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格差問題(その5)(“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』、「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?、正社員「逆ギレ」も 非正規の待遇格差が招く荒れる職場) [社会]

格差問題については、4月16日に取り上げた。今日は、(その5)(“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』、「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?、正社員「逆ギレ」も 非正規の待遇格差が招く荒れる職場)である。

先ずは、BNPパリバ証券経済調査本部長の河野龍太郎氏が2月17日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』(上・下)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/194007
・『世界的大ベストセラー『サピエンス全史』では、人類がどこから来たのかが論じられた。7万年前、人類が人類たり得た最初の「認知革命」が起こった。人類は、他の動物とは異なり、想像力で社会を構築し、ルールや宗教など虚構(物語)を共有することで、仲間と緊密に協力して地球最強の生物となった。 本書では、最新科学の知見を盛り込み、人類の行く末を論じる。 まず、生体器官もアルゴリズムに過ぎないという最新の生物学の知見を基に、前著で論じた認知革命や、その後の農業革命(1万2000年前)、文字や貨幣の発明(5000年前)、科学革命(500年前)などをデータ処理の観点から論じる。個体の制約から解放されたデータ処理能力は、ヒエラルキーの強化や仕事の細分化で、一段と効率化する。それが、人類が集団として進歩した理由だ。 300年前には自由主義など人間至上主義が誕生し、その追求の結果、人類を長年苦しめた飢餓や疫病、戦争の三つの大きな問題は20世紀末にほぼ解決された。人間中心の考えをさらに推し進め、今や私たちは、不死や至福という神の領域に踏み込もうとしている』、「個体の制約から解放されたデータ処理能力は、ヒエラルキーの強化や仕事の細分化で、一段と効率化する。それが、人類が集団として進歩した理由だ」、その通りなのだろう。
・『生物工学やAI(人工知能)の発展で、近い将来、生体情報は全てクラウド上に蓄積される。健康を望む人は、進んでデータを提供するはずだ。いずれ体だけでなく、頭脳や精神状況もモニターされ、自分以上に自分を知るネットワークシステムが誕生し、人間はその支配下に入る。人間は脇役に追いやられ、データ至上主義の時代が訪れる。同時に、サイボーグ工学の進展により、富裕層は体や頭脳のアップグレードを繰り返す。 多くの経済書は、技術革新で経済格差が拡大すると懸念してきた。本書は、データを握りアップグレードを続けホモ・デウス(デウスは神)となったエリートが支配する階級社会の到来を警告する。 評者は、AIの発展は恩恵だけではなく、ダークサイドももたらすと懸念していたが、自由主義が歯止めになると楽観していた。しかし、自由主義も私たちが作り上げた虚構の一つに過ぎず、むしろ不死や至福の追求を促し、自らを切り崩す。著者の執筆動機は、本書で描くディストピア(反理想郷)の到来を避けるためだという。 さて、私たち日本人は、自然との共生を重んじ、人間中心主義だけを拠(よ)り所(どころ)としてはこなかった。幅広い生物に仏性を認めるだけでなく、神と人を区別せず、万物を神と崇(あが)める土着信仰もある。西欧近代主義の帰結がホモ・デウスだとしても、別の未来も描けるように思えるが、手遅れなのか』、「本書は、データを握りアップグレードを続けホモ・デウス(デウスは神)となったエリートが支配する階級社会の到来を警告する」、まさに「ディストピア」そのものだ。「私たち日本人は、自然との共生を重んじ、人間中心主義だけを拠(よ)り所(どころ)としてはこなかった」、という面があるのは事実だが、楽観視は禁物だろう。

