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外国人労働者問題(その14)(中国人介護技能実習生が日本の介護現場の「救世主」にはならない理由、セクハラ 医療 介護…「移民」も直面する日本の諸問題 国士舘大学 社会学 日本の「移民」、ルポ 外国人労働者の子どもたち ~受け入れ拡大のかげで~) [社会]

外国人労働者問題については、7月5日に取上げた。今日は、(その14)(中国人介護技能実習生が日本の介護現場の「救世主」にはならない理由、セクハラ 医療 介護…「移民」も直面する日本の諸問題 国士舘大学 社会学 日本の「移民」、ルポ 外国人労働者の子どもたち ~受け入れ拡大のかげで~)である。

先ずは、日中福祉プランニング代表の王 青氏が9月18日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「中国人介護技能実習生が日本の介護現場の「救世主」にはならない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/214965
・『2017年から鳴り物入りで始まった介護職種の外国人技能実習制度。特に、中国人介護技能実習生への期待は大きく、「日本の介護現場の人手不足を救う救世主になる」ともいわれていた。しかし、現状はなかなか厳しい』、甘い期待は禁物のようだ。
・『現状は厳しい中国人介護技能実習生  「こんなはずではなかった」――最近、外国人技能実習制度で中国人介護技能実習生を受け入れた日本の介護施設から、このような声が漏れ伝わってくる。 筆者は当初から中国人介護技能実習生の導入について、「慎重に検討すべきだ」と主張していたが、どうやら筆者の懸念が現実となりつつあるようだ。 外国人の介護技能実習は、2017年11月1日の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の施行に合わせ、外国人技能実習制度の対象職種に介護職種が追加されて、始まった(それ以前にも、EPAによるインドネシア、フィリピン、ベトナムからの介護人材の受け入れはあり)。 その背景は、いうまでもなく、人手不足だ。日本のサービス業はどこも労働力不足に悩んでおり、特に介護業界は深刻だ。その理由は明白で、介護施設には人員配置の最低基準があり、その基準に達しなければ、そもそも事業が継続できない。 このため、外国人実習生の中でも、特に中国人介護技能実習生に対する期待は大きかった。 その理由は、(1)中国人は日本人と同じ東洋人であり、容姿だけでなく、文化的にも日本人の高齢者が親しみを感じやすい、(2)漢字が読めるため、日本語を覚えやすく、日本語能力試験も受かりやすい、(3)一人っ子政策があった中国では少子高齢化が急速に進んでおり、介護に関心を持つ人が多い――などだ。 加えて、外国人技能実習制度とは、日本が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術または知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度である。 このため、介護事業者側は「少しでも人手がほしい」というのが本音だが、介護が社会問題化しつつある中国において「介護人材を育てる」という意義は大きい。国や介護事業者にとっても、中国人介護技能実習生の受け入れは“介護先進国の日本で学んでもらう”という「大義名分」が立ちやすい』、当初はウィン・ウィンで上手くいく皮算用だったが・・・。
・『中国の介護現場も深刻な人手不足  技能実習生を採用することにより、多くの介護事業者が頭を抱えるのは、「現場の負担やコストが予想以上に大きいこと」だ。 中国人介護技能実習生の仕事を指導し、生活をサポートするためには、それなりの人を配置する必要があり、手間暇がかかる。介護現場では日本人スタッフがつきっきりで、サポートしなくてはならないことが多く、現場のスタッフからは「ただでさえ忙しいのに、実習生の面倒まで見るのは大変」との声が出てきている。 なぜ、このような事態が生じているのか。 まずは、日本の介護事業者による圧倒的な認識不足だ。 あまり知られていないが、実は中国の介護現場も日本以上に深刻な人手不足である。現在、65歳以上の人口が2億人と日本の総人口を超えており、要介護の高齢者は4000万人いる。介護に対する需要は大きいが、肝心な介護の職に就こうとする人は極めて少ない。施設と在宅介護のニーズを合わせて、介護職は1000万人が不足すると指摘されている。 そもそも中国には「お手伝いさん文化」がある。昔、お手伝いさんは「下人」と呼ばれ、人の世話をする人、仕える人に対して昔からの偏見と差別は今もなお根強く残っている。都市部での大多数の若者はそっぽを向いているのが実情だ。また、本人がこの仕事をやりたいと思っても、親がさせないケースが多い。というのは、世間体があるからだ。 事実、今年、上海市政府が看護学校をはじめ、各専門学校に「介護専門の学部を設けること」を指示、各校では介護の学生募集を始めたが、まったく集まらない。ある上海の有力な看護学校の校長は「半年がたっているが、1人も応募しない」とため息をつく。 確かに最近は、中国の介護業界では若い人が着実に増えてきている。ただ、ほとんどの人が希望する職種は現場のヘルパーの仕事ではなく、企画や経営に関わりたいと思っている。その中には看護師やソーシャルワーカーの資格を持っている人が多い。つまり管理職として働きたいのだ。 詳しくは後述するが、残念ながら、せっかく日本の介護現場で実習しても、その多くの人は学歴や資格等の事情から中国に帰っても管理職として活躍できる機会は極めて少ないと予想される』、「中国の介護現場も日本以上に深刻な人手不足である」、「人の世話をする人、仕える人に対して昔からの偏見と差別は今もなお根強く残っている」、「ある上海の有力な看護学校の校長は「半年がたっているが、1人も応募しない」とため息をつく」、というのでは、わざわざ日本で介護をしようという奇特な人がどれだけいるか疑問だ。
