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バブル(最近)(その2)(ついにアメリカの巨大バブル崩壊が見えて来た 株価の大乱高下めぐる「6つの鍵」で読み解く、今回のバブルはもう1回膨らむかもしれない 今は「買い」か「売り」のどちらを選択すべきか) [金融]

バブル(最近)については、1月2日に取上げた。パンデミック騒動もあって世界的に株価が急速に調整色を強めている今日は、(その2)(ついにアメリカの巨大バブル崩壊が見えて来た 株価の大乱高下めぐる「6つの鍵」で読み解く、今回のバブルはもう1回膨らむかもしれない 今は「買い」か「売り」のどちらを選択すべきか)である。

先ずは、財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏が3月8日付け東洋経済オンラインに掲載した「ついにアメリカの巨大バブル崩壊が見えて来た 株価の大乱高下めぐる「6つの鍵」で読み解く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/335217
・『今回から、山崎元氏やかんべえ(吉崎達彦)氏とともに、新たに持ち回り連載を担当することになった小幡績です。これから頑張っていきたいと思います。 さて、世界は新型肺炎に振り回されているが、金融市場ももちろん例外ではない。アメリカの株式市場は史上最高値を更新し続け、「今年はどこまでいくか」、と一般的には期待されていたところだった。それにもかかわらず、新型肺炎による世の中の混乱以上に、株式市場は混乱している。今日は、なぜ、世界的に株価が乱高下しているのか。その謎を解き明かしたい』、小幡 績氏の見解は、このブログ1月2日でも紹介した。
・『「6つの鍵」から出てくる「答え」とは何か?  第1の鍵は、世界的な乱高下ではない、ということである。中国の上海市場は2月頭、最初に暴落が起きたが現在は反発局面が続いており、多少の乱高下はあるものの、回復トレンドをたどっている。 新型肺炎の震源地であり、生産が最も落ち込んでいるのは中国であり、前代未聞の中国の生産指数が約70%下落したにもかかわらず、暴落したのはアメリカ株などだ。これはなぜか。 私のゼミの卒業生が言うには「中国では外出できず、みんな暇すぎてデイトレばっかりやっているので中国株は上がっている」、ということだが、彼女が大のデイトレ好きなだけに、これは割り引いて聞く必要がある。 第2に、実際、新型肺炎発生が世界的な話題となり、上海株が暴落し、日本がダイヤモンド・プリンセス号で慌てふためく中、2月12日にアメリカのダウ平均は史上最高値を更新したのだ。中国の生産がストップし、世界的な生産ネットワークが大きなダメージを受けるのは間違いないのに、株価は上昇したのである。これはなぜか。 第3に、新型肺炎がアメリカに上陸したとはいえ、アジアあるいは欧州大陸の一部(イタリア、イラン)に比べれば、まだ無視できる程度であり、また、生産や消費への新型肺炎の影響は現時点では劇的に小さいうえに、今後も拡大するとは思えない。さすがに今の日本でも(注:前後のつながり?)、民主党の大統領候補者選の集会はことごとく禁止または自粛となるだろう。アメリカはまったく状況が違い、新型肺炎の生活への影響はまだ無視できるほどに小さい。  第4の鍵は、3月5日木曜日には新型肺炎に関する大きなニュースが出なかったにもかかわらず、株価が暴落した点だ。 第5の鍵は、5日の暴落前である3月4日水曜日の話だ。株価が暴騰した理由にあげられていることの一つは、ジョー・バイデン氏がスーパーチューズデーで予想以上に勝利し、民主党の大統領候補として復活したことにより、バーニー・サンダース大統領の可能性が低くなった、ということだった。 確かに、サンダース大統領なら株価にはマイナスだ。だが、バイデンの方がドナルド・トランプ大統領に勝てる可能性があるから、という理由でバイデンが勝ったのだから、民主党勝利の可能性が出てくる。そのため、トランプ大統領再選よりは株価にはマイナスであるはずで、それほど明確な株価上昇の理由ではないはずだ。 第6に、FEDが予想外のタイミングで、3月3日火曜日に緊急利下げを行ったのに対して、株価が暴落で反応したことだ。これはなぜか。 これら6つの点を合わせて考えると、答えははっきり見えてくる』、「第3」については、「生産や消費への新型肺炎の影響は現時点では劇的に小さいうえに、今後も拡大するとは思えない」、とあるが、ニューヨーク州やカリフォルニア州で外出禁止令が出されるなど感染は急拡大しており、生産や消費にも悪影響を及ぼす可能性も出てきた。
・『今はアメリカの長期バブルの崩壊局面にある  答えは、新型肺炎による株価暴落が起きているのではなく、アメリカ株式の長期に渡ったバブルが崩壊している、つまり、今は「より長期のバブル崩壊局面」にあり、大局的な転換点にあるからである、ということだ。 まず第1の鍵、あるいは謎に対する答えから行こう。上海市場で暴落とならないのは、上海市場のバブルはすでに2015年に崩壊しており、現在がバブルどころか、バブル崩壊後の底に近い状況であるからだ。だから、崩壊するべきバブルがなく、新型肺炎で一時的に急落したものの、それはまさに買い場であり、底値がさらに一時的なパニックで安くなったのだから買いが入ったのだ。 第2の謎は、アメリカはバブルのピークにあったら、いきなり崩壊してはすべての投資家が大きなダメージを受けるので、売り場を作るために必死でネガティブなニュースを意識的に、あるいは無意識的に無視し、あるいはポジティブなモノと捉えて、くさいものに蓋、あるいは売りポジションを作るための準備をしていた。こう考えれば、これまでの歴史的なバブル崩壊局面と類似性がはっきりする。 2008年のリーマンショックのときも、2007年夏にパリバショックというものが起きて、世界的に債券市場は凍りついていたにもかかわらず、2007年の秋にNYダウ平均は当時の史上最高値を更新したのである。 第3の謎、「アメリカでは実質的な影響は少ないのに、新型肺炎で下がるのか」、に対する答えは、今後、アメリカで新型肺炎が無限に広がるという恐れを抱いているからではなく、まったく逆で、新型肺炎と今回の暴落および乱高下が無関係である、と考えれば簡単だ。アメリカ株式市場のバブル崩壊なのである。 第4の点、5日の暴落についてだが、バブル崩壊局面では、投資家のセンチメントは最悪の状態になる。代表的なのは恐怖指数(VIX指数)である。乱高下を表すこの指標がこう呼ばれていることに象徴されるように、恐怖のときは、乱高下するのである。投資家はバブル崩壊の恐怖に直面しているのである。 第5の点、4日の暴騰も、これと同じで、恐怖に陥ると、藁にもすがりたくなる。したがって、ポジティブかどうか分からないニュースでも、とりあえず、明らかにネガティブでなければ、しかも、前日に大暴落していれば、反転のきっかけのニュースとして、自分の願望を押し付けて解釈することになるのである』、「今はアメリカの長期バブルの崩壊局面にある」、「バブル崩壊局面では、投資家のセンチメントは最悪の状態になる・・・恐怖のときは、乱高下するのである。投資家はバブル崩壊の恐怖に直面しているのである」、との見解には、私もその通りだと思う。
・『「最大の謎」=「利下げなのに暴落」の理由  最後の第6の点、「利下げなのに暴落」は、第5の点からすると、暴騰しそうであるが、ここは債券市場が絡んでいるので、そうはいかない。債券市場と株式市場は根本的に異なるロジックで動いている。 理由は2つある。債券市場の投資家、運用者は理論重視、理屈で動く人々であり、株式市場は、直感、ムードで動く、狩猟民族の人々である。もともと債券投資は保有をし続けて利回りを得る、インカムゲインをねらう投資であり、株式は値上がりによるキャピタルゲインをねらう投資であることが背景にある。 しかし、同時に、債券投資でキャピタルゲインをねらう人々もいる。彼らは現物を持たず先物で勝負するから、現在の保有ポジションは重要でなく、自由に動けるので、彼らが相場に影響を与えるから、これまでの投資スタンスから自由にポジションを取れる。したがって、債券買いの理由が生まれれば一瞬でポジションを変え、動くことができるのである。 一方、株式投資家は、先物勝負の人々もいるが、現物の投資家たちも売買をかなりするので、影響が残っており、動きにくいという面がある。これが第2の理由で、債券投資家が、その瞬間のロジックに正しく(素直に)反応するのである。ここでは、FEDが緊急利下げをした、ということは、次の会合で利下げすると思われていたのを前倒ししたのだから、金利は一気に大きな下降トレンドに入る。 次の会合でのさらなる利下げもありうるから、債券は値上がりを続けるはずだ。したがって「何があっても買いだ」、ということになり、債券買いが殺到し、金利が急低下した。債券投資家と株式投資家を先ほどは二分して議論したが、さらに両方に投資する投資家も当然いる。しかも、彼らは大きな規模で資金をシフトさせるから、彼らが一気に株式から債券にポジションをチェンジしたわけだ。なぜなら、債券でキャピタルゲインを狙えるからである。だから、株を売った。それゆえ、株式は下がったのである』、「債券市場と株式市場」の関係についての分析もさすがだ。
・『市場はより大きな下落局面、実体経済も長期下降へ  さて、今後はどうなるのか。私が2019年末の記事「2020年、意外なところからバブル崩壊は始まる」に書いたように、株式市場は大きな下落局面、バブル崩壊局面にある。 私は、きっかけはソフトバンクグループやユニコーンバブルの崩壊によると思っていたが、それ以外のまったく予想外の株式市場とは無関係のところからバブル崩壊のきっかけがきた。 ということは、これをきっかけに「ソフトバンクバブル」、「ユニコーンバブル」の崩壊の可能性もより一層強まったわけで、このバブル崩壊局面はさらに大きな崩壊局面となり、さらに長期に渡って続く。新型肺炎の話題が下火になったとしても、それにより株式市場が一時的に大きな反転をみせたとしても、ここはより大きな下落局面であるから、それを踏まえたうえで投資戦略を考えるべきである。 一方、実体経済については「今は新型肺炎による生産の先送り、需要の先送りが起きている。だから、新型肺炎騒ぎが収束すれば、その先送りされた需要が一気に出てくる。そうなれば景気は急回復する」、という議論がある。だが、それも間違いだ。 これは改めて議論したいが、これまで無駄に消費していたものが消えたので、人々はその無駄に気づき、あるいは無駄遣いの熱が醒めてしまっている。改めて需要が生じる、消費し直す、ということはない。 実体経済も大きなバブルになっていたというのが私の見方で、それが正しければ、実体経済も長期の下降局面に入るはずだ(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、少なくともバブル期の株価高騰で生じた資産効果で「実体経済も大きなバブルになっていた」のが、剥げるので、「実体経済も長期の下降局面に入るはずだ」、同感である。「「ソフトバンクバブル」、「ユニコーンバブル」の崩壊の可能性もより一層強まった」、ソフトバンクグループは持ちこたえられるのだろうか。

次に、経済評論家の山崎 元氏が3月14日付け東洋経済オンラインに掲載した「今回のバブルはもう1回膨らむかもしれない 今は「買い」か「売り」のどちらを選択すべきか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/336967
・『世界の資本市場が荒れている。後に「新型コロナショック」と呼ばれることになるのだろうか』、「山崎 元氏」の見方も注目される。
・『暴落の原因は、いったい何だったのか?  「資本市場の総本山」ともいうべきアメリカの株式市場は、過去3週間の間にNYダウで1日に1000ドル以上の前日比上下を8回も演じている。まるで新興国の株価指数のようで、「株式市場には成熟などあり得ないのだろうか?」と問いかけたくなる。 筆者は、現在ファンドマネージャーの仕事をしているわけではないし、日頃、株価の動きをあまり気にしないのだが、日経平均株価が1000円以上下げた9日の月曜の夜(正確には10日の朝)には、久しぶりにニューヨークの株価が気になって目が覚めた。 2013ドルを超えるNYダウの下げを見られたのだから、目の覚まし甲斐があったと思った。ところが、ほんの3日後の12日にNYダウは2352ドルの下げを演じ、下げ幅のレコードはあっさり更新されてしまった。アメリカ株がこの調子では、日本の株価が無事なはずもなく、週末13日の日経平均終値は1128円安の1万7431円となった。 さて、この相場変動(端的に言うと「暴落」)をどう理解するべきなのか。 表面的な材料としては、主として中国だけの問題だと思われた新型コロナウイルスによる肺炎の感染が、イタリアを筆頭に欧州諸国へ広がった。さらにアメリカにも全土レベルへと拡大していることによる、経済活動の悪化観測が「新たな悪材料」(情報のネガティブな差分)として、市場に追加されたことが原因だ。 11日にはアメリカが英国を除く欧州からの渡航者に入国禁止を発表した(この日のNYダウは1464ドルの下げだった)。今更の感なきにしもあらずだが、WHO(世界保健機構)はパンデミック(感染症の世界的大流行)を宣言した。 これまでは、世界の工場でかつ大きな消費地でもある中国経済の停滞が、世界の需要の低迷や製造業のサプライチェーンの分断等を通じて、世界の経済、ひいては企業業績にマイナスの影響を与えることが主な経済的懸念材料だった。OECD(経済協力開発機構)が3月2日に発表した予測では、その効果は2020年の世界の成長率で、以前と比べてマイナス0.5%程度の下方修正だった(2.9%→2.4%)。 上記の予測は、中国以外での感染拡大の影響を含んでいない。それでは、どこまで悪化するのかというと、当面、悪くなりそうだとは分かっても、影響の大きさが掴めない。 世界経済へのネガティブな影響が拡大しそうなことがもたらす利益予想の下方修正と、影響のマグニチュードに不透明感が増したことに伴うリスクプレミアムの拡大が今回の暴落の直接的な原因だと理解できる』、欧米での外出禁止令などの影響を考慮すると、「世界の経済、ひいては企業業績にマイナスの影響」はかなり大きなものになるだろう。
・『オバゼキ先生の「バブル崩壊説」  さて、故・ぐっちーさんご逝去の後、しばらく喪に服して空席となっていた本連載の執筆陣に、先週、満を持してオバゼキ先生(小幡績氏)が加わった。そして、初回から特大のホームランを飛ばされた。 先週の段階で、波乱気味の相場を、アメリカ株式のバブル崩壊過程であると断じて、「株価はまだまだ下がるに違いない」と言ってのけたのだった。登場初回にして、このインパクトは凄い。およそ株価の予想として、何が起こればこれ以上の的中と言えるのかが思い浮かばないくらいの神がかり的予言であった。 実は、筆者も、アメリカの資本市場がバブル気味であったことについては、同意見ではあった。故・ぐっちーさんのご逝去を悼む記事に書いたが(「ぐっちーさんが教えてくれたアメリカ経済のリアル『バブル崩壊の予兆』がちらほら見えてきた」(2019年9月29日))、劣化しつつ拡大するアメリカの社債市場がキナ臭いと思っていた。 その後の考えも含めて整理すると、バブル形成の構図は以下の5通りだ。 (1) 信用度が低い会社も含めて米企業が社債を発行する (2) 低信用度の社債を金融機関がCLO(担保付ローン証券)に編成して販売する (3) CLOは低金利で運用難の金融機関(日系を含む)が買う (4) 企業は調達した資金を自己株買いに使い株価を上げて株主に報いる  (5) ついでにストックオプションを持っている経営者も儲かる この構図は、企業の経営者、金融機関、機関投資家の3者が「当面」儲かるので歯止めがかかりにくい点で、強固なバブル形成プロセスといえる。 住宅資金を借りられるなら家を買おうと思うサブプライム(信用度が劣る)住宅購入者、証券化で儲かる金融機関、証券化商品(当時はCDO(担保付負債証券))で利回りを稼ごうとする機関投資家やトレーダー、というリーマンショックに至ったバブルを形成した当時の構図とよく似ているのだ。 証券化商品で商売する金融機関と、それを買う機関投資家が、共に他人のカネを扱っていて当事者個人は無責任でいられる点は前回と同じだ。ぐっちーさんなら、金融機関に対して、「CLOって、あたしが昔売っていたCDOと同じやつだろ。あんたら、進歩ないねぇ」と言って高笑いするところだろう』、CLO暴落で、日本の地域金融機関は火傷するとこが続発する懸念がある。
・『負債の作り手は「悪い意味で有能な」企業経営者  だが、今回、少し違うのは、負債の作り手が、返済ができなくなったら担保の住宅を取られる経済的に余裕のない素朴な(?)一般個人ではなく、自分の財産(主に自己株やストックオプションによる)と地位のためには取りうる手段を総動員して稼げるうちに稼ごうとする「悪い意味で有能な」企業経営者である点だ。今回の方が、よりたちが悪いように見える。 もちろん好調な経済が背景にあったのだが(一部は株高のおかげだ)、この構造のおかげで、アメリカの社債バブルが起こり、その副産物としてアメリカの株価が大いに上がり続けていたのだろうと、筆者は考えている。 「ほら、私が言う通り、バブルが崩壊しているのですよ!」とオバゼキ先生はおっしゃるかも知れないのだが、筆者は、この強固なインセンティブ構造(欲望のトライアングル!)を思うと、このバブルがそう簡単に崩壊してリセットされるようには思えないのだ。まだまだしぶといのではないだろうか?(もっとも、この考えに、予想としての自信はない)』、「この強固なインセンティブ構造(欲望のトライアングル!)を思うと、このバブルがそう簡単に崩壊してリセットされるようには思えない」、どうも山崎氏の願望に終わる可能性の方が大きいのではなかろうか。
・『かんべえ先生の心配とは?  さて、この連載のいい点は、筆者達が(編集者も含めて)ゆるく相互に意見(普段は競馬の予想と感想なのだが)を交換しながら原稿を書いている点だ。 今回の暴落について、かんべえ(吉崎達彦)先生からメールで有益な示唆を頂いた。コロナもさることながら、原油価格の下落が重要で心配なのだという。 株価の影に隠れているが、原油価格の下落も凄まじい。世界景気の減速観測に加えてサウジアラビアとロシアの交渉決裂による減産合意の不成立が大きく響いている。 原油価格下落は、産油国にとってダメージであることと、日本のような原油輸入国にとってはプラスの効果があることを想起させる。だが、原油価格下落の金融的な影響まで考えた場合、必ずしも日本にとってはプラスと言い切れない。 金融市場として恐ろしいのは、原油価格の下落が、アメリカのシェールオイル業者のデフォルト(債務不履行)をもたらす可能性があることだ。この場合、他の社債のクレジット・スプレッドが一気に拡大して、今まで社債で資金調達ができていた企業の資金繰りが付かなくなる公算が大きい。サブプライム問題の際にCDOが暴落・デフォルトしたように、CLOが暴落する。この状況は、単なる株価の下落よりも金融システムを揺るがす金融危機に至る可能性が大きい。 加えて、財政構造が脆弱な産油国の国際金融的デフォルトが起こる可能性も拡大している。 金融に対する危機としては、コロナ問題をきっかけとした株価の下落よりも、こちらの方が「本丸」である可能性がある。かんべえ先生のメールの味わい深い一節を引用しよう。 「ひと回り前の子年に流行っていたCDOが、12年後に皆が忘れた頃にCLOという形で舞い戻ってきて、それが続々と破綻するとしたら、まさしくリーマンショック以来ということになりますね」。 現実化するとしても数カ月先かも知れないが、こうした状況が起きたときには、アメリカの社債市場が崩壊して、その副産物であるアメリカ株の株高も大幅修正されて、国自体がアメリカの子会社のような日本の株価も大幅に連れ安することが避けられまい(その時は、もちろん世界の株式は「買い!」の場面となる)』、確かにCLOの「破綻」の影響は深刻なようだ。「世界の株式は「買い!」の場面となる」、暴落で割安になるので、「買い!」ということなのだろう。
・『バブルの粘り腰はいかに?  さて、新型コロナウイルス(による経済減速)に、バブル(崩壊の可能性)に、原油安(による金融不安)、と悪材料が並ぶと、普通の人なら、「株式は売るしかない!」という気分になるかも知れないのだが、筆者はそれがいいと思っていない。 新型コロナウイルスの問題が今後どのような推移になるかは分からないが、それ以外の要素を考えると、今秋に大統領選挙を控えるアメリカのトランプ政権には複数の手段がある。 短期的な効果をタイミングよく得るためには、何れもアメリカ内の新型コロナウイルス問題が一段落することが必要条件となるが、(1)FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ、(2)減税、(3)対中国貿易制限の緩和、といった手段は何れも株価に対してプラスに大きく効く要因だ。再選のことだけを考える大統領には、それなりに持ち弾がある。 NY市場の株価暴落といえば、今も突出した1位の下落率を誇る1987年のブラックマンデー(前取引日比?22.6%)の後に起きたことは、世界の景気後退を避けるために、日本で金融緩和と財政支出を伴った内需拡大政策が採られて、比較的短期間で株価は回復した。だが、その後に日本の資産(主に株式と土地。ゴルフ場の会員権なども)のバブル拡大であった。 大幅な急落と急騰とが交錯するここしばらくの内外の株価の感触は、どうもブラックマンデーの当時に似ている。1980年代後半の日本がそうだったように、「アメリカの資本市場がバブル的である」とするなら、このバブルはもっと粘ってもおかしくないのではないか。 もっとも、今回政策的に無理をしてでも頑張る「機関車」の役割は、日本ではなくてアメリカだ。日本の政策には、余力と柔軟性が乏しい。「消費税の期限付き停止」が分かりやすくて公平で消費の喚起に有効であり、かつ規模の上でもいいと思うが、実際に出てくるのは、「ケチ臭くて、複雑な、キャッシュレス決済のポイント還元拡大の逐次投入」くらいではなかろうか(この予想は「外れ」を強く期待する)。率直に言って、しばらくはアメリカ頼みだろう。 数カ月単位くらいの話で、長期的に資産形成をしている一般投資家は気にしなくていい。だが、新型コロナ問題が落ち着いて、「少し厄介な新型インフルエンザくらいだな」と理解されるようになった時に、アメリカの資本市場は再びバブル形成の軌道に入り直している可能性が捨てきれない。 予想に責任など持つ気はないが、筆者個人は、少なくとも今は持っているインデックスファンドを売りたいとは思わない。数カ月単位で今「売る」か「買う」かどちらかを選べと言われたら、断然「買い」を選ぶ。 付け加えると、株式投資が仮に「長期なら絶対損をしない」と皆が信じるようになったら、株式投資に対する高いリターンは存在しなくなってしまうのが金融理論の理屈だ。 株式は、心配しながら持ち続けて、眺め続けるべきものなのだ(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「株式は、心配しながら持ち続けて、眺め続けるべきものなのだ」、には同意するが、「アメリカの資本市場は再びバブル形成の軌道に入り直している可能性」、は少ないのではないかと考えている。
タグ:(3) CLOは低金利で運用難の金融機関(日系を含む)が買う 暴落の原因は、いったい何だったのか? バブル形成の構図 「今回のバブルはもう1回膨らむかもしれない 今は「買い」か「売り」のどちらを選択すべきか」 CLOが暴落 アメリカはまったく状況が違い、新型肺炎の生活への影響はまだ無視できるほどに小さい 新型コロナ問題が落ち着いて、「少し厄介な新型インフルエンザくらいだな」と理解されるようになった時に、アメリカの資本市場は再びバブル形成の軌道に入り直している可能性が捨てきれない (2) 低信用度の社債を金融機関がCLO(担保付ローン証券)に編成して販売する (最近) 株式は、心配しながら持ち続けて、眺め続けるべきものなのだ (1) 信用度が低い会社も含めて米企業が社債を発行する 企業の経営者、金融機関、機関投資家の3者が「当面」儲かるので歯止めがかかりにくい点で、強固なバブル形成プロセス (5) ついでにストックオプションを持っている経営者も儲かる バブル バブルの粘り腰はいかに? オバゼキ先生の「バブル崩壊説」 他の社債のクレジット・スプレッドが一気に拡大して、今まで社債で資金調達ができていた企業の資金繰りが付かなくなる公算が大 財政構造が脆弱な産油国の国際金融的デフォルトが起こる可能性も拡大 アメリカのトランプ政権には複数の手段がある (1)FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ、(2)減税、(3)対中国貿易制限の緩和 コロナ問題をきっかけとした株価の下落よりも、こちらの方が「本丸」である可能性がある 単なる株価の下落よりも金融システムを揺るがす金融危機に至る可能性が大 金融市場として恐ろしいのは、原油価格の下落が、アメリカのシェールオイル業者のデフォルト(債務不履行)をもたらす可能性がある 負債の作り手は「悪い意味で有能な」企業経営者 リーマンショックに至ったバブルを形成した当時の構図とよく似ている (4) 企業は調達した資金を自己株買いに使い株価を上げて株主に報いる 第1の鍵は、世界的な乱高下ではない 山崎 元 実体経済も大きなバブルになっていたというのが私の見方で、それが正しければ、実体経済も長期の下降局面に入るはずだ ソフトバンクグループやユニコーンバブルの崩壊 市場はより大きな下落局面、実体経済も長期下降へ 「最大の謎」=「利下げなのに暴落」の理由 恐怖のときは、乱高下するのである。投資家はバブル崩壊の恐怖に直面しているのである 今はアメリカの長期バブルの崩壊局面にある 第6に、FEDが予想外のタイミングで、3月3日火曜日に緊急利下げを行ったのに対して、株価が暴落で反応 第5の鍵は、5日の暴落前である3月4日水曜日の話 小幡 績 3月5日木曜日には新型肺炎に関する大きなニュースが出なかったにもかかわらず、株価が暴落 中国の生産がストップし、世界的な生産ネットワークが大きなダメージを受けるのは間違いないのに、株価は上昇 「6つの鍵」から出てくる「答え」とは何か? 東洋経済オンライン 「ついにアメリカの巨大バブル崩壊が見えて来た 株価の大乱高下めぐる「6つの鍵」で読み解く」 (その2)(ついにアメリカの巨大バブル崩壊が見えて来た 株価の大乱高下めぐる「6つの鍵」で読み解く、今回のバブルはもう1回膨らむかもしれない 今は「買い」か「売り」のどちらを選択すべきか)
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日本の構造問題(その15)(平成初期の中年男の悲鳴が予言していた「日本の自殺」、日本人は「失われた30年」の本質をわかってない、「日本はソフトな独裁国家」天才哲学者マルクス・ガブリエルが評するワケ) [経済]

