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インフラ輸出(その9)(高速鉄道めぐる日本とインドの「同床異夢」、台湾新幹線、的中した「開業前の不安要素」、日立の英国事業に暗雲 原発断念に加え鉄道事業にも火種、円借款検討の石炭火力、反対住民が次々投獄 インドネシアで人権問題) [インフラ輸出]

インフラ輸出については、1月4日に取上げた。今日は、(その9)(高速鉄道めぐる日本とインドの「同床異夢」、台湾新幹線、的中した「開業前の不安要素」、日立の英国事業に暗雲 原発断念に加え鉄道事業にも火種、円借款検討の石炭火力、反対住民が次々投獄 インドネシアで人権問題)である。

先ずは、やや古いが、昨年11月19日付け東洋経済オンライン「高速鉄道めぐる日本とインドの「同床異夢」 輸出と現地生産、どちらがベストシナリオ?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/249854
・『「本社の食堂でカレーライスを食べていると、『君、インドに興味あるの?だったらインドで仕事をしませんか』と、声をかけられるんですよ」。JR東日本(東日本旅客鉄道)の関係者が苦笑交じりにこんな話を披露してくれた。 インドでは、日本の新幹線方式による同国初の高速鉄道プロジェクトとして、ムンバイ―アーメダバード間505kmを約2時間で結ぶ計画が進んでいる。2015年12月に実施された日印首脳会談で覚書が交わされ、2017年9月には安倍晋三首相も出席して起工式が行われた。2023年の全線開業を目指す。総工費は約9800億ルピー(約1.5兆円)。そのうち8割は円借款で賄われる予定だ。 JR東日本の子会社・日本コンサルタンツ(JIC)が高速鉄道の技術基準の作成や設計、入札業務に関するコンサルティング業務を受託している。JR東日本も総力を挙げてサポートしている。 ただ、目下の悩みは人手不足。JR東日本はグループ全体で100人を超えるスタッフを投入しているが、まったく足りていない。冒頭の話は、こうした状況を端的に示している』、安倍首相はおおいばりだったようだが、問題も多そうだ。
・『インド高速鉄道のキーマンが大勢来日  JICはオールジャパン態勢による鉄道インフラ輸出の尖兵となるべく、2011年に設立された。筆頭株主はJR東日本で、JR西日本、JR九州、東京メトロなども出資する。JR東海は出資こそしていないが、数名の人材をJICに送り込み、インド案件に協力している。 11月初旬、インド高速鉄道のキーパーソンたちが大挙して日本にやって来た。11月6日に都内で運輸総合研究所主催による「高速鉄道セミナー」、11月8日には福岡市内で高速鉄道国際会議(IHRA)主催による「IHRA国際フォーラム」という国際的なセミナーが相次いで開催されたためだ。 どちらのセミナーにもインドの高速鉄道プロジェクトが主要テーマとして盛り込まれており、インド側の要人がプロジェクトの現状や今後について講演した。また、IHRA国際フォーラムの翌9日には九州新幹線長崎ルートの建設現場や熊本市内にあるJR九州の新幹線車両基地などの視察も行われた。インド側関係者にとっても新幹線の実情を知る貴重な機会になった。 「メイク・イン・インディア(インドで作ろう)をぜひ実現したい」。IHRA国際フォーラムにおいてインド鉄道省・鉄道委員会で車両担当委員を務めるラジェシュ・アグラワル氏が壇上から訴えた。インドのモディ政権は外国資本を誘致し、国内の製造業を発展させるメイク・イン・インディアというスローガンを掲げている。日本政府もジェトロ(日本貿易振興機構)を活用した中小企業のインド進出支援など、さまざまな協力を約束している。 新幹線方式による高速鉄道プロジェクトもその1つに位置づけられる。インドは鉄道総延長6万3000kmという世界有数の鉄道大国。鉄道関連産業の存在感も強く、アグラワル氏は「インドには鉄道車両を製造できるメーカーが6社あり、全国各地に多数存在する製造拠点の従業員を合計すれば15万人に達する」と胸を張る。 ムンバイ―アーメダバード間を走る高速鉄道車両は、東北新幹線「E5系」をベースに高温対策など現地仕様を施したものとなる。高速鉄道セミナーで講演したインド高速鉄道公社のブリジェシュ・ディグジット部長は、「設計は最終段階にある」という。 開業時に投入されるのは1編成につき10両を24編成で240両。