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生活保護(その4)(生活保護費を搾取する「大規模無低」の正体 厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念、「生活保護で大学進学なんてゼイタク」本音を包み隠す厚労官僚の“良識”、生活保護ケースワーカーを死体遺棄に走らせた「孤立職場」の病理) [社会]

生活保護については、昨年5月19日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その4)(生活保護費を搾取する「大規模無低」の正体 厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念、「生活保護で大学進学なんてゼイタク」本音を包み隠す厚労官僚の“良識”、生活保護ケースワーカーを死体遺棄に走らせた「孤立職場」の病理)である。なお、タイトルから「福祉問題」はカットした。

先ずは、昨年12月13日付け東洋経済オンライン「生活保護費を搾取する「大規模無低」の正体 厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/254894
・『生活保護費の受給者の生活支援をめぐって、大きな問題が浮上している。 保護受給者数は2018年7月時点で約210万人。2015年3月をピークにその総数は減少に転じている。世帯類型別に見ると、リーマンショック後は若年層などが増えたが、近年は景気回復を受け減少。母子世帯や傷病・障害者世帯なども同様に減少している。 一方で拡大の一途をたどるのが、高齢者世帯だ。世帯類型別ではすでに5割を超え、受給者のうち全体の47%は65歳以上の高齢者となっている。高齢の保護受給者数は、この20年で約3.4倍に拡大。中でも「高齢単身者」の増加が大きい。 住居を失った多くの高齢単身者の終の住処(ついのすみか)となっているのが、一時的な居所と位置づけられている社会福祉事業の1つ、「無料低額宿泊所」(無低)だ』、無低に該当するかは定かではないが、昨年1月に札幌市の高齢者自立支援施設の火災で11人死亡、2009年3月には渋川市の老人施設出火で10人死亡などの痛ましい事故も相次いでいる。
・『生活保護で暮らす高齢者の「受け皿」  無低は「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」として社会福祉法に位置づけられている。一方、生活保護法は居宅保護(自宅における生活支援)を原則としており、補助的に救護施設や更生施設などが保護施設として位置づけられている。そうした中で、無低のみが拡大を続けてきた。 背景として考えられることは、単身高齢者の場合、民間アパートなどを借りようとしても拒否されるケースが多く、保護施設に加え養護老人ホームのような老人福祉施設も不足していることが挙げられる。その中で無低が生活保護で暮らす高齢者の「受け皿」として機能してきた経緯がある。 もちろん無低の中には、小規模なグループホームの形態で社会福祉士など福祉専門職が中心となり、巡回などを通じて利用者の生活安定に取り組んだり、福祉事務所や医療・福祉サービス事業者と連携し、適切な支援を提供したりする施設もある。 そうした小規模ながら良質な施設がある一方、拡大が続くのが入所者が多く要介護者も多い「大規模無低」だ。法的規制が少なく設置運営基準が緩いこともあり、1999年に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立すると一気に広まった。 一部の運営事業者は1施設当たりの入所者数を大規模化。ホームレス状態にある人に、公園などで運営事業者自らが「相談」と称して声をかけ、施設に入れてしまう勧誘行為も横行した。 住居を失い福祉事務所に生活の相談に行くと、「大規模無低の利用を促された」と話す保護受給者は多く存在する。こうした運用実態が特定の大規模無低の急拡大に拍車をかけた可能性が高い。今では全国で無低施設数は537、入居者数は1万5600人に至っている。経営主体の8割弱がNPO法人だ』、「大規模無低」が「法的規制が少なく設置運営基準が緩いこともあり、1999年に・・・NPO法が成立すると一気に広まった」、NPOにはまともなところも多いが、貧困ビジネスを展開しているところも多そうだ。
