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英国EU離脱問題(その14)(浜矩子教授「今の英国の混乱ぶりは情けない」、CIAが視る世界:鉄の女サッチャーとは程遠い 氷の首相メイの罪と罰、BREXIT再延期が浮き彫りにする 英国・EU危機の深淵、英国のEU離脱は労働党との妥協で「穏健路線」に 10月31日までの離脱期限延期で何が起きるか) [世界情勢]

英国EU離脱問題については、昨年9月19日に取上げた。日替わりのように事態が流動的だったが、漸く半年間の延期が決まったのを受けた今日は、(その14)(浜矩子教授「今の英国の混乱ぶりは情けない」、CIAが視る世界:鉄の女サッチャーとは程遠い 氷の首相メイの罪と罰、BREXIT再延期が浮き彫りにする 英国・EU危機の深淵、英国のEU離脱は労働党との妥協で「穏健路線」に 10月31日までの離脱期限延期で何が起きるか)である。

先ずは、3月31日付け東洋経済オンラインが掲載した同志社大学教授の浜矩子氏へのインタビュー「浜矩子教授「今の英国の混乱ぶりは情けない」 ブレグジットの決断そのものは正しいのだが」を紹介しよう。Qは聞き手の質問、Aは浜氏の回答。
https://toyokeizai.net/articles/-/274148
・『ブレグジット(英国のEU<欧州連合>離脱)は迷走を続けている。3月29日、英国下院はテリーザ・メイ首相がEUと合意した離脱協定案を344対286で否決した。否決は3度目。3月中に合意すれば、5月22日までに法的な整備を行って離脱することとされていたが、これがなくなった。EU側は英国議会が4月12日までに何らかの「前進する方向性」を決定しEUに示さなければ、さらなる離脱延期を検討することはできないとしている。このまま時間だけが過ぎれば、4月12日に「合意なき」(ノーディール)ブレグジットが実現してしまう。 今回の投票では、ボリス・ジョンソン前外相やジェイコブ・リースモグ議員など、従来は協定案に反対してきた離脱強硬派の一部が賛成に回ったにもかかわらず、可決できなかった。4月12日は5月のEU議会選挙に候補を出すかどうか、という観点から設定された期日。合意なき離脱を避けるためには、EUが納得する何らかの前進的な方針を出しての長期の離脱延期、離脱の撤回、国民投票のやり直しがありうる。だが、いずれにしても、英国議会の議論は割れたままだ。長期の離脱延期となれば、欧州議会選挙に候補者を立てる必要が出てくる。 今回は、英国とEUとの関係、なぜ、いつまでも議会はまとまらないのか、英国の事情に詳しい浜矩子同志社大学教授に話を聞いた。浜教授はブレグジットの混乱の背景には格差の拡大もあると指摘。話は持論であるアホノミクス(アベノミクス)批判にもつながっていった』、なお、この記事のあと4月11日にEUは英国の離脱を10月末まで再延期することを認めた。浜氏は三菱総研時代に英国に駐在していただけあって、参考になりそうだ。
・『英国と大陸欧州は体質も目指す方向も違っていた  Q:かねて英国はEUを離脱すべしと主張されていました。 A:そもそも英国はEUに入ったことが間違いだった。いずれは離脱するだろうと見ていた。経済・社会の体質が島国の英国と大陸欧州とではまったく違う。欧州統合の理念はドイツとフランスが再び戦争を起こさないための共同体形成という外交・安全保障上のテーマから出発している。その後、だんだん経済統合へと進んでいったが、原点は欧州防衛共同体を志向したものであった。ところが、英国はそうした意識は非常に稀薄だった。 1960年代末から1970年代にかけて、英国経済は非常に低迷した。一方で、統合欧州は欧州経済共同体<EEC>として関税同盟を作った初期の効果が大きく、成長力が高まって市場も拡大していった。そのため、経済的にその流れに乗りたいという実益的発想から、英国も加盟を考えるようになった。 そうした英国の狙いとか体質の違いを、フランスのシャルル・ド・ゴール大統領(当時)はよく見抜いていて、「島国体質の彼らとわれわれの考えは合わない」と拒否し、ド・ゴールが死ぬまで英国は入れてもらえなかった。「アメリカの傀儡であり、トロイの馬である」と語ったことは有名だ。だが、アメリカにそこまでの考えがなく、その点では結果的に取り越し苦労だった。 だが、外交・安全保障に基づく理念先行の大陸と実益・経済優先のイギリスの体質の違いはド・ゴールの指摘のとおりだった。加盟当初からボタンの掛け違いのようなことは目立ち、見返りが少ないことにカネばかり出さされて、と英国が不満に思うことは今に始まったことではない。 統合欧州は理念先行、政治先行、外交・安全保障先行なので、実益はともかく、とにかく最初にルールをしっかり決めよう、形を作ろうとするのがやり方だ。国々がひしめき合って、ひとまたぎで国境を超えられるので、ルールを決めないとカオスになってしまう、という現実もある。イギリスは海賊国で海に出たら何が起こるかわからない、成り行きでその場その場で最も実益の高い選択をする。だから、最初から入らなければ、こんな騒ぎにもならなかった、というのが私の印象だ』、確かに「外交・安全保障に基づく理念先行の大陸と実益・経済優先のイギリスの体質の違い」を見抜いて英国のEEC加盟に反対したド・ゴール大統領は、先見の明があったことになる。
