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人工知能(AI)(その8)(「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由、「中国発AI」で、通訳も速記も もう必要ない ファーウェイやBATを超える ものすごい企業、AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか、養老孟司氏:AIと日本人) [技術革新]

人工知能(AI)については、昨年12月20日に取上げた。今日は、(その8)(「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由、「中国発AI」で、通訳も速記も もう必要ない ファーウェイやBATを超える ものすごい企業、AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか、養老孟司氏:AIと日本人)である。

先ずは、4月8日付け東洋経済オンライン「「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/275351
・『95.4%――。これは野村総合研究所が2015年に発表した、「日本におけるコンピューター化と仕事の未来」というイギリス・オックスフォード大学との共同研究における、「タクシー運転手」の今後10~20年後の「機械による代替可能性」である。同研究では、職業がAI(人工知能)やロボティクスなどの機械によってどれだけ代替されるかを検証した。 本当に95.4%という高確率でタクシー運転手という職業が機械に代替されるのか。確かに、自動運転が実用化されたら、無人タクシーは普及する可能性が高い。すでにタクシー大手の大和自動車交通は、昨年から公道や住宅地で自動運転の実証実験を開始。「限定区域内での自動運転タクシーの実現は近い」と同社の前島忻治社長は語る。 ただ、「安全・安心を今以上に担保するために、しばらくは乗務員が同乗することになる」と、前島社長は釘を刺す。公道ではどんな危険が待ち受けているかわからない。しばらくは非常時のトラブル対応が乗務員の仕事になるという。さらに、高齢者が多く利用する過疎地では、「(乗客との)コミュニケーション力が必要になる。運転スキルより、心理学や接客の心得がある人材が必要になる」(前島社長)。 加えて無人化が実現すると、タクシー会社には車内や周囲の状況を、カメラを通じて監視する仕事が生まれると予想される。その場合、一定数の運転手は、そうした新たな職業にシフトする可能性がある。それも考慮すると、タクシー運転手という職業の95.4%が機械に代替されるという予測は、現実とはギャップがあることがわかる』、確かに「AI(人工知能)やロボティクスなどの機械によってどれだけ代替されるか」というのは難しい問題のようだ。
・『「AIに仕事を奪われる」説が横行  『週刊東洋経済』は4月8日発売号で「AI時代に食える仕事食えない仕事」を特集。そこでは多くの人にとって身近な18職種の自動化の影響を、取材に基づき検証している。 野村総研の予測値は、専門家が設定した特定の職業における自動化の傾向をAIに学習させ、他の職業に当てはめることで導き出した。これは2013年、英オックスフォード大のカール・B・フレイ博士とマイケル・A・オズボーン准教授が発表した「雇用の未来」という研究論文と同様の手法を用いている。 同論文では、「アメリカでは10~20年以内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが高い」と発表。その反響は大きく、当時「47%」という数値と併せ、「AIに仕事を奪われる」といったセンセーショナルな報道が繰り返され、「AIによる職業消滅論」の関連書籍の発刊も相次いだ。 ただその後、専門家の間では同リポートの問題点を指摘する声が次々と上がった。経済産業研究所の岩本晃一上席研究員は、「47%という数値は特殊な前提での予測。雇用の未来の研究では、その後に研究結果を発表した独ZEW研究所のメラニー・アーンツ氏らの貢献のほうが大きい」と指摘する。 アーンツ氏らの研究結果の特徴は、オズボーン氏らのリポートが考慮していなかった「タスクベース」の変化を踏まえたもの。本来、仕事はさまざまな業務(タスク)の積み重ねである。いくら自動化が進んでも、実際には職業そのものが機械に置き換わるわけではない。その一部のタスクが置き換わっていくのだ。 OECD(経済協力開発機構)は、アーンツ氏らのそうした現実を踏まえた研究結果を基に2016年にリポートを発表。そこでは、自動化の可能性が7割を超える職業はOECD21カ国平均で「9%」という予測値が掲載された』、どんな方法論でやるか如何で、試算の数字は大きく異なるようだ。