・『生活保護費はほとんど手元に残らない  無低事業者は、保護受給者が受け取る住宅扶助や生活扶助の中から、さまざまな「利用料」と称し毎月徴収する金銭を運営財源としている。中にはそのほとんどを徴収する悪質な大規模施設運営事業者も存在し、「貧困ビジネス」と批判されている。 ある大規模無低から逃げ出してきた元利用者は、「施設では家賃のほか、高い食費や水道光熱費や共益費も払わされ、生活保護費はほとんど手元に残らず生活再建につながらなかった」と話す。 2015年に厚生労働省が実施した実態調査では、本来は一時的な居住場所であるはずの無低が、入所期間4年以上に及ぶ入所者が全体の3分の1を占めていることが明らかとなった。これはつまり、一度無低に入ったら出ることが難しい実態がある、ということになる。 大規模無低の運営実態はどうなのだろうか。金銭管理と称し生活保護費を丸ごと取り上げたり、「施設内就労」の名の下で福祉の専門資格を有しない保護受給者を施設職員に据えて働かせたりするケースがある。1つの居室をベニヤ板で間仕切っただけで天井部分が完全につながっている居室を、「簡易個室」と称し50~200人を1つの施設に「収容」するような大規模無低も関東各地に存在している。 こうした大規模無低の運営事業者などによる悪質な貧困ビジネスの実態を厚生労働省も問題視。厚労省が2015年に定めた現行のガイドラインでは、個室を原則とし、居室面積は7.43平方メートル=4畳半相当以上とされている。狭い床面積の場合は、住宅扶助(家賃)を減額する仕組みも導入された。 だが、こうした最低限の規制すら骨抜きにしかねない議論が浮上している。厚労省は11月、貧困ビジネスへの規制強化などに関する検討会の初会合を開催した。無低の最低基準や保護受給者の日常生活支援のあり方などについての検討を踏まえ、厚生労働省令や条例を策定するスケジュールを示した』、「1つの居室をベニヤ板で間仕切っただけで天井部分が完全につながっている居室を、「簡易個室」と称し50~200人を1つの施設に「収容」するような大規模無低も関東各地に存在」、とは本当に酷い話だ。
・『「簡易個室」を最低基準として公認?  検討会の開催は規制強化の流れの中に位置づけられるが、業界関係者の間では「厚労省は『簡易個室』を最低基準として公認するのではないか」との懸念が広がっている。 それは厚労省が初会合で示した資料に、「多人数居室、一つの個室をベニヤ板等で区切ったいわゆる『簡易個室』も一定数存在する」と、その存在を前提としているかのような記載がされているためだ。 現行ガイドラインでは「個室が原則」とされているが、仮にこの「簡易個室」が無低の最低基準として認められれば、これまで相部屋を中心に大規模展開してきた無低運営事業者でも、ベニヤ板で簡単に1部屋を間仕切りさえすれば、そのまま生き残れることになる。 この点については、12月17日の第2回検討会で議論される見通しだ。議論の行方によっては、悪質な貧困ビジネスの「儲けのカラクリ」を排除するどころか、その存在を肯定することになりかねない。そうした正念場を早くも迎えている』、厚労省が「「簡易個室」を最低基準として公認」するとしても、最低限、火災などへの安全性は確保すべきだ。

次に、フリーランス・ライターのみわよしこ氏が5月24日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「生活保護で大学進学なんてゼイタク」本音を包み隠す厚労官僚の“良識”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/203451
