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メディア(その20)(総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う、あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~、小田嶋氏:ニュースを「マスク」する効用について) [メディア]

メディアについては、昨年12月24日に取上げた。今日は、(その20)(総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う、あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~、小田嶋氏:ニュースを「マスク」する効用について)である。

先ずは、「インファクト」編集長の立岩陽一郎氏が本年2月9日付けYahooニュースに掲載した「総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tateiwayoichiro/20200209-00162252/
・『新聞社デスクの怒り  「あの記事を読んで、本当に腹が立った」。 そう話すのは、ある新聞社のデスクだ。記事とは、Yahoo!個人に書いた「総理大臣と記者との会食が引き起こしている問題の深刻さに気付かないメディア」(2020年1月13日)だ。主要メディアのベテラン記者ら7人が安倍総理と会食をしたことの問題点を指摘したものだ。 腹を立てたのは記事を書いた私に対してではない。総理との会食に参加した記者らに対してだ。 「多くの記者は取材先との緊張関係の中で、ぎりぎりのやり取りをしながら記事を書いています。それをチェックする私も日々が真剣勝負です。それが、ああいう会食が一回でも行われれば、全てがなれ合いで行われているように見られてしまう」。 そのデスクの社名も部署も名前、性別も出せない。それを明かすことでデスクが不利益を被る恐れが有るからだ。不思議な話だと思う。Yahoo!に記事を書いた後、私はNHKを含む何人ものメディアのデスク、記者とやり取りをしているが、みな、このデスクと同じ反応を示す。しかし、それが組織の上層部には届かない。届いているのかもしれないが、議論にさえならない。品の無い言い方を許して頂ければ、「蛙の面に小便」という言葉があてはまる』、社長との「会食」だけでなく、「デスク」ともしていたとは初めて知った。社長より直接的影響力が強いので、「安倍総理」にとっての効果は大きそうだ。
・『記事の反響  自画自賛と批判されそうだが、記事の反響は大きかった。いろいろな意見が寄せられた。多くは、参加したジャーナリスト、それを許しているメディア各社への批判だった。特に目立ったのは毎日新聞購読者からの声だった。 「毎日新聞の購読を止める」。 そうした書き込みを多く目にした。これには理由が有る。去年(2019年)、官邸キャップと安倍総理との会食が行われた際に、毎日新聞は参加しなかったことが知られている。その毎日新聞の姿勢を評価して朝日新聞の購読者だった少なからぬ人が毎日新聞に切り替えたということだ。 「毎日新聞よ、お前もか!」。 書き込みの行間を読むと、そうなる。裏切られたという思いなのだろう』、「毎日新聞」はホネがあると思っていたが、「会食」に参加、とはがっかりだ。
・『「呼ばれなかったから」  一方で、私の記事に対する批判も多く寄せられた。その代表的な例は、「呼ばれなかったから、その腹いせで書いている」というものだろう。 前回の記事に書いた通り、そう思う人がいることも驚くことではない。情報は権力者に集まり、取材者は情報を得るために権力者に近づこうとする。それが無批判に常態化しているのが日本のメディアであることは紛れもない事実だからだ』、「取材者は情報を得るために権力者に近づこうとする。それが無批判に常態化しているのが日本のメディアである」、その通りだ。
・『検察幹部との食事会  こういう経験をしたことがある。NHKで記者をしていた時の話だ。大阪で司法キャップをしていた2009年、大阪高検検事長室で検事長にこう言われた。 「今度、本を出したんだが、それをNHKで扱ってくれないか」 どんな本か見せてもらうと、大阪高検のある中之島について絵と文章でつづった内容だった。大阪高検検事長とは東京高検検事長と並んで検事総長の次に位置する検察最高幹部の一人で、特に関西においては検察のトップとして君臨する権力者だ。出来ればその思いに沿いたいという下心は私にもあった。 仮に、その本が、検察人生を振り返り、知られていない秘話を記したものであれば扱えないわけではない。しかし、残念ながら本の内容はそういうものではない。私が本を手に取って黙っていると、検事長は次の様に言葉を続けた。 「読売(新聞)は書いてくれるそうだ」。私は驚いた。どうやってこの本を記事にするのか、イメージがわかなかったからだ。 「この本をメディアで扱う公益性は無いでしょう」。 とは、勿論口には出さない。しかし、そう心の中でつぶやきつつ、私は、「NHKで扱うのは難しいです」と答えて検事長室を後にした。 それからしばらくしていくつかのメディアが本を記事にしていた。そして、ある日、本を記事で扱ったメディアの記者と検事長とのみで食事会が催されたと耳にした。一方、私はこれ以降、この検事長には会っていない』、「大阪高検検事長」もずいぶん心が狭い人物のようだ。
・『根の深い問題  これがどういうことか、もう少し解説する必要が有る。官僚組織は法令順守が原則だが、当然、トップの意向も重視される。しかも、官僚組織では、トップの意向が瞬く間に下に届く。特に、検察の様な「優秀」な組織はその傾向が強い。 ところで、検察取材とは、その多くは検察から情報をとる作業だ。これは法令順守とは別の力学でなされる。検察側が守秘義務に違反する中で情報が記者に流れるということだ。その際、トップの覚えのめでたい記者に情報を流すのは、さほど問題にならないという認識が生まれる。従って、メディアの側からすれば、トップに取り入れば取材がしやすくなる、つまり情報を得やすくなるという利点が生まれる。そして自然と、メディアは権力に取り込まれていく。それは時にニュース判断さえ狂わす。 検察を取材するのは社会部記者だ。総理との会食は、政治部の現職、元職の記者だった。つまり、この問題は政治部だけに特有なものではないということだ。取材対象が異なるだけで、その権力者と取材者との関係という構図は変わらない。まして新聞、テレビ、通信といったメディアの違いでもない。日本のメディア全体の問題だと認識しなければいけない』、検察の「トップの覚えのめでたい記者に情報を流す」リークにより、世論形成していく手法は酷いものだ。その最たるものが、ゴーン問題や小澤元民主党幹事長問題だ。
・『新聞労連の南委員長に問う  この問題について新聞労連の南彰委員長は次の様に話した。「正直に言うと、ああいう取材の仕方は、今まではあたりまえだったということはあります。会食をしながらオフレコベースで情報を引き出すというのは、政治部記者の伝統芸でもあったかと思います。有力政治家は忙しいから皆で囲むという形式になってしまう。だから、あまり良いこととは思わなくても、これやらないと仕事にならない、とういう理解で続けてきたという側面は有ったと思うんです」。 南氏は朝日新聞の政治部記者であり官邸記者クラブにも在籍していた。委員長職を終えれば、朝日新聞の政治部に戻ることになる。それ故、これは自身の問題として受け止めている。そして続けた。 「もうそれは考えなおさないといけない。状況が大きくかわったと思うんです。取材過程が可視化されてきているということです。総理の動静として新聞に掲載されるだけでなく、それがSNSで拡散する。それを市民がおかしいと感じ、更にSNSで表明していく」。 その結果、取材方法そのものが問い直されているのだと感じている。 「取材した内容だけでなく、取材の方法についても信頼性が問い直されていると感じます。その(取材方法への)信頼がなければ、ニュース・ビジネスも成り立たないということを新聞社はじめ、メディアは考える時期に来ているのだと思うんです」』、最後の部分は全面的に同意する。
・『会食は3つのテーブルを総理が回る  南氏は、今回の会食についてできる限り情報を収集したという。 「会食は、3つのテーブルに分かれて、総理がそれを回るという形で行われたようです」。 仮に、それが取材の場だったとして、総理に厳しい質問をすることは可能なのだろうか? 「詳しい内容かはわかりませんが、その場で桜を見る会についてきちんと説明するよう求めた記者はいたそうです。ただ、そうした取材の雰囲気としては、一人だけ輪を乱す質問はしにくいのも事実です。相手が怒って席を立ってしまうような厳しい質問はできないでしょう」。 私はこの問題は日本の民主主義を問い直すものと認識しているが、南氏も同じだった。「根本的には、官邸に権限が集中する中で、官邸からどう情報を引き出すのかということをメディアは真剣に考えなければいけない。しかし、メディアはそれをしてこなかった。権限を与えるなら、公文書を残す取り組みを強く求めるなどすべきだった。それをせずに権力だけ集中させてはいけないと言わなければいけなかったが、メディアは従来のオフレコ取材で対応できると思ってきた。それが今も続いている」。 そして、本当にそれで取材ができているのかという疑問も生じていると私は思う。南氏は、この6月に予定されている新聞労連主催のシンポジウムで、この問題を取り上げる考えだ。 「一言で言うと、『原則と例外をひっくりかえす』ということかと思います。総理との会食の様な取材形式は、これまで「原則いいです」だったが、これを、「原則ダメです」としないといけない。どうしても、必要な時も有るかもしれないが、それはあくまでも『例外です。原則はダメなんですよ』としないといけないと感じています。そのための議論を始めていきたい」。 この記事のタイトルは、南氏に問うというものにしている。「『問う』はちょっと違いますか?」と尋ねたところ、「私自身も問われているのは間違いないので」このままで良いと話した。 しかしこの問題は、南氏の取り組みに期待するだけでは変わらない。メディアを変えるのは読者、視聴者だからだ。更に言えば、これはメディアだけの問題ではない。日本の民主主義が問われている問題だ。その思いを多くの人に共有して頂きたい』、「官邸に権限が集中する中で、官邸からどう情報を引き出すのかということをメディアは真剣に考えなければいけない。しかし、メディアはそれをしてこなかった。権限を与えるなら、公文書を残す取り組みを強く求めるなどすべきだった。それをせずに権力だけ集中させてはいけないと言わなければいけなかったが、メディアは従来のオフレコ取材で対応できると思ってきた。それが今も続いている」、との指摘は本質を突いている。『原則と例外をひっくりかえす』との「南氏」の提案には大賛成だが、それが出来るメディアは殆どなさそうなのは、残念でならない。

次に、2月25日付けNHKクローズアップ現代+「あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4389/index.html
・『今、ネットの爆発的な普及の陰で、新聞をはじめとした地域メディアが危機に直面している。発行部数と広告収入の減少により、全国で廃刊や休刊する新聞が相次いでいるのだ。こうした中、読者や市民と直接結びき、疑問や悩みを取材する「読者起点の報道」に活路を見いだそうという動きが始まっている。報じるだけでなく、読者とともに地域の課題解決を目指す「課題解決型ジャーナリズム」。この新たな報道のかたちは、メディアへの人々の信頼を取り戻すカギになるのか?地域メディアの当事者や専門家たちと一緒に、これからの地域メディアのあり方を考える。 出演者 瀬尾傑さん (スマートニュース メディア研究所 所長) 古田大輔さん (元BuzzFeed Japan 編集長) 坂本信博さん (西日本新聞 記者) 大井美夏子さん (社会福祉士 市民の視点でネットメディアを運営) 武田真一 (キャスター)』、興味深そうだ。
・『“ニュース砂漠”で暮らしに何が?  アメリカ南東部のノースカロライナ州。全米に広がるニュース砂漠があります。 人口13万人の郡で、唯一の新聞社となったロブソニアン。 経営難から、かつて18人いた記者は6人に減りました。 ほとんどがキャリア2~3年の若い記者です。 「どうにかして、あすの紙面を埋めないといけない。ジェシカ、何かないのかい?」 「警察に電話で問い合わせてみます。今朝はニュースがなかったんです。」 「タングルウッドも調べたけど、だめだったよ。クリスマスツリーの話もだめ。」ロブソニアン紙 ドニ―・ダグラス編集長「かつては1つの記事を3人の編集者でチェックしていましたが、今では2人です。週末は誰もチェックできないこともあります。誤植が増えました。取材の方法も変わりました。自分たちの足で稼ぐ取材が減りました。」 6年前、メディアの存在が地域にもたらす影響を象徴する出来事が起きました。 ロブソニアンがある隣の郡には、記者40人がいる比較的大きな新聞社があります。この郡に鶏肉処理工場の進出計画が持ち上がり、新聞社は170を超える記事で手厚く報じました。内容は、雇用を生むメリットと環境汚染が起きるかもしれないリスクの両方を伝えるものでした。報道を受けて住民の間に進出の是非を巡る論争が起きました。 ニュースキャスター「鶏肉処理工場建設に対して、集会が開かれました。」 「緑のシャツは賛成派、赤のシャツは反対派です。」反対の声が高まり、最終的に工場は進出を断念。 その後、この工場がロブソニアンのある郡への進出を計画します。それに対して、ロブソニアンが掲載した記事は隣の郡の7分の1ほど。雇用を生むメリットに注目し、誘致を促すものばかりでした。 取材班「工場建設のことを新聞で読んだことがありますか?」 「いいえ。」 取材班「工場があることも知らない?」 「知りません。」 取材班「聞いたこともない?」 「ないです。」「フェイスブックで知りたい情報は得られる。新聞と同じよ。」 工場は3年前に完成。 ロブソニアンがある郡では、市民の間に議論は生まれませんでした。 “ニュース砂漠”が広がるとどうなるのか…。 武田:改めて、瀬尾さんはこの要因をどういうふうにお考えですか。 ゲスト瀬尾傑さん(スマートニュース メディア研究所 所長)瀬尾さん:アメリカのローカルメディアは、ある意味、日本以上にはるかに追い込まれているわけですよ。やっぱり数が多い。日本みたいに、1県1紙のように対象になってないので競争が激しい。あるいは、宅配制度も弱いということがある。そういう意味で言うと、日本以上に広告収入に依存している。そういった経営はすごく厳しくて、すでに、とう汰も始まっています。 武田:そういう地域メディアがどんどん衰退していく中で、何かアメリカで起きている問題はあるのでしょうか。 ゲスト古田大輔さん(元BuzzFeed Japan 編集長)古田さん:もういろんな研究がアメリカではなされていて、地域メディアがなくなったところの影響で特に深刻視されているのが、例えば投票率が下がる。選挙で候補者も減っていく。みんな、その地域の政治に対する関心を失っていくんですよね。それが大きな影響だと言われています。 武田:実際にそういうことが起きている…。 古田さん:起きていると。そこで考えたいのが、実は日本でも今、候補者がいないという問題が言われていますよね。地方選挙のたびに投票にならない、地方議会が維持できないと。実は、これは日本においてはニュースの砂漠というのが、もうずっと昔から起こっていたことの証左なのではないのかなと僕は思うんですね。日本って、1,800の自治体を116紙がカバーしている。つまり、日本においては地域情報の取材というのは、そもそもずっと昔から足りていないんですよね』、「日本においてはニュースの砂漠というのが、もうずっと昔から起こっていたことの証左なのではないのかな」、その通りなのだろう。
・『密着!地方新聞の舞台裏  読者に必要とされる新聞になるため、何かできないか。 西日本新聞では、2年前から新たな取り組みを始めました。 「あなたの特命取材班」通称「あな特」。記者と読者が共に作る、新しい報道だといいます。 これまでマスメディアは、行政や警察などの当局取材や記者による調査報道をもとに、何を知らせるべきかを判断して報じてきました。 一方「あな特」では、記者は読者から寄せられた疑問や悩み事から取材をスタート。その経緯や分かった事実を行政や企業にもぶつけ、取材を深めていきます。“読者の声から始まる調査報道”です。 西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん「課題設定権を読者に半ば委ねる形で、読者が知りたいことに答えて、単に知りたいに答えるだけではなく、新聞社の取材力を発揮した調査報道で課題が解決していく。そういう課題解決型の調査報道を通して、新聞のファンを増やして、ジャーナリズムへの信頼を稼ぐということが、今われわれがやるべきことなんじゃないかな。」 読者と記者をつなぐのが通信アプリ。 読者からの情報や意見には記者全員がアクセスでき、担当は早い者勝ちで決まります。 テーマに関心を持った記者が読者に個別に連絡し、取材を始めます。 この日も読者から投稿がありました。子どもの医療電話相談「#8000」についてです。 早速、記者が情報を寄せてくれた読者のもとに駆けつけます。 “電話を何度かけてもつながらない” “つながって症状を伝えても自分で判断してほしいと繰り返された” 運営している自治体への取材だけでは気付けなかった事実です。 続けて、読者の声を受けて行政に取材すると、相談が増える中、電話回線が足りず、体制が不十分な場合が多いことが判明。その実態を記事にしました。 投稿を寄せた読者「『あな特』の場合は、市民がそれぞれ意見を言ったところを掘り下げて調べてくれるので、ちょっと切り口が違うというか。下から上がってきたようなものなのかな。より信頼はありますね。」 読者が発信し、記者がそれを深掘りすることで身近な課題を解決する。例えば、高速バスに障害者優先席が設置されたり、携帯電話の決済を不正利用した詐欺の補償制度も始まりました。 読者からは「あな特」の存在に感謝する声が寄せられるようになっています。 “声を届けてくれた西日本新聞さんのおかげです。” “一人の訴えではどうにもできなかった” 開始から2年、「あな特」に登録した人は1万4,000人になりました。 西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん「『こういう企画を新聞がやるのは初めてです』とか、『こんな企画を待ってました』という声が読者から来まして、我々、新聞は斜陽産業だみたいなことを思い込んでいましたけども、まだまだ我々にしかできない仕事がたくさんあって、しかも地域に根ざした地方紙の記者だからこそできる仕事がたくさんある。」』、「西日本新聞」の「あな特」は、画期的な取り組みだ。
・『去年からは、地方新聞社同士の連携も始まりました。 それぞれの地域の声を共有することで、全国に共通する課題の解決を目指しています。 西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん「地域最強のメディア同士が連携すれば、そこに読者という最大の見方が加われば、かつてない質量ともに面白い報道ができるのではないかなと感じております。」 これまではライバル同士、取材した情報を共有するなど考えられなかったことでした。 しかし、沖縄から北海道までおよそ20社が加わり、全国をカバーするネットワークが生まれています。 その一つ、去年参加した岩手日報です。 記者たちが情報共有をするのは、こちらのチャットシステム。90名の記者やデスクが会社の垣根を越え、一日およそ10件の記事や情報を直接やり取りしています。 岩手日報 報道部 太田代剛さん「これはこっち(岩手日報)でもいけそうな感じがするね。」 この日、西日本新聞から届いたのは“子連れで議会を傍聴した時に退席を求められた読者の体験をもとにした記事”です。 早速、西日本新聞とテレビ会議でつなぎ、記事を書いた経緯を詳しく聞きます。 西日本新聞「お母さんが議会によって対応だったり、設備だったりとかがばらばらで、そういう現状を知ってもらいたいという話を『あな特』でいただいて。」 岩手日報「規則が決まっていないところは、議長さんが職権でその都度決めている感じ?」 岩手にも、九州の読者と同じような疑問を持つ人がいるのではないか。 記者はまず、子連れで議会を傍聴することについて子育て世代の母親に話を聞きます。 読者「(子連れ傍聴が)ウエルカムな状態を作ってもらえたら、すばらしいのかな、やる気あるなと感じるかな。子育て(世代)に対して。」 さらに、県議会にも取材。 記者「福岡の西日本新聞さんの『子連れ傍聴』について取材した記事ですけども、今、議会でそういった議論とかは…。」 岩手県議会議員「まずは『開かれた議会』というところ、誰もが来られる場所を作るべきだと。」 2日後、連携から生まれた記事は、西日本新聞の記事と一緒に大きく掲載されました。 岩手日報 記者 小向里恵子さん「市民の声を聞くことで、県民はこういう疑問をもっているんだなっていう。新しい取材なのかなって。新聞記者だからこそできることもあるかもしれない。」 西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん「書いた記事が読者に刺さっているのか、読者に読まれているのかという手応えが何となく感じにくい中で、地域の最強のローカルメディア同士が連携して、より深い調査報道ができれば、その地域だけではなくて日本中の読者に、よりよい報道を届けることができると思っています。」』、相互にライバルではない地方新聞社同士の連携とはいいことだ。
・『読者に必要とされるメディアとは?  武田:西日本新聞の坂本さんの「記事が読者に刺さらない」という言葉にすごく共感するところがあるんですね。でも、なぜそういうことになるのか。 ゲスト坂本信博さん(西日本新聞記者)坂本さん:これまで、市民が知るべきだというニュースと記者が知らせたいというニュースに軸を置いてきました。一方で、読者が知りたいということに応えられてなかったんじゃないかなというのは、最近感じるようになっていまして。 武田:何がそうさせたのしょうか。 坂本さん:読まれているのかどうか、反響がまずなかなかないと。 古田さん:昔、マスメディアしかなかった時代は、情報の流通は基本的にマスメディアを通してだったわけですよね。ほかには、そんなになかったわけです。でもインターネットの時代になって、誰でも1億人のインターネットユーザーが自由に発信できるし、受信できるし、拡散できるようになったら、情報の数が膨大になってしまったわけですよね。そうすると、その中でマスメディアが担ってる情報の率なんて、本当にこれっぽっちになっちゃったわけです。 武田:大井さんにお伺いしたいのは、読者や視聴者の側としてはやっぱりそんな感じなんですか。 ゲスト大井美夏子さん(社会福祉士 市民の視点でネットメディアを運営)大井さん:そうですね…はい。 武田:こんなテレビとか新聞なんか要らないよと、もうネットがあるからという感じ? 大井さん:「知りたい」というものと、出されたものが…。例えば地方でしたら、地域に関する自分たちが知りたいと思うところの情報が本当に少ないですし。だから、そういった「知りたい」っていうものをもっと出してもらって深めてもらったら、やっぱりこれは買いたいなとか、応援したいなという気持ちになるんじゃないかなと思うのですが。 武田:欲しい情報がない。何かここでギャップが生じて、メディアの不信というものが、やっぱり背景にあるのではないかという気もするんですけれども。例えば、最も信頼しているメディアとしては、新聞やNHKテレビというのは相変わらずある程度は高いんですけれども、徐々に信頼度は下がってきているというようなデータもあります。 坂本さん:そこで何か手を打てないかということで始めたのが「あなたの特命取材班」なんですけども。読者と記者が直接つながることで読者の知りたいことを吸い上げて、しかも双方向でやり取りできるので、一緒に取材に協力して頂く形で、いい報道を作っていこうという取り組みを始めたところです。その手法も可視化していくというのをこだわっていまして。読者からこういう調査依頼があって、ここで調べたらこうで、そのあと調べたらこうで、という手法を見せていくことで信頼を高めていきたいというねらいもあります。 古田さん:今まさにおっしゃった取材の過程も、どういうふうに取材したのかということも開示することで信頼性を担保しようとする手法というのが、今後ますます重要になると思います。 瀬尾さん:僕、「あな特」ですごいなと思うことが2つあって。1つは、読者から課題をもらうことによって、いわゆる読者とエンゲージメントができているということなんですね。要するに、読者をいかに巻き込むかというところだと思うんですけども、そこを「あな特」は 達成していると思うんですね。2つ目は、それをネットワークにしようとしていることなんです。単独でやるのではなくて、いろんな力を借りてやるというのがすごく大事なことだと思うんですね。 坂本さん:以前だと、会社と会社でシステムがつながってなければ記事のやり取りはできなかったんですけども、デジタルとかネットの発達のおかげで、よりやりやすくなってきてるというのは間違いなくあると思います。 大井さん:紙のメディアが駄目だというお話もずっとあったと思うんですが、じゃあ新聞社の方でも「うちの社にはこういった得意分野の記者がいますよ」というものをどんどんアピールしていけば、「じゃあその記者が書いた記事を読みたいわ」とか。それをやっていったら、信頼関係というのも生まれてくるんじゃないかなと私は思うんですけど。 瀬尾さん:実は、マスメディアの中にいる記者の方たちというのはすごく取材力もあったり、発信力もあったり、分析力があったりする方もいるわけですよね。それがなかなか今まで日本の新聞社の中から表に出てこなかった。逆に、記者の方も発信できるツールや機会もいっぱいあり、それは別にネットだけじゃないと思うんですよね。例えばイベントでどんどん情報発信するというのもあるかもしれないし。 古田さん:「Journalism as a Service」という言葉があるんですけど、サービスとしてのジャーナリズム。日本語にちょっと訳しづらいんですけど、「貢献するジャーナリズム」みたいな意味があります。自分たちも地域の一員として、その地域の課題と向き合って、じゃあそれをどうポジティブな方向に変えていけるのかっていうことを、そのコミュニティーの人たちと一緒に考えて報じていくというような考え方が広がっていて。信頼性を失ってきた中で、じゃあ我々の価値って何なんだろうというふうに考えた時に、やっぱりこのコミュニティーに貢献しないといけないのではないかという考え方が広がってきてると思うんですよね』、「「あな特」ですごいなと思うことが2つあって。1つは、読者から課題をもらうことによって、いわゆる読者とエンゲージメントができている・・・読者をいかに巻き込むかというところだ・・・2つ目は、それをネットワークにしようとしていることなんです。単独でやるのではなくて、いろんな力を借りてやるというのがすごく大事なこと」、「あな特」の特徴を見事に描き切っている。記事を記者の署名入りにするのも一案だ。
・『模索する記者たち 地域が求めるニュースとは  新たな試みは、NHKでも始まっています。 北海道十勝地方にある帯広放送局。 4人の記者で34万人が暮らす地域を取材しています。「NHKの加藤です。」 その一人、加藤誠記者です。 2年前、かつて勤務していた帯広局に再び赴任。取材を続ける中で、視聴者との距離を感じるようになりました。 NHK帯広放送局 加藤誠記者「ギャップですよね、やっぱり。今までこうだろうなって思ってきたことと。あと実際、市民の方が本当に知りたいとか、悩んでいることって、やっぱり違うっていうか。ずれがあるっていうか。やっぱりもう一回向き合いたいな。」 帯広放送局がおととし12月に始めた、地域の悩みにとことん向き合う「ナットク!とかちCH」。 記者は、視聴者から寄せられる意見や情報をもとに取材。放送やホームページで結果を報告します。反響が届くとすぐに取材し、放送。情報のキャッチボールを繰り返します。異なる意見やアイデアを伝え、課題解決のつなぎ役を目指します。 「交差点の除雪のしかたが悪い」という投稿から始まった放送では、ボランティア、除雪を行う業者、ドライバーの悩みなど11週続けて伝えました。 その後、帯広市は除雪の予算を増額。除雪車を増やしました。 NHK帯広放送局 加藤誠記者「続けることでいろんな人の考え方が伝えられるし、反響をもらえるし。そうすることによって、いろんな人が共感できる。今までと違う手触り感というか、それは初めての感覚。」 さらに、地域の人のもやっとした思いを記者が直接聞くワークショップ「もやカフェ」を開きました。 参加者「移住者とつながる場がないっていう。いろんな人とつながる場所が市内にはなくて。」 NHK帯広放送局 佐藤恭孝記者「会う機会がないですよね。」 参加者「冬の時期になるとお店が休業してしまうモヤモヤが出て。」 参加者の本音が次々と出ました。 NHK帯広放送局 加藤誠記者「みなさんのモヤモヤやアイデアを、NHKを使ってもらって、私たちがつなぐ役割になれればと思っています。」 参加者「ふだん知り合うことのない人たちと話ができて、いろんな悩みとかも共有できて、いい時間になりました。」「テレビだけじゃなくて、外で直接お話ができる機会が得られて、とてもいいなと。」 翌週。“もやカフェではとても有意義な時間が過ごせました!!” “『人口流出』をテーマにされていることが、モヤっとしております” 参加者がSNSで発信してくれた疑問の声。 加藤記者は直接会いに行きました。 地域の情報をネットで発信する野澤一盛さんです。野澤一盛さん「人口流出をネガティブに捉えて、まあ流出しているのは事実ですけど、北海道の中でいうと石狩以外は札幌圏以外は、十勝の人口流出が一番少ないんです。むしろ、そこが何でなんだろうみたいな突っ込み方をしてくれたらヒントが生まれるなと。」 NHK帯広放送局 加藤誠記者「つまり、あれですか、流出って言い方だと…」 野澤一盛さん「ちょっとネガティブなワードがいっぱい入っていて、なんかすげー外からっていうか。上から目線だなってすごい思ったんですよ。」 NHK帯広放送局 加藤誠記者「上から目線…。」 前向きな発信を心がけてきた加藤記者にとって意外な指摘でした。 しかし、この意識のズレに、地域の人に役立つための手がかりがあると感じました。 NHK帯広放送局 加藤誠記者「そうか、そう見えるのか。そう伝えているつもりはないですけど、そう聞こえちゃうわけですね。聞けてよかったです。そういうの。」 2週間後。 「ただいまより、第2回もやカフェを開催いたします。」 会場には、野澤さんの姿が。地域の課題を一緒に考えたい気持ちが強まったといいます。 野澤一盛さん「また何かあったら相談してみようとか、これの繰り返しかなって、ちょっと思いましたね。」』、「NHK帯広放送局」の「ナットク!とかちCH」や、「もやカフェ」も注目すべき面白い試みだ。
・『市民とつくる“未来のメディア”  武田:西日本新聞やNHKの帯広放送局がやっていることも、より見やすくしていくとか、ただ報じるだけじゃなくて、読者と一緒に社会を変えていくというようなこともできるんじゃないかなというふうに私は感じてるんですけれども。大井さんいかがですか? 大井さん:メディアと市民って、結構区分けしすぎというか。例えばメディアの人や記者の人も、一人のいわゆる家庭人であったり、地域社会の人であったり、いろんな所にいろんな趣味とかでも関わっていると思うんですけど。自分はメディアの人間であり、市民でもある、県民でもある、国民でもあるというような意識で取材してもらったら、その垣根というのも「同じじゃん」じゃないですけど、(同じ)だと思うんですけど、「さあ取材に行きますよ」「メディアですよ」みたいにすると、みんな構えてしまうところもあるので、そういった取材の持ち方がいいんじゃないかなと思います。 武田:一生懸命、仕事をしてるつもりなんですけど、やはりそこのズレですよね。 瀬尾さん:これはメディア側が読者や市民を信じることだと思うんですよね。やっぱり読者をまだ信じ切れていないんじゃないかと思うんですよね。今日議論した中でも出てきた、例えば取材過程の透明性、あるいはコミュニティーメディアを巻き込んでいく、市民に参加してもらうということは、前提として僕らが読者、ユーザー、市民を信じているということなんですよ。その原点に戻るということが僕は大事なんだと思います。 坂本さん:新聞記者は、お金稼ぐのではなくて信頼を稼いでファンを増やすというのが、これからの仕事だと思ってるので。そういう意味では、一緒に連携して作っていくという信頼関係を紡ぎつつ、協力関係も大事にしていくというのが大事なんじゃないかなと思っています。先日、あな特通信員に「あなたにとって『あな特』って何ですか?」ということを聞いたところ、一番多かった答えが「社会参加」だったんですよね。64%の方が「あな特」=「社会参加」だと。つまり、社会への窓だというふうに答えて下さって。それは、われわれもすごく可能性を感じました。 大井さん:でも、やっぱり市民の人はみんな、メディアに期待をしてると思うので。それに応えるために頑張って頂きたいというのは思いますし、メディアが駄目になったら本当に地域がゆがむので、それは心の底から「やって下さい」という感じで応援したいとは思っているんですけど。応援したいと思うような記者の方がどんどん出てほしいなと思います。 武田:頑張りましょう。ありがとうございました』、メディアの一層の創意工夫に期待したい。

第三に、コラムニストの小田嶋 隆氏が2月7日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「ニュースを「マスク」する効用について」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00056/?P=1
・『マスクが品薄らしい。 案の定の展開だ。 マスクが品薄になることは、多くの人々にとって、十分に予想されていたことだった。 にもかかわらず、その不吉な見込み通りに、マスクはもののみごとに品薄になっている。 なぜかといえば、多くの人々にとってマスクが品薄になる展開が明らかに予見できたからだ。 同語反復に聞こえるかもしれない。 が、実際問題として、その同語反復が現実の事態として実現しているのだからして、これはどうしようもない。 不安は現実化する。 なぜなら、不安な未来を呼び寄せるのは、未来への不安だからだ。 これも同語反復だ。 未来について人々が不安を抱けば抱くほど、不安通りの近未来が招来する。これは、不安という感情の性質からして、回避しようのないなりゆきだ。 たとえば、銀行の取り付け騒ぎは、人々が金融制度の信用性に不安を抱くことで引き起こされる。 というのも、個々の預金者にとって、万が一にも自分の預金が引き出せなくなる事態を回避するためには、とりあえず自分の預金を全額引き出しておくことが、最も確実な手立てだからだ。さてしかし、多くの預金者が預金をおろすと、銀行の資金力は衰えることになる。 と、金融システム全体から見て、銀行の信用性が毀損されて信用不安が増大する。その結果、預金者にとってはますます預金を引き出す緊急性が高まる。こうなってしまっては、取り付け騒ぎはもう誰にも止められない。そもそも、銀行の信用というのは、「預金者が一斉に預金を引き出さないこと」を前提に保持されていた一種の「思い込み」であったわけで、だとすれば、その幻想なり思い込みなりに疑念が生じた時点で、信用は雲散霧消する。これはどうしようもないことだ。 2月5日のNHKの夜のニュース番組は、このマスク不足について、異例の長時間を割いて報道していた。 国会での与野党の論戦に関するニュースの冷淡さ(←解説を一切省いて、野党の質問に答える安倍総理の録画編集映像をそそくさと再生するのみでした)に比べて、マスク不足を伝えるニュースの熱心さは、文字通り「異常」に映った』、「国会での与野党の論戦」は安部政権にとっては論理破綻を示すだけなので、御用放送としては「冷淡」な扱いにしたのかも知れない。
・『個人的な印象としては「NHKの中の人たちは、視聴者のマスク不足への不安を煽ることで、いったい何を実現したいのだろうか」と思わずにはいられなかった。 おそらく、マスクのニュースをとりわけ熱心に伝えていたスタッフの真意は 「これからの季節、花粉症などで、どうしてもマスクが必要な人もいるので、過度な買い占めはやめましょう」「話題の新型肺炎を予防するために、マスクがある程度有効なことはたしかですが、かといってマスクが予防の切り札になるわけではありません。もちろん手洗いも重要です。いずれにしても、マスクに過度に頼ったり、マスクを過剰に買いだめしたりすることはおすすめできません」てなことを訴えるところにあったのだろう。 その気持ちはわかる。 しかし、当たり前の話だが、伝える側の真意が、それを受け止める側にそのまま伝わるとは限らない。 おそらくだが、ニュースを見た視聴者の多くは 「なるほど。マスクが品薄なのか。いまのうちに買い置きをしておかないといけないな」と思ったはずだ。 しかも、重要なポイントは、そうすること(マスクの買い置きをすること)を、平均的な視聴者が「賢い対処」と考えていたに違いないことだ。 もう少し詳しく解説すると、情報の受け手である視聴者は 「愚かなテレビ視聴者がパニックに陥ってマスクを買い占めることで市場からマスクの在庫が消滅してしまう前に、賢い消費者たる自分としては、当面の備えとしてマスクの買い置きをしておくことにしよう」という順序でものを考える。 つまり、個々のテレビ視聴者からしてみると、他人(あるいは「愚かな大衆」)が、マスクを買い占めることが「愚行」「パニック反応」「利己主義」「浅ましい消費者行動」であるのに対して、自分がマスクを買い置きすることは、「当然の生活防衛」であり「賢明な消費行動」であり「機敏な市場対応」だというお話になる。これは、理不尽なようでいて、個々の消費者の心理からすれば、無理からぬ反応でもある。 だって、バカな人たちがマスクを買うことで市場からマスクが消えてしまうのが目に見えているのだとしたら、マスクが市場から姿を消す前にマスクを買い置きすることのどこが愚かだと言えるのだ? というよりも、個々の消費者の賢い(あるいは「無理からぬ」)消費行動が、市場全体から見て愚かなパニック反応として作用してしまう行きがかりは、商品市場の呪いというのか「合成の誤謬」という言葉で説明されるべき宿命だ。これは、テレビ局が視聴者に自覚を促したり説教を垂れたりすることで防げるような単純なお話ではない』、「合成の誤謬」という経済学用語を持ち出すとはさすがだ。
・『むしろ、上からおためごかしの説教を垂れることで、結果として視聴者のパニックを煽りにかかっている彼らの態度をこそ「愚行」と呼ぶべきなのではなかろうか。 私は、はっきりとそう思っている。 あれは、愚かなニュースだった。 それにしても、NHKの番組スタッフは国会のニュースについて解説することを、どうしてあれほどまでにあからさまに避けようとするのだろうか。 もしかして、マスクにこだわっているのは、国会のニュースを伝えないためなのか、と、そう思いたくなるほど、この1年ほど、NHKの報道姿勢は脱政治的な話題に傾いている。 マスクと五輪のスタジアムとトランプと聖火のトーチとオリンピックとオリンピック。いい加減にしてほしい。 話をもとに戻す。 NHKが口を酸っぱくして「必要以上のマスクの買い占めは本当にマスクを必要としている人を苦しめることになるので、できれば控えてください」と繰り返しているお説教は、視聴者の耳に 「バカな人たちが必要以上にマスクを買い占める危険性があるので、賢い消費者であるあなたにはいまのうちに自分に必要な分のマスクを確保しておくことをおすすめします」というメッセージとして届いている可能性がある。 これは、由々しき事態であると申し上げねばならない。 実際、トイレットペーパーでもマスクでも同じことなのだが、あの種の必需品は、「一般の消費者が必要以上に買いだめをしない」ことを前提として流通している。 特に、トイレットペーパーやティッシュペーパーのような、売り場や倉庫に置いた時にやたらとかさばるわりに、たいして利幅の大きくない商品は、小売店にとって「なるべくなら在庫したくない商品」でもあるわけで、それゆえ、個々の消費者がなんらかの理由で、普段よりも多めに買い置きをしておこうと考えると、またたく間に市場から在庫が消えることになっている。 要は、生産者から流通業者、小売業者を経て消費者に至るまでの経路の個々のメンバーが、それぞれに適正にして最小限の在庫量を心がけていれば、商品は健全に流通するはずなのだ。しかし、どこかの段階で、買い占めによる価格高騰を狙う不良業者や、棚が空になる不安から買いだめに走る消費者が現れると、商品流通市場は、またたく間に機能不全に陥る。 いわゆる「合成の誤謬」は、経済の世界だけでなく、報道の現場でも起こっている。 私がいちテレビ視聴者ならびに新聞読者として感じているところを率直に申し上げるに、たとえば、今回の新型肺炎については、個々の報道機関が、それぞれのページビューなり視聴率なりを追求した結果、日本のメディア全体としてのニュースは、およそ信用のならない水準に着地している』、「この1年ほど、NHKの報道姿勢は脱政治的な話題に傾いている」、全く同感だ。安部政権への「忖度」なのだろう。今夕のニュースでの安部首相の記者会見は、各局のニュースが同じものを一斉に流しており、まるで大本営発表を彷彿とさせるものだった。
・『民放の情報番組は、いたずらに危機感を煽る一方で、パニックに陥った人々を嘲笑している。 しかも、これらは、同じひとつのニュース枠の中で、一貫した情報として提供されている。 まるで、あるタイプの食品メーカーが右手で酒を売っておきながら、左手でウコン入りの怪しげな二日酔い対策サプリメントを販売している手口にそっくりだ。 彼らは、一方の口で 「気をつけろ」「こわいぞ」「用心しろ」と警告を発しつつ、もう一方の口で 「過剰反応するな」「パニックは禁物だ」「落ち着け」と言っている。 しかも、単にパニックをしずめるのではなく、それをネタに冷笑をあびせている。 「見てください。棚が空っぽです」「ほら、観光地もこんな調子です」「あらあら、あきれましたね」「いったい何を考えているのでしょう」 いや、わかっている。 個々のニュース原稿を書いている個々の記者は、それぞれの場面に応じた適切な言葉を書き連ねているつもりなのだと思う。 でも、それらのニュースを通しで見ているこっちからすると、彼らが配信しているニュースは、総体としてはマッチポンプにしか見えないのだ。 私は、すらすらと英語が読める人間ではない。 それでも、新型肺炎に関しては、海外のニュースサイトを見に行った方が、ずっと有益な情報が得られると思っている。 事実、ニューヨーク・タイムズやBBCのホームページに載っている表やグラフは、言葉のハンディを超えて、明らかにわかりやすく今回の新型のウイルス性疾患の全体像を伝えてくれている。私はツイッター経由で流れてきた、それらの情報に、色々な点で蒙を啓かれた(注)と思っている』、「彼らが配信しているニュースは、総体としてはマッチポンプにしか見えない」、その通りで、担当している社会部記者が必死になって、面白そうなネタを漁っている光景が目に浮かぶようだ。
(注)蒙を啓く:啓蒙する(goo辞典)。
・『心配なのは、ニュース番組・紙面を作っている人たちが、どのタイプの情報提供が視聴者・読者を誘引して、どんな書き方をすればページビューが稼げるのかといった課題に日々心を砕いている一方で、どのニュースにどれだけの放送時間(あるいはスペース)を割り当てるのかについて考える努力をおろそかにしているのではなかろうかということだ。 この場を借りてお伝えしておくが、私は、この一年ほど、NHKのニュース番組「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」については、はっきりと不信感を抱いている。 あんなに毎日毎日オリンピックの話ばかり繰り返すのであれば、いっそ「オリンピックの顔と顔」くらいなタイトルで放送した方がふさわしいのではないかとさえ思っている。 不安は現実化する。 不信もたぶん現実化する。 不信を抱く方が悪いのだと、あるいは、彼らは言うかもしれない。 私は、そうは思っていない。不信を感じさせる側がいけないのだと思っている。 メディアに不信感を抱くことが、必ずしもメディア・リテラシーの本旨でないことはわかっている。 とはいえ、マスクがウイルスを完全に遮断できないのと同じように、受け手の側のメディア・リテラシーがすべてを解決するわけではない。 NHKの皆さんには、とりあえずマトモな国会報道を回復してもらいたい。 症状が致死的にならないうちに、手を打ってくれるとありがたい』、全面的に同意したいが、現実には、「オリンピック」が近づくと一層酷くなるのだろう。やれやれ・・・。最後に、「ニュースを「マスク」する効用について」とのタイトルは、さすが小田島氏だけあって、言い得て妙だ。
タグ:メディア yahooニュース 日経ビジネスオンライン 西日本新聞 NHKクローズアップ現代+ 小田嶋 隆 (その20)(総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う、あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~、小田嶋氏:ニュースを「マスク」する効用について) 立岩陽一郎 「総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う」 新聞社デスクの怒り 総理大臣と記者との会食が引き起こしている問題の深刻さに気付かないメディア 多くの記者は取材先との緊張関係の中で、ぎりぎりのやり取りをしながら記事を書いています。それをチェックする私も日々が真剣勝負です。それが、ああいう会食が一回でも行われれば、全てがなれ合いで行われているように見られてしまう 記事の反響 多くは、参加したジャーナリスト、それを許しているメディア各社への批判 「呼ばれなかったから」 取材者は情報を得るために権力者に近づこうとする。それが無批判に常態化しているのが日本のメディアである 検察幹部との食事会 大阪高検検事長 本を出したんだが、それをNHKで扱ってくれないか NHKで扱うのは難しいです 根の深い問題 メディアの側からすれば、トップに取り入れば取材がしやすくなる、つまり情報を得やすくなるという利点が生まれる。そして自然と、メディアは権力に取り込まれていく 時にニュース判断さえ狂わす 新聞労連の南委員長に問う 取材過程が可視化されてきている 取材方法そのものが問い直されている (取材方法への)信頼がなければ、ニュース・ビジネスも成り立たないということを新聞社はじめ、メディアは考える時期に来ている 会食は3つのテーブルを総理が回る 『原則と例外をひっくりかえす』 官邸に権限が集中する中で、官邸からどう情報を引き出すのかということをメディアは真剣に考えなければいけない。しかし、メディアはそれをしてこなかった。権限を与えるなら、公文書を残す取り組みを強く求めるなどすべきだった。それをせずに権力だけ集中させてはいけないと言わなければいけなかったが、メディアは従来のオフレコ取材で対応できると思ってきた。それが今も続いている 「あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~」 読者や市民と直接結びき、疑問や悩みを取材する「読者起点の報道」に活路を見いだそうという動きが始まっている “ニュース砂漠”で暮らしに何が? 地域メディアがなくなったところの影響で特に深刻視されているのが、例えば投票率が下がる。選挙で候補者も減っていく。みんな、その地域の政治に対する関心を失っていく 日本でも今、候補者がいないという問題が言われていますよね。地方選挙のたびに投票にならない、地方議会が維持できないと。実は、これは日本においてはニュースの砂漠というのが、もうずっと昔から起こっていたことの証左 密着!地方新聞の舞台裏 「あなたの特命取材班」通称「あな特」 去年からは、地方新聞社同士の連携も始まりました 読者に必要とされるメディアとは? 「あな特」ですごいなと思うことが2つあって。1つは、読者から課題をもらうことによって、いわゆる読者とエンゲージメントができているということなんですね。要するに、読者をいかに巻き込むかというところだと思うんですけども、そこを「あな特」は 達成していると思うんですね。2つ目は、それをネットワークにしようとしていることなんです。単独でやるのではなくて、いろんな力を借りてやるというのがすごく大事なことだと思うんですね 模索する記者たち 地域が求めるニュースとは NHK帯広放送局 「ナットク!とかちCH」 「もやカフェ」 市民とつくる“未来のメディア” 「ニュースを「マスク」する効用について」 マスクが品薄 NHKの夜のニュース番組 マスク不足について、異例の長時間を割いて報道 国会での与野党の論戦に関するニュースの冷淡さ 他人(あるいは「愚かな大衆」)が、マスクを買い占めることが「愚行」「パニック反応」「利己主義」「浅ましい消費者行動」であるのに対して、自分がマスクを買い置きすることは、「当然の生活防衛」であり「賢明な消費行動」であり「機敏な市場対応」だというお話になる 「合成の誤謬」 NHKの番組スタッフは国会のニュースについて解説することを、どうしてあれほどまでにあからさまに避けようとするのだろうか。 もしかして、マスクにこだわっているのは、国会のニュースを伝えないためなのか、と、そう思いたくなるほど、この1年ほど、NHKの報道姿勢は脱政治的な話題に傾いている 民放の情報番組は、いたずらに危機感を煽る一方で、パニックに陥った人々を嘲笑している 彼らが配信しているニュースは、総体としてはマッチポンプにしか見えないのだ 「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」については、はっきりと不信感を抱いている。 あんなに毎日毎日オリンピックの話ばかり繰り返すのであれば、いっそ「オリンピックの顔と顔」くらいなタイトルで放送した方がふさわしいのではないかとさえ思っている
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フィンテック(その4)(独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化、ブロックチェーンが世間から評価されない理由 研究の第一人者が語る、デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊 どう生き残るか) [金融]

