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日産ゴーン不正問題(その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”) [司法]

日産ゴーン不正問題については、2月25日に取上げた。ゴーン氏保釈を踏まえた今日は、(その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”)である。

先ずは、3月11日付けJBPressが転載した新潮社フォーサイトへの経済ジャーナリストの大西康之氏による寄稿「ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡」を紹介しよう。これは、傑作で、必読である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55709
・『日本は再び「ゴーン・ショック」に襲われる。1度目は20年前、フランス・ルノーから日産自動車に乗り込んだカルロス・ゴーン前会長が、ゴーン改革で「系列」に代表される日本企業の古い商慣習を粉砕した。次に破壊されるのは、世界から批判を浴びている日本の「人質司法」だ。ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡である』、2度も「ゴーン・ショック」を引き起こした「ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡である」とは言い得て妙だ。
・『世界に晒された日本の刑事司法  3月6日、逮捕から108日目に保釈されたゴーン被告は、作業服に帽子とマスクという奇妙な姿で東京拘置所から出てきた。だが、メガネの奥の目は鋭さを失っていない。「無罪請負人」の弘中惇一郎弁護士という味方を得て、大反撃を始めるつもりだろう。 「新戦略による初勝利」仏紙『フィガロ』はゴーン被告の保釈を電子版の速報でこう伝えた。監視カメラ設置など、保釈後の証拠隠滅が疑われないような措置を提案したことを「より攻撃的な司法戦略」と評価した。仏紙『ル・モンド』は、日本の裁判所が自白を拒む被告の保釈請求をほとんど認めないとした上で、今回の保釈を「日本の司法制度では異例の決定」と伝えた。 弁護士の立ち会いなしに容疑者を長期間拘留する日本の検察のスタイルは、ゴーン被告の逮捕によって海外にその実態が伝わり、「人質司法」と批判されてきた。 勾留理由開示手続きを巡ってゴーン被告が法廷に現れた時には、『AFP通信』が手錠と腰縄を付けてスリッパ姿で入廷したゴーン被告の様子を事細かに描写し、「7週間に及ぶ東京拘置所での生活が活力を奪った」と批判した。 カルロス・ゴーンという世界的に著名な経営者を逮捕したことにより、前近代的な日本の刑事司法が世界に晒された。裁判所は、こうした海外からの批判を当然、気にしていたはずである』、「人質司法」は「日本の後進性を映し出す鏡」で、日本人として恥ずかしい限りだ。
・『「国連」を持ち出された途端、腰砕けに  そこをうまく突いたのが、ゴーン被告の家族だった。家族は3月4日、ゴーン被告の長期勾留が人権侵害に当たるとして、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行ったことを発表した。 発表後に記者会見した家族側の弁護士フランソワ・ジムレ氏は、「懲罰的な環境で尊厳を侵害する不当な勾留が続いている。今回の事件は日本の勾留制度を白日の下にさらすことになる」とまくし立てた。 その直後、新たにゴーン被告の弁護を引き受けた弘中惇一郎氏らの弁護団が3度目の保釈請求をすると、裁判所はあっさりこれを受け入れた。検察は「証拠隠滅の恐れがある」と準抗告したが、裁判所に棄却された。ゴーン被告の家族を動かしたのが弘中氏だとしたら、大した策士ぶりである。いずれにせよ日本の裁判所は、「国連」を持ち出された途端、腰砕けになった。 「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」幕末の江戸で流行った誰もが知る狂歌で、カフェインの強い上等なお茶である上喜撰は蒸気船にかけて黒船を意味する。四杯はペリーの黒船が4隻だったことを意味し、たった4隻の黒船で徳川300年の泰平が破られ右往左往する幕府を揶揄した歌だ。日本は「黒船」が来ないと変わらない』、ゴーン被告の家族が「国連人権高等弁務官事務所で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行った」とは初耳だが、上手い高等戦術だ。
