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医療問題(その18)(末期胃がんを乗り越えた「医師」が「大学学長」になって考えた人生、医療記事は鵜呑みにしてはいけない 第36回 医療における正しさとは何か、複数医師が「絶対に受けない」と明かした検診は一体何か?) [社会]

医療問題については、10月27日に取上げた。今日は、(その18)(末期胃がんを乗り越えた「医師」が「大学学長」になって考えた人生、医療記事は鵜呑みにしてはいけない 第36回 医療における正しさとは何か、複数医師が「絶対に受けない」と明かした検診は一体何か?)である。

先ずは、近畿大学名誉学長の塩崎 均氏が10月29日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「末期胃がんを乗り越えた「医師」が「大学学長」になって考えた人生」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/183551
・『近畿大学名誉学長、塩崎均氏はもともと食道がんの専門医だ。患者の声帯にダメージを与えない新しい手術方法を開発し、世界的な評価も受けている。2005年、そんながんの専門医に深刻な腫瘍が見つかった。ステージ4の胃がんだ。医師としてこの現実とどう向き合い、その後の人生を歩んできたのか』、興味深そうだ。
・(生い立ちの部分は省略)『ステージ4の胃がんから奇跡の復帰 死ぬ覚悟はしても、絶対諦めてはダメ  ──附属病院の院長を務められていた2005年に、ステージ4の胃がんが見つかって手術をされています。この経験は大きかったですか? 塩崎 医師はだいたい、自分が専門としているがんで死ぬといわれています。ちょうどPET(検査薬を使ってがん細胞を見つけるための検査機器)を導入したばかりのころで、自分がその第1号の被験者になろうと思って試したら、がん細胞が見つかりました。病院長室にあるコンピュータでその画像を見たときは「きたな」と思いました。一応、後輩の専門医にも同じ映像を見せたんです。私の映像であることは伏せて。すると、「この患者さんは手遅れですね」と言う。リンパ節が腫れていましたから、転移もしている。ようするに末期がんです。正確な治療方針を立てるのに必要な検査の結果が出そろうまで、2週間はかかります。その間、いろいろと考えました。あるときは「外科医としてがんに打ち勝つ努力をするべきだ」と思ったり、また別の日には「いやいや、このまま何も治療しないで家族とのんびり過ごそう」と思ったり。人間って、不思議なものですね。それまで、何か問題があればすぐに決断をするよう訓練されてきましたが、このとき初めて、本当に大切なことを決断するためにはそれ相応の時間も必要だということを感じました。じつは私と同じようなケースの患者を、それまで何十人と手術していました。でも、1人も助からなかった。だから、これはもうダメだと思いました。ただ、途中で考えが変わった。どうせ限られた人生ならば、自分を実験台にして誰もやってない治療法を試してみよう。チャレンジしようという意欲が湧いてきたのです。自覚症状はまったくありませんでしたから、頑張れば1年間はなんとかなるだろうと思いました。事務長を呼んで、とにかく一年間は病院長として一生懸命やるから、と話したのを覚えています。あと1年だから、やりたいことは全部やらせてくれ、と。 ──やりたいことというのは? 塩崎 思うような治療法を試させてくれ、ということです。欧米の食道がんに関する論文では、手術前に放射線と抗がん剤を併用する治療法が紹介されており、良く効くというデータがありました。ただし、胃がんに対しては使われたことがなかった。食道がんのほとんどは扁平上皮がんで、胃がんは腺がんですから、胃がん専門医の間では「がんの質が違うから効かない」といわれていたし、放射線医も尻込みしました。調べると、欧米では食道がんの半数以上を腺がんのようなものが占めていた。これまでと同じ治療法を試しても死を待つばかりならば、自分の体で新しい治療法を試す方がいい。そうすれば医師として社会の役に立てるし、何か残せるはずだと思いました。病院長の仕事を続けながら約2ヵ月間治療をし、リンパ節の腫れがひいたところで、胃がんの摘出手術を受けました。術後は水分も受け付けないほど苦しい時期もありましたが、家族の支えもあり、乗り越えることができました。末期がんの患者さんとお話しする機会があるときにはいつも、死ぬ覚悟はしてくださいね、と言うんです。ただし、絶対に諦めたらダメですよ、と。明日、もっといい薬が出るかもしれん。新しい機械が開発されて、治療法が変わるかもしれん。だから諦めたらダメです、と。ただし、覚悟はしなさいと。覚悟をすればチャレンジできます。幸いにして再発することもなく、2008年に医学部長、12年に学長に就任することもできました。今になって思うと、私を学長にすることを決断した弘昭さん(当時の近畿大学理事長、世耕弘昭氏)はえらかった。もしも私が理事長だったら、私を学長にはしません。再発のリスクはだいぶ下がっていたとはいえ、いつどうなるかわからんやつに大学を任せられんと思うのが普通ですよ』、新しい治療法を試せたのは、大物医者の特権だったこともあるだろう。世耕経産相が当時、理事長で病み上がりの塩崎氏を学長にしたとは、意外に見る目があったようだ。
・『「大学を1つにしたい」 “オール近大”で学部間の連携を強化  ──胃がんを乗り越えて学長になられたとき、何か目標は立てたのですか。 塩崎 とにかく大学を1つにしたい、ということです。第1回でも紹介した、10学部2研究所から78人の教員が参加し、現在も活動が続いている東日本大震災で被災した福島県川俣町への支援は、まさしく「オール近大」を掲げて取り組んだ最初の事例です・・・──学部間の連携だけでなく、民間からの受託研究実施件数が全国トップと、産学連携にも力を入れているのは第2回で伺った通りですが、実際にどのような成功事例がありますか。 塩崎 じつは私が非常に興味を持っているのは、まだ成功していない方の事例です。放射性物質が付着した落ち葉をバイオコークスにする技術。これをなんとか実用化できないかなと考えていますが、なかなか難しい。落ち葉に熱をかけて圧縮すると、放射性物質は漏れずに容量は100分の1になる。中間貯蔵庫まで運んでいくのに、トラック100台いるのが1台で済むじゃないか、と。バイオコークスはいわば人造の石炭です。製造時に廃棄物を出さない「ゼロエミッション燃料」なんです。放射性物質を含む場合でも、埋めて半減期が過ぎたら掘り起こして燃料にできます。単価の問題で実用化には至りませんでしたが、実証実験は成功しました。 ──現場の声を受けながら、さらに研究を深めて実用的なものにしていく、という。 塩崎 そうですね。今はタイとマレーシアでパームヤシを搾った後のカスをバイオコークスにする研究をしています。廃棄物を燃やすにもお金がかかりますから、それが燃料になってある程度のお金が入るのであれば、現地にとってもいい。ただし、廃棄物もタダではありません。輸送するにもお金がかかります。技術的にはできているのですが、コストの面でもう一歩というところ。CO2の排出量も抑えられますし、実用化できたらこんなにありがたいことはないと思います。 ──大学に関しては近年、世界トップクラスの大学と互角の教育水準、教育環境を提供してグローバル人材を育てていく「G型」か、地域社会に貢献する「L型」か、という議論があります。近大が目指している実学は、そのどちらでもないような気がしますが。 塩崎 ちょうど中間くらいですね。ドイツ的な職業訓練も取り入れつつ、グローバルで活躍できる土台も作っていくようなイメージです。実際には学生一人ひとりの個性と能力には違いがありますから。1つの大学の中でも個々人の考えによって自然と分かれていきますよね。ただ、これからの近畿大学の学生にはどちらか一方というよりは、ローカルもグローバルも両方理解できる人材になってほしいと思っています』、近畿大学はマグロなどの養殖で有名だが、その他にも新しいことに色々挑戦していることに驚かされた。今後の研究の発展を期待したい。

次に、外科医の中山 祐次郎氏が10月25日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「医療記事は鵜呑みにしてはいけない 第36回 医療における正しさとは何か」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000038/102400047/?P=1
・『こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。現在京都大学大学院で勉強中です・・・さて本題に入ります。今回は、医療における「正しさ」とは何か、について考えてみたいと思います。これは医療記事を読むために必要な医学リテラシーになります。そして専門家も、単なる科学的意味にとどまらない解釈が必要です。専門的な話も含まれますが、噛み砕いて説明いたします』、なるほど。
・『論文を理解するのは医者でも簡単ではない  新聞やニュースを見ていると、よく「○○大学のチームが、XXX病の新しい治療法を開発」というような記事があります。おお、これはすごい、いよいよXXX病は新しい治療法が見つかっていくのか……などと思うのですが、残念ながら多くの場合、こういった報道は鵜呑みにしてはいけません。その理由は3つあります。 1つめは、研究の解釈が困難である点です。 記事にはだいたい研究の概要が書いてありますが、その解釈は非常に難しく、残念ながら記事を書いた記者さんも理解できていないことが多いと思います。この難易度は非常に高く、例えば医者であればみな分かる、というものでもありません。 私がいま通っている京都大学大学院では、「報道された記事で誤っているものを見つけて発表する」という課題や、「実際の報道記事を読み、誤りを指摘する」という試験があるほどです。社会医学の専門的な勉強をした人にしか、その研究内容の正確な解釈は難しいでしょう』、大学院の課題や試験にそのようなものまである、つまりかなり高度な訓練を受けていることを知って、一安心した。
・『恥ずかしながら私も京都大学大学院で勉強して、初めて知ったということが多々ありました。何かの研究結果(科学雑誌に載る論文という形で発表されます)をいかに批判的に吟味するか、その知識と技術はそれほど単純ではありません。そして論文や、その論文をまとめた医師などが読むガイドラインにも大きな問題を含んでいるものが少なからずあるという現実を知りました。 さらには、捏造や不正があるかどうかを見極めるのは、同じ専門家にとってもかなり困難です。小保方晴子さんのSTAP細胞のときは、最先端の研究者がもろ手を挙げて「バンザイ、素晴らしい結果!」と言っていましたが、最終的には不正とされていますよね』、論文の捏造や不正の見極めはやはりかなり困難なようだ。
・『文脈まで分かるのは専門家1人につき1~2領域  2つめは、文脈が分からないとその研究の重要性が理解できないという点です。 1点目の研究内容が分かったとしても、それがこのXXX病の世界でどんな意義を持ち、その病気の治療にどんな影響があるのかは、XXX病の専門家にしか分かりません。これがどのくらいのスケールの専門家かというと、基本的には、広くても1専門家について1~2領域くらいでしょう。 例えば私で言えば、外科・大腸がん・感染症などの専門家ですので、同じ「消化器」という領域の癌についての文脈はある程度分かります。すなわち胃がんや肝臓がん、膵臓がんなどはその治療の歴史的変遷を知っており、新しい研究結果がどのような意味を持ち、今後の治療現場がどのように変わるか(あるいは変わらないか)が分かります』、専門化が進むと、カバーできるのは「専門家1人につき1~2領域」となるのもやむを得ない話だ。
・『専門領域ならこぼれ話まで聞こえてくる  これが大腸がんについてとなると、さらに「ああ、あそこの大学の先生、この研究をずっとやってるとは知っていたが、ついに結果が出たか。これで大腸がんの患者さんの5%くらいはまあまあな恩恵を受けられるかもしれないな。ま、それでもあんまり政治力はないし、マーケット的にも製薬会社が薬の開発にいくかどうかは怪しいなあ」なんてレベルで解釈ができるわけですね。ついでに「あれ、ホントはもっと早く結果が出るはずだったらしいけど教授のストップで今になったらしいよ」などという研究こぼれ話まで聞こえてくることもあります。 しかし、先日行ったESMOという学会でもそうでしたが、乳がんや肺がんの最新の研究結果を文脈から解釈するのは正直あまりできません。そしてこれががんではなく、例えば関節リウマチや統合失調症などという別分野になれば文脈は全く分からない、ということになります。 その意味では、医学の専門家よりは記者さんの方が文脈を幅広く把握していると思います。関係者のことも取材というかたちで知っていますから、情報は入りやすいでしょう』、なるほど。
・『社会に与えるインパクトを予測するのは困難  3点目は、研究結果が社会に与えるインパクトが不明であるという点です。 先日、本邦の本庶氏がノーベル賞を受賞したというニュースがありました。私はとっても驚いたのですが、それで小野薬品工業の株価が一時的に跳ね上がったそうです。小野薬品工業は本庶先生が発見したPD-1抗体に関連するオプジーボという薬を作った製薬会社です。本庶氏がノーベル賞を受賞したことが、小野薬品工業の企業価値を高め株価が上がるという判断だったのでしょう。が、オプジーボはいま日本でどんどん薬価が下げられていることや、オプジーボ以外の免疫チェックポイント阻害薬がすごい勢いで世に出て来ていることを考えると、申し訳ありませんが私なら到底、その判断にはなりません。ま、その後すぐに株価は落ち着いたそうですが。 これがいい例かどうかは分かりませんが、少なくとも研究結果が社会に与えるインパクトを正確に測定するという行為は多くの人にとって難しいと思います。これは医学の専門家にとってもやはり困難で、おそらく測定できる人はほとんどいないでしょう。 社会に与える影響は、なにもプラスのものばかりではなく、負の影響が起きることもあります。例えば生殖技術が進んだ結果、技術的には「産み分け」のようなことは可能になってきましたが、倫理的議論が置き去りになっています。これが進んで優生思想にならないかと私は懸念しています。 この3点目については、私のような専門家もまた研究結果を十分に吟味せねばなりません。自然科学的重要さからただ単に「新しい技術」に飛びつくことなく、ある時は批判的に見つめなければならないと感じています。 このような理由で、新しい研究結果は本当に解釈が難しいのです。しかも新しい発見から実際に病院で使える薬や技術になるまでにはいくつものハードルがあり、形になるものは一部なのです。我々専門家としても、安易な万歳は避けて批判的な視点が必要であると思っています。 それではまた次回、お会いしましょう』、「社会に与えるインパクトを予測」というのは確かに誰にとっても難しそうだ。「批判的な視点が必要」というのは、医学のみならず、広く通用する考え方だろう。

第三に、10月31日付けNEWSポストセブン「複数医師が「絶対に受けない」と明かした検診は一体何か?」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20181031_790699.html?PAGE=1#container
・『人間ドックの予約サイトを覗いてみると、約30種類もの検診・検査が…。それをすべて受けたなら、数万円はくだらない。さらに、検診にもリスクが伴うという。では、「受けざるべきではない検診」はなにか? プロに聞いてみた。 プロが敬遠する検診について、複数の医師が「絶対に受けない」と明かしたのが腫瘍マーカー検査だった。 内科医の松本賛良先生はこう語る。「腫瘍マーカー検査は、すでに診断されたがんに対し、手術がうまくいったか、抗がん剤が効いているか、など治療の経過を把握するために開発されたもの。今のところこの検査だけで、早期がんが確実に見つかる、あるいはがんではないという診断がつくものではありません。もし腫瘍マーカー検査を行うのであれば、関連する画像診断も一緒に受けた方がよいでしょう」 産婦人科医の高橋怜奈先生も同意見だ。「私も腫瘍マーカー検査は受けません。体調や生理などで数値が上がったりするし、マイナスの値でもがんのこともある。これで安心してしまったら困るし、値段も高いからまともな医師ならやらないと思います」』、私も毎年の人間ドックで腫瘍マーカー検査を3種類受けているが、次回からは考え直すべきなのかも知れないようだ。
・『意味がないわけではないが、デメリットの大きさから避けたいという意見が上がったのがCTスキャンだ。 「胸部CTスキャン検査はやりません。X線写真1枚で異常がないなら、やる必要を感じない。なぜかといえば、CTの放射線被ばく量はレントゲン150枚分にもなる。少なくとも、定期的にやる必要はないと思います」(形成外科医・齋藤真理子先生)』、胸部CTスキャン検査の「放射線被ばく量はレントゲン150枚分」とは驚いた。私はレントゲンだけなので、従来通りでいいようだ。
・『やはり、医師の知恵は即戦力を発揮する。簡単なのに、意外と実践されていない賢い受け方を提案する声もあった。乳腺外科医の矢加部文先生が言う。「乳がん検診・婦人科検診・胃カメラなどそれぞれのかかりつけ医を決め、検診はすべてそこで受けることです。長い期間カルテの蓄積があり、体の状態を把握してくれている医師は、自分以上に体の状態を理解してくれる存在。小さな異変にも気づいてもらいやすい。長くつきあえて、信頼に値するかかりつけ医をつくり、そこにお任せしましょう」 また、「検診で何より大事なのは結果を受け取った後」と話すのは、渋谷セントラルクリニック院長の河村優子先生だ。「生活習慣病はもとより、がんや認知症を含めた多くの病気の原因は食事や運動、喫煙、アルコールといったライフスタイルです。検診の結果が陰性であったとしても、それが今後も続くかどうかは別問題。また、ここ最近では目に見える大きさのがんになる前から早期発見・未然に防止するためのがんの遺伝子検査もできるようになってきました。検診は、受けっぱなしでは意味がないのです。だから、必ず検査結果をもとに、ライフスタイルについてアドバイスをもらえる医師の検診をおすすめします」 結果に一喜一憂するより、今後の健康維持が大切なのは間違いないだろう。医療の専門家であり、女性である彼女たちの貴重な意見を胸に刻みたい』、「検査結果をもとに、ライフスタイルについてアドバイスをもらえる医師の検診をおすすめします」、というのは、私も郵送されてくる検査結果だけでなく、わざわざ医師のアドバイスをもらうようにしており、満足感は高い。今後も続けよう。
タグ:pet 医療問題 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン Newsポストセブン 中山 祐次郎 (その18)(末期胃がんを乗り越えた「医師」が「大学学長」になって考えた人生、医療記事は鵜呑みにしてはいけない 第36回 医療における正しさとは何か、複数医師が「絶対に受けない」と明かした検診は一体何か?) 塩崎 均 「末期胃がんを乗り越えた「医師」が「大学学長」になって考えた人生」 食道がんの専門医だ。患者の声帯にダメージを与えない新しい手術方法を開発し、世界的な評価 ステージ4の胃がんから奇跡の復帰 自分がその第1号の被験者になろうと思って試したら、がん細胞が見つかりました 後輩の専門医 「この患者さんは手遅れですね」 のとき初めて、本当に大切なことを決断するためにはそれ相応の時間も必要だということを感じました 私と同じようなケースの患者を、それまで何十人と手術していました。でも、1人も助からなかった 誰もやってない治療法を試してみよう。チャレンジしようという意欲が 手術前に放射線と抗がん剤を併用する治療法 病院長の仕事を続けながら約2ヵ月間治療をし、リンパ節の腫れがひいたところで、胃がんの摘出手術を受けました 末期がんの患者 死ぬ覚悟はしてくださいね、と言うんです。ただし、絶対に諦めたらダメですよ、と 学長にすることを決断した弘昭さん(当時の近畿大学理事長、世耕弘昭氏)はえらかった “オール近大”で学部間の連携を強化 放射性物質が付着した落ち葉をバイオコークスにする技術 タイとマレーシアでパームヤシを搾った後のカスをバイオコークスにする研究 「医療記事は鵜呑みにしてはいけない 第36回 医療における正しさとは何か」 医療記事を読むために必要な医学リテラシー 論文を理解するのは医者でも簡単ではない こういった報道は鵜呑みにしてはいけません 1つめは、研究の解釈が困難 「報道された記事で誤っているものを見つけて発表する」という課題 「実際の報道記事を読み、誤りを指摘する」という試験 捏造や不正があるかどうかを見極めるのは、同じ専門家にとってもかなり困難 文脈まで分かるのは専門家1人につき1~2領域 専門領域ならこぼれ話まで聞こえてくる 社会に与えるインパクトを予測するのは困難 我々専門家としても、安易な万歳は避けて批判的な視点が必要 「複数医師が「絶対に受けない」と明かした検診は一体何か?」 複数の医師が「絶対に受けない」と明かしたのが腫瘍マーカー検査 腫瘍マーカー検査は、すでに診断されたがんに対し、手術がうまくいったか、抗がん剤が効いているか、など治療の経過を把握するために開発されたもの 今のところこの検査だけで、早期がんが確実に見つかる、あるいはがんではないという診断がつくものではありませ 意味がないわけではないが、デメリットの大きさから避けたいという意見が上がったのがCTスキャンだ CTの放射線被ばく量はレントゲン150枚分 必ず検査結果をもとに、ライフスタイルについてアドバイスをもらえる医師の検診をおすすめします
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インフラ輸出(その7)(ジャカルタ都市鉄道計画「寒すぎる」内部事情 日本側コンサルの調整機能に問題はないのか、ついに着工「インドネシア高速鉄道」最新事情 沿線に立ち並ぶ中国語の旗、日立「鉄道快進撃」がイギリスで直面した難敵 電化の遅れ、運行会社撤退、旧式信号…) [インフラ輸出]

インフラ輸出については、2月13日に取上げた。今日は、(その7)(ジャカルタ都市鉄道計画「寒すぎる」内部事情 日本側コンサルの調整機能に問題はないのか、ついに着工「インドネシア高速鉄道」最新事情 沿線に立ち並ぶ中国語の旗、日立「鉄道快進撃」がイギリスで直面した難敵 電化の遅れ、運行会社撤退、旧式信号…)である。

先ずは、アジアン鉄道ライターの高木 聡氏が6月3日付け東洋経済オンラインに寄稿した「ジャカルタ都市鉄道計画「寒すぎる」内部事情 日本側コンサルの調整機能に問題はないのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/222698
・『ジャカルタ地下鉄公社(MRTJ)南北線は、インドネシア初の地下鉄・都市高速鉄道(MRT)として開業予定の路線である。日本車輌製造・豊川工場を出発した車両の第1号が4月4日、ジャカルタ州にあるタンジュンプリオク港に到着した。その後到着した車両12両は、12日早朝までにルバックブルス車両基地へ陸送され、同日朝にはアニス・バスウェダン、ジャカルタ州知事の立ち合いのもと、公式報道公開が実施された。 かつて日本滞在経験のあるアニス知事は式典で、「高い日本の技術が活用された新しい公共交通機関というだけではなく、新たな市民文化を根付かせるものになってもらいたい」と、MRTJ南北線の開業に向けた思いを述べた。土木工事から車両調達、電気、信号、運行管理、そして開業後のメンテナンス支援までを包括したパッケージ型インフラ輸出として初の鉄道がいよいよ来年開業する』、初のパッケージ型インフラ輸出とは意義深い。
・『意外に冷めている現地の人々の反応  だが、現地の人々の反応は、意外に冷めている。というのも、MRTという名前ばかりが先行し、はたしてMRTとは何なのか、生活がどのように変わるのかというのがイメージできていないからである。 すでに既存の国鉄線を活用した通勤鉄道(KCI)はあるものの、各駅におけるほかの公共交通機関、また近隣施設との結節力は極めて低く、日本でいうところの都市鉄道とは似て非なるものであり、街づくりと一体化した鉄道整備という認識は皆無である。加えて、工事期間中は主要道路の渋滞を助長させており、それによるマイナスイメージも大きい。 地下区間、高架区間ともに線路敷設工事はほぼ完了した。残る工事は高架駅部分などに限られており、こうなってくると車両は到着したのに、まだ開業しないのかというクレームすら出てくるのである。 MRTJの後を追うように、4月14日には「LRTジャカルタ」向けに、現代ロテムと宇進産電という韓国の車両メーカー2社が製造する車両の第1号もジャカルタ入りしている。 LRTジャカルタは東ジャカルタの繁華街クラパガディン地区と今年8月18日開催のアジア競技大会に向けに建設が進む自転車競技場が隣接するフェロドローム間5.8kmを結ぶ高架式軽量軌道線である。 ジャカルタ州内におけるLRT建設計画は、議会で反対論も根強かったが、第18回アジア競技大会のインドネシア開催が決定されたことを受け、アホック前ジャカルタ州知事(初の華人首長、その後のコーラン侮辱発言により失脚)任期中の2015年に着工が決定し、今年8月13日の開業を目指している。 全額がジャカルタ特別州予算によって賄われ、州営、国営の建設会社によって土木工事が行われているものの、イギリス系コンサルタントおよび韓国鉄道建設会社が、設計や運行管理支援を行っており、事実上韓国主導のプロジェクトと言える。わずか半年ほどで事業化調査と予備調査を終え、2016年6月に建設着工にこぎ着けた。 区間が5.8kmと短いとはいえ、アジア競技大会開幕に間に合わせるには、かなり無理のあるスケジュールである。車両については現代ロテムが受注からわずか1年3カ月で納入したことから、当局は短期間での調達をアピール材料にしているが、実は同じく今年度開業予定とされる韓国金浦空港と市内を結ぶ軽量鉄道とほぼ同設計の車両を納品したにすぎない』、韓国は単距離とはいえLRTジャカルタだけでなく、既に空港と市内を結ぶ軽量鉄道も受注していたようだ。それぞれの工事費総額が記事にないのは残念だ。
・『本当に8月に開業するのか  5月下旬現在、車両は導入予定8編成のうち、1編成だけ到着したものの、肝心の車庫がない。州営住宅と一体に整備している都合上、完工していないのだ。車両はクラパガディン駅近くの高架線にポツンと留置されている。集電システムは第三軌条式であるため、架線は設置されないのだが、まだ通電しておらず、試験走行開始は6月下旬と言われている。 それでも各駅部は目下工事中であり、来年開業のMRTJの駅と比べても、それと同等か、それより遅れているという印象で、本当に8月に開業するのかと疑わしくなってくる。 とはいえ、現政権が掲げる目玉政策であったジャカルタ―バンドン間高速鉄道の2019年開業は不可能とする政府の公式見解が発表された今、来年の大統領選挙を控えるジョコウィ大統領にとってアジア大会の成功は喫緊の課題である。現在の世論調査では、ジョコウィ大統領の再選がほぼ確定と見られているが、隣国マレーシアでは、先日の総選挙で大方の予想を反し、政権交代が実現、ナジブ首相は退陣に追い込まれた。 同じく華人経済圏で起きたこの政権交代劇は、インドネシアにとっても決して対岸の火事ではない。国民はおおよそにして口にしないが、中国資本、そして中国人労働者の大流入に対する不満は積もりつつある。 ちなみに、ジャカルタとアジア競技大会の共同開催都市であるパレンバンにおいても、空港と市内を経由して競技場を結ぶLRTが大会までの開業を目指している。こちらは国家予算で賄われ、運営は国営企業の1つであるインドネシア鉄道(KAI)が行う。 高速道路、港湾施設、空港などのインフラ整備も道半ばである中で、国民の注目を一身に集めるアジア競技大会と国内初のLRT開業は、4年目に突入したにもかかわらず目立った施策を打ち出せていないでいるジョコウィ政権にとって、現政権の功績をアピールする最後で最大のチャンスであるのだ』、アジア大会を無事終了したということは、LRTジャカルタの完成も間に合ったのだろう。それにしても、ジョコウィ政権がこうした鉄道建設しかアピールする功績がないというのも寂しい限りだ。
・『8月13日に電車は走るが、本開業ではない  では、LRTジャカルタは本当に開業できるのか、関係者に話を聞いてみたところ、予想どおりの答えが返ってきた。2017年12月16日付記事「信号未完成「空港線」はぶっつけ本番で走った」と同様に、8月13日に電車は走るが、本開業ではないということだ。 他線区と接続しない完全独立路線でかつ短距離であり、複線の線路上に1編成ずつ(車両2本を併結し、1編成4両になる模様)車両を置き、単線並列として往復させるという非常に原始的なシステムであり、安全性は保障されている。 実は同様の扱いをジャカルタ、スカルノハッタ国際空港内のターミナル間APM(全自動無人運転車両システム)でも行っており、これも韓国の宇進産電が車両やシステムを収めたが、整備が追いついておらず、無人と称しながら単線並列の有人運転を行い、保安装置もないため、時速30km以下での走行を余儀なくされている。 ただ、このLRTジャカルタを笑い飛ばすのは時期尚早である。ひるがえって、オールジャパンの総力を結集したとされるMRTJの現状を見るに、それはひとごとではないのではないかとさえ感じる。MRTJの車両は車庫にこそ留置されているが、4月に到着した車両はこの2カ月間、まったく動いていない。LRTジャカルタと同じく架線への通電が始まっていないためだ。しかも、到着した2編成分のみ車庫は完成しているが、ほかのスペースはまだ工事中だ。 荷重測定も車両限界測定も行っていないにもかかわらず、LRTジャカルタがいきなり高架上に車両を載線したということ自体が問題だ。では、MRTJはというと、報道公開時の社長スピーチなどから推測するに、こちらも6月下旬、レバラン休暇明けごろから、いよいよ走行試験が始まるものと思われる。だが、現時点においてMRTJ線路上に軌道検測車両を走らせたという報道もない。どうやって走行試験を開始するつもりなのだろうか。 そして今度は、走行試験を開始すれば、8月までには客を乗せられるなんていう声も出るのであろう。日本の面目を保つために、もしそんな声が日本側から出たとしたら、あまりにも恥ずかしいことだ。 政治的感情はこの際捨て去るべきだ。線路と電気、そしてATO(自動列車運転装置)のシステムを入れれば、自動で電車は動くと考えている人がいるようだが、そんな甘いものではない。日本における東京メトロ副都心線開業時の混乱ぶりを見れば、いかにATOの調整が大変かということがわかる。しかも、MRTJには地上区間、地下区間が存在するわけで、荒天時の設定は困難を極めるだろう。 そして、それが完了してからの習熟訓練が実際のダイヤを用いて実施される。車両が到着してから開業までに1年を要するのである。それだけではない。列車の運行管理やホームドアなどを含めた安全管理システムのような列車を動かすための仕組みに加え、券売機や自動改札機、情報案内装置といった乗客対応のために必要となる設備の準備など、これからやるべきことは山積している。そして、何一つとして設置後トラブルなく動く設備などない。そう見てくると、まだMRTJには1年あるというものの、それですらかなり無理のあるスケジュールと言わざるをえない』、プロジェクトのスケジュール管理などなきに等しいようだ。日本側も面目に囚われず、安全第一で臨んでほしいところだ。
・『必要な説明ができているのか  MRTJもLRTジャカルタも今後の延伸計画がある以上、工期の長さは争点となる。そうなったときに、日本側に、どうしてそのプロセスが必要で、それをすることで何が起こるのかという説明ができる人間がはたしているのだろうか。 各分野のプロフェッショナルがジャカルタに集結し、日々プロジェクトを推進しているということは紛れもない事実である。しかしながら、各業者間、そして日本・インドネシア間を調整する部分において、力量不足が露呈していないだろうか。JICAコンサルの能力の低さが、現場実務者へのシワ寄せとなり、工程遅れに至っているのではないか。 MRTJは日本の鉄道新線をそのまま輸出するという初の事例であるが、本来それを監督する鉄道会社が不在のままで、新線を建設したらどうなるか。新線建設の監督を行うのがMRTJ社であるが、KAIからの転籍者も少なく、鉄道運営に関するノウハウは極めて低い。 MRTJは州営会社であり、国営会社のKAIと協力関係をあえて築かなかったのだが、事ここに至っては協力関係もやむなしということなのか、5月に入り、突如MRTJ社はKAIとの人材育成に関する協力合意を結んだ。それだけではない。車両取り扱いに関する研修は基本的にマレーシアで実施されていたが、5月下旬になり、急遽日本で受け入れる事態になっている。 本来、もっと早い段階で、日本側が提案してしかるべき案件だが、誰もそんな発想を持ち得なかったようだ。もう一度、全体のスキームを総点検し、世界に比類のない日本標準のMRTを、ここジャカルタに送り出してもらいたいと願うばかりだ』、パッケージ型インフラ輸出ではJICAコンサルには、形式的なコンサルティングではなく、真に現地事情を踏まえた実効性あるコンサルティングを期待したいところだ。

