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高齢化社会(その14)(50代は使えないの嘘 言葉にできない暗黙知を生かせ、高齢化率50%「横浜のニュータウン」に変化の波 大和ハウスが「再生」に乗り出す背景事情、少子超高齢化した日本を襲う「2022年危機」そのヤバすぎる現実 団塊の世代がついに75歳を超え始める) [社会]

高齢化社会については、昨年8月6日に取上げた。今日は、(その14)(50代は使えないの嘘 言葉にできない暗黙知を生かせ、高齢化率50%「横浜のニュータウン」に変化の波 大和ハウスが「再生」に乗り出す背景事情、少子超高齢化した日本を襲う「2022年危機」そのヤバすぎる現実 団塊の世代がついに75歳を超え始める)である。

まずは、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が昨年9月24日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「50代は使えないの嘘、言葉にできない暗黙知を生かせ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00041/?P=1
・『「うちの息子がね、やたらと50代の文句を言うんですよ」こう話すのはある企業の社長さん、62歳である。 これまで50代の社員への不平不満は耳にたこができるほど聞いてきたけど(すみません)、息子と父親とのやりとりが「情報源」になるのは今回が初めて。しかも、社長さん=父親のリアクションが実に興味深かったので取り上げようと思う。 まずは、“父親”の独白からお聞きください。 「こないだ息子と久々に飲んだんです。やつも忙しくしてるので、本当、久しぶりでした。最初のうちは息子の仕事の悩みを聞いてやって。うちの会社でも若手が簡単に辞めちゃうんでね。息子の悩みは結構、参考になりました。 それでだんだんとお酒が回ってきたら、息子が上司の文句を言い始めた。 言われたことだけやればいいっていうから言われたことだけやったら、『なんで言われたことしかできないんだ!』って怒られるだの、『自分で考えろ!』って言うから、自分で考えてやったら『余計なことするな!』と怒られただの言うんです。 まぁ、確かに上司はそう言いがちだし、自分もやってるかもしれんなぁって笑いながら聞いていました」』、「久しぶり」とはいえ、「息子と久々に飲んだ」、とはうらやましい。
・『若手が抱く50代シニア社員へのアレルギー  「ところがね、息子が50代以上の社員の文句を言い始めましてね。はい、上司じゃなく、同じ職場にいるシニア社員です。 『エクセルがまともに使えない、コミュニケーション能力が低い、役職定年になって会社にいる意味があるのか』と不平不満を言い、揚げ句の果てに、シニア社員が異動してくると、みんなの迷惑だから辞めてほしいとか言うわけですよ。 シニア社員の生かし方は、うちの会社でも課題になっているので、息子の言い分が分からないでもない。でも、30そこそこの若造が、シニア社員をまるで給料泥棒のろくでなしのように言っているのを目の当たりにしたら、頭にきちゃってね。 ついカッとなって、『若手にはない力がシニア社員にはあるんだぞ』って言い返したんです。 そしたら今度は『自分の成功体験ばかり言って現場の邪魔をするか、会社で死んだふりしていて一言も話をしようとしないかどちらか。そんな人に、どんな力があるのか? 50歳以上はそもそも人間関係が狭過ぎる。会社の中にしか人間関係がないから視野が狭い』って反論してきた。 なので、会社は使い物にならないやつを置いておくほど、ばかじゃないって言ってやったんです」 「そしたら今度はなんて言ったと思います? 『今の50代は英語もまともにできないのに大企業に入った人がたくさんいる。50代は甘やかされ過ぎだ』って。 いやぁ、参りましたよ。なんだか自分のこと言われてる気がしてきちゃって、情けなくてね。 会社では私も、安心だけを求めるやつは要らないって50代以上の社員に活を入れてるんですけど、面と向かって悪く言われると、なんかね……。50代以上の社員への若手社員のアレルギーがここまでひどいとは驚きました。 実際のところ、50歳以上の社員ってどうなんですか? 息子を納得させることができなかった自分も悔しくて。本当、どうなんですか?」』、「自分の成功体験ばかり言って現場の邪魔をするか、会社で死んだふりしていて一言も話をしようとしないかどちらか」、とは手厳しいが、一面の真実でもある。
・『シニア社員の“見えざる底力”とは?  会社ではシニア社員に活を入れている「社長さん」が、息子との応酬に悪戦苦闘している姿を想像するだけで失笑してしまう。そのやりとりはどう見ても息子さんの圧勝である。 とはいえ「お父さん」が言う通り、「若手にはない力がシニア」にはある。断言してもよい。 というわけで、今回は改めて「50代の底力」について具体的に考えてみようと思った次第だ。 実はこの数カ月、50代以上の社員を集中的にインタビューしているのだが、今年に入ってから「空気」が変わってきたように感じている。これがこう変わりましたと明言できるほどの目立った変化ではないが、1年前に比べると明らかに“死んだふり”をして会社にしがみつく人が減り、前向きに頑張っている人が確実に増えているのだ。 役職定年などで給料を減額され、部下が上司になり、一旦はやる気を失うものの、そこから再起。部下たちに迷惑をかけないように、生き延びようと踏ん張っている。) ただ、残念なことに、彼らの頑張りは外からは見えにくい。