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アメリカ(除くトランプ)(その5)(不正入学事件が浮き彫りにした 平等の国アメリカの不平等な現実、大卒資格はコストに見合うか? 米国をむしばむ学費ローン、ハリケーン災害と危機管理) [世界情勢]

アメリカ(除くトランプ)については、昨年11月26日に取上げた。今日は、(その5)(不正入学事件が浮き彫りにした 平等の国アメリカの不平等な現実、大卒資格はコストに見合うか? 米国をむしばむ学費ローン、ハリケーン災害と危機管理)である。

先ずは、サム・ポトリッキオ氏が3月30日付けNewsWeek日本版に掲載した「不正入学事件が浮き彫りにした、平等の国アメリカの不平等な現実」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/sam/2019/03/post-29_1.php
・『<成功するチャンスは誰にでもあるはずだったのに、資産家が資金力で子供を一流大学に送っていた> アメリカン・ドリームを夢見ている人は、アメリカよりカナダや北欧に行ったほうがいい。 アメリカは本来、貧しい家庭に生まれても大金持ちになるチャンスがあることを誇りにしてきた国だ。「機会の平等」を重んじる理念は、アメリカ独立宣言にもうたわれている。成功するチャンスは誰にでもある......はずだった。 しかし、この理念が揺らいでいる。裕福な家庭の出身で学業成績が冴えない若者と、貧しい家庭の出身で成績トップクラスの若者は、大学卒業率に違いがない。それが今日のアメリカの現実なのだ。 いま騒ぎになっている不正入学スキャンダルは、こうした不平等が生まれる仕組みを白日の下にさらした。裕福な親が子供を一流大学に入学させるために、入試コンサルタントを通じて試験監督者や大学のスポーツチームのコーチに「裏金」を支払っていたことが発覚したのだ。 裏金と引き換えに、試験監督者がテストの正解を教えたり、スポーツチームのコーチがスポーツ特待生制度を悪用したりして不正入学を手助けしていた。中には、全くプレー経験のないスポーツの特待生として入学を認められた学生もいた。 私が勤務しているジョージタウン大学では、テニスの元コーチが総額270万ドル以上の裏金を受け取り、裕福な家庭の子供を少なくとも12人入学させていた。その多くは、入学後は一度も大学代表としてテニスの試合に出場していない。 この事件では、有名女優や有力法律事務所のトップ、金融界や実業界の大物などが起訴されている。これらの資産家の子供たちは、親の資金力で実現した不正の助けがなければ、一流大学に合格できなかっただろう。 もっとも、アメリカのエリート大学の入学者選考が能力以外の要素に左右されるのは、今に始まったことではない。親が卒業生なら有利になるし、親が多額の寄付をすれば合格の可能性は大幅に高まる』、「ジョージタウン大学のテニスの元コーチ」が受取った「裏金」は、1人当たり22.5万ドルとやはりケタ外れのようだ。
・『不当に席を奪われた怒り  トランプ大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナーがハーバード大学に入学できたのは、出願直前に父親が250万ドル寄付したからだと言われている。高校時代の成績はぱっとせず、ハーバードなど論外だと、高校の教員たちは誰もが思っていた。 トランプ自身も、成績は精彩を欠いていたのにペンシルベニア大学に入学できた。当時のSAT(大学進学適性試験)の成績が公開されれば裁判に訴えると強硬に主張しているのは、おそらく点数が低かったからだろう。SATの点数が公開されれば、一流大学に合格できたのは父親の経済力のおかげだったと分かってしまう。 今回発覚した不正入学スキャンダルが激しい怒りを買ったのは当然だ。大学を目指す若者が増えるのに伴い、入試の競争は激化している。その中で志望校に入学できなかった若者たちは、本来なら入学する資格のない人たちに席を奪われていたことに気付き始めたのだ。 この10年ほどでアメリカの一流大学に入学した人の数は何百万人にも上る。そのうち、今回の不正入学事件の対象者は100人にも満たない。 しかし、このスキャンダルをきっかけに、アメリカが抱える不平等と格差の深刻さに目を向けるべきだ。ある研究によると、アメリカの大卒者人口のうち、所得レベル下位50%の家庭の出身者が占める割合は14%にすぎない。中下流層の子供は、高校をトップの成績で卒業しても50%しか上位61校の大学に出願しないという報告もある。 このような状況を改めて機会の平等を取り戻すためには、どうすればいいのか。思い切ったアイデアを1つ披露しよう。一流大学の入学者定員を2倍に拡大させて、大学が厳しい選別でブランドイメージを維持する戦略をやめさせればいい。 大学とは、そもそも教育の場であるはず。教育という贈り物を受け取る対象を一部の人に限定する必要はない』、「トランプ」の「不正入学」はさもありなんだが、「クシュナーがハーバード大学に入学できたのは、出願直前に父親が250万ドル寄付したからだと言われている」ようだが、優等で卒業、その後、ニューヨーク大学ビジネススクール・ロースクールでMBA・法務博士を取得した(Wikipedia)ということは、実力もあったようだ。アメリカだけでなく、日本では医学部の不正入試、韓国では司法長官の息子の不正入学、など大学入学を巡る不正問題は広がりをみせているようだ。

次に、5月21日付けNewsWeek日本版「大卒資格はコストに見合うか? 米国をむしばむ学費ローン」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/post-12167_1.php
・『2007-09年の金融危機のさなかでも、米国では大卒者の失業率は5%前後だった。大学まで進学しなかった人たちの半分程度にとどまり、高等教育の価値を示していた。 だが、話はそこで終わらなかった。学費ローンの残高は総額1.5兆ドル(約164兆円)を突破、大半はこの10年間で累積した。 米連邦準備理事会(FRB)が9日に開いたイベントに参加した研究者らは、学歴が将来の収入と中流階級への道を保証するという常識が、この膨大な借金によって崩れ去ろうとしていると懸念を表明した。 登壇したシカゴ連邦準備銀行のエバンス総裁は、借金、つまり市場価値の低い学位に対する過払いなどの問題が、高等教育投資への「下振れリスク」になっていると指摘。FRBは高度人材の必要性を常々主張しているが、そこの経済学博士が異例の批判を展開した。 「学生たちは大学にそこまでの価値があるのか疑問に思うのではないか」、「さまざまなリスクが積み重なり、マイナス面の方が勝ってしまうことを心配している」とエバンス氏。とりわけ最近入国してきた移民や年齢が高めの人、一家の中で初めて大学に進学した人など、「非伝統的な」学生たちへの影響を懸念した』、「米国で大卒」の価値がこれまでは高かったことに驚かされた。
・『5分の1がローン滞納  イベントは中流階層の未来をテーマに、2日間にわたって開催された。米国では雇用、時給、学費ローンの問題が注目されており、2020年の大統領選の重要課題となることが予想される。 大統領選の民主党候補者らは、公立大学の授業料無償化から学費ローンの全面的な返済免除、就職先の保証や最低賃金の引き上げまで、さまざまな政策を提案している。一方のトランプ大統領は、関税、貿易、税務政策など、相対的に学歴が低めの人たちへの機会を回復すると大統領が主張する政策に焦点を置いている。 ここに集まった研究者らにとって学費ローンの問題は、本来なら永久に有効なはずの「教育投資は回収できる」という政策決定に反する不穏な変化だ。ブルッキングズ研究所のフェロー、アダム・ルーニー氏は、これを「アメリカンドリームの中核的信条」と語る。 会場では、まだその信条に変わりはないようだ。 1960年代から減少傾向にある成人男性の雇用率について聞かれたメリーランド大学の経済学者メリッサ・キアニー氏は、「大卒の人の数を増やすべき。大学を卒業した人たちの方が雇用率が高いことは事実だ」と述べた。 一方で研究者らは、学費ローンの難題も認識している。 彼らは、活気のない中流層の収入をどう回復させるかや、貧困層が中流層に上がる機会が減りつつあることなどを幅広く議論した。 パウエルFRB議長は、運よく恵まれた家庭に生まれなかった人たちの経済的成果がこれまでになく限られつつある米国において、こうした問題の解決は「きわめて重要だ」と語った。 それにも関わらず、経済的成果をあげるための大学進学は、今や債務とセットで語られている。特に人種的、民族的なマイノリティーにとっては、進学することが生涯賃金の減少を意味する可能性がある。 米国の大卒者は増加を続け、25歳以上の人口の3分の1を占めるが、それは高騰する学費やオンライン講座の増加などとともに拡大した学費ローンプログラムに支えられている。 ブルッキングズのルーニー氏によると、4年生大学の学費ローンは平均3万5000ドルで、4400万人が利用している。より返済プランが高額になるのは大学院生だという。また、2年制大学で準学士号を取得したり教育訓練コースを履修しようとローンを組んだ学生は、卒業後の賃金が低く、返済に苦労することもある。 ニューヨーク連銀によると、大学に進学した学生のうち約半数がローンを組んでおり、2017年時点で5分の1は返済が遅れていた』、日本でも学生の「学費ローン」の返済が、卒業生の大きな負担となりつつある。
・『自動化とグローバリゼーション  ブランダイス大学のデバルシ・ナンディ准教授によると、ローンを組んだ卒業生と組まなかった卒業生を比較すると、ローンを返済する必要がある人たちは投資をする率が低い、もしくは積極的に投資をしなくなるという。理由は収入を返済に回す必要があるからだ。 ローンを使って高い学位を取得したほうが、最終的には収入が高くなるという研究もあるが、ナンディ准教授は「収入があっても、(投資は)キャリアの早い段階でとん挫する」と反論した。 しかし、借金をしてでも大学に進学しなければ、事態はさらに悪化するかもしれない。自動化とグローバリゼーションの波が押し寄せる中、スキルや学歴が相対的に低い労働者の賃金と雇用率は下がり続けている。安定した職を保持するには、準学士号以上の学位がこれまで以上に必要不可欠になりそうだ・・・』、こうした問題を米連邦準備理事会(FRB)が取上げるとは、経済の隅々まで目配りする姿勢は、日銀にも見習ってほしいものだ。

第三に、在米作家の冷泉彰彦氏が9月14日付けでメールマガジンJMMに掲載した「ハリケーン災害と危機管理」from911/USAレポート」を紹介しよう。
・『ハリケーンのシーズンを迎えたアメリカですが、今年の場合、まず甚大な被害を受けたのはアメリカ本土ではなく、隣国のバハマ諸島でした。カリブ海を西進していたハリケーン「ドリアン」が910ヘクトパスカル(米国ではカテゴリー5「最大級」)の勢力でこの島国を襲ったのでした。 特に大きな被害のあったのは北部のグランド・バハマ島と、アバコ島でした。サンゴ礁に生成された島であるため標高は低く、最高点でも海抜10メートル程度の島に、6メートル以上という高潮が襲うと共に、暴風雨が直撃、しかも移動速度が時速2キロと遅い中で被害が長時間継続するという悲劇も重なりました。 現時点での公式発表では、犠牲者数50名となっていますが報道によれば、1500名の行方不明者があると言います。1300という数もあり、少し前までは2500と言われていましたが、それだけ情報が集約できていないということを表しています。 この2つの島では住宅はほぼ壊滅状態に近く、家を失った人は7万6千人に上るという推計もあります。そんな中、国際的な支援活動は始まっていて、英連邦の一国家ということで英国からの支援、そしてすぐ隣の米国からは沿岸警備隊が救助活動に参画しており、また支援物資の輸送も始まっています。アメリカからということでは、バスケットボール界の「レジェンド」であるマイケル・ジョーダン氏がバハマ政府に対して1ミリオン(約1億8百万円)の寄付を表明しつつ、広範な募金活動を呼びかけているところです』、「ハリケーン」の被害は大きくなっている気がするが、今回はアメリカは被害に合ってないとはいえ、温暖化への国民の怒りがそれほど高まらないのは不思議だ。
・『反対に、イヤなエピソードもいくつかあります。一つは、バハマで家を失った被災者がすぐ隣の米国フロリダ州に避難しようとしたところ、フェリーの中で「ビザ保有者以外は下船しないように」という指示を受けたという問題です。通常、バハマ諸島と米国の間には「ビザ免除協定」があり、多くの住民は相互訪問の行き来を問題なくしていたのですが、今回のような危機において入国拒否されるという事態に、バハマの人々は驚いているようです。 つまりトランプ指揮下の入国管理では、人道よりも国境の厳格さを優先しており、「ビザがないのに長期的に住み着く可能性のある外国人」は入国拒否ということなのです。このような注目されるケースでどうして冷酷な対応ができるのかというと、それを歓迎する一部のアメリカ国内の世論に迎合するためなのでしょうが、それにしてもイヤな話です』、こんな時まで、「トランプ指揮下の入国管理では、人道よりも国境の厳格さを優先」、とは困ったことだ。
・『トランプといえば、この「ハリケーン・ドリアン」が「アラバマに向かう」と何度もツイートをして大問題になりました。確かに初期の予報では、速度を速めてフロリダを横断、アラバマやミシシッピに向かう可能性も示唆されていました。その際の印象が強かったのでしょうが、その後、バハマ諸島付近で停滞し、北に進路を変えて大西洋岸を北上することがハッキリした後も、大統領は「アラバマへ向かう」とツイートし続けたのです。 一部には、この大統領のツイートに反発した気象庁(ナショナル・ウェザー・センター、ナショナル・ハリケーン・センター)の職員に対して、閣僚の一人が圧力をかけたという説があり、とにかく「トランプのフェイク警報問題」として騒動になっています。 多くのメディアは「自分が間違ったので、訂正します。終わり」と言えばいいのに、どうして出来ないのかと疑問を呈していましたが、とにかく政治も言論も敵と味方の勝ち負けの世界という独特の発想をベースに、虚報も報道もその手段だと思っている大統領には反省はないようです。 そんなわけで、今回のハリケーン「ドリアン」に関しては、後味の悪いエピソードも付いて回っているわけですし、甚大な被害を受けたバハマ諸島に関しては、その被害実態自体が十分に集約されておらず、伝えられてもいないという状況があります。 そうではあるのですが、少なくとも一時は直撃を覚悟したフロリダ半島の東岸、また警報の通りに実際にハリケーンが上陸して暴風雨による被害が発生したノースカロライナなどでは危機管理体制が機能していたのも事実です。 ハリケーンと危機管理ということでは、私自身、2012年10月のハリケーン「サンディ」の直撃を受けていますが、この時の経験も加えて考えてみると、アメリカの場合は2つの大きな特徴があるということが指摘できます。今回の「ドリアン」については、それが上手くいったという例にするのは躊躇されるのですが、あくまで一般論として参考にしていただければと思い、ご紹介することにします。 2つの特徴の1番目は、とにかく首長が顔の見える形で危機管理の前線に立つということです。今回の「ドリアン」の場合もそうですが、予報円に入ってきた時点からフロリダ州では州知事が先頭に立って避難や準備を呼びかけていました。 例えば、2012年の「サンディ」の際、こちらニュージャージー州の知事は、クリス・クリスティ(共和党)でしたが、彼はハリケーンの接近に伴ってTVやラジオにライブ出演して避難を呼びかけていました。ローカルFMの生番組では聴取者からの電話を直接知事が取っており、「今から(海岸沿いの主要高速道)ガーデンステート・パークウェイに乗って逃げても大丈夫ですか?」という電話に対して、「あと30分で完全閉鎖になるので、そこから逆算して行動して下さい。分かりますよね」などと極めて具体的に対応していたのを覚えています。 別にこうしたFMでの指示というのは政治パフォーマンスではなく、この具体例に対して切迫した対応を知事という「顔の見えるキャラクター」が行うことで、聴取者全員に「どう行動したらいいか」を考えるように伝えるのが目的で、全体として機能しているように思われました。 この「サンディ」の場合は、しかし非常に強い勢力のまま上陸して州を東から西に横断する格好となり、沿岸部では壊滅的な高潮被害、内陸でも広範囲で大規模な家屋の倒壊や、倒木の発生、そして長期間にわたる停電などが発生していたのですが、とりあえず州政府は知事を中心に情報発信を続けて、それは機能していました。 象徴的だったのは、被災の翌日である2012年10月31日に、甚大な被害のあった沿岸部でクリスティ知事がオバマ大統領を迎えて、二人が手を携えて復興支援を約束したシーンでした。 この日は、大統領選の真っ最中と言いますか、投票日のほぼ1週間前でした。そして知事は共和党でロムニー候補を支持していた一方で、オバマ大統領は民主党を代表して再選を目指す最後の段階に来ていたのです。 そんな状況の中で、連邦政府を代表したオバマと、州を代表したクリスティが復興のためには、党派を超えて連携するという姿を見せたことは、州民には深い印象を与えたのでした。 いずれにしても、ハリケーン襲来の前後にわたって、「顔の見える」首長がメッセージ発信と意思決定のリーダーシップを発揮する、そしてそのリーダーシップそのものがメッセージの発信と伝播力になっていくという仕掛けは、アメリカの場合は機能していると思います。 ちなみに、ニューヨーク市ではハリケーン接近に伴う高潮の危険性に関して、ある時に当時のブルームバーグ市長が非常に厳しい避難命令を出したにも関わらず、予報が「空振り」になったことがありました。その後で、この「サンディ」が接近した際には、市長が避難命令を出すと「オオカミ少年」になるからということで、就任して日の浅かったクオモ知事が避難命令を出して結果的に多くの市民の救命につながっています』、「クリス・クリスティ」知事は、大統領予備選挙でトランプに敗退したが、なかなか立派な危機対応で、千葉県の森田知事とは雲泥の差だ。
・『2つ目の問題は、避難命令の出し方です。まず事前に出すということがあり、基本は「72時間前の予告、24時間前の完了」というようなタイムラインが標準で、例えばフロリダに大型が接近するというような場合は、96時間前ということもあります。 ですから、避難命令が出た時点で多くの住民は、家にベニア板や角材での補強をしたりして、家財道具を車に積んで内陸の知人や親戚といった避難先を目指すことになります。また、この72時間あるいは96時間前の避難命令発動と同時に、全州に非常事態宣言を発動することも多いです。 また都市部では、基本的に24時間前に「まだ風雨が強くなる前」に公共交通機関は運休となり、高速道路等は緊急車両以外は通行禁止となります。ですから、そこから逆算して行動することが必要になるわけです。 避難命令の出し方ということでは、対象区域を指定してその区域内の住民は「全員避難」を徹底するという方法が取られます。その際に、避難には時間的な期限を切り、その期限が来たら警察、消防や、州兵などが残留者のチェックをかけるという実務対応になっています。ですから、文字通り強制避難です。 ただ、アメリカの場合は「ハリケーン・パーティー」といって、一部の若者が暴風雨の中でパーティーをやるという蛮カラなカルチャーがあり、また、公務などでどうしても動けない人間もいます。そうした場合に、生命の危険がないと確認が取れれば、多少の柔軟な運用はされるようですが、原則として強制避難というのは完全にそのエリア内の住民全員に退避、もしくはシェルターへの移動を強いる運用になっています。 そして僅かな例外を除いて、住民は整然と従っています』、「ハリケーン・パーティー」とは、いかにもアメリカらしい「蛮カラなカルチャー」だ。
・『勿論、72時間前などに非常事態宣言を出して、避難命令を出せば「空振り」ということは十分にあり得ます。例えば、今回の「ドリアン」について言えば、フロリダ州では風雨は強まりましたが、暴風雨の被害ということでは回避されたわけです。ですが、これによる州政府や気象関係者への批判は特にありません。 科学的な観測とシミュレーションの結果下した判断が、大自然という巨大な相手のために結果的に間違っていても、それは非難しないということが定着しているのです。 その反面、トランプの「フェイク、アラバマ警報」問題などに対する世論の視線は冷たいものとなるわけです。 日本の今回の台風15号被災などを見ていますと、例えば千葉県の森田知事などは、安全な県庁の中でバリッと決めた防災作業服で難しい顔をしているのではなく、もっと早く現地で被災者を激励しつつ、国に支援を要請することができなかったのかという印象を抱いてしまいます。 勿論、日本の場合は政治家が視察に行くと、それが復興の妨害になるとして批判を浴びるし、事実を伝えるべきメディアや、県外からのボランティアまで迷惑をかける悪人扱いがされるなど、実務的な復興に、抽象的な善悪を絡めてしまう屈折したカルチャーがあるわけです。また、制度的に政治家のアドリブ判断を許容しない防災マニュアルが整備されているという問題もあるのかもしれません。アメリカの場合は反対にそうした部分が過剰に単純化されている部分もあるのかもしれません。 ですが、やはり今回の千葉県の大規模災害の場合は、知事や選出国会議員などがもう少し事態を牽引できればと思うのです』、アメリカで「科学的な観測とシミュレーションの結果下した判断が、大自然という巨大な相手のために結果的に間違っていても、それは非難しないということが定着している」、というのは大いに学ぶべきだ。
・『より喫緊の課題として議論が必要なのは「空振り覚悟で、風雨の来る前に動く」という「先手」の問題です。近年の日本では、いわゆる計画運休として、議論が始まっており、都市部を中心に「48時間前の予告、24時間前の決定」というタイムラインを中心に、また4年間の実績のある京阪神が先行する形で議論が続いています。 この計画運休に関してですが、今回の台風15号における首都圏の混乱に関しては、 やや専門的になりますが、1)各事業所・学校が月曜日の休業・休校判断を下しやすくするには、金曜の午後に予告すべきであった。 2)8時の運転再開予定というのは出勤・登校を促す曖昧な時間であり、断念させる方向で予め12時以降の運転再開を予告すべきであった。 3)山手線については、池袋、大崎の車両所から順次運転開始とするのではなく、回送車を2駅置きに配置して、全線一斉に営業運転を開始しても良かったのでは。  などの提言をしておきたいと思います。いずれにしても、京阪神に続いて首都圏でも計画運休について「空振り覚悟」でしっかりやり切るように研究が進むことを期待したいと思います。 重要なのは、監督当局とメディアであり、大規模な「空振り」が出た時には鉄道事業者をしっかり擁護して、むしろ自分たちが盾になるぐらいの姿勢を見せていただきたいと思います。 もう一つの問題は、本物の「強制避難」を風雨の強まるはるかに前に行うという問題です。日本社会がより高齢化して行くということは、風雨が強まってからの避難がより困難になることを意味します。「避難指示が出ましたが、既に暗くなっており、水深の深い部分等では屋外に出るのは危険かもしれません。命の守れる判断を」などと、アナウンサーが絶叫しているのをよく聞きますが、どう考えても妙です。 この避難指示にしても、もっと強い言葉で「強制避難」という言い方も含めて、風雨の強くなる前の思い切り前倒して、実施する、その際には顔の見える首長が、「空振りの場合は責任を取る」覚悟でリーダーシップを取る、そのような姿が実務的に求められると思うのですが、いかがでしょうか』、説得力に溢れた提言で、諸手を上げて賛成したい。 
タグ:冷泉彰彦 アメリカン・ドリーム Newsweek日本版 メールマガジンJMM アメリカ(除くトランプ) (その5)(不正入学事件が浮き彫りにした 平等の国アメリカの不平等な現実、大卒資格はコストに見合うか? 米国をむしばむ学費ローン、ハリケーン災害と危機管理) サム・ポトリッキオ 「不正入学事件が浮き彫りにした、平等の国アメリカの不平等な現実」 アメリカは本来、貧しい家庭に生まれても大金持ちになるチャンスがあることを誇りにしてきた国 「機会の平等」を重んじる理念は、アメリカ独立宣言にもうたわれている 。裕福な家庭の出身で学業成績が冴えない若者と、貧しい家庭の出身で成績トップクラスの若者は、大学卒業率に違いがない。それが今日のアメリカの現実なのだ 不正入学スキャンダル 裕福な親が子供を一流大学に入学させるために、入試コンサルタントを通じて試験監督者や大学のスポーツチームのコーチに「裏金」を支払っていたことが発覚 ジョージタウン大学では、テニスの元コーチが総額270万ドル以上の裏金を受け取り、裕福な家庭の子供を少なくとも12人入学させていた 有名女優や有力法律事務所のトップ、金融界や実業界の大物などが起訴 アメリカのエリート大学の入学者選考が能力以外の要素に左右されるのは、今に始まったことではない。親が卒業生なら有利になるし、親が多額の寄付をすれば合格の可能性は大幅に高まる 不当に席を奪われた怒り 「大卒資格はコストに見合うか? 米国をむしばむ学費ローン」 米連邦準備理事会(FRB)が9日に開いたイベント 学歴が将来の収入と中流階級への道を保証するという常識が、この膨大な借金によって崩れ去ろうとしていると懸念を表明 5分の1がローン滞納 中流階層の未来をテーマ 学費ローンの問題は、本来なら永久に有効なはずの「教育投資は回収できる」という政策決定に反する不穏な変化だ 自動化とグローバリゼーション 「ハリケーン災害と危機管理」from911/USAレポート」 ハリケーン「ドリアン」 特に大きな被害のあったのは北部のグランド・バハマ島と、アバコ島 バハマ諸島と米国の間には「ビザ免除協定」があり、多くの住民は相互訪問の行き来を問題なくしていたのですが、今回のような危機において入国拒否されるという事態に、バハマの人々は驚いている トランプ指揮下の入国管理では、人道よりも国境の厳格さを優先しており、「ビザがないのに長期的に住み着く可能性のある外国人」は入国拒否ということなのです トランプといえば、この「ハリケーン・ドリアン」が「アラバマに向かう」と何度もツイートをして大問題になりました 2つの特徴の1番目は、とにかく首長が顔の見える形で危機管理の前線に立つということ 「サンディ」の際、こちらニュージャージー州の知事は、クリス・クリスティ(共和党) 甚大な被害のあった沿岸部でクリスティ知事がオバマ大統領を迎えて、二人が手を携えて復興支援を約束したシーン 2つ目の問題は、避難命令の出し方 科学的な観測とシミュレーションの結果下した判断が、大自然という巨大な相手のために結果的に間違っていても、それは非難しないということが定着 「空振り覚悟で、風雨の来る前に動く」という「先手」の問題 計画運休として、議論が始まっており、都市部を中心に「48時間前の予告、24時間前の決定」というタイムラインを中心に、また4年間の実績のある京阪神が先行する形で議論が続いています 本物の「強制避難」を風雨の強まるはるかに前に行うという問題 避難指示にしても、もっと強い言葉で「強制避難」という言い方も含めて、風雨の強くなる前の思い切り前倒して、実施する、その際には顔の見える首長が、「空振りの場合は責任を取る」覚悟でリーダーシップを取る、そのような姿が実務的に求められる
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イラン問題(その3)(ホルムズ海峡の日本船舶 守るのは有志連合ではない、有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」、数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備) [外交]

イラン問題については、6月27日に取上げた。今日は、(その3)(ホルムズ海峡の日本船舶 守るのは有志連合ではない、有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」、数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備)である。

先ずは、7月12日付け日経ビジネスオンラインが掲載した元衛艦隊司令官(海将)の香田洋二氏へのインタビュー「ホルムズ海峡の日本船舶、守るのは有志連合ではない」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/071200077/
・『米国のダンフォード統合参謀本部議長が7月9日、ホルムズ海峡の安全確保などを目的とする有志連合を結成すべく、関係国と調整していると明らかにした。日本政府も打診を受けたとされる。日本はこれにどう対応すべきなのか。安倍晋三首相が取り組むイラン・米国の仲介に影響はないのか。海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた香田洋二氏に聞いた。 Q:イランとの緊張が高まる中、米国が関係国との連携に動き始めました。 香田:今回の件で、強調しておきたいことが2つあります。1つは、ホルムズ海峡の周辺を航行する日本の民間船舶を守るのは誰なのか、をしっかり考える必要があること。日本の船舶に従事する船員の命を誰が守るのか、石油をはじめとするエネルギーの安定供給に誰が責任を持つのか、ということです。これはダンフォード氏に言われて始めるようなことではありません。この点について政府が議論していないとしたら、無責任のそしりを免れ得ません。 2つ目は、今回、米国が提唱する有志連合は、アフガニスタン戦争やイラク戦争の時に結成されたものとは全く異なる性格のものです。この2つの有志連合は、それぞれの国に攻め込むことを前提にしていました。しかし、今回の有志連合はホルムズ海峡周辺の安全確保と、航行秩序の維持が目的。武力行使を意図とした有志連合ではありません。集団的自衛権を持ち出すなど、両者を混同した議論が見受けられます』、議論の混迷を解きほぐしてもらいたいものだ。
・『軍事行動の可能性は低い  そもそもの話として、私は、米国もイランも軍事力に訴える可能性は低いと考えます。まずイランの側に立って考えてみましょう。イランにとって最悪なのは、国際社会の中で孤立することです。ホルムズ海峡で過激な行動を取れば、西側諸国などから経済支援を受けられなくなってしまいます。軍事攻撃を目的とする新たな有志連合の結成に正当な理由を与えることにもなりかねません。イランはそんなことはしないでしょう。 6月13日に日本とノルウェーのタンカーが攻撃される事態がありました。イランが過激な行動を取ったとしても、あの程度がせいぜいでしょう。私は、あの事件を起こしたのは革命防衛隊などの孫請け組織だと見ています。場所は、イラン領海の外縁から2カイリほど。イランが厳しく管理をしている海域ですから、イラン関連の組織がやったのは間違いありません。ただし、そのやり方は素人然としたものでした。今のタンカーは二重船体になっています。日本のタンカーへの攻撃は内側のタンクに及ぶものでなく、火災を発生させることもできなかった。 さらに、日本のタンカーと意識することなく攻撃したものとみられます。その場にいた、やりやすそうな船を選んだ。安倍首相がイランを訪問していた時ですから、イラン政府としては孫請け組織が「とんでもないことをしてくれた」と見ていたでしょう。 一方、米国にとっても、今の段階で軍事行動を起こすのは時期尚早です。イランが核合意を破り、低濃縮ウランの貯蔵量が2015年の核合意で規定した300kgを超えても、濃縮度を合意を上回る4~5%に上げることがあっても、核兵器の開発を始めるには、まだいくつものステップが残っています。軍事行動を要する事態には至っていません。 また、米国にとって現在の最大の脅威は中国です。イランに対処するために、北東アジアに置くべき軍事アセットを中東に回すのは考えづらいことです。加えて、軍事行動は一度始めたら、どこまでエスカレートするか分かりません。中東にくぎ付けになる可能性があり、リスクが大きすぎます』、さすが軍人らしく冷静な判断だ。
・『米国の狙いは中東の安定維持  Q:米国が有志連合の結成に向けて、動き始めたのはなぜでしょう。 香田:米国は、中東地域の安定を国益と考えているからです。冒頭でお話しした、考えておくべきことの2つ目と関連します。 シェール革命が起きて、エネルギー供給における中東依存度は下がっています。このため、米軍が中東に直接関与する必要性は小さくなっている。それでも、この地域の面としての安定を維持し、海上交通の秩序を維持することは依然として重要と見ているのです。先ほど触れたタンカーへの攻撃のようなイランの冒険を抑止する意図もあるでしょう。 ただし、そのための行動のすべてを米国が単独で賄うことはできません。なので、自国の船を護衛する力のある国は自分でやってほしいということです。 Q:先ほど、イランに軍事行動を起こす気はないと説明していただきました。そうであれば、米国が中心となって有志連合を結成することが、かえってイランを刺激することになりませんか。 香田:確かに、イランが態度を硬化させる可能性はあるかもしれません。ただし「刺激」はすでにしています。その一方で、毅然とした態度を取ることで、イランを増長させない効果が期待できます。 「刺激」が元でイランが軍事行動を起こすことがあれば、イランにとって虎の子である核関連施設を攻撃される恐れが生じ自殺行為です。そんなことはしないでしょう。また、刺激しようがしまいが、軍事行動を起こす時は起こすものです。 Q:ダンフォード氏は「米国が警戒活動を指揮する」と発言しています。具体的には何をするのでしょう。 香田:民間船舶の運航統制を考えているでしょう。自国の船を護衛する力のない国の民間船舶が、武装することなくペルシャ湾周辺を航行するのは好ましいことではありません。日本やNATO(北大西洋条約機構)加盟国の民間船舶の間に、こうした国の船を割り当てて航行すれば、これらにも警戒の目を及ぼすことができます』、日本がチャーターした船への攻撃が偶発的なものだとすれば、「有志連合」への参加の必要性はない筈だ。
・『日本は、日本の船を守るのか  Q:日本は有志連合に加わるべきでしょうか。 香田:これは、考えておくべきことの1つ目と関連します。日本の船を日本の政府や自衛隊が守るべきか否かを決心する必要がある。 自衛隊を海外に出すことに依然として抵抗があるようです。しかし、日本の船舶を守るのは日本しかありません。もちろん、憲法の枠内で行動するのが前提です。 政治的判断として「守らない」という選択もあり得ます。ただし、その時は船員の生命をどう考えるのか、という問題が生じます。エネルギーの安定供給も保証できません。 日本の船舶を日本政府が護衛するのに、集団的自衛権の議論は必要ありません。日本政府も自衛隊もイランの現状において集団的自衛権を行使することは考えていないでしょう。やってはいけないことです。 Q:日本の船は日本が守る、と決心した場合、どのような法的根拠で護衛艦を派遣することになるのでしょうか。 香田:まずは海上警備行動。この時、武器の使用については、警察官職務執行法第7条(正当防衛・緊急避難)にのっとることになります。 場合によっては、特別措置法を制定することになるかもしれません。 武力攻撃に至らない侵害に迅速に対処し、不法行為に切れ目なく対応すべく、政府は2015年、海上警備行動の発令手続きを迅速化するための閣議決定をしました。 Q:先ほど、第三国の船舶も護衛対象にする可能性をお話しいただきました。これは、海上警備行動で可能ですか。 自衛隊法 第82条 防衛大臣は、海上における人命若(も)しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。 香田:無防備の第三国の船舶が、護衛艦の至近距離において武装勢力に襲われるケースですね。こうした事態への対処は事前に決めておく必要があります。憲法違反の疑義があるならば、「助けない」という選択になります。 ただし、遭難など、海の上で困っている人がいたらお互いに助け合うという不文律があります。「海員の常務」と呼ばれるものです。これを適用することは可能です。自力で自国の船舶を守る力を持たない国と外交交渉をし、護衛対象にすることもあり得るでしょう。人道支援と考えることもできます』、なるほど。
・『「米艦防護」の必要はない  Q:ダンフォード氏は、「警戒活動を指揮する米国の艦船」も護衛の対象に想定しているようです。自衛隊が「米艦防護」を求められることはありませんか。2015年に成立した安保法制で、平時において自衛隊自身が保有する武器などを防護するために武器が使用できるのと同様に、米軍の艦船や航空機を防護するための武器使用が可能になりました。 香田:それはありません。米国の艦船は、自衛隊に護衛してもらわなくても、自力で守れます。 考える必要があるとすれば、極めてまれなケースですが、エンジンが故障した、電力が供給できなくなった、といった不慮の事故に米国の艦船が見舞われた時でしょう。これについては、どのように対処するか、政府は事前にルールを決めておく必要があります。先ほど触れた「海員の常務」と解釈することもできます。 Q:護衛艦を派遣する場合の任務と法的根拠について「国際平和支援法」に基づく後方支援を提供する可能性はありますか。安保法制の一環として、新たに制定された法律です。アフガニスタン戦争の際、日本は特別措置法を制定して、インド洋において多国籍軍に給油を実施しました。国際平和支援法はこうした措置を恒久法で定めるものです。 国際平和支援法1条 この法律は、国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの(以下「国際平和共同対処事態」という。)に際し、当該活動を行う諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等を行うことにより、国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。 香田:今回のケースにはなじまないと思います。今回の有志連合の目的はあくまで、ホルムズ海峡周辺の安全確保と航行秩序の維持です。武力攻撃が目的ではないので、国連安保理決議を必ずしも必要とする措置ではありません。もちろん、あった方が好ましくはありますが。 他国の部隊への給油などの支援措置があり得るとしたら、ペルシャ湾に艦船を派遣するものの資金がなく燃料の確保に困る国を支援するケースでしょう。その場合は、特別措置法を制定し、物品役務相互提供協定(ACSA)*を締結した国を支援できるようにすることになると思います。 *:自衛隊と他の国との間で物資や役務を融通しあう取り決め。食料、燃料、弾薬などの物品や、輸送、医療などの役務が対象。安全保障・防衛協力をスムーズに実施し、協力の実効性を高めることが狙い。国連平和維持活動(PKO)や共同訓練、大規模災害における協力を想定している』、「「米艦防護」の必要はない」というのは当然だろう。
・『日本の船舶を守ることに専念するなら、「仲介」に悪影響はない  Q:安倍首相が6月にイランを訪問し、米国・イラン間の緊張を緩和すべく仲介に乗り出しました。9月の国連総会で、イランのロウハニ大統領と再び会談することを検討し始めています。 米国が主導する有志連合に参加すると、仲介者としての中立を放棄しているようにイランからは見えるでしょう。仲介に支障をきたしませんか。 香田:リスクはあります。だからこそ、自衛隊の護衛艦は日本の船舶を護衛することに専念すべきです。この点を明確にする。それでもイランは日本の姿勢を難詰するかもしれません。しかし、日本の自衛隊が日本の船舶を護衛するのは当たり前のことです。クレームを付けられる筋の行動ではありません。 加えて、有志連合の目的がホルムズ海峡周辺の安全確保と航行秩序の維持であることを明瞭にすべきです。イランに攻め込む意図のものではない、と。ダンフォード氏の現在の言動だけでは不明瞭です。日本の外務省はこの点で努力する必要があると思います』、「有志連合の目的」をいくら「明瞭」にしたつもりでも、イランにとっては敵対行動と捉えられる可能性は大きく、やはり「仲介」が難しくなるとみておくべきではなかろうか。

