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就活(就職活動)(その5)(学生を規格化する「就活ルール」は即廃止すべき 「選択の自由」を許さないと生きる力は摩耗、政府が「就活ルール」に関わるのは愚行といえる3つの理由、就活で蔓延する「早期内定囲い込み」の手口 企業の安易な囲い込みは離職を増やすだけだ) [社会]

就活(就職活動)については、昨年7月4日に取上げた。今日は、(その5)(学生を規格化する「就活ルール」は即廃止すべき 「選択の自由」を許さないと生きる力は摩耗、政府が「就活ルール」に関わるのは愚行といえる3つの理由、就活で蔓延する「早期内定囲い込み」の手口 企業の安易な囲い込みは離職を増やすだけだ)である。

先ずは、健康社会学者の河合 薫氏が昨年9月18日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「学生を規格化する「就活ルール」は即廃止すべき 「選択の自由」を許さないと生きる力は摩耗」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/200475/091400182/?P=1
・『・・・さて、今回は「自由と責任」について考えてみようと思う。 経団連の中西宏明会長が「個人の考え方」とした上で、就活ルール廃止発言をした9月3日。 私は久しぶりにワクワクし、心から拍手喝采した。 「単一文化の社会であるということ自体が、そろそろ弱点になってきたというふうに思っているので、もっと多様性のある社会につくり変えていった方がよい」(by 中西会長)→「そのとおりだ! さすがだ!」(by 河合) 「採用日程に関し、経団連が采配すること自体に極めて違和感がある。経団連の意見として、こうしますとか、しませんとかは言わない」(by 中西会長)→「そーだそーだ!!! よくぞ言ってくれた!」(by 河合) といった具合に心底共感して感動したのだ。 中西さんの経団連会長就任が決まったときから、「中西さんだったら変えてくれる!」と期待していたのだが、すったもんだ続きの就活一括採用にメスを切り込むとは。「お見事!」としか言いようがない。 誤解のないように断っておくが、私は中西さんと個人的なお付き合いもなければ、面識もない。 「だったら、なぜ変えてくれるなんて期待したんだ?」と不思議に思われるかもしれないけど、私のフィールドワークのインタビューに協力してくれた、「日立の社員」たちが、そう確信させてくれたのだ。 かれこれ10年以上、700人近くの現場の声を聞いていると、それが「経営者」を映し出す鏡であることがわかる。 キャリアに悩み、現状に抗い、将来に漠然とした不安を抱えながらも、「あ、この人の会社、いい会社なんだな」と思わせる空気感を、彼らが紡ぐ言葉に垣間見ることができるのである。 そういった会社のひとつが「日立」だった。 協力してくれた「日立の社員」の人たちは、所属している部署も、やっていることも、年齢も学歴も違ったけど、みな「気」が良かった。講演会に呼んでいただいたときも同様の「気」を感じた。 であるからして、日立のトップである中西さんはきっと「働く人たちが元気になれる経団連にしてくれるに違いない」と期待したのである。 ところが、ご存知のとおり「中西発言」の波紋はいっせいに広がり、賛成の意思を示したのは経済同友会の小林喜光代表幹事のみ。 中西会長自身も発言2日後の9月5日、「採用の問題や日本の雇用制度、大学側の問題も相当ある非常に幅の広い課題なので、よく(政府・大学と)一緒に検討していこうという呼びかけだ」(「日本経済新聞」9月6日付朝刊)と、「各方面とそういう話をして誰も反対していない」と言い切っていた2日前の勢いがいっきにトーンダウンしてしまったのだ。  なるほど。経団連会長でも崩せない“アレ”が立ちはだかっているということか。 アレ=ジジイの壁。 そうなのだ。変化を厭う「ジジイの壁」が猛威を振るいそうな気配が漂い始めていることに、私はある種の絶望感なるものを感じているのである』、河合氏のフィールドワークは、日立だけで、「10年以上、700人近くの現場の声を聞いている」、とはすごい蓄積だ。「経団連会長でも崩せない・・・ジジイの壁」とあるが、最終的には経団連は筋を通し、代わりに政府が乗り出したようだ。
・『何よりも驚いたのは大学側が「反対!」を表明したことだ(以下、日本経済新聞より抜粋)。 全国の大学などでつくる就職問題懇談会は10日の会合で、現行ルールを維持する方向で議論を進めることで一致した。学生の勉学への影響やルール変更による混乱を避けるため、としている。(中略) 懇談会の山口宏樹座長(埼玉大学長)は、現行ルールについて「学修環境への影響が極力抑えられており、4年間維持されている」と指摘。これまで経団連と懇談会が同じルールで一致してきた経緯を踏まえ、「経団連の指針がなくなるということは、両輪の片方が外れるので好ましくないという意見がほとんどだ」とした。 混乱……。ふむ、混乱ね。 確かに経団連は、2020年入社の学生までは会社説明会が3月、採用面接の解禁が6月と決めたばかりで、突然のルール廃止宣言を匂わされ、驚く気持ちはわかる』、大学側としては、「青田買い」の激化を懸念したのだろう。
・『大学が「学問の場」から就職の「ハローワークの場」になっていた  だが、反対する人たちは一様に「学生が混乱する」と主張するけど、そもそも就活一括採用というルールそのものが散々学生を混乱させてきた。 世の中の 経済状況の影響をもろに受ける新卒一括採用は、ハ?フ?ル崩壊後の就職氷河期に始まり、2008年のリーマンショックなと?、生まれた日という自分て?はと?うにもならない出来事て?学生を「差別」した。 その余波は高校生にまで広がり、数年前私の元にやってきた高校3年生は、大学3年生時に海外の大学と半年間の交換留学プログラムのある某大学を第1志望にしようとしたところ、担任の先生から、「3年生のときに留学していては、就職活動に支障がでる。もっと就職に力を入れている他の4年制大学に進んだほうがいい」と言われ悩んでいた。 気がつけば大学は本来の「学問の場」から、就職するための「ハローワークの場」と化し、「就職まで責任をもって面倒をみて、いい就職先を斡旋する」ことを“売り”にする大学が急増。 「ブラック企業とホワイト企業を見分ける方法はありますか?」と、大学関係者が私の元に質問に来る始末だ。 大学生たちは大学生たちで「就活フラッグ」が振られた途端、それまでの自由な服装から喪服のような真っ黒のリクルートスーツに着替え、茶髪を黒髪にし、モリ気味のアイメイクを落とし、作り笑顔を練習し、「内定」を求めて奔走する。就職するための「ハローワークの場」と化し 「内定」=「人の価値」のごとく扱われ、内定エリートが大手を振る一方で、待てど暮らせど鳴らぬ携帯にドキドキし、気がつけば「就活」が人生となり、最終面接でダメ出しをくらい地獄の底に突き落とされ、若さを満喫できる時間を就活に翻弄されているのである。 結局のところ就活とは、「オトナたちが求める人材と化すための装置」でしかなく、可能性が無限大にひろがっているはずの若い学生たちが、オトナが求める“規格化された若者”に変身する』、「新卒一括採用」の起源は、河合氏の指摘よりももっと古く、1928の大手銀行間で就職協定が結ばれた歴史があるようだ(Wikipedia)。確かに、大学が「就職するための「ハローワークの場」と化し」、「真っ黒のリクルートスーツ」の学生が「「内定」を求めて奔走」するというのは、異様だ。「結局のところ就活とは、「オトナたちが求める人材と化すための装置」でしかなく、可能性が無限大にひろがっているはずの若い学生たちが、オトナが求める“規格化された若者”に変身する」、というのは言い得て妙だ。
・『「就活」が「自律」の邪魔に  新卒一括採用廃止に異を唱えるオトナたちは決まって、「新卒一括採用があるからこそ就職できる学生は多い」「新卒一括採用があるからこそ日本の若者の失業率は低い」と言うけど、そもそも大学からストレートに就職市場に流れ込んでいくことが、学生たちにとって本当に幸せなことなのだろうか? そりゃあ誰だって、みんなと同じように就職できた方が安心するし、奨学金をもらっている学生も多いので、「即社会人」になることが望ましいのかもしれない。 しかしながら、私は国民の一大行事化した「就活」こそが、学生時代に育まれる「自律性」の邪魔をしていると考えているのである。 たとえば、日本以外の大学生は、学びの場である大学で実によく学ぶ。感心するほど必死で勉強する。そして、彼らは学問を通じて自ずとわく「おもしろい」という感情の中で自分の適性を見極め、方向性を探り、知識を深化させ、スキルを高める。 それと並行して、学生たちはリアル社会との接点を見出し、「働く」経験を積み、社会の厳しさとやさしさを体感し、自分に足りないものを強化すべく、社会人としての居場所を探していくのだ。 こういった学生時代のチャンレジは、たった1人でも、完全なるアウェーでも、どうにかしてその場で、限られた資源の中でベストと思える答えを探り出す力、すなわち「自律性」を育む最高の時間となる。 何か困難にぶつかった時も、「自分には無理!」と最初からあきらめるのではなく、自分の頭で考え、自分の決断、感覚を信じて踏み出す力。不完全な状態にあるという自覚を持ちながらも、その時にベストと思える答えを探り、行動にうつす覚悟。 そんな「自分の行動を信じる力=自律性」をもった学生を、寛容な気持ちで受け止めることこそがオトナの役目じゃないのか。だって、どんなに平等かつスムーズに社会人のスタートをきる手ほどきをしても、そのあとの人生は「彼ら」次第だ』、「「自律性」を育む」ことの重要性はその通りだと思うが、やや学生を美化し過ぎている印象も受ける。学生の多くは、「自律性」など考えたこともなく、周囲を見回してばかりいるのが現実だと思う。
・『自律性ほど、ひとりの社会人として長い人生を生き抜くうえで必要なものはないことをいちばん知っているのは、オトナたちのはずなのだ。 神戸大学の西村和雄特命教授らが実施した、2万人に対するアンケート調査で、「所得、学歴よりも『自己決定』が幸福感に強い影響を与えている」ことが明らかになった。 所得水準と幸福度が必ずしも関係しないことは、国内外複数の研究者たちにより明らかになっていたが、「何が」「どの程度」影響しているかは未だ明確じゃなかった。 そこで神戸大のチームは、「所得」「学歴」「進学や就職などにおける選択の自由を示す自己決定」「健康」「人間関係」――の5項目に関する選択式の質問を設け、統計的に分析した。 その結果、 +自己決定は健康や人間関係に次いで幸福感に影響を与えていた +自己決定は所得と比較すると、約1.4倍強い影響があった +学歴は統計的に有意な結果が出なかった などがわかった。 研究チームは結果について、 「自己決定で進路を決定した人は、自らの判断で努力し、目的を達成する可能性が高くなる。また、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなる。こういった達成感や自尊心が、幸福感を高めることにつながっていると考えられる」とコメントしている』、アンケート結果は、納得できる。
・『「進学と就職の決定」と人生の幸福感  自己決定。すなわち「選択の自由」が、職務満足感や人生の満足度を高め、寿命にまで影響することはこれまで多くの調査で示されてきたので、先の調査結果は個人的にはそんなに驚くべき結果ではなかった。ただ、ひとつだけ実に興味深いことがある。 この調査で用いられた「自己決定」の質問項目が、 「中学から高校への進学先は誰が決めましたか?」「高校から大学への進学先は誰が決めましたか?」「初めての就職先は自分で決めましたか?あなたに最もあてはまるものをお答えください。」という極めてシンプルな3つの質問に対し、 +全く希望ではなかったが周囲のすすめで決めた +あまり希望ではなかったが周囲のすすめで決めた +どちらとも言えない +ある程度自分の希望で決めた +自分の希望で決めた という回答で、構成されていたことだ。 つまり、「選択の自由」は、「自律性」や「コントロール感」「裁量権」と極めて近い概念なのだが、これらを測るには抽象的かつ感覚を問う質問がされてきた。 「私は自分の行動は自分で決める」とか、「何かを判断するとき社会的な評価よりも自分の価値を優先する」といった具合だ。 ところが神戸大の研究チームは「進学と就職の決定」だけで測り、それがその後の人生の幸福感に強い影響力をもつことを明らかにしたのである。 これって、すごい。というか、こういう結果こそ、新卒一括採用議論で参考にすべきだ。 私が子供だった頃より、人生における選択肢は確実に増えた。ところが今の日本社会には「これが正解!」が溢れ、正解から外れると「負け組」と排除され、ちょっとでも失敗すると「自己責任」が問われる。 なんでもかんでも「正解」ばかり追い求める社会は息苦しい。ある人にはそれが正解でも、ある人には正解じゃない。10人いたら10通りの正解があって当たり前なのに、「平等」という美しい言葉のもと、自分を信じ、目の前のできることを一つひとつ進め、自分の強みを進化させる力が退化し、「選択の自由」を許さない空気がさらに生きる力を摩耗させている。そう思えてならないのである』、実際の社会のなかでは「これが正解!」などということは少ないのにも拘らず、「なんでもかんでも「正解」ばかり追い求める社会は息苦しい」というのはその通りだろう。
・『久々に「あのとき」の感覚が蘇った  最後に……。 私は毎年、「窒息状態からの解放」と称し夏休みは国外脱出しているのだが、今回ほど「日本の息苦しさ」を痛感した夏休みはなかった。 その感覚は13歳の私が日本に帰国したときの息苦しさと匹敵するほどで。それはとんでもなく息苦しいことを意味する。 米国で「自分MAX」になることを教育されていた13歳の私は、「日本では『普通』が一番である」ことを知りショックを受けた。「自分の意見を言いなさい」と教育されていたのに、日本では黙っているほうが安全。手を挙げるなんてダサい、でしゃばり、目立ちたがりと揶揄される。 そんな空気感を、皮膚が柔らかい13歳の私はビンビンに感じ、「アメリカに帰りたい」が口癖になっていたのである。 そして、今回。久々に「あのとき」の感覚が蘇った。 いったいなぜ、価値観が多様化しているはずなのに、「かくあるべし」的価値観が王道になっているのか? いったいなぜ、「その正解」とかけ離れた価値観の自分に自信を持てなくなっているのか? 1週間にも満たないわずかな時間だったけど、日本の外に出たことで、自分がちっちゃな世界に生きる輩になりさがってることに気づき、がっかりし、「自分に戻ろう!」と決意した。 というわけで今回のテーマには、さまざまなご意見があると思いますが、それをぶった斬りました。いつもどおり賛否両論、お待ちしております』、
帰国子女にとっては当然の感覚だろう。それを夏休みの海外旅行で思い出したようだが、今後の河合氏の筆致がますます磨かれることを期待したい。

次に、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏が10月24日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「政府が「就活ルール」に関わるのは愚行といえる3つの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/183141
・『中西経団連会長の英断  筆者は、そもそも日本経済団体連合会(経団連)のような財界団体の存在意義に疑問を感じ、できれば廃止、少なくとも活動規模を縮小するべきではないかと考えている。財界団体は時代の役割を終えた。 しかし、経団連の新会長である、日立製作所の中西宏明氏は良い見識をお持ちの方だ。彼は、個人的な意見としながらも「経団連が就活ルールを決めるのは違和感がある」として、廃止する意向を表明した。経団連が策定・公表してきた「採用選考に関する指針」がなくなるのだ。 実効性が乏しく、かつ効果として有害であったルールを廃止するのがいいと見切ったことは、優れた判断だと思う。 しかし、安倍晋三首相は「学生の本分である勉強よりも就職活動が早くなるのはおかしい。広報活動(説明会)は3月、選考活動は6月に開始というルールをしっかりと守っていただきたい」と発言。また、全国の大学や短大などで構成する就職問題懇談会も、「2021年春入社組については現行ルールを維持すべきだ」と述べた。しかも、今後、政府内で新たな就活ルールの検討のための会議が設けられそうだ。 せっかく経団連が、有害なルールを廃止するというのに、政府がこれに代わるルールを作ろうとするとは不可解だ。「就活ルール」はない方がいい。以下、理由を3つ挙げる』、河合氏と同様の結論のようだ。
・『理由1 採用・就職は自由であるべき意思決定だ  「就活ルール」を設けるべきではない最も根本的な理由は、企業から見て採用、学生から見て就職が、共に将来に向けて極めて重要で、競争的であるべき、自由な取引であることだ。 企業から見て、いわゆる「青田買い」(早期の採用)を前倒ししすぎると採用の精度が落ちるし、実際に入社してもらうまでのコストが掛かるかもしれないが、優秀な人材を早く確保することができるプラス効果があり得る。このプラスとマイナスのバランスと競争上の状況をどう考えて、実際にどう行動するかは、企業同士が競争し工夫すべき経営戦略の問題だ。 また、学生側にあっても就職先を早く決めるのか、じっくり選んでから決めるのかは、就職市場における自分の競争力を考えた上で判断すべき人生戦略に関わる問題だ。 就職先を早く決めてその後に学業に注力したい学生もいるだろうし、勉強によって自分の価値を高めつつ就職先を時間を掛けて決めたい学生もいるだろう。彼らに対して画一的に「○年生の×月まで内定を出してはならない」とルール化することは余計なお節介だ』、「自律性」ある学生を前提にすれば、その通りだが、前述の通り、そうはいかないのが現実だ。
・『理由2 学業と就活時期は本来無関係だ  いわゆる就活ルールの議論にあって、最もばかばかしいと思うのは、就活の時期によって学生が勉強したりしなかったりすることへの影響がうんぬんされることだ。 現実問題として、今の「ゆるゆる」で卒業できる大学の場合、就職が決まってしまうと、その後に成績を稼ぐモチベーションがなくなるし、そもそも3年時くらいに4年分に必要な単位を取ることが難しくないために、学生が勉強に不熱心になることは大いにあり得るし、現実にある。 しかし、問題の原因を就活ルールに求めることは不適切だ。 はっきり言おう。就職の内定時期によって、学生の学業への熱意が変化するとすれば、それは大学が提供する教育サービスの価値が低いことが原因だ。 大学で学ぶことが自分のプラスになると思うなら、学生は内定を得ても得なくても勉強するだろう。また、大学が学生に本当に勉強させたいのなら、4年間しっかり通わなければ卒業に必要な単位が取れないようなカリキュラムを組むといいし、卒業に必要な学力レベルを高く設定すればいい。学生は魅力やメリットを感じないから大学に行かない。それだけのことではないか。 「役に立たない講義にもそこそこ出席して、センセイたちを満足させてくれたら、学力には厳しいことを言わずに卒業させてやる」といった条件を学生に提示することが正しい大学教育だとは思えない。 その大学を卒業したこと自体に価値があるという事実こそが、大学のブランド価値であるべきではないか。まして、推薦入学やAO入試での合格者など、入学者の学力にバラツキが生じているのだから、大学はせめて卒業生の学力に対して責任を持つべきだ。 なお、就活ルールがある方が、大学の学生に対する就職指導は楽であるかもしれないが、ルールの有無は大学関係者のためにではなく、企業と学生のためにどうなのかという観点から判断されるべきだ』、これについては、その通りだ。
・『理由3 「守られないルール」の悪影響  経団連の「採用選考に関する指針」があっても、外資系企業やIT系の「やる気のある」企業などは、優秀な学生の確保を目指して早い時点から候補者を選考して内定を出すことを躊躇しない。ビジネスにとって人材が決定的に重要であることを思うなら、むしろ当然のことだろう。 また、多くの企業は、ほとんど候補者選考のためとしか思えないワンデーインターンも含めて、各種のインターン受け入れを行って、間合いを測りながら相当に早い時点から学生の確保に動いている。 こうした企業の“抜け駆け”に対して有効な制裁措置はないし、そもそも自由な企業活動に制裁を設けるべきでもない。今後、政府が設ける検討会議で、就活ルールを「実効性のあるものにする方法」が検討されるのだろう。しかし、強制力のある規制を作るべきではないし、規制を作ってもこれを公平に適用することは容易ではないだろう。 一方、「指針」を真に受けて就職活動に臨む学生は、就職活動において出遅れる場合があり得るのが現実だ。加えて、企業側に余計な紳士協定があることで、採用活動の情報がオープンに流通しにくくなっている。 守られないルールは、それ自体として形骸化していて不公平であり、加えて採用活動に関する情報を見えにくくしている。学生に対する情報上の公平性を損なっていると言える。 余計な建前を撤廃して、企業には採用活動に関する情報を広く公平に発信することのみを奨励すべきだろう。 また、新卒一括採用の他に、通年採用を併用する企業も出てくるだろうし、さまざまなレベルで中途採用も行うだろう。通年採用は、多様な人材を柔軟に採用する上でメリットのある方法だが、現在のような選考活動に期限を設ける就活ルールになじまないのは当然だ。 各種の人材の採用方法は、企業の経営上の必要性と工夫によるもので、人材の採用方法は一律に規制してそろえるべきものではない。 再度強調しておこう。就職活動の時期が前後することで大学生の学業に対する態度が変化するとしたら、それは、大学の教育内容自体に魅力がないからであって、企業のせいではない。 政府が新たな就活ルールを作ろうとすることは、全く愚かなことだ』、「守られないルールは、それ自体として形骸化していて不公平であり、加えて採用活動に関する情報を見えにくくしている。学生に対する情報上の公平性を損なっていると言える」、「就職活動の時期が前後することで大学生の学業に対する態度が変化するとしたら、それは、大学の教育内容自体に魅力がないからであって、企業のせいではない」、などというのは正論だ。

第三に、人材ビジネス企業 人事・採用担当の豊川 晴登氏が2月13日付け東洋経済オンラインに寄稿した「就活で蔓延する「早期内定囲い込み」の手口 企業の安易な囲い込みは離職を増やすだけだ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/265431
・『人事担当者の間では、「新卒採用の早期化」が非常に話題になっています。 経団連が「採用選考に関する指針」の廃止を決定しましたが、それは来年の2021年卒の学生からで、これから就活する2020年卒については、「3月広報開始、6月選考開始」のルールが適用されます。来年についても政府が主導する形で、そのスケジュールが維持され、各就職情報会社の就活ナビサイトも、そのルールに沿った形で、「3月グランドオープン」という流れが続くものと思われます。 しかしそれは、表面的な形にすぎません。人事の間で話をすると、「昨年末で必要数の内定は出した」「2月、3月で採りきる予定」といった情報にあふれ、ルール通りの採用を行う会社に出会うのが難しいというのが現状です。 政府が改めて「これまでと同様の日程による就活ルールを定めていく」とアナウンスしていますが、人事担当者は、経団連がルールを撤廃したことに大きなインパクトを受けています。そして今後の新卒採用については、より選考が早まり、「とにかく早く学生を囲い込んだもの勝ち」という意識が高まっている気がしています。 今の段階でも、早期の内定出しとそれに伴う囲い込みに必死な会社が多いのが現状です。その囲い込みのよくあるパターンをいくつか紹介していきましょう』、「より選考が早まり」というのは、予想されたこととはいえ、やはり大きな問題だ。
・『「必要数の内定は昨年末までに出した」という会社も 
囲い込みの例1「君は特別待遇」  その学生が他の会社に接触する前に、「君は特別」と、特別待遇を前面に出しながら、スピード対応で最終面接まで持っていき、就活の終了を約束させて内定を出す会社があります。インターンシップに参加した学生の中から優秀な学生を「特別待遇」して、囲い込むケースが最近かなり増えています。 ただ、本当に特別待遇であればいいのですが、実際は特別待遇でもなんでもなく、その方法がその会社の通常の採用手法になっている場合があるので、特別という言葉に浮かれて、その後の就職活動を止めたりするのは、少々危険な選択です』、大いにありそうな悪質な話だ。
・『囲い込みの例2「豪華おもてなし」  早々に内定を出した後、定期的に社員との食事会を行い、安心感と恩を与えることで入社を確実にさせるケースです。特徴的なのは、いくつかの食事会の会場に、普段学生が来ることのないような豪華な場所を選び、「選ばれた人材である感」を押し出す点です。食事会で出てくる社員は、社内でも優秀な人だったり、容姿端麗だったりと、学生が憧れる要素を持つ選抜された社員です。 ただ、入社後そこで話した社員たちと一緒に働ける保証はなく、連れていってもらった豪華な場所についても、入社後も連れて行ってもらえるような機会があるとは限りません。 入社後、そうした優秀な社員にも普段から会って話すことができ、豪華な食事会にも、お祝いなどでときおり連れて行ってくれる企業ならば安心ですが、入社前だけ美味しいところを見せる会社だと、そのギャップに耐えられなくなるかもしれません。 自分が入社しようと思う会社の等身大がどの程度なのか、理解することができれば、ギャップリスクは減らすことができると思います。その会社が、等身大を見せているかどうかは気にしてほしいところです』、「会社の等身大」は学生に分かる筈はないのが実情だろう。
・『容姿端麗な内定女子をリクルーター役にする例も  囲い込みの例3「早期内定者をリクルーターにして呼び水に」  先に内定を得た学生に、自社の新卒採用の手伝いをしてもらい、その学生にほかの優秀な学生を誘う役割を担わせる会社があります。なぜこの会社に決めたのかを語らせることで、まだ入社するかどうか迷っている学生側への入社動機を高めると同時に、その人自身の入社動機を高める効果が狙えます。 この手法について、意図的に容姿端麗な女子学生に早期内定を出し、その女子学生に、「私たちと一緒に頑張ろうよ!」と、これから選考に向かう優秀な男子学生たちを口説かせるということをやっている会社が実際にあると聞いています。 女性とあまり接点のない理系優秀男子や、上昇志向や競争心が高い男子学生を、これで結構引っ張れるという話を聞いて、複雑な気持ちになりました。この手法の賛否については読者にお任せします』、就活にまで「色仕掛け」があるとは驚かされた。引っ掛かる学生も情けない。
・『囲い込みの例4「内定後のインターンで就活意欲をそぐ」  内定後インターンシップという名目で、有給で働かせ、他社への就活の時間をなくさせてしまう会社もあります。いってみれば入社前アルバイトのようなものです。 その目的が、学生本人にその会社や仕事の適性を考えてもらうことや、早期戦力化を期待するものならまだいいですが、単純に他社に行かせないための囲い込みを目的にしているというケースも少なくありません。 今後につながらない雑務や、会社の実態からは距離を置かせ、実務が伴わない内容のインターンシップは、学生の未来をあまり考えているとは思えず、悪意さえ感じます』、「他社に行かせないための囲い込みを目的」とした内定後インターンシップは、極めて悪質だ。
・『このように、会社はさまざまな方法で、「早期囲い込み」を行っています。 会社のことをちゃんと理解してもらうために、オープンな姿勢で学生に情報を与える会社であれば、早期の接触も悪くはないとは思います。しかし、そういう会社ばかりでなく、「お化粧した会社情報」ばかりを学生に与え、早期に囲い込む会社が少なくありません。 私は、これは望ましくない傾向だと感じています。というのも、早期に囲い込もうとする会社が増えるほど、学生が「就職」することに対して、そして「働く」ということに対して、真剣に向き合う時間が少なくなると思うからです。 自分がどんな会社に入って、どんな仕事をしながら、自分のありたい姿に近づけていくのか――。これは、真剣に自分自身に向き合い、さまざまな会社に出会って比較検討をし、複数会社への選考に臨み、成功や失敗を繰り返す中で磨かれていくものだと感じています』、その通りだ。
・『早期内定で入社後「こんなはずでは」に直面  実際、こんな例があります。 ちょっと興味を持って参加したインターンシップやセミナーで、出会った会社や人のことが「いいな」と思って、自分に向き合うことも、ほかの会社と比較検討することもないまま、どんどん選考に進んでいきました。そして、会社の人たちからも、「君はとても優秀だ。君の力が必要だ。私たちと一緒に夢を実現しようよ」などと口説かれ、内定を承諾しました。 周りの友人も同じように内定をもらっており、就活も面倒なことが多いと感じていた。そんな中、自分が「いいな」と思ったところに内定をもらえたので、「これも縁、運命」だと思い、早期に就活を終了させたのです。入社までの間も、会社の手厚い内定者フォローがあり、安心しきって、残りの学生生活を満喫したのです。 しかし、いざ入社してみると、自分がイメージしていた会社や仕事内容と、ものすごいギャップがあることに直面したのです。インターンシップやセミナーで説明されていたことと違う実態が数多く、入社前にあれだけ優しかった先輩たちが、めちゃくちゃ厳しかったり、忙しくてほとんどかまってくれなかったりしたそうです。 さらに、すごく魅力的に伝えてくれた華やかな仕事内容も、実は、その会社のほんの一部の仕事で、全体的に地道に営業をするといった泥臭い仕事が中心。当初いわれていた、魅力的な仕事に就くには、10年以上のキャリアを積み、さらに社内競争に勝ち残って、数パーセントの枠に選ばれる必要があることを知ったのです。 こうした結果、入社半年くらいで、その会社で働くことの未来が見えなくなり、退職を考える。もしくは、やりがいは諦め、世間体のため、生活のために割り切って働く――。このような、非常にもったいない若手人材が何人もいます。 こうなってしまうと、今後のキャリア形成にとって、望ましいとはいえない展開になります。早期に退職を選択した場合、残念ながら新卒時よりも市場価値が下がってしまうのが現状です。転職活動をしても、新卒時に比べて入社できる会社の選択肢が狭まっており、今より満足できる会社に転職できる可能性は高くありません。 退職を選択せずに、残るとしても、やりがいをもって働けないのであれば、その会社で積み上げられる経験が薄くなる可能性が高いといえます。 比較的長く働いたとしても、与えられたルーティンの仕事しかしていなければ、世の中で通用するビジネススキルが身につかず、年は取っても市場価値があがらなくなります。また、その会社で働くことが、ただ我慢を積み重ねることになるため、精神的な問題を抱える可能性も高くなります。 つまり、新卒時に安易に会社を決めることは、就活というストレスから早く逃れられる反面、将来的に大きなリスクを抱えることになるのです。 確かに数少ない出会いの中で、「幸運にも相性の良い会社」に出会える学生がいることも事実です。しかし、それは本当に幸運なパターン、もしくは入社してから腹をくくり、「ギャップがあっても自分が決めたことだから」と、むしろ仕事の面白さや成果を自らつくりだして「相性の良い会社にする」パターンだと思います』、「新卒時に安易に会社を決めることは、就活というストレスから早く逃れられる反面、将来的に大きなリスクを抱えることになるのです」、というのはその通りだ。
・『素直で真面目なタイプほど安易に内定先を決めてしまう  後者の人のように、覚悟ができればいいのですが、そのような学生はそもそも楽観的で、深く考えることなく突き進んでいけるエンジンをもっているタイプが多いと思います。 しかし、安易に会社を決めてしまう学生の多くは、そういうタイプの学生ではなく、素直で真面目なタイプだと感じています。新たな動機が見つかる機会がない限り、柔軟に対応できる人が少ないのではと思っています。 よって、就活をはじめたばかりの学生に対し、早期に囲い込みをすることには反対です。自己分析や企業研究など、やるべきことをしっかりやっている学生や、明確な志がある学生については心配ありませんが、多くの学生は、そこまでの準備や志がないまま、就活に挑んでいると思います。 そんな中、企業側が安易に早期囲い込みをすることは、お互いのミスマッチを増やすことになるのではと懸念しています。 就活スケジュールの早期化は企業主導で行われており、学生側が変えようと思って変えられることではありません。よって、学生側が、「企業の巧妙な手口にはまり、安易に就職先を決めないようにする」という意識を持つことが重要になると考えています。 とはいっても、ある一定の時期までには、必ずどこに入社するかを決める必要はあります。それまでに、ちゃんと自分と向き合い、そして興味がある会社について調べ、会社の違いを理解し、何故自分がその会社を選ぶのか、そして、その仕事を続け、将来自分は、どうなりたいのか、それらを周りの人たちに胸を張って言えるのであれば、早期に入社を決断しても大丈夫でしょう。 しかし、それらがちゃんと言えず、違う会社との比較検討もせずに、なんとなく出会った会社の雰囲気や社員の魅力だけで就職先を決めるのは、中長期的なキャリア形成において大きなリスクを抱えることになることをわかってほしいと思います。 「最初に入る会社なんてどこでもいい。自分がそこでどう働くかだ」という考えの人がいるのもわかっていますし、そうした考えもある意味間違いではないので否定はしません。しかし、私は最初に入る会社が、その人の働く価値観や姿勢をつくることに大きな影響を与えると強く感じています。だからこそ、最初に入る会社は大事にしてほしいと思っています。 本当に自分に合った会社を見つけることが難しいこともよくわかります。しかし、安易に決めるよりは、やるべきことをやって決めたほうが、より自分に合う会社に入社できる可能性は高まると思います』、「企業側が安易に早期囲い込みをすることは、お互いのミスマッチを増やすことになるのではと懸念しています」、早期囲い込みに就活生が乗せられないよう、大学も就活セミナーなどを通じて教育すべきだろう。
・『就職は自分への投資という気持ちで  人の生涯年収は、2億円~3億円と言われています。給料は労働の対価という部分がありますが、自分の将来価値がそれだけ得られるという投資的な考え方もできます。就職先を決めることは、2億円~3億円(場合によってはそれ以上)の対価を得る投資先を決めることと、同じような意味があると思っています。 大した仕事の経験がないのに、投資する先(=入社できる先)を広く選べるのは、新卒の時だけです。だからこそ適当に決めず、自分自身を、その会社に投資する理由について、明確に語れることが必要だと思っています。 入社すれば、きっとうまくいかないことだらけでしょう。辛いこともたくさんあります。でも、そのうまくいかないこと、辛いことを乗り越えるだけの理由が自分の中にあれば、きっと踏ん張ることができ、必死にもがく中で乗り越え、成長できるでしょう。 就活に時間と労力を割き、いろいろなことに向き合うことは、大変だと思います。しかし、働くうえで、自分自身の大きな支えとなる意思や思いを、貴重な新卒就活という時間の中で、つくることが大事だと思っています』、その通りで、特に異論はない。
タグ:就活 就職活動 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 新卒一括採用 河合 薫 山崎 元 (その5)(学生を規格化する「就活ルール」は即廃止すべき 「選択の自由」を許さないと生きる力は摩耗、政府が「就活ルール」に関わるのは愚行といえる3つの理由、就活で蔓延する「早期内定囲い込み」の手口 企業の安易な囲い込みは離職を増やすだけだ) 「学生を規格化する「就活ルール」は即廃止すべき 「選択の自由」を許さないと生きる力は摩耗」 経団連の中西宏明会長 就活ルール廃止発言 経団連会長でも崩せない“アレ”が立ちはだかっているということか。 アレ=ジジイの壁 何よりも驚いたのは大学側が「反対!」を表明したことだ 大学側としては、「青田買い」の激化を懸念 大学が「学問の場」から就職の「ハローワークの場」になっていた 就活とは、「オトナたちが求める人材と化すための装置」でしかなく、可能性が無限大にひろがっているはずの若い学生たちが、オトナが求める“規格化された若者”に変身する 「就活」が「自律」の邪魔に 「自律性」を育む 「所得、学歴よりも『自己決定』が幸福感に強い影響を与えている」 自己決定。すなわち「選択の自由」が、職務満足感や人生の満足度を高め、寿命にまで影響する 人生における選択肢は確実に増えた。ところが今の日本社会には「これが正解!」が溢れ、正解から外れると「負け組」と排除され、ちょっとでも失敗すると「自己責任」が問われる なんでもかんでも「正解」ばかり追い求める社会は息苦しい 米国で「自分MAX」になることを教育 日本では『普通』が一番である 日本の外に出たことで、自分がちっちゃな世界に生きる輩になりさがってることに気づき、がっかりし、「自分に戻ろう!」と決意した 「政府が「就活ルール」に関わるのは愚行といえる3つの理由」 中西経団連会長の英断 「就活ルール」はない方がいい 理由1 採用・就職は自由であるべき意思決定だ 理由2 学業と就活時期は本来無関係だ 理由3 「守られないルール」の悪影響 守られないルールは、それ自体として形骸化していて不公平であり、加えて採用活動に関する情報を見えにくくしている。学生に対する情報上の公平性を損なっていると言える 豊川 晴登 「就活で蔓延する「早期内定囲い込み」の手口 企業の安易な囲い込みは離職を増やすだけだ」 人事担当者の間では、「新卒採用の早期化」が非常に話題に 囲い込みの例1「君は特別待遇」 囲い込みの例2「豪華おもてなし」 容姿端麗な内定女子をリクルーター役にする例も 囲い込みの例3「早期内定者をリクルーターにして呼び水に」 囲い込みの例4「内定後のインターンで就活意欲をそぐ」 早期内定で入社後「こんなはずでは」に直面 素直で真面目なタイプほど安易に内定先を決めてしまう 就職は自分への投資という気持ちで
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ソフトバンクの経営(その9)(ソフトバンク上場 公開価格割れが示す難局 ファーウェイ問題 値下げ圧力 通信障害…、ソフトバンク孫正義氏が日本より海外で尊敬される理由、ソフトバンク「ビジョン・ファンド」 資金早くも半減、ソフトバンク物流参入へ 照準は「アマゾン」) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、昨年11月21日に取上げた。今日は、(その9)(ソフトバンク上場 公開価格割れが示す難局 ファーウェイ問題 値下げ圧力 通信障害…、ソフトバンク孫正義氏が日本より海外で尊敬される理由、ソフトバンク「ビジョン・ファンド」 資金早くも半減、ソフトバンク物流参入へ 照準は「アマゾン」)である。

