SSブログ

日産ゴーン不正問題(その5)(ゴーン事件に学ぶ 経営につまずかない「企業統治」の仕組み作り、カルロス・ゴーン氏逮捕事件 心配な今後の展開、「カルロス・ゴーンという黒船」がこじ開けた 裁判所の閉鎖性 事件を機に 自立の時期を迎えた…?) [企業経営]

日産ゴーン不正問題については、昨年12月28日に取上げた。今日は、(その5)(ゴーン事件に学ぶ 経営につまずかない「企業統治」の仕組み作り、カルロス・ゴーン氏逮捕事件 心配な今後の展開、「カルロス・ゴーンという黒船」がこじ開けた 裁判所の閉鎖性 事件を機に 自立の時期を迎えた…?)である。

先ずは、1月16日付けダイヤモンド・オンライン「ゴーン事件に学ぶ、経営につまずかない「企業統治」の仕組み作り 池尾和人・立正大学経済学部教授に聞く」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは池尾氏の回答)。
https://diamond.jp/articles/-/190934
・『日産自動車カルロス・ゴーン元会長の逮捕は、経済界に大きな衝撃を与えた。ゴーン氏は拘留理由開示手続きを通じて無罪を主張するも保釈が認められず、事態は混迷の度合いを強めている。これまでコーポレートガバナンス(企業統治)に無頓着だった企業は、この事件を教訓に社内体制をどう整えるべきか。日本においてコーポレートガバナンス・コードの策定を主導した池尾和人・立正大学経済学部教授に聞いた』、コーポレートガバナンス問題の第一人者に聞くというのは、実にタイムリーだ。
・『「企業統治」の意味を正しく理解しているか  Q:ゴーン事件をきっかけに議論が盛り上がるコーポレートガバナンス(企業統治)ですが、企業にとってそれを徹底することの意義を改めて教えてください。 A:誤解されがちですが、コーポレートガバナンスの仕組みを導入するだけで会社がよくなるわけではありません。企業関係者は、その本来の意義をまずきちんと整理して理解すべきです。 私は金融庁と東京証券取引所が取りまとめ、2015年に適用が始まったコーポレートガバナンス・コードの策定において、有識者会議の座長を務めました。このコーポレートガバナンス・コードとは、上場企業が守るべき行動規範を示し、株主がその権利を適切に行使できる環境を整備するための企業統治の指針です。その目的は、企業のパフォーマンスを向上させ、株主などのステークホルダーに還元することです。 ただ、企業のパフォーマンスに対して一義的に影響を与えるのはマネジメント(経営)であるというのが私の持論です。もしコーポレートガバナンスの体制に不備があっても、優秀なトップがうまく企業を経営すれば、パフォーマンスが向上することはあり得ます。リーダーが優秀であれば、むしろ下手な民主制よりも求心力の強い独裁制のほうが効率的でしょう。それゆえ、コーポレートガバナンスの整備と企業のパフォーマンスは、必ずしも連動しないケースがあります。 とはいえ、経営者に立派で優秀な人が必ず就任する保証はない。会社の利益より自己の利益を追求する人や、無能な人がトップになったらマネジメントはおぼつきません。だから、適正な人が経営者になる確率を高めるための「品質保証」の仕組みとして、コーポレートガバナンスが必要となる。それが本来の意義です。 また、ガバナンスが機能しているか否かは短期で判断するのではなく、中長期で見て「おおむね機能している」状況にもっていけるのが理想です』、さすが、実務的にみてもバランスが取れた見解だ。
・『パフォーマンスがよければ市場は注文をつけないという現実  Q:日産自動車は、なぜガバナンスが徹底されていなかったのでしょうか。 A:投資家にとって、最も重要なのは企業のパフォーマンス。それが良ければ、投資家は「企業統治がきちんと機能している」と思い、あまり細かい注文を付けないものです。日本企業全体を見ても、「稼ぐ力」が低下し、投資家の不満が高まった結果、コーポレートガバナンスが重視され始めた経緯があります。 ゴーン氏は、死に体だった日産を奇跡的に立ち直らせた実績があり、投資家からカリスマのように信頼されていました。だからこれまで、経営者の品質を保証するのが本来の目的であるコーポレートガバナンスの必要性に投資家の関心が向かず、日産も体制整備に本腰を入れなかったのでしょう。 似た事例として、米グーグルがあります。同社は創業者らが黄金株(極端に大きな支配権が付与された特殊な株式)を保有しており、一般株主が経営をコントロールしにくい構造になっています。これは、標準的なコーポレートガバナンスの観点からは適正とは言い難いもの。しかしパフォーマンスがいいから、米国の取引所や投資家は同社を受け入れています。そういう状況は実際にあるのです』、「投資家にとって、最も重要なのは企業のパフォーマンス」と、株式市場による監視の限界や、グーグルの黄金株を例示するなども、さすがだ。
・『Q:有価証券報告書の虚偽記載で取り沙汰されたゴーン氏の高額報酬は、以前から疑問視されていました。しかし実績がスゴイから、あまり追求されなかったと。そうした実態を考えると、コーポレートガバナンスはどこまで有効なものでしょうか。 A:確かに株式市場では、潜在的に重要なことが疎かにされ、表面的なパフォーマンスだけで企業が評価される側面はあります。資本主義の目的は利益を上げることですから。しかし、だからと言ってルールに従わなくていいわけではない。市場経済はプロスポーツと一緒で、勝つことが至上の目的であっても、何でもありではなく、ルールに従った上での「勝ち」でないと認められません。結果が良ければルール違反を見逃してもらえるということにはならないのです。 またゴーン氏に限らず、始めは優秀だった経営者が永久にそうであり続ける保証はなく、途中で変質することもあるでしょう。そう考えると、経営者の質を中長期で保証するコーポレートガバナンスの体制は、やはり重要なのです』、確かにカリスマ頼みというのは不安定だ。