日本の構造問題については、1月23日に取上げた。今日は、(その15)(平成初期の中年男の悲鳴が予言していた「日本の自殺」、日本人は「失われた30年」の本質をわかってない、「日本はソフトな独裁国家」天才哲学者マルクス・ガブリエルが評するワケ)である。

先ずは、健康社会学者(Ph.D.の)河合 薫氏が昨年4月23日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「平成初期の中年男の悲鳴が予言していた「日本の自殺」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00021/?P=1
・『今回は平成最後のコラムとなるので「平成の30年間を振り返る」という、コテコテのメディアチックなテーマにしようと思う。 個人的には、私は昭和63年(1988)入社。かくして昭和の高度成長期に「当たり前」だった働き方が瓦解していく様を目の当たりにした世代でもある。“ピチピチ”で“イケイケ”だったあの頃、自分のキャリアを含め「こんな風になる」とは“1ミリ”も想像していなかった。 もちろん元号が変わったからといって、今ある「流れ」が変わるわけではない。 だが、平成を振り返ることは自分のキャリアの足跡をたどることであるとともに、フィールドワークのインタビューに協力してくださった約700名の人たちの「語り」に思いをはせる作業でもあり、これまで講演会やら取材やらでお邪魔した数えきれないほどの企業の人たちから伺った「わが社の問題点」を振り返ることでもある。で、そんないくつもの“データBOX”の蓋を開けてみると、「悪化、劣化、衰退」という、最悪な文字しか浮かばない。ふむ、何回振り返っても暗闇しか見えない。 もちろん色々な制度や法律はできたし、セクハラやパワハラ、長時間労働など、やっと、本当にやっと平成終盤で関心が高まり、部分的にはかすかな“光”が見えてきた問題もある。 しかしながら、どれもこれも抜け穴だらけで、全体を見渡すと“自滅”にむかっているとしか思えないのである。 それは「グループ一九八四年」が昭和50年2月号の『文藝春秋』に投稿した論文、「日本の自殺」の中に予期されていたとおりであり、本論文が2012年に文春新書から出版されたときの巻末で文芸評論家の福田和也氏が記した言葉どおりのことが起こっているな、と。 「日本人が部分を見て全体をみることができなくなり、エゴと放縦と全体主義の蔓延のなかに自滅していく危機のなかに存するというべきなのである」(by グループ一九八四年 『日本の自殺』P.57より) 「今の日本は『自殺』するだけの勢いもなく、衰えた末に『自然死』してしまうのではないか、と思わされる」(by 福田和也氏 同P.189より) なんだかしょっぱなから陰鬱な文章になってしまったのだが、「全体をみることができなくなった」という言葉の重みを裏付ける調査から、まずは紹介しようと思う。 この調査は私の大学院時代の恩師である山崎喜比古先生が中心になり、平成3年(1991年)11月に「中壮年男性」を対象に実施したもので、日本の産業ストレス研究の原点といえる大規模調査のひとつだ』、30年以上も前の「日本の自殺」の「巻末」の「言葉」が、現在にも当てはまるというのは、大いに考えさせられる。
・『1970年代後半から、医学の現場では「過重労働による死」がいくつも報告され、遺族の無念の思いをなんとか研究課題として体系づけたいと考えた旧国立公衆衛生院の上畑鉄之丞名誉教授(うえはた・てつのじょう、2017年没)が、「過労死」という言葉を初めて使い、1978 年の日本産業衛生学会で「過労死に関する研究 第1報 職種の異なる17 ケースでの検討」を発表した。 それをきっかけに翌年から「過労死」の事例報告が相次ぎ、やがて「過労死」という言葉は医師の世界から弁護士の世界に広まり、1988年6月、全国の弁護士・医師など職業病に詳しい専門家が中心となって「過労死110番」を設置。すると夫を突然亡くした妻たちから電話が殺到し、それをメディアが取り上げ「過労死」という言葉が一般社会に広まることになった。 時期を同じくして多くの企業がOA化を進め、働く人たちの精神的ストレスも増加していた。そこで、欧米ではすでに1970年代から進められていた長時間労働の削減やワークライフバランスを「日本でもやらなきゃ!」と労働者を対象にした調査研究がスタートしたのである』、「「過労死」という言葉を初めて使」ったのが「1978 年」だったとは初めて知ったが、40年以上も解決されずに続いていることも衝撃的だ。
・『「長時間」働くことは“美徳”だった平成初期  今回紹介する「中壮年男性の職業生活と疲労とストレス調査」は、民法、労働法を専門とし社会法の分野で多くの立法に参画した東京大学名誉教授(当時)の有泉亨先生はじめ、日本の労働経済学研究の第一人者である法政大学名誉教授(当時)小池和男先生らの助言を得て、山崎先生らが調査を実施し、報告書をまとめたものだ。 当時は「長時間労働やストレスフルな働き方はあくまでも、労働者個人の問題要因」として説明される議論が主流だった。そこで山崎先生は「人の働き方は、企業の働かせ方で変わる!」と、至極まっとうな異議を唱えるべく、労働・職場環境の要因と合わせて分析した。俗っぽくいえば、山崎先生は“ブラック企業研究”のパイオニア的存在であり、この視点こそがこの研究の“ウリ”だった。 調査対象は、東京都内や都心通勤圏に住む35~54歳の男性労働者3000人。基本属性は、+1000人以上規模の会社に勤める人が4割を占め、+業種は「製造業」が30.6%と最も多く、「サービス業」20.5%、「建設業」11%と続き、 +雇用形態は「正社員」が95.6% 月平均の残業時間は、中央値で「30時間以上~40時間未満」。50時間以上が24%、70時間以上が11.5%。 対象が異なるため単純比較はできないが、2013年に「Vorkers」が行った調査では、残業時間は50時間以上が4割。つまり、91年の山崎先生の調査では「今より短い結果」が得られていたのである。 そして研究の“キモ”である長時間労働とその他の要因tとの関係性については、次のようなことがわかった。 +「仕事量が多い」「不規則勤務がある」「厳しいノルマがある」という職場ほど、残業時間が長い +残業時間が多い人ほど「長時間労働を評価する雰囲気がある」とし、具体的には、月平均残業時間「50~70時間未満」は53.3%、「70時間以上」は65.5% +「成績に響くので、少しくらい体調が悪くても出社する」という労働者が36%に上ったのに対し、「仕事を休むと迷惑をかけるので、少しくらい体調が悪くても出社する」と77%が回答  「好きな仕事ができなくとも高い地位に昇進したい」「ある程度昇進し、かつ嫌いな仕事でなければいい」という昇進志向の労働者は全体の51%で、「昇進よりも好きな仕事」との回答(37%)を大きく上回っていた 上記の結果からは、「24時間働けますか?」という企業側の暗黙のオーダーを、働く人たちが「美徳」と捉え、世間もそういう働き方をする人たちを評価する風潮が、「長時間労働」の背後に存在していたと推察できる。 と同時に、1990年代初頭のビジネスマンは、会社というヒエラルキー組織の中で絶対的な居場所を確保することを好む傾向が強かったこともわかる』、確かにあの頃は、まだよき時代だったようだ。
・『忙しかったけど納得のいく報酬と思いやりある職場があった  次に、「職場の人間関係」に関する項目では、 +「仕事を任せられる部下や、サポートしてくれる人がいない」53.9% +「上司の指導や助言が得られない」51.2% で、これらを残業時間との関係でみると、 +月平均残業時間が50時間以上になると、それぞれ68.8%、68%にもおよび、50時間未満との格差が生じていることがわかった。 その一方で、+「同僚や部下が忙しいと、すすんで手伝ったりカバーする」と、全体の8割の人が答えている。 また「報酬」に関しては、 +「現在、思い通りの地位についている」と60.3%、「仕事におもしろさや、やりがいを感じている」と69.6%が回答。 しかしながら、残業時間との関係は認められず、一部でいわれるように、仕事が面白くてやりがいがあるからといって、残業が多くなることはないことがわかった。 賃金については、仕事に見合った報酬を「十分に得ている」は42.7%、「十分ではない」が55.9%と上回った。報酬への満足感と残業の多さとの関係性はなかった。「自分の過労死を心配することがある」とした人は、月平均残業時間70時間以上では65%だった。 ……さて、いかがだろうか。 繰り返すが、調査が行われたのは平成3年(1991年)10月だ。 この頃は「余裕があった時代」とイメージされがちだが、実際には「仕事量の多さ」や、「厳しいノルマ」に悲鳴をあげ、「賃金に不満」を感じている人も多く、既に過労死や過労自殺と背中合わせの時代に突入していたのだ。 その半面、給料は上昇傾向に(ピークは1997年の467万3000円 by国税庁「民間給与実態統計調査」)にあったことに加え、「会社員=正規雇用」で、「将来への不安」に押しつぶされそうになることはなかった。 「サポートを得られない」「上司の助言が得られない」状況になりつつも、「同僚や部下が忙しいと、すすんで手伝ったりカバーする」と8割の人が答えられるだけの心理的余裕もあった。 つまるところ「ストレスの雨」は職場に降り始めていたものの、それをしのぐだけの“傘”を企業が提供していたことで、ビジネスマンは「やりがい」と「他者への共感」というポジティブな感情を確保できていたのではないか。「正規雇用・長期雇用」という制度を企業が維持していたことで、労働者と企業の間でギブアンドテイクの関係がギリギリ保持できていたのである』、「「ストレスの雨」は職場に降り始めていたものの、それをしのぐだけの“傘”を企業が提供していたことで、ビジネスマンは「やりがい」と「他者への共感」というポジティブな感情を確保できていたのではないか」、解説は説得的だ。
・『成果主義の名を借りたコスト削減が職場を荒廃させた  ところが、“パチッ”“パチッ”とバブルがはじける音を聞きつけていた会社組織の“上階のお偉い人たち”は、その「全体」をみることなく「部分」、すなわち「年功制」のネガティブな側面だけを注視。 「アメリカの成果主義ってやつを輸入したらどうかな?」「いいね。年功賃金に不満もってる新人類の若いやつらも喜ぶだろう」 「うん!能力主義だよ!」 「そうだ!自己実現だよ!」といった具合に、“コスト削減”という下心ありありの制度を、文化も労働体系も異なる米国から輸入。それにまんまとひっかかったのが、「自分は“できる”」と妄信したエリートと「偉そうなオジさん」に不満を抱えていた若者だった。「年功序列崩壊だ! 成果を出せばいいんだ! 目指せ、1億円プレイヤーだ!」と大喜びしたのである。 「エゴと放縦と全体主義」に陥ってる“お偉い人たち”は、さらなる深みにハマり、「米国=世界→素晴らしい!」とばかりに「正規雇用」と「長期雇用」をなくすことを選択。 1995年、日経連(現経団連)は、「新時代の『日本的経営』」なるものを打ち出し(下記の表)、山一証券の倒産以降は「ダムサイジング(愚かなサイズ合わせ)」に突っ走り、平成後期には政治の力を借り「生きる力の基盤」を確保できない労働者を量産した。 (「長期蓄積能力活用型グループ」「高度専門能力活用型グループ」「雇用柔軟型グループ」に分けた表はリンク先参照) ちなみに「ダムサイジング」とは、1996年の経営管理学界で、当時リンカーン・エレクトリックの最高経営者だったドナルド・ヘイスティングスが使ったお言葉である。人件費を削るなどの経費削減が、長期的には企業の競争力を低下させるとする研究者たちの研究結果を、自らの経験を交えて「ダムサイジング」と呼んだのだ。 全体が見えない人たちの思考は常に短絡的。自分たちが“新しい”と信じている経営手法は、海の向こうで既に否定されていたのだ。しかしながら、もはや働く人たちを「人」として見られない経営者たちは「エゴに満ちた経営」をどこまでも追い求めた。 すべては「投資家」を喜ばすための政策であり、そこに「働く人の健康」や「働く人の感情」はみじんも存在しない。 やがて、現場の人たちは生々しい感情を抑え、利己的に生きないと自分が生き残れないことを経験的に学び、「同僚や部下が忙しいと、すすんで手伝ったりカバーする」という共感は消滅し、「自己責任」という言葉を多用する人たちを量産した』、「自分たちが“新しい”と信じている経営手法は、海の向こうで既に否定されていたのだ」、何とも皮肉なことだ。「「同僚や部下が忙しいと、すすんで手伝ったりカバーする」という共感は消滅し、「自己責任」という言葉を多用する人たちを量産した」、大きな弊害が残されたようだ。
・『平成に失われた共感や居場所を「令和」に取り戻すために  つまるところ、平成の時代とは「人間の勝手さと愚かさ」を知らしめた30年だったのではないか。カネに換算できないこの無形の価値あるものをおろそかにし、目の前の「見えるもの」に心奪われたものは、自滅の道をたどるしかない。 もし、1990年代初期に「過労死」というものを企業が真剣に受け止め、「大切な社員を死なせてはならない」と考えてくれれば「自滅の危機」は、免れたかもしれない。 経営者が、高度成長期の立役者だった下村治氏の「オイルショックをもって高度成長は完全に終わった。これからはゼロ成長または低成長だ」という予言を真剣に受け入れていれば、「成長し続けるためのコスト削減」ではなく、「今いる人を大切にするための経営」に舵(かじ)をきることができたかもしれない。 もし、バブル期の私たち世代が「自分たちは恵まれた時代に生まれただけ。運が良かっただけ」と全体を見ることができたら、もう少しだけ「共感」という感情を社会に残せたかもしれない。 そして、平成が終わろうとしている「今」。日本中のアチコチに「居場所」を見いだせない人たちがいる。全体を見ず部分だけを見て批判することでしか、居場所を得られない人たちがいる。 なんか書いていて悲しくなってしまったのだが、小さくてもいいから自分にできることをコツコツと考え実行し、「オカシイことはオカシイ」と言える自分の価値判断軸を失うことなく、残りの時間を過ごすしかないのだな、きっと。 というわけで、元号変われど今までどおり精進いたしますゆえ、「令和」の時代にまたお会いしましょう』、「平成の時代とは「人間の勝手さと愚かさ」を知らしめた30年だったのではないか」、鋭い指摘だ。何とかして社会に「共感」を取り戻したいものだが、「覆水盆に返らず」なのかも知れない。短期的視点で、日本的経営の良さを破壊した経営者たちの罪は深い。

次に、経済ジャーナリストの岩崎 博充氏が本年1月26日付け東洋経済オンラインに掲載した「日本人は「失われた30年」の本質をわかってない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/325346
・『今から30年前、1990年の東京証券取引所は1月4日の「大発会」からいきなり200円を超える下げを記録した。1989年12月29日の「大納会」でつけた史上最高値の3万8915円87銭から、一転して下げ始めた株式市場は、その後30年が経過した今も史上最高値を約4割ほど下回ったまま。長期的な視点に立てば、日本の株式市場は低迷を続けている。 その間、アメリカの代表的な株価指数である「S&P 500」は、過去30年で約800%上昇。353.40(1989年末)から3230.78(2019年末)へと、この30年間でざっと9.14倍に上昇した。かたや日本は1989年の最高値を30年間も超えることができずに推移している。 この違いはいったいどこにあるのか……。そしてその責任はどこにあるのか……。アメリカの経済紙であるウォールストリートジャーナルは、1月3日付の電子版で「日本の『失われた数十年』から学ぶ教訓」と題して、日本が構造改革を行わなかった結果だと指摘した』、興味深そうだ。
・『日本は失われた40年を歩むことになるのか  この30年、確かに株価は上がらなかったが、極端に貧しくなったという実感も少ない。政治は一時的に政権を明け渡したものの、バブル崩壊の原因を作った自民党がいまだに日本の政治を牛耳っており、日本のあらゆる価値観やシステムの中に深く入り込んでいる。 バブルが崩壊した原因やその責任を問われぬまま、失われた30年が過ぎてきた。自民党政権がやってきたことを簡単に総括すると、景気が落ち込んだときには財政出動によって意図的に景気を引き上げてリスクを回避し、その反面で膨らむ一方の財政赤字を埋めるために消費税率を引き上げ、再び景気を悪化させる……。そんな政治の繰り返しだったと言っていい。 2012年からスタートしたアベノミクスでは、財政出動の代わりに中央銀行である日本銀行を使って、異次元の量的緩和という名目で、実際は「財政ファイナンス(中央銀行が政府発行の国債を直接買い上げる政策)」と同じような政策を展開してきた。政府に逆らえない中央銀行総裁が登場したのも、日本経済の「失われた20年、30年」と無縁ではないだろう。 実際に、近年の日本の国際競争力の低下は目に余るものがある。 生産能力は低下する一方であり、加えて少子高齢化が顕著になってきている。新しい価値観をなかなか受け入れない国民や企業が蔓延し、失われた30年が過ぎたいま、日本はこれから失われた40年、あるいは失われた50年を歩き始めているのかもしれない。 このままでは2030年代には、日本は恒常的なマイナス成長国家となり、経常赤字が続き、やがては先進国から陥落する日が来るのかもしれない……。そんな予測をする専門家も多い。日本の失われた30年を、もう1度検証し振り返ってみたい』、確かに「バブルが崩壊した原因やその責任を問われぬまま、失われた30年が過ぎてきた」、「もう1度検証」する意味は大きい。
・『この30年、何が変化したのか?  この30年で日本はどんな変化を遂げたのだろうか。まずは、主要な統計上の数字の面でチェックしてみたい。 ●平均株価(日経平均株価)……3万8915円87銭(1989年12月29日終値)⇒2万3656円62銭(2019年12月30日終値) ●株式時価総額……590兆円(1989年年末、東証1部)⇒648兆円(2019年年末、同) ●ドル円相場……1ドル=143.4円(1989年12月末、東京インターバンク相場)⇒109.15円(2019年12月末) ●名目GDP……421兆円(1989年)⇒557兆円(2019年) ●1人当たりの名目GDP……342万円(1989年)⇒441万円(2019年) ●人口……1億2325万人(1989年、10月現在)⇒1億2618万人(2019年、11月現在) ●政府債務……254兆円(1989年度、国と地方の長期債務)⇒1122兆円(2019年度末予算、同) ●政府債務の対GDP比……61.1%(1989年)⇒198%(2019年) ●企業の内部留保……163兆円(1989年、全企業現金・預金資産)→463兆円(2018年度) これらの数字でわかることは、第1に株価の低迷がずっと続いていることだ。 1989年の大納会でつけた3万8915円という高すぎる株価は、解禁されたばかりの株式先物指数が一部の外国人投資家に使われた意図的な上昇相場であったという背景もあるが、30年間回復できない現実は日本経済に問題があるとしか言いようがない。 アメリカの株価がこの30年で9倍になったことを考えると、日本の株価は異常な状態と言っていいだろう。ちなみに、この30年間でドイツの株価指数も1790.37(1989年末)から1万3249.01(2019年末)に上昇。ざっと7.4倍になっている。 なお、株式市場の規模を示すときに使われる「時価総額」も、この30年で日本はわずかしか上昇していない。 株式の上昇による資産効果の恩恵を日本の個人はほとんど受けていないことになる。個人が株式に投資して金融資産を大きく伸ばしたアメリカに比べると、日本は一向に個人の株式投資が進んでいない。日本人の多くが豊かさを実感できない理由の1つと言っていいだろう。 実際に、この30年で海外投資家の日本株保有率は1990年度には5%弱だったのが、2018年度には30%に達している。日本株の3割は外国人投資家が保有しているわけだ。 かつて日本の株式市場は3割以上が国内の個人投資家によって保有されていた。バブル崩壊によって個人投資家が株式投資から離れ、その後の個人の資産形成に大きな影を落としたと言っていい。現在では、過去最低レベルの17%程度にとどまっている。 ちなみに、アベノミクスが始まって以来、政府は「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」などの「五頭のクジラ」と呼ばれる公的資金を使って、意図的に株価を下支えしていると言っていい。日銀も「ETF(上場投資信託)」を買い続けている。 これでは株価は適正な価格形成を行えず、個人投資家の多くは割高な価格で株をつかまされている状態だろう。株価が暴落したときに、個人が株式市場に参入する機会を失ってしまっているわけだ。 株式市場というのは、あくまでも市場の価格形成に任せるのが望ましく、株価が大きく下がれば個人投資家が株式投資を始める可能性が高い。せっかくの投資機会を、政府が意図的に邪魔している状態が続いてきたとも言えるのだ。 マクロ経済的に見ると、日本の名目GDPは1989年度には421兆円だったのが、30年を経た現在では557兆円になっている(米ドル建てで計算。1989年はIMF、2018年は内閣府推計)。一見すると国内総生産は順調に伸びてきたかのように見えるが、世界経済に占める日本経済のウェートを見ると、その凋落ぶりがよく見て取れる。 ●1989年……15.3% ●2018年……5.9% アメリカのウェートが1989年の28.3%(IMF調べ)から2018年の23.3%(同)へとやや低下したのに比べると、日本の落ち込みは大きい。その代わり中国のウェートは2.3%(同)から16.1%(同)へと急上昇している。新興国や途上国全体のウェートも18.3%から40.1%へと拡大している。 日本の国力の低下は、明らかだ』、確かに「五頭のクジラ」が日本の株式市場を大きく歪めた状態は、いまだに続いているのは異常だ。「世界経済に占める日本経済のウェートを見ると、その凋落ぶり」は、目を覆いたくなるほどだ。これには、「アベノミクス」による円安政策も大きく影響している。
・『グローバル企業が示す日本の衰退  日本の「失われた30年」を的確に示している指標には、日本全体の「国際競争力」や日本企業の「収益力ランキング」がある。 例えば、スイスのビジネススール「IMD」が毎年発表している「国際競争力ランキング」では、1989年から4年間、アメリカを抜いて日本が第1位となっていた。それが2002年には30位に後退し、2019年版でも30位と変わっていない。 一方、アメリカのビジネス誌『フォーチュン』が毎年発表している「フォーチュン・グローバル500」は、グローバル企業の収益ランキング・ベスト500を示したものだ。1989年、日本企業は111社もランキング入りしていたが2019年版では52社に減少している。 日本の科学技術力も、この30年で大きく衰退してしまった。 日本の研究者が発表した論文がどれだけほかの論文に引用されているのかを示す「TOP10%補正論文数」というデータでも、1989年前後には世界第3位だったのだが、2015年にはすでに第9位へと落ちてしまっている。 このほかにも、ここ30年で順位を落としてしまった国際ランキングは数知れない。ほとんどの部分で日本以外の先進国や中国に代表される新興国に抜かれてしまっている。日本は今や先進国とは名ばかりの状態なのかもしれない。) 残念なことに、日本のメディアは日本の技術がすばらしいとか治安が優れているなど、数少ない日本の長所をことさらにクローズアップして、日本が世界をリードしているような錯覚を毎日のように国民に与え続けている。 1989年には、日本にやってくる外国人観光客は非常に少なかった。訪日外国人客は283万人(1989年)、それがいまや3119万人(2018年)に膨れ上がった。当時、外国人にとって日本の物価は非常に高く、一部のお金持ちを除くとなかなか日本に来ることができなかった。 現在は中国に限らず、世界の数多くの観光客が日本は格安だとして訪れている。実際に、日本はこの30年間ほどんど物価が上がらず、アベノミクスで掲げた年2%のインフレ率さえ達成できない。 国民生活にとっては、それが悪いわけではないが、日本の国力は明らかに低下していると考える必要があるだろう』、「日本のメディアは日本の技術がすばらしいとか治安が優れているなど、数少ない日本の長所をことさらにクローズアップして、日本が世界をリードしているような錯覚を毎日のように国民に与え続けている」、のは残念なことだ。
・『責任はどこにあるのか?  日本が失われた30年を始めたきっかけは、言うまでもなく株価の大暴落だが、追い打ちをかけるように当時の大蔵省(現財務省)が、高騰を続ける不動産価格を抑制しようと「総量規制」を実施したことにある。株価にブレーキがかかっているのに、土地価格にまでブレーキをかけたことが原因であり、そういう意味ではバブル崩壊は政府の責任だ。 アメリカがリーマンショックを経験したような出来事を、日本はその20年も前に味わっていたわけだが、そこでの対応の違いがアメリカと日本の差を決定的にしたと言っていい。 日本は、株価暴落や土地価格の暴落などによって実質的に経営破綻に追い込まれた金融機関や企業の破綻を先延ばしし、最終的に7年以上もの時間をかけてしまったからだ。 リスクを先送りにすることで、自民党を軸とした政治体制を守り、政権と一蓮托生になっていた官僚機構も、意図的に破綻処理や構造改革のスピードを遅らせた。その間、政府は一貫して公的資金の出動による景気対策や公共事業の増加などで対応してきた』、「バブル崩壊は政府の責任」、その通りだが、「実質的に経営破綻に追い込まれた金融機関や企業の破綻を先延ばしし、最終的に7年以上もの時間をかけてしまった」、には違和感がある。「先延ばし」は、本格的回復を遅らせるが、ショックを和らげる効果もあるからだ。
・『財政赤字がまだ400兆円のレベルだった頃に、当時の大蔵省主計局に取材したことがある。担当者は「赤字国債の発行を辞めることは、官僚機構がみずから国を荒廃に追いやることになる」と発言したのをいまでも思い出す。赤字国債なしでは、日本は立ち行かなくなっていることを認めているわけだ。 この30年、日本は企業救済のための資金は惜しまずに支出してきた。アメリカのように、税金を民間企業に支出することに強硬に反対する共和党のような勢力が、日本にはないからだ。公的資金の支出が景気の回復に効果がないとわかると、今度は郵政民営化といった規制緩和を始める。 しかし、これもさまざまな勢力に忖度するあまり、中途半端な形で進行し、結果的に景気回復の切り札にはならなかった。最終的に、現在進行形のアベノミクスにたどり着くわけだが、スタートして今年で8年になろうとしているにもかかわらず、その効果は見当たらない。 ひょっとしたら、一時的に消費者物価が2%を突破するかもしれないが、一時的なものに終わる可能性が高い。その間、政府の債務はどんどん膨らんで、政府は何度も消費税率アップに動く以外に方法はなくなっていく。 1989年4月に消費税を導入して以降、この30年で政府は3回の「消費税率引上げ」を実施しているが、いずれも2%、3%という具合に、ほんの少しずつ引き上げることで決定的なパニックに陥るリスクを避けてきた。 一方のアメリカは、リーマンショック時にバーナンキFRB議長は大胆に、そしてスピード感を持って解決策を打ち出した。責任を回避せずに、リスクに立ち向かう姿勢がアメリカにはあったと言っていい。 日本はつねにリスクを回避し、事なかれ主義に徹し、改革のスピードや規模が小さくなってしまう。その結果、決断したわりに小さな成果しか上げられない。簡単に言えば、この30年の失われた期間は現在の政府に責任があることは間違いない。 それでも国民は、バブル崩壊の原因を作った政権にいまも肩入れしてきた。その背景には補助金行政など、政府に頼りすぎる企業や国民の姿がある。実際に、この30年間の統計の中でもあったように政府債務は250兆円から約4倍以上の1100兆円に増えている。 自民党政権がいまも続いているのは、ただ単に「低い投票率」に支えられているだけ、という見方もあるが、30年の間に、国民の間に「諦め」の境地が育ってしまったのも事実だろう。 長期にわたってデフレが続いたため、政府は経済成長できない=税収が増えない分を長期債務という形で補い続けてきたわけだ。収入が減ったのに生活水準を変えずに、借金で賄ってきたのが現在の政府の姿と言っていい』、リーマン・ブラザーズの破綻を放置し、「リーマンショック」を引き起こしたこと自体が、「アメリカ」の政策ミスだった。「この30年の失われた期間は現在の政府に責任があることは間違いない」、「収入が減ったのに生活水準を変えずに、借金で賄ってきたのが現在の政府の姿」、などはその通りだろう。
・『日本はなぜ構造改革できないのか?  全国平均の公示地価を見ると、1976年を「0」とした場合、1992年まではプラス圏だったが、その後バブルが崩壊して住宅地、商業地ともに公示価格はひたすらマイナスを続けて、2015年にやっと「前年比プラス」に転じる状況にある。30年前の土地価格に戻るには、悪性インフレぐらいしか考えられない状況だ。要するに、30年近い歳月、日本国民は土地価格の下落を余儀なくされたわけだ。 株価や土地価格が上昇できなかった背景をどう捉えればいいのか。 簡単に言えば、少なくとも日本政府は構造改革につながるような大胆な改革を行ってこなかった。都市部の容積率を抜本的に見直すといった構造改革を怠り、消費税の導入や、税率アップのような構造改革ではない政策でさえも、選挙に負けるというトラウマがあり、一線を超えずにやってきた、という一面がある。 もっとも、構造改革をスローガンに何度か大きな改革を実施したことはある。例えば、企業の決算に「時価会計」を導入したときは、本来だったら構造改革につながるはずだった。これは、日本政府が導入したというよりも、国際的に時価会計導入のスケジュールが決まり、それに合わせただけのことだが、本来であれば株式の持ち合いが解消され、ゾンビ企業は一掃されるはずだった。 ところが政府は、景気が悪化するとすぐに補助金や助成金といった救済策を導入して、本来なら市場から退散しなければならない企業を数多く生き残らせてしまった。潰すべき企業を早期に潰してしまえば、その資本や労働力はまた別のところに向かって、新しい産業を構築することができる。負の結果を恐れるあまり、政府はつねにリスクを先送りしてきた。 バブル崩壊後も、株式市場は長い間、「PKO(Price Keeping Oparation)相場」と言われて、政府によって株価が維持されてきた。世界の平均株価と大きく乖離した時期があった』、「都市部の容積率を抜本的に見直すといった構造改革を怠り」、これは不動産業者の主張で、私は安易な「容積率見直し」には反対だ。地価低迷は、高くなり過ぎた地価の修正過程だったと捉えるべきだ。
・『官民そろってガラパゴスに陥った30年  そして今大きな問題になっているのが、デジタル革命、 IT革命といった「イノベーション」の世界の趨勢に日本企業がどんどん遅れ始めていることだ。 この背景には、企業さえも構造改革に対して消極的であり、積極的な研究開発に打って出ることができなかったという現実がある。欧米のような「リスクマネー」の概念が決定的に不足している。リスクを取って、新しい分野の技術革新に資金を提供する企業や投資家が圧倒的に少ない。 日本はある分野では、極めて高度な技術を持っているのだが、マーケティング力が弱く、それを市場で活かしきれない。過去、日本企業はVHSやDVD、スマホの開発といった技術革新では世界のトップを走ってきた。 しかし、実際のビジネスとなると負けてしまう。技術で優っても、ビジネス化できなければただの下請け産業になってしまう。もっとわかりやすく言えば、日本特有の世界を作り上げて、そこから脱却できない「ガラパゴス化」という欠点に悩まされてきた。 日本特有の技術に固執するあまり、使う側のポジションに立てないと言ってもいい。日本が製造業に固執しながら、最先端の技術開発に終始している間に、世界は「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に支配されていた。あまりにも残念な結果といえる。 この30年、日本企業はさまざまなガラパゴスを作ってきた。 そして、そのガラパゴスの背景には、必ずと言っていいほど政府の歪んだ補助行政や通達、 規制といったものが存在している。業種にもよるが、日本企業の多くは消費者ではなく、規制当局や研究開発費を補助してくれるお上(政府)の方向を向いてビジネスしている姿勢をよく見かける。政府が出してくれるお金を手放せないからだ。 とはいえ、失われた40年を歩き始めたかもしれない日本にとって、今後は失われただけでは済まないだろう。日銀には一刻も早く、金融行政を適正な姿に戻し、株式市場も適正な株価形成のシステムに戻すことが求められている。自民党が避けてきた「最低賃金の大幅上昇」や「積極的な円高政策」といった、これまでとは真逆の政策に踏み切るときが来ているのかもしれない。 そして、政府は財政赤字解消に国会議員の数を減らすなど、目に見える形で身を切る改革をしなければ、今度は「崩壊する10年」になる可能性が高い』、「ガラパゴス化」には、政府だけでなく、経営者の責任も大きい筈だ。「金融行政を適正な姿に戻し、株式市場も・・・」、大賛成だ。