次に、作家の橘玲氏が8月26日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?【橘玲の日々刻々】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212972
・『死者35人、負傷者33人という多くの被害者を出した「京都アニメーション放火事件」は、放火や殺人というよりまぎれもない「テロ」です。しかし犯人は、いったい何の目的で「テロ」を行なったのでしょうか。 報道によれば、容疑者はさいたま市在住の41歳の男性で、2006年に下着泥棒で逮捕され、2012年にコンビニ強盗で収監されたあとは、生活保護を受けながら家賃4万円のアパートで暮らしていたとされます。事件の4日前に起こした近隣住民とのトラブルでは、相手の胸ぐらと髪をつかんで「殺すぞ。こっちは余裕ねえんだ」と恫喝し、7年前の逮捕勾留時には、部屋の壁にハンマーで大きな穴が開けられていたとも報じられています。 身柄を確保されたとき、容疑者は「小説をパクリやがって」と叫んだとされます。アニメーション会社は、容疑者と同姓同名の応募があり、一次審査を形式面で通過しなかったと説明しています。 ここからなんらかの被害妄想にとらわれていたことが疑われますが、精神疾患と犯罪を安易に結びつけることはできません。これは「人権問題」ではなく、そもそも重度の統合失調症では妄想や幻聴によって頭のなかが大混乱しているので、今回のような犯罪を計画し、実行するだけの心理的なエネルギーが残っていないのです。欧米の研究でも、精神疾患がアルコールやドラッグの乱用に結びついて犯罪に至ることはあっても、病気そのものを理由とする犯罪は一般よりはるかに少ないことがわかっています。 じつは、あらゆるテロに共通する犯人の要件がひとつあります。それが、「若い男」です。ISIS(イスラム国)にしても、欧米で続発する銃撃事件にしても、女性や子ども、高齢者が大量殺人を犯すことはありません。 これは生理学的には、男性ホルモンであるテストステロンが攻撃性や暴力性と結びつくことで説明されます。思春期になると男はテストステロンの濃度が急激に上がり、20代前半で最高になって、それ以降は年齢とともに下がっています。欧米の銃撃事件の犯人の年齢は、ほとんどがこの頂点付近にかたまっています』、「あらゆるテロに共通する犯人の要件がひとつあります。それが、「若い男」です」、というのはその通りだ。「テストステロン」も不可欠のものだが、副作用も大きいのは困ったことだ。
・『日本の「特殊性」は、川崎のスクールバス殺傷事件の犯人が51歳、今回の京アニ放火事件の容疑者が41歳、元農水省事務次官長男刺殺事件の被害者が44歳など、世間に衝撃を与えた事件の関係者の年齢が欧米よりかなり上がっていることです。さまざまな調査で、20代の若者の「生活の充実度」や「幸福度」がかなり高いことがわかっています。日々の暮らしに満足していれば、「社会に復讐する」理由はありません。 このように考えると、日本の社会の歪みが「就職氷河期」と呼ばれた1990年代半ばから2000年代はじめに成人した世代に集中していることがわかります。当時、正社員になることができず、その後も非正規や無職として貧困に喘ぐ彼らは、ネットの世界では自らを「下級国民」と呼んでいます。とりわけ低所得の男性は結婚もできず、社会からも性愛からも排除されてしまいます。 この国で続発するさまざまな事件は、「下級国民のテロリズム」なのかもしれません。そんな話を、新刊の『上級国民/下級国民』で書いています』、「日本の社会の歪みが「就職氷河期」と呼ばれた1990年代半ばから2000年代はじめに成人した世代に集中」、というのは確かに深刻だ。政府も対応策をアリバイづくりで打ち出しているが、実効性は期待薄だ。

第三に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が9月10日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「正社員「逆ギレ」も、非正規の待遇格差が招く荒れる職場」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00039/?P=1
