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イラン問題(その4)(イランとの応酬はまるでギャンブル トランプ外交の極限の危うさ、米国vsイラン戦争回避の出来レース 2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは、米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後 元中東担当外交官が解説) [世界情勢]

イラン問題については、昨年9月29日に取上げた。今日は、(その4)(イランとの応酬はまるでギャンブル トランプ外交の極限の危うさ、米国vsイラン戦争回避の出来レース 2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは、米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後 元中東担当外交官が解説)である。

先ずは、在米作家の冷泉彰彦氏が本年1月9日付けNewsweek日本版に掲載した「イランとの応酬はまるでギャンブル、トランプ外交の極限の危うさ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2020/01/post-1136_1.php
・『今回の一件でトランプはおそらく相当程度にペンタゴンを掌握したと見られるが......  トランプ大統領の命令で、米軍がイランのソレイマニ司令官をイラクのバグダッド空港で殺害したのが1月3日。イランは大規模な報復を示唆していました。一部にアメリカとイランは「にらみ合いによる長期戦」となるのでは、という見方がありましたが、イランは早い時期に報復を実行しました。 イラク現地時間8日の未明、米軍が駐留するイラクの基地2カ所に、十数発の弾道ミサイルを撃ち込んだのです。対象となったのは、イラク中西部のアル・アサド空軍基地と関連施設、そして北部のアルビル基地でした。この2カ所への攻撃で、一時イランからは「80人死亡」という情報も流れていたのです。 専門家も、市場も、世論も、世界中が、「トランプの司令官殺害命令を契機として、大規模な戦争が起きる危険性」を覚悟したのでした。この事態を受けて、米国東部時間1月8日の午前11時にトランプ大統領が、ホワイトハウスで会見を行うというニュースが流れると、アメリカのメディアは一斉に「現政権発足以来、最大の危機」という報道を繰り広げました。 ところが、会見の時間が近づくにつれて、下げていたNY株式市場の株価はゆるやかに上昇に転じたのです。会見は11時を過ぎても始まらず、NYダウは40ドル高で小康状態となりました。そこへ、閣僚と軍の幹部が入場して来ました。閣僚というのは、ペンス副大統領、エスパー国防長官、ポンペオ国務長官、軍人は統合幕僚本部のメンバーでした』、私も「トランプ大統領」の「記者会見」を注視していて肩透かしを食らわされた口だ。
・『イラン側からのメッセージ  中継していたCNNでは「政権内、そして軍との意見不一致はない、自分たちは一枚岩だということを誇示している」という解説をしていました。誰も何も言わない不気味な沈黙が流れましたが、各人の表情には緊張は見られたものの、開戦を覚悟した悲壮感はありませんでした。 約30分遅れでトランプ大統領が入場、いきなりイランを批判し、経済制裁の追加を言明しました。口調は厳しいのですが、本格開戦とか再報復という文言はないまま演説が進行して行きましたが、決定的だったのは前日のイラク2カ所へのミサイル攻撃を説明した部分です。 トランプ大統領は、攻撃により「アメリカ人にもイラク人にも犠牲者は出なかった」として、その理由としてはイラン側から事前通告があったと述べていました。つまり、この2カ所に対する攻撃において、イラン側は「これ以上は対立をエスカレートさせない」というメッセージを含めており、アメリカはそれを理解したというわけです。 市場には安堵感が流れて、ダウはザラ場で280ポイントも上昇し、一方で原油の先物は一気に下がりました』、「イラン」はこんな猿芝居をうったことで、国内に説明がつくのだろうか。