・『中国の介護現場を支えるのは農村出身の出稼ぎ中年女性  実際に現在、中国の都会の介護現場で働いている9割は40~50代(いわゆる4050)の出稼ぎの女性だ。彼女たちは、これまで田舎で生活し、まともな学校教育を受けたことがない。中には小学校3年で中退した人もいて、字が読めない人も少なくない。しかも、介護業の離職率は20~30%と高い。 中国の介護事業者は人手を確保するのに必死だ。農村からの4050出稼ぎの女性に対して、宿舎と食事を無料で提供することに加えて、地域格差が大きいため、都会の生活習慣や文化も教えなければならない。 上海にある離職率が2%にとどまり、「上海で最も成功している」といわれる、ある民間の介護事業者は、「農村部出身のスタッフのモチベーションをいかにして高め、入居者の生活を支える役割を担ってもらうかは、まさに経営者にとって大きな課題」と語る。職業訓練や研修を常に行い、スタッフが必要な貯金をためるための勤務体系やプランを作成する。また、帰省できない介護スタッフのため、春節の間は地方から介護スタッフの家族を呼び寄せて、会社負担で上海観光に招待するなど、あの手この手でモチベーション維持に気を使っている。 政府も対策に余念がない。 上海市政府は2年前から「最も美しい介護スタッフコンテスト」を主催している。上海市全域約5万人の介護従事者から、技術部門とスピーチ部門の両方から優勝者50人を選出し、奨励金のほかテレビや新聞にも登場させて、社会に向けて、介護という仕事の重要性と崇高性を訴え、社会地位を上げる狙いである。大卒や一定の勤務年数となる人には、地域によっては政府から給料以外に年間2万元(約32万円)の奨励金を個人に支給している。 このように、中国では官民一体となって、「介護の担い手」確保のための手を緩めない。 そして、最近中国の介護職の給与も大幅に改善されていて、日中の賃金格差がだんだん縮小してきた。 このような状況下、中国を離れて、わざわざ日本に来るという介護スタッフはなかなかいない。 技能実習生として、日本に来る中国人介護スタッフの多くは、経済発展が遅れている内陸部出身の若者である。内陸部の高卒や専門学校の若者はせっかく卒業しても、就職先がなかなか見つからないのが現状だ。都市生活者に比べ、十分な教育やマナーを受けていない人も多い。 筆者の仕事上の知人が中国に赴き、介護技能実習生として来日する予定の生徒に対して研修を行っている。 「なぜ日本へ行きたいのですか?」との質問に、いつも漠然とした答えしか返ってこないという。その中で、「日本の化粧品、美容に興味があるから」「日本のアイドルが好き」「日本へ行けるから」などの答えもある。残念ながら「日本の介護を学びたい」という声が一度も聞かれなかったと話す。 中国人の優れた介護人材を探して、日本に連れてきて、育成するのは相当大変なことなのだ』、「「上海で最も成功している」といわれる、ある民間の介護事業者」は涙ぐましい努力をしているようだ。「最近中国の介護職の給与も大幅に改善されていて、日中の賃金格差がだんだん縮小してきた」、「介護技能実習生として来日する予定の生徒に対して研修を行っている。「なぜ日本へ行きたいのですか?」との質問に・・・日本の介護を学びたい」という声が一度も聞かれなかった」というのでは全く期待できない。
・『中国人の若者は介護ヘルパーには向かない?  筆者の個人的見解もあるが、私は中国人の若者はあまり介護ヘルパーには向かないように思う。 そもそも中国人の若者は日本人の同世代に比べて、ちょっと「自己中心」という印象がある。 中国は一人っ子政策が長く続いたため、両親や祖父母に非常にかわいがられて育つ。このため、どうしても「甘さ」がある。高齢者のお世話はもとより、日常の家事もあまり経験がないために、家事全般についての常識に乏しい。よって、40~50代の女性に比べると、どうしても手際が悪くなる。 正直なところ、大家族で生活する機会が多いフィリピン人の方がホスピタリティーやサービス精神の面でも介護ヘルパーとしての資質は優れていると思う。 中国出身である筆者がここまで厳しく言うのは、あまりにひどい例を見聞きしているためだ。 例えば、20代のスタッフを数人、採用したある介護施設で聞いた話だ。 一定の研修期間を経て、若いスタッフらが現場に入った。その日からトラブルが連続した。ひどかった例では、ある女性スタッフが男性の入居者の入浴介助の最中、急に「ぎゃー」と叫んで風呂場から逃げ出してしまった。入浴時、男性の体を見るに耐えず、まして手で体を洗ってあげるのが耐えられなかったという。 別のスタッフは、認知症の入居者を責めた。そして、責める際の動画をスマホで撮って友達に送った。加えて、入居者の身の回りの世話をしている最中、「苦しい!できない!」と泣きながら子どものように手足をバタバタするスタッフもいた。 こうしたトラブルが連続して以来、この施設の経営者は、精神的にすっかり参ってしまい、「やっぱり既婚の中年女性の方が生活感もあり、高齢者や子どもを世話した経験があるから、独身の若者よりも良い」との結論になってしまったようだ』、「中国人の若者はあまり介護ヘルパーには向かない」、「大家族で生活する機会が多いフィリピン人の方がホスピタリティーやサービス精神の面でも介護ヘルパーとしての資質は優れている」、確かにその通りなのだろう。
・『日本の介護事業者は覚悟と準備を持って受け入れるべし  日本に来る若者の介護スタッフでは、さすがにここまでひどい例は聞かない。しかし、1年前に若い中国人介護技能実習生を受け入れた日本の介護施設の関係者からは「1つのことに集中しすぎるあまり、周囲に目を配ることができない。何度注意されても変わらない」との不満が聞こえてくる。わずか1年で技能実習生と施設側には、すき間風が生じているようだ。 一方、中国人技能実習生にしてみたら、「こちらが一生懸命やっているのに、注意されたり、認めてもらえなかったりして、悔しい」と納得できない部分がある。 このような状態が増えれば、お互いにとって良くないのは明らかだ。 そもそも日本の介護事業者は介護スタッフが採用できなければ、中国人介護技能実習生を連れてくればいい……。このような安易な考えはやめた方がいい。お互いが不幸になるだけだ。 それでも、「日中の介護人材の交流のために、中国人介護技能実習生を受け入れたい」という真面目な介護事業者もいる。 受け入れるからには、どうしたら中国でも大活躍できる人材となりうるか。「『さすが、日本の介護現場で学んできた人』と中国で尊敬されるような技術力のある介護人材を育成する」という気概を持つべきだろう。 日本の介護事業者は、受け入れるのならば、よほどの覚悟と準備を持って受け入れるべきだ。 具体的にどんな育成や指導をすべきかという注意点などについては、いずれダイヤモンド・オンライン上でも執筆する機会を持ちたいと思う』、「日本の介護事業者は、受け入れるのならば、よほどの覚悟と準備を持って受け入れるべきだ」、その通りなのだろう。

次に、文筆家の川端 裕人氏が10月22日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「セクハラ、医療、介護…「移民」も直面する日本の諸問題 国士舘大学 社会学 日本の「移民」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00112/00023/?P=1
