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就活(就職活動)(その7)(外資コンサルが「イケてるから就職しちゃった」人の末路、新卒「売り手市場」の落とし穴 大企業の求人倍率はたった0.37倍、大手“下層”社員の就活生暴行事件に感じる薄ら寒さ) [社会]

昨日に続いて、就活(就職活動)(その7)(外資コンサルが「イケてるから就職しちゃった」人の末路、新卒「売り手市場」の落とし穴 大企業の求人倍率はたった0.37倍、大手“下層”社員の就活生暴行事件に感じる薄ら寒さ)を取上げよう。

先ずは、2月26日付け日経ビジネスオンラインが掲載した早稲田大学ビジネススクール准教授の入山 章栄氏と大阪大学経済学部准教授の安田洋祐氏による対談「[議論]外資コンサルが「イケてるから就職しちゃった」人の末路 File1 外資系コンサルティングファーム(第4回)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/forum/19/00012/021300005/?P=1
・『各業界をよく知る第一線のゲストに話を聞きながら、今後、その業界がどう変わっていくかを探る新連載「入山・安田の業界未来図鑑」。3回にわたり公開してきたFile 1の議論では、ボストンコンサルティンググループ(BCG)前日本代表の御立尚資氏、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で退社後、非営利法人(NPO)のクロスフィールズを立ち上げた小沼大地氏をゲストに招き、外資系コンサルティングファームについて議論し合った。 議論終了後、進行役を務めた入山章栄氏と安田洋祐氏が、議論を振り返った。業務内容、ビジネスモデル、人材とあらゆる面で変容への過渡期にあり、チャレンジが必要になっているコンサルファームの立ち位置を改めて確認し、今とは大きく異なるであろう未来像を描いた』、興味深そうだ。
・『現在の議論のテーマ  3回にわたって連載した「外資系コンサルティング業界」。これまでの議論を振り返り、改めてこの業界への疑問や未来への提言、入山氏と安田氏の議論への感想などをお待ちしております。 編集部:新連載「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」の初回の議論が終わりました。ゲストを迎えて外資系コンサルティング業界について語り合ってもらいましたが、いかがでしたか。 入山:うん、すごく楽しかった。まず、経営学者の僕と経済学者の安田さんとで視点が違うというのがわかって、2人ナビゲーター制って面白いなと思いました。いい補完関係ができたと思います。 就職先としてのコンサル業界について話していた時、御立さんが、就職人気ランキングを見た瞬間、「不健全だ」と言いましたよね。 編集部:東京大学と京都大学の学生の就職人気ランキングですね。コンサルファームが上位を独占していました』、「コンサルファームが上位を独占」とは世の中も変わったものだ。
・『「東大・京大でコンサル大人気」は危機  入山:僕、御立さんの感覚はすごくよくわかる。本当にヤバいと思う。危機ですよ。 秋元康さんが以前言っていたという話を何かで読んだことがあるのですが、AKB48の初期のメンバーはAKB48そのものに興味があるのではなく、「何者かになりたい」という思いで入ってきた。だから成功した、と。でも、その後に入った人たちは、みんな「AKB48のメンバーになりたい」と入ってきている、と言うんです。 同じことはビジネス界でも当てはまります。例えば全日空。昔はJALがナショナルフラッグで、全日空は今のLCC(格安航空会社)のようなマイナープレイヤーでした。そういう組織に、「いつかJALの鼻を明かしてやる」と野武士のような人たちが入社してきた。 だから今の全日空の役員クラスの方々って、ある意味変わっていて、面白い人が多いんです。そうじゃなかったら、LCCのピーチ・アビエーションなんてつくろうとしないですよ。あれって究極のカニバリ※注1ですから。全日空という会社に入りたいわけじゃなくて、「何か面白そう」と勢いで入った人たちだから、イノベーター感覚があるんですね。 ※注1:カニバリ(カニバリゼーション(共食い)の略。自社の製品・サービスが自社の他の製品・サービスと競合し侵食してしまう現象のこと) BCGもマッキンゼーも以前は「何か面白いことができそうだ」「ぶっ飛んだことがやりたい」と思って入ってくる人たちばかりだった。それが今回、ゲストに来てくれたクロスフィールズ代表の小沼さんであり、ライフネット生命を立ち上げた岩瀬大輔さんらの世代。今はそうではなく、就職においてブランドが確立されてしまいました。マッキンゼーやBCGに入ることの方が自己目的化している。 安田:イノベーションを起こすような人物が、大学卒業後に就職する企業は変わりつつあるでしょうね。少し前は3年とか5年ぐらいコンサルファームにいる間に様々な手法を学び、実務に触れ、その経験を踏まえて起業していたけれど、今はそういう経験を一切せずにいきなり起業したり、先輩や友達が始めたスタートアップに就職したりという人が増えてきた。僕らの世代では起業ってすごくハードルが高かったけど、環境も変わってきて、資金も集まりやすくなっていますからね』、「マッキンゼーやBCGに入ることの方が自己目的化している」のかも知れないが、従来と同様に起業へのステップとしてコンサルファームを考えているとすれば、必ずしも「危険」な兆候とはいえない気もする。
