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高齢化社会(その10)(突然キレる「凶暴老人」が急増中 日本人特有の事情を認知脳科学者が解説、上野千鶴子氏「老後の同居は幸せな時間を奪う」 超高齢時代「おひとりさま」生活のすすめ、炎上する「老後2000万円」報告書問題、最悪なのは麻生大臣だ) [社会]

高齢化社会については、5月8日に取上げた。今日は、(その10)(突然キレる「凶暴老人」が急増中 日本人特有の事情を認知脳科学者が解説、上野千鶴子氏「老後の同居は幸せな時間を奪う」 超高齢時代「おひとりさま」生活のすすめ、炎上する「老後2000万円」報告書問題、最悪なのは麻生大臣だ)である。

先ずは、5月25日付けデイリー新潮「突然キレる「凶暴老人」が急増中、日本人特有の事情を認知脳科学者が解説」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/05250731/?all=1
・『最近、駅員やコンビニ店員などに対して、ものすごい剣幕で怒鳴りつける高齢者が増えているような……そう感じている方は少なくないはず。実際、ここ20年間で高齢者の暴行・傷害件数はおよそ20倍以上に膨れ上がっているというのだ。なぜ日本の高齢者はキレやすくなっているのか、『凶暴老人』(小学館新書)の著者で、名古屋大学大学院情報学研究科の川合伸幸准教授(中部大学創発学術院客員准教授)に話を聞いた。 2015年6月、JR京浜東北線の車内で71歳の男性が隣に座っていた男性と口論になり、包丁を突きつけ逮捕された。16年3月には、兵庫県・加古川市で75歳の男性がタバコのポイ捨てを注意した小学校1年生の男児の首を絞め、逮捕されている。 また今年5月にも、三重県名張市の公園でサッカーをして遊んでいた中学生のボールが自分の車に当たったことに腹を立て、中学生の髪の毛を掴むなどし、67歳の男性が逮捕された。 こうした“高齢者の凶暴化”。それはさまざまなデータからも明らかだ。 法務省発表の2017年版「犯罪白書」によると、16年の65歳以上の高齢者の検挙人員は、暴行が4014人、傷害が1809人。この人数は、平成に入ってからずっと右肩上がりの傾向にあった。97年と比較すると、17・4倍ともなる。 こんなデータもある。日本民営鉄道協会が大手私鉄16社、全国のJR6社、地方公共交通12社の鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況をまとめた調査結果だ。17年度に起きた計656件の暴力行為のうち、60代以上の加害者が占める割合が23.3%(153件)と、もっとも高いという。 ただし、こうしたデータには“統計のトリック”が隠されていることも事実。少子高齢化が進む日本では、17年10月時点で65歳以上の人口は3515万人となり、総人口に占める割合も27.7%と、年々上がり続けている(内閣府がまとめた2018年版「高齢社会白書」より)。 「実は警察庁の人口10万人あたりの刑法犯検挙人員は、ここ10年間、どの年代でも減っています。しかし、犯罪件数が減っても、高齢者の数は増え続けているので高齢者の占める割合が上昇し、増加しているように見えるのです。とはいえ、それらの問題を抜きにしても、暴行や傷害事件に関しては急激に増えていますが……」(川合氏、以下同)』、確かに高齢者による「暴行や傷害事件」の急増は、困った現象だ。
・『キレやすくなるのは前頭葉の衰え  なぜ、ここまで高齢者は怒りやすくなっているのだろうか。川合氏は、原因をこう分析する。 「まず、怒りの感情は脳の“大脳辺縁系”というところでつくられ、その怒りを抑制する役目を果たすのが“前頭葉”になります。前頭葉は、年齢とともに機能が低下するので、普通なら我慢できるようなことでも高齢者は感情を抑え切れず、つい言動に出てしまいやすいといえます」 しかし、脳科学的な話だけであれば、日本に限らず諸外国の高齢者にもあてはまるようにも思えるし、日本でキレる老人が“急増”している理由も説明できない。 川合氏は、キレる高齢者が急増している背景には、現代日本特有の社会構造の変化が関係しているという。 「私が調べたところ、海外では、高齢者がキレやすくなっているという事例や研究論文などはほとんど見つかりません。