フィンテックについては、2017年12月26日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その4)(独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化、ブロックチェーンが世間から評価されない理由 研究の第一人者が語る、デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊 どう生き残るか)である。

先ずは、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏が昨年12/15現代ビジネスに掲載した「独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69137
・『中国では、電子マネーや信用スコアリングの他にも、様々な新しいフィンテックのサービスが登場している。世界のフィンテック関連投資の約半分が中国でなされている』、「中国」はいまや最先端分野でも先頭を走っているようだ。
・『フィンテックで中国は世界のトップに  2019年11月27日に発表された「フィンテック100」で、第1位は、電子マネー、アリペイを提供するAnt Financial(アント・フィナンシャル)だった。トップ10社のうち、中国企業が3社を占めている。これはアメリカの2社より多い(「フィンテック100」は、国際会計事務所大手のKPMGとベンチャー・キャピタルのH2 Venturesが作成するフィンテック関連企業のリスト)。 これまでの推移を見ると、2014年では、100社に入った中国企業は1社だけだった。2015年には7社となり、インターネット専業の損害保険会社である衆安(ジョンアン)保険が世界のトップになった。2016年には、アメリカが35社、中国が14社となった。世界トップは、アント・フィナンシャルだった。2017年版で上位3位に入ったのは、アント・フィナンシャル、衆安保険、そして趣店(クディアン)だ。趣店は、オンラインマイクロクレジットサービス を提供している。 2018年12月に公表された2018年版では、アリババ・グループの関連会社が、トップ3を独占した。 このように中国のフィンテックはここ数年の間に驚くべき成長をとげ 、いまや世界一の地位をゆるぎないものにしているのだ』、「いまや世界一の地位をゆるぎないものにしている」、改めて驚かされた。
・『世界のフィンテック投資の半分が中国で  2019年6月に発表されたアクセンチュアの調査によると、2018年のフィンテック・ベンチャー企業への投資額は、全世界で、前年比2倍以上の553億ドルとなった。 そのうち、中国における投資額が、前年比で約9倍の255億ドルになった。つまり、世界のフィンテック投資総額のうち46%を中国が占めたことになる。 中国におけるフィンテック投資額の半分以上は、アント・フィナンシャルが5月に実施した140億ドルの資金調達が占めている。 アント・フィナンシャルに続くのは、Du Xiaoman Financial。同社は2018年4月に中国の検索エンジン大手Baiduから独立した企業で、消費者金融サービスを提供する。2つの投資案件で43億ドルを調達した。 中国におけるその他の大型案件としては、後述するLufaxが、香港証券取引所で2018年12月に13億ドルを調達した。 なお、アリババグループは、11月26日、香港証券取引所に上場した。新株の売り出しによる調達総額は875億香港ドル(約1.22兆円)になった』、「アリババ」の「株の売り出しによる調達総額は875億香港ドル」と小ぶりにみえるが、売り出し株数が少なかったからで、昨年12月20日の時価総額は5695億米ドルと中国最大の巨人である。
・『融資や資金運用での新しいサービス  中国のフィンテックのうち、電子マネーと信用スコアについては、すでに述べた・・・。そこで述べた網商銀行や微衆銀行が、中小企業への融資を拡大している。 融資や資金運用の分野には、つぎのようなサービスも登場した。 「余額宝(Yu'e Bao)」は、アリペイのプラットフォーム上で販売されるMMF(マネー・マーケット・ファンド)だ。2013年6月に始まった。小口資金をMMFとして集め、その資金を大口定期預金として運用することによって、魅力的な利回りを提示することができた。 これができたのは、当時、銀行の預金金利が規制されていたためだ。大口定期預金と小口定期預金の間には、かなりの金利差があった。この差を利用して、有利な利回りを提供できたのだ。一時は、加入者が6億人を超える世界最大のMMFと言われた。ただし、その後、規制の強化の影響で、資産額が減少している。 オンライン・クレジット(P2Pレンディング)も成長した。これは、金を貸したい人と借りたい人を、金融機関の仲介なしで、インターネットを通じて結びつける金融サービスだ。 貸したい人は既存の金融商品を買うよりも高い金利を得ることが出来、借りたい人は既存の金融機関からお金を借りることが困難でも、資金調達出来る。 2007年以降、リテール投資家にとっての新たな固定収入源として、急成長した。2016年末時点で総額8162億人民元(約13.2兆円)もの融資残高になった。 しかし、不祥事や詐欺が頻発し、後述のように規制が強化された』、「オンライン・クレジット」の融資残高は、現在は殆どなくなったようだ。規制などの影響で大きく振れ易いのは当然だ。
・『保険では平安保険や衆安保険が活躍  保険の分野にも、特徴のある企業が登場している。これらが提供する新しい保険サービスは、「インシュアテック」と呼ばれる。 中国平安保険は、1988年に設立された。最初は伝統的なサービスを提供していたが、アリババやテンセントが新しいビジネスモデルを作り出すのを見て、2007~08年頃に、方針を切り替えた。 現在、中国で最も革新的な金融グループであり、時価総額が中国最大の保険会社だ。世界でも最大の保険会社の1つになっている。 傘下企業がつぎのようなサービスを提供している。 +Lufax:平安保険集団が44%の株式を保有している P2P レンディングプラットフォーム +Ping An Good Doctor:(平安グッドドクター):スマートフォンで病院を予約できる。医師とオンラインで健康相談をし、薬の手配ができる。登録ユーザーは2億6千万人。世界最大の遠隔医療プラットフォームだ。同社は2018年に香港証券取引所に上場した。 衆安保険は、2013年にアント・フィナンシャル、中国平安グループ、テンセントによって設立されたインターネット専業の損害保険会社だ。「Fintech 100」で、3年連続で5位以内に選ばれた。2017年9月には、香港取引所に株式上場した。 同社が最初に提供した商品は、返品送料保険だ。これは、タオバオなどで購入した商品が期待通りの内容・品質でなかった場合に、返品する場合の返送料金を補償する保険だ。タオバオの成長に伴って急激に普及し、同社の急成長を支えてきた』、「返品送料保険」とは面白い商品だ。
・『フィンテックに対する規制が強まる  中国のフィンテックは、これまであまり規制がない条件下で急速に成長してきた。しかし、成長するにつれてさまざまな問題も顕在化し、規制が強化されている。悪質業者や詐欺的行為を排除して利用者保護を図るため、当局はフィンテックの規制に乗り出している。 とりわけ、オンラインクレジットの規制が、2015年12月以降、強化されている。これによって、同業界が勢いを失っている。 また、中国人民銀行は、網聯(ワンリェン)というシステムを、2018年6月から運用開始した。日本では、決済業務を行うためには、全ての金融機関が参加する「全銀ネット」を通じて行うこととされているが、これと同じような仕組みだ。 これまで、アリペイやウィーチャットペイなどの電子マネーは、直接に銀行と連携してサービスを提供してきた。しかし、網聯の導入によって、これらの決済業務は、すべて網聯プラットフォームを通じて処理しなければならなくなった。 これによって、すべての振替業務が人民銀行の管理下に置かれることとなり、マネーロンダリングや脱税などの違法行為が困難になるとされている。他方で、これまでアリペイやウィーチャットペイでは、コスト増になる。 さらに、余額宝の増加を制限するための自主規制が行われた。2017年6月には、残高の上限が、2017年12月には、1日に投資出来る金額の上限が設定された。これによって、余額宝の残高は減少している。 国内市場が飽和して成長率が低下してきたため、中国のフィンテック企業は、海外進出を進めている。 P2Pレンディングプラットフォームは、規制が弱い東南アジアの市場を目指している』、「東南アジア」は中国系企業に対しては、強い規制をためらいがちなこともあって、彼らの草刈り場とならなければいいのだが・・・。

次に、プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役の秋山進氏が2月2日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ブロックチェーンが世間から評価されない理由、研究の第一人者が語る」を紹介しよう。これと第三の記事は、かなり理論的だが、ブロックチェーンを理解するためには、読む価値があると紹介する次第である。
https://diamond.jp/articles/-/226870
・『ひところビットコインの高騰が世間を騒がせ、ブロックチェーンの技術が未来を変えると話題になった。今、この技術はどのような局面にあるのか。ブロックチェーン研究の第一人者である東京大学大学院情報学環准教授の高木聡一郎氏と、本連載『組織の病気』著者である秋山進氏が2回に分けて「ブロックチェーン技術がつくる未来」を語り合う。前編では、ブロックチェーン技術の現状の普及度合い、実際の使われ方など、一般ビジネスパーソンも知っておくべき「ブロックチェーンの現在地」について話を聞いた』、最近は世間の「ブロックチェーン」熱も冷めてきたようだが、ここで本質を知っておく意味は大きそうだ。
・『ブロックチェーンは結局何がすごいのか  秋山 一時期、2016年あたりからでしょうか、一般のビジネスパーソンにも「ブロックチェーンがすごい」という言説が浸透し、「ブロックチェーンがITの世界だけではなく、世界のビジネスや社会のあり方を一変させるのではないか」という期待が高まりました。しかしその後、ビットコインの乱高下やコインチェック事件などもあり、今では当初の熱狂が静まっているような印象も受けます。 ブロックチェーンについて頭ではわかったような気がするものの、いまひとつ実感として、どのあたりがすごいのかがよくわからない……というのが私を含めた読者の正直なところだと思います。高木先生から見て、ブロックチェーンという技術は現在どういう局面にあるのでしょうか。 高木 ブロックチェーンは、不特定多数の人々が共同で管理することにより信頼性・透明性を確保した情報の台帳です。参加者みんなで同じ台帳を持ち合い、一斉に更新することで、「リーダーがいなくてもデータに矛盾が生じない」という合意形成のアルゴリズム(仕組み)になっています。その技術が画期的で革新的であることは間違いありません。 しかし、この優れた技術は一般ユーザーにとって“見えにくい”。このことが、ブロックチェーンのインパクトが一般の人にはいまひとつ捉えがたい理由の一つではないでしょうか。 秋山 「すごい技術」はユーザーから隠れたところで稼働していると。 高木 はい。インターネットが出てきたとき、みんながその「すごさ」を受け入れられたのは、それまでは一般の人が容易にアクセスすることのできなかった情報に、アクセスできることが実感できたからだと思います。例えば、ホワイトハウスのホームページがあって、それを誰でも見に行くことができ、アドレスに飛ぶと、実際にそれがあるということを誰もが見て読むことができた。 秋山 一部の人のものだった情報が、誰にでもアクセス可能なものになって、情報の民主化ともいうべき現象が起こりましたね。 高木 そうなんです。しかし、仮に暗号通貨を取引したとしても、ユーザーが得る体験自体は、ネット証券やネット通販のeコマースのサイトと同じようなもので、いつも通りサイトやアプリを触っているのと何ら変わらない。その裏でどんなシステムが動いているのかは、ユーザーには見えません。 秋山 通貨の取引に関していえば、ユーザーにとってはビットコインも、株やドル・円の取引も、やっていることは同じに見えてしまうんですね。 高木 また、ブロックチェーンは「自律分散型」であるという点も革新的なのですが、分散的であることのメリットが一様には感じられないことも、一般ユーザーが価値を実感できない理由の一つだと思います。 秋山 自律分散型というのはキーワードですね。詳しく教えていただけますか』、「ユーザーには(メリットが)見えません」、確かにその通りだ。
・『中央集権型の従来のシステム 自律分散型のブロックチェーン  高木 一般的な管理システム(組織、通貨発行の仕組み、国家など)には、中央に一番えらい人がいて、その人に情報や権限が集中し、上意下達で命令が伝えられ、その組織のネットワークのすみずみまでコントロールしていました。いわゆる中央集権型、ピラミッド型のヒエラルキー構造です。例えば国家なら大統領や首相が、通貨なら中央銀行が、組織なら社長がその一番上というか中央にいて、組織や貨幣の流通を統制する仕組みです。 ブロックチェーンは、これとは全く違います。誰かが一番えらいということはなく、みんなが平等にネットワークにつながって情報台帳を共有しています。みんなで情報を共有して、その情報の信頼性を保証するという形です。技術的な解説は省略しますが、その信頼性を保証するときの暗号の使い方が、ブロックチェーンの技術なのです。 中央集権型組織/分散型組織(図はリンク先参照) 秋山 ブロックチェーンが生きるのは、決定する権力を分散させるべき場面だということですね。 高木 そうです。場面によって、向き不向きがあるということです。例えば、中央集権型のシステムで何かを決めるときには、最終的に一番えらい人が決めればいいので、そんなに時間はかかりません。一方、分散型の場合は参加者全員が平等なので、意見がまとまらない場合、物事が決めにくい。効率を考えると、何かを決める際には意思決定の得意な人に任せたほうがいいのです。 つまり、ブロックチェーンは何にでも汎用的に使えるのではなく、その技術が持つ分散性がそぐわないような場面もたくさんあるということです。これもブロックチェーンが爆発的な普及に至らない理由の一つです。 秋山 今の我々が使っているシステムや多くの組織は、中央集権的なピラミッド組織。ブロックチェーンが生きるのは、それとは全く違うリゾーム状の民主的な組織なんですね。 高木 インターネットが発達し、デジタル化が進むと、一部のプラットフォーマーに情報が集中します。そのプラットフォーマーが中央集権的に権限を持ってしまうと、それを使っている人の情報はすべてプラットフォーマーに握られてしまってよくない。そこで、例えば通貨の発行権のようなものを自分たちで持てないかと……ブロックチェーンが生まれたもともとの思想もこういうところにありました』、「ブロックチェーンは何にでも汎用的に使えるのではなく、その技術が持つ分散性がそぐわないような場面もたくさんある」、言われてみれば、その通りだ。
・『学歴詐称対策、電力取引 広がるブロックチェーンの使い道  秋山 ブロックチェーンというと、ビットコインをイメージするビジネスパーソンも少なくないと思いますが、それだけのための技術ではなく、ほかにもさまざまなことに幅広く使える「機能」を持っていますよね。今どんなものへの活用が、どのくらい進んでいるのでしょうか。 高木 ブロックチェーンの長所として、「共有しても改ざんされない」「価値流通の仕組みを誰でも作れる」「トレーサビリティーを担保できる」という3点があります。そして、これらの特徴を生かすことが期待できる分野として、学歴詐称対策、農作物のトレーサビリティー(安全性、フェアトレード)、アート作品の売買などがあります。 秋山 学歴詐称対策というのはおもしろいですね。 高木 ブロックチェーンで管理すれば、過去からの情報の積み上げがすべて記録として残りますし、ある人がどの大学のどんな課目を履修して、そのテストの結果はどうだったか、ということまでミクロな情報が集積されます。こうしたミクロな情報をみんなで正しいと保証して、共有してすることで、自分なりの卒業証書を作っていくこともできるでしょう。情報が改ざんされていないことを保証する要素技術としてブロックチェーンはとても優れたものです。ここまでミクロな情報ではありませんが、マサチューセッツ工科大学(MIT)でも、卒業証書の管理に使われています。 ただ一方で、信頼は人と人のあいだに生まれる心理的なものでもあります。いくらブロックチェーンの仕組みが堅牢(けんろう)で、みんなでそれを共有しているから大丈夫といっても、それを実感できるような「よりどころ」が必要だということです。) 秋山 信頼感を持てるようなインターフェースがあって、それを通じて確認ができれば、本当に保証されたとユーザーが納得できるということですね。 高木 はい。ブロックチェーンの技術のまわりには、使い勝手のよいアプリなど、多くの人がその信頼度を確認できるようなエコシステムが必要になってくるでしょう。世の中に広まって、みんながブロックチェーンの優れた機能を使えるようになるためには、ブロックチェーンそれ一つの技術だけでは完璧ではありません。 秋山 インターネットのように、普通の人が使ってメリットを享受できて、はじめて定着するんですね。その意味で、私がおもしろいと思ったのは、電力取引にブロックチェーンを使う事例です。電力の自由化でどこから電力を買うかを自由に決められる時代においては、その電力が何由来なのかを知ったうえで買うことができるのは、ユーザーにとってメリットになると思います。例えば、太陽光や風力など、化石燃料を使わない電力を使いたいと思う人は、ブロックチェーンでその電力が何由来かという情報が保証されていれば、それを選んで買うことができますね。 高木 デジタルグリッドという会社で取り組んでいる仕組みですが、電力にIDをつけてどこで発電されたものか仮想的に分かる仕組みを作ることで、ユーザー間で直接売買する、まさにブロックチェーンの長所を生かした使い方です。 もともと風力などのエコ発電で生まれる電力は、一箇所で大量の電力を一度に生み出せるわけではなかったので、やりとりも細々したものになり、それを融通することが課題でした。その意味でも、ブロックチェーンの分散的な価値観となじむ使い方なのです』、「学歴詐称対策」に意味はあるのだろうが、個人情報保護の仕組みも必須だろう。「電力取引にブロックチェーンを使う」、確かに面白そうだ。
・『新たな価値体系が組織を変える  秋山 地域通貨も、貨幣を超えた可能性を感じさせる事例だと思います。 高木 そうですね。2016年には会津大学、ベンチャー企業、東京大学、GLOCOM国際大学などが、共同研究で地域通貨「萌貨(モエカ)」の実証実験を行いました。サブカルチャーイベント「福島Moe祭」において、当日会場内のみで利用できる「萌貨」をスマホ専用アプリで取引しました。来場者同士がイベントの宣伝をしたり、会場のゴミ拾いや掃除をしたりすると「モエ」がたまり、ためた「モエ」は、飲食物やグッズが当たる福引チケットとして使用できるというものです。 秋山 ちょっとした親切やいいなと思ったことに、普通のお金ではない価値を与えることができるのがいいですね。 高木 日本円はすでに価値基準が決まった通貨ですが、それとはレイヤーの違う価値基準をつくり、従来のお金では評価されないことを積極的に評価できる仕組みです。 秋山 お金以外の価値基準というと、社内通貨を活用している企業もあるそうですね。面倒な仕事を引き受けてくれたら、社員同士で“サンキューポイント”をやりとりするというような。お金ではなく社内だけで流通する社内通貨で払うことで、ちょっとした善意や通常の業績評価で表せない人の行為に対する感謝の気持ちを、社内通貨という価値として付与することができる。これが機能すれば社内のコミュニケーションが劇的に変わると思いますし、給与とは別の価値体系でその人のよいところを評価できるのは組織開発の観点からも、画期的な意味を持つと思います。 高木 これもまた業績評価や給与といった従来の価値とは違う価値体系をつくることができるという例ですね。 秋山 例えば、コールセンターの対応一つ見ても、一件あたりの時間が短くすめば優秀ということになるかもしれませんが、電話をかける側としては「今回の人はすごく説明が丁寧でよかった」とか、「中身はわかったけど嫌な感じだった」とか、評価に差は出てきますね。よかった人に円というお金を払うことはなじまないにしても、ブロックチェーンの仕組みで「いいね」のようなものをつけることができたらおもしろいでしょうね。 高木 新たな価値体系でいうと、フェイスブックが開始する暗号通貨「リブラ」には注目しています。リブラがお金の価値や従来の権威が付与するものとは異なる価値認識を生むと、おもしろくなりそうです。 ブロックチェーンを使うことで、評価が多様化し、誰でも新たな価値体系をつくることができる。おっしゃるように、コミュニケーションが変わるというところも注目すべき点だと思います』、「新たな価値体系が組織を変える」、確かに面白い発展が期待できるのかも知れない。

第三に、上記の続き、2月10日付けダイヤモンド・オンライン「デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊、どう生き残るか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/228232
・『一時期大きく注目を集めたブロックチェーン。その技術は今、どうなっているのか。そして新たな技術の普及により、企業のビジネスモデルや社会構造、われわれの生き方はどう変わるのか――ブロックチェーン研究の第一人者である東京大学大学院情報学環准教授の高木聡一郎氏と、本連載『組織の病気』著者である秋山進氏が2回に分けて「ブロックチェーン技術がつくる未来」を語り合う。前編(ブロックチェーンが世間から評価されない理由、研究の第一人者が語る)に続き、後編ではブロックチェーンを含めたデジタル化によって企業に起こる変化、さらに社会や個人の生き方にまで話題が広がった』、興味深そうだ。
・『パブリックではないブロックチェーンの功罪  秋山 前回に引き続き、ブロックチェーンが活用されている事例について聞かせてください。昨年話題になったキャッシュレス決済、この決済システムでブロックチェーンが使われることもあるようですね。 高木 キャッシュレス決済のプラットフォームにブロックチェーンの技術が活用されています。LINEペイやペイペイのようなキャッシュレス決済は便利ですが、LINEのアカウントしかない人からペイペイのアカウントしかない人に支払うといった、規格をまたがった決済はできません。 そこで、アリババがつくったのがキャッシュレス決済のプラットフォーム。たとえば、香港のアリペイとフィリピンのGキャッシュという異なる規格間での送金にブロックチェーンを活用するなど、すでに運用を開始しています。 ただし、こういったビジネスのプラットフォームで利用されるブロックチェーンの多くは、そこに参加する企業が限定されます。これは「コンソーシアム(会員制)型」と呼ばれるタイプで、ビットコインのように誰もが参加できるわけではありません。 秋山 コンソーシアム型は、オープン型のビットコインと何が違うのでしょうか。 高木 そもそもビットコインは「誰でも使える」ことを目指して生まれたもので、パブリックなものです。だからこそ、マイニング※に多くの人が参加して、競争が激化し、計算のために大電力が必要になります。 ※情報のブロックを新しくつなぐときの暗号を探し当てるため、膨大な量の計算をすること。その作業をいち早くやり遂げた人にビットコインが支給される。 一方で、参加者が決まっているコンソーシアムはお互いに知っているもの同士なので、その意味では最初から取引の内容は保証されています。つまり、情報改ざんの可能性が低いので、マイニングはありません。よって、運用コストも低くなります。 とはいえ本質的には、ブロックチェーンは「パブリックである」場合にこそ、その革新性があります。情報の非対称をなくして効率的な資源配分をする、インターネットの民主化をさらに進めるものとしてつくられ、受け入れられた技術であるという点では、この方法は、本来のブロックチェーンの意義を生かしていないことになるのですが。 秋山 平等にしたら競争が起こるので電力を使いすぎ、低コスト運営にするとメンバーが限られて、平等性が薄れると。 高木 エネルギー効率と機会平等をどう考えるかですね。組織の経済学が問題になってきます。 秋山 今、マイナス面についておうかがいしたのですが、もう一つ、たとえば、膨大な量の計算処理を高速で行うことができる「量子コンピューター」を使えば、ハッシュ値をもとにした非改ざんの証明という現在の方法が崩されるのではないか、という懸念への対応についてはいかがですか。 高木 仕組みをアップデートすることで対応できる可能性はあるのですが、問題は意思決定が必要になることです。どの時点から量子対応にする、ということをみんなで決めなくてはなりません。その合意形成は、前回お話しした分散性ゆえに難しいでしょう。ブロックチェーンは全員が平等に参加するものなので、意思決定をするのには非効率なのです。 秋山 なるほど。いろいろな事例をうかがって、ブロックチェーンを使うとメリットがある場面と、そうでない場面がだいぶ具体的にわかってきました』、みずほや三菱UFJグループが検討しているものも、「マイニング」が不要な「コンソーシアム型」なのだろう。
・『デジタル化による影響を読み解く3つのキーワード  秋山 さて、高木先生はブロックチェーンを含めたデジタル化、情報技術の進展により、既存の枠組みを超えて内部要素の組み直しがなされる「デフレーミング」という状況が起こっていると主張されています。それについて少しお話しいただけますか。 高木 デフレーミングによって、「分解と組み替え」「個別最適化」、そして「個人化」が進むと考えています。 すでにいろいろなところで起こっているように、デジタル化は事業やサービスをはじめ、従来のさまざまな枠組みを崩したり、その垣根をなくしたりしています。その結果、細分化された要素を新たに組み直すといった、「分解と組み替え」が起こっています。 ここでは、企業は一度自分たちの持っている事業を分解してみて、何が強みなのか、「中核価値」を定義し直す必要があります。そしてそれをデジタルの技術と組み合わせて新しく価値を提供していくことを考えなければなりません。 業務のデジタル化にしてもそう。デジタルで業務を効率化、最適化しようとすると、いままで通りの業務のプロセスを組み替えたり、なくしたりしなくてはならない。いままでと同じパッケージは最適ではなくなります。 秋山 全部棚卸しして、「自分のコア」を見つめ直す、ということですね』、「企業は一度自分たちの持っている事業を分解してみて、何が強みなのか、「中核価値」を定義し直す必要があります。そしてそれをデジタルの技術と組み合わせて新しく価値を提供していくことを考えなければなりません」、面白そうだが、大変な作業だろう。
・『個人化が進む社会 埋もれた才能の活用も可能に  高木 また、それぞれのニーズに応じた「個別最適化」が起こります。これには2つあって、1つはプラットフォームのマス・カスタマイゼーションです。 たとえば、ナイキの靴を自分のサイズ、好みの色の組み合わせ、好みのデザインで発注して、自分だけの一足を買うことができるといったようなことです。自分のプラットフォーム内で扱っている商品を、個人向けにカスタマイズする動きです。 秋山 扱う商品そのものが、ユーザーニーズによってカスタマイズされるということですね。 高木 もう1つは、プラットフォームの外部にある価値とユーザーをマッチングさせるGAFAのようなビジネスです。モノではなく、仲介する情報や仲介する内容、マッチングを個別最適化する。プラットフォームは仲介をしているだけなので、自社のリソースによらず膨大なニーズとシーズ※をマッチングすることができます。 ※供給者が持っている特別な技術や材料のこと そしてその場合、プラットフォームには情報が集中し、圧倒的に有利になります。たとえば有望な会社があって、GAFAのプラットフォームで取引をしたら、プラットフォーム上にすべての記録と履歴が残ります。極端に言えば、脅威に感じれば買収するとか、潰すとか、優越的に振る舞うことができる。 秋山 産業構造として寡占化が急速に進みますね。ヨーロッパでは特にそれに反対する動きも活発ですね。 高木 寡占化が進むことについては課題も多いのですが、一方で、デフレーミングによって小さな企業でも自社の「中核価値」を再定義することで、既存のサービスをユーザーに最適化されたものに転換して提供することができます。また、個人のスキルやリソースを個別に特定して取引するビジネスも実現可能です。このように「個人化」が進むことも大きな流れです。 秋山 ブロックチェーンによってすべてのデータが蓄積され、かつその正しさが証明されていれば、得意なことがある人とその能力を必要としている人とを結びつけられる。埋もれた才能の発掘も進みそうですね。 高木 おっしゃるとおり、これまで活躍できなかった人が組織によらず活躍できる機会が増えます。雇用されながら別の副業をするとか、個人の潜在的な能力をあますところなく発揮できます。デフレーミングで起こる「個人化」はまさにそういうこと。個人の力が強い社会になるともいえるでしょう。 ただ、もちろん注意すべきこともあります。個人の能力や実績が情報として残ってしまえば、それを隠すことはできない。一度何かで失敗したことが、全部履歴に残り、生きづらくなるということも考えられます。また、才能があったとしても、使うかどうかは個人の意思によるということもいえるでしょう』、「デフレーミングで起こる「個人化」はまさにそういうこと。個人の力が強い社会になるともいえるでしょう」、結構なことのように思えるが、「個人の能力や実績が情報として残ってしまえば、それを隠すことはできない。一度何かで失敗したことが、全部履歴に残り、生きづらくなるということも考えられます」、こんなデメリットがあるのであれば、あえて使おうとする個人は少ないのではなかろうか。
・『「初期のゆらぎ」で規定される危険性  秋山 ニーズに合わせて「個別最適化」されるということで一つ思ったのは、幅が狭められてしまう可能性もあるのではないかということです。たとえば私は一時期、能力開発の観点からニュースサイトでよくサッカーの久保建英選手の記事を読んでいたのですが、そういう記事の下には久保選手に関係する記事が出てくるので、またクリックして読む。そうすると、別に私は24時間久保選手のことだけを考えている人間というわけではないのに、レコメンドニュースがすべて久保選手だらけになってしまう(笑)。 まだデータアナリシスの精度が低いせいなのかもしれませんが、こうして選択の幅が狭められるのも危険ですね。過去の履歴から、自分の嗜好が解析されて、見たくないものは表示されない、自分の目になじむ記事だけに囲まれるフィルターバブルもそうですが。 高木 「初期のゆらぎ」で規定されてしまうことの危険性はありますね。多様性がなくなるので、ランダム性を導入するということも必要でしょう。 秋山 ニュースサイトでも、わざとその個人に最適化されていない記事を差し挟む工夫も必要ですね。まったく興味のない可能性のあるニュースをあえて入れるという。 高木 個人化が進んで個人が強くなるけれども、やはりそれだけでは限界がある。10年後、20年後に「揺り戻し」が来る可能性は大いにあると思います。個人化だけではなく、並行してコミュニティや対面のコミュニケーションが再評価されるといったようなことです』、「自分の目になじむ記事だけに囲まれるフィルターバブル」では、確かに「多様性がなくなる」弊害は極めて大きい。「ランダム性を導入する」程度で済む問題ではないのではなかろうか。
・『デジタル・ネイティブでない世代が新しい社会で生き抜くために  秋山 デフレーミングでいろいろなことが変わるだろうということがわかりました。ただ、デジタル・ネイティブではない40代以上の世代にとっては、正直そういう社会には感覚的についていけないのではないかという諦めの気持ちや恐怖があると思います。しかし、それでも人生100年時代を生き抜かなければならない。何かヒントはありませんか。 高木 新しいことが生まれている技術の変わり目は、ビジネスの変わり目です。今まで大きな組織でなければ持ち得なかったシステムや情報を、個人がデジタル技術で使うことができる。これまでの寡占をひっくり返せる可能性もあります。最先端技術そのものに追いつかなくても、そこに合わせたエコシステム(注)に関わることはできるでしょう。 個人としても改めて「中核価値」を整理、再定義して、自分の持っている能力や対面コミュニケーション能力を新しいエコシステムで生かせないか考える。そして、そのエコシステムやコミュニティに接続することができれば、チャンスは広がると思います。 秋山 自分のできることを整理したり、発信したり、新しい技術や社会、コミュニティに、オープンマインドで接すると。これからは、「自分から開かれていく」ことが必要ですね』、こんな難しいことが求められているとは、困ったことだが、余り深刻に考えずに、その場その場で乗り切ってゆけるのではなかろうか。
(注)エコシステム:本来は生態系を指す英語「ecosystem」を比喩的に用い、主に情報通信産業において、動植物の食物連鎖や物質循環といった生物群の循環系という元の意味から転化して、経済的な依存関係や協調関係、または強者を頂点とする新たな成長分野でのピラミッド型の産業構造といった、新規な産業体系を構成しつつある発展途上の分野での企業間の連携関係全体を表すのに用いられる用語(Wikipedia)
タグ:MMF 野口 悠紀雄 ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 秋山進 フィンテック (その4)(独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化、ブロックチェーンが世間から評価されない理由 研究の第一人者が語る、デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊 どう生き残るか) 「独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化」 フィンテックで中国は世界のトップに 中国のフィンテックはここ数年の間に驚くべき成長をとげ 、いまや世界一の地位をゆるぎないものにしている 世界のフィンテック投資の半分が中国で 融資や資金運用での新しいサービス 余額宝 オンライン・クレジット(P2Pレンディング) 保険では平安保険や衆安保険が活躍 フィンテックに対する規制が強まる P2Pレンディングプラットフォームは、規制が弱い東南アジアの市場を目指している 「ブロックチェーンが世間から評価されない理由、研究の第一人者が語る」 高木聡一郎 ブロックチェーンは結局何がすごいのか 参加者みんなで同じ台帳を持ち合い、一斉に更新することで、「リーダーがいなくてもデータに矛盾が生じない」という合意形成のアルゴリズム リーダーがいなくてもデータに矛盾が生じない 中央集権型の従来のシステム 自律分散型のブロックチェーン 分散型の場合は参加者全員が平等なので、意見がまとまらない場合、物事が決めにくい。効率を考えると、何かを決める際には意思決定の得意な人に任せたほうがいいのです ブロックチェーンは何にでも汎用的に使えるのではなく、その技術が持つ分散性がそぐわないような場面もたくさんあるということ 学歴詐称対策、電力取引 広がるブロックチェーンの使い道 情報が改ざんされていないことを保証する要素技術としてブロックチェーンはとても優れたものです 電力取引にブロックチェーンを使う事例 新たな価値体系が組織を変える 「デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊、どう生き残るか」 パブリックではないブロックチェーンの功罪 コンソーシアム型 参加者が決まっているコンソーシアムはお互いに知っているもの同士なので、その意味では最初から取引の内容は保証されています。つまり、情報改ざんの可能性が低いので、マイニングはありません 運用コストも低くなります デジタル化による影響を読み解く3つのキーワード デフレーミング 細分化された要素を新たに組み直すといった、「分解と組み替え」が起こっています。 ここでは、企業は一度自分たちの持っている事業を分解してみて、何が強みなのか、「中核価値」を定義し直す必要があります。そしてそれをデジタルの技術と組み合わせて新しく価値を提供していくことを考えなければなりません 個人化が進む社会 埋もれた才能の活用も可能に 「初期のゆらぎ」で規定される危険性 自分の目になじむ記事だけに囲まれるフィルターバブル 多様性がなくなる デジタル・ネイティブでない世代が新しい社会で生き抜くために
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クレーマー(その2)(「カスタマーハラスメント」に店長が逆上 メッタ刺しにした痛ましい実例、「社長を出せ!」「土下座しろ!」「SNSで拡散するぞ!」 恫喝クレーマーへの対処法) [企業経営]

