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電機産業(その2)(日本の電機メーカーが敗北した理由 元アスキー社長・西和彦が語る、名門パイオニア、ファンド傘下入りの「覚悟」 3000人規模リストラも計画だが 視界は不良、テスラに悩まされるパナソニック社長の本音 「いったい何者なのか」と自問自答した真意、名門GE異例のトップ交代で解体加速 IoT事業も練り直し) [産業動向]

電機産業については、2016年6月21日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(日本の電機メーカーが敗北した理由 元アスキー社長・西和彦が語る、名門パイオニア、ファンド傘下入りの「覚悟」 3000人規模リストラも計画だが 視界は不良、テスラに悩まされるパナソニック社長の本音 「いったい何者なのか」と自問自答した真意、名門GE異例のトップ交代で解体加速 IoT事業も練り直し)である。なお、タイトルから「日本の」は削除した。

先ずは、8月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京大学工学系研究科IoTメディアラボラトリー ディレクターの西 和彦氏へのインタビュー「日本の電機メーカーが敗北した理由、元アスキー社長・西和彦が語る」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/178238
・『技術開発者、経営者、研究者と、IT社会の前線で常に時代を引っ張ってきた西和彦氏。その重層的な経験は、西氏に今、どのような感慨をもたらしているのだろうか。日本IT史における一時代の主役の一側面を記すインタビューをお届けする』、西氏がアカデミックの世界にいたとは。
・『ネット社会の到来と変革の様相はほぼ20年前の予想通りだった  ――西さんと初めてお目にかかったのは1990年代初めのことで、まだインターネットの黎明期でした。その際にはインターネットの未来を実感させられました。 西 確か週刊ダイヤモンドの別冊で、『インターネット超時空術』という雑誌を一緒に作りましたね。 ――1996年です。西さんに監修していただきました。あの時、西さんは、「これからはハワイでも、山の中の温泉でも仕事ができるよ」とおっしゃって、編集スタッフ用のサイトを作って、全員が取材状況を共有できるようにしてくれました。偶然、私は編集作業中に別件でハワイ出張があり、ホテルで「電話にこのパソコンをつなげてインターネットを使いたいのですが」と説明したら、コンシェルジュが「当ホテルではできませんが、ここで聞いてみては?」と教えてくれた場所があり、行ってみるとIBMのハワイ支社でした(笑)。当時はまだ早かったけれど、その後、西さんの言った通り、インターネットで仕事ができる時代が確実にやってきました。西 96年と言えば、私がアスキーの社長を務めていたころですが、そのころの予言はほぼ当たっています。個別の技術うんぬんというよりも、インターネットの社会性というか、人々の暮らしを革命的に変えていくという社会学的な意味での部分はほとんど予測していた通りでした。』、西氏の将来技術への読みはさすがだ。
・『――80年代の西さんは、マイクロソフトと組んで、後に「パソコン」と呼ばれる機器の開発に全力を挙げていましたが、思い出深い機器はありますか。 西 たくさんあって、これ一つにと絞れない(笑)。例えば「NECのPC8001」とかかなぁ。それ以外にもIBMのパソコンや、鳥取三洋電機に作ってもらったゼニス社向けのポータブルパソコンは、世界初のIBM互換機、いわゆるコンパチのノートパソコンでした。松下電器とソニーが同じ規格を採用してくれた「MSXパソコン」や、Windows1.0を搭載した日本初のデスクトップパソコン「NEC PC100」、パソコンに初めてCD-ROMを搭載した富士通の「FM TOWNS 」なども思い出深いものです。企画や設計に深くかかわったからです。 当時は、パソコンに必要なビデオチップやオーディオチップ、そしてCPUもアスキーで開発していたし、CDに74分のビデオを入れられるデジタル画像圧縮技術では日刊工業新聞社から賞もいただきました。 ――懐かしいものばかりですね。連載でも書かれていましたが、発想の根底には「コンピューターはメディアになる」という思想が一貫してありましたね。 西 コンピューターは、最初は数字で、計算機、次に文字、つまりワープロになり、図や写真が扱えるようになり、オーディオ編集やビデオ編集へと機能を高めてきました。 発想のバックボーンにあるのは、じつは子どものころからやっていたアマチュア無線で、電信や音声だけでなく、無線でテレタイプや画像送信ができるようになっていった経験がありました。つまり、無線はメディアになっていったわけです。そうした経験をしていたからこそ、コンピューターもメディアになると予想できたのです』、アマチュア無線の経験がものをいったとは、天才の発想は常人には図り難いものがあるようだ。
