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保育園(待機児童)問題(その9)(A.L.C.貝塚学院「破綻騒動」の内幕をすべて明かす!元従業員の怒りの内部告発、破綻騒動のA.L.C.貝塚学院 保護者説明会を開催 今の月謝は「国内最安」と認識、安倍政権の子育て分断政策で「認可外幼稚園」倒産激増危機、保育事故の検証報告書を読む その1 ~神奈川県葉山町のケース~、保育事故の検証報告書を読む その2 ~東京都事業所内保育所のケース~) [社会]

昨日に続いて、保育園(待機児童)問題(その9)(A.L.C.貝塚学院「破綻騒動」の内幕をすべて明かす!元従業員の怒りの内部告発、破綻騒動のA.L.C.貝塚学院 保護者説明会を開催 今の月謝は「国内最安」と認識、安倍政権の子育て分断政策で「認可外幼稚園」倒産激増危機、保育事故の検証報告書を読む その1 ~神奈川県葉山町のケース~、保育事故の検証報告書を読む その2 ~東京都事業所内保育所のケース~)を取上げよう。

先ずは、3月30日付けダイヤモンド・オンライン「A.L.C.貝塚学院「破綻騒動」の内幕をすべて明かす!元従業員の怒りの内部告発」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/198474
・『既報の通り、認可外幼稚園「A.L.C.貝塚学院」(以下、貝塚学院)などを運営する有限会社アメリカンラングエイジセンターの不透明な金の流れが明らかになっているが、週刊ダイヤモンドでは、同園の経営陣に近しい関係にあった元社員から、有力な証言を得た。破綻宣言から一転して事業譲渡へと翻ったのはなぜか、内部の複雑な組織と人間関係を解き明かす。 「社内の空気が変わったのは今年に入ってからのことでした」とAさんは振り返る。なんとなくだが、“何かが変わりそうだ”という雰囲気が経営陣から漂い始め、社員の間では「経営者が交代するのかもしれない」と噂になっていた。 それから数カ月後、社員に伝えられたのは非情な「解雇通告」だった。 解雇が言い渡された日は、保護者に園の閉鎖を伝えるメールが送られたのと同じ、3月26日だった。卒園式後で子どもたちはお休みであり、同社の子会社・株式会社ドゥ・シェイルが行っていた学童保育は、後に説明する鈴江菜穂子氏の指示で臨時休業になっていた日でもあったが、緊急会議と称されて従業員が2カ所に分けられて全員召集された。 そこで渡されたのが、写真の解雇通知だ。弁護士から、「破産手続きに入るので一斉解雇する。ここでサインしてほしい」と有無を言わさずその場で迫られた。そこまで会社が切迫した状態にあったとはその場にいた誰も知らず、動揺が広がった。その際に弁護士は、会社に3億円の負債があり、その大半は貝塚学院のものだと話したという。サインをした後は、私物だけを持って出て行ってと追い出された。 Aさんはドゥ・シェイル社で学童保育事業に携わっていたため、翌日も子どもたちに会う予定だった。「翌日の27日はみんなで遠足に行く予定だったんです。それどころか、今はみんなの連絡先もわからず、お詫びすらできませんでした」とやるせない気持ちをうち明ける。 ところが同日、保護者へのメールがきっかけで、事が世にさらされたことで、経営陣は慌てふためいたようだ。今度は「解雇通告をした弁護士が解任されたらしい」と同僚から連絡が入った。この解任された弁護士は破産処理のプロであったため、何か事態が変わったのではとAさんは察した』、認可外とはいえ幼稚園という教育事業を行っている経営主体とは思えないような、お粗末極まる騒動だ。「解任された弁護士は破産処理のプロ」というのも、プロであれば混乱を最小限にして処理する筈なので、二流なのだろう。
・『破綻から一転、事業継続へ  その予感は的中する。29日の保護者向け説明会では、一転してアメリカンラングエイジセンターは、傘下2園の事業継続の意向を示すことになる。 事業を引き継ぐ株式会社サンは、もともとは介護事業が長かったが、2年前に事業を売却し、現在は太陽光発電事業を行っており、幼児保育に関する経験はない。経営陣が織戸氏に頼み込み、急転直下のホワイトナイトになった可能性が高いが、具体的にはまだ詰め切れていないため、説明会では、鈴江氏が「事業はサンが引き継ぐ」との繰り返しに終始した。2度の説明会にサン社の織戸四郎代表取締役は現れなかったが、その後、保護者向けには直接メールでサン社から連絡が入ったようだ。 さらに、質疑応答では、肝心の「債券」という名の預かり金(詳細は既報記事参照)の返済に関して質問が続出したが、「債券も引き継いでいただくよう交渉している」と、経営陣は要領を得ない回答しかしなかった。 