・『2019年4月、日本の労働力人口が減るなかで在留資格「特定技能」が導入された。その一方、低賃金や長時間労働など、外国人労働者の過酷な実態が話題に上っている。日本に暮らす外国人たちは今、どんな状況に置かれ、どんな問題があるのだろうか。移民政策を専門とし、外国人支援にも取り組む鈴木江理子先生の研究室に行ってみた! 「今更きけない」レベルの基本的なことを、鈴木さんに教えてもらった。 旧植民地出身のオールドタイマー(注)から、今、問題になっている「留学」「研修」「技能実習」、そして、「特定技能」についても駆け足で見た。 では、現時点で、鈴木さんが問題視しているのはどんな部分なのだろうか。 「政府は、特定技能の制度についても『移民政策ではない』と言い続けています。労働力はほしいけど、怪我したら帰ってください、病気になったら帰ってください、年をとったら帰ってくださいと。労働力としての有用性のみが評価されるわけです。その点では、『特定技能』の制度も『技能実習』と同じです。家族を呼べないのも同じですし」 なぜ政府が「移民政策ではない」ことにひたすらこだわるのか、直接の理由を語ったことがないため、よくわからない。ただ確実に言えるのは、技能実習から特定技能へと移行すると、最長で10年もの期間、日本で、単身、働き続けることになり、その間、日本で出会った相手と家族形成したいと願う若者もかなり出てくるだろうということだ。いや、たとえ5年きっかりであってもそうだろう。やはり実質的な「移民」受け入れにつながっていくのではないだろうか。 「実は、母国に家族を置いておけというのは、つまり、結局賃金も安く抑えることが可能になるということなんです。家族を呼べば、家族が暮らせるだけの賃金が必要になるので。私は家族が暮らせることはかなり大切なことだと思っています。途上国から来た人が、それも単身でしか働けないっていう状況を続けたら、その産業もそういった労働者に依存しつづけることになりますよね。一方で、日本で家族を養えるような環境なら、日本人もそこに戻ってくるかもしれません」 現状では、日本で家族形成をする「日本人」はとうてい働けない労働条件を容認してしまっているわけで、ならば、外国人労働者が家族を呼び寄せても暮らしていけるだけの待遇を実現すれば、それはそのまま「日本人も働ける」場所になっていくはずだ。実は外国人労働者をめぐる議論は、そのまま日本人労働者の問題と直結していることが多い。 それでも、制度は動き始め、また以前にもまして「外国人材の活用」が叫ばれる』、「母国に家族を置いておけというのは、つまり、結局賃金も安く抑えることが可能になるということなんです」、その通りだ。(注)オールドタイマー:20世紀半ばまでに日本へ来た朝鮮人やその子孫(Wikipediaに加筆)。
・『日本人がその労働条件では働けない職場に、かつてはバックドアから、昭和から平成への元号の変わり目からはサイドドアから、そして、令和の今はフロントドアからも人を受け入れつつ、そうこうするうちに、ずいぶん「外国人」はぼくたちの社会に増え、様々なサービスを支えてくれるようになった。 「今回、法律が変わって、今後、5年間で約35万人、つまり、毎年平均7万人受け入れるっていうことで、みんな大騒ぎしています。でも、私たちからしてみると、ここ数年、毎年、10万人、20万人と増えてきたじゃないかと思います。技能実習生だったり、留学生だったり、あとは国際結婚とか、いろんな形で増えていますから。さらに、第2世代、第3世代の子どもも生まれているわけですから、外国人や外国ルーツの人、が増えていくのはもうとっくに始まっているんです」 鈴木さんに言わせれば(いや、この問題に関心を持ってきた人に言わせれば)、「外国人」はとっくに増えているし、すでにぼくたちの社会は彼ら彼女らに支えられている。その中には、「移民」と呼んで差し支えない「定住型」の人たち、移民ルーツの人たちが、もう数百万人もいる。彼ら彼女らはいずれ帰っていくのではなく、ともに生きていく人たちだ。 以上、鈴木さんが大学の講義で語るような内容をかなり単純化してたどった感があるが、大雑把な見取り図は描けたかもしれない。 では、鈴木さんが大学の教室を離れて活動している移住者支援はどんなふうだろう。前述の通り、鈴木さんは「特定非営利活動法人 移住者と連帯するネットワーク(以後、移住連)」の副代表理事だ。 まずは「移住連」について教えてもらおう』、「「外国人」はとっくに増えているし、すでにぼくたちの社会は彼ら彼女らに支えられている。その中には、「移民」と呼んで差し支えない「定住型」の人たち、移民ルーツの人たちが、もう数百万人もいる。彼ら彼女らはいずれ帰っていくのではなく、ともに生きていく人たちだ」、事態は予想以上に進展してしまっているようだ。
・『「1996年に前身ができた時には、移住労働者と連帯する全国ネットワークという名称で、労働者がメインだったんです。でも、実際には移住労働者の家族など、労働者に限らない課題にも対応しているので、NPO法人化した2014年に、『移住者』と変えました。海外の会員もあわせて個人が400人超、団体が100団体ちょっと入っています。研究者もかなり多いんです。移住連は、毎年、省庁と交渉をしているので、統計などの情報も持っていますから」 移住者という広い括りの中にどんな人たちがいるのか、すでに今回の連載で解説した。本当に様々な出自の人たちが、様々な時期に日本に来ていることは、あらためて見ると驚くべきことだ。そして、やってきた人たちは、日本で家族形成をしたり子育てをするなどして、ぼくたちの社会に根付いている。移住連がひとつの団体としてすべてにかかわるというよりは、日本各地でそれぞれの問題に対峙している様々な団体や個人がネットワークを作っているというイメージだ』、移住連は具体的にはどんな活動をしているのだろう。