・『日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来  刑事司法制度の前近代性については、例えば1988年のリクルート事件でゴーン被告と同じ東京拘置所に113日間拘留され、拘禁反応鬱状態になった経験を持つリクルート元会長の江副浩正は、共著『取り調べの「全面可視化」をめざして』(中央公論新社)の中でこう語っている。「てきぱきと働く受刑者の姿を見ながら『羨ましい』と思った」 東京拘置所には刑務所もあるが、「自由に身動きできず、空さえ見えない拘置所での暮らしは刑務所より厳しい」と受刑者の多くは語っている。 しかし有罪率99.9%とも言われる日本では、長期勾留された人間がその非人道性を訴えても、「所詮は罪人の泣き言」と無視されてきた。 言うまでもないが、被告は罪人ではなく、その人権は配慮されるべきである。外国人でしかも超有名人であるゴーン被告の声は、日本を越えて海外に届き、その声が海外メディアで増幅されて日本に跳ね返ってきた。海の向こうから批判されると、日本の権力者たちは途端に狼狽し始めた。それが「異例の保釈」につながったと見るべきだろう。日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来したのである』、近代法の基本原則に「推定無罪」があり、誰でも有罪宣告を受けるまでは無罪と推定されるにも拘らず、日本だけは逮捕されたたけで、罪人扱いを受けるというのは、日本の後進性の典型例だ。
・『黒船ゴーンで鉄鋼業界に激震  ゴーン被告が「黒船」の役割を果たすのは今回が初めてではない。冒頭で触れたとおり、20年前の1999年、筆頭株主になったルノーからCOO(最高執行責任者)として日産自動車に送り込まれた時もゴーン被告は黒船だった。 「コストカッター」と呼ばれたゴーン被告は、着任早々、鉄鋼資材の購入先を「選別、集約する」と言い出した。泰平の眠りを貪っていた日本の鉄鋼業界に激震が走る。 当時、日産の月間の鋼板使用量は8~9万トンで、トヨタ自動車に次ぐ大口ユーザーだったが、そのシェアは新日本製鉄(現新日鐵住金)が28%、川崎製鉄が26%、NKKが25%で、残りを住友金属工業、神戸製鋼所が分け合っていた。共存共栄を旨とする高炉5社は入札で競うわけでもなく、シェアは「不変」とされた。コスト競争力ではNKKが一段劣っていたのだが、日産は同じ芙蓉グループのNKKを「系列」とみなし優遇していた。 ゴーン被告はこうした日本的、馴れ合いの商慣習を一顧だにせず、日本以外の国と同様に競争入札を実施した。その結果、新日鉄のシェアが60%に倍増、川鉄は30%に増え、NKKが3分の1の10%に激減した。鉄鋼業界ではこれを「日産事件」と呼ぶ。 「変わらない」と思い込んでいたシェアの大変動に、NKKの経営陣は言い知れぬ危機感を感じた。その予感はあたり、日産事件をきっかけにトヨタ自動車など他の自動車メーカーも鉄鋼メーカーの選別を始めたのだ。流れは自動車、鉄鋼業界にとどまらず、電機メーカーなども素材、部品メーカーを選別し始めた』、筆者の大西氏は、元日経ビジネス記者で企業もので鋭い記事を書いてきただけに、「日産事件」まで引き合いに出すとはさすがである。
・『「系列」は見事に解体された  「単独では生き残れない」と悟ったNKKは「格下」と見ていた川鉄との合併に踏み切る。JFEグループ(現JFE ホールディングス)の誕生である。合併比率は川鉄1に対しNKK0.75。新日鉄に次ぐナンバーツーを自任してきたNKKにとっては屈辱的な条件だったが、背に腹はかえられなかった。 玉突きで新日鉄が住友金属と経営統合して新日鐵住金が誕生し、鉄鋼業界は3社体制に再編された。 ゴーン被告は日産系列の部品メーカーの持ち株を売却し、世界中から安くて良い部品を調達した。他の自動車メーカーもこれに倣い、日本の自動車産業の高コスト体質の原因だった「系列」は見事に解体された。 ゴーン被告による改革は調達だけではなかった。稼働率の低い工場を閉鎖し、余剰人員を削減し、縦割り組織と上意下達のメカニズムを壊して社内の意思疎通を良くした。これらの改革を一気呵成に進めたことで、日産の業績はV字回復し、ゴーン被告の経営は「ゴーン・マジック」、ゴーン被告自身は「カリスマ」と呼ばれるようになった』、「系列」の解体は、やはり外国人経営者でなければ、手をつけられなかっただろう。