「じつは『債券』は在園生だけでなく、卒業生もずっと預けっぱなしということも多く、また数年前に貝塚学院が40周年を迎えた時には、『40周年債』を発行して、園児の保護者だけでなく近隣の方々まで購入していたりするんです。ここの園は保護者も愛着が強く、親の代からここ、という家庭もあり、長い間返金していないケースも多くあります」 約1億3000万円だと経営陣が説明した『債券』について、保護者には「学費を払えなくなった場合はこれで立て替える」と説明していたようだが、この預かり金がそもそもプールされていたのか、またサン社が引き継ぐ可能性があるのかもまったく不明だ。 「事業継続を宣言するにあたり、幼稚園教諭の引き留めを行なっているようです。しかし、話を聞くと、園児も教諭も半減する見込みのようです」とA氏は言う。 この園の売りの一つだったのは、A.L.C.アルファウイング(以下、アルファウイング)にあった自前のプールと独自の教育プログラムだ。しかし、プールは老朽化と費用の関係で4月以降は休止。教師もどこまで残るかはわからない。園児のほうも、4月の入園に向けて、すでに他の園に移ることが決まったケースも多い。 事業継続が決まった認可外幼稚園のほうはまだしも、学童保育の職員は全員解雇。施設は27日以降閉鎖されており、こちらの児童に関しては別の受け入れ先を説明会で示してはいたが、受け入れ先が学区と違う児童もおり、後は保護者任せにする算段のようだ。また、複合施設・川崎ルフロンなどにあった別の幼児教室も、同施設の改装後に再開予定だったが、教師たちが退職届けを出しているという。こちらに預かり金制度の有無が影響しているのかどうかは定かではない』、「園児も教諭も半減する見込み」というのは当然だろう。しかし、それで果たして事業継続できるのだろうか。
・『全てを知る「元代表」不在の保護者説明会  ここであらためて、この認可外幼稚園にまつわる人間関係について説明しよう。貝塚学院とアルファウイングの2園を運営していたラングエイジセンターの代表取締役には、園では「主事」と呼ばれていた鈴木美代子氏がいたが、実質的に園を取り仕切っていたのは、その姪である「部長」の鈴江奈穂子氏だった。 同社は、資本関係は不明だが、「子会社」として学童保育や幼児教育を行う株式会社ドゥ・シェイルを持っていた。貝塚学院でカリスマ指導者として有名だった阪口靜司氏は、その会社の代表取締役であり、今回の保護者向け説明会にも出席していた。 3月29日の保護者向け説明会の壇上には、長らく代表取締役だった鈴木美代子氏の姿はなく、代わりに母の坂本節子氏が終始無言で立ち尽くしていた。鈴木美代子氏の代表取締役辞任は、3月21日のこと。なぜそのタイミングで辞任していたのか、疑問が残る。 一方で、説明会を取り仕切っていた鈴江氏は、横浜で学校法人若葉台学院を経営。認可幼稚園や認可保育園、企業主導型保育所を運営しており、そのうちの一つは、なんとアルファウイングの建物の2階にある。幼稚園や保育所の経営を行っているにもかかわらず、同社の経営に近かった鈴江氏が、なぜ認可外幼稚園を引き取らず他社に譲渡するのか疑問が残るが、その点については保護者会でも説明はなかった。 とりあえず、このままアメリカンラングエイジセンターにあった2園を事業継続することで、事態を一旦収束させたいというのが経営陣の本音だろう。保護者向け説明会でも、「預かり金は返してもらえるのか」という保護者と、「事業が続くんだからそんな話はするな」という保護者とが対立する場面も見られた。子どもを預ける親からしてみれば、当然の感情だろう。 しかし、なぜこのタイミングで破産させようとしたのか、結局預かり金は原資が残っているのか、本当にサン社が預かり金まで引き継いで支払う予定があるのか、そもそも、この預かり金制度はどのような法的根拠があるのか、といったことが何も明らかになっていないままでは、当座をしのげたところで、説明会でも貝塚学院の赤字は450万円、アルファウイングの赤字は1100万円と話しており、状況は好転しない。解雇された社員の未払い賃金についても棚上げになっている状態で、「減額されるのではないか」という噂が飛び交っている。 真相を知るはずの鈴木美代子氏は、「体調不良」を理由に、説明会の場には出てこず、保護者からは「この期に及んで雲隠れか!」と怒りの声が上がった。不透明な組織と金の流れの解明には、まだ時間がかかりそうだ』、「カリスマ指導者」がいたとは驚きだ。「預かり金」は本来であれば出資法違反で刑法上の罪に問われる犯罪行為だ。ただ、不特定多数から集めるのではなく、関係者から集めるだけなので、見逃がしてもらう余地があるのかも知れない。いずれにしろ、破綻の真相、事業を引き継ぐサン社の能力、など不明な点が多いようだ。