彼らに注がれる世間の冷ややかで厳しいまなざしが、彼らの頑張りが表に出づらい状況を作っているように思う。 「若手の邪魔はしたくない」という気持ちと、「周りから期待されないこと」へのやるせなさが、微妙かつ複雑に絡み合い、会社での不安定な立ち位置に悶々として空回りしているのである。 その殻を破ることさえできれば、若手から「役立たず」と揶揄(やゆ)されることはなくなるのに、それができない。彼らの話を聞いていると「そんなに頑張っているなら、もっと自信を持てばいいのに」と思う。しかし、そこで過去の「立場」が邪魔をしてしまうのだ。 繰り返すが、50歳以上のシニアにはどんなに若手が頑張ったところでかなわない力がある。特にバブル世代も含めたこの世代は、若いときに現場の末端を経験させられ、上司のパワハラにも耐えた「たたき上げ世代」だ。 このときの経験こそが、未来を見通せない、過去の法則が一切役に立たない今の日本社会を打開する切り札になると私は確信している』、全く同感である。
・体を通じて蓄積した「暗黙知」が生きる時代  ここでの「経験」とは、専門用語でいうところの「暗黙知(tacit knowledge)」だ。人間が習得する知識は、大きく2つに分けることができる。 1つ目は、視覚または聴覚を通じて習得する知識。2つ目が自分の感覚を通じ実際に体験して習得する知識だ。前者は「情報知」と呼ばれ、後者は「経験知」または「身体知」と呼ばれている。 例えばラジオ、テレビ、新聞、SNSなどのメディア、あるいは人から聞いた情報として知り得た知識は「情報知」。情報過多社会に生きる若い世代に、シニア世代は情報知で勝つことができない。彼らの情報網は実に多彩で、常に情報をアップデートし、中には歩く「yahoo!ニュース」のような若者もいる。 一方、経験知(身体知)は、実際に個人が体感したことで「言葉にされていない知識」として身に付くもの。音の聞き分け方や顔の見分け方、味の違いなども経験知だし、自転車の乗り方を練習し自分で乗れるようになって体が覚えた感覚なども「経験知」である。 このような「経験知(身体知)」の中に「暗黙知」があり、暗黙知が豊かなほど想定外の出来事にうまく対処することが可能なのだ。 どんなに詳細なルールやマニュアルを作ったところで、そこに「人」がいる限り、網の目からこぼれ落ちる事態や事件が起こる。そんなときに、現場の対応次第で、小さな事件がとてつもなく大きな問題になってしまったり、大問題になりそうな事件が意外にもすんなりと過ぎていってしまったりもする。 つまり、「現場の力」。それを左右するのが「暗黙知」というわけ。 ついつい私たちは言葉にできる知識こそが「真の知識」だと考えがちだが、実際には暗黙知のような言葉にならない知識の方が、物事を遂行し、諸問題の解決するのに役立つ。危機を乗り越えるには必要なのだ。 かなり前になるけど、「これぞ暗黙知だ!」という場面に出合ったことがある。 マンション横の一方通行の道で、大きな荷物を持った年配の女性が私の車の前を走っていたタクシーを止めたのだが、女性がなかなか乗り込むことができず、ちょっとした渋滞となった。 タクシーの運転手さんは車から降りることもなく、歩くおばあさんを待つばかりで、そのうち後ろの車が「プッ、プッ」と小さくクラクションを鳴らし始めた。 それは明らかに「おばあさん」に向けられたものではなかった。私自身も「まったくも~。なんで運転手さん降りてきて、おばあさんの荷物を持ってあげないんだろう。なんなら私が行くか!」と動かない運転手に少しばかりイラついてしまったので、クラクションを鳴らした人も「おい!降りて手伝ってやれよ!」とサインを送ったのだと思う』、「情報知」は形式知とも呼ばれる。
・『現場の解決力は暗黙知が支えている  すると私の後ろに並んだ車の列の中に同じタクシー会社の方がいたようで、年配の運転手が突然走ってきて私たちに深々と頭を下げた。そして、おばあさんの荷物を持ち上げて手を取り、優しくドアを開けておばあさんを乗せたのだ。 慌てて20代後半くらいの若い運転手さんもタクシーを降り、ベテランの運転手さんに促されるように私たちの方に頭を下げた。 まさに危機一髪。 ベテラン運転手が出てこなければ、クラクションをさらに激しく鳴らす人たちが出てきて、おばあさんは悲しい気持ちになっただろうし、クラクションを鳴らす運転手に怒りを覚える人も出てきたに違いない。 このときのベテランの運転手さんの行動力こそが「暗黙知」がなせる業。即座に脳と体が状況を処理し、「今、何をすべきか?」を順序だって判断する。 暗黙知はさまざまな不測の事態や、「もう無理!」という状況を繰り返し経験することで高まるため、年齢とともに上昇し、ピークは70歳と断言する研究者もいるほどである。「おばあさんの知恵袋」などはまさに暗黙知なのだ。 話を戻すと、50代以上の社員ほど、どんどんと現場から遠ざけられがちだが、蓄積した「暗黙知」を活用するならまったく逆だ。天敵の来襲や不測の事件が起きる確率の高い現場の最前線にこそ、シニア社員に任せた方が合理的。 とはいえ、不機嫌で、ITにも弱いシニアをそんな目立つところに置いてどうする? と首をひねる人も多いことだろう。それ以前にシニア社員自身が「なんでそんな仕事をやらなきゃならないんだ!」とふてくされる可能性は高い。 彼らは彼らなりに頑張っている半面、「俺はまだまだやれる。やる気もあるし、やるべきこともある。なのになんで50をすぎた途端、部下が上司になり、給料減らされるんだよ!」という不満を抱いているため、彼らが自主的に「これをやりたい」と動くように仕向ける必要がある』、確かにその通りだが、「仕向ける」のも容易ではない筈だ。