次に、上記と同じ高木 聡氏が10月25日付け東洋経済オンラインに寄稿した「ついに着工「インドネシア高速鉄道」最新事情 沿線に立ち並ぶ中国語の旗、開業は2024年?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/244872
・『ジャカルタ―バンドン間高速鉄道、中国に発注――。日本とインドネシアの関係に激震をもたらした衝撃的な決定から、早くも3年が経過した。当初の開業予定年度である2019年までは長く見積もってもあと1年弱。しかし、これまで一向に工事の進捗は見られなかった。当初予定どおりの開業が不可能であることは、誰が見ても明らかである。 だが、これを中国に事業を託したインドネシアの手落ちと断じるのは時期尚早だ。2018年も半ばになり、ようやく本格的な着工の兆しが見えてきた。最近の政府高官発言では、2024年開業という新たなスケジュールが出るなど、目が離せない動きが増えている』、どういうことだろう。。
・『いよいよ建設が始まった  筆者は月に数回、平日朝に高速道路でジャカルタ東方のチカンペック方面からジャカルタに向かうが、その渋滞がここ数カ月、以前にも増して悪化しており、途中のカラワン料金所からまったく進まないことがある。高速鉄道の事業主体であるインドネシア中国高速鉄道(KCIC)の発表によると、東ジャカルタ(ポンドックグデ)―カラワン付近は、ほぼ高速道路脇の緩衝地帯に高架を建設するという。これは工事がいよいよ開始したのではないかと車窓に目をやると、これまで囲いだけがあった高速鉄道用地に一部重機などが搬入され、工事車両も出入りしていた。 そこで、2016年1月に起工式が開かれ、唯一進捗が見られていたワリニ駅付近を訪れた。国鉄(KAI)線の最寄り駅であるマスワティ駅からバイクタクシーで山道を駆け上がると、そこには第8国営農園会社の立て看板があり「農園会社保有地・高速鉄道ワリニ駅開発予定地」との文言がある。さらに進むと、高速鉄道会社が設置した同様の看板もあったほか、中国語による道路標識が目に留まった。 高速鉄道の建設現場はちょっとした盆地のようになっており、トンネルとトンネルの間に駅が建設されるようだ。この盆地に面した斜面は赤土がむき出しになっているか荒れ地になっており、農園会社の保有地が高速鉄道用地だけでなく、駅を中心とした一体開発に転用されることがうかがえた。 工事現場入り口にはKCICの展示ホールがあり、その裏手には作業員用宿舎が並ぶ。30人ほどの中国人が寝泊まりし、作業監督をしているとのことだ。現場の様子を見に来ていた地元住民グループに聞くと、工事はちょうど4カ月ほど前から始まったそうだ。作業員は地元在住の農業や自営業からの転職が多いようで、警備員によると約800人ほどのインドネシア人作業者が従事しているという。現在、トンネルは100mほど掘り進んでいる模様だ。 現場はいかにも僻地のようだが、意外にも交通アクセスは良い。高速道路も通っており、バスに乗ればジャカルタまでは3時間弱。高速鉄道開業後はわずか30分でジャカルタと結ばれる。世界有数の過密都市ジャカルタの住宅事情を考えれば、緑に囲まれたゆとりある生活空間と新幹線通勤は、意外と簡単に受け入れられるであろう。成功すれば、土地保有者である第8国営農園会社に落ちる利潤も計り知れない。 9月下旬にジャカルタで開催された「インドネシア交通エキスポ」でKCICブースの大半を占めていたのは、このワリニ駅周辺開発予想図のジオラマとその解説であった。担当者曰く、これが公になるのは今回が初という。一方で「ジャカルタ―バンドン35分」というこれまでの宣伝文句はどこか控えめだった。 担当者は公共交通指向型都市開発(TOD)の一環であると胸を張るが、近年インドネシアでもてはやされているTODという言葉自体が、高速鉄道プロジェクトと共に持ち込まれた単語であることを忘れてはならない。 日系コンサルが関わってきたジャカルタ首都圏の交通政策において、公共交通中心の街づくりは遅々として進まなかった。駅などの交通結節点の強化ばかりが謳われ、土地を媒介として利益を生み出す仕組みがあまり議論されてこなかったからではないだろうか。 ところが、近年一気に議論が進んだTODは、基本的に駅周辺のKAIが保有する遊休地に国営建設会社がモール併設のアパートを建設し、駅周辺で生活が完結するようにデザインされている。日本人が考える公共交通中心の街づくりとは異なるものだ。高速鉄道の場合も考え方は同じで、ワリニ駅周辺では国営企業が保有する用地を開発する。不動産デベロッパーも高速鉄道開業を見越した大規模開発をすでに始めており、大手財閥リッポーグループが手掛けるメイカルタもその1つだ。今さら高速鉄道事業が凍結されては困るというのが実情だろう』、日系コンサルは建築・土木系の技術者が中心だったためなのではなかろうか。「土地を媒介として利益を生み出す仕組み」を見落としていたとは技術者の限界だろう。
・『鉄道だけでは成り立たない実情  つまり、これは単純なジャカルタ―バンドン間の輸送需要だけでは、巨額の建設費を回収できないということを意味している。沿線に都市を開発し、さらにそこから生まれる通勤需要を生み出す、これが建前上は民間会社であるKCICの描く青写真である。 インドネシアの高速鉄道というと、日本では中国の案件横取りとインドネシアの不誠実な対応がやり玉に上がり、非難される節がある。だが、仮に日本が受注していたとしても、果たして円借款による建設で順調に進んだのかどうかの検証も必要であろう。オールジャパンによるインフラ輸出という旗印ばかりが先行し、民間企業との温度差を指摘する声もある。 仮に日本が受注していた場合でも、土地収用や収益性という面で、日本企業にとって茨の道となった可能性もあると関係者は語る。高速鉄道単体ではうまみがないにもかかわらず、鉄道一辺倒で売り込みを行った日本側にも落ち度はあるのだ。事業化ありきで実現可能性調査を進めると、このような不幸も起こりえるということは認識しておくべきだ』、日本側は安倍政権に尻を叩かれて、「高速鉄道単体ではうまみがないにもかかわらず、鉄道一辺倒で売り込みを行った」というのは情けない話だ。現地の実情に通じた人間はいなかったのだろうか。
・『では、このタイミングでの着工、そして2024年開業予定というスケジュールは何を意味するのか。まずは着工に至るまでの紆余曲折の流れを振り返ってみよう。 高速鉄道計画はユドヨノ前大統領の政権下から、日本の手により事業化調査が進められ土地てきた。ところが、2014年7月の大統領選挙で、ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)氏が当選したことで事態は一転。ジャワ島外のインフラ開発重視を掲げるジョコウィ大統領は就任後、もはや着工直前と見られていた高速鉄道計画を凍結した。 同氏はかつてジャカルタ州知事就任時にも、日本の円借款により進められていたジャカルタMRT南北線事業をいったん棚上げにしている。このため、高速鉄道計画の凍結も一種の政策パフォーマンスかのように見えたが、現実には違った。その裏で中国と高速鉄道建設に関わる覚書を結んでいたのだ。2015年3月のことである。この時点で日本は梯子を外されていたわけだ。ただ、そのまま中国と契約を結ぶわけにはいかず、国際入札という形で日本と中国の一騎打ちとなった。 だが、その先も不可解な動きが多々あった。入札結果の公示は延期が続き、遅くとも8月17日の独立記念日(折しも独立70周年であった)には発表かと思われたが、それにも間に合わなかった。そして最後に導き出された答えは、事業計画の白紙撤回であった。 実はこの直前にゴーベル商業相(現・日本担当特命大使、日本インドネシア友好協会理事長)が来日し、日本の新幹線導入に向け関係各所を訪問していたが、帰国後に大臣から外されている』、大臣から外されたのが帰国後、どれだけ日数があったのかは不明だが、こうした事情を掴んでいなかった日本政府の対応はお粗末だ。インドネシアであれば、日本政府がコントロールできると驕っていたのであれば、問題だ。
・『白紙撤回が一転、中国受注  もともとの事業計画から見ると、入札額は日本のほうがわずかに下回っていたと思われる。一方の中国案は工期の短さと費用負担の面で有利であった。あくまで筆者の推測に過ぎないが、インドネシア側は金額・工期・費用負担等すべてにおいて中国案が優位になると踏んでいたものの、日本側もわずかに優位な条件を出してきたことから政府内で答えが導き出せず、妥協案としての白紙撤回に至ったのではないだろうか。 結局、インドネシア側はお茶を濁すかの如く、規格を「中速鉄道」に切り替えた。だが、高速鉄道の白紙撤回からわずか1カ月、リニ国営企業相の訪中を経て9月末には中国による受注が確定した。中国企業とインドネシア企業の合弁で設立された会社はKereta Cepat Indonesia China(KCIC)、すなわち「インドネシア中国高速鉄道」。中速鉄道ではなく、最高時速350kmでジャカルタ―バンドンを結ぶ、れっきとした高速鉄道が建設されることになった。 だが、起工式のあとも順風満帆ではなかった。提出書類の不備などを理由にジョーナン運輸相(当時)が建設許可を与えなかったからである。だが、ジョーナン氏はその後2016年7月末の内閣改造で政府を去ることとなり、事実上の更迭となった。 同氏は先述のゴーベル氏と共に親日派で知られる人物で、中国による高速鉄道を推進するリニ国営企業相との確執が要因といわれる。この際、兄弟に元日本留学生がおり、日本に縁の深いアニス教育文化相(現ジャカルタ州知事)も閣僚から外されている。そして2016年8月、建設許可が後継の運輸相から交付された。つまり、インドネシア政府内においても、日本案・中国案に揺れ動いていたことがうかがえる。 この背景には、インドネシア初となる、軍人でも世襲でもない「平民宰相」のジョコウィ大統領が内閣をコントロールできていない状況があると政府に近い関係者は言う。つまり、一部閣僚の私利私欲と権力争いの中で、中国案が採用された可能性が極めて高いのだ。それゆえ内閣改造を行ったとしても、高速鉄道推進派と懐疑派の攻防は続くことになった。今年の初めには、ジャカルタ―バンドン間の建設では十分な需要が見込めないとして、設計そのものの見直しすら迫られる事態となった。 もっとも、仮に順調に着工に漕ぎつけたとしても、2019年開業は間に合わないという見方が、当初から多数を占めている』、どうもインドネシア政府は、「一部閣僚の私利私欲と権力争いの中で」、ジョコウィ大統領のリーダシップには余り期待できないようだ。
・『大統領任期中の開業目指す  なぜ中国はあえて2019年開業を推し続けたのか。それは、ジョコウィ大統領の2期目がかかる政治的理由に因むものである。任期満了に伴う次の大統領選挙は2019年4月。インドネシア国民特有の大統領信仰のもと、大統領は英雄であり続けなければならない。しかし、ジョコウィ氏は盤石な政治基盤も手腕も持たない。だからこそ、インフラ開発などの目に見える成果にすがる傾向がある。これが2019年開業を打ち出した理由なのだ。 では、どうしてこのタイミングでの着工なのか。まず1つは時間的問題だ。インドネシアの大統領任期は5年。今着工して順調に工事が進めば、ジョコウィ大統領の2期目在任中に開業が可能だ。逆に、次の任期中に開業できなければ史上最低の大統領のレッテルを貼られる可能性がある。待ったなしの時期なのである。次いで、物理的な問題が解決したことだ。これは今夏にインドネシアで開催されたアジア大会に向けての道路・鉄道建設ラッシュが一段落し、技術者や現場作業者が確保できた点である。 中国からの資金調達はどうか。これまでは土地収用の遅れを理由として融資が滞る場面もあったが、難航していたジャカルタ側始発駅周辺の空軍用地がこの7月に高速鉄道会社側に引き渡された。残る未取得用地は主にバンドン近郊区間だが、インドネシア交通エキスポのKCICブース担当者は、今年中の用地取得完了を目指し、年末までに約11億ドル相当の融資を受けると語った。その後も進捗状況に応じて融資は実施されるため、土地と資金に関する問題は解決しているという。 中国の掲げる「一帯一路」政策において、高速鉄道輸出は必ずしも目論見どおりに進んでいないのが実情だ。そんな中、ジャカルタ―バンドン間が開業すれば東南アジア初の高速鉄道となり、中国にとって対外的なアピールにもつながるわけで、今さらインドネシア側の不備を理由に融資を中止にするとは考えづらい。 注目すべきは来年の大統領選挙の行方である。ジョコウィ氏の対抗馬となる野党のプラボウォ氏は、特に中国からの投資額急増を政権批判の材料にしており、国が外国に乗っ取られるとイスラム保守派層に訴える。無神論を基本とする中国共産党と、唯一神への信仰を国家原則とするインドネシアは、本来相容れない存在である。もし次の選挙で政権交代が実現した場合、高速鉄道事業が再び白紙撤回になる可能性も大いにある。 ただ、そうなったとしても、日本に分が回ってくるという意味ではないということは付け加えておく。外国排除の風潮の中では、日本も中国も同じ立場だ。そして、高速鉄道プロジェクトには超低金利の借款ですら受け入れないという姿勢に変わりはない。官民パートナーシップの名のもとに表向きは国費を投入しないのだ。「表向き」というのは、KCICに出資するコンソーシアムに含まれるインドネシア企業はいずれも国営企業省の管轄下にあり、万一の場合は間接的に国費を投入できるという意味合いである。 もっとも、在来線でも3時間、高速化を図れば2時間半程度で結べると思われるジャカルタ―バンドン間に、新たに巨費を投じて高速鉄道を建設するのはあまりにも不経済であり、国費を投じるくらいなら凍結する公算が高い。逆に言えば、政府保証なしという条件を突きつけ、とりあえず中国にやらせてみるという手法は、ある意味で理にかなっていた』、「在来線でも3時間、高速化を図れば」30分短縮というのでは、余り意味はなさそうだ。「とりあえず中国にやらせてみる」、日本側はそれを見守ればいいのだろう。
・『非難だけでは何も変わらない  インドネシア政府が急転直下、かつ正当なプロセスを踏まずに中国案を採用したのは不誠実の極みであり、糾弾されるべきものである。だが、非難だけして目を背けていては、それこそ中国の思うつぼだ。 インドネシアに初めて来る出張者が空港に着いてまず驚くのは、道路を埋め尽くす圧倒的多数の日本車である。数十万カ所にも及ぶモスク(イスラム祈祷所)のスピーカーや各家庭の給水ポンプも大半が日本製品であり、日本ブランドの浸透度は世界有数である。それは、戦後いち早くインドネシアを戦略的パートナーとして認め、技術移転、現地生産を進めた先人たちの先見の明によるもので、世界でも稀に見る良好な関係を築いてきたと言われる。 高速鉄道事業が両国関係に暗い影を落としたのは事実であるが、このような事案はどこにでも起こりえるものであり、これを教訓として、来たるプロジェクトに備えなければならない。高速鉄道計画で両国政府が対等な関係に立てていなかったのは事実である。相手国を見下すような言動は言語道断だ。そして、身の丈に合ったプロジェクトを策定できなかった点については反省しなければならないであろう。 今年は日本とインドネシアの国交樹立60周年という記念すべき年である。もう一度両国関係を振り返り、現代的な国際協力のあるべき姿に思いを巡らせれば、意外なヒントが見つかるかもしれない』、その通りなのだろう。

第三に、在英ジャーナリストのさかい もとみ氏が9月20日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日立「鉄道快進撃」がイギリスで直面した難敵 電化の遅れ、運行会社撤退、旧式信号…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/238255
・『英国の鉄道界はこの数年、新たな転機というべきトピックが目白押しだ。政府主導で旧型の優等列車を日立製新型車両へ置き換えるプロジェクトが進んでいるのをはじめ、ロンドン周辺の通勤ルートなど大都市近郊で積極的に車両更新が進んだことで、鉄道がより快適な乗り物として再認識されるようになってきた。 「英国鉄道界の大変革」を語るうえで、都市交通部門のトップに掲げるべきトピックはやはりロンドン横断鉄道「クロスレール(エリザベス線)」の開業だろう。市内中心部を東西に走り、地下鉄利用ではアクセスに時間がかかるヒースロー空港へも直結。全長118㎞からなる新たなロンドンの大動脈の建設は「欧州最大のエンジニアリングプロジェクト」と関係者が胸を張る世紀の大事業だ。 だが、もともとは今年末に営業運転開始の予定だったものの、「安全性確保のために最終確認作業にまだ時間が必要」として、開業は少なくとも来年秋まで延期となった。人々の大きな期待を浴びていただけに延期の決定は残念だ』、全長118㎞とは「欧州最大のエンジニアリングプロジェクト」と呼ばれるのもうなずける。
・『開業や車両更新の延期が次々と  クロスレールのように大規模かつ新しい鉄道路線の開業スケジュールはもとより、従来からの路線での車両更新もさまざまな事情で遅延が起こる。 英国は鉄道発祥の国だ。初の鉄道が開業してから、かれこれ200年近くが経つ。「21世紀に入ってだいぶ経つのだから、鉄道インフラはきっと近代化されているはずだ」と思うのは大間違いで、実際にはいまだ大英帝国華やかなりし頃のインフラを基礎に使っている駅や線路がそこかしこにあるのだ。インフラがあまりに古く、新型車両のテストを始めてみると想定外のトラブルが続出、導入がどんどん遅れることも決して珍しくない。 すでに日本へもさまざまな形で伝えられているように、英国では日立製の車両があちこちで走り出している。日本国内では新幹線車両をはじめとする各種の車両を送り出している日立だが、こと英国で走らせようとすると「信頼性の高いニッポンの電車」でも全く予想外のトラブルに見舞われるから驚きだ。 日立の英国での動きについて、ここ数年の状況を改めて整理してみよう。 英国政府は、主要幹線鉄道を走る老朽化の著しい優等列車用車両の更新について、都市間高速鉄道計画(インターシティ・エクスプレス・プログラム=IEP)の名の下で計画を推し進めてきた。 日立は2012年7月、英運輸省からIEP向け車両を受注した。同社製の高速列車は日本で製造した「クラス395」がロンドンとイングランド南東部を結ぶ高速鉄道「ハイスピード1(HS1)」で導入されているが、「雪にも強く信頼性が高い」との同形式の評判がIEP向け車両受注の決め手のひとつになったことは疑いないだろう。2017年秋には、受注した122編成(計866両)のうち、グレート・ウェスタン鉄道(GWR)向けの「クラス800」が走り出した。 この新型車両にはパンタグラフが付いており、見た目は「電車」だが、ディーゼルエンジンで発電することで非電化区間も走行できる「バイモード」となっている。バイモード車両は、IEPが英国の鉄道界にもたらした「大きな技術的革新」と言っても過言ではない。電化路線の先にある非電化区間にもそのまま乗り入れられるのが特徴で、エリザベス女王2世が2017年6月、「同車両初の乗客」として試乗した際もその新しいテクノロジーに大いに興味を持ったという・・・バイモード車両は、線路沿いに架線を立てるといった環境負荷への改善が見込まれるのが大きなアドバンテージだ。導入にメドがついたことで、景観保護が優先される観光ルートなどでは電化工事そのものを見送ったところさえもある』、「インフラがあまりに古く、新型車両のテストを始めてみると想定外のトラブルが続出」、というのはさもありなんだ。こうしたことで揉まれるのも日立にはいい経験だろう。
・『スコットランド向け車両は難産に  前述のGWR向け「クラス800」は、投入時の初列車が思わぬトラブルに見舞われた・・・が、納入時期そのものは当初予定どおり実現できたほか、その後も量産車両が次々と投入され、大きなトラブルも起こっていない。 一方、スコットランドの2大都市であるエディンバラとグラスゴーを結ぶ新型近郊電車のお目見えは難産となった。 日立は2015年、同地方の列車を運行するスコットレール向けに「クラス385(AT-200)」70編成(計234両)と10年間の車両メンテナンス事業を受注した。当初は2017年中の運転開始を目指したが、実際に営業運転にこぎつけられたのは今年の7月となってしまった。 日立レールヨーロッパのカレン・ボズウェル社長はお披露目運転の直後の会見で「車両納入までの道のりはとても複雑で、かつさまざまな困難を伴うものだった」と述懐したように、想像以上の問題があれこれと発生した。 最も大きな問題は、この新型電車が走る区間はもともと非電化で、その工事が遅れたことが挙げられる。鉄道の線路や信号システムなどインフラを管理するネットワーク・レール・スコットランドが同区間の電化を受け持ったが、「電化工事の完了がずいぶん遅れたため、電車を本線上で試運転したくてもできなかった(日立の関係者)」という。 「クラス385」はチェコ共和国のヴェリム試験センターにある13㎞あまりのテストサーキットで十分な走り込みを行ってきたものの、電化がようやく完了したスコットランドの線路で実際に走らせてみるとさらなる問題が発見された。試運転を担当した運転士たちが、運転席の曲面ガラスを通して見る信号機の光が「二重に映る」と訴えたのだ。 これが判明したのは営業運転が始まるわずか半年前の今年1月のことで、その後急いで曲面ガラスの取り替えに着手する事態となった。困ったことに、日立製車両の営業運転開始の遅れは政治問題化する動きにまで発展。地元メディアは「スコットランド自治政府の閣僚らが、遅れについて日立の責任を問うべきだ、という声を上げている」とさえ報じた』、こうしたプロジェクトでは遅れはつきものだが、個々の要因別にどちらの責任なのかをその都度、明確にしておく必要もありそうだ。
・『「あずま」は無事走り出せるか?  日立のIEP向け車両「クラス800」は、今年中には東海岸本線(イースト・コースト線)にも投入される予定だ。新型車両の愛称は東海岸の「東」を取って「あずま」と定められた。 命名された時には列車運行オペレーターがヴァージン・トレインズ・イースト・コースト(VTEC)だったこともあり、ヴァージングループの総帥として知られるリチャード・ブランソン氏自身がお披露目式に現れるという力の入れようだったが、同社はその後資金繰りが厳しくなり、今年6月からイースト・コースト線の優等列車は政府が運営するロンドン・ノース・イースタン鉄道(LNER)が運行を引き継いでいる。 ただ、LNERは「あずま」の車両も愛称も引き継ぐことを決めており、幸いにも宙に浮くことはなさそうだ。 だが、これでやれやれと思ってはいけない。「あずま」の車両を本線上で試運転したところ、設置後30年にもなる旧式信号機やポイントへの電磁干渉が判明。このままでは「電化区間でもディーゼルモードで走らすしかない」(BBC報道)とも伝えられており、別の意味でバイモード車両の利点が生きるのではないかという異常な見方まで語られている。筆者が調べたところ、本稿の執筆時点でこの問題は解決していないもようだ』、「旧式信号機やポイントへの電磁干渉」とは思いがけない問題も起こるものだ。
・『次の焦点は「HS2」車両  今後の英国鉄道界で最も大きなトピックといえば、やはり高速鉄道「ハイスピード2(HS2)」の建設着手だろう。英国は鉄道発祥の地とはいえ、高速鉄道についてはフランス、ドイツはもとよりイタリアやスペインよりも整備が遅れている。目下のところ、ロンドン・セントパンクラス駅と英仏海峡(ドーバー海峡)をくぐる「ユーロトンネル」の入り口を結ぶ全長109㎞の「HS1」があるにとどまる。 HS2は1期工事でロンドン・ユーストン駅とイングランド中央部のバーミンガムの間2026年までに結ぶことを目指している。現在、英運輸省による車両発注先の選定手続きが進められており、正式入札を行った会社は、日立がボンバルディア(カナダ)と共同で名乗り出ているほか、独シーメンス、スペインCAF、同タルゴ、そして中国中車(CRRC)も手を挙げている。 入札仕様によると「概ね54編成、1編成の定員が1000人以上、最高時速は360㎞」などとなっており、契約額は27億5000万ポンド(およそ4000億円)に達する。日立がIEP車両で総額1兆円規模もの車両を受注したが、果たしてこの実績が評価される格好となるだろうか。 今まで述べたように、日立は英国で新たな市場開拓を確実な形で発展させてきている。残念なことに、今年6月にはロンドン地下鉄ピカデリー線向け新型冷房車両の入札では、同社がボンバルディアとコンソーシアムを組んで参加し、落札が期待大とされていたにもかかわらず、「工場を英国に建てる」と明言したシーメンスに取られる格好となってしまった。 しかし英国では引き続き、HS2はもとより在来線各線で新型車両への更新が進んでいる。日本の信頼度の高い近郊車両が英国でさらなる活用範囲を広げて行くのだろうか。今後の展開を期待したい』、「工場を英国に建てる」とのシーメンスのやり方は確かに強力だろう。頑張れ! 日立!
タグ:東洋経済オンライン インフラ輸出 日本車輌製造 さかい もとみ 高木 聡 (その7)(ジャカルタ都市鉄道計画「寒すぎる」内部事情 日本側コンサルの調整機能に問題はないのか、ついに着工「インドネシア高速鉄道」最新事情 沿線に立ち並ぶ中国語の旗、日立「鉄道快進撃」がイギリスで直面した難敵 電化の遅れ、運行会社撤退、旧式信号…) 「ジャカルタ都市鉄道計画「寒すぎる」内部事情 日本側コンサルの調整機能に問題はないのか」 ジャカルタ地下鉄公社(MRTJ)南北線 インドネシア初の地下鉄・都市高速鉄道(MRT) パッケージ型インフラ輸出として初の 意外に冷めている現地の人々の反応 工事期間中は主要道路の渋滞を助長させており、それによるマイナスイメージも大きい LRTジャカルタ 韓国の車両メーカー2社が製造する車両 5.8kmを結ぶ高架式軽量軌道線 今年度開業予定とされる韓国金浦空港と市内を結ぶ軽量鉄道とほぼ同設計の車両を納品 中国資本、そして中国人労働者の大流入に対する不満は積もりつつある 4年目に突入したにもかかわらず目立った施策を打ち出せていないでいるジョコウィ政権にとって、現政権の功績をアピールする最後で最大のチャンス 走行試験を開始すれば、8月までには客を乗せられるなんていう声も出るのであろう。日本の面目を保つために、もしそんな声が日本側から出たとしたら、あまりにも恥ずかしいことだ まだMRTJには1年あるというものの、それですらかなり無理のあるスケジュールと言わざるをえない JICAコンサルの能力の低さが、現場実務者へのシワ寄せとなり、工程遅れに至っているのではないか 「ついに着工「インドネシア高速鉄道」最新事情 沿線に立ち並ぶ中国語の旗、開業は2024年?」 ジャカルタ―バンドン間高速鉄道、中国に発注 工事はちょうど4カ月ほど前から始まったそうだ 成功すれば、土地保有者である第8国営農園会社に落ちる利潤も計り知れない 公共交通指向型都市開発(TOD) 日系コンサルが関わってきたジャカルタ首都圏の交通政策において、公共交通中心の街づくりは遅々として進まなかった 駅などの交通結節点の強化ばかりが謳われ、土地を媒介として利益を生み出す仕組みがあまり議論されてこなかったからではないだろうか 駅周辺のKAIが保有する遊休地に国営建設会社がモール併設のアパートを建設し、駅周辺で生活が完結するようにデザイン 土地を媒介として利益を生み出す仕組み 鉄道だけでは成り立たない実情 オールジャパンによるインフラ輸出という旗印ばかりが先行し、民間企業との温度差を指摘する声も 白紙撤回が一転、中国受注 インドネシア政府内においても、日本案・中国案に揺れ動いていたことがうかがえる 一部閣僚の私利私欲と権力争いの中で、中国案が採用された可能性が極めて高いのだ 大統領任期中の開業目指す 在来線でも3時間、高速化を図れば2時間半程度で結べると思われるジャカルタ―バンドン間に、新たに巨費を投じて高速鉄道を建設するのはあまりにも不経済 「日立「鉄道快進撃」がイギリスで直面した難敵 電化の遅れ、運行会社撤退、旧式信号…」 政府主導で旧型の優等列車を日立製新型車両へ置き換えるプロジェクトが進んでいるのをはじめ、ロンドン周辺の通勤ルートなど大都市近郊で積極的に車両更新が進んだことで、鉄道がより快適な乗り物として再認識 クロスレール(エリザベス線) 全長118㎞ 「欧州最大のエンジニアリングプロジェクト」 開業や車両更新の延期が次々と インフラがあまりに古く、新型車両のテストを始めてみると想定外のトラブルが続出、導入がどんどん遅れることも決して珍しくない ハイスピード1(HS1) インターシティ・エクスプレス・プログラム=IEP 見た目は「電車」だが、ディーゼルエンジンで発電することで非電化区間も走行できる「バイモード」 スコットランド向け車両は難産に エディンバラとグラスゴーを結ぶ新型近郊電車 電化工事の完了がずいぶん遅れた 電車を本線上で試運転したくてもできなかった 運転席の曲面ガラス 運転席の曲面ガラスを通して見る信号機の光が「二重に映る」と訴えた 「あずま」は無事走り出せるか? EP向け車両「クラス800」 「あずま」の車両を本線上で試運転したところ、設置後30年にもなる旧式信号機やポイントへの電磁干渉が判明 次の焦点は「HS2」車両 「工場を英国に建てる」と明言したシーメンスに取られる格好となってしまった
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東京オリンピック(五輪)予算膨張以外(その5)(「言論の自由がない」D.スペクターさん東京五輪狂騒に苦言、英国では「五輪ボランティア」が殺到した事情 大事なのは無償とか有償とかではない、東京五輪後も“新築”で販売 選手村再開発スキームの危うさ) [国内政治]

東京オリンピック(五輪)予算膨張以外については、8月23日に取上げた。今日は、(その5)(「言論の自由がない」D.スペクターさん東京五輪狂騒に苦言、英国では「五輪ボランティア」が殺到した事情 大事なのは無償とか有償とかではない、東京五輪後も“新築”で販売 選手村再開発スキームの危うさ)である。

先ずは、9月25日付け日刊ゲンダイが掲載した米国ABC放送の番組プロデューサーでタレントのD.スペクター氏へのインタビュー「「言論の自由がない」D.スペクターさん東京五輪狂騒に苦言」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/237930/1
・『<24時間テレビはチャリティーでギャラもらえるのに、東京五輪は巨大なビジネスなのにボランティアはタダ働きっておかしいと思うのは、私だけ?>――。2020年東京五輪のボランティア募集について疑問を呈したツイートは、リツイート数が約5万件に上るほどの反響を呼んだ。投稿したのがデーブ・スペクターさんだ。56年ぶり、2度目の東京五輪の開催に向け、大会組織委員会や政府、東京都、メディアが一体となって盛り上げ機運を高めていることにも、「冷静になろう」と呼びかけている』、面白そうだ。
・『スポンサーが自前でスタッフを  24時間テレビのことを今さらどうこう言うつもりはないけど、チャリティー番組とはいえ、結局金儲けじゃないですか。スポンサー企業の協賛金だけで番組内で募った寄付金額を超えているし、当然、出演者はギャラをもらう。それならなぜ、テレビ番組とは比較にならないほどの収入がある五輪で、一般人がタダ働きを強いられるのか。オカシイと思ったんです・・・2012年のロンドン五輪でもボランティアがたくさんいたけど、事情が異なるのは、日本が英語圏ではないこと。日本において、英語を話せる人は特別なスキルの持ち主です。働いている年齢であれば、そのスキルを生かして仕事をしているはず。例えば、コーディネーター兼通訳を1日拘束した場合、相場は大体5万円。しかし、五輪ボランティアは、スキルがあっても無報酬で、交通費と別にもらえるのは五輪のユニホームぐらいです。ヤフオクで売るにしても数がたくさん出回るから、当分は高く売れないでしょうし(笑い)。 ――東京五輪のボランティアは、<1日8時間程度><10日以上の活動が基本>などの条件が細かく決まっています。 その条件で「お金はいらない」って言う人は、“スーパーボランティア”の尾畠春夫さんぐらいじゃないですか。仕事でもボランティアでも、人は「利用されている」と思うとモチベーションが下がってしまう。リオ五輪のボランティアはまさにそうだった。ろくに食事ができないとか労働時間が長すぎるとか、劣悪な環境だったと聞きます。東京五輪では妥協案として、少額でもいいから「手当料」をあげてもいいと思う。そうすれば、スポンサーの大企業が大儲けしている五輪に利用されている感じが薄れるじゃないですか。そもそも、スポンサー企業が自前で大会運営スタッフを用意すればいいのにね』、なるほど。
・『グルになって視聴率を稼ごうとするメディア  ――組織委と都が募集している五輪ボランティアは約11万人にも上ります。 そもそもそんな大量に必要ですか。今や、日本には年間約3000万人の外国人観光客が来ています。それでも、都内で彼らを案内しているボランティアなんかほとんどいないでしょ。五輪だからといって、大量のボランティアが必要だという理屈は通りません。しかも、五輪を見に来る人は、ほとんどが関係者で五輪の事情を知っている人たち。友達や親戚が出場している人、あるいは、スポーツ関係者とかスポンサーとか。選手だって、自国のスタッフを雇っています。スマートフォンや宿泊所で、都内の案内情報は分かる。だから、組織委や都が考えているほど、ボランティアは必要ないと思う』、一理ある考え方だ。
・『――組織委や都は宣伝費用を使ってボランティアを募集し、文科省は学生ボランティアの参加を暗に働きかけています。国を挙げて五輪を盛り上げようと必死です。 日本で五輪が大袈裟に扱われる理由のひとつは、日本ではアマチュアスポーツが美化され過ぎているから。メディアはアマスポーツやパラリンピックに関して感動的な物語を演出しがちですが、冷静に考えると、アスリートは、自分のやりたいことをやっているだけ。今の時代、安い賃金で働いている介護士や学校の先生、消防士などの方がよほど偉いと思う。それなのに、アスリートに関しては美しい話が作られる。いわゆる、感動をオーバーに演出するのを改めて欲しい』、最後の部分はその通りだ。
・『――アメリカでは、五輪はどのように扱われているのでしょう? アメリカ人は、五輪選手がメダルを取っても、「頼んだ覚えはない」という一歩引いた気持ちで見ています。才能のある人が自己満足でやっているという考えだから、日本みたいに大袈裟じゃないんですよ。もちろん、アメリカが獲得したメダルが増えるとうれしいけど。あと、アメリカには一年を通じて、野球やバスケ、アメフトやアイスホッケーなどのプロスポーツリーグがあるから、誰もスポーツ観戦に飢えていないんですよね。 ――逆に、日本では五輪が過剰にもてはやされていると。 放送の仕方にも問題があると思います。日本だと、NHKと民放が一緒になった「ジャパンコンソーシアム」が五輪の放映権を買う。だから、放映権獲得のために払った大金の元を取りたくて、しつこく宣伝をやり、各社がグルになって五輪を盛り上げて視聴率を稼ごうとするのです。ところが、アメリカではFOXを入れて4大ネットワークがあり、そのひとつであるNBCしか五輪を放送しない。他の局はニュースとして各競技の結果を伝えるくらいで宣伝もしない。だから、日本みたいに朝から晩まで五輪の話題一色ではないのです。それに、五輪選手を平気でちゃかしたりする。1局しか放映していないから、その他の局からすればタブーもないし、何を言ってもいいから。日本でも五輪が1局だけの放映だったら、もう少し扱いが違ってくると思う』、日本での「朝から晩まで五輪の話題一色」には、私も反感を覚える。
・『――アマチュアスポーツに対する見方や姿勢が日米では異なる? アメリカだと五輪に出た選手は、割とあっさり競技をやめる人が多いんです。出場した頃がピークで引退して、弁護士になったりビジネスをしたりする。日本だと、引退後にスポーツタレントとしての道があるから、講演したりコメンテーターになったりする。でも、日本のメディアでは、メダリストがずっと重宝されてヨイショされ続けるから、アマチュアスポーツ界で権力を握る“ドン”みたいな人が出てきてしまう』、その通りだ。
・『誇大妄想で時代遅れ  ――日本では、五輪を批判することがはばかられるような雰囲気があります。 まさに、五輪がしらける要因のナショナリズムですね。ところが、世界大会でも国内大会でも、各国の選手たちはみんな仲良しで敵ではない。だから、メディアなどが国VS国の敵対関係をつくったりあおったりすると、無理やり感が出てしまう。選手同士がライバルでも、国籍なんて関係ないのです。五輪は、プロスポーツと違ってわざわざお金を払って見ているわけじゃない上に、多額の税金が使われている。だから、見ている人は好き勝手言っていいはず。スポーツは何でも文句を言えるからこそすてきじゃないですか。なぜ五輪だけは、“キレイ”じゃないといけないのか。五輪には言論の自由がないと感じます』、正論で大賛成だ。ナショナリズム、五輪全体主義の押し売りには辟易する。
・『――五輪以外にも世界大会や国内大会など多くの大会があります。 五輪はあくまで“お祭り”なのに、国内外ではスポーツの数ある大会で最も価値のあるものに思われています。だから、五輪の演出や報道が過剰なのです。スポーツがメインなら、開会式を数時間もやる必要はないでしょ。普通のスポーツで数時間もセレモニーを行う種目ってありますか。五輪そのものが、出場者と観戦者、演出者による誇大妄想なんですよ。現実はというと、五輪は世界万博のように時代遅れになっているから、どの国もやりたがらない。 ――最近、日本国内では台風や地震、豪雨などの災害が多発しました。五輪の時期も心配です。 なおさら、五輪でムダ金を費やすのではなく、社会保障や防災、復興などにお金を回したほうがいいと思う。東京五輪は復興五輪と位置づけられていますが、無理やり感が拭えません。「元気と勇気を与える」のは、24時間テレビだけでいいんですよ。どうせ根拠はないんだから。でも、何だかんだ言って五輪の開会式には行きたい。だって、現地に行けたらインスタにアップして、みんなに自慢できるじゃないですか。五輪をボロクソに批判するなら、ちゃんと見ないと何も言えませんから(笑い)』、結びを冗談で締めるとは彼らしい。

