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メディア(その20)(総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う、あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~、小田嶋氏:ニュースを「マスク」する効用について) [メディア]

メディアについては、昨年12月24日に取上げた。今日は、(その20)(総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う、あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~、小田嶋氏:ニュースを「マスク」する効用について)である。

先ずは、「インファクト」編集長の立岩陽一郎氏が本年2月9日付けYahooニュースに掲載した「総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tateiwayoichiro/20200209-00162252/
・『新聞社デスクの怒り  「あの記事を読んで、本当に腹が立った」。 そう話すのは、ある新聞社のデスクだ。記事とは、Yahoo!個人に書いた「総理大臣と記者との会食が引き起こしている問題の深刻さに気付かないメディア」(2020年1月13日)だ。主要メディアのベテラン記者ら7人が安倍総理と会食をしたことの問題点を指摘したものだ。 腹を立てたのは記事を書いた私に対してではない。総理との会食に参加した記者らに対してだ。 「多くの記者は取材先との緊張関係の中で、ぎりぎりのやり取りをしながら記事を書いています。それをチェックする私も日々が真剣勝負です。それが、ああいう会食が一回でも行われれば、全てがなれ合いで行われているように見られてしまう」。 そのデスクの社名も部署も名前、性別も出せない。それを明かすことでデスクが不利益を被る恐れが有るからだ。不思議な話だと思う。Yahoo!に記事を書いた後、私はNHKを含む何人ものメディアのデスク、記者とやり取りをしているが、みな、このデスクと同じ反応を示す。しかし、それが組織の上層部には届かない。届いているのかもしれないが、議論にさえならない。品の無い言い方を許して頂ければ、「蛙の面に小便」という言葉があてはまる』、社長との「会食」だけでなく、「デスク」ともしていたとは初めて知った。社長より直接的影響力が強いので、「安倍総理」にとっての効果は大きそうだ。
・『記事の反響  自画自賛と批判されそうだが、記事の反響は大きかった。いろいろな意見が寄せられた。多くは、参加したジャーナリスト、それを許しているメディア各社への批判だった。特に目立ったのは毎日新聞購読者からの声だった。 「毎日新聞の購読を止める」。 そうした書き込みを多く目にした。これには理由が有る。去年(2019年)、官邸キャップと安倍総理との会食が行われた際に、毎日新聞は参加しなかったことが知られている。その毎日新聞の姿勢を評価して朝日新聞の購読者だった少なからぬ人が毎日新聞に切り替えたということだ。 「毎日新聞よ、お前もか!」。 書き込みの行間を読むと、そうなる。裏切られたという思いなのだろう』、「毎日新聞」はホネがあると思っていたが、「会食」に参加、とはがっかりだ。
・『「呼ばれなかったから」  一方で、私の記事に対する批判も多く寄せられた。その代表的な例は、「呼ばれなかったから、その腹いせで書いている」というものだろう。 前回の記事に書いた通り、そう思う人がいることも驚くことではない。情報は権力者に集まり、取材者は情報を得るために権力者に近づこうとする。それが無批判に常態化しているのが日本のメディアであることは紛れもない事実だからだ』、「取材者は情報を得るために権力者に近づこうとする。それが無批判に常態化しているのが日本のメディアである」、その通りだ。
・『検察幹部との食事会  こういう経験をしたことがある。NHKで記者をしていた時の話だ。大阪で司法キャップをしていた2009年、大阪高検検事長室で検事長にこう言われた。 「今度、本を出したんだが、それをNHKで扱ってくれないか」 どんな本か見せてもらうと、大阪高検のある中之島について絵と文章でつづった内容だった。大阪高検検事長とは東京高検検事長と並んで検事総長の次に位置する検察最高幹部の一人で、特に関西においては検察のトップとして君臨する権力者だ。出来ればその思いに沿いたいという下心は私にもあった。 仮に、その本が、検察人生を振り返り、知られていない秘話を記したものであれば扱えないわけではない。しかし、残念ながら本の内容はそういうものではない。私が本を手に取って黙っていると、検事長は次の様に言葉を続けた。 「読売(新聞)は書いてくれるそうだ」。私は驚いた。どうやってこの本を記事にするのか、イメージがわかなかったからだ。 「この本をメディアで扱う公益性は無いでしょう」。 とは、勿論口には出さない。しかし、そう心の中でつぶやきつつ、私は、「NHKで扱うのは難しいです」と答えて検事長室を後にした。 それからしばらくしていくつかのメディアが本を記事にしていた。そして、ある日、本を記事で扱ったメディアの記者と検事長とのみで食事会が催されたと耳にした。一方、私はこれ以降、この検事長には会っていない』、「大阪高検検事長」もずいぶん心が狭い人物のようだ。
・『根の深い問題  これがどういうことか、もう少し解説する必要が有る。官僚組織は法令順守が原則だが、当然、トップの意向も重視される。しかも、官僚組織では、トップの意向が瞬く間に下に届く。特に、検察の様な「優秀」な組織はその傾向が強い。 ところで、検察取材とは、その多くは検察から情報をとる作業だ。これは法令順守とは別の力学でなされる。検察側が守秘義務に違反する中で情報が記者に流れるということだ。その際、トップの覚えのめでたい記者に情報を流すのは、さほど問題にならないという認識が生まれる。従って、メディアの側からすれば、トップに取り入れば取材がしやすくなる、つまり情報を得やすくなるという利点が生まれる。そして自然と、メディアは権力に取り込まれていく。それは時にニュース判断さえ狂わす。 検察を取材するのは社会部記者だ。総理との会食は、政治部の現職、元職の記者だった。つまり、この問題は政治部だけに特有なものではないということだ。取材対象が異なるだけで、その権力者と取材者との関係という構図は変わらない。まして新聞、テレビ、通信といったメディアの違いでもない。日本のメディア全体の問題だと認識しなければいけない』、検察の「トップの覚えのめでたい記者に情報を流す」リークにより、世論形成していく手法は酷いものだ。その最たるものが、ゴーン問題や小澤元民主党幹事長問題だ。
