SSブログ

金融関連の詐欺的事件(その7)(スルガ銀行事件で暗躍した「悪徳不動産業者」が野放し状態の理不尽 大儲けして、お咎めなしって…、かぼちゃの馬車の教訓「向こうからくる不動産は全部クソ」不動産業界インサイダー地下座談会(2)) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、昨年11月14日に取上げた。今日は、(その7)(スルガ銀行事件で暗躍した「悪徳不動産業者」が野放し状態の理不尽 大儲けして、お咎めなしって…、かぼちゃの馬車の教訓「向こうからくる不動産は全部クソ」不動産業界インサイダー地下座談会(2))である。

先ずは、この問題を追ってきた新聞記者の藤田 知也氏が昨年12月21日付け現代ビジネスに寄稿した「スルガ銀行事件で暗躍した「悪徳不動産業者」が野放し状態の理不尽 大儲けして、お咎めなしって…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59066
・『地方銀行のなかでずば抜けた高収益を誇っていたスルガ銀行。2018年に不正にまみれた不動産投資向け融資の実態を暴かれ、その代償として巨額損失を計上し、銀行としての信用も地に落ちた。 その裏で不正の実行役として暴利を貪りながら、お咎めをまったく受けない不動産業者たちがいる。スルガ銀行の不正融資をスクープしてきた新聞記者が、悪徳業者を”野放し”にしている不動産行政の怠慢ぶりを告発する』、興味深そうだ。
・『スルガ銀行は変わったのか  スルガ銀行が11月30日に公表した業務改善計画は、不動産投資向け融資で発覚した一連の不祥事へのケジメのつけ方を示すものだった。 金融庁からは不動産投資向け融資で6カ月間の業務停止命令を受けると同時に、11月末までに業務改善計画を出すよう求められていた。来年4月までの業務停止期間中に、不正はしない、真っ当な銀行に立ち返ってもらうことが眼目にある。 一方で銀行中に不正を蔓延させたことの経営責任を問うため、創業家出身の岡野光喜前会長を含む現旧役員9人に対しては、総額35億円の損害賠償請求訴訟が静岡地裁に提起された。 計画公表に先だつ11月27日には、問題を把握しながらシェアハウス向け融資の拡大を主導した専務執行役員を懲戒解雇し、執行役員12人を含む計117人の行員には降格や減給などの懲戒処分を下した。ただ、不正が「組織的」だったことを理由に行員らの刑事責任は問わず、懲戒処分も退職済みの行員には及ばない。 処分された行員の懲戒事由には、レントロール(家賃収入)の改ざんに自ら手を染めるなど直接関与したのが13人いたものの、貯蓄や年収の水増しに直接関与した事例は「確認できなかった」(有国三知男社長)としている。 これまでの取材では、業者が偽造した預金通帳を添削し、修正を求めて出し直させる行員が複数いた。オーナー弁護団からは、通帳を偽造できる業者を紹介する行員との会話を録音した音声データが公開された。証拠まではつかめないものの、業者から100万円単位の謝礼を受け取っていた行員がいる、との情報もある。 それに比べると、スルガ銀行の懲戒事由は甘い気がしないでもないが、不正への関与が組織的だったと認定された銀行自身が今期決算で1000億円規模の赤字を計上することを考えれば、相応のしっぺ返しを受けていると評価することもできなくはない。 創業家のファミリー企業への不透明な融資に対する追及はまだこれからだが、全行員を対象に「法令を守る」という銀行員としての基礎(?)をたたきこむ研修を実施するというから、不正が当たり前になった組織が本当に生まれ変われるかどうか、今後を見守るしかない。 前長官がスルガ銀をベタ褒めしていた金融庁は「反省すべきを反省する」(遠藤俊英長官)と表明し、不動産融資に対する監督を強化。不正を見過ごした金融機関への立ち入り検査にも動いている。 少なくとも金融業界は、不動産投資向け融資の現場で不正が見過ごされていたことを反省し、いまは不正を通さない態勢づくりに注力している。 対照的なのが不動産業界である』、確かにこれだけ組織的にやっていたのであれば、個々の行員の責任を追及するのは筋違いだろう。
・『誰も責任追及されなかった  スルガ銀で横行した不正融資とは、顧客の年収や貯蓄を水増しした融資資料を偽造し、本来は審査の条件を満たさないような顧客に多額の融資を引き出させるものだ。銀行員が不正の片棒を担ぐスルガ銀の場合は、顧客が知らないうちに年収や貯蓄が水増しされていた例も多い。 不正を主導したのが銀行なのか不動産業者なのかは立場によって評価が分かれるが、少なくとも預金通帳、ネットバンキング画面、源泉徴収票、確定申告書といった書類を偽造しまくった実行役は、不動産業者にほかならない。私文書偽造や詐欺の罪にも問われかねない悪質な行為だが、その多くは東京都や国土交通省から宅地建物取引業の免許を交付されている。 宅地建物取引業法では、不動産業者が取引関係者に損害を与えたり、取引の公正を害したりした場合などは処分の対象になるとしている。書類を偽造し、過剰な融資を引き出す行為が、取引の公正さを害し、関係者に損害を与えるものであることは、結果をみても明らかだろう。 シェアハウス投資では、スルガ銀で融資を受けた1200人超の顧客のほとんどが預金通帳の写しなどの審査資料を改ざんされていた。その販売にかかわった業者の数は100社を下らない。 中古1棟マンション投資では、現状の入居率や家賃を記した家賃収入表(レントロール)も改ざんし、ウソを通すために賃貸契約書まで捏造されていた。ある業者では、従業員同士がサインをし合って契約書をつくりまくっていたという。 スルガ銀以外でも、三井住友銀行やりそな銀行、静岡銀行、西京銀行(山口県)、西武信用金庫(東京都)などで、業者による不正を見抜けずに融資を実行した例が取材で確認されている。業者が銀行をだまして不正を働くケースが多く、なかにはネット上にメガバンクのネットバンキング画面そっくりのホームページを作り込み、顧客の貯蓄が多いように偽装していた業者までいた。 それにもかかわらず、業者が責任を追及されることはほとんどない。不正が横行する実態を朝日新聞で最初に報じた2月13日以降、不動産業者を監督する立場にある国土交通省や東京都が、銀行融資での不正を理由に行政処分を下した例は11月末時点ではまだ一つもない。これはどういうことなのか』、三井住友銀行やりそな銀行まで引っかかっていたとは、問題の広がりを示している。「ネット上にメガバンクのネットバンキング画面そっくりのホームページを作り込み、顧客の貯蓄が多いように偽装していた業者までいた」、ここまでやっていたのかと驚かされた。国土交通省や東京都が処分しないのも不可解だが、警察も動くべきだろう。
・『悪徳業者は次のカモを探している  筆者が8月に取材したときは、東京都不動産業課は「通報や苦情が寄せられていない」といい、国交省不動産業課は「個別の状況をみて必要に応じて判断する」とコメントしていた。「不正の認定は難しく、慎重でなければならない」と言う担当者もいた。 しかし、多くの業者が犯罪同然の不正に手を染めていたことは、オーナーの弁護団が開示してきた資料からも自明のこと。スルガ銀が公表した調査報告書でも明確になった。すこし調べれば、いくらでも証拠は集まるが、それをしようとしない行政はあえて目をつぶっているようにさえ映る。 業者が不正をしてまで過剰な融資を引き出したのは、物件価格を釣り上げ、法外な利益をせしめるのが目的だ。 シェアハウスや中古1棟マンション投資では、仕入れ値に比べて売値を3割から5割も高くするケースが多かった。ウソの家賃保証やレントロールで客の目を欺けば、億単位の物件を一つ売るたびに3千万~5千万円も転がってくる。誘惑が大きかったのは間違いないだろう。 スルガ銀は業務停止処分を受けて多額の損失も計上し、顧客らの手元には割高な物件と重たい借金が残された。 その一方で不正融資をテコに大儲けした業者たちは、何のお咎めもなく高笑いしている。ある業者は店じまいをして悠々自適に過ごし、別の業者は名前を変えて次のカモを物色している。 「この業界、腐りきってますよね」。同じセリフが業者の口から自嘲気味に吐き出されるのを何度も聞いてきた。不正に走る業者が得し、マジメな業者がバカを見る状況に、諦観の念が渦巻いている。 何度か新聞紙面でも問題提起をしたが、状況は変わらず、悪質な業者は「野放し」のままだ。このまま行政はなにも手を打たず、不正を容認するような態度をとり続けるつもりなのだろうか。 そうだとすると、言えることは一つしかない。不動産投資の世界は、ウソと欲望にまみれた魑魅魍魎が跋扈している。いちど足をすくわれると、それまでの平穏な生活はたちまち暗転する。「ちょっとした老後の資産形成に」といった程度の生半可な気持ちで手を出せば、間違いなく食いものにされるということだ』、こんな不法行為をしても罪に問われず、悪徳業者は高笑いして、「次のカモを探している」などということが、放置されるようでは、日本の司法・行政の権威は完全に地に落ちたと言わざるを得ないだろう。

次に、1月11日付けダイヤモンド・オンライン「かぼちゃの馬車の教訓「向こうからくる不動産は全部クソ」不動産業界インサイダー地下座談会(2)」を紹介しよう。――は聞き手の質問。
https://diamond.jp/articles/-/190518
・『蛇の道は蛇、建前だけでは本質は決してわからない、それが不動産の世界。そんな世界にどっぷり漬かった不動産業界人がネット上に集う、全宅ツイ(全国宅地建物ツイッタラー協会)。週刊ダイヤモンド2018年12月1日号『一生モノの住み処選び』では、そんな業界人による本音座談会を前年に引き続き敢行しました。誌面には掲載できなかった暴露ネタ満載の3時間トーク、完全版を6回に分けてお届けします。 【座談会参加者(全宅ツイオールスターズ)】 ●全宅ツイのグル @emoyino 都心の不動産を中心に扱うブローカー ●どエンド君 @mikumo_hk 専業の不動産投資家。 ●かずお君 @kazuo57 事業会社の不動産事業部所属 ●新宿シュガーレス @Sugarless_kid 投資会社勤務 ●次郎丸哲戸 @_Jiro70 不動産関連を専門とする士業。大家も兼業 ●あくのふどうさん @yellowsheep 商業用不動産、権利関係の調整を主に取り扱うブローカー。 ●のらえもん @Tokyo_of_Tokyo マンションブロガー。 ●はとようすけ @jounetu2sen 不動産売買・仲介会社勤務。【全国宅地建物ツイッタラー協会】ツイッター上で交流し合う不動産業界関係者により結成された団体。不動産業界の面白物件やニュースに登場した不動産などを集めた『クソ物件オブザイヤー』を毎年開催。ツイッターのトレンド入りを果たすほどに注目されている』、「全国宅地建物ツイッタラー協会」なるものまであるのを初めて知った。世の中変わったものだ。
『――2018年の不動産トップニュースといえば、やはりかぼちゃの馬車関連でしょうか。 どエンド あれって、マスコミ勤務とか比較的リテラシーの高いエリートサラリーマンみたいな方が、周辺の土地や家賃相場と全く関係ないところで買ってる。なんでなんですかね。新築ワンルーム買ってる人も結構いますからね。 哲戸 そこそこの地方国立大出て製薬会社のMRやってるような、本人は「自分がリテラシー高い、頭がいいエリートなんだ」と思っている人が「実は富裕層にはこんな錬金術がある」って囁かれるわけですよ。「この話がまわってきたら、俺も富裕層入りだ」って。「あなたも高額所得者だから、節税が必要ですよ!」「ま、まあな」みたいな。 どエンド なんとかアセットマネージメント系って、だいたい六本木や銀座など豪華な会場でセミナーやって気持ちを盛り上げてクソ物件を買わせようとしますよね。 かずお どエンド君の名言です。「向こうからくる不動産は全部クソ」。2000RTくらいされましたよね。 どエンド それ、グルが言ってたのをパクったんだけどね。 哲戸 そういう感じの友達がいてさ、訳のわからないワンルーム物件を「これ節税になるの?」って持ってきたの。確かにマイナスになってるけど、普通に考えて新築のSRCマンションを買って、所得税がそんな赤字になるわけない。見てたら「その他」っていうところに一番大きい400万ぐらい入ってるのよ。「この『その他』って何?」って業者に聞きに行かせたら、「その他」は「なんかいろんな経費を入れていいんですよ、そこに」。みたいな説明をされたと。え?そんな雑な話を。 かずお ドン・キホーテのレシートとかも入ってるのかね。 哲戸 それ、そもそも不動産買わなくていいじゃん!事業である程度やっておけばいいじゃんっていう話。こんな話に乗っちゃう人が結構多いんですね。 はと 節税っていう言葉にやられちゃう』、「「その他」は「なんかいろんな経費を入れていいんですよ、そこに」」などという話が、税務署に通用するのだろうか。
・『「経費で節税」という言葉の魔力  どエンド たくさん納めてるだけに。 かずお こんなに給料が上がったのに、税金で取られて大して増えねえぞって。 どエンド あと、経費に対する憧れってあるんじゃないですか。 のら 私、サラリーマンだから「経費使って節税」って言葉への憧れ、よくわかりますよ。ついにここまで来たか、って思っちゃいますよね。 グル かっこいいよね。 どエンド 初年度の売り上げに消費税の還付金を足してシュミレーションを出すようなひどい業者もいますしね。 かずお それで反応しない時点で鴨になってる。 哲戸 キャップレートの話をすると、例えば5%と、6%って1%しか違わない。でも実際の物件価格だと2割ぐらい違うわけでしょう。そこをわかってない人が多い。素人だと物件価格の1億でキャップが1%違うと100万円しか違わない感覚に陥っちゃうんだけど、全然違うよね。 かずお で、売るときも5%で売れると信じてる。 どエンド これ本当にわかってもらえない…。ところでかぼちゃや地方の一棟マンション買って、空室なのに賃貸借契約書を偽造されてるの、かわいそうすぎないですか。家賃まで相場より水増しされて。 かずお まあ見に行けよっていう話。見に行ったら、壁に、ドアにシートが張ってある。人が生活してるかどうかわかるじゃん。全部、同じニトリのカーテンなんですよ。 どエンド 近所のレオパレスが半分空いてるのに、この物件だけ満室だったら、何かおかしいと思いますよね。 シュ 思わないんでしょうね。買う人は。「たまたまこのアパートは半分空いてるから、チャンスなんだ」って思っちゃう』、物件を見もしないで購入する投資家の自己責任もあるとはいえ、「空室なのに賃貸借契約書を偽造」とは酷い悪徳業者もいるものだ。
・『「エリートは取引先から詐欺に遭ったことはない」  哲戸 サブリースだから、そんなの知ったこっちゃねえよと。あとで業者がつぶれるとか、そこまで発想が至らないんでしょうね。 はと 頭いいのにねって思っちゃいますけどね。 哲戸 もう一歩先に、多分頭がいかないんだろうな…。 どエンド 大企業に勤めてると、取引先が飛ぶとかあまり経験ないんじゃないかな? シュ ハンコがつかれたものに対する絶大なる信頼。 のら そもそも取引先が証拠を偽装してくるとか、最初から詐欺にハメこんでこようってのに遭わない。大企業だと。 どエンド 零細自営業だと発注先は会社なんかより個人の方が安心感ありますよね。 あくの 「こいつのケツはおさえた」っていうね。 どエンド 昨日できたばっかりの、資本金100万の会社とか嫌じゃないですか。個人の方が逃げないからいい。 あくの 適当に失敗経験を積んでた方がいいかもしれないですね。いきなりかぼちゃで1億5000万マイナスとかだと大変すぎるから。 シュ 郊外で1000万ぐらいの収益ワンルームをよくやってるランドネットとかの物件で練習してコケればいいんですよ。でもランドネットの物件って、蓮田駅から12分の中古ワンルーム400万、グロス(表面利回り)8%なんですよ。まあまあですよね。 哲戸 旭川で180万円で20%とかの物件売ってる人いるけど。当時、スルガかジャックスか忘れたけど、不動産担保ダメなんでフリーローンで融資つけてた。でも全然問題ない、180万円だからって。ただ、暖房とかエアコン壊れたら、賃料軽く飛ぶ』、「エリートは取引先から詐欺に遭ったことはない」というのは、投資が騙された背景を的確に説明しているようだ。
・『一度騙されると「鴨リスト」に載っちゃう  ――かぼちゃのオーナーの皆さんは、今後物件運営どうすればいいのでしょうか。何かやりようはある? 哲戸 経験則的に言うと、物件って握り締め続けるとなんとかなるケース多いよね、僕が管理してた物件で、2007年とかにリート作るって地方の商業施設とかいっぱい入れたやつが、見事に溶けちゃってレンダー主導になった。でもレンダー主導だと売却もできずに、ずっと10年間持ち続けてたら意外と生き返った。債務超過になってたのに、最後分配金がいくらか戻ってきた。お釣り返ってくるみたいな。あれ?みたいな。 あくの 賃料は入ってきますもんね。 哲戸 ただ、かぼちゃはダメだね。多分。いくら握り締めても。 のら そもそも入居者入るんですかあれ。 どエンド かぼちゃ、まじめに運用すると実質利回りは定価の3、4パーぐらいなんですよね。金利1%で30年返済とかじゃないと合わない。それでも持ち出しなく抜けられるまで20年かかる。 あくの 賃料が取れないから…。 かずお かぼちゃの馬車が埋まらないのはリビングがないからだ。壁ぶち抜いて共用リビングを作ればすべてうまくいくっていってコンサルフィーとる業者もいますよね。 どエンド リビングとかそういう問題じゃない…。タコ部屋でも恵比寿とか中目黒の立地なら埋まります。 グル 被害者を救済する団体ですって言って、金を集めていたやつもおったな。 かずお やっぱり一度騙されると、「鴨リスト」に載っちゃうんですよね。かぼちゃ救済でも金を取られ、再生コンサルに金を取られ。 グル 弁護士団でも、多分取れなかった。騙されてる。 シュ 債務カットどのくらいでしたっけね』、「一度騙されると、「鴨リスト」に載っちゃうんですよね。かぼちゃ救済でも金を取られ、再生コンサルに金を取られ」というのは、恐ろしい話だが、これが悪徳業者たちの手口なのだろう。
・『「元本カット?やべえ、借りときゃよかった!」  かずお 元本カットをしろって、金融庁から通達が出てるから。この前、スルガがリリース出した業務改善計画でもそうするって言ってるね。 あくの まじすか…、借りときゃよかった。 グル ハンコ自分で突いたのにね。 かずお それなのに、責任取らせないのは、俺は反対だな。お前が決断したんやろうって。確かに騙されたけど、スルガは何も悪くないじゃん。お金貸してくれたのに。 グル かずおくんも倒産経験者ですしね。 かずお 俺じゃない、会社、会社! どエンド 社員1人あたりに直すと一人◯億円くらい棒引きしてもらいましたかね。 かずお やめてくださいよ。でも数百億円返したからね!だいじょうぶ。今日の座談会参加者の半分がリーマンで会社潰れてるからね。僕らは確かに、会社潰して借金引いてもらいましたけど、その代わり社員がリストラされて、残った人も年収ががっつり下がって、かつ住宅ローン組もうとしても、住宅デベロッパーなのに組めないというさぶい目に遭いましたから。同じ目に遭えって。お前も持ってるものは全部売り切って、「すんません、残ってる分は迷惑かけます」とか「残った分頑張って返します」っていうんだったら、わかるけれど。なにぃー、まだ、むしれる毛残ってるやん!って。全部むしれよ』、いやはや不動産業界というのは、真っ当なサラリーマンとは対極の魑魅魍魎の世界のようだ。なお、今回は対談の2回目だけ紹介したが、興味がある方は、下記の特別レポートの一覧から探してほしい。
https://diamond.jp/category/s-dw_special
タグ:(その7)(スルガ銀行事件で暗躍した「悪徳不動産業者」が野放し状態の理不尽 大儲けして、お咎めなしって…、かぼちゃの馬車の教訓「向こうからくる不動産は全部クソ」不動産業界インサイダー地下座談会(2)) エリートは取引先から詐欺に遭ったことはない 金融関連の詐欺的事件 藤田 知也 現代ビジネス 「スルガ銀行事件で暗躍した「悪徳不動産業者」が野放し状態の理不尽 大儲けして、お咎めなしって…」 誰も責任追及されなかった 私文書偽造や詐欺の罪にも問われかねない悪質な行為 ネット上にメガバンクのネットバンキング画面そっくりのホームページを作り込み、顧客の貯蓄が多いように偽装していた業者までいた 「経費で節税」という言葉の魔力 「元本カット?やべえ、借りときゃよかった!」 かぼちゃ救済でも金を取られ、再生コンサルに金を取られ 一度騙されると「鴨リスト」に載っちゃう 空室なのに賃貸借契約書を偽造 「かぼちゃの馬車の教訓「向こうからくる不動産は全部クソ」不動産業界インサイダー地下座談会(2)」 ダイヤモンド・オンライン 「次のカモを探している」 悪徳業者は次のカモを探している 監督する立場にある国土交通省や東京都が、銀行融資での不正を理由に行政処分を下した例は11月末時点ではまだ一つもない 三井住友銀行やりそな銀行、静岡銀行、西京銀行(山口県)、西武信用金庫(東京都)などで、業者による不正を見抜けずに融資を実行した例が取材で確認 不動産業界 スルガ銀行は変わったのか 今期決算で1000億円規模の赤字を計上
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

メディア(その11)(小田嶋氏2題:加害者に「親密」な人たち、カフェラテ150円の罪の大きさ) [メディア]