・『技術の未来に世界観を持たないトップが日本メーカーの失敗を招いた  ――多くの技術をリードしてきたマイクロソフトですが、スマートフォン時代につまずきました。それはなぜだったとお考えですか。 西 マイクロソフトの「Windowsモバイル」は、新しく開発されたモバイル用のOSで動き、製品としては大変いいものでした。ただマイクロソフトが見誤ったのは、モバイル上で動くアプリをなめていたことです。「全部、ブラウザ上で動くからいいじゃないか」と高をくくっていたんです。そのうちアプリを書いてくれるよ。書いてくれなければ金をやったらいいだろう。でも、誰もスマホ用のアプリの開発に熱心にならなかった。 もし、WindowsモバイルにWindows OSそのものをフルで載せていたら、状況はまったく変わっていたと思います。Windowsが動くスマホならば独立アプリはたくさんあるし、開発もしやすいので、アンドロイドやiOSとも本格的に戦えたと思います。今からでも遅くないと思って、実は東大のうちのラボで試作しています。 ――技術のレベルではなく、ちょっとした戦術の違いで状況が劇的に変わってしまったわけですね。 西 トップが深く関与して、現場の戦術立案のプロセスについて徹底的にチェックすることをしない限り、負けるのではないかと思います。現場にお任せではダメです。現場は自分たちのやっていることに自信を持っていますが、トップは将来的に本当にそれが正しいのかどうか検証する必要がある。上がってきた技術に対しては、現場が責任を持ちます。しかし、トップはもっと大きな世界観と視野を持って、世界と会社の未来を判断しなければなりません。それができなければ、あっという間に事業は死に絶えてしまいます。 そうした未来予測ができるかできないかが、トップに必要とされる重要な資質になっていると思うのです。だからこそ、マイクロソフトでもスティーブ・バルマーは、責任を問われたのでしょう』、トップの責任はやはり極めて重いようだ。
・『――日本の電機メーカーにも同じような過去がありますよね。 西 例えば「ブルーレイ」や「HD DVD(High-Definition DVD)」があります。今やパソコンへのDVD搭載は当たり前ですが、ブルーレイを搭載したパソコンは、いまだに普及していません。 なぜそんなことになったかといえば、ブルーレイ開発の中心だったソニーが、「プレイステーション4」への4K対応ブルーレイ再生機能の搭載を見送ったからです。たった数千円のコストをケチって、人気ゲーム機に搭載しなかった。これは犯罪に近い判断です。これによって4Kブルーレイは、ソニーが自ら中心になって開発した商品なのにもかかわらず、自らその普及に大きなブレーキをかけてしまいました。2Kのブルーレイも4Kのブルーレイも瀕死状態になってしまったと言っていいと思います。 一方、ブルーレイに対抗して東芝が開発したHD DVDもダメでした。こちらはマイクロソフトが、XBOXの標準機能にしなかったからです。もし東芝が、「HD DVD用ドライブをDVD用ドライブと同じ値段でマイクロソフトや他のパソコンメーカーに最初から赤字でも納めます」と言っていれば、マイクロソフトも標準対応にして普及したでしょう。今ではそれが当たり前になっていたに違いありません。 ブルーレイにしろHD DVDにしろ、売れないから作らない、作らないから売れないという“ネガティブシュリンク”にはまってしまったのです。経営陣の大きな戦術ミスが、せっかくの素晴らしい良い技術をダメにしてしまったのではないでしょうか。痛恨の極みです。これはまとめて本にしたいと考えています』、ソニーも東芝も大きな戦術ミスで、もったいないことをしたものだ。