第三に、哲学者のマルクス・ガブリエル氏が2月12日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「日本はソフトな独裁国家」天才哲学者マルクス・ガブリエルが評するワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/228172
・『「世界で最も注目を浴びる天才哲学者」と呼ばれるマルクス・ガブリエル氏。すべてがフラットになり、あらゆる情報が氾濫し、何が真実なのか、真実など存在するのかわからなくなった現代を、彼はどう見ているのか。日本の読者に向けて行われた独占インタビューを基にしたマルクス・ガブリエル氏の最新作『世界史の針が巻き戻るとき~「新しい実在論」は世界をどう見ているか』から一部を抜粋して、世界が直面している危機に対する彼の舌鋒鋭い意見を紹介する』、マルクス・ガブリエル氏はNHKの資本主義特集でも登場する人物で、「日本はソフトな独裁国家」とは何を言いたいのだろう。
・『我々はGAFAに「タダ働き」させられている 彼らを規制すべき理由  GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)は、今や世界を統治しているとも言える状況にあります。GAFAの統治を止めるべく、何か規則や法律を設けるべきだと私は思います。身動きできないくらい徹底的に規制すべきです。 どのような理由、方法、法制度で、など議論の余地はありますが、私の提案はこうです。GAFAはデータで利益を得ていますね。データム(データの単数形)とは、アルゴリズムと私が行うインプットの間にある差異です。 まず、インプットとは何かについてお話ししましょう。私がバーベキューパーティを主催したとする。写真を撮ってアップする。フェイスブックやグーグルは、そのアップされた写真から利益を得ます。バーベキューパーティ自体からでは当然ありません。でも、バーベキューパーティを主催して写真を撮るのは私です。これは労働と言っていい。私が手を動かしているのです。歯牙にもかけないような会社のために価値を生み出しています。 フェイスブックが存在する前は、写真のアップなんてしようとも思わなかった。フェイスブックがなかったからです。恐らく写真を撮ることすらなかったでしょう。家族のアルバム用には撮ったかもしれません。それが、今や人々はフェイスブックのために写真を撮っている。これはつまり、人々がフェイスブックに雇われているということです。フェイスブックのために、文字通り働いているんです。 フェイスブックは彼らにいくら払っているか?ゼロです。ですから、我々はフェイスブックに税金を課すべきです。それが解決策の一つですが、法的な問題などがいろいろありますから、難しいでしょうね。もっといいのは、税金の代わりにベーシックインカムを払わせることです。 想像してみてください。GAFA企業が、彼らのサービスを使っている人々に分単位でベーシックインカムを払わなければならなくなったとしたら。ドイツでの最低賃金は一時間約10ユーロです。ですから、私がGAFAのいずれかのサービスをネット上で一時間使ったとする。彼らはユーザーが何時間消費するか簡単にわかります。GAFAのユーザーなら当然アカウントがありますから、彼らが提供する価値からマイナスして、私が生み出した価値を私のアカウントに紐づけることができる。 彼らは私にデータを提供してくれます。レストランに行きたいと思ったら、レストランに関するデータをくれます。その彼らがくれる価値を10ユーロからマイナスして払ってもらえばいい。きっと金額に換算できます。そんなに難しいことではない。私の推定では、1時間につき7ユーロか8ユーロくらいになるでしょう。これが、よりよい解決策です。 各国政府は、我々国民がGAFAに雇われているという事実を認識したほうがいい。近いうちに、GAFAはすべてを変えるか我々にお金を支払うかのどちらかを行うと思います。それで経済的な問題の多くは解決されるでしょう。ネット検索をするだけでお金持ちになれるのですから(笑)。富豪は言い過ぎかもしれませんが、十分食べていくことはできるでしょう』、「フェイスブックのために写真を撮っている。これはつまり、人々がフェイスブックに雇われているということです。フェイスブックのために、文字通り働いているんです」、「フェイスブック」にしてみれば、「人々が」勝手に「フェイスブック」を使っているだけで、「ベーシックインカム」を払わされるいわれはないと主張するだろう。
・『デジタル・プロレタリアートが生まれている  2019年5月1日の「エル・パイス」(スペインの新聞)のインタビューでも述べたことですが、我々は自分たちがデジタル・プロレタリアート(無産階級)であることに気づいたほうがいい。一つ、あるいは複数の企業のためにタダ働きしているのですから。人類史上、こんな状況は一度も起こったことがありません。GAFAは「我々はビッグデータを吸い上げる代わりにたいへん便利なサービスを無料で提供している」などと言います。でも、実質無料ではありません。我々は気づかないうちに彼らのために働いているのですから。 たとえば、あなたが今フライドポテトを食べたいと思ったとしましょう。そこでボンの町にあるフライドポテトの屋台に行くと、「この店のポテトは無料です」と言われた。それはいい、いただこう。でも店員はこう続けます。「ポテトを受け取る前にあの畑からじゃが芋を採ってきなさい、そうしたら揚げてフライドポテトにしてあげましょう」と。「じゃが芋を採るのも無料です。ただ行って採ればいい、無料開放されています。採って持ってきなさい」と、こうです。 その実態は、フライドポテト会社のために働くということです。フライドポテトを無料提供ですって?それは無料ではありません。これがGAFAの行っていることです。彼らは何も無料で与えてくれてやしません。トリックです。いくばくかの広告収入はあるかもしれないが、本当の収益は我々のタダ働きから来ているのです。 我々はそのことに気づいていません。それがトリックです。なぜなら我々の労働に対する概念がひどいものだからです。我々は皆、マルクス主義的な労働概念を持っています。実はマルクス主義の労働観はそこまで間違っているわけではないかもしれませんね。マルクス主義における労働とは、肉体的・活動的な現実を別の形に変換することを指します。木を削ってテーブルを作る、これが労働です。 インターネットではこれがどう起きるかというと、バーベキューパーティ、つまり肉体的・活動的な現実を開催し、写真を撮る。これが変換です。その変換した写真をアップする。アップも変換に当たります。 それでも我々はインターネットに関して、「それが物質的なものではない」という素朴な労働観を持っている。これが間違いです。(情報空間でのやりとりは)精神的なものだと思うかもしれませんが、インターネットは完全に物質的なものです。サービスも半導体チップも物質的なものでしょう。それがインターネットです。一定の方法で組み立てられた配線、チップ、電磁放射線の集合体です。我々は、その事実にまったく気付いていません。 最近の調査では、我々は1年間のうち約4カ月もネットをして過ごしているといいます。1年のうち4カ月も、びた一文くれない人間のために働いて過ごしているのです。彼らは何かしらのサービスをくれているかもしれません。でも実際は、そのサービスで得られるものより多くの代償を我々は支払っているんです』、「デジタル・プロレタリアート」、とは言い得て妙だ。しかし、「フライドポテト」の寓話は全く理解できなかった。「我々は1年間のうち約4カ月もネットをして過ごしているといいます。1年のうち4カ月も、びた一文くれない人間のために働いて過ごしているのです」、「働いて過ごしている」というのも、理解できなかった。
・『日本はテックイデオロギーを生み出す巧者  グーグルがベルリンのクロイツベルク地区に新たな拠点を設立しようとしたとき、ベルリンでは反対運動が起きました。このような巨大テック企業への反対運動は、日本では見られませんね。人々の認識には、日独でかなりのギャップがあると感じます。 それは、日本がテクノロジーに関するイデオロギーを生み出すのが抜群にうまいからだと私は思います。このようなストーリーの紡ぎ手としては、日本は第一級の国の1つで、90年代はカリフォルニア以上、少なくとも同等に重要な存在だったと思います。今はそこまでの存在感はありませんが。とはいえ、モダニティに対する日本の貢献がなければテレビゲームは今日の姿にはなっていなかったでしょうし、それゆえインターネットで我々が得る経験も今の状態にはかすりもしないものになっていたでしょう。 ですから日本は、地球上でテクノロジーがもっとも進んでいる地域の一つであり続けているのです。昔はやった「たまごっち」は、機械に愛情を投影することで、人間としての欲望が置き換えられるものでした。日本は一社会として、こうしたモデルを受け入れる傾向が他の地域よりもあると思うのです。 ドイツで起きた反GAFA運動に関して一つ私が強く思っているのは、ドイツは実に長い期間、テクノロジーと独裁主義、イデオロギーとの関わりを味わってきたということです。ドイツは自動車を発明しましたね。忘れてはならない、ドイツが行った人類滅亡への多大な「貢献」です。ドイツのイデオロギーというのは――私は今これをかつての姿に修復しようと使命感を持ってやっているんですが――ともかく、ドイツの発明というのは人類史上最悪に近い。 もちろん他にも人類滅亡に「貢献」している国はありますし、ドイツにも、カントやヘーゲルらがモダニティに素晴らしい貢献をした面もあります。それでも、ドイツの発明は最悪です。 それからドイツは、二度の世界大戦で非常に重大な役割を果たしました。実際はもっとさまざまな要因が絡み合って引き起こされたのですが、端的にいうとそうなります。あれは人間を破壊するためにテクノロジーが使われた戦争でした。ドイツのテクノロジーに対する見識は、そういうものです。テクノロジーとは、壊滅という悪の力だと思っています。ですから、テクノロジーで利益を得ている一部の人々を除き、ドイツにおける批判的思考の持ち主は誰でも、デジタルテクノロジーに強い抵抗を示すでしょう。これは独裁だ、と本能的に反応します。直感的に、独裁に対して反発を起こすのです』、「ドイツにおける批判的思考の持ち主は誰でも、デジタルテクノロジーに強い抵抗を示すでしょう。これは独裁だ、と本能的に反応します」、なるほど、日本人には想像できない抵抗感があるようだ。
・『優しい独裁国家・日本  私は日本が好きですが、日本へ行くと独裁国家にいるような感覚を覚えます。とても民主主義的だし、人々も優しい。中国にいるときのような感覚はない。でも、非常に柔和で優しい独裁国家です。誰もがそれを受け入れている、ソフトな独裁国家のような感覚です。 日本の電車のシステムは完璧ですね。でもホームで列に並び、来たのがピンク色の女性専用車両だったら、私は別の車両へ移動しなければならない。もしそのシステムを理解せず、従わなかったら、いわゆる白手袋の駅員がやってきて追い出されることもあります。 実際、そうだったんです。東京を訪れた際、ピンク色のシステムを知らないまま女性専用車両に立っていて、なぜピンク色なんだろうと考えていたら、もう白手袋がやってきていました。これが、ソフトな独裁国家ということです。 このように完璧になめらかな機能性には、ダークサイド(暗黒面)があります。精神性や美が高まるというよい面もありますが。日本文化は非常に発達していて、誰もが美の共通認識を持っており、食べ物も、庭園も、すべて完璧に秩序が保たれている。それが日本文化のすばらしい面であり、よい面です。 でも、暗黒の力もあるのです。抑圧されたもののすべてが、その力です。時間に遅れてはいけない、問題を起こしてはいけないと、まるで精神性まで抑えるかのような力です。先ほどの白手袋のように、テクノロジーへ服従させられます。私は、これは日本を規定する対立関係(antagonism)だと思います。どんな先進社会にも構造的な対立関係が組み込まれていますが、対立関係、つまりは弁証法です。 ※本文は書籍『世界史の針が巻き戻るとき~「新しい実在論」は世界をどう見ているか』を一部抜粋して掲載しています』、「日本文化は非常に発達していて・・・それが日本文化のすばらしい面であり、よい面です。 でも、暗黒の力もあるのです。抑圧されたもののすべてが、その力です。時間に遅れてはいけない、問題を起こしてはいけないと、まるで精神性まで抑えるかのような力です」、「暗黒の力」にもう1つ付け加えるとすれば、集団への同調圧力の高さがあると思う。「どんな先進社会にも構造的な対立関係が組み込まれていますが、対立関係、つまりは弁証法です」、「ソフトな独裁国家」にはなるほどと納得した。
タグ:「五頭のクジラ」と呼ばれる公的資金を使って、意図的に株価を下支え 平成に失われた共感や居場所を「令和」に取り戻すために 日本は失われた40年を歩むことになるのか 日本の構造問題 「過重労働による死」 東洋経済オンライン 岩崎 博充 かつて日本の株式市場は3割以上が国内の個人投資家によって保有 世界経済に占める日本経済のウェートを見ると、その凋落ぶりがよく見て取れる 現在では、過去最低レベルの17%程度 官民そろってガラパゴスに陥った30年 「平成の30年間を振り返る」 「ストレスの雨」は職場に降り始めていたものの、それをしのぐだけの“傘”を企業が提供していたことで、ビジネスマンは「やりがい」と「他者への共感」というポジティブな感情を確保できていたのではないか 日本はなぜ構造改革できないのか? 自分たちが“新しい”と信じている経営手法は、海の向こうで既に否定されていた 文化も労働体系も異なる米国から輸入 科学技術力も、この30年で大きく衰退 「同僚や部下が忙しいと、すすんで手伝ったりカバーする」という共感は消滅し、「自己責任」という言葉を多用する人たちを量産した 1978 年 「今の日本は『自殺』するだけの勢いもなく、衰えた末に『自然死』してしまうのではないか、と思わされる」 暗黒の力もあるのです。抑圧されたもののすべてが、その力です。時間に遅れてはいけない、問題を起こしてはいけないと、まるで精神性まで抑えるかのような力です 「国際競争力ランキング」 バブル崩壊は政府の責任だ デジタル・プロレタリアートが生まれている 「同僚や部下が忙しいと、すすんで手伝ったりカバーする」と8割の人が答えられるだけの心理的余裕もあった 優しい独裁国家・日本 「日本人が部分を見て全体をみることができなくなり、エゴと放縦と全体主義の蔓延のなかに自滅していく危機のなかに存するというべきなのである」 「平成初期の中年男の悲鳴が予言していた「日本の自殺」」 近年の日本の国際競争力の低下は目に余るものがある もはや働く人たちを「人」として見られない経営者たちは「エゴに満ちた経営」をどこまでも追い求めた 日本のメディアは日本の技術がすばらしいとか治安が優れているなど、数少ない日本の長所をことさらにクローズアップして、日本が世界をリードしているような錯覚を毎日のように国民に与え続けている ガラパゴスの背景には、必ずと言っていいほど政府の歪んだ補助行政や通達、 規制といったものが存在 忙しかったけど納得のいく報酬と思いやりある職場があった ドイツにおける批判的思考の持ち主は誰でも、デジタルテクノロジーに強い抵抗を示すでしょう。これは独裁だ、と本能的に反応します 我々はGAFAに「タダ働き」させられている 彼らを規制すべき理由 「過労死」 日本はテックイデオロギーを生み出す巧者 「日本人は「失われた30年」の本質をわかってない」 「24時間働けますか?」という企業側の暗黙のオーダーを、働く人たちが「美徳」と捉え、世間もそういう働き方をする人たちを評価する風潮が、「長時間労働」の背後に存在していた フォーチュン・グローバル500 株式の上昇による資産効果の恩恵を日本の個人はほとんど受けていない 「日本の自殺」 「「日本はソフトな独裁国家」天才哲学者マルクス・ガブリエルが評するワケ」 この30年、何が変化したのか? (その15)(平成初期の中年男の悲鳴が予言していた「日本の自殺」、日本人は「失われた30年」の本質をわかってない、「日本はソフトな独裁国家」天才哲学者マルクス・ガブリエルが評するワケ) アベノミクスでは、財政出動の代わりに中央銀行である日本銀行を使って、異次元の量的緩和という名目で、実際は「財政ファイナンス(中央銀行が政府発行の国債を直接買い上げる政策)」と同じような政策を展開 グローバル企業が示す日本の衰退 「平成の時代とは「人間の勝手さと愚かさ」を知らしめた30年だったのではないか」 日経ビジネスオンライン 悪化、劣化、衰退」という、最悪な文字しか浮かばない マルクス・ガブリエル ダイヤモンド・オンライン 成果主義の名を借りたコスト削減が職場を荒廃させた グループ一九八四年 実質的に経営破綻に追い込まれた金融機関や企業の破綻を先延ばしし、最終的に7年以上もの時間をかけてしまった 責任はどこにあるのか? 「長時間」働くことは“美徳”だった平成初期 アメリカの成果主義 株価が暴落したときに、個人が株式市場に参入する機会を失ってしまっている 河合 薫 「過労死110番」 「正規雇用・長期雇用」という制度を企業が維持
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貧困問題(その2)(ホームレスを食い物にする輩のありえない悪行 彼らの健康事情と貧困ビジネスの結びつき、G7で2番目に高い日本の相対的貧困率 そこで何が起きている?、車上生活 社会の片隅で…) [社会]

貧困問題については、昨年3月25日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(ホームレスを食い物にする輩のありえない悪行 彼らの健康事情と貧困ビジネスの結びつき、G7で2番目に高い日本の相対的貧困率 そこで何が起きている?、車上生活 社会の片隅で…)である。