・『Q:なぜ、国民投票から2年たっても、離脱できないほど混乱してしまったのでしょうか。 A:出て行くと決めた後の英国は無様(ぶざま)で、見ていて情けない。離脱派議員は「EU側とまともに交渉すると、敵の術中にはまる」「ブリュッセルが言うことはすべて罠だ」「隷属国家になる」などと疑心暗鬼で、「われわれのペースで物事を決めるのだ」と意固地になったりして、大人げない。 こうしたことは英国らしくなく、もっと、プラグマティックで実務的に物事を進めていくのが英国流だったはずだ。なぜ感情的になって脅し文句みたいなことをほざいて、作業を遅らせているのだろうか。知人と話をしてみると、当の英国人たちも驚いているようだ。 従来、加盟に反対してきた良識的な離脱派が政治の一線から退き、幼児化した政治家が前面に出たことが原因だとみている。昔のジェントルマン政治家であれば、もっと淡々と実務を進めていっただろう。具体的なことは官僚どうしで詰めていけばよい話だ』、民主主義のお手本だった国でも、「幼児化した政治家が前面に出たことが原因」とはいやはやと呆れるしかない。
・『アイルランド問題を事前に示さなかった責任  離脱協定案に反対しているいわゆる離脱強硬派といわれる人たちは、私に言わせれば発作的離脱派、離脱過激派だ。ボリス・ジョンソン前外相やジェイコブ・リースモグ議員などだが、彼らはいわゆる昔のイングランド民族主義者だ。旧・支配階級に属するので古色蒼然たる「大英帝国よ、もう一度」といった発想もある。彼らはよく「take back control(舵取り力を取り戻せ)」 というが、これまでEUにそんなに牛耳られていたわけでもない。 そもそも混乱の一因として彼らは国民投票の前にウソを言っていたことが大きい。意図的、感情的にEUの分担金とか移民問題などで不当にEUを非難したりした。彼らの過激な発言を聞いて、扇動されたのが、世の中の活況や一段と富裕化する富裕層から置いてけぼりを食らったと感じてきた庶民と貧困層だ。アメリカ的にいえばプアホワイト的な人々だ。アメリカのトランプ支持者と重なる部分が明らかにある。 Q:デイヴィド・キャメロン前首相は、国民投票でブレグジットは否決されると考えていた。そもそも、保守党は単独過半数を取れないので、公約した国民投票をやらなくて済む、と思っていたと後に話しました。 A:伝家の宝刀を抜くときは、どちらに転んでも大丈夫な準備をしてやるものだが、甘かった。 もしも、もっとまともに将来の英国・EU関係について考えていたのなら、国民投票をやると言い出す前に英国の北アイルランド地方とアイルランド共和国との関係の問題について慎重に慎重を期して考えて、この問題について国民の注意を喚起していたはずだ。そして、それでも離脱という投票結果が出た場合に備えて、北アイルランド・アイルランド共和国間の国境について、離脱後にどのように対応するつもりであるのかを国民に示していたはずである。 現状では、この陸上国境は事実上のフリーパス状態になっている。英国とアイルランド共和国がいずれもEU加盟国だからだ。だが、離脱後には状況が変わる。それでも、フリーパス状態を維持するのか。そうではないのか。そうではなくなることは、国境周辺におけるテロの再発につながるかもしれない。だが、フリーパス状態を維持すれば、それはブレクジットが尻抜けになることを意味する。このような状況に関する対応が、「合意ある離脱」への大きな障害物となっている。 最大の難関となっているこの問題について、国民投票前に国民の注意を喚起しなかった。この点については、大いに責任を問われて然るべきところだ。あの国民投票について、それを仕掛けた人々が何と甘く考えていたことか』、キャメロン前首相は「国民投票でブレグジットは否決されると考えていた」というのも甘いし、「伝家の宝刀を抜くときは、どちらに転んでも大丈夫な準備をしてやるものだが、甘かった」というのはその通りだ。
