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人工知能(AI)(その7)(「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた、AIが奪う仕事 vs 少子化で減る人手 第2回 自動化と人口減少のマクロ経済学、契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか) [イノベーション]

17日に続いて、人工知能(AI)(その7)(「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた、AIが奪う仕事 vs 少子化で減る人手 第2回 自動化と人口減少のマクロ経済学、契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか)を取上げよう。

先ずは、エール大経済学部准教授の伊神 満氏が11月8日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた」を紹介しよう。なお、注などは省略した。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/102200249/110100004/?P=1
・『AI(人工知能)が仕事を奪う、世の中は大変なことになる――。AI技術の急速な発展が報じられる中で、世間では「ふわっとした」議論が繰り返され、「機械との競争」への漠然とした不安ばかりが煽られている。だが、本当にそうなのか。本コラムでは、世界最先端の経済学研究を手がかりに、名門・米エール大学経済学部で教鞭を執る伊神満准教授が「都市伝説」を理性的に検証する』、面白そうだ。
・『まずはじめに:連載コラム(全4回)の趣旨  人工知能(AI)については色々な人が色々なことを言っている。だが、よく分からない未来を語るにつけて、楽観論も悲観論も、ただ各人が「個人的に言いたいこと」を言っているだけのように見える。 となると、「AI技術は是か非か」「AI失業は起こるのか」「もはや人類の滅亡は時間の問題か」についての「結論」自体には、ほとんど何の意味もない。これだけ沢山の予想があれば、そのどれかは当たるだろうし、大半は外れるに決まっているからだ。 そんなことよりも、冷静な人たちが交わしている「それなりの確かさをもって言えそうなこと」に耳を傾け、吟味しよう。そしてあなた自身の身の振りかたについては、あくまで自分の頭で考えよう。でなければ、あなたという人間の「知能」と人生に、いったい何の意味があるだろうか。 このコラムは、経済学者である筆者が、9月中旬にカナダのトロント市で開催された第2回全米経済研究所(NBER)「人工知能の経済学」学会で行った研究発表と、そこで見聞きした世界を代表する経済学者たちによる最新の研究について、一般向けにまとめたものである』、こうしたテーマを取上げるNBERはさすがだ。
・『まずは、AIが「人間の経済活動にもたらす」影響を考えてみよう。連載コラムの前半にあたる第1回と第2回では、AIの「外側」の経済学の話をする。 AIやロボットは、これまで人力を必要としていた生産活動の「自動化」ととらえるのが一般的だ。そこで、AIの「外側」の経済学では、自動化技術の中身はさておき、それがもたらす経済活動へのインパクトを考察する(連載後半にあたる第3回と第4回では、AIの「内側」の経済学に触れる。この分類は、論点を整理するために筆者が独自に使っているものだ)。 今日紹介するのは、誰もが気になる「自分の仕事はなくなってしまうのか」という問いについての、興味深い実証プロジェクトだ』、どのように実証的に分析するのだろう。
