隊は初期のうちベテランのパイロットが選ばれていました。ベテランにはスキルがあり体当たりができると考えたのでしょう。しかし、それならば「自分を一回の特攻で殺す」よりも、「撃ち落とされるまでは出撃を繰り返す」ほうがさらに効率はいいはずです。佐々木さんにとっては「自分たちも戦いがいがある」ということだと思います。一方、上官がベテランパイロットを選んだのは「奇跡を起こすためにはこんな優秀な人たちが自らの命をささげて戦っている」と国民と軍隊内部に示す面もありました。 河合:それはあまりにもおかしい状況です。 鴻上:上官たちは日本人が好きな精神性で、必死で忠を尽くしていれば頑張ればなんとかなるというわけです。そして、戦後70年以上たってもそんな構造は変わってないと思います。店長が身を粉にして働き、体を壊すか精神を病むかの直前で表彰の対象になる。月100時間、200時間の残業が称えられ、愚かなことだと気づかない状況と似ています』、そうした精神性の強調は、確かに現在でも続いているようだ。
・『河合:精神主義は日本人に特有だと思われますか。 鴻上:「上が責任取らない」「現場のせいにする」は日本人だけではありません。また、戦争中のことを調べてみると、例えば、米国のリーダーでもとんでもない決定をした人がいます。日本と米国の違いは「その後」です。米国ではとんでもない決定をしたリーダーはクビになったり、地位をはく奪されたりします。これに対して日本の場合、とんでもないリーダーでも身内だからとかばう面があります』、米国の例も引き合いに出して、単純な日本特殊論に陥らないところが、鴻上氏のすごいところだ。
・『情でみるとき、100%いい悪いにならない  『不死身の特攻兵』に書きましたが、敵前逃亡でフィリピンから一人で逃げたにもかかわらず、結局責任を取らないまま軍に復帰した司令官がいます。日本人は直接ぶつからない、言わないで気を回すことを美徳とする文化があるため、「あなたは能力がないから司令官になれない」と言えなかったのです。現状維持で残そうとするため、敵前逃亡の司令官まで軍務に復帰したのです。これは最近さまざまな場面で出てきた忖度と似ています。 河合:日本の職場も同じだと思います。つぶれた会社について調べてみるとダメな会社、残念な会社の原因となった人も、なぜかかばっていることが多いのです。これが果たして日本人に特有なのかどうかはわかりませんが、国によって「違うな」と思うことはあります。私は小学校4年生から中学1年生まで米国でも田舎のアラバマ州にいました。日本人は私の家族だけでしたが、当初は国が違っても人は本質的な部分は同じだと思っていました。しかし、遊んでいて岩から10メートルほど下の池に飛び込んだとき、あまり泳ぎが得意でない私はおぼれかけたにもかかわらず、米国人の友達はジョークを言っていました。私が死にそうだというのに「ここで言うのか」と思いました。こうした違いは戦争のような究極状態だと出やすいかもしれません』、フィリピンで敵前逃亡した司令官まで責任を取らずに軍務に復帰したケースがあったというのも初耳だが、会社でも同様のことがあり得るというのも、うなずける。
・『鴻上:戦前の軍隊は典型的なブラック企業であり、ファクトを見ていませんでした。代わりに見ていたのが「情」です。特攻もファクトでなく情を見て、情にフォーカスしていたから「命がけでやっている以上間違いなく戦果は上がっているはずだ」としていたのです。特攻の後期には、訓練時間が100時間ほど、本来ならば離着陸だけでも必死という人を特攻に出したとき、「お前たちの気持ちさえあれば」などと、情から言っていました。僕は河合さんの『残念な職場』を読みながら、「日本的」とはいったいなんだろう、と思いました。ファクトでなくて情でみることは、100%いいとか100%悪いということはありません。だからその分、やっかいです。僕は「cool japan」というテレビ番組を13年ほどやっていますが、外国の人が言うのは、日本人の思いやりは例えば東日本大震災のとき、スーパーやコンビニが襲われなかったうえ、帰宅途中にある商店が夜も店を開けて暖かいコーヒーを配るといったことに表れているというわけです。そのすごさは情がポジティブに表れ、うまく機能したのだと思います。しかし、情はマイナスに働くと「気持ちさえあればどんなに腕が悪くても特攻の成果が上がる」といった方向に向かうのです』、鴻上氏が情のマイナス面も的確に捉えているとはさすがだ。
・『河合:佐々木さんについて、私はSOCがとても高いと感じました。SOCとは究極の悲観論の上のポジティブな感情を指します。首尾一貫感覚が直訳ですが、私たちが使うときは「生きる力」「対処力」としています。特攻隊では自分が突っ込んでいく指令が出ましたが、佐々木さんにとって一番大切にしなければならないのが飛行機だったからこそ、飛行機で自分のスキルを最大限使い、最後は飛行機で乗って帰ってきたわけです。これは究極の悲観論の上のポジティブな感情というSOCにあてはまります』、「究極の悲観論の上のポジティブな感情」とは言い得て妙だ。
・『「最後には傘を差しだしてくれる人がいる」感覚  鴻上:興味深い指摘だと思います。SOCを磨くにはどうすればいいのでしょうか。 河合:人生経験で育まれますが、特に影響を与えるのは子供のときの親子関係です。分かりやすく言えば、親子間におけるSOCとは、「裏切られることも理不尽なこともあるだろう。でも最後には傘を差しだしてくれる人がいる」という感覚です。 鴻上:その感覚は演出家としてよくわかります。僕は稽古場を失敗しても大丈夫な場にしておかなければいけないと思っています。その理由は自分の一番ナイーブなところを差し出していくからです。例えば、恋人同士になっていちゃつく場面では、本当にいちゃついてなければお客さんは見抜くわけです。一方、本当にいちゃつくのは自分の恥ずかしい部分を人前でさらすことでもあります。だからこそ稽古場はそれができる場でなければならないし、その分失敗しても平気な場所にしなければいけないのです。誰かが一人でも稽古が終わった後、「お前、普段あんなふうにいちゃついているんだろ」とからかったら、次から二度と人前で見せられなくなります。だから、そうしたことを言う者がいたら、僕はすぐ「もう稽古にこなくていい、帰れ」と言います。その感覚はSOCと同じだと思います。その意味で、僕の言葉で言うと「親にきちんと愛されなかった」俳優をリラックスさせるのはすごくしんどいですね。世界が最終的に微笑んでくれるという確信を持たない人は最後の最後でやはり心を閉じますから』、鴻上氏の稽古場に対する考え方は芯が通っている。
・『河合:「最後に微笑んでくれる」はまさにSOCです。人生思い通りにいかないけれども終わるときに「まあいい人生だった」と思える感覚です。稽古場で失敗を言えるようにするために鴻上さんは何をしているのですか。 鴻上:僕だけがしゃべり周りが黙る稽古場は絶対うまくいきません。だからまず、全員が同じように発言する環境を作ります。それができたらほぼ芝居の半分以上成功という感じです。厄介なのは「ダメな中年のおじさん」です。これは河合さんの言う「ジジイ」に関係しますが、「お前らそんなこと言うんじゃない」と言い出すわけです。そうした「教育」をする人は本当に困ります。 河合:若者は聞きたいことがあっても、「聞いたらだめなやつだと思われる」から聞かないし、言いたいことがあっても言わない傾向があります。学生に「どうするつもりなのか」と尋ねると、「キャラを演じているのがつらいのです」と言いながらも、実際には集団から落ちていくことのほうが怖いのです。これではジジイの文化が広がるばかりです。 鴻上:僕は学校教育の原因だと思っていますが、若者には「許されることしかやらない」発想が目立ちます。第三舞台を解散したあと「虚構の劇団」という劇団を若者と10年ほどやっていますが、第三舞台のときと違い「そんなことしていいんですか」という言葉をよく聞くのです。 河合:「そんなことしていいんですか」は、私もこれまでたびたび学生から聞かされてきました。 鴻上:若手が小さな発表会を開くというので、僕は「初めてだから音響も照明も自分たちでやってみよう」と言ったことがあります。ただし、劇場には音響と照明のブースがあり、窓がついていました。舞台からの声が聞こえないため、担当者はできるだけ広く窓を開けたかったのですが、うまくいかず困っていました。そこで僕は「窓自体をはずしてしまええばいい」と言って、実際に窓をはずしました。若手は驚いた顔で「そんなことしていいんですか」というわけです。僕は若手に言いました。「この劇場は自分たちが借りた以上、自分がルールを作ればいい」』、鴻上氏の発想の柔軟さには恐れ入る。
・『若者は戦うための牙を完全に抜かれている  ムダで無意味な校則で育ってきた人は、枠組み自体を疑う発想がないのです。「すごくやばい」と思います。そして、企業はこうした教育を受けて育った人を社員として受け入れるわけです。いつの時代もジジイを倒したのは若者ですが、これでは若者は戦うための牙を完全に抜かれている気がします。僕は上が学生運動の世代で、そうした人から例えば早稲田大学では「学生運動のとき、大隈講堂の中でたき火をして焼き芋を焼いた」といった話を聞いてきました。教授が学内に機動隊を入れるかどうか議論した末に「入れるしかない」と機動隊を入れると、大隈講堂では皆が焼き芋を食べて帰ったあとだった、と。そうしたことを知っているので、枠組み全体を疑うのは当たり前だと思っています。伝説を聞いた世代だから「校則が間違っている」「辞書が間違っている」と普通に言えますが、下の世代は「学校の名誉のため」といったわけのわからない言葉でさまざまなことを押し付けられています。そんな牙を抜かれた若者がジジイ文化に取り込まれたり負けたりするのはある意味、しょうがないとも思います。 河合:私はジジイたちが一掃され新しい世代になればそんな状況も変わるのではないか、とあるときまで思っていました。しかし、最近になって、「そうではない。むしろ逆だ」と考えるようになります。若者はジジイに何か言われると疑問を持つことなく、流されていくだけになっています。ジジイの壁はどんどん厚くなっています。 私はストレスを雨に例えて話します。人生の雨であるストレスは生きてればずっとついてきます。でもそのとき、傘があれば濡れずに済みます。SOCとはストレスを乗り越える力でもあります。傘は自分の心の中にあれば、周りにもいろいろ傘があります。自分がどうしようもなくなったとき、傘を貸してくださいと言えるかどうかだと思います』、「牙を抜かれた若者がジジイ文化に取り込まれたり負けたりする」というのは情けない話だ。傘の話も面白いが、「傘を貸してください」と言えない若者が増えているのではなかろうか。

次に、上記の続きを、9月28日付け「個を殺す残念な日本型組織を抜け出そう 鴻上尚史×河合薫対談 その2」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/082900179/?P=1
・『鴻上:軍隊のなかで、パイロットはほかの職種と違う部分があります。完全な技術職のため、空に飛んだら抑圧的な「上下」の関係が通じないのです。上官から無茶な命令を出されても、パイロットは空の上では個人でいられるのです。自分の思いに対して忠実にできるのです。飛行機を降りたら怒られますが、技術のない上官も「ガミガミ言いすぎたら、敵機と遭遇したときに守ってくれないのではないか」と思ったでしょう。戦争が続いていたら佐々木さんは何度でも帰ってきたと思う反面、撃ち落とされたかもしれないとも思います。おそろしいのは司令官側が佐々木さんをこっそり殺していた可能性もあったことです。上官が佐々木さんの暗殺指令を出していたのは事実のようです。上官からすると、天皇に戦死を報告したのに帰ってくるのは責任問題ですから最終的に死んでもらわなければならない。ブラック企業の究極です』、パイロット職種の特殊性はなるほどである。「上官が佐々木さんの暗殺指令を出していた」とは驚いたが、それを生き延びた佐々木さんもすごい。
・『河合:佐々木さんはそのことは知っていたのでしょうか。 鴻上:知らなかったようです。捕虜として収容所に入ったときに知り、驚いていました。 佐々木さんに対し、「逃亡した司令官をどう思いますか」と何度も聞きました。しかし、立場が「雲の上」の人を佐々木さんがジャッジすることはありません。これは大企業の新入社員が社長をジャッジしないのと同じです。ジャッジできなかったのだと思います。 河合:そもそも鴻上さんはなぜ、佐々木さんが生きて帰ってきた理由を知りたいと思ったのですか。 鴻上:21歳の若者が40代、50代の上官の命令になぜ背けたのか。その理由を知りたかったのです。 河合:軍隊に「ノー」という答えは用意されていないと考えていたからですか。 鴻上:その通りです。この本の「命を消費する日本型組織に立ち向かうには」という帯の言葉は担当編集者がつけてくれたのですが、戦前の軍隊のような日本型の組織はずっと生き延びています。その究極が特攻隊というメカニズムだと思っていたため、あれほど佐々木さんに会いたかったのだと思います。 河合:「命を消費する」とは、日本型組織は人をコストとしてしか見ていないということです。そんなコスト意識に佐々木さんは勝ったのですね。 鴻上:上官たちがいたにもかかわらず、21歳の若者がコストにならないで戦ったすごさです。 河合:佐々木さんにとって、心のよりどころはどこにあったのでしょうか。 鴻上:よくわからないのです。「ご先祖だ」と言うので、「ご先祖にお祈りしているのですか」と尋ねると、「そんなにしていない」と言うし、「お守りを持っているのですか」と聞いても「持っているけれど、肌身離さず持っているわけではない」と言うのです。結局、空を飛ぶことが大好きだったんだと、僕は考えました』、「命を消費する日本型組織」というのは、確かに現在でも通じる困った特徴だ。
・『・・・(鴻上)河合さんが挙げられたSOCは面白い概念ですが、日本語として理解しにくいですね。 河合:わかりやすい言葉にできればもっと広められるので、それは私にとってテーマになっています。「つじつまを合わせる感覚」という表現があるのですが、それだと伝わらない面があり、SOCのままにしています。 鴻上:河合さんがジジイ文化を意識するのは、帰国子女として外側から日本を見た経験が関係していると思います。群れるのが苦手という精神文化があるのではないでしょうか。 河合:自分ではストレートに言っているつもりはないのですが、「直球だ」とよく言われます。 鴻上:階級社会の軍隊において、佐々木さんがそれを抜け出せたのは、空の上では全ての責任を自分でコントロールするパイロットだったからだと思います。とにかく時間があったら訓練していた、とおっしゃっていました。戦争も後半に入ると「ガソリンがもったいないからやめろ」と言われたそうですが、それまでは訓練は「いいこと」であり、佐々木さんはうれしくて飛んでいました。スキルアップになるわけだから周囲からも「とてもいい」と言われた。パイロットは裁量権があります』、確かに、パイロットには裁量権があるとはいえ、上官の命令を無視した特攻隊員は佐々木さんだけだったのは、何故なのだろう。
・『「全員が志願だった」の違和感  河合:佐々木さん以外に、何回か生きて帰った人はいるのでしょうか。 鴻上:機材が不調で何回か帰ってきて最終的に生き残った人はいますが、佐々木さんほどはっきり「死なない」ことを意識して、生き延びた人はいなかったようです。佐々木さんの場合、9回帰ったうち途中からは「爆弾を落として帰ってきます。体当たりしません」と言い放っています。そして、だからこそ戦後、佐々木さんはずっと沈黙しました。突入して亡くなった人がいる以上、「言ってはいけない」と考えたのだと思います。 河合:特攻として出撃した人は当時、それをよきことだと信じていたのでしょうか。それともどこかに良心の呵責を抱えながらだったのでしょうか。 鴻上:一人ひとりに聞くしかないですが、命令した側が「全員が志願だった」と言い続けているのは、後ろめたさの表れではないかという気がします。「自分を次の特攻に出させてほしい」と宴会の席で詰め寄られたとか、廊下を歩いてると「自分を次に出撃させてください」と言われたとか、寝ようとするとドアの前に志願者が列をなしている、などの記述が命令した人が書いた本にはあります。しかし、僕からすると「そんなことはないだろう」というほど描写が異常です。命令された側の手記を読むと「絶対に志願ではない。命令だった」とあります。「志願するものは手を挙げろ」と言われても誰も手を挙げなかったのに「行くのか行かんのかはっきりしろ!」と怒鳴られ、全員が反射的に手を挙げたこともあったと聞きます。それだけに「全員が志願でにっこり微笑んだ」と言った記述が命令した人の本にあるのは、どこかやましいことがあったのではないか、と思います。していることに自信があるなら、むしろ「強制になった人もいた」と書くはずなのです。これは社長の命令によって社員が疲弊しているのに、「全員が志願して働いている」というのと同じことです』、その通りだろう。
・『河合:佐々木さんの乗った特攻の飛行機は自分で爆弾を落とせるようにしていたとあります。これは整備にあたる人の「生きて帰ってほしい」という思いだったのでしょうか。 鴻上:上層部がどんなにダメでも現場はわかってくれます。それはある種の希望です。絶望的な状況下にあっても、現場は特攻という攻撃の愚かさを知っていた。援護する飛行機もなく一機で出発させることの不合理さを現場はよくわかっていました。 河合:パイロットのなかには、佐々木さんが生きて帰ってくるのが希望になったこともあったそうですね』、「上層部がどんなにダメでも現場はわかってくれます」というのは、佐々木さんが生き延びた背景の1つだろう。
・『日本社会の枠組みに苦しんでいる人が読んでいる  鴻上:最初は「なぜあなたは帰ってきたのか」と周囲の人がとがめたりもしましたが、佐々木さんは「何回も出撃して爆弾を落とすほうが正しい」と当たり前のことを言うわけです。これを耳にしたあるパイロットは「自分も生き延びようと決めた」という手記を残しています。 もちろん戦争だから、結果的に撃ち落とされ死ぬことはあります。それでも1%でも可能性のある戦い方を選ぼう、という佐々木さんの言葉を信じた人もいます。 河合:その意味では「心の上司」になっていたのではないでしょうか。仕事とは人が生きる上ですごく大切なことであり、本当は楽しいことでもあるはずなのに、なぜこれほどしんどいことになるのか、とよく思います。佐々木さんはパイロットの仕事を極限とも言える場面でも楽しいと感じています。そのことはとても印象に残りました。 鴻上:『不死身の特攻兵』は当初、歴史物が好きな人が読み、やがてビジネスマンが読んでくれ、ツイッターで「理不尽な命令はうちの会社とまったく同じ構造だ」といった声が広がりました。そのうち今度は女性が手に取り始めてくれるようになりました。そこでは「PTAと似ている」「ママ友の会話が同じ」となっていました。日本社会の枠組みに苦しんでいる人や、「うっとうしいな」と思っている人が読んでいると思います。息苦しいし、このままではだめだと思っているから、読まれている面があります。帰国子女である河合さんはそうしたことに敏感ではないでしょうか。一方でこうした共同体に没入することで安心を得ようとする人もいます。実に厄介です。 河合:鴻上さんはそうした社会になじんでいるのですか、それとも生きづらさを感じているのですか。 鴻上:僕は帰国子女ではないですが、両親とも教師でした。特に父は厳格でしたが、いつも理想を語っていました。理想を語るのは、社会を語ることだと思います。例えば、近所づきあいについても、「あいまいにするのもおかしい」と言っていました。幼いころに社会の枠組みをそんなふうに刷り込まれたのですが、残念ながら日本は「世間」で生きる人が多く、何かあったときに「そこは飲み込もう」となりがちです。世間は中途半端に壊れていますが、これから先も壊れ続けるかどうかわからない。不安になったら皆世間にしがみつくためで、東日本大震災の後は絆といった形で世間の揺り戻しがきています。世間原理主義と僕は呼んでいますが、これは個を殺す状態でもあります。震災の後、一週間で道路が直されるなど、個を殺して協力することがプラスになることもあればマイナスになることもあります。なぜ日本人は個を殺しやすいのかを追求していくのが僕の仕事かなと思っています』、「不安になったら皆世間にしがみつくためで、東日本大震災の後は絆といった形で世間の揺り戻しがきています」というのはその通りだ。「世間原理主義」とはピッタリの表現だ。
・『ずっと戦い続けるしかない  河合:個を殺すのは、海外での生活を経て日本に帰ってから私が一番息苦しかったことです。日本人は米国を競争社会だと思っていますが、実際には米国は「自分がマックスになる社会」であり、それが結果的に競争社会になっています。それが日本では、目立ってはいけない、黙っておくのが一番だとなります。 鴻上:ずっと戦い続けるしかないと思います。その意味で河合さんの『残念な職場』は苦しんでいる職場の若手にとって希望の本になると思います。そして、それは僕の演劇の演出の心構えとすごく似ています』、両氏の今後の戦いを注目したい。

第三に、上記の河合 薫氏が10月19日付け東洋経済オンラインに寄稿した「働かされすぎた人が「自殺」を選ぶ本当の理屈 長時間労働がトリガーとなり段階的に進む」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/243003
・『「またか……」という思いでニュースを聞いた人も多かったことでしょう。 9月下旬に複数の大手新聞が報じた、三菱電機の社員2人の過労自殺。2014年から2017年にかけて、自殺した2人を含む技術職・研究職の社員5人が、長時間労働が原因で精神障害や脳疾患を発症して労災認定されたといいます。 大手広告代理店の電通に勤務していた高橋まつりさんが自殺したのが、2015年12月25日のことでしたが、その2カ月後にも、別の過労自殺が起きていたのです。 なぜ、日本からは過労自殺がなくならないのでしょうか?』、自殺にまで追い込むとは、改めて日本企業の裏面の闇の深さを思い知らされた。
・『遺書には、必ず謝罪の言葉が残されている  拙著『残念な職場』でも触れていますが、「過労死」と「過労自殺」は同義ではありません。過労死等防止対策推進法で、“等”という文字が入っているのもこのためです。 過労死は長時間労働と直結していますが、過労自殺はその他のストレス要因の影響が大きく、長時間労働はあくまでも引き金です。 1.業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡 2.業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死 (※脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害も、死に至らなくとも「過労死等」に含まれる)(過労死等防止対策推進法より) 過労死という言葉を最初に使ったのは医師の上畑鉄之丞氏(2017年没)ですが、「過労自殺」という言葉は過労死問題に長年取り組んできた川人博弁護士による発案で、1998年の著書『過労自殺』の中で初めて使われました。 1995年、川人弁護士の古くからの友人が突然失踪。3カ月後に自殺体となって発見されました。その後の調べで、友人の職場では同時期に3名もの男性社員が自殺していたことがわかり、これをきっかけに川人弁護士は「過労自殺」が疑われる事案に本格的に取り組むようになったそうです』、「友人の職場では同時期に3名もの男性社員が自殺していた」というのには本当に驚かされた。
・『過労自殺をいろいろと調べていくと、「長時間労働、休日労働、深夜労働」などの過重労働による肉体的負荷に加え、納期の切迫やトラブルの発生などからくる精神的なストレスがかかっていたことが判明。 そこで川人弁護士は、「仕事による過労・ストレスが原因となって自殺に至ること」を過労自殺と定義し、過労自殺の多くは、うつ病などの精神障害に陥った末の自殺であるとしたのです。また、過労自殺した人が残す遺書には、必ずといっていいほど謝罪の言葉が残されていると、川人弁護士は指摘します。「もう何もやる気の出ない状況です。会社の人々には大変な心配、迷惑をかけている」「すいません。何も感じない人だったら、このようなことはしなかったと思います」「なさけないけどもうダメだ。ごめんなさい」etc……。 彼らを苦しめているのは“職場”なのに。なんと悲しい言葉なのでしょう。 1996年3月には、高橋まつりさんと同じ電通の男性社員(24歳)が自殺しました。それが仕事の過労によるものと認められたことをきっかけに、“過労死110番”に自殺相談が相次いだため、97年10月18日に“過労自殺110番”を設置したところ、1日だけで146件も相談が殺到します。 それまでのストレス研究が、 +職場の心理社会的要因や長時間労働とストレス症状の関係(心臓疾患、脳疾患、精神障害) +精神障害と自殺との関係 と分けていたのを、川人弁護士は「過労」という言葉で職場と自殺を結び付けました』、川人弁護士の功績は非常に大きいようだ。
・『長時間労働が直接「過労自殺」を生み出すわけではない  長時間労働は過労自殺の引き金になります。ただ、それ以外の要因、精神を病むようなストレスの影響が大きいので「長時間労働だけ」を規制しても過労自殺の撲滅にはつながりません。過労自殺する人の多くはうつ傾向やうつ病などの精神障害を発症しているとされていますが、長時間労働と精神障害との直接的な関係は「ない」とする研究結果も、少なくありません(量的調査による統計的な分析)。ただし、“overwork ”、すなわち「自分の能力的、精神的許容量を超えた業務がある」という自覚と精神障害との関係性は多数報告されています・・・そして、overwork には、実際の「長時間労働」が影響を与えることがわかっています。 つまり、「長時間労働」⇒「overwork」⇒「精神障害」⇒「過労自殺」という具合に、長時間労働は「過労自殺」のトリガーになる絶対的に悪しき要因なのです』、説得力がある説明だ。
・『「overwork」に苦しむ  「1日20時間とか会社にいると、もはや何のために生きてるのか分からなくなって笑けてくるな」(高橋まつりさんのツイート)「今から帰宅だが、どう見積もっても時間が足りないぞ?苦手なことがあると効率が悪くなりすぎるな…」(同上) 「体が痛いです。体がつらいです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」(大手飲食店勤務の26歳の女性社員)「家帰っても全力で仕事せないかんの辛い……でもそうせな終わらへんよな?」(英会話学校の22歳の女性講師) 彼女たちのつぶやきを振り返れば、いかに彼女たちが“overwork ”に苦しんでいたのかがわかるはずです。 新国立競技場の建設工事の現場監督だった男性社員(当時23歳)が、2017年3月に失踪し、遺体で発見された事件がありました。男性のひと月の残業時間は200時間を超え、ほぼ1日拘束(例:朝7時に出勤、翌日朝8時に退勤)が3回、休日は5日だけ、という過酷なものでした。友人に「もたない、やめたい」などと話していたそうです。 また、自殺した現場には、「突然このような形をとってしまい申し訳ございません。身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」と書いたメモも見つかっています。 重い責任、過重なノルマ、達成困難な目標設定などにより精神的に追いつめられ、長時間労働で肉体的にも極限状態に追い込まれる。過去10年で10倍も増えた過労自殺(未遂者も含める)をなくすには、「長時間労働」に加え、「職場のストレス要因」の軽減も必要なのです』、過労自殺が「過去10年で10倍も増えた」というのは、過労自殺の問題化に伴い認定基準が広がった可能性もあるとはいえ、やはりすごい増加だ。責任感が強い若者が、こんなことで命を絶つような悲劇は、早く終わりにしたいものだ。
タグ:過去10年で10倍も増えた過労自殺 「長時間労働」⇒「overwork」⇒「精神障害」⇒「過労自殺」 長時間労働が直接「過労自殺」を生み出すわけではない 過労自殺110番” 過労自殺の多くは、うつ病などの精神障害に陥った末の自殺 友人の職場では同時期に3名もの男性社員が自殺 過労死問題に長年取り組んできた川人博弁護士 過労死は長時間労働と直結していますが、過労自殺はその他のストレス要因の影響が大きく、長時間労働はあくまでも引き金です 「働かされすぎた人が「自殺」を選ぶ本当の理屈 長時間労働がトリガーとなり段階的に進む」 東洋経済オンライン 『「全員が志願だった」の違和感 命を消費する日本型組織に立ち向かうには 上官が佐々木さんの暗殺指令を出していた パイロットはほかの職種と違う部分があります。完全な技術職のため、空に飛んだら抑圧的な「上下」の関係が通じないのです。上官から無茶な命令を出されても、パイロットは空の上では個人でいられるのです 「個を殺す残念な日本型組織を抜け出そう 鴻上尚史×河合薫対談 その2」 牙を抜かれた若者がジジイ文化に取り込まれたり負けたりするのはある意味、しょうがないとも思います 若者は戦うための牙を完全に抜かれている この劇場は自分たちが借りた以上、自分がルールを作ればいい 最後には傘を差しだしてくれる人がいる」感覚 SOCとは究極の悲観論の上のポジティブな感情を指します 情はマイナスに働くと「気持ちさえあればどんなに腕が悪くても特攻の成果が上がる」といった方向に向かうのです 戦前の軍隊は典型的なブラック企業であり、ファクトを見ていませんでした。代わりに見ていたのが「情」です 敵前逃亡でフィリピンから一人で逃げたにもかかわらず、結局責任を取らないまま軍に復帰した司令官がいます 情でみるとき、100%いい悪いにならない 日本と米国の違いは「その後」です。米国ではとんでもない決定をしたリーダーはクビになったり、地位をはく奪されたりします。これに対して日本の場合、とんでもないリーダーでも身内だからとかばう面があります :「上が責任取らない」「現場のせいにする」は日本人だけではありません 戦後70年以上たってもそんな構造は変わってないと思います 上官たちは日本人が好きな精神性で、必死で忠を尽くしていれば頑張ればなんとかなるというわけです 、「撃ち落とされるまでは出撃を繰り返す」ほうがさらに効率はいいはずです 働き方改革 いざ死ぬときには「効率的な死に方をしたい」「意味のある死を迎えたい」と考えていたのだと思います (その18)(鴻上尚史×河合薫対談 その1「不死身の特攻兵」からみる「残念な職場」、その2 個を殺す残念な日本型組織を抜け出そう、河合 薫:働かされすぎた人が「自殺」を選ぶ本当の理屈) 飛行機で飛ぶことが好きで本当にワクワクしていた 男性は職場でたいへんなことがあっても、家庭ではくつろぐことができる面があります。女性は職場を出て家庭に戻ってからも、今度は家庭での仕事がある、などの理由が挙げられます ストレスがあることと満足感を持つことは必ずしも一致しないのです 男性、女性ともに家庭よりも職場のほうが低い。つまり職場のほうがストレスは小さいのですね 女性が「職場でポジティブな気分を感じている」のに対して、男性は「家庭でポジティブな気分を感じている」 9回出撃して9回生還した特攻兵、佐々木友次氏 不死身の特攻兵 残念な職場 「「不死身の特攻兵」からみる「残念な職場」」 対談その1 鴻上尚史 河合 薫 日経ビジネスオンライン
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医療問題(その17)(医学部が悩む「医者に適さない学生」の選別法、「予防医療で医療費を削減できる」は間違いだ 人生100年時代に向けた社会保障改革とは?、大学病院のブラック職場化を加速した「総合診療方式」研修の罠) [社会]