次に、もう少し新しいところで、4月8日付けexciteニュースが東京商工リサーチの記事を転載した「破綻騒動のA.L.C.貝塚学院 保護者説明会を開催、今の月謝は「国内最安」と認識」を紹介しよう。
https://www.excite.co.jp/news/article/Tsr_analysis20190408_03/
・『認可外幼稚園(幼児教育施設)の「A.L.C.貝塚学院」(以下、貝塚学院)を運営していた(有)アメリカンラングエイジセンター(以下ALC)が事実上、経営破綻した問題で、支援企業が主催した保護者向け説明会が4月6日、川崎市内で開催された。 3億円の資金支援を表明している(株)サンの織戸四郎社長は、自身が貝塚学院の園長に就く意向を示した上で、会計や費用の透明化、業務効率化によるコスト削減を進める方針を明らかにした。 説明会は6日午前9時半から開かれた。貝塚学院側からは織戸社長のほか、運営担当者、職員2名が出席。冒頭、英語や体操に力を入れてきた貝塚学院の教育方針を堅持すると表明した。貝塚学院の担当者は、「料金表があるのかないのか分からない状況」だった利用料金の透明化や、経理処理に会計事務所が関与する体制に改めることを説明した。 月間2万5,000円~2万6,000円(送迎バスの利用料などは別)に設定した月額利用料(月謝)については、「この教育でこの利用料は国内最安」(同担当者)との認識を示した。 貝塚学院の不動産担保に不安の声 ALCは過去の不動産投資などから債務の履行が困難な状態に陥り、3月26日に突然保護者らに事業停止を通告し、社会問題化した。その後、太陽光事業を展開するサンが3億円の資金支援を申し出たことから、一転して事業の継続へと舵を切った。しかし、ALCが保有する貝塚学院の不動産には金融機関が合計4億5,000万円の根抵当権を設定している』、「過去の不動産投資などから債務の履行が困難な状態に陥り」というので、破綻の直接の原因は放漫な不動産投資にあったようだ。金融機関による「根抵当権設定」の問題をクリアするには、サンが債務ごと引き受ける必要がある。
・『6日の説明会では、保護者から「校舎の所有者の変更の可能性があるか」と質問が出た。これに対し、貝塚学院の担当者は「事業をサンが譲渡を受けるタイミングで、この物件も取得する方向で話を進めている。何かトラブルがあったとしてもこの園の存続が不可能になることはない」と断言した。 新入生の月謝は「値上げ」も 約2時間の説明会の後、報道陣の取材に織戸社長が応じた。貝塚学院の不動産担保について、織戸社長は「金融機関からの協力は最大限得られる。まだ(ALCの経営破綻が表面化して)10日なので、法的に確定した回答ではないが、園児を路頭に迷わせてはいけないという点で足並みは揃っている」と述べた。 また、「国内最安」とする月謝で学院運営の単月黒字化が可能か問われると、「そこも金融機関との調整だが、不可能ではない。ただ、新しく入る方には月謝の適正化、ある程度合理的な金額で入っていただくのが望ましい」と月謝の値上げを示唆した』、こんな騒ぎを起こしておいて、値上げとは強気だが、大丈夫なのだろうか。

第三に、3月30日付け日刊ゲンダイ「安倍政権の子育て分断政策で「認可外幼稚園」倒産激増危機」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/250745
・『川崎市で発覚した認可外幼稚園の閉鎖騒動。新年度目前の突然の“閉園通知”に保護者の困惑は大きい。結局、30日午後に行われた説明会で、地元企業の支援による継続が決まったものの、騒動の背景には10月から始まる幼児教育無償化をめぐる差別的な「選別」がある。今、各地の認可外幼稚園で“入園児離れ”が起こっているのだ。 経営が行き詰まり閉鎖した「A.L.C.貝塚学院」は、「無認可のため、10月から始まる幼保無償化の対象外で園児が集まらず継続が困難になった」と説明――。どういうことなのか。 安倍首相は一切、条件を付けずに「全ての子供たちの幼稚園や保育所を無償化します」(2017年11月の所信表明演説)と表明していたが、実は例外がある。 昨年6月の閣議決定では<3歳から5歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化する>とした上で<(それら)以外についても、保育の必要性があると認定された子供を対象として無償化する>とある。 認可施設は「全て」なのに、認可外は「保育の必要性」の条件付き。つまり、「保育可能」とみなされる専業主婦世帯が認可外幼稚園に子供を預けても、無償の対象にならない。まるで、子育て分断政策だ。 このため、認可外幼稚園の関係者から“入園者離れ”を懸念する悲鳴が上がっていた。50年以上の歴史がある認可外幼稚園(都内)の園長はこう言う。 「新年度は15人募集しましたが、6人しか集まりませんでした。認可外というのが少なからず影響したと思います」』、ALCの破綻も「安倍政権の子育て分断政策」が影響していたとは、この政策の裏面を再認識した。