・『仕事を1つひとつのタスクに分解してみよう  ミクロ実証的な1つのアプローチとしては、個々の職業を、その構成要素である各種「作業」レベルに分解して考えてみることができる。たとえば、大学教授という「職業」の人は、大きく分けて、 (A)研究 (B)教育 (C)雑用 という3種類の活動に時間を使う。そこでたとえば(B)の教育活動を、さらに (B1)授業内容の立案と作成 (B2)授業そのものの実施 (B3)宿題やテストによる学生の評価 (B4)大学院生の研究へのアドバイス ……のように分解し、さらに細かく具体的な「作業」をリストアップすることができる。そして、各「作業」(タスク)について、今後10年間でどのくらい自動化できそうか、その筋の専門家に点数をつけてもらおう。こういう点数を並べれば、「大学教授という職業が何パーセント自動化できそうか」を測る目安くらいにはなりそうだ。 感覚をつかんでもらうために、もう1つの例として「米国で大手監査法人に勤める会計士(専門分野は税務)」についても、業務内容をざっくりタスク分けしてみよう。 (W)税務申告書の作成 (X)税務申告書の確認 (Y)チームのマネジメント (Z)クライアントの獲得および関係構築 たとえば末端の仕事である(W)を詳しく見ていくと、 (W1)試算表の勘定科目(の管理コード)を整理して、ソフトに入力 (W2)税務上と会計上では費用・収益の認識が異なるので、違いを計算してソフトに入力 (W3)税控除や繰越欠損金が利用できるか否かを判断する といったタスクによって構成されている。もともとこの分野はコンピューターによる処理との相性が良い。だから(W1)や(W2)などはソフトの活用を前提としたタスク設計になっている。とはいえ、たとえば「交際費はその内容によって控除の可否が変化する」といった例外処理も多いため、完全自動化は難しいのだという。 この記事の読者も、ためしに自分の仕事のタスク構成を洗い出してみたらどうだろう。AIによる自動化が云々という話以外にも、何か新しい発見があるかもしれない。 こうした「自動化のしやすさ」を、世の中の多くの職業について数値化したのが、「機械学習と職業の変化」という論文である・・・といっても、今まさに進行中の研究だから、完成版が読めるのはまだ先になりそうだ。 この研究を発表したのは、米マサチューセッツ工科大学(МIT)のエリック・ブリニョルフソン教授だ。IT(情報技術)業界研究のベテランで、最近では『プラットフォームの経済学』(日経BP社)なども邦訳されている。彼自身も発表中に認めているように、数値結果そのものは、分析プロセスを少し変更しただけでも、ガラッと変わる。 たとえば、大学教授の仕事(B)教育について、具体的なタスクをいかに定義するのか、どこまで適切に細分化できるのか、本当にうまく自動化できるのか、大学教授であるはずの筆者にもよく分からない。 また、(B)教育を自動化した結果、大学教授というポストそのものが消滅してしまうのであれば、筆者は専業コラムニストに転職せざるを得ない。しかし逆に、これまで(B)に割いていた時間と体力を(A)研究に注げるようになるのであれば、願ったり叶ったりだ。 だから、たとえ「学者が科学的にたどりついた発見や数字」であっても、結論そのものには飛びつかない方がいい。当然、(自称)コンサルタントや(自称)天才プログラマーが適当にぶち上げている「未来予想」については、言うまでもない』、仕事をタスクに細分化して、タスクごとに「「自動化のしやすさ」を、世の中の多くの職業について数値化」するとは、確かに説得力がありそうな手法だ。
・『自動化しやすいタスクの8条件  ……というわけで、ブリニョルフソン教授らによる論文自体は未完成なのだが、理論的考察の大枠については、『サイエンス』誌上で「機械学習で何ができるのか? 労働需要への影響について」という短い記事を読むことができる。 その要点をまとめると、タスクを自動化するためには、8つの条件が必要だという(表1)。ちなみにこれは、スタンダードな「教師あり機械学習」、つまり回帰分析のようなデータ処理を主眼としたリストである。 表1:「自動化しやすいタスク」の8条件(1.「インプット」と「アウトプット」が、どちらも明確になっている。 2.インプットとアウトプットを正しく対応させたデジタルデータが、大量に存在する。 3.明確なゴールがあり、その達成度について明確なフィードバックがある。 4.長々とした論理展開や、いろいろな背景知識・一般常識にもとづく思考が、必要ない。 5.下した判断について、その理由や過程を詳しく説明する必要がない。 6.多少の誤差・間違いが許され、「正解」を理論的に証明する必要もない。 7.現象自体や「インプットとアウトプットの対応関係」が、時間の経過によってあまり変化しない。 8.物理的な作業における器用さや特殊技能が、必要ない。) このように機械学習の射程範囲をハッキリさせていくと、何でもかんでもうまく自動化できるとは限らないことが、浮き彫りになる。もちろん、機械が苦手とする「論理」や「証明」や「特殊技能」を、それではフツーの人間がどれくらい身につけているかというと、それは別問題だが……』、この「自動化しやすいタスク」の8条件を満たすタスクは、現実にはかなり限定されたものになりそうだ。