・『「未来の仕事のデータは存在しない」  しかし、アーンツ氏らの研究結果にも加味されていない要素がある。その1つは「現実社会では新しい仕事が生まれる」ことである。前述のタクシー運転手の「カメラを通じて監視する仕事」がこれに当たる。 野村総研リポートを担当した上田恵陶奈上級コンサルタントも、「未来の仕事のデータは存在しないため、調査においては、現状の仕事が未来永劫変わらないとの前提を置いた。しかし、時代とともに仕事は変わる。定量的予測にはどうしても限界がある」と話す。それでも調査を実施した狙いについて、「将来の労働力不足を踏まえ、自動化による仕事の代替の可能性を検証しようとした」(上田氏)と振り返る。 では実際、職業の自動化による影響はどのように表れるのか――。現実社会を見据えると、上記の①「職業はタスクベースで変化する」、②「新しい仕事が生まれる」という要素以外にも、これまでの定量予測には含まれていない3つの要素がある。それは③「技術進化&コストの影響」、④「人材需給の影響」、そして⑤「社会制度や慣習の影響」である。 これまでの「AIによる職業消滅論」の多くでは、AIやロボット技術が、想定されるかぎり進化することを前提に、職業への影響を予測している。しかし、技術進化は一足飛びには進みにくい。その実現のスピードに加え、コストとの見合いで導入するメリットがあるかが、普及のカギを握る。それが③「技術進化&コストの影響」である。 ④「人材需給の影響」はどうか。今でも現実社会で、デジタル化やそれにAI技術を組み合わせた自動化は普及し始めている。だが、その中心はサービス業や建設業をはじめとする人材不足が深刻な業界。いくら自動化の技術開発が進んでも、余剰人員を抱える業界や企業ほど「まずは人にやってもらう」という動機が働きやすい。よほど低コスト化が進まない限り、自動化が進みにくい分野があるのが現実だ。 最後に⑤「社会制度や慣習の影響」も現実社会では避けて通れない。役所や金融機関のサービス、企業間契約などでは、人と対面し、捺印した書類で手続きするといったアナログなルール、慣習が多く残る。デジタル化に一気に舵を切ろうにも、デジタルデバイド(情報格差)の影響を危惧する声などが上がり、一足飛びに進めにくい分野がある』、確かに現実にはこうした定性的要素を考慮する必要がありそうだ。
・『身の回りの環境変化への想像が不可欠  専門家の間では、「こうした現実をすべて踏まえた定量的予測は不可能」というのが常識。現実社会は複雑だからこそ、ある特定の条件下に絞った形で、定量予測が行われてきた経緯がある。 すでに単純な定型業務におけるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入など、人の仕事の機械への代替は進んでいる。そうした変化によって雇用に影響が及ぶ人も広がるだろう。デジタル失業が発生しない、というわけではない。 ただ実際に起こるのは、職業そのものの消滅というより、タスクベースでの増減という変化が大半だろう。変化の様相は職業によって異なる。だからこそ職業の未来は個別に、かつタスクベースで、さらに社会変化も含めて見通すことが重要になる。 現実にどんな事態が発生するのか――。各個人が身の回りの環境変化に想像をめぐらせることが不可欠といえる』、「こうした現実をすべて踏まえた定量的予測は不可能」なので、「各個人が身の回りの環境変化に想像をめぐらせることが不可欠」という結論では、「なあーんだ」と言いたくもなるが、これが正直な見方なのだろう。

次に、5月2日付け東洋経済オンライン「「中国発AI」で、通訳も速記も、もう必要ない ファーウェイやBATを超える、ものすごい企業」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/278801
