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日韓関係(その8)(両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢、橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」、日韓が陥る「記憶の政治」の愚、日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」) [外交]

一昨日、昨日に続いて、日韓関係(その8)(両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢、橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」、日韓が陥る「記憶の政治」の愚、日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」)を取上げよう。「またか」とウンザリする向きもあろうかとは思うが、この問題の重要性を考慮すれば、異例の3日連続もアリだと考えた次第だ。

先ずは、軍事評論家、ジャーナリストの田岡俊次氏が9月10日付け日刊ゲンダイに掲載した「【寄稿】両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/261887
・『日韓の対立は昨年10月30日、韓国大法院が徴用工への補償を命じたのが発端と言われがちだが、実はそれ以前、10月10日から済州島で行われた国際観艦式に参加予定の日本の護衛艦は艦旗(旭日旗)を掲揚しないよう韓国側が求め亀裂が生じた。 旭日旗は中国が1895年の下関条約で韓国独立を認めた日清戦争でも翻り、今日の海上自衛隊旗章規則も掲揚を定める。「艦旗を掲げるな」と言うのは世界の海軍の礼儀に反し、海上自衛隊は参加を取り消した。 12月20日には韓国の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射する事件も発生、今年10月14日の相模湾での観艦式に中国は招くが、韓国海軍は招待されない。今後、韓国が詫びたり、日本の態度が変わることは考えにくく“日韓海軍冷戦”の状態は続くだろう。 これは文在寅大統領の思想傾向だけが原因ではない。韓国海軍は盧武鉉政権下の2005年に進水した1万9000トン級の揚陸艦(ヘリ空母)を「独島」(竹島)と命名、李明博政権下の2008年に進水した1800トン級の潜水艦は「安重根」(伊藤博文の暗殺犯)と名付けるなど、露骨な対決姿勢を示してきた。北朝鮮海・空軍は弱体だから、韓国海・空軍は予算拡大を狙うため、日本を仮想敵視するが、「日本と戦う」と言えば予算がつくのが問題だ。 日本では冷戦的世界観が残り「韓国は味方」と思いがちで、韓国の軍拡に関する報道はまれだが、海軍はヘリ空母1隻、1300~1800トン級の潜水艦16隻、巡洋艦3隻、駆逐艦・フリゲート23隻、1200トン級哨戒艦18隻を持ち、日本のヘリ空母4隻、巡洋艦2隻、その他の護衛艦41隻に数的には迫っている』、日本のヘリ空母に対抗して、ヘリ空母を建造、「潜水艦は「安重根」と名付けるなど、露骨な対決姿勢」、「「日本と戦う」と言えば予算がつく」、「日本では冷戦的世界観が残り「韓国は味方」と思いがち」、韓国が日本を仮想敵国として着々と軍拡にいそしんでいるとは不気味だ。しかも、「文在寅大統領の思想傾向だけが原因ではない」、日本の安全保障の考え方そのものを抜本的に見直す必要があるのかも知れない。