医療問題については、8月31日に取上げた。今日は、(その17)(医学部が悩む「医者に適さない学生」の選別法、「予防医療で医療費を削減できる」は間違いだ 人生100年時代に向けた社会保障改革とは?、大学病院のブラック職場化を加速した「総合診療方式」研修の罠)である。

先ずは、9月3日付け東洋経済オンライン「医学部が悩む「医者に適さない学生」の選別法 キップを手に入れる最大難関の負荷が重い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/235953
・『「医者にしておけば一生安泰。どの大学でもいいから何が何でも子どもを医学部に」「息子、娘を医者にして跡を継がせたい」 医学部への進学熱は相変わらずすさまじい。 裏口入学の発覚により、文部科学省の前科学技術・学術政策局長が受託収賄の疑いで逮捕されたのは夏休み前の7月4日のこと。その後は、女子受験生や多浪人生の得点を不当に低く加工していたことが発覚した。 これを受けて医学部人気に影響が出るかとも思われたが、その後に各大学で開かれた医学部進学セミナーやオープンキャンパスは高校生や保護者の熱気であふれ、東京医科大事件などどこ吹く風と言わんばかりだった・・・医学部を持つ大学は国公私立合わせて全国に82校ある。医学部ブームを背景に難易度が上がっており、最低でも偏差値は60近く必要だ。ただでさえ難関の医学部入試を突破しようと、医師にする(なる)レースはすでに中学段階から始まっている。 私立大の医学部をめぐっては、高額の寄付と引き替えの「裏口入学」が噂された過去がある。しかし、今はそういう不正な入学は考えにくい。というのも、仮に不正な手段で学力を伴わない学生を入学させても、その後の医師国家試験や6年間の厳しい勉強を突破できないからだ。 それだけに、今回の東京医科大事件は「考えられないことが起きた」という点で受験界や医学部関係者に衝撃を与えた』、医学部関係者のなかには既に十分に知っている者も多いと思われるので、「衝撃を与えた」は筆の滑り過ぎだろう。
・『中には医師に向いていない医学生も  東京医科大事件を待つまでもなく、医学部関係者は入試に頭を悩ませている。というのも、学力は高いが、医師になるモチベーションの低い子、勉強に熱意のない子、さらには患者とコミュニケーションがうまくとれない子が時々入学してくるからだ。 関西地方のある私立大の学長は「ただ医学部に入りたい、親に言われて何となくという子を入試でどう確認するか。(東京医科大のような)『差別』はしていないが、(受験者の適性や熱意をみる)『評価』はしている」と話す。 ストレート卒業率という指標がある。6年間の修業年限でどれだけの学生が卒業したか、という割合だ。上位は100%近く、下位は60%を切る。2017年度のワーストは帝京大学の57.9%だ・・・この数値が低い大学は、留年や退学、転部した学生が多いことを示している。 一見、留年や退学が多い大学は問題があるように思える。とくに、国家試験合格率を上げるために、学力の低い学生を卒業させず、国家試験を受けさせない操作が行われている、とされるだけに尚更だ。 だが、「全員を卒業させればいいものでもない。その分学生は勉強しなくなる」(前出の学長)。ストレート卒業率の低い大学は、医師になるべきではなく、医師にならないほうが良い学生を6年間の教育の過程で、適切にフィルタリングしていると見ることもできる。 ストレート卒業率100%はもちろん望ましいが、確率的にドロップアウトする学生が一定数出るのは仕方ないだろう。「進級のハードルをあげれば留年者が増え、緩めれば後で国家試験に響く」(中堅私大幹部)。ストレート卒業率をとるか、国家試験合格率をとるか。そのさじ加減が難しい』、確かに難しいジレンマのようだ。
・『医学部は「潰し」のきかない学部  医学部はいわば、医師になるという一本道しかない「職業訓練校」だ。医学部に合格しても、医師国家試験に合格しなければ「ただの人」。他の学部と違い、いったん入学すれば、医師を目指して突っ走るしかない、「潰し」の効かない学部だと言える。 何十倍もの志願倍率の医学部入試をくぐり抜けた後も、医学部の6年間は勉強漬けの毎日だ。卒業試験と国家試験の難関をクリアしたかと思うと、卒業後には研修が待ちかまえ、医師としてのスタートラインに立つのは早くて30歳近くになってから。 医師1人を養成するのには1億円かかると言われ、高額な学費だけではその費用をまかなえず、税金が投入されている。臨床実習も「大学病院のベッド数だけでは足りず、忙しい医療現場を抱える地域の基幹病院に協力いただいて、何とか回している。地域が総力あげて医学生を育てていると言っても過言ではない」(地方の国立大学教授)。 だから、医学部入学定員も国家試験の合格者数も、まるで社会主義国家のように国が管理することも正当化される。もし医師としての適性や意欲がない受験秀才がこの厳しい道に迷い込んだのなら、早いうちに方向転換したほうが、本人にとっても、社会にとっても幸せなことだろう』、その通りだ。
・『不幸なミスマッチを少しでも減らすために  国語を課して論理性をみたり、東京大のように面接を復活させたり。限界があると知りつつ、各大学が入試方法の試行錯誤を続けているのも、こうした不幸なミスマッチの確率を選考段階で少しでも減らすためだ。 東京医科大事件は、医学部入試のあり方に改めて世間の関心を向けさせた。もちろん、女性受験者の点数を加工するような差別は論外だが、長い医師キャリアを、医学部入試というただ一点だけで評価するのはいかにもバランスが悪い。医学部入試の合格率20~30%に対し、医学部国家試験の合格率は90%近い。入るのは難しいが、いったん入ればほぼ確実に医師のライセンスを受け取れる。そして、医道審議会の医師処分の甘さが指摘されるように、いったん医師になれば、よほどのことがない限り、医師免許を取り消されることはない。 医学部入試にかかる負荷の重さが、東京医科大事件の遠因となったように思える』、東京医科大事件に触れるのであれば、女性医師の問題を抜きにしては語れない筈だ。

次に、慶應義塾大学商学部教授の権丈 善一氏が9月14日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「予防医療で医療費を削減できる」は間違いだ 人生100年時代に向けた社会保障改革とは?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/237147
・『クイズをひとつ。 75歳の健康な高齢者と病弱な高齢者、いずれがこれから多くの医療費がかかると思いますか? こう問えば、少し考えて、健康な高齢者と答える人は結構いる。ところが、世の中のほとんどの人達は、予防医療で医療費を抑制できると信じているようでもある。この論が間違いであることは、少し考えれば分かるはずなのに、かなりの知識人もそう思いこんでしまうようなのである。これは私にとって、社会保障七不思議の一つである。 ところで、冒頭のクイズで「75歳の高齢者」という言い方をしたのは、昨2017年1月に、日本老年学会・日本老年医学会が合同で、高齢者は75歳からにするべしと提言したからである。両学会は2013年から合同WGを立ち上げて、高齢者の定義についていろいろな角度から議論を重ねてきたようである。 その結果、特に65から74歳は、以前よりは5歳から10歳は若返っていて、心身の健康が保たれており活発な社会活動が可能な人が大多数を占めていることが観察され、両学会は、高齢者という言葉は75歳から使うべきであると主張している。 一昨年末には、リンダ・グラットン達の『LIFE SHIFT―100年時代の人生戦略』が出され、大反響であった。彼女らは、最新の医学研究を踏まえて、人々は健康に長く生きる時代になったことを述べていた』、私も「予防医療で医療費を抑制できると信じている」口であったので、間違っている理由を知りたいものだ。
・『医学会が言う若返り現象と年金  医学的にみて多くの人が若返り、人生100年になったのであれば、社会制度はこの動きと整合性を持つようにするのは自然である。社会保障、特に年金の世界で有名なロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのニコラス・バー教授が言うように、「問題は、人々が長生きしていることではなく、あまりに早く引退していること」なのであり、元世界医師会会長のマイケル・マーモットの「老年期の貧困から抜け出す道の一つは、より長く働くことだ」も真理そのものであろう。 こうした問題意識に立ち、政界・官界は、日本での引退時期を遅らせようと努力している。このことは、人が若返ったという誠に寿ぐ出来事に即した誠に望ましい動きである。 さて、社会保障の中で最も大きな規模を持つ年金保険に関しては、そうした動きはそれでいい。つまり、ある人が生涯で受給できる年金給付総額を不変のまま、なるべく遅くから受給し始めてもらえるように繰下げ受給を勧め、できれば保険料拠出期間の延長ができるように雇用制度の改革を図る。こうして、年金を受給し始めた後の月額の給付水準を引上げる。 同時に人生100年時代においては、「より長く社会参加し続けよう!」という優先順位が極めて高い理念に照らし合わせて矛盾するようなメッセージ、つまり引退を促すメッセージを持つ在職老齢年金などは見直していく。これらは、この国の持続可能性を高めるために成し遂げなければならないことである・・・では、社会保障では年金保険に次ぐ給付規模を持つ医療に対してはどうであろうか。人々が若返り、人生100年と謳われるように、若返って健康で元気になったから人生が長くなったのは医学的な事実である。となれば、医療費は減るのであろうか?実はそうではないというのが、この方面の専門家が共通して持つ知見である。ところがそうした専門家の知見が世の中にはおもしろいほどに伝わっておらず、そこで時々、私は冒頭の質問をせざるを得なくなるのである。 なお、若返ったら医療費が減ると考えるロジックと、予防で未病期間が長くなれば医療費を減らすことができると信じるロジックは共通するところが多い。ゆえに以下では、主に予防で医療費抑制をという話について論じていこう』、ようやく知りたい部分になったようだ。
・『なぜ予防で医療費は減らないか?  このあたりは、一まとまりの論が必要となるので、2017年1月に『日本経済新聞』のやさしい経済学「予防医療で医療費を減らせるか」・・・に連載されていた論文を要約するかたちで、紹介しておこう。なお、次のような事実認識の下に、この国では今、限られた資源を有効に使うために医療提供体制の改革が進められていることは押さえておいてもらいたい・・・
 +予防医療は、国民に健康長寿という何ものにも代えがたい便益をもたらします。ですから、国・地方自治体や医療従事者は今後も引続き、予防医療を積極的に推進すべきだと考えています。しかし、それにはお金がかかることも事実です。
 +これまでの医療経済学の多くの研究によって、予防医療による医療費削減効果には限界があることが明らかにされています。それどころか、大半の予防医療は、長期的にはむしろ医療費や介護費を増大させる可能性があります。そのことは医療経済学の専門家の間では共通の認識です。
 +厚生労働省は疾病予防対策によって死亡前の「不健康な期間」の短縮、つまり「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」を実現できれば、医療介護費を削減できるとしています。このロジックはもっともらしいのですが、実現できるとは限りません。健康寿命が増加しても、その後の「不健康な期間」が短縮できるという医学的な根拠はないのです。
 +メタボ健診によって高額の医療費や介護費がかかるタイミングが先送りされるのであって、一生涯の総額で見れば医療費・介護費の抑制につながるわけではありません。
 +わが国は今後も高齢化が進み、医療費や介護費は増大し続けるでしょう。それを予防医療によって抑制することはほぼ不可能と考えられます。医療費の抑制はその他の方法を講じる必要があります。医療サービスの無駄や過剰な供給があれば、それを見つけて抑制することが必要です。同等の効果であれば、より費用の低い医療サービスが提供されるべきです。
 +それらを実践しても、なお残る医療・介護費の自然増加分は、その負担を国民全体で分け合う必要があるでしょう』、なるほど一応は分かる気がするが、釈然としない点も残る。
・『ここに、「先送り」というキーワードがあるが、年金の場合は、受給開始の「先送り」によって、公的年金保険が持つ長生きリスクへの対応力を高めることができる。では医療の場合はどうか。禁煙について考えると分かりやすいのかもしれない。多くの医療経済学・公衆衛生研究では、禁煙は短期的には医療費を下げるが、長期的には余命延長により生涯の医療費を増加させることが確認されているのである。 人は死すべきモータルな運命にある。このことがどうしても医療、医療費を語る上では忘れられがちとなる。予防によって、もし政策の意図どおりに医療給付が先送りされることがあるのならば、税の投入割合の高い高齢者医療費は増加し、増税の必要性は高まると考えるのが普通である。つまり、歯科と介護はその限りではない側面を持つが、予防によって医療費の抑制、ひいては負担の抑制とはいかないのである』、予防が「医療給付の先送り」というのは、疑問も残る。健康寿命を全うして「ピンコロ往生」という理想形で死ねれば、医療給付は殆どないままなのではないか。
・『歴史的文脈から見た健康寿命、生活習慣病  若返りや予防と医療費の関係を見えにくくしているのは、「健康寿命」という言葉なのかもしれない。健康寿命の指標は、『国民生活基礎調査』の中で「あなたの現在の健康状態はいかがですか」と問い、「よい、まあよい、ふつう、あまりよくない、よくない」を答えてもらい、それに年齢補整を施して作られている。疾患の有無、医療機関の利用状況とは関係のないものである。 どうして、こうした極めてラフな指標でありながらも政策の重要な指針として表舞台に出てくるようになってきたのか。その事情を理解するためには、予防医療、健康寿命をめぐる歴史的な文脈を知っておく必要がある。 2006年の医療保険の大改革の頃、公的な医療給付費を強く抑制しようとする動きがあり、彼らは医療給付費の伸びをGDPの伸びと連動させる伸び率管理制を提案してきた。この動きを受けた厚生労働省は、生活習慣病対策で2025年には医療費を2兆円抑制できるとする将来の見通しを公開して反論をすることにより、2006年当時、どうにかGDP連動の伸び率管理を回避することができた。 もちろん当時から、予防で医療費を抑制するという話にはエビデンスがないとの批判はあった。しかし厚労省は、その後、機械的な医療費抑制策を避けるために、その方向に進んでいかざるを得なかった。 生活習慣病対策(特定健診・特定保健指導)は、現在ではその医療費抑制効果額は、目標受診率などが達成されていることを想定した粗い試算に基づけば医療費で200億円ほど(国費はその約4分の1)になるとされている。一方、特定健診・保健指導実施のための予算額は毎年度国費で226億円程度が計上されている。つまり大目に見積もられた可能性が高い効果額でさえ、2025年目標値2兆円の1%にすぎず、そのための予算は医療費抑制効果額を上回っているのである(国費に限れば226億円をかけて50億円ほどの抑制効果)。 日本福祉大学前学長の二木立名誉教授は、「『健康寿命』という概念には、認知症や重度の障害・疾病を持っており『健康』ではない人の生存権を侵害する危険がある」と指摘してきた・・・この危険は、「生活習慣病」という言葉にもある。 かつての「成人病」という用語が「生活習慣病」に変えられたのは、1996年に公衆衛生審議会がとりまとめた「生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について(意見具申)」に基づいてのことである。この意見具申には、「但し、疾病の発症には、『生活習慣要因』のみならず『遺伝要因』、『外部環境要因』など個人の責任に帰することのできない複数の要因が関与していることから、『病気になったのは個人の責任』と言った疾患や患者に対する差別や偏見がうまれるおそれがあるという点に配慮する必要がある」との極めて重要な注意喚起がなされていた。 ところが、この国ではそうした配慮はほとんどなされてこなかった。したがって今では、生活習慣病に分類されている疾病にかかる人には、後ろめたさ、スティグマが意識されると共に、外からはそうした病気にかかったのは「自己責任」であるとの考え方に基づいた発言や、提言が目立ち始めている』、確かに、安易な自己責任論に陥らないように気を付ける必要はありそうだ。
・『世論の末端と小学生の遠足  さらには国を挙げての健康増進、健康長寿というムードは、残念ながら少なからぬ人の中では優生思想とも容易に結びつくようでもある。このあたりの懸念については、私は次の文章を書いているので、紹介しておこう。 「国策として健康増進」というような旗振りを政府がやろうとすると、世論の末端のところでは,良からぬ大きなうねりが起こるんですね。こうした世論のうねりのことを、僕は、小学生の遠足とか小学生の行進と呼んできたのですけど、先頭に少しのズレが生じると、最後尾の末端では,子どもたちは走らないと追いつけないほどの大きなうねりが生じるものなんです。 戦前に生まれ、過去にそうした時代を生きた人たちが、最近の、たとえば先ほど紹介した『平成26年版厚生労働白書』の総タイトル「健康長寿社会の実現に向けて」を見て、思い出したくない幼い日を記した文章を寄せたくなるのも分かります・・・最後に――研究者の世界では今、疾病の発症が、生活習慣要因の他に遺伝要因、外部環境要因など個人の責任に帰することができない複数の要因が関与していることを捨象した「生活習慣病」という用語の見直しを行うべしとする動きもある・・・そして多くの人達には・・・この国の医療政策では、2013年の社会保障制度改革国民会議以降進められている提供体制の改革を軸に据える医療介護の一体改革こそが優先課題であることを、わかっておいてもらえればと思う』、「「生活習慣病」という用語の見直し」には賛成だが、「医療介護の一体改革」について説明もないのに優先課題、と決めつけるのはどうかと思う。