・『Q:金融商品取引法違反では、ゴーン氏に加えて日産自身も起訴されました。今回の事件は、ゴーン氏と日産の責任をどう区別して考えるべきかが、難しいケースですね。 A:そうですね。ただいずれにせよ、経営者の行動をチェックできずにそうした事態を招いた会社側に責任がないとは言えません。 現在の企業は単体ではなく、グループ全体でガバナンスを考えるのが普通です。日産の最大の問題点は、ルノー、日産、三菱という、それぞれ支配・被支配の関係がある3社連合のトップをゴーン氏が兼任しており、グループとして経営者をチェックする機能を喪失していたことです。 従来は持ち株会社のトップと傘下の主力銀行のトップが同じであることが当たり前だった銀行にしても、フィナンシャルグループとしてビジネスを展開するようになり、そうした体制を見直してきました。同じ大企業グループと比べて、日産のガバナンス不在は明らかだったと言わざるを得ません』、その通りだろうが、フランス政府というやっかいな大株主もいることから、仕組み上ではあえて曖昧なままにして、運用上でゴーンの政治力に期待したのだろう。
・『ガバナンスの一手段として「司法取引」は適切か  Q:日産は、ゴーン氏の捜査に協力する見返りに刑事処分が軽減される司法取引制度を利用しました。これはある意味「自律的な動き」とも言えます。司法取引は、コーポレートガバナンスの一手段となり得るのでしょうか。「日本人のメンタルには合わない手法」という声も聞かれますが。 A.会社の中で何が起きているかという情報を外から得るのは非常に難しいため、時としてインサイダー(内部の関係者)の協力を得る必要はあります。そのインサイダーに情報提供のインセンティブを与えるためには、それなりの見返りが必要。そう考えると司法取引のような捜査手法は、コーポレートガバナンスとして有効だと思います。 ただし、企業の談合事件の捜査にも言えることですが、最初に自白して情報提供した側の処分が軽くなり、最後まで秘匿した側の処分が重くなるようなやり方は、やはり不公平感があるため、日本では議論を生むでしょう。そうしないと得られない情報を引き出せるというプラス面が、マイナス面と比べてどれだけ大きいかによって、司法取引適用の価値があるケースかどうかを判断すべきだと思います。 Q:不祥事を起こしてしまった企業がガバナンスを再構築するためには、まず何をすべきでしょうか。 A:一般的に言えば、不祥事を起こした企業は、独立した第三者委員会を設置し、原因と責任の所在を明らかにして、調査報告書の作成などを行ないます。その際、社内の内部監査のチームと連携することが重要です。 通常、内部監査部門は社長に直属しており、経営者の「目」として社内各部署で不正行為がないかをチェックするのが役目です。しかし、仕組み上社長自らの不正を摘発することはできないため、ゴーン事件のようなケースでは機能しない。一方、独立性が高くても社内事情に疎い第三者委員会は、内部監査部門から情報をもらわないとスムーズに動けない。だから、両者が連携して調査を行なうのが理想です。 そして次のステップでは、社内にコーポレートガバナンスの仕組みをつくっていきます』、なるほど。
・『ガバナンス徹底には第三者委員会と内部監査チームの連携が不可欠  Q:不祥事を起こした企業や、まだ企業統治への取組みが十分でない企業は、ガバナンス体制を具体的にどうやって構築していけばいいでしょうか。 A:コーポレートガバナンスの基本ポリシーは、経営の監督機能と業務執行機能の分離です。取締役会の中に、社外取締役を中心とする指名委員会(取締役の選任・解任)、監査委員会(役員の職務監視)、報酬委員会(役員の報酬決定)の3つの委員会を設置する一方、取締役の業務執行機能を執行役(取締役会で選任された役員)に移管する、指名委員会等設置会社が増えています。 ただし、3~5名程度であることが多い各委員会が組織全てをモニタリングするのは不可能です。委員が頻繁に集まるだけではダメで、やはり内部監査部門との連携が重要となります。連携などの仕組みがしっかりしていれば、平時は委員会を月1~2回開催すれば十分でしょう。 昨年6月、コーポレートガバナンス・コードの一部改訂が行われましたが、そこで強調されたポイントが、経営者の選任・解任に関する取り決めの整備でした。その後のフォローアップ会議で、「ゴーン事件の前にコーポレートガバナンス・コードを改訂していたため、後追いにならなくてよかった」という意見が出たことを覚えています』、トップが不正に関与していた場合には、「内部監査部門との連携」がどれだけ機能するのかは疑問も残る。