・『「日本と戦う」で予算がつく  2隻目のヘリ空母や3700トン級潜水艦などが続々と進水し、来年度から5年間の中期国防計画では日本の「いずも」級(満載2万6000トン)を上回る3万トン級空母を建造、F35B戦闘機十数機を搭載する。 韓国は弾道ミサイル「玄武2C」(射程800キロ、名古屋に届く)、巡航ミサイル「玄武3C」(同1500キロ、日本全土に届く)の量産を進め、弾道・巡航ミサイルの総数は2000基に近い。核弾頭の代わりに弾道ミサイルは子爆弾約900発を放出し、広い地域の制圧を狙う。潜水艦、水上艦もそれを搭載、ミサイル128発を積む「合同火力艦」も中期防に入れている』、どうも北朝鮮ではなく、日本を仮想敵国と想定した装備のようだ。 空軍は、実質的には爆撃機であるF15K(戦闘行動半径1250キロ)59機など戦闘機500機を超え、航空自衛隊の330機をしのぐ。空中給油機もエアバス330の改装型4機を発注した。 北朝鮮は奥行き約500キロ、北京へも約900キロだから、射程1500キロの巡航ミサイルや空中給油機は何のためか。毎年2回演習をする「独島防衛」に必要とも考え難い。韓国陸軍は米陸軍の47万人より多い49万人だが、11万8000人を削減する。防衛費を増大する一方で北朝鮮に対抗する陸軍を減らし、海・空軍の増強をはかる。 韓国の今年度の国防予算は円換算で約4兆円、日本の8割だが、韓国は5年間に年平均7・5%ずつ増額する計画で日本と並ぶ。韓国のGDPは昨年1・66兆ドルでロシアの1・58兆ドルを上回る。日韓軍備競争は双方に不利益だが、それが起こりつつある形勢だ』、「戦闘機500機を超え、航空自衛隊の330機をしのぐ」、「空中給油機もエアバス330の改装型4機を発注」、「防衛費を増大する一方で北朝鮮に対抗する陸軍を減らし、海・空軍の増強をはかる」、韓国に対抗した軍拡競争に乗るべきではなく、あくまで軍事面を中心とした対話を強化すべきだろう。

次に、9月11日付けPresident Online「橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/29859
・『今回の日韓関係悪化の大元は、韓国大法院(最高裁)による徴用工判決だ。これに対して日本側は、輸出管理手続きの厳格化といった実質的な利益のない対抗手段ではなく、やられた分だけやり返すための法的な理屈を考えるべき。その手段とは? プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(9月10日配信)から抜粋記事をお届けします』、辣腕弁護士としての提案とは興味深そうだ。
・『韓国側の主張を分析したうえで日本の主張を徹底的に構築せよ  今回の韓国大法院の徴用工判決には、それなりの法的理屈があることを本メルマガで詳論してきた。1965年の日韓基本条約・請求権協定があるからハイ終わり、と簡単に言えるものではない。お互いに解釈の余地が生まれ得る問題だ。ゆえに、その点を踏まえて、日本は日本の立場の法的主張を準備しておくべきだ。 相手の主張を吟味することなく、自分の主張が絶対的に正しいものと信じ込んで法的論戦に臨むと、足元をすくわれる。韓国側の主張もそれなりに成立することを認識した上で、日本側の法的主張を徹底的に構築すべきだ。(略)さらに国際司法裁判所や仲裁委員会での判断を仰ぐ前に、国家の実力行使で解決するやり方もある。もちろん武力行使によらない実力行使だ。現在の日韓双方は、その報復合戦に突入している。ただし、実力行使を行うのであれば、その根拠を法的に構築すると同時に、これまでも散々論じてきたが、実害が最小限にとどまるような方法を採らなければならない』、日本政府は「日韓基本条約・請求権協定があるからハイ終わり」といった余りに単純化した主張から脱するべきだ。「報復合戦」も「実害が最小限にとどまるような方法を採らなければならない」、その通りだ。
・『李承晩ライン拿捕事件を韓国政府に賠償請求できるか  この点、日本の政治家やインテリの一部には、次のような歴史的事実を基に、「韓国政府」への実力行使を叫ぶ者がいる。 1952年発効のサンフランシスコ講和条約によって日本が主権を回復する直前に、当時の李承晩韓国大統領が、日本海に李承晩ラインなるものを一方的に引いて、竹島を実効支配した。今の中国が南シナ海でやっているのと同じようなことをやったのである。日本は当時、主権が回復していなかったのでなす術がなかった。その後、サンフランシスコ講和条約によって日本の主権が回復し、本来であれば日本の漁船が漁業をできる地域においても、韓国は李承晩ラインを盾に、日本漁船を拿捕し、多くの日本人漁師が韓国側に拘束された。拘束時に死亡者まで出ている。 この点について、日本側は韓国に補償請求しようとした。