・『「非正規と呼ぶな!」と指示したメールが厚生労働省内に出回ったらしい。先週あちこちで批判されていたので、ご存じの方も多いと思うけれど簡単に振り返っておく。 問題のメールは今年4月に同省の雇用環境・均等局の担当者名で省内の全部局に「『非正規雇用労働者』の呼称について(周知)」という件名で通知されたもので、国会答弁などでは「パートタイム労働者」「有期雇用労働者」「派遣労働者」などの呼称を使うことを指示。「非正規」のみや「非正規労働者」という言葉は用いないよう注意を促すものだった。 また、「『非正規雇用』のネーミングについては、これらの働き方には前向きなものがあるにもかかわらず、ネガティブなイメージがあるとの大臣の御指摘があったことも踏まえ、当局で検討していた」と記載され、「大臣了」という表現もあったという。 報道を受け根本匠厚生労働相はメールの指示や関与を否定。また、厚労省は内容が不正確だとし、文書やメールを撤回している。 厚労省は、2010年版の「労働経済の分析」(労働経済白書)で、1997年と2007年の年収分布を比較し、10年間で年収が100万~200万円台半ばの低所得者の割合が高まり、労働者の収入格差が広がったのは、「労働者派遣事業の規制緩和が後押しした」と自ら国の責任を認めていたのに……。この期に及んで言葉狩りに加担するとは実に残念である』、「「非正規と呼ぶな!」と指示したメールが厚生労働省内に出回った」、というの初耳だが、自らの失政を「言葉狩り」でしのごうとするのは余りにお粗末だ。
・『「非正規」の言葉を避ける“空気”が醸成されている  いったい何度、発覚、否定、撤回、が繰り返されていくのだろうか。 今回の問題を、役所の知人など複数名に確認したところ、かねてから永田町では「非 正規という言葉はイメージが悪い」「希望して非正規になっている人も多い」という意見があったそうだ。 「老後資金年金2000万円問題」が浮上し野党が行ったヒアリングでも(6月19日)、年金課長が「根本厚労相から『非正規と言うな』と言われている」と発言し、21日に根本厚労相が記者会見で課長の発言を否定したこともあった。 要するに、メールを撤回しようと何だろうと、「非正規という言葉はなくそうぜ!」という“空気”が出来上がっていたのだろう。 いずれにせよ、大抵こういった悪意なき無自覚の「言葉狩り」が起こるときは、決まって知識不足、認識不足、無知が存在する。 実際、3日の記者会見で、根本厚労相は以下のようにコメントしており、私はこのコメントの方がむしろ問題だと考えている(抜粋要約)。 「正社員に就けずにパートなどの働き方を余儀なくされている方や、積極的にパートなどの働き方を選択している方など、多様な働き方が進んでいる。単に『正規』『非正規』という切り分け方だけでよいのか、それぞれの課題に応じた施策を講ずるべきではないか、と思っている。 パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者に寄り添った政策を展開して、同一労働同一賃金の実現に向けて全力で取り組んでいく、これが私の姿勢であり、基本的な考え方です」 ……ふむ。「それぞれの課題」「同一労働同一賃金」という言葉を大臣が使っているので、一見問題があるとは思えない発言だし、ご本人からはいっさい悪意は感じられない だが、「働き方」と「働かせ方」は全くの別物である。これを混同していることにこそ、大きな問題がある。 働き方の主語は「働く人」。働かせ方の主語は「会社」だ』、「「働き方」と「働かせ方」は全くの別物である。これを混同していることにこそ、大きな問題がある」、というのは鋭い指摘だ。
・『「非正規雇用」vs「正社員」という構造が生まれた  パートタイムだろうと、有期雇用だろうと、派遣だろうと、はたまた正社員だろうと「働く」ということに全く違いはない。にもかかわらず、企業が非正規と正規という単なる雇用形態の違いで、 賃金が低い 残業代が出ない 産休や育休、有休が取れない 時短労働ができない 社内教育の機会がない 昇進や昇給の機会がない 雇用保険に入れない 簡単に「雇い止め」にあう、etc.etc.… と「働かせ方」を区別したのだ。 労働基準法や男女雇用均等法で禁止されていることを企業側が理解していない場合も多く、非正規雇用者は権利があるのに行使できない。 