先ずは、ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーターの村田 らむ氏が昨年5月23日付け東洋経済オンライン「ホームレスを食い物にする輩のありえない悪行 彼らの健康事情と貧困ビジネスの結びつき」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/282556
・『ホームレス。いわゆる路上生活をしている人たちを指す言葉だ。貧富の格差が広がる先進国において、最貧困層と言ってもいい。厚生労働省の調査によると日本のホームレスは年々減少傾向にあるものの、2018年1月時点で4977人(うち女性は177人)もいる。そんなホームレスたちがなぜ路上生活をするようになったのか。その胸の内とは何か。ホームレスを長年取材してきた筆者がルポでその実態に迫る連載の第9回』、興味深そうだ。
・『健康を保つのが難しいホームレス  野宿生活はとても過酷だ。健康を保ち続けるのはとても難しい。また、ホームレスの中には高齢の人も多い。健康上、問題を抱えている人も多い。 そもそもケガや病気が原因でホームレスになった人も少なくなく、前職に建築関係や土木関係の仕事をしていた人がいる。 「重いものを運ぶ仕事で腰を痛めてしまった」「鳶職として作業中、高所から落下して足をケガしてしまった」というような話をよく聞く。 ケガや病気が原因で日雇い労働に行けなくなり、そのまま収入がなくなってしまった。治療費で貯金も消えてしまい、結果的に野宿生活を余儀なくされてしまうというケースだ。 夏場に荒川の河川敷を歩いていると、上半身裸になって体を洗っている男性がいた。男性の上半身にはガッツリ入れ墨があった。またお腹には縦に15センチほどの傷があった。 話を聞くと、まだ野宿生活を始めて間がないという。 ホームレスになる前は、個人経営のリサイクル店を運営していたそうだ。捨ててあるテレビ、洗濯機、冷蔵庫などを拾ってきて直して販売していた。商売が順調なときは、テレビや雑誌の取材が来たこともあったという。 「3年前にがんになって入院したんだけど、この間また再発したんだ。ある日すごい気持ち悪くなって、ウンコも真っ黒になっちゃって、慌てて病院に行ってカメラを飲んだら胃がんだった。そのまますぐに手術をして胃をとっちゃった」 腹の傷はそのときのものだという。 手術や入院にお金もかかり、その間仕事もできなかったので、結局お店を手放すことになってしまった。 現在はホームレスをしながら単発の清掃の仕事などで収入を得ている。ただ、食べるのが精一杯で術後の通院はできていないという。 がんは治ったが併発している病があるらしく、苦しい日々だと語っていた。 ホームレスの中には、厳しい野宿生活を続けるうちに病気になってしまう人もいる』、一旦、「ホームレス」になってしまうと抜け出すのも難しそうだ。
・『病気になっても病院に行けない  ホームレスの平均年齢は高い。平均60歳以上であり、70代、80代も珍しくない。高齢者にとって、夏の暑さ、冬の寒さは体にこたえる。いつでもきちんと食事がとれるわけではないので、栄養失調にもなりがちだ。 そしてほとんどの人は健康保険を持っていない。廃品回収などの収入では、食事代を確保するだけで精いっぱいである。病院に行くお金はとても確保できない。市販の薬を買うのすら難しい。病気になっても、我慢してやりすごして、そのうちに悪化していく場合が多い。 しばらく見ないのでテントの中をのぞくと亡くなっていた、というケースもよく聞く。多摩川などのテント村を歩いていると住人が亡くなってしまい、花や線香がお供えしてある小屋も目につく。 かつて上野のホームレス村を取材していたとき、定期的に一時立ち退きがあった。いったんテントを別の場所に移し、一定期間後に戻ってくることを強要された。警察や区から予告があるため、みんな朝からテントを畳んで移動する。しかし、動かないテントがいくつかあった。テントの中をのぞくと、すでに亡くなっていることが多かった。 不摂生がたたり病気になる場合もある。 かつてホームレスの喫煙率は非常に高かった。そのため、ホームレスの取材に行くときは、タバコを持っていってお礼に渡すことが多かった。 ただ、近年はタバコがずいぶん値上がりしたので、ホームレスには購入のハードルが上がったようだ。また、全体の喫煙者数が減り、喫煙のマナーも上がったので、ポイ捨てされた吸い殻もあまりなくなった。なかなか定期的にタバコを吸うのが難しくなり、そのままやめてしまったという人が増えた。タバコを渡そうとしても 「タバコはやめた」と断られることが多くなったので、僕は最近、ホームレスを取材する際にはタバコは持ち歩いていない。 お酒をたくさん飲むホームレスも多い。 そもそも酒を飲みすぎて会社をクビになったり、日雇労働の仕事を失ったりしたのが原因でホームレスになった人はかなりたくさんいる。そういう人は、ホームレスになった後も、手に入れたお金は全部酒にして飲んでしまう場合が多い。 飲む酒は、値段の割にアルコール度数が高い焼酎のカップ酒が選ばれやすい。ふたをあけるとストレートでググググと一気に飲む。そんな飲み方が体にいいわけがない。 結果的に、肝臓や腎臓など内蔵を傷める。土気色の顔をしているのに、さらに酒をあおりそのまま路上で寝てしまう。 酔っ払ってケンカをして、それで大ケガを負う場合もある。定期的にお話をうかがっていた大阪・西成地区のあるホームレスは、酔っ払っているときにケンカをしかけたり、酔って寝ているときに一方的に暴力を振るわれたりして、いつもケガをしていた。 ある日その男性に会うと、アゴを蹴られ、下の前歯が何本も折れていた。普段は病院には行かないが、今回ばかりは足を運んだそうだ。アゴには縫い跡が生々しく残っていた。しかし定期的に病院に通う金はない。痛くても我慢するしかない。 「しかたないからアルコール消毒するんだ。ついでに麻酔にもなるしな」と言って笑い、またお酒を飲んでいた。数時間後にはベロベロになって公園で寝てしまった。このままでは暴力を受けたり、金を盗られてしまったりする可能性が高いのはわかるが、ベロベロに酔ってしまうと周りはもうどうしようもない』、「近年はタバコがずいぶん値上がりしたので、ホームレスには購入のハードルが上がったようだ」、ただ、「お酒をたくさん飲むホームレスも多い」、殆どアル中に近い人も多そうだ。
・『強度のアルコール依存症や違法ドラッグを使用する人も  もっとアルコール依存症がひどくなると、会話をするのも困難になる。被害妄想が強くなり、怒鳴り散らしたり、暴力を振るったりすることもある。 僕も取材中にしたたかに酒に酔った人に絡まれたことが何度もある。包丁を突きつけられたことも2度あった。 彼らは入院して治療しなければならないレベルの、アルコール依存症だろう。 また数は少ないが覚せい剤など、違法ドラッグを使用するホームレスもいた。もちろん心身ともに悪影響がある。 アルコールやドラッグとは関係なく、精神病を患っていると思われる人も少なくない。 話をうかがうと、「近くに住む(別の)ホームレスに命を狙われている。『殺す!!』『殺す!!』と毎晩小屋の外から言われるんだ。こっちから殺さないと殺されるよ」と早口で言っていた。少し聞き込みをしたが、実際には彼に対し「殺す」と言っている人はいなかった。非常に強い被害妄想を持っているのだ。 被害妄想を持っているだけならいいが、妄想が行き過ぎて本当に暴力を振るってしまうこともあるようだ。誰が悪いわけではないが、被害者は出る。 人前でズボンを脱ぐ、路上で大小便をする、など奇行が目立つ人もいた。寝床の周りをゴミだらけにしたりするのも、近くに住んでいる人にとっては大変迷惑だ。 かつて僕が住んでいた家のそばに、道行く女性を大声で怒鳴りつけたり、子どもに触ったり、男性器を露出させたりするホームレスがいた。ある日、ホームレスの行動に腹を立てた男性が彼を取り押さえていた。 取り押さえた男性の目にも、道行く人たちの目にも、ホームレスの男性が、完全に悪いように見えたと思う。 たしかによくないことをしているかもしれないが、ただ病気ならば仕方がない部分もある。彼に必要なのは、暴力による成敗ではなく治療だろう。 精神を病んだホームレスは、ホームレスの中でも目立ってしまう。 多くのホームレスは、あまり目立たないように周りに迷惑をかけず生活しているが、そのように目立つホームレスがいると 「ホームレス=困った人」「ホームレス=悪い人」というイメージが定着してしまう。こういうイメージは、お互いにとってよくない結果になる場合が多い。ホームレスに対する暴力も、そもそもはそのような誤解から始まっている場合がある。 あまりに精神状態がひどいホームレスは、積極的に保護をして治療をしたほうがいいだろう』、最近は若者による「ホームレス狩り」のニュースは見なくなったが、「あまりに精神状態がひどいホームレスは、積極的に保護をして治療をしたほうがいいだろう」、その通りだ。
・『治療費を払ってもらえない病院側のジレンマ  病気が悪化したり、暑さ寒さに倒れてしまったりしたところを、救急車で搬送されることもある。自分で救急車を呼ぶこともあるし、知り合いや通行人が電話をかけることもある。 病院によってはホームレスの受け入れを拒むところがある。とくに何度も入退院を繰り返しているホームレスは、病院のブラックリストに載っている場合があり、なかなか病院に入ることができないという。 病院で治療を受けたり、入院したりすると、当然費用がかかるが、多くのホームレスは支払うことができない。病院サイドも最悪の場合はお金をとるのを諦めるしかない。ただお互いのダメージを減らすために、治療を最低限に絞ったり、入院期間を短くしたりするケースもある。それが問題視されることがあるそうだ。新宿の総合病院で務める医師は、「病院としてはよかれと思ってやっているのですが、人権団体に差別だと抗議されたこともあります。しかし、きちんと治療をして、高額の治療費を請求しても怒られると思うんですよね。とても難しい問題ですね」と語っていた。そういう問題が起きないように、病院は入院しているホームレスに対し、ケースワーカーをつける場合がある。 ケースワーカーはホームレスが退院後に住めるアパートを見つけ、そこに住所を登録し、生活保護受給の手続きをする手伝いをする。そして生活保護費の中から治療費や入院費を受け取るという形を取る。 病院は治療費を取りっぱぐれずにすむし、結果的に患者も野宿生活から離脱することができる。今は生活保護を受け取るハードルはずいぶん下がったが、20年ほど前はなかなか申請が通らなかった。当時は、「ホームレス生活から抜け出したかったら、救急車を呼んで入院するのが早い」と言われていたぐらいだ。 いったん生活保護をもらい、そこから家賃を支払うようになってしまえば、基本的に継続してアパートで生活していくことができる。 だが、中には生活保護でアパート生活するのは嫌だという人もいる。大阪の淀川の河川敷に小屋を建てて生活をする70代の男性は語る』、「病院は入院しているホームレスに対し、ケースワーカーをつける場合がある。 ケースワーカーはホームレスが退院後に住めるアパートを見つけ、そこに住所を登録し、生活保護受給の手続きをする手伝いをする。そして生活保護費の中から治療費や入院費を受け取るという形を取る」、なかなかいい手だ。
・『生活保護をもらって暮らす福祉アパート  「こういう所に勝手に住んでても『出てけ』とはまず言われないね。基本的人権のおかげかな?その代わり……、 『大阪は福祉の街なので、福祉をもらってアパートで暮らしてください』って役所の連中によく頼まれるよ。もちろん断るけどね」 「福祉で暮らす」とは、ほとんど「生活保護をもらって生活する」という意味である。生活保護を受給して、普通にマンションで暮らせ、という意味だ。 「福祉をもらう奴は、みんな早(はよ)う死んでしまうわ。なんもしなくてもお金が入ってくるから、酒飲んでギャンブルしているヤツばっか。ドヤ街に行ったら、ギャンブルで生活保護を溶かした人らが炊き出しに並んでるよ。もう何のための生活保護か、何のための炊き出しかわからない。 俺はホームレスでありながらも毎日働いているから、本当の意味で生きていられるんだよ」と語った。 彼のように、人に施されるのは嫌だというホームレスは実は少なくない。健康であるうちは、自力で生活して、どうしてもダメになったら福祉アパートに入居しようと思っているという人もいる。言わば、独立心が強い人たちだ。 また、福祉アパートなどの独自ルールである「『禁酒』『禁煙』『門限23時』などを守るのが嫌だ」「面倒くさいから住みたくない」という人もいた。 ただ、多くのホームレスは、「アパートに住めるなら、住もう」と思う。実際、生活保護費が受給しやすくなり、福祉アパートへ住みやすくなって以降、ホームレスの数は減った。生活保護を受けていると病院の治療も受けられ、健康的な生活を送りやすくなる。 いろいろな考え方があるが、よい方向に進んだと思う』、「福祉アパート」は「独自ルール」があるとはいえ、「生活保護費が受給しやすく」なるのであれば、いい政策だ。
・『しかし中には、ホームレスの健康を利用してお金を稼ごうとする人たちもいる。いわゆる貧困ビジネスだ。 以前、新宿中央公園でホームレスの人たちに話をうかがっているとき、とてもひどい目にあった男性に出会った。 その男性は片手にバッグを抱えてベンチに座っていた。 「寒い日が続きますけど、体調大丈夫ですか?」と話しかけると、「大丈夫じゃないよ」とつっけんどんな言葉がかえってきた。 「俺は今、こんなことになってんだよ」と言うと、バッグの中からビニールパックを出した。中には黄色い液体が入っている。 「これは尿パック。つまり俺の尿なの。尿パックは尿道につながってるの。こんな状態だから全然、体調なんてよくないよ!!」と怒り口調で言った。 つまり袋の管は、導尿カテーテルを介し男性の男性器につながっているのだ。 導尿カテーテルをつけたままホームレス生活をしている人がいるなんて、ちょっと信じられなかった。なぜそんなことになってしまったのかを聞く』、「貧困ビジネス」とは恐ろしい話だ。 
・熱海まで連れて行かれ、いきなり手術、そして放置  「ベンチに座ってたら、背広を着た連中に『体調大丈夫ですか?』って聞かれたんだよ。今みたいにさ。それで『いや、大丈夫じゃない』って答えたんだ。最近、オシッコの出が悪いって言った」 そう答えると、背広を着た連中は、「では病院で治療を受けましょう」と言って男性を自動車に乗せた。そしてどこへ行くとも言わず、走り始めた。 「近所の病院に行くと思うでしょ。そうしたら着いたのは熱海の病院。熱海までほぼノンストップで連れてこられちゃった」 新宿から熱海までは、高速道路で約2時間の距離だ。ホームレスを医者に診せるために移動する距離じゃない。 病院に着くと、検査を受けさせられた。 「『前立腺が肥大化しているので手術します。サインを書いてください』って言われて、なんだかよくわからないけどサインしたよ。お金ないけど大丈夫?って聞いたら、大丈夫って言うからさ」 そして翌日には手術台の上にいた。 手術が終わったのち数日は入院したが、そのまままた自動車に乗せられて新宿中央公園に連れて帰って来られたという。そして彼を公園に放置して彼らは帰っていた。 開腹手術が終わったばかりのホームレスを、数日後に野宿生活に戻していいはずがない。 前立腺肥大症は、確かに排尿に障害が出る場合、手術の選択もある疾患だ。ただ、この疾患は50代を超えるとかなりの確率で起こる。50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%が肥大すると言われている。 はたして、新宿に住むホームレスを、わざわざ熱海まで連れて行ってまで手術する必要があったのだろうか? おそらくは国から診療報酬をもらうための詐欺的な手口である。ホームレスを手術して、多額の診療報酬の請求をしていたのだろう。 ホームレスを手術して、診療報酬を不正に受給するやり口だ。にわかに信じがたい出来事だが、実際にある。ちなみに新宿のホームレスの間ではホームレスに声をかけて病院に連れて行く人たちを、“病院手配師”と呼んでいた。 固有の呼び名がつくほど数がいるのだ。 詐欺とまでは言えないが、生活保護受給者を受ける患者に対しては、高い治療を施す病院も少なくない。 ドヤ街近くにある病院では看板に『生活保護取扱い』と大きく書いてあるところも多い。 そのような病院で働く看護師に話を聞くと、 「患者は自分でお金を払うわけじゃないから、いくら高い治療でも平気です。先生もそこらへんは踏まえてますから、看護師として『その注射は打たなくていいんじゃないかな?』と思う注射をドンドン打ちます。正直な所、あからさまにお金を稼ごうとしています」と話してくれた。 違法とは言えないかもしれないが、誠意のない治療法である』、「“病院手配師”」が横行しているとは驚いた。「新宿に住むホームレスを、わざわざ熱海まで連れて行ってまで手術」、そんな事例が多いようであれば、「生活保護受給者」向け医療費を支払う機関でチェックした上で、しかるべき立ち入り検査をするべきだろう。
・『あこぎなやり方で稼ぐ病院の実態  手術ではなくアルコールなどの中毒から回復を目的とする精神科の病院もある。前述のとおり、確かにホームレスにはアルコール依存症の患者が多い。治療が必要な人も多い。 治療するのはもちろんいいが、かなりあこぎなやり方で稼いでいる病院は問題だ。 下請けとして、都内の貧困ビジネス系の精神科の病院に関わった人に話を聞いた。 「現場で見ていて、かなりヤバイ感じがしました。患者のほとんどはアルコール依存症のホームレスか生活保護受給者なんですが、毎日どこかからワゴン車で連れてきて、クリニックで軟禁してしまうんです。 そして彼らの持ち物とか、全部勝手に捨ててしまうんですよ。『生活に支障のない程度に整理する』と言っていたのに、結果的には全部容赦なく捨てました。その際に、現金も取り上げてしまいます。『患者が勝手に酒を買わないようにする』らしいのですが、やりすぎだなと思いました」 ホームレスも荷物を全部捨てられてしまっては、野宿生活に戻るのは困難になる。病院としては、彼らを二度と帰すつもりはない。 彼らは狭く区切られた最低限の施設の住み、最低限の食事が与えられる。治療行為がないわけではないが、ほとんど飼い殺しだ。そして生活保護費からガッツリと治療費はいただく。病院には、彼らが生きている限り継続してお金は入り続ける。 違法行為ではないのかもしれないが、かなり強引な手法で稼ごうとしているように見えた。その病院の年商は20億円を超えていた』、「精神科の病院」は「貧困ビジネス」がやり易そうだが、これにも何らかの監視が必要だろう。
・『病気よりもおそろしい社会の闇  そんな病院によるホームレスの貧困ビジネスの中でも最悪のケースは、2009年に発覚した奈良県の「山本病院事件」だろう。 山本病院では、西成の生活保護受給者向けのマンションに直接出向き、入院の勧誘をしていた。実に入院患者の6割が、生活保護受給者だったという。 そして入院患者に、心臓カテーテル検査を行ったように装い、診療報酬をだまし取っていた。2005年度には275件、2006年度には196件の心臓カテーテル検査を実施したと、記録されている。 本当に手術をしたケースもあったようだ。 患者に対し、「手術やらんと死ぬで!!」と、とても荒い口調で手術をすすめたという。そして手術は失敗して、患者は亡くなった。結果的に山本病院では、狭心症のある女性看護師にも半強制的に心臓カテーテル手術を施し死亡させた。 まるでサスペンス映画のような、恐怖の治療を繰り返した山本病院は、元理事長らが逮捕されて幕を閉じた。 ホームレスの健康を利用して金を稼ごうとする人たちは、実はたくさんいるのだ。 病気よりも、むしろそういう社会の闇のほうがおそろしいと思った』、「貧困ビジネス」の「闇」の深さは想像の域を超えている。生活保護の対象をむやみに絞るよりも、こうした「無駄使い」の撲滅に注力すべきだろう。

次に、株式会社デコムのデータサイエンティストの松本 健太郎氏が11月19日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「G7で2番目に高い日本の相対的貧困率。そこで何が起きている?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00067/111200016/?P=1
・『公的統計データなどを基に語られる“事実”はうのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。※文中にある各種資料へのリンクは外部のサイトへ移動します  日本は、貧困国でしょうか。 「貧困」と聞いて大勢の人がイメージするのは、アフリカの貧困国のように、極端に背が低くガリガリに痩せ細った子どもたちの姿かもしれません。しかしGDP規模が米国、中国に次ぐ第3位の日本において、そのような光景を目の当たりにすればそれは「事件」です。 そうした貧困は「絶対的貧困」と呼ばれ、世界銀行では「1日1.90米ドル(約200円)未満で生活する人々」と定義されています。2015年には全世界で約7.36億人いると試算されています』、「データサイエンティスト」が「検証」してくれるとは、面白そうだ。
・『米国に次いで高い日本の「相対的貧困率」  貧困にはもう1種類、「相対的貧困」と呼ばれる指標があります。その国の文化・生活水準と比較して困窮した状態を指し、具体的には「世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない人々」と定義されています。 日本の相対的貧困率は、12年は16.1%、16年は15.7%もありました。約6人に1人は「相対的貧困」なのです。「OECD経済審査報告書(2017年)」には、国別の相対的貧困率が掲載されています。日米欧主要7カ国(G7)のうち、日本は米国に次いで2番目に高い比率になっています。 「昔はもっと貧しかった」と主張される方もいます。では、ご自身の学生時代を江戸時代と比較して「あなたは昔に比べて裕福だった」と言われたら、どのような気分になるでしょうか。それと一緒で、成長を続ける現代において昔との比較は意味がありません。 相対的貧困とは、あくまで相対的なものであり、概念であり、目で見えにくい。だからこそあまり注目を集めず、今も苦しんでいる人たちがいます。ちなみに国立社会保障・人口問題研究所が17年7月に実施した「生活と支え合いに関する調査」によれば、「ひとり親世帯(二世代)」の約36%が食料の困窮経験について「あった」と回答しています。 持続可能な社会を目指すなら、相対的貧困は低い方が良いといわれています。実際、SDGs(持続可能な開発目標)では、「目標1」として「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」と掲げるだけでなく、「目標10」に「各国内および各国間の不平等を是正する」と掲げ、相対的貧困層の減少を訴えています。 それは、なぜでしょうか?』、「米国に次いで高い日本の「相対的貧困率」」、改めてショッキングな姿だ。
・『「相対的貧困層」は若者、老人、ひとり親の家庭に多い  まず、相対的貧困層とはどのような人たちが多いかを調べてみます。 貧困に関する研究の第一人者である阿部彩先生の「貧困統計ホームページ」に、詳細な分析結果が掲載されています。 この結果から、主に10代後半~20代前半の若者と70代以上の高齢者の相対的貧困率が高いと分かります。70代後半の女性の4人に1人が相対的貧困というのは、なかなか衝撃的な結果です。 少し違った角度で見てみましょう。20~64歳における世帯構造別・男女別の相対的貧困率は以下の通りです。 母子・父子家庭を意味する「ひとり親と未婚子のみ」の相対的貧困率が他世帯構造と比べて高いと分かります。もちろん、その家庭で暮らす子どもも「相対的貧困」に含まれます。 子どもの貧困率(子ども全体に占める貧困線に満たない子どもの割合)は「平成28年国民生活基礎調査」によると13.9%、実に7人に1人の子どもが貧困だと分かりました。ひとり親の場合、貧困率は50%を超えます。 10代後半~20代前半の若者、70代以上の老人、そして母子・父子家庭(子ども含む)。この3つの層に、相対的貧困が多くいると言えるでしょう』、確かに「この3つの層」は、「相対的貧困が多」そうだ。
・『「相対的貧困」家庭の子どもは相対的貧困に陥りやすくなる  20歳未満の若者・子どもが、相対的貧困の場合、それはどのような影響を及ぼすでしょうか? 「全国的な学力調査(全国学力・学習状況調査等)の平成29年度追加分析報告書」に、家庭の「社会経済的背景(SES)」と小学6年生、中学3年生の学力の関係を分析した結果が掲載されています。 ※社会経済的背景(Socio-Economic-Status、SES):子どもたちの育つ家庭環境の諸要素(特に保護者の学歴・年収・職業など)のこと。ただし固定的な定義があるわけでなく、調査によって定義や分類に使われるデータは異なる この調査では、家庭の社会経済的背景(SES)を「Lowest」「Lower middle」「Upper middle」「Highest」の4階層に分け、それぞれの家庭収入、父親の学歴、母親の学歴について以下のようにまとめています。 この中では、Lowestが相対的貧困層に比較的近いのではないかと考えます。 家庭の社会経済的背景(SES)別の小学校6年生の平均正答率は、以下のようになっています。棒グラフは平均正答率、丸い円が変動係数(標準偏差を平均値で割った値で高いほど正答率にばらつきがある)を意味しています。 どの科目も、家庭の社会経済的背景(SES)が高いほど平均正答率が高まり、変動係数は低くなるという結果でした。では、中学校3年生の平均正答率も見てみましょう。 同じような結果を示しました。家庭の社会経済的背景(SES)が平均正答率と何らかの関係があるとうかがわせます。 もっとも、この結果だけでは「両親の学歴が低い・年収が低いから、子どものテストの点数も悪くなる」と言えません。なぜならLowestの変動係数が相対的に見て高いということは、高い学力水準を持つ生徒もいると言えるからです。あくまで「平均正答率の平均値が低い」だけしか分かりません。 ただ、平均正答率の平均値が低ければ、大学に入学せず就職したり、職場でも単純労働に従事したりするなど、その後の生涯収入に影響を及ぼす可能性があります。) 09年公表と、少し古いデータになりますが、東京大学の大学経営・政策研究センター「高校生の進路と親の年収の関連について」によると、両親の年収別の高校卒業後の進路は以下の通りでした。年収が高まるほど大学に進学するか浪人する比率が高まり、かつ就職する率が低くなります。 また、19年に発表された内閣府の子供の貧困対策「子供の貧困に関する現状」によると、子どもの大学(専修学校等含む)進学率の推移は、ひとり親家庭、生活保護世帯など金銭的な問題が考えられる世帯は、全世帯に比べて相対的に低い結果となりました。 本人が自らの意志で「大学に行かない」と選んだならともかく、「大学に行けない」と言わざるを得なかった。「学ぶ環境」が無く、適切に学業を修められなかった。これこそが貧困が与える影響でしょう。その結果、その家庭に生まれた子どもも相対的貧困に陥りやすくなる。結果、貧困は連鎖し、再生産されてしまう。 これこそが「持続可能性が無い社会」なのでしょう。こうした状況を「学ばないおまえが悪い」と斬って捨てるほどの自己責任論者にはなれません。このような状況を放っておいてよいはずがありません』、「「学ぶ環境」が無く、適切に学業を修められなかった。これこそが貧困が与える影響でしょう。その結果、その家庭に生まれた子どもも相対的貧困に陥りやすくなる。結果、貧困は連鎖し、再生産されてしまう」、確かに「持続可能性が無い社会」といえそうだ。
・『捕捉率の把握を目的とした継続的な統計データは無い  貧困から抜け出すための手段の1つは生活保護です。しかし日本は海外に比べて捕捉率(生活保護を利用する資格がある人のうち実際に利用している人の割合)が低いといわれています。 日本弁護士連合会(日弁連)が作成したリーフレットでは、日本の捕捉率は15.3~18%としています。一方でドイツは64.6%、フランスは91.6%と高水準とされています。しかし少なくとも日本の数値は推測であり、真の実態は不明です。実は、捕捉率の把握を目的とした継続的な統計データは無いのです。 旧民主党政権下の10年4月に、厚生労働省に「ナショナルミニマム研究会」が開催され、初めて生活保護の捕捉率の推計が公表されました。ただし「国民生活基礎調査」(07年)を用いた類推です。ちなみに、政権交代の影響か以降の捕捉率は公表されていません。 生活保護を受給するには、「収入要件」や「貯蓄要件」(貯蓄残高が生活保護基準の1カ月分未満)のほかに、「就労要件」(働けるか否か)、家族による 養義務者の有無(家族の中で扶養してくれる人がいるか否か)など、さまざまな要件をクリアする必要があります。これらのうち後者2つは「国民生活基礎調査」からは分かりません。) 研究会の資料によると、所得が生活保護の「収入要件」より低い低所得世帯は、全4802万世帯中597万世帯(12.4%)でした。 一方、「貯蓄が保護基準の1カ月未満で住宅ローン無し」という生活保護の「貯蓄要件」に当てはまる世代は229万世帯(4.8%)となりました。 当時の生活保護世帯は108万世帯ですから、所得要件のみで判定すると、捕捉率は15.3%(108万人/108万人+597万人)となります。資産要件のみで判定した捕捉率は32.1%(108万人/108万人+229万人)となります。これではいろいろな要件を加味した実際の捕捉率は分かりません』、「旧民主党政権下・・・初めて生活保護の捕捉率の推計が公表・・・政権交代の影響か以降の捕捉率は公表されていません」、生活保護に冷たい自民党らしいやり方だが、姑息過ぎる。
・『貧困率が下がると捕捉率も下がる不思議  そんな中で、学術研究の一環として就業構造基本調査の「オーダーメード集計」を用いて、都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、生活保護の捕捉率を集計した論文を発表されたのが山形大学の戸室健作准教授です。 ※「オーダーメード集計」:既存の統計調査で得られた調査票データを活用して、調査実施機関等が申し出者からの委託を受けて、そのオーダーに基づいた新たな統計を集計・作成し、提供するもの 論文によると、全国の捕捉率(所得のみ)は92年14.9%、97年13.1%、02年11.6%、07年14.3%、12年15.5%と推移しています。10%台前半で推移というデータは日弁連が作成したリーフレットともだいたい合っています。 論文の中に掲載された都道府県別の貧困率と捕捉率で散布図を作製すると意外なことが分かります。 都道府県別に見て、貧困率も捕捉率もこんなに散らばっています。貧困率が高くてもしっかり捕捉している大阪に対して、ほぼ同じ貧困率なのに捕捉できていない宮崎。この差はいったいどこにあるのでしょう? また、貧困率が低いと、捕捉率が低くなる傾向にあるのも気になります。捕捉率は「生活保護が必要な世帯に保護が行きわたっているか」を表す指標なので、本来はこの2つの指標は無相関になってもおかしくありません。それなのに、貧困率が低いと補足率が低くなる(貧困なのにそう見なされていない人が多くなる)のはなぜでしょうか。貧困率が低いことに安住して、捕捉率を高める自治体の努力がおろそかになるなら問題です。予算をかけて早急に改善すべきではないでしょうか。 さらにいえば、「どこに住んでいるか」によって捕捉率が異なるなら、所得だけでなく場所ですら「貧困を生む要因」になりかねません。「私は〇〇県だったから生活保護ももらえず貧しい人生を過ごす羽目になった」なんて、絶対にあってはならないことです。 数字を見えないままにしておくと、あるはずの現実も無いことになってしまいます。それが生活保護を巡る現状です。貧困の実態は3年に1回の国民生活基礎調査(厚生労働省)と、5年に1回の全国消費実態調査(総務省)のデータを加工しないと分からないのが現状です。こうした状況でよいのでしょうか? これは、行政を動かす政治家の仕事です』、「数字を見えないままにしておくと、あるはずの現実も無いことになってしまいます。それが生活保護を巡る現状です」、是非とも実態のより正確な把握が可能になる仕組みに改めてもらいたいものだ。