・『「生活保護での大学進学は認めない」厚労省が国会で公言した内容とは  厚労官僚による「生活保護での大学等への進学は認められない」という国会答弁が、大きな波紋を引き起こしている。理由は、生活保護法の「最低限度の生活」が大学進学を含まないからだそうだ(2019年5月21日、参院・文教科学委員会)。まるで「生活保護での大学等への進学は法で制約されている」と言わんばかりだが、その解釈は無理筋だ。 とはいえ現在、生活保護のもとでの大学等への進学は、事実として認められていない。生活保護世帯の子どもたちは、高校以後の教育を受けるためには、学費と生活費を自弁する必要がある。手段の多くは、学生支援機構奨学金の借り入れやアルバイトとなり、疲労と不安でいっぱいの学生生活を送ることとなる。 学費免除や給付型奨学金を獲得するためには、多くの場合、低所得でも貧困でもない家庭の子どもたちと同じ土俵で、より優れた成績や業績を示す必要がある。それは苛酷というより、現実離れした「無理ゲー」だ。しかも、浪人もできない。「受験勉強ができるのなら、働いてください」ということになるからだ。 その子どもたちと接してきた、現場の心あるケースワーカーたちは、黙って座視してきたわけではなく、子どもたちの生活や学業を支え、勇気づけてきた。そして、声を上げてきた。生活が生活保護によって支えられているだけで、彼ら彼女らの学生生活は好ましい方向に激変する。中退によって奨学金という名の借金だけが残るリスクは激減する。 生活保護世帯や貧困世帯で育った子どもたちも、支援者たちも、もちろん心ある国会議員など政治家たちも、「生活保護で生活基盤を支えられた学生生活を認めるべき」という声を挙げてきた。そして政府は、生活保護世帯からの大学進学に対する一時金(自宅内進学の場合、10万円)を制度化した。ほんの少しずつではあるが、期待できそうな動きが現れてきていた。 しかし、それらの積み重ねに寄せられた期待を、一気に打ちのめす国会答弁が行われた。その内容は、「自助努力と自己責任で高校卒業後の学びを獲得できない子どもたちは、高卒や大学中退で世の中に放り出されても仕方ない」と解釈できるだろう。この発想は、どこから来るのだろうか。 実は、「劣等処遇」という用語1つで、おおむね説明がついてしまう』、どういうことなのだろうか。
・『日本人は身分制度が好きなのか 医療にも見え隠れする「劣等処遇」  「劣等処遇」は、生活保護制度の中に包み隠されてきた考え方の1つだ。厚生省・厚労省の官僚たちの良識に封じ込められた場面も、間接的に存在が察せられた場面もある。2013年と2018年の生活保護法改正は、「劣等処遇」を丸見えに近づけた。 現在の生活保護法にクッキリ現れている「劣等処遇」は、後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品だ。生活保護法では、2013年改正で「後発医薬品を優先」することとなり、ついで2018年改正で「後発医薬品を原則」とすることになった。背後に、「生活保護という“身分”にふさわしい医療」という発想、すなわち「生活保護なら劣等処遇」という考え方があったとすれば、2013年に「優先」、2018年「原則」と明確化されてきたことは、全く迷いなく理解できる。 もちろん厚労省も、厚労省の方針を大筋のところで強く定めている財務省も、「劣等処遇を強める」とは言っていない。あくまでも、国としての課題の1つは医療費の増大であり、医療費を抑制することが必要だ。そのために、医薬品をジェネリック医薬品に置き換えたい。しかしながら、生活保護受給者でのジェネリック医薬品の選択率は、一般よりも低い。それどころか、医療費自費負担がないため、不要な治療や検査や医薬品を求める生活保護受給者もいる。だから、生活保護ならジェネリック医薬品を強制しなくてはならない。これが、大筋のストーリーだ。 忘れてはならないのは、生活保護世帯の少なくとも70%が高齢者・障害者・傷病者世帯であり、一般より医療ニーズが高いことだ。傷病者の中には、がんなどの難病に罹患したことが契機となって職業と収入を失い、生活保護以外の選択肢を失った人々も含まれる。必然的に、先発医薬品しかない疾患の罹患率も高い。だから、生活保護受給者にジェネリック医薬品を選べない場面が多くなるのは自然だ。 しかし、政府が劣等処遇をしたいと考えているのなら、「医療費がタダだから、ご近所さんの分まで湿布薬の処方を受けて配る生活保護受給者の高齢女性」といった例に世間を注目させ、「許せない」という世論を喚起し、抵抗を受けずに「後発医薬品を優先」「後発医薬品が原則」という条文を法律に含めるだろう。これは、2013年と2018年の生活保護法改正の直前、実際に見られた現象だ。 「生活保護でも大学へ」という動きは、「劣等処遇」があからさまになっていく時期に、並行して行われた。とはいえ厚労省としては、堂々と「生活保護なら大学に行かないでほしい」とは言いにくかったはずだ。 その「口にチャック」は、ついに壊れてしまったようだ』、「生活保護受給者でのジェネリック医薬品の選択率は、一般よりも低い」、というのは確かに問題だ。ただ、「ジェネリック医薬品を強制」するのを、生活保護受給者だけでなく、健康保険加入者にも広げるべきではなかろうか。「先発医薬品しかない疾患」にはその例外として、先発医薬品を認めるべきだ。