次に、在英ジャーナリストの小林 恭子氏が10月10日付け東洋経済オンラインに寄稿した「英国では「五輪ボランティア」が殺到した事情 大事なのは無償とか有償とかではない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/242202
・『2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて、ボランティアの募集が始まった。オリンピック・パラリンピックの組織委員会は約8万人の「大会ボランティア」、東京都は「都市ボランティア」約3万人を募集している。 「オリンピックのボランティアは有償であるべき」という声が日本で日増しに支持を得るようになったが、2012年のロンドン大会で約7万人のボランティアが「ゲーム・メーカー」として参加したイギリスでは、「ボランティア」とは基本的に無償の行為であり、スポーツ・イベントではボランティアの存在は必須となっている。「やりがい搾取」「ブラックボランティア」などいう言葉はまず出てこない。 いったいどのような社会背景があるのかを探ってみた』、ボランティアの問題は議論の的になっているので、深く理解する意味は大いにありそうだ。
・『ボランティアのもとの意味とは?  まず、「ボランティア」(volunteer)という言葉の定義を再確認してみよう。英語の「volunteer」はもともとラテン語(「望んで・自分の自由意思で」という意味の形容詞)から発祥したものだが、17世紀には「軍事兵役に志願する人」つまり「志願兵」の意味であった。現在オックスフォード英語辞書を引いてこれを和訳すれば、最初が「志願兵」そして「自らの意思でいずれかの範囲で奉仕を提供する人」になる。 オリンピック・ボランティアの有償化を支持する人は、「ボランティアという言葉には『無償』という意味が必ずしも入っていない」と主張する。したがって、「ボランティア」と言えど「有償化も可能だ」という流れである。ところが、英語の「ボランティア」には「自ら志願する」という意味とともに「無償で行うこと」が含まれて認識されている。 明文化されたものでは、たとえば英イングランド地方のボランティア組織を統括する「全国ボランタリーカウンシル」(NCVO)は、ボランティア行為を「ほかの人・グループ、あるいは環境に恩恵を与えることを目的に、無給で何かを行うことで時を過ごす活動」と明記している。イギリス政府のボランティアについての説明でも、無給で作業を行うことが前提となっている。 「誰かほかの人に恩恵を与えるために、無給で活動をする」=ボランティアの精神は、イギリス人の生活のあらゆるところに根付いている。 イギリス内で町中に頻繁に設置されているのが、中古品を販売する「チャリティ・ショップ」だ。店自体は慈善組織の運営となり、市民がもう着なくなった衣服、おもちゃ、書籍、食器などを持ってきて、これを廉価で販売する。代金の大部分が慈善組織の設置目的(がんの研究、高齢者支援、貧困者の救済など)に使われる。 各店舗にいるマネジャーは給与を得るが、持ってこられたさまざまなものを仕分け、レジで販売する人は全員が無給のボランティアである。同様の作業を一般の小売店でやれば、いくばくかの賃金が得られるが、あえてここにきて空いた時間を提供している。もし無給のボランティアがいなかったら、チャリティ・ショップ体制は崩壊するだろう。 イギリスで困窮状態にいる人を支援する仕組みは、12世紀以降、キリスト教の教会が中心となって進められてきた。18世紀にはボランティア活動の原型となる「ボランタリー連盟」が各地で設置され、19世紀以降、慈善団体が次々と生まれていった。今では国際的な慈善組織となった「オックスファム」(1942年創設)もその1つだ』、なるほど。
・『年間を通じてボランティア活動する人は約3割  筆者の隣人ジェーン・ウオーカーさんは80歳を超えた1人暮らしの女性。何十年も前から、近隣の養老施設を訪問している。体が動けなくなった入居者には「話を聞くことしかできない」というが、「自分が使わなくなった刺しゅう入りハンカチを持っていたら、すごく喜んでもらえた」と嬉しそうに語る。相手の喜んだ顔が彼女に喜びを与えるのである。 NCVOが調べたところによると、イギリス内で特定の組織やグループを通じてボランティア活動を「少なくとも1カ月に1度」行った人は27%、「少なくとも1年に1度」は41%に上った(『コミュニティ・ライフ・サーベイ』2015–16年)。 活動内容はその組織のために「資金集めをした」「イベントに参加した」「イベント運営を支援した」が大部分を占めた。組織の種類は「スポーツ」「趣味」「芸術」「社交」「宗教」など。活動理由は「人の生活を向上させる・支援するため」(61%)、「組織の目的実現のために」(39%)、「余裕の時間があったから」(30%)、「自分のスキルを使いたかったから」(30%)が上位にきた。 イングランド地方で、スポーツ分野でのボランティア活動を奨励する組織「スポーツ・イングランド」によると、同地方の人口の14・9%に当たる約670万人がスポーツや運動にかかわるボランティア活動を行っているという。「ボランティアの介在がなかったら、こうした活動は止まってしまう」(『ボランティア活動のビジョン』より)。具体的には「コーチング」「ランニングの交通整理」「運営資金の管理」「参加者の送迎」「運動用具の清掃」などボランティア内容は多岐にわたる。 スポーツ・イングランドの「ボランティア」の定義は、「ほかの人の恩恵のために、無給で活動を行う人」である。ここでも「無給」がキーワードになっている。 ボランティアは自らの意思でこうした活動に参加し、活動を行っている間の食事代や交通費の支払いを受けるのが普通だ。スポーツ・イングランドによれば、スポーツ・ボランティアは「労働者」ではない。つまり、運営者側と雇用関係を持たない。もし雇用関係になれば、運営側は最低賃金を払うなどの義務が出てくる。 こうした日常的にボラティアを行う素地があるイギリスでは、2012年にロンドンでオリンピック・パラリンピックが開催された際のボランティアには、必要人員7万人をはるかに超える24万人が手を挙げた』、確かにイギリスではボラティア精神が深く根付いているようだ。
・『選手と一緒にボランティアもロンドンを行進  こうした中、3倍以上の応募者の中から選ばれたボランティアたちは、「ゲーム・メーカーズ」と名付けられた。「ゲームを作る人」という意味だが、これはオリンピックを「ゲーム」と呼ぶことに由来している。「みんなでオリンピック・パラリンピックを作るんだ」という意思が表れた名称だった。ゲーム・メーカーズは無給だったが、制服と交通費、当日の食事代は支給された。 約7万人の大会ボランティアに加えて、ロンドン市が募集したボランティア約8000人(「チームロンドンアンバサダー」)が観光案内の提供、大会会場までの交通案内を担当し、筆者もロンドン市内のあちこちでその様子を散見した。 大会終了後、選手団の祝勝パレードがロンドンの中心部で行われたが、このとき、選手団の後ろに大会ボランティアたちも行進。街行く人々から大きな声援を受けた。このパレードに参加したボランティアの西川千春氏は「選手がスポーツ・エリートとしてのイギリス代表だとすれば、ボランティアはまさに一般市民のイギリス代表だった」と書いている・・・ロンドン大会の組織委員会のウェブサイトによると、ロンドン市民で大会ボランティアとなったポール・ウィグノールさんは、「昔から、オリンピック・ファンだった」としている。2012年のロンドン大会のボランティアになるために申し込みをしたときには、60歳の手前だった。タクシー運転手として経験を積んでいたウィグノールさんは、スポーツのコーチとして働いていた経験もあって、審査に合格した。 送迎を担当したボランティアの経験は「最高だった。わが都市ロンドンと英国のために」大きな成功となった大会の一部になれたからだ』、選手団の祝勝パレードで、選手団の後ろに大会ボランティアたちも行進した」というのは、いいことだ。
・『一方、2016年のリオ大会の場合はどうだったのだろうか。ブラジルは、イギリスほどボランティア精神が根付いていないとされており、リオ市が募集した約1700人の「シティ・ホスト」と呼ばれるボランティアの人たちは有償だった。 この大会で、リオ組織委員会が募集した無償の「大会ボランティア」として参加したのが、日本の会計事務所に勤める赤澤賢史さんだ。ちょうど2012年から2016年末までブラジル・サンパウロのKPMG/あずさ監査法人のオフィスに派遣されており、「南米では初めてのオリンピック開催は歴史的なイベント、ぜひ参加しなければ」と申し込んだ。 自ら志願したからこその喜びがあった  サンパウロからリオまでは450キロほど離れていたが、事前研修は休みを利用しながら参加して、実際のボランティアに臨んだ。担当はゴルフ会場の「国際プロトコールチーム」でのアテンド業務。ここには各国の政府関係者、競技関係者の役員が訪れた。 参加日数はトータルで10日間。途中に土日を挟んだので丸々休んだ1週間を除くと、会社の業務とのやりくりはそれほど難しくなかったという。 リオの場合も大会ボランティアの場合、日当は出なかったが、リオ市内の公共交通機関で使えるプリペイドカードが支給されたほか、食費は運営側が負担した。赤澤さんの場合、サンパウロとリオの往復交通費および現地での宿泊代は自腹。エアビーアンドビーや駐在員の家族グループと廉価な場所を探したという。 オリンピック終了後は、赤澤さんはパラリンピックでもボランティアを継続。ボランティアの経験を大いに楽しんだようだ。「即興のチームで、さまざまな国籍のさまざまな国から来た人たち」と力を合わせながら、ポルトガル語を使って大会を成就させた喜びがあった。チームの士気は高く、「自ら選択したボランティアであったからこそ、本当の笑顔で対応できた」と赤澤さんは思っている。すでに、東京大会のボランティアにも申し込みを済ませている。 今後も、「東京大会のボランティアを有償にするべき」という声がしばらく続きそうだが、「労働」あるいは「人にやらされている」と思えば、同じ作業でも感じ方はまったく異なりそうだ。もし東京で大会ボランティアが有償化となれば、少なくともイギリス人は非常に驚くに違いない』、ボランティア精神が根付いているイギリスでは、無償が当たり前だからといって、そうした精神に乏しい日本でも無償が当然と押し切る組織委員会の姿勢には疑問を感じる。それ以上に懸念されるのは、学校などがボランティア参加を事実上、強要することだ。そうでなくても同調圧力が強い日本では、学校などからの参加呼びかけに応じないことは有形無形の圧力にさらされかねない。大いに気を付けたいところだ。

第三に、11月6日付け日刊ゲンダイ「東京五輪後も“新築”で販売 選手村再開発スキームの危うさ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/241039/1
・『三井不動産や野村不動産などディベロッパー11社が先週、名称発表した五輪選手村(東京・晴海)の再開発地「HARUMI FLAG」。来年5月からマンション群5632戸のうち7割を分譲で売り出すが、気になるのは、どの部屋も「新築」で販売することだ。 マンション群はほぼ選手村の“居抜き”で、選手ら約1万8000人が宿泊する建物が、なぜ「中古」にならないのか。先月31日の会見で、三井不動産選手村事業部の担当者はこう説明した。 「マンションの建築途中で『仮使用許可』を取得し、選手村で一時利用する。利用後に工事を再開。(建築基準法に適合した)建築確認の検査済証は(建築の)最終段階で出る。その時点で『新築』になるスキーム」 やや分かりにくいが、要は現在、建てているのは選手村でなく、あくまでもマンション。選手村として「仮使用」後、マンション完成時に承認を得れば「新築」になると言いたいらしい。どうも法の抜け穴をかいくぐっているような印象だ。国交省の見解はこうだ。 「建築物の『仮使用』は建築基準法7条6項の定めで、地方公共団体の長が安全上、防火上、避難上に支障がないと認めた場合に許されます。床面積1万平方メートル以上の大規模建築は、都道府県知事が承認。新築マンションの『仮使用』は、植栽など外構工事が未完成でも居住棟に家財を運ぶケース、1階のテナントが入居未定で内装工事が終わらずに上層階へ入居するケースなどが想定されます。ただ、首長が安全を認めれば幅広く活用される余地はあります」(住宅局建築指導課)』、そんな”裏技”があったとは。ただ、入居者もそれを承知で購入するのだろうから、それほど問題にするほどのことではないかも知れない。
・『都民は数千億円の“大損”  やはり選手村の「仮使用」は法の想定を超え、選手が使った後も高値の「新築」で売らんがための脱法的なスキームのようだが……。 都のオリ・パラ準備局は「1994年の広島アジア競技大会や、98年の長野五輪の選手村も『仮使用後』に、広島では民間マンション、長野は公共住宅になりました」(選手村担当部長)と言うが、日刊ゲンダイの問い合わせまで前例を調べていなかった。 ただでさえ、都は選手村整備でディベロッパーに途方もない便宜を図っている。約1600億円相当の都有地13.4ヘクタールを9割引き以上の約129億円で投げ売りし、五輪期間中だけ使う選手村の“仮”間仕切り壁など内装・解体工事で約445億円も負担するムダ使い。さらに「ディベロッパー側に支払う選手村の賃貸料も都の負担。金額の協議はこれから」(前出の選手村担当部長)というから、都民はトータル数千億円規模の税金を巻き上げられそうなのだ。 「選手村は『寄宿舎』であり、『分譲住宅』とは用途が異なります。用途変更や大規模修繕を経なければ、建築基準法の趣旨を逸脱することになる。小池都知事が『仮使用』を認めるのなら、ディベロッパーにおもねったと言われても仕方ありません」(建築エコノミストの森山高至氏) 小池都政は五輪のためなら何でもアリ。小池はディベロッパーの“メス犬”に成り下がるのか』、少なくとも都有地の投げ売りだけは、不当極まるものだ。 都議会の野党やマスコミは、小池知事に遠慮することなく、追求して欲しい。
タグ:東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ 東京オリンピック(五輪) 小林 恭子 予算膨張以外 (その5)(「言論の自由がない」D.スペクターさん東京五輪狂騒に苦言、英国では「五輪ボランティア」が殺到した事情 大事なのは無償とか有償とかではない、東京五輪後も“新築”で販売 選手村再開発スキームの危うさ) 「「言論の自由がない」D.スペクターさん東京五輪狂騒に苦言」 東京五輪は巨大なビジネスなのにボランティアはタダ働きっておかしいと思うのは、私だけ? スポンサーが自前でスタッフを 日本において、英語を話せる人は特別なスキルの持ち主 コーディネーター兼通訳を1日拘束した場合、相場は大体5万円 五輪ボランティアは、スキルがあっても無報酬 1日8時間程度 10日以上の活動が基本 グルになって視聴率を稼ごうとするメディア 組織委や都が考えているほど、ボランティアは必要ないと思う 日本ではアマチュアスポーツが美化され過ぎている 感動をオーバーに演出するのを改めて欲しい アメリカ人は、五輪選手がメダルを取っても、「頼んだ覚えはない」という一歩引いた気持ちで見ています NHKと民放が一緒になった「ジャパンコンソーシアム」が五輪の放映権を買う。だから、放映権獲得のために払った大金の元を取りたくて、しつこく宣伝をやり、各社がグルになって五輪を盛り上げて視聴率を稼ごうとするのです NBCしか五輪を放送しない 日本みたいに朝から晩まで五輪の話題一色ではないのです アメリカだと五輪に出た選手は、割とあっさり競技をやめる人が多いんです。 日本のメディアでは、メダリストがずっと重宝されてヨイショされ続けるから、アマチュアスポーツ界で権力を握る“ドン”みたいな人が出てきてしまう なぜ五輪だけは、“キレイ”じゃないといけないのか。五輪には言論の自由がないと感じます 輪はあくまで“お祭り”なのに、国内外ではスポーツの数ある大会で最も価値のあるものに思われています 五輪そのものが、出場者と観戦者、演出者による誇大妄想なんですよ 現実はというと、五輪は世界万博のように時代遅れになっているから、どの国もやりたがらない 五輪でムダ金を費やすのではなく、社会保障や防災、復興などにお金を回したほうがいいと思う 「英国では「五輪ボランティア」が殺到した事情 大事なのは無償とか有償とかではない」 組織委員会は約8万人の「大会ボランティア」、東京都は「都市ボランティア」約3万人を募集 ロンドン大会で約7万人のボランティアが「ゲーム・メーカー」として参加 イギリスでは、「ボランティア」とは基本的に無償の行為であり、スポーツ・イベントではボランティアの存在は必須 ボランティアのもとの意味とは? ラテン語(「望んで・自分の自由意思で」という意味 17世紀には「軍事兵役に志願する人」つまり「志願兵」の意味 「自らの意思でいずれかの範囲で奉仕を提供する人」 英語の「ボランティア」には「自ら志願する」という意味とともに「無償で行うこと」が含まれて認識されている ボランティアの精神は、イギリス人の生活のあらゆるところに根付いている 年間を通じてボランティア活動する人は約3割 選手と一緒にボランティアもロンドンを行進 リオ大会 リオ市が募集した約1700人の「シティ・ホスト」と呼ばれるボランティアの人たちは有償 リオ組織委員会が募集した無償の「大会ボランティア」 懸念されるのは、学校などがボランティア参加を事実上、強要することだ 同調圧力が強い日本 「東京五輪後も“新築”で販売 選手村再開発スキームの危うさ」 「HARUMI FLAG」 マンション群5632戸のうち7割を分譲で売り出すが、気になるのは、どの部屋も「新築」で販売することだ マンションの建築途中で『仮使用許可』を取得し、選手村で一時利用する 利用後に工事を再開。(建築基準法に適合した)建築確認の検査済証は(建築の)最終段階で出る。その時点で『新築』になるスキーム 法の抜け穴をかいくぐっている 都民は数千億円の“大損” 約1600億円相当の都有地13.4ヘクタールを9割引き以上の約129億円で投げ売り
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韓国「徴用工」問題(その1)(徴用工判決も 韓国で日本の国民感情を逆なでする行為が相次ぐ理由、韓国「徴用工勝訴」が日本に与える巨大衝撃 戦後体制そのものを揺るがすパンドラの箱だ、徴用工判決で問われる「日韓国交正常化の闇」 韓国大法廷の判決文を熟読してわかったこと) [外交]

今日は、韓国「徴用工」問題(その1)(徴用工判決も 韓国で日本の国民感情を逆なでする行為が相次ぐ理由、韓国「徴用工勝訴」が日本に与える巨大衝撃 戦後体制そのものを揺るがすパンドラの箱だ、徴用工判決で問われる「日韓国交正常化の闇」 韓国大法廷の判決文を熟読してわかったこと)を取上げよう。

先ずは、元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏が11月1日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「徴用工判決も、韓国で日本の国民感情を逆なでする行為が相次ぐ理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/184010
・『韓国の最高裁で元徴用工4人に計4000万円の支払い命じる判決  10月30日、第2次世界大戦中に強制労働をさせられたとして韓国人4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)を相手取り、損害賠償を求めた訴訟の差し戻し上告審で、韓国の最高裁に当たる大法院は、同社の上告を退ける判決を言い渡した。これにより、4人に合わせて4億ウォン(約4000万円)の支払いを命じたソウル高裁の判決が確定した。 日本政府は、元徴用工への請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、同社も同様の主張をしたが、認められなかった形だ。 元徴用工やその遺族は、2005年に旧新日鉄を相手取りソウル中央地裁に提訴した。しかし当時の盧武鉉政権が、日韓請求権協定や関連の外交文書を検証した結果、個人が企業に賠償を求めるのは事実上困難との見解を表明。1、2審は原告が敗訴した。 しかし大法院は、韓国政府には賠償請求権はないものの「個人請求権は消滅していない」との判断を示し、審理をソウル高裁に差し戻した。これを受け同高裁は2013年、計4億ウォンの賠償を命じた。 だが、大法院は控訴審判決が出てから5年以上、判断を保留してきた。背景には、後述するが、韓国政府が日本政府同様、日韓請求権協定によって両国民の間の請求権は「完全かつ最終的に解決」したとの解釈を示してきたことがある。 ところが最近、大法院の担当次長が判決を遅らせたとして逮捕された。これは、文在寅政権として「早く判決を出すように」との意思表示であり、今回の判決も文政権の意向に沿ったものと見ることができる』、「大法院の担当次長が判決を遅らせたとして逮捕された」なかでの判決だったとは初めて知った。
・『個人補償は韓国政府が拒んできた経緯 判決を受けて訴訟乱発の恐れ  そもそも65年の日韓国交正常化交渉の過程において、日本政府は個人補償も検討したが、当時の朴正熙政権が一括して韓国政府との間で解決するように求め、無償3億ドル、有償2億ドルで決着した経緯がある。 盧武鉉政権も2005年に、日本による無償3億ドル協力には「強制動員被害補償の問題解決という性格の資金が包括的に勘案されている」として、責任は韓国政府が持つべきだとの認識を示している。文大統領は、このときの高官だった。しかし、文大統領は昨年の光復節直後の記者会見で、「個人請求権は消滅しない」「司法判断を尊重する」と述べた。 韓国政府が、長年にわたり「個人の請求権は消滅した」との立場を取っていたのだから、外交交渉の経緯を最高裁に説明、説得するのが行政府の責任ではないか。文大統領が国内的に歴史の見直しに力を入れるとするのは構わないが、外交的には相手方の強い反発を理解すべきで、日本の反応を過小評価したとしか思えない』、「個人補償は韓国政府が拒んできた経緯」があったというのも、初めて知った。盧武鉉政権の高官だった文大統領が、手の平返しをするとは、恐れ入った。
・『今回の判決を受け、これから各地で訴訟が活発化することが予想される。既に70社を相手取り、15件の裁判が進行中であり、約1000人が原告となっている。そして、“訴訟予備軍”も20万人以上いるといわれる。この全員が日本企業に1000万円を求めたら、その総額は2兆円に上る。新日鉄住金が賠償を支払わない場合、原告の弁護士は差し押さえを求めることを検討中ともいわれ、そうなれば日韓経済関係には甚大な影響を与える。 しかし、より根本的な問題として、日韓政府間合意から50年以上経った今、政権が変わったからといって一方的に約束を反故にされては、安定した国家関係は望めない。韓国政府は裁判所の意向と言うのだろうが、これまでの韓国政府は合意内容を擁護してきたし、これは韓国政府の責任であると言ってきた。 日韓請求権協定で相互に争いがある場合には紛争解決の手続きが決められており、まず2国間協議、それで解決しない場合には第三国の委員を加えた仲裁委員会での話し合いを求めることができることになっている。韓国の裁判所もこうした手続きを尊重し、一方的に判断するのではなく、こうした国際的なルールに従って解決するよう勧告するのが妥当ではないか』、日韓請求権協定には「紛争解決の手続き」が決められているのに、これを無視するとは、韓国の裁判所はどうなっているのだろう。
・『文大統領は昨年、大統領就任後の光復節(終戦記念日)演説で、「過去の歴史が未来志向的な発展の足を引っ張るのは好ましくない」と述べていたが、この発言は何だったのかと疑いたくなる。 今の韓国政府内には、日韓関係について造詣の深い人はほとんどいない。李洛淵(イ・ナギョン)国務総理は東亜日報の東京支局長を務めており、韓日議員連盟の野党側の責任者をしていた人物。だが、そもそも外交にはあまり縁のない職責であり、彼をサポートする人間が政府内にいないとなれば影響力はないと考えていい。韓国外交部において日本通は常に要職にいたが、今は日本擁護をすると排斥される恐れがあり、勇気を持って発言できる人はいない。こうしたことも影響したのではないだろうか』、中国に接近している文政権が、日韓関係を如何に軽視しているかが表れているのだろう。
・『文政権になってから相次ぐ日本の国民感情を逆なでする行為  文政権は、日本の国民感情を逆なでするような行為を繰り返してきた。 例えば、慰安婦問題に関する日韓合意に基づいて設立された慰安婦財団の解体の示唆を始め、日本の海上自衛隊による旭日旗掲揚の自粛要請、そして国会教育委員会の超党派議員による竹島上陸などである。 そうした流れの中、今回の判決が出たことにより、歴代政権下で日本に対して取り上げてきた歴史問題をほぼ網羅することになった。しかも、文大統領の訪日も先延ばしにされており、日本との関係を重視しているようには見えない』、隣国の大統領がこんな有様とは困ったものだ。
・『このうち、まずは慰安婦財団の解体示唆について見ていこう。 文大統領は、常に元慰安婦に寄り添ってきた。ただ、文大統領が言っている「当事者の意思が反映されておらず、真の解決にならない」という理屈には納得がいかない。アジア女性基金が運用されていた際、韓国内で批判があったのは、元慰安婦に支給される見舞金が、日本政府からの直接の資金ではなく国民募金によるもので、これでは日本政府の責任を認めたことにならないという点だった。 しかし、今回の財団への拠出は、全て日本政府の財政から支出されたものだ。しかも、「被害者の名誉・尊厳回復への努力、自発的な真の謝罪を要求する」という点に関しては、アジア女性基金の際にすでに反省と謝罪を記した総理の書簡を添付している。 文大統領の主張が妥当性を欠くのは、朴槿恵政権当時の財団理事長が全ての元慰安婦の下を訪れて説得に努めた結果、7割の元慰安婦が納得していたということだ。要するに、反対しているのは文大統領に近い慰安婦財団に属する元慰安婦などであり、この人々は自分たちの主張が120%満足されなければ納得しないことである。 もっと言えば、日本と対立していることに“存在意義”を感じている人々だ。文大統領は、こうした元慰安婦団体と手を組んでいるのだ。仮にそういう人々が反対しても、大多数の元慰安婦が納得していれば、この日韓合意は十分正当性があるものといえるにもかかわらずだ。 慰安婦財団の解体は、日韓の政府合意の根幹をなすもの。韓国政府は、公式合意があったことは否定できず再交渉は求めないとしているが、日本政府として当然のことながら、再交渉する気など毛頭ないだろう。 慰安婦合意を事実上反故にするこの措置は、徴用工の扱いと同じで政府間の合意を一方的に放棄するに等しい』、なるほど。
・『海上自衛隊による旭日旗掲揚の自粛要請  続いて、韓国済州島で行われた国際観艦式に、日本の海上自衛隊の艦船が参加するに当たり、旭日旗掲揚の自粛を求められた問題。海軍の艦船が海軍旗を掲揚して航行するのは国際慣例になっているにもかかわらずだ。 旭日旗については、1998年と2008年の観艦式の際には掲揚して参加している。それ以降、旭日旗に対する韓国の国内世論が敏感になっている点はあろうが、韓国政府としては国際慣例に則るものであることを指摘し、国内世論を静めるのが筋だろう。ちなみに韓国も李舜臣将軍が使った亀甲の旗を掲げたようだ。李舜臣は豊臣秀吉の水軍を破った英雄であり、韓国の誇り。こうした韓国の行動は、日本に対する当てつけだといえる。 日本だけに国際慣例は適用されないのか。旭日旗は、日本の法律で掲揚が義務づけられているものだ。これを拒否されると、北朝鮮の核問題でより日米韓の協力を深めなければならないときに、日本は韓国との安保協力がやりにくくなる。韓国の海軍は日本との防衛協力に前向きだが、韓国の大統領府が足を引っ張っている形だ。 今回、韓国は全ての参加国に対し、自国と韓国の国旗の両方を掲揚するように求めたもようだが、多くの国は海軍旗も合わせて掲揚して参加した。これは韓国の対応が、国際慣例に反するものであることへの抗議とも考えられよう』、私個人は旭日旗は好きではないが、海上自衛隊艦船の正式な旗になっている以上、掲揚は当然のことだ。しかも、「1998年と2008年の観艦式の際には掲揚して参加している」のであれば、今回それを認めなかった韓国の姿勢の変化こそが問題だ。
・『そして、韓国国会教育委員会の竹島上陸訪問。韓国では、日韓に歴史問題が持ち上がると、必ずといっていいほど竹島を訪問する政治家などが現れる。慰安婦問題で窮地に陥っていた李明博元大統領が竹島に上陸したのがそのいい例だ。 今回も、一連の問題が持ち上がったタイミングで、国会教育委員会の超党派議員団が竹島に上陸している。ポイントは教育委員会の議員だったという点で、韓国の若者に竹島に関する教育をより徹底しようという意図が垣間見えるのがより深刻だ。 韓国は、日本と交渉する際、世論を刺激して世論を味方につけて交渉するが、今回も同じ構図といえる。竹島問題は、これまでもたびたび日韓関係悪化のきっかけを作ってきたが、こうした傾向は今後も続くだろう』、困ったことだが、韓国による竹島占拠を長年放置してきた自民党政権にも責任がある。
・『「日韓パートナーシップ宣言」20周年は日韓の困難な時代の始まりか  今年は、日韓の友好促進と協力拡大をうたった小渕恵三・金大中両首脳による「日韓パートナーシップ宣言」の20周年。これを機に、改めて日韓関係の促進ムードを盛り上げようというタイミングだった。 この宣言の趣旨は、日本が文書で謝罪と反省を述べる代わりに、韓国政府はこれ以上、歴史問題を提起しないようにしようというもの。韓国政府としても勇気のいる決断だったが、宣言できたのは、日本が戦後、多大な努力を重ねて民主国家になったことを韓国側が認めたということが前提にある。 日本人にとって、日本が民主国家であるというのは当たり前のこと。だが、韓国人はそう捉えていない。日本には、折に触れ軍国主義の亡霊が現れるかのように言われているからだ。そうした誤解を晴らし、当たり前の事実を素直に受け入れることが日韓関係ではいかに重要かが分かる。 韓国の国益を考えれば、日本との関係を強化することが望ましいはずだ。文大統領が「過去の問題が未来志向的な日韓関係の足を引っ張るのは望ましくない」と述べたのは、まさに的を射た発言だ。また、日本にとっても韓国との関係は国際政治上も、安全保障上も、切っても切れない関係だ。さらに、経済や文化の面においても関係の強化に多くのメリットがある。 日韓両国は今一度、小渕・金大中の日韓パートナーシップ宣言の精神に立ち返るべきではないだろうか。そのためにも韓国には、安定した日韓関係の構築に何が必要なのかいま一度考えてもらいたい』、そもそも日本には韓国を困らせるような外交カードはないのだろうか。あれば、それを切ると脅すことも可能なのだが・・・。
・『民間レベルでは順調に発展 戦後の日本の協力に関する教育必要  日韓関係は、民間レベルでは順調に発展している。昨年、韓国から日本を訪問した人は700万人を超え、1位の中国に迫る勢いだ。日本から韓国への訪問客も、ピョンチャンオリンピック以降回復の兆しを見せている。また韓国では、日本の小説は常にランキング上位に登場しているし、日本食もブームだ。こうしたことにより、日本を知る韓国人は増加しており、日本の本当の姿を伝える環境は整っている。 しかし韓国には、あえて歴史問題や政治関係を取り上げ批判する人が一部にいる。しかも、そうした人々の声は大きい。それに反対すれば親日と批判されるた、声を潜める傾向にある。したがって、反日が主流かのような印象を与えてしまう。 そうした声を抑え、正しく日本の姿を伝えるには、韓国政府、特に文大統領のリーダーシップが不可欠である。文政権にこうした能力が欠けていることが、日韓関係に暗い影を落とす結果になっているのだ。 日本は、戦後の韓国の復興のため誠意をもって協力してきた。だが、韓国ではそうした事実はほとんど語られていない。むしろ意識的に隠ぺいされてきた。筆者は韓国に感謝してほしいから言うのではない。戦後の日本の協力を理解すれば、韓国は日本と関係について直視できるようになると思うから言っているのだ。韓国の人々は、戦後の日本の協力の歴史について、もっと学んでほしいと思う』、その通りだが、日韓請求権協定については、以下の2つの記事は日本政府の公式見解とは違った見方をしているので、紹介したい。