メディアについては、1月8日に取上げた。今日は、(その11)(小田嶋氏2題:加害者に「親密」な人たち、カフェラテ150円の罪の大きさ)である。

先ずは、コラムニストの小田嶋 隆氏が1月11日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「加害者に「親密」な人たち」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/174784/011000175/?P=1
・『扶桑社が発行する「週刊SPA!」編集部が、同誌に掲載した記事について、このほど、謝罪のコメントを発表した。 以下、経緯を説明する。 「週刊SPA!」は、昨年12月18日発売分(12月25日号)の同誌誌面上で、《ヤレる「ギャラ飲み」》というタイトルの特集記事を掲載した。「ギャラ飲み」とは、同誌によれば、「パパ活」に続いて頻繁にその名を聞くようになっている昨今流行のコミュニケーション作法のひとつらしい。もともとは、「タク飲み」という一緒に飲んだ女性にタクシー代として5000円から1万円を支払う飲み方から発展した習慣で、男性が女性に一定額の「ギャラ」を支払う飲み方なのだそうだ。 その「ギャラ飲み」について、特集記事では、カネを払って女の子と飲みたい男たちと、他人の支払いで酒を飲みたい女性を結びつけるスマホ用のマッチングアプリ4例を紹介しつつ、「ギャラ飲み」の実際をレポートしているわけなのだが、問題となったのは、同誌が、インターネットマッチングサービス運営者の見解として、「ヤレる女子大学生ランキング」として実在する首都圏の5つの大学名を掲載した点だ。 当然、批判が殺到した。 朝日新聞の記事によれば、《ネット上の署名サイトでは4日に「女性を軽視した出版を取り下げて謝って下さい」と呼びかけがあり、7日までに2万5千人超の賛同が集まっていた。》のだそうだ。 そんなこんなで、冒頭でお伝えした通り、「週刊SPA!」編集部が、この7日に謝罪のコメントを発表したというのが、これまでの流れだ』、「ギャラ飲み」とは初めて知った。ガールズバーなどより安くて済むのだろうか。
・『コメントは以下の通り。《本特集は「ギャラ飲み」という社会現象について特集したものです。ギャラ飲みの現場で何がおき、どういったやりとりが行われているのかを一般大衆誌の視点で報じております。その取材の過程で、ギャラ飲みの参加者に女子大生が多いということから、ギャラ飲みのマッチングアプリを手掛けている方にも取材を行い、その結果をランキングという形で掲載したものです。そのなかで「より親密になれる」「親密になりやすい」と表記すべき点を読者に訴求したいがために扇情的な表現を行ってしまったこと、運営者の体感に基づくデータを実名でランキング化したこと、購読してくださった読者の皆様の気分を害する可能性のある特集になってしまったことはお詫(わ)びしたいと思います。また、セックスや性にまつわる議論については、多種多様なご意見を頂戴しながら、雑誌として我々にできることを行ってまいりたいと思っています。》』、「ヤレる女子大学生ランキング」とはいくら三流週刊誌とはいえ、やり過ぎだ。
・『「週刊SPA!」は、私自身、現在に至るまでなんだかんだで10年以上寄稿している週刊誌でもある。基本的なかかわりかたは、2週か3週に一度のタイミングで、短い書評のコーナーを担当しているだけなのだが、時々コメント取材に応じたり、インタビュー記事に付き合ったりすることもあって、編集部とはそこそこの付き合いがある。なので、今回の出来事については、まったくの他人事というふうには受け止めていない。責任を感じているというほどのことはないにしても、応分に心を痛めている。 騒動の火元になった記事は、初出の段階では読んでいなかった。 自宅に送られてきているバックナンバーを読んだのは、ツイッター上での炎上がひとまわりして、編集部がお詫びのコメントを出した後のタイミングだった。 率直な感想としては、「失望」という言葉が一番よく当てはまると思う。 事実、読み終わってしばらく不機嫌になった。 告白すれば、私は、自分が寄稿しているにもかかわらず、この雑誌をもう何年も開いていない。理由は、失望したくなかったからだと思う。読めば確実に失望することが内心わかっていたからこそ、私は毎号送られてくる最新号を、ビニール外装の封印を解くことなく、単に玄関先に積み上げていた。で、半年ほど積み上げて熟成させた後、ヒモで縛って廃棄する手続きを粛々と繰り返してきた次第だ。 今回、あらためて読んでみて、やはり失望した。 ネット上を漂っている自称業界人の「こんなことでいちいち謝っていたのでは雑誌なんか作れやしないぞ」 という感じのコメントにも、別の意味でうんざりしている。 雑誌は、もしかしたら業界ごと腐っているのかもしれない。 そう思うと少しさびしい』、寄稿していながら、読んでなかったというのは、「失望する」というより、コラムニストとして「恥ずかしくなる」ためだったのではなかろうか。
・『ネット上で殺伐とした言葉をやりとりしている業界周辺の人々の言い分を要約すると 「フェミやらクレーマーやら人権屋やらの正義派ぶったツッコミにいちいち真正直に対応していたら、男性向け娯楽雑誌はじきに聖歌隊の歌集みたいなものになるぞ」「お上品な雑誌が読みたいんなら自分でノートの裏にでも記事書いてろよ」てなお話になる。 つまり「リアル」で「ぶっちゃけ」な「男の本音」を率直に反映した誌面を作るのであれば、無遠慮な下ネタを避けて通ることは不可能なのであって、むしろ問題なのは、本来男が読むべき雑誌を、想定読者ではないある種の女性たちがわざわざ眉をひそめるために読んでいるその異様な読書習慣のほうだ、と、彼らは言いたいようだ。 もちろん、私とて、最新号の雑誌を陳列する書店の書棚が、上品で奥ゆかしい5月の花園みたいな場所であることを期待しているわけではないし、すべての雑誌が清らかなピューリタンの魂を体現すべきだと考えているのでもない。 とはいえ、「週刊SPA!」の当該の特集に対して投げかけられた非難の声が不当に大きすぎるというふうには、まったく思っていない。また、今後あの種の企画が萎縮することでわが国の雑誌出版文化が危機に瀕するだろうとも考えない。当然だ。あれは、なんの取り柄もない、どうにもならない正真正銘のクズ記事だった。 下品だからダメだと言っているのではない。 不謹慎だからこの世界に生き残るべきではないと主張しているのでもない。 個人的な見解を述べるなら、私は、書き方に多少下品な部分があっても、内容が面白いのであれば、その記事は掲載されるべきだと思っている。また、本文中に不謹慎な断言をいくらか含んでいるのだとしても、全体として洒脱なテキストであるのなら、その文章は必ずや印刷されて読者のもとに届けられなければならないと考えてもいる。 雑誌は、多様であるべきものだ。 その意味で、雑誌の記事は、不謹慎であっても面白ければOKだし、不真面目に書かれていても参考になればオールライトだ。ダサくても真面目なら十分に許容範囲だ。つまり、どこかに欠点があっても、ほかの部分になにがしかの魅力が宿っているのであれば、雑誌記事は、生き残る資格を持っているものなのだ』、雑誌記事に対する考え方は穏当だ。
・『12月25日号に掲載された「ギャラ飲み」特集の特集記事は、そういう長短を併せ持ったテキストではなかった。 バカがカッコつけたあげくにスベってみせただけの、ダサくて下品で、おまけに差別的で、だからこそ批判されている、どこをどう拾い上げてみても擁護できるポイントがひとつも見当たらないゲロ企画だった。 ということは、あんなものはツブされて当然なのである。 毎週毎月大量に発行され、印刷される雑誌の記事の中に、価値のないパラグラフや、焼き直しの凡庸なフレーズが含まれているケースは、実のところ珍しくない。というよりも、雑誌の主要な部分は無価値なフレーズと焼き直しのアイディアで出来上がっている。それはそれでたいした問題ではない。 ただ、今回のあの記事は、単に無価値であるのみならず、確実に暴力的で差別的な言葉を随所に散りばめることで、明らかな被害者を生み出していた。その点が大きな問題だった』、「明らかな被害者を生み出していた」のであれば、確かに問題だ。
・『関係者にぜひ正しく認識してもらいたいのは、「週刊SPA!」のあの記事が「面白いんだけど言い過ぎてしまったテキスト」や、「トンガッている分だけ毒が強すぎた企画」ではなくて、「調子ぶっこいたバカがあからさまな性差別を振り回してみせただけの救いようのないゴミ記事」だったということだ。 ところが、どうしたものなのか、21世紀のネット社会では、この種の不祥事→お詫び案件が発生すると、ほとんど反射的に「詫びさせた側」「クレームをつけた人々」を叩きにまわる人々が、どこからともなく湧いて出て一定の役割を果たすことになっている。 今回の場合だと 「シャレのわからない赤縁メガネの学級委員長タイプがコメカミに青筋立ててキャホキャホ言い募ったおかげで、なんだか世にも凶悪な性差別記事だったみたいな話になっちゃってるけど、実際に読んでみれば、なんのことはないよくあるナンパ指南のテキストですよ」みたいな語り口で事態を説明したがる逆張りの人々が、加害記事の制作者を応援している。 振り返れば、財務省を舞台としたセクハラ事件でも伊藤詩織さんが告発したレイプ疑惑でも、最後まで加害者の側に立って、被害者の態度に非を鳴らす人々がSNSに盤踞していた。 彼らは、炎上の原因を、記事そのものの凶悪さにではなく、クレーマーの狂気やフェミの人権意識の病的亢進に求めるテの論陣を張りにかかる。 でなくても、そういう人々は、今回の記事の欠点を 「『ヤレるギャラ飲み』というタイトルの付け方が行き過ぎだった」「『お持ち帰りできる女子大生ランキング』にしとけばセーフだった」という程度にしか受け止めない』、ネット社会で、「「詫びさせた側」「クレームをつけた人々」を叩きにまわる人々」というのは不思議な存在だ。ネット右翼の一派なのだろうか。
・『冒頭近くで引用した「週刊SPA!」編集部のコメントも、もっぱらに「言葉の使い方の不適切さ」を詫びることに終始していた。 《 −略− そのなかで「より親密になれる」「親密になりやすい」と表記すべき点を読者に訴求したいがために扇情的な表現を行ってしまった −略− 》と彼らは言っている。 要するに、編集部は、今回の騒動の主たる原因を、「ヤレる」という書き方が下品で扇情的だった点にしか認めていない。逆にいえば、彼らはその部分を「親密になれる」と言い換えていればOKだったと考えている。ということは、企画意図自体の凶悪さを認めていないわけだ。 9日になって5大学が抗議文を発表したことを受け、扶桑社は同日夜に公式サイトで「女性の尊厳に対する配慮を欠いた稚拙な記事を掲載し、多くの女性を傷つけてしまったことを深くお詫びいたします」などとする謝罪文を掲載した。 しかしネット上のコメントの中には、編集部を擁護する声が多数ではないが蔓延している。 代表的なのは、「ホイチョイの『東京いい店やれる店』がヒットしたのは、1994年だったわけだけど、あれから四半世紀で、日本の空気はすっかり変わってしまったわけだな」「思えば遠くへ来たものだな」「もう、『ヤレる』なんていう言葉を含んだ企画は二度と編集会議を通らないんだろうな」的な述懐だ。 彼らは、記事の劣悪さそのものよりも、むしろ凶悪な記事が許されなくなった世間の風潮の変化を嘆いている。「窮屈でかなわないぜ」というわけだ。 念のために解説しておくと、彼らの分析は根本的に的を外している。 今回の経緯をどうしても「お上品ぶった腐れリベラルだとか、何かにつけて噛み付いてくる狂犬フェミみたいな人たちのおかげで世界が窮屈になっている」というストーリーに落とし込みたい向きは、「1990年代には、『東京いい店やれる店』が大ヒットしていたのに、2019年には、同種の雑誌企画がいきなり謝罪に追い込まれている」という感じの話に逃げ込みたがる。 でも、それは違う。 第一に、「東京いい店やれる店」がピックアップし、紹介し、ランキング化していたのは、「店」であり「デートコース」だった。 ということは、あのヒット企画は、タイトルに「ヤレる店」という下品な表現をフックとして用いてはいたものの、その内容はあくまでも「おすすめのデートコースと評判のレストラン」をガイドする、東京のレストランガイドだった。その意味で、今回の「週刊SPA!」の企画記事を同一線上に並べられるものではない。 今回の「週刊SPA!」の記事がランキング化しているのは、ズバリ「女子大学生」という生身の人間だ。 しかも、その都内の女子大学生たちは「ヤレるかヤレないか」という一点に沿って序列化され、評価され、名指しでまな板に上げられている。 「ヤレる店」をランキング化する企画にしたところで、そりゃたしかに上品な話ではないだろう。 でも、「ヤレる女子大生」を実在の大学名そのまんまでBEST5まで表にして掲出してしまう感覚とは比較にならない。いくらなんでも、「ヤレる店」の企画は、そこまで凶悪ではない』、「ホイチョイの『東京いい店やれる店』」との相違まで、調べた上で明確に指摘するとは、さすがだ。
・『最後に「女衒」についても一言触れておきたい。 「週刊SPA!」の当該のこの企画は、三部構成で、第一部が「アプリ」紹介、第二が「飲みコンサル」、第三部が「女衒」となっている。内容は、それぞれ、「ギャラ飲みアプリの紹介」「ギャラ飲みマッチングサービスを主宰する人々によるギャラ飲みイベントの紹介」「女衒飲みの紹介」だ。問題は第三部の「女衒飲み」なのだが、私は、当初、「女衒」からの被害をブロックするためのお話だろうと思って読んでいた。当然だ。 なぜというに「女衒」というのは、女性が性的商品として人身売買されていた時代の職種で、現代にあっては反社会的組織の人間が担っていると考えられる犯罪的な役割であり、明らかな蔑称だからだ。女衒と呼ばれて喜ぶ人間はいないはずだし、女衒に近づきたいと考える人間も普通はいない。 ところが、最後まで読んでみるとどうやら様子が違う。というのも、この記事の文脈の中では、「女衒」は、蔑称ではないからだ。蔑称ではないどころか、一定のリスペクトを持って「女衒の人との接触に成功」(週刊SPA!12月25日号p56)というふうに書かれていたりする。 見出しでも「実はコスパ○(マル)。女衒ギャラ飲みはかわいくて安い」(同p56)となっているし、本文でも「アプリでは時間ごとにどんどん料金が加算されていくが、女衒に紹介してもらった場合は、明確な時間制限はないのがありがたい」「女衒飲みの条件として、女衒が指定した店で飲む必要があるが、細かいルールは少なく、あくまで”大人のやり取り”になる」などと、記事中では「女衒」を肯定的な存在として持ち上げている。 私は、「女衒」という言葉をこれほどまでにポジティブに運用している現代の文章をほかに知らない。 彼らはいったいどうしてまた、女衒なんかを持ち上げているのだろうか。 ともかく、これを読んで、ちょっと謎が解けた気がしている。 この記事は、単なるナンパ指南であるようでいて、もう少し不吉な何かを示唆している。 書き手は、同誌の想定読者に対して「おまえら、しょせんヤリたいわけだろ?」という感じの思い切り上から侮った問いを投げかけている。 さらに、「ギャラ飲み」に集う女性たちに向けては「君らはアレだよな? どうせオンナを武器に世渡りするほかにどうしようもないわけだろ?」的なこれまた著しく侮った決めつけを適用している。 その一方で、女衒にはあからさまな憧れの感情を表出している。 「運営側」に対する無条件の憧憬。 他人をコントロールすることへの強烈な欲望。 まるっきりな権力志向じゃないか。 これはいったい何だろう? いわゆる中二病だろうか? 単に悪ぶってみせているということなのか? とりあえず、ここで結論を出すことはせずにおく。 ただ、「週刊SPA!」の周辺に 「真面目なヤツらはカタにはまっててどうしようもない」という気分を共有している人たちが集まっている気配はずっと前から感じていた。 あるいは、私はその空気がイヤであの雑誌を開かなかったのかもしれない。 結論を述べる。 カタにハマっているのは、実は不真面目な人たちだ。 真面目な人たちは、自分の人生に真面目な態度で臨んだことの結果として、良い意味でも悪い意味でも厄介な個性を手に入れることになる。 不真面目な人たちはその境地に到達することができない。だから、半端な見栄を張ったり他人をランク付けしたりする。なんと哀れな人間たちではないか。 いっそスパっと(以下略)』、「カタにハマっているのは、実は不真面目な人たちだ。 真面目な人たちは、自分の人生に真面目な態度で臨んだことの結果として、良い意味でも悪い意味でも厄介な個性を手に入れることになる。 不真面目な人たちはその境地に到達することができない」という逆説の意外さには感服した。

次に、同じ小田嶋氏による1月15日付けの「カフェラテ150円の罪の大きさ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00002/?P=1
・『福岡県内のコンビニエンスストアで、コーヒー用の100円のカップを購入した62歳の男が、そのカップの中に150円のカフェラテを注いだ窃盗の疑いで逮捕された のだそうだ。 第一報はツイッターのタイムラインに流れてきた「NHKニュース」の公式ツイッターの RT を通じて知った。 リンク先で紹介されているニュースの動画では、現地のコンビニの駐車場に立った若い記者がこう言っている。 「こちらの白いカップが100円のコーヒー用カップ。そしてこちらの茶色いカップが150円のカフェラテ用カップです。男はこちらの白い100円のカップに150円のカフェラテを入れたということです」 なるほど。 再生を終えた後、しばらく考え込んでしまった。 「要するに違うカップにカフェラテを注ぐことで50円分の代金をチョロまかした62歳の男(←オレと同い年だ)がいました、ということなんだろうけど、これは『ニュース』なのだろうか」「たしかに法律を厳格に適用すれば100円の代金で150円の商品を手に入れたこの男の行為は、差し引き50円分であれ窃盗は窃盗なのだろう。とはいえ、こんなセコいゴマカシで逮捕されるなんてことが現実にあり得るものなんだろうか」「逮捕されたことが事実であるのだとして、それでは、この差額50円の窃盗による逮捕劇を全国ネットのニュースで伝える判断を下したデスクは、いったいこのニュースのどの部分にニュースバリューを認めたのだろう」「2年ほど前にオレは、考え事をしながら西友のセルフレジを精算せずに通過したことがある。で、100メートルほど歩いた時点で気づいて店に引き返したのだが、このオレの素敵な正直さはニュースにならないのか?」「50円チョロまかしたおっさんの不心得がニュースになるのなら、嫁さんに暴言を吐いた男や、散歩中の飼い犬が路上に残した排泄物を放置した飼い主の不行跡だって、ニュースにされておかしくないと思うぞ」 大げさに言えばだが、私は、この程度の逸脱が全国ニュースとして報じられてしまう国で、この先、自分が、無事に天寿をまっとうできるのかどうかに不安を感じはじめている。カタクチイワシの群れみたいな相互監視社会を作り始めているこのわれわれの国では、右旋回のタイミングがほんの少し遅れれば、そのまま群れから取り残されて永遠に排除されることになっている。62歳の私は、ボタンを押し間違えることが不安で、この先、二度とコンビニのコーヒーを買えなくなることだろう』、こんな些細な事柄を全国ニュースで流すNHKのセンスには呆れ果てた。と同時に、「100円のカップに150円のカフェラテを入れた」なんてことが可能だとすれば、それは自動販売機(?)の設計のお粗末さこそが問題で、「50円チョロまかしたおっさんの不心得」などは取るに足らないことではないかと感じた。
・『NHKのニュースサイト「NHK NEWS WEB」にアップされているニュースの放送原稿では、事件の概要を以下のように説明している。《−略− 警察によりますと「100円のコーヒーカップに150円のカフェラテを注いでいる」という情報が常連の客から店に寄せられ、店が警戒していたところ、男がカフェラテを注いでいるのを確認しました。 このため店のオーナーが問いただしたところ、男は「ボタンを押し間違えただけだ」と説明していましたが、警察の調べに対し、容疑を認めているということです。 −略− 》 率直に申し上げて、高校の放送研究会がパロディで作る嘘ニュースのシナリオに見える。というのはつまり、それほど「バカなネタを大真面目に作っている」ということだ。パロディの要諦は、「バカなネタを大真面目に作ること」だ。 で、NHKのこのニュースは、まさに、「バカなネタを大真面目に作る」というパロディの作劇法そのままの手法で作り込まれている。 その結果、本物のニュースでありながら、最終的には「ニュース」という存在そのものに対する見事なパロディに仕上がっている。 おそらく、このニュースフィルムを作っている間、NHKのスタッフは、自問自答せずにいられなかったはずだ。 「なあ、このニュース、このカタチのままで流して大丈夫なのか?」「これ、ヘタすると、定時ニュースの権威をクソまみれしちまうぞ」 80から90年代にいくつか列席したテレビ業界関係者の結婚披露宴では、「新郎が新婦を誘拐した」とか 「容疑者新郎Aが共犯者新婦Bと共謀して計画的な職場放棄(新婚旅行)を画策している」みたいな見立てで作られた記者レポート風のVTR作品が上映されて、大いに参加者の喝采を集めていたものだった。 メディア業界の人間は、自分たちの業界のセルフパロディを好む。のみならず、時には、本業での制作物に対する時よりも大きな情熱を傾けてパロディの制作に注力する。 で、彼らが余興や忘年会や仲間内の結婚式で上映する自虐パロディの映像作品の中には隠れた傑作が少なくないわけなのだが、今回のNHKニュースの作風は、その種のパロディニュースのそれとほとんど区別がつかない。 この種のパロディニュースの勘所は +大真面目なニュース原稿の文体 +真剣な表情のレポーターの現地レポート +緊迫感を演出する手持ちカメラ映像 +下からアオる感じの大仰なカメラワーク という、安ワイドショーニュースならではの堅固な形式を固持しつつ、それでいてテーマの部分では +どうにもあほらしい犯罪(はんぺんの下にちくわぶを隠すことでおでんの会計をごまかしたとか)を告発するといったところにある。 要するに、ニュースの中身をどこまでも空疎にしておくことで、世間の信じている「ニュース」なるものが、いかに外形的な要素に依存した形式的な制作物であるのかを天下に知らしめることが、パロディに与えられている使命だということだ』、ということであれば、同じ時間帯でもっと重大で政権に不都合なニュースがあったので、その重大さを薄める効果を狙っていたのでは、とさえ深読みしたくなる。
・『私自身、ずっと昔、「ASAHIパソコン」というパソコン情報誌で、「藍亭長屋」という用語解説パロディの連載を持っていたことがある。 藍亭長屋という架空のお江戸下町コミュニティーに住むご隠居さんが、「ユビキタス」「脆弱性」「コンパチブル」「アンドゥー」「パケ死」といったIT用語について長屋の住人相手に解説をカマすという落語仕立てのコラムだった。 必ずしも成功した連載ではなかった(というよりも、わりと盛大にスベってました)のだが、この時心がけていたのは、 「落語の形式と文法は最大限遵守すること」「落語としてそのまま成立する口舌の冴えとオチの鮮やかさを目指すこと」「ネタは落語からなるべく遠ざかること」の3つだった。 つまり、パロディは「形式は完璧に、内容は空疎に(あるいは「異質に」)」という構えで作られているからこそ、パロディたり得るわけで、形式の作り込みが甘かったり、内容が変にもっともらしくなってしまったら、パロディとしては焦点のボケたものになってしまうということだ。 「藍亭長屋」シリーズの連作は、結果的にはニセモノの落語の領域にさえ到達できない半端なパロディに落着した。のみならず、IT用語解説としてもたいしてわかりやすくない困ったテキストでもあった。 ただ、読者にとっては価値の低い読み物であっても、書き手にとっては、あれを書いたおかげで落語への愛情と理解が深まることになったありがたいコラムだった。書かせてくれた媒体や、許容してくれた編集部や読者にはいまでも感謝している。ついでに言えばだが、あの連載を何年か続けたことで、私は、パロディと現実の距離について少しだけ敏感になれたと思っている。まあ、怪我の功名に過ぎないといってしまえばそれまでだが。 最近の例では、ネット上で時々話題になる「虚構ニュース」がパロディの文法をよく踏まえていると思う。 内容のバカバカしさといい、文体模写の見事さといい第一級のパロディに仕上がっている作品が多い。 で、この度のカフェラテのニュースだが、実際、「虚構ニュースの映像版」と言われて見せられたら、私は信じてしまったかもしれない。 それほど完成度が高い。 ということはつまり、それほど形式のみが完成されていて中身がバカげているということだ。 こんなことが起こるのは、もしかして、ニュース制作の現場で、「きちんとした中身(内容)のあるニュースを配信する」ことよりも、「形式として完成度の高いニュースを制作する」ことが重視されているからなのかもしれない。 記者さんやデスクさんたちは、ニュースの中身の信頼性やニュースバリューの重さをあれこれ考えることよりも、ただただ右から左に作っては流すニュースの形式としての完成度ばかりを気にかけている。だから、ニュースバリューはゼロでも、形式としてニュースらしかったり、扇情的な素材として視聴者のアイキャッチに貢献する素材であれば、そのままニュース項目として合格点をつけてしまう。実にありそうな話ではないか』、記者やデスクがそこまで落ちぶれていることはないと信じたいが、本件のニュースの扱いは確かに解せない。
・『うがった見方をすれば、このニュースは 「コーヒー類飲料の品種ゴマカシ注入の横行にアタマを痛めるコンビニ業界が、警察とマスコミを巻き込んで一罰百戒の逮捕案件ニュースの配信を企画した」結果なのかもしれない。 そう考えると、一応の辻褄は合う。 あるいは、もっと別の陰謀論的な推理を持ち出せば 「厚労省による不適切統計処理や五輪招致に関する贈賄疑惑などなど、政権にとって不利なニュースばかりが並ぶ中で、政権との軋轢を恐れるニュース制作現場が、誰も傷つかない無難なニュースを求めた結果が、ほのぼのローカル軽犯罪ネタの全国ニュース昇格という結果への着地だった」という読み方もできる』、後者は私が2パラグラフ前に指摘した通りで、憶測ではあるが信憑性も高いのではあるまいか。
・『いずれも信憑性は著しく低い。 というよりも、まるっきりの当てずっぽうに過ぎない。 おそらく、真相は、ニュースを配信している現場の人間たちが、ニュースバリューという抽象的で手強くで厄介で神経の疲れる対象についてアタマを絞ることよりも、ニュースの完成度という手慣れた人間には一発でわかる尺度でニュースを選別することを選び続けたことの結果が、ゴミみたいなニュースの配信を招いているということなのだと思う。 雑誌の現場でも似た問題は起こっている。 内容はまるで空疎なのに、なんとなく形式が記事っぽく整っているから通用している」 みたいな記事はたくさんあるし 「本当は面白くないんだけど、面白っぽく書いてあるもんだからついつい笑わされたような気分になるコラム」がいたずらにトラフィックを空費している例だって、たぶん珍しくない。 個人的には、コーヒーの容器にカフェラテを注いだおっさんの小ずるさと、のべ2015万人に対して、雇用保険の支給額など564億円を過小支給していた厚労省の統計不正の深刻さを虚心に比べて見れば、後者の方が数億倍は悪辣だと思うし、ニュースバリューに関しても、後者のニュースの方が少なくとも百倍は重要だと思うのだが、放送時間の方は、せいぜい二倍程度しか割かれていない。 実に不健全な運用だと思う』、後者のニュースの放送時間が「せいぜい二倍程度」ということであれば、やはり不都合なニュースのインパクトを薄めるためという見方が、ますます有力になってきたようだ。
・『この微罪逮捕案件を公共放送が全国ニュースで配信した理由を解明するためには、実は、もうひとつ、有力な仮説がある。 以前、当コーナーでも紹介した「スッキリ中国論」(田中信彦著 日経BP社)の中にその話が出てくる。 以下、本書の56ページ〜69ページの記述の中で詳しく紹介されている内容を簡単に要約する。+刑法学が専門の一橋大学法学研究科、王雲海教授(法学博士)によれば、中国の刑法と日本の刑法には根本的な違いがあって、中国が犯罪の「質と量」を問うているのに対して、日本では「質」のみが重視される。
 +具体的には、日本では無断で携帯の充電をした人間が窃盗罪に問われた例があるのに対し、中国では、ある程度以下の金額の窃盗は捜査されない。
 +中国では違法行為と犯罪は2つの異なった概念である。それゆえ、違法行為であっても「犯情が極めて軽く、危害が著しくない場合は犯罪にならない」
 +他方、日本では、「法律に違反すること」そのものが「犯罪」であり、被害の大きさは犯罪の成否には関係しない。
要するに、「スジ」を重視する日本人の考え方からすれば、たとえ50円でも、あるいは携帯を充電するための数円相当の電気料金であっても、人様のものを勝手にわがものとすればそれはすなわち窃盗であり犯罪になるということだ。 で、この「スジ」が厳格に守られているからこそ、わが国は世界でも珍しいほど治安が良いわけで、これはこれで素晴らしいことではある。 が、一方においてなにかにつけて「スジ」で考える日本人が作っているわれわれの社会は、窮屈だったり、融通がきかなかったりして住みにくい部分を持ってもいる。 中国風と日本流のどちらが悪くてどちらが良いという問題ではない。 この原稿でどちらかを推薦したいと考えているのでもない。 ただ、私が思うに、NHKをはじめとするメディア各社(朝日新聞、日経新聞、読売新聞、毎日新聞、FNNなど)がこの微罪逮捕のニュースを一斉に報じていることから感じられるのは、もともと「スジ」にこだわる傾向の強かったうちの国のメディアの潔癖性の傾向が、さらに極端になってきていることだったりする。 たとえばの話、私が20代の若者だった40年前に、これほどまでに軽微な罪を新聞全紙とテレビ各局が伝えた例はなかったはずだ。 罪を犯した者へのこの苛烈さが、われわれは群生動物のマナーを身に付けはじめていることの最終段階を示す兆候でないことを祈って稿をおさめたい。 罪を犯した人間を擁護することよりも、犯罪者を一人でも減らすことに力を注ぐのがコラムニストのあるべき姿ではないのか」という感じの想定コメントに対しては、あらかじめ 「良いコラムニストは、罪薄き違法行為者の側に立つものだ」とお答えしておく。 根拠は特にありません』、微罪逮捕のニュースがNHKだけでなく、主要メディア各社も取上げたというには、心底驚かされた。どうやら、政権の陰謀論の疑いがますます濃くなってきたようだ。
なお、このブログでは、「安倍政権のマスコミへのコントロール」として、昨年9月9日などで8回にわたって取上げているので、参考にして欲しい。
タグ:メディア (その11)(小田嶋氏2題:加害者に「親密」な人たち、カフェラテ150円の罪の大きさ) 小田嶋 隆 日経ビジネスオンライン 安倍政権のマスコミへのコントロール NHKをはじめとするメディア各社(朝日新聞、日経新聞、読売新聞、毎日新聞、FNNなど)がこの微罪逮捕のニュースを一斉に報じている 中国が犯罪の「質と量」を問うているのに対して、日本では「質」のみが重視される 後者のニュースの方が少なくとも百倍は重要だと思うのだが、放送時間の方は、せいぜい二倍程度しか割かれていない 厚労省の統計不正の深刻さ 「厚労省による不適切統計処理や五輪招致に関する贈賄疑惑などなど、政権にとって不利なニュースばかりが並ぶ中で、政権との軋轢を恐れるニュース制作現場が、誰も傷つかない無難なニュースを求めた結果が、ほのぼのローカル軽犯罪ネタの全国ニュース昇格という結果への着地だった 品種ゴマカシ注入の横行にアタマを痛めるコンビニ業界が、警察とマスコミを巻き込んで一罰百戒の逮捕案件ニュースの配信を企画 ニュースの中身をどこまでも空疎にしておくことで、世間の信じている「ニュース」なるものが、いかに外形的な要素に依存した形式的な制作物であるのかを天下に知らしめることが、パロディに与えられている使命 バカなネタを大真面目に作っている 差額50円の窃盗による逮捕劇を全国ネットのニュースで伝える判断を下したデスクは、いったいこのニュースのどの部分にニュースバリューを認めたのだろう NHKニュース コーヒー用の100円のカップを購入した62歳の男が、そのカップの中に150円のカフェラテを注いだ窃盗の疑いで逮捕 コンビニエンスストア 「カフェラテ150円の罪の大きさ」 カタにハマっているのは、実は不真面目な人たちだ。 真面目な人たちは、自分の人生に真面目な態度で臨んだことの結果として、良い意味でも悪い意味でも厄介な個性を手に入れることになる。 不真面目な人たちはその境地に到達することができない 女衒にはあからさまな憧れの感情を表出している。 「運営側」に対する無条件の憧憬。 他人をコントロールすることへの強烈な欲望。 まるっきりな権力志向じゃないか 「女衒」 『東京いい店やれる店』 「週刊SPA!」編集部のコメントも、もっぱらに「言葉の使い方の不適切さ」を詫びることに終始 反射的に「詫びさせた側」「クレームをつけた人々」を叩きにまわる人々が、どこからともなく湧いて出て一定の役割を果たすことになっている 21世紀のネット社会 「リアル」で「ぶっちゃけ」な「男の本音」を率直に反映した誌面を作るのであれば、無遠慮な下ネタを避けて通ることは不可能なのであって、むしろ問題なのは、本来男が読むべき雑誌を、想定読者ではないある種の女性たちがわざわざ眉をひそめるために読んでいるその異様な読書習慣のほうだ、と、彼らは言いたいようだ 謝罪のコメントを発表 「ヤレる女子大学生ランキング」として実在する首都圏の5つの大学名を掲載 《ヤレる「ギャラ飲み」》というタイトルの特集記事 「週刊SPA!」 「加害者に「親密」な人たち」
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

統計不正問題(その1)(アベノミクスの土台揺るがす厚労省「勤労統計不正調査」の衝撃度、統計不正キーマン“幽閉” 安倍内閣の呆れる「隠蔽ドミノ」、統計不正問題でフタをされてはならない「霞が関の病理」という本質論) [国内政治]

今日は、統計不正問題(その1)(アベノミクスの土台揺るがす厚労省「勤労統計不正調査」の衝撃度、統計不正キーマン“幽閉” 安倍内閣の呆れる「隠蔽ドミノ」、統計不正問題でフタをされてはならない「霞が関の病理」という本質論)を取上げよう。