・『商社やビジネススクールとも競合(編集部:コンサルファームの未来についても語り合っていただきましたが…。 入山:コンサルファームの役割はこれから大きく変わり、業務はコンサルティングにとどまらなくなっていくということですよね。面白かったのはコンサルファームがエクイティーを入れ始めているという話。 安田:株式を持ってリスクを取るようになってきたというんですから、究極の運命共同体ですね。 入山:今日も話をしましたが、コンサルファームの機能はデザインファームとかぶってきています。そして、プライベートエクイティー※注2ともかぶってきていると思う。既にエクイティーを入れているというのは、ある意味プライベートエクイティー投資と同じです。だから商社的になってきていますよね。 ※注2:プライベートエクイティー(未公開株式に投資を行う投資家やファンド) 編集部:商社的というのは? 入山:これからの商社って、やることは事業投資と事業経営ですから。マイノリティー エクイティーを入れて投資し、そこに人を送り込んで経営させている。やっていることはかなり近いです。 編集部:確かに機能が重なりますね』、「コンサルファームがエクイティーを入れ始めている」というのには驚かされた。第三者的な地位から、当事者になることを意味するが、コンサルファームは儲けの蓄積だけが資本なので、過小資本体質だ。それが事業リスクを取り始めるというのは、可能なのだろうか。
・『ビジネススクールIMDの競合はマッキンゼー  入山:世界の大手コンサルファームは研修事業も手掛けています。スイスのビジネススクールの「IMD」って、実は研修事業が稼ぎ頭なんですけど、ドミニク・テュルパン前学長は「最近、企業向けのカスタマイズ研修のコンペでマッキンゼーやBCGと競合になる」と話していました。「マジ?」ってびっくりして。 安田:僕は今日、クライアントである企業側にコンサルファームへの依存体質があるのではないかと問題提起したかった。コンサルファームの報酬は時間で決まっていて、成果が出なければ切られて次がなくなるという話でした。 その理屈は分かるけれど、実際のところ、一度、特定のコンサルファームを使えば、惰性で使い続けるものじゃないでしょうか。日本企業の場合は何年かたつと経営者が入れ替わります。前の社長が使い始めたコンサルファームを切るというのは、よほどの理由がないと難しい気がします。 そういう意味では、今、報酬体系が変化しつつあることで、コンサルファームとクライアントとの関係も変化していく可能性がある。仕事の幅が多様化してきたことにとどまらず、そういう面でも大きく変容しつつある業界だと実感しました』、「コンサルファームとクライアントとの関係も変化していく可能性」というのはありそうな話だ。
・『コンサルファームに「範囲の経済」は当てはまるか  入山:株式を入れて事業にもかかわっているし、デザインにもかかわっている。ロジックが売りかと思いきや、「大事なのは直感」という。「コンサルファームとは何なのか」というところまできていますね。 編集部:確かに。コンサルって、いったい何屋なんでしょう。 入山:何屋と定義できないのがコンサルの面白いところじゃないですか。逆に言うと、コンサルという言葉ではまっているだけだとヤバい。はまらないことをやるのが大事。コンサルティングファームと呼ばれていたものは、ものすごく変容しないと、これからの時代にはキャッチアップできないということだと思います。御立さんはとてもポジティブな方なので、明るく未来を見せてくれましたけど、逆に言うとそれぐらい変化をしなくては生き残れない。 編集部:こういう変容というのは、学問的なフレームワークで語れますか。 入山:経営学的に言うと、「ダイナミックケイパビリティー」※注3ですね。 ※注3:ダイナミックケイパビリティー(変化する環境に対応するために、これまで培ってきたノウハウ、資源、資産などを統合、組み替え、再構成する自己変革能力) 編集部:競争環境のポートフォリオが変わる中で、変化しようとしているということですね。コンサルファームに求められるスキルセットが変わるという見方もできます。 安田:BCGもマッキンゼーも、今までは経営戦略構築のロジカルな部分でビジネスをしてきたと思うんですが、その幅を広げていこうとしているし、実際にそのために人材も増やしている。 経済学的に言うと、コンサルファームがいろいろなタスクを担うようになった時、それぞれに補完性があってシナジーを生み出すことができるのなら、「範囲の経済(economy of scope)」※注4が当てはまるのですが、そう簡単なものではない気がしますね。 ※注4:範囲の経済(経営資源を共有・有効活用して事業を多角化したり製品・サービスを多様化したりすることで、より経済的な事業運営が可能になること)』、コンサルファームが多角化に乗り出したが、上手くいかないということでは様にならないようだ。
・『手を広げてもやっていけるのか?  例えばデザインなど感覚的なものは、もともとコンサルでは請け負っていなかった。そこに手を出して、コストだけ増えてパフォーマンスが下がるのならば、手を出さない方がいいということになります。コンサルティングという業務の中で、どれぐらい範囲の経済を追求できるのか、それに合わせた人材を採用できるのかといったところがカギになります。 場合によっては、コンサルファームはロジカルな部分だけに特化した方がいいのかもしれない。必要な他の機能は自分たちで手掛けずにアウトソースするというのもあり得るんじゃないでしょうか。今のところ、外注路線ではなく、人を増やして自分たちでやってみようという方向に進んでいるように見えるけれど、果たしてそれは本当に正しい経営戦略なのか。それは20年、30年たってみないと分からないですね』、さて結果はどうなるのだろうか。