・『自動化の普及を左右する6つの「経済学的ファクター」  また、仮にあるタスクの「機械化が可能」になったとしても、それが現実世界で普及したり、人力による労働力への需要・賃金にインパクトを及ぼす過程は、実はけっこう複雑である。同『サイエンス』記事が指摘するとおり、技術的な問題の他に「経済学的なファクター」にも影響されるはずだ(表2)。 表2:関連する6つの経済学的なファクター(1.タスクの自動化のしやすさ(技術的な代替可能性)。 2.そのタスクの成果物への需要が、最終価格にどのくらい左右されるか(価格弾力性)。 3.複数タスク間の補完性。 4.そのタスクの成果物への需要が、消費者の所得にどのくらい左右されるか(所得弾力性)。 5.人間の働く意欲が、どのくらい賃金に左右されるか(労働供給の弾力性)。 6.ビジネス全体の構造が、どう変化するか(生産関数の変化)。 網羅的に列挙しようとするあまり、この表はやや抽象的にすぎる感もあるが、「総論」的な記事なので仕方あるまい。これらの経済学的コンセプトの詳細については、入門レベルの教科書に譲る・・・』、これは抽象的で経済学的過ぎる印象も受ける。
・『結論は全部スルーし、根拠とロジック「だけ」を吟味  さて、タスク分けの最新研究に話を戻すと、正直、経済学者の仕事としてはかなりベタな分析だし、「職業」や「作業」をどう整理するかによって「自動化のしやすさ」の数値は大きく変わってくる。また、そもそも「今後10年間における、個別タスクの自動化のしやすさ」についての技術的見解も、専門家の間ではかなり議論が分かれるだろう。 だから筆者から読者へのアドバイスとしては、「あなたの仕事が危ない!」風の議論や数字を見るときには、とにかく結論そのものはスルー(無視)しよう。こういう話題についての「結論」は、当たるか外れるか分からない株価の予想みたいなもので、つまらない。 そうではなくて、「何をどうやったら、そういう数字とメッセージが出てくるのか」という、前提条件や考え方のプロセスに(のみ)注目するのが、正しい大人の読み方だ。 ベタなミクロ実証研究から言えることは、このあたりが限界だ。次回は、思いっきりマクロな視点から俯瞰してみよう』、「結論は全部スルーし、根拠とロジック「だけ」を吟味」とは、我々素人にとっては有難いアドバイスだ。

この続きを、11月15日付け「AIが奪う仕事 vs 少子化で減る人手 第2回 自動化と人口減少のマクロ経済学」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/102200249/110600005/?P=1
・『「AIで仕事がなくなる」というストーリーを検証するために、前回は私たちの仕事を細かくタスク分けしてみた。その結果、各職業がどれくらい自動化できそうかの目安にはなりそうだが、数字自体は計算の前提次第でコロコロ変わってしまうので、あまり当てにならなそうだと分かった。 そういうベタなミクロ実証研究とは対照的に、今回は思いっきりマクロな視点から眺めてみよう』、なるほど。
・『自動化とは「資本」で「労働」を置き換えること  1国全体でどれくらいの労働力が必要とされるか(労働への需要)は、自ずと「自動化」の影響を受けることになるだろう。タスクの自動化が進んだとき、労働需要は増えるのだろうか、それとも減るのだろうか? 「自動化」は、コンピュータ・アルゴリズムやロボットという機械への「投資」によって可能になる。だから自動化とは、それらの投資の積み重ねである「資本」の働きによって、人力での「労働」を代替するものだと言える。こう頭を整理すれば、その先のロジックも見通しが立てやすい。 もしもマクロ経済学に触れたことのある読者がいたら、経済活動の生産面に注目したコンセプトである「生産関数」が、 アウトプット = 「労働インプット」と「資本インプット」の関数 という形で表現されていたことを思い出そう。1つひとつのタスクについて、あるいは企業について、「ミクロな生産関数」を考えることもできるし、ある地域や国全体について「マクロな生産関数」を考えることもある。 問題は、この「関数」がどんな形をしているかだ。生産関数のカタチ次第で、機械と人力のあいだの代替・補完関係や、ひいては「自動化が労働需要にもたらすインパクト」も変わってくる』、その通りだろう。