・『この先のことは分かりません。今回の会見でも、トランプ大統領は追加の制裁を言明し、とにかくイランの核政策を厳しく批判しています。イランにしても、オバマとEUなどとの間で成立させた核合意が事実上崩壊した今、核開発を簡単に止めることはできません。ですから、アメリカとイランの緊張関係はまだまだ続くと考えられます。 そうではあるのですが、とりあえず12月末から発生していた米イランの間での暴力の応酬が、短期的に沈静化することは確度の高い状況となってきました。また、仮にそうだとすると、1月3日のソレイマニ司令官殺害作戦というのは、法的な正当性や後世の歴史的評価は別として、現時点では「成功した」という評価が可能になります。 何よりも、このイランとの「暫定的な手打ち(?)」により、当面アメリカは米兵を危険に晒すことを回避できた格好です。2017年1月の就任以来、とかくトランプ大統領とペンタゴンの間には、不協和音が続いていましたが、おそらくこの一件をもってトランプ政権は相当な程度に軍を掌握したと考えられます。 それでは、今回の一件はトランプ流の「常識破り」な「交渉術」が成功したもので、今後ますます大統領は自信を深め、世論もそれを支持して、トランプ流の軍事外交が展開される、そんな評価をしていいのかというと、それは違うと思います。 今回のソレイマニ司令官殺害作戦は、とにかく法的根拠が希薄なだけでなく、軍事外交の方法論として、あまりにも危険なギャンブルです。同様の手法が、常に成功するとは限りません。仮に今回の「成功」に味を占めて、トランプ流の軍事外交が世界を対象に展開されるようですと、どこかで大きな破綻が生じる可能性は否定できないでしょう』、こんな「危険なギャンブル」はこれ限りにしてほしいものだ。「ソレイマニ司令官殺害作戦」の「法的な正当性」はもっと問題化すれば面白いのだが・・・。

次に、1月11日付けデイリー新潮「米国vsイラン戦争回避の出来レース、2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/01110800/?all=1&page=1
・『これで“手打ち”!?  1月8日、ニューズウィーク日本版は公式サイトに「イラン戦争間近? アメリカで『#第三次大戦』がトレンド入り、若者は徴兵パニック」の記事を掲載した。ウェスリー・ドカリー氏の署名記事で、日本版サイトはその翻訳を掲載した。 午後2時15分に公開された記事の冒頭部分をご紹介しよう。《米軍が1月3日、ドローン攻撃でイラン革命防衛隊の司令官カセム・スレイマニ(註:日本メディアの多くは「ソレイマニ」と表記)を殺害すると、アメリカのSNSは大騒ぎとなり、ツイッターでは「第三次大戦(WWIII)」がトレンド入りした。アメリカがイランとの戦争に踏み切れば、徴兵が始まるのではないかという不安の声も多く上がっている》(註:デイリー新潮の表記法に合わせて引用した。以下同) ここで改めてソレイマニ司令官の殺害を報じた記事を確認しておこう。共同通信は1月3日、「米、イラン精鋭司令官を殺害 トランプ氏が指示、ヘリで攻撃」と報じた。 《米国防総省は2日夜、トランプ大統領の指示を受け、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害したと発表した。国営イラン放送も、イラクの首都バグダッドの国際空港で米国のヘリコプター攻撃により殺害されたと確認。イラン側の報復は必至で、中東情勢がさらに緊迫化する恐れがある》 そしてイランが攻撃を開始。テレ朝NEWSは1月8日、「【報ステ】イラン報復 アメリカ軍記事(注:「基地」の誤り)にミサイル」の記事を掲載した。 《報復を宣言していたイランが日本時間8日午前7時半ごろ、イラクにあるアメリカ軍基地をミサイルで攻撃した》 この攻撃については後で詳しく見るが、イランが報復を行い、同じ日の午後にニューズウィーク日本版が「第三次世界大戦」の記事を掲載したわけだ。 報復が報復を呼ぶ最悪の展開を想像した方は、この頃なら決して少なくなかっただろう。しかしながら、ニューズウィーク日本版の記事がアップされてから約45分後、午後3時に日テレNEWS24は「イラン外相『戦争は望んでいない』」の記事を掲載した。《イランが、アメリカ軍が駐留するイラクの基地を攻撃したことについて、イランのザリフ外相は8日、「攻撃は終わった。戦争は望んでいない」などとして、あくまで自衛のための報復であることを強調した》』、一時は「ツイッターでは「第三次大戦(WWIII)」がトレンド入りした」、のからの急展開のなかでは、「ニューズウィーク日本版」が先走り記事を出したのも頷ける。それにしても、「イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官」が、「イラクの首都バグダッドの国際空港で米国のヘリコプター攻撃により殺害された」、本来、厳重な警戒体制が敷かれている筈だが、イラク側に米軍の内通者でもいたのだろうか。