・『戦略構築から業務遂行に事業拡大中だが…  入山:外注路線でいくと、途中をすっ飛ばされるでしょうね。「コンサル、いらないじゃん」という話になる。 編集部:「あっちに直接行けばいいや」となるかもしれませんね。 安田:「全部任せたい」というニーズが強いクライアントならば取り込めるのではないでしょうか。現にIT系とか会計系のコンサルファームはそういう需要を取り込んでいる。クライアントは専門的な経理や会計の機能を任せたいとその業務プロセスを外注し、そこから、より上のレイヤーの経営戦略のところも任せたいと同じコンサルファームに一本化して任せるという形です。 戦略コンサルはそれとは逆向きで、上のレイヤーの経営戦略の構築から入って、少し日々の業務の方に拡大していこうとしている。両方からそれぞれ入っていこうとしているように見えますね。 編集部:まさにレッドオーシャンですね。うーん、コンサルファームの未来はあまり明るくない気がしてきました。 入山:いや、分かりませんよ。我々のような学者はどうしても悲観的に見てしまいがちなので。とにかく、ものすごく大きな変化が起きるということです。 安田:僕は正直、コンサルファームがどうなるかよりも、社会全体で経営の質が高まるのか、イノベーションを起こせるのかに関心があります。コンサルファームがビジネスを多様化していって、それによってクライアントである企業でイノベーションが生まれるのならそれはそれでいい。 仮にそうならない場合には、これまでコンサルファームが請け負っていた機能は誰がどのように担うのか。個々の会社が自前でやるのか、AI(人工知能)を使ったサービスを活用するのか。 日本全体、世界全体でイノベーションを生み出せるより良い経営にたどり着けるのか。そういう視点からすると、今日の話は明るい未来が見えたような気はします。いろいろとやれることは広がっているので』、そうなってもらいたいものだ。
・『ロジックと直感は相反するものではない  編集部:今回伺ったお話で一番印象に残ったのは、野球のことを全く知らないけれど、東北楽天ゴールデンイーグルスの経営を立て直した人がいるという話でした。誰も気付かないことに気付ける能力があったということですよね。それこそ、まさに直感でしょう。そう考えると、コンサルファームが採用人数を増やしていろいろなタイプの人材を取り込んでいるというのはどうなんでしょうか。直感と逆の方向に行っちゃうんじゃないかという気もします。 安田:今日は右脳と左脳、ロジックと直感という対比で議論が進みましたが、それらの食い合わせが悪いのかというと果たしてどうなんだろう。 暗黙知を形式知化し見える化するプロセスで考えると、ロジックであれ、デザインであれ、似たようなことをやっているんじゃないかと思います。暗黙知のままでは組織の中で共有されにくい。何らかの形で見える化しようとするわけですが、ロジックを使う時は、みんなが理解できるようなフレームワークに当てはめる。 デザインの場合は、見えるものをぽんと出す。アウトプットの仕方はかなり違うけれど、必ずしも相反するものではない気がします。見える化のチャネルとしてこれまではロジカルな部分ばかりが強調されていたけれど、そこに、ある種の直感も入り込んだデザインを持ってくるということで。 入山:ロジカルシンキングとデザインシンキングの違いって、哲学的に言うと還元主義と全体主義の違いだと思います。デザインシンキングが求められている背景は、還元主義とは真逆の方向性が必要だということでしょう』、ずいぶん難しい話だが、感覚的には分かるような気がする。
・『素粒子論を突き詰めても宇宙は説明できない……  近代の科学はだいたい分解していく方向です。ミクロ経済もそう。バラバラにして細かいメカニズムを把握しようとする。問題は、それをわっと組み合わせた時、全体としてまるっとひとつのパッケージになるのかというと、必ずしもそうではないこと。例えば物理の世界で、素粒子論を突き詰めても宇宙のメカニズムは説明できないのと同じで。 編集部:なるほど。以前取材した時、立正大学教授の吉川洋先生がマクロ経済とミクロ経済の違いについて、同じようなお話をされていたのを思い出しました。ミクロ経済を突き詰めてマクロ経済を理解しようとするのは間違っていると。 安田:はい、吉川先生は今のマクロ経済学のあり方に非常に一貫して批判的なスタンスですね。「物理学を見よ」というわけです。物理学でのミクロの理論は量子力学で、個別の粒子を分析します。でも粒子の振る舞いを細かく分析できても、もう少し大きな物体の動きにはほとんど役に立たない。 例えば、多数の気体分⼦が集まった気体の振る舞いを知るには統計⼒学が必要です。実際、熱⼒学などは、マスを扱う統計⼒学をベースに発展してきました。 マスを扱う統計⼒学的な発想を⼊れなきゃいけない、という立場で吉川先生はずっと研究されています。今のところ、このアプローチは経済学界では主流になっていませんけれども。 経済学に関しても、ミクロレベルの家計の行動とか企業の競争といったものは、ミクロ経済学とかゲーム理論を使って分析すればいいのですが、何億人も集まったマクロの経済を分析するには、マスを扱う統計力学的な発想を入れなきゃいけないと考えてずっと研究しています。異端とされていますけれどね』、吉川氏がそんな意欲的な研究をしているとは初めて知ったが、研究が上手くいくよう期待したい。
・『コンサルに“イケてる”イメージで入社した人の末路  編集部:ミクロは突き詰めるとキリがない。マクロでざっくりしたものを細かくしてしまうとかえって精度が落ちるようなところもある。そこのさじ加減が難しいですね。 入山:難しいです。でも御立さんのお話をうかがっていて思ったけど、非常に広い視野を持っているので、いい意味での“ざっくり感”がありますよね。 編集部:ありますね。世の中に、もっとそういうざっくり感を持つ人が必要なのでしょうかね。 入山:それ、僕はすごく重要だと思います。外部から見ると、コンサル=ロジックみたいなイメージがあるけど、上に行く人は右脳型のざっくり感のある人なのかもしれない。御立さんはそういう感覚をお持ちだから、そっち側の絵を描いているわけですが、組織の中にいる人たちが、ざっくりじゃない人ばかりになっていたらまずいよね。 編集部:最後は属人的なものに依存するっていうことですね。だから結局、頭脳よりは「人」が大事。では、イケてるイメージだけで入ってきちゃった人たちは、どうなっちゃうのか。 安田:きっかけとして人って大事ですからね。面白い社長がいるとか、ちょっと上の先輩にすごく優秀な人がいるとなれば、新しいことをやりたい人たちが集まってくるわけですから』、確かに「「人」が大事」なようだ。