ところが1965年の日韓基本条約・日韓請求権協定時に、日韓の紛争は全て終結させる趣旨から、李承晩ラインに基づく日本漁船拿捕事件の補償は、全て日本政府が日本人漁師に行うことで決着した。自国民への補償は自国政府が行うという原則論である。そして実際、日本政府は日本人漁師に補償を行った。 そこで、日本の政治家やインテリの一部は、この点を蒸し返し、再度「韓国政府」に直接請求すればいいと主張する。 しかし、これは国際法上の「主権免除」という法的理屈を知らない主張だ。国際社会のルールにおいては、自国の裁判所において外国「政府」を直接訴えることはできない。すなわち日本の裁判所において「韓国政府」を直接訴えることはできないのである。「韓国政府」を直接訴えたいなら、「韓国の裁判所」で訴えるほかないのであるが、しかし、李承晩ラインを巡る補償について「韓国の裁判所」に「韓国政府」を訴えたところで、日本側が勝てる見込みはないだろう。韓国の裁判所では韓国側の法的理屈が採用されてしまうだろうから。 この点、韓国の元徴用工側は、うまくやっている。今回の韓国大法院が下した徴用工判決を見て欲しい。これは元徴用工の韓国国民が「韓国の裁判所」において韓国国内の「日本企業」を訴えている。「韓国の裁判所」において「日本政府」を訴えることはできないが、韓国国内の「日本企業」を訴えることはできるのである。 韓国国民が、徴用工問題で、「日本の裁判所」において、「日本政府」や「日本国内の日本企業」を訴えても負ける。先に述べたとおり、日本の裁判所は、元徴用工の個人補償について裁判所に訴えることはできないという立場だからだ。だから元徴用工たちは、自分たちの味方になってくれるだろう「韓国の裁判所」において韓国国内の「日本企業」を訴えて、勝訴判決を得たのである』、「李承晩ライン拿捕事件」はかろうじて思い出したが、「「韓国政府」に直接請求」することは、「国際法上の「主権免除」」で出来ないというのは、残念だがやむを得ない。「元徴用工たちは・・・「韓国の裁判所」において韓国国内の「日本企業」を訴えて、勝訴判決を得た」というのは鮮やかなやり方だ。
・これこそが日本の政治家の役割  日本側にもこのような緻密な戦術が必要である。韓国政府を訴えろ! では完敗する。だからこそ、日本側も、「日本の裁判所」で「日本国内の」「韓国企業」を訴えることはできないか。もっといえば、日本政府が「日本国内の」「韓国企業」の財産を差し押さえることができないか、を徹底的に考えるべきで、それが日本の政治家の役割だ。 李承晩ラインに基づく日本漁船拿捕事件や、その他のもので日本人や日本企業、さらには日本政府が「日本国内の」「韓国企業」を訴えることができるものはないか。最近、日本の外務省は、徴用工判決に基づく差押えやその現金化によって韓国内の日本企業に損害が出れば、日本政府は国際法に基づいて韓国側に損害賠償請求ができる、という見解を発出している。 加えて、韓国側が、徴用工判決とそれに基づく日本企業への差押え・現金化という日韓基本条約・日韓請求権協定に反する行動を貫くというのであれば、それこそ日韓基本条約・日韓請求権協定の破棄ということも視野に入れるべきである。それらを破棄すると日本側が韓国側に提供した5億ドルの資金を韓国側から戻してもらうことになる。ここを精査して、「日本の裁判所」に「韓国政府」を訴えるのではなく、「日本の裁判所」に「日本国内の」「韓国企業」を訴えたり、その財産を差し押さえたりすることができるように知恵を絞るのが日本の政治家の腕の見せどころだ。 (略) 政治家やインテリたちは、日韓関係の悪化で損をすることがないし、むしろそのことで仕事が増えるインテリも多いので、強硬策だけを叫んでいればいい。しかし、損をする民間人にとってはたまったものじゃない。加えて韓国が、日本の要求する輸出管理手続きをきちんと踏んでくれば、日本側は輸出許可を出さざるを得ず、そうなると韓国には何のプレッシャーにもならずに、徴用工判決の問題は何ら解決しない。 徴用工判決問題を解決するというなら、日本側の意図を明確にして、相手を動かす方策を実行すべきである。輸出管理手続きを厳格化し、「それは安全保障の問題だ!」などとごまかすべきではない。 「分捕られたなら、それを分捕り返す」。これが、日本側が採るべき本来の方策だ。(略)』、総論的にはその通りだが、実際には「「日本の裁判所」に「日本国内の」「韓国企業」を訴え」るための不当行為など、いくら頭をひねっても出てこないのではなかろうか。威勢がいい啖呵を切ることにかけては橋下氏は天才的だが、中味が乏しいこともあるようだ。