クレーマーについては、2018年10月15日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(「カスタマーハラスメント」に店長が逆上 メッタ刺しにした痛ましい実例、「社長を出せ!」「土下座しろ!」「SNSで拡散するぞ!」 恫喝クレーマーへの対処法)である。

先ずは、元警察官で(株)エンゴシステム代表取締役 援川聡氏が2018年11月13日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「カスタマーハラスメント」に店長が逆上。メッタ刺しにした痛ましい実例」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/184322
・『昨日11/12(月)のNHK「クローズアップ現代+」で、顧客によるサービス提供者への過剰なクレームや迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント」が社会問題になっていることが取りざたされました。 クレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る23の技術を公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』が、実用書にもかかわらず需要が殺到し、発売即、続々と異例の大重版が決まっていることからも、「カスハラ」に悩まされている人が多いことが伺えます。 本記事では、そんなクレーマーからの過剰な迷惑行為に逆上して、罪を犯してしまった飲食チェーン店長の痛ましい事例と、自分の身を守るためのテクニックを特別掲載します』、「クローズアップ現代+」は文字版のバックナンバーがないので、この記事を紹介した。
・『「加害者」にならないために  クレーム現場のストレスに押しつぶされないためには、完璧主義を捨てることも大切です。 クレーム対応で失敗する人の多くは、「絶対に失敗できない」「100点の対応をしなければならない」という真面目な人が多いのです。 酔っ払いが警察官に絡むのは日常茶飯事ですが、それは警察官が一般市民に対して「手を出さない」ことを知っているからです。それと同様に、クレーマーは真面目でおとなしい人を狙う傾向があります。 私にとって忘れられない出来事があります。クレーム対応専門のコンサルタントとして、ようやく独り立ちした頃のことです』、「クレーマーは真面目でおとなしい人を狙う傾向があります」、とは恐ろしいことだ。
・『牛丼チェーンの痛ましい事例  2004年、男性が、東京墨田区の自宅マンションで背中や胸をナイフで十数か所メッタ刺しにされて死亡するという事件が起きた。 被害者は、ふだんは寡黙な介護士(当時36歳)。一方、加害者は全国チェーンを展開する牛丼屋の店長(当時26歳)。2人とも善良な市民だった。しかし、その背後には、「クレーマー」と「その担当者」という関係があったのだ。 事件の発端は些細なことだった。 ある日の昼食時、被害者男性は自宅近くにある牛丼屋に立ち寄り、持ち帰り弁当を注文したが、椅子に腰掛けて待っている間の接客態度に腹を立てた。 「店内で食べる客にはコップで水を出すのに、オレにはなにも出さないのか!」 店長が持ち帰り客への配慮に欠けていたことを詫びて、その場は収まったが、それからまもなく、男性客から電話が入った。 「さっき、持ち帰りの弁当を買った者だが、弁当が傾いて中身がグチャグチャ。とても食べられない。どんなものを売ったのか、その目で確かめに来い!」 店長は、大急ぎで被害者の自宅を訪ねた。 「誠に申し訳ございません」と丁重にお詫びしたが、男性は許してくれない。 ちょうど昼食時で、店が立て込む時間帯だった。店長に抜擢されたばかりで、2人のアルバイト店員を残してきた店の様子が心配でならない。 「今日のところは、これでなんとか」と、店長はポケットから財布を取り出し、千円札を抜いた。罵声を浴びせていた男性は、なにくわぬ顔でそれを受け取った。 しかし、一件落着とはいかなかった。男性のクレームは日増しに過激になり、事件前日から当日にかけては嫌がらせとしか思えない電話が10回以上かかってきていたという。 そしてついに、「お前の親の顔が見てみたい」のひと言で、店長がキレた。 凶行に至ったのは、その直後だった。(了) この店長の凶行は決して許されるものではありませんが、警察の捜査によって、被害者の男性は、同様の手口であちこちから金品をせしめる常習クレーマーだったことが明らかになりました』、当初の「弁当が傾いて中身がグチャグチャ」との理不尽なクレームに「千円札」を払ったようだが、これで狙われたのかも知れない。
・『取り返しのつかないことになる前に  この痛ましい事件は当時、世間を騒がせましたが、これは、必ずしも特異なケースとは言い切れません。 実際、クレーム担当者から、私の元に「相手を殺した夢を見た」とSOSが送られてくることもあります。 SOSすら発することができず、孤独感に苛まれている人もいます。他人に頼ることは、本人のプライドが許さないのかもしれません。 日々、クレーマーと向き合っていると、自分の気持ちと折り合いがつかなくなることがあるでしょう。時には「そこまで言うなら、白黒つけようじゃないか!」と反撃したくなるかもしれません。もちろんそれは危険です。かといって、じっと我慢しているだけでは「姑息な自分」に腹が立ってきます。 では、どうすればいいのでしょうか? 私の方法は「いきなり行動しない」ということです。まずは、『クレーム対応「完全撃退」マニュアル』でも紹介している「臍下丹田呼吸法」や「足指ストレッチ」で心を整え、その間に自分の怒りが過ぎ去るのを待つのです。 これらは私が警察官時代に身につけた方法ですが、今は、怒りを抑える「アンガーマネジメント」の方法論について、専門家の本もたくさん出ています。自分なりの「やり過ごす技術」を身につけることが、結果的に自分を守ることになるでしょう。 ただ、それでも事態が好転するとは限りません。 その場合、私は個人的に、「自分がやっつけなくても、いつか誰かが“倍返し”してくれる」と考えるようにしています。天罰がくだると信じて、自分の心を落ちつかせるのです。 「すべてのお客様に満足してもらうために、完璧な対応をしなければならない」と考える余裕のなさが、モンスタークレーマーの狙いどころでもあるのです。 半歩退いたり、事態を見守ったりすることで、相手の攻撃をかわすことができるのです。 『クレーム対応「完全撃退」マニュアル』では、最新のクレーム事例を40以上紹介しながら、対面・メール・電話あらゆる場面における正しい対応法、ネット炎上を鎮火させる方法、高齢化に伴い増加している「シルバーモンスター」の実態と対策など、クレーマーの“終わりなき要求”を断ち切る23の技術を余すところなく紹介しています。 ぜひ、現場で使い倒していただき、万全の危機管理体制を整えた上で「顧客満足」を追求してください。(参考記事は省略)』、「半歩退いたり、事態を見守ったりすることで、相手の攻撃をかわすことができるのです」、かなり忍耐強くないといけないようだ。
・『『クレーム対応「完全撃退」マニュアル 100業種・5000件を解決したプロが明かす23の技術』 著者からのメッセージ  次のうち、あなたが「正しい」と思うものに、チェックを入れてみてください。 +クレーム対応では、とにかく「スピーディな行動」を心がける +お客様第一主義を貫き、常に「目配り」を怠らない +自分が受けたクレームは、何が何でも責任をもって解決する +クレーマーも「お客様」だから、顧客満足の視点を忘れてはいけない +相手が納得するまで、とことん話し合うべきだ +事実関係がはっきりしないうちは、「お詫び」してはいけない +相手の理不尽な要求に対しては、論理的に反論するべきだ +クレームの実態を把握するために、どんどん相手に質問するべきだ +相手が大声を張り上げたら、悪質なクレーマーとして警戒すべきだ +クレーマーの本性を暴くために、相手の心情まで踏み込んで考えたほうがいい +相手の誤解が原因だとわかったら、話の腰を折ってでも、すぐに指摘するべきだ +「ネット炎上」には最大の注意を払い、特別な警戒態勢を敷く必要がある +クレーマーの要求に対しては、できる限り補償内容を小さくするべくギリギリまで交渉するべきだ +どんな相手でも、要求を断るときには、言い分をすべて聞いてからにしたほうがいい +クレーマーは千差万別だから、事前準備するよりも「でたとこ勝負」するしかない  いかがでしたでしょうか。 実は、上記のチェックリストは、すべて、クレーム対応において「やってはいけないこと」です。 もし、1つでもチェックを入れていたら、あなたは、クレームを長期化させる可能性があります』、私は設問を読むうちに、「やってはいけないこと」を列挙したと見抜いたが、皆さんはどうでしたか。
・『全業種対応・全クレームを断ち切る「完全撃退マニュアル」  私は1995年、39歳のときに、大阪府の警察官から民間の大手流通業(スーパーマーケット)に転職し、クレーム対応や危機管理に従事しました。そして、2002年、クレーム対応専門のコンサルタントとして独立しました。 その後、独立して20年間近く、企業や店舗、病院、学校、役所など、100業種以上にのぼる組織・団体で、クレーム対応の講演やセミナー講師を務めてきました。 同時に、顧問契約と単発の依頼を含め、クレーム対応やトラブルに悩む方々をリアルタイムでフォローし続けています。常時携帯電話を持ち、電話口やメールでのアドバイスを行なうほか、クレーマーと直接対峙することもあります。これまで、解決に導いてきたクレーム相談は、5000件をはるかに超えます。 こうした活動を通じて痛切に感じることは、世の中に、自己中心的でなかなか納得しないクレーマーが日々増殖し、社会環境が悪化していることです。 クレームとは本来、お客様から頂戴する「ご意見・ご指導・ご要望」です。しかし、現代社会においては、サービスを受ける側は便利さに慣れているため、少し待たされることすらも許容できないなど「我慢のできない人」が増えています。 サービスを提供する側が顧客満足(CS=Customer-Satisfaction)を追求すればするほど、便利な世の中になればなるほど、「満足」のハードルは高くなり、不満を感じる人が増え、些細なことで怒りを爆発させる「モンスタークレーマー」が増加するという図式があるのです』、最後の部分は、確かにその通りで、困った問題だ。
・『かつて、私は「マニュアル無用論者」でした。 多くの企業で、過去の事例などを元にした「クレーム対応マニュアル」がつくられ、なかには、想定問答集などを含めた数十ページにわたる立派なものもあります。でも、必ずしも有効活用されているわけではないようです。 なぜなら、過去の事例に則ったマニュアルに頼りすぎてしまうと、そこに書かれていないことに対応できない傾向があるからです。また、クレームが発生した現場でマニュアルの該当ページを探している暇などありませんし、分厚いマニュアルの内容を全て頭に叩き込んでおくのも、現実的ではないでしょう。 しかし、現在、クレーム事情は複雑化しています。 消費者からの理不尽な要求は、もはや「お客様の声」として対応できるレベルではなく、「ハラスメント」の領域として社会問題化しています。詳しくは『クレーム対応「完全撃退」マニュアル』で解説しますが、これは「カスタマーハラスメント」と呼ばれ、労働組合や国も対策に本腰を入れ始めました。ひとつ対応を間違えると、ブログやSNSにより瞬時に悪評が拡散する可能性もあります。 また、超高齢化社会を迎えた今、「シルバーモンスター」の存在も大きな脅威です。たとえば団塊世代のクレーマーには、現役時代に培った交渉力を武器にクレーム担当者を「論破」すること自体が目的化したケースが増え、担当者の頭を悩ませています。 そうして中で、クレームの最前線に立ち続けてきた私は、あらゆる業種の、あらゆるクレームに対応し、理不尽な要求を断ち切る「完全撃退マニュアル」の必要性を感じるようになりました。 本書では、個別状況にしか対応できない対症療法的な対策ではなく、私の20年の現場経験で培ったスキルを総動員し、全てのクレームに通じる「原理原則」を、45以上の最新のクレーム事例を紹介しながら余すところなくお伝えします。どんな業種でも、どんな種類のクレームでも、本書のポイントを理解しておけば乗り越えることができます。 また、緊迫したクレーム対応の現場に臨むには、技術以外に「心構え」が大切です。とりわけ、「お客様」と「クレーマー」を見極め、「理不尽な要求を断る勇気」を持ってもらうためのマインドセットについても、随所に盛り込みました。 すべての従業員が本書の内容を理解・実践し、現場の不安が解消されれば、組織に一体感が生まれ、従業員満足度が高まり、離職率の低下につながります。 クレーム対応という「危機管理」を盤石にしてこそ、「顧客満足」を追求する体制が整うのです』、「団塊世代のクレーマーには、現役時代に培った交渉力を武器にクレーム担当者を「論破」すること自体が目的化したケースが増え、担当者の頭を悩ませています」、いじめのような「論破」に熱を上げるエネルギーを、もっと意味のあることに向けてもらいたいものだ。

次に、クレーム・コンサルタントの山下由美氏が昨年12月6日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「社長を出せ!」「土下座しろ!」「SNSで拡散するぞ!」 恫喝クレーマーへの対処法」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/222565
・『『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します』、どういうことなのだろう。
・『「上司を呼べ!」「社長を出せ!」と恫喝されるパターン  お客様さまに要求に応えられないことを伝えると、「お前じゃダメだ」「社長を出せ!」と怒り始めることがよくあります。一般のお客さまが激怒しているだけなのか、悪質クレーマーによる意識的な恫喝なのかによって対応は違ってきますが、いずれも対応者の権限の範囲などのフレームを決めておくことが大切です。 自分に与えられた権限の範囲で対応可能なクレームであれば、「今回の対応の権限は私に与えられています。会社の規定によるものですので、上司でも社長でも、対応は変わりません」と伝えて様子をうかがいましょう。 そこで、お客さまが上司や社長を呼ぶことをあきらめ、自分の力で怒りを鎮めることができそうであれば、そのまま最後まで責任を持って対応します。具体的には、お客さまの気持ちを代弁するなどして「そうなんだよ」「そうなんです」といったYES言葉を引き出し、こちらを「敵」ではなく「味方」と認識してもらうように努めます。YES言葉を引き出した時点で、お客さまの怒りはほぼ解消されます。 一方、そのような対応ができそうでも、自分の権限を越えた内容の要求であれば、お客さまの訴えをしっかりと聞き取ったうえで、あとは上司に任せるようにしましょう。 たとえば、店内でお客さまがケガをした場合、「医療費までは店長判断、休業補償は本部判断」という権限になっていたとしたら、お客さまから休業補償を求められたときは、必ず本部に指示を仰ぐようにします。 できれば、対応そのものも、本部の担当部署にゆだねたほうがいいでしょう。権限のある部署が直接話すほうが、伝言ゲームによる誤解が生じにくく、早く解決できるからです。 以上は一般的なクレームの範囲にとどまるものですが、なかには「いいから社長を出せ!」の一点張りの人もいます。悪質クレーマーとして扱うのは気が引けるのですが、シニアのクレームでありがちな光景です。「地位の高い人が対応にあたった」「社長と知り合いになった」ことで承認欲求を満たしたいという気持ちが根底にあります。 そのため、言われたとおりに上司や社長を呼ぶと、その後も事あるごとに上司や社長を呼びつけるようになり、業務に支障をきたすようになったケースも実際に起きています。相手が悪質クレーマーだと感じたら、専門の担当者に引き継ぐ。もしくは上司を呼ぶのであれば、そのクレームに直接関係している範囲の上司にとどめましょう。そうでなければ、覚悟を決めて、相手の根が尽きるまで「呼び出せない」と断り続けてください』、「対応者の権限の範囲などのフレームを決めておくことが大切です」、その通りなのだろう。「お客さまの気持ちを代弁するなどして「そうなんだよ」「そうなんです」といったYES言葉を引き出し、こちらを「敵」ではなく「味方」と認識してもらうように努めます」、なるほど巧な手だ。
・『「土下座しろ!」と強要されるパターン  土下座を要求する悪質クレーマーも後を絶ちません。実際、私のセミナーで出会った生徒の半数くらいは、「その場が収まるなら仕方ない」と思って土下座したことがあると言っています。もちろん、みなさん、喜んで土下座をしているわけではありません。一方で、土下座を断ったことで、相手が怒りをヒートアップさせることも少なくありません。 土下座への対応の一つの指針となるのが、2013年、衣料販売チェーン『しまむら』の客が店員に土下座をさせ、その画像をネットに掲載した事件です。この時、土下座をさせた客は強要罪で逮捕されました。些細なトラブルを口実に土下座をさせることが、強要罪になり得ることが示された事例といえます。 もちろん、土下座で解決するならと、さっさと頭を床につけることがダメだとは言いません。ただ、基本的には、飲食店や小売店での通常の接客で起きたトラブルで、そこまでする必要ないのではないでしょうか。 このように土下座を迫られたら、応じるか応じないかは難しい問題です。やはり、お店や会社でフレームを決めておくべきでしょう。スタッフ個々の判断にゆだねるのではなく、お店や会社としてどうするかを決めておいたほうが、現場は対応しやすいはずです。 たとえばフレームで「土下座の要求には応えない」と決めておき、前述のYES言葉を引き出すようにしたり、場合によっては金品による解決法を提案したりしても、土下座を要求してくるようなら、「当店では、これ以上の対応は規定上いたしかねます。ご納得いただけない場合は、専門スタッフが法に基づいて対応させていただきます」ときっぱりと断るようにしましょう』、確かに毅然たる対応も必要だ。
・『「SNSで拡散するぞ!」と脅されるパターン  「この動画や音声をSNSで拡散するぞ!」と脅されることがあります。周知のとおり、近年、増加中の悪質クレームです。こうしたクレームには、単刀直入に次のように告げてください。 「お客さまが動画や音声をどのように扱われるかについては、こちらからとやかく申し上げる権利はございません。ただし、実際にSNS等にアップロードされた場合は、それに伴う被害状況に応じて、法に則って、しかるべき措置を取らせていただきます」 これでたいていの悪質クレーマーは思いとどまります。それでもツイッターなどに上げられてしまったら、弁護士に依頼して削除の手続きを行うまでです。 ただし、裁判で争うのは、相当な労力となります。そうならないための防衛手段の一つは、お客さまのトラブル対応などの際に、こちらも録音しておくことです。隠し撮りはいけません。お客さまに「お話を正しく記録するために、今から録音させていただきます」と通告したうえで録音するのです。 「録音なんてどういうつもりだ!」とすごまれても、「お客さまのお話の内容を社内で正しく把握するためです」と伝えましょう。実際に、大手企業のコールセンターのほとんどは「このやりとりは録音されています」と知らせたうえで、対応をスタートしています。後で不利になるようなことは相手も避けたいため、暴言や言いがかりを控えるようになります』、「お客さまに「お話を正しく記録するために、今から録音させていただきます」と通告したうえで録音するのです」、これはいい手だ。
・『以上、3種類の悪質クレームを挙げましたが、いずれもあらかじめ想定されるトラブルに応じたフレームを決めておくことが大切です。対応を間違えると、解決までの時間が長引いたり、問題がこじれたりしますので、お店や会社全体でフレームを共有するようにしましょう。 『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者である山下由美さんが独自に編み出したクレーム対応法「超共感法」に、今、熱い視線が注がれています。続々と新型クレームが登場するなか、従来のマニュアルでは対処しきれなくなっているからです。 現在、クレーム・コンサルタントとして活躍中の山下さんは、ご自身が何千件、何万件ものクレームを処理してきた実績を持ちます。地方公務員として30年間勤務。福祉部、税務部などで、多いときには電話も含め、1日200件のクレームに対応する傍ら、プレイバックシアター(即興演劇)、心理学、コーチングなどを学び、それらの手法を活かした独自のクレーム対応法を確立しました。クレームに来た人を笑顔にし、実際、クレーム来訪者によるファンクラブまでできた伝説的存在です。 2005年、役所を早期退職後、クレーム・コンサルタントとして、指導した企業は約1,000社。地元の北海道から口コミで広がり始め、今やその世界では、名前を知らない人のいないクレーム・コンサルタントの第一人者です。 著者が編み出したクレーム対応法は、「怒鳴られたら怒鳴り返す」「正しい説明はしない」「傾聴するな!」など、従来のマニュアルなどに記載されている常識をことごとく覆すものです。お客さまにたったひと言「そうなんです」と言わせるだけで、相手の怒りを嘘のように消し去り、クレームを解決するという画期的な手法となっています。 覚えることはたった一つですから、誰でもすぐ実践できます。しかも、お客さまのタイプやクレームの種類を選ばないため、一般的なマニュアルでフォローしきれないような新型クレームも難なく解決に導きます。 著書『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』では、そうした先生の手法を余すところなく紹介。さらに金品目的などの悪質クレーマー対策も万全の内容となっています。 クレーム対応担当者、またクレーム対策に苦労の絶えない企業にとって、必読の一冊です!』、「クレーム来訪者によるファンクラブまでできた伝説的存在です」、確かに凄腕の「コンサルタント」のようだ。「あらかじめ想定されるトラブルに応じたフレームを決めておくことが大切です」、これが基本なのだろう。
タグ:クレーマー ダイヤモンド・オンライン アンガーマネジメント 山下由美 カスタマーハラスメント (その2)(「カスタマーハラスメント」に店長が逆上 メッタ刺しにした痛ましい実例、「社長を出せ!」「土下座しろ!」「SNSで拡散するぞ!」 恫喝クレーマーへの対処法) 援川聡 「「カスタマーハラスメント」に店長が逆上。メッタ刺しにした痛ましい実例」 「加害者」にならないために 完璧主義を捨てることも大切 クレーム対応で失敗する人の多くは、「絶対に失敗できない」「100点の対応をしなければならない」という真面目な人が多い クレーマーは真面目でおとなしい人を狙う傾向があります 牛丼チェーンの痛ましい事例 被害者は、ふだんは寡黙な介護士 加害者は全国チェーンを展開する牛丼屋の店長 「さっき、持ち帰りの弁当を買った者だが、弁当が傾いて中身がグチャグチャ。とても食べられない。どんなものを売ったのか、その目で確かめに来い!」 店長はポケットから財布を取り出し、千円札を抜いた 男性のクレームは日増しに過激になり、事件前日から当日にかけては嫌がらせとしか思えない電話が10回以上かかってきていた 取り返しのつかないことになる前に じっと我慢しているだけでは「姑息な自分」に腹が立ってきます。 自分なりの「やり過ごす技術」を身につけることが、結果的に自分を守ることになるでしょう 半歩退いたり、事態を見守ったりすることで、相手の攻撃をかわすことができる クレーム対応「完全撃退」マニュアル 全業種対応・全クレームを断ち切る「完全撃退マニュアル」 自己中心的でなかなか納得しないクレーマーが日々増殖し、社会環境が悪化している サービスを提供する側が顧客満足(CS=Customer-Satisfaction)を追求すればするほど、便利な世の中になればなるほど、「満足」のハードルは高くなり、不満を感じる人が増え、些細なことで怒りを爆発させる「モンスタークレーマー」が増加するという図式がある 団塊世代のクレーマーには、現役時代に培った交渉力を武器にクレーム担当者を「論破」すること自体が目的化したケースが増え、担当者の頭を悩ませています 「理不尽な要求を断る勇気」 「「社長を出せ!」「土下座しろ!」「SNSで拡散するぞ!」 恫喝クレーマーへの対処法」 『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』 「上司を呼べ!」「社長を出せ!」と恫喝されるパターン 対応者の権限の範囲などのフレームを決めておくことが大切です お客さまの気持ちを代弁するなどして「そうなんだよ」「そうなんです」といったYES言葉を引き出し、こちらを「敵」ではなく「味方」と認識してもらうように努めます 「土下座しろ!」と強要されるパターン 『しまむら』の客が店員に土下座をさせ、その画像をネットに掲載した事件 画像をネットに掲載 些細なトラブルを口実に土下座をさせることが、強要罪になり得ることが示された事例 お店や会社でフレームを決めておくべきでしょう 「SNSで拡散するぞ!」と脅されるパターン お客さまに「お話を正しく記録するために、今から録音させていただきます」と通告したうえで録音する あらかじめ想定されるトラブルに応じたフレームを決めておくことが大切 クレーム来訪者によるファンクラブまでできた伝説的存在
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ゲーム(一般)(その1)(日本の「eスポーツ」が世界に遅れる根本理由 プロライセンス制度は本当に必要なのか、香川県の「ゲーム規制」は正しいと言えるのか 「アイテム課金」とゲームを履き違えている、DeNA「508億円の減損処理」 大赤字でこれからどうなる?) [社会]

今日は、ゲーム(一般)(その1)(日本の「eスポーツ」が世界に遅れる根本理由 プロライセンス制度は本当に必要なのか、香川県の「ゲーム規制」は正しいと言えるのか 「アイテム課金」とゲームを履き違えている、DeNA「508億円の減損処理」 大赤字でこれからどうなる?)を取上げよう。

先ずは、1月26日付け東洋経済オンライン「日本の「eスポーツ」が世界に遅れる根本理由 プロライセンス制度は本当に必要なのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/325721
・『1位ユーチューバー、2位プロゲーマー、3位ゲーム実況者――。 小学館の小学生向け漫画誌『月刊コロコロコミック』が2019年11月に発表した「読者の興味がある職業」に関するアンケート調査では、2年連続でeスポーツ大会に選手として出場する「プロゲ―マー」が2位に輝いた。ただ、子どもも憧れるこのプロゲーマーをめぐって、国内では混乱が生じている。 世界でテニスよりも多い約1.3億人の競技人口を誇るeスポーツ。子どもたちがプロゲーマーに関心を持つ1つの理由は、eスポーツの大会で選手に与えられる高額な賞金だろう。eスポーツを牽引するアメリカでは、大会の賞金総額が数十億円に上るものもある。 2019年7月には、ニューヨークで開催された「フォートナイト・ワールドカップ」で16歳の選手が優勝し、賞金300万ドル(約3億2900万円)を獲得したことが日本メディアでも大きく報じられた』、アメリカでは「16歳の選手が優勝し、賞金300万ドル(約3億2900万円)を獲得」、これでは日本の「子ども」もあこがれるのは無理もない。
・『プロライセンスを巡る議論  海外では、職業としてeスポーツを行い、大会で優秀な成績を残した選手は「プロゲーマー」を名乗るのが一般的だ。一方、日本ではやや異なる意味合いを有する。2018年2月に設立された業界団体、日本eスポーツ連合(JeSU)が一定の条件を満たした場合に有料で発行する「公認プロライセンス」を獲得した選手を、プロゲーマーと呼んでいる。 業界団体がライセンスによってプロ認定を行うのは、現在知られている限り、日本だけだ。1月24日現在では、209人がプロライセンス、1人が13~15歳向けのジュニアライセンス、そして9つのeスポーツ団体がチームライセンスを所持している。 このプロライセンスを巡っては、制度が設立されて以来、業界の内外で侃々諤々の議論が繰り広げられてきた。というのも、日本人の選手にとって、プロライセンスを所持していることが、公認大会で高額な賞金を受け取る条件となるケースがあるからだ。JeSUは、eスポーツを盛り上げる上でキーとなる高額賞金の獲得者をあえて制限する制度を、なぜ設ける必要があったのか。) JeSUがプロライセンス制度を設立した背景にあるのが、「不当景品類及び不当表示防止法」(以下、景表法)の存在だ。 eスポーツは、ゴルフやテニスなどのスポーツ競技と異なり、あくまでゲームメーカーが制作・販売(課金ゲームも含む)する商品をプレイすることで成り立つ。ゆえに景表法のもと、eスポーツ大会の賞金がゲームソフトの販売を促進するための「おまけ(景品)」と見なされる懸念がゲーム業界内にあり、そのリスクを回避するために、有料ソフトの金額の20倍、あるいは最大10万円までしか授与することができなかった。 仮に、主催者が大会に参加する選手の宿泊費や交通費を補助したり、賞金のほかに賞品が授与されたりした場合は、その相当額が全体から引かれることになる。 プロライセンス制度ができる以前は、景表法の存在によって、国内で高額賞金が出る大会が実施できない、日本の法律の管轄外であるはずの海外大会でも、「日本のチームが優勝した場合は賞金が受け取れない」という規約が設けられるケースが出るなど、日本人の選手が活躍するうえで大きなハードルになっていた』、「景表法」の「リスクを回避するために、有料ソフトの金額の20倍、あるいは最大10万円までしか授与することができなかった」、とは初めて知ったが、馬鹿馬鹿しい規制だ。
・『2年に1度、5000円の発行手数料を支払う  こうした状況を打開するためにJeSUが考案したのが、このプロライセンス制度だ。ライセンス制度取得資格を満たした選手は、2年に1度、5000円の発行手数料を支払うことで「プロ」として区別され、仕事の対価として高額な賞金を受け取ることができるようになる。大会によっては、賞金がもらえる順位に入ることが確定した段階で、大会の主催者が選手へのプロライセンス授与を推薦する場合も多い。 JeSUが同制度の必要性を主張するうえで「錦の御旗」として掲げてきたのが、景表法を管轄する消費者庁からの推奨だ。JeSU会長でセガホールディングス社長の岡村秀樹社長は、「安心安全、公明正大な賞金付き大会を開く仕組みはないものか、と消費者庁ときちんと会話をする中で、(JeSUのような)中立的な団体が(選手をプロとして)認める制度があれば安心でわかりやすいですね、という話があった」と語る。 ここまでならば、JeSUは日本で合法的にeスポーツを普及させるうえで、画期的な制度を作り出したように見える。 ところが、JeSUにライセンス制度を推奨したとされる消費者庁の担当部署に問い合わせると、異なる見解が返ってくる。いわく、「JeSUからライセンス制度の提案を受けた際、会話のやりとりの中で『それならわかりやすいかもしれませんね』と返答したことはあるかもしれないが、積極的に作るべし、と言ったことはない」(消費者庁の担当者)というのだ。 消費者庁によれば、参加者を絞った大会であれば、賞金を選手の「仕事の報酬」とみなすことで景表法を回避することが可能だという。大会の開催にあたって消費者庁や、業界団体に確認すれば、ライセンスがなくても、合法的に高額賞金を授与する大会を開催することは問題ないと説明する。 実は、賞金を「仕事の報酬」として合法的に受け取るという解釈は、ライセンス制度が設立されてから有識者などから度々指摘されてきたものだ。エンターテインメントビジネスに詳しい国際カジノ研究所の木曽崇氏は、「JeSU自身、表向きはプロライセンスの所持を賞金受け取りの条件としながら、実際の運用上はこの解釈を適用させてきた可能性は高い」と指摘する』、「消費者庁」の主張は合理的だ。
・『JeSUに対する批判の声が相次ぐ  JeSU自身も東京ゲームショウの会期中の2019年9月12日、法令の適用について照会をするノーアクションレター制度によって、消費者庁から「仕事の報酬等と認められる金品の提供は景品の提供に当たらない」旨を確認したと発表、岡村会長は、「eスポーツ界にとって大きな前進だ」と力強く語った。 だが、その発表の余韻覚めやらぬ9月15日に開催されたカプコンの格闘ゲーム「ストリートファイターV」の国際大会では、プロライセンス制度に疑問を呈し、受け取りを拒否してきたももち選手が優勝。これまで通りに優勝賞金500万円は、副賞のゲーミングモニター3万9800円相当と現金6万0200円に減額された。SNSなどでは、「発表と話が違う」としてJeSUを批判する声が相次いだ。 東洋経済も賞金減額の理由をJeSUに問い合わせたが、「近々に声明を発表する」としたまま、明確な回答は先延ばしにされていた。) ようやく回答が得られたのは、2019年12月3日の岡村会長への取材でのこと。岡村会長は、カプコンの大会で優勝賞金が減額された理由について「消費者庁からの回答を得る前に大会の申し込みを締め切っており、急に賞金を出す条件を変えたら不利益を被る人も出てくる。本当にタイミングが悪かった」と弁明した。 その上で、「JeSUが最も大事にしているのは、必ずしも日本の社会でポジティブに評価されていないゲームの印象を改善し、合法的にeスポーツを普及させること。自分たちのライセンス制度を何が何でも既得権益化したいという意思は、まったくない」(同)と力を込めた。 さらに、「プロライセンス制度によらない賞金付き大会を開催する可能性が拡大した今、ライセンスの新たな付加価値を考えていきたい」(同)と語った。実際、2019年11月末に開催されたコーエーテクモ主催の「DEAD OR ALIVE 6」の大会では、JeSUの承認のもとでライセンス制度によらずに賞金の授与が行われている』、「消費者庁」が「JeSU」の「プロライセンス制度」だけを認めるなどということは常識的にもあり得ない話なのに、都合よくPRした「JeSU」の罪は深そうだ。
・『ライセンス制度の縛りは残る  かといって、これで国内のeスポーツ大会からライセンス制度による縛りが一掃されるかというと、そうとも限らない。そもそも、大会の参加者を限定しないオープン参加型の大会では、賞金の受け取りにプロライセンスが必要だ。 さらに、カプコンに今後開催する大会での賞金授与の方針を質問したところ、「JeSUによる関係先との協議も踏まえながら、法的に問題のない形での大会開催を図る。必要に応じて、JeSUライセンス制度の活用を検討する」との回答があった。別の1社は、「今後の方針はまだ決まっていないが、業界で足並みをそろえていくつもりだ」と答える。 2019年12月2日にJeSUが発表した「ライセンスについて」という文章の中には、「JeSUプロライセンス制度を活用することが今後のeスポーツの普及・発展のために欠かせない」とも明記されている。同日には、ライセンス制度に疑問を呈してきたももち氏が、ライセンスを取得したことも発表された。 もちろん、ライセンス制度を有効に活用する手段はある。まだ職業として確立されていないプロゲーマーが、ライセンスを自らの「箔付け」に使いたいというニーズはあるだろう。 岡村氏は、「スポンサーやメディアに選手を紹介するとき、ライセンスを持っている選手を指名されることが増えてきた。最近は、取得を目標にeスポーツを頑張る人も多い」という』、「まだ職業として確立されていないプロゲーマーが、ライセンスを自らの「箔付け」に使いたいというニーズはあるだろう」、確かにその通りだろう。
・『解決すべき課題は山積み  JeSUがライセンス制度の普及に心血を注いできたここ2年弱、世界のeスポーツ市場はショービジネスとして大きく進展し、2019年には日本円で1000億円を超す市場規模にふくらんだと推測される(調査会社のNewzoo調べ)。 日本でも2018年で前年比13倍の48億円と急成長しているが(Gzブレイン調べ)、大会の賞金総額は海外に大きく見劣りする、プロゲーマーや大会運営者の育成環境が整っていない、など解決すべき課題は山積している。業界団体による選手の「囲い込み」とも取れる制度が、eスポーツの普及、発展に本当に欠かせないものなのか。大会を主催するゲームメーカーを含め、さらなる検討の必要がありそうだ』、「JeSUライセンス制度」のような「業界団体による選手の「囲い込み」とも取れる制度」は、むしろ「eスポーツの普及、発展」を阻害する可能性もある。抜本的見直しが必要なようだ。

次に、デジタルライターの岡安 学氏が2月2日付け東洋経済オンラインに掲載した「香川県の「ゲーム規制」は正しいと言えるのか 「アイテム課金」とゲームを履き違えている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/327661
・『1月10日に香川県議会が提出した「ネット・ゲーム依存症対策条例」の素案について、各所で話題になっています。強制力のない条例なので、施行したところで意味がないと見る人もいれば、強制力がなくとも規制が世間的に常態化する可能性に懸念を示す声もあります。 素案によると18歳未満はゲームをプレーする時間を平日は60分、休日は90分とすることが明記されており、目的はネット・ゲーム依存症から子どもを守ることとされています。 香川県の子どもたちには申し訳ないですが、個人的にはこの条例を施行してみてもよいのではないかと思っています。ただし、現在のような曖昧な事象に対する曖昧な対策ではなく、施行前と施行後にしっかりとした調査データが必要で、施行した結果どのような効果があったのかをしっかり検証することが大前提です』、「香川県議会」が「18歳未満はゲームをプレーする時間を平日は60分、休日は90分」に制限する条例を検討しているとは、驚かされた。
・『香川県のゲーム依存症の子どもはどれだけいるのか  まず、現時点で香川県のネット・ゲーム依存症の18歳未満がどれだけいるのか、全国の平均と比べてみる必要があると思います。そして、何年施行することで結果が表れるかを検証し、ゲームのプレー時間を短くしたことで、全国平均と比べて、ネット・ゲーム依存症の人が減っているのかを確認しなくてはなりません。 以前NHKで報道されたゲーム障害の番組では、厚生労働省・研究班の調査で推定93万人の中高生がネット依存が疑われるとのことでした。さらに国立病院機構久里浜医療センターの調査で、ネット依存と判断された90%がゲーム障害だと定義していました。つまり80万人以上がゲーム障害だと定義していますが、これによると約670万人の中高生の12%がゲーム障害になっている計算となります。 ちなみに今回の条例の発端となったとみられるWHOのゲーム依存症の定義としては、「ゲームをする時間や頻度を自ら制御できず、あらゆる事象からゲームを最優先する。何かしらの問題が起きてもゲームをし続けるなどの状態が12カ月以上続き、社会生活に重大な支障が出ている」とされています。 つまりゲームばかりやって宿題をやらないとか、休みの日に1日中ゲームをしているとか、その程度では依存症であるとは言えないわけです。ゲームによって不登校になってしまい、まともな生活を送れていない学生が80万人もいるのかが本当に疑問です。 ちなみに文部科学省「平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」では、中学校で3.65%の生徒が不登校だそうです。不登校の原因がゲームによるものだけでないことも考えると、12%の生徒がゲーム障害になっているというのはちょっと当てになりそうにもありません。厚生労働省の研究班の調査結果を基準とするのか、それともWHOの定義を基準とするのかも明確にすべきでしょう』、「ゲーム障害」になっている生徒の割合をどうみるかは、確かに確固とした数字は、まだないようだが、改めて調査して確定するのを待って、規制するというのでは、遅すぎる気もする。
・『ちなみにネット依存に関する8項目の質問は、 +ネットに夢中になっていると感じる +予定よりも長時間使用する +制限しようとしてもうまくいかなかったことがある +トラブルや嫌な気持ちから逃げるために使用する +使用しないと落ち着かない、いらいらする +熱中を隠すため、家族らにうそをついたことがある +使用時間がだんだん長くなる +ネットのせいで人間関係などを台なしにした、しそうになった とあり、5項目以上該当するとネット依存が疑われるそうです。WHOの定義から比べるとかなり基準のハードルが低く感じます。例えば、これをアルコール、お酒に言い換えたとき、当てはまる項目が5項目以上該当した場合、アルコール依存と定義されて納得する人はいるのでしょうか。 香川県の条例の素案では、依存症の定義も示されていませんし、改善されなかった場合の対処も示されていません。そこを曖昧にして、ゲームさえやめさせればいいというように見えてしまいます。 香川県社民党県議会議員の高田よしのり氏は個人ブログで、「ゲームをすればするほどのめり込むようにゲームは作られていて、ゲーム会社の術中にハマったモノは、空いた時間はゲームばかりするようになります」と説明をしています。しかし、これはあくまでも彼の持論であり、根拠も示しておりません。 さらにそのブログでは、ゲームそのものではなく、スマートフォンのソーシャルゲームの多くが採用しているアイテム課金から子どもを守るためにゲームを規制すると言及しており、アイテム課金こそが諸悪の根源であると述べています。つまり、アイテム課金を規制すべきところをゲームそのものに置き換えているわけです』、「香川県の条例の素案では、依存症の定義も示されていませんし、改善されなかった場合の対処も示されていません」、確かにかなりずさんなようだ。
・『ゲームプレー時間を短くすることは効果的なのか  では、アイテム課金を抑制するためにゲームプレー時間を短くするというのは、効果的なのでしょうか。 アイテム課金は、その方法でしか取得できないレアアイテムも存在することがありますが、ほとんどが時間をかければアイテム課金をせずに、簡単に手に入れられます。 例えば、基本無料のPCゲームの『リーグ・オブ・レジェンド』は、使用できるキャラクター、チャンピオンが140体ほどいますが、これらを獲得するにはゲーム内通貨IPが必要になります。IPはゲームをプレーすることで稼ぐことができますが、相当数の時間をかけないとチャンピオンを獲得できるほどのIPを貯めることはできません。そこで、IPをリアルマネーで購入することで、その手間を省き、手っ取り早くチャンピオンを獲得できるわけです。つまり、アイテム課金を防ぐにはゲームプレー時間を長くするしかないわけです。 1日60分しかできなくなってしまえば、他県のプレーヤーよりも後れをとってしまうことは確実です。それに追いつくためには課金するしかないわけです。ネット・ゲーム依存症の条例を推進する人たちは、課金を抑制するための施策が課金を促す結果になってしまうことを理解していないと言えるわけです。 そもそも依存症は結果であって、予防することは難しいと考えます。WHOのゲーム障害(依存症)についても、先の定義を読んでもらえればわかると思いますが、生活に支障がでるほどゲームに傾倒してしまう人がいて、そういう人は適切な対処が必要であると言っているだけです。 WHOが発表した国際疾病分類にあるゲーム障害の次の項目には、そのほかの障害というものがあり、すべてが対象であることがわかります。なので、ゲームがほかの娯楽に比べて、依存症になりやすいとは言っているわけではありません。 依存症自体は、ゲームに限らず多くの事柄でみられます。知名度の高いものでいえば、アルコール依存症、ギャンブル依存症などがあります。タイガー・ウッズが発症したことで、セックス依存症も耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。 ほかにも本ばかり読んで人とコミュニケーションをとれない人や特定のスポーツチームやアイドルを応援するあまり、社会生活がまともに送れなくなっている人もいます。恋愛に関しては友人関係や家族関係を壊しても恋愛対象との関係を優先したり、社会的に制裁されたとしても不倫をする人が後を絶たないことをみても依存が存在することが十分わかります』、「アイテム課金を防ぐにはゲームプレー時間を長くするしかない」、「依存症の条例を推進する人たちは、課金を抑制するための施策が課金を促す結果になってしまうことを理解していない」、手厳しい矛盾点の指摘だ。
・『しっかりとした議論と検証方法が必要  これらの事象で依存症と判断された人も基本的には依存症を改善するための対処をするものであって、依存症自体をなくすために依存したものそのものを禁止することは行っていません。薬物依存症のように効果が大きく、社会復帰が難しいもの自体は法律で規制されていますが、ほとんどのものは規制されているわけではありません。 ゲーム依存症がないとは思っていませんし、ゲームをプレーすることを優先して社会生活がまともに送れない人もいると思います。だからといって、ゲームそのものを規制すると、後々ほかの影響が出てくると思うのです。 ゲーム依存症が話題になる前は、ギャンブル依存症が取り沙汰されていました。その結果、パチンコ業界がかなりシュリンクされました。ゲームも同様に市場が縮小していった後は、次の嗜好品がターゲットになることは目に見えています。 それはアニメかもしれませんし、ネット動画かもしれません。自分に興味がないものだからと言って、野放しにしていると、いつかは自分の好きなものが対象になってしまうでしょう。そうなる前にゲーム=悪、無駄なモノと一蹴せず、しっかりとした議論と検証方法が必要だと思います。 現時点では、香川県のネット・ゲーム依存症に関する条例の素案は、子どもたちを依存症から守ることを名分に、自分たちが興味のないゲームの規制をしたいようにしかみえません。ゲームを規制するために子どもをだしに使うのは、本末転倒どころではないことをよく考えてみたほうがよいのではないでしょうか』、少なくとの条例などで規制するためには、学識経験者などを集めて検討しておくべきで、「香川県」のやり方は余りに拙速だ。