・『イケてる組織でも、「ビッグプッシュ」が必要  一定期間、いい人が入ると、その世代の人たちが抜けたとしても、当分はその循環が続く。ただ新しいビッグプッシュがなくて惰性でいくと、徐々に良かった特色が失われていってしまいます。今、外資系コンサルティングファームはその過渡期にあるのかもしれない。 入山:そういう意味でも本当に今はチャレンジングな時期ですね。 編集部:なるほど。そうやって整理すると、コンサルファームの今の成長ステージがどのあたりなのか、理解できますし、成長ステージの理解の仕方は、ほかの業界やら身近な事象にも、あてはめられそうですね』、外資系コンサルティングファームが「過渡期」をどのように乗り切っていくのか注目していきたい。

次に、3月13日付けダイヤモンド・オンライン「新卒「売り手市場」の落とし穴、大企業の求人倍率はたった0.37倍」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/196634
・『3月に入り、今年も就職活動が実質的に解禁された。「売り手市場」と呼ばれ、学生優位に活動が進んでいると思われているが、さまざまなデータをみていくと、すべての業界・企業で売り手市場とはとても呼べない状況だ。一体、いま就職市場では何が起きているのか。現在発売中の『息子娘を入れたい会社 2019』を一部抜粋し、企業規模別・業種別の大卒求人倍率や就職活動をする学生の意識調査から、就職市場の実態をあぶり出す』、興味深そうだ。
・『就職内定率や大卒求人倍率は過去最高レベルだが……  いま、就職市場は「売り手市場」と言われる。就職希望の学生数よりも、企業側の求人数の方が多く、就職には有利な状況だというのだ。確かに、文部科学省と厚生労働省の調査では、2019年3月大学卒業予定者の就職内定率は77.0%となり、前年同期比1.8ポイント上昇(2018年10月1日現在)。1997年3月卒に調査が開始されて以来、同時期では過去最高となった。 就職情報各社の調査を見ても同じ傾向がうかがえる。 たとえば、リクルートワークス研究所の発表(「第35回 ワークス大卒求人倍率調査」)によると、2019年3月卒業予定の大学生・大学院生に対する全国の民間企業の求人総数は、前年の75.5万人から81.4万人へと5.8万人増加(対前年比+7.7%)している。一方、学生の民間企業就職希望者数は、前年とほぼ同水準の43.2万人(対前年比+2.1%)。求人に対して38.1万人の人材不足となった。その結果、大卒求人倍率は1.88倍と、前年の1.78倍より0.10ポイント上昇している。 こうした状況において、学生の間には“楽勝”ムードが漂っているのである』、かつての「就職氷河期」が嘘のようだ。
・『規模や業種別の差が大きい「売り手市場」に潜む落とし穴  しかし、世間で言われる就職内定率や求人倍率などのデータは全体の平均であることが多い。実態を詳しく見ていくと、別の様相が浮かび上がってくる。 いま触れたリクルートワークスの調査によると、従業員規模別が5000人以上の大企業の求人倍率は0.37倍にすぎず、しかも前年の0.39倍からむしろ0.02ポイント低下している。1人の採用枠に3人の学生が応募しているのである。 一方、300人未満の企業(中小企業)ではむしろ9.91倍と、前年の6.45倍から3.46ポイントも上昇して過去最高となった。1人の学生に対し、10社の求人がある計算だ。 業種別の差も大きい。人手不足が深刻になっている流通業の求人倍率は12.57倍と、前年の11.32倍より1.25ポイント上昇。建設業の求人倍率も9.55倍と、前年の9.41倍より0.14ポイント上昇している。 その一方、金融業は0.21倍、サービス・情報業は0.45倍にすぎない。 企業規模や業種による求人倍率の差がこれだけ大きいと、決して「売り手市場」で学生優位と言えるような状況ではない。 当然、就活の方法も変わってくる。「売り手市場」という表面的なムードに流されていると、苦戦することは間違いない』、「大企業の求人倍率は0.37倍」、「金融業は0.21倍、サービス・情報業は0.45倍」というのでは、確かに「決して「売り手市場」で学生優位と言えるような状況ではない」。
・『学生たちの就職意識にも微妙な変化が生じている?  社会経験がまだない大学生の就職に対する意識が、マスコミ報道や曖昧な社会風潮に左右されることはある意味で当然である。 それゆえ、学生の就職に対する意識が、社会の実態を映し出している面もある。 ここでは、マイナビ「2019年卒大学生就職意識調査」を見てみよう。 同調査によると、就職にあたっての就職観として最も多いのは、「楽しく働きたい」で、33.3%。2001年から1位を続けている。 次いで多いのが「個人の生活と仕事を両立させたい」で24.2%。こちらも19年間2位のままだ。 一方、以前と比べ、「人のためになる仕事をしたい」(15.0%)と「自分の夢のために働きたい」(11.6%)が逆転してきているのは特徴的だ。東日本大震災以降、社会貢献に対する関心の高まりが垣間見える。 以前と比べて意識の変化がよりドラスティックなのが、企業選択のポイントだ。 どのような企業が良いと思うか?」という質問に対し、最も多かったのは「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」(38.1%)だが、年々、その割合は下がってきている。 