次に、弁護士で弁護士ドットコム執行役員の田上 嘉一氏が11月2日付け東洋経済オンラインに寄稿した「韓国「徴用工勝訴」が日本に与える巨大衝撃 戦後体制そのものを揺るがすパンドラの箱だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/246841
・『韓国の最高裁判所である大法院が10月30日、注目の判決を下しました。戦時中に日本の工場に動員された韓国人の元徴用工4人が、新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟の上告審において、個人の請求権を認めた控訴審判決を支持し、1人あたり1億ウォン(約1000万円)を支払うよう命じたのです。 これを受けて、安倍晋三首相は、「判決は国際法に照らして、あり得ない判断」と厳しく批判し、河野太郎外相は韓国大使を呼び出して厳しく抗議しました。 韓国の徴用工が行っている同様の訴訟は、約80社を相手に14件存在しますが、同様の判決が下される可能性は高いでしょう。それだけではなく、約22万人ともいわれる徴用工や、さらには同じ被害を受けた中国人やアジア諸国人々からも同様の訴えが提起され、日本企業は多大な賠償責任を負うことになるおそれがあります。 そもそも日韓の戦後賠償についての日本の立場は、1965年に日韓両国の間で締結された日韓基本条約、そしてその関連協定である日韓請求権協定においてすでに「完全かつ最終的に」解決されているというものでした。そうだとすれば、いまさら賠償請求が認められる余地はないということになります。それでは、なぜ今回韓国大法院はこのような判決を出したのでしょうか』、詳しい背景はどんなものなのだろう。
・『日韓請求権協定による解決  太平洋戦争においてポツダム宣言を受諾して降伏した日本は、アメリカによる占領を経た後、1951年のサンフランシスコ平和条約で主権を回復し、国際社会に復帰しています。 一方、韓国はそもそも戦時中においては日本の植民地だったため、連合国としてサンフランシスコ平和条約に参加できませんでした。したがって、残された日韓の2国間の賠償問題については、15年もの交渉を経て、最終的な決着として、1965年6月に日韓基本条約が締結され、同12月に発効しています。 同条約により、日本は無償供与3億ドル、有償2億ドルの経済協力を行いました。無償分だけでも当時の韓国の国家予算に匹敵する金額であり、その後の韓国経済の急成長を支えたとされています。 日韓請求権協定2条1項では、「両締約国は、両締約国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決された」ということが確認されています。 また、同2条3項には、「一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であってこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であって同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする」と規定されており、韓国国民の日本に対する請求権が主張できないことが定められています。 加えて、この協定の合意議事録には、「完全かつ最終的に解決された財産、権利及び利益並びに請求権」の内容として、「被徴用韓国人の未収金、補償金及びその他の請求権の弁済請求」が明記されており、徴用工の補償請求が日韓請求権協定の枠内にあることは明らかです。 これらをまとめると、日本に対して請求権を有する徴用工は、日本政府や日本企業に賠償請求を行うことができないけれども、その代わりに韓国政府に対して請求することが認められるということになります。 実際に韓国政府は、日韓請求権協定の国内法的措置として「財産権措置法」を制定し、「韓国及び同国国民の日本国又はその国民に対する債権であって、同協定2条3項の『財産、権利及び利益』に該当するものは、昭和40(1965)年6月22日において消滅したものとする」と定めています』、こんな「財産権措置法」まであるとは、初めて知った。
・『個人の請求権は消滅していない?  ところが、国と個人はあくまで別人格です。国が請求権を放棄しても、それによって個人の請求権まで消滅しているのかどうかについては、長年の争点となっていました。何よりも、日本政府自身が、「日韓請求権協定ではあくまで外交保護権を放棄したものに過ぎず、個人の請求権は消滅していない」と答弁しています(1991年8月27日参議院予算委員会における柳井俊二条約局長の答弁)。 これは、仮に個人の請求権まで消滅してしまうと、朝鮮半島に資産を残してきた日本人に対して日本政府が補償を行わなければいけなくなってしまうので、「あなたの権利は消滅していないので、ぜひ韓国の制度で請求権を行使してくれ」と突き放すための理屈でした。 また、1990年からの10年間に韓国人が提訴した数十件の戦後補償訴訟においては、日本側が日韓請求権協定によって解決済みであるという抗弁を行っていませんでした。すなわち、この当時はまだ政府も、冒頭に示したように「完全かつ最終的に」解決しているとは考えていなかったということになります』、日本政府がかつては「個人の請求権は消滅していない」との姿勢だったとは、驚いた。戦後補償訴訟で日本側が抗弁しなかったのも問題だ。
・『「サンフランシスコ条約枠組み論」の意味  2007年4月27日、日本の最高裁は、中国人を原告とする戦後補償訴訟において、「個人の請求権は消滅していないものの、裁判上訴求する権能を持たない」という結論を下しました。これは、1999年にアメリカで日本企業が訴えられた際に用いられた理論を参考にしたもので、「サンフランシスコ条約枠組み論」と呼ばれています。 この理論によって、「戦後補償に関しては、サンフランシスコ条約等の各条約によって解決済みである」という結論が確立されたわけです。したがって、日韓の戦後補償であれば、日韓請求権協定によって解決済みということとなります。 しかし、この理屈は従来の日本政府の見解を変更するものであり、法律構成として論理的であるとはいえず、どちらかというと政治的かつ曖昧な決着であったと言えるでしょう。とにかくいずれにせよ、日本では国外の戦争被害者が、日本政府や日本企業に請求を行うことが認められないという結論に至りました。これが今も政府が言う、「日韓請求権協定によって解決済みのはずである」という根拠です。 他方で、盧武鉉政権は2005年に民官共同委員会を開催して見解を示しています。ここでは、「従軍慰安婦、在サハリン韓国人、原爆被害者は請求権協定の範囲外」とする一方で、徴用工に関する請求権は依然として請求権協定の範囲内ということになっていました。これは現在でも韓国政府の公式見解です。なお、現大統領の文在寅は当時の政権メンバーでした。 日韓請求権協定を巡る解釈についてはさまざまな変遷をたどったとはいえ、この時点において、徴用工の補償に関する日韓両国政府の見解は一致していたといえます。革新派の盧武鉉政権でしたが、それでも現在と比べれば日韓関係はまだ良好でした。 そうした中、元徴用工が、2000年5月に三菱重工業、2005年2月に新日本製鉄(現新日鉄住金)を相手取って提訴しました(三菱広島プサン訴訟・旧日本製鉄大阪ソウル訴訟)。今回の判決につながる訴訟です。一審ニ審ではいずれも原告が敗訴しますが、2012年に韓国大法院が驚きの決定を行います。 その論旨を簡潔にまとめると次の4点です ①日帝による植民地支配は反人道的で違法である ②したがって植民地支配下における国家総動員法に基づく徴用も違法となる ③請求権協定は両国間の債権債務関係を政治的合意によって解決したものであり、植民地支配に関する条約ではない ④したがって植民地支配に直結した不法行為の損害賠償もその枠外であり、個人の請求権は消滅していない といった内容のものでした。30日の大法院判決も基本的に同旨となっています。 ここで重要なのは、今回認められた反人道的な植民地支配に基づく慰謝料請求は、そもそも日韓請求権協定の対象となっていた未収金や補償金とはまったく別の請求権であるという点です。「そもそも日本の植民地支配はまったく違法なものなのだから、それに基づく補償問題については、日韓両国は一切合意していない」ということを言っているわけです。日本側はそれも含めて完全かつ最終的に解決したと思っているわけですから、「話が違う」となってしまいます。 そして、大法院判決の論旨は、2005年の民官共同委員会見解とも合致しておらず、日韓両国政府におけるこれまでの法解釈から大きく逸脱したものとなっていました』、韓国大法院判決の③は全く理解できない一方的解釈だ。
・『あまりに横暴と言わざるをえない  上述の通り、日韓請求権協定に関する日本側の解釈も決して一貫していたとはいえないことは確かです。「サンフランシスコ条約枠組み論」も純粋な法理論というよりも、多分に政治的な妥協の産物としての色合いが強いと言えるでしょう。 しかし、たとえそうであったとしても、すでに戦後賠償については、サンフランシスコ平和条約を含む一連の条約によって解決済みであるという前提に立って各国の国際関係が成り立っているところに、50年以上も経った今となって、「日本はそもそも違法な植民地支配の賠償を行っていない」として、これまでに積み上げられた政治的合意の土台を根底から覆してしまうことは、あまりに横暴と言わざるを得ないでしょう。講和とは何だったのかという話にもなります。 今回の韓国大法院判決は、日韓関係の基礎となる1965年体制、ひいては現在の国際社会の基礎であるサンフランシスコ体制を根幹から揺るがすものとなりかねません。その意味で、まさにパンドラの箱を開けてしまったと言えるでしょう』、説得力のある主張で、その通りだ。

第三に、東京新聞 論説委員の五味 洋治氏が11月6日付け東洋経済オンラインに寄稿した「徴用工判決で問われる「日韓国交正常化の闇」 韓国大法廷の判決文を熟読してわかったこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/247496
・『10月30日に韓国の大法院(最高裁に相当)が「元徴用工」に対して、計4億ウォン(約4000万円)の支払いを命じた判決に対する批判が、日本で収まらない。日本政府は、過去に日韓両政府が合意した内容を否定するものとして、「日韓関係の法的基盤が揺らいでしまう」「100%、韓国側の責任において(解決策を)考えることだ」(河野太郎外相)と強く反発し、韓国政府の対応を求めている。文在寅大統領は判決について発言しておらず、対応に困っていることがうかがえる。 しかし、大法院の判決文を熟読すれば、「韓国側の約束違反」というだけではない、日韓国交正常化時の「闇」も浮かんでくる』、「日韓国交正常化時の「闇」」とは何なのだろう。
・『募集広告と全く違う苛酷な労働  判決文はA4用紙約50枚にわたる膨大な量だ。原文にも目を通したが、判決文独特の表現が多いため、正確に理解するのが難しい。そこで日本の有志の弁護士が日本語に仮訳したものを参考にしながら、判決文を熟読してみた。 判決文は大きく、判決主文、事実関係の経過、判決に反対した裁判官と、同意した裁判官の補足意見からなる。 日本は第2次世界大戦中、労働力不足を補うため、日本が統治していた朝鮮半島からも人員を動員した。最初は募集広告を通じ、戦争の最終段階では「国民徴用令」によって、本人の意思に関係なく労働させた。4人の原告について判決文は、一般的呼称である「徴用工」という表現は使わず、強制動員被害者と呼んでいる。その理由は、原告がいずれもが新日鉄住金(当時は日本製鉄)の募集に応じて日本で働くことになったからだろう』、「募集に応じて日本で働くことになった」のに、「強制動員被害者」と呼ぶとは理解に苦しむ。
・『原告のうち2人は1943年頃、旧日本製鉄が平壌で出した、大阪製鉄所の工員募集広告を見て応募した。「2年間訓練を受ければ、技術を習得することができ、訓練終了後、朝鮮半島の製鉄所で技術者として就職することができる」と書かれていた。 しかし実態は「1日8時間の3交代制で働き、月に1、2回程度外出を許可され、月に2、3円程度の小遣いが支給されただけ」だった。賃金全額を支給すれば浪費するから、と本人の同意を得ないまま、彼ら名義の口座に賃金の大部分を一方的に入金し、その貯金通帳と印鑑を寄宿舎の舎監に保管させた。 賃金は結局、最後まで支払われなかった。ほかの原告も当初の話とは全く違う苛酷な条件で働かされ、逃走しないよう厳しい監視下に置かれて、時に体罰を振るわれたと証言している。原告たちは当時まだ10代だったと思われる』、「賃金は結局、最後まで支払われなかった」とは酷い話だが、それも含めて「日韓請求権協定」で解決された筈だ。
・『大法院が認めたのは強制労働への慰謝料  判決文は、強制動員被害者に賠償の権利を認めた理由について説明している。ここが判決の核心部分といえる。 韓国と日本の政府は1951年末頃から国交正常化と戦後補償問題について論議を始めるが、日本による統治(植民地支配)の補償額や対象をめぐり意見が食い違い、交渉は難航した。この原因は、統治の合法性をめぐる認識の争いだった。日本は合法、韓国は不法と主張していたが、この問題はあいまいにされたまま、1965年に国交正常化が実現した これに伴って結ばれた「日韓請求権協定」に、請求権問題は「完全かつ最終的に解決されたことを確認する」と盛り込まれた。日本政府は韓国に3億ドルの無償、2億ドルの有償支援を行った。韓国はこれを主にインフラ投資に使い、「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展を成し遂げた。 「これですべて終わっているのに、なんでいまさら賠償しろと蒸し返すのか」というのが日本政府の主張であり、一般的な理解だろう。 判決文も、国交正常化の経緯については認めている。ただし「請求権協定は日本の不法な植民支配に対する賠償を請求するための協定ではなく、(中略)韓日両国間の財政的・民事的な債権・債務関係を政治的合意によって解決するためのものであったと考えられる」と判断している。つまり原告に関していえば、未払い賃金の返済だけを意味していたということだ。 今回の訴訟は「原告らは被告に対して未払賃金や補償金を請求しているのではなく、 上記のような(強制動員への)慰謝料を請求している」(判決文)のであり、日本による統治を「不法」としている韓国では、1965年の請求権協定に含まれていない慰謝料を請求できる、という論理構成になっている。 誤解の多い個人の請求権についても判決文は触れている。 自分の財産などを毀損された場合、相手に補償や賠償を求めることができる「請求権」は、そもそも人間の基本的な権利とされており、消滅させることはできないとの見解が多い。もし消滅させたければ、協定にその旨を明確に書く必要があるが、日韓請求権協定には書かれていない。請求権をめぐる問題が「完全に解決」と書かれているだけで、無くなったのか、まだ有効なのかはっきりしない。 この表現に落ち着いた意味を、判決文はこう説明している。「請求権協定締結のための交渉過程で日本は請求権協定に基づいて提供される資金と請求権との間の法律的対価関係を一貫して否定し」てきた。 筆者が補足すれば、請求権に関する協定と言いながら、請求権の対価として無償で3億ドルを出すのではないと日本側は主張していたのだ。この指摘は重要だ。日本側は植民地支配を合法だとしていたので、謝罪や賠償の意味を持つ「請求権」の中身をあいまいにしておきたかったということだ』、日本側があいまいにした点を突っつかれたことになり、確かに「日韓国交正常化時の「闇」」であるようだ。
・『3億ドルの無償支援は「独立祝い金」  事実、3億ドルの性格については椎名悦三郎外相は次のように答弁している。 「請求権が経済協力という形に変わったというような考え方を持ち、したがって、 経済協力というのは純然たる経済協力でなくて、 これは賠償の意味を持っておるものだというように解釈する人があるのでありますが、法律上は、何らこの間に関係はございません。あくまで有償・無償5億ドルのこの経済協力は、経済協力でありまして、韓国の経済が繁栄するように、そういう気持ちを持って、また、新しい国の出発を祝うという点において、 この経済協力を認めたのでございます」(第50回国会参議院本会議1965年11月19日) 有名な「独立祝い金」答弁である。 請求権についても1991年8月27日の参院予算委員会で、当時の柳井俊二外務省条約局長が、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と明言している。 ここで、日本政府の外交上の知恵というか、トリックが暴かれている。 請求権協定は結んだが、請求権に応じたのではない。経済支援なのだ。この支援で納得し、提訴など権利を主張しないと約束してくれれば支払う。この条件を、当時韓国側もあうんの呼吸で受け入れた。だから国交正常化が実現したということだ。 一部で「3億ドルを払ったのだから請求権は消えた」と、「3億ドル代価説」を主張する人がいるが、実はこれは、日本政府がもっとも困る主張なのだ。 判決文も「大韓民国と日本の両国は請求権協定締結当時、今後提供される資金の性格について合意に至らないまま請求権協定を締結したとみられる」とあいまい合意の疑いを表明している。そのうえで「請求権協定で使用された『解決されたことになる』 とか、主体などを明らかしないまま 『いかなる主張もできないものとする』などの文言は意図的に使用されたものといわねばならず、これを個人請求権の放棄や消滅、権利行使の制限が含まれたものと安易に判断してはならない」とし、請求権は残っているとの判断を示している』、これでは、まるで日本のオウンゴールのようなものだ。
・『強制動員被害者に責任をかぶせてはならない  韓国政府は、日韓国交正常化後、3億ドル分の無償支援(現金ではなく日本からの物品と役務)を使って経済発展を実現したあと、法律を整備して強制動員被害者の補償にも乗り出した。判決文によれば、それは十分なものではなかった。 保障の対象は、当初死亡者に限定されていた。判決文は、「強制動員の負傷者を保護対象から除外する等、 道義的次元から見た時、 被害者補償が不十分であったと見る側面がある」と、韓国政府の努力不足を明確に指摘している。 判決文の最後には多数意見に対する2人の裁判官の補充意見が載っている。戦後70年以上が経過しても、いまだに解決できない問題の本質が書かれていると筆者は感じた。 まず「人間としての尊厳と価値を尊重されないままあらゆる労働を強要された被害者である原告らは、精神的損害賠償を受けられずに依然として苦痛を受けている」と、原告の状況に同情を示している。 請求権協定が結ばれた時、韓国は、軍事独裁の朴正煕政権だった。しかし、民主化が進み人権意識が強まった。市民のデモが、大統領の弾劾を実現するほどのパワーを持っており、大法院の判決は、そういう世論を反映していると言っていいだろう。 そして2人の裁判官は補足意見を、こう結んでいる。 「大韓民国政府と日本政府が強制動員被害者たちの精神的苦痛を過度に軽視し、その実像を調査・確認しようとする努力すらしないまま請求権協定を締結した可能性もある。請求権協定で強制動員慰謝料請求権について明確に定めていない責任は協定を締結した当事者らが負担すべきであり、これを被害者らに転嫁してはならない」 判決文の趣旨には同感する部分が多い。ただ、これまで外交であいまいにやり過ごした点を、過去にさかのぼって、すべて白日の下にさらしてしまったのも事実だ。それだけに、解決策が見出しにくくなった。 元徴用工による裁判は、他にも14件あり、12月以降判決が相次ぐ見通し。日本政府が韓国政府に対応を求め、韓国政府は世論の沈静化を待ち、できることを考える。当分そうするしかなさそうだ』、日本側にもこんなにも瑕疵があるようでは、仮に国際司法裁判所などに持ち込んでも、必ずしも日本有利な結論になるかは不明だ。東京新聞は読んでないが、日本のマスコミもこの問題を、外務省の言いなりにではなく、深く掘り下げて報道してもらいたいものだ。
タグ:東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン 盧武鉉政権 武藤正敏 韓国「徴用工」問題 (その1)(徴用工判決も 韓国で日本の国民感情を逆なでする行為が相次ぐ理由、韓国「徴用工勝訴」が日本に与える巨大衝撃 戦後体制そのものを揺るがすパンドラの箱だ、徴用工判決で問われる「日韓国交正常化の闇」 韓国大法廷の判決文を熟読してわかったこと) 「徴用工判決も、韓国で日本の国民感情を逆なでする行為が相次ぐ理由」 韓国の最高裁で元徴用工4人に計4000万円の支払い命じる判決 韓国政府が日本政府同様、日韓請求権協定によって両国民の間の請求権は「完全かつ最終的に解決」したとの解釈を示してきた 大法院の担当次長が判決を遅らせたとして逮捕 文在寅政権として「早く判決を出すように」との意思表示 個人補償は韓国政府が拒んできた経緯 判決を受けて訴訟乱発の恐れ 既に70社を相手取り、15件の裁判が進行中であり、約1000人が原告 原告の弁護士は差し押さえを求めることを検討中 日韓経済関係には甚大な影響 日韓請求権協定で相互に争いがある場合には紛争解決の手続きが決められており、まず2国間協議、それで解決しない場合には第三国の委員を加えた仲裁委員会での話し合いを求めることができることになっている 今の韓国政府内には、日韓関係について造詣の深い人はほとんどいない 今は日本擁護をすると排斥される恐れがあり、勇気を持って発言できる人はいない 文政権になってから相次ぐ日本の国民感情を逆なでする行為 慰安婦財団の解体の示唆 海上自衛隊による旭日旗掲揚の自粛要請 会教育委員会の超党派議員による竹島上陸 朴槿恵政権当時の財団理事長が全ての元慰安婦の下を訪れて説得に努めた結果、7割の元慰安婦が納得していた 旭日旗については、1998年と2008年の観艦式の際には掲揚して参加している 「日韓パートナーシップ宣言」20周年は日韓の困難な時代の始まりか 民間レベルでは順調に発展 戦後の日本の協力に関する教育必要 田上 嘉一 「韓国「徴用工勝訴」が日本に与える巨大衝撃 戦後体制そのものを揺るがすパンドラの箱だ」 日韓請求権協定による解決 日韓請求権協定2条1項では、「両締約国は、両締約国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決された」ということが確認 同2条3項には、「一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であってこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であって同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする」と規定 日本に対して請求権を有する徴用工は、日本政府や日本企業に賠償請求を行うことができないけれども、その代わりに韓国政府に対して請求することが認められるということになります 「財産権措置法」を制定 日本政府自身が、「日韓請求権協定ではあくまで外交保護権を放棄したものに過ぎず、個人の請求権は消滅していない」と答弁 1990年からの10年間に韓国人が提訴した数十件の戦後補償訴訟においては、日本側が日韓請求権協定によって解決済みであるという抗弁を行っていませんでした この当時はまだ政府も、冒頭に示したように「完全かつ最終的に」解決しているとは考えていなかったということになります 「サンフランシスコ条約枠組み論」の意味 戦後補償に関しては、サンフランシスコ条約等の各条約によって解決済みである」という結論が確立 政治的かつ曖昧な決着 「従軍慰安婦、在サハリン韓国人、原爆被害者は請求権協定の範囲外」 徴用工に関する請求権は依然として請求権協定の範囲内 現大統領の文在寅は当時の政権メンバーでした この時点において、徴用工の補償に関する日韓両国政府の見解は一致 2012年に韓国大法院が驚きの決定 ①日帝による植民地支配は反人道的で違法である ②したがって植民地支配下における国家総動員法に基づく徴用も違法となる ③請求権協定は両国間の債権債務関係を政治的合意によって解決したものであり、植民地支配に関する条約ではない ④したがって植民地支配に直結した不法行為の損害賠償もその枠外であり、個人の請求権は消滅していない 今回認められた反人道的な植民地支配に基づく慰謝料請求は、そもそも日韓請求権協定の対象となっていた未収金や補償金とはまったく別の請求権 50年以上も経った今となって、「日本はそもそも違法な植民地支配の賠償を行っていない」として、これまでに積み上げられた政治的合意の土台を根底から覆してしまうことは、あまりに横暴と言わざるを得ない 五味 洋治 「徴用工判決で問われる「日韓国交正常化の闇」 韓国大法廷の判決文を熟読してわかったこと」 日韓国交正常化時の「闇」も浮かんでくる 募集広告と全く違う苛酷な労働 募集に応じて日本で働くことになった 「強制動員被害者」 賃金は結局、最後まで支払われなかった 大法院が認めたのは強制労働への慰謝料 日本政府は韓国に3億ドルの無償、2億ドルの有償支援 「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展を成し遂げた 自分の財産などを毀損された場合、相手に補償や賠償を求めることができる「請求権」は、そもそも人間の基本的な権利とされており、消滅させることはできないとの見解が多い もし消滅させたければ、協定にその旨を明確に書く必要があるが、日韓請求権協定には書かれていない 請求権に関する協定と言いながら、請求権の対価として無償で3億ドルを出すのではないと日本側は主張 植民地支配を合法だとしていたので、謝罪や賠償の意味を持つ「請求権」の中身をあいまいにしておきたかったということだ 3億ドルの無償支援は「独立祝い金」 これまで外交であいまいにやり過ごした点を、過去にさかのぼって、すべて白日の下にさらしてしまったのも事実だ。それだけに、解決策が見出しにくくなった 日本政府が韓国政府に対応を求め、韓国政府は世論の沈静化を待ち、できることを考える。当分そうするしかなさそうだ
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トランプ大統領(その37)(トランプ暴走に歯止めをかけられるか 「米国の分断」「世界の分断」招いた罪、トランプよりヤバいアメリカ最高裁「保守化」 アメリカ人が本当に恐れているのはこっち、冷泉彰彦氏:中間選挙の意味と今後の政局を考える) [世界情勢]

トランプ大統領については、10月31日に取上げた。中間選挙結果を踏まえた今日は、(その37)(トランプ暴走に歯止めをかけられるか 「米国の分断」「世界の分断」招いた罪、トランプよりヤバいアメリカ最高裁「保守化」 アメリカ人が本当に恐れているのはこっち、冷泉彰彦氏:中間選挙の意味と今後の政局を考える)である。特に、3番目は必読である。

先ずは、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が11月9日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「トランプ暴走に歯止めをかけられるか 「米国の分断」「世界の分断」招いた罪」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/110800087/?P=1
・『米国の中間選挙では、上院は共和党が多数を維持したものの、下院は民主党が8年ぶりに過半数を奪還した。予想された結果とはいえ、選挙の最前線に立ったトランプ大統領の事実上の敗北といえる。 若者や女性の多くは、トランプ大統領にはっきりノーを突きつけた。たしかに「米国の分断」と「世界の分断」を招いた罪は重大だ。トランプ政権は、上下両院の「ねじれ議会」で政権運営がむずかしくなるが、問題はそこにあるのではない。「米国第一主義」を掲げての保護主義、移民排斥など排外主義、パリ協定離脱など反環境政策、そして核開発競争と世界を「新冷戦」の混乱に陥れた「トランプ暴走」に歯止めをかけられるか。それこそがいま問われている』、「トランプ大統領の事実上の敗北」とは反トランプ派らしい筆者なりの評価だ。今日紹介する他の2人は違う評価をしている。
・『3度目のハラハラ  米中間選挙は米国政治の玄人には関心事かもしれないが、世界中がかたずをのんで見守るほどのニュース価値はなかった。事実、前回の投票率は41%と低く、米国民の関心は薄かった。たいてい現政権には厳しめの結果になると相場が決まっていた。それが今回は投票率は47%に跳ね上がり、期日前投票も大幅に増えた。投票の列が予想を超えて伸び、投票時間が延長された州もあった。議会選挙や知事選なのに、トランプ大統領本人の是非を問う審判、「国民投票」の色彩が濃かったためだ。 選挙結果について、トランプ大統領は「素晴らしい成功をおさめた」と自画自賛している。大統領そっくりの「ミニ・トランプ」と呼ばれる層が登場したのが気に入ったようだが、これは明らかにトランプ大統領の敗北である。共和党が上下両院を支配していた体制が、トランプ大統領のせいで崩れたのである。CNNは若者の3分の2は、トランプ大統領に反対し民主党を支持したと報じている。これらの若者こそ投票率向上の主役だった。急増した女性議員の大半は民主党からだった。 この米中間選挙ほど、ハラハラさせられた選挙はなかった。2016年、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票、そして米大統領選挙で2度も「まさか」の結果に世界中が驚愕した。米中間選挙でトランプ政権が上下両院とも勝利するという「まさか」が起きれば、2020年の米大統領選につながることになるとトランプ大統領を勢いづかせていたかもしれない。まさに「3度目のハラハラ」だった』、3度目の「まさか」が起こらなかったのは確かだろう。
・『世界を混乱に陥れた2年  トランプ大統領の2年は「米国の分断」をもたらしただけではない。それは「世界の分断」を招き、あちこちで混乱を引き起こした。だからこそ、世界中がこの米中間選挙に着目したのである。 まず「米国第一主義」を掲げた保護主義である。いきなりオバマ前大統領が主導した環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した。かと思うと、クリントン民主党政権下で成立した北米自由貿易協定(NAFTA)を見直し、米墨加(USMCA)協定に変更した。米国への投資、生産誘導をめざして、数量規制や為替条項を盛り込んだ。自由貿易協定が「管理貿易」協定になってしまった。 鉄鋼、アルミニウムの関税引き上げで世界中を相手に貿易戦争を仕掛けたあとは、2国間交渉に持ち込み、2国間の貿易赤字解消をめざした。2国間の貿易赤字を「損失」ととらえるトランプ大統領は典型的な経済音痴である。なかでも米中の貿易戦争は世界経済を揺るがし始めている。ハイテクの覇権争いが根幹にあり、「経済冷戦」の様相が濃いだけに、米中間選挙の結果にかかわらず、エスカレートしかねない。 移民排斥など排外主義は、「メキシコの壁」建設に表れている。そのメキシコを経由して米国をめざす中米から移民の列「キャラバン」には、メキシコとの国境に米軍を動員して排除する構えである。 オバマ前大統領が先導した地球温暖化防止のためのパリ協定から離脱するとともに、票獲得のため石炭への規制を緩和した。今そこにある「地球の危機」に、あえて反環境政策を貫いている。冷戦終結と核軍縮を導いた歴史的な中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄すると表明して世界を核危機の脅威にさらした。オバマ前大統領が目指した「核兵器なき世界」に逆行する。同時にイランの核合意から離脱し、経済制裁を打ち出して、原油市場を動揺させている』、トランプ大統領の2年間の罪は、その通りだ。
・『「米国外交の継続性」はどこに行ったか  超大国である米国の最大の特徴は、「外交の継続性」にあったはずだ。共和党政権から民主党政権に移ろうと、民主党政権から共和党政権に変わろうと、そこに外交の継続性・一貫性というものがあった。だからこそ、超大国・米国の信認があった。 ところが、トランプ政権はそうした米国のよき伝統を根底から捨てたのである。オバマ前大統領の功績にことごとく冷水を浴びせただけではない。北大西洋条約機構(NATO)を批判して、米欧同盟を揺るがし、国際連合を軽視して国際主義に背を向けた。 トランプ大統領のディール外交には、いったん合意しても、いつ「ちゃぶ台返し」があるかもしれないという不安がつきまとう。これでは、「米国の信認」は失われるばかりである』、ここでも異論はない。
・『2大政党制の矛盾露呈  中国の共産党1党独裁による「国家資本主義」には大きな矛盾がある。その一方で、米国の2大政党制にも矛盾が潜んでいる。米中間選挙で、その矛盾が露呈された。 同じ共和党でも、トランプ大統領にすりより、選挙支援を受けた勢力とトランプ批判を続けた故マケイン議員ら穏健派との間には大きな溝があった。トランプ大統領の事実上の敗北でその溝はさらに深まる可能性がある。 民主党の「分裂」も大きい。オバマ前大統領やヒラリー・クリントン前大統領候補ら主流派と左派のサンダース上院議員の落差は大きい。「民主社会主義者」と名乗って下院選で勝った史上最年少のオカシオコルテス氏ら「プログレッシブ」(急進左派)との落差はさらに広がるだろう。背景にあるのは、世界共通の課題である格差の拡大である。 価値観が多様になるなかで、2大政党制は果たしていつまで米国民の意思を反映できるか。「米国の分断」で、米国政治は重い課題を抱え込んだ』、共和党では、ミニ・トランプが多数当選したので、トランプ大統領の党内の地位は高まったとの見方もある。
・『「ねじれ議会」でも「米国第一」変わらず  米中間選挙の結果を受けて、トランプ主義は変わるのだろうか。下院で民主党が多数派を奪還したことで、まずトランプ陣営のロシア疑惑や税申告問題などが調査の対象になるのは必至である。民主党が弾劾手続きを開始する可能性も消えない。中間選挙の翌日、トランプ大統領は突然、セッションズ司法長官を解任したのも危機感の表れだろう。 トランプ大統領は「ねじれ議会」に対応して民主党の協力を呼び掛けているが、「米国第一主義」などこれまでの路線は変更しない構えである。 予算権限を握る下院では、医療保険制度(オバマケア)の改廃やメキシコ国境の壁建設などは通りにくくなる。トランプ大統領が選挙目当てで打ち出した中間層に対する追加減税などは構想倒れに終わるだろう。その代わりに、外交や通商政策では、これまでのトランプ流を押し通す恐れがある。 大統領令が頻発される可能性もある。とくに下院で多数を占める民主党はもともと管理貿易など保護主義容認の傾向もあるだけに、情勢次第で民主党の同調も考えられる。米中摩擦では、民主党も中国の人権問題をからめて強硬姿勢を取る可能性は否定できない』、「外交や通商政策では、これまでのトランプ流を押し通す恐れがある」というのは容易に想像できることではあるが、やれやれだ。
・『トランプとどう付き合うか  米中間選挙を受けたトランプ政権とどう付き合うかは、今後の日本の国際社会での位置付けを決める。安倍晋三首相との蜜月関係に頼りすぎるのは危険である。 来年始まる物品貿易協定(TAG)では、トランプ政権は自動車に25%の高関税をかけることをちらつかせながら、米墨加協定並みに、「管理貿易」と「為替条項」を得ようとするだろう。対米投資を呼び込む戦略である。これまでの日米通商交渉の決着点だった自主規制はすでに織り込まれているようにみえる。 こうした2国間主義は日本にとって最も避けたいところだ。といって離脱したTPPに復帰するよう米国に求め続けるのは、あまりに芸がない。日本がめざすべきは、このTPPと東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を統合することだ。日本はこの2つのメガFTA(自由貿易協定)にともに参加する唯一の先進主要国であり、扇の要の役割を果たせる。 RCEPは東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国に、日中韓、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国で構成する最大のメガFTAである。TPPよりは自由化度は低いが、成長基盤はずっと広範だ。今後の交渉次第で、自由化度を引き上げるのは可能である。TPPとRCEPが結合し、アジア太平洋に「スーパーFTA」ができれば、米国も参加を考えざるをえなくなるだろう。 それは、世界経済の最大の問題である米中「経済冷戦」を防ぐ道につながるはずだ』、RCEPには中国がいるので、TPPとの結合には困難も予想されるが、面白い考え方だ。
・『2020年は左右ポピュリスト対決か  2020年大統領選に、トランプ大統領は出馬意欲を捨てていないが、米中間選挙結果をみるかぎり、そこには不透明感が漂う。はっきりしているのは、これまでのような共和・民主の中道政治の対決にはならず、左右両極の対決になる可能性が強いという点だ。 中道派の退潮はいまや世界の潮流である。ドイツなど欧州政治ではすでに深刻な問題になっている。2020年の左右対決がポピュリズム(大衆迎合主義)どうしの対決になるなら、超大国・米国の信認は地に落ちることになりかねない』、世界的なポピュリズムの高まりは嘆かわしいが、この流れは当面続くと覚悟せざるを得ないようだ。