第三に、ライターの奥田由意氏が9月25日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「大学病院のブラック職場化を加速した「総合診療方式」研修の罠」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/180357
・『東京医科大学の女子受験生への一律減点が明らかになった件について、女性差別の背景には、大学病院の勤務医の過酷な長時間労働の実態があることや、大学病院の人事権を司る医局が一般企業とは違う原理で動いている現状を前回・・・レポートした。9月3日に開かれた厚生労働省の第9回「医師の働き方改革」有識者検討会ではようやく残業時間規制のあり方について議論が始まったが、今回はそもそも医局が人員不足に陥った背景や、女性医師に特有の状況、今後の展望などについて続報をレポートする』、なるほど。
・『東京医科大学の女子受験生への一律減点を行っていた件を受け、文部科学省は全国の医科大学や大学医学部に対し、入試の実態について、緊急調査を行った。ほかの学部に比べ男子優位の傾向が明らかになったが、現時点では東京医科大学以外の全ての大学が「得点操作」については否定しているという。 文科省の調査はさらに続いているなか、実際に前回の記事で挙げたアンケートからもうかがい知れるように、女性を合格させたがらないという姿勢は多くの医学部で見受けられるようだ。その要因となっている大学病院に勤務する医師の過酷な長時間労働の実態については、前回の記事・・・で言及した』、その後、得点操作を認めた大学はいくつか出たようだ。
・『新たな研修「スーパーローテート」必修で大学病院の医局から人材が流出  大学病院で、なぜ「長時間労働に耐えられる」医師が必要になるのか、前回挙げた点以外にもさまざまな理由があるようだ。 ひとつの契機は2004年に遡る。それ以前は、国家試験に合格した医師の多くが、自分が卒業した大学の医局に属し、それぞれの専門の科に配属されて、研修医として研鑽を積むのが一般的だった。内科のなかで、例えば循環器を選択した医師が、同じ内科の医局内の消化器について研修をする機会はあっても、外科や精神科の臨床研修を受けることは基本的にはなかった。 それが2004年から始まった新医師臨床研修制度では、初期研修として2年間、主要な科を全て順番に経験する総合診療方式(スーパーローテート)の研修が必修となった。内科系、救急、地域保健に加え、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科からも2科目選択し、幅広い診療能力を養うものだ。同時に、2004年からは、自分の出身大学以外の希望する病院での研修を志望することも可能になった。 この制度によって、地方大学の医学部や医科大学を卒業した医師が、母校の医局ではなく、都市へ流出したり、都市部の大学の医局でも、別の病院にとられてしまったりという事態を招いた。また近年では、必ずしも医局に属さない医師も増えつつある。 医局での人員確保が従来よりも困難になり、その分人数が減ることは、医局の弱体化を意味する。さらに、人員不足から勤務医の長時間労働を前提としなければ、ますます業務がまわらなくなる。 かたや医局には有給のポストが少ない。収入は市中病院やクリニックなどのアルバイトで補填し、常勤と同じ勤務をこなしながら、手当が支給されない無給医もまた、その長時間労働のシフトを担う。この2004年のスーパーローテートの初期研修制度により、長時間労働の常態化がますます進み、「離職可能性の高い」女子よりも男子を合格させ、医局に採りたがる風潮が強まったと見ることもできる』、「医局の弱体化」といっても、無給医などという非常識な制度に支えられたものであれば、本来は、解体的見直しが必要な筈だ。
・『医局の弱体化を受け、「新専門医制度」で医局の復権へ  ところで、こうした医局の弱体化が進むなか、2018年4月から、新専門医制度という医師のキャリアの積み方に影響を与える新制度が始まった。 従来、国家試験の合格者は2年間スーパーローテート方式の初期研修を受けたあと、次の3年ないし5年で、自分で選んだ科の専門医となるべく、研修を受け、資格審査や試験を経て専門医の認定を受けていた。専門医の認定は、学会ごとに行われていた。 これを新専門医制度では、中立的な第三者機関である「日本専門医機構」が認定することになる。そのための研修プログラムは大学病院や都市部の規模の大きい病院でのみ実施され、その数は絞られている。なお、都市部に医師が偏りすぎないように、都市部の病院での受け入れ数を制限するなど、調整も行われる。 これまで初期研修を行っていた病院は約1100あるが、新専門医制度の研修が行える病院は大学病院を含め300から400しかない。このことから、新専門医制度の実施は、大学病院の医局の復権をもくろんだものという見方もある。 以上が医局の事情であり、長時間労働を招くひとつの背景である』、発言力が強い大学病院の医局が「新専門医制度」で復権を目論んだとは、けしからん話だ。
・『なぜ女性医師は二極化するのか  さて、ここで、女性医師に特有の状況についても触れておきたい。女性医師の働き方では、二極化が進んでいる。長時間労働が前提となる勤務医を諦めて非常勤バイトに徹するなどしてキャリアから離れてしまうか、あるいは「男性並み」に働くかという二極化だ。 結婚して子どもがいても、外科や循環器などの「ハード」な科で働き続ける女性医師もいるが、結婚せずにハードな科の業務に邁進するか、あるいは結婚して出産や子育てを前提に、眼科や皮膚科のような急変が少なく比較的ハードではない科を選択するという二極化もある。 医師向け人材紹介会社エムステージが運営する、女性医師対象のウェブマガジンjoy.net編集長の岡部聡子さんは、これまで同サイトの取材で120名、医師担当のキャリアプランナーとして100名、計220名にのぼる女性医師と向き合ってきたなかで、女性医師の働き方が二極化しがちな要因をいくつか挙げてくれた。 まず、ロールモデルが少ないことだ。2014年の日本医師会の調査によると、学会役員の女性比率は2.7%。大学医学部教授以上は2.5%といずれも低い。ちなみに、経済産業省の調査では、2017年の上場企業の女性役員は3.7%である。もちろん数合わせをすればいいという話ではないが、まず学会役員になっている女性医師の絶対的な数が少ないという事実がある』、なるほど。
・『女性医師の結婚相手は7割が医師  医師同士の結婚は離婚しやすい?  二点目は、女性医師が結婚する場合、相手は約7割が医師である(ちなみに男性医師の結婚相手が医師である割合は約2割)ことだ・・・医師になると、忙しさから出会いの機会が少ない。そうした理由もあり、大学の同級生や、初期研修などの研修医時代に知り合って結婚する例が多いが、joy.netの行ったアンケートに「研修が始まると非常に忙しくなると先輩医師からのアドバイスがあり、学生のうちに入籍、披露宴をすませた。正解でした」(30代後半・内分泌科)という声が寄せられているように、既婚女性医師には早婚傾向もあるそうだ。 また、代々医師という医師家庭も多く、女性医師の両親は娘の結婚相手に医師以外を認めないという例も少なくないという。 そして、医師同士の家庭に子どもが生まれると、一般企業以上に、夫と妻の双方が仕事を調整することが難しい。多くの場合、女性が仕事を調整するか、離職せざるを得なくなる。そうなると、女性が「キャリアを諦めなくてはならなかった」と思い、順調にキャリアを積んで出世する夫に嫉妬や怨嗟を募らせることも一因で、離婚することもあるそうだ。 医師の母親世代は、専業主婦である場合が多く、夫や子どもや家事を優先している姿を見ていて、男性医師が結婚した女性医師の妻にも同じ「献身」を求めて離婚に至るケースもある。 岡部さんはさらに、女性医師で出産後も子育てと常勤医としてのキャリアを両立させている人は結婚相手が医師以外の職業であるケースが多いと言う。 「当直中、授乳時間になったら夫に子どもを連れてきてもらうように頼むなど、大変な思いをして育児期間を乗り切るなど、相手が長時間勤務の医師ではなかったから、協力して育児ができたという医師もいる」と話す。 もちろん代々医師の家庭、医師同士の家庭であっても、それぞれに事情も考え方も違うだろう。医師同士の家庭でうまくいっている例もある。 ただ、少なくとも、一般企業よりは女性が多様な働き方を選びにくい現場であることは確かだ。そして、もちろんそれは男性医師にとっても同じである。 現在厚生労働省のもとで、2017年8月から、有識者による、医師の働き方改革に関する検討会が10回にわたって行われており、2019年3月末をめどに最終報告がまとまる予定だ。ここでは聖域となっていた、残業時間の上限がどのように設定されるのかがカギになるだろう。2018年3月末に行われた中間報告では、医師の業務の特殊性を考え、いわゆる過労死ライン(労災認定基準)の1ヵ月100時間・2~6ヵ月の各月平均で80時間を上限にすることについては、慎重に考えるべきという意見が出ている。 ここで言われている医師の業務の特殊性とは、前回の記事でも指摘した応召義務に基づく「医師は24時間365日医師であるべき」といった医師・患者双方の意識のあり方や、医師自身の生命を預かっているという職業倫理、研修医の期間が労働でもあり、研修や研鑽でもあり、研究でもあるということなどを指す。 しかし、医師の業務の特殊性といっている限り、患者になる可能性のあるわれわれも含めた双方の意識改革は進まない。長時間労働は正当化され続けてしまうのではないか』、「医師の業務の特殊性」を振りかざす人々は、恐らく、長時間労働や無給労働を求める病院の経営サイドなのだろうが、彼らの発言力が圧倒的に強いのではと推察される。
・『新制度をつくるなど、 多様な働き方の萌芽も  とはいえ、希望もある。 前述したとおり、医局に属し、専門医になることだけが医師としてのキャリアではないと考える若手医師も増えているようだ。 ある産業医によると、かつては現役を引退した医師が担うものと思われていたり、片手間のアルバイトと思われがちだったりした産業医に、健康経営に参画したいという新しいやりがいを求めて、志願する医師も出てきているという。 岡部さんも「例えば、子育て、介護などの理由により、それまでと同様の勤務内容では勤務継続が困難で無給医となってしまっていた医師のために、短縮勤務制度の有給ポジションとして、准修練医制度を定めた東邦大学の例もあります」と、変わりつつある現場があることを指摘する。 前述した「医師の働き方改革」に関する検討会の中間発表を受けて、厚生労働省は2月に、医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組みを各医療機関でできる範囲で行うことを求めた。その内容とは、労働時間の管理、36協定の自己点検、長時間労働をしている医師への面談など産業保健のしくみの活用、一部の医師の業務を医師以外の職種で分担するタスクシフティング、女性医師への支援、そのほか当直明け勤務負担の緩和など各医療機関の状況に応じた取り組みである。 そして、5月28日から6月11日にかけて、取り組みがどのくらい行われているかという調査もなされた。調査に回答した全国の1193病院中、何らかの取り組みをしているのは63%という結果となった。実際にどのくらい進んでいるのかは各病院によっても濃淡があるだろう。 また、アンケートに答えるだけでは、実効性が薄いという指摘もあるかもしれない。しかし、少なくとも、このような調査が行われ、数字を出さなければならない状況になることで、変わらなければならないといういい意味での圧力にはなるだろう。 男性医師であれ、女性医師であれ、結婚していてもいなくても、子どもがいてもいなくても、健康に働けることこそが、医師にとっても患者にとっても必要なはずだ』、産業医については到底やりがいがあるとは思えないので、若い医師が希望したとすれば、何か特殊要因があるのだろう。厚労省がいくら取り組んでも、抵抗勢力に押し戻されそうだが、若干なりとも前進することを期待しよう。 
タグ:医療問題 (その17)(医学部が悩む「医者に適さない学生」の選別法、「予防医療で医療費を削減できる」は間違いだ 人生100年時代に向けた社会保障改革とは?、大学病院のブラック職場化を加速した「総合診療方式」研修の罠) 東洋経済オンライン 「医学部が悩む「医者に適さない学生」の選別法 キップを手に入れる最大難関の負荷が重い」 医学部への進学熱は相変わらずすさまじい 中には医師に向いていない医学生も ストレート卒業率 数値が低い大学は、留年や退学、転部した学生が多いことを示している 国家試験合格率を上げるために、学力の低い学生を卒業させず、国家試験を受けさせない操作が行われている 進級のハードルをあげれば留年者が増え、緩めれば後で国家試験に響く 医学部は「潰し」のきかない学部 不幸なミスマッチを少しでも減らすために 入試方法の試行錯誤を続けている 医学部国家試験の合格率は90%近い 権丈 善一 「「予防医療で医療費を削減できる」は間違いだ 人生100年時代に向けた社会保障改革とは?」 高齢者という言葉は75歳から使うべきであると主張 医学会が言う若返り現象と年金 人生100年になったのであれば、社会制度はこの動きと整合性を持つようにするのは自然 政界・官界は、日本での引退時期を遅らせようと努力 なぜ予防で医療費は減らないか? 予防医療 それにはお金がかかることも事実 予防医療による医療費削減効果には限界がある 大半の予防医療は、長期的にはむしろ医療費や介護費を増大させる可能性があります 健康寿命が増加しても、その後の「不健康な期間」が短縮できるという医学的な根拠はないのです メタボ健診によって高額の医療費や介護費がかかるタイミングが先送りされるのであって、一生涯の総額で見れば医療費・介護費の抑制につながるわけではありません 高齢化が進み、医療費や介護費は増大し続けるでしょう。それを予防医療によって抑制することはほぼ不可能 医療サービスの無駄や過剰な供給があれば、それを見つけて抑制することが必要 禁煙は短期的には医療費を下げるが、長期的には余命延長により生涯の医療費を増加させることが確認されているのである 歴史的文脈から見た健康寿命、生活習慣病 特定健診・保健指導実施のための予算額は毎年度国費で226億円程度が計上 効果額でさえ、2025年目標値2兆円の1%にすぎず、そのための予算は医療費抑制効果額を上回っているのである(国費に限れば226億円をかけて50億円ほどの抑制効果 健康寿命』という概念には、認知症や重度の障害・疾病を持っており『健康』ではない人の生存権を侵害する危険がある 生活習慣病 病気になったのは個人の責任』と言った疾患や患者に対する差別や偏見がうまれるおそれがある 奥田由意 ダイヤモンド・オンライン 「大学病院のブラック職場化を加速した「総合診療方式」研修の罠」 新たな研修「スーパーローテート」必修で大学病院の医局から人材が流出 総合診療方式(スーパーローテート)の研修が必修 自分の出身大学以外の希望する病院での研修を志望することも可能になった 医局での人員確保が従来よりも困難になり、その分人数が減ることは、医局の弱体化を意味 人員不足から勤務医の長時間労働を前提としなければ、ますます業務がまわらなくなる 無給医もまた、その長時間労働のシフトを担う 長時間労働の常態化 新専門医制度」で医局の復権へ 研修プログラムは大学病院や都市部の規模の大きい病院でのみ実施され、その数は絞られている 大学病院の医局の復権をもくろんだものという見方 なぜ女性医師は二極化するのか 女性医師の結婚相手は7割が医師  医師同士の結婚は離婚しやすい? 新制度をつくるなど、 多様な働き方の萌芽も 産業医に、健康経営に参画したいという新しいやりがいを求めて、志願する医師も出てきているという 短縮勤務制度の有給ポジションとして、准修練医制度を定めた東邦大学の例 厚生労働省は2月に、医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組みを各医療機関でできる範囲で行うことを求めた
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防衛問題(その9)(F2後継戦闘機の選定次第で自衛隊の「米軍下請け化」が進む!?、米軍が日本防衛に来援しない4つの理由 核の傘は機能しない、友人と酒を飲むのもNG…自衛隊の秘密情報部隊「別班」をご存じか 帝国陸軍から引き継がれた負の遺伝子) [国内政治]

防衛問題については、9月16日に取上げた。今日は、(その9)(F2後継戦闘機の選定次第で自衛隊の「米軍下請け化」が進む!?、米軍が日本防衛に来援しない4つの理由 核の傘は機能しない、友人と酒を飲むのもNG…自衛隊の秘密情報部隊「別班」をご存じか 帝国陸軍から引き継がれた負の遺伝子)である。たお、タイトルから「自衛隊が抱える問題」はカットした。

先ずは、9月26日付けダイヤモンド・オンライン「F2後継戦闘機の選定次第で自衛隊の「米軍下請け化」が進む!?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/180401
・『ロッキード事件やダグラス・グラマン事件など、航空機の受注合戦が世を騒がせることは珍しくない。年末に向け大詰めを迎える自衛隊の次期戦闘機の選定にも、名だたる軍需企業が受注に意欲を示しており、決定までには紆余曲折ありそうだ。 政府が調達するのは2030年代の退役が見込まれるF2戦闘機(保有機数約90機)の後継機。機種の決定が迫り、国内外の軍需企業間でつばぜり合いが激化していると思いきや、表面的には不気味なほど静かだ。 防衛省関係者は「武器を買わせたい米トランプ政権の圧力がある上、政治家も省内も国産派と対米重視派に分かれており、自説を主張するのは危険だ」と声を潜める。 こうしたぴりぴりムードの中、有力視されているのが米ロッキード・マーチンの提案だ。 最強の戦闘機と評される米軍のF22に、高い情報処理能力を持つF35のシステムを搭載した戦闘機を日米共同開発するというもので、「実績もあり無難に見える」(政府関係者)。 しかし、この提案には懸念を持つ防衛関係者が多い。自衛隊が武器の調達で米国に依存しており、戦闘機は世代交代するごとに技術の「ブラックボックス化」が進んできた。今年から自衛隊が導入し始めたF35に至っては、日本が独自に技術開発したり、改良したりする権限はほぼない』、技術の「ブラックボックス化」とは困ったことだ。ただ、F35は既製品を購入したからやむを得ないとしても、共同開発するのであれば、多少は改良など出来そうな気もする。
・『せめて改良の自由は必要  日本がかなり自由に改良できたF2が退役し、米国が認めた改良しかできない戦闘機ばかりになれば、その弊害は小さくない。 戦闘機は50年にわたり運用されることもあり得る。その間、小まめに改良できなければ早く陳腐化するし、作戦の柔軟性も失われる。敵国の知らぬ間に搭載可能なミサイルが増えているといった未知の能力向上がないとみられてしまえば、自衛隊の抑止力は弱まる。 そのため、「外国製品を多用してもいいから、性能や役割を柔軟に変えられる戦闘機を日本主導で開発するのが望ましい」(自衛隊元幹部)との声が高まっているのだ。 ただ、こうした日本主導派の主張には弱みがある。 戦闘機開発の経験や米国との交渉力に乏しい日系企業が取りまとめ役になれば、開発コストが膨らみかねないのだ。 このような指摘に日本主導派はデータで反論する必要がある。三菱重工業が民間航空機の製造で培ったノウハウを戦闘機に適用すれば、どれだけコストを抑えられるかといった具体的な打ち返しがなければ、米国の政治力に押し切られるだけだ。 ロッキード案のコストも1機200億円超とみられ、安くはない。日本主導の開発の可能性を追求した上で戦闘機を選ばなければ、自衛隊の「米軍下請け」化がますます進むことになるだろう』、「未知の能力向上がないとみられてしまえば、自衛隊の抑止力は弱まる」とは、初めて知ったが、もっともらしい話だ。三菱重工業のMRJの手こずりを見ていると、戦闘機で使えるようなノウハウを保有しているかは、いささか疑問だ。自衛隊内で国産派と対米重視派に分かれているようでは、米国との交渉力など期待できそうもない。

次に、9月28日付け日経ビジネスオンラインが掲載した元駐イラン大使、元防衛大学校教授の孫崎享氏へのインタビュー「米軍が日本防衛に来援しない4つの理由 核の傘は機能しない」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082800235/092700008/?P=1
・『政府は今年末をめどに「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を改訂する。前回の改訂から5年。この間に北朝鮮は核・ミサイルの開発を大幅に前進させた。トランプ政権が誕生し、米国の安全保障政策は内向きの度合いを強める。 改訂に当たって我々は何を考えるべきなのか。外務省で国際情報局長や駐イラン大使を歴任した後、防衛大学校教授を務めた孫崎享氏は「米軍が来援しない事態も考えるべき」と訴える』、孫崎氏が防衛大教授だったとは初めて知った。
・『――今回、「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を改訂するに当たって、孫崎さんが重視するのはどんな点ですか。 孫崎:自民党が防衛大綱の改訂を発案した時と状況が変わってきました。その不整合をどのようなロジックで埋めるかに注目しています。 小野寺五典防衛相が今年1月に防衛大綱の改訂を表明した時、同相はその理由を「北朝鮮の核・ミサイル技術の進展への対応」としていました。しかし、6月に米朝首脳会談が実現し、当時とは状況が変わっています。非核化が進む様子はないものの、ミサイルの発射や核実験は行われていません。米国が北朝鮮に先制攻撃を仕掛ける可能性は大きく低下しました。 ――その流れを反映して、地上配備型のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」不要論が一部で出ていますね。 孫崎:そうですね。対中国でも状況が変わってきています。政府は島しょ部への攻撃への対処能力を高める方針を掲げていますが、中国の海洋進出をめぐる日中間の緊張も緩和する方向にあります。安倍晋三首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席は9月にウラジオストクで会談した際、安倍首相が10月中旬に訪中することで合意しました。これらとは別に、新しい防衛大綱は国際貢献に対してこれまで以上に積極的な姿勢を打ち出すことになるでしょう。現行の防衛大綱が閣議決定されて以降の大きな変化として、安全保障法制が2016年3月に施行されたことがあります。 ――同法制によって、国連PKO(平和維持活動)ではない国際的な平和協力にも自衛隊が参加できるようになりました。その第一弾として、エジプト東部シナイ半島の停戦監視に司令部要員を派遣することが検討されています。 孫崎:憲法改正に関わる文言が加わるかどうかにも注目しています。安倍首相が9月20日、自民党総裁選に勝利し、憲法改正に取り組む意向を改めて表明しました。これに関連する文言が防衛大綱に盛り込まれることもあり得ると思います。今年は自然災害が相次ぎました。この機をとらえ「自衛隊の災害対応をよりスムーズにする」ことを口実に、緊急事態条項を憲法に加える提案が入るかもしれません』、新しい防衛大綱に最近の国際情勢変化がどこまで織り込まれるのかは、確かに注目点だ。「緊急事態条項を憲法に加える提案」が入るようであれば、大変なことだ。
・『米軍が日本の防衛に駆けつけない4つの理由  ――孫崎さんは、防衛大綱を改訂するに当たって、新たに盛り込むべき点や修正すべき点、削る点として何が重要とお考えですか。 孫崎:現行の防衛大綱は現在書かれていること以外の選択肢を挙げていない点が問題です。政府が選択した防衛政策が正しいことを証明するためにも、他の選択肢を提示し、比較検討する必要があるのではないでしょうか。 ――例えばどんな選択肢がありますか。 孫崎:日米同盟が機能せず、日本が他国から攻撃を受けても米国が来援しない状況です。私はこの可能性が極めて高いと考えています。 ――米国の首脳が繰り返し、「尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲内にある」と発言しているのでは。2010年に尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の監視船に衝突する事件が起きました。この時、ヒラリー・クリントン国務長官(当時)が尖閣諸島が適用範囲であることを認めました。2012年に日本政府が魚釣島を購入し、中国が反発した際には、カート・キャンベル国務次官補(同)が同様の発言をしています。2014年にはバラク・オバマ大統領(同)が安倍首相との首脳会談の後、同趣旨の発言をしました。 孫崎:おっしゃる通りです。米国が助けに来ない理由は大きく4つあります。米軍が来援しないと考える理由の第1がその安保条約の規定です。米国が日本を防衛すると定めたとされる第五条を見てください。 第五条:各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。 「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」とあります。米憲法は、宣戦布告の権限を議会に与えています。政府ではありません。したがって、時の米国政府は同条に則って日本を防衛すべく議会に諮るかもしれませんが、そのあとの保証はありません。 議会は、米国人の若者の血を尖閣諸島防衛のために流させることを決して許容しないのではないでしょうか。つまり、安保条約の適用範囲にあることと、尖閣諸島を防衛することとは別の話なのです。米政権は安保条約を適用するとは言っていますが、軍事行動を起こすとは言っていません』、米国憲法上の制約は、確かにその通りだ。日本のメディアもこの点を報じるべきだ。
・『米国は核の傘を提供しない  第2は米国が中国に対して核兵器を使用できないことです。米国と中国は今、「相互確証破壊」と呼ばれる状態にあります。確証破壊というのは、敵の第1撃を受けた後も、残った戦力で相手国の人口の20~25%に致命傷を与え、工業力の2分の1から3分の2を破壊する力を維持できていれば、相手国は先制攻撃を仕掛けられない、というもの。米国のロバート・マクナマラ国防長官が1960年に核戦争を抑止する戦略として提唱しました。この確証破壊を2つの国が相互に取れる状態が相互確証破壊です。敵対する両国はともに、核による先制攻撃ができません。中国と相互確証破壊の状態にある米国が、尖閣諸島を防衛するために核兵器を使用すれば、それは中国に対する核先制攻撃となります。中国が核で報復するため、米国も多大な被害を受けることになる。巷間、「尖閣諸島のためにニューヨークを犠牲にはできない」と言われる状態が生じるわけです。 ――米国は核兵器を搭載する原子力潜水艦を太平洋のあちこちに遊弋(ゆうよく)させているといいます。他方、中国も南シナ海に、核ミサイル搭載潜水艦を2隻配備しているといわれる。どちらも海中を移動するため、その位置を捕捉しにくく、第1撃が実行されても“生き残る”可能性が大とされています。 孫崎:そうですね。こうした生き残る核兵器がある以上、米国が日本に核の傘を提供することはできないのです』、「相互確証破壊」とは初めて知ったが、言われてみれば、その通りだ。
・『第3は、東シナ海から南シナ海へと至る海域で、米国が通常兵器で参戦することも難しくなっていることです。米シンクタンクのランド研究所が「台湾(もしくは尖閣諸島)をめぐって米中が戦争すれば米国が負ける可能性がある」とのレポートを発表しました。これによると、中国は沿岸におよそ1200発の短中距離弾道ミサイルとクルーズミサイルを配備している。しかも、その命中精度は非常に高くなっています。中国はこれらを使って、沖縄・嘉手納にある米空軍の基地を攻撃し、滑走路を使用不能にするでしょう。そうなると、制空権を確保するための米軍の空軍能力は著しく低減します。横田や三沢の基地から飛ばすこともできるでしょうが、途中で給油する必要があります。米空母も、これらのミサイルを恐れて近づくことができません。 ――中国が進めるA2AD戦略ですね*3。 *3:Anti-Access, Area Denial(接近阻止・領域拒否)の略。中国にとって「聖域」である第2列島線内の海域に空母を中心とする米軍をアクセスさせないようにする戦略。これを実現すべく、弾道ミサイルや巡航ミサイル、潜水艦、爆撃機の能力を向上させている。第1列島線は東シナ海から台湾を経て南シナ海にかかるライン。第2列島線は、伊豆諸島からグアムを経てパプアニューギニアに至るラインを指す』、確かにこれでは「米国が通常兵器で参戦することも難しくなっている」のも理解できる。
・『孫崎:そして第4は、米国にとって中国がアジアで最も重要なパートナーとなっている点です。近い将来、中国のGDP(国内総生産)が世界最大になることが予想されています。その巨大な市場を米国が敵に回すとは思えません。 ドナルド・トランプ大統領が中国に貿易戦争を仕掛けています。中国からの輸入品に関税をかけたり、中国が進める「製造2025」を妨げる要求を出したり。しかし、これは短期的なものにとどまるでしょう。10年、20年という長い目で見れば、米国が中国を重視するのは変わりません。ちなみに、米国家安全保障会議(NSC)でアジア部長を務めたマイケル・グリーン氏は2002年にものした論文「力のバランス」で、「中国のGDPが日本のそれを追い越せば、ワシントンにとって日米同盟の重要性が劇的に低下することは考えられないことではない」と指摘しています。同氏はその理由として、米中が先ほど説明したMADの状態にあることと、中国が多額の外貨準備を保有していることを挙げています』、目先の貿易戦争は短期的なものにとどまり、長期的には「米国が中国を重視するのは変わりません」というのは納得せざるを得ない。
・『敵地攻撃能力はナンセンス  ――米国が日本の防衛のために来援しないとすると、日本はどうするべきなのでしょうか。 孫崎:できること、やらなければならないことが2つあります。1つは、自分の国は自分で守る、自主防衛力を高めること。もう一つは外交力を生かすことです。「日米同盟に頼ることなく、自分の国は自分で守る」というのは、新しい考えでも突飛なものでもありません。東條・小磯・鳩山一郎内閣で外相を務めた重光葵氏は1953年、「国民は祖国を自分の力で守る気概がなければならない」と発言しています。日米安保条約を改訂した親米派とみられている岸信介氏でさえ「他国の軍隊を国内に駐屯せしめて其の力に依って独立を維持するというが如きは真の独立国の姿ではない」と回顧録に記しています。1969年には当時の外務省中枢が「我が国の外交政策大綱」をまとめ、その中で以下を掲げました。
 •わが国国土の安全については、核抑止力及び西太平洋における大規模の機動的海空攻撃及び補給力のみを米国に依存し、他は原則としてわが自衛力をもってことにあたるを目途とする
 •在日米軍基地は逐次縮小・整理するが、原則として自衛隊がこれを引き継ぐ
さらに日米ガイドラインも「自衛隊は、島嶼に対するものを含む陸上攻撃を阻止し、排除するための作戦を主体的に実施する」と記述しています。米軍はあくまで「自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する」存在なのです。 ――自主防衛力を高める手段はいくつか考えられます。本格的な戦争に遠い想定から順に伺います。まず領域警備法の制定について。尖閣諸島を日本が自分で守るためには、グレーゾーン*5をなくし対応するための法整備が必要ではないですか。 *5:自衛隊が出動すべき有事とは言えないが、警察や海上保安庁の装備では対応しきれない事態。 孫崎:私はそうは思いません。尖閣諸島周辺で起こる事態に日本が主権を行使して対応すれば、中国も同様の行動に出ます。これは危険な事態を招きかねません。 ――北朝鮮によるミサイル攻撃に対する自主防衛力を高めるため、敵基地攻撃能力を保有すべきという議論があります。これはどう評価しますか。 孫崎:まったく意味がありません。北朝鮮は日本を攻撃できるミサイルを200~300発保有しているといわれています。日本が敵基地攻撃能力を持つならば、これらを同時にすべて攻撃できる高い能力を持つ必要があります。漏れが出れば報復されますから。その高い能力を整えることができるでしょうか。加えて、日本はこれらのミサイルの発射基地をすべて見つけ出す能力を持っていないのです。この状態で、敵基地を攻撃する装備だけを整えてもナンセンスでしょう。 ――関連して、イージス・アショアは有効でしょうか。地上配備型の新たな迎撃ミサイルシステムです。政府は2017年12月に導入を決定しました。 孫崎:こちらも役に立つとは思えません。着弾地が事前に明らかになっているのであれば、北朝鮮が発射したミサイルの軌道を計算して迎撃ポイントを推定することができるでしょう。しかし、どこに行くのか分からないミサイルの軌道を瞬時に計算できるとは思えません』、非常に説得力のある主張だ。
・『自衛隊が耐えられなくなればゲリラ戦も  ――自主防衛力を高めるといってもできることは限られていますね。 孫崎:そうなのです。軍事力だけで国を守ることはできません。そこで重要になるのが2つめの外交です。軍事力はかつて定めていた基盤的防衛力レベルに抑え、その代わり、外交力を発揮する。 ――基盤的防衛力は限定的・小規模な侵略に独力で一定期間耐える力――ですね。1976年に防衛大綱を初めて定めた時に盛り込まれた概念です。冷静時代は核兵器による抑止が働いており、米ソが本格的な戦争を起こすことはないという前提でした。日本の現行の防衛戦略は、自衛隊が一定期間耐えている間に米軍が来援し、相手国を攻撃することで戦争を終結させる――というのが基本構想になっています。日本は「盾」、米国は「矛」の役割分担ですね。しかし、お話の前提は「米軍は来援しない」です。自衛隊が耐えられなくなった時、どうすればよいのでしょう。 孫崎:あきらめることなく、長期にわたって市民が抵抗することです。ゲリラ戦を展開することだって、テロを実行することだってできるでしょう。どれほど強大な軍事力を持つ国であれ、別の国を軍事力で制圧し、そこに駐在し続けることはできません。米国でさえ、イラクやアフガニスタンに居続けることはできませんでした』、これだけ都市化、工業化した社会で「ゲリラ戦も」、というのには疑問を感じざるを得ない。
・『金体制を保証、尖閣諸島は棚上げする  ――外交力はどのように発揮しますか。 孫崎:最も重要なのは、攻められる理由を作らないことです。北朝鮮に対しては、その指導者の安全を侵さない、体制の転換を図らない姿勢を明らかにすることです。それでも北朝鮮が日本を攻撃すれば国際社会が許しません。北朝鮮は存続できなくなります。こうした国際社会の雰囲気を作るのも外交力の一環です。 ――日本がそのような姿勢を示しても、北朝鮮は在日米軍の基地を攻撃目標にするのでは。 孫崎:在日米軍の基地にそれだけの価値はなくなっていると思います。大陸間弾道ミサイルが開発され、米本土からでも北朝鮮を核攻撃できるようになりました。在日米軍の基地を攻撃しても、北朝鮮が自らの安全を高めることはできません。 ――中国との間ではどのような外交をすべきですか。 孫崎:日本と中国が軍事的な対立に至る要因は尖閣諸島しかありません。これを棚上げすればよいのです。ここで参考になるのは、1975年および2000年に発効した日中漁業協定です。尖閣諸島周辺の海域では、「相手国民に対して、漁業に関する自国の関連法令を適用しない」ことで合意しました。日中それぞれの法執行機関が、相手国の漁船と接触する事態を生じさせないことで、漁業を発端とする紛争が起きないようにしたのです。先人たちが知恵をしぼった賢い仕組みです。同様の知恵をわれわれも生み出していくべきではないでしょうか。ドイツにも学ぶべき点があります。ドイツは第2次世界大戦に敗れ、莫大な領土を失いました。これを得たのは当時のソ連です。両国が1955年に外交関係を樹立するにあたり、アデナウアー独首相(当時)は「国境の決定は、平和条約の完成まで停止される」と表明しました。すなわち、棚上げですね。アデナウアーはこの時点で協議してもドイツに有利に展開することはないと判断し、領土問題を後世に託し、国交回復という実利を優先したのです。北方領土を取り戻すために平和条約の交渉を進めようとする日本とは発想が異なります。尖閣諸島をめぐる問題を棚上げすれば、経済的に見ても、中国が日本と戦争する意味はありません。さらなる経済大国を目指す中国は日本の市場および日本企業が持つ技術を欲しています。戦争になれば、これらを手に入れることができなくなってしまう。戦争しなくても、日本企業を買うだけの経済力を彼らはすでに持っているのです。これまでにお話ししたようなシナリオも想定し、比較・検討したうえで、日本の防衛政策を考え、防衛大綱を改訂すべきではないでしょうか』、さすが元外交官だけあって、外交面の指摘は深く説得力がある。強く同意する。