替わって、増えてきているのが「安定している会社」(33.0%)。いまのままなら、いずれトップになりそうな勢いだ。 また、男女の違いも興味深い。「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」の割合は文系理系を問わず、女子の方が男子より高い一方、「安定している会社」の割合は男子の方が女子より10ポイント前後も高いのである。特に文系男子では2年連続して「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」 を抑えてトップになっている。 景気は、いまや戦後最長を更新しようかというところまできているが、学生の意識は意外に保守的であり、むしろ将来への不安が高まっているようにも見える』、「安定」志向が強まっているというのは残念だ。
・『何をもって「安定」と言うか――変わりつつある「安定」の意味  このように学生の間では就職において、概ね、「安定性」を重視する傾向が強まっているが、「安定」とはそもそも何だろう。 おそらく、本人が望まないリストラや転職を迫られることなく、安定した生活を送れるように、ということではないだろうか。 そのためには、やはり、「規模が大きく、有名で、“ブラック”ではない」といった企業、そして、その正社員をイメージするのであろう。 しかし、最近、メーカーに勤める技術者が、派遣会社に転職するケースが増えているという。 デジタル関係を中心に技術革新のスピードがどんどん早くなり、企業としては時間をかけて専門知識やスキルを持つ社員を育てている余裕がない。そこで、即戦力が欲しいというニーズが高まっているのと同時に、技術者の側でもひとつの会社だけにとどまっていることをリスクととらえる意識が生まれてきているためだ。 あるいは、人材サービス産業協議会の調査(「転職賃金相場2018」)によると、財務経理や人事など管理部門では、1000万円以上の高年収での中途採用ほど転職回数が多い人の割合が高くなっているという。豊富な実務経験が前向きに評価されている表れで、転職に対するマイナス評価は徐々に薄れてきている。 学生は「安定」志向を強めているが、そもそも「安定」の中身が変わってきていることに気づく必要がある』、そこまで学生に求めるのはいささか酷な感じもする。
・『こんなはずじゃなかった、と 甘い見通しで慌てるケースも  学生の就職に対する意識は、どうしても近視眼的になりがちである。そのため、社会風潮のほか、親の意向にも左右されやすい。 しかし、採用コンサルタントの櫻井樹吏氏は次のように警鐘を鳴らす。 「親が知っている業界や業種、企業も限られます。たとえば、公務員だと、民間企業の動向をあまり知らないでしょう。視野の狭い学生の考えに、親の限られた知識や価値観が加わると、就職における選択の幅が大幅に狭まってしまいます。学生の知っている業種や企業が社会全体の20%、親のそれが20%として、両方を掛け合わせると、わずか4%しか視野に入らないことになったりします」 その証拠に、最近の学生の就活の動きには、あるパターンが見えるという。 従来に比べて就職への危機感が薄く、のんびり構える学生が増えている。そのため、いわゆる“エントリー”の社数が減り、また、大手に絞って活動するケースが多いのだ。しかし、大手や人気業種では採用において数や質をむしろ絞り込んでいる企業も少なくなく、そこで、夏以降、慌てて、大手に限らずに業種も広げて探し始めるという。 甘い見通しであとから慌てているようでは、充実した就活をするのは難しいだろう』、私立大学では「就活」に力を入れているので、「わずか4%しか視野に入らない」というのは大げさ過ぎる。
・『相対化する就活の「成功」と「失敗」を考える  そもそも大手に絞って就職活動をしているといっても、かつて日本を代表するような有名企業が経営難に陥っているケースが少なくない。大手企業・有名企業であれば将来も安心、とはとても言えない。 まして、これからは「人生100年時代」と言われる。大学卒業時点での就活で、その後の人生が決まるわけではない。 「終身雇用」はすでに死語となった。これからは、一生の間に1回2回どころか、3回くらい転職するのが当たり前になるだろう。 また、最近よく聞くようになったのが「社内失業者」という言葉だ。企業に勤めているものの、活躍の場がなく、ほとんど働いていないような人のことを指す。その数は1980年代後半に大量入社したバブル世代を中心に、500万人とも600万人とも言われる。 これから求められるのは、自らのキャリア観と専門性や強みだ。 就活のスケジュールを巡る議論も、早期化が問題と言われるが、新卒一括採用という前提があっての話にすぎない。通年採用、第二新卒採用など採用形態が多様化していけば、そもそも就活スケジュールの「早期化」に意味はない。 キャリア観や自分の個性、強みをしっかり認識してから就職活動に取り組んだ方が、むしろ「就活」における満足度は高くなるのではないか。就職後の長いキャリアと人生も豊かなものになるはずだ』、本日の日経新聞によれば、「経団連、通年採用に移行 新卒一括を見直し 大学と合意、日本型雇用転機に」とのことで、遅まきながらいよいよ通年採用も視野に入ってきた。ただ、「新卒一括」も新入社員研修のしやすいといったメリットもあるので、今後、甲論乙駁の議論になるだろう。

第三に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が4月2日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「大手“下層”社員の就活生暴行事件に感じる薄ら寒さ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00017/?P=1