次に、在米映像コーディネーターAgentic LLC(米国)代表のジュンコ・グッドイヤー氏が 11月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「トランプよりヤバいアメリカ最高裁「保守化」 アメリカ人が本当に恐れているのはこっち」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/248457
・『トランプ政権発足後、その政権の真価が問われると言われた中間選挙が終わった。結果は周知のとおり、上院は共和党勝利、下院は民主党が多数派を奪還し勝利した。 リベラル派は当然、今回の選挙結果に好意的だ。アメリカの主要メディアのほとんどは、リベラル寄りと言われているが、当然今回も「リベラルの正義が圧勝をもたらした」とか、「トランプ大統領にNOという審判が下った」というような言葉を並べている。彼らが重要性を重んじる多様性を軸に、ミネソタ州、そしてミシガン州で女性のムスリム教徒として初の議会当選を果たしたオマール、タライブ両氏などを取り上げて、「歴史的勝利」に対してお祝いムードだ』、なるほど。
・『報道されるアメリカとその実態は違う  今回の結果により、これから共和党はさまざまな困難を経験していくだろう。来年からの議会には「ねじれ」が生じるし、民主党が下院を支配する流れの中、法案や予算が通りにくくなることは明らかだ。また、民主党は大統領に対し、弾劾を発議する流れが出てくる可能性もある。しかし、だからと言ってトランプ大統領自身が完全に苦境に立ってしまったとは一概には言いにくい。 そもそも下院は奪回したかもしれないが、上院は共和党優位のままだ。また、歴史的にみると中間選挙では例年、現役大統領の政党が議席を減らすことも多いので、この結果だけを見て、トランプ政権にNOが突き付けられたという判断はすべきではないだろう。大統領への弾劾についても、上院を共和党が支配している以上、そこで3分の2の賛成を得ることなど考えにくいため、しょせんそれは実現できないと考えるほうが妥当だ。 その証拠に、トランプ大統領にとっては、この結果は想定内であったとも感じる。現に選挙結果がわかってすぐに「今夜は大成功だった」とツイッターでつぶやいており、今後どんな反撃に出るのかは見ものといった感もある。しかも彼は大統領だ。いざとなれば議会の承認や立法を経ず、直接連邦政府や軍に発令可能な「大統領令」という切り札もある』、トランプ大統領のツイートはまんざら負け惜しみでもなさそうだ。
・『メディアが今回の勝利でリベラル派の正当性と政権への不信報道を展開すればするほど、いつものごとく「リベラルのメディアはフェイクである」と応戦するだけだ。 トランプ大統領の支持率が就任以来、ずっと安定していることも忘れてはいけない。ピューリサーチ研究所の調べによると、トランプ大統領は就任後から支持率40%前後を確実に維持していることがわかる。歴代のほかの大統領のそれに比べると、極端に支持率にアップダウンが少ないのも特徴だ。これは、大統領の支持基盤が、就任時から揺らいでいないことの証明とも言える。 また、共和党内に限っていうと、8月の時点での大統領支持率は84%とかなり高い。トランプ大統領への支持は、票を実際に彼に投じた保守派の間では意外と高いままなのだ』、トランプの不思議な強味を冷静に指摘している。
・『保守派の人たちは偏向報道に憤っている  こうした背景には、日本に住む多くの人が想像つかないほど、アメリカが「キリスト教を中心に動いている」という事情もある。アメリカでは日曜日になると、全人口の40%以上が教会に祈りを捧げに行くということを、どれだけの日本人が知っているだろうか。 あらゆる点で時代の先ゆく先進国の代表のような印象でアメリカを見る人も多いが、実際のアメリカは、驚くほど「オールドファッション」という言葉が似合う国でもある。都市部から30分も車で走ったら、いまだに「古き良きアメリカの伝統」を重んじ、家族単位でせっせと教会に通う人ばかりだ。 そして彼らのほとんどは、保守、あるいは完全に保守でなくとも中道的だ。グローバル企業が多数存在する都会ならまだしも、「リベラルを100%信じる」という人は、郊外に行くほど薄れる。シアトル郊外に暮らす筆者の周囲を見渡しても、リベラルな都会の企業に勤めていても住んでいるのは郊外で、公言はしていないものの、自身は実は保守という人もかなりいる。 彼らは偏向報道のために誤解されていることを、快く思っていないことも多い。「保守は差別主義者で多様性を歓迎しない人たち。田舎者で学がない」とレッテルを張られる不快感から、報道を信じないという人も大勢いる。キリスト教の基本が「汝、隣人を愛せ」なので、社会における弱者支援や、社会還元活動や慈善活動に対して非常に熱心というのが現実だし、リベラルよりも学歴がないわけでもない。メディアが生み出した誤解は本当に多いのだ』、確かに「隠れトランプ派」もかなりいそうだ。
・『しかし、保守への根深い誤解もある中で、確実にメディアの報道が正しい点があるとするなら、保守派の多くが「人工中絶」と「銃規制」には、徹底的に反対しているという点だ。特にキリスト教の教えを大切にしたい人の多くは、人工中絶反対という立場をとる。 人工中絶をめぐっては、1973年にその権利を保証し、中絶を規制する法律を違憲とする「ロー対ウェイド判決」というものが最高裁によって確定されているが、熱心な保守派やキリスト教信者とっては、この最高裁の決定こそ、現状何よりも覆したい最高裁決議のひとつであると言えるのだ』、なるほど。
・『あっという間に保守派だらけの最高裁に  そんな彼らにとって、トランプ大統領は願ってもない存在だったに違いない。なぜなら、就任わずか2年の間に、2人の保守寄り判事を最高裁判所に送り込んだからである。 最高裁判事の存在というのは、アメリカにおいてはある意味、大統領以上に重要なポストだ。最高裁には定年制がなく、大統領を指名できるほか、かつ政治においても重要な役割を担っているからだ。アメリカはそもそも移民で成り立っている多様な国なので、1つの事柄にもさまざまな見解があり、議会で決定することが困難な争点も多数ある。こうした中、三権分立の一角として重要な決定権を持つのが最高裁なわけである。 アメリカの最高裁判事は9人が定員だが、2016年にスカリア判事が亡くなった後は、リベラル4人、保守3人に加え、保守派と言われながらも案件によってどちらにも転ぶケネディ判事の8人で構成されていた。スカリア判事の欠員を埋めるためにトランプ大統領が指名したゴーサッチ氏は敬虔なクリスチャンであり、人工中絶反対派。彼は49歳という若さで、今年4月に最高判事に就任した。 これで、リベラル4人、保守4人、ケネディ判事という構成になったが、7月9日に今度はそのケネディ判事が引退を表明。その後任にトランプ大統領から指名されたのが、レイプ疑惑を報道されたブレット・カバノー氏だったため、アメリカ中は大騒ぎになった。 結局、カバノー氏が判事に就任し、リベラル4人、保守5人となったわけだが、リベラルが頭を抱えるのは、カバノー氏も53歳と若く、ゴーサッチ氏同様、今後20年以上、実質的にアメリカ政治に影響を及ぼす立場に就いたということだ。 ちなみにリベラル判事が多い時代には、リベラル優位な政策が多数認められた。2016年5月に最高裁が合憲とした「同性婚」などは、特にその象徴だろう。しかし、現在の最高判事比率は保守派が一人多い。保守派がこの機に、悲願ともいうべき人工中絶を違憲にする動きに出ることは予測しやすいと言える』、その通りなのかも知れないが、他方で、司法には安定性が求められ、余りに党派色が出ると、国民の信認を失うことにもなりかねない。多数派になった保守派が、この点をどう考えるかも注目点だろう。
・『トランプ大統領の暴走を止められるのは最高裁だけ  トランプ大統領にしても、前回の大統領選挙中から保守へのアピールとして「自分が大統領になったら人工中絶を取り下げる判事を任命する」と公言していたこともあり、2年後の再選への切り札として、彼自身が積極的に中絶合憲を取り下げる動きに出るのではとも見られている。 この動きへの懸念の声が大きい理由は、民主主義が根本から崩れるからだ。そもそもトランプ大統領は大統領令を出しまくり、大事な政策であっても議会との事前打ち合わせや、内容調整をしないことで有名だ。こうした暴走を最終的に止められるのは、最高裁判事だけである。それを止める人がいなくなったら、この国はどうなってしまうのだろう。 現在、リベラル派判事のルース・ギンズバーグ氏が85歳という高齢で、いつ引退してもおかしくないと言われている状況にある。しかもなんとその彼女が、中間選挙後に助骨を3本折るケガをしてしまった。 万一、同氏がこのケガが引き金となりトランプ政権下で引退すれば、次期判事を指名するのはトランプ大統領となる。彼は保守派判事を指名するだろうし、大統領が指名した判事を承認するのは、上院だ。その上院は今回の選挙でも共和党が勝利しており、過半数を占めている(ちなみに最高裁判事承認は、その過半数が必要なだけだ)。ギンズバーク氏の後釜が保守派になった途端、最高裁の判事構成はかつてないほど、保守優位になってしまうのだ。 そんなわけで、ギンズバーグ氏が元気で健康のまま判事を続け、トランプ政権下では引退してほしくないと口にする人は、リベラル派はもとより、中道派の人々の間では非常に多い。冗談のように聞こえるかもしれないが、彼女のケガのニュースが飛び込んだ途端、ソーシャルメディアは、彼女の回復を祈るような投稿があふれかえっていた。政権が変わるよりも怖いのは、民主主義が成り立たなくなることだと、みな、口々に話している。 こうした材料を踏まえて考えると、リベラル派がいくら努力しても、トランプ大統領にとって有利な札が多いのではと思えてしまう。メディアは2年後の大統領選に焦点を切り替えてトランプ大統領の再選を防ごうと躍起になるのだろうが、果たしてそれはうまくいくだろうか。何となく、まだトランプ大統領には追い風が吹いているように思えてならない。個人的にはトランプ氏が次期も大統領に再選するのではと睨んでいる』、さすが米国で生活しているだけあって、深い読みだ。個人的には外れて欲しい予言だが、客観的には当たってしまいそうだ。

第三に、在米作家の冷泉彰彦氏が11月10日付けメールマガジンJMMに掲載した「「中間選挙の意味と今後の政局を考える」 from911/USAレポート」を紹介しよう。
・『11月6日に行われたアメリカの中間選挙は、僅差の選挙区が多く、まだ議席数が確定していませんが、大勢としては、 上院・・・定数100、共和党52議席、民主党46議席、残り2議席 下院・・・定数435、民主党225議席、共和党198議席、残り12議席 ということで大方の予想通りの結果に終わりました。但し、上院での共和党は意外に強かったという印象がある一方で、下院の民主党は予想通り勝ちましたが圧倒的ではありませんでした。 その分析を行う前に、選挙終了後に立て続けに3つの大きな事件が発生しており、選挙結果を合わせて考えると、これからのアメリカの政治や社会については、多難な感じが強まっている、そんな雰囲気を感じます。 まず、その3つの事件ですが、1つ目は、ジェフ・セッションズ司法長官の更迭という事件です。このニュース、セッションズ氏の解雇というのは、それほど大きな問題ではありません。セッションズ氏については、かねてから大統領との確執があり、大統領としては解雇のタイミングを計算していたのは事実のようだからです。今回の中間選挙で上院の過半数を抑えたことで、民主党に閣僚人事を妨害される可能性は少なくなった、そこで堂々と司法長官をクビにした・・・これが表面に浮かんで来るストーリーです。 ところが、その奥にはもう一つ仕掛けがありました。それは、当面職務を行う司法長官代行にセッションズ氏の補佐官であったマシュー・ウィテイカー氏という人物を指名したという点です。このウィテイカー氏というのは、米司法界の中でも極端な「トランプ派」であることで著名な人物です。 何しろ、「ロシア疑惑全体が魔女狩り」「大統領に対する特別検察官の捜査は中止すべき」「国務長官時代に個人アドレスを使用した問題でヒラリーを逮捕すべき」などという放言を繰り返してきた人物だからです。 では、どうして「代行」なのでしょうか? まず、このウィテイカー氏という人物は、余りにも極端な存在です。ですから正式な司法長官に任命しても、上院の承認は難しいと言われています。にも関わらず、「代行」に指名したというのは、まず「民意を得た新議会は、2019年1月3日まで発足しない」中では、「約2ヶ月間は代行を続けることができそう」という「時間稼ぎ」の意味合いがあります。 また、とにかく下院はともかく上院では議席の上積みができた「勝利ムード」の中では、ウィテイカー代行が「相当に一方的な司法行政」を行っても、勢いで押し切れる、そんな計算もあるのでしょう。何よりも、2019年1月3日が来るまでは、下院は共和党多数ですから、民主党の計画している「国政調査権でトランプを追い詰める」ということはできません。その間に、司法省としてどんどん「捜査の手仕舞い」を進めようということも、考えているでしょう。 つまり、この人事は「2019年1月以降の下院民主党への宣戦布告であり、同時に先制攻撃」だということです。下院民主党は、まだ次期議会における人事や方針を固めていませんが、いくら過半数を獲得して弾劾発議が可能になったからといって「トランプ弾劾」にいきなり突き進むことは控える模様です。その代わりに、国政調査権を使い、複数の委員会によって「大統領のロシア疑惑」「過去の確定申告書」「女性問題などのカネの流れ」を暴くとしています。その構えに対する、大統領サイドの回答が「これ」だということです。それにしても、選挙の翌日から「これ」では、何とも先が思いやられます』、ウィテイカー氏を司法長官代行に指名した背景の説明についての深い読みは、さすがと感心した。
・『2つ目はカリフォルニア州ベンチュラ郡で起きた、ダンス・バーでの乱射事件です。 この事件では、強力なアサルトライフルではなく、連写可能な45口径のハンドガン(ピストル)で12名が殺害されるという惨事となりました。事件が起きたのは、LA西部の内陸ですが、丘を越えた南には風光明媚な海岸の街マリブがあり、そのマリブにあるペパーダイン大学の学生の中から多くの犠牲者が出てしまいました。 現場で自殺したと発表されている28歳の乱射犯は、海兵隊の退役軍人で、PTSDに苦しんでいたという報道もありますが、本稿の時点では詳細は不明です。この事件も、このように中間選挙がアメリカの分断を露骨に示した中では、即座に「銃規制への運動」には発展させにくいムードがあります。 3つ目の事件は、RBGことルース・ギンスバーグ最高裁判事が、病院に搬送されたというニュースです。転倒して肋骨を折り、既に治療が済んで退院したということですが、このニュースは、民主党系の人々には「一瞬キモを冷やす」ような事件でした。何しろ、10月にブレット・カバナーという保守派判事が送り込まれている中で、最高裁は5対4で保守派が多数になっています。 これに加えて、RBG女史が辞任ということになれば、後任としてトランプ大統領は更に保守派を送り込むことになり、そうなると最高裁は6対3という極めてアンバランスな状態になります。そうした状態になれば、保守陣営としては「悲願」である「妊娠中絶の違憲化」と「同性婚の違憲化」を進めるでしょう。 ロバーツ長官などは、本人としては保守派でもさすがに長期的な歴史の審判を意識して調整を図るでしょうが、6対3という票差の中では、保守派としては「悲願の実現」を熱望するようになり、そこに大統領の再選への戦略が絡むようですと、それこそ国家分裂のような状態にもなりかねません。 いずれにしても、今回の選挙は改めて国の分裂ということを露呈した結果に終わりました。ここで、改めて、選挙結果について私なりの分析をしてみたいと思います』、最高裁のロバーツ長官などが慎重に構えても、「6対3という票差の中では、保守派としては「悲願の実現」を熱望するようになり・・・国家分裂のような状態にもなりかねません」というのは、興味深い展開になりそうだ。
・『重要なのは、2016年の選挙との相違点です。トランプと民主党が世界観のレベルでの激しい対立を演じたということでは、今回の2018年と2016年は似ています。真正面からの衝突ということでは、変わりません。ですが、共和党の側も、民主党の側も大きな違いがあります。 まず共和党の場合ですが、2016年の場合は「完全な団結」は達成できていませんでした。共和党の本流に連なる3つの軸、すなわち東北部などを中心とした「経済合理性からの支持」、中西部を中心とした「宗教保守派の支持」、そしてこれに重なるような形で乗っかっている「軍事タカ派」、2016年の時点でこの3つは「ドナルド・トランプ」という存在には懐疑的でした。 財界的な視点からは「保護貿易や年金保証など、トランプの経済政策は左派というよりクラシックなリベラル」という反発がありましたし、宗教保守派にすれば「何回も結婚と離婚を繰り返した、浮ついたイメージの芸能人」への不信がありました。何よりも、軍事タカ派にしてみれば「自由と民主主義という旗をバカにしつつ、紛争地域への介入を拒否するという究極の孤立主義」は同調不能だったのです。 ですが、今回の選挙はその共和党を団結させました。契機となったのは、2017年末に実現した究極と言っていいような減税です。法人税も個人所得税も大きく下げられたことで、これは共和党の小さな政府論に加えて、税への忌避感の強い共和党支持者の共感を得たわけです。その上に、ダラダラと続く株価の上昇もありました。 更に大きく保守層の団結を実現したのは、カバナー判事指名という問題です。この問題では、図らずも「METOO 運動」とシンクロしかねないようなスキャンダルが出て、民主党が勢いづくという局面もあったのですが、判事自身も含めた正面突破作戦という「実戦に打って出る」ことで、上院承認を勝ち取ったのでした。その達成感は大きく、また念願の「同性婚禁止・中絶禁止」への「希望」が生まれた宗教保守派は「トランプは使える」という意味での忠誠を誓うに至ったのです。 その意味で、2016年の大統領選と比較すると、共和党の団結は強固となり、集票能力は向上したし、士気も高かったということは言えるでしょう。そうしたベースの上に、大統領自身は「移民キャラバンには軍を出動させる」式の一種ヘイトとしかいいようのないポピュリズム作戦で、そもそもは無関心そうともなりかねない「現状不満層」を投票所に向かわせたのでした』、共和党の3派が団結したとの分析は、さすが鋭く、大いに参考になった。
・『一方の民主党はどうかというと、こちらも大いに士気は上がっていました。まず、2016年の段階では、ヒラリーとサンダースの熾烈な予備選の「怨念」が残っていました。特に、ミレニアル世代には「どう考えてもヒラリーはタカ派で財界フレンドリーの過去世代」というイメージから結果的に大量の棄権を出していたと考えられます。結果的に、ヒラリーは民主党の基礎票を完全に投票所に送り込むことができず敗北したとも言えます。 その2016年と比較すると、民主党もまた団結を誇っていました。確かに、サンダース派の中からは、多くの予備選を取って本選に進み、最終的に議席を得た候補も多いですし、その中にはサンダース同様に「民主的な社会主義者」であることを自他ともに認める政治家も増えました。その意味で、党内の分裂は相変わらずですし、全体の平均値はやや過剰なほどに左シフトしているのも事実です。そうではあるのですが、少なくとも2016年と比較すると、圧倒的な団結と組織力を誇る選挙が、民主党の場合は出来たと言えます』、民主党は、「党内の分裂は相変わらず」だが、「圧倒的な団結と組織力を誇る選挙が」できたのは、トランプ憎しだったのだろうか。
・『では、当面の政局はどのように推移するのでしょうか? とりあえず「選挙という勝ち負けの世界」は終わりました。ですから、選挙に勝つため、あるいは負けないために「世論の感情面」に瞬間的に刺激を与える政治は、不要なはずです。ということは、感情論前提の政治から、少しは常識的な政治に戻るのでしょうか? 仮にそうであれば、少なくとも次の選挙までの2年間は「落ち着いて成果を出すようにする」スタイルに変わるはずです。ですが、例えば中間選挙の翌日に、セッションズ更迭、トランプ派を司法長官代行にという無理筋を通してきた、これはどういうことなのでしょう? 恐らく、トランプ大統領の念頭には「日々が斬るか斬られるかの戦い」という感覚があるのだと思います。戦っている敵は、民主党であり、今は静かになった共和党の本流かもしれませんが、敵が誰かという以前に、「2つのもの」と戦っているのだと思われます。1つは、一連のスキャンダルです。ロシアとの癒着、女性たちへの説明のつかない口止め料支払いの数々、そして父親以来の脱税疑惑・・・そうした疑惑について、全く潔白であれば何も恐れる必要はないはずですが、何かを抱えていて摘発を恐れているのかもしれません。強引な司法長官代行人事には、単なる政治的な力比べ以上の何かが感じられるからです』、「一連のスキャンダル」との戦いは、トランプにとっては確かに大問題だろう。
・『もう1つ大統領が戦っているのは経済、とりわけ株価と景気だと思います。今回の選挙では経済問題は前面に出ませんでした。感情論に任せた移民ヘイトなどに集中できたのは、景気が好調だからです。ですが、仮にこのあと、深刻な株価の調整があり、バブルの崩壊のような流れになって景気や雇用まで低迷するようでは、2020年の再選は遠のきます。そのことは大統領はよく分かっていると思います』、こちらはさらに手強そうだ。
・『ということは、今後の「トランプ政治の方向性」ということでは、一連の疑惑に関しては手段を選ばない方法で、摘発や弾劾を潰すということになると思います。もしも、少しでも危険を感じたら、感情論政治をエスカレートさせて、自分の支持者をカッカさせるでしょう。そうなれば、摘発や弾劾の動きは党利党略だということになり、互角の戦いが可能だからです。その限りにおいて、ヘイトなどを含む感情論政治は今後も激しい形で続いて行くのだと思います』、そういう逃げ道があったとは、初めて知った。
・『一方で、株価と景気には今後非常に敏感になることが予想されます。すでに、市場は乱高下の気配が続いていますし、原油も下がってきました。景気の腰折れという可能性は、具体的に意識されるようになっています。ということは、恐らくは中国との通商交渉は進むのではないかと思います。 いずれにしても、「分断を煽る感情論の政治」は今後も激しさを増す一方で、景気には敏感にならざるを得ない、そのようなマトリックスの中で、今後のトランプ政権は推移して行くように思われます』、なるほど大いに参考になる見方だ。
・『具体的には、下院民主党では、弾劾発議は当面見送る動きとなっています。但し、監査委員会をフル稼働させて、政権への捜査を行う可能性が示されています。ここでの力比べは相当なエネルギーを双方が使うことになると思います。 その一方で、インフラ整備計画を前面に出して、議会民主党との協調を図るという観測もあります。景気が政治の生命線ということがあり、仮に公約通りインフラ整備をやるのであれば、民主党の政策と重なる部分があるからです。 もう一つ、トランプ大統領が抱える「恐怖」のことを指摘しなくてはなりません。 それは、今回の選挙で「米国の政治を根本から覆しかねない変化」が見られたということです。それはテキサス州における民主党票の躍進です。最終的には共和党現職のテッド・クルーズ議員に僅かに及ばなかったものの、ビト・オルーケ候補の善戦は、全国に鮮烈な印象を与えました。同候補は、まるで「敢闘賞」扱いで、依然として「2020年の民主党大統領候補として有力」といわれています。 では、どうしてオルーケ氏はそこまで評価されているのでしょうか? イケメンで、起業家、政策はサンダース派に近い左派で、ミレニアル世代の共感を獲得・・・更にはオルーケ効果で、テキサスの下院選挙区では3議席ぐらい取った・・・そんなことが言われていますが、それだけではありません。テキサス全州の選挙で、単純票数で共和党に肉薄した、そのことが非常に重たい意味を持つからです。 今回の上下両院選挙ですが、上院は一州2議席(改選は普通その中の1議席)で人口比も、一票の格差も関係ありません。一方の下院は、完全に小選挙区制です。ところが、2020年の大統領選挙というのは、「選挙人数」の獲得ゲームとなっています。その選挙人というのは、国勢調査の人口比で決められ、人口の多い州は選挙人も多い制度となっています。ただし、その選挙人数は「その州で勝った候補が基本的には総取り」というルールです。 現代のアメリカ大統領選では、保守州は数は多いのですが人口が少ないので選挙人も少ない一方で、リベラル州はカリフォルニア、ニューヨークなど人口が多く選挙人が多いのですが、州の数としては比較的少ないわけです。そこで、両党の基盤は拮抗しています。 ですから、各回の大統領選の結果を左右するのは「スイング・ステート」つまり右に行ったり左に行ったりする州を「どっちが取るのか?」という戦いになります。要するに、フロリダとペンシルベニア、オハイオを取れば勝てるというわけです。2016年はその典型的なパターンでした。 問題はテキサスです。テキサスは大州で、選挙人数は538中の38もあります。 そして、テキサスは保守州ですから基本的に共和党が取ってきました。ですが、この38が民主党に行ってしまうということになれば、これは大変です。共和党の勝ち目は薄くなってきます。選挙人の38というのは、ペンシルベニアとオハイオを足した数、要するに途方もない数です。 オルーケ候補は、そのテキサスで左派でありながら、全州で50.9%対48.3%という善戦を見せたというのは、これは2020年の大統領選を考えると極めて重たいというわけです。ですから、多くの評論家が「オルーケ善戦」とか「依然として有力な大統領候補」と言い続けているわけです。 勿論、依然としてテキサスには岩盤のような保守票があります。郡によっては、共和党95%で民主党5%というような地域もありました。ですが、2020年のこの州の戦いは恐らく大統領選の全体を左右するに違いありません。 ちなみにテキサスの票ですが、2014(中間選挙、上院選)総数464万、共和286万(当)、民主160万  2016(大統領選)総数897万、共和469万(当)、民主388万 2018(中間選挙、上院選)総数833万、共和424万(当)、民主402万 となっています。今後も、ダラス=ヒューストン回廊を中心に、どんどんニューエコノミーが拡大して行くテキサスでは、全国から民主党支持者が流入してくるでしょうし、経済が強くなれば「トランプ流の感情論」は通用しなくなります。これからの2年間、テキサスの社会動向には注目していかなくてはならないでしょう。いずれにしても、今回の中間選挙はアメリカの歴史にとって大きな意味を持ちそうです』、大きなカギになるテキサスの社会動向は大いに注目したい。
・『最後に通商や安全保障における日米関係ですが、以上申し述べたように、大統領の政治姿勢が「日々が感情論を煽る戦い」であると同時に「株価と景気には神経質」になるということを念頭に入れて行くべきと思います。ということは、過去2年間と全く同様に「緊張感」を持ちつつ、時にはG7諸国と、時には中国、時には欧州などと連携しながら、時には、対イラン政策などでアメリカとの距離を厳密に調整しながら進む、ということでは良くもならないし、悪くもならない、そう考えておく必要があると思われます』、「アメリカとの距離を厳密に調整しながら進む」道を採らざるを得ないというのは、うんざりだが、しょうがないのだろう。それにしても、極めて参考になる分析だった。
タグ:民主党 東洋経済オンライン 共和党 日経ビジネスオンライン 冷泉彰彦 トランプ大統領 岡部 直明 JMM (その37)(トランプ暴走に歯止めをかけられるか 「米国の分断」「世界の分断」招いた罪、トランプよりヤバいアメリカ最高裁「保守化」 アメリカ人が本当に恐れているのはこっち、冷泉彰彦氏:中間選挙の意味と今後の政局を考える) 「トランプ暴走に歯止めをかけられるか 「米国の分断」「世界の分断」招いた罪」 トランプ大統領の事実上の敗北 世界を混乱に陥れた2年 「米国外交の継続性」はどこに行ったか 2大政党制の矛盾露呈 「ねじれ議会」でも「米国第一」変わらず 日本がめざすべきは、このTPPと東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を統合することだ 2020年は左右ポピュリスト対決か ジュンコ・グッドイヤー 「トランプよりヤバいアメリカ最高裁「保守化」 アメリカ人が本当に恐れているのはこっち」 報道されるアメリカとその実態は違う アメリカの主要メディアのほとんどは、リベラル寄り 「今夜は大成功だった」とツイッターでつぶやいており リベラルのメディアはフェイクである」と応戦するだけだ 保守派の人たちは偏向報道に憤っている アメリカが「キリスト教を中心に動いている」 全人口の40%以上が教会に祈りを捧げに行く 「オールドファッション」という言葉が似合う国 「古き良きアメリカの伝統」を重んじ、家族単位でせっせと教会に通う人ばかり 保守派の多くが「人工中絶」と「銃規制」には、徹底的に反対 「ロー対ウェイド判決」 あっという間に保守派だらけの最高裁に 保守派がこの機に、悲願ともいうべき人工中絶を違憲にする動きに出ることは予測しやすいと言える トランプ大統領の暴走を止められるのは最高裁だけ リベラル派判事のルース・ギンズバーグ氏が85歳という高齢 助骨を3本折るケガ まだトランプ大統領には追い風が吹いている 個人的にはトランプ氏が次期も大統領に再選するのではと睨んでいる 「「中間選挙の意味と今後の政局を考える」 from911/USAレポート」 選挙終了後に立て続けに3つの大きな事件が発生 1つ目は、ジェフ・セッションズ司法長官の更迭 司法長官代行 マシュー・ウィテイカー氏という人物を指名 極端な「トランプ派」 「民意を得た新議会は、2019年1月3日まで発足しない」中では、「約2ヶ月間は代行を続けることができそう」という「時間稼ぎ」の意味合いがあります 上院では議席の上積みができた「勝利ムード」の中では、ウィテイカー代行が「相当に一方的な司法行政」を行っても、勢いで押し切れる 下院民主党 「トランプ弾劾」にいきなり突き進むことは控える模様 その代わりに、国政調査権を使い、複数の委員会によって「大統領のロシア疑惑」「過去の確定申告書」「女性問題などのカネの流れ」を暴くとしています 2つ目はカリフォルニア州ベンチュラ郡で起きた、ダンス・バーでの乱射事件 3つ目の事件は、RBGことルース・ギンスバーグ最高裁判事が、病院に搬送されたというニュースです 後任としてトランプ大統領は更に保守派を送り込むことになり、そうなると最高裁は6対3という極めてアンバランスな状態 保守陣営としては「悲願」である「妊娠中絶の違憲化」と「同性婚の違憲化」を進めるでしょう 2016年の選挙との相違点 2016年の場合は「完全な団結」は達成できていませんでした 東北部などを中心とした「経済合理性からの支持」 中西部を中心とした「宗教保守派の支持」 これに重なるような形で乗っかっている「軍事タカ派」 今回の選挙はその共和党を団結させました 契機となったのは、2017年末に実現した究極と言っていいような減税 共和党の団結は強固となり、集票能力は向上したし、士気も高かった 党内の分裂は相変わらずですし、全体の平均値はやや過剰なほどに左シフトしているのも事実です そうではあるのですが、少なくとも2016年と比較すると、圧倒的な団結と組織力を誇る選挙が、民主党の場合は出来たと言えます 当面の政局 トランプ大統領の念頭には「日々が斬るか斬られるかの戦い」という感覚がある 「2つのもの」と戦っている 1つは、一連のスキャンダルです。ロシアとの癒着、女性たちへの説明のつかない口止め料支払いの数々、そして父親以来の脱税疑惑・・・ もう1つ大統領が戦っているのは経済、とりわけ株価と景気 少しでも危険を感じたら、感情論政治をエスカレートさせて、自分の支持者をカッカさせるでしょう。そうなれば、摘発や弾劾の動きは党利党略だということになり、互角の戦いが可能だからです 「分断を煽る感情論の政治」は今後も激しさを増す一方で、景気には敏感にならざるを得ない、そのようなマトリックスの中で、今後のトランプ政権は推移 下院民主党では、弾劾発議は当面見送る動き 監査委員会をフル稼働させて、政権への捜査を行う可能性 インフラ整備計画を前面に出して、議会民主党との協調を図るという観測も トランプ大統領が抱える「恐怖」 「米国の政治を根本から覆しかねない変化」が見られた テキサス州における民主党票の躍進 テキサス全州の選挙で、単純票数で共和党に肉薄した、そのことが非常に重たい意味を持つ テキサスは大州で、選挙人数は538中の38もあります。 そして、テキサスは保守州ですから基本的に共和党が取ってきました。ですが、この38が民主党に行ってしまうということになれば、これは大変です 通商や安全保障における日米関係 過去2年間と全く同様に「緊張感」を持ちつつ、時にはG7諸国と、時には中国、時には欧州などと連携しながら、時には、対イラン政策などでアメリカとの距離を厳密に調整しながら進む、ということでは良くもならないし、悪くもならない、そう考えておく必要
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今日は更新を休むので、明日 金曜日にご期待を!