・『中山素平翁に助けられ教えられて自分は生き返った  ――西さんは、パソコンやインターネットを日本に持ってきて、若くして日本を代表するような経営者たちに会われ、口説き落として多くの製品を開発してきました。年配の経営者の方々にかわいがられていて、記者たちの間では「じじい殺し」と言われていました。 西 いや僕は、そんなこと思っていませんでしたけど。嫌なじじいもたくさんいたし、そんなじじいには面と向かって悪口言って、その後は口も利いていません。さすがに葬式には行っているけど(笑)。 ――では、西さんが尊敬する経営者はどんな方ですか。 西 いちばんは、やはり日本興業銀行の頭取だった中山素平さんですね。中山さんに初めてお目にかかったのは、アスキーのスイスフラン建ての無担保転換社債の繰り上げ償還で借り換えの協調融資をお願いにあがったときです。その後、興銀が応援指導してくれてリストラもうまくいきました。 その成果報告とお礼にうかがった際、「あの時は助けていただいて本当にありがとうございました。業績もよくなってきて、ちゃんとお金を返していきます」と挨拶したら、「それはよかった。しかし君、お金を返してもらったら銀行のビジネスはあがったりだよ。それで関係は終わってしまう。だから君、いい会社になって、もっとお金をたくさん借りたまえ」と言われたのにはびっくりしました。 ――構えが違う、というやつですか。 西 バランス感覚を始めとすると総合的な感覚がすごい方でした。日本人として日本のためにという発想にブレがなかったように感じます。 ――「君はリスクを取りすぎだ」とも言われたそうですね。 西 それはね、アスキーの社長を辞める前の話です。中山さんに「アスキーを助けるためにCSKにお金を出してもらうことになりました」と報告したら、「何のために興銀は君を助けたのか」と語気を荒らげて怒られたんです。「君にはそれが分からないのか」と言われたのです。僕はもったいなくて中山さんの前で泣いてしまったのですが、最後はこう言われました。 「こうなったからには、大川さんにはかわいがってもらい、経営者としての立場を維持できるように頑張りなさい。そもそも、君は何でもかんでも喜んで自分のリスクとして抱え込み突撃していくが、これからはやめなさい。たとえ10回うまくいっても、1回失敗するとすべてがおしまいになってしまう。だから気をつけなさい。これからの人生で、もう大きな失敗はしない方がいい」と。 そう言ってもらえると、アスキーを辞めなければならない悲しみよりも、それだけ評価してもらって温かい言葉をかけてもらえているんだと、随分と癒やされました。感謝しています。 中山さんが亡くなった時に、日経新聞は3人のコメントを載せました。中曽根康弘元総理、富士ゼロックスの会長で、中山さんが創設に関わった国際大学の理事長になる小林陽太郎さん、そして僕。若手の経営者の中で最もかわいがってもらったのは僕だというのが理由でした。今でも鎌倉霊園にお参りに行っています』、中山素平氏は、「財界の鞍馬天狗」といわれただけあって、人を見る目があったようだ。
・『大川功は「先を見る目」がすごかった 孫正義には「天の時」がない  ――アスキーを買収したCSKの大川功さんは、どのような方でしたか。 西 ご本人はよく「予兆」という言葉を使っておられましたが、私から言わせれば「先を見る目」「先手を打つ」という機動的な部分がすごかった。 アスキーへの支援決定後、私は社長を退任して平の取締役として大川さんの特命事項担当のような仕事をしていましたが、M&Aとかプロジェクトにお金を出すときの感覚が、他のオーナー経営者とはまったく違っていました。 普通、オーナー経営者はケチで、10億円の事業買収ならば「8億円にならないか」と値切ったりするものです。しかし大川さんは、一切値切らない。むしろ、「10億円? 12億円払うからこうしろ」と言う。そういう買い方をする人でした。 大川さんは2001年に、会長を務めていたセガが家庭用ゲーム機分野から撤退する際に、個人資産約850億円をセガに寄付して“終戦処理”を支援しました。「事業で得たお金は事業に返す」という信念を見せたのですが、そんなオーナー経営者はいませんよ。そこはすごかった。大川さんを超えるオーナー経営者にはまだ出会ったことがありません。 ――ソフトバンクの孫正義さんについても、感じるところをお聞かせいただけますか。西さんと孫さんは、「IT時代の寵児」として、事あるごとに並び称されていました。 西 仲は悪くありませんよ。コンサルの注文もくれたし。ただ一緒に仕事した機会がほとんどないので、正直よくは分かりません。そもそも僕と孫さんは、今では別の世界の住人。孫さんは投資家であり、僕は実業家で研究者です。投資と実業、研究は違います。 ――孫さんは、「ITの未来」への投資を続けています。同じ未来を見ている立場の者としての評価はいかがですか。 西 孫さんの“誤算”は何かと言えば、「時間」だと思います。孫さんの頭の中では猛烈なスピードでIoT とかAIといった技術の進歩と、そこで出現する社会が描かれているのでしょう。研究の現場にいる僕にすれば、その予測は正しい。けれど、孫さんが10年でくると思っている状況になるには30年かかりますよ。「時間切れで死んでるよ」と言いたい。 確かに私も世の中が進むスピードが、どうしてこんなに遅いのかとイライラする毎日です。でも半ばあきらめているんです。ならば、長生きして待とうと。 だから失礼な話だけど、僕は、孫さんのARMへの投資は失敗すると思います。方針は正しいんです。「方針の失敗」ではなくて「時間の失敗」。3~5年では成果は見えず、そのうちファンドの償還期限がきてしまう。つまり時間切れのタイムアウトになるでしょう。孫さんは読みが早すぎなのではないでしょうか。地の利、人の和はあるが、天の時がないということではないでしょうか』、孫氏への評価は手厳しいが、確かに当たっているのかも知れない。