・『金の切れ目がテロの切れ目!?  これを1つの契機として、抑制的な報道が目立つようになっていく。例えば時事通信は翌9日の午前1時57分、公式サイトに「イラン報復、米軍基地攻撃 イラクに弾道ミサイル十数発―トランプ氏『死傷者なし』」の記事を掲載した。末尾を紹介させていただく。《CNNテレビによると、イランはミサイル攻撃実施を事前にイラク政府に伝えていた。イラク側から情報を入手した米軍は、着弾までに兵士らを防空壕(ごう)などに避難させることができたという。事実であれば、イランが緊張激化に歯止めをかけるため、米兵に被害を出さないよう配慮した可能性が高い。イランのメディアは「米部隊側の80人が死亡、200人が負傷した」と伝えたが、国内向けの政治的宣伝とみられる》 こうして徐々に「すわ、第三次世界大戦か」という懸念は減少していき、「どうやら大丈夫みたいだ」と世論も変わったわけだ。 中東研究家の佐々木良昭氏も「私も一時期は最悪の事態を想定しましたが、このままなら両国間の緊張は緩和に向かうと思います」と指摘する。 「改めて浮き彫りになったのは、経済制裁に疲弊しているイランの現状です。イラン国内の世論がアメリカに報復すべきだと沸きたち、指導者層も一時期は頭に血が昇っていたに違いありませんが、しばらくすると『自分たちはアメリカに報復できるだけの資金を持っていない』ことに気づいたのです。イラクにあるアメリカ軍基地に数十発のミサイルを打ち込むので精一杯だったのです」 話は少し古いが、AFP通信は2018年12月2日、「イランと韓国、原油の『物々交換』取引で合意 制裁の回避図る」と報じた。《イランは1日、同国から輸出した原油の代金を物品で受け取る取引を行うことで、韓国と最終合意したことを明らかにした。米国がイラン産原油に対して再発動した禁輸措置の回避を図る》 記事は“制裁逃れ”の面から解説しているが、佐々木氏は同じ動きから「イラン経済の危機的状況」も読み解けるという。 「本来であれば、イランは原油の代金を現ナマで受け取りたいわけです。国内経済に余裕があれば、制裁の解除や緩和を待とうとしたでしょう。それを『物品でいいから払ってくれ』と頼んだということは、国内で薬品など市民生活の必需品さえ枯渇している現状があるからです」 イランの正規軍だけでなく、支援しているテロ組織の動きも鈍い。例えば「反欧米、イスラエル殲滅」を掲げるヒズボラは、レバノン国内に“ヒズボラ国”を樹立するほどの勢力を持っているが、アメリカにテロ攻撃を仕掛けたというニュースは今のところ全く報じられていない。 「簡単な話です。イランの国内経済でさえ悲鳴をあげているのに、外国の組織を援助する余裕などあるはずがありません。イランの支援が先細りしてしまい、ヒズボラを筆頭とするテロ組織は自重するしかない状況なのです」(同・佐々木氏)』、「原油の『物々交換』取引」にまで追い込まれているとは、確かに外貨資金繰りは苦しそうだ。
・『アメリカとイラン、真の関係は?  ソレイマニ司令官を殺害したことでアメリカは面子を保ち、トランプ大統領は自身の再選につなげようとしている。だが、イランはイランで、プライドを満足させた瞬間があったという。 「イランがイラクに放ったミサイルですが、アメリカに攻撃の正確性を見せつけるという真の目的があり、それは果たされたと考えていいでしょう。つまり、ミサイルはアメリカの基地を“ぎりぎりで外す”ように狙って発射され、それは達成されたわけです。イランの国営メディアが報じた『米部隊の80人が死亡』が嘘だとは誰もが分かっていることで、むしろ真実は『米兵や関係者が誰も死ななかった』ことがイラン軍の目的であり、アメリカに対する一種の恫喝にもなっている。こうしてイランの面子も保たれました。