となると、日本の高齢者の問題は、社会的な孤立にあると考えられます。海外では仕事場以外の友人がいるのは普通ですが、特に定年後の日本人男性は、会社を離れるとまったく人付き合いがなくなる人が多い。人間関係が希薄な都市部で暮らす人は、自宅でも奥さんに邪魔者扱いされて居場所がなく、ストレスが溜まっていることも一つの要因にあるのではないでしょうか」 2018年版「高齢社会白書」(内閣府)の60歳以上の高齢者の近所付き合いの程度を見てみると、「あまり付き合っていない」「全く付き合っていない」の合計は、女性が18.8%なのに対して、男性は26.5%にものぼる。 このデータからもわかるように、女性よりも男性のほうが、社会とのつながりが希薄であることも、感情が爆発するきっかけになっているといえる』、「キレやすくなるのは前頭葉の衰え」のためだが、日本で問題になるのは、「社会的な孤立にある」というのは、その通りなのだろう。
・『怒り抑制に一役買う有酸素運動  高齢者がキレにくくなるためには、どのような対策が有効なのか。川合氏は次のように語る。 「散歩などの有酸素運動が一番効果的です。年をとると一般的には脳内の神経細胞が新しく生まれにくくなりますが、運動をすることで脳の血管が大きくなって血液が刺激され、新しい神経細胞がつくられやすくなるのです。そうなれば、感情の抑制機能が改善されることが期待でき、キレにくくなるでしょう」 アメリカ・イリノイ大学のクレーマー教授は、ウォーキングを6カ月間行なった高齢者の脳の機能を調べたところ、運動を行なう前よりも前頭葉の活動量が増加し、脳の認知機能が向上することを示した。 これまで、脳の前頭葉の機能低下と社会での孤独感が、高齢者をキレやすくさせている要因だと述べてきた。 一方で、日本社会の高齢者に対する接し方が変化していることも大きいのではないだろうか。 たとえば、昔は“高齢者を敬いましょう”という社会の共通認識があった。しかし、ここ近年は滅多にそのような言葉が聞かれなくなった。 というのも、現代の日本では、お金を持っていて、仕事をせず元気に暮らしている高齢者に対して、嫉妬心などから多くの人が親しみを感じていないことも大きいだろう。 老いとともに、高齢者が疎まれるような社会になっていることが、キレる高齢者の増加に一役買っているのかもしれない』、「怒り抑制に一役買う有酸素運動」というのは救いだ。「高齢者が疎まれるような社会になっている」というのは、当面、強まりこそすれ、弱まることはないだろう。やれやれ・・・。

次に、6月6日付け日経ビジネスオンラインが2009年3月19日付け記事を再載した「上野千鶴子氏「老後の同居は幸せな時間を奪う」 超高齢時代「おひとりさま」生活のすすめ」」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00059/060400014/?P=1
・『家族と親密に暮らすのが幸せ--。この考え方を疑う余地のない人にとって、高齢者のひとり暮らしは、孤独で寂然とした老後に映るだろう。 体力が減退すれば、段差につまずいて転倒したりと、生活上のリスクは高まる。家族と同居すれば、リスクと孤独というストレスを避けられるかもしれない。 現実を見ると、高齢者のひとり暮らしは、決して少数派とはいえない。とくに男女の平均寿命の違いから、ひとり暮らしの女性高齢者の率は高い。65歳以上の高齢者で配偶者のいない女性の割合は55%。80歳以上になると女性の83%に配偶者がいない(下記『おひとりさまの老後』による)。 彼女たちはみな、家族から同居を避けられ、介護されない“かわいそうな”人たちなのだろうか。社会学者の上野千鶴子さんは明確に「ノー」と否定する。ベストセラーとなった『おひとりさまの老後』でこう綴っている。「高齢者のひとり暮らしを『おさみしいでしょうに』と言うのは、もうやめにしたほうがよい。とりわけ、本人がそのライフスタイルを選んでいる場合には、まったくよけいなお世話というものだ」。 高齢者の単身世帯率は年々増えている。これは「家族と一緒に暮らすのが幸せ」という予断を裏切るものだ。日本の高齢者に増えている「おひとりさま」の背後には、どのような事情があるのだろうか。 Q:上野先生は「80歳以上になると、女性の83%に配偶者がいない」と著書の『おひとりさまの老後』で指摘されています。