先ずは、1月31日付けダイヤモンド・オンライン「アベノミクスの土台揺るがす厚労省「勤労統計不正調査」の衝撃度」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/192488
・『昨年の「働き方改革国会」での労働時間のデタラメ調査に続いて、またもや厚生労働省で「毎月勤労統計調査」(毎勤)の不正が発覚した。 賃金を把握するための基本的な調査の不正は、15年間にも及んでおり、組織的隠ぺい、虚偽報告、資料廃棄と、日を追うごとに疑惑が深まっている。 22日には、外部有識者らによる特別監査委員会が中間報告を発表、それを受けた形で鈴木俊彦事務次官ら計22人の処分が発表され、「幕引き」が図られたが、混乱は収まりそうにない。 特別監査委が行ったとしていた担当職員らに対する聞き取りが、実は「身内」である厚労省職員によって行われていたり、報告書の“原案”を厚労省が書いていたりという「お手盛り」が発覚。批判を受け、根本匠厚労相は2日後、一部の調査の「やり直し」を表明した。 「賃上げ」を成果として強調してきたアベノミクスの土台を揺るがしかねない事態になりつつある』、かつての内務省の流れを汲む中央省庁でこんなことが起きたとは、信じられないようなお粗末な出来事だ。
・『予算案の閣議決定をやり直し 賃金指標など修正  深刻なのは、勤労統計を基に経済の状況を示すさまざまな指標で修正が行われ、政府の統計自体への不信感が広がっていることだ。 例えば、毎月勤労統計を再集計した結果、毎月の名目賃金を示す「現金給与総額」の伸び率は2012~17年が上方修正される一方で、2018年以降はすべて縮んで下方修正された。 国内総生産(GDP)や景気判断の根拠の1つになる「雇用者報酬」も下方修正された。この結果、日本経済の立ち位置すらもあいまいになる事態なのだ。 安倍政権が受けた衝撃も大きかった。まず迫られたのは、来年度予算案の“修正”だ。 賃金水準を基に決まっている雇用保険や労災保険、船員保険などに、合わせて795億円もの追加給付と必要経費が発生したからだ。 「長年にわたり不適切な調査が行われ、統計の信頼が失われる事態が生じたことは誠に遺憾」(安倍晋三首相) 「とにかく、極めて遺憾なことだ」(麻生太郎財務相) 「統計法の規定に則していなかったと考えられる。甚だ遺憾」(菅義偉官房長官) 1月18日に、昨年末にいったん行った来年度予算案の閣議決定をやり直した際には、安倍政権のトップ3が、立て続けに「遺憾」を表明せざるを得なかった。 そもそも不正調査はなぜ行われたのか』、安倍政権のトップ3、なかでもスネに傷をもつが麻生までも「遺憾」表明とは白々しい。
・『ルール違反の抽出調査に04年から切り替え  「不正」を、厚労省が認めたのは昨年12月13日、統計委員会長との打ち合わせの場だった。 出席した厚労省や総務省の担当者を前に、委員長の西村清彦氏(元日銀副総裁)が、「毎勤」の結果について詳細な分析の必要性を提起した。 2018年に入り、現金給与総額の伸び率が目立って高くなっていたことに、一部のエコノミストらが疑問を投げかけ、「不正確性」が指摘されていたからだ。 西村委員長が、この問題を統計委員会のテーマにする考えを示したところ、厚労省の担当者が事もなげに、こう発言した。 「従業員500人以上の事業所について東京都では、抽出調査をしている」 本来、従業員500人以上の事業所はすべて調査することになっていたのに、勝手に抽出調査に変えていた驚愕の事実を認めた。 「あぜんとした」「目が点になった」「あり得ないことが起きている」この時のことを知る関係者は、今も信じられないという驚きを隠さない。 毎月勤労統計調査とは、国が統計法で定める56の基幹統計の1つ。会社員の給料や労働時間の実態と変動を明らかにする目的で行われている。 調査項目の中で特に重視されるのが、名目賃金と実質賃金だ。 毎月初旬に公表される速報値は午前9時の公表と同時にメディアがインターネット速報で流すほどだ。毎月の物価の増減と賃金の伸び具合を時系列で比べることができるため、政府の政策決定や企業の賃金決定の際の基礎データとして用いられている。 景気の現状や先行きの判断にも欠かせず、内閣府が公表する国民経済計算(四半期GDP速報)の算出に使う「雇用者報酬」など政府内の別の指標や、雇用保険の給付額など、さまざまな公的数値の算出の基になっている。 調査対象は、従業員5人以上の事業所で全国200万以上。このうち約3万を抽出して調査するが、従業員500人以上の事業所に限っては、全数調査するのがルールになっている。 調査の実務は、厚労省から委託を受けた都道府県の担当者が担っている。 ところが、厚労省は東京都の従業員500人以上の事業所について、04年から、全体の約3分の1の事業所を抽出する調査に切り替えていた。 調査すべき約1400事業所のうちの3分の1の事業所だけを掲載した名簿を渡すようになったという。 なぜこの時期に抽出調査に切り替えたのか、誰が判断したのか。 23日にまとめられた特別監察委の中間報告は、「(全数調査を受ける)企業から苦情が多く、大都市圏の都道府県の担当者の負担軽減への配慮だった」と、認定。その上で、調査変更の手続きを踏まず担当課だけで判断したのは「不適切な対応」とした。 全国に5000以上ある従業員500人以上の事業所のうち、3割近くが集まる東京都の作業の負担が重くなっていたのは確かなようだ。だが、小池百合子都知事は「都から国に(調査方法を)変えてくださいといった文書などはない」と、会見で述べていた。 だが監察委は東京都側への調査はせずに、厚労省の担当者への聞き取りだけで、動機を判断した。 その一方で、担当者の中には不正と気づいた職員もいて、「変えた方がよいと思ったが、統計委員会や審議会にかけると問題がある」という認識を職員が抱いていたと認定している』、04年に勝手に抽出調査に切り替えた担当課長は、もうとっくに退職して、騒ぎをよそに優雅な天下り生活を満喫していることだろう。
・『組織的な隠ぺいの可能性 総務省にはウソの説明  担当課の単なる手続き無視だとは考えにくい厚労省の組織的な関与を疑わせるのが、調査を行う担当者向けに作成された「事務取扱要領」の改変だ。 抽出調査に切り替えた2004年から使われていた「事務取扱要領」には「規模500人以上の事業所は東京に集中しており、全数調査にしなくても精度が確保できる」と記述されていた。 ところが安倍政権になっていた15年には、「事務取扱要領」から、東京都の抽出調査を容認する内容が削除された。 削除は、統計委員会が「毎勤」の調査手法を審議することを決めた直後だったという。このタイミングで審議が決まったのは、「毎勤」の調査手法の点検が1992年以降行われていなかったことが理由だった。削除は、抽出調査がルール違反だと認識した上での、発覚を逃れるための工作だったとみられる。 翌16年には、厚労省は明確なウソをつく。10月27日付で厚労省が総務省に提出した書類には、従業員500人以上の事業所について「全数調査継続」と記載していた。 書類は、厚労省の雇用・賃金福祉統計室が作成、当時の塩崎恭久厚労相名で総務省に提出していた。統計室の当時の参事官(課長級)は統計委員会に出席し、口頭でも全数調査の継続を説明したという。明らかな虚偽説明だった。 だが、この件についての監察委の中間報告書は、「だいぶ前から抽出調査で行われており、わざわざ(事務)要領に書かなくてもよいと考えた」と、当時の担当課長がヒアリングに対して説明した内容をそのまま記述し、「抽出調査であることを隠ぺいする意図があるとまでは認められなかった」と、深く調査した様子はない。 「事務取扱要領」から抽出調査を容認する部分を削除するのは、担当者だけが知っていてできるものではない。要領は、マニュアルとして歴代の担当者に引き継がれており、削除に直接関与した職員が何人いたかは別として、ルール違反であることを知りながら「毎勤」に関わっていた職員が多数いたとみるのが自然だろう』、確かに「「事務取扱要領」から抽出調査を容認する部分を削除」というのは、担当課長だけでは無理で、もっと組織的関与があったとみるべきだろう。
・『18年から「データ補正」 賃金の大幅上昇に疑問続出  最大の疑問点は、18年1月分の「毎勤」から、不正なデータを本来の全数調査に近づける「データ補正」をひそかに始めたことだ。 抽出調査の場合、集計の際にはデータを「復元補正」し、母集団全体の調査結果に近づけるのが通常なのだが、厚労省は04年に抽出調査に変えて以降、この補正も行わず、抽出した事業所だけの調査データを使って集計を行っていた。 それ自体も問題なのだが、データ補正を18年1月に始めるに際して、そのためのシステム改修までしたのに、データ補正を公表しないまま、その後、「毎勤」数値を発表し続けていた。 しかし、「異変」は公表数値そのものに表れた。 大手企業が集まる東京都の事業所について、約3分の1の抽出調査に切り替えたことで、全体の中で大規模事業所の調査数が減ることになり、04年から2017年までは、正しく調べた場合より低い賃金の数字が出ていたのに対し、データ補正をしたことで、18年1月からは前年度同月比で賃金が高い伸び率になったからだ。 最初にこのことを指摘したのは、西日本新聞の2018年9月12日付1面、「統計所得、過大に上昇」の記事だった。 記事では、名目賃金に当たる「毎勤」の「現金給与総額」が、18年1月以降、前年同月比1%~2%以上の高い伸びを記録し、同6月には前年同月比3.3%増と、1997年1月以来21年5ヵ月ぶりの高い伸びを示したことを指摘している。 18年からは、499人以下の対象事業所を見直したことから、入れ替え前の事業所だけを集計した「参考値」も厚労省は公表していたが、その数値では、前年同月比の伸び率が1%を超えた月は3月と6月だけ。6月も参考値では伸び率は「1.3%」しかなかった。 こうした結果に、大手証券のエコノミストが「統計の信頼性を疑わざるを得ない。報道や世論もミスリードしかねない」とコメントしている。 この問題は、その後、他のメディアでも報じられ、金融機関などのエコノミストらから「数値の不自然」に不信の声が出たため、厚労省は昨年9月28日の統計委員会で事情を説明せざるを得なくなった。 しかし、この時も厚労省は、東京都分を抽出調査にしていることを伏せたまま、「499人以下の対象事業所を見直した影響」と説明した。 しかも「500人以上の事業は全事業所が対象」と、改めてウソの報告までしている。 こうして「毎月勤労統計調査」は、昨年秋ごろからは、関係者の間では「いわくつき」の統計とみなされていたのである』、最初に問題を指摘した西日本新聞はさすがだ。統計委員会での事情説明でまで、ウソをつき続けたとは、安倍首相がアベノミクスの成果として、2018年春以降の賃金上昇率の上向き傾向を自慢したことも、背景にあるのかも知れない。
・『お家芸の「資料廃棄」で統計が空白の期間が  不正調査問題で、厚労省が対応に動いたのは、年明け後初の閣議があった1月8日だった。 昨年12月28日、朝日新聞の「毎月勤労統計 全数調査怠る」(夕刊一面)のスクープ記事が出て、その後、主要メディアが一斉に報じたことで、逃れられないと考えたようだ。 それでも8日の閣議後会見では、根本厚労相は「調査中」を連発。報道陣の追及を受けて、厚労省幹部から不正調査の報告を受けたのは、昨年12月20日だったことを明かした。 翌21日は、「毎勤」の10月分確報の公表された日だ。根本厚労相は、この時には、不正な手法で調査され集計結果が不正確である可能性が高いことを知りながら、統計の公表を認めていたことになる』、通常の神経の持ち主なら、公表を延期した筈で、それを怠った根本厚労相の罪も深い。
・『厚労省は3日後の1月11日、「毎勤」の不正調査が04年から15年間続いてきたことを認める報道資料を公表。閣議後会見で、根本厚労相は謝罪した一方で、「組織的な隠ぺいの事実は現時点ではない」と言い切った。 しかし、その後、組織的隠ぺいを疑わせる事実がまた次々と発覚する。 一連の問題を受けて1月17日に開かれた統計委員会で明らかになった「毎勤」の基になる資料の廃棄もその1つだ。 廃棄された資料の種類は複数あるが、最も深刻なのは、「事業所名簿」だ。 これがないと抽出調査をデータ補正するのに使う「抽出率逆数表」が作れない。 2010年には、産業分類の変更が行われていることもあって、統計上、過去のデータと時系列で比較可能なデータにそろえるためには、10年の産業分類変更を加味した逆数表を作って、それ以前のデータを補正する必要がある。 しかし、逆数表を作るのに必要な事業所名簿はすでに廃棄し、残っていないというのだ。 つまり、2004~2011年の「毎勤」の賃金の統計データが、空白になる可能性が高い。 08年にリーマンショックがあり、11年には東日本大震災があった歴史的な時期に、日本人の賃金はどれくらい上がったのか下がったのか、正確に把握するデータを、もう手にすることができない可能性が高いのだ。 これは、「毎勤」の統計を一部、基にして算出されるGDPなどの他の経済指標も同じことがいえる。 資料廃棄は、厚労省の「お家芸」になってしまったようだ。 「消えた年金」問題の時も、裁量労働制の労働時間の不適正調査データ問題の時も、厚労省が当初は「ない」といっていた資料が、後になって省内の地下倉庫から出てきた前歴がある。 厚労省がこれまで以上に地下倉庫を捜索し、資料の“発見”に努めることぐらいしか、「毎勤統計の空白」を回避する手段は残されていないのが、悲しい現実だ』、仮に紙ベースの資料は廃棄したとしても、コンピュータ上のものまで消去してしまったのだろうか。
・『「賃金上昇」は忖度で? “アベノミクス偽装”が焦点に  「真相」の解明は28日から始まった通常国会に舞台を移した。 問題は、当然ながら政権・与党に飛び火している。まず明らかにされなければならないのが、15年間に及ぶ不正の間の大臣たちの関与だ。 厚労省が総務省に「全数調査している」とウソの書類を送った16年当時に大臣だった塩崎恭久・衆院議員は、「報告は一切上がってこなかった」と自身の関与を否定。 監督責任については謝罪したものの、「事務的なことまで全部を大臣が見ることをみんなは期待しているのか」と、半ば開き直っている様子だ。(朝日新聞1月17日付朝刊) 昨年1月にひそかに始まったデータの「復元」の際に大臣だった加藤勝信自民党総務会長も「当時、報告を受けていたわけではない」と、都内の講演の場で述べ、関与を否定している。 ちなみに加藤氏は、統計に詳しく計算式まで細かく把握していることで、省内では有名だった。 野党側がとりわけ関心を抱くのが、「データ補正」が、なぜ昨年1月に始まったのか、だ。 安倍首相が「働き方改革国会」と名付けた通常国会が始まった時期に、ぴたりと重なっているからだ。 この国会で安倍政権は、裁量労働制の対象を拡大する法案を成立させようとしていた。しかし、野党は「裁量労働制は過労死を助長する」と対象拡大に猛反対。 与野党が対立する中で出てきたのが、「裁量労働制で働く人の労働時間が、一般の労働者よりも短いというデータがある」との安倍首相の答弁だった。 裁量労働制の労働時間が短いことは、過労死助長という野党の批判を抑え込むのに、都合のいいデータだ。 しかし、このデータは、厚労省の官僚によって不適切な算出の仕方で作られ、働く人の実態を示す数字ではなかった。 このことが発覚して国会は紛糾、安倍首相は裁量労働制の対象拡大を撤回せざるを得なかった。 そんな頃、厚労省は「毎勤」のデータ復元をひそかに始めている。その数字は「賃金の大幅上昇」を示す結果となった。 2013年から日銀の異次元緩和策を柱に始まったアベノミクスだが、為替市場の潮目が直前から変わっていたこともあって、当初は円安・株高などで好況を演出したが、その後は“中だるみ”に陥った。 企業収益は急回復したものの、労働分配率は下がり続けたことや消費増税もあって消費の停滞が長引いた。 そうした中で打ち出されたのが「賃上げ促進」だった。 2014年春闘からは、政府が経済界に「賃上げ」を要請する「官製春闘」が始まった。しかし政府の笛太鼓にもかかわらず、賃金の伸びは鈍く、官製春闘の限界や批判が強まる中で、2017年秋には、安倍首相が直接、「3%」賃上げの数値に言及する力の入れようだった。 18年秋の自民党総裁選での「3選」を意識して、首相がアベノミクスの成果の打ち出し方について地ならしを進めていた時期だ。 ネックだった賃金の伸び悩みが解消され賃金も良くなった、となれば、アベノミクスの評価はさらに高まり、総裁再選の盤石度合いは高まる。 そんな「首相の意中」を、政権発足以来、首相に重用されてきた側近の加藤厚労相(当時)や厚労省官僚が、「忖度」したことはなかったのだろうか。 「加計・森友問題」で揺れた昨年の国会の「デジャブ」のように、安倍政権の土台を揺るがしかねないぐらいに火種は大きくなった』、データの「復元」の際に大臣だった加藤勝信自民党総務会長が、「統計に詳しく計算式まで細かく把握している」のであれば、犯人の1人である可能性もありそうだ。裁量労働制の労働時間分析でミソを付けた厚労省としても、失地回復のチャンスとばかりに、乗ったというシナリオもありそうだ。

次に、2月5日付け日刊ゲンダイ「統計不正キーマン“幽閉” 安倍内閣の呆れる「隠蔽ドミノ」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/246853
・『「アベノミクス偽装」と批判が噴出する「毎月勤労統計(毎勤)」で不正に賃金がカサ上げされた問題を巡り、衆院予算委で4日から2日間の集中審議が行われている。しかし、安倍政権は疑惑のキーマンを異例の更迭人事で“口封じ”。まるでドミノ倒しのように分かりやすい隠蔽を重ねるのは、ひとつ間違えば、疑惑が官邸にまで飛び火しかねないからだ。 厚労省は局長級の大西康之政策統括官を1日付で官房付に異動。統計不正の責任を押しつけた事実上の更迭だ。 「表向きの理由は『賃金構造基本統計』で、ルール違反の『郵送調査』を昨年12月下旬に知りながら、根本大臣や、1月の総務省の一斉点検でも報告しなかったこと。大西氏は統計政策担当の統括官として、不正の実態の全てを知り得る立場にいた真相解明のキーマン。不正を組織的に隠蔽した疑いもある。ただ、更迭され、主に局長級が答弁を担う慣例により、国会に呼ばれにくくなりました」(厚労省関係者) キーマンの尻尾切りは分かりやすい口封じ。組織的隠蔽の疑いをさらに組織ぐるみで隠蔽するもので、「官邸の指示による“幽閉”」(永田町関係者)との見方もある。 大西氏は毎勤の不正についても昨年12月20日、根本大臣に不正を報告した“張本人”。翌21日、注釈ひとつ付けずに同年10月分の確報値を公表するなど、適切な対応を怠ったのはなぜか――。根本大臣は国会で、「事務方から『原因が明らかではない中、定例の業務として公表したもので思いが至らなかった』と聞いている」と言い訳。事務方に責任をなすりつけた』、真相解明のキーマンを更迭するとは、確かに「官邸の指示による“幽閉”」との見方が出てくるのも当然だ。それにしても、やることが姑息過ぎる。
・『根本厚労相を飛び越え安倍官邸に連鎖  もし大西氏が国会に呼ばれて「大臣に公表を指示された」とでも漏らそうものなら、大臣ぐるみの隠蔽に発展しかねない。 さらに、官邸ぐるみの隠蔽に飛び火する可能性もある。 「大西氏からの報告後、根本大臣は『同月28日まで官邸に報告しなかった』と言っている。『不正の影響がどこまで広がるか分からなかった』『まずは事実関係の精査を優先した』との説明を額面通りに受け止める野党関係者は少ない。説明は官邸からの指示の受け売りで、実は20日時点で官邸にも報告があったことを伏せる隠蔽との見方が、大半です」(前出の永田町関係者) そもそもの問題は、全数調査すべき毎勤の対象事業者を長年、不正な抽出調査でゴマカしたこと。さらに、昨年1月からは抽出調査の結果を全数調査に近づける「データ補正」をこっそり始め、平均賃金の数値が不自然に上昇したことだ。野党は当時の加藤勝信厚労相、過去に毎勤の調査手法にケチをつけていた麻生太郎財務相の“介在”まで見据えている。 つまり、国会で大西氏が余計なことをしゃべると、次々と追及の的は広がり、果ては官邸にまで及びかねない。だから、幽閉したのだ。 野党の試算によると、昨年の実質賃金の伸び率は実際はマイナスなのに、統計不正により「プラス」に水増し。全ての隠蔽の目的はアベノミクスの失敗を覆い隠すことなのは、間違いない。 「今回の問題を巡って計22人の官僚が処分され、自民党厚労部会長の小泉進次郎氏も厚労省批判を強めています。まるで、厚労省だけが悪者と言わんばかりですが、そうではないでしょう。国の基幹統計を歪めることは、官僚にとって何のメリットもありません。もっと上のレベルの政治家か官邸を忖度し、アベノミクスを“粉飾”するために不正に手を染めたとみるべきだと思います」(政治ジャーナリストの角谷浩一氏) アベノミクス偽装の内閣ぐるみ隠蔽は、モリカケ問題と根っこは同じ。全てはアベ様の気分を損ねないための忖度だ。今度こそ、「自殺者」が出ないことを祈るしかない』、角谷浩一氏の見方は大いにありそうだ。「アベノミクス偽装の内閣ぐるみ隠蔽は、モリカケ問題と根っこは同じ」との日刊ゲンダイの見方も同意できる。

第三に、大蔵省出身で明治大学公共政策大学院教授の田中秀明氏が2月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「統計不正問題でフタをされてはならない「霞が関の病理」という本質論」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/192984
・『昨年末に明るみに出た厚生労働省の毎月勤労統計の不正を巡って、2019年度政府予算の閣議決定のやり直し、厚労省に設置された特別監査委員会の調査のやり直しなど、問題が拡大している。安倍政権としては4月の統一地方選挙や夏の参議院選挙を控え、この問題に一刻も早くフタをして拡散を止めたいところだろう。しかし、これは単なる統計という技術的な問題ではなく、霞が関の深部に横たわる病理に関係している。何が問題の本質なのかを考えてみよう』、「問題の本質」とは興味深そうだ。
・『統計の信頼性が根底から崩れた 厚労省で何が起きていたのか  この問題は、昨年末に総務省の統計委員会(統計法に基づき設置された第三者機関)が、厚労省に対して調査結果が不自然だと指摘したことから、不正が世の中に明るみになった。役所は「不適切」と言っているが、法令違反なので「不正」である。 「毎月勤労統計」とは、賃金や労働時間の動向を調査する統計である。同統計では、従業員5~499人の授業者は抽出で、500人以上の大規模事業者は全数を調査することになっていたが、2004年以降、東京都内の大規模事業所については、3分の1程度を抽出して調べていた。 全数調査は民間企業や地方自治体などの負担が大きく面倒だからというのが、不正の主な理由だ。そうであれば、調査手法の在り方を議論して正々堂々と見直すべきだが、それをせずに勝手に調査手法を変えたのが問題の1つである。 さらに問題なのは、3分の1の抽出ならば、全体の数字を算出するために3倍して補正すべきところをしなかったことである。また、2018年からこっそりと補正をして、統計数字を発表したことである。 相対的に賃金の高い大規模事業所が3分の2も抜けていたため、補正しなかったときは賃金が過少評価され、補正後は数字が正しくても、その前と比べると過大評価されることになり、統計の信頼性が全く失われてしまった。 問題の大きさに鑑み、厚労省は1月16日、民間有識者で構成される特別監察委員会(座長/樋口美雄・労働政策研究・研修機構理事長)を設置し、事実関係及び責任の所在の解明を依頼した。同委員会は、わずか1週間たらず後の22日に調査結果を発表した。 同委員会は種々の問題点を指摘するものの、組織的な関与や隠ぺいがあったとは認められないと結論づけた。これを受けて厚労省は、大臣らの給与の自主返納、事務次官・政策統括官ら合計22人の職員の処分(訓告・減給など)を行った』、特別監察委員会が「わずか1週間たらず後の22日に調査結果を発表」、しかも厚労省が原案を作っていたとは、座長の樋口美雄氏は慶應義塾大学退職後の第二の職場を厚労省に世話してもらったらしいとはいえ、「御用学者」の典型で、もう良心の片鱗もないようだ。
・『政府予算や政策判断に多大な影響 「早く幕を引きたい」では済まない  調査報告では、事実関係の整理と責任の所在・評価が記載されているが、後者についてのポイントは次のとおりである。 (1) 課長級職員を含む職員・元職員は、事実を知りながら漫然と従前の取り扱いを踏襲。部局長級職員も実態の適切な把握を怠り、是正せず。適切な手続を踏まなかったこと、復元処理を行わなかったこと、調査方法を明らかにしなかったことについて、統計調査方法の開示の重要性の認識、法令遵守意識の両方が欠如していた(2017年の変更承認以降は統計法違反)。
(2) 実作業に影響ないと、課長級職員が判断し、決裁や上司への相談を経ずに対応したのは不適切。他方、供述によれば、隠蔽しようとする意図までは認められない。
(3) 統計の正確性や調査方法の開示の重要性等、担当者をはじめ厚生労働省の認識が甘く、専門的な領域として「閉じた」組織の中で、調査設計の変更や実施を担当者任せにする姿勢や安易な前例踏襲主義など、組織としてのガバナンスが欠如していた。
 1週間というのはあまりに短い期間であり、とにかく早く幕引きを図りたい政権の強い意向が働いたと考えられる。24日に閉会中審査を行った衆参の厚労委員会で、与野党から報告書や調査に対して批判が噴出し、厚労省の身内の職員がヒアリングなどを行っていたことも明らかになった。これを受けて25日、根本匠厚労相は、特別監察委員会による聞き取り調査をやり直す考えを表明するに至った。 今回の騒動は、統計という技術的な問題であり、一般の国民には関係ない話と思われるかもしれないが、そうではない。冒頭で言及したように、政府予算の数字にも関係する。毎月勤労統計は、雇用保険や労災保険などの支給額や事業主向けの助成金を算定する際の根拠となるからである。 これまでの給付が過少だったことから、追加給付が延べ約2015万人に対して、助成金が約30万件に対して必要になり、それに必要な経費は約795億円となった。給付そのものに必要なお金だけではなく、支給手続きに必要なシステムの改修費や人件費が約195億円もかかる。 これらの費用は、労使が支払った保険料などを原資とする労働保険特別会計から支給される。さらに雇用保険給付の一部は、一般会計も負担する(6億4000万円)。国家公務員が労災認定された場合に支給する補償金にも影響していたことがわかり、約200万円の追加給付費用がかかる。こうした追加費用を賄うために国債を追加発行する必要があり、その利払い費の追加も1000万円増える。要するに、こうした追加費用は国民負担なのだ。この責任は一体誰がどのように取るのだろうか』、「支給手続きに必要なシステムの改修費や人件費が約195億円もかかる。 これらの費用は、労使が支払った保険料などを原資とする労働保険特別会計から支給」とあるが、これは本来の労働保険特別会計の使途からは逸脱しており、厚労省のミスによるものであれば、一般会計の負担とすべきだろう。
・『アベノミクスへの忖度はあるか 賃金上昇率の過大評価が明るみに  それから重要なのは、毎月勤労統計はアベノミクスという経済政策にも関係することである。野党が問題にしているのが、厚労省が安倍政権を忖度して賃金上昇率を本来より高く見せたのではないかということである。 1月23日に厚労省は、再集計可能な2012年以降のデータについて、毎月勤労統計の再集計結果を公表した。従来の公表値と再集計値を比較することにより、前者の数字がどの程度バイアスがかかっていたかがわかる。 現金給与総額については、2012~18年の間、全て従来の公表値は過少評価であった。その乖離率は0.2~1.2%であり、毎月おおよそ0.5%程度乖離していた。2015年平均を100とする指数で見ると、従来の公表値はだいたい過大評価であり、その乖離率は0.7%~マイナス0.5%であった。 また、現金給与総額を前年同月比で見ると、2013~16年までは乖離率は0.1~0.2%程度であるが、足もとの2018年はマイナス0.1~マイナス0.7%であった。特に足もとの2018年は、賃金指数と前年同月比の公表値はほぼ過大評価だったことになる。 実は、新しく算出した再集計値にもバイアスがかかっている。2018年から調査対象が見直されたため、前年同月で正確には比較できない。例えば、上昇率が高かった2018年6月の賃金上昇率は、当初の公表値で3.3%増だったが、今回の再集計値では2.8%増になり、さらに、調査対象を見直さなかった場合の参考値は1.4%増になった。これらは名目値であるが、物価上昇の影響を考慮した実質賃金でみると、さらにマイナスになっている。 日本経済はほぼ完全雇用になっており、非正規を中心に人手不足になっているものの、一般国民にはそうした実感が乏しい。その1つの理由が、特に賃金が増えていないことだと言われているので、毎月勤労統計の数字は政策にも影響を与える重要なものなのだ。 毎月勤労統計の不正が発覚されたことから、総務省が他の基幹統計(特に公共政策が高く重要な統計として位置づけられている56統計)について点検したところ、4割に当たる22統計で、データ処理の誤りなどずさんな取り扱いが判明した。役所としては、総務省、財務省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、厚生労働省(毎月勤労統計以外)、経済産業省であり、件数では国交省が一番多い(7統計)。 毎月勤労統計のような不正とまではなかったとしても、他省庁の政府統計も似たりよったりだったわけである。 今回の問題の背景として、統計職員が削減されてきたこと、職員が短い期間で異動すること、統計の重要性が軽視されてきたことなどが指摘されている。総務省によると、国の統計職員は、2009年の3916人から2018年の1940人になっているという。同じ期間で、厚労省は279人から233人に減っている。 先ほどの特別監察委員会も、「統計に携わる職員の意識改革、統計部門の組織の改革とガバナンスの強化、幹部職員を含め、組織をあげて全省的に統計に取り組むための体制の整備等に取り組むべきである。今後、引き続き具体的な再発防止策等を検討すべき」と指摘している』、統計部門もIT化の進展で、作業は効率化された筈なので、人員削減を理由にするのはどうかと思う。「職員の意識改革」も、今回は担当者レベルの問題ではないので、「組織としての意識改革」の方がふさわしい。
・『真の問題は統計職員の減少ではなく 統計が政策形成で重視されないこと  ただ、統計の職員や組織の問題はその通りだと思うが、それらは根本的な問題ではない。統計職員の数が減っているのは、裏返せばその必要性が相対的に低下していることを意味している。 安倍政権では、政府全体でいわゆるEBPM(Evidenced-based policy making/証拠に基づく政策形成)を推進することを掲げているが、それは見せかけであり、実態は異なるのだ。最近の端的な例を挙げれば、育児・教育の無償化である。 無償化の発端は、2017年5月3日の読売新聞に掲載されたインタビューで、安倍総理が幼児から高等教育までの教育無償化を憲法改正の優先項目にする考えを示したことに遡る。その後わずか半年あまりで内容が決まり、12月8日に無償化の具体的な内容を盛り込んだ「新しい経済政策パッケージ」が閣議決定されている。 教育無償化に関する政策形成過程の問題は、現在の教育や保育において何が問題なのか、そうした問題を解決するに当たって無償化政策がどのように有効なのか、といった分析がほとんどなかったことである。 低所得の家庭の子どもの保育はすでに無料あるいは低い負担となっており、一律な無償化は所得の高い世帯の負担をもゼロとする。高等教育の無償化については、当初は低所得世帯の学生に限定されるが、それを将来拡大することは問題が多い。大学には所得の高い世帯の子弟ほど進学するので、高等教育への公的補助は逆進的になるからである。 なぜ分析がなかったのか。それは、無償化政策が2017年10月に行われた第48回衆議院選挙の選挙公約として必要だったからである。要するに、選挙対策だったのだ。 安倍政権は、官邸主導で政策の内容が先に決まることが多いので、分析などは必要がなく、むしろ官邸主導の決定に合わせて都合が良いように数字が後から整理されるのだ。アベノミクスの重要な柱である成長戦略についても、日本経済が低迷している問題の分析がなく、「あれやります、これやります」とプランばかりが書かれている。 こうした状況では、いくら公務員に統計の重要性を訴えても意味がない。今回の厚労省の統計職員をかばうつもりはないが、彼らを責めても事態は改善しない』、その通りだ。「官邸主導」の暴走の弊害、ここに極まれりだ。
・『「政治化」する官僚たち 霞が関の不祥事と病理  2012年12月に誕生した安倍政権は6年が経過し、異例の安定政権となっている。外交面を中心に政治主導を発揮していると言われている。しかしこれとは裏腹に、加計学園の獣医学部新設、裁量労働規制に関する労働時間調査、森友学園への国有地売却、陸上自衛隊の日報問題、文部科学省の違法天下りや、大学に便宜を図る見返りに息子を不正入学させる幹部まで現れるなど、行政レベルで問題事案が頻発している。 それらに加えて、今回の毎月勤労統計である。それぞれの問題には個別の理由や事情はあるとしても、根っこは共通している。霞が関の官僚は、政治家との緊密な関係や、自ら利害や省益を追求するという意味で「政治化」し、本来発揮すべき「専門性」が疎かになっているのだ。特別監察委員会の調査報告でも統計職員の問題を指摘しているが、彼ら自身が自分たちの組織や利害を守ろうとしており、政治化していると言える。 官僚の政治化は今に始まったことではないが、安倍政権による公務員人事が拍車をかけている。2014年に国家公務員法などが改正され、幹部公務員の人事制度と内閣人事局が設置された。審議官以上の幹部公務員の任免は、総理大臣・官房長官・大臣の協議により決定することになった。新聞報道によれば、官邸の意に沿わない幹部は更迭されている。たとえば2015年、総務省の自治税務局長が第1次安倍政権でふるさと納税の導入に反対した経緯があったため、更迭された(「朝日新聞」2017年7月19日)。 官僚たちは官邸に人事を握られているので、官邸の顔色をうかがっており、しばしば総理らを忖度しているのではないかと指摘されるようになったのである。極論すれば、霞が関の幹部は、今や官邸のイエスマンになっている(詳細は、ダイヤモンド・オンライン「安倍政権の公務員制度改革を斬る」(前後編)、2014年4月16日及び18日」を参照)。 筆者は、今般の毎月勤労統計問題の本質は、厚労省の統計職員による単なる不正や技術的な問題ではないと考えている。霞が関全体に共通する問題であり、さらに政と官の関係なのだ』、官僚が「政治化して」、統計データやエビデンスを踏まえた政策提案がおろそかになるというのは、ある意味では官僚の「無駄遣い」だろう。
・『統計不正は公務員制度や政官関係の問題に直結する  当面の日本の課題は、急速に進む少子高齢化を乗り越えることである。資源は限られており、医療・福祉・教育・規制・税制などあらゆる分野で、問題の原因、政策や選択肢の費用対効果などについて分析が必要になっている。そのためには、公務員がその専門性に基づき分析や政策を検討することが必要である。 新しい幹部公務員の人事について、菅義偉官房長官は「適材適所」の当たり前の人事をやっていると述べているが(「朝日新聞」2017年2月27日)、その基準が明確ではないので、官僚たちは疑心暗鬼になり、政治家の顔色をうかがい、忖度に走っているのだ。 幹部公務員の人事を政府全体で横断的に行うことは正しいが、それは政治家への忖度や猟官ではなく、能力と業績で公務員を選抜する仕組みが前提となる。公務員制度についての具体的な改革案については、拙著『官僚たちの冬』(小学館新書)をご笑覧いただきたい。 今般の毎月勤労統計の問題は不正であり、まずは正すべきであるが、統計職員や組織のガバナンスにとどめる話ではない。問題を究明せずにたった1週間の調査と関係者の処分で幕引きを図ろうとした政府の姿勢、統計データやエビデンスを重視しない政策立案過程、専門性に基づく分析ではなく政治家への忖度に走る官僚たち、そうした真の問題に我々は目を向けなければならない』、説得力溢れる主張で、大賛成だ。
統計不正問題に関する国会での議論が深まることを期待したい。
タグ:根本厚労相を飛び越え安倍官邸に連鎖 キーマンの尻尾切りは分かりやすい口封じ。組織的隠蔽の疑いをさらに組織ぐるみで隠蔽するもので、「官邸の指示による“幽閉”」(永田町関係者)との見方も 大西康之政策統括官を1日付で官房付に異動。統計不正の責任を押しつけた事実上の更迭だ 「統計不正キーマン“幽閉” 安倍内閣の呆れる「隠蔽ドミノ」」 日刊ゲンダイ 加藤厚労相(当時)や厚労省官僚が、「忖度」したことはなかったのだろうか 首相の意中 「アベノミクスの土台揺るがす厚労省「勤労統計不正調査」の衝撃度」 相対的に賃金の高い大規模事業所が3分の2も抜けていたため、補正しなかったときは賃金が過少評価され、補正後は数字が正しくても、その前と比べると過大評価 統計不正は公務員制度や政官関係の問題に直結する 厚労省の身内の職員がヒアリングなどを行っていた 統計不正により「プラス」に水増し。全ての隠蔽の目的はアベノミクスの失敗を覆い隠すことなのは、間違いない 首相がアベノミクスの成果の打ち出し方について地ならしを進めていた時期だ。 ネックだった賃金の伸び悩みが解消され賃金も良くなった、となれば、アベノミクスの評価はさらに高まり、総裁再選の盤石度合いは高まる 「賃金上昇」は忖度で? “アベノミクス偽装”が焦点に わずか1週間たらず後の22日に調査結果を発表 これがないと抽出調査をデータ補正するのに使う「抽出率逆数表」が作れない 事業所名簿 お家芸の「資料廃棄」で統計が空白の期間が 予算案の閣議決定をやり直し 賃金指標など修正 特別監察委員会 アベノミクス偽装の内閣ぐるみ隠蔽は、モリカケ問題と根っこは同じ 18年から「データ補正」 賃金の大幅上昇に疑問続出 統計の信頼性が根底から崩れた 厚労省で何が起きていたのか 田中秀明 ルール違反の抽出調査に04年から切り替え 「政治化」する官僚たち 霞が関の不祥事と病理 真の問題は統計職員の減少ではなく 統計が政策形成で重視されないこと ダイヤモンド・オンライン 問題を究明せずにたった1週間の調査と関係者の処分で幕引きを図ろうとした政府の姿勢、統計データやエビデンスを重視しない政策立案過程、専門性に基づく分析ではなく政治家への忖度に走る官僚たち、そうした真の問題に我々は目を向けなければならない 特別監査委員会 調査の不正は、15年間にも及んでおり、組織的隠ぺい、虚偽報告、資料廃棄と、日を追うごとに疑惑が深まっている 毎月勤労統計調査 組織的な隠ぺいの可能性 総務省にはウソの説明 アベノミクスへの忖度はあるか 賃金上昇率の過大評価が明るみに 労働保険特別会計から支給 支給手続きに必要なシステムの改修費や人件費が約195億円もかかる 官僚たちは官邸に人事を握られているので、官邸の顔色をうかがっており、しばしば総理らを忖度 必要な経費は約795億円 追加給付が延べ約2015万人 政府予算や政策判断に多大な影響 「早く幕を引きたい」では済まない 過去に毎勤の調査手法にケチをつけていた麻生太郎財務相の“介在” 統計不正問題 「統計不正問題でフタをされてはならない「霞が関の病理」という本質論」 (その1)(アベノミクスの土台揺るがす厚労省「勤労統計不正調査」の衝撃度、統計不正キーマン“幽閉” 安倍内閣の呆れる「隠蔽ドミノ」、統計不正問題でフタをされてはならない「霞が関の病理」という本質論) 霞が関の幹部は、今や官邸のイエスマンになっている
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