・『新聞労連の南委員長に問う  この問題について新聞労連の南彰委員長は次の様に話した。「正直に言うと、ああいう取材の仕方は、今まではあたりまえだったということはあります。会食をしながらオフレコベースで情報を引き出すというのは、政治部記者の伝統芸でもあったかと思います。有力政治家は忙しいから皆で囲むという形式になってしまう。だから、あまり良いこととは思わなくても、これやらないと仕事にならない、とういう理解で続けてきたという側面は有ったと思うんです」。 南氏は朝日新聞の政治部記者であり官邸記者クラブにも在籍していた。委員長職を終えれば、朝日新聞の政治部に戻ることになる。それ故、これは自身の問題として受け止めている。そして続けた。 「もうそれは考えなおさないといけない。状況が大きくかわったと思うんです。取材過程が可視化されてきているということです。総理の動静として新聞に掲載されるだけでなく、それがSNSで拡散する。それを市民がおかしいと感じ、更にSNSで表明していく」。 その結果、取材方法そのものが問い直されているのだと感じている。 「取材した内容だけでなく、取材の方法についても信頼性が問い直されていると感じます。その(取材方法への)信頼がなければ、ニュース・ビジネスも成り立たないということを新聞社はじめ、メディアは考える時期に来ているのだと思うんです」』、最後の部分は全面的に同意する。
・『会食は3つのテーブルを総理が回る  南氏は、今回の会食についてできる限り情報を収集したという。 「会食は、3つのテーブルに分かれて、総理がそれを回るという形で行われたようです」。 仮に、それが取材の場だったとして、総理に厳しい質問をすることは可能なのだろうか? 「詳しい内容かはわかりませんが、その場で桜を見る会についてきちんと説明するよう求めた記者はいたそうです。ただ、そうした取材の雰囲気としては、一人だけ輪を乱す質問はしにくいのも事実です。相手が怒って席を立ってしまうような厳しい質問はできないでしょう」。 私はこの問題は日本の民主主義を問い直すものと認識しているが、南氏も同じだった。「根本的には、官邸に権限が集中する中で、官邸からどう情報を引き出すのかということをメディアは真剣に考えなければいけない。しかし、メディアはそれをしてこなかった。権限を与えるなら、公文書を残す取り組みを強く求めるなどすべきだった。それをせずに権力だけ集中させてはいけないと言わなければいけなかったが、メディアは従来のオフレコ取材で対応できると思ってきた。それが今も続いている」。 そして、本当にそれで取材ができているのかという疑問も生じていると私は思う。南氏は、この6月に予定されている新聞労連主催のシンポジウムで、この問題を取り上げる考えだ。 「一言で言うと、『原則と例外をひっくりかえす』ということかと思います。総理との会食の様な取材形式は、これまで「原則いいです」だったが、これを、「原則ダメです」としないといけない。どうしても、必要な時も有るかもしれないが、それはあくまでも『例外です。原則はダメなんですよ』としないといけないと感じています。そのための議論を始めていきたい」。 この記事のタイトルは、南氏に問うというものにしている。「『問う』はちょっと違いますか?」と尋ねたところ、「私自身も問われているのは間違いないので」このままで良いと話した。 しかしこの問題は、南氏の取り組みに期待するだけでは変わらない。メディアを変えるのは読者、視聴者だからだ。更に言えば、これはメディアだけの問題ではない。日本の民主主義が問われている問題だ。その思いを多くの人に共有して頂きたい』、「官邸に権限が集中する中で、官邸からどう情報を引き出すのかということをメディアは真剣に考えなければいけない。しかし、メディアはそれをしてこなかった。権限を与えるなら、公文書を残す取り組みを強く求めるなどすべきだった。それをせずに権力だけ集中させてはいけないと言わなければいけなかったが、メディアは従来のオフレコ取材で対応できると思ってきた。それが今も続いている」、との指摘は本質を突いている。『原則と例外をひっくりかえす』との「南氏」の提案には大賛成だが、それが出来るメディアは殆どなさそうなのは、残念でならない。

次に、2月25日付けNHKクローズアップ現代+「あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4389/index.html
・『今、ネットの爆発的な普及の陰で、新聞をはじめとした地域メディアが危機に直面している。発行部数と広告収入の減少により、全国で廃刊や休刊する新聞が相次いでいるのだ。こうした中、読者や市民と直接結びき、疑問や悩みを取材する「読者起点の報道」に活路を見いだそうという動きが始まっている。報じるだけでなく、読者とともに地域の課題解決を目指す「課題解決型ジャーナリズム」。この新たな報道のかたちは、メディアへの人々の信頼を取り戻すカギになるのか?地域メディアの当事者や専門家たちと一緒に、これからの地域メディアのあり方を考える。 出演者 瀬尾傑さん (スマートニュース メディア研究所 所長) 古田大輔さん (元BuzzFeed Japan 編集長) 坂本信博さん (西日本新聞 記者) 大井美夏子さん (社会福祉士 市民の視点でネットメディアを運営) 武田真一 (キャスター)』、興味深そうだ。