その後、利用者の拡大に合わせ、順次車両を投入する。30年後には1編成につき16両を71編成、つまり1136両の車両が投入される計画だ。仮に1両当たりの製造価格を3億円とすれば、車両だけで3000億円を超える大きなビジネスとなる』、「インドには鉄道車両を製造できるメーカーが6社あり、全国各地に多数存在する製造拠点の従業員を合計すれば15万人」とインド側は誇っており、「メイク・イン・インディアというスローガン」を掲げ、後述のように安倍首相もこれにコミットしたようだ。しかし、その口約束を実際に果たしていく上で、技術水準の格差の大きさをどう克服するのだろうか。
・『高速鉄道車両の輸出を狙うインド  今回の路線運営が軌道に乗った後は、デリーやコルカタなど主要都市を結ぶ複数の路線において事業化がスタートする。日本以外の国が受注する可能性もあるが、ディグジット部長は、「フランスやドイツがやることになったとしても、車両はE5系の技術を使って開発したい」と言い切る。 また、アグラワル氏は「日本の技術は割高と言われているが、インドで製造すれば中国よりも安くできる。また、インド製は中国製よりも信頼できると考えている国が、中東やアジアに多い」と言い、将来の高速鉄道車両の輸出を見据えている。 安倍首相は起工式の場で「日本はメイク・イン・インディアにコミットしている。日本の高い技術とインドの優れた人材が協力すれば、インドは世界の工場になる」と発言。このため、日本側の関係者は一様に「メイク・イン・インディアは守る」と口をそろえる。 ところが新幹線をインドで造るという構想は、今のところ絵に描いた餅だ。「技術の蓄積がないと新幹線の車両は造れない」と、JR東日本の西野史尚副社長は説明する。同社は「少なくとも当初、導入される車両については、日本で製造したものが持ち込まれる予定だ」としている。 日印間の協議では、日系企業の進出や合弁企業による生産もメイク・イン・インディアとみなされる。E5系を開発したのは川崎重工業と日立製作所の2社。川重は将来の合弁事業による現地生産を視野に入れ、2017年にインド最大手の重電メーカー・BHEL社と高速鉄道車両の製造における協業で合意した。日立も鉄道部門における日本アジアパシフィック事業の責任者を務める光冨眞哉常務執行役は「工場を造るのか、現地でパートナーを見つけるのかなど、どう進めていくかを現在検討中」と述べている。 世界の鉄道メーカー大手のシーメンスやアルストムはインドに鉄道の製造拠点を持つ。日立も鉄道信号を手掛ける子会社のアンサルドSTS社が同国内にエンジニアリング拠点を有しており、「数百人規模の優れたエンジニアが働いている」(光冨常務)。この会社が将来、現地で車両製造を行う際の足がかりになる可能性もある。 日本の新幹線システムを採用している台湾の高速鉄道では、2004~2005年に30編成、2012~2015年に追加の4編成が導入された。この34編成はすべて日本からの輸出だ。インドでは追加導入のタイミングで現地生産に切り替えられることになるだろうが、メイク・イン・インディアの時間軸がインドと日本では隔たりがあるようだ』、「高速鉄道車両の輸出を狙うインド」とは、インド側はかなり気が早いようだ。「シーメンスやアルストムはインドに鉄道の製造拠点を持つ」のに比べ、日本企業の進出は出遅れ気味だ。日本からの輸出を現地生産に切り替えていくといっても、「メイク・イン・インディアの時間軸がインドと日本では隔たりがあるようだ」であれば、今後もインド側の要求に悩まされることだろう。
・『現地製造の高いハードル  また、メイク・イン・インディアが約束されているとはいえ、いざ現地生産に踏み切るとなると、設備投資から人材の確保までさまざまな課題が発生する。とりわけ気になるのは従業員の教育面だ。1カ月に何万台も生産される自動車と違い、鉄道車両の製造は手作業に負う部分が多く、月産数両程度しか造れない。熟練工の養成は不可欠だ。 昨年12月に日本で起きた新幹線の台車亀裂トラブルは、製造指示書に従わなかった現場の作業員による台車枠の削りすぎが原因だった。この事例は論外としても、設計書で指示されていない細部の作業を現場の判断でこなす「匠の技」も一歩間違えると、賞賛どころかトラブルの原因になりかねない。在来線以上に安全性が重視される高速鉄道車両の製造は高度な技術と品質管理が求められる。現地生産は一朝一夕にはいかないだろう。 