・『消える仕事 vs 新たな仕事  自動化によって労働力への需要がどのくらい増えるか、それとも減るかは、必ずしも自明ではない。 たとえば、エレベーターガール(エレベーター運転士)という仕事は、今でも時折デパートで目にすることはあるものの、基本的には「絶滅危惧種」だ。自動化の犠牲者とも言えるだろう。しかしその一方で、エレベーターの自動運転化によって生まれた仕事もある。「エレベーター運行システムの開発や管理」といった役割だ。 個々のタスクや職業が自動化されたときに「経済全体で労働需要が増えるか減るか」については、どれだけ熱心にエレベーターガールを観察していても、分からない。新たな仕事は同じデパート内ではなく、むしろエレベーター製造会社や運営会社の方で生まれているからだ。広い範囲における自動化のインパクトを知るには、その自動化技術が「奪う仕事」と「生む仕事」の両方を視野に入れねばならない』、エレベーターの例では、「奪う仕事」の方が「生む仕事」よりも圧倒的に多い筈だ。そうでなければ、代替が進まなかっただろう。
・『アメリカでは「消える仕事」の方が多かった  米マサチューセッツ工科大学(MIT)のダロン・アセモグル教授がカナダ・トロントで発表した論文「自動化と新タスク」・・・は、この「消える仕事と新たな仕事」という視点を重視し、独特なカタチをした生産関数を提案(=仮定)している。 そのようなマクロ経済モデルに即して、過去30年間のアメリカのデータを分析した結果、自動化(ここでは「工場への産業用ロボットの導入」のこと)によって生まれる仕事よりも、消える仕事のほうが多かった、と結論づけている。 もちろん、過去における「工業用ロボットの導入」と、未来における「AIによる各種タスクの自動化」の間には、分野や使途の違いも多いはずだ。過去のデータからそのまま未来を予測するのにも限界があるから、国と時代ごとの状況の違いを考慮した方がいいだろう』、「アメリカでは「消える仕事」の方が多かった」というのは納得できる話だ。
・『ドイツでは、ロボット導入後も人材の配置転換がうまくいった  実際、ドイツについて同様の分析をした別の論文「ロボットに適応する」・・・では、アメリカとは対照的な結果が報じられている。ドイツの場合は、ロボット導入後も、企業内での人員の配置転換がうまくいったらしい。 なお、これらのマクロ的な実証分析は、扱う対象やデータの性質上、因果関係の識別についてはツメが甘い傾向がある。だから、これらの研究によって「自動化が原因で、仕事が消える(または消えない)という結果が起こった」という因果関係が示された、と信じ込むのは早合点だ。 そうではなく、あくまで「過去30年間のアメリカのデータに見られた相関関係が、同時期のドイツのデータでは見られなかった」という程度にユルく理解しておく方が安全だろう。統計や計量経済学になじみのない読者のためにもう少しかみ砕いて言うと、「ロボットの導入」と「仕事の増減」のどちらが原因でどちらが結果かが厳密に証明されたわけではなく、単にそれらの2つの出来事がほぼ同時に起こったという意味だ』、「ドイツでは、ロボット導入後も人材の配置転換がうまくいった」というのは理解に苦しむ。もっとも「どちらが原因でどちらが結果かが厳密に証明されたわけでは」ないというのは、その通りかも知れない。「疑似相関」には気をつける必要がありそうだ。
・『少子化と労働需給  さて、未来の日本がアメリカとドイツ、どちらに近い展開になるのか、あるいは全然違う第3のパターンを示すのかは、分からない。だが、仮に工業用ロボットとAIが似たような技術革新である場合(そして仮に日本企業がドイツよりもアメリカに近い人事制度をとっている場合)には、AIの実用化が進むにつれ労働需要は減っていきそうである。 それでは、AIの商業利用などさっさと禁止してしまったほうがいいのだろうか? そして日本の労働者は、「AI先進国」であるアメリカと中国の企業が(日本に本格進出する前に)全面戦争に突入して共倒れしてくれることを、ただ神頼みするしかないのだろうか? しかし、ここで忘れてはいけないのは、人口問題である。 先に紹介した研究が扱ったのは、過去のアメリカとドイツ、すなわち、「国全体の人口が増加している局面」であった。人口が増加すると、だいたい労働力(労働の供給)も増える。だが、ひとたび将来に目を転じると、日本や韓国、それにドイツを筆頭に一部の欧米諸国も、すでに少子高齢化と人口減少のステージに突入している。 言いかえると、1国内に存在する労働力(労働供給)は、どの国でも減少傾向にある(ただし、アフリカの多くの国々を除く)』、具体的には次のようだ。