・『“ニュース砂漠”で暮らしに何が?  アメリカ南東部のノースカロライナ州。全米に広がるニュース砂漠があります。 人口13万人の郡で、唯一の新聞社となったロブソニアン。 経営難から、かつて18人いた記者は6人に減りました。 ほとんどがキャリア2~3年の若い記者です。 「どうにかして、あすの紙面を埋めないといけない。ジェシカ、何かないのかい?」 「警察に電話で問い合わせてみます。今朝はニュースがなかったんです。」 「タングルウッドも調べたけど、だめだったよ。クリスマスツリーの話もだめ。」ロブソニアン紙 ドニ―・ダグラス編集長「かつては1つの記事を3人の編集者でチェックしていましたが、今では2人です。週末は誰もチェックできないこともあります。誤植が増えました。取材の方法も変わりました。自分たちの足で稼ぐ取材が減りました。」 6年前、メディアの存在が地域にもたらす影響を象徴する出来事が起きました。 ロブソニアンがある隣の郡には、記者40人がいる比較的大きな新聞社があります。この郡に鶏肉処理工場の進出計画が持ち上がり、新聞社は170を超える記事で手厚く報じました。内容は、雇用を生むメリットと環境汚染が起きるかもしれないリスクの両方を伝えるものでした。報道を受けて住民の間に進出の是非を巡る論争が起きました。 ニュースキャスター「鶏肉処理工場建設に対して、集会が開かれました。」 「緑のシャツは賛成派、赤のシャツは反対派です。」反対の声が高まり、最終的に工場は進出を断念。 その後、この工場がロブソニアンのある郡への進出を計画します。それに対して、ロブソニアンが掲載した記事は隣の郡の7分の1ほど。雇用を生むメリットに注目し、誘致を促すものばかりでした。 取材班「工場建設のことを新聞で読んだことがありますか?」 「いいえ。」 取材班「工場があることも知らない?」 「知りません。」 取材班「聞いたこともない?」 「ないです。」「フェイスブックで知りたい情報は得られる。新聞と同じよ。」 工場は3年前に完成。 ロブソニアンがある郡では、市民の間に議論は生まれませんでした。 “ニュース砂漠”が広がるとどうなるのか…。 武田:改めて、瀬尾さんはこの要因をどういうふうにお考えですか。 ゲスト瀬尾傑さん(スマートニュース メディア研究所 所長)瀬尾さん:アメリカのローカルメディアは、ある意味、日本以上にはるかに追い込まれているわけですよ。やっぱり数が多い。日本みたいに、1県1紙のように対象になってないので競争が激しい。あるいは、宅配制度も弱いということがある。そういう意味で言うと、日本以上に広告収入に依存している。そういった経営はすごく厳しくて、すでに、とう汰も始まっています。 武田:そういう地域メディアがどんどん衰退していく中で、何かアメリカで起きている問題はあるのでしょうか。 ゲスト古田大輔さん(元BuzzFeed Japan 編集長)古田さん:もういろんな研究がアメリカではなされていて、地域メディアがなくなったところの影響で特に深刻視されているのが、例えば投票率が下がる。選挙で候補者も減っていく。みんな、その地域の政治に対する関心を失っていくんですよね。それが大きな影響だと言われています。 武田:実際にそういうことが起きている…。 古田さん:起きていると。そこで考えたいのが、実は日本でも今、候補者がいないという問題が言われていますよね。地方選挙のたびに投票にならない、地方議会が維持できないと。実は、これは日本においてはニュースの砂漠というのが、もうずっと昔から起こっていたことの証左なのではないのかなと僕は思うんですね。日本って、1,800の自治体を116紙がカバーしている。つまり、日本においては地域情報の取材というのは、そもそもずっと昔から足りていないんですよね』、「日本においてはニュースの砂漠というのが、もうずっと昔から起こっていたことの証左なのではないのかな」、その通りなのだろう。
・『密着!地方新聞の舞台裏  読者に必要とされる新聞になるため、何かできないか。 西日本新聞では、2年前から新たな取り組みを始めました。 「あなたの特命取材班」通称「あな特」。記者と読者が共に作る、新しい報道だといいます。 これまでマスメディアは、行政や警察などの当局取材や記者による調査報道をもとに、何を知らせるべきかを判断して報じてきました。 一方「あな特」では、記者は読者から寄せられた疑問や悩み事から取材をスタート。その経緯や分かった事実を行政や企業にもぶつけ、取材を深めていきます。“読者の声から始まる調査報道”です。 西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん「課題設定権を読者に半ば委ねる形で、読者が知りたいことに答えて、単に知りたいに答えるだけではなく、新聞社の取材力を発揮した調査報道で課題が解決していく。そういう課題解決型の調査報道を通して、新聞のファンを増やして、ジャーナリズムへの信頼を稼ぐということが、今われわれがやるべきことなんじゃないかな。」 読者と記者をつなぐのが通信アプリ。 読者からの情報や意見には記者全員がアクセスでき、担当は早い者勝ちで決まります。 テーマに関心を持った記者が読者に個別に連絡し、取材を始めます。 この日も読者から投稿がありました。子どもの医療電話相談「#8000」についてです。 早速、記者が情報を寄せてくれた読者のもとに駆けつけます。 “電話を何度かけてもつながらない” “つながって症状を伝えても自分で判断してほしいと繰り返された” 運営している自治体への取材だけでは気付けなかった事実です。 続けて、読者の声を受けて行政に取材すると、相談が増える中、電話回線が足りず、体制が不十分な場合が多いことが判明。その実態を記事にしました。 投稿を寄せた読者「『あな特』の場合は、市民がそれぞれ意見を言ったところを掘り下げて調べてくれるので、ちょっと切り口が違うというか。下から上がってきたようなものなのかな。より信頼はありますね。」 読者が発信し、記者がそれを深掘りすることで身近な課題を解決する。例えば、高速バスに障害者優先席が設置されたり、携帯電話の決済を不正利用した詐欺の補償制度も始まりました。 読者からは「あな特」の存在に感謝する声が寄せられるようになっています。 “声を届けてくれた西日本新聞さんのおかげです。” “一人の訴えではどうにもできなかった” 開始から2年、「あな特」に登録した人は1万4,000人になりました。 西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん「『こういう企画を新聞がやるのは初めてです』とか、『こんな企画を待ってました』という声が読者から来まして、我々、新聞は斜陽産業だみたいなことを思い込んでいましたけども、まだまだ我々にしかできない仕事がたくさんあって、しかも地域に根ざした地方紙の記者だからこそできる仕事がたくさんある。」』、「西日本新聞」の「あな特」は、画期的な取り組みだ。