次に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が7月18日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/208948
・『急浮上した「有志連合」 政府は対応に苦慮するが  7月9日、米統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード海兵大将は記者団に対し、ペルシャ湾の出入り口であるホルムズ海峡などの航海の安全確保のため「有志連合」結成を目指し関係諸国と調整中であることを表明した。11日には米国務次官補デビッド・スティルウェル空軍准将(予備役)が来日、外務省、防衛省などとイランや北朝鮮情勢につき意見交換を行った。 これに先立つ6月24日、トランプ米大統領はツイッターで「ホルムズ海峡を主たる原油輸入路としている日本、中国などが自国の船を自ら守るべきだ」と述べた。ダンフォード統参議長の「有志連合」結成論や、スティルウェル国務次官補の訪日は、トランプ大統領の意向を受けたものだと考えられる。日本政府は対応に苦慮しているが、「イラン包囲網」に参加する「大義」はあるのか』、さしもの安倍政権も今度ばかりは慎重姿勢のようだ。
・『米・イラン対立はトランプ政権が引き起こした  現在起きているイラン核合意をめぐる米国とイランの対立は、ひとえにトランプ政権が引き起こしたものだ。米・露・英・仏・中・独の6ヵ国とEUはイランの穏健派政府との2年以上の交渉の結果、2015年7月「イラン核合意」に達した。この合意では、イランは少なくとも15年間は、原子炉の燃料用の3.67%以上の濃縮ウランやプルトニウムを製造せず、濃縮用の遠心分離機の大幅な削減をし、その見返りにイランに対する経済制裁は解除することを定めている。 国連安全保障理事会もそれを支持する決議をし、IAEA(国際原子力機関)は2016年1月、イランが合意を完全に履行したことを確認した。これで経済制裁は解除に向かい、話し合いによる解決の成功例となった。 ところがトランプ大統領は2018年5月、一方的にイラン核合意離脱を宣言、経済制裁をすべて再発動した。米国はイランと取引をする外国金融機関等の企業にも制裁を再導入するとしている。それまでの対話の努力をすべてひっくり返す米国の離脱にはイランはもちろん、他の合意署名国も怒り、英、仏、独が遺憾の意を共同で表明したのは当然だ。 このためイランは7月7日、核合意で上限とされたウラン濃縮3.67%を超えた4.5%濃縮を行うことを宣言したが、核兵器用の濃縮ウランはウラン235の比率が90%以上であり、4.5%は核兵器開発には程遠い。経済制裁が解除されないことへのイランの不満を示すジェスチャーにすぎない。 米国はこれを「核合意違反」と非難するが、自国は核合意離脱を宣言。経済制裁を再開し、合意をほごにしたのだから、まるで契約を破棄して商品の代価は支払わず、「納入しないのは契約違反」と騒ぐようなものだ』、そもそも「米・イラン対立はトランプ政権が引き起こした」、というのはその通りだ。
・『「日本タンカー襲撃」でも米国の主張は不自然  6月13日にホルムズ海峡の出口であるオマーン湾で日本の国革産業が運航するタンカー「コクカ・カレイジャス」(パナマ船籍、1万9000総トン)と、ノルウェー企業が運航していたタンカー「フロント・アルタイル」(マーシャル諸島船籍、6万3000総トン)が爆発物による攻撃を受けたこの事件につき、米国は「イランに責任がある」と主張、中東地域を担当する米中央軍は「攻撃は吸着水雷(Limpet Mine)によるものだ」との声明を出した。また「イランの革命防衛隊が不発だった水雷を日本のタンカーから回収し、証拠隠滅している状況を米軍が撮影した」とする“証拠写真”を公表した。だがこの主張には極めて不自然、矛盾した点がある。 吸着水雷は強力な磁石を付けた小型爆弾で、アクアラングを背負ったダイバーがボートや小型潜水艇で港に潜入、停泊中の敵艦船の水線(海面の線)下に取り付け、時限信管で爆発させる。 第2次世界大戦中の1943年9月、英軍特殊部隊の14人がカヌー3隻でシンガポールの港に潜入、吸着水雷で日本の貨物船7隻を沈没、または破損させた。1945年7月には英軍の超小型潜水艇でシンガポールに潜入したダイバーが重巡洋艦「高雄」の船底に吸着水雷を付け、大亀裂を生じさせた。人が抱えて泳げるような小型水雷でも、水中では爆発の圧力が周囲の水に抑えられ、船に向かって集中するから相当な威力を発揮する。 だが「コクカ・カレイジャス」の破孔は1回目の午前6時45分頃の爆発によるもので、右舷船尾の水線より少し上だった。その約3時間後に起きた2回目の爆発は、右舷中央部の水線よりはるかに高い位置に小さな穴を生じさせた。 泳いで船に接近するダイバーは、目標の船の水線下には比較的容易に吸着水雷を付けられるが、泳ぎながら水線より上に爆弾を持ち上げて付けるのはシンクロナイズドスイミングより難しいし、水線下に穴をあけないと効果は乏しい。 まして2回目の攻撃の破孔は、水面から手が届かないような高い舷側に生じている。何のために、どうやって水雷を高い場所に取り付けたか、極めて不自然な話だ。もしヘリコプターか無人機が搭載する小型のミサイルを誤射すれば、このような被害が生じる可能性がある』、確かに米国の主張には、かなりの無理があるようだ。
・『つじつま合わない「証拠写真」 「反イラク感情」抱かせる狙い?  「コクカ・カレイジャス」の航海速力は14.3ノット(時速26キロ)、航行中にダイバーが泳いで水雷を取り付けるのはまず不可能だ。サウジアラビアのジュベイル港に停泊中か、あるいは10日に出港したのちカタールのムサイード港に寄港した際に付けられた、ということになる。 複数の水雷を付けるならほぼ同時に爆発するようにするはずで、3時間もの差があるのもおかしい。「コクカ・カレイジャス」の乗組員は「砲弾のような物が飛来した」と報告している。1回目の爆発は突然だから思い違いが起きる可能性もあるが、それによる右舷後部の火災を消し、緊張しているはずだから、もし右舷にもう1個異様な物体が付いていれば気付くだろう。「砲弾のような物が飛来した」との乗組員の証言は無視できない。 イランの巡視艇が「コクカ・カレイジャス」に接舷し、革命防衛隊員が不発の水雷を回収している」とする米軍の“証拠写真”はつじつまが合わない。不発があったか否か、は事件後はじめて分かる。事件発生後にはタグボートが駆けつけてアラブ首長国連邦のカルバ港へ曳航し、米駆逐艦「ベインブリッジ」も来て同船の乗組員を一時収容、船内の安全確認を行ったのち乗組員は元の船に戻った。多くの人々の関心が攻撃を受けた船に集中する中、イラン革命防衛隊員が船に乗り込んで証拠隠滅をはかる、と言うのは変だ。まるで火災現場に消防車やパトカーが集まる中、放火犯が現れて証拠品を回収するような話だ。この写真は13日の夜に撮影されたようで、もしイランの巡視艇が来たのなら、米国あるいは他の反イラン勢力の犯行の証拠を探そうとしていたとも考えられる。 米国は「吸着水雷」の磁石の破片を同船から回収し「イラン軍のパレードに出ていた物と酷似している」とも発表した。だが弾道ミサイルや戦車などが行進して威容を誇示するパレードに、特殊部隊が密かに使う小型水雷のようにまったく見栄えのしない物を出すとは考えにくい。 ポンペオ米国務長官は6月13日の記者会見で「イラン政府は日本のタンカーを攻撃、乗組員の生命を危険にさらした。安倍首相がイラン訪問中に事件を起こして日本を侮辱した」と述べた。だが「コクカ・カレイジャス」はパナマ船籍でパナマ国旗を掲げ、船尾にも船籍港の「パナマ」が書かれている。 船の所有者は法的にはパナマ企業で、それが日本企業の子会社であることは攻撃する側には簡単には分からない。ポンペオ国務長官は、米国の対イラン強硬策への国際社会の批判が強い中、なんとか日本人に反イラン感情を抱かせ、イラン包囲網に参加させようとしている様子だ。 米国は「イランがホルムズ海峡の封鎖を目指している」と言うが、それをすればイランは自国の原油輸出を妨げ自分の首を絞める結果となる。一方、米国はシェール・オイルの産出で石油輸出国になったから、ホルムズ海峡の閉鎖で原油価格が上昇すれば、米国を利することになるのは明らかだ。イランが軽々とそのような愚行をするとは考えにくい』、確かに、「ホルムズ海峡」の緊張は、イランにはマイナスの影響しかないが、米国への影響はプラスだ。
・『米国の虫のいい構想 「自衛隊の派遣」否定は当然  ロイター通信によれば、ダンフォード大将が想定している「有志連合」では米軍は指揮統制や警戒監視、情報収集を行い、各国の商船はその国の艦艇が護衛するという。米海軍は護衛の艦艇を出さず、指揮だけするなら、安上がりにイラン包囲ができる虫の良い構想だ。 だが南シナ海の人工島問題で米海軍は中国海軍と張り合っているし、米中は「貿易戦争」のさなかだ。また中国はイラン核合意からの米国の離脱、制裁再開を批判しているから中国軍艦が米軍の指揮下に入ることはまずない。 イランは19世紀から北のロシア、南のインドを支配するイギリスの圧迫を受けたため、、日露戦争での日本の勝利を喜び、伝統的に親日だ。第2次世界大戦では中立を宣言したが、英軍とソ連軍は南北から侵攻し、イランは両国に占領された。皇帝は捕えられ島流しされて死亡した。 日本は米国が1980年に革命後のイランと国交を断絶しても、イランとの友好関係を保ち、国交を続けてきた。イラン核合意についてもそれを支持する立場だ。 「コクカ・カレイジャス」の乗組員の報告を聞いている日本政府は、米国が「イランの犯行」と叫んでも同調せず、「誰が攻撃したのか分からない」(石井国土交通相)「予断をもって発言することは控えたい」(菅官房長官)など慎重で、中立的姿勢を示した。岩屋防衛相も6月14日「我が国の存立を脅かす恐れはない」と述べ、自衛隊の派遣を否定した。岩屋氏は7月16日にも「現時点では有志連合に参加する考えはない」と述べている。 米国が「日本の船は日本が守れ」と海上自衛隊派遣を要求しても、日本の船会社が海外に子会社を作り、外国船籍にしている「便宜置籍」の外航船は2411隻。日本船籍の外航船はわずか219隻だから、日本船籍の船だけを守ってもあまり意味がない。政府は便宜置籍船も合わせて「日本関係船舶」と称しているが、法的にはパナマやリベリアなど、他国の主権下にある船を海上自衛隊が護衛し、必要があれば武力行使をすることが自衛権の範囲と言えるか否かは疑問だ。 日本の船会社はパナマ等の海外子会社の株主にすぎない。外国企業への出資者の権益を守ることが自衛権行使に当たるのならば、諸外国に進出している日系企業の工場等を戦乱や暴動などの際に守るために自衛隊を派遣したり、逆に日本にある中国企業の工場を中国軍が守ることも自衛権の行使ということになりかねない』、最後の部分は、大いに気を付けて考えるべきだ。
・『米国を「核合意復帰」に誘導するのが良策  仮に日本に食糧や石油などを運ぶ船が続々と撃沈され、日本国民の生存が脅かされるような事態になれば、海上自衛隊がどの国の船であろうが、日本に不可欠な物資を運ぶ商船を護衛し、通商路を確保するのは自衛の範囲だろう。だが今回の状況は岩屋防衛相も言う通り国家の存立に関わるような切迫した事態ではない。米国のオバマ政権が賛成して成立したイラン核合意に、米国が復帰さえすれば円満に解決する話だ。 自衛隊法82条(海上警備行動)は「海上の人命、財産の保護、治安維持のため自衛隊に海上で必要な行動をとることを命ずることができる」と定めている。だが武器使用は警察官職務執行法に準じて、正当防衛等の場合以外には人に危害を加えてはならない。 ソマリア沖での海賊退治に海上自衛隊を参加させた際、2009年に制定された海賊対処法(略称)は防護の対象を日本関係船舶に限らず、海賊行為の制止に武器使用も認めている。 だが海賊は「私的目的」で行動するものと定義され、軍艦、公船に対して適用されない。イラン革命防衛隊は正規軍とは別組織だが、同国政府に属するから海賊ではない。 もし日本が米国の要請に従い、ホルムズ海峡等に護衛艦、哨戒機、給油艦などを派遣するなら、新たな立法が必要だが、トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱し、イランと取引する他の諸国の企業にも制裁を加えるとし、空母や爆撃機を派遣して威嚇するのに協力するための新法を制定するならば「横車協力法」と言わざるを得ない。今回は「有志連合」に加わる国は少ないだろう。自衛隊を米軍の指揮下に入れて、日本にとって「百害あって一利なし」の行動を取らせるよりは、他の諸国と連携して米国をイラン核合意への事実上の復帰に誘導するよう努める方が良策であるのは明らかだ』、「米国を「核合意復帰」に誘導するのが良策」というのは筋論だが、トランプ大統領がこれをのむ筈もないだろう。少なくとも、「有志連合」参加は見送るべきだろう。

第三に、9月20日付けNewsweek日本版「数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/post-13027_1.php
・『サウジアラビアは、高高度からの攻撃を抑止するため、数十億ドルを費やして西側から最新鋭の防空システムを購入してきた。だが、同国の巨大な石油産業の施設が大打撃を受け、安価な小型無人機ドローンや巡航ミサイルによる攻撃からの防御には、全く役立たないことが、図らずも証明されてしまった。 14日の攻撃で、サウジの原油生産量は約半分に落ち込んだ。隣国・イエメンとの4年半に及ぶ戦争で何度も重要資産が攻撃を受けながら、同国が適切な防衛態勢を整えていない実態を露呈した。 サウジと米国は、恐らく今回の攻撃の背後には、イランがいるとの見方をしている。ある米政府高官は17日、攻撃の起点はイラン南西部だったというのが米政府の考えだと説明した。3人の米政府高官は、攻撃にはドローンと巡航ミサイルの両方が使われたと語った。 イラン側は関与を否定し、サウジが主導する有志連合に敵対しているイエメンの集団が攻撃を実行したと主張。イエメンの親イラン武装勢力フーシ派は、自分たちが単独で攻撃したとする声明を発表している。 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によると、イランの弾道ミサイルと巡航ミサイルの発射能力は、中東で最強であり、イランや同国が支援する近隣の武装勢力とサウジの距離の近さを踏まえれば、サウジのいかなるミサイル防衛システムも事実上圧倒する可能性がある。 ただ、より限定的な攻撃でも、サウジにとって手に余ることが分かっている。例えば最近フーシ派は、サウジの民間空港や石油ポンプ設備、同国東部のシェイバー油田などの攻撃に成功した。 サウジのある安全保障関係者は「われわれは無防備だ。どの施設にも実質的な防空態勢が存在しない」と話した。 【関連記事】サウジのムハンマド皇太子、韓国に防空システム構築支援を要請  14日に攻撃されたのは、国営石油会社サウジアラムコの2つの石油精製施設。石油関連施設の被害としては、1990─91年の湾岸危機時にサダム・フセインのイラク軍がクウェートの油田を炎上させて以来の規模となった。 サウジ政府は暫定的な調査結果として、イラン製の兵器が使用されたと分かったが、発射地点はなお不明だと説明している。 当初、専門家はドローンによる攻撃と特定していたが、3人の米政府高官は、ドローンと巡航ミサイルを組み合わせた攻撃方法であり、初めに考えられたよりも複雑で高度な作戦だったことがうかがえると述べた。 サウジの安全保障専門家の1人は「サウジにとってこの攻撃は(米中枢同時攻撃の)9・11のようなものだ。今回の攻撃は、これまでの状況を一変させるゲームチェンジャーだ」と指摘。さらに「われわれが国防のために数十億ドルを投じた防空システムと米国製兵器は、どこにあるのか。これほど精密な攻撃ができるなら、海水淡水化工場などもっと多くの施設が標的になりかねない」と懸念する。 主要な都市や施設にサウジが配備している防空システムでは、長らく米国製の長距離地対空ミサイル「パトリオット」が、主要な役割を果たしてきた。実際、フーシ派がサウジの都市に向けて発射した高高度飛行の弾道ミサイルは、首都・リヤドを含む主要都市で見事に迎撃されてきた。 ところが、ドローンや巡航ミサイルは、より低速かつ飛行高度も低く、パトリオットにとって検知・迎撃が難しい。 ペルシャ湾岸諸国のある高官は「ドローンは、サウジにとって非常に大きな試練だ。なぜなら、しばしばレーダーをかいくぐって飛んでくる上に、イエメンやイラクとの国境線が長いためで、大変脆弱な状況に置かれている」と指摘した』、「サウジ」が自らの脆弱性を認識しながら、イエメンへの軍事介入を強化しているというのは、理解に苦しむ。イラン孤立化を狙って、わざと攻撃させた可能性すら考えられる。
・『安価な攻撃手段  アラムコの操業に詳しい関係者は、今回攻撃を受けたアブカイクの施設は、ドローンに対する防衛態勢が不完全だったと証言した。当局は、レーダーが適切にドローンを捉えたかどうか調査を進めている。 サウジと取引がある西側の防衛企業幹部は、1年前までアブカイクの防衛用にパトリオットが配備されていたと話す。 14日に適切な迎撃ができなかった理由について、記者団から聞かれた有志連合の報道官は「230発を超える弾道ミサイルが有志連合によって迎撃された。われわれはあらゆる脅威に対応しており、サウジの安全保障を確保する防衛能力がある」とだけ答えた。 サウジ政府の報道担当部門は、コメント要請に回答しなかった。 先のサウジ安全保障関係者と2人の業界関係者によると、同国政府は数年前からドローンの脅威を認識し、コンサルタントや関連業者と解決策を話し合っていたものの、新たな具体的措置を講じてこなかった。 米国防総合大学のデーブ・デロッシュ氏は「従来のほとんどの防空レーダーは、高高度からの脅威に向けて設計されている。巡航ミサイルとドローンは地表すれすれを飛んで来るが、地平線が丸い関係でレーダーに映らない。また、ドローンは小さ過ぎて、大半のレーダーに熱源として探知されない」と解説する。 たかだか数百ドル程度のドローンに対し、1発約300万ドルの高額なパトリオットミサイルで撃ち落とすのは、あまりにも割に合わない面がある。 米国の防空専門企業・ディドローンのヨルク・ランプレヒト最高経営責任者(CEO)兼共同創業者は、より有効なドローン迎撃策として、こちらからもドローンのスウォーム(群れ)を向かわせることを提案する。 また、ジャミング(電波妨害)などの技術によって、ドローンを制御不能にできるとしている。 ただ、頻繁にジャミングを行えば、産業活動が損なわれたり、周辺住民に健康被害を与えることにつながる恐れもある。 いずれにしても武装されたドローンは入手しやすくなる一方で、重要なインフラへの脅威は過剰なほどに高まりつつある、と専門家はみている。 サウジの政策担当者がずっと前から恐れているのは、中部と東部に淡水を供給している同国東部・ジュバイルの淡水化施設が攻撃される事態だ。 この施設が破壊されれば、数百万人が水を利用できなくなり、修理に長い期間を要する可能性があるとみられている』、確かに「淡水化施設が攻撃される事態」は、今回の石油産業の施設より打撃は深刻で、イランもさすがに控えたのかも知れない。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 田岡俊次 Newsweek日本版 香田洋二 イラン問題 (その3)(ホルムズ海峡の日本船舶 守るのは有志連合ではない、有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」、数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備) 「ホルムズ海峡の日本船舶、守るのは有志連合ではない」 ホルムズ海峡の安全確保などを目的とする有志連合を結成すべく、関係国と調整 軍事行動の可能性は低い 米国の狙いは中東の安定維持 日本は、日本の船を守るのか 「海員の常務」 「米艦防護」の必要はない 日本の船舶を守ることに専念するなら、「仲介」に悪影響はない 「有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」」 急浮上した「有志連合」 政府は対応に苦慮するが 米・イラン対立はトランプ政権が引き起こした 「イラン核合意」 トランプ大統領は2018年5月、一方的にイラン核合意離脱を宣言、経済制裁をすべて再発動 「日本タンカー襲撃」でも米国の主張は不自然 つじつま合わない「証拠写真」 「反イラク感情」抱かせる狙い? 米国の虫のいい構想 「自衛隊の派遣」否定は当然 米国を「核合意復帰」に誘導するのが良策 「数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備」 高度からの攻撃を抑止するため、数十億ドルを費やして西側から最新鋭の防空システムを購入 安価な小型無人機ドローンや巡航ミサイルによる攻撃からの防御には、全く役立たないことが、図らずも証明 安価な攻撃手段 中部と東部に淡水を供給している同国東部・ジュバイルの淡水化施設が攻撃される事態 修理に長い期間を要する可能性 数百万人が水を利用できなくなり、修理に長い期間を要する可能性
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鉄道トラブル(その1)(新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」を強調した報道への大きな違和感 もっと光を当てるべきことがあるだろう、停電で「電車内閉じ込め」 盲点だった猛暑対策 京成線ストップ、冷房切れ乗客が体調不良、台風で駅に乗客殺到の大混乱 鉄道計画運休の弱点は「運転再開」だ) [社会]

今日は、鉄道トラブル(その1)(新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」を強調した報道への大きな違和感 もっと光を当てるべきことがあるだろう、停電で「電車内閉じ込め」 盲点だった猛暑対策 京成線ストップ、冷房切れ乗客が体調不良、台風で駅に乗客殺到の大混乱 鉄道計画運休の弱点は「運転再開」だ)を取上げよう。

先ずは、筑波大学教授(臨床心理学、犯罪心理学)の原田 隆之氏が昨年6月12日付け現代ビジネスに掲載した「新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」を強調した報道への大きな違和感 もっと光を当てるべきことがあるだろう」を紹介しよう(文中の付注の番号などは省略)。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56073
・『新幹線の中での惨劇  6月9日、東京発新大阪行きの東海道新幹線「のぞみ」の最終便で、男が乗客にナタなどを振るって、男性1人が死亡、女性2人が重傷を負うという衝撃的な事件が起こった。 奇しくも、8人の死者を出した「大阪池田小事件」から17年、7人の被害者を出した「秋葉原事件」から10年というニュースが、新聞やテレビで何度も流れた直後の出来事だった(事件はいずれも6月8日)。 車内には悲鳴が響きわたり、パニック状態となる乗客もいたというが、新幹線の車内はまさに「走る密室」である。乗客の恐怖はいかばかりであっただろう。 最終便ともなれば、疲れて寝ていた人もいただろうし、食事をしたり、ビールを飲んだりして、くつろいでいた人もいたかもしれない。 普段から安全を前提として過ごしている日常的な状況が、このような理不尽で不可解な凶悪犯罪の舞台となったことに、われわれは底知れぬ不安を抱く。 私も同じ日の日中、仕事で「のぞみ」に乗ったばかりであったので、一報を聞いたときは、他人事だと思えない恐怖を感じた。 毎日仕事やレジャーで多くの人が利用する新幹線、同じように感じた人は多かっただろう』、「新幹線」で「ナタ」を振るうというのは、シュールな悪夢だ。
・『容疑者は「誰でもよかった」と供述  新幹線は事件の直後、非常ボタンが押されたため、一旦緊急停車をしたが、その後最寄りの小田原駅に移動して再度停車した。そして、通報により待ち構えていた警察官が乗り込んで、容疑者が逮捕された。 殺人未遂容疑で逮捕されたのは、愛知県在住の無職、小島一朗容疑者、22歳だった。 警察官に連行される様子は、顔を伏せたり隠したりするわけでもなく、不貞腐れたようなどこか挑戦的な表情にも見えた。 報道によると、彼は両隣(窓側と隣の通路側)の女性に切りつけたということであるが、「誰でもよかった」と供述しているという。 また、死亡した男性は、凶行を止めに入って返り討ちに遭い、馬乗りになった容疑者に何度も刺されていたという目撃証言がある。 本当に理不尽としか言いようがない。被害者の無念や遺族の悲しみを思うと、心の底から怒りと悲しみがこみ上げてくる』、「死亡した男性は、凶行を止めに入って返り討ちに遭い、馬乗りになった容疑者に何度も刺されていた」、誠に勇気ある行動だが、他の乗客は見て見ぬふりを決め込んだのだろう。
・『「容疑者自閉症?」という報道があり…  事件を受けて、毎日新聞のデジタル版は翌日「新幹線殺傷:容疑者自閉症?「旅に出る」と1月自宅出る」との見出しで事件を報じた。 その後見出しからは「自閉症」の語句が、本文からは「自閉症と診断され、昨年2~3月には岡崎市内の病院に入院していた」という箇所が削除された。 そして翌日、毎日新聞は、ツイッター上で「発達障害について不適切な記載をしてしまいました」と謝罪した。 また、夜のニュース番組『Mr.サンデー』では、容疑者の生育歴を詳しく紹介するなかで、容疑者が「発達障害」の診断を受けていたことを何度も繰り返し報じていた。 番組のなかでは、「発達障害の人が皆、犯罪をするわけではない」「そういう決めつけはよくない」と一応の前置きをしていたが、それが吹き飛んでしまうほど、「発達障害」を前面に押し出し、専門家なる者が解説を加えていた』、テレビ番組といえども、担当者が取材してきた内容を、局として自主的にチェックすべきだ。
・『発達障害と犯罪  容疑者が何らかの診断を受けていたこと、精神科入院歴があることなどが事実だとしても、それは容疑者の有する特性の1つにすぎない。 ほかにも数多くの特性があるはずであるが、彼の一面だけをとらえて殊更に強調して報道することに何の意味があるのだろうか。 不可解な事件が起こると、誰もが不安になる。そして、その「答え」を精神障害に求めて、一時の安心を得ようという安易な心理がそこには透けて見える。 しかし、もしそれが誤った「答え」であれば、事件の解明には何も役立たないし、精神障害に対するいわれのない偏見を増長することにもつながる。 これまで積み重ねられてきた犯罪心理学の膨大な研究データは、発達障害を含む精神障害と犯罪・非行との関連を否定している。これは明確な事実である。メディアが強調するような精神障害と犯罪との関連は、事実に反する「神話」にすぎない。 世の中には精神障害や発達障害を有する多くの人々がいるが、その大多数は犯罪とは無縁である。もちろん、犯罪に赴く者も少数であるが存在する。一方、いわゆる「健常者」も大多数は犯罪とは無縁であるが、少数であるが犯罪行為を行う者がいる。 つまり、どちらの集団にも、犯罪とは無縁の大多数の人々と、犯罪に加担する少数の者がいる点では同じである。 このことをデータで確認してみると、犯罪白書によれば、平成27年度の刑法犯の検挙人員総数は、約24万人であるのに対し、そのうちの精神障害者数は約4,000人にすぎない(発達障害のみのデータはないので、精神障害者全体を見るしかない)。 厚生労働省の患者調査によれば、わが国の精神障害者は約390万人いる。また、同じく厚生労働省のデータによれば、平成26年度に医療機関を受診した発達障害者は、約19.5万人である。 これらの数字をもとに単純に計算すると、一般の人が犯罪を犯す割合(精神障害者を除いたわが国の人口全体のうち、精神障害のない刑法犯の割合)は約0.2%であるのに対し、精神障害者が犯罪を犯す割合(精神障害者全体のうち、精神障害刑法犯の割合)は、約0.1%にすぎない。 さらにわが国の人口全体に占める精神障害者は、約3.1%であるのに対し、刑法犯全体に占める精神障害者は、約1.7%である。 つまり、精神障害者よりも、「健常者」のほうが犯罪に至る割合がずっと多いということである。 このように、これらの単純な事実を見ただけで、精神障害や発達障害を犯罪の「原因」であると決めつけることが正しくないことがわかるだろう』、「精神障害者よりも、「健常者」のほうが犯罪に至る割合がずっと多い」、説得力のある主張だ。
・『犯罪の要因とは何か?  精神障害や発達障害が犯罪の原因でないとすると、何を犯罪の原因であると考えればよいのだろうか。 同じ問いを別の言い方に直すと、精神障害者であれ健常者であれ、犯罪者とそうでない者を分ける要因とは何だろうか。 そのような要因こそを、犯罪に関連する要因(あるいは犯罪の原因)として考えるべきである。 カナダの犯罪心理学者アンドリューとボンタは、膨大な研究データベースから、犯罪に至る者とそうでない者を分ける要因、すなわち犯罪のリスクファクターを8種類見出し、それらを「セントラルエイト」と名づけた。 セントラルエイトの概要は、表のとおりである(リンク先参照)。 今回の事件においても、その背景や原因に迫りたいのであれば、これらの要因を一つひとつ丁寧に検討すべきであるのに、「発達障害」だけに着目することは的外れも甚だしく、真の犯罪の動機や原因に迫ることができない』、さすが「臨床心理学、犯罪心理学」の専門家だけある。
・『発達障害のとらえ方  このようにビッグデータを見たとき、つまりマクロな見方では、発達障害と犯罪には直接の関連がないことがわかった。しかし、何も発達障害と犯罪はまったく関係ない、と切り捨てているわけではない。 個々のケースをミクロで見たとき、発達障害が犯罪の背景としては無関係でないケースもなかにはある。 ただし、その場合も発達障害を単独で犯罪の要因として見るような単純化した見方ではなく、セントラルエイトとの関連を丁寧に分析するべきである。 例えば、先の番組でも、容疑者の生育歴として、両親との不和、不登校、対人関係の悪化などが挙げられていたし、暴力を容認するような価値観やパーソナリティについても簡単に触れられてはいた。 つまり、本件の背景として光を当てるべきは、発達障害という目立つ要因だけではなく、家庭や学校、そして職場での不幸な対人関係や疎外感などを背景にして、障害を持つ容疑者が徐々に行き場をなくし、追い詰められていった過程のほうであろう。 また、容疑者のパーソナリティを考えると、そうした過程のなかで、不遇感や世間に対する恨みのような感情を募らせていったのかもしれない。 たびたび自殺を口にすることもあったようで、だとすると本件は、無辜の被害者を巻き込んだ「拡大自殺」としてもとらえられるかもしれない。 一方、もし容疑者に対して、適切な支援がなされていたのであれば、孤立を深めず、疎外感や世間に対する恨みなどを募らせることなく、適切な場で能力を発揮して、充実した毎日を送ることができていた可能性がある。 わが国では、特に大人の発達障害者に対する支援が著しく欠如していることが大きな問題である。 このように、本件において、仮に障害、パーソナリティ、環境(支援の欠如)が相互に影響しあって犯罪という結果につながったのだとすると、後の2つを十分に考慮することなく、まだ情報も十分に明らかになっていない段階で、「発達障害」というレッテルだけが新聞の見出しに踊ったり、テレビで連呼されたりすることは、大きな問題である。 発達障害という診断は、多数者とは異なる少数者を異端者として排除するためのレッテル貼りであってはならない。また、学校や職場において、多数者の型に無理やり嵌め込むような、教育や治療の対象とするためのものであってもならない。 それは、本人が「生きづらさ」や「生活上の困難」を抱えていることを示す目印となり、早期から継続して、家庭、学校、職場、社会で、本人の個性や多様性を尊重しながら、「生きづらさ」をなくすための適切な支援や治療が受けられるようにするための指標となるべきものである。 このような事件が起きるたびに、われわれの不安を鎮めるため、安易な理解を求めて容疑者の障害をいたずらにクローズアップすることは、傷害への偏見や排除につながる安易なレッテル貼りそのものであり、メディアはそのような態度を厳に慎むべきである』、主張には全面的に同意する。

