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不正会計(東芝以外)(その2)(今や日本は“粉飾大国” 民間企業もデタラメ会計処理が急増、粉飾した方が「得」に? 久保利弁護士が嘆く不正の真因、他人事と笑えぬ大和ハウスの中国巨額流用事件、部長「懲戒解雇」でも残る東レの「粉飾決算」疑惑 10億円前後の売上の実態は「在庫飛ばし」か?) [企業経営]

不正会計(東芝以外)については、2016年4月18日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(今や日本は“粉飾大国” 民間企業もデタラメ会計処理が急増、粉飾した方が「得」に? 久保利弁護士が嘆く不正の真因、他人事と笑えぬ大和ハウスの中国巨額流用事件、部長「懲戒解雇」でも残る東レの「粉飾決算」疑惑 10億円前後の売上の実態は「在庫飛ばし」か?)である。

先ずは、1月27日付け日刊ゲンダイ「今や日本は“粉飾大国” 民間企業もデタラメ会計処理が急増」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/246319
・『厚労省「毎月勤労統計」の不正調査やアベノミクスの賃金偽装が発覚し、統計への信頼が揺らいでいる。そんな中、24日、東京商工リサーチが衝撃的な調査結果を発表をした。コンプライアンスやガバナンスが叫ばれるご時世、上場企業の「不適切会計の開示」が急増しているのだ。数字のチョロマカシは国だけでなく、民間企業にも蔓延している』、「不適切会計」と穏やかな表現をしているが、実態は「粉飾」だ。
・『9年間で2倍超  東京商工リサーチは、2008年から不適切会計の開示企業を調査している。08年は25社だったが、16年は過去最多の57社と9年間で2・2倍に増え、昨年は2番目に多い54社と高水準だった。 「15年の東芝の不適切会計問題以降、開示資料の信頼性確保や企業のガバナンス強化を求める声は強まっています。一方で、海外展開など営業ネットワークが拡大する中、グループ会社へのガバナンスが行き届かないのが実情です。難しい会計処理に対応できる人手が確保できないのも要因です」(東京商工リサーチ情報本部・松岡政敏課長) 昨年、不適切会計を公表した東証1部上場企業は26社(別表)。単なる「誤り」もあるが、「着服」や「粉飾」など不正が横行している。しかも、一部のワルの仕業ではなく、組織的な不正が長年続くことも珍しくない。 昨年7月に発覚したヤマトHD子会社の法人向け引っ越し代金の過大請求は、昨年までの過去5年間で約31億円、123支店にも上った。中には、支店長の関与もあったという。 業務用冷蔵庫大手のホシザキは、昨年10月に架空の工事発注が発覚。17年1月~18年9月にかけて、過酷なノルマを達成するために、168人いる営業担当者らの4割に当たる70人もが不正に手を染めていた』、ヤマトやホシザキでは大規模な組織的不正で、悪質だ。
・『ヤマトもホシザキもマトモな誰かが止めなかったのか――。経済評論家の斎藤満氏が言う。「粉飾も、『バレなければいい』との意識を、普通の人が持っているということです。財務省、厚労省の文書やデータの改ざんなど国が率先して粉飾し、まったく責任を取らないわけです。知らないうちに、国民は不正を受け入れるようになってしまっている。“お上”がやっているじゃないかという意識です。平気でウソをつく国で、会社や国民だけが“公明正大”なんてことにはなりません」 1991年に崩壊したソ連は長年、政府が経済成長率や国民所得の統計を改ざんし、「経済はうまくいっている」と喧伝したが、企業や組織の報告でもデタラメやウソが蔓延していたという。毎勤の不正調査をこのままアヤフヤで終わらせたら、日本も粉飾大国まっしぐら。待っているのは崩壊だ』、「“お上”がやっているじゃないか」という意識を払拭するためにも、「財務省、厚労省の文書やデータの改ざん」にきっちり「けじめ」をつけるべきだろう。