第三に、11月19日付けNHKクローズアップ現代+「車上生活 社会の片隅で…」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4355/index.html
・『「車しか行き場がない」と道の駅の駐車場などで暮らす車上生活者たち。トラック運転手の職を失い、亡き妻との思い出が詰まった車で、食うや食わずの生活を続ける60代の男性。幼少期の虐待が原因で対人関係がうまく築けず、各地を転々とする20代の男性。認知症の妻が徘徊をするため「誰にも迷惑をかけたくない」と高速道路のサービスエリアで車上生活を送る70代の夫婦も。社会の片隅で車上生活を送る人々の実態を追う。 出演者 武田真一 (キャスター)』、私も「道の駅」はよく利用するが、「車上生活者たち」の存在には気付かなかった。
・『3割超の道の駅で…なぜ?亡くなる人も  私たちが取材を始めたきっかけは、ことし8月に起きたある事件でした。 50代の女性が、母親の遺体を車の中に放置したとして、逮捕されたのです。母親と息子の家族3人で1年間、車で生活していたことが、警察への取材で分かりました。しかし、なぜ車上生活を続けていたのか、詳しいことは分かっていません。 取材班「その家族を見かけたことは?」 家族を見たという男性「1回か2回だけ。ぐったりしていた。おばあさんが。」 道の駅 従業員「あまりジロジロ見ても、営業の邪魔にならなければ。」 私たちは、車上生活の実態を調べるため、各地の道の駅を取材することにしました。 幹線道路沿いにある、群馬県の道の駅です。ドライバーが休憩をとるため、駐車場もトイレも24時間開放されています。 夜になると…。 後田ディレクター:見えますでしょうか。この真っ暗に見える駐車場に、1…2…10台弱、車が止まっています。 休憩する車に混ざり、ここで生活しているとみられる人の車が…』、「10台弱」とは想像を上回る多さだ。
・『66歳 仕事失い道の駅で…車で暮らす理由  数か月前から駐車し続けている車があると聞き、訪ねました。 後田ディレクター:すみません、突然。「カメラはだめ。」 後田ディレクター:話だけでも。 「車もだめ。世間には出たくない。嫌だ。」 この日は、取材をすることはできませんでした。 男性の元を訪ね続けて2週間後。取材に応じてくれることになりました。 後田ディレクター:お父さん、こんにちは。 車上生活を続ける男性(66)「はい。」 後田ディレクター:昼になったら気温が上がってきましたね。 車上生活を続ける男性(66)「そうだね。」 後田ディレクター:この道の駅は、どれくらい? 車上生活を続ける男性(66)「12月が来れば、1年。」 後田ディレクター:車の中、見せてもらっても? 車上生活を続ける男性(66)「いいよ、好きなように撮って。」 後田ディレクター:寝るのは後部座席ですか? 車上生活を続ける男性(66)「うん。」 後田ディレクター:カセットコンロも。ここで煮炊きも? 車上生活を続ける男性(66)「できる。」 後田ディレクター:ごはんは、どうしていますか? 車上生活を続ける男性(66)「食料があれば、それなりに。こういうゼリー状になるから。」 後田ディレクター:(手作りゼリーを勧められ、食べてみて)なんか、さわやかな味。 車上生活を続ける男性(66)「だから前は70kgあったんだけど、体重は40kgぐらいまで落ちて。」 後田ディレクター:そんなに? 66歳の男性はトラック運転手でしたが、去年、仕事を失い、生活に行き詰まりました。仕事を見つけるためにも、車を手放せないといいます。 車上生活を続ける男性(66)「(アパートの)支払いが滞るように。不動産屋もうるさくなってきた。『じゃあ出るか』車中泊の状態になって。」 男性によると、収入は月に10万円の年金。アパートで暮らすと家賃4万円に加え、光熱費もかかり、毎月4万円ほどの赤字になります。 車上生活では、家賃、光熱費はかかりません。ただ、冷蔵庫がなく、そのつど食材を買わねばならないため、食費はかさみます。支出は年金の範囲内で済むものの、ギリギリの生活を余儀なくされています。 車上生活を続ける男性(66)「知らない人は『生活保護でも受ければ』と簡単に言うけど、1回市役所に行って聞いたら、『車を持っているんでしょ?だめですね。』パッと切られて終わり。」 それでも、車を手放さないのはなぜなのか。 車上生活を続ける男性(66)「これが別府温泉。一応ツーショットありますよ。」 後田ディレクター:写真、大事にされていますね。 車上生活を続ける男性(66)「これが、女房が死んだときの遺影。」 長年連れ添った妻は、7年前に亡くなりました。子どもはおらず、この車には、夫婦でドライブに行った思い出が詰まっていると教えてくれました。 車上生活を続ける男性(66)「いなくなると、がっかりだよね。夢も希望もなくなっちゃった。」 後田ディレクター:旅行に行った車なんですよね。 年金支給日の前夜。 後田ディレクター:今から、どこに行くんですか? 車上生活を続ける男性(66)「これから燃料。ガス欠だから。」 後田ディレクター:ガソリンの量、完全に空に? 車上生活を続ける男性(66)「うん。」 年金は、支給日の午前0時に振り込まれます。 ATMの前で、午前0時を待ちます。 購入したガソリンは5リットル。 そこから1時間、歩いて戻ります。 後田ディレクター:これからどうされるんですか? 車上生活を続ける男性(66)「移動するよ。ここには戻らないで、どこかよそに行くから。いくらなんでも、ずっと止まったままじゃ、相当目立っていると思う。ここに止まったままが、相当まずいんじゃないの。じゃあ行きますよ。」男性は、行き先を告げずに去って行きました』、「男性の元を訪ね続けて2週間後。取材に応じてくれることになりました」、取材もなかなか大変なようだ。「生活保護・・・市役所に行って聞いたら、『車を持っているんでしょ?だめですね。』パッと切られて終わり」、彼は「車」への思い入れが強いので、「車上生活」を続ける選択をしたのだろう。
・『27歳 若者も…「人間関係は難しい」その理由  私たちが取材した車上生活者の中には、若者もいました。 ディレクター:車に泊まられた? 「そうですね。」 ディレクター:何をされているんですか? 「ちょっといろいろな事情があって。あまり言えない事情が。」 朝7時。福岡県の道の駅で出会ったのは、27歳の男性でした。 ディレクター:僕、そっち(助手席)座っても? 車上生活を続ける男性(27)「別にいいですけど、めちゃめちゃ散らかっていますよ。」 ディレクター:生活感ありますね。 車上生活を続ける男性(27)「そうですか?」 現在は無職の男性。人と話をするのは久しぶりだといいます。 ディレクター:あの白いのは? 車上生活を続ける男性(27)「ペットのハムスターの遺骨です。」 ディレクター:ハム太郎ですか? 車上生活を続ける男性(27)「いや、ハム吉です。」 男性は1か月前まで、派遣社員としてトラックの製造ラインで働いていました。しかし、限界を感じ、退職。会社の寮を出ざるを得ませんでした。 車上生活を続ける男性(27)「朝8時に出勤し、終わるのが夜中の1時。めっちゃ続くし、(周囲に)ぺこぺこやっていても、結局そこまででしかないし。特にやりがいも感じず、続かなかったですね。」 日中、男性は混み合う道の駅を避け、ファミリーレストランへと移動します。座るのは、いつも端の席。なるべく人とは関わりたくないのだといいます。 車上生活を続ける男性(27)「難しいですよね、人間関係は。働いていたあのころに比べれば、だいぶ気持ち的には楽です。」 なぜ、人間関係が難しいと感じているのか。この夜、男性が心の内を語ってくれました。男性が、「飲みませんか」と誘ってくれました。 車上生活を続ける男性(27)「ふだん飲まないんですよ。友達ゼロで、彼女もいない。引きこもり車中泊。」 話し始めたのは、幼い頃に受けた虐待の記憶でした。 車上生活を続ける男性(27)「じいちゃんにどなられたり、ずっと7年間ぐらい。もうノイローゼみたいになっていました。トラウマですね。」 男性は、小学生の時に両親が離婚し、父親の実家に引き取られました。そこで祖父から虐待を受け続け、人を信じられなくなったといいます。 車上生活を続ける男性(27)「(虐待を)見て見ぬふりをしていた、父親が正直許せない。引き取ったくせに。それだったら母親の方に行きたかった。子どもに選ぶ権利はなかった。いろいろな事情があって。親のせいにするわけではないですけど、今の自分の生活が。」 どの職場でも人間関係に悩み、長続きしなかったという男性。仕事を失うたびに、車上生活を繰り返してきました。 今、男性はプログラミングの勉強を続けています。今後はなるべく、人と関わらない仕事に就ければと考えています。 車上生活を続ける男性(27)「最終的には、こんな生活していられない。仕事を見つける。住む場所を確保する。この2つですね。こんな(生活)を幸せと思いたくない。」』、「小学生の時に両親が離婚し、父親の実家に引き取られました。そこで祖父から虐待を受け続け、人を信じられなくなった」、子供への「虐待」は、ずいぶん尾を引くこともあるようだ。
・『30代 妊娠・幼子を連れて 誰も頼れず…  幼い子どもを連れながら、車上生活を余儀なくされた人もいます。 女性は、行政の支援を受け、現在は夫と3人の子どもとアパートで暮らしています。 車上生活をしていた女性(30代)「これが、当時乗っていた車。このサイズで寝泊まりしていました。」 車上生活をしていたのは、3年前の冬。長女は、まだ1歳。さらに、長男を妊娠中でした。 車上生活をしていた女性(30代)「車がなかったら、野宿するしかない。雨風をしのげる唯一の場所。インターネットカフェは子どもがいたらだめですよね。子どもと一緒にいるためには、どうしようと。」 当時、夫婦共に日雇いの仕事をしていましたが、収入は月に10万円ほど。アパートを借りる余裕はありませんでした。 車上生活をしていた女性(30代)「(日雇いの)仕事もお互いにどっちかが行って、子どもを見て。子どもはちゃんと寝かせてあげて、私たちは交代で寝る。永遠にこの生活か、とか。一番つらかったのは、子どもが泣いたとき。とりあえず外であやすけど、寒いじゃないですか。ごめんねって。」 両親とは疎遠だった夫婦。同居していた親戚とのトラブルをきっかけに、車上生活を余儀なくされました。幼い子どもを抱えていたため、友人に相談することもためらったといいます。 車上生活をしていた女性(30代)「『子どもを連れて、どうした?』『こんな時だけ?』というのもあるから、事情を話しづらかった。頼れる相手がいれば違ったのかもしれないけど。」』、「夫婦共に日雇いの仕事をしていましたが、収入は月に10万円ほど」、確かに最底辺だ。「行政の支援を受け、現在は夫と3人の子どもとアパートで暮らしています」、「3人の子ども」がいれば、「車上生活」を続けるわけにはいかないだろう。
・『支援の手が届きにくい…亡くなる人も  住まいのない人たちを支援している静岡県のNPOです。 最近、車上生活者についての情報が相次いで寄せられています。 居住支援を行うNPO 鈴木和樹さん「ものすごい違和感を感じられたと。車、見れば分かります?けっこう汚れていて。」 高齢の母親と娘が2人で車上生活をしているようだといいます。 居住支援を行うNPO 鈴木和樹さん「いるといいけどね。」 道の駅を探しますが…。 居住支援を行うNPO 鈴木和樹さん「白のセダンということだったんですけど、セダンが無いですね。」 すでに移動してしまったあとでした。 居住支援を行うNPO 鈴木和樹さん「難しいですよ。車って、どこまでも行けるので。もしかしたら通過点だったかもしれないし、とにかく会わなきゃ始まらない。」 さらに、車上生活者と接触できても、支援には課題があります。これまでのように生活保護を勧めても、拒まれるケースが少なくないのです。 NPOのシェルターで、一時的に暮らしている男性です。 8年間、車上生活を続けた末、仕事を失い、飲まず食わずの状態で保護されました。 ディレクター:生活保護を受ける考えはありましたか? 車上生活をしていた男性(64)「それは、正直無かったですね。生活保護というのは。自分の中にはね。やっぱり意地もあったんでしょうね。働ける間は、自力で働きたい。人に食べさせてもらわなくても、なんとかしようって。どんどん深みにはまっていっちゃった。」 居住支援を行うNPO 鈴木和樹さん「『助けて』って言えない人のほうが、世の中いっぱいいますし。僕だってなかなか言えないですよ。言えないなら、言ってもらえるような関係を作るしかない。」 車上生活を続けた末に、人知れず、亡くなる人もいます。 道の駅 従業員「道の駅の看板のすぐ下、一番すみですね。脳梗塞で、いきなり、ばたんと倒れちゃったらしくて。あと、熱中症みたいな症状で、救急車を呼んだことも何度もある。」 関東地方すべての道の駅を取材したところ、車上生活者とみられる人が、少なくとも9人亡くなっていることが分かりました。 道の駅 従業員「きっと声をかけて、少し話ができたら、死ななくてすんだかもしれない。こういう所で亡くなっているのを、珍しいと思わなくなっている。」』、「車上生活:では、エコノミークラス症候群になって、「脳梗塞」というのもあり得る話だ。
・『なぜ増加? 知られざる実態  武田:取材にあたった後田ディレクターです。今回、およそ50人を取材してきたそうですけれども、このほかにも、さまざまな事情を抱えた人がいたんですよね。 後田ディレクター:例えば、神奈川県の海老名サービスエリアでは、70代の夫婦が2年間、車上生活を送っていました。妻が認知症のため、徘徊(はいかい)することを心配して“近所に迷惑かけたくない”と家を出ざるを得なかったといいます。 さらに、夫婦と子どもたちの5人家族は、公園の水道で洗濯をするなどして車上生活を送っていました。長女は小学2年生でしたが、通学をさせていませんでした。私たちは児童相談所にも連絡しましたが、車上生活をしていた理由は最後まで明かさないまま、取材の途中で行方は分からなくなってしまいました。 また、働きながら車上生活を送る清掃員の女性もいました。住宅ローンを返すために借金を重ねた結果、多重債務に陥りました。給料のほとんどは借金の返済に消えてしまい、車上生活から抜け出せなくなっていました。 また、家は近くにあるけれど、事情があって帰れないという50代の女性もいました。心配した道の駅の従業員の方が警察に通報すると、実は夫のDVから逃れるために車上生活をしていると言っていたそうです。 武田:こうして聞いてみますと、皆さん、貧困に苦しみ、そのうえでさまざまな難しさを抱えて、車上生活を強いられているということなんですね。 後田ディレクター:取材をしてみると、引きこもり、DV、認知症など、現代社会で人々を孤立させているさまざまな問題と車上生活が結びついているように感じました。一見すると、レジャーとして車中泊をしている人たちと見分けはつきませんが、一つ一つの車に声をかけてお話を伺ってみると、車上生活を長年続けているという人が想像以上に多く、とても驚きました。 武田:誰しもが、ふとしたきっかけで陥りかねない車上生活。社会はどう向き合えばいいんでしょうか』、「引きこもり、DV、認知症など、現代社会で人々を孤立させているさまざまな問題と車上生活が結びついているように感じました」、確かに事情は様々なようだ。
・『「社会との交わりが閉じられて…」「冷たい社会に…」  30年前から、ホームレスの支援を行っているNPOです。 車上生活者の現状を、貧困の問題として、ひとくくりにはできないと戸惑いを感じています。 武田:これほど多くの方が、車の中で暮らしている。長年、困窮者支援をしてきた立場で、どう捉えているのか。 居住支援を行うNPO 阿英紹さん「10年前の、いわゆるホームレスの方々と、ここ10年の車上生活の方々とは、まったく質が変わってきた。かつてのホームレス対策で、とにかくアパートに入れて保護、生活保護を受けるだけではすまないのが今の時代。」 武田:なぜ、そこまで困窮してしまったのか。なぜ、そこまで人間関係に悩むようになってしまったのか。 居住支援を行うNPO 阿英紹さん「ここが一番難しいところ。その問いは、私たちも正解はなかなか見当たらない。どこかで、社会との交わりが閉じられてしまっている。原因はいろいろある。難しい生き方になっている。『本来はこういう生活するはずじゃなかった』と思っていると確信しています。」 武田:自らそういう暮らしを選んでいる? 居住支援を行うNPO 阿英紹さん「選んだんじゃなくて、追い込まれてしまっているとしか思えません。」 武田:ご本人を取り巻く状況に問題があるのか? 居住支援を行うNPO 阿英紹さん「今、冷たい社会に日本がなっているような気がします。いつでも誰でも、何かのはずみで、そういう状態に陥ってしまう。私たちは、そういう中に生きているんだろうと。オアシスみたいなものがあれば、一息つけるような場所があれば、変わって、また立ち上がっていけるんじゃないか。具体的には、言うは易しで、なかなか難しいですよね。」』、これはといった解決策はなさそうな難しい問題のようだ。
・『いま 社会はどう向き合う?  武田:住まいを持って、日々やりがいを持って働くという、ごく当たり前だと思われてきたことが、今すごく難しくなってきている。そういう今の社会の1つの断面を表しているように感じたんですが、どういうふうに感じましたか? 後田ディレクター:取材を通じて、「誰にも迷惑をかけられない」という言葉を繰り返し耳にしました。一度人生でつまずいてしまうと、家族にも友人にも頼ることができない社会になっているのだなと痛感しました。 車上生活をしている方は、私たちが、ふだん使っている駐車場で暮らされています。身近な場所にもかかわらず、人知れず、車上生活を送っている人がいる。社会の無関心の中で、この問題が広がっている怖さを感じました。 引き続き取材をしていきたいと思っています。 武田:しっかり見ていかなくてはいけないですね。 ※一部の回で、配信されない場合があります。ご了承ください』、今後の「取材」で、さらに深く掘り下げてくれることを期待したい。
タグ:なぜ増加? 知られざる実態 いま 社会はどう向き合う? 「ホームレスを食い物にする輩のありえない悪行 彼らの健康事情と貧困ビジネスの結びつき」 治療費を払ってもらえない病院側のジレンマ 米国に次いで高い日本の「相対的貧困率」 熱海まで連れて行かれ、いきなり手術、そして放置 「学ぶ環境」が無く、適切に学業を修められなかった。これこそが貧困が与える影響でしょう。その結果、その家庭に生まれた子どもも相対的貧困に陥りやすくなる。結果、貧困は連鎖し、再生産されてしまう 3割超の道の駅で…なぜ?亡くなる人も 「相対的貧困」家庭の子どもは相対的貧困に陥りやすくなる 生活保護をもらって暮らす福祉アパート 東洋経済オンライン 松本 健太郎 村田 らむ 支援の手が届きにくい…亡くなる人も 病気よりもおそろしい社会の闇 「車上生活 社会の片隅で…」 強度のアルコール依存症や違法ドラッグを使用する人も 日経ビジネスオンライン 30代 妊娠・幼子を連れて 誰も頼れず… 「絶対的貧困」 「G7で2番目に高い日本の相対的貧困率。そこで何が起きている?」 (その2)(ホームレスを食い物にする輩のありえない悪行 彼らの健康事情と貧困ビジネスの結びつき、G7で2番目に高い日本の相対的貧困率 そこで何が起きている?、車上生活 社会の片隅で…) 「相対的貧困層」は若者、老人、ひとり親の家庭に多い お酒をたくさん飲むホームレスも多い NHKクローズアップ現代+ あこぎなやり方で稼ぐ病院の実態 66歳 仕事失い道の駅で…車で暮らす理由 近年はタバコがずいぶん値上がりしたので、ホームレスには購入のハードルが上がったようだ 貧困率が下がると捕捉率も下がる不思議 病気になっても病院に行けない 「社会との交わりが閉じられて…」「冷たい社会に…」 貧困問題 福祉アパートなどの独自ルールである「『禁酒』『禁煙』『門限23時』などを守るのが嫌だ 健康を保つのが難しいホームレス
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パンデミック(新型肺炎感染急拡大)(その5)(パンデミックを乗り切るなら清潔な日本 お粗末な危機管理には「前科」 五輪中止に追い込まれる可能性も、新型コロナのパンデミックで避けたい未来 医療崩壊のイタリア、法改正へ、新型コロナ緊急事態宣言でテレビの報道内容に指示も、コロナ・パンデミックで米中の「相互排除」が拡大し世界は分断へ向かう) [国内政治]