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金融関連の詐欺的事件(その6)(追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~、スルガ銀 パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、10月1日に取上げた。今日は、(その6)(追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~、スルガ銀 パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?)である。

先ずは、10月10日付けNHKクローズアップ現代+「追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4190/
・『シェアハウスへの投資トラブルで表面化したスルガ銀行問題。先月、第三者委員会は、営業の暴走や審査の機能不全、ずさんな経営管理体制が不正を拡大させたと断じる報告書をまとめた。元行員や不動産業者への独自取材では、融資条件に到底満たない人々の資産や年収のデータを偽装していた生々しい実態も見えてきた。「優良銀行」とされてきたスルガ銀行が、なぜ不正融資に走ったのか、その軌跡を時代背景を交えてお伝えする』、多面的に捉えているので、全貌把握にはもってこいである。
・『投資話の裏で…驚きの不正 スルガ銀行で何が?手口の詳細  個人向けの不動産融資で、数々の不正が明らかになったスルガ銀行。取材に応じた元行員は、目先の利益を優先するあまりにルールを逸脱して、強引な融資を行っていたと語りました。 スルガ銀行の元行員(審査部門)「何が何でも、目をつむってでも(融資を)実行する形を作れという指示が出て。もしくは、そうせざるを得ないような状況になって、恐怖政治的な手法で行員を管理していくとか、組織を運営していくとか、そういった部分が全面的に出てしまっていた。」 この問題を調査した第三者委員会の報告書です。通帳のコピーや契約書などの書類を偽装していたことが明らかになりました。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者です。行員に頼まれ、通帳の預金残高を多く見せる偽装を行っていたと言います。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者「7とカンマをコピーして、こういう感じで持ってくる。これだけで残高は730万いくつ。」 不正はどう行われていたのか。舞台は、シェアハウスなどの個人向けの投資用不動産でした。大手IT企業に勤めながら不動産投資を始めた奥山一郎さん(仮名)。スルガ銀行から1億6,000万円の融資を受け、今年(2018年)4月、このシェアハウスのオーナーになりました。安定した収益が得られるという誘い文句でしたが、想定が崩れ、多額の借金返済に追われています。 シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)「資金的にけちっているので、(家具は)自分で1個ずつ入れるしかない状況。」 奥山さんのシェアハウスは、広さ4畳の部屋が15あります。しかし、そのうち9つが空室のままです。現在の家賃収入は合わせて月15万円余り。一方、銀行への返済額は64万円。毎月50万円近くの赤字が出ているのです。経費を少しでも抑えるため、週末にはみずから物件の清掃や備品管理を行っています。 シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)
「なんでこんなことをやっているのかなと思います。新築でこの入居率の状況ですので、それが今後もっと悪い状況にしかならないので、不安だらけ。」 奥山さんは、去年(2017年)3月、不動産販売会社からシェアハウスの購入を持ちかけられました。自己資金がゼロでも、全額、銀行から融資を受けられる。さらに、空室がどれだけ出ても毎月およそ90万円の家賃収入を保証。その収入があれば、銀行に返済しても手元に15万円残るという触れ込みでした。 シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)「売り込みに来た販売会社は、あやしいなと思いました。私自身がそれだけの金額を借りられるとは思えなかったので、ほんまかいなと。」 半信半疑だった奥山さんに対し、1か月後、不動産会社が連れてきたのが、スルガ銀行の行員でした。その行員は、奥山さんに次のように話したと言います。“スルガ銀行は、個人向けの融資にフォーカスしてやっているので、この物件に関しては、ちゃんと融資をすることができます。物件の入居率に関しては、今後も私たちが定期的に見ていくので大丈夫です” シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)「銀行も貸し倒れがあると困るので、物件価格とかを見た上で審査しているんだろうなと。その銀行が『満額を出しますよ』という話なので、もうこれは大丈夫なんだろうと思いました。」 ところが、スルガ銀行はこうした融資の過程で、本来守るべきルールを逸脱していました。スルガ銀行では顧客の返済能力を確かめるため、物件価格の1割、1億円の場合は1,000万円、自己資金があるか確認するルールが存在していました。 しかし、自己資金が足りない場合、不動産業者が通帳のコピーを改ざん。スルガ銀行は改ざんを指示したり、黙認したりしていました。こうした不正によってルールが骨抜きにされ、ずさんな融資が行われていたのです。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者は、不正な資料をもとにした融資が当たり前になっていたと言います。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者「銀行も、もうやり方を知っている。不正は不正だけど、不正という認識よりは、(銀行と客との)橋渡しというイメージが強いです。」 奥山さんの通帳のコピーも改ざんされていました。左が本物の記録。右が銀行が保管していた改ざんされた記録。物件価格の1割、1,600万円を超えるように2,200万円に預金残高が改ざんされていました』、不動産会社が連れてきスルガ銀行の行員に、大丈夫と言われれば、一般の人は信じてしまうのも無理はない。また、通常は自行預金であれば、オンライン端末でチェックするが、当然のことが行われてなかったようだ。
・『行員は、改ざんされたコピーを原本と違いないとして印鑑を押していました。さらに、行員が不動産業者に改ざんを具体的に依頼しているケースもありました。「エビ(=エビデンス)」とは、自己資金の確認書類。行員が通帳の残高を5,700万円に改ざんしてほしいと業者に頼んでいます。 スルガ銀行と取り引きがあった不動産業者「ある程度、改ざんを黙認してもらったり指示してもらったり、お互い(融資の)承認を取りたいという目標に向かって、一緒に動いているような状況でした。」 スルガ銀行は、金融庁の行政処分を受けて開いた会見で、少なくとも1,546件の不正が行われていたと明らかにしました』、ここまでくると、銀行も共同正犯である。
・『なぜ投資用不動産融資で… 驚きの不正とパワハラの実態  スルガ銀行は静岡県で123年の歴史を持ち、創業以来、地域経済の発展に貢献してきました。なぜ、信用が第一の銀行が不正がまん延する組織になっていったのか・・・2000年以降、住宅ローンなどの個人向けの融資に特化していくようになります。しかし、銀行どうしの競争が次第に激化し、通常の住宅ローンでは利益を稼ぎにくくなっていきます。そこで乗り出したのが、個人向けの投資用不動産融資でした。その額は2008年度から3倍以上、4,000億円近くに急増。新規の融資額全体の8割を占めるまでになりました。 その結果、スルガ銀行は5年連続で過去最高益を更新。“地銀の優等生”とも言われるようになりました。しかし、好業績を維持してきた裏で不正が広がっていたのです。 第三者委員会は、5年ほど前から不正が一気に広がったとして、その背景に営業部門の暴走があったと指摘しています。銀行が当初設定した融資額の目標を、営業部門の幹部が増収増益を続けようと大幅に引き上げていました。ストレッチ目標と呼ばれた非現実的なノルマ。現場の営業マンは苦しむことになりました。ノルマ達成のため、上司から部下へのパワハラが横行していたことも第三者委員会の聞き取り調査から明らかになりました。 第三者委員会の聞き取りより“上司の机の前に起立し、どう喝される。机を殴る、蹴る。持っていったりん議書を破られて投げつけられる。数字ができなかった場合に、ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやると言われた”』、まるで「ブラック企業」そのものだ。
・『過度なノルマによって稼ぎ出された収益に依存するようになっていったスルガ銀行。営業部門の暴走を止めるべき審査部門も機能しなくなっていました。 スルガ銀行の元行員(審査部門)「(営業部門は)審査部に対して完全に上から目線で、貴様ぐずぐず言っていないで、さっさと(印鑑を)押せ。ふざけたつまんねえことばかり言っているんじゃねえという感じの口調で、それで融資が実行してしまわれるということは、よく目にしました。」 経営陣も現場の問題から目を背けていました。3年前、スルガ銀行は投資用のシェアハウスを調査し、入居率が推計5割にとどまっていることを把握。しかし、その情報は適切に共有されず、融資の拡大に歯止めをかけられませんでした。今年4月、融資の取り扱いが最も多かったシェアハウス運営会社スマートデイズが破綻。そのことで、個人向けの投資用不動産を巡る不正があらわになったのです』、3年前に投資用のシェアハウスを調査し、入居率が推計5割にとどまっていることを把握していたが、「その情報は適切に共有されず、融資の拡大に歯止めをかけられませんでした」というのは同行の体質からは当然だろう。
・『スマートデイズの破綻により、当初、約束されていた家賃保証も受けられなくなった奥山さん。1億6,000万円の融資をどう返済するのか、めども立たず、追い詰められています。不動産投資を始めたのは、家族のためでした。40代になってから授かった2人の子どもたちに、少しでも財産になるものを残せたらと思ったのです。奥山さんは、投資に失敗したと初めて妻に告げたときのことを、今でも忘れることができないと言います。 シェアハウスのオーナー 奥山一郎さん(仮名)「恐らく、すごく心配がるか、ヒステリックになるかなと思ったんですけど、僕がかなりうろたえていたんだと思います。(妻は)力強く『まず物件を見に行こう』と。『まず物件を見に行って、回す方法を考えよう』と言ってくれました。(妻は)ずっと内職みたいなやつを見つけて、昼の時間にやっています。そういうのを思うと、申し訳ないと思っています。」 オーナーを支援 加藤博太郎弁護士「最初からオーナーをだますようなスキームが、スルガ銀行を含めて作られていたことを考えると、普通の投資被害、投資をして損をした事案とは違うと思っている。(スルガ銀行には)金利の減免を含めて、オーナーにしっかり向き合って頂いて、オーナーが破綻しなくていいように一緒に考えて頂きたい。」』、初めの部分にある「現在の家賃収入は合わせて月15万円余り。一方、銀行への返済額は64万円。毎月50万円近くの赤字が出ている」、というのでは、銀行が仮に返済猶予したとしても、焼石に水だ。返済減免が必要だろう。
・『追跡!スルガ銀行問題 驚きの不正はなぜ?  武田:スルガ銀行は今回、6か月の一部業務停止という行政処分を受けました。銀行としては5年ぶりの非常に厳しい処分です。スルガ銀行は専門の部署を設けて、オーナーたちに対応していくとしています。 鎌倉:今回、第三者委員会が指摘した不正や不適切な行為は、書類の偽装や業者からの接待など、実に多種多様な形でまん延していました。こうした不正の原因について、第三者委員会は主に3つ指摘しています。まず1つ目、営業現場の暴走です。聞き取り調査では、釣り堀に魚が10匹いないのに、10匹とってこいと言われる状況で、その結果、不正が全くない案件など全体の1%あったかどうかと答える行員もいたんです。次に、審査の機能不全です。それを象徴するのが、審査承認率99%という数字です。つまり、営業部門が挙げてきた融資のほとんどすべてが審査を通っていた状況なんです。営業部門の圧力で審査の独立性が失われ、チェック機能が働いていませんでした。 武田:そして3つ目は、ずさんな経営管理体制です。経営陣は現場の不正を見過ごし、営業現場の暴走を許しており、これが無責任だと断じています。これについて第三者委員会の委員長に直接聞きました。 武田「営業現場の暴走、止められない経営層。構図を目の当たりにしてどう感じたか?」 第三者委員会 委員長 中村直人弁護士「営業現場の本部長以下が、いい数字を作って、会長、社長、副社長に持っていって、褒めてもらいたい。悪い情報を絶対に持っていってはいけないと自制をしている。経営層は現場の悪いことについて『報告を受けない』『知らない』という形になって、現場側が暴走し始めるという構図。」 武田「同じ会社で、現場の暴走を感じることはなかったのか?」 第三者委員会 委員長 中村直人弁護士「雲の上で下界の汚いことはまったく知らずに、数字だけを享受している。我々からすると経営陣はけしからん。」』、経営陣が営業現場の実態を一切見ようともしない組織は、スルガ銀行だけでなく、最近の大企業の不祥事でも多く見られるようだ。
・『積極的な融資を背景に… 高まる不動産投資熱  鎌倉:今回の問題が起きた背景として、ここ数年の個人の不動産投資熱の高まりがあります。こちらは、国内の銀行全体の個人向けの投資用不動産への融資残高、その推移です。ここ数年、積極的に銀行は融資をしてきたことが分かります。しかし、今回の問題を受けて、金融機関は融資に慎重になり始めているんです。 武田:そこで不動産投資家たちに、どんな変化が起きているのか密着しました。  それでも冷めない投資熱 “不動産で稼ぎたい”ワケ  先月(9月)末、不動産投資をするサラリーマンや主婦たちが集まる情報交換会が開かれていました。参加していたのは20代から50代のおよそ20人・・・会を主催する主婦の杉村八千代さんです。 マンションオーナー 杉村八千代さん「今、スルガ銀行のおかげで銀行の窓口がとても狭くなりました。銀行開拓も、不動産を探すことも諦めず、負けずにがんばっていきましょう。」 銀行が個人への融資に慎重な姿勢を見せ始める中、なんとか投資を続けていきたいと思っています。杉村さんが不動産投資を始めたのは、今から3年前のことでした・・・“満室”にこだわらないと、賃貸事業として成り立たない。」 投資を始める前、杉村さんは生活のゆとりがなかったと言います。自動車部品工場に勤める夫の年収は500万円ほど。家計を支えようと清掃などのパートをしていました。老後のために資産を増やしたいと思っていましたが、預貯金だけではとても安心できなかったと言います。 マンションオーナー 杉村八千代さん「将来が豊かになるイメージが全然わかないと思う。前は定期貯金や積み立てで一生懸命増やしてきていたが、(金利)0.1%とかになってしまっているので、それで老後のために備えようというのには厳しいと思う。」 不動産投資が人気を集めていることを雑誌などで知り、自分も投資に乗り出すことを決めました。杉村さんは、2億3,500万円で3棟のマンションを購入。その全額を地元の信用金庫に融資してもらい、頭金なしで買うことができました。3棟がすべて満室になれば、毎月の家賃収入は合わせて144万円。そこからローンの返済や諸経費86万円余りを差し引くと、杉村さんの手元には毎月57万円余り残る計算です。 マンションオーナー 杉村八千代さん「大きなお金が動きますけれども、残るお金も大きいので。運用していけば通帳にどんどん貯まっていくという実感を覚えると、これでしっかり満室にしていけば(運用)できるんだなと思った。」 杉村さんの最終的な目標は、マンションを6棟に増やすこと。部屋が埋まらないリスクに備えるためには、部屋数を増やすことが必要だと考えているからです。 マンションオーナー 杉村八千代さん「走り出したら不動産業は、どこかで立ち止まるより、ずっと(不動産を)持っている限り続いていく仕事だと思う。」』、なかには、こうした成功例もあるだろうが、それとて今後、入居率が低下すれば、失敗例になりかねない筈だ。
・『スルガ銀行の問題が起きたあと、投資の計画に影響を受けた人もいます。アパートへの投資を考えていた男性です。2月、男性はある地方銀行に、およそ1億円の融資を申し込み、金利1.8%で仮審査が通りました。しかし、スルガ銀行の問題が発覚したあと、融資は取りやめになりました。別の地方銀行に融資を申し込んだところ、金利は当初よりも高い2.55%。返済額は1,600万円以上増えることになりました。返済額が増えても一定の利益は確保できると考え、投資に踏み切りました。 アパートに投資した男性「絶対(お金は)増えないから、投資を考えなければいけない。多少、痛手を負ったけれども、アウトかセーフかと言えば、なんとかセーフの方に滑り込んだかなと思っている。」 武田:超低金利の中、不動産投資に乗り出す人たちが後を絶たないという現状について、不動産投資セミナーの主催者は、こう話しています。 武蔵コーポレーション 大谷義武社長「『将来への不安』が最大の要因。『将来不安』が無ければ、ここまでの不動産投資市場は形成されていない。その不安が、ますます加速している。」』、金利が当初のものより高くなっても、投資したこの男性は、「なんとかセーフの方に滑り込んだかなと思っている」としているが、これも先行きは疑問だ。
・『追跡!スルガ銀行問題 低金利に苦しむ地銀  鎌倉:一方、金融機関も長引く低金利によって苦境に立たされています。全国の地方銀行106行のうち54行が昨年度、融資などの本業で赤字になっているんです。 武田:こうした状況の中、金融庁は、高い利益を上げてきたスルガ銀行のビジネスモデルに対して、一定の評価をしてきました。しかし、不正のまん延は見抜けなかった形で、監督の在り方も問われています。金融庁の責任をどう考えるのか、専門家に聞きました。 追跡!スルガ銀行問題 金融庁の責任は  ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次チーフエコノミスト「スルガ銀行だけではなくて、地方銀行が置かれた環境はどこも同じ。『他にもあるんじゃないか』と多くの国民、金融機関も思っている。金融行政が急いでやらないといけないのは、不正融資の問題がスルガ銀行だけの問題なのか、他の銀行、企業を含めて、類似のことが起きていないか識別、判断することがいちばん急がれるべき。」 鎌倉:金融庁は、他の銀行でも投資用不動産向け融資が適切に行われているか、実態の把握を急ぐ方針を示しています。 武田:無理な融資を続けてきたスルガ銀行。その結果、多額の負債に苦しむ投資家たちの姿。それは、かつてのバブル時代をほうふつとさせるものでした。スルガ銀行の問題から、私たちは今度こそ、教訓を得なければならない。強く思います』、不正融資はスルガ銀行だけでなく、他の地銀や、さらには西武信金にまで広がりをみせているようだ。スルガ銀行は、4~9月赤字900億円となり、 旧経営陣を提訴するようだが、赤字が今後大きくなる懸念もあり、当面、要注意だ。

次に、健康社会学者の河合 薫氏が10月2日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「スルガ銀、パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/100100183/?P=1
・『――結局、これらの不正行為などに関わった銀行員は、銀行のためでもなく、顧客や取引先等のためでもなく、自己の刹那的な営業成績のため(逆に成績が上がらない場合に上司から受ける精神的プレッシャーの回避のため)、これらを行ったものと評価される。決して、違法性があるかどうか分からなかったとか、会社の利益のためになると思ってやったなどというものではない。―― これは先月、スルガ銀行の第三者委員会が公表した「不適切融資」に関する調査報告書(以下、報告書)の192ページに記されていた文言である。 不正や問題が起きるたびに、似たような報告書が公開されてきた。が、私はこれほどまでに人間の「愚かさと野蛮さ」を克明に描いた“読み物”をみたことがない。 事実は小説より奇なり、リアルはドラマよりおぞましいとでもいうべきか。 要するに「カネ」。一時は地銀の「優等生」と称されたスルガ銀行の実態はカネだけを追いかけた組織だった。 「雲の上から下界を見ているような人たち」だった経営陣は、「上納金」さえちゃんと収めてくれればモーマンタイ(問題ない)。目的を果たすための手段は問わず、「下界」では営業担当役員が審査部門の人事に介入するなどやりたい放題。本来、ブレーキをかけるべき審査部門が全く機能しない、退廃的な「王国」ができあがっていたのである。 不正行為が疑われる件数は調査委員会が調査したもので約800件、会社が調査したもので1000件もあり、内部通告制度を利用したものはわずか1%。 「どうせもみ消される」「言うだけムダ」「下手なことをしたら報復される」「誰が通報したかバレる」との理由から、通報を断念した行員たちもいた。 担当者、支店長、執行役員のすべてが「共犯者」であるため、不正通報は裏切り行為と見なされていたのだ。 また、資産形成ローンの営業に携わったことのある行員の9割が、「営業ノルマを厳しいと感じたことがある」とし、7割が「営業成績が伸びないことを上司から叱責されたことがある」と回答。 ノルマは営業担当の麻生治雄元専務の独断で決められた非現実的なもので、その麻生氏を執行役員に引き上げたのが、岡野喜之助副社長(故人)だ。 第三者委員会は、岡野光喜氏の実弟で2016年7月に急逝した故岡野副社長こそが、営業偏重の人事や過大な営業目標、審査部門の弱体化など一連の問題の背景となる構図を作り上げた主たる責任者と断定している。 330ページに及ぶ報告書に記された経営的な問題点は、既に専門家があちこちで指摘している。よって、私は第三者委員会が明かしたリアルから「いかにして人は暴走するのか?」についてあれこれ考えてみようと思う』、「担当者、支店長、執行役員のすべてが「共犯者」であるため、不正通報は裏切り行為と見なされていたのだ」、というのでは通報制度は確かに機能しないだろう。
・『行員たちが受けたパワハラ  まずはこちらをご覧いただきたい。行員たちが実際に受けたパワハラである。(以下、報告書より抜粋)。 ノルマが出来ていないと応接室に呼び出されて「バカヤロー」と、机を蹴ったり、テーブルを叩いたり、「給料返せ」などと怒鳴られる。 「なぜできないんだ、案件を取れるまで帰ってくるな」と、首を掴まれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った。  数字が達成できないなら「ビルから飛び降りろ」と言われた。 毎日 2~3 時間立たされ、怒鳴り散らされる、椅子を蹴られる、天然パーマを怒られる、1 カ月間無視され続ける。 「死ね」「給料どろぼう」「できるまで帰ってくるな」と罵倒。 数字が(達成)できなかった場合に、ものを投げ、パソコンにパンチされ、「お前の家族皆殺しにしてやる」と言われた。 毎日、怒鳴り続けられ、昼食も2週間行かせてもらえず、夜も午後11時過ぎまで仕事させられた。 支店長席の前に1時間以上立たされ、支店長が激高し、ゴミ箱を蹴り上げたり、コップを投げつけられた。 達成率が低いと、椅子を蹴られ、机を叩かれ、恫喝されながら育った。 数字があがらないなら休日はなし、数字があがらないなら時間外請求するな、融資実績があがらないならば、会社に給与返せ、いつまで会社から定額自動送金してもらっているんだというモラルの欠片もない会社だった。 どれもこれも信じがたい愚行だが、これは報告書に記載されているごく一部に過ぎない。 営業を担当した経験のある行員7割超が「営業成績が伸びないことを上司から叱責されたことがある」と回答しているのだ。 「会議中にターゲットになる者を特定。みんなの前で罵声を浴びせる。 被害者が精神的に追い詰められ、休職や退職に至ると、営業推進を一生懸命に行った結果だと肯定し、その数や追い詰め方を自慢し競い、賞賛されるような状況にあった。 恫喝、強要でパワハラ以外の何でもないことが行われていることを知りながら、誰も止められなかった、本気で止めようとしなかった」(行員の証言) ……追い詰め方を自慢しあい、賞賛される職場。想像するだけでおそろしくなる。 これまでにも「飛び降りろ!」「死ね」という暴言を吐かれたという話は聞いたことがあったが、身体的暴力が日常的に行われていたという話は聞いたことがない。 ましてや、「精神的に追い詰めることが営業推進を一生懸命にやった結果」と肯定されるなど、ありえない。 いったい何人の行員たちが、精神を病み、体を壊したのだろう。中には人生をめちゃくちゃにされてしまった人もいたのではあるまいか』、おそらく中途退職者数はかなり多かったのだろう。
・『創業オーナー家ら多数の上位者が存在  下界のトップである麻生氏は02年に執行役員、04年に常務執行役員、専務執行役員となったが、「強大な力を誇ったとはいえ、だたの執行役員に過ぎなかった」(報告書より)。 スルガ銀行の執行役員は「雇用型」で、従業員。すなわち一労働者にすぎず、創業オーナー家の岡野兄弟を含む多数の上位者が存在していた。役員などのインタビューによると、故岡野副社長は、麻生氏を営業本部長に取り立ててはいたが、それは営業成績や営業能力に着目したもので、それ以上でもそれ以下でもなかった。 どんなに麻生氏が成績を上げようとも、故岡野副社長は取締役に取り立てる気も、ましてや自分の後継者にする気もなかったのである。 いわば「鉄砲玉」だ』、これは上位者から成る取締役会と、執行役員以下の執行側を明確に区分したコーポレート・ガバナンス上では、ある意味で「先進的」な構造である。しかし、取締役会メンバーである社長や副社長が執行側と切り離されていたのは、やはり問題だった。主要経営陣へのヒアリングもある金融庁の検査で、問題が見過ごされたばかりか、地域金融機関のモデルと推奨した金融庁の責任は重大だ。
・『――経営トップ層は、持株比率や創業家の権力を背景に全体としてのスルガ銀行は完全に支配していたが、他方、現場の営業部門は強力な営業推進力を有する者、しかも従業員クラスに任せ、その者には厳しく営業の数字を上げることを要求し、人事は数字次第となっていた。 一方で経営層自らは執行の現場に深入りせず、幾重もの情報断絶の溝を構築していた。 このような仕組みは、客観的に評価するならば、業績向上のために執行の現場は強力に営業推進する者をトップにして自由にやらせるが、それは経営層が自ら手を汚すのではなく、少々営業部門が逸脱あるいはやり過ぎることにも目をつぶる、という態勢を採ってきたといわれてもしようがない。―(報告書 P231より) とどのつまり退廃的な「王国」は、雲の上で自分に利を運ぶ人を善としたエゴイスト経営陣の産物であり、麻生氏自身もまた「創業家の威光」を後ろ盾にした、下界のエゴイスト。 倫理観や道徳心のかけらはなく、誰もが「自分を守る」ためだけに上司の奴隷となっていったのである』、こんな歪な組織構造では、経営には本来求められる持続性には欠ける筈なのだが、それに気づかなかったエゴイスト経営陣の責任は誠に重大だ。
・『報告書では営業部門が暴走したメカニズムを次のように分析している。 強力な営業推進政策→ 上位者による精神的な圧迫→逸脱行為の組織的な蔓延による規範的障害の欠如/全員共犯化→高業績者の昇進による逸脱行為の更なる促進/正当化認識→高業績による営業部門の増長と管理部門の萎縮 とりわけ私が注目したのが「逸脱行為の組織的な蔓延による規範的障害の欠如/全員共犯化」を加速させた「表彰制度」だ。 スルガ銀行では、故岡野副社長の「頑張った行員は細大漏らさず褒めてあげたい」との思いから、年々表彰項目が増えていったそうだ。 表彰制度が「悪」を正当化する装置に  報告書の別紙に表彰制度項目が並んでいるのだが、A4に5ページ分。店舗や個人を対象に、膨大な項目が並んでいる。 本来、こういった表彰制度は従業員の士気を高め、組織風土をプラスに作用させるリソースである。 しかしながら、エゴイストが権力をもった組織では「悪」を正当化する装置と化した。 表彰されたものたちは、「おかげさまで首都園トップ店となりました」「岡野会長から特別に食事に連れていってもらった。普通ではありえないこと」などと、嬉しそうに周囲に吹聴していたのである。 上からのお墨付きを得れば、悪は善と化す。 いかなる手段であれ、ノルマを達成すれば万事オッケー。パワハラと不正でノルマを達成した人が表彰され、昇進すれば、ますますパワハラは加速する。 「数字至上主義・パワハラ・表彰」の3点セットが、劣悪な組織風土の土台になっていたのだ』、銀行では表彰制度により支店を競わせるのが一般的だが、そこで無理が行われてないかをチェックするのが審査部や人事部など本部の役割だ。チェック機能なしにやったスルガ銀行は、まるで「ブレーキがなくアクセルだけのクルマ」だ。
・『……なんとも恐ろしいことだ。 度々発生しているスポーツ界におけるパワハラでは、自身のスキル向上や勝負に勝つというポジティブな経験が、パワハラを肯定的に捉える傾向を高めることが国内外の調査研究から明かされているが、それと全く同じだ。 「あのとき厳しく言ってくれたのは自分のためだった」「あのとき怒られたことで踏ん張ることができた」と、コーチや監督の恫喝や暴行を自ら肯定し、「パワハラに耐えられなかった人は弱い人」となる。 パワハラに耐える力と結果を出す力は同義ではないのに、結果を出すためにはパワハラが必要と錯覚するのだ。 しかも、人間には「承認欲求」があるため、パワハラに苦しんでいる最中でもそれを正当化させてしまう場合がある。 これまで私のインタビューに協力してくれた方の中には、上司からパワハラを受けていた人が何人もいた。そして、多くの人たちが「パワハラを受けているうちに、“自分が悪いのでは?”という気持ちに苛まれた」と心情を明かしてくれたのだ。 念のため断っておくが、「頑張った行員は細大漏らさず褒めてあげたい」というトップの思い自体は悪いものではない。 が、今回の報告書が明かした「表彰制度」の負の側面は、極めて貴重である。 そもそも「頑張った」とは何を意味するのか? 頑張りとは「数字」「カネ」に絶対的に反映されるものなのか? いかなる制度も、「ナニ」に価値を置くかでプラスにもマイナスにもなる。 故岡野副社長は、「社員教育は時間の無駄、その時間があれば営業させろ、現場で経験を積む中で教育はできる」が持論で、銀行員としての基礎知識やモラルが熟成される時間さえムダと考えていたという。 第三者委員会が故岡野副社長を、「一連の問題の背景となる構図を作り上げた主たる責任者と断定」した上で、「麻生氏は情報の断絶が生じているスルガ銀行の中で、現場に明確な形で介入しない経営陣の下、ひたすら営業に邁進した立場というべきである。したがって、「本件の構図」を作った張本人ではないし、その構図について責任があるとするのは酷であろう(それは経営トップの責任である)」と論じている。 だが、私は「創業家の威光」を背に不可能な数字目標を掲げ、自分に従わない人を切り捨て、何でもありの王国を作り上げた麻生氏には、人道的な責任が多いにあると考えている。 仮に麻生氏が暴走したのが、上からのパワハラによるものだったとしても、だ。 と同時に、麻生氏に成り下がるリスクは誰にでもあるように思う』、その通りだ。
・『絶対的権力による無力化  つまり、これは創業家という絶対的権力による無力化であり、無力化による思考停止だ。 麻生氏は、「いつか雲の上の住民になれる」と期待し、「初の営業からの取締役」を夢みていたのだろうか。 あるいは「しょせん、営業。私たちとは別」と上流階級である経営陣たちに見下される不満を部下たちにぶつけ、社外の人たちから「スルガ銀行の絶対的権力者」と祭り上げられることに酔いしれていたのか。 無論、報告書に答えは記されていない。 しかし、おそらくそういった人の心の複雑さと環境の大切さを、しみじみと何度も妄想することこそが、人を暴走させないために欠かせないことなのかもしれない』、いつもながら説得力に溢れた指摘だ。
・今後、スルガ銀行の借り手への対応、その他銀行でのアパートローンの動向を注目したい。
タグ:第三者委員会 日経ビジネスオンライン シェアハウス 河合 薫 NHKクローズアップ現代+ 金融関連の詐欺的事件 (その6)(追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~、スルガ銀 パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?) 「追跡!スルガ銀行問題~超低金利時代の“闇”~」 ずさんな経営管理体制が不正を拡大させたと断じる報告書 「優良銀行」とされてきたスルガ銀行 通帳のコピーや契約書などの書類を偽装 不動産業者です。行員に頼まれ、通帳の預金残高を多く見せる偽装を行っていた 広さ4畳の部屋が15あります。しかし、そのうち9つが空室のままです 現在の家賃収入は合わせて月15万円余り。一方、銀行への返済額は64万円。毎月50万円近くの赤字が出ている スルガ銀行では顧客の返済能力を確かめるため、物件価格の1割、1億円の場合は1,000万円、自己資金があるか確認するルールが存在 不正によってルールが骨抜きにされ、ずさんな融資が行われていた 不動産業者「ある程度、改ざんを黙認してもらったり指示してもらったり、お互い(融資の)承認を取りたいという目標に向かって、一緒に動いているような状況でした 銀行も共同正犯 個人向けの投資用不動産融資 新規の融資額全体の8割を占めるまでになりました 営業部門の暴走 ストレッチ目標 ノルマ達成のため、上司から部下へのパワハラが横行 営業部門の暴走を止めるべき審査部門も機能しなくなっていました 3年前、スルガ銀行は投資用のシェアハウスを調査し、入居率が推計5割にとどまっていることを把握 その情報は適切に共有されず、融資の拡大に歯止めをかけられませんでした スマートデイズが破綻。そのことで、個人向けの投資用不動産を巡る不正があらわになったのです 不正の原因 第三者委員会は主に3つ指摘 1つ目、営業現場の暴走 次に、審査の機能不全 3つ目は、ずさんな経営管理体制 第三者委員会 委員長 中村直人弁護士 営業現場の本部長以下が、いい数字を作って、会長、社長、副社長に持っていって、褒めてもらいたい。悪い情報を絶対に持っていってはいけないと自制をしている 経営層は現場の悪いことについて『報告を受けない』『知らない』という形になって、現場側が暴走し始めるという構図 個人の不動産投資熱の高まり 今回の問題を受けて、金融機関は融資に慎重になり始めている 低金利に苦しむ地銀 全国の地方銀行106行のうち54行が昨年度、融資などの本業で赤字 「スルガ銀、パワハラ王国暴走と創業家支配の因果 いかにして組織は逸脱するのか?」 一時は地銀の「優等生」と称されたスルガ銀行の実態はカネだけを追いかけた組織だった 「雲の上から下界を見ているような人たち」だった経営陣は、「上納金」さえちゃんと収めてくれればモーマンタイ(問題ない) 「下界」では営業担当役員が審査部門の人事に介入するなどやりたい放題 内部通告制度を利用したものはわずか1% 担当者、支店長、執行役員のすべてが「共犯者」であるため、不正通報は裏切り行為と見なされていたのだ 故岡野副社長こそが、営業偏重の人事や過大な営業目標、審査部門の弱体化など一連の問題の背景となる構図を作り上げた主たる責任者と断定 行員たちが受けたパワハラ 創業オーナー家ら多数の上位者が存在 スルガ銀行の執行役員は「雇用型」で、従業員。すなわち一労働者にすぎず、創業オーナー家の岡野兄弟を含む多数の上位者が存在していた 「逸脱行為の組織的な蔓延による規範的障害の欠如/全員共犯化」を加速させた「表彰制度」 パワハラと不正でノルマを達成した人が表彰され、昇進すれば、ますますパワハラは加速 ブレーキがなくアクセルだけのクルマ 創業家という絶対的権力による無力化であり、無力化による思考停止だ
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ネット社会(その2)(小田嶋氏:ネットの文字はなぜ記憶に残りにくいのか) [社会]

