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小売業(一般)(その2)(ショッピングセンターの「廃墟化」が加速しそうな理由、日本のトイザらスが米国と違い大健闘のワケ、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは) [産業動向]

百貨店、コンビニに続いて、今日は、小売業(一般)(その2)(ショッピングセンターの「廃墟化」が加速しそうな理由、日本のトイザらスが米国と違い大健闘のワケ、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは)を取上げよう。
なお、このブログで「小売業(一般)」を前回取上げたのは、昨年9月29日である。

先ずは、流通ジャーナリストの森山真二氏が昨年12月19日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ショッピングセンターの「廃墟化」が加速しそうな理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/153465
・『ショッピングセンター(SC)はアマゾンエフェクトで大淘汰時代を迎えるのか――。SC先進国である米国のメディアでは、最近よく廃墟と化したSCが映し出される。米アマゾン・ドット・コムの“効果“は、まるでブルドーザーのように既存の流通業界を押し潰していく。ネット通販が先行して拡大している中国でも、百貨店や大型店は不振で閉鎖も増えているという。今のところ順調そうに見える国内SCにも、アマゾンエフェクトによるSC淘汰の波が訪れるのか。あなたの街のSCは大丈夫?』、アマゾンの影響は本当に甚大だ。
・『ショッピングセンターの未来に影 大型SC「ウイングベイ小樽」運営会社の民事再生法  最近、国内のSCでちょっとしたサプライズがあった。北海道小樽市の大型SC「ウイングベイ小樽」を運営する小樽ベイシテイ開発の民事再生法の適用申請だ。事前に再建計画があるプレパッケージ型の法的整理とはいえ、SCの未来に影を落とした。 もともとウイングベイ小樽は総合スーパーのマイカル(現イオンリテール)が開業した。しかしマイカルの経営破綻に連鎖する格好で、2001年に1度目の民事再生法の適用を申請、今回で2度目になる。 ウイングベイ小樽は一時期流行した、どでかいSCで、その売り場面積は実に東京ドームの約2.5倍はあろうかという約12万平方メートル。初期投資額は約650億円もかけており、「いったい何年たったら黒字化するのか」という案件だった。 当初の計画がバブルの時で、どう考えても無謀だったとしか思えないが、さすがに12万平方メートルもあると運営コストが高く、赤字が続いており債務超過だった。商圏人口の減少、さらにネット通販の拡大が追い打ちをかけた格好。自力での再建は諦め、再生ファンドをスポンサーにつけ2度目の法的整理とした。 ウイングベイ小樽はSCのなかでもバブル案件で、特殊な案件だという声が多い。「日本は新規のSCもいまだに開業されており、米国のようにSCがバタバタ閉鎖するようなことにはならないのではないか」(大手流通業)と、まだまだ楽観論が大勢となっている。イオンのデベロッパー会社、イオンモールの2017年度上期の決算は好調で、SCの将来については微塵も陰りを感じさせないのである。しかし、SC全体を見渡すと、急速に変化が起こっている』、ウイングベイ小樽運営会社の破綻は、確かに例外的なのだろう。
