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金融規制・行政(その5)(メガバンク・地銀が戦々恐々 「マネロン国際審査」の試練、マネーロンダリング疑惑に揺れる北欧金融モデル 信頼前提の制度破綻、地銀の「時限爆弾」 新リスク規制は再編促すか、元金融庁幹部が地銀の副頭取に就任!異例人事にざわつく銀行業界) [金融]

金融規制・行政については、昨年7月2日に取上げた。久しぶりの今日は、(その5)(メガバンク・地銀が戦々恐々 「マネロン国際審査」の試練、マネーロンダリング疑惑に揺れる北欧金融モデル 信頼前提の制度破綻、地銀の「時限爆弾」 新リスク規制は再編促すか、元金融庁幹部が地銀の副頭取に就任!異例人事にざわつく銀行業界)である。

先ずは、3月4日付けダイヤモンド・オンライン「メガバンク・地銀が戦々恐々、「マネロン国際審査」の試練」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/195677
・『金融業界が今、マネーロンダリング(資金洗浄)対策に躍起になっている。国際組織・金融活動作業部会(FATF)による対日審査を今秋に控えているからだ。11年前に受けた低評価を覆すべく、対応に追われる金融機関の現状に迫った。 2月22日、三菱UFJ銀行はマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐ態勢が不十分だと米通貨監督庁から指摘を受け、改善を図ることで同庁と合意したと発表した。制裁金はないものの、「改善できなければ、一部業務停止もあり得る重い内容」(関係者)だ。 メガバンクですら、米国の厳重なマネロン対策基準の下では“不合格”。そうした現実を突き付けられた中、日本では地域銀行をはじめとした多くの金融機関が今、マネロン対策に目の色を変えて取り組んでいる。なぜなら、金融活動作業部会(FATF)という国際組織(下図参照)が今秋、日本のマネロン対策について審査に入るからだ。 FATFは毎年、各国の法整備や企業の取り組みを審査し、その結果に応じて強化策を図るよう指示している。日本は今年5月から審査の自己申告書を提出し、それを基に10月に対面審査を受ける予定だ。結果の公表は来年で、結果が著しく悪ければ海外との取引に支障を来すことになる。 実際に対面審査を受けるのは、業態ごとの数社程度だが、1社でも駄目ならば、日本全体の評価が下がってしまう。そのため、「うちが足を引っ張るわけにはいかない」(地銀関係者)と、各社が対策を進めているわけだ。 まして日本は、2008年公表の第3次相互審査において、「27ヵ国中18位」という低評価を受けた苦い経験がある。にもかかわらず、同審査から数年たっても対策が遅々として進まず、FATFからくぎを刺され、慌てて犯罪収益移転防止法の改正を急ぐなど常に後手に回ってきた』、マネーロンダリングとは、違法な資金源を偽装する目的で犯罪収益を処理すること(Wikipedia)。第3次相互審査で「「27ヵ国中18位」という低評価を受けた苦い経験」とは不名誉な記録だ。しかも、対策が「常に後手に回ってきた」とは金融庁の責任も重いようだ。
・『そうした現状の中で、日本はFATFの第4次相互審査を迎えることになる。チェックされるのは、マネロン対策の関連法整備など40項目と、企業ごとの対策の有効性など11項目。特に、資金の流出入が集中する銀行などの預金取扱金融機関、少額決済を担う資金移動業者、仮想通貨交換業者が重点候補になっている。 FATFはすでに21ヵ国で第4次審査を終えたが、そのうち実質的に合格となったのは英国やイタリアなど5ヵ国のみ。金融大国の米国も不合格の烙印を押されており、日本が合格する可能性は低い。金融機関の経営を監督する金融庁としては、せめて米国にやや劣る程度の評価で落ち着かせたいというのが本音だろう(下図参照)』、米国は在米の日本の金融機関には厳しいことを言ってくるのに、FATFは不合格とは、FATFはさぞかし厳しい基準で臨んでくるのだろう。