・『「必要とされたい」思いは働かないおじさんも同じ  なんだかとってもめんどくさいのだが、使う側の論理だけでやることは、必ずしも生産性の向上にならない。むしろ多少手がかかろうとも、自分から取り組み、やった仕事に達成感を持ち「自分はちゃんと貢献している」という自信を持たせた方が、周りのパフォーマンスも向上する。 私は15年近くいろんな人の声に耳を傾けてきたが、口に出す出さないは別として、働く人たちには例外なく「人に必要とされたい」という願いがあった。 同様の願いは、彼ら=働かないおじさんにもある。 であるからして、シニアの「底力」を引き出すことに成功すれば、間違いなく50代を責める若手は減り、働かないおじさんはネガティブスパイラルから脱し「1+1=3、4、5…」とチーム力が高まり、長期的に生産性が向上する。 では、空回りしがちな50代以上の社員が殻を破るために必要なものとは何か? 「緩いつながりの構築」である。 「強いつながり」とは、接触回数が多い、一緒にいる時間が長い、情報交換の頻度が多い、心理的に近いといったような関係を指し、社内の人間関係や仕事で繋がる人たちは強いつながりの人脈だと考えていい。 で、その逆が「弱いつながり」となる。 くしくも件の息子が「50歳以上はそもそも人間関係が狭過ぎる」と言っていた通り、1つの組織で長年過ごしてきたシニア社員は、似たような人とばかりつながっているため、アウェーで自分からアクションを起こすのが壊滅的に下手。それを打開する最良の手段が「緩いつながりの構築」である。 役職定年で一旦腐った状態から脱し、今なお「仕事が楽しい」と笑う人たちは例外なく、「外の人たちと接する機会」の中で、殻を破るきっかけを得ていたのだ』、「緩いつながりの構築」、とは有力な打開策になりそうだ。
・『外に出れば恵まれていた自分が見える  ある人は若い人たちの「朝活」で、ある人は資格取得の研修で、また、ある人は地域のボランティアで、彼らは自分の「立場」を俯瞰することに成功していた。 役職定年があるような大企業に勤めている自分、役職定年になる役職まで務めあげた自分、会社に行けば自分の椅子と机がある自分、といった当たり前が、外へ出てみれば決して当たり前ではなかった、と。そして、それがいかに恵まれているかを痛感した、と。 強いつながりの中では見つけられなかった、価値観や言葉に触れることで、それまでの不満が思い過ごしだったことに気づいていたのである。 しかも、緩いつながりの中では、自分から話しかけないと誰も相手にしてくれない。自分から動かないと、仲間になれない。つまり、自分がいることで何かが回ることを経験し、アウェーで生きていくコツをつかむ。緩いつながりを持つことで、会社にも居場所を作れるようになる。緩いつながりの中に身を置く経験をするだけで、彼らの暗黙知が刺激されるのだ。 世間では「会社の外に居場所を作れ!」がシニア社員の定説だが、「会社の中で居場所を作れ!」。そのために緩いつながりを作る。ますます50代のおじさん社員が増えていく職場で、会社にも、社員にも、まだまだできることはあるように思います』、「緩いつながりを作る」ようにするためには、40歳台からそれに備えた準備も必要なのではなかろうか。

次に、住生活ジャーナリストの田中 直輝氏が12月14日付け東洋経済オンラインに掲載した「高齢化率50%「横浜のニュータウン」に変化の波 大和ハウスが「再生」に乗り出す背景事情」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/317979
・『少子高齢化により、空き家の増加や地域の過疎化が社会問題化している。その象徴といえるのが郊外型住宅団地「ニュータウン」だ。経済成長期に庶民のマイホームの夢をかなえる場として、戸建て型・集合住宅型を含め全国で開発されてきたが、その多くが今、往時の活気を失い、高齢化や人口減少など「オールドタウン」と称したほうがよい状況になりつつある。 そのため、そこに立地する住宅や土地は、「負動産」など称され一般的には魅力がないように思われがちだ。だが、見方を変えれば、ニュータウンは学校や公園など居住インフラがすでに整備された理想的な住環境といえる。 若い世代を呼び込めればにぎわいが生まれ、地域活性化につながる。ニュータウン再生が可能なら、今後の地域社会の形成にあたってよい影響が期待されるからだ。 本稿では、かつてニュータウン開発を行った事業者がその再生に取り組む事例を紹介し、その成果と今後どのような成果が期待されるかについて紹介する』、「オールドタウン」化しつつあるところは多そうだ。
・『超高齢化で街の維持が困難に  神奈川県横浜市栄区に「上郷ネオポリス」というニュータウンがある。1970年に大和ハウス工業が開発を始めた戸建て団地だ。鎌倉市との境にあり、大変緑豊かな立地である。現在は868戸に約2000人(2019年9月現在、上郷ネオポリス自治会調べ)が居住している。 注目すべきは約50%(2017年9月現在、横浜市政策局統計情報課調べ)という高齢化率だ。全国の高齢化率は平均27.7%、横浜市では平均24.0%(いずれも2017年)であることを考えると、上郷ネオポリスは超高齢地域といっていい。 高齢化は現地にさまざまな問題を生み出している。ネオポリス内にあった商店の閉店により買い物の利便性が著しく低下しているほか、同時進行した少子化により小学校(旧横浜市立野七里小学校)が廃校している。要するに、街の維持が難しい状況となっているのだ。 さて、その一画に10月29日、「野七里(のしちり)テラス」という施設がオープンした。