昨日に続いて、ネット社会(その2)(小田嶋氏:ネットの文字はなぜ記憶に残りにくいのか)を取上げよう。

コラムニストの小田嶋 隆氏が10月26日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「ネットの文字はなぜ記憶に残りにくいのか」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/102500164/?P=1
・『つい先日、経団連会長の会長執務室にこの5月、はじめてパソコンが設置されたという読売新聞の報道があって、その新聞記事のスクリーンショット(スクショ)を貼り付けたツイートが大量に拡散されている。経団連会長に就任した日立製作所の中西宏明会長がパソコンがないことに驚き、導入したのだという。 ネット内の人々の反応は「えっ? いままでパソコンも使ってなかったわけ?」「じゃあどうやって外部と連絡をとっていたんだ?」という素朴な疑問からはじまって、やがて大喜利に発展した。「経団連って竜宮城だったのか?」「会長がメールアドレスを持つのもはじめてらしいぞ」「ってことはつまり歴代のボスはメールを使ってなかったわけか?」「もしかしたら、指示は竹簡に毛筆とかか?」「移動は大名駕籠だな」「まあ、ちょっと遠めの行き先には牛車ぐらい使ってると思う」「実際、インターネットが来ない環境下で、外部とはどうやって情報交換してたんだろうか」「秘書経由だろ」「苦しゅうない近う寄れとかいって、耳打ちしてたわけだな」「いや、セキュリティー的なアレを勘案するにパンパンって両手を打ち鳴らすと御庭番が石灯籠の陰から現れるシステムじゃないかな」「だよな。だからこそ経団連ビルの会長執務室には石灯籠付きの庭と天井裏と床下を設営することが必須だったわけで、してみるとパソコンの設置が後回しになってたのも当然だわな」「側女(そばめ)もな」「この際ソバメは関係ないだろ」「これは異なことを。拙者セキュリティー的に必須と愚考するが」 つまりだ。ネット内の人たちは、「経団連の対人感覚の旧弊さ」と「情報感度の低さ」を嘲笑していたわけだ。気持ちはわかる』、経団連会長執務室にパソコンを導入したのが、日立製作所の中西宏明会長ということであれば、当然だろう。
・『いまどき、固有のメールアドレスを持っていないボスが、口頭や手書きのペーパーで指示を出していたらしいのもさることながら、激変する世界経済に臨む日本の窓口ともいうべき経団連の会長執務室が、インターネットにすらつながっていなかった事実は、老舗蕎麦屋の店主が実は蕎麦アレルギーでしたというのとそんなに違わない驚天動地の日本没落情報だと思う。 とはいうものの、経団連の会長のような名誉ある職になると、「情報」そのものより「顔」の方が重要になるのではなかろうかという気もする。 どういうことなのかというと、ある程度以上の規模の会社の社長が自分で運転しなくなるのと同じように、名だたる一流企業の社長が雁首を揃えている組織のトップともなると、もはやいちいちメールに自分で答え、具体的に経営判断を行うことが禁じられていてもおかしくないのではないか、ということだ。であるからして、判断の基礎となる「情報」自体も、むしろ邪魔になる。 つまり、経済人の統合の象徴として在位している経団連会長は、来客を接待したり、関連の会合であいさつをするための「顔」なのであって、判断や命令を下す「頭」や「腕」ではない。とすれば、私的な肉声を発する発信源たるメールアドレスは、本来そぐわない装備なのだ』、なるほど、巧な解釈だ。
・『・・・私は、これまでの経団連の会長が固有のメールアドレスを持っていなかったことを、さして異常なことだとは思っていない。インターネット経由の情報にアクセスしていなかったことも、いかにもありそうな話だと思っている。それどころか、あらまほしきことですらある、というふうに受け止めている。 もう少し踏み込んだ言い方をするなら、私は、経団連の会長のような立場の人間は、秋刀魚の裏表も分からない状態で執務させておくのが本人のためにも無難なのだと思っている。なんというのか、「象徴」的な地位の人間を、神輿の上に座らせて無力化することは、この国の組織人たちが長い歴史の中で学び得た知恵なのであって、最高権力者から実務的な権力を引き剥がして、単なる「権威」として遇するのは、組織防衛上の安全策なのである。 むしろ、ああいう役柄の人間が、暴れん坊将軍よろしく市井の悪逆非道を手ずから正しにかかったりしたら、現場は大混乱に陥るだろう。 してみると、現職の中西会長が、メアドを獲得し、自前のパソコンを装備するに至ったことは、これまで半世紀余りにわたってわが国の経済界をリードしてきたあの組織が大きく変化しつつあることの、最初の兆候であると言えるのかもしれない』、「最高権力者から実務的な権力を引き剥がして、単なる「権威」として遇するのは、組織防衛上の安全策なのである」とは言い得て妙だ。
・『もうひとつ思うのは、個別の企業のトップや、現場で指揮を採る最前線のリーダーならいざしらず、経団連の会長のような立場にいる人間は、パソコンやインターネット経由でもたらされる「文字化」した情報はあえて無視して、「肉声」や「握手」や、「フェイストゥーフェイス」の交流で得られる身体的な情報のやりとりに専念する方が、むしろ本筋なんではなかろうかということだ。 でなくても、コミュニケーションのうちの、非言語的な部分(文字化に伴って言葉の中から捨てられてしまった部分)を担うべき司祭に当たる役割の人間は、この先、必ず必要になるはずだ』、なるほど。
・『こんなことを思ったのは、実は、別のニュースの関連情報を掘り進むうちにたどり着いた奇妙なウェブサイトを見たからだ。 そのサイトというのは、最近報じられた社員の自殺と、その遺族がパワハラによるものだと訴えている件の、一方の当事者である社長が運営している書評用のブログだ。 その書評ブログの中で、社長ご本人が主張しているところによると、彼は、1日に50~100冊、月1500~3000冊の本を読むのだそうだ。 読書に充てる時間は、1日あたり4時間から6時間。どうしてそんなに速くたくさんの本を読めるのかという質問には、《結論から言うと『慣れ』です。》と答えている。 具体的な方法については、《私はフォトリーディングやフォーカスリーディングと言ったビジネス書で宣伝されてるような手法は一切学んでいません。速読セミナーに通ったことはあるのですか?と聞かれたりもしますが、そういう物には一切参加してません。あ、いや、別にそういう物を否定してるんじゃ無いですよ。私は参加してません、と言うだけです。速読セミナーに行くくらいなら私はその時間読書するし、そのセミナー代で私は本を買います(笑)》と説明している。 どう受け止めたら良いのだろう。 私は、「ウソ」ではないかと解釈している。 仮に、この社長の言う通りに、1日に50~100冊の本を、4時間から6時間の読書時間で読破しているのだとすると、単純計算で6時間で100冊の場合、1冊あたり3.6分(3分36秒)で読了していることになる。 私の常識では、これを「ウソ」と思わないことは難しい。 あるいは、社長自身が、意図的に他人をだますためにウソをついているということではないのかもしれない。 でも、そうだとしても、社長は自分をだましているはずだ。 つまり、社長は、3分半で1冊の本を「読んだ」と思い込むウソを、自分に対してついている。そういうことではないか』、確かに「ウソ」だろう。「自分に対してついている」というのは面白い解釈だ。
・『この感覚は、実は、わずかながら見当がつく。 というのも、私自身、自分の読書については、最近、自分ながら錯覚しているのではなかろうかと思い始めているからだ。 問題は、どうして件の社長が、見え透いたウソと思われる(ウソだと思ってますが)ほどの読書量をブログに書かねばならなかったのかということであり、また、われわれが、実際には読了しているわけでもない書籍を読破したと思い込みたがっているのかということでもある。 以下、われわれ21世紀の人間が、情報の入力に関して、いかに奇天烈な妄執を抱くに至っているのかについて考えてみたい。 この話は順序立てて、思い切り前提のところにさかのぼって話しはじめなければならない。 なので、これから先で並べるのは、ちょっとめんどうくさいストーリーなのだが、ぜひつきあってください』、面白そうな仮説だ。
・『まず、音読と黙読の話をする。 これは、いくつかの場所で話したり書いたりしたことのある話でもあるので、知っている人は既に知っているかもしれない。が、ともあれ、先につながる話なので、我慢して聞いてほしい。 十数年前、子供が通っていたある進学塾から、あるペーパーが配布された。 そのA4のコピー用紙3枚ほどのワープロ打ちのテキストは、驚くべき内容の警告文だった。 そこにはおおよそ以下のようなことが書かれていた。「小学校4年生以上のお子さまをお持ちの保護者の皆さんに申し上げます。お子さまたちに、いますぐこの場で音読の習慣をやめさせてください。音読は、できれば、3年生までのうちに中断したほうが良い習慣です」 という挑発的な書き出しを受けて、説得は続く。「文章を声に出して読んでいる限り、あるいは頭の中で文字を音声に変換して読み下している限り、文章を読む速度は1分間に300文字程度より速くはなりません」「ところが、難関中学の入学試験では、1分間300文字の速読能力ではとても追いつかない量の問題文が出題されます」「理由は、第一に学習指導要領の定めによって、中学入試では小学校で教えたカリキュラムの範囲を超える問題を出題することが禁じられているからで、第二に、小学校の教育課程の範囲内の問題を普通に解答させると、満点を取る受験生が続出して合否が判定できないからです」「そこで、特に優秀な受験生が集中する難関校では、もっぱら問題の分量を増やすことで満点得点者の続出に対応しています。それゆえ、難関校の入試に臨む児童は、試験時間内には読みきれない膨大な量の問題文を読みこなす必要に迫られるわけです」「つまり中学受験に臨む子供たちは、なるべく速く、正確に大量の文章を読み下す速読能力を訓練しなければなりません」「そのためには、遅くとも小学校4年生の段階で、頭の中で文字を音にする習慣をやめさせて、文字を映像のまま、ひとかたまりの情報として処理する技術に慣れて行く必要があります」とまあ、言い回しや説明の順序はともかくとして、内容としては以上のようなお話が展開されていた次第で、われわれはどうやら大変な時代に到達してしまったのだなあ、と、私は、しばし感慨にふけったものなのである』、難関中学の入学試験がそんなことになっているというのを初めて知り、驚かされた。
・『あらためて言えば、私の母親の世代の人間は、基本的に「黙読」ということができない。彼女が新聞を読んでいる姿を見ていると、黙って読むことはできていても、微妙に口元がモゴモゴ動いていたりする。それもそのはず、頭の中では文字がありありと音に変換されているからだ。 母の世代の人間にとって、書物は、貴重品だった。 月に1冊本を買ってもらえることが大いなる楽しみで、だから戦前の子供たちは、その貴重なうえにも貴重な書籍を、それこそ舐めるように丁寧に読んでいた。間違っても買ってきて2時間で読了するような、そんなぞんざいな読み方はしなかった。 だから、黙読は、不必要であるのみならず、どちらかといえば、文字に対して失礼な読み方ですらあったはずなのだ。 ところが、現代の子供たちは、音読していては間に合わない量の情報を取り入れなければならない。 で、音読は、いつしか「勉強のできない子の困った習慣」みたいな扱いに追いやられつつある。 文字から音読の要素を排除するということは、情感やニュアンスや音韻やリズムを消し去って、文章を純粋な「情報」に圧縮することでもある』、言われてみれば、その通りだ。
・『いつだったか、ある対談でご一緒した詩人の伊藤比呂美さんに、この「児童進学教室による音読排除のススメ」の話を振ったところ、彼女は素晴らしく怒って「子供たちが朗読をしなくなったら、詩が詩でなくなるだけではおさまりません。言葉から音が切り離されるということは、日本語がもはや人間の言葉ではなくなるということです」と断言された。私は、「そうですね」とお答えしたのだが、「そうですねじゃありません!」と叱りつけられた。 その通りだ。誰かが叱られなければならないのだ。あるいは、われわれの世代全部が、まるごと、昔の日本人からお叱りを受けて、平身低頭謝罪しなければならないのかもしれない。 日本語を音読しなくなるということは、言葉の持っている機能のうちのより基本的な側の半分を捨て去ることを意味している。これは、返す返すもとんでもないことだ』、「言葉から音が切り離されるということは、日本語がもはや人間の言葉ではなくなるということです」とは詩人らしい鋭い指摘だ。
・『もっとも、我が身を振り返ってどうなのかというと、私自身、音読の習慣を失って久しい。 日常的に大量の文書を読みこなすことを業務の一部としている出版業界の人間は誰であれ、似たようなものだと思う。なぜというに、いちいち文章を音声に変換していたらノルマの量の文章を読みこなせないからだ。 私は、薄めの新書なら内容にもよるがだいたい2時間ほどで読了することができる。 割り算をしてみると、1分間あたり1000文字ほどの速読力ということになる。 これは、一般の人と比べれば速いほうだと思うが、業界標準としては、むしろ遅い方かもしれない。 もっと速い人はいくらでもいる。 私自身も、献本で送られてくる新刊や、書評のための書籍を読む時のスピードは、自腹で買った本を読む時の速度に比べて明らかに速い。普段の読み方の倍以上かもしれない。 で、そういう速度で実際に読めているのかというと、「軽めの文体の本だな」とか「字組はゆるめだよね」といったあたりのことは、まあ把握できる。 「全体として経済のことを書いてある本みたいだぞ」という程度のこともわかる。 でも、そのくらいのことは、そもそもタイトルを見ればわかることでもある。 私は、読んだ気になっているだけで、実際にはまるで読めていないのかもしれない。 印刷物だけではない。 毎日毎日、私はメールやらSNSやらウェブニュースやらスマホ経由のラインやらメッセージやらの、ありとあらゆる種類の文字を、かなりとんでもない速さで読みこなしている。 そうしていながら、ふと気がついてみると、私は何も覚えていない。あるいはこれは、年齢のせいで、アタマの中を通過した文字の定着率が落ちているということに過ぎないのかもしれない。 でも、個人的には、自分がアタマの中に文字をスクロールさせる動作に依存してしまっていると考えた方が、筋道が通ると思っている。 私は、読書ブログの社長ほどではないにしても、文字を通過させる下水管みたいなものになってしまっているのかもしれない。 で、そのウェブにつながった下水管たちが、経団連のもと会長たちを嘲笑している。 奇妙な図だと思う』、「文字を通過させる下水管みたいなもの」とは上手い表現だ。
・『月に3000冊の本を読む人間は、月に30頭の牛を食べつくした人間が健康を害するのと同じようにして、自らの精神を健康に保つことができなくなるはずだ。 私たちも、用心せねばならない。 頭の中に保持できる文字の数には限界がある。 その限界を超えると、たぶん、自分自身を保持できなくなる。 エビデンスはないが、私はそう思っている』、面白いオチだが、私は、限界を超えた文字は忘れていくだけで、自分自身は保持されると思っている。
タグ:ネット社会 日経ビジネスオンライン 小田嶋 隆 (その2)(小田嶋氏:ネットの文字はなぜ記憶に残りにくいのか) 「ネットの文字はなぜ記憶に残りにくいのか」 経団連会長の会長執務室にこの5月、はじめてパソコンが設置された 経団連会長に就任した日立製作所の中西宏明会長がパソコンがないことに驚き、導入 ネット内の人たちは、「経団連の対人感覚の旧弊さ」と「情報感度の低さ」を嘲笑 名だたる一流企業の社長が雁首を揃えている組織のトップともなると、もはやいちいちメールに自分で答え、具体的に経営判断を行うことが禁じられていてもおかしくないのではないか 経団連会長は、来客を接待したり、関連の会合であいさつをするための「顔」なのであって、判断や命令を下す「頭」や「腕」ではない 「象徴」的な地位の人間を、神輿の上に座らせて無力化することは、この国の組織人たちが長い歴史の中で学び得た知恵なのであって、最高権力者から実務的な権力を引き剥がして、単なる「権威」として遇するのは、組織防衛上の安全策なのである パソコンやインターネット経由でもたらされる「文字化」した情報はあえて無視して、「肉声」や「握手」や、「フェイストゥーフェイス」の交流で得られる身体的な情報のやりとりに専念する方が、むしろ本筋 社員の自殺と、その遺族がパワハラによるものだと訴えている件 社長が運営している書評用のブログ 1日に50~100冊、月1500~3000冊の本を読むのだそうだ。 読書に充てる時間は、1日あたり4時間から6時間 私は、「ウソ」ではないかと解釈 社長は、3分半で1冊の本を「読んだ」と思い込むウソを、自分に対してついている 私自身、自分の読書については、最近、自分ながら錯覚しているのではなかろうかと思い始めているからだ 21世紀の人間が、情報の入力に関して、いかに奇天烈な妄執を抱くに至っているのかについて考えてみたい ある進学塾 小学校4年生以上のお子さまをお持ちの保護者の皆さんに申し上げます。お子さまたちに、いますぐこの場で音読の習慣をやめさせてください。音読は、できれば、3年生までのうちに中断したほうが良い習慣です 文章を声に出して読んでいる限り、あるいは頭の中で文字を音声に変換して読み下している限り、文章を読む速度は1分間に300文字程度より速くはなりません 難関中学の入学試験では、1分間300文字の速読能力ではとても追いつかない量の問題文が出題されます 私の母親の世代の人間は、基本的に「黙読」ということができない 貴重なうえにも貴重な書籍を、それこそ舐めるように丁寧に読んでいた 音読は、いつしか「勉強のできない子の困った習慣」みたいな扱いに追いやられつつある 文字から音読の要素を排除するということは、情感やニュアンスや音韻やリズムを消し去って、文章を純粋な「情報」に圧縮することでもある 詩人の伊藤比呂美 言葉から音が切り離されるということは、日本語がもはや人間の言葉ではなくなるということです 日本語を音読しなくなるということは、言葉の持っている機能のうちのより基本的な側の半分を捨て去ることを意味している。これは、返す返すもとんでもないことだ 私自身、音読の習慣を失って久しい 私は、読んだ気になっているだけで、実際にはまるで読めていないのかもしれない 文字を通過させる下水管みたいなものになってしまっているのかもしれない 月に3000冊の本を読む人間は、月に30頭の牛を食べつくした人間が健康を害するのと同じようにして、自らの精神を健康に保つことができなくなるはずだ 頭の中に保持できる文字の数には限界がある。 その限界を超えると、たぶん、自分自身を保持できなくなる
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ネット社会(その1)(「低能先生」を凶行に駆り立てたネット民の闇 匿名コミュニティによる正義追求の恐ろしさ、“つながり孤独” 若者の心を探って…) [社会]

今日は、ネット社会(その1)(「低能先生」を凶行に駆り立てたネット民の闇 匿名コミュニティによる正義追求の恐ろしさ、“つながり孤独” 若者の心を探って…)を取上げよう。

先ずは、ITジャーナリストの本田 雅一氏が6月30日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「低能先生」を凶行に駆り立てたネット民の闇 匿名コミュニティによる正義追求の恐ろしさ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/227515
・『人気ブロガー「Hagex」ことネットセキュリティ会社勤務の岡本顕一郎さんが殺害された6月24日の事件が大きな波紋を呼んでいる。岡本さんを殺害したのは、インターネットコミュニティの中で誹謗中傷を繰り返していた無職・松本英光容疑者。岡本さんは、自身のブログの中で、「低能先生」として知られる松本容疑者の行為を問題視し何度か取り上げていた。松本容疑者はこれを逆恨みして犯行及んだと見られている。 岡本さんはインターネットセキュリティの世界でよく知られる存在だったほか、ネット上の様々な出来事を綴った「Hagex-day.info」をHagex名で書いていた』、新聞で読んだだけでは、全く理解できなかったので、紹介した次第。
・『現実社会では接点がまったくなかった  しかしこの事件が注目されているのは、岡本さんがネット社会で広く知られた人物だったからだけではない。松本容疑者が岡本さんと現実社会では接点がまったくない上、ネット上でも直接の議論などを交わしたことがないにも関わらず、強い意思を持って殺害という行為を選択している点にある。 警察からの情報を基にした複数の報道によれば、松本容疑者は岡本さんの本名すら知らず、ネット上で見つけていたHagex氏とみられる人物の写真を参考にして殺害する人物を特定したようである。Hagex氏を「ネット上で自分を批判している人物の代表」と一方的に見定め、社会への復讐として犯行に及んだと考えられる。 この事件が驚きをもって受け止められたのは、ネットコミュニティにおける匿名のやり取りに過ぎないのに、それが原因で凄惨な殺人事件を犯した点にある。たしかに、殺人にまで至った今回のようなケースはまれではあるが、ネット上には、想像を超えた発想から執拗な攻撃を行う人は多い。一方的な逆恨みは、ネットコミュニティでは決して珍しい話ではないのだ。 タイトルにもあるように、「低能先生」は追い詰められる中で暴発したとみられる。そのことを解説する前に、まずは事件の経緯をおさらいしておきたい。 松本容疑者は株式会社はてなが運営するサービスを頻繁に利用していたと見られている。ひとつは「はてなブックマーク」で、ウェブのブックマーク、およびブックマークした記事へのコメントを利用者間で共有するサービスだ。 もうひとつは「はてな匿名ダイアリー」である。名称の通り、日記を匿名で投稿できるサービスだ。匿名とすることで、日常の生活とは切り離された自由な発想で日記形式の文章を投稿できるが、一方的な感情を吐露する場としても使われる』、現実社会では接点がまったくなかったのに、殺害するとは、恐ろしい時代になったものだ。匿名性については、私はそのマイナス面を重くみて、このブログも実名でやっているが、確かにプラス面もある。
・『松本容疑者は頻繁に迷惑行為を行っていた  なお、”匿名”は英語で”アノニマス”であるため、”アノニマスダイアリー”を略して「アノニマスダ」と呼ばれ、それが変換ミスなども相まって「アノニ増田」に変化。ネットコミュニティの中では「増田」と呼ばれている。いくつかの関連ブログに出てくる「増田」とは、はてな匿名ダイアリーそのものを示す場合と、その利用者や投稿されたエントリーを指している場合がある。 松本容疑者は、はてなブックマークの「IDコール」という、特定IDの利用者にコメント投稿の通知を送る機能を用い、頻繁に迷惑行為を行っていた通称「低能先生」と同一人物の可能性は極めて高い。 「低能先生」とは、自分が気に入らないコメントを残している人物にIDコールで罵詈雑言を送るのである。迷惑行為を繰り返すため、「低能先生」のアカウントは何度もアカウント削除されたが、それでも毎回、新しいIDを作成して同じ行為を繰り返していた。 罵詈雑言には「低能」という言葉が頻出するため、この迷惑行為を行うアカウント、人物は「低能先生」と呼ばれるようになっていった。それほどまでに長期間、多数の迷惑行為が続けられていたのだ。 はてな匿名ダイアリーには、「低能先生」の行いについてまとめたエントリーが多数掲載され、それぞれトラックバックでつながっている。そのうちのひとつを参照すると、「低能先生」がどのような罵詈雑言を書いていたのかを参照できる。 また、こちらのエントリーを見る限り、ひとりの相手に1日最大6件ものIDコールを行っており、膨大なエネルギーをかけて多数の罵詈雑言を放っていたことが想像できる。低能先生のこうした行為は2016年ぐらいから始まり、何度もID凍結と新規ID作成を繰り返していたが、ID凍結の頻度が高まったのは岡本さんがブログの中で「低能先生」の行為を扱ったことがきっかけだったと言われている。 ブログの中では、批判的に「低能先生」の活動について取り上げられているだけでなく、簡単な通報で迷惑行為を行うIDを凍結できると紹介しており、ユーザーの間で「低能先生」を通報する機運が高まったことは確かなようだ。 はてな匿名ダイアリーでの呼びかけであるため、誰が行っていたのかはわからないが、「低能先生」の通報、ID凍結を呼びかけるエントリーが繰り返し投稿されており、そこには低能先生と思われるIDからの匿名トラックバックも多数見受けられる。時系列でトラックバック内容を見ると、低能先生が繰り返しのID削除に苛つき、だんだんと現実社会での報復へと向かう様子が伺える。 「通報厨」と名付けられた、繰り返し行われる低能先生の通報を呼びかける人物(誰であるかは不明)に対する怒りが、こちらのエントリーにまとめられていた。 これらの経緯を考えると、松本容疑者は誰なのか、あるいは一人ではなく複数なのかもわからない通報厨に報復するかわりに、通報厨が生まれるきっかけを作った、しかも誰なのかを特定できているHagex氏にターゲットを絞ったと考えられる。 しかし、それだけでは殺人には及ばなかったのではないか。実際の犯行の引き金となったのは、挑発するような書き込みがあったからである。それは、現実社会での実行力がない人物が、ネット上だけで強がっているだけだ、と揶揄する書き込み(はてな匿名ダイアリーのトラックバック)である。毎日新聞の報道によると、低能先生に人を殺せるわけがないと煽られたことが殺人実行への直接の動機だったようだ。 はてなのサービス内で起きた経緯は、このようにユーザー間で細かくまとめられており、より詳細な経緯を知りたいのであれば、元となる情報を参照してほしい』、松本容疑者の無職とあるが。こんなにネットにのめり込むからには、外の実社会とのつながりは、あったとしても希薄なのだろう。
・『追い込まれていった構図  しかし、冒頭でも述べたように”命を奪う”という領域まで思い詰めたことは異常だが、松本容疑者が追い込まれていった構図は決して珍しいものではない。ネット上には「ネット弁慶」、すなわち「現実社会では大人しいがネット社会の中では強気」に振る舞う人は少なくない。 インターネット時代より遙か以前、電子掲示板システムによるパソコン通信サービス時代から、いわゆる”ネット弁慶な人”は多かった。筆者自身、一方的に中傷を受けたことが何度もあるが、実際に会ってみると温和で親切ということがほとんどだった。 パソコン通信時代、商用サービスではIDと個人が結びついていたが、それでもネット上の人格と現実社会での人格の乖離は多かった。まして、インターネットの匿名サービスともなれば、その傾向が強まることは想像に難くない。 実際には行為が行き過ぎれば、ネット接続サービス事業者への情報開示請求などにより個人を特定できてしまう。低能先生の例でも、情報開示請求をした人物が現れたとの情報が流れており、本人の想像の範疇を超えて追い詰められていったのだろうが、筆者は少し違った角度からこの事件について感じていることがある。 松本容疑者が低能先生であったのだとするなら、彼は(自身のトラックバックでも書いているように)複数の匿名利用者から集団リンチを受けているように感じていたのではないだろうか。 匿名サービスでは、それが一人なのか、複数なのかはわからない。書き込みの傾向や書き込まれる時間などで、同一人物なのかある程度は判断できるものの、自分に対する攻撃が繰り返されているうち、ネット社会における自分の人格を取り巻くすべてが敵に見え、まるで結託しているかのように思えるのだ』、ネットコミュニケーションの落とし穴にはまり込んだようだ。
・『「追い詰めないこと」が大切  数年前、筆者はネット上で活動する特定のIDに、毎日のように誹謗中傷のツイートや加工した画像を投稿された経験がある。その加害者IDのターゲットは筆者だけではなく、ある携帯電話事業者に対して批判的記事を書いた人物全員であった。 この加害者IDは偶然も重なり、自分が敬愛する携帯電話事業者の経営者とTwitter上でつながりを持つことができた。その携帯電話事業者がTwitter上でのアンバサダーマーケティングを行っていた時期、ファンを公言してやまなかった彼とのやり取りをマーケティング戦略上、利用していたからだ。ところが方針変更もあって関係が希薄になると、少しでも批判的と捉えられる記事を書いているジャーナリストを罵倒しはじめ、この経営者との関係を保とうとし始めたのである。 当然、筆者も含めて反論、反証したものは多い。彼の行為は毎日のように繰り返され、エスカレートしていったため、その分だけ彼のところに届く批判はこの件とは無関係の人物からの返信も含め、増加していった。そのため、何らかの集団からリンチされているように感じたこともあったようだ。 筆者はこの追い詰め方はまずいのではないかと感じた。そこで、最終的には彼自身がかつて明らかにしていたアドレスに筆者自身が連絡し、穏便に引き下がってもらうよう、彼の周囲とともに説得に乗り出した。彼の脳内では自分の行為が正当化されているため、どんなに温和な説得や言葉であっても「何か大きな見えない圧力で攻撃されている」と解釈するため、非常に厄介な経験だった。 この経験から、ネット社会では精神的に追い詰められていく過程で、自分の敵を過大に見積もる傾向があることがわかった。「追い詰める快楽」に酔っては危ないようにも感じた。 ネット社会の特殊性は、可視化されにくい情報が多いということだ。不足する情報を人間は推測で補完しようとする。現実社会よりも圧倒的に情報が少ない中で補完する情報が過大になってくると、事実関係と自分自身の認識の乖離が進み、さらに追い込まれていくのだ。「周りは全員が敵で、自分を抹殺しようとしている」というように。 今回の痛ましい事件の教訓は、「異常な行動を取っているように思える見知らぬ人物の凶行に気をつけろ」ということではない。そうではなく、「凶行に及ぶようなところまで相手を追い詰めないこと」が大切なのではないかと思う』、「不足する情報を人間は推測で補完しようとする。現実社会よりも圧倒的に情報が少ない中で補完する情報が過大になってくると、事実関係と自分自身の認識の乖離が進み、さらに追い込まれていくのだ」というのは、本当に恐ろし「落とし穴」だ。大いに気を付けたい。

