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物流問題(その5)(ヤマト水増し請求は「起こるべくして起こった」と言える理由、ヤマト「社外秘資料」入手!代金着服、事故隠蔽…不正・懲戒の実態、消える内航船 静かに進む「海の物流危機」 船員の過半数が50歳超でも「外国人はノー」) [産業動向]

物流問題については、昨年10月5日に取上げた。1年以上経った今日は、(その5)(ヤマト水増し請求は「起こるべくして起こった」と言える理由、ヤマト「社外秘資料」入手!代金着服、事故隠蔽…不正・懲戒の実態、消える内航船 静かに進む「海の物流危機」 船員の過半数が50歳超でも「外国人はノー」)である。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が8月2日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ヤマト水増し請求は「起こるべくして起こった」と言える理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/176253
・『ヤマトホールディングスの子会社で、顧客への水増し請求が問題になっている。この一件のみならず、近年は神戸製鋼や東芝、電通など、日本を代表する大企業で粉飾や水増し請求などの不正が次々に発覚している。そこには、昭和型企業理念をいまだに引きずっている日本企業に共通する闇がある』、「共通する闇」とは何だろう。
・『個々人の社員の独断はあり得ない ヤマト水増し請求の闇  「宅配クライシス」にあえぐ流通界の巨人が、今度は「水増しクライシス」でも足元が揺らぎはじめている。 ヤマトホールディングスの子会社・ヤマトホームコンビニエンス(以下、YHC)が法人向け引越し代金を水増し請求していた問題だ。当初は4.8万件で17億円といわれていた水増しが、5年前までさかのぼって調査をしたところ、2倍以上の31億円にも上ることが分かったという。 この問題を指摘した同社の元支店長・槙本元氏は先月27日に国土交通省で会見を行い、過大請求は2010年ごろから行われていて、「17億円より膨らむはず」という見方を示していたが、まさにその通りになったわけだ。この流れでいけば、2010年からざっと40~50億円の水増し請求が行われていた可能性もある。 ヤマトホールディングスの山内雅喜社長は、「会社として組織としてこのような指示をしたことはない」(日本経済新聞2018年7月24日)と釈明をしているが、個々の社員が「今月は目標未達で苦しいからちょっと上乗せしちゃえ」と魔が差すくらいでは、ここまで膨大の数の不正にはならないはずだ。 指示はしていないという言葉を信じるのなら、YHCという組織全体が「どうせお客もそこまで厳しくチェックしないんだから、乗っけられるだけ乗っけておけ」というボッタクリ文化に毒されていたとしか考えられないのだ。 では、なぜここまでのモラルハザードが起きてしまったのか。 調査委員会が原因を究明しているということなのでそれは待ちたいが、個人的には恐らくその調査報告書にも掲載されないであろう、「根本的な原因」がひとつ思い当たっている』、「ボッタクリ文化に毒されていた」とは手厳しいが、「根本的な原因」とは何なのだろう。
・『昭和な社訓のゴリ押しが組織を殺す  それは「ヤマトは我なり」だ。「何だそれ?」という方のために説明をすると、1931年に制定されたヤマトグループの社訓の一番頭にくるもので、ヤマトホールディングスホームページには以下のように紹介されている。《社員一人ひとりの「和」の力、「協力・結束・調和」が、ヤマトグループの企業としての力を生み出します。この「自分自身=ヤマトという意識を持ちなさい」という言葉は、ヤマトグループの全員経営の精神を表しています》 この言葉からもわかるように、ヤマトグループで働く人たちにとって、「ヤマトは我なり」というのは、「全国約4千の拠点で毎朝唱和する社訓の1つ」(日経MJ2016年5月16日)であり、それ以上に、常に心の真ん中に置くべき、極めて重要なものの考え方なのだ。 そんなヤマトの社訓と「過大請求」とが一体、どう関わってくるのだ、と首をかしげる方も多いかもしれないが、実は大いに関係している。 