・『半世紀以上の老舗が悲鳴を…  「ひばりが丘団地自治会たんぽぽ幼児教室」(西東京市)も認可外。1962年創立で、卒園した園児は900人を超える老舗である。同教室の平賀千秋部長が言う。 「10月からの無償化を見据えて、当園でなく、近くの認可幼稚園に流れたようです。例年、40人前後が入園するのですが、新年度は32人しか集まりませんでした。大幅な収入減になります。赤字にならないよう、バザーを開催するなど考えないといけませんね。何とか、認可幼稚園と同様に無償の対象にして欲しい」 半世紀以上も地域に根差し、愛されている施設が、「認可外」という理由だけで無償の対象外にされ苦しんでいる。 この問題を国会で追及している宮本徹衆院議員(共産)が言う。「認可外であっても、ちゃんと運営している施設は、国の責任で無償の対象とすべきです。差別的な選別で、良心的な運営をしている認可外の幼稚園が廃園に追い込まれるようなことがあってはいけません」 来年度予算が成立し、後半国会の焦点は幼児教育無償化法案だ。安倍首相は2月8日の衆院予算委員会で「無償化対象外でも地域や保護者のニーズに合った施設がある。国と地方が協力して支援していくことを検討させていただきたい」と答弁している。この約束をキッチリ守り、与野党を超えて、差別的な選別は是正すべきだ』、「半世紀以上も地域に根差し、愛されている施設が、「認可外」という理由だけで無償の対象外にされ苦しんでいる」というのは確かに問題だ。「差別的な選別は是正すべき」というのはその通りだ。共産党以外の野党のスタンスも知りたいところだ。

第四に、 小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長の山中龍宏氏が昨年8月30日付けYahooニュースに寄稿した「保育事故の検証報告書を読む その1 ~神奈川県葉山町のケース~」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamanakatatsuhiro/20180830-00095009/
・『はじめに  近年、教育・保育施設等における事故が社会的な問題となり、2014年6月に開催された第16回子ども・子育て会議において、「行政による事故の再発防止に関する取り組みのあり方等について検討すべき」と指摘された。これを受け、2014年9月に、内閣府、文部科学省、厚生労働省により「特定教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会」が設置された。私も委員の一人としてこの会議に参加した。 2015年12月に上記の検討会の最終とりまとめが出され、2016年3月、「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」が公表された。同時に、2016年3月31日付で「教育・保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的な検証について」という通知が国から出され、保育現場等で死亡事故が起こった場合には検証委員会を設置して検討し、その報告書を国に提出するよう求めている。それ以前は、死亡事故の検証は義務付けられておらず、遺族が署名を集めて陳情したりしなければ検証は行われなかった。2016年4月以降は、ほぼ自動的に検証委員会が設置されることになり、検証委員会から提出された報告書は公表され、自治体のホームページで誰でも見ることができるようになった。 また、30日以上の医療機関受診を必要とした事故についても報告することが義務付けられ、保育事故情報データベースとして公開されている。2018年3月末までに2016例が登録されている。 これまでに公表された検証報告書を読んで、「予防につなげる」という観点から問題点を指摘したい』、検証報告書を作成・公表することになったこと自体は、いいことだ。