男性より女性の平均寿命のほうが長いため、パートナーが亡くなった場合、必然的に女性のひとり暮らしが増えるのはわかります。ひとり暮らしが増えているということは、子世帯との同居を避けているということですね。高齢者が単身生活を選ぶ理由はなんでしょうか? 上野:NHKの番組で「おひとりさま現象」を取り上げた際、キャスターの国谷裕子さんが「どうしておひとりさまが増えるんでしょうね」とゲストの評論家・樋口恵子さんに問いました。樋口さんいわく「そりゃ、ラクだから」。 もっともな答えです。同居しないほうが親子双方にとってラクなんですよ。経済的に余裕があれば、別居を選択する人が増えています。 実際、厚生労働省のデータを見ると、1980年における子との同居率は69%でしたが、2000年には49%、2006年には45%に減っています』、最新の2016年では38%とさらに減っているようだ。
・『「介護しないのはすまない」から同居  Q:双方にとってラクということは、それだけ家族との同居はストレスを生みやすいということでしょうか? 上野:当然でしょう。ストレスの原因は、ほとんどが人間関係から生じたものですから。同居していれば、家族からストレスが生まれます。 たしかに、高齢者施設で暮らす人には盆暮れも一時帰宅ができず、ふだんも訪問する人がいなくて寂しい思いをしている人がいますから、家族がいる人は幸せだと思いますよ。だけど、同居して家族介護が始まってしまったら、互いがストレス要因になります。親密だからいい関係が築けるわけではありません。介護に第三者が介入することは、家族が適切な距離をとる上でとても重要なんです。 いまの同居は、ほとんどが中途からのものです。というのは、長男であっても結婚と同時に親と別居し、世帯を分離するのが当たり前になったからです。 高齢者の「幸福度調査」によると、中途同居では幸福度が低い傾向があります。ちなみにいちばん低いのは、“たらいまわし同居”です。しかも子世帯が仕事のある場所を離れられないので、親たちが呼び寄せられての同居です。幸福度が低いのは、それまで住んでいた土地で築いてきた人間関係をすべて失うのみならず、子世帯の「家風」に合わせなければならないことになるからです。 Q:いったい、高齢者の一人暮らしと家族同居を分けるものは何なのでしょうか? 上野:身も蓋もない話ですが、高齢者の子世帯との同居率は、金持ちと貧乏人で低く、中程度の経済階層で高いことがわかっています。理由がそれぞれまったく違います。 低経済階層では、そもそも子世帯が自分の生活で手いっぱいで、親の面倒を見る余裕もないので別居しています。比べて、高経済階層だと、経済的に余裕があるので高齢者が自ら別居を選んでいます。 Q:一方で「中経済階層」は、家族との同居率が高いようですね。中経済階層が子世代と同居をする理由を、どうご覧になりますか? 上野:介護施設もピンからキリまで。施設に入れるにはしのびないが、二世帯を維持するだけのゆとりもない、という中程度の経済階層に同居率が高くなっています。それだけでなく、「老いた親を放っておくなんて」といった社会規範を、子のほうが意識しているからでしょう。親の介護を引き受ける理由として、「やればできるのに、そうしないのはすまない」という“自責の念”もありますから。積極的に喜んで介護を行う人は少ないでしょう。とくに嫁の立場にある人にとってはね。 だいたい、日本の法律には「家族には法的な介護責任がある」という規定はありません。あるのは生活扶助義務ですが、これは経済的な扶養義務に限られます。カネを出すことを強制できても、手を出さない人に強制する法律はありません。高齢者虐待防止法では、同居家族には「養護者責任」が発生しますが、別居していれば別です』、「同居して家族介護が始まってしまったら、互いがストレス要因になります。親密だからいい関係が築けるわけではありません。介護に第三者が介入することは、家族が適切な距離をとる上でとても重要なんです」、「幸福度が・・・いちばん低いのは、“たらいまわし同居”」、などはその通りだろう。