・『3~4年くらい前だろうか。その“予兆”は、既にあった。 大学で講義を終えたあと、数名の女性の学生たちに、「先生、OB訪問ってやっぱりした方がいいんでしょうか?」と相談を持ちかけられたのである。 当時は、エントリーシートの普及で一時激減していたOB・OG訪問がにわかに復活。企業側から大学にOB・OGが送られてくるなど、学生が直接話を聞く機会もわずかながら増えていた時期だった。 なので私は、「行った方がいいよ。実際に会社に行って、そこで働いている人たちの雰囲気を肌で感じることもできるし」と即答。 すると彼女たちは戸惑った表情で、「会社に行っていいんですか? OB訪問って外で会うものだと思ってた」と返したのである。 (以下、当時のやりとり)「外で会うって……、OBって女性ってこと?」(河合)「いいえ、男の先輩です」(学生)「へ? なんで会社じゃないの?」(河合)「会社じゃ言えないこともあるから、外でお茶したり、ご飯食べたりするんです」(学生)「先輩からもその方が、会社の実態が分かるからいいよ、ってアドバイスされてます」(学生) 「う~む……二人っきりで会うの?」(河合) 「はい」(学生) 「でも、向こうは就業時間中なのよね?」(河合) 「土日とか……」(学生)「仕事が終わってからとか……」(学生) 「いやぁ~、そんなのありえない。会社の中でだって、女性社員と二人で話すときは、外から室内をうかがえる窓付きの部屋にしないとダメなご時世なんだから、『会社見学もさせていただきたいので、会社に伺わせていただいていいですか?』って聞いてごらん」(河合)といったやりとりをしていたのである。 その“OB訪問”で、ついに逮捕者が出たのは、みなさんご承知のとおりだ。 警視庁は2月18日、ゼネコン大手の大林組に勤める27歳の男性社員を、OB訪問に来た女子大学生にわいせつ行為をした疑いで逮捕。男性社員はパソコンを見ながら面接指導をすると言って、学生を自宅マンションに誘いこんだとされている(東京地検は3月16日までに、不起訴処分とした。理由は明らかにされていない)。 また、3月26日には、就職活動でOB訪問に訪れた女子大学生を居酒屋で泥酔させ、女子大生の宿泊先のホテルでわいせつな行為をした疑いで住友商事元社員の24歳の男性を逮捕。事件があったのは3月1日夜から2日未明にかけてで、被害者から住友商事側に被害の連絡があったため、6日に懲戒解雇されている』、OBが会社の外で会うのがそんなに普及していたとは、確かに危険だ。
・『きっかけはマッチングアプリ  報道によれば、どちらも、就活中の大学生とOBやOGをつなぐスマートフォンのマッチングアプリで知り合ったそうだ。 マッチングアプリは2017年ごろから急速に普及したもので、大手転職支援会社が自ら運営するものや、アプリ運営会社が就職情報会社との業務提携の下で提供しているものなどがある。やり方は実に簡単で、訪問を受ける側の社会人が登録すると自分の会社名や出身校が表示され、就活生がアクセス。条件が合えば個別にメッセージのやりとりが可能になる仕組みだ。利用料はなし。すべて無料だ。 登録している社会人のほとんどは企業側が公認しているユーザーだが、一部、“非公認”のボランティアユーザーと呼ばれる社会人も含まれている。大林組の事件以降、ボランティアユーザーを中止したり、面談のガイドラインを作成したりと運営側も対応に追われているようだ。 青春時代を“完全アナログ”で育った私の感覚では、たとえOB・OGといえどもアプリ上の情報だけで見ず知らずの先輩といきなり「会う」など到底理解できない。が、“完全デジタル”で育った若い世代にそんなわだかまりは一切ない。 中には「セクハラっぽいことを書いてきたから、ヤバイと思ってアクセスするのをやめた」という学生や、「アプリは怖いと聞いたことがある」と敬遠する学生もいるが、ブラック企業を過剰なまでに恐れる学生たちにとって、気軽にOB・OGとコンタクトでき、本音を聞き出すチャンスを得られるアプリはどちらかといえばメリットが大きいツールなのだ。 念のため断っておくと私はOB・OG訪問は賛成だし、自分が求める条件に合ったOB・OGとコンタクトを取れるアプリを利用すること自体は、悪いとは思っていない。 しかし、これだけSNSを通じたトラブルが頻発するご時世であれば、もっと慎重な運営をして然るべきだったのではないか。「あとは本人同士でひとつよろしく!」「あとは企業さんの方でひとつよろしく!」的な“甘さ”が多分にあったように思えてならない。 それ以前に、企業側は「自分の会社の社員が、その身分を利用して、“就活”をダシに学生と社外で会うこと」をどう考えているのだろう。 大林組は逮捕が報じられてから約2週間後の3月6日に、「OB・OG訪問の際の当社社員の対応について」「リクルート活動における行動規範について」と題された文書をHP上に公表しているが、事件の詳細に関しては何も書かれていない。 住友商事では事件後、リリース「当社元社員の逮捕について」を通じて謝罪したが、同社がくだんのマッチングサイトを運営する企業と提携し、約350人の社員が登録していた事実には一切触れていない(関連リリース「住友商事の社員 約350名が登録」)』、「マッチングアプリ」が普及していたとは初めて知った。「“非公認”のボランティアユーザーと呼ばれる社会人」までいるとは危険極まりない。
