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いじめ問題(その9)(私立学校でいじめの実態は把握されているのか?、「ハーフ」の女子生徒を自死に追い詰めたイジメ 「ガイジン」と笑われ続けた彼女は…、壮絶いじめ告白の中川翔子 「嫌な同窓会なら行かなくていい」) [社会]

いじめ問題については、10月18日に取上げた。今日は、(その9)(私立学校でいじめの実態は把握されているのか?、「ハーフ」の女子生徒を自死に追い詰めたイジメ 「ガイジン」と笑われ続けた彼女は…、壮絶いじめ告白の中川翔子 「嫌な同窓会なら行かなくていい」)である。

先ずは、教育社会学者の舞田敏彦氏が11月13日付けNewsweek日本版に掲載した「私立学校でいじめの実態は把握されているのか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13375_1.php
・『<教育委員会が強く指導できる公立学校と違って、私立学校ではいじめ問題が認知されにくいことが指摘されている> 子どもの問題行動が、13~15歳の思春期で多発するのはよく知られている。この年代は中学生のステージだが、最近では私立中学校が増えている。東京都内では、中学生の4人に1人が私立校の生徒だ。 その私立校に関連して、10月23日の京都新聞ウェブ版に興味深い記事が出ている。「私立校のいじめ対応に不満、どうすれば? 指導機関なく『治外法権』との声も」と題するものだ。 中身については後で触れるが、いじめは問題行動の中でも量的な把握が最も難しい。可視性が低く、客観的な基準がない。学校がいじめの把握にどれほど本腰を入れるか、という認知の姿勢にも影響される。ここで問いたいのは、学校側の認知の姿勢だ。中学校の公立と私立を比較すると、気になる傾向が見えてくる。 毎年実施される『全国学力・学習状況調査』では、「いじめはどんな理由があってもいけない」という項目への賛否を問うている。否定的な回答をした中学校3年生の率は、公立が4.4%、私立が7.0%となっている(2018年度)。いじめの容認率は、公立より私立のほうが高い。この比率を中学校の全生徒数にかけると、いじめを容認する生徒の実数が出てくる。これを、統計に出ているいじめ認知件数と照合すると<表1>のようになる。 統計上のいじめ認知件数(d)を、いじめを容認する生徒の推計数(c)で割ってみると、公立は0.711、私立は0.170となる。分母をいじめの真数と見立てると、公立は7割を把握できているが、私立は2割もわかっていないことになる。私立のいじめ認知度は低い。 生徒募集に響くので、学校がいじめの認知に積極的でない可能性がある。問題のある生徒は退学させることができ、私立校ではこの手の問題への対応に関する研修が、公立に比して不十分であることも考えられる。 上記の京都新聞記事では、私立校のいじめ対応には不満が多いことがいわれている。公立校なら、教育委員会が強く指導できる。公立のいじめ認知度は7割と高いが、相次ぐ重大事件を受けて、教育委員会の指導が強化されているためだろう。しかし私立はそうはいかず、指導の権限が設置者の学校法人にあるため、内輪の問題として処理され、きちんとした対応ができていないという疑問がある。同記事でも提言されているが、私立学校についても外部の指導機関が必要だろう』、ここでの「いじめ認知度」は、「分母をいじめの真数と見立てる」、というかなり大胆な前提で試算されたものではあるが、「公立は7割を把握できているが、私立は2割もわかっていないことになる」、実際の「認知度」にここまでの格差があるか否かは別としても、私立の方が低いことは確かなようだ。ただ、「私立学校についても外部の指導機関が必要」、との結論には違和感を覚える。もっと、「私立学校」の特性に立脚した慎重な判断が求められる。
・『なお、公立中学校のいじめ認知度には地域差がある。<表1>と同じやり方で都道府県別の数値を計算し、高い順に並べると<表2>のようになる。 山梨県と山形県では、統計上のいじめ件数が、いじめを容認する生徒数の2倍を超えている。頻繁に見回りをしたり、アンケート調査をしたりと、いじめの把握に本腰を入れていることがうかがえる。16の県が1.0を上回るが、0.5を割っている県も8県ある。後者の県は、いじめ認知の姿勢が適正か点検してみる必要があるかもしれない。 認知度が低いのは都市部の県が多いが、中学生のスマホ所持率が高いので、いわゆる「ネットいじめ」にも注意が必要だ。インターネット上のいじめも、いじめの法的な定義に含まれる(いじめ防止対策推進法第2条)。こうしたネット上のいじめは、把握の網から漏れやすい。同法第19条でも規定されているように、国や自治体はネットパトロール等の取組を支援していく必要がある』、「ネットいじめ」は確かに深刻な問題だが、NPO法人などによるネットパトロールの自治体の支援の実績や有効性についても、検証すべきだろう。