・『移住連のウェブサイトを見ると、キーワードとしてこんな言葉が掲げられていた。 ここにいる、と。 移住者であり、移民として捉えるべき人たちが、すでに、ここにいる、という意味だ。 「結局、人間として来ているわけですから、私たちの社会の中にある問題は、移住者/移民たちの中にもあるんです。例えば、私たちが充分に取り組めていないものとして、在日の人とか、中国帰国者の介護の問題があります。第1世代の高齢化が進んでいて、中国帰国者向け、在日コリアン向けの介護施設というのもでき始めています。つまり、ライフサイクルの中であらゆることを同じように経験していくことになります」 本当に活動は多様で、それはそのまま、日本の移住者問題、移民問題の多様さそのものだ。鈴木さんが言う通り、ぼくたちの社会で見られる問題のすべてが同じようにそこにある。 ウェブサイトにも掲載されている主要なプロジェクトの中から、鈴木さんとの話題にあがったものをいくつかピックアップする。 まずは、女性の問題。 「国際結婚などで日本に来た移住女性は、弱い立場にあって、外国人であり女性であるという二重の意味で差別を受けがちです。DVですとか、離婚、地域での孤立、それから、『ジャパゆきさん』に始まるシングルマザーの問題ですね。さらに最近では、技能実習女性のセクハラや労働問題もありますし、介護労働者も多くなって、そこでの問題もあります」 「ジャパゆきさん」とシングルマザーというのは、とても大きな問題で、当然ながら、今では子どもたちも大きくなっている。JFC(ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン)と呼ばれる人たちがおり、これはつまり、日本人男性とフィリピン人女性の子どもたちという意味だ。法的な結婚をしていない場合、父親が認知しないと日本国籍をもらえず、母親とともに大変な思いをする子たちがいる。 さらに、技能実習生が直面する問題は、セクハラなどの被害はもちろんだが、さらに先鋭化したとも言えるケースがたびたび見られる。 「技能実習生が妊娠したら、中絶するか帰国するか選択を迫られるケースは実際にあるんです」と鈴木さんは言った』、「活動は多様で、それはそのまま、日本の移住者問題、移民問題の多様さそのものだ」、「ぼくたちの社会で見られる問題のすべてが同じようにそこにある」、なるほど。
・『家族を伴わない単身渡航でやってくる若者だから、恋愛もするだろうし、妊娠することもあるだろう(またひどい話だが、セクハラの結果として、妊娠に至ることもあるかもしれない)。それでも、あくまで単身での渡航で就労することが条件なので、出産することが制度として想定されていない。 入管法対策というのもとても大きなテーマだ。 「法律が変わるたびに、外国人管理や排除が強化されていくので、私たちは『管理・排除ではなく共生のための制度を!』と言い続けています。例えば、1980年代から90年代にかけて、労働力不足を満たしていたのは、オーバーステイの非正規滞在者が多かったんです。まだ緩やかな排除の時代で、おまわりさんも『あの人はオーバーステイ』と知っていても普通に挨拶して見逃しているような時代でした。でも、21世紀になって、技能実習制度などサイドドアからの労働力供給が十分に機能するようになって、さらにフロントドアからの受け入れも検討され始めたので、じゃあバックドアは閉じましょうと、一斉に摘発を始めました。2003年12月に、半減計画(今後5年間で非正規滞在者を半減する計画)が出された時、本当にできるのかと思っていたら、実際に目標を達成してしまいましたから」 「不法滞在者」と表現すると、「不法」つまり法をおかした人であり、とてつもなく悪い人のような印象を受けるが、実際には、そうならざるを得ない様々な原因がある。例えば、今なら、過酷な職場で、監理団体も味方になってくれないような場合、技能実習生が脱出(失踪)することがある。このストーリーの中で技能実習生は、搾取された被害者だが、しかし、入管法的には、決められた就労を放棄したのだから、不法滞在者ということになる。日本の制度では、自分ではなく受け入れ側に問題があっても、簡単に本人が「不法」になってしまう。 更に最近、当局が問題にしているのは「偽装滞在者」だ。偽造した卒業証明書や虚偽の雇用証明書などを使って不正に在留資格を得た人や、在留資格に定める活動をしていない人のことで、入管は取り締まりを強化する方針だそうだ。 「本来、研修・技能実習制度って『前職規定』っていうのがあって、母国において同じ仕事をしていて、その仕事を日本でより高めていくという建前です。だから、前職についての証明書が必要なんです。でも、例えば、私が聞き取ったある建設会社の現場では、みんな母国では別のことをやっていて、本人たちが知らないまま勝手に履歴が書き換えられてるんですよ。それって本人の責任ではないですよねって法務省担当者に尋ねたんですが、『本人が知らなくても、偽って入ったのだから、発覚すれば退去になります』って答えなんです」』、「21世紀になって、技能実習制度などサイドドアからの労働力供給が十分に機能するようになって、さらにフロントドアからの受け入れも検討され始めたので、じゃあバックドアは閉じましょうと、一斉に(不法滞在者の)摘発を始めました」、”不法”滞在者にとっては迷惑極まる話だ。
・『この偽装の問題は、日本に在留するほぼすべての外国人がそれぞれの在留資格に応じて問題にされうるものなので、日本の入国管理は、自由に資格を剥奪できる使い勝手のよい理由をまた一つに手にした感があるという。 なお、はっきりしたものにせよ「偽装」にせよ、入国管理局は入管難民法に基づいて「不法滞在者」を収容施設に収容することができるし、制度上、無期限の収容が可能な仕組みになっている。理由は「不法」であることだが、はたして本当に法に触れているのかを問う裁判は行われず、また、入管の審査内容も公開されない。これだけでも非常に危険な仕組みだ。例えば、日本人との結婚を偽装と疑われ、1年、2年と長期収容されるといったことが実際に起きている。本来このように一段落で済ませられる話ではないものの、付記せざるを得ない。 さらに、「外国につながる子ども・若者」の問題。 もうお気づきと思うが、移住連が掲げるプロジェクトは、それぞれ排他的に領域が決まっているわけではなく、互いに密接に連関している。 例えば、これまでにも話題に出た「女性の技能実習生が妊娠した場合」を考えてみると、最初は「女性の問題」に見えていたところから、様々な問題が顔をだす。 移住連が編集を手がけた『外国人の医療・福祉・社会保障 相談ハンドブック』(明石書店)。発売後すぐに増刷したのは、外国人に関するこうした問題がそれだけ広がっているからだろう。 そもそも、在留資格が受け入れる企業を前提として与えられている場合、セクハラや低賃金にも我慢を強いられることが多いわけだし、そんな状況下で妊娠したら、中絶するか、帰国するかの二択であり、「失踪」して子を産めば、非正規滞在になってしまう。それでも、産む選択をしたら、まずは、医療問題や社会保障の問題が浮上し、さらにその後、子どもや若者の問題へとつながっていく……。 「当たり前ですけど、子どもって生まれたときから自分がオーバーステイだって知ってるわけではないんですよ。