・『AI失業 vs 人口減少  ……ということは、AIによるタスク自動化によって労働需要が減る(可能性がある)一方で、人口の高齢化によって労働供給も(現実にすでに)減りつつあるわけだ。  片や、「AIで仕事がなくなる!」  片や、「高齢化で人手が足りない!」 これらは本当に、現代社会を悩ます2大マクロ問題となるのだろうか? 冷静に(ただしある程度ザックリ単純に)考えてみると、2つの悩みは両立し得ない。「自動化によって人手不足を補う」ことさえできれば、2大問題はどちらも解消し、一件落着となるかもしれない。 このような楽観的なシナリオを強調したのが、米グーグルのチーフエコノミストであるハル・ヴァリアン氏が発表した「自動化と生殖」(原題は「Automation vs Procreation」)という論文だ。まあ、AIを開発する企業に勤めている彼の立場を考えると、このような「ゆるふわ」風味の論文それ自体は、多少割り引いて読んだ方が賢明だろう。 しかし、「高齢化が進む国ほど、ロボットの開発と導入も盛んである」という別の研究もある。というか、日本はまさにその世界最前線にある国だ。だから私自身の意見としては、日本の企業や家庭(そしてもちろん政府)は、どんどん実験的な取り組みを進めるべきだと思う。 ……というわけで、AIが労働の需給にもたらすインパクトは、「消える職業」と「生まれる職業」、そして「人口減少スピード」の三つ巴のバランス次第ということだ』、その通りだろう。
・『私たちが本当に考えるべきこと  もちろん、たとえばエレベーターの「運転」と「管理」は別の職種であり、タスク構成も必要なスキルも異なる。だから、エレベーターガールが「エレベーター自動運転プログラムを設計する仕事」に、いきなり転職できるとは限らない。もう少し一般論として考えても、「無くなる仕事」と「新たな仕事」は、別物だ。 また自動化で「人余りになる仕事」と、人口減少で「人手不足になる仕事」にも、ズレがあるだろう。 となると、もし私たちが「AI失業」と「人口減少」について真面目に考えるのであれば、社会全体として重視すべきなのは、  ①仕事と人手の出会いを、業界・社会全体でスムーズにする工夫。  ⓶いまある人手でこなせるように、仕事のカタチを柔軟に変化させる工夫。 ③「新たな仕事」に柔軟に対応できるような、新スキル習得の場所と機会。 ④「人手不足の分野を狙って自動化を進める」ような、研究開発と企業活動。 ……といったポイントになる。 これらの前向きな方策について(特に④について)考える際には、前回と今回の議論のように「自動化技術」をブラックボックスとして外側から眺めているだけでは、ラチがあかない。 「自動化技術」そのものも、私たち人間が開発・運用してきたものなのだから、AIの「外側」の話はこれくらいにして、次回からはAIの「内側」に入っていくことにしよう』、①~④は確かに重視すべきなのだろう。

この続きの第三の、11月22日付け「「パチスロ必勝法」に学ぶ価格戦略 第3回 マーケティングは丸投げできる? AIの内側の経済学」については、リンク先は下記だが、ここでの紹介を省略する。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/102200249/111400006/

第四の、12月1日付け「契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/102200249/111900007/
・『「AI(人工知能)の内側の経済学」に踏み込んだ前回は、ビジネスにおける価格設定や広告戦略(いわゆるマーケティング関連のプロセス)をAIに丸投げする話をした。つづいて今回は、「AIを搭載した新製品」の中身について考えてみよう。AI開発、それはとても面白い「人間の営み」なのである』、どういうことなのだろう。