・『インサイダーが正当性を主張しても説得力がない  Q:無資格検査問題からゴーン事件と、日産では立て続けに不祥事が明るみに出ました。同社は新たに「ガバナンス改善特別委員会」を立ち上げましたが、これまで指名委員会や報酬委員会が設けられていませんでした。 A:日頃からコーポレートガバナンスの体制を整えておくことには、不正の防止という現実的な目的はもちろん、万一の事態が起きたときに経営の正当性を主張するという目的もあります。 日産については、もともとコーポレートガバナンスが不十分な経営体制で生じた不正がインサイダーによって明るみに出たケースのため、世間は日産の新しい経営体制に懐疑的です。「ひょっとしたら、ゴーン氏を辞めさせた当事者たちの中に、ある種の責任を問われるべき立場の人がいるかもしれない」と思うかもしれません。また、司法取引というやり方についても、自己規律が健全に発揮されたという印象は薄い。 そうしたムードの中で、インサイダーが自らの正当性を主張しても、「言い訳」と受け取られてしまい、説得力はありません。同社が信頼を取り戻すためには、前述のような統治体制の構築に真摯に取り組む必要があります。 それに対して、もともとコーポレートガバナンスをきちんとやっていた会社は、自社のコントロールが及ばない原因で不祥事が起きても、経営の責任は問われないことが多いものです。 Q:やはり、どこかできちんとやらないとダメなのですね。そうして整備した統治体制を有名無実化せず、きちんと運用するにはどうしたらいいでしょう。 A:コーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議におけるキャッチフレーズは、まさに「形式から実質へ」です。制度が形だけ整っていても魂が入っていないというケースは、よくあります。たとえば東芝は、委員会設置会社の形式をとって「先進的」と言われていたにもかかわらず、あんな不祥事を起こしてしまった。 しかし、だからと言って形式がどうでもよいというわけではない。本当に細かい部分まで形式を整えていくと、それなりに実質が担保される側面もあるからです。その点東芝は、コーポレートガバナンスの体制を大枠だけ整え、細かいところまで配慮していなかったと考えられます。監査委員会の委員長が内部出身の取締役で、しかももともと経理部門のトップだったということは、形式面から考えても明らかにおかしい。 形式を整えないと何も始まらないので、それは第一にやる。しかし、そこで終わらずに魂を入れた運用をしていく、という意識が必要なのです。 Q:池尾教授は、これまで多くの企業の経営に参画し、コーポレートガバナンス・コードの策定にも関わりました。それらの過程で、企業の様々な取組み事例を見て来たと思いますが、足もとで企業統治への機運は高まっていると感じますか。 A:数年前と比べて大きく変わったという印象はあります。全体の取組みを10とした場合、積極的な企業が3割、事務的にやっている企業が4割、全く取組んでいない企業が3割。マラソンに例えると、先頭がスピードアップしたため、後続との距離が広がっているという感じです』、コーポレートガバナンスへの取組みは、信用格付けで評価される可能性があるが、上場企業といっても信用格付けする取得してない企業も多いので、遅れた企業は当分、残るだろう。
・『あおぞら銀行のボードは一般的なものではなかった  私は学者ですが、コーポレートガバナンスとの関わりは実践から出発しています。これまで日本を代表する経営者と接する機会に恵まれ、その考えや行動を興味深く見聞きしてきました。 2000年、一時国営化されていた日本債券信用銀行(後のあおぞら銀行)が再民営化された際、ソフトバンクの孫正義社長、オリックスの宮内義彦社長らとともに同社の取締役に就任しました。そして、同行がスポンサーの1社だったソフトバンクの機関銀行(特定の事業会社などの資金調達目的で預金を集める銀行)とならないよう、モニタリングするために設けられた特別監査委員会の委員長を務めました。 そうした組織のトップは、大学教授など中立的な人間がいいということだったのでしょう。その後、日本郵政公社の生田正治総裁の招きで、同公社の社外理事も経験しています。 委員会等設置会社が認められたのは、2002年の改正商法からであったにもかかわらず、当初のあおぞら銀行のボード(取締役会)は、執行サイドは社長と専務の2人だけ、あとは全部社外取締役という陣容でした。 だから、当時私はそういうのが当たり前だと思っていたのです。しかし、ほとんどの日本企業はそうではなく、あおぞら銀行のボードは特別中の特別だったということを後から知り、驚きました。しかしここにきて、当時と同じ機運が経営者の中に広がってきたと感じています』、コーポレートガバナンスへの取組み機運が高まってきたというのは結構なことだ。
・『コーポレートガバナンスが「太陽政策」である理由  Q:トップを走っている企業とそれ以下の企業とでは、何がどう違いますか。 A:やはり経営者の自覚です。コーポレートガバナンスの目的は、経営者を縛ったり見張ったりするのではなく、経営者が投資家に対して憂いなく説明責任を果たせるよう、健全な経営の仕組みをつくること。言うなれば、経営者にとって「北風政策」ではなく「太陽政策」なのです。 そうした本質に気づいている経営者は取組みに前向きですが、自分を縛るものと考えている経営者は取組みが中途半端になりがちです。 Q:日本企業のガバナンスに対する考え方は、グローバルな感覚に近づいてきていると思いますか。 A:欧米企業では、悪い経営者はとことん悪いことをする。だから、制約の強さはむしろ海外のコーポレートガバナンスのほうが強いかもしれません。その点、日本のコーポレートガバナンス・コードは、日本企業にマッチするように策定されています。そもそもルール(規則)ではなくプリンシプル(原則)という位置づけになっているし、株主をはじめ色々なステークホルダーとの協働によって、短期ではなく中長期での成長を目指すことが強調されています。 もっとも、狭い意味での株主主権を振りかざすことがグローバルスタンダートではないはずなので、こうした考え方は「日本的」というより「普遍的」なものであると理解すべきかもしれません』、日本のコーポレートガバナンス・コードが「ルール(規則)ではなくプリンシプル(原則)という位置づけになっている」というのは、プリンシプルが好きだった全金融庁長官の影響もあるとはいえ、望ましい方向だろう。

