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中国経済(その4)(中国が経常赤字に転落 日本への影響は 「爆買い」の減少に警戒必要、追いつめられた中国経済 2019年の動向を占う 習近平重要講話と中央経済工作会議から読み解く、中国経済「崩壊」の始まりを感じさせるこれだけの理由) [世界経済]

中国経済については、2016年9月7日に取上げたままだった。2年以上経った今日は、(その4)(中国が経常赤字に転落 日本への影響は 「爆買い」の減少に警戒必要、追いつめられた中国経済 2019年の動向を占う 習近平重要講話と中央経済工作会議から読み解く、中国経済「崩壊」の始まりを感じさせるこれだけの理由)である。

先ずは、小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEOの小宮 一慶氏が昨年12月21日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「中国が経常赤字に転落、日本への影響は 「爆買い」の減少に警戒必要」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/011000037/122000049/?P=1
・『今年上半期、中国の経常収支が赤字に転落しました。中国国家外貨管理局が発表した2018年1~6月の経常収支は、283億ドル(約3兆1500億円)の赤字となりました。 経常収支とは、貿易収支・サービス収支・所得収支(海外から得た利子や配当など)を合計したもの。海外との総合的な取引状況を示します。これが赤字になったということは、海外から稼げなくなりつつあるということと同義です。これは中国経済には大きな問題となります。 2000年代から急成長を遂げ、世界第2位の経済大国に成長した中国が、なぜ今になって経常赤字に陥ったのか。日本への影響はどのように考えればいいのか。今回は、中国経済の現状と展望について考えます』、中国の経常収支赤字化は、確かに目をひく数字だった。
・『18年1~3月期、17年ぶりの経常赤字に  まずは、経常収支の中でも最も大きなウェイトを占める「貿易収支」の推移から見てみましょう。 貿易収支は大幅な黒字を続けています。2016年は5097億ドル(約57兆円)、2017年も4215億ドル(約47兆円)の黒字です。そのかなりの部分は対米黒字です。米国が不満を持つのも分かります。特にここ数カ月は、米中貿易摩擦による関税率の引き上げを見込んだ駆け込み需要が発生しており、中国側の貿易収支の黒字幅が増加しやすい傾向があります。 ところが、中国の経常収支は2018年1~3月におよそ17年ぶりの赤字に転落し、4~6月は黒字となったものの、1~6月では赤字となりました。 一体、何が原因だったのでしょうか。 経常収支は、貿易収支、サービス収支、第一次所得収支(海外からの金利や配当等)、第二次所得収支(政府開発援助や国際機関への分担金等)の合計です。 中国の内訳を見ますと、先ほども見たように貿易収支は順調ですが、それと同時に「サービス収支」の赤字が拡大しているのです。サービス収支の赤字は2010年あたりから増加し始め、季節要因によって貿易黒字が縮小した2018年1~3月にはカバーしきれず経常赤字になりました。 1~3月期は春節の時期が含まれているため、毎年、この四半期の貿易黒字は一時的に減る傾向がありますが、サービス収支赤字が拡大し続けていることには変わりありません。なぜでしょうか。 主な原因は、中国人による海外旅行の増加による「旅行収支」の悪化です。これは、旅行者の滞在先での宿泊費や交通費などが主なものです。中国からの海外旅行者の増加により、旅行収支の赤字が拡大しているというわけです。 中国経済が成長してくるにつれ国民の生活は豊かになり、海外への旅行熱が高まり、さらには、高品質な海外製品に対する需要が高まりました。税制上、輸入品よりも海外で購入した方が安いこともあり、海外旅行先で爆買いする中国人も多くいます。これらは経常収支の悪化をもたらすのです』、旅行収支赤字が主因であれば、対策は簡単だが、影響は日本にも及ぶ。