・『なぜ日産は「神様」に祭り上げたのか  だがゴーン被告を知る、ある大企業の元会長はこう指摘する。 「ゴーンさんは普通の経営者だし、ゴーンさんがやったのも当たり前の改革。だが当時の日本人経営者にはそれができなかった。文明人が未開の地で日蝕を言い当てて、原住民に神様と崇められたのと同じ。日本の経営のレベルが低かったため、普通の経営者が神様になってしまった」 ゴーン被告を最初に「神様」に祭り上げたのは日産の役員・社員だ。倒産寸前だった会社が、あっという間に優良企業に生まれ変わったのである。ゴーン氏が普通の経営者なら、会社を傾けた自分たちが怠慢で無能だったことになる。自分たちの非を隠すために、ゴーン被告を「不可能を可能にした神様」に祭り上げた』、「神様」誕生についての、極めて説得力溢れた鋭い指摘だ。
・『その尻馬に乗ったのがメディアである。工場を閉め人員を削減して固定費を減らし、不稼働資産を減損処理してしまえば、バランスシートが軽くなり、期間利益が跳ね上がるのは常識である。しかし勉強不足と読者の関心を引きたい下心が相まって「カリスマ・ゴーン」と書きたてた。 残念なのは、前近代的な日本の企業社会に改革の先鞭をつけたゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったことである。「経営者として当たり前のことをやったまで」と謙虚にしていれば、逮捕はなかっただろう。 しかし驕ったゴーン被告が逮捕されたことで、今度は未開な日本の刑事司法にスポットライトが当たった。1度目のゴーン・ショックで激震が走った鉄鋼業界と同じように、日本の司法も大いに揺さぶられることになる。本人にその意思はないだろうが、結果的にゴーン被告は2度目の「黒船」として、再び日本を救うのかもしれない』、「残念なのは・・・ゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったこと」、というのはその通りで、人間の脆さを物語っている。「未開な日本の刑事司法」を変革する大きな一撃になってもらいたいものだ。

次に、司法ジャーナリストの村山 治氏が3月14日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/196834
・『役員報酬の虚偽記載や会社資金を不正流用したとする特別背任の罪に問われ、東京拘置所で勾留されていた前日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が3月6日、保釈された。 昨年11月19日の逮捕以来、勾留は108日に及んだ。 東京地検特捜部が摘発した事件の否認被告が、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの前に保釈を認められるのは極めて異例だ。 法曹関係者が驚く「異例の判断」の背景に何があったのか』、真相を是非、知りたいところだ。
・『予想外の「変装」姿 保釈を巡るさまざまなせめぎ合い  カリスマ経営者と呼ばれた男は、青い帽子にマスクと眼鏡、作業服といういで立ちで東京拘置所の玄関に現れ、詰めかけた報道陣に対応することなく去った。 ゴーン氏は、勾留理由開示公判や弁護士などを通じ、繰り返し「自分は無実」と訴えていた。 マスコミはじめ多くの関係者は、保釈されたゴーン氏は、カメラの前で堂々と「無実」の根拠を明らかにし、また、捜査の問題点を指摘する、と予想していた。 それだけにこの奇策は「何か、人前に出られない事情でもあるのか」との臆測を呼ぶことにもなった。 3月8日、ゴーン氏の弁護人の1人、高野隆弁護士は自らのブログで「『変装劇』はすべて私が計画した。(略)膨大な数のカメラがバイクやハイヤーやヘリコプターに乗って彼を追いかけたでしょう。彼の小さな住居は全世界に知れ渡ります。(略)頭に閃いたのが昨日(ママ)の方法でした」と明かした。 何のことはない。「メディアスクラム」対策だったわけだが、保釈の2日後にはゴーン氏の新たな住居にはマスコミが詰めかけた』、ゴーン氏にとっては、マスコミへの対応は万全の準備をしてからと考えていたのだろうから、マスコミを一旦は遠ざけたのは、成功だったとも言えるだろう。