・『選べない介護は「強制労働」  Q:かつては「(義理の)親の介護は嫁の務め」と言われていました。現在、同居した家族で実際に介護を担っているのは誰なのでしょうか? 上野:同居家族で介護が行われているとき、「誰が誰の世話をしているか」の組み合わせは多様です。 家族介護の研究をされている笹谷春美さんが、北海道で家族介護の実情を調査したところ、「娘から母」に対する介護が22.2%。「妻から夫」が19.7%、「嫁から義母」が17.8%。「夫から妻」が17.8%という結果が出ました。 決して「嫁から義母(姑)」ばかりが多いわけではありません。それに同居親族ばかりが介護しているわけではありません。娘の介護の場合には、別居介護が少なくありません。驚くのは、男性介護者の増加です。データによると、06年で24%、08年には28%とほとんど3割に達しています。つまり家族介護者の約3人に1人が男性で、その圧倒的多数が夫です。「介護は女の仕事」という常識は、覆りつつあります。 Q:では、家族間の介護の組み合わせで、最もストレスの高い関係はどれでしょうか? 上野:「嫁から義母」の介護です。「やってあたりまえ」で評価も感謝もされず、遺産の相続権もない。ストレスが最大です。その結果、介護虐待も起きていますから、介護する方にとっても、介護される方にとって最も不幸な選択肢と言えます。だから最近では、「介護される方」の選好も、嫁から娘や息子へとシフトしてきました。 笹谷さんの調査によると、家族が介護者を引き受けた理由を上位3つ挙げてもらったところ、いちばん高いのは、「自分しか介護者がいない」だったそうです。選択肢のない介護を、私たちの業界では、「強制労働」といいます。 Q:「強制労働」ですか……。 上野:私は口の悪い人間で知られていますが、いくらなんでもこれは私が言ったのではなく、メアリー・デイリーというヨーロッパの研究者の「選べない介護は強制労働だ」という発言によります。 介護を引き受けるにあたって作用するのが“ジェンダー規範”と“親族規範”です。ジェンダー規範とは、「嫁の務めだから」や「長女だから」というように、男より女の優先順位が、ありがたくないことに、高くなってしまうことです。 親族規範とは、「長男だから親の面倒を見るのがあたりまえ」と長男を優先するものです。ただし、生前は長男を優先しながら、親の死後の遺産相続では、兄弟姉妹が均分相続を主張するという、長男以外の者にはご都合主義的に使われる規範だということも明らかになっています』、「家族介護者の約3人に1人が男性で、その圧倒的多数が夫です」、には驚かされた。「選択肢のない介護を、私たちの業界では、「強制労働」といいます」、確かにその通りだろう。
・『「妻にならワガママを言える」  Q:戦前の旧戸籍法では「家単位」で戸籍が作られ、婚姻すれば、嫁いだ家の戸籍に記載されました。「○○の娘」という扱いです。戦後の新戸籍法では婚姻によって、各人が親の戸籍を抜けて、「夫婦単位」の戸籍を新たに設けることになりました。嫁から義母の介護が減ったということは、逆にこれまで妻は、夫の親という“他人”に対価なき介護を行うよう強いられてきたわけですね。 上野:地域差と世代差はあっても、この10年で家族介護の優先順位は完全に替わりました。要介護者が自分の介護者として期待する順位は、「配偶者>娘>息子>嫁」の順になりました。 では、配偶者、つまり夫婦間の介護は幸せなのかといえば、そうともいえません。妻が夫を介護している場合、ともに高齢者である“老老介護”が多い。しかも夫のほうは、妻以外の他人の介入を非常に嫌がります。 したがって夫が重度の要介護になっても妻は外部の介護資源を利用せず、自宅に抱え込むケースが多い。夫は妻への依存性が高く、24時間侍ることを要求します。妻は外出もままならず、社会的に孤立しやすい。地域に介護資源があるのに、それを利用しにくい状況にあります。 Q:より質のいいサービスを受けられる可能性があっても、夫はそれを利用することを嫌がるのですか? 上野:はい。なぜなら妻にならいちばんワガママを言えるからです。介護が必要になってから、そういう態度になったわけではなく、もとからそういう関係なのでしょう。 そもそも家族は介護に関して素人で、プロの介護のほうが質は高いはず。それにもかかわらず、高齢の夫は他人が入ることに抵抗を示し、妻に依存する傾向があります。依存性が高いからといって、夫婦関係が良好とは限らないというのが、この世代の特徴ですね』、「夫のほうは、妻以外の他人の介入を非常に嫌がります。 したがって夫が重度の要介護になっても妻は外部の介護資源を利用せず、自宅に抱え込むケースが多い。夫は妻への依存性が高く、24時間侍ることを要求します。妻は外出もままならず、社会的に孤立しやすい。地域に介護資源があるのに、それを利用しにくい状況にあります」、という夫のワガママは、大いにありそうな話だが、困ったことだ。