これがザリフ外相の『戦争は望んでいない』という抑制的な発言が行われた理由の1つだと考えられます」(同・佐々木氏) イランにとって、ソレイマニ司令官の殺害が屈辱であるのは言うまでもない。しかしながら、メリットがゼロだったかと言えば、実はそうでもないという。 AFP通信は19年12月6日、「イラン反政府デモ弾圧、死者1000人超か、米発表」と報じた。実はイラン国内では反体制のデモが盛んに行われているのだ。 「死者が1000人という数には異論がありますが、イランの指導者層がデモの沈静化に頭を悩ませていたのは間違いありません。ところが、ソレイマニ司令官がアメリカによって殺害されると、イラン国民は反米で一致団結、反政府デモなど消えてしまいました。さらに原油価格が上昇したことも、イランにとっては歓迎すべき状況だったと思われます」(同・佐々木氏) そして佐々木氏は「そもそもアメリカとイラン両国は、互いを本当に敵と見なしているのか、そこに疑問を持ちながらニュースを見てほしいのです」と推奨する。 「アラブ世界ではイスラム教スンニー派が90%と多数派です。リビア、エジプト、スーダン、サウジアラビアなどがスンニー派国家として知られています。ところがイランは、少数派とされるシーア派の国家です。これだけでもアメリカにとってイランは、価値があります。イランが一定の存在感を示す限りは、中東の一体化が阻まれ、アメリカが中東をコントロールできる余地が大きくなるからです」 イランが軍事大国化していくと、サウジやアラブ首長国連邦、ヨルダンという国々はアメリカの軍事兵器を購入する。佐々木氏は「半分は冗談ですが、アメリカはイランにどれだけ感謝しても感謝しすぎるということはないのです」と言う。 「“敵の敵は味方”という諺もあります。国際政治、特に中東となると、簡単に“敵”や“味方”を色分けすることは不可能です。司令官が暗殺され、イランが報復を行った時は緊張しましたが、両国のパフォーマンスだけが目立って沈静化に向かいつつあります。もちろん杞憂で終わるに越したことはありません。しかしながら、国際的な茶番を見せられた印象も拭えないのです」』、イランにとっては、「『米兵や関係者が誰も死ななかった』ことがイラン軍の目的であり、アメリカに対する一種の恫喝にもなっている。こうしてイランの面子も保たれました」、「ソレイマニ司令官がアメリカによって殺害されると、イラン国民は反米で一致団結、反政府デモなど消えてしまいました」、他方、アメリカにとっては、「イランは、少数派とされるシーア派の国家です。これだけでもアメリカにとってイランは、価値があります。イランが一定の存在感を示す限りは、中東の一体化が阻まれ、アメリカが中東をコントロールできる余地が大きくなるからです」、国際情勢は一筋縄ではいかず、複雑怪奇だ。

第三に、元外務省中東アフリカ局参事官でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏が1月12日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後、元中東担当外交官が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/224880
・『イラン国営メディアは8日未明、イラク西部の米軍と有志連合軍が駐留する空軍基地にミサイル攻撃を行ったと報じた。これを受けて米国・イラン双方から伝わってくる公開情報は極めて興味深い。今後の米イラン関係をいかに読むべきか。現時点での見立てを解説しよう』、宮家氏の「見立て」も興味深そうだ。
・『今後の米イラン関係をいかに読むべきか?  イラン国営メディアは8日未明、イラク西部の米軍と有志連合軍が駐留する空軍基地にミサイル攻撃を行ったと報じた。イランが米軍基地へのミサイル攻撃を認めるのは今回が初めて。一方、米国防総省はイランが12発を超える弾道ミサイルを米軍が駐留するイラク内の基地2カ所に撃ち込んだと発表した。 米国によれば、3発のミサイルはイランから発射されたが、現時点で米国人の死傷報道は出ていない。ドナルド・トランプ米大統領は「全て順調、今のところ良好(All is well 〈中略〉 So far so good)」とツイートした。イラクの首都バグダッドの国際空港近くでイラン最精鋭のクドゥス(Quds)部隊のカセム・ソレイマニ司令官が殺害されてから5日目の出来事である。 これまでイラン指導部は米国に「厳しく報復する」と誓っていたはず。ところが、今回イラン側は「(米側の攻撃)に対応した攻撃が完了した(proportionate attack concluded)」と述べている。以上の公開情報は極めて興味深い。今後の米イラン関係をいかに読むべきか。筆者の現時点での見立ては次の通りだ』、どう読めばいいのだろう。