次に、11月22日付けPRESIDENT Onlineが掲載したNHK取材班により「「ハーフ」の女子生徒を自死に追い詰めたイジメ 「ガイジン」と笑われ続けた彼女は…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/30772
・『外国から日本に移り住んだ家族の中には、容姿や文化の違いを背景に陰湿ないじめを受けている子どもがいる。同級生から「ガイジン」と蔑まれながらも強く生きようとした女性の生涯を、NHK取材班が追った――』、興味深そうだ。
・『日本ではなく「カナダに残っていれば……」  「天然パーマ」「毛が濃いんだよ」彼女がその容姿に対して毎日浴びせられた言葉。黒板に書かれた彼女の似顔絵に投げつけられたスリッパ。その少女は、過去に体験した記憶から逃れることができず、心の傷が癒えることはなかった。「いつまでたっても、普通の女の子には戻れない」。そう訴えた彼女はどこにでもいるような女の子で、あえて少し違うところがあるとすれば、それは彼女のルーツだった。 高橋美桜子さんはカナダ人の父親と日本人の母親の間に1989年、カナダで生まれた。その後、両親は離婚。美桜子さんは4歳半から、母親の典子さんとともに日本で暮らした。 だが、母の典子さんは日本に帰国したことを今も悔やんでいる。 「カナダでは一人一人に自分の考えがあることを幼い時から教えていました。自分の考えがあるということは、相手にも違う考えがある。みんな違って当たり前という発想が自然と身についたんだと思います。だから、カナダに残っていれば……。今でもそう思っています」』、背景にあると思われる異質なものを排除しようとする日本の「島国根性」は、本当に困ったことだ。
・『自分のルーツは誇るべきものだったのに  日本への帰国を決めた時、典子さんは、ある不安を感じた。娘は「ハーフ」だから、いじめられるかもしれない。だから美桜子さんには伝えておいた。 「みおちゃんは日本で『ハーフ』と呼ばれる。でも、みおちゃんはみおちゃんらしく胸を張っていこうね」 確かに日本の小学校で、美桜子さんは同級生から「ガイジン」「カナダに帰れ」という心ない言葉を投げかけられた。それでも美桜子さんは、小学校の時に書いた作文で、こうした言葉に対し「何にも悪いことしてないのにと悲しくなるし、同じ人間なのに、なぜ差別するの」とつづり、むしろ彼女にとってそのルーツは誇るべきものだった。 美桜子さんは、泣いている友だちがいれば隣で優しく元気づけてあげる正義感の強い、自分の意見をしっかりと言える子どもに成長した。 しかし、美桜子さんは、愛知県の私立中学校に進学するといじめを受けるようになった。はっきりした理由はわからない。 同級生がいじめられているのを見て「やめなよ」と言って止めたこと。担任が男女差別的な発言をしたことに対して「そういうことを言うのは間違ってる」と意見したこと。外国にもルーツがあるから見た目が目立つこと。そういうことが積み重なって、美桜子さんへのいじめは突然始まった』、「担任が男女差別的な発言をしたことに対して「そういうことを言うのは間違ってる」と意見」、とは海外で育った子どもにはあり得ることだ。
・『担任教師は「お前の思い過ごしだ」  いじめは、所属していたバトン部で夏ごろから始まり、部活を辞める他なかった。 2学期に入ると、教室でもいじめが行われるようになった。仲間はずれにシカト。「天然パーマ」「毛が濃いんだよ」と執ように吐き捨てられる、容姿に関する言葉。教科書やノートに殴り書きされた「ウザい」「キモイ」「死ね」といった文字。自分の椅子に座って下を見ると机の下にゴミが集められ、教室に戻ると机が教室の外に出されていた。 黒板に美桜子さんの似顔絵を描いて、スリッパを投げつけている同級生もいた。美桜子さんは体調不良を訴え学校に行くのを嫌がり、下校のたびに泣いて帰ってくるようになった。 中学1年の3月。