次に、2月25日付け日経ビジネスオンライン「粉飾した方が「得」に? 久保利弁護士が嘆く不正の真因」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00017/022100001/?P=1
・『日本企業の不正会計はなぜ、無くならないのか。コーポレートガバナンス(企業統治)に精通する久保利英明弁護士は、経営者が「数字を甘く見ている」ことが原因だと指摘する。 Q:東芝など、粉飾決算をきっかけに経営が傾く大企業が相次いでいます。不正は会計の数字だけでなく、企業倫理をも腐らせてしまいます。にもかかわらず、一部の日本企業は不正会計をやめようとはしない。なぜでしょうか。 久保利英明弁護士(以下、久保利):基本的にバレないからでしょう。周囲がみんな不正しているのに、自分だけやらないのは損だと思っているのかもしれません。 古い体質の日本企業は、有価証券報告書の虚偽記載を軽く考えすぎです。粉飾決算と言われると気にするけれども、虚偽記載と表現されると(実質的な危険を伴わない)「形式犯」と見なしてしまう。不正会計の結果として数字が多少上下しても、会社の実態が変わらなければ問題ない、というわけです。 厚生労働省の統計不正でも同じですが、日本人は数字の話になると「矮小」で「些末」なことだと考えがちです。言語ではなく数字によって真実を表現するのが決算の目的です。会計数値のごまかしはマーケットに対する詐欺なのに、そういう認識ではなくなるのです。不正に手を染める経営者は数字を甘く見ている。「なめている」と言ってもいいでしょう』、「日本人は数字の話になると「矮小」で「些末」なことだと考えがち」というのは困ったクセだ。
・『Q:経営者が不正に手を染める動機は何でしょうか。 久保利:自分が立派な経営者だと、周囲に思われたいからでしょうね。経営の実態としては問題ないのに、たまたま数字が悪かった場合、四半期決算などで厳しい評価が下されます。それに耐えられないと経営者が考えると「お化粧」が始まります。 過去の優れた経営者を守りたいという動機もあるでしょう。「中興の祖」などと呼ばれるような経営者に傷をつけるぐらいなら、数字を多少いじった方がいいと考えてしまう。人間は文句を言いますが、数字は文句を言いませんからね。在任中だけ上手くやれればいいと、経営者が考え始めたらアウトです』、かつては、決算数字は財務部門が社長と相談して作るもので、財務部門の腕の見せ処だったが、いまや許されなくなっているのに、惰性で操作しているとすれば問題だ。
・『Q:東芝の不正会計では「チャレンジ」を命じた経営者は摘発されていません。処分が甘いことも背景にありそうです。 久保利:その通りですね。オリンパスのように東京地検特捜部が登場すると大変ですが、証券取引等監視委員会レベルなら大したことにはならないと、経営者がたかをくくっているのでしょう。 日本の検察は無罪を「格好悪いこと」と捉えがちで、(不正会計を)事件化しようとしません。しかしそれは検事の怠慢です。どんどん立件して、どこからが有罪なのかの線引きを作らなければ、みんな萎縮してしまいます。無罪になってもいいから、裁判所の判例を積み重ねて行くことが大事です。 検察が尻込みしているため、今の日本では不正会計をやった方が「得」になっています。嘘をついて粉飾しても上場廃止になることはほとんどない。会社が苦しいときに数字をごまかし、3年ぐらいは隠し通す。その後、ほとぼりが冷めた後に有価証券報告書を訂正すれば許されてしまう。その結果「ハコ企業」とも揶揄される、とんでもない上場企業が生き残っているのです』、「検察が尻込みしているため、今の日本では不正会計をやった方が「得」になっています」、検察の猛省を促したい。