次に、8月16日付け東洋経済オンライン「停電で「電車内閉じ込め」、盲点だった猛暑対策 京成線ストップ、冷房切れ乗客が体調不良」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/297386
・『猛暑の中、冷房の止まった列車内に缶詰になり、乗客が体調不良を起こす。これはたまたま乗り込んだ列車の巡り合わせが悪かった、ということでよいのだろうか。事態を重く見た国土交通省鉄道局は8月9日、首都圏13社の鉄道事業者の安全対策責任者を集めて「猛暑時の停電による駅間停車への対応に関する意見交換会」を開いた。 きっかけは、京成電鉄本線などで8本の列車が停電により駅間に停車、車内に閉じ込められた乗客が熱中症とみられる体調不良で救急搬送されたことだ。トラブルは6日朝8時30分ごろに発生。駅間停止した列車は停電により冷房が止まり、乗客15人が体調不良を訴え、うち9人が病院に搬送された』、「猛暑時の停電」が通勤時、とはさぞかし息苦しいことだったろう。
・『過酷だった「猛暑の停電」  京成の発表によると、停車から30分後には避難誘導を開始し、約1時間で3500人の誘導を完了したという。同社は停電を引き起こした青砥変電所(東京都葛飾区)の設備故障の原因も含めて、誘導のあり方を調査中。国交省は停電の原因究明と再発防止策と共に、誘導の検証について報告を求めている。 同社鉄道本部長の室谷正裕常務は「われわれは一生懸命やりました。例えば今回、駅間停止を受けて駅務員が日暮里駅から出たのですが、現場までは900m離れていた。応援に駆け付けるまでの距離と、誘導の距離で2倍になる。時間的にも最短で終えることができたと思っているのですが、それをお客様にどう判断いただけるか」と訴えた。 従来、駅間停車で課題となっていたのは、迅速な運行再開だった。車内に閉じ込められた乗客の誘導が課題としてはっきり認識されたのは、国交省鉄道局安全監理官室によるとごく最近のことだ。それは2018年6月18日に発生した大阪北部地震がきっかけだった。発生は朝7時58分。今回の京成同様に通勤時間帯だった』、「京成の発表によると、停車から30分後には避難誘導を開始し、約1時間で3500人の誘導を完了」、ということであればまずまずのようだ。。
・『この地震ではJR西日本が運行する列車153本が駅間停車し、約14万人に影響を与えた。停車から30分後に降車を開始したものの、特急列車1本を残して停車した全列車の避難を完了するまでに約4時間を要している。 この駅間停車がいかに過酷であったか、同社がまとめた報告からうかがい知ることができる。トイレがない車両は、降車や最寄り駅まで誘導したほか、近接して停車するトイレのある車両へも誘導したが、それにも限界がある。「乗務員室を遮蔽し、手元にある材料で簡易トイレを作成」した。 誘導にも課題があった。線路を歩くことが困難な、杖や車いすを使う乗客には「担架を準備して、係員4、5人で対応」。一方で運行再開を待つ乗客に対しても食料を配布しながらの対応だった。 国交省鉄道局はこの教訓を生かして駅間停止時のガイドラインを策定。救出はしごの列車への搭載や非常用電源の設置、運転再開に向けた効率的な点検のために地震計を増やすなどの提案を行った。 ただ、この地震発生時の大阪市の最高気温は18度。猛暑に適応した対策は、いわば「想定外」だった』、「JR西日本」では、「停車から30分後に降車を開始したものの、特急列車1本を残して停車した全列車の避難を完了するまでに約4時間を要している」、京成と異なり列車本数も多いので、大変だろうが、「約4時間」とは時間がかかり過ぎだ。「トイレ」などへの対応で苦労したのも、無理からぬところだ。
・『猛暑対策は盲点だった  猛暑と真逆の事例は、実はあった。2018年1月11日、新潟県三条市のJR信越線東光寺―帯織駅間の踏切で、新潟発長岡行きの普通電車が豪雪によって運行不能に陥り、430人が約15時間にわたって車内に閉じ込められた。このときも一部の乗客が体調不良で救急搬送されている。列車は暖房も機能しており、トイレも付いていたが、開放までの時間が長過ぎた。 このとき、国交省鉄道局は再発防止策として「運行再開と乗客救出の対応を並行して行うことを徹底する」ことなどを指示したが、これまで猛暑時の駅間停止対策が真剣に検討されたとは言いがたい。 そこで冒頭の猛暑対策の意見交換会だ。予定の時間を過ぎても熱心に話し合いが続いた。会議は非公開だが、ホームページ上で結果のとりまとめを公表する予定だ。国交省鉄道局は「各社、ハードソフト両面からオリジナリティーに富んだ対応を考えている。対策事例集をまとめて活用を呼び掛けたい」(安全監理官室)と会議の方向性を示す。期せずして車内で足止めされた乗客を、できるだけ早期に開放する一助になれば、それに越したことはない。 ただ、昨年から発生した駅間停車の対応を追う限り、鉄道局が閉じ込められた乗客の救出を第一に考えるべきだと明言した文書は残っていない。トラブル対応にあたる安全監理官室は「乗客ファーストであることは当然で、それを前提に対策は考えられている」と話すが、わかりきったことでも明示することは大切ではないか。乗客の安心と鉄道事業者への信頼は、それでこそ育まれるはずだ』、「わかりきったことでも明示することは大切」、というのは当然のことだ。

第三に、鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏が9月11日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「台風で駅に乗客殺到の大混乱、鉄道計画運休の弱点は「運転再開」だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/214394
・『首都圏を直撃した台風15号。首都圏のJRと私鉄は初めて、足並みを揃えて計画運休に踏み切った。しかし、運転再開を巡っては駅に長蛇の列ができるなど、大混雑が起きた。計画運休は確かに有効な取り組みだが、「運転再開」が課題なのだ』、私の現役時代には「計画運休」はなかった。一体、どんなものなのだろう。
・『首都圏JR・私鉄も計画運休に踏み切った  8日深夜から9日朝にかけて関東を縦断した台風15号は、神奈川県や千葉県の沿岸部を中心に大きな被害をもたらした。首都圏のほとんどのJR線、私鉄線が8日夜から9日朝にかけて運転を見合わせたため、各地で通勤・通学ラッシュが大きく混乱した。 この光景に既視感を覚えた人も少なくないはずだ。JR東日本は、昨年9月30日から10月1日にかけて近畿から東北へ本州を縦断した台風24号でも計画運休を実施。30日正午に「20時以降、首都圏の在来線の全ての路線について順次運転を取りやめる」と発表し、終電を繰り上げて営業を終了した。翌1日の運行は、30日夜の時点では「おおむね平常通り」としていたが、台風の被害が予想以上に大きいことが判明、当日の朝4時になって「始発から全ての路線で運転見合わせ」が発表されたため、運休を知らない乗客が駅に押し寄せて大混乱となった。 この反省をふまえ、今回は8日17時過ぎに「9日は始発から午前8時頃まで運転を見合わせる」ことを発表。また、運転開始後も通常より本数が少なく、点検で異常が見つかった場合は運転開始が遅れる可能性もあることが付け加えられていた。しかし、今回も被害が予想以上に大きく、ほとんどの路線の運転再開が朝8時以降にずれ込んだことで、結果的に昨年の混乱が再現されることになった。 もちろん、一般利用者に計画運休の認知が広がったこと、翌日の運転状況について予告が行われたこと、JR東日本だけでなく私鉄各社も計画運休に踏み切ったことなど、昨年より改善が見られた点も少なくない。2014年から計画運休を実施しているJR西日本も、当初は失敗が続き、多くの批判が寄せられたが、手法の改善と利用者の理解が進んだことで、ようやく定着したという経緯がある(「JR西日本の『計画運休』に称賛の声、台風21号から乗客守る」参照)。 国土交通省は鉄道事業者と一緒に、計画運休時の望ましい情報提供のあり方について検討を進めており、今年7月には、計画運休の48時間前に実施の可能性、24時間前に詳細内容を発表する「情報提供タイムラインのモデルケース」を提示している。ただ、このレベルの事前告知は未だに実現していないのが実情で、計画運休発表時の休業、休校の取り扱いなども含めて、鉄道事業者と利用者の双方に、もうしばらくの経験の蓄積が必要になりそうだ』、「2014年から計画運休を実施しているJR西日本も、当初は失敗が続き、多くの批判が寄せられたが、手法の改善と利用者の理解が進んだことで、ようやく定着したという経緯がある」、「手法」だけでなく、「利用者の理解」も大事なようだ。
・『運転再開時に大混乱 計画運休の大きな課題  しかし、課題は計画運休の事前告知だけにあるわけではない。2年連続の混乱から、計画運休の「限界」も見えてきた。 そもそも計画運休とは、列車運休時の混乱を防止するための手法である。安全確保を目的とした従来の運休は、主に強風や大雨の規制値を基準として行われるが、規制値に達するギリギリまで運行を続けると、帰宅難民が発生したり、駅間に停止した列車の救助が必要になるなど、二次被害が生じかねない。そこで規制値に達する前に計画的に運行を取りやめて、やり過ごそうというものである。 では運転の再開はどうか。一般的には台風通過後、風速や雨量が規制値を下回ってから安全確認を開始し、設備や線路上の安全を確認次第、運転を再開する。これは計画運休においても基本的には同様だが、その結果、首都圏では2年連続で混乱が生じてしまったのである。関西に比べて鉄道利用者数が多く、並行路線が少ない首都圏鉄道網の特性が影響した部分が少なくないかもしれないが、これまで見過ごされていた課題が顕在化した結果とも言えるだろう。 これまで主にJR西日本が実施してきた計画運休は、終電を繰り上げて営業を終了し、翌日の始発からは通常通り運転が再開されるケースが多かったため、運転再開の手法がクローズアップされることは少なかった。だが、週明け月曜日の始発から運転を見合わせる事態となれば、ホームや駅に運転再開を待つ乗客の長蛇の列ができ、大混乱が起きるのは必然である。運転再開時に一斉に乗客が押し寄せる問題は、今後、どの地域でも起こりうる「計画運休の弱点」となる。 しかし、これは鉄道会社の努力でどうにかなる問題ではないのが実情だ。2015年に行われた大都市交通センサスによれば、鉄道で東京23区に到着する通勤・通学定期券の利用者数は1日あたり約514万人。うち神奈川から約89万人、埼玉から約82万人、千葉から約68万人、東京都多摩部から約61万人が県を越えて移動している。何百万人が毎日、数十キロもの距離を電車で移動するために、首都圏には多くの鉄道路線があり、長い編成の列車が高頻度で運行している。それでも平均混雑率150%以上の混雑が生じている』、「そもそも計画運休とは、列車運休時の混乱を防止するための手法である。安全確保を目的とした従来の運休は、主に強風や大雨の規制値を基準として行われるが、規制値に達するギリギリまで運行を続けると、帰宅難民が発生したり、駅間に停止した列車の救助が必要になるなど、二次被害が生じかねない。そこで規制値に達する前に計画的に運行を取りやめて、やり過ごそうというものである」、「運転の再開はどうか。一般的には台風通過後、風速や雨量が規制値を下回ってから安全確認を開始し、設備や線路上の安全を確認次第、運転を再開する。これは計画運休においても基本的には同様だが、その結果、首都圏では2年連続で混乱が生じてしまった」、「首都圏」の「運転の再開」が上手くいかない理由が明確には説明されてないのは、いささか残念だ。
・『運転の早期再開はしないという選択肢もアリ  そのため、降雪時の間引き運転などで運転本数が減ると通常の乗客を運びきれなくなり、激しい混雑と遅延が発生する。あるいは朝ラッシュ時間帯、並行する路線が人身事故で運転見合わせになると、もう一方の路線に乗客が集中して駅では入場規制が行われ、列車は超満員で乗降に時間がかかり、輸送はマヒ状態に陥る。つまり、大都市圏の鉄道網は通常でも綱渡り状態で成り立っている代物であり、輸送のバランスが少しでも崩れれば、途端に機能しなくなってしまうものなのだ。 それだけに、鉄道事業者はどのような状況下であっても、可能な限り輸送を確保し、支障があった場合はそれを最小限に留め、早期に運転を再開させる「習性」を持っている。日本の公共交通の信頼性と安定性が、このような勤勉さに支えられていることは確かである。 しかし、運転再開を急げば急ぐほど、列車の本数が少ないなど、通常運行とは程遠い状態からスタートせざるを得ない。そこに、「電車が動いている!」と判断した乗客が殺到すれば、たちまち大混乱が起きてしまう。これは、鉄道事業者にとっては余りに大きなリスクであるし、回り回って事業者自身の首を絞めかねない。 早期の運転再開が、かえって全体の混乱を招くのであれば、運転を再開できる状況であっても、混乱を避けるために(そして旅客の安全のために)あえて運転再開しない選択肢があってもいいはずだ。 最大の課題は、これからやってくる台風に対応するためではなく、台風が過ぎ去った後も運転再開を引き延ばすことを、利用者と社会が受け入れられるかどうかである。しかし鉄道に危険を及ぼすのは強風と大雨だけではない。利用者の殺到による大混乱を避けることも、安全・安定運行のために鉄道事業者が果たすべき責任のひとつだろう。 平日の朝ラッシュ時間帯に台風が大都市圏を直撃するのは、年に1度あるかないかの話だ。たとえ空振りになったとしても、万が一を避けるために1日くらい会社や学校を休んだほうが手っ取り早い。私たちがそういう社会を望むかどうかという選択肢である。 JR西日本が始めた計画運休は、私たちの社会を変えるほどの大きな意義のある取り組みであった。安全に運転を止めることができるようになった今こそ、安全に運転を再開させるための取り組みに着手すべき時である』、確かに「運転再開」の広報のあり方、利用者や企業の対応は試行錯誤的に改善してゆく他ないのかも知れない。
タグ:東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン Mr.サンデー 現代ビジネス 原田 隆之 枝久保達也 鉄道トラブル (その1)(新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」を強調した報道への大きな違和感 もっと光を当てるべきことがあるだろう、停電で「電車内閉じ込め」 盲点だった猛暑対策 京成線ストップ、冷房切れ乗客が体調不良、台風で駅に乗客殺到の大混乱 鉄道計画運休の弱点は「運転再開」だ) 「新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」を強調した報道への大きな違和感 もっと光を当てるべきことがあるだろう」 新幹線の中での惨劇 「のぞみ」の最終便で、男が乗客にナタなどを振るって、男性1人が死亡、女性2人が重傷を負う 容疑者は「誰でもよかった」と供述 「容疑者自閉症?」という報道があり… 容疑者が「発達障害」の診断を受けていたことを何度も繰り返し報じていた 発達障害と犯罪 精神障害者よりも、「健常者」のほうが犯罪に至る割合がずっと多い 犯罪の要因とは何か? 発達障害のとらえ方 「停電で「電車内閉じ込め」、盲点だった猛暑対策 京成線ストップ、冷房切れ乗客が体調不良」 京成電鉄本線などで8本の列車が停電により駅間に停車、車内に閉じ込められた乗客が熱中症とみられる体調不良で救急搬送 過酷だった「猛暑の停電」 猛暑対策は盲点だった 「台風で駅に乗客殺到の大混乱、鉄道計画運休の弱点は「運転再開」だ」 首都圏JR・私鉄も計画運休に踏み切った 運転再開時に大混乱 計画運休の大きな課題 運転の早期再開はしないという選択肢もアリ
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維新の会(その2)(「突発性バカ」になる東大出身者の共通点 怒りと不安の感情を抑えられない、丸山穂高議員の「戦争発言」 維新の“行儀見習い”が原因!?、暴言や失言でも「維新」が支持を失わない理由 巧みな「ふんわりとした気分&イメージ」醸成) [国内政治]

維新の会については、5月29日に取上げた。今日は、(その2)(「突発性バカ」になる東大出身者の共通点 怒りと不安の感情を抑えられない、丸山穂高議員の「戦争発言」 維新の“行儀見習い”が原因!?、暴言や失言でも「維新」が支持を失わない理由 巧みな「ふんわりとした気分&イメージ」醸成)である。

先ずは、精神科医の和田秀樹氏が5月17日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「「突発性バカ」になる東大出身者の共通点 怒りと不安の感情を抑えられない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/28689
・『東大出身の政治家や首長が「暴言」を吐きバカ化するワケ  丸山穂高衆議院議員は、5月11日、北方領土へのビザなし交流に参加中、「戦争で島を取り返すことに賛成か、反対か」などと発言し、日本維新の会を除名された。野党から批判の声が相次いでいるが、本人はツイッターで「無所属で活動する」と表明し、議員辞職を否定している。 丸山議員は、東京大学経済学部卒後、経済産業省に入った、いわばエリート。ここ1、2年、こうした本来「賢い」とされる人がバカなことをしでかし、自らの社会的生命を危うくしたし失ったりという事案がしばしば起こっている。 政治家でいえば元衆議院議員の豊田真由子氏だ。東京大学法学部を出た後、キャリア官僚になり、さらにハーバードに国費で留学して修士を取った後で国会議員になったが、昨年6月、秘書に暴言・暴行を働いた、と週刊誌に報じられ、その後、議員の職を失うことになった。ネット上に流された暴言を吐いた録音テープが連日テレビやラジオでも放映され、本人にとっては相当な精神的苦痛であったに違いないが、自業自得というしかない。 今年1月には、別の暴言騒動が起きた。東大の教育学部を出て、NHKに入局、その後司法試験に合格し、衆議院議員を経て、兵庫の明石市長になった泉房穂氏だ。2017年6月、国道の土地買収交渉における進捗の停滞に業を煮やしたあまり、担当職員に対して「火つけて捕まってこい、おまえ。燃やしてまえ。損害賠償を個人で負え」などと暴言を吐いた内容が、今年になって明らかになり、やはり録音・公開されて、市長をいったん辞職することになった。 この件は、市の担当者の怠慢ではないかとの指摘もあり、その後の出直し選挙で泉氏は3度目の当選を果たした(任期は2015年の前回市長選挙当選からの残任期間である2019年4月30日までであるため、先頃の統一地方選に臨んだが泉氏以外の立候補者がおらず、4選)』、「明石市長」のケースは始めの2つに比べ軽微だ。
・『エリートのバカ化の原因は「傲慢さ」ではない  こうした暴言トラブルが起きると、大手メディアやテレビ番組のコメンテーターの中には、エリート特有の「傲慢さ」を原因と指摘する者が現れる。 しかし、豊田氏は厚生労働省時代、地道に公僕としての務めを果たし、泉氏も社会福祉士の資格を持ち、弱者に寄り添う政策で知られた。誰の目にもパワーハラスメントに映るものの、傲慢さばかりにフォーカスするのは的外れというものだろう。 私の見立てでは、彼らは人もうらやむ学歴を持つ超エリートだが、感情をコントロールする能力に関してはひどく低かった、ということになる。一般的には、難関大学に合格したようなエリートは、それまで遊びたい気持ちを抑えて受験勉強を優先したはずであり、また日々、勉強を続けるモチベーションを維持していたはずだ。つまり「自己コントロール」の経験値が、世の中の大多数を占める非エリートより高い。ところが、実際はそうではないケースも目立つのだ』、「自己コントロール」の対象による違いもあるのではなかろうか。
・『「怒り」や「不安」という感情が人をおかしくする  「怒り」という感情は時として人間を常軌の逸した心理状態にする。大変怖い。だが、もっと怖いのは過度な「不安」感情による“異常”ともいえる言動だ。 例えば、佐川宣寿・前国税庁長官だ。東大経済学部を出て、財務省の官僚として、エリート街道をひた走っていたが、例の森友学園を巡る、財務省の国有地の売却に関する文書の改竄を「指示した」と認定された。 疑惑を追及された国会での答弁や証人喚問では、安倍首相や昭恵夫人、その他政治家への忖度や指示を受けた事実については明確に否定し、改竄の経緯については刑事訴追の恐れを理由に証言の拒否を続けた。真相は現在も藪の中であり、多くの国民が疑惑の念を深め、不快に感じたことだけは確かだ。 そもそも疑問に思うのは、なぜ改竄を指示したのかということだろう。考えられるのは、もし、売却に関する問題がさらに露見したら、首相や官邸筋に迷惑をかけてしまうのではないかという不安にさいなまれパニック状態になった結果、改竄して事実を必死に覆い隠そうとしたという可能性だ。 しかし、もし、その行為がバレるのではないかと考えなかったとすれば、まったく愚かなことだ。これぞ、賢い人がバカになったといえる典型例ではないだろうか。その詳細なメカニズムに関しては、本連載で今後、解説していく予定だが、現在の認知科学では、「感情と認知(判断)」また「感情と思考」には強いリンクがあると考えられ、感情に認知が支配されていないか定期的にモニタリングすることが重要視されている。 佐川氏は改竄さえしていなければ更迭の理由はなく、希望通りの出世はできないにせよ、それなりの地位が保証されたはずであり、将来は待遇のよい天下り先も得ていたに違いない。ところが彼は完全にその地位を失い、世間に顔向けできない状態に陥った』、「佐川氏」は安倍首相を守り斬った功績で、ほとぼりが冷めたら華麗に天下りする可能性もある。
・『大企業の不祥事も一流大学卒のトップのバカ化が原因  このほかにも大企業の不正会計事件や、リコール隠し、不祥事隠しが最近、立て続けに起きている。これらも、正直に報告すると株主から突き上げられ、マスコミにたたかれる、といった不安が、不正や隠蔽のきっかけとなっているように見える。巧妙に隠したつもりが、結果的に発覚し、そのダメージや損失は甚大なものになる。とてもではないが賢明な行動とはいえない。 そういう企業のトップのほとんどは超一流大学を出ているだけでなく、仕事もできて、社内の出世競争にも勝ち抜いてきた人たちだ。不安という恐ろしい感情が、賢く頭のいい人々をバカにしたといっていいのではないだろうか』、「不安という恐ろしい感情が、賢く頭のいい人々をバカにした」、大いにあり得る話だ。
・『どんなに賢い人でも「バカになる瞬間はある」  私は、もともと極めて賢かった彼らは「自分がバカになることへの対策やケアをしていない」と感じる。 長年大学受験の指導をしていてわかったことがある。それは、本来成績がとてもよい人が志望校に不合格になる場合、その主因は試験当日、突然「バカ」になるということだ。つまり、プレッシャーや不安によりケアレスミスをし、ありえない失点をするのである。 実は、これらはある程度は事前対策が可能なものである。 たとえばミスについては、過去に自分がおかしたケアレスミスを書き出して、どうすれば防げるかを考え、そのトレーニングを事前にやっておけばいい。試験場でパニックにならないようなメンタルトレーニングなども、本やネットで簡単に探せるだろう。 しかし、結果的に不合格となる賢い受験生たちはそういう対策をやっていないのが実情だ。自らの力を過信し、墓穴を掘ってしまうのだ。 アメリカの経営者やエグゼクティブの人たちの多くが、自分の精神科医やカウンセラーを持っていることはよく知られている。メンタルヘルスのためだけでなく、不安や怒りの感情が判断を歪めるという経験則から、それを防ぐために、自分の心理状況をモニターしたり、改善したりする目的があるのだ。要するに、頭も体もメンタルも劣化するものと認識し、その「防御」にお金と時間をかけているわけだ。 確実に言えることは、どんなに賢い人でも、「バカになる瞬間はある」ということだ。AIでなく人間である以上、そうならないということはあり得ない。前述したように、怒りや不安という感情の渦に飲み込まると、利口な人であってもバカ化することがある。 自分は賢いという知的傲慢や、勉強不要という知的怠惰 また、いくら東大卒であろうが、東大教授であろうが、大学を出てから、あるいは教授になってから、ろくに勉強しないとバカになるのも当たり前の話である。学問が日進月歩の今日ではよりその傾向が強いだろう。私は医学の世界に身をおいているが、今でも10年くらい前の治療理論や技術に固執する医者が多いのを見ると、このことを痛感する。 これも自分は賢いという知的傲慢や、勉強なんかしなくても大丈夫という知的怠惰が賢い人をバカにしていると言える。 実は私の勉強や知的活動の原動力は、より賢く進化していきたいというポジティブなものではない。むしろ、バカになりたくないという「バカ恐怖」がエネルギーになっている。 人は加齢とともに心身が老化・劣化し、不具合や誤作動を起こすことがある。そして、それが人によっては社会的生命の命取りになることもある。 だが、そうした危機感や自覚を少しでも持てば、知らず知らずのうちにバカになってしまうという失態を防ぐことができる、ということを精神科医としてぜひ伝えたい。本連載では今後、賢い人間をバカにしてしまう事例を取り上げ、その原因を解説していく』、「アメリカの経営者やエグゼクティブの人たちの多くが、自分の精神科医やカウンセラーを持っていることはよく知られている。メンタルヘルスのためだけでなく、不安や怒りの感情が判断を歪めるという経験則から、それを防ぐために、自分の心理状況をモニターしたり、改善したりする目的があるのだ。要するに、頭も体もメンタルも劣化するものと認識し、その「防御」にお金と時間をかけているわけだ」、なるほど大した心がけだ。「本連載では今後、賢い人間をバカにしてしまう事例を取り上げ、その原因を解説していく」、今後も楽しみだ。

次に、5月27日付けHARBOR BUSINESS Online「丸山穂高議員の「戦争発言」、維新の“行儀見習い”が原因!?」を紹介しよう。
https://hbol.jp/193149
・『暴言を吐くに至った理由は丸山氏の“個人的資質”だけなのか  2015年夏に安保関連法案阻止のために維新独自案作成に尽力していた丸山穂高衆院議員が、橋下徹・元大阪市長ら維新幹部による“行儀見習い”(再教育)が始まってから約3年半後の今年5月、「戦争で北方領土奪還」発言を口にした。 「『戦争』発言・丸山議員の意外な過去。『日本の戦争参加』に歯止めをきかせようと尽力していた!? 」(5月21日配信)で紹介した通り、憲法学者の小林節・慶應大学名誉教授が「合憲」と認定した維新独自案作成に関わった丸山氏に対して、橋下氏は「『(大阪)維新の会で行儀見習いをさせます』と“再教育”を宣言」(2015年7月11日付『産経新聞』)していた。 丸山氏はどんな再教育を受けて、暴言を吐くまでに変貌していったのか。教育係としての橋下氏の発言に注目していたが、「丸山穂高氏の失敗・4つの理由」(5月22日配信のプレジデントオンライン)には、以下のように丸山氏の“個人的資質”に関する理由ばかりが書かれていた。 1、丸山氏が維新の会の看板の力を過小評価し、自分の力を過大評価した 2、永田町での生活で、どんどん自分の力を過信するようになった 3、維新の会の中に、支えてくれる仲間がいなかった 4、有権者全体からみればごく一部なのに、声は非常に大きいネットの中の応援団に依存しすぎた 再教育前の丸山氏は「戦争に歯止めをかける」という立場だった。しかし、当時の発言を問題視した橋下氏は“再教育”を宣言。そして同年10月、党内路線対立を抱えていた維新は野党共闘路線の「非大阪組」と政権補完路線の「大阪組」に分裂。大阪7区が選挙区の丸山氏は共に維新独自案作成に関わった「非大阪組」と決別して、「大阪組」の一員として“行儀見習い”を受けることになったのだ。この環境の激変が丸山氏を変えていった可能性がある。その変貌ぶりを見ていくことにしよう』、「再教育前の丸山氏は「戦争に歯止めをかける」という立場だった。しかし、当時の発言を問題視した橋下氏は“再教育”を宣言」、やはり“再教育”が橋下氏の思惑以上に効果を発揮したらしい。
・『共謀罪成立の“先兵役”を担った丸山氏  2015年9月の安保関連法案成立の翌々年の2017年春、安倍政権は共謀罪法案を提出した。これに野党は徹底抗戦。与野党激突法案となる中、自民と公明と維新の3党は5月19日、質疑を打ち切って強行採決に踏み切った。その“先兵役”を担ったのが丸山氏だった。渦中の衆院法務委員会で「審議時間はもう十分。私の質疑のあと、ただちに採決してほしい」と発言、強行採決の環境作りをする発言をしたのだ。 野党筆頭理事の民進党・逢坂誠二議員(当時)は激怒し、「これが法治国家なのか。ひどい話だ。しかも委員会の審議に出ていない委員外の者に『審議時間は十分だ』などと言わせて、責任放棄も甚だしい」と抗議した。丸山氏が登場する動画は、当時の民進党のサイト「【衆院法務委】自公維3党が『審議は十分』と共謀罪法案を強行採決」で今でも視聴可能だ。 小林節教授に「合憲」と認定された維新独自案(対案)丸飲みを安倍政権に迫った頃からは、とても想像できない姿へと変貌していた。これは“行儀見習い”による教育効果の産物だったのではないだろうか』、維新は丸山氏を舒明することで、「トカゲの尻尾切り」をしたようだが、もともとの“再教育”については、口を拭ったままという卑怯な姿勢を示した。
・『原発再稼働反対を口にすることがなくなった橋下氏  2012年4月、維新創設者である橋下・大阪市長(当時)は「僕は頭に来た。民主党政権はノーです。俄然やる気が出てきた。維新政治塾のメンバーにはとにかく国政に行ってもらいたい!」と発言。大飯原発再稼働をしようとしていた野田政権打倒宣言をした。 そして、元経産官僚の古賀茂明氏や環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長、河合弘之弁護士らがメンバーの「大阪府市エネルギー戦略会議」を立ち上げ、再稼働なしでの節電計画作成を指示、原発推進の経産省と渡り合った。当時の橋下氏は、大阪から日本のエネルギー政策を脱原発に変えようとしていたのだ。 しかし橋下氏は次第に原発再稼働問題をほとんど口にしなくなり、2012年12月に誕生した第2次安倍政権が原発再稼働に邁進してもこれに反対することはなかった。 しかも2014年7月の滋賀県知事選では、元経産官僚で自公推薦の小鑓隆史候補(現・自民党参院議員)の応援演説を行い、大飯原発再稼働反対で連携した嘉田由紀子・前滋賀県知事から「小鑓候補は原発推進」と忠告された。しかし、橋下氏は「大阪都構想でお世話になっている菅官房長官に頼まれた」と言って聞く耳を持たなかった』、原発再稼働に対し維新が姿勢を180度転換した裏には、菅官房長官の働きかけがあったようだ。
・『維新での“再教育”と、丸山氏の変貌に因果関係はあるのか  このような「ゆ党」と揶揄される政権補完路線は、維新に大きな恩恵をもたらした。橋下氏は2018年9月出版の『政権奪取論 強い野党の作り方』の中で、安倍政権と維新との関係を次のように記している。 「大阪の政治行政は、安倍政権の協力で、これまで進めることができなかった政治課題をどんどん進めることができた。うめきた2期開発、阪神高速道路淀川左岸線の延伸、大阪万博への挑戦、カジノを含む統合型リゾート推進法(IR推進法)の制定、リニア中央新幹線の大阪開通の8年の前倒し――その他、これまで法律や制度の壁にぶつかっていたことを安倍政権の協力で乗り越えたことは多数ある。ゆえに、日本維新の会が安倍政権に協力することは当然だ」(同書p.231より) 維新代表の松井一郎市長と橋下氏は、定期的に安倍首相や菅官房長官と会食する親密な関係だ。安倍政権肝いり法案の審議でも維新は、野党が反対した共謀罪やカジノ法案などに賛成、安倍首相の悲願である憲法改正論議にも協力している。一方で安倍政権側も、維新の目玉政策である大阪万博誘致やリニア開通前倒しなどのインフラ整備促進に協力している。 安倍政権の補完勢力となることで地元への利益誘導に成功してきたように見える維新での“再教育”と、戦争発言を口にした丸山氏の変貌との間に因果関係はないのだろうか。維新にはまったく責任のないことなのだろうか。国会などでの丸山氏の発言が注目される』、維新はいまや安倍政権の”別動隊”になったようだ。