でも、小さい頃から、夜、自転車に乗るときには必ずライトをつけてねとか、すごく厳しく親から言われて、何でここまで言われるんだろうって思ってたら、実はオーバーステイだからと知らされたりするんです。そうすると、普通の子どもならば怒られたり注意されるだけで済むことでも、自分はそれでは済まないと分かってきて、すごく気をつけて毎日の生活を送るようになります。生まれた時から日本で育って日本語で暮らしているのに、言葉が通じない、知らない国に送還されたらどうしよう、って不安のなかで生活している子どももいます」 その一方で、在留資格はあるけれど、あるいは、日本国籍はあるけれど、「日本語指導が必要な児童生徒」(文科省調査)は年々増えている。また、前にも触れたように、国籍取得とともに「ルーツを消される」という問題も別の極にある。結局、「移民政策はとらない」「厳しい外国人政策で管理、排除すればいい」という発想のしわ寄せが、まるまる子どもたちに行っているように見える。 つづく』、「本当に法に触れているのかを問う裁判は行われず、また、入管の審査内容も公開されない。これだけでも非常に危険な仕組みだ」、「入国管理局」にここまで恣意的な権限を持たせるのは好ましくない。少なくとも「審査内容」は公開させるべきだろう。「生まれた時から日本で育って日本語で暮らしているのに、言葉が通じない、知らない国に送還されたらどうしよう、って不安のなかで生活している子どももいます」、なんとか救済したものだ。移住連の今後の活動に期待したい。

第三に、9月18日付けNHKクローズアップ現代+「ルポ 外国人労働者の子どもたち ~受け入れ拡大のかげで~」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4329/index.html
・『外国人労働者が急増するなか、学校教育を受けられない子どもたちの問題が深刻化しています。彼らは日本の義務教育の対象ではないため、いじめや語学力不足、あるいは家庭の事情などでいったん学校に通えなくなると、制度からこぼれおちてしまい“放置された子ども”となってしまうのです。外国人生徒の比率が15%を超えたある中学校の生徒指導の現場をルポ。学校からドロップアウトしてしまった彼らの、その後の生活とは…?未来とは…?当事者とともに考えます。 出演者 石井光太さん (作家) 宮田裕章さん (慶應義塾大学教授) 小島祥美さん (愛知淑徳大学准教授) 横山ラファエルさん (元不就学児) 池長ミッシェルミツヨシさん (元不就学児) 武田真一 (キャスター) 、 高山哲哉 (アナウンサー)』、興味深そうだ。
・『ルポ 外国人急増の裏側で ♪黒や白は関係ない 俺はこの道で育った男 ガイジンとかそんなのは関係ない やっとんのはこの町だ  岐阜県可児(かに)市。この街で育った日系ブラジル人のグループです。ふだんは建築現場などで働きながら音楽活動をしているメンバー。多くは、かつて日本の小中学校を「ドロップアウト」した経験を持っています。 「差別を乗り切るために、何をやらんといかんかって言ったら、その時はケンカやラップだったり、ストリートで生きるしかなかった。」 「俺学校行って、『うんこ(の色)』とか『くさいガイジン』『国に帰れ』とか。俺はただ、学校に行きたかった。勉強したかっただけ。」 今、外国人労働者が急増する中、学校教育を受けられない子どもの問題が改めて浮き彫りになっています。ことばも基礎的な学力も身につけられないまま、制度からこぼれ落ちてしまう子どもが後を絶ちません。 今年、外国人労働者の受け入れ拡大を目指した法律が施行。しかし、その子どもたちは義務教育の対象から外れるため、学校に通えなくなるケースは、さらに増えるのではないかと懸念されています。 今、教育現場ではいったい何が起きているのか。増え続ける外国人の子どもたちと向き合ってきた、ある学校に密着しました』、「外国人労働者の受け入れ拡大を目指した法律が施行。しかし、その子どもたちは義務教育の対象から外れるため、学校に通えなくなるケースは、さらに増えるのではないかと懸念されています」、確かに深刻な問題だ。
・『ルポ 外国人急増…多国籍化する教育現場  岐阜県可児市立蘇南(そなん)中学校です。 朝8時。登校時間が過ぎると、静かだった職員室が一変しました。 「(タガログ語)7時10分にお子さんを送った?」「(ポルトガル語)うーん、また連絡しますね、いいですか?」 4人の通訳が、登校してこない生徒に確認の連絡をします。全校生徒900人のうち150人が外国籍。この10年で3倍に増えました。今、問題になっているのは、こうした外国籍の子どもが学校に来なくなるケースが増えていることです。 生活指導主任 竹内幸正さん「この確認中って子たちが、現在連絡が取れていない子たちです。電話がそもそも家にない、親が携帯を持って行って連絡できないとか。」 この日は19人が無断欠席。連絡もつかないため、教師が手分けをして家を訪ねます。 ブラジル出身の中学3年生。もう1年近く不登校が続いています。工場に勤める両親はいつも不在がちで、訪問してもなかなか会えません。 「明日学校…。」生活指導主任 竹内幸正さん「学校来られる?」 「うん。」 生活指導主任 竹内幸正さん「生存確認というと大げさですけど、電話連絡ができない以上、そもそも子どもがいるのか、生活の実態があるのか、学校に行く途中で事故にあっていないか、外国人の子でも、日本人の子でも同じように心配。」 親の多くは、80年代の入管法改正によって入国が認められた日系ブラジル人やフィリピン人。市内にある自動車関連の工場で働いています。日本人の働き手が不足する中、可児市の外国人は今も増え続け、人口10万人のうち8000人を占めるまでになっています。 こうした外国人の子供たちに対応するため、蘇南中学校では特別な補習プログラムをもうけてきました。 教員「“から”にしようか。『交番“から”広場が見えます』の方が良いね。」 それぞれの学力に合わせて、漢字や数学を増やすなど時間割も一人一人オーダーメイドしています。ところが、今年に入って、毎月のように新たな外国人生徒が転入してくるようになりました。 教員「1年生、まったく答えていないので」「いつ(日本に)来たんだろうこの子。」「それにも答えていない。」 学力差や、抱える事情も年々多様に。「一人も脱落させたくない」と続けてきた、きめ細かな授業も限界に近づきつつあります。 教員「これからもまた、来年も、こんなぐらいの人数になる可能性はある?」「小学校のいま人数が増えているという話なので、今後この規模で、このスタイルで維持出来ないかもしれない。」「全員を見届けるというか、そういうのは厳しくなる。」 学校に来られなくなる事情も人それぞれです。 フィリピン生まれ。3歳で来日したマリアさん。