・『下っ端にも広がる「何をやっても許される」感  いずれにせよ、私は今回の事件にとてつもない憤りを覚えている。 就職希望先の社員と学生という圧倒的に差がある力関係の中で性的な関係を強要するなど、まったくもって言語道断。会社側は「未来の自分たちの仲間」かもしれない学生を、もっとしっかり守る必要があるのではないか。 今回の2つのケースがそうだったように、20代のひよっこ会社員がまるで「会社の採用担当者」のように振る舞い、「内定」という“人参”をちらつかせながら、会社の目の届かないところで学生たちと「個人的」に会うような行為を放置している事態は、まさに異常としか言いようがない。 SNS上では、女子学生の“わきの甘さ”を批判する声もあったけれど、それは全くのお門違いだと思う。 就職という大きな人生の節目で、学生たちはみな「ちょっとでもいい会社に入りたい」と必死だ。もちろん今の就活のあり方や、安定志向=大企業志向の高まりには、私自身異論はある。しかし、今回の事件はどう考えても悪いのは男性社員であって、女子学生ではない。 学生たちの必死さを悪用し、「大企業の会社員」という身分を利用し、卑劣な行為に及んだ側の問題であり、犯行である。 今回逮捕された男性社員たちは、企業名も出さず、個人の名前だけで、同じような卑劣な性的行為を女子学生に強要できただろうか? 自分が属する企業の社会的地位を、自分の価値と混同した末の悪事であることは紛れもない事実だろう。 いつの時代も、そういうモラルなき横暴な振る舞いをするのは、決まって社会的地位の高い輩である。 以前、米国のウーバーテクノロジーズで、215件ものセクハラやパワハラが疑われ、20人超が解雇されるという前代未聞の事件があった(関連記事:日本経済新聞「ウーバー、改革へ女性幹部スカウト セクハラ20人超解雇」)。当時のCEOトラビス・カラニック氏は「Aチーム」と呼ばれるハイパフォーマー軍団を側近にし、社長がお墨付きを与えたハイパフォーマーの横暴には人事部も手を出せず、黙認するしかなかったと報じられた。 私がいた“業界”にもそういう人たちはいたけれど、大抵それは、そこそこの役職に就く、組織階層の上階の輩だった。 そんないわゆる“特権階級”による「何をやっても許される」という“超勝ち組的トンデモ発想”が、大企業とはいえ、まだ20代の、組織内ではまだまだ下層の会社員にまで広がっているリアルを突きつけられ、私は薄ら寒い感覚に陥っているのである』、「“超勝ち組的トンデモ発想”」とは言い得て妙だ。
・『氷山の一角?  それに……、今回の逮捕は「ついに出た」とするのが正確な表現であり、“超勝ち組のOB”による学生への悪質なセクハラはかなり前から問題視されていた。そこでの「セクハラ」には自らの優位性を背景にした傲慢な視線があり、ちょっとわきが甘い、コミュニケーション下手の男性が、さしたる自覚もなくついうっかりやってしまう類のものとは大きく異なる(それはそれで許されない行為ではあるけれど)。 「エントリーシートを添削してあげる」だの、「面接のやり方を教えてあげる」だのと、LINEなどで個別に連絡を取り、学生を夜間に飲食店などに呼び出し、付き合わせる。「人気の大手企業の内定取りたきゃ、セクハラも我慢しなきゃならない」といった馬鹿げた噂まで、学生の間で出るほどだった。 つまり、あれだ。マッチングアプリの普及で“超勝ち組のOB”による悪質なセクハラがお手軽に行われるようになってしまったわけで、私が思うに、氷山の一角が明るみに出ただけ。誰にも相談できず泣き寝入りしている学生も少なくないのではないか。 「“一線”を越えそうなら、きっぱりと断ればいい」と批判する人もいるかもしれないけど、それって、そんな簡単なことではない。私のような“ジャジャ馬”でさえ、若い時分、電車の中で痴漢に遭った際には怖くて声を上げることができなかった。 理屈じゃない。「オトナ」という別世界の存在に、自分がターゲットにされることへの恐怖心。身体が金縛りにでもあったように身動きできなかった罪悪感。そんないくつもの怖さ、恥ずかしさ、悔しさから、自己嫌悪に陥り、行動不能に至り、ただただ我慢するしかなくなってしまうのである。 今となってはそんなウブな時代があったなんて……信じられないけど。 しかし、いったいなぜ、これほどまでに「何をやっても許される」と勘違いする大バカな若者が増えてしまったのか? 私は、世の中の不透明感に伴って強まっている、“大手病”とも呼ばれる学生たちの大企業志向が大きく影響していると考えている。勝ち組の椅子取り競争が年々激化する一方で、椅子を得た若造が勘違いし、結果的に“オレ様エリート”が増殖する……。 就職情報大手のマイナビが、2019年春卒業予定の大学生らに行ったアンケート調査では、「大手企業に就職したい」という回答が54.5%と前年調査より1.7ポイント上昇。特に、その傾向は男性に多く、「絶対に大手」と答えた男子の割合は文系、理系ともに女子の2倍近かった。その一方で、リクルートワークス研究所の調査によると、従業員数が5000人以上の企業の求人倍率は0.37倍と、狭き門だ(関連記事:日本経済新聞「『大手・安定志向』鮮明に、就活生意識調査 マイナビ」)。 希望していた中小企業に内定をもらっていた学生が、大企業に決まった友人に触発され改めて大手を目指した結果、「自分は何がしたくて、何を求めているのか……何が何だか分からなくなってしまった」と嘆いていたことがある。学生たちの中では、おそらく私たち“オトナ”が想像する以上に、「大企業に就職する」というだけで、自分と他者を隔てる特別感が作られているのである』、「若い時分、電車の中で痴漢に遭った際には怖くて声を上げることができなかった」、河合氏にもそんなウブな時代があったことを再認識した。「勝ち組の椅子取り競争が年々激化する一方で、椅子を得た若造が勘違いし、結果的に“オレ様エリート”が増殖する」とは、さすが鋭い指摘だ。