・『地銀が見過ごした海外送金  監督当局をはじめ、金融業界全体が不合格を半ば覚悟しているのは、日本のマネロン対策がかなりお寒い状況にあるからだ。 中でも、“問題児”とされているのが地銀だ。17年には、愛媛銀行で数億円規模のマネロンと疑われる海外送金を見過ごす“大失態”が起きたとされる。 事態が表面化した18年初め、地銀頭取との会合で金融庁側が「低いレベルの金融機関が一つでも存在すると、金融システム全体に影響し(中略)対策が脆弱であると批判を浴びる恐れがある」と語ったことからも、稚拙な取り組みに対する監督当局の危機感が伝わってくる。 愛媛銀は「金融庁のガイドラインに基づき(マネロン対策の)高度化を進めている」(広報)というが、問題は愛媛銀に限らず、多くの銀行がこれまで泥縄式でしか一連のマネロン対策を進めてこなかったことにある。 そうした状況で、FATF審査では疑わしい取引の監視方法を体系化することが求められている。一方で地銀はというと、「営業行員にもマネロンに関する資格試験を受けるように急かしている」(中部地方の地銀幹部)という段階で、「顧客ごとのリスクを数字化する評価書の作成と、営業部門への周知の二つ」(マネロン対策に詳しい渡邉雅之弁護士)に、いまだ苦戦しているという。 さらに第二地銀など小規模な金融機関には、収益に結び付かないという理由からシステム投資に消極的なところも多く、取引のモニタリングシステムを導入したとしても苦労が絶えないようだ。 ある地銀では、「しばらく取引がなかった口座に、突如として1万~2万円の金額が複数回振り込まれた。これはねずみ講の疑いがあると報告が上がってきたが、確認したらお年玉が入金されただけだった」(関係者)という。こうした確認作業を徒労とみるか、必須とみるかで、経営陣の意識が透けて見えそうだ』、「疑わしい取引」については報告義務があるので、「お年玉が入金されただけ」という笑い話もあり得るのだろうが、こんな少額のものは報告不要とした方がいいのかも知れない。
・『地銀だけではない。マネロン対策強化の網は、金融業界の幅広い領域に及んでいる。 今年1月半ば。20社ほどの資産運用会社の幹部が居並ぶ投資信託協会の理事会に、金融庁の佐々木清隆総合政策局長が出席、各社にマネロン対策の徹底を求めた。 そこでは、顧客から資金を直接預かる直販系の運用会社はもちろんのこと、各社が投資する株や債券などの発行体についてマネロンリスクの分析・管理を厳重に行うことが要請されたという。 運用会社の場合、投資対象となる株や債券などは膨大な規模で、人員が限られる社も少なくない。こうした領域にまで慌てたように対応を求めてきたことは、金融庁がFATFの動向を読み違えていたように映り、運用業界に詳しい関係者は「衝撃だった」と話す』、資産運用会社には、「各社が投資する株や債券などの発行体についてマネロンリスクの分析・管理を厳重に行うことが要請された」、そこまでやるのかと驚かされた。
・『仮想通貨業者も大きな焦点に  さらに第4次審査では、仮想通貨交換業者が初めて俎上に載せられる。仮想通貨の中には匿名性の高いものもあり、FATFが厳しい目を光らせるのは確実だ。 この分野の重点項目は何か。昨年12月に金融庁が仮想通貨交換業者に報告徴求命令を出し、今年2月中旬までに各業者が提出した資料によると、報告は60項目に上る。 各社が頭を抱えるのが、「銀行送金と違い、送付先の顧客属性が分かりにくい」(交換業者首脳)こと。送付先情報と突き合わせて、マネロンと疑われる取引をあぶり出すリストの導入を検討する業者もいるが、小規模な業者は「そこまで手が回らない」(同)。内部管理部門の構築においても、大手金融機関出身者といった「人材が不足」(同)しているという。 銀行と同様、交換業者はその規模によって取り組みの温度差が大きい。自主規制団体が中心となって、どこまで業界全体の底上げを果たせるかも今回試されているといえそうだ』、仮想通貨取引はマネロンと最も親和性が高いだけに、「小規模な業者」はお手上げだろう。第4次審査の結果がどうなるかは、大いに注目される。