先ずは、昨年12月20日付け東洋経済オンライン「ソフトバンク上場、公開価格割れが示す難局 ファーウェイ問題、値下げ圧力、通信障害…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/256302
・『ソフトバンクグループ(SBG)傘下の携帯電話事業会社ソフトバンクは12月19日、東京証券取引所第1部に株式を上場した。 SBGはソフトバンク株の売却で、新規上場として史上最大となる約2兆6000億円を市場から調達したが、株価は初日から公開価格の1500円を大きく割り込んだ。終値は1282円(公開価格比14.5%減)という厳しい結果で、上場の祝福ムードが吹き飛ぶ厳しい船出になった。 「個人投資家から怒りや落胆の声が出ている。なぜこうなったのか」「公開価格は適切だったのか」。同日午後、市場がクローズしてから行われた会見では、ソフトバンクの宮内謙社長に対し、いきなりの株価下落を追及する質問が相次いだ』、私は、悪材料以上に、もともとの親子上場そのものに疑問を持っているので、厳しい結果に違和感はない。
・『ソフトバンク社長、株価下落は「残念」  宮内社長は株価下落について「残念だ」としつつ、「急にドコモショック、通信障害、中国のファーウェイ(の問題)、政府のプレッシャーなど色々と起きた」と想定外の事態について言及。ただ、上場先送りはまったく頭になかったといい、「厳しい環境の中で船出することで心を引き締めていく。ITのマーケットはビジネスチャンスの山だ」と強調した。 公開価格については、「85%の配当性向、5%の配当利回りをきちっと示すことが重要じゃないかという引き受け証券会社のアドバイスを受けて、1本の1500円にした」と説明するだけだった。 実際、ネガティブな材料が山盛りの中での上場だった。8月には、菅義偉官房長官が「携帯料金は今より4割程度下げられる」と発言。業界への値下げ圧力が強まる中で、競合のNTTドコモが10月末、来年度以降の大幅値下げ方針を発表した。 ソフトバンクは現時点で、サブブランドの「ワイモバイル」における一部値下げ方針を示しているが、今後はソフトバンクブランドも含めたさらなる値下げ拡大が不安視されている。また、12月6日には、原因はスウェーデンの通信機器ベンダーであるエリクソン側にあったものの、大規模な通信障害を起こした。この障害発生後の5日間で約1万件の解約があったという。 中でも特にソフトバンク関係者が、「株価への影響が最も大きかったのではないか」とみるのが、ファーウェイ問題だ。米国政府は、中国政府が通信機器大手のファーウェイを通じて不正に情報収集するおそれを指摘して規制を強めている。 日本政府も呼応して今月、本格的に“ファーウェイ排除”に動き出した。近く、通信などの重要インフラを担う企業に対し、ファーウェイなど中国製品の除外を求めるとみられている。 12月10日には、政府が安全保障上の問題から2019年4月以降、情報流出のおそれがある機器を調達しないことを各省庁や政府系機関で申し合わせた。 さらに12月14日に行われた総務省の電波監理審議会では、次世代通信規格5Gの電波割り当て指針案の中で、通信会社に対し、この申し合わせに留意するように求めた。名指しこそしていないが、情報流出のおそれがある機器というのは、ファーウェイなどの中国製品を指しているとみられる』、ファーウェイ問題とは思わぬ余波を受けたものだ。
・『中国製設備を使うのはソフトバンクだけ  国内の通信会社のうち、既存の4Gの通信設備でファーウェイやZTEなど中国製を導入しているのは、ソフトバンクだけだ。一般的に通信の設備投資額は巨額だというイメージがある。そのため、中国製の通信設備を他国製に交換する費用などへの懸念が広がり、株価を大きく下押しする材料になった可能性がありそうだ。 通信各社は戦略上などの理由から、通信設備のベンダー別割合など、詳細は公表していない。ただ会見ではファーウェイ関連の質問が集中。「不安を払拭する必要がある」(ソフトバンク関係者)という判断もあり、ソフトバンクは導入状況を初めて明かすなどの説明に追われる形となった。その内容を額面通りに受け取れば、影響額はさほど大きくないことになる。 まず、今後の対応方針について宮内社長は「政府の本当のガイドラインを見極めたい」としつつ、「コアネットワーク(基幹回線網)の部分では欧州のベンダーに変えざるをえないと思っている」と述べた。コアネットワークは通信のネットワークで最も重要な回線であり、情報が抜き取られるリスクを避けるには交換が必須となりそうな部分である。 そもそもソフトバンクの設備投資額のうち、欧州ベンダーと中国ベンダーに分けた場合の比率は欧州が9割で、中国は1割に過ぎないという。つまり、すべての通信設備に占める中国製の割合はかなり限定的だったということになる。 CTO(最高技術責任者)を務める宮川潤一副社長は、コアネットワークにおける中国製通信設備の交換費用の見通しについて、「数億円の前半レベルだ」と述べた。 仮にコアネットワーク以外の部分まで交換の必要が生じれば、費用が多少は膨らむかもしれない。実際、交換範囲の大きさによっては、中国製の通信設備自体が帳簿上の価値を失い、固定資産除却損失が数百億円発生する可能性はあるという。ただ、これはあくまで会計処理の話で、ソフトバンクにとって新たな金銭的な負担を伴うということではない』、中国ベンダーの比率は「1割に過ぎない」というのは、本当かと驚きだが、もともと英国ボーダフォンを買収した出自が影響しているのかも知れない。
・『問題はファーウェイだけじゃない  とはいえファーウェイ問題の懸念を除いても、ドコモの携帯通信料金の大幅値下げなどの影響は、これから顕在化してくるとみられる。さらに通信障害対策への投資なども含めて、取り巻く環境が楽観できないことには変わりはない。 宮内社長は会見中、何度も「われわれは逆境に強い」という言葉を繰り返した。また、「通信会社としてのネットワークのインフラビジネスは着実に伸ばせる。その上に新規事業を追加して、これから大きく成長できる」とも述べ、シェアオフィス「ウィーワーク」の日本事業や、スマホ決済サービス「ペイペイ」などを例に挙げた。 ただこの言葉通りにならなければ、痛い目に遭うのは「配当性向85%、配当利回り5%」に惹かれて株を購入した個人投資家たちだ。いくら配当性向を高くしても、多額の含み損を抱えることになれば本末転倒。公募に応じた多くの個人投資家が求めているのは、耳障りのいい言葉ではない。波乱の上場初日を終えたソフトバンクは今後、市場の評価を覆すことはできるだろうか』、ソフトバンクの株価は15日現在で1289円と低迷したままだが、逆境を果たして跳ね返せるのだろうか。

次に、早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏が12月21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ソフトバンク孫正義氏が日本より海外で尊敬される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/189254
・『ソフトバンクIPOで初値が公募価格割れ 相次ぐ向かい風と手厳しい市場の評価  ソフトバンクが歴代で最大級のIPOを行ったが、初値は公募価格割れという残念な結果に終わった。 タイミングも悪かったのであろう。このところ、ソフトバンク自身の問題だけではない事件に足をすくわれることが多く、「ついていない」としか言えない状況が続いている。 親会社であるソフトバンクグループの孫正義会長と関係が深いとされる、サウジアラビアのムハンマド皇太子のスキャンダルで、リヤドの経済フォーラムでの孫会長の講演は取り止めとなった。また、ソフトバンクが日本で唯一携帯電話網の基地局設備に採用し、5G開発でも手を組んでいるファーウェイへの風当たりが強まっている。さらには、先日のエリクソン製設備の不具合によるソフトバンク携帯電話の大規模通信障害の影響で、足もとでは契約解除件数が急増している。 今回のIPOに対するメディアの論調も、手厳しいものが多い。しかし、ここでちょっと立ち止まって考えてみてほしい。そもそもソフトバンク(ソフトバンクグループ)と孫正義会長に対して、日本人の評価は手厳しすぎるのではないだろうか。 ソフトバンクは1980年代、当時まだPCがマイコンと言われていた時代に、PCソフトの流通やパソコン雑誌の出版といった事業からスタートしている。それまで一部のマニアが自分でプログラミングするしか使いようのなかったPCを、パッケージソフトを購入して誰でも使えるものにし、第一次パソコンブームを牽引した点で、ソフトバンクの功績は大きい。 当時のソフトバンクが創刊した『Oh!PC』『Oh!MZ』などの機種別PC雑誌は、機種ごとに使い勝手の異なっていた当時のPCを使いこなすために、お世話になった入門者も多かっただろう。 その後、1990年代に入ってヤフーの日本におけるサービスを開始、2000年代にはYahoo!BBによるADSL接続を実現しインターネットプロバイダ事業にも参入し、インターネットの普及に貢献した。駅前で「Yahoo!BBでーす!」と言ってADSLモデムを配っていた販売員の姿を、覚えている人も多いだろう。「機器代金ゼロ円」のリカーリングビジネスの先駆けとも言える。 その後、ボーダフォン(Vodafone)の日本法人を買収して携帯電話事業に進出、現在に続くソフトバンクの中核事業の1つに育て上げた。日本のボーダフォンの前身はジェイフォン(J-Phone)である。ジェイフォン、ボーダフォン時代を通じて、NTTドコモとKDDIの大手携帯キャリアに押されて鳴かず飛ばずだった通信キャリアの買収は、当時「高すぎる買い物」「失敗必至」と言われた。しかし、いち早くiPhoneに目を付けて契約者数を拡大したことから、上位2社に恐れられる存在にまでなった』、孫正義会長のIT業界での貢献が大きいことは確かだ。
・『ガラパゴス市場に先んじてiPhoneを導入した先見性  ガラパゴスと言われたように、日本の携帯キャリアは日本の独自機能、独自規格を貫き、日系携帯端末メーカーはいわゆる「全部入りケータイ」を大量供給していた。こうしたビジネスモデルでないと商売にならなかった時代に、日本独自の機能は一切省き、当時の高機能携帯には当たり前だった「ワンセグ」も「おサイフケータイ」も内蔵しないiPhoneを日本に導入したのは、極めて大きなチャレンジだっただろう。 現在、日本は世界中で最もiPhoneユーザーが多い市場になっているが、これもソフトバンクの仕掛けによるものだったと言える。 こうして見ると、ソフトバンクと創業者の孫正義氏が日本のIT産業において果たした役割は極めて大きいと言える。にもかかわらず、一般の日本人の評価がそれほど高くないように思えるのは、育てた企業の規模と産業に与えた功績について論じられるときではなかろうか。 シャープの伝説のエンジニアと言われる佐々木正氏は、若き孫正義氏を見出し高く評価したと言われるが、一般の評価としては、松下電器産業(現パナソニック)の松下幸之助氏やホンダの本田宗一郎氏のように「尊敬される経営者」というより、「確かにお金は儲けているけど……」というエクスキューズをつけて語られることが多いように思える』、ガラパゴス的な「全部入りケータイ」には目もくれず、iPhoneをいち早く導入した慧眼も大したものだ。
・『孫正義氏は「クール」なのか 日本人と外国人で割れる評価  なぜこのようなことを言うかというと、今から10年ほど前、ある台湾の財閥系企業の経営者に「ソフトバンクの孫正義さんは、今日本で一番クールな経営者ですよね」と言われたときに、筆者も「クール」という言葉に違和感を覚えたからだ。 孫正義氏は確かにすごい人だと思う。だけどそれは、クールとか尊敬という評価に値するのか。それから筆者は、自らが教える大学院で、日本人と外国人留学生(それぞれ就業経験のあるビジネススクールの社会人大学院生)に「孫正義はクールな経営者だと思うか」という問いを毎年投げかけている。 もちろん、人によって答えは多少違っているが、面白いことに、日本人と留学生とで異なる傾向が見られる。留学生の多くは「孫正義氏はクールで尊敬する経営者」と答えるのに対し、日本人学生の多くは「確かに金儲けはうまいが、クールとか尊敬とは少し違う」と答えるのだ。日本人学生の相対的な評価の低さの理由を突き詰めて問うてみると、多かった答えが「孫正義氏は買収によって現在のビジネスを手に入れたのであって、全てを自分でつくったわけではない」というものであった。 松下幸之助氏も本田宗一郎氏も、自身で技術を考案し、画期的な製品をつくり上げた。いや、孫正義氏も最初は自身が考案した自動翻訳機をシャープの佐々木正氏に売り込んで、大きな資金を獲得しているのだから、最初は一緒だったのかもしれない。 ただ、旧松下電器やホンダが自社で開発した技術を自社製品として設計し、自社ブランドで販売していたのに対して、ソフトバンクの主要事業の多くは他社から買収してそれを育てたものが多い。違いはここにあるのだろうか。 20世紀のモノづくりは内製化と垂直統合の時代であった。自社で開発したユニークな技術を自社製品に搭載することで、技術的なイノベーションを起こしていた。その成功体験が日本人には強すぎたのかもしれない』、私は、「自身で技術を考案し、画期的な製品をつくり上げ」ようが、買収によろうがどちらでも持続的なビジネスに出来ればいいと考えているので、「孫正義氏はクール」だと思う。ただ、「尊敬」には違和感がある。
・『モジュール化と国際分業の時代に昔の価値観で勝ち残るのは難しい  一方21世紀は、モジュール化と国際的な分業の時代である。聞こえの良い言い方をすれば、オープンイノベーションがもてはやされる時代である。イノベーションとは、そもそも新しい組み合わせによって経済的な利益を生み出す活動を指す言葉であり、新技術開発による技術的イノベーションは、イノベーションの一例でしかない。 他者が開発した技術であっても、その新しい組み合わせ方を考案したり、新しい組織形態によって事業を運営したり、あるいは新しい市場に製品やサービスを投入したりすることも、経済的な利益が伴えば、立派なイノベーションである。 日本人は2つの意味で、イノベーションを誤解していることが多い。1つは、自ら開発した技術だけがイノベーションの源泉だと思い込むこと。もう1つは、経済的な利益が伴わなければ、その活動はイノベーションではないということだ。 非常に優れた技術であって、それが高く評価されていても、企業に収益をもたらさなければ、それはイノベーションではない。ただの新技術である。技術成果と事業成果は異なる。技術成果が事業成果を伴って初めて技術的イノベーションと言えるし、仮に新たな要素技術が伴わなくても、新しい技術の組み合わせ方、導入の仕方によって企業に収益がもたらされれば、それこそがイノベーションと言える。 技術の変化と普及の速度が速くなった現在、内製と垂直統合だけではその変化に対応できない。世界中に散らばっている技術を集め、新たな組み合わせによって「金儲け」をすることが、オープンイノベーションの本質である。「日本独自の差別化」という大義名分のもとで排他的な垂直統合を目指しても、日本に勝ち目はないだろう。 そう考えれば、ソフトバンクグループが事業会社から投資会社に変化しつつある状況は、グローバルにオープンな環境で新たな技術の組み合わせを実現するためのプラットフォームの形成と見ることもできる。自らが要素技術開発の担い手にならなくても、技術と技術の繋ぎ合わせに必要不可欠なプラットフォームの提供者になれば、ビジネス全体のリーダーシップをとることもできるからだ』、その通りで、全面的に同意する。
・『イノベーションの定義を変える孫正義氏のチャレンジ  先日、あるメーカーの中堅社員の方が、「会社としてオープンイノベーションを標榜しているのですが、個別の案件になると、自社技術でないという理由で採用されないのです」と嘆いていた。日本企業はまだまだ20世紀の成功体験を引きずってはいないだろうか。 20世紀においても、自社で開発したものにこだわることでイノベーションが阻害される現象を「NIH」(Not Invented Here/ここで発明されたものではない)症候群と呼んでいた。オープンな競争環境において、迅速で柔軟な対応が求められる現在、重度のNIH症候群にかかっている日本企業がまだまだあるのかもしれない。 まずは意識を変えることだ。そして「孫正義氏がクールな経営者に見える」ようになってくると、日本のイノベーションの在り方が変わるのかもしれない。 それともう1つ。日本人は「金儲け」にもう少し貪欲になってもいいのではないだろうか。繰り返すが、イノベーションがイノベーションである要件は、経済的な利益がもたらされること。技術的な成果を実現しただけで、満足しないことが重要なのである。 少々話題が広がり過ぎたきらいはあるが、筆者は今回、ソフトバンクのIPOに鑑み、ふとこんなことを思った次第である』、伝統ある製造業では、いまだに「NIH」症候群が残っているようだが、一刻も早くオープンイノベーション推進に切り替えてほしいものだ。

第三に、2月17日付け米WSJ紙「ソフトバンク「ビジョン・ファンド」、資金早くも半減」を紹介しよう。
https://jp.wsj.com/articles/SB12633037436720523516104585108132061574868
・『世界最大のハイテク投資家であるソフトバンクグループにとって、さらなる現金を必要とする日が近づいているかもしれない。 ソフトバンクは2年前、1000億ドル近い規模を誇るハイテクファンドの「ビジョン・ファンド」を設立し、投資の世界に疾風を巻き起こした。同社が6日提出した証券当局向け資料によると、ファンドはすでに資金の半分を使っている。 それでも、ダウ・ジョーンズ・ベンチャーソースによると、残りの資金はプライベートエクイティ(PE)のアポロ・インベストメントによる世界2位の投資ファンドが運用する250億ドルの2倍に相当する。 ビジョン・ファンドにはサウジアラビアやアブダビの政府系ファンド(SWF)が出資している。米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズや共有オフィス賃貸を手掛ける米ウィーワークなど、世界有数規模の時価総額に達した新興企業の株式を取得し、猛烈なペースで資金を投じてきた。 これまでのところ、四半期当たり約70億ドルを投資しており、このペースで行けばあとわずか1年半で資金が尽きる計算だ。ファンド従業員への報酬支払いや、ソフトバンク本体からビジョン・ファンドへ移転するかもしれない投資事業を考慮に入れれば、それより早く資金が底をつく可能性が高い』、ビジョン・ファンドの規模は、第二位の倍とは小さな入り江での「クジラ」のような存在だ。既に500億ドルを投資したというのは、ペースが早すぎるような気もする。
・『ソフトバンクが何百億ドルもの資金を調達するのは、最近では難しくなっているかもしれない。市場の変動が大きくなっているうえ、中国などの景気に減速の兆候が見られる。また、ビジョン・ファンドの最大の支援者であるサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、同国の著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害を指示した疑いが持たれており、一部のハイテク企業はサウジ絡みの出資受け入れをちゅうちょしている。ムハンマド皇太子は殺害への関与を否定している。 ソフトバンクの孫正義会長兼社長は6日、さらなる資金の調達時期と手法を検討中だとしつつ、「数カ月内に急ぐ」必要はないとの考えを示した。「この投資ペースを維持していく」と語っている』、孫正義会長としては、「強気」のポーズを取らざるを得ないのだろう。

第四に、2月15日付けダイヤモンド・オンライン「ソフトバンク物流参入へ、照準は「アマゾン」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/194129
・『デジタル革命の到来で、高度なIT人材は引く手あまた。メルカリに代表される新興IT企業や、その他多くの事業会社は、成長の鍵をにぎる高度IT人材を血眼になって求めている。週刊ダイヤモンド2月23日号では「IT人材の採り方・育て方」を特集。IT人材獲得合戦の最前線を追った。 ソフトバンクが、今秋をめどに物流事業への参入を検討していることが本誌の調べで分かった。 その陣頭指揮を執るのは、「Pepper(ペッパー)」などロボットの開発・販売事業を展開しているソフトバンクロボティクスの顧問兼ロジスティクス本部長である松浦学氏だ。あるソフトバンク関係者によれば、「今夏までに、物流とITの知見を併せ持つような高度人材を約80人採用する計画で動いている」と打ち明ける。 日本の物流業界は、ネット通販市場の成長で物量が急増しているが、慢性的な人手不足とピンハネが横行する多層下請け構造に苛まれている。物流クライシスの深刻さは尋常ではない。 にもかかわらず、ソフトバンクが勝算ありと踏むのは、得意とするロボティクス技術を使えば、日本の物流のボトルネックを解消できると考えたからだろう。  何を隠そう、松浦氏は、家具大手ニトリホールディングスの物流子会社、ホームロジスティクス社長を務めていた人物。ニトリの物流施設へロボット技術の導入を決めた推進役である。例えば、川崎市内にあるニトリのネット通販向け倉庫を「ロボット倉庫」に切り替えたり、自動搬送ロボット「バトラー」を導入して物流倉庫の入出庫業務を自動化したりした。 ソフトバンクは松浦氏を招聘したのに続いて、テック人材を大量に採用し物流サービスの開始に備えようとしているわけだ』、松浦学氏だけでなく、「物流とITの知見を併せ持つような高度人材を約80人採用する計画」とは本腰が入っているようだ。
・『ソフトバンクが仮想敵国として照準を定めるのは、間違いなくアマゾンであろう。2000年にネット書店として日本に上陸して以降、アマゾンは日本各地に物流拠点を着々と建設しており、デリバリープロバイダー(地域配送会社)の組織化も進んでいる。 ソフトバンクは、千葉県など関東近郊エリアの物流倉庫の自動化を手始めに、拠点を拡大していく方針。現時点では、物流倉庫の自動化に専念し、アマゾンも苦戦している「ラストワンマイル」の配送は手掛けないもようだ。 それでも、ソフトバンクはグループ系列のヤフーやアスクルはネット販売チャネルを持っており、トヨタ自動車とは自動運転技術など次世代モビリティーで提携している。 満を持して、ソフトバンクが物流へ参入するからには、倉庫業務の自動化が物流事業のビジョンの最終形だとは考えにくい。 長期的には、自動運転車や次世代モビリティーが配送業務を担うなど、もっと壮大な構想を描いているに違いない』、「「ラストワンマイル」の配送は手掛けない」で、アマゾンにどのように対抗してゆくのだろうか。正式発表が楽しみだ。
・『アマゾンと重複する物流テック人材の獲得バトル  そして、ソフトバンクの物流参入の成否は、「物流×IT」に造詣が深いIT人材を確保できるかどうかにも懸かっている。 もともと、ソフトバンクはIT人材の獲得に熱心な会社だ。ペッパーでロボット事業に参入するときも、キャッシュレス決済アプリ「ペイペイ」をローンチするときもIT人材を大量に採用した実績がある。 歴史的に見ても、多くの日本企業とは異なり、顧客管理などの基幹システムをSIベンダーに丸投げすることなく、重要なシステムについては内製化してきた。その背景について、「内製化には時間も労力もかかる。経営者(である孫正義代表)の覚悟があったのだと思う」(渡辺真生・ソフトバンクIT本部長)と話す。 ソフトバンクに限らず今、世界的なデジタル革命を受けて、あらゆる業種の企業が、専門領域とITを組み合わせて新規領域へ参入している。企業の規模の大小を問わず、IT人材を内部に抱え込むのが必須の戦略となっているのだ。 日本の高度なIT人材は“超枯渇”状況。ソフトバンクとアマゾンとの間でも「物流×IT人材」の獲得合戦が始まっているように、こうした人材の年収は高騰しており、簡単には採用できなくなっている。企業がビジネス戦略に沿ったIT人材を獲得できるかどうか。その「採用力」が、企業の存亡を分けることになりそうだ』、両社の「採用力」がどうなるのかも見物のようだ。
タグ:ソフトバンク 東洋経済オンライン オープンイノベーション ダイヤモンド・オンライン WSJ紙 松浦氏 長内 厚 ソフトバンクの経営 ファーウェイ問題 (その9)(ソフトバンク上場 公開価格割れが示す難局 ファーウェイ問題 値下げ圧力 通信障害…、ソフトバンク孫正義氏が日本より海外で尊敬される理由、ソフトバンク「ビジョン・ファンド」 資金早くも半減、ソフトバンク物流参入へ 照準は「アマゾン」) 「ソフトバンク上場、公開価格割れが示す難局 ファーウェイ問題、値下げ圧力、通信障害…」 新規上場として史上最大となる約2兆6000億円を市場から調達 株価は初日から公開価格の1500円を大きく割り込んだ ソフトバンク社長、株価下落は「残念」 菅義偉官房長官が「携帯料金は今より4割程度下げられる」と発言 大規模な通信障害 5日間で約1万件の解約 中国製設備を使うのはソフトバンクだけ 欧州ベンダーと中国ベンダーに分けた場合の比率は欧州が9割で、中国は1割に過ぎない コアネットワークにおける中国製通信設備の交換費用の見通しについて、「数億円の前半レベルだ」 固定資産除却損失が数百億円発生する可能性 問題はファーウェイだけじゃない 「ソフトバンク孫正義氏が日本より海外で尊敬される理由」 ソフトバンク(ソフトバンクグループ)と孫正義会長に対して、日本人の評価は手厳しすぎるのではないだろうか ガラパゴス市場に先んじてiPhoneを導入した先見性 松下幸之助氏やホンダの本田宗一郎氏のように「尊敬される経営者」というより 「確かにお金は儲けているけど……」というエクスキューズをつけて語られることが多い 孫正義氏は「クール」なのか 日本人と外国人で割れる評価 ソフトバンクの主要事業の多くは他社から買収してそれを育てたものが多い 20世紀のモノづくりは内製化と垂直統合の時代であった。自社で開発したユニークな技術を自社製品に搭載することで、技術的なイノベーションを起こしていた その成功体験が日本人には強すぎたのかもしれない モジュール化と国際分業の時代に昔の価値観で勝ち残るのは難しい 新技術開発による技術的イノベーションは、イノベーションの一例でしかない 他者が開発した技術であっても、その新しい組み合わせ方を考案したり、新しい組織形態によって事業を運営したり、あるいは新しい市場に製品やサービスを投入したりすることも、経済的な利益が伴えば、立派なイノベーションである 日本人は2つの意味で、イノベーションを誤解 1つは、自ら開発した技術だけがイノベーションの源泉だと思い込むこと もう1つは、経済的な利益が伴わなければ、その活動はイノベーションではないということだ イノベーションの定義を変える孫正義氏のチャレンジ 「NIH」(Not Invented Here 「ソフトバンク「ビジョン・ファンド」、資金早くも半減」 「ソフトバンク物流参入へ、照準は「アマゾン」」 ソフトバンクが、今秋をめどに物流事業への参入を検討 物流とITの知見を併せ持つような高度人材を約80人採用する計画 ソフトバンクが仮想敵国として照準を定めるのは、間違いなくアマゾン 「ラストワンマイル」の配送は手掛けないもようだ 長期的には、自動運転車や次世代モビリティーが配送業務を担うなど、もっと壮大な構想を描いているに違いない アマゾンと重複する物流テック人材の獲得バトル
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アベノミクス(その31)(衝撃! 日本人の賃金が「大不況期並み」に下がっていた アベノミクスとはなんだったのか…、民主党政権は「悪夢」だったのか、「総雇用者所得が増えた」のは女性や非正規の就労数が増えたから。賃金は低下した) [経済政策]

アベノミクスについては、昨年12月23日に取上げた。今日は、(その31)(衝撃! 日本人の賃金が「大不況期並み」に下がっていた アベノミクスとはなんだったのか…、民主党政権は「悪夢」だったのか、「総雇用者所得が増えた」のは女性や非正規の就労数が増えたから。賃金は低下した)である。