・『EUの通貨統合は苦しくなるばかりだ  Q:英国以外の国でもEUに対する不満、EUエリートがルールを決めていくことへの抵抗感は高まっています。 A:欧州統合の推進者たちは、「偉大な欧州」の実現に向けて、統合の理念を高く掲げ、その理念に対応した設計図に現実をあわせていくことこそ自分たちの使命だと考えて来た。その系譜を受け継いでいるのが、今、前述の庶民たちから「エリート層」として嫌がられている政治家や論者たちだ。 東欧から加盟してきた小さい国々は自分たちのサイズ、体型をEU型に合わせられ、いわば窮屈だったり、ぶかぶかだったりする服を無理してまとうことにあまりメリットがないなと感じ始めた。とくに、高飛車にルールを押しつけてくるドイツやフランスには怒りを感じている。後から入った国だけでなく、最近は初期メンバーであるイタリアもそうした姿勢を強めている。 Q:英国は通貨統合に入っていませんが、ユーロはドイツにとっては弱すぎ、南欧諸国にとっては強すぎて、いびつです。これを解決するために銀行同盟や財政同盟などユーロを軸とした政策が進められています。そうしたことも問題になったのではないでしょうか。 A:それはある。通貨統合は次元の違うハードルの高さだった。各国の経済状況が異なる中で、金利が1本というのは無理な話で、これをやってしまったことで、経済に変調を来している。この無理な体制を維持しようと思えば、結局のところ、加盟国たちに対する政策的締め付けを強化し、窮屈な収斂と平準化を押しつけていくほかはない。 そうすればするほど、国々は窮屈さが増し、憤懣が蓄積する。そろそろ、ひたすら統合の深化を進めなければならないという発想から離れて、わが道を行くこともできる方法を模索すべきではないか。むろん、EU官僚はそのような発想はしないだろうが』、EU創設メンバーの1つであるイタリアに緊縮策を押し付けたこともあって、ポピュリスト政権誕生を招いたことは深刻だ。
・『Q:英国はEUを離脱してどんな姿を目指すのでしょうか。 A:メイ首相は、離脱という国民投票結果を受けて、これからの英国は「グローバル・ブリテン」を目指すと言った。あれは決して悪くないイメージだったと思う。EUという名の閉鎖的な経済空間に閉じこもるのを止めて、どこの国ともオープンに開かれた経済を実現していく。大海原に乗り出して行く英国的海賊魂の再発見だ。 大航海時代じゃあるまいし、そんなのは時代錯誤的幻想だ、という識者は多い。だが、実をいえば、この開放性こそグローバル時代によくマッチしていると私は思う。WTOの掲げた「自由、無差別、互恵」は、本当はすべての国がそうあるべきだが、そのように行動できないところが問題だ。 ただ、メイ首相も「グローバル・ブリテン」という言葉が本来持っている意味を実現していく気合いが十分入っているのかどうかは実に疑わしい。自分が言ったことの本当の意味がわかっていなかったようだ。 英国もあるときから英国らしくなくなった。敗北の甘い香り、老大国としての英国、これを私は「老いらく(楽)の国」と名づけたが、それはダメだとマーガレット・サッチャー元首相が「成長だ、成長だ」と尻をひっぱたいた。労働組合をぶっ潰し、インフラを民営化し、証券制度改革「ビッグバン」を進めた。これが意外に上手くいって外国からの投資を呼び込むことに成功した。ただし、格差は拡がっていった。 さらに、サッチャーの路線を継承し、かつ軟弱化し幼稚化したのがトニー・ブレア元首相。彼は労働党だけれども、政策はサッチャーに似ている。アホノミクスが掲げる「クールジャパン」はブレアの「クールブリタニア」のぱくり。その頃、ダイアナ妃が世界的なブームになったこともあって、すっかり舞い上がり、オリンピックまでやってしまった。このころから落ち着いて物を考えられなくなったのではないか』、「「クールジャパン」はブレアの「クールブリタニア」のぱくり」というのは初耳だが、「クールジャパン」の方がさんざんミソがついてしまったようだ。
・『偽預言者が掲げる耳心地よいスローガンに警戒せよ  Q:ポピュリズムの跋扈は世界的な現象と言われていますが、民主主義、議院内閣制発祥の英国でも同様というわけですね。 A:その罠に陥る隙が次第に世界的な広がりを持つようになってしまっている。それが怖い。英国は大人の国のようであって、徹底的に何でもありな面もある。この面を助長する力学が巣食い始めることが心配だ。やはり格差が広がっている事が背景にある。いわゆるエリートたちと庶民の上手な共存と支え合いが英国の絶妙な二人三脚だったはずだが、そこが崩れてきている。 そういうところに、幼稚な政治家が単純にして明快なメッセージを振りかざす。ブレクジットの英国では、それがtake back controlというスローガンになった。アメリカでは「アメリカ・ファースト」。日本では「強い日本を取り戻す」とか、「世界の真ん中で輝く国創り」とか、目指すは「一億総活躍社会」だなどという国威発揚・総動員体制的な号令になる。いずれも、偽予言者が発する、耳心地よい単純なスローガンだ。 しかし、格差は成長によって解決できるわけではない。モノは有り余っているが、上手く分かち合いができていないことが問題で、必要なのは再分配だ。偽予言者はそのことを語らない。さらに、幼稚な政治家は弱虫なので、弱いものいじめや反対する人への凶暴性を発揮したりすることに注意が必要だ。ハンガリー、ポーランド、チェコ、ルーマニアでもそういう右翼的な指導者が政権を取っている。洋の東西を問わず、どうも、偽預言者の大量発生症候群が顕著だ。警戒しなければならない』、「偽預言者の大量発生症候群」とは本当に困ったことだ。そのうち、現実の壁にぶつかって、正気を取り戻すのだろうか。