次に、4月7日付けNEWSWEEK日本版「マネーロンダリング疑惑に揺れる北欧金融モデル 信頼前提の制度破綻」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2019/04/post-11940_1.php
・『ダンスケ銀行やスウェドバンクといった北欧の大手銀行に相次いでマネーロンダリング(資金洗浄)に関与した疑惑が浮上したことで、相互の信頼を前提に鷹揚な性格で築かれていたこの地域の金融モデルが破綻し、当局による厳しい統制を求める声が強まっている。 非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルの評価で北欧は最も腐敗・汚職の度合いが小さい地域となっているが、ダンスケ銀行とスウェドバンクに捜査の手が伸び、両行の株価は大幅に下落した。 政治家、規制当局、投資家などは、締め付け強化やより厳しい罰金制度、自主規制に任せていたシステムの見直しなどを望んでいる。 スウェーデンのボルンド金融市場・住宅相は「われわれの社会の根幹である寛容さは信頼の上に成り立っており、その信頼は著しく損なわれている」と嘆いた。その上で先週スウェドバンクがビアギッテ・ボンネセン最高経営責任者(CEO)を解任した点に触れて「一個人の首を切るだけでは不十分だ」と指摘するとともに、内部管理態勢の抜本的な改革が必要になると訴え、今後政府が何らかの措置を講じる姿勢を強くにじませた。 一連の資金洗浄疑惑の震源地となったのはバルト海に面するラトビアとエストニアだ。両国ともロシアと欧州を金融面で橋渡しするというモデルを構築したものの、悪いイメージを背負うことになった。 エストニア政府は、同国内の支店を通じ2007─15年に不審な資金のやり取りに関与していたことを認めたダンスケ銀に対し、事業閉鎖を命令。同行は隣国のラトビアとリトアニアからも撤退しつつある。 デンマークの学者Gert Svendsen氏は、資金洗浄疑惑で北欧文化の中核的な要素が打撃を受ける恐れがあると懸念し、「信頼に基づいて行動できれば人々はより幸せになれる。だからスウェーデンとデンマークの人々は幸福度がかなり高いのだ」と説明した』、ラトビアとエストニアが構築した「ロシアと欧州を金融面で橋渡しするというモデル」、そのものがマネロンの疑いが濃厚だ。「資金洗浄疑惑で北欧文化の中核的な要素が打撃を受ける恐れ」というのは、残念ながらその通りなのだろう。
・『当局の動き  デンマークでは資金洗浄疑惑を受けて現在の右派連立政権への批判が高まり、6月までに実施予定の総選挙で左派の野党勢力が政権を奪取する可能性もいくつかの世論調査で示されている。 こうした中でデンマーク政府は、資金洗浄の取り締まりに従事する部門の人員を倍増し、同部門に違反者への制裁金を科すことや立ち入れ検査を行う権限を認めるなど積極的な対応に乗り出した。ヤルロブ産業・金融相は、米国型の管理態勢にシフトすると表明した。 スウェーデンもこれに追随するかもしれない。ロベーン首相は先週、規制当局の態度が生ぬるいとの批判を受け、規制強化に向けた法制化に動く可能性があると語った。 同国の場合、昨年には金融監督庁の担当部門が複数の大手銀行の資金洗浄対策が不十分なので制裁措置を打ち出すべきだと提言したものの、首脳部が警告書を送付するだけにとどめたというケースが見られた。また金融監督庁は、中央銀行から規制が甘すぎると苦言を呈された後、銀行の住宅ローンの引当金に関するルールの厳格化も迫られた。 トランスペアレンシー・インターナショナルのルイーズ・ブラウン氏は、スウェーデンは改革を必要としており、規制の執行と企業統治の両面で改善しなければならないと主張している。 今回の資金洗浄疑惑では、当局と監督対象銀行の距離が近すぎるのではないかという問題も浮上してきた。 デンマークの前金融監督庁長官はかつて、2016年の就任前に5年間、ダンスケ銀で最高財務責任者(CFO)を務めていた。同国は現在、金融監督庁長官と副長官に過去5年間金融機関で働いていた人物を起用することを禁じている』、ルールは厳格化するとしても、「北欧文化の中核的な要素」は出来るだけ残してもらいたいものだ。