「全員経営」というのは、かの松下幸之助も掲げた日本型企業文化の根幹をなす考え方である。高度経済成長期のように、人口が右肩上がりでイケイケドンドンの時期には、一定レベル以上のサービスや商品を提供できる大企業は、ガバナンスが崩壊しないかぎり、自然と「結果」がついてきた。だから、昭和の組織は「協力・結束・調和」を一番大切なこととして掲げたのである。 ただ、時代が変われば当然、考え方も変わらなくてはいけないのだが、ヤマトグループをはじめ、多くの大企業はいまだに、この「全員経営」をまるでお題目のように唱え続けている。 これはかなりマズい事態を引き起こす。 人口減少でさまざまなシステムの見直しをしなければならないのに、高度経済成長期の思考を毎朝唱和させられれば、高度経済成長期の思考に凝り固まってしまう。当然、現代の問題は解決できない。それでもなお、「協力・結束・調和」という精神論を振りかざせば、「みんなのため」の名のもとに社員を酷使するブラック企業になるか、「みんなで協力して不正をする」というダークサイドへ堕ちるしかないのである』、なるほど、ある程度理解できた気がする。
・『低成長時代に全体主義を掲げると水増しや粉飾が常態化する理由  ご存じのように、ヤマトはドライバー不足などの厳しい問題で業績が悪化している。このように「結果」が出ていない組織の「全員経営」は、「全員不正」になってしまう恐れがあるのだ。 実はこのように「一人ひとりの力を結集して運営にあたる組織」というのは、「結果」が出ているうちは「one for all,all for one」なんて感じで互いにミスをフォローしたりといいこと尽くめなのだが、ひとたび「結果」が出なくなってくると、誰に命じられるわけでもなく、互いのミスをフォローし合うかのように、自発的に「水増し」や「粉飾」などに走る傾向があるのだ。 いい加減なことを言うなとお叱りがくるかもしれないが、過去に国家ぐるみで「全員経営」を掲げた人たちの失敗が、その真理を雄弁に語っている。旧ソ連だ。 「神戸製鋼『不正40年以上前から』証言で注目すべきソ連との関係」の記事でも触れたが、この国では、「計画経済」が行き詰まってくると、以下のように社会のさまざまなところに「粉飾」や「水増し」が横行した。 「水増しソ連経済統計 国民所得6倍を90倍 国内誌が実態暴露」(読売新聞1987年2月7日) 役所、工場、企業…さまざまな組織で、さまざまな人たちが、誰に命じられるわけでもなく、自発的に不正に手を染めたのである。ただ、ちょっと考えればそれも当然である。 「計画経済」というものは、ソ連人民一人ひとりが力を結集すれば計画通りに物事が進む、という考えに基づいているので、結果が出ないなどあり得ない、ということになる。当然、計画達成は至上命令なので、それができない工場長は責任を問われ、罰則や制裁も加えられた。 とはいえ、経済が計画通りに進むのなら、今の日本もこんな有様にはなっていない。旧ソ連も同様で、さまざまなところで計画通りの結果が出ないという事態が起こった。こうなると、責任者が吊し上げられるのはもちろんだが、組織構成員たちも肩身が狭い。 では、「みんな」が助かるために何をすればいいか。一人ひとりが力を結集させて、「粉飾」や「水増し」という不正を行うことで、破綻を覆い隠せばいいという結論になりがちだ』、旧ソ連の計画経済を引き合いに出すのは、やや違和感もあるが、面白い見方だ。
・『全体主義そのものだった旧ソ連でも水増しや粉飾が横行していた  つまり、旧ソ連の企業や工場などが「水増し」や「粉飾」という「不正の温床」となったのは、計画経済の破綻によって、「ソ連は我なり」という「全員経営」がマイナスの方向へ思いっきり舵を切って、「全員不正」になってしまったと見ることができるのだ。 「ヤマトは我なり」という「全員経営」を掲げるこの組織にも、旧ソ連と似た問題が起きていた可能性は高い、と筆者は考えている。こちらにも「計画経済」の行き詰まりが見えるからだ。 「YHCの18年3月期の営業利益は5億2200万円で、過大請求分を差し引くと赤字に陥っていた可能性がある」(毎日新聞2018年7月24日)  調査委員会の報告でいずれ明らかになるだろうが、もし仮にYHCで、「水増し請求」によって辛うじて「結果」を出すということが常態化していたのなら――。