次に、在米作家の冷泉彰彦氏が1月19日付けメールマガジンJMMに寄稿した「「カルロス・ゴーン氏逮捕事件、心配な今後の展開」 from911/USAレポート」を紹介しよう。
・『日産、ルノー、三菱という自動車メーカー三社連合を率いていたカルロス・ゴーン氏は、昨年11月19日に逮捕されて以来、拘留が50日を越えています。この問題は、著名な経営者が果たして犯罪を犯していたのかという点、そして世界最大の自動車製造グループの一角が今後どうなるのかという点など、グローバルな話題性のあるニュースであると思います。 ですが、アメリカでは大きなニュースになっていません。逮捕のニュースは伝えられましたが、その後の報道は散発的です。理由の一つは、余りに国内ニュースが「騒がしい」ので、ビジネス関連の国際ニュースにまで関心が回らないということがあります。 具体的には、国境の「壁」建設費を要求している大統領と、これを拒否する議会(民主党+共和党の一部)の対立から、予算が成立せず「政府閉鎖」が28日目に入っており、このニュースと大統領に関する「ロシア疑惑」の特別検察官報告が近いというニュースなどがあります。 特に「政府閉鎖」については、大統領と議会はどちらも一歩も引けない状況に立たされています。そんな中で、民主党は大統領に対して「こんな状況では年頭一般教書演説は延期せよ」と迫ると、大統領が「民主党議員団のアフガン視察」に「軍用機使用を禁止して旅程を断念させる」という「逆襲」に出ています。また、その大統領自身は「米国としてダボス会議への公式参加は全部キャンセル」とするなど、大きな影響が出ています。 政府職員については何しろ給与が出ないのですから、生活費のキャッシュ・フローのためには、「公職の方は病気欠勤」にして、日銭の稼げるアルバイトに出る人が増えています。その影響で、複数の空港では保安検査場が一部閉鎖になっています。食品安全検査員、沿岸警備隊、航空管制官の間では顕著な欠勤はないようですが、生活が成り立たないという動揺が始まっていると報じられています』、ゴーン氏逮捕事件が、トランプを巡る大騒動にかき消されて、「アメリカでは大きなニュースになっていません」というのは一安心だ。
・『一方で、英国では報道されているように、15日(火)にはメイ政権が提出した「離脱案」が下院で否決されてしまいました。ですが、同じ下院は16日にはメイ首相の不信任案を否決しており、今後は「代替案」の審議、その「代替案」が否決されると「合意なき離脱の回避」のためには「国民投票のやり直し」という流れになるかもしれません。 では、どうして米国も英国もこうした「内部の激しい対立劇」を演じていられるのかというと、現時点では「景気がいい」からです。確かに「米中通商戦争」がトリガーになって、世界が同時不況に陥る危険性はゼロではありません。ですが、少なくとも現時点では、即座に株が暴落したり、金融危機が発生したりする可能性は低いわけです。 こうした事情がある中で、特にアメリカの場合は国内の対立劇に関心が集約されており、ゴーン氏の事件などは忘れられた格好とも言えます。また、株価は不安定ながら、景気が好調だという中で、巨大な北米自動車市場の状態も悪くないわけで、日産のドル箱市場である北米が堅調だということは、一種のお家騒動というべきこの事件を「やっている余裕」を与えているとも言えます』、米英でいまのところ「景気がいい」ので、「「内部の激しい対立劇」を演じていられる」とはその通りなのだろう。
・『もう一つ、ゴーン氏の事件が「そんなに大騒ぎにならない」理由があります。昨年、2018年の年明けは、「EV(電気自動車)化」と「AV(自動運転車)化」という、自動車業界の近未来に起きるであろう大きな変化が、大変な話題になっていました。 例えば、2018年1月にラスベガスで行われたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)ではトヨタの豊田章男社長が登場して、業界の大変革へ向けた危機感を表明したり、中国の百度(バイドゥ)とBMWが共同で行ったAVデモ走行なども含めて、AV+EVが大変に注目されていました。 年初からそんな雰囲気でしたから、その勢いで行けば2018年は「AV元年」とでもいうことになって、自動運転車のデモ走行が世界中で行われたり、企業間の提携や買収が派手に発生したりしていたはずでした。ところが、3月にアリゾナ州のテンペで「自動運転試験中」の車が、自転車を押して渡っていた女性を認識できずに死亡事故を起こしてしまうという事件が起きました。 この事件の前は、例えばグーグル系の「ウェイモ」社などは、「自動運転車の死亡事故率が、人間の運転する車の事故率を下回るのであれば、どんどん普及する」などと豪語していたのですが、事件後は「1件の死亡事故」を契機として自動運転車への社会の目は「厳しくなる」ことが証明された格好です。 事故に関与したウーバー社は、AVソフトウェアの開発ではトップランナーの一つでしたが、その後はIPOを優先していることもあり、AVの試験走行に関しては派手なデモンストレーションは自粛しているようです。同じように、EV+AVのコンセプトで話題を集めていた「テスラ」社も、派手な話題を呼ぶことはなくなりました。 今年、2019年も同じラスベガスでCESが行われましたが、今年はAVについては大きな話題にはなっていません。そんなわけで、2018年の後半から現在にかけては、自動車業界の特にAV化の部分については、一息ついた格好になっています。 全体の株価が堅調で各国、特に米国が国内政治の話題ばかりに関心が行っている、しかも業界の変革がスローダウンしている、つまりは、こうした環境があるから「ゴーン氏の事件」は余り関心を呼んでいないし、また同時に「ゆっくり係争を続ける」ことも許されるというわけです。 仮に景気や市場が悪ければ、日産やルノーの株は国際市場で叩き売られていますし、仮に大幅な株安となれば、業界再編を狙うライバルや、資金力にモノを言わすシリコンバレーなどが、企業の買収に食指を伸ばしてくるわけで、「そうならない」環境があるがゆえの事件ということも言えると思います』、確かに日産は「ツイ」ているといえるのかも知れない。