パンデミック(新型肺炎感染急拡大)については、3月10日に取上げたばかりだが、事態が急展開している今日は、(その5)(パンデミックを乗り切るなら清潔な日本 お粗末な危機管理には「前科」 五輪中止に追い込まれる可能性も、新型コロナのパンデミックで避けたい未来 医療崩壊のイタリア、法改正へ、新型コロナ緊急事態宣言でテレビの報道内容に指示も、コロナ・パンデミックで米中の「相互排除」が拡大し世界は分断へ向かう)である。

先ずは、3月11日付けJBPressが英誌The Economistを転載した「パンデミックを乗り切るなら清潔な日本 お粗末な危機管理には「前科」、五輪中止に追い込まれる可能性も」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59653
・『COVID-19が安倍首相肝いりのプロジェクトを台無しにする恐れがある  パンデミックを乗り切るために滞在する国を一つ選ばなければならなくなったら、筆者は間違いなく日本を選ぶ。 入浴の様子を描いた19世紀初めの木版画が物語っているように、日本人は昔から、清潔であることを称賛に値するほど重んじてきた。 現代の日本人も長年、ちょっと鼻をすすっただけで、すぐにマスクをつけていた。周囲に迷惑がかからないようにとの配慮からだ。 さらに、国民は公的機関などからの呼びかけに素早く反応する。 1月半ばから説かれている新型コロナウイルス感染症「COVID-19」対策では、こまめに手を洗うことが強調されている。 手洗いは、ウイルス拡散のスピードを遅くすることに間違いなく貢献している。 3月4日時点で日本の感染者数が1035人で死者が12人にとどまっていること、しかもその大半が横浜港に数週間停泊していたクルーズ船に関連していることを考えれば、特にそうだ。 驚くべきプラスの副作用がすでに明らかになっている』、「日本人は昔から、清潔であることを称賛に値するほど重んじてきた」、15日では感染者数が1496人で死者が29人(うちクルーズ船が各々712人、7人)のようだ(厚労省)。ただ、日本ではこれまでPCR検査の対象者を極めて限定していたが、これを拡大すれば、感染者数は一気に急増する可能性がある。
・『医師からの報告によれば、日本では欧米と異なり、普通のインフルエンザの患者数が急減している。過去数年との比較だけでなく、この冬の前半と比べても減っているという。 日本でのインフルエンザによる死者が2018年には3300人だったことを考えれば、ここ数カ月間で熱心に説かれた予防策は、COVID-19の犠牲者をはるかに上回る数の命を救ってきたのかもしれない。 だがそれでも、ここ数日は社会のストレスが表出している。 東京では、マスクを手に入れようと薬局にやってきた買い物客の行列で小競り合いが生じた。トイレットペーパーのパニック買いが各地で始まり、店の棚が空になった。 公衆トイレのトイレットペーパーに自転車用の盗難防止チェーンが巻かれている写真まで広まった。 ゴールディングの『蠅の王』には遠く及ばないものの、日本のように行儀の良い国では非常に異例な現象だ。 その原因は、普段は主張がはっきりしている安倍晋三首相の政府に対する疑念がわき起こったことに求められる。 そもそも、首相の問題は前述のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から始まったようだ。 乗客乗員3700人の中にCOVID-19の感染者(いずれも海外で感染)がいることが分かった時に取られた隔離策はお粗末だった』、アメリカではクルーズ船対応を日本の失敗を踏まえて、直ぐに上陸させて、隔離する措置を取ったようだ。
・『ある乗客が表現したように、この船は海に浮かぶペトリ皿だった。船内では、感染者数が700人を超え、7人の死者を出すことになった。 さらに驚くべきことに、乗組員はウイルスに感染した船からの上陸を認められた際に特に隔離されず、日本人の乗客は公共交通機関で帰宅することが許された。 間違いだらけの危機管理と言えば、日本には前科がある。 1995年の阪神淡路大震災の時には、政府の支援の手が届くのがあまりに遅かったため、ヤクザが炊き出しを行ったほどだ。 ダイヤモンド・プリンセスへの対応においても官僚組織は混乱していた。自国民の乗客がいる欧州諸国の大使は、日本政府の誰と連絡を取ればよいのか分からないとこぼしていた。 危機の間に姿が見えなかった安倍氏については、腕が落ちたのではないかと訝る声がファンの間から漏れた。 それまでびくともしなかった内閣支持率は急落した。 コロナウイルスだけでなく自分の評判へのダメージも封じ込めようと、安倍氏は2月27日、指導力を発揮し、すべての学校に対して4月まで休校するよう求めた。 また3月初旬には、最悪の事態に備え、政府が非常事態宣言を出すことを可能にする法案作成にも着手した。緊急支援策も打ち出している』、「間違いだらけの危機管理と言えば、日本には前科がある」、硬直的な官僚機構もさることながら、政治的リーダーシップのお粗末さが主因だろう。
・『攻めの姿勢の安倍首相が帰ってきた。 おかげで今度は、休校要請の決断に際して専門家からどんな助言を受けたのか、そもそも助言を受けたのか、といった疑問が次々に浮上している。 新たなストレスも表に出てくるに違いない。 特に、昼間働いているのにこれから数週間にわたって子供の世話をしなければならなくなった母親たち(父親たちではないようだ)は大変だ。 ある母親は「子供を育てるとはどういうことか、政府は分かっていない」と不満を述べている。 日本政府は、4月には国内が正常化するとしている。その見込みは薄いように思える。 中国の習近平国家主席を国賓として招く計画は、傾きかけた日中関係を元に戻してくれるはずだったものの、すでに延期が決まっている。 これについては、安倍氏が被る政治的コストはほとんどない。 そもそも、安倍氏を権力の座に押し上げたナショナリストたちは、中国の独裁者を招請することに不満を漏らしていた』、安倍首相は、桜を見る会などの逆風を、「休校要請」などで「やっている感」を出すのに必死のようだ。
・『もっと利害が大きいのは、この夏に開催予定の東京オリンピックの方だ。 安倍氏は、嘆かわしいことに普通の日本人には愛国心が足りないので、このイベントを機に養ってもらいたいと思っている。 また、オリンピックのおかげで日本が開放的でグローバル、かつ多文化の国に見えるようになってほしいとも考えている。 さらに、オリンピックは関連の費用が予算を大幅に超過しているとはいえ、首相を7年あまり務めて勇退する際の花道にもなる。 この大会をキャンセルすることになれば、日本の一般市民はがっかりするだけでなく、負担しなければならなかった費用が無駄になることへの怒りも覚えるだろう。 しかし、もしパンデミックになれば、その決定権は安倍氏の手から取り上げられる。 何といってもオリンピック選手村が「陸上のクルーズ船」になってしまうからだ、と上智大学の中野晃一教授は指摘する。 オリンピックは少なくとも延期になると思っておいた方がいいだろう。 そして首相の人気の回復もかなり先にずれこむと見てよさそうだ』、国際オリンピック委員会(IOC)は、今のところ当初予定通りとしているが、欧州での感染拡大が続くようであれば、1年延期論も強まるだろう。

次に、3月12日付け日経ビジネスオンライン「新型コロナのパンデミックで避けたい未来、医療崩壊のイタリア」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/031200005/?P=1
・『イタリア政府は3月11日、新型コロナウイルスの感染者が1万2462人、死者は827人になったと発表した。致死率は6.6%で他国より突出して高く、修羅場と見られた中国・武漢より高い。重症の感染者に医療現場が対応しきれず、医療崩壊が起きているようだ。 3月10日朝からイタリアの街の空気は一変した。それまで新型コロナウイルスの感染者が増えていたものの、前週末まではイタリア人の受け止め方は様々だった。「新型コロナで正念場のイタリア、人口の約4分の1を『封鎖』」で書いたように、息抜きのために散歩やジョギング、公園に出かける人も多かった。 だが、コンテ伊首相が9日夜に、10日から移動制限を北イタリアから全土に拡大すると発表。国民に外出を控えて自宅で過ごすように要請し、「国民全員が協力して、厳格な規制に対応してほしい。私たちにはもう時間がない」と訴えかけた。飲食店は営業時間が午前6時から午後6時に制限され、客も1メートル以上の間隔を保たなければならない。 移動制限を打ち出した後は、街の人出が激減。道路や公園などがガラガラになった。ミラノ在住の日本人は、「出かけるのも気が引ける」と話す。スーパーマーケットは混乱を避けるために入場制限を実施しており、その外では列ができていた上に、1メートル以上の間隔を空けて並んでいた。 社会的な混乱も起きている。イタリア政府の規制によって、刑務所の受刑者が面会を禁じられたことに怒り、イタリアの20カ所以上の刑務所で暴動が発生。AFP通信によると、北部の刑務所では受刑者が屋上を占拠して抗議活動をしたり、刑務所の外で受刑者の家族が激しく詰め寄ったりした。中部では受刑者が刑務所を占拠し、南部の刑務所では大規模な脱走が起きた。 移動制限を発令した10日以降も感染者と死者の増加に歯止めがかかっていない。11日の感染者は前日から2313人増え1万2462人。死者は同196人増え827人となった。特に注目されているのが、致死率の高さだ。イタリアの6.6%という致死率は、世界保健機関(WHO)がこれまでの報告をまとめた平均の3.4%より高く、最も修羅場と見られた中国・武漢より高い。その理由として2つが挙げられている。 1つは、高齢者の多さだ。イタリアは平均寿命が男女共に80歳を超える長寿国であり、全人口に占める65歳以上の比率は23%を占める。新型コロナによる死者は持病を持つ高齢者が多いようだ。 もう1つが、医療現場の混乱である。現地メディアや個人の情報発信を総合すると、北イタリアで感染者が急増している地域の病院では、医療従事者や医療器具が不足し、重症者の治療に手が回らない「医療崩壊」の状態にあるようだ』、イタリアでの「致死率の高さ」は確かに衝撃的だ。何故、このような事態を招いたのだろう。
・『北イタリアの病院は戦時下のような状態  米CNNによると、感染者が最も多い北部ロンバルディア州で集中治療態勢の調整に当たっている関係者は、「今や廊下での集中治療態勢整備を強いられている」「病院の区画は全て重症者のために開放した」と語った。 北部のミラノ近郊にある病院の集中治療室(ICU)で治療に当たるダニエル・マッキーニ医師のSNS(交流サイト)の書き込みも話題になっている。「高齢者だけでなく、若い人も気管挿管され、ICUに搬送される」「1日に15~20人が入院し、ICUは崩壊しつつある。戦争のようだ」と、その惨状を語っている。 また、イル・ジョルナーレという現地メディアには、ロンバルディア州の医師の衝撃的な証言が掲載された。それは、「60代以上の患者には挿管しなくなった。若い人や他の病状のない人を選んで挿管する人の選択をしなければならない。人工呼吸器を必要とするすべての人に挿管できなくなった」というものだ。 イタリアの現場の医師たちは緊急事態にあるため、断片的な情報が多い。そこで、ベルギーで新型コロナ対応の指定病院に勤める医師に現地の情報から分かることを解説してもらった。 「新型コロナの感染者はまずは肺を休めることが大事なので、呼吸困難が見られるようなら気管挿管をして人工呼吸器を付ける。例えば1000床ほどの規模の病院なら、100個弱の人工呼吸器はある。それを超えるほどの重症患者が集まる事態を聞いたことがない。重症の感染者に人工呼吸器をつけられなければ死んでしまう。内容が本当だとすると、北イタリアの一部の医療現場はまさに戦時下のような状態ではないか」 イタリアはこれまで財政緊縮策の一環として医療費削減を進め、医療機関や医療従事者を削減してきたところに、新型コロナの重症者が殺到してしまった。引退した医師を呼び戻すなどの緊急策を講じているが、人員不足は解消されていない。そうした中で、十分な治療ができない重症者が増え、死者が急増している可能性がある』、「ICUは崩壊しつつある」、「60代以上の患者には挿管しなくなった。若い人や他の病状のない人を選んで挿管する人の選択をしなければならない」、完全な「医療崩壊」が起きているようだ。
・『本当に検査数は多いのか  医療崩壊が起きている理由として、病院が軽症の感染者を多く受け入れてしまった点が挙げられている。初期症状の患者の検査を実施せず、その感染が明らかになるまでその患者が感染を拡大させてしまったことが、当初、イタリアでも大きく取り上げられた。その反省からか、病院での検査を積極的に実施したことで、院内などで感染を拡大する悪循環に陥ったとの指摘がある。 だが、ここで疑問が生じる。検査をしても軽症の感染者が多いのならば、致死率は下がるはずだ。むしろ、イタリアが突出して検査数が多いというわけではない。人口当たりの検査数で見ると、韓国は100万人当たり4000人近くも検査をしているのに対して、イタリアは1000人以下でスイスやドイツと大差はない。 イタリアは比較的症状が重い人のみを検査しているという見方もある。ロンバルディア州の高齢者向けのクリニックに勤めるカサニ医師は英タイムズ誌に「潜在的にはもっと感染者が多いが、対象を重症者に絞っているため致死率が高くなっている」と語った。 先のベルギーの医師も、疑問を呈する。「死者や集中治療室に入っている人を含めた重症化率が他国よりあまりに高い。数字上の間違いか、他の地域と同じウイルスなのか疑問を持たざるを得ない」と話す。 新型コロナ以外の理由による死者が含まれているのではないか、との疑問がある。ただ、現場の医師の証言では重度の肺炎患者が多く、何らかの形で新型コロナに関連した死者が多いようだ。 WHOは11日、新型コロナについてパンデミック(世界的な大流行)と認定し、中国以外での感染拡大に強い懸念を示し、各国に対策強化を促した。イタリアの医療現場の窮状に対して、普段なら周辺各国から援助に駆けつける動きもあり得るが、今は欧州各国も自国民の検査や医療体制の維持に懸命で余裕がない状況だ。 イタリアは国内病院でICUの受け入れ能力が限界に近付いており、これ以上は受け入れられないと見られている。医療現場の負荷を軽減することが生命線となるため、軽症の患者の自主隔離を徹底し、感染者を増やさないために人々の移動を大幅に制限している。日本や世界各国がイタリアのようにならないためには、医療崩壊への対策と危機意識を周知徹底することがより重要になりそうだ。[追記:2020年3月13日19:25]本文中で紹介したイタリアの現地メディア、イル・ジョルナーレの記事に対し、病院側は事実ではないと別の現地メディアで反論した。今のところ真偽は明らかになっていない』、「潜在的にはもっと感染者が多いが、対象を重症者に絞っているため致死率が高くなっている」、これが「致死率」に関するもっともらしい説明だろう。「今は欧州各国も自国民の検査や医療体制の維持に懸命で余裕がない状況だ」、とはいえ、EUとしては多少無理をしてでも、イタリアへの医療チーム派遣などの支援を打ち出すべきだろう。そうすれば、反EUの極右勢力も力を失う筈だ。フランスやドイツが自国対策だけに追われている現状は、残念だ。

第三に、3月13日付け日経ビジネスオンライン「法改正へ、新型コロナ緊急事態宣言でテレビの報道内容に指示も」の一部を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/031200118/?P=1
・『政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に対応すべく、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案を国会に提出した。「緊急事態措置」を宣言できるようになる。立憲民主党の山尾志桜里衆院議員は、宣言に当たっては国会承認(緊急の場合は事後)を必須とするよう強く求めている。同措置は、言論の自由を奪いかねない強い制限を国民に課すことができるものだからだ。 新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、政府が3月10日、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案を提出しました。衆議院の内閣委員会は3月11日、与野党の賛成多数でこれを可決。13日の衆参本会議で採決し、成立する予定です*。(*:このインタビューは3月11日に行った。同法案は3月12日、衆院本会議で可決され、参院に送られた)(Qは聞き手の質問)
・『Q:山尾さんは、同法が定める「緊急事態措置」に強い懸念を示されています。どこに問題があるのでしょうか。 山尾:この緊急事態措置は、国民の目と口を封じることができる非常に強い措置です。なので、改正するならば、その宣言に際して事前の国会承認を義務づけ(緊急の場合は事後も可)、民主的統制を高める必要があると考えています。現行法は、事後に国会に報告するだけですみます。期間も最長2年となっており、これは長すぎます。 (新型インフルエンザ等緊急事態宣言等)第三十二条 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする』、「立憲民主党の」枝野党首以下が安部首相に丸め込まれて、賛成したのは許し難い。
・『集まり、議論することを禁止できる  Q:国民の目を塞ぎ口を封じる、というのは具体的にはどういうことですか。 山尾:この法律は国民の行動を広く縛ることができます。まず、45条で国民に外出の自粛を要請することができるとしています。 (感染を防止するための協力要請等)第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。 Q:「要請」は「命令」ではないのですよね。 山尾:その通りです。しかし、同条の2項と3項に進むと、学校、保育園、老人ホームといった施設の使用禁止を指示することができるとしています。「指示することができる」というのは、罰則規定こそありませんが、命令できるということです。 第四十五条 2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。 3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。 この部分を援用すれば、緊急事態措置を宣言した根拠をただすための議論をする市民イベントさえ禁止できることになります。これが冒頭でお話しした「口を封じる」行為です。「この法律が定める私権制限は抑制的」との見方もありますが、私はそうは思いません。宣言の是非を国民が話し合う機会を奪う可能性すらある措置なのですから。 集会を禁止するというのは、明治の「集会条例」以来、政府が反対派を抑えるのに使ってきた常とう手段ですね』、「宣言の是非を国民が話し合う機会を奪う可能性すらある措置」、やはり重大な問題がありそうだ。
・『「指定公共機関に必要な指示をすることができる」が意味するもの  山尾:さらに、国民の目も塞ぐことができます。首相が民放テレビ局に指示することができるのです。 Q:それはどういうことですか。 山尾:本文に直接的に書かれているのではありません。しかし、いくつかの条項を組み合わせると、そのように運用ができるのです。3月11日に開かれた法務委員会の質疑に内閣府を呼んでただしました。順に説明しましょう。(これ以降は有料)』、肝心の部分は有料なので紹介できないのが残念だ。「山尾」氏は男女関係ではとかく噂があるが、自らの信念に基づいてただ1人で造反するとは、見上げたものだ。安部政権の今後の具体的な運用を注視していきたい。

第四に、元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏が3月18日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「コロナ・パンデミックで米中の「相互排除」が拡大し世界は分断へ向かう」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/231919
・『中国武漢に始まった新型コロナウイルス感染は、同心円を描くように韓国や日本など周辺国に拡がり、ついには米国と欧州などに拡大。12日にWHO(世界保健機関)は「パンデミック」を宣言した。 中世にペスト流行がローマ教会の権威を壊し、主権国家を生む契機になったように、その後も天然痘、コレラ、スペイン風邪などの世界への感染症の拡大が歴史を変えてきた。 現代は医学と医療が発達しており、「新型コロナウイルス・パンデミック」が歴史の本質を変えることにはならないにしても、移動の制限などで人の交流が減り、一方で疑心暗鬼や不信感が強まるなどの国民心理の変化が各国政治の自国第一の傾向をより強めることになりそうだ』、「各国政治の自国第一の傾向をより強める」、とは困ったことだ。
・『不信感強まり協調の意識が希薄に 国際政治、自国中心主義が加速  パンデミック宣言は、コロナウイルス封じ込めに各国が総力で取り組むことを促したものだが、これだけヒト、モノの相互依存関係が深まっているときに、世界が同時に感染の終息を迎えるのははるか先のことだろうし、数年先のことになるかもしれない。 中国や周辺国で感染の拡大がピークを越えても、人の移動が回復するに従い、いったんは終息したと思われた国にも感染の再来も予想される。 各国は人々の移動を制限し、学校を閉め、人が集う芸術・文化・スポーツの集いを自粛する。そうした期間が長引くほど、グローバリゼーションにより成長してきた経済は大きな打撃を受ける。 中国の経済成長は大幅に減速するだろうし、先進国では軒並みマイナス成長になるだろう。 石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどの間での減産調整が合意できなかったことによる原油価格の急落もあって、世界経済の先行き不透明から、このところ世界の株式市場で株価下落が止まらない状況だ。 経済が回復するのは感染症の終息が確実となった後になるだろうし、経済活動の停滞だけでなく、問題が長期化すれば、人の交流が途絶えるなかで、人間の社会的営みは希薄になる。国際協調や地域の助け合いといった概念は薄れるだろう。 一方でネットの世界は拡がっているが、感染拡大により、殺伐としたやりどころのない疑心暗鬼や不信感、不安が、SNSを通じて増幅されている。 もともとネットの世界は自己中心主義の傾向はあるにしても、このような心理は、国内政治を変え、国際関係を変える背景を織りなす。 感染症拡大の危機に人々が求めがちなのは、知性や合理性ではなく一見強く見えるリーダーだ。 先進民主主義国では、グローバル化の下、新興国の台頭や移民流入などで職を失ったり賃金が増えなかったりした人たちの不満の受け皿としてポピュリズムが強まってきたが、パンデミックによる国民の不安心理などがこれを加速し、排外主義にもなりかねない自国中心主義が強まる可能性がある。 秋に大統領選挙がある米国では、アメリカ・ファーストを前面に掲げるトランプ大統領にとって再選に有利な環境が作られていくということかもしれない』、「先進民主主義国では・・・ポピュリズムが強まってきたが、パンデミックによる国民の不安心理などがこれを加速し、排外主義にもなりかねない自国中心主義が強まる可能性がある」、危険な兆候だ。「トランプ大統領」の感染症に対する楽観的発言が、米国民の不信を高める方向に作用することを期待するほかなさそうだ。
・『強権体制で感染封じ込めた中国 イメージ回復に反転攻勢  先進民主主義国を中心に自国中心主義を生んでいくなかで、中国はどういう方向に向かうのだろうか。 中国は新型コロナウイルスの感染拡大防止で初動を誤った。それは共産党体制の欠陥というべきものだ。 新型ウイルスが発見された時点で、当局が、最初に感染症の存在を提起した医師の訴えを封じた言論封殺的行動にみられる情報統制や、地方政府は中央の指示がないと動かず、かつ習近平総書記に権力が集中する体制の下では迅速な対応ができなかった。 初動が遅れ、武漢市の「封鎖」が行われるまでに500万人といわれる人々が交通の要衝である武漢から各地へ散っていった。 一方でその後の感染拡大を止めたのは、共産党体制の強制力と先進的なITを駆使した手法、監視社会の下でのビッグデータの活用だった。 要するに習近平体制で着々と積み上げられてきた監視体制が功を奏したということだ。 中国にとっては、今後、2つの課題を克服することができるか否かが、大きな分岐点になる。まず1つ目は「経済成長」の維持だ。 中国共産党にとってみれば統治の正統性を示す上で高い経済成長の維持は必須だ。特に2020年は習近平総書記が掲げる所得倍増公約(2010年比)の最終年になることから、実現に必要な5.6%以上の成長率達成に躍起になるに違いない。 すでに内政の重点は経済活動の早期回復に移っており、地方・中小企業への財政支援や投資・減税などあらゆる政策手段が活用されるだろう。 コロナウイルス感染拡大防止のために武漢市などで実施された、例えば食料品などの無人配送サービスや医療などのオンライン事業を他の地域に本格導入する動きもある。 一時的に成長が大幅に減速した場合に、特に若年失業者の増加も相まって国民の不満は蓄積されるだろうが、感染症対策で国民に対する監視体制は一層強化されており、習近平体制そのものが揺らぐことはないだろう。 共産党一党独裁体制は初動で失敗したが、感染症拡大の終息には適しているということか。 2つ目の課題は国際的な「イメージの回復」だ。 中国での初動の誤りが世界的感染拡大を生み、衛生状態や医療インフラの後進性を世界にさらし、中国の国際社会でのイメージを大きく損なった。 欧米では中国人だけではなく韓国人、日本人への差別意識も見られる始末だ。 習近平政権は、感染拡大が山を越えて終息に向かっているなど、国際社会への積極的なメッセージを出し、反転攻勢にでようとしている。 中国の感染が湖北省も含め終息しても、米国や欧州の感染はおそらくまだ拡大の一途をたどることになるかもしれず、中国での感染終息と欧米での感染拡大の長期化というタイムラグを、中国は、共産党統治体制の優れた点だということでイメージ回復に積極的に活用しようとするだろう。 強権体制で感染を止めた中国と、個人の自由を制約しきれない欧米先進国との対立は激化する』、最近、中国が感染源は米軍と非難したことに対し、米国がこれを否定する展開になっているが、中国もみっともないことをするものだと呆れ果てた。大国にあるまじき行為だ。
・『米中はデカップリングから相互排除に向かう  すでに米中の間では、ウォール・ストリート・ジャーナルが掲載した「中国はアジアの病人」という記事を巡り、激しい応酬が繰り広げられている。 中国は同紙の記者3人の国外退去を命じ、これに対し米国は米国駐在中国人記者の総数を100人以下に限るなどの措置をとっている。 米国内では新型コロナウイルスの感染が拡大しており、人々の嫌中感や対中差別的雰囲気が高まる可能性がある。 共和・民主両党とも対中強硬姿勢は同じで、大統領選では強硬路線を競うことになるのだろう。昨年秋の米中貿易協議の第1段階の合意も、経済の落ち込みが大きい中国は米国農産物の輸入拡大などを合意通り、実施するのは難しいと思われる。 新型コロナウイルス問題が一段落したとしても、米中の間には、香港や台湾問題など、対立の火種が残ったままだ。香港の民主化運動は根強く続くだろうし、新型コロナウイルス感染を最小限で食い止め、支持率も上がった台湾の蔡英文総統は自信を深め、独立志向を強めるだろう。米中の戦略的対峙も深まる。 今年11月の米国大統領選挙結果は、今後の国際政治の展開を考える上で大きな意味を持つ。 パンデミックで米国民の内向きの意識が強まるなか、トランプ大統領がアメリカ・ファーストを改めて訴えて再選に成功する可能性は高まった。 だとすれば、今後5年余りの世界は自国中心主義がさらに加速されることになるだろう。 そうなると、強権体制の下、国内の感染拡大に形の上では歯止めをかけた中国との関係はどのようになるか。 米中関係については、通常の貿易や投資では、双方にメリットがあるので、緊密化することはないにしても縮小することはないが、ハイテク分野での技術開発や投資、貿易は通常の貿易・投資とは切り離し(デカップリング)、お互いを排除した経済圏を形成していくという予測が強かった。 だがパンデミックを機に、米中間はハイテク分野でのデカップリングにとどまらず、通常の経済関係を含めた相互排除にまで発展することになるのではないか』、「米中はデカップリングから相互排除に向かう」、とは鋭い読みだ。
・『国際社会の分断が進む 崩れる先進民主主義国の協調  そして分断は、米中間だけに終わるものではではない。 新型コロナウイルスの感染拡大防止ということで、米国は英国を除く欧州からの入国を唐突に禁止したが、安保や経済関係を巡る米国と欧州の不協和音は、このパンデミックを通じてもさら大きくなっていく可能性が強い。 パンデミックへの対処や経済へのダメージを回避するためには、国際的な協調体制の強化が必要だが、その動きは今のところ見られない。 G7の議長国がイニシアティブをとるべきなのだが、今年は議長国が米国で、トランプ政権になって、米国の国際協調体制離れは顕著だ。 こうした状況で、冷戦時代に培われ、最近まで続いてきた先進民主主義国の協調体制は壊れつつある。 欧州でもアジアでも、米国からは離れる動きがどんどん強まり、一方でEUの求心力は衰え、米国に近い英国・東欧諸国と、米国と距離を置く独仏を中核とする諸国の分断が明らかになりつつある。 従来考えられていたような民主主義体制を基本とする「西側諸国」は、一枚岩ではなくなっているのだ。 新型コロナウイルス・パンデミックは長期間にわたると予想され、この間に、各国が自国優先主義を強めると、従来のように、共産党独裁の強権体制だからという理由で中国を忌避するという雰囲気ではなくなっていく。 アジアでもその傾向は強いのかもしれない。アジアでは民主主義体制が定着してきたわけではなく、いくつかの国では強権体制が国の発展に効果的という見方もされている。 世界の分断と対立は日本にとって好ましいことではあり得ない。米国との同盟関係を維持しつつ中国との経済関係を重視し、国際協調体制から利益を受ける日本こそが、世界が分断に進むのを抑える重要な役割を担うべきではないのか。 そのためには、日本は国内のウイルス感染をできるだけ早く終息させなければならない。そして国内支持率に右往左往する政治に終止符を打ち、長期を見据えた大戦略の下で行動していくことが何よりも必要な時代だということを強く認識したほうがいい』、「日本は・・・長期を見据えた大戦略の下で行動していくことが何よりも必要な時代」、理念的にはその通りなのだろうが、現実には「長期を見据えた大戦略」は日本が最も不得手だ。まして、「世界の分断と対立」が進むなかでは、せいぜい沈没しないように上手く舵取りしていくほかないのではなかろうか。
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農畜産林業(その3)(ソフトバンクが農業流通に殴り込み JA全農に対抗する大本命が始動、日本の林業は青息吐息で補助金漬け 「品質が良い」は遠い過去の話に、「国産が一番安全だ」と妄信する日本人の大誤解 日本は世界トップレベルの農薬大国) [産業動向]