第三に、マネックス証券 執行役員チーフ・アナリストの大槻奈那氏が3月15日付けロイターに寄稿した「コラム: 地銀の「時限爆弾」、新リスク規制は再編促すか=大槻奈那氏」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-nana-otsuki-idJPKCN1QV0UT
・『昨年末、銀行に動揺が走った。一部の株や債券の価格が1週間で10%近く暴落する中、いくつかの銀行で、含み損のレベルがあらかじめ決まっていた「アラームポイント」に抵触したためだ。 問題はそこからだ。通常、このポイントにひっかかると、含み損の出ている証券を注視し、さらに損失が広がった場合、「ストップロス・ルール」により損切りをしなければならない。2003年に起きた「VaR(バリュー・アット・リスク)ショック」と呼ばれる債券相場の急落以来、多くの銀行でこうしたルールを厳格化している。 ところが今回、一部の銀行はアラームポイントや、ストップロス・ルールの執行を一時停止し、ポジションをキープしてしまった。久々のボラティリティー上昇に、なかなか踏ん切りがつかなかったようだ。 この結果、大手地銀7行の12月末時点の外債等の含み損益(評価損益の「その他有価証券」で「その他」に記載される項目)は、ふくおかフィナンシャルグループ(FG) 以外の全行で悪化、コンコルディアFGと山口FGの含み損(山口は単体合算)は、9月末時点からそれぞれ3倍と2.4倍に拡大した。 その後、市場は若干持ち直したものの、ピークからはまだ遠い。この3月末には損切りを迫られる銀行が続出しそうだ。みずほFGが6日発表した「外国証券の含み損処理等」による1800億円の有価証券売却損もその一環とみられる。 本来アラームポイントやストップロスのルールは、リスク拡大を避けるために設けられたもので、安易に緩和すべきではない。今回は、結果オーライだったが、今後はこのような牧歌的な管理手法は通用しにくくなるとみられている』、「一部の銀行はアラームポイントや、ストップロス・ルールの執行を一時停止し、ポジションをキープしてしまった」、いまだにこうした銀行が存在するとは驚きだ。
・『新たな金融規制「IRRBB」で何が変わるか  金融庁は今月末より、地方銀行など国内のみで業務を展開する金融機関を対象に、国債や外債、預金、貸出などの金利リスクについて、「銀行勘定の金利リスク(IRRBB)」と呼ばれる新たな金利リスク規制を導入する。 銀行は、そもそも預かった資金を運用し、さや抜きでもうけるのが基本だ。短期預金をあまりに長期の貸し出しや有価証券で運用してしまうと、急に預金が引き出された時に手元資金が足りなくなってしまう。 このため銀行は、金利リスクテークをほどほどに抑えるよう、規制されている。かつて金利リスクといえば債券リスクに限った話だったが、08年のリーマンショック後、管理の範囲が貸し出しなど、「銀行勘定」の資産・負債全体に及ぶようになった。 この厳格なルールは昨年3月、まず大手行などの国際基準行に適用され、今年3月末から国内基準行にも適用範囲が拡大される。 具体的には、2つの点が大きく変更される。 第1に、リスクの測定方法が厳しくなる。これまで金融庁は、過去5年間の実際の金利変動からリスク量を計算することを容認していた。  ここ5年といえば、「毎日、金利が動かないことを確認するのが唯一の業務」などと円債関係者が揶揄(やゆ)されるような静かな市場だった。そのため、そこから計測されるリスク量は極めて限定的だった。 ところがルール改正後は、円建ての場合は金利が上下1%幅、ドル建ての場合は上下2%幅で変動した場合、どれだけの損失が出るかを算出しなければならない。この変動幅は通貨ごとに異なり、例えば、南アフリカランドであれば、4%の変動幅でリスクを計算する。 日本国債の金利が1%動くなどという仮定は、夢のまた夢のような気もするが、自己資本の十分性を保守的にチェックしようというのが、この改正の趣旨だ。 このように計算された「まさか」の時の損失が、自己資本の15─20%を上回った場合、金融庁が状況を分析した上で、金融機関と「深度のある対話」を行い、対応策を求める。さらに、改善策を履行しているかどうかを、同庁がフォローアップする。こうした改善に至るプロセスの明確化が変更の2点目だ。 現在でも、金融機関が過度な金利リスクを負った場合、当局が相応の対応を促すことは可能だ。しかし実際には、リスク量が小さく出るため、それに抵触する金融機関は、ほとんどなかった。新たなルールでは、潜在的なリスクが浮き彫りになり、高いリスクを抱える金融機関に対して、抜本的な改善策を促す仕組みが確立する』、「金融機関と「深度のある対話」を行い、対応策を求める」、当該の金融機関にとっては極めて厳しい「対話」になるのだろう。