第三に、ジャーナリストの吉富 有治氏が6月13日付け東洋経済オンラインに掲載した「暴言や失言でも「維新」が支持を失わない理由 巧みな「ふんわりとした気分&イメージ」醸成」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/286105
・『政治資金問題で前市長が辞職したことに伴う、6月9日の大阪府堺市長選で、地域政党「大阪維新の会」の新人、永藤英機氏が当選を果たした。4月に行われた市長・知事が入れ替わった大阪府・市の首長ダブル「クロス」選でも勝利を収めた大阪維新の会。今回の堺市長選では、一度否決されたにもかかわらず再度の住民投票を訴えている「大阪都構想」を前面には出さなかったものの、来年の秋には2度目の住民投票が実施される予定である。 一方、国政政党の「日本維新の会」に関しては、北方領土をめぐる「戦争発言」で除名となった丸山穂高衆議院議員、被差別部落への差別を助長する発言をした問題で参院選に立候補予定だった長谷川豊氏の公認を停止し、長谷川氏自身も公認を辞退するなどの問題を生じ、支持率も低迷している。 にもかかわらず、なぜ「維新」は大阪で支持されているのか。東京など大阪以外でもこうした現象は起こりうるのか。このほど、『緊急検証 大阪市がなくなる』を上梓した吉富有治氏がレポートする』、「なぜ「維新」は大阪で支持されているのか」、を是非、解明してほしいものだ。
・『既成政党化した「維新」  4月7日の大阪ダブル選と統一地方選で圧勝した大阪維新の会(以下、維新)。彼らはダブル選で大阪府知事と大阪市長のいすを守り、統一地方選では大阪府議会で単独過半数を獲得、大阪市議会でも第一会派を維持した。 その圧倒的な強さは6月9日に投開票された堺市長選でも証明された。維新は、前回2017年9月の市長選で竹山修身・前市長に敗れた元大阪府議の永藤英機氏を擁立し、3度目の正直で勝利を手にすることができたのだ。 これまで維新は堺市長選で2度も敗れている。だが、今回は維新に風が吹いていた。そもそもこの選挙のきっかけは、維新の政敵だった竹山修身・前市長によるズサンな政治資金管理が発覚したことだった。前市長の金銭スキャンダルがマスコミや市議会で取り上げられたことで世論は竹山市政に反発し、有権者の怒りを買って前市長は辞任を余儀なくされた。維新にすれば、市民の怒りを追い風にしながら選挙戦に臨むことができたのだ』、維新は「堺市長選」ではとんだ「敵失」に助けられたようだ。
・『政令市である大阪市を廃止し、東京23区のような特別区を設置する、いわゆる「大阪都構想」(以下、都構想)。維新にとっては最大の目玉政策である。維新陣営は、堺市長選で彼らの政策の1丁目1番地である都構想を争点から意図的に外し、代わりに「金と政治」を声高に叫びながら竹山前市長と彼の応援団だった自民党のデタラメぶりをアピールした。最大の政策を隠したのは、堺市民の都構想に対するアレルギーが大阪市民よりも強いからである。事実、維新が堺市で過去2回も敗退したのは、都構想に反対する堺市民が多かったからだ。 一方、自民党大阪は統一地方選の惨敗で独自候補を立てる余裕がなく、党をあげての組織的戦いができなかった。そこに加え、同党大阪府連の会長に就任した渡嘉敷奈緒美衆院議員は都構想に賛成する姿勢を見せたことで府連は大混乱に陥った。 そこでやむなく前堺市議の野村友昭氏が自民党を離党して立候補を表明。党の支援が受けられないことで自民党大阪の有志が自主的に支援し、また共産党や市民団体などが野村氏を応援したものの、結果は13万7862票対12万3771票で敗退。約1万4000票差と予想外に接戦だったのは、後半戦から野村陣営の追い上げが勢いを増したことと堺市民の都構想アレルギーのためだろう。それでも維新は大阪府と大阪市に次いで、府下2番目の政令市の市長まで手中に収めたのである。 大阪府と大阪市、そして堺市の選挙を通じてわかったことは、維新は以前に比べてより支持層が広がり、さらに強固で盤石な組織基盤が大阪に根づいているということである。かつての新興勢力は、いまや押しも押されもせぬ巨大な地域政党に脱皮した。結党から9年、もはや立派な既成政党だ』、「堺市長選」で維新が「最大の目玉政策である」「大阪都構想」を封印したとは、「敵失」に乗って勝つためとはいえ、姑息だ。
・『「暴言」「失言」でも求心力を失わない事情  大阪で維新が産声をあげたのは2010年4月のことだった。自民党大阪府議団を離党した松井一郎府議(現大阪市長)と浅田均府議(現参院議員)ら数人の府議たちが地域政党「大阪維新の会」を結党。そこに大阪では圧倒的な人気を誇った当時の橋下徹府知事(その後、大阪市長に鞍替え)が代表に就任し、世間とマスコミの注目を浴びた。 最初こそ弱小会派だと思われていた維新だが、翌2011年4月の統一地方選では"橋下チルドレン"と呼ばれる新人候補を大量に擁立し、大半が素人に毛の生えた選挙戦でありながら初戦から大勝利を果たした。このとき初めて府議会で単独過半数を取り、過半数には届かなかったものの大阪市議会でも第一会派を獲得。この統一地方選を皮切りに維新は大阪で圧倒的な存在感を示すことになる。 順風満帆、天下無敵に見えた維新にも最大の挫折が待っていた。2015年5月17日に実施された都構想の是非を問う住民投票で敗北したことである。僅差ながら反対票が賛成票を上回ったことで維新は一時、党勢に陰りが見え始めたのだ。 住民投票の結果を受け、橋下徹氏は維新の代表を降り、2015年12月に大阪市長の任期を終えてからは政界を卒業。このとき維新は最大のシンボルを失った。また、2017年10月22日投開票の衆院選では、本拠地の大阪で日本維新の会の候補者が軒並み落選する事態にも見舞われ、「維新もここまでか」と思われた時期もあった』、私も「維新もここまでか」で、小躍りしたものだが、そうは問屋が卸さなかったようだ。
・『余談だが、この衆院選で維新の候補者が負け続ける中、大阪の選挙区で当選したのが丸山穂高衆院議員である。ビザなし交流で訪れた国後島で戦争発言をして国会から糾弾決議を受けた丸山議員。彼が世間と国会から「退場」を命じられながら強気でいられるのは、他の維新候補が衆院選挙区で軒並み敗北しても、自分は勝利したという自負があるからではないかと推察する』、なるほど納得した。
・『話を戻そう。橋下徹という政治的シンボルを失い、維新は求心力を失うかに思えた。国会議員を抱える日本維新の会は支持率も振るわず、離党した丸山議員をはじめとして暴言議員、失言センセイが同党の足を引っ張っている。また、地方に目を向ければ維新の党勢が大阪並みに伸びる気配もない。 だが、大阪に限れば維新は強い。圧倒的に強い。結党から今日までの間で維新に愛想を尽かして同党から逃げ出す府議や市議がいたり、選挙違反で逮捕された市議がいても、どうしたわけか大阪の有権者は維新を見放さない。それどころか、今回のダブル選と統一地方選、そして堺市長選を加えてのトリプル勝利である。 大阪市と堺市の両政令市は維新が完全に牛耳った。自民党大阪が力を失って迷走し、公明党が維新の軍門に降ったことで都構想実現の可能性は一気に高まった。今後のスケジュールでは、都構想の設計図を作る法定協議会が6月末から再開され、来年夏には完成。来年の秋には2度目の住民投票が実施される予定である。一度は敗れた都構想も実現しそうな勢いだ。 なぜ維新は大阪で強いのか。逆に言うと、なぜ大阪限定の政党なのか。東京や他府県に住む人とこの話をすると、誰もがここがわからないと口をそろえる。維新最強の理由はさまざまだが、その背景の1つには大阪府と大阪市の特殊な事情がある。大阪の暗黒史だ』、「大阪の暗黒史」とは穏やかではないが、何なのだろう。
・『大阪の「暗黒史」  2004年から2005年にかけ、大阪市はマスコミと世間の集中砲火を浴びた。ろくに働かない市職員や労組の組合員を異常厚遇した問題が続々と発覚し、そこにバブル期に建設した数々の巨大な箱モノが経営破綻したというマスコミ報道が相次いだからである。 大阪府も同様に、関西国際空港の対岸に建設した「りんくうタウン」などさまざまな開発に失敗。それまでは金持ち自治体だった大阪府と大阪市は、箱モノ政策の失敗とズサンな公金感覚で巨額の借金を背負うことになった。当然、府民と市民は怒りの声を上げた。 その後に登場したのが橋下徹氏である。彼は大阪府の改革を公約に2008年1月、府知事選に立候補して当選。府民から大歓迎を受けたのは、まだまだ消えやらぬ大阪府と大阪市への不満がナニワの街に充満していたからである。 例えて言えば、ガスが充満した部屋に少しでも火花が飛べば大爆発を起こすようなものだ。見方を変えると、もし橋下氏がバブル経済の真っ最中に登場すれば、あそこまでの熱狂で迎えられなかっただろう』、「府民から大歓迎を受けたのは、まだまだ消えやらぬ大阪府と大阪市への不満がナニワの街に充満していたからである」、漸く
理解できた。
・『維新の人気もこの延長線上にある。大阪市の暗黒史から10年以上が経過しており、なおかつ橋下氏以前の歴代市長も市政改革は進めてきたのに、維新は今も「大阪市を過去に戻すな」というキャッチフレーズを大阪ダブル選や統一地方選で多用した。「既成政党(自民党など)は大阪市を過去に戻し、既得権益を失うことを恐れている」とことさらアピールすることで、市民の不満感情に新たな火をつけた。 これらの巧妙な心理作戦により、有権者の気分を「大阪市の改革はまだまだ必要だ」というベクトルへと誘導することに維新は成功した。ただし、同じ手法を自民党や公明党、共産党が真似たところで、おそらく誰も信じないだろう。有権者の意識は、すでに「維新はすごい」「維新は信頼できる」で支配され、事実そう思わせるだけの現象が大阪の街に現れたことも無視できないからだ。 維新は時代の波に乗ったラッキーな政党であると思っている。維新が誕生して大阪府政と大阪市政で力を持ち始めたのは、リーマンショックから立ち直りつつあった2012年以降の時期と重なっていた。そこに加えて近年、関西では外国人観光客の増加でインバウンド効果が出始めたり、2025年大阪万博の誘致成功により大阪では景気アップの高揚感に包まれている。 もっとも、これらすべてが維新の政策のおかげではない。万博やインバウンドにしても、例えば関空の滑走路整備など政府や大阪府・市の両議会の支援も無視できず、為替レートの変動といった経済的な外部要因も大いに貢献しているのは言うまでもない』、ラッキーな要素もかなりあったようだが、政治には運も必要だ。
・『漠然としたイメージによる支持  それでも維新の宣伝は巧みだ。いいことは維新のおかげ、悪いことは既成政党が原因といった善悪二元論的なデフォルメPR作戦が功を奏し、大阪府民と大阪市民はさらに維新に信頼を寄せることになる。統一地方選の前半、私は大阪市内で維新候補の演説を取材しつつ、何人かの支持者と話をした。とくに印象的だったのは、大半の人がふんわりとした気分で維新を支持していることだった。中には「維新になってから役所の対応はスピードが増した。市営地下鉄も民営化され、ますます市民には便利になる」という具体的な成果をあげる人もいた一方で、「都構想とか難しいことはわからへんけど、松井さんや吉村さんはガンバってはると思うで」といった、半ば漠然としたイメージで維新を支持している人が目立ったことである。 有権者がこのような感情を持つのはなぜか。さまざまな外部要因があるにもかかわらず、高揚感のある大阪の街や経済の姿を自党の政策の成果だとする、いわば維新の巧みな宣伝効果のなせるワザなのかもしれない。彼ら維新がプロパガンダに長けた政党なのは、長く同党を見続けた取材者として痛いほど感じている。 都構想に関して言えば、各マスコミの直近の世論調査を見ると大阪市内に限っても都構想に賛成する有権者は反対者を上回っている。この流れであれば次回の住民投票は賛成多数になるだろうと私は考えている。おそらく都構想は実現し、その瞬間、政令市・大阪市は行政上も地図の上からも消えてなくなる。そして次は堺市の番だ。いずれ堺市も政令市から特別区へとスケールダウンするだろう。 しかし、都構想実現の過程でさまざまな問題やハードルがより鮮明になることも危惧している。検討課題が多すぎるこのビッグプロジェクトは2025年大阪万博と同時並行で進めることが可能なのか、特別区への移行に伴うコストは計画以上に膨らまないのか。また、人口60万~70万の政令市と同じ規模を持つ特別区が、財源も権限も"都"に手足を縛られた中で自主的な行政が可能なのか等々である。 以上のように、維新が党勢を伸ばした背景には大阪の特殊事情があったのは間違いない。バブルに浮かれバブルが弾けた大阪という土地の「空間軸」と、大阪府・市の行政ミスから年月が経たない「時間軸」との"交差点"で維新が登場し、最大限のパワーを得ることになった。何度も言うが、維新は時流が味方したラッキーな政党である』、大阪のマスコミも維新に味方している筈だ。森友学園への大阪府の許認可では、叩けばホコリが出る筈だったが、うやむやにされたようだ。
・『大阪だけの現象ではなくなる  ただ、これらは大阪に限った問題ではない。いずれどこの都市でも、また東京都でも起こりうることである。小池百合子都知事が登場した背景には、舛添要一前都知事の公用車問題や政治資金による家族旅行の問題が存在したからだ。これは、かつての大阪府・市のデタラメ行政の余韻が消えぬうちに橋下氏が府知事になった背景と似ている。代表を辞任して勢いが落ちたとはいえ、希望の党を立ち上げるまでのプロセスも維新の誕生を彷彿とさせる。 条件さえ整えば第2、第3の維新は必ず誕生する。橋下徹的な政治シンボルが東京に現れてもおかしくはない。そのとき、改革を掲げる"ヒーロー"の登場に拍手喝采で迎え入れる有権者も数多く出てくることだろう。だが、ときに歴史は冷酷である。最初はヒーローだと信じていた人物や組織が、年月の経過とともに「裏切られた」「しまった」と思わせないとも限らない。事実、そんな史実は国内外で少なくない。 維新はヒーローか、それともアンチヒーローなのか。有権者に、あるいは地方自治や国家にメリットを与えてくれる政党なのか。神ではない私たちは後世の行政学者や政治史家の判断を待つしかないが、それでも現象だけを見て熱に浮かれるのではなく、政治や政治家を冷静に見つめる目だけは持ちたいものである』、お隣の韓国も「改革を掲げる"ヒーロー"の登場に拍手喝采で迎え入れる有権者」、という点では日本以上に極端なようだ。「現象だけを見て熱に浮かれるのではなく、政治や政治家を冷静に見つめる目だけは持ちたい」、というのは諸手を上げて賛成だ。
タグ:東洋経済オンライン 和田秀樹 維新の会 PRESIDENT ONLINE (その2)(「突発性バカ」になる東大出身者の共通点 怒りと不安の感情を抑えられない、丸山穂高議員の「戦争発言」 維新の“行儀見習い”が原因!?、暴言や失言でも「維新」が支持を失わない理由 巧みな「ふんわりとした気分&イメージ」醸成) 「「突発性バカ」になる東大出身者の共通点 怒りと不安の感情を抑えられない」 東大出身の政治家や首長が「暴言」を吐きバカ化するワケ 丸山穂高衆議院議員 元衆議院議員の豊田真由子氏 NHKに入局、その後司法試験に合格し、衆議院議員を経て、兵庫の明石市長になった泉房穂氏 エリートのバカ化の原因は「傲慢さ」ではない 「自己コントロール」 「怒り」や「不安」という感情が人をおかしくする 大企業の不祥事も一流大学卒のトップのバカ化が原因 どんなに賢い人でも「バカになる瞬間はある」 アメリカの経営者やエグゼクティブの人たちの多くが、自分の精神科医やカウンセラーを持っていることはよく知られている。メンタルヘルスのためだけでなく、不安や怒りの感情が判断を歪めるという経験則から、それを防ぐために、自分の心理状況をモニターしたり、改善したりする目的があるのだ。要するに、頭も体もメンタルも劣化するものと認識し、その「防御」にお金と時間をかけているわけだ HARBOR BUSINESS Online 「丸山穂高議員の「戦争発言」、維新の“行儀見習い”が原因!?」 暴言を吐くに至った理由は丸山氏の“個人的資質”だけなのか 「戦争で北方領土奪還」発言 『戦争』発言・丸山議員の意外な過去。『日本の戦争参加』に歯止めをきかせようと尽力していた!? 当時の発言を問題視した橋下氏は“再教育”を宣言 「非大阪組」と決別して、「大阪組」の一員として“行儀見習い”を受けることになったのだ。この環境の激変が丸山氏を変えていった可能性が 共謀罪成立の“先兵役”を担った丸山氏 原発再稼働反対を口にすることがなくなった橋下氏 大阪都構想でお世話になっている菅官房長官に頼まれた 維新での“再教育”と、丸山氏の変貌に因果関係はあるのか 共謀罪やカジノ法案などに賛成、安倍首相の悲願である憲法改正論議にも協力 吉富 有治 「暴言や失言でも「維新」が支持を失わない理由 巧みな「ふんわりとした気分&イメージ」醸成」 大阪府堺市長選で、地域政党「大阪維新の会」の新人、永藤英機氏が当選 国政政党の「日本維新の会」に関しては、北方領土をめぐる「戦争発言」で除名となった丸山穂高衆議院議員、被差別部落への差別を助長する発言をした問題で参院選に立候補予定だった長谷川豊氏の公認を停止し、長谷川氏自身も公認を辞退するなどの問題を生じ、支持率も低迷している 既成政党化した「維新」 竹山修身・前市長によるズサンな政治資金管理が発覚 市民の怒りを追い風にしながら選挙戦に臨むことができた 「大阪都構想」 維新陣営は、堺市長選で彼らの政策の1丁目1番地である都構想を争点から意図的に外し、代わりに「金と政治」を声高に叫びながら竹山前市長と彼の応援団だった自民党のデタラメぶりをアピール 維新は以前に比べてより支持層が広がり、さらに強固で盤石な組織基盤が大阪に根づいている 「暴言」「失言」でも求心力を失わない事情 丸山議員。彼が世間と国会から「退場」を命じられながら強気でいられるのは、他の維新候補が衆院選挙区で軒並み敗北しても、自分は勝利したという自負があるからではないかと推察 自民党大阪が力を失って迷走し、公明党が維新の軍門に降ったことで都構想実現の可能性は一気に高まった 大阪の「暗黒史」 2004年から2005年にかけ、大阪市はマスコミと世間の集中砲火 ろくに働かない市職員や労組の組合員を異常厚遇した問題が続々と発覚し バブル期に建設した数々の巨大な箱モノが経営破綻したというマスコミ報道が相次いだ 「りんくうタウン」などさまざまな開発に失敗。それまでは金持ち自治体だった大阪府と大阪市は、箱モノ政策の失敗とズサンな公金感覚で巨額の借金を背負うことになった その後に登場したのが橋下徹氏である。彼は大阪府の改革を公約に2008年1月、府知事選に立候補して当選。府民から大歓迎を受けたのは、まだまだ消えやらぬ大阪府と大阪市への不満がナニワの街に充満していたから 維新は今も「大阪市を過去に戻すな」というキャッチフレーズを大阪ダブル選や統一地方選で多用 万博やインバウンド 漠然としたイメージによる支持 大阪だけの現象ではなくなる 改革を掲げる"ヒーロー"の登場に拍手喝采で迎え入れる有権者
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リクナビ問題(その1)(リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか 弁護士が解説、リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒 「データ購入企業」にも鉄拳) [企業経営]

今日は、リクナビ問題(その1)(リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか 弁護士が解説、リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒 「データ購入企業」にも鉄拳)を取上げよう。一昨日は、個人情報保護を取上げたが、本件はより幅広いので、独立させた。

先ずは、8月23日付けダイヤモンド・オンラインに掲載したSTORIA法律事務所 東京オフィスの杉浦 健二弁護士へのインタビュー「リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか、弁護士が解説」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは回答、付注は省略)。
https://diamond.jp/articles/-/212543
・『8月1日、就職情報サイト「リクナビ」を運営する株式会社リクルートキャリア(以下、リクルートキャリア)は、同社が提供していた「リクナビDMPフォロー」サービスにおいて、いわゆる「内定辞退率」データをクライアントである採用企業に提供していたことを公表。その際、ユーザーである学生の個人データの扱いや同意の取得方法等が適切だったかが問われています。 8月5日には7,983名の学生からプライバシーポリシー同意取得の不備と、「リクナビDMPフォロー」の廃止についてリクルートキャリアから報告されました。 ユーザーから同意を取得する方法や個人データの扱い、また行動履歴等を分析した結果の活用方法に関して議論がなされる本事案について、STORIA法律事務所 東京オフィスの杉浦健二弁護士に見解を伺いました』、興味深そうだ。
・『1.同意取得の方法以前に、同意の対象となるプライバシーポリシーの内容の明確性が問われた事案 Q:本事案について、ユーザーである学生からの同意取得の方法をはじめとした個人情報取り扱いの観点からは、どういった点に問題があったと考えられますか。) A:報道によればリクルートキャリアは「リクナビDMPフォロー」を通して、就活生の内定辞退率を個人が特定できるかたちで、同サービスを利用する企業38社に提供していたとのことでした*1。リクナビ2020のプライバシーポリシーには、以下のような記載がなされています。 (リクナビ2020 プライバシーポリシー(株式会社リクルートキャリア、2019年8月14日取得、傍線加工 BUSINESS LAWYERS編集部)) この「行動履歴等(当該ログイン以前からの行動履歴等を含みます)を分析・集計」した結果こそが、今回問題となっている内定辞退率にあたると考えられます。同プライバシーポリシーの記載では、「行動履歴等は、あらかじめユーザー本人の同意を得ることなく個人を特定できる状態で第三者に提供されることはございません」とあるものの、冒頭の傍線で示した「個人を特定したうえで、」の文言がどの文節にかかるのかがはっきりしないために、個人が特定されるかたちで内定辞退率を企業に提供するという意味なのか、個人が特定されないかたちで企業に提供するという意味なのかが不明確といえます。 個人情報保護法上、個人情報取扱事業者は、原則として、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならないものとされています(個人情報保護法23条1項)。リクルートキャリアの8月1日付プレスリリースによれば、「ご同意いただいたプライバシーポリシーに基づき、リクナビサイト上での行動履歴の解析結果を取引企業に対して提供しておりました」との記載があるため、リクルートキャリア自身はユーザー個人が特定されるかたちで内定辞退率を提供することについて、同プライバシーポリシーによって同意を取得できていると判断していたようです。その後、リクルートキャリアは8月5日付プレスリリースで、学生7983名については同プライバシーポリシーによる形式的な同意すら得られていなかったことを発表しました。 しかし本件で問題なのは、プライバシーポリシーの内容が不明確であることで、これら7983名以外の学生についても適切な同意が得られていなかった可能性が残っているという点であると考えます』、企業側は自社に都合良く解釈しがちだが、「リクルートキャリア」の場合は酷過ぎる。
・『Q:ユーザーである学生から、個人情報の取扱いについて適切な同意を得る方法はどうあるべきだったと考えられますか。 A:個人データを第三者に提供するにあたってあらかじめ本人の同意を得たといえるためには、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、本人が同意に係る判断を行うために必要と考えられる合理的かつ適切な方法によらなければならないものとされています(個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」2-12「本人の同意」、平成28年11月(平成31年1月一部改正))。 たとえばプライバシーポリシーを公表している場合は、当該プライバシーポリシーの内容に同意する旨のボタンをクリックしてもらう方法が考えられますが、同意の前提として、プライバシーポリシーで示された取扱い方法で自分の個人情報が取り扱われる旨を理解していることが必要となります。 リクナビ2020のプライバシーポリシーの記載内容は上記のとおり明確であったとはいえず、同意ボタンをクリックする方法等をとっていたとしても、ユーザー個人が特定されるかたちで各企業に対して内定辞退率が提供されることについて本人の同意を得たといえるかどうかは疑問の残るところです。本件では同意取得の方法以前に、同意の対象となるプライバシーポリシーの内容の明確性が問われた事案であったといえます。 今回のプライバシーポリシーの問題となった部分について、より明確な内容にしようとすれば、たとえば以下のような文案が考えられます(また、当社は、ユーザーがログインして本サービスを利用した場合には、ユーザーが本サービスに登録した個人情報、およびcookieを使用して本サービスまたは当社と提携するサイト(当社と提携するサイトはこのリンクをご参照ください)から取得した行動履歴等(当該ログイン以前からの行動履歴等を含みます)を分析・集計したデータについて、ユーザー個人を特定できる状態で、利用企業等に対して提供する場合があります。このデータ提供は利用企業等における採用活動補助を目的としてなされるものであり、利用企業等において選考目的で利用されることはありません。また利用企業等に対して提供されるデータは行動履歴等の分析・集計データであり、行動履歴等そのものは、あらかじめユーザー本人の同意を得ることなく個人を特定できる状態で第三者に提供されることはありません。) この文案であれば、「行動履歴等を分析・集計したデータ」について、ユーザー個人を特定できる状態で利用企業等に提供される可能性があることは、少なくとも明確となります。 しかし、この文案によっても、行動履歴等を分析・集計した個人データに「内定辞退率」とのラベルが貼られて利用企業等に提供されることまでは想起できないため、プライバシーポリシーの明確性については問題とならなかったとしても、「内定辞退率」とのラベルが貼られて個人データが利用企業等に提供されるビジネスモデルになお批判が集まった可能性は否定できません』、「内定辞退率」とは企業がノドから手が出るほど欲しがるデータだ。着想はさすが攻撃的なリクルート系だけあるが、きちんとしたコンプライアンス上の詰めが疎かになったようだ。
・『2.「内定辞退率」を選考に利用しない条件で有償提供するという契約に無理があった  Q:リクルートキャリアは8月1日のリリースにおいて「学生の応募意思を尊重し、合否の判定には当該データを活用しないことを企業に参画同意書として確約いただいています」としています。しかしクライアント企業が当該データを合否の判定に用いていないかは確認が難しいことから、合否判定に利用された懸念があるとする声もあります。当該データの用途の取り決め方法については適切だったのでしょうか。 A:たしかにリクナビ2020のプライバシーポリシー上、企業に提供した内定辞退率(ユーザー行動履歴等の分析・集計結果)については「選考に利用されることはありません」と記載されています。またリクルートキャリアの8月1日付プレスリリースによれば「提供された情報を合否の判定に活用しないことにご同意いただいた企業にのみ、本サービスをご提供してきました」「ご利用いただいている企業には当社から定期的に利用状況の確認をさせていただいております」とも記載されています。 しかし、たとえこれらの運用が十分に行われていたとしても、「リクナビDMPフォロー」を導入する各企業側とすれば、内定辞退率データを選考に利用したい動機があることは否めず、各企業が実際に選考に利用していなかったかどうかも不明です。 契約の取り決め方法としては、リクルートキャリアからの利用状況の確認にとどまらず、リクルートキャリアから各企業に対する立入調査条項を含めることも考えられますが、自社の顧客である各企業に対する調査権限を認めるような条項を定めることは非現実的といえます。企業が選考に利用したいと考える価値があるデータを、選考に利用しない条件で有償で提供するという契約内容自体にそもそも無理があったといえるかもしれません。 Q:サービスを利用するために、ユーザー本人が望まない個人情報の利用に同意せざるを得ないケースもあるのではないかと懸念されます。「本人の同意」に加え、データ利活用時代における、個人情報を提供する側、利用する企業側双方が納得できる仕組みについてはどのように考えますか。 A:ユーザーが個人情報の提供を望まないのに、他のサービスに乗り換えられないために個人情報を提供せざるを得ないケースが問題視されています。現在、GAFAをはじめとした大手IT企業による個人情報の収集方法について、公正取引委員会が、独占禁止法違反である「優越的地位の乱用」にあたるケースを示す運営指針(ガイドライン)案を策定中であると報道されています*2。ユーザーに利用目的を知らせなかったり、サービス提供に必要な範囲を超えて個人情報を取得したりするようなケースについて、今後規制が進むことが予想されます。 またEUの「一般データ保護規則(GDPR)」では個人データの利用停止はいつでも行える(EU 一般データ保護規則 第7条)のに対し、日本の個人情報保護法では、個人データの利用停止は個人情報保護法違反があった場合にのみ可能とされている(個人情報保護法30条)点は問題ではないかとの声があり、2019年4月に個人情報保護委員会が公表した「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理(個人情報保護委員会、平成31年4月25日)」では、個人データの利用停止制度の導入について検討がされています』、「「リクナビDMPフォロー」を導入する各企業側とすれば、内定辞退率データを選考に利用したい動機があることは否めず、各企業が実際に選考に利用していなかったかどうかも不明です」、というのであれば、「提供された情報を合否の判定に活用しないことにご同意いただいた企業にのみ、本サービスをご提供してきました」との強弁には無理がある。 
・『3.「リクナビDMPフォロー」を利用したクライアント企業が問われ得る法的責任  Q:「リクナビDMPフォロー」は38社で「試験的な運用」がなされていたと公表されています。今回の件について、利用していたクライアント企業に責任等は生じますか。 A:報道によれば各企業は、「リクナビDMPフォロー」の利用にあたって、選考結果や学歴などの応募学生の個人データをリクルートキャリアに提供していたとのことでした*3。個人データを第三者に提供する場合、原則として本人の同意が必要となることは先に述べた通りですが(個人情報保護法23条1項)、各企業が、個人データの取扱いを利用目的の達成に必要な範囲でリクルートキャリアに委託していたといえる場合、個人情報保護法上は本人の同意を得る必要はないとされています(個人情報保護法23条5項1号)。 本件では、各企業がリクルートキャリアに提供した応募学生の個人データについて、たとえばリクルートキャリアが委託に基づかず自ら取得した行動履歴等の個人データを突合して内定辞退率を算出し、各企業に提供する内容の業務委託契約であったような場合は、各企業による応募学生の個人データの提供は個人情報保護法23条5項1号が定める委託の範囲を超えるものとして、各企業は個人情報保護法違反の責任を問われる可能性が生じます。この場合、個人情報保護委員会は各企業に対して、必要に応じて報告を求めたり立入検査を行うことができるほか、実態に応じて指導・助言、勧告・命令を行うことができ(個人情報保護法40条、41条、42条)、命令に違反した者は6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する旨も定められています(個人情報保護法84条)。 Q:本件では、職業安定法への抵触の可能性もあるとされていますが、この点についてはいかがでしょうか。 A:本サービスのような、人事労務分野においてAIやデータを活用する手法はHRテックと呼ばれ、近年注目が集まっています。ただしHRテックの分野では、職業安定法に抵触しないかどうかの検討が不可欠となります。職業安定法では、採用活動を行う企業には求職者の個人情報の取扱いについての義務が課せられる旨が定められているところ(職業安定法5条の4)、厚生労働省の指針*4によれば「職業紹介事業者等は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならない」とされています。 本件では、38社の企業が、個人が特定できる状態の内定辞退率という個人情報の提供を受けていたとされています。仮に38社の企業が、リクルートキャリアから個人情報の提供を受けることについて応募学生から同意を得ていなかったとすれば、上記指針に抵触する可能性が生じます。 Q:個人情報を扱ううえで、適法かどうかの判断は今まで以上に重要となりますね。 A:今回の件で、「リクナビDMPフォロー」と同様のHRテックビジネスに対する世間の目は厳しくなることが予想されます。個人情報保護法、職業安定法等の法令を遵守することはもちろん、たとえ適法であっても、採用時における求職者情報というデリケートなデータを取り扱う以上、そのビジネスモデル自体が批判を受けることも想定されますので、これまで以上に慎重な検討が求められるものと考えます。 特に個人データの第三者提供を行う場合は、不明確なプライバシーポリシーを提示して形式的な同意を得ておくだけでは不十分であり、ユーザーの個人データが第三者提供される旨が明確にわかるようまず利用目的の欄に記載したうえで、提供を予定する個人データの項目もできる限り具体的に記載することが求められるでしょう。さらに個人データの第三者提供に同意することで、ユーザーにとってどのようなメリットが生じるのか(たとえば当該サービスの無償提供や、より充実したサービスが提供可能となること等)まで触れられていれば望ましいものといえます。 明確でわかりやすい内容のプライバシーポリシーを提示し、ユーザーも納得したうえで真に同意していると評価できる個人情報の取扱いを行うことが、結果的にユーザーや世間からも評価されるサービスの実現につながるのではないかと考えます』、(利用企業)「仮に38社の企業が、リクルートキャリアから個人情報の提供を受けることについて応募学生から同意を得ていなかったとすれば、上記指針に抵触する可能性が生じます」、と「職業安定法に抵触」する恐れがあるとは、リクルートキャリアは顧客の利用企業まで違法行為に巻き込んだことになり、罪は深いようだ。「人事労務分野においてAIやデータを活用する手法はHRテック」、については、まだまだ手探りのようだ。

次に、9月20日付けダイヤモンド・オンライン「リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒、「データ購入企業」にも鉄拳」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215312
・『労働者保護を原則とする厚生労働省が、怒り狂っている。就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが就活学生の内定辞退率予測データを大企業に販売していた問題についてだ。厚労省の怒りの矛先は、個人情報のデータを販売したリクルートキャリアのみならず、購入したビッグカンパニーへも向いている。 戦後最大の疑獄事件「リクルート事件」が発覚したのは、1988年のこと。リクルートから賄賂として未公開株を譲渡された収賄側には、時の労働省(現・厚生労働省)事務次官の名もあった。 リクルートホールディングス(HD)が31年前の亡霊に取り付かれている。 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(リクルートHD傘下)が就活学生の内定辞退率を算出、その予測データを企業に販売するサービス「リクナビDMPフォロー」が廃止に追い込まれたのだ。データを購入した企業はトヨタ自動車やホンダ、NTTグループなどビッグネームばかり34社に上る。 実は、この問題の根っこはリクルート事件にある。 ある厚労省OBは、「当時、求職者と企業をマッチングする職業紹介事業と同じように、求人情報サービスを行う『募集情報等提供事業』に対しても、規制をかけるべきという議論が省内であったが、ノールールという結論が導き出された」と打ち明ける。 後に、その判断を下したのが収賄罪に問われた労働次官であり、リクルートによる根回しが取り沙汰された。それでも、「募集情報等提供事業=無法地帯」という結論が覆ることはなく、うやむやにされた。求人情報サービスに野放図が許された元凶はここにある』、「この問題の根っこはリクルート事件にある」、というのには驚かされた。
・『怒り心頭の厚労省は新ビジネスを本気でつぶす  9月6日、厚労省はリクルートキャリアに対して、職業安定法に基づく行政指導を実施。同時に、業界団体である全国求人情報協会向けに、役所らしからぬ感情的な文言で要請を行った。厚労省はリクルートHDが考案した「新しいビジネスモデル」を本気でつぶしにかかったのだ。 そもそも、「リクナビDMPフォロー」で売買されたデータとはどんなものなのか。 トヨタの場合、採用試験を受けた大学新卒学生の名簿をリクルートキャリアに提出、同社が「リクナビ」のプラットフォーム上で得られた個人情報(トヨタ志願者が何社にエントリーしたか、どんな就職活動をしたのか)からトヨタの「志望度の高さ」を数値化し、内定辞退率予測データと称して販売していたというものだ。 要するに、学生が浮気性であるかどうかが分かる身辺調査のようなものである。身持ちが堅い学生の歩留まりは高くなるだろうという想定の下、「相場は400万~500万円」(購入企業関係者)ともいわれる高額データに、企業が群がったのである。 厚労省は怒り心頭に発している。「リクルートの顧客は企業だけではなく、学生でもあるはず。ビジネスの起点を忘れるとは言語道断だ」(厚労省幹部)と手厳しい。 まず、リクナビなど募集情報等提供等事業で得た個人情報を「選別・加工」して別の商品としてビジネスを展開した段階で、それはより規制の強い職業紹介事業の範疇になるとした。 厚労省による新ビジネスつぶしの本気度は、二つの視点で分かる。 一つ目は、就活学生が個人情報利用に同意しているか否かにかかわらず、採用合否の決定前に募集企業へデータを提供するビジネスをシャットアウトしたことだ。 今回の事案は、職業安定法と並行して、個人情報保護法にも抵触するのだが、こちらは学生本人の同意さえ得られればビジネス続行の可能性はあった。その意味で、厚労省の決断は、一歩踏み込んでいるといえる。 二つ目は、厚労省の怒りの鉄拳が、リクルートHDのみならず、データを購入した企業にも向けられていることだ。 購入企業の多くは、「合否判定に使っていない」の一点張りだ。仮に合否に使った場合でも、社会的に責めを負うことはあっても法的責任を問われることはない。) また、リクルートキャリアと購入企業は業務委託契約を結んでおり、購入企業が名簿など個人情報を渡した場合でも、「人事部人事課から人事部分析課(リクルートキャリア)へデータ分析を外注しただけ」(厚労省幹部)という扱いになる。厚労省が購入企業の法律違反を追及することは極めて難しい。 厚労省の旗色は悪い。それでも、労働局を動員することは決まっている。派遣や職業紹介など人材サービスの専門家である、需給調整指導官が調査に入るのだという。「個人情報データを目的外で使用していないか」など職業安定法に抵触していないかどうかを丹念にヒアリングする予定だ。 労働基準監督官のように強い捜査権を持っているわけではないが、「需給調整指導官が切る指導書は監督官でいう是正勧告のようなものだと思ってもらっていい」(厚労省幹部)と息巻く。百戦錬磨の大企業が尻尾を出すとは思えないが、労働者に不利に働く新ビジネス頻発の抑止力にはなるだろう』、「志願者が何社にエントリーしたか、どんな就職活動をしたのか から・・・「志望度の高さ」を数値化し(た)内定辞退率予測データ」が、「相場は400万~500万円」で入手できるのであれば、利用企業にとっては、有難いデータだろう。
・『採用だけではなく雇用管理でも個人情報が使われる  厚労省は、「内定辞退率データ」事業を業として展開できるのは、寡占化された業界上位のリクナビや「マイナビ」くらいしか想定しておらず、今回の強硬手段で法の網を掛けられたと判断している。 だがいつの時代も、法整備が技術革新を超えることは難しい。 すでに「リクナビ」モデルも陳腐化しつつある。約80万人もの新卒学生がエントリーシートを企業へ一括送信し、募集企業は大量の学生を選別しなければならない。学生と企業の双方が非効率なマッチングという「壮大なる無駄」を前に疲弊している。 ひずみのあるところにビジネスが生まれるのは世の常だ。効率化を目的に、内定辞退率データ販売という違法なビジネスは生まれた。 本来、どの企業が第1志望なのかを秘密にすることは、学生に許された特権だったはず。それが、本人があずかり知らぬところで選考過程が進む理不尽さが明らかになった。 ICTやAIの進化により、今後、個人情報からブラックボックスになっていた経済状況、嗜好、生活パターンなどが暴かれやすくなる。その解析データが企業の人事評価に使われる公算は大きい。 今回のリクナビ問題は「採用」という入り口の規制で解消したかにみえるが、企業が雇った後の「雇用管理」の現場でも、個人情報は駆使されるはずだ。データ解析で得られた「判断」は一定の根拠があるだけに覆すことが難しく、社会の差別構造を助長するリスクをはらむ。 リクナビ問題は、技術革新と労働者保護を両立することの難しさを露呈している』、「企業が雇った後の「雇用管理」の現場でも、個人情報は駆使されるはずだ」、というのは嫌な監視社会の到来である。日本でもEUのGDPR(一般データ保護規則)のような規制で歯止めをかける必要がありそうだ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 職業安定法 リクナビ問題 (その1)(リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか 弁護士が解説、リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒 「データ購入企業」にも鉄拳) 杉浦 健二弁護士 「リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか、弁護士が解説」 リクナビDMPフォロー 同意取得の方法以前に、同意の対象となるプライバシーポリシーの内容の明確性が問われた事案 内定辞退率 「内定辞退率」を選考に利用しない条件で有償提供するという契約に無理があった EUの「一般データ保護規則(GDPR) 「リクナビDMPフォロー」を利用したクライアント企業が問われ得る法的責任 職業安定法では、採用活動を行う企業には求職者の個人情報の取扱いについての義務が課せられる旨が定められている 人事労務分野においてAIやデータを活用する手法はHRテックと呼ばれ、近年注目 「リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒、「データ購入企業」にも鉄拳」 「リクルート事件」が発覚したのは、1988年 31年前の亡霊に取り付かれている 求人情報サービスを行う『募集情報等提供事業』に対しても、規制をかけるべきという議論が省内であったが、ノールールという結論が導き出された その判断を下したのが収賄罪に問われた労働次官であり、リクルートによる根回しが取り沙汰された。それでも、「募集情報等提供事業=無法地帯」という結論が覆ることはなく、うやむやにされた 怒り心頭の厚労省は新ビジネスを本気でつぶす トヨタの場合、採用試験を受けた大学新卒学生の名簿をリクルートキャリアに提出、同社が「リクナビ」のプラットフォーム上で得られた個人情報(トヨタ志願者が何社にエントリーしたか、どんな就職活動をしたのか)からトヨタの「志望度の高さ」を数値化し、内定辞退率予測データと称して販売していた 「相場は400万~500万円」 採用だけではなく雇用管理でも個人情報が使われる
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悪徳商法(その3)(マルチ商法「ジャパンライフ」にチラつく安倍政権との蜜月、固定電話が「巨大なリスク」になっていることに気づいていますか いまやデメリットのほうが上回る、悪徳ビジネスの餌食になる若者たち なぜ詐欺師が語る夢に依存するのか) [社会]