車両だけでなく、電気関係製品や線路なども日本から持ち込まれる予定となっている。「当初はインド側からレールや分岐器についてはインド製を使ってほしいという要望があったが、技術レベルが日本の水準に満たなかった」と、ある現地関係者が明かす。 IHRA国際フォーラムで、インド鉄道省のアグラワル氏とともにパネリストを務めたJR東日本の冨田哲郎会長は壇上で次のように述べた。「新幹線の発展の歴史をインドに伝えたい。安全性確保のためには設備の高度化や人材育成が重要。教育、訓練に加え、ルールを守ることも伝えていきたい。そして、マネジメントは見えないリスクに対して謙虚な気持ちを持つべきだ」。日本の鉄道関係者にとってはごく当たり前の内容であり、聞き流してしまうかもしれない。だが、インドで鉄道車両を製造するという困難な課題を前にすると、極めて重要な意味を帯びてくる』、インド側の熱を冷まさないよう表現を遠慮したようだが、もっとハッキリ言って、誤解を生じさせないことの方が重要なのではなかろうか。

次に、1月15日付け東洋経済オンライン「台湾新幹線、的中した「開業前の不安要素」 キーマンが明かす「日欧混在システム」の限界」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/259811
・『2007年に開業した台湾の高速鉄道が新幹線の海外展開事例であることはよく知られている。白地にオレンジの線がまばゆい車両「700T」は、東海道・山陽新幹線「700系」をベースに開発されたものだ。 しかし、完成に至るまでの道のりは平坦ではなかった。日本勢と独仏連合が入札で競合、1997年にいったんは独仏連合が受注を獲得したものの、その後1999年に日本が逆転受注を果たした。ただ、土木構造物などのインフラ部分はすでに欧州仕様で工事が発注されており、日本の受注は車両や電気、信号システムなどにとどまった。その意味において、完全な新幹線システムとは言いがたい側面もある。一方、台湾側は「世界の鉄道技術の良いところを集めた“ベストミックス”である」としている。 日本が独仏連合に敗れた後に、敗者復活戦に参戦したJR東海の田中宏昌氏(当時副社長、現在は顧問)は、日本が逆転受注を果たした立役者の1人である。一度は受注に成功した独仏連合をなぜ退けることができたのか、完全な新幹線システムでないことによりどのような問題が生じているのか。今後の新幹線の海外展開にどのような教訓を残したのか。すべてを知り尽くす田中氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは田中氏の回答)。
・『ドイツ高速鉄道の事故が転換点  Q:当初受注した独仏連合から新幹線の採用に至るまでのプロセスにおいて、最大の転換点は何ですか。 A:1998年にドイツで起きた高速鉄道の脱線事故だ。100人を超える死者が出た。この事故を契機に独仏の技術がミックスされた「ユーロトレイン」の安全性が疑問視され、技術の再評価が行われることになった。 事故の原因は新しく開発した車輪が割損したことによるもの。この車輪は、本体の車輪を薄いゴムクッションで巻いて、さらにその外側に鋼製のタイヤをはめ込んだ多重構造になっていた。その鋼製タイヤが金属疲労を起こした。それを見逃した検査体制にも問題があった。 もし事故が起きていなかったら、新幹線の採用はありえず、当初の計画どおりユーロトレインが導入されていただろう。 新幹線の生みの親である島秀雄さんは、「新幹線は新しい技術を使うのではなく、今ある技術を最大限に生かして使うのだ」とおっしゃっていた。ドイツの事故の場合も、新しい技術を実用化するなら、その前に実験を十分に行う必要があったのだが、それを十分にしないまま実用化してしまったのだろう。 Q:トルコでも昨年12月に高速鉄道の事故がありました。 A:トルコの場合は別の原因によるものだ。営業時間帯に保守作業が行われており、運行管理システムがきちんと機能していなかった。日本では、新幹線は営業時間帯と保守時間帯をきちんと分けており、コントロールセンターから指令が発せられることで営業時間帯と保守時間帯がきちんと切り替わる。したがって、営業時間帯に保守作業が行われることはない。 Q:台湾の高速鉄道は、車両は新幹線ですが、インフラは欧州のものが使われています。どう評価しますか。 A:システムを構築するためには、単独の部品が優秀というだけでは不十分。