次に、4月5日付けNews Week日本版「グレン・カール CIAが視る世界:鉄の女サッチャーとは程遠い、氷の首相メイの罪と罰」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2019/04/post-22_1.php
・『ブレグジットを漂流させた最大の戦犯はテリーザ・メイ――今からでも「残留」に舵を切るべきだ  本人は嫌がっているが、テリーザ・メイ英首相は「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャー元首相とよく比較される。 女性でイギリスの首相になったのはこの2人だけだ。いずれも保守党の党首だが、野党からも変革と近代化の担い手と目されていて、共にオックスフォード大学の出身。移行期間もEUとの合意もない「ハードブレグジット」の可能性が高まるなか、メイが驚異の粘り腰を見せているのも、たぶんサッチャー並みに鉄壁の頑固さを持ち合わせているからだろう。 しかし2人には違いもある。サッチャーが強いイギリスの復活について明確なビジョンと目標を持ち、鉄のように固い決意で突き進んだのに対し、メイは政治家の役割を「何かをすることであり、何者かであることではない」と考える。だが16世紀フランスの哲学者モンテーニュの言葉を借りるなら、かつて世界の海を制した偉大な国の指導者たる者は、「行く先の定まらぬ船にはどんな風も役に立たぬ」ことを知るべきだ。 ところが今はメイ政権の閣僚でさえ、首相自身がどこに行き先を定めているのか分からずにいる。だから国民は互いに矛盾する幾多の願望(主権の回復、国境の開放、入国管理の強化、自由貿易、移民の排除、大国の地位、等々)が渦巻く海を漂うのみで、イギリスという船は困窮と影響力の低下へとまっしぐらに進んでいる。 歴史を振り返れば、回避できるのに自滅の道を選んだ国は皆無に等しい。稀有な例は、例えば1861年のアメリカだろう。当時の大統領は、国が2つに引き裂かれていくのを手をこまねいて見つめるのみで、流れを変えるための行動を起こさなかった。結果としてこの年に南北戦争が起こり、国は分断された』、確かにメイ首相が政治家の役割を勘違いしていることが、混乱を大きくしているようだ。
・『「民意」に引きずられるな  メイも確かに国を導こうと努めた(ただし不合理な民意にクギを刺すことはなかった)が、EU離脱が現実になればイギリスは空中分解しかねない。スコットランドやウェールズ、さらには北アイルランドがEU残留を望み、連合王国を去る可能性がある。いずれにせよ、時間がない。このまま期限が過ぎて合意なき離脱となれば、この国の影響力は低下し、国民は貧しくなる。代わりに得られるものは......偽りのプライドのみだ。 16年の国民投票では、確かに国民の52%がEU離脱を選んだ。しかし国民の大半は、どんな離脱のシナリオでも避け難い経済成長の鈍化を望んでいない(あるいは「避け難い」という事実から目を背けている)。それでもメイは民主主義の原則に忠実で、国民投票で民意が示された以上、その意思に従うべきであり、そうでなければ民主主義が失われると考えている。 国民投票の段階で、メイはEU離脱に反対していた。しかし国民投票で離脱派が勝ち、その20日後に首相に推されてからの彼女は一貫して「ソフトブレグジット」なるものを目指してきた。EU市場との良好な関係を維持し、EUの定めた各種規制もある程度は受け入れるという立場だ。そしてどうにか政権を維持してきた。 しかし彼女の行動は真の「指導者」にふさわしいものではなかった。一国の指導者たる者は、とりわけ危機的な状況で政策や法制などの複雑な問題の判断を迫られたとき、民意に引きずられてはならない。 国民投票のような直接民主主義で効果的な統治はできない。国民は互いに相いれない主張や願望を星の数ほども掲げるのみで、直面する問題の全容や個々の政策に関する決定の複雑な部分までは理解できない。 ところがメイ首相は、国民投票で示された民意を実行するだけの技術者と化している。船長が進むべき方角を指し示せないようでは、イギリスという船は漂うのみ。残された選択肢は少なく、どれを取っても国の、そして民主主義の衰退につながるだろう。 18世紀のフランスの思想家モンテスキューは、原則重視も度が過ぎれば失政につながると教えてくれた。アメリカ屈指の偉大な大統領だったエイブラハム・リンカーンは、個々の法律や原則を守るために国全体が滅びることがあってはならないと言った。 保守主義、とりわけイギリス的保守主義の伝統にも学ぶべき教訓がある。約250年前、保守主義の偉大な思想家であったエドマンド・バークは、選挙で選ばれた人物が単に多数意見を実現するためだけに行動すれば国民の信頼と自らの責務を裏切ることになると警告している。 「諸君(国民)を代表する人物には、勤勉さだけでなく判断力が求められる」。バークはそう言っている。「もしも彼があなた方の意見のために自分の判断を曲げることがあれば、彼はあなた方のために働いたのではなく、あなた方を裏切ったことになる」』、「メイ首相は、国民投票で示された民意を実行するだけの技術者と化している。船長が進むべき方角を指し示せないようでは、イギリスという船は漂うのみ。残された選択肢は少なく、どれを取っても国の、そして民主主義の衰退につながるだろう」との手厳しい批判はその通りだ。メイ首相は何故こうしたことに気付かないのだろう。