介護施設(老人ホーム)問題(その3)(高齢者施設を牢獄以下の場にする「拘束の神話」認知症対策の遅れが目立つ日本、親を「サ高住」に入居させた子が「安心」してはいけない5つの理由「リーズナブルな介護施設」という誤解、発覚!経営破綻の大手老人ホーム創業者に「驚きの過去」 まさかこんな…) [社会]

介護施設(老人ホーム)問題については、2017年12月6日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(高齢者施設を牢獄以下の場にする「拘束の神話」認知症対策の遅れが目立つ日本、親を「サ高住」に入居させた子が「安心」してはいけない5つの理由「リーズナブルな介護施設」という誤解、発覚!経営破綻の大手老人ホーム創業者に「驚きの過去」 まさかこんな…)である。

先ずは、健康社会学者の河合 薫氏が昨年10月30日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「高齢者施設を牢獄以下の場にする「拘束の神話」認知症対策の遅れが目立つ日本」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/200475/102900187/?P=1
・『2013年、認知症で入院していた男性(95歳)が、車いすに乗って一人でトイレに行き転倒。頭を打ち、全身まひの障害を負い、寝たきりの状態となった。 男性の親族が病院側に約3890万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は10月17日、約2770万円の支払いを命じた。小野寺優子裁判長は判決理由で、「男性は歩く際にふらつきが見られ、転倒する危険性は予測できた」と指摘。その上で、「速やかに介助できるよう見守る義務を怠った」と述べた、と報じられている。 この判決を聞き、複雑な心境になった人は多いのではないか。少なくとも私はそうだった。 もし、自分の親が同じ状況になったら、「なぜ? なんで一人でトイレに行かせた?」と、病院側を責めたくなるに違いない。 が、その一方で、こういった判決が、ますます病院や介護施設にいる高齢者の行動を拘束することになってしまうのでは?、と心配になる』、確かに病院や介護施設の責任をどう判断するかは、悩ましい問題だが、責任を過度に重くみるべきではないだろう。
・『高齢者施設にご夫婦で入所している知人(90歳)が、「夫は入所時に手すりを伝い歩きすれば歩ける状態だった。しかし、この施設では至るところに監視カメラが設置されていて、伝い歩きしていたら『危ないから歩くのをやめてください!』と警告され、瞬く間に歩けなくなった。そしたらケアマネジャーさんに『これで楽になりますね』と言われた。悪気はなかったんだと思うが、本音がポロっと出てしまったんでしょう。施設がいちばんこわいのは事故が起こって、訴訟問題や新聞沙汰になることだから寝たきりのほうが、施設側には楽なんだと思う」と、教えてくれたことがある。 また、入所時に車いすだった知人の母親は、看護師呼び出しのスイッチを押し忘れて立ち上がったことを契機に、「転倒でもされたら困る」とオムツにさせられた。 高齢者は1日寝ていると、それだけで老いる。私自身、父が入院一週間であっという間に老いたときはショックだった。 小さくなった親の背中や、細くなった腕や足……、それを見た時の切なさといったら半端ではない。 施設側が事故をおそれるあまり、行動を拘束されてしまうという、悲しく、切なく、いたたまれないリアルが幾多も存在しているのだ。 熊本の事例と似たような判決は過去にもある。介護施設で認知症の女性(当時79歳)が夜勤の介護士が気づかないうちに転倒し、左大腿骨転子部を骨折。裁判では207万円の賠償請求が認められている(12年3月28日東京地裁)。報告書を見る限り、この施設では高齢者の人権とご家族の思いをかなり汲み入れたケアを施していた末の「不幸な結果」だったことがわかる。 女性のベッド付近にはポータブルトイレが置かれていたが、女性は介護施設のトイレを利用することが多かった。「事故」が起きた当日、女性のベッド近くに複数の男性入所者が就寝しため、ポータブルトイレを置かなかった。おそらく施設側は「いつも施設内のトイレを使っているから大丈夫だろう」と考えたのだろう。 深夜に女性が車いすでトイレに行くときにも、介護士は付き添った。女性は自力でトイレブース内の手すりを使って便座に移動し、排尿。このあと、女性から「転んじゃった」と言われ、介護士は転倒の事実を知ったという。 どんなに看護師さんや介護士さんが一所懸命やっていても、不幸にも事故が起きてしまうことはある。どんなに「トイレに行くときは声をかけてください」と伝えていても、頭より体がフライングし、気づいて「あっ!」と声をかけたときには……、ということは、日常的に高齢者と接している人は経験したことがあるのではないか。少なくとも私は施設を訪問するたびに何度も目撃したし、自分の親にも同様のことが起こり、冷やっとした経験がある』、高齢者にも適度な運動は必要であり、「施設側が事故をおそれるあまり、行動を拘束」というのは、避けるべきで、逆に本人や家族もその代償として、事故が起きても施設側の責任を問わないようにするコンセンサスも必要だろう。
・『認知症の患者の3割は身体拘束されたことがある  いったい「見守りの義務」とはどこまでのことを言うのか? 確かに転倒による事故は不幸な出来事ではある。だが、「事故=施設の責任」という空気が社会に熟成されてしまうと、施設側は予防線を張らざるをえない。 高齢者の自由に歩く権利、自由に動く権利は奪われ、最悪の場合、事故防止策という名目で、「身体的拘束」が正当化される。 冒頭の判決の報道でこんなことを懸念していた折も折、これまでほとんど明かされていなかった一般病院での「拘束の実態」が、東京都医学総合研究所と国立がん研究センターの研究チームの分析で明らかになった。 なんと「認知症患者の3割は身体拘束されたことがある」とされ、拘束の主たる理由は「事故防止」だったことがわかったのである。 調査は、17年、全国の一般病院を3466施設(ICUや精神科病院は除外)を対象に行なったもので、認知症かその疑いがある入院患者2万3539人のうち、28%にあたる6579人が、拘束帯やひもなどを使った身体的拘束を受けていたのだ。 具体的には、「車いすに拘束帯などで固定」13% 「点滴チューブなどを抜かないよう(物をつかみにくい)ミトン型の手袋をつける」11% 「ベッドからの転落防止で患者の胴や手足を縛る」7% 「チューブを抜かないよう手足を縛る」5% 「 徘徊防止で胴や手足を縛る」4% 身体拘束は本来、意識が混乱した患者の生命や安全を守ることが目的で行われるものだが、研究チームは、「看護師らの人手が不足している上、安全管理の徹底を求める入院患者の家族などに配慮し、事故防止を最優先する意識が働く。その結果、他の対策を検討することなく、拘束を行いがち」 と考察。 その上で、「認知症の高齢者は、身体拘束を受けると、症状が進んだり筋力が低下したりしやすい。不必要な拘束を減らす取り組みが求められる」と指摘している』、「認知症の高齢者は、身体拘束を受けると、症状が進んだり筋力が低下したりしやすい」、にも拘らず、28%が「拘束帯やひもなどを使った身体的拘束を受けていた」というのは確かに問題だ。
・『改めて言うまでもなく、日本の高齢化は世界で最も急ピッチで進んでいる。65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症で(2012年)、25年には約5人に1人になるとの推計もある(「平成29年版高齢社会白書」)。 しかしながら、その対策は遅く「日本の認知症対策は後進国」と指摘する専門家は多い。例えば、日本で認知症対策が国家戦略として明確に位置づけられたのは、15年の「新オレンジプラン」だが、フランスの「プラン・アルツハイマー」や米国の「国家アルツハイマープロジェクト法」は、日本の10年以上前に進められている。 ……というかそれ以前に、「新オレンジプラン」って何?、ってことだが、これは“病院ではなく、住み慣れた家や地域で暮らし続けることができる社会”を目標としたもので、「新」とつけているのは、「安倍首相」マターだからだ。 つまり、12年に全く同じ内容の「オレンジプラン(認知症施策推進5カ年計画)」が打ち出され、13~17年度の5カ年計画で進められていた。 ところが、14年11月に東京で認知症の国際会議が開かれ、安倍首相は「初めての国家戦略として認知症施策をつくる」と宣言。そこで急きょ、「オレンジ」は「新オレンジ」に、「5カ年計画」は「総合戦略」に変更されたのだ。 と少々脱線してしまったが、日本が認知症対策の後進国と呼ばれる所以のひとつに、「身体拘束」も含まれているのである』、日本では、「高齢化は世界で最も急ピッチで進んでいる」にも拘らず、認知症対策の後進国とは由々しい事態だ。
・『ここに一冊の手引きがある。タイトルは「身体拘束ゼロへの手引き〜高齢者ケアにかかわるすべての人に〜」というもので、厚生労働省の「身体拘束ゼロ作戦推進会議」が、01年3月に作成した。00年4月の介護保険法施行実施前年に、当時の厚生省より介護保険施設における「身体拘束 の禁止」の省令が出されたことに付随するものだ。 内容は若干、精神論のような部分もあるが、推進会議のメンバーの熱い思いが伝わる温かい手引きとなっている。ただ、残念なのは「関係者は医療関係者のみ」という視点で書かれている点だ。つまり、「現場だけ」に押し付ける内容で、「これじゃあ、ゼロにはならん。むしろ増えるだけ」というのが、率直な感想である。 そこで、手引きの中で「ここだよこれ! これを全国民に徹底的に教育せよ!」という、極めて重要な部分があるので紹介する』、手引きは初耳だ。本来は医療関係者だけでなく、患者本人や家族も関わる問題なので、広くPRすべきだろう。
・『エヴァンス博士らによる論文「老人抑制の神話」  「身体拘束が問題となっているのは日本だけではない」という文言で始まる文章には、欧米で激減するきっかけとなった1本の論文が紹介されている。 これは米ペンシルバニア大学のエヴァンス博士らによる「老人抑制の神話(Myths about elder restraint)」(1990)で、「老人は転倒しやすく、転倒すると大きなけがになってしまうので、拘束するべきである」という一般的な神話に反証。先行研究などをレビューすることで介護を考える基礎となる極めて大切な知見を世界に知らしめた貴重な論文である。 具体的には神話を5つに分類し、各々次のように反証している。 神話1「老人は転倒しやすく転倒すると大きな怪我になってしまうので拘束すべきである」(拘束が効果的という科学的な裏付けは全くない。「拘束が効果的」と教育されるから、拘束という行為に直結するのであって、拘束しない方法を教育されているスコットランドには拘束がない) 神話2「傷害から患者を守るのは看護者の道徳的な義務である」(拘束によって生じる弊害の方が大きい。弊害が大きいと知りながら拘束する、という看護者の道徳とはなんであろうか?) 神話3「拘束をしないと、転倒などでけがをしたときには看護者や施設の法的責任問題になる」(拘束を行なったことによって生じた医療事故も存在する) 神話4「拘束しても老人にはそんなに苦痛ではない」(「私は自分が犬になったように感じ、夜中中泣き明かした。病院は牢獄よりひどいところ」(エヴァンス博士が行なったインタビュー調査より)) 神話5「拘束しなければいけないのは、スタッフが不足しているからである」(スコットランドの看護者の人員配置は米国と同じだが、米国と比較して拘束の割合が低い。ケアスタッフを増やすことなく拘束を減らした事例も多くの文献で示されている。拘束された患者の方の場合、観察時間が増え、結果的に看護の必要度が増し、費用が増加したとする研究結果もある。以上からスタッフが足りないから拘束をすると、逆に人員不足に拍車をかけることになる。 手引きで紹介されているのはここまでだが、エヴァンス博士らは97年に、上記の反証の妥当性を検証する実証実験も行なっている。 「拘束に関する教育を行った群(教育群)」「教育に加え相談に対応した群(教育+相談群)」「コントロール群(何も行わない群)」を無作為に割り付け、比較を行ったのだ』、「老人抑制の神話」も初耳だが、もっと医療・介護関係者にも広がってほしいものだ。
・『拘束は病院や施設の問題でなく、みんなの問題  その結果、拘束率は、「コントロール群」では40%台で変化がなかったのに対し、「教育+相談群」は32%から14%に低下。さらに、 介入後の転倒率は、「コントロール群」でむしろ高く、重大事故は「教育+相談群」では生じなかった。 「老人は転倒しやすく転倒すると大きな怪我になってしまうので拘束すべき」という一般的な理解が、神話に過ぎなかったことが実証されたのである。 繰り返すが、私は「見守りが必要ない」と言っているわけではない。しかしながら、問題の解決には、それに関わるすべての人たちが、物事の本質を理解し、知識を共有し、健康へのリテラシーを高めることは極めて重要である。 そして、そういった知見と教育が、医療現場だけでなく全国民に「これでもか!」というくらいなされる社会になれば、もう少しだけ看護や介護の現場に人間的なぬくもりが灯るのではないか。 事故はいかなる場合も起こるし、転倒事故は高齢者や施設だけに限ったことではないというコンセンサスを社会が受け入れられるようになれば、認知症の高齢者が地域で普通に暮らせる社会にも通じるように思う。 誰にだって親がいるし、誰だって老いる。高齢者の腕や身体は想像以上に小さく、薄く、弱く、高齢者の息遣いは想像以上に、切ない……』、説得力に溢れた主張で、全面的に賛成だ。

次に、介護・暮らしジャーナリストの太田 差惠子氏が1月12日付け現代ビジネスに寄稿した「親を「サ高住」に入居させた子が「安心」してはいけない5つの理由「リーズナブルな介護施設」という誤解 」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58796
・『私は90年代から介護の現場を取材し、そのリアルな現実や有益な情報を執筆や講演、NPO活動を通して紹介しています。 最近会った埼玉県在住のタカシさん(53歳:仮名)は母親を「サ高住」に入居させたことについて悩んでいるとのことで、眉間にしわを寄せ、うつむき加減に話し始めました。 母親(81歳)は、長年連れ添った夫(タカシさんの父親)が亡くなってから広島の実家で1人暮らしをしていました。夫を亡くした喪失感からか、ウツ気味で、閉じこもりがちだったそうです。タカシさんが電話を掛けると、泣き出すこともありました。 タカシさんはそんな母親を1人にさせておくことが心配になり、10ヵ月程前、タカシさんの自宅からほど近いサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)に越してきてもらいました。 オープンして1年ほどのきれいなところで、18㎡と狭いものの、タカシさんの自宅からは車で30分以内の距離です。何かあればすぐに駆け付けることができるので、安心したところでした』、自宅の近くに入れられて一安心というのは、十分理解できる。
・『母を「サ高住」に入居させて安心したのも束の間…  ところが……。環境の激変が影響したのか、引っ越してきた母親は、広島に居たときとは逆に、フラフラと歩きまわるようになりました。サ高住からタカシさんに電話が掛かってきて、タカシさんが駆けつけることもありました。病院に連れていくと「認知症」を発症していると診断され、介護保険の認定も取りました。 その後も、母親の不審な行動はエスカレートする一方で、他の入居者の部屋のドアを開けようとし、周囲からクレームが出ることも。そして、入居9ヵ月目で、とうとうサ高住から「こちらでは対応できないので、よそを探してください」と退去勧告されたのです。 「『出て行け』って、耳を疑いました。母の終の棲家として、このサ高住を選んだつもりだったのに……」とタカシさんは舌打ちします』、一人暮らしで気が張り詰めていたのに、「サ高住」に入居したことで、「認知症」が急速に悪化した可能性がある。他の入居者にもかなりの迷惑をかけた以上、退去勧告はやむを得ないだろう。入居条件をよく確かめなかったタカシさんにも落ち度がある。
・『「リーズナブルな介護施設」という誤解  国の先導のもと、サ高住は急速に増えており、全国に24万戸近い数となっています。 そのせいでしょうか。ここ1、2年で親の介護の話をする子らの間で、「サ高住」という言葉が頻繁に語られるようになりました。 どうやら、多くの子は、その実態を知らないまま「一時金不要のリーズナブルな介護施設」と捉えているようで不安になります。 タカシさんにしても、母親を「介護施設」に入居させたつもりだったので、退去勧告は寝耳に水の話だったのです。 なぜ、サ高住を「リーズナブルな介護施設」と捉える向きに、私は不安になるのか……。 確かに、サ高住に入居する際に高額な一時金の支払いは必要ありません(敷金は必要)。しかし、サ高住には5つの「ない、ない」事情があるのです。 1、 職員が介護するわけではない 2、 認知症に対応するわけではない 3、 介護食や介護用風呂の用意があるわけではない 4、 医師や看護師が常駐しているわけではない 5、 看取りまで行うわけではない』、「サ高住には5つの「ない、ない」事情がある」というのは、入居時に確認すべきだろう。
・『「サ高住の93%=介護施設ではない」という現実  私はタカシさんに、母親の入居したサ高住は、「特定施設」の指定を取っているかどうか質問しました。 タカシさんは、「特定施設」という言葉を初めて聞いたらしく、戸惑った表情をしています。「特定施設」とは、「特定施設入居者生活介護」の略で、都道府県が指定する施設で、簡単に言えば「介護型」のことです。 指定を受けているサ高住なら、施設職員の配置基準が定められており、24時間体制で、要介護度ごとに定められた定額制で介護を受けることができます(サ高住だけでなく、有料老人ホームにも、指定を受けているところと受けていないところがあります)。 しかし「特定施設」の指定を受けているサ高住は、全体の約7%のみ。言い換えれば、93%のサ高住は「住宅型」であり、職員の配置基準もなく職員から介護を受けることはできないということです。夜間は職員不在のところさえあります。 もちろん「サービス付き」というくらいですから、何も付いていないわけではありません。「住宅型」であっても、必ず、「1日1回の安否確認」がなされ、ちょっとした「生活相談」には対応します。 しかし、その他のサービスは、サ高住ごとに違います。食事の提供を行うところは多いですが、キザミ食などの介護対応も色々で、重度の要介護者を入浴させる設備も用意されていないことが一般的です。看護師の常駐も期待できないでしょう』、介護施設に比べ安い分、サービス水準は低くなることは、覚悟すべきだった。
・『介護を受けるには「別途費用」が必要なケースが  案の定、タカシさんの母親が入居しているサ高住は「特定施設」ではなく、「住宅型」でした。 「住宅型」では、介護が必要な場合は、自宅にいるときと同じように、介護事業者と契約して別途費用を支払い、必要なサービスを受けることになります。 ことを複雑にしているのが、多くの「住宅型」サ高住には、関連の介護事業者が併設しており介護サービスを提供しているという点です。事情を知らずに見学すると、「介護施設」に見間違えますが、サービスを利用できるのは、新たに契約した時間帯だけです。 そもそも「サ高住」とは、身の回りのことはできる高齢者が1日数時間サービスを受け、自立した暮らしをしようという趣旨で設立されたものです。 もし、ピンピンコロリと逝けるなら、終の棲家となりえるのでしょう。しかし、通常、タカシさんの母親のように、時間と共に、自立の度合いは低下します。病気やケガで入院しても、長居はできず、あっと言う間に退院となる昨今。そのとき、そのサ高住に戻れるのか、ということも考えておく必要があるでしょう。退去勧告を受けるケースもあります』、その通りだろう。
・『「重度」の要介護者を集めるサ高住も  ただし、例外はあります。 もし、認知症などの症状が重くなり寝たきりになると「手がかからない」という理由から、受け入れに前向きになるサ高住は少なくないのです。介護度が重くなると、動きまわることがなくなり、事故のリスクも軽減します。 しかも、介護保険から支払われる介護報酬は、要介護度の高い人ほど増える仕組みになっています。併設の介護事業者は重度の入居者に対して介護保険のサービスをたくさん提供できるというわけです(介護保険のサービスだけではまわらず、オプションの自費サービスを入れることになるケースも)。 結果、重度者の比率の高いサ高住も見受けられます。とはいえ、医療依存度(点滴や胃ろうなど)が高くなると、医療対応が難しく退去勧告を受けることになるでしょう。看護師などの医療職が常勤していなければ看取りまで行うことは難しいと言えます。 また、本来は自立や介護の必要度合いが低い入居者を想定していたのに、中・重度者が増え、結果、入居者の転倒骨折などの事故が多発、といった側面も……。サ高住の大きな課題となっています』、「「重度」の要介護者を集めるサ高住も」というのは、確かにあり得る話だ。
・『「サ高住」を選ぶなら、将来の住み替えを想定すべし  タカシさんのケースでは、サ高住の「ないない事情」を把握していなかったために「こんなはずでは」となりました。 「サ高住では、最期まで暮らせない」と想定内であったなら、頭を抱えこまずに済んだのかもしれません。 これからサ高住を選ぶ方は、「状況によっては、入居後にさらなる住み替えが必要になる」ということを承服しておいてください。 事前の見学の際に、実際に退去となった人の事例やその後の行き場を聞きたいところです。新規オープンのサ高住では、そういう実績が積まれていないので慎重に。 もちろん、「住み替え」のための資金計画もお忘れにならないでください。 ちなみに、タカシさんは、母親を、認知症の高齢者を家庭的な雰囲気の中で介護する小規模な施設「グループホーム」に移そうと奔走中です』、「サ高住」には不動産屋など介護経験のない業者も多く参入しているようだ。入居に当たっては、条件を十二分に確認すべきで、「将来の住み替えを想定すべし」だろう。