先ずは、経済アナリストの中原 圭介氏が2月5日付け現代ビジネスに寄稿した「衝撃! 日本人の賃金が「大不況期並み」に下がっていた アベノミクスとはなんだったのか…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59692
・『毎月勤労統計の不正が発覚したことによって、日本の賃金上昇率がかさ上げされていたことが明らかになり、国会が紛糾している。野党は「アベノミクス偽装」だと言うが、じつは問題の本質はそんなところにあるのではない。独自試算をしてみると、日本人の賃金がすでに「大不況期並み」になっていることが明らかになったんです――そう指摘するトップ・アナリストで、『日本の国難』の著者・中原圭介氏による緊急レポート!』、興味深そうだ。
・『野党の言う「アベノミクス偽装」は本当か?  厚労省の一連の不正統計において、とりわけ野党が問題視しているのは、2018年1月から「毎月勤労統計」の数値補正を秘かに行っていたということです。 たしかに、2018年からの補正によって賃金上昇率がプラスにかさ上げされていたのは紛れもない事実であり、厚労省が集計しなおした2018年の実質賃金はマイナス圏に沈む結果となったので、野党が「アベノミクスは偽装だ」と追及するのは間違いではないといえるでしょう。 しかし私は、野党が2018年の実質賃金だけを取り上げて、「アベノミクスは偽装だ」というのは、大きくポイントがずれているし、国民をミスリードしてしまうと考えております。 というのも、2018年だけの実質賃金を取り上げるよりもずっと重要なのは、アベノミクス以降の実質賃金、すなわち2013年以降の実質賃金がどのように推移してきたかという事実だからです。統計の連続性を担保したかたちであれば、補正を行っても行わなくても、賃金に関するアベノミクスのごまかしが露見することになるというわけです』、「アベノミクス偽装」というよりも「アベノミクスの嘘」の方が、適切なのかも知れない。
・『2013年~15年に「リーマン級」にまで暴落していた  そのような視点から、2000年以降の賃金の推移を独自の試算(2000年の賃金を100として計算)で振り返ってみると、名目賃金は2000~2004年まで大幅に下がり続けた後、2006年までは小幅な上昇に転じたものの、リーマン・ショック前後の2007~2009年に再び大幅に下がり、その後の2017年まではかろうじて横ばいで踏ん張っていることが見て取れます。 そうはいっても、2016~2017年の名目賃金は2年連続で小幅ながらも増えているので、政府によって「賃金はいよいよ上昇トレンドに入ったのだ」と力強く語られるのは致し方ないのかもしれません。しかしながら、物価の変動率を考慮した実質賃金の動きを名目賃金に重ねて眺めると、政府の主張が明らかに間違っていることがすぐに理解できるようになります。 そのように容易に理解できるのは、実質賃金は2000年以降、名目賃金とほぼ連動するように推移してきたのに対して、2013年以降はその連動性が完全に崩れてしまっているからです。2013年以降の5年間の実質賃金の動向を振り返ってみると、2013年は0.8ポイント減、2014年は2.6ポイント減、2015年は0.9ポイント減と3年連続で減少を続けた後、2016年には0.7ポイントの増加に転じたものの、2017年には再び0.2ポイントの減少へと逆戻りしているのです。 ここで注目したいのは、日本は2012年12月から戦後最長の景気拡大期に入っているにもかかわらず、2013~2015年の実質賃金の下落幅は累計して4.3ポイントにまでなっていて(※厚労省の当時の統計では4.6ポイント減/2015年=100で計算)、その下落幅というのは2007~2009年のリーマン・ショック前後の5.2ポイントに迫っていたということです。そのうえ、2014年の2.6ポイント減という数字は、2008年の1.9ポイント減や2009年の2.2ポイント減を上回り、2000年以降では最大の下落幅となっているのです』、確かに2013年以降の実質賃金の落ち込みぶりは顕著だ。
・『景気は国民の実感のほうが正しい  2013~2015年の実質賃金が未曽有の不況期に迫る落ち込みを見せた理由は、同じ期間に名目賃金がまったく増えていなかった一方で、大幅な円安が進行したことで輸入品の価格が大幅に上昇している過程において、消費増税までが追い打ちをかけて実質賃金の下落に拍車をかけてしまったからです。 私の試算では、2013~2015年の実質賃金の下落幅4.3ポイント減のうち、輸入インフレの影響は2.5ポイント減、消費増税の影響は1.8ポイント減となっているのです。 その結果として、2014~2016年の個人消費は戦後最大の水準まで減少することになりました。 円安インフレによりガソリンや食料品など生活に欠かせない必需品ほど値上がりが目立つようになったので、多くの家庭で財布を握る主婦層はそれらの必需品の値上がりには敏感に反応せざるをえず、ますます節約志向を強めていくことになったのです。 円安によって大企業の収益が飛躍的に高まったのに対して、国民の賃金上昇率は物価上昇率に大きく割り負けしてしまい、購買力が加速度的に落ち込む事態になったというわけです。 経済メディアのお決まりの説明では、「実質賃金より名目賃金のほうが生活実感に近い」といわれていますが、私は少なくとも日本人にとってはその説明は当てはまらないと確信しています。というのも、日本人の消費の動向は実質賃金の増減に大きく左右されていることが明らかになっているからです。 現に、実質賃金と個人消費のグラフを重ねて相関関係を検証すれば(上グラフ)、実質賃金が大幅に下落した時にのみ個人消費が減少するという傾向がはっきりと表れています。とりわけ2013年以降は名目賃金と実質賃金の連動性が逆相関の関係になったことにより、かえって実質賃金と個人消費の関係がわかりやすくなったというわけです。 実質賃金と個人消費に強い相関関係が認められる今となっては、経済学者も経済官僚も「名目賃金が国民の生活実感に近い」という間違った常識を改める必要があります。そのうえで、いかに実質賃金を上昇させていくのかという発想を取り入れて、国民の生活水準の向上を考えていかねばならないのではないでしょうか』、消費税増税や輸入インフレで、名目と実質が乖離したなかでは、その通りだろう。
・『国民の8割はアベノミクスの蚊帳の外にいる  安倍晋三首相の言う「平均賃金」とは名目賃金のことを指しており、「史上最高の賃金上昇率」とは連合の発表している数字を根拠にしています。 しかし、これまで申し上げてきたように、普通の暮らしをする国民にとって重要なのは、決して表面上の名目賃金などではなく、物価を考慮した実質賃金であります。おまけに、連合に加盟している労働者は日本の全労働者のわずか12%にすぎず、労働組合がない圧倒的大多数の中小零細企業の労働者は含まれていないので、史上最高の賃金上昇率は一部の大企業の正社員に限定されて行われていたと言っても差し支えはないのです』、「国民の8割はアベノミクスの蚊帳の外にいる」というのは言い得て妙だ。
・『戦後最長の景気拡大なのに…  私は2013年にアベノミクスが始まった当初から、「アベノミクスの恩恵を受けられるのは、全体の約2割の人々にすぎないだろう」とざっくりとした感覚で訴えてきましたが、その後のメディアの世論調査でも概ねそれに近い結果が出ていたということは興味深い事実です。 私がなぜ約2割の人々だといったのかというと、富裕層と大企業に勤める人々の割合が大まかにいって2割くらいになるからです。 アベノミクスが円安によって株価や企業収益を高めるかたわらで、輸入品の価格上昇によって人々の実質賃金を押し下げるという弊害をもたらすことは、最初からわかりきっていたのです。 要するに、普通に暮らす残りの8割の人々は、未だにアベノミクスの蚊帳の外に置かれてしまっているというわけです。日本は戦後最長の景気拡大が続いているとはいっても、いずれの世論調査においても国民の約8割が「景気回復を実感できない」と答えているのは、実は至極当然のことといえるでしょう』、「富裕層と大企業に勤める人々の割合が大まかにいって2割くらいになる」というのは初耳だが、大掴みで捉えるには大いに参考になる数字だ。
・『不正統計があぶり出した「実質賃金の真実」  私はこれまでの著書や連載のなかで、経済統計のなかでいちばん重視すべき統計は決してGDP成長率の数字そのものではなく、国民の生活水準を大きく左右する実質賃金であると、たびたび訴えてきました。 アベノミクスの最大の問題は、政府が国民に対して名目賃金(とりわけ大企業の賃金上昇率)の成果ばかりを強調し、実質賃金にはいっさい触れてこなかったということです。 さらにひどいことに、安倍首相は「勤労統計の伸び率のみを示して、アベノミクスの成果だと強調したことはない」「連合の調査では今世紀最高水準の賃上げが続いている」と2月1日の参議院本会議で答弁しました。連合に加盟しているのは大企業ばかりで、その賃上げ率を日本全体に当てはめて説明している首相の姿は、あまりに国民の暮らし向きに鈍感ではないかと感じました。 それに加えて、名目賃金にしても実質賃金にしても、調査の対象は「事業所規模5人以上」となっているので、零細企業は調査対象外となっており、実態を正確に反映しているとは言えないところがあります。零細企業は中小企業よりも財務的にも経営的にも行き詰っているところが多く、零細企業を調査対象に入れれば、実態はもっと厳しい結果が出るはずだからです。 今回の不正統計の問題における大きな成果は、メディアが多少は実質賃金に注目するようになったということです。そういった意味では、野党が政府を追及しているポイントがずれているとはいっても、結果的には好ましい形になったのではないかと思っております。 政府には「国民の暮らし向きは良くなっていない」という現実をしっかりと直視してもらったうえで、国民の暮らしが良くなる経済政策や社会保障制度を構築することに期待したいところです』、実質賃金は国民の暮らしに直結する重要な指標だ。メディアももっと関心を払えば、アベノミクスに対する評価は厳しくなる筈だろう。

次に、ジャーナリストの池田 信夫氏が2月11日付けアゴラに寄稿した「民主党政権は「悪夢」だったのか」を紹介しよう。
http://agora-web.jp/archives/2037196.html
・『安倍首相が自民党大会で「悪夢のような民主党政権」と評したのに対して、立憲民主党の枝野代表が「自殺者数が減るなど、よくなった部分もある」と反論したことが話題になっている。公平にみて民主党政権が悪夢だったことは事実だが、安倍政権はそれほどいい政権なのだろうか。 次の図は日経平均株価に完全失業率(右軸)を逆に重ねたものだが、失業率が最悪(5.5%)だったのは麻生政権の末期で、2009年8月の民主党政権から下がり始めた。自殺率も失業率と相関が強いので、同じころ減り始めた。その後も単調に雇用は改善した。 これを2000年代前半からみると、不良債権処理で多くの企業が破綻した2003年が、雇用も株価も最悪だった。そのボトムから景気が回復する途上でリーマンショックにぶつかったが、2009年後半から元のペースを回復した。これは民主党政権の経済政策がすぐれていたからではなく、麻生政権がばらまいた90兆円以上の補正予算がきいたものと思われる。 印象的なのは2010年代に政権が代わっても、失業率がほぼ同じペースで改善したことだ。これは非正社員の増加で就業者数が増えた(総労働時間は減った)ためで、安倍政権で加速も減速もしていない。リフレ派は「金融政策で失業率が下がった」というが、それが下がり始めたのは白川総裁の時代である』、経済政策の評価は、確かに難しいものだ。
・『それに対して株価は、民主党政権では上がらなかった。図の灰色の部分が民主党政権の時期だが、この時期だけ失業率と株価の相関が破れ、雇用は改善しているのに日経平均は8000円台を低迷した。それが急上昇したのは、2012年9月に安倍総裁が誕生し、自民党政権に戻ることが確実になったときだ。 株式市場にとっては、民主党政権は悪夢だった。2011年の東日本大震災と福島第一原発事故への対応も支離滅裂だったが、子ども手当などのバラマキ福祉で大企業から労働者に再分配しようというアンチビジネスの姿勢が、市場にきらわれたのだ。 この点で自民党の政権復帰が悪夢をさます効果は大きかった。株価がもっとも大幅に上がったのは、安倍首相の就任直前である。つまりアベノミクスの効果の大部分は、プロビジネスの自民党が政権に戻るという心理的な「偽薬効果」だったのだ。日銀の量的緩和も初期にはほとんどきかなかったが、2014年には円安で株価が上がり、翌年にはドル安で下がった。 2010年代に日本経済は、世界金融危機から着実に回復してきた。政権交代やマクロ経済政策は、よくも悪くも雇用にはほとんど影響していない。景気は世界的に回復したので、この時期に政権をとった安倍首相はラッキーだった。民主党政権が2012年末の総選挙で政権を維持していたら、日本経済の救世主といわれたかもしれない』、「アベノミクスの効果の大部分は、プロビジネスの自民党が政権に戻るという心理的な「偽薬効果」だった」というのは、公正な評価だろう。民主党も、野田元首相の解散などという暴挙さえなければ、評価は180度違っていたのかも知れない。

第三に、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏が2月14日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「総雇用者所得が増えた」のは女性や非正規の就労数が増えたから。賃金は低下した」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/193897
・『毎月勤労統計の不正調査発覚を機に、国会で、実質賃金を巡る議論が続いている。 野党は、「実質賃金の伸びはマイナスだから、アベノミクスは失敗した」としている。 それに対して、安倍晋三首相は、「総雇用者所得が増えているから、アベノミクスは効果を上げている」と主張している。 総雇用者所得が2018年に急に増えたのは事実だ。しかし、それは女性の非正規就業者数が増えたからだ。それによって平均賃金が押し下げられた。 だから、総雇用者所得の増加は、望ましい結果をもたらさなかったことになる。 なおこれは、配偶者特別控除が拡大されたことの影響と考えられる。したがって、1回限りの効果だ』、国会論戦を詳しくみている訳ではないが、安倍の手前勝手な言い分に対して、野党は何故、正面切った反論をしないのだろう。不勉強のためとは思いたくないが・・・。
・『総雇用者所得は2018年に確かに増えた  安倍首相が言っている「総雇用者所得」とは、「毎月勤労統計調査」の1人当たり名目賃金(現金給与総額)に、総務省「労働力調査」の非農林業雇用者数を乗じたものだ・・・この指標は、政府が毎月の景気情勢を分析している月例経済報告で用いられている。 この推移を示すと、図表1、図表2に示すとおりだ。 図表1総雇用者所得の推移(名目) 図表2総雇用者所得の推移(実質) 図のように総雇用者所得が、2018年に急に増えたのは、事実だ。名目で増えただけでなく、実質でも増えた。 だだし、言うまでもないことだが、賃金と、それに雇用者数を乗じた総雇用者所得とは別の指標だ。 野党は「実質賃金の下落が問題だ」と言っているのだから、それに対して「雇用者総所得を見れば増えている」と言っても、答えたことにはならない。議論はすれ違っている。 これは、「プラトンはさておき、ソクラテスは」と言われる論法である(試験で「プラトンについて述べよ」という問題が出たが、ソクラテスのことしか勉強しなかった学生がこう言ってソクラテスについて述べたという話)。 問題は、18年に起きた現象をどのように解釈するかだ。 以下で見るように、問題の本質は、女性や高齢者が増えているために賃金が下がることなのである。 これは、後で見るように困窮度の高まりと解釈できる。したがって、望ましいことではない。事実、18年の実質消費はほとんど増えていない』、首相が質問をそらして答えているのであれば、野党は直ちに反論すべきだろう。
・『増えたのは女性と高齢者であり非正規雇用だ  総雇用者所得が増加している主たる原因は、就業者数が増加していることである。 この状況を労働力調査で見ると、以下のとおりだ。 まず、図表3に示すとおり、就業者数の対前年伸び率が2018年に急に上昇した。 また図表4に示すとおり、65歳以上はもともと伸び率が高かった。 18年に大きな変化が見られたのは、図表5に示す女性だ。それまで対前年比1.5~2%の増加だったのが、2%を超える高い伸びになった。 これが、18年に雇用者総所得の伸び率が急に高まった原因である。 就業者数の伸び率が高まったことで、賃金にどのような影響を与えるかを見るために、正規・非正規の区別で見てみよう。 図表6に示されているように、就業者数が増えたのは、非正規である。 正規と非正規で15年以降、伸び率に傾向的な差は見られなかったが、18年には、非正規の就業率が顕著に上回った。 このように、18年は、他の年に比べて、女性の就業者と非正規就業者が急に増えたのである(これらは重さなっている。つまり、女性の非正規就業者が増えたのだ)。 ところが、この賃金は、平均より低い。したがって、平均賃金が下落したのである』、国会論戦もこのように統計の中身に踏み込んだ深いものになってほしいものだ。
・『女性の就業が急に増えたのは配偶者特別控除の拡充のため  女性の就業者が2018年に急に増えたのはなぜだろうか? これは、配偶者特別控除の改正によると考えられる。 所得税において、配偶者の収入が103万円以下の場合は「配偶者控除」が適用され、103万~150万円の場合は「配偶者特別控除」が適用される。 「配偶者特別控除」は、配偶者控除が受けられる人と受けられない人の差が、103万円を境に急に生じてしてしまうことを補正するための控除だ。 「配偶者控除」は控除額が38万円だが、「配偶者特別控除」は、配偶者の収入が上がるほど控除額が減っていき、上限額を超えると控除額が0円になる(控除を受ける納税者の年収900万円以下の場合)。 18年分からは、控除を受けられる上限が年収201万円までに引き上げられ、「103万~150万円」の範囲の「配偶者特別控除」の金額が、配偶者控除と同じ「38万円」になることとされた。 これまで「103万円の壁」と言われていたものが、「150万円の壁」になったのである。 この措置は、女性の雇用を促進したと考えられる。 ただし、38万円の特別控除が受けられるのは、年収が150万円までだし、年収201万円超は特別控除がゼロになるので、この措置が促進したのは、パートなどの非正規雇用だったと考えられる。 これが、上で見たように、女性就業率の上昇をもたらしたのだ。 そして、これは賃金の低い非正規雇用を増加させたために、平均賃金を押し下げたのである。 これが重要なことである。 なお、女性就業者伸び率の高まりは、今後、施策がさらに拡充されなければ、18年1回限りの現象であることに注意が必要である』、野党も「配偶者特別控除の改正」の影響を事前に勉強しておけば、何が起きるかは把握でき、国会論戦も深まっただろう。
・『実質消費が増えないことこそがアベノミクスの問題  賃金が上昇しなくとも、賃金所得の総額は増えたのだから、消費の総額は増えてしかるべきだ。ところが、GDP統計を見ると、そうはなっていない。 実質家計消費支出の対前年同期比を2018年について見ると、1~3月期で0.33%の増、4~6月期で0.0001%の減、7~9月期で0.6%の増と、ほとんど前年と変わっていない。 実質家計消費の推移を中期的に見ると、図表7のとおりであり、14年4月の消費税増税の前に駆け込み需要で増え、増税後にその反動で減ったという変化があっただけで、ほとんど変わらない。 それどころか、18年7~9月期を13年の7~9月期と比べると、0.43%の減少となっている。 問題は、このように実質消費がほとんど増えていない(あるいは減少している)ということなのだ』、なるほど。
・『なぜこうなるのか?  「この数年は賃金が上昇しないから、配偶者特別控除の引き上げに対応して、女性が働きに出た。しかし、やはり十分な所得が得られないので、消費を増やさず、貯蓄を増やした」ということが考えられる。 あるいは、将来に対する不安が増大しているのだろうか?  いずれにせよ、家計の状況は好転していないのだ。だから、消費が増加しないのである。 そして、このことこそが、日本経済の最大の問題であり、アベノミクスが効果をもたらしていないことの何よりの証拠だ。 この点をこそ、問題にすべきである。 なお、これまで書いてきた問題をより正確に検証するには、可処分所得の分析が必要だ。しかし、これについては、16年の値までしか公表されていない。 このような重要な指標の発表にかくも長い時間がかかるのは問題である。 さらに、GDP統計の所得面の正しいデータには、毎月勤労統計の正しいデータが不可欠である』、「統計不正」はGDP統計をも歪める重大な問題だ。これに、首相秘書官が関与していたとなると、いよいよ官邸主導の「アベノミクス偽装」の本丸が揺らぎだしたようだ。 
タグ:株価 野口悠紀雄 安倍首相 ダイヤモンド・オンライン 池田 信夫 中原 圭介 アゴラ 現代ビジネス アベノミクス (その31)(衝撃! 日本人の賃金が「大不況期並み」に下がっていた アベノミクスとはなんだったのか…、民主党政権は「悪夢」だったのか、「総雇用者所得が増えた」のは女性や非正規の就労数が増えたから。賃金は低下した) 「衝撃! 日本人の賃金が「大不況期並み」に下がっていた アベノミクスとはなんだったのか…」 毎月勤労統計の不正 「アベノミクス偽装」 問題の本質はそんなところにあるのではない。独自試算をしてみると、日本人の賃金がすでに「大不況期並み」になっている 野党の言う「アベノミクス偽装」は本当か? 2013年~15年に「リーマン級」にまで暴落していた 2013~2015年の実質賃金の下落幅は累計して4.3ポイントにまでなっていて(※厚労省の当時の統計では4.6ポイント減/2015年=100で計算)、その下落幅というのは2007~2009年のリーマン・ショック前後の5.2ポイントに迫っていた 景気は国民の実感のほうが正しい 日本人の消費の動向は実質賃金の増減に大きく左右されている 国民の8割はアベノミクスの蚊帳の外にいる 富裕層と大企業に勤める人々の割合が大まかにいって2割くらいになる 不正統計があぶり出した「実質賃金の真実」 「民主党政権は「悪夢」だったのか」 「悪夢のような民主党政権」 失業率が最悪(5.5%)だったのは麻生政権の末期で、2009年8月の民主党政権から下がり始めた 民主党政権の経済政策がすぐれていたからではなく、麻生政権がばらまいた90兆円以上の補正予算がきいたものと思われる 民主党政権の時期だが、この時期だけ失業率と株価の相関が破れ、雇用は改善しているのに日経平均は8000円台を低迷した。それが急上昇したのは、2012年9月に安倍総裁が誕生し、自民党政権に戻ることが確実になったときだ 株価がもっとも大幅に上がったのは、安倍首相の就任直前である。つまりアベノミクスの効果の大部分は、プロビジネスの自民党が政権に戻るという心理的な「偽薬効果」だったのだ 「「総雇用者所得が増えた」のは女性や非正規の就労数が増えたから。賃金は低下した」 安倍晋三首相は、「総雇用者所得が増えているから、アベノミクスは効果を上げている」と主張 野党は「実質賃金の下落が問題だ」と言っているのだから、それに対して「雇用者総所得を見れば増えている」と言っても、答えたことにはならない 問題の本質は、女性や高齢者が増えているために賃金が下がること 増えたのは女性と高齢者であり非正規雇用だ 女性の就業が急に増えたのは配偶者特別控除の拡充のため 18年1回限りの現象 実質消費が増えないことこそがアベノミクスの問題
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決済システム(その3)(キャッシュレス比率 実は6割超 “通説”に反するデータとは、PayPay狂騒曲 ひそかに笑った「あの銀行」、還元バブルで「モバイル決済」は過当競争に 「将来は半減となりかねない」これだけの理由) [金融]

決済システムについては、昨年10月2日に取上げた。今日は、(その3)(キャッシュレス比率 実は6割超 “通説”に反するデータとは、PayPay狂騒曲 ひそかに笑った「あの銀行」、還元バブルで「モバイル決済」は過当競争に 「将来は半減となりかねない」これだけの理由)である。

先ずは、1月27日付けHatena Blogが日経ビジネスオンライン「キャッシュレス比率、実は6割超 “通説”に反するデータとは」の有料記事をもとに掲載した「[日経ビジネス]キャッシュレス比率5割超!?…統計って難しいね」の一部を紹介しよう。
https://abcdefgh.hateblo.jp/entry/2019/01/27/234021
・『キャッシュレス比率、実は5割超 “通説”に反するデータとは  本日は日経ビジネスのこの記事に関する話です。一般的に日本は現金文化であり、キャッシュレスの進みは遅いと言われています。 日本では決済額に占める比率は約2割にとどまるとされ、韓国(89%)や米国(45%)に後れを取ると指摘されてきた。…(中略)… ところが、前提となる2割という数字に異を唱えるような調査に改めて注目が集まっている。金融庁が2018年秋に公表していた独自調査だ。それによると、日本のキャッシュレス比率は既に5割超あるという。 経済産業省が算出した「約2割」と金融庁が算出した「5割超」、何故こんなにも大きな乖離があるのか? それは調査手法の違いが原因のようです。 すごーく、ざっくり言うと、 (A)クレジットカード/デビットカード(14.9%) (B)公共料金や家賃・ローンの口座振替(17.1%) (C)ネットバンキングなどによる他口座への振り込み(22.3%) のうち、 ■経済産業省:(A)のみ ■金融庁:(A)+(B)+(C) ということのようです』、統計不正が問題になっているが、これは統計の利用目的の違いで不正ではない。経産省は、消費税増税対策にかこつけてキャッシュレス決済を推進したいために、日本が「遅れている」との印象を与える数字を使ったのだろう。
・『統計って難しいですね  うーん、言いたいことが多いので順番に…。
①他口座への振り込みをキャッシュレスに入れるべき?(まぁ確かに現金で振り込んでいない以上、キャッシュレスなのかもしれませんが、だからと言ってキャッシュレスに入れるべきなのか?? 振り込み先の口座で現金を引き出しているケースも結構あると思うんですけどね…』、これは誤り。振り込み先の口座での決済は別途カウントされるので、切り離して考えるべき。
・『②公共料金や家賃、ローンの口座振替もキャッシュレスに入れるべき?(まぁ確かに現金で振り込んでいない以上、キャッシュレスなのかもしれませんが、だからと言ってキャッシュレスに入れるべきなのか?? 言いたいことは①と全く同じです(笑) この統計結果を使って「何を語るのか」にも依るとは思いますが、違和感はぬぐえないです』、これも同様に。誤った見方で、私には金融庁の見解の方が正しいように思える。
・『③そもそも金額ベースでキャッシュレス比率を算出する?(①②の根底にある疑問として、そもそもキャッシュレス比率って「金額ベース」で算出するべきものなのでしょうか? 上記で記載している通り、このキャッシュレス比率の算出目的に依るのでしょうが、仮に「キャッシュレスの浸透率」を出したいのであれば、金額ではなく、支払回数(頻度)で算出するべきだと思います。 例えば、コンビニで100人の買い物客がいて、50人が電子マネーで合計9万円分の買い物を、残りの50人が現金で合計1万円分の買い物をした場合、キャッシュレス比率は何が適切でしょうか? きっと金額ベースで90%と出すよりも、支払回数ベースで50%と出すほうが実態に近い気がします(特に「(B)公共料金や家賃・ローンの口座振替」をキャッシュレスに含む場合は)』、利用目的によるが、支払回数ベースでは国際比較は難しいのではないか。
・『④同じ「定義」で比較しているのか?(まぁ、いずれにしても同じ「定義」で比較しているのであれば、意味のある数字だと思います。言い換えると、「(A)のみ」ではなく、「(A)+(B)+(C)」で算出するのであれば、日本だけでなく、他国も同じ定義で計算しないと何とも言えないなぁと』、金融庁のデータを見た訳ではないが、恐らく比較に耐える同じ定義で計算していると思われる。
・『統計以外で言いたいこと:口座振替は日本特有!(ちなみに「口座振替」って日本特有みたいですね。 18年春に全国銀行協会の平野信行会長(当時、三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は、「日本はキャッシュレス化が著しく遅れているといわれるが、銀行システムの面では進んでいる」と反論している。 銀行側の言い分はこうだ。米国をはじめ他の主要国では口座振替機能が充実しておらず、公共料金や家賃の支払いもクレジットカードや小切手を使うことが多い。日本の銀行が利便性向上を怠ってきたわけではない……。 外国って口座振替の機能ってないんですね…。 少し調べてみたところ、Wikipediaにこんな記載がありました。 一方、小切手の利用が浸透している欧米では、文化的に銀行の自らの口座から勝手に引き落とされることに抵抗があるとされ、公共料金等の支払いは自宅に郵送される請求書の金額を確認したうえで個人小切手を郵送して支払うことが多い 口座自動振替 - Wikipedia うーん、クレジットカードも似たようなものだと思いますが、そうなんですね。 絶対便利だと思うのですが…。 日本はガラパコスと言われることが多いですが、実際には「進んでいる」という意味でのガラパコスが多いと思うんですよね。 上手く海外にサービス展開して、日本のサービス/機能をデファクトスタンダードにして欲しいですね』、英国では口座自動振替が徐々に広がっているらしいが、中心は小切手。仮に「口座振替は日本特有」だとしても、これを含めて国際比較するのは当然である。決済は、各国それぞれの事情があるので、「日本のサービス/機能をデファクトスタンダードにして欲しい」というのは、気持としては分かるが、無理だろう。それにしても、経産省の統計の使い方は、余りに我田引水だが、官邸を巻き込んでいるだけに、多くのマスコミは疑問をはさまずに報道している。消費増税対策については、改めて後日、取上げるつもりである。

次に、1月22日付け日経ビジネスオンライン「PayPay狂騒曲、ひそかに笑った「あの銀行」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/012200021/
・『ソフトバンクとヤフーが運営するスマートフォンの決済サービス「PayPay」が総額100億円の還元キャンペーンを打ち出したのは2018年12月初め。決済に対応したビックカメラには長蛇の列ができ、還元の原資はわずか10日間ほどでなくなった。この狂騒曲の裏側には、陰の勝者が存在する。 正体はヤフーが出資する金融機関、ジャパンネット銀行(東京・新宿)。法人の新規口座開設数を18年12月前半で17年の同じ期に比べて実に2.5倍に増やした。その多くは、PayPay決済を店頭で導入した加盟店の店主たちというのがミソだ。 なぜか。クレジットカードをはじめキャッシュレス決済の場合、当然ながら「消費者が店頭で買い物をするタイミング」と「店側が決済サービスの提供会社から売上金を受け取るタイミング」に時間差が生じる。クレジットカードだと一般的に月2回に分けて入金される。QRコード(2次元バーコード)決済の有力サービスである「LINE Pay」でも、その月の売り上げは翌月末に戻ってくるといった具合だ。 こうした仕組みを熟知していたジャパンネット銀行が対応に動いた。PayPay決済に「最短で翌日入金」という方式を取り入れたのだ。もちろんその場で受け取れる現金ほど早くはないが、店側にとっては従来型に比べれば資金繰りは大幅に楽になる。そもそも零細商店のなかには、入金の時間差を嫌がって現金決済にこだわってきた所も多かった。こうした現状や気持ちを冷静に分析し、速やかに処方箋を出したことが勝因と言える。 2000年開業のジャパンネット銀は、日本のインターネット専業銀行の先駆けである。だが預金残高で見れば後発の住信SBIネット銀行やソニー銀行などに追い越されて久しく、独自の成長プランを描けるかどうかが問われている。今回の需要掘り起こしに限らず、新たな顧客層へのアプローチを続けられるかが問われそうだ』、ジャパンネット銀行の対応は、見事だが、「法人の新規口座開設数を18年12月前半で17年の同じ期に比べて実に2.5倍に増やした」のは、「総額100億円の還元キャンペーン」の効果もあったのではなかろうか。

第三に、金融アナリストでマネックス証券 執行役員の大槻 奈那氏が2月1日付け東洋経済オンラインに寄稿した「還元バブルで「モバイル決済」は過当競争に 「将来は半減となりかねない」これだけの理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/263411
・『東京のコンビニのレジにはいまや40種類ものキャッシュレス決済手段が並ぶ。さらに、1月22日、メルカリが子会社「メルペイ」に売上金を移管すると発表し、キャッシュレス決済の布石ではないか、と話題になっている。これ以外にも、今年中に5種類以上がスタートする予定だ。とりわけ利用者が増加しているのがモバイル決済。市場調査のICT総研は、2021年度末には2018年度末の2倍以上の1953万人がモバイル決済を利用するようになると予想している。 モバイル決済の伸びは足元でさらに加速している模様だ。火をつけたのが、昨年12月のソフトバンクとヤフーのペイペイによる「100億円あげちゃうキャンペーン」だった。仮に1口座当たりの利用額が1~2万円とすると、この間に200〜400万のアカウントが開設された計算である。新生銀行や住信SBIなどのリテール口座数が300万程度。ペイペイはわずか10日でこれらに匹敵する顧客を集めたことになる。 モバイル決済自体は特に新しいわけではない。すでに2016年にOrigami PayがQRコードによるモバイル決済をスタートしている。一部の店舗で2%の直接割引がその場で受けられることなどが売りだった。 しかし当初のモバイル決済の普及は緩やかだった。日本では現金の信頼性や利便性が高すぎる。それを犠牲にしキャッシュレス決済に向かわせるには、限られた場所で受けられる2%の特典では不十分だったようだ。ところが、同じく利用場所が限られたペイペイは、20%という桁違いの還元キャンペーンで一気に顧客を引き寄せた』、「100億円」、「20%という桁違いの還元」キャンペーンは確かにインパクトが大きかったのだろう。
・『ここまできた還元合戦  ペイペイを運営するソフトバンクは、2000年代初頭のモデム無料配布でトップシェアに躍り出た成功体験を持つ。しかし、今回はペイペイの独走は許されなかった。ペイペイがシステムトラブルでミソをつけてしまったのち、LINEPayも12月後半に20%還元キャンペーンに追随したからだ。 20%という大胆なキャンペーンが終わった今でも、たとえば、LINEpayは、今年7月まで3.5~5%という高い還元率に設定している。楽天Payなどは、それだけでは還元率は高くないが、高還元バーチャルカードのKyash(還元率2%)と組み合わせて使えば、3%以上の還元率もありうる。今年も新たに5種類以上のモバイル決済が開始される。利用者が大盤振る舞いに慣れてしまった今、新規参入組も、恐らく還元合戦に参画せざるを得ないだろう。 (リンク先には「戦国時代、乱立する日本のモバイル決済」の表) 決済サービスには「ネットワーク外部性」が働く。つまり、利用者数が多いほど、価値が高まる。個人決済はまさにネットワーク外部性が重要になる。 晴れてデファクトスタンダードとなれば、個人の詳細な行動データが獲得できる。小口決済データは個人の日々の生活をかなり詳細に映し出す。中国のアリペイは、個人の信用力スコアを金融商品から婚活サイトまでの幅広いサービスに活用している。先日、ウィーチャットペイを運営するテンセントも同様のスコアリングを開始すると報じられた。 日本でも、行動データが独占的に取得できれば、これまでの消費者金融とは別次元の精緻な信用力分析が可能になる。そうなれば、たとえば年率10%前後のローンを極めて低い貸倒率で実行できるかもしれない。 しかし、デファクト獲得の道は険しくなっている。従来のクレジットカードや電子マネーの場合、選択する際の尺度として、使える加盟店の数や保有することのステータスなどがあった。しかし、モバイル決済の場合、見せびらかしはできない。アプリを設定しても持ち運びの負担は増えないため、とりあえず多くの決済手段をアップしておいて、その時々で有利なものを選んで使えばいいため、加盟店の数もそこまでの差別化にはならない。 このため、決済アプリは、ポイントなどの特典が最大の焦点になりつつある』、決済アプリは、「とりあえず多くの決済手段をアップしておいて、その時々で有利なものを選んで使えばいい」というのでは、競争激化は必至で、体力勝負にならざるを得ないだろう。
・『参入せざるを得ない銀行  そんな中、メガバンクも動きだした。昨年11月、銀行連合が統一QRコードによるスマホ決済の開発を発表した。それとは別に、みずほフィナンシャルグループは地銀に対し、自社開発の電子マネー・Jコインへの参加を呼びかけている。 現在メガ各行は、内国為替、つまり、ATMや送金手数料等で、年間千億円以上の収益を上げている。決済アプリを手がければ、こうした自行の既存サービスとカニバリゼーション(注)を起こしかねない(注:共食い)。それでも他社に取られて行くよりはマシだ。さらに、一部の報道にあったように、将来的には電子マネーでの給与の支払いまで認められるかもしれない。これが実現すれば、日本の小口決済は、世界にも例をみない"銀行はずし"のシステムとなる。ここで出遅れるわけにはいかない。 しかし問題は、後発組の銀行連合の決済システムを使ってもらえるかどうかである。自分の給与口座から直接資金を移動できるので便利にみえるし、加盟店手数料を安価に設定するとも伝えられているが、それだけでは個人を引きつけるお得感はない。 このような決済サービスの乱立は続くのだろうか。問題は、決済アプリの極めて低いスイッチングコストだ。カード情報や銀行口座番号をアプリに入力するだけで済むため、お得なサービスが出れば、すぐに乗り換えられてしまう。だとすると、最初のキャンペーンだけではなく、つねに他社を上回るお得感を感じさせ続ける必要がある。この消耗戦に生き残れる運営会社はどれだけあるだろうか。 生き残りの条件は、顧客にメリットを与え続けることに加え、利用場所に近いこともカギとなるだろう。Eコマースを運営するアリババがこのパターンだ。日本でいえば、楽天ペイなどが一例だ。 あるいは、実質的なスイッチング・コストを引き上げることも一案だ。たとえば、ロイヤリティ・プログラムやポイントの運用などで、長く使うとメリットが増えるようにする。利用によってレベルが上がるLINE Payの「マイカラー」がやや近いが、これは利用額に応じたもので、必ずしも長期利用を促すものではない』、「実質的なスイッチング・コストを引き上げる」というのは確かによさそうなアイデアだ。
・『淘汰の波が訪れたらどうなるのか  淘汰の波が訪れた場合、最も気になるのが情報セキュリティ面だ。それまでに蓄積されたデータが狙われた時に、収益が上がらぬ中でコストをかけて守り切れるかどうかが懸念される。また、個人利用者、特に高齢者の場合、今のガラケー同様に、いったん使えるようになったサービスがなくなったら、新しいサービスについていけず、決済という重要な生活手段を失いかねない。 安易な集客は、最終的に顧客をリスクにさらしかねない。決済という重要な社会インフラに混乱をきたすことがないよう長期目線の戦略で臨んでほしい』、さすが金融アナリストだけあって、説得力がある。その通りだろう。
タグ:ジャパンネット銀行 経産省 東洋経済オンライン 決済システム 日経ビジネスオンライン アリペイ 大槻 奈那 楽天Pay (その3)(キャッシュレス比率 実は6割超 “通説”に反するデータとは、PayPay狂騒曲 ひそかに笑った「あの銀行」、還元バブルで「モバイル決済」は過当競争に 「将来は半減となりかねない」これだけの理由) Hatena Blog 「[日経ビジネス]キャッシュレス比率5割超!?…統計って難しいね」 キャッシュレス比率、実は5割超 “通説”に反するデータとは 日本では決済額に占める比率は約2割にとどまるとされ、韓国(89%)や米国(45%)に後れを取ると指摘 金融庁が2018年秋に公表していた独自調査 日本のキャッシュレス比率は既に5割超ある 消費税増税対策にかこつけてキャッシュレス決済を推進 他口座への振り込み 公共料金や家賃、ローンの口座振替もキャッシュレスに入れるべき? そもそも金額ベースでキャッシュレス比率を算出する? 同じ「定義」で比較しているのか? 統計以外で言いたいこと:口座振替は日本特有! 「PayPay狂騒曲、ひそかに笑った「あの銀行」」 総額100億円の還元キャンペーン 陰の勝者 法人の新規口座開設数を18年12月前半で17年の同じ期に比べて実に2.5倍に増やした 「最短で翌日入金」という方式を取り入れた 「還元バブルで「モバイル決済」は過当競争に 「将来は半減となりかねない」これだけの理由」 コンビニのレジにはいまや40種類ものキャッシュレス決済手段が並ぶ ICT総研 2021年度末には2018年度末の2倍以上の1953万人がモバイル決済を利用するようになると予想 利用者が増加しているのがモバイル決済 Origami PayがQRコードによるモバイル決済をスタート 当初のモバイル決済の普及は緩やか ペイペイは、20%という桁違いの還元キャンペーンで一気に顧客を引き寄せた ここまできた還元合戦 LINEPayも12月後半に20%還元キャンペーン 20%という大胆なキャンペーンが終わった今でも、たとえば、LINEpayは、今年7月まで3.5~5%という高い還元率に設定 高還元バーチャルカードのKyash(還元率2%)と組み合わせて使えば、3%以上の還元率もありうる ネットワーク外部性 利用者数が多いほど、価値が高まる 小口決済データは個人の日々の生活をかなり詳細に映し出す 個人の信用力スコアを金融商品から婚活サイトまでの幅広いサービスに活用 デファクト獲得の道は険しくなっている アプリを設定しても持ち運びの負担は増えないため、とりあえず多くの決済手段をアップしておいて、その時々で有利なものを選んで使えばいいため、加盟店の数もそこまでの差別化にはならない 参入せざるを得ない銀行 自行の既存サービスとカニバリゼーション(注)を起こしかねない 問題は、決済アプリの極めて低いスイッチングコストだ 実質的なスイッチング・コストを引き上げることも一案 淘汰の波が訪れたらどうなるのか 最も気になるのが情報セキュリティ面だ 収益が上がらぬ中でコストをかけて守り切れるかどうかが懸念 個人利用者、特に高齢者の場合、今のガラケー同様に、いったん使えるようになったサービスがなくなったら、新しいサービスについていけず、決済という重要な生活手段を失いかねない 決済という重要な社会インフラに混乱をきたすことがないよう長期目線の戦略で臨んでほしい
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バイトテロ・ネット悪ふざけ(その1)(くら寿司「悪ふざけバイト」の告訴に広がる波紋 批判あるが「不適切動画問題」へ一石となるか、「バイトテロ」と「低賃金」の密接な関係 犯人処罰だけでは泥沼に) [社会]