・『以上は、長めの前置きでですが、日産=ルノー=三菱連合を取り巻く環境は、そんなわけで「緩い」わけですが、それでも事件の今後の展開については、多くの心配があります。 この事件ですが、私は「全体像をつかんだ何者かのシナリオによる陰謀」という考え方は難しいと思うようになってきました。事件の当初は、一部に「ゴーン氏は日産とルノーの経営統合を模索しており、このままでは日産がフランスの会社になってしまうという危機感からクーデターが発生した」という見方がありました。 ですが、時価総額で言えば、日産がルノーの約2倍ある中では、経営統合によるルノーの日産への支配強化ということは筋が通らない話です。そこで、私は「AV+EVの熾烈な開発競争の中で、経営効率を更に高めようというゴーン体制と、フランス側、日本側の対立があった、つまりフランスでの雇用創出を求める声や、日産はあくまで日本の会社という観点をベースにした、日仏の政府が意向を重ね合わせてのクーデター」という仮説を持っていました。 ですが、その後の日仏のギクシャクした関係を見ていますと、背後で日仏が連携しての逮捕劇というのは「ハズレ」という感じもしています。そうなると、例えばですが、ゴーン氏の派手な経費の付け替えなどに怖くなった日産の内部通報者が、弁護士に相談したら「関与したあなたも危ない」と言われて、司法取引欲しさに検察に駆け込んだとか、「小さなキッカケ」が契機となって、関与している全てのプレーヤーの「引っ込みがつかなくなった」という「筋書きのないドラマ」に突入しているという見方の方がリアリティがあるようにも思われます』、「日仏の政府が意向を重ね合わせてのクーデター」というのは理解に苦しむ。日産と日本政府によるクーデター説が日本ではいまだ強いが、冷泉氏の見方も1つの見解として参考になる。
・『問題は、検察がいつまでも拘留を続ける中で、ゴーン氏本人の保釈を認めていない点です。これも憶測になりますが、不自然なまでに拘留が長期化している背景には、検察はゴーン氏が保釈された場合に、すぐに記者会見を行って理路整然と自分に非のないことを国際世論に向かって訴える、そのことを恐れているのではないか、そんな印象を与えるわけです。仮にそうだとしたら、これは大変な問題です。 何が大変なのかというと、仮にそのような180度の対立があるのであれば、日本の司法制度においては、裁判の長期化の可能性があるからです。裁判が長期化すれば、その間に国際経済が深刻な不況になり、株価の水準が大きく下がる時期も来るでしょう。その一方で、やがて資金力を得たウーバー=トヨタ連合や、グーグル、アップルなどのAV積極派が世界における自動運転の社会的認知に成功するかもしれません。 更に、EVの世界では中国勢やインドのタタなどが部品のモジュール化を進めながら、「自家用車」を「保有することに意味のある付加価値」から解放して、コモデティ化してしまうかもしれません。 そんな中で、いつまでもルノー、日産がこの事件の裁判を続けていたら、買収のターゲットになってしまいます。これが最悪のシナリオです。そうなっては、日産、そして三菱自動車という企業もブランドも消滅してしまうかもしれません』、確かに、「最悪のシナリオ」も大いにありそうだ。
・『そのために、この問題の解決にあたっては以下の3点を考慮することが必要と思われます。 1点目は、とにかく迅速な解決を行うということです。検察は決定的な証拠を手にしており、既に起訴した容疑で公判維持ができるのであれば、勾留を解き、何を言われても主張を貫き、法廷の決定に従うべきです。また、どう考えても公判が維持できなくなったら、メンツにこだわらずに撤退することも必要でしょう。 この事件は、形式としては刑事事件ですが、本質は民事です。ですから民事的な和解なり、現状復帰などが可能であれば、そちらを優先して、刑事責任を延々と追及して裁判が長期化するのは避けるべきと思います』、「この事件は、形式としては刑事事件ですが、本質は民事です」というのは初耳だが、言われてみればその通りだ。ただ、検察が「メンツにこだわらずに撤退する」可能性が残念ながら低そうだ。
・『2点目は、「制度の使い勝手」を考えて行くということです。例えばですが、噂されているように、今回の事件において日本人の経営陣が司法取引を使っているのであれば、これは新しく導入されたこの制度を本格的に適用する貴重なケースであるわけです。それこそ、司法取引で減刑ないし免じられた刑事責任については、社会的な批判や非難からも逃れられるのかなど、しっかり議論をして制度を固めてゆかねばなりません。 大きな問題としては、有報への虚偽記載、承認なき報酬という容疑です。どちらも日本の企業ガバナンス制度が機能しているかを問う裁判になります。企業内法務部門や、企業内監査部門、外部監査人や社外取締役など、現在の日本の上場企業には二重三重のチェック体制が制度として取られています。 ですが、今回の容疑は「カリスマ的な経営者」が強い権力を持った場合には、こうしたチェック体制が発動しないという認識を前提に、その「カリスマ的経営者」自身