悪徳商法については、昨年4月19日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(マルチ商法「ジャパンライフ」にチラつく安倍政権との蜜月、固定電話が「巨大なリスク」になっていることに気づいていますか いまやデメリットのほうが上回る、悪徳ビジネスの餌食になる若者たち なぜ詐欺師が語る夢に依存するのか)である。

先ずは、昨年11月10日付け日刊ゲンダイ「マルチ商法「ジャパンライフ」にチラつく安倍政権との蜜月」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/241456
・『顧客約6800人、負債総額約2400億円――。マルチ商法まがいの手口で、磁石を埋め込んだ健康グッズの預託商法を全国展開していた「ジャパンライフ」(東京)による消費者被害をめぐる捜査が本格化の様相だ。 1975年に設立されたジャパンライフは昨年12月に経営破綻し、今年3月に東京地裁が破産手続きの開始を決定。その間、消費者庁から4度の行政処分を受けながら、しぶとく生き延びていた。その背景には安倍政権との“関係”がチラつくのだ。 「ジャパンライフの商売は磁気ネックレスなどを数百万円で顧客に売りつける一方、同社がそれを第三者に貸し出すことで顧客に年6%のレンタル料を支払う仕組み。動きがあったのは5日でした。警視庁がジャパンライフの破産管財人に関係資料の提出を求めたのです。昨年12月に愛知県内の被害対策弁護団が同社と山口隆祥会長、長女のひろみ前社長に対する告発状を県警に提出した。詐欺や預託法違反などの疑いです。本社を管轄する警視庁や被害者の多い愛知県警を中心に、特定商取引法違反(不実の告知)容疑などでの立件を視野にしているとみられています」(捜査事情通)』、本年4月25日付け日経新聞夕刊は「ジャパンライフ捜索 警視庁など、債務超過隠し勧誘疑い 預託商法で7000人被害」と、遅まきながら捜査に入ったようだ。ジャパンライフについては、このブログの昨年4月19日付けで紹介した。
・『何人もの大臣が広告塔に  ジャパンライフは政治との近さを売りに、商売を続けていた。2014年9月に消費者庁から文書で行政指導を受けた3カ月後、安倍首相側近の下村博文文科相(当時)が代表を務める政党支部に10万円を献金。15年3月には首相主催の「桜を見る会」に招待されたと宣伝チラシで大々的にアピール。〈安倍晋三内閣総理大臣から山口(隆祥)会長に「桜を見る会」のご招待状が届きました〉という文言と招待状の写真が掲載されていた。 16年12月に一部業務停止を命じる1度目の行政処分を受けると、さらに加速。チラシで昨年1月13日の出来事として〈安倍内閣の重要閣僚の加藤大臣と山口会長が会食し、ジャパンライフの取り組みを非常に高く評価していただきました!〉と紹介された加藤勝信厚労相(当時)の、〈ジャパンライフのビジネスモデルは、1億総活躍社会を先取りしています!〉というコメントが掲載された。その2週間後の1月27日に〈自民党・二階俊博幹事長を囲む懇親会を山口会長主催で開催しました!〉と喧伝するチラシもあった』、これだけ多くの安倍首相側近が応援、首相主催の「桜を見る会」にも招待、というのは異常な親密さだ。 
・『一方、ジャパンライフ問題を追及する共産党の大門実紀史参院議員が入手した「お中元リスト」には安倍首相をはじめ、麻生財務相や菅官房長官、茂木経済再生相らオトモダチもズラリと名を連ねていた。 「消費者庁は17年3月に2度目の行政処分を命じ、さらに追加措置も検討していましたが、官邸から横ヤリが入ったといいます。当時は森友学園問題が火を噴き、国会対応に追われていた時期だった」(永田町関係者) 臨時国会の火種がまたひとつ増えたか』、「消費者庁・・・2度目の行政処分を命じ、さらに追加措置も検討していましたが、官邸から横ヤリが入った」、というのは事実であれば、飛んでもないことで、本来、国会で追及すべきだが、この点に関しては追及材料が揃わなかったためか、追及はなかったようだ。マスコミは「忖度」して公開された事実のみの報道に限定しているようだ。警察・検察をガッチリ支配している安倍政権には、怖いものがなさそうなのが残念だ。

次に、経済評論家の加谷 珪一氏が4月17日付け現代ビジネスに掲載した「固定電話が「巨大なリスク」になっていることに気づいていますか いまやデメリットのほうが上回る」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64142
・『どの家庭にも必ず1台はあった固定電話が、今や危険な存在となりつつある。携帯電話へのシフトが進み、若年層の間では固定電話を持たない人が増えてきたことで、固定電話に加入していることは高齢者であることと同義になりつつある。固定電話の加入者は、強引な勧誘の電話や振り込め詐欺などの格好のターゲットとなっている』、身につまされる話のようだ。
・『営業や勧誘は固定電話に集中する  今年の2月、東京都江東区で80歳の女性が殺害されるという事件が発生したが、被害者が殺害される2週間ほど前に資産状況などについて尋ねる不審な電話があったという。渋谷区でも電話の後に強盗が家に押し入るという事件が発生しているほか、全国各地でも似たような不審電話の情報が寄せられている。 電話を使った犯罪といえば、真っ先に思い浮かぶのが「振り込め詐欺」や「オレオレ詐欺」だろう。息子などを名乗り、一方的に電話をかけて現金を振り込ませるというものだが、一般的にこうした詐欺を行う犯罪者と強盗を行う犯罪者は種類が異なるとされる。 だが、振り込め詐欺やオレオレ詐欺については、金融機関での水際作戦などによって成功率が低くなったことから、これまで詐欺を行っていたグループがより凶悪な強盗に転じたとの見方もある。 一連の犯罪には固定電話の存在と、電話に対する利用者の意識が密接に関係している。 犯罪とまではいかなくても、今や固定電話には過剰なセールスや勧誘など、加入者にとって不都合な連絡ばかりがやってくる。筆者も自宅に固定電話を残しているが、留守番電話を聞くと、金融商品や不動産の勧誘などセールスの電話が何件も録音されている。留守電なのでメッセージを残さない人もいるが、ざわついた音が聞こえるのでオフィスからかけている可能性が高い。 昼の時間帯はたいてい留守電になっているにもかかわらず、これだけの電話があるという現実を考えると、高齢者で電話に出る世帯にはセールス目的の電話が集中している可能性が高い。実際、電話に出る高齢者の番号はリスト化されており、ネットで売買されている状況である』、「電話に出る高齢者の番号はリスト化されており、ネットで売買されている」、我が家にもセールス電話が多く、閉口している。留守番電話にして後で録音を聞くのも考えたが、私自身が留守番電話が嫌いなので、止めた経緯がある。
・『固定電話加入者の争奪戦  2016年時点における固定電話の加入者数(050番号のIP電話を除く)は5539万となっており、10年間で15%ほど減少した。だが、この数字には少し注意すべき点がある。固定電話の加入者数の中には、0ABJ番号(いわゆる03や06の番号)を使ったIP電話が含まれている。具体的なサービス名で言えばNTTの「ひかり電話」である。 かつてほどではないが、NTTはひかり電話へのシフトを促す営業活動を継続的に行っているので、0ABJ番号のIP電話の加入者数も徐々に増えている。だが、ひかり電話に変えたところで見た目や使い勝手にほとんど変化はないので、わざわざひかり電話に切り替える加入者というのは、コストに敏感な法人(あるいは個人事業主)か電話について関心の高い個人ということになるだろう。 逆に言えば、今の段階でも従来型の固定電話を使っている加入者は、高齢者や通信サービスにあまり興味がない個人である可能性が高く、この層は、電話による勧誘ターゲットと重なっている。 従来型の固定電話に絞ると、2016年時点の加入者は2298万となっており、10年間で約半減した。この2298万人をめぐって、多くの勧誘電話がかけられ、場合によっては犯罪者も同じようなアプローチを行っている可能性が高い。 一人暮らしをしている高齢の親を持つ人の中には、リスク管理という観点から固定電話を廃止するケースも出てきているようだが、実際にはそう簡単にはいかない。高齢の日本人にその傾向が特に顕著なのだが、自身が使い慣れたツールを変えることに対して、過剰な抵抗感を示す人が少なくないのだ』、我が家は「ひかり電話」だが、セールスはしつこくかかってくる。
・『慣れたツールへの過剰なこだわり  かつて、日本の電話は品質が高いものの、料金も極めて高いという問題があり、通信サービスに対する規制緩和の動きが活発だった1990年代には、電話の過剰品質と料金の関係がよく議論された。料金が高いことの最大の理由は、NTTの市場独占にあったことは明らかだが、NTTの側にも多少の言い分があった。 日本の電話利用者は、ちょっとでもつながりにくかったり、呼び出し音の種類やタイミングが違ったりすると、途端にパニックを起こして電話が使えなくなってしまう。多大なコストをかけて常に同じ条件で通話できるよう品質を管理しておかないとクレームが寄せられるというのが現実であった(だからといって独占が許容されるわけではないが)。 諸外国では、電話会社がオフィス内のビジネスホンまで手がけるケースは少なく、別の事業者がオフィス内の電話を請け負うことも多いが、日本ではこの分野もNTTとその協力企業が圧倒的な立場である。 外資系を含め多くの企業がビジネスホンに参入したが、使い勝手が違うと利用者が拒絶反応を起こすので、一部の企業を除いて、あまり顧客を獲得できなかった(ちなみに誰かが代表電話を取り、回線を保留にして、通話相手に切り替えるというラインキー方式は諸外国ではあまり見られない)。 ビジネスパーソンでもこのような状況なので、ましてや現役を引退した高齢者の場合、使い慣れた固定電話の廃止には頑強に抵抗する可能性が高い。 従来型固定電話の加入者数は今後、さらに減少していく可能性が高いが、この残り少ないターゲットの獲得を目指して、さらにしつこい電話勧誘が行われる可能性は十分にある。電話勧誘とは直接関係しないが、日本郵便は今年の4月から80歳以上の人に対しては保険の勧誘を行わない方針を固めたと報道されている。 コンプライアンスを重視する企業は、過剰なセールスを自粛する傾向にあるので、固定電話に対してはさらに過激なセールスが集中するかもしれない』、「従来型固定電話」だけでなく、「ひかり電話」も「ターゲット」になっているのではあるまいか。
・『固定電話にはメリットもあるが…  一連の問題の背景には、日本社会が持つ特殊性が大きく関係している。そもそも諸外国では日本のような振り込め詐欺やオレオレ詐欺というものは存在しない。もちろん諸外国にも詐欺師は存在しているが、家族を装った電話の詐欺がここまで広範囲に、そして継続的に成立している国は日本だけである。 コミュニティ内には知っている人だけが存在し、コミュニティの外は「他人」として完全にシャットアウトするという、ムラ社会型の意識が強く残っており、家族(と思われる)からの連絡はどんな内容でも無条件に信じてしまうという心理的なメカニズムが作用していると考えられる。 こうしたムラ社会は変化に乏しいので、従来のやり方を踏襲することへのこだわりが強くなる。使い慣れたツールに固執し、新しいツールへの切り替えが進まないことと、振り込め詐欺などの諸問題は、実は水面下でつながっている話といってよい。 固定電話には、品質が高い、番号が地域ごとに管理されているといった、携帯電話にはない特長がある。本来であれば、利用者のニーズに合わせて使い分ければよい話であり、固定電話そのものが無意味というわけではない。 だが、日本の現状を考えた場合、高齢者の固定電話はもはやリスク要因でしかない。このままでは、事業目的以外の固定電話は廃れてしまうのではないだろうか』、「留守番電話」を活用する方式への切り替えも検討しよう。

第三に、フリーライターのさとうあつこ氏が9月25日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「悪徳ビジネスの餌食になる若者たち、なぜ詐欺師が語る夢に依存するのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215497
・『悪質商法や詐欺にひっかかってしまうのは高齢者ばかりではない。業者たちの格好のターゲットとなっているのが、つい他人に依存してしまう、今どきの素直で誠実な若者たちだ。「地下鉄サリン事件」を知らない世代を待ち受ける巧妙な罠とは――。長年、マインドコントロールを研究し、詐欺、悪質商法、テロ集団、カルト集団などに精通する立正大学心理学部教授の西田公昭氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『モノなしマルチ商法に情報商材…若者を狙う悪徳ビジネス  大学生の息子が怪しい投資セミナーに通っているようです。「友達に紹介されて、伝説のカリスマに会った」「人生観が根こそぎ変わった。自分は雇われない生き方をする」などと興奮しています。そろそろ就職活動を始めなければいけない時期だというのに――。どうやら学生ローンで借金し、そのカリスマ先生とやらの教材やセミナー代に充てているらしいのです。心配でなりません。 1995年に起きた「地下鉄サリン事件」を知らない世代が、今ひそかに悪質商法、詐欺のターゲットになっている。 「昨年7月6日にオウム真理教元代表・松本智津夫死刑囚の死刑執行が行われ、『そんな事件があったんだ』と興味をそそられた若者もいたことでしょう。しかし、松本死刑囚という人物について面白おかしく語られることはあっても、狡猾きわまりない教団の信者獲得テクニックについては、理解が広がらなかったのではないでしょうか」と、西田氏は指摘する。 異性から接近され、デートを繰り返すうち金品を巻き上げられてしまう「デート商法」。就活塾にしつこく勧誘され入会したところ、高額の研修費用、イベント参加費用などを請求される「就活商法」。SNSで友人に誘われ、スタートアップの勉強会に参加したところ、高額な受講料を支払わされる「悪質起業セミナー」――未経験の若者を狙う悪徳ビジネスは、じつにさまざまだ。 特に最近増えているのが、モノではなくもうけ話を持ち掛ける「モノなしマルチ商法」である。アフィリエイトなどの副業や仮想通貨、ファンド型投資商品を勧め、「友達を紹介すればキャッシュバックされる」などと言葉巧みに契約させる。だが、実際には説明されたようなもうけがあるわけでもなく、返金を求めても交渉が難しい、といったケースが相次いでいる。 国民生活センターによれば、29歳以下の若者におけるモノなしマルチ商法についての相談件数は2018年度では2481件と、2014年度の859件に比べて3倍近くにのぼる。 情報商材の相談も急増中だ。自称、“巨万の富を稼ぎ出したカリスマ”が広告塔として現れ、「誰でも簡単に必ずもうかる!」などのうたい文句でPDFや動画、アプリを高額で販売する、といったものである。同じく国民生活センターによれば2017年度の相談件数は6593件。一度購入すると、さらに高額なコンサルティングやセミナーを契約させる業者もいて、被害額が膨らんでいる。 「今どきの若者は素直で真面目。裏返せば、自分の判断や能力に自信がなく、友達の承認や評価を過度に求める人が多い。カリスマに憧れて、『この人の言うとおりにすればすべてうまくいく』など、安易に絶対的な信頼感を抱いてしまうタイプもいます」 ある特定の人との関係に異常なまでにしがみつき、心の安定を得ようとする状態を、精神医学では「関係依存」と呼ぶ。情報商材のカリスマや、マルチ商法を勧めてくる友人に嫌われまいと、つい財布のひもを緩めてしまう若者の中には、関係依存の傾向をもつ人も多いのではないだろうか』、「未経験の若者を狙う悪徳ビジネスは、じつにさまざまだ」、改めてその広がりを再認識させられた。
・『チェックしたい! だまされやすい人の3つの特徴  そもそも、依存心が高く、だまされやすい人には次のような特徴があると西田氏は言う。 (1)衝動、欲求を制御するのが苦手(ネットなどでつい衝動買いをしてしまい、部屋はいらないものだらけ、といった人は危険。甘い夢を見がちなところがあり、うまいもうけ話を聞くとついコロっとだまされてしまう。) (2)やさしくて温厚(和を乱したくない、他人に嫌われたくないという思いが強く、頼まれるとノーといえない。) (3)巧みな話術に乗せられやすい(「なんだかいい人だな、この人の言うことなら間違いなさそうだ」などと、無批判に相手の話を聞き、信ぴょう性を考えない。 3つすべて当てはまるようなら要警戒だ。 「どれも日本人にありがちな特徴では。ただでさえ、日本社会は同調圧力が高く、依存関係が働きやすいところがある。周りの意見に合わせるうち、危険か危険でないか自分の頭で判断することすらしなくなってしまうのです」と西田氏。 男性の場合、“情報弱者”と思われるのが嫌で、被害を受けたことを周囲に言えないケースも多い。その結果、人知れず借金を抱え込むなど、ますます泥沼にはまってしまうことになる』、「ただでさえ、日本社会は同調圧力が高く、依存関係が働きやすいところがある。周りの意見に合わせるうち、危険か危険でないか自分の頭で判断することすらしなくなってしまうのです」、というのは恐ろしいことだ。
・『悪徳業者、詐欺師のテクニックは優秀なセールスマンと同じ  では、詐欺や悪質商法から身を守るにはどうすればいいのだろうか。 1つは、契約書を受け取ってから一定期間内(契約書を受け取った日を含め、訪問販売などは8日間、マルチ商法は20日間)に解約できるクーリング・オフについて知っておくことだろう。訪問販売や電話勧誘などで突然勧誘され、契約してしまった場合やマルチ商法、エステ、語学学校などの契約で認められている。また、マルチ商法の場合、事実と違うことを告げられた、あるいは故意に事実を告げられなかったときは、契約の申し込みや承諾を取り消すことが可能だ。 ただその前に、業者たちのだましのテクニックを把握し、危険かどうか見抜くための心構えをもつことも肝心だろう。 悪質商法の手口は、磨き抜かれたセールスの手法と同じ、と西田氏は指摘する。 「心理学者のロバート・B・チャルディーニは、<返報性><一貫性><社会的証明><好意性><権威性>など、説得のプロが活用する法則をいくつか掲げています。実際、業者のトークを聞いてみると、ごく優秀なセールスマンと同じことを言っている。『あなたのためを思って言うんですよ』『口コミサイトでも評判です』『あの○○さんもやっていました』などなど。複数の法則を巧みに組み合わせて攻めれば、世慣れていない若者などイチコロです」 相手の信用を勝ち取る“コールド・リーディング”という話術も悪質業者ならばお手のものだ。服装や表情、雰囲気などから相手の状況を推測しつつ、誰にでも当てはまりそうなことを言う。いろいろ話すうち、1つ2つ当たるものがあると、『この人は自分のことをわかってくれる、すごい』とうれしくなり、「そのとおりです、実は…」などと自らペラペラ情報を喋ってしまう。 「さらに恐ろしいのは、あらかじめ入手した個人情報を利用する“ホット・リーディング”。SNSを使っていれば、プライベートな情報はダダ漏れも同然。マルチ商法の場合は、友人から友人へと情報が漏れ伝わっていることも多い。悪質な業者であれば、違法に入手したデータベースや探偵を利用することもあります」 だまされる若者が増えている背景には長引く経済不安もある、と西田氏』、「悪質商法の手口は、磨き抜かれたセールスの手法と同じ」、世慣れていない若者が「だまされる」のも無理からぬところがありそうだ。
・『「“老後2000万円問題”がニュースになるなど、国や社会に対する不安材料は日々増えている。格差も定着しています。何を信じていいかわからず、未来に希望を抱けない若者は地下鉄サリン事件が起きた頃よりもっと多いはず。悪質商法の業者や詐欺師が語る“夢”にすがりたくなるのも、無理はないかもしれません。しかし、だからこそ思考停止状態で他人に依存するのでなく、自分の頭で考え、判断する力を身につけるべきでは。もちろん若者だけでなく、日本人全員にいえることですが」 2022年、民法改正により成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられれば、親の同意を得ずに契約できる若者がさらに増える。息子娘の自立心と判断力を早くから養っておきたい』、「思考停止状態で他人に依存するのでなく、自分の頭で考え、判断する力を身につけるべきでは」、その通りだが、孫にどう伝えていくのかは難しそうだ。
タグ:日刊ゲンダイ 悪徳商法 ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 加谷 珪一 (その3)(マルチ商法「ジャパンライフ」にチラつく安倍政権との蜜月、固定電話が「巨大なリスク」になっていることに気づいていますか いまやデメリットのほうが上回る、悪徳ビジネスの餌食になる若者たち なぜ詐欺師が語る夢に依存するのか) 「マルチ商法「ジャパンライフ」にチラつく安倍政権との蜜月」 顧客約6800人、負債総額約2400億円 磁石を埋め込んだ健康グッズの預託商法を全国展開していた「ジャパンライフ」 東京地裁が破産手続きの開始を決定 消費者庁から4度の行政処分を受けながら、しぶとく生き延びていた 安倍政権との“関係”がチラつく 特定商取引法違反(不実の告知)容疑などでの立件を視野 何人もの大臣が広告塔に 下村博文文科相(当時) 10万円を献金 首相主催の「桜を見る会」に招待されたと宣伝チラシで大々的にアピール 一部業務停止を命じる1度目の行政処分を受けると、さらに加速 加藤大臣と山口会長が会食し、ジャパンライフの取り組みを非常に高く評価していただきました!〉と紹介された加藤勝信厚労相(当時)の、〈ジャパンライフのビジネスモデルは、1億総活躍社会を先取りしています!〉というコメントが掲載 二階俊博幹事長を囲む懇親会を山口会長主催で開催しました!〉と喧伝するチラシ 共産党の大門実紀史参院議員 消費者庁は17年3月に2度目の行政処分を命じ、さらに追加措置も検討していましたが、官邸から横ヤリが入ったといいます 「固定電話が「巨大なリスク」になっていることに気づいていますか いまやデメリットのほうが上回る」 固定電話の加入者は、強引な勧誘の電話や振り込め詐欺などの格好のターゲットとなっている 営業や勧誘は固定電話に集中する 固定電話加入者の争奪戦 慣れたツールへの過剰なこだわり 固定電話にはメリットもあるが… さとうあつこ 「悪徳ビジネスの餌食になる若者たち、なぜ詐欺師が語る夢に依存するのか」 業者たちの格好のターゲットとなっているのが、つい他人に依存してしまう、今どきの素直で誠実な若者たちだ モノなしマルチ商法に情報商材…若者を狙う悪徳ビジネス 未経験の若者を狙う悪徳ビジネスは、じつにさまざまだ チェックしたい! だまされやすい人の3つの特徴 悪徳業者、詐欺師のテクニックは優秀なセールスマンと同じ 思考停止状態で他人に依存するのでなく、自分の頭で考え、判断する力を身につけるべきでは
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個人情報保護(その1)(「ツタヤで借りたAV」は警察にモロバレ CCC、Tカード情報を警察に横流し、悠仁さま「刃物事件」で男を逮捕できた訳 個人情報が"丸裸"になる気持ち悪さ) [社会]

今日は、個人情報保護(その1)(「ツタヤで借りたAV」は警察にモロバレ CCC、Tカード情報を警察に横流し、悠仁さま「刃物事件」で男を逮捕できた訳 個人情報が"丸裸"になる気持ち悪さ)を取上げよう。

先ずは、4月12日付けPRESIDENT Online「「ツタヤで借りたAV」は警察にモロバレ CCC、Tカード情報を警察に横流し」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/28381
・『捜査対象者のプライバシー丸裸も「違法ではない」  今年に入り、検察当局が裁判所の許可を得ずに顧客情報を入手できる企業など計約290団体をリストアップしていたことが報道により明らかにされ、話題となった。 その団体には「主要な航空、鉄道、バスなど交通各社やクレジットカード会社、消費者金融、コンビニ、スーパー、家電量販店など」(1月4日東京新聞朝刊)が含まれるとされ、各社の情報をつなぎ合わせれば、裁判所の令状がなくても、捜査対象者のプライバシーを丸裸にできるという。 聞くだけで怖くなるが、この行為がなぜ許されるのか。城南中央法律事務所の野澤隆弁護士は「『捜査関係事項照会』に基づく捜査手続きで、厳密にいえば違法ではない」と指摘する。 「たしかに、憲法で定める令状主義に違反している可能性はあります。とはいえ、刑事訴訟法等では、捜査当局が官公庁や企業などに対し捜査上必要な事項の報告を求めることができるとの規定があります。憲法がつくられた当時は少なくとも今のような個人情報がつまったカードが発行されることは想像されていなかったわけで、現在の運用は捜査当局らの解釈に事実上委ねられています。判例の一般的な傾向を見ると違法性があるとまでいえないのはほぼ間違いないのですが、適法性が高いとまではいえない状況です」』、令状ではなく、『捜査関係事項照会』だけで情報を提供しているとは、恐ろしい話だ。
・『「Tカード」の問題が特に深刻である理由  東京新聞など、複数のメディアによれば、検察当局のリストには「Ponta」を運営するロイヤリティマーケティングや「nanaco」を運営するセブン・カードサービスが記載されていた。 しかし、今回とくに問題視されていたのが、ポイントカード最大手「Tカード」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)。その理由としてはCCCが会員規約に、捜査当局への会員情報の提供を明記していなかったためだ。Pontaなどは一応そのことについて記載はされていたという。 規約に記載してこなかった理由についてCCCの広報担当者は「各種法令に遵守してサービスを提供する旨は記載しており、情報提供は法令遵守の範疇に入ると判断していた」と説明する』、CCCのレンタル店は、中古品買取も行うため、中古品買取の免許も持っており、警察とはツーカーの関係なのだろう。
・『「捜査対象者の性癖を調べるために使われていた」  報道によると、捜査当局はCCCからTカードの会員情報(氏名、生年月日、住所)、ポイント履歴(付与日時、ポイント数、企業名)、レンタル日、店舗、レンタル商品名のほか、店舗の防犯カメラ画像を入手することができた。 では、CCCからの情報を捜査当局はどのように活用していたのか。CCCを取材している大手メディアの社会部記者は驚くべき実態を語る。 「これは、警察と検察の幹部が両方認めていることですが、レンタル商品名は捜査対象者の性癖を調べるために使われていました。たとえば、痴漢系のAVばかりを借りていたら、この人にそういった行為に興味があるのかもしれないと目星をつけるわけです。出演している女優が極端に若いふりをしている作品や小中学生が水着になっているグラビアものを多く借りていたら、『児童性愛の趣味があるのかもしれない』と、捜査における参考情報にするのです」 つまり、警察や検察は裁判所の許可を得ずに、Tカード利用者の性的嗜好を調べることができたのだ。例え、映画やドラマといった一般的なDVDでAVを挟み、“サンドイッチ”にしてレジまで持っていったとしても、警察にはすべてお見通しだったのだ。さらに、捜査当局は防犯カメラ画像も入手できたということなので、そんな恥ずかしい行動も全部見られてしまっていた可能性もある』、「Tカード利用者の性的嗜好を調べることができた」、捜査当局にとっては便利な存在だったようだ。
・『「何らかのルールづくりは必要ではないか」  野澤弁護士は「裁判所が『やむを得ない』と判断したうえで、何のDVDを借りていたのかを警察に知られてしまうのは、捜査上仕方がないことなのでしょう。しかし、令状すらなく、警察官が“気になった人”の性癖を調べてしまうことに対しある種の怖さを感じる人は多いはずです。個人情報の取り扱いに対し社会が敏感になっているいま、何らかのルールづくりは必要だと思います」と話す。 個人情報保護法に詳しいひかり総合法律事務所の板倉陽一郎弁護士も、「個人情報保護法に違反するかどうかでいえば、CCCの情報提供は法令に基づいた手続きなので違法ではありません」と述べる』、個人情報保護法もそこまでは想定してなかったとすれば、何らかの法改正も必要だろう。
・『「損害賠償請求であれば、勝てる可能性はある」  その一方で「仮に民事訴訟で、情報を見られた人がデータの提供元や捜査機関に損害賠償請求をした場合、そこに著しいプライバシーの侵害があると裁判所が判断すれば、原告側が勝つことになります。個人情報保護法に違反するかどうかと民事上の請求の諾否は独立しています」と説明する。 板倉弁護士はこう指摘する。 「例えば、フェイスブックやグーグルはプライバシーレポートなどを定期的に発表し、どんな情報を外部に提供したのかをユーザーに報告することで情報提供に関する透明性を担保しようとしています。また、捜査関係事項照会については拒否することもできるので、事案ごとに情報を提供するべきどうか会社としてしっかりと判断していくことが適切と考えます」 CCCは「情報提供の内容について、詳細はお答えできないが、必要最低限の情報にとどめていた」としている。また、報道を受け「一般の方から不安の声」があったといい、2月に基本方針が確定するまでの間、令状に基づく場合にのみ対応することを発表した。同社は現状として規約を変えていないが、「今後、文言をどうするのか、現在は協議している」と話す』、「基本方針」はどうなったのだろう。