今日は、バイトテロ・ネット悪ふざけ(その1)(くら寿司「悪ふざけバイト」の告訴に広がる波紋 批判あるが「不適切動画問題」へ一石となるか、「バイトテロ」と「低賃金」の密接な関係 犯人処罰だけでは泥沼に)を取上げよう。

先ずは、ITジャーナリストの本田 雅一氏が2月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「くら寿司「悪ふざけバイト」の告訴に広がる波紋 批判あるが「不適切動画問題」へ一石となるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/265397
・『SNSを通じた、いわゆる“不適切動画”の発信が止まらず、謝罪する企業が後を絶たない。2月9日にはセブン-イレブン横浜高島台店で、商品であるおでんの“しらたき”を口に含んでから戻すシーンが動画投稿され、ただちにセブン-イレブン・ジャパンは謝罪メッセージを出した。 しかし、翌日、今度はバーミヤンの厨房で調理中に中華鍋から上がる炎でタバコに火を付けて喫煙する動画がSNSで問題視され、こちらも謝罪メッセージがバーミヤンを展開するすかいらーくホールディングスから出された(ただし動画そのものは2018年3月撮影のもの)。 こうした不適切動画はほかにもファミリーマート、ビッグエコーなどにも広がり、それぞれ企業側が謝罪メッセージを出すに至った。不適切動画による謝罪が続いている理由は、社会的に大きな話題になっているうえ、埋もれていた過去の不適切動画投稿が発見されるなど、一種のブームになっているいう側面もある。 例えば、すき屋港北箕輪町店でアルバイト店員が“おたま”など顧客サービスに使う道具を不適切に扱った動画が投稿されたのは今年1月のことだが、一連の流れの中で過去の投稿が再発掘されている。 “バイトテロ”とも言われるこうした行為に対して、何らかの対策を施すことができるのだろうか?』、模倣犯とはいえ、よくぞこれだけ次々と出るものだと驚かされる。
・『最初の事例は2007年の吉野家「テラ豚丼」  今年になってから急増しているように感じられる、飲食店などでの不適切動画投稿だが、決して“つい最近”始まったものではない。筆者自身、何度も似た事例について記事を書いてきただけでなく、まだSNSの企業利用が現在ほど進んでいなかった頃は、社内のSNS利用ルール作りなどの相談に乗ったことも何度かあった。 動画投稿という点で言えば、2007年12月に投稿された吉野家の“テラ豚丼”事件が最初の事例だろう。深夜にアルバイト店員が、メニューにはない“テラ盛り”を作ってみせる動画を撮影。食材の不衛生な扱いなども問題となり、問題動画の舞台となったフランチャイズ店は契約が解除されて閉店に追い込まれた。 動画ではないものの、2013年にはローソンのアイスクリーム用冷凍庫内で寝そべった写真がツイッターに投稿されて問題となり、直後にブロンコビリーでキッチンの大型冷凍庫に入っている写真もツイッターに投稿された。衛生上の問題とイメージ対策から該当店舗が閉鎖された。 最悪だったのは2013年、個人経営のそば屋「泰尚(たいしょう)」の倒産事件だろう。食器や食洗機などを不衛生に扱った写真の投稿を発端に休業に追い込まれた同店は倒産。さらに2015年になると、「すき家」のアルバイト店員が店内でわいせつ画像を撮影して投稿するなど、いわゆる第1次バイトテロとも言える時期が続いた。 こうした問題が目立つようになった背景には、スマートフォンとSNSの普及により、写真や動画を簡単に誰もが撮影可能となったうえ、発信もしやすくなったことが挙げられるだろう。過激動画や写真を発信することによって、非日常的な注目を集め、虚栄心を満たす“悪ふざけ”の増加は、必ずしも日本だけの現象ではない。 後を絶たない不適切動画投稿……バイトテロ問題の本質は、事件を起こす本人に対するリスクが小さすぎることだ。そうした意味では「くら寿司」が、バイトテロ事件を起こした元従業員2人を刑事・民事で告訴したことが流れを変えるきっかけとなるかもしれない』、こうしてみると、10年以上前から、事件は繰り返し発生しているようだ。個人経営のそば屋であれば、倒産に追い込まれたのも悲惨だが、あり得る話だ。
・『小さすぎる“悪ふざけ”の代償  事件のほとんどは学生アルバイト、あるいは20代前半までの非正規雇用者であり、社会的責任の欠如などを指摘する声もある。中でも高校生アルバイトの場合、経済的には保護者に依存しているため、雇用契約の解除がバイトテロの抑止力になりにくい。 2007年の「テラ豚丼」で最も大きな被害を被ったのは、フランチャイズ契約を取り消されたアルバイトの雇用者だった。ブロンコビリーの場合も、投資回収がまだ進んでいない店舗を閉鎖せざるをえなくなった出店企業側が損を被る形だ。バイトテロにおける事例では、店舗の閉鎖や該当従業員の解雇といった解決策が取られるものの、行為を行った個人に対する責任追及は甘い。 そば屋「泰尚」の例では写真投稿に関わったアルバイト4人が民事賠償起訴された。原告側は倒産時にあった3300万円の負債のうち、休業後の事業機会損失や従業員への給与支払い分など1385万円を請求、その後、和解したが和解金は4人分合計でも200万円にすぎなかった。 以前よりも虚栄心を満たす愉快犯が生まれやすい環境が生まれている中、悪ふざけの代償が小さすぎるのだ。 2月5日、回転寿司チェーン店のくら寿司の守口店のアルバイト店員がゴミ箱に廃棄された魚の切り身を、ゴミ箱から拾ってまな板に載せなおした動画が投稿された。調査の結果、実際に廃棄された切り身が顧客に提供された事実はなかったようだが、衛生面で特に配慮が必要な生魚を扱う店舗としては致命的とも言えるイメージダウンだ。 8日にくら寿司を運営する「くらコーポーレーション」は動画投稿に関わったアルバイト店員2人に対して法的措置を取る準備を始めたとのニュースリリースを発表した。 くらコーポレーションは法的措置を検討するに至った理由について「上場企業としての責任を果たす」「約3万3000人の従業員の信頼回復」といった理由に加え、「多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影した SNS の投稿に対し、 当社が一石を投じ、全国で起こる同様の事件の再発防止につなげ、 抑止力とする為」としている。 こうした動きに対し11日、セブン-イレブン・ジャパンも前述した“しらたき”を不適切に扱ったアルバイト店員2人に対して法的措置をとる意向を示した。 もちろん、まだ高校生のアルバイトとはいえ、従業員に対する教育責任が雇用者にもあるのではないか、個人に対する罰としては重すぎるのではないかとの指摘もある。しかし、“社会通念上、許されない行為”の認識を雇用主だけに背負わせることは合理的ではない。 なぜならば、問題を引き起こしているアルバイト店員の大多数は両親などの庇護下にあるからだ。雇用関係の維持に対してこだわる必要がない彼らに、雇用者が徹底した倫理観を植え付けるのは無理な話だ。 くら寿司のケースでは、食品衛生法上の問題、あるいは営業面では威力業務妨害、不衛生に扱った器具が使えなくなったのであれば、器物破損などに問われる可能性がある。このことを教える責任は、家庭はもちろん学校などの教育機関にもある。 現在のスマートフォンの原型とも言える初代iPhoneが発売されたのは12年前、2007年のこと。SNSの普及も同時期だが、日本でのSNS利用やスマートフォン普及が加速したのは2011年の東日本大震災が1つのきっかけだった。震災の混乱が収まり始めた2013年ごろから、SNSを通じたバイトテロが急増したが、それからすでに5年以上が経過している。 “悪ふざけでは済まない”という共通認識を、家庭や教育機関も含めて強く持つべきだろう。社会全体で問題意識を共有するきっかけにしたいと、くらコーポレーションが考えているのであれば致し方ない面はあるだろう。 スマートフォンとインターネットは、もはや生活の一部である。“誰でもSNSで情報発信できることのリスク”について、もはや「知らなかった」「禁止すればいい」「どう対処していいかわからない」では済まない時代。バイトテロ対策について、その責任を雇用者に求めるだけでは解決できない』、「雇用関係の維持に対してこだわる必要がない彼らに、雇用者が徹底した倫理観を植え付けるのは無理な話だ」というのは、その通りかも知れないが、仕事をさせる前に、一般的な注意事項や、事件を起こせば法的責任が問われるリスクがあることを納得してもらう必要もあるだろう。
・『「雇用契約」の見直しが必要  一方で企業側も自衛手段は必要だ。教育だけでは解決できないかもしれないが、業務に関連した情報をSNSで発信することに関し、ガイドラインを作成して明文化。この中で、SNS発信がどのような社会的影響を与えるか、その影響範囲についても記述しておきたい。 「友人同士のやりとりのつもりでも、世界中の人から情報を見られていること」「友人以外でも情報共有する可能性があり、ものの数分もあれば撤回できない状況になる場合があること」「自分の情報発信によって大きな経済損失が生まれ、その責任が発信者に課せられる可能性があること」――。スマートフォンを子ども達が使うようになった社会的背景の中で、教育現場での対応は進んでいるが、学校における“SNS教育”と職場における禁止事項を具体的に関連付けるなど、リスクを想起しやすい内容を盛り込むことが望ましいが、その際に気をつけたいのは若年層とのSNSに対する認識、肌感覚の違いだ。 近年のバイトテロは、短時間で自動的に消えるインスタグラムの「ストーリーズ」という機能を発端にしたケースが増えている。2013年のバイトテロブーム時は、ツイッターの共有範囲に関する無知が引き起こした側面もあった。SNSの使い方の変化を大人たちも理解する必要がある』、さすがIT専門家らしい指摘で、その通りなのだろう。

次に、ノンフィクションライターの窪田順生氏が本日付けのダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「バイトテロ」と「低賃金」の密接な関係、犯人処罰だけでは泥沼に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/193902
・『バイトテロをした若者に法的措置をする企業の動きに注目が集まっている。確かに犯人が悪いのは言うまでもないが、この手の非正規従業員による不祥事の大半は、動機に「低賃金や劣悪な労働環境への不満」がある。今後、外国人労働者に低賃金労働をさせようと目論んでいる日本では、彼らによる「テロ」も覚悟しなければならず、その際には「国際人権問題」にまで発展するリスクをはらんでいる』、どうやら単なる馬鹿げた話というよりも、広がりを持った大きな話になってきたようだ。
・『「バイトテロ銘柄」は特定業種に偏っている  「バカ」を「見せしめ」として吊るし上げればメデタシ、メデタシで終わる類の話なのか――。 いわゆる「不適切動画」を投稿したバイト従業員に対して、一部の企業が再発防止と信用回復のために「法的措置」を取ると表明したことが、大きな波紋を呼んでいる。 労働問題の専門家が、この問題の背景にはバイト従業員の低賃金・低待遇があるとして、法的措置をとる前に待遇改善をすべきではないかと見解を示すと、法的措置を支持する方たちが、「バカをやった本人が悪いのに、環境のせいにするな」「そのうち安倍政権が悪いとか言い出すぞ、これだからサヨクは」と全否定するなど、バチバチのバトルに発展しているのだ。 個人的には、法的措置支持派の方たちのおっしゃることには非常に共感できる。個人の犯罪行為を「世の中が悪い」「政権が悪い」という方向に持っていくことは、問題をうやむやにすることにしかならない。 我が子を虐待死させる親は、不幸な生い立ちや育児ストレスが…などという言い訳ができないほど厳罰に処してほしいし、統計不正問題も、政権や大臣の責任問題うんぬんの前に、不正がスタートした時点まで遡って、官僚の不正・隠蔽体質を徹底的に追及すべきだとも思う。 ただ、今回のケースは、これらの話とはちょっと違う気がしている。 「バカは訴えられないとわからない」派の方たちは、「バイトテロ」と「賃金」は因果関係がないと叫んでいるが、残念ながら必ずしもそうとは言えないからだ。 従業員が勤務中にSNSで不適切な写真、動画を投稿するという問題が注目を集め始めた2013年から今日に至るまで、「バイトテロ」が世間を賑わせた企業をざっと羅列してみよう。 ピザハット、ピザーラ、ローソン、セブン-イレブン、ファミリーマート、ブロンコビリー、バーガーキング、すき家、ビックエコー、TSUTAYA、そして今回大きな注目を集めた、くら寿司。この中には複数回「テロ」の憂き目にあっている企業もあるが、大まかに分けると、「フード系チェーン」「コンビニ」「ビデオレンタル」「カラオケボックス」という業種が浮かび上がる』、言われてみれば、確かにこうした業種に集中しているようだ。
・『バイトテロの被害企業は明らかにバイト賃金が安い  これらの企業名を見てピンときた方も多いだろう。そう、学生からは「時給の安いバイト先」として知られている業種なのだ。 もちろん、「火のないところに煙は立たない」ではないが、これらの企業が「低賃金労働」だということは、客観的データが雄弁に物語っている。 リクルートジョブズの調査研究機関「ジョブズリサーチセンター」は、「TOWNWORK」「fromA navi」などに掲載された全国の求人情報を抽出し、募集時の平均時給を割り出している。その2018年12月度の全国の平均時給をみると、さまざまな業種で1000円以上となっている中で、「974円」とダントツに低いのがフード系である。 首都圏・東海・関西という三大都市圏を対象とした「職種別平均時給」という細かいデータを見ていくと、さらに興味深い事実が浮かび上がる。 あらゆる職種の中で、「909円」とダントツで低いのが「CD・ビデオレンタルスタッフ」となっており、「974円」で「コンビニスタッフ」、「986円」の「ファーストフード」、「990円」の「レジ」、そして「999円」の「洗い場・パテントリー」「調理・コック・板前(見習い含む)」と続くのである。ちなみに、この序列は「バカッター」騒動が注目を集めた2013年もほぼ変わっていない。 何をか言わんやであろう。他業界と比べて、平均時給が際立って低いこれらの職種は、ほぼ例外なく「バイトテロ」の舞台となっている。 調理する魚をゴミ箱に投げ捨てる。唐揚げを厨房の床に擦りつける。レジ横のおでんに悪戯をする。CDレンタルに訪れた客の個人情報を晒せると暴言を吐く――。これらの愚かな行為は、すべて低賃金労働の現場で発生しているのだ。 一部の有識者が指摘するように、この問題の原因が「日本の若者の情弱化」だというのなら、もっと広範囲の業種で「バイトテロ」が起きていなくてはならない。しかし、限られた業種で起きているのだから、この業種に特有の要因が、バイトテロ発生に影響を及ぼしていると考えるのが筋ではないのか。 ということを言うと、「そんなのはこじつけだ!時給が低くても真面目に働いているバイトだってたくさんいる。そういう方たちへの冒涜だ!謝罪しろ!」と極論に走りがちな人がいるが、筆者は何も、時給の低いバイトをしている方たちがすべて「バイトテロ予備軍」だ、などと主張したいわけではない。 「低賃金」が引き起こす待遇への不満が、従業員に「バカなことだけど、いいか、やっちまえ」と背中を押している――つまり負の「やる気スイッチ」のような役割になっていないか、ということを申し上げたいのである』、「負の「やる気スイッチ」のような役割に」というのは言い得て妙だ。
・『従業員不祥事の動機トップはダントツで「低賃金」  そんなバカなことがあるのかと思うかもしれないが、企業危機管理の世界では、これはSNS登場以前の、はるか昔からある従業員不祥事の王道パターンなのだ。 わかりやすいのが「バカッター」騒動後に発覚して、世間を騒がしたアクリフーズ(現・マルハニチロ)の冷凍食品に農薬が混入されていた事件だろう。 当初、同社は安全管理を徹底していると内部犯行を否定していたが、フタを開ければ、犯人は生産ラインに携わる契約社員で、動機は「低賃金」への不満だった。事件が発覚する2年前、給与体制が変わったことで年収が大きく減っており、年収200万で月給は約14万と報じられた。 もちろん、だからといって農薬を混入するなど許されるわけがない。同じ賃金でも文句を言わず、手も抜かずに真面目に働く方たちも、当時のアクリフーズにはたくさんいらっしゃったはずだ。この犯罪行為の責任はすべて、契約社員個人にあることは明白だ。 だが、その一方で、この契約社員もそれまでは「テロ」に踏み切らず、まともに働いていたということを考えると、「低賃金」が愚かな行為の背中を押した、という動かしがたい事実もあるのだ。 実は、こういう話は非常に多い。アクリフーズのように大ニュースにならないだけで、日本中で大なり小なり日常的に起きているのだ。筆者も報道対策アドバイザーとして、さまざまな企業で「従業員・バイト」にまつわるトラブルの対応にあたったが、動機は「給料・待遇の不満」が圧倒的に多いのだ。 この傾向は「バイトテロ」にも見られる。2015年にSNSに不適切動画を投稿した「すき家」の女性バイトは、愚かな行為だけではなく、こんなつぶやきもしている。 「あーあ、クソバイトだ」 皆さんも学生時代を思い返していただきたいが、バイトを「クソ」と思う理由は「賃金」だけではない。しかし、その不満というのは「時給アップ」でかなり緩和されるのも事実なのだ。 だが、こういう話をどんなに声高に主張したところで、世の中的には、「バイトテロ」と「賃金」の因果関係はなかなか受け入れられることはないだろう』、「低賃金」の職であれば、やる気もおきず、クビになっても他の職につけばいいだけで、クビになることが抑止力にはならない。やはり負の「やる気スイッチ」を押す最大の要因だろう。
・『外国人労働者に低賃金労働を押し付けることの愚かさ  似たような悲劇が繰り返されているにもかかわらず、「しつけ」の名目で我が子をボコボコにする親が後をたたないことからもわかるように、日本では「大人の命令を聞かないバカな若者は、痛い目に遭わせて分からせるしかない」という教育哲学が骨の髄まで染みついている。 不適切動画を投稿した若者を全力でたたき、クビにした元バイトを訴えて国民は拍手喝采――という大きな潮流はもはや止められないのではないか、と個人的には思っている。 そこで気になるのが、この流れの先に突き当たるであろう「危機」のことだ。勘のいい方はもうお気づきだろう、外国人労働者による「テロ」だ。 ご存じのように、今年から人手不足業界に続々と外国人労働者が投入されていくわけだが、なぜこれらの業界が「人手不足」となっているのかというと、「低賃金・低待遇」で日本の労働者たちから敬遠されるという、いわゆる「雇用ミスマッチ」が起きているからだ。 これまで見てきたように、低賃金への不満が「バイトテロ」のトリガーになっている、という現実に鑑みれば、日本人の代わりに、低賃金や低待遇の仕事を押し付けられる外国人労働者が同じような事件を起こしても、何の不思議もない。 ほとんどの日本人は、「外国人労働者」と聞くと、貧しい暮らしの中で、憧れの国・日本にやってきて、嫌な仕事も文句ひとつ言わずにキビキビ働く「おしん」のような奉公人のような人たちだと勘違いしているが、実はそんなことはない。 低賃金や低待遇の仕事を押し付けられたら、日本の労働者と同じように不満を抱く。多くの外国人技能実習生が職場から失踪しており、しかも動機の67%が「低賃金」という法務省調査がすべてを物語っている』、確かに、これからは「外国人労働者による「テロ」」が出てくる可能性は高そうだ。
・『外国人労働者テロが起きたときは国際的な人権問題になるリスクも  そして、やっていることも日本の若者と特に変わらない。スマホを持ち、SNSを介して遠く離れた友人たちと、たわいもないやり取りをする。その中には当然、「悪ふざけ」をする者もいる。 それはつまり、低賃金や低待遇で不満を抱えた外国人労働者が「こんな仕事、クビになってもいいや」と、友人との悪ノリで不適切動画を投稿することだってあるということだ。そういう「外国人労働者テロ」が起きた時、果たして我々の社会では、どういう世論が巻き起こるのか。 「日本の社会ルールに従えないような不良外国人はさっさと追い出せ!」「再発防止のため、企業に損害を与えた外国人労働者は法的措置など厳しい対策をとれ!」 もちろん、外国人労働者側も黙っていないだろう。そもそも日本人も嫌がるような劣悪な労働環境や低賃金労働を強いている事業者や、日本政府が悪いというロジックを展開して、場合によっては、「徴用工」問題のリバイバルのように騒ぐ者もいるかもしれない。 賃金アップできない業界はたいてい、過当競争にさらされている。しかし、事業者たちが、事業の整理や統廃合という根本的な解決をせず、安易に外国人労働者を投入することは、日本の労働者が直面しているパワハラ、セクハラ、低賃金での過重労働という諸問題を、「国際的な人権問題」に格上げして、世界に日本の「恥」を広めることにしかならないのだ。 理不尽だと思うかもしれないが、「移民政策」を選んだのは他でもない我々なのだ。 戦争、紛争、憎しみ合い…激しく対立する者たちというのは古今東西、必ずこういうことを叫んでいる。「先に攻撃したのはあっちだ」 「バイトテロ」という問題もこれと同じで、「企業」と「労働者」という、どちらの立場に立つかによって、景色がまったく違って見える。 正直、筆書にはどちらが「正義」なのかはわからない。ただひとつだけ言えるのは、今回のように「バカ従業員には報復せよ」という企業が増えたことで、この国にまたひとつ、終わりの見えない戦いが始まったということだ』、「外国人労働者テロ」が起きれば、「国際的な人権問題」になるだけでなく、当該外国人労働者に民事・刑事責任を問うとなれば、社会派弁護士らによる弁護団が結成され、訴訟がドロ沼化する懸念もあろう。見落とされていた重大な問題を指摘してくれた筆者は、さすがである。
タグ:バーミヤン 東洋経済オンライン すき屋 セブン-イレブン ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 本田 雅一 バイトテロ ネット悪ふざけ (その1)(くら寿司「悪ふざけバイト」の告訴に広がる波紋 批判あるが「不適切動画問題」へ一石となるか、「バイトテロ」と「低賃金」の密接な関係 犯人処罰だけでは泥沼に) 「くら寿司「悪ふざけバイト」の告訴に広がる波紋 批判あるが「不適切動画問題」へ一石となるか」 不適切動画 ファミリーマート、ビッグエコー 最初の事例は2007年の吉野家「テラ豚丼」 ローソンのアイスクリーム用冷凍庫内で寝そべった写真 ブロンコビリーでキッチンの大型冷凍庫に入っている写真 個人経営のそば屋「泰尚(たいしょう)」の倒産事件 第1次バイトテロ スマートフォンとSNSの普及 バイトテロ問題の本質は、事件を起こす本人に対するリスクが小さすぎることだ 「くら寿司」が、バイトテロ事件を起こした元従業員2人を刑事・民事で告訴したことが流れを変えるきっかけとなるかもしれない 小さすぎる“悪ふざけ”の代償 事件のほとんどは学生アルバイト、あるいは20代前半までの非正規雇用者 高校生アルバイトの場合、経済的には保護者に依存しているため、雇用契約の解除がバイトテロの抑止力になりにくい くらコーポレーションは法的措置を検討 上場企業としての責任を果たす 約3万3000人の従業員の信頼回復 同様の事件の再発防止につなげ、 抑止力とする為 雇用関係の維持に対してこだわる必要がない彼らに、雇用者が徹底した倫理観を植え付けるのは無理な話だ 「雇用契約」の見直しが必要 業務に関連した情報をSNSで発信することに関し、ガイドラインを作成して明文化。この中で、SNS発信がどのような社会的影響を与えるか、その影響範囲についても記述しておきたい 「「バイトテロ」と「低賃金」の密接な関係、犯人処罰だけでは泥沼に」 「バイトテロ銘柄」は特定業種に偏っている 「フード系チェーン」「コンビニ」「ビデオレンタル」「カラオケボックス」という業種 バイトテロの被害企業は明らかにバイト賃金が安い 「時給の安いバイト先」として知られている業種 他業界と比べて、平均時給が際立って低いこれらの職種は、ほぼ例外なく「バイトテロ」の舞台となっている 「低賃金」が引き起こす待遇への不満が、従業員に「バカなことだけど、いいか、やっちまえ」と背中を押している――つまり負の「やる気スイッチ」のような役割になっていないか 従業員不祥事の動機トップはダントツで「低賃金」 外国人労働者に低賃金労働を押し付けることの愚かさ 外国人労働者による「テロ」 低賃金や低待遇の仕事を押し付けられたら、日本の労働者と同じように不満を抱く。多くの外国人技能実習生が職場から失踪しており、しかも動機の67%が「低賃金」という法務省調査 外国人労働者テロが起きたときは国際的な人権問題になるリスクも
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日本の政治情勢(その28)(政策失敗でネタ切れ 鳴り潜めた安倍政権のスローガン政治、官房長官補佐官が突然の退任発表…背後に“怪文書”騒動か、「私は森羅万象を担当している」安倍首相の“神宣言”は無教養なだけじゃない! 東条英機と同じ“肥大化した万能感”) [国内政治]

日本の政治情勢については、昨年9月29日に取上げた。今日は、(その28)(政策失敗でネタ切れ 鳴り潜めた安倍政権のスローガン政治、官房長官補佐官が突然の退任発表…背後に“怪文書”騒動か、「私は森羅万象を担当している」安倍首相の“神宣言”は無教養なだけじゃない! 東条英機と同じ“肥大化した万能感”)である。

先ずは、慶応義塾大学経済学部教授の金子勝氏が昨年10月31日付け日刊ゲンダイに掲載した「政策失敗でネタ切れ 鳴り潜めた安倍政権のスローガン政治」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/240603
・『ようやく臨時国会が始まったが、安倍首相は所信表明演説からコケている。“やってる感”を演出してきたスローガン政治が、“ネタ切れ感”に変わったからだ。世論の半数超が反対する改憲案の国会提出をわめく前に、掲げた政策の大半が失敗していることを反省するのが先だ。 国土強靱化を掲げて公共工事を増やしても、西日本豪雨で愛媛の肱川は氾濫。農林水産業を活性化させると言いながら、TPP11や日欧EPAで農産物関税は大幅引き下げ。いくらTAGだと言いつくろっても、日米FTA交渉ではそれ以上を求められるのは必至だ。全世代型社会保障もメチャクチャ。待機児童は3年連続で増加する一方で、株式運用で公的年金はヨタヨタ。支給開始年齢を70歳に引き上げて帳尻合わせ。これでは死ぬまで働けと迫っているも同然だ。 “デフレ脱却”のアベノミクスはついに口にしなくなり、女性活躍の“目玉”の片山さつき地方創生相に口利きワイロ疑惑が浮上。1億総活躍社会の裏で官公庁では障害者水増し雇用が横行する。「生産性革命」は残業代ゼロで働かせ放題の高度プロフェッショナル制度の導入だ』、「政策失敗でネタ切れ」とは最近の安倍政治を的確に表現している。
・『モリカケ問題から逃げ回る安倍の下、「全員野球内閣」の本領発揮とばかりに閣僚らの不祥事が噴出している。「政治とカネ」の問題は片山にとどまらず、宮腰沖縄北方担当相、渡辺復興相、柴山文科相、平井科学技術担当相、工藤国交政務官と、まさに「全員野球」で不正疑惑だ。この内閣には腐臭が漂っている。 野党は安倍政権が掲げた政策を一つ一つキッチリ検証し、安倍がいかにフェイクな印象操作に終始しているかを暴くことが不可欠だ。公文書やデータを改ざんしてもおとがめナシ。失言や暴言を吐き散らしても責任を問われない。日本の社会を根底から破壊するありさまを徹底的に追及し、白日の下にさらしてもらいたい。 安倍は改憲と同時に愛国心を育てる教育改革にも固執している。世論の反発が強い道徳の教科化は小学校で今年度から始まり、中学校は来年度からだ。まさか首相になれば「嘘をついても大丈夫」「約束は守らなくていい」「困ったら公文書を改ざんする」と教えるのではないでしょうね』、野党はこれだけ追求の材料がありながら、野党同士の「内ゲバ」に明け暮れ、肝心の安倍政権追求には真剣味を欠いているのは、残念でならない。