・『高校進学と何が違うのか 大学進学はもうゼイタクではない  ここで改めて考えたいのは、「大学等への進学はゼイタクなのか」ということだ。 かつての大学進学は、能力または環境や経済力に恵まれた、一部の子どもたちの特権だった。しかし現在、大学等(短大や専門学校を含む)への浪人を含む進学率は、すでに80%を超えている。もはや「行くのが普通」と考えるべきだろう。 生活保護の過去の歴史の中には、全く同じシチュエーションがあった。1970年、生活保護のもとでの高校進学が、厚生省の通知によって認められたときだ。この年、高校進学率は80%を超えた。高校進学が当然に近くなると、若年層の就職は高卒が前提となる。 「自立の助長」を目的とする生活保護法が、高校進学を認めないままでいると、自立を阻害することになってしまう。その観点からだけでも、進学は認めざるを得なかった。このとき、高校進学を認めた委員会の議論には、「高校まででは物足りない気もするけれども」といった文言もある。そして、高校進学を認める通知が発行された。 それなのに、なぜ、2019年、厚労官僚は「できない」と明言することになるのだろうか。厚労省の通用門の前で待ち構え、官僚本人を質問責めにしても、納得できる回答は得られないだろう。おそらく本人も、「今、この立場にいる以上は、そう言わざるを得ない」という状況にあるはずだ。しかし、背景に「劣等処遇」があるとすれば、理解はたやすい。 現在は、医薬品を最前線として、生活保護を「劣等処遇」の制度へとつくり変える動きが進行中だ。2013年と2018年に生活保護法が改正されただけではなく、数え切れないほどの生活保護費の引き下げや締め付けが行われている。少なくとも現政権や財務省の意向が激変しない限り、厚労省としては、大幅な脱線はできない。だから、「教育だけ劣等処遇の対象から外します」とは言えない。まことにわかりやすい話だ。 ここで文科省が厚労省に強く反発すれば、状況は変わるかもしれない。しかし現在のところ、そういう期待を持てる状況ではない(これ以降の紹介は省略)』、大学教育の無償化をしようとしているなかでは、生活保護受給世帯での大学進学も認めるべきだろう。さもなければ、「貧困を次世代に再生産」することになってしまう。厚労省の再考を期待したい。

第三に、フリーランス・ライターのみわよしこ氏が9月13日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「生活保護ケースワーカーを死体遺棄に走らせた「孤立職場」の病理」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/214641
・『受給者の犯罪に巻き込まれたケースワーカーの「その後」  今年6月12日、京都府向日市の生活保護ケースワーカー(29歳)が、死体遺棄の疑いで逮捕された。担当していた男性受給者(55歳)が殺害した女性の遺体を隠そうとした際、他の男性(52歳)とともに協力したのである。3名はすでに起訴され、10月2日に第1回公判が予定されている。 ケースワーカーは生活保護に関して、受給者の「すべて」を握っている存在だ。力関係では、ケースワーカーの方が強くなる。しかしこの事件では、受給者が担当ケースワーカーを精神的に支配し、まるで“パシリ”のように扱っていたという。担当ケースワーカーの仕事ぶりには特に問題はなく、むしろ好感を持たれるものであった。 類例のない事件であり、世の中の反響は大きかった。むろん、「ケースワーカーが担当している受給者の犯罪に手を貸す」などということは、絶対にあってはならない。それなのに、なぜ、事件は起こってしまったのだろうか。 発覚から3ヵ月が経過し、そろそろ世の中から忘れられつつある事件だが、向日市役所や向日市議会では、現在もホットな話題の1つだ。