げた箱に行くと、目に飛び込んできたのは、自分の靴の中にびっしり貼りつけられた画びょう。美桜子さんは、画びょうが入ったままの靴を持って担任にいじめを訴えた。担任は画びょうを受け取っただけで、こう言ったそうだ。 「俺のクラスにいじめなんかするやつはおらん。お前の思い過ごしだ」 それから10日ほど経った修了式の日。登校すると、同級生の1人が「汗が臭いから空気の入れ換えをしよ」と言うなり、教室の窓を開けた。 「もう無理。この中学校だけは絶対に嫌だ」 帰宅途中の美桜子さんは、典子さんに電話で伝えた。もう限界だった』、私立中学の「担任」の暴言は余りに酷い。「差別的な発言」へ「意見」されたことに根を持っていたのだろうか。
・『怖い記憶が襲って人格が分裂するように  中学2年、美桜子さんはいじめから逃れるため、別の中学に転校。その学校でいじめはなかった。 しかし、美桜子さんに異変が起きた。 「またいじめにあうかもしれないと思うと、怖くて教室にいられない」 受診していた医師の診断は、いじめられたことによるPTSD。美桜子さんはいじめの体験、記憶から逃れることができなかったのだ。 中学2年の2月深夜。美桜子さんは突然起きだし、典子さんに言った。 「私は美桜子じゃありません。私は美桜子さんに、美桜子さんのことを教える人です」 美桜子さんの中の「誰か」が話し続けた。 美桜子さんがいくつかの人格にわかれていること、美桜子さんが自分自身のことを嫌いになったことがわかった。その後も「ランちゃん」「あやちゃん」と名乗る別の人格が表れては、典子さんに美桜子さんの心の内を明かしていった。 そして、中学1年の時にいじめられた話になると、決まってしゃくり上げるように泣いてしまうのだった。どうしても逃れられない、いじめの記憶。「普通の女の子」に戻りたい。そんな当たり前のことすらかなわない現実があった。 美桜子さんが書き残したメモにはこうつづられている。 「何でこんなコトになっちゃったの?!!! いつになったら、治るの?!!! このまんまじゃいつまでたっても、ふつうの女の子には戻れないじゃない」』、「人格が分裂」はいわゆる解離性同一性障害(下記リンク)で、ここまで深刻な病状を示しているのを、単なる「PTSD」との「医師の診断」は不適切だったのかも知れない。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_dissociation.html
・『高校のスピーチコンテストで選んだテーマは  美桜子さんからははつらつさが失われ、幼なじみもその変化に驚くほどだった。容姿も含め自分に自信を持っていた彼女。なのに、自分の顔を「かわいくない、ブスだよ」と言うようになり、自信を完全に失っていた。自らのルーツは、もう彼女にとって誇りでもなんでもなくなっていた。 過呼吸を起こしたりカッターナイフを取り出してリストカットをしようとしたりと不安定な状態が続いた。ただ、一時期フリースクールに通いながら治療を進めていた美桜子さんは高校にも進学できた。 そうした中、美桜子さんは高校1年の1学期、スピーチコンテストのために、いじめの経験をテーマに作文を書いている。 「自分との戦い」とタイトルをつけられた原稿はこう始まる。 「今、私は自分自身と戦っています。その理由は今から3年前、中学1年生の時に受けた『いじめ』にあります」 そして、美桜子さんが前を向いて歩み出していると感じられる言葉もあった。 「今まで自分のいじめについて言葉に書き表したことはありません。でも、勇気を出して今、ここに書き表そうと思います」』、「いじめの経験をテーマに作文を書いている」、なかなか勇気があるし、自分を客観視できるのも大したものだ。
・『大切な友だちが見つかった矢先に起きた悲劇  美桜子さんはいじめの経験について、いじめた同級生のストレスの「ゴミ箱」にされたと表現し、何も考えられなくなり、心が麻痺し、自分の生きている意味を見失い、他人からみればたとえ短い期間であったとしても、いじめを受けている本人にはすごく長く感じた1年間だったと振り返っている。 そのうえで、高校生活ではいじめの経験を理解してくれようとする大切な友だちも見つかり、そうした友だちと本気で笑い合える日が来ることを楽しみにできるようになったことを明かし、その心境をこう表現している。 「私の長い長いトンネルは小さい小さい光の出口が見つかったのかもしれません」 しかし、高校2年の8月。母親が持病で検査入院をしていた日、一人きりになった美桜子さんは、知人にメールを送った。 