・『中国政府が旅行収支赤字を縮小しようとする可能性がある  日本経済もそんな中国人旅行客による恩恵を受けてきました。しかし、それもいつまで続くのかは分かりません。 というのは、中国政府がこの先、旅行収支赤字を縮小しようと動き出す可能性があるからです。 中国の成長率の推移を見ますと、かつては二ケタ成長を続けていましたが、直近の2018年7~9月期は前年同期比6.5%まで鈍化しています。今後は米中貿易摩擦の影響もありますから、ますます厳しい状況に陥るでしょう。長期的には、一人っ子政策の影響で労働力人口が長期的に減少しますから、これも経済成長を鈍化させます。このことは、中国の成長を見込んでの海外からの投資を鈍化させることにつながります。 その中で中国人旅行客が世界各国に旅行を続け、爆買いをすれば、経常収支を悪化させ、人民元売りが起こります。ただでさえ、国内経済の鈍化によって人民元安の傾向が続いている上に、海外旅行や爆買いの影響が重なるのです。 さらに、米中貿易摩擦によって貿易黒字が縮小していく可能性もあります。米国は、それを狙っているわけですからね。貿易黒字の縮小によって経常赤字が拡大すれば、人民元がますます下落し、下手をすれば暴落する可能性も否定できません。 中国政府としては、こういった状況を看過できるはずがありません。人民元安が進みすぎるのを防ぐため、せめて旅行収支赤字だけでも縮小して人民元安に歯止めをかけようと対策を打ち出す可能性は大いにあるでしょう。旅行そのものを規制すれば、当然、爆買いもなくなります。 そうなれば、日本経済への影響も避けられません。2017年の訪日客による消費額は、16年に比べて18%増加し約4兆4000億円に上り、5年連続で最高額を更新し続けています。中でも、中国人観光客による消費は約1兆7000億円と首位に位置しています。 消費額自体は4兆4000億円ですが、波及効果も加味すれば、GDPベースで約10兆円の経済効果があるとの見方もあります。 中国政府が旅行収支赤字の縮小を視野に入れ始めると、この莫大な観光収入が大幅に減少する可能性も少なくありません。 訪日客数の推移を見ますと、2018年8月は前年同月比4.1%増の257万8021人、9月は北海道での地震の影響もあり5.3%減の215万9600人、10月は1.8%増の264万600人となっています。2018年の訪日客数は3000万人を超えましたが、2017年は前年同月比で20%前後の伸びを維持していたことを考えますと、増加ペースが鈍化していると言えるでしょう。 中国政府が手を打ち始めたら、この伸びは止まるどころか、減少に転じる可能性もあります。台湾は反中国政権の影響もあり、中国本土からの旅行客が減少し、経済にも悪影響が出ています』、インバウンド・ブームについては、影の部分の指摘も増えていることから、「中国本土からの旅行客が減少」はやむを得ないことなのだろう。
・『東京のマンション投資、地方の観光地にも影響  さらに言えば、単純に旅行収支だけではなく、海外への投資、例えば不動産投資などを抑制することも考えられます。そうなると、中国人投資家による日本国内、特に東京都内のマンションへの投資、あるいは北海道などでの観光地への投資などに影響が出るでしょう。 しかもここへきて日本経済のトレンドが変わり始めています。2018年7~9月期のGDP実質成長率はマイナス2.5%(季節調整済み、年率換算)と、減少幅は前回の消費増税後の2014年4~6月期以来の大きさとなりました。2019年1月まで成長が続けば、戦後最長の景気拡大となると期待されていますが、その先は黄信号が灯っているのです。 ここで中国からの訪日客が急減するようなことがあれば、日本の景気に大きな影響があることは間違いありません。 米中貿易摩擦の解決の仕方にもよりますが、この先、中国の経常収支は悪化してゆく可能性があります。日本企業も中国を大きな市場としているところも多く、また、訪日客の動向によっては、日本への影響の度合いも大きく変わってきますので、注意が必要です』、既に弱まり始めている日本の景気をさらに下押ししたり、不動産市況に悪影響があることは覚悟する必要があるが、インバウンドに過度に依存した姿こそが異常なのであり、持続性ある成長路線に戻すためには、不可避なことであるように思う。