・『去年からは、地方新聞社同士の連携も始まりました。 それぞれの地域の声を共有することで、全国に共通する課題の解決を目指しています。 西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん「地域最強のメディア同士が連携すれば、そこに読者という最大の見方が加われば、かつてない質量ともに面白い報道ができるのではないかなと感じております。」 これまではライバル同士、取材した情報を共有するなど考えられなかったことでした。 しかし、沖縄から北海道までおよそ20社が加わり、全国をカバーするネットワークが生まれています。 その一つ、去年参加した岩手日報です。 記者たちが情報共有をするのは、こちらのチャットシステム。90名の記者やデスクが会社の垣根を越え、一日およそ10件の記事や情報を直接やり取りしています。 岩手日報 報道部 太田代剛さん「これはこっち(岩手日報)でもいけそうな感じがするね。」 この日、西日本新聞から届いたのは“子連れで議会を傍聴した時に退席を求められた読者の体験をもとにした記事”です。 早速、西日本新聞とテレビ会議でつなぎ、記事を書いた経緯を詳しく聞きます。 西日本新聞「お母さんが議会によって対応だったり、設備だったりとかがばらばらで、そういう現状を知ってもらいたいという話を『あな特』でいただいて。」 岩手日報「規則が決まっていないところは、議長さんが職権でその都度決めている感じ?」 岩手にも、九州の読者と同じような疑問を持つ人がいるのではないか。 記者はまず、子連れで議会を傍聴することについて子育て世代の母親に話を聞きます。 読者「(子連れ傍聴が)ウエルカムな状態を作ってもらえたら、すばらしいのかな、やる気あるなと感じるかな。子育て(世代)に対して。」 さらに、県議会にも取材。 記者「福岡の西日本新聞さんの『子連れ傍聴』について取材した記事ですけども、今、議会でそういった議論とかは…。」 岩手県議会議員「まずは『開かれた議会』というところ、誰もが来られる場所を作るべきだと。」 2日後、連携から生まれた記事は、西日本新聞の記事と一緒に大きく掲載されました。 岩手日報 記者 小向里恵子さん「市民の声を聞くことで、県民はこういう疑問をもっているんだなっていう。新しい取材なのかなって。新聞記者だからこそできることもあるかもしれない。」 西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん「書いた記事が読者に刺さっているのか、読者に読まれているのかという手応えが何となく感じにくい中で、地域の最強のローカルメディア同士が連携して、より深い調査報道ができれば、その地域だけではなくて日本中の読者に、よりよい報道を届けることができると思っています。」』、相互にライバルではない地方新聞社同士の連携とはいいことだ。
・『読者に必要とされるメディアとは?  武田:西日本新聞の坂本さんの「記事が読者に刺さらない」という言葉にすごく共感するところがあるんですね。でも、なぜそういうことになるのか。 ゲスト坂本信博さん(西日本新聞記者)坂本さん:これまで、市民が知るべきだというニュースと記者が知らせたいというニュースに軸を置いてきました。一方で、読者が知りたいということに応えられてなかったんじゃないかなというのは、最近感じるようになっていまして。 武田:何がそうさせたのしょうか。 坂本さん:読まれているのかどうか、反響がまずなかなかないと。 古田さん:昔、マスメディアしかなかった時代は、情報の流通は基本的にマスメディアを通してだったわけですよね。ほかには、そんなになかったわけです。でもインターネットの時代になって、誰でも1億人のインターネットユーザーが自由に発信できるし、受信できるし、拡散できるようになったら、情報の数が膨大になってしまったわけですよね。そうすると、その中でマスメディアが担ってる情報の率なんて、本当にこれっぽっちになっちゃったわけです。 武田:大井さんにお伺いしたいのは、読者や視聴者の側としてはやっぱりそんな感じなんですか。 ゲスト大井美夏子さん(社会福祉士 市民の視点でネットメディアを運営)大井さん:そうですね…はい。 武田:こんなテレビとか新聞なんか要らないよと、もうネットがあるからという感じ? 大井さん:「知りたい」というものと、出されたものが…。例えば地方でしたら、地域に関する自分たちが知りたいと思うところの情報が本当に少ないですし。だから、そういった「知りたい」っていうものをもっと出してもらって深めてもらったら、やっぱりこれは買いたいなとか、応援したいなという気持ちになるんじゃないかなと思うのですが。 武田:欲しい情報がない。何かここでギャップが生じて、メディアの不信というものが、やっぱり背景にあるのではないかという気もするんですけれども。例えば、最も信頼しているメディアとしては、新聞やNHKテレビというのは相変わらずある程度は高いんですけれども、徐々に信頼度は下がってきているというようなデータもあります。 坂本さん:そこで何か手を打てないかということで始めたのが「あなたの特命取材班」なんですけども。読者と記者が直接つながることで読者の知りたいことを吸い上げて、しかも双方向でやり取りできるので、一緒に取材に協力して頂く形で、いい報道を作っていこうという取り組みを始めたところです。その手法も可視化していくというのをこだわっていまして。読者からこういう調査依頼があって、ここで調べたらこうで、そのあと調べたらこうで、という手法を見せていくことで信頼を高めていきたいというねらいもあります。 古田さん:今まさにおっしゃった取材の過程も、どういうふうに取材したのかということも開示することで信頼性を担保しようとする手法というのが、今後ますます重要になると思います。 瀬尾さん:僕、「あな特」ですごいなと思うことが2つあって。1つは、読者から課題をもらうことによって、いわゆる読者とエンゲージメントができているということなんですね。要するに、読者をいかに巻き込むかというところだと思うんですけども、そこを「あな特」は 達成していると思うんですね。2つ目は、それをネットワークにしようとしていることなんです。単独でやるのではなくて、いろんな力を借りてやるというのがすごく大事なことだと思うんですね。 