・『全国にSCが3000以上もあれば飽和 新規オープンは確実に減少  国内のSCの数は2016年末で約3200ある。国内のSCはイオンの名誉会長である岡田卓也氏が、かれこれ30年も前に「これからキツネやタヌキが出るところに出店せよ」という大号令を発し、イオンでは2000年以降SCの開発が本格化、イオンのSCの広がりとともに、大手のデベロッパー会社が相次ぎSCに参戦した。 2000年には全国のSC数も約2200だったから、それ以降さらに1000のSCが開かれている格好だ。 全国にSCが3000以上もあると、飽和だ、いやまだまだ出店の余地はあると関係者の声は二分されるが、日本ショッピングセンター協会の調査では、明確な転機を迎えていることが読み取れる。 新規にオープンするSC数が確実に減少しているのだ。 07年には97SC、08年は88SCの新規オープンがあった。だが、09年は57SC、10年には54SC、そして16年も54SCとなっている。新規の出店は増加しても閉鎖SCもあって、10年以降の純増数は横ばいという状況だ。10年前には100近い数のSCがオープンしていたのだから、明らかに鈍化しているといえる。 イオンのデベロッパー会社イオンモールの3ヵ年の新規出店計画も、17年度は5ヵ所だが18年度には4ヵ所、19年度は2ヵ所と新規出店を抑制していく。 SC新規出店の鈍化は国内の電子商取引(EC)市場の成長と軌を一にしている。国内のEC市場は16年で前年比9.9%増の15兆1358億円。ご存じのように、SCのテナントはネットでの購買に移行しやすいカテゴリーが多い。しかも高齢化がそれに拍車をかける。 テナント各社は実店舗を増やさずネットシフトを進め、ジワジワとSCへの出店を抑制するテナントが増えているとしても不思議ではない。 米国の例を見ればそれは明確だ。米国では日本の10倍以上のSCがある。その数は大小合わせて約4万7000ヵ所。しかし、中でも全米に1200ヵ所あるという大型のSCであるショッピングモールについては、スイス金融大手のクレディ・スイスが今後5年間で25%が消滅すると予測している。 集客力のある大型モールが25%も消滅するのだから、競争力のない中小型のSCの消滅はさらに激しくなるといった見方もあるほどだ』、確かにネット通販が普及すれば、SCテナントはSCへの出店を抑制するのは当然だ。
・『米国では悪循環の構図に陥るSC  米国ではすでにショッピングモールの退潮に合わせ、核になるテナント小売業のモールからの撤退も深刻な状況だ。 百貨店のメイシーズが100店閉鎖を発表、またシアーズホールディングスは150店、さらに婦人服専門店チェーンのザ・リミテッドが破綻に伴い、250店全店を閉鎖、JCペニーやステープルズ、スポーツオーソリティ等々、数え上げたらきりがない。ほとんどの業態がアマゾンエフェクトで圧倒されている業態だ。 SCはテナントが埋まらず空床率が増えると集客力を失い、結果として入居するテナントも魅力のないところが増え、SC全体の売上高が落ちるという悪循環の構図に陥っていく。 最近、米国でよく廃墟と化したSCの映像が映し出されるのも、そういった構図で廃墟化したところだろう。 国内でも、小売業向けソフトウエア開発のリゾームによる全国商業施設と業態別テナント出退店動向の調査レポートでは、2016年は出店が1万3529店に対し、退店が1万5043店で、テナント合計で1514店が退店したと報告している。 テナントの出退店では純減が明確になっている。中でもファッション系のテナントの退店は激しく、出店は3300店に対し退店は4500店にもなっている。 もうすでに、テナントとなる衣料品やインテリア、雑貨などの専門店チェーンはハッキリとSCの選別を始めている。今後、アマゾンを始めとしたネット通販市場の拡大で、その傾向が一層鮮明になっていくのは間違いない。 これからのSCは「Aクラスでなければ生き残れない」と、商業デベロッパーとして大手のイオンの岡田元也社長でさえ、SCの選別・淘汰が進むだろうと見ている。 それでは魅力あるテナント、商品を揃えられない、AクラスでないSCはどうなるのか。最後には、米国と同じSC廃墟の道が待っているのかもしれない』、その通りで、日本でもSCは厳しい時代を迎えるだろう。

次に、3月27日付け東洋経済オンライン「日本のトイザらスが米国と違い大健闘のワケ 米国はアマゾン効果よりもLBOの負担で自滅」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/214146