次に、元産経新聞北京特派員でジャーナリストの福島 香織氏が12月26日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「追いつめられた中国経済、2019年の動向を占う 習近平重要講話と中央経済工作会議から読み解く」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/218009/122500193/?P=1
・『新華社が21日に報じたところによれば、19-21日に中央経済工作会議が開催された。中央委員会総会(四中全会、政治政策の決定を中央委員会によって可決する)を開かずに経済政策を決める中央経済工作会議を先に開くのはやはり異例だ。しかも、その直前に行われた改革開放40周年記念の習近平重要講話を仔細に読めば、経済の習近平路線は大きく変わりそうにない。中国の来年の経済動向を、習近平重要講話と中央経済工作会議の中身から占ってみたい』、これまでからバブルの歪みが指摘されてきた中国経済も、いよいよ「弾ける」とすれば、影響は深刻だ。
・『倒産500万件、失業200万人か  簡単に2018年の中国経済を概観すると、今年の経済鈍化は、庶民が肌身で切実に感じるレベルである。党大会後から始まった債務圧縮政策は中国の雇用を支えてきた民営中小零細企業を直撃、報道ベースでざっくり500万件が倒産し200万人が路頭に迷い、740万人の出稼ぎ者が都市部から農村に戻った。その原因を習近平路線にあるとする声は党内でも大きい。習近平の政策の一番強烈なところは「習近平を核心とする党中央」が一切を指導する独裁路線であり、株式市場も為替市場も民営企業も債務も、党(習近平の意向)が完璧にコントロールしてやろう、という点だ。そんなものを完璧にコントロールできる天才的指導者などいるか、という話だ。 これは鄧小平の改革開放路線(資本主義を経済の手段として容認し、経済活動については政治的制約を極限まで減らし、結果的に豊かになった企業家および中間層を党に取り込むことで共産党の権力を強くする)とは真逆。だから、習近平路線の呼び名は「逆走路線」あるいは「改毛超鄧」(毛沢東のやり方を改良して鄧小平を超越する)と表現される。 胡錦濤政権末期を振り返ると、鄧小平路線を長年継続してきた結果、(資本家を受け入れた)共産党の腐敗と風紀の乱れが激化し、貧富の差の拡大によって大衆の不満が膨らみ、経済が資本主義(自由主義)、政治が社会主義(全体主義)という不均衡によって、共産党は経済の資本主義化にブレーキをかけるか、政治の社会主義体制の看板を下ろすかの選択の岐路に立たされていた。この選択をできずにいた胡錦濤政権から、矛盾が極限まで膨らんだ状態の中国を受けついだ習近平政権は、高度経済成長の持続を諦め、成長減速を「新常態」(ニューノーマル)と受け入れて、経済構造の大改革を行うとした。だが、文革時代に思春期を過ごし、大した経験や知識をもたない習近平には参考となる政治家手本は毛沢東しかおらず、毛沢東のやり方を模倣する以外なかった。 結果として起きた現象を上げれば、安邦保険や海南航空集団といったメガ民営企業の事実上の国有化などによる民営企業のパニック、2015年上海“株災”から始まった中国株式市場の信用失墜、意見の対立する政治家、官僚排除による党内組織機能の硬直化やサボタージュ、中国製造2025(製造業の高度化)や一帯一路(国内余剰生産などの矛盾を国外に移転、拡大することによる問題解消を狙った中華式経済圏の拡大)といった戦略を中国の覇権主義台頭と警戒した米国との貿易戦争などが重なって、中国経済は急減速した。外資引き上げが加速し、キャピタルフライトはとどまらず、人民元は急落を続け、不動産バブル、地方債務ははじける寸前であり、社会消費の鈍化が目立つようになった』、改革開放以来の経済政策の流れが理解できたが、習近平にとっては、内憂外患の極致にあるようだ。
・『「鄧小平路線に戻すべき」との声も  2017年暮れごろから中国政府内の金融官僚たちは「ミンスキーモーメント」という言葉を口にし始めた。これを警戒し、習近平政権は金融バブル崩壊圧力を緩めるために2018年6月、P2P金融業者(ネットなどをプラットフォームに使った個人間融資)を選んで破綻させたのだが、大量の自殺者、失踪者が出て数百万単位の金融難民を出した苛酷なものだった。ネット上で怨嗟の声が渦巻き、習近平政権に対する大衆、特に中間層の敵意を形成することになった。しかも、P2Pを破綻させたところで、中国の巨大な金融破たんリスクが解消されるわけもなく、むしろ次はより大きなショックがくると国内外のアナリストたちは恐怖を感じるようになった。