「みんなが死ねって言ってる。苦しいから薬を飲んだ」 異変を感じた知人は、すぐに美桜子さんの友人に彼女の自宅へ急いで向かうよう連絡した。友人たちは美桜子さんに電話をかけ、美桜子さんは電話に出た。 しかし、すでに意識がもうろうとした様子で、途中から美桜子さんの声は途切れた。 8月18日未明。美桜子さんは自宅マンションの8階から身を投げて、16歳の短い人生を自ら閉じた。家のテーブルには、赤いペンで書かれた遺書が残されていた。 「まま大好きだよ。みんな大好きだよ。愛してる。でもね、もうつかれたの。みおこの最後のわがままきいてね。こんなやつと友ダチでいてくれてありがとう。本当にみんな愛してるよ。でも、くるしいよ。」』、「母親が持病で検査入院」、最悪のタイミングだったようだ。
・『「目立ってうざい」という空気に彼女は苦しめられた  美桜子さんの死後、典子さんは娘がなぜ死ななければならなかったのかを考えてきた。 その理由を知りたくて学校側を相手に裁判を起こした。一審では、いじめが自殺の原因だと認められた。しかし、二審では高校での友人とのあつれきなどによるストレスが自殺の原因だとして、いじめとの関係は認められなかった。 典子さんは「私の中では、美桜子のことはまだ終わってないんです」と話し、今でも美桜子さんの短い人生について考え続けている。 そして、美桜子さんがいじめられた原因のひとつに、彼女のルーツが関係していたのではないかと思っている。 「美桜子はハーフで目立ち、はっきりものを言ううざいヤツ。だからいじめてもいいということになったと思っています。日本は、波風を立てない、何かあっても何もなかったようにやり過ごす、異なる意見は和を乱すから悪。そういうものに美桜子は苦しめられ続けた」』、「二審では高校での友人とのあつれき」、本文では触れられてないが裁判では問題視されている。どのようなことがあったのだろう。中学を卒業して年数が経っているとはいえ、「典子さん」側の弁護士の力量不足もありそうだ。「日本は、波風を立てない、何かあっても何もなかったようにやり過ごす、異なる意見は和を乱すから悪。そういうものに美桜子は苦しめられ続けた」、多様性を認めず、異質なものを排除し、集団主義を重視し過ぎる日本の教育制度そのものにも問題がありそうだ。

12月23日付け日経ビジネスオンライン「壮絶いじめ告白の中川翔子 「嫌な同窓会なら行かなくていい」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/121800006/?P=1
・『時にはタレント、時には女優、時には声優・歌手として幅広い分野で活躍を続ける「しょこたん」こと中川翔子さんが2019年夏、衝撃的な書籍を出版した。自身のいじめられ体験を赤裸々につづった『「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない』(文芸春秋)だ。 中学時代、ささいなことからいじめの標的になり、「死にたい」と思うまで追い詰められたという中川さん。当時の気持ちを振り返りながら、今現在いじめで傷つき悩む子どもたちや周囲の人々に対し送ったメッセージが本書だ。 学校でのいじめは卒業しても心の奥にトラウマとして沈殿し、その後の人生に様々な影響を与えかねない。人は学校時代のつらい記憶とどう向き合い生きていけばいいのか。改めて中川さんに聞いた』、中川さんまでいじめを経験したとは、興味深そうだ(Qは聞き手の質問)。
・『Q:本を読ませて頂きましたが、衝撃的な内容でした。我々男性は「女子同士のいじめ」にあまり詳しくなく、正直、暴力を伴う「男子同士のいじめ」に比べるとまだ“楽な部分”もあるのではと思っていましたが、とんでもない間違いでした。 中川:私も男子の世界はよく分からないんですけど、一つ言えるのは、いじめで思い悩み命を絶ってしまう子がいるという点は男の子でも女の子でも変わらないということです。そしてそういうひどいいじめは決して特別なことではなく、どこにでもあります。むしろ「当たり前のようにあるものだ」という前提でいないと周囲の大人は見逃してしまい、それこそ取り返しのつかないことになってしまうんです。子供は「自分がいじめられている」とは言いませんから。 Q:中川さんも言えなかった? 中川:絶対知られたくなかったですね。親には言えないし、言いたくないし、知られたくないし限界まで我慢しました。でもそこまで追い込まれていても、クラスでのいじめは表面だけを見ているとなかなか分かりません。例えば、担任の先生も私の中学の場合は授業以外の時間は教室にいませんでした。その先生がいない10分の休み時間とか、他の教室への移動時間にこそいじめは起きるんです。大人にとっては1週間でも一瞬で過ぎちゃうけど、いじめられている子供にとっての10分って、とても長いんですよね』、「子供は「自分がいじめられている」とは言いません」、「先生がいない10分の休み時間とか、他の教室への移動時間にこそいじめは起きるんです」、いじめの発見がなかなか難しい理由の一端が分かった。