「サチテラス」と呼ばれるコンビニ(ローソン上郷野七里テラス店)、路線バスの待合所の機能も有するコミュニティー拠点「イマテラス」が入っている。) 施設は地域住民から募集されたボランティアにより運営され、ローソンの店長・従業員も地域の方々が雇用されている。ボランティアには80歳代の方もいるという。ここを拠点とした移動販売も行われている。 建物内外に40以上の席が設けられており、日中はご高齢の方々が主に集い、夕方からは小学生を含む若い住民の方の姿も見られ、その様子から野七里テラスが幅広い世代の集いの場になっていることがうかがい知れた。 そもそもの始まりは、大和ハウス工業が2014年から開始した住民との意見交換にある。以降、「まちづくり協定」の締結、大学(東京大学、明治大学)や高齢者住宅協会も加わった「まちづくり協議会」の発足などを通じて、施設の実現にこぎ着けたものだ。 2017年には全住民を対象とした「全戸住民意向調査」を実施。その中で「買い物・交通の不便」や「高齢者の見守りや支え合い」など、街のあり方の問題点や要望が浮き彫りになり、それが野七里テラスに反映されている』、実験的なパイロット・プロジェクトなのだろうが、面白い取り組みだ。
・『さらに幅広い再生策を模索  「当初はお茶をするだけの簡単なものを考えていたが、予想以上に立派なものができた。そのおかげで、従来は閉じこもりがちだった人たちに動きが生まれた。街が変わった、盛り上げていこうという雰囲気になってきた」と、住民は話す。 ただ、再生の取り組みは始まったばかり。現地の再生に当初から関わる大和ハウス工業の瓜坂和昭氏(営業本部ヒューマン・ケア事業推進部部長)は、「もっと幅広い再生策が展開できるはずだ」と言う。 上郷ネオポリスはインフラ施設が充実したニュータウンだ。横浜市の埋蔵文化財センターなどとして活用されている旧小学校の建物は、耐震工事が実施済みである。老人福祉センター「翠風荘」「栄プール」(2020年3月末に廃止予定)などもある。 一方で、大和ハウス工業は新築・リフォームをはじめとした住宅事業だけでなく、医療・介護、フィットネス、商業店舗など幅広い事業領域を有する。そして、それぞれの事業に高度な専門知識や事業スキルを有する専門部隊も抱えている。 そうした強みを生かし施設を再活用し、より時代に即し地域ニーズにも合致した施設としてリフォーム・リノベーションなどによる用途転換することで、高齢の住民の暮らしを改善し、さらに若い世代を呼び込むことができる環境づくりができ、周辺地域も含めた地域活性化につなげられるとみているのだ。 施設の再利用ではないが、前述した野七里テラスは、同社の持つ強みが発揮され実現できたものだ。コンビニの誘致にあたっては、子会社の大和リビングがローソンとフランチャイズ契約を結び、大和リビングが店長や従業員の募集や雇用を行っている。 また、移動販売にあたってはネオポリス内だけでなく、周辺にある高齢者向け施設などの顧客先も開拓している。このような仕組みを導入することで、野七里テラスをビジネスとして採算性あるものにしているわけだ』、「ビジネスとして採算性あるものにしている」、とは、設備費の償却も含むのかは不明だが、含むとすれば大したものだ。
・『地元自治会が主体となっての実現は難しい  採算面を含むニュータウン再生を地元の自治会が主体となって実現するのは、相当な大変さが伴うと考えられる。そもそも、まちづくり協議会の設置をはじめ、ネオポリス内の意見の調整さえ難しかったからだ。 前述の住民の方は「大和ハウス工業が意見交換を申し出る前もネオポリスの再生を推進しようとしていたが、とにかく人、お金、時間、そしてアイデアもなく、足踏みが続いていた」と振り返っていた。 もっとも、旧小学校などはいずれも横浜市の所有であり、自治会やまちづくり協議会、大和ハウス工業でどうこうできるものではない。「そのため、現在、横浜市と上郷ネオポリスのまちづくりに関する包括協定を結ぶべく活動している」(瓜坂氏)と話していた。 いずれにせよ、注目すべきは上郷ネオポリスの再生が、大和ハウス工業が住民と企業や自治体との間を取り持ち、協力を得る一方で、実践的なアイデアや取り組みを行う「タウンマネジメント」を展開することで進展しているという点だ。 では、なぜ大和ハウス工業はこのようなニュータウン再生の取り組みを今、進めようとしているのか。同社では、1962年から全国61カ所、延べ7万区画(約30k㎡)でネオポリスを開発してきた。 その中には、開発から40年以上経過した、上郷ネオポリスと同様の課題を抱えている団地もある。このため、上郷でのニュータウン再生、タウンマネジメントの手法がうまくいけば、ほかのネオポリスの再生にもノウハウを生かすことができると考えているわけだ。 さらには他社開発のニュータウンにも拡大でき、その中からリフォーム・リノベーション、ストック(中古)売買、住宅医療・介護施設などといった需要が生まれれば収益も生まれ、今後も持続的な企業の成長が期待できる。 売上高4兆円規模にまで成長する中で多岐にわたる事業領域の確立、それによるノウハウの充実といった、ニュータウン再生に向けた体制づくりにある程度のメドがついたことが、本腰を入れ始めた第1の理由といえる。 第2の理由は、過去に開発したニュータウンをこのまま放置しておくことが、今後の企業成長の足かせになる可能性があるからだ。 時代は、環境・社会・ガバナンスへの取り組みが適切に行われているかを重視する「ESG」など、持続可能な社会の実現へ向かおうとしている。 そうした時代の変化の中で、ニュータウン再生問題は事業リスクになり、社会的責任を問われる状況になることも考えられるのである』、「ニュータウン再生問題は事業リスクになり、社会的責任を問われる状況になることも考えられる」、こうした点を覚悟した上で、「大和ハウス工業」は取り組んだのだろう。