・『「性悪説」で制度設計すれば不正は減る  Q:不正会計は洋の東西を問わないのでしょうか。 久保利:2001年に米エンロンで不正が発覚するまでは似たような状況でしたが、それ以降、米国では大きな不正会計はほとんど起きていません。翌年、SOX法(サーベンス・オクスレイ法)が制定されたことが、経営者の考え方を大きく変えたからです。 SOX法の狙いは、人間が関与することによって変えられる「あいまいさ」をなくすこと。根底にあるのは「性悪説」です。企業のCEO(最高経営責任者)は、チャンスがあれば不正に手を染めるという前提で、制度が設計されています。 利益相反や癒着につながる余地を会計士から奪い、社外取締役も厳格に選んでいきます。人間の弱さを見つめて、正しい行動を取るように縛っていくことが、不正会計を防ぐのに必要だという考え方です』、日本でも日本版SOX法が出来たが、実効性は乏しいようだ。
・『Q:手足を縛られることに対する不満の声もありそうです。 久保利:企業経営者はうれしくないでしょうが、不正を指示されることから解放される従業員は喜び、株主もうれしいでしょう。悪党に転じる可能性があるCEOを野放しにしない、できない組織にすれば、みんながハッピーになるはずです。 厳格かつ平等なルールの中でどうやって勝つかが経営者に問われます。会計はフェアであるべきです。独裁者のようにルールをねじ曲げてしまったら、同業との比較などできません。どの会社が優れているのか、投資家は判断できないでしょう。 ルールの統一と厳正化は世界的な潮流です。決して止めることはできません。その中で日本だけが独自ルールにこだわっていると、世界水準から取り残されています。 昔はアジア諸国で1番だったかもしれませんが、今の日本企業のガバナンスは遅れていると思います。ルーズにぬるま湯に浸っている間に、多くの国に追い抜かれてしまった。昔と変わらず不正会計が後を絶たないのは、日本が旧態依然の状態で足踏みしていることの証明です。 Q:企業は何をすべきでしょうか。 久保利:一番大事なのは、頭のCEOをきちんとすること。当局やメディアがいくら旗を振っても、CEOが嫌だといったら不正を防ぐための制度は導入されません。 本来なら、指名委員会などの制度を整え、社外取締役が後継者育成や選任に関与すべきです。会計士や弁護士などの専門家が経営の中枢に入ってチェックする仕組みも必要でしょう。日本の財界は規制強化から逃げ回らず、きちんと世界の水準と向き合うべきです』、説得力ある主張で、その通りだ。

第三に、3月25日付け日経ビジネスオンライン「他人事と笑えぬ大和ハウスの中国巨額流用事件」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00019/032000032/?P=1
・『大和ハウス工業は13日、中国の合弁会社である大連大和中盛房地産(遼寧省大連市)で、合弁相手から派遣された取締役2人と出納担当者1人に資金が不正流用された疑いがあると発表した。会社から外部への不審な送金が確認され、預金残高と帳簿の差異は現時点で14億1500万元(約234億円)に上るという。 同社は3人を中国捜査当局に業務上横領などの疑いで刑事告訴する手続きに入った。取締役2人は合弁先の大連中盛集団有限公司の元董事長とその息子で、出納担当者は元董事長のめいだった。合弁企業の業務執行は合弁先からの派遣者にほぼ依存していたことから、発覚が遅れたようだ。 いったい大連中盛集団とはどのような企業なのか。設立は1983年。高付加価値住宅やホテル、リゾートなどを開発して成長し、総資産は100億元(1650億円)を超えるという。合弁企業は2005年に設立されたが「最初から業績が好調だったため、信頼しきっていた」と大和ハウスの関係者は語る。同社内でも中国は成功事例とされており、ある時点までは信頼できるパートナーだったようだ』、「預金残高と帳簿の差異は現時点で14億1500万元(約234億円)」とはかなり巨額だ。いくら任せていたとはいえ、連結対象企業であれば、数字は本社でもチェックしている筈なので、突然の発表には違和感がある。