第三に、ジャーナリストの時任 兼作氏が1月28日付け現代ビジネスに寄稿した「発覚!経営破綻の大手老人ホーム創業者に「驚きの過去」 まさかこんな…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59500
・『他社に買収され、不祥事が発覚  「まさかこんな老人ホームがあろうとは」警視庁の捜査関係者は、唖然としたという。話題となっているのは、「未来倶楽部」などの名称で首都圏を中心に37もの施設を展開している大規模老人ホームグループのことである。 ホームページにしろ、パンフレットにしろ、なかなか立派で、運営も実にしっかりなされているかに見えた。ところが、2018年末、多額の入居一時金を不正に流用していたとして、詐欺の疑いで警視庁に告訴状が提出されたのである。 捜査が開始されると、驚くような事実が次々と明らかになった。 「実は、『地面師』が作った有料老人ホームだったことが判明した」前出の捜査関係者はそう言って、続ける。「この老人ホームを運営するのは未来設計という企業だが、創業者である女性経営者Aは2000年5月、暴力団組員らとともに公正証書不実記載、同行使の容疑で埼玉県警に逮捕されていた。犯罪の中身はというと、偽造した売買契約書などを使って、無断で他人の土地の所有権を移転登記したというもの。つまり地面師の手口に他ならない。元司法書士や不動産金融業者、稲川会系暴力団組員ら7人の地面師グループの一員だった」 逮捕時のAの肩書は「不動産金融業者」だったという。捜査関係者はさらに続けた。「呆れるのは、詐欺の傍ら『未来倶楽部』を立ち上げていたことだ。未来設計を同2000年の2月、東京で設立している」 こうした成り立ちであったせいか、「未来倶楽部」では、施設や運営にまつわる問題やトラブルが絶えなかった。やがて内部からの批判の声も上がった。 Aが居住する月額400万円ものマンションの家賃や、高額の飲食費が会社につけ回しされている。脱税している……など数々の内部告発が飛び出し、右翼系新聞で取り沙汰されることもあった。2016年5月には、職員の間でパワハラによる自殺が発生し、問題視されたともいう。 これに加えて、入居一時金などの預託金を着服しているという疑惑もささやかれたものの、事が明るみに出るには、なお時間を要した。 転機は、2018年7月に訪れる。未来設計の持ち株会社が他社に買収されたことがきっかけだった。 買収したのは、同業の創生事業団(福岡市)。同社のその後の調査で、入居者から預かった入居一時金が運転資金などに流用されていたほか、不当に高額な報酬がAに支払われていたことなどが判明した。 それを受け、創生事業団は昨年12月末、Aら前経営陣に約21億円の支払いを求める民事訴訟を東京地裁に提訴するとともに、粉飾決算に基づいた買収契約を結ばされたとして、詐欺の容疑で警視庁に告訴状を提出したのだった。一方、未来設計は今年1月22日、民事再生法の適用を申請。経営破綻に陥った』、信じられないほど酷い「ブラック老人ホーム」だ。地面師が経営者とは、何故、こんなものが認可されたのだろう。
・『政界・警察との関係  こうしたなか、入居一時金返還の遅延が2018年9月以降、月に40~50件も発生しているという。 「一時金の一部は、暴力団に流れていた可能性もある」と指摘するのは、暴力団捜査に当たる警視庁の別の捜査関係者だ。警視庁は組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の収受)容疑でも捜査を進めているというが、事実だとすれば、犯罪に犯罪を重ねた形だ。 驚くべきことはこれに止まらない。同社には、著名な政治家も肩入れしていたというのだ。 「未来設計は毎年12月、ザ・プリンスパークタワー東京で盛大なクリスマス会を開催しており、そこに政治家たちを招いていた。たびたび官邸にも出入りしている有力政治家や、同グループが施設を置いている自治体首長の秘書らは、欠かさず出席していたことも今回、明らかになった」(前出の捜査関係者) まだある。警察の幹部OBが、未来設計の取締役に収まっていたともいう。同捜査関係者が語る。 「神奈川県警の警視で、署長を務めたのち監察官にまで就いた幹部だ。監察官は警察内部の不祥事取締りの担当者。そういった人物が、地面師が作った老人ホーム運営会社の役員とは……。 しかも就任の経緯が、老人ホームの入居者死亡事件を穏便に取り計らったことにあるとか、就任後も警察人脈を使って同様のことをしたうえに、入居者や家族からのクレーム、さらには内部告発の動きが出ると、警察権力をちらつかせて封じ、その見返りに高額の報酬を得ていたとか、様々な情報が寄せられている。現在、精査しているところだ」 もっともこの疑惑については、実態を知らずに会社に入ってしまったのではないか、と擁護する声もあり、その証拠として、同取締役は内部告発者のひとりであったと指摘する関係者もいる。 一方、これを打ち消す証言もある。右翼系新聞の動きを抑えられなかったことでAの不興を買い、立場が悪くなったせいで反旗を翻して、預託金流用などの内幕を明かし始めたというものだ。 真偽はともあれ、この幹部の存在がために入居者保護が遅れたのだとしたら、許されることではない。現在、遅滞している預託金返還も由々しき問題である。施設選びには慎重を要する最たる事例と言えよう』、政治家や警察を抱き込んでいたというのは、敵ながら上手い手口だ。有力政治家は大物らしいが、誰なのだろう。
・『主犯格に「焼酎」を売りつけて…  ところで、地面師と警察幹部と言えば、警視庁にも同じような問題が浮上している。積水ハウスが地面師グループに騙された詐欺事件に関連して、やはり警視が関係していたというのである。 その警視はグループ主犯格の容疑者と親密に交際し、金銭の授受もあったうえ、逮捕情報を漏らしたとされる。警視が現役である点では、神奈川県警よりも事態は深刻だとの指摘もある。詐欺事件の捜査に当たる警視庁二課の捜査関係者が語る。 「この主犯格と親しかった警視庁の捜査員は何人かいるが、最も親密だったのが暴力団捜査を担当するこの警視だ。警視は、警視庁の売店で売っている『桜田門』と銘打たれた焼酎を主犯格に持っていき、数十万円で売り付ける形でカネを取っていた。逮捕状が出た直後、それを伝えたのも警視だと見られている」 警視庁が強制捜査に乗り出した当日、主犯格は見事、行方をくらましていた。逮捕されたのは、その数日後のことであった。二課の捜査関係者が続ける。「主犯格の男が地面師であり、山口組六代目系列の企業舎弟と親交して金銭の貸し借りをしていたほか、別の暴力団関係者らとも幅広く交際している暴力団周辺者であった点などでも、未来設計の創業者と似た存在と言える。それに現職の警視が嵌ってしまったわけだ」 なお、この警視についても、弁護の声がある。捜査の必要上しかたなく主犯格とかかわったに過ぎないにもかかわらず、そのせいで出世が遅れてしまったと本人は嘆いている、というものだ。だが警視という立場は、ノンキャリアとしては頂点に近い。それでも、出世が遅れたというのだろうか。 二課の捜査関係者によると、警視は監察の対象となり、ずいぶん前から取り調べを受けているというが、いまだ処分は下りていない。 いずれの事件も、警察が自ら「地面師」と深い関わりを持っていたなどとなれば、国民に顔向けできまい』、「いずれの事件も、警察が自ら「地面師」と深い関わりを持っていた」というのは初耳だが、社会部の警察担当記者たちは、忖度して記事にしないでいるのだろう。こんなことでは、いつまでたっても、社会のブラックな側面はなくならないだろう。嘆かわしいことだ。
タグ:いずれの事件も、警察が自ら「地面師」と深い関わりを持っていた 「サ高住」 エヴァンス博士らによる論文「老人抑制の神話」 主犯格に「焼酎」を売りつけて… 未来設計 政界・警察との関係 「親を「サ高住」に入居させた子が「安心」してはいけない5つの理由「リーズナブルな介護施設」という誤解 」 現代ビジネス 太田 差惠子 未来設計は今年1月22日、民事再生法の適用を申請。経営破綻に陥った 粉飾決算に基づいた買収契約を結ばされたとして、詐欺の容疑で警視庁に告訴状を提出 Aら前経営陣に約21億円の支払いを求める民事訴訟を東京地裁に提訴 買収したのは、同業の創生事業団 入居一時金などの預託金を着服しているという疑惑 事故はいかなる場合も起こるし、転倒事故は高齢者や施設だけに限ったことではないというコンセンサスを社会が受け入れられるようになれば、認知症の高齢者が地域で普通に暮らせる社会にも通じるように思う 職員の間でパワハラによる自殺が発生 地面師 拘束は病院や施設の問題でなく、みんなの問題 神話4「拘束しても老人にはそんなに苦痛ではない」 神話3「拘束をしないと、転倒などでけがをしたときには看護者や施設の法的責任問題になる」 神話5「拘束しなければいけないのは、スタッフが不足しているからである」 「事故=施設の責任」という空気が社会に熟成されてしまうと、施設側は予防線を張らざるをえない 神話2「傷害から患者を守るのは看護者の道徳的な義務である」 神話1「老人は転倒しやすく転倒すると大きな怪我になってしまうので拘束すべきである」 「関係者は医療関係者のみ」 他社に買収され、不祥事が発覚 「発覚!経営破綻の大手老人ホーム創業者に「驚きの過去」 まさかこんな…」 厚生労働省の「身体拘束ゼロ作戦推進会議」 時任 兼作 「身体拘束ゼロへの手引き〜高齢者ケアにかかわるすべての人に〜」 創業者である女性経営者Aは2000年5月、暴力団組員らとともに公正証書不実記載、同行使の容疑で埼玉県警に逮捕 新オレンジプラン 日本の認知症対策は後進国 「サ高住」を選ぶなら、将来の住み替えを想定すべし 「重度」の要介護者を集めるサ高住も 「リーズナブルな介護施設」という誤解 拘束の主たる理由は「事故防止」 認知症患者の3割は身体拘束されたことがある 介護を受けるには「別途費用」が必要なケースが 「サ高住の93%=介護施設ではない」という現実 サ高住には5つの「ない、ない」事情がある 一般病院での「拘束の実態」 河合 薫 「高齢者施設を牢獄以下の場にする「拘束の神話」認知症対策の遅れが目立つ日本」 (老人ホーム)問題 介護施設 認知症の患者の3割は身体拘束されたことがある 日経ビジネスオンライン (その3)(高齢者施設を牢獄以下の場にする「拘束の神話」認知症対策の遅れが目立つ日本、親を「サ高住」に入居させた子が「安心」してはいけない5つの理由「リーズナブルな介護施設」という誤解、発覚!経営破綻の大手老人ホーム創業者に「驚きの過去」 まさかこんな…)
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

保育園(待機児童)問題(その7)(社長解任のJPHD 保育園大手が直面する難題 保育士・金融筋…動揺するステークホルダー、企業主導型保育所に巣食う「助成金詐欺」の闇 政府肝いりの保育園増加策には大穴があった、わずか半年で突然休園…待機児童「目玉政策」が引き起こした大混乱 新タイプの保育園に何が起きているのか、「待機児童ゼロ」を最優先した結果 日本の保育は問題だらけになった 片山大介・参議院議員インタビュー) [社会]

保育園(待機児童)問題については、昨年8月27日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(社長解任のJPHD 保育園大手が直面する難題 保育士・金融筋…動揺するステークホルダー、企業主導型保育所に巣食う「助成金詐欺」の闇 政府肝いりの保育園増加策には大穴があった、わずか半年で突然休園…待機児童「目玉政策」が引き起こした大混乱 新タイプの保育園に何が起きているのか、「待機児童ゼロ」を最優先した結果 日本の保育は問題だらけになった 片山大介・参議院議員インタビュー)である。なお、タイトルから「保育園落ちた」はカットした。

先ずは、昨年9月6日付け東洋経済オンライン「社長解任のJPHD、保育園大手が直面する難題 保育士・金融筋…動揺するステークホルダー」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/236469
・『民間保育園最大手のJPホールディングス。創業者と社長が異例ともいえる過激なプロクシーファイト(委任状争奪戦)を繰り広げた末、突如登場したファンド、マザーケアジャパンの手に落ちるという結果となった。創業者側と社長側が互いのパワハラ、セクハラといった醜態を“暴露”し合う様は、あきれるほどだった。 6月の株主総会では、会社側が提案した8名の取締役候補のうち、荻田和宏社長を含め6人の再任が否決される異例の事態に発展。マザーケアジャパンが主導して新経営陣が発足したが、顧客や現場の保育士、金融機関などステークホルダーからの信頼を取り戻すことは容易ではない。 そのJPホールディングスの新経営陣が8月10日、東京都内で第1四半期決算と長期ビジョンの発表を行った。前経営陣から残留した古川浩一郎新社長、そしてマザーケアジャパン代表から今回取締役に就任した坂井徹氏らが同席した』、民間保育園最大手で「過激なプロクシーファイト」とは驚かされた。
・『第1四半期から異例の赤字  この2019年3月期の第1四半期は、営業損益が1億3800万円の赤字(前年同期は2億3600万円の黒字)となった。第1四半期からの赤字転落はかつてないことである。 営業損益の赤字転落について、「保育士の採用強化により求人費用が増加したことに加え、4月、5月において各施設への保育士の配置が児童の受け入れ時期よりも先行し、投入人員に見合った稼働率を上げることが出来ず――」(決算短信)と説明している。 ただ、保育士の採用競争が激しく採用コストがかかるのは今に始まったことではない。保育士の配置が子どもの受け入れ時期より先行するのも、事前の訓練・教育の必要性から当然であり、例年行われていることである。 懸念されているのは、保育士が保育園企業他社に移動しているのではないか、ということだ。保育園企業は、多大な補助金を売り上げに計上している点に特色がある。受け入れる子どもの数は保育士の人数に左右され、それによって補助金の額が決まる側面がある。つまり、保育士人員の増減が損益に直結するのだ。 グループで子育て支援事業を手掛ける日本保育サービスには2000人を超える保育士がおり、昨年末まで保育園の数に合わせ、保育士も順調に増えていた。ただ、人手不足を受けて、業界内では保育士の獲得合戦が激化している。特に保育士は新年度開始前の3月末に大量に転職する傾向がある。 現状で会社側は「4月以降、保育士が減っているという感覚はない」とする。いずれにせよ、保育士の経営に対する信頼を取り戻すことが第一の課題になる』、日本保育サービスはJPホールディングスが100%出資する子会社で、保育園支援などを主業務にしているようだ。
・『金融筋の信頼は取り戻せるか  発表された長期ビジョンでは、2025年3月期に連結で売り上げ1000億円を目指すとしている。現在の3倍を軽く超える規模急拡大であり、異例の積極的な中期計画を開示した。 古川新社長は、「M&A(企業の合併・買収)を含めて、協力できる企業とは資本提携や業務提携を積極的に打ち出していく」と表明している。その内容としては、子育て支援事業の質的成長と既存事業の拡大で500億円、M&A・資本提携・業務提携による新しいビジネス価値の創造で500億円という内訳を明らかにしている。 同社は有利子負債129億円(総資産に占める割合は50%)という財務体質で、利益剰余金(内部留保)は54億円という会社である(2018年3月末)。手元の資金が潤沢という状況ではない。 金融筋は現状でJPホールディングスについて当惑、あるいは見定めようとしている段階といえる。M&Aをするにも長期資金をどこからどう調達するのかという問題を抱えそうだ。 さらに1000億円構想におけるM&Aについて、同社と筆頭株主のマザーケアジャパンがどのような役割分担や資金面での支援体制を採るのかも不透明だ。マザーケアジャパンは今年1月に創業者の山口洋氏から持ち株のほとんどを取得しているが、その取得資金(81億円)をどのように調達したかについても明らかにされていない』、有利子負債依存度50%とは、財務的にはM&A資金調達に苦労しそうだ。
・『創業者の山口氏と経営面でも”和解”  JPホールディングスは第1四半期決算の発表とほぼ同時に、山口氏との和解も発表している。山口氏は昨年末、開示資料によって名誉を毀損されたとして同社に訴訟を提起していた。和解によって、会社側は公表資料の中の山口氏に関する記述を取り消した。そのうえで、古川社長は「山口氏が会社に戻ることはないが、助言は求めていく」として、経営面でも“和解”を進めていくことを示唆している。 就任当初、古川社長は、「山口氏は会社に戻ってくることはない」と幹部社員たちの動揺を抑えにかかった経緯がある。これまで荻田前社長に追従していた前経営陣は、「山口氏は保育園企業にふさわしくない」としてきた。これは、グループ基幹会社の幹部クラスもまったく同様だったようだ。 今後は山口氏が多少なりとも経営に影響力を持つということになりそうだ。結局は山口氏の経営経験に頼らざるをえないということか。この背景には、山口氏の所有株を買収したマザーケアジャパンの坂井氏と山口氏の関係があるともみられている。 古川新社長、坂井取締役は保育園の現場を回り、とりあえずは対話・コミュニケーションで社員たちの心をつかむ作業にとりかかる意向とみられる。だが、多くのステークホルダーからの信頼・信任を取り戻すのはそう簡単な作業ではなさそうだ』、保育園ビジネスで敵対的M&A合戦が成功したとは、時代も変わったものだ。

次に、保育ライターの大川 えみる氏が11月26日付け東洋経済オンラインに寄稿した「企業主導型保育所に巣食う「助成金詐欺」の闇 政府肝いりの保育園増加策には大穴があった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/250807
・『10月末、東京都世田谷区の企業主導型保育所「こどもの杜」で保育士が一斉退職し、休園に追い込まれた。これを受けて、立憲民主党は11月13日、「子ども子育てプロジェクトチーム」会合を開いた。 この会合に出席した公益財団法人児童育成協会の藤田興彦理事長は「企業主導型保育事業は大変重要な国の政策という認識。これまで真摯に審査をしてきた。今回いろいろなことが起こって非常に残念、悔しい思いだ」と発言した。藤田理事長は「真摯に審査をしてきた」と言う。しかし、この言葉を額面通りに受け取ることはできない。 この「こどもの杜」の代表がコンサルティング契約を結んでいた保育園事業者A社が都内で運営する少なくとも7園で建設費の「水増し請求」をした疑いがあるのだ(なお、A社については、8月31日配信の記事「都内『助成金漬け』保育園、ずさん経営の末路」でも問題点を指摘した)』、一時もてはやされた企業主導型保育所には、大きな落とし穴がったようだ。
・『不正に多額の助成金を取得していた  「水増し請求」の実態をみていこう。たとえば、3階建ての中古マンションの1室(119平方メートル)に設置された保育園。A社から依頼を受けた工事業者X(以下、X社)は、この小さな保育園の工事費用を9873万円と見積もり、それを受けてA社は、定員18人として、企業主導型保育事業の助成や監督業務を担う児童育成協会に助成金を申請。A社は児童育成協会から「整備費」として2016年11月14日付で7742万円の助成決定通知書を受けとっている。整備費の4分の3に相当し、これは制度に定められた比率の助成だ。 問題は、工事費用の9873万円の妥当性だ。この費用はマンション1室の購入費用ではない(月額賃料64万8000円の賃借契約)。保育園開設の整備費である。小さな保育園の整備費としては、素人目にも違和感がある金額だ。たとえば、内装仕上げ工事だけで1687万円、空調設備工事だけで951万円と見積もられているのだ。 この見積もり資料を別の企業主導型保育所を運営する経営者に確認してもらった。この経営者は東京都内で複数運営し、待機児童対策に貢献しているとして自治体からの信頼も厚い。経営者は資料を見ると、目を剥くような表情を浮かべて言った。 「この金額はあり得ない。私が経営している保育園(約100平方メートル)の見積もりと比較して内装仕上げ工事費は8倍、空調設備工事は4倍もします。そのほかの工事費も数倍高い」』、通常であれば、保育所経営者にとっては、工事費を安くさせようとするが、「整備費の4分の3に相当」する助成金がもらえるとなれば、必要以上に高目にして、あとで工事業者からバックマージンを受け取ることで、ボロ儲けが可能だ。「整備費の4分の3に相当」する法外な助成金は、明らかにこうしたモラルハザードを招くもので、やり過ぎだ。いくら待機児童対策とはいえ、制度設計がズサン過ぎる。しかも、審査した児童育成協会も見逃すとは無責任だ。
・『見積もり額9873万円は「あり得ない」  内装工事費用の単価は、「坪あたり」で計算されるのが一般的だ。見積もり額9873万円を工事面積36坪で割ると、坪単価は274万円に上った。この金額に対し、保育園の設計を手がけたことがある一級建築士が驚きの声を上げる。 「坪単価274万円なんて絶対にあり得ない!大理石でも使っていたんですか?」 別の一級建築士によると、保育園の工事費用は坪単価100万円前後が相場だという。この建築士は「工事費用の坪単価が80万円台の保育園もある。なぜ審査の段階で見抜けなかったのか」と疑問を呈した。 ほかの建設関係者もこう話す。「保育園に用途が近い"学校"の鉄筋コンクリート造でも、坪単価100万円が標準的です。内装工事費の坪単価274万円は、新築で2~3園を建てられる金額に相当する」 児童育成協会関係者は次のように反省する。「整備費は平米単価を決めるべきだったと思っています。2018年度に入るまではそれがなかった。だから、助成金を青天井で出してしまっていた。結果的に協会の審査に問題があったといわれてもやむを得ない。今後は是正していきたい」 「企業主導」ということであれば当然のことながら、参入する企業の経営状況や財務体質をチェックする必要があるはずだが、前出の児童育成協会関係者は「事実上、書類が右から左へ流れていっているだけ。細かいチェックはしていなかった」と明かす。 その点について、児童育成協会の窓口に問い合わせてみると、「企業主導型保育事業は、審査担当62人、監査担当18人の計80人で運営している。審査担当者の中に会計士や税理士はいない」とのことだった。立ち入り調査による指導・監査業務の実施主体は児童育成協会だが、業務の一部はパソナが受託し、パソナでは97人が監査を担っているという。 企業主導型保育事業への参入に際しては、認可保育園の申請には必要な「会社が3年以上存続していること」という縛りもなく、参入が容易になっている。となれば、ペーパーカンパニーを作ってしまえば助成を受けられる可能性すら出てくる。ところが、児童育成協会の審査担当者によると、「企業に対して決算書の提出を求めているものの、専門的な知識を持った担当者がその内容をチェックしているわけではない」とのことだ。 児童育成協会の審査担当者によると、施設については、審査担当の部署に籍を置く6人の建築士が、見積書や設計図を含む書類のほか、工事現場や建物の写真を確認する。疑義が生じた場合のみ現地へ行って確認するが、疑義が呈されない限り、現地を確認することはないという。 企業である以上、事業が破綻して倒産するリスクがあるわけだが、こうした非常事態に備えて協会がどのような対応をするのかも決まっていないという。つまり、待機児童の受け皿を名目に始まった制度にもかかわらず、受け皿となる保育園が閉園するリスクが織り込まれていないのだ』、児童育成協会の「業務の一部はパソナが受託し」ているようだが、パソナといえば、あの規制緩和論者で悪名高い竹中平蔵が会長をしている。ズサンな審査で、ボロ儲けをしているとは、許し難い。企業型にも拘らず、破綻リスクを織り込んでないというのも、制度の重大な欠陥だ。
・『A社の元経営者「私もいろいろ迷惑してる」  話をA社に戻そう。A社は2016年11月から2018年3月までに、整備費として、前出の園を含む7園合計で4億6000万円にも上る助成金を児童育成協会から受け取っている。にもかかわらず、園関係者は「工事は雑でひどい状態だった」と漏らす。ある園では、釘が落ちていたり、鍵が閉まらなかったりしたほか、水漏れも確認されたという。 これとは別の園でA社からの発注工事を担当した業者は、2018年6月までに工事を完了しているにもかかわらず「A社から工事費が1円も支払われていない」とため息をつく。工事費未払いまで起こしているのだ。 A社の元経営者である女性は現在、東京都内ではなく西日本にいる。電話で取材を申し込んだが、「取材に答える気は一切ありません。弁護士を通したとしても、話すことはありません。私もいろいろ迷惑してるんです。こちらに来てもらっても会う気はありません」との対応だった。 この女性はすでにA社を去っている。現在は、新たな代表のもとで民事再生が進められ、保育事業は別の教育関連企業に譲渡されたことから、保育園の運営を継続できる見通しがついているという。 そもそもA社のような企業は、なぜ台頭したのだろうか。 近年、保育園に希望しながら入園できない「待機児童」が問題として注目を浴び、子育て世代を中心にその解決が盛んに叫ばれた。こうした世論を受け、待機児童問題の解決に向けて安倍政権下で議論され、政府肝いりの政策として推し進められたのが、民間主体(株式会社、学校法人、NPO法人など)が保育園を経営する「企業主導型保育事業」だった。 企業主導型保育事業は2016年4月、負担企業の従業員や地域の子どもを預かるための保育園の整備費、運営費を助成する制度として始まった。協会が管理を一手に引き受け、企業が負担している「子ども・子育て拠出金」を原資に、保育園に助成している。 子ども・子育て拠出金は児童手当の財源でもあるように、企業が社会全体の子育てを支えるために拠出している。法律の定めによって、国が徴収し、子ども・子育てという公益のために支出するという点では、社会保険料や税と基本は同じである。 急増する施設に対し、児童育成協会の審査体制は追いついていない。 企業主導型保育所は、認可保育園よりも緩い基準で認可並みの助成が受けられるとして、参入企業が相次いでいる。助成決定はこれまでに24回実施され、制度開始当初の2016年9月時点(助成決定1回目)で150施設・定員3907人だったものが、2018月3月末時点(同24回目)では2597施設・定員5万9703人まで急増している。 助成が決まった数の推移を見ると、いかに急増しているかがわかる。助成決定1回目の2016年9月時点で150施設、同18回目の2017年3月末時点で871と、半年余りで721施設が増加。その7カ月後、同19回目の2017年10月末時点で1511まで伸び、たった1年ほどで施設数は10倍、定員は9倍にも膨らんでいる。 同年10月の衆議院議員選挙で、安倍首相が総裁を務める政権与党・自民党が幼児教育の無償化政策を訴えたことも、企業が参入する呼び水になったとみられる。前出の児童育成協会関係者が明かす。「2017年10月当時、急に審査担当の人員が増やされた。待機児童の受け皿を少しでも多くつくることが優先されているように感じた」 制度開始から2年半あまり。悪質な業者の参入と助成金の取り逃げを許さないためにも、企業主導型保育事業の制度を徹底的に見直すべきときが来ているのではないだろうか』、正論でその通りだ。