を最初から刑事責任を問う形で告発しているわけです。 そうなると、内部統制などということを、検察は信じていないということになるわけです。これはある意味では形式主義を排し、本質に迫る告発として正しいのかもしれませんが、同時に、膨大な労力を投じて運営されている日本企業の内部統制というのが、要は形式主義であり、トップの意向で何とでもなるというレベルだと断定しているようなものでもあります。 仮にそうであれば、本当に機能する内部統制の方法を考えなくてはなりません。その意味で、例えばですが、西川社長以下の経営陣が「違法と認識しつつトップの暴走を止められなかった」場合に、行為そのものの刑事責任については、司法取引でチャラにできるのかもしれませんが、善管注意義務など株主に対する民事責任はどうなるのかも大変に気になります』、確かに事実関係が明確になったら、株主代表訴訟が提起される可能性があろう。
・『いずれにしても、今回の事件は制度の使い勝手を問う性格のものであり、特に内部統制については、コンプライアンスがどうとか散々手間暇をかけてやってきたことが、要は形式だったことを暴露してしまった、その点はどう改善していくのかが問われるのだと思います。 制度の使い勝手ということでは、企業の提携関係について、今回の事件は非常に歪んだ実態を明らかにしています。日産は、北米日産というドル箱を抱えているために、ルノーの約2倍の時価総額を有しています。にも関わらず、株式の持ち合いにおいては、ルノーの方が比率が高いばかりか、日産の持つルノー株にはフランス法の規制により議決権が付帯されていません。 仮に、ルノーによる日産支配の比率が高いのであれば、投資家はルノーを通じて日産の保有・支配を目指すはずですが、そのルノーには政府保有株の存在など公社的性格が残っているために、面倒があるわけです。そこで日産に直接投資した方がシンプルということと、業績としても日産が優良であるために、日産株が価値を持って上場されているわけです。 非常に複雑でスッキリしない話です。更に問題を複雑にしているのが、日産=ルノー=三菱のアライアンスを管理する統合会社が存在することです。この統合会社は、しかしながら持ち株会社ではありません。3社がそれぞれ出資してできており、いわば共同で保有している子会社のようなものです。 しかも、悪いことに、このアライアンス管理会社が、闇報酬の支払い元になっているという疑惑が出ているのです。こうなると、内部統制とか、ガバナンスとかいうレベルではありません。まるで非上場の同族会社が、好き勝手やっているレベルに近いわけです。 とにかく、親子上場をやめさせて、企業の、特に同一産業におけるアライアンスの場合は、キチンと経営統合をして、保有の頂点にある親会社が持ち株会社の要件を満たし、その会社だけが公開企業として、株式市場からの資金調達を行うとともに、経営責任と情報公開義務を持つ、そのようなピラミッド型のシンプルな形式にしなくてはダメです』、正論ではあるが、ルノー大株主としてのフランス政府の存在を考えると、そう簡単な話ではなさそうだ。
・『3点目は「経営の落とし所」です。仮に、西川社長がゴーン氏追放を真剣に考えているのであれば、「ポスト・ゴーン体制」とは何か、ということへの明確なビジョンが必要だということです。 前述したように、現在は短い「モラトリアム時期」かもしれませんが、やがて自動車産業には2つの厳しい冬がやってくると思います。1つは、景気循環の結果としての需要の落ち込みであり、もう1つはAV+EVの本格化による業界秩序の再編です。 その場合は、既存の自動車産業内での集合離散だけではなく、シリコンバレーの巨人たちも参戦しての壮絶な合従連衡の戦いが繰り広げられることでしょう。 その場合に「ポスト・ゴーン」の日産をどうしたらいいのでしょうか? 車台の共通化や、EV+AVに関する研究開発を通じて、アライアンスの中で一体化で走ってきた部分は大きくなっています。そこを重視するのであれば、第一ステップとして「日産はルノーの買収」ないしは「持ち株比率の逆転」を要求し、歯を食いしばって資金調達をして、そのように「関係のねじれ」を解消すべきです。 そうでなければアライアンスとしての企業価値を十分に発揮できずに、合従連衡の戦いに参加できないからです。その場合、恐らくルノーはその要求を蹴るでしょう。 丁重に話を持って行って、それでも蹴られたら、その場合は日産あるいは日産+三菱がルノー資本から自由になって、日本の民族資本となるので「万々歳」かというと、それは違います。 いくら北米日産というドル箱を抱えているからと言って、それだけでは激しい集合離散の戦いを勝ち抜くことはできません。ウカウカしていて、株安なり円安なりに付け込まれると、デトロイト、ドイツ勢、シリコンバレー、あるいは中国やインドなどの新興勢力に敵対買収されてしまうこともあり得ます。 そうではなくて、仮にルノーとの別離を経験したら、日産は国際的なM&Aの台風の目として「撃って出る」べきです。デトロイトのどこか、ドイツのどれか、トヨタ以外の日本メーカー、中国、インド、シリコンバレーなど、様々な提携関係が模索される中で、日産として買われて行くのではなく、買って行く、そして現在の「3社連合」を上回るアライアンスを作って、本格的なAV+EV時代を戦い続けるべきと思います。 カルロス・ゴーンという稀代の天才を過去の存在にしようというのであれば、誰かがその代わりに日産のリーダーシップを取って行くべきです。そして本格的なAV+EV時代の到来や、次の景気後退期をどう戦って行くのか、そのビジョンを見せて行くべきです。そのリーダーシップが見えない、これがこの事件の最大の問題であると思います。やがて、アメリカの経済界がこの問題に関心を持つ時期がくると思います。 そうなれば、白馬の騎士を装ったハイエナが押し寄せてくるのは目に見えています。 その前に、とにかく事件の決着と新体制への移行が何としても必要と思うのです』、「仮にルノーとの別離を経験したら、日産は国際的なM&Aの台風の目として「撃って出る」べきです」というのは、冷泉氏はなかなかの戦略家だ。しかし、そんなビジョンやリーダーシップを持った人物なぞ、残念ながら見当たらないのが実情なのではなかろうか。