・『IoTにおけるキラーアプリは バイオセンサーなど4つ  ――IT世界の競争では、常に普及の起爆剤となる“キラーアプリ”を誰が創造し、握るのかが重要ですが、IoTにおけるキラーアプリとはどのようなものだとお考えですか。 西 4つほどあると思います。1つ目は人間の体のセンシング、つまりバイオメトリックスセンサー。2つ目がインテリジェントハウス、3つ目がインテリジェントシティ、4つ目が宇宙も含めた意味での空間問題です。 ――しかし、さきほどの「時間」の話のように、IoT活用の歩みは思った以上に遅いという印象もあります。 西 そうですね。とりあえずはバイオメトリックという体のモニターを必要としている人がたくさんいるので、それを中心に研究しています。ばんそうこう型で使い捨ての各種センサーといったものです。 IoTとは何かといえば、結局のところマイクロコントローラーと通信システム、そしてクラウドの3つなのです。そのため、クラウド研究の一環として電子マネーの研究も進めています。ただ、監督当局は、金融システムは理解しているけれど電子マネーのタックスヘイブン的な性質や、一方で現実世界での基軸通貨をめぐる主導権争いとの関係などについて十分に整理できていないのではないかと感じます。そうしたことこそIoT活用面で、課題だと言えます』、監督当局も困難ではあっても、IoT活用面の課題を解きほぐしてもらいたい。
・『5つの革命史を書きたいのは正史と違う現実があるからだ  ――東大は65歳が定年です。その後のことは考えていらっしゃるのですか。 西 Windows関連機器の開発やアスキーの経営は、正直しんどく、つらいものでした。大学での研究生活は前向きで、楽しいものですが、つらさは同じです。だから65歳を過ぎたら、つらくない、楽しめることをしたい。 具体的には、戦争と政治の歴史についてまとめようと思っています。日本古代史と日本戦国史、明治革命史、太平洋戦争前の動員体制史、フランス革命史で1冊ずつ本を書きたいと考えています。 歴史の根底にある政治に興味があるのですが、ある碩学の先生から、「君ね、政治学みたいなむなしいものをやっちゃダメだよ。政治は常に建前と本音があり、政治的建前の研究などというむなしいものに大切な時間を使ってはいけない」と言われ、「そんなものかな」と感じてはいるのですが、それはそれで面白そうじゃないですか。 ――なぜ古代史や戦国史などなのですか。 西 いわゆる正史には、勝者が書き換えたうそがあり、正史ではないことに、さまざまな事実や人の思惑があるからです。日本の歴史は、中国や半島からの帰化した人たち同士の戦いという側面もあります。フランス革命も本当に自由と民主主義のための闘争だったのかは疑問があり、分かりませんからね。 ――西さんと言えば、蔵書の多さも有名ですが、将来は学園長を務めていらっしゃる須磨学園に「西和彦文庫」でも作られますか。 西 今は7万冊ぐらいあるかなぁ。高校時代の英語の金田収二先生から「西君、本は買おうか買うまいか迷ったら全部買いなさい。それによって君の人生は大きく広がって変わりますよ」と教えられて、こんな蔵書になりました。 でも西文庫など作りませんよ。僕が持っている技術や美術の専門書は中高生には難しすぎるし、須磨学園の図書館の司書さんたちも持て余すでしょう。そもそも蔵書とは属人的なものであり、他人に預けても価値は共有されずに古本屋に売られるのがオチです。 「今月の主筆」の連載で、ブックオフを創業した坂本孝さんの話を読んでがっかりしました。というのも、買い取り価格は1冊10円で、7万冊を古本屋さんに売っても、合計で100万円にもならないと知ったからです。本の購入には、1億円は使っていると思うんですけどね。悔しいな。絶対に売りません』、「蔵書とは属人的なものであり、他人に預けても価値は共有されずに古本屋に売られるのがオチです」というのは味わい深い言葉だ。でも、私は1冊10円でも売って整理したい。