次に、ジャーナリストの 元木 昌彦氏が5月28日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「悠仁さま「刃物事件」で男を逮捕できた訳 個人情報が"丸裸"になる気持ち悪さ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/28815
・『「防犯カメラ」の配線が切断されていた  「悠仁さまの机にナイフを置いた男は、どうやって捕まったか」 『週刊現代』(6/1号)は、元号が変わる前に逮捕せよと厳命を受けた警視庁が、あらゆる手を使って容疑者の長谷川薫(56)をいかに追い詰めていったかを詳細に報じた。 4月26日に長谷川はお茶の水大学付属中学の敷地内に侵入した。秋篠宮悠仁(12)の机の上に、長さ60cmの棒に括りつけた2本の果物ナイフを置いた。 悠仁の警護は皇宮警察と警視庁の警備部警衛課が受け持っているが、彼が授業中は同席しない。この時はたまたま体育の授業で教室にはいなかった。 リミットは4月29日。それ以降だと新聞などで大きく扱われ、令和の祝賀ムードに水を差すというのだ。捜査の主導は捜査一課が受け持ち、極左を担当する公安刑事、「捜査支援分析センター」(通称SSBC)という専門部隊も投入された。SSBCは今年2月に東陽町で起きた「アポ電強盗殺人事件」で犯人逮捕に貢献した。2009年4月に設置された警視庁刑事部の付置機関で、約120名、防犯カメラなどの画像収集、分析のスペシャリスト集団だ。 中学の入り口にあるインターホンからの映像を回収した。そこには午前10時50分ごろ、「水道工事の者です」と告げ、鍵を解錠させた不審人物が写っていた。この不審な男に絞る。その前の10時30分ごろ、キャンパスの北西側に2mほどしかない外壁があり、そこに設置されているはずの防犯カメラの配線が切断されていた』、素早い逮捕劇には、平成のうちに決着をつけようと、大々的な捜査体制があったようだ。
・『クレジット会社に「捜査事項照会」をかけて住所を把握  綿密に計画された犯行だった。逮捕後に長谷川は、「刺すつもりだった」といっているようだから、警備していた連中は冷や汗ものだったろう。 午前11時過ぎ、キャンパスから出てくる男を正門前のカメラがとらえていた。植え込みにヘルメットや作業服などを入れたビニール袋を捨てる。 男は東京メトロの茗荷谷駅に向かう。構内の防犯カメラが鮮明に男をとらえていた。 「SSBCは、様々な規格の映像を取り込むことができ、その映像を手配容疑者などの映像と顔照合ができる『撮れ像』と呼ばれる独自の機能を持っています」(ジャーナリストの今井良)。さらに、都内のどこに防犯カメラがあるのかという「設置データベース」も持っているという。 だが大型連休中で、防犯カメラの管理者と連絡が取れない事態が頻発した。 男は東京駅方面へ向かった。この際、切符ではなく交通系のICカードを使った。捜査員はすぐ東京メトロに「捜査事項照会」をかけ、ICカードの登録情報から長谷川薫という氏名が判明。同時に公安調査庁に極右、極左の活動家に同名の人物がいないかを確認。「該当なし」という返事。 長谷川は東京駅で降車、新幹線で新大阪に向かい、さらに大阪市西成区近辺に行ったことが駅のカメラなどで確認された。 ICカードや防犯カメラから、長谷川が事件前から都内のホテルに滞在していたことが判明。渋谷区の「東急ハンズ」で果物ナイフなどを購入していた。買い物をクレジットカードでしていたことがわかると、クレジット会社に「捜査事項照会」をかけ、銀行口座、登録している住所がわかった』、普段ののんびりした捜査とは、別世界の手際良さだ。
・『短期間で、防犯カメラ、ICカード、カード情報を入手  長谷川は、再び新大阪から東京方面の新幹線に乗り込み、小田原で下車してJR東海道線の平塚駅で降りた。捜査員らは、長谷川が駅前の東横インにチェックインしたことを確認して逮捕状を取り、外出先から帰ってきたところを身柄確保した。 リミットまで残り3時間を切っていた。だが、肝心のナイフを悠仁の机に置いた映像はない。否認されると窮地に追い込まれる。長谷川は「中学校に侵入したことは間違いない」と認めたことで事なきを得た。 しかし、長谷川の動きを見ると、単独犯ではなく、共犯者がいる可能性が高いのではないだろうか。本来ならもう少し泳がせて行動を監視するのだが、今回はそれができなかった。 これを読む限り、短期間で、防犯カメラ、ICカード、クレジットカード情報を入手して犯人を逮捕した警察のやり方は見事というしかない。 だが、『週刊現代』は気付いていないようだが、何度も出てくる「捜査事項照会」というやり方に疑問を持つ読者も多くいるのではないか』、「捜査事項照会」への民間企業の安易な協力については、第一の記事でも見た通りだ。
・『「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法」とは  『世界』(6月号)の「日本型監視社会」の中にある、共同通信社会部取材班による「丸裸にされる私生活」を読むと背筋がゾッとする。 共同は、最高検察庁が保管している「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法等一覧表」をすっぱ抜いた。一覧表に並ぶ企業は少なくとも約290社、記載されたデータの種類は約360にも上る。 リストに記載されている項目は、データ等の名称、入手可能なデータの内容、保存期間、問い合わせ窓口、照会方法、照会・差し押さえ等に当たっての留意点など。 最初に来るのがANAマイレージクラブだそうだ。入手内容は、カード所有者の住所、氏名、生年月日、電話番号、勤務先、勤務先の連絡電話、マイルをためた実績も挙げられている。 ANAの保存期間は3年。照会方法は簡単だ。カード番号だけでなく、住所・氏名・生年月日・電話番号からできる。留意点として「クレジットの取引内容や使用履歴は回答していない」とあり、定形郵便で問い合わせ、返信用封筒には82円分の切手を貼るように指示されるそうだ。 リストに記載してある企業は、主要な航空、鉄道、バスなどの交通各社、電話、ガスなどのライフライン企業から、ポイントカード発行会社、クレジットカード会社、消費者金融、携帯電話、コンビニ、ガソリンスタンドからカラオケ、インターネットカフェ、ゲーム会社まである。 入手できる情報は、住所・氏名・生年月日・電話番号のほかに利用履歴、店舗利用時の防犯カメラ映像など。それらを手に入れれば、その人間の趣味嗜好から思想傾向までを丸裸にできる』、「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法等一覧表」は、捜査側にとっては便利なマニュアルだ。
・『取材班が「底知れない気持ちの悪さ」を感じたワケ  共同によれば、このリストは「警察の協力を得て作成した」そうだから、検察だけではなく警察がこの一覧を使って個人情報を取ることなど日常茶飯事なのであろう。 またリストの作成者には「法科学専門委員会」というのも名を連ねている。共同によれば、この委員会は厚生労働省の文書偽造事件で、局長の村木厚子が無罪になった際、大阪地検特捜部の証拠改竄が明らかになったのを受けて、2011年に最高検に設置されたという。 客観的な証拠の重要性が改めて認識され、検察にもDNAや薬物などの鑑定方法、サイバー、デジタルフォレンジック(電子鑑識)など幅広い知識が必要と考えたからだそうだ。 共同取材班は、リストに目を通して「底知れない気持ちの悪さ」を感じたという。さらに大きな問題は、リストに載っていた企業の多くが、捜査機関側から「捜査関係事項照会」をされれば、顧客の個人情報を提供すると“明記”していることである』、これだけ幅広い企業が、「「捜査関係事項照会」をされれば、顧客の個人情報を提供する」、というのは驚きだ。
・『照会を撥ねつける気概のある企業は多くない  「捜査関係事項照会」とは、刑事訴訟法197条に規定してある捜査手法のことで、捜査当局が官公庁や企業などに、捜査上必要な事項の報告を求めることができると規定されている。 家宅捜査や差し押さえなどは、裁判所の令状が必要になるが、内部手続きだけで照会をかけることができるが、報告を求められた側は照会に応じなくても罰則は受けない。だが、顧客のプライバシー情報が重要だと考え、照会を撥ねつける気概のある企業が多くあるとは思えない。 共同は一覧に掲載されている290社にアンケート取材を試みた。104社が回答を寄せ、そのうち91社が捜査関係事項照会による顧客情報提供があったことを認め、29社は、顧客向けの利用規約やプライバシーポリシーに、情報提供することを明記していないという。 回答を寄せた企業はまだこうした問題に気を配っているところで、中には、当局の要請に応えることをなぜ取材されるのか、訳がわからないというところもあったそうである』、企業には「お上」意識が根強く、「当局の要請に応えること」は当然と考えているのだろう。
・『「個人情報の塊」を無断で提供してきたTポイント  CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)という企業がある。Tポイントカードを展開し、会員数は6788万人(昨年9月時点)だという。ポイントカード事業では最大手だ。 レンタルショップ、コンビニ、飲食店、ドラッグストアなど、あらゆるところでモノを購入するとポイントが付く。 ここは捜査当局にとって非常に有用だったそうである。ある事件の容疑者が、同じ時間帯に特定のコンビニへ来て買い物をすることが、Tポイントカードからわかり、防犯カメラの映像で本人だと確認し、待ち伏せて身柄を拘束できたという。 このCCCの「T会員規約」には、当局に対する情報提供についてどこにも明記されていなかった。したがって、捜査当局から求められれば、個人情報の塊を無断で外部に提供し続けてきたのだろう。呆れてしまう。 なおCCCは共同が報じた後、「個人情報保護方針を改訂いたしました」というニュースリリースを出している』、「ニュースリリース」は一般的記述のみで、捜査当局への情報提供についてはさっぱり分からない。
・『「国と対立してまで顧客の個人情報を保護する意識がない」  携帯電話会社は、GPS機能を使えば、その人物がある時間にどこにいたかがわかる。位置情報は高度なプライバシー情報であるが、大手3社は「令状が必要」とリストに明記されているという。 だが、オンラインゲーム会社3社は、位置情報が取得可能だが、令状が必要とは記載されていない。 ある検察関係者は共同の記者に、「企業は国と対立してまで顧客の個人情報を保護する意識がない。当局となれ合い、情報を渡す」といい切ったそうである。 「この捜査官の言い分に、捜査関係事項照会で情報提供を頻繁に求められた経験のある人物は反発する。取材に『あるとき、なぜこの情報が必要なのか疑問に思ったことがあった。それで回答を拒んだら、捜査官に<そんなことを言うのはおたくだけだ>とすごまれた』という」(『世界』6月号より) この捜査関係事項照会は、EUでも問題視されているという。なぜなら、日本の企業がEU市民の個人情報を取得すれば、裁判所の令状なしに日本の捜査機関に提供されてしまうからだ。 これに対して、日本政府は必至に弁明し、文書で「国民の意識の高まりを背景に、回答がより慎重になされる傾向が顕著」「警察は国家公安委員会や各都道府県公安委員会の監督を受けている」などと実情と違う説明をしているという』、EUへの日本政府の弁明は確かに苦しまぎれといった感がある。
・『いまどきの中国人が財布を持たない理由  「近いうちに中国はプライバシーという言葉がなくなりますよ」 こういったのは、『週刊現代』の特別編集委員で、中国に詳しい近藤大介だ。彼は中国のキャッシュレス事情を話してくれた後、こう指摘した。 中国はIT先進国である。日本はまだAIが発達すると単純労働だけではなく、税理士や公認会計士までいらなくなると騒いでいる。だが、中国では既にAI弁護士が出現し、事件と類似する判例を見つけ出し、量刑を決めて判決文まで書くことができるようになってきているそうだ。 国民のほとんどの顔を登録しているから、大群衆が集まるイベントに犯罪者が紛れ込んでいても、監視カメラが顔認証で見つけ出す。犯人探しだけではない。コンビニは無人化が進み、客は欲しいものを籠に放り込み、店を出る時カメラに顔を向け、外に出るとスマホに購入額が表示されるという。 中国人は財布を持たない。日本へ旅行に行くときだけ現金が必要だと旅行会社から聞かされ、渋々財布を買うそうだ。日本が新札を発行するというニュースを聞いた中国人は、これからは現金など持ち歩かないのに、日本人はなぜそんなバカな投資をするのだと、笑っていたという』、「現金」は究極の匿名性を確保してくれるが、中国人にはその有難さが理解できないのだろう。
・『本当に「共産主義国だからできること」なのか  『世界』6月号で慶應義塾大学の山本龍彦教授が、中国の信用ポイントについてリポートしている。中国では10億人が巨大Eコマース「阿里巴巴(アリババ)」を利用している。この傘下の芝麻信用(セサミクレジット)では、利用者の個人情報だけではなく、最高人民法院が公表している「信用喪失被執行人リスト」も収録され、スコアが高い者は低金利でローンが組めたり、賃貸物件の敷金が不要になったりとさまざまな便益を享受できるが、スコアが低い者は、企業の採用で不利に扱われたり、婚活で冷遇されるなど、差別的な扱いを受ける。 共産主義国だからできることであって、曲がりなりにも民主主義国の日本ではそんなことはできはしない。 実際、住民基本台帳もマイナンバーも、何千億円というカネを使っても普及率は10%程度だ。政府や役人は、マイナンバーを東京オリンピックまでに行き渡らせ、それに銀行口座をひも付けして、個人の資産をすべて把握しようとしているようだが、もくろみ通りにいかないのは、日本人がプライバシーに関心が高いからだろう。 だが、本当にそうだろうか? 先の山本教授によると、みずほ銀行とソフトバンクが立ち上げた「J.Score」が、AIを用いて個人の信用度をスコアリングするサービスを開始しており、NTTドコモ、ヤフー、LINEなども参入を発表しているという』、「J.Score」が今後どう成長していくかは興味深い。
・『監視大国ニッポンは警察国家ニッポンへの回帰だ  ITの発達で企業が膨大な顧客情報という「ビッグデータ」を集めることができるようになったため、われわれのプライバシーは真っ裸にされているのだ。 さらに共謀罪ができ、こいつは怪しいと見れば盗聴や尾行ができる。その上、われわれがケチなポイントが欲しくて売り渡している個人情報を、検察や警察は令状なしに手に入れられるのである。プライバシーよりも安心・安全を優先させたために、日本の辞書からもプライバシーという言葉が消える時代が遠からず来ることは間違いない。 監視大国ニッポンは警察国家ニッポンへの回帰であり、このままいけば戦前よりもっと厳重に監視・管理され、個人のプライバシーなどぼろ雑巾のように扱われるに違いない。 令和という年がそうならないように願うが、残念ながら、この流れを止めるのは難しいと思わざるを得ない。(文中敬称略)』、憂鬱な予測だが、「監視・管理」に行き過ぎがないように監視する仕組みも是非構築していく必要がある。
タグ:個人情報保護 PRESIDENT ONLINE 秋篠宮悠仁 (その1)(「ツタヤで借りたAV」は警察にモロバレ CCC、Tカード情報を警察に横流し、悠仁さま「刃物事件」で男を逮捕できた訳 個人情報が"丸裸"になる気持ち悪さ) 「「ツタヤで借りたAV」は警察にモロバレ CCC、Tカード情報を警察に横流し」 捜査対象者のプライバシー丸裸も「違法ではない」 検察当局が裁判所の許可を得ずに顧客情報を入手できる企業など計約290団体をリストアップ 『捜査関係事項照会』に基づく捜査手続き 「Tカード」の問題が特に深刻である理由 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC) 会員規約に、捜査当局への会員情報の提供を明記していなかった 「捜査対象者の性癖を調べるために使われていた」 警察や検察は裁判所の許可を得ずに、Tカード利用者の性的嗜好を調べることができた 「何らかのルールづくりは必要ではないか」 「損害賠償請求であれば、勝てる可能性はある」 元木 昌彦 「悠仁さま「刃物事件」で男を逮捕できた訳 個人情報が"丸裸"になる気持ち悪さ」 リミットは4月29日。それ以降だと新聞などで大きく扱われ、令和の祝賀ムードに水を差す 極左を担当する公安刑事、「捜査支援分析センター」(通称SSBC)という専門部隊も投入 クレジット会社に「捜査事項照会」をかけて住所を把握 SSBCは、様々な規格の映像を取り込むことができ、その映像を手配容疑者などの映像と顔照合ができる『撮れ像』と呼ばれる独自の機能を持っています 「設置データベース」 東京メトロに「捜査事項照会」をかけ、ICカードの登録情報から長谷川薫という氏名が判明 ICカードや防犯カメラから、長谷川が事件前から都内のホテルに滞在していたことが判明 クレジット会社に「捜査事項照会」をかけ、銀行口座、登録している住所がわかった 短期間で、防犯カメラ、ICカード、カード情報を入手 長谷川が駅前の東横インにチェックインしたことを確認して逮捕状を取り、外出先から帰ってきたところを身柄確保 「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法」とは 「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法等一覧表」 企業は少なくとも約290社、記載されたデータの種類は約360にも上る。 リストに記載されている項目は、データ等の名称、入手可能なデータの内容、保存期間、問い合わせ窓口、照会方法、照会・差し押さえ等に当たっての留意点など 取材班が「底知れない気持ちの悪さ」を感じたワケ リストに載っていた企業の多くが、捜査機関側から「捜査関係事項照会」をされれば、顧客の個人情報を提供すると“明記” 照会を撥ねつける気概のある企業は多くない 「個人情報の塊」を無断で提供してきたTポイント 「国と対立してまで顧客の個人情報を保護する意識がない」 いまどきの中国人が財布を持たない理由 本当に「共産主義国だからできること」なのか 「J.Score」 監視大国ニッポンは警察国家ニッポンへの回帰だ
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災害(その7)(“全市避難せよ!”いったいどこへ?、首都直下地震が起きたら! 関東大震災の「火災と揺れ」の恐怖 10万5000人が死亡した現場を見よ、千葉の停電は「的外れな議論」が多すぎる 県や政府に「危機管理」の意識が欠如していた) [社会]

昨日に続いて、災害(その7)(“全市避難せよ!”いったいどこへ?、首都直下地震が起きたら! 関東大震災の「火災と揺れ」の恐怖 10万5000人が死亡した現場を見よ、千葉の停電は「的外れな議論」が多すぎる 県や政府に「危機管理」の意識が欠如していた)を取上げよう。

先ずは、7月30日付けNHK NEWS WEB「“全市避難せよ!”いったいどこへ?」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190730/k10012013791000.html
・『「全市に避難指示」あなたにこんな情報が届いたら、どう行動しますか?7月の記録的な大雨で、市内「全域」の59万人に避難指示が出された鹿児島市では、住民から戸惑いの声が上がりました。命を守る情報をめぐる混乱を取材すると、市の思いと、住民の受け止めの間にギャップがある現状が見えてきました』、これまで避難指示の遅れから被害を拡大したと非難された自治体をみて、安易な安全策に走ったのかも知れない。
・『全域と言われても…「鹿児島市から出ろってことか?」  7月初旬。記録的な大雨が降る中で鹿児島市が市内全域に避難指示を発表。対象人数は59万人にのぼり、ネット上には戸惑いや不安の声が相次ぎました。 「全域に避難指示と言っても、どこに避難しろと?」 「59万人。ちゃんと受け入れてもらえるのかな」 鹿児島市が開設した避難所の合計収容人数は約8万5000人。59万人全員が避難して来れば、とても入りきれる数ではありません。 今回の大雨では鹿児島県内の9つの自治体が「全域」に避難指示を出したほか、隣の宮崎県でも都城市などが全域に避難勧告を発表しました』、避難勧告が避難所の収容人数とは無関係に発出されるというのもおかしな話だ。
・『ルールはあるの?  そもそも市町村が避難指示や避難勧告を出す場合、対象地域とする範囲についてのルールはあるのでしょうか? 実は、法律による明確な定めはありませんが、国は「避難勧告等に関するガイドライン」の中で次のように一定の考え方を示しています。『発令対象区域は、居住者や施設管理者等が危機感を持つことができるよう、適切な範囲に絞り込むことが望ましい』 実際に、対象地域の絞り込みを進める自治体もあります。神戸市は避難指示・勧告を各区の「土砂災害警戒区域」などに絞って発表します。 また横浜市は市内2400か所余りの土砂災害警戒区域を独自に調査し、特に危険性の高い100か所余りを「即時避難勧告対象区域」に選定しています。 災害情報に詳しい静岡大学の牛山素行教授は、こう指摘します。+「全域」という情報は、市内に安全な場所が無いと受け取ることができるので、住民はどこに逃げればいいのか…と戸惑いや混乱があったのではないでしょうか。+自治体は災害の見逃しを防ぎたいといったねらいがあると思いますが、通常、市内全域で一様に土砂災害や洪水のリスクがあるとは考えにくいです。危機感を持ってもらうには、絞り込んだ発表をするのが望ましいと思います。そうでなければ情報が軽視され、信頼を損いかねません』、安易に「避難指示や避難勧告」を出すと、オオカミ少年と同じで、多くの人に無視されてしまうだろう。
・『全域」でも「全員」じゃない!?  なぜ今回、鹿児島市が全域に避難指示を出したのか、市の担当者に聞いてみました。その理由はというと…。 「鹿児島市内は崖や中小河川が多く、今回のような大雨では地区を区切ることに大きな意味がなかった」 さらに、こんな答えも返ってきました。「市全域に避難指示を出しましたが、市民全員が避難所に避難する必要があるとは考えていませんでした。土砂災害警戒区域など危険な場所に住む人たちに避難してもらいたいという情報でした」 つまり、鹿児島市の意図は「市内全域に避難指示を出すけれども、実際に避難が必要なのは危険な地域に住んでいる人」ということだったのです。 鹿児島市の森市長も避難指示発表直後の会見で「特に崖地や河川の近くにお住まいの方は早めに避難してほしい」と呼びかけていました』、「避難指示や避難勧告」の定義は自治体任せにせず、、国が「ガイドライン」できちんとした規準を示すべきだ。
・『住民に任された避難の判断  住民は「全域」の意味をどう受け止めたのでしょうか。私たちは崖崩れが起きた鹿児島市田上地区で取材しました。 町内会長が住民たちに避難を呼びかけ、避難所に行った住民も多かったといいます。ただ、中には「広い鹿児島市で全域と言われても、どこが危ないのかわからない」と話す住民もいました。崖が多く川もある比較的リスクの高い地域でしたが、住民に対して市の意図が十分には伝わっていませんでした。 さらに、避難すべきかどうか判断を任された形となった住民の中には、避難を迷っている間に危険な状況に陥った人もいました。田上地区のある男性は、川が氾濫しても自宅が高台にあるため大丈夫だと考えて避難しませんでした。 ところが自宅は土砂災害の危険性が高い「土砂災害警戒区域」の中にあったのです。雨は激しさを増し、自宅の近くで崖崩れが発生。最終的には消防に促されてようやく避難したといいます。 危険性と避難の必要性を自分たちで的確に判断するのは簡単ではない一面も見えてきました』、自治体は住民まかせにせず、ハザードマップに従って的確な指示を出すべきだ。
・『ギャップ埋める取り組み  今回の取材を通じて、比較的規模の大きな自治体が「全域」に避難情報を出すことは、住民が災害の脅威を自分のこととして受け止める意識を薄めてしまうのではないかと感じました。 命を守る情報について自治体の意図と住民の受け止めにギャップがあることはとても危険です。それを埋めるには、リスクのある場所はどこか、災害時にどんな情報が出るかといったことを、自治体と住民が日頃から共有しておくことが重要です また牛山教授は「全域ということばを、危機感や警戒感を伝えたいという思いから使うケースもあるのではないか。最近は強い情報を積極的に出すべきだという風潮があるが、強い情報の頻発は情報の軽視につながりかねない」とも指摘していました。 特別警報や大雨の警戒レベルなど、災害が起きるたびに、新たな情報の創設が繰り返されていますが、果たして住民の避難行動に結び付いているのかという点も、検証が必要だと思います。どのような情報の出し方が効果的なのか、私たちメディアも考えていかなければならないと思っています』、「強い情報の頻発は情報の軽視につながりかねない」というのはその通りだ。「検証」を徹底的に行ってほしいものだ。

第二に、名古屋大学減災連携研究センター客員教授の武村 雅之氏が9月1日付け現代ビジネスに掲載した「首都直下地震が起きたら! 関東大震災の「火災と揺れ」の恐怖 10万5000人が死亡した現場を見よ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66637
・『9月1日は「防災の日」。1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災にちなんでいる。 東日本大震災以来、日本中で頻発する地震。さらに「30年以内に70%の確率で、マグニチュード7クラスの首都直下地震が襲う」と言われている。また、都心南部直下でM7.3の地震になると、1都3県の面積の約3割が震度6弱以上になるとも……。 その結果として、最悪のシナリオでは2万3000人が亡くなり、61万棟が全壊・焼失してしまう可能性がある(ちなみに関東大震災での死者・行方不明者は、10万5385人)。 目前に迫る大災害に5人のエキスパートが警鐘を鳴らした『首都直下地震「専門家5人の警告」』(電子書籍)から武村雅之教授の「被服廠跡の惨劇」を抜粋。 首都直下地震は明日来ても不思議ではない』、「最悪のシナリオでは2万3000人が亡くなり、61万棟が全壊・焼失してしまう可能性」、というのは控え目の予測だろう。
・『日本を瀕死の状態に陥れた巨大地震の恐怖  関東大震災─大正12(1923)年9月1日─を起こした地震を関東地震と呼んでいます。私は1990年頃から、この地震を調べ始めましたが、関東地震はデータが非常に多く残っていることがわかりました。これまで、それらのデータを一つ一つ、自分で調べながら30年やってきました。町ごとに、どういう原因で何人亡くなったか、死者を調べて数字を積み上げ、被害と震度を出しました。 今回、「被服廠跡の惨劇」というテーマをつけたのは、被服廠跡で関東大震災を象徴するような被害が起こっているからです。ここでは約3万8000人の方が亡くなられました。 関東大震災というと関東の震災だと言う人がいますが、それは違っています。日本が国家存亡の機に瀕した自然災害は、関東大震災しかありません。 関東地震の震源は、相模湾にある海溝(相模トラフ)から、フィリピン海プレートが関東平野の下に潜り込み、その関東平野とプレートの境目で起こりました。神奈川県はほぼ全域が震源の直上になっています。 当時は震度計はありませんでしたが、住家全壊率と震度には相関があるので、各市町村ごとの全壊率から評価すると震度7のところも相当ありました。関東大震災の震度分布を作ると、阪神・淡路大震災の10倍以上の広さが震度7になっていました』、「被服廠跡」で「約3万8000人の方が亡くなられました」、決して広いとはいえない場所で、それほどの犠牲者が出たというのは、震災避難者の誘導の難しさを再認識させられた。
・『関東大震災での死者  関東大震災で亡くなった方は約10万5000人いますが、東京では約6万9000人が亡くなっています。震源の直上でもないのに、なぜこれほど多くの方が亡くなったのでしょうか。 地震が起こると家が潰れます。家が潰れて亡くなった方は約1万1000人です。火災で亡くなった方は約9万2000人もいます。「関東大震災は火災だ」と言われますが、家が潰れて亡くなった方も阪神・淡路大震災の2倍ぐらいいます。 土砂災害で亡くなった方が700~800人です。関東大震災後に耐震基準ができたので、もし今、同じ規模の地震が起こっても住宅の全壊は減るでしょう。火災もそれにつれて減ると思います。しかし、土砂災害は減らない。今横浜や横須賀には、崖の下に多くの人が住んでいますが、これは危ないと思っています。 強い揺れが来たときに、海岸にいる人は津波が来るかもしれないと思っても逃げていない。東日本大震災では地震発生から津波到達までに一番早いところでも1時間半あったので、すぐに逃げていれば95%の人は助かりました』、東京のゼロメートル地帯では、「津波」から逃げるには高層マンション程度しかなさそうだが、多くの避難者を収容できるのだろうか。
・『関東大震災の被害額  経済被害については、大正14(1925)年に東京市がまとめています。地震の経済被害には直接被害と間接被害があります。直接被害は、鉄道会社で言えば線路が曲がったとか橋が落ちたというものです。間接被害は、電車が止まって運賃収入がなくなることなどです。民有林や田畑の被害は入っていませんが、関東大震災の直接被害は約55億円、そのうち東京市が約36億円です。 国に対する影響という意味でGDPを基準に比べてみます。関東大震災のときはGNPですが、これが150億円ぐらいですから、損害総額の55億円は36.7%にあたります。この比率が40%に到達する災害はそれほど多くはありません。東日本大震災が3.3%です。 関東大震災のときの国家予算は約15億円ですから、国家予算比は360%です。東日本大震災が約2割ということを考えると、日本は関東大震災からよく復興できたものだと思います』、関東大震災当時は地方が自立的だったが、現在では本社機能の東京集中がはるかに進んだことを考慮すると、経済の混乱は予想以上に深刻化する懸念もある。
・『東京・横浜を去る避難民  政府は、大きな被害を受けた東京・横浜からできるだけ多くの人を地方へ避難させます。関東大震災が起きたのは9月1日ですが、9月20日ぐらいまで、汽車賃を無料にし、救援物資を積んできた船にも無料で人を乗せた。約100万人が9月中に東京・横浜を出ていったという記録が残っています。 日本は大正9(1920)年に近代国家になって初めて国勢調査をしました。そのときの経験を生かして関東大震災後の11月15日に国勢調査的なことをしました。 天皇陛下が羅災者のために1000万円、今の価値なら約500億円を下賜されました。唯一それが一般庶民に現金で配られたお金です。 これを配るべき人がどこの県に何人ぐらいいるかを把握しなければならない。それが、11月15日の調査の一番大きな目的だったと最近わかってきました。人口が減少したところは、東京市と横浜市と神奈川県の郡部で、合計約77万人減少しています。このうち約10万人が死亡しています。また全被害者のうち約80万人が被災地から県外に移動しています。 一番人が増えたところは東京府の郡部で、約32万人増えています。被災地に近くて比較的被害が少なかった場所だからです。被災地以外では、大阪が約3万4000人、栃木や新潟は2万人以上、愛知県でも約2万3000人が被災者として暮らしています。沖縄でも約1600人、北海道だと約1万人近くが暮らしている。そういう状況が地震から2か月後にあったということです。 ちなみに東日本大震災では、各県内で移動した人も含めて2カ月後で約20万人が移動しています。しかし、関東大震災のときに比べて正確な調査がなく、そういう意味では現代のほうが、大正時代より遅れている部分があるのです』、親戚付き合いも希薄になりつつあるなかで、地方への避難といっても容易ではなさそうだ。
・『東京での火災と揺れ  東京の火災はどういう形で起こったか。9月1日の11時58分に地震が起こり、火災はその時点から発生し、3日の10時ぐらいに一応鎮火しますが、その間ずっと燃え続けました。 9月1日の夕方までに燃えたところは、隅田川の東側、今の江東区や墨田区と、浅草より北の方です。隅田川より西側の水道橋から神田と神保町あたりも焼けましたが、ここは揺れが大きかったこともありましたが、辺りは江戸時代に大池という池があったところを埋め立てた地域で、地盤が悪くて多くの家が潰れたからです。東京の中央区、銀座や日本橋はほとんど家が潰れていません。しかし後で他の地域から飛び火して燃えています。 地震が起こると、どこでも火災は起こりますが、普通は人が消します。ところが家が潰れると、人が下敷きになり、火も消せずに延焼火災になってしまうのです。 一旦燃え出すと、燃えるものがなくなるまで消えないのが火災です。 今は「地震が起こったときには、やけどをするから急いで火を消すな」と言いますが、消したほうがいいと私は思います。延焼火災になったらたくさんの人が死ぬのです。 家が潰れることと火災は関係があります。延焼火災を防ぐにも、耐震設計が必要です。それが、関東大震災後に耐震基準ができた一番大きな理由です。我々は今、その恩恵を被っているわけです。 9月1日の夕方ぐらいまでに、警視庁が各警察署の管轄で何軒家が潰れているか調べています。大正9年の国勢調査と合わせると全壊率がどれくらいかがわかるので、震度分布を出すことができました』、「「地震が起こったときには、やけどをするから急いで火を消すな」と言います」、飛んでもなく自己中心的なことを言う輩がいるものだ。「消したほうがいいと私は思います」、当然である。
・『220年前にほぼ同じ地震に襲われていた  関東大震災の220年前、元禄16(1703)年にあった関東地震で、江戸はどういう被害が出たのか。 江戸では340人が亡くなった記録があります。しかも、火災は起きていませんでした。その頃の江戸は、元禄16年までに墨田川に永代橋と新大橋がかかりますが、それまでは両国橋しかありませんでした。元禄の地震の46年前の1657年に起こった明暦の大火で、死者約10万人を葬ったのが、両国橋を渡ってすぐにある回向院でした。これらなどから、隅田川の東側はほとんど人が住んでいなかったことがわかります。墨田川の東側は湿地帯だったので人が住めなかったのでしょう。 その後、水害を防ぐ技術が出てきます。堤防をつくり、埋め立てができるようになりました。そして、隅田川より東側に、人が住める広大な場所が出てきた。しかし、江戸時代は大名の上屋敷等が火災で焼けたときのために下屋敷が多かった。明治になると、大名がいなくなり、区画整理もしないままその地域に一般庶民がたくさん住みました。 隅田川の東側をそのまま水害が起こるところにしておけば、誰も住まず、大正の関東地震で6万9000人も亡くなることにはならなかった。ところが科学技術が進んで、堤防をつくる技術ができた。科学技術は単なる道具なので、人がどう使うかが重要です。科学技術が進んだからといって、人間が幸せになるわけではないということを、関東大震災は教えてくれています』、その通りだ。残念ながら人間にはリスクを過小評価・無視してしまう「楽観バイアス」があるようだ。

第三に、京都大学大学院特任教授の安田 陽氏が9月18日付け東洋経済オンラインに掲載した「千葉の停電は「的外れな議論」が多すぎる 県や政府に「危機管理」の意識が欠如していた」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/303302
・『台風15号による停電が長期化している問題で、電力会社による情報提供のあり方が批判を招いている。 送配電事業を担う東京電力パワーグリッドは当初、2日程度で停電を解消できるとの見通しを示したが、その後、おおむね1週間、さらには2週間へと見通しを変更した。そうした中で、千葉県知事やマスメディアなどから、東電の「想定の甘さ」を指摘する声が相次いだ』、「千葉県知事」も初めのうちは被害は軽微といったニュアンスで発言、あとで批判されたり、緊急用に備蓄してある発電機のかなりが未使用ということが発覚したり、など決して他者を批判できる立場にはない筈だ。全く頼りない口だけの知事のようだ。
・『千葉県や国の対応は遅すぎた  しかし、問題とすべきは「見通しの甘さ」ではない。大規模災害の場合、被災状況の正確な把握自体がそもそも困難であり、情報の欠損や情報提供の遅延は当然起こりうる。東電の責任だけを追及しても得るものはあまりない。 大規模災害時には、正確な情報を得られず不確実性がある中で、意思決定をしていかなければならない。これが「クライシスマネジメント」(最悪の状態を想定した危機管理)の考え方だ。むしろ、国や地方自治体にクライシスマネジメントが欠如していたことこそ問題にすべきだ。 その一例が、行政による対策本部設置の遅さだ。千葉県が災害対策本部を設置したのは、大規模停電発生から丸1日以上が過ぎた9月10日午前9時のことだった。経済産業省の停電被害対策本部の設置は13日。政府全体の災害対策本部に至っては17日現在も設置されていない。 対策本部設置以前からさまざまな取り組みが続けられていたはずだが、大規模災害では電力のみならず、医療や食料の提供、避難場所の確保などさまざまな課題があり、政府や都道府県による対策本部を速やかに設置し、意思決定・情報発信していくことが必要だ。 その際、クライシスマネジメントの中枢を担うのも、電力会社などの民間企業ではなく、国や都道府県である。しかし、今回の災害では、対策の多くが電力会社任せにされている。 東電は9月13日になって、停電の復旧までにおおむね2週間が必要だとの見通しを示した。これだけ停電が長期化する事態であれば、電力会社に判断や公表を任せることが正しかったのかについても疑問がある。政府が主導してもよかったケースだ。 マスメディアの報道も、的外れなものが少なくない。例えば倒壊した電柱の本数が何本あるかとの質問に東電が答えられなかったことが問題視されたが、情報の正確性にこだわりすぎるのはクライシスマネジメントの観点から適切ではない。むしろ、災害時は情報が十分そろわないことが多いということを認識すべきだ。 仮に3ケタの電柱被害があり、停電が長期化した場合にどのような対処が必要であるかをあらかじめ予想したうえで、情報が少ない初期の段階でも被災者の安全を想定して行動する準備ができていたかどうかを問うべきだ』、安倍政権がいまだに「対策本部設置」を設置してないのは、驚くべきことだ。いまさら設置すれば、判断ミスを認めることになるからかも知れない。いずれにしろ、今回は政府、千葉県、東京電力、さらにはマスコミとも、「クライシスマネジメント」の典型的失敗例を提供してくれたようだ。
・『科学的根拠に基づく議論が必要  停電の原因や対策に関する報道でも見当違いが少なくない。ある大手紙は、1990年代以降に送電関連の設備投資が抑制されていたことを挙げ、電柱が老朽化して倒壊を増やした可能性を指摘している。 確かに1970年代に建設された設備も多数残っており、「耐久性があると判断した電柱への投資を先延ばし」したとも言及されている。しかし、鉄塔や電柱の耐用年数は50年と定められており、現時点で明確な技術基準違反が多数見つかっているわけではない。 今後、電柱倒壊の原因や老朽化との関係については、経産省などで検証委員会などを立ち上げ、きちんと検証すべきだが、停電も十分解消されていない現時点で、十分な裏付けも取らず「老朽化が原因」と示唆することは、クライシスマネジメントの観点から優先すべき順位を見誤っているように見える。 電柱の地中化については逆のことがいえる。複数の政治家が電柱の地中化の有効性について言及したと報じられる一方、SNSやネットでは地中化は莫大なコストがかかるとか地震に弱いなどの反論も相次ぐ。欧米ではこのようなインフラ投資に対しては費用便益分析(費用対効果の検証)を行うが、日本では印象論的な消極論が多い。 地中化は確かに建設コストがかかり、電力料金を押し上げる可能性もあるが、自然災害に対する強靭性や事故率の低さ、景観・環境の点からコストに見合う便益(ベネフィット)が期待される。電柱の地中化や耐久性基準見直しは、防災やリスク低減というリスクマネジメントの観点から検討する必要があるだろう。 災害多発時代の日本にとって必要なのは、科学的根拠に基づいたリスクマネジメントの議論と合意形成手法の確立だ』、説得力溢れた主張で、大賛成だ。
タグ:災害 東洋経済オンライン 現代ビジネス NHK News web (その7)(“全市避難せよ!”いったいどこへ?、首都直下地震が起きたら! 関東大震災の「火災と揺れ」の恐怖 10万5000人が死亡した現場を見よ、千葉の停電は「的外れな議論」が多すぎる 県や政府に「危機管理」の意識が欠如していた) 「“全市避難せよ!”いったいどこへ?」 月の記録的な大雨で、市内「全域」の59万人に避難指示が出された鹿児島市では、住民から戸惑いの声 全域と言われても…「鹿児島市から出ろってことか?」 避難所の合計収容人数は約8万5000人。59万人全員が避難して来れば、とても入りきれる数ではありません 鹿児島県内の9つの自治体が「全域」に避難指示を出したほか、隣の宮崎県でも都城市などが全域に避難勧告 ルールはあるの? 「避難勧告等に関するガイドライン」 全域」でも「全員」じゃない!? 市民全員が避難所に避難する必要があるとは考えていませんでした。土砂災害警戒区域など危険な場所に住む人たちに避難してもらいたいという情報でした 住民に任された避難の判断 ギャップ埋める取り組み 強い情報の頻発は情報の軽視につながりかねない 武村 雅之 「首都直下地震が起きたら! 関東大震災の「火災と揺れ」の恐怖 10万5000人が死亡した現場を見よ」 「30年以内に70%の確率で、マグニチュード7クラスの首都直下地震が襲う」 最悪のシナリオでは2万3000人が亡くなり、61万棟が全壊・焼失してしまう可能性 『首都直下地震「専門家5人の警告」』 「被服廠跡の惨劇」を抜粋 日本を瀕死の状態に陥れた巨大地震の恐怖 「被服廠跡の惨劇」 約3万8000人の方が亡くなられました 関東大震災での死者 「関東大震災は火災だ」 関東大震災で亡くなった方は約10万5000人 家が潰れて亡くなった方は約1万1000人 火災で亡くなった方は約9万2000人 土砂災害で亡くなった方が700~800人 関東大震災の被害額 東京・横浜を去る避難民 東京での火災と揺れ 今は「地震が起こったときには、やけどをするから急いで火を消すな」と言いますが、消したほうがいいと私は思います 220年前にほぼ同じ地震に襲われていた 安田 陽 「千葉の停電は「的外れな議論」が多すぎる 県や政府に「危機管理」の意識が欠如していた」 千葉県知事やマスメディアなどから、東電の「想定の甘さ」を指摘する声が相次いだ 千葉県や国の対応は遅すぎた クライシスマネジメント 大規模災害時には、正確な情報を得られず不確実性がある中で、意思決定をしていかなければならない 対策本部設置の遅さ 政府全体の災害対策本部に至っては17日現在も設置されていない 科学的根拠に基づく議論が必要 災害多発時代の日本にとって必要なのは、科学的根拠に基づいたリスクマネジメントの議論と合意形成手法の確立
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災害(その6)(西日本豪雨の隠れた人災「ダム放流で大洪水襲来」の危険すぎる現場、「関空」経営陣 災害対応で露呈した根本問題 民営化後の日仏合弁体制が生んだひずみ、知らないと命にかかわる…M9南海トラフ地震のすべて いま あなたにできることは何か) [社会]