・『公判前整理手続きが始まる前では初めて  カリスマ経営者の保釈をめぐり、裁判所と検察、弁護団の間で激しい「攻防」があった。 ゴーン氏は、2010~17年度の日産の役員報酬を約91億円過少に有価証券報告書に記載したとして金融証券取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)で、また、私的な損失を日産に付け替えて損害を与えたなどとして会社法違反(特別背任)で起訴された。 ゴーン氏の弁護人だった元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士は、起訴後の1月11日と18日の2度にわたって東京地裁に保釈を請求したが、却下された。 1回目の請求では、保釈後にフランスなどに住む条件を提示したとされ、2回目は、住居を日本国内に変更したとされるが、地裁は、いずれも証拠隠滅の恐れがあると判断したようだ。 その後、辞任した大鶴氏に代わって、新たに弁護人になったのが、「無罪請負人」といわれる弘中惇一郎弁護士と、米国流の刑事手続きに通じた高野弁護士だ。 弘中氏らは、同月28日、3回目の保釈を請求。「インターネット接続不可」や「携帯電話のメール禁止」「住居の出入り口に監視カメラ設置」「パソコン作業は弁護人の事務所で」など厳しい行動制限をゴーン氏に課す保釈条件を地裁に提案。 地裁はこれを受け入れ、「罪証隠滅の恐れがある」との検察側の反対意見を退けた。 保釈条件にはさらに、「事件関係者との接触禁止」「住居は東京都内に制限」「海外渡航禁止、パスポートは弁護人が保管」も加えられ、ゴーン氏は、金商法違反に対して2億円、特別背任に対して8億円の計10億円の保釈保証金を納めて、拘置所を出た。 特捜部が摘発した事件で容疑を否認している被告人の保釈は、争点や証拠を絞る公判前整理手続きで検察側、弁護側双方の主張が出そろうまで認められないのが通例だった。 だがゴーン氏の保釈時点では、整理手続きの日程は決まっておらず、検察を含む多くの法曹関係者が、地裁による異例の保釈判断に驚いた』、筆者はどうしても、主な取材源である検察「寄り」になってしまうようだ。
・『検察は反発「証拠隠滅を防げない」  しかし、常識的にみて、この条件で「罪証隠滅」を防げるのかは疑問だ。 住居の入口に監視カメラを付けても、住居の外で関係者と接触すればわからない。他人の携帯を使えば通信もチェックできないからだ。 検察のスポークスマンである久木元伸東京地検次席検事は8日の会見で、東京地裁の保釈決定を、「証拠隠滅を防ぐ実効性はない」と批判。 別の検察幹部は「裁判所は、ゴーン氏側が証拠隠滅しても構わない、と思っているのではないか」と憤った。 検察にとって予想外の事態になる「伏線」はあった。 特捜部は、ゴーン氏の8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け、昨年12月10日に後半部分の容疑で再逮捕したが、東京地裁は、同月20日、検察が求めたゴーン氏らに対する勾留延長請求を却下した。 ゴーン氏らは容疑を否認していたが、地裁は、2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」とし、捜査内容に踏み込んで、勾留延長しなくても捜査は尽くせた、と認定した。 その後、特捜部はゴーン氏側の保釈請求手続きが始まる直前の翌21日、会社法違反(特別背任)容疑でゴーン氏を逮捕。身柄を引き続き確保したが、検察幹部らは、裁判所が勾留判断で従来のスタンスを変えつつあるのではないか、と警戒していた』、特捜部は「8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け」たようだが、余りに見え見えの小細工で、「地裁は、2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」」としたのは当然だ。
・『海外からの「人質司法」批判 地裁の判断に影響の見方  「異例の保釈」の背景に何があったのか。 今回のゴーン氏の事件では、ゴーン氏の勾留が長くなるなかで、罪を自白しないと保釈が認められないという「人質司法」の問題が、海外メディアの報道をもとに大きくクローズアップされることになった。 それが、今回の裁判所の保釈判断に影響したとの指摘もある。 司法制度は国によって違う。勾留や保釈などの刑事手続きの是非についても、日本の制度・ルールのもとで適正に行われているかどうかで判断すべきで、「外圧」によって判断を変えるのは、司法のあるべき姿ではない。 当の裁判所も海外の論調に影響されたとは絶対、認めないだろう。 