坂本さん:以前だと、会社と会社でシステムがつながってなければ記事のやり取りはできなかったんですけども、デジタルとかネットの発達のおかげで、よりやりやすくなってきてるというのは間違いなくあると思います。 大井さん:紙のメディアが駄目だというお話もずっとあったと思うんですが、じゃあ新聞社の方でも「うちの社にはこういった得意分野の記者がいますよ」というものをどんどんアピールしていけば、「じゃあその記者が書いた記事を読みたいわ」とか。それをやっていったら、信頼関係というのも生まれてくるんじゃないかなと私は思うんですけど。 瀬尾さん:実は、マスメディアの中にいる記者の方たちというのはすごく取材力もあったり、発信力もあったり、分析力があったりする方もいるわけですよね。それがなかなか今まで日本の新聞社の中から表に出てこなかった。逆に、記者の方も発信できるツールや機会もいっぱいあり、それは別にネットだけじゃないと思うんですよね。例えばイベントでどんどん情報発信するというのもあるかもしれないし。 古田さん:「Journalism as a Service」という言葉があるんですけど、サービスとしてのジャーナリズム。日本語にちょっと訳しづらいんですけど、「貢献するジャーナリズム」みたいな意味があります。自分たちも地域の一員として、その地域の課題と向き合って、じゃあそれをどうポジティブな方向に変えていけるのかっていうことを、そのコミュニティーの人たちと一緒に考えて報じていくというような考え方が広がっていて。信頼性を失ってきた中で、じゃあ我々の価値って何なんだろうというふうに考えた時に、やっぱりこのコミュニティーに貢献しないといけないのではないかという考え方が広がってきてると思うんですよね』、「「あな特」ですごいなと思うことが2つあって。1つは、読者から課題をもらうことによって、いわゆる読者とエンゲージメントができている・・・読者をいかに巻き込むかというところだ・・・2つ目は、それをネットワークにしようとしていることなんです。単独でやるのではなくて、いろんな力を借りてやるというのがすごく大事なこと」、「あな特」の特徴を見事に描き切っている。記事を記者の署名入りにするのも一案だ。
・『模索する記者たち 地域が求めるニュースとは  新たな試みは、NHKでも始まっています。 北海道十勝地方にある帯広放送局。 4人の記者で34万人が暮らす地域を取材しています。「NHKの加藤です。」 その一人、加藤誠記者です。 2年前、かつて勤務していた帯広局に再び赴任。取材を続ける中で、視聴者との距離を感じるようになりました。 NHK帯広放送局 加藤誠記者「ギャップですよね、やっぱり。今までこうだろうなって思ってきたことと。あと実際、市民の方が本当に知りたいとか、悩んでいることって、やっぱり違うっていうか。ずれがあるっていうか。やっぱりもう一回向き合いたいな。」 帯広放送局がおととし12月に始めた、地域の悩みにとことん向き合う「ナットク!とかちCH」。 記者は、視聴者から寄せられる意見や情報をもとに取材。放送やホームページで結果を報告します。反響が届くとすぐに取材し、放送。情報のキャッチボールを繰り返します。異なる意見やアイデアを伝え、課題解決のつなぎ役を目指します。 「交差点の除雪のしかたが悪い」という投稿から始まった放送では、ボランティア、除雪を行う業者、ドライバーの悩みなど11週続けて伝えました。 その後、帯広市は除雪の予算を増額。除雪車を増やしました。 NHK帯広放送局 加藤誠記者「続けることでいろんな人の考え方が伝えられるし、反響をもらえるし。そうすることによって、いろんな人が共感できる。今までと違う手触り感というか、それは初めての感覚。」 さらに、地域の人のもやっとした思いを記者が直接聞くワークショップ「もやカフェ」を開きました。 参加者「移住者とつながる場がないっていう。いろんな人とつながる場所が市内にはなくて。」 NHK帯広放送局 佐藤恭孝記者「会う機会がないですよね。」 参加者「冬の時期になるとお店が休業してしまうモヤモヤが出て。」 参加者の本音が次々と出ました。 NHK帯広放送局 加藤誠記者「みなさんのモヤモヤやアイデアを、NHKを使ってもらって、私たちがつなぐ役割になれればと思っています。」 参加者「ふだん知り合うことのない人たちと話ができて、いろんな悩みとかも共有できて、いい時間になりました。」「テレビだけじゃなくて、外で直接お話ができる機会が得られて、とてもいいなと。」 翌週。“もやカフェではとても有意義な時間が過ごせました!!” “『人口流出』をテーマにされていることが、モヤっとしております” 参加者がSNSで発信してくれた疑問の声。 加藤記者は直接会いに行きました。 地域の情報をネットで発信する野澤一盛さんです。野澤一盛さん「人口流出をネガティブに捉えて、まあ流出しているのは事実ですけど、北海道の中でいうと石狩以外は札幌圏以外は、十勝の人口流出が一番少ないんです。むしろ、そこが何でなんだろうみたいな突っ込み方をしてくれたらヒントが生まれるなと。」 NHK帯広放送局 加藤誠記者「つまり、あれですか、流出って言い方だと…」 野澤一盛さん「ちょっとネガティブなワードがいっぱい入っていて、なんかすげー外からっていうか。上から目線だなってすごい思ったんですよ。」 NHK帯広放送局 加藤誠記者「上から目線…。」 前向きな発信を心がけてきた加藤記者にとって意外な指摘でした。 しかし、この意識のズレに、地域の人に役立つための手がかりがあると感じました。 NHK帯広放送局 加藤誠記者「そうか、そう見えるのか。そう伝えているつもりはないですけど、そう聞こえちゃうわけですね。聞けてよかったです。そういうの。」 2週間後。 「ただいまより、第2回もやカフェを開催いたします。」 会場には、野澤さんの姿が。地域の課題を一緒に考えたい気持ちが強まったといいます。 野澤一盛さん「また何かあったら相談してみようとか、これの繰り返しかなって、ちょっと思いましたね。」』、「NHK帯広放送局」の「ナットク!とかちCH」や、「もやカフェ」も注目すべき面白い試みだ。