・『プロダクト(製品)イノベーションのためのAI技術  仕事の流れの一部を自動化すること、それは一種のプロセス・イノベーション(生産・販売活動のコストを下げること)であった。こんどは、プロダクト・イノベーションについて考えてみよう。プロセス・イノベーションが製造・販売の工程(プロセス)を改善するものであったのに対して、こちらは新たな製品(プロダクト)を開発・投入する話である。 たとえば、「AI技術でお米がおいしく炊ける」炊飯器。そういうキャッチコピーの家電製品は昔からあったが、一体どのあたりに「知性」が感じられるのか、よく分からなかった。しかし、ユーザーのその日の体調をセンサーで感知するのみならず、電子メールやSNSへの投稿内容までも細かくデータ分析してくれる炊飯器が登場したならば、どうだろうか。 メールの文章がどれくらい整っているか、乱れているか。友人の投稿内容に「いいね」するのか、しないのか。あなたの一挙手一投足をつぶさに観察することで、この炊飯器は「その日その時のあなたにとって最適な炊き加減」に自動調整してくれる。すなわち、あなたの「幸福を最大化」してくれる機械の登場である。これほどすごい機能が付けば、「AI搭載」の名に恥じない画期的な製品と言えよう(※フィクションです)』、例示は極端で不適切だ。たかが炊飯器にそこまで「観察」されたくない人も多いのではなかろうか。ただ、プロダクト・イノベーションに活躍しそうだというのは、その通りなのかも知れない。
・『囲碁・将棋AIや自動運転プログラムの「目的関数」  さて、こういう新製品をどうやって開発したらいいのだろう? 私たち人間は、AIもしくはロボットに何かしらの「目標」を与え、それを達成するような動作を期待する。こういう目標のことを経済学や工学では「目的関数」と呼び、「最適化問題」という数学的な問題設定に落とし込む。たとえば、上記の「炊飯器」ならば、ユーザーからの「おいしい」という評価を高めることが、明確な目的関数になるだろう。 目的関数 = 「やるべきこと」に応じたボーナス点 → 「これを最大化せよ」と命令  あるいは近年めざましい活躍をみせた囲碁や将棋をプレイするAIは、「ゲームに勝てる確率」を目的関数として、先を読みながら「次の一手」を探し出すように設計されている。その開発過程(数理モデルを構築し、関数形を調整し、シミュレーションとデータ分析を活用する)は、経済学的な実証研究のプロセスにかなり近い。 逆に、「やってはいけないこと」の違反度に応じて「罰点」を設定することもある。たとえば、無人運転車に搭載されるソフトには、「信号を無視したらマイナス100点」、「ネコをひいたらマイナス200点」、「通行人をひいたらマイナス5億点」みたいなペナルティーを設定しておくわけだ。 目的関数 = 「やってはいけないこと」に応じたペナルティー → 「これを最小化せよ」と命令  ところがロボットは、私たちが期待するような振る舞いを、実際にしてくれるとは限らない』、どうしてなのだろう。
・『ドジっ子ロボットには、お仕置きが必要だ  たとえばお掃除ロボット。部屋の床掃除を勝手にやってくれる掃除機は、すでにかなり普及している。筆者も1台持っている。ただしこのロボット、あまり融通が利かない。同じところをグルグル回ったり、段差にハマったり、電源コードを巻き込んでしまったりする。 また、「電池が切れるまでの間に掃除する床面積」を最大化するようプログラムされたロボットは、最短距離で移動しようとするときに、その動線上にあった家具を壊してしまうかもしれない。こういう問題が発生するのは、(人間が暗黙のうちに期待している)さまざまな「目的関数」や「制約条件」の全てを、(明示的に)インプットできるとは限らないからだ。与えられたタスクそのもの以外のファクター、つまり作業をとりまく環境や文脈というものが、お掃除ロボットにはのみ込めていない。 これが人間の「お掃除担当メイドさん」であれば、家具を壊したりしたら、ご主人様から叱られるかクビ。最悪の場合、損害賠償請求の訴訟を起こされてしまうかもしれない。そしてそれが分かっているからこそ、家具の扱い(などの、直接命じられてはいない事柄)にも注意を向けてくれる。 何か、うまい方法はないものだろうか?。 ご主人様 VS 代理人 (プリンシパル・エージェント問題) カナダ・トロント大学のギリアン・ハットフィールド氏が発表した「不完備契約とAIアラインメント」・・・という研究は、「ドジっ子ロボット」のような問題を、いちど抽象的なレベルで理論化してみよう、と提案している。 ミクロ経済学には、人間同士の利害の対立を整理するための知見がたくさんある。