次に、11月2日付け日刊ゲンダイ「官房長官補佐官が突然の退任発表…背後に“怪文書”騒動か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/240742
・『菅官房長官の“懐刀”を自任する大臣補佐官が近く退任するという。今国会での成立が見込まれている水道法改正案など、公共サービス改革の旗振り役を務めてきた人物だが、突然の退任発表は、「なぜ、このタイミングで?」と臆測を呼んでいる。実は、官房長官を後ろ盾に権勢をほしいままにしてきた補佐官を巡っては、怪文書も出回る騒動が起きていた。 「菅義偉官房長官の大臣補佐官を務める福田隆之氏が近く退任することが30日、分かった。関係者が明らかにした」――。31日の深夜1時に産経ニュースが配信した小さな記事が、政界では大きな話題になっている。 福田氏は1979年生まれの39歳。早大教育学部卒業後、野村総合研究所の主任研究員を経て、2012年から新日本有限責任監査法人エグゼクティブディレクター・インフラPPP支援室長を務めていた。その時に菅長官の知遇を得て、16年1月から官房長官補佐官に就任した。民間からの登用は菅長官の一本釣りだったといわれている。 起用の理由について、菅長官は当時の記者会見で「民間資金の活用による公共施設の整備運営(PFI)に広範な識見、経験を有しており、公共サービス改革に関わる重要事項を担当してもらう」と説明していた。 「福田氏が手掛けていたのは、主に水道事業や港湾のPFIです。役所との折衝では官房長官の威光を振りかざし、ゴリ押ししてくることで有名だった。口癖は『菅長官が言っている』。『官房長官の意向なのだから、つべこべ言わずにやれ』という高圧的な態度で、陰では“黒い補佐官”と呼ばれていました」(国交省関係者) 加計学園問題で、官邸の補佐官や秘書官が「総理のご意向」を振りかざしたのと同じ構図だ』、新日本からの「天上り」になるが、安倍政権では2015年で164名の「天上り」がいるようだ。情報セキュリティなどの技術的知識を活かすためならいざ知らず、PFIのようんなビジネス上の利害が絡む分野にもいたとは驚きだ。しかも、「官房長官の威光を振りかざし、ゴリ押ししてくる」のでは、陰口が出てくるのも当然だ。
・『書かれている内容の真偽は分からないが、永田町では、臨時国会直前から福田氏に関する怪文書が出回っていたという。 「怪文書に書かれていたのは、PFIに関連したリベート疑惑などです。民間業者の選定に介入して見返りを要求しているとか、パリ出張の際にフランスの水道業者から接待を受けていたという内容でしたね。福田氏のバックには竹中平蔵氏がいて、民間運営の市場形成で利権を独占しようとしているとか……。それらが事実ならば、水道法改正案の成立も危うくなりかねない。報道では、担当していた仕事に区切りがついた福田氏が自ら退任を申し出たとされていますが、焦った官邸側が“切った”のが実情でしょう」(自民党議員秘書) いやはや、日刊ゲンダイが入手した“怪文書”には、「補佐官室にポテトチップスを常備」「蕎麦の薬味のネギにも手をつけないほどの野菜嫌い」「自宅用の土産は和菓子が喜ばれる」など、役所内部の人間しか知り得ないような情報も書かれている。 「官邸が絶対的な力を持っていれば、内部情報がポロポロと漏れ出てくることは考えられません。政権中枢を直撃する怪文書騒動や補佐官の退官は、政権の力がなくなり、官邸のグリップが利かなくなっていることの証しでしょう。霞が関全体が、3選でレームダック化した安倍政権と距離を取り始めているように感じます」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏) こういう綻びから一気に崩壊まで行くケースもある。安倍政権もそろそろ先が見えてきた』、「パリ出張の際にフランスの水道業者から接待」についてはともかく、大いにあり得る話だが、リベート疑惑は大問題だ。辞任させることで闇に葬ったのだろう。「政権の力がなくなり、官邸のグリップが利かなくなっていることの証し」であればいいのだが・・・。

第三に、2月9日付けLITERA「「私は森羅万象を担当している」安倍首相の“神宣言”は無教養なだけじゃない! 東条英機と同じ“肥大化した万能感”」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2019/02/post-4537.html
・『「私は総理大臣ですから、森羅万象すべて担当しておりますので」 安倍首相が国会で言い放ったこの発言が、大きな話題を呼んでいる。Twitterでは「森羅万象」がトレンド入り、「#森羅万象担当大臣」や「#森羅万象内閣」などのハッシュタグとともに、こんな投稿が相次いでいるのだ。〈ついにゴッド宣言〉〈現人神、平成にもいたんだねぇ〉〈安倍総理がついに地震や台風など森羅万象を司る神であらせられることを自白される〉〈森羅万象を司る神なら四島返還など簡単なはずなのにねえ〉〈移植云々サンゴマンになったり森羅万象ゼウスマンになったり、結局安倍さんはどうなりたいのですかね。てか、森羅万象を司っているのに何で嘘つくの?〉 森羅万象とは「宇宙間に存在する数限りない一切のものごと」(『広辞苑』第7版)の意。それを「担当している」と自称するのだから、「すわ全知全能の神にでもなったつもりか!」と突っ込まれるのも当然だろう』、もう正常心を失っているとしか思えない。
・『いったい安倍首相はどういう意図で、こんな「神宣言」とも言えるような発言を行ったのか。改めて振り返ってみよう。 発言があったのは2月6日の参院予算員会でのこと。国民民主党の足立信也議員が、厚労省の毎月勤労統計不正調査問題をめぐって、安倍首相に特別監察委員会の報告書を読んだのか質した。安倍首相が「そのものは読んではおりません。私は概要について秘書官から報告を受けている」と一切悪びれずに答弁した。 そこで、足立議員が「やっぱりこれだけ大事なことなのに、報告書も読まれていない」「総理としては、報告書を読まれていないので残念なのですが、これは第三者委員会とは認めないという認識でいいですね?」と追及すると、安倍首相はまたもや平然とこう答えたのだった。 「あの、総理大臣でございますから、森羅万象すべて担当しておりますので、あの、報告書をですね、まあ様々な、これ日々様々な報告書がございますが、それを全て精読する時間はとてもない、わけでございますし、世界中から、で起こっている、まあ電報等もあるわけでございます。ということはご理解いただきたい、とこう思います」 つまり、“自分は森羅万象(宇宙のすべて)を「担当している」が忙しいので第三者委員会の報告書は読めませんでした”、と言い訳しているわけである。どうしてこの文脈で「森羅万象」という単語が出てくるのか意味がわからないが、実は、安倍首相が国会で「森羅万象」という言葉を口にするのはこれが初めてではない。 たとえば昨年には、政府の裁量労働制データ改ざん問題を追及されて「私の場合は、もちろんこの予算について、森羅万象全てのことについてお答えをしなければならない立場ではありますが、全てのことについては、しかし、それは全て私が詳細を把握しているわけではありません」(2018年2月20日衆院予算員会)と居直り。その前年にも、森友・加計学園問題に関して「丁寧な説明」がされていないと詰められて「政府が取り扱っている森羅万象全てを私が説明できるわけでは当然ないわけでございますから」(2017年11月28日衆院予算委員会)などとのたまっていた。 ようするに、安倍首相はどうも「森羅万象」という言葉を“いっぱいやることがあるからチェックしきれないんだよ、許してね、テヘッ”という文脈で使っているらしいのだ。 安倍首相といえば、「云々」を「でんでん」、「背後」を「せご」と読むなど、日本語の基礎知識がないことで有名だが、しかし、この“森羅万象担当発言”はたんなる無教養という問題だけではなく、安倍首相の傲慢な姿勢が漏れ出たものではないのか』、「森羅万象」を軽々しく多用する癖があるようだが、四字熟語を使えば相手がひるんで、ごまかせるとでも思っているのだろうか。「安倍首相の傲慢な姿勢が漏れ出たもの」との指摘は、その通りだろう。
・『安保国会では「私は総理大臣なんだから正しい」発言も  事実、安倍首相は“思い上がり”というレベルをはるかに超えた、自分を絶対的な権力者だと勘違いしているとしか思えない発言を連発してきた。 たとえば2016年、2018年など数回にわたって国会で「私は立法府、立法府の長であります」と宣言。総理大臣は行政府の長であり、まさかの三権分立ガン無視発言を何度指摘されても繰り返している。2017年の防衛大学卒業式では「警戒監視や情報収集に当たる部隊は、私の目であり耳であります」「諸君のなかから最高指揮官たる内閣総理大臣の片腕となって〜」などと訓示して、明治天皇が軍に下した「軍人勅諭」さながらの言い回しで話題になった。 なにより忘れてはならないのは、2015年安保国会での党首討論で言い放った「我々が提出する法律についての説明はまったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」だろう。言うまでもなく、安保法制は多数の憲法学者から違憲という指摘がなされ、法案の中身もめちゃくちゃな代物だった。ところが、そうした批判に対し安倍首相は「総理大臣なんだから正しい」と断言、まさしく“俺こそが法だ”という法治主義の根幹を揺るがす発言だった。 ほかにも、安倍首相はことあるごとに「私が最高責任者」と繰り返すが、昭和史研究の第一人者である作家・保阪正康は、この安倍首相の口癖を、日本を狂気の戦争に駆り立てた東条英機と同じものだと分析している。 「安倍さんは国会の答弁でよく“私が責任者ですから”と言うでしょう? あれは東条の言い方と同じなんですよ。政治権力の頂点にいる者が威張り散らすときの言葉で、東条は“俺に逆らうな”という恫喝の意味を込めてよく使いました。あんな言葉、普通の政治家は使いませんよ」(日刊ゲンダイ2016年2月19日付) こうした安倍首相の迷言の数々を振り返ってみると、いま、ネット上で話題になっている「森羅万象を担当している」なる発言も、これらとまったく同じ“天皇気取りの独裁者気質”“肥大化した万能感”からきていることがよくわかるだろう。そして、この安倍首相の歪んだ意識こそが、国会を軽視し、言論を平気で弾圧する“民主主義の破壊者”というしかない暴挙を生み出している。 そういう意味でも、わたしたちはこの発言を笑うだけですましてはならない。この政治家を一刻も早く総理大臣の椅子から引き摺り下ろし、「森羅万象を担当している」ということが勘違いであることを知らしめる必要があるだろう』、「独裁者気質”“肥大化した万能感”」とは言い得て妙だ。「“私が責任者ですから”と言うでしょう? あれは東条の言い方と同じなんですよ。政治権力の頂点にいる者が威張り散らすときの言葉で、東条は“俺に逆らうな”という恫喝の意味を込めてよく使いました」というのは恐ろしいと同時に、滑稽でもある。「安倍首相の歪んだ意識こそが、国会を軽視し、言論を平気で弾圧する“民主主義の破壊者”というしかない暴挙を生み出している」というのも的確な指摘だ。ただ、世論調査では内閣支持率が高水準を維持しているのは、解せないが、マスコミの安倍政権への忖度が1つの要因であることは確かなようだ。やれやれ・・・。
タグ:金子勝 日刊ゲンダイ litera 安保国会 日本の政治情勢 福田隆之 (その28)(政策失敗でネタ切れ 鳴り潜めた安倍政権のスローガン政治、官房長官補佐官が突然の退任発表…背後に“怪文書”騒動か、「私は森羅万象を担当している」安倍首相の“神宣言”は無教養なだけじゃない! 東条英機と同じ“肥大化した万能感”) 「政策失敗でネタ切れ 鳴り潜めた安倍政権のスローガン政治」 「全員野球」で不正疑惑 「官房長官補佐官が突然の退任発表…背後に“怪文書”騒動か」 菅義偉官房長官の大臣補佐官 野村総合研究所の主任研究員 新日本有限責任監査法人エグゼクティブディレクター・インフラPPP支援室長 民間からの登用は菅長官の一本釣り 役所との折衝では官房長官の威光を振りかざし、ゴリ押ししてくることで有名だった 『官房長官の意向なのだから、つべこべ言わずにやれ』という高圧的な態度で、陰では“黒い補佐官”と呼ばれていました 「天上り」 ビジネス上の利害が絡む分野 永田町では、臨時国会直前から福田氏に関する怪文書が出回っていた PFIに関連したリベート疑惑 パリ出張の際にフランスの水道業者から接待を受けていた バックには竹中平蔵氏がいて、民間運営の市場形成で利権を独占しようとしている 焦った官邸側が“切った”のが実情 政権中枢を直撃する怪文書騒動や補佐官の退官は、政権の力がなくなり、官邸のグリップが利かなくなっていることの証しでしょう 霞が関全体が、3選でレームダック化した安倍政権と距離を取り始めているように感じます 「「私は森羅万象を担当している」安倍首相の“神宣言”は無教養なだけじゃない! 東条英機と同じ“肥大化した万能感”」 私は総理大臣ですから、森羅万象すべて担当しておりますので “自分は森羅万象(宇宙のすべて)を「担当している」が忙しいので第三者委員会の報告書は読めませんでした”、と言い訳しているわけである 国会で「森羅万象」という言葉を口にするのはこれが初めてではない 安倍首相といえば、「云々」を「でんでん」、「背後」を「せご」と読むなど、日本語の基礎知識がないことで有名 この“森羅万象担当発言”はたんなる無教養という問題だけではなく、安倍首相の傲慢な姿勢が漏れ出たものではないのか 安保国会では「私は総理大臣なんだから正しい」発言も 私は立法府、立法府の長であります 三権分立ガン無視発言を何度指摘されても繰り返している 「我々が提出する法律についての説明はまったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」 “俺こそが法だ”という法治主義の根幹を揺るがす発言 「安倍さんは国会の答弁でよく“私が責任者ですから”と言うでしょう? あれは東条の言い方と同じなんですよ。政治権力の頂点にいる者が威張り散らすときの言葉で、東条は“俺に逆らうな”という恫喝の意味を込めてよく使いました この安倍首相の歪んだ意識こそが、国会を軽視し、言論を平気で弾圧する“民主主義の破壊者”というしかない暴挙を生み出している
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日本型経営・組織の問題点(その6)(日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される、日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」、武田薬品 ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化) [企業経営]

日本型経営・組織の問題点については、昨年8月21日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される、日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」、武田薬品 ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化)である。

先ずは、経済ジャーナリストの岩崎 博充氏が昨年11月16日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/248969
・『今年もあと残すところ1カ月半ほどになった。この1年も、相変わらずさまざまな不祥事が目立った。最近も、油圧機器大手の「KYB」とその子会社による免震制振オイルダンパーの検査データ改ざん、そして自動車メーカー「SUBARU(スバル)」の出荷前検査不正行為。大手出版会社「新潮社」による「『新潮45』休刊騒動」などなどだ。 さらに、日本大学や東京医科大学といった教育機関関係のトラブルも多かった。ボクシング協会やレスリング協会のパワハラ、セクハラといった問題も浮上した。 こうしたトラブルの背景には、市井の人々がTwitterやブログなどで、広く世に情報発信できるようになったことと関係があるのかもしれないが、それにしても日本全体のタガが緩んでいるような印象を持った人も少なくないのではないか。 トラブルの原因はさまざまだが、問題なのはその対応に時間がかかりすぎたり、あるいは対応法が間違っていたりすることが多かったということだろう。 たとえば、KYBの免震ダンパー問題も、15年以上もの間、データ偽装の事実がわかっていながら放置して発表してこなかった。組織ぐるみの確信犯と言われても、反論の余地がない問題だ。スバルの出荷前検査問題に至っては、偽装が明るみに出てリコールを連発した以降も偽装を続けていたことが明らかになっている』、確かに日本組織の「不祥事続発」は海外の日本企業に対する信頼を揺るがす由々しい問題だ。
・『目の前のトラブル対応に終始する日本の悪い癖  もともと日本企業は、昨年あたりから不祥事が次々に明らかになって、その対応ぶりがコロコロ変わるなど大きな批判を受けてきた。印象に残っているケースでは神戸製鋼所や三菱マテリアルといった歴史のある古い企業が、記者会見で返答をくるくる変えるなど不適切な対応が目立った。 とりわけ批判されたのが、問題発生から解決に向かう際に初動ミスがあり、情報開示の姿勢が疑問視されたことだ。経営トップの不適切な発言や不透明な発言も数多く出てきて、日本企業全体の信用度、信頼度に疑問を持たれたケースも少なくない。 たとえば、三菱マテリアルの製品品質データ改ざん問題では、当初本社による記者会見では「偶発・軽微なミス」と主張していたのが、東京地検特捜部の強制捜査などが始まってからは、一転して子会社がデータ改ざん表面化以降も改ざんを続けており、資料隠蔽の指示が本社からあったことまで明るみに出ている。 日立化成や東レ、宇部興産といった伝統ある企業でも、検査データの改ざんなどが発覚。さらに、人事の不透明さといった面でもさまざまな批判が集中した。社長が責任を取って辞任するとしながらも会長職に就くなど人事面でも疑問が持たれる対応が目立った。 こうした企業風土は、現在もほとんど変わっていないような気がしてならない。KYBのデータ偽装事件にしても、スバルにしても日本企業の本質は変わっていないのだ。自ら不祥事を発表した企業も今年は多かったが、まさに「赤信号、みんなで渡れば怖くない」といった集団心理を連想させる。 日本大学の危険タックル問題は記者会見が油に火を注ぐこととなり、東京医科大学の不正入試問題も大学が当初意図した反響とは大きく違う方向に行ってしまったのではないか。 それだけ状況分析を各大学とも見誤ってしまった結果かもしれない。 ここ数年の日本企業や政府のトラブル対応を見ていると、その大半がとりあえず目の前の問題を何とかしよう、という場当たり的な解決策に終始している、という印象を受けてしまう。『新潮45』の休刊問題でも、当初は社長のコメント発表で、何とか目の前の状況を収拾しようとしたものの、結局は最悪の結果になってしまった』、不祥事対応のお粗末さも目を覆いたくなるような酷さだ。影で指導している筈の危機対応のコンサルタントらも、一体、何をしているのだろう。
・『誠心誠意謝罪するのが問題解決の基本  問題が表面化した段階で、最初から非を認めて、その解決策を示したほうがよかったのかもしれない。 そもそも企業や政府の説明責任というのは、もし誤りがあればそれを正して人々に理解を求めることが大切になる。しかし、報道されていることが真実であった場合、あるいは言い逃れようがなく明白な事実であれば、ごまかすのではなく誠心誠意謝罪するのが問題解決の基本といわれる。問題解決のコンサルタントや専門家の間では、説明責任や謝罪で最も大切なのは「誠意」と言われている。こちら側にミスがあった場合には、誠意をもって謝罪する以外に方法はない、ということだ。 ところが日本ではその基本がないがしろにされることが多い。パワハラがあったのに「パワハラはない」と言い逃れをする、いじめが存在しているのが明白なのに、「調査中」という言葉で誤魔化そうとする。要するに、部分的には認めつつも大筋では認めないなど、誰もがうそだとわかる稚拙な言い訳が繰り返されている。テレビや新聞で忖度されて報道されている、近年の国会を舞台とした議論や言い訳と同じ光景だ。日本中がうそや矛盾に満ちた言い訳に対してマヒしつつあるのかもしれない。 一方、日大アメフト部で反則を犯した学生が記者会見をしたが、彼の誠実で誠意ある対応が日本中の人々に支持されたのも、誠意ある謝罪とその解決策の提示が問題解決への正しい方法であることを示している。 誠意ある謝罪をしたところで、犯してしまった間違いや失敗はそれだけでは許されるものではない。謝罪と同時に、トラブルへの対応や賠償への補償といったものをきちんと示す必要がある。加えて、二度とこうしたことが起こらないようにするための将来的なビジョンを示す必要がある。 こうした一連の問題解決のプロセスが日本の企業や大学、公共団体など、幅広い層に不足しているとみていいのかもしれない。こうした謝罪や説明責任は、個人に対しても同じことが言える。 昨年同様に今年ほど、トラブルの問題処理が問われた年はなかったのではないか。数多くの日本企業や教育機関の広報部門の質の劣化だけではなく、そうした問題解決に優秀な人材や資金を投じていないことも明らかになった。 しかし、それ以上に問われるのは「トップ」の資質だ。不祥事に対して組織のトップが最後まで公に顔を出さずに幕引きを図ろうとしたり、会見を開いたとしても誠意のない対応を見せたりするようなケースが目立つ。 背景にはあるのは、日本企業の多くが終身雇用制を取り、新卒一括採用で採用された社員が、派閥争いを生き抜いてトップに上り詰めたような人が多いからだと、個人的には考えている。イエスマンであることがトップになる条件であり、彼らには謝罪や反論は苦手なのかもしれない』、「広報部門の質の劣化」、「それ以上に問われるのは「トップ」の資質だ」というのはその通りだ。
・『結局はガバナンスの欠如とコンプライアンスの概念失墜  日本企業のトラブルが相次いでいる直接的な原因のひとつは、「コーポレートガバナンス(企業統治)」の欠如が原因と言っていいだろう。とりわけ、グローバル化が遅れている日本企業の中ではコーポレートガバナンスが欠けている企業や団体が目立つ。 最近になって教育機関のガバナンスも問題視されているが、これも海外との接触があまりない機関独特の問題と言っていいかもしれない。 コーポレートガバナンスというのは、東証などを傘下に持つ日本取引所グループの定義によると「会社が株主をはじめ、顧客や従業員、地域社会等の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する」となっている。 そのためには、「適切な情報開示と透明性の確保」という項目が基本原則として設けられている。適切な説明責任が、きちんとした情報開示とともに実施されることが、ガバナンスを維持する最大の要件の1つと言ってもいい。 コーポレート・ガバナンスは、企業が存続可能な成長を維持するために必要不可欠なものであり、そのためにどんなことをすればいいのかを企業は常に考えていかなくてはいけない。ちなみに、これは政府や自治体などにも言えることであり、ガバナンスができていない団体は今後もさまざまな問題を連発し続けることになるはずだ。 そしてもう1つのトラブルの原因の1つが、「コンプライアンス=法令遵守」という概念の確立だ。当たり前のことかもしれないが、最近の日本企業の不祥事を見ていると、明らかに法律に反していることを平気でやっているケースが目立ってきている。企業利益を追求するあまり法令遵守を怠るといったことは、ありえない話だ。個人よりも企業、といった歪んだ価値観が日本社会には根強く残っている。 内部告発制度が国際的に求められているのも、 こうしたコンプライアンスとの関係が大きい。サウジアラビアのジャーナリストがトルコ国内で殺害された事件も、以前なら絶対に表にできないことが、現在では簡単に表ざたになる。 最近のさまざまなトラブルの原因と問題解決を急がなければ、日本企業はますます世界から取り残されていくことになるかもしれない』、筆者は「コンプライアンス=法令遵守」と狭く捉えているようだが、こうした問題に詳しい弁護士の郷原信郎氏は、「コンプライアンス=社会的要請に応えていくこと」と広義に捉えており、私にはその方が適切なように思われる。ただ、「日本企業はますます世界から取り残されていく」との危機感には同感である。なお、現在、レオパレス21の工事不正が問題化している。この問題は後日取上げる予定だが、これだけ対象戸数が多いと、同社の存続の可能性も問われることになるだろう。そこまでして、工事不正した背景を知りたいものだ。

次に、11月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した健康社会学者の河合薫氏へのインタビュー「日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/186440
・『働き方改革が叫ばれて久しいが、日本人の労働環境が劇的に改善される兆しは見えず、相変わらずブラック企業に関する報道も絶えない。日本人の「社畜化」が改善されないのは、一体なぜなのか。『残念な職場』(PHP新書)著者の河合薫氏に話を聞いてみた』、このブログでも河合薫氏の主張は頻繁に取上げているように、同氏は私が最も注目している論者の1人である。
・『外国人が驚愕する日本人の「居眠り」  日本人の社畜ぶりは海外でも話題です。 実際の業績よりも「疲れ果てるまで働くこと」が評価され、夜は「マラソン・ドリンキング(ダラダラ飲み会)」――日本人が社畜化する背景には、家事などの「ケア労働」への不当に低い評価がありそうだ  「日本と海外の働き方の違いを象徴する例として、海外の人は、通勤電車で平然と居眠りする日本人を見て驚愕すると言います。もちろん治安の差などもありますが、『公衆の面前で昼寝?日本ではそれは勤勉の証しである』というタイトルで、居眠りとサラリーマンの生態を紹介する記事がニューヨーク・タイムズに書かれたこともあります」 そう話すのは、『残念な職場』(PHP新書)の著者で、働き方に関する研究をしている河合薫氏だ。 河合氏によると、日本人の睡眠時間は、世界最短という調査結果が出ているという。米ミシガン大学の調査でわかった国別の平均睡眠時間の比較では、日本人の平均睡眠時間は7時間24分。欧米は軒並み8時間前後を記録しているのに対し、7時間半以下を記録したのは、日本とシンガポールだけだった。 さらにその内訳をひもとくと、最も眠っていないのは働き盛りの中年男性だったという。日本の中年男性は諸外国と比較して、圧倒的に睡眠不足であり、その睡眠不足を補うように「居眠り」をするのだ。 『日本人は眠らない、昼寝もしない、居眠りをするのだ!』というタイトルで書かれたケンブリッジ大学のステガー博士によるコラムでは、日本人の「inemuri」について以下のような文章がつづられている。(河合氏による一部要約)「彼らには到底理解できない日常がある。それは居眠りだ。通勤電車の中で椅子に埋もれるように居眠りしたり、立ったまま居眠りしたり、簡単に公衆の面前で寝る。しかも驚くべきことに周囲もそれを受け入れている。彼らは睡眠時間を削って働いているので、だらしない居眠りが許される。(中略)職場での居眠りは無気力と怠慢の証しではなく、疲れ果てるまで仕事をがんばった結果と評価され、実際の業績より疲れをおして会議に出席するほうが価値が高い。日本人の精神はオリンピックに通じている。つまり『参加することに意義がある』のだ」』、「日本人の平均睡眠時間が7時間24分。欧米は軒並み8時間前後」との比較は、私には差がこれだけしかないのかと逆に驚きだった。「日本人の精神はオリンピックに通じている。つまり『参加することに意義がある』のだ」」は痛烈な批判だ。
・『さらに河合氏によると、日本人は睡眠時間が短いだけでなく、「仕事以外の時間の使い方」が世界基準と異なるという。 「2009年のOECDの調査によると、日本人は家族で過ごす時間は欧米の半分以下という独特のライフスタイルを送っていることがわかりました。その一方で日本人は、コース料理が一般的なフランスやイタリア並みに食事時間が長いことも判明しました」』、「日本人は家族で過ごす時間は欧米の半分以下」というのは、顕著な差で、確かに深刻な問題だ。
・『家族の時間を奪う“マラソンドリンキング“  家族と過ごす時間が少ないのに食事時間が長い傾向にある理由の一つには、「仕事終わりの一杯」が関係しているのではないか、と河合氏は指摘する。前述のコラムのように、「参加することに意義がある」というサラリーマンの姿勢は、就業時間だけに限らない。仕事終わりに男同士で連れ立って飲み歩く文化も日本人特有のものだ。 「海外、特にヨーロッパでは仕事後に飲みにいくような文化はありません。既婚者であれば、退社後は真っ先に家族のもとへ帰っていくのが普通。米国では職場の飲み会があったとしても18時には終わります。『接待』と称し、夜中まで飲み歩くなんて考えられません」 河合氏によると、海外では飲みにいく場合、子どもをベビーシッターに預け、妻も同伴させるなど家族ぐるみでの付き合いが多いという。サラリーマンだけで連れ立っているようなことは、独身者でも珍しいのだ。 日本のサラリーマンの飲み方に関しては、CNNが以下のように論じている。『Salarymanは日本経済を支える役目を果たすために、会社を最優先させる生活を営んでいる。彼らは死ぬほど働いたあとには、顧客や同僚たちと長々と酒を飲む』。「長々と酒を飲む」の原文は『marathon drinking』と表現されている。 「このmarathon drinkingこそが、サラリーマンの食事時間をダラダラと延長させ、家族と過ごす時間を奪い、睡眠時間を削っているわけです」』、marathon drinkingとは言い得て妙だ。これが、「食事時間をダラダラと延長させ、家族と過ごす時間を奪い、睡眠時間を削っている」とは、なるほどと納得した。
・『社畜でいたがる日本人 背景には家事軽視の社会通念  ただでさえ長い労働時間の上、仕事が終わった後は同僚や取引先とダラダラと飲み続け、結果的に家族との時間や睡眠時間が短くなる。まさに「社畜」という表現がピッタリだ。 「だったら仕事が終われば、さっさと帰ればいいじゃん」という声も聞こえてきそうだが、日本人が「社畜化」を余儀なくされている理由には、「社畜でいるほうがラク…という心理が隠されている場合もある」と河合氏は分析する。 「男女関係なく、生きていくためには労働力として売買される『市場労働』と、『ケア労働』のどちらの労働も不可欠です。しかし、北欧諸国と比較して日本では家事、育児、介護などの無償の労働である『ケア労働』が評価されにくく、そのことが家にいることのストレスにつながっている可能性があります」 「育休」がなかなか浸透しないことからもわかるように、軽視されがちな家事育児などのケア労働。日本と同様にケア労働が軽視されがちな社会であるアメリカでは、家庭より職場にいるほうがストレスを感じていない、という研究結果が判明している。 「米ペンシルベニア州立大学の研究チームが、客観的なストレス指標によって検証した結果、男女、既婚未婚、子どもの有無に関係なく、家庭より職場にいるときの方がストレスを感じたときに分泌されるコルチゾール値が低いことが判明しました。つまり、母親だけでなく父親も独身者も皆一様に、家にいるより仕事をしているほうがラクだと感じているのです。早く退社してもフラフラと外で時間をつぶしてすぐに帰宅しないフラリーマンが、いい例ですね」 この研究グループのリーダーである教授は、この結果について「有償である職場の仕事に対し、家庭の仕事は退屈でそれほど報いのあるものではない。それが家庭のストレス度を高めているのではないか」と論じている。 「家庭の仕事を退屈で報いがない…と表現してしまうことは、多くの主婦層に反感を持たれるでしょう。しかし、結局のところいまだに多くの男性(そして女性も)がケア労働をそのように評価している現実が、ケア労働のストレス性をより高めているのではないでしょうか。改めて家事や育児、介護に対する評価を見つめ直さないことには、社畜化の改善は見込めないと思います」 「社会を支えるのは市場労働」という価値観が根底にある限り、ケア労働が本当の意味で評価されることはない。日本のサラリーマンの社畜化は、ケア労働への低評価と表裏一体のようである』、「社畜でいたがる」のが日本人だけでなく、アメリカ人にもそうした傾向があるというのは、初めて知ったが、興味深い指摘だ。