・『管理者ではなく指導者たれ  つまりこういうことだ。メイは投票で示された民意を実行することが民主主義の原則に従うことだと信じているが、それこそが彼女の目指す民主主義の凋落を招き、国民の意思を裏切ることになるのだ。 今のイギリスはブレグジットをめぐって真っ二つに、絶望的なほどに分断されている。極めて難しい状態だ。この状況に、メイの官僚的な冷静さはふさわしくない。惨敗必至と思われるなら、指導者はゲームのルールを変えなければならない。 彼女はイギリスのEU残留を強く主張すべきだった。国民に対して、自分は国民の一貫性がなく自滅型の衝動を統括するのではなく、公共の利益のために自らの決断力と指導力を行使すると告げるべきだった。そしてEU離脱の是非をめぐる2度目の国民投票の実施を呼び掛けるべきだった。 自分の意見を控えることは指導力ではない。民主主義において求められるのは、一貫性を欠き破壊的な国民の願望に指導者が従うことではなく、国民の生活にとって重要な問題について明確な決断を下すことだ。 メイの個人としての政治的目標の欠如、技術的な凡庸さ、問題を過度に単純化した(つまりばかげた)国民投票の結果への固執は、彼女が「鉄の女」とは程遠いことを示している。 危機、それも国の存続に関わる危機の際、指導者は進むべき方向を選び、混乱と矛盾に満ちた国民の気まぐれを拒絶しなければならない。単なる管理運営者にとどまることを拒み、国民を率いなければならない。 それができれば、メイはイギリスを救うことができるはずだ。それが彼女個人の政治的な破滅を意味するとしても構わないではないか。彼女は偉大な連合王国の素晴らしい遺産に沿った行動を取ることになるのだから。たとえその偉大な国が、今は未熟な国民投票で示された社会的・経済的なストレスのせいで今にも分裂しそうな状態にあるとしても』、正論である。願わくば、メイ首相がこの記事を読んで、政治スタイルを一変させることだが、いまや遅すぎるのかも知れない。

第三に、在独ジャーナリストの熊谷 徹氏が4月11日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「BREXIT再延期が浮き彫りにする、英国・EU危機の深淵」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/041100035/?P=1
・『興味深いのは、EU(欧州連合)のドナルド・トゥスク大統領が延期についての合意をツイッターで発表した、4月11日午前1時57分という時刻だ。 各国の首脳たちは前日の午後6時に会議を始め、日付が変わるまで合意に達することができなかった。これは、延期の是非について激しい議論が行われたことを示している』、確かに異例の長時間会議だ。
・『「EUはBREXITの人質にされる」  BREXIT(英国のEU離脱)の期限はまず3月29日から4月12日に延ばされた後、テリーザ・メイ英首相が6月末までの延期を要請していた。 EU側の態度も一枚岩ではない。EUの事実上のリーダー国ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、前日のメイ首相との個別会談で、期限の延期について比較的柔軟な態度を示していた。 これに対し、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はメルケル氏よりも延期に批判的な態度を取ってきた。同氏は首脳会議の前に「延期を認めるには、英国政府が具体的なスケジュールを示すことが条件だ」と発言した。会議が8時間近く続いたことは、メイ首相がBREXITに向けての具体的なプランを他国の首脳たちに示すことができず、フランスなどが強く反発したことを示唆している。 マクロン大統領は会議の後「今後数カ月の間に、BREXITをめぐる協議がEUの他のプロジェクトを危険にさらすのを避けることが不可欠だ。我々は欧州を再生させなくてはならない。BREXITがこのプロジェクトを妨害してはならない」というコメントを発表している。またベルギーのシャルル・ミシェル首相も「私は英国議会が抱える問題の人質にされるのはごめんだ」と語っている』、マクロン大統領の言い分ももっともで、ベルギー首相も相乗りしたようだ。