罰則や制裁を恐れ、実績を水増ししていた旧ソ連の工場や企業の姿と丸かぶりではないか。 バカバカしいと思うかもしれないが、YHCや旧ソ連が同じ病にかかっていたというのは、両者のモラルの壊れっぷりを見ても明らかだ。 前出・槙本氏は2010年頃から幾度となくこの問題を内部告発したが、会社は取り合ってくれなかったという。また、水増し請求をしている人間をいさめたが、「みんなやっているじゃないですか」と逆ギレされ、ほどなくして同じようなことを繰り返したと証言している。 これは旧ソ連もまったく同じだ。たとえば1984年、ソ連企業庁の担当者が、生産報告を日本円で約5億7000万円水増ししていたとして処分された。だが、ほどなくして驚くべき事実も発覚した。なんとこの担当者は3年前、2年前にも同様に水増しをしていたが、同じ企業庁内で、同じ職にとどまっていたというのだ』、なるほど。
・『神戸製鋼、電通、東芝…全体主義企業の相次ぐ不正  どういうことか。この問題を報道している「読売新聞」のモスクワ特派員の言葉がすべてを物語っている。 「うがった見方をすれば、少々の水増しは必要悪と目をつぶるのがソ連経済の体質かもしれない。ただひたすら、計画達成だけを目標にする経済活動の弊害が、かい間見えるようだ」(読売新聞1984年6月29) 厳しい業績状況や槙本氏の証言から、このような体質がYHCにもあったのではないかということは容易に想像できよう。 そして、もうお気づきだろうが、「計画達成だけを目標にする経済活動の弊害」というのは、残念ながらヤマトグループだけにとどまらず、日本のあらゆる「大企業」に見てとれる。 「世界一の鉄鋼技術」を掲げていた神戸製鋼は、経営陣の指示がなくても現場の判断で40年近くデータの「粉飾」を行っていた。世界で五指に入る広告代理店・電通では、ネット広告の効果を「水増し」してクライアントに報告し、過大請求を行っていた。そして、東芝では経営陣が「チャレンジ」の名のもとで、現場に対して、旧ソ連も真っ青の「計画経済必達」を命じ、やはり旧ソ連の工場長らと同じように、各部門が自発的に利益の「水増し」を行っていた。 無理にこじつけているわけではなく、ここ数年で発覚している名門企業の不正が発生するプロセスというのは、すべて旧ソ連型のモラルハザードで説明できるのだ』、ここまできてようやく納得できた。こじつけの感もなくはないが、参考になる見方だ。
・『不正発覚ラッシュの本番はむしろこれから!?  これらの企業は「計画達成」に強い執着があるのはもちろんだが、なによりも「電通人」「東芝マン」なんて言葉があるように、単なる「勤務先」という定義を超越して、死ぬまでその組織に忠誠を誓うことを強いるような、独特の組織カルチャーがある。気兼ねなくて言わせていただくと、全体主義の匂いがプンプンするのだ。 人口がフリーフォールのように激減していく日本ではもはや、「全員経営」などという、旧ソ連型全体主義が通用しないのは明らかだ。計画経済が行き詰まったように、多くの企業の「経営計画」が暗礁に乗り上げるのは目に見えている。 そこで本来は考え方をガラリと変えなくてはいけないのだが、「ヤマトは我なり」みたいに古い社訓に縛られていると、その現実を「気合」や「不正」で乗り越えようとしてしまう。そういえば、「全員経営」を掲げるユニクロも、ジャーナリスト・横田増生氏の潜入取材などで、近年は「ブラック企業」のそしりを受けている。 そう考えると、今回のYHCの「水増し請求」発覚は、氷山の一角というか、これから始まる不正発覚ラッシュの序章なのかもしれない。 個人的には次はマスコミ、その中でも、これだけ人口が減少しているのに、発行部数がそれほど落ちていないという大新聞あたりがクサいと思っている。注目したい』、確かに、いまだに「全員経営」を唱っている大企業は多いのは事実だ。「これから始まる不正発覚ラッシュの序章なのかもしれない」という不気味な予言が大新聞も含めてどうなるか、私としても大いに注目したい。

次に、8月16日付けダイヤモンド・オンライン「ヤマト「社外秘資料」入手!代金着服、事故隠蔽…不正・懲戒の実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/177542