第三に、ジャーナリストの小林 美希氏が1月15日付け東洋経済オンラインに寄稿した「わずか半年で突然休園…待機児童「目玉政策」が引き起こした大混乱 新タイプの保育園に何が起きているのか」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59360
・『企業から集める拠出金で運営費が賄われる新たなタイプの「企業主導型保育所」が待機児童対策の目玉となっている。 スタートから3年目、運営する事業者にとっても、利用する親子にとっても、大混乱した状態となっている』、「企業主導型保育所」とは本当に迷惑な制度だ。
・『企業主導型保育所の理想と現実  「いったい、なぜ不採択になったか分からない」と、都内のある事業者は嘆く。待機児童が多い地域で4つの「企業主導型保育所」を新規開設しようとしたが、ふたを開けたら1施設しか認められなかった。 企業主導型を設置するに当たり、自治体の保育課にも細かく相談したうえで、自治体からも「ここに企業主導型保育所を作ってもらえるとありがたい」と言われながらも叶わない、という矛盾が生じている。 2016年度から始まった企業主導型保育は、企業から拠出される「事業主拠出金」で運営費が賄われている。 内閣府が管轄となる政府肝いりの待機児童対策に位置付けられ、企業が従業員に向けて作る福利厚生の一環として従業員の働き方に応じた運営をすることが目的とされ、認可外保育所の扱いとなる。 認可保育所などは市区町村が設置する計画を立てながら事業者の選定・審査などを行うが、企業主導型の設置について市区町村に権限はない。 定員20人以下の比較的小規模の施設が多く、定員の半分まで地域枠として従業員以外の子どもも預かることができるため、待機児童対策の政府の目玉政策となっている。 通常の認可外保育所には運営費は助成されないが、企業主導型は認可保育所並の助成が受けられることが大きなメリットとなり、乗り出す事業者が急増した。 2016年度は2万284人、17年度は3万9419人の合計約6万人分の待機児童の受け皿が整備された。この2年間で新たに開設された保育施設では、3人に1人が企業主導型保育に預けるほどの身近な存在になりつつある。 朝7時以前に開所している早朝開所施設は2016年度で22.7%、夜10時以降に開所している夜間開所施設は10.6%、日曜開所施設は29.4%となり、認可保育所ではカバーできないような時間帯の保育も担う。 スピードをあげて待機児童を解消するための奇策となった企業主導型保育所を広めるため、国は事業者の参入障壁を低くする手だてを打った。 その1つが、内装工事など施設整備費の助成だ。 通常、認可保育所を新規開設する時には事業者が工事費など一定の初期費用をあらかじめ用意しなければならないが、企業主導型保育は認可保育所と同水準の工事費用の4分の3相当分が受けられる。 内閣府がPRしているパンフレットには、「都市部で定員20人の施設を新設する場合」として、「例えば…工事費用1億860万円の助成が受けられる!」と書かれている。 すると、施設整備費欲しさで「時流にのって儲けたい」「1億円が入る、おいしいビジネスだ」と考える素人参入も紛れてしまい、結果、監査では7割もの施設で問題が見つかった。 幼児用のトイレを整備していない、食物アレルギーの対応を行っていない、保育計画を作成していないなど、保育の初歩も分かっていないところも散見された。秋田県、沖縄県では助成金の不正受給まで発覚した』、「監査では7割もの施設で問題が見つかった」とは開いた口が塞がらない。「企業主導型の設置について市区町村に権限はない」というのもおかしな話だ。
・『「企業主導型はゆるい」という噂が広がり…  保育所を新しく開設する大きなハードルの一つは、保育士確保だ。 保育士不足が顕著になるなか、事業者が保育所を始めやすくするために保育士の配置基準を実質、規制緩和した。 保育施設には、保育士の配置基準が定められている。認可保育所なら、例えば0歳児は子ども3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児は「6対1」など年齢ごとに決められているが、企業主導型保育は配置基準の100%が保育士の資格をもつ者でなくてもよい制度とされた。 企業主導型保育は、保育士の割合が100%、75%、50%の3段階が認められている。それぞれに助成金の額に差がつけられて100%が一番高くなっている。 初年度の16年度は、保育士比率100%の施設が55.3%に留まり、同75%の施設が20.6%、同50%の施設が24.1%で約半数が100%を満たさずスタートした。 17年度は保育士比率100%の施設が76.7%に上昇したが、保育士比率75%、50%の施設はそれぞれ1割あった。 ある不動産業者は「“企業主導型はゆるい”という噂が広がり、配置基準があることも知らないような業者が次々に保育所を作ってしまった」と明かす。 保育ニーズのない地域にも乱立したため、共同通信が7~8月に行った調査では、「定員に占める利用児童数の割合」が平均で49%と、半分を割り込んでいた。 東京都世田谷区では、2018年4月に開園した企業主導型保育所「こどもの杜(もり)上北沢駅前保育園」が11月に入って突然、休園した。系列の「下高井戸駅前保育園」も他の事業者に切り替わるなどして波紋を広げた』、乱立した結果、「「定員に占める利用児童数の割合」が平均で49%と、半分を割り込んでいた」とは、お粗末の極みだ。
・『「不採択」が続く異例の事態  一方で、保育の実績と定評のある事業者が待機児童の多い地域に保育所を作ろうとしても“不採択”になるという事態も起こった。 18年度は約3万人の受け皿整備が掲げられ、2288施設、定員5万1499人分の申請があった。審査を経て10月末に、約1500施設、約3万5000人分が助成決定の「内示」を受けたが、申請のあったうち3割が不採択となった。 審査を行った児童育成協会は、10月末にメール1つで内示を通知した。そこには、なぜ不採択になったかの理由は示されず、「個別の結果内容についての回答は行っておりません」という不誠実な対応をとったため、採択されなかった事業者から「審査が不透明だ」という批判の声があがっている。 審査項目は、①待機児童対策への貢献、②多様な働き方に応じた保育の提供、③事業に要する費用、④事業の持続可能性、⑤保育の質、⑥保育事業の実績――とされている。 また、審査にあたっては優先的に考慮される項目があり、①多様な働き方に応じた保育の提供(7時以前の早朝保育、22時以降の夜間保育、休日保育の実施)、②待機児童対策への貢献(認可保育所に入れなかった人数が多い市区町村)、③その他として中小企業による設置(共同利用の相手先が確保されていればさらに評価)となっている。 冒頭の事業者は、早朝・夜間保育以外の項目すべてをクリアする水準であったはずだが、不採択通知を受け取った。 同事業者の従業員の就業時間が昼頃から夜8時半までとなるため、朝7時半から夜6時頃が基本的な預かり時間となる認可保育所では預かってもらえず、これまで産後にやむなく退職した社員もいたという。 従業員の半数以上が女性で若手が多いため、産後の就業継続に保育は必要不可欠。現在も妊娠中の社員がいるため、企業主導型保育所の設置は悲願だった。 事業展開している地域はちょうど待機児童も多く、自治体保育課からも「保育所を作って地域枠で預かってほしい」と期待がかかっていた。 既に企業主導型保育所の運営実績もある。保育士を配置基準以上に雇い、研修も積極的に受け、賃金は全産業平均を上回る水準にするなど質を高める環境を整備した。決算は黒字続きだ。 そうした姿勢を評価した自治体の保育課からの紹介で入園を決めた親子もいる。2園目、3園目を作るという噂を聞きつけた保護者から100件を超える問い合わせもあった。開園を見通して事前説明会を行うと「すぐにでも預けたい」という人が続出した。 保育所設置に向けて申請するにあたり、物件も抑えていたが不採択になったことで無駄になった。保育所向けの物件は奪い合いだ。年度内の開設に向けて4月には物件を探し、5月には賃貸契約を結んだ。不採択となった物件を抑えるための費用だけでも約600万円の損失となった。 申請するまでの設計図や建設費用の見積もりをとるなど建設業者への支払いもかさみ、同事業者は「これまでコツコツと貯めてきた資金が全てただの損失になった。不採択になった理由さえ分からず、国を信じられない。今後、企業主導型を作ろうとは思えなくなった」と嘆く』、こうした良心的な企業主導型保育所が、不認可になるとは残念だが、少なくとも不認可の理由は開示すべきだろう。
・『保育は誰のためにあるのか  企業主導型保育の問題を受け、立憲民主党の子ども・子育てPT(プロジェクトチーム)は11月に内閣府と児童育成協会からヒアリングを行った。 同席した世田谷区の保坂展人区長は「保育は誰のためにあるのか。あくまで、子どもの成長と発達を保障するもの。乳幼児の人格形成の土台を作る保育は大変重要だ。子どもの視点でどのように保育が行われるか多方面からチェックすべきだ」と語気を強めた。 世田谷区は認可保育所の設置について独自のガイドラインを作り、基準や審査を厳しくしている。 一方で、企業主導型保育の設置を決めるのは、内閣府から委託を受けて審査などを行う児童福祉協会に権限があり、市区町村には設置についての決定権はない。 そのため、区から認可されない業者でも、企業主導型に看板をつけ変えれば参入できてしまう制度上の問題もヒアリングで指摘された。 世田谷区は11月19日に内閣府に対して要望書を提出。この時点で区内では2018年度だけで5園が休園などしているため、企業主導型保育所の整備にあたって自治体の関与を強化すること、突然の休園などへの対応の強化を柱に改善を求めた。 内閣府は12月に「企業主導型保育事業の円滑な実施に向けた検討委員会」を設置。改善に向けた議論が始まった。 質の高い保育を実践できる事業者が保育所を運営できる制度設計にしなければ、最終的には子どもにしわ寄せがくる。それには審査の透明性は必要不可欠だろう。 そして、そもそも、保育所は児童福祉法によって市区町村に設置する義務がある。この大原則を無視して保育所整備を行うことの矛盾が露呈し始めている。保育所整備のグランドデザインを描き直し、軌道修正を図らなければならないのではないか』、世田谷区の言い分はもっともだ。ズサンな制度の早急な軌道修正が求められる。

第四に、上記と同じジャーナリストの小林 美希氏が1月30日付け現代ビジネスに寄稿した「「待機児童ゼロ」を最優先した結果、日本の保育は問題だらけになった 片山大介・参議院議員インタビュー」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59588
・『「ブラック保育所」が生まれる構造  機児童対策のため急ピッチで保育所が作られるなか、保育士が低賃金で長時間労働という“ブラック保育所”の存在が目立っている。その構造的な問題はどこにあるのか。 筆者が問題視するのは国が認める「委託費の弾力運用」という制度だ。 認可保育所には、委託費と呼ばれる運営費用が市区町村を通して支払われている。その内訳は「人件費」「事業費」「管理費」の3つ。 「事業費」は、給食費や日々の保育に必要な材料を購入したりするためのものがメインとなり、「管理費」は職員の福利厚生費や土地建物の賃借料、業務委託費など。 もともと、「人件費は人件費に」「事業費は事業費に」「管理費は管理費に」という使途制限がかけられていたが、それを規制緩和して相互に流用できるようになったのが前述した「委託費の弾力運用」となる。 問題なのは、弾力運用が3つの費用の相互流用だけでなく、同一法人が運営する他の保育所への流用、新規施設の開設費用への流用も認めていることだ。 本来は8割かけられるはずの人件費が抑え込まれ、3〜4割程度しか人件費比率がかけられないブラック保育所が散見されることに、警鐘を鳴らさなければならない。 参議院の片山大介議員(日本維新の会)は、委託費の弾力運用について、いち早く国会で取り上げてきた。 2017年3月9日の厚生労働委員会で、人件費比率の低い保育所があることに着目し、委託費の大部分を占める人件費が流用されている問題を指摘。同年5月30日の厚生労働委員会でも「委託費の弾力運用」そのものを問題視した。 2018年2月1日の参議院予算委員会では、片山議員が保育者の人件費比率が著しく低いことを数字で示した。 独自調査の結果、都内の700を超える認可保育所の「保育従事者の人件費比率」の平均が社会福祉法人で55%、株式会社で42%だということから人件費の流用幅が大きく、「弾力運用について縛りをかけるべきだ」と政府に詰め寄った』、「弾力運用」そのものは必ずしも不適切ではないが、余りに「流用幅が大きく」というのは問題だろう。
・『保育士の平均年収は約315万円  小林:「委託費の弾力運用」の問題点を、どう捉えますか。 片山:保育所に支払われる委託費は人件費が8割を占めると国は想定しています。一方で、これまで委託費がどのように使われているか実態が把握されていませんでした。 実際はどうかとデータをとると、そうならない。3割、4割という例もあります。その大きな原因となるのは、弾力運用で人件費が他に使われているからです。保育士の待遇が悪いという現場からの声と、人件費が流用されている状況が合致します。 保育所運営にかかる費用については、何にいくらかかるかという積み上げ方式で計算されています。だから、本来は使い切る性格のものです。 しかし、同一法人が運営する他の保育所はもちろん介護施設への流用なども国が通知で認めているため、好き勝手に使えるようになってしまっています。 小林:国は保育士の人件費の額を示しており、保育士の年収は平均で約380万円とされています(2017年度)。それなのに、内閣府の「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」(17年度)では、私立で働く保育士の平均年収は約315万円という結果でした。 片山:もし想定通りの年収380万であっても、決して高い賃金水準とはいえません。平均年収の実績が315万円というのは低すぎると、内閣府だってわかっているはず。 にもかかわらず、国会の答弁では「配置基準以上の保育士を雇っているから一人当たりの賃金が安くなる」という説明をする。それならば、配置基準より多く雇っているのはなぜかを考えなければいけない。配置基準ギリギリでは、きちんと保育ができないと現場が判断しているからでしょう。 配置基準の引き上げを考え、それに見合った財源をつける。そして、委託費を払って、あとは“ご自由に”ではいけない。今のままだと“ブラック保育園”が増えてしまうだけではないでしょうか』、国が想定している人件費比率が8割だとすれば、現実の「社会福祉法人で55%、株式会社で42%」は余りに低い。ここでは、「配置基準」の問題は捨象される筈だ。
・『「適正な給与水準」の曖昧さ  小林:安倍晋三政権は、保育士の処遇改善に力を入れてきました。これと「委託費の弾力運用」は矛盾しないでしょうか。 片山:安倍政権は「財政が厳しいなかで処遇改善のための加算を作った」と強調していますが、弾力運用によって土台が抜けています。 保育士の処遇改善を重要課題としているにもかかわらず、実際に人件費分がきちんと使われていないということを深刻に考えなければなりません。 公定価格で示された年収額を守ってもらうことのほうが、よほど処遇改善になります。そもそも論に戻さなければいけない。 弾力運用ができる前提条件には「適正な給与水準」であることなどが通知で示されていますが、実際のところは、なし崩しで野放図になっている。 委託費のもとは税金です。税金の使い道として国が考えたように使われていないならば、実態を調査する。そして、委託費の流用の仕方が目に余るようであれば、弾力運用をやめさせなければならないでしょう。 小林:そもそも、適正な給与水準というのが曖昧です。 片山:国会答弁でも逃げ道にされました。民間の給与体系に行政が口を挟めないという理由づけもされますが、適正な給与水準を国が示すことは理論的には可能なはず。地方公務員給与や地域ごとの最低賃金をきちんと調べて保育士の地域別の賃金モデルを示し、賃金水準を守らせるべきです。 監査があるといっても、弾力運用についてきちんとチェックされていない。一定の人件費比率を下回ればモラルハザードを起こしている可能性があるとして、個別調査したうえで弾力運用を停止するなどの縛りが必要です。 小林:約1年前の国会で、政府側が弾力運用について「検討の余地がある」と理解を示しました。 その結果、18年3月末の子ども子育て支援法の改正時には参議院の付帯決議で「処遇改善を講じるに当たっては、保育所等における人件費の運用実態等について十分な調査、検証を行うこと」という方向がつけられました。附帯決議は法的拘束力がないものの、無視できない存在です。 片山:今年度、内閣府が弾力運用に関する調査を始めたと聞いています。これまで放置されていた委託費の弾力運用について内閣府も問題意識を持ち始めたことは一歩前進です。公定価格で算出されている額が給与に反映されない実態をもっと多くの人に知ってもらいたい。 保育士も保護者も、なんでこんなに保育に回るお金が少ないのかと諦めていますが、本当は、もっと給与がもらえる権利があるのに違うことにお金が回っていると気づいてもらえるよう、大きな動きにしたいと思っています』、「内閣府が弾力運用に関する調査を始めた」というのは遅すぎるが、一歩前進ではある。それにしても、どこに「お金が回っている」のだろうか。
・『「待機児童ゼロ」を最優先した結果…  小林:弾力運用という制度はどうしたら良いのでしょうか。 片山:処遇改善費が出ているのに、人件費の大元が流用されているのでは本末転倒。あるべき姿として人件費が使われないのであれば、あるべき姿にするために縛りをかける。弾力運用そのものについて考え直すべきではないでしょうか。 小林:ほかにも保育分野で規制緩和が進んでいます。待機児童解消のために急ピッチで保育所が作られると保育士確保が困難になり、保育士の配置基準が事実上、規制緩和されています。 片山:自己責任を求める一般的な規制緩和を保育に当てはめるべきではありません。保育士の配置基準を緩めて待機児童の数を減らしたいのが大前提に見えます。その結果、ゼロになったら問題が解決するわけではなく、本当に良い保育を提供できるか、質の議論に及んでいない。 保育者の全てが保育士でなくても良いこともありますが、保育士以外が実際にどこまでスキルがあるのか。最低限守ることは、一定の研修を受けるだけでいいのか。無資格者がわずかばかりの研修を受けただけでは、預ける側の親は心配でしょう。 そして、処遇改善といっても加算方式はいつまで続くか分からないという経営側の不安から処遇改善に躊躇する実態もあります。公定価格を引き上げ、同時に配置基準も引き上げるという、発想の転換が必要です。 小林:2016年度からは企業主導型保育所という、税金を財源とせず所管も内閣府という新たなタイプの保育施設がスタートしました。企業主導型保育所は、配置基準の5割を保育士で満たせば良い制度となるなど、基準が緩和されています。昨年11月には東京都世田谷区で企業主導型保育所が急に休園し、波紋を広げました。 片山:企業主導型こそ待機児童対策で急ごしらえしたところもあり、今、いろいろな形で歪が生じています。 実際のニーズに合った形で作っているか不明確で、結果、4割も定員割れしてしまっています。素人の事業者が保育ノウハウもないのに、多額の助成金を目当てに参入してしまい、もっと大きな問題が出てくる可能性ある。 保育については、国よりも市町村がよくわかっているのですから、市町村が施設の設置や監査について、きちんと関与すべきです。 こうした問題は全て「待機児童ゼロ」ということが最優先事項になっているから起こってしまう。 有権者にとって分かりやすい政策に舵を切って、現場の声や保育のありかたが二の次になっている。待機児童ゼロになれば政治の評価が上がるという意識から脱する時期がきているのではないでしょうか』、「待機児童ゼロ」というキャッチフレーズは分かり易いが、これだけがクローズアップされたことの歪みが顕著に現れているのだろう。
・『「保育士の人員体制」という重要課題  小林:保育の量ばかりでなく質を考えるうえで、保育士の人員体制は重要な課題です。厚生労働省は財源さえ確保できれば配置基準の引き上げを予定していますが、進んではいません。 片山:良い保育のため何人の保育士が必要かというテーマが隠れてしまっています。 乳幼児教育の無償化は望まれることですが、約8000億円という予算をかけて今、ただちにすべきことなのか。それより先に、預けられる先によって、住む地域によって保育の質に差が出ないようにすることが先決です。そうした保育の環境整備を行ったうえで無償化すべきです。 保育士の配置基準を引き上げるために必要な予算は約1300億円と試算されています。本当に確保できない額なのか。子育てを重視する政権というなら、1300億円の財源を確保すべきです。 小林:消費増税による税財源が乳幼児教育の無償化に使われ、地方も費用負担することになります。保育行政が停滞はしないでしょうか。 片山:予算の配分について決着がつきましたが、「そもそも国が言い始めたことなのですから、本来、国が全額をみるべき」という地方の言い分は分かる気がします。地方は増税分で独自の事業計画を立てていたはずだから。 無償化にしても、外国人労働者の受け入れ拡大にしても、官邸主導でそれありきで物事が進み、制度設計する側の役人が苦労する。タイムリミットが決められてしまって、そのなかでやるとなるとどうしても制度の不備が多くなる。 官邸主導で不備があるまま突っ込んでいく手法が目立ってきている気がします。政治はもっといろんな意見を聞きながら妥協点を探るべき。 小林:大きな議論なく進んできた「委託費の弾力運用」の緩和について、今こそ、政治の場で改めて問い直さなければなりませんね。 片山:少なくとも、人件費の部分については弾力運用に縛りをかけるべきです。賃金の大元が担保されれば、処遇は大きく改善されます。保育は“儲けよう”と思っても本来、成り立たちません。 そして、保育士に余裕がなければ、良い保育をすることは難しくなり、一番のしわ寄せは子どもにきてしまう。保育士の処遇改善と同時に配置人員の引き上げも行うべきです。子どもたちが質の良くない保育を受け続けたら、どんな社会になるのか。考えてみてほしい。 弾力運用の仕組みまで知る人は少ないけれど、世論が起これば政治は動きます。そのためにも、この問題について言い続けたいと思います』、「官邸主導でそれありきで物事が進み、制度設計する側の役人が苦労する。タイムリミットが決められてしまって、そのなかでやるとなるとどうしても制度の不備が多くなる」というのは、その通りだ。世論の盛り上がりによる軌道修正が望ましいが、官邸への忖度が強いマスコミには残念ながら、余り期待出来そうもないようだ。
タグ:「社長解任のJPHD、保育園大手が直面する難題 保育士・金融筋…動揺するステークホルダー」 発表された長期ビジョンでは、2025年3月期に連結で売り上げ1000億円を目指すとしている。現在の3倍を軽く超える規模急拡大 不正に多額の助成金を取得していた 「待機児童ゼロ」を最優先した結果… 「適正な給与水準」の曖昧さ 保育士の平均年収は約315万円 「わずか半年で突然休園…待機児童「目玉政策」が引き起こした大混乱 新タイプの保育園に何が起きているのか」 「定員に占める利用児童数の割合」が平均で49%と、半分を割り込んでいた 「不採択」が続く異例の事態 保育園事業者A社が都内で運営する少なくとも7園で建設費の「水増し請求」をした疑い 本来は8割かけられるはずの人件費が抑え込まれ、3〜4割程度しか人件費比率がかけられないブラック保育所が散見 見積もり額9873万円は「あり得ない」 整備費の4分の3に相当し、これは制度に定められた比率の助成だ 保育士が一斉退職し、休園 児童育成協会 企業主導型保育所「こどもの杜」 「委託費の弾力運用」 保育は誰のためにあるのか。あくまで、子どもの成長と発達を保障するもの 「企業主導型保育所に巣食う「助成金詐欺」の闇 政府肝いりの保育園増加策には大穴があった」 大川 えみる 「企業主導型はゆるい」という噂が広がり… 小林 美希 創業者の山口氏と経営面でも”和解” 制度設計がズサン過ぎる 創業者側と社長側が互いのパワハラ、セクハラといった醜態を“暴露”し合う様は、あきれるほどだった 企業主導型保育所の理想と現実 保育士が低賃金で長時間労働という“ブラック保育所”の存在が目立っている 過激なプロクシーファイト 「「待機児童ゼロ」を最優先した結果、日本の保育は問題だらけになった 片山大介・参議院議員インタビュー」 JPホールディングス 東洋経済オンライン 現代ビジネス 「企業主導型保育所」 モラルハザードを招く (その7)(社長解任のJPHD 保育園大手が直面する難題 保育士・金融筋…動揺するステークホルダー、企業主導型保育所に巣食う「助成金詐欺」の闇 政府肝いりの保育園増加策には大穴があった、わずか半年で突然休園…待機児童「目玉政策」が引き起こした大混乱 新タイプの保育園に何が起きているのか、「待機児童ゼロ」を最優先した結果 日本の保育は問題だらけになった 片山大介・参議院議員インタビュー) 保育園(待機児童)問題
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

エネルギー(その4)(太陽光 価格引下げで「経産省VS業界」大紛糾 経産省が未稼働案件に大ナタ 頓挫の案件も、太陽光発電の制度改正で3000億円を超える損害が予想される理由、京セラやシャープ 太陽光で巨額損失のなぜ 成長が鈍化する太陽光市場で膨らむ損失) [経済政策]

昨日に続いて、エネルギー(その4)(太陽光 価格引下げで「経産省VS業界」大紛糾 経産省が未稼働案件に大ナタ 頓挫の案件も、太陽光発電の制度改正で3000億円を超える損害が予想される理由、京セラやシャープ 太陽光で巨額損失のなぜ 成長が鈍化する太陽光市場で膨らむ損失)を取上げよう。今日は、政策動向、事業者、機器メーカーが中心である。

先ずは、昨年12月2日付け東洋経済オンライン「太陽光、価格引下げで「経産省VS業界」大紛糾 経産省が未稼働案件に大ナタ、頓挫の案件も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/252474
・『経済産業省による再生可能エネルギー電力の固定価格買い取り制度(FIT)の見直し案が、太陽光発電業界に波紋を投げかけている。 経産省は10月15日の審議会で2012~14年度にFIT認定を得ていながら、いまだに稼働できていない太陽光発電事業を対象に、買い取り価格の引き下げや買い取り期間の短縮に踏み切るとの方針を発表。「未稼働案件に適切に対処することは、国民負担の抑制と新規開発の促進に資する」(山崎琢矢・新エネルギー課長)と理解を求めた。 FIT制度では発電事業用の太陽光発電設備(出力10キロワット以上)について、当初決めた価格で20年にわたって電力会社が買い取る仕組みが設けられてきた。今回、経産省はFIT法に関する省令を改正し、「未稼働案件」の一部について、より実勢に近いコストに基づく価格への引き下げを実施する』、昨日も問題になった未稼働案件について、いよいよ買い取り価格の引き下げや買い取り期間の短縮に踏み切るようだ。
・『いったん決めた買い取り価格を引き下げ  具体的には、2019年3月末までに系統連系工事(送電線につなぐ工事)の着工申し込みが受領されていない案件について、従来の買い取り価格を大幅に引き下げる。2012年度および2013年度、2014年度に認定された案件の買い取り価格は現在、それぞれ1キロワット時当たり40円、36円、32円だ。2019年3月末までに系統連系工事の着工申込受領がなされず、2019年度および2020年度にずれ込んだ場合、これらを2017年度時点の価格である21円や2018年度時点の18円にそれぞれ見直す。 経産省は11月21日までパブリックコメント(意見公募)を実施しており、寄せられた意見を踏まえて、早ければ12月5日にも最終案を公表する。 経産省によれば、今回の制度改正の背景には再エネをめぐるいくつもの大きな問題がある。第1に、電気料金に上乗せして徴収されている再エネ賦課金の増大だ。2018年度の1年間だけで消費税の1%分に相当する2.4兆円に達する。再エネの発電量がこのままのペースで増え続けた場合、2030年度時点に年間3.1兆円と想定された賦課金額を前倒しで到達してしまう。賦課金の急速な増大には、日本経済団体連合会など経済界の反発も強い。 また、高い買い取り価格の権利を持ったまま、一向に稼働しない案件が大量に存在している。送電線に空きが生まれず、新たな太陽光発電投資が行われにくくなるといった弊害も指摘されている。経産省によれば、2012~2014年度の事業用太陽光発電の認定案件のうち、未稼働のものは約2300万キロワットにものぼっている(同期間の認定案件のうちですでに稼働したものは約3000万キロワット)。そのうち、今回の制度見直し対象となるのは、2017年の改正FIT法施行時に運転開始期限が設定されなかったもので、1100万キロワット弱~1700万キロワット弱にのぼると見られている』、経産省は12月5日に最終案を公表したようだ。未稼働のものが、稼働したものの77%とは驚くほど多い。しかも、未稼働であっても、送電線の容量が割り当てられているので、送電線の空きを少なくしているのは、新規案件の接続を抑制するだけに問題が大きい。
・『経産省案に事業者が反発  だが、劇薬とも言える今回の経産省の方針に対して、事業者の反発は大きい。 太陽電池メーカーや太陽光発電事業者など140社・団体でつくる太陽光発電協会は11月22日、「未稼働案件問題」に関する記者会見を開催した。増川武昭事務局長は「いったん約束された買い取り価格と買い取り期間が遡及的に変更されることになり、事業者や投資家、金融機関から、FIT制度の安定性や信頼性、事業予見性が損なわれることを危惧する声が多く挙がっている」と指摘。系統連系工事着工申し込み期限の先延ばしなど、軌道修正が必要だとの考えを示した。 同協会が11月に実施したアンケート調査には29社が回答。合計設備規模約310万キロワットのうち、「稼働できなくなる可能性」が「確実」「極めて高い」「高い」としたのは計228万キロワット。すでに投資した金額は約1680億円、未稼働となった場合の施工会社や金融機関などへの違約金等が約1210億円にのぼるという。 太陽光発電事業の法務に詳しいベーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護士は「これほど大きな制度変更であれば、周知期間として1年は必要。経産省の問題意識は理解できるが、訴訟が頻発する可能性がある」と指摘する。 メガソーラー発電所を多く手掛けるスパークス・グリーンエナジー&テクノロジーの谷脇栄秀社長は「当社でも、すでに融資契約を結んでいて着工している案件の中で、投資収益に影響を受けるものがある」と明かす。というのも、今回の改正案によれば、運転開始期限が設定されるためだ。現時点の案では系統連系工事の着工申し込み受領時から1年以内に稼働できない場合、遅れた分だけ買い取り期間が短くなる。 法改正ではなく、省令改正で買い取り価格を引き下げることについて、前出の江口弁護士は「FIT法で経産相に与えられている委任権限を逸脱する」と指摘する。 一方、FIT法では、電力の供給が効率的に実施される場合に通常要すると認められる費用に適正な利潤を勘案して買い取り価格を決めるとしている。「認定取得から年月が経過する中でパネルの価格も大幅に下落している。その結果として、当初予定していなかった超過利潤が生まれることが問題だと認識している」(経産省・山崎課長)』、「事業者が反発」するのは織り込み済みだろう。ただ、「省令改正で買い取り価格を引き下げる」という安易な手を使ったことで、事業者からの訴訟リスクにさらされることになろう。
・『経産省を支持する意見も  ただ、こうした未稼働案件が積み上がる事態は、FIT法が施行された2012年時点で想定されておらず、経産省も当時、導入促進を急ぐ中で、買い取り価格見直しや運転開始期限のルールを設けていなかった。 今回の経産省の方針を強く支持する意見もある。岡山県で国内最大のメガソーラーを稼働させた、くにうみアセットマネジメントの山﨑養世社長は「未稼働案件のFIT価格引き下げには賛成だ」と語る。「実現できるかどうか、はっきりしない案件のために貴重な系統容量が占拠されてしまっていることが再エネの導入を阻害している。こうした状況を是正することは正しい」。 その山﨑氏も制度変更によるマイナス影響を危惧する。「運転開始期限が1年後に設定された場合、案件が大型であるほど運転開始期限までに完成できないケースが多くなると考えられる。FIT期間が短くなって投資収益率が低下した場合に、事業中断も起こりうるし、投融資の回収が困難になるケースも考えられる」という。 また、山﨑氏は許認可の取得が終わらないために未稼働状態が長引いている案件について、「買い取り価格が下がることはやむをえない」としつつも、「その場合、安い価格のパネルへの変更を認めて欲しい」(山﨑氏)と主張する。 未稼働案件をめぐる問題は、FIT法制定当初、事業者に有利すぎるルールを認めてしまった後での軌道修正の難しさを物語っている』、確かにFIT法をよく練りもせず、安易に制定しまったツケの清算は、やや遅きに失したきらいはあるが、早い方がいいのは当然だろう。