・『EU改革プロジェクトに遅れ  マクロン大統領がBREXITの延期について批判的である理由は、彼がドイツと共同で主導権を取って、EUの競争力を強化するためのプロジェクトを始めようとしているからだ。具体的には、欧州にデジタル化を担当する新しい官庁を設置し、中国や米国に比べて遅れている人工知能の研究開発を加速する。 またEUは対米政策でも難題を抱えている。ドナルド・トランプ大統領が率いる米国との関係は、日に日に悪化している。貿易摩擦は日ごとに深刻化し、米国はEU加盟国から輸入する自動車の関税を大幅に引き上げる可能性がある。これはモノづくり大国ドイツに深刻な打撃を与える。 さらにトランプ氏は、欧州防衛の要だった軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)についても批判的な姿勢を強めている。欧州諸国は、米国抜きでも局地紛争などに対応できる態勢をこれまで以上に整えなくてはならない。 さらにEUでは、財政難に苦しむ東欧諸国と南欧諸国を中心に、中国の一帯一路計画に参加する国が増えており、対中戦略において足並みの乱れが生じている。このためEUは統率の取れた対中戦略について一刻も早く合意し、加盟国に対して「抜け駆け」を禁じる必要がある。 だが今年1月以来、EUはBREXITへの対応に時間を割かれてしまい、首脳会議を開いてもこれらの重要な議題について十分に協議することができない状態が続いている。誰も公には言わないが、「BREXITをめぐる協議に一刻も早く決着をつけてほしい」というのがEU側の本音である。 EUはメイ首相との間で合意したBREXIT協定案の内容を変更することを拒否している。したがってEUが柔軟性を示すことができるのは、BREXITの期日だけである。しかし、EUは今回6カ月以上も期日を延期することで、BREXITをめぐる協議が延々と続く危険を抱え込んだ。英国側は「EUは意外と柔軟ではないか。結局合意なしのBREXITが怖いに違いない」と思うだろう。 10月末の期日が近づいた時、英国政府が再び延期を求める可能性もある。EUが英国議会の人質に取られ、他の議題がおろそかにされるという危険は誇張ではない』、「EUが柔軟性を示すことができるのは、BREXITの期日だけ」というのは、初めて知って、今回の延期の意味が理解できた。
・『英国の欧州議会選挙参加への懸念  さらにマクロン大統領らを心配させているのが、5月23日~26日に行われる欧州議会選挙である。 当初EU側は、英国をこの選挙に参加させない方針だった。EUを離脱しようとしている英国の議員を欧州議会に参加させた場合、立法過程に問題が生じる恐れがあるからだ。 たとえば将来ある法案が欧州議会で可決され、賛成した議員の中に英国からの議員が含まれていたとしよう。今年秋に英国がEUを離脱した場合、他の国の議員が「EUの加盟国ではない英国の議員が投じた票は無効だ」と主張して、法案の撤回または採決のやり直しを求める声が出る可能性がある。 したがってEU側は当初「BREXITの期限は、どんなに延ばしても欧州議会選挙直前の5月22日まで」と主張していた。EU加盟国の首脳は、英国が欧州議会選挙に参加した場合、BREXITの混乱がEUに飛び火すると危惧しているのだ。 EU側がBREXITの期限を10月末まで延ばしたことは、欧州議会が法案の妥当性に関するリスクを抱え込んだことを意味する』、「英国が欧州議会選挙に参加」すると、確かにややこしいことになりそうだ。
・『メイ首相の無策への絶望感?  EU加盟国は、絶対に譲れない「レッド・ライン」としていた5月22日の防衛線をなぜあっさり放棄したのだろうか。メイ首相のBREXIT協定案は、今年1月以降すでに3回も英国議会下院で否決されている。メイ首相は最近、野党労働党のジェレミー・コービン党首と打開策を協議し始めた。コービン氏はあわよくば保守党政権を打倒し、自分が首相になることを狙っている人物だ。自分の党すら統御できない首相が、野党党首に自分の提案をすんなりと受け入れさせることができるとは到底考えられない。 EU側は英国に5月22日まで猶予を与えても、メイ首相が協定案を英国議会で通過させることは不可能だと判断したのだ。つまり2カ月程度の延期では解決策とならないほど、メイ首相は手持ちのカードがなくなっているのだ。 欧州議会選挙では、イタリアやドイツ、フランスなどの右派ポピュリスト政党による会派が、得票率を伸ばすことを狙っている。BREXITをめぐりEUと英国政府が陥った袋小路は、ポピュリスト政党にとって「伝統政党の統治能力が欠如している」ことを有権者にアピールする上で、絶好の材料となるだろう。欧州が歩みつつある暗夜行路の終着点は、まだ当分見えそうにない』、「ポピュリスト政党にとって「伝統政党の統治能力が欠如している」ことを有権者にアピールする上で、絶好の材料となる」というのは本当にマズイことだが、英国では「伝統政党の統治能力が欠如」していることは事実なのでしょうがないようだ。