第三に、三井住友アセットマネジメント 調査部が12月15日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「武田薬品、ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/188584
・『大型買収、国境や系列を超えた提携、主力事業からの撤退などが活発化・・・海外企業では、携帯電話市場で圧倒的なトップシェアを誇っていたノキアがスマートフォンへの対応に遅れると、主力事業である携帯電話端末事業を売却するなど、事業再編が経営戦略の根幹の一つとなっています。 一方、国内企業は中長期的な視点から、各種事業を抱え続け、再編の対象になるのは主に赤字事業にとどまっていました。ただ今年は、社運を賭けた大型買収、国境や系列を超えた提携、かつての主力事業からの撤退などが増加しています。こうしたことから日本企業にとって今年は特筆すべき年となり、株式市場の関心も高まっています。 背景には従来ほど経済の高成長が期待できないことや海外企業との競争が激化したこと、技術革新により商品のライフサイクルが短期化したこと、物言う株主など投資家からの企業価値向上に対する要求が強まったことなどがあります。政府は昨年4月から事業を切り離した場合には税金がかからない「スピンオフ税制」を導入して事業再編を後押ししています。 そこで今回は、特に市場へ強いインパクトを与えた事業再編の事例を振り返ると同時に、来年の展開について見ていきたいと思います』、確かに、日本企業のM&A戦略は変化しつつあるようだ。
・『武田薬品工業、ルネサスエレクトロニクスなどが社運を賭けた大型買収を実施  今年は日本企業でも、規模の拡大、海外開拓、新技術などを狙い、社運を賭けた大型買収に踏み切る事例がみられました。過去の企業買収を見ると必ずしも成功確率が高いとは言えませんが、海外企業が合併や企業買収などを通じて企業規模を拡大していく中、対抗手段として買収に踏み切る企業は今後も増加すると考えられます。 株式市場の関心は高く、本業との補完効果はあるか、買収後は投資に見合う利益を長期的に生み出せるか、買収価格は適正かなどに注目が集まっています。今年、こうした動きをした企業には武田薬品工業、ルネサスエレクトロニクス、カルソニックカンセイなどがあります』、「過去の企業買収を見ると必ずしも成功確率が高いとは言えません」と軽く指摘されているが、これはやはり大きな問題だろう。
・『武田薬品工業が約6.8兆円と国内最大規模の企業買収を実施  今年、特に注目を集めたのは医薬品業界で、超大型買収とノーベル賞受賞により自社開発品が脚光をあびました。 武田薬品工業は5月に、アイルランドの製薬大手シャイアーを買収することで合意しました。買収額は460億ポンド、その時点で約6.8兆円の大型買収となります。 時価総額が3.3兆円前後の武田薬品工業にとって、買収に伴うつなぎ資金の借り入れが、3兆円程度、増資4兆円による大幅な株式の希薄化を伴う今回の決定は、文字通り社運を賭けた買収となります。 12月5日、この買収の是非を問う臨時株主総会を開かれ、買収に使う武田株を新たに発行する議案が3分の2以上の賛成を受けて可決されました。創業家やOBら一部株主はリスクが大きいと反対を表明していましたが、機関投資家などが成長戦略として支持しました。また、年間180円の配当を強調して一般株主の支持を得ました。 買収案はシャイアーでも承認され、買収額は460億ポンド、日本円換算で約6.6兆円(株主総会開催時点)と、国内企業としては最大規模となるM&A(合併・買収)が成立しました。単純合算で連結売上高3兆5000億円と世界8位の製薬会社となる見込みです。 この買収により、シャイアーが持つ高収益の希少疾患治療薬と薬価が高額で高収益な米国事業を取り込み、グローバル化を進めます。買収合意後の株価は軟調に推移しましたが、巨額投資に見合う利益を長期にわたり生み出せるかが今後のポイントとなります』、武田薬品のシャイアー買収は、「文字通り社運を賭けた買収」だが、こんな決断が出来たのも、外国人社長がいたからこそなのだろう。
・『ノーベル賞受賞の研究を活用し、小野薬品工業は自社開発新薬を開発  一方で国内企業の自社開発品も注目を集めました。10月1日、ノーベル生理学・医学賞が発表され、京都大学の本庶佑特別教授と米国のジェームズ・アリソン教授が受賞しました。人の免疫を抑制する効果を持つ「PD-1」という分子を発見し、新たながん治療法開発へと道を開いた功績によるもので、これを応用したのが小野薬品工業の「オプジーボ」です。 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブが共同開発した「オプジーボ」は、20年以上の時間と資金を費やし、京都大学と共同研究により2014年に発売へと至りました。発売当初の極めて高い薬価はその後引き下げられ、患者数の多い肺がんや胃がんなどへの保険適用が拡大したことで、大型新薬となりました。今後も医薬品業界では、買収による薬品ポートフォリオの拡充か自社開発かのどちらの方向をめざすか、戦略は分かれるとみられます』、「オプジーボ」への小野薬品工業の貢献については、ここでは評価しているが、本庶佑特別教授は厳しい見方をしているようだ。
・『ルネサスエレクトロニクスは買収で車載用&通信用半導体の強化へ  半導体大手のルネサスエレクトロニクスは、自動運転やEVなど市場の拡大が期待される自動車向け半導体と、市場拡大中のIoT 分野 などを成長戦略の柱として経営資源を集中する戦略を進めています。 その一環として9月11日にインテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を約67億ドル(約7330億円)で全株式を取得し、完全子会社とすると正式に発表しました。 IDTはあらゆるモノがネットにつながる「IoT」の中核技術である通信用半導体の設計・開発に強みがあり、工場を持たず設計開発に特化したファブレス企業です。ルネサスエレクトロニクスは自動車や家電を制御するマイコンで世界トップの市場シェアを握りますが、IDTの技術を活用しIoT時代に必要な通信用などの競争力を強化します。実現すれば日本の半導体メーカーの買収額として過去最大級となります。 10月22日、自動車部品大手のカルソニックカンセイは、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の自動車部品部門のマニエッティ・マレリの買収を発表しました。買収金額は約8000億円の大型買収となります。 この背景には、次世代技術の研究開発に多額の資金や多様な技術を要することに加えて、電気自動車では不要となるエンジンや排気関連の自動車部品企業の生き残りへの強い危機感があります。同社は日産自動車の系列解消に伴い、米投資ファンドの傘下に入りました。エンジン回りの部品が中心でしたが、今回の統合により、自動車部品の総合企業として生き残りを目指します』、私は、電気自動車化が進むなかで、旧来型の部品企業を合併する意味が果たしてあるのか、と疑問も感じるが、もう少しこうした点にも触れてほしかった。
・『中核事業も聖域なく事業再編へ 収益力の底上げに臨む  海運業界は日用品、工業製品などを運ぶコンテナ船と鉄鉱石、石炭などを運搬する不定期船などが主力事業ですが、過剰投資による船腹過剰からコンテナ、不定期船ともに運賃が大幅に下落。不定期船の運賃指数であるバルチック海運指数は、2007~8年の高値から一時90%以上下落しました。 これを受けて今年4月、日本郵船、商船三井、川崎汽船の大手3社がコンテナ船事業を本体から切り離して、世界第6位のシェアを持つ「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」を設立しました。新会社の立ち上がりは苦戦していますが、中長期的に収益力の底上げに繋がることが期待されます。 総合重工各社は、かつての主力事業ながら厳しい環境が続いた造船事業について、分社化や他社との提携などによる存続を模索してきましたが、ようやく抜本的な対応に踏み切りました。8月10日、IHIが造船の拠点である愛知工場を完全閉鎖したのです。30万トン級の大型造船所での完全閉鎖は日本で初めてとなります。旧三井造船の造船事業を引き継いだ三井E&S造船は、千葉工場での商船建造を停止、事実上商船建造から撤退します。同様に三菱重工業が長崎工場での建造を半減し、橋梁など土木構造物などにシフトしました』、後ろ向きの再編にも意味があるとはいえ、評価が甘過ぎる印象だ。アセットマネジメントとして、当該株式も保有しているので、余り厳しいことは指摘できないのだろうか。
・『系列、国境を越えた提携が加速 グーグルなどに対抗可能な日本企業連合が誕生  自動車業界に変化をもたらしているのはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の動きです。これらを巡って技術開発競争や提携の動きなが加速しています。 10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクグループで新しい「モビリティサービス」の構築に向けて戦略的提携に合意し、両社で「モネ・テクノロジーズ」を設立することを発表しました。これにより、グーグルなどの陣営に対抗できる日本企業連合が誕生します。 今回の提携で注目なのは、トヨタ自動車がKDDIの母体の一つである日本移動通信の設立にかかわり、今もKDDIの大株主である中で、ソフトバンクと提携したことです。これは開発競争が従来の関係を超えた総力戦の段階にきたことを意味します。移動中に料理を作って宅配するサービスや、移動中に診察を行う病院送迎サービス、移動型オフィスなどを届けることなどを目指す方向で、将来はグローバル市場への提供も視野に入れているとしています。 ソフトバンクグループは既に ライドシェア大手のウーバー、シンガポールのGrabや車載用に期待される半導体企業などに対し大規模に出資しています。今回の提携で両社の協調姿勢が強まれば、トヨタ自動車が自動車の開発、生産、販売、メンテナンスにおける強みや自動運転技術のソフト、ハード両面での技術力を実際の開発や商業化により活用しやすくなると考えられます。ソフトバンクグループと協業する事で、グローバルに付加価値を生み出せる可能性が高まったとみられます』、この評価もやや甘い印象だ。
・『事業再編の加速が利益率の向上や株式市場の活性化につながることを期待  来年も株式市場では、加速が予想される大型買収、提携、撤退などに注目が集まるとみられます。特に買収される側の企業にはプレミアム(時価以上の株価)がつくことが多く、注目が高いと思われます。 注目される業界としては、例えば自動車関連、小売り関連などがあげられます。自動車業界に変化をもたらすCASEを巡って完成車、及び自動車部品業界の再編の動きは更に加速するとみられます。 小売業は、今後少子高齢化などから国内市場の拡大があまり期待できない中、深刻な人手不足やネット販売へのシフトなどへの対応を迫られます。10月にユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)は、傘下のユニーをドンキホーテホールディングスに売却すると発表するなど、再編の機運は高まっています。競争の厳しいGMS(総合スーパー)、食品スーパー、アパレルなどが注目されます。 こうした取り組みにより、欧米に比べて低いと言われる日本の生産性が向上し、経済、株式市場が活性化することが期待されます。 ※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません』、上記のように総じてやや甘い評価が目立つが、敢えて紹介したのは、最近のM&Aブームを総括的に見るためである。紹介した意味は、それなりにあったと思うが、読者の皆さんはどうだろうか。
タグ:東洋経済オンライン 郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン 河合薫 オプジーボ シャイアー 岩崎 博充 日本型経営・組織の問題点 (その6)(日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される、日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」、武田薬品 ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化) 「日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される」 油圧機器大手の「KYB」とその子会社による免震制振オイルダンパーの検査データ改ざん 「SUBARU(スバル)」の出荷前検査不正行為 「新潮社」による「『新潮45』休刊騒動」 日本大学や東京医科大学といった教育機関関係のトラブル ボクシング協会やレスリング協会のパワハラ、セクハラといった問題も浮上 問題なのはその対応に時間がかかりすぎたり、あるいは対応法が間違っていたりすることが多かったということだろう 目の前のトラブル対応に終始する日本の悪い癖 誠心誠意謝罪するのが問題解決の基本 結局はガバナンスの欠如とコンプライアンスの概念失墜 コンプライアンス=法令遵守 コンプライアンス=社会的要請に応えていくこと 「日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」」 外国人が驚愕する日本人の「居眠り」 『残念な職場』 日本人の平均睡眠時間は7時間24分。欧米は軒並み8時間前後を記録 7時間半以下を記録したのは、日本とシンガポールだけ 日本人の精神はオリンピックに通じている。つまり『参加することに意義がある』のだ」 日本人は家族で過ごす時間は欧米の半分以下 日本人は、コース料理が一般的なフランスやイタリア並みに食事時間が長いことも判明 家族の時間を奪う“マラソンドリンキング“ 家族と過ごす時間が少ないのに食事時間が長い傾向にある理由の一つには、「仕事終わりの一杯」が関係 marathon drinking 食事時間をダラダラと延長させ、家族と過ごす時間を奪い、睡眠時間を削っている 社畜でいたがる日本人 背景には家事軽視の社会通念 日本と同様にケア労働が軽視されがちな社会であるアメリカでは、家庭より職場にいるほうがストレスを感じていない、という研究結果が判明 三井住友アセットマネジメント 調査部 「武田薬品、ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化」 大型買収、国境や系列を超えた提携、主力事業からの撤退などが活発化 武田薬品工業、ルネサスエレクトロニクスなどが社運を賭けた大型買収を実施 過去の企業買収を見ると必ずしも成功確率が高いとは言えません 武田薬品工業が約6.8兆円と国内最大規模の企業買収を実施 約6.8兆円の大型買収 文字通り社運を賭けた買収 ノーベル賞受賞の研究を活用し、小野薬品工業は自社開発新薬を開発 京都大学の本庶佑特別教授 ルネサスエレクトロニクスは買収で車載用&通信用半導体の強化へ 中核事業も聖域なく事業再編へ 収益力の底上げに臨む 系列、国境を越えた提携が加速 グーグルなどに対抗可能な日本企業連合が誕生
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ベンチャー(その4)(バイオベンチャー「そーせい」が迎えた大試練 実験サルにがんが発生 治験中断の誤算、「起業家うつ」増加の実態 メンタルヘルスを損なう6つの事情、「起業家が育たない日本」はまともな社会だ 「ジョブズとトランプの価値観」が実は同じ理由) [技術革新]

昨日に続いて、ベンチャー(その4)(バイオベンチャー「そーせい」が迎えた大試練 実験サルにがんが発生 治験中断の誤算、「起業家うつ」増加の実態 メンタルヘルスを損なう6つの事情、「起業家が育たない日本」はまともな社会だ 「ジョブズとトランプの価値観」が実は同じ理由)を取上げよう。

先ずは、昨年9月26日付け東洋経済オンライン「バイオベンチャー「そーせい」が迎えた大試練 実験サルにがんが発生、治験中断の誤算」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/239264
・『日本を代表するバイオベンチャーが岐路に立たされている。そーせいグループは9月18日、アルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症(DLB)などの治療候補薬で行っていた臨床試験(治験)を自主的に中断すると公表した。 アメリカでは提携先の製薬大手アラガン(本社・アイルランド)が2017年からAD向け適応の治験第1相を開始、日本国内ではグループの中核子会社ヘプタレス・セラピューテックが、DLB向け適応の治験第2相を開始したばかりだった』、こうしたことは、バイオベンチャーではありがちだ。
・『最大3600億円の超大型提携  そーせいにとって、この薬は極めて重要だ。そーせいは2016年4月、ほかの創薬候補を含めて中枢神経系疾患分野でアラガンと大型提携を結んでいる。いずれも同年2月に買収したヘプタレスの技術を活用したものだった。 その内容は、アラガンにグローバルでの開発・販売権を与える代わりに、契約一時金137億円、化合物のタイプ別に開発進捗に応じたマイルストン収入最大730億円、さらに販売目標の達成に応じたマイルストン収入として最大で2743億円(発表時の換算レートでの計算値)が入るというもの。 想定収益合計は最大3600億円に達し、ほかに売上高に応じた最大2ケタの段階的ロイヤルティの受領権もある。日本のバイオベンチャーとしては破格だった。契約一時金はすでに計上済みで、2017年3月期のそーせいの収益を一気に膨らませた。この契約によりバイオベンチャー銘柄としての同社の注目は一気に高まって、株価は一時、6500円を超えた。 今回の創薬候補は、アラガンにライセンスアウトした3つの化合物タイプの1つにすぎないが、日米欧で治験(欧州は現在治験後期第1相を完了)段階に進んでいて、アラガンと提携した開発プロジェクトの先陣を切っていた。 これまでアラガン関連の開発は順調に進捗しているとみられていた。それが突然の自主中断。なぜ中断せざるをえなくなったのか。 その“犯人”はカニクイザルだった。 人に対する治験と並行して、そーせいは重篤な副作用がないかなどの安全性を確認するため、動物を使った長期毒性試験を実施していた。ラットなどの試験では重篤な有害事象が起きなかったが、今回、カニクイザルに毒性所見が見つかり、希少な腫瘍(がんや肉腫)が発生した』、ラットなどでは大丈夫でも、サルでは毒性だ出たというのは、ありそうな話ではある。それにしても、アラガンとの契約で、「段階的ロイヤルティの受領権」とはいかにも製薬業界らしい手法だ。
・『不十分な説明内容  そーせいはただちに原因究明に入るとともに、人向けの治験を中断。リリース発表当日に、緊急でこの事案に関する投資家向けオンライン説明会を実施した。 当然と言えば当然だが、人の安全性の確保を第一優先にしたこと、動揺する市場や投資家への説明を急いだことは評価されるべきだろう。ただ、その説明の内容が極めて不十分だった。 がんが発生した複数のサル向けの毒性試験での投与期間は9カ月。治験での人への投与期間より長い。薬の用量も人に対するものよりも多かった。 会社側は「9カ月という投与期間の終わりに近い時期になって毒性が見つかった」とも説明している。こうした説明からは、投与期間の長さや用量の多さががんを引き起こしたのではないか、という疑問が起きる。 これに対し、そーせいは「原因究明に向けアラガンなどと調査を開始した」と語るのみで、有毒事案の中身など詳細な説明は避けている。いつからどのくらいの期間、どれだけの用量を欧米などの治験で人に投与したのかといった極めて基本的な情報も含めて、「アラガンとの契約上の守秘義務」を理由にそーせいは口をふさぐ。 これまでの治験では人に重篤な有害事象は出ていないと会社は強調しているが、単に薬の投与期間が短いから出ていないだけなのかもしれない。長期に薬を使い続ける必要性がある認知症治療薬の現実を考えれば、現時点では少なくともその懸念は持たざるをえない。 「ほかの薬の開発やプロジェクトへの影響はどうか」。説明会では、今回の事件がほかの開発薬に広がるのではないかという懸念を持つ投資家からの質問が相次いだ。「いつになったらよいニュースが聞けるのか」など、会社へのいらだちを素直に表す意見も飛び出した。 「1つの薬だけでなく、当社にはたくさんのプロジェクト、多くの有望なポートフォリオがある」。ピーター・ベインズ社長CEOは懸命に投資家の懸念払拭に努める』、問題をいち早く公表した姿勢は評価できるが、契約先との守秘義務を口実に十分な説明が出来ないというのは問題だ。必要であれば、契約先と交渉して守秘の一部を解除してもらうことも可能な筈だが、契約先が最大のスポンサーとあっては遠慮したのかも知れない。
・『治験再開には最低6カ月かかる  確かに同社は日本のバイオベンチャーには珍しく豊富な開発候補品を持つ。今回の説明会資料によれば、治験段階の候補品が6つ、その一歩手前の前臨床の薬が6つ、さらにその手前の探索段階の薬が5つという具合。昨年末に海外で約210億円を調達しており、開発資金も当分は十分にある。 ただ、前述のとおり、今回の開発薬がアラガンとの大型提携の中で最先行していただけに、その治験中断の影響は小さくない。ベインズCEOは「6~12カ月以内に治験を再開したい」と語ったが、今後、原因究明を本格化する段階であり、現時点では治験再開のメドは立っていない。最悪の場合、「治験が再開できない可能性もある」(ベインズCEO)。 今回の治験中断が、関連する資産やのれんの減損に自動的につながるわけではないが、治験中止となれば、そーせいの財務に大きな影響を及ぼす可能性もある。 発表を受けて株価は大きく調整した。現在では1200円前後と、ピーク時の2割程度にすぎない。かつてバイオベンチャーの中で断トツだった時価総額は、ペプチドリームやサンバイオに大きく水を空けられており、投資家の目も厳しくなりつつある。 「こういうことはこの業界では日常茶飯事。会社が強靭になるためのよいチャンス」。説明会の最後に創業者の田村真一会長はそう語った。その言葉どおり、雨降って地固まるとなるのか。悲願である世界的バイオ会社に脱皮できるか、大きな正念場にそーせいは差し掛かっている』、なんとか踏ん張って欲しいところだ。

次に、株式会社cotree 代表取締役の櫻本真理氏が1月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「起業家うつ」増加の実態、メンタルヘルスを損なう6つの事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/191198
・『古くからの友人と、カフェで偶然出会った。2年は連絡をとっていなかったと思う。1年ほど前、彼は長く勤めた大企業を辞めて自分の会社とサービスを立ち上げた。当時はいくつものメディアに取り上げられ、注目を浴びているのをSNSで見かけていた。それがこのところ、SNSでも友人の集まりの場でも、姿を見かけないな、と思っていたところだった。 向かいの席に座った彼は「久しぶりだねー」と笑顔をつくったが、口元がひきつっているのが分かった。カップを握る手も震えていた。もともと明るくて気さくな彼の、落ち着かない様子に違和感を持ち、少し心配になった。 「大丈夫?調子悪そう」と聞くと、ぎこちなく笑いながら「会う人みんなにそう言われる」と答えた。 「最近寝ても寝た気がしなくて、それに頭が全然働かない」と彼は話し始めた。 聞くと、彼の事業はスタート当初こそ注目されたものの、思ったように収益化は進まなかったという。追加の資金調達のめどがつかないまま、資金は底をつきそうになっていた。運転資金を稼ぐために日銭稼ぎのための業務を請け負うが、それが彼の体力と睡眠時間を奪っていた。ミスが増え、顧客からのクレームも増え、仕事を楽しいとは思えない。うつむいて絞り出すように話す様子からも、精神的に限界にきているのだとすぐに分かった。 「いったんゆっくり休んでみるという選択肢はないの?病院にも行ってみたほうが」と言う私に、彼はこう返してきた。 「できることなら休みたいし…もうやめたい、とすら思ってしまう。でも今休んだら会社は立ち行かなくなる。そうしたら失敗者としての烙印を押されてしまって、きっともう夢をかなえることはできなくなる。もう一度立ち上がれる自信がない」 彼はその数ヵ月後、事業をたたみ、実家に帰ったと聞いた。 このエピソードは、個人が特定されないように複数の事例をもとに改変を加えたものである。だが、起業家うつの、典型的な事例のひとつといっていいだろう』、「運転資金を稼ぐために日銭稼ぎのための業務を請け負うが、それが彼の体力と睡眠時間を奪っていた」とは、ありそうな落とし穴だ。
・『増える起業家、知られざる苦悩  起業がブームだ。東京都は、現在5%程度の都内開業率を2024年に10%台にまで引き上げるべく、起業家支援のための予算を割いている。キャッシュリッチな大企業も相次いでアクセラレーション(起業家育成)のプログラムやCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)の組成を通じてベンチャー投資や支援の動きを加速させており、起業家支援のためのエコシステムは広がり続けている。 有望なベンチャーに投資したいという資金はあふれ、投資家同士が獲得競争をしている。そんな中、むしろ投資家が投資したいがために「起業させる」ようなケースもあると聞く。 既存産業の成長の鈍化、イノベーションの必要性、テクノロジーの進歩、働き方の多様化。「起業家を増やす」ことは社会が向かいうる当然の方向性である』、確かに最近のベンチャーブームはバブル的色彩すら帯びてきたようだ。
・『そんな中、このようなデータがある。 「起業家の37%が、気分障害・不安障害の基準を満たしている(一般人の7倍)」「起業家の49%が、生涯に一度はメンタルの問題を抱える」 筆者が運営する会社(株式会社cotree)では、従来からオンラインで臨床心理士等の専門家との相談を行えるオンラインカウンセリングサービスを運営しており、起業家からの相談も多く受けてきた。その中で見えてきたことは、言い古されてきたかもしれない「経営者の孤独」とメンタルヘルスの現実だ。起業家はメンタルヘルスの問題を抱えやすく、その問題を持続させやすい。そこには単純ではない、起業家特有のいくつかの要因が関係している』、起業家のメンタルヘルスの問題はこれまで殆ど取り上げられることがなかったが、確かに重要な問題のようだ。
・『【要因1】経営者という責任と不確実性の大きさ  起業家が抱える外的ストレス要因は大きい。利害関係者が増えれば増えるほど、精神的な重圧は増える。顧客はもちろんのこと、雇用をしていれば従業員、投資を受けていれば投資家に対して、負うべき責任は拡大していく。事業成長の鈍化、資金不足、組織内のいざこざ、製品へのクレーム、想像もしないトラブルなど、あらゆる「ハードシングス」が起こる。 そしてそれだけのハードシングスを乗り越えたとして「成功する確約」はどこにもないことも多い。来月どうなるか分からないという不確実性もまた、精神的負荷を高めることになる』、その通りだろう。
・『【要因2】裏切りからの孤独、他者への不信  経営を続ける中で、信頼していた役員や従業員への期待が裏切られたり、同じ船に乗る仲間だと考えていたメンバーが冷たく立ち去ったりといった場面と出合うことは多い。そうした経験から傷つきを重ね「だんだん他人に期待をしなくなった」と経営者が話すのを聞くことがある。 他人に依存しない姿勢は経営者の「強さ」のようにも見えるが、仲間を巻き込みながらも「本当に信頼できるのは自分だけ」という孤独感と裏腹でもある』、経営が上手くいかなくなると、手の平を返したように去っていくというのも、人間社会の縮図だろう。
・『【要因3】夫婦・家族関係の不和で孤独感が加速  弊社が運営するオンラインカウンセリングサービスにおける経営者からの相談の中で、最も多く見られる相談内容は「夫婦関係、家族関係」であった。経営者、特に立ち上げ初期の起業家にとっては、仕事に割く心身のエネルギーが大きいために、家庭の優先順位が必然的に下がってしまうことは多い。また、経営者によく見られる自由への志向性や合理的思考を前提としたときに、不自由で親密な関係性を維持することが難しくなってしまう場合もある。 夫婦・家族関係が不和であるということは、すなわち「家に帰っても癒される場所がなく、孤独である」ということだ。これが職場における孤独感に拍車をかけることがある』、「「家に帰っても癒される場所がなく」というのは悲惨だ。
・『【要因4】起業家のADHD生涯罹患率は約3割  「起業」というリスクとハードシングスを伴う環境に自ら飛び込もうとする人たちには、それを可能にする「起業家ならではの性格特性」がある。フットワークの軽さや創造性、柔軟性などの性格特性は、環境に適応していれば起業家の強みとして事業の拡大を支える。 だが、それが生かせる環境や他者との関係性がなければ、それはむしろ社会的不適応となり、精神的不安定さや周囲とのあつれきとなる。起業家的な特性とメンタルの疾患は、紙一重のところにあるのだ。 UC Berkeleyの調査によれば、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の生涯罹患率は起業家で29%、一方の対照群で5%。躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害は起業家で11%、対照群で1%。薬物やアルコールなどへの依存は、起業家で12%、対照群で4%。いずれの精神疾患においても、起業家の罹患率は著しく高い(グラフ参照)。 昨今国内外のメディアで目にすることもある「起業家の自殺」は、支援者にとっては最も触れたくないであろう出来事であろう。だが、起業家に多いとされる双極性障害は、精神疾患の中でも最も自殺のリスクが高い。もともとそうした気質を持った起業家が、高いストレスにさらされた結果発症し、薬物・アルコールへの依存や衝動性などと相まって自殺既遂に至ってしまうことは、必然的に想定しうる不幸なのだ』、「起業家的な特性とメンタルの疾患は、紙一重のところにある」、UC Berkeleyの衝撃的な調査結果が如実に物語っているようだ。
・『【要因5】休む、転職という「逃げ道」がない  精神的負荷が高まって「もうだめだ、苦しい」となってしまったとき、一般の従業員であれば「休む」「転職する」という選択肢もある。だが、起業家は安易に「休む」「逃げる」という選択をするには、仕事が人生と結びつき過ぎていることが多い。会社の経営が起業家のカリスマ性や能力に依存している場合にはなおさらである。 だからこそ、限界まで苦しみ、逃げることができずに抱え込んでしまうことになる。経営者自身が不調や心の揺れを抑圧していることもあり、自覚したときにはもう手遅れ(病理の状態)になっているケースもある』、確かにその通りだろう。
・『【要因6】「起業家は強くなくてはならぬ」という社会の目  メンタルヘルスの問題に対する社会の目は、10年前と比べると格段に改善したとはいえ、依然として優しいとはいえない。それが「自己責任でリスクをとっている」と考えられがちな起業家のメンタルヘルスとなるとなおさらである。「メンタルが弱い起業家になんて投資しないから、起業家のメンタルヘルス問題には興味がない」と話すキャピタリストと出会ったこともある。 こうした言説がまかり通る社会で、起業家にとって自身の不安感や揺らぎを堂々と表明できる場所はほとんどない。IPOやバイアウトなどの形でEXIT(事業売却)に成功し大金持ちになる起業家の世界は華々しいが、その光の世界にたどり着く起業家はごく一部だ。その道すがら、弱さをさらけ出すことができずに「姿を見かけなくなる」起業家は多い。「失敗者の烙印」を恐れて社会に戻れなくなる者もいる』、やはり何でも相談出来る親しい友人が必要なようだ。
・『失敗や弱さを許容する社会へ  「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助氏の有名な言葉がある。「成功とは、成功するまでやり続けること」 今の社会には、失敗を許容し、成功するまでやり続けられる空気があると言えるだろうか? 起業家にとってメンタルの不調は、自身の不調だけの問題では済まない。事業成長の鈍化や組織への悪影響という形で、さらなる状態の悪化を招くこともある。それが起こる前に早期に自覚して対処することが、負のスパイラルを止めることにつながるはずである。だが、起業家特有の精神的孤立や、「弱さをみせたら成功は遠のく」「失敗したら次はない」という社会の空気感が、起業家の抱える心の問題の発見を遅らせ、再起を難しくしているのである。 メンタルヘルスの問題やリスクに対する適切な理解、対処、支え合える関係性を築いていく上で、まずは支援者、そして社会全体が起業家の失敗やメンタルのリスクを受容する姿勢が必要とされている。 2018年11月に弊社が立ち上げた起業家向けメンタルサポートサービス「escort」では、その運営にVC(ベンチャーキャピタル)をはじめとする起業家支援に関わる20社以上による協賛金が充てられ、起業家は無料でメンタルサポートを利用できるようになった。これは、支援者の立場からもこの問題を真摯に受け止め、解決に向けて取り組んでいくことへの意思表示であるともいえよう。 多様で自由な生き方が許容されるはずの時代において、「起業家としての成功」はごく一部の人たちに許されるスポットライトではなく、広く社会を照らす希望の光になるべきである。最初から成功可能性の高い「安牌」にのみコミットするのではなく、「起業」のあり方が多様化する中で起業家の失敗を受容し、不調な時期を乗り越えられるように支えることこそが、支援者ひいては社会としてのあるべき姿なのではないだろうか』、説得力ある主張で、その通りだ。筆者が立ち上げたメンタルサポートサービスに、VCなど「20社以上による協賛金」とは、世間の見方も変わりつつあることを示唆しているのかも知れない。