・『市民とつくる“未来のメディア”  武田:西日本新聞やNHKの帯広放送局がやっていることも、より見やすくしていくとか、ただ報じるだけじゃなくて、読者と一緒に社会を変えていくというようなこともできるんじゃないかなというふうに私は感じてるんですけれども。大井さんいかがですか? 大井さん:メディアと市民って、結構区分けしすぎというか。例えばメディアの人や記者の人も、一人のいわゆる家庭人であったり、地域社会の人であったり、いろんな所にいろんな趣味とかでも関わっていると思うんですけど。自分はメディアの人間であり、市民でもある、県民でもある、国民でもあるというような意識で取材してもらったら、その垣根というのも「同じじゃん」じゃないですけど、(同じ)だと思うんですけど、「さあ取材に行きますよ」「メディアですよ」みたいにすると、みんな構えてしまうところもあるので、そういった取材の持ち方がいいんじゃないかなと思います。 武田:一生懸命、仕事をしてるつもりなんですけど、やはりそこのズレですよね。 瀬尾さん:これはメディア側が読者や市民を信じることだと思うんですよね。やっぱり読者をまだ信じ切れていないんじゃないかと思うんですよね。今日議論した中でも出てきた、例えば取材過程の透明性、あるいはコミュニティーメディアを巻き込んでいく、市民に参加してもらうということは、前提として僕らが読者、ユーザー、市民を信じているということなんですよ。その原点に戻るということが僕は大事なんだと思います。 坂本さん:新聞記者は、お金稼ぐのではなくて信頼を稼いでファンを増やすというのが、これからの仕事だと思ってるので。そういう意味では、一緒に連携して作っていくという信頼関係を紡ぎつつ、協力関係も大事にしていくというのが大事なんじゃないかなと思っています。先日、あな特通信員に「あなたにとって『あな特』って何ですか?」ということを聞いたところ、一番多かった答えが「社会参加」だったんですよね。64%の方が「あな特」=「社会参加」だと。つまり、社会への窓だというふうに答えて下さって。それは、われわれもすごく可能性を感じました。 大井さん:でも、やっぱり市民の人はみんな、メディアに期待をしてると思うので。それに応えるために頑張って頂きたいというのは思いますし、メディアが駄目になったら本当に地域がゆがむので、それは心の底から「やって下さい」という感じで応援したいとは思っているんですけど。応援したいと思うような記者の方がどんどん出てほしいなと思います。 武田:頑張りましょう。ありがとうございました』、メディアの一層の創意工夫に期待したい。

第三に、コラムニストの小田嶋 隆氏が2月7日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「ニュースを「マスク」する効用について」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00056/?P=1
・『マスクが品薄らしい。 案の定の展開だ。 マスクが品薄になることは、多くの人々にとって、十分に予想されていたことだった。 にもかかわらず、その不吉な見込み通りに、マスクはもののみごとに品薄になっている。 なぜかといえば、多くの人々にとってマスクが品薄になる展開が明らかに予見できたからだ。 同語反復に聞こえるかもしれない。 が、実際問題として、その同語反復が現実の事態として実現しているのだからして、これはどうしようもない。 不安は現実化する。 なぜなら、不安な未来を呼び寄せるのは、未来への不安だからだ。 これも同語反復だ。 未来について人々が不安を抱けば抱くほど、不安通りの近未来が招来する。これは、不安という感情の性質からして、回避しようのないなりゆきだ。 たとえば、銀行の取り付け騒ぎは、人々が金融制度の信用性に不安を抱くことで引き起こされる。 というのも、個々の預金者にとって、万が一にも自分の預金が引き出せなくなる事態を回避するためには、とりあえず自分の預金を全額引き出しておくことが、最も確実な手立てだからだ。さてしかし、多くの預金者が預金をおろすと、銀行の資金力は衰えることになる。 と、金融システム全体から見て、銀行の信用性が毀損されて信用不安が増大する。その結果、預金者にとってはますます預金を引き出す緊急性が高まる。こうなってしまっては、取り付け騒ぎはもう誰にも止められない。そもそも、銀行の信用というのは、「預金者が一斉に預金を引き出さないこと」を前提に保持されていた一種の「思い込み」であったわけで、だとすれば、その幻想なり思い込みなりに疑念が生じた時点で、信用は雲散霧消する。これはどうしようもないことだ。 2月5日のNHKの夜のニュース番組は、このマスク不足について、異例の長時間を割いて報道していた。 国会での与野党の論戦に関するニュースの冷淡さ(←解説を一切省いて、野党の質問に答える安倍総理の録画編集映像をそそくさと再生するのみでした)に比べて、マスク不足を伝えるニュースの熱心さは、文字通り「異常」に映った』、「国会での与野党の論戦」は安部政権にとっては論理破綻を示すだけなので、御用放送としては「冷淡」な扱いにしたのかも知れない。
・『個人的な印象としては「NHKの中の人たちは、視聴者のマスク不足への不安を煽ることで、いったい何を実現したいのだろうか」と思わずにはいられなかった。 おそらく、マスクのニュースをとりわけ熱心に伝えていたスタッフの真意は 「これからの季節、花粉症などで、どうしてもマスクが必要な人もいるので、過度な買い占めはやめましょう」「話題の新型肺炎を予防するために、マスクがある程度有効なことはたしかですが、かといってマスクが予防の切り札になるわけではありません。もちろん手洗いも重要です。いずれにしても、マスクに過度に頼ったり、マスクを過剰に買いだめしたりすることはおすすめできません」てなことを訴えるところにあったのだろう。 その気持ちはわかる。 しかし、当たり前の話だが、伝える側の真意が、それを受け止める側にそのまま伝わるとは限らない。 おそらくだが、ニュースを見た視聴者の多くは 「なるほど。マスクが品薄なのか。いまのうちに買い置きをしておかないといけないな」と思ったはずだ。 しかも、重要なポイントは、そうすること(マスクの買い置きをすること)を、平均的な視聴者が「賢い対処」と考えていたに違いないことだ。 もう少し詳しく解説すると、情報の受け手である視聴者は 「愚かなテレビ視聴者がパニックに陥ってマスクを買い占めることで市場からマスクの在庫が消滅してしまう前に、賢い消費者たる自分としては、当面の備えとしてマスクの買い置きをしておくことにしよう」という順序でものを考える。 