・『「会社の廊下でも、外の道路でも、真ん中を歩け!」  それに拍車をかけるのが、“上”の超特権階級の会社員である。 ある大企業に就職した学生が、研修会で「キミたちはえりすぐりのエリートだということを忘れないでほしい」と言われたと話してくれたことがある。「会社の廊下でも、外の道路でも、真ん中を歩け!」と。 話を聞いたときは失笑してしまったけど、要は「キミたちは最上級の階層に属する人間である」と言いたかったらしい。 っていうか、会社の廊下はまだしも、道路の真ん中歩いたら、車にひかれてしまうと思うのだが……。まぁ、そんなツッコミはこの際、脇に置いておこう。端的に言えば、会社のトップが自分の会社の新入社員に、「自分より“下”の属性をバカにしていい」とお墨付きを与えているのに等しい。 会社の知名度や規模、収入や役職、社会的地位などの“外的な力”は、人の生きる力を強め、満足感を高めるリソースであり、それ自体は何ら悪いものではない。問題は、外的な力を過信、偏重するあまり、内的な力を高めるのをおろそかにしてしまうこと。 本来であれば、絶好調なときほど、自分が恵まれた環境にいるときほど、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった“内的な力”、いわば人格の土台に磨きをかける姿勢を大切にしなきゃいけない。 ところが、若いときから自分の給料では入れないような店を接待で使ったり、会社の名刺なしには会えない大物と接したり、下請け会社の年上の人から頭を下げられれば、外的な力を背景に、他者を軽んじるようになってしまう。そして、会社組織自体が、そうした姿勢をいさめ、修正する機能を果たせなければ、今回のような事件が起きても何らおかしくない。 組織の目の届かないところで、圧倒的に弱い立場にある学生たちと社員が「個人的」に会うような行為を容認し、放置していたことを、今回問題になった企業はどう考えているのか? そもそも、弱い立場にある人間への配慮が、根本的に欠けている。 今回の事件は男性社員によるものだが、これが女性会社員によるものだったとしても、当然、私の見解は全く変わらない。ここでしているのは、「男女」の話ではなく、立場の「上下」の話なのだから』、「若いときから自分の給料では入れないような店を接待で使ったり、会社の名刺なしには会えない大物と接したり、下請け会社の年上の人から頭を下げられれば、外的な力を背景に、他者を軽んじるようになってしまう。そして、会社組織自体が、そうした姿勢をいさめ、修正する機能を果たせなければ、今回のような事件が起きても何らおかしくない」、との鋭く深い指摘には、大いに考えさせられた。
タグ:若いときから自分の給料では入れないような店を接待で使ったり、会社の名刺なしには会えない大物と接したり、下請け会社の年上の人から頭を下げられれば、外的な力を背景に、他者を軽んじるようになってしまう 氷山の一角? 自分が属する企業の社会的地位を、自分の価値と混同した末の悪事であることは紛れもない事実 下っ端にも広がる「何をやっても許される」感 就職活動でOB訪問に訪れた女子大学生を居酒屋で泥酔させ、女子大生の宿泊先のホテルでわいせつな行為をした疑いで住友商事元社員の24歳の男性を逮捕 大林組に勤める27歳の男性社員を、OB訪問に来た女子大学生にわいせつ行為をした疑いで逮捕 河合 薫 金融業は0.21倍、サービス・情報業は0.45倍にすぎない 従業員規模別が5000人以上の大企業の求人倍率は0.37倍にすぎず、しかも前年の0.39倍からむしろ0.02ポイント低下 規模や業種別の差が大きい「売り手市場」に潜む落とし穴 「新卒「売り手市場」の落とし穴、大企業の求人倍率はたった0.37倍」 ダイヤモンド・オンライン イケてる組織でも、「ビッグプッシュ」が必要 コンサルに“イケてる”イメージで入社した人の末路 素粒子論を突き詰めても宇宙は説明できない… ロジックと直感は相反するものではない ビジネススクールIMDの競合はマッキンゼー 現在の議論のテーマ 安田洋祐 (その7)(外資コンサルが「イケてるから就職しちゃった」人の末路、新卒「売り手市場」の落とし穴 大企業の求人倍率はたった0.37倍、大手“下層”社員の就活生暴行事件に感じる薄ら寒さ) (就職活動) 会社のトップが自分の会社の新入社員に、「自分より“下”の属性をバカにしていい」とお墨付きを与えているのに等しい “非公認”のボランティアユーザーと呼ばれる社会人も含まれている OB・OG訪問がにわかに復活 就職内定率や大卒求人倍率は過去最高レベルだが…… 戦略構築から業務遂行に事業拡大中だが… 「経団連、通年採用に移行 新卒一括を見直し 大学と合意、日本型雇用転機に」 手を広げてもやっていけるのか? “特権階級”による「何をやっても許される」という“超勝ち組的トンデモ発想”が、大企業とはいえ、まだ20代の、組織内ではまだまだ下層の会社員にまで広がっているリアル 外資系コンサルティングファームについて議論 新連載「入山・安田の業界未来図鑑」 ある大企業に就職した学生が、研修会で「キミたちはえりすぐりのエリートだということを忘れないでほしい」と言われた 「Aチーム」と呼ばれるハイパフォーマー軍団を側近にし、社長がお墨付きを与えたハイパフォーマーの横暴には人事部も手を出せず、黙認するしかなかったと報じられた 日経新聞 「[議論]外資コンサルが「イケてるから就職しちゃった」人の末路 File1 外資系コンサルティングファーム(第4回)」 コンサルファームに「範囲の経済」は当てはまるか 「東大・京大でコンサル大人気」は危機 日経ビジネスオンライン 入山 章栄 就活 相対化する就活の「成功」と「失敗」を考える 20人超が解雇 何をもって「安定」と言うか――変わりつつある「安定」の意味 学生たちの就職意識にも微妙な変化が生じている? 「大手“下層”社員の就活生暴行事件に感じる薄ら寒さ」 きっかけはマッチングアプリ セクハラやパワハラ 「会社の廊下でも、外の道路でも、真ん中を歩け!」 ウーバーテクノロジーズ 勝ち組の椅子取り競争が年々激化する一方で、椅子を得た若造が勘違いし、結果的に“オレ様エリート”が増殖する こんなはずじゃなかった、と 甘い見通しで慌てるケースも
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