第三に、ジャーナリストの伊藤 博敏氏が1月24日付け現代ビジネスに寄稿した「「カルロス・ゴーンという黒船」がこじ開けた、裁判所の閉鎖性 事件を機に、自立の時期を迎えた…?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59532
・『裁判所が「自立の時期」を迎えた…?  カルロス・ゴーン被告は、やはりタダ者ではない。日本の常識を覆し、知力の限りを尽くして検察に戦いを挑み、裁判所に意義を突きつける。その結果、山は動いた――。 現在、小菅の東京拘置所に、ゴーン被告を除いて、特捜部が手掛けた「特捜案件」の被告はいない。リニア談合の被告も、文部科学省事件の被告も、昨年末から今年にかけて、否認のまま保釈した。 それは、12月20日、検察が求めたゴーン被告の勾留延長を却下する際、「海外要人だから特別扱いした」という批判を受けないようにするための“布石”ではあった。ただ、裁判所が「自立の時期」を迎えていたのも確かである。 まだ、途中経過に過ぎないが、ゴーン事件の衝撃を検証したい』、興味深そうだ。
・『敗戦直後、地検特捜部は、陸海軍の物資を巡る事件を手掛ける「隠退蔵物資事件捜査部」としてスタートした。以降、70年、特捜部が国家秩序を意識し、国策として取り組む特捜案件の場合、裁判所は検察のいうままに勾留を認め、有罪判決を下してきた。 なかでも否認を続ける被告は「国家への反逆」とみなし、拘置所に留め置いた。悪名高い「人質司法」である。それだけに、ゴーン被告の勾留延長却下は、前代未聞であり、検察にとって衝撃だった。 東京地裁は、11月19日のゴーン被告の最初の逮捕が、5年分の有価証券報告書への報酬の不記載で、12月10日の再逮捕が、以降3年分の不記載で、それだけに「事業年度の連続する一連の事案と判断した」と、却下理由を説明した。 12月20日までに勾留期間が30日を経過、不記載という形式犯で、そんなに長く勾留する必要はないという意思表示だった。裁判所が判断理由を説明するのは前代未聞。検察から距離を置いて見せた。 この決定を受けた記者会見で久木元伸・東京地検次席検事は、過去に例があるかないかを問われ、「調べてみないとわからないが、調べようもない…」と、うろたえた。 特捜部が「政官財の監視役」となり、裁判所がそれを支えるという予定調和の世界が崩れた』、確かに「ゴーン被告の勾留延長却下は、前代未聞であり、検察にとって衝撃だった」のだろう。
・『「保身」と「外圧」  ゴーン被告は黒船となった。 その処遇は、逮捕直後から海外メディアの注目の的だった。 仏メディアは、「弁護士が事情聴取に立ち会えず、家族との面会もままならない」という日本の刑事手続きを、驚きをもって報じた。仏では、弁護士同席が認められ、捜査妨害と判断されなければ家族との面会も可能。なにより勾留は最長でも96時間である。 それは日仏の刑事手続きの違いであって善し悪しではないが、国際的にも著名な経営者の逮捕は、仏だけでなく欧米メディアの重大関心事となり、11月22日、逮捕後の最初の地検会見には欧米の記者が殺到、久木元次席に質問を浴びせかけた。 そのほとんどに、「(捜査に支障を来たすので)答えを差し控える」と、回答していたが、2週に1度の会見を、外国メディアの要請を受けて、当面は毎週開くことにした。 海外メディアは、処遇に批判的だった。米通信社は、ゴーン被告が仕切りのないトイレと小さな机だけの3畳の単独部屋で、シャワーを毎日は浴びられず、パソコンもない環境だとして、「劣悪」と報じた。 ただ、そうした環境より海外メディアが批判したのは、逮捕を繰り返して自白を迫り、否認を続ければ、起訴後も勾留を続け、それが1年、2年と続くこともある「人質司法」についてである。この問題については、ブラジル、レバノン、仏に国籍を持ち、大使の接見は認められているだけに、「大使館の声」として早期保釈の要望が伝えられた。 刑事訴訟法第89条で、保釈の請求があれば、罪証の隠滅、逃亡の恐れがない場合、原則として保釈を認めなければならないのに、勾留を続ける事に違和感を持つ裁判官は少なくないという。 しかし、仮に保釈して証拠を隠滅、あるいは逃亡して事件が潰れた場合、裁判官の判断ミスとなる。そうしたくないという保身が、「公判のメドが立つまで拘置所に入れておけばいい」という結論につながる。検察との仲も良好を保てる。 しかし、外圧が保身を除去した』、「人質司法」は確かに日本の司法制度の恥部だ。それに脚光が当てられた意味は大きい。