9月10日にも、向日市議会の本会議において、市議の杉谷伸夫氏が事件のその後と今後に関する質問を行ったばかりだ。 向日市議会では、事件に関する質問に対し、最初に副市長が答弁した。殺された女性の冥福を祈念し、市民に謝罪することを述べて深々と頭を下げる副市長の姿には、役職ゆえの義務というより、深い思いが現れているように感じられた。 また、担当ケースワーカーを守り切れず事件へと至ったことへの反省、信頼を回復させるべく検証に全力を挙げる意向を語る言葉にも、「とりあえず、そう言っておかなくては」という様子は感じられなかった』、私も新聞記事だけでは理解できず、疑問に思っていた事件だ。
・『詳細を解き明かすには公判に期待するしかない  逮捕された受給者の男は、いわゆる「対処困難ケース」であった。担当ケースワーカーのもとには、しばしば電話があり、通話は2時間ほどに及んでいたという。しかも語り口や内容は、いわゆる「クレーマー」のものだった。 向日市の答弁によれば、上司は担当ケースワーカーの困惑を承知しており、状況に応じて電話を代わるなどの対応を行っていた。また、ケース診断会議を開催して対策を検討し、原則、複数のケースワーカーで家庭訪問を行っていた。さらに、日々、情報共有を徹底し、上司からの声がけも行ってきたという。しかし、それらの組織的対応が名実ともに徹底されていたら、事件は予防できていたであろう。 主犯の元受給者の男の言動からは、反社会的勢力と関係していた可能性が推察される。しかし、もしも現役の暴力団員である場合には、そうではない場合と同様に生活保護を適用するわけにはいかず、一定の制約がある。このことは1981年以来、厚労省のいくつかの通知で繰り返され、徹底されている。 2006年の通知では、福祉事務所に対し、生活保護申請者や受給者が暴力団員であるかどうかについて、警察から情報提供を受ける必要性も示された。向日市では、これらの通知に従って情報提供を受けていたという。 いずれにしても、主犯の男の背景の詳細、また担当ケースワーカーに対して日常的に行っていた要求の内容については、公判で明らかにされるのを待つしかない。公判開始後も、向日市には個人情報の保護が求められる』、「逮捕された受給者の男は」「「クレーマー」のものだった」、これに対し、「上司は担当ケースワーカーの困惑を承知しており、状況に応じて電話を代わるなどの対応を行っていた。また、ケース診断会議を開催して対策を検討し、原則、複数のケースワーカーで家庭訪問を行っていた。さらに、日々、情報共有を徹底し、上司からの声がけも行ってきた」、それなのに何故、今回の事件につながったのかは、「公判で明らかにされるのを待つしかない」、というのはハシゴを外された気がする。
・『ケースワーカーの経験不足 向日市の行ってきた対策とは  この間、向日市は、再発防止のための手立てを講じてきた。 逮捕の翌日、6月13日には、京都府の監査が行われた。複数での訪問を原則としているのに単独で行うことが多かったこと、ケース記録の回覧が速やかではなかったこと、ケースワーカーが1人で担当していたことが指摘されたという。少なくとも、人員が不足していたことは確かだ。 また、逮捕されたケースワーカーの不在に対して、6月24日には早くも、生活保護業務の経験者が配置された。また7月に入ると、警察OBが支援員として配置された。福祉業務に警察OBが関わることには、賛否両論があるところだが、必要な場面があることは否定できないかもしれない。 その後、8月7日には、市役所内部に検証委員会が設置された。また9月10日の杉谷議員の質問に対し、市は「第三者による検証委員会を設置する」と回答している。全国的に類例のない事件の検証には、専門家の知見が必要だ。専門家を含む第三者による検討委員会の設置は、必須であろう。 市側は、事件と職員を守れなかったことについて、「組織として重大」と認識し、「しっかり検証する」という。とはいえ、職員本人は拘置されており、自由な面接で話を聞くことは不可能な状態だ。もちろん、その状態では処分を検討することはできない。 杉谷氏にご提供いただいた資料によると、向日市のケースワーカーの経験年数は非常に短く、平均2年以下となっている。逮捕された本人が、当時、最も長い経験を有していた。それでは、知識やノウハウやスキルは蓄積されようがない。 そもそも向日市役所では、生活保護業務がどう捉えられていたのだろうか。「少なくとも、重視はされていなかったのではないか」と感じられてならない。向日市に隣接する京都市には、生活保護業務経験が10年から20年に及ぶ中堅やベテランも数多い。もしも、向日市が今後すぐに方針を転換しても、経験10年の中堅を育成するには今後10年かかる。しかしそれでも、10年かけて行う必要があるのではないだろうか』、どうも、冒頭の市の対応は、建前に過ぎず、実態はそれほどでもなかったようだ。