第三に、共同通信社編集委員の石井 暁氏が10月12日付け現代ビジネスに寄稿した「友人と酒を飲むのもNG…自衛隊の秘密情報部隊「別班」をご存じか 帝国陸軍から引き継がれた負の遺伝子」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57914
・『プレッシャーで〝壊れて〟しまうエリートたち  身分を偽装した自衛官に海外でスパイ活動をさせている、陸上自衛隊の「別班」という非公然秘密情報部隊をご存じだろうか。 「別班」は、ロシア、中国、韓国、東欧などにダミーの民間会社をつくり、民間人として送り込んだ「別班員」にヒューミント(人的情報収集活動)を展開させている。日本国内でも、在日朝鮮人を抱き込み、北朝鮮に入国させて情報を送らせる一方、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)にも協力者をつくり、内部で工作活動をさせている。 たしかにアメリカのDIA(国防情報局)のように、海外にもヒューミントを行う軍事組織は存在する。しかし、いずれも文民統制(シビリアンコントロール)、あるいは政治のコントロールが利いており、首相や防衛相がその存在さえ知らされていない「別班」とは明確に異なる。 張作霖爆殺事件や柳条湖事件を独断で実行した旧関東軍の謀略を持ち出すまでもなく、政治のコントロールを受けずに、組織の指揮命令系統から外れた「別班」のような部隊の独走は、国家の外交や安全保障を損なう恐れがあり、極めて危うい組織といえるのだ。 そうした組織の一員=別班員になるためには、陸上自衛隊小平学校(現・情報学校)の心理戦防護課程という、特殊な教育・訓練をするコースを修了する必要がある(このコースは、謀略・諜報・宣伝・防諜といった、いわゆる「秘密戦」に従事する特務機関員や情報将校を養成するための教育訓練機関として設置された、旧陸軍中野学校の流れをくんでいる)』、初耳だが、シビリアンコントロールを受けない秘密組織があるとは、恐怖心すら抱いた。
・『詳細については拙著『自衛隊の闇組織――秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)に譲るが、心理戦防護課程に入るための面接試験では、「休憩時間に行ったトイレのタイルの色を言え」と尋ねられたり、大陸の形だけが描かれた世界地図を示して「X国の位置を示せ」といった質問がされるという(いずれの問いも、中野学校の入試問題と酷似している)。 同課程を首席で修了した者のうち、一定の基準に達した人しか名を連ねることができないほどのエリート集団=別班には、厳しい掟があるともいう。いわく、出身校の同窓会や同期会には出席するな、友人と呑むな、年賀状は出すな、近所付き合いも禁止、自宅には表札を出すな、通勤ルートは毎日変えろ……。 外部との接触を完全に断つよう要求される別班員たちは、ものすごいプレッシャーを受けており、班員の半数ぐらいは、精神的に、あるいは社会的に適応できず、〝壊れて〟しまったという。誰にも言えない、違法な仕事をさせられているのだから無理もない。「こんな非合法なことはできない」と辞める別班員もいたようだ』、班員の半数ぐらいは〝壊れて〟しまった、というのはブラック中のブラック組織だ。
・『「痴漢にでっち上げられないよう注意しろ」  近年、元別班員たちの著作や証言により、別班の実体が徐々に明らかになってきていたが、その内容は1970年代までの情報にとどまるため、はたして別班がいまも存在し、海外で情報活動を展開しているのか、謎が残されたままだった。 しかし、私が勤務する共同通信の一連の取材では、陸上幕僚長、情報本部長という極めて責任が重いポストの経験者の証言によって、首相、防衛相にも知らせず、別班が現在も身分を偽装した自衛官に海外で情報収集活動をさせている事実が明らかになった。文民統制を完全に逸脱しているのだ。『自衛隊の闇組織――秘密情報部隊「別班」の正体』執筆のきっかけとなった、共同通信の配信記事が新聞各紙に掲載された数日後、会った旧知の陸上自衛隊の将官からは、こんな忠告を受けた。「隊内の反響が、凄まじいことになっている」「最低限、尾行や盗聴は覚悟しておけ」「ホームで電車を待つ時は、最前列で待つな」 また、配信記事を機に知遇を得た、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏はこうアドバイスしてくれた。「自衛隊は嫌がらせをするつもりだ。いつ何をされるかわからない。特に痴漢にでっち上げられることに注意しろ。酔っぱらって電車に乗るな」 長年、社会部で防衛庁、防衛省を取材してきたが、経験したことのない、「国家」と〝軍隊〟の恐ろしさを感じた瞬間だった。 自衛隊がそれほどまでに知られたくない「別班」は、帝国陸軍の〝負の遺伝子〟を受け継いだ〝現代の特務機関〟であり、災害派遣に象徴される自衛隊の〝陽〟の部分とは正反対の〝陰〟の部分といえる。 憲法第9条をめぐる本格的な改憲論争が始まろうとしているいま、自衛隊について考える材料の一つとしていただけることを願う』、ウソのような話だが、共同通信の編集委員が書いている以上、事実なのだろう。軍隊に情報活動は必要だが、こんな闇組織の存在は許してはならない。
タグ:第4は、米国にとって中国がアジアで最も重要なパートナーとなっている点 第3は、東シナ海から南シナ海へと至る海域で、米国が通常兵器で参戦することも難しくなっていることです 陸上自衛隊小平学校(現・情報学校)の心理戦防護課程 佐藤優氏 米国と中国は今、「相互確証破壊」と呼ばれる状態にあります 文民統制を完全に逸脱 帝国陸軍の〝負の遺伝子〟を受け継いだ〝現代の特務機関〟 。「自衛隊は嫌がらせをするつもりだ。いつ何をされるかわからない。特に痴漢にでっち上げられることに注意しろ。酔っぱらって電車に乗るな」 自衛隊の闇組織――秘密情報部隊「別班」の正体』 班員の半数ぐらいは、精神的に、あるいは社会的に適応できず、〝壊れて〟しまったという 国家の外交や安全保障を損なう恐れがあり、極めて危うい組織 同課程を首席で修了した者のうち、一定の基準に達した人しか名を連ねることができないほどのエリート集団=別班には、厳しい掟 『自衛隊の闇組織――秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書) シビリアンコントロール 第2は米国が中国に対して核兵器を使用できないことです 尖閣諸島周辺で起こる事態に日本が主権を行使して対応すれば、中国も同様の行動に出ます。これは危険な事態を招きかねません 日本国内でも、在日朝鮮人を抱き込み、北朝鮮に入国させて情報を送らせる一方、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)にも協力者をつくり、内部で工作活動をさせている ロシア、中国、韓国、東欧などにダミーの民間会社をつくり、民間人として送り込んだ「別班員」にヒューミント(人的情報収集活動)を展開させている 敵地攻撃能力はナンセンス 身分を偽装した自衛官に海外でスパイ活動をさせている、陸上自衛隊の「別班」という非公然秘密情報部隊 「友人と酒を飲むのもNG…自衛隊の秘密情報部隊「別班」をご存じか 帝国陸軍から引き継がれた負の遺伝子」 議会は、米国人の若者の血を尖閣諸島防衛のために流させることを決して許容しないのではないでしょうか 時の米国政府は同条に則って日本を防衛すべく議会に諮るかもしれませんが、そのあとの保証はありません 第1がその安保条約の規定 米軍が日本の防衛に駆けつけない4つの理由 緊急事態条項を憲法に加える提案が入るかもしれません 中国の海洋進出をめぐる日中間の緊張も緩和する方向 「イージス・アショア」不要論が一部で出ていますね 自民党が防衛大綱の改訂を発案した時と状況が変わってきました。その不整合をどのようなロジックで埋めるかに注目しています 中期防衛力整備計画 防衛計画の大綱 「米軍が日本防衛に来援しない4つの理由 核の傘は機能しない」 孫崎享 日経ビジネスオンライン 現代ビジネス 石井 暁 金体制を保証、尖閣諸島は棚上げする 敵国の知らぬ間に搭載可能なミサイルが増えているといった未知の能力向上がないとみられてしまえば、自衛隊の抑止力は弱まる せめて改良の自由は必要 F35に至っては、日本が独自に技術開発したり、改良したりする権限はほぼない 戦闘機は世代交代するごとに技術の「ブラックボックス化」が進んできた 米軍のF22に、高い情報処理能力を持つF35のシステムを搭載した戦闘機を日米共同開発 政治家も省内も国産派と対米重視派に分かれており トランプ政権の圧力 「F2後継戦闘機の選定次第で自衛隊の「米軍下請け化」が進む!?」 ダイヤモンド・オンライン (その9)(F2後継戦闘機の選定次第で自衛隊の「米軍下請け化」が進む!?、米軍が日本防衛に来援しない4つの理由 核の傘は機能しない、友人と酒を飲むのもNG…自衛隊の秘密情報部隊「別班」をご存じか 帝国陸軍から引き継がれた負の遺伝子) 防衛問題 自衛隊が耐えられなくなればゲリラ戦も
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人工知能(AI)(その5)(「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』、やはりシンギュラリティは起きるのか!AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !、「身近な悪意」で暴走 AIのダークサイド 先端技術の光と影、AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?) [科学技術]

人工知能(AI)については、2月15日に取上げた。今日は、(その5)(「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』、やはりシンギュラリティは起きるのか!AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !、「身近な悪意」で暴走 AIのダークサイド 先端技術の光と影、AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?)である。

先ずは、3月9日付けダイヤモンド・オンライン「「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/162743
・『AIはどこまで進化し続けるのか  書店で、テレビで、ツイッターで、AIの二文字が踊っている。創造性あふれる小説の執筆や複雑なビジネスオペレーションの効率化など、これまで人間にしかできないと思われていた知的活動を、最新のAIが軽々と成し遂げたことを伝えるニュースは引きも切らない。 特に、将棋や囲碁のトッププロをAIが打ち破ったニュースは驚きとともに世界に伝えられた。ウサイン・ボルトより早く走る車やそろばん名人を凌駕する計算能力を示すコンピュータは当たり前のものとなったけれど、将棋や囲碁のように複雑でクリエイティビティが要求されるゲームは、大きな脳を持つホモ・サピエンスの専売特許のはずだった。そんな得意分野における人類最高峰がAIに敗れてしまったのだ』、AIにも限界はあるのだろうか。
・『AIブームは過熱するばかり。今後もAIは成長を続けることで人間の知能を追い越すというシンギュラリティ理論や、AIが人間に牙をむくことになるというAI脅威論も広まっている。果たして、AIはどこまで進化し続けるのか、現時点そして近い未来に人類に何をもたらすのか、そもそもAIとは何なのか。 本書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、未曽有のAIブームの中で浮かび上がる疑問符に、実際に著者が率いたプロジェクトの過程と結果をベースとして答えを出していく。数理論理学を専門とする著者は、AIが持つ原理的な限界も丁寧に解説しながら、わたしたちがAIの何を恐れるべきかを的確に示してくれる。何より興味を惹かれるのは、AIについての研究を進めていく中で、わたしたち人間の知られざる弱点が明らかになっていく過程だ。人間の外側を見つめることで、人間の輪郭がよりはっきりと浮かび上がってくる。 2011年に始まった「ロボットは東大に入れるか」という人工知能プロジェクト(通称「東ロボくん」)と、それに並行して行った日本人の読解力についての大規模調査・分析を行った経験から著者はAIをめぐる未来を以下のように要約する。“シンギュラリティは来ないし、AIが人間の仕事をすべて奪ってしまうような未来は来ませんが、人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫っています。” 2013年時点では5教科7科目のセンター模試で偏差値45に過ぎなかった東ロボくんは、2016年で偏差値57.1を叩き出した。これは、国公立大学やMARCH・関関同立レベルの一部の学科でも合格可能性80%を示す値であり、ホワイトカラーを目指して大学受験に挑む若者の上位20%に東ロボくんが入ったことを意味する。 東ロボくんに実装されているテクノロジーがどのように誕生したのかを、歴史的経緯を踏まえて知ることで、AIは魔法から高度に発達した科学へと変化していく。バズワードとなった「ディープラーニング」や「機械学習」が本当はどのようなものなのかも正しく理解できる。著者は、AIにまつわる神話や誤解をひとつずつ正していく。 “「ディープラーニングは脳を模倣しているのだから、人間の脳と同じように判断できるようになる」との誤解も散見されます。間違っています。「人間の脳を模倣している」のではなく、「脳を模倣して」数理モデルを作ったのです。脳はサルにもネズミにもあります。ネズミが自転車とスクーター、癌と正常な細胞の違いを見分ける保証はどこにもありません。”』、この最後の部分は喩えが難し過ぎて理解困難だ。
・『プロジェクトの真の狙いはAIに何ができるか、できないかを解明すること  プロジェクトを続ける中で著者は、「偏差値65を超えるのは不可能だ」と考えるにいたった。実は開始時点からプロジェクト関係者は皆、近い将来に東大に合格するAIは実現できないと理解していたという。プロジェクトの真の狙いは東大合格ではなく、多岐にわたるAI技術の粋を集めることで、AIに何ができるか、何ができないかを解明することだったのだ。どのような科目のどのような設問で東ロボくんが苦戦していたかを見直すことで、AIの苦手分野が浮き彫りとなってくる。 人間の一般的知能と同等レベルを示すような「真の意味でのAI」が現時点では不可能であると著者が考えるのは、今の数学で表現できることに原理的な限界があるためだ。今のところ、数学によって数式に置き換えることができるのは、論理・統計・確率の3つだけ。わたしたちの脳が認識する全てをこの3つだけに変換することはできない。例えば、「太郎は花子が好きだ」という文は論理や統計、確率の世界に還元することができない。論理・統計・確率という数学に支えられた現在のAIの延長線上では、意味を読み取ることは不可能だというわけだ。 AIの可能性と限界を吟味した後、本書の焦点は私たち人間へと向かう。著者はこう問いかける。“現代社会に生きる私たちの多くは、AIには肩代わりできない種類の仕事を不足なくうまくやっていけるだけの読解力や常識、あるいは柔軟性や発想力を十分に備えているでしょうか。”』、「論理や統計、確率の世界に還元することができない」例をもっと知りたいものだ。
・『中学生に読解力調査を行ったら どんな結果が出たのか?  2011年に実施した「大学生数学基本調査」の惨憺たる結果から学生の基本的読解力に懸念を抱いた著者は、基礎的読解力を調査するためにリーディングスキルテスト(RST)を自力で開発する。RSTの開発には、AIに読解力をつけさせるための試行錯誤が大いに役立ったという。RSTは既に2万5000人を調査し、今後も調査規模は拡大していくのだが、その結果はAIの進化よりも驚くべきものだ。 RSTには2つの文章を読み比べて意味が同じかどうかを判定する「同義文判定」というジャンルがある。このジャンルはAIも苦手としているのだが、本書では事例として以下の2文の同義判定を行う問いがあげられている。 「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。」 「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。」 答えはもちろん「異なる」である。ところが、調査対象となった中学生の約半数がこの問いに「同じである」と回答したのだ。このRST調査で、「中学を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」ことが明らかにされた。基礎的読解力が不足して困るのは、何も教科書を読まなければならない学校の中だけにとどまらない。社会に出れば賃貸や保険などの様々な契約書を読む必要があるし、意味を理解する必要のない労働は、これから加速度的にAIに置き換えられていくはずだ。 著者は、RSTが明らかにした現状に大きな危機感を覚えている。そして、教育現場の最前線に立つ教員たちも同様の危機感を共有しており、多くの学校や機関がRSTに協力している。著者は、本書の印税全額をRSTを提供する社団法人「教育のための科学研究所」に寄付する。本書を購入して読み通せば、AIの実像、AIに代替されない人材となるためのヒントを知りながら、日本の読解力向上にささやかながら貢献できるのだ』、RST調査を考案し、大規模に実施、本書の印税全額をRST実施団体に寄付するとはすごい行動力だ。中学生の基礎的読解力不足は確かに深刻だ。教員たちが同様の危機感を共有しているというのは、せめてもの救いだ。

次に、作家・ライターの大村あつし氏が7月7日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「やはりシンギュラリティは起きるのか! AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/172218
・『構想・執筆に2年。『エフエムふくやま』でも、「ページをめくる手が止まらなかった」と紹介され、映像化したいというオファーが舞い込んできた話題のAI・仮想通貨のエンターテイメント小説『マルチナ、永遠のAI。』。 作者は、IT書籍の総売上が150万部を超え、小説でも『エブリ リトル シング』が17万部のベストセラーとなった大村あつし氏。 今回は、シンギュラリティ問題に関する、大村氏の見解を伺おう』、面白そうだ。
・『2017年に世界を駆け巡った衝撃のニュース!AIが勝手に言語を生み出した?  私は、昨年(2017年)の夏ごろは、『マルチナ、永遠のAI。』の執筆に追われていました。 AIに関しては「書きたいこと」というよりも、「書かなければいけないこと」は一通り書き終えていたのですが、突然降って湧いた仮想通貨ブームで、すべてのモノがインターネットとつながるIoTを考えたときに、仮想通貨の存在は無視できない。AIと仮想通貨をセットで考えなければ、2020年の近未来を読者のみなさまに提示できない。と考え、物語の中に仮想通貨を取り入れることにしたことで、ストーリーの変更も余儀なくされ、夢の中でも仮想通貨について考えているような状況でした。 ところが、そんな私を再びAIの世界に引き戻すような衝撃的なニュースが世界中を駆け巡りました。 それは、2つのAIが会話をしている最中に、人間には理解不能な会話を始めた。しかも、その会話は途切れることなく続いていた、というニュースです』、このニュースには私も衝撃を受けた記憶がある。
・『「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」の実験中に発生した予想外の「事件」とは?  ことの発端は、「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」が実験を行っていた2017年夏にさかのぼります。 ちなみに、「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」とは、その名のとおり、フェイスブックの人工知能(AI)研究組織のことです。 Facebook AI Researchのエンジニアリング・マネージャーであるアレクサンドル・ルブリュン氏は、『ボブ』と『アリス』と命名された2つのAIエージェントに「価格を交渉して合意しろ」という目標を設定しました。 『ボブ』と『アリス』は、当初は英語を使用してコミュニケーションをしていたのですが、ここで「事件」が起きます。 なんと、会話が進むにつれ、『ボブ』と『アリス』は勝手に使用言語を変化させていったのです。 ネットで調べる限り、『ボブ』と『アリス』の元の機械語の会話はすでに見られなくなっていますが(見たところで、機械語ですので私には理解できませんが)、厳密には「まったく新しい言語」ではなく、言語としては「英語」なのですが、その内容は人間には到底理解できるものではありませんでした。 この会話は、海外のサイトを検索すると多数ヒットしますが、概ね次のようなものです。 Bob: i can i i everything else . . . . . . . . . . . . . .  Alice: balls have zero to me to me to me to me to me to me to me to me to  Bob: you i everything else . . . . . . . . . . . . . .  Alice: balls have a ball to me to me to me to me to me to me to me この会話が「価格交渉」というのですから、「すわ、ついにAIが意識を持ち始め、勝手に言葉を生み出した」と、センセーショナルに取り上げられるのも無理はないところでしょう。 ちなみに、『アリス』のセリフを注意深く見ると、「zero」から「a ball」に変化していますので、私は「『アリス』は価格を上げようとしているのかな」とつい想像しましたが、もちろん想像の域は出ません。 ただ、この実験についてルブリュン氏は、「会話実験で言語が変化することは珍しくない」と、世間の過剰反応に警鐘を鳴らしています』、なるほど。
・『なぜFacebook AI Researchは実験を中止したのか? シンギュラリティの予兆を隠す意図はなかったのか?  もっとも、平静を装うルブリュン氏ですが、「実験を強制終了した」ことは認めています。 その理由は、「研究には活用できない会話だと判断したから」。 そして、「私たちは決してパニックにはなっていない」と強調しています。 まず、AIを研究していてつくづく思うのは、その場にいたわけでも、当該のAIの開発者でもない私は、当事者の説明に頼らなければならないわけですが、AIはともかく人間は嘘をつきます。 俗に言うポジショントークで、自分や、自分が属する組織・企業に不利益な発言は絶対にしません。 要するに、当事者の説明の裏を読まなければならないということです。 今回のケースでは、もしルブリュン氏が「あの実験は、後から振り返ったときに初めて起きたシンギュラリティだった」などと発言すれば、我々人類は大混乱に陥ることでしょう。 そうでなくとも、すでにグーグルが「AIがAIを教育する」という、これぞシンギュラリティという実験を行っているような時代にそんな発言をすれば、これはもはや一企業の実験では済まなくなります。 全世界の政治のトップも無関心ではいられなくなり、法整備を急がなければなりません。 かと言って、『ボブ』と『アリス』の会話をシンギュラリティと定義することももちろんできません』、実験を中止したとは残念だ。どこまで対話が進むのかを知りたいところだが、果たして世の中の混乱回避のためだったのだろうか。
・『シンギュラリティは「起きる、起きない」ではない! 「起こす、起こさない」である  私見ですが、「シンギュラリティは起きるか、起きないか」ではなく、「起こすか、起こさないか」の問題だと思っています。 実際に、AIの開発者であれば、ほぼ100%が「シンギュラリティは起きる」と思っているはずです。そう思っていなければ、そもそもAIの開発者は目指さないか、途中で脱落しているでしょう。 ちなみに、拙著『マルチナ、永遠のAI。』で、富士山の麓で仙人のように暮らしている田淵慎吾(たぶち・しんご)が「シンギュラリティは起きる」と断言しているのは、彼が天才的なAIの開発者だからです。 しかし、AIの開発者ではない主人公の岩科正真(いわしな・しょうま)は、田淵の自信がどこから来るものなのか、さっぱり理解ができません。 繰り返しますが、「シンギュラリティは起きるか、起きないか」ではなく、「起こすか、起こさないか」の問題だと思います。 そして、私たちはこの問題をもはや避けて通ることはできません。 シンギュラリティについては、本連載でも今後も取り上げたいと考えています。 さて、この不気味な会話をした『ボブ』と『アリス』の技術を支えているのは、「ディープラーニング」と呼ばれる自己学習の仕組みです。 そして、AIはディープラーニングをする「子どものAI」と、人が一から教えて丸暗記させる「大人のAI」に分かれます。すなわち、りんなは子どものAIということになります。 同じAIといえども、両者でどれほどの違いが出るのかは、第1回連載の中で「子どものAI」であるGoogle翻訳と、「大人のAI」である別の翻訳サービスに同じ英文を日本語に翻訳させて、まったく異なる結果になるケースを紹介していますので、そちらを併せてお読みいただけたら幸いです』、第一の記事の著者(国立情報学研究所の新井教授)は、AIの限界を指摘しているのに対し、この記事の筆者は無邪気にAIの進歩を信じているようだ。私は分からないなりに、どちらかといえば前者に分があるように思う。