第三に、公認会計士の川口宏之氏が2月18日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「DeNA「508億円の減損処理」、大赤字でこれからどうなる?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/229070
・『DeNAの巨額赤字! これからどうなる?  2020年3月期第3四半期の決算で、DeNAは約442億円もの営業損失を計上しました。通期決算の赤字はほぼ確実で、2005年の東証マザーズ上場以来、初の赤字決算は避けられそうにありません。 ここ数年、DeNAは営業利益100億円~200億円台の黒字をキープしていましたので、今回の突然の赤字転落は衝撃的で、株価も大幅下落となりました。 いったいDeNAに何が起きたのでしょうか?決算資料をもとに分析します。 2019年4月~12月の連結損益計算書をみると、「その他の費用」が516億円も計上されており、これがDeNAの利益をすべて吹き飛ばしました。「その他の費用」の内訳を見ると、そのほとんどが「減損損失」で、額は508億円です。下図を見てください。 「減損損失」とは、端的に言えば「事業価値低下による固定資産の価値下落」です。つまり、DeNAの貸借対照表に計上されている固定資産の価値が下がったため、その価値下落分が費用として計上されたのです。 日本の会計基準では、「減損損失」は特別損失に区分されるため、営業利益に直接影響しません。しかし、DeNAが適用している会計基準は国際財務報告基準(IFRS)です。IFRSには特別損益という区分はありません。そのため、減損損失は営業利益より上に区分され、営業利益を押し下げる結果となったのです』、活発にM&Aをした「IFRS」採用企業では、突然大きな「減損損失」計上がある場合があるのが、要注意だ。
・『「これ」が営業利益を押し下げた!  では今回、「減損損失」の原因は何なのでしょうか?注記情報に「減損損失」の内訳が載っており、これを見ると大部分が「のれん」の減損なのです。 「のれん」とは、ブランド、技術、販売網、従業員の能力などの企業が保有する目に見えない価値の総称のことです。このような無形の価値は、M&Aによって初めて顕在化する資産です。具体的には、M&A時の買収価格が買収先企業の純資産を上回る場合、その差額がのれんとして貸借対照表に計上されます。 DeNAの場合、2010年に買収した米国のゲーム会社ngmocoにかかる「のれん」が大半を占めます。当時DeNAは、米国進出の足掛かりにするため、設立からわずか2年程度だったこの小さな会社を、巨額の資金を使って買収しました。しかし、期待通りの成果は出せず、事業は赤字続き。2016年にはngmoco社を清算し、米国事業からは事実上の撤退となりました。 このような事態に陥っても、当時のDeNAは「のれん」の減損を行いませんでした。ゲーム事業全体としてはまだ価値下落はない、という判断だったのでしょう。 また、日本の会計基準と違ってIFRSは「のれん」の定期償却がありません。つまり、DeNAのようにIFRSを適用している会社は、減損の判定がされるまで、「のれん」は1円も償却されず、永遠に貸借対照表に残り続けるのです。 しかしその後、DeNAのゲーム事業は衰退の一途をたどります。過去5年の売上と利益の推移を見ると、坂を転がり落ちるような右肩下がりとなっています。下図を見てください。 第3四半期累計(9ヵ月ベース)の推移で見ても回復の兆しが見えず、会計基準に従い、減損の判定が下されました。 つまり、ゲーム事業全体としての価値下落が明白となったため、ゲーム事業の「のれん」も、やむなく減損せざるを得ない事態となったのです。 この結果、これまで溜めつづけてきた「のれん」が、貸借対照表から損益計算書へと一気に放出され、今回の巨額の赤字となったわけです』、買収した「ngmoco社を清算」した時点で、「減損」することも出来たが、「ゲーム事業全体としてはまだ価値下落はない、という判断」、は結果的に失敗だったことになる。
・『IFRSのメリット、デメリット  日本の会計基準は、「のれん」は最長20年内の期間で規則的に償却され、その償却額がコストとして計上するというルールです。これに対してIFRSでは、「のれん」の規則的な償却は行われません。したがって、IFRSは毎年の「のれん」の償却負担がないため、平常時には実に都合がいい会計ルールです。 ところが、業績低迷という非常時になると、「減損」というトリガーが引かれ、一気に巨額の損失を引き起こします。IFRSを適用していて、かつ、巨額の「のれん」がある会社は、いつ爆発するか分からない不発弾を抱えているようなものなのです。 ちなみにDeNAは、ngmocoを買収した2011年3月期では日本の会計基準を適用していました。当時の有価証券報告書を見ると、「のれんの償却は、2012年3月期より12年で行う方針であります。」と書かれています。 ところが、その直後にIFRSに移行したため、結局は「のれん」の償却は行われてないのです。仮に、DeNAが日本の会計基準のままであれば、約8年にわたり「のれん」の償却費が毎年コツコツ費用に落ちるので、今回の「のれん」の減損による被害は約3分の1の金額で済んだはずなのです。 DeNAはかつて、キュレーションサイトの不適切な記事掲載問題が起きた時も、のれんの減損を強いられました。しかし、減損損失は40億円程度で、しかも、数ある新規事業の一つに過ぎなかったので、業績に与える影響はそれほど大きいものではありませんでした。 しかし、今回の減損はゲーム事業全体での減損です。ゲーム事業はDeNAの売上全体の3分の2を占める主力事業なので、経営の屋台骨が大きく揺らいだと言えるでしょう。 ゲーム事業は、ヒット作を出せば爆発的に利益を稼ぐことができるため、儲けやすいビジネスと思われがちですが、決してそうではありません。ユーザーというのは常に移り気です。 一時的に人気が出ても、継続的に面白いゲームを開発し続ければなければ、ユーザーに飽きられて、業績がとたんに悪化してしまいます。つまり、ゲーム事業というのはハイリスク・ハイリターンのビジネスなのです』、「ゲーム事業というのはハイリスク・ハイリターンのビジネス」、その通りだ。
・『DeNAはこれからどうなる?中長期的に見る  不安定なゲーム事業に代わる収益の柱を育てようと、DeNAはM&Aを駆使して事業の多角化を模索してきました。しかし、キュレーションサイトは前述の通り閉鎖に追い込まれ、旅行事業の「DeNAトラベル」もエボラブルアジアへ譲渡してしまいました。 配車アプリ「MOV」も、ジャパンタクシーとの経営統合することになり、オートモーティブ事業からは片足抜けた格好です。現在はヘルスケア事業などを育成中ですが、いまだ赤字が続いており、収益の柱になるにはまだまだ時間がかかりそうです。 そんな中、唯一、好調を維持しているのはスポーツ事業です。すなわち横浜DeNAベイスターズだけが孤軍奮闘しています。他の事業が苦戦する中、スポーツ事業は前年同期比で増収増益を達成しました。 現在、DeNAの貸借対照表に残っている「のれん」は、ベイスターズ買収時に発生した58億円のみなので、今後の減損リスクは極めて限定的でしょう。また、DeNAはキャッシュを800億円以上も抱えるキャッシュリッチ企業で、自己資本比率も70%を超えています。 かつての栄光時代の蓄えによって財務基盤はまだまだ盤石で、かつ、今回の減損損失で溜った膿は吐き出されました。 決して焦る必要はなく、中長期的な視点でじっくり事業の立て直しに注力していってもらいたいものです』、DeNAの創業者は元マッキンゼーのパートナーだった南場智子氏で、経営のプロである。それでも、「不安定なゲーム事業に代わる収益の柱を育てようと、DeNAはM&Aを駆使して事業の多角化を模索」してきたが、苦戦しているようだ。「横浜DeNAベイスターズだけが孤軍奮闘しています」、というのでは、寂しい限りだ。今後の巻き直しを期待したい。
タグ:ゲーム 東洋経済オンライン IFRS ダイヤモンド・オンライン (一般) ゲーム障害 (その1)(日本の「eスポーツ」が世界に遅れる根本理由 プロライセンス制度は本当に必要なのか、香川県の「ゲーム規制」は正しいと言えるのか 「アイテム課金」とゲームを履き違えている、DeNA「508億円の減損処理」 大赤字でこれからどうなる?) 「日本の「eスポーツ」が世界に遅れる根本理由 プロライセンス制度は本当に必要なのか」 小学生向け漫画誌『月刊コロコロコミック』が2019年11月に発表した「読者の興味がある職業」に関するアンケート調査では、2年連続でeスポーツ大会に選手として出場する「プロゲ―マー」が2位に輝いた 6歳の選手が優勝し、賞金300万ドル(約3億2900万円)を獲得 プロライセンスを巡る議論 日本eスポーツ連合(JeSU)が一定の条件を満たした場合に有料で発行する「公認プロライセンス」を獲得した選手を、プロゲーマーと呼んでいる。 業界団体がライセンスによってプロ認定を行うのは、現在知られている限り、日本だけだ 209人がプロライセンス、1人が13~15歳向けのジュニアライセンス、そして9つのeスポーツ団体がチームライセンスを所持 「不当景品類及び不当表示防止法」(以下、景表法) 賞金がゲームソフトの販売を促進するための「おまけ(景品)」と見なされる懸念 景表法のもと、eスポーツ大会の賞金がゲームソフトの販売を促進するための「おまけ(景品)」と見なされる懸念がゲーム業界内にあり、そのリスクを回避するために、有料ソフトの金額の20倍、あるいは最大10万円までしか授与することができなかった 2年に1度、5000円の発行手数料を支払う 消費者庁ときちんと会話をする中で、(JeSUのような)中立的な団体が(選手をプロとして)認める制度があれば安心でわかりやすいですね、という話があった 消費者庁によれば、参加者を絞った大会であれば、賞金を選手の「仕事の報酬」とみなすことで景表法を回避することが可能 大会の開催にあたって消費者庁や、業界団体に確認すれば、ライセンスがなくても、合法的に高額賞金を授与する大会を開催することは問題ないと説明 JeSUに対する批判の声が相次ぐ 「DEAD OR ALIVE 6」の大会では、JeSUの承認のもとでライセンス制度によらずに賞金の授与が行われている ライセンス制度の縛りは残る まだ職業として確立されていないプロゲーマーが、ライセンスを自らの「箔付け」に使いたいというニーズはあるだろう 解決すべき課題は山積み 業界団体による選手の「囲い込み」とも取れる制度が、eスポーツの普及、発展に本当に欠かせないものなのか 岡安 学 「香川県の「ゲーム規制」は正しいと言えるのか 「アイテム課金」とゲームを履き違えている」 香川県議会 「ネット・ゲーム依存症対策条例」 18歳未満はゲームをプレーする時間を平日は60分、休日は90分とすることが明記 香川県のゲーム依存症の子どもはどれだけいるのか 香川県の条例の素案では、依存症の定義も示されていませんし、改善されなかった場合の対処も示されていません ゲームプレー時間を短くすることは効果的なのか アイテム課金を防ぐにはゲームプレー時間を長くするしかない 依存症の条例を推進する人たちは、課金を抑制するための施策が課金を促す結果になってしまうことを理解していない しっかりとした議論と検証方法が必要 川口宏之 「DeNA「508億円の減損処理」、大赤字でこれからどうなる?」 DeNAの巨額赤字! これからどうなる? 第3四半期の決算で、DeNAは約442億円もの営業損失を計上 「減損損失」で、額は508億円 「これ」が営業利益を押し下げた! 大部分が「のれん」の減損 米国のゲーム会社ngmocoにかかる「のれん」が大半 ngmoco社を清算し、米国事業からは事実上の撤退 当時のDeNAは「のれん」の減損を行いませんでした。ゲーム事業全体としてはまだ価値下落はない、という判断 これまで溜めつづけてきた「のれん」が、貸借対照表から損益計算書へと一気に放出され、今回の巨額の赤字となった IFRSのメリット、デメリット キュレーションサイトの不適切な記事掲載問題が起きた時も、のれんの減損 ゲーム事業というのはハイリスク・ハイリターンのビジネス DeNAはこれからどうなる?中長期的に見る 横浜DeNAベイスターズだけが孤軍奮闘しています
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働き方改革(その24)(三菱電機「ブラック企業大賞」2連覇なのに“業績好調”のナゼ、三菱電機 「情報流出」「過労自殺」が相次ぐ事情 縦割り組織や風通しの悪い風土が遠因に、希望退職で「やる気なし若手」を量産する素人トップの罪) [企業経営]

働き方改革については、昨年10月26日に取上げた。今日は、(その24)(三菱電機「ブラック企業大賞」2連覇なのに“業績好調”のナゼ、三菱電機 「情報流出」「過労自殺」が相次ぐ事情 縦割り組織や風通しの悪い風土が遠因に、希望退職で「やる気なし若手」を量産する素人トップの罪)である。

先ずは、ジャーナリストの森岡 英樹氏が本年1月20日付け文春オンラインに掲載した「三菱電機「ブラック企業大賞」2連覇なのに“業績好調”のナゼ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/26579
・『社員の自殺が相次ぐ三菱電機は、1月10日、労務問題の再発防止策を発表した。ハラスメント教育の強化、アンケートの実施や相談窓口の充実などを掲げた「職場風土改革プログラム」と題された対策はすでに取り組んでいるものばかり。また、経営幹部による詳しい説明や記者会見もなく、「ポーズに過ぎないのでは」と内部から声が聴かれる。 三菱電機は、弁護士やジャーナリストによる企画委員会が運営する「ブラック企業大賞」において2018年、2019年と史上初の2年連続で大賞を受賞した。 「三菱電機は2012年以降、長時間労働やパワハラが原因で自殺した社員が子会社も含めて5人います。19年も選ばれたのは、昨夏自殺した20代の男性新入社員が残したメモが公開されたことが大きい」(労働問題に詳しい弁護士) そのメモには、新入社員の上司にあたる30代の教育主任から浴びせられた暴言が書き残されていた。 「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓あるで、死んどいた方がいいんちゃう?」「死ね」 新入社員は、主任から追い詰められ、昨年8月下旬、社員寮近くの公園で命を絶った。主任は自殺教唆の疑いで11月に兵庫県警が書類送検。以降、「ニクイねぇ!三菱」のテレビCMを中止している。 「遺族は三菱電機について『反省の色は見られず保身に全力を注いでいるように感じる』と話しています。また過去に労働時間の虚偽申告を促すなど、過労を隠蔽してきた」(前出・弁護士)』、業績は絶好調なのに、「「ブラック企業大賞」2連覇」とは本当に不思議だ。「長時間労働やパワハラが原因で自殺した社員が子会社も含めて5人」、ということは「30代の教育主任」の言動が例外的事例ではないのだろう。
・『過労・パワハラが横行しやすい企業風土  ただ、業績は堅調。日立製作所に次ぐ総合電機2位の座を確たるものにしている。 「家電から重電、人工衛星まで幅広く手掛け、多くの産業用電機機器で国内トップシェアを誇り、特に防衛エレクトロニクス分野では抜きんでている。携帯電話やパソコンからの撤退など、選択と集中を早めに進めてきたことが功を奏した。18年の国際特許登録出願件数も中国のファーウェイに次いで世界第2位です。自己資本比率も55%を超え、財務も盤石といえます」(メガバンク幹部) なぜ過労やパワハラが横行しているのか。 「『組織の三菱』と言われるように、グループ内の取引だけでも十分やっていけるため、内部の論理が優先される企業風土が根付いている。また三菱電機は事業部制が敷かれ、一度配属されたら、他部門への異動は少ない。それゆえ、社内の上下関係が絶対視されがちなのです」(同前) 16年に自殺した社員は「三菱は私のことを一生忘れないで欲しいです」と書き遺していた。その声に早く耳を傾けるべきだった』、「内部の論理が優先される企業風土」、「一度配属されたら、他部門への異動は少ない」、「社内の上下関係が絶対視」、などだけでは到底説明できない筈だ。もっと立ち入った分析が必要なようだ。

次に、2月22日付け東洋経済オンライン「三菱電機、「情報流出」「過労自殺」が相次ぐ事情 縦割り組織や風通しの悪い風土が遠因に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/331900
・『総合電機大手の三菱電機で、不祥事やトラブルが相次いでいる。 三菱電機は2月10日夜、社内ネットワークが外部からのサイバー攻撃を受けた問題で、これまで流出していないと説明していた、防衛に関する重要な情報が流出した可能性があると発表した。 防衛省によると、流出した可能性があるのは、防衛装備庁が2018年10月に貸し出した装備品の研究試作の入札に関連した資料で、取り扱いに注意すべきとする注意情報が含まれていた。防衛省は最終的には三菱電機とは別の企業が契約を締結しており、流出が安全保障に与える影響については「精査中」と発表した』、「サイバー」防衛のプロが「攻撃を受けた」だけでも問題なのに、隠蔽で問題をさらに大きくしたようだ。
・『大きく変転する三菱電機の説明  三菱電機は1月20日に、サイバー攻撃によって個人情報や企業機密が外部に流出した可能性があると発表していた。この時点では、防衛や電力、鉄道など社会インフラに関する機微な情報や機密性の高い重要な情報は「流出していないことを確認済み」と説明していた。しかし、1カ月も経たないうちに当初の説明が180度ひっくり返った。 防衛省の資料は紙媒体で渡され、そのまま返却するのが決まりになっていた。三菱電機は資料を受け取る際に情報の保全に関する誓約書を防衛省に提出していたが、紙資料を無断で電子データ化し、保存していた。重要な情報が流出していないと当初説明していた理由について、三菱電機は「流出した恐れのある資料は最初の調査対象から漏れていた」と説明した。 防衛装備庁の担当者は、「資料を電子データにして保存することは許可しておらず、不適切な取り扱いだった。この先、追加で何か出てこないとも限らないので、処分は全容が判明次第、検討する」とコメントした。最終的な調査結果の判明時期について具体的な回答は得られておらず、三菱電機の説明に防衛省は不満を募らせている』、「紙資料を無断で電子データ化し、保存していた」、とは極めて重大な信義則違反だ。機密情報の取り扱いのルーズさには呆れ果てる。
・『防衛情報の流出可能性を発表したのと同じ2月10日には、製品の出荷検査不備も明るみに出た。パワー半導体製品の一部で、顧客と取り交わした規格どおりの出荷検査を行っていなかったのだ。 パワー半導体は家電のほかに、電鉄や送電などのインフラ関連でも使われている製品で、出荷検査の誤りは2014年11月から2019年6月まで5年近く続いていた。出荷検査不備は2019年6月下旬にパワーデバイス製作所で品質管理の見直しをしている最中に判明。三菱電機は「検査規格値よりも高い許容範囲をもつように設計しているため、機能や安全性に問題ない」と説明しているが、問題は顧客への報告が発覚から半年以上後の2020年2月上旬まで遅れたことだ。 顧客への報告が半年以上もかかった理由について、三菱電機は「パワーデバイス製作所を管轄する半導体・デバイス事業本部へ報告があったのは7月上旬で、そのときに顧客へできるだけ早く報告するよう指示があったが、対象の顧客向けの全製品を確認するのに時間を要した」と説明している』、「製品の出荷検査不備」も「5年近く続いていた」、社内の内部監査が全く機能してないようだ。
・『子会社で仕様不適合製品を出荷する過去も  三菱電機は過去にも不適合な製品を出荷するトラブルを起こしている。2018年には子会社のトーカン社が契約仕様に適合していない製品を出荷していたことが判明した。製造委託元と契約した仕様に満たないゴム製品を、少なくとも10年にわたって出荷していた。その問題を受け、2018年12月から2019年3月まで、国内の全事業所と子会社121社を対象とする品質保証体制の再点検を行っていた。 再点検の過程で、子会社の菱三工業が仕様不適合の鋳造製品を出荷していたことも発覚した。こうした事態を受け、2019年8月に品質保証体制を強化していくとしていたが、新たにパワー半導体の出荷検査不備が続いていたことが発見され、発覚後も顧客への報告が遅れた。検査要領書の改訂を担当する部門が改訂を怠り、改訂の確認行為も不十分だったために、実際の検査を担当する部門が旧規格のままで検査を継続していた』、「検査要領書の改訂を担当する部門が改訂を怠り、改訂の確認行為も不十分だった」、「組織の三菱」にあるまじき信じられないような不祥事だ。
・『過労やそれに伴う自殺も繰り返し起きている。 三菱電機によると、2014年から2017年に三菱電機の社員5人が長時間労働などで労災認定され、うち2人は長時間労働が原因で過労自殺をしている。この5人とは別に、2019年8月に上司からパワーハラスメントを受けたとされる新入社員が自殺し、上司は2019年11月に自殺教唆容疑で書類送検された。 三菱電機は1月に「最優先課題」として労務問題の再発防止策「職場風土改革プログラム」を公表した。しかし、新たな施策は一部分に限られ、改革を遂行するための専門組織も設置されていない』、「改革を遂行するための専門組織も設置されていない」、のでは「改革」への本気度が疑われる。
・『失敗しても上司に相談できない  一部上場企業で、これほど短期間に長時間労働を原因とした労災認定が相次ぐのは異例のことだ。たび重なる品質問題も含め、三菱電機社内でいったい何が起きているのか。 三菱電機の元社員は「失敗しても上司に相談できる環境ではなく、(仕事の)ミスや問題はそのまま引き継がれていた」と打ち明ける。こうした企業風土が、隠蔽(いんぺい)とも受け取られかねない問題の報告遅れや社員の自殺を招いている可能性がある。 三菱電機は、携帯電話や洗濯機といった不採算事業からいち早く撤退して「選択と集中」を進め、2009年のリーマンショック時にも赤字に転落しなかった数少ない大手電機メーカーだ。事業や工場ごとに損益を管理し、「優等生」と呼ばれる収益体制を保ってきた。 その一方で、部門ごとの独立度が高く、「事業間の連携がとりにくい」(三菱電機幹部)という課題も抱えている。社長直轄で事業横断的な取り組みを先導するビジネスイノベーション本部を2020年4月に新設し、事業間のシナジーを高めていこうとしていた。 防衛情報の流出疑惑を受け、社長直轄の情報セキュリティ統括室を4月に新設すると発表した。文書管理の/再点検や従業員教育の充実を進めるが、実際の情報の利用・管理は各事業本部の本部長や事業所長が管理責任を負う体制は従来と大きく変わらない。 2020年3月期は、売上高が4.5兆円(前年同期比0.4%減)、営業利益が2600億円(同10.5%減)と減収減益で、柱のFA(ファクトリー・オートメーション)や自動車機器関連の市場環境が厳しいながらも、家電や重電は堅調だ。株価も1500円前後で安定的に推移し、一連の不祥事などに大きく反応しているようには見えない。 だが、「経営戦略の基本は、社会課題を解決するような企業になろうということ」(杉山武史社長)と掲げる以上、社内ガバナンスの改善は急務だ』、「社会課題を解決するような企業になろう」、それ以前に、社内の問題点を解決すべきだろう。

第三に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が2月25日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「希望退職で「やる気なし若手」を量産する素人トップの罪」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00063/?P=1
・『希望退職の嵐が吹き荒れている。 +ラオックス……全従業員の約2割にあたる140人程度 +ラオックスの子会社のシャディ……50歳以上かつ勤続10年以上の正社員や契約社員、20人程度 +東芝機械……全従業員の1割弱の200~300人 +オンワードホールディングス……全従業員の約8%にあたる413人が応募。予定数350人の2割増。+NISSHA……250人規模の希望退職者の募集 +味の素……50歳以上の約800人の管理職を対象に、約100人の希望退職者を募集 さらに、オンキヨー、ノーリツ、そして、ファミリーマート……などなど、この3カ月内でもこれだけの企業が、希望退職を実施している(あるいは実施予定)』、決算は好調でも、リストラの嵐が吹き荒れているようだ。
・『辞めてもらいたくない人が手を挙げる  中でも衝撃的だったのが、先週報じられたファミリーマートの希望退職だ。2月3日から7日の間に40歳以上の社員を対象に800人の退職者を募集したところ、1111人が応募。そのうち「86人は業務継続に影響がある」として、制度を利用した退職を認めず、引き留めたという。 ふむ。「86人は業務継続に影響がある」って? これって要するに“リストラリスト”の存在を肯定したようなものじゃないか。まぁ、そういうものが存在することくらい誰だって分かっているけど、「86人は業務継続に影響がある」という文言が企業側から出るとは……あまりに露骨だ。 「はいはい、そうですよ。リストラリストに準じて希望退職という名前のリストラに踏み切ったんだけどね、辞めてもらいたくない人が手を挙げるもんだから、いやぁ~、慌てて引きとめましたよ!」と認めたのだ。) いずれにせよ、想定外のすったもんだの結果、全社員約7千人の約15%にあたる1025人の「業務に支障の出ない人」をリストラした。内訳は、正社員が924人、定年後に嘱託職員として働く非正規社員が101人で、約7割は店舗指導員など現場の社員だそうだ。コンビニが人手不足で深夜営業を止める可能性があるので、本部には人手が余るためリストラする。実に分かりやすい。分かりやす過ぎる構図だ。 これを世の中では「経営」と呼ぶのだろうか……。 つい数カ月前までは新聞を開くたびに「空前の人手不足」という文字が日々踊り、「外国人労働者を入れないと労働力が足りない!」とあちらこちらで悲鳴が上がっていたのに。何なんだ、こりゃ。 「っていうか、足りないのは日本経済の底辺を支える労働力でしょ?」「そうそう。労働の冗長性を担保する労働力だよ」 はい、その通りです。 カネがかかる40歳以上の正社員、60歳以上の嘱託社員にはお引き取り願いたい。そのきっかけを模索していた企業が、「やっちまえ~今がチャンスだ。さもないと、70歳まで雇えだの、同一労働同一賃金だので嘱託の賃金も上げろだの言われるぞ!」と、希望退職という名のリストラに踏み切った』、「足りないのは日本経済の底辺を支える労働力」であって、「カネがかかる40歳以上の正社員、60歳以上の嘱託社員にはお引き取り願いたい」、が本音なのだろう。
・『ますます先行きが見えない2020年  元日のコラム(「働きがい問われる年、シニアのリストラが若者にも悪影響」)で、私自身が予測した通りのことが起こっているわけだが、たったひと月ちょいの間に次々と「希望退職のリアル」が報じられると、これはこれでかなりショックだ。 「人の可能性」にみじんも期待しない、数字とばかりにらめっこしている経営陣の姿が、私の“脳内テレビ”に映し出され、暗たんたる気分になる。2020年が時代の節目になると覚悟はしていたけど、GDPが実質6.3%マイナスとか、新型コロナウイルスで世界経済に打撃だとか、2020年の年末には、私は「ここ」に何を書いているのか全く予想できず不安になる。 「でもさ、数年前と違って、希望退職した後の就職支援は結構充実してるって言うし、そんなに悪い話じゃないっしょ?」 こういった意見もある。が、会社の支援を受けると退職金の額が減らされり(注:正しくは「る」)上、再就職先では歓迎されないケースが多い。「だったら自分で!」と仕事を探すが、なかなか希望通りにはならない。海外勤務などの経験があれば雇用されるチャンスがあるが、それでも賃金は半分程度だ。 「成功するかどうかは、個人のスキルやる気じゃなく運」「起業はうまくいかない」「家族の理解がないと希望退職はオススメしない」という声が、私がインタビューした人たちからは圧倒的に多かった。 そんな不確実性が限りなく深まっている労働環境で、これからの日本を背負う30歳前後の人たち数名の意見やらを聞く機会があった。 そこでも希望退職の話題が出て、「僕たちも使い捨てされるんですよね。今の日本の会社に何一つ期待してません」という声が、若い世代から相次いだのである。 というわけで、今回はそのときの話をネタにあれこれ考えてみようと思う。 え? 希望退職で成功するコツがテーマじゃないのか?って。はい、それはまたおいおい取り上げますので、今回は若い世代のナマの声をお聞きいただきます。 「うちの会社も2年前から希望退職を毎年募集していて、ターゲットも50代から40代に下がってきました。僕が入社したときはもっと上の人たちもいたんですが、今の部署のメンバーは若手だらけです。 会社は若手育成だと言って、僕らの世代に色々と任せるんですね。結果を出せば給料は上がると人事は言うけど、結果を求められても教えてくれる人はいません。もっと40代や50代の人たちにサポートしてもらいたいのに、頼れる人がいない。なので、ホントにこれでいいのか? と不安が大きいんです」』、中高年への「希望退職」募集が「若い世代」に及ぼす影響とは興味深い切り口だ。
・『若手にとって“必要な”シニアが消えている  「結局、希望退職って辞めてもらいたい人よりも、会社は辞めてもらいたくない人を決めてるんだと思うんです。でも、実際には辞めてもらいたくない人ほど希望退職する。そういうの見ていると……こっちもやる気が失せるんです。 自分もコストとしてしか見られてないと思うと、結果を出せないことにプレッシャーもかかる。マジでもっと教えてもらいたいこととかあるんですよ。なのに誰も教えてくれる人がいないっていうか、40歳が切り捨ての区切りになっているから、38歳くらいからやる気を失うって『あとは楽させてもらう』とか言う人もいます。 高い給料をもらってるのに働かない先輩社員を疎ましく思う気持ちがある一方で、もっと上の世代と若い世代が一緒になって仕事をした方がいいんじゃないかって思ったり。でも、希望退職でデキる人ほど辞めちゃうし、やる気を失ってる人たちには一緒にやってくれるモチベーションはありません。 僕も自分のことで精いっぱいだから、20代の後輩たちの面倒も見られません。仕事のオペレーションがどんどん複雑になってるのに、結果ばかり求められるから若手も嫌になっちゃう。20代前半の離職率が高まっているのは、そういったことも関係しているんだと思います」 「僕はいわゆるミレニアム世代です。世間ではスタートアップが増えてるとか、新しい感性で成功してるってニュースとかもあるけど、それってごく一部ですよね。フリーランスでやってる友人が、その会社で管理職みたいなことまで任されてるんですね。でも、フリーランスだから手当も出ない。かといって仕事を断れば契約も切られる。会社に長くいるつもりはないけど、その先どうなるかも分からないから流されてるだけだって嘆いてました。 僕らの世代で会社に期待してる人なんているのかなぁ? どうせあと10年もしないうちに僕たちも切られるんですよね? そうなったときに他でやっていける自信もない。ホント僕らはどうなるんだろう……」 こう話してくれたのは、某メーカーに勤務する32歳の男性である。他の人たちも言葉は違えど、彼と同様の意見だった。彼らは「やる気はある。でも・・・」と将来を憂い、「もっと上の人たちに教えてもらいたい」と切実に訴えたのである』、「マジでもっと教えてもらいたいこととかあるんですよ。なのに誰も教えてくれる人がいないっていうか、40歳が切り捨ての区切りになっているから、38歳くらいからやる気を失うって『あとは楽させてもらう』とか言う人もいます」、「希望退職でデキる人ほど辞めちゃうし、やる気を失ってる人たちには一緒にやってくれるモチベーションはありません」、「仕事のオペレーションがどんどん複雑になってるのに、結果ばかり求められるから若手も嫌になっちゃう。20代前半の離職率が高まっているのは、そういったことも関係しているんだと思います」、などは今回のリストラの若い世代への影響を如実に示している。
・『若手ほど仕事の充実感が少ない  以前、「60歳以上はワーク・エンゲイジメントが3.70だったのに対し、29歳以下は3.29と全体平均を下回り、正社員では29歳以下の若手ほど働きがいを感じていない」という大規模な調査結果(『労働経済白書 令和元年版 労働経済の分析』)を紹介したが、その背景には彼らが今回話してくれた不完全燃焼感があるのではないだろうか。 (注:「ワーク・エンゲイジメント」とは、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」を表す概念で、具体的には「活力=仕事から活力を得ていきいきとしている」「熱意=仕事に誇りとやりがいを感じている」「没頭=仕事に熱心に取り組んでいる」の3つがそろった状態と定義される) 若手ほど、仕事に対する充実感が少ない。『労働経済白書 令和元年版 労働経済の分析 ─人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について』より。 どんな仕事でも実際に現場で回そうとすると、なかなかうまくいかないものだ。そんなとき年配者の気の利いた言葉や、ちょっとした気遣いに救われることがある。一つひとつは小さなことでも、そういった日常が繰り返されることでだんだんと「仕事の筋肉」が鍛えられ、あるとき小躍りするような成果が出たり、自分でも予期しなかった朗報が入ったり。「ああ、頑張ってきてよかった!」と安堵し、仕事が面白くなる。それは自分の成長を実感する瞬間でもある。 こうしたかけがえのない経験が、キャリアを耕すための重要なリソースが、希望退職という悪行により奪われているのだ。そして、それは企業がプロを育てることを放棄したことでもある。 この数年間でさまざまな業界で「プロがいなくなった」とたびたび感じるのも、長年汗をかいてきた熟練者を戦力外にし、彼らの技術移転がなされる機会が奪われ、若者が育たなくなったからに他ならない。 人員削減のような分かりやすいコストカットが、会社に残る人の心理に悪影響を及ぼすことは、世界中の調査研究で一貫して証明されているが、若者に与える影響は私たちの想像をはるかに超えている。 リストラで短期的に企業が救われたとしても長い目で見ればアウト。いわば「企業の自殺」だと繰り返し警告してきたが、希望退職で会社が再建できると考える経営者の人たちには、ぜひともその先に何があるのかを教えてほしいものだ。 今、経営者が新しいと思ってやっていることのほとんどは、何一つ新しいものなく、歴史を振り返れば、むしろそれがいかに愚行かが分かる。 例えば、日本の経営者が大好きな米国では、40年前に今の日本と同じことが起こっていた。意外に思われるかもしれないけど、1970年代まで多くの米国企業では、終身的な雇用を前提に社内で人材育成する「キャリア型雇用」がメジャーだった。 働く人は最初に就職した企業に忠誠を誓う一方で、企業は彼らのキャリアを育成する。定年を迎えるまで出世の階段をコツコツと上っていくのが常識とされていたのだ』、「この数年間でさまざまな業界で「プロがいなくなった」とたびたび感じるのも、長年汗をかいてきた熟練者を戦力外にし、彼らの技術移転がなされる機会が奪われ、若者が育たなくなったからに他ならない」、「人員削減のような分かりやすいコストカットが、会社に残る人の心理に悪影響を及ぼすことは、世界中の調査研究で一貫して証明されているが、若者に与える影響は私たちの想像をはるかに超えている」、「リストラで短期的に企業が救われたとしても長い目で見ればアウト。いわば「企業の自殺」だ」、などは大いに考えさせられる。「1970年代まで多くの米国企業では、終身的な雇用を前提に社内で人材育成する「キャリア型雇用」がメジャーだった。 働く人は最初に就職した企業に忠誠を誓う一方で、企業は彼らのキャリアを育成する。定年を迎えるまで出世の階段をコツコツと上っていくのが常識とされていたのだ」、私の忘れた記憶を思い出させてくれた。
・『1980年代、米国で起きていた不景気と人材の関係  ところが1980年代初頭、米国の景気は急速に冷え込み、リストラと国内工場の閉鎖が横行し、非正規雇用が増大する。 その結果、従業員の企業に対する忠誠心や士気は減退する。同時に、知的産業と他の産業間の雇用格差が拡大し、能力ある人材は「より高く払ってくれる企業」に流れるようになった。人材市場の流動化だ。 つまり、仕事のスキルを伸ばしてキャリアの可能性を広げる責任は、雇用主ではなく従業員みずからに課されるようになったのである。 一方で、ゼネラル・エレクトリック、IBM、シアーズ・ローバックなど米国の大企業は、社内育成制度を従来通り維持し続けた。人の可能性を信じ続けた経営者の“胆力”により、これらの企業は1990年代の米国の経済成長を支えたものの、極めて優秀な「人材供給企業」となり、コア人材の流出防止という新たな課題が生じるようになった。 そこで誕生したのが、MBA(経営学修士)などの経営の学位を取得した経営者の誕生である。 企業を経営する上で優秀な人材を流出させないためのは、きちんとした人材マネジメントをする必要がある。周りに流される経営ではなく、その会社にあったプロフェッショナルな経営ができる人物じゃないと会社は競争に勝てないし、存続できないという当たり前が一般化したのだ。 ここで興味深かったのが、プロになるのは現場経験が必要不可欠だったこと。どんな優秀なエリートCEOでも、経営幹部として現場に出て、多くの職務を経験し、社内で人脈を作り、昇進に伴い権限と責任を拡大させるなど、MBAでは学ぶことのできない「現場経験」をしていることが調査研究により明かされたのだ。 もっともこういった変化が起こったのも、コストカットだけやっていたんじゃ世界との戦いに勝てないと経営者が猛省し、「経営とは人の可能性にかけること」と経営者が考えたからに他らならない。 今のリストラしまくっている日本で、低学歴化(=Ph.Dを活かせない)が進む日本で、30年前の米国と同じような変化が果たして訪れるのだろうか。 “学ばない大人”たちよ、どうか“学びたい若い世代”を潰さないでくださいませ』、米国で「コストカットだけやっていたんじゃ世界との戦いに勝てないと経営者が猛省し、「経営とは人の可能性にかけること」と経営者が考えたからに他らならない」、これに比べ日本の経営者はだいぶ遅れているようだ。ただ、「日本で、低学歴化」には違和感がある。高学歴化が進んだのに、企業が対応し切れず、Ph.Dの就職難が進んだというのが、実態なのではなかろうか。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 河合 薫 働き方改革 文春オンライン (その24)(三菱電機「ブラック企業大賞」2連覇なのに“業績好調”のナゼ、三菱電機 「情報流出」「過労自殺」が相次ぐ事情 縦割り組織や風通しの悪い風土が遠因に、希望退職で「やる気なし若手」を量産する素人トップの罪) 森岡 英樹 「三菱電機「ブラック企業大賞」2連覇なのに“業績好調”のナゼ」 社員の自殺が相次ぐ三菱電機は、1月10日、労務問題の再発防止策を発表 「ブラック企業大賞」において2018年、2019年と史上初の2年連続で大賞を受賞 長時間労働やパワハラが原因で自殺した社員が子会社も含めて5人 過労・パワハラが横行しやすい企業風土 組織の三菱 グループ内の取引だけでも十分やっていける 内部の論理が優先される企業風土 一度配属されたら、他部門への異動は少ない。それゆえ、社内の上下関係が絶対視されがち 三菱電機、「情報流出」「過労自殺」が相次ぐ事情 縦割り組織や風通しの悪い風土が遠因に 社内ネットワークが外部からのサイバー攻撃を受けた 防衛装備庁が2018年10月に貸し出した装備品の研究試作の入札に関連した資料 大きく変転する三菱電機の説明 紙資料を無断で電子データ化し、保存 製品の出荷検査不備も明るみに 5年近く続いていた 問題は顧客への報告が発覚から半年以上後の2020年2月上旬まで遅れた 子会社で仕様不適合製品を出荷する過去も 子会社のトーカン社が契約仕様に適合していない製品を出荷 子会社の菱三工業が仕様不適合の鋳造製品を出荷していたことも発覚 品質保証体制を強化 検査要領書の改訂を担当する部門が改訂を怠り、改訂の確認行為も不十分だったために、実際の検査を担当する部門が旧規格のままで検査を継続 過労やそれに伴う自殺も繰り返し起きている 社員5人が長時間労働などで労災認定され、うち2人は長時間労働が原因で過労自殺 失敗しても上司に相談できない 不採算事業からいち早く撤退して「選択と集中」を進め、2009年のリーマンショック時にも赤字に転落しなかった数少ない大手電機メーカーだ 部門ごとの独立度が高く、「事業間の連携がとりにくい」(三菱電機幹部)という課題も 社長直轄の情報セキュリティ統括室を4月に新設 「希望退職で「やる気なし若手」を量産する素人トップの罪」 希望退職の嵐が吹き荒れている 辞めてもらいたくない人が手を挙げる “リストラリスト”の存在を肯定 足りないのは日本経済の底辺を支える労働力 カネがかかる40歳以上の正社員、60歳以上の嘱託社員にはお引き取り願いたい そのきっかけを模索していた企業が、「やっちまえ~今がチャンスだ。さもないと、70歳まで雇えだの、同一労働同一賃金だので嘱託の賃金も上げろだの言われるぞ!」と、希望退職という名のリストラに踏み切った ますます先行きが見えない2020年 若手にとって“必要な”シニアが消えている マジでもっと教えてもらいたいこととかあるんですよ。なのに誰も教えてくれる人がいないっていうか、40歳が切り捨ての区切りになっているから、38歳くらいからやる気を失うって『あとは楽させてもらう』とか言う人もいます 希望退職でデキる人ほど辞めちゃうし、やる気を失ってる人たちには一緒にやってくれるモチベーションはありません」、「仕事のオペレーションがどんどん複雑になってるのに、結果ばかり求められるから若手も嫌になっちゃう。20代前半の離職率が高まっているのは、そういったことも関係しているんだと思います 若手ほど仕事の充実感が少ない この数年間でさまざまな業界で「プロがいなくなった」とたびたび感じるのも、長年汗をかいてきた熟練者を戦力外にし、彼らの技術移転がなされる機会が奪われ、若者が育たなくなったからに他ならない 人員削減のような分かりやすいコストカットが、会社に残る人の心理に悪影響を及ぼすことは、世界中の調査研究で一貫して証明されているが、若者に与える影響は私たちの想像をはるかに超えている リストラで短期的に企業が救われたとしても長い目で見ればアウト。いわば「企業の自殺」だ 1970年代まで多くの米国企業では、終身的な雇用を前提に社内で人材育成する「キャリア型雇用」がメジャーだった。 働く人は最初に就職した企業に忠誠を誓う一方で、企業は彼らのキャリアを育成する。定年を迎えるまで出世の階段をコツコツと上っていくのが常識とされていたのだ 1980年代、米国で起きていた不景気と人材の関係 米国の大企業は、社内育成制度を従来通り維持し続けた。人の可能性を信じ続けた経営者の“胆力”により、これらの企業は1990年代の米国の経済成長を支えたものの、極めて優秀な「人材供給企業」となり、コア人材の流出防止という新たな課題が生じるように プロになるのは現場経験が必要不可欠だったこと。どんな優秀なエリートCEOでも、経営幹部として現場に出て、多くの職務を経験し、社内で人脈を作り、昇進に伴い権限と責任を拡大させるなど、MBAでは学ぶことのできない「現場経験」をしていることが調査研究により明かされた コストカットだけやっていたんじゃ世界との戦いに勝てないと経営者が猛省し、「経営とは人の可能性にかけること」と経営者が考えたからに他らならない “学ばない大人”たちよ、どうか“学びたい若い世代”を潰さないでくださいませ
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電機産業(その2)(パナソニック:家電部門の本社を中国に移転 狙いは伏魔殿の解体【スクープ】、「働かなくても年収1500万円超」幹部に迫る大リストラ【内部資料入手】、津賀社長が本誌だけに明かした「反転攻勢」の秘策、勝負所で逃げの一手 成長事業を手放すパナソニック 赤字事業撲滅の「止血」に奔走するパナソニックに明日はあるか) [企業経営]