・『不信感をどう払拭するかも課題  といっても、道のりは険しい。上郷ネオポリスの住民の方からは、「大和ハウスは、開発終了後は売りっぱなしだった。意見交換会が始まった頃は半信半疑だった」という、厳しい本音も聞かれた。 このような不信感を取り除くことから始まるわけで、ましてや事業を採算ベースに乗せるためには相当の時間がかかる。ただ、それはどのニュータウン再生、あるいはストック住宅の流通活性化、空き家問題の解決であっても同じことで、チャレンジする姿勢は評価できる。 過去に開発したニュータウンに舞い戻り、その再生に取り組むという事例は、少なくとも筆者には記憶がない。そうした観点からも、今回紹介させていただいた。冒頭にも書いたが、再生の必要があるニュータウンは多く、これに続く動きが出てくることに強く期待したい。 なお、大和ハウス工業は2018年1月から、ストック住宅の売買仲介、買取再販、リノベーション・リフォームなどの既存住宅事業を強化するため、グループ統一の新ブランド「Livness(リブネス)」を立ち上げている。 2022年3月期には売上高3000億円規模をもくろんでいるという。この中でネオポリスの再生事業は、「リブネスタウンプロジェクト」と称され、兵庫県三木市にある「緑が丘ネオポリス」でも取り組みが行われている』、確かに、「売りっぱなし」モデルからの転換は時間がかかりそうだが、今後の展開を注目したい。

第三に、10月12日付け現代ビジネス「少子超高齢化した日本を襲う「2022年危機」そのヤバすぎる現実 団塊の世代がついに75歳を超え始める」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67765
・『誰も経験したことがない歪んだ人口構造に打つ手なし!現役世代は、稼いだカネの半分を税金と社会保障に持っていかれる。高齢者の持つ資産は行く当てを失い、塩漬けに。土地は値下がり、老朽化したインフラは放置するしかない。出口を失った時代にあなたはどう備えるのか。 〈2022年危機に向けた健保連の提案〉今年9月9日、社会保障に関する提言をまとめたこんなタイトルのレポートが公表され、話題を呼んでいる。作成したのは「健康保険組合連合会」。全国約1400の企業健保組合からなる連合組織で、加入者は全国民のおよそ4分の1に当たる約3000万人。 日本の医療制度を支えてきた巨大組織が「このままでは従来の健康保険の仕組みは維持できない」と悲鳴を上げたのだ。 レポートの内容を要約すると、次のようになる。 〈急激な高齢化と現役世代人口の減少により、医療保険制度における現役世代の負担はますます大きくなり、医療、介護、年金を合わせると、社会保険料率が間もなく30%を超えることになる。 これを避けるためには、後期高齢者の医療費負担を原則2割とするなど、世代間の負担のアンバランスを是正する改革を進めるべきだ。〉 提言の中身そのものは目新しいものではないが、注目すべきは、なぜこのレポートが「2022年危機」と名付けられているか、だ。 実はこの年から、推定800万人といわれる団塊の世代(1947年~'49年生まれ)が75歳になり、総人口(1億2400万人)に対する75歳以上の人口が約1900万人と2割近くに迫るのだ。 健保連はその危機を迎える前に、一刻も早く対策をとるべきだと声を上げたわけだが、75歳以上の人口急増は、具体的に社会や経済にどんな影響を与えるのだろうか。 ニッセイ基礎研究所・生活研究部の天野馨南子准主任研究員が社会保障費の観点から解説する。「男性の健康寿命は75歳と言われていて、この歳を越えると、ほとんどの人が日常的な医療支援や介護が必要な状態になります。そして、一人当たりにかかる医療費や介護費が跳ね上がります。 厚労省によると、一人当たりの年間医療費は65歳未満で平均18万円なのに対し、75歳以上では91万円に急増します。介護費も同様です。75歳以上の人口が急増するということは、日本社会全体にのしかかる負担も急増することを意味するのです」』、「健保連の提案」については、このブログの1月26日付けで医薬品(製薬業)(その3)でも紹介した。
・『世界史に残るほどの危機  続けて法政大学経済学部の小黒一正教授は、日本全体の負担がどこまで膨れ上がるかについて、具体的に数字を挙げた。 「昨年5月に政府が発表した『社会保障の将来』という資料によると、'18年度の社会保障給付費の総額は、年金が約57兆円、医療費が約39兆円、介護費が約11兆円で、そのほか諸々を含めて約121兆円。 これが'25年度には年金が約60兆円、医療費が約48兆円、介護費が約15兆円で、社会保障費は約140兆円にまで膨らみます。さらに'40年度には社会保障費は190兆円を超えると試算されています。 東京五輪以降、日本はいやが上にも『社会保障費の膨張』という問題に向き合わねばなりません。 年金支給額を抑制したり医療負担を上げたりするか、あるいは働く世代から税金などをより多く徴収する、消費税をさらに上げる、といった選択をせざるを得なくなります」 大和総研の試算によると、このまま社会保障費が伸び続ければ、'40年には就業者一人当たりの医療・介護保険料の支払額は現在の25万円程度から43万円に増加する見込みだという。 そこに、重い所得税や消費税がのしかかる。現在所得税の最高税率は45%だが、今後、さらなる引き上げが行われることは確実だ。税金と社会保険料などで所得の半分近くを持っていかれる現役世代も現れるだろう。 