数多くの部品が組み合わされて1つのシステムになる。高速鉄道であれば、橋梁、バラスト、レールといった土木構造物から、電気を供給する変電設備や架線構造が一体となったシステムとして安全に機能しなくてはいけない。この点は台湾で何度も繰り返して説明したが、なかなか理解を得ることができなかった。 Q:日本のシステムを丸ごと採用するのではなく独自のシステムを作るという台湾の「ベストミックス」という考え方にも一理あるのでは? A:彼らのシステムをまったく無視するつもりはない。だが、信頼性と安全性が担保できるまで十分に検証を行う必要がある。その時間がたっぷりあるならよいが、開業時期が決まっていて、そこに向けてスケジュールを組むとなると限界がある』、確かに「ベストミックス」も時間に制約があるなかでは、「絵に描いた餅」だ。
・ドイツ製採用を強行した結果は…  Q:台湾が採用したドイツ製の分岐器はトラブルが頻発しているそうですね。 A:ドイツ製の分岐器は規模が大きく構造が複雑で、また、地域環境特性という面でもドイツと台湾は大きく違う。われわれはシンプルで小さな新幹線仕様の分岐器のほうが台湾に向いており、建設コストの削減にもつながると提案したのだが、台湾側は採用を強行した。もし十分な時間があるならドイツ製の分岐器を日本の分岐器と同じ条件で敷設して耐久性や信頼性をチェックしたうえで、改良することもできただろうが、そんなことをしていたらいつ開業できるかわからない。台湾側としては時間的な余裕がなかったのだろう。 結局、ドイツ製の分岐器は走行試験開始の時からたびたびトラブルを起こし、開業後も改善していない。この問題は立法院(国会)でも取り上げられ、集中審議が行われたが、すべての分岐器を取り替えるとなると1年程度運休しないといけない。だましだまし使っていくしかないという結論に落ち着いた』、「分岐器」が事故原因なのだろうか。原因とされるのは、確か運転手のスピードの出し過ぎと、ATSが切られていたことだと記憶しているが・・・。
・『客室内では窓のそばにハンマーが設置してあり、緊急時は乗客がガラスを割って脱出するという仕組みも日本と違います。 A:欧州の基準では列車が脱線転覆したときに窓ガラスを割って逃げるということになっている。車体がひっくり返っていないならドアを開けて脱出すればいい。また、車体が横になっていたら天井に窓があるので、ガラスを割ったら危ないし、そこからどうやって逃げるのか。「あまり意味がない」と申し上げたが「欧州から来ているコンサルタントの要望で」ということで採用された。この点でわれわれが強く主張したら、それが開業の遅れにつながるおそれもあり、OKした。 台湾の高速鉄道には、無駄なものや重複しているものが結構ある。システムとして考えずに、個別のものとして考えているからこういうことが起きる。 Q:日本側の努力が報われてよかったと感じたことは? A:新幹線の教育を1年半かけてやってきて、それが随所に生かされていることは本当によかった。日本式の指差し喚呼も行われている。こうした教育の成果が見られると救われた気分になる』、運転手のスピードの出し過ぎと「教育の成果」の関係をハッキリさせる必要があろう。
・『新幹線とは「7割同じ」  Q:台湾の高速鉄道は、新幹線ファミリーの1つとして位置づけていいのでしょうか。 A:誤解を招くかもしれないが、わかりやすく言えば、新幹線との技術的な違いは3割くらい。逆に言えば7割は新幹線と同じで、ATC(自動列車制御装置)のような重要な部分は譲っていない。だから、新幹線とDNAは同じという言い方をすることもある。 今では1日当たりの平均乗客数も17万人まで増え、庶民の足として定着した。紆余曲折はあったが、トータルとして見れば、成功したといえるのではないか。 Q:アメリカ・テキサス州の高速鉄道計画では新幹線の導入が前提ですが、台湾を教訓にするとベストミックスでなく、完全な新幹線システムのほうがいいのでしょうか。 A:アメリカには連邦政府やテキサス州の法律がある。その技術基準と照らし合わせて改正できる可能性があるものについては努力していきたい。折衝しても、どうしてもダメだという事柄については、現地のルールに従わざるをえないと思う』、台湾新幹線の事故原因はまだ調査中のようだが、どのような結論になるのだろうか。日本側の責任が問われることはないだろうが、インフラ輸出のリスクを思い知らされた一件だった。