第三に、キャロル・グラック氏(コロンビア大学教授〔歴史学〕)が9月18日付けNewsweek日本版に掲載した「日韓が陥る「記憶の政治」の愚 どちらの何が正しく、何が間違いか」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/post-13004.php
・『<過去を政治の道具にする「記憶の政治」とは何か。泥沼の関係に陥りつつある日韓が仏独から学べること。本誌最新号「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集より> またしても、日本と韓国の間で緊張が高まっている。そして、またも双方が、敵意が膨れ上がる主な原因は「歴史問題」だと言い出している。 韓国人は、日本人が戦時中と植民地時代の行いを十分に認識してないと非難する。日本人は、自国で語られる歴史に欠けている部分を蒸し返されることにうんざりしている。過去を武器にして現在に損失をもたらしているという意味では、どちらの国も同罪だ。 日本人も韓国人もこれは「歴史」論争だと言っているが、実際に話しているのは「記憶」についてだ。 歴史と記憶は同じものではない。歴史とは過去に起きたことであり、記憶とは、そのストーリーをどのように語るかということだ。国家が自らのストーリーを語るときは特に、記憶は選択的、政治的、感情的になりがちだ。 国民の歴史という概念は目新しいものではない。全ての国が、時には英雄として、時には犠牲者として自分に都合よくストーリーを語るが、それらは常にアイデンティティーと国家の誇りに関わっている。 一方で、何が新しいかと言えば、いま私たちは「記憶の政治(メモリー・ポリティクス)」の時代を生きているということだ。記憶の政治では、歴史が国境を超えた問題になる。過去を利用して国内でアイデンティティーを築くだけでなく、国際関係でも過去を政治の道具にするのだ。 国境を超える記憶の政治は、1945年からの数十年間で変化してきた。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)など戦時中の不正義を事実として認め語ろうという努力を機に、「世界的な記憶の文化」が徐々に生まれてきた。 国の過去の中でより暗い部分とどう向き合うかについての基準には、公に認めること、正式な謝罪、被害者への賠償が含まれるようになった。こうした記憶の基準は、奴隷制や先住民族への暴力など自国民に対してだけでなく、戦争や内戦で対峙した昔の敵や、帝国主義時代の旧植民地にも適用される。 日本と韓国は今まさに、国家の歴史と国際的な記憶の政治の複雑な網にからめ捕られている』、「日本人も韓国人もこれは「歴史」論争だと言っているが、実際に話しているのは「記憶」についてだ。 歴史と記憶は同じものではない。歴史とは過去に起きたことであり、記憶とは、そのストーリーをどのように語るかということだ。国家が自らのストーリーを語るときは特に、記憶は選択的、政治的、感情的になりがちだ」、これが海外からの冷静な見方なのだろう。「日本と韓国は今まさに、国家の歴史と国際的な記憶の政治の複雑な網にからめ捕られている」、というのは言い得て妙だ。
・『日韓双方が正しく間違っている  韓国でリベラルな文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「われわれは二度と日本に負けない」と宣言するとき、彼は国家の経済への脅威について訴えている。親日派(「親日反民族行為者」)をやり玉に挙げるとき、彼は韓国の独立を、1948年に南北朝鮮がそれぞれ独立した冷戦下の反共産主義というより1919年の反日独立運動(三・一独立運動)に結び付けようとしている。このようにして、最終的に南北統一を目指す韓国の国民のストーリーに、北朝鮮が取り込まれていく。 こうしたレトリックは、国内的な目的のために日本に対する敵意を振りかざすものだ。) 