第三に、評論家の中野 剛志氏が2月9日付け東洋経済オンラインに寄稿しつぁ「「起業家が育たない日本」はまともな社会だ 「ジョブズとトランプの価値観」が実は同じ理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/264149
・『アメリカという国家の価値観がどのように出来上がってきたのか。500年の歴史からひもといた『ファンタジーランド狂気と幻想のアメリカ500年史』がこのほど刊行された。アメリカを支えてきた価値観はどこから来て、どこへ行くのか。『[新版]〈起業〉という幻想アメリカン・ドリームの現実』の共訳者でもある筆者が読み解いていく』、意外性があり面白そうだ。
・『現実と幻想の区別がつかない国民性  そうだろうなと薄々感じていたことなのに、それを明快に論証されると、かえって驚くようなことがある。 『ファンタジーランド』とは、まさにそういう本だ。 本書のテーマは、次のように要約される。 「トランプ政権の『ポスト真実』『もう一つの事実』は、一般的には、不可解で常軌を逸したアメリカの『新たな』現象だと考えられている。だがこれは、アメリカ史全体を通じて(実際にはアメリカ史が始まる前から)受け継がれてきた意識や傾向から当然導き出される結果なのである」(『ファンタジーランド 上』、p17) トランプ政権を生み出したのは、アメリカ人の国民性である。その国民性とは、現実と幻想の区別がつかないということだ。 驚くなかれ、アメリカとは、次のような世論調査の結果が出る国なのだ。 3分の2が、「天使や悪魔がこの世で活躍している」と信じている。 3分の1以上が、地球温暖化は、科学者や政府やマスコミの共謀による作り話だと信じている。 3分の1が「政府は製薬会社と結託し、がんが自然治癒する証拠を隠蔽している」「地球外生物が最近、地球を訪れた」と信じている。4分の1が「ワクチンを接種すると自閉症になる」「魔女は存在する」と信じている。 聖書は主に伝説と寓話であると思っている人は、5人に1人しかいない。 著者のカート・アンダーセンは、この現実と幻想の区別ができないアメリカ人気質を、建国以前のプロテスタントの入植までさかのぼっている』、「現実と幻想の区別ができないアメリカ人気質」は、実にユニークな指摘で、言われてみれば頷ける部分もある。
・『「ポスト真実」の根源は1960~1970年代の若者文化  もっとも、この気質が本格的に花開いたのは、1960年代から1970年代である。 リベラル派(左派)は、この時代の若者文化を理想視し、いまだにその反体制的な価値観を信じている。そして、保守派(右派)のトランプ政権が振りまく「ポスト真実」に怒りの声を上げている。 しかし、1960~1970年代の若者文化の価値観とトランプ政権の「ポスト真実」とは、同根であることをアンダーセンは暴いていく。 (1960年代の平等の拡大によって)一人ひとり誰もが自由に、自分の好きなことを信じ、好きなものになれるようになった。こうした考え方を突き詰めていけば、競合するあらゆる考えを否定することになる。もちろん個人主義は、アメリカが生まれ、幸福の追求や自由が解き放たれたときから存在する。以前から、『夢を信じろ』『権威を疑え』『好きなことをしろ』『自分だけの真実を見つけろ』と言われてきた。だがアメリカでは1960年代以降、法律が一人ひとりを同一に扱うだけでなく、一人ひとりが信じていることはどれも一様に正しいというところまで、平等の意味が拡大された。絶対的な個人の自由を容認するのがわが国の文化の原則となり、国民の心理として内面化された。自分が信じていることは正しいと思っているのであれば、それは正しい。こうして個人主義は、自己中心主義となって蔓延した」(『ファンタジーランド 上』、p314~315) 権威を疑い、体制に逆らい、自由と平等を絶対視した結果、リベラル派は「一人ひとりが信じていることはどれも一様に正しい」という相対主義に行きついた。 しかし、リベラル派の「権威を疑え」「自分だけの真実を見つけろ」という相対主義を徹底すれば、客観と主観、あるいは現実と幻想の区別がなくなっていくのも当然であろう。リベラル派はトランプ政権を批判するが、「ポスト真実」「もう一つの事実」といった相対主義を振りまいてきたのは、本をただせば、リベラル派なのである』、「960~1970年代の若者文化の価値観とトランプ政権の「ポスト真実」とは、同根である」との指摘には、心底驚いた。
・『自由放任主義と「みんな子ども」症候群  さらに、リベラル派の相対主義は、次の2つのアメリカ的な気質にもつながっている。 その1つは、極端な所得格差や巨大企業の市場独占を許容する「自由放任主義(新自由主義)」である。 「自分だけの真実がある」という相対主義は、「自分の好きなことをしていい」という自己中心的な個人主義を正当化する。それは、自己表現にふけったりマリファナを吸ったりする自由だけでなく、資本家が規制や税から逃れたり、従業員の400倍の所得を得る自由も許容する。自由放任主義は、リベラル派の相対主義と個人主義の帰結なのだ。 もう1つは、アンダーセンの言う「『みんな子ども』症候群」である。 相対主義を徹底すると現実と幻想の区別がなくなるが、現実と幻想の区別をしないということは、幼稚化するということでもある。幼児は現実と幻想をごっちゃにするが、大人になるにつれ、その分別ができるようになる。ところが、リベラル派の相対主義は、現実と幻想の未分化を是とする。要するに、いつまでも子どものままでいることを称揚するのだ。 1960~1970年代のリベラル派の価値観が育てた個人主義、自由放任主義そして「みんな子ども」症候群。 このアメリカというファンタジーランドを象徴する現象が、日本人が憧れてやまないシリコンバレーの起業家である。 そもそも、アメリカの起業家のイメージは、多くの「幻想」によって構成されている。日本人、そしてほかならぬアメリカ人自身が信じている起業家の「幻想」は、こんな感じだろう。 シリコンバレーでは、才能にあふれた若者が途方もない夢を抱き、その夢を実現するために、1人あるいは数名で起業する。アメリカでは、そうしたスタートアップ企業が続々と登場し、それがアメリカ経済のダイナミズムを生んでいる。とくに、1990年代のIT革命は、そうした若者が起業して夢を実現するチャンスを大きく拡大した。 このような起業家のイメージを象徴する存在が、例えばスティーブ・ジョブズである。 しかし、アメリカの起業家の「現実」は、こうである(『真説企業論』)。
 + アメリカの開業率は下落し続けており、この30年間で半減している(「日本経済『長期停滞』の本当の原因」図1)。
 + 1990年代は、IT革命にもかかわらず、30歳以下の起業家の比率は低下ないしは停滞しており、特に2010年以降は激減している(「ウォールストリート・ジャーナル」記事)。
 + 一般的に、先進国よりも開発途上国のほうが起業家の比率が高い傾向にある。例えば、生産年齢人口に占める起業家の比率は、ペルー、ウガンダ、エクアドル、ベネズエラはアメリカの2倍以上である。
 + アメリカの典型的なスタートアップ企業は、イノベーティブなハイテク企業ではなく、パフォーマンスも良くない。起業家に多いのは若者よりも、中年男性である(『[新版]〈起業〉という幻想』)。
 +1990年代後半から2000年代前半(IT革命の前後)、シリコンバレーにおけるハイテク産業の開業率は全米平均をやや下回り、シリコンバレーを除いたカリフォルニア州の開業率の3分の2程度である(CESifoサイト)』、リベラル派の相対主義が「自由放任主義と「みんな子ども」症候群」を生んだとの指摘もユニークで参考になる。「アメリカの起業家の「現実」」は、我々日本人のイメージとは大きくかけ離れたものだ。
・『GAFAを生み出した「ファンタジーランド」  こうした「現実」にもかかわらず、なぜ起業家という「幻想」は消えないのか。それは、アメリカ人が、現実と幻想の区別ができないし、したくもないという気質をもつからである。 「シリコンバレーで、有能かつ幸運な一握りの人間がまれに巨万の富を得て、それに刺激を受けたほかの人たちが信じ願い続ける。個人の起業家が大成功を収める可能性はとてつもなく小さい。宝くじと同じだ。それに、テクノロジーで大当たりする可能性も低い。だが、1980年代と90年代に驚異的に大金持ちになった第一世代のデジタル起業家、ゲイツ、ジョブズ、ベゾスは、中年でも比較的若いうちに億万長者になった。今世紀、バブルがはじけて暴落が起きる前夜に成功した若きデジタル起業家は、30歳(グーグルのラリー・ペイジ)、25歳(スナップチャットのエヴァン・シュピーゲル)、23歳(フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ)で億万長者になった。これが夢をさらに大きくした。金銭的に大成功を収めるテクノロジー関係のスタートアップを指す新しい用語は何か?『ユニコーン』だ。子どもだけが信じる想像上の生き物である」(『ファンタジーランド 下』、p337~338) 大企業組織に立ち向かう個人の起業家は、反体制的な個人主義の理想に合致する。 各国の規制や税から逃れる寡占的な巨大IT企業(いわゆるGAFA)は、「自分の好きなことをしていい」という自由放任主義の産物だ。 そのGAFAが提供するのは、現実と幻想の区分をあいまいにするデジタル技術であり、「自分だけの真実」が見つかるSNSである。 成功する起業家の若さが強調されるのは、「みんな子ども」症候群の症例だろう。次の症例も同じである(最近、日本でも、同じような症例を見せる痛々しい企業が増えてきているが) 「現代的でクールなオフィスでは(カリフォルニアでは特に)、管理職も従業員も子どものような服装をしているだけではない。職場に、スリンキーやミスター・ポテトヘッドなどのおもちゃ、テーブルサッカーや『HALO(ヘイロー)』などのゲームが完備されている。1990年代になると、職場でよく『楽しいかい?』と尋ねられるようになった。それが、仕事に満足しているかどうかを尋ねる標準的な言葉となったのである」(『ファンタジーランド 下』、 p29) ここでも、スティーブ・ジョブズは象徴的である。 若き日のジョブズは、1960~70年代の若者文化(ヒッピー文化)の影響を強く受け、薬物を使用してハイになり、幻覚を見ていた。晩年、膵臓がんを患ったジョブズは、すぐに外科手術を受けていれば治癒する可能性があったにもかかわらず、フルーツジュース、鍼、薬草療法、インターネットで見つけた治療法、霊能者に頼っていたという(『ファンタジーランド下』、p136~137)。 このように、起業家のイメージは、徹頭徹尾、アメリカ的=ファンタジーランド的なのである。だから、アメリカ人たちは、起業家という「幻想」から離れられないのである。 そもそも、「アメリカは山師、起業家、あらゆる種類のペテン師によって作られた」(『ファンタジーランド 下』、p373)国なのだ。ジョブズを生んだファンタジーランドで、トランプ大統領が誕生したのは、必然だったのではないか。 「日本では、起業家がなかなか育たない」などと嘆く声が絶えないが、それも当然である。ファンタジーランドの幻想をいくら追いかけたところで、現実にはならないのだ』、「こうした「現実」にもかかわらず、なぜ起業家という「幻想」は消えないのか。それは、アメリカ人が、現実と幻想の区別ができないし、したくもないという気質をもつからである」、「GAFAが提供するのは、現実と幻想の区分をあいまいにするデジタル技術であり、「自分だけの真実」が見つかるSNSである。 成功する起業家の若さが強調されるのは、「みんな子ども」症候群の症例だろう」、「起業家のイメージは、徹頭徹尾、アメリカ的=ファンタジーランド的なのである。だから、アメリカ人たちは、起業家という「幻想」から離れられないのである」、「ジョブズを生んだファンタジーランドで、トランプ大統領が誕生したのは、必然だったのではないか」、などの指摘は、極めてユニークで、大いに考えさせられる。日本がベンチャー育成で、アメリカの真似をしようとするのは、馬鹿げたことなのかも知れない。やはり、日本には日本に合ったやち方があるのだろう。
タグ:ベンチャー 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン そーせいグループ 中野 剛志 (その4)(バイオベンチャー「そーせい」が迎えた大試練 実験サルにがんが発生 治験中断の誤算、「起業家うつ」増加の実態 メンタルヘルスを損なう6つの事情、「起業家が育たない日本」はまともな社会だ 「ジョブズとトランプの価値観」が実は同じ理由) 「バイオベンチャー「そーせい」が迎えた大試練 実験サルにがんが発生、治験中断の誤算」 アルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症(DLB)などの治療候補薬で行っていた臨床試験(治験)を自主的に中断すると公表 提携先の製薬大手アラガン 最大3600億円の超大型提携 想定収益合計は最大3600億円 ほかに売上高に応じた最大2ケタの段階的ロイヤルティの受領権もある 株価は一時、6500円を超えた 動物を使った長期毒性試験 ラットなどの試験では重篤な有害事象が起きなかったが、今回、カニクイザルに毒性所見が見つかり、希少な腫瘍(がんや肉腫)が発生 不十分な説明内容 アラガンとの契約上の守秘義務 治験再開には最低6カ月かかる 株価は大きく調整した。現在では1200円前後 櫻本真理 「「起業家うつ」増加の実態、メンタルヘルスを損なう6つの事情」 運転資金を稼ぐために日銭稼ぎのための業務を請け負うが、それが彼の体力と睡眠時間を奪っていた 増える起業家、知られざる苦悩 起業家の37%が、気分障害・不安障害の基準を満たしている(一般人の7倍) 起業家の49%が、生涯に一度はメンタルの問題を抱える 起業家のメンタルヘルスの問題 【要因1】経営者という責任と不確実性の大きさ 【要因2】裏切りからの孤独、他者への不信 【要因3】夫婦・家族関係の不和で孤独感が加速 【要因4】起業家のADHD生涯罹患率は約3割 要因5】休む、転職という「逃げ道」がない 【要因6】「起業家は強くなくてはならぬ」という社会の目 失敗や弱さを許容する社会へ 「「起業家が育たない日本」はまともな社会だ 「ジョブズとトランプの価値観」が実は同じ理由」 『ファンタジーランド狂気と幻想のアメリカ500年史』 『[新版]〈起業〉という幻想アメリカン・ドリームの現実』 現実と幻想の区別がつかない国民性 トランプ政権を生み出したのは、アメリカ人の国民性である。その国民性とは、現実と幻想の区別がつかないということだ 3分の2が、「天使や悪魔がこの世で活躍している」と信じている 3分の1以上が、地球温暖化は、科学者や政府やマスコミの共謀による作り話だと信じている 3分の1が「政府は製薬会社と結託し、がんが自然治癒する証拠を隠蔽している」「地球外生物が最近、地球を訪れた」と信じている 「ポスト真実」の根源は1960~1970年代の若者文化 1960~1970年代の若者文化の価値観とトランプ政権の「ポスト真実」とは、同根である 個人主義は、自己中心主義となって蔓延 リベラル派の「権威を疑え」「自分だけの真実を見つけろ」という相対主義を徹底すれば、客観と主観、あるいは現実と幻想の区別がなくなっていくのも当然 「ポスト真実」「もう一つの事実」といった相対主義を振りまいてきたのは、本をただせば、リベラル派なのである 自由放任主義と「みんな子ども」症候群 1960~1970年代のリベラル派の価値観が育てた個人主義、自由放任主義そして「みんな子ども」症候群 アメリカの起業家の「現実」 アメリカの開業率は下落し続けており、この30年間で半減 1990年代は、IT革命にもかかわらず、30歳以下の起業家の比率は低下ないしは停滞しており、特に2010年以降は激減 アメリカの典型的なスタートアップ企業は、イノベーティブなハイテク企業ではなく、パフォーマンスも良くない。起業家に多いのは若者よりも、中年男性である GAFAを生み出した「ファンタジーランド」 そのGAFAが提供するのは、現実と幻想の区分をあいまいにするデジタル技術であり、「自分だけの真実」が見つかるSNSである 起業家のイメージは、徹頭徹尾、アメリカ的=ファンタジーランド的なのである だから、アメリカ人たちは、起業家という「幻想」から離れられないのである
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ベンチャー(その3)(日本人がシリコンバレーで通用しない理由、ベンツが注目!3つの単語で表す「住所」革命 世界を57兆個に分割 英国ベンチャーの威力) [技術革新]

ベンチャーについては、昨年1月19日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(日本人がシリコンバレーで通用しない理由、ベンツが注目!3つの単語で表す「住所」革命 世界を57兆個に分割 英国ベンチャーの威力)である。

先ずは、日本マイクロソフト 業務執行役員、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長の澤 円氏が昨年6月28日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日本人がシリコンバレーで通用しない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/173461
・『皆さんこんにちは、澤です。 皆さんは、シリコンバレーに対してどんな印象を持っていますか?超最先端企業が集まる場所?イノベーションの聖地?天才たちがしのぎを削る場所?といった印象でしょうか。 確かに、世界的に有名なテクノロジー企業の本社が数多く存在し、イノベーティブな世界が広がっているのは間違いないでしょう。私自身、そんな刺激的なシリコンバレーでがんばっている親しい友人が何人もおり、先日、その中の1人で、私が心から尊敬する堀江愛利さんと日本で対談する機会に恵まれました。 堀江さんはカリフォルニア大学を卒業後、IBMでキャリアをスタートさせ、その後さまざまなテクノロジー関連企業でマーケティングの仕事をしていました。そして、2013年に「Women’s Startup Lab」を創業し、女性の起業家向けのアクセラレーション(短期養成所)を立ち上げています。 多くのメディアに取り上げられたり、大規模なITイベントのキーノートスピーカーを務めたりと、非常に華々しい活躍が目立っていますが、実際の堀江さんは極めて人間くさく、そして包容力のある優しい女性です。今回は、そんな堀江さんとの対談の中で気づいた、シリコンバレーで活躍する人にあって、ほとんどの日本人に足りない力についてお話ししたいと思います』、シリコンバレー事情を日本人向けに語る上では、ピッタリだ。
・『シリコンバレーは「オープン」な場所だけれど、決して「イージー」な場所ではない  シリコンバレーとは、ご存じの通り、サンフランシスコ・ベイエリアの南にあるサンタクララバレーとその周辺地域一帯のことです。ITの巨大企業の多くがここで生まれ、今でもイノベーションの聖地として全世界から多くの人を引きつけています。 シリコンバレーのカルチャーは一言でいえば「オープン」。とにかく、どんな人に対しても門戸は開かれています。ただし、チャレンジしようとする人だけに活動が許されています。そうでない人たちに、居場所が与えられることはありません。 実のところ日本人には、「勉強するためにシリコンバレーに行く」というモードの人が少なくありません。これが一番迷惑がられる。何かを生み出すつもりがなければ、シリコンバレーでは足手まといにしかなりません。 また、シリコンバレーでは「考える」よりも「行動する」人が尊重されます。そして、「巻き込む力」も大事です。シリコンバレーで活躍しようとする人たちはとにかく「ピッチ」をたくさんするそうです。 「ピッチ」というのは「プレゼンテーション」のことで、シリコンバレー独特の表現だといいます。投資家などへのプレゼンのことを「ピッチ」と呼ぶことが多く、会議室やシアターなどで行う構えたプレゼンなどではなく、もっとカジュアルに行うイメージだそうです。 シリコンバレーで新しいビジネスを立ち上げようとしている起業家は、UberやLyftの運転手になっていろいろな人を乗せ、運転しながら乗客に片端からピッチを行ったりするとのこと。シリコンバレーでUberやLyftを利用する人の中には、数多くのベンチャーキャピタリストがいるので、チャンスをつかむ手段と生活費を稼ぐ手段の両方になるわけです。 こうやって人を巻き込んでいくことが、シリコンバレーで生き残るために必要なアクションになります。 そして、「オープンであるけれどもイージーではない」というのもシリコンバレーの特徴です。チャレンジする人はもちろん歓迎されますが、成功が約束されているわけでは、もちろんありません。 また、「一生懸命やっている」のは当たり前の話であって、そのこと自体が評価されることはありません。大事なのは、そのアイデアがどのように世の中を変え、実行するのがなぜ自分であるべきなのかを言語化できているかどうかです。それが言語化できていれば、シリコンバレーの人々が味方になってくれます。 誰もが思い付きそうなアイデアや、誰でも身につけられるスキルを武器にできるほど、イージーな世界ではありません。自分でなくてはならない「何か」を持っていることが、シリコンバレーでは求められるのです』、「日本人には、「勉強するためにシリコンバレーに行く」というモードの人が少なくありません。これが一番迷惑がられる」、というのは納得できる。起業家が「UberやLyftの運転手になっていろいろな人を乗せ、運転しながら乗客に片端からピッチを行ったりする」という超積極姿勢には、驚かされた。
・『実は「男性社会」のシリコンバレー  今回、私が堀江さんから聞いた話で非常に驚いたのが、シリコンバレーがかなりの「男性社会」だということです。ダイバーシティーの最先端という印象だったのですが、94%のベンチャーキャピタルからの投資は、男性CEOのスタートアップ企業に渡るのだそうです。そして、「女性の意見は成熟度が足りない」と言われることも少なくないそうで、だからこそ愛利さんは「Women’s Startup Lab」を立ち上げ、男性を巻き込んでいけるような女性の起業家を育てようと奮闘しています。 ただし、「なんだ、日本と同じなんだ」と思うことなかれ。シリコンバレーでは圧倒的に「チャレンジしている人たち」の数が多く、その中でライフイベントに左右されずにチャレンジし続けている男性が成功をつかんでいるだけの話です。結婚や出産によって、チャレンジが途切れがちなのは日本もアメリカも一緒ですが、チャレンジをしている人数にはやはり比較できないくらい差があります。 まず日本は、チャレンジをしようと思える土壌を作るところから始めなくてはなりません。以前から何度もこの連載でお話ししましたが、日本人は「正解は何か」を考えようとしてしまう癖があります。しかし、正解探しをしている間はチャレンジとは呼べません。チャレンジするとは、「自分でまだ解決されていない課題を見つけ、さらにその正解となるものを作る」ことだからです。そのためには、やはり「行動」が最も大事ですン』、「チャレンジするとは、「自分でまだ解決されていない課題を見つけ、さらにその正解となるものを作る」とは、言い得て妙だ。
・『プランを立てる前に実行するシリコンバレーの人々 失敗を恐れてチャレンジをしない日本人  シリコンバレーでは「ビジネスプランを持ってくるやつが現れたら逃げろ」と言われているそうです。プランを立てている間に、そのアイデアは古くなる、プランを立てるくらいならまず手を動かすなり誰かと行動を起こすなりしろ、ということだそうです。 実際、最新のシステム開発では、プランから実装までを順番に行うウォーターフォールと呼ばれる手法から、アジャイル開発とかDevOpsと呼ばれる手法にシフトしてきています。これは、早めに失敗してすぐに修正するということを可能にするアプローチです。早く失敗すれば、修正も小さくて済みます。そのためには、なるべく多くのフィードバックを多面的に得られるように、早くマーケットに出したり、ユーザーに使ってもらったりする必要があります。 今までなら「こんな出来でよくリリースしたな」というアプリケーションが、スマートフォンのストアに出ていたりするのは、まさにこういったアプローチの表れでもあります。 日本人は失敗をなるべく避けようとします。もちろん、シリコンバレーでも失敗をしたくてするわけではないでしょうけれど、失敗はチャレンジにつきものだ、という合意があるそうです。 まだまだ日本人には「石橋を叩いて渡る」という精神を持つ人が多く、たくさん時間が浪費されてしまう傾向があります。そんな日本人にもどうやって早めに失敗をさせて、それを克服して成長してもらうか、その道筋をどう作っていくか。これが今の私に必要なチャレンジなのではないか、と気づかせてもらえた素敵な対談でした』、「プランを立てる前に実行するシリコンバレーの人々 失敗を恐れてチャレンジをしない日本人」という指摘は、大いにありそうな話だ。さすがである。

次に、7月31日付け東洋経済オンライン「ベンツが注目!3つの単語で表す「住所」革命 世界を57兆個に分割、英国ベンチャーの威力」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/231492
・『過去何世紀にもわたって世界中で人々の生活の基盤となってきた“住所”の概念に、英国発のベンチャーが革命を起こそうとしている。 2013年に創業した英国ロンドンに拠点を置く「what3words(ワット3ワーズ)」は、世界中を3メートル四方の空間に分け、たった3つの単語で位置情報を表わすシステムを開発した。57兆個の空間に4万の単語を割り当てている。日本語に対応したスマートフォンアプリも今年5月に配信が始まった。 夏の休日、都内にある広大な代々木公園でピクニックをしている友人たちに合流しようとする。「池の近く」「大きな木の近く」などと言われても、わかりにくい。電話をしながらやっとの思いで会えた、という経験がある人も少なくないだろう。そんなときに、what3wordsの3単語の位置情報がわかれば、簡単に合流できる。代々木公園にある池のほとりのある場所は「あつがり・はじめ・よろしく」だ』、これは驚くほど画期的なアイデアだ。覚え易い単語3つで表すとは、心憎いばかりだ。
・『住所の仕組みは100年前で止まっていた  「スマホや車で位置情報を扱い、米アマゾンのアレクサ(のような音声アシスタント)やスマートスピーカーが普及し始めているのに、住所システムは100年前と同じ。これは変でしょう」。what3wordsのクレア・ジョーンズCCO(チーフ・コマーシャル・オフィサー)は、そう疑問を投げかける。たとえばロンドンには「チャーチロード」という道が14個あり、メキシコシティには「フアレスストリート」という道が632個もある。 住所システムのない世界の途上国には、40億人が暮らしている。2016年にいち早く提携したのが、モンゴル政府だ。遊牧民国家だったモンゴルは、多くの人々がつねに移動を繰り返すため、住所という概念がなかった。主に郵便局がwhat3wordsを活用し、郵便物の正確な配達が可能になった。物流分野ではほかにも、中東の物流最大手であるサウジアラビアのアラメックス社にシステムを提供。旧来の住所の仕組みが都市の発展に追いついていなかったという。 この革新的なアイデアに、世界的大企業も注目した。高級車ブランド「メルセデス・ベンツ」を展開する独ダイムラーである。同社は今年1月、what3wordsの資金調達に参画し、約10%の株式を取得したことを発表。今春から、ベンツの小型車「Aクラス」の新たなカーナビシステムにwhat3wordsが組み込まれている。長々とした住所を入力しなくても、3つの単語を言うだけで目的地を指定できる。 「創業当初から、われわれは“音声”を前提にシステムを設計した」と、ジョーンズ氏は明かす。what3wordsの創業メンバーたちは、人間と機械のコミュニケーションにおいて音声が主役になると見越して、3つの単語による位置情報の表現を編み出したのである。 来る自動運転時代に、ドライバーがいない“ロボットタクシー”に乗ることを考えてみる。目的地が近づいた際、交差点を左、次の信号を右、といった指示を出すことは容易ではない。始めからスマホアプリや車内のマイクなどに3単語で目的地を吹き込んで3メートル四方の正確な地点を指定しておけば、迷うことはない』、「音声が主役になると見越して、3つの単語による位置情報の表現を編み出した」というのも凄いことだ。
・『音声認識に適した単語の組み合わせ  3つの単語の組み合わせも、音声認識に適したものが考えられている。たとえば比較的近隣の場所に、似たような発音の単語の組み合わせは割り当てていない。誤って別の場所を指定してしまう事態を避けるためだ。類似する単語や発音の組み合わせは、互いに遠くの場所が設定されている。たとえば、「lemon.banana.apple」はオーストラリアの砂漠地帯で、「melon.banana.apple」は米国ニューメキシコ州だ。 自動車や物流だけでなく、what3wordsと相性がいいのが「インスタグラム」をはじめとするSNSだ。旅行先で見つけた感動的な風景など、自分が見つけた位置情報タグのないスポットを簡単に共有することができる。「#what3words」というハッシュタグで検索すると、世界でさまざまな位置情報が投稿されているのがわかる。 英語や日本語だけでなく、現時点で26言語に対応している。新たな言語に対応する際は、単に英語版を翻訳するのではなく、それぞれの言語でまったく新しい3つの単語を割り振っている。ロンドン本社の言語担当の部署が世界中で数百人のフリーランスの言語学者と契約し、各言語で単語リストをつくる。数百の言語で研究を進めており、1言語ごとに6カ月の開発期間を設けている。 単語リストの基準は、①なじみのある言葉かどうか、②短い言葉であるかどうか、という2点だ。日本語の場合は2万5000語のリストが存在し、数学を用いたアルゴリズムによって、57兆とおりの3単語の組み合わせを自動で割り当てる。 さらに注目すべきは、これがネットにつながっていないオフライン状態でも作動することだ。一度振り分けられた3単語は、永遠に変わることがなく、言語リストの組み合わせは単なる文字データなので、全世界でもたったの12メガバイト分のデータにしかならない。住所のように膨大なデータベースを必要としないため、海外旅行や災害時でも使える』、「世界中で数百人のフリーランスの言語学者と契約し、各言語で単語リストをつくる。数百の言語で研究を進めており、1言語ごとに6カ月の開発期間を設けている」』、「音声認識に適した単語の組み合わせ」などは、「実装」にもかなりの工夫を凝らしているようだ。
・『ではどのように収益化しているのか。先述のダイムラーやモンゴル政府、アラメックス社といったB to Bの顧客から得るシステムのライセンス料が収益源だ。消費者向けのアプリは無料で使えるが、大規模な利用には料金が発生する仕組みだ。 創業者のクリス・シェルドリックCEOは、もともと音楽業界で働いていた。シェルドリック氏が企画したライブの会場を、参加するミュージシャンや機材の業者らが見つけられず迷うことが多かった。ライブハウスだけでなく、広大な公園や緑地で行われる音楽フェスティバルなどでも、人と待ち合わせたり、ステージを見つけたりするのに苦労することがある。 そんな悩みを抱えたシェルドリック氏はある夜、母校であるケンブリッジ大学の数学者の友人と夕食を食べながら、愚痴をこぼした。「位置情報の正確性や利便性を高めるには、どうしたらいいだろう」。緯度や経度を示すGPS座標の16ケタの数字はあるが、覚えられるものではなく、誰も使っていない。「じゃあ、単語の組み合わせにすればいいじゃないか」。 この数学者がシェルドリック氏の創業パートナーで、現在what3wordsの研究開発を率いるモーハン・ガネサリンガム氏だ。2人はすぐさま土台となるアルゴリズムのコードを書き始めた。これが現在では80人を抱えるベンチャー企業となった』、音楽プロデューサーと友人の数学者の夕食時の会話からアイデアが生まれたとは、驚いたが、そんなものなのかも知れない。
・『日本でも大企業との提携が生まれるか  what3wordsはここ日本でもビジネスの拡大を狙っている。今年6月にはカーナビ大手のアルパインが出資したことを発表。さらに、米シリコンバレーを拠点とするスタートアップ支援機関の「プラグアンドプレイ」も支援している。同社は世界26拠点で数百社のスタートアップと大企業をつなげてきた。what3wordsとダイムラーをつないだのもプラグアンドプレイの独ストゥットガルト拠点だった。 昨年設立されたプラグアンドプレイの日本法人がこの6月に始めた支援プログラムに、what3wordsも参画している。大企業パートナーには日産自動車やデンソーなどの自動車関連メーカーや、日本通運といった物流企業も名を連ねる。「プログラムが終わる頃には、発表できることがあると思う」とジョーンズ氏は話す。こうした企業との提携に発展するかどうかが注目される。 住所という古くて新しい課題を、3つの単語で解決しようとするwhat3words。シンプルだがクリエイティブな仕組みを、世界に定着させることができるか』、恐らく定着するのだろうが、日本でもこうした本格的なベンチャ-が出現してほしいものだ。
タグ:ベンチャー 東洋経済オンライン 日産自動車 日本通運 デンソー ダイムラー ダイヤモンド・オンライン (その3)(日本人がシリコンバレーで通用しない理由、ベンツが注目!3つの単語で表す「住所」革命 世界を57兆個に分割 英国ベンチャーの威力) 澤 円 「日本人がシリコンバレーで通用しない理由」 「Women’s Startup Lab」 堀江愛利 シリコンバレーは「オープン」な場所だけれど、決して「イージー」な場所ではない 日本人には、「勉強するためにシリコンバレーに行く」というモードの人が少なくありません。これが一番迷惑がられる 起業家は、UberやLyftの運転手になっていろいろな人を乗せ、運転しながら乗客に片端からピッチを行ったりする チャンスをつかむ手段と生活費を稼ぐ手段の両方になる 実は「男性社会」のシリコンバレー ライフイベントに左右されずにチャレンジし続けている男性が成功をつかんでいるだけの話 プランを立てる前に実行するシリコンバレーの人々 失敗を恐れてチャレンジをしない日本人 プランを立てている間に、そのアイデアは古くなる、プランを立てるくらいならまず手を動かすなり誰かと行動を起こすなりしろ 日本人には「石橋を叩いて渡る」という精神を持つ人が多く、たくさん時間が浪費されてしまう傾向があります 「ベンツが注目!3つの単語で表す「住所」革命 世界を57兆個に分割、英国ベンチャーの威力」 what3words 国ロンドンに拠点 世界中を3メートル四方の空間に分け、たった3つの単語で位置情報を表わすシステムを開発した。57兆個の空間に4万の単語を割り当てている 住所の仕組みは100年前で止まっていた what3wordsの資金調達に参画し、約10%の株式を取得 ベンツの小型車「Aクラス」の新たなカーナビシステムにwhat3wordsが組み込まれている 音声が主役になると見越して、3つの単語による位置情報の表現を編み出した 音声認識に適した単語の組み合わせ 現時点で26言語に対応 世界中で数百人のフリーランスの言語学者と契約し、各言語で単語リストをつくる。数百の言語で研究を進めており、1言語ごとに6カ月の開発期間を設けている 日本語の場合は2万5000語のリストが存在し、数学を用いたアルゴリズムによって、57兆とおりの3単語の組み合わせを自動で割り当てる 言語リストの組み合わせは単なる文字データなので、全世界でもたったの12メガバイト分のデータにしかならない ダイムラーやモンゴル政府、アラメックス社といったB to Bの顧客から得るシステムのライセンス料が収益源だ 消費者向けのアプリは無料で使えるが、大規模な利用には料金が発生する仕組みだ 創業者のクリス・シェルドリックCEOは、もともと音楽業界で働いていた 企画したライブの会場を、参加するミュージシャンや機材の業者らが見つけられず迷うことが多かった 母校であるケンブリッジ大学の数学者の友人と夕食を食べながら、愚痴をこぼした 緯度や経度を示すGPS座標の16ケタの数字はあるが、覚えられるものではなく、誰も使っていない じゃあ、単語の組み合わせにすればいいじゃないか 日本でも大企業との提携が生まれるか
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安倍首相の賃上げ要請(その4)(日本の大病「報われてない感」への特効薬 安倍首相の「官製春闘」への密かなエール、最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由 「韓国の失敗、イギリスの成功」から学ぶこと、最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由 「地域別」に設定している国はわずか4カ国) [経済政策]

安倍首相の賃上げ要請については、2017年6月18日に取上げたままだった。現在は、この問題から派生して統計不正問題がクローズアップされているが、これは別として、今日は(その4)(日本の大病「報われてない感」への特効薬 安倍首相の「官製春闘」への密かなエール、最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由 「韓国の失敗、イギリスの成功」から学ぶこと、最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由 「地域別」に設定している国はわずか4カ国)である。