第三に、1月21日付けダイヤモンド・オンライン「日立の英国事業に暗雲、原発断念に加え鉄道事業にも火種」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/191363
・『日立製作所がグローバル化の拠点と位置付けてきた英国での事業に暗雲が垂れ込めている。英政府と進めてきた原発建設計画の続行を断念する他、昨年は鉄道車両事業でも政府の大型案件を逃した。良好だった英政府との関係が冷え込んでいると言わざるを得ない状況だ。 「英政府は間違いなく原発建設をやりたがっていた。しかし(原発で発電した電力を優遇価格で買い取る)価格が92ポンドならやれていた」。日立幹部は英政府との難交渉にほとほと疲れた様子でこう語った。 それでも、原発計画から撤退するという経営判断は投資家から歓迎された。 事業を中断すれば約3000億円もの損失が発生するというのに、撤退観測が報道された1月11日、日立株価は前日比8.6%上昇した。 英政府は、原発計画を実現させるため総事業費3兆円のうち2兆円を融資する支援策を示していたが、国民からの反発を招きかねない高値での電力の買い取りには慎重だった。 冒頭の日立幹部発言にある「92ポンド」とは、フランスや中国の企業が主体となる英国の原発計画で設定された1メガワット時当たりの買取価格だ。これが電力の市場価格の2倍の水準だったために英国内で政治問題化していた。 ただでさえ政権基盤がぜい弱なメイ英政権が、原発計画で日立に譲歩できる余地は限られていた』、「フランスや中国の企業が主体となる英国の原発計画」では1メガワット時当たり92ポンドが設定されていたが、「政治問題化していた」ため、日立には適用されなかったというのは、確かに「政権基盤がぜい弱なメイ英政権」には無理だったのだろう。日立もツイてない。
・『鉄道では入札巡り政府に敗訴も  今回の原発計画の断念により懸念されているのが、英政府との関係悪化だ。 日立にとって英国は、原発新設の唯一の予定地であっただけではなく、社内で海外展開の模範事例となっている鉄道事業のグローバル本社や工場がある重要な国だ。原発も鉄道も英政府の理解なくして事業展開は困難なビジネスである。 日立の東原敏昭社長は英原発計画の継続断念を発表した会見で「民間の経済合理性には合致しない(から日立が原発計画を中断する)と現時点では英政府にご理解いただいている」と述べた。だが、原発計画の中断で国の根幹であるエネルギー政策にほころびが生じた英政府が心穏やかであるはずがない。 実は、日立と英政府の間には18年から隙間風が吹いていた。 ことの発端は、日立が6月にロンドン市交通局の鉄道車両の大型案件(2000億円規模)の受注を独シーメンスにさらわれたことだ。勝利を確信していた日立は結果に納得できず、ロンドン市交通局を提訴し、日立が落札できなかった理由の説明を求めた。 しかし、裁判所に不服を申し立てる作戦はあえなく失敗に終わった。11月には敗訴が決まり、シーメンスが正式に車両の設計に着手した。 受注失敗の代償は大きかった。英国の鉄道車両工場の稼働率維持が危ぶまれる状態になったのだ。日立関係者によれば「19年までは受注残があるが、それ以降の英国工場の仕事は今後の受注次第だ」という。 受注残がなくなれば、工場の従業員1300人の雇用問題にも発展しかねない。 日立と英政府との間の火種はこれだけではない。 日立はかねて英国の欧州連合(EU)離脱に影響を受ける「Brexit銘柄」とされてきた。仮にBrexitで英国とEUの貿易に関税が課されるようになれば、英国からの鉄道輸出にも支障をきたす。 原発と鉄道の事業で世界に打って出るための橋頭堡だった英国で日立は苦境に立っている。英政府との関係悪化で堡塁が崩れれば、日立の成長戦略が頓挫することにもなりかねない』、「英国の鉄道車両工場の稼働率維持が危ぶまれる」とは深刻だ。Brexitで「英国からの鉄道輸出にも支障」とは、踏んだり蹴ったりだ。

第四に、2月27日付け東洋経済オンライン「円借款検討の石炭火力、反対住民が次々投獄 インドネシアで人権問題、外務省の対応は?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/268065