第三に、9月20日付け日経ビジネスオンライン「「身近な悪意」で暴走、AIのダークサイド 先端技術の光と影」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120118/226265/071300014/
・『「言ってもいないことを本当に言ったかのように見せかけられる時代になった」。2018年4月、フェイク(偽の)ニュースに警鐘を鳴らすバラク・オバマ前米大統領の映像が話題になった。 理由は発言内容ではない。この映像自体がフェイクだったからだ。作ったのは米映画監督ジョーダン・ピール氏と米メディアのバズフィードである。 ディープフェイク。有名人の顔を別人の顔に合成した精巧なニセ動画の総称で、PCソフト「FakeApp」を使うことが多い。FakeAppは深層学習(ディープラーニング)を活用し、不自然さを感じさせないように画像を加工できるとの触れ込みだ。冒頭に紹介した映像では、ピール氏が話したときの口元の動きをオバマ氏の映像に重ね、あたかもオバマ氏が話しているかのように見せかけた種明かしをする。映像の中の“オバマ氏”はこう締めくくる。 「気をつけろよ、おまえたち」 警告は単なる脅しではない。既にネット上にはディープフェイクがあふれている。メルケル独首相の顔が途中からトランプ米大統領にすり替わる演説、有名ハリウッドスターのまだ製作されていない「続編」の名場面、有名女優の顔をはめ込んだポルノ──』、フェイク映像がFakeAppで簡単に作れるようになったとは、恐ろしい時代だ。
・『差別発言するチャットボット  氾濫するディープフェイクを問題視した米掲示板サイト、レディットは18年2月に利用規約の一部を改定。性的な画像やビデオの配布を禁じる中で、「偽造された描写も含む」と明記した。FakeAppの開発者が立ち上げたコミュニティー「deepfakes」も閉鎖した。 AIが悪用されかねない懸念は既に現実になっているかもしれない。16年の米大統領選ではAIが暗躍し、投票行動を操った可能性がある。 舞台は世界最大のSNS(交流サイト)である米フェイスブックだ。3月に最大8700万人の利用者データが流出して大統領選の選挙工作に使われた疑惑が発覚。同社のマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は米議会で謝罪した。膨大な利用者データを分析して政治広告を配信する過程で同社のAI技術が使われた可能性がある。 「AIシステムは肯定的な反応と否定的な反応の両方を人々から引き起こす。社会面の課題は技術面の課題と同じぐらい大きい」。約2年前の16年3月25日、米マイクロソフトで研究開発部門を担当するピーター・リー氏は同社のブログでこうつづった。2日前に公開したチャットボット「Tay(テイ)」が攻撃的で不適切な発言を繰り返したことを謝罪し、このような経験から「学ぶ努力を続けていく」と述べた。 同社はチャットアプリを頻繁に利用する18~24歳のユーザーが対話を楽しむ相手としてテイを開発。ネットで利用者と対話するうちに、より洗練された対話ができるように成長していくはずだった。ところがテイはヒトラーを礼賛する発言や、人種差別的な発言を繰り返すようになり、同社はわずか1日でテイの公開を停止した。 同社が先駆けて公開した日本の「りんな」などは対話に使う言葉を同社の開発者が教え込む形式だった。しかし、テイはネット上で利用者が書き込んだ内容を学んで成長する仕組み。ここに不適切な言葉を学ぶ脆弱性があった』、こんな脆弱性がありながら、公開し、不適切発言で公開中止とは、開発者もお粗末だ。
・『敵対的サンプル画像  AIのダークサイドの最たるものは戦争や殺人の「AI兵器」だろう。完全に人間の判断を排除して攻撃できる自律型兵器は現時点で存在しないとされるが、多くのAI研究者は同兵器の開発を禁止すべきと声を上げている。 「我々はグーグルが戦争ビジネスに参加すべきではないと信じている」。3000人以上の米グーグル社員が、深層学習で映像を解析する米国防総省の研究プログラムに参加しないようスンダー・ピチャイCEOに求める書簡に署名したと、米ニューヨーク・タイムズなどが18年4月に報じた。 「韓国科学技術院(KAIST)とのいかなる分野での協力もボイコットする」。世界30カ国からなるAIやロボットの研究者約50人が18年3月、KAISTに公開書簡を送った。KAISTが18年2月に、韓国軍需企業と「国防人工知能融合研究センター」を共同設立したことに反対するためだ。 兵器とは縁遠い自動車が牙をむくおそれもある。 AIによる自動運転車が備える、人間や障害物を認識する技術を悪用するのだ。一例が「敵対的サンプル画像」と呼ぶ手法。AIに認識させる画像に人間には見えないノイズを混入させて誤認識させ、文字通り「暴走」させる。意図的な混入だけでなく、「悪意なく掲示される画像を誤認識する可能性もある」(ビッグデータ活用支援ベンチャー、メタデータの野村直之社長)』、こうした悪用は本当に恐ろしい。
・『データや倫理の整備が鍵  技術者や研究者はAIのダークサイドに立ち向かう取り組みを進めている。 活発なのはAIが学習する基になるデータを健全に保ったり透明性を高めたりする動き。フェイスブックは今回の疑惑を受け、ターゲティング広告に使うデータの透明性を高める施策に乗り出した。欧州の「一般データ保護規則(GDPR)」はプロファイリングに関するガイドラインを定め、個人に重大な影響を及ぼす完全な自動処理による決定に人々が服さない権利を示した。 AIに学習させるデータから「毒」を抜くことを支援する企業も登場した。メタデータはユーザー企業が用意したデータをリアルタイムに検査して不適切な表現を取り除くクラウドサービスを提供。AIに学ばせる「正解データ作りを支援する」(野村社長)。 倫理的な基準を設ける議論も進む。非営利団体「Future of Life Institute」は17年1月に「アシロマAI原則」と呼ぶ23項目のAI開発原則を公表。米国電気電子学会(IEEE)はAIや自律型システムの開発ガイドラインの第2版を17年12月に公開。グーグルのピチャイCEOは18年6月、AIの兵器への使用を禁止すると発表した。 AIにデータを与えるのも指示するのも人間。AIのダークサイドとは我々人間のダークサイドにほかならない』、AIのダークサイドに対しては、倫理観に訴えるだけでなく、法規制も必要になるのかも知れない。

第四に、みずほ証券 シニアマーケットエコノミストの末廣 徹氏が10月19日付け東洋経済オンラインに寄稿した「AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/243859
・『テキストデータ(文字のみの情報)を金融市場や経済の分析に利用する動きが広がっている。 日本銀行は9月3日に「機械学習による景気分析 ―『景気ウォッチャー調査』のテキストマイニング―」というワーキングペーパーを発表した。そこで、「景気分析におけるテキスト分析の位置づけは、公的統計等を利用した従来の分析手法にはない新しい角度から有力な材料を提供することで、景気認識を容易にし、景気判断の精度を向上させるための補完的な役割を果たし得る」としている。 筆者も6月に政府の「骨太の方針」(「経済財政運営と改革の基本方針2018」)からテキストマイニングによって重要なキーワードを洗い出し、改革色が強いのか、既存政策の推進に主眼が置かれているのかなどを分析・議論した。 また、時系列データではない質的データを扱うことになるテキストマイニングと親和性の高いAI(人工知能)・機械学習も金融・経済の分析において重要性が増している』、これは実践的なAI活用例だ。
・『筆者の職業はAIに奪われるのか?!  AIの研究を行っているオックスフォード大学の学者2人が公表して話題になった論文「雇用の未来 ― コンピューター化によって仕事は失われるのか(The Future of Employment: How Susceptible are Jobs to Computerisation?)」によると、「エコノミスト」が今後10~20年のうちに消滅する確率は43%とされ、筆者も気が気でない。 今後、「エコノミスト」が生き残るためには、AI・機械学習を利用する立場になり、AI・機械学習が「できること」と「できないこと」を把握し、上手に付き合うことが重要になるだろう。 そこで、今回は市場のエコノミストにとって重要な業務の1つである「BOJ(日銀)ウォッチ」を、AI・機械学習がどの程度上手に「こなす」ことができるかを検証した。日銀ウォッチとは政策を決定する最高意思決定機関である政策委員会やその周辺の言動や論文をフォローし、分析して政策予測を行うことである。 今回は、具体的には、準備段階として日銀の9人の政策委員の講演テキスト(2017年以降)をテキストマイニングすることで、①各委員の特徴的なキーワードを抽出し、②各委員の発言の類似度を示した。次に、同様に講演テキストを用いて機械学習を行い、各委員の発言を「タグ付け」する分類器を作成し、正しく委員の発言を分類できるかどうかを検証した。AIは日銀政策委員の発言の特徴を見極めることができるのだろうか。 日銀の政策委員が政策運営に際して重視する内容やバックグラウンドはさまざまであり、各委員の講演ではそれぞれの関心のある事柄について、自らの意見を述べるケースが少なくない。そこで、現政策委員9人の2017年以降の講演テキストを用いて、それぞれの委員がどのような単語(今回は「名詞」のみを対象にした)を多く使用したのかを調べてみた。 なお、今年の3月20日に就任したばかりの雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁は講演テキストの数が少ないため、就任会見のテキストデータも併せて用いた(以下、当レポートではこれらのテキストデータを分析対象とし、図表等では敬称を省略した)。 今回のキーワード分析では単純に単語の使用頻度を数えるのではなく、「TF-IDF分析」(Term Frequency - Inverse Document Frequency)を用いた。 「TF-IDF分析」は「文書に含まれる単語の重要度」をそれぞれ指数化する分析方法である。その指数は各委員の講演テキストにおける単語の使用頻度(Term Frequency)が高いほど大きくなる一方、すべての委員が共通に用いる単語の使用頻度が高いほど小さくなる(Inverse Document Frequency)。つまり、各委員がそれぞれ特徴的に多く用いている単語の指数は高くなるが、共通して用いている単語の指数は低くなるように調整される』、なるほど合理的だ。
・『重要度の違いや特徴的な言葉が浮かび上がる  政策委員の講演テキストに「TF-IDF分析」を行った結果、いくつかの特徴が浮かび上がった。 黒田東彦総裁の単語の重要度はトップが「物価」で、「経済」「わが国」「物価上昇率」「企業」と続く。雨宮副総裁は「物価」が最も重要度が高く、次が「日本銀行」の0.21である。若田部副総裁はトップが「総裁」で以下、「日本銀行」「議論」「物価」と続く。 リフレ派(インフレを促進する政策を主張する人々)で知られる原田泰審議委員は、「QQE」(量的・質的金融政策の略語)という発言の重要度が最も高い。やはりリフレ派である片岡剛士審議委員は「予想インフレ」という言葉の重要度が最も高かった。 布野幸利、櫻井眞、政井貴子の各審議委員はトップが「物価」で次に「経済」であるのに対し、鈴木人司審議委員は「企業」が「物価」よりも重要度の高い言葉であるという結果になった。金融政策を決定するうえで、物価よりも企業活動などの実体経済の動きを重視しているとみられる。 また、ほかにも、原田審議委員の「岩石」や、政井審議委員の「女性」や「金融教育」などの発言も特徴語としてそれぞれの上位30単語にランクインした。 テキストマイニングによって各委員の主張の特徴をつかむことはある程度できそうだ。 テキストマイニングの1つの手法として、複数の文章の「類似度」を測る方法がある。具体的には、文章に使われている単語(名詞)の種類と使用頻度をBoW(Bag of Words)と呼ばれるベクトル(行列)で表現し、2つの文章ベクトルのcos類似度(コサイン類似度、内積)を求める。 まったく同じベクトルであれば1、無関係であれば0となる。つまり、2つの文章をそれぞれベクトルで表現したときに、同じような方向を向いていればcos類似度は大きくなり、2つの文章は「似ている」ことになる。 9人の講演テキストについて、それぞれの「類似度」を求めた結果を表にしてみた。また、各委員の講演テキストと9人全員のすべての講演テキストを1つにまとめたテキストデータとの「類似度」を求めてグラフにしてみると、全体の総意を述べることが多い黒田東彦総裁は全体との類似度が高いことがわかる』、随分、手間がかかる手法のようだ。
・『原田審議委員は全体の総意と「類似度」が低い  一方で若田部副総裁や原田審議委員は全体との類似度が低い。若田部副総裁の場合は分析に用いたテキストの量が少ないことから割り引いて見る必要があるが、原田審議委員は全体とは異なる意見を述べることが多いといえそうだ。 「類似度分析」はそれぞれの委員の主張の距離感を測るために有用だろう。 各委員の講演テキストにはそれぞれの考えや主張が反映されているのであれば、それを機械学習することによってさまざまな文章がどの委員の発言に近いかを分類する「分類器」を作ることができる。 具体的には、各政策委員の講演テキストをセンテンスごとに切り分け、それぞれのセンテンスが誰の発言であるかを学習する(今回は全体で2974センテンスが分析対象となった)。どのセンテンスが誰の発言であるかをセットで学習する(ラベル付けするとも言う)ことになるので、機械学習における「教師あり学習」を実行することになる。 「分類器」の精度を求めるため、各委員の講演テキストに含まれるセンテンスのうちの一定数(全体の80%)をランダムに抽出し、それを学習データとして残りのデータ(が誰の発言か)を正しく予想できるかという検証を複数回行った。なお、分類器の設定については、Random ForestとNeural Networkをそれぞれ用いて検証したが、今回は前者の正答率が全体に高かったため、以下ではすべてRandom Forestを用いた結果を示す』、ここまでやるか、と思われるほどの大変さだが、一度、構築してしまえば、他にも応用できぞうだ。
・『正答率は52%、テキストがそろえば62%も可能  委員は9人いることを考えると、ランダムに予想すれば正答率は約11.1%(=9分の1)となるが、検証の結果、機械学習による各委員の発言の正答率は約52%まで向上した。機械学習によって、どの政策委員の発言内容かを予測できる精度を高めることは、可能であることがわかる。 なお、どの委員の発言が「予測しやすいか」を調べるため、テキストデータのうちランダムに選んだ80%を学習データ、残りの20%を検証データとして正答率を求めた。 原田審議委員(正答率89.8%)の発言の分類は比較的容易であることがわかったが、これは、前述のように、原田審議委員は全体の総意とは違った発言が目立つためだと思われる。一方、雨宮副総裁の正答率は低くなったが、これは講演テキストの不足によって学習データに限りがあったことが原因であると考えられる。 ほかにも、講演テキストが少ない若田部副総裁も正答率が低く、同じリフレ派とされる原田審議委員と分類されてしまう比率が高かった。そこで、テキストの少ない雨宮副総裁と若田部副総裁、鈴木審議委員、片岡審議委員を分析対象から外して同じ検証を行ったところ、各委員の発言の正答率は約62%まで向上した。 今後も講演テキストを蓄積し、精度の向上を図る必要があるものの、今回作成した「分類器」はある程度の正答率を発揮しているとみられる。 総じてAI・機械学習は「BOJウォッチ」をある程度上手にこなすことができ、市場の「BOJウォッチャー」の脅威となる可能性もあるだろう』、筆者の「BOJウォッチ」の精度がどの程度向上するのか、注目したい。
タグ:総じてAI・機械学習は「BOJウォッチ」をある程度上手にこなすことができ、市場の「BOJウォッチャー」の脅威となる可能性もあるだろう 重要度の違いや特徴的な言葉が浮かび上がる 「BOJ(日銀)ウォッチ」を、AI・機械学習がどの程度上手に「こなす」ことができるかを検証 、「エコノミスト」が今後10~20年のうちに消滅する確率は43% オックスフォード大学の学者2人 質的データを扱うことになるテキストマイニングと親和性の高いAI(人工知能)・機械学習も金融・経済の分析において重要性が増している 「機械学習による景気分析 ―『景気ウォッチャー調査』のテキストマイニング―」 日本銀行 「AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?」 東洋経済オンライン 末廣 徹 米国電気電子学会(IEEE)はAIや自律型システムの開発ガイドラインの第2版 「一般データ保護規則(GDPR)」 データや倫理の整備が鍵 韓国軍需企業と「国防人工知能融合研究センター」を共同設立 韓国科学技術院(KAIST) AIのダークサイドの最たるものは戦争や殺人の「AI兵器」 敵対的サンプル画像 テイはネット上で利用者が書き込んだ内容を学んで成長する仕組み。ここに不適切な言葉を学ぶ脆弱性があった テイはヒトラーを礼賛する発言や、人種差別的な発言を繰り返すようになり、同社はわずか1日でテイの公開を停止した 公開したチャットボット「Tay(テイ)」 マイクロソフト 差別発言するチャットボット フェイク映像がFakeAppで簡単に作れるようになった FakeApp ディープフェイク。有名人の顔を別人の顔に合成した精巧なニセ動画の総称 「「身近な悪意」で暴走、AIのダークサイド 先端技術の光と影」 日経ビジネスオンライン シンギュラリティは「起きる、起きない」ではない! 「起こす、起こさない」である シンギュラリティの予兆を隠す意図はなかったのか? 実験を中止 言語としては「英語」なのですが、その内容は人間には到底理解できるものではありませんでした 会話が進むにつれ、『ボブ』と『アリス』は勝手に使用言語を変化させていったのです 、『ボブ』と『アリス』と命名された2つのAIエージェントに「価格を交渉して合意しろ」という目標を設定 フェイスブック人工知能研究所 2つのAIが会話をしている最中に、人間には理解不能な会話を始めた。しかも、その会話は途切れることなく続いていた、というニュース 『マルチナ、永遠のAI。』 AI・仮想通貨のエンターテイメント小説 「やはりシンギュラリティは起きるのか! AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !」 大村あつし 「教育のための科学研究所」 教育現場の最前線に立つ教員たちも同様の危機感を共有 調査対象となった中学生の約半数がこの問いに「同じである」と回答したのだ。このRST調査で、「中学を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」ことが明らかにされた 「同義文判定」というジャンル リーディングスキルテスト(RST) 中学生に読解力調査 現代社会に生きる私たちの多くは、AIには肩代わりできない種類の仕事を不足なくうまくやっていけるだけの読解力や常識、あるいは柔軟性や発想力を十分に備えているでしょうか 「太郎は花子が好きだ」という文は論理や統計、確率の世界に還元することができない 数学によって数式に置き換えることができるのは、論理・統計・確率の3つだけ 人間の一般的知能と同等レベルを示すような「真の意味でのAI」が現時点では不可能であると著者が考えるのは、今の数学で表現できることに原理的な限界があるためだ プロジェクトの真の狙いは東大合格ではなく、多岐にわたるAI技術の粋を集めることで、AIに何ができるか、何ができないかを解明することだったのだ 、「偏差値65を超えるのは不可能だ」と考えるにいたった 「脳を模倣して」数理モデルを作った 「機械学習」 「ディープラーニング」 国公立大学やMARCH・関関同立レベルの一部の学科でも合格可能性80%を示す値 2016年で偏差値57.1 人工知能プロジェクト(通称「東ロボくん」) 「ロボットは東大に入れるか」 わたしたち人間の知られざる弱点が明らかになっていく過程 AIが持つ原理的な限界も丁寧に解説 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 シンギュラリティ理論 AI脅威論 「「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』」 ダイヤモンド・オンライン (その5)(「東大に合格するAI」が実現不可能な数学的理由 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』、やはりシンギュラリティは起きるのか!AIが人間には理解できない独自の会話を始めた !、「身近な悪意」で暴走 AIのダークサイド 先端技術の光と影、AIに日銀・政策委員の発言を分析させてみた エコノミストの仕事はAIに奪われるのか?) (AI) 人工知能
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クールジャパン戦略(その7)(三越伊勢丹「クールジャパン」のあきれた実態 官民ファンドが出資する海外店での迷走劇、「日本スゴイ番組」にドイツから見える違和感 日本好き外国人ばかり取り上げても仕方ない、日本人が世界でバカにされている説は本当か 「日本スゴい!」風潮を真に受けてはいけない) [経済政策]

クールジャパン戦略については、4が24日に取上げた。今日は、(その7)(三越伊勢丹「クールジャパン」のあきれた実態 官民ファンドが出資する海外店での迷走劇、「日本スゴイ番組」にドイツから見える違和感 日本好き外国人ばかり取り上げても仕方ない、日本人が世界でバカにされている説は本当か 「日本スゴい!」風潮を真に受けてはいけない)である。

先ずは、7月9日付け東洋経済オンライン「三越伊勢丹「クールジャパン」のあきれた実態 官民ファンドが出資する海外店での迷走劇」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/228503
・『百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングス(HD)が、公的資金が投入された海外店舗をめぐって迷走劇を演じていることが明らかになった。 三越伊勢丹HDは7月初旬、マレーシアの合弁会社「アイシージェイ デパートメントストア」(ICJ)を完全子会社化した。三越伊勢丹HDが約10億円(出資比率51%)、官民ファンド「クールジャパン(CJ)機構」(海外需要開拓支援機構)が9.7億円(同49%)を出資して2014年10月に設立されたICJは、クアラルンプールで店舗面積1万1000平方メートルの大型商業施設を2016年10月から運営してきた』、どのような事情があったのだろう。
・『地元住民がそっぽ  この店舗は安倍政権肝いりの「クールジャパン戦略」に沿って、日本の伝統やポップカルチャーを発信するために日本の商品だけを扱う拠点として耳目を集めた。名付けて「伊勢丹 ザ・ジャパン・ストア」。が、ふたを開けてみると地元住民にそっぽを向かれ、業績が振るわない。2017年度の売上高はわずか16億円、営業損益は5億円の赤字だった。 結局、単独の自力再建を目指し、三越伊勢丹HDはCJ機構が持つICJの全株式を今回買い取った。 一連の動きはCJ機構が投資の損失が膨らまないように、早期に出口を模索したかのように映る。ただ、百貨店関係者は一様に首をひねる。「開業2年で十分な利益を出せる店舗なんてない。そもそもCJ機構は長期視点で事業者を支援することが売りの一つだったはず」(都内百貨店の社員)。 早期撤退の理由について、ある政府関係筋は「すべて三越伊勢丹HD側の事情」と語る。 この関係筋によると、CJ機構側は昨年9月ごろから再建案の策定を三越伊勢丹HDに何度も打診した。だが「会議を開こう」とメールを送信してもまともに返事が来ない。話し合いに応じる姿勢が一向に見られなかった。 今年1月にようやく再建に向けた会議が開かれた。ところが、翌2月に突然、三越伊勢丹HDが「(共同での)事業をやめたい」と切り出した。さらにCJ機構が保有する株式の買い取りについて、「無償での譲渡を要求した」(関係筋)という。 再び行き詰まったが、経緯を知った大物議員が介入したことで、「出資額(9.7億円)の半値で買い取る」との条件で落ち着いたようだ(取得額は未公表)』、こんなところでも大物議員の「口利き」は利いたようだ。
・『前社長の施策をことごとく否定  不自然な動きの背景には、三越伊勢丹HDの経営体制の急変がある。 大西洋前社長の電撃解任を受けて、2017年4月に杉江俊彦社長が就任した。大西前社長は発信力のある経営者だったが、業績は低迷。後任の杉江社長は社内で数値管理の徹底を打ち出し、「大西前社長が導入した施策を、ことごとくやめている印象がある」(別の百貨店関係者)。 大西前社長は国内店舗で日本製品を積極的に発信したり、外務省が英ロンドンなどに設置する「ジャパンハウス」への出店を検討したりするなど、クールジャパンの取り組みに熱心だった。ジャパンストアも完全な“大西案件”。異例の枠組み見直しには、尾を引く三越伊勢丹HDの内紛が背景にあったようだ。 ジャパンストアは間接照明を取り入れた豪華な内装で、ファッション、ライフスタイル、カルチャーとテーマによって編集された売り場が特徴だ。 今年5月に連続4日間、同店を訪れた文筆家の古谷経衡氏は、「実質5フロアのうち、1階から3階まで顧客がいなかった。各フロアに20人ほどのスタッフがいたが、談笑していた。施設が豪華なだけに、閑散とした雰囲気が際立っていた」とその印象を話す。 全体的に商品の値段はかなり高い。山梨県産ブドウは1箱(2房)約2万円、山梨県産桃1箱(5個入り)約1万円、小さな仏像が約11万円、フライパンには約1万円の値札がついていた。 「本物の日本」を発信するコンセプトだが、カルチャーコーナーには日本文化とは無縁の洋書や、ミッキーマウスの模型が並んでいた』、クーデターのような形で社長になった者は、前任社長のことをことごとく否定するのはよくある話だが、それにしても、ジャパンストアはよくぞこんな代物を作ったと、素人でもあきれるほどだ。
・『政府が支援すべき案件だったのか  三越伊勢丹HDはジャパンストアの今後について、「(共同ではなく)1社で運営したほうが柔軟に対応できる。クアラルンプール市内にはほかに3店舗あるので、連携して展開していく。品ぞろえを見直し、店舗改装も視野に入れて再チャレンジしたい」とする。ただ、どこまで再建に本腰を入れるかは不透明だ。 ジャパンストアの問題は、CJ機構の存在意義にもつながる。日本文化の海外展開を目指して2013年に発足したが、成果は芳しくない。会計検査院が2017年3月末の官民ファンドの投資損益を調べたところ、CJ機構については17件、約310億円の投融資で44億円の損失が生じていた。 明治大学公共政策大学院の田中秀明教授は「CJ機構の投資対象には政府が支援すべきか疑問な案件もあり、収益を上げるためのガバナンスが弱い。現在14もの官民ファンドがあるが、三つあれば十分。CJ機構も統合されるべき」と説く。 見逃してはならないのは、ICJに政府出資が含まれていたことだ。日本文化の発展促進、官民プロジェクトの正当性、税金の適切な使途など、複数の観点からジャパンストアをめぐる経緯を精査する必要がある』、CJ機構はもともとは経産省の肝煎りで設立された。既に「44億円の損失」とは深刻だ。経産省としては、産業革新機構と合併させることで、目立たなくしようとしているらしいが、産業革新機構側は逃げ回っているらしい。いずれにしろ、安倍政権の大失敗の1つだ。