・『事故の概要  保育中に転倒した6歳男児が帰宅後に死亡した事故が発生した。2016年12月13日午後4時ころ、神奈川県葉山町の公立保育園の園庭で追いかけっこをしていて、園庭と保育室のあいだにあるデッキの通路上を走っていたところ、デッキに置いてあったサッカーゴールの網に足を取られ転倒した。保育士が駆け寄り、全身状態を確認したところ意識は清明であった。以後、室内で安静にし、午後6時過ぎに祖母に引き渡されて帰宅した。午後7時過ぎに容態が悪くなり、自宅から救急搬送されたが、翌14日午前5時過ぎに搬送先の病院で死亡が確認された』、痛ましい事故だ。
・『事故の発生状況を推測すると  報告書の4ページには、死因として「腹部打撲による臓器損傷による出血性ショック」と記されている。推測ではあるが、この事例の場合、おなかを打ってから比較的短時間で死亡しているので、肝臓か脾臓からの大量出血によって死亡したと思われる。尖ったものが腹部に当たれば何らかの傷が皮膚についているはずであるが、子どものおなかの皮膚には傷は認められていない。そこで、おなかにぶつかったものは、直径が3cmくらいの棒(クッキー作りやパン作りなどに使う麺棒)状のものの先端部分ではないかと推測される。走って転んだとき、その麺棒の先端部がおなかにぶつかり、皮膚直下の肝臓か脾臓に当たった。麺棒の先と背骨のあいだに臓器が挟まれ、臓器が裂けたのではないかと推測される。 すなわち、子どもが転倒した現場の写真、とりわけおなかがぶつかったと思われる場所の写真や、麺棒のようなものの写真やその計測値(直径や長さ)を知ることが死因を考える上で不可欠である。この報告書には、写真は何も収載されていない。現場の見取り図、たとえばサッカーゴールの絵と、転んだと思われる場所の見取り図、おなかがぶつかったと思われるものの絵があれば理解しやすい。 子どもの症状、状態を十分把握していたかどうかが検討され、おなかを打った後、保育士が子どもに「大丈夫?」と聞き、「うん」とうなずいたと記載されている。子どもは、保育士の問いに答えることができており、以後も保育園にいるあいだは症状に大きな変化はみられなかった。これらから、受傷した時点から祖母に引き渡すまでのあいだに、保育士が重篤な臓器損傷を疑うことはできなかったと思われる』、なるほど。
・『この報告書の問題点
1 死因の情報がない  この報告書の最大の問題点は、死因に関する情報がほとんどない点である。報告書の4ページの死因の項には、「後日、遺族からのヒアリングで死因が腹部打撲による『臓器損傷による出血性ショック』ということを知った」と2行にわたって書かれているだけである。しかも、遺族から聞いた情報だけで、医療機関や司法解剖の情報ではない。 どこの臓器が、どのように裂けていて、どれくらい出血していたかなど、医療機関や解剖の情報がなければ死因を検討することはできない。また、腹部がぶつかった何らかの麺棒状の構造物の写真と計測値を記録しておかなければ予防にはつながらない。これらの情報が全く記載されていないので、なぜ臓器が損傷したのかまったくわからない』、肝心の「死因の情報がない」というのでは、報告書の体をなしていない。
・『2 検証委員メンバーの問題  検証委員会の委員として、保育関係者や弁護士などが委員になっているが、事故が発生する直前から事故が発生して15分くらいまでのあいだの子どもの身体の変化については、これらの人が検討できることはほとんどない。死亡のメカニズムについては医師、あるいは生体工学の専門家しか検討することはできない。さらに、医師であれば誰でもいいわけではなく、今回の場合は救急医か、腹部外傷の専門医が委員として適切である。内科医、あるいは公衆衛生関係の医師では十分検討することができない』、その通りだろう。
・『3 医療体制の問題  自宅から救急車を依頼したのは午後7時35分であった。最初に搬送された病院に午後8時13分に到着したが、そこでは治療ができないので、2時間後に2番目の病院に転送され、そこで6時間半後の翌日の午前5時12分に死亡している。午後8時過ぎから午前5時の時間帯は、医療機関は通常の診療体制ではなく、少ない医療スタッフで検査も十分にできなかった可能性がある。この診療体制に制約があった点も予後に大きく関与していると思われるが、この点についても一切触れられていない』、救急隊員と病院の連絡をしっかりしていれば、初めから治療可能な病院に運ばれ、治療できた可能性もあろう。