・『中国における合弁の実態に詳しい西村あさひ法律事務所 上海事務所代表の野村高志弁護士は「100%子会社であればコンプライアンスやガバナンスが効かせやすい。だが、合弁企業は歴史が長いところほど中国企業への遠慮や関係性の中で後回しにされる傾向がある。その分、不正が潜んでいるリスクが大きい」と指摘する。大和ハウスは、このリスクが最悪の形で顕在化した事例といえそうだ。 同社は今後、第三者委員会を設置する。全容解明はその調査結果を待つ必要があるが、ここまで巨額の横領が見過ごされた経緯には、不審な点も多い。 大和ハウスは「会計監査人による監査を通じて会社の運営状況を確認しておりました」と説明しているが、この点には疑問が残る。外部への送金は2015年から約5000万元(約8億2500万円)ずつ20回以上に分けて行われたという。入出金作業は出納担当者が一手に担っていたとのことだが、中国の会計監査では銀行口座と突合するため、このような原始的な手法が発覚しないとは考えにくい。少なくとも数年間にわたって会計監査が機能していなかった可能性がある』、「数年間にわたって会計監査が機能していなかった」とすれば、大和ハウスの責任も重大だ。
・『相次いで発覚している中国での会計不正  当初は折半出資だったが、現在は大和ハウスが83.65%、大連中盛が16.35%の株式を持つ形に変化している。大和ハウスは「増資の際に先方には資金がないと言われ、当社だけが資本金を積み増していった」と出資比率が偏っていった経緯を説明する。大和ハウスのみが資金を拠出し、経営リスクを抱え込んでいたことになる。それにもかかわらず、体制見直しを求めなかったのはなぜか。それだけ合弁先への信頼度や依存度が高かったということなのだろうが、一般的な感覚では理解し難い。 今月、日本企業の中国子会社や合弁会社での不正が相次いで発覚した。リズム時計は14日、広東省東莞市にある連結子会社の不適切な会計処理で今期業績に約2億9000万円の損失が生じ、社長が引責辞任すると発表。帝国電機製作所は15日、中国の子会社などが架空取引や従業員の賞与などをめぐり不適切な会計処理を行っていたとして、会長の引責辞任や取締役の報酬返上などの処分を発表した。ここ数年だけでも日本郵船やLIXILグループといった大手が不正会計問題に直面し、中には経営破綻に追い込まれたケースもあった。 日本企業の多くは中国拠点の人材の現地化を進めている。現地法人のトップや要職に現地採用の人材を置く一方で、駐在する日本人を減らすケースも多い。現地の市場やビジネス環境に合わせ、現地化を進めることそのものは間違いではない。ただ、日本の本社の目がより届きにくくなる恐れはある。 また、中国では政府や国有企業における反腐敗運動や、経済関連のルールの見直しなどビジネスの透明化を目指す動きが加速している。不正発覚が相次いでいる背景にはこうした事情が関係していそうだ。 「機会」「動機」「正当化」の三要素がそろった時に、人は不正行為に踏み出すという。中国など海外拠点では独特のルールや本社との地理的な距離、言語の問題なども相まって不正行為に走る条件がそろいやすい。だからこそ、不正は必ず発覚すると思わせる体制を作って「魔が差す」ことを抑止するガバナンスが重要になる』、現地化は当然としても、本社のチェックやコントロールが利いてないようであれば、こうした現地での不正行為は不可避だ。「「魔が差す」ことを抑止するガバナンスが重要」というのはその通りだ。

第四に、4月24日付けJBPressが 新潮社フォーサイトの記事を転載した「部長「懲戒解雇」でも残る東レの「粉飾決算」疑惑 10億円前後の売上の実態は「在庫飛ばし」か?」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56189