・『外務省と国際協力機構(JICA)が政府開発援助(円借款)の供与を検討しているインドネシアの石炭火力発電所の建設計画に関して、反対する住民が相次いで逮捕・投獄され、実刑判決を受けている。 舞台となっているのが、インドネシア・ジャワ島にあるインドラマユ石炭火力発電所。インドネシア国有電力会社(PLN)が主体となり、100万キロワットの石炭火力発電設備2基の設置という、大型の拡張工事が計画されている。そのうちの1基について、外務省、JICAが円借款を検討している。 国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは2018年10月3日、「発電所反対で投獄なのか」と題した声明を発表。拡張計画に反対して投獄された3人の農民のうち2人の農民について、市民として当然の権利を行使しただけで拘留されている「良心の囚人」として、即時かつ無条件の釈放を求める国際的な救援活動を呼びかけた。 今年2月21日、2人は刑期を終えて釈放されたが、反対住民1人が現在も刑務所に収監されたままだ』、インドネシアでの反対運動弾圧は初耳だ。日本のマスコミも遠慮せずに伝えて欲しいところだ。日本政府が力を入れている石炭火力発電所は、二酸化炭素の排出などで悪名が高く、国内でも中止が相次いでいる。
・『逮捕の狙いは反対運動の弾圧?  投獄された3人の罪名は、国旗を逆さまに掲げたとの理由による「国旗侮辱罪」。2017年12月17日の深夜1時頃、地元の警察が自宅に踏み込んできて3人を逮捕した。同日23時に3人は保釈されたが、2018年9月に3人は再逮捕・未決勾留され、同12月27日に2人に5カ月、1人に6カ月の実刑判決が出された。 支援者の1人で現地の事情に詳しい国際環境NGO・FoE Japanの波多江秀枝氏は、「本人たちは罪を否定しており、国旗が正しく掲揚されていたのを見た住民もいる。国旗を逆さまに掲げたというのは事実に反した言いがかりだ。本当の狙いは発電所建設への反対運動に対する弾圧に他ならない」と強く批判する。 この逮捕・投獄事件では、外務省、JICAが検討している政府開発援助(ODA)に関して、検証対象となる人権への配慮がきちんとされているかに注目が集まっている。 JICAが策定した「環境社会配慮ガイドライン」では、協力事業の実施に際して、「人権状況を把握し、意思決定に反映する」と明記。政府が閣議決定した「開発協力大綱」でも、「当該国における民主化、法の支配及び基本的人権の保障をめぐる状況に十分注意を払う」とのくだりがある』、インドネシアでの反対派へのデッチ上げの有罪判決とは、酷い話だ。野党はこういった問題も国会で取上げるべきだろう。
・『しかし、JICAは「現時点で(人権状況に問題があるか否かの)確認をしておらず、判断は差し控える」(壽楽正浩・JICA東南アジア第1課主任調査役)とする。外務省は「人権状況について価値判断はしていない」(担当者)という。 JICAは現在、出力100万キロワットの大型石炭火力発電所建設の前段階に当たる設計業務について、「エンジニアリング・サービス(ES)借款」を、PLNに供与している。しかも、追加貸し付けが実施されたのは、3人が再逮捕された後の2018年9月27日だ。 ただ、環境社会配慮ガイドラインには「プロジェクト本体に対する円借款の供与にかかる環境レビューにおいて、環境社会配慮上の要件を満たすことを確認することを可とする」との条項がある。そのためJICAは、現時点で調査は必要ないとの認識だ。 その考え方について壽楽氏は次のように説明する。 「ES借款はプロジェクト自体が経済性を含めてフィージブルか否かを確認する作業でもある。発電所本体への円借款供与を検討する際に、環境社会配慮も含めて確認するのが効率的であり、審査のステップとしても適当だとの判断がある」 壽楽氏は「現時点でインドネシア側から、発電所本体の建設に関しての円借款の要請は受けていない」としたうえで、「反対住民やNGOから指摘されている問題については、PLNに確認を求めている」と説明を続ける』、なんと腰の引けた対応だろう。これでは、「環境社会配慮ガイドライン」など有名無実だ。