・『米国の玩具小売大手トイザラスは、2017年9月に日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請して経営再建を進めてきた。だが、スポンサーが見つからないため、3月15日に米国内735店を閉鎖し、米国事業を清算すると発表した。 日本で事業を営む日本トイザらスは、米国本社が85%出資するアジア統括会社の傘下にある。米国の破綻を受けて、取引先に対し「日本を含むアジア事業は今回の米国事業の清算プロセスに含まれておらず、日本での事業は今後も変わらず継続する」という内容の説明文を送付している。 日本トイザらスは本当に大丈夫なのか、ディーター・ハーベル社長に聞いた』、米国本社では、スポンサーが見つからず、清算とは厳しい時代だ。
・『日本事業は順調で、投資スピードを加速できる  日本法人は2017年4月から米国本社が85%、香港を拠点にアジアで小売業を展開するファン・リテーリングが15%出資するトイザらス・アジア・リミテッドの傘下にある。米国本社と資本的なつながりはあるが、事業や財務的には独立している。今後はスポンサーが入ることで、アジアと日本はむしろ投資スピードを加速させられる。 昨年9月のチャプター11以降、取引先とは頻繁に話をしている。米国の親会社に対する心配があるのは理解しているが、日本事業は独立しているので大丈夫だということを伝えている。取引先や銀行の理解は得られている・・・カナダ事業は新しいオーナーの下で独立することが決まった。まだはっきりとは言えないが、アジアも同じ方向になるだろう・・・アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)が原因と・・・は思わない。アマゾンに限らず、小売業で競合の“エフェクト”があるのは当たり前だ。米国がああいう事態に陥ったのは、自分たちの側に原因がある。米国法人には約50億ドルの有利子負債があり、毎年4億ドル以上の金利負担が重くのしかかかっていた。そのため、コスト削減が優先でサービスが圧縮され、店舗のリニューアルも満足にできなかった。ビジネスへの投資ができず、イノベーションを起すこともできなかった』、「毎年4億ドル以上の金利負担」とは確かに致命傷だ。
・『米国事業は重い債務負担が足かせに  2005年にベイン・キャピタルやコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)など3つのファンドによる買収で米国本社は非上場化した。この買収はLBO(レバレッジド・バイ・アウト=買収先の資産などを担保に資金を調達するM&A手法)だったため、買収資金などで約50億ドルの有利子負債を負うことになったのは先に述べたとおりだ。 LBOは、一般的に資産売却やリストラに加え、数年後に再上場することで財務改善を図る。しかし、トイザラスはリーマンショックで再上場の機会を逃し、金利負担が重いまま、事業への投資が十分にできず競争力が低下した。 ビジネスとは長距離走のようなもので、勝つためにはランナーが健康であることが一番大切だ。だが、重い債務負担で足に鎖がついたようにスローダウンを強いられた。アマゾンも含めてスピードアップしていく競争相手とそうした状況で戦わねばならなかった』、LBO後の再上場の機会を逃したのは、リーマンショックもさることながら、事業そのものの立て直しが進まなかったことがあるのではなかろうか。
・『競合のことは考えるが、より大切なことは競合ではなく、お客様にとって一番よい環境を提供できるか。われわれが見るべき相手はアマゾンではなくお客様だ。お客様の立場から考えて、付加価値を提供できているか。人気の玩具を提供できているか、お店は子供たちが楽しめる場になっているか、ママに有用な情報を提供できているか、スタッフは質問に答えられているのか・・・日本は米国とは違う。運営する161店で顧客に集中できている。 私は昨年9月の社長就任前に各店舗を回ったが、お客様に商品の説明ができる知識を持ったスタッフがいる。財務体質も良好だ。この先3年間で無借金になる可能性もある。 新規出店やリニューアルといった投資も日本法人が独自に行える。日本でも、アマゾンだけでなく家電量販店なども玩具を扱っており、米国同様に競争は激化している。だからこそ、子ども達が遊びやすい店、買いやすい店にする努力を続ける必要がある。