・『今後の課題  この報告書を読めばわかるが、保育の場に関連した死亡事故が起こると大変な事態になる。検証委員会の設置、委員の選出、遺族への対応、保育園への聞き取り、検証委員会の会議、報告書の作成など、膨大な時間、人員、経費がかかることになる。これだけの労力をかけた以上、実効性のある予防策を提示することが強く求められる。 国からの通知には具体的な検証の進め方が細かく記載され、どのような情報を収集したらよいかの項目については下記のように挙げられている。 1 子どもの事故当日の健康状態など、体調に関すること等(事例によっては、家族の健康状態、事故発生の数日前の健康状態、施設や事業の利用開始時の健康状態の情報等) 2 死亡事故等の重大事故に至った経緯 3 都道府県又は市町村の指導監査の状況等 4 事故予防指針の整備、研修の実施、職員配置等に関すること(ソフト面) 5 設備、遊具の状況などに関すること(ハード面) 6 教育・保育等が行われていた状況に関すること(環境面) 7 担当保育教諭・幼稚園教諭・保育士等の状況に関すること(人的面) 8 事故発生後の対応(各施設・事業者等及び行政の対応) 9 事故が発生した場所の見取り図、写真、ビデオ等  これらの項目をすべて網羅するにはたいへんな作業量が必要となる。報告書を読むと、ほぼ全ての項目について記載されているが、何が予防につながるポイントなのかがわかりにくい。今回のケースでは、「健康な子どもが転んでおなかを打ち、約半日後に死亡した」ので、2と5と9について詳しく調査して、そこを中心にした記録とすべきである。 2016年3月に国から出された通知には、都道府県と市町村の連携の必要性や、あらかじめ検証組織の委員候補者をリストアップしておくことなどが記載されているが、めったに起こらない死亡事故に対して、事前にこれらの準備をしている自治体はほとんどないと思われる。事実、今回の検証委員会の報告でも、市町村ではなく都道府県が検証すべきと提言している。また、診療に当たった医師や警察官が検証委員会に参加する必要があるとも述べている。 国は、実際に検証委員会を設置して検討した自治体からの意見をよく聞いて、「実行可能であり、予防につながる検証」の仕組みを構築する必要がある』、その通りだ。膨大な作業をした報告書は、再発防止に役立てないと意味がない。

第五に、上記の続きを、4月8日付け「保育事故の検証報告書を読む その2 ~東京都事業所内保育所のケース~」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamanakatatsuhiro/20190408-00121358/
・『・・・ 事故の概要  1歳2か月 男児 発生日:2016年3月11日(入所後25日目) 発生場所:東京都内の認可外保育施設(事業所内保育施設) 保育の開始:2016年2月16日 状況:3月からの通園状況は一度の欠席もなく、当日も午前8時40分に元気に登園した。午前10時45分に昼食をとり、11時35分ころ、別室で昼寝に入り、11時45分に寝入ったことを確認した。本児の姿勢は、布団にうつ伏せ(胸が布団についた状態)で、顔は壁側に向いていた。以後、本児は別室で一人で寝かされ、保育者が傍らを4回通った。その時の姿勢は昼寝を始めた時と同じであったが、近づいて顔色や呼吸を確認することは一度もしていなかった。午後2時ころ(推定)、保育士が様子を見に行き、異変に気づいた。午後2時15分に119番通報をし、すぐに心肺蘇生が行われた。午後2時35分ころに救急車が到着して病院に搬送され、午後3時33分に死亡した。(東京都のHPから引用)』、昼寝中の事故は多いようだ。
・『 この報告書の問題点
1.死因の検証がされていない  この報告書の最大の問題点は、死因に関してまったく検討していないことである。報告書には「警察からは『個人情報のため情報開示には応じられない』との回答であった。そのため、本検証委員会では、直接の死因については把握することができない状況である」と記載されている。死因がわからなければ予防策は考えられない』、警察の対応は個人情報保護法の解釈が硬直的過ぎるようだ。検証委員会としても、直ぐに諦めずに、利用目的等を明らかにして、もっと食い下がるべきだった。
・『2.定番、漠然、決意の言葉の羅列  このような報告書では、「二度と同じ事故を繰り返さない」、「繰り返してはならない」という言葉が必ず、何度も使用される。これは「事故死」や「事故」の枕詞といってもよいが、実際には同じ事故があちこちで起こり続けており、この言葉を使用するだけでは効果はない。また、「丁寧に温かく優しい保育を徹底」、「丁寧さに丁寧さを重ねて保育をしなければならないという共通認識やリスクの意識の薄さ」、「質の確保」、「保育所は、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない」、「職員の資質向上」などの文章も記載されている。理念はわかる。思いもわかる。では、具体的に何をどのようにしたらよいのか、たぶん、書いた本人にもわからないのではないか。これを書いた人には、「丁寧な保育」というものを具体的に映像、あるいは数日間、実際の保育現場で見せてもらいたい。「具体的にわからないこと」や「できないこと」をいくら言っても意味がない。 単なる決意表明に終わらせないためにも、報告書が出来上がった時点で、「丁寧」、「優しい」、「最高」などの漠然とした言葉を検索機能を使ってチェックし、その言葉を削除して、実行可能かつ有効な行動指針に文言を変える必要がある』、大いにありそうな話だ。「定番、漠然、決意の言葉の羅列」ほど、馬鹿馬鹿しいものはない。