・『介護される側がボランティアに  Q:逆に、夫が妻に介護をする場合、特徴的な傾向はありますか? 上野:この場合は往々にして「いい旦那さんをお持ちで羨ましいわ」といった美談になります。しかし、夫が妻にする介護の中身をよく見ると体調管理にはじまり生活管理、投薬管理と、こと細かく行い、まるで仕事の延長のような管理介護が特徴です。 一言でいうと「介護者主導型の介護」です。介護のやり方やスタイル、スケジュールをみんな介護者が決めてしまうため、妻は自分が受けている介護に否とは言えなくなる。 「奥さんはお幸せね」と周囲は言うけれど、本当に幸せなのでしょうか。「よい介護」とは、基本的に「自分が受けたい介護」です。介護の内容について文句や注文をできないとしたら、妻は「介護されてあげるボランティア」をしていることになります。 ただ、夫が妻を看る場合のメリットもないわけではありません。まわりが放っておかないことです。「旦那さんが介護をされているのなら大変」とケアマネージャーや第三者が積極的に介入するので、社会的資源を利用しやすい。夫婦間の介護には、こうしたジェンダーの非対称性があります。 Q:「介護は女の仕事」といったジェンダー規範が変化しつつある中で、「息子から親」の介護のケースが「嫁から義親」より順位が高くなっています。この背景には、何があるのでしょうか? 上野:息子が老親を介護するケースが徐々に増えています。息子がもともとシングルであったか離婚したか。またはリストラされ経済的に苦しくなったことで同居率が高まっています。ところが、この息子たちが親を虐待する加害者のトップを占めているのです』、「夫が妻に介護をする場合」には「介護者主導型の介護」になる、「介護の内容について文句や注文をできないとしたら、妻は「介護されてあげるボランティア」をしていることになります」、などもありそうな話だ。
・『深刻なパラサイトとネグレクト  Q:虐待とは、どんな中身のものですか? 上野:「経済的虐待」「身体的虐待」「心理的虐待」の3種類あり、いちばん多いのは経済的虐待です。 これは親の年金に依存した「年金パラサイト」を指し、親が介護保険や医療保険を使うのを嫌がります。寝たきり状態になってケアマネージャーや民生委員が介入しようとしても、「うちは必要ない」と拒絶するケースが多いのです。 ケアマネージャーや民生委員が口を揃えて言うのは、「もしおばあちゃんがひとりでいたら、年金も介護保険もあるから、いくらでも介入できる。息子が同居しているばっかりに、手も足も出せない」と。 身体的虐待については、殴る蹴るの暴行よりも“ネグレクト”、つまり介護放棄が多い。床擦れがひどくなっても放置し、食べ物も与えないケースです。 Q:息子に独自の経済基盤がないからパラサイトし、現実と直面したくないからネグレクトが起こっているわけですか? 上野:そうです。これが各地で処遇困難事例として問題になっています。家族の意思決定権がいちばん大きいため、第三者が介入しにくいのです。高齢者にとって、パラサイトの息子の存在が人生最大のリスク要因とストレス源になる可能性が高まっています。 Q:経済不況が続くと、そのリスクは増加するいっぽうになりますね。 上野:はい。しかも親が息子に対し、強い責任感を覚えているため、被害者意識が希薄なのです。「親として子どもを守らなければ」とか「こんな息子に育てた自分が悪い」といった一心同体意識が親側に強いからです。 Q:親の介護をしたほうが年金で暮らす期間も伸びるはずです。それでも息子が介護放棄するのは、介護スキルがなく、面倒だという考えに基づいているのでしょうか? 上野:いいえ、もっと深刻な理由です。背景には息子の社会的孤立があります。息子が自分のぶんだけ弁当をコンビニエンスストアで買ってきて、親と襖一枚隔てた部屋で食べるなど、気持ちも身体も親に向かわない事例もあります。鬱や自殺念虜を抱えた人もいるといいますから、自分のことで手いっぱいなのでしょう。 Q:話をうかがっていますと、高齢になったら、ひとりで暮らすほうがリスクは少ないように思えてきました。 上野:シングルのあなただって親のリスク要因になるかもしれませんよ。生活能力も介護能力も経済能力もない男性が社会的に孤立してしまう。これが現在の中高年の息子世代が抱えた最大の問題です』、「ケアマネージャーや民生委員が口を揃えて言うのは、「もしおばあちゃんがひとりでいたら、年金も介護保険もあるから、いくらでも介入できる。息子が同居しているばっかりに、手も足も出せない」」、というのも確かに本当に深刻で、解決策は到底、思いつかない。