・『会議で議事録を取る必要はなし。外国企業との商談も通訳いらず――。 そんな夢のような世界を、中国屈指の音声認識AI(人工知能)企業である、アイフライテックがすでに実現している。 同社が開発した「智能会議系統(スマート会議システム)」は、会議中の発言をAIで認識し、自動で文字に変換してスクリーンに映し出す。音声認識の正確性は中国語で97%、英語で95%と、プロの速記者をも上回る高さだ。声紋を分析して話者を識別できるのはもちろんのこと、中国語と英語だけでなく日本語や韓国語にも対応し、リアルタイムでスクリーンに対訳を表示する機能を併せ持つ。中国語では、会議の要点を短くまとめた要約すら、自動で作成可能だという。 人間のような声を人工的に生み出す音声合成の技術も発達している。その名も「AIカスタマーサービスロボット」。中国火鍋チェーン大手で日本にも店舗を持つ、海底撈(ハイディラオ)などの外食企業で活用されている。予約を取るため店舗に電話してきた客と、まるで人間同然のスムーズさでやりとりができる。研究部門のトップを務める李世鵬・アイフライテック副社長は、「電話の相手が人間かロボットかを判別するのは難しい(くらいの自然さ)」と豪語する』、アイフライテックの「スマート会議システム」や「AIカスタマーサービスロボット」は、確かに凄い性能のようだ。
・『アマゾンやグーグルに次ぐ、中国トップの破壊力  元々アイフライテックは1999年設立の学生ベンチャーだった。 そのミッションは「コンピュータに聞き、話し、理解し、考えさせる」「AIでよりよい世界をつくる」ことである。音声認識と音声合成技術の高さを武器に、AI大国を目指す中国政府からの支援も受けながら急成長し、2008年に上場。2017年版の『MITテクノロジーレビュー』によると、革新的な技術と効果的なビジネスモデルを組み合わせた「スマート・カンパニー50」で、アメリカのアマゾンや、グーグルの親会社アルファベットに次ぐ、世界第6位に選ばれた。中国勢としては巨大IT企業であるBAT(バイドゥ、アリババグループ、テンセント)を抑えてトップだ。 今や1万人以上の従業員を抱えており、時価総額も1兆円を超える大企業となった。4月19日に発表された2018年度の業績は、売上高約1300億円(前期比45%増)、純利益約90億円(同24%増)ときわめて好調だ。 こうした最先端の企業を含め、『会社四季報 業界地図』(東洋経済新報社)では、自動車・商社・ITなど166業界を網羅。主要な業界プレーヤーやその関係性を図解している。トップページを飾るのはAI業界で、中国企業ではBATの3社を掲載中だ。今後はアイフライテックのような新興企業にも注目していく。 そのアイフライテックが手がけるのは、企業向けサービスだけではない。今年1月、アメリカのラスベガスで開かれた世界最大の電子機器見本市CESで発表した「AIノート」は、有望な製品の1つだ。 A5サイズで厚さは7.5mm、重さは360gと軽く、アマゾンの電子書籍リーダー「Kindle(キンドル)」を彷彿とさせる。電子書籍を読む機能もあるが、それだけではない。スマート会議システムと同様、音声を自動かつほぼ同時に文字変換し、画面上に表示できるのだ。まるでノートが速記者の代わりをしてくれるようである』、アイフライテックは、「スマート・カンパニー50」で「世界第6位」、「中国勢」トップになるだけの実力を備えているようだ。
・『専門分野のデータが次々と蓄積される  中国AIの動きには、日本の電子機器メーカーも後押しする。ワコムが供給する付属のデジタルペンで通常のノートのようにメモを取ると、自動変換されたテキストの該当部分が網掛けでハイライトされる。記録した内容は簡単にキーワード検索でき、どのメモに何を記録したか、思い出しながら探す手間を省くことが可能。持ち運びもしやすいため、活用シーンは会議だけでなく、学校の授業や取材など多様だ。中国語と英語の同時翻訳機能もリリース予定である。 「将来、オフィスで働く人は、AIノートさえ持てばよいことになる」(李副社長)。価格は約8万円で、現在は中国でのみ展開しているが、販売台数はすでに30万台を突破。海外版の発売も検討中だという。 AIノートに先駆けて市販化されたアイフライテックのポータブル音声翻訳機は、日本のアマゾンのサイトでも約6.5万円で販売されている。50種類もの言語を認識、中国語に同時吹き替えできるだけでなく、逆に中国語を外国語に吹き替えすることも可能で、英語・日本語・韓国語・ロシア語はオフラインでも中国語から変換できる。レストランのメニューや駅の標識などの文字情報を、”画像認識”して翻訳する機能も備えるという。同社は今後、医療や金融、ITなど産業翻訳の分野で蓄積したビッグデータを武器に、専門用語の翻訳機能を強化し続ける方針だ。 人間の目、耳、そして脳までも置き換えるAIの進化。産業界で浸透するアイフライテックなど中国企業の躍進を見る限り、通訳、速記者の仕事がAIに奪われる日は、近い。(リンク先には米国勢、中国勢の図あり)』、英語版や日本語版などが出てくれば、市場を席捲し、通訳、速記者の仕事は明らかに代替されるだろう。日本企業が部品供給だけに留まっているのは、残念だ。