・『東証一部上場企業「東レ」は、売上高2兆5000億円(2019年3月期見込)に迫る、日本を代表する繊維などを中心とした世界的素材メーカーである。前経団連会長の榊原定征氏が社長、会長を務めていたことでも知られる(現在は特別顧問)。 榊原氏の後を受けて2010年に就任した現社長の日覺昭廣(にっかくあきひろ)氏は、CEO(最高経営責任者)とCOO(最高執行責任者)を兼ねて権力を集中させ、前任の榊原氏を超えて今年6月ですでに丸9年、なおも続投すると見られ、異例の長期政権となっている。 その同社および日覺社長に対し、今年2月、ある訴訟が東京地方裁判所に提起された。その第1回口頭弁論が、4月15日に行われたばかりである。 訴状や関係者の証言などからは、同社のコーポレート・ガバナンスがまったく機能していないばかりか、場合によっては「粉飾決算」の疑いすら浮上する問題が浮き彫りになってくる』、前経団連会長の「東レ」で一体、何があったのだろう。
・『「社長公印」と「印鑑証明書」を2回発行  2月28日に提訴された当該訴訟は、都内に本社を置くクラウドファンディング会社「C社」が原告となり、3億5000万円の「債務存在確認」を東レに求めたものである。 具体的な経緯はこうだ。 東京・港区に本社を置く「オリエントコミュニケーション」(以下「オリ社」)なる会社が、東レの「水処理機器」100台を購入する資金として、2017年9月、C社から3億5000万円の融資を受けた。返済は半年後の2018年3月に一括という契約だった。 オリ社とC社はこれ以前には何の取引もなく、そもそもこの融資案件は東レ側からの依頼だった。 そもそもこのオリ社、大手民間信用調査会社によると、資本金1000万円の「経営コンサルタント」で、従業員は1名。利益もほとんど計上されておらず、いわば代表者の個人会社である。少なくとも、世界規模の東レが有力製品を100台規模で販売する正規の取引相手とは到底考えられない。 当然C社は、取引実績も信用力もないオリ社に単独で融資をするリスクを考慮したようで、東レがC社に連帯して債務保証を約するならば、しかも東レ社長の正式な公印がある契約という条件を付ける。 そして実際、融資の「申込書」には、この金銭消費貸借契約にかかわる一切の権限を、自社の「水処理システム事業部長」(以下「F部長」)に委任するという日覺社長名の「委任状」が添えられ、もちろん代表取締役社長としての印鑑が押印され、さらにその印が公的なものであることを証明する東京法務局発行の「印鑑証明書」も添えられていた。そして融資は実行された。 ただ、オリ社が期日に返済できなかったため、期限を9カ月延長して2018年12月とする「変更合意書」を取り交わしている。その際にも、東レはC社に対して同様の社長印の「委任状」と「印鑑証明書」を改めて発行している』、従業員1名の「オリ社」が「東レの「水処理機器」100台を購入」というのも不自然で、いわくがありそうだ。
・『強硬な姿勢で門前払いに  しかし、変更した期日になってもまた返済がなかったため、C社は当然ながら、連帯して保証している債務の返済を東レに求める交渉を行うが、契約当事者である東レの「F部長」とは連絡が取れなくなる。 ばかりか、東レ本社を訪問して用向きを伝えても、法務担当者に「直接の連絡はまかりならぬ、電話も同様。話はすべて指定の弁護士事務所に申し入れろ」という強硬な姿勢で門前払いにされてしまう。 やむなく指定の弁護士事務所に連絡し、連帯した債務保証にかかわる「社長印付き委任状」「印鑑証明書」原本を含めた証拠資料を直接提示し、保証の実行を求めた。 ところが弁護士事務所側は、最終的に年が明けた本年1月30日、「本件連帯保証にかかるものを含めいかなる債務も負担するものではない」と回答し、そもそもオリ社の債務を連帯して保証した事実すら完全に否定した。ことやむなきに至り、C社は提訴した、という次第である。 ちなみに、現時点では第一義的債務者であるオリ社が完全に経営破綻しておらず、3億5000万円の債務が完全に回収不能になっているわけではないため、C社としては東レに連帯保証の履行を求める前段階として、まずは連帯の債務が存在することを確認する訴訟を提起したわけだ』、東レともあろう企業が、何故こんなお粗末な信じ難い対応を取るのだろう。