ここに、米国との貿易戦争が重なり、中国経済は改革開放以来、例をみないほどに追いつめられている。 党内では現状を改善するためには路線を旧鄧小平路線に戻すべきだと主張する声が強くなっていた。だが、習近平にとって旧鄧小平路線に戻ることは自身の敗北を認め、下手をすれば引退という形で責任を取らされる可能性があり、簡単には認められない。習近平は最終的にどうするのか、その答えが改革開放40周年記念日に行われた演説であった。 演説の内容を簡単にいえば、旧鄧小平路線には戻らない、という習近平の決意が打ち出されている。見出し的には「改革開放路線の継続宣言」と報じてるメディアもあるが、中身はあくまで習近平路線維持を押し通したものだった。鄧小平の言葉よりも毛沢東の言葉を多く引用しているし、なにより胡錦濤政権時代の2008年に行われた改革開放30周年記念行事には江沢民ら長老が勢ぞろいしたが、今回、長老連は軒並み欠席。現役指導部と習近平の取り巻きだけが参加した習近平独演ショーのようになっていた。 まず「党が一切を指導する」(経済、市場を含めた国家占有至上主義路線)の維持を繰り返した。 また中国を国際秩序の擁護者としながら、「中国人民にあごで偉そうに指図できる教師様はいない」と毛沢東風に語り、中国が目指すのは米国はじめ西洋社会が示す民主主義モデルではなく、中国が独自の道をいくのだと主張している。これは既存の国際秩序への挑戦姿勢と受け取れよう。米国を暗にさして「覇権主義と強権主義に旗幟鮮明に反対する」と牽制している。また国有経済優先姿勢も明確にし、「公有経済制はみじんもゆるがさない」としている。改革開放路線継続といいながら、実は逆走路線である。党内改革派からは鄧小平路線に回帰し、国際社会との融和・妥協点を探るべきだという意見が出ているが、それにも習近平はノーだということだ。 「改革すべきところ、改革できるところは必ず改革する、改革すべきでないところ、改革できないところは絶対改革しない」とのべているが、これは事実上の「これ以上改革開放しない」宣言といえるだろう。習近平の本音はもとのまま毛沢東時代逆走路線ということだ。とりあえず、鄧小平を少し持ち上げてみせるが、「できないものはできない」と、開き直ったようにもみえる。さらに一流の軍隊を作って中華民族の復興路線の後ろ盾とする社会主義現代強国化路線の堅持を訴えた。 また「党の集中統一指導により、我々は歴史の偉大なる転換を実現し、改革開放新時代と中華民族の偉大なる復興の新たな道のりを切り開くことができる。一連の重大なリスクの挑戦を受けて立つことができる。無限の艱難辛苦を克服し、変局、風波、洪水、パンデミック、地震、危機もろもろに対応でき防止できる能力がある。古臭くなった過去のやり方でもなく、旗印を安易に挿げ替えただけの邪道でもなく、ゆるぎない中国社会主義路線を堅持するのだ」と語っている』、「習近平の本音はもとのまま毛沢東時代逆走路線」とはいうものの、毛沢東時代とは比較にならないほど経済構造が複雑化したなかで、統制強化路線が機能するのだろうか。
・『「旗印を安易に挿げ替えた邪道」とは  「旗印を安易に挿げ替えた邪道」とは、経済の資本主義化を社会主義初級段階に言い換えて自由主義路線を推し進めた鄧小平を念頭に置いているとすれば、習近平の本音がどこにあるかは明らかだ。しかも、習近平が考えうるリスクの羅列の筆頭に「変局」「風波」が挙がっている。変局を直訳すれば非常事態だが、これには政治的意味が含まれており、革命や政変、戦争などを連想させる言葉である。風波は動乱、天安門事件のような社会や政治の動乱を差す言葉だ。習近平が自分の路線を押し通す先に、政変や動乱のリスクも想定しているともとれる。この重要講話を読む限り、習近平は妥協しないつもりであり、いざとなったら政変も動乱も受けてたつ、といわんばかりのやけっぱちで暴走気味であるとも受け取れるのではないか。 さて、この重要講話発表の翌日に中央経済工作会議が開催された。新華社によれば会議では「世界は百年に一度の大変局に直面している。変局中には危機と同時にチャンスが併存しており、これは中華民族の偉大なる復興に重大なチャンスをもたらす」と指摘されたという。ここでも、「変局」が意識されている。とにかく来年は、世界も中国も政治体制、経済や秩序のフレームワークが激変するような非常事態がおきうる危険な一年という意識がにじみでている。