第三に、5月15日付け日経ビジネスオンラインが掲載した山本龍彦=慶応義塾大学法科大学院教授へのインタビュー「AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/051400009/?P=1
・『あらゆる分野でAI(人工知能)の活用が広がっている。特にFinTech(金融と技術の融合)分野では、与信領域で活用が進みつつある。中国では個人の与信を点数化して表示するスコアリングサービスが広がっており、日本でもこうした動きが少しずつ広がりつつある。だが、そこに落とし穴はないのだろうか。AIから受ける恩恵の側面だけに光を当てていないだろうか。憲法学を専門とする慶應義塾大学法科大学院の山本龍彦教授に聞いた』、法的側面からの見解は貴重だ。
・『憲法はプライバシーの権利を保障している。一方、AI(人工知能)やビッグデータの世界では情報を集めることが重要になる。プライバシーの考え方とデータがけん引する社会の間には、そもそも一定の矛盾が存在している。大学院の修士課程で研究していた「遺伝情報の保護」を例に取ろう。 遺伝情報は生まれつきのものだ。疾病は本来、遺伝情報と環境要因が影響しあって発現するものだが、遺伝情報から読み取れるリスクだけでその後の人生が決定されるような風潮がある。 遺伝情報の解析とAIは確率的な予測をするという点で非常に相性がいいが、遺伝情報は本人の努力によって変えられるものではない。AIの予測精度を高めるためにこうした情報を広く集め始めると、「生まれによる差別」が間違った形で復活する可能性も出てきてしまう。 例えば、FinTech業界で起きている変化を見てみよう。中国のアリババグループが運営する「芝麻信用」は個人の信用をスコア付けする仕組みだ。スコアの高い人は恩恵を受け、スコアの低い人は制限を受ける。 本来、FinTechが「Financial Inclusion(金融包摂)」を目的として生まれたものであれば、このスコアリングの仕組みは貨幣ではない価値がけん引するという点で、従来はチャンスを与えられなかった人に恩恵をもたらす側面がある。伝統的な信用情報を持ち得ていない人でも、「線」でその人の行動を捉えることによって包摂されていくためだ』、「プライバシーの考え方とデータがけん引する社会の間には、そもそも一定の矛盾が存在している」というのは、鋭い指摘だ。
・『オーウェルからカフカの世界へ  だが、問題もある。一つは監視という問題だ。「線」で捉えるというのは、極端に言えば「ずっと見ている」ということを意味する。従来は社会的な評価の対象にならなかった領域、例えば私的な領域が評価対象になる可能性もある。 極めてプライベートな空間である自宅でごろごろ寝ている行為ですら、センシング技術や手に持ったスマートフォンで把握される恐れがある。そうなると、リラックスできる安息地がこの世界から無くなってしまうかもしれない。 スコアの高い人も低い人も、常に緊張にさらされる問題もある。仮に公的な機関がスコアを管理すると、多くの人が現状の政権を批判するような活動を控えるようになるだろう。行動に萎縮が生まれ、「自由」の意味が変わってしまう。 法治国家は事前に罰せられるルールを明確化している。予測可能性が立つことで自由が生まれる。これが法による支配のメリットでもある。 ところがアルゴリズムの世界では事前に不利益を予知しにくい。そのため予測可能性が立たず、自身のどのような行動がマイナス要因になるのかが分からず、萎縮効果が生まれる。こうした支配状況はアルゴリズムとデモクラシーを掛け合わせた「algocracy(アルゴクラシー)」とも呼ばれる。 アルゴリズムによって規律される社会では、ブラックボックスが生まれてしまう。個人にとっての自由の意味が変わり、社会的に見れば民主主義にも影響を与えることになる』、「アルゴクラシー」とは恐ろしいような話だ。