とりわけ契約理論と呼ばれる分野では、「ご主人様と代理人という異なる2者のあいだで利害をすり合わせて、望ましい結果を導くための契約方法を考える」という課題が研究されてきた。こういう場合の「主人」のことを英語でプリンシパル、「代理人」をエージェントと言うので、この課題は「プリンシパル・エージェント問題」と呼ばれている。 ハットフィールド氏いわく、「ユーザーとAI」の関係は、ちょうど契約理論における「ご主人様と代理人」の関係にあたるので、理論的でエレガントな解決策があるはずだ。ただし、この発表の討論者であるスタンフォード大学のポール・ミルグロム氏(発表者の元指導教授で、オークション関連の実務でも有名)からは、これら2つの問題には共通点もあるが相違点もある、という指摘がなされた。いわく、プリンシパル・エージェント問題の場合は、通常、代理人の側が「余計なこと」を気にしてしまうのが、問題の根っこにある』、「プリンシパル・エージェント問題」まで出てくるとは、さすが経済学者らしい。
・『お掃除ロボットは、雇われ社長の夢を見ない  たとえば、株主(=ご主人様)に雇われたはずの社長(=代理人)のケース。株主が望むのは、企業価値の最大化である。しかし、社長という人間の個人的な利害は、これと必ずしも一致しない。「全国制覇したい」とか、「大型M&Aで注目を集めたい」とか、「休日は家族とゆっくり過ごしたい」とか、「社員に嫌われたくない」といった個人的な野望や心理に、どうしても引きずられてしまう。 契約理論は、こうした状況に対する処方箋をあみ出してきた。たとえば、社長のサラリーの何割くらいを成果報酬式にすればいいのか、といった計算ができるようになった。 これに対して、「ドジっ子お掃除ロボット」の失敗例は、べつにロボット(=代理人)側に個人的な野心があるわけではない。単に、開発者あるいはユーザー(=ご主人様)の側が「部屋をキレイにせよ」という目的しかインプットしなかったのが問題である。もしも開発者またはユーザーが、「部屋をキレイにせよ」「ただし家具を壊してはならない」という追加条件をインプットすることができさえすれば、それで一件落着かもしれない。 企業の雇われ社長もお掃除ロボットも、おなじ「代理人」ではある。しかし契約理論は、代理人が人間であるがゆえに発生する問題を扱ってきたのに対し、AI・ロボットは「個人的な願望」を秘めていたりはしない。そういう点では、問題の本質が微妙に異なっている可能性がある。より緻密な研究が必要になりそうだ』、言われてみれば、通常のプリンシパル・エージェント問題とは大きく違うようだ。追加条件だけで済むのであれば、こんな回り道をす必要もなさそうだ。
・『AIが達成した「成果」ではなく、「開発プロセス」に注目しよう!  さて、トロントで9月に開催された「人工知能の経済学」学会について一般向けにお伝えしてきた本連載だが、今回で最終回である。いかがだっただろうか? 正直、「えっ、そんな事しか分かっていないの?」と拍子抜けされた方も、多いのではないだろうか。 しかし、研究の最前線というのは大体そんなものだ。不明なものや未解決な問題があるからこそ、そこに取り組む余地が残されている。そして、「世界最高の経済学者たち」(あるいは勝手にそのように自負している人たち)が集まった学会ですら、この程度のことしか判明していない。 むしろ、その事実にこそ着目してほしい。 経済学をキチンと理解している人は少ないし、AI関連技術をキチンと理解している人も少ない。ましてや、その両方をよく分かっている人というのは、本当にレアだ。それにもかかわらず(あるいは、そうであるがゆえに)、「AI」について得意げに解説し、個人的な願望にすぎないテキトーな「未来予想と解決策」を、あたかも「理の当然」かのように語るコメンテーターがあふれている。そのクオリティーは推して知るべし、である。「無知の知」から始めよう。 本連載の第1回には、「目新しい結論や、ショッキングな数字などは全部スルーして、何をどうやったらその主張にたどり着くのか、根拠とロジック(にのみ)注目するのが、正しい大人の姿勢だ」という話をした。それに呼応する形で、結びにあたって今回オススメしたいのは、
 +「AIが達成したとされる成果」については完全にスルーして、むしろ
 +「どういうアルゴリズム(計算手順)を使って」、そして、
 +「その開発者たちが、どのような試行錯誤のプロセスを経て」 現在のパフォーマンスに到達したのか……に注目することだ。