だから、経済工作会議の前に開かれた政治局会議で2019年、2020年経済成長目標は6.1%に設定すべしと提言された。今年の経済成長は6.6%前後の見込みで、それでも肌身に厳しい状況を感じるのだから、来年の厳しさは想像以上だろう。ちなみに国家統計局内の特別チームが内部報告用に取りまとめた統計によれば今年の本当の成長率は1.67%という(向松祚・人民大学貨幣研究所副所長、NYT)。 会議ではマクロ政策方針は積極財政、穏健通貨政策をとり、よりカウンターシクリカル(逆周期調節)な対応を強化する、とした。さらに積極財政を効果的にするために、大幅減税を実施し、地方政府の専項債権(インフラプロジェクトなどの資金調達のための特別債)規模を大幅に拡大させる、とした。同時に地方債務リスクを穏健に妥当にコントロールする。貨幣政策は適度に緩め、流動性を確保し貨幣政策メカニズムの改善を図りつつ、直接融資比重を上げて民営の中小零細企業の融資困難問題を解決するとした。穏当をキーワードにした慎重な政策で痛みを最小限にとどめるつもりなのか。 構造改革については、国有企業改革が首位におかれた。珍しく踏み込んできたと思える発言は「政企分開、政資分開と公平競争原則を堅持する。国有資本を強く優位に大きくし、企業を管理することから資本を管理することへの転換実現を加速する」とした点だ。国有企業の競争力を強化することを政策の基礎として、党と国有企業の関係を、あくまで国有資本の管理者として、企業自体の管理は政治と切り離す、という意味だとしたら、これは習近平路線の逆をいく話だ。しかも、「民営企業の発展を支持し、制度環境を法治化し、民営企業家人身の安全と財産の安全を保護する」としている。民営企業家の不審死、自殺が相次ぎ、不自然なやり方で民営企業の国有化を進めた、習近平のこれまでのやり方を改める、という意味にもとれる』、ここには触れられてないが、財政赤字はさらに大きく拡大し、中央銀行がそれを支えることになるのだろう。その場合、資本主義国であれば、インフレが激化するが、統計操作では、安倍政権より遥かに手慣れているので、そんな気配も見せないのだろう。不思議な国だ。
・『米中貿易戦争が再燃したら…  こうして見てみると、経済政策に関していえば、習近平路線と離れて独自に動きだしているように見える。だが改革開放記念演説に見た習近平の自分のやり方への執着をみれば、本当に経済工作会議のもとに打ち出された方針で運営されるのかも定かではない。そもそも、中央委員会総会によって次の5年の政策の大枠の方向性が可決されていないのだ。 ちなみに会議に国家副主席の王岐山が欠席したのは、党内で意見分裂があったからだ、という見方もあった。すでに中央委員でもない王岐山の欠席に意味があるかどうか別として、党内で習近平派とアンチ習近平派に分かれて、政策の方向性が紛糾しているという話は私も各方面から仄聞(そくぶん)している。習近平の権力への執念が経済政策の方向性の定まりがたさの原因とすると、今後の見通しは不確定きわまりない。しかも90日停戦を経て3月1日には、米国との貿易戦争が再燃するかもしれない。そうなれば、中国経済のハードランディング回避は難しくなろう。今年のP2P破綻のような選択的破綻でしのぐにしても、規模はリーマンショック級以上、という予想をいうアナリストたちは少なくない』、ただ、トランプも本格的な貿易戦争は望んでないと見られることから、貿易戦争再燃はかろうじて避けられるのではなかろうか。それでも、国内での歪み蓄積による経済悪化といったリスクは十分あり得るだろう。

第三に、ジャーナリストの姫田小夏氏が1月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「中国経済「崩壊」の始まりを感じさせるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/190528