・『さらに私が「バーチャルスラム」と呼ぶ問題が出てくる。スコアが社会的なインフラと結びつくと、スコアの低い人が排除される社会になる。社会生活で不利益を被ることになり、差別を受け始めるのだ。なぜスコアが低くなったのかが分かれば改善の余地もあるが、ブラックボックスであれば手の施しようがない。 英国のSF作家、ジョージ・オーウェルは小説『1984』で監視社会の暴走を描いた。一方、チェコの作家、フランツ・カフカは小説『審判』で、理由も分からず逮捕され、理由も述べられないまま裁判にかけられ処刑される主人公の不条理を描いた。 D.ソロブという情報法学者は、データ社会がブラックボックスを放置したまま発展を続けていくと、「オーウェルの世界」から「カフカの世界」へと移行すると指摘する。不条理な没落によってスコアが低い人が二度とはい上がれず、権力主体が誰なのかは分からない。こうした人たちがバーチャル空間のなかで吹きだまりを作り、バーチャルスラムを形成してしまう。 政府や民間企業は当然、こうした問題を把握している。例えば内閣府がまとめている「人間中心のAI社会原則(案)」では、「公平性、説明責任及び透明性の原則」を掲げている。EU(欧州連合)のGDPR(一般データ保護規則)でも「Automated individual decision ­making(個人に関する自動化された意思決定)」を行う場合の説明義務に触れている。 民間でも「Explainable AI(説明可能なAI)」に取り組み始めた企業が出ている。ロジックを残し、説明可能にしておくことで、AIをホワイトボックス化する取り組みだ』、「AIをホワイトボックス化する取り組み」は大いに推進してほしいところだ。
・『「主義」や「憲法」による差異  共産主義は基本的な考え方として私有財産制度を否定している。これに対し、資本主義は財を囲い込む。データを財として見れば分かりやすいが、共産主義国家は財を私有せずに皆で共有するのに対し、資本主義国家は横串にさせない。このように国家としての「主義」の違いは、データの取り扱いという点に深く影響を及ぼす。 憲法文化も大きな差異を生む。「自由(liberty)」をベースにプライバシーを考える米国では「表現の自由」が強い。マーケティングにおいても、データ収集・プロファイリング・データの販売は表現の自由として憲法上、保護されている。そのためにGAFAのような巨大企業が育っていく。 一方、「尊厳(dignity)」をベースにプライバシーを考えるEUは、人をツール化(道具化)することに対して否定的だ。そのため、スコアリングやターゲティングといった人をモノとして見る行為を良しとせず、国民のデータベースを作ることにも抵抗感がある。 だが、米国では選挙コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカによる米Facebookのデータ不正収集事件で潮目が変わりつつある。米GoogleやFacebookと異なり、広告収入に依存しない米Microsoftや米Appleが盛んにプライバシーの尊重をうたい始めていることからも、その変化は見て取れる。誇りに思っていた表現の自由がデータの乱用によって侵されたという事態に国民が憤りを感じているためだ。 では、どのような対処が望ましいのだろうか。 一つは、スコアなどの情報を金融の世界だけにとどめておくことだ。利用範囲を限定し、社会生活のインフラと結び付けないようにすれば、差別を生まない環境を作れる。もう一つはスコアを多元化しておくことだ。複数の事業者が手掛ける形にすれば一元化を避けられ、国民に選択肢を与えることができる。 政府が厳しい規制をかける段階にはまだ来ていない。民間企業が今後どのような動きを見せるのかは分からない。自由な活動を政府が規制するタイミングではないだろう』、米国でも「米Microsoftや米Appleが盛んにプライバシーの尊重をうたい始めている」というのは好ましい変化だ。「スコアなどの情報を金融の世界だけにとどめておく」、「スコアを多元化しておく」という提言には大賛成である。

第四に、解剖学者の養老孟司氏が文芸春秋3月号に寄稿した「AIと日本人~AIが人間を情報化する新たな「脳化社会」を生き抜く処方箋とは」のポイントを紹介しよう。
・『チンパンジーとの違い  人間とは「意識=理性」によって「同じ」という概念を獲得した生き物。「等価交換」が出来るようになったり、言葉やお金、民主主義を生み出した』、「「同じ」という概念を獲得した」ことは、確かに大きな進歩をもたらしたようだ。