これまで、農業として昨年1月29日に取上げた。今日から、牧畜・林業も含め農畜産林業に拡大した。農畜産林業(その3)(ソフトバンクが農業流通に殴り込み JA全農に対抗する大本命が始動、日本の林業は青息吐息で補助金漬け 「品質が良い」は遠い過去の話に、「国産が一番安全だ」と妄信する日本人の大誤解 日本は世界トップレベルの農薬大国)を取上げる。

先ずは、昨年8月30日付けダイヤモンド・オンライン「ソフトバンクが農業流通に殴り込み、JA全農に対抗する大本命が始動」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/213325
・『小泉進次郎氏が自民党農林部会長を退任し、すっかり改革の機運が後退した感のある農業界だが、民間からは変化の潮流が生まれている。JA全農といった旧来勢力が牛耳ってきたモノの流通などを代替する新事業が相次いで8月に本格始動したのだ。 これまで多くのIT企業や製造業が農家支援サービスを提供してきたが、大きな成功を収めているとは言い難い。そうした中、旧来型の「農業流通」を激変させるインパクトがある二つの事業が8月に始動した。 それらの事業は、従来の農家支援サービスとは違い、農家の利益に直結するモノの販売や決済サービスを提供する。この事業領域は長らくJA全農や卸会社など従来のプレーヤーが牛耳り、参入障壁がある聖域だった。 まず、流通変革の旗手となり得るのが、ソフトバンク・テクノロジー(SBT)だ。農家が農業に使う資材の相見積もりを取り、比較できる情報サイト「AGMIRU」を、商品の購入までできるECサイトにバージョンアップして本格稼働させた。 同サイトを運営するSBT子会社リデンの上原郁磨社長は「もうけていない人から月額のサービス料をもらうのではなく、サービスをどんどん利用してもうかってもらい、手数料を頂くのが特徴だ」と、従来の農家支援サービスとの違いを強調する』、「ソフトバンク」が乗り出したとは面白い。
・『事業開始時の会員は5000人弱だが、これを1年で1万人、3年で5万人(うち農家4万8500人、生産資材の販売事業者1500人)に増やす。 ビジョンは壮大だ。SBTは生産資材の販売だけではなく、農家への融資や農業生産でのIT・ロボットの活用、農産物の販売支援など各分野の「農業ベンチャーのトップランナー」と連合を組み、SBTはその集合体の“ハブ”の役割を果たそうとしている。 構想が実現すれば、農家の資金調達から農産物の販売までを支える押しも押されもせぬ「プラットフォーマー」となる。 当然、ビジネスが拡大すると、全農をはじめとしたJAグループと競合するが、一部、地域の単位農協(JA)は「JAグループならグループ内の全農を利用すべし」という組織の論理にとらわれず、AGMIRUなどの利用を検討しているという。JAがサービスを利用すれば、SBT陣営と全農が競合することになり、農家の選択肢が広がる。 そして、SBTがハブとなる農家支援連合のメンバーで、自らも農業流通の変革者になるべくのろしを上げているのが、農業ベンチャーのマイファームだ。8月から、オンライン卸売市場「ラクーザ」を正式にオープンした。 従来の青果流通では原則、農産物は農家→JA→全農→卸→仲卸→スーパーなどと、とてつもなく長い経路をたどる。 農産物が生産現場から消費者の手元に届く前に、生産現場の情報が流通の途中で寸断されてしまい、農産物の価値(おいしさ、安全・安心など)が消費者に伝わらないことが多々あった。 ラクーザは中間流通を省き、農家とスーパーやレストランを直接つなぐことで、農家の努力を反映した「適正価格」の実現を目指す。 利用するスーパーやレストランからすれば、農家のこだわりをウリにした個性的な商品を提供するためのツールになる』、「ソフトバンク」は農家にとっての購買部分に食い込み、農産物の販売部分は、「農業ベンチャーのマイファーム」の「オンライン卸売市場「ラクーザ」に委ねようとしているようだ。JAとしては、購買部分や販売部分を流出させまいと必死で対抗策を打ち出してくるだろう。
・『8月上旬現在で会員は800人(農家600人、購入者200人)だが、これを2020年内には4000人に拡大する。 農家全体からすれば少数だが、事業の成長の余地はある。マイファームの西辻一真社長は「登録を希望した農家は3000人いたが、家庭菜園の域を脱していない人にはご遠慮いただいた」と話す。一定の売り上げ規模があり、経営感覚に優れたプロ農家だけを集めることで、ECサイトとしての信頼性を高めようとしているのだ。 とはいえ、挑戦者たるSBTやマイファームの新サービスにも課題はある。従来の商流に比べ小ロットになる傾向があり、運送費がかさむのだ。このため、契約当たりの単価を上げる必要があるが、例えばラクーザの平均単価は3000~6000円とBtoBの取引としては小粒だ。 今後、テクノロジーの力で物流を効率化するとともに、契約規模を大ロットにしたり、利用頻度を高めたりできるかどうかが、勝負の分かれ目になる。 そしてもう一つ。事業体ではないが、旧来の農業団体とは一線を画すSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)をベースにした新たな農業者集団も誕生した。8月に設立された「日本農業者ビジネスネットワーク」だ』、「従来の商流に比べ小ロットになる傾向があり、運送費がかさむ」、確かに工夫が必要だろう。
・『農業団体にも変化 SNSベースのフラット組織発足  その母体となったのが、フェイスブック(FB)の非公開グループ「FB農業者倶楽部」だ。グループには8518人が登録し、フラットな関係で農業の経営課題の解決方法などを教え合っている。 今回立ち上がった日本農業者ビジネスネットワークは、FBのグループを活発化して課題解決能力を高めるとともに、FB上や会員が集まるオフ会で政策論議を行い、農業政策への意見反映を目指す。 一方、JAなど既存の農業団体は組織運営が硬直的で、農政運動は形骸化が進む。農政運動の意見集約は形式上、地域→都道府県→全国組織という段階を経て行われるが、農業者集団の活動資金の一部をJA全中などの上部団体に依存しているため自由な意見が言いにくい。 旧来の農業界を圧倒するスピードで、企業やベンチャー、プロ農家が積極的に“つながり”始めた。今年は民間発の「農業改革元年」となるかもしれない』、「FB農業者倶楽部」とは面白い。「農業の経営課題の解決方法などを教え合っている」ような活動に参加し、積極的に発信する「農家」がどの程度出てくるかは見物だ。「農業改革元年」も大げさではないのかも知れない。

次に、12月10日付けダイヤモンド・オンライン「日本の林業は青息吐息で補助金漬け、「品質が良い」は遠い過去の話に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/222892
・『国がこれから成長産業となるであろうと期待を寄せている日本の林業。終戦直後や高度経済成長期に造林された人工林が50年以上たち、利用期を迎えていることが要因だという。しかし、実際のところ課題は山積しており、そううまくいかないのが実態のようだ。著書『絶望の林業』(新泉社)がある森林ジャーナリストの田中淳夫氏に詳しい話を聞いた』、「林業」を「国がこれから成長産業となるであろうと期待」、とは何かの冗談だと思った。
・『安くても材質が悪く売れ残る国産材  農林水産省の調査では、2017(平成29)年の日本の林業産出額は4859億円。そのうち2550億円が木材生産によるものだ。 木材生産額はバブル経済崩壊以降、年々落ち込み、ここ15年ほどは横ばいで推移しているものの、まったく安泰ではない状況に陥っている。ただしその一方、森林・林業白書をはじめとする国の林業政策を見てみると、「林業を成長産業にする」と意気込む言葉が頻出する。はたしてその論拠はどういった点にあるのか。 「日本の林業は、戦中に乱伐した山を戦後大造林したおかげで、国土面積の3分の2が森林となり、その4割が人工林です。苗を植えてから50年以上がたち、木材として使えるほどの高く太く育った木がようやく増えてきて、森林蓄積が増えたのです。国もこのチャンスを逃さないよう、どんどん木を伐採して売っていけば、林業関係者にももっと利益が出ると考えているため、そのように強く打ち出しているのでしょう」(田中淳夫氏、以下同) 国土交通省「平成29年度土地に関する動向」によると、2016(平成28)年時点の日本の森林面積は国土面積3780万ヘクタールの3分の2にあたる約2500万ヘクタールを占め、世界有数の森林国だとされている。 また、森林資源は人工林を中心に、毎年約7000万立方メートル増加し、現在約52億立法メートルもの蓄積があるという。 確かに商品になる木材の量が増えているのは、はっきり数字に表れているが、だからといって、すぐに利益が出るという単純な話ではないと、田中氏は指摘する。 「1990年代前半のバブル経済が崩壊するまでは、国産材に一種のブランド価値があって売れていました。しかしバブル崩壊以降、不景気による木材需要の低迷のほかに、国産材が売れなくなった大きな要因として、住宅の建築様式のニーズが変わった点が挙げられます。和風よりも柱が見えないフローリング中心の洋風の部屋が増えたことで、外材需要が増えていったのです。現在、国産材でも需要が増えているのは、合板用やバイオマス発電の燃料用に使うような価格が安い木材ぐらい。だから、需要量は横ばいでも利益は減っているわけなのです」』、「苗を植えてから50年以上がたち、木材として使えるほどの高く太く育った木がようやく増えてきて、森林蓄積が増えた」、とはいえ、「需要が増えているのは、合板用やバイオマス発電の燃料用に使うような価格が安い木材ぐらい」、というのでははなはだ心もとない。
・『度を過ぎた補助金が国内林業衰退の原因  今年林野庁が公表した農林水産省による調査「木材需給報告書」の「木材価格」を参照すると、ヒノキ、スギ、カラマツなどの木材価格は、高度経済成長に伴う需要の増大などの影響によって1980年にピークを迎え、ここ10年はほぼ横ばいとなっている。 また、一般に「国産材の方が外材よりも品質がいい」と漠然と思っている人も多いと思われる。しかし、実態はまったくの正反対なのだという。 田中氏の分析によると、国産材は、森林の手入れを怠って加工法がしっかりしていない上、乾燥させず製材精度も低く、流通の面でも無駄が多いため、質が悪くなっているのだという。 本来であれば、外材と対抗するためには林業従事者にも何らかの経営努力や改革が必要になる。国もこのままでは、林業全体が産業として尻つぼみになると問題意識を持ったこと自体はよかったのだが、結局過度な補助金漬けになってしまったと、田中氏は言う。 「農業は補助金が多いと聞いたことがある人は多いと思いますが、林業はその比ではありません。機械類の購入や林道・作業道の開削などに加えて、苗植え、草刈り、間伐などそれぞれの作業に対して、補助金が国と地方自治体から支給され、大ざっぱに言えば作業費の7割にあたるお金が与えられます。しかも地域によっては10割全額出る市町村もあります。それだけの援助があれば、自分たちで努力してまでコスト削減しようとしないのは当然です」 また、2018年から、主伐(山に残された木を伐採すること)に対しても補助金が出るように制度が変わり、ますます補助金がないと成り立たない産業になりつつあるのだ。 このまま林業が衰退し続けていけば、単に当事者たちが困るだけの問題ではないと、田中氏は警鐘を鳴らす。 「林業は、森林を健全に育てる重大な役割を担っています。森林がしっかり管理されず、ほったらかしになると、木が十分に育たないため、台風や大雨の際に簡単に折れたり、土砂崩れや洪水を引き起こしたりするなど、より深刻な状況を招く可能性が高まる。当事者以外の人にもまったく無関係ではないのです」』、「作業費の7割にあたるお金が与えられます。しかも地域によっては10割全額出る市町村もあります」、まさに「補助金」づけだ。「森林がしっかり管理されず、ほったらかしになると、木が十分に育たないため、台風や大雨の際に簡単に折れたり、土砂崩れや洪水を引き起こしたりするなど、より深刻な状況を招く可能性が高まる」、全く困った危機的事態だ。
・『補助金全廃で復活したスイスの林業  日本の林業は課題が山積しているのが現状だが、やはり諸悪の根源は、補助金にあると田中氏は語る。 とはいえ、いきなりゼロにすれば、林業は即壊滅状態に陥る危険性が高い。では、どうすればいいのだろうか。 「ドイツやスイス、北欧などのヨーロッパ諸国では、林業は成長産業で日本のような補助金制度は一切ありません。ただ、スイスも90年代まで多額の補助金を出していて、赤字が続いていた時代があったのですが、約20年かけて2005年に環境保全とは別の林業関係の補助金が撤廃され、今では小ぶりながら黒字の森林経営を展開しています。日本の場合、いきなり全廃は現実的でないので、たとえば10年程度の期間を設けて少しずつカットすれば、業者も対応せざるを得ないですし、体力がついた企業は効率化できるようになり、現状よりも改善するはずです」 しかし、補助金をカットしても残る問題として、そもそも当事者たちが林業に対してやる気がないのも根深い理由のようだ。 「林業に関わっている人の多くは兼業なので、おそらく今だと補助金をなくせば、やめてしまう業者がほとんど。そのような救いようのない状況が長く続いているので、なかなか希望を見いだすことはできません。ですが、補助金がなくなっても、森が好きで林業に希望を抱いている人たちに期待するしかありません」 田中氏によれば、田舎暮らしに憧れて、林業に参入してくる若者が実は増えているのだという。しかし、やってみて初めて、林業が全然もうからないことに気づき、やめる人も多いようだ。 補助金がなくなれば、生き残るのが難しい業者が必ず出るのは避けられない。それでも、森林あっての林業は、何よりも長期的な視点が重要だ。 どちらにせよ、補助金を増やし続ける政策では、林業に明るい未来はやってこない。思い切った改革が国や政治家、林業当事者たちに求められる』、「ドイツやスイス、北欧などのヨーロッパ諸国では、林業は成長産業で日本のような補助金制度は一切ありません」、こうした海外での実情を詳しく分析した上で、日本の「林業」の「思い切った改革」の姿を立案・実行してゆくべきだろう。