一方、日本で保守派の安倍晋三首相が従軍慰安婦問題に関する新たな謝罪を拒み、強制連行という解釈を認めないとき、彼は国家のプライドと国内の政治基盤に語り掛けている。日本政府が韓国やアメリカなどに設置された「平和の少女像」の撤去を求めるのは、国際社会で日本の名誉が傷つけられると考えているからだろう。 そこでは記憶についての世界的な基準より、国力に関する愛国主義的な物語のほうが優先されている。これはどちらの国も正しくて、どちらの国も間違っていると言える。 韓国は、日本の戦争と植民地支配の過去は適切に認識されなければならず、将来にわたって日本の歴史の良い面も悪い面も教育しなければならないと主張する。これはそのとおりだ。また、韓国の裁判所が昨年、元徴用工問題で日本企業に賠償を命じる判決を出したことも、ドイツの戦時中の強制労働に関する判例をある程度なぞっていた。 日本は慰安婦問題で、不完全な部分はあるにせよ既に公式に謝罪と賠償をしたにもかかわらず、韓国が受け入れないことに戸惑っている。慰安婦をはじめとする戦争被害者のために市民社会の日本人が尽力していることも、韓国は認めようとしない。これについては日本の言うとおりだ。 一方、韓国は元徴用工への賠償金のために日本企業の資産を差し押さえて売却すると脅しているが、これは間違っている。こういう脅しは記憶についての世界的な基準からは外れている。 そして、日本は記憶をめぐる傷を貿易政策と安全保障政策にすり替えているが、これも間違っている。韓国が「日本の経済侵略対策特別委員会」を設置するなど、同じような報復をするのも間違っている』、日韓双方の主張をともに「間違っている」と切り捨てているが、その通りだろう。
・『仏独のようにはなれなかった  どちらの国も、過去の間違いを現在の間違いにすり替えているだけだ。75年近い年月の間に何も変わっていないかのように。だが実際は、多くのことが変わっている。「歴史問題」に関してもさまざまな変化が起きているのだ。 今から21年前の1998年に、金大中(キム・デジュン)大統領と小渕恵三首相は日韓共同宣言に署名。日本による植民地支配が韓国に多大な損害と苦痛を与えたことを認めた上で、未来志向の両国関係を目指すと約束した。 その後、韓国で日本の映画や音楽、マンガなどが解禁され、J-POPとK-POPが人気を集めた。2002年にはサッカー・ワールドカップを共同開催。日本で韓流ブームが起きて、互いに観光客が増えた。日韓関係は新しい段階を迎えたと思われた。 私はその頃、日本と韓国が、60年代前半の仏独のような和解に向かっているかもしれないと書いた。しかし、私は間違っていた。それでも、長く敵対していたフランスとドイツが第二次大戦後に関係を修復できた理由を検証することは、役に立つのではないか』、「フランスとドイツ」とは事情が相当違いそうだが、まずはみてみよう。
・『【参考記事】韓国に対して、宗主国の日本がなすべきこと) フランスとドイツの関係を変えた要素は3つある。双方の市民社会団体と草の根の運動(初めはドイツのほうが積極的だった)、シャルル・ドゴール仏大統領とコンラート・アデナウアー西独首相という2人の力強い指導者の政治的な意思、冷戦とソ連の脅威という文脈におけるそれぞれの国益だ。 両国は1963年にエリゼ条約(仏独協力条約)を結んで敵対関係に終止符を打った。しかし、その関係を強固にしたのはその後の教育の変化と、若い世代を中心に社会のあらゆるレベルで交流が深まったこと、そして、EUを通じて地域的な力が強まったことだ。 こうした順応はもちろん個人の記憶を消し去りはしなかったが、それでも両国の関係を変え、両国とほかの西欧諸国との関係を変えた。 時代や歴史的背景は異なるが、フランスとドイツの相互理解を深めた要素は今日の日本と韓国にも通じるだろう。 今年6月初めの世論調査では日本人と韓国人の約半数が相手国に良くない印象を抱いているが、その傾向は変化してきており、今後も変わるだろう。両国とも、若者のほうが年長者より互いへの好感度が高い。観光や大衆文化が草の根レベルで影響を与えていると思われる。 金大中が未来志向の日韓関係を宣言したときのように、指導者の姿勢も変化を起こし得る。文大統領は今年8月15日に、日本の植民地支配からの解放を記念する式典で「日本が対話と協力の道に進むなら、われわれは喜んで手をつなぐ」と語った。日本政府もむき出しの敵意にばかり反応せず、こうした前向きの発言を積極的に受け止めることもできるだろう』、「文大統領は今年8月15日に」融和的演説をしたのに、頭に血が上っていた日本政府がこれを無視したのは、確かに外交的には失策だろう。。