・『おばあちゃん手製のプリクラ帳  Q:いじめのきっかけは、本当にささいなことでした。 中川:本当のきっかけはよく分かりません。いくつかあるきっかけの一つだと思うんですが、私の場合は「プリクラ帳を見せて」と中学に入ってすぐ隣の子に言われたのが始まりでした。おしゃれな今どきの目立つ感じの子で、後にいじめグループのボスになっていく子なんですが、私はプリクラ帳を持っていなかったのです。見ると、みんながプリクラ帳を見せ合い楽しそうにしている。 そこで、何か代わりになるものはないかと家中を探しました。私は小学校3年生のときに父を白血病で亡くしていて、母と祖母の3人暮らし。そのおばあちゃんが和紙で作ってくれたノートに、急いで撮ったプリクラを貼って持って行ったんです。 Q:すると「おばあちゃん? 何それ、キモくない?」と言われてしまう。 中川:一度「キモい」と認定されると、後は絵を描いていても何をしていても「キモい」となってしまう。クラスで孤立して、悪口を言われ、休み時間の間もトイレに隠れたり、廊下のロッカーの教科書を入れ替えたりして、忙しいふりをしていました。 Q:……。 中川:「何でこんなことになっちゃったんだろう」とか、いじめられたことを思い出しては「あのとき、ああ言い返せばよかった」とかずっと無駄なことを考えていたように思います。なるべく学校での滞在時間を短くしたいから授業が終わるとすぐに帰宅です。で、帰ってからずっとインターネットをやって、ネットで見つけたいろいろな面白い情報を、仕事で夜中に帰ってくる母に話すんです。そうすると母は「へえっ」てきいてくれて。 Q:ネットとお母さんが最初の救いになるんですね』、「ネットとお母さんが最初の救いに」なったというのは不幸中の幸いだ。
・『ラジオ体操が流れると「ああ、また学校だ…」  中川:でもそうやって起きていると明け方になって、ラジオ体操が聞こえてきて、ああ、また学校だ、嫌だなみたいな、そんな感じでずっと過ごしていました。それでも中3になるとキムラという友達もできました。彼女はもっと上の「カースト(学校内序列)」の子なんですが、普通に私と一緒にいてくれて、一緒に笑ってくれていて、絵を描いたり、漫画を読んだりしてくれました。 Q:慰めてくれたり、一緒にいじめグループに対抗したりしてくれるわけではない? 中川:何も言わず、隣にいてくれるだけです。でも、だからこそ救われました。私の靴箱がボコボコにされていたのを見ても何も言わなかったんです。ただ隣にいる。私は「隣る(となる)」って表現しているんですが、ただ隣ってくれる人がいるだけでも、人は救われるんですよね。 Q:本を読んでいて、キムラさんがいなかったらどうなっていたかと思いました。 中川:そうですね。そこのところはラッキーでしたね。だから、隣るというのはすごく勇気がいると思うんです。やっぱり被害を受けたくないとか、自分に被害が及びかねないですもんね。キムラとは今でも友達です。 Q:キムラさん以外の中学時代の同級生の方々とのお付き合いはあるんですか。同窓会とか。 中川:絶対に行きたくないです。 Q:弊社が2019年夏に出版した『同窓会に行けない症候群』には、中川さん同様、学生時代にいじめを受けて、当時のことを思い出したくないから同窓会に行きたくないという人の話も出てきます。 中川:行かなきゃいいです。行く必要はありません。全ての同窓会に行くなと言っているわけではないですよ。例えば私の場合、小学校5~6年のクラスは先生とも生徒同士もとても仲がよくて、ついこの間も同窓会をしたばかりです。 中学の卒業前に学校に行かなくなってしまった自分にとって、学生生活で一番楽しかった時代。ひたすら懐かしい思い出話をして笑って、みんなそれぞれ違う道を歩んでも、あの頃の懐かしさは時がたてばたつほど宝石みたいに輝いて、それは楽しい時間でした。そういう同窓会はどんどん行けばいい。でも、嫌な人と会う同窓会なんて行く必要ないと思います。大切な人とは普段から会っていますし。この間もプチ同窓会を開きました』、「私は「隣る(となる)」って表現しているんですが、ただ隣ってくれる人がいるだけでも、人は救われるんですよね」、そんなものなのかも知れない。