災害については、昨年9月12日に取上げたままだった。今回の千葉の問題を取上げる前に、(その6)(西日本豪雨の隠れた人災「ダム放流で大洪水襲来」の危険すぎる現場、「関空」経営陣 災害対応で露呈した根本問題 民営化後の日仏合弁体制が生んだひずみ、知らないと命にかかわる…M9南海トラフ地震のすべて いま あなたにできることは何か)をみておこう。

先ずは、ジャーナリストの粟野仁雄氏が昨年10月9日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「西日本豪雨の隠れた人災「ダム放流で大洪水襲来」の危険すぎる現場」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/181534
・『半世紀前の映画『黒部の太陽』(熊井啓監督 三船敏郎主演 1968年公開)のヒットで有名になった富山県の黒部峡谷にあるクロヨンダム(関西電力 黒部第四ダム)は、今も人気観光スポットだ。 灌漑、発電、洪水調整……様々な名目で造られたダムは大切な観光資源でもある。しかし、高位置に膨大な量の水を貯めておくことは、基本的に大きなリスクが伴う。 今年7月、ラオスで建設中のダムが決壊し、死者・行方不明者が百数十名出た。数千人が家を失い、避難生活を送っている。米国では1889年にペンシルバニア州のダムが決壊し2209人が死亡する大惨事があった。フランスでは1952年にダム決壊で421人が死亡している。日本では戦前の1940年、北海道の幌内ダムが決壊し60人が死亡するなど多くの事故があった。 最近でも、東日本大震災では福島県の藤沼ダムが決壊し、膨大な水が流出、8人が死亡している。2年前の熊本地震でも西原村の大切畑ダムが損傷し、住民が肝を冷やしていた』、ダムに伴う事故は、世界的にも発生しているようだ。
・『ダムを決壊から守る「放流」が二次被害をもたらす被災地の皮肉  豪雨の際、「ダムを決壊から守るために放流する」とよく聞く。この「ダムが決壊する」とは、どういうことを指すのか。満杯になれば重量に耐えられずに、ひびが入ったり割れたりして自壊するのだろうか。それでは危なくて仕方がない。 7月7日の西日本豪雨で大被害のあった愛媛県大洲市の丸山幸宏危機管理課長は、「越水し、ダム自体が沈んでしまえば操作もできなくなるし、ダムを支えている土中の構造物も崩れてしまう可能性がある」と説明してくれた。 国土交通省四国地方整備局の山鳥坂ダム工事事務所の柴田治信課長は、「僕らもうっかり決壊するという言葉を使ってしまうのですが、重さに耐えられずに割れたりするわけではありません。溢れてしまうことです」と話す。ラオスの事故では建設した韓国企業が、「決壊はしていない。溢れただけだ」と必死に弁明している。この事故で韓国プロジェクトの海外受注は激減したと言われる。 いずれにせよ、豪雨時のダムの放流は「ダムの決壊を防ぐため」というのが名目だ。実は、先の西日本豪雨で、その放流により犠牲者が出たことをご存じだろうか。愛媛県では肱川の2つのダムの放流で、合計9人が放流直後に水死しているのだ』、テレビ番組でもよく取上げられた。
・『西日本豪雨時の放流で9人が死亡 怒号が飛び交った住民説明会  8月9日夜。愛媛県での西日本豪雨取材のさなか、西予市野村町の野村中学校の体育館で住民説明会があった。同市にある肱川の野村ダム流域では5人が亡くなり、家屋倒壊などの被害を受けた。被害はダム放流の直後。「人災だ」との声が強まっていた。体育館は約700人で満席。冒頭、管家一夫市長のあいさつに続く黙とうの最中から、「人殺し」「謝れ」「パフォーマンスか」などの怒号が飛んだ。 説明者側は国土交通省、愛媛県、西予市。資料を配り、「規則通り操作した」「予想外の雨で……」と繰り返した。国交省の川西浩二・野村ダム管理所長は「記録的豪雨を予測できず、事前放流量を増やせなかった」などと釈明したが、「人命よりダムが大事なのか」などの声に遮られる。質疑では年配男性が「国民の生命財産を守るという憲法にあなた方は違反したのです」と指摘した。「人災なんだから100%補償すべきだ」と訴える女性には拍手が沸いた。 終了近くに立ち上がった入江須美さん(51)は、「危険を知らせてくれれば夫は死なずに済みました」と訴えた。自宅で印刷業を営む夫義彦さん(59)は、流された愛車のスポーツカーから遺体が発見された。夫の遺影を抱いた須美さんは記者に囲まれ、「小さなダムなので早めに減らすべきだったのに。伝え方はどうだったのか。通常の6倍も流すと聞いていれば夫は早く逃げたはず。また説明会を開いてほしい」と訴えた。 野村ダムの建設時に町長だった池田忠幸氏(91)は、「マニュアル通りの操作しかできないことが情けない。耕作面積も人口も減っているのに、灌漑のために満杯にしておく必要はなかった」と運用のまずさを指摘した。その昔、反対運動の中を苦労して建設にこぎつけたダムそのものが否定されることが、悔しくてならない様子だ。 ダムの放流は午前6時20分だが、国が大量放流を市に知らせたのは6時8分。市は避難指示を5時20分に出していたが、市民は「いつものような放送で切迫感はなかった」と口を揃える。危険通知の遅れに管家一夫市長は、「混乱状況で早く知らせられなかった。お詫び申し上げる」と謝罪した。 下流の鹿野川ダムの放流で4人の犠牲者を出した大洲市でも、9月18日、住民説明会が行われた。このダムのすぐ近くに旧肱川町役場、現在は市の支所がある。近くに住む向井富重さん(67)が語る。 「あっという間に水が上がり2人で逃げるのが精いっぱい。1階の天井近くまで水が来た。家の中は滅茶苦茶でした。後になって大工さんが、飼っていた5歳の猫のホコちゃんが死んでいたのを見つけたんです。苦しんだのか目を剥いていました。妻と泣きはらしました」』、「野村ダムの」「運用のまずさ」、市のは「避難指示」の伝え方、など問題点がいくつも重なったようだ。
・『猫さえ逃げ遅れた大洪水の恐怖 緊急放流の責任は誰にあるのか?  普通の浸水なら、猫であれば2階に逃げそうなもの。押し寄せた水は逃げる間もない速さだったのだろう。明らかにダム放流による被害だ。向井さんは「いつもダムを満杯にしていた。大雨になるのに早めに減らしてなかったのが間違い」と指摘した。 今回の豪雨で大きな被害を出した岡山県では、1963年、水島コンビナートへの利水や発電目的で高梁川上流に新成羽川ダムを竣工した。国は「洪水対策にもなる」と建設反対派を抑え込んだ、しかし後に、豪雨の緊急放流で被害が出て住民が訴訟を起こした。裁判例は徳島県などでもある。 村を沈めてまで全国に建設されたダムは、本当に安全なのか。筆者はこの春、岡山県の湯原温泉を楽しんだ。岡山市の名勝・後楽園の横も流れる旭川の上流に位置する。昔ながらの風情の温泉街だが、すぐ上にはダムがあった。複雑な形の人造湖の水は、豊富で観光にも適している。しかし、もしあのダムが決壊したらどうなるのか。それこそ温泉街は全滅し、多くの死者が出るだろう。 今回の西日本豪雨では、広島県呉市でも、上流の野呂川ダムの決壊を恐れて「流入量以上の放流をしない」との規則に反して通常の3.6倍の大量放流が行われたため、下流の平福で甚大な浸水被害が起きたとされ、県が調査をしている。 鹿野川ダム近く、肱川の支流の河辺川で計画された山鳥坂ダムは、民主党が政権を取って一時ストップした建設工事が、自公政権で再開されている。前述の柴田さんは「新しいダムが早くできていれば、大洲市内の被害は軽減できた」と話す。 2001年、長野県の田中康夫知事が「脱ダム宣言」をして議論となった。民主党政権では群馬県の八ッ場ダム建設にストップがかかった。西日本豪雨をきっかけにダム否定論も散見するが、「ダムがなければもっと被害は大きかった」という専門家も多く、議論は分かれている。 もっとも、ダムだけが怖いのではない。磯田道史氏の『天災から日本史を読み直す』によれば、1854年の伊賀上野地震では奈良県の古市村(現奈良市古市町)で、段々畑のように高位置に築造されていたため池が決壊し、家々が押し流されて67人が死亡する悲劇が起きている。磯田氏は「甲賀忍者の古文書調査で地震時のため池決壊の恐ろしさを知った」と著している。 2004年の中越地震では、新潟県山古志村で名産の錦鯉の養殖池が崩壊し、大きな被害をもたらした。古くは1868年(明治元年)に愛知県の農業用の入鹿池が決壊し、941人が死亡した。1953年には京都府の農業用の旧大正池が決壊し、山津波で多数の死者を出した。 ダム建設の反対においては環境問題が取り沙汰されることが多いが、今回、震度7の地震で惨事となった北海道の厚真町では、農業用の厚真ダムの放水路が土砂で埋まり、雨で「決壊する可能性」が出て警戒に当たったが無事だった。振り返って、高位置に大量の水を貯めておくことの危険を改めて再認識すべきだろう』、ダムは作れば安心とはいかず、運用も重要なようだ。


次に、10月9日付け東洋経済オンライン「「関空」経営陣、災害対応で露呈した根本問題 民営化後の日仏合弁体制が生んだひずみ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/241890
・『9月4日に台風21号が関西国際空港を直撃してから1カ月が経った。高潮による冠水・浸水で大きな被害が出た第1旅客ターミナルやA滑走路などはすでに復旧。空港内は以前の賑わいを取り戻しつつある。10月6日には、台風時のタンカー衝突で一部が損壊した連絡橋でのマイカー通行の規制が解除された。 2017年度、関空の国際線旅客数は前年度比14%増の2190万人となり、初めて2000万人を超えた。9割を占めるアジア圏からの訪日客の増加が牽引し、ここ数年好調が続いている。ただ2週間あまり続いた関空発着便の大規模な欠航は訪日観光など関西経済に大きな影響を及ぼした。災害対策の想定や危機管理体制が適切であったか、運営会社の関西エアポートは今後国と連携して検証を進める方針だ』、不手際があれだけ目立った以上、きっちり「検証」してほしいものだ。
・『関空は台風直撃後丸2日間を無駄にした  関西エアポートは、関空の民営化に伴い国から運営権を取得し、2016年4月に業務を開始。オリックスと、フランスの空港運営会社バンシ・エアポートが4割ずつ、関西圏の主要企業が共同で残りの2割を出資する体制だ。 同社の社内外からは、台風直撃直後から、経営陣の対応や経営体制の適切性に多くの批判が出ている。関空発着便を運航する航空会社のある幹部は、「台風直撃から丸2日間、“空港は再開予定なし”としか発表しなかったのは、空港運営会社の意思決定としてありえない」と突き放す。 さらにこの幹部は、「空港に取り残された利用客らの数も間違っていた(当初は3000人としていたが、実際は8000人だった)。結果、バスなどの手配も不十分で、人を脱出させるだけで手いっぱい。復旧計画の策定にも着手できないまま、最初の48時間を浪費した」と振り返る。 今回関空で高潮による浸水被害が出たのは1期島(第1ターミナルとA滑走路)のみ。2期島にある第2ターミナルを発着するLCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションは、台風直撃翌日の9月5日時点で運航を再開できる体制を整えていた。 複数の関係者によれば、5日に国交省大阪航空局が主催した会議で、ピーチ側が「1便だけでも6日から飛ばしたい」と要望。国交省も「少しでも復旧が進んでいることを示すことは重要」としたが、関西エアポート側は「トイレなどが使える状態ではない」と譲らなかったという。 関西エアポートの煮えきれない対応に対し、「首相官邸が激怒した」(前出の航空会社幹部)。政府は緊急のタスクフォースを発足させ、復旧プランを策定。9月7日の朝に石井啓一国交相が記者会見で発表した。 だが複数の関空関係者によれば、このプランをめぐって関西エアポートのトップが割れた。同社はオリックス出身の山谷佳之社長とバンシ出身のエマヌエル・ムノント副社長が、「Co-CEO(共同CEO)」として共同で経営する体制を取っている。 国交省の復旧プランは日本語のみで作成された。山谷社長らオリックス側の経営陣は、タイムリーに情報を入手していた。だがムノント副社長らバンシ側の経営陣は日本語が不得手。プランの翻訳はその日の夕方になって出来上がった』、官邸主導型で「復旧プランを策定」せざるを得なかったというのは、民営化そのものの妥当性を疑わざるを得ない。
・『社長と副社長が緊急時に言い争い  「共同経営体制なのに、なぜ同時に情報を入れてくれなかったんだ」。翌8日朝の会議でムノント副社長は、山谷社長にそう噛みついた。山谷氏が「だったらお前が日本語を勉強しろ」と応じると、ムノント氏は「お前がフランスに来たときは、フランス語で情報共有するからな」と吐き捨てたという。 口論にいらだったある社員は、「そんなケンカをしていないで、意思決定をしてください」と言い放った。だがその場にいた社員らは部屋から出され、会議が中断。経営陣のみの話し合いが30分以上行われた。呆れた何人かの社員は会議の再開を待たずに、持ち場へ戻ったという。 「今回の混乱は起こるべくして起こったもの」。関空関係者らは異口同音にそう指摘する。「災害や事故など、時間との勝負となった場合、社内コミュニケーションや(日仏企業の共同経営という)経営陣の構図の問題がある限り、うまく対応できるはずがないのは火を見るより明らかだった」(関係者)。 社内コミュニケーションにおける問題の筆頭は、言語だった。民営化前、国が100%出資する新関西国際空港株式会社が運営していた時代は、社員はもちろん、取引先や国、自治体、財界はほとんどが日本人であり、日本語だけで事足りていた。 だがバンシが経営に入ったことで外国人幹部が多数登用された結果、日本語と英語の両方でのコミュニケーションが必要になり、時間がかかるようになったという。また、日本人相手に提案する資料でさえも、社内では英語の資料を作成したうえで議論しなければならず、議論の結果を説明する際には再度日本語に翻訳する必要に迫られた』、「問題の筆頭は、言語だった」というのは、「日仏企業」へ民営化した段階でも、緊急時を想定すれば分かっていた筈だ。
・『社内コミュニケーションが停滞  確かに外資系企業が後から経営に参画すれば、どの企業にも起こりうる問題かもしれない。ただコミュニケーションの問題はこれだけではなかった。 まずオリックスは過去に空港運営の経験がない。そのため本題の議論に入る前に、用語や過去の経緯をすべて説明する必要があった。一方のバンシに対しては、日本の地理や制度、法律についての説明が求められたという。 「1時間の会議であれば、前半の30分以上がオリックスとバンシのための基礎的な説明や議論に充てられることも多々あった。3~4時間話し合った末に何も進展がないムダな会議も多く、旧体制から在籍している社員のいらだちは募る一方だった」(関係者) 2016年末に関西エアポートが設立された際、山谷社長とムノント副社長は互いを「ブラザー(兄弟)」と呼び、仲の良さを強調していた。だが先述の通り、緊急事態の中で両者の関係はそれとは程遠いものだった。 空港というインフラの危機管理においては、オリックス側は、基本的にバンシ側の専門性に委ねるという方針だった。ただ関係者の話を総合すると、日本の空港や航空会社の事情を無視し、バンシ独自の危機対応策を強行したことが初期対応が遅れた大きな要因だったとみられる。 実際、日本航空の赤坂祐二社長は、「(関西エアポートは)空港運営については知見があるものの、航空会社のオペレーションに絡む経験がそんなに多くないと感じた。飛行機がどうやって飛んでいるかについて、一緒にコミュニケーションしていく必要がある」と指摘している。 一向に台風対応が進まない中でも、バンシ側はやり方を変えようとしなかった。結局政府の後ろ盾を得た山谷社長らオリックス側の経営陣がバンシ側に異議を唱え、復旧や対策の主導権を握っていったという。「国が介入したからこそ、オリックスとバンシの悪しき対等関係を崩すことができた」と関係者はつぶやく』、空港運営に素人の「オリックス」が入ったことにも問題がありそうだ。
・『旧体制からの社員は失望、離職者も続出  旧体制からの社員たちからは、「私たちが動いた方が早い」「優先順位が違う」「もっと最善の方法が取れるのになぜやらないのか」などと、怒りの声が相次いだ。彼らは日頃からオリックスやバンシの経営陣から、「今までは国管理だったからダメだったんだ。民間はもっと賢明かつスピーディー。国に育てられた君たちはもっと民間意識を持ちなさい」と事あるごとに言われていた。それゆえに、台風直撃の3日後に国交省が発表した復旧プランを「社員たちは忸怩たる思いで見ていた」(関係者)。 民営化後の社内のモチベーション低下は著しいという。「旧体制から経験を積んできた“航空のプロ”がどんどん辞めている」(航空会社幹部)。しかも、「多種多様な部門でまんべんなく離職者が次々に出ている」(関空関係者)。 直近では空港業務に関する外部コンサルタントの起用が目立ち、社内からは疑問の声が相次いでいる。「高いお金をかける割には、使えるような提言はほとんどないと社員の多くは思っている」(関係者)。今回の危機対応をなんとか乗り切ったものの、「コンサルだらけの生活に戻ることに頭を抱えている社員もいる」(同)。 民営化のメリットがまったくなかったわけではない。2017年初に開業した第2ターミナルの国際線ビルには、保安検査の時間を短縮する「スマートセキュリティシステム」や、客の購買意欲を促す「ウォークスルー型」と呼ばれる免税店を設置。以前からあったアイデアだが、民営になったことで投資の自由度が増し、ビルの新設に合わせて世界の潮流に合ったものを取り入れることができた。 ただ空港は巨大な公共インフラである以上、投資の自由度だけでその成否を判断することはできない。緊急時の迅速な対応は必須要件だ。「いくら万全なBCP(事業継続計画)を策定しても、それを指揮する経営者や意思決定層がBCP以前の課題に取り組まなければ、また同じことが起こってしまう」(関係者)と危惧する声は少なくない。 国交省が10月初めに発足した主要空港における災害対策の検討会でメンバーを務める日本大学の轟朝幸教授は、「空港の災害対応は一民間企業にとどまらず、関係者が非常に多い。民営ゆえに行政側も言いにくい面があったようだが、有事の際のリーダーシップを誰が引き取るかを官民の間で明確にすべき。関西エアポートも利害関係者との関係を一層深める必要がある」と指摘する』、「民営化のメリット」として紹介されている「投資の自由度」があったとしても、「緊急時の迅速な対応は必須要件」を満たすことが出来なかったのは、やはり民営化に問題がありそうだ。
・『北海道7空港の民営化はどうなるのか  関空の旅客機能は、結果的に台風直撃から2週間でおおむね回復することができた。政府主導の下、連日連夜現場の空港職員たちが汗を流した。台風直後の空港と陸地を結ぶ唯一の交通手段だったバスは、疲れ切った様子の職員であふれていた。航空会社幹部らは一様に「現場の頑張りはすばらしかった」と評する。それだけに関西エアポートの経営陣には猛省が求められる。 オリックスとバンシは現在、新千歳や女満別、旭川など北海道7空港の民営化に名乗りを上げており、一次審査を通過したとみられる。大雪など気象の影響も大きい北の大地での空港運営は、海上空港である関空とはまた違った難しさが伴う。くしくも北海道は、関空に台風が直撃した2日後の9月6日に大地震に見舞われている。 今回の危機対応から多くを学び、両社は空港運営の姿勢を改められるのか。背負った荷はあまりにも重い』、「北海道7空港の民営化」では少なくとも両社は外すべきだろう。

第三に、11月5日付け現代ビジネス「知らないと命にかかわる…M9南海トラフ地震のすべて いま、あなたにできることは何か」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58183
・『史上最悪の被害を出した関東大震災からおよそ100年。その3倍以上の死者数が想定されている「超巨大地震」は、眼前に迫っている。自衛のために知らなければならない、その時に起こること』、
興味深そうだ。
・『国民の半分が被災者に  今年に入り、立て続けに大きな地震が発生している。6月には大阪府北部の震度6弱、9月には北海道胆振東部の震度7、そして今月は、千葉県東方沖の震度4で、深夜に鳴り響く「地震速報」に多くの人が驚かされた。 異常ともいえるこの状況を前に、専門家たちが、口をそろえて次の超巨大地震―「南海トラフ地震」が刻一刻と近づいていることを警告しているのをご存じだろうか。 今年2月の文科省の地震調査委員会の発表によれば、今後30年間で、最大M9クラスの「南海トラフ地震」が発生する確率は70~80%だ。 「いつか来る」と言われて久しいこの大地震。政府によって発表される発生確率は年とともに上昇しており、未曽有の大災害は次第に「必ず来る」ものへと、その認識が変わってきている。 この大震災では、茨城県から沖縄県まで、全長2000km以上の範囲が被害を受ける。 政府の南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループは、南海トラフ地震を「国難」としたうえで、「国民の半分が被災者になる」とまで想定した。 何が起こり、どれだけの被害が出るのか。この巨大地震の全貌を知っておくことが最低限、あなたと、あなたの家族を守ることにつながる。 そもそも、南海トラフ地震はどのようなメカニズムで発生するのか。南海トラフ地震研究の第一人者である高橋学氏(立命館大学環太平洋文明研究センター)が解説する。 「日本の周りには北米プレート、太平洋プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートの4つのプレートがあります。これらのプレートはぶつかり合い、互いに圧力をかけながら、何年もかけて動いているのです」 プレートとは、地球表層部を覆う一枚の巨大な岩盤のようなものだ。日本周辺に存在する4つのプレートのうち、フィリピン海プレートは、ユーラシアプレートに押し曲げられながら潜り込むように動いている。この二つのプレートの境界線が、南海トラフと呼ばれる。 「二つの大きな岩石の板であるプレート同士が押し付けられ合った結果、負荷に耐えられなくなったユーラシアプレートが大きく跳ね上がる。これが南海トラフ地震です」(前出・高橋氏) 南海トラフは小笠原諸島東部からフィリピン海までのびている。この大きな岩盤が一挙に跳ね上がれば、茨城から沖縄まで甚大な被害を及ぼす超巨大地震となるのだ。 南海トラフにかかる負荷は、およそ90~150年の周期で、地震として「解放」される。過去に発生した南海トラフ地震は、1946年の昭和南海地震(M8)、1854年の安政地震(M8.4)、1707年の宝永地震(M8.6程度)と、そのすべてがM8を超える巨大地震となっている。 前回が1946年だったことを鑑みると、平均的な周期から考えて、次回は2070年前後と考えられる。 だが冒頭にも述べたとおり、政府はその発生確率について、今後30年間で、最大80%としている。つまり、これまでの周期よりも早く、巨大地震が起こるというのだ』、「「国民の半分が被災者になる」ような「南海トラフ地震」がそこまで近づいているとは不気味だ。
・『ビル9階まで津波が  推定発生時期が早まっているのはなぜか。前出・高橋氏が語る。 「現在、ユーラシアプレート上で直下型地震が頻発しています。特に、今年は静岡県西部や浜名湖付近、そして三重、紀伊半島南端などで直下型地震が発生しています。 つまり、現在プレートには強く負荷がかけられている状態です。私の研究によれば、あと2~3年以内に発生する可能性が高い」 一刻も早い対応が迫られる状況ではあるが、各自治体の地震への対策はけっして十分であるとは言えない。むしろ、「南海トラフ地震が発生すれば、史上最悪の被害を生む可能性が高い」と、専門家は異口同音に警鐘を鳴らす。 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの試算によれば、その想定死者数はなんと32万人にのぼる。これは、「過去最悪」と言われた1923年に発生した関東大震災における死者数(10万5000人)の3倍以上だ。 100年前とは違い、建物の耐震・免震化が行われた現在でこの被害が想定されているのだから、その破壊力は計り知れない。 もっとも深刻なのは津波による被害だ。太平洋沿岸部に位置する都市は、2000年に一度の大規模な津波に襲われるリスクがある――。災害時の被害シミュレーションなどを手がける、ハイドロ総合技術研究所の川崎浩司氏が語る。 「南海トラフ地震では、津波による浸水面積は東日本大震災の倍近く、1000平方kmを超えると考えられます。静岡県では津波の高さが最大30mを超えると予想される地域も存在する。これは、一般的なビルの8~9階分の高さに相当します」 東日本大震災では津波の高さは最大で16m強だった。その倍の高さの波が、秒速10mの速度で沿岸部を呑み込む。 浜松市や静岡市、焼津市などの沿岸部の都市はほぼ全域が浸水し、県内だけでおよそ32万棟が全壊、静岡県内だけで10万人超の死者が出る。これは、全体の犠牲者数の3分の1におよぶ。隣県の愛知県でも、2万3000人もの犠牲が出ることが想定されている。 ほかにも、高知県や小笠原諸島では30m超、三重県では20m超の高さの津波が襲う』、一時は地震の予知でしのごうとしたが、現在では予知は不可能が通説になったので、出たとこ勝負で臨むしかないのだろうか。これだけ高い「津波」では、防潮堤よりも高台への移住を進めるしかないだろう。
・『横浜が孤立する  津波の想定最大高が比較的低いその他の地域も、安全とは言えない。東京や横浜、大阪、そして名古屋では4m程度の津波が発生すると予測されている。静岡と比較すると、被害は小さく感じられるかもしれないが、川崎氏はこう警告する。 「これらの地域は『海抜0m地帯』の面積が広くなっています。大阪の梅田や東京の江東区などの街が長期間、水没してしまう可能性もある」 東京スカイツリーに臨む、隅田川付近は特に危険だ。同地に多く存在する地下商業施設などに津波が流れこめば、一瞬で浸水する。 地下だけではなく、建物の1階部分も浸水してしまう。高層マンションでは、エレベーターが軒並み故障し、住民が閉じ込められる。 お台場や銀座、浅草などの人気観光地もまた、海抜は0mに近い。多くの人でにぎわう街を、突如4mの津波が襲う―。地震でパニックを起こした人ごみの中、高い建物に逃げ込むことすら叶わずに、そのまま激流に呑み込まれてしまうだろう。 横浜もまた、津波の被害が大きい地域の一つだ。市内に56もの河川が流れる横浜では、津波が川を遡上し、街中で氾濫を引き起こす危険がある。 「横浜には古い橋が多く存在しています。これらの橋が地震や津波による大量の水の逆流に耐えられる保証はありません。交通インフラが麻痺し、多くの人が孤立してしまうでしょう」(災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏) 人や建物への直接的な被害に加え、もっとも危惧される「二次災害」が、ライフラインの喪失だ。 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの想定では、太平洋側の9割の地域で停電、断水が発生し、ガスも使用不可になるという試算結果が出ている。静岡県では340万人、愛知県では490万人が断水を強いられる。 「電気系統が完全に復旧するまでは、被災後1週間程度はかかります。上下水道に至っては復旧にそれ以上の時間を要し、地震から1週間が経過しても、上水道は7割、下水道も4割が使用できないと考えられます」(金沢大学教授で自然災害に詳しい宮島昌克氏) 上下水道は地下に管を通しているため、被害が広範囲になればなるほど、復旧には人員と時間が必要になる。 巨大な地震で避難場所が崩壊したり、交通インフラの壊滅で移動ができなかったりすれば、全国で3000万人を超える人々が1週間以上、ライフラインを欠いた状態で、救助を待ちながら生き延びなければならない。 仮に老人ホームでライフラインが復旧しなければ、食べ物もなく、トイレも流せずに、体力のない高齢者たちは徐々に弱っていく。彼ら全員が1週間以上もの間、確実に生き延びることができるとは考えにくい。 一人が体調を崩せば、連鎖的に数十人もの高齢者が重篤な状態に置かれてしまうことすら考えられる』、「多く存在する地下商業施設などに津波が流れこめば、一瞬で浸水する」、しかも停電で明かりもなくなるというのでは、まさに大都市での地獄絵だ。
・『助かるための準備  水道・ガスが東南海地域で被害が極めて大きくなるのに対し、停電の被害がもっとも大きいと予想されるのは大阪、兵庫だ。停電の件数は、静岡が200万軒、愛知が370万軒であるのに対し、大阪は450万軒、兵庫は300万軒だ。 なぜ、これほど突出してこの2府県が被害を受けるのか。その理由を、前出の和田氏が解説する。 「西日本の発電所及び関連施設は、多くが海沿いにあり、津波で浸水する可能性が高い。加えて、密集する家屋が倒壊することで、送電施設が被災し、広範囲で停電が発生するのです」 阪神工業地帯の中心地である大阪湾の埋め立て地には、多くの火力発電所が並ぶ。古くから、文字通り阪神地方の電力を賄ってきたこの施設が津波に襲われれば、辺りの電力供給は一挙に滞ってしまうのだ。 交通インフラへの影響もはかりしれない。日本の中心に位置する名古屋には、日本の交通の大動脈である東海道線、東名高速が走っている。これらが長期にわたって寸断されれば、商品輸送に大きな影響を与えることは間違いない。 ライフラインが壊滅した時、交通インフラが復旧しなければ、人員を派遣することはおろか、飲食料などの物資を届けることさえ困難だ。 東日本大震災では高速道路、新幹線はともに完全な復旧に2週間以上を要した。被害が広範囲におよぶ南海トラフ地震では、復旧までに1ヵ月以上かかる可能性もある。 総合的な被害は過去最悪の災害となることは疑いようがない。そんななかで、われわれはどのようにして南海トラフ地震に備えればよいのか。前出・和田氏が話す。 「自分の住んでいる地域のハザードマップを頭に入れておくことが重要です。より安全な建物の場所を確認し、最短の移動経路を確認する。素早く対処することができれば、助かる可能性は高くなります」 東海地方の内陸部をはじめ、津波の危険がなくても、大きく揺れる地域はある。このような地域では、屋内の家具などが大きく動き、ケガをするリスクもある。いまのうちに、家具の足元をしっかりと固定しておく必要がある。 また、前述のとおり、被害を受けたライフラインは、復旧に少なくとも数週間を要する。余裕をもって、1ヵ月分の非常食や飲料水を、すぐに持ち出すことができる場所に保管しておこう。 未曽有の大災害はすぐそこに迫っている。それを頭の片隅に置き、いざという時にすぐに行動できるかどうかが、あなたの命運を握っている』、「1ヵ月分の非常食や飲料水」というのは1週間分しか備えてない私には衝撃だ。しかも、広域が被害にあう南海トラフでは、1ヵ月分でも不十分かも知れない。早急に買い増しをしておこう。
タグ:災害 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 粟野仁雄 (その6)(西日本豪雨の隠れた人災「ダム放流で大洪水襲来」の危険すぎる現場、「関空」経営陣 災害対応で露呈した根本問題 民営化後の日仏合弁体制が生んだひずみ、知らないと命にかかわる…M9南海トラフ地震のすべて いま あなたにできることは何か) 西日本豪雨の隠れた人災「ダム放流で大洪水襲来」の危険すぎる現場」 様々な名目で造られたダムは大切な観光資源でもある。しかし、高位置に膨大な量の水を貯めておくことは、基本的に大きなリスクが伴う ダムを決壊から守る「放流」が二次被害をもたらす被災地の皮肉 媛県では肱川の2つのダムの放流で、合計9人が放流直後に水死 西日本豪雨時の放流で9人が死亡 怒号が飛び交った住民説明会 猫さえ逃げ遅れた大洪水の恐怖 緊急放流の責任は誰にあるのか? 「「関空」経営陣、災害対応で露呈した根本問題 民営化後の日仏合弁体制が生んだひずみ」 関空は台風直撃後丸2日間を無駄にした オリックスと、フランスの空港運営会社バンシ・エアポートが4割ずつ、関西圏の主要企業が共同で残りの2割を出資する体制 経営陣の対応や経営体制の適切性に多くの批判 関西エアポートの煮えきれない対応に対し、「首相官邸が激怒した」 復旧プランを策定。9月7日の朝に石井啓一国交相が記者会見で発表した。 だが複数の関空関係者によれば、このプランをめぐって関西エアポートのトップが割れた 社長と副社長が緊急時に言い争い 問題の筆頭は、言語だった 社内コミュニケーションが停滞 旧体制からの社員は失望、離職者も続出 北海道7空港の民営化はどうなるのか オリックスとバンシは現在、新千歳や女満別、旭川など北海道7空港の民営化に名乗りを上げており、一次審査を通過したとみられる 「知らないと命にかかわる…M9南海トラフ地震のすべて いま、あなたにできることは何か」 国民の半分が被災者に ビル9階まで津波が 横浜が孤立する 助かるための準備 自分の住んでいる地域のハザードマップを頭に入れておく 1ヵ月分の非常食や飲料水を、すぐに持ち出すことができる場所に保管しておこう
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働き方改革(その22)(「人間関係」に疲れ切った日本人を救う働き方 フリーエージェント化を採用した会社の成功、「全員出世を目指す」日本の働き方は無理すぎる 日本企業は「ジョブ型が標準」へ転換できるか、「不当な扱いを受けたら即転職」の時代は来るか 「ジョブ型」は会社と個人の双方にプラスだ、「生かすも殺すも俺次第」フリーランス礼賛社会の光と陰) [経済政策]