・『なお、この規制議論の過程では、金利リスク量が規定を上回った場合、即刻是正を強制すべきとする強硬意見もあった。しかし、これは国債のボラティリティーを高めかねないとの配慮から却下され、資本賦課(ふか)を求めない「第2の柱(Pillar 2)」と呼ばれる緩やかな枠組みに落ち着いた。また、現在ゼロとされている先進国の国債のクレジットリスクを引き上げるべきかどうかという点も並行して議論されていたが、あまりにセンシティブであるため、一旦棚上げされた』、「先進国の国債のクレジットリスクを引き上げる」ことになれば、特に欧州の銀行にとっては大変だろう。
・『地域金融機関の金利リスクは  18年3月にIRRBBが先行して導入された国際基準行の場合、金利リスク量は問題のない水準だった。メガバンクの中で最もリスク比率が高かった三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG) でも同年3月末時点で10.6%、それ以外の大手行も4─10%程度と、国際基準行の上限である15%を余裕でクリアした。 では、地域金融機関ではどうか。これらの銀行では、金利リスク量の上限が20%と、国際基準行よりは甘い。 だが、日銀が昨年10月に公表した金融システムレポートによれば、地銀や信金の自己資本に対する平均金利リスク比率は円貨だけで30%を超える。 実際には、コア預金などさまざまな計測方法の違いで、これよりは小さくなるとみられるものの、円貨のほかに外貨の金利リスクもある。日銀は、これが大手行、地銀ともに約5%程度と試算。中には、もっと高い金融機関もあるとみられ、IRRBB規制は大手行ほど影響がないとは一概に言い切れない』、大手行にも影響があるのであれば大変だ。
・『厳しい状況に陥る地域金融機関は  仮に、規定の上限をオーバーした場合、どの程度ポジションを圧縮しなければならなくなるのだろうか。 現在、地銀の金利リスク量は、貸出と債券投資で、2対1程度の割合になっている。単純計算では、自己資本の30%を超える金利リスクを負った地域金融機関が、同比率を20%以下に圧縮するには、全ての保有債券を売却する必要に迫られる。 地銀が保有する国内債券の総額は、2018年9月末で60兆円程度となっている。さほど大きくはないが、地元企業の私募債などがこれ以上引き受けにくくなるというだけでも、局地的に大きなインパクトを与える可能性がある。 では、どんな地域金融機関が厳しい状況に陥りやすいのだろうか。IRRBBとは異なる算出方法ではあるが、現在でもショック時の金利リスク量は年次ベースで開示されている。新庄信用金庫や高知信用金庫など一部の信用金庫で18年3月末の自己資本に対する比率が17─30%に達するなど、相対的に高い水準にある。 地銀でも、同3月末で10%前後の銀行が散見される。 これら金融機関の共通点としては、預証率が高く、有価証券利回りが高いなどの点がある。特に、地方の信金については、地元に有力な貸し出しが少ない場合などは有価証券の運用にプレッシャーがかかっている可能性が高いとみられる。 銀行が保有している有価証券の平均利回りは、かつて購入した高金利の債券が満期を迎えるにつれ、じわじわと低下している。欧米でも金融政策の正常化を停止している状況下では、日銀の緩和政策にも出口は見えないだろう。 だが、この2、3年間、新たな収益源として狙いを定めた投融資先は、さまざまな理由から、ことごとく下火になっている。エネルギー向けのプロジェクトファイナンス、クレジットカードローン、投資用マンション融資、そして外債などがその例だ。 