イノベーションを怠れば負けてしまう。 イノベーション――。日本トイザらスが力を入れるのが新しい基準の店作りだ。昨年9月にリニューアルした港北ニュータウン店(横浜市都筑区)がモデル店となっている。「それまで約3メートルあった棚を約1.6メートルと低くして店内の見通しをよくしました。入り口付近はベビー用品から玩具に切替え、さらに通路を挟んで男児玩具、女児玩具と分けてゾーニングをわかりやすくしました」と吉田健太郎ストアディレクター(店長)は説明する。「プレイテーブルを約10から20~30に増やして子供たちが遊び易い店作りをしています」』、子供がプレイテーブルで遊べるというのは、実店舗ならではの強みだろう。
・『イノベーションで商品の回転効率が向上  ――店舗のイノベーションの具体例が港北ニュータウン店ですね。 どこにどんな玩具があるかをよりわかりやすくした。棚の上から玩具を取るのにはしごが必要だったが、今は子どもの目の高さに商品がある。プレイテーブルを増やしたことで楽しく遊んでもらえる。 こうした新しい店作りの考え方はアジアで共通している。シンガポールや香港、上海の店舗を参考にベストなやり方を日本に移植した。今後は日本のやり方をアジアで発信していくことになる』、店舗のイノベーションはシンガポールや香港などの成功事例を移植したとは、グローバル展開している強みだろう。
・『2016年以降に出店した小型店4店は新型店舗だ。港北ニュータウン店とマリノアシティ福岡店(福岡市西区)の2店はリニューアルで新型店舗に衣替えした。今年度は小型店を7~8店オープンする。それらは新型店舗となる。リニューアル店の数はまだ固まっていない。米国の影響があるからだ。順次リニューアルを進めていくことになる。 日本トイザらスは米国トイザラスと日本マクドナルドの合弁で1989年に設立、1991年に国内第1号の荒川沖店(茨城県)をオープンした。当時の日本は、中小小売店の保護・育成のために大規模小売店舗法(大店法)によって大型店の出店が規制されていた。2店目となる橿原店(奈良県)には当時のジョージ・ブッシュ米大統領が視察に訪れる。日米貿易摩擦が激しい時代、小売業界の黒船とも呼べる存在だった』、ブッシュ米大統領が橿原店に視察に訪れたニュースは見た記憶がある。
・『ネットとリアルをうまく組み合わせていく  ――日本トイザらスといえば、大店法改正の原動力にもなった大型店の象徴です。それが小型店を増やしているのはなぜでしょう。  確かに新店はほとんどが小型店です。昔は都心部から離れたところに大型店を出店することが多かったが、2010年以降はショッピングセンター(SC)内の店舗を増やしてきた。最近は、より都心部の小型店が中心となっている。それはお客様の人口動態の変化に対応した結果であり、お客様との距離を少しでも近くするためです・・・少子化でも売り上げ規模を拡大することはできる。昔に比べて今の子どもの方が玩具をたくさん買ってもらえる。今後は勉強の興味をサポートする知育玩具や健康によい玩具に力を入れることも考えている。現在行っている店舗のリニューアルで終わりではなく、もっとよい店にする、もっとよいモノを提供するなど、毎年ベターベターにしていく』、日本ではまだまだやる気十分なようだ。

第三に、流通ジャーナリストの森山真二氏が7月31日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「食品スーパーの逆襲、コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/176015
・『コンビニエンスストアやドラッグストアに押され放しだった食品スーパー(SM)の逆襲が始まった。イオンは傘下のSM各社の全国的な再編に実行する方針だし、東海地方地盤のSM、バローは生鮮食品が売上高の50%超のSMの出店を開始するなど、SMの攻勢が目立ってきた。コンビニには総菜やファストフードで売り上げを食われ、ドラッグストアには加工食品の安売りで売り上げを食われてきた。しかも最近の「料理作らない化」傾向もあり、食材が中心の品ぞろえのSMはこのところさえなかった。巻き返し策によって再び小売業界で存在意義を示すことができるか――』、興味深そうだ。