もっとも、「人質司法」が日本の刑事司法の暗部である、との認識は、かなり前から弁護士会や学会の共通認識だった。 裁判所と検察は、戦後の治安をともにささえてきたという「戦友意識」があり、裁判所側は、「容疑を持たれた被疑者、被告人には、すべからく、証拠隠滅する動機があり、保釈すれば罪証隠滅される恐れがある」との検察側の主張を受け入れがちだった。 高野弁護士は1月18日のブログで、この問題にも触れている。 それによると、最高裁事務総局が『会内限り』という限定付きで日弁連に秘密裏に提供した統計資料では、保釈された人(1万801人)のうち9割以上(9832人)は罪を自白した人で、罪を否認した人(5275人)について見ると、全公判期間を通じて保釈されるのは21.6%であり、公判前に釈放されるのは7.4%に過ぎない。 こうした声の高まりが、裁判所を動かした可能性はある』、「日本の制度・ルールのもとで適正に行われているかどうかで判断すべき」は建前論に過ぎず、現在その「制度・ルール」のあり方が国内からも問われていると捉えるべきだ。
・『裁判員裁判が「改善」のきっかけに  一方で裁判所でも、司法制度改革で国民が司法参加する裁判員裁判制度が2004年に導入されてから「人質司法」の改善に向けた具体的な動きが始まっていた。 大阪地裁判事だった松本芳希裁判官(京都大学大学院法学研究科教授)が06年6月、「保釈基準が厳格化しすぎている」などとして、罪証隠滅の恐れについて、個別具体的に判断すべきと指摘する論文を発表。 その考え方が次第に裁判官の間に浸透し、14年には最高裁が証拠隠滅の恐れについて「具体的な検討」を促す決定を出すに至った。 3月6日の朝日新聞朝刊は「最高裁によると、保釈を請求して判決までに認められた割合は、2000年は47%だったが、17年は66%に上昇した」と伝えた。 ただ、特捜事件だけは例外で、勾留が長期化する例がままあった。 松本論文発表以後でも、大阪地検特捜部が摘発した2009年の郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省元局長の村木厚子さんは164日、17年の森友学園事件で同特捜部が詐欺罪などで起訴した籠池泰典前理事長夫妻は299日に及んだ。 18年に東京地検特捜部が摘発したゼネコン大手4社によるリニア談合事件では、罪を認めない2社の幹部は291日にわたって勾留された』、罪状を否認する被告には、こんなに長く勾留されるというのは、やはり罪状を認めろとの陰湿な圧力で、人権問題だろう。
・『ゴーン氏に対する保釈決定は、特捜事件に対しても例外を認めないとする裁判所のスタンスを示したといえる。 ただ、ゴーン氏に対する裁判所の勾留と保釈の判断には、見過ごせない「ぶれ」もみられた。 東京地裁は、ゴーン氏が1月11日に起訴された後、ゴーン氏に対する接見禁止を解除した。 接見禁止は、共犯者との口裏合わせなどの罪証隠滅工作を防ぐために弁護士や特定の外交官以外との面会を禁止するものだ。それを解除したということは、起訴で捜査は一段落し、罪証隠滅の恐れがなくなったので誰と会ってもいい、と判断したということだ。 接見禁止を解除したのだから、11日に大鶴弁護士から出された保釈請求に対しても、許可するのが筋だったが、地裁は、3月7日までゴーン氏を勾留し続けた。 地裁の接見禁止解除と保釈請求却下の判断は明確に矛盾する。純粋に法律と事実だけで判断したのなら、こういう矛盾は起きない。地裁が勾留を続けた理由は何なのか、説明してほしいところだ。 この接見禁止解除と勾留継続の判断矛盾を裁判官は認識し、そのアンバランスをいずれ解消したいと考えていたはずだ。 裁判所にとって、弘中弁護士らが新たに提示した「ゴーン氏に厳しい行動制限を課す」保釈条件は、渡りに舟だったのではないか。 いずれにしろ、ゴーン氏に対する保釈判断は、前例として今後の裁判所の判断を縛ることになる。 検察は、特捜事件を含め、今後、被疑者、被告人の早期保釈を前提とした捜査への転換を迫られる可能性がある』、やはり筆者の検察への遠慮が目立つ。「転換」すべきだろう。