銀行に残された収益の防衛手段は、経費構造の抜本的見直しだ。その点、地域金融機関は大手行から大きく遅れをとっている。 最大の施策はやはり業界再編であろう。マイナス金利導入から4年目を迎える来年度は、いよいよ地域金融機関の再編が活発化すると予想する』、かつて金融庁から収益力の高さを称揚されていたスルガ銀行が「悪徳不動産業者」とグルになっていたのが発覚したように、「新たな収益源」には多くを期待できなかなったのは深刻だ。再編といっても、最も一般的な「持株会社傘下での統合」では、効果が限定的なので、やはり雇用調整が進み易い合併でないと効果はでないようだ。

第四に、3月25日付けダイヤモンド・オンライン「元金融庁幹部が地銀の副頭取に就任!異例人事にざわつく銀行業界」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/197699
・『2月下旬、ある地方銀行の首脳人事に業界がざわめいた。奈良県に本店を構える南都銀行が元金融庁幹部の石田諭氏を招聘し、6月から副頭取に据えると発表したからだ。 旧第一勧業銀行出身の石田氏は経営共創基盤に在籍中、前金融庁長官の森信親氏に請われて金融庁に出向したという人物。石田氏は2013年から18年までの間、地銀に経営改革を促す地域金融企画室長など要職を歴任した。石田氏の「鋭く物申す」(金融庁幹部)姿勢が、地銀に容赦なく自己変革を迫った森前長官に評価され、「任期延長となった」(同)という。 そんな“森金融庁”の実力者が、監督対象だった地銀のナンバー2に、しかも44歳の若さで就任したため業界の耳目を集めたわけだ。 就任の経緯について、南都銀は「今年1月ごろにこちらから石田氏に打診した」(経営企画部)と明かす。ただ、伏線は数年前に敷かれていたもようだ。 石田氏は一時期、地銀の検査を統括する立場にいたが、当時の検査対象の一つが南都銀だった。そのときに南都銀の橋本隆史頭取と接点を持ったという。 18年7月に森氏が長官を退任すると、後ろ盾を失った石田氏も金融庁を去り、経営共創基盤に出戻った。そこで、以前から経営のアドバイザーを外部から積極的に登用していた橋本頭取と、自身の再就職先を模索していた石田氏との趣旨が合致し、今回の人事が実を結んだという』、石田氏は民間出身で、受け入れ側からの働きかけで再就職したようなので、いわゆる「天下り」ではないようだ。
・『懸念される現場への悪影響  古巣もこの人事には「驚いた」(前出の金融庁幹部)が、地銀改革の観点から「金融庁の上層部も期待している」(関係者)ようだ。 だが、楽観ばかりもしていられない。気掛かりなのは、南都銀側の現場のモチベーションだ。この懸念に対し、「対策は取ってはいない」(経営企画部)とし、現段階では現場から不満の声は聞こえてこないという。ただ、昨年代表取締役に就いた「有望株」(南都銀関係者)の役員が、石田氏の就任と同時に、1年で退任するという“政変”も起きてはいる。 昨今、地銀全体の業績悪化が著しく、県内唯一の地銀として強固な経営基盤を持つ南都銀でも、17年からの中期経営計画で「変革と挑戦」を掲げ、行員の意識改革に着手中だ。石田氏の登用はこの流れを象徴する出来事に映るが、数字が伴っていないのが現状だ。 本業のもうけを示す「業務純益」は、17年3月期の147億円から、18年3月期は106億円となり、今期は4~12月までの累計で52億円と振るわない。 4月以降、石田氏は経営企画や人事などの中枢機能に加え、デジタル推進という新領域を同時に所管する。革命に反発は付きものというが、今回の異例の人事を含め一連の改革が実を結ぶか否かは、“扇の要”を担う石田氏の手腕次第といえる』、「南都銀側の現場のモチベーション」は確かに微妙なようだ。ただ、石田氏も批判するだけの監督者側から、経営に責任を負う側に回るだけに、真の実力が試されることになるだろう。さてどうなるだろうか。