先ずは、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が1月14日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「日本の大病「報われてない感」への特効薬 安倍首相の「官製春闘」への密かなエール」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00003/?P=1
・『日経ビジネスオンラインが「日経ビジネス電子版」に生まれ変わるのに伴い、コラム名を「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」にちょっとだけ改め、再スタートを切らせていただくことになりました。職場から家庭、社会まで、生きづらい今の時代における人と人の関わりのありようについて綴っていきたいと思っています。今後とも、これまで同様、ご愛読のほど何卒よろしくお願い申し上げます。 で、栄えある(?)第1回となる今回は、「お金と幸せ」についてあれこれ考えてみようと思う。 1月7日に行われた経済3団体の祝賀会で、安倍首相は、「(消費増税で)引き上げた分は全部お返しし、さらにお釣りが来るという、こういう対策を打ちながら、デフレ脱却を確かなものにしていきたい」とコメント。さらに「去年まで、5年連続で最高水準の賃上げが続いた。今年も(引き続き高い水準の賃上げに)期待している」と経営者たちに訴えた。 一方の経済3団体のトップは、「今年の景気は堅調に推移していく」との見通しを述べたと報じられている。 賃上げが続き、好景気か……。「増税でお釣りが来る」という意味不明のコメントも、「景気は堅調に推移していく」という見通しも、ちっとも腑に落ちない。 ふむ、なるほど、この楽観さが“現場”の悲鳴につながっているのだな、きっと。 そもそも首相や経済界トップの人たちの言葉の根拠はどこにあるのだろうか。 経済のことは門外漢なので偉そうなことは言えないけど、素人目にみても世界経済は不安定さを増しているように思う。米国市場を襲ったクリスマス大暴落、中国経済の減速……。地震や洪水などの大規模な自然災害も世界的に頻発している。さらに、ちょっと先まで目を向ければ、五輪不況だって懸念されているし、何よりも2020年以降は社会の超高齢化が一層加速する。 賃上げは「5年連続で最高水準」らしいが、あまり素直にうなずく気にはなれない。「数字」は分析次第で見え方が大きく変わる。数字は嘘をつかないけど、使い方次第で真実を隠す道具にもなってしまうのだ』、経済3団体のトップは本音では先行きを警戒的なトーンで話たかったのだろうが、安倍首相に忖度して楽観的に話したのだろう。
・『増えない賃金、増えるミリオネア  昨年話題になったが、主要7カ国(G7)で日本だけが2000年の賃金水準を下回っていることがOECDの分析で明らかになった。また、日銀によれば、この5年で日本の労働生産性は9%伸びた一方、物価変動の影響を除いた実質賃金の上昇率は2%にとどまることもわかった(日本経済新聞「賃金再考(1) 日本の賃金、世界に見劣り」)。 また、「平成29年賃金構造基本統計調査」のデータを見ても、この20年間、賃金はほとんど上がっていないことがわかる(短時間労働者以外の一般労働者の月額賃金)。 その一方で、18年度における東証一部上場企業の社長の報酬総額は中央値で5552万円で、前年比2.2%増だ(デロイトトーマツ調べ)。また、東京商工リサーチの調査によると、役員報酬が1億円以上だった上場企業の役員数は538人(18年3月期決算)。17年の466人から大きく増え、過去最高を更新している。 約1カ月前の18年12月18日、野村総合研究所(NRI)が「日本の富裕層・超富裕層の世帯数は2013年から増え続け、2000年以降の最多だった」との調査結果を公表した(金融資産保有額5億円以上は「超富裕層」、1億円以上5億円未満を「富裕層」と定義)。 具体的には、+富裕層・超富裕層は126.7万世帯で、最も多かった2015年の121.7万世帯から約5万世帯も増加 +富裕層および超富裕層の純金融資産総額は、15年比で、それぞれ9.1%(197兆円から215兆円)、12.0%(75兆円から84兆円)増加 となった。 お金のデータばかりで恐縮だが、世帯数のデータだといまひとつピンと来ないので、ついでにクレディ・スイス「2016 年度グローバル・ウェルス・レポート」も紹介しておく。 +16年度の日本の富裕層(資産総額100万ドル以上)の数は前年度から74万人ほど増加し、283万人。74万人は世界最大の増加数で、富裕層の数は世界2位 +日本の超富裕層(純資産5000 万米ドル超)の個人は世界最大の伸び率で 3600人。その数は、現在、世界第 6 位 +今後も日本の富裕層の数は増加し、 2021年には27%増になる見込み ……だそうだ』、かつては日本は平等社会といわれたが、いつの間にか富裕層も随分増えたものだ。
・『「リツイートするだけで100人に100万円!」って……  ただ、読者の皆さんもよくご存じの通り、多くの“ミリオネア”は会社員でない。経営者・役員・自営業者・家族従業者などの「資本家階級」などに属し、資産運用している人たちである。 「リツイートするだけで100人に100万円!」などと1億円をプレゼントした経営者が年明け早々話題になったが、あるところにはあるってこと。とにもかくにも「持てる者」と「持たざる者」の格差は確実に広がっていて、言葉は悪いが、現場が汗水流して稼いだカネが、都合よく“ピンハネ”されているのではないかと疑ってしまう。 もちろん世の中には儲かった分をきちんと働く人たちに還元し、現場に足を運び、従業員の声に耳を傾けているトップもいるけれど、先に紹介したデータを見るにつけ、自分たちの報酬水準だけはグローバル並みにし、「持たざる者」など目に入っていないトップが増えているような気がしてならないのだ。 「普通の人々」が眼中にないと思われるのは、政治家やお役人も同じ。先週明らかになった厚生労働省による「毎月勤労統計調査」の“捏造”問題、昨年発覚した裁量労働制の不適切データ問題……。本当に暗澹たる気分になるし、国への不信感も尽きない。 だいたい、「僕たちがんばってます!成果出してます!」とアピールするために、都合よく数字を使う人たちが多すぎる。前述した「平成29年賃金構造基本統計調査」を公表した際の報道発表資料では、「女性の賃金は過去最高で、男女間賃金格差は過去最小」と、“いつもどおり”プラス面だけを強調していたし、当時の野田聖子総務大臣(女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣)が昨年の3月8日の「国際女性の日」に寄せたメッセージでも、「女性の就業者数はこの5年間で約200万人増加し、子育て期の女性の就業率も上昇するなど成果は着実に上がっています」と胸を張ったものの、増加数の半数超が非正規であることには全く触れなかった』、「リツイートするだけで100人に100万円!」で私財から1憶円を出したといっても、遥かに大きな広告効果が出たことだろう。
・『おカネはやっぱり、大切なご褒美  物流大手の日本通運は4月から非正規社員の賃金を引き上げ、正社員との待遇格差を解消する方針だ。これと並行して賃金体系についても、入社年次やキャリアから、能力や担っている役割を重視した形に改める方向で検討しているという。 同一労働同一賃金が盛り込まれた働き方改革関連法の施行も控えており、正社員と非正規の賃金格差は当然、是正されるべきだ。ただ、広がりつつある是正の動きを、諸手を挙げて評価できない自分がいるのもまた事実。待遇格差の解消に伴い賃金体系を変更し、成果主義にシフトする中で、正社員の賃金水準が下がった例も見られるからだ。 非正規と正社員の賃金格差は依然として大きい。30代前半の平均月額賃金は、正社員28.1万円、非正規社員21.1万円で、その差は約7万円だが、年齢が上がるにつれさら広がり、30代後半で約10万円、50代前半では20万円近くにまでなる(平成29年賃金構造基本統計調査)。この差を、非正規の引き上げではなく、正社員の処遇“改悪”によって縮める方向に進む気がしてならないのである。 フォードの創業者のヘンリー・フォードは「1日5ドル」という、当時としては破格の賃金を払うことで、同社を世界的な企業に育てた。彼はのちに取材を受けるたびに、生産性向上と離職対策に大きな効果を上げたこの賃金政策について、「我々が考案した中で最高の費用削減の手段の1つが、1日5ドルの賃金を決めたことだ」と繰り返した。 また、米スタンフォード大学経営大学院教授で組織行動学者のジェフリー・フェファー博士は、経営学を労働史から分析し「人件費を削ることが長期的には企業の競争力を低下させ、経営者の決断の中でもっともまずいものの元凶であることは歴史を振り返ればわかる」と説く。 昨年、Amazonが最低賃金を時給11ドルから15ドルに上げると発表し、大きな話題となった。賃金を上げる企業は優秀な人材を魅了するし、そこで働く人たちのモチベーションだって高まる。高い賃金の仕事を失いたくなければ「肩叩きをされない」ように、働く人たちだって頑張るに違いない。 おカネがすべてではないけれど、おカネは私たちにとって大切なご褒美だし、自分の成果を測る目安にもなる。人間の生きる力であるSOC(sense of coherence)の理論においても、おカネは人の生きる力を引き出す極めて大切なリソースとされる。と同時に、お金は個人の幸福感をも左右する。 人間はやっかいな性癖を持つ生き物で、「他者と比較する」特性がある。平たく言えば「上」か「下」。勝ち組・負け組という言葉が好んで使われるのも、私たち人間は他者のまなざしから逃れるのが極めて難しく、絶対的価値より相対的価値により幸福感や満足感が左右されがちなのだ。だから、比較が容易な「おカネ」は、その意味で重要なのである』、ヘンリー・フォードが「我々が考案した中で最高の費用削減の手段の1つが、1日5ドルの賃金を決めたことだ」と誇った爪の垢でも日本の経営者たちに飲ませたいものだ。人間は「絶対的価値より相対的価値により幸福感や満足感が左右されがち」というのは、確かにやっかいな特性だ。
・『「報われている感」の喪失  たかがカネ。されどカネ。 今の日本の大きな問題は、あらゆる場面で「報われている」という感覚が持てないこと。20年以上賃金が上がっていない状況は、当然、「報われている感」の喪失につながる。 この感覚の背景にあるのが「賃金公平感」だ。これは「自分が要求できると考えている金額が支払われているかどうか」に相当する感覚で、世間の相場など他者との相対的な比較によって決まる。私たちは「もっとお金があれば幸せになれる」としばしば考えるが、「お金があるからといって幸せとは限らない」。賃金公平感こそが、職務満足感や幸福感をも大きく左右するのである。 これまでの「賃金公平感」に関する研究は、同じ職場、同じ産業、同じ年齢など自分が所属する(あるいはした)集団間での相対的賃金比較が、個人の幸福感や満足感へどう影響するかを検討するものが中心だった。しかし、近年は、自分が所属しない集団との比較や、他者ではなく「過去の自分」や「未来の自分」との比較が大きく影響しているという論説が増えた。 その中の1つ、京都大学名誉教授の橘木俊詔氏らの調査結果がとても興味深いので紹介する(橘木俊詔科研調査2012)。 この調査では、比較対象を「過去の自分」「未来に予想される自分」「本来あるべき自分」「職場の同僚や知人」「学生時代の同級生」「親戚・親族」「近所の人」「テレビ、新聞、インターネット、書籍などで知った人」「平均的な日本人」に分類し、対象者に「あなたが今の所得が高いか低いかを評価するときに、もっとも比較しやすい対象」を選んでもらった。 その結果、トップは「過去の自分(27.2%)」、次いで「平均的な日本人(25%)」「職場の同僚や知人(18%)」「本来あるべき自分(11.9%)」「学生時代の同級生(10.2%)となった。 つまり、役職定年になった人がよく、「これからはさ、どんなにがんばっても給料はビタ一文上がらないんだぜ」と、口を尖らせ、やる気を失っていくのは、「過去の自分」との比較に加えて、「本来あるべき自分」とのギャップによると考察できるのである。 橘木氏らの研究では、こうした比較対象が個人の幸福感に及ぼす影響を分析するとともに、本人の所得そのものと幸福感との関連性も調べた。その結果、個人の幸福感に強く影響を及ぼすのは本人の所得だった。一方、比較対象の所得が高いと幸福感は下がり、その効果は「本人所得と幸福感の関連性ほど大きくないものの、統計的に十分に確認できるものだった」のである。 賃金は上がらない、これから上がる見込みもない。その一方で、人生100年時代を迎え寿命は伸びるばかりだ。 もし、もし、本当に「だってあげるカネがないんだもん!」というならわかる。だが、日本企業の内部留保はこの15年で倍以上に増えて446兆円超になり、そのうち221兆円を現預金が占める(2017年度「法人企業統計」)。また、経常利益は11.4%増となったが、設備投資は5.8%増、人件費は2.3%増にとどまった。 なので経営者のみなさま、賃金をきちんと上げてください。もっともっと上げてください。安倍首相どもども、強く、強く、お願い申し上げる次第である。 なんだか「勝手に1人春闘!」になってしまったが……要求を受諾していただけないと、会社の繁栄はありませぬぞ』、説得力ある主張で、その通りだ。

次に、元外資系のアナリストで小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏が2月1日付け東洋経済オンラインに寄稿した「最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由 「韓国の失敗、イギリスの成功」から学ぶこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/263406
・『オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。退職後も日本経済の研究を続け、『新・観光立国論』『新・生産性立国論』など、日本を救う数々の提言を行ってきた彼が、ついにたどり着いた日本の生存戦略をまとめた『日本人の勝算』が刊行された。 人口減少と高齢化という未曾有の危機を前に、日本人はどう戦えばいいのか。本連載では、アトキンソン氏の分析を紹介していく』、勝算をものにするには、どうしたらいいのだろう。
・『世界中の学者が「最低賃金」と「生産性」に注目  今、アメリカ以外の先進国では、生産性を高めるための政策が最も重要視されています。中でも、最低賃金の引き上げによる効果が注目されています。そして、その理由が大変に興味深いのです。 生産性と最低賃金との間には、強い相関関係があります。これは周知の事実です。 この相関が強くなっているのは、これまで、生産性が高くなれば所得水準が上がり、最低賃金も引き上げられてきたからです。 最低賃金の上昇は、生産性向上の結果だった。このように、最低賃金が事後的に決まると考えるのは、最低賃金を労働政策、強いて言えば貧困対策と捉える考え方です。 しかし、今はまったく逆の発想、つまり最低賃金を「経済政策」と位置づける傾向が強くなっています。「生産性と最低賃金に強い相関関係があるのであれば、最低賃金を引き上げたら、生産性も向上させられるのではないか」と考え始めたからです。 このアイデアを説明する前に、なぜ生産性向上のための手段が注目されているのか、その背景を説明しておきましょう。 コンサルティング会社のマッキンゼーの分析によると、過去50年間、世界の経済成長率は年平均3.6%だったそうです。 経済成長率は人口増加要因と生産性向上要因に分けて見ることができます。過去50年の3.6%という成長率は、人口増加要因と生産性向上要因、それぞれによるものが1.8%ずつでした。 しかし、これからの50年間は、人口増加要因による成長が0.3%まで下がります。生産性向上要因による成長率が今までと同じ1.8%で推移すると仮定すると、世界経済の成長率は2.1%まで下がります。その結果、生産性向上要因への経済成長の依存度が、これまでの50%から86%まで急上昇するのです。 要するに、人口が増加すると、何もしなくても経済は勝手に成長し、政府の税収も伸びます。政府は、人口増加という数の力によって、高齢化により増加する社会保障の負担を捻出することも可能です。このような状況下であれば、政府は賃金など、民間企業の経営に口を出す必要はありません。しかし、人口増加要因による経済成長率が低下すると、政府は生産性向上に注目し始めます。 一方、日本のように人口が減少すると、人口増加要因は経済成長率にマイナスに作用します。経済成長率が下がれば、当然、国は苦境に立たされることになります。社会保障費をはじめ、高齢化によって増え続ける各種の負担分を捻出するためには、どの国よりも生産性を向上させなければなりません。 国が何もしなくても自然と生産性が上がるのならいいのですが、人口増加による経済成長と違い、生産性にはそのような都合のいいことは起きません。ですので、国が主導し、生産性を高めるための政策を打つ必要があります。 最低賃金と生産性の相関関係の強さに注目が集まるようになったのは、生産性向上に有効な方法を探した結果なのです』、今後は生産性向上がカギを握るが、最低賃金の引上げがこれにつながるというのは、トンデモ経済学のように思えるが・・・。
・『「誰」が「なぜ」、生産性を高めるのか  先ほども書いたように、人口増加要因と違い、生産性は自然に上がるものではありません。誰かが意図的に何かをしないと、向上するものではないのです。生産性向上には設備投資や企業内の働き方の変化が必要ですので、意思決定と実行能力を要します。 研究者たちの研究で、生産性を上げる具体的な方法については解明されていますが、どういう動機を持って、誰が生産性の向上を決め、実行するかについては、まだ解明されていません。 生産性向上は競争の結果だという研究者もいますが、同じ国(経済)の中や、同じ業種の中でも、企業間で生産性の激しいばらつきが存在することも確認されていますので、競争だけでは説明できません。 唯一言えるのは、同じ国の同じ業種で、企業間で生産性の大きな違いが生じているということは、明らかに経営者の質の善しあしが、生産性の高低を左右しているということです。生産性向上は経営者の質にかかっていることは、研究によって明らかにされています。 なので、国全体の生産性を高め、経済を成長させるためには、生産性の低い企業の経営者をどう動かし、生産性の向上にあたらせるかが、1つの重要なポイントとして浮かび上がるのです。 国が政策として、企業経営者に生産性を上げるよう誘導する、その手段として最低賃金の引き上げが重要なポイントになります。なぜなら最低賃金の変動は、全企業がその影響を免れないからです。 最低賃金が上がることによって人件費が増えると、経営者は対応せざるをえなくなります。会社のビジネスモデルを変えて、生産性を高めなければなりません。インフレと同じ原理です。最低賃金で働く人を多く抱える生産性の低い企業ほど大きな影響を受けますので、経済の「底上げ政策」と言えます。 この政策はいくつかの国で実施され、期待通り、生産性は向上しました。最低賃金の変動がその国の経済にどのような影響を与えるか、その事例として最も研究が進んでいるのが、イギリスの例です』、「最低賃金が上がることによって人件費が増えると、経営者は対応せざるをえなくなります。会社のビジネスモデルを変えて、生産性を高めなければなりません」というのでメカニズムがなんとなく理解できた。
・『最低賃金引き上げの成功例、イギリス  イギリスは1999年に最低賃金を導入しました。実は1993年からの6年間は、イギリスには最低賃金が存在していませんでした。つまり、1999年の導入は「新規」導入ということになるので、最低賃金導入による経済効果を研究するためには格好の、雑音のないデータが手に入るという好条件がそろっていました。そのため、多くの研究者がイギリスの事例をこぞって研究テーマに選んだので、数多くの分析がされたのです。 また、この事例の研究が進んだのには、当時のイギリスの政治事情というもう1つ別の理由がありました。イギリスの最低賃金の導入は、労働党のブレア政権のもとで実現しました。もともとブレア首相は最低賃金の導入と引き上げを公約に掲げて選挙を戦い、政権を奪取したという経緯がありました。 最低賃金導入に反対だった保守党は、ブレア政権を攻撃する材料として、最低賃金導入のアラを探すべく、多くの研究者に分析を依頼しました。その結果、イギリスの事例は徹底的に研究されることになったのです。反対派の期待もむなしく、イギリスでは最低賃金の導入により、予想以上に大きな成果が生まれました。 イギリスでは1999年から2018年まで、毎年平均4.17%も最低賃金が引き上げられ続けました。この間、最低賃金は実に2.2倍になったにもかかわらず、インフレには大きな悪影響もなく、生産性も上昇しています。2018年6月の失業率は4.0%で、1975年以降の最低水準です。1971年から2018年までの平均である7.04%を大きく下回っています。 次回以降の記事では、最低賃金引き上げのメリットを説明する予定ですが、今回は最低賃金の引き上げに対して、日本で必ず沸き上がる反対意見を紹介し、それらの間違いを指摘しておきたいと思います』、イギリスの成功例は、反対派の保守党がアラを探しを「多くの研究者に分析を依頼」しても、かれらの望んだ結論は出なかったことであれば、確かなのだろう。
・『最低賃金を引き上げても失業者が増えるとは限らない  最も典型的かつ、たくさん上がる反対意見は「最低賃金を引き上げると失業者が増える」というものです。この意見は新古典派経済学の説に基づいています。 新古典派経済学では、市場経済の下、労働市場は価格形成が効率的に行われているという前提が置かれています。そのため、最低賃金を引き上げると、失業者が増えるという理屈が成立します。確かに昔の教科書には、そのように載っていました。 しかし、この仮説はすでにいくつかの国での実験によって否定されています。イギリスを含めて、各国のデータを分析すると、最低賃金をうまく引き上げれば、失業率は下がる事例が多く、上がる例は比較的少数派です。 つまり、実験によって新古典派経済学のこの仮説は完全に否定されたのです。では新古典派経済学の仮説は、何が間違っていたのでしょうか。 答えは、実際の労働市場における労働価格が、教科書のように効率的には形成されていないことにあります。仕事や雇用に関する情報は完全ではありませんし、転職には障壁もあります。また労働者層によって労使間の交渉力が違うので、完全に効率的な価格形成はされないのです。 日本での最低賃金引上げに反対の声を上げる人たちの中には、2018年の韓国の失敗例を持ち出す人もいます。この人たちの意見を否定するのは簡単です。 先ほども説明したように、最低賃金を引き上げると必ず失業者が増えるという単純な事実は存在しません。最低賃金は引き上げ方次第で効果が変わるのです。 最近よく言われるようになったのは、最低賃金を賢く引き上げ、経営者がパニックにはならず、ショックを与える程度に引き上げるのが効果的だという説です。アメリカのある分析によると、12%以上の引き上げは危険な水準であるとされています。韓国政府も事前にこの分析を読んでいれば、2018年のように最低賃金を一気に16.4%も引き上げるという、混乱を招く政策を実施することもなかったのではないでしょうか。 韓国の失敗は、いっきに引き上げすぎたという、引き上げ方の問題でした。経営者がパニックに陥り、経済に悪影響が出たと解釈するべきです。 2018年、安倍政権は最低賃金を3%引き上げました。正しい判断です。しかし、このとき、経営者から悲鳴のような抗議の声は上がりませんでした。ということは、この程度の最低賃金の引き上げは、彼らにとってショックですらなかったと判断できます。この程度の引き上げ幅では、まだまだ不十分だったのでしょう。 2019年は消費税の引き上げも予定されているので、最低賃金は少なくとも5%の引き上げが必要なのではないでしょうか』、「最低賃金を賢く引き上げ、経営者がパニックにはならず、ショックを与える程度に引き上げるのが効果的だという説」は、素人でもなるほどと納得できる。韓国のように、「一気に16.4%も引き上げる」と、経営努力の範囲を大きく超え、失敗してしまうのだろう。
・『人件費削減は愚かな「自殺行為」だ  本連載の第1回「『永遠の賃上げ』が最強の経済政策である理由」では、日本経済を成長させるためには、賃上げによって個人所得を増加させるしかないと提言しました。永遠の賃上げを実現し、国民の所得を増加させるためには、最低賃金の継続的な引き上げが極めて重要です。 今の日本の経営者の多くは、人件費をコストと捉えて、下げることばかり考えています。人口が増加しているのであれば、その考え方に強く反対はしませんが、人口が減少しているときに人件費を下げるのはご法度です。人口が減る中で人件費が下がれば、個人消費総額が減り、回り回って結局は経営者自身の首を絞めることにもなるのです。まさに自殺行為です。 私が常々強調しているように、日本経済は人口増加のパラダイムから、すでに人口減少パラダイムへとシフトしました。そのパラダイムシフトに合わせて、企業の経営も変える必要があるのは言うまでもありません。しかし、嘆かわしいことに、日本の経営者の多くはまだ対応できていません。 しかし、経営者がこのことを理解せず、従業員の給料を増やす気にならなくても、政府は彼らを変えることができるのです。経営者が自主的に賃金を上げないのなら、最低賃金を引き上げて、無理やり賃金を上げさせればいいのです。 継続的に、かつ、上手に最低賃金を上げていけば、経営者は人の配置と資本金の使途、商品自体や商品の単価を工夫しなくてはならなくなります。人口減少で働き手が減るので、失業率が上がることを恐れる理由も必要もありません。 計算の上では、人口減少による悪影響がもっとも大きい2040年まで、毎年約5%ずつ最低賃金を上げていけば、経済は1%ずつ成長することになります。 「最低賃金を引き上げて、生産性を高めても、それはただのお金至上主義ではないか。生産性が上がれば、国民生活が豊かになるのか。そうではないはず」というようなことも時々言われますが、完全に間違っています。 経済が成長しても、必ずしも国民の生活水準の向上にはつながりません。なぜならば、単純に人口が増加すれば、経済は成長するからです。しかし、生産性は国民の生活水準そのものです。 私が主張したいのは、人口が減少する日本では、なかなか総生産額は伸びない。しかし、生産性を高め、個人所得を増やしていけば、個々人の生活水準が上がって、今後ますます厳しくなる高齢化による負担増も乗り越えられるということです』、説得力ある主張で、その通りだ。初めの方で「トンデモ経済学」などと疑ったことを恥じる。
・『社会保障を維持するには生産性向上しかない  「生産性を上げても税金で取られるだけですよ」と言う人もいます。たしかに生産性を上げても、すべての恩恵が労働者に還元されるわけではありません。税負担は増えます。 しかし、社会保障の負担は生産性を上げても上げなくても、いずれにせよ重くなります。生産性を上げていかないと、労働者の可処分所得は減る一方です。もはや生産性を上げるしか、選択肢はないのです。もちろん、税負担の増加以上に生産性が向上することが望ましいのは言うまでもありません。 次回は、最低賃金引き上げのメリットを考えます』、「生産性を上げても税金で取られるだけ」との批判は、敢えて取上げる価値がないほどお粗末な暴論だ。

第三に、同氏による上記の続き、2月8日付け東洋経済オンライン「最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由 「地域別」に設定している国はわずか4カ国」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/264773
・『地域別の最低賃金があるのは世界の「少数派」  前回の記事(最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由)では、日本経済を維持・成長させていくためには、永遠の賃上げを実現し、国民の所得を増加させることが不可欠で、それを実現させるためには、最低賃金の継続的な引き上げが極めて重要だという話をしました。 ただし、日本の場合、最低賃金制度には大きな問題点があります。それは、現在、日本では都道府県別に最低賃金が設定されていることです。この制度を是正し、最低賃金を全国一律にすることは、地方創生に欠かせない制度変更です。 実は全国一律の最低賃金の実現に向けた動きは、すでにスタートしています。 2019年2月7日、自民党内に「最低賃金一元化推進議員連盟」が発足しました。連盟の会長には衛藤征士郎衆院議員、幹事長に山本幸三衆院議員が就任されました。この連盟の発足式では、私が基調講演をさせていただきました。 全国一律の最低賃金導入は、衰退する一方の地方経済の悪循環を断ち切り、地方創生を推進する挑戦的な試みです。 2013年時点で、地域別の最低賃金を導入している国は、カナダ、中国、インドネシア、日本の4カ国のみです。4カ国というのは、全体のわずか3%にすぎません。つまり、全国一律ではない最低賃金を導入しているのは、世界的に見るとかなりまれなことで、日本はそのまれな制度を導入している珍しい国の1つなのです。 「業種別・全国一律」という国はありますが、最低賃金の数が増えすぎて複雑になるので、今はできるだけシンプルにするのが主流です。特に、最低賃金政策に積極的に取り組んで研究と検証が進んでいるヨーロッパでは、業種別でない純粋な全国一律としている国が全体の65%となっていることに注目しています。 国が決めた全国一律の最低賃金を上回る水準で、各地方に独自の最低賃金を決めることを認めている国もあります。アメリカがその1つです。ニューヨークやカリフォルニアなどで、独自の最低賃金を設定しています。ほかにも、ロシアとブラジルが同じ制度を導入しています。 この制度を導入している国と、地域別最低賃金を設定している日本以外の3つの国には、1つ、決して無視してはいけない特徴があります。それは、国土が非常に広いということです。面積で見ると、ロシアが世界第1位、カナダが第2位、アメリカが第3位、中国が第4位、ブラジルが第5位、インドネシアが第15位です。それに対して、日本は世界第61位です。 国土が広いと、自分の住んでいるところより最低賃金が高い地域があっても、移動するには多くの障害をクリアしなくてはいけないので、労働者はそう簡単には移動しません』、地域別最低賃金には何の疑問も持っていなかったが、世界の主流は全国一律というのは初めて知った。自民党内に「最低賃金一元化推進議員連盟」が発足したというのは驚いた。
・『「全国一律」にしたイギリスでは、失業は増えなかった  実は、この点が日本での最低賃金のあり方を考えるうえで、大変重要なのです。 地域別に最低賃金を設定した場合、交通の便がよく、移動が容易なほど、労働者は最低賃金の低い地域から高い地域に移動してしまう可能性が高くなります。最低賃金の低い地域からは、段々と人が減り、経済には大きな悪影響が生じ、衰退していくことになります。 前回の記事で、イギリスが1999年に最低賃金を導入したことはお伝えしました。このときのイギリスでも、最低賃金は地域別にするべきだという議論があったようですが、結局は「世界の常識」である全国一律最低賃金にしました。 イギリスで最低賃金を設定する際には、慎重のうえにも慎重に検討を重ねました。その結果、地方によって物価の違いがあるという事実はあえて無視しました。もちろん、最も賃金水準が低い地方に合わせて、最低賃金を低く設定することもしませんでした。物価と最低賃金導入以前の平均賃金が地域によって異なっていたにもかかわらず、全国一律の最低賃金を導入したのです。 その結果、最低賃金に合わせるための低所得者の所得の引き上げ率は、地方によって異なっていました。賃金水準の低いところでは、引き上げ率はかなり高い水準になりました。 前回も説明しましたように、「労働市場は完全に効率的に価格形成がされているので、最低賃金を上げると失業者が増える」という新古典派経済学の説は、実際の社会での実験の結果、否定されました。実際の事例に基づいて、「労働市場の価格形成はもっと複雑で、単純ではない」ということが海外の論文でも証明されています。 最低賃金は、引き上げ方次第で雇用にはほとんど影響しないことが注目されていますので、イギリスも全国一律最低賃金制度を導入したのです。 確かに、最低賃金の導入によって賃金の水準を大きく引き上げる必要があった地域に関しては、しばらくの間、起業のペースや新規雇用の増加率が相対的に低下しました。しかし、失業率が高まるなどの、既存の雇用者への影響は見られませんでした。 この事実も日本にとって大変重要です。日本ではこれから生産年齢人口が減り、企業数も減ります。ですので、既存雇用への影響は最も大事な確認事項になるからです。 一方で、最低賃金を上げると、それが刺激になって、生産性が上げられることが確認されています』、イギリスは日本以上に地域差が大きいのに、全国一律を導入したというのは大したものだ。日本でも全国一律なら東京一極集中を是正する一因になることも確かだ。
・『「最低賃金の格差」と「地方衰退」の悪循環  今までのように最低賃金の水準を都道府県別のままにしておくと、日本の地方はさらに衰退を続けることになるでしょう。日本は国土がそれほど広くないうえ、全国の交通インフラが整っているので、移動が簡単です。 このまま東京と地方の最低賃金のギャップが拡大し続けると、労働者は地方を離れ、ますます東京に移動してしまうでしょう。以下のプロセスで、地方の衰退が引き起こされるのです。 地方の最低賃金が相対的に低いから、若い人がその地方を出る →人がいなくなるから、経済基盤が弱まる →経済が弱いから最低賃金が上げられない →東京などとのギャップが広がる →さらに人がいなくなる →東京などとのギャップがさらに広がる このような「悪循環」としか呼べないループが、都道府県別の最低賃金により引き起こされているのです。 地方衰退の悪循環は、かなり前から始まっています。事実、地方の最低賃金水準と県民の数を比較すると、0.88という大変強い相関係数が認められます。2040年の人口予想では、その相関はさらに強くなります。地域別最低賃金が地方の衰退を引き起こしている可能性は極めて高いと思います。 前出の議員連盟の議論の中では、外国人労働者の受け入れも、全国一律最低賃金を導入するために考慮するべきポイントとされています。 外国人の受け入れを最も希望しているのは地方の事業者です。しかし、外国人労働者の訪日目的はお金を稼ぐことなので、とりあえず地方から日本での生活を始めたとしても、東京など賃金の高い都会に移りたいと考えても何の不思議もありません。 ですので、今までのように東京と地方の最低賃金のギャップを放置したままにすると、東京への集中は外国人まで巻き込んで、今まで以上に進むこととなるのです。 地方創生を掲げながら、地域別最低賃金制度のもと、東京などとの最低賃金のギャップによる地方の衰退を誘導している政策は、明らかに矛盾しています』、「「最低賃金の格差」と「地方衰退」の悪循環」は、確かに放置できない重大な問題だ。自民党が「全国一律」に目をつけた背景に、この点もあるのかも知れない。。
・『「現状維持志向」と「想像力の欠如」が問題  最低賃金を都道府県別にすると、先ほど説明したような悪循環が生まれることは、ちょっと頭を使えばすぐに想像がつきます。しかし、なぜ今のような制度が長年放置されてきたのでしょうか。 私は、日本独特の「現実に則した物事の決め方」に問題があるうえ、「想像力が乏しい」からだと思います。この問題の根源を理解するためには、そもそも最低賃金がどう設定されているかを理解する必要があります。 厚生労働省のホームページには、最低賃金は次のように決まっていると書いてあります。 「最低賃金は、最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成)において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分に参考にしながら審議を行い決定します」「地域別最低賃金は、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており(以下略)」 要するに、最低賃金は福祉政策の一環で、生産性が低い場合には最低賃金も低くて当然と考えられているようです。 しかし、この最低賃金の決め方は大きな問題をはらんでいます。人口が減少し、その影響でデフレになった場合、この最低賃金の決め方では、最低賃金そのものがデフレスパイラルの悪循環を引き起こすことになりかねません。それと同時に、生産性向上という国策を骨抜きにする可能性もあるのです。 現実に則して最低賃金を決めようとすると、現状の支払能力を勘案し、事業者の今現在の予算を事後的にどう配分するかだけに終始してしまいます。この決め方をしていては、現状維持がせいぜいでしょう。 これでは経営者に刺激を与えることはなく、今まで通りに経営すればいいというインセンティブを与えることになります。生産性を高めるインセンティブが働かなければ、所得が増えることもなく、その地域の経済が次第に衰退していくことになります。 私が、今の最低賃金の決め方が想像力に乏しいと感じるのは、今の決め方が、「支払能力が固定であること」を前提としているからです。あたかも事業者の支払能力は変えられないと想定されているのです。 しかし、事業者の支払能力というのは、当然のことですが、可変です。変えようと思えば変えられるものです。生産性を向上させれば、事業者の支払能力も上がります。特に多くの地方にはインバウンドの観光需要が増加しているので、新しいビジネスモデルに挑戦する絶好のチャンスでもあります。 何度も繰り返していますが、人口が減少する以上、日本では生産性を向上させることが国家の死活問題となっています。しかし、現状の事業者の支払能力を前提に最低賃金を設定すれば、経営者を刺激することはできず、またしても彼らを「現状さえ維持できればいい」と勘違いさせることになりかねません。 それでは彼らの中に、生産性を向上させる意欲を生み出すことも、新しい技術を導入する動機を作り出すこともできません。結果、日本の最先端技術の普及を妨げることにもなるでしょう。特に、年齢の高い経営者を挑戦に駆り立てることは困難になるでしょう。 別の切り口からも、地方創生と都道府県別最低賃金の矛盾を指摘できます。 国全体で最低賃金の引き上げに挑戦することが決まって、全国の経営者がそれに向けて生産性を上げることに努力することとなったとします。 地方によっては、経営者たちが「私たちは参加しない、努力しない」と、自分の地域だけ最低賃金が上がらないようにゴネることも考えられます。そうなれば、努力した地方の生活水準が上がって、努力しない地域は衰退したままになります。 そのとき、努力しなかった経営者たちは、必ず「補助金を出してほしい」と言ってくるでしょう。これは、典型的な制度上のモラルハザードです。要するに、この制度のままでは、国策を無視することができて、生産性向上政策が全国津々浦々まで及ばない可能性が高くなるのです』、「今の決め方が、「支払能力が固定であること」を前提としている」が、「事業者の支払能力というのは、当然のことですが、可変です。変えようと思えば変えられるものです。生産性を向上させれば、事業者の支払能力も上がります」というのは確かだ。言い換えれば、静態的に捉えるか、動態的に捉えるかの違いだろう。
・『「低いほうに合わせる」は、やってはいけない愚策  今の日本の最低賃金の制度は、昭和の時代のままです。昭和のままの最低賃金の制度を放置すると、地方経済も昭和のまま置き去りになってしまい、若い世代はますます東京に集中してしまいます。 最低賃金を全国一律にし、さらに水準を引き上げて、全国津々浦々で生産性を向上させる挑戦は、日本にとっては初めての試みなので、期待通りの成果が上がらない可能性もないことはないでしょう。しかし、今までの制度のもとでは 、地方経済は確実に、そして深刻に衰退します。 繰り返しますが、地域別最低賃金制度は世界的に見ると稀な制度です。これを世界標準である全国一律に変えるのは、日本にとって非常に価値ある試みです。もちろん、今度とも地方創生のための支援は引き続き不可欠ですが、全国一律最低賃金によって地方に夢を与えるのは、大変重要で、かつ有効だと私は確信しています。 最後に、私は地方にこそ最低賃金の引き上げが必要と考えています。ですから、全国一律にする際、最低賃金が低い地域に合わせて帳尻を合わせることは許されません。東京の最低賃金を引き上げつつ、地方の引き上げ率をより大きくして、現状1.3倍にも拡大されてきた東京と地方のギャップを縮小させることに、大きな意味と価値があるのです』、「「低いほうに合わせる」は、やってはいけない愚策」というのは言い得て妙だ。全国一律最低賃金について、筆者の腰が最後でやや引けた印象を受けたが、「日本にとって非常に価値ある試み」で、是非実現の機運がもっと高まってもらいたいものだ。
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