・『同窓会も忘年会も嫌なら「スルー」で構わない  Q:学生時代の仲間でも会いたい人とは普段から交流している。同窓会というのは“会いたくない人とわざわざ会う場所”。だったら行く必要なし」とハライチの岩井勇気さんも話してました(「ハライチ岩井が語る『今時、同窓会に参加する人』の正体」)。 中川:正直、人間って「あ、この人、ちょっと合わないな」みたいな部分は誰しもあると思うんです。だから周りの人や自分が関わってきた人全員と仲良くする必要なんか全くないと思うんですよ。人の寿命は限られているじゃないですか。そう考えれば、無駄なストレスをため込むのって本当に時間がもったいない。人生がもったいないです。 Q:そこは、『同窓会に行けない症候群』の根幹的主張でもあります。 中川:特に、妙に変な攻撃性が含まれている人っているじゃないですか。そういう人と関わるのは面倒くさいし、時間の無駄です。寿命という時間をすり減らしてまた嫌な思いをしたら嫌じゃないですか。 Q:確かに最近の同窓会では、攻撃性の高い人が他人を攻撃しようと集まるケースもあるとの指摘もあります。いずれにせよ、気の合わない人と会うことになる同窓会も、パワハラ・セクハラし放題の場と化す可能性さえある会社の忘年会も、嫌なら行かなくていいというわけですね。いつか時間がたって、そういう嫌な相手にも会いたいなどと思う日は来るのでしょうか。 中川:大人の中には「いじめは卒業すれば終わる」と思っている人もいますが、私の場合、いじめられたダメージみたいなものが本当に薄れ始めたのは20歳ぐらいからでした。いじめと関係のない環境になっても、いじめられた経験がフラッシュバックして思い出すことがあった。心の傷は一生消えないのかもしれません。 Q:なるほど。 中川:だけど今では、あの時期があったから、今があるとも思えるようになってきました。当時は「毎日が地獄」みたいに思っていて、その地獄の穴を埋めるためにネットをやって、本を読んでいたつもりだったのですが、結果として、それがものすごい未来への糧になりましたから。 例えば、2019年12月に「RGB~True Color~」という5枚目のオリジナルアルバムを出して、作詞もしたんですが、あの頃の経験が様々な作品のベースになりました。タイトルの「RGB」というのは光の三原色の頭文字で、あの苦しんでいた時期、「もう嫌だ」「何でこんな目に遭うんだろう」と傷ついていた時期に、私に一瞬だけ強く差し込んだ──そんな光を、作品を作る上で強くイメージしました。あのときの一瞬の光が未来の夢の種になり、未来の自分を助けてくれている。だから、すごく意味があったんだ、と』、「周りの人や自分が関わってきた人全員と仲良くする必要なんか全くないと思うんですよ。人の寿命は限られているじゃないですか。そう考えれば、無駄なストレスをため込むのって本当に時間がもったいない。人生がもったいないです」、割り切りがすごいが、これが耐える秘訣なのかも知れない。他方で、「私の場合、いじめられたダメージみたいなものが本当に薄れ始めたのは20歳ぐらいからでした。いじめと関係のない環境になっても、いじめられた経験がフラッシュバックして思い出すことがあった。心の傷は一生消えないのかもしれません」、やはり深刻な問題だ。
・『どんな闇にも光は差し込む  Q:今、いじめに悩んでいる子供達にも、差し込む光はある、と。 中川:いじめられている頃は将来のことなんて考える余裕はないと思うけど、今いじめられている人は何とか生きて、生きて、生き延びてほしいです。何でもいいから好きなことに夢中になって生きてほしい。そうしたら、ああ、生きていてよかったという一瞬が必ず待っているから、と伝えたいです』、「いじめられている人」への救いのメッセージだ。中川さんを改めて見直した。ただ、中川さんは前述のような強さがあるが、それのない普通の人にも「救い」となるかは、自信がない。