・『検察の「次の一手」注目される余罪捜査  そうした中で、検察の次の動きとして注目されるのが、特捜部のゴーン氏に対する余罪捜査だ。 3月6日の朝日新聞朝刊は「前会長がオマーンの日産販売代理店オーナーから3000万ドル(現在のレートで約34億円)を借り入れ、数年後に中東の日産子会社からその代理店に計約3500万ドル(同約39億円)が送金された」と伝えた。 「特捜部は、中東各国に捜査共助を要請。関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを進めている」と報じている。 3月中にも、中東の関係国からの捜査共助に対する回答が寄せられるとの情報もある。その証拠に対する評価次第で、捜査の次の展開が決まりそうだ。 毎日新聞(3月9日朝刊)は、8日に地裁では開かれたゴーン氏の特別背任事件に関する裁判所、検察、弁護側の三者協議の後、取材に応じた弘中弁護士が、(協議で)検察側は前会長を追起訴する可能性について、「ないとは言えない」と語ったことを伝えている。 ゴーン氏は12日の日産取締役会への出席許可を地裁に求めたが、地裁は検察の反対意見を入れて許可しなかった。 今後、始まる公判前整理手続きは最低でも数ヵ月はかかるとみられ、実際に公判が始まるのは、早くて年内となりそうだ。 その間も、検察と弁護団、地裁の間では、さまざまな駆け引きが続く』、中東案件で追起訴する場合には、再びゴーン氏を拘留するのだろうか。当面、目が離せないようだ。

第三に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が3月12日付け同氏のブログに掲載した「日産、株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/03/12/%E6%97%A5%E7%94%A3%E3%80%81%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E3%81%8C%E9%81%B8%E4%BB%BB%E3%81%97%E3%81%9F%E5%8F%96%E7%B7%A0%E5%BD%B9%E3%81%AE%E5%8F%96%E7%B7%A0%E5%BD%B9%E4%BC%9A%E5%87%BA%E5%B8%AD%E3%81%AB%E3%80%8C/
・『保釈が許可され、108日ぶりに身柄拘束を解かれたゴーン氏は、裁判所の許可があれば日産の取締役会に出席できるとされたことから、取締役会への出席を裁判所が許可するかどうかが注目された・・・。 3月11日の昼のNHKニュースでは、ゴーン氏が12日の日産取締役会出席の許可を裁判所に求めていることについて、「日産側は出席に反対する意向を検察に伝えている」と報じていた。 しかし、取締役は株主に選任されているのであり、その取締役の出席に、会社(執行部側)は反対できる立場ではない、そのような、会社法的にあり得ない「日産のゴーン氏取締役会出席への反対」を、そのまま報じるNHKに疑問を感じていたところ、同日夕方、東京地裁がゴーン氏の取締役会出席を許可しない決定をしたと報じられた。 朝日新聞ネット記事では、被告弁護人の弘中惇一郎弁護士は11日夕、記者団に対し、「日産から強い反対があった」ことを明らかにした。 弘中弁護士によると、日産側から取締役会の開催の案内を受けたため、ゴーン被告が取締役としての責任を果たすために出席を希望し、証拠隠滅の恐れを排除するため、地裁には「弁護士も同席して出席したい」旨を申し入れた。 一方、日産側は顧問弁護士を通じ、ゴーン被告の出席について「強硬に反対」する意見書を出したという。主な反対理由については、1)現在の日産としては今後のことを決めるのにゴーン被告は出席してもらう必要がない、2)ゴーン被告の出席により、他の取締役が影響を受け、罪証隠滅の恐れがある、3)ゴーン被告が出席すると議論がしにくい――というもの としている。 しかし、日産が上記のような意見を提出したというのは、どう考えても理解できない。 1)の「ゴーン氏出席の必要がない」、3)の「ゴーン被告が出席すると議論がしにくい」というのは、日産の執行部として言えることではない。株主に選任された取締役の出席の必要性は、会社執行部が否定できることではない。会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない。 2)は「他の取締役が影響を受ける」ということだが、日産の取締役の中でゴーン氏が接触を禁止されている関係者は西川廣人社長だけのはずだ。その西川氏が、「ゴーン氏の取締役会出席によって影響を受け、罪証隠滅の恐れがある」という趣旨であろう。 裁判所は、株主に選任された取締役の、取締役会への出席について「必要性」を否定できる立場ではない。しかし、会社が「出席の必要がない」と意見を述べた場合、それは会社として許されることではないが、会社法上の判断を行う立場ではない刑事裁判所としては、その意見を尊重することになる』、「会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない」というのはその通りで、この点を鋭く指摘したのは、私が知る限り郷原氏だけだ。