次に、7月25日付けNHKクローズアップ現代+「“つながり孤独” 若者の心を探って…」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4164/index.html
・『ツイッターやFacebookなどのSNSが急速に普及するなか、“多くの人とでつながっているのに孤独”という、“つながり孤独”を感じる若者が増えている。「SNSで友だちの暮らしを見て劣等感を抱く」「SNSでのつながりの薄さに孤独を感じる」。番組には“つながり孤独”を訴える声が200通近く寄せられた。SNSがなぜ孤独を生み出すのか?番組では、寄せられた声をもとに、オープンジャーナリズムの手法で若者たちを悩ませる“つながり孤独”の実態を探っていく』、“つながり孤独”とは、この番組で初めて知った。
・『“つながり孤独”を知っていますか?  “つながり孤独”。今、知り合いや友達とのつながりに悩み、苦しむ人が増えているのを知っていますか? 30代 女性「つながりがあっても、自分は誰からも理解してもらえない。」 20代 女性「『つながり孤独』を感じすぎて、しんどかった時は、ああ死にたいと。」 インターネットを通じて、いつでもどこでも誰とでもつながることができる私たちの社会。その裏で、若者たちが感じる「孤独」。それが“つながり孤独”です。友だちもいるし、独りぼっちなわけでもないのに、なぜ?同じ悩みを抱える28歳、ディレクターのこの疑問から取材は始まりました。私たちは、番組のホームページやフェイスブックでご意見や体験談を募集。すると、200通以上の声が寄せられました。 20代 男性“知り合いの幸せそうな姿、夢や目標に向かって頑張っている姿を見て、自分は誰からも認められていないのではないかと、孤独を感じます。” 20代 女性“気軽に他人の近況をチェックできることによって、自分との差異がより明確になってしまい、孤独を感じます。” 20代 女性“SNSの投稿では、友だちが就職先の先輩と楽しそうにしているのです。自分とは違う状況がうらやましくなり、孤独感にさいなまれます。” “つながり孤独” 他人と比べてしまう… この声を寄せてくれた人を訪ねることにしました。アカネさん、20歳。高等専門学校を卒業後、地元の会計事務所で働いています。 アカネさん(20)「この子はたぶん、会社の人たちとディズニーランドに行ってる写真です。」 よく見るSNSはインスタグラム。自宅や職場で少しでも時間があるとチェックを欠かしません。アカネさんがよく見るのは、進学や就職で東京に引っ越した友だちの投稿です。都会での暮らしを生き生きと伝える写真や動画。それを見る度、アカネさんはどうしても自分と比較してしまうといいます。 アカネさん(20)「キラキラした写真っていうのが、あんなに近くにいた人たちがやっぱり違う世界にいるんだなっていうさみしさがあります。うらやましいっていう気持ちもありますし、自分と同じ人たちだったのに、こんなに差があるのか。」 つながり孤独に苦しんだ、アカネさん。もう見るのはやめようと、スマートフォンをたたきつけたこともありました。それでも、SNSから離れることはできません。 アカネさん(20)「『つながり孤独』を感じすぎて、しんどかった時は、ああ死にたいと。」 「死にたいとまで思ってたの?」 アカネさん(20)「はい。インスタグラムをやめちゃったら、もうつながりがなくなるのと一緒で、いつ会えるか分からないし、もう私のこと覚えてくれるかも分からない。SNSがあって当たり前の生活になってしまってるので、この孤独感はずっとつきまとうなって思ってる。」』、「“気軽に他人の近況をチェックできることによって、自分との差異がより明確になってしまい、孤独を感じます」というので、漸く理解できた。自分を確立する前に、SNSにひたると確かにあり得る話だ。
・『“つながり孤独” 本音が言えない  つながり孤独を訴える200通の声。SNSで本音を打ち明けることができないという悩みも多く寄せられました。 20代 男性“いまはSNSがあるので、自分の考えを表明できる環境はあるように思われますが、結局“本心”を隠すことになり、孤独を感じます。” 30代 女性“家族といても、職場で誰かと一緒にいても孤独を感じます。SNSでつながりがあっても、距離を感じます。” この声を寄せてくれた、リサさん、34歳。販売の仕事をしています。つながり孤独を強く感じたのが、去年(2017年)仕事に行き詰まり、フェイスブックに書き込んだ時のことでした。“もう、どうしたらいいか。今までで一番メンタルが低空飛行してる。” 「つらい心境を分かってほしい」。でも、リサさんは本当の気持ちを書き込むことはできませんでした。 リサさん(34)「ネットだから、文字だけでは分からないところもありますし、それで誤解を受けてしまうというところもあると思うんです。」 友達は励ましのコメントを寄せてくれましたが、表面的なやりとりで終わりました。相談できず、アドバイスも受けられない。リサさんは、結局仕事を辞めてしまいました。 リサさん(34)「職場とかSNSだとか、世界は昔に比べたら広くなってきているし、選択肢だって、いろいろとあると思うし。それでもやっぱり、つながりがあっても自分は誰からも理解してもらえないというか、孤独感を感じることをなくすというのは、たぶんないのかなって、この先。」』、「「つらい心境を分かってほしい」。でも、リサさんは本当の気持ちを書き込むことはできませんでした・・・仕事を辞めてしまいました」というのは、ネットに限らず、職場でも相談できる上司や同僚に恵まれず、本人自体も「殻に閉じこもる」性格だと大いにあり得る話だ。
・『変わる若者の孤独感  若者の悩みに、長年向き合ってきた人も“つながり孤独”の広がりを感じています。 本郷由美子さん。民間団体が認定する精神対話士の資格を持ち、16年間、孤独や生きづらさを抱える人たちのケアに取り組んできました。 大学3年生「もう少し深い関係の仲の友人を増やせたらなという思いはあります。」 学校や職場にとどまらず、インターネット空間でのつながりに悩み、コミュニケーションがとれない若者が増えている。本郷さんは、そう実感しています。 精神対話士 本郷由美子さん「10何年前っていうのは、集団の中ではみだしてしまうような立場に追いやられてしまって孤独を感じるっていう悩みを聞くことが多かったんですけど、(今は)たくさんつながってるけれども、本当に心を許せる人がいない。SNSよりも生身の人間に関わりたいっていうことをおっしゃっていて、でもその関わり方が分からないという風に苦しまれている。」』、私の場合でも、「本当に心を許せる人」というのはもともと数少ないものだ。しかも、仕事、生き方など分野別に分かれている。
・『“つながり孤独”って!? ただいま検討中  SNSで孤独を感じる、苦しい。 “つながり孤独”を訴える若者たちの切実な声に、私は20代のころの自分を思い起こしました。 武田:“つながり孤独”がピンと来ないっていうことは全くなくて、僕の若いころなんかは、例えば地方局で同期が良い仕事をして認められたとかなると、すごくうらやましく感じたし、他人の芝生が青く見える的な感覚っていうのは、若いころに本当によく感じましたね。よく分かります。SNSをよく使っている私は、自分も同じように感じることがあると思いながら、同世代の人たちを見ていました。 田中:見ている人みんな理解できるんじゃないかなと私は思って、3人グループがいたら、他の2人だけ一緒に遊んでいるのを見ちゃったら、あっとか思うとかって、そういうことっていっぱいあると思うんです。 武田:孤独って、すごくつらいじゃないですか。死にたくなるくらいつらいっていうことも分かる。ただ、やっぱり孤独って悪いことばかりじゃなくて、それを原動力として人とつながりたいと思うし、誰かを愛したいっていう気持ちにもなるだろうし、孤独はやっぱり僕は友だちだと思いますし。 田中:若者の状況が知りたいっていうことをすごい思ったんですね。何で生身の人間関係に逃げない?っていうか、行かないのかなって。悩みを持った時にっていうことをすごく思ってしまって。 武田:そういうのは、もしかして勝ち組の論理なのかもしれないけどね。 田中:だから私も毎回そうじゃないし、だけど、その勝ち組って今おっしゃいましたけど、そう思える人と思えない人は何が違うのかとか、そういうことを知りたい』、群れるだけではなく、孤独のなかで自分を高めることも大切だと思う。
・『“つながり孤独” 若者の胸のうち  ゲスト 菅本裕子(ゆうこす)さん(SNSアドバイザー・YouTuber・モテクリエイター) つながり孤独を感じる若者たちの胸のうちに、もっと迫りたい。私は、SNSの世界で活躍する、菅本裕子さんに会いに行きました。菅本さんは「モテクリエーター」を名乗り、SNSなどでファッションやメイクの情報を発信。「ゆうこす」の愛称で同世代の女性から支持を集め、SNSの総フォロワー数は100万人を超えています。 武田:実はこれ、みんなで見た時に、SNS上で孤独を感じたんだったら、なんで近くの生身の人間関係を充実させようとか思わないのかな? 菅本さん:私はSNSと現実世界だったら、やっぱ現実世界のほうに気を遣っちゃうんですね。たぶん私たち世代はSNSでコミュニケーションとるのに慣れすぎて、SNSで失敗したから現実っていうのは、なかなか行きづらいかもしれない。現実で失敗したからSNS(に逃げる)っていうのは分かるんですよ。だけどハードル低いところから急にまた高いところに挑戦していくの、なんか難しいかも。 武田:現実世界の方がハードルが高い? 菅本さん:全然高いです、私からすると。どうですか? 武田:いや、それは全然わかんない』、「私はSNSと現実世界だったら、やっぱ現実世界のほうに気を遣っちゃうんですね」というのは、さすが「SNSの総フォロワー数は100万人を超えています」だけある。人間的な広がり、社会との関わりがあってこそ、ファンが広がるのではなかろうか。
・『“接続過剰な日常”が若者を苦しめる  ゲスト 水無田気流さん(詩人・国学院大学経済学部教授) 私は、生きづらさや孤立についての著作もある、水無田気流さんに話を伺いました。 田中:いま若者が感じている“つながり孤独”、これを水無田さんは、どういうふうなものだと捉えていらっしゃいますか? 水無田さん:私は、SNSに日常的につながっていないとやりきれないというような、そういう若い人たちのあり方を、“接続過剰な日常”と言ってきたんですね。SNS上に出てくるキラキラした情報というのは、ほんの氷山の一角で、それ以外のところは、いろいろと悩みやゆがみを抱えていたり、あるいは、そういった問題が人に話せなくて困っているかもしれないんですよね。例えば座間で起きたSNS上に自殺願望を書き込んだ、特に女性たちを中心とした被害者が、殺人事件の被害者になるという痛ましい事件が起きましたけれども、SNS上で日常生活をリア充として「盛る」文化と、こういう自殺吐露のつぶやきというのは、表裏一体だと思うんですよね。自分の薄暗い部分、人はそういう部分あって当たり前なんですよね。ただ、そういう当たり前の暗くて薄暗くてドロドロした部分というのを、なかなか社会が容認できなくなってきている』、“接続過剰な日常”とは言い得て妙だ。
・『“つながり孤独” 心の病に苦しんで…  “つながり孤独”から心の病を患ってしまったという女性に出会いました。大学3年生のサクラさんです。双極性感情障害と診断され、心療内科に通っています。サクラさんがのめり込んでいたのは、16歳から始めたツイッターです。自分のつぶやきを読んでくれるフォロワーを増やすことに熱中し、つながった人は8,000人を超えました。 サクラさん(20)「承認欲求みたいな、人にたくさんフォローされることで、なんとなく認められてるみたいな。少なくとも『ひとりぼっちではない』、そういうのが欲しかったんだと思います。」 しかし、8,000人のフォロワーで、サクラさんのつぶやきに反応してくれる人はほとんどいませんでした。 サクラさん(20)「結局こんなに人がいても、自分に関心を持つ人は4〜5人しかいない。(SNSを)使う前は、誰とでもつながれるっていうので、携帯を持つことで(孤独から)救われるみたいな気持ちがあった一方で、持ってみると、結局そういうわけじゃなくて。SNSっていっても、使いこなせばこなすほど、限界が見える。つながりの限界。」 サクラさんは、8,000人とつながったアカウントを削除しました。しかし、SNSで誰かに気にかけてほしいという思いはなくならないといいます』、「8,000人のフォロワーで・・・自分に関心を持つ人は4〜5人しかいない」というのには驚いたが、そんなものなのかも知れない。。
・『ゆうこすが語るSNSといいね  SNSの総フォロワーが100万人を超す、菅本さん。サクラさんの話を、どう受け止めたんでしょうか。 菅本さん:自分が納得できたらいいじゃないですか、その頑張ってることに対して。だけど今は、頑張ってる過程に、今から一歩踏み出します、“いいね!ゼロ”。やっと頑張って達成しはじめました、“いいね!ゼロ”とかだと、もう数字がずっと常につけられてる感覚なので、やっぱそれはさみしいですよね。 武田:数字か。すぐ評価されますからね。でも自分が頑張っていれば、それでいいじゃんって思うんですけど。 菅本さん:本当はたぶんそうだと思うんですよ。だけど、もう今は(SNSを)みんなが持ってて、みんなが使ってるもので、それをしないことが逆に不自然っていう社会なので、常にここに数字が出ているようなものじゃないですか』、こんなところでまで、数字に追われるとはどう考えても馬鹿げている。ただ、そうさせてしまうのが、SNSなどの恐いところなのだろう。
・『孤独は社会問題 動き始めたイギリス  “つながり孤独”を社会の問題と捉え、対策に動きだしたのがイギリスです。孤独問題を担当する大臣を新設。300億円の基金も作りました。 イギリス トレイシー・クラウチ孤独担当大臣「高齢者の孤独の深刻さを理解するためには、かなりの作業が行われています。ですが、孤独の問題は高齢者だけでなく、すべての世代に広がっていることです。」 イギリスでは、孤独は心身の健康を損ねたり、職を失ったりすることにつながるなど、全ての世代に関わる深刻な問題と受け止められています。孤独な社会がもたらす経済損失は年間5兆円に上るという試算もあります。孤独を隠すのではなく、みんなで共有しようという取り組みもネット上で始まっています』、さすがイギリス、いい取り組みだ。
・『“つながり孤独” 私たちはどうすれば?  ゲスト 石田光規さん(早稲田大学文化構想学部教授) 私たちの社会は、孤独にどう向き合えばいいのか。現代の人間関係について研究を続ける、石田光規さんを訪ねました。 石田さん:心配されるのは、格差化されるだろうなっていう感じはするんですよね。つながりを持つ人はものすごい持ってて、持たない人は本当に持てないという形で、ものすごい自由になってしまうと、その自由を精いっぱい活かして、つながりをたくさん作ることが出来る人と、そうではなくて、つながりというところからあぶれてしまう人という形で、もっとはっきりしてきてしまうんじゃないのかなと。 武田:僕らの言うことも届かないし、向こうの言うこともあんまり理解できてないのかなと、すごく不安になるんですけど、どう乗り越えたらいいんですかね。 石田さん:もともとは(現代の若者は)ひとりというところから始まってるんだということを、もう少し理解してあげたほうがいいのかなと思うんですよね。一昔前であれば、つながりの中にある程度、包摂(ほうせつ)されていたから、そんなに別につながりのこと、あれこれ言う必要なかったんですけれども、現在の若い世代は、そういったものが非常に緩くなってしまっているので、ある意味、課題みたいなものを背負ったまま、今の若い人っていうのは育ってきてると思うので、そういった状況というのを理解した上での言葉っていうのが必要なのかな。 SNS総フォロワー100万人の菅本さんは、ネットの中に自分の居場所を見つけることを勧めます。 菅本さん:孤独を感じるのもSNSだけど、孤独を癒すのもSNSなのかなと。ちょっとは自己中心的になる必要性があるなと思ってて、SNSの中では。人に合わせる合わせるだけだったら消費されてって、どんどん孤独になってっちゃうから。私はこうです、ああです、これが好きで、こういうことに興味がありますって言うことで、ほかのSNS上の人たちが話しかけやすくなって、仲間が見つけやすくなって、そこに居場所ができて、コミュニティーができてってなったら、たぶん他でうらやましいなと思っても、私にはここに友だちがいるし、居心地がいいし、そんなになんか疲れることもなくなっていくんじゃないかな。 孤独を感じる時間も大切なもの。水無田さんはそう話します。 水無田さん:孤独というのは悪いところだけでもない。孤独というのをポジティブな面から自分と対話する時間だと思って、少し自分を直視するということもトレーニングしてみたらいいのではないかなと思いました』、水無田さんの指摘は、私がさきほどコメントしたことに近く、その通りだ。
・『田中:本当に今もまさにヒントだと思うんですけど、それができればいいんですけど、できないっていう人がつながりをやめて自分の内省ができないっていう人が、かなり今、多くなっている。 水無田さん:つらいんだったら普通はやめなさいというアドバイスになると思うんですよね。でも、別にやめることができないんだったら、それはしょうがない。そういったダメなところも含めて、自分を認めてあげよう。不安とか孤立感、孤独感を感じたにしても、それは一時のものですよね。なので、今、感じていることを認めてあげた上で、でも、それは永遠ではないということを知ることも必要じゃないかと思います。 田中:私たちが生きる日々は、みんな決してキラキラしているばかりではありません。今回の取材を通じて、孤独に悩み、苦しみもがいている人たちが表に見えにくい形で私たちの周りにいることに、改めて気付かされました。 武田:“つながり孤独”は、家族・会社・地域といったしがらみではなく、個人として自由に人とつながることを求めてきた私たちが、その自由と引き換えに抱え込むことになった孤独なのかもしれません。そう考えますと、若者だけの問題ではないと感じます。 田中:こうした人たちの声に、これからも向き合っていきたいと思います』、「個人として自由に人とつながることを求めてきた私たちが、その自由と引き換えに抱え込むことになった孤独なのかもしれません。そう考えますと、若者だけの問題ではないと感じます」というのは、その通りなのかも知れない。学校の道徳では、こうしたSNSとの付き合い方こそ取上げて、皆で考えさせるべきだろう。
タグ:匿名 東洋経済オンライン ネット社会 菅本裕子 本田 雅一 NHKクローズアップ現代+ (その1)(「低能先生」を凶行に駆り立てたネット民の闇 匿名コミュニティによる正義追求の恐ろしさ、“つながり孤独” 若者の心を探って…) 「「低能先生」を凶行に駆り立てたネット民の闇 匿名コミュニティによる正義追求の恐ろしさ」 人気ブロガー「Hagex」ことネットセキュリティ会社勤務の岡本顕一郎さんが殺害 無職・松本英光容疑者 岡本さんは、自身のブログの中で、「低能先生」として知られる松本容疑者の行為を問題視し何度か取り上げていた 松本容疑者はこれを逆恨みして犯行及んだ 現実社会では接点がまったくなかった 松本容疑者は頻繁に迷惑行為を行っていた 「低能先生」とは、自分が気に入らないコメントを残している人物にIDコールで罵詈雑言を送るのである 迷惑行為を繰り返すため、「低能先生」のアカウントは何度もアカウント削除されたが、それでも毎回、新しいIDを作成して同じ行為を繰り返していた 通報厨が生まれるきっかけを作った、しかも誰なのかを特定できているHagex氏にターゲットを絞ったと考えられる 追い込まれていった構図 ネット弁慶な人 パソコン通信サービス時代 複数の匿名利用者から集団リンチを受けているように感じていたのではないだろうか 自分に対する攻撃が繰り返されているうち、ネット社会における自分の人格を取り巻くすべてが敵に見え、まるで結託しているかのように思えるのだ 「追い詰めないこと」が大切 不足する情報を人間は推測で補完しようとする 現実社会よりも圧倒的に情報が少ない中で補完する情報が過大になってくると、事実関係と自分自身の認識の乖離が進み、さらに追い込まれていくのだ 「“つながり孤独” 若者の心を探って…」 “多くの人とでつながっているのに孤独”という、“つながり孤独” SNSで友だちの暮らしを見て劣等感を抱く SNSでのつながりの薄さに孤独を感じる “知り合いの幸せそうな姿、夢や目標に向かって頑張っている姿を見て、自分は誰からも認められていないのではないかと、孤独を感じます 気軽に他人の近況をチェックできることによって、自分との差異がより明確になってしまい、孤独を感じます つながり孤独』を感じすぎて、しんどかった時は、ああ死にたいと “つながり孤独” 本音が言えない 本当の気持ちを書き込むことはできませんでした 相談できず、アドバイスも受けられない。リサさんは、結局仕事を辞めてしまいました 変わる若者の孤独感 たくさんつながってるけれども、本当に心を許せる人がいない。SNSよりも生身の人間に関わりたいっていうことをおっしゃっていて、でもその関わり方が分からないという風に苦しまれている 若者の胸のうち 「ゆうこす」の愛称で同世代の女性から支持を集め、SNSの総フォロワー数は100万人を超えています 私はSNSと現実世界だったら、やっぱ現実世界のほうに気を遣っちゃうんですね たぶん私たち世代はSNSでコミュニケーションとるのに慣れすぎて、SNSで失敗したから現実っていうのは、なかなか行きづらいかもしれない “接続過剰な日常”が若者を苦しめる “つながり孤独”から心の病を患ってしまったという女性 8,000人のフォロワー 自分に関心を持つ人は4〜5人しかいない “いいね!ゼロ”とかだと、もう数字がずっと常につけられてる感覚なので、やっぱそれはさみしいですよね 孤独は社会問題 動き始めたイギリス 孤独問題を担当する大臣を新設。300億円の基金も作りました 孤独な社会がもたらす経済損失は年間5兆円に上るという試算も 私たちはどうすれば? 現在の若い世代は、そういったものが非常に緩くなってしまっているので、ある意味、課題みたいなものを背負ったまま、今の若い人っていうのは育ってきてると思うので、そういった状況というのを理解した上での言葉っていうのが必要なのかな 孤独というのは悪いところだけでもない。孤独というのをポジティブな面から自分と対話する時間だと思って、少し自分を直視するということもトレーニングしてみたらいいのではないかなと思いました 個人として自由に人とつながることを求めてきた私たちが、その自由と引き換えに抱え込むことになった孤独なのかもしれません。そう考えますと、若者だけの問題ではないと感じます
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外国人労働者問題(その8)(在ベトナム日本大使館員が告発 外国人実習生の悲惨な実態、小田嶋氏:シャイロックにだってそりゃ無理だ) [経済政策]

昨日に続いて、外国人労働者問題(その8)(在ベトナム日本大使館員が告発 外国人実習生の悲惨な実態、小田嶋氏:シャイロックにだってそりゃ無理だ)を取上げよう。

先ずは、11月9日付け日刊ゲンダイ「在ベトナム日本大使館員が告発 外国人実習生の悲惨な実態」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/241236/1
・『安倍政権は今国会で入管法を改め、来年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大をもくろんでいる。現状でも外国人技能実習制度が悪用され、「実習生」は低賃金で過酷な労働を強いられているのも、お構いなし。耐えかねた実習生の失踪は年間7000人超。ベトナムは最多の12万人の技能実習生を日本に送り出しているが、現地の日本大使館の現役書記官までが「ベトナムの若者の人生をメチャクチャにしている」と警鐘を鳴らしている』、これは聞き捨てならない。
・『大使館にとって最重要課題  安倍首相は臨時国会の所信表明演説で「入管法改正」を訴えた中で、半年前に来日したベトナムのクアン国家主席(9月21日死去)との会話を取り上げた。 「(クアン主席が)来日の際、訪れた群馬の中小企業では、ベトナムの青年が、日本人と同じ給料をもらいながら一緒に働いていた。そのことをクアン主席は大変うれしそうに私に語って下さった」』、ベトナムの国家主席が訪問する事業所であれば、当然、最も模範的なところを選び、応答も事前に振付をする、完全な「ヤラセ」だろう。
・『7日の参院予算委員会で小池晃議員(共産)は「群馬のケースはごく一部だ」と指摘しながら、紹介したのは在ベトナム日本大使館がリリースしたセミナーの記事だ。 10月13日にベトナム・ハティンで開催された日越人材育成交流会。訪日希望の学生や教育関係者ら240人が参加した。日本大使館を代表して桃井竜介1等書記官があいさつ。多くのベトナムの若者が日本で働いていることを喜びつつ、こう語ったのだ。<ベトナムは(日本での)技能実習生の失踪者数、犯罪検挙件数がワースト1位。ベトナムの若者は決して最初から犯罪をしようと思って日本に行っているのではなく、犯罪をせざるを得ない状況に追い込まれています。ベトナムそして日本において、悪徳ブローカー、悪徳業者、悪徳企業が跋扈しており、ベトナムの若者を食い物にしています> <日本におけるベトナムのイメージ、そしてベトナムにおける日本のイメージが悪化することを懸念しています。本問題は大使館にとって最重要課題です> あいさつをした桃井書記官に改めて話を聞くと、「ベトナムだけでなく、日本側の受け入れる管理団体や企業にも悪いところはあると思います」と語った。技能実習生の現状を見るに見かねた大使館の異例の“あいさつ”ではないか。 小池氏に見解を聞かれた河野太郎外相は「ベトナム国内で、ベトナムの若者の夢を損なうようなブローカーが跋扈していることは重大な課題だ」と、あえてベトナム側の問題だけに言及』、1等書記官がセミナーで、マイナスの側面もあることを警告したのは、長い目での日越親善を図る上では、当然のことだ。
・『安倍首相も河野外相も、都合のいい一部だけを見て、日本が悪い悲惨な実態からは目をそらす。そうして、外国人労働者受け入れ拡大に前のめりになっているが、半年でマトモな受け入れ態勢を築くのは不可能だ。 例えば、ベトナム人実習生は12万人もいるのに、厚労省には、ベトナム語ができる相談員はたったの1人しかいない。週2回、面談や電話で相談を受けているというから、あまりにもショボ過ぎる態勢だ。 小池氏は「来年の4月までに、これだけの問題が山積しているものが解決できるのか。決意だけ語って、ボロボロの臨時国会で通すなど許されない」と法案の撤回を求めた。 見切り発車で外国人労働者を拡大すれば、国際社会における日本のイメージは奈落の底だ』、さすが共産党だけあって、痛いところを突いた質問と主張だ。他の野党も見習うべきだ。ただ、1等書記官が「政府方針に反して、余計なことを言った」として、左遷されないかが心配だ。もっとも、「本問題は大使館にとって最重要課題」ということであれば、大丈夫なのかも知れない。

次に、コラムニストの小田嶋 隆氏が11月9日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「シャイロックにだってそりゃ無理だ」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/110800166/?P=1
・『移民をめぐる議論が沸騰している。 話をはじめる前に、まず「移民」という言葉の定義をはっきりさせておかないといけない。 というのも、「移民」という言葉の周辺には「難民」や「外国人労働者」や「技能実習生」、さらには「不法滞留外国人」や「留学生」や「在日外国人」といった少しずつ違う立場の人々がいるからでもあれば、「移民」をめぐる議論が、それら周辺にいる人々を同一視する粗雑な論争に発展しがちなものでもあるからだ。 無用の混乱を避けるためには、とにかく「移民」という言葉が指し示す人間の範囲を、できる限り明示しておく必要がある。 「移民」は「国際連合広報センター」が説明しているところによれば、《国際移民の正式な法的定義はありませんが、多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意しています。3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的です。--国連経済社会局》ということになっている。 これに対して、「難民」は《難民とは、迫害のおそれ、紛争、暴力の蔓延など、公共の秩序を著しく混乱させることによって、国際的な保護の必要性を生じさせる状況を理由に、出身国を逃れた人々を指します。難民の定義は1951年難民条約や地域的難民協定、さらには国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)規程でも定められています。--国連難民高等弁務官事務所》と説明される。 もっとも、国連のこのページの解説が冒頭で自ら「国際移民の正式な法的定義はありませんが」と断り書きしている通り、「移民」という用語について、国際的に明確な定義が共有されているわけではない。 ということはつまり、「移民」のつもりで入国した人間が、行きずりの異邦人として冷遇されたり、逆に一時滞在のつもりで入国した外国人がその国の人間に「移民」として敵視されることも起こり得るわけで、結局、この言葉は、それぞれの国なり地域の人間たちが抱いている「余所者」への偏見や期待を体現した、どこまでも中途半端で、曖昧な言葉なのかもしれない』、なるほど。
・『さて、2016年(平成28年)5月24日、自民党政務調査会の労働力確保に関する特命委員会がとりまとめた報告書「『共生の時代』に向けた労働者受入れの基本的考え方」の注記の中で、「移民」を次のように定義している。《「移民」とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の 在留資格による受入れは「移民」には当たらない。》 自民党および政府の解釈では、一般的な技能実習生や外国人就労者は、「移民」ではないことになる。さらに言えば、日本国内で何年働いていようが、納税をしていようが、入国の時点であらかじめ永住権を持っていないのであれば、日本政府としては彼らを「移民」には分類しないということでもある。 してみると、コンビニで働いている留学生や日本のプロ野球で活躍している外国人選手はもちろん、日本企業に正式に就職して10年以上働いて家族を呼び寄せて子供たちを日本の学校に通わせている外国人であっても、この定義上は「移民」に数えられないわけだ。 10月のはじめの国会審議の中で、「安倍政権は、いわゆる移民政策を取ることは考えていない」と言った安倍晋三首相の答弁は、この時の「移民」の定義から導き出された言葉であったはずだ』、安倍政権が外国人就労者を「移民ではない」と強弁している根拠が、自民党の委員会がまとめた報告書にあったとは、初めて知った。しかし、国際的常識を外れた、勝手な独自見解であることは確かだ。
・『政府は、人手不足解消のために、今後、出入国管理法(入管法)を改正して、外国人労働者の受け入れ枠を増やすつもりでいる。しかしながら、その外国人労働者拡大政策を「移民政策」として扱われることに対しては、断じて抵抗するということなのだろう。 一方において「移民」の定義のハードルを上げつつ、他方で外国人労働者流入のハードルを下げれば、なるほど、統計数字の上では「移民」の数を増やさないままの状態で、労働現場に外国人労働者を大量に供給することが可能になるわけで、そうすれば、見かけ上は移民政策を採用せずに労働者不足を補うことができる。 しかし、その「見かけ上の純血国家」は、いったい誰のための看板なのだろうか。 自分たちの国が、日本人の日本人による日本人のための国家であることをいつまでも信じていたい忠良な人々の脳内に展開されている、幻想上の国体観のためであろうか。 でも、実態として街に外国人が溢れ、立ち寄った小売店のカウンターに外国人が立ち、子供たちの学校にカタカナ名前の同級生が同席している流れは、既に起こってしまっている変化でもあれば、この度の入管法の改正案によって、さらに加速化される傾向でもある。 われわれは、実態として、すでに移民国家に片足を踏み入れつつある』、「幻想上の国体観のため」にこんな実態からかけ離れた、都合のいい解釈をするとは、国際的には全く説明不可能だ。
・『そうでなくても、労働市場は外国人依存の度合いをより深めようとしている。  にもかかわらず、安倍首相が「移民政策は取らない」と断言するのは、いったい誰のためにそう言っているアナウンスなのだろうか。 私は、首相の言葉をどうしてもうまく了解することができない。 個人的な話をすれば、私は、日本が移民国家になるべきであるのかどうかについて、いまだに自分の中で確たる答えを見いだせずにいる。 あちらを立てればこちらが立たずで、迷う要素ばかりが心にひっかかる。だから、鎖国論にも開国論にも全力では乗れずにいる。 ただ、開国するなら開国するで、日本に来てくれる外国人には、日本人と同等の権益を保証すべきだと思うし、あらゆる点で彼らが暮らしやすい条件を整えるべきだとは思っている。 逆に、移民の流入がもたらすリスクを避けたいのであれば、外国人労働者の労働力をあてにすることは、潔く諦めなければならないはずだとも考えている。 つまり、労働者として利用する一方で、市民社会のメンバーとしての権益は与えないと宣言しているように見える現状の政府の方針には賛成できないということだ』、正論である。
・『11月7日の衆院予算委員会で、山下貴司法相は外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案に関連して、失踪した外国人技能実習生の87%が「現状の賃金などへの不満」を理由に挙げたことを明らかにしている。 なにげなく紹介されているデータだが、この87%という数字が示唆している状況はなかなか深刻だ。 そもそも、「外国人技能実習生」について言われている「失踪」という言い方が妥当なのだろうか。 私見を述べるなら、むしろ、「脱走」と表現したほうが適切な感じがする。 ともあれ、結果として「失踪」した実習生が、行方をくらまさずにおれないほどの低賃金で労働していた調査結果があることは認めざるを得ない。 とすれば、政府としては「外国人技能実習生制度」が、「技能実習」の名のもとに、海外からやってきた青年たちに、職業選択の自由がなく、寝泊まりする場所も選べず、低賃金を強いる、奴隷労働的な枠組みであった実態を直視して、その改善に乗り出さねばならないはずだ』、「奴隷労働的な枠組み」とは、極めて的確な表現で、日本人としては恥ずかしい限りだ。
・『が、政府は、そうするつもりを持っていない。それどころか、入管法を改正することで、外国人への単純労働の丸投げ枠を拡大する意図を明らかにしつつある。 少子高齢化に歯止めがかからない現状で、わが国の労働市場が、労働力不足に陥っていることは周知の事実だ。 とすれば、その労働力不足を補うべく、外国人労働者の受け入れ枠を拡大することは、必然と言って良い施策なのだろう。ここまではいい。 私が、理解できないのは、ことここにおよんでいけしゃあしゃあと「移民政策は取らない」と明言してしまえる神経のあり方だ。 いったい、政府は、この答弁を通じて、いかなる方針を示唆しているのだろうか。 つまり、「労働力は輸入するけど、移民は受け入れないよ」ということだろうか。あるいは「働き手として入国させつつも、人間的な生活はさせない」「働く外国人は歓迎するが、その外国人が家族を呼び寄せて日本で子孫を残すことは許さない」「労働する外国人が、日本の社会の中で労働以外の生活を営むことには賛成しない」「外国人労働者が勤労者として富を生み出すことは応援するが、彼らが生活者として生活することには必ずしも共感しない」「労働環境は保証するけど、人権は保証しない」「給与は与える一方で、生活は与えない」「生存は保証するが、永住するに足る資産形成は許さない」「利用はするがリスペクトはしない」ってなことだろうか。 いや、言い過ぎなのはわかっている。いまここに書いた10行ほどは、撤回してもかまわない。 ただ、「外国人労働者の受け入れ枠は拡大するが、いわゆる移民政策は取らない」とする安倍首相の答弁が、「人間」でなく「労働力」だけを輸入する意図を物語ってしまっている事実は動かせない。 そんなことは不可能だ』、手厳しく、本質を突いた指摘は、さすがだ。
・『強欲な金貸しのシャイロックが、借金の担保として、心臓のまわりの肉1ポンドを、一滴の血も流さずに手に入れることができなかったのと同じように、いかな晋三のまわりの人間たちとて、生身の人間から商品としての労働力だけを抽出して売買することはできない。あたりまえの話だ。 アメリカでは、トランプ大統領が、移民阻止のために軍隊を出動させている。中米ホンジュラスからメキシコを縦断してアメリカを目指す「キャラバン」と呼ばれる人々に対応するための派遣した軍隊に「忠実な愛国者」、“Operation Faithful Patriot” という作戦名を与えている。 11月7日、米国防総省はこのあからさまに扇情的な作戦名を、今後は使わない旨を発表した。 トランプ陣営が、中間選挙の投開票が終わった7日になってから作戦名の変更を告知したことは、とりもなおさず、「移民キャラバン」の脅威と、それに立ち向かう「忠実な愛国者」としての自分たちの活躍ぶりを選挙のためのイメージ戦略として利用したことを証明している。 移民は利用される。労働力として経済的に利用されることはもちろん、スケープゴートとして政治的に利用されることもあれば、仮想敵として社会的な不満の持って行き場にされることもある。 どう扱うにせよ、私たちのような島国の人間が、外国人に対して平常心で向き合えるようになるまでには、一定の時間がかかる。つまり、開国か鎖国かのいずれの結論を出すのであれ、拙速にコトを進めるやり方だけは避けるべきだ。 現状の政府の方針は、ウソがバレバレであり、かつ拙速であると言わざるを得ない。 大切なことや難しい課題に対しては、賢く、かつ、中途半端な態度を堅持しなければならない。 はなはだ中途半端な結論だが、私はそう思っている』、タイトルの意味が漸く理解できた。説得力溢れる主張で、大賛成だ。
タグ:日刊ゲンダイ 日経ビジネスオンライン 外国人労働者問題 小田嶋 隆 (その8)(在ベトナム日本大使館員が告発 外国人実習生の悲惨な実態、小田嶋氏:シャイロックにだってそりゃ無理だ) 「在ベトナム日本大使館員が告発 外国人実習生の悲惨な実態」 外国人技能実習制度が悪用 「実習生」は低賃金で過酷な労働を強いられている 実習生の失踪は年間7000人超 ベトナムは最多の12万人の技能実習生を日本に送り出している ベトナムのクアン国家主席 来日の際、訪れた群馬の中小企業では、ベトナムの青年が、日本人と同じ給料をもらいながら一緒に働いていた。そのことをクアン主席は大変うれしそうに私に語って下さった 「ヤラセ」 は在ベトナム日本大使館 セミナーの記事 日越人材育成交流会 桃井竜介1等書記官があいさつ ベトナムは(日本での)技能実習生の失踪者数、犯罪検挙件数がワースト1位。ベトナムの若者は決して最初から犯罪をしようと思って日本に行っているのではなく、犯罪をせざるを得ない状況に追い込まれています ベトナムそして日本において、悪徳ブローカー、悪徳業者、悪徳企業が跋扈しており、ベトナムの若者を食い物にしています 本問題は大使館にとって最重要課題です 安倍首相も河野外相も、都合のいい一部だけを見て、日本が悪い悲惨な実態からは目をそらす 外国人労働者受け入れ拡大に前のめりになっているが、半年でマトモな受け入れ態勢を築くのは不可能だ 見切り発車で外国人労働者を拡大すれば、国際社会における日本のイメージは奈落の底だ 「シャイロックにだってそりゃ無理だ」 「移民」という言葉の定義 国際連合広報センター 国際移民の正式な法的定義はありませんが、多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意しています。3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的です 難民とは、迫害のおそれ、紛争、暴力の蔓延など、公共の秩序を著しく混乱させることによって、国際的な保護の必要性を生じさせる状況を理由に、出身国を逃れた人々を指します。難民の定義は1951年難民条約や地域的難民協定、さらには国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)規程でも定められています 2016年(平成28年)5月24日、自民党政務調査会の労働力確保に関する特命委員会 報告書「『共生の時代』に向けた労働者受入れの基本的考え方」 「移民」とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の 在留資格による受入れは「移民」には当たらない 「移民」の定義のハードルを上げつつ、他方で外国人労働者流入のハードルを下げれば、なるほど、統計数字の上では「移民」の数を増やさないままの状態で、労働現場に外国人労働者を大量に供給することが可能に 見かけ上は移民政策を採用せずに労働者不足を補うことができる 「見かけ上の純血国家」 自分たちの国が、日本人の日本人による日本人のための国家であることをいつまでも信じていたい忠良な人々の脳内に展開されている、幻想上の国体観のためであろうか 実態として街に外国人が溢れ 実態として、すでに移民国家に片足を踏み入れつつある あちらを立てればこちらが立たずで、迷う要素ばかりが心にひっかかる。だから、鎖国論にも開国論にも全力では乗れずにいる 開国するなら開国するで、日本に来てくれる外国人には、日本人と同等の権益を保証すべきだと思うし、あらゆる点で彼らが暮らしやすい条件を整えるべきだとは思っている 移民の流入がもたらすリスクを避けたいのであれば、外国人労働者の労働力をあてにすることは、潔く諦めなければならないはずだとも考えている 失踪した外国人技能実習生の87%が「現状の賃金などへの不満」を理由に挙げた 「失踪」した実習生が、行方をくらまさずにおれないほどの低賃金で労働していた調査結果があることは認めざるを得ない 政府としては「外国人技能実習生制度」が、「技能実習」の名のもとに、海外からやってきた青年たちに、職業選択の自由がなく、寝泊まりする場所も選べず、低賃金を強いる、奴隷労働的な枠組みであった実態を直視して、その改善に乗り出さねばならないはずだ 「労働力は輸入するけど、移民は受け入れないよ」 「働き手として入国させつつも、人間的な生活はさせない」 労働環境は保証するけど、人権は保証しない いかな晋三のまわりの人間たちとて、生身の人間から商品としての労働力だけを抽出して売買することはできない 移民は利用される 労働力として経済的に利用されることはもちろん、スケープゴートとして政治的に利用されることもあれば、仮想敵として社会的な不満の持って行き場にされることもある 私たちのような島国の人間が、外国人に対して平常心で向き合えるようになるまでには、一定の時間がかかる 開国か鎖国かのいずれの結論を出すのであれ、拙速にコトを進めるやり方だけは避けるべきだ
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