そういうニュースの読み方をしていけば、おのずと関連技術の原理的な部分にも詳しくなれるはずだし、背後にある基礎研究にも興味が湧いてくるだろう。いつまでもAIをブラックボックス扱いしていないで、開発者と開発プロセスに踏み込んでほしい。これはまた、ニュースの「書き手」や編集者にぜひお願いしたいことでもある。 ちまたでは「機械」として恐れられたり敬われたりしているものが、じつは研究者が四苦八苦して作った「人為」の産物であることも、改めてよく分かるだろう。AI開発ほど興味深い「人の営み」は、なかなかない。経済学の研究対象は、まだまだ尽きないようである』、「テキトーな「未来予想と解決策」」に騙されないようにとのアドバイスは心強い。「ちまたでは「機械」として恐れられたり敬われたりしているものが、じつは研究者が四苦八苦して作った「人為」の産物であることも、改めてよく分かるだろう」との指摘も実に参考になった。
タグ:人工知能 エレベーターガール 日経ビジネスオンライン (AI) 伊神 満 「「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた」 仕事を1つひとつのタスクに分解してみよう 自動化しやすいタスクの8条件 自動化の普及を左右する6つの「経済学的ファクター」 結論は全部スルーし、根拠とロジック「だけ」を吟味 「契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか」 プロダクト(製品)イノベーションのためのAI技術 囲碁・将棋AIや自動運転プログラムの「目的関数」 ドジっ子ロボットには、お仕置きが必要だ プリンシパル・エージェント問題 お掃除ロボットは、雇われ社長の夢を見ない (その7)(「AIで人間の仕事がなくなる?」の経済学的解明 第1回 全職種の作業をタスク分けしてみた、AIが奪う仕事 vs 少子化で減る人手 第2回 自動化と人口減少のマクロ経済学、契約理論でAIを「調教」「ドジっ子お掃除ロボット」は撲滅できるか) エール大学経済学部 楽観論も悲観論も、ただ各人が「個人的に言いたいこと」を言っているだけのように見える 「AI技術は是か非か」「AI失業は起こるのか」「もはや人類の滅亡は時間の問題か」についての「結論」自体には、ほとんど何の意味もない 第2回全米経済研究所(NBER)「人工知能の経済学」学会で行った研究発表 AIが「人間の経済活動にもたらす」影響 「AIが奪う仕事 vs 少子化で減る人手 第2回 自動化と人口減少のマクロ経済学」 自動化とは「資本」で「労働」を置き換えること 消える仕事 vs 新たな仕事 エレベーターの自動運転化によって生まれた仕事もある。「エレベーター運行システムの開発や管理」といった役割 アメリカでは「消える仕事」の方が多かった ドイツでは、ロボット導入後も人材の配置転換がうまくいった 少子化と労働需給 AI失業 vs 人口減少 AIが労働の需給にもたらすインパクトは、「消える職業」と「生まれる職業」、そして「人口減少スピード」の三つ巴のバランス次第 私たちが本当に考えるべきこと ①仕事と人手の出会いを、業界・社会全体でスムーズにする工夫 ⓶いまある人手でこなせるように、仕事のカタチを柔軟に変化させる工夫 ③「新たな仕事」に柔軟に対応できるような、新スキル習得の場所と機会 ④「人手不足の分野を狙って自動化を進める」ような、研究開発と企業活動 「「パチスロ必勝法」に学ぶ価格戦略 第3回 マーケティングは丸投げできる? AIの内側の経済学」 「AI技術でお米がおいしく炊ける」炊飯器 「その日その時のあなたにとって最適な炊き加減」に自動調整してくれる。すなわち、あなたの「幸福を最大化」してくれる機械の登場 「部屋をキレイにせよ」「ただし家具を壊してはならない」という追加条件をインプットすることができさえすれば、それで一件落着かもしれない AIが達成した「成果」ではなく、「開発プロセス」に注目しよう! ちまたでは「機械」として恐れられたり敬われたりしているものが、じつは研究者が四苦八苦して作った「人為」の産物であることも、改めてよく分かるだろう 「AI」について得意げに解説し、個人的な願望にすぎないテキトーな「未来予想と解決策」を、あたかも「理の当然」かのように語るコメンテーターがあふれている
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