ちなみに、国民全体の所得に占める税金と社会保障の負担割合を示す「国民負担率」は、現在約43%。'25年には50%を超えることは間違いないと言われている。 「政府はこれまで、こうした改革の議論を先送りしたり、都合の悪い数字や実態をなるべく見せないようにしてきましたが、これまでは予測として語られてきたものが、ついに現実味を帯びて、目の前に危機として迫ってくる。その境目が、2022年と言えるでしょう」(小黒氏) あと2年と少しで、人類史上はじまって以来の「超高齢化国家」となる日本。元ゴールドマン・サックス金融調査室長で、『国運の分岐点』などの著書があるデービッド・アトキンソン氏は、 「今後日本は、明治維新のときの何倍も何十倍も大きな困難に直面する」として、こう続ける。 「いま日本が迎えているのは、後世の日本史だけでなく、世界史にも残るであろう国家の変化です。なぜなら、これほどの高齢化と少子化、そして人口減少が進んだ国は、歴史的に見てもほとんどないからです。 つまり、これから日本が直面する問題に対して、従来の学問では答えを出すことができないということです。 少子高齢化と人口減少が社会に及ぼす影響は、医療や社会保障に限りません。どんな問題が起こるかを予測し、それを真摯に受け止め、死にもの狂いで答えを出さなければならないのです」 アトキンソン氏が言うように、日本が直面する問題は健康保険や年金だけにとどまらない。 前出の天野氏は、団塊の世代はもちろん、「団塊ジュニア」と呼ばれるその子供世代の問題もこれからの日本では顕在化してくると語る。 「40代を中心とする中年層の未婚化と、彼らの老後リスクという問題が現れるでしょう。50歳時点で結婚歴のない男性が約24%、女性が約15%もいます。 また、'15年の国勢調査を分析した結果、40代未婚男性の6割、同じく女性の7割が親と同居していることが判明しました。 彼らのなかで親の年金や住居などを頼りに生活をしている人たちが、親が亡くなった後にどう生活するのか。高齢者の医療・介護問題とは別に、生活が立ち行かなくなった40代という、もうひとつの難問にも、社会が向き合わなければならなくなります」) 少子超高齢化・人口減少社会が抱えるもうひとつの大きな問題が「労働者不足」だ。 いま、企業の採用の現場でも「2022年危機」が叫ばれている。 「新卒」と呼ばれる22歳の人口はこれまで120万人台で推移してきたが、'22年を境に減少に向かうことが分かっており、その減少幅は毎年1万人単位。1年で5万人減る年もある。 2000年代はじめより急速な「少子化」が進んだが、その影響が新卒採用の現場に出始めるのだ』、「これまでは予測として語られてきたものが、ついに現実味を帯びて、目の前に危機として迫ってくる。その境目が、2022年と言えるでしょう」、「いま日本が迎えているのは、後世の日本史だけでなく、世界史にも残るであろう国家の変化です。なぜなら、これほどの高齢化と少子化、そして人口減少が進んだ国は、歴史的に見てもほとんどないからです」、これまで政府が覆い隠してきた厳しい現実がいよいよ表れてくるようだ。
・『カネの流れが止まる  新卒に限ったことではない。'22年から'30年代にかけて、日本では若年人口の減少と定年退職者の増加により、約800万人の労働力が不足する可能性がある。 「25歳から34歳の若年労働者の数だけをみても、この10年で2割弱減りました。今後はさらに減ることになり、大企業は言うに及ばず、飲食店やコンビニのバイトも不足するようになるでしょう」 こう指摘するのは、経済評論家の加谷珪一氏。加谷氏は、労働者不足によって今後「人手不足倒産」に見舞われる企業が続出することを危惧する。 「仕事はあるのにそれを受けるのに十分な働き手がおらず、新規の仕事を断らざるを得ない企業がすでに続出しています。 結果、倒産を余儀なくされた会社が増えていて、'18年度の人手不足倒産企業数は前年比44%増の153件。今後働き手の数が少なくなるなかで、ますます倒産企業が増えていく可能性が高い」 働き盛りの若年労働者の確保に苦しむ企業に対し、国は少しでも年金や社会保障費の負担を軽減しようと、「定年の延長」「再雇用」を要求する。活躍の場をうまく見つけられればいいが、なかなかそうもいかない。 「定年延長や再雇用で働く高齢労働者に、企業が最適な仕事を渡せるかというと、なかなか難しい。企業にとっては負担が増えるというのが現実です。また、社員の高齢化が進むことで企業が負担する社会保障費も増大します。 そうなると、若い人の採用活動や新規事業に投資したくても、そこに回すおカネがなくなってしまう。そうして成長の機を逃して、沈んでいってしまう企業が、'22年以降は続々と出てくるはずです」(加谷氏) 「おカネがうまく回らない」のは企業だけでない。実は、日本全体でカネの循環が滞ることを示唆する、ある調査結果が存在する。 みずほ総合研究所の'18年1月の金融資産に関する調査によると、'20年ごろから、日本のすべての金融資産のうち70歳以上が保有する割合が急増し、'35年には日本の全金融資産の4割を70歳以上の高齢者が持つことになるという。 また、第一生命経済研究所のレポートによると、'30年には全資産の1割にあたる200兆円を認知症患者が保有することになる。 預貯金や株を持つ高齢者が増えること自体は仕方がないとしても、認知症患者の資産は「塩漬け」になる可能性が高い。国家予算の2倍ほどの資産が眠ったままでは、日本経済は完全に停滞する。人の流れもカネの流れも、急速に鈍くなっていくだろう。 '22年以降、日本社会はいわば血液がうまく循環しない「病人」のような状態に陥ってしまうのだ』、「人手不足倒産」については、生産性が低い企業が淘汰されることなので、日本全体の生産性は上がってゆく筈だ。「認知症患者の資産は「塩漬け」になる可能性が高い」、成年後見制度も出来たが、後見人による不正事件が相次いでおり、まだまだ制度としては未熟なようだ。