・『本人がノイズに  現代は脳の時代で「脳化社会」と定義。あらゆる人工物は、脳機能の表出。30年間のデジタル化により、社会の「脳化」はますます鮮明に。世界が究極的な理性主義になっている。「理性」を突き詰めたのがコンピュータ、その先にあるAI。現代社会における「本人」は「ノイズ」でしかない(例えば本人確認では書類の方が大事)。「相模原障害者施設の19人殺し」の背景には、帰納的に使えるか否かのイチかゼロかの発想で、全てのものには意味がなければならないという心理がある。さらにその意味が「自分にわかる筈だ」という暗黙の了解もある。後段が問題で、「私にはそういうものの存在意義がわからないから、意味がないと勝手に決めてしまっている』、「現代社会における「本人」は「ノイズ」でしかない」というのは面白い比喩だ。「相模原障害者施設の19人殺し」の背景の分析も興味深い。
・『人間の悪いクセ  アメリカで人間の能力を上げるヒューマン・エンハンスメントを真面目に考えている。この問題が孕む優生思想の危険性』、「ヒューマン・エンハンスメント」が「優生思想の危険性」を孕んでいるというのも、言われてみればその通りなのだろう。
・『「わかる」ことの落とし穴  東大などの国公立大学に進学する生徒は読解力があるが、その帰結として、空気を読み「忖度する」官僚のような負の側面。世の中には理屈のないもの、感覚的なものが存在するのだから、子供たちの”差異”を大切にする感覚を日常生活において持ち続けることが、非常に大事。テクロノジーやAIの発展を止めることは出来ない。戦前の軍隊と同じように、一度、お金と労力を投資してシステム化してしまうと、慣性が大きくなってしまい、後戻り出来ないからです。だからこそ、世界には「同一性」と「差異」が併存。それが、AIが生み出す新たな脳化社会への処方箋になるかもしれません』、「子供たちの”差異”を大切にする感覚を日常生活において持ち続けることが、非常に大事」というのは、その通りだ。そうすることで、企業でも、性別や人種の違いに限らず、年齢、性格、学歴、価値観などの多様性を受け入れ、広く人材を活用することで生産性を高めようとするダイバーシティを広く認めることにもつながっていくだろう。  
タグ:私的な領域が評価対象になる可能性も 「AIと日本人~AIが人間を情報化する新たな「脳化社会」を生き抜く処方箋とは」 スコアが社会的なインフラと結びつくと、スコアの低い人が排除される社会になる。社会生活で不利益を被ることになり、差別を受け始めるのだ 「相模原障害者施設の19人殺し」の背景 Microsoftや米Appleが盛んにプライバシーの尊重をうたい始めている 一つは監視という問題 私が「バーチャルスラム」と呼ぶ問題が出てくる オーウェルからカフカの世界へ 「「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由」 アルゴリズムによって規律される社会では、ブラックボックスが生まれてしまう。個人にとっての自由の意味が変わり、社会的に見れば民主主義にも影響を与えることになる 独ZEW研究所のメラニー・アーンツ氏らの貢献 世界第6位に選ばれた。中国勢としては巨大IT企業であるBAT(バイドゥ、アリババグループ、テンセント)を抑えてトップ ジョージ・オーウェル ③「技術進化&コストの影響」 公的な機関がスコアを管理すると、多くの人が現状の政権を批判するような活動を控えるようになるだろう スマート・カンパニー50 もう一つはスコアを多元化しておくこと チンパンジーとの違い 「私にはそういうものの存在意義がわからないから、意味がないと勝手に決めてしまっている プライバシーの考え方とデータがけん引する社会の間には、そもそも一定の矛盾が存在 アマゾンやグーグルに次ぐ、中国トップの破壊力 ①「職業はタスクベースで変化する」 スマート会議システム 東洋経済オンライン 「未来の仕事のデータは存在しない」 世の中には理屈のないもの、感覚的なものが存在する 文芸春秋3月号 養老孟司 「同じ」という概念を獲得 algocracy(アルゴクラシー) ロジックを残し、説明可能にしておくことで、AIをホワイトボックス化する取り組みだ リラックスできる安息地がこの世界から無くなってしまうかもしれない 専門分野のデータが次々と蓄積される AIカスタマーサービスロボット 「こうした現実をすべて踏まえた定量的予測は不可能」 身の回りの環境変化への想像が不可欠 95.4% Financial Inclusion 時代とともに仕事は変わる。