・『第1ラウンドは米国の勝利?  今回のイラン側のミサイル攻撃が始まる前、筆者はこう書いていた。 (1)正規戦でイランは米軍の敵ではない。イラン自身がそれを最もよく知っているはずだ。さればイランの報復は代理戦争と非正規戦だろう。イランがよほどの誤算をしない限り、いずれにせよトランプ氏は誤算を続けるだろうが、大戦争には至らないとみる。 (2)イランの戦略目的は、対米戦勝利ではなく、イラクなど中東地域からの米軍撤退と米影響力の低下だ。さらに、イランはソレイマニ司令官の死を内政で最大限活用する。経済制裁で疲弊し、民衆の不満が高まっているイランの政府に今必要なのは、共通の敵に対する国民の団結であるはずだからだ』、トランプも「イラクなど中東地域からの米軍撤退」を目指しているので、イランの「戦略目的」達成も夢ではないようだ。
・『計算し尽くされたイランの対応  筆者の上記の見立ては今も基本的に変わっていない。今回イランは難しいオペレーションを強いられた。トランプ氏を相手に、米国の軍人・民間人が多数死亡するような攻撃だけは避けたい。下手をするとイスラム共和制そのものの崩壊にもつながりかねない自殺行為だからだ。 他方、国内政治的には何らかの「断固とした対米報復を実行」する必要がある。あれだけ国民の反米感情をあおっておいて、今更何もしないわけにはいかないからだ。米国人は殺さず、事態もエスカレートさせないが、十分強力な軍事攻撃が必要となると、結局今回のミサイル発射に行き着いたのだろう』、「計算し尽くされたイランの対応」は誠に見事だ。
・『お粗末なトランプ政権内の政策軌道修正  こうしたイラン側の慎重で、熟考の末の、抑制の効いた軍政的政策判断に比べれば、トランプ政権の対応はお世辞にもプロとはいえない。今回も大統領が、熟慮しないまま、衝動的に、恐らくは(誰とは言わないが)「イラン憎し」の閣僚の意見を採用し、いつもの通り暴走したのだろう。 通常この種の問題ある大統領決断が下された後は米政府内、特に国防総省などでダメージコントロール作戦が水面下で展開されることが多い。北朝鮮との対話決定、シリアからの米軍撤退決定などの場合と同様、今回もトランプ政権内で大統領とその部下たちとの間で水面下の熾烈な確執があったはずだ』、トランプ大統領が「いつもの通り暴走したのだろう」、今回は結果オーライなのかも知れないが、それが続く保証はない。
・『第2ラウンドはどうなるか?  現時点(8日夜)では、米国・イラン双方とも、今回の攻撃の被害など詳細な事実関係を検証しつつ、相手の出方を見極めようとしているはずだ。攻撃直後は大統領声明発表も予想されていたが、いまだ行われていない。経験則上あえて予想すれば、当面トランプ氏が対イラン大規模軍事攻撃に踏み切る可能性は低いだろう。 だが、仮にこれで米イラン間の緊張がある程度緩和されたとしても、あくまで第1ラウンドの終了にすぎない。今回は米国・イラン共に、必要であれば相手に対して直接軍事攻撃が可能だということを改めて確認し合ったという点で、両国間で新たな段階の「地政学ゲーム」が始まったとみるべきだろう。 第2ラウンドの最大の焦点も当然、中東湾岸地域での米軍駐留の是非を巡る米イラン間の綱引きだ。先日のイラク国会の米軍撤退要求「決議」に法的拘束力はなかった。されば、今後イランはイラク国内にさらに手を突っ込み、イラク政府が正式に米軍撤退を要求するよう内政干渉を強めていくだろう』、「イラク政府が正式に米軍撤退を要求する」ような事態を、メンツが潰れる米国は必死で防ぐのだろう。