・『3.「保育」という言葉のもつ呪縛  「保育」という言葉の中に、各人がそれぞれの思いを込めて述べているが、それぞれが考えていることは異なっているのではないか。具体的にできることを指摘しないと、何をしていいかわからない。理念ではなく、具体的にやるべきことを示すべきではないか』、その通りだ。
・『4.保育現場に、危険因子が周知されていないという現実  本児は寝つきが悪くて、午睡中に目覚めて泣くことがあるので、他の子どもと別室で寝かせた。1時間後、1時間15分後、1時間35分後に保育士がそばを通った時に寝ている姿を見ただけで、寝始めてから2時間15分後に異常事態を発見した。現在、睡眠中の突然死を早く発見するために、乳児では5分おき、幼児では10-15分おきに体位や呼吸状態を確認する必要があると指摘されている。本事例では、2時間以上もチェックされず、死後硬直となるまで気づかなかったことは管理不十分と指摘されても仕方がないと思う。また、20年以上前から、睡眠中の乳児の突然死の危険因子として「うつぶせ寝」が指摘されている。これは1歳になるまでの危険因子とされているが、1歳2か月児でも危険因子となり得るのかもしれない』、昼寝なのに、「寝始めてから2時間15分後に異常事態を発見した」というのは驚きだが、「寝つきが悪」いので、寝たら起こさないようにしていたのかも知れない。
・『5.既存報告書が持つ束縛  一度、報告書が公開されると、他のところで同じような事例が発生した時には書式が踏襲される場合が多い。とくに精神論の部分はコピーして増幅される傾向がある。今後、予防につながる報告書の様式を追及していく必要がある。この記事も、批判するためだけに書いているのではなく、簡潔で予防につながる報告書が発表されるようになるための意見として受け取っていただきたい』、精神論よりも「予防につながる報告書」にしてもらいたいものだ。
・『 私が提言するとしたら  本報告書では提言が14個も述べられている。提言とは、実行可能で、重要なものを3~5個くらい挙げるものであろう。数が多いと覚えられない。また、一つの提言の文章が長く、一部は重複していて、これを読んでも何を言いたいのか、何が最も重要なのかがわからない。この報告書がニュースで報道されたときのタイトルは「丁寧な保育の徹底を」であったと思う。医療事故の検証報告として「丁寧な診療の徹底を」という結論を出したら人々は怒るであろう。精神論は極力避け、具体的にできることを挙げるべきである。そこで、私の提言を挙げてみたい』、確かに「「丁寧な保育の徹底を」なるタイトルは無内容の極致だ。
・『1. 死因究明のため、医療機関、警察、消防のデータを開示することが不可欠である  死亡した原因がわからなければ予防策も検討できない。子どもの死亡全数検証制度(Child Death Review)を法制化して、情報を共有できるようにする。
 2. 慣れ保育の必要性について検討し、ガイドラインを作成する  保育開始直後に死亡例が多い。慣れ保育について科学的な検討が必要である。
 3. うつぶせ寝の危険性の周知と、心肺蘇生法の研修などの徹底  20年以上前から乳児のうつぶせ寝の危険性については指摘されているが、未だ保育現場に伝わっていない。周知方法について再検討する必要がある。また、救命救急の訓練は必須事項として保育士に義務づける必要がある。
 4. 死亡例は、国レベルでの検討が必要である  保育管理下での死亡は1年間に8~19件である。地域で検討するには、専門家もおらず、課題が大きすぎる。国レベルでの検討が望ましい。国レベルの組織である運輸安全委員会のような組織を作る必要がある。 保育管理下の睡眠中の乳児の突然死は、今後も必ず発生する。詳細な情報の収集体制を確立し、専門家によって一例一例を検討していく体制の構築が不可欠である』、「保育管理下での死亡は1年間に8~19件」もあるのであれば、「国レベルでの検討」は必須だ。筆者の提言を受けた実効性ある報告書になっていくよう期待したい。