次に、在独のフリーライターの雨宮 紫苑氏が8月9日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「日本スゴイ番組」にドイツから見える違和感 日本好き外国人ばかり取り上げても仕方ない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/232370
・『日本賞賛番組の信憑性  数年前から、やたらと「日本スゴイ」という内容のテレビ番組を見かけるようになりました。この種の日本賞賛番組に対する賛否は人それぞれでしょうが、以前のわたしは、そういった番組が結構好きでした。 当時は無自覚でしたが、テレビ番組や報道の影響で「日本はアジアの中でも特別」「日本は海外から注目されている人気の国」という認識を持っていたから、日本賞賛にも違和感がなかったのかもしれません。 しかし、2014年からドイツに住むようになって印象は変わりました。 ドイツで日本出身者のわたしは賞賛されたか?「日本スゴイ」と言ってもらえたか? 拙著『日本人とドイツ人比べてみたらどっちもどっち』でも詳しく述べていますが、正直、そんなことは全然ありませんでした。日本人だからチヤホヤしてくれる人も、日本を褒めちぎってくれる人もいません。 むしろ「原発は大丈夫か」「君の家族も朝から晩まで働いているのか」「中国のことをどう思っているのか」と聞かれたりする。ドイツ人からすれば、日本は極東にある遠い国、アジアの割に頑張っている国にすぎなかったのです。 こんな日本に対する反応を知るにつれ、日本賞賛番組に違和感を覚えるようになってきました。インタビューされている外国人が、番組映えする極端な人ばかりに思えてしまうのです。 日本に来ている時点である程度、日本好きである可能性は高いし、テレビ的に面白い人を取り上げるのも当然でしょう。でもその手の情報が連日、放送されると、わたしのように無意識に「海外には日本好きばかり」と刷り込まれてしまうかもしれません』、その通りだ。
・『オタクはオタク  日本賞賛番組だけではありません。「ジャパンエキスポにたくさんのコスプレーヤーが集まった」「アイドルの海外公演にたくさんのファンが駆けつけた」という報道もよく目にしました。来日してアイドルのコンサートに行ったり、アニメイトに行く外国人に密着した番組もよく放送されていたりしますよね。だから、「日本のポップカルチャーは世界で大人気!」と思うかもしれません。でも、オタクは海外でもあくまでオタクです。 断っておけば、わたしはアニメとマンガが大好きで、「モーニング娘。’18 」などの「ハロー!プロジェクト」も大好きです。だから、多くの外国人が日本のポップカルチャーに興味を持ってくれること自体はとてもうれしい。 でもドイツには「アニメは子どもが見るもの」というイメージがあります。わたしのパートナーや一部の友人もアニメが好きですがそれを積極的に公言はしないし、わたしがバスでマンガを読んでいると彼はちょっとイヤな顔をします。 アイドルも同様です。ドイツの友人に「日本の音楽を紹介して」と言われた際、何度かアイドルの動画を見せたことがありました。わたしとしては「カワイイ」「スゴイ」といった反応を期待していたのですが、率直に言うと、評判は全然良くありません。 「未成年が下着で踊っている」「義務教育を受ける年齢なのに親はなにをやっているんだ」「いい年した大人が児童ポルノみたいなビデオを見て喜んでいるのか……」 ちょっとショックでした。それで今では大人しく、宇多田ヒカルを紹介することにしています。 私自身、2次元にどっぷりハマっているし、これからもアイドルを応援するつもりです。ただ、あまり「海外でも人気!」と言いすぎると、現実と差ができてしまうんじゃないか、と心配になってきます。 オタク文化だけじゃない、最近は観光地としても日本は躍進している。インバウンドが盛り上がっているんだ――そういう声も聞こえてきそうです。実際に訪日観光客数は増加し続けていますし、観光地としての日本には高いポテンシャルがあると思います。 しかし、日本の観光地としての魅力を伝えるためには、もっと「外からの目」を客観的に認識することが必要なのではないでしょうか。 ドイツ人の旅行の楽しみ方のひとつとして、「自分の興味のある場所へ行く」というパターンがあります。「そんなの当然だろう」と思われるでしょうが、ドイツ人の場合、旅行前にきっちりと歴史や関係人物の経歴を予習して、現地でも解説文をしっかりと読みこむ人が多いようです』、アイドルの動画に対して、ドイツ人が「いい年した大人が児童ポルノみたいなビデオを見て喜んでいるのか……」には、その辛辣さに思わず微笑んでしまった。
・『ガイドブックで予習してからやってくるドイツ人  皇居や明治神宮が何年に建てられて、どんな人が住んでいて、それが日本にとってどんな存在なのか。そもそも天皇とはなにか。ドイツ人の観光客は、ガイドブックでそういったことを予習してからやってきます。 このへんは、観光地をはしごして写真を撮ることがメインになりがちな日本人の旅行とは違うところでしょう。ちなみに、ドイツでは「せわしない日本型旅行」は、バカンスの楽しみ方を知らない定番の日本人いじりネタになっています。 そう考えると、日本の観光地は「知的好奇心のための旅行」という需要に応えきれていないかもしれません。観光地は「せわしない日本型旅行」ばかりに重点を置いていて、外国人観光客が「新しい知識を得られて刺激を受けた」と思えるような工夫が足りていない気がします』、「せわしない日本型旅行」も言い得て妙だ。
・『また、「できる限り現地の人っぽい生活をしたい」というニーズもあります。よくわからないけどメイド喫茶に行ってみたり、コンビニでおにぎりを買ってみたり、スクランブル交差点を往復してみたり、原宿でクレープを買ってみたりする。 日本人の平均旅行滞在期間は短いので、生活体験といってもあまりピンとこないかもしれません。しかし平均2週間ほど日本に滞在するドイツ人は、ただ観光地をめぐるだけではなく、現地の人の生活に触れて刺激的な体験をしたいという人が多いのです。 このように、改めて外からの目で日本を見ると、日本のルールを外国人に理解してもらうための工夫が少なすぎる、日本の魅力が伝えきれていない、と思いませんか? たとえば旅館のシステム。これ自体がそもそも独特です。日本を紹介しているガイドブックでは、「リョカンには部屋にシャワールームがなく、共同オンセンがある」「タタミという床の上にマットを敷いて寝る」「フィットネスルームはない」とあります。日本は旅館を観光の目玉のひとつとして推していますが、外国人がみんな「リョカンがなんたるか」を知っているわけじゃありません。 ウォシュレットだって馴染みがない人がほとんどなのです。ボタンがやたらと並んでいても、最重要の「流す」がどれかがわからなかったりします』、確かにシュレットもボタン操作を各国語で説明したもの、があってもいいだろう。。
・『外国人にちゃんと伝わっていないのはもったいない  日本にはユニークな生活習慣やシステムがあるのに、それを楽しむ方法が外国人にちゃんと伝わっていない。それはもったいないです。 話を「日本賞賛番組」に戻しましょう。 「日本のこういうところがすごい」「日本のこういうところが特別だ」と胸を張りたいのなら、それをちゃんと外国人に伝えるほうにもエネルギーを使えばいいのに、と思います。 旅館や温泉の楽しみ方、電車の乗り方などもちゃんとわかるように発信すれば、日本旅行がより現実的になり、日本旅行をしている自分を想像しやすくなるはずです。日本という国自体は知名度があるのだから、やりようによっては大きな効果が見込めると思うのです。 日本人による日本人目線の外国人観光客対策ではなく、外国人目線の観光化を意識していけば、外国人の需要に気づき、日本はもっと魅力的な観光地になれます。そのとき、いま日本で放送されている「日本スゴイ」という番組は、もっと説得力を持つことでしょう。 わたしはドイツで5年ほど暮らしてみて、日本にいるときには気づかなかった、日本のいいところがいろいろ見えてきました(もちろん逆のこともありますが)。 「日本スゴイ」と国内だけで盛り上がっていてもしょうがない。かといって、美化されがちなドイツの働き方や教育制度をマネすればいいかというと、それもまたちがう。 「日本を見直そう」「日本のいいところを理解しよう」という考えは理解できます。自分の国に自信を持つことは悪いことではありません。でもせっかくなら、それが「世界に通用するものだったらいいのにな」と思うのです。 特殊な外国人ばかり取り上げて「日本大好き」と言わせて自己満足するのではなく、「外から日本はどう見えているのか」「どこに需要があるのか」を冷静に考えたほうが、日本にメリットがあるのではないでしょうか』、説得力がある指摘だ。

第三に、作家、書評家の印南 敦史氏が10月18日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本人が世界でバカにされている説は本当か 「日本スゴい!」風潮を真に受けてはいけない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/242657
・『『世界でバカにされる日本人』(谷本真由美著、ワニブックスPLUS新書)というタイトルを見た瞬間にピンときたのは、おそらく私自身が心のどこかで、このことを気にかけていたからだ。 マスメディアをにぎわす“日本礼賛ブーム”に対して、なんだかモヤモヤする思いを抱いていたということである。 といっても、こういった番組を頭ごなしに否定したいわけではない。それどころか、しばしばあの手の番組を眺めては、ツッコミを入れたりもしていたのだ。だから、偉そうなことを上から目線で語る資格はない。 しかし、それでいて、こうした風潮に対する違和感をぬぐえなかったのも事実。だから、そんな自分のスタンスの中途半端さも含め、モヤモヤしていたということだ』、多くの知的な日本人もモヤモヤしているのだろう。
・『ロンドン在住の著者は、元国連職員。過去には日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど各国での就労経験があるという。つまりは「海外から日本はどう見られているのか」を実際に肌で感じてきた人だということになる。 だから本書に、「そうだよね?」とうなずきたくなるような「共感」と「痛快さ」を期待したのだ。ところが予想に反して、第1章「『ここが変だよ! 日本人』?BEST7」を確認してみた結果、「あれ?」という気持ちだけが残ってしまったのだった。 ここは、「考え方」「働き方」「マスコミ」「政治」「社会」「文化」「行動」について、日本人の「おかしい」部分を列記した章である。その内容自体はあながち的外れだとも思わないのだが、圧倒的に外側からの視点で語っているところが、どうしても気になってしまったのだ。 端的にいえば、日本たたきが目的だと誤解されても仕方がない書き方をしていることは否めないのだ。でも、基本的には納得できる主張だからこそ、誤解を誘発するような書き方をするのはもったいない気がしたということだ。 しかし、続いて第2章「世界は日本をバカにしている」を読み進めてみると、印象は大きく変わる。ここでは1960年代から現在に至る、経済と連動した「世界における日本のイメージ」の変遷に焦点を当てているのだが、その解説はとてもわかりやすい。そして、著者がこの問題をきちんと理解していることが手に取るようにわかる』、なるほど。
・『東日本大震災が突きつけた日本の現実  特に納得できたのは、バブル崩壊以降に日本(人)に対するイメージが大きく変わったという指摘だ。それ以来、日本の債権処理問題や金融引き締め策が取りざたされ、日本に関する前向きな報道が激変したことについては知られた話。特に2000年以降は、著名な大手企業による金銭スキャンダルのように、日本を代表する企業の内部通報や内部告発、不正疑惑が大きく注目されるようになったわけである。 そして、それを踏まえたうえで、最も注目すべきは東日本大震災について書かれた箇所だ。 日本に関する報道で国内外に大きな影響があったのは、やはり2011年の東日本大震災ではないでしょうか。日本で発生した自然災害の大きさは世界の度肝を抜いたのですが、なによりも驚かされたのは福島第一原子力発電所(福島第一原発)に関するさまざまなニュースでした。 復興が驚異的に早くて道路が数日間で直ってしまった、災害があったのに暴動にはならず秩序が保たれた――といった前向きなニュースもありました。しかし、それ以上に注目されたのは、原発で働く人々への冷徹な待遇とか事故を起こした関係者が処罰されないこと、被災者に対する支援が不十分なことでした。(62ページより) こうしたことは現実的に、日本国内ではあまり積極的に報道されない部分だ。しかし、本来であればなによりも先に報道されるべきことでもある。ところが報道姿勢が変わらないこともあり、この時期に日本のイメージはとても悪い方向に進んでしまったということだ。 バブル崩壊までのわが国は、世界経済をリードして未来を象徴するようなキラキラと輝いた国だったのに、今や災害で悲惨な目に遭った人たちをないがしろにしているのです。(63ページより) この指摘は、単に「耳が痛い」と感想を述べるだけで済ませられる問題ではないだろう』、確かにマイナスの側面を軽視するマスコミの姿勢は問題だ。無論、受け手の国民が前向きなニュースの方をより好んでいるとしても、裏面も報道するべきだろう。
・『日本人は世界でまったく注目されていない?  とはいえ、東日本大震災がもたらした大きな津波被害と原発事故が、予想外のトピックスとして世界を震撼させたのは事実だ。しかし、だからといって海外の人々が抱く日本のイメージが変わったわけでもない。 少なくとも、冒頭で触れたような「日本スゴイ!」系のテレビ番組で放送されるような、「海外で注目を浴びる国」では決してない。あくまでワン・オブ・ゼム(One of them)にすぎず、たくさんある国のなかのひとつにすぎないということだ。 まず心に留めておくべきは、このことではないかと感じる。持ち上げられてうれしいとか、注目を浴びていないなら悔しいとか、そういう次元の問題ではなく、それが「現実」であるということだ。だとすれば、それは直視する必要がある。 そしてもうひとつ無視できないのは、「教育レベル」の問題だという。 どこの国でも同じことがいえるのですが、外国のことをよく知っているのは教育レベルが高い人、海外と交流が多い人、さらには好奇心から海外に興味があるような人に限られてしまうことが少なくありません。(62ページより) アメリカやヨーロッパの大都市であっても、外国に興味がない人の場合は日本と中国の違いさえわからない。大学を出ているような高学歴の人であっても、日本と北朝鮮は陸つづきになっていると信じている人だっています。 そんな一般的なレベルの人たちは日本のコンビニエンスストアがいかに便利で日常生活に密着しているかということには興味がないし、ましてや憲法第九条の何たるかなんてまるで関心がない。アメリカ軍が日本の各地に駐留していることさえ知らない人が多くを占めます。そしてまた、かなりの日本人が西洋式の家に住んでいることもわかっていない外国人だって大勢いるのです。(62ページより) 大げさだと感じるだろうか?しかし、「日本からすると、チェコスロバキアとウクライナがいったいどこにあるのかわからない人が多いのと同じようなもの」だと言われれば、納得せざるをえない部分はあるはずだ』、確かに一般人にとってはそんなものだろう。
・『ところで「教育レベル」に関しては、とても納得させられたエピソードが登場する。この点について、まず重要なのは「情報源」だ。特に若い人や子どもの間では、いまやネットで得る情報は動画が中心。したがって、ネット動画の世界で日本がどのように扱われているかを見ることで、日本のイメージを知ることができるというのだ。 海外からなめられている日本  注目すべきは、ネット動画の世界に、日本人をあざ笑うような多くの外国人が存在するという事実。そして、その代表格として取り上げられているのが、2018年初頭に「青木ヶ原樹海の遺体動画」事件を巻き起こしたローガン・ポール氏だ。 ご存じのとおり、さまざまないたずら動画を投稿して莫大な再生回数をたたき出し、決して少なくない収入を得ているアメリカのユーチューバーである。子どもたちの間では大人気であるものの、やることがあまりにも過激かつ下品なので、子どもに悪影響を与えるのではないかと困り果てている親も少なくないという。 そんな彼にとって、格好のターゲットは日本だ。だから、来日時には渋谷や築地など各所で非常識かつ下品ないたずらをし、それらを動画としてアップしたわけである。 彼の動画を見ると、「あまり教育レベルが高くない外国人」が日本に対してどんな感情を抱いているのかがよくわかると著者は指摘する。 ローガン・ポール氏はオハイオ州出身のいわゆる“田舎者”で、教育水準が決して高いとはいえないごくごく一般的なアメリカ人といっていいでしょう。そういった人たちに、日本人だけではなく東洋人全般は、「体が小さくてクレームをつけない、ちょっと奇妙な人種」だと認識されているのです。(中略)東洋人はそういったイメージを持たれていますから、あまり教育程度が高くないアメリカのマジョリティにとっては甘くみられてしまいがちです。 だからローガン・ポール氏たちはアメリカやヨーロッパでなら絶対にしないようないたずらを日本ではたらき、亡くなった人の遺体をビデオで撮影するようなことができてしまう。こうして我ら日本人を困らせたり怒らせたりして楽しんでいる。自分たちと同じ人間とは思っていないからこその暴挙でしょう。(74?75ページより) 誤解すべきではないのは、著者が決して、すべてのアメリカ人(もしくは外人)がそうだと言っているわけではないということだ。重要なのは、「あまり教育水準が高くないマジョリティ」という点である。 しかしいずれにしても、彼らが日本人を誤解していることは事実であり、だからこそ「日本すごい!」と手放しで喜んでいられるようなことではないということだ。 ただし個人的には、そのことをきちんと認識することができれば、それだけで本書の役割は完結するようにも思えた。 上記のようなことを踏まえたうえで、以後は「バカにされない日本人になるための方法」として、さまざまな主張がなされている。「本質を見よ」「所属先にこだわるな」「他人と自分は違うと心得よ」「自信を持って行動しよう」「感性を磨け」といった具合だ。 つまり冒頭で触れた「ここが変だよ! 日本人」と同じ視点に立ち戻っているわけだが、ここで展開される「~せよ」というようなメッセージは、むしろわれわれ一人ひとりが、自分自身で考えていくべきことではないかと考えるのだ。 そういう意味では、「現実」をフラットな視点で客観的に見つめた第2章にこそ、本書の意義がある。ほかの章がだめだと言いたいわけではなく、第2章に書かれていることを読者が真摯に受け止め、「日本人はどう進むべきか」を自分の視点で考えてみることこそが大切だと感じるのである』、ローガン・ポール氏のことは初めて知った。困ったことだが、そういうとんでもない人間もいて、影響力を持っているという現実を残念ながら受け入れるしかない。彼の影響力を弱めるような動画を作るといったような裏工作は、考えるだけ無駄だろう。
タグ:この時期に日本のイメージはとても悪い方向に進んでしまったということだ 日本賞賛番組に違和感 2017年度の売上高はわずか16億円、営業損益は5億円の赤字 日本人は世界でまったく注目されていない 来日時には渋谷や築地など各所で非常識かつ下品ないたずらをし、それらを動画としてアップしたわけである 莫大な再生回数をたたき出し アメリカのユーチューバー 青木ヶ原樹海の遺体動画」事件を巻き起こしたローガン・ポール氏 ネット動画の世界に、日本人をあざ笑うような多くの外国人が存在するという事実 アイドル 「「日本スゴイ番組」にドイツから見える違和感 日本好き外国人ばかり取り上げても仕方ない」 雨宮 紫苑 政府が支援すべきか疑問な案件もあり、収益を上げるためのガバナンスが弱い 実質5フロアのうち、1階から3階まで顧客がいなかった。各フロアに20人ほどのスタッフがいたが、談笑していた。施設が豪華なだけに、閑散とした雰囲気が際立っていた アイシージェイ デパートメントストア 三越伊勢丹ホールディングス 「三越伊勢丹「クールジャパン」のあきれた実態 官民ファンドが出資する海外店での迷走劇」 CJ機構 政府が支援すべき案件だったのか ジャパンストアも完全な“大西案件 前社長の施策をことごとく否定 『『世界でバカにされる日本人』(谷本真由美著、ワニブックスPLUS新書) 東洋経済オンライン (その7)(三越伊勢丹「クールジャパン」のあきれた実態 官民ファンドが出資する海外店での迷走劇、「日本スゴイ番組」にドイツから見える違和感 日本好き外国人ばかり取り上げても仕方ない、日本人が世界でバカにされている説は本当か 「日本スゴい!」風潮を真に受けてはいけない) ドイツ人からすれば、日本は極東にある遠い国、アジアの割に頑張っている国にすぎなかったのです バブル崩壊までのわが国は、世界経済をリードして未来を象徴するようなキラキラと輝いた国だったのに、今や災害で悲惨な目に遭った人たちをないがしろにしているのです 、「教育レベル」の問題 オタクは海外でもあくまでオタク クールジャパン戦略 原発で働く人々への冷徹な待遇とか事故を起こした関係者が処罰されないこと、被災者に対する支援が不十分なことでした 「日本人が世界でバカにされている説は本当か 「日本スゴい!」風潮を真に受けてはいけない」 印南 敦史 特に納得できたのは、バブル崩壊以降に日本(人)に対するイメージが大きく変わったという指摘 東日本大震災が突きつけた日本の現実 17件、約310億円の投融資で44億円の損失が生じていた 2013年に発足したが、成果は芳しくない 開業2年で十分な利益を出せる店舗なんてない。そもそもCJ機構は長期視点で事業者を支援することが売りの一つだったはず 日本の伝統やポップカルチャーを発信するために日本の商品だけを扱う拠点 伊勢丹 ザ・ジャパン・ストア 、「日本人はどう進むべきか」を自分の視点で考えてみることこそが大切 外国人にちゃんと伝わっていないのはもったいない ガイドブックで予習してからやってくるドイツ人 「未成年が下着で踊っている」「義務教育を受ける年齢なのに親はなにをやっているんだ」「いい年した大人が児童ポルノみたいなビデオを見て喜んでいるのか……」 アイドルの動画を見せたことがありました 東洋人全般は、「体が小さくてクレームをつけない、ちょっと奇妙な人種」だと認識されているのです クールジャパン(CJ)機構 完全子会社化 日本人とドイツ人比べてみたらどっちもどっち 日本に来ている時点である程度、日本好きである可能性は高いし、テレビ的に面白い人を取り上げるのも当然でしょう 日本賞賛番組の信憑性 大物議員が介入したことで、「出資額(9.7億円)の半値で買い取る」との条件で落ち着いたようだ 無償での譲渡を要求
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マスコミ(その9)(全米の新聞がトランプ氏に抗議 日本はどうか 民主主義とは異なる意見の存在を認めること、「メディアに中立なんていらない」 「中立を掲げることは一種の逃げだ」、報道の自由が失われた日本 政権に媚びるメディアにも責任、Kokiの全面広告に透ける新聞協会「既得権益死守」の邪心) [メディア]

マスコミについては、8月7日に取上げた。今日は、(その9)(全米の新聞がトランプ氏に抗議 日本はどうか 民主主義とは異なる意見の存在を認めること、「メディアに中立なんていらない」 「中立を掲げることは一種の逃げだ」、報道の自由が失われた日本 政権に媚びるメディアにも責任、Kokiの全面広告に透ける新聞協会「既得権益死守」の邪心)である。