第四に、みずほ総合研究所 上席主任エコノミストの吉田 健一郎氏が4月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「英国のEU離脱は労働党との妥協で「穏健路線」に 10月31日までの離脱期限延期で何が起きるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/276403
・『4月10日に開催されたEU首脳会合では、英国のEU(欧州連合)離脱期限が2019年10月31日まで延期されることが決まった。英国のテリーザ・メイ首相は、19年6月30日までの離脱期限延期を要請していたが、EU側は離脱方針が定まらない中での短い延期を認めなかった。 延期期間をめぐっては、19年6月30日までの短期間の延期を主張するフランスと、19年12月までの長めの延期を主張するドイツなどが対立し、結果的に双方の主張の間をとって、10月31日までの延期となった。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、英国がEUに長い間とどまることで、例えば新首相が強硬離脱派議員の中から選ばれ、EU統合の深化を妨げるような政策をとる事態を懸念しているとされる。 離脱期限延期は「前倒し離脱条件付き」とされ、英下院での離脱協定批准とEUとの最終合意など離脱の条件が整えば、10月末を待たずに離脱することが可能とされた。また、6月末の時点で、英国側の離脱協定批准に向けた行動のチェックが行われることとなった。英政府はできる限り早期の離脱を目指すが、EU法によって5月23~26日の欧州議会選挙への参加準備を進めることとなった。 新たに与えられた約6カ月の猶予期間に何が起こるのか。以下では、まず短期的に想定されるシナリオを整理し、そのうえでブレグジット(英国のEU離脱)の着地点について考察する』、「マクロン大統領は、英国がEUに長い間とどまることで、例えば新首相が強硬離脱派議員の中から選ばれ、EU統合の深化を妨げるような政策をとる事態を懸念している」、というのは納得できる話だ。
・『英国がEUと離脱協定を締結し、ブレグジットが実現するまでの道のりはまだ長く、不透明である。 まず英政府は、メイ首相がすでに与党の強硬離脱派の説得をあきらめたため、野党労働党と離脱後の英・EUの将来関係について合意を目指し(以下「与野党合意」とする)、英議会でのコンセンサス形成を狙うこととなる。その上で、昨年11月に英政府・EU間で合意された「EUと英国の将来関係を定めた政治宣言(Political Declaration)」の修正交渉をEUと行うことになろう。EUが政治宣言の修正に応じた場合、同じく昨年11月に合意された「離脱協定(Withdrawal Agreement)」と政治宣言を英下院での採決にかけ、ブレグジットに必要な英下院の承認を目指す』、「前倒し離脱条件付き」とはいえ半年も延びると議会内の緊張感も薄らぎ、妥協意欲を削ぐのではと懸念される。
・『労働党は「ボリス・プルーフ」な合意を要求  労働党への協力要請は、英政府が穏健な離脱路線に方向転換することを意味している。労働党に協力を要請する以上、英政府は労働党の要求に応じる必要がある。ジェレミー・コービン党首が率いる労働党は、EUとの関税同盟の締結やEU単一市場との緊密な関係の維持を党の方針としている。同党は、離脱協議の結果の是非を問う再国民投票を容認しており、これは離脱の取りやめにつながりうる。 労働党は首相が誰であれ与野党合意が維持されるような法的保証を英政府に求める公算が大きい。メイ首相は、EUとの離脱協定が締結された後 辞任する意向を示している。労働党からすれば、辞任後の新首相がボリス・ジョンソン前外相のような保守党の強硬離脱派であった場合でも与野党合意が守られていなければ、合意の意味がない。英タイムズ紙は、こうした法的保証付きの与野党合意を「ウォーター・プルーフ」ならぬ「ボリス・プルーフ」付き合意と報じている。 与野党合意が成立した場合、英国ではこの合意内容を反映させるべく、おそらく政治宣言の変更交渉をEUと行うことになろう。この結果、EUとの合意がなされれば、EU離脱法に基づき、離脱協定と政治宣言が英下院採決にかけられることとなる。 4度目となる下院採決のポイントは、保守党の強硬離脱派造反による賛成票の減少を、労働党の穏健離脱派による賛成票の増加で補えるかという点となる。与野党合意の内容によるが、EUと関税同盟締結などの穏健な離脱路線が明記された場合、保守党内の強硬離脱派の大量造反が予想される。 労働党との交渉が決裂したり、4度目の下院採決が否決されたりした場合、メイ政権は、今後のブレグジットの方向性を問う採決を行う予定である。ここではいくつかの選択肢が採決にかけられる予定である。過去の「示唆的投票」の結果を踏まえると、選択肢としてはEU関税同盟への残留や、国民投票の再実施などが考えられる。保守党が従来より目指している包括的なFTA(自由貿易協定)といった選択肢が含まれる可能性もある』、レームダックになったメイ首相が、「「ボリス・プルーフ」付き合意」を結べる可能性は低いのではなかろうか。