・『「帝国の慰安婦」としての記憶  変化の背景には地域的な文脈もあった。仏独は、欧州というコミュニティーに共に参加することに共通の利益を見いだした。現在、日本と韓国の国益も東アジアの域内関係に同じくらい密接に結び付いているのではないか。 ただし、過去の敵が未来の友になるというシナリオには、もう1つ課題がある。フランスとドイツは戦争の敵国同士だったため、仏独の記憶の政治は戦争が軸になっていた。それに対し、韓国は日本の植民地だったため、韓国は慰安婦や徴用工の問題を、戦争というより植民地時代の抑圧として考える。 日本では少なくとも90年代前半以降、戦争の記憶を積極的に呼び起こす動きが広まっているが、帝国主義時代の過去にはあまり向き合ってこなかった。日本人は南京虐殺や七三一部隊、従軍慰安婦を知ってはいるが、例えば慰安婦については帝国主義ではなく戦争の産物と見なす人が多いだろう』、「日本では・・・帝国主義時代の過去にはあまり向き合ってこなかった」、というのは確かに大いに反省すべき材料だ。
・『帝国主義の歴史を持つ多くの国と同じように、日本は長い間、自らの帝政の悲惨な行為について公には沈黙を守ってきた。イギリス、オランダ、ベルギー、ドイツ、フランスでも、今なお帝国主義時代の記憶が問題化している。 確かに帝国主義の過去を乗り越えて和解を目指そうという決然たる努力に、大きな壁が立ちはだかることも多い。例えばフランスと旧植民地のアルジェリアは2003~07年に友好条約の締結を模索したが、かなわなかった。1962年にアルジェリアが独立を果たしてから数十年がたっても、1世紀以上に及んだ植民地支配とアルジェリア戦争の残忍な記憶は重く、「歴史の傷」を癒やすことはできなかった。 日韓の関係はフランスとアルジェリアより近く、より友好的だが、日本の植民地支配に対する韓国の記憶はほかの旧植民地と同じくらい強烈なものも少なくない。日本と韓国が歴史の溝を埋めようとするなら、植民地時代の知識を学んで歴史的事実を認めることがおそらく出発点になるだろう。 記憶の政治の時代を生きる困難について、解決策が分かっているとは言わない。それでも明白なことが2つある。 まず、ナショナリズムは現代の惨劇だ。世界のナショナリズムは、国内外のほぼあらゆる場所で不確実性に対する反応として生まれている。日本と韓国のナショナリズムは、海峡の両側で同じように人々の目を塞ぎ自分たちの国益さえ見失わせている。 そして、過去を政治の武器として利用することは、前向きではなく後ろ向きに生きるということだ。過ぎ去った過去が、これから訪れる未来を危機にさらす──そうした事態を許すということだ。(筆者の専門は日本近現代史。近著に『戦争の記憶 コロンビア大学特別講義──学生との対話──』〔講談社現代新書〕) <本誌2019年9月24日号掲載「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集より>・・・』、「日本と韓国が歴史の溝を埋めようとするなら、植民地時代の知識を学んで歴史的事実を認めることがおそらく出発点になるだろう」、というのは正論ではあるが、現在の日本には無理なのではなかろうか。

第四に、作家の橘玲氏が9月17日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」【橘玲の日々刻々】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215024