次に、12月5日付けダイヤモンド・オンライン「太陽光発電の制度改正で3000億円を超える損害が予想される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/187472
・『「ある程度想像していたが、ここまで影響が大きいとは思わなかった……」 11月22日、太陽光発電協会(JPEA)の増川武昭事務局長は記者会見の冒頭、肩を落としながらこう述べた。その理由は、本誌11月24日号でも触れた、太陽光発電事業における未稼働案件の買い取り価格の引き下げだ。 国が、再生可能エネルギーによる電気の固定価格買い取り制度(FIT)を導入してから6年、経済産業省が未稼働案件のあまりの多さを問題視。そこで、電気料金から徴収する再エネ発電促進賦課金(今年度は2.4兆円)を減らす方向にかじを切ったのだ。 これについて、JPEAがアンケート調査を実施、具体的な影響が判明した。発電事業者110社のうち、何らかの影響があると答えたのは、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の案件を抱える大手29社。案件数113件のうち111件は稼働する予定だったが、今回の見直しで92件は未稼働になる可能性が高いという』、未稼働113案件のうち、「92件は未稼働になる可能性が高い」というのは、影響がかなり大きそうだ。
・『電力会社への工事負担金、地権者やEPC(設計・調達・建設をする業者)などへの支払いで約1680億円、計画の頓挫によるEPCや金融機関への違約金、地権者への賠償金などが約1210億円。実に、合計3000億円弱の損害が予想されるという。 ただし、これらの設備規模は計約310万キロワットで、経産省が減額対象とする約2300万キロワットの一部にすぎない。アンケートに未回答の事業者分を勘案すると、損害額は大幅に増える見込みだ』、「経産省が減額対象とする約2300万キロワット」から設備規模だけで全体の損害を推定すると、「3000億円弱の」約7倍となる。
・『問題は未稼働だけではない  もっとも、業界が恐れているのは投資の停滞だ。ある投資会社の幹部は「出力抑制と今回の見直しで、太陽光発電はもう要らないと言われているのと同じ。経済界にとってマイナスであり、金融機関は深刻だろう」と話す。また、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、「太陽光発電は急速にコストが下がるもの。世界で唯一、認定時に価格を決める日本の制度に欠陥がある」と指摘。関係者の納得がいくためには、「系統連系時に価格が決まる制度に改めることが必要」だという。 実は、事業者側も今回の見直しに基本的に賛同している。だが、林地開発など行政上の手続きに時間を要し、期限を迎える来年1月下旬に間に合わないのだ。そのため、再来年3月末まで延長するなど救済措置を望んでいる。 一方、林地開発は自然破壊になり、地域住民とのあつれきを生む。造成費が出なくなれば自然が守られると歓迎する向きもあるが、代わりに造成が不要な事業の可能性も考える必要がある。例えば、送電線の空き容量を増やす、工事負担金を減らすなどといったことだ。 FITの見直しと同時にこれらも解決しない限り、太陽光発電市場は一気に縮小するだろう』、自然破壊はやはり避けるべきだろう。「造成が不要な事業の可能性」というのは、説明不足で意味不明だ。いずれにしても、太陽光発電市場の縮小はやむを得ないとして割り切る必要があろう。

第三に、12月18日付け東洋経済オンライン「京セラやシャープ、太陽光で巨額損失のなぜ 成長が鈍化する太陽光市場で膨らむ損失」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/255793
・『次世代のエネルギーとして急速に普及が進む太陽光発電。太陽光発電システムの導入量は2017年には2015年比で2倍と急成長した。一方で、日系企業の中には材料価格の変動などで思わぬ損失を負う事態が相次いでいる』、太陽光バブル崩壊は機器メーカーにも及んでいる。
・『京セラは511億円の損失計上  京セラは11月28日、太陽電池パネルに使うポリシリコン原材料の調達をめぐり、511億円相当の損失を計上すると発表した。これを受け、同社は2019年3月期の通期業績見通しを下方修正。従来は1540億円と見込んでいた営業利益は990億円(IFRS対比で前期比9.1%増)に減速するとした。 この損失をもたらす原因となったのが、2005~2008年にかけてアメリカのシリコンメーカー、ヘムロック社と結んだポリシリコン原材料の長期購入契約だ。当時はドイツなどで再生可能エネルギーが拡大しており、需給が逼迫していたため、必要量を確保しようと高値での長期契約を結ばざるをえない状況だった。 ところがその後、市況は思わぬ展開を見せる。太陽電池用のシリコンは半導体用と比べて純度などの品質要求が厳しくないため、中国などの参入が相次いだのだ。 その結果、起きたのが急激な価格破壊だ。ポリシリコン原材料の価格は2018年までの10年間で8分の1ほどに下がった。かつては京セラやシャープが上位を占めていた太陽電池パネルの生産世界シェアも、中国勢が上位を占めるようになった。 価格低下を受け、京セラはヘムロック社に契約見直しを要請。契約が不公正だとして訴訟まで起こしたが、11月28日に和解したという。京セラは2017年3月期と2018年3月期にも引当損失をあわせて308億円計上しており、一連の長期購入契約をめぐる損失は合計で約820億円となっている。 同様の事態は、同じくポリシリコン原材料の長期購入契約を結んでいたシャープでも起きている。 シャープは2015年、契約上の購入価格と時価との間に差額が大きくなったとして、546億円を買付評価引当金に計上。事実上の損失として処理した。契約自体は解消せず、このときの契約に従って2020年末まで材料を購入し続ける方針だという(2018年9月末時点での引当金は156億円)。 ただ、京セラの太陽光発電事業の苦戦は原材料高だけが原因ではない。太陽光を含む生活・環境部門は今期、原材料費の損失計上がなくても170億円の赤字予想だった。 そもそも中国勢との激しい価格競争にさらされているうえに、2019年には再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が開始から10年が経ち、終了するものが相次ぐ。 FIT関連の事業はすでに需要が想定以上に落ち込んでおり、黒字化への足かせとなっている。同社は拠点集約などでコスト低減を進めており、谷本秀夫社長は10月30日の決算説明会で「10月に拠点集約がほぼ完了した。来期(2020年3月期)の黒字化は難しいかもしれないが、再来期(2021年3月期)には黒字化できるとみている」と意気込んでいた。 京セラの損失計上を、市場はおおむね好意的に反応した。発表直後の11月29日に京セラ株は前日に比べ5%近く上昇。これは原材料高によって苦しんできた太陽光事業がこれで好転するとの期待からだろう』、京セラ、シャープとも太陽光バブルのピークでの原料調達のためとはいえ、高い月謝を払わされたものだ。
・『魅力的でも危うい太陽光市場  太陽光で痛手を負ったのはこの2社だけではない。老舗の化学メーカーであるトクヤマは2016年、2000億円以上を投じてマレーシアに完成させた太陽電池用多結晶シリコンの生産拠点を減損処理し、わずか100億円で売却せざるをえなくなった。理由は同じくポリシリコンの価格下落。生産コストよりも販売価格のほうが低い「逆ザヤ」状態に陥ってしまったからだ。 最近では、太陽電池用シリコンウェハーをスライスするダイヤモンドワイヤを販売する中村超硬が2018年4~9月期決算で、在庫評価損や減損特損を計上したことで、83億円の最終赤字を計上し、債務超過に転落した。 主戦場の中国で、2018年初からウェハーメーカーの生産調整が続いたうえ、政府が補助金削減による引き締め策に打って出たことで、販売価格が一気に7割減となった。「ここまでの価格下落は想定以上だ」(中村超硬)。 実際、急成長を続けてきた太陽光発電市場全体も、今年、突然の停滞に見舞われている。自治体や企業向けに太陽光発電導入のコンサルティングをしている資源総合システムによると、2018年の太陽光発電市場は前年比マイナス15%に落ち込んだ可能性があるという。 調整局面が続く市場環境の下、巨額損失の教訓をどう生かすのか。各社は事業戦略の練り直しを迫られている』、死屍累々の後の「事業戦略の練り直し」といっても、生易しい課題ではなさそうだ。
タグ:トクヤマは2016年、2000億円以上を投じてマレーシアに完成させた太陽電池用多結晶シリコンの生産拠点を減損処理し、わずか100億円で売却せざるをえなくなった 経済産業省 アンケート調査 太陽光発電協会(JPEA) 「太陽光発電の制度改正で3000億円を超える損害が予想される理由」 経産省案に事業者が反発 1100万キロワット弱~1700万キロワット弱 今回の制度見直し対象となるのは 従来の買い取り価格を大幅に引き下げる 「未稼働案件」の一部について、より実勢に近いコストに基づく価格への引き下げを実施する 未稼働案件に適切に対処することは、国民負担の抑制と新規開発の促進に資する いまだに稼働できていない太陽光発電事業を対象に、買い取り価格の引き下げや買い取り期間の短縮に踏み切るとの方針を発表 ダイヤモンド・オンライン 固定価格買い取り制度(FIT)の見直し案 東洋経済オンライン (その4)(太陽光 価格引下げで「経産省VS業界」大紛糾 経産省が未稼働案件に大ナタ 頓挫の案件も、太陽光発電の制度改正で3000億円を超える損害が予想される理由、京セラやシャープ 太陽光で巨額損失のなぜ 成長が鈍化する太陽光市場で膨らむ損失) エネルギー 2019年3月末までに系統連系工事(送電線につなぐ工事)の着工申し込みが受領されていない案件 「太陽光、価格引下げで「経産省VS業界」大紛糾 経産省が未稼働案件に大ナタ、頓挫の案件も」 シリコンウェハーをスライスするダイヤモンドワイヤを販売する中村超硬が2018年4~9月期決算で、在庫評価損や減損特損を計上したことで、83億円の最終赤字を計上し、債務超過に転落 必要量を確保しようと高値での長期契約を結ばざるをえない状況 魅力的でも危うい太陽光市場 シャープでも起きている ポリシリコン原材料の長期購入契約 京セラは511億円の損失計上 経産省を支持する意見も すでに稼働したものは約3000万キロワット 系統連系工事の着工申し込み受領時から1年以内に稼働できない場合、遅れた分だけ買い取り期間が短くなる 「京セラやシャープ、太陽光で巨額損失のなぜ 成長が鈍化する太陽光市場で膨らむ損失」 未稼働のものは約2300万キロワット 世界で唯一、認定時に価格を決める日本の制度に欠陥 問題は未稼働だけではない 高い買い取り価格の権利を持ったまま、一向に稼働しない案件が大量に存在している。送電線に空きが生まれず、新たな太陽光発電投資が行われにくくなるといった弊害 2030年度時点に年間3.1兆円と想定された賦課金額を前倒しで到達 違約金等が約1210億円 2.4兆円 これらの設備規模は計約310万キロワットで、経産省が減額対象とする約2300万キロワットの一部にすぎない 合計3000億円弱の損害が予想 再エネ賦課金の増大 すでに投資した金額は約1680億円 同協会が11月に実施したアンケート調査には29社が回答。合計設備規模約310万キロワットのうち、「稼働できなくなる可能性」が「確実」「極めて高い」「高い」としたのは計228万キロワット 生産世界シェアも、中国勢が上位を占めるように 大手29社。案件数113件のうち111件は稼働する予定だったが、今回の見直しで92件は未稼働になる可能性が高いという ポリシリコン原材料の価格は2018年までの10年間で8分の1ほどに下がった 2017年度時点の価格である21円や2018年度時点の18円にそれぞれ見直す 2012年度および2013年度、2014年度に認定された案件の買い取り価格は現在、それぞれ1キロワット時当たり40円、36円、32円
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

エネルギー(その3)(ドイツでもグリーン電力の夢は頓挫していた 送電網の整備が遅れロシアの天然ガス頼みに、太陽光の2019年問題 期限切れを前に対応を急げ!、メガソーラー建設反対運動が続発、太陽光発電は本当に「エコ」か) [経済政策]

エネルギーについては、昨年1月12日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(ドイツでもグリーン電力の夢は頓挫していた 送電網の整備が遅れロシアの天然ガス頼みに、太陽光の2019年問題 期限切れを前に対応を急げ!、メガソーラー建設反対運動が続発、太陽光発電は本当に「エコ」か)である。

先ずは、昨年10月28日付け東洋経済オンラインが「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部の記事を転載した「ドイツでもグリーン電力の夢は頓挫していた 送電網の整備が遅れロシアの天然ガス頼みに」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/245485
・『脱化石燃料・脱原発の野心的な目標をぶち上げたドイツだが、送電網の再整備が立ち遅れロシアの天然ガス頼みに。 今年8月の猛暑の日、ドイツ北部のバルト海沖に浮かぶリューゲン島に数百人のツアー客が集まった。お目当てはビーチではない。アルコナ洋上風力発電所が開催した「魅惑の洋上風力発電」展だ。 港には巨大な白いグラスファイバーのブレードが並んでいた。この長さ約75メートルのブレードは、約30キロ沖合にそびえる風力発電用タワー60基の上に設置されると、ガイドが説明した。2019年初めまでに発電量は385メガワットに達し、40万世帯分の電力を供給できるようになるという。 「わが社がここでやろうとしていることを一般の人たちに知らせて、『おお、すごい!』と言ってもらいたい」と、アルコナの幹部シルケ・ステーンは話す。 もっとも、ツアー客が港の別の場所に目をやれば、同じくらい壮大な人工物に気付いたはずだ。こちらは見学予定に入っていないが、港の一画にはコンクリートのコーティングを施した巨大な鉄鋼のパイプが積み重ねて並べてあった。 これらのパイプは、ロシアとドイツを結ぶ全長約1220キロの天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」の一部として海底に敷設される。予定どおり来年に工事が完了すれば、既に稼働中のノルド・ストリームと合わせて現在の2倍のガスがロシアから輸送される。 皮肉にも積み出し港を共有するこの2つのプロジェクトは、再生可能エネルギーに懸ける夢と、ロシアのガス頼みという苦い現実の板挟みになったドイツの苦悩を物語っている』、風力発電用タワーとロシアからの天然ガスのパイプラインが積み出し港を共有しているというのは、確かに皮肉この上ない。風力発電の「発電量は385メガワット」とは巨大だ。原発の1/3基分に相当する。
・『「南北問題」がネックに  ドイツは10年、今世紀半ばまでに電力の80%を再生可能エネルギーで賄うという野心的な目標を掲げた。さらに翌年には日本の福島第一原子力発電所の事故を受け、22年までに「脱原発」を達成すると発表した。 ドイツはいち早く固定価格買い取り制度を導入(17年に入札制度に移行)するなど、個人や企業による太陽光と風力発電事業をテコ入れしてきた。おかげで1990年には電力比率の3・6%にすぎなかった再生可能エネルギー(風力、太陽、水力、バイオガス)が、発電量の3割超を占めるようになった。 しかし高邁なビジョンは、厳しい現実に突き当たった。世界屈指の工業国ドイツが脱化石燃料・脱原発に舵を切るのは容易ではなく、当初の予想以上にコストがかかり、政治的にも困難を極めた。結局、政府はエネルギー政策を見直して化石燃料への依存度を高め、気候変動対策で世界をリードする役目もある程度返上せざるを得なくなった。 問題は送電網にある。太陽光・風力発電を主役にすると、従来よりも複雑でコストも高い送電網が必要になる。ドイツが目標を達成するには、「送電網の全面的な再整備が必要だ」と、再生可能エネルギー推進政策に詳しいアナリストのアルネ・ユングヨハンは言う。 風力発電ブームがもたらしたのは、供給と需要のミスマッチという予期しない問題だった。ドイツでは風力発電所は常に強い風が吹く北部に集中しているが、大規模な工場の多くは南部にある(南部に集中する原発は次々と運転を停止している)。 北部の風力発電所から南部の工業地帯に電力を送るのは容易ではない。風が強い日には、風力発電所は大量の発電が可能になるが、電力はためておくことができない。供給過剰になれば送電線に過大な負荷がかかるため、電力系統の運用者は需給バランスを維持しようと風力発電所に送電線への接続を切断するよう要請する。こうなるとツアー客が眺めた巨大なブレードも無用の長物と化す。 一方で、電力の安定供給のためには莫大なコストをかけてバックアップ電源を稼動させなければならない。ドイツでは昨年、こうした「再給電」コストが14億ユーロにも達した。 解決策は、北部の風力発電施設から南部の工場にスムーズに電力を送れるよう送電網を拡張すること。そのための工事は既に始まっている。巨額の予算をかけて(事業費は電気料金に上乗せされて、消費者が負担する)、総延長約8000キロ近い送電線が新たに敷設される予定だが、今のところ工事が完了したのは2割足らずだ』、確かに送電線の敷設には時間がかからざるを得ない。
・『風力発電で大量の失業者  「壊滅的に工期が遅れている」と、ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は8月に経済紙ハンデルスブラットに語った。遅れた理由の1つは住民運動だ。4本の高圧電線が通る地域の住民は電磁波の影響を懸念し、地下にケーブルを埋設するよう要求。そのために工期は延び、コストは膨らんだ。 今の見通しでは工事が全て完了するのは25年。原発が全て運転を停止してから3年後だ。 こうした状況下で、ドイツは再生可能エネルギーへの転換のペースを見直さざるを得なくなった。与党キリスト教民主同盟(CDU)の広報担当ヨアヒム・ファイファーは本誌の取材にメールで応じ、「再生可能エネルギーの発電量を増やすことに注力し過ぎていた」と認めた。「発電量を増やすと同時に送電網を拡張する必要があるのに、後者が後回しになった」 再生可能エネルギー推進派は政策の後退に強く反発している。ドイツ風力発電連合のウォルフラム・アクセレムCEOによると、風力発電業界では大量の失業者が出ている。「19、20年にこの業界は苦境に陥るだろう」 一方、ノルド・ストリーム2の建設工事は着々と進んでいる。このプロジェクトの事業費110億ドルは、ロシアの国営エネルギー企業ガスプロムと5社の欧州企業が出資しており、ドイツの納税者には直接的な負担はない。パイプラインはドイツ、ロシア、フィンランド、スウェーデン、デンマークの領海を通過するが、通過を拒否するデンマークを除く4カ国は既に敷設を許可している。 今でもEUが消費する天然ガスの約3割はロシア産だが、予定どおり来年末にノルド・ストリーム2が稼働を始めれば、欧州のガス市場におけるロシアのシェアはさらに拡大する。欧州最大のガス田があるオランダは地震頻発のため30年までにガス田を全て閉鎖する予定で、EUのロシア依存は一層進む。 ドナルド・トランプ米大統領は7月、「ドイツは完全にロシアに支配されている」と発言。米政府はノルド・ストリーム2に投資する欧州企業に制裁を科す可能性があると脅しをかけた』、EUのロシア依存が一層進むのは好ましいことではないにしても、トランプの脅しは内政干渉そのものだ。
・『褐炭の採掘はフル操業  ドイツ政府もロシアへの過度の依存を警戒しているが、エネルギーの安定供給を求める産業界の要望は無視できない。現実問題としてロシア産ガスに頼らざるを得ないと、ドイツ国際安全保障問題研究所のエネルギー専門家クリステン・ベストファルは言う。「大きな需給ギャップを埋めるには、(ロシアの)ガスが必要だ」 再生可能エネルギー用の送電網整備が立ち遅れるなか、二酸化炭素(CO2)の排出量が最も多い化石燃料である褐炭の需要も伸びている。褐炭による火力発電はドイツの電力供給の25%近くを占める。化石燃料業界が逆風にさらされるなか、褐炭の採掘会社は稼げるうちに稼ごうと事業の拡大に余念がない。 石炭火力発電が大きく伸び、ドイツのCO2排出量は15、16年と連続で増えた(17年には微減)。ドイツは今なおヨーロッパ最大のCO2排出大国だが、アンゲラ・メルケル首相は汚名返上に努めるどころか、20年までに1990年比の40%という削減目標を撤回するありさまだ。 わずか数年前、パリ協定の採択に向けた議論が行われていたときには、ドイツはEUの気候変動対策のリーダーを自任していた。だが最近、ミゲル・アリアスカニャテ欧州委員会気候行動・エネルギー担当委員が30年までの削減目標を90年比40%から45%に引き上げようと提案すると、メルケルは渋い顔をした。「既に決めた目標があるのだから、その達成が先だ。次から次に新しい目標を打ち出すのはいかがなものか」』、メルケル首相もキレイ事ばかりは言っていられないようだ。

次に、11月9日付けNHK時論公論「太陽光の2019年問題 期限切れを前に対応を急げ!」を紹介しよう。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/309196.html
・『一般家庭の太陽光発電にとって試練となるかも。 家庭用太陽光で発電した電気を電力会社が買い取る制度の買取期間が、1年後から終わり始めるから。対象となる家庭は2019年だけでも50万世帯にのぼる見通し。各家庭が売電先を探すなどの対応しなければ、発電した電気がタダで流れていくことにもなりかねない。しかし売電先を探そうにも、どこがいくらで買い取ってくれるのか、買い取り期間終了後の仕組みがきちんとできていない。 この「太陽光の2019年問題」について +家庭用太陽光の買い取り期間終了とは。+対象となる家庭はどう受け止めているのか。+政府や電力会社はどう対応していくべきか』、10年で期限切れになることは当初から分かっていた筈なのに、いまだに期限切れ後の対応が未定とは、政府も無責任もここに極まれりだ。
・『CO2を出さない電源として注目される太陽光や風力などの再エネだが、価格が高く、政府は普及を図るため再エネで発電した電気を一定の価格で買い取ること制度開始。中でも太陽光だけは一般家庭が導入可能な再エネで、重点的に拡大を図ろうと制度を前倒しする形で2009年11月から買い取り開始。自宅消費で余った分を電力会社が買い取る仕組みで、当時は太陽光パネルの価格が高かったため、買い取り価格は1kWhあたり48円と、かなり高い価格に設定。 高価格が保証されたことで一般家庭の太陽光が一気に増え、200万世帯あまりがパネルを設置。 しかし高価格での買い取り期間は10年間に限定されており、それ以降電力会社は買い取る義務がなくなる。期間終了となる家庭は2019年11月と12月だけでも53万世帯、2023年までに160万世帯に達する見込み。あわせれば最大で700万kWと原発7基分の再エネによる電力が有効に利用されないおそれ』、最後の部分はやや誇張気味ではある。
・『再エネについて政府はエネルギー基本計画で、脱炭素化の切り札と位置づけ、将来の主力電源にしていく方針。そのためには再エネが買い取り制度のような支援が無くても成り立つ自立した電源になれるかどうかにかかっている。 それには設置した人たちが、買い取り期間終了後も引き続き意欲を持って有効に活用し続けてもらうことが必要。 最近は企業の中にも事業で使う電気をすべて再エネでまかなうことを目指すことで企業価値を高めようとするところも。再エネは脱炭素化の価値の高い電源としてニーズが高まっていることから、買い取り終了後も需要はあり、一定の価格も期待できる。 にもかかわらず期限切れまで1年となっても、一般家庭や電力会社にあまり動きがなく、買い取り制度からうまく移行できないおそれがある、これが太陽光の2019年問題』、高い値段で買わされる電力会社は動き難いのは当然で、ここでこそ政府の出番の筈だ。
・『対象となる一般家庭はまずは期限が切れる前にあらたな売電先を探す必要。あらたな設備は必要ないが、自分で売電先を探さなければ。 もう一つ、電気をためる方法。時間帯や天候によって発電量が変動する太陽光の弱点の解消にもつながりこれまで以上に効率的に使うことができる可能性あるが、あらたに蓄電池を設置しなければ。 制度発足当初に太陽光を導入した人たちはこの問題をどう捉えているのか。横浜市内のあるお宅では2010年の初めにおよそ200万円かけて太陽電池パネルを設置。操作パネルを見れば、どれだけ発電しているかや、売電量がリアルタイムでわかる。毎月5千円から6千円分、東京電力に買い取ってもらっている。しかし1年余り後に買い取りが終わってしまうことについて、不安を募らせる。蓄電池は200万円近くと高価で、まだ設置に踏み切れないという。この先どことどうやって契約すればいいのか、自ら動かなければならないのか、そして買い取り価格はどうなるのか、わからないことだらけという。このように契約先を探そうとしても、一体どの電力会社がいくらで買い取る用意があるのかなど、買い取り期間終了後の仕組みがきちんとできていないことが一番の問題』、売電収入が「毎月5千円から6千円」ということは、年間6~7.2万円、10年間でも設置費の200万円の僅か1/3程度に過ぎない。買取価格が下がれば、寿命前に回収出来るかすら微妙だろう。これでは、さらに蓄電池に200万円近く投資する家庭は限定的だろう。
・『政府は買い取り期間が終わった太陽光を買い取る用意がある電力会社に、早く買い取りのメニューを提示させる必要あり。 その際、かなり安くなることが想定される。ただあまりにも安すぎると、一般家庭で今後も太陽光を続けていこうという意欲がなくなり、再エネ拡大にはつながらない。適正な競争によって価格が決まることが望ましい。 そのためにも現在買い取りをしている大手電力会社になるべく早く、価格を提示してもらうことが必要。大手が示せば、新電力もそれに対抗する値段を出して価格競争が起きる。 また買い取り期間が終わることを忘れていて気づいていない一般家庭も多い。 太陽光を設置している家庭のうち、どの家庭が期限切れとなるのかという顧客情報は多くの場合大手電力会社が握っているので、大手電力から各家庭に通知してもらうのが一番確実。 それぞれの家庭が脱炭素社会に向けてのけん引役となるためにも、今から賢い再エネの活用方法を考えられる環境づくりを』、普通であれば一般の新聞も騒いでもよさそうだが、音無しである。政府への忖度でなければいいのだが・・・。