・『実態と乖離した不動産価格の裏側  中国経済がおかしくなっている。「IT、製造業、不動産業で雇用削減」「消費が曲がり角」――年明け早々、日本経済新聞は中国経済の変調をこう報じた。中国の主要な経済紙を開いても、「債務危機」「連鎖破綻」「不良資産処理」など、先行きの不穏さを暗示する経済用語が目を引く。2019年の中国経済は見通しが悪い。 昨冬、筆者が訪れた上海の街は「真っ暗」だった。その元凶は不動産市況だろう。もとより上海では、マンションの乱開発と投機が生んだ「空室」が社会問題になっていたが、その数が激増し、夜間マンションにともる灯りが減ったのだ。 上海在住で複数の事業用マンションを持つ富裕層のひとりは「売りに出した住宅を見に来る客はいても契約には至りません」と語る。上海では2017年以降、住宅の中古市場が動かなくなった。 上海市黄浦区の不動産屋に張り出された住宅情報を見ると、1000万元台、2000万元台のマンションが目に付く。特別な仕様でも立地でもないごく普通の住宅だが、1億円はざら、2億円、3億円の高値がつくのだ。 その不動産屋の前に、近隣居住者とおぼしき老人が立っていたので話かけた。この老人は最近、所有していた物件を680万元(約1億1000万円)でやっとの思いで売却したという。このエリアでの成約額といえば680万元がせいぜいなのだ。2000万元越えの “バブル物件”など簡単には売れはしない。 その売却で手にしたお金は何に投資したのかと聞いたら、「借金返済ですべて消えてなくなった」と上海なまりの中国語で明かした。金融機関のみならず、親戚や友人から借りまくって買ったまではよかったが、老人の手元には何も残らなかったのだ。 インターネットでは「房奴」「車奴」など、「~奴」という言葉を見るようになった。住宅ローン、自動車ローン、カードローンを返せない個人が増えているのだ。中国人民銀行は2018年第3四半期末、クレジットカード支払いの不良債権(半年の遅延)額は880億元になったと発表した。2011年同期の106億元と比べると8倍以上の増加だ。 高額な負債を負った生活者は急増する中、中国では今、「個人破産制度を設けよ」という声が高まっている』、個人破産制度がないということは、返済できない個人はどうなってしまうのだろう。
・『改革開放のシンボル民営企業も八方ふさがり  中央政府は今、民営企業の救済と金融破綻の回避に必死だ。中国では企業の倒産が増えている。 中国の改革開放のシンボルとしての役割を背負った民営企業。その数は2017年末までに2726万社に増えた。これに「個体戸」と呼ばれる自営業を加えると、実に中国企業の95%が私企業で成り立っている計算になる。しかしこれら民営企業の多くは、経営コスト増、資金調達難、構造転換の困難という三重苦で経営難に直面している。 筆者は中国で、ある民営企業経営者と面会した。中国の民営企業トップ500の上位にランキングする、中国では有名なアパレル企業の経営陣である。 仮に彼を陳氏と呼ぶことにしよう。陳氏一族は浙江省温州市で、それぞれ工程ごとに独立したグループ会社を経営する同族企業だ。1970年代生まれの陳氏は、製造販売に従事し、全国チェーンを発展させた。そのブランド名は中国人なら誰もが知るところだが、中国の経営環境に対する陳氏の見通しは悲観的だ。 「生存競争があまりに激しい。中国では今、年商1億元規模の企業がバタバタと倒産しています。その原因の1つは、一瞬で価格の比較ができるネット販売。消費者は同じものなら少しでも安いものを選ぶため、競争力のない多くのアパレル工場がつぶれてしまったのです」 同社製品は「タオバオ」でも販売し、大きな商機につながったという。しかし、同時にこれがデフレを招き、2005年前後に高額衣料品の値段はどんどん落ちていった。 一方で、陳氏は経営環境を悲観するもう1つの要因を「信用破綻」だと指摘する。 「温州ではもともと『民間借貸』(個人や企業間での融資)が発達しており、銀行からの借り入れなしに独自に資金調達ができましたが、これが2011年に破綻してしまったのです」 この信用破綻は連鎖を呼び、陳氏のビジネスも一気に暗転した。自社ブランドを持ち、店舗展開を一気に加速させようとした矢先、店舗開発は行き詰まり、数億円の資金を投じて大量生産した商品は瞬く間に在庫の山と化した。その痛手は8年を経た現在も癒えてはいないという。その理由を陳氏は次のように語っている。 「2011年までは中央政府も『民間借貸』を認めていました。商業銀行が中小の民営企業に貸したがらない環境の中で、『民間借貸』は唯一の血流だったのです。けれども2011年に不動産バブルが崩壊すると、住宅を担保に高利で借り入れていた経営者はもはや夜逃げするしかありませんでした」「この破綻の元凶を『民間借貸』にあるとした中央政府は、その後の金融改革の中で、『民間貸借』を規制し、銀行融資を奨励するようになりました。しかし表向きの政策とは違い、銀行は貸したがらない。結局、資金が行き渡らず、多くの企業が今なお厳しい状況に置かれているのです」』、金融面の傷は極めて深そうだ。