電機産業については、2016年6月21日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(パナソニック:家電部門の本社を中国に移転 狙いは伏魔殿の解体【スクープ】、「働かなくても年収1500万円超」幹部に迫る大リストラ【内部資料入手】、津賀社長が本誌だけに明かした「反転攻勢」の秘策、勝負所で逃げの一手 成長事業を手放すパナソニック 赤字事業撲滅の「止血」に奔走するパナソニックに明日はあるか)である。

先ずは、本年1月6日付けダイヤモンド・オンライン「パナソニックが家電部門の本社を中国に移転、狙いは伏魔殿の解体【スクープ】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/224708
・『パナソニックは“賭け”に負けた。家電の次の本業候補として投資を集中させた自動車事業が失速。今度は母屋の家電事業まで低迷し、構造改革が急務な状況にある。そこで、津賀一宏・パナソニック社長は、伏魔殿化した家電部門に解体的出直しを迫る「背水の新モデル」を繰り出そうとしている』、かつての超優良企業が苦しんでいる実態を、4つの記事で紹介する。
・『新設されたCNA社の“裏ミッション”とは  2019年4月に産声を上げたパナソニックの地域カンパニー、中国・北東アジア(CNA)社。次期社長の最右翼と目される本間哲朗・パナソニック専務執行役員が社長を務める、社内でもっとも勢いのあるカンパニーである。 本間専務はCNA社設立の狙いについて、「パナソニックの中国での売上高が、中国のGDP成長率に見合った伸びを示していないという問題を解決するため」と淡々と語っている。本間専務自身は中国語が堪能で、「現地でのプレゼンテーション聞いて驚いた」(パナソニック社員)というほどの腕前だ。中国ビジネスを躍進させる立役者として登用されたのは間違いないだろう。 だが、CNA社を中国攻略のためだけに設けられた地域統括拠点と位置付けるのは、あくまでも表向きの説明だ。 実は、CNA社には“裏ミッション”が課されている。端的にいえば、パナソニックの保守本流であり、伏魔殿と化している家電部門(アプライアンス〈AP〉社)の“解体”だ。 実際に、経営の中枢に身を置くある役員は「家電のライバルが中国などの海外メーカーに変わりつつある中では、強かった白物家電ですら今のビジネスモデルの延長線上では競争に勝てなくなる」と危機感を募らせる。 そして現在、パナソニック上層部では、検討事項として家電部門の本拠地を日本から中国へ移すこと、つまり家電部門の「中国本社」移転計画まで俎上に載せられているというのだから驚きだ。 他ならぬ津賀一宏・パナソニック社長が、「家電部門の本社を日本から中国へ移転する計画なのか」というダイヤモンド編集部の問いに対して、「もちろん、そういうことも視野に入れている。ヘッドクオーター(本社)の中国への移管は一つの考え方です」と認めている。 家電部門の解体と本社移転。あまり穏やかな話とは言えないが、一体どういうことなのか』、「保守本流」の「家電部門の解体と本社(中国への)移転」、とは思い切った手を打たざるを得ないところにまで追い込まれたようだ。
・『どうも津賀社長ら上層部は、歴史的に発言力の強い家電部門の「事業部の縦割り志向」や「人事の硬直性」が、家電の低迷の元凶になっていると不信感を持っているようなのだ。確かに、2020年3月期の家電部門の営業利益率(見通し)は2.8%と低い(家電危機については、特集「パナソニック老衰危機」の♯04〈1月7日配信〉を参照)。 かつてのパナソニックの家電部門は強かった。デジタル家電の総本山、AVCネットワークス(AVC)社は、事業こそジリ貧に陥ったが、今も各カンパニー幹部に出身者を送り込む人材の宝庫である。テレビなどデジタル家電の失速後も、安定収益を稼ぎ続けた白物家電部門の社内での発言権は強い。数年前までAP社幹部の陣容が固定化し、経営上層部や本社が介入しづらい雰囲気すらある。 だからこそ、競合メーカー撤退後の残存者利益にあぐらをかいた。とうの昔に、ライバルは国内メーカーから中国メーカーへ変わっていたのに、開発・生産拠点の統廃合に踏み込んだ構造改革への着手に遅れてしまったのだ。 そこで、津賀一宏・パナソニック社長は乾坤一擲の勝負に出る。部門解体と本社移転という“ショック療法”を使うことで、現場の抵抗を断ち切り、本来の家電王国の底力を取り戻そうとしているのだ。 その具体策こそ、部門間の壁を取り払い、家電事業を中心に展開するAP社と、電材事業を中心に展開するライフソリューションズ(LS)社を融合させた「中国発の新しいビジネスモデル」を早急に作り上げることだ』、「とうの昔に、ライバルは国内メーカーから中国メーカーへ変わっていたのに、開発・生産拠点の統廃合に踏み込んだ構造改革への着手に遅れてしまった」、伝統に安住した戦略ミスの典型だ。
・『「縦割り志向」丸出し 役員合宿での仰天エピソード  部門の縦割り志向の強さを象徴する話がある。18年のパナソニック創業100周年を前に、主要な戦略課題について議論しようと週末に役員合宿が決行された時のことだ。 成長の柱として「住空間の新たなソリューション」を提案するため、AP社とエコソリューションズ(ES。現LS)社の融合が「テーマ」だったにもかかわらず、なぜか最終のプレゼンテーションはAP社とLS社が別々に行っていた。 そもそも、「エリート然とした旧松下電器産業(現パナソニック)と、超体育会系の旧パナ電工とでは全く気質が合わない。両社の合併前は『電工の敵は電産、電産の敵は電工』といわれるほど仲が悪かった」(パナソニック取引先幹部)。パナソニックを源流とする家電事業と、パナ電工を源流とする照明・配線器具といった電材事業とでは販売ルートが異なることから、反目するばかりで、互いに協業することもこれまではなかった。 しかし、津賀社長も本社の戦略部隊も、この「水と油の関係」にはさすがに呆れ返り、「やはりAP社の伏魔殿ぶりは治らない。日本ではなく、まずはしがらみのない中国で、AP社とLS社の融合を目ざすことを決意した」と、パナソニック幹部はCNA社設立の内幕を打ち明ける。 流通が未成熟であり、パナソニックとしての流通ルートも確立してない中国ならば、AP社にとってもLS社にとっても、販売チャネル開拓はゼロからのスタート。しがらみがない分、協業関係が築きやすいというわけだ。 津賀社長の頭の中には、「中国シフトの続編」もありそうだ。中国で構築した「AP社+LS社モデル」を、日本を含めたアジアやインドへ横展開するというものだ。昨年末に、津賀社長は「『可能性』で終わらせない」というタイトルの社員向けブログでインド市場について言及し、電材を突破口に攻勢をかける覚悟を綴っている』、「旧松下電器産業・・・と・・・旧パナ電工とでは全く気質が合わない。両社の合併前は『電工の敵は電産、電産の敵は電工』といわれるほど仲が悪かった」、両社の合併後も、「家電事業」と「電材事業」は「水と油の関係」、というのを、「販売チャネル開拓はゼロからのスタート。しがらみがない分、協業関係が築きやすい・・・中国で構築した「AP社+LS社モデル」を、日本を含めたアジアやインドへ横展開する」、とは大胆でスケールの大きな組織融合策だ。
・『草津の抵抗で中国移転が頓挫 今度こそ主要拠点の統廃合は必至  家電部門の本社移転を念頭に置いた、本気の中国シフトは、開発・生産拠点の統廃合をもたらすことになるだろう。すでに「中国現地には白物家電だけで1500人の技術者がいる」(津賀社長)としており、開発部門だけでもかなりの中国シフトが進んでいるという。 滋賀県・草津など主要な生産拠点の統廃合は必至だ。事実として、過去に中国への移管が検討されたのだが、草津の猛反対にあい頓挫した経緯がある。しかし外部環境を見ればやはり国内拠点閉鎖は覚悟しなければならない。 家電を取り巻く環境は一変した。16年にはシャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下となり、東芝も白物家電子会社を中国の美的集団に売却。どちらもアジア企業の傘下で日系ブランドを活用しながらグローバル競争をいかに勝ち抜くかを模索している。 繰り返しになるが、パナソニックの敵は国内メーカーではなく、中国メーカーだ。高単価製品が強かっただけに、パナソニックにはコスト競争力に対する耐性が乏しい。中国起点でビジネスを考え、中国企業をライバルに持つならば、中国の家電メーカーが使う「標準部品」を調達できるかどうかが生命線になる。 しかも、白物家電の部品の主要サプライチェーンは中国へ移りつつあり、中国の部品メーカーは「日本向けの独自部品の生産は小ロットで効率が悪いため、受注を渋る」(パナソニック役員)という現実がある。今後、中国の部品メーカーの勢力が一層増すことになれば、日本の家電部品市場が衰退し、部品の調達が難しくなる未来は想像に難くない。高品質の標準部品を供給できる中国メーカーの開拓等はもはや必要不可欠となる。 贔屓目に見ても、パナソニックの部品調達を含めた生産体制の構築は、中国メーカーに比べて周回遅れだろう。それでも、「足下で儲かっていることと、今のビジネスの延長線上でずっと競争に勝てるかってことは話が全く別。競争環境が変わったなら土俵を変えるのは当然」(パナソニック役員)と意志は固い』、「高単価製品が強かっただけに、パナソニックにはコスト競争力に対する耐性が乏しい。中国起点でビジネスを考え、中国企業をライバルに持つならば、中国の家電メーカーが使う「標準部品」を調達できるかどうかが生命線になる・・・高品質の標準部品を供給できる中国メーカーの開拓等はもはや必要不可欠となる」、それを「生産体制の構築は、中国メーカーに比べて周回遅れ」、のなかで実現していくのは大変だろう。
・『20年前と比べて時価総額半減のピンチ  これほどまでに、津賀社長がトップダウンで改革の大ナタを振るわねばならないほどに、パナソニックが置かれている状況は厳しい。 19年3月期に4000億円超あった営業利益が、20年3月期(見通し)には3000億円に激減。営業利益率も3.9%に落ち込む。 「まさか、こんなはずではなかった」というのがパナソニック上層部の偽らざる気持ちかもしれない。成長へのアクセルを踏もうと1兆円の戦略投資枠を設け、20年3月期までの4年間で約4000億円を、米テスラ向けリチウムイオン電池などの自動車事業に集中的に投じてきた。だが、この博打に負けたことで、成長ドライバーを失った。 それだけではない。津賀社長が「知らないうちに、モグラ(不採算事業のこと)が出てきた」と表現するように、カンパニーや事業部に任せきりだった“放任損益管理”の付けが回ってきている。 19年11月22日に発表した新中期戦略(3カ年)の詳細で、パナソニックは成長戦略の説明が不足しているとアナリストから批判された。 厳しい評価は、短期的な業績低迷だけに依るものだけではあるまい。事業領域を担当する五つのカンパニー全てにおいて、将来の成長戦略を描き切れないという異常事態、人事の硬直性、事業部の縦割りーー。名門電機パナソニックを襲う「老化現象」は深刻だと言わざるを得ない。 株式市場は正直だ。松下幸之助という経営の神様を創業者に持ち、創業100年を超えるパナソニックだが、19年12月24日時点の時価総額ランキングでは国内54位にまで順位を落としている。同6位だった2000年12月22日時点と比較すると、時価総額は半減しており、凋落ぶりは明らかだ。 パナソニックは、起死回生の「中国発新モデル」を成就させて、再び市場の期待を取り戻せるのか。社長就任8年目の津賀社長の、最後にして最大の戦いが始まった・・・』、「20年前と比べて時価総額半減」、とは確かに状況は極めて厳しいようだ。「五つのカンパニー全てにおいて、将来の成長戦略を描き切れないという異常事態」、「老化現象」がここまで進んだというのは衝撃だ。

次に、1月8日付けダイヤモンド・オンライン「パナソニック「働かなくても年収1500万円超」幹部に迫る大リストラ【内部資料入手】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/224720
・『大企業病がまん延するパナソニック。ついに、津賀一宏社長は大胆な人事改革に着手し、組織に刺激を与えようとしている。ダイヤモンド編集部は、パナソニックの「管理職の賃金テーブル」が記された内部資料を入手。特集「パナソニック老衰危機」(全10回)の#05では、それを基に、硬直化する人事制度の問題を指摘する』、興味深そうだ。
・『内部資料で分かったパナ幹部「高給取り」の実態  ここに、パナソニックの内部資料がある。「管理職の賃金テーブル」が記されたものだ。 パナソニック幹部のヒエラルキーは、序列の上位から順に、取締役(社内)7人、執行役員10人、新たに設けられた「事業執行層」「管理職」という階層で形成されている。今回、ダイヤモンド編集部が入手した資料は、そのうち管理職の待遇についてまとめられたものだ。それにより、パナソニック幹部たちの恵まれた実態が浮かび上がった。 パナソニックの管理職(専任職を含む)には、役割の大きさに応じて決まる「役割等級」が8段階あり、経営層(P1~P3)、基幹職(P4~P8)という内訳になっている。かなりざっくり言えば、事業場長クラスの役割等級がP1~P3、BU(ビジネスユニット)長・部長のそれがP3~P6、課長のそれがP6~P8といったイメージだ。 全ての管理職において、月額で給与が固定される「完全月給制」が採用されており、同じ役割等級なら働いても働かなくても給与にあまり差がつかない賃金設計になっているようだ。) 例えば、部長・課長が混在するP6の場合、平均的な評価であるCランク(基準額)の月収は66万円となっている。仮に、最高評価のAAランクが付いても69万円、最低評価のDランクが付いても65万円といった具合だ。P6の管理職の年収は1100万円前後だと思ってもらえればいい。 事業場長クラスのP1~P3ともなると「業績連動分の構成比が大きくなるが、最低の評価が付いても年収1500万円以上は保証されている」(パナソニック幹部)という。 管理職の最低ランクのP8でも年収990万円前後なので、ほぼ全ての管理職が年収1000万円以上を手にしていることが分かる。評価のいかんにかかわらず、極めて高待遇だといえるだろう。 ちなみに、2019年3月期の有価証券報告書によれば、組合員も含めたパナソニック社員の平均年収は774万円(平均年齢45.6歳、平均勤続年数22.8年)である。日本人の給与所得者の平均年収が441 万円(平均年齢46.4歳、平均勤続年数12.2年)、電機業界を含む製造業の平均年収が520万円であることを考えると(日本人と製造業の平均年収は18年の国税庁「民間給与実態統計調査」による)、パナソニック社員の給与は高いレベルにある』、確かに恵まれた高給与だ。
・『年収1500万円以上の“働かないおじさん”が滞留  それにもかかわらず、若くして管理職になった中堅幹部たちからは、硬直的な賃金テーブルに対して不満の声が上がっているのも事実である。 「年功序列がまかり通っており、高齢の“働かないおじさん”が年収1500万円以上の高給をもらっている。しかも、彼らが滞留しているので上のポストが空かない」「管理職になるとき、P3へ上がるときといった節目の関門では昇格試験があるのだが、それをパスする基準に直属の上司の私情が挟まれるなど、透明性や公平性に乏しい」という声がそうだ。 創業101年の歴史ある企業であれば、年功序列がある程度、温存されているのは仕方あるまい。だが、現在のパナソニックにまん延する停滞感が、人事の硬直性や経営上層部の劣化から生まれていることは否定できない。現状に安住していると、変革する力を失ってしまう。 パナソニックは悪循環に陥っている。前述の通り、労働生産性の低い幹部であっても、一度管理職になってしまえば高給取りになれる。年収1500万円の“働かないおじさん”が滞留すると上位のポストが詰まり、若手の登用が進まない。結果として、経営層の新陳代謝が滞っているのだ。 また、パナソニックには横並びのこの賃金テーブルしかないため、社外から年収2000万~5000万円クラスの高度人材や経営人材を一本釣りで獲得しようとしても賃金のハードルが立ちはだかる。 こうした大企業病、老化現象ともいえる悩みを最も問題視しているのが、他ならぬ津賀一宏・パナソニック社長である。社内ブログでは、こう心境を吐露している。 「現在の執行役員の年齢層も課題だと感じています。社長になって以降は可能な限り、積極的に若い人材を役員にしたいとの思いで登用を進めてきました。しかし、硬直的な現行制度の中では年月とともに高年齢化が進んでしまい、多様性が失われていると言わざるを得ません。これでは、変革に向けて刺激的な議論を呼び起こすのは、なかなか難しいと思います」 パナソニックの「老衰」をストップさせるため、津賀社長は大胆な人事改革に着手した』、いまだにこんなぬるま湯のような賃金体系が温存されていたとは、驚かされた。もっと早くから「着手」しておくべきだったようだ。
・『事業執行層が140人に 年収総額は20億円超  津賀社長の人事改革の「第1弾」は、事業執行体制の見直しである。昨年10月1日付で、大量の降格を伴う人事を発動した。 まず、増え過ぎた執行役員(取締役と兼務する役員を除く)を43人から10人へと4分の1に削減した。これにより、32人の執行役員が新たに設けられた事業執行層(参与など)へ降格となった(1人は退任)。事業ポートフォリオの改革など全社の戦略の方向付けを担う人材のみを執行役員に残し、それ以外の個別事業の執行責任だけを負う人材は事業執行層としたのだ。 言うまでもなく、その目的は「滞留するロートルの退出」と「若手人材の抜てき」を同時に行うことにある。思い切った人事の新陳代謝を促進することで、組織の活性化を狙っているのだ。 もちろん、執行役員から事業執行層へ呼称が変わっただけでは、改革の効果は期待できない。パナソニックでは、執行役員から格下げとなった32人に、P1~P2の上級管理職を加えた幹部を事業執行層と呼んでおり、事業執行層の数は約140人に上る。 ここに、大量の“働かないおじさん”が含まれている。仮に、1人当たり年収が最低ラインの1500万円だと見積もったとしても、総額21億円もの巨費が事業執行層に支払われている計算になる』、なるほど。
・『55歳以上・滞留3年以上の幹部に迫るリストラの足音  津賀社長の真意を酌めば、この人事改革に「第2弾」が待ち受けていることは想像に難くない。「退任や給与の大幅ダウンなど、事業執行層に大リストラが待ち受けているのではないか」(パナソニック中堅幹部)とされているのだ。 とりわけ、そのターゲットになりそうなのが、先般格下げされた「元執行役員の事業執行層」の32人だろう。 上図を見れば明らかだが、降格された事業執行層32人中、「55歳」以上の人員は27人いる。 そのうち、執行役員になってからの在任期間が「3年」以上と、滞留している人員が17人もいる。この辺りが、津賀社長のメスが入るターゲットだといえそうだ。 今年2月にも内定する幹部人事を前に、パナソニック上層部は戦々恐々としている』、遅きに失したきらいがあるが、当然の措置だろう。

第三に、1月20日付けダイヤモンド・オンライン「パナソニック津賀社長が本誌だけに明かした「反転攻勢」の秘策」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/226106
・『『週刊ダイヤモンド』1月25日号の第1特集は、「パナソニック 名門電機の凋落」です。創業101年のパナソニックに再び経営危機が迫っています。事業軸を担当する五つのカンパニー全ての業績が振るわず、2020年3月期見通しでは営業利益が前年同期比で1000億円もダウンする異常事態なのです。日立製作所やソニーが過去最高の営業利益を更新する中、パナソニックだけが長期低落傾向から抜け出せずにいるのはなぜなのでしょうか。就任8年目の津賀一宏・パナソニック社長に突撃インタビューを敢行しました』、社長の考え方とは興味深い。なお、Qは聞き手の質問、Aは津賀社長の回答。
・『「家電部門・本社を中国に移転」を視野に入れている  Q:2019年11月に開催された投資家向けの年度計画説明会では、新中期戦略の具体策が示されました。改革の目玉として、家電事業等を展開するアプライアンス(AP)社と、電材事業等を展開するライフソリューションズ(LS)社を融合させて「新しいビジネスモデル」をつくることを掲げています。このモデルが成功するかどうかは、19年4月に設立した中国・北東アジア(CNA)社という地域カンパニーでの取り組みが鍵になりそうですね。 A:日本ではAP社にしてもLS社にしても、手掛ける商材のマーケットにおけるポジションが高いので、急に一緒にビジネスを展開するのは難しい。流通ルートが違いますから。だから、やれるところからやるということで中国から着手しようとしています。 Q:将来的に、家電部門(AP社)のヘッドクオーター(本社)を日本から中国へ移転する計画はないのですか。 A:もちろん、そういうことも視野に入れています。すでに、事業部によってはヘッドクオーターを中国に移したりしていますから。 まあ、大きなカンパニーの本体を中国に移管するのは一気に進められるものではないですし、まずは中国でしっかりとした成功モデルを構築して、かつ中国で開発体制にかかるコストも含めた固定費を回していける前提がないと、現実的ではありませんが。 ただし、長期的に考えれば、それ(ヘッドクオーターの中国への移管)は一つの考え方なんですね。コスト一つ取っても、中国起点で削減していくというのが一番分かりやすいですし、(中国メーカーの標準部品の活用などにより)まさに研究している最中でもありますし。 これから中国にはもっと注力して、将来的には、日本向けの家電製品にも使えるような部材をもっと調達していきたいと考えていますから。 Q:CNA社に関しては、設立時に家電事業のヘッドクオーターを中国に持っていこうとして、白物家電の“本拠地”である滋賀・草津の従業員から猛烈な反対に遭ったと聞いています。 A:仮説として、どれだけヘッドクオーターを中国へ持っていけるのか検討してもらったといういきさつがあります。ま、反対というよりも、「やったら破綻しますよ」と言われたんですよね。 中国を中心にやり過ぎると、日本の消費者に納得してもらえる商品をちゃんと出せなくなると。単に工場を中国に建設して、中国で生産した商品をそのまま日本に持って帰ってくるというのとは違うので。 今のところ日本向けの商品と中国向けの商品では、開発の考え方を少し変えています。ただし、中国向けでいいものができれば、それをアジア向けやインド向けに展開するという考え方もありますし、その先には日本向けとしても展開できるだろうと。こうした思惑もあります。 Q:中国での新モデルは、販売のみならず、開発も日本に依存した家電事業の構造を変える目的があるのですね。そもそも、近年、家電事業の収益が停滞している原因をどう考えていますか。 A:家電が厳しいのは、つまりテレビが厳しいということです。事業部は厳しいと分かっているんです。分かっているのに、まだテレビを売ろうとしているから駄目なんです。 だから、そこ(テレビ事業)だけは許さないです。許さない……。前から、そんなことでは駄目だと言っていたわけやし。 Q:なぜ事業部では、駄目なことがまかり通ってしまったのですか。 A:それは誰かが甘いことを言うたからでしょうな。収益性もあったように見えていたのですが、結局、売上高ばかり追って、販売会社の利益を薄めて十分に稼げていなかった。だから、テレビの戦略が間違っていたんでしょう。 Q:津賀さんの言い方が人ごとのように聞こえるのですが、それは無責任なのではないでしょうか。 A:いやいや、そんなことないんです。事業計画の割り当てはカンパニー長の責任範囲ですから。全てのカンパニーの全ての事業部の責任を負うことなんてできません』、「テレビ事業」を抱える「カンパニー長」は責任を取らされたのだろうか。
・『「老衰」迫るパナソニックに見る日本企業の縮図  『週刊ダイヤモンド』1月25日号の第1特集は、「パナソニック 名門電機の凋落」です。 「今のパナソニックには、何一つ強いものがない。このままでは10年持たない。早ければ3年で潰れる」。あるパナソニック中堅幹部は声を潜めて危機感をあらわにする。別のパナソニックOBも手厳しい。「もはやパナソニックは日本のお手本企業ではなくなってしまった」──。 松下幸之助という経営の神様を創業者に持つ名門企業、パナソニックといえば業績に浮き沈みはあったとしても、それでも国内製造業のベンチマークだったはずです。しかし、いまや、事業軸を担当する五つのカンパニー全てで業績が振るわず、2020年3月期見通しでは営業利益が前年同期比で1000億円もダウンする異常事態に陥っています。 パナソニックの時価総額(約2兆5600億円)は、20年前と比べて実に半分以下に落ち込んでしまいました。 ライバルの日立製作所やソニーが過去最高の営業利益を更新する中、パナソニックだけが長期低落傾向から抜け出せずにいるのはなぜなのでしょうか。 津賀社長に突撃したインタビューでは、保守本流の家電事業の再建策の他、シナリオが狂った自動車事業の方向性、後継者レースの行方、津賀社長自身の進退についても尋ねています。ダイヤモンド編集部だけに打ち明けた「津賀社長の真意」については、本誌をご覧ください。 広がり過ぎた業容の「取捨選択」の遅れ、全体最適を阻む事業部の縦割り志向、イノベーションの芽を摘む企業風土、人事の硬直性──。パナソニックをむしばむのは大企業病とも言える「老化現象」です。パナソニックの重大課題を通じて、日本の多くのレガシー企業が抱える「老衰危機」の実態を浮き彫りにしました』、「早ければ3年で潰れる」との「中堅幹部」の「危機感」に比べ、「津賀社長」のそれはやや薄く、対応策も微温的との印象を受けた。

第四に、ジャーナリストの大西 康之氏が2月5日付けJBPressに掲載した「勝負所で逃げの一手、成長事業を手放すパナソニック 赤字事業撲滅の「止血」に奔走するパナソニックに明日はあるか」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59224
・『今年は「オリンピック・イヤー」。家電メーカーにとっては「4年に一度の稼ぎ時」である。米EV大手テスラが昨年末、米国に続き中国でもEVの生産を開始した。これを受け、テスラの株式時価総額は独フォルクスワーゲン(VW)を抜き、自動車メーカーとしてトヨタ自動車に次ぐ世界2位に浮上した。今年は「電気自動車(EV)元年」。テスラに車載電池を一手に供給する電池メーカーには「バラ色の未来が待っている」はずである。 それなのに、日本最大の家電メーカーで、世界最強の電池メーカーであるパナソニックが2月3日に発表した第3四半期決算を見た時には、こんな言葉しか浮かばなかった。 「三十六計逃げるにしかず」 パナソニックが3日に発表した2019年4月〜12月期の連結決算(国際会計基準)は営業利益が前年同期比18%減の2406億円。20年3月期通期の業績見通しは従来予想通り、売上高が前期比4%減の7兆7000億円、営業利益は27%減の3000億円とした。新型肺炎の影響が織り込まれていないことを考えると、赤字転落も十分にありうる。 だがそれよりも衝撃的だったのは、決算と同時に発表されたもう一つのニュースの方だ』、どういうことだろう。
・『車載用角形電池事業はトヨタとの合弁会社に  この日、パナソニックは車載用角形電池事業をトヨタ自動車との合弁会社に譲渡すると発表した。合弁会社の出資比率はトヨタ51%、パナソニック49%であるため、同事業はパナソニックの連結対象から外れる。 パナソニックが手がける車載電池は円筒型と角形の2タイプがある。円筒型はテスラ向け、角形はトヨタなどテスラ以外のEVメーカー向けである。今回の合弁を証券市場関係者は「テスラ向け以外の車載電池事業をトヨタに売り渡した」と捉えている。 車載電池事業はテスラ向けに集中する、というなら話は分かる。だが、どうやらそうではないらしい。 3日、ブルームバーグは、テスラが「中国で生産する自動車向けの電池供給元として中国の寧徳時代新能源科技(CATL)を採用することで暫定合意した」と報じた。 米国で「モデル3」の量産を軌道に乗せたテスラは昨年12月30日、中国・上海に建設したギガファクトリー3でも「モデル3」を出荷した。着工からわずか11カ月の出荷という早業に世界は驚愕した。世界最大の自動車市場に橋頭堡を築いたテスラの株は、当然のように高騰し、株式時価総額はゼネラル・モーターズ(GM)とフォードの合計を上回った』、これまで注力してきた「車載電池事業」のうち、「テスラ向け以外・・・をトヨタに売り渡した」、何故、見切ったのだろう。
・『テスラのメインサプライヤーから外れる可能性も  「一緒に中国に進出してほしい」 上海での現地生産を決めた時、テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスクは、パナソニックにそう呼びかけた。しかし「四半期で700億円をキャッシュ・バーン(現金を燃やす)する」と言われた無謀な投資と、テレビ出演中にマリファナを吸ったり、ツイッターで「モデル3を計画通り生産できないのは、パナソニックがボトルネックになっているから」と発言したり、というイーロン・マスクの奔放な言動に振り回され続けたパナソニックは、中国進出を決断できなかった。 3日の決算発表で車載事業の中国生産の可能性を問われた梅田博和CFO(最高財務責任者)はこう言い切った。 「中国に生産ラインを作る予定は全くない」 テスラは当面、中国での生産でパナソニックとLG化学製の電池を使用する。だが、中国での電池供給の本命はこの2社ではなくCATLだ。 テスラとCATLがグローバルな電池供給で合意した場合、将来的には中国の電池工場が、米国にあるパナソニックとテスラの合弁会社より生産コストが安くなり、パナソニックはテスラ向け車載電池でも「メイン・サプライヤー」の座を奪われるかもしれない』、いくらこれまで「イーロン・マスク」に振り回されてきたとはいえ、中国進出の誘いを断るとは、もったいない話だ。
・『逃げてばかりの経営では未来は見えない  パナソニックの津賀一宏社長は、テスラがまだ海のものとも山のものとも知れぬ5年前、ネバダ砂漠に建設するギガファクトリーに2000億円を投資するという巨大なリスクを取った。その後、テスラは何度も「経営危機」を囁かれたが、パナソニックは忍耐強くパートナーシップを維持してきた。 そうした我慢が実を結び、「いざ量産!」の段になって、パナソニックは腰が引けてしまった。テスラ向けでCATLに、その他の車載電池はトヨタに主役を譲り、自らは一歩後ろに下がってしまったのだ。 車載電池だけではない。2020年1月、住宅事業を手がけるパナソニックホームズは共同株式移転の方式で、トヨタとの合弁会社「プライム ライフ テクノロジーズ」の完全子会社になり、パナソニックの連結から外れた。家電や自動車などすべてのものがインターネットにつながる「IoT」の時代、住宅はIoTのベースになる。しかしここでもパナソニックは腰が引けた。 半導体事業は子会社パナソニックセミコンダクターソリューションズ(京都府長岡京市)を、今年6月をメドに約270億円で台湾の新唐科技(ヌヴォトン・テクノロジー)に売却することが決まっている。IoTの時代には、鍋釜にまで半導体が埋め込まれ、半導体産業は新しいステージに突入する。成長の余地はあるはずなのに「赤字事業撲滅」に血眼のパナソニックは、ここからも手を引くのだ。 止血効果は確かに出ている。2019年4月〜12月期のフリーキャッシュフローは1286億円のプラスとなり、前年同期のマイナス646億円から大きく改善した。だが同じ時期に、減価償却、設備投資、研究開発費はいずれも減少している。つまり「未来への投資」を大きく抑制しているのである。 在任8年とパナソニックとしては異例の長期政権になった津賀社長は、何としても黒字で花道を飾りたいのかも知れない。赤字事業を次々と切っていけば、あるいはそれも可能だろう。だがその後に何が残るというのか。企業の役割とは新たな価値を生み出して社会を前に進めることである。パナソニックは5年後、10年後、どんな会社になりたいのか。逃げてばかりの今の経営からは未来が見えてこない』、「異例の長期政権になった津賀社長は、何としても黒字で花道を飾りたいのかも知れない」、しかし、「逃げてばかりの今の経営からは未来が見えてこない」、さすが企業経営の観点での論評に定評がある「大西 康之氏」らしい鋭い指摘で、全面的に同意したい。
タグ:ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 大西 康之 電機産業 (その2)(パナソニック:家電部門の本社を中国に移転 狙いは伏魔殿の解体【スクープ】、「働かなくても年収1500万円超」幹部に迫る大リストラ【内部資料入手】、津賀社長が本誌だけに明かした「反転攻勢」の秘策、勝負所で逃げの一手 成長事業を手放すパナソニック 赤字事業撲滅の「止血」に奔走するパナソニックに明日はあるか) 「パナソニックが家電部門の本社を中国に移転、狙いは伏魔殿の解体【スクープ】」 パナソニックは“賭け”に負けた 家電の次の本業候補として投資を集中させた自動車事業が失速。今度は母屋の家電事業まで低迷し、構造改革が急務な状況 背水の新モデル 新設されたCNA社の“裏ミッション”とは 裏ミッション パナソニックの保守本流であり、伏魔殿と化している家電部門(アプライアンス〈AP〉社)の“解体”だ 上層部では、検討事項として家電部門の本拠地を日本から中国へ移すこと、つまり家電部門の「中国本社」移転計画まで俎上に載せられている 家電部門の解体と本社(中国への)移転 歴史的に発言力の強い家電部門の「事業部の縦割り志向」や「人事の硬直性」が、家電の低迷の元凶になっていると不信感 競合メーカー撤退後の残存者利益にあぐらをかいた とうの昔に、ライバルは国内メーカーから中国メーカーへ変わっていたのに、開発・生産拠点の統廃合に踏み込んだ構造改革への着手に遅れてしまった 部門解体と本社移転という“ショック療法”を使うことで、現場の抵抗を断ち切り、本来の家電王国の底力を取り戻そうとしている 家電事業を中心に展開するAP社と、電材事業を中心に展開するライフソリューションズ(LS)社を融合させた「中国発の新しいビジネスモデル」を早急に作り上げることだ 「縦割り志向」丸出し 役員合宿での仰天エピソード 両社の合併前は『電工の敵は電産、電産の敵は電工』といわれるほど仲が悪かった 「水と油の関係」 販売チャネル開拓はゼロからのスタート。しがらみがない分、協業関係が築きやすい 中国で構築した「AP社+LS社モデル」を、日本を含めたアジアやインドへ横展開する 草津の抵抗で中国移転が頓挫 今度こそ主要拠点の統廃合は必至 20年前と比べて時価総額半減のピンチ パナソニックは成長戦略の説明が不足しているとアナリストから批判 「老化現象」 五つのカンパニー全てにおいて、将来の成長戦略を描き切れないという異常事態 「パナソニック「働かなくても年収1500万円超」幹部に迫る大リストラ【内部資料入手】」 内部資料で分かったパナ幹部「高給取り」の実態 年収1500万円以上の“働かないおじさん”が滞留 事業執行層が140人に 年収総額は20億円超 55歳以上・滞留3年以上の幹部に迫るリストラの足音 「パナソニック津賀社長が本誌だけに明かした「反転攻勢」の秘策」 「家電部門・本社を中国に移転」を視野に入れている 「老衰」迫るパナソニックに見る日本企業の縮図 「勝負所で逃げの一手、成長事業を手放すパナソニック 赤字事業撲滅の「止血」に奔走するパナソニックに明日はあるか」 車載用角形電池事業はトヨタとの合弁会社に テスラのメインサプライヤーから外れる可能性も 逃げてばかりの経営では未来は見えない 在任8年とパナソニックとしては異例の長期政権になった津賀社長は、何としても黒字で花道を飾りたいのかも知れない 企業の役割とは新たな価値を生み出して社会を前に進めることである。パナソニックは5年後、10年後、どんな会社になりたいのか。逃げてばかりの今の経営からは未来が見えてこない
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日本型経営・組織の問題点(その9)(外国の識者が語る"日本人論"が核心をつくワケ 日本人の日本人論にない視点がある、忘年会だけじゃない! スルーすべき日本の会社のムダな慣習、何をいまさら経団連 日本型雇用は10年前に終わっている) [経済政治動向]