・『すでに周辺工事が進捗  しかし、次々と人権問題が持ち上がっている中で、「発電所本体の建設に際して、インドネシア側から円借款の要請が来たら、その時に検証すればいい」というやり方は妥当なのか。ES借款供与時に人権状況を調査・検証してはならないとの規定はない。 前出の波多江氏は「反対の声をあげただけで住民が逮捕・有罪になるような現状は、そもそも政府開発援助を適正に実施できる条件を満たしていない」と指摘する。 現在、発電所本体の工事こそ行われていないものの、PLNはアクセス道路の建設や送変電設備に関する土地造成工事を着々と進めており、反対する住民をいつでも閉め出せるようにあちこちにゲートが設けられている。 インドネシアでは、石炭火力発電所の増設そのものにも疑問が出ている。 硫黄酸化物やばいじんなど有害物質の排出量の多さが、周辺住民から強い反発を招いている。また2017年9月には、インドネシアの財務相がPLNの事業計画の見直しを求める書簡をエネルギー鉱物資源相に送付していたことが現地の報道によって判明している。国際環境保護団体グリーンピース・インドネシアのユユン・インドラディ氏は、「ジャワ島およびバリ島エリアでは電力供給の予備率が40%もあり、電力設備の過剰が問題となっている。新たな石炭火力発電所の建設は必要ない」と指摘する。 そうした中で、「大統領選の前に、発電所本体の建設に関する円借款の要請が出されるのではないか」(波多江氏)とも危惧されている。 問題山積のプロジェクトに外務省やJICAがどう判断を下すのか、注視を怠れない』、「電力供給の予備率が40%もあり、電力設備の過剰が問題となっている」なかで、建設を強行するとは、きっとリベートなどの利権が大きいからなのだろう。インフラ輸出の号令がかかると、裏面を隠して、突っ走ることを続けていけば、現地住民からの恨みを買い、国際親善どころではなくなる筈だ。
タグ:インドは鉄道総延長6万3000kmという世界有数の鉄道大国 ダイヤモンド・オンライン ドイツ製の分岐器はトラブルが頻発 (その9)(高速鉄道めぐる日本とインドの「同床異夢」、台湾新幹線、的中した「開業前の不安要素」、日立の英国事業に暗雲 原発断念に加え鉄道事業にも火種、円借款検討の石炭火力、反対住民が次々投獄 インドネシアで人権問題) インフラ輸出 「高速鉄道めぐる日本とインドの「同床異夢」 輸出と現地生産、どちらがベストシナリオ?」 東洋経済オンライン 日印首脳会談で覚書 ムンバイ―アーメダバード間505kmを約2時間で結ぶ計画 JR東日本 総工費は約9800億ルピー(約1.5兆円)。そのうち8割は円借款 メイク・イン・インディア グループ全体で100人を超えるスタッフを投入 高速鉄道セミナー インドには鉄道車両を製造できるメーカーが6社あり、全国各地に多数存在する製造拠点の従業員を合計すれば15万人に達する 高速鉄道車両の輸出を狙うインド 安倍首相は起工式の場で「日本はメイク・イン・インディアにコミットしている 現地製造の高いハードル 少なくとも当初、導入される車両については、日本で製造したものが持ち込まれる予定 のシーメンスやアルストムはインドに鉄道の製造拠点を持つ 台湾の高速鉄道が新幹線の海外展開事例 「台湾新幹線、的中した「開業前の不安要素」 キーマンが明かす「日欧混在システム」の限界」 ドイツ高速鉄道の事故が転換点 台湾側は「世界の鉄道技術の良いところを集めた“ベストミックス”である」 インフラ部分はすでに欧州仕様で工事が発注 新幹線とは「7割同じ」 「円借款検討の石炭火力、反対住民が次々投獄 インドネシアで人権問題、外務省の対応は?」 インドラマユ石炭火力発電所 英国の鉄道車両工場の稼働率維持が危ぶまれる状態に 「日立の英国事業に暗雲、原発断念に加え鉄道事業にも火種」 ロンドン市交通局の鉄道車両の大型案件(2000億円規模)の受注を独シーメンスにさらわれた 原発計画の中断 Brexitで英国とEUの貿易に関税が課されるようになれば、英国からの鉄道輸出にも支障をきたす 受注残がなくなれば、工場の従業員1300人の雇用問題にも発展しかねない 100万キロワットの石炭火力発電設備2基の設置という、大型の拡張工事が計画 そのうちの1基について、外務省、JICAが円借款を検討 逮捕の狙いは反対運動の弾圧? 「発電所反対で投獄なのか」 アムネスティ・インターナショナル 「良心の囚人」として、即時かつ無条件の釈放を求める国際的な救援活動を呼びかけた 環境社会配慮ガイドライン ジャワ島およびバリ島エリアでは電力供給の予備率が40%もあり、電力設備の過剰が問題となっている すでに周辺工事が進捗 新たな石炭火力発電所の建設は必要ない
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