・『ヤマト運輸で起きた不正行為や犯罪、事件・事故に対する懲戒事案をまとめた「懲戒委員会審査決定事項について」という社外秘資料を、本誌は独自入手した。ヤマトは昨年の大規模な違法労働問題に続き、7月には法人向け引っ越し事業の全国的な過大請求が判明したが、本丸の宅急便事業ではどのようなコンプライアンス体制を敷いているのか・・・「懲戒」と赤文字で大きく書かれた表紙。中をめくると「交通事故を隠蔽していた」「代金の着服を行った」など物々しい文面が幾つも並んでいる。 これは宅配便最大手のヤマト運輸で起きた不正行為や犯罪、事件・事故に対する懲戒事案をまとめた「懲戒委員会審査決定事項について」という社外秘資料。通称「赤社報」だ。本誌は同社関係者から、2017年4月13日付の第432回分から同年12月22日付の第440回分までの赤社報を入手。これを基に懲戒の種類やそれに対する審議、主なケースをまとめたのが次ページの図である(なお、ヤマト運輸に対して資料の確認と幾つかの質問をしたところ、同社は「コメントは控える」と回答し、否定しなかった)。 その数、9ヵ月間で総計203件。資料を提供した関係者は、「お客さまから運賃や代引き手数料を頂きながら、不正に着服する行為が全国的に多い。飲酒運転などで逮捕される事案も毎月のように発生している」と深刻さを訴える。そして「これは宅急便事業のみの不祥事で、グループ全体では驚くほどの件数になる」という。 まるでそれを裏付けるかのような問題が起きている。7月、引っ越し事業を行うグループ会社のヤマトホームコンビニエンス(YHC)が過去2年間にわたり、法人客2640社に総額17億円を過大請求していたことが判明した。 「顧客から信頼を頂いているクロネコブランドとして、あってはいけないこと」。ヤマトホールディングスの山内雅喜社長は記者会見の席で謝罪を繰り返し、「組織的に指示したことはない」と弁明。しかし全国の事業所の9割近くで過大請求が見つかっており、全社的に不正が横行していたのは明らかだ。会見の数日後に過大請求額を過去5年間で総額31億円に訂正するなど、その全容は計り知れず、今月9日には国土交通省がYHC本社に立ち入り検査を行う異例の事態となっている』、リンク先の図を見ると確かに目を覆いたくなるような不祥事の続発ぶりだ。ただ、真の問題は宅急便事業でのこうした小さな不祥事ではなく、水増し請求のように大規模、組織的なものにある筈だ。
・『ヤマトは昨年、本丸の宅急便事業で230億円もの未払い残業代が発覚し、働き方改革に取り組んでいる真っ最中。にもかかわらず、またもコンプライアンス・・・違反が露呈した。いったい同社のコンプライアンス体制はどうなっているのか。その実態を垣間見ることができるのが冒頭の赤社報なのだ。 衝撃的な事案が並ぶ中でもひときわ目を引くのが、首都圏のあるセンターで起きたコレクト商品(通信販売などの代金引換商品)の代金の着服である。約1年間で353件、総額7652万0392円を、ドライバーが「遊興費欲しさから」着服したと記してある。 それはどんな手口なのか。複数の関係者に取材すると、通称「コレクトの回し」と呼ばれるもので着服の「常とう手段」だという。 具体的にはこうだ。ヤマトの各センターでは毎日、全ての荷物をドライバーが持つ携帯端末とそれにひも付く基幹システムで管理しているのだが、ドライバーがコレクト商品を「持ち出し」(配達)の入力をしないで客に届け、回収した代金を着服する。または配達は完了して代金を回収しているが、端末には持ち戻り(不在)で入力し、代金は懐に入れる。こうした不正を繰り返すのがコレクトの回しで、そのトータルが353件、7652万円に上ったとみられる。 しかし、こうした行為を防ぐために一応は「牽制管理システム」がある。コレクト商品の配達状況をチェックし、何日も持ち戻りが続いたり、センターに入金がなかったりするとアラートが出る仕組みだ。通常は荷物や金が行方不明になれば事務員や早朝アシストと呼ばれる荷物の仕分け作業員、あるいは別のドライバーが気付いて捜索が始まる。ところが幾つかの「抜け穴」があり、周囲に気付かれないことも現実にはあるという。 「この場合は当該ドライバーが他の人にチェックをさせなかったり、休みの前日に着服分を幾らか入金したりして、ばれないようにしていたのだろう」(関係者)。平均すると1件につき約20万円の高額商品を1年も「回し」続けたことになり、当該センターは相当ずさんな管理体制だったと推測される。 