・『生活保護業務は重要視されていなかった?  杉谷さんも、次のように指摘する。 「このような状況の中で、生活保護の業務に誇りを持つのは、難しいのではないでしょうか。業務の経験年数から見ると、経験が継承され、しっかりした仕事をすることには、無理があります」 また、事件に関して現在まで明らかにされた内容から感じられるのは、成り行きに任せられていた可能性と、職員各個人に任せられていた可能性だ。結果として放任していた組織には、課題が「ない」とは言えないかもしれない。 向日市では、8月4日に市議会選挙が行われた。杉谷さんは選挙を控えて、市民と数多くの対話を重ねた。市民からは、事件に関して「巻き込まれたケースワーカーも犠牲者だ」という声が多数だったという。同時に、主犯の受給者の男に対しては、「なぜ、あんなやつに生活保護を」「なぜ、向日市に住ませておいたのか」という声も上がったという。 その声に対して、杉谷さんは「そうしたら、その人はどこに住むんですか」と冷静に応対したそうだ。さらに「どこに住むのも、その人の自由です。困っていたら、放っておいたら死ぬかもしれません。そういうことがないように、自治体は支援しなきゃいけません。いつ誰がそうなるかわかりません。支援するのは市町村の仕事」と答えたこともあるそうだ。 「市の姿勢も、市民の感情も、批判するのではなく一緒に考えていきたいです」(杉谷さん)) 売り言葉に買い言葉を返すだけでは、建設的な対話はできないままだろう。私も、自分自身の反省を込めて、「一緒に考えていきたい」と思う。批判はやめられないかもしれないけれども』、杉谷さんの「主犯の受給者の男」に対する姿勢は、誠に模範的だ。。
・『公正さとストレス対策を両面で ケースワーカーを1人にするな  現在、社会福祉学の研究と教育に携わっている吉永純さん(花園大学教授)は、長年にわたって、京都市役所で生活保護業務を経験してきた。その経験も踏まえて、このように語る。 「この向日市の事件には、2つの問題があります。 1点目は、公正な職務の執行という点です。今回の事件では、ケースワーカーへの脅迫的な言辞や毎日のような長時間の電話など、“業務妨害”といってもよい行為が続いていました。このような行為には、組織を挙げた、毅然とした態度が求められます。隣の京都市では、2017年に条例を定め、不当な要求に対しては全て記録化し、その概要を公表するとともに毅然として対処する仕組みをつくりました。 2点目は、生活保護実施に当たっての問題です。ケースワーカーの仕事は、利用者との密室での1対1の面接場面が多く、仕事も1人で行うことが多いのです。特に今回のような場合、ストレスも溜まってきます。そのような事態を避けるには、常に組織として対応方針を検討し対処すること、つまりケースワーカーを1人ぼっちにさせないことが肝要です。 向日市には、決して職員の個人責任にせず、第三者委員会などで真摯な検証を行うことが求められます」 10月2日から公判は開始されるが、その後も数多くの事件や災害が起こり、世の中の関心はそちらに向かってしまうだろう。致し方ないことではある。しかし、関心を向けられなくなったら、おそらく長い年月の後、共通点のある事件が「忘れたころにやってくる」であろう。その最悪の成り行きだけは、避けたいものである』、「京都市」の対応は、模範となり得るものだ。京都府や厚労省は、自治体任せにするのではなく、模範事例を向日市などの他の自治体にも紹介するなど、水平展開する努力をすべきだろう。