第三に、フリーライターの有井太郎氏が11月9日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「メガソーラー建設反対運動が続発、太陽光発電は本当に「エコ」か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/184843
・『「エコ」のイメージが強い太陽光発電。しかし今、全国各地でメガソーラーの建設とそれに対する反対運動が起きている。景観地としても有名な長野県・霧ヶ峰の麓でも、東京ドーム約40個分、ソーラーパネル約31万枚の巨大計画が立ち上がり、住民の反対運動が過熱。はたしてなぜ、このような事態が頻発するのか。長野県をモデルケースに、太陽光は本当にエコなのか考えたい』、既に太陽光発電設備が乱開発された北杜市では、景観破壊、パネルによる熱輻射、水源・水質への悪影響などが問題化している。
・『霧ヶ峰の近くで立ち上がったソーラーパネル31万枚の大計画  東京・新宿駅から、特急電車でおよそ2時間の場所にある長野県・茅野市。蓼科高原などの観光地を有するこの地で、先日あるシンポジウムが行われた。そこには、定員の300人を優に超える500人が集まったという。四国や九州など、遠方からも多数の人が訪れた。 それが、10月8日に茅野市民館で開催された「全国メガソーラー問題シンポジウム」。近年、全国で開発が進む大規模な太陽光発電施設、“メガソーラー”がテーマだった。 ここまで広範囲に、同じ“問題”が起きているのは正常とは言い難い。“問題”とは「メガソーラー開発に対する反対運動」だ。このシンポジウムでも、リアルタイムで反対運動を行っている地域として、千葉県鴨川池田地区、静岡県伊豆高原、愛知県知多郡東浦、三重県四日市足見川の人たちが事例報告と現状の共有を行った。 これらに先んじて報告されたのが、シンポジウム開催のきっかけとなった、長野県諏訪市四賀のソーラー事業に対する反対運動だ。国定公園もある長野県・霧ヶ峰の近くに立ち上がった計画で、事業面積196.5ha、東京ドーム約40個分の土地に、ソーラーパネルを31万枚並べるもの。山間地域のメガソーラーとしては、国内最大級の規模となる。 事業計画地は茅野市の隣にある諏訪市だが、反対運動はちょうどそのエリアの斜面下部に位置する茅野市米沢地区の住民が中心となっている。 「山は森林によって保水力を有しています。これだけ大規模に森林を伐採し、さらにこの計画では大量の土を掘削。10tトラック5万台分の土が動くとのことです。加えて、計画地の下には、茅野市の市内4分の1をカバーする水道水の水源もあるのです。それほどの開発をする必要がどこにあるのか、疑問でなりません」 こう話すのは、反対運動を行う米沢地区Looopソーラー対策協議会の柴田豊さん。「Looop」とは、今回の計画を行う事業者である。 2011年の東日本大震災を経て、再生可能エネルギーの筆頭として注目された太陽光発電。それがなぜ、全国でこのような事態を起こしているのだろうか。霧ヶ峰での事例をピックアップしつつ、メガソーラーの根本的な問題を考えてみたい』、リンク先の写真にある事業計画地のイメージ図を見ると、こんなものが出来たら霧ヶ峰の景観は台無しになるだろう。
・『土砂災害に水質の変化 地元の人が抱く不安とは  諏訪市四賀のメガソーラー計画では、計画地の脇を「横河川」という川が流れる。横河川は、これまでにたびたび大雨で災害を起こしており、1983年には米沢地区に大きな被害があったという。「これだけ広範囲に森林を伐採すれば、雨水の浸透量は減り、横河川への大量流出を招くかもしれません」と柴田さんは危惧する。 事業者のLooopは、対策として計画地内に“調整池”を3ヵ所つくるとしている。今回、Looop担当者にその点を聞くと「調整池は、最新の長野県の林地開発設計基準に基づいて容量の計算が行われており、豪雨時でも計画地から流れ出る水量をコントロール(調整)できる」とのこと。 しかし、この調整池についてもこれまで議論がされており、住民からの不安は尽きないようだ。柴田さんが説明する。 「本来、調整池とは川の外側に作ることで、本流から水を逃がし、水量の調整や濁りを除去します。しかし本計画では、計画地にもともと流れる川を深く掘って調整池にするとのこと。本当に水量や濁りを十分調整できるのか疑問です」 他にも不安は山積している。湧水への影響だ。計画地の下には茅野市民の4分の1の生活水となる「大清水湧水」がある。Looopは「大清水については、開発地の影響は予測されない」としているが、住民はその説明に納得していない。 「実は、かつてもこの地で開発計画が起こり、信州大学の教授が地質を調査しました。その際の内容とLooopの調査結果には異なる点が多々あります。また、地質調査の結果報告も不十分で、信州大学特任教授の小坂共榮氏もその点を指摘しています」 また、諏訪市側には「南沢水源」という別の水源があり、こちらは諏訪地域の住民の生活水にもなっている。この水源については、現状で「影響が少ない」とLooopは発表しているとのこと。「“少ない”というのは、『影響がある』ことを認めているのではないでしょうか」と柴田さんは話す。 さらに、諏訪地域には“諏訪五蔵”と称される酒蔵がある。彼らは霧ヶ峰から来る伏流水を使っており、「酒蔵の方々も大変な不安を感じています」と柴田さんは続ける』、景観破壊を問題にしてないのは理解に苦しむ。
・『なぜ計画が立ち上がったか この開発でより良い山になる?  特に成り行きが注目されるのは、工事で排出される大量の“残土処理”だ。当初、トラック5万台の土は横河川沿いに盛られる予定だったが、事業計画を審査する長野県環境影響評価技術委員会の指摘を受けて、事業者は計画を変更。近隣の採石場跡地に運び出すことにした。 しかし、それだけの土を積み上げて、はたして土砂崩れなどが起きないか。住民は不安を感じている。また、採石場跡地は技術委員会の審査対象範囲から外れるため、処理方法の計画は不透明になっているという。 柴田さんは「とにかく計画が“事業ありき”で進んでいます。地形やこの土地の環境を考えたら、“なぜここでそんな開発が必要なのか”という思いしかありません」と繰り返す。 では、どうしてこのような事業が立ち上がったのか。この計画地は、上桑原牧野農業協同組合、上桑原共有地組合、上桑原山林組合という3つの組合が地権者となり、牧草地として活用してきた。 だが、需要の減退や組合員の高齢化により、山林の維持管理が難しくなったとのこと。これを理由に今回の事業に至ったという。現在は3組合が地権者のままだが、最終的にはLooopが土地を買い取る計画となっている。 なお、この事業の正当性について、Looopは以下のような回答を寄せている。 「最近は、過去に例のない集中豪雨による自然災害が全国各地で増え、諏訪地方でも今年9、10月に発生した台風による強風で倒木が相次ぎ、約2万戸が停電しました。このような中でこれまで以上に人手をかけた森林管理が求められています。防災調整池や年間を通じての草刈り、点検を行うことで、治山力の向上につながると考えています」 つまり、今回の事業を通じて、より安全な自然環境を実現するというのがLooopの考えだ』、山林の維持管理が難しくなった3つの組合が、Looopの話に乗ったのが実情のようだ。メガソーラーを作った方が、「治山力の向上につながる」とのLooopの言い分は笑止千万だ。
・『2012年からバブル状態に メガソーラーをめぐる法律  確かに、森林は管理が必要となる。定期的に間伐をするなど、適度に人の手を入れることで、より理想的な土壌や保水能力が保たれるからだ。 しかし、「だからといって、これほどのソーラーパネルを並べることがプラスになるという論理は成り立たないでしょう」と話すのは、冒頭で紹介したシンポジウム実行委員会・事務局の小林峰一さんだ。「どんなに手の入っていない森林でも、森林が森林として存在する方がはるかに山として高いメリットを持ちます」と続ける。 同時に筆者が気になるのは、協議会の人も指摘していた気候の問題だ。長野県茅野市は国内有数の寒冷地であり、冬は大量の雪が降る。当然、ソーラーパネルにも降り積もるだろう。これらの管理や安全性は問題ないのだろうか。 そもそも、これだけの大規模な工事をして、この環境で発電事業をやるメリットがどこにあるのか、疑問に感じる人も多いはずだ。 ここに関連してくるのが、ソーラーに関する法律である。 メガソーラー問題のきっかけとなったのは、2012年に導入された固定価格買取制度(FIT)。再生可能エネルギーでつくった電力は、20年間、国の定める価格で電力会社が全量買い取るという仕組みだ。 再生可能エネルギーの促進が狙いであり、買い取り価格は2012年時点で1kWhあたり40円と、国際的に見ても高値に設定された。その後、年々買い取り価格は下がり、現在は18円となったが、基本的に認定を受けた時の価格で20年間買い取られるので、導入初期の2012年~2014年、40円~32円の時代に認定された企業は、高利益が期待できる。諏訪市四賀の計画も、ここに含まれる。 「この結果、当時メガソーラーバブルが起きました。20年にわたり安定的な利益が上げられるわけですから。ビジネスとしての熱が高まり、地権者から事業権利を買い、それを別の企業に譲渡する仲介業者も出てきました」(小林さん)』、「認定を受けた時の価格で20年間買い取られる」というルールに、いつまでに供給するという条件が入ってなかったのは完全な手落ちだ。
・『安定的なビジネスゆえに歯止めが効かない状態に  諏訪市四賀のメガソーラーも、当初は東日本土地開発という企業が事業権利を持っていた。それをLooopに権利移管した形となる。これが悪いこととは言わないが、森林という共有財産がきわめて営利的な形で取引されている現状がある。 FITによって、メガソーラーは安定的に収入を得られるビジネスとなった。冷静に見れば、事業者にとっても地権者にとっても損はない。そして、法律を犯してもいない。 とはいえ、先ほどの市民の声を聞けばわかる通り、土地や森林はその地域の人々の安全や生活、地場の農業、産業などに関わる。 だからこそ「FITを導入した後、このような状況が始まった段階で細かく法整備をするべきでした」と小林さんは話す。「これまでは、太陽光発電の施設を作る際の法的な規制がほぼないに等しい状況でした。それでは歯止めが効かなくなります」という。 ここ最近、九州電力では、太陽光の発電量が増えすぎたことから、受け入れを制限する「出力抑制」をたびたび行っている。旧来の発電方法による電力に加え、太陽光発電が急増した結果、供給過剰となった。つまり、想定外に太陽光発電が増えすぎているのである。 このニュースは、日本のエネルギービジョンがいかに曖昧かを示しているのではないか。法規制の遅れはもちろん、将来的なエネルギーの割合やロードマップが敷かれていないことが見てとれる。 環境省は、メガソーラー問題が各地で続出していることに対し、100ha以上の大規模な太陽光発電施設について環境影響評価(アセスメント)法に基づくアセス対象にする方針を発表した。環境などに配慮した事業計画を義務付けるもので、2020年の導入を目指すという。 実はこれより先に、県や市ではすでに条例でメガソーラーをアセス対象としている。諏訪市四賀のメガソーラーは、全国で初めてアセスが適用された事業でもある。小林さんは「アセス対象になっていなければ、残土処理の問題なども検討されずに着工されていました」と話す。 「ただし、現状のアセスメント法は事業者が調査の主体者になります。また、方法書の作成なども事業者が別の企業に依頼する形。依頼主(事業者)の不利になることはしにくいと考えるのが当然で、公平性には疑問が残ります」(小林さん)』、「現状のアセスメント法は事業者が調査の主体者」というのでは、事業者に有利な報告が出るのは目に見えている。事業者からアセスメント費用を徴求した上で、自治体が第三者に調査を委託する形であるべきだ。
・『太陽光とメガソーラー このエネルギーは本当にエコか  2012年以降、爆発的な増加を見せる太陽光発電。発電の方法自体は確かにクリーンだが、森林を伐採して、地域住民を不安にさせてまで造るメガソーラーはエコなのだろうか。 なお霧ヶ峰では、Looopより一足先に別の事業者がソーラー施設を建設している。こちらはずっと小規模だが、同じように次々と事業者が参入し「霧ヶ峰がソーラーパネルで埋め尽くされるのではないか」と危惧する住民もいる。対策協議会の柴田氏は、こんな思いを吐露する。 「Looopの方は当初、『観光立県として、メガソーラー施設により国内外の集客が期待できる』と話していました。本当にそうでしょうか。地元の人間にとっては信じられない言葉でしたし、説明を聞いていても、山や自然を理解されているとは到底思えません」 その上で、柴田氏は「これだけの開発をして、もし何かが起きても取り戻せません。木はまた育つかもしれませんが、大量に削った土は元通りにできないですから」と話す。 対策協議会の主体となる地域はまさに横河川の下流域にあたり、その地区の住民の約93%は計画に反対している。 今年に入り、インターネットも含めた署名運動を行いました。初めてのことでどれだけ署名が集まるか想像もつきませんでしたが、4万人の方に署名いただきました。茅野市や諏訪市だけでなく、首都圏や北海道、九州の方など全国から集まったことに驚いています」(柴田さん) 今回の取材で筆者は、Looopに「このまま地元住民の合意を得られない場合、それでも事業は遂行するのでしょうか」と質問を投げかけた。答えは以下のようなものだった。 「今後も引き続き事業計画、環境影響調査の丁寧なご説明に努め、地域との対話を重視し進めて参りたいと考えております」 太陽光発電は本当にエコなのか。それ以上に、メガソーラーは本当にエコなのか。今こそ真剣に議論すべき問題ではないだろうか』、「「Looopの方は当初、『観光立県として、メガソーラー施設により国内外の集客が期待できる』と話していました」、こんな馬鹿な言い分を聞き入れる地元も工事などの利権に目が眩んでいるからなのだろう。こんなメガソーラーが出来たら、霧ヶ峰には絶対に行きたくない。それにしても、より広い立場で考えられる県が、こんな環境破壊を見逃すとは、行政の不作為もここに極まれりだ。
タグ:大規模に森林を伐採 Looopの方は当初、『観光立県として、メガソーラー施設により国内外の集客が期待できる』と話していました 計画地は、上桑原牧野農業協同組合、上桑原共有地組合、上桑原山林組合という3つの組合が地権者となり、牧草地として活用 土砂災害に水質の変化 地元の人が抱く不安とは 天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」 現在は3組合が地権者のままだが、最終的にはLooopが土地を買い取る計画 計画地の下には茅野市民の4分の1の生活水となる「大清水湧水」がある 計画が“事業ありき”で進んでいます ニューズウィーク日本版 太陽光とメガソーラー このエネルギーは本当にエコか 「太陽光の2019年問題 期限切れを前に対応を急げ!」 高価格での買い取り期間は10年間に限定されており、それ以降電力会社は買い取る義務がなくなる 「南北問題」がネックに アルコナ洋上風力発電所 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン Looop NHK時論公論 風力発電で大量の失業者 なぜ計画が立ち上がったか この開発でより良い山になる? 調整池 発電量は385メガワットに達し、40万世帯分の電力を供給できる 「南沢水源」という別の水源があり、こちらは諏訪地域の住民の生活水にもなっている 住民の反対運動が過熱 霧ヶ峰の麓でも、東京ドーム約40個分、ソーラーパネル約31万枚の巨大計画 「メガソーラー建設反対運動が続発、太陽光発電は本当に「エコ」か」 山林の維持管理が難しくなった 安定的なビジネスゆえに歯止めが効かない状態に 再生可能エネルギーに懸ける夢と、ロシアのガス頼みという苦い現実の板挟みになったドイツの苦悩を物語っている 景観破壊、パネルによる熱輻射、水源・水質への悪影響などが問題化 計画地の下には、茅野市の市内4分の1をカバーする水道水の水源もある 量の土を掘削。10tトラック5万台分の土が動く 固定価格買取制度(FIT) 有井太郎 期限切れまで1年となっても、一般家庭や電力会社にあまり動きがなく、買い取り制度からうまく移行できないおそれがある 2012年からバブル状態に メガソーラーをめぐる法律 「ドイツでもグリーン電力の夢は頓挫していた 送電網の整備が遅れロシアの天然ガス頼みに」 皮肉にも積み出し港を共有するこの2つのプロジェクト 北杜市 期間終了となる家庭は2019年11月と12月だけでも53万世帯、2023年までに160万世帯に達する見込み 今回の事業を通じて、より安全な自然環境を実現するというのがLooopの考えだ 褐炭の採掘はフル操業 エネルギー (その3)(ドイツでもグリーン電力の夢は頓挫していた 送電網の整備が遅れロシアの天然ガス頼みに、太陽光の2019年問題 期限切れを前に対応を急げ!、メガソーラー建設反対運動が続発、太陽光発電は本当に「エコ」か) 買い取り期間終了後の仕組みがきちんとできていない
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

東京オリンピック(五輪)予算膨張以外(その7)(小田嶋氏:「おそろしきは「五輪翼賛体制」にあらず) [メディア]

東京オリンピック(五輪)予算膨張以外については、1月12日に取上げた。今日は、(その7)(小田嶋氏:「おそろしきは「五輪翼賛体制」にあらず)である。

コラムニストの小田嶋 隆氏が本日付けの日経ビジネスオンラインに寄稿した「おそろしきは「五輪翼賛体制」にあらず」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00003/?P=1
・『ちょっと前のニュースなのだが、この1月の中旬、東京都港区の防潮扉でバンクシーの作品と見られる落書きが発見された時の話題を蒸し返したい。 発端は、小池百合子東京都知事がツイッター上に投稿した書き込みだった。 小池氏は《あのバンクシーの作品かもしれないカワイイねずみの絵が都内にありました! 東京への贈り物かも? カバンを持っているようです。》と、ネズミに寄り添ったポーズの自身の写真つきでツイートしている。ちなみに写真の中で知事が羽織っているアウターは、オリンピックのエンブレムを意識した柄のコートだったりする。 「なるほど」 私は、タイムラインに流れてきたそのツイートを見て、そのあからさまな宣伝臭に当惑した。 以来、「ポピュリズム」という言葉がアタマから離れない。 なので、今回は、ポピュリズム全般について、この一年ほどの間にあれこれ考えていることを吐き出してみるつもりでいる』、こんなネタを自己PRに利用する小池都知事のやり方は、余りにあざとい」。
・『小池都知事に狙いをつけて何かを言いたいわけではない。 ただ、話のとっかかりとしてあまりにもわかりやすい絵柄を提供してくれたので、知事閣下の話題でスタートさせていただいた次第だ。他意はない。悪意は多少ある。悪意については、やや申し訳なく思っている。 話題の口火を切ったのは知事のツイッター発信だった。 その知事のツイートに東京都が反応し、その反応を新聞が報じるカタチで事態が進行した。 見事な連携だ。 実際の順序はどうだったのだろう。
 1.東京都所有の防潮扉にバンクシー作と思われるネズミが描かれていたことが発見される。
 2.上記の発見が都の担当者の知るところとなる。
 3.現地で作品と都知事のツーショットを撮影した上で、知事がツイートする。
 4.「都が本物かどうか調査する考えを明らかにする旨を発表した」という新聞記事が配信される。 という感じだろうか。
細かい経緯はともかく、知事によるツイッター発信と、メディアによる報道と、都による調査の開始が一体化して進められている感じが濃厚に漂っている。 こういったあたりの進行具合がどうにも芝居がかっている。 民放の深夜帯ドラマのスタッフが仕掛けるスポーツ新聞向けの番宣のようでもある。 当然のことだが、このわざとらしい絵柄の写真を伴ったあざといツイートは、一部の都民の反発を招いた。 というのも、作者がバンクシーであれ、そこいらへんの美大生のいたずらだったのであれ、落書きは落書きだからだ。とすれば、防潮扉の管理および所有者であり現地を管轄する行政機関でもある東京都としては、当然、迷惑行為を取り締まる者の立場で行動せねばならない。建前上はそうなる。 ところが、作者が有名人かもしれないということで、落書きの扱いには明らかな手心が加えられている。 なにしろ、行政のトップたる知事自らが、落書きを歓迎するかのような発信を公開している。 なんだろうこれは。 素人の落書きは迷惑防止条例違反で、著名人の落書きがプレゼントだという都の判断が正当なのだとしたら、一般人の出すゴミは薄汚い廃棄物で、女優さんの捨てるゴミはお宝(拝跪物?)だってなことになってしまう。ついでに申せば、おっさんの壁ドンはセクハラで、イケメンによる壁ドンは恩寵ですよという話にもなる。いや、世間の通り相場がそんなふうなのはかまわない。どうせそんなものなのだ。が、公的な行政機関である東京都が異人さんの落書きをえこひいきしたのでは、われらパンピーはやっていられない。それではスジが通らない』、確かにその通りだ。
・『もっとも、スジはスジとして、それとは別に、パブリックな資産とも解釈できるストリートアートを扱うにあたって、東京都が、いきなり塗りつぶす措置を回避したのは、とりあえずの判断としては穏当だった。私自身、現状を保管して調査する旨を発表した今回の都の対応は賢明だったと思っている。というのも、公共的な機関がアートに類するものを扱う時には、判断ではなく、むしろ判断の留保が重要だと思うからだ。とにかく、どんなものであれ表現物に関しては、世の中の評価が定まるまでの何十年かの間、行政は判断を急ぎすぎないことだけを心がけて対処してほしい。 今回の一連の出来事は、結局のところ、バンクシー関連のブツを五輪ならびに都政の宣伝に利用せんとした小池都知事の計算高さが裏目に出たケースだった。 というのも、バンクシーは、昨年話題を呼んだシュレッダー絵画のケースでも明らかな通り、自分の作品を扱うメディアの反応を含みおいた上で作品をバラ撒いているひとまわり手の込んだ計画立案家だからだ。今回のケースを本物であることを前提として言えば、バンクシー自身がはじめから最後まで絵図を描いていたのかどうかはともかくとして、彼は、行政機関や商業メディアがどんなふうに対応するのかも織り込んだ上でネズミの絵を配置していたはずだ。 とすれば、まんまとネズミ捕りにひっかかる体でツーショットの写真を提供し、のみならずうすらみっともないプロパガンダまで展開してみせた小池都知事の一挙手一投足は、発端から結末に至るまで、バンクシーの手のひらの上の絵の具にまみれたスラップスティック絵画だったと解釈しなければならない』、バンクシーは、「行政機関や商業メディアがどんなふうに対応するのかも織り込んだ上でネズミの絵を配置していたはずだ」、「まんまとネズミ捕りにひっかかる体でツーショットの写真を提供し、のみならずうすらみっともないプロパガンダまで展開してみせた小池都知事の一挙手一投足は、発端から結末に至るまで、バンクシーの手のひらの上の絵の具にまみれたスラップスティック絵画だったと解釈しなければならない」というのは、手厳しい小池都知事批判だ。
・『もっとも、小池都知事とて、普段の状況なら、こんなあからさまな宣伝戦には打って出なかったと思う。 メディアも同様だ。通常時であれば、知事の側からのリークに唯々諾々と従って大本営発表の官製ニュースリリースを配信するような、恥ずかしい作業には従事しなかったはずだ。 なのに、どうしてこんなことが起こってしまったのか。 それが、今回の主題と言えば主題だ。 私は、こんなわざとらしいニュースが配信されてしまったのは、うちの国の行政機関と商業メディアがまるごと「五輪翼賛体制」にハマりこんでいることの結果だと考えている。 深読みが過ぎると思っている読者もおられるはずだ。  ただ、私には、五輪招致が決まってからこっち、五輪関連のニュースに限らず、メディアの報道ぶりが様々な面で流れ作業に堕してきているように思えるのだ。 この5年か10年の間に、すっかりテレビのニュースを見なくなった』、「五輪翼賛体制」とは穏やかではないが、確かに思い当たる節も多い。
・『ところで「テレビを見なくなった」ということを誇らしげに語る人間には用心したほうがいい。 なんとなれば、テレビを見ないことを自慢する人は、内心で、テレビを見る人間を軽蔑していたりするからだ。そして、自分以外の大多数を軽蔑している人間は、つまるところ自我が歪んでいる。 「オレはテレビを見ない」と宣言する人間は、その言葉の行間で 「オレはあんたらみたいなバカじゃない」と言っている。 そして、その行間の余韻では 「オレを尊重しろ」と叫んでいる。 ぜひ注意せねばならない。 テレビをバカにする人間は、むしろ自分がバカにしているものから見放されていることを告白することになる。 なんと悲しいなりゆきではないか。 ある程度年齢の行った人間がテレビ離れする理由のひとつに、テレビ画面の中で動いている人間が一人残らず愚かに見えるということがある。 これは危険な兆候だ。 というのも、テレビの中の人間がバカばっかりに見えている理由は、彼が人並み外れて賢いのか、でなければ世間一般に対して強力な憎悪を抱いているのかのどちらかで、普通に考えればわかることだが、99パーセントは後者だからだ。 ともあれ、そんなこんなで、私は、世間との距離を保持するべく、半ば義務として、一定期間ごとに一定時間テレビを視聴することにしている。 実際、久しぶりにテレビを見ると、テレビの中の人たちはバカばっかりに見える。 わりと危険な状況だ。 なんとかそのバカに適応しないといけない。というよりも、世間一般をバカにする危険なオレサマ状態から脱却しないといけない。でないと、本物のフール・オン・ザ・ヒル(注)になってしまう(注)ビートルズの有名な歌』、「世間との距離を保持するべく、半ば義務として、一定期間ごとに一定時間テレビを視聴することにしている」というのはいい心がけだ。
・『ネットばかり見ていると、人は必ず偏向する。 というのも、ネット上で私の目に触れるコンテンツは、結局のところ私自身が取捨選択して集めた私自身の偏見の反映だからだ。 毎日ネットを巡回していると、自分のお気に入りのニュースサイトや、神経にさわらない論客のブログや、読むに耐える記事ばかりを選択して読むことになる。 と、いつしか、ニュースのジャンルも、論説の傾向も、似たようなものばかりになる。 たとえて言うなら、ホテルの朝食バイキングで好きなメニューだけを選んで食卓に並べている状態に近い。 当然、栄養は偏る。私のような偏食家のテーブルは相当にとんでもないことになる。 私は、色の派手な野菜を食べない。ナマの魚と小骨のある魚も食べない。種のあるフルーツと生焼けっぽい肉と醤油にまみれた感じの煮物と切り方のデカい根菜類も、身辺に近づけない。そんなこんなで、ご存知の通り案の定に糖尿病を獲得している次第なのだが、それはまた別の話だ。 とにかく、自分の好みに沿って選んでいるとニュース素材が偏向することはどうしようもない事実で、ということは、それだけに頼って暮らしていると、世界認識そのものが偏向して行くことになる。これはわりとまずい。 それゆえ、私は、自分自身の偏見の蛸壺に潜り込む事態を避けるべく、時々は世間の人が定食メニューとして摂取しているテレビのニュースをそのまま見ることにしている』、確かに、高齢者のなかには、「自分自身の偏見の蛸壺に潜り込む」ような人も多いようだ。
・『話を元に戻す。 そのしばらくぶりに見るニュースが、やっぱりおかしい。 私の側がおかしくなっている可能性はもちろん考慮するべきなのだろうが、それにしてもおかしい。 個々に偏向した個々人がそれぞれの偏向を思い思いに深めて行く過程は、たしかに危険といえば危険ではあるが、各々の人間のランダムな偏向は、言ってみれば用水路のメダカのうちの何匹かが、石の割れ目にアタマを突っ込んで死んでいたりするのと同じことで、全体から見ればたいした損失ではない。 おそろしいのは、群れで泳いでいるメダカたちの行き先が、休耕田の水たまりに帰着する展開の方だ。 群れの中の一匹一匹のメダカは、自分たちの行き先には頓着していない。ただ、群れからはぐれないことだけを心がけて泳いでいる。そういう場合、ひとつの群れが丸ごと孤立した水たまりに入り込んでしまったら最後、引き返す選択肢は残されていない。とすれば、群れのメダカたちは一匹残らず死ななければならない。 何を言いたいのかというと、オリンピック招致が決定してからこっち、テレビのニュース番組の扱う話題が、「オリンピックに水を差さないニュース」に限定されてきているということだ。 「それのどこがいけないんだ?」「大勢が盛り上がる話題を嫌うのはあんたの勝手だけど、みんなが喜んでいる話題にいちいち噛み付くのは悪趣味だぞ」と、そう思う読者もいるはずだ。 が、違うのだ。私が言おうとしているのは、そんな大げさな話ではない。 どこかに心根の卑しい悪党がいて、その五輪教の教祖に当たる人物が、日本人を一人残らず洗脳しようとたくらんでいるとか、そういう陰謀論を展開しようとしているのではない。 私が指摘するつもりでいるのは、もっと単純な話だ。 たとえば、五輪という国家イベントがもたらす最も明示的な効果は、メディアを一元化することだ。 これについては、おそらく異論はないはずだ。 事実、IOCは、新聞に関しては一業種一社の原則を取っ払って、朝日、読売、毎日、日経の4紙をひとまとめに「オフィシャルサポーター」として認定する特例を認めている。 テレビは、NHK民放含めて、新聞以上にあからさまな利害関係者におさまっている。 彼らにとって、五輪は、番組コンテンツでもあれば取材先でもあり、アーカイブでもあれば現在過去未来にわたって永遠に採取可能なタレント資源でもある。 この状況で、五輪に対してネガティブな報道をすることは事実上不可能だと言っても良い』、確かにメディアの多くが「あからさまな利害関係者におさまっている」のは事実だ。ただ、メディアがニュース番組の扱う話題を自主規制しだしたのは、もっと前の東日本大震災がきっかけだったように思う。
・『ただ、私が懸念しているのは、本来は、五輪に対してだけ発動されるはずだったこの「挙国一致」の設定が、いつしか、ニュース番組の構成台本全般に及んできているのではなかろうか、ということだ。 スポーツ関連が、五輪万歳&日本ガンバレ報道一色になることについてはすでにあきらめている。 なにしろ、誰が強制するまでもなく、われわれ自身そういうのが大好きである以上、これは仕方のないことだ。 が、これを続けているうちに、非「日本サイコー」、アンチ「日本バンザイ」な話題は、いつしか遠ざけられるようになる。 で、知らず知らずのうちに、五輪とは直接には関係のないニュース項目についても、微妙な手加減をする感じで、挙国一致の空気が作られる。 私には現状がすでにそうなっているように思えてならない。 ニュースの現場には 「五輪を無事に終えるまでのこの先の二年間は、とにかくネガティブな事件や小難しい論争は避けて、みんなが一致できる話題を提供するように心がけようじゃないか」という気分がただよっている。そのせいなのかどうか、キャスターの表情は五輪関連の話題になると、ワイパーでぬぐったみたいに明るくなる。 「次は卓球の代表選考の話題です」と告知する時、女性キャスターは、満面の笑みを浮かべている。 「楽しみですね」「ええ」 いや、表情が明るいことそのものは良いのだ。 ただ、こんな調子で、国会や沖縄関連のニュースはつまらなそうな顔で、五輪のニュースは笑顔いっぱいで伝えるようなことが繰り返されていたら、いずれ、視聴者ともども、沈痛な顔で伝えるニュースそのものに忌避感を抱くようになる気がする。 実際にそうなっているのかもしれない。 現在の状況は、たとえば仲の良くない夫婦が、とにかく長男のお受験が終わるまではと思って、仮面夫婦を演じている姿に似ている。 長男が合格すれば、夫婦仲の方も案外おさまるところにおさまる、と、そういう話になれば良いのだが、たぶんそんな都合の良い展開にはならない。 落ちたら落ちたで責任追及がはじまるし、合格したら合格したで、入学金の莫大さにあらためてびっくりすることになる。 それよりもなによりも、自分たちが五輪後のことを考えないようにしているそのことが一番おそろしい。 おそろしいので考えたくないから考えないことがおそろしいというこのループには出口がない。 おそろしい』、「五輪翼賛体制」に止まらず、広がっているとすれば、確かにおそろしい話だ。最後の「オチ」はいつもに増していい出来だ。
タグ:バンクシー関連のブツを五輪ならびに都政の宣伝に利用せんとした小池都知事の計算高さが裏目に出たケース 小池百合子東京都知事 (その7)(小田嶋氏:「おそろしきは「五輪翼賛体制」にあらず) メディアを一元化 「五輪翼賛体制」 知事によるツイッター発信と、メディアによる報道と、都による調査の開始が一体化して進められている感じが濃厚に漂っている 日経ビジネスオンライン ツイッター上に投稿 テレビは、NHK民放含めて、新聞以上にあからさまな利害関係者におさまっている 小田嶋 隆 予算膨張以外 テレビのニュース番組の扱う話題が、「オリンピックに水を差さないニュース」に限定されてきている まんまとネズミ捕りにひっかかる体でツーショットの写真を提供し、のみならずうすらみっともないプロパガンダまで展開してみせた小池都知事の一挙手一投足は、発端から結末に至るまで、バンクシーの手のひらの上の絵の具にまみれたスラップスティック絵画だったと解釈しなければならない それだけに頼って暮らしていると、世界認識そのものが偏向して行く 毎日ネットを巡回していると、自分のお気に入りのニュースサイトや、神経にさわらない論客のブログや、読むに耐える記事ばかりを選択して読むことになる (五輪) あのバンクシーの作品かもしれないカワイイねずみの絵が都内にありました! 東京への贈り物かも? カバンを持っているようです。》と、ネズミに寄り添ったポーズの自身の写真つきでツイート 知らず知らずのうちに、五輪とは直接には関係のないニュース項目についても、微妙な手加減をする感じで、挙国一致の空気が作られる うちの国の行政機関と商業メディアがまるごと「五輪翼賛体制」にハマりこんでいることの結果 「おそろしきは「五輪翼賛体制」にあらず」 東京オリンピック
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感