取材中、9ヵ月間で203件の懲戒事案数に対して、「マンモス企業だから仕方ない」という関係者の声もあった。何しろ、ヤマトは全国に6000の営業拠点を抱え、従業員数は20万人超。件数と従業員数の割合で測れば、一般的水準という意味だ。 だからといって、ヤマトも不正を野放図に放置しているわけではなく、仕組みは整備している。まず、コレクト回しの荷物に対して、「届いた商品が壊れている」と客からのクレームが入れば、システム上では「届いているはずのない荷物」として判明するようになっている』、銀行も昔から小さな不祥事は日常茶飯事で、それに対する牽制の仕組みもあるが、それでもある程度の発生は避けられないようだ。
・『マザーキャッツは、いる?  さらに、大きいのが社内監査だ(監査に関する質問もヤマトから回答を得られなかったため、現場社員の証言を基に述べる)。監査には幾つかパターンがある。ざっくり言えば本社の監査部が年に1回程度実施する“本監査”と、その前に主管支店が実施する“主管監査”がある。本監査はより厳密な監査を行うために、当該センターが所属する管轄以外の、遠く離れた別のエリアの監査人を派遣する場合もある。 他方、ヤマトで古株社員を中心に語り継がれるのが警察OBなど“プロ”が集う特別調査部隊で、特に悪質な不正を担当する通称「マザーキャッツ」の存在だ。クロネコに引っ掛けて、母猫が目を光らせる様子からその名が付いたもよう。「組織図にも載せていない秘密組織」とうわさされている。 実際は、マザーキャッツ課は10年以上前に「品質監理課」に名称が変更されているし、監査部は組織図上に示されている。しかも昨年春からは働き方改革の一環で、監査部は社長直轄に切り替わり、より表に出てきている。つまり現場で語り継がれるマザーキャッツは“都市伝説”に近い。ただ、それだけ現場社員にとって監査部隊は、謎のベールに包まれ、恐れ多い存在なのだ。 加えて赤社報そのものが不正防止に役立っている。全国のセンターに配布され、正社員・契約社員だけでなく末端のパート・アルバイトも回覧し確認のサインをすることから「全社全員で情報を共有する赤社報はコンプラ違反の抑止力になっている」と評されている。 このように、仕組みや抑止力は二重三重に張り巡らされていて、社員もそれを認知し恐れている。 ところが、社歴20年超のベテランドライバーは「多い、少ないじゃなくて、“懲りない”だ」と明かす。「赤社報を初めて見たときから着服、暴力、事故隠蔽はずっと掲載されていて、何ら変わっていない」(同)という』、なるほど。
・『まっとうな仕組みにもかかわらず、不正が繰り返される原因は仕組みを動かす“人”にありそうだ。冒頭の関係者は「結局、本社の経営陣が真に有効な手を打っていない。全従業員に対するコンプライアンス研修すらない」と憤る。 不正の発生に対して本社や支社の幹部が責任を取ることはまれで、当事者と、場合によっては併せてその現場の上司(センター長やエリア支店長)、あるいはせいぜい主管支店長が軽い懲戒を受ける程度。宅急便は地域に根差した業務の性質上、本社や支社から事細かに指示を出すというよりも、現場に裁量を与える「現場主義」だ。この方針は時に「現場任せ」となり、不祥事の責任も現場に“丸投げ”する構造で、改善されない。 他方、現場からは「人手不足で誰彼構わず採用したせいで、人材の質が低下しているのが原因だ」(中堅ドライバー)。「昔は先輩から後輩へ指導する過程で、仕事に対するモラルも自然と伝わっていたと思う。しかし今は目の前の業務に手いっぱいで余裕がない」(前出のベテランドライバー)。要するにネット通販の荷物の急増に端を発した労働過多が、現場のモラル低下を招いているという。 最後に、大多数の従業員は真面目に業務を遂行していることを強調したい。本誌の調査では「サービスの質が高い配送業者」として8割弱の利用者が「ヤマト」と答えている(右図参照)。消費者からの絶大な信頼を裏切らないためにも、引っ越し事業、宅急便事業を問わず、ヤマトはグループ総出で企業倫理の在り方を見直すべきである』、肝心の水増し請求問題は、個人レベルではなく、組織的問題だが、筆者はこれについては第三者委員会の結論を待つとして、細かな不祥事に絞っている。その限りでは、妥当な主張だ。第三者委員会の結論を早く見たいものだ。