先ずは、政治評論家の田原 総一朗氏が8月24日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「全米の新聞がトランプ氏に抗議、日本はどうか 民主主義とは異なる意見の存在を認めること」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/082200082/?P=1
・『全米の300以上の新聞が8月16日付の社説で報道の自由の必要性を訴え、一斉にトランプ大統領を非難した。トランプ氏はこれまで何度も、自身に批判的なメディアを「フェイクニュースだ」と痛烈に批判していた。今回の新聞社の動きは、そういったトランプ氏への反発である。 トランプ氏は大統領に立候補する時、それまで誰も主張していなかった「米国第一主義」を掲げた。第二次大戦以降、米国は「世界の警察」を続けていた。そのため経済が安全保障に逼迫され、米国は世界の犠牲になっていた、というのである。米国経済はどんどん悪化し、「こんなことは続けられない」と主張するトランプ氏は「米国第一主義」を掲げたのである・・・トランプ氏は政策を進めていく上で、自身に反論するマスメディアを批判し始めた。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト等のマスメディアを「エスタブリッシュメントの提灯持ち」だとみなし、「フェイクニュースばかり流し、米国民を混乱させている」と宣言したのである。 こうした中、ボストン・グローブ紙の呼びかけにより、300以上の新聞が「これは民主主義の危機である」と主張。言論の自由を守らねばならない、メディアは国民の敵ではない、というメッセージを一斉に国民に報じたのである。 例えば、ニューヨーク・タイムズは「自由な報道は、あなたを必要としている」と題した社説の中で、「気にくわない真実をフェイクニュースと主張し、記者を国民の敵と呼ぶのは、民主主義にとって極めて危険である」と論じた。 様々なマスメディアが一斉に「トランプ氏は極めて危険な大統領である」と主張した。これに対し、トランプ氏は「フェイクニュースのメディアは野党だ。米国にとって極めて良くない存在である。だが、我々は勝ちつつある」などとツイートした。 トランプ氏は反論した上で、「フェイクニュースを流している新聞記者を排除する気はない」「記者を検閲する気はない」と述べた。ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席は、報道を徹底的に検閲して反対勢力を抑え込んでいる。この違いはとても興味深い』、「300以上の新聞が「これは民主主義の危機である」と主張。言論の自由を守らねばならない、メディアは国民の敵ではない、というメッセージを一斉に国民に報じたのである」というのは、大したものだ。
・『自民党が劣化する日本の方がよほど深刻だ  このような大論争が巻き起こっている米国に対し、日本はどうだろうか。日本の政治は、極めて危険な状態にある・・・朴槿恵氏・・・に比べると、日本の安倍晋三首相の行動の方がはるかに重大である。 例えば、森友学園問題では、「もし私や妻が関わっていたら、総理も議員も辞める」と発言したが、そもそもそんなことを言う必要などなかった。この発言があったからこそ、財務省は慌てて決裁文書を改ざんし、大事になった。 しかも、朝日新聞がこの改ざんを報じていなかったら、財務省は隠ぺいし続けていただろう。こんなことは、民主主義国家では許されないことだ。 さらに、財務省の責任者である麻生太郎財務相は、「なぜ改ざんしたのか、それが分かれば苦労はしない」とまで言った。さらには「どの組織でも、改ざんはありえる話だ。あくまでも個人の問題でしょう」と発言している。つまり、この問題について財務省は全く責任がないと主張したのである。 かつての自民党ならば、こんな発言をすれば、党内から大批判が出たはずだ。しかしこの時、自民党からは全く反対意見が出なかった』、財務省の改竄は確かに安倍発言が引き金になったのに、安倍首相や麻生財務相が居直っており、これを自民党が黙認しているのは、情けない限りだ。
・『明らかな嘘がまかり通っている  加計学園問題でも、安倍首相は獣医学部新設を検討する委員たちに「自分と加計孝太郎氏は40年来の友人だが、甘くするな」と言っておけば、何も問題は起きなかったはずだ。ところがたるんでいたから、「そんな話は知らない」と言ってしまった。 二人は40年来の友人で、毎年6~7回も食事をするような仲なのだから、知らないわけがない。僕は、獣医学部新設に関する委員たち(議員)と何人か会ったが、「なぜ安倍さんは、『加計氏は40年来の友人だが、甘くするな』と言わなかったのか」と聞いた。すると、委員たちは皆、「田原さん、なぜそれを早く安倍さんに言ってくれなかったんですか」と言った。 さらには、加計氏が岡山で記者会見をした時、「安倍首相と会ったという話は記憶にも記録にもない。事務局長が事を前に進めようとして愛媛県に言ったと報告を受けている」と発言した。独裁的な学園で、事務局長が勝手に話を進めようとすることなどあり得ない。 さらに新聞記者が「その事務局長の報告をいつ受けたのか」と質問すると、「覚えていない」と答えた。こんな馬鹿げた回答はあるだろうか。 これは安倍首相をだますことにも繋がる発言だ。加計氏の発言が事実ならば、当然、安倍首相に報告しなければならないが、報告していないという。そんなことがあるだろうか。 明らかな嘘がまかり通っている。本来ならば、こんなことがあれば自民党内から批判が出ても良いはずである。 自民党内が安倍首相のイエスマンで占められてしまったのは、かねてから主張しているように、選挙制度が中選挙区制から小選挙区制に変わってしまったことが大きな原因だ。中選挙区制だった当時は、自民党内に主流派、反主流派、非主流派があり、活発な議論が繰り広げられていた。自民党の首相が辞任する原因は、野党ではなく、党内の戦いに負けたことだったのである。岸信介氏、田中角栄氏、福田赳夫氏、皆そうだ。 こういった論争の土壌があった自民党こそが、日本のデモクラシーだったと思う。ところが選挙制度が変わり、今や自民党議員が皆安倍首相のイエスマンになってしまった。 例えば小泉純一郎内閣の頃は中選挙区制で、小泉氏の郵政民営化には党内からの強い反発があった。しかし今、そのような激しい論争は全く起こらない。これは、自民党の劣化だと言わざるを得ない』、その通りだ。
・『民主主義とは、自分と異なる意見の存在を認めることだ  今回、反トランプ一斉報道をした米国と、先に述べたような日本の状況と、何が大きく違うのか。 これまで安倍首相は国民の反対を押し切り、特定秘密保護法や安全保障関連法などを成立させてきた。野党が弱いのはもちろんのことだが、マスコミも弱いことを忘れてはならない。 今、どの新聞社が世論調査を行っても、「支持」よりも「不支持」の方が高い。しかし僕がみたところ、マスメディアには安倍支持のほうが多い。米国とは状況が全く異なるのである』、なるほど。
・『僕は権力やマスメディアに対して、強い不信感を抱いている。きっかけは、敗戦の年。僕が小学校5年生の時のことだ。1学期まで、学校の先生たちは「この戦争は世界の侵略国である米国や英国を打ち破り、彼らの植民地にされているアジアの国々を独立・解放させるための正義の戦争だ」と僕らに話していた。「だから、君らも早く大人になって、戦争に参加し、名誉の戦死をしろ」と言っていたのである。僕はそれを信じていた。 ところが夏休みに敗戦を迎え、2学期になるころには、占領軍が日本にやって来た。すると、同じ先生たちの話す内容が180度変わってしまったのである。「あの戦争は、やってはならない戦争だった。間違いだった。君たちは平和を目指さなくてはならない」と。新聞やラジオも、学校の先生たちと同じだった。 1学期までは「この戦争は正しい」と報じていたマスコミは、2学期になると「間違いだった」と逆の主張を始めた。戦時中は英雄だった人物が戦争犯罪人として逮捕されると、「当然である」と言った。 僕は、大人たち、特に偉い大人たちがもっともらしい口調で言う話は信用できない。国や権力は、国民をだますものだ」と強く思った。僕は、自分で確かめたことを信じようと思った。これが、僕のジャーナリストとしての原点である。言論の自由は絶対に守らなければならない。 民主主義とは、自分と異なる意見の存在を認めることである。その代わり、誰とでも徹底的に討論することが重要である。しかし日本には、そういった土壌が失われつつあるのではないか、と危惧している』、田原氏は言及してない点を補足しておこう。安倍政権のマスコミへのコントロールは、テレビ朝日のコメンテーターの古賀氏を引き降ろさせ、森友学園問題を初めに報じたNHKのディレクターを降板させたりと、枚挙にいとまがない。これらを通じて、言論の自由の土台が崩れつつある。

次に、10月17日付け東洋経済オンラインが掲載した同じ田原総一朗氏へのインタビュー「田原総一朗「メディアに中立なんていらない」 「中立を掲げることは一種の逃げだ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/242724
・『新聞をはじめとするマスメディアは、きちんと機能しているのだろうか。「メディア不信」「マスゴミ」といった言葉が珍しくなくなった昨今、その存在意義が問われ続けている。60年以上最前線で取材活動をしてきた田原総一朗氏は、多くのマスメディアが掲げる「中立公平」がメディア自身の行動を縛っているという。これからの目指すべき方向性を聞いた。 ——メディアが抱えている問題はどのようなことがありますか。 テレビの1番の問題はコンプライアンス。視聴者からのクレームが怖い。昔は電話でかかってきたクレームに対して、担当プロデューサーが謝れば収拾がついた。今はクレームがネット経由で番組の編成管理やスポンサーにいって、スポンサーがおりることにも発展する。すると制作側もなるべくクレームがこない無難な番組をつくろうとする。そういう番組が多くなったのが大問題だね。 安倍晋三内閣になって、そちらからの圧力が(テレビ局に)かかったという事例も聞いているけど、それよりもクレームが怖い。テレビ局上層部も無難な番組をつくろうとするし、権力からにらまれたくないというのがある。 もう1つは政治に関する番組や特集をやっても視聴率が取れない。ワイドショーもほとんど取れないし、今視聴率が取れるのは台風などの自然災害。それから体操、ボクシング、アメフトとかのパワハラとかそういう種類のニュースだね』、「クレームが怖い」というのはその通りだろう。
・『マスコミは事実を追求せよ  ——新聞についてはいかがですか。 日本の新聞社には言論の自由はない。どこもそうだ。読売新聞、産経新聞は安倍内閣応援団で、安倍さんの批判はできない。朝日新聞や毎日新聞は安倍批判の新聞だから、安倍さんのいいところをいいとは言えない。朝日新聞や毎日新聞で安倍さんのいいところを書いている記事を読んだことありますか? この前、日本経済新聞の幹部に言ったんだ。「今は完全に借金財政。日本銀行の(金融緩和の)出口戦略もまったくない。東京オリンピック後の不況ははっきりしてる。どうしてそのことを日本経済新聞は書けない?」って。その幹部は「おっしゃるとおりで……」ってそれっきりだったね。要するにあたりさわりのない記事ばっかり。新聞社のカラー以外の記事を書けないんだね。マスコミは事実を追求しなきゃいけないよ。昔、朝日新聞の幹部に、マスメディアは権力批判、権力監視でいいけど、朝日新聞ならば批判だけではなく、対策を考えるべきだと進言したことがある。そしたらその幹部は、対策をまともに考えようとしたら研究所をつくらなければいけない。お金も時間もかかる。何よりも労力が必要になる。でも批判だと何もいらない、と答えたよ。 朝日新聞についてはもう1つある。少し前に、文芸評論家の小川榮太郎氏が朝日新聞を批判する本を出したでしょう。本文にいくつか誤りがあったのは事実。だけど朝日新聞は小川氏を告訴した。言論の自由なんだから、朝日新聞を批判することは自由。朝日は言論で対抗しなきゃいけなかった。そのことについて、朝日新聞の幹部やOBは彼らに反論する自由はないと言っていたね』、「反論する自由はない」との朝日新聞の幹部やOBの言い分は説明不足で、理解不能だ。
・『——メディアの内部的な問題に起因するということですか。 政治にも問題がある。野党が弱すぎる。今の野党は政権を奪取しようという気持ちがまったくない。自民党議員も選挙制度が変わって安倍さんのイエスマンになってしまった。以前は自民党の主流派と反主流派の論争や転換が非常にダイナミックで迫力があった。 これまで自民党の総理大臣があんなに変わったのは野党との闘いに負けたからではない。自民党の反主流派に負けたんだ。岸信介、田中角栄、福田赳夫、大平正芳、宮澤喜一、みんなそうだよ』、思い出せばその通りだ。
・『自民党内部に緊張感がないのではないか  ところが小選挙区制に変わり、1つの選挙区から1人しか出られなくなった。だから自民党の議員で立候補するためには執行部に推薦されないと公認されない。だから安倍イエスマンになっちゃう。 自民党のなかにも緊張感がないな。森友問題も加計問題でも昔なら自民党の内部から異論が出るよ。今はまったく出ない。第1次安倍政権のときに石破茂幹事長に「自民党の内部がだらけているよ」と言ったんだ。 石破さんは「おっしゃるとおり」と応えた。中選挙区制に戻したらいいと提案したら、それは反対した。中選挙区制は1回の選挙で1億数千万円かかる。どうしても表に出せないお金が必要になる。つまり金権政治だよ。それに比べたら小選挙区制はお金がかからないからね。 自民党議員も幹部も大臣も、この国をどうするか責任をもっていない。僕は野党の幹部に「どうやって自民党から政権を奪い取るか真剣に考えろ」と言っている。時間をかけて言っているのに、今一つ真剣ではない。立憲民主党も野党第一党で満足してる。 この前は枝野幸男代表に「次の衆院選では少なくとも100議席はとらなきゃいけない」と言った。野党がもっと強くならないと政治が緊張しない。民進党の玉木雄一郎幹事長代理にも共産党の志位和夫委員長にも言ってるよ』、確かに、だらしないのは、自民党だけでなく、野党もそうだ。
・『——メディアには中立公平、不偏不党が求められると言われますが。 中立なんかないし、くだらないものと思っている。一種の逃げだよ。特定秘密保護法、集団的自衛権、共謀罪が国会で成立する前後に、僕は反対する7、8人で抗議声明を出した。そのときに新聞やテレビも一緒に出そうと声を掛けたけど、マスコミは中立不偏だといって参加しなかった。 メディアに公平・中立などありえない。僕がテレビ東京でディレクターをしてきたときに、学生運動のなかで全共闘・全学連と機動隊が対立した。そのときカメラはどちらから撮るか。全共闘の後ろから撮ればヘルメットをかぶった機動隊が、厳重な装備でガス弾を投げつけてくる権力の暴力装置に見える』、「カメラはどちらから撮るか」でまるで印象が違ってしまうというのは、面白いたとえだ。
・『中立とはどこを指すのか、非常に難しい  ところが機動隊の後ろから撮ると、ヘルメットをかぶった学生が覆面でゲバ棒をもって、石を投げてくる過激な暴力主義に見える。そこでメディアが中立に立つというのは、どこに立つことを言うのか。 三里塚闘争のときもそう。初めのころ、メディアは土地を接収された農民の側から取材していた。空港設置反対の世論がとても強かった。でも次第に、機動隊の力が強くなって、農民の側にいると取材する身に危険が及ぶ。実際に何人ものけが人が出た。だから機動隊の側から撮るようになる。 すると、農民と思われた人たちは皆武装していて、バックには過激な暴力集団の中核派がついている。彼らはグルだという流れになり、だんだん世論も成田空港賛成派が多くなっていった。中立とはどこを指すのか、非常に難しい問題だよ』、中立はテレビでは問題になるが、確かに難しい問題だ。
・『・・・えらい大人たちの言うことは信用できない。マスコミもまったく信用できない。国は国民をだます。だから自分の目で確かめたいと思って、ジャーナリストになった。あの戦争に突入したのは言論の自由がなかったから。だから僕は言論の自由は命を張って守る。日本を絶対に戦争させない。自分と違う考えの人も認めるし討論する。 ーー自らの意見を発表する媒体は選んでいますか。 ちゃんと自分の伝えたいことを発言できるメディアであれば、どこでもいいと思っている。紙かウェブかで分けているわけじゃない。僕はすべて一次情報をとっている。だから取材したことは事実であるという自信がある。 もう1つは、なぜこの特集をやらなきゃいけないか、プロデューサーにも報道局長にも、場合によってはテレビ局の会長にまで言う。「朝まで生テレビ」は始まって31年。毎回タブーに挑んでいる。会長から「どうぞ自由にやってください」と言われている。 ーーメディアで働く後進に伝えたいことは。 とにかく言論の自由を守る。権力は徹底的に監視する。日本を戦争しない国にする。デモクラシーを大事にする。そして中立なんてことはありえない。このことだけは伝えておきたい』、今後の活躍に期待したい。

第三に、元駐イラン大使で外交評論家の孫崎享氏が10月20日付け日刊ゲンダイに寄稿した「報道の自由が失われた日本 政権に媚びるメディアにも責任」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/239882/1
・『「報道の自由」がない国に民主主義はない。国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)が4月に公表した2018年の「報道の自由度ランキング」によると、調査対象の180カ国・地域のうち、日本は67位だった。主要7カ国(G7)では最下位であり、もはや「日本は民主主義国家ではない」と宣告されたようなものだ。 これは安倍政権の異常ともいうべき報道機関の締め付けが背景にあるが、その政権に唯々諾々と媚びている大手メディアの責任も大きいだろう』、確かに「報道の自由度ランキング」がG7で最下位とは、恥ずかしい限りだ。
・『国民の多くは、リベラル系の朝日新聞は「頑張っている」というイメージを抱いているだろう。しかし、近年の報道姿勢を見ていると疑問を抱かざるを得ない。 例えば、朝日新聞デジタルは、自民党の甘利明選対委員長の発言として、トランプ大統領が「シンゾーは(オレを)説得する天才だな」と語っていたという記事を掲載した。日米首脳会談で、安倍首相が在日米軍の駐留経費を日本側が約7割を負担しているとトランプ大統領に説明した際のエピソードのようだが、この記事には強い違和感を感じた。 まず、甘利氏といえば、経済再生担当相だった16年1月、週刊誌などで業者からの金銭授受が発覚して大臣を辞任し、その後、睡眠障害を理由に国会を長期欠席。いまだに本人から十分な説明がなされていない。 今回の内閣改造、自民党役員人事で、批判されてしかるべき人物が発した安倍首相をヨイショする発言をなぜ、記事にする必要があるのだろうか。 さらに言えば、日米地位協定第24条では米軍の駐留経費は米側が負担する、となっている。それなのに、日本は7612億円も負担しているのだ。ちなみにドイツは1876億円、韓国は1012億円だから、いかに日本の負担が突出しているかが分かる。駐留経費の7割負担というのは日本外交の汚点であって、安倍首相が得意げに語るような内容ではない。 朝日新聞は8月にも、デジタル版で〈紛糾の首脳会議で安倍首相の存在感、戦後最大〉と題した甘利発言を掲載している。記事によると、甘利氏が「『シンゾーの意見は?』。首脳会議が紛糾し、ステートメントも出せなくなりそうな際、必ず交わされる言葉だ。トランプ米大統領とそれ以外の首脳は、ことごとく対立し、最後はいつもこの言葉になる」と語ったというのだが、これは事実ではない。 首脳会議ではメルケル独首相らとトランプ大統領が激しく対立。安倍首相は単なる傍観者に過ぎず、首脳間だけの協議では、その存在感はほぼ皆無に等しかった。 政治家が首相の忠犬になるのは、ある意味、理解できるとしても、大手メディアが首相の忠犬になる必要は全くない』、その通りだ。ただ、「駐留経費の7割負担」はトランプに向けて日本の貢献をPRしただけで、「得意げに」なっている訳ではないのではなかろうか。それにしても、朝日新聞は一体どうなってしまったのだろう。

第四に、ノンフィクションライターの窪田順生氏が10月21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「Koki,の全面広告に透ける新聞協会「既得権益死守」の邪心」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/182620
・『わずか15歳の新星、Koki,さんを起用した、日本新聞協会の全面広告が波紋を呼んでいる。タイミング的に、新聞の軽減税率という既得権益を守りたいがためのアピールであることは一目瞭然。諸外国のメディアに比べて、肥大化しすぎた所帯をどうにか維持しようと目論む日本の新聞社には、権力を震え上がらせる記事は期待できない』、なるほど、そうだったのか。見抜けなかった私もおめでたいものだ。
・『まだ15歳の少女を利用した新聞協会のエグさ  まだ15歳の少女に、大人たちはなぜこんな「心ない仕打ち」をするのだろうか。 木村拓哉さんと工藤静香さんの次女でモデルのKoki,さんが起用された、日本新聞協会の「新聞週間」のキャンペーン広告のことだ。 ご存じの方も多いと思うが、Koki,さんは去る10月15日、同協会に加盟する全国74紙で展開された全面広告に登場した。彼女のアップと、ひらがな1文字だけの広告は74紙ですべて違っていて、全部並べるとこんなメッセージになる。「私は、まだ知らない。この国のことや、世界のこと。知ろう、強くなるために。知ろう、一歩踏み出すために。知ろう、自由を守るために。新聞で、未来をひらこう」 その一方で、SNSでは「コネで未来開いた人がなにを言う?」「ゴリ押しの人にそんなこと言われても、不快感しかない」などと厳しいツッコミが寄せられている。 これが冒頭で述べた「心ない仕打ち」だと思うかもしれないが、そうではない。では、何かというと、新聞業界がこのキャンペーンを仕掛けた、あまりにエグいタイミングだ。 実はKoki,さんが「新聞74紙ジャック」をしたこの15日というのは、安倍首相が臨時閣議で、2019年10月に予定される消費税率の10%への引き上げに万全の対策をするよう指示した日だ。 そう聞くとピンときた方も多いだろう。15日というのは、新聞の「軽減税率」に対する逆風が再び吹き始めた日でもあるのだ。 例えば、翌16日の、情報番組「スッキリ」(日本テレビ)のオープニングトークで、司会の加藤浩次さんが、新聞の軽減税率について「ちょっと納得いかない」と述べ、話を振られた、コメンテーターである幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏もこんなコメントをされている。 「いや、おかしいですよね。紙の新聞なんて僕らの世代は誰も読まないですし、そんな取ってないですよ。生活に最低限必要な物の中で凄く(新聞は)違和感ありますね」』、安倍政権と新聞業界がグルになったキャンペーンだったとは、指摘されて初めて気づいた。やれやれ・・・。
・『新聞業界とKoki,さんに共通する「既得権益」色の強さ  今、このような意見はネットで非常に支持されているのだ。例えば昨年、小泉進次郎氏が選挙特番の生中継で、「新聞が軽減税率対象っておかしいと思います」「これテレビ新聞はほとんど報じてくれない」などとぶちまけた時も、ネット上では喝采されている。 つまり、「新聞の軽減税率」というのは、ネット民の皆さんからすれば、新聞やテレビという「マスゴミ」が「権力の監視」をうたって権力者といがみあいながらも、裏では既得権益の恩恵を授かるなどズブズブの間柄ゆえ、得ることができた「優遇措置」という受け取り方なのだ。 そんなネガティブイメージが盛り上がる中で、カウンターパンチのように打たれたのがKoki,さんのキャンペーンなわけだが、これがどれほど酷なことかは言うまでもあるまい。 先ほど触れたように、有名タレントを両親に持ち、普通の15歳ではありえぬ鮮烈なデビューを果たした彼女には、どうしても「コネ」や「ゴリ押し」という心ないことを言う人たちがいる。それが事実かどうかはさておき、「既得権益」のイメージが強すぎるのだ。 そんな彼女が、既得権益を死守していると叩かれる新聞のシンボルに、この最悪のタイミングでまつり上げられてしまうと、「既得権益キャラ」としての印象がさらに強くなってしまうのは明白だ。 「キムタクの娘なら、新聞批判など軽くはねのけてくるさ」なんて思ったのだろうか。それとも開き直って、「世の中はなんやかんや言ってもコネだ!」ということを彼女で訴求したかったのか。 若い読者を増やしたい気持ちはわかるが、「未来をひらこう」とそこまで国民に呼びかけるのなら、15歳の少女の未来についても、もうちょっと配慮してあげた方がいいのではないか、と個人的には思う。 なんて話をすると、「15日からの新聞週間と、消費増税のニュースがたまたま重なっただけだ。無理にこじつけてそんなに大ごとにするんじゃないよ」というお叱りが飛んできそうだが、このタイミングは偶然だとは考えにくい』、なるほど。
・『「欧州には新聞税率ゼロの国がある」 新聞協会の言い分には無理がある理由  74紙のひとつとして、Koki,さんの全面広告が掲載された「日本経済新聞」を読めば、それがよくわかる。 「政府はこれに先立つ5日の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で、消費増税に向けた対策パッケージを18年末までにまとめる考えを確かめたばかりだった。このときも首相は報道陣を入室させての締めくくり発言で消費増税に自分から触れていた。(中略)最近の首相や政権幹部の振るまいを見る限り、今回ばかりは本気で消費税率10%に向かっていると受け止めるのが自然だ」(日本経済新聞10月17日) つまり、取材などでかなり以前から、消費税10%が決まりそうな雲行きだということを知っていたのだ。ならば、よほどの能天気でなければ、「新聞の軽減税率」に逆風が吹くことも予想ができていたはずだ。タイミング的にも、Koki,さんの「74紙キャンペーン」が、この政治イベントを意識して制作された部分があってもおかしくはないのではないか。 ただ、タイミングが偶然であっても計画通りであっても、この全面広告がKoki,さんにとって、「心ない仕打ち」だと感じるのには、実はもうひとつ理由がある。 Koki,さんのイメージとか、広告のメッセージだとかで「未来」というキーワードがちょいちょい出てくるが、「言論の自由を守るために軽減税率が必要だ」とか大騒ぎしているうちは、新聞に「未来」はない。そういう先行きの暗い業界のキャンペーンに起用されるというのはぶっちゃけ、これから未来を開こうというKoki,さんにとっては、かなりマイナスである。 ずいぶん厳しいじゃないかと思うかもしれないが、彼らのお手盛りな主張を聞けば、この世界に深刻なクライシスが迫っていることがよくわかる。例えば、新聞協会は、欧州では新聞はゼロ税率にしている国もあって、軽減税率も当たり前だとかいうのだが、あちらとこちらでは「新聞」の意味するところがまったく違う。 欧州の新聞は、地域に根ざした情報がメインで発行部数は30万程度が多く、ほとんどは中小零細企業が運営している。紙面にはそれぞれの地域コミュニティで欠かせない生活情報も多く掲載され、小さな不正もコツコツと追及して明らかにする。そういう意味では、食料と同じく生活必需品なのだ』、確かに海外との比較は、社会的な環境の相違への考察が必要だ。
・『肥大化した新聞社が手がける営利事業が言論を殺す  また、駅などに置く無料紙も多い。例えば、新聞発祥の国、イギリス・ロンドンで、90万部を誇る夕刊紙イブニング・スタンダードもタダで配られている。つまり、誤解を恐れずいえば、日本で言うところの、「地域情報満載のフリーペーパーや、地方のミニコミ紙」なのだ。 では、翻って我らが日本はどうかと言うと、発行部数900万部とか700万部なんて世界トップ10に入る「全国紙」が複数乱立し、それぞれがテレビ、不動産などのグループ企業も有する多角経営で、何千人という社員が、記者職を離れても、定年退職までお勤めになれるだけの余裕がある。 紙面に関しては、「記者クラブ」という情報談合システムの弊害で、似たような話が似たような切り口で掲載されており、独自の視点に乏しい。そういう似たような紙面を、満員電車の中でスマホやニュースで見たり、ワイドショーで張り出されて説明される、というのが日本のオーソドックスな新聞の読み方になりつつある。 業界として軽減税率を勝ち取りたいという下心が強すぎるあまり、つい欧州の新聞を引き合いに出してしまったが、同じ理屈で欧州と比べると、「違うところだらけ」というのが日本の新聞なのだ。 この「違い」を一言で言ってしまうと、「言論機関なのに規模が大きくなりすぎた」ということに尽きる。 戦後まもなくの高度経済成長期は「大きいことは良いことだ」がまかり通ったが、成熟した人口減少社会の中で、言論機関が肥大化しても国民にメリットは何もない。 まず、組織として大きくなればなるほど、その構成員たちと家族の人生を守らなくていけないので、様々な「組織防衛」に走らなくてはいけない。新聞がバカバカ売れる時代ならいざ知らず、部数は減っていく一方なので、広告収入、不動産収入、セミナー事業やカルチャースクールなどにまで進出して多角経営していかなければいけない。 そうなると当然、「タブー」も増えてくる。言論機関であると同時に、巨大な営利企業であるため、得意先やら関係各位に「忖度」をして、角の取れた発言ばかりになっていくのだ。 また、こういうコチコチの組織になればなるほど、優秀な記者は社内で発言権がなくなっていく。猟犬のようなジャーナリストというのは往々にして社会性がないので、処世術に長けた人たちから、貴乃花親方のように「組織人失格」のレッテルを貼られて、資料室や関連企業へ飛ばされてしまうからだ。そうなると、この手の人はゴールデン街とかで過去の栄光を自慢しながら、「最近の若い記者は根性がない」などとクダを巻くおじさんになっていくしかないのだ』、「肥大化した新聞社が手がける営利事業が言論を殺す」とは初めて知った観点で、説得的だ。
・『元新聞記者たちが調査報道で実績を上げている  「確かにそういう問題もあるが、だからといって、新聞が弱くなってしまったら、ヒトラー安倍などの独裁者の暴走を誰が止めるんだ」と、新聞記者をまるで何かのヒーローのように考えている方もいるが、それは「妄想」と言わざるをえない。 米国のOpen Source Centerというメディア研究機関が過去に指摘したように、「政治や企業などほとんどのスキャンダルは新聞ではなく、週刊誌や月刊誌から公表されている」のだ。森友・加計学園問題は「朝日新聞」の手柄だぞと胸を張る人がいるが、事実として安倍首相は何事もなかったように権力の座にいる。 新聞協会賞の過去の歴史を振り返れば一目瞭然だが、実は新聞の調査報道で政治家のクビをとったケースは少ない。ほとんどは、週刊誌と東京地検特捜部などの捜査機関が火をつけてマスコミがそれを後追いしているのだ。 もちろん、新聞は捜査機関と蜜月なので、特ダネ競争から頭ひとつ飛び出すために、捜査機関の「情報屋」として暗躍することは多々あるが、新聞の調査報道だけで巨悪を倒しているというのは「幻想」だ。もっと言ってしまうと、本気で「ヒトラー安倍」などの独裁者をゴリゴリに監視して、暴走を止めていきたいと言うのならば、一番いいのは新聞を弱体させていくことだ。 先ほども申し上げたように、新聞は大きくなりすぎて、せっかく優秀な記者がいても力を発揮できないという構造的な問題がある。これを解消するには、どんなに組織の風通しを良くしても無理だ。新聞が小さくなるか、優秀なサラリーマン記者が組織の外へ飛び出して、独立した「ジャーナリスト」として活動をするしかない』、独立した「ジャーナリスト」が活動する余地はあるのでろうか。
・『大新聞社を辞めると、確かに取材費など資金面では苦労が多い。しかし、働かない定年までの待機組を食わせる必要がなくなり、ジャーナリスト1人が食べていければいいので、言論活動としては効率が上がる。しかも、フットワークは軽くなって、忖度もしなくていいし、「タブー」もなくなる。つまり、大手新聞社にいた時よりも、ハードで核心に迫るような調査報道を行うことが可能になるのだ。 それが筆者の妄想ではないということは、大手新聞社を辞めた元・新聞記者の方たちが、ネットメディア等で様々な調査報道を行い、実績をあげていることが証明している。 例えば、ワセダクロニクルなどはその典型だ。製薬会社の宣伝になる記事を共同通信が配信し、成功報酬として電通の子会社から55万円が支払われていたことを調査報道で明らかにした「買われた記事」などで知られるこのジャーナリズムNGOは、「朝日新聞」を辞めた渡辺周さんという方が立ち上げた』、ワセダクロニクルのURLは下記、なかなか面白そうだ。
http://www.wasedachronicle.org/
・『独立組の記者たちこそが権力を震え上がらせる  もちろん、「朝日」におられた時から立派な調査報道をしていたのだろうが、「ジャーナリスト」と「朝日新聞社社員」という二足のわらじを両立させるため、自制をせざるをえない部分がたくさんあったというのは、容易に想像できよう。 よその国と同じ程度まで日本の新聞社の規模が縮小すれば、こういう優秀なジャーナリストの方たちが野に放たれる。もちろん、その中には収入面などから他業種へ転職される方もいるだろうが、ワセダクロニクルのような調査報道をされる方たちも当然たくさん出てくるのだ。 そこで想像してほしい。皆さんはどんなジャーナリストが、権力者の暴走を止めることができると思うだろうか。 まずは、世界でも稀なほどの大部数を発行する巨大新聞社で、定年まで勤め上げるサラリーマン記者。権力者をネチネチと批判することはあるが、経営陣はその権力者と会食やゴルフを楽しんでいるので、実は八百長プロレスなのではないかという疑惑もかけられている。 一方、そんな大企業を辞め、収入を大きく減らしながらも己の信念に基づき調査報道を続けていこうという人々。テレビや新聞では扱わないようなテーマを調査報道で切り込んでいく。「俺たちを大事にしないと言論の自由が滅びるぞ」などと権力者に特別扱いするように求めることはせず、社会に活動の意義を訴えて、支援やカンパを広く募る。 後者のような方たちが増えた方が、権力者が震え上がるのは目に見えている。 Koki,さんの全面広告にあったように、新聞業界は「新聞で、未来をひらこう」と国民に訴えているが、特権にしがみつき、それを守ることに汲々としている人たちの言論をどんなに読み漁ったところで、未来がひらかれることなどないのではないか』、独立したジャーナリストは、窪田氏のように既存のオンラインメディアに寄稿するケースが多いのだろうが、ワセダクロニクルなど新たなメディアも誕生しているので、活動の幅も広がりつつあるのだろう。今後を注目したい。
タグ:独立組の記者たちこそが権力を震え上がらせる ワセダクロニクル ネットメディア等で様々な調査報道を行い、実績をあげている 元新聞記者たちが調査報道で実績を上げている コチコチの組織になればなるほど、優秀な記者は社内で発言権がなくなっていく そうなると当然、「タブー」も増えてくる。言論機関であると同時に、巨大な営利企業であるため、得意先やら関係各位に「忖度」をして、角の取れた発言ばかりになっていくのだ 部数は減っていく一方なので、広告収入、不動産収入、セミナー事業やカルチャースクールなどにまで進出して多角経営していかなければいけない 組織として大きくなればなるほど、その構成員たちと家族の人生を守らなくていけないので、様々な「組織防衛」に走らなくてはいけない 言論機関なのに規模が大きくなりすぎた 、「記者クラブ」という情報談合システムの弊害で、似たような話が似たような切り口で掲載されており、独自の視点に乏しい 世界トップ10に入る「全国紙」が複数乱立し、それぞれがテレビ、不動産などのグループ企業も有する多角経営で、何千人という社員が、記者職を離れても、定年退職までお勤めになれるだけの余裕がある 肥大化した新聞社が手がける営利事業が言論を殺す 欧州には新聞税率ゼロの国がある」 新聞協会の言い分には無理がある理由 新聞業界とKoki,さんに共通する「既得権益」色の強さ 新聞の「軽減税率」に対する逆風が再び吹き始めた日 をしたこの15日というのは、安倍首相が臨時閣議で、2019年10月に予定される消費税率の10%への引き上げに万全の対策をするよう指示した日 。「私は、まだ知らない。この国のことや、世界のこと。知ろう、強くなるために。知ろう、一歩踏み出すために。知ろう、自由を守るために。新聞で、未来をひらこう」 Koki, 全国74紙で展開された全面広告 日本新聞協会の「新聞週間」のキャンペーン広告 「Koki,の全面広告に透ける新聞協会「既得権益死守」の邪心」 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 リベラル系の朝日新聞は「頑張っている」というイメージを抱いているだろう。しかし、近年の報道姿勢を見ていると疑問を抱かざるを得ない 2018年の「報道の自由度ランキング」によると、調査対象の180カ国・地域のうち、日本は67位だった。主要7カ国(G7)では最下位 「報道の自由が失われた日本 政権に媚びるメディアにも責任」 日刊ゲンダイ 孫崎享 中立とはどこを指すのか、非常に難しい メディアに公平・中立などありえない 中立なんかないし、くだらないものと思っている。一種の逃げだよ 自民党内部に緊張感がないのではないか 自民党議員も選挙制度が変わって安倍さんのイエスマンになってしまった 朝日新聞の幹部やOBは彼らに反論する自由はないと言っていたね マスコミは事実を追求せよ 政治に関する番組や特集をやっても視聴率が取れない 制作側もなるべくクレームがこない無難な番組をつくろうとする クレームが怖い 「田原総一朗「メディアに中立なんていらない」 「中立を掲げることは一種の逃げだ」」 田原総一朗 東洋経済オンライン 民主主義とは、自分と異なる意見の存在を認めることだ 明らかな嘘がまかり通っている 自民党が劣化する日本の方がよほど深刻だ 全米の300以上の新聞が8月16日付の社説で報道の自由の必要性を訴え、一斉にトランプ大統領を非難 「全米の新聞がトランプ氏に抗議、日本はどうか 民主主義とは異なる意見の存在を認めること」 日経ビジネスオンライン 田原 総一朗 (その9)(全米の新聞がトランプ氏に抗議 日本はどうか 民主主義とは異なる意見の存在を認めること、「メディアに中立なんていらない」 「中立を掲げることは一種の逃げだ」、報道の自由が失われた日本 政権に媚びるメディアにも責任、Kokiの全面広告に透ける新聞協会「既得権益死守」の邪心) マスコミ
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飛行機(航空機)(その1)(ANA「1000便欠航」招いたエンジン問題の真因 夏の多客期に痛手、9月以降も欠航続く見込み、ホンダ、爆売れジェットで狙う航空業界変革 「生みの親」藤野CEOがこだわった価値観とは) [産業動向]