日本型経営・組織の問題点については、昨年11月6日に取上げた。今日は、(その9)(外国の識者が語る"日本人論"が核心をつくワケ 日本人の日本人論にない視点がある、忘年会だけじゃない! スルーすべき日本の会社のムダな慣習、何をいまさら経団連 日本型雇用は10年前に終わっている)である。

先ずは、作家・経済ジャーナリストの渋谷 和宏氏が昨年11月23日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「外国の識者が語る"日本人論"が核心をつくワケ 日本人の日本人論にない視点がある」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/30036
・『日本人はなぜロボットを友達だと思うのか  「日本人ほど『日本人論』が好きな国民はいない」と著者の佐藤智恵氏は言う。そうかもしれないと思う。私自身、外国の識者が語る日本論、日本人論にはつい耳をそばだててしまう。本書『ハーバードの日本人論』は、そんな外国人の視点で見た日本論、日本人論の中でもとりわけ異彩を放つ一冊だ。 「日本人はなぜロボットを友達だと思うのか」「日本人のオペレーションはなぜ簡単に真似できないのか」――本書はこうした「日本人のなぜ」について、メディア論やマネジメント論などそれぞれの分野で第一人者として知られるハーバード大学の教授陣に著者がインタビューし、わかりやすくまとめている。専門領域のみならず、日本や日本人について深い知識を持つ教授陣の話は示唆に富み、かつ新鮮だ。 「日本人はなぜロボットを友達だと思うのか」――メディア論を専門とするアレクサンダー・ザルテン准教授は言う。「日本人が歴史的にテクノロジーを『理想的な社会を実現するのに不可欠なもの』ととらえてきたことと深い関係がある」。 明治維新後、日本は西洋の技術を取り入れ、近代化に成功した。戦後の高度成長を支えたのも絶えざる技術進歩だった。テクノロジーへの信頼が、日本人のロボット観の根っこにあると指摘するのだ』、「佐藤智恵氏」は元NHKディレクターでコロンビア大学MBA取得、ボストン・コンサルティング・グループ勤務などを経てげ、作家/プロデューサー/コンサルタント。このブログでも2017年8月19日付け「原爆投下」で紹介している。確かに「外国の識者が語る日本論、日本人論」は、日本人が気付かない点を指摘してくれるので、興味深いものも多い。
・『日本のアニメが国境を超えて愛される理由  さらにザルテン准教授は日本のアニメが国境を超えて愛される理由についても独創的な分析を披露する。日本のアニメは日本の物語だけでなく、ディズニーのアニメや近代のSF文学などからも影響を受けており、その表現にも様々な技法が取り入れられている。こうした特徴が、インターネットによって文化の混合を日常的に体験している世界の若者の感覚に合致したと言うのだ。 「日本人のオペレーションはなぜ簡単に真似できないのか」――マネジメント論が専門のウィリー・C・シー教授は「かんばん」に代表されるトヨタ生産方式を例に挙げ、それを可能にしているのは継続して学習し、問題を解決する企業文化であり、その土台には「完璧な品質を追求する」「継続して改善を行う」という日本人の国民性があると解説する。 トヨタ生産方式は「日本の経済風土にあったオリジナルな方法を」という考えから開発されたと言われる。世界のものづくりに革命を起こした生産方式がなぜ日本企業によって生み出されたのか。答えの一端を垣間見た気がする。 本書が取り上げる「日本人のなぜ」は、もちろんこれらだけではない。「日本人はなぜ『場』を重んじるのか」「日本人はなぜものづくりと清掃を尊ぶのか」――ほかにも気になる命題が取り上げられ、その分析には思わず同僚や友人にひけらかしたくなる指摘がちりばめられている』、「佐藤智恵氏」が専門家から見解を引き出す能力は、豊富な職歴の上に築かれたのだろう。暇を見つけて、読んでみたくなる本だ。

次に、在米作家の冷泉 彰彦氏が12月24日付けNewsweek日本版に掲載した「忘年会だけじゃない! スルーすべき日本の会社のムダな慣習」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2019/12/post-1132.php
・『<社内での打ち合わせや会議のための「社内出張」や、転勤、単身赴任などスルーすべきビジネス慣行が日本の会社には多い>  30年ぐらい前に止めていれば良かったのにいまさら感がありますが、「忘年会スルー」という言い方で、職場における半強制的で楽しくない宴会のために、貴重な年末の時間を使う習慣が批判されているのは良いことだと思います。 ですが、悪いのは忘年会だけではありません。日本の職場風土をもっと風通しの良いものにすると同時に、先進国中最低レベルとなっている生産性を向上させるためには、他にもスルーすべきことがあります。 1つ目は「社内出張」です。出張というと、セールスや業務提携など重要な目的があったり、あるいは見本市への出店や、反対に見本市や国際会議への参加による情報収集や人脈形成など、企業としての業務に欠かせないものがあるのは事実だと思います。 ですが、出張には大きな負荷がかかります。期間中は家事、育児、介護といった家族における責任を放棄して、遠隔地に行かねばなりません。問題は、どうしても必要な対外交渉、調査といったものではなく、日本の場合はまだまだ同じ会社の中での打ち合わせや会議のために出張する、つまり「社内出張」の機会が多いということです』、テレビ会議導入などで多少減ったとはいえ、「社内出張」は本当に無駄の最たるものだ。
・『「社内会議のための出張」はほとんどムダ  例えば、一定の職位以上の管理職は定期的に本社に集めて、全社の動きを知らせるという会社は多いと思います。また、海外など遠隔地に駐在させて勤務させている社員を呼び返して報告させる会議などもあります。さらには、何か突発的な問題が生じた場合には、役員などに報告と謝罪のために出張しなくてはならないということもあるでしょう。 こうした「社内会議のための出張」というのは、ほとんどがムダだと思います。まず、多くの社員を集めて「全社の動きを知らせる」会議というのは、単に参加者を社内政治の評論家にするだけで、個人のスキルの向上、そして会社全体の業績の向上には役にも立ちません。もっと言えば、社内世論を形成して意思決定の参考にしようなどという弱いリーダーでは通用しない時代でもあります。全社の動きを幅広く知らせれば社員の育成になるというのも、社員のモラル向上になるというのも限定的です。 海外に人を出していると「浦島太郎」になるので、ときどき呼び返してコミュニケーションしたほうが良いという習慣もありますが、根拠は怪しいと思います。日本の産業界は、国際化の遅れからこのような低迷に到ったのですから、変わらねばならないのは日本側であって、せっかく最前線に出ている人間には伸び伸びチャレンジさせるべきでしょう。 一番悪いのは、トラブルの発生時に「報告と謝罪」を対面式コミュニケーションでやるために呼び寄せることです。初動が大事であれば、現場の問題解決を本社は支援するべきところですが、ふんぞり返って「不始末は来て報告せよ、対応はそれからだ」というような姿勢の企業はどんどん淘汰されていくでしょう』、海外駐在の拠点長を定期的に呼び寄せるのも無駄だ。「トラブルの発生時」の本社の「ふんぞり返った」対応も酷いものだ。
・『2つ目にスルーすべきなのは、転勤です。せっかく身に着いたスキルを捨てさせて、全く違う分野に異動させる、あるいは別の土地へ異動させるという「人事ローテーション」と「ゼネラリスト育成」というのが、日本型人事だとされてきました。ですが、共働きが当然となる一方で、あらゆる業務内容が高度化し、専門性が問われるようになった現在、転勤のメリットは薄れており、残っているのは個人の人生設計を壊す弊害だけのように思います。 転勤に伴う単身赴任という習慣も、核家族の求心力を奪い、次世代に親となるべきロールモデルを与えることができなかった罪は重いと思います。まわりまわって非婚少子化の後押しをしているという観点から、社会的に止める時期に来ていると考えていいでしょう。 忘年会に象徴されるような、公私混同体質を伴った封建的ヒエラルキーで人間性を束縛するのが「忠誠心」だとか、何かに付けて「社内会議」をするのが育成やスキル向上になると思い込んだり、国中、世界中のどこへでも辞令一枚で社員と家族を飛ばせると考えたり、これでは、まるで「お国替え」と「参勤交代」です。封建主義そのものであり非人間的であると同時に、21世紀の高度な生産性とは全く馴染みません。これらの慣習も、スルーでいいのではないでしょうか』、アメリカで日本人駐在員たちの悲哀を見ているらしい冷泉氏ならではの鋭い指摘で、諸手を挙げて同意する。

第三に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が2月18日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「何をいまさら経団連、日本型雇用は10年前に終わっている」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00062/?P=1
・『久しぶりに春闘が話題だ。 きっかけは経団連が「日本型雇用の見直し」なるものを求めたこと。年末に行われた定例の記者会見で中西宏明会長は、こう訴えた。「新卒一括採用、終身雇用、年功序列型賃金が特徴の日本型雇用は効果を発揮した時期もあったが、矛盾も抱え始めた。今のままでは日本の経済や社会システムがうまく回転しない。雇用制度全般の見直しを含めた取り組みが重要だ」と。 その上で、「賃上げの勢いを保つことは大前提だ。ただ製品やサービスの付加価値向上に必要なスキルや意欲のある人が活躍できる環境づくりも大事だ。そのためには賃金体系や人事制度についてもしっかり対応すべきだ」──。 この発言は1月21日に発表された「2020年版 経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」の中で、「転換期を迎えている日本型雇用システム」という言葉に置き換わった。「新卒一括採用や終身雇用、年功型賃金を特徴とする日本型の雇用システムは転換期を迎えている。専門的な資格や能力を持つ人材を通年採用するジョブ型採用など、経済のグローバル化やデジタル化に対応できる新しい人事・賃金制度への転換が必要」と、盛んにアピールしているのだ。 しかも、組合側も組合側で、経団連の指針に“素直”に応じるような要求が相次いでいる。 自動車メーカーなどの各労働組合が12日、経営側に提出した要求書には……、・給与を1人当たり月額1万100円の引き上げを求める一方で、ベアについて人事評価に応じて差をつける新たな方法を提案(by トヨタ自動車の労働組合) ・新たな仕事に挑戦した社員に賃金を上乗せする制度の拡充を求める(by ホンダの労働組合)など、賃上げにめりはりをつけてほしいと書かれているらしい』、「労働組合」が「賃上げにめりはりをつけてほしい」、とは信じられないような要求だ。「めりはりをつけ」るのは、あくまで経営側であり、こんな要求で、組合員の団結が維持できると思っているのだろうか。或いは、団結など不要と割り切っているのかも知れない。御用組合化もここに極まれりだ。
・『2008年の「派遣村」が象徴していた日本型雇用の崩壊  これらの経緯を受け、テレビなどでは「転換期を迎えている日本型雇用システム」という言語明瞭意味不明のフレーズを繰り返している。 ……ふむ。「日本型雇用システムが転換期を迎えている」って? 中西会長含め、経済界を代表する重鎮たちは、昨年から度々この言葉を繰り返しているけど、この言葉に私は違和感を抱き続けている。 だって、とっくの昔に日本型雇用システムは転換期を迎えていたじゃないか。10年前に、重鎮たちだってしかと、その目で、見たはずである。 まさか、忘れたってことだろうか? 経団連もメディアも、2008年の年末の「派遣村」のことを忘れてしまったのか?当時、メディアは連日連夜日比谷の派遣村から中継していたのに……。いったいどうしてしまったんだ? あの「年越し派遣村」こそが、日本型雇用システム崩壊の象徴に他ならない。 忘れてしまった“経済界の重鎮”のために、あのときの出来事を簡単におさらいしておく。 08年秋に起きたリーマン・ショックにより、大手の製造業などで働く非正規の人たちがリストラされ、寮からも追い出される事態となった。いわゆる「派遣切り」だ。 そんな人たちを受け入れようと、労働組合関係者、法律家、生活困窮者支援NPOのメンバーらにより、日比谷公園に「年越し派遣村」がつくられ、全国から500人近くが集結。当時は“ワーキングプア”や“ネットカフェ難民”など、不安定な雇用形態である非正規雇用で働く人が急増した時期だったので、社会の関心も高かった。 中には「ホームレスも含まれているじゃないか!」「政治的な陰謀じゃないか」など、批判的な意見もあったが、派遣村の最大の功績は「貧困の可視化」だった。派遣村をきかっけに格差問題は貧困問題になり、非正規と正社員という単なる雇用形態の違いが「身分格差」になっていることが周知されたのだ。 それは“経営の三種の神器”として日本企業を支えてきた「終身雇用、年功制、社内組合」の崩壊であり、米国の経営とは異なる日本独自の極めて優れた経営戦略として世界から称賛された「日本型雇用システム」の終焉(しゅうえん)を意味するものだった。 つまり、経団連はやたらと「日本型雇用システムの限界」だの「日本型雇用システムの転換期」だの昨年から言い続けているけど、10年も前に“日本型雇用システム”の転換期を迎えていたのだ』、「「年越し派遣村」こそが、日本型雇用システム崩壊の象徴に他ならない」、思い出したが、確かにその通りだ。
・『にもかかわらず「日本型雇用システムの転換期」という言葉を多用するのは、非正規にしたくでもできない正社員の賃金を減らしたい。コストをとにかく減らしたい。ただそれだけのこととみえる。 情けないことに経済界の司令塔である経団連が、あからさまに「コストカット」を訴え続けているのである。 こちらの図をご覧いただきたい。改めて書くまでもなく、日本の労働人口の年齢構成は高齢化が進み、60歳を過ぎても働くのが当たり前となった。共働きも当たり前で、働く女性も増えた。ところが「増えた属性=60代&女性の人たち」は日本型雇用システムでは雇用されていない(http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-07.html)。 年齢階級別非正規雇用労働者の割合の推移(男女別)(男女共同参画局『男女共同参画白書 令和元年度版』より) 女性は34歳以下をのぞくすべての年代で半数以上が非正規、男性では65歳以上の7割以上、55~64歳の約3割が非正規だ。25~34歳では14.4%と割合はさほど高くないが、全体として非正規雇用が増加傾向にあることは注視すべきだ。 一方、35~54歳は小泉政権の時に一旦増えたが、その後はほぼ横ばいが続いている。 要するに、この世代こそが経団連が言うところの“日本型雇用システム”の恩恵を受けている世代だ』、「35~54歳」の「男性」だけが「“日本型雇用システム”の恩恵を受けている」、とは初めて知った。しかし、ここにもいよいよ「経団連」はメスを入れようとしているようだ。
・『経団連の使命とは何だったのか  これまでも経団連の重鎮たちは、あの手この手で40代、50代の働く人たちをお荷物扱いするような発言をしてきたけど、今回は“子飼いにした組合”を巻き込み、この世代のコストカットに踏み切った。 連合の神津里季生会長がどんなに、「そもそも(経団連が指摘するような日本型)雇用システムはこの20年、確立していない。中小・零細企業の労働者や正社員以外の雇用形態で働く労働者への視点が欠けている」と指摘しても、重鎮たちはどこ吹く風だ。 「そんなこと分かってるよ! でもね、まださ、日本型雇用システムの恩恵を受けている層がいるのよ。その人たちのコストをカットしないことには日本の未来はないのさ」ってこと。……あまりに露骨だ。 かつてトヨタの会長だった奥田碩氏が、機会ある度に「解雇は企業家にとって最悪の選択。株価のために雇用を犠牲にしてはならない」と語り、経団連会長として「人間の顔をした市場経済」という言葉を掲げたのに、今の経団連のお偉い人たちの視界に「人間の顔」はない。 経団連のウエブサイトには経団連の使命として、「企業と企業を支える個人や地域の活力を引き出し、日本経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与することにあります」と記されている。 「稲山嘉寛経団連会長(1980-86)は『我慢の哲学』、平岩外四経団連会長(1990-94)は『共生』、豊田章一郎経団連会長(1994-98)は『魅力ある日本』といったコンセプトを打ち出し、国際社会の中でよき企業市民として日本企業が受け入れられるように取り組みました」とも書かれている。 今の経団連から発せられる文言のどこに、「個人や地域の活力を引き出す」メッセージがあるのか? 日本型雇用システムを悪の根源のごとく叩きまくっているけど、それを生かす経営を今の経団連はしてきたのだろうか?』、従来の「経団連」とは大きく異なり、大所高所の議論よりも、目先の利害中心になってきたようだが、これも時代の流れとしたら、余りに寂しい。
・『2018年、日経新聞が“異例”の経団連批判をしたと話題になった記事を覚えているだろうか。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31995500Q8A620C1X12000/ 「経団連、この恐るべき同質集団」と大きな見出しがついた記事には、 ・19人の正副会長全員のだれ一人として転職経験がない  ・全員サラリーマン経営者 ・全員男性 ・全員日本人 ・一番若くて62歳 ・中西会長以下12人が東大卒、次いで一橋大3人、京大、横浜国大、慶応大、早稲田大が各1人で、首都圏以外の大学を出たのは山西健一郎・三菱電機取締役相談役ただ1人(京大工卒)と、異様なまでの同質性が指摘されていた。 フツーに考えれば、これだけ働く女性が増えたご時世で、なんでこの集団には女性がいない? 外国人労働者を増やすといっているのに、なんで外国人もいない? 経団連が大好きな「世界の市場」では多様性が当たり前なのに、今の経団連は多様性の「たの字」もない集団である。中西会長は会長に就任する前に、多様性の重要性を訴えていたはずなのに……いったいなぜ? お偉い人たちに叱られることを覚悟で言わせていただければ、経団連の上層部こそが、日本型雇用システムの恩恵を受けまくった人たちで、自分たちが変わることを置き去りにしている。そう思えてならないのである。 もし、本当に経団連の使命が「企業と企業を支える個人や地域の活力を引き出し、日本経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与すること」であるなら、組合のあり方そのものも変えなくてはならないはずだ。 ところが、経団連は「業界横並びの集団的な賃金交渉は、実態に合わなくなっている」と明記し、春闘の意義そのものに疑問を呈した。社会的対話の象徴である「春闘」を、必要ないのでは?と指摘したのだ。 ふむ。これは大問題である』、「日経新聞が“異例”の経団連批判」、は誠に手厳しいが、その通りだ。「経団連の上層部こそが、日本型雇用システムの恩恵を受けまくった人たちで、自分たちが変わることを置き去りにしている」、との河合氏の批判は正鵠を突いている。
・『世界がディーセント・ワークを目指す時代に  社会対話は自由、平等、保障、人間の尊厳といった条件の下で、男女を問わずすべての人々がディーセント・ワークを得る機会を促進するというILO(国際労働機関)の目的達成においてカギとなる役割を果たしている。 ディーセント・ワークについては、今年最初の元日コラムで書いたとおり(働きがい問われる年、シニアのリストラが若者にも悪影響)、1999年のILO総会で初めて用いられた概念である。 「権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事」であるディーセント・ワークを、ILOでは「すべての人にディーセント・ワークを(Decent Work for All)」を目指し活動している。 その仕事とは、「労働基準及び働く上での権利」「雇用」「社会的保護」「社会対話」の4つの柱で成立する。 社会対話をILOは、「政府、使用者、労働者の代表が、経済・社会政策に関わる共通の関心事項に関して行うあらゆる種類の交渉、 協議、あるいは単なる情報交換」と定義している。 そして、社会対話を可能にする条件として、以下を掲げている。 ・社会対話に参加する技術的能力を備え、関連する情報を入手できる機会が与えられた、強く、独立した労使団体 ・社会対話に従事しようとという政治的意思と決心が全当事者に存在すること ・結社の自由と団体交渉の基本的な権利の尊重 ・適切な制度的支援 ・社会的パートナーの代表が互いに平等なパートナーとして認識されること こうした社会対話の形態の1つが、春闘のような労使の二者構成だ。 その社会対話を経営の司令塔である経団連が「いらない」と言っているのだ。 労働組合からに講演会に呼ばれると、大抵聞こえてくるのは「組合に若い人が入りたがらない」「非正規の人が多いのに組合では正社員のことしか議論しないので、実態に合っていない」といった、組合のあり方への懸念であり、疑問だ』、「ディーセント・ワーク」の柱の多くは、ほぼすべて条約化されているが、日本は批准していないものが多い(Wikipedia)。日本は労働法制の面では後進国並みのようだ。
・『中西会長の出身母体である日立製作所の組合の雑誌に、私は数年間連載を持たせてもらったことがある。子会社や関連会社も多い日立グループにはたくさんの組合があり、活動が実に活発だった。いくつかの組合からは講演会に呼ばれたし、本体の日立製作所に呼んでいただいたこともある。 そのときの感想は「組合と会社がとてもいい関係にある」という、極めてポジティブなものだった。 なので、私は中西さんが経団連の会長に就任したときに、ものすごく期待した。あの日立のトップだった中西さんなら、時代遅れになっている経団連を変えてくれるのではないか、と。 働く人たちの視点で、カネではなく「人」を見てくれるんじゃないか、と。心から期待したのだ。 いったいどうしてしまったんだ? もっと働く人たちのやる気が湧くメッセージを、経団連の会長として出してくれよ!と、本当に残念でたまらないのである。 価値が多様化し、技術が日新月歩する予測不能な厳しい市場で生き残るには、企業が存在する意義を経営者がきちんと考え、自分たちの会社の価値判断を重視し、働く人たちが「誇りを持って働ける職場」とは何か?を考える経営をすることだ。 たとえばジョンソン・エンド・ジョンソンの「我が信条(Our Credo)」のような、「自分たちのなすべきことは何か」の原点に立ち戻る経営について、経済界の司令塔としてメッセージを出すことじゃないのか。会長さん!私、間違ってますか?』、「経団連会長」に対する手厳しくも暖かい叱咤激励だ。
タグ:日経ビジネスオンライン PRESIDENT ONLINE 河合 薫 Newsweek日本版 佐藤智恵 日本型経営・組織の問題点 冷泉 彰彦 (その9)(外国の識者が語る"日本人論"が核心をつくワケ 日本人の日本人論にない視点がある、忘年会だけじゃない! スルーすべき日本の会社のムダな慣習、何をいまさら経団連 日本型雇用は10年前に終わっている) 渋谷 和宏 「外国の識者が語る"日本人論"が核心をつくワケ 日本人の日本人論にない視点がある」 日本人はなぜロボットを友達だと思うのか 「日本人のなぜ」について、メディア論やマネジメント論などそれぞれの分野で第一人者として知られるハーバード大学の教授陣に著者がインタビューし、わかりやすくまとめている 『ハーバードの日本人論』 日本のアニメが国境を超えて愛される理由 「忘年会だけじゃない! スルーすべき日本の会社のムダな慣習」 社内での打ち合わせや会議のための「社内出張」や、転勤、単身赴任などスルーすべきビジネス慣行が日本の会社には多い 「社内出張」 日本の場合はまだまだ同じ会社の中での打ち合わせや会議のために出張する、つまり「社内出張」の機会が多い 「社内会議のための出張」はほとんどムダ トラブルの発生時に「報告と謝罪」を対面式コミュニケーションでやるために呼び寄せることです。初動が大事であれば、現場の問題解決を本社は支援するべきところですが、ふんぞり返って「不始末は来て報告せよ、対応はそれからだ」というような姿勢の企業はどんどん淘汰されていくでしょう 2つ目にスルーすべきなのは、転勤 「人事ローテーション」と「ゼネラリスト育成」というのが、日本型人事 あらゆる業務内容が高度化し、専門性が問われるようになった現在、転勤のメリットは薄れており、残っているのは個人の人生設計を壊す弊害だけ 転勤に伴う単身赴任 忘年会に象徴されるような、公私混同体質を伴った封建的ヒエラルキーで人間性を束縛するのが「忠誠心」 国中、世界中のどこへでも辞令一枚で社員と家族を飛ばせると考えたり、これでは、まるで「お国替え」と「参勤交代」です 封建主義そのものであり非人間的であると同時に、21世紀の高度な生産性とは全く馴染みません 「何をいまさら経団連、日本型雇用は10年前に終わっている」 経団連が「日本型雇用の見直し」なるものを求めた 雇用制度全般の見直しを含めた取り組みが重要だ 賃金体系や人事制度についてもしっかり対応すべきだ 転換期を迎えている日本型雇用システム 専門的な資格や能力を持つ人材を通年採用するジョブ型採用など、経済のグローバル化やデジタル化に対応できる新しい人事・賃金制度への転換が必要 組合側も組合側で、経団連の指針に“素直”に応じるような要求が相次いでいる 賃上げにめりはりをつけてほしい 2008年の「派遣村」が象徴していた日本型雇用の崩壊 非正規にしたくでもできない正社員の賃金を減らしたい。コストをとにかく減らしたい 「35~54歳」の「男性」だけが「“日本型雇用システム”の恩恵を受けている」 経団連の使命とは何だったのか 奥田碩 「人間の顔をした市場経済」 今の経団連から発せられる文言のどこに、「個人や地域の活力を引き出す」メッセージがあるのか? 日本型雇用システムを悪の根源のごとく叩きまくっているけど、それを生かす経営を今の経団連はしてきたのだろうか? 日経新聞が“異例”の経団連批判 経団連、この恐るべき同質集団 今の経団連は多様性の「たの字」もない集団 経団連の上層部こそが、日本型雇用システムの恩恵を受けまくった人たちで、自分たちが変わることを置き去りにしている 世界がディーセント・ワークを目指す時代に 社会対話は自由、平等、保障、人間の尊厳といった条件の下で、男女を問わずすべての人々がディーセント・ワークを得る機会を促進するというILO(国際労働機関)の目的達成においてカギとなる役割を果たしている ほぼすべて条約化されているが、日本は批准していないものが多い ジョンソン・エンド・ジョンソンの「我が信条(Our Credo)」のような、「自分たちのなすべきことは何か」の原点に立ち戻る経営について、経済界の司令塔としてメッセージを出すことじゃないのか
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決済(その5)(「キャッシュレス還元祭り」に踊らされ 搾取される人の残念な傾向、メルカリへのオリガミ売却価格は1株1円 事実上の経営破綻で社員9割リストラ、「ペイペイの毒」に潰されたキャッシュレス企業…その残酷すぎる末路 「オリガミ身売り騒動」が意味するもの) [金融]

決済については、昨年5月24日に取上げた。今日は、(その5)(「キャッシュレス還元祭り」に踊らされ 搾取される人の残念な傾向、メルカリへのオリガミ売却価格は1株1円 事実上の経営破綻で社員9割リストラ、「ペイペイの毒」に潰されたキャッシュレス企業…その残酷すぎる末路 「オリガミ身売り騒動」が意味するもの)である。

先ずは、本年1月14日付けAERAdot「「キャッシュレス還元祭り」に踊らされ、搾取される人の残念な傾向」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dol/2020011400056.html?page=1
・『キャッシュレス花盛りの日本列島 でも、ちょっと考えてみよう  消費増税対策としてスタートしたキャッシュレス決済のポイント還元事業だが、順調に利用も伸びているようで、政府はポイント原資が不足する恐れが高まったとして、約2700億円の追加予算を計上する方針だという。 1日平均の還元額については、スタート当初は約8億円だったが、現在は約14億円(2019年12月16日現在)にまで増加しているうえ、年末年始商戦でもうひと伸びという思惑もあったのだろう。 なお、この還元事業の対象に入らない大手企業の決済に対しても、決済業者独自のキャンペーンが行われ、まさに日本列島中がキャッシュレス花盛りといったところだ。 その一方で、ヤフーを傘下に収めるZホールディングスとLINEの経営統合、KDDIとローソンの提携など、早くも「祭り」の後のスマホ決済再編の動きも見えてきた。彼らに先陣を切らせていたようにも見えるカード会社も、かざすだけのタッチ(コンタクトレス)決済を軸に攻勢をかけようとしている。 そんな業界事情に振り回されるのが消費者だ。「現金で払うのはもったいない」という風潮に押され、キャッシュレスに邁進しているニッポンだが、中には「キャッシュレスの被搾取予備軍」になっている人もいるのではないだろうか。トクだと思って使っているつもりが、逆にむしり取られる側になってはいまいか。果たしてあなたがそうなっていないか、次の項目を読んでぜひ自問してみてほしい』、確かに時流に流されるのではなく、立ち止まって冷静に考えることも必要だ。
・『【傾向1】使っているスマホ決済が3つ以上ある  昨年の大型キャンペーンでPayPayをスマホにダウンロードしたという人は多いだろう。数あるスマホ決済アプリの中で、最も利用者が多いといわれているのだから、当然かもしれない。さらに、「ドコモユーザーならd払い、auユーザーならauペイも」というのは自然だろう。ついでに、「コンビニでのキャンペーンが目立ったLINE Payやメルペイも、その際に入れました」という人も結構いるのではないか。 クレジットカードの活用法では、カードはメインとサブの2枚に絞り、ポイントやマイルを集中してためるのが効率的とよくいわれている。スマホ決済アプリも、むやみやたらと手を出すと、バラバラに打ってくるキャンペーンのたびに、「今週はアプリAを使い、翌週はアプリBを、さらに翌月はC、そしてDを……」と、どこの決済業者にとってもお得意様になってしまいかねない。 加えて、キャンペーンで付与されたポイントが期間限定だったり用途限定だったりしたならば、それを使うためにまた決済をして……という無限消費ループが待っている。これでは、「トクしているのは決済業者のほう」ということになりかねない。 そろそろ自分が使いやすいスマホ決済アプリが見えてきたころだろう。できれば2つまでに収めるべく、整理を始めたほうがいいかもしれない』、賢明なアドバイスだ。
・『【傾向2】以前よりもコンビニでの買い物が増えた  ポイント還元店の中でも、レジで2%が割り引かれる即時還元を採用しているコンビニが決済金額を伸ばしているという。「割引になるのだから、コンビニで買うに限るよね」と思うのは自然な成り行きだ。ビジネスパーソンにとって身近な存在であり、毎日寄り道をする人も多いだろう。 還元策が始まる以前と同じように利用するであれば、問題はない。しかし、「どうせ割引になるのだから、ついでにこれも……」と買う量や回数が増えてはいないだろうか。 2%還元というと、300円の買い物をすれば6円引きとなる。500円で10円引きだ。だから、たとえば毎日コンビニで500円使い、10円の還元を20日間受けたとすれば、1万円使って200円を得することとなる。しかし、コンビニに行くのをたった1日やめれば、1万円も使うことなく、200円程度の金額は簡単に節約できるのだ。ちょっと冷静になって考えればすぐわかることだが、おトクな感じがしていても、実は全然おトクでない買い物の仕方をしていることがあるから、要注意だ』、最後の部分はその通りだろう。
・『【傾向3】必ず還元事業の対象になっている店を探して入る  ランチしようと何気なく入った店で現金支払いをした後に、そこがキャッシュレスで5%還元の対象店だとわかったら、無性に損をした気になるのではないか。筆者もこの経験がある。レジも混んでいたため現金で支払ったら、お釣りを受け取ったタイミングで小さく「5%還元店」を示すシールを発見したのだ。誰もが名を知るメジャー店だから、きっと対象外なのだろうと油断していたのが敗因だった。 せっかく対象の店を表示するアプリがあるのだから、先に見るべきだった。筆者と同じような経験をした人は、「これからは必ず払う前に確認しよう。いやいや、はじめから還元対象の店を調べてそっちに行こう」と思うだろう。 考えてみれば、それがこのポイント還元事業の狙いなのだ。消費増税の影響で売り上げが落ちそうな中小規模店舗を保護するため、そこにわざわざ足を運び、お金を使ってくれる人たちを増やすのが目的なのだから。 毎日のランチも、飲み会も、還元の対象店をまずアプリで調べて……という人は、この事業に乗せられて、素直にお金を使ってくれる層ともいえる。自分の行動が誘導されているかもしれないとしても、あまりそれを気にしない寛容な人々だ。 経済産業省によると、還元事業に登録する店は日々増えており、2019年12月21日現在の登録申請数は約97万店だという。お金を使う場所がますます増えていきそうなので、ご用心を』、本年2月21日時点の登録申請数は約107万店と僅かながらも増えたようだ。
・『【傾向4】ポイント還元の開始後にクレジットカードを新しくつくった  クレジットカードの枚数をむやみに増やすのはポイントが分散するのでよろしくないと先に書いたが、「最近、新しくカードをつくった」という人はいないだろうか。その理由が、キャッシュレスアプリへの紐づけや高還元率キャンペーンを利用したいがためだとしたら、注意が必要だ。 キャンペーン上手のPayPayは、Yahoo!JAPANカードを決済先にすると還元率を最大までアップしてくれる。そのため筆者は、このカードを新たに申し込んだという声を聞いたことがある。 期間は終了してしまったが、JCBは自社グループ発行の個人カード・ビジネスカードをApple Pay またはGoogle Payに設定すると、20%をキャッシュバックするという、大型キャンペーンを打った。LINEが発行を予定している高還元率のVISAカードを申し込むつもり、という人も多いだろう。 クレジットカードは、そうそう気軽につくっていいものでもない。JCBによると、日本人のクレジットカードの平均保有枚数は3.2枚(2018年)。ネット通販や公共料金・通信費の決済に使用しているカードはなかなか変えられないし、還元率も似たり寄ったりだ。新たなカードをつくるきっかけがない中で、キャッシュレスのキャンペーンに乗って新規加入が増えれば、カード会社には御の字といえる。 カード会社は手数料の高いリボ払い(注)やカードローンで稼いでいる。多分、新規加入後には「オトクになりますよ」とリボ特典をアピールしてくるだろう。賢明な読者諸氏は、そちらには近寄らないようにしてほしい。本当に搾取されかねないからだ』、(注)リボ払い:予め設定した一定の金額を毎月支払ってゆく定額方式、支払残高の大きさに応じて毎月の支払額が増減する残高スライド方式の2通りがあるが、うっかりしていると支払残高が膨らみ、金利負担も大きくなるリスクがある。「賢明な読者諸氏は、そちらには近寄らないようにしてほしい」、その通りだ。
・『【傾向5】気づくと最近、現金決済をしていない  もともとキャッシュレス派だったという人は、自分の支払いペースがつかめているだろうから、問題ない。しかし、ポイント還元の開始後、にわかキャッシュレス派になったという人は、そろそろカードの利用明細を確かめよう。 現金では財布の中にある金額以上は支払えないが、キャッシュレスなら別だ。「現金お断り」にした楽天イーグルスの本拠地・楽天生命パーク宮城は約27%、ヴィッセル神戸の本拠地・ノエビアスタジアム神戸は約50%も、2019年の飲食購入金額が上がったという。 キャッシュレスにすると、現金より多めに使ってしまう傾向があるのは事実らしい。また、いくら払ったかは決済履歴を見て振り返ることができるが、「今月はあといくら使っていいのか」ということは、パッと見ではわからない。カード引き落とし日は1~2カ月先になるからだ。そこに無自覚のままキャッシュレス払いを重ねていると、突然口座の残高が赤字となってしまうことは、あり得ない話ではない。 ポイント還元事業の期間内に目いっぱい使おうというのはいいが、自分が払える範囲で使うという家計の基本をお忘れなく』、「自分が払える範囲で使うという家計の基本」、ではあるが、それをつい忘れて使ってしまいがちな人がかなり存在することも事実だ。
・『【傾向6】あれほど不人気なマイナンバーカードに興味がわいてきた  いまだ普及率が10%台にとどまるというマイナンバーカード。「個人番号が書かれたカードをつくるなんて、情報漏洩が不安じゃないか!」という声に押されているようだが、最近興味がわいてきたという人もいるのではないか。それは、現在のポイント還元事業終了後に、新しい制度が始まるからだ。 マイナンバーカードの所有者がIDを取得し、それを使用して電子マネーやスマホ決済アプリをチャージすると、25%の「マイナポイント」が付与される。2万円を入金すると5000円分のマイナポイントがつくというわけだ。 25%というとかなりの大盤振る舞いだ。決済サービス事業者カンムの調査によると、「マイナポイントを使いたい」と答えた割合は20歳以下で7割ほど。その8割以上が、ポイントバックが魅力だからと答えている。あれほど不人気だったマイナンバーカードが好意的に迎えられるとは、やはり還元率は人を惑わせるということか。 以前はセキュリティが不安だと言っていた人でも、心が揺れてしまうのが高い還元率。これまで関心がなかったのに「いい機会だし、マイナンバーカードをつくろうかな」と傾いてしまったとすれば、あなたは還元率にかなり弱いタイプという証拠だ。マイナンバーカードをつくること自体はいいとしても、この手の人は各種キャンペーンにおける「うっかり消費」のリスクがかなり高いと思われるため、注意が必要だ』、「マイナポイント」は申込期間が本年7月から来年3月末で、まだ「マイナポイントの申込ができるキャッシュレス決済サービスは現在募集中」のようだ。
https://mynumbercard.point.soumu.go.jp/
・『その消費は本当に必要?キャッシュレスの光と影  キャッシュレス決済には光もあれば影もある。たくさんのポイント還元を受けるためには、たくさんの消費が必要だ。本当に必要な消費をしたのか、還元策に釣られた結果なのか、その違いは大きい。無自覚のうちに必要以上のお金を払っていないか、我が身を振り返ることも大切なのだ』、「還元策に釣られ」ることのないよう気をつけたいものだ。