第三に、話題は全く変わるが、10月28日付け東洋経済オンライン「消える内航船、静かに進む「海の物流危機」 船員の過半数が50歳超でも「外国人はノー」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/245568
・『多くの業界と同じく、物流の大動脈である海運業も少子高齢化と人手不足に悩まされている。深刻なのは、国内産業の基礎物資輸送の要である内航海運で事業継続が危ぶまれる事業者が増えていることだ。 海外の港を行き来する外航船と異なり、内航船は日本国内の港から港へモノや人を運ぶ海運業者だ。鉄鋼や石油製品、セメントなど国内の産業基礎物資輸送の約8割を担う。災害などで陸路が寸断された際には代替輸送を行うほか、環境負荷軽減に向けたモーダルシフトの受け入れ先としても期待されている。 内航船の船員数はバブル崩壊後の景気低迷に伴い、1990年の5万6100人から2016年には2万7639人へ半減。その一方で輸送量は2010年以降、3億6000万~3億7000万トン程度で下げ止まっており、現状の船員規模を維持する必要がある。しかし、年齢構成をみると心もとない状況だ』、「モーダルシフトの受け入れ先としても期待」されているのに、大丈夫なのだろうか。
・『船員の過半数は50歳以上  内航船員の7割強を占める貨物船の場合、50歳以上が53%、60歳以上も28%を占める。一方、30歳未満の若手船員は16%にすぎない。いびつな年齢構成になった背景には、内航船員は日本人でなければならないというルールがあるからだ。 1899年(明治32年)の船舶法制定以来、内航船は経済安全保障上の観点から日本籍船に限定され、外国人船員も認められてこなかった。一方、運賃がドル建ての外航船は、1985年のプラザ合意後の円高をきっかけにコスト削減策として外国人船員の採用に舵を切った。 内航海運は、外航海運の外国人船員化と漁獲制限に伴って漁船からあぶれた日本人船員の受け皿となった。バブル崩壊後の輸送量減少で新造船が減ったこともあり、人手不足とは無縁でいられた。「即戦力を採用できたので、長らく船員育成に力を入れてこなかった」(内航船関係者)ため、今そのツケが回ってきた格好だ。 航海士や機関士になるには国家資格の海技士免許が必要で、船の大きさや航行区域に応じて1~6級に分かれている。小型の内航船であれば6級から乗ることができ、4級を持っていれば比較的大きな船の船長になれるが、免許取得には乗船履歴などの条件をクリアする必要がある。 内航船員を養成する代表的な教育機関に海技教育機構があり、中学卒業者を対象にした海上技術学校4校と、高校卒業者以上を対象とする海上技術短期大学校3校、海技大学校を擁する。技術学校では3年の修業期間終了後に6カ月の乗船実習を受けると、4級の航海士か機関士の免許を取得できる。短大も乗船実習を含め2年で同様の免許が取得可能だ。 同機構では“士官候補生”の内航船員を毎年330~380人程度送り出している。技術学校、短大とも志願者は募集定員を上回っており、これまでのところ船員希望の若者を確保できていないわけではない』、船長資格が予想外に簡単に取得できるのに、いささか驚かされた。
・『船員1年目の手取りは月25万円  そもそも船員は高給取りだ。「船員1年目でも乗船中の月給は手当込みで手取り25万円程度」(海技教育機構の遠藤敏伸・募集就職課長)。貨物船の場合、勤務形態は3カ月乗船、1カ月陸上休暇のサイクルが基本で、乗船中は賄い付きなので食費もかからない。「海が好き、給料がいい、まとまった休みが取れる点を志望動機に挙げる生徒が多い」(同)という。 国土交通省の試算によると、60歳以上の船員が今後5年間で退職する場合には毎年1200人程度の新規就業者が必要という。海技教育機構の定員増が検討されているほか、水産系高校から内航船員希望者を募ったり、社会人経験者を対象とした6級取得養成制度を設けたりすることで、退職者の補充を急いでいる。 女性船員の育成も課題だ。内航海運の女性船員比率は2%にすぎず、貨物船ではさらにその比率は下がる。貨物の積みおろしの際には力仕事が必要な上、伝統的な男性職場のため採用する側も敬遠しがちだ。