勉強熱心で日本語も十分に習得していますが、去年から学校を休むことが増えています。自宅を訪ねてみると、マリアさんは去年生まれたばかりのめいっ子の子守をしていました。 マリアさん「ベイビーいつもの顔は?いつもの顔はどうしたの?」 仕事が忙しい家族の代わりに、マリアさんが面倒を見ています。赤ちゃんの具合が悪いときは、1週間ほど登校できないこともあると言います。 マリアさん「私も家族の一員として、お手伝いしたい。学校にいることは勉強として大切だけど、家族が優先なので。」 自動車関連工場の派遣社員として働くマリアさんの母と叔母。仕事場が遠いため、朝5時に出て帰宅は夜8時をすぎます。 マリアさんの母「マリアさんの大変だけど、学校本当はいま勉強しないといけない。でも、面倒を見る人がいないからしかたがない。」 本国への仕送りもあり、日々の生活費をまかなうのが精一杯。本人は高校進学を希望していますが、心配なことも。 マリアさんの母「やっぱり高いから。家賃とか保険、税金。やっぱりまず頭の中は生活。どういう生活ができるか。」 この日、不登校が続いている中学2年生のフィリピン人生徒の両親がやってきました。 母親「本人は学校に行くのが嫌なのです。退学するしかありません。日本に来る前は問題なく勉強していました。」 「フィリピンにいる時は問題なかった?」 母親「ええ、成績も良かったんです。」 生徒は、勉強にも友人にも馴染めず、退学を強く希望していると言います。 教頭「本当に辞めちゃっていいですか?」 母親「ええ、どうしようもありませんから。」 しかし、学校は子どもを強く引き留めることはできません。外国籍の子どもは憲法上、義務教育の対象から外れているためです。結局、この日は結論を出さず、もう少し考えてもらうことになりました。 この学校では、去年1年で10人が中途退学。その後どうしているのか確認することはできていません』、「蘇南中学校・・・全校生徒900人のうち150人が外国籍」、こんなに多いとは驚いた。「それぞれの学力に合わせて、漢字や数学を増やすなど時間割も一人一人オーダーメイドしています。ところが、今年に入って、毎月のように新たな外国人生徒が転入してくるようになりました・・・学力差や、抱える事情も年々多様に。「一人も脱落させたくない」と続けてきた、きめ細かな授業も限界に近づきつつあります』、外国人生徒数が増えれば、「オーダーメイド」は確かに困難にならざるを得ないだろう。
・『外国人急増×日本の未来は…  武田:NHKと専門家の調査では、全国で学校に通っていない外国籍の子どもは8000人以上に上るとみられています。文部科学省も初めて全国的な調査に乗り出しています。可児市で外国籍の子どもの実態調査と改善に向けた取り組みを長年行ってきた、小島さん。全国でこうした状況になってきている。これはなぜなのでしょうか。 ゲスト 小島祥美さん(愛知淑徳大学准教授)小島さん:2つありまして、1つは、やはり国が就学義務の対象にしていないという外国人に対しての扱いですよね。この問題が一番大きいです。2つ目がですね、それに伴って自治体任せになってしまっているっていうのが大きい点です。とりわけですね、外国人の住民というのは地域によって偏在しておりますので、数が多ければ施策はされているんですけども、少なければ、社会から見えない子どもたちという対象になってしまっていることで施策がされていないという自治体格差があるというのが大きな問題ですよね。 ゲスト 宮田裕章さん(慶應義塾大学教授)宮田さん:やはり政府の受け入れ拡大の政策、あるいは少子化人口減少という中、日本でも、必ずこれはさらに大きな問題となっていくだろうと。この点からですね、今日フォーカスが当たっている岐阜県可児市というのは、日本の未来の姿の1つの可能性であるということも言えますし、可児市の取り組みの意義と課題を理解するということは、日本の将来を考えるうえでもすごく大事なのかなというふうに思います。 高山:最近、街角で働いている外国人を見かけるっていう方、結構多いと思います。在留外国人の推移なんですけども、全国的にも可児市でも外国人が増え始めたのは1990年代に入ってからなんですね。大きな節目は、1989年に改正されました入管法。それをきっかけに、さまざまな国籍の人たちが労働力として日本に入ってきて、去年は過去最高の273万人を記録。平成の30年間でなんと2.7倍も増えたんです。 来日した外国人の皆さんには、在留資格ってものが与えられる。主にこういったものなんですが、家族が帯同できるのは、このうちの、こちらです。さらに、今年4月入管法が新たに改正されまして、新たに在留資格に特定技能というのが設けられまして、5年間で34万人の受け入れが見込まれているんです。この特定技能は全部で14の業種があります。このうちの2つの業種では、家族を帯同呼び寄せることができるという道もあるんです。 今後、外国人の家族そして、子どもがどんどん増えることが見込まれています。 武田:学校からこぼれ落ちてしまった子どもたち。その後、どんな現実と直面することになるんでしょうか』、「国が就学義務の対象にしていないという外国人に対しての扱いですよね。この問題が一番大きいです。2つ目がですね、それに伴って自治体任せになってしまっているっていうのが大きい点」、就学義務の対象にして、国がもっと前面に出るようにすべきだろう。
・『ルポ 外国人急増…小学校中退に児童労働も  岐阜県可児市で、かつて小中学校を中退した経験がある若者たちと出会いました。勉強やいじめ、家庭の事情も重なり退学。その後は過酷な生活を送っていました。 外国人労働者の家族を長年取材 作家 石井光太さん「仕事をはじめたのは何歳の時からですか?」 横山ラファエルさん「仕事をはじめたのが、中学2年生だもんで。」 池長ミツヨシさん「14歳でバイトとか。給料(日給)7000円。」 石井光太さん「小学校5年生で日本に来て、学校行かなくなって、お父さんからビンタされて、家を出て。どこに泊まっていたの?友達のおうち?」 池長ミツヨシさん「友達の家とか、橋の下とか、いろいろ寝とった。」 石井光太さん「ホームレスみたいな生活?12歳ぐらいでしていたんだ。11歳12歳13歳がホームレス?」 池長ミツヨシさん「先輩が俺を拾って『日本のやり方あなたに教える。』ずっと3年くらい面倒みてくれた。その人は親方の仕事をやっていた。」 石井光太さん「建築会社の親方に拾ってもらった形で、そこで働き始めるわけですね。」 ブラジル出身の塩野ホドリゴさんが来日したのは20年前。蘇南中学校に転入しましたが、当時は学校側も外国人の生徒の受け入れに戸惑っていました。 塩野ホドリゴさん「いきなりブラジルから日本に来て、しゃべれんし、お母さんと一緒に学校行かないとダメって。