定量的予測にはどうしても限界がある」 法治国家は事前に罰せられるルールを明確化している。予測可能性が立つことで自由が生まれる。これが法による支配のメリットでもある (その8)(「機械に大半の仕事を奪われる」説の大きな誤解 日本人が「デジタル失業」しにくい5つの理由、「中国発AI」で、通訳も速記も もう必要ない ファーウェイやBATを超える ものすごい企業、AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか、養老孟司氏:AIと日本人) 「AIが生み出す「不条理な没落」にどう対峙すべきか」 電子書籍を読む機能もあるが、それだけではない。スマート会議システムと同様、音声を自動かつほぼ同時に文字変換し、画面上に表示できる フランツ・カフカは小説『審判』で、理由も分からず逮捕され、理由も述べられないまま裁判にかけられ処刑される主人公の不条理を描いた AI 中国語では、会議の要点を短くまとめた要約すら、自動で作成可能 本人確認では書類の方が大事 アイフライテック アルゴリズムの世界では事前に不利益を予知しにくい。そのため予測可能性が立たず、自身のどのような行動がマイナス要因になるのかが分からず、萎縮効果が生まれる スコアなどの情報を金融の世界だけにとどめておくこと 伝情報は本人の努力によって変えられるものではない。AIの予測精度を高めるためにこうした情報を広く集め始めると、「生まれによる差別」が間違った形で復活する可能性も出てきてしまう AIノート カール・B・フレイ博士とマイケル・A・オズボーン准教授が発表した「雇用の未来」という研究論文と同様の手法 「タクシー運転手」の今後10~20年後の「機械による代替可能性」 会議中の発言をAIで認識し、自動で文字に変換してスクリーンに映し出す。音声認識の正確性は中国語で97%、英語で95%と、プロの速記者をも上回る高さだ 「自由(liberty)」をベースにプライバシーを考える米国では「表現の自由」が強い 「「中国発AI」で、通訳も速記も、もう必要ない ファーウェイやBATを超える、ものすごい企業」 米国では選挙コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカによる米Facebookのデータ不正収集事件で潮目が変わりつつある ④「人材需給の影響」 FinTech ⑤「社会制度や慣習の影響」 日経ビジネスオンライン 『1984』で監視社会の暴走を描いた 山本龍彦=慶応義塾大学法科大学院教授 本人がノイズに 「AIに仕事を奪われる」説が横行 「等価交換」が出来るようになったり、言葉やお金、民主主義を生み出した OECD(経済協力開発機構)は、アーンツ氏らのそうした現実を踏まえた研究結果を基に2016年にリポートを発表。そこでは、自動化の可能性が7割を超える職業はOECD21カ国平均で「9%」という予測値が掲載 各個人が身の回りの環境変化に想像をめぐらせることが不可欠といえる 不条理な没落によってスコアが低い人が二度とはい上がれず、権力主体が誰なのかは分からない。こうした人たちがバーチャル空間のなかで吹きだまりを作り、バーチャルスラムを形成してしまう 「わかる」ことの落とし穴 「主義」や「憲法」による差異 アメリカで人間の能力を上げるヒューマン・エンハンスメントを真面目に考えている。この問題が孕む優生思想の危険性 世界には「同一性」と「差異」が併存。それが、AIが生み出す新たな脳化社会への処方箋になるかもしれません ②「新しい仕事が生まれる」 子供たちの”差異”を大切にする感覚を日常生活において持ち続けることが、非常に大事 「タスクベース」の変化 人の仕事の機械への代替は進んでいる D.ソロブという情報法学者は、データ社会がブラックボックスを放置したまま発展を続けていくと、「オーウェルの世界」から「カフカの世界」へと移行すると指摘 RPA 人工知能 専門家の間では同リポートの問題点を指摘する声が次々と上がった 「アメリカでは10~20年以内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが高い」 「尊厳(dignity)」をベースにプライバシーを考えるEUは、人をツール化(道具化)することに対して否定的
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