しかし、11年前から女性船員を定期的に作用してきた協同商船の福田正海専務は「結婚を機に辞めることも多いが、いずれは女性船員だけで1隻運航させたい」と採用に積極的な事業者も登場している。 荷主からコスト削減目的で外国人船員の採用を求める声が出たことがある。しかし、「日本人船員とのコミュニケーションの問題や、混雑した港を航行する技術が必要なため、外国人船員(の採用)は難しい」(内航海運大手)として、現在そうした要望は出ていない。 もっとも、内航海運業界内でも船員不足の状況は一律ではない。これには特有の契約形態が影響している。 運送事業者は「オペレーター」と呼ばれ、元請けのほかに2次、3次の下請け事業者がいる。オペレーターは自社保有船のほかに、貸渡事業者(オーナー)から船員ごと船を借り、請け負った貨物を運送する。荷主はオペレーターに運賃を、オペレーターはオーナーに用船料を支払う多重構造になっている』、「船員1年目の手取りは月25万円」と待遇が予想外にいいのにも驚かされた。もっとも船内に拘束される時間が長いことからすれば、妥当なのかも知れない。
・『貸渡事業者の6割が「一杯船主」  オペレーターは2018年3月時点で1515事業者おり、主に荷主である石油元売り会社や鉄鋼会社などの系列に属する上位60事業者が総輸送量の8割を契約している。一方、オーナーも1470事業者いるが、その6割程度が主に小型船を1隻のみ保有する「一杯船主」だ。 大型船を複数保有するなど事業規模の比較的大きいオペレーターやオーナーは、船内環境を含めた待遇の良さをアピールできるため、「船員採用ではそれほど苦労していない」(内航海運大手)。海技教育機構の卒業生も大手事業者を中心に入社していく。 深刻なのは一杯船主を含めた小規模事業者だ。国交省の調査では船舶1~2隻、船員20人未満の事業者では50歳以上の比率が6割を占め、60歳以上の船員も34%に達している。こうした小規模事業者の中には、「とうちゃん船長、かあちゃん機関長」と呼ばれてきた家族、親族だけで運航するオーナーも存在する。 船員が辞める理由として、もっとも多いのは人間関係と内航海運関係者は口をそろえる。小規模事業者は若手の船員に来て欲しいが、せいぜい5~6人乗りで年齢が高い船員ばかりの小型船は敬遠されがち。一杯船主だと人間関係がこじれた際にほかの船に移ることもできず、待遇も見劣りがする。一方、オーナー側も“促成栽培”で経験不足の若手船員を雇うことに不安を覚えるうえ、少人数運航では育成する余裕もない。 内航海運オーナーの営業利益率は1.3%と全産業平均の約3分の1にすぎない。1隻数億円以上する船の建造費も借り入れで賄っている状況だ。後継者難、船員不足となれば事業継続は難しくなり、実際、一杯船主は2005年から10年間で39%減少した』、大手事業者と小規模事業者の格差に改めて驚いた。一杯船主の減少は、事業整理(清算)なのか、或は大手に事業譲渡(吸収合併)なのか、どういう形をとるのだろう。いずれにしろ、業界の再編成が必要なことは確かなようだ。
・『国交省もようやく本腰に  業界からは「一杯船主が安く請け負っているから成り立っている業界。いなくなったらどうするのか」(中堅オーナー)と先行きを危惧する声があがる。小規模事業者が主に所有する499総トン以下の小型船は内航船全体の隻数の8割弱を占める。統合や集約を進めようにも「赤字の事業者を集めてどういう経営をするのか」「長らく地縁血縁でやってきた世界なので難しい」との見方が大勢だ。 船員や海運関連の従業員らでつくる全日本海員組合の森田保己組合長は「そもそも運賃や用船料が削られてきたことが、内航海運が直面している問題の要因。用船料の適正化が不可欠だ。小型船が動かなくなればその分を外国籍船に頼むことになりかねず、事故も多発するおそれがある」と、現場の声を代弁する。 国交省でも小規模事業者の船員不足を含め、内航海運の課題解決に向けて各種検討会を設置するなど本腰を入れ始めた。荷主、オペレーター、オーナーいずれもが“三方良し”とならなければ、経済安全保障を掲げたオールジャパン体制の維持は難しくなるだろう』、「経済安全保障」の建前はいささか時代遅れの感もある。小規模事業者へ助成するような愚は避けるべきで、「安楽死」を促すべきではなかろうか。
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