次に、12月8日付け東洋経済オンライン「名門パイオニア、ファンド傘下入りの「覚悟」 3000人規模リストラも計画だが、視界は不良」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/254105
・『かつては「名門」と言われ、革新的な技術を生み出してきた創業80年の老舗メーカーのパイオニア。経営再建を模索していたが、香港系投資ファンドの傘下に入ることになった。12月7日、パイオニアはベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(以下ベアリング)と経営再建計画で合意したと発表。ベアリングが総額1020億円を投じてパイオニアを買収する。 具体的なスキームはこうだ。パイオニアが来年1月25日に開く臨時株主総会で承認を得た後、来年3月をメドに第三者割当増資を行って、ベアリングから770億円の出資を受ける。その後、残りの株式もベアリング側が250億円で株主から買い取る。買い取り額は1株当たり66.1円で12月7日の終値の88円よりも25%安い。株主にとっては厳しいスキームとなる。 早ければ、2018(正しくは9)年3月中にパイオニアはベアリングの完全子会社となり、上場廃止になる。会見を開いたパイオニアの森谷浩一社長は「サポートしてくださっていた株主の皆様には申し訳ないが、この改革をしなければパイオニアの未来はない」と覚悟を示した』、発表後の株価は63~64円と買い取り額をも下回っている。
・『人員削減や事業整理にも着手へ  ベアリングのジォーン・エリック・サラタ会長兼CEOは、「パイオニアの技術力、ブランド力、人材という強みを活かしながら、まずは迅速な財政基盤の安定化が求められる。そのための非上場化だ」と語った。ベアリングは2006年に日本法人を設立。ホームセンターのジョイフル本田など国内7社、総計2750億円の投資実績を有する。パイオニアがDJ事業を売却する際も名乗りを上げた経緯がある。 森谷社長は経営再建計画の具体的な内容について明言を避けたが、財務基盤安定を最優先に、2年間で全体の約15%に当たる3000人規模の人員削減や事業整理、拠点の統廃合などを進めるとした。取締役は森谷社長を残して5人が辞任し、臨時株主総会後にベアリングからの新たな取締役を受け入れるが、パイオニアから改めて選任される可能性もあるという。 「社内はざわついているが、方向性が決まってよかった」。リストラや事業再編の不安もある中、ある社員は取材に安堵した気持ちを吐露した。 パイオニアは今年5月にカーナビを自動車メーカーに販売するOEM事業で大規模な損失が見込まれると発表。抜本的な対策を早急に講じるため、スポンサー探しに奔走していた。6月には、10年間社長を務めた小谷進社長(現会長)が退任し、森谷社長がバトンを引き継いだ。しかし、2018年4〜6月期決算では資金繰りの懸念から「継続企業の前提に関する疑義注記」が付いた。銀行にOEM事業の再建案を示せず、シンジケートローンの借り換えを拒否される事態に陥ったからだ。 自動車部品メーカー大手のカルソニックカンセイなどが支援先として名乗りを上げる中、最終的に、9月にベアリングとスポンサー支援の基本合意を締結。シンジケートローン借り換え期限間際の9月18日に250億円の融資を受けた。12月中に500〜600億円の増資を行うための本契約に向け10月中の合意を目指したが、交渉が長引いていた。 9月の基本合意時点では、両者は上場維持を前提に話を進めていたというが、森谷社長は「やはりお金だけ出してもらうわけにはいかない。一緒の船に乗り、どう再生して行くかを考えた」と、打ち明ける。増資額が計画より170 億円増えているのは、2020年12月に償還予定の転換社債について、その時期までに150億円分のキャッシュを用意できる見通しが立たないためだという』、「OEM事業で大規模な損失」というのは解せないが、仕事量確保の余り無理な条件で受注したのかも知れない。
・『求められるマネジメント能力  パイオニアはこれまでも経営危機に見舞われてきた。社運をかけたプラズマ事業の不振で2010年まで6年連続の最終赤字を経験した。大規模なリストラや工場閉鎖を断行し、ホンダなど3社に対する第三者割当増資で急場をしのいだ。2014年には祖業のオーディオ事業と売れ筋のDJ機器事業を売却し、車載事業へと大きく舵を切った。 だが、グローバルでの技術革新のスピードを見極められず、客先からの大掛かりな仕様変更を請負わざるを得なくなった。森谷社長は、「売り上げの増減に対してのコストの出方や、開発投資と回収のバランスをマネジメントする能力が不十分だった」と反省を示す。 