それで、水金しか(学校に)行けなかった。」 当時の校長だった林伍彦さん。林さんも、ホドリゴさんたち外国人の生徒とどう向き合えばいいのか悩む日々でした。 元校長 林伍彦さん「休み時間になると踊り場に集まって、ブレイクダンスをしまくって。授業開始の鐘がなっても、なかなか教室に入ってくれない。何人かの先生が教室に入れる。そんなのが毎日の生活でしたから。」 中学を終えたホドリゴさんは、高校には進学せず仲間の多くも中途退学しました。しかし、卒業から半年後、林さんはホドリゴさんから意外な事実を告げられます。 元校長 林伍彦さん「ある日彼は『校長先生、僕に日本語教えてくれない?』『漢字を教えて。』そう言ったんですよ。僕らこの中学校の外国人の子どもたちを預かっているけれど、“預かっている”じゃなくて、生徒としてきちんと勉強させなければ、僕らはこの子どもたちにとって申し訳ない。なんとかこの子たちがちゃんと勉強する、そういう場を作ってあげたいと。」 ホドリゴさんの言葉を受けて、林さんは可児市とともに改善に乗り出しました。14年前に設立された「ばら教室KANI」。入学前に日本語と学校のルールを学びます。地元の学校に通う前の3か月間。外国人の子どもなら誰でも無料で通うことができます。 「失礼します。先生に用事があります。」こうした手厚いサポートを10年以上続けることで、可児市は外国人の生徒の学校への定着率を着実にあげてきました。現在600人の外国人の児童生徒を対象にするこの取り組み。市は年間8000万円の予算を組んで支えています。 可児市は、なぜここまで外国人の子どものサポートに力を入れているのでしょうか。 可児市 冨田成輝市長「外国の方の支援というよりも、市民なんですよ。国籍が外国なだけで市民なんですよね。これからは日本の国自体が企業が、外国籍の方を雇って続けて行く以上、その人たちの生活を支えるというのは、これは自治体がやっていますけれども、企業や国にとっても不可欠なことですので。」 年間8000万円の捻出は決して楽ではありませんが、可能な限り続けたいといいます。 高山:けっこうな額の予算というのは、未来への投資であると。 可児市 冨田成輝市長「(予算額は)いまでも最低限だと思うんですけど、(その予算がないと)まともな学校教育はできない。とんでもないことになっている。」』、可児市が「ばら教室KANI」を「年間8000万円の予算」で支えているというのは、大したものだ。
・『外国人急増×日本の未来は…  武田:可児市で学校に行けなかった経験をした、ラファエルさんとアヒルさんにお越しいただきました。今日は、ようこそお越しいただきました。ありがとうございます。今の学校の様子っていうのは、どういうふうにご覧になりますか。 ゲスト 横山ラファエルさん(元不就学児)ラファさん:昔みたいにやっぱ少なかったので、その辺。頼れる人がいなくて。友達とかでも。だけど今だいぶ多くなってきたので、お互い支え合ったりすればまあ、乗り越えれると思いますね。 ゲスト 池長ミッシェルミツヨシさん(元不就学児)アヒルさん:今、可児のほうにいる外国人と日本人、みんな、手、組んどるし、ちゃんとうまくいっとるし、もうたぶん、心配はない。 武田:小島さんは、改めてその成長したお二人の姿をご覧になって、今、感じること。 小島さん:そうですね。まずはすごくうれしいですよね。っていうのも、何よりも、彼らたちのこの腕に書かれてる0574って、さっき、なんか…。 宮田さん:岐阜の市外局番。これは日本人として、非常に、なんていうのか熱いものがあるんですけど。 ラファさん:一応「0574familia」っていうのがあって。それが僕たちのグループみたいな。音楽や仕事や全部一緒にまとめてやってるグループなんですね。 宮田さん:でも、その市外局番をグループ名にするっていうのは、たぶん、思いがあると思うんですけど。 ラファさん:そうですね。地元思いっていうのが強いです。 宮田さん:岐阜の好きなところっていうのはどういうところですか。 ラファさん:岐阜ですか?全部ですね。自然が好きですね、岐阜は。都会よりも、田舎育ちで自然で生きてきた中で、あそこが自分の場所っていうのが。 武田:自分の場所なんですね。 ラファさん:はい、そうです。落ち着く場所って言えばいいんですかね。 高山:地元。 ラファさん:地元ですね、はい。地元ですね。 小島さん:可児の中で、ある種起点に、市自体が覚悟をしたっていう時点があったわけですよね。それまでは、外国人住民はいつかは帰る人たちなので、その人たちに対して施策を打つ必要はないんじゃないかっていう、ゲストのような扱いだったような態勢が、街の雰囲気もあった中でそれがそうではなく、住民なんだ一市民なんだっていう態勢に変わっていった。 武田:VTRの中では、可児市、最低でも8000万円が必要だというふうに言ってましたよね。 小島さん:10万都市で8000万という額はかなりの負担ですので。可児は頑張ってます。これ以上もっとっていうのは、かなり自治体にとって負担が大きいのではないのかなと思いますし、それぐらいの体力がある自治体っていうのも、かなり限られているんではないのかなっていうふうに思いますよね。 高山:調べてみると、長野県の上田市では、児童生徒が多国籍化しすぎて8か国に対応しなきゃいけないということで、通訳が見つからないという事態に陥っていたり。あと、人口の5%が外国人という大阪市。日本語の支援が必要な子どもたちというのは、10年で3倍に増えたんですけど、行政としても頑張って支援できる非常勤の人などをあてがっても、なかなか足りずに待機児童まで生まれてしまっているという状況なんですよね。全国で今お金がない、人がない、リソースがないという悲鳴が上がっているんです。 こちら、日本の外国人受け入れ政策を各国の移民政策と比較した指標なんですが、日本は38か国のうちなんと27位。低いんですよね。 各項目で見てみますと、どの項目もやはり低調。いろんな問題が山積しておりまして、例えば、義務教育がない。親に対する支援もない。子どもだけじゃなくて。 諸外国では当たり前のことが日本ではできていないということが、この29位、そして全体では27位という順位に甘んじているわけです。 ラファさん:僕も団地に住んでるんですけど、そこに今、いろんな新しい方が増えてきてるんです。僕たち長いから、そこで助け合ったりしてるんですけど、やっぱりひどいとこはひどいですね。家具もなくて、何もない状態で。だから、できるだけ手伝ったりしてるんですけど、仲間思いっていうか、みんな同じ国だし、同じ国じゃなくても外国人の方だから気持ちは分かるし、手伝うのも当然っていうふうに思ってるから。