・『コンビニにやられっ放しだった食品スーパー  食品スーパー(SM)というと、真っ先に思い浮かべるのが生鮮食品と総菜ではないだろうか。特に総菜の種類の豊富さはコンビニの比ではなく、出来立てが買えるとあってファンは少なくない。 しかし、その総菜はコンビニにやられっ放しだった。 日本惣菜協会の「惣菜白書」によると、今から約10年前の2009年のコンビニの総菜売上高は2兆957億円、これに対しSMの総菜売上高は1兆9534億円で、その差は約1400億円しかなく、両者は拮抗していた。 だが17年にはSMが2兆6205億円だったのに対し、コンビニがSMを大きく上回る3兆2289億円となり、その差は6000億円も差がついてしまった。 コンビニの店舗数が増えたこともあるが、弁当以外にシニア層や有職女性の取り込みを狙って、ポテトサラダなどレトルトパウチの総菜やハンバーグなどの総菜を拡充。SMのバックヤードで調理した出来立てを提供するというSMの有利点にも勝るとも劣らない、質の高い総菜をコンビニ各社が販売し始めていることが大きく伸びた理由だ』、コンビニの努力は確かにすごい。
・『SMも最近では午後10時、11時閉店と長時間営業の店舗が増えているが、共働き世帯の増加で夕食用としての総菜の購入は、遠くのSMよりも近くのコンビニで済ますという傾向もある。 惣菜白書によるとSMも17年の総菜の売上高は09年に対し、6000億円近く上乗せしているが、コンビニはその倍、1兆2000億円を上乗せしている。本来SMが取り込むべき総菜の売上高を、明らかにコンビニに取られている状態だ。 「最近はSMを1店出店すると3~5年くらい後には(店の周囲に)にドラッグストアが5店くらい、コンビニが10店くらいできるようになった」と話すのはある大手SMの社長。 コンビニは24時間営業というナイトマーケットに対応、その上、欲しい商品を即座に購入できるという利便性がある。総菜や弁当もSMに比べ遜色がないとまでいったら言い過ぎかもしれないが、近くで買えるということを考慮すれば、総菜の購入の場として遜色がなくなってきた』、なるほど。
・『加工食品でもドラッグストアから安売り攻勢  最大の“集客装置”である総菜の売上高をコンビニに取られてきたSMは、加工食品でもドラッグストアに安売り攻勢をかけられ攻め込まれている。 福岡市内のディスカウント型のドラッグストア、コスモス薬品の店舗では7月下旬、サンヨー食品の「サッポロ一番みそラーメン」5食パックが248円(税込み)で売れられていた。 即席袋めんの売れ筋商品である同品は、SMでは安くても300円を切ることはまれである。同じドラッグストアのウエルシアホールディングスのネット通販では30食入りが2579円。コスモスの5食入りに換算すると、ウエルシアでさえ約429円という価格だ。 コスモス薬品は食品の売上高構成比は50%以上とドラッグストアの中でもSMに近い業態である。 調剤にはあまり力を入れず、ひたすら日常購買頻度の高い食品、しかも加工食品の安売りに力を入れて急成長してきた。ローコスト運営に加え、化粧品や日用品の高粗利部門が食品の安売りを補完する。 特売価格とはいえ、こんな爆発力で攻め込まれたらSMだってひとたまりもない。同じサッポロ一番みそラーメンを買うのに何百円という差があり、SMの店舗と距離がなければ、もちろんコスモス薬品の優先順位は高くなるだろう。 ドラッグストアでもマツモトキヨシホールディングスのように化粧品、日用品を拡充するところもあれば、調剤薬局部門を強化しているところもあり、専門性の打ち出し方で枝分かれしてきている。 しかし、コスモス薬品のように食品部門を広げるドラッグストアは増加傾向で、SMも顔負けの生鮮食品を拡充しているところも増えている。しかも大半のドラッグストアが加工食品や飲料の安売りで集客する手法を取っているのだ』、食品部門に力を入れるドラッグストアは、SMにとって脅威だろう。