つまり、個々のテレビ視聴者からしてみると、他人(あるいは「愚かな大衆」)が、マスクを買い占めることが「愚行」「パニック反応」「利己主義」「浅ましい消費者行動」であるのに対して、自分がマスクを買い置きすることは、「当然の生活防衛」であり「賢明な消費行動」であり「機敏な市場対応」だというお話になる。これは、理不尽なようでいて、個々の消費者の心理からすれば、無理からぬ反応でもある。 だって、バカな人たちがマスクを買うことで市場からマスクが消えてしまうのが目に見えているのだとしたら、マスクが市場から姿を消す前にマスクを買い置きすることのどこが愚かだと言えるのだ? というよりも、個々の消費者の賢い(あるいは「無理からぬ」)消費行動が、市場全体から見て愚かなパニック反応として作用してしまう行きがかりは、商品市場の呪いというのか「合成の誤謬」という言葉で説明されるべき宿命だ。これは、テレビ局が視聴者に自覚を促したり説教を垂れたりすることで防げるような単純なお話ではない』、「合成の誤謬」という経済学用語を持ち出すとはさすがだ。
・『むしろ、上からおためごかしの説教を垂れることで、結果として視聴者のパニックを煽りにかかっている彼らの態度をこそ「愚行」と呼ぶべきなのではなかろうか。 私は、はっきりとそう思っている。 あれは、愚かなニュースだった。 それにしても、NHKの番組スタッフは国会のニュースについて解説することを、どうしてあれほどまでにあからさまに避けようとするのだろうか。 もしかして、マスクにこだわっているのは、国会のニュースを伝えないためなのか、と、そう思いたくなるほど、この1年ほど、NHKの報道姿勢は脱政治的な話題に傾いている。 マスクと五輪のスタジアムとトランプと聖火のトーチとオリンピックとオリンピック。いい加減にしてほしい。 話をもとに戻す。 NHKが口を酸っぱくして「必要以上のマスクの買い占めは本当にマスクを必要としている人を苦しめることになるので、できれば控えてください」と繰り返しているお説教は、視聴者の耳に 「バカな人たちが必要以上にマスクを買い占める危険性があるので、賢い消費者であるあなたにはいまのうちに自分に必要な分のマスクを確保しておくことをおすすめします」というメッセージとして届いている可能性がある。 これは、由々しき事態であると申し上げねばならない。 実際、トイレットペーパーでもマスクでも同じことなのだが、あの種の必需品は、「一般の消費者が必要以上に買いだめをしない」ことを前提として流通している。 特に、トイレットペーパーやティッシュペーパーのような、売り場や倉庫に置いた時にやたらとかさばるわりに、たいして利幅の大きくない商品は、小売店にとって「なるべくなら在庫したくない商品」でもあるわけで、それゆえ、個々の消費者がなんらかの理由で、普段よりも多めに買い置きをしておこうと考えると、またたく間に市場から在庫が消えることになっている。 要は、生産者から流通業者、小売業者を経て消費者に至るまでの経路の個々のメンバーが、それぞれに適正にして最小限の在庫量を心がけていれば、商品は健全に流通するはずなのだ。しかし、どこかの段階で、買い占めによる価格高騰を狙う不良業者や、棚が空になる不安から買いだめに走る消費者が現れると、商品流通市場は、またたく間に機能不全に陥る。 いわゆる「合成の誤謬」は、経済の世界だけでなく、報道の現場でも起こっている。 私がいちテレビ視聴者ならびに新聞読者として感じているところを率直に申し上げるに、たとえば、今回の新型肺炎については、個々の報道機関が、それぞれのページビューなり視聴率なりを追求した結果、日本のメディア全体としてのニュースは、およそ信用のならない水準に着地している』、「この1年ほど、NHKの報道姿勢は脱政治的な話題に傾いている」、全く同感だ。安部政権への「忖度」なのだろう。今夕のニュースでの安部首相の記者会見は、各局のニュースが同じものを一斉に流しており、まるで大本営発表を彷彿とさせるものだった。
・『民放の情報番組は、いたずらに危機感を煽る一方で、パニックに陥った人々を嘲笑している。 しかも、これらは、同じひとつのニュース枠の中で、一貫した情報として提供されている。 まるで、あるタイプの食品メーカーが右手で酒を売っておきながら、左手でウコン入りの怪しげな二日酔い対策サプリメントを販売している手口にそっくりだ。 彼らは、一方の口で 「気をつけろ」「こわいぞ」「用心しろ」と警告を発しつつ、もう一方の口で 「過剰反応するな」「パニックは禁物だ」「落ち着け」と言っている。 しかも、単にパニックをしずめるのではなく、それをネタに冷笑をあびせている。 「見てください。棚が空っぽです」「ほら、観光地もこんな調子です」「あらあら、あきれましたね」「いったい何を考えているのでしょう」 いや、わかっている。 個々のニュース原稿を書いている個々の記者は、それぞれの場面に応じた適切な言葉を書き連ねているつもりなのだと思う。 でも、それらのニュースを通しで見ているこっちからすると、彼らが配信しているニュースは、総体としてはマッチポンプにしか見えないのだ。 私は、すらすらと英語が読める人間ではない。 それでも、新型肺炎に関しては、海外のニュースサイトを見に行った方が、ずっと有益な情報が得られると思っている。 事実、ニューヨーク・タイムズやBBCのホームページに載っている表やグラフは、言葉のハンディを超えて、明らかにわかりやすく今回の新型のウイルス性疾患の全体像を伝えてくれている。私はツイッター経由で流れてきた、それらの情報に、色々な点で蒙を啓かれた(注)と思っている』、「彼らが配信しているニュースは、総体としてはマッチポンプにしか見えない」、その通りで、担当している社会部記者が必死になって、面白そうなネタを漁っている光景が目に浮かぶようだ。
(注)蒙を啓く:啓蒙する(goo辞典)。