タグ:愛媛銀行で数億円規模のマネロンと疑われる海外送金を見過ごす“大失態” 地銀が見過ごした海外送金 スウェドバンクがビアギッテ・ボンネセン最高経営責任者(CEO)を解任 前金融庁長官の森信親氏に請われて金融庁に出向 元金融庁幹部の石田諭氏を招聘し、6月から副頭取に据える 金融庁としては、せめて米国にやや劣る程度の評価で落ち着かせたいというのが本音 しばらく取引がなかった口座に、突如として1万~2万円の金額が複数回振り込まれた。これはねずみ講の疑いがあると報告が上がってきたが、確認したらお年玉が入金されただけだった 米国も不合格の烙印を押されており すでに21ヵ国で第4次審査を終えた ラトビアとエストニアだ 昨年代表取締役に就いた「有望株」(南都銀関係者)の役員が、石田氏の就任と同時に、1年で退任するという“政変”も起きてはいる 懸念される現場への悪影響 「元金融庁幹部が地銀の副頭取に就任!異例人事にざわつく銀行業界」 この2、3年間、新たな収益源として狙いを定めた投融資先は、さまざまな理由から、ことごとく下火になっている スルガ銀行 厳しい状況に陥る地域金融機関は 各社が投資する株や債券などの発行体についてマネロンリスクの分析・管理を厳重に行うことが要請された 旧第一勧業銀行出身 南都銀行 地域金融機関の金利リスクは 先進国の国債のクレジットリスクを引き上げるべきかどうかという点も並行して議論されていたが、あまりにセンシティブであるため、一旦棚上げされた 資本賦課(ふか)を求めない「第2の柱(Pillar 2)」と呼ばれる緩やかな枠組みに落ち着いた 金利リスク量が規定を上回った場合 リスクの測定方法が厳しくなる 昨年3月、まず大手行などの国際基準行に適用され、今年3月末から国内基準行にも適用範囲が拡大 国債や外債、預金、貸出などの金利リスクについて、「銀行勘定の金利リスク(IRRBB)」と呼ばれる新たな金利リスク規制を導入 新たな金融規制「IRRBB」で何が変わるか 今回、一部の銀行はアラームポイントや、ストップロス・ルールの執行を一時停止し、ポジションをキープしてしまった 「コラム: 地銀の「時限爆弾」、新リスク規制は再編促すか=大槻奈那氏」 ロイター 大槻奈那 デンマークの前金融監督庁長官はかつて、2016年の就任前に5年間、ダンスケ銀で最高財務責任者(CFO)を務めていた 資産運用会社 スウェーデンのボルンド金融市場・住宅相は「われわれの社会の根幹である寛容さは信頼の上に成り立っており、その信頼は著しく損なわれている」と嘆いた スウェーデンもこれに追随するかもしれない 米国型の管理態勢にシフトすると表明 デンマーク 両国ともロシアと欧州を金融面で橋渡しするというモデルを構築したものの、悪いイメージを背負うことになった 相互の信頼を前提に鷹揚な性格で築かれていたこの地域の金融モデルが破綻し、当局による厳しい統制を求める声が強まっている ダンスケ銀行やスウェドバンクといった北欧の大手銀行に相次いでマネーロンダリング(資金洗浄)に関与した疑惑が浮上 マネーロンダリング疑惑に揺れる北欧金融モデル 信頼前提の制度破綻」 Newsweek日本版 仮想通貨業者も大きな焦点に 日本が合格する可能性は低い 疑わしい取引の監視方法を体系化することが求められている 実質的に合格となったのは英国やイタリアなど5ヵ国のみ システム投資に消極的なところも多く 金融規制・行政 第3次相互審査において、「27ヵ国中18位」という低評価を受けた苦い経験 資金の流出入が集中する銀行などの預金取扱金融機関、少額決済を担う資金移動業者、仮想通貨交換業者が重点候補 実際に対面審査を受けるのは、業態ごとの数社程度だが、1社でも駄目ならば、日本全体の評価が下がってしまう 結果の公表は来年で、結果が著しく悪ければ海外との取引に支障を来すことになる 国際組織・金融活動作業部会(FATF)による対日審査を今秋に控えている 「メガバンク・地銀が戦々恐々、「マネロン国際審査」の試練」 ダイヤモンド・オンライン (その5)(メガバンク・地銀が戦々恐々 「マネロン国際審査」の試練、マネーロンダリング疑惑に揺れる北欧金融モデル 信頼前提の制度破綻、地銀の「時限爆弾」 新リスク規制は再編促すか、元金融庁幹部が地銀の副頭取に就任!異例人事にざわつく銀行業界)
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