・『最大の問題は、ゴーン氏の取締役会出席が、関係者の西川氏の公判証言にどう影響するかだ。もし、日産の意見書で、「西川氏は、取締役会でゴーン氏と顔を合わせただけで、心理的圧迫を受け、公判証言ができないと言っている」と述べているのであれば、裁判所としても、公判審理に影響があると判断せざるを得ないであろう。 しかし、ゴーン氏には弁護士が同席し、証拠隠滅の恐れを排除するというのだから、もちろん、ゴーン氏が刑事事件に関する発言などするわけもない。それなのに、「取締役会で顔を合わせるだけで圧迫を受けて公判証言に影響する」と言っているとすれば、西川氏は、今後、ゴーン氏の刑事公判で、ゴーン氏の目の前で証言できるのだろうか。そのような情けないことを言う人間が社長を務めていて、日産という会社は本当に大丈夫なのだろうか。 西川氏は、ゴーン氏逮捕直後の会見で、社内調査の結果、重大な不正が明らかになったゴーン氏に対して「強い憤り」を覚えると述べていた。その時点で西川氏が言っていた「不正」のうち、唯一、検察が起訴事実とした「有価証券報告書虚偽記載」については、西川氏自身が、代表取締役CEOとして有価証券報告書の作成・提出義務を負う立場なのに、西川氏は、逮捕も起訴もされていない・・・。そういう西川氏にとって、ゴーン氏が取締役会に出てきたら「合わせる顔がない」というのはわかる。しかし、そのような「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか。 西川氏は、また、ゴーン氏逮捕直後の会見で、「社内調査によって、カルロスゴーン本人の主導による重大な不正行為が明らかになった。会社として、これらは断じて容認できないことを確認のうえ、解任の提案を決断した。」と述べていたが、その不正の事実を、ゴーン氏本人が出席する取締役会に報告して解職の議案を出すのではなく、検察に情報提供して逮捕してもらってから、本人がいない臨時取締役会で解職を決議したのである。 日産は、ゴーン氏が保釈され、取締役会への出席の意向を示すや、出席に反対する意見書を提出するという、株式会社として「異常な対応」を行い、ゴーン氏の取締役会出席を回避した。しかし、それによって、日産自動車は、会社法上の規律もガバナンスも機能しておらず、もはや株式会社としての「体を成していない」ことを図らずも露呈したことになる。 今日は、日産取締役会の後、日産・ルノー・三菱自動車の共同記者会見が行われるとのことだ。しかし、この取締役会をめぐる動きは、西川社長の下では日産という会社が立ちいかなくなることを示しているように思える』、「「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか」、との指摘は説得力がある。日産・西川社長は会社法を改めて勉強するきだろう。
タグ:郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 弘中惇一郎弁護士 「推定無罪」 同氏のブログ 新潮社フォーサイト 大西康之 日産ゴーン不正問題 村山 治 (その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”) 「ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡」 日本は再び「ゴーン・ショック」に襲われる 1度目 ゴーン改革で「系列」に代表される日本企業の古い商慣習を粉砕した 次に破壊されるのは、世界から批判を浴びている日本の「人質司法」だ 世界に晒された日本の刑事司法 「人質司法」は「日本の後進性を映し出す鏡」 「国連」を持ち出された途端、腰砕けに 家族は3月4日、ゴーン被告の長期勾留が人権侵害に当たるとして、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行った 日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来 有罪率99.9%とも言われる日本では、長期勾留された人間がその非人道性を訴えても、「所詮は罪人の泣き言」と無視されてきた 被告は罪人ではなく、その人権は配慮されるべき 日本だけは逮捕されたたけで、罪人扱いを受ける 黒船ゴーンで鉄鋼業界に激震 コスト競争力ではNKKが一段劣っていたのだが、日産は同じ芙蓉グループのNKKを「系列」とみなし優遇 ゴーン被告はこうした日本的、馴れ合いの商慣習を一顧だにせず、日本以外の国と同様に競争入札を実施 日産事件をきっかけにトヨタ自動車など他の自動車メーカーも鉄鋼メーカーの選別を始めたのだ。