・『10日ほど海外を旅行して、帰国してみると日韓対立がさらにヒートアップしていました。慰安婦財団解散、徴用工判決から「ホワイト国」除外、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄へと至る過程はいまさら繰り返すまでもないでしょう。 この問題が難しいのは、日韓両国のアイデンティティに直結していることです。そのため、相手国を擁護するかのような主張をするとたちまち「炎上」し、バッシングの標的にされてしまいます。こうして、まともなひとほどこの問題から距離を置こうとし、残るのは「ポピュリスト」ばかりということになります(事情は韓国も同じでしょう)。 そこでちょっと冷静になって、この問題を「2つのリベラリズムの対立」として読み解いてみましょう。ポイントは、「世界はますますリベラル化している」です。 日本の保守派は、「現在の法律を過去に遡って適用することはできない」といいます。これは一般論としてはそのとおりですが、「歴史問題」にそのまま当てはめることはできません。黒人を奴隷にしたり、新大陸(アメリカ)の土地を原住民から奪ったり、アフリカやアジアを植民地にすることは、西欧の当時の法律ではすべて「合法」だったのですから。現在の「リベラル」な人権概念を過去に適用することによって、はじめて奴隷制度や植民地主義を批判できるのです。 こうした「リベラリズム」の拡張はやっかいな問題を引き起こすため、欧米諸国の圧力でこれまで抑制されてきましたが、新興国の台頭によって「パンドラの箱」が開きかけています。インドではヒンドゥー原理主義者がイギリスの植民地統治を全否定し、「民族の歴史」を新たにつくりなおそうとしています。韓国の「歴史の見直し」は、こうした潮流の最先端として理解できるでしょう。そこでは、現在のリベラルな価値観を時空を超えて拡張し、過去を断罪することができるのです』、「こうした「リベラリズム」の拡張はやっかいな問題を引き起こすため、欧米諸国の圧力でこれまで抑制されてきましたが、新興国の台頭によって「パンドラの箱」が開きかけています・・・韓国の「歴史の見直し」は、こうした潮流の最先端として理解できるでしょう」、なるほど説得力がある説明だ。
・『それに対してもうひとつの「リベラリズム」は個人主義化です。ここでは自由と自己責任の論理が徹底され、自分が自由意思で行なったことにのみ全面的に責任をとることになります。逆にいえば、自分がやっていないことには責任をとる必要はないし、勝手に責任をとってはならないのです。 第二次世界大戦の終結から70年以上がたち、日本でも戦場を経験したひとはごくわずかになりました。とりわけ孫やひ孫の世代にあたる若者は、なぜ自分が生まれるはるか昔の出来事で隣国から執拗に批判されるのか理解できないでしょう。「反韓」ではなく「嫌韓」という言葉は、こうした気分をよく表わしています。 問題なのは、どちらの側にも「リベラルな正義」があることです。お互いが自分たちを「善」、相手を「悪」と思っている以上、そこに妥協の余地はありませんが、その一方で、どれほど批判しても相手の「正義」が揺らぐことはありません。こうして、罵詈雑言をぶつけ合いながら、アメリカや「国際社会」を味方に引き入れようとしてますます袋小路にはまりこんでいくのでしょう。 解決策としては、それぞれの国民が「いつまでもこんなバカバカしいことはやってられない」と気づくことでしょうが、それにはまだ長い時間がかかりそうです』、輸出環境の悪化は、日韓両国経済に打撃を与えるが、相対的に韓国の方がダメージが大きい筈だ。「バカバカ」しさに早目に気づいてもらいたいものだ。日本も早目に気づいてもらいたい点では同様だ。
タグ:橘玲 日韓関係 日刊ゲンダイ ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE 田岡俊次 Newsweek日本版 (その8)(両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢、橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」、日韓が陥る「記憶の政治」の愚、日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」) 「【寄稿】両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢」 国際観艦式に参加予定の日本の護衛艦は艦旗(旭日旗)を掲揚しないよう韓国側が求め亀裂が生じた “日韓海軍冷戦” これは文在寅大統領の思想傾向だけが原因ではない 2008年に進水した1800トン級の潜水艦は「安重根」(伊藤博文の暗殺犯)と名付けるなど、露骨な対決姿勢 「日本と戦う」と言えば予算がつく 日本では冷戦的世界観が残り「韓国は味方」と思いがちで、韓国の軍拡に関する報道はまれ 「日本と戦う」で予算がつく 戦闘機500機を超え、航空自衛隊の330機をしのぐ 空中給油機もエアバス330の改装型4機を発注 防衛費を増大する一方で北朝鮮に対抗する陸軍を減らし、海・空軍の増強をはかる 橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」」 韓国側の主張を分析したうえで日本の主張を徹底的に構築せよ 韓国側の主張もそれなりに成立することを認識した上で、日本側の法的主張を徹底的に構築すべき 報復合戦 実力行使を行うのであれば、その根拠を法的に構築すると同時に、これまでも散々論じてきたが、実害が最小限にとどまるような方法を採らなければならない 李承晩ライン拿捕事件を韓国政府に賠償請求できるか 国際法上の「主権免除」 日本の裁判所において「韓国政府」を直接訴えることはできない 元徴用工の韓国国民が「韓国の裁判所」において韓国国内の「日本企業」を訴えている。 これこそが日本の政治家の役割 日本政府が「日本国内の」「韓国企業」の財産を差し押さえることができないか、を徹底的に考えるべきで、それが日本の政治家の役割だ 「分捕られたなら、それを分捕り返す」。これが、日本側が採るべき本来の方策だ キャロル・グラック 「日韓が陥る「記憶の政治」の愚 どちらの何が正しく、何が間違いか」 過去を武器にして現在に損失をもたらしているという意味では、どちらの国も同罪だ 日本人も韓国人もこれは「歴史」論争だと言っているが、実際に話しているのは「記憶」についてだ。 歴史と記憶は同じものではない。歴史とは過去に起きたことであり、記憶とは、そのストーリーをどのように語るかということだ いま私たちは「記憶の政治(メモリー・ポリティクス)」の時代を生きている 日韓双方が正しく間違っている 韓国は、日本の戦争と植民地支配の過去は適切に認識されなければならず、将来にわたって日本の歴史の良い面も悪い面も教育しなければならないと主張する。これはそのとおりだ 元徴用工問題で日本企業に賠償を命じる判決を出したことも、ドイツの戦時中の強制労働に関する判例をある程度なぞっていた 仏独のようにはなれなかった 韓国に対して、宗主国の日本がなすべきこと 「帝国の慰安婦」としての記憶 日本と韓国が歴史の溝を埋めようとするなら、植民地時代の知識を学んで歴史的事実を認めることがおそらく出発点になるだろう 日本と韓国のナショナリズムは、海峡の両側で同じように人々の目を塞ぎ自分たちの国益さえ見失わせている。 そして、過去を政治の武器として利用することは、前向きではなく後ろ向きに生きるということだ。過ぎ去った過去が、これから訪れる未来を危機にさらす──そうした事態を許すということだ 「日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」【橘玲の日々刻々】」 日本の保守派は、「現在の法律を過去に遡って適用することはできない」といいます。これは一般論としてはそのとおりですが、「歴史問題」にそのまま当てはめることはできません 現在の「リベラル」な人権概念を過去に適用することによって、はじめて奴隷制度や植民地主義を批判できるのです こうした「リベラリズム」の拡張はやっかいな問題を引き起こすため、欧米諸国の圧力でこれまで抑制されてきましたが、新興国の台頭によって「パンドラの箱」が開きかけています 韓国の「歴史の見直し」は、こうした潮流の最先端として理解できるでしょう もうひとつの「リベラリズム」は個人主義化 自分がやっていないことには責任をとる必要はないし、勝手に責任をとってはならないのです 解決策としては、それぞれの国民が「いつまでもこんなバカバカしいことはやってられない」と気づくことでしょうが、それにはまだ長い時間がかかりそうです
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