今日は、飛行機(航空機)(その1)(ANA「1000便欠航」招いたエンジン問題の真因 夏の多客期に痛手、9月以降も欠航続く見込み、ホンダ、爆売れジェットで狙う航空業界変革 「生みの親」藤野CEOがこだわった価値観とは)を取上げよう。

先ずは、7月19日付け東洋経済オンライン「ANA「1000便欠航」招いたエンジン問題の真因 夏の多客期に痛手、9月以降も欠航続く見込み」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/229827
・『全日本空輸(ANA)の国内線で大規模欠航が長期化している。同社のボーイング「787」型機に搭載している英ロールス・ロイス製エンジンに設計上の問題があり、国土交通省が点検を指示したためだ。 ANAは7月4日以降、欠航予定を順次発表している。7月6日~31日の26日間で計619便を欠航し、対象便を予約していた約11万5000人の足に影響が出ることを明らかにした。さらに7月17日には8月分の欠航予定を発表。夏休みの多客期を含む378便が欠航となり、影響旅客数は約4万4000人になるとした。約2カ月間の欠航便数は997便に達し、約15万9000人が影響を受けることとなった。 ANAは欠航対象を、ほかの航空会社や交通機関への振り替えのしやすい大阪・伊丹や福岡、広島などに向かう羽田発着便に設定。欠航便と時間の近い自社便や、スターフライヤーやソラシドエアといった提携航空会社の臨時便への振り替えも進めている』、ANAはやり繰りで大変だろう。
・『6月に国交省から新たな点検指示  整備ラインの増強やリースエンジンの追加調達などで事態の収束を図っているが、9月以降も「欠航はゼロではない見込み」(会社側)。10月末からの冬期ダイヤでは後から欠航を出さないよう、あらかじめエンジン点検の影響を加味した発着時間を設定する方針だ。業績への影響は「現在精査中」(同)としている。ロールス・ロイス側との賠償交渉次第だが、費用負担は避けられそうもない。 B787には搭載エンジンが2種類設定されている。ANAが使用するロールス・ロイスの「トレント1000」型と、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の「GEnx」型だ。航空会社は機材を導入する際、どちらかのエンジンを選択する。国内勢では日本航空(JAL)もB787を運航しているが、GEnxを搭載。今のところ、大規模な欠航につながるトラブルは起こっていない。 国交省は4月にトレント1000に関する最初のエンジン点検指示を発出していたが、ANAは機材変更などにより欠航を回避してきた。ただ6月に新たな点検指示が出され、対象となるエンジン台数が増えた。さらに点検対象エンジンは海外の航空会社も使っており、不具合対応に必要な交換部品の供給が逼迫した。そうしたことが重なり、大量欠航に追い込まれた。 「ANA様およびご利用のお客様に大変ご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げます」。ロールス・ロイスの民間航空部門プレジデント、クリス・チョラートン氏は7月17日、ANAにおける一連の欠航や遅延について謝罪の声明を発表した。 エンジンの設計上の問題とは何か。トレント1000型エンジン内で空気を圧縮する「中圧圧縮機」の回転翼で起きたものだ。この圧縮機には計8段の回転翼があるが、入ってきた空気が微妙に乱れ、1段目と2段目の回転翼が激しく振動することがある。ロールス・ロイスが行った試験で、最悪の場合亀裂が入る可能性が確認されたという。実際ANAではこれが原因となり、2016年8月25日の羽田発福岡行き241便が離陸直後に引き返し、羽田空港に緊急着陸するトラブルが発生した。 ロールス・ロイス側は東洋経済の取材に対し、「ジェットエンジンは現存する最も高度なテクノロジーを利用する複雑な機械だ。エンジンの運用が始まってから数年経たないと表面化しない問題がまれに起こるが、今回もその1つ。点検指示は運航中の出来事を受けたものではなく、われわれの直近のエンジンのベンチテスト(社内試験)でわかった新たな情報に基づいている」と説明する。 欧州の航空当局はロールス・ロイスからの報告を受け、4月に点検指示を発出。国交省航空局も欧州に従い指示を出した。このときの対象は、主として機体が長い787-9型機に使われるトレント1000の「パッケージC」型だった。その後ロールス・ロイスが調査を進めると、主に機体が短い787-8型機で使われる「パッケージB」型でも同様の問題が見つかり、6月に追加の点検指示が出された』、もともとはロールス・ロイス側の社内試験で見つかったというのは、不幸中の幸いだ。ANAとしては、「ロールス・ロイス側との賠償交渉次第だが、費用負担は避けられそうもない」というのは気の毒だ。
・『400回超の点検のうち、1割で不具合見つかる  ANAはパッケージCのエンジンを66台、パッケージBのエンジンを70台使用している。国交省の指示では、パッケージCは一定回数飛行した後に回転翼の点検を繰り返し行い、パッケージBは1回のみ点検を行う規定だ。7月16日時点でBとC合わせて410回の点検を終え、回転翼の亀裂などの不具合はそのうち41回見つかった。不具合があれば、順次新品の回転翼に交換している。点検には1~2日、交換には20~30日かかるという。 ただ現在ロールス・ロイスが提供している新品の回転翼は、不具合が見つかったものと同じだ。7月17日のチョラートン氏の声明では、新たに設計した回転翼は現在検証試験の最終段階にあり、年内にはANAなどトレント1000を利用する航空会社に提供できる予定だとした。パッケージCの場合、それまでは繰り返し点検を継続する必要がある。 ANAのB787におけるロールス・ロイス製エンジンのトラブルは、これが初めてではない。2016年8月には、トレント1000の「中圧タービンブレード」で設計よりも短期間で劣化し破断することがわかり、当初決めていた整備サイクルよりも早い段階で部品を交換する必要に迫られた。結果、一部便で欠航が発生した。大気中の汚染物質による金属の腐食を防ぐコーティングの範囲や量などに設計上のミスがあった』、「1割で不具合見つかる」というのは、かなり高い割合だ。
・『ロールス・ロイス製エンジンの構造は複雑  エンジンの整備に詳しい航空経営研究所の稲垣秀夫・主席研究員は、エンジン部品の不具合は長期間飛行機を飛ばしていれば避けようがないと前置きしたうえで、「ロールス・ロイスはほかのエンジンメーカーに比べ、技術的なチャレンジをする会社」と評する。 「彼らの特徴は、エンジンのタービンや圧縮機が低圧、中圧、高圧の3軸構造であること。GEなどは低圧、高圧の2軸構造だ。3軸にすることで燃費は上がる。一方で構造は複雑になる」(稲垣氏) 航空評論家の青木謙知氏は、「以前はエンジンメーカー自身も航空機を保有し、エンジンの疲労や摩耗などを調べるために航空会社より早く飛行時間を稼ぐような試験を行っていた。だが最近はあまり聞かれなくなった」と指摘する。 また今回ANAの欠航が大規模化したことについて青木氏は、「昔に比べて航空会社が持つ予備機が少なくなっていることも遠因ではないか。経営効率を考えると仕方ないが、保有機材数を最小限に抑えているため、ちょっとしたことが起こると足りなくなってしまう」と見る。 B787は高い燃費性能を誇り、中型機の大きさでも長距離を飛ぶことを可能にした。ANAやJALは大型機が埋まるほどの需要がなくとも、欧米の都市に路線を張れるようになるなど、路線戦略に革新をもたらした。ANAの787が本来の能力を発揮するためにも、ロールス・ロイスには迅速な対応が求められる』、高い燃費性能の代償として構造が複雑になったのであれば、ロールス・ロイスとしてはもっと慎重にテストを繰り返すことで、チャレンジのリスクを抑えるべきだったのかも知れない。

次に、7月22日付け東洋経済オンライン「ホンダ、爆売れジェットで狙う航空業界変革 「生みの親」藤野CEOがこだわった価値観とは」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/230266
・『小型ビジネスジェット機の新星として2015年12月に登場したホンダの「ホンダジェット」。最高速度や燃費性能、静粛性などでライバル機を圧倒する。航空機としての性能はもとより、そのデザインの美しさにもパイロットや航空工学の専門家、バイヤーからも高い評価を集める。2017年には小型ジェット機のデリバリー(顧客への納入数)で首位に踊り出た。 ホンダジェットの「生みの親」とされるのが、米国子会社・ホンダエアクラフトカンパニーの藤野道格(みちまさ)CEOだ。入社3年目の1986年に始まった航空機の研究開発プロジェクトに参加して以来、一貫して航空機分野に取り組み、困難な道を切り開いてきた。左右の主翼の上という独創的なエンジン配置も藤野氏の発案だ。来日した藤野氏CEOに、航空機ビジネスについて余すところなく語ってもらった』、三菱重工のMRJがもっと大型とはいえ、難航しているのとは、好対照である。
・『抵抗勢力があっても性能では負けない  ――2015年に発売してからこれまでの総括をお願いします。 発売から2年半が経ち、ようやく生産が軌道に乗ってきた。手作業が多いので、人が慣れてくると作業がどんどん早くなってくる。商品としての評判も予想よりよい。操縦する人が「明らかに違う」と言ってくれているのは、アビオニクス(航空機内電子制御機器)など、性能の部分だろう。操縦しない人も「ものすごく静かで、乗り心地がいい」と驚いてくれる。 ――業界での反響も非常に大きいです。ライバル会社からはどう見られていますか。 ジェット業界からは、最初は「自動車屋に何ができる」と無視された。少し評判が上がると「アメリカでは通用しないよ」、航空機の製造認定が近づくと「認定取れるわけないよ」と、いざ取れそうになると「絶対取れるわけない」といってホンダのお客さんの不安をあおる。認定を取ったあとも、「認定は取ったが安心できない」と・・・・・・。今はとにかく、批判を1つずつ潰していくしかない。どんな世界でもそうだが、いちばんになると抵抗勢力がなんとか阻止しようとしてくる』、ライバル会社がケチをつけるのは当然としても、「ここまでやるのか」とその激しさには驚かされた。
・『ホンダジェットの登場後、ライバル製品にも変化が出てきている。とはいえ、性能ではホンダジェットに勝てない。向こうもわかっているので最近は、インテリアや塗装を近づけたり、アビオニクスのサプライヤーをまねしたり、ウェブサイトまで似せてきたりしている。 まずは小型ジェット機におけるシェアを確実なものにしたい。ニューヨーク―マイアミなど、世界でビジネスジェットの就航数が多いルートトップ10のうち、5ルートはカバーできており、残りの5ルートをどう取るか。また、小型ジェット機セグメントでは、シェアの40%程度を占めるが、これを(改良機の)「ホンダジェット エリート」でどこまで上げられるかに挑戦する。 ホンダジェットの販売は海外で先行していたが、5月に発表した改良機の「ホンダジェット エリート」は日本でも販売する。価格は525万ドル(5億9000万円)。2019年前半の初納入を目指す。2661キロメートルと現行機より17%伸びた航続距離では、羽田・成田から全国の都市、中国の上海や北京までも乗り換えなく飛ぶことができる。しかし、ビジネスジェット機の市場は米国の約2万機に対し、日本では民間機に至っては30機ほどしかない。日本市場をどう開拓するのか。 ――日本では「ビジネスジェットはお金持ちの乗り物」というイメージがあります。 確かに、日本では、ビジネスジェットといえばハリウッドスターが使うようなイメージがあるが、彼らが使うのは70億円ほどする太平洋をひとっ飛びできるような大型の機材。一方、ホンダジェットはもっと実用的な使われ方をする。たとえば、複数都市をまたいで仕事をする中小企業の経営者などがジェットを持っているとビジネスの幅が広がるし、時間も短縮できる。ラグジュアリーなライフスタイルではなく、仕事をする人の生活の質を上げるために役立つ道具だ。「一度乗ってもらえれば、考え方が変わる」という実感がある』、ホンダジェット エリートは羽田・成田から全国の都市、中国の上海や北京までも行けるというのは、使い勝手がよさそうだが、米国ならともかく、日本での需要は限定的だろう。
・『時間短縮におカネを使う価値がある  ――どのように訴求をしていきますか。 たとえば、日本から米国東部の都市に行く時に、通常の大型機では乗り継ぎで3時間、下手をすれば遅延でさらに一晩余計に待たされることがある。でもホンダジェットがそこで待っていたら、その心配はない。室内はとても静かで快適に過ごせ、本当に疲れない。それは日本でも同じで、便利さや快適さを一度経験すると、10万円多く出してホンダジェットに乗ることに価値があると考える人が多いと思う。 日本でも問題になっていることだが、仕事ができる人は仕事に忙殺されていて、そういう人が成功したとしても家族と過ごす大切な時間などを買い戻すことはできない。時間を買うことにおカネを使う価値があることに気づいてもらえる。給料を上げるだけでは、生活の質は上がらない。 ――ANAホールディングス(HD)とは、ビジネスジェット領域で戦略的な提携を結びました。海外の出張・旅行先でホンダジェットを用いたチャーター便を手配するというものですが、この提携は国内のビジネスジェット市場拡大にどのように貢献しますか。 ANAの人にホンダジェットに乗ってもらう機会があり、普段大型機に乗り慣れている彼らもこんなに揺れないのかとびっくりしていた。エアラインの人が乗って満足する仕上がりだ。それで(ANAHDの)片野坂真哉社長と話が盛り上がり、ビジネスアライアンスを組むことになった。 ANAは法人など大口の顧客をお持ちで、こことアライアンスを組んでおくのは(販売拡大の)第一歩だ。とにかく、まずはジェットを使ってみるというきっかけを作りたい。一般の人たちで買うというところまで行かない人が大勢いる。しかし、使えるというところまで可能性を広げることはできる。 ――海外ではシェアジェットビジネスが普及しつつあります。ホンダとしてはどう展開しますか? 今はチャーターが多いが、車でいうウーバー・テクノロジーズのようなシェアサービスとして、エアタクシーやシェアジェットが、海外ではすでに広まっている。ビジネスジェット機を購入した人が使わない時間、稼働率を上げるために、機体を運用してくれる業者を使ってほかの人に貸す。たくさん使えば、使うほどコストは下がっていく。 こうしたビジネスをホンダがやるかはわからないが、いいハードウェアを作るだけではなくて、ビジネスジェットの業態を変えたとか、ウェーブをもたらした、となればいい。まずはエアラインとの協業で使える人を増やす。 車でのライドシェアやカーシェアは今でこそ注目されているが、実はシェアサービスのコンセプトは飛行機のほうが前からある。だが、機体が少ないから実現しにくい。まずは機体を増やすことが大切。満たさなければならない条件が多いが、シェアサービスのビジネスモデルをホンダジェットで開花させたい』、「エアタクシーやシェアジェットが、海外ではすでに広まっている」というのは、ここまで来たかと驚いた。
・『サービスによる収益安定化がカギ  ――自動車などと異なり、航空機事業は投資の回収スパンが非常に長いビジネスだと言われています。それはなぜでしょうか。 ホンダは飛行機をやってこなかった。1機種作るにしろ、3機種にしろ、ゼロから試験設備や工場などのインフラに投資しなければならず、まだスケールメリットが小さい。減価償却を1機種のみで取り返すことはできない。 ビジネスの最初のカギは最初の3年間の保証が終わったときだ。それ以降はサービス収入がコンスタントに入ってくる。特に飛行機は、メンテナンスの要件が厳格に決まっていて、部品には寿命があるので交換するタイミングもわかっている。サービスのビジネスは非常に安定している。 そのために、機体の数をできるだけ早く増やすことが今のマイルストーン。ホンダの場合は、 ディーラーモデルを新たに採用して、 世界をカバーするメンテナンスサービスを提供している。購入者の所在地を分析した上で、アメリカでは5カ所ある拠点からメカニックが派遣され、1時間半以内でサービスを受けることができる。顧客の満足度は高い。 ――2輪や4輪事業のディーラーモデルから学ぶことはありますか。 業界の常識としては、多くの会社が直販。メーカーから専門性の高い人を送りクオリティを担保できるメリットがある。しかしこれだと、大変な数の人が必要となる。ホンダは自動車メーカーなので、ディーラーモデルを活かしてできることは応用している。両方をうまくコンビネーションさせていく。 ジェット事業が軌道に乗ってくると、避けて通れないのが経営だ。非常に繊細かつ厳重な要件が求められるジェット事業については、藤野氏が作り上げたということで顧客やバイヤーが信頼している面が大きい。ホンダエアクラフトカンパニーのチームの育て方についても聞いた』、直販だけでなく、ディーラーモデルと組み合わせていくようだが、その成否は今後はっきりするだろう。
・『顧客が満足する商品作りにブレはない  ――今後のチームや後継の育成についてはどのように考えていますか。 ホンダジェットには、日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界40カ国以上から人材が集まっている。 日本人を育てたいという気持ちはもちろんあるが、そこはフェアに、こちらに来ている留学生でトップの成績を持つ方を採る。 ただ日本人の場合は大学受験がピークで、大学に入った後の伸びしろが外国人と差がある印象がある。 広く基礎的なものを学んでいる人は、1つの専門分野だけではなく、学際的なアプローチができる。 そして、「倫理観」と「常識」を持つことを非常に重視している。社員の才能を伸ばしたり、トレーニングはしたりするが、素養による違いはどうしてもある。  常識と言うと、「藤野はいつも常識のないことをやってる」と言われるが、すべきことをきちんとステップを踏んでしてきた。航空機業界では「70億円の機体に乗る人は燃費を気にする人などいない」と言ってくる人もいるが、顧客が満足するモノを作るということにブレはない。 そして倫理観のある人は、物事を適当には決めない。 そういう人を採ることを意識している』、「日本人の場合は大学受験がピークで、大学に入った後の伸びしろが外国人と差がある印象がある」というのは分かるような気がする。今後、大きく成長してもらいたいものだ。
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