タグ:いじめ問題 (その9)(私立学校でいじめの実態は把握されているのか?、「ハーフ」の女子生徒を自死に追い詰めたイジメ 「ガイジン」と笑われ続けた彼女は…、壮絶いじめ告白の中川翔子 「嫌な同窓会なら行かなくていい」) 舞田敏彦 Newsweek日本版 「私立学校でいじめの実態は把握されているのか?」 京都新聞ウェブ版 「私立校のいじめ対応に不満、どうすれば? 指導機関なく『治外法権』との声も」 『全国学力・学習状況調査』 否定的な回答をした中学校3年生の率は、公立が4.4%、私立が7.0% 認知件数(d)を、いじめを容認する生徒の推計数(c)で割ってみると、公立は0.711、私立は0.170となる 分母をいじめの真数と見立てると、公立は7割を把握できているが、私立は2割もわかっていないことになる 指導の権限が設置者の学校法人にあるため、内輪の問題として処理され、きちんとした対応ができていないという疑問 私立学校についても外部の指導機関が必要 っと、「私立学校」の特性に立脚した慎重な判断が求められる いじめ防止対策推進法第2条 国や自治体はネットパトロール等の取組を支援していく必要 PRESIDENT ONLINE NHK取材班 「「ハーフ」の女子生徒を自死に追い詰めたイジメ 「ガイジン」と笑われ続けた彼女は…」 日本ではなく「カナダに残っていれば……」 カナダでは一人一人に自分の考えがあることを幼い時から教えていました。自分の考えがあるということは、相手にも違う考えがある。みんな違って当たり前という発想が自然と身についたんだ 自分のルーツは誇るべきものだったのに 泣いている友だちがいれば隣で優しく元気づけてあげる正義感の強い、自分の意見をしっかりと言える子どもに成長 私立中学校に進学するといじめを受けるようになった 同級生がいじめられているのを見て「やめなよ」と言って止めたこと 担任が男女差別的な発言をしたことに対して「そういうことを言うのは間違ってる」と意見したこと 担任教師は「お前の思い過ごしだ」 画びょうが入ったままの靴を持って担任にいじめを訴えた 担任は画びょうを受け取っただけで、こう言ったそうだ。 「俺のクラスにいじめなんかするやつはおらん。お前の思い過ごしだ」 怖い記憶が襲って人格が分裂するように 別の中学に転校。その学校でいじめはなかった 美桜子さんに異変が起きた。 「またいじめにあうかもしれないと思うと、怖くて教室にいられない」 受診していた医師の診断は、いじめられたことによるPTSD 美桜子さんがいくつかの人格にわかれていること、美桜子さんが自分自身のことを嫌いになったことがわかった 解離性同一性障害 高校のスピーチコンテストで選んだテーマは スピーチコンテストのために、いじめの経験をテーマに作文を書いている 大切な友だちが見つかった矢先に起きた悲劇 高校2年の8月。母親が持病で検査入院をしていた日、一人きりになった美桜子さんは、知人にメールを送った。 「みんなが死ねって言ってる。苦しいから薬を飲んだ」 途中から美桜子さんの声は途切れた。 8月18日未明。美桜子さんは自宅マンションの8階から身を投げて、16歳の短い人生を自ら閉じた 「目立ってうざい」という空気に彼女は苦しめられた 学校側を相手に裁判 一審では、いじめが自殺の原因だと認められた。しかし、二審では高校での友人とのあつれきなどによるストレスが自殺の原因だとして、いじめとの関係は認められなかった 日経ビジネスオンライン 「壮絶いじめ告白の中川翔子 「嫌な同窓会なら行かなくていい」」 『「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない』 いじめで思い悩み命を絶ってしまう子がいるという点は男の子でも女の子でも変わらないということです。そしてそういうひどいいじめは決して特別なことではなく、どこにでもあります。むしろ「当たり前のようにあるものだ」という前提でいないと周囲の大人は見逃してしまい、それこそ取り返しのつかないことになってしまうんです 子供は「自分がいじめられている」とは言いません 先生がいない10分の休み時間とか、他の教室への移動時間にこそいじめは起きるんです おばあちゃん手製のプリクラ帳 ネットとお母さんが最初の救いに ラジオ体操が流れると「ああ、また学校だ…」 嫌な人と会う同窓会なんて行く必要ない 同窓会も忘年会も嫌なら「スルー」で構わない 今いじめられている人は何とか生きて、生きて、生き延びてほしいです。何でもいいから好きなことに夢中になって生きてほしい。そうしたら、ああ、生きていてよかったという一瞬が必ず待っているから、と伝えたいです
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