将来の成長を見込む高精度3D地図を開発する子会社「インクリメントP」や自動運転用の高性能センサーLiDARなど注目すべき事業はあるが、黒字化には程遠い。ベアリングによる完全子会社化が完了するタイミングで、パイオニアは中期経営計画や具体的な再建計画を発表する予定だが、成長戦略をどう描くかが注目される。 加えて、変化の激しい車載ビジネスの荒波の中、パイオニアの高い技術力や優秀な人材を、いかにマネジメントできるかが新体制の課題になる。社員口コミサイトの「Vorkers」には、「経営センスのある人物を外部から迎えるべきだ」という元社員のコメントが寄せられている。外資系ファンド傘下で生まれ変わることができるのか』、なんとか生まれ変わってほしいものだ。

第三に、10月31日付け東洋経済オンライン「テスラに悩まされるパナソニック社長の本音 「いったい何者なのか」と自問自答した真意」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/246498
・『家電から車載に軸足を移して成長する――。一度はそう打ち出したパナソニックが、方針の見直しを決断した。 「実はここしばらくの間、パナソニックという会社がいったい何者なのか、自問自答する日々を過ごした。かつて家電の会社だった時代は説明しやすかったが、今は車載電池、車載エレクトロニクス、工場の(製造)ラインなど、さまざまな事業を展開している。そして気がつくと、パナソニックがいったい何者なのか見えなくなっていた。正直、かなり悩んだ」 今年創業100周年を迎えたパナソニックが10月30日から5日間、東京・千代田区の東京国際フォーラムで開催している記念イベント。開催初日の30日、基調講演に登壇した津賀一宏社長のスピーチのサブタイトルは、「パナソニックは、家電の会社から何の会社になるのか」。テーマの通り、話は社長の悩みの吐露から始まった』、100周年記念イベントの基調講演が「悩みの吐露から始まった」というのは、前代未聞で驚かされた。よほど悩みが深いのだろう。
・『住宅と車載、成長の2本柱に抱く不安  テレビの失敗を元凶とする業績不振から脱却すべく、2012年に社長に就任して以来、家電の次の成長柱を模索してきた津賀氏。2013年には、住宅と車載の2分野を重点事業に位置づけ、2015年から4年間で1兆円の戦略投資枠を設けるなど、事業の育成に注力してきた。 だが、住宅事業は戸建てやリフォーム、介護などの重点領域で中期の収益計画を大幅に下方修正。直近の2018年4〜6月期は営業赤字となり、戦略を再考。そこで現在は、もう一本の柱である車載部品の中でも今後の市場拡大が見込まれるEV(電気自動車)用リチウムイオン電池を成長の柱に位置づけている。 電池事業の最大顧客は2011年から戦略的パートナー契約を結ぶ米EVメーカーのテスラ。アメリカ・ネバダ州の電池工場「ギガファクトリー」にはパナソニックも2000億円程度を出資し、共同で運営している。2017年にはトヨタ自動車との提携検討も発表した。この2社を筆頭に、12社80車種以上に供給し、出荷量ベースでは世界シェアの15%ほどを握る(2017年、調査会社テクノ・システム・リサーチ)など、市場でも優位にある。 電池事業の2017年度の業績は、北米と中国2つの新設工場への先行投資が重く18億円の営業赤字だったが、「今期(2018年度)から本格的に投資の刈り取り時期に入る」(梅田和博CFO)。車載事業の成長がまさにこれから、という時期にも関わらず、津賀氏が思い悩んだのはいったいなぜなのか』、住宅事業も2018年4〜6月期は営業赤字とは深刻だ。
・『津賀氏はこう打ち明ける。「車載電池の会社になるといっても、10年後、20年後に自動車ビジネスがどうなっているかはわからない。そう簡単に事業領域を絞り込むことは難しい」。 慎重な物言いの背景には、車載電池を巡る環境の変化がある。その1つが、テスラの混乱だ。同社初の大衆車となる「モデル3」の生産を2017年7月に開始したが、全自動ラインの立ち上げに苦戦。本来、昨年12月までに達成する予定だった週次5000台の生産目標は今年6月へとずれこんだ。これに伴い、パナソニック側の電池の出荷も計画比で下振れし、生産過剰となった一部を住宅用蓄電池向けに振り分けるなどの対応に追われた』、テスラの「おおボラ」に振り回されるのでは、かなわないだろう。