第三に、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏が6月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「炎上する「老後2000万円」報告書問題、最悪なのは麻生大臣だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/205313
・『「老後報告書」の炎上は不思議でならない  通称「老後報告書」、金融審議会市場ワーキンググループによる「高齢社会における資産形成・管理」(2019〈令和元〉年6月3日付)が、いわゆる「炎上」状態にある。 これは、どうしたことか。筆者は、当初、この炎上を不思議な思いで眺めていた。 本連載で先週書いたように、この報告書は、老後の資産形成と管理について国民個人の立場から書かれたもの。関係者が多いためか、率直に言って内容は「ゆるい」し、不徹底だと思ったのだが、筆者の心配はこの報告書が高齢者向けの金融商品・サービスのあざといマーケティングに利用されるのではないかという可能性にあった。 ところが、現在の議論は、「公的年金は破綻しているのではないか?」「国民に2000万円貯めろという政府の言いぐさは無責任だ」といった妙な方向に向いている。 報告書で問題の「約2000万円が必要」に至る箇所を見ると、「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると」(報告書P.10)、毎月5万円程度を保有資産から取り崩しており、これを基に「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1300万円、30年で約2000万円の取り崩しが必要となる」(P.16)と試算してみたにすぎない。 事実に基づく単なる計算であって、これに文句を言うこと自体が奇妙だ』、大きく政治問題化しているが、確かに元来は試算に過ぎない。
・『そもそも野党側の追及がピント外れだった  また、年金が「100年安心」だというのは、一定の経済前提の下での公的年金財政の持続性のことであり、個々の高齢家計に資産の備えが必要ないことを訴える表現ではない。 「100年安心だと言っていたのに、今になって2000万円不足だから貯めておけというのは無責任だ」とか、まして「年金の破綻をまず謝れ」と言うに至っては、ピントの外れた言いがかりに近い。 実際の家計は「平均的な姿」の家計以外に、高所得・高支出の家計もあれば、低所得・低支出の家計もあるし、現役時代と老後で支出をどう配分するのかは、個々の家計の意思決定次第だ。 「2000万円」という数字は印象的だが、報告書は「平均的な姿」を目指せと強制しているわけではないし、まして公的年金が破綻すると言っているわけでもない。公的年金の給付が「マクロ経済・スライド方式」に基づいて今後徐々に削られることは、もともと分かっていた話だ。 野党側の追及の初動は全くピント外れだったのだ。 政治的な駆け引きがあるので、無理な注文かもしれないが、「2000万円!」と絶叫するのは愚かに聞こえるだけなので、できたら即刻やめてほしい。本来、本件は参議院選挙の争点になり得るようなテーマではない』、ただ、野党側にしてみれば、参院選を控えて格好の攻撃材料がころがってきたので、それを政治的に利用しているのだろう。