・『食品スーパーにとっての前門の虎コンビニ、後門の狼ドラッグストア  SMにとってはまさに前門の虎がコンビニ、後門の狼がドラッグストアという状態だ。 コンビニとドラッグストアの攻勢にさらされているSM各社は業績でも苦戦を強いられ減益決算が続出。特に、ドラッグストアの“地方豪族”と競合が激化している地方SMはその傾向が顕著だ。 北海道地盤で合併・買収(M&A)で本州南下作戦を展開するアークスや、平和堂、さらにバローなどは今年の決算で軒並み減益となっている。人手不足を背景にした人件費の高騰という要因もあるが、ベースにはコンビニ、ドラッグストアとの競争が激しさを増していることがある』、SMは本当に大変そうだ。
・『各地で芽生え始めた食品スーパー反撃の“狼煙”  しかし、押されているSMとて黙っていない。 バローは生鮮食品を拡大した店舗の出店を開始した。精肉、青果の売り場を広げ、鮮魚に専門店を導入するなどして生鮮食品部門の売上高で全体の「5割以上」を目指すという新型の店舗モデルである。 最近ではロードサイド型の鮮魚専門店チェーンも急成長しており、生鮮食品にも専門店化を求める動きがある。つまりドラッグストア、コンビニの泣きどころである生鮮を徹底的に強化して、戦う土俵を替えるという戦略だ。 イオンの岡田元也社長は今年中に傘下のSMグループの再編を進める考えを明らかにしている。全国の「マックスバリュ」やM&Aで傘下に入れたSMの再編でスケールメリットを出し経営体質の基盤を強化、ドラッグストアなどに対抗していく。 岡田社長は「SMは売上高2000億円を目標にしてきたが、2000億円では大したことができないことも分かった」とSMの再編に前向きな姿勢である。 イオンSMグループの再編で先行したマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の3社の経営統合によるUSMH(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)は今年、3社の共通の機能、業務プロセスをHDに統合して、本格的な統合効果を引き出す方針だ。アークスでも傘下のSMのシステムを統合、業務の改善を展開、収益力を強化していく考えだ。 SMはコンビニの惣菜やドラッグストアの安売りに負けない“食の専門店”として存在意義をいかに出していくかが問われている局面に入っている。各地で芽生え始めたSM反撃の“狼煙(のろし)”は、SMという業態の今後の行方を占うことになりそうだ』、SMが生鮮を徹底的に強化して反撃しようとするのは、なるほどと納得できる。いずれにしろ、消費者にとっては、選択肢が増えることは大歓迎だ。

第四に、10月11日付け東洋経済オンライン「驚安ドンキは、なぜ「ユニー」を飲み込むのか 8月下旬にドンキ側から買収を打診した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/242795
・『流通大手のユニー・ファミリーマートホールディングス(以下、ユニー・ファミマ)は10月11日、傘下でGMS(総合スーパー)を展開するユニーの株式すべてをディスカウントストア大手のドンキホーテホールディングス(以下、ドンキ)に売却すると発表した・・・ドンキは昨年8月にユニー・ファミマと業務提携を結び、11月にはユニー株の40%を取得していた。今回、残りの60%をユニー・ファミマから買い入れ、ユニーを完全子会社化する。買収は2019年1月に完了する予定。同時に、ユニー・ファミマもTOB(株式公開買い付け)により、ドンキ株を最大20.17%まで取得し、持ち分法適用関連会社とすることを公表した。TOBは11月上旬から開始する』、ユニーがドンキの完全子会社になりながら、ユニー・ファミマがドンキ株を最大20.17%まで取得、という一見、「株式持ち合い」に事実上近い形をとる意味については、記事には説明がないので、よく分からない。ユニーに形式的な「花」を持たせてやったのかも知れないが、なにか釈然としない。