・『合意できなければ、解散総選挙しかない  それでも英下院でブレグジットの方向性が定まらなければ、いよいよ英下院におけるコンセンサス形成は行き詰まる。この場合、英政府の選択肢としては、「合意なき離脱(ノーディール・ブレグジット)」、「解散総選挙の実施」、「国民投票の再実施」などが考えられる。英下院は過半の議員が合意なき離脱には反対しており、英下院がこれを選択する公算は小さい。国民投票の再実施については、労働党政権への政権交代が必要なのではないかと筆者はみている。 その場合、残された手段としては解散総選挙しかないだろう。英調査会社YouGovが4月2~3日に行った支持率調査では保守・労働両党の支持率は拮抗している(保守党32%、労働党31%)。 解散総選挙や国民投票の再実施になった場合、10月31日の離脱期限に間に合わず、英国は再度EUに対して離脱期限の延期要請に追い込まれる可能性がある。しかし、今回のEU首脳会合における、離脱期限の延期に対するフランスの厳しい姿勢を踏まえると、EU側がさらなる離脱延期を認めるかは定かではない。EUが離脱期限の延期を認めなければ、合意なき離脱となる可能性がある。 ブレグジットの先行きは複雑で不透明だが、「合意のある離脱」、「合意なき離脱」、「離脱取りやめ」といった可能性のうち、最終的には合意のある離脱が実現するだろう。合意なき離脱は英・EU共にメリットがなく、そういった事態は発生しないと予想している。 合意のある離脱では、離脱協定が合意の基本となる。メイ首相が交渉した離脱協定はEUも承認したもので、EUはこの協定以外の離脱協定を受け入れる姿勢は示していないからだ。英国は、離脱協定に基づく離脱の後、EUとの関税同盟締結や単一市場残留のような穏健な離脱を目指すのか、EUとFTAを締結するなどややEUと距離を置く将来関係にするのか、あるいはWTO(世界貿易機構)ルールの下で何の協定も結ばないのかといった選択を迫られる』、「合意なき離脱は英・EU共にメリットがなく、そういった事態は発生しないと予想している」という見立てで、一安心した。
・『「離脱取りやめ」もハードルが多すぎる  ブレグジット後の英・EU関係は、「離脱協定+関税同盟」、「離脱協定+FTA」、「離脱協定+WTO」などからの選択となるが、現在は「離脱協定+関税同盟」が選択される可能性が相対的に高まっている。英国が離脱協定の修正をあくまで望むことは可能だが、そのうちアイルランド島のバック・ストップ問題に関する部分の修正に、EU側は応じていない。今後英側で離脱強硬派政権が誕生した場合であっても、EU側の対応は変わらないだろう。 「離脱取りやめ」については、その可能性は高まっているものの、英下院で過半の支持を得るには至っていないうえ、実施までには越えねばならないハードルが多い。解散総選挙の実施や、そしておそらく労働党への政権交代が必要であり、その上で国民投票法を成立させ、国民投票で「EU残留」という結果を得る必要がある。これらの実現には1年以上かかる可能性が指摘されており、再国民投票実施の場合には、離脱期限の再延期が必要になる。 他方で、「合意なき離脱」については、現在の英下院がこれを能動的に選択する可能性は低い。また、仮に解散総選挙になったとしても、世論は合意なき離脱を支持していないので、合意なき離脱を支持するような強硬離脱派議員が過半を占める下院になるとは考えにくい。 10月末までに英下院での方向性が定まらなければ解散総選挙の可能性が高まり、やはり離脱期限の再延期が必要になる。しかし、前述のとおりフランスが今回の首脳会合で示した厳しい姿勢を踏まえると、10月に離脱期限の再延期を申請する場合のハードルは今回よりも高いものとなろう。 そのため、EU側が英国の離脱期限延期要求を認めずに、なし崩し的に離脱期限が過ぎてしまい、合意なき離脱が事故的に起きるシナリオがありうるが、実際にはそれも考えづらい。合意なき離脱の容認は、EUにとっても非常に危険な賭けであるからだ。合意なき離脱に伴う不確実性の上昇によりEUが景気後退に陥るリスクが高まれば、最終的には失業率の上昇を通じて政治的な不安定化にもつながる可能性がある。 英国が実際にEUを離脱するのはいつになるのか。英国で与野党合意に成功すれば、5月22日までに英国は離脱することになる。他方で、英下院の方針が定まらずにメイ首相が辞任し、解散総選挙となれば、10月末までブレグジットはもつれ込むことになる』、EU離脱問題のニュースには「いい加減にしろ」と食傷気味ではあるが、まだまだ気が抜けない状態が半年間も続くようだ。
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