流れは自動車、鉄鋼業界にとどまらず、電機メーカーなども素材、部品メーカーを選別し始めた 「系列」は見事に解体された 鉄鋼業界は3社体制に再編 「ゴーン・マジック」 「カリスマ」 なぜ日産は「神様」に祭り上げたのか ゴーン氏が普通の経営者なら、会社を傾けた自分たちが怠慢で無能だったことになる。自分たちの非を隠すために、ゴーン被告を「不可能を可能にした神様」に祭り上げた その尻馬に乗ったのがメディア 「カリスマ・ゴーン」 残念なのは、前近代的な日本の企業社会に改革の先鞭をつけたゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったことである 「ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由」 勾留は108日 東京地検特捜部が摘発した事件の否認被告が、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの前に保釈を認められるのは極めて異例 予想外の「変装」姿 保釈を巡るさまざまなせめぎ合い 「メディアスクラム」対策 公判前整理手続きが始まる前では初めて 高野弁護士 厳しい行動制限をゴーン氏に課す保釈条件を地裁に提案 地裁はこれを受け入れ、「罪証隠滅の恐れがある」との検察側の反対意見を退けた 検察は反発「証拠隠滅を防げない」 8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け、昨年12月10日に後半部分の容疑で再逮捕 東京地裁は、同月20日、検察が求めたゴーン氏らに対する勾留延長請求を却下 2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」 海外からの「人質司法」批判 地裁の判断に影響の見方 「人質司法」が日本の刑事司法の暗部である、との認識は、かなり前から弁護士会や学会の共通認識 裁判員裁判が「改善」のきっかけに 大阪地裁判事だった松本芳希裁判官(京都大学大学院法学研究科教授) 罪証隠滅の恐れについて、個別具体的に判断すべきと指摘する論文を発表 検察の「次の一手」注目される余罪捜査 特捜部は、中東各国に捜査共助を要請。関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを進めている 「日産、株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”」 日産側 ゴーン被告の出席について「強硬に反対」する意見書 主な反対理由については、1)現在の日産としては今後のことを決めるのにゴーン被告は出席してもらう必要がない 2)ゴーン被告の出席により、他の取締役が影響を受け、罪証隠滅の恐れがある 3)ゴーン被告が出席すると議論がしにくい 会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない 、会社が「出席の必要がない」と意見を述べた場合、それは会社として許されることではないが、会社法上の判断を行う立場ではない刑事裁判所としては、その意見を尊重することになる 最大の問題は、ゴーン氏の取締役会出席が、関係者の西川氏の公判証言にどう影響するか 西川氏は、今後、ゴーン氏の刑事公判で、ゴーン氏の目の前で証言できるのだろうか。そのような情けないことを言う人間が社長を務めていて、日産という会社は本当に大丈夫なのだろうか 「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか 日産自動車は、会社法上の規律もガバナンスも機能しておらず、もはや株式会社としての「体を成していない」ことを図らずも露呈
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