・『イーロン・マスク氏のツイッターが波紋  それに加えて、テスラのイーロン・マスクCEOの奔放な言動にも肝を冷やすことになった。これまでも過激な言動が話題になってきたマスク氏だが、今年8月にはツイッターで突然、株式の非上場化を示唆し、株価操縦の疑いがあるとしてアメリカの証券取引委員会から起訴される事態にまで発展した。 モデル3の生産台数は、設備の入れ替えなどが奏功し、足元は週次5000台で安定してきた。10月25日に発表された7〜9月期決算は市場予測を上回り、これまでマイナス値が続いていたテスラのフリーキャッシュフローが8億8100万ドルのプラスに転換。パナソニックの電池の出荷も大幅に拡大しているはずだ。それでも、株式市場の見方は厳しく、2018年の初頭から続く株価の低迷は未だ底を打ちそうにない。 モルガン・スタンレーMUFG証券の小野雅弘アナリストは、パナソニックの株価低迷をこう分析する。「株価の変動幅が大きい現在の市場環境では、少しでもリスク要因のある銘柄は避けられる。パナソニックの場合、車載電池の最大顧客であるテスラの生産状況の不透明性に加え、テスラと組むこと自体、同社の信用度を下げるリスクがあるとみられている」。 津賀氏も東洋経済の取材に対し、「テスラとのリスクは常にヘッジしているし、テスラが倒産するわけでもないが、唯一どうにもできないのはイーロンの言動」と苦悩を語った。 今後どこまでテスラと付き合うかも問題だ。10月には中国・上海の工場用地を獲得し、2019年から一部生産を始める予定。パナソニックの津賀氏は中国での協業も「検討する」と発言してきた。ただ、「中国でも手を組む場合、従来よりよい条件でテスラと協業し、投資負担やリスクを抑えない限り、収益性の大幅な向上は望みにくい」(みずほ証券の中根康夫アナリスト)との指摘もある。 リスクはテスラの混乱だけではない。投資に積極的な中国の電池メーカーも脅威だ。EV拡大を国策として進める中国政府の手厚い支援の下、莫大な投資を進める中国の電池メーカーCATLも、中国国内の自動車メーカーのみならず、日産自動車やホンダ自動車など、パナソニックの重要顧客にも、中国国内で発売する一部車種ではあるが採用が始まった。 こうした状況を受け、パナソニック社内には「車載電池は中国勢の勝ち」と見る社員もいる。津賀氏は取材の中で、「われわれの電池が世界最高レベルの品質水準であることに違いはない。パナソニックがCATLに負けたという意見には反応する気にもなれない」と語気を強めた一方で、「当社の競合となりうる筆頭格」とは認めた。また、電子ミラーやコックピット、センサーなど幅広い商品群を展開するパナソニックの車載事業だが、電池に替わるほどの強い部品がないのが現状だ』、テスラでは、イーロン・マスク氏が会長を退くようだが、今後の影響力は未知数だ。さらに、「中国政府の手厚い支援を受ける地場電池メーカーとの競争は、なま易しくはなさそうだ。
・『定まらない未来のビジョン  家電の会社から脱却したものの、車載部品メーカーとしての持続的な成長に不確実性が出てきたパナソニック。そこで、津賀氏が今回の講演で新たに打ち立てた目標が、「くらしアップデート業」なるものだった。 いったいどういうことなのか。家電販売のような完成品を売り切るビジネスモデルではなく、消費者の暮らしにあわせてソフトウェアをアップデートする家電やサービスを強化し、継続的な課金収入を得るモデルを目指すという。その一例として、街中などの特定区間を低速で走り、宅配や売店、医療などさまざまなサービスを展開できるコンセプトカーや、家の中の情報基盤「ホームX」などを発表。つまり、暮らしを軸としたプラットフォーマーを目指すというのだ。 ただ、この新目標はこれまで打ち立ててきた住宅や車載の強化よりも一段高い次元の話だ。展開する多様な取り組みの中でパナソニックの強みがいったいどこにあるのかはまだ見えにくい。パナソニックが次の100年も存続する上での“自分探し”は、今後も続く』、確かに取り巻く環境に不確実性が高いなかでは、“自分探し”も容易ではなかろう。奮闘を期待したい。

第四に、第四に、10月17日付けダイヤモンド・オンライン「名門GE異例のトップ交代で解体加速、IoT事業も練り直し」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/182156
・『米ゼネラル・エレクトリック(GE)が1日、初めて社外出身者をCEOに据えるトップ人事を行った。2017年12月期、58億ドルの最終赤字に沈んだGEは事業売却などのリストラを進めるが、新CEOの下で解体がさらに加速しそうだ。 前CEOのジョン・フラナリー氏は、主力の火力発電機器の低迷が決定的になっていた17年8月にトップに就任。中核部門の医療機器を含む200億ドル規模の事業売却などに着手したが、株価の下落を止めることはできなかった。 フラナリー氏は9月下旬、ひっそりと来日し、経団連の会合で講演していた。会合に参加した企業の幹部は「(危機対応で)疲れていた。看板事業としてぶち上げたIoT(モノのインターネット)関連事業の説明にもかつての勢いを感じなかった」と振り返る。 日本での講演から数日後、フラナリー氏は更迭された。1年という在任期間は、10年以上続投するトップが続いていたGEにとって異例の短さだ』、あの名門GEでCEOが僅か1年で交代というのは、電機業界を取り巻く環境の厳しさを示唆しているのかも知れない。