タグ:「生活保護費を搾取する「大規模無低」の正体 厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念」 生活保護受給者でのジェネリック医薬品の選択率は、一般よりも低い 医療費自費負担がないため、不要な治療や検査や医薬品を求める生活保護受給者もいる。だから、生活保護ならジェネリック医薬品を強制しなくてはならない 公正さとストレス対策を両面で ケースワーカーを1人にするな 京都市では、2017年に条例を定め、不当な要求に対しては全て記録化し、その概要を公表するとともに毅然として対処する仕組みをつくりました。 ダイヤモンド・オンライン 低額宿泊所」(無低)だ 高齢者世帯だ。世帯類型別ではすでに5割を超え、受給者のうち全体の47%は65歳以上の高齢者となっている 「「生活保護で大学進学なんてゼイタク」本音を包み隠す厚労官僚の“良識”」 小規模ながら良質な施設がある一方、拡大が続くのが入所者が多く要介護者も多い「大規模無低」だ。法的規制が少なく設置運営基準が緩いこともあり、1999年に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立すると一気に広まった (その4)(生活保護費を搾取する「大規模無低」の正体 厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念、「生活保護で大学進学なんてゼイタク」本音を包み隠す厚労官僚の“良識”、生活保護ケースワーカーを死体遺棄に走らせた「孤立職場」の病理) 「簡易個室」を最低基準として公認? 「生活保護ケースワーカーを死体遺棄に走らせた「孤立職場」の病理」 経営主体の8割弱がNPO法人だ ケースワーカーの経験不足 向日市の行ってきた対策とは 生活保護 1つの居室をベニヤ板で間仕切っただけで天井部分が完全につながっている居室を、「簡易個室」と称し50~200人を1つの施設に「収容」するような大規模無低も関東各地に存在 生活保護で暮らす高齢者の「受け皿」 生活保護業務は重要視されていなかった? 東洋経済オンライン 生活保護法では、2013年改正で「後発医薬品を優先」することとなり、ついで2018年改正で「後発医薬品を原則」とすることになった 「生活保護での大学進学は認めない」厚労省が国会で公言した内容とは 京都府向日市 「劣等処遇」は、生活保護制度の中に包み隠されてきた考え方の1つ 無低事業者は、保護受給者が受け取る住宅扶助や生活扶助の中から、さまざまな「利用料」と称し毎月徴収する金銭を運営財源としている。中にはそのほとんどを徴収する悪質な大規模施設運営事業者も存在し、「貧困ビジネス」と批判されている 「生活保護という“身分”にふさわしい医療」という発想 高校進学と何が違うのか 大学進学はもうゼイタクではない 向日市のケースワーカーの経験年数は非常に短く、平均2年以下となっている。逮捕された本人が、当時、最も長い経験を有していた。それでは、知識やノウハウやスキルは蓄積されようがない 詳細を解き明かすには公判に期待するしかない 生活保護ケースワーカー(29歳)が、死体遺棄の疑いで逮捕された。担当していた男性受給者(55歳)が殺害した女性の遺体を隠そうとした際、他の男性(52歳)とともに協力 吉永純さん 受給者の犯罪に巻き込まれたケースワーカーの「その後」 上司は担当ケースワーカーの困惑を承知しており、状況に応じて電話を代わるなどの対応を行っていた。また、ケース診断会議を開催して対策を検討し、原則、複数のケースワーカーで家庭訪問を行っていた。さらに、日々、情報共有を徹底し、上司からの声がけも行ってきたという の向日市の事件には、2つの問題があります。 1点目は、公正な職務の執行という点です みわよしこ 今では全国で無低施設数は537、入居者数は1万5600人 金銭管理と称し生活保護費を丸ごと取り上げたり、「施設内就労」の名の下で福祉の専門資格を有しない保護受給者を施設職員に据えて働かせたりするケースがある 住居を失った多くの高齢単身者の終の住処(ついのすみか)となっているのが 日本人は身分制度が好きなのか 医療にも見え隠れする「劣等処遇」 「クレーマー」のものだった 2点目は、生活保護実施に当たっての問題です ケースワーカーを1人ぼっちにさせないことが肝要です。 向日市には、決して職員の個人責任にせず、第三者委員会などで真摯な検証を行うことが求められます
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