しかも、非正規社員が雇用契約している相手は「企業」だ。ところが企業による「待遇格差」が慣例化したことで、まるで「正社員さま」と契約しているかのような事態も発生している。 「私たちが、誰のために働かされているか分かります? 正社員のためですよ。何もしない正社員のために、契約社員は必死で働かされているんです」 ある会社で非正規社員として働く女性が、こう漏らしたことがある。 彼女の職場は転勤が多かったため、出産を機に退職。その後は育児に専念していたが、転勤問題が取り上げられるようになり、人事部のかつての同僚から「もし働く気があれば、契約社員として同じ部署で働けるけど?」と誘われ、昨年、会社に復帰した。正社員だった時と比べると、年収は4割ほど下がったという。 「以前は自分の仕事が終わればさっさと帰ってしまう契約社員たちを『楽でいいよなぁ』と、腹立たしく思ったことも正直ありました。でも、いざ自分が逆の立場になってみると、契約社員の方が真面目に働いていることに気づきました。 契約を更新してもらうためには、数字で成果を出さなければならない。残業代も出ませんし、限られた時間の中で効率よく仕事をこなさなければなりません。 正社員だった時の方が楽だったようにさえ思います。とりあえずは毎月の給料は出るし、ある程度結果を出せば、昇給も昇進もありますから」 「自分が契約社員になったら、正社員の怠慢と横柄な態度も目に付くようになってしまって。例えば、契約社員が事務書類の提出が遅れると、『意識が低い』だの『モチベーションが低い』だのマイナスの評価を受けます。ところが正社員だと『ちょっと忙しくて』という言い訳が通る。上司もそれを容認するんです。 それにね。正社員ってある程度までは横並びで昇進し、仕事も任されるようになるけど、契約社員は採用される時点で会社が求めるレベルに達しているので、その意味では契約社員の方が仕事ができます。おそらくそのことを正社員も肌で感じているのでしょう。特に私のように出戻りだと、年下の正社員はなめられたくないのか、ものすごい上から目線で対応してきます。 20代の正社員が顧客にてこずっていたのでアドバイスしたら、『正社員をなめるなよ!』と言われて驚きました。同期からは『非正規は気楽でいいよな?』と言われることもあります。給料が下がっても仕事が好きで、仕事をしたくて復帰したのに……。正社員ってそんなに偉いんでしょうか」』、企業にとっては、「正社員」の下に「非正規」を位置づけることで、正社員の自尊心をくすぐっているのだろう。
・『バカにされたくない“正社員”が契約社員を責める  この女性はインタビューに協力してくれた半年後に退職。メンタル不全に陥り、「やめる」という選択肢しかなかったという。 “正社員”から冒涜(ぼうとく)された経験を持つのは、この女性に限ったことではない。 「『パートなんていつだってクビにできるんだぞ』といつも言われるんです」と嘆く30代のパート社員もいたし、上司に意見したら『契約の身分で偉そうなこと言うな!』と恫喝(どうかつ)された40代の契約社員もいた。 人は自分が満たされないとき、他人に刃(やいば)を向けることがある。自分がバカにされたくないから、他人をバカにする。そんなとき、非正規という会社との契約形態が、かっこうのターゲットになることだってある。会社が待遇格差をつけたことで、正社員が妙な優越感を持つようになり、本来の性格までゆがめてしまったのだ。 揚げ句の果てに、何か事件が起こると「非正規」だの「契約社員」だのといった雇用形態の違いに原因があるかのように利用されるようになった。 繰り返すが、その“身分格差”を生んだのは、「非正規」という言葉ではなく、企業による待遇格差だ。働かせ方の問題である。「それぞれの課題に応じた施策を講ずるべきだ」(by 根本厚労相)などとまどろっこしいことを言っている場合ではないのではないか。 これまで、政府は基本的に「待遇格差」を禁じ、「正社員化」を進める法律を制定してきたのだから、法の抜け穴を巧妙に利用し、差別をしている企業を根こそぎ罰すればいい。それだけである程度非正規の問題は解決されるはずだ』、「“身分格差”を生んだのは、「非正規」という言葉ではなく、企業による待遇格差だ。働かせ方の問題である」、「法の抜け穴を巧妙に利用し、差別をしている企業を根こそぎ罰すればいい」、などはその通りだ。