次に、2月7日付けダイヤモンド・オンライン「メルカリへのオリガミ売却価格は1株1円、事実上の経営破綻で社員9割リストラ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/228034
・『メルカリへの身売りを発表したスマートフォン決済のオリガミの譲渡価格は1株1円だったことが6日、分かった。オリガミは売却に当たり、社員185人のうち約9割にあたる160~170人規模のリストラを実行する。キャッシュレス決済のフロントランナーだった同社は競争激化により、事実上の経営破綻に追い込まれたかたちだ』、「オリガミ」が「事実上の経営破綻に追い込まれたかたちだ」、とは驚かされた。
・『事実上の経営破綻 フィンテック・バブルの崩壊か  スマートフォン決済の老舗であるOrigami(オリガミ)は1月23日、フリマアプリ大手メルカリのスマホ決済子会社であるメルペイに会社を丸ごと売却すると発表した。両社は売却価格を非公表としたが、複数の関係者は1株1円だったことを明らかにした。同社の株数は259万株であるため、譲渡価格は総額約259万円だったことになる。 日本経済新聞社が発表した「NEXTユニコーン調査」では、オリガミの企業価値は417億円と算定されており、今回の売却価格は市場評価を大きく下回ったことになる。金融関係者は「フィンテック(金融とITの融合)・バブルの崩壊」と語った。 複数の関係者によると、オリガミは売却発表と同時に社内向けに大規模な人員削減策を公表。社員185人のうち約9割にあたる160~170人規模のリストラ策に踏み切る。大半の社員は1月末が最終出社となり、2月末で退職になるという。これは事実上の解雇に当たるが、今回のメルカリへの売却は実質的な経営破綻となるため、「人員削減の必要性という項目に該当し、いわゆる整理解雇の位置付けだ」と関係者は明かした。 ダイヤモンド編集部の取材に対し、譲渡価格についてメルカリの広報担当者は「非公表のためノーコメント」とし、リストラの人数についてはオリガミとメルカリの両広報担当者共に「両社が最大に強みを発揮できる適切な人員配置を検討している」と語るにとどめた』、市場評価の「417億円」が僅か「約259万円」とは、まさに「フィンテック・バブルの崩壊」だ。
・『経営陣はスポンサー探しに奔走するも雇用守れず  オリガミはコスト面の負担が大きい一方で収益が追い付かず、1月中旬の段階で「残り数週間で資金がショートするレベル」(関係者)だった。 康井義貴社長をはじめ、オリガミ幹部は資本調達に走り回ったが、出資先が見つからずに八方ふさがりとなり、最後にたどり着いたのがメルカリだった。康井社長は1株1円という破格での売却の代わりに従業員の雇用維持を申し入れたが、従業員の削減が「メルカリからの買収条件だった」(オリガミ元社員)という。 日本企業では、買収元が買収先企業の従業員の大リストラに着手する事例は少ないが、「スタートアップの救済であれば妥当だ」とベンチャーキャピタル関係者は指摘する』、「従業員の削減が「メルカリからの買収条件だった」」とは冷徹な市場原理が貫徹されたようだ。
・『新興スマホ決済に押された“老舗”のオリガミ陣営  オリガミがしのぎを削っていたキャッシュレス決済の分野は、官民一体による推進と消費増税の緩和策として取られたポイント還元制度などを追い風に、多数の新規プレイヤーの参入が続いていた。 中でもオリガミは、2012年創業でいち早くキャッシュレス決済に進出した業界のフロントランナー。信用金庫の中央銀行としての役割を担う信用中央金庫と資本業務提携を結び、地方の加盟店開拓にも取り組んでいる。 だが、ソフトバンクグループ傘下の PayPay(ペイペイ)は、消費者還元キャンペーンを繰り返して顧客を拡大。加えて、ヤフーとLINEの経営統合によりLINEPayの顧客基盤が加わることなった。PayPayの加盟店数185万カ所に対して、オリガミは約19万カ所にとどまり、すでに大きく劣後している。 レガシー(負の遺産)を抱える銀行や証券会社など従来の金融プレイヤーがサービス改革に出遅れる中、イノベーターとして勃興してきたフィンテック・ベンチャー。「これまでは、赤字でも粗利益さえ増やせば資金は後から付いてくるというビジネスモデルだったが、大きな転機に差し掛かっている」と話す金融業界関係者もいる。 現在、多額のリスクマネーがフィンテック・ベンチャーに流れているが、今後はより一層スタートアップの真贋が問われる』、「フィンテック・ベンチャー」ブームも終わったようだ。

第三に、消費生活ジャーナリストの岩田 昭男氏が2月21日付け現代ビジネスに掲載した「「ペイペイの毒」に潰されたキャッシュレス企業…その残酷すぎる末路 「オリガミ身売り騒動」が意味するもの」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70526
・『地方での生き残りを図ったが…  Origami(オリガミ)の本社は、東京・六本木の六本木ヒルズ森タワーにある。筆者は昨年暮れにそこに取材に行った。 以前は表参道のこじんまりとしたビルに入っていたが、森タワーではワンフロアを贅沢に使っていた。まさに時代の最先端を行くIT企業ならではの洗練されたオフィスといった感じで、オリガミの社員も生き生きと働いているように見えた。 同社は2012年に設立され、日本で初めてQRコード決済サービスを始めたスタートアップ企業。ロゴマークは“折り紙”でつくった鶴だ。 社名といい、そのデザインといい、日本をイメージさせるユニークなもので、将来性のある企業として筆者は好感を持っていた。数あるQRコード決済サービスの企業の中でも、ダークホース的な存在として密かに注目もしていた。 もちろんオリガミは、PayPay(ペイペイ)や楽天ペイなどに比べると資本も少なく、おカネの面では互角に戦えないことははっきりしていた。そこで、地方に軸足を移して生き残りを図ろうとしていたのである。 例えば、JR東日本と提携し、青森で都市開発なども行っている。また、地方の信用金庫や地銀がQRコード決済サービスに進出するときは、たいていオリガミがバックにつくことが多いのが印象的だ。 そうした戦略について改めて話を聞くのが、冒頭の取材目的だった。実際、取材に応じた担当者は、新しいプランをいろいろと話してくれた。 だが今年1月23日、突如としてフリマアプリのメルカリがオリガミを買収すると発表したのだ』、「QRコード決済サービス」の草分けといえども、体力もないのに、「表参道のこじんまりとしたビルに入っていたが、森タワーではワンフロアを贅沢に使っていた」、とはやり過ぎだ。
・『原因は「ペイペイ」にあった?  オリガミは2013年からQRコード決済「Origami Pay(オリガミペイ)」のサービスを開始している。日本経済新聞が2019年11月に発表した「NEXTユニコーン企業調査」で企業価値417億円と報じられていた。そのため、買収額もそうした金額に準じるものになるのではないかと推測された。 それだけの成長が見込める企業と考えられていたわけだが、買収の内容は、実に惨憺たるものだった。「オリガミは借入先が見つからず、最終的にメルカリに1株1円、合計259万円、つまり“タダ同然”で身売りすることに合意した」と報じられたのである。 オリガミの売上高は3億円にも満たず、年度赤字だけでも前年比2倍の25億円にも達していたという。立派な本社オフィスの賃料が年間3億円だったというから、売上高よりも賃料のほうが高かったことになる。もはや、事実上の倒産状態だった。 誰もが思うのは、将来性を期待されていたユニコーン企業が、なぜそれほどまでに業績を悪化させてしまったか、だ。 筆者は、率直に言って、ペイペイの『100億円あげちゃうキャンペーン』に原因があるのではないかと考えている。そして、それは「QRコード決済業界の構造的な問題」でもあるのだ。 今から考えれば、ペイペイが2018年12月から展開した20%還元キャンペーンが終わりの始まりだったのかもしれない。ペイペイに刺激された同業他社も、かなり無理をしてでも同様のキャンペーンを始めた。それが各社を消耗させたのだ』、「立派な本社オフィスの賃料が年間3億円だったというから、売上高よりも賃料のほうが高かったことになる。もはや、事実上の倒産状態だった」、「ペイペイ」を抜きにしても、無理だったのではなかろうか。
・『業界を侵す「ペイペイの毒」  筆者は、LINE Pay(ラインペイ)のケースを身近に見ていた。LINEペイは収益モデルが異なるので、ペイペイの真似などしなくてもいいと思っていたが、キャンペーンの現場に取材に行くと事情は全く違っていた。 LINEの担当者は「ペイペイさんには絶対負けられない。負けないためにはまずキャンペーンが必要。しかも、連続してやらなければ勝てない」と力説していたのだ。 たしかにペイペイは1回で終わることなく、耳目を集める大型キャンペーンを続けて行っていた。それに対抗するため、当時のLINEの合言葉は、「走りながら考える」というものだった。そしてとうとう『300億円送っちゃうキャンペーン』を行うことになってしまったのである。 少しどぎつい表現をすれば、あの頃からすでに「ペイペイの毒」が回っていたのだ。それくらい異常だった。 結局、20%還元がいわば“業界標準”になったわけだが、いまは還元額の上限が1000円になって、それほど大きな痛手とまではなくなっている。それでも還元のための原資が必要には変わりない。 そもそも、クレジットカード業界の還元率は0.5〜1%が標準で、通常のカード利用で還元できるのはそれくらいが限度なのだ。加盟店の手数料による収益が決まっていて、それ以上のものは出せないし、無理にそれ以上のものを出せば、自ずと破綻することが分かっている。 要するに、ペイペイの登場によって、これまでクレジットカード業界が築き上げてきたキャッシュレス決済の常識が、大きく歪められる事態になったと言えるのだ』、確かに「ペイペイの毒」は業界に強く回ったようだ。
・『孫社長のしたたかな計算  結局、ペイペイに追随し、無理を重ねたLINEは大きな赤字を背負い込むことになる。2019年1月~9月期の決算で営業損益は275億円の赤字だった。LINEの親会社である韓国のIT企業・ネイバーは、LINEの赤字を受けて売却を決定。三下り半を突きつけるという格好になった。 そのLINEが駆け込んだのが、ソフトバンクグループを率いる孫正義社長だ。孫社長にしてみれば「しめしめ」といったところだろう。ペイペイとLINEペイは、QRコード決済サービス業界の1位と2位。つまり、ソフトバンクグループは業界のビッグ2を抱えることになったわけだ。 ペイペイを提供するヤフーとLINEの経営統合が昨年11月に発表されたとき、LINEペイはいずれペイペイに食われてなくなると予想されていた。しかし蓋を開けてみると、そのまま吸収というわけではなく、コミュニケーションアプリからの派生点や女性会員が多いというLINEペイの特徴を生かす形で、今のところ共存する形をとっている。 ライバルを潰し、それを取り込んで、さらに再生して上手に使う。ヤフーとLINEの統合のウラには、こうした動きが見て取れた、では、今回のメルカリによるオリガミ買収も同じことが言えるのだろうか。 オリガミがQRコード決済サービス企業であるのに対し、メルカリはフリマアプリが本業で、言ってみれば出自がまったく異なる。だからこそ、ペイペイとLINEペイと同じように2つが共存するのかと思ったが、どうやらそうではないようだ。 というのも、メルカリの目的は会員ではなく、オリガミペイの加盟店が欲しかっただけなのだ』、「メルカリの目的は会員ではなく、オリガミペイの加盟店が欲しかっただけ」、極めてドライな姿勢だ。
・『加盟店は欲しいけど人はいらない  メルカリのフリマアプリのユーザーは、「メルペイ」を使って買い物をしたりサービスを受けたりすることでポイントに換え、それをメルペイでまた使うことができる。つまり、メルペイはフリマアプリ、メルカリを使う人の決済手段なのだ。 メルカリで売り買いをすると、1万円までの買い物に対して1回200円の手数料がかかる。その手数料がメルペイを使うと無料になる。これは、会員にとっては大きなメリットだ。 そういうこともあって、メルペイの会員はすでに十分に足りている。そこで新たな課題となったのは、メルペイが使える加盟店をいかに増やすかだった。 加盟店を自前でつくるのは容易ではない。そこでメルカリは、ドコモのiDや三井住友カードなどのカード会社の暖簾を借り、メルペイが使える加盟店を増やしていった。結果、加盟店の数は2019年2月時点で約170万店に達し、ある程度の成果を得たのである。 しかし、カード会社の暖簾を借りることにはデメリットもある。それは、QRコード決済によって得られるはずの情報が思うように手に入らない点だ。 そこで、やはり自由に情報を手に入れることができる加盟店が必要だということで、目をつけたのがオリガミだった。オリガミペイの加盟店は全国に約19万店。数はそれほど多くないが、買収によってこの加盟店が手に入れば、メルカリにとって自前の加盟店展開の強力な地盤になる。 ちなみにメルカリは、オリガミの買収に際して、同社社員の大半のリストラを決定している。つまるところ、非情ながら「加盟店は欲しいけど人はいらない」ということに他ならない』、「加盟店は欲しいけど人はいらない」、「オリガミ」に「加盟店」以外には強味がなかった以上、いたしかたないだろう。
・『オリガミの敗因とは何だったのか  オリガミは元々、クレジットカード・クレディセゾンのポータルサイトのなかに自社のコーナーを持っていて、「セゾンOrigami Pay」というスマホ決済サービスを行っていた。しかし、昨年の10月末にこのサービスの終了を発表して、セゾンとの提携関係が解消していた。 セゾンとの提携は、オリガミにとって資金面での後ろ盾を得るという点で重要なものだった。しかし、セゾン色の打ち出しや人事面での介入といったマイナス面もあったはずだ。 いずれにしても、今考えれば、オリガミはこの時すでに重要な資金源を失ったことで、長い間、資金先の確保に苦しんでいたのではないだろうか。言わば、自主独立路線を選んだものの、結果として失敗に終わったことになる。 ペイペイのようにカネに物を言わせて派手なキャンペーンを打つわけにはいかないオリガミは、ケンタッキーと組んで半額クーポンを提供するなど、会員獲得のためにそれなりの手はいろいろと打ってきた。 しかし、小なりともいえキャンペーンを行うには金が要る。その積み重ねが、オリガミの体力を容赦なく奪っていったのではないか。 そういったことを考えても、オリガミの敗因の最大の理由は、ナショナルスポンサーの不在だった。例えば、ドコモのようなスポンサーを得て、その傘下として成長を図るといったことができれば、結果は違ったかもしれない。 そう感じてならない、今回のメルカリのオリガミ買収騒動だった』、「自主独立路線」を選ぶ前に、次の「資金源」の当たりをつてなかっとすれば、経営陣は余りにお粗末だ。オフィスの移転にしても、然りである。
タグ:決済 ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス AERAdot (その5)(「キャッシュレス還元祭り」に踊らされ 搾取される人の残念な傾向、メルカリへのオリガミ売却価格は1株1円 事実上の経営破綻で社員9割リストラ、「ペイペイの毒」に潰されたキャッシュレス企業…その残酷すぎる末路 「オリガミ身売り騒動」が意味するもの) 「「キャッシュレス還元祭り」に踊らされ、搾取される人の残念な傾向」 キャッシュレス決済のポイント還元事業 早くも「祭り」の後のスマホ決済再編の動きも見えてきた キャッシュレスの被搾取予備軍 【傾向1】使っているスマホ決済が3つ以上ある 【傾向2】以前よりもコンビニでの買い物が増えた 【傾向3】必ず還元事業の対象になっている店を探して入る 【傾向4】ポイント還元の開始後にクレジットカードを新しくつくった 【傾向5】気づくと最近、現金決済をしていない 【傾向6】あれほど不人気なマイナンバーカードに興味がわいてきた その消費は本当に必要?キャッシュレスの光と影 「メルカリへのオリガミ売却価格は1株1円、事実上の経営破綻で社員9割リストラ」 オリガミの譲渡価格は1株1円だった 社員185人のうち約9割にあたる160~170人規模のリストラ 事実上の経営破綻 フィンテック・バブルの崩壊か 「NEXTユニコーン調査」 オリガミの企業価値は417億円と算定 経営陣はスポンサー探しに奔走するも雇用守れず 従業員の削減が「メルカリからの買収条件だった」 新興スマホ決済に押された“老舗”のオリガミ陣営 フィンテック・ベンチャー 岩田 昭男 「「ペイペイの毒」に潰されたキャッシュレス企業…その残酷すぎる末路 「オリガミ身売り騒動」が意味するもの」 地方での生き残りを図ったが… 以前は表参道のこじんまりとしたビルに入っていたが、森タワーではワンフロアを贅沢に使っていた 日本で初めてQRコード決済サービスを始めたスタートアップ企業 原因は「ペイペイ」にあった? オリガミの売上高は3億円にも満たず、年度赤字だけでも前年比2倍の25億円にも達していた 立派な本社オフィスの賃料が年間3億円だったというから、売上高よりも賃料のほうが高かったことになる。もはや、事実上の倒産状態だった 業界を侵す「ペイペイの毒」 ペイペイは1回で終わることなく、耳目を集める大型キャンペーンを続けて行っていた 「ペイペイの毒」 クレジットカード業界の還元率は0.5〜1%が標準で、通常のカード利用で還元できるのはそれくらいが限度なのだ。加盟店の手数料による収益が決まっていて、それ以上のものは出せないし、無理にそれ以上のものを出せば、自ずと破綻することが分かっている ペイペイの登場によって、これまでクレジットカード業界が築き上げてきたキャッシュレス決済の常識が、大きく歪められる事態になった 孫社長のしたたかな計算 ペイペイとLINEペイは、QRコード決済サービス業界の1位と2位。つまり、ソフトバンクグループは業界のビッグ2を抱えることになった メルカリの目的は会員ではなく、オリガミペイの加盟店が欲しかっただけ 加盟店は欲しいけど人はいらない オリガミの敗因とは何だったのか 自主独立路線を選んだものの、結果として失敗に終わった
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日本の政治情勢(その42)(古い「仲間内資本主義」では新しい成長産業は育たない、「検事長定年延長」で検察は政権の支配下に~森法相の答弁は説明になってない、小田嶋氏:10人の部下を持つ人間がウソをつくと 10人のウソつきが誕生する) [国内政治]

日本の政治情勢については、2月7日に取上げたばかりだが、今日は、(その42)(古い「仲間内資本主義」では新しい成長産業は育たない、「検事長定年延長」で検察は政権の支配下に~森法相の答弁は説明になってない、小田嶋氏:10人の部下を持つ人間がウソをつくと 10人のウソつきが誕生する)である。

先ずは、立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授の金子 勝氏が2月19日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「古い「仲間内資本主義」では新しい成長産業は育たない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/229216
・『「桜を見る会」疑惑追及が優先されるべき理由  安倍晋三首相は、通常国会での施政方針演説で、地元後援者らを税金でもてなした「桜を見る会」の疑惑も、「カジノ汚職」も、菅原・河井元大臣らの公選法違反問題にも言及せず、ひたすら東京五輪の「成功」を目指すことや「改憲」の意欲を喧伝した。 その後の予算委員会でも、桜を見る会の推薦者名簿の調査や夕食会の明細書などの提出にも応じないままだ。17日には、夕食会代のホテルへの支払いは参加者個人がやり、ホテルは参加者個人に宛名のない領収書を出したなどと、安部首相が説明してきたことを、ホテル側が、野党に出した文書で「否定」していることが野党側から明らかにされたが、首相が国民に対し疑惑を自ら払拭しようという姿勢は感じられない。 与党からは「いつまで桜(を見る会の追及)をやっているのか」「もっと議論すべき重要なことがある」と、幕引きを図る声も出るが、「潔白」を言うなら、国民が納得するきちんとした説明をすべきだろう。 社会全体を考えるべき政治家が税金を私物化し、官僚組織が政権におもねって、公文書を廃棄したり改ざんしたりして証拠を隠すようなことがまかりとおることになれば、社会の規範が一気に崩れる。 “仲間内”で利益を分け合い、権力に近い人間だけが甘い汁を吸うことで、公正なルールを壊してしまうと、モラルは壊れ、企業経営も産業も腐っていく。 日本はその「寸前」に来ている』、金子氏の危機感がひしひしと伝わってくる。
・『安倍政権の体質は「クローニーキャピタリズム」  安倍政権の体質は、開発独裁によく起きるクローニーキャピタリズム(仲間内資本主義)に似ている。 このことは「森友・加計問題」でもさんざん批判されたが、最近でも同じようなことがいくつか起きた。 一つは、政権に近いとされる黒川弘務東京高検検事長(63)の定年を半年間、延長することが、1月末の閣議で決められた問題だ。 黒川氏は2月8日に、検察庁法の規定にある63歳の定年を迎える予定だった。検察官の定年延長は過去に例がなく、稲田信夫検事総長が慣例通り約2年の任期で勇退することを念頭に、黒川氏を検事総長になれるようにしたといわれている。 法務省の官房長や事務次官を務めた黒川氏は、安倍政権では共謀罪などの重要法案策定にたずさわり、菅官房長官と近いとされる。 首相は国会での質問に、この人事は「法務省の中で決定し、閣議決定した」としか答えていないが、異例の事態に法務省や検察内からも驚きの声が上がっているという。 途上国などでは、為政者が司直の手が自らに及ばないようにしたり、政敵を摘発したりする狙いで“子飼い”を捜査当局の要職につけることがままある。 まさか、そんなことを考えているわけではないと信じたいが、安倍政権では、2013年にも「法の番人」とされる内閣法制局長官に、内部昇格という慣例を破って憲法解釈の変更に前向きな外務省出身者を起用した“前科”がある。 「お友達」の政治家を大臣に登用、霞が関の幹部職員の人事権を官邸が握り、政権に忠実な役人を側近として重用してきた安倍政権だが、政治的中立性や独立性が厳しく担保されるべき組織の人事まで“私物化”が始まっている。 「身内へのえこひいき」ぶりに自民党内からも批判が出たのが、昨夏の参院選でウグイス嬢ら選挙運動員に3万円という、法定の倍以上の日当を払っていた河井案里参議院議員に対する優遇だ。 派手な選挙運動の原資として、党本部から、通常の約10倍の1億5000万円が振り込まれていたという。 もともと広島選挙区では、溝手顕正・元国家公安委員長(元参院議員会長)が議席を持っていたが、首相は、首相補佐官を務めた側近の河合克行前法相の妻だった案里氏を擁立、強引に2人の候補者を出した。 落選した溝手氏は第1次安倍政権下で行われた2007年参院選での自民惨敗を「首相の責任」と批判し、民主党政権時代の2012年に安倍氏が消費増税関連法案への賛成と引き換えに「話し合い解散」を迫った際も、「過去の人」と評する など反安倍発言が目立っていたという。 選挙では 案里氏には首相や二階幹事長が入れ代わり立ち代わり応援に訪れるなど露骨な肩入れをしたのに対し、溝手氏が党本部から受け取ったのは1500万円だったという。 案里氏側に流れた資金には、国の政党交付金も入っていたが、首相や政権の権力維持のために税金が使われる構図は「桜を見る会」と同じだ』、「クローニーキャピタリズム」が日本のような先進国で起きているとは、恥ずかしい限りだ。「検察官の定年延長」問題は、第二、第三の記事でも紹介する。「反安倍発言が目立っていた」「溝手氏」を落選させるための、党本部からの「通常の約10倍の」カネが買収に使われ、逮捕目前になっているのも、酷い話だ。
・『現職国会議員が逮捕された「カジノ汚職」も、仲間内資本主義の体質と無縁ではない。 カジノを含む統合型リゾート(IR)への進出を狙った中国企業が、現金や中国、北海道への旅行費用など、総額800万円近くを贈与したとされる秋元司衆議院議員は、IRを所管する内閣府副大臣だった。 IR進出を狙って中国企業が安倍政権のIR担当副大臣を頼ったのはある意味、当然だった。 秋元議員から、当時、与党内で協議中だったカジノ法案の検討状況などの情報を得ることを期待し、また内閣官房の担当者を紹介してもらい、IR地域に指定される自治体の拡大を働きかけたという。 秋元議員のほかにも、この中国企業のカネが 通称「IR議連」とよばれるカジノ誘致の国際観光産業振興議員連盟の岩屋毅幹事長や、IR問題を所管する菅官房長官に近い議員らにも流れていた。 安倍政権では身内のコネが強力な利権獲得の手段になることを意識していたからだろう。 安倍首相自身も2017年2月の日米首脳会談の後、トランプ大統領から米カジノ業者の日本進出への尽力を要請されたり、カジノ業者らとの会合に出席したりしたことが報じられている』、「カジノ汚職」での「秋元議員」は氷山の一角に過ぎないが、仮に全貌が明らかになれば、政権がひっくり返るだけでなく、自民党・維新の会には大打撃となるため、「検察官の定年延長」問題につながった可能性がある。
・『古い“縁故主義”で成長戦略は惨憺たる結果  カジノは安倍政権の「成長戦略」の一つだが、事実上、事業の成否は許認可をどう取るかだ。もともと成長戦略といえる代物ではないのだが、古い縁故主義に支配された産業政策から新しい産業が生まれないことは明らかだ。 実際に、安倍政権の「成長戦略」は惨憺たる結果だ。 国家戦略特区事業で、ニューライフサイエンスと言いながら研究業績がほとんどないにもかかわらず、安倍首相と理事長が大学時代からの友人という加計学園が選ばれた。 また、スーパーコンピューターの開発事業でも、安倍首相を取り巻く人脈(たとえば著作『総理』を書いた山口敬之元TBS記者)と近い関係にあった齊藤元章社長のペジーコンピューティングが、文科省や経産省からベンチャー支援のために巨額の助成金を詐取することになった。 齊藤氏は、2015年5月に麻生太郎副総理が国会で称賛し、翌年10月には経済財政諮問会議の「2030年展望と改革タスクフォース」で委員に抜擢されていた。 齊藤氏は、開発費を水増しした虚偽の実績報告書を新エネルギー・産業技術総合開発機構に提出、受け取った助成金を負債の返済や会社の資金繰りにあてていた。 約100億円もの助成金 のうち、文科省などの60億円が返還されたが、28億円 がまだ返還されていない』、「ペジーコンピューティング」では、伊藤詩織さんをレイプした安部首相と親しいジャーナリストの山口敬之氏が、同社から高級マンションの家賃を出してもらっていたようだ。山口敬之氏の罪も不問にされた。
・『縁故主義で権力者周辺の者だけが利益を得るようなり、しかもトップの責任者が居直ると、不正と腐敗が組織全体に行き渡る。不正と腐敗が野放しになると、政府も企業も公正なルールに欠け情報開示もないまま、赤字や損失を垂れ流しても当たり前になる。 モラルや規律が崩壊した典型が官民ファンドである。14の官民ファンドのうち、アベノミクスとともに成長戦略を実現するはずの12のファンドが設立されたが、すでに2017年度末時点で8つが累積損失を出していった。惨憺たる結果だ。 海外への新たな事業展開を支援する官民ファンドのクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)も、利益が上げられず、累積損失が約179億円に達している。 出資企業に対して損失を税金で補填する仕組みになっているが、2014~17年公表の事業のうち少なくとも7件で、機構の株主企業6社に出資総額の3割にあたる約196億円が還流されていた。 たとえば、吉本興業は昨年4月にクールジャパンから100億円もの出資が決まった。その時は、大阪でのG20に合わせて、「なんばグランド花月」の「吉本新喜劇」に安倍首相がサプライズ出演し、6月には、出演の返礼に「吉本新喜劇」の出演メンバーらが官邸を訪問したとされる。 まるで「友達扱い」だが、吉本興業の教育事業への出資は、反社会勢力との「闇営業」が問題になったにもかかわらず、結局、そのまま決められた。 INCJ(旧産業革新機構)が出資した半導体のルネサスやディスプレーのJDI(ジャパン・ディスプレイ)の失敗も惨憺たるものだ。厳しい業績審査があるわけではなく、税金がズブズブ注ぎ込まれていった。 JDIは日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合して、韓国や台湾企業などとの価格競争に敗れた液晶産業を、政府主導で再構築するねらいで作られた。 発足は安倍政権前だが、その後、2015~16年にかけ、累計100億円程度の在庫の過大計上が行われ、営業損益のかさ上げや損失先送りなどの粉飾決算の疑惑が出ている。これまで約3500億円もの税金が投入されたが、経営は上向かないまま。2019年3月期決算では1094億円の最終赤字だ。 台湾と中国の企業連合「SUWAインベストメント」から800億円の資本を受け入れる計画もとん挫、代わっていちごアセットグループに買収される方向に変わるなど、「投げ売り」状態になっている。 官民ファンドがうまくいかないのも、先端技術の知識もマーケティング能力もない、大企業と官庁の寄せ集めの組織体で統一した経営戦略が打ち出せない一方で、所轄官庁の下で失敗がチェックされないまま役所の天下りや助成金の受け皿になっていて経営規律が働きにくいことがある。 しかも国のトップがこのありさまだから、責任をとる者は誰もいない』、「官民ファンド」については、このブログでも機構資本主義として取上げている。
・『日銀の大規模緩和策 規律喪失させ市場不全に  これだけ規律や公正なルールが壊れた社会では、新しい産業が生まれたり経済が活性化したりすることはない。 一方で公文書やデータの改ざんや隠蔽を繰り返しても責任を問われなければ、その場しのぎのインチキやゴマカシが横行する。かつては考えられなかったような企業の検査データなどの偽装が、三菱自動車をはじめ、旭化成建材や日産自動車、富士重工など、名だたる一流企業で次から次に発覚するのも、無関係ではない。 加えて目標も目的も見失ったまま、日銀の大規模金融緩和やマイナス金利政策が続けられていることも、日本経済の規律喪失や弛緩を助長する。 安倍首相が「政治任用」した黒田東彦総裁のもとで超金融緩和が続けられているが、「2年」で実現するとした「2%物価目標」は、7年近くたっても達成できないまま、金融緩和とマイナス金利を続けざるをえないでいる。 その結果、地銀・信金に経営困難をもたらす一方で、金利負担がなく、場合によっては日銀が社債を買ってくれるので、ソンビ企業でも経営責任を問われずに生き残ることができる。 おまけに日銀を筆頭にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) や共済年金やゆうちょ銀行、かんぽ生命が株買いで株価を支えてくれる。 ストックオプションを得た経営者たちは、地道な技術開発投資をせず、労働分配率を切り下げても、内部留保をため込み、配当を増やし、自社株買いで株価をつり上げれば、短期的に利益を得ることができる。 結果として、日銀は緩和を続けるしかなく、金融政策は出口のないネズミ講のようになり、株式市場も機能不全に陥ってしまっている。 本来、株式市場は、新商品開発や技術革新で成長を競う企業の活動が株価として見える化され、それが新たな投資を呼び込み、さらなる企業の成長につなげる役割だが、そうした「自由主義」経済のダイナミズムも働かなくしてしまっているのだ。 安倍政権の下で、産業の競争力低下が起き、日本経済がどんどん朽ち果てていくのは当然だろう』、「企業の検査データなどの偽装が・・・名だたる一流企業で次から次に発覚するのも、無関係ではない」、「「自由主義」経済のダイナミズムも働かなくしてしまっている」、説得力溢れた主張で、全面的に同意する。

次に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が2月5日付け同氏のブログに掲載した「「検事長定年延長」で検察は政権の支配下に~森法相の答弁は説明になってない」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2020/02/05/%e3%80%8c%e6%a4%9c%e4%ba%8b%e9%95%b7%e5%ae%9a%e5%b9%b4%e5%bb%b6%e9%95%b7%e3%80%8d%e3%81%a7%e3%80%81%e6%a4%9c%e5%af%9f%e3%81%af%e6%94%bf%e6%a8%a9%e3%81%ae%e6%94%af%e9%85%8d%e4%b8%8b%e3%81%ab%ef%bd%9e/
・『2月1日の【黒川検事長の定年後「勤務延長」には違法の疑い】と題する記事で、検察庁法が、刑訴法上強大な権限を与えられている検察官について、様々な「欠格事由」を定めていることからしても、検察庁法は、検察官の職務の特殊性も考慮して、検事総長以外の検察官が63歳を超えて勤務することを禁じる趣旨と解するべきであり、検察官の定年退官は、国家公務員法の規定ではなく、検察庁法の規定によって行われると解釈すべきだとして、違法の疑いを指摘したところ、大きな反響を呼び、この問題は、昨日(2月3日)の衆議院予算委員会でも取り上げられた。 渡辺周議員の質問に、森雅子法務大臣は、「検察庁法は国家公務員法の特別法に当たります。そして特別法に書いていないことは一般法である国家公務員法が適用されることになります。検察庁法の22条をお示しになりましたが、そちらには定年の年齢は書いてございますが勤務延長の規定について特別な規定は記載されておりません。そして、この検察庁法と国家公務員法との関係が検察庁法32の2に書いてございまして、そこには22条が特別だというふうに書いてございまして、そうしますと勤務延長については国家公務員法が適用されることになります」と答弁した。 森法相は、検察庁法と国家公務員法が特別法・一般法の関係にあると説明したが、何とかして、黒川検事長の定年延長を理屈付けようとした政府側の苦しい「言い逃れ」に過ぎない。 問題は、検察庁法22条の「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。」という規定が、「退官年齢」だけを規定したもので、「定年延長」については規定がないと言えるのかどうかである。検察庁法の性格と趣旨に照らせば、「退官年齢」と「定年延長は認めない」ことの両方を規定していると解するのが当然の解釈だろう。 裁判官の定年退官について、憲法80条では「その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。」と定められ、裁判所法50条で「最高裁判所の裁判官は、年齢70年、高等裁判所、地方裁判所又は家庭裁判所の裁判官は、年齢65年、簡易裁判所の裁判官は、年齢70年に達した時に退官する。」とされている。憲法の規定に基づく裁判所法の「年齢が~年に達した時に退官する」と同様に、検察庁法で規定する「定年」は、その年齢を超えて職務を行うことを認めない趣旨だと解するべきである。 森法相は、「裁判官も国家公務員だから、裁判所法の定年退官の規定は、年齢だけを定めたもので、定年延長については規定していないので、一般法の国家公務員法の定年延長の規定が適用される」とでも言うのであろうか』、「森法相」の答弁は明らかに無理がある。
・『そもそも、検察庁という組織において、国家公務員法82条の3の「その職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずる」というような事態が生じることがあり得るのか。検察庁法が規定する検察官の職務と検察庁の組織に関する「検察官一体の原則」からすると、そのようなことは想定できない。 検察庁法1条の「検察庁は検察官の行う事務を統括するところとする」という規定から、個々の検察官は独立して検察事務を行う「独任制の官庁」とされ、検察庁がその事務を統括すると解されている。それは、官庁のトップの有する権限を、各部局が分掌するという一般の官公庁とは異なる。つまり、検察官は、担当する事件に関して、独立して事務を取り扱う立場にあるが、一方で、検察庁法により、検事総長がすべての検察庁の職員を指揮監督する(7条)、検事長、検事正が管轄区域内の検察庁の職員を指揮監督する(8条、9条2項)とされていることから、検事総長、検事長、検事正は、各検察官に対して指揮監督権を有し、各検察官の事務の引取移転権(部下が担当している事件に関する事務を自ら引き取って処理したり、他の検察官に割り替えたりできること)を有している。それによって「検察官同一体の原則」が維持され、検察官が権限に基づいて行う刑事事件の処分、公判活動等について、検察全体としての統一性が図られている。 検察官の処分等について、主任検察官がその権限において行うとされる一方、上司の決裁による権限行使に対するチェックが行われており、事件の重大性によっては、主任検察官の権限行使が、主任検察官が所属する検察庁の上司だけでなく、管轄する高等検察庁や最高検察庁の了承の下に行われるようになっている。 このように、検察の組織では、検察官個人が独立して権限を行使するという「独立性のドグマ」と、検察官同一体の原則による「同一性のドグマ」との調和が図られているのであるが、少なくとも、検察官の職務については、常に上司が自ら引き取って処理したり、他の検察官に割り替えたりできるという意味で「属人的」なものではない。特定の職務が、特定の検察官個人の能力・識見に依存するということは、もともと予定されていないのである』、「森法相」答弁の根拠は見事に覆された。
・『検察庁という組織には、定年後の「勤務延長」を規定する国家公務員法81条の3の「職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき」というのは、もともと想定されていないというべきである。 森法相は、黒川検事長の「勤務延長」の理由について、「東京高検検察庁の管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するため、黒川検事長の検察官としての豊富な経験知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が不可欠であると判断したため、当分の間引き続き東京高検検察庁検事長の職務を遂行させる必要があるため、引き続き勤務させることとした」と答弁した。 しかし、少なくとも、黒川検事長の「検察官としての豊富な経験知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が不可欠」とは考えられない。ここでの「部下職員」は、主として東京高検の検察官や、東京地検幹部のことを指すのであろうが、黒川検事長の勤務の大半は「法務行政」であり、検察の現場での勤務は、合計しても数年に過ぎない。また、検事正の勤務経験も、松山地検検事正着任直後に、大阪地検不祥事を受けて法務省に設置された「検察の在り方検討会議」の事務局に異動したため、僅か2か月程度に過ぎない。他の、東京高検検察官、東京地検幹部の方が、遥かに「検察官としての経験」は豊富である。 黒川検事長の定年延長についての森法相の答弁は、法律解釈としても疑問だし、実質的な理由も全く理解できない。それが、次期検事総長人事を意図して行われたとすれば、「検事総長自身による後任指名」の慣例によって「独立性」を守り、それを「検察の正義」の旗頭としてきた検察にとって「歴史的な敗北」とも言える事態である。 かねてから、内部で全ての意思決定が行われ、外部に対して情報開示も説明責任も負わない閉鎖的で自己完結的組織が「検察組織の独善」を招くことを指摘してきた私は、「検察の独立性」を守ることにこだわるつもりは毛頭ない。しかし、内閣固有の検事総長の指名権を正面から行使するのではなく、違法の疑いがある定年延長という方法まで用いて検察トップの人事に介入しようとするやり方には、重大な問題がある。責任を回避しつつ、意向を実現しようとする「不透明性」なやり方で、安倍政権は、検察組織をもあからさまに支配下におさめようとしているといえよう』、「黒川検事長の勤務の大半は「法務行政」であり、検察の現場での勤務は、合計しても数年に過ぎない」、初めて知った。ますます延長の根拠が揺らいだようだ。「責任を回避しつつ、意向を実現しようとする「不透明性」なやり方で、安倍政権は、検察組織をもあからさまに支配下におさめようとしているといえよう」、野党ももっと追及してほしい。