タグ:保育園 (待機児童) 問題 (その9)(A.L.C.貝塚学院「破綻騒動」の内幕をすべて明かす!元従業員の怒りの内部告発、破綻騒動のA.L.C.貝塚学院 保護者説明会を開催 今の月謝は「国内最安」と認識、安倍政権の子育て分断政策で「認可外幼稚園」倒産激増危機、保育事故の検証報告書を読む その1 ~神奈川県葉山町のケース~、保育事故の検証報告書を読む その2 ~東京都事業所内保育所のケース~) ダイヤモンド・オンライン 「A.L.C.貝塚学院「破綻騒動」の内幕をすべて明かす!元従業員の怒りの内部告発」 A.L.C.貝塚学院 弁護士から、「破産手続きに入るので一斉解雇する。ここでサインしてほしい」と有無を言わさずその場で迫られた 保護者へのメールがきっかけで、事が世にさらされたことで、経営陣は慌てふためいたようだ 「解雇通告をした弁護士が解任されたらしい」 解任された弁護士は破産処理のプロ 破綻から一転、事業継続へ 株式会社サン 太陽光発電事業を行っており、幼児保育に関する経験はない 「債券」という名の預かり金 約1億3000万円だと経営陣が説明した『債券』 園児も教諭も半減する見込み 全てを知る「元代表」不在の保護者説明会 貝塚学院でカリスマ指導者として有名だった阪口靜司氏 貝塚学院の赤字は450万円、アルファウイングの赤字は1100万円 出資法違反 exciteニュース 東京商工リサーチ 「破綻騒動のA.L.C.貝塚学院 保護者説明会を開催、今の月謝は「国内最安」と認識」 3億円の資金支援を表明している(株)サン 自身が貝塚学院の園長に就く意向 英語や体操に力を入れてきた貝塚学院の教育方針を堅持すると表明 利用料金の透明化や、経理処理に会計事務所が関与する体制に改める 貝塚学院の不動産には金融機関が合計4億5,000万円の根抵当権を設定 最安」とする月謝 月謝の値上げを示唆 日刊ゲンダイ 「安倍政権の子育て分断政策で「認可外幼稚園」倒産激増危機」 認可施設は「全て」なのに、認可外は「保育の必要性」の条件付き。つまり、「保育可能」とみなされる専業主婦世帯が認可外幼稚園に子供を預けても、無償の対象にならない 認可外幼稚園の関係者から“入園者離れ”を懸念する悲鳴 半世紀以上の老舗が悲鳴を… ひばりが丘団地自治会たんぽぽ幼児教室 山中龍宏 yahooニュース 「保育事故の検証報告書を読む その1 ~神奈川県葉山町のケース~」 「特定教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会」が設置 「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」が公表 「教育・保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的な検証について」という通知 保育現場等で死亡事故が起こった場合には検証委員会を設置して検討し、その報告書を国に提出するよう求めている 保育中に転倒した6歳男児が帰宅後に死亡した事故が発生 葉山町の公立保育園 「腹部打撲による臓器損傷による出血性ショック」 報告書の問題点 死因の情報がない 検証委員メンバーの問題 今回の場合は救急医か、腹部外傷の専門医が委員として適切 医療体制の問題 今後の課題 報告書を読むと、ほぼ全ての項目について記載されているが、何が予防につながるポイントなのかがわかりにくい 2と5と9について詳しく調査して、そこを中心にした記録とすべき 国は、実際に検証委員会を設置して検討した自治体からの意見をよく聞いて、「実行可能であり、予防につながる検証」の仕組みを構築する必要 「保育事故の検証報告書を読む その2 ~東京都事業所内保育所のケース~」 東京都内の認可外保育施設 昼寝 死因の検証がされていない 警察からは『個人情報のため情報開示には応じられない』との回答 警察の対応は個人情報保護法の解釈が硬直的過ぎる 定番、漠然、決意の言葉の羅列 「保育」という言葉のもつ呪縛 保育現場に、危険因子が周知されていないという現実 既存報告書が持つ束縛 精神論よりも「予防につながる報告書」に 私が提言するとしたら 提言とは、実行可能で、重要なものを3~5個くらい挙げるもの 死因究明のため、医療機関、警察、消防のデータを開示することが不可欠 慣れ保育の必要性について検討し、ガイドラインを作成する うつぶせ寝の危険性の周知と、心肺蘇生法の研修などの徹底 死亡例は、国レベルでの検討が必要
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