・『日本全土が「負動産」に  東京オリンピックを前に活況を呈している不動産も、五輪という祭りが終われば一気に暗転する。 東京・中央区の「晴海フラッグ」。'23年から居住開始となる地上14~50階建てこのタワーマンションの販売が7月から始まったが、最上階の部屋こそ一瞬で完売したものの、一部の住戸では「応募ゼロ」のものがあった。 「都心部のタワマンは、売りに出されれば間違いなく完売する」というタワマン神話は、すでに崩れつつあるのだ。 東京を暗い雲が覆い始めたが、不動産コンサルタントの長嶋修氏が予測する'22年以降の日本の不動産市場は、さらに暗い。 「日本全国で見たときには、東京五輪以降、地価や不動産価格は下がっていくしかありません。結局不動産の価格は需要と供給のバランスで決まります。 新しい住まいを必要としない高齢者が増え、消費意欲旺盛な若い世代が減っていく日本では、需要がどんどん下がっていくので、当然価格も下がるわけです。 今後、日本の不動産は3極化していくと思われます。価値の落ちない都市部の不動産が全体の15%、都市部や主要駅から少し離れていて、価値が徐々に下落していく不動産が70%、そして都市部や駅からも遠く離れていて、ほとんど価値のなくなる不動産が15%。人口減少の速度が激しいところほど、価格の下落も激しくなります」 「ほとんど価値のない不動産」は、現在進行形で増えている。「不動産の100均」と呼ばれるサイトが登場し、不動産業界で波紋を呼んでいることをご存じだろうか。 「YADOKARI」と「あきやカンパニー」という不動産企業が運営するこのサイトでは、日本中の使われなくなった空き家を「100円物件」として紹介。 所有希望者を募り、その活用の仕方の相談に乗ったり、仲介を行っている。紹介物件数はまだまだ少ないが、軽井沢の空き家や島根の海水浴場近くの家も掲載されている。 一昔前なら、軽井沢の家が100円で売り出されることなど考えられなかっただろう。だが、「日本はすでに不動産がタダで手に入る国になっているのです」と指摘するのは、経済アナリストの米山秀隆氏だ。 「100円という値段がついているだけでも、いまはまだマシかもしれません。10年後には100円でも買い手がつかない不動産が相当範囲に広がっていて、どうしても手放したいときには、引き取り手におカネを払わなければならないような時代がくるでしょう。 今後、日本には『誰も欲しがらない不動産』が増えていくわけですが、そういった土地や建物は、結局国や自治体が税金を使って管理せざるを得なくなる。もちろん、そのコストは税金として国民が負担することになります。 いま、土地を購入するときに、あらかじめ処分にかかるコストを徴収すべきだという議論があります。 実際にそんな制度が導入されれば、ますます土地や不動産を買うインセンティブが下がり、さらに地価が下落するという負のサイクルが加速することになります」 日本のほとんどの不動産が「負動産」に変わる日は、すぐそこまで来ている。前出の長嶋氏は、空き家が急増することによる日本社会の治安の悪化を懸念する。 「築50年を超えていて、駅から遠い郊外の物件は今後、次々空き家となっていきます。一戸建てだけでなく、廃墟のようなマンションが出てくる可能性もある。そうした空き家に不法に住む人たちが現れると、周囲の治安は悪化するでしょう」』、「「不動産の100均」と呼ばれるサイトが登場」、初耳だが、そこまで「ほとんど価値のない不動産」が増えているのかと、再認識させられた。「空き家が急増することによる日本社会の治安の悪化を懸念」、嫌なことではあるが、覚悟しておくべきだろう。
・『もうひとつ、'22年以降に起こる問題として認識しておかなければならないのが、「インフラの老朽化」だ。 9月上旬に発生し、日本に未曽有の被害をもたらした台風15号。千葉では2000本以上の電柱が倒壊・破損し、60万軒以上で停電が発生したが、これほど多くの電柱が倒れたのは、老朽化も要因のひとつだった。 災害や事故が起こるまで気づかないが、この国のインフラの老朽化は見えないところで進行しているのだ。 「道路や橋、水道といったインフラは、建設・設置から大体50年が経つと事故や破損、不具合などが生じる可能性が高くなります。 日本のインフラは、高度経済成長期以降の1970年代に全国に一斉に整備されていきました。つまり'20年代から、日本全国のインフラの老朽化が急速に進むことになるのです」 こう話すのは、東洋大学経済学部の根本祐二教授だ。国交省の調査によると、'22年には日本全国の2m以上の橋のうち約40%、トンネルで約31%、国が管理する水門などの河川施設の約40%が、建設から50年以上経過するという。さらにその10年後の'32年になると、それぞれ65%、47%、62%にまで急伸する』、不要になるインフラも増えてくる筈なので、それらを大胆に廃棄する政治的な勇気も必要だろう。