第三に、コラムニストの小田嶋 隆氏が2月21日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「10人の部下を持つ人間がウソをつくと、10人のウソつきが誕生する」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00058/?P=1
・『東京高検検事長の定年が延長されたニュースの第一報が流れたのは、先月末(1月31日)だった。 この時点の記事は、リンク切れになっている。 新聞社にとって、記事が、コストと人員をかけた制作物であり、なおかつ大切な収益源であることを考えれば、読者たる私たちが、記事の無料公開を期待するのは、虫の良すぎる話なのだろう。この点は理解できる。当然だとも思う。 ただ、一定の期間を過ぎた記事をいきなりリンク切れにするのではなく、有料での閲覧に切り替えるなり、過去記事閲覧サービスへの紹介ページに誘導するなりの措置は、あってしかるべきだと思う。 自分の原稿に限らず、ちょっと前のブログ記事やウェブ上のコンテンツからリンクした先の記事が、行方不明になっていた時の失望感はバカにならない。メディア各社には、ぜひリンク切れ記事の処理の再考をお願いしたい。ちなみに、諸外国では、過去記事は国民共有の財産(ないしは情報源)として、無料で公開している例も少なくないと聞く。過去記事を太っ腹に公開することで、記事閲覧サービスへの加入者拡大を促す可能性もゼロではないと思う。ぜひ検討してもらいたい。 話を元に戻す。私が個人的にクリップしていた記事を要約すると、1月末の時点の朝日新聞の記事は、当該の人事が閣議決定されたことと、検事長が検察官の定年を超えて勤務を続けるのが初めてのケースである旨を簡単に伝えたものだった。 翌2月1日付の朝日新聞デジタルの有料記事では、《高検検事長の定年延長、官邸介入で「やりすぎでは」の声》という見出しで、手続きの異例さと、当該の人事への反響を伝えている。 2月11日には、東京新聞が「視点」という編集局次長による署名原稿の形で、《検事長人事案を官邸に蹴られた… 前代未聞の人事介入は検察の独立性を揺るがす》という解説記事を掲載した。 本文では 《黒川氏は法務省の官房長、次官を計七年五カ月も務め、与党に幅広い人脈を持つ。この間、検察は政治家の絡む事件に積極的に動くことはなかった。「安倍政権の守護神」とやゆされたこともあった。今回の定年延長は「腐敗摘発はほどほどに」という検察へのメッセージだと受け止めた国民も多かったと思う。検察の独立性を揺るがすことだと想像できないのだろうか。長期政権末期の腐臭が漂う出来事である。》と、きびしく断言している』、「長期政権末期の腐臭が漂う出来事である」との手厳しい批判は、さすが「東京新聞」らしい。
・『さらに2月19日には、毎日新聞が「水説」という同紙の専門編集委員による署名入りの連載コラムで《怒れる検事長OB》という見出しの文章を載せている。 ここでは、《知り合いの検事長OBに聞いてみた。国家公務員法の適用は妥当かと。「僕はそう思わない」と一人は言った。「これはルール・オブ・ロー(法規範)から外れている。内閣と検察がお互いに緊張感を持って仕事をするのがルールだ」。別の一人はもっと直接的だった。「黒川君を抱えないとやれない重要事件って何よ。総理や法務大臣に定年が恣意(しい)的に動かされると、検察官の独立性に影響する可能性がある。怒っている人が多い」》と、法曹界内部に広がる怒りと反発の声を紹介している。 ともあれ、新聞各社は、現政権による異様な人事への憂慮の念を記事化すべく、努力を続けている。 個人的に、このニュースは、現政権が「人間」を道具のように扱うやりざまのひとつの典型例だと思っているのだが、より専門的な見地から、今回の人事を、三権分立の原則を脅かすとてつもない暴挙だと評している人たちもいる。 当稿では、そこのところには触れない。 理由は、私が法の支配や三権分立に関して専門的な知識を持っていないからでもあるのだが、それ以上に、個人的な関心に訴えたのが、「ボスと下っ端の間のやりとり」という、より卑近なテーマだったという事情に依拠している。 私たちは、上からのゴリ押しに弱い。 コンビニの店長とアルバイトの関係で日々起こっているのと同じことが、政権の中枢でも繰り返されている。 うちの国の民の多くは、原理原則よりも目先の人間関係の圧力に従うことで日々の暮らしを営んでいる。 その人間的な弱さのあらわれ方が、あまりにも身に迫って感じられたので、今回はその話をする。ウソをつかされる人間の心が、どんなふうに死んでいくのか。これは人ごとではない。圧迫的な人間関係の中で暮らしている日本人の多くが毎日のように経験していることだ。 検事長の定年延長をめぐる話題が国会で取り上げられると、野党側からの質問に対して、しかるべき立場の官僚が説明をせねばならないわけなのだが、権力勾配のもたらす圧力は、当然、この立場の人間に集中することになる。 面白かったのは、人事院のお役人の答弁の変遷だ。 記事によれば、答弁に立った人事院の松尾恵美子給与局長は、2月12日の衆院予算委員会で 《定年延長導入を盛り込んだ国家公務員法改正案が審議された1981年、人事院が「(延長は)検察官には適用されない」との解釈を示していたことを指摘され、「現在まで同じ解釈を続けている」と答えた。》ことになっている。それが、19日には《立憲民主党の山尾志桜里氏の質問の際、松尾氏が「『現在』という言葉の使い方が不正確だった。撤回させていただく」と答えた。さらに1月22日に検察庁法を所管する法務省から定年延長について相談があり、24日に「異論はない」と書面で返答したとも説明。森雅子法相も解釈を変更した時期を「1月下旬」と答えた。》てなことになっている』、「私たちは、上からのゴリ押しに弱い・・・私たちは、上からのゴリ押しに弱い」、鋭い指摘で、その通りだ。
・『松尾局長は、山尾氏の「なぜ2月12日の時点で解釈変更に言及せず、解釈を引き継いでいると説明したのか」という追い打ちの質問に対して 「つい言い間違えた」と答えている。 これには驚いた。あんまりびっくりしたので、この時のやりとりは、わざわざネット動画を探しに行って確認した。 と、松尾局長は、本当に「つい言い間違えた」と言っている。なんと。本当に、生身の人間が、国会で「つい言い間違えた」と言わされていたのである。 私自身、こんな国会答弁を聞いたのは初めてだ。 見ていて気の毒になった。いや、動画を見てもらえればわかる。彼女の表情はまったく生気を失っている。これほどまでにいたましい人間の振る舞い方を見て、心を痛めない人間はそんなにいないはずだ。 松尾局長はさらに 「隠すつもりはなかったが、聞かれなかったので答えなかった」と述べている。 これにも、びっくりだ。こんなバカな答えがあるものだろうか。 でもって、質問の最後の部分を記録した映像には、答弁席に立ち尽くす松尾局長に向かって、後方の閣僚席に座っている茂木外務大臣が、 「帰れ!帰れ!」と促す声が記録されている。茂木大臣が発動したあからさまな恫喝については別の機会に別の場所で触れることがあるかもしれない。とりあえずここではこれ以上の言及はしない。「あきれた」とだけ言っておく。 大切なのは、松尾局長が、ご自身の12日の答弁と、安倍首相が国会で述べた言葉の不整合を調整して、首相の発言に沿って「現在」の法解釈を合わせるべく、無理な路線変更を余儀なくされたことだ。 つまり、彼女は「辻褄を合わせる」ミッションを負っていたわけだ。 そこのところから考えて、松尾局長が、「つい言い間違えた」などという愚かしい答弁をせねばならなかったのは、彼女が無能だったからではない。愚かだったからでもない。松尾局長が、見苦しい答弁をせねばならなかったのは、彼女が正直な回答をブロックされていたからだ。 本当のことを言ってはいけない立場に立たされた時、正直な人間は、正体を失う。自分自身をさえ失う。 彼女は、自分が従事している仕事の職業倫理に反する回答を求められ、それを衆人環視の中で自分の口から吐き出さなければならなかった。 とすれば、ロボットみたいな無表情で機械的な発話を繰り返すか、でなければ、3歳児の如き無垢を発揮するほかに対処のしようがないではないか』、森友学園問題で、近畿財務局が職員が決裁文書改ざんを強要され、自殺者という犠牲者まで出したことも記憶に新しいところだ。
・『松尾局長は、この時、「口裏を合わせる」ことを求められていた。 これまで、幾人の高級官僚がこのこと(←政権中枢の発言に事後的に口裏を合わせること)を求められ、そしてそのミッションを果たすことによって、自らの人間の尊厳を喪失してきたことだろうか。 おそらく、公衆の面前であからさまなウソをついてしまった人間のうちの何割かは、二度とそれ以前の自分に戻れなくなっているはずだ。 意に沿わぬウソをつかされた人間は、精神的に死んでしまう。 中には本当に死んでしまう人もいる。 松尾さんには、ぜひ立ち直ってもらいたいと思っている。 やや手加減した言い方をすればだが、私は、安倍総理が、自らの過去の言動と現在の立ち位置との間に生じる矛盾を覆い隠すために塗り重ねてきたウソの中には、結果的にウソになってしまった分も含めて、無理のない話もあったのだろうと思っている。 誰であれ、やっていることと言っていることとの間には、多少の齟齬があるものだし、過去にやってしまったことと、現在やろうとしていることとの間には、多かれ少なかれ矛盾点や食い違いが生じるものだからだ。 ただ、上の立場の人間がウソを押し通す時、その下で働く人間は、ボスのウソをカバーする立場に追い込まれる。これは、当事者にとっては、非常に苦しいミッションだ。 安倍さんは、その、とてつもなく不毛で罪深い仕事を、自分の足元にいる非常に広範囲の人間たちに強要している。私の個人的な考えでは、安倍政権の罪は、ウソをついたことそのものよりも、部下にウソをつかせ続けてきたことの中にあると思っている。 ウソをつかされた人間は、死んでしまう。 自分のウソを糊塗するためにウソをつくのもそれはそれでキツい仕事だが、他人が勝手に言い放ったウソの尻拭いのために自分が人前でウソをつかねばならない立場に追い込まれることは、誇り高い人間にとっては、死を意味している。 ANAホテルの広報担当者が、新聞の取材に対して首相答弁を否定する回答をした旨の記事を受けて、2月の17日に、私は以下のようなtwを投稿した。ぶら下がっているスレッドともどもご笑覧いただきたい。 《ホテルにとっての一番の財産は信用だ。ただ、信用の置けるホテルには二種類ある。ひとつは、太客がウソをついた時に口裏合わせをしてくれるホテルで、もうひとつは法と正義と真実を大切にするホテルだ。どちらのホテルに信用を置くのかは人それぞれだ。個人的には後者を信用する人間を信用したい。》 ここで言う、「信用の置けるホテル」のうちの前者(←太客がウソをついた時に口裏合わせをしてくれるホテル)は、具体的には、ホテルニューオータニを指している』、「上の立場の人間がウソを押し通す時、その下で働く人間は、ボスのウソをカバーする立場に追い込まれる。これは、当事者にとっては、非常に苦しいミッションだ。 安倍さんは、その、とてつもなく不毛で罪深い仕事を、自分の足元にいる非常に広範囲の人間たちに強要している」、その通りだ。
・『ホテルニューオータニは、「ホテル側が約800人の前夜祭参加者と個別に契約し、個別に領収書のやりとりをした」という首相の説明をいまもって否定していない。このほか、当日の会費の設定や、明細書の有無や、契約した当事者の名前も含めて、一切明らかにしていない。つまり、太客である首相夫妻ならびに政府にとって都合の悪い情報に関しては口を閉ざしている。 これはこれで、「信用」を守るひとつの姿勢ではある。 とはいえ、ここで防衛されている「信用」は、太客である首相とホテル側の間で個別的に紐帯されている個別的な信用に過ぎない。ということは、太客でない大部分の宿泊客からしてみれば、「差別待遇」ですらある。いずれにせよ、普遍的な意味での「信用」ではない。 一方、ANAホテルが守っている「信用」(←法と正義と真実を大切にするコンプライアンスに寄り添った信用)は、すべてのホテル客と共有可能な、世界中どこの国でも通用するグローバルで普遍的な「信用」だ。 さてしかし、17日の時点までは、メディア各社の取材にメールで回答していたANAホテルは、18日に自民党と会談した後の19日以降、「個別の事案に関するお問い合わせに関しては、回答を差し控える」という姿勢に転換している。 このANAホテルの対応の変化について、毎日新聞は、19日《首相答弁否定のANAホテル、自民幹部と会談後に“沈黙”…圧力はあったのか?》という記事をアップしている。 あるいは、政府は、インターコンチネンタルホテルのコンプライアンスを殺しにかかっているのだろうか。 うちの国の政権中枢に連なる人々は、これまで、財務省の官僚に不自然な答弁を強要し、公文書を改ざんさせ、ホテルの担当者に沈黙を求め、人事院の官僚に答弁を撤回させてきた。 一つのウソを守るために、10のウソが必要になるというのは、よく言われる話で、実際、時系列に沿って考えればその通りなのだと思う。 もう一つウソという同じ言葉について、権力勾配に沿って考える見方を推奨しておきたい。 10人の部下を持つ人間がウソをつくと、10人のウソつきが誕生する。 安倍首相ご自身は、あるいは、ウソをついている自覚を持っていないのかもしれない。 しかし、ご自身が何百人何千人のウソつきを生産していることは、ぜひ自覚してもらいたい。ついでに、その何百人何千人のウソつきたちの心が、かなりの度合いで死んでいることも、できれば思い出してあげてほしい。ぜひ』、「安倍首相」は本当に罪深い人物で、このままでは官僚機構はボロボロに壊れてしまいかねないようだ。
タグ:毎日新聞 東京新聞 ホテルニューオータニ ルネサス 日経ビジネスオンライン 郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン クールジャパン機構 同氏のブログ 山口敬之 日本の政治情勢 小田嶋 隆 金子 勝 (その42)(古い「仲間内資本主義」では新しい成長産業は育たない、「検事長定年延長」で検察は政権の支配下に~森法相の答弁は説明になってない、小田嶋氏:10人の部下を持つ人間がウソをつくと 10人のウソつきが誕生する) 「古い「仲間内資本主義」では新しい成長産業は育たない」 「桜を見る会」疑惑追及が優先されるべき理由 社会全体を考えるべき政治家が税金を私物化し、官僚組織が政権におもねって、公文書を廃棄したり改ざんしたりして証拠を隠すようなことがまかりとおることになれば、社会の規範が一気に崩れる “仲間内”で利益を分け合い、権力に近い人間だけが甘い汁を吸うことで、公正なルールを壊してしまうと、モラルは壊れ、企業経営も産業も腐っていく 安倍政権の体質は「クローニーキャピタリズム」 検察官の定年延長は過去に例がなく 為政者が司直の手が自らに及ばないようにしたり、政敵を摘発したりする狙いで“子飼い”を捜査当局の要職につける 内閣法制局長官に、内部昇格という慣例を破って憲法解釈の変更に前向きな外務省出身者を起用した“前科” 河井案里参議院議員に対する優遇 党本部から、通常の約10倍の1億5000万円が振り込まれていた 「カジノ汚職」 仲間内資本主義の体質と無縁ではない 秋元議員 安倍首相自身も2017年2月の日米首脳会談の後、トランプ大統領から米カジノ業者の日本進出への尽力を要請されたり、カジノ業者らとの会合に出席したりしたことが報じられている 古い“縁故主義”で成長戦略は惨憺たる結果 ニューライフサイエンス 加計学園が選ばれた ペジーコンピューティングが、文科省や経産省からベンチャー支援のために巨額の助成金を詐取 縁故主義で権力者周辺の者だけが利益を得るようなり、しかもトップの責任者が居直ると、不正と腐敗が組織全体に行き渡る 成長戦略を実現するはずの12のファンドが設立されたが、すでに2017年度末時点で8つが累積損失 吉本興業は昨年4月にクールジャパンから100億円もの出資 吉本興業の教育事業への出資は、反社会勢力との「闇営業」が問題になったにもかかわらず、結局、そのまま決められた JDI 失敗も惨憺たるもの 大企業と官庁の寄せ集めの組織体で統一した経営戦略が打ち出せない一方で、所轄官庁の下で失敗がチェックされないまま役所の天下りや助成金の受け皿になっていて経営規律が働きにくい 日銀の大規模緩和策 規律喪失させ市場不全に 企業の検査データなどの偽装が、三菱自動車をはじめ、旭化成建材や日産自動車、富士重工など、名だたる一流企業で次から次に発覚するのも、無関係ではない 「2%物価目標」は、7年近くたっても達成できないまま、金融緩和とマイナス金利を続けざるをえない 地銀・信金に経営困難 日銀を筆頭にGPIF 共済年金やゆうちょ銀行、かんぽ生命が株買いで株価を支えてくれる ストックオプションを得た経営者たちは、地道な技術開発投資をせず、労働分配率を切り下げても、内部留保をため込み、配当を増やし、自社株買いで株価をつり上げれば、短期的に利益を得ることができる 「自由主義」経済のダイナミズムも働かなくしてしまっている 「「検事長定年延長」で検察は政権の支配下に~森法相の答弁は説明になってない」 黒川検事長の定年後「勤務延長」には違法の疑い 「その職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずる」というような事態が生じることがあり得るのか 「検察官一体の原則」からすると、そのようなことは想定できない 検察官は、担当する事件に関して、独立して事務を取り扱う立場 検事総長がすべての検察庁の職員を指揮監督 検察全体としての統一性が図られている 黒川検事長の「検察官としての豊富な経験知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が不可欠」とは考えられない 黒川検事長の勤務の大半は「法務行政」であり、検察の現場での勤務は、合計しても数年に過ぎない。 「検事総長自身による後任指名」の慣例によって「独立性」を守り、それを「検察の正義」の旗頭としてきた検察にとって「歴史的な敗北」とも言える事態 責任を回避しつつ、意向を実現しようとする「不透明性」なやり方で、安倍政権は、検察組織をもあからさまに支配下におさめようとしているといえよう 「10人の部下を持つ人間がウソをつくと、10人のウソつきが誕生する」 検事長人事案を官邸に蹴られた… 前代未聞の人事介入は検察の独立性を揺るがす 黒川氏は法務省の官房長、次官を計七年五カ月も務め、与党に幅広い人脈を持つ。この間、検察は政治家の絡む事件に積極的に動くことはなかった。「安倍政権の守護神」とやゆされたこともあった。今回の定年延長は「腐敗摘発はほどほどに」という検察へのメッセージだと受け止めた国民も多かったと思う。検察の独立性を揺るがすことだと想像できないのだろうか。長期政権末期の腐臭が漂う出来事である 怒れる検事長OB ボスと下っ端の間のやりとり」 人事院のお役人の答弁の変遷 松尾恵美子給与局長 1981年、人事院が「(延長は)検察官には適用されない」との解釈 「現在まで同じ解釈を続けている」 「『現在』という言葉の使い方が不正確だった。撤回させていただく 私たちは、上からのゴリ押しに弱い 「つい言い間違えた」 松尾局長が、ご自身の12日の答弁と、安倍首相が国会で述べた言葉の不整合を調整して、首相の発言に沿って「現在」の法解釈を合わせるべく、無理な路線変更を余儀なくされたこと 松尾局長は、この時、「口裏を合わせる」ことを求められていた 意に沿わぬウソをつかされた人間は、精神的に死んでしまう 上の立場の人間がウソを押し通す時、その下で働く人間は、ボスのウソをカバーする立場に追い込まれる。これは、当事者にとっては、非常に苦しいミッションだ 太客がウソをついた時に口裏合わせをしてくれるホテル 首相答弁否定のANAホテル、自民幹部と会談後に“沈黙”…圧力はあったのか? 安倍首相ご自身は、あるいは、ウソをついている自覚を持っていないのかもしれない。 しかし、ご自身が何百人何千人のウソつきを生産していることは、ぜひ自覚してもらいたい。ついでに、その何百人何千人のウソつきたちの心が、かなりの度合いで死んでいることも、できれば思い出してあげてほしい
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随筆(その3)(養老孟司「おもしろい発見」が生まれる 記録のススメ 人生最高の10冊、「はまらなかった」ピースの悲しみに) [文化]

随筆については、1月18日に取上げた。今日は、(その3)(養老孟司「おもしろい発見」が生まれる 記録のススメ 人生最高の10冊、「はまらなかった」ピースの悲しみに)である。

先ずは、1月12日付け現代ビジネス「養老孟司「おもしろい発見」が生まれる、記録のススメ 人生最高の10冊」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69514
・『飼い犬のごまかし  まず、動物を題材にした面白い本ということで、『人イヌにあう』を紹介します。 著者のローレンツは「動物行動学」という動物の行動を研究する学問を切り開いた人物で、ノーベル生理学医学賞も受賞しています。これは研究書ではなく、身近な犬を題材にしたエッセイですが、さすがの観察眼というか、面白い発見がたくさんあるのです。 ローレンツの飼っている犬が、彼が帰ってきたら変なやつが侵入してきたと吠え出した。少し近づいたら、主人だと気づいて、今度は全然関係ない方向に吠えた。つまり、別な人に吠えていたんだという、ごまかしをしているわけです。犬にもこんな側面があるんだと、笑いながらその内容の豊かさに驚かされます。 『ファーブル昆虫記』は言わずと知れた虫の観察記録です。まず、単純な虫の習性に魅了されます。ひとつはタマオシコガネ。糞を丸めるという習性があるんですけど、そのきれいな丸さにびっくりします。ほとんど芸術に近い。そういった驚きには事欠きません。 「記録する」ことの重要性も痛感させられます。日本人はよく日記や手記を書きます。たとえば戦争で、兵士の遺体から日々を綴ったメモが出てきたりもする。ただ、「記録する」ことは、日本人はうまくない。事実の記述よりも、まず感想が先に来るんです。 欧米圏では、より記録が重視されます。それは民族というより言語の問題ですけど、この本には「記録」の面白さがたくさんあります。 ファーブル自身もまさに「記録」の人で、一日中、畑のわきでずっとハチを見ている。朝、近所のおばさんたちがそばを通って、夕方に戻ってきてもまだ見ていて、笑われたりもする。そんなファーブルだからこそ発見できたものの大きさを実感します』、「飼い犬のごまかし」には微笑んでしまった。犬は自尊心が強いので、大いにありそうなことだ。「欧米圏では、より記録が重視されます。それは民族というより言語の問題ですけど」、「民族というより言語の問題」、やや抽象的過ぎて、分かり難い。
・『脳みそが騙される  『脳のなかの幽霊』は脳の仕組みや働きについて探求する一冊です。ひとつには幻肢痛です。たとえば、事故や戦争でなくした手の「痛み」を訴える患者さんがいます。問題は脳にあります。 実際に手がなくなっていても、脳のデータには手が残っていて、混乱が起こる。脳は面白いことに、自分の具合がおかしいという信号を出せず、なくなったはずの手が「痛い」という信号を出すんです。 では、治療のためにはどうすればいいか。この本で書かれているのは、患者さんの残っている手を、ある箱に入れて動かしてもらう方法です。 中に鏡があって、手がふたつあるように見える。つまり、両手があって動いているように見えるのですが、脳はこれで安心し、不調がおさまるのです。単純なようで意外な発見が、この本にはたくさん詰まっています。 『夜と霧』は精神科医のフランクルが、自らのナチス強制収容所体験を綴った一冊です。文字通り、想像を絶する体験でした。フランクルは奥さんや子ども、両親を失い、また自身もいつ死んでもおかしくないような状況にさらされます。 しかし、『夜と霧』は単に戦争の悲劇について語る作品ではありません。人間そのものについての思索を巡らせる作品なんです。 何の理由もなく収容所に放り込まれて、毎日のようにまわりの人が殺されていく。なぜ、監督官たちはこのような残忍な仕打ちを平気でできるのか。収容者たちはなぜ死ななければならないのか。ひいては、なぜ人間はこの世界に存在するのか。 極限の状況だからこそ、問いかけは真摯で切実なものにならざるを得ない。その書き手の真摯さ、またそこから生み出された思惟の深さに打たれるんですね。 『モモ』は「時間が奪われる」ことをテーマとしたファンタジーです。時間をきっかけにして、本当の豊かさとは何かについて論じている。この本は、今だからこそ響くものがあると思います。 今は、「現在」はあっても「未来」がない。半年後までにこの仕事を終わらせるとか、現在の延長線上で先のことをとらえていて、不確かな、だからこそ豊かな「未来」がなくなっているんです。 特に子どもへの影響は大きい。いい学校に行くために予定をぎっちり決めるとか、これからの豊富な「不確かさ」こそが子どもにとって最大の財産なのに、それが奪われている。 本作では、奪われた時間を取り戻すのがモモという大人の論理に染まっていない少女なんですが、そのことも象徴的だと思います。 本は、机に向かってではなく、電車での移動中とか、暇つぶしに読みます。ただ、これまでずっとそばにいたという意味では、やはり私の人生のかけがえのない友ですね』、「幻肢痛」は知っていたが、治療方法は知らなかった。ただ、二回目、三回目となると、「脳みそが騙され」なくなるのではなかろうか。『夜と霧』は、子供時代に映画で観て、ショックを受けた記憶がある。
・『養老孟司さんのベスト10冊
第1位『夜と霧 新版』ヴィクトール・E・フランクル著 池田香代子訳 みすず書房 1500円 「フランクルは、他者が“生きる意義”を見つけることへの手伝いに、自分の使命を見出した人であると感じています」
第2位『人イヌにあう』コンラート・ローレンツ著 小原秀雄訳 ハヤカワ文庫NF 800円 「犬に対する、動物学的な考察の深さはもちろん、ローレンツの犬に対する愛情の深さにも心を打たれる一冊です」
第3位『脳のなかの幽霊』V・S・ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー著 山下篤子訳 角川文庫 920円 「脳は、自分の不調を体のほかの部分のせいにする。たとえば腰痛も、多くは脳が原因であると言われています」
第4位『完訳 ファーブル昆虫記』(全20冊)ジャン=アンリ・ファーブル著 奥本大三郎訳 集英社 3600円(第一巻・上) 「SNS時代ではみんな“感想”を口にするけど、まず“記録”の大切さをここで学んでほしい」
第5位『積みすぎた箱舟』ジェラルド・ダレル著 セイバイン・バウアー画 羽田節子訳 福音館文庫 入手は古書のみ さまざまな苦難と驚きに満ちた、英領時代のカメルーンにおける野生動物収集の記録
第6位『モモ』ミヒャエル・エンデ著 大島かおり訳 岩波少年文庫 800円 少女モモと時間泥棒との戦い。「“不確かさ”を愛することの喜びと意義を教えられます」
第7位『火星の人類学者 脳神経科医と7人の奇妙な患者』オリヴァー・サックス著 吉田利子訳 ハヤカワ文庫NF 940円 「脳神経科医の著者と個性的な患者たち。色覚異常の画家のエピソードは特に面白い」
第8位『呪われた町』(上・下巻)スティーヴン・キング著 永井淳訳 集英社文庫 入手は古書のみ 「キングの初期のヒット作。まだ作風は確立していない頃ですが、これも十分に怖い」
第9位『めぞん一刻』(全10巻)高橋留美子著 小学館文庫 各600円 「ノスタルジック。'80年代の下宿が持っていた、人情味あふれる感じがよく出ています」
第10位『イタリアン・シューズ』ヘニング・マンケル著 柳沢由実子訳 東京創元社 1900円 「人生のどこかで、必ず過去のつけは回ってくる。なかなか“世捨て人”にはなれません」
さすが養老先生が選んだだけあって、濃い内容のものばかりのようだ。図書館で借りて読んでみたい。

次に、コラムニストの小田嶋 隆氏が2月14日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「「はまらなかった」ピースの悲しみに」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00057/?P=1
・『先週末以来、体調がよろしくない。定期的な治療を受ける身になってみると、投薬のタイミングやら検査のあれこれでカラダのコンディションが変わりやすくなる。と、その変化に呼応して、気分や人生観がわりとカジュアルに変わってしまう。これはもう、どうすることもできない。 そんなわけで、病を得てからこっち、自分が、思考の主体である前に、まず生き物であるという事実に直面している次第だ。 生き物である限りにおいて、ものの考え方や感じ方は、外的な客観状況よりは、ほかならぬ自分自身の健康状態や体調に、より端的に左右される。そういう意味で、いま私がとらわれている憂悶は、あまりマトモに取り合うべきではないのだろうとも思っている。 とはいえ、本人にしてみれば、アタマで思うことよりはカラダで感じることのほうが切実でもあれば現実的でもあるわけで、ということはつまり、うんざりした気分の時に、啓発的な原稿を書くみたいなうさんくさい仕事ぶりは、技術的に困難である以上に、作業として胸糞が悪いので、取り組む気持ちになれない。 週に一遍やってくる原稿執筆の機会を、私は、客観的であることよりは正直であることに重心を置きつつ、粛々とこなしていきたいと考えている。ありていに言えば、気分次第で書きっぷりが変わってしまうことを、自分の側からコントロールするつもりはないということだ。 コラムニストは、エビデンスやファクトを材料に思考を積み上げて行くタイプの書き手ではない。 別の言い方をすれば、私の文章は、私の思想や信条よりも、より多く気分や感情を反映しているということでもある。読者には、ぜひそこのところを勘案してほしいと思っている。 「ああ、オダジマは機嫌が良くないのだな」と思ってもらえれば半分は真意が伝わったことになる。 残りの半分はどうでもよいといえばどうでもよろしい。蛇足の残余のおまけの付け足しに過ぎない。 先週末にまず私を失望させたのは、7月に開幕する東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式の演出を委ねられている狂言師の野村萬斎氏が、五輪の開会式にアイヌ民族の伝統舞踏を採用しない旨を発表したニュースだった。 思うに、これは、単に演出上の制約からアイヌの伝統舞踏をプログラムに組み入れることができなかったという筋のお話ではない。 そもそも、アイヌの踊りを開会式の舞台に推す声は、インスタ映えや演出効果とは別次元の要望だ。 アイヌ舞踏の開会式プログラムへの編入は、朝日新聞が3月3日に配信した記事(「五輪開会式でアイヌの踊りを『オリパラ精神にかなう』」で紹介している通り、 《リオデジャネイロやシドニー、バンクーバーなど過去の五輪では先住民が開会式に登場した。》というこれまでの国際社会の取り組みを踏まえた、先住民としての自覚の反映だったといってよい』、当初、「五輪の開会式にアイヌ民族の伝統舞踏」を使おうとしたのは、誰のアイデアだったのだろう。「過去の五輪では先住民が開会式に登場した」、ので今回もとなったのだろうか。
・『そのアイヌの人々の思いを 「はまらなかった」という浅薄きわまりないコメントとともに不採用とした野村萬斎氏の判断に、私は、失望以前に、ほとほとあきれ返った。 なぜというに、 「はまらなかった」という説明は、説明ではなくて、説明放棄だからだ。 これは、期限内にリポートを提出できなかった学生が、書けなかった理由を質す声に対して 「書けなかった」と回答したに等しい捨て台詞だ。 事情を説明するつもりなら、書けなかった理由を明らかにしなければならない。 「病気で寝ていた」でもよいし、 「実家で不幸があって忙殺されていた」でもかまわない。 とにかく、結果としてリポート不提出の事態に至った理由を相手に伝えないと、誠実に説明をしたことにはならない。 ところが、野村萬斎氏は 「はまらなかった」と言って、それ以上の言及をしていない。これでは 「やる気が出なかった」「どうでもよいと思ったので別段の努力はしなかった」「めんどうくさかったので放置した」と言っているのとなにも変わらない。 このコメントから伝わってくるのは、野村萬斎氏にとって、アイヌの人々の要望が、取るに足らない些事に過ぎなかったのだろうということだけだ。 で、私は、Asahi.comの記事を読んだ直後に 《これ、演出的にはまらなかったのではなくて、「2000年にわたり同じ民族が、同じ言語で、同じ一つの王朝…日本しかない」という政権中枢の思想にはまらなかった、ということではないのだろうか。 五輪開会式、アイヌ舞踊は不採用「はまらなかった」:朝日新聞デジタル - 2020年2月8日0時34分》 《「アイヌ利権」がどうしたとかいったお話を大真面目な顔で拡散しにやってくるアカウントが大量発生しているところから見ても、「はまらなかった」のは、演出上の理由というよりは、政治的な判断だったのだろうね。震災からこっちのたった10年ほどの間に、本当にバカな国になってしまったものだよ。- 2020年2月8日午後2時5分》 《文化的な多様性に配慮しつつアイヌの踊りを「はまるように」演出する力量がないのなら、あるいは、圧力をはねかえすだけの覚悟を持っていないのであれば、はじめから引き受けるべきではなかったのではないか。結果として、少なからぬ人々を失望させ、自分自身も恥をかくことになった。 - 2020年2月8日午後5:20》 という3つのtwを連投した』、「「2000年にわたり同じ民族が、同じ言語で、同じ一つの王朝…日本しかない」という政権中枢の思想にはまらなかった」、などのtwはいい線を突いているようだ。
・『ちなみに、上記tw内で引用した、 「2000年にわたって同じ民族が、同じ言語で、同じ一つの王朝を保ち続けている国など世界中に日本しかない」という麻生太郎副総理兼財務大臣による発言は、後に「お詫びのうえ訂正」されている。 しかし、この時の「お詫び&訂正」は、例によって 「誤解が生じているのならお詫びのうえ訂正する」 という文言を伴ったものだった。 この謝罪マナーは、現政権の閣僚が、失言をした時の毎度お約束の弁明のパターンで、要するに、麻生さんは、マトモに謝ってはいない。というのも、この謝罪語法 「誤解が生じているのなら」という IF~THEN の条件構文を踏まえた、「条件付きの謝罪」に過ぎないからだ。 それ以上に、この言い方は、「誤解」という言葉を持ち出すことによって、暴言被害の原因を被害者の側の読解力の不足に帰責している。言ってみれば 「オレの側には、悪意もなければ差別の意図もなかったわけなんだが、頭の悪いテレビ視聴者や被害妄想にとらわれた一部の新聞読者が記事をヨメば、その文言の中から差別的なニュアンスを嗅ぎ取ることもあり得るので、ここは一番オトコギを出して謝罪してやることにするぞ」と開き直った形だ。 麻生さんの歴史歪曲コメントの真の問題点は、言葉の選び方の無神経さや不適切さで説明のつく話ではない。 「誤解」がどうしたとかいった、コミュニケーション過程で発生した不具合の問題でもない。 麻生さんの発言が問題視され、人々を傷つけ、失望させ、憤らせたのは、彼の思想そのものが差別的で、その歴史理解が根本的な次元において完全に間違っているからだ。ここのところを率直に認めて、自分の言葉で正確に訂正したうえで、今後の生き方をあらためる旨の決意表明とワンセットで謝罪するのでなければ、本当の謝罪にはならない。 ところが、麻生さんは、こころもちふんぞりかえった姿勢で誤解した人間の理解力の貧困を嘲笑してみせたのみで、きちんとした謝罪の態度はいまだに示していない。メディアの人間たちも、麻生さんが誰に何を謝るべきであるのかを然るべき言葉で追及していない。番記者たちは、テレビカメラの前で恫喝されてニヤニヤしている。論外と申し上げなければならない。 さて、野村萬斎氏が開会式にアイヌ舞踏を採用しない旨を述べた記事が公開されて間もなく、五輪組織委が開閉会式の選手入場時にグラウンドで選手らの出迎えや誘導を行う「アシスタントキャスト」を延べ2200人募集する旨を発表したという記事を確認した。 記事は、野村萬斎氏のコメントとして 《開閉会式の演出を統括する狂言師の野村萬斎さんは「多くの人に参画して頂き、未来につなげていく。個人主義が増える中で、多種多様な世界をみんなで受け止めてほしい」と役割を説明。開閉会式の準備については「骨格はできている。7、8合目までいっているのでは」と述べた。》というやり取りを紹介している。 このコメントにもあきれた』、「メディアの人間たちも、麻生さんが誰に何を謝るべきであるのかを然るべき言葉で追及していない。番記者たちは、テレビカメラの前で恫喝されてニヤニヤしている。論外と申し上げなければならない」、その通りだ。安部首相も最近は謝罪を一切せずに逃げ回っているようだ。
・『なので 《「個人主義が増える中で、多種多様な世界をみんなで受け止めてほしい」という野村萬斎氏のコメントの意図が心底から理解できない。「多種多様」な世界や生き方を許容するのがつまりは「個人主義」なんじゃないの? 違うの? 「滅私奉公」が多様な世界なわけ - 2020年2月9日午後3時18分》 《「多種多様な世界」てなことを言っておけばとりあえず「動員」臭を緩和できると思ってるとしか思えない。 - 2020年2月9日午後3時21分》 《だからこそ、一方の口で「多種多様な世界をみんなで受け止めてほしい」と言っておきながら、別の口で「個人主義が広がっているなかで」てな調子で、「個人主義」をやんわりとディスることが可能なのだね。- 2020年2月9日午後3時23分》 《五輪に関係している人たちは、なぜなのか、ことあるごとに「個人主義」への疑義を表明しがたる。もしかするとオリンピックへの熱狂を演出しようとしている人たちの心底には、この国に個人主義が蔓延することへの危機感があらかじめ共有されているということなのだろうか。- 2020年2月9日午後3時35分》 という、4つのtwを連投した。 いまさら申すまでもないことだが、アイヌの伝統舞踏を開会式のプログラムから排除することは、普通に考えて「多種多様な世界をみんなで受け止める」態度とは、正反対のスタンスだ。 ところが、野村萬斎氏のアタマの中では、これらが矛盾しない。 というのも、彼にとっての「多種多様な世界」は、「世界中の様々な国から様々な文化を背負った多様な人々がやってくること」を意味していて、それは、「一つに団結した、単一の文化と歴史と民族と王朝を2000年にわたって持ちこたえてきた私たちのニッポン」とは、対極に位置する、まったく別の概念だからだ。 それゆえ、多様性は、自分たちの内部にではなく、オリンピックという舞台そのものが担う。 そして、その「多様性の祭典」たるオリパラを主催する自分たち日本人は、「個人主義」を排して、「私心」を捨てて、「全体」ないしは「公共」に尽くすことを旨として、「全員団結」を旗印に協力しようではありませんか、てなお話になる。 書いていて気持ちが萎えてきた。 たぶん、わたくしども日本人は、たやすく一つになることだろう。 そういう時、典型的な日本人と見なされない日本人は、「はまらなかった」という言葉とともに、冷たく排除されることになるはずだ。 私自身、はまることができるものなのかどうか、自分を疑っている。 私はつぶされるかもしれない』、「多様性は、自分たちの内部にではなく、オリンピックという舞台そのものが担う。 そして、その「多様性の祭典」たるオリパラを主催する自分たち日本人は、「個人主義」を排して、「私心」を捨てて、「全体」ないしは「公共」に尽くすことを旨として、「全員団結」を旗印に協力しようではありませんか、てなお話になる」、ズバリ本質を突いた鋭い指摘だ。
・『もう一つがっかりしたのは、野村萬斎氏が政権中枢の人々に媚びる文脈の中で個人主義を腐してみせたコメントについて、古典文学や古典芸能にたずさわっている有識者が、一人として抗議の声を上げていない(←私の観察範囲では)ことだ。 お国の補助金で食いつないでいる古典業界(←あえて「業界」という言葉を使わせてもらうことにしました)の人々にとって、政権批判はご法度だと、そういうことなのかと思うと、なんだか生きているのがめんどうくさくなってくる。 実際、ツイッターの中でも、ふだんから古典の話ばかりしているアカウントは、絶対に政治的だったり党派的だったりする話題には絡もうとしない。 つまり、それが彼らの処世なのだね。 古典びいきだから事なかれ主義に終始しているのではなくて、むしろ、論争的で政治的で物議をかもしがちな話題や、現実的で生臭くて世俗的で面倒でアクチュアルな出来事や考え方とは距離を置いて、ひたすらに王朝的で貴族的で浮世離れした、優雅で高踏的な要素に逃避することを願っているからこそ、古典の花園に逃げ込んでいると、そういうことなわけだ。 不機嫌な結論になった。 個人的には、ツイッタージャパン社が、日本青年会議所とメディア・リテラシーの確立に向けてパートナーシップ契約を結んだニュースにも毒気を抜かれた。 がっかりしたとか失望したよりも、自分がかねがね抱いていた疑念が、あまりにもドンピシャリに正鵠を射ていたことに茫然自失している。 なんでも、ツイッタージャパンと手に手をとってメディア・リテラシー向上のために活動していく旨を宣言している日本青年会議所が、メディア・リテラシーの啓発を目的として始めたツイッターアカウントは、早速、ジャーナリストの津田大介氏が「発狂している」旨を投稿したのだそうだ。 コメントする気力も湧かない。 本来なら、ツイッターのようなメディアは、多様性と個人主義に足場を置いているということになっている。 それが、どういうことなのか、愚かで短絡的な人たちの玩具になりさがろうとしている。 私個人としては、いまさら発狂する年齢でもないので、身の振り方を真剣に考えなければいけないのだろうと思っている。 「はまらなかった」てなことで、黙って消える末路も覚悟しておかねばならない。 まとまらない原稿になってしまった。 読者にはすまなかったと思っている。 もしかすると、私の書き方が断片的になっているのは、この数年来のツイッター依存と関係があるのかもしれない。 そういう意味では、いっそ縁を切るのも悪くない選択だ。 自分自身の人格が多種多様になっているようなら、そりゃ発狂かもしれないわけだから』、「ツイッタージャパン社が、日本青年会議所とメディア・リテラシーの確立に向けてパートナーシップ契約を結んだ」、私も驚かされたが、ツイッタージャパン社がこの程度のものだったと知って、ガッカリした。
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