・『今回、CEOに就任したローレンス・カルプ氏は米医療機器メーカー、ダナハーのトップとして同社の時価総額を5倍にした人物だ。 GEのCEO就任と同時に、15年に買収した仏アルストムの電力部門を含む230億ドルののれん代の大部分を減損処理する方針を示した。カルプ氏のトップ就任が好感され、GE株は反発した。 だが、これで膿を出し切れたのかと疑われてしまうのが現在のGEの苦しいところだ。昨年以降、金融部門での損失計上や年金の積み立て不足といった問題が噴出し、業績予想の下方修正が続いたため、不信感を持たれているのだ』、不信感払拭は簡単ではなさそうだ。
・『日本での事業にも変化  こうした疑いを晴らすためにも、カルプ氏は事業売却やコスト削減を加速するだろう。 リストラは成長分野に位置付けてきたIoT関連事業にも及ぶ。発電機器などのデータを解析して運用改善につなげるIoTプラットホームなどを開発する子会社、GEデジタルのコストを4億ドル減らすという。 プラットホームの売り込み先も絞り込む。GEは日本でソフトバンクやNECと提携し、全方位的に営業してきたが、めぼしい実績を挙げていない。このため、GEの中核製品である航空エンジンや発電機器の顧客(航空業界や電力業界)に注力する。 だが、そうした注力業界の企業幹部ですら、「GEは積極的にアプリを開発する意気込みがなくなった。プラットホームを使って自由に課題解決してくださいという姿勢に後退した」と話す。 同企業を担当していたGEの中堅技術者ら3人が最近、日系電機メーカーにまとまって転職するなどIoT人材がGEを離れている。GEはIoT関連事業を続けるが、事業戦略の練り直しも必要になりそうだ』、何でも自社開発するのではなく、オープンに開発してゆく路線なのだろうが、中堅技術者ら3人がまとまって転職、というのは痛いところだろう。
タグ:初めて社外出身者をCEOに据えるトップ人事 「名門GE異例のトップ交代で解体加速、IoT事業も練り直し」 日本での事業にも変化 1年という在任期間は、10年以上続投するトップが続いていたGEにとって異例の短さだ イーロン・マスク氏のツイッターが波紋 前CEOのジョン・フラナリー氏 中山素平翁に助けられ教えられて自分は生き返った 孫さんのARMへの投資は失敗すると思います。方針は正しいんです。「方針の失敗」ではなくて「時間の失敗」。 3~5年では成果は見えず、そのうちファンドの償還期限がきてしまう。つまり時間切れのタイムアウトになるでしょう。孫さんは読みが早すぎなのではないでしょうか。地の利、人の和はあるが、天の時がないということではないでしょうか 大川功は「先を見る目」がすごかった 孫正義には「天の時」がない (その2)(日本の電機メーカーが敗北した理由 元アスキー社長・西和彦が語る、名門パイオニア、ファンド傘下入りの「覚悟」 3000人規模リストラも計画だが 視界は不良、テスラに悩まされるパナソニック社長の本音 「いったい何者なのか」と自問自答した真意、名門GE異例のトップ交代で解体加速 IoT事業も練り直し) 技術の未来に世界観を持たないトップが日本メーカーの失敗を招いた ネット社会の到来と変革の様相はほぼ20年前の予想通りだった ダイヤモンド・オンライン 「日本の電機メーカーが敗北した理由、元アスキー社長・西和彦が語る」 電機産業 求められるマネジメント能力 話は社長の悩みの吐露から始まった 記念イベント 東洋経済オンライン ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(以下ベアリング)と経営再建計画で合意 5つの革命史を書きたいのは正史と違う現実があるからだ 住宅と車載、成長の2本柱に抱く不安 基調講演に登壇した津賀一宏社長のスピーチ 創業100周年 「テスラに悩まされるパナソニック社長の本音 「いったい何者なのか」と自問自答した真意」 IoTにおけるキラーアプリは バイオセンサーなど4つ 「名門パイオニア、ファンド傘下入りの「覚悟」 3000人規模リストラも計画だが、視界は不良」 人員削減や事業整理にも着手へ 定まらない未来のビジョン
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