・『心配なのは、ニュース番組・紙面を作っている人たちが、どのタイプの情報提供が視聴者・読者を誘引して、どんな書き方をすればページビューが稼げるのかといった課題に日々心を砕いている一方で、どのニュースにどれだけの放送時間(あるいはスペース)を割り当てるのかについて考える努力をおろそかにしているのではなかろうかということだ。 この場を借りてお伝えしておくが、私は、この一年ほど、NHKのニュース番組「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」については、はっきりと不信感を抱いている。 あんなに毎日毎日オリンピックの話ばかり繰り返すのであれば、いっそ「オリンピックの顔と顔」くらいなタイトルで放送した方がふさわしいのではないかとさえ思っている。 不安は現実化する。 不信もたぶん現実化する。 不信を抱く方が悪いのだと、あるいは、彼らは言うかもしれない。 私は、そうは思っていない。不信を感じさせる側がいけないのだと思っている。 メディアに不信感を抱くことが、必ずしもメディア・リテラシーの本旨でないことはわかっている。 とはいえ、マスクがウイルスを完全に遮断できないのと同じように、受け手の側のメディア・リテラシーがすべてを解決するわけではない。 NHKの皆さんには、とりあえずマトモな国会報道を回復してもらいたい。 症状が致死的にならないうちに、手を打ってくれるとありがたい』、全面的に同意したいが、現実には、「オリンピック」が近づくと一層酷くなるのだろう。やれやれ・・・。最後に、「ニュースを「マスク」する効用について」とのタイトルは、さすが小田島氏だけあって、言い得て妙だ。
タグ:メディア yahooニュース 日経ビジネスオンライン 西日本新聞 NHKクローズアップ現代+ 小田嶋 隆 (その20)(総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う、あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~、小田嶋氏:ニュースを「マスク」する効用について) 立岩陽一郎 「総理大臣と記者との会食はなぜ無くならないのか 新聞労連委員長に問う」 新聞社デスクの怒り 総理大臣と記者との会食が引き起こしている問題の深刻さに気付かないメディア 多くの記者は取材先との緊張関係の中で、ぎりぎりのやり取りをしながら記事を書いています。それをチェックする私も日々が真剣勝負です。それが、ああいう会食が一回でも行われれば、全てがなれ合いで行われているように見られてしまう 記事の反響 多くは、参加したジャーナリスト、それを許しているメディア各社への批判 「呼ばれなかったから」 取材者は情報を得るために権力者に近づこうとする。それが無批判に常態化しているのが日本のメディアである 検察幹部との食事会 大阪高検検事長 本を出したんだが、それをNHKで扱ってくれないか NHKで扱うのは難しいです 根の深い問題 メディアの側からすれば、トップに取り入れば取材がしやすくなる、つまり情報を得やすくなるという利点が生まれる。そして自然と、メディアは権力に取り込まれていく 時にニュース判断さえ狂わす 新聞労連の南委員長に問う 取材過程が可視化されてきている 取材方法そのものが問い直されている (取材方法への)信頼がなければ、ニュース・ビジネスも成り立たないということを新聞社はじめ、メディアは考える時期に来ている 会食は3つのテーブルを総理が回る 『原則と例外をひっくりかえす』 官邸に権限が集中する中で、官邸からどう情報を引き出すのかということをメディアは真剣に考えなければいけない。しかし、メディアはそれをしてこなかった。権限を与えるなら、公文書を残す取り組みを強く求めるなどすべきだった。それをせずに権力だけ集中させてはいけないと言わなければいけなかったが、メディアは従来のオフレコ取材で対応できると思ってきた。それが今も続いている 「あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~」 読者や市民と直接結びき、疑問や悩みを取材する「読者起点の報道」に活路を見いだそうという動きが始まっている “ニュース砂漠”で暮らしに何が? 地域メディアがなくなったところの影響で特に深刻視されているのが、例えば投票率が下がる。選挙で候補者も減っていく。みんな、その地域の政治に対する関心を失っていく 日本でも今、候補者がいないという問題が言われていますよね。地方選挙のたびに投票にならない、地方議会が維持できないと。実は、これは日本においてはニュースの砂漠というのが、もうずっと昔から起こっていたことの証左 密着!地方新聞の舞台裏 「あなたの特命取材班」通称「あな特」 去年からは、地方新聞社同士の連携も始まりました 読者に必要とされるメディアとは? 「あな特」ですごいなと思うことが2つあって。1つは、読者から課題をもらうことによって、いわゆる読者とエンゲージメントができているということなんですね。要するに、読者をいかに巻き込むかというところだと思うんですけども、そこを「あな特」は 達成していると思うんですね。2つ目は、それをネットワークにしようとしていることなんです。単独でやるのではなくて、いろんな力を借りてやるというのがすごく大事なことだと思うんですね 模索する記者たち 地域が求めるニュースとは NHK帯広放送局 「ナットク!とかちCH」 「もやカフェ」 市民とつくる“未来のメディア” 「ニュースを「マスク」する効用について」 マスクが品薄 NHKの夜のニュース番組 マスク不足について、異例の長時間を割いて報道 国会での与野党の論戦に関するニュースの冷淡さ 他人(あるいは「愚かな大衆」)が、マスクを買い占めることが「愚行」「パニック反応」「利己主義」「浅ましい消費者行動」であるのに対して、自分がマスクを買い置きすることは、「当然の生活防衛」であり「賢明な消費行動」であり「機敏な市場対応」だというお話になる 「合成の誤謬」 NHKの番組スタッフは国会のニュースについて解説することを、どうしてあれほどまでにあからさまに避けようとするのだろうか。 もしかして、マスクにこだわっているのは、国会のニュースを伝えないためなのか、と、そう思いたくなるほど、この1年ほど、NHKの報道姿勢は脱政治的な話題に傾いている 民放の情報番組は、いたずらに危機感を煽る一方で、パニックに陥った人々を嘲笑している 彼らが配信しているニュースは、総体としてはマッチポンプにしか見えないのだ 「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」については、はっきりと不信感を抱いている。 あんなに毎日毎日オリンピックの話ばかり繰り返すのであれば、いっそ「オリンピックの顔と顔」くらいなタイトルで放送した方がふさわしいのではないかとさえ思っている
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