・『「社長の直轄案件」?  この不可解な取引について筆者は1月早々から取材を始め、同月16日に、東レ広報室に質問書を出し、事実確認を求めた。 その後、東レ側と幾度かのやり取りをしていくうち、東レは2月12日、報道各社向けに「プレス・リリース」を発表した(全文はこちら)。 概要は、「当社元従業員が第三者との取引に関連し不正行為(有印私文書偽造、同行使罪等)を行っていたことが発覚」「当社の買戻義務や連帯保証義務を定めた書類を無断で作成」「この元従業員は2018年11月22日付で懲戒解雇処分」「その後も、当社従業員であるかのようにふるまい、不正行為を継続していることを確認」「警察にも刑事告訴すべく相談」などとなっている。 この懲戒解雇された「元従業員」こそ、「F部長」である。つまり東レは、C社がオリ社に融資した際に手交した日覺社長の代表印がある「委任状」と「印鑑証明書」は「偽造」されたものであり、F部長が独断で行った犯罪行為であるから厳正に処分した、よって東レはむしろ被害者であるから債務の保証も法的に無効である、という主張をしているのである。 経緯を知る関係者はこう言う。 「そもそも最初にC社がこの融資契約を結ぶにあたっては、F部長がまぎれもなく東レの幹部であるか確認する意味から、C社代表者らは東レの本社でF部長と打ち合わせをしている。その際には彼の部下も同席し、名刺も受け取っている。その際F部長らは、この水処理事業は日覺社長の肝入り案件であり、社長はこの分野で世界ナンバーワンになりたいのだと社内に大号令を発している、とさかんに強調していた。そしてF部長は、自分は日覺社長がまだ社長になる前、名古屋支社責任者だった頃の部下だったので覚えがめでたく、だから日覺社長の直轄案件であるこの事業については、自分は直接社長と話ができるので『委任状』も『社長印』ももらえるのだ、と説明した」 そして事実、社長印は押印され、印鑑証明書も真正のものが発行されている』、これでは法的には東レの立場は極めて弱い筈なのに、何故突っ張るのだろう。
・『不良在庫を関係会社に「飛ばした」のか  しかし、東レ側はこれを「偽造」と主張する。 言うまでもなく、企業にとって代表者の公印および印鑑証明書は最重要書類であり、然るべき担当部署が厳重に管理する。F部長がC社に手交した公印と印鑑証明書はまぎれもない真正なものであり、いわゆる地面師など詐欺集団が行う「偽造物」ではない。にもかかわらず東レが「偽造」と主張する根拠は不明である。 仮に東レが主張するように、連帯債務保証が会社承認のものではなくF部長の独断行為であるのなら、厳重に管理しているはずの最重要書類を社員が簡単に、しかも複数回も持ち出せるとは、企業としてのガバナンスがまったく機能していないという問題が浮上することになる。 もちろん、この融資の目的となっている水処理機器は、実際に存在する。ただし、東レからオリ社への販売はペーパー上のもので、実際には、東レが発注したメーカーの倉庫に保管されたままという。 「この融資の対象となっているのは、そのうちの100台。F部長の説明では、この機器は当初、バングラデシュで販売する予定だったところ、現地でのテロ事件などの影響で頓挫してしまい、売り先のない在庫として抱えている状態になってしまった。それを一時的にオリ社に販売した形にし、その間に新たな売り先を見つけてくる算段だったようだ。F部長自身も、上司や担当役員である専務から『この在庫をどうするんだ!』と責められていると嘆いていた」(同) このF部長の説明が真実だとすると、東レとしては不良在庫を関係会社に「飛ばした」ということになる。しかも、その「飛ばし」行為に債務保証をしている。コンプライアンス上、重大な疑義が生じることになる』、オリ社への販売は、「新たな売り先を見つけてくる」までの「一時的」なつもりだったというので、オリ社の介在が漸く理解できた。