働き方改革については、7月12日に取上げた。今日は、(その22)(「人間関係」に疲れ切った日本人を救う働き方 フリーエージェント化を採用した会社の成功、「全員出世を目指す」日本の働き方は無理すぎる 日本企業は「ジョブ型が標準」へ転換できるか、「不当な扱いを受けたら即転職」の時代は来るか 「ジョブ型」は会社と個人の双方にプラスだ、「生かすも殺すも俺次第」フリーランス礼賛社会の光と陰)である。

先ずは、作家の橘 玲氏が7月16日付け東洋経済オンラインに掲載した「「人間関係」に疲れ切った日本人を救う働き方 フリーエージェント化を採用した会社の成功」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/291334
・『世界は急速に「未来」に向かっているにもかかわらず、日本人(サラリーマン)の働き方は相変わらず前近代的な「身分制」にとらわれたままです。この気の遠くなるような矛盾が私たちの直面している現実なのですが、そんな世界をどのように生き延びていけばいいのでしょうか。近著『働き方2.0vs4.0不条理な会社人生から自由になれる』より橘玲氏が海外の企業の事例から、複雑な人間関係や膨大な業務から社員を開放する新たな試みを紹介します』、興味深そうだ。
・『「触れ合い」が多すぎることが「ソロ化」を招く  多くの人が感じている「生きづらさ」の根源にあるのは、知識社会が高度化し人間関係が複雑化していることです。保守派やコミュニタリアン(共同体主義者)は「昔のような触れ合いがなくなった」と嘆きますが、これはそもそも事実として間違っています。 小さなムラ社会で農業しながら暮らしていれば、顔を合わせるのは家族と数人の隣人たちだけで、ムラの外から見知らぬ人間(異人)がやってきたら大騒ぎになるでしょう。ヒト(サピエンス)は旧石器時代から何十万年も、あるいは人類の祖先がチンパンジーから分岐してから何百万年も、こうした世界で暮らしてきました。 しかし今では、(少なくとも都会で暮らしていれば)日々、初対面の人と出会うのが当たり前です。こんな「異常」な環境に私たちは適応していないので、それだけでものすごいストレスになります。問題は「触れ合いがなくなった」ことではなく、「触れ合いが多すぎる」ことなのです。 日本をはじめとした先進国で急速に進む「ソロ化」はここから説明できます。日常生活での「触れ合い」に疲れ果ててしまうため、プライベートくらいは1人(ソロ)になりたいと思うのです。夫婦は「他人」ですから、その関係すらもおっくうになると、結婚できるだけの条件(仕事や収入)を十分に満たしていても生涯独身を選ぶ人も増えてくるでしょう。 こうした問題がわかっていても、会社(組織)は専門化する業務や多様な価値観を持つ顧客の要望に対応するために、仕事を複雑化せざるをえません。その結果、多くの社員が人間関係に翻弄され、擦り切れ、力尽きていきます。「karoshi(過労死)」は今では日本だけではなく、世界中で大きな社会問題になっています』、「「触れ合い」が多すぎることが「ソロ化」を招く」、意外だがその通りなのかも知れない。
・『この理不尽な事態に対して個人でできる対抗策が、会社を離脱するフリーエージェント化ですが、誰もが独立して自分の腕一本で家族を養っていけるわけではありません。そこで、「会社そのものを変えればいいじゃないか」という試みが出てきました。 ここで、ジェイソン・フリードとデイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソンの『NO HARD WORK!無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』から、「穏やかな会社(カーム・カンパニー)」というコンセプトを紹介しましょう。 フリードとハイネマイヤー・ハンソンはソフトウェア開発会社「ベースキャンプ」を1999年に創業しました。開発・販売するのはプロジェクト・マネジメントツールの「ベースキャンプ」のみで、世界30カ国で54人の社員(メンバー)が働いています。ということは、1カ国に1人か2人ということになります。 ベースキャンプの労働時間は1年を通じてだいたい1週当たり40時間で、夏は週32時間に減らしています。社員は3年に1回は1カ月の有給休暇を取ることができ、休暇中の旅行費用は会社持ちです』、「ソフトウェア開発会社」だから可能という面もあるにせよ、面白い試みだ。
・『働く時間は1日8時間あれば十分  こんなこんなことが可能なのは、本来、ちゃんとした仕事をするのに1日8時間あれば十分だからです。それなのに、日本人がなぜこれほど忙しいのかというと、「1日が数十の細かい時間に寸断されている」からです。会議や電話、同僚や部下からの相談、上司との雑談など、こまごまとした用事によって通常の勤務時間のほとんどは潰れてしまいます。細切れの時間で集中した仕事はできないので、夜中まで残業したり、休日に出勤して穴埋めしなくてはならなくなるのです。 ベースキャンプでは、それぞれの社員が「開講時間」を決め、1日1時間など、自分への質問はそのときに限るようにしています。そんなことをして大丈夫かと思うでしょうが、緊急の質問は実はほとんどなく、自力で解決できることも多いといいます。「聞けば教えてくれる」同僚や上司が近くにいるから、依存してしまうのです。 会議や打ち合わせなど、他の社員のスケジュールを勝手に埋めることができるシェア型のカレンダーもベースキャンプでは使用禁止です。他人の時間を勝手に分割し、仕事に集中できないようにして生産性を落とすだけだからです。 給与の交渉も時間の無駄だとして、プログラマーであれデザイナーであれ、いっさいの査定なしに、業界の同じポジションのトップ10%が得ているのと同じ額の給与が支払われます。これは住んでいる場所(国)に関係ないので、バングラデシュのような生活コストが安いところで暮らせば、ものすごく優雅な生活ができます。こうしてベースキャンプの社員たちは、自分と家族にとって最も快適な場所に移り住んでいきます。 どうでしょう? これはたしかに特殊なケースでしょうが、会社であっても、創意工夫によって「人間らしい」働き方をすることは可能なのです』、「それぞれの社員が「開講時間」を決め」、「シェア型のカレンダーも・・・使用禁止」、これであれば、各自は「仕事に集中」できるだろう。上司が部下に質問するのも「開講時間」に縛られるのだろうか気になるところだ。

次に、8月20日付け東洋経済オンラインが掲載した 日経新聞出身のジャーナリストの中野 円佳氏が慶應義塾大学教授の鶴光太郎氏と対談した「「全員出世を目指す」日本の働き方は無理すぎる 日本企業は「ジョブ型が標準」へ転換できるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/297914
・『東洋経済オンラインでの連載「育休世代VS.専業主婦前提社会」に大幅加筆した書籍、『なぜ共働きも専業もしんどいのか~主婦がいないと回らない構造』。これに合わせて、有識者らにインタビューをして本著の議論をもう一段進める。第4弾は、慶應義塾大学大学院商学研究科の鶴光太郎教授』、興味深そうだ。
・『日本は正社員の中にさらに格差をもたらす二重構造状態  中野:日本の雇用システムは、専業主婦が支えて男性正社員は「無限定」に働くことを前提にしてきました。また、それにより共働きが増えていく中でさまざまな軋轢が出ています。 欧米の「ジョブ型」は職務内容を明記したうえで採用をして、賃金もその職務にひも付いています。社内での異動は基本的に社内公募が中心で、転勤なども従業員の同意が前提です。 一方、日本の「メンバーシップ型」は、職務・場所・時間が限定されていない「無限定社員」で、これが大きな問題を生んでいます。ワーク・ライフ・バランスを持てなくさせ、女性の参入を阻み、また個人が専門性を身に付けることを阻害する。こうした問題を鶴先生も指摘されています。 「無限定社員」のような働き方ができる人ばかりではなくなってきている中で、数年前から、「限定社員」の考え方が出てきました。でも、私は地域限定社員などを取材してきて、基本的にあまりうまくいっていないのでは、と感じています。 女性ばかりがそれを選ぶことで間接的に格差につながっているし、昇進しづらいことで当初想定以上の賃金格差が生まれている企業もあります。結局、1つの会社の中に「限定社員」と「無限定社員」があって、どちらかを選べとなると、基本的には無限定社員を選ぶ競争になってしまうのではないでしょうか。 鶴:私が雇用ワーキンググループの座長を務めていた規制改革会議では、「限定社員」を「ジョブ型正社員」として法制度化して、導入する議論をしてきました。そのときに、組合側が懸念していたのが今おっしゃったような内容でした。正規・非正規の格差が問題なのに、さらに正社員の中に格差をもたらす二重構造をつくるのかと。 確かに二重構造は望ましくなく、当初から相互転換できる仕組みをつくらないといけないということを言ってきました。ジョブ型と無限定を行ったり来たりできるようにする。三菱UFJやAIG損保など、実際に転換できる仕組みを導入している企業もあります』、「メンバーシップ型」が太宗であるなかに、「ジョブ型」を導入するには、確かに問題がありそうだ。
・『中野:総合職・一般職の相互転換制度を導入したものの、5年経過して誰も使っていないというような企業もあります。 鶴:処遇の格差を残したまま制度だけを変えても、実態として活用できないですよね。もともとはオランダなどで、正社員だとしてもパートタイム、フルタイムを相互転換が自由にできる国があり、そこから着想を得ています。 時間が短いと処遇が低いとか出世ができないという状況では、「転換できますよ」と言っても誰も使わない。賃金システムと、整合的に制度を明示する必要があります。 中野:昇進の基準自体が曖昧で、ジョブ型を導入したものの、5年や10年運用して「やっぱり誰も出世していないじゃないか」「結局すごく格差が開いた」とわかるようでは、安心して選べない。手当などの格差があることはともかく、事前に明示されることが必要ですね。 一方、「ジョブ型正社員」をデフォルト(標準)化するにはどうしたらいいのでしょう。「無限定正社員」システムはそもそもいいシステムであり、それを維持したいと多くの人が思っていたら、“共有化された予想”が変わらない状況で自発的な変化を待っていたとしても、相当時間がかかると論文で指摘されています』、その通りだろう。
・『賃上げよりも雇用の安定が重視されてきた  鶴:労使ともに、従来のやり方をいいシステムだと思っているわけですよね。人事としては無限定社員として雇い、都合よく配属をぐるぐる回せるのは便利でしょう。ジョブ型にすると個々人にあわせて対応をしないといけなくなり、面倒くさくなります。 使用者側としても、年功賃金で社員のインセンティブを落とさないように働かせられるし、労働者側も家族を養えるだけの金額を受け取って、その代わりに長時間労働などの弊害はあるけれど、しょうがないよねとやってきたわけです。 この構造を変えるには、発想の転換が必要です。労働者側は基本的にこれまで中高年層の雇用を守るのが大事で、それ以外の対象を視界の中から外してきた側面があります。それによって、例えば就職氷河期の世代で非正規が増えていくのは仕方ないなどと、犠牲が若い世代に押しつけられてきた。労働者側が賃上げよりも雇用安定を重視してきたことが賃金が上がらない背景にもなっています。 ジョブ型になると、拠点が閉鎖されたら解雇される可能性もあるし、処遇が今より低くなる。多様な働き方が出てくればさまざまなメリットがあるとわかっていながらも、処遇悪化は嫌だ、となってしまう。経営側も変えるのは面倒だからと放っておいたら、勝手に改革が進むような推進力はないわけです』、「メンバーシップ型」が定着したなかに、「ジョブ型」を導入してゆく知恵はあるのだろうか。
・『中野:労使の「共有化された予想」を大きく変える「ビッグ・プッシュ」、つまり現在ある制度から、別の望ましい制度に移行させるために、外生的な大きなショックを加えることが必要だとされています。 鶴:変化はあります。例えば日立は徹底してグローバルな人材活用ということで、ジョブ型を標準にしていかないといけないという確信が中西宏明会長にある。新卒一括採用でいきなりジョブ型にするのは、僕はハードルが高いと思うけど、経営側の認識は確実に変わりつつありますよね。 ジョブ型の提言はこれまでずっとしてきて、その中で労働条件を明示する必要があるということを言ってきたわけだけれど、法制化は経営側に抵抗があった。ところが経営側のスタンスが変わってきたので、今までの提言の積み残しをもう一度出して、1歩進められないかと動いているのが最近の規制改革会議の議論です。 中野:日立のように「抜本的に見直します」「グローバルで制度をそろえます」という事例はともかくとして、1社の中にジョブ型と無限定が併存するとなると、どういった人が無限定のほうを選ぶようになるのでしょうか。 鶴:理系は専攻が細分化されていて、研究室の推薦などが従来からあり、すでにややジョブ型に近い側面があります。でも文系は大学でやったことがなかなか職務に直結する形ではないですよね。企業は結局のところ地頭や、私が「性格スキル」と呼んでいる非認知能力などを見て採用しています。 新卒一括採用は今の形から大きく変わらず、ただ入社10年くらいになるときにジョブ型にいくのか、今までの総合職的に昇進していくポジションにいくのか、分かれていく形がいいのではないでしょうか。すでに中途採用が増える中で、中途の人はジョブ型に近い配属をしている企業も多いと思います』、「ジョブ型」では職務規定も充実する必要がある筈だが、そんなことが出来る企業はごく一握りだろう。
・『日本企業が目指すべきジョブ型と無限定の構造  中野:入社10年程度で、無限定に働き昇進するエリートコースが一部あり、それ以外の人はジョブ型になっていくイメージでしょうか。 鶴:海外でもファストトラックで選別されて、エリートコースに最初から乗っている人はいて、相当厳しい働き方していて日本の無限定社員に近い印象です。 ただ、ジョブ型のほうにも、ある程度その領域で幹部候補になっていく人は出てくるはずなんですね。ジョブ型になったら幹部になれないというわけではなく、そのコースもある。普通の大多数の正社員はジョブ型、幹部を目指す人の中にもジョブ型と無限定といるイメージですね。無限定は残るとは言ってもかなり限定的です。 中野:日本は正社員総合職なら基本的に無限定社員で、誰もが社長など上を目指すような競争をしています。それが、裁量権がそれほどない人にまで、長時間労働や望まない転勤をのまねばならない構造をもたらしていた。 でもジョブ型が大多数になっていくと、皆がそれをやらなくてもよくなる。一方で、じゃあそちらにまったく昇進がないかというとそうではなく、その分野のプロになっていく道もあるということですね。 鶴:皆が同じような競争をするのではなく、ジョブ型が増えていくと専門の多様性も出てきます。流動性が高い、つまり人の出入りが多い企業は利益率が高いという調査結果も出ています。 人の出入りがなく閉じた組織で、新卒で皆が上がっていくところはやはり硬直化してしまう。同質性が高すぎるんですよね。生産性を上げるためには多様性が必要で、それは性別とか国籍とかだけではなくさまざまな専門を持った人が集まることが必要です。 中野:経験や価値観の多様性がある組織はイノベーションが起きやすいという研究結果がありますよね。同じような経験をした人ばかりでは新たなアイデアは生まれませんね。そうした発想が労使ともに広がるといいですね。(後編に続く)』、「人の出入りがなく閉じた組織で、新卒で皆が上がっていくところはやはり硬直化してしまう。同質性が高すぎるんですよね。生産性を上げるためには多様性が必要で、それは性別とか国籍とかだけではなくさまざまな専門を持った人が集まることが必要です」、というのはその通りだ。「後編」が楽しみだ。

第三に、上記の続き8月23日付け東洋経済オンライン「「不当な扱いを受けたら即転職」の時代は来るか 「ジョブ型」は会社と個人の双方にプラスだ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/297917
・『・・・「ジョブ型正社員」が増えた場合の働き方の変化は?  中野:今年5月に規制改革推進会議で、「ジョブ型正社員」の法整備が提言されています。前回記事で、企業内の昇進ルートなどがどのように変わっていくかイメージが湧いてきましたが、「ジョブ型正社員」が増えていった場合、個人の働き方としてはどのように変わっていくでしょうか。 鶴:ジョブ型というのはその領域のプロを自任するわけで、自分の市場価値を明確化することもしやすいです。どのような貢献をすることによりどれくらいの処遇を受けられるかが無限定の総合職より明らかなので、適切な処遇を受けられないのであればいつでも転職しますというふうになる。 この緊張感があることは企業にとってもプラスだと思います。ジョブ型にしたらどんどん人が抜けるということではなく、いつ抜けてもいいとなれば処遇をそれなりにする。働き手も処遇に見合った貢献をしないと、となる。流動性も高まれば生産性向上にもつながる。本人もどれくらい貢献しているかを意識するし、企業も評価する。 中野:これまでの無限定社員の問題の1つが、その企業にしか通用しないスキルだけが磨かれて、他社で通用する専門性がないから転職ができないということでしたね。日本は転職がしにくいというけれど、転職市場がないわけではなく、転職に踏み切れる人が少ない。 鶴:ジョブ型になっていけばその人の使用価値って何なのかを本人も企業も意識せざるをえない。40歳を過ぎて平社員でも賃金が自然に上がっていくというのは実際のパフォーマンスを反映しているのではなく、生活保障的な側面が強かったわけです。 転職すると賃金は下がるから、移動が妨げられてしまう。そうして企業は社員を囲い込んできたわけです。でも中高年になって、「追い出し部屋」に追いやられたというような話がありますが、そういうものがあること自体が日本特有の奇異な現象。不当な扱いをされたら辞めればいいわけですよね』、「ジョブ型」でも高齢化した場合には、転職は難しく、「不当な扱いをされたら辞めればいい」とはならないのではあるまいか。
・『ジョブ型にするなら、共働きがデフォルト  中野:男性で育休取得後に転勤が命じられ、退職したという事例がSNSで話題になりました。一方で企業側は配置をいくつか提案したけれどそれが不服で訴訟しているという事例もありますね。でも拠点がなくなるなどで配置転換は致し方なく、それに応じられないならそのエリアで別の仕事を探す、ジョブ型にするしかない。 鶴:欧米企業では30代後半から賃金は上がりにくいですよ。生産性が上がっていくわけではないので、ジョブ型賃金はそのようなカーブになる。ただそこが、中野さんが新刊で書かれているような家族システムの話とリンクしてしまっているわけですよね。 ジョブ型にするなら、共働きをデフォルトにしていかないと厳しい。これまで無限定正社員と主婦の組み合わせだから成り立ってきたわけだけれど、ジョブ型の片働きで住宅ローンを組んで子どもの教育費もかかってとなると、経済的に難しくなる。非正規社員はやはり安定しないので、夫婦共に正社員になって、どちらかあるいは両方がジョブ型というのが安定的な形だと思います。 中野:総合職の働き方自体も、例えば転勤について、今までのように辞令が出たら問答無用で行くという形から、企業が配慮する事例も出てきていると感じます。 鶴先生の論文でも「転勤可否の希望が聞かれる」「配偶者の転勤などを理由に本人の希望による勤務地転換の制度がある」場合、適職感、仕事満足度、幸福度などが高まると指摘されています。同列意識が強く、まだまだ配慮があると「ずるい」という声が上がってきてしまうのが日本企業の現状ではありますが……。 鶴:共働きがデフォルトになっていく中で、一緒に行かせてくれる、転勤先でも配偶者もフレキシブルにまた働けるということが大事になっていますね。 配慮することによって力を発揮してもらう、貢献してもらう。配慮してもらった側も、だから頑張ろうとなる。それは直接関係ない人にも、企業に対するエンゲージメントや企業のリピテーションを高めることで跳ね返ってくる。 日本経済新聞社のプロジェクトの一環「スマートワーク経営研究会」の調査で、「職務限定正社員」と「フレックスタイム」の導入が、時間当たり労働生産性の向上に寄与しているという結果もでています。従業員にきめ細かく配慮することが企業側に業績として返ってくる。子育て中の人とか特定の人を配慮するというのではなく、ジョブ型であれば全員が配慮される。配慮しなければ辞めてしまう』、「「職務限定正社員」と「フレックスタイム」の導入が、時間当たり労働生産性の向上に寄与しているという結果もでています」、大いにあり得そうな話だ。
・『無限定のものが限定されてきている  中野:今までのメンバーシップ型では、いかに自己犠牲を払って会社にコミットメントするか、忠誠心の高い人が出世するという形でした。それが変わっていかないといけないし、変わってきているということですね。 鶴:そういう意味では、ジョブ型という別の枠をつくるのではなく、今の無限定がジョブ型に近づいてきているという側面もあります。長時間労働もそれが当たり前という世界から上限規制をかけて縛りがかかってきています。まずは時間の面でまったくフリーな無限定は、なくなってきているわけですよね。 次は場所の限定性で、転勤については厚生労働省は、転勤に関する雇用管理のヒントと手法を公開しているのですが、もう一歩進めてしっかりしたガイドラインをつくっていくべきではないでしょうか。 先ほどの話とはまた違う方向性ではありますが、無限定のものが少しずつ限定されてきているので、ジョブ型に近づけていくうえではそういう進め方もあるかもしれないですね』、最後の部分は、その通りなのかも知れない。

第四に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が9月17日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「「生かすも殺すも俺次第」フリーランス礼賛社会の光と陰」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00040/?P=1
・『今回は「自由と幻想」について考えてみようと思う。 ・「殴られたり、蹴られたりされた。翌日は病院に行き会社を休んだ」(30代男性・映像製作技術者) ・「不当契約の強要、払い渋りにあった」(40代女性・編集者) ・「枕営業を要求された。応じなかったら悪い噂を流されたり、仕事の邪魔をされたりした」(30代女性・声優) ・「会食と称して食事を強要された。手を握る。体を触る。キスの強要もあった」(50代女性・コピーライター) ・「妊娠を告げたら仕事を与えないと言われ、仕事を切られた」(40代女性・編集者)Etc.etc……。 これはフリーランスで働く人たちを対象とした調査に寄せられたコメントの一部である(インターネット調査で1218人から回答)。 調査を実施した一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会などによれば、フリーランスで働く人の61.6%がパワハラ、36.6%がセクハラを経験。具体的には、「脅迫や名誉毀損などの精神的な攻撃」が59.4%と最も多く、「過大な要求」(42.4%)、「経済的な嫌がらせ」(39.1%)、「身体的な攻撃」(21.8%)など(複数回答)で、ハラスメントをされても「夢のため」と我慢してしまう被害者も少なくなかったという。 ……なんだかなぁ。パワハラやセクハラされている状況が、リアルにイメージできてしまうだけに胸がつまる』、「フリーランスで働く人の61.6%がパワハラ、36.6%がセクハラを経験」、想像以上に実態は悲惨なようだ。
・『労働法で守られないフリーランス  「てめぇ、こんなこともできないんなら死んでしまえ!」「おまえの代わりなんていくらでもいるんだよ!」 と恫喝(どうかつ)され、おびえるフリーランスを目の前で見たこともある。 そもそもフリーランスは、発注先と直接契約を結ぶので労働基準法の適用外。また、来年4月から適用されるパワハラの防止策を義務づける関連法でも、原則フリーランスは含まれていない。 もちろん法律さえ作れば解決するというものではないけど、直接契約を結ぶフリーランスは「何をやっても許される」と勘違いする“大ばか野郎”のターゲットになりがちである。「おまえを生かすも殺すも俺(私)次第だぞ!」などと面と向かって言われても、生活が懸かっているフリーランスは「ノー」と言えなくなってしまうのだ。 ちなみにILO(国際労働機関)が6月に採択し、日本も批准した「仕事の世界における暴力と嫌がらせの撤廃に関する条約」では、労働者に加えて、ボランティア、求職者、インターンや見習い実習生なども保護の対象である。この法律では「仕事の世界における暴力と嫌がらせ」を、「1回限りの出来事か繰り返されるものかを問わず、心身に対する危害あるいは性的・経済的に危害を与えることを目的とするか、そのような危害に帰する、あるいは帰する可能性が高い、一連の許容できない行動様式および行為またはその脅威(性差に基づく暴力と嫌がらせを含む)」と定義している。 そもそも一昨年くらいから、やたらと「フリーランス」という言葉が使われ、あたかも「フリーランス、かっこいい!」的イメージが広がったことに私は懸念を抱いている』、「フリーランス」を長年続けている河合氏の「懸念」は重く受け止めるべきだろう。
・『この背景にあるのが、何度かこのコラムでも紹介している「『働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために』懇談会 報告書」だ。 ・「2035年の企業は、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となる」 ・「プロジェクト期間が終了すれば、別の企業に所属する形になる」 ・「一日のうちに働く時間を自由に選択するため、フルタイマーではないパートタイマーの分類も意味がないものになる」 ・「企業に所属する期間の長短や雇用保障の有無等によって『正社員』や『非正規社員』の区分は意味を持たない」 ・「1つの会社に頼り切る必要もなくなるため、不当な働き方や報酬の押し付けを減らせる」などなど。 自立した個人、多様な価値観、自由に働く社会、独立して活動する個人、自立した個人が自律的に多様なスタイルで、といった具合に、報告書には「自立」と「自由」という言葉が脅迫的なまでに使われていて、読み終えたあとに“食あたり”ならぬ“自立あたり”に襲われるほど。 最新技術を最大限に生かせば、「個」を生かした「幸せな働き方」が担保できるとするこの報告書は、一言でいえば「会社員消滅宣言書」だ』、安倍政権は「フリーランス」を一方的に美化して広めたいのだろう。
・『「フリーター」もかつては自由を象徴するワードだった  政府にとってフリーランスという言葉は、「自由な働き方」「自立した個人」を印象付ける便利なワードなのだ。 その流れに拍車をかけたのが、フリーランスで成功している人たちだ。彼らはフリーランスのリスクを語るより「自分のやりたいことをやるにはフリーランス最高!」と安易にフリーランスを推奨した。 かつて「フリーター」という言葉に憧れ、「夢を追う若者」を量産したときと同じだ。 それまでは「定職に就かない」あるいは「無職」と呼ばれていた人たちが、「フリーター」というカタカナ用語によって、「自由を求める人」の象徴になった。 毎朝、“痛勤電車”に乗り込み、思いつきで物言う上司に堪え、理不尽のるつぼに悶える会社員と自分は違う。上司にペコペコしてるなんてかっこ悪い。会社の歯車になってどうする? 自分らしい人生を生きる自由な存在としての「フリーター」は、サラリーマン=会社員からの解放を願う若者を魅了したのだ』、確かに、一時は「フリーター」がもてはやされた。
・『やがてフリーターがワーキングプアを象徴する言葉に変わると、ノマドだの、ブロガーだのと、新しいカタカナな言葉が生まれ……。実態はフリーターと何ら変わらないのに、今度は「フリーランス」がさまざまな思惑を満たすワードとして、現在使われている。 厚労省はフリーランスの労働者を「発注者から委託を受け、主に個人で仕事をして報酬を得る者」と位置付け「雇用類似の働き方」と呼んでいるが、明確な定義はない。 そんな中、内閣府は7月、国内の就業者のうちフリーランスが306万人から341万人程度とする推計を公表したと報じられた。これは国内の就業者全体の約5%を占める。 341万人程度のうち、本業がフリーランスの労働者が228万人、副業が112万人で、就業者全体における本業がフリーランスの人の割合は3%程度。 報道によれば「政府は多様で柔軟な働き方を後押ししており、フリーランスの実態を把握することで今後の政策に役立てる」と考えているらしい。 明確な定義もないのに推計とは「????」って感じなのだし、3%という数字が多いのかどうかは皆目見当がつかないのだが、私の周りにはフリーランスが山のようにいるし、新聞各紙には「米国の6.9%に比べると半分以下にとどまる(本業のフリーランス)」という文言が書かれていたので、最低でもこの水準を政府は今後目指すということなのだろう』、「本業のフリーランス」の割合を「3%程度」から倍にするのを目指すというのは大変なことだ。
・『フリーランスは組織の出入り業者にすぎない  念のため断っておくが、私は「フリーランス」という働き方を否定的に捉えているわけではないし、フリーでやりたい人はやればいいと思う。だが、フリーで働くことのリスクを、もっときちんと伝えるべきだと考えている。 個人的な話で申し訳ないけど、私はかれこれ20年フリーランスで仕事をしているので、組織に属さないで働くことのリスクを嫌というほど味わった。 所詮、フリーランスは会社という組織の出入り業者でしかないわけで。「これでおしまい」と言われれば、抵抗するすべもなく「はい」と引き下がるしかない。組織外の人間に対して「会社員」が「会社員の人格」を表出させたときの怖さも、これまで何度も経験した。 前日まで「河合さん、最高っす!」と言っていた人が、会社員という立場に立った途端、全くの別人になる。そのギャップに、私は何度も震撼(しんかん)し、翻弄されてきた』、「私はかれこれ20年フリーランスで仕事をしている」河合氏の考え方は重い。「フリーで働くことのリスクを、もっときちんと伝えるべき」、というのはその通りだ。
・『仕事がなければ食えないし、あればあったで「1人ブラック企業」状態になる。目の前の仕事が次の仕事の営業なので、常に200%を目指してがんばるしかない。かといって病気になれば、また食えなくなるので、ギリギリの状態で健康にも留意し、それでも壊れる体を必死で仕事に支障がないように全力で保護しなければならない。 ちまたには「フリーランスで年収〇〇円稼ぐ!」といったコラムがあちこちに散見されるが、「稼ぐ」ことと「稼ぎ続ける」ことは全く別。食い続けるには常に自分が成長し、変化していかなきゃ駄目。おカネという有形の資産を得るには、そのカネを得るだけの無形の資産への投資が絶対条件になる。 自分が選ばれる人になるために仕事の質を上げるしかないのだが、これまた困ったことに「ここまで上げればオッケー!」というゴールはどこにも引かれてないので、食い続けるためには常に学び磨き続けるしかない。当然ながら「自己投資」するためには、カネも時間もかかる。 つまるところ、組織外の人間に指定席はなく、それが用意されているのは一部の天才だけ。普通の能力しかない私は、きょう、絶好調でたくさん稼げても、あすには突然稼ぎがなくなるという憂き目に、何度も遭遇した。 通帳とにらめっこする日々と、空白が目立つスケジュール帳に不安が募る日々は、何度でも繰り返されるのである』、「フリーランス」の仕事は確かに不安定で、リスクの固まりのようだ。
・『フリーランスの「自由」に必要不可欠な要素  フリーで20年生きてきて繰り返し学んだのは、「1円を稼ぐことの難しさ」といっても過言ではない。 フリーランスは確かに自由だが、その自由には仕事がない自由、体を壊す自由も含まれている。 自己管理し、自己投資し、自己プロデュースし、そのすべてが自己責任の上に成り立っていて、それに耐えられるだけの「開き直り」も必要不可欠だ。 何が何でも食っていってやるという覚悟がなきゃ、フリーでやっていくのは無理。雇ってもらえるかどうかはさておき、コンビニの店員さんだろうと、スーパーのレジ打ちだろうとやって、どうにかしてやる!という気合が必要なのだ。 ……気合。うん、根性ではなく、気合だ! 先に挙げた報告書も含め、「会社員じゃない=自由」「会社と距離をとる=新しい」といった風潮がこの数年広まっているけど、会社という組織の外に出ると組織の中にいるときには気づかなかった「会社員」ならではのいい面が見えるものだ。 会社を英語で言うときには、COMPANY(カンパニー)となるが、COMPANYは、「共に(COM)パン(Pains)を食べる仲間(Y)」ってこと。会社は「(食事など)何か一緒に行動する集団」である。会社には仲間と食事(給料)が存在するため、会社員は会社員が思う以上に「会社」という存在に守られている。 そもそも会社は入社したてのひよっこにも、「生活できるだけの賃金」をくれる。がんばって成果を上げれば給料を上げてくれたり、ワンランク上のタスクにチャレンジさせてくれたりすることだってある。 会社が自己啓発の機会を準備してくれることもあるし、普通だったら会えない人と会える機会を与えてくれることもある』、「「会社員」ならではのいい面」、言われてみれば、大きな恩恵を受けていたのは確かだ。
・『会社という環境がパフォーマンスを支えていた例も  仕事の合間に仲間たちとするたわいもない会話に救われることもあるし、自分の失敗を上司が尻拭いしてくれることだってある。 それだけではない。「会社」というコミュニティで同僚と共にする時間そのものが、自分のパフォーマンスを引き上げてくれるのだ。 ハーバード・ビジネススクールのボリス・グロイズバーグらが、ウォール街の投資銀行で働く1000人以上のアナリストを対象にした調査で、個人のパフォーマンスは個人の能力ではなく、「同僚との関係性」に支えられていることが分かった。 職場のメンバー同士が信頼し、お互い敬意を払っている環境で働いている時には、成績が極めて良く、職場の“スーパースター”だった人が、その腕を買われ、転職した途端、星の輝きは瞬く間に消え“フツーの人”に成り下がる。私たちは知識や能力は自分の力だと信じているけど、実際には他者との関係性が深く関連しているのだ。) 共に過ごし、相互依存関係を構築し、重要な情報やスキルを共有し、互いに刺激しあうことで自分の能力も引き出されていくのである。 会社というのは、まさにそのためのコミュニティーであり、会社のこういったプラス面を、会社側もフリーランス側も理解しておくことも大切じゃないのか。違いを尊重し、共感する。それが個人のパフォーマンスを上げ、ひいては会社の生産性向上につながっていくことを知っていれば、「生かすも殺すも俺次第」などと勘違いする輩も減るのではないか』、「ウォール街の投資銀行で働く1000人以上のアナリストを対象にした調査で、個人のパフォーマンスは個人の能力ではなく、「同僚との関係性」に支えられていることが分かった」、「アナリスト」のような専門的な仕事でも、「「同僚との関係性」に支えられている」、「同僚」の存在の重要性を再認識させられた。
・『会社とフリーランスの新しい関係を  会社の下にフリーランスがいるのではなく、あくまでも横。かつて大企業と中小企業が上下ではなく、同志としてつながり、大企業ができないことを中小がやり、中小ができないことを大企業が担保したような関係を、会社とフリーランスが構築できればいいと思う。 今のままではフリーランスはただの下僕になりかねない。 フリーラン=freelance は直訳すると「自由な槍」。本業フリーランスになる人は、自由という言葉に踊らされず、自分が戦える「槍」を装備しているか?を自問してほしい』、最後のアドバイスは、さすが的確なようだ。
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