・『麻生大臣が上司ではかわいそう  ところが、追及の矢面に立った人物が、麻生太郎大臣(財務・金融担当)だったのがまずかった。彼は、何と「表現が不適切だった」と報告書をバッサリと切って捨てた。 「2000万円は、単に平均値に基づく高齢家計の試算を示しただけで、何の問題もない。報告書を丁寧に読んでください」とでも説明しておけばよかったところを、早々に表現の非を認めた。 麻生氏は、年金が話題になるとまずいと思い、この問題を早く終わらせたかったから、「表現が不適切」で済まそうとしたのだろう。しかし、この手の逃げ腰は、追及したくなる心理の火に対して大いに油を注ぐ効果がある。麻生氏の初期対応の誤りで、この問題は「炎上」に至ったと筆者は思っている。 それにしても、委員の意見をまとめて表現を調整して報告書をまとめた事務方の担当者は、上司筋である大臣に「表現が不適切」と言われては立つ瀬がない。こんな上司の下で働くのではたまらないだろうと、ご同情申し上げる。 しかし、結果的には、部下をもう少し大切に思う気持ちを持って丁寧に答弁していれば、この心ない上司の側でも炎上に巻き込まれずに済んだのだろう。つまりは、不心得に対して罰が当たったような展開であり、世の中は案外バランスが取れている。 なお、答弁としては、現役世代の手取り収入額に対する受給開始時の年金額の割合を示す「所得代替率50%」に言及した安倍晋三首相の発言も危ない。所得代替率は、これまで分子が名目額、分母が可処分所得といういびつな計算で示されていたことが、国会で指摘され(指摘したのは元厚生労働大臣の長妻氏だ)、塩崎恭久厚労大臣(当時)が不適切な計算であったことを認めている。 分子・分母を共に可処分所得で計算すると数字は相当に低下するはずなので、「所得代替率50%」を基準とする説明に首相がこだわると、「年金はやっぱり安心ではない」という印象を国民に与える可能性がある』、安倍首相の「所得代替率50%」に言及した発言は、厚労省の役人が原稿を書いている筈なので、厚労省もお粗末だ。
・『麻生氏の無礼に次ぐ  後の質疑で話題の報告書の全文を読み込んでいなかったことが判明した麻生大臣だが、「表現が不適切」だと、部下ばかりか、報告書を了承した審議会の委員たちにまで恥をかかせた。そして、彼は、さらにこの報告書を正式なものとして受け取らないと言い出した。 そもそも、大臣は、審議会の有識者とされる人々に対して、専門的識見に基づく意見の提出を依頼している立場だ。その報告書を、都合が悪いから「受け取らない」と言う麻生氏は一体どこまで失礼にできた人物なのか。 しかし、この度重なる失礼も、罰当たりのブーメランを加速する結果に終わるのではないか。 受け取りを拒否したとしても、報告書の計算自体が変わるわけではない。また、報告書が指摘した老後に向けた資産形成等が必要なくなるわけでもない。 まして、麻生氏に、報告書に代わる老後の備えの対案があるようには見受けられない。 報告書の各所に注目が集まる一方で、麻生大臣は、事実の説明とともに「それで、どうするのですか?」と対案を求められることになるだろう。 ここでも、「単なる表現の問題」で逃げ切ろうとする姿勢が見えるので、追及する側も、見物する側も、麻生氏が追い込まれることに対して「張り合い」を覚える構造になっている。 元々どうということのない報告書がこれだけ騒がれる問題となるのだから、組織のトップが不出来であることが、いかに不幸なことなのかが分かる』、今夜のテレビでは、政府は報告書を大臣が受取りを拒否したことで、「報告書自体をなかったことにする」という小手先の戦術で乗り切るつもりのようだが、いくら野党がだらしないとはいえ、こんな戦術が通用するとは思えない。「罰当たりのブーメラン」が麻生氏にふりかかる今後の国会審議が楽しみだ。
・『「平均値」で老後を語るな  最後に一言補足しておく。 報告書が示した試算は、高齢家計の「平均」に基づくものだが、個々の家計が多様である中で、平均に基づく計算だけを示すのはやめた方がいい。ダメなファイナンシャルプランナー(FP)が書く本や原稿は、平均で老後のお金の問題を語る傾向があるが、これと同類の不備だ。平均値に基づく試算に対して、低所得・低支出な人は「こんなに必要なのか」と不安になるし、高所得・高支出な人も「こんなもので足りるのか」と不安になる。平均は誰も安心させない。 必要なのは、個人が自分の必要貯蓄額を計算できる「方法」を教えることだ』、さすが投資のプロらしい補足だ。
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