・『社内コンプライアンス部門も調査  実際、東レ社内でこのF部長の取引に対し、すでに昨年10月時点で社内の法務・コンプライアンス部門が調査に動いている。 東レには同じ水処理機器がほかにも50台、在庫として残っており、それもオリ社に販売する形で、C社とほぼ同じ形式で、ほかに複数の金融会社から融資を受けさせていた。ただし、それらの金融会社の中に違法に法外な金利をつけている会社があり、さらに反社会的勢力と関係があるとされる会社もあって、それらが東レに保証の履行を迫って社内で問題になっていたという。それらの金融会社に関係する人物が言う。 「オリ社に融資をした金融会社はC社以外に数社あるようです。それぞれ2億から4億円ほどの融資ですが、中には年利100%を超える、いわゆる闇金のようなところもある。しかも、それぞれ東レの連帯債務保証が付いているばかりか、買い戻し特約までつけているものもあった。そうした貸金業法に違反する違法金利をつけていた先の1社が東レに債務保証を実行させるべく、強圧的に東レに迫った。国会議員を使ったという話もある。それで東レ社内でも問題となり、コンプライアンス部門が動いたようです」 これらの金融会社関係先などから、件の「社長公印」や「印鑑証明書」などが金融業界関係者の間に出回り、さらに怪しげな反社会的勢力の関係者まで蠢いていた。 実際、法務部長、法務・コンプライアンス部門長である専任理事などがオリ社を訪れ、取引の経緯を聞き取り、買い戻しの話をしている事実もある。 では、東レが強弁するように、本当にF部長の独断の「詐欺」行為なのか。 しかし、C社はもちろん、他の金融会社との取引も含め、F部長もオリ社の代表者も融資金を横領したなどの事実は確認されていない。つまり、これらの取引で個人的に私腹を肥やした形跡が確認されていないのだ』、「東レには同じ水処理機器がほかにも50台、在庫として残っており、それもオリ社に販売する形で、C社とほぼ同じ形式で、ほかに複数の金融会社から融資を受けさせていた」、「金融会社の中に違法に法外な金利をつけている会社があり、さらに反社会的勢力と関係があるとされる会社も」、なにやら飛んでもない広がりを見せてきたようだ。
・『3カ月も懲戒解雇の事実を「秘匿」  一方で、東レ側にはさらに重大な疑惑が浮上する。 C社を含めたこれら水処理機器150台の売り上げは、各社の契約を総合すると10億円前後になると見られる。それらはすでに前期決算で計上されているはずだが、先に指摘した通り、実態は「在庫飛ばし」の疑いが強いと言わざるを得ない。だからこそ、社内の法務部門も動いた。となると、決算は「粉飾」だったのではないかという疑惑だ。 さらに、F部長の懲戒解雇の日付は、前述の通り昨年の11月22日付である。しかし、C社はF部長と連絡が取れなくなったことを不審に思い、12月に入ってからも何度も東レ本社に問い合わせたが、その度に「Fは出張中です」としか応じなかった、との関係者の証言もある。 実際、東レは筆者の取材を受けた後、2月12日になって初めて懲戒解雇の事実を公表した。C社を含め金融会社関係者らも、この時点までまったく知らされていない。つまり3カ月近くも、社内でさえ部長という幹部社員の懲戒解雇事案を伏せ続けていた。なぜこの時点まで事実を「秘匿」していたのか。 加えて、リリースでは「警察にも刑事告訴すべく相談」としているが、リリースを発表したあと東レ側に確認したところ、相談はしているがまだ警察は告訴を受理していないと説明していた。 今回、改めてこれらの疑惑を東レに質問したが、 「告訴状は提出しておりますが、受理の状況含め、捜査に関わることであり、お答えすることは差し控え」「個々の取引に関する事項については回答を差し控え」との回答しかなかった。 当該訴訟は冒頭に記した通り、まだ第1回目の口頭弁論が開かれたばかり。今後、互いの具体的主張が展開されるはずで、東レ側の対応が注目される』、それにしても、東レは何故、C社からの「債務存在確認」の求めを、水面下で認めずに、訴訟にまで発展させてしまったのだろう。マスコミはこれまでのところ抑えてあるとはいえ、裁判の進展如何では抑えられなくなる可能性もある。いずれにしろ、信じられないような不祥事で、今後の展開が大いに注目される。
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