・『「GMS、ディスカウントストア、コンビニエンスストアの3業態を持つ流通グループで、荒波を乗り越えたい」。同日に行われた会見の席上で、ドンキの大原孝治社長は今回の資本関係拡大の理由について、そう強調した。 実は昨年12月、東洋経済のインタビューで、ユニーの佐古則男社長は次のように語っていた。「ユニーの売却については正式に議論したことがない。GMSセグメントが利益を稼いでいけば、(ドンキが)出資比率を5割、6割に引き上げる理由がなくなってしまう」。 この発言から一転してユニーの売却に踏み切ったのは、GMSの競争がより激化しているからにほかならない。ユニー・ファミマの髙柳浩二社長は「GMSや食品スーパーは食品の販売で稼ぐが、この分野がディスカウントストアやドラッグストアと競合している。特に、ユニーは食品販売に対する依存度が高いので厳しくなっている」と説明する。 折りしも、今回の発表の前日に当たる10日には、GMS最大手のイオンが食品スーパーの再編を発表したばかり。全国6エリアの事業会社をエリア別に統合することで地域密着化を進め、コンビニなどとの競合に打ち勝つ狙いだ。同時に、GMSの食品や衣料などの部門を分社化して開発力強化を図る。 競合が大胆な変革で競争環境の変化への対応策を打ち出す中、ユニーもドンキの完全子会社となることで、店舗オペレーションの改善や物流の効率化、多様化する顧客ニーズへの迅速な対応を打ち出す構えだ』、ユニーが考え方を10か月で変えたのは、イオンの動きも影響したのだろうか。
・『5年以内に100店舗を業態転換  一方で、ドンキはユニー店舗のブラッシュアップに全力を注ぐ。ドンキは今年2~3月、ユニーのGMS業態である「アピタ」や「ピアゴ」のうち、売り上げ不振だった6店舗を「MEGAドン・キホーテUNY」としてリニューアルオープンさせた。 家電や化粧品などの品ぞろえを拡大し、低価格を強調したドンキ流のPOP(店内広告)を取り入れたこの店舗は、転換後の3~8月の累計売上高が前年同時期比で9割増と急拡大した。 今回のユニー株取得の協議は今年8月下旬にドンキ側からユニー・ファミマに打診したというが、転換店が想定以上の実績を出したことが大きな後押しとなったようだ。2018年8月末でユニーの店舗数は約190店あるが、「2019年中に20店舗を業態転換を実施する予定。さらに、5年以内には100店舗の業態転換を目指したい」(大原社長)。 また、業態転換店舗が好発進した理由については、大原社長は「ユニーが持つ食品を中心としたブランド力とドンキのアミューズメント性の高い店舗運営力が合わさったハイブリッド型店舗として、ユニーとドンキの両顧客を取り込むことができた」と説明した。 ユニー・ファミマの髙柳社長も「それぞれ強みを持つ3業態があるので、自分たちのリソースで業態転換ができる。自己変化型のグループというのが、われわれの強み」と強調した。 ユニー・ファミマとの“相思相愛”をアピールしたドンキだが、競争環境が激しさを増す中、思惑通りユニーの収益を底上げできるとは限らない』、転換店の売上高が前年同時期比で9割増、とは驚くべき数字だが、僅か6店舗のサンプル店だから出来た数字である可能性もあり、過大評価は禁物だ。
・『オペレーションに差も  大原社長は「両社合わせて売上高1兆6500億円(それぞれの決算期末売上高を単純合算)、国内小売業界で4位になる、という話が話題になっているが、あまり興味はない。ユニー買収によるスケールメリットによって売り上げを上げるのか、粗利率を上げるのか、それとも販管費を下げるのかなど、利益向上に寄与するのかどうかを見極めたうえで戦略を組み立てたい」と手綱を締める。 商流についてもチェーンストアとして展開してきたユニーと、個店主義を重視してきたドンキホーテでは、オペレーションに差がある。スケールメリットを追求するためには、商流の整理にも踏み切らなければならないだろう。 海外展開の強化を目的に2019年2月に「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」へと社名変更することも、今回合わせて発表したドンキ。新たな“決意”で、荒波を乗り越えることができるか』、オペレーションの差など経営統合につきものの難しさを如何に克服していくか、注目したい。
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