・『実はこの“身分格差”問題は、日本の労働史を振り返ると「男社会」により生まれたことが分かる。 さかのぼること半世紀前。1960年代に増加した「臨時工」に関して、今の「非正規」と同様の問題が起き社会問題となった。 当時、企業は正規雇用である「本工(正社員)」とは異なる雇用形態で、賃金が安く不安定な臨時工を増やし、生産性を向上させた。 そこで政府は1966年に「不安定な雇用状態の是正を図るために、雇用形態の改善等を推進するために必要な施策を充実すること」を基本方針に掲げ、1967年に策定された雇用対策基本計画で「不安定な雇用者を減らす」「賃金等の処遇で差別をなくす」ことをその後10年程度の政策目標に設定する。 ところが時代は高度成長期に突入し、日本中の企業が人手不足解消に臨時工を常用工として登用するようになった。その結果、臨時工問題は自然消滅。その一方で、労働力を女性に求め、主婦を「パート」として安い賃金で雇う企業が増えた。 実際には現場を支えていたのは多くのパート従業員だったにもかかわらず、パートの担い手が主婦だったことで「パート(=非正規雇用)は補助的な存在」「男性正社員とは身分が違う」「賃金が低くて当たり前」「待遇が悪くても仕方がない」という常識が定着してしまったのだ』、労働組合が「非正規雇用」の問題を真剣に取り上げてこなかった罪も大きい。
・『非正規社員が正社員より給与が高い国も  それだけではない。 「なぜ、何年働いてもパートの賃金は上がらないんだ!」という不満が出るたびに、企業は「能力の違い」という常套句(じょうとうく)を用いた。正社員の賃金が職務給や年功制で上がっていくことを正当化するために、パートで働いている人の学歴、労働経験などを用い、能力のなさを論証することで、賃金格差を問題視する視点そのものを消滅させたのである。 私は今の非正規雇用の待遇の悪さは、こうしたパートさん誕生の歴史が根っこにあると考えている。それゆえ、とりわけ女性の非正規の賃金は低い。さらに「正社員を卒業」したシニア社員が非正規で雇われるようになり、ますます非正規雇用の全体の賃金も抑えられるようになってしまったのだ(参考記事:「他人ごとではない老後破綻、60過ぎたら最低賃金に」)。 だいたい雇用問題では、常に「世界と戦うには……」という枕詞が使われるけど、欧州諸国では「非正規社員の賃金は正社員よりも高くて当たり前」が常識である。 フランスでは派遣労働者や有期労働者は、「企業が必要な時だけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金が支払われている。イタリア、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどでも、非正規労働者の賃金の方が正社員よりも高い。「解雇によるリスク」を補うために賃金にプラスαを加えるのだ』、「「解雇によるリスク」を補うために賃金にプラスαを加えるのだ」、というのは確かに合理的だ。日本でそうなってないのは、歴史的経緯などが要因になっているのかも知れない。
・『また、EU諸国の中には、原則的に有期雇用は禁止し、有期雇用にできる場合の制約を詳細に決めているケースも多い。 4割が非正規の今の日本社会ではかなり極論にはなるかもしれないけど、私は一貫して有期雇用のマイナス面を指摘しているので、有期雇用は原則禁止した方がいいと考えている。人間の尊厳のために仕事は必要だし、有期契約のような不安定な仕事は、人間の尊厳を満たすには十分ではない。生きる力の土台をも奪うものだ。 ただ、その一方で、非正規社員、正社員に関係なく企業とのつながりが不安定になり、同時に企業と働く人との繋がりが重要ではなくなってきていることも否定できない。 その上で、改めて考えると、働く人が生きていく上で、仕事ができることと、生活を送るのに十分な収入があることを、法律で担保することが極めて重要になる。 くしくも、厚労省メール問題が浮上したのと時を同じくして、日本企業が持つ「内部留保(利益剰余金)」が7年連続で過去最大を更新したと財務省が発表した。2018年度の金融業・保険業を除く全産業の「利益剰余金」は463兆1308億円で、前年に比べ3.7%も増えていたのだ。 使わないでため込んでいるくらいなら、まずは非正規の賃金を上げるよう政府は“通達メール”でも出してはどうか。 あと数週間で消費税も上げられるのだ。 政府は消費が一向に盛り上がらないと嘆いているけれど、4割も非正規がいるのだから、使おうにも金がない世帯が増えているわけで。徹底的に「労働者を保護する」という観点に立てば、できることはたくさんある。 変えるべきは「非正規」のイメージではなく、差別的な働かせ方だ』、最後の部分は諸手を上げて同意する。