・『米国・イラン関係は前例のない次元に突入  今回筆者の見立てで予想が外れたのは、イランが対米報復に非正規戦や代理戦争を活用しなかったことだ。それは恐らく、国内的に「イランが直接米軍基地をミサイルでたたいた」という形を示す必要があったからだろう。されば、第2ラウンドではこの種の非正規戦や代理戦争がこれまで同様続くことを覚悟すべきだ。 第2ラウンドがいつ始まるかは分からない。恐らくトランプ氏自身の直感が最も重要となるだろう。逆に言えば、これほど重要な米国・イラン間の緊張状態が、米国大統領とはいえ、素人である一個人の直感的、衝動的判断に左右されること自体、米国・イラン関係が前例のない次元に入りつつあることを示している。 一方、日本にとっては外交活動を活性化させるチャンスだ。もちろん、日本ができることには限界があるが、欧州諸国などと共同ないし連携しながら、米国・イラン両国に働き掛けを行う価値は十分あるだろう。もしかしたら、「米イラン新地政学ゲーム」の第2ラウンドは既に始まっているかもしれないからだ』、「これほど重要な米国・イラン間の緊張状態が、米国大統領とはいえ、素人である一個人の直感的、衝動的判断に左右される」、時代というのはまさに「「米イラン新地政学ゲーム」の第2ラウンド」に入っているのかも知れない。私は安倍首相には無理と思うが、「米国・イラン両国に働き掛けを行う」努力は続けてもらいたいものだ。
タグ:イラン問題 (その4)(イランとの応酬はまるでギャンブル トランプ外交の極限の危うさ、米国vsイラン戦争回避の出来レース 2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは、米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後 元中東担当外交官が解説) 冷泉彰彦 Newsweek日本版 「イランとの応酬はまるでギャンブル、トランプ外交の極限の危うさ」 イラン側からのメッセージ この2カ所に対する攻撃において、イラン側は「これ以上は対立をエスカレートさせない」というメッセージを含めており、アメリカはそれを理解した アメリカとイランの緊張関係はまだまだ続く イランとの「暫定的な手打ち(?)」により、当面アメリカは米兵を危険に晒すことを回避できた格好です デイリー新潮 「米国vsイラン戦争回避の出来レース、2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは」 これで“手打ち”!? ニューズウィーク日本版が「第三次世界大戦」の記事を掲載 ツイッターでは「第三次大戦(WWIII)」がトレンド入りした 金の切れ目がテロの切れ目!? アメリカとイラン、真の関係は? ソレイマニ司令官がアメリカによって殺害されると、イラン国民は反米で一致団結、反政府デモなど消えてしまいました 原油価格が上昇したことも、イランにとっては歓迎すべき状況 そもそもアメリカとイラン両国は、互いを本当に敵と見なしているのか、そこに疑問を持ちながらニュースを見てほしいのです イランは、少数派とされるシーア派の国家です。これだけでもアメリカにとってイランは、価値があります。イランが一定の存在感を示す限りは、中東の一体化が阻まれ、アメリカが中東をコントロールできる余地が大きくなるからです 『米兵や関係者が誰も死ななかった』ことがイラン軍の目的であり、アメリカに対する一種の恫喝にもなっている。こうしてイランの面子も保たれました 宮家邦彦 ダイヤモンド・オンライン 「米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後、元中東担当外交官が解説」 今後の米イラン関係をいかに読むべきか? 第1ラウンドは米国の勝利? イランの戦略目的は、対米戦勝利ではなく、イラクなど中東地域からの米軍撤退と米影響力の低下 計算し尽くされたイランの対応 米国人は殺さず、事態もエスカレートさせないが、十分強力な軍事攻撃が必要となると、結局今回のミサイル発射に行き着いた お粗末なトランプ政権内の政策軌道修正 今回も大統領が、熟慮しないまま、衝動的に、恐らくは(誰とは言わないが)「イラン憎し」の閣僚の意見を採用し、いつもの通り暴走したのだろう 第2ラウンドはどうなるか? 第2ラウンドの最大の焦点も当然、中東湾岸地域での米軍駐留の是非を巡る米イラン間の綱引きだ 今後イランはイラク国内にさらに手を突っ込み、イラク政府が正式に米軍撤退を要求するよう内政干渉を強めていくだろう 米国・イラン関係は前例のない次元に突入
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