・『信用破綻の元凶は不動産バブル崩壊  温州といえば、陳氏のように商才ある経営者を数多く輩出し、民間経済が発達した土地柄だ。改革開放の初期、軽工業が盛んだった温州は“脱国有”のモデル都市として注目を集めた。先に富んだ温州人たちは2000年代に入ると一早く沿海部の不動産に手を出した。地元温州のみならず、上海を含む中国各地の住宅価格は、彼らの大胆なマネーゲームで“身の丈”をはるかに超えるバブルと化した。 身から出た錆とはこのことである。バブル化した不動産市場に浙江省政府が購入を制限する「限購」を発令すると、市場は一気に冷えた。2011年、温州市では事実上、不動産バブルが崩壊した。買い手を市場に参入させないことでバブル抑制を試みたまではよかったが、その「劇薬」が、不動産価格の予想外のハードランディングを招いてしまい、不動産を担保に資金繰りをつけていた温州経済を破綻させてしまったのである。 2014年、筆者は不動産価格が激しく暴落した温州市を訪れた。その温州で目の当たりにしたのは、3年を経てもなお高止まりしたまま売れ残るマンションと、膨大な借金を抱えたまま経営者が戻らない工場だった。不動産価格が高騰したといわれる中心部の宿から見えるのは、数えるほどしか灯りがつかない真っ暗な高級住宅街だった。 さらにそれから4年経った2018年、温州は2019年明けの税率引き上げを前に“駆け込み特需”で製造業が活気づいていた。だが、温州を頻繁に訪れる日本人ビジネスマンによれば「温州経済は今なお暗中模索だ」という。 「温州経済は立ち直たっとは言い難い。抵当に押さえられたままの不動産も少なくありません。主力のアパレルや日用品などの産業も縮小し、次の産業は育っていないのが現状です」』、「「劇薬」が、不動産価格の予想外のハードランディングを招いてしまい」というのは、日本のバブル潰しで、不動産融資の総量規制導入で、不動産市場の崩壊、金融機関の不良債権問題深刻化を招いたオーバーキル策と似ている。
・『突き抜けた民営企業は一握り  日本でもその名をよく聞くアリババやテンセント、OPPOやシャオミなども民営企業だが、こうした“突き抜けた企業”は、実はほんの一握りだ。他方、シェアサイクルでも民営企業が大きなリードを見せたが、3年を経ずして参入企業の多くが消えた。「多産多死」で強者を生み出すのが中国流ともいえるが、上海在住の一部の消費者は「決断は大胆だが経営は問題が多い」と不安を隠さない。ちなみにシェアサイクルのofoは昨年日本から撤退したが、「その後日本支社と連絡がつかなくなった」と協力した自治体を困惑させている。 そんな民営企業に特効薬はないと踏んだのか、昨年、「私営経済退場論」「新公私合営論」といった論文が相次いで発表された。共産党の支配が強まる近年、これらは「中国を再び公有経済に戻すのか」という不安すら煽った。 民営企業は結局のところシャドーバンクから資金調達するしかなく、またしても借りた金の不良債権化が問題になっている。中国の有力経済紙「21世紀経済報道」は、「ここ数年の借り入れが返済期を迎えるが、返済できない企業は多い」、「違約に陥る民営企業が信用破綻を生んでいる」と報じる。 振り返れば2011年、中国のメディアはこぞって温州企業のこげつきと経営者の夜逃げを取り上げた。あれから8年を経た今、上海で感じるのは当時の“温州クラッシュ”の再現だ。 「政府がコントロールできる限りにおいてバブル崩壊はない」とする強気の中国だが、果たして市場は有効に制御されているといえるのだろうか。あるいは温州のバブル崩壊の検証を十分に行ったといえるのだろうか。もしかすると中国経済は今まさに、暗くて長いトンネルの入り口に立たされているのかもしれない』、不良債権といっても、その定義が緩く、処理も先送りが認められていれば、マイナス効果は裏で累積されるだけで、表に出てこない状態なのだろう。しかし、そうした危険な状態はやがて崩壊せざるを得ないが、現政権は先送りを優先するのだろう。
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