・『「何者にも左右されない気概」  リニア建設談合で、9ヵ月の勾留を続けていた大成建設の大川孝被告、鹿島の大沢一郎被告に対し、東京地裁が保釈の決定をしたのは12月17日である。 ゼネコン4社のうち、談合を認めた大林組、清水建設については逮捕者すら出さなかったことを考えれば、イジメのような勾留だったが、19年2月14日の初公判まで勾留を続けるという選択肢もあった。 文部科学省の贈収賄事件では、東京医科大に便宜を図る見返りに、自分の息子を合格させた収賄罪の佐野太元科学技術・学術振興局長を、12月21日に保釈した。 また、佐野被告ら文部科学官僚に対する贈賄と受託収賄幇助に問われた「霞が関ブローカー」の谷口浩司被告は、否認を続けているうえ、共犯の古藤信一郎容疑者が海外逃亡を続けており、当面、保釈はないと見られていた。 しかし地裁は、1月11日、弁護人の保釈請求に対し、いったんは請求を却下したものの、弁護人の準抗告を受けて、17日、保釈を認めた。 ゴーン保釈の下準備であると同時に、変化の胎動でもある。ただ、「ゴーンの外圧」を気にしつつも、屈しているわけではない。 ゴーン被告のパフォーマンスはさすがである。 保釈取消を狙った特捜部は、12月21日、個人的な損失を日産に付け替え、それを個人に戻す際に保証した知人に利益供与したという特別背任容疑で再々逮捕した。 そのおかげで保釈は叶わず、クリスマスも正月も拘置所で過ごしたものの、1月8日、満を持したように地裁に登場。公判に有利に働くわけではなく、誰も使わない「勾留理由開示」を、自分の弁論の場として使い、注目の法廷で「無罪」を主張し、弁護団もゴーン被告の検察との「劇場型対決」に相乗り、海外メディアを中心に情報発信を行い、8日、大鶴基成弁護士は外国特派員協会で記者会見するともに、保釈を請求した。 これを棄却されると、ゴーン被告は米国の家族側報道担当を通じて、「日本の賃貸住宅に滞在してパスポートは預け、毎日、検察に連絡し、GPSを使った追跡装置を身につける」と、保釈のための条件を出した。だが、地裁は、22日、2度目の保釈請求も「証拠隠滅の懸念がある」として却下した。 裁判所が示したのは、「何者にも左右されない」という気概である。裁判所の判断が、これほど注目を集めることはないが、一方で、検察との関係においては、まだまだ“揺らぎ”がうかがえて興味深い。 変化をもたらした「ゴーン砲」は、その犯した罪とは別に、評価されるものだろう』、ゴーン被告側が「保釈のための条件を出した」が、裁判所が「2度目の保釈請求も「証拠隠滅の懸念がある」として却下」したのは、残念だった。「裁判所が示したのは、「何者にも左右されない」という気概である」と筆者は評価しているが、裁判所を買いかぶり過ぎているようにしか思えない。個人的には、不届きとのそしりを受けるかも知れないが、「劇場型対決」はなかなか見がいがあり、飽きない。
タグ:問題の解決にあたっては以下の3点を考慮することが必要と 裁判が長期化すれば、その間に国際経済が深刻な不況になり、株価の水準が大きく下がる時期も来るでしょう。その一方で、やがて資金力を得たウーバー=トヨタ連合や、グーグル、アップルなどのAV積極派が世界における自動運転の社会的認知に成功するかもしれません。 更に、EVの世界では中国勢やインドのタタなどが部品のモジュール化を進めながら、「自家用車」を「保有することに意味のある付加価値」から解放して、コモデティ化してしまうかもしれません。 そんな中で、いつまでもルノー、日産がこの事件の裁判を続けていたら、買収のターゲ (その5)(ゴーン事件に学ぶ 経営につまずかない「企業統治」の仕組み作り、カルロス・ゴーン氏逮捕事件 心配な今後の展開、「カルロス・ゴーンという黒船」がこじ開けた 裁判所の閉鎖性 事件を機に 自立の時期を迎えた…?) 日産ゴーン不正問題 ダイヤモンド・オンライン 「ゴーン事件に学ぶ、経営につまずかない「企業統治」の仕組み作り 池尾和人・立正大学経済学部教授に聞く」 「企業統治」の意味を正しく理解しているか コーポレートガバナンス・コードの策定を主導した池尾和人 パフォーマンスがよければ市場は注文をつけないという現実 ガバナンスの一手段として「司法取引」は適切か ガバナンス徹底には第三者委員会と内部監査チームの連携が不可欠 インサイダーが正当性を主張しても説得力がない コーポレートガバナンスが「太陽政策」である理由 冷泉彰彦 JMM 「「カルロス・ゴーン氏逮捕事件、心配な今後の展開」 from911/USAレポート」 アメリカでは大きなニュースになっていません 余りに国内ニュースが「騒がしい」ので、ビジネス関連の国際ニュースにまで関心が回らない どうして米国も英国もこうした「内部の激しい対立劇」を演じていられるのかというと、現時点では「景気がいい」からです アメリカの場合は国内の対立劇に関心が集約 特に米国が国内政治の話題ばかりに関心が行っている、しかも業界の変革がスローダウンしている、つまりは、こうした環境があるから「ゴーン氏の事件」は余り関心を呼んでいないし、また同時に「ゆっくり係争を続ける」ことも許される 「全体像をつかんだ何者かのシナリオによる陰謀」 という考え方は難しいと思うようになってきました 「小さなキッカケ」が契機となって、関与している全てのプレーヤーの「引っ込みがつかなくなった」という「筋書きのないドラマ」に突入しているという見方の方がリアリティがある 問題は、検察がいつまでも拘留を続ける中で、ゴーン氏本人の保釈を認めていない点です 1点目は、とにかく迅速な解決を行う 2点目は、「制度の使い勝手」を考えて行く 3点目は「経営の落とし所」 仮にルノーとの別離を経験したら、日産は国際的なM&Aの台風の目として「撃って出る」べきです 伊藤 博敏 現代ビジネス 「「カルロス・ゴーンという黒船」がこじ開けた、裁判所の閉鎖性 事件を機に、自立の時期を迎えた…?」 裁判所が「自立の時期」を迎えた…? ゴーン被告の勾留延長却下は、前代未聞であり、検察にとって衝撃だった 「保身」と「外圧」 「何者にも左右されない気概」
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感