タグ:変えるべきは「非正規」のイメージではなく、差別的な働かせ方だ EU諸国の中には、原則的に有期雇用は禁止し、有期雇用にできる場合の制約を詳細に決めているケースも多い 「解雇によるリスク」を補うために賃金にプラスαを加えるのだ 非正規社員が正社員より給与が高い国も 身分格差”問題は、日本の労働史を振り返ると「男社会」により生まれた バカにされたくない“正社員”が契約社員を責める 「非正規雇用」vs「正社員」という構造が生まれた 「非正規」の言葉を避ける“空気”が醸成されている この期に及んで言葉狩りに加担するとは実に残念である 「労働経済の分析」(労働経済白書)で、1997年と2007年の年収分布を比較し、10年間で年収が100万~200万円台半ばの低所得者の割合が高まり、労働者の収入格差が広がったのは、「労働者派遣事業の規制緩和が後押しした」と自ら国の責任を認めていた 「非正規と呼ぶな!」と指示したメールが厚生労働省内に出回った 「正社員「逆ギレ」も、非正規の待遇格差が招く荒れる職場」 日経ビジネスオンライン 河合 薫 この国で続発するさまざまな事件は、「下級国民のテロリズム」なのかもしれません 当時、正社員になることができず、その後も非正規や無職として貧困に喘ぐ彼らは、ネットの世界では自らを「下級国民」と呼んでいます 日本の社会の歪みが「就職氷河期」と呼ばれた1990年代半ばから2000年代はじめに成人した世代に集中 日本の「特殊性」は、川崎のスクールバス殺傷事件の犯人が51歳、今回の京アニ放火事件の容疑者が41歳、元農水省事務次官長男刺殺事件の被害者が44歳など、世間に衝撃を与えた事件の関係者の年齢が欧米よりかなり上がっていること テストステロンが攻撃性や暴力性と結びつくことで説明 あらゆるテロに共通する犯人の要件がひとつあります。それが、「若い男」です 「「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?【橘玲の日々刻々】」 橘玲 私たち日本人は、自然との共生を重んじ、人間中心主義だけを拠(よ)り所(どころ)としてはこなかった。幅広い生物に仏性を認めるだけでなく、神と人を区別せず、万物を神と崇(あが)める土着信仰もある。西欧近代主義の帰結がホモ・デウスだとしても、別の未来も描けるように思えるが、手遅れなのか データを握りアップグレードを続けホモ・デウス(デウスは神)となったエリートが支配する階級社会の到来を警告する いずれ体だけでなく、頭脳や精神状況もモニターされ、自分以上に自分を知るネットワークシステムが誕生し、人間はその支配下に入る。人間は脇役に追いやられ、データ至上主義の時代が訪れる 人間中心の考えをさらに推し進め、今や私たちは、不死や至福という神の領域に踏み込もうとしている 300年前には自由主義など人間至上主義が誕生し、その追求の結果、人類を長年苦しめた飢餓や疫病、戦争の三つの大きな問題は20世紀末にほぼ解決された 個体の制約から解放されたデータ処理能力は、ヒエラルキーの強化や仕事の細分化で、一段と効率化する。それが、人類が集団として進歩した理由だ 『サピエンス全史』 格差問題 (その5)(“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』、「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?、正社員「逆ギレ」も 非正規の待遇格差が招く荒れる職場) 河野龍太郎 ダイヤモンド・オンライン 「“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』(上・下)」
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