・『崩落・陥没事故が多発  日本全土でインフラの老朽化が進むとどのようなことが起こるのか。根本教授が説明する。 「たとえば'12年には山梨県の笹子トンネルで天井板崩落事故が起こり、9人の方が亡くなりましたが、あれは天井板を支える金属ボルトの老朽化によって起こりました。 大きな台風のあとに橋が流されたというニュースをご覧になることがあると思いますが、老朽化によって橋が洪水に耐えられなくなったことが原因の場合もあります。 その他にも水道管が老朽化すると破裂して断水につながります。また、地面の中の下水道管が老朽化して破損し、そこに土砂が吸い込まれて空洞ができると道路が陥没する。 先日、千葉市でも道路の陥没事故が起こりました。こうした事故が'20年代以降は日本各地で頻発するようになります」 根本教授によれば、老朽化したインフラの新設・整備・補修に必要な額は今後50年で450兆円。年間9兆円ほど必要になるというが、社会保障費の増大に苦しむ国が、そんな巨費を捻出できるわけもなく、放置され続ける。 さらに不動産アナリストの石澤卓志氏は、インフラ補修を行う技術者の不足も問題になるだろうと警鐘を鳴らす。 「修繕技術を持った人たちが、今後続々と退職します。少子高齢化が進むなか、新しい技術者の確保・育成も困難になるので、土木技術者の不足も大きな問題となってくるでしょう。 そうしたことを踏まえて、国土交通省が主催するインフラ設備の課題や問題点を協議する『社会資本整備審議会』では、ある日突然橋が落ち、犠牲者が発生する事態がいつ起こっても不思議ではないという懸念を表明しています。 残酷な話ではありますが、今後は老朽化したインフラを修理も点検もせず使い続けることになります。それはすなわち、日常的に命に関わるような危機と隣り合わせで生活をしなければならない、ということなのです」) 社会保障費が膨張する一方で、「社会補修費」不足に悩み、命の危険におびえながら生活する。これが2022年からの日本の姿なのだ。経営コンサルタントの鈴木貴博氏は、こんな未来を予測する。 「社会保障とインフラの維持に多額のコストがかかるようになると、当然、利用者である国民にその負担がのしかかります。昨年より水道の民営化が認められるようになりましたが、自治体によっては10年後には水道代が月に1万円程度になっていても不思議ではない。 そこに高い税金、光熱費、通信費がのしかかる。それらを支払ったら残るのは食費だけ……という人が国民の大半になる状況も否定できないのです。 今後は、『年収が200万円の世代が、なぜ年金収入がそれ以上ある高齢者を支えなければならないんだ!』『自分たちが働いて稼いだおカネが、高齢者を支えるためだけに使われている。それはおかしい!』と訴えるような政治家が現れて、広く支持を集め、世代間の分断が進むことも考えられます。 分断が進めば、社会の一体感が失われ、様々な階層で対立が起こることになるでしょう。『和を以って尊しとなす』という日本の美徳とされてきた価値観が忘れ去られてしまうかもしれない。 人口減少・少子高齢化は、そうした意味でも国の根幹を変えてしまう可能性があるのです」』、確かに「分断が進めば、社会の一体感が失われ、様々な階層で対立が起こることになる」、息子や孫の世代に大きな重荷を残してゆくのは、心苦しい限りだ。
・『個人でできることは何か  社会の「老朽化」から生じる危機の数々。知れば知るほどめまいがする。この危機を突破する方法はあるのだろうか。 『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を著したエズラ・ヴォーゲル氏の息子で、カリフォルニア大学バークレー校のスティーヴン・ヴォーゲル教授は、こう言う。 「確かに、このままいけば日本は奈落の底に落ちるでしょう。しかし、救われる道はあります。シンプルな提言のひとつとして、教育への投資があります。 日本の教育レベルは高いですが、ITなどソフトエンジニアリングの教育は世界と比べると遅れているように見えます。労働力の不足を補うためにも、IT活用は必須です。それを駆使できる人材を育てるため、教育への投資を進めるべきなのです。 このような、考え得る限りの改革をいち早く進めること。いまはまだ、日本の人口も年齢構造も安定した状態にありますが、これが崩れるまでに改革を進めなければ、地獄のような状況が待っています」 国や社会がやるべきこととは別に、個人が生活を守るためにできることはあるのだろうか。経済評論家の森永卓郎氏は、ひとつの選択肢として、「都市部に住むことをあきらめること」を提案する。 「いまの年金制度を考えると、今後、受け取る年金額が減少することは避けられません。月十数万円程度に減額された年金で暮らすにはどうするかを考えるしかないわけです。 具体的な選択肢のひとつが、地方に移り住むこと。不動産価格が急落するということは、住居にかかる費用も下がるということです。 東京から50km圏内の郊外の中古物件であれば、いまでも200万円ぐらいで購入できる。物価も都心の3割ぐらい安くなるので、生活コストを下げることができます。 『そんなことでなんとかなるのか』あるいは『そんなことができるか』と思われるかもしれませんが、ここまで問題が深刻化してしまったいま、個人でできることは『そんなことぐらいしか残されていない』と現実を直視して、行動に移すことが大切なのです」 いまから2000年以上前、共和政ローマ期の政治家にして文筆家のカエサルは「多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」という言葉を残した。はたして現代の日本人は、この数々の危機を直視し、奈落を避けることができるのだろうか』、「スティーヴン・ヴォーゲル教授」の「教育への投資」は、解決策の1つに過ぎないだろうし、既に遅すぎるような気もする。カエサルの指摘にもあるように、日本人はハーメルンの笛吹き男に踊らされて、死の洞窟へと向かっているような気がする。今回は、なにやら暗いまとめになってしまったことをお許し頂きたい。
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