だけど、そこだけ、もうちょっと何か工夫してほしいですね。来たばっかりの人たちのためにも、何かがたぶん足りてないかもしれないので。 武田:安心して暮らしていけるような、何かサポートですね。今のお話、聞いてても改めて思うんですけれども、やはり、私たちが外国から来る人たちを本当に隣人としてしっかり受け入れて。で、その人たちと一緒に日々の暮らしをずっと生きていくんだっていう、何か覚悟が問われているんだと思うんですよね。 小島さん:私は、国、そして自治体また、それぞれ私たち一人一人が覚悟と想像力が必要なのかなって思うんですよね。また、私たち一人一人市民ですけれども、外国人労働者たちが汗と、そして涙と苦しみを持って働いている中で、私たちの暮らしっていうものがあるんだっていう、その想像力を持った中で地域はどうあるべきなのか、私たち一人一人はどうあるべきなのかっていうのは考えるべきなんじゃないのかなって思います。人間を受け入れているという認識から、想像力を持って、国、そして自治体に担う制度設計を行ってほしい。それがまず取り組んでいただきたいことだと思います。 ゲスト 石井光太さん(作家)石井さん:やはり僕たちは、日本に来たから日本のことを学びなさい、日本に従いなさいということではなくて、逆にその人たちが来てもらったんだから、これから我々が変えていかなきゃいけない。彼らが居心地のいい世の中に変えていかなきゃいけない。それはやはり、これから日本というのは、どんどん外国から人を呼んで、日本という国をよりよくしていかなければならないんですよね。そのためには、やはり日本の文化を強いるのではなくて、来てもらう人に対してきちんと合わせていく。そういったようなことが必要なんじゃないのかなっていうふうに思ってます。 宮田さん:いわゆる日本と異なる文化の人たちを迎え入れたときに、マジョリティーである日本側がいかに変わっていくか。これがすごく大事なのかなと。「郷に入っては郷に従え」ということわざがあるんですが、あれは入る側の心構えでですね。実は受け入れ側の心構えではないんですよね。そのときに、やはり我々が一歩踏み出して、これから一緒に生きていくのであれば違う日本に、新しい違う文化を共に作っていくんだということが必要になるかなと思います。(最後の部分にあるラップの歌の歌詞は省略)』、「日本の外国人受け入れ政策を各国の移民政策と比較した指標なんですが、日本は38か国のうちなんと27位。低いんですよね。 各項目で見てみますと、どの項目もやはり低調。いろんな問題が山積しておりまして、例えば、義務教育がない。親に対する支援もない。子どもだけじゃなくて。 諸外国では当たり前のことが日本ではできていないということが、この29位、そして全体では27位という順位に甘んじているわけです」、全く恥ずかしい限りだ。私自身は外国人労働者受け入れ拡大政策には反対だが、すくなくとも受け入れた移民、特にその子どもに対しては、支援を十二分に行うべきで、日本政府の冷淡さには呆れ果てるほかない。
タグ:日本の介護事業者は覚悟と準備を持って受け入れるべし 大家族で生活する機会が多いフィリピン人の方がホスピタリティーやサービス精神の面でも介護ヘルパーとしての資質は優れている 中国人の若者は介護ヘルパーには向かない? 中国の介護現場を支えるのは農村出身の出稼ぎ中年女性 ある上海の有力な看護学校の校長は「半年がたっているが、1人も応募しない」とため息をつく 人の世話をする人、仕える人に対して昔からの偏見と差別は今もなお根強く残っている 中国の介護現場も深刻な人手不足 現状は厳しい中国人介護技能実習生 「中国人介護技能実習生が日本の介護現場の「救世主」にはならない理由」 ダイヤモンド・オンライン 王 青 (その14)(中国人介護技能実習生が日本の介護現場の「救世主」にはならない理由、セクハラ 医療 介護…「移民」も直面する日本の諸問題 国士舘大学 社会学 日本の「移民」、ルポ 外国人労働者の子どもたち ~受け入れ拡大のかげで~) 外国人労働者問題 日経ビジネスオンライン 川端 裕人 「セクハラ、医療、介護…「移民」も直面する日本の諸問題 国士舘大学 社会学 日本の「移民」」 日本の外国人受け入れ政策を各国の移民政策と比較した指標なんですが、日本は38か国のうちなんと27位。低いんですよね。 各項目で見てみますと、どの項目もやはり低調。いろんな問題が山積しておりまして、例えば、義務教育がない。親に対する支援もない。子どもだけじゃなくて。 諸外国では当たり前のことが日本ではできていないということが、この29位、そして全体では27位という順位に甘んじているわけです 長野県の上田市では、児童生徒が多国籍化しすぎて8か国に対応しなきゃいけないということで、通訳が見つからないという事態に陥っていたり 外国人急増×日本の未来は 年間8000万円の予算 「ばら教室KANI」 ルポ 外国人急増…小学校中退に児童労働も 外国人急増×日本の未来は… 学力差や、抱える事情も年々多様に。「一人も脱落させたくない」と続けてきた、きめ細かな授業も限界に近づきつつあります ところが、今年に入って、毎月のように新たな外国人生徒が転入してくるようになりました それぞれの学力に合わせて、漢字や数学を増やすなど時間割も一人一人オーダーメイドしています 全校生徒900人のうち150人が外国籍 4人の通訳が、登校してこない生徒に確認の連絡 岐阜県可児市立蘇南(そなん)中学校 ルポ 外国人急増…多国籍化する教育現場 ルポ 外国人急増の裏側で 「ルポ 外国人労働者の子どもたち ~受け入れ拡大のかげで~」 NHKクローズアップ現代+ 在留資格はあるけれど、あるいは、日本国籍はあるけれど、「日本語指導が必要な児童生徒」(文科省調査)は年々増えている 生まれた時から日本で育って日本語で暮らしているのに、言葉が通じない、知らない国に送還されたらどうしよう、って不安のなかで生活している子どももいます 21世紀になって、技能実習制度などサイドドアからの労働力供給が十分に機能するようになって、さらにフロントドアからの受け入れも検討され始めたので、じゃあバックドアは閉じましょうと、一斉に(不法滞在者の)摘発を始めました ぼくたちの社会で見られる問題のすべてが同じようにそこにある 活動は多様で、それはそのまま、日本の移住者問題、移民問題の多様さそのものだ 移住連 移民」と呼んで差し支えない「定住型」の人たち、移民ルーツの人たちが、もう数百万人もいる。彼ら彼女らはいずれ帰っていくのではなく、ともに生きていく人たちだ 鈴木江理子先生
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