第三に、拓殖大学国際学部教授の竹下 正哲氏が本年1月21日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「「国産が一番安全だ」と妄信する日本人の大誤解 日本は世界トップレベルの農薬大国」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/32274
・『世界で一番安全な作物をつくっている国はどこか。少なくともそれは日本ではない。拓殖大学国際学部教授の竹下正哲氏は「日本の農薬使用量は中国並みで、世界有数の農薬大国。日本の農業は長期間の『鎖国』で、すっかり農業後進国になってしまった」という――。 ※本稿は、竹下正哲『日本を救う未来の農業』(ちくま新書)の一部を再編集したものです』、私も日本の農産物は安全と信じ込まされてきたので、「日本の農薬使用量は中国並みで、世界有数の農薬大国」、には驚かされた。
・『日本人は日本の農業を誤解している?!  「日本の農業問題」というキーワードを聞いて、みなさんはどんなことを思い浮かべるであろうか? 農家の高齢化、担い手不足、農家の減少、耕作放棄地、低い自給率、衰退産業……。そういったキーワードが思い浮かぶのではないだろうか。ニュースなどを見ていると、必ずこういった論調で、危機が叫ばれている。 しかし、実は高齢化や農家の減少、耕作放棄地、自給率などの問題は、どれもまったく問題ではない。少なくとも、どれも解決可能であり、表面的なことにすぎない。むしろ問題の本質はまったく別のところにある。というのも、その問題の本質に取り組むことができたなら、高齢化や農家の減少、耕作放棄地などの問題はひとりでに解決に向かうからだ。 では、その問題の本質とは何か、を一緒に考えてみたいと思う。 最初にみなさんに伺いたいのは、「世界で一番安全な作物をつくっているのは、どの国だろうか?」という問いである。裏返すと、「世界で一番危険な作物をつくっているのは、どの国だろうか?」という質問に変わる。 もちろん、何をもって危険とするかについては、人によって違うだろう。確固たる基準が存在するわけではないが、ここでは、仮に「農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤など)をたくさん使っている作物ほど危険」という基準から見てみることにしよう。一番農薬を使っている国はどこだろうか?』、「日本の農業問題」の「本質」は「農薬」多用にあるようだ。
・『「国産が一番安全」という間違った神話  学生たちにこの質問をすると、たいてい「アメリカ、中国」といった答えが返ってくる。その両国が、農薬を大量に使っているイメージなのだろう。逆に「世界で一番安全な作物をつくっている国は?」という問いに対しては、9割近くの人が、「日本」と回答してくる。 だが、この認識は大きく間違っている。FAO(国連食糧農業機関)の統計によると、中国の農薬使用量は、農地1haあたり13kgという世界トップレベルの数値だ。だが、実は日本も11.4kgの農薬を使っており、中国とほぼ変わらない。日本も中国に劣らず、世界トップレベルの農薬大国なのだ。 実はアメリカはずっと少なく、日本の5分の1しか使っていない。ヨーロッパ諸国も日本より低く、イギリスは日本の4分の1、ドイツ3分の1、フランス3分の1、スペイン3分の1、オランダ5分の4、デンマーク10分の1、スウェーデン20分の1となっている。EUは政策により意図的に農薬を減らしている。また近年躍進が著しいブラジルを見てみても、日本の3分の1であり、インドは日本の30分の1しかない。 日本人の多くは「国産が一番安全」、そう信じていることだろう。しかし、それは間違った神話なのかもしれない。少なくとも、統計の数字だけを見るならば、日本は中国と並んで世界でも有数の農薬大国ということになる。農薬漬けと言ってもいい。アメリカの4倍以上、ヨーロッパの3~20倍以上を使っている』、「日本」の「農薬漬け」で「アメリカの4倍以上、ヨーロッパの3~20倍以上を使っている」、衝撃の数字だ。マスコミももっと取り上げるべきだ。
・『「鎖国」を続けた日本農業の危機  このように、日本人に植え付けられてしまっている誤解は他にもたくさんある。これから順次それらを解いていくが、その前に、具体的にどんな危機が日本に来るのか、それをまず考えてみよう。 大きな背景としては、日本の鎖国がついに終わろうとしている、という世界的な動きがある。結論から先に言うと、日本の農業の多くは、1970年代からまったく進歩をしていない。技術革新というものが、起きてこなかったのだ。 農村でのどかにカボチャやニンジンを作っている農家の多くは、実は1970年代とまったく同じ農法で栽培している。昔ながらの「土づくり」を尊び、50年前と同じように肥料をあげ、同じように水やりをして、同じ量だけ収穫している。 今の時代に1970年代と同じ方法でやっていけている産業など、他にあるだろうか。農業だけ、それができてしまう。なぜかというと、国際競争にさらされてこなかったからだ』、確かに「農業」は最も規制に守られた産業だ。「昔ながらの「土づくり」を尊び」、というのは悪くはないが、「50年前と同じように肥料をあげ」、というのは頂けない。
・『海外では驚くべき進歩を遂げている  日本の農業は、第二次世界大戦が終わった後ずっと鎖国をしてきた。コメ788%、こんにゃく芋1700%、エンドウ豆1100%に代表されるような高い関税をかけることで、海外からの農産物を閉め出してきた。加えて、作物ごとに複雑な「規格」を設定し、外国からの参入をさらに困難としてきた(非関税障壁)。 海外では、ここ30年ほどの間に農業の形が激変した。栽培法には幾度も革命が起き、そのたびに世界最先端のテクノロジーが農業と融合してきた。そして農業は国境を越えたグローバルビジネスとなり、カーギル、ブンゲなどの巨大企業が生まれ、世界の食糧をコントロールするほどの力を持つに至った。その陰で、昔ながらの農法をしてきた零細農家はつぶされ、消えていった。 日本はというと、海の向こうで、そのような熾烈なつぶし合いが起こっているとは知らないまま、ひたすら国内市場だけを見てきた。ずっと内向きの農業をして、平和な産地間競争に明け暮れてきた。 そのような鎖国状態を今後も続けていけるのなら、それはそれでよいかもしれない。日本の農家はサラリーマン以上にお金を稼げている人が多いし、それに対して不満を持っている国民も少ない。日本独特の農業のあり方だ。だが、現実問題として、開国せざるを得ない事態になってしまった』、ただ、激変緩和措置がついているので、急激な変化は避けられるのではなかろうか。
・『「TPP」で開国せざるを得なくなった  2018年12月末、TPPが始まった。TPPとは、Trans-Pacific Partnership(環太平洋パートナーシップ)のことで、太平洋を取り囲む11カ国の間で、関税をほぼなくし、貿易を自由にできるようにしましょうという取り決めのことだ。実際、多くの関税が最終的には0%になることが決まった。 このTPPが発効した瞬間から、日本への農産物の輸入は大幅にジャンプした。TPP直後の2019年1~4月の輸入量は、前年と比べてブドウは41%アップ、キウィは42%、牛肉(冷凍)30%と大幅に増加している(財務省貿易統計)。 スーパーを見ても、チリ産やオーストラリア産のブドウが大量に並ぶようになったことに気づくだろう(だいたい2~6月の季節)。チリと言えば、地球の裏側の国だ。そこから新鮮なブドウが、日本の4分の1ほどの価格で、次々と送られてきている。TPP発効によって、農産物の輸入が増えていることは間違いない』、この程度の輸入増加の影響は大したことはなさそうだ。
・『消費者にとっては嬉しいことだが…  それは消費者にとっては嬉しいことかもしれないが、農業関係者にとってはたいへんな驚異(注:正しくは「脅威」)だろう。海外から安い農産物が入ってくると、日本の物が売れなくなってしまう。つまり、農家の収入がなくなり、それが続けば、最悪閉業しなくてはならなくなってしまう。 しかし、そんなTPPであっても、これから始まる恐怖のほんのさわりに過ぎない。というのも、TPPに加盟している11カ国を詳しく見てみると、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムという国々だとわかる。 みなさんはどうだろうか。スーパーに行って野菜や果物を選ぶとき、マレーシア産、ベトナム産のトマトと、日本産のトマトが並んでいたら、いったいどちらを選ぶだろうか。おそらく日本産を選ぶ方がほとんどだろう。 日本人の心理として、アジアや中南米からの作物が多少安かったとしても、無理して国産を買おうとする。「国産は安全でおいしい。海外産はなんか薬が多そうで怖い」と日本人の多くが信じているためだ。 (実際には、日本産の方が、農薬の量はずっと多いのだが)つまりTPPによってアジアや中南米から安い野菜や果物がたくさん入ってくるようになるが、それでも、それが太平洋の国々である限り、日本にとってはそれほどの脅威にならないだろう。だが安心してはいられない。もし相手がヨーロッパだったらどうだろうか?』、「海外産はなんか薬が多そうで怖い」、との迷信は次第に薄れていくだろう。
・『一番恐ろしいのはヨーロッパ産  そう、一番怖ろしいのは、アメリカでも中国でも中南米でもない。ヨーロッパだ。もしヨーロッパ産の野菜がスーパーに並んだらどうなってしまうか、真剣に想像したことがあるだろうか? 実はTPPとは別に、ヨーロッパとはEPAが結ばれた。EPAとはEconomic Partnership Agreement(経済連携協定)のことで、これもヨーロッパと日本の間の関税や関税以外の障壁を取り払い、貿易をより自由にしましょうという取り決めだ。これは2019年2月より発効された。そしてその影響はすぐに現れた。 EPA発効後の2019年2~4月の輸入量を前年と比べてみると、ヨーロッパからのワインが30%増加した(財務省貿易統計)。チーズは31%、豚肉は10%増加している。 さらにこれからは、ヨーロッパから野菜や果物が押し寄せてくるようになるだろう。すでにEPAの前から、オランダ産のパプリカはスーパーで売られ始めていたが、それは始まりに過ぎない。農産物の関税や非関税障壁は4~11年をかけて段階的に取り払われていくものが多く、それに合わせて、ヨーロッパからたくさんの野菜や果物、キノコがやってくるようになる。ベルギー産のトマト、フランス産のジャガイモ、スペイン産のブドウ、主婦たちははたしてどちらを選ぶだろうか』、消費者としての私にとっては、大歓迎だ。
・『国産野菜が勝てる理由が見つからない  フランス産やイタリア産と聞けば、まず響きだけでおしゃれな感じがするだろう。しかも、それらは農薬の量が日本よりもずっと少ない。日本の3分の1から20分の1しかない。 そして日本の物よりずっと安い。おいしさはほぼ変わらない。となると、みなさんはどちらを選ぶだろうか。「おいしいけど、値段が高くて、農薬が多い国産野菜」か、あるいは「おいしくて、値段が安くて、農薬が少ないヨーロッパ産野菜」か。 勝負は見えているだろう。正直、日本の野菜が勝てる理由が見つからない。消費者はともかく、外食(レストランなど)や中食(お弁当屋さんなど)産業は、ヨーロッパ産に飛びつくだろう。実際、すでにいくつかのファミレスは、そういう動きを見せている。 「イタリア産のポルチーニ茸を使ったパスタ」とか「ドイツ産リンゴのジュース」などのメニューをよく目にするようになった。そのメニューを見たとき、「国産じゃないから嫌だ」と思う人はきっと少ないだろう。ヨーロッパから安い野菜・果物が入ってくるようになれば、再びイタリア料理やフランス料理ブームがやってくるかもしれない。 そうなったとき、日本の農家は生き残っていくことができるのだろうか?』、鮮度はどの程度アピール材料になるのだろう。
・『日本は時代遅れの「農業後進国」  一昔前までは、ヨーロッパから新鮮野菜を持ってくることは、不可能に近かった。理由は単純で、遠すぎるためだ。だが今は、時代が変わった。収穫が終わった後の処理はポストハーベスト技術と呼ばれるが、これが急速に発達したのだ。今では、チリのような地球の裏側であっても、収穫したばかりの新鮮な野菜・果物を、鮮度そのままに日本のスーパーに並べることが可能になっている。 日本は鎖国をしながら、長いこと眠り続けてきた。その間に、海外の農業は急速に発展し、日本に追いつき、追い越していった。もし日本がこのまま眠り続けるならば、国内の農業は間違いなく滅びるだろう。 その理由は、一言で言えば、日本がすっかり農業後進国になってしまったからだ。たとえば、日本で「最先端農業」と聞けば、多くの人が「農薬をたくさん使う農業のこと」と思うだろう。そしてもし農薬を使うのが嫌だったら、有機農業や自然栽培といった昔ながらの農法に戻るしかない。 つまり「昔ながらの農業」、あるいは「薬漬けの農業」、その二者択一しか今の日本にはない。しかし、そんな考え方は世界ではもう完全に時代遅れだ』、ただ、「ポストハーベスト」については、防カビ剤および防虫剤が食品添加物として認められているが、制度上は国内で認められる「農薬」とは区別されている。しかし、薬剤の中には、発癌性や催奇形性など、人体へ影響を与える疑いのある成分も含まれており、消費者は高濃度(ポストハーベスト農薬の残留度は、畑で撒かれる農薬の数百倍との説もある)の残留薬剤の付着した商品を手にしていると、消費者団体を中心に、その危険性が指摘されている。これらの批判には反論もある(Wikipedia)。筆者は、この点を度外視しているようだ。
・『最新テクノロジーで農業問題の解決を  ヨーロッパでは、そのどちらでもない第3の農法が発達している。すなわち、最新のテクノロジーを使って日本よりもはるかに効率のよい農業をしながら、でも同時に、使う農薬の量は、日本よりもずっと少なくしている。最先端農業でありながら、安全で安心、環境にも優しい。そんなまったく新しい農業が発明されている。 そんな事実を知っている日本人は、まだほとんどいない。日本は、国全体がそういった世界の進化にまったくついて行けていない。中国やインドの方がはるか先を行っていることも知らない。追い越されていることにすら気づいていない。みんな「日本の農業は世界最高」という幻想を信じたまま、時間が止まってしまっているのだ。 このまま行くと、世界と日本の差はさらに開いていくことだろう。なぜなら、テクノロジーの変化はとてつもなく速いからだ。今日1だった差は、明日には10になり、2日後には100、1週間後には1万の差になっている。 それほどまでに、世界の変化は速い。TPPとEPAが始まってしまった今、もはや一刻の猶予もない。あと数年が生き残れるか滅びるか、その勝負の分かれ目だろう』、やや誇張も目立つが、「「日本の農業は世界最高」という幻想」は捨て去る必要があることは確かだ。そうした意味でも、「幻想」がかきたてる役割を果たしている、日本礼賛の「クールジャパン」のPRはもう止めてほしいものだ。
タグ:日本 日本は時代遅れの「農業後進国」 海外では驚くべき進歩を遂げている 一番恐ろしいのはヨーロッパ産 「日本の農業は世界最高」という幻想 国産野菜が勝てる理由が見つからない クールジャパン ヨーロッパとはEPAが結ばれた ひたすら国内市場だけを見てきた。ずっと内向きの農業をして、平和な産地間競争に明け暮れてきた 海外では、ここ30年ほどの間に農業の形が激変した。栽培法には幾度も革命が起き、そのたびに世界最先端のテクノロジーが農業と融合 「国産が一番安全」という間違った神話 日本人は日本の農業を誤解している?! 日本の農薬使用量は中国並みで、世界有数の農薬大国 ドイツやスイス、北欧などのヨーロッパ諸国では、林業は成長産業で日本のような補助金制度は一切ありません 度を過ぎた補助金が国内林業衰退の原因 補助金全廃で復活したスイスの林業 現在、国産材でも需要が増えているのは、合板用やバイオマス発電の燃料用に使うような価格が安い木材ぐらい 安くても材質が悪く売れ残る国産材 「日本の林業は青息吐息で補助金漬け、「品質が良い」は遠い過去の話に」を 日本農業者ビジネスネットワーク これまで多くのIT企業や製造業が農家支援サービスを提供してきたが、大きな成功を収めているとは言い難い フェイスブック(FB)の非公開グループ「FB農業者倶楽部」 農業団体にも変化 SNSベースのフラット組織発足 従来の商流に比べ小ロットになる傾向があり、運送費がかさむ 中間流通を省き、農家とスーパーやレストランを直接つなぐことで、農家の努力を反映した「適正価格」の実現を目指す 「農業改革元年」 農業ベンチャーのマイファームだ。8月から、オンライン卸売市場「ラクーザ」を正式にオープン 「ソフトバンクが農業流通に殴り込み、JA全農に対抗する大本命が始動」 一部、地域の単位農協(JA)は「JAグループならグループ内の全農を利用すべし」という組織の論理にとらわれず、AGMIRUなどの利用を検討 ダイヤモンド・オンライン (その3)(ソフトバンクが農業流通に殴り込み JA全農に対抗する大本命が始動、日本の林業は青息吐息で補助金漬け 「品質が良い」は遠い過去の話に、「国産が一番安全だ」と妄信する日本人の大誤解 日本は世界トップレベルの農薬大国) 『日本を救う未来の農業』(ちくま新書) 農畜産林業 森林がしっかり管理されず、ほったらかしになると、木が十分に育たないため、台風や大雨の際に簡単に折れたり、土砂崩れや洪水を引き起こしたりするなど、より深刻な状況を招く可能性が高まる バブル崩壊以降、不景気による木材需要の低迷のほかに、国産材が売れなくなった大きな要因として、住宅の建築様式のニーズが変わった点が挙げられます。和風よりも柱が見えないフローリング中心の洋風の部屋が増えたことで、外材需要が増えていった 「「国産が一番安全だ」と妄信する日本人の大誤解 日本は世界トップレベルの農薬大国」 農家の資金調達から農産物の販売までを支える押しも押されもせぬ「プラットフォーマー」となる 農家への融資や農業生産でのIT・ロボットの活用、農産物の販売支援など各分野の「農業ベンチャーのトップランナー」と連合を組み、SBTはその集合体の“ハブ”の役割を果たそうとしている 最新テクノロジーで農業問題の解決を ポストハーベスト技術 フランス産やイタリア産と聞けば、まず響きだけでおしゃれな感じがするだろう。しかも、それらは農薬の量が日本よりもずっと少ない。日本の3分の1から20分の1しかない。 そして日本の物よりずっと安い。おいしさはほぼ変わらない。 国の林業政策を見てみると、「林業を成長産業にする」と意気込む言葉が頻出 ポストハーベスト」については、防カビ剤および防虫剤が食品添加物として認められているが、制度上は国内で認められる「農薬」とは区別されている。しかし、薬剤の中には、発癌性や催奇形性など、人体へ影響を与える疑いのある成分も含まれており、消費者は高濃度(ポストハーベスト農薬の残留度は、畑で撒かれる農薬の数百倍との説もある)の残留薬剤の付着した商品を手にしていると、消費者団体を中心に、その危険性が指摘 事業開始時の会員は5000人弱 消費者にとっては嬉しいことだが… PRESIDENT ONLINE 資材の相見積もりを取り、比較できる情報サイト「AGMIRU」を、商品の購入までできるECサイトにバージョンアップして本格稼働 フラットな関係で農業の経営課題の解決方法などを教え合っている 流通変革の旗手となり得るのが、ソフトバンク・テクノロジー(SBT)だ。農家が農業に使う資材の相見積もりを取り、比較できる情報サイト「AGMIRU」を、商品の購入までできるECサイトにバージョンアップして本格稼働させた 竹下 正哲 大ざっぱに言えば作業費の7割にあたるお金が与えられます。しかも地域によっては10割全額出る市町村もあります 「鎖国」を続けた日本農業の危機 アメリカはずっと少なく、日本の5分の1しか使っていない。ヨーロッパ諸国も日本より低く、イギリスは日本の4分の1、ドイツ3分の1、フランス3分の1、スペイン3分の1、オランダ5分の4、デンマーク10分の1、スウェーデン20分の1 「TPP」で開国せざるを得なくなった 苗を植えてから50年以上がたち、木材として使えるほどの高く太く育った木がようやく増えてきて、森林蓄積が増えた 高い関税をかけることで、海外からの農産物を閉め出してきた。加えて、作物ごとに複雑な「規格」を設定し、外国からの参入をさらに困難としてきた(非関税障壁) 収穫したばかりの新鮮な野菜・果物を、鮮度そのままに日本のスーパーに並べることが可能に 中国の農薬使用量は、農地1haあたり13kgという世界トップレベルの数値だ。だが、実は日本も11.4kgの農薬を使っており、中国とほぼ変わらない
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小売業(コンビニ)(その7)(セコマ・丸谷社長 コンビニのビジネスモデルは終焉が近い、コンビニの裏側は搾取の連鎖 商社が君臨し取引先・加盟店が泣く、セブン 米コンビニ「2兆円買収」破談にみた課題 アメリカ事業を加速する狙いだったが・・・) [産業動向]

小売業(コンビニ)については、昨年12月28日に取上げた。今日は、(その7)(セコマ・丸谷社長 コンビニのビジネスモデルは終焉が近い、コンビニの裏側は搾取の連鎖 商社が君臨し取引先・加盟店が泣く、セブン 米コンビニ「2兆円買収」破談にみた課題 アメリカ事業を加速する狙いだったが・・・)である。

先ずは、1月20日付け日刊ゲンダイ「セコマ・丸谷社長 コンビニのビジネスモデルは終焉が近い」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/267668
・『今や社会インフラとなったコンビニだが、大きな転機を迎えている。元日、24時間営業、食品の値引き販売の是非などをめぐり、本部と加盟店オーナーとの対立が表面化、政府も「あり方検討委員会」などを設置し、変革を迫っているからだ。そんな中、異色の存在感を示しているのが北海道中心のコンビニチェーン、セイコーマートを展開してきた株式会社セコマだ。大手に比べて、加盟店が支払うロイヤルティーは低いし、契約で24時間営業を義務づけることもない。なぜ、それで儲かるのか。大手はなぜ、できないのか。丸谷智保社長に聞いてみた』(Qは聞き手の質問、Aは丸谷氏の回答)、興味深そうだ。
・『本部と加盟店の関係見直しが急務  Q:昨年はコンビニのあり方が問われる一年でした。どうご覧になっていましたか? A:大手コンビニのビジネスモデルの限界がついにきた。そんな印象を受けました。もうちょっと正確にいうと、米国発のフランチャイズ制を応用した日本的コンビニビジネスモデル。これが終焉に近づいたということだと思います。 Q:日本的モデルとは? A:フランチャイズ制度そのものは悪い制度ではありません。でも、日本のコンビニ業界はそれをねじ曲げてしまった。その綻びが出ているように思います。フランチャイズ制の基本理念は本部と加盟店の共存共栄です。そのベースにあるのは富の正当な配分と、加盟店に独立した裁量権を持たせることです。本来のフランチャイズ制度とは本部と加盟店は同心円状の関係なんですね。ところが、従属関係になっているように見える。ロイヤルティーの問題もあるし、加盟店にどれだけの裁量権があるのだろうか。24時間契約であれば営業時間の裁量権はないし、値引き販売を許さないのであれば価格決定権もないことになる。その地域に集中出店するドミナント戦略をやれば、道を隔てて同じチェーンの店が出てくる。加盟店にはテリトリー権もないわけです』、「本来のフランチャイズ制度とは本部と加盟店は同心円状の関係なんですね。ところが、従属関係になっているように見える」、ズバリ本質を突いた指摘だ。
・『Q:売れ残りも加盟店の負担になる。24時間開けていても、儲からない店もある。人手不足で人件費もかかる。これじゃあ、加盟店が悲鳴を上げるのもわかりますね。 A:これまで30、40年とやってきたけど、ついに綻びが露呈してしまった。それが去年なのですが、実は同じようなことは10、20年前から言われてきたんですよ。でも右肩上がりで成長し続けてきたから、問題にならなかった。採用は簡単にできたし、店長に応募する人もたくさんいた。 Q:今は違いますか? A:人件費のコストは上がっているし、エネルギーコストの値上げも激しい。これでは24時間やっていられない、ということになる。堤防の一穴が崩れて、洪水になった。でも、本質は24時間問題ではなくて、本部と加盟店の関係です。ここに最大の問題があると思いますよ。 Q:セコマは違うんですか? A:うちは当初から本部がいただくロイヤルティー率は10%、営業時間は最低16時間以上で、お客さまのニーズがあればオーナーの判断が基本ということにしています。値引き販売もオーナーの裁量に任せている。テリトリー権も原則認めています』、「本質は24時間問題ではなくて、本部と加盟店の関係です。ここに最大の問題があると思います」、「セコマ」は「同心円状の関係」のようだ。
・『重層的な利益構造がセコマの強み  Q:なぜ、それでも利益が出るのでしょうか? A:製造、小売り、物流というサプライチェーンを経営していることで、重層的な利益構造になっていること。もうひとつはマンパワーの強みです。個々の店長は地域に密着している人が多いので、地域に愛され、顧客をつかんでいます。 Q:食品を製造する12の子会社がアイスクリームや牛乳、総菜、サンドイッチなど多彩な商品を作っていますね。セイコーマート店内にはホットシェフがあり、店内の厨房で作られた大きなおにぎりや本格的なカツ丼も好評です。 A:グループの豊富牛乳公社で牛乳もつくっていますが、セイコーマートで売っているのは年間1500万本。1900万本は自社チェーン以外の本州に売っています。羽幌町にあるダイマル乳品ではアイスクリームを年間2400万個製造していますが、3分の1は本州向けです。こうした外販にも力を入れているところです』、「製造、小売り、物流というサプライチェーンを経営していることで、重層的な利益構造になっている」、「個々の店長は地域に密着している人が多いので、地域に愛され、顧客をつかんでいます」、確かに強味のようだ。
・『Q:物流のほうは? A:普通のコンビニは大体1日に9回くらい配送が来るんです。お菓子、パン、冷凍食品と別々にトラックが来る。うちはグループの物流センターで混載するので1日2回が基本です。それとは別にアイスクリームは週に3回。だから、1日にトラックが3回来る日が3日ある。それだけです。また、店舗が閉まっていたら、運送業者が店舗内に入って、荷物を置いていく。だから、荷物を受け取るために店を開けておく必要もないし、効率的です。 A:そんなことができるのは自社で物流もやっているからですか? A:自社、あるいはほとんどうちの物流しかやっていない業者に任せています。信頼関係があるんですね』、「普通のコンビニは大体1日に9回くらい配送が来る」、「うちはグループの物流センターで混載するので1日2回が基本」、北海道は広いが、配送回数がこれだけ少なくて済むのであれば確かに効率的だ。
・『Q:他のコンビニが悩んでいる人手不足はありませんか? A:北海道も人手不足ですが、5年くらい前に採用の仕組みを見直し、応募、採用が2・6倍くらいに増えました。ウェブから申し込んでもらうと、翌日までにコールセンターから電話がいく。そこで、働きたい人と条件のマッチングをするんです。正社員ではなくパートで働きたい人には事情がある。子供の迎えとか、介護とか。土日は働けるけど、平日の火水はダメという人もいる。そうすると、最初に希望してきた店や業務ではなく、近くの別の店、仕事を紹介したりするのです。 Q:そうした工夫がグループ全体の利益につながるわけですね。しかし、人口が1000人もいない過疎地は儲からないでしょう? A:過疎地だからこそ、リアル店舗へのニーズが高いのです。900人の集落でも、うちが撤退すると、買い物に行く店がひとつもなくなってしまう。地域からも自治体からも「続けてください」「出してください」と頼まれるのです。そう言われることは小売店冥利に尽きますよ。 Q:でも赤字じゃダメでしょう? A:逆算するんです、いかに900人の集落で店舗が成り立つかを。物流コスト、人件費、光熱費を落とす。営業時間を13時間にするなどの工夫をして既成概念にとらわれずにランニングコストを下げます。もちろん地域とも相談します。自治体、住民、私たちの3者で話し合うんです。自治体からの助成金で、店の建設コストの一部を負担してもらったり、自治体が所有する土地を安く賃貸してもらい、地代負担を軽減したり。そういう工夫でコストを下げて、900人の集落でもトントンになるようにする。それに、売っているものの半分はPB商品であり大半はグループで作っているものですから、グループ全体で利益が出る。最終的にグループ全体がトントンであれば、地域を応援できるのではないか、いや、そうすべきではないか、と考えています』、過疎地では、「自治体からの助成金」や「自治体が所有する土地を安く賃貸」、など自治体の協力も仰いでいるようだ。
・『右肩上がりで収益を上げる時代ではない  Q:地域にやさしい経営をしていますね。お父さまは社会党の参議院議員をされていましたが、その影響はありますか? 丸谷社長の経営は今はやりの利益至上主義、市場絶対の新自由主義的な発想とはちょっと違いますね。 A:新自由主義とは違うと思います。ただ、父親は農業地域でいかに農民の幸せを実現するかに尽力した人で、町営でワイン事業を始めたんですね。公共資本で産業基盤をつくり、その富を分配することで地域全体を豊かにしようとした。社会主義というより農本主義ですね。世界を見渡せば、フランスにもそういうところがある。ドイツや北欧も自由主義経済だけど、社会主義のいいところを取り込み、地域全体の豊かさを求めている。こういうのが成熟国ではないですか。そのために大切なのは地域に根ざした企業の持続性です。地域が本当に必要とするものをやり続ける。その中でいかに効率化して、利益を出すか。利益を出せれば持続できる。持続のために補完的な事業も考える。本州での牛乳販売もそのひとつです。こうしたことを愚直にやっているだけです。私は右肩上がりで収益を上げる必要は、もうないのではないかと思います。そりゃ再生産投資をする利益は必要ですよ。店も工場も古くなりますから。しかし必要以上の利益を追求すべきではなく、少しずつ内部留保が充実していけばよい。それがサステナブルな、現代的な経営だと考えています』、「地域が本当に必要とするものをやり続ける。その中でいかに効率化して、利益を出すか。利益を出せれば持続できる・・・必要以上の利益を追求すべきではなく、少しずつ内部留保が充実していけばよい。それがサステナブルな、現代的な経営だと考えています」、北海道でのドミナント的地位という恵まれた環境があるとはいえ、素晴らしい経営哲学だ。
・『Q:丸谷社長は北海道拓殖銀行出身ですね。拓銀は拡大主義で破綻した。こうした経験も影響していますか? A:銀行には20年間勤めました。それなりに地域に貢献してきたと思います。地元からも愛されてきた。でも、そういう会社でも倒れたら何にもならない。拓銀は都市銀行であるがために無理な展開をしましたね。必要もないところに手を伸ばした結果、存立基盤が崩れた。地域住民によって立つマーケットの地歩をしっかり固めておくことが大事だと思います。 Q:人口減少社会に直面している安倍政権の経済政策はどうですか? A:危険なのはバランスシートを大きくしていることですね。いつまで続けるのでしょうか。プライマリーバランスの均衡といっていたのに、それがないがしろになり、物価も上がらず、GDPも増えない中、バランスシートだけが膨らむのは危ういと思いますね。 Q:成熟社会は右肩上がりを目指せばいいというものではない? A:そうです。どうして2%成長しなければいけないのか。日本は世界から「日本を見習え」と思われるような成熟社会を目指すべきで、その在り方の模索に、ただちに取り組まなければいけないと思います。 ▽丸谷智保(まるたに・ともやす)1954年9月24日生まれ。北海道池田町出身。慶大法卒。北海道拓殖銀行、シティバンクを経て2007年3月セイコーマート(現・セコマ)入社。09年3月から社長。内閣府経済財政諮問会議政策コメンテーター』、「日本は世界から「日本を見習え」と思われるような成熟社会を目指すべきで、その在り方の模索に、ただちに取り組まなければいけないと思います」、正論である。今後の丸谷社長の活躍に期待したい。

次に、3月2日付けダイヤモンド・オンライン「コンビニの裏側は搾取の連鎖、商社が君臨し取引先・加盟店が泣く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/230204
・『『週刊ダイヤモンド』3月7日号の第1特集は、「コンビニ 搾取の連鎖」です。コンビニエンスストア業界で苦境に追い込まれているのは、フランチャイズ契約先の加盟店だけではありません。厳しい取引条件に泣く食品メーカー、ノルマに追われる本部社員もいます。一方、本部の親会社である総合商社は、配当金や幹部人事、そして商流を押さえ、いわば“勝者”として君臨しています』、面白そうだ。
・『加盟店とメーカーを犠牲に総合商社が潤うコンビニの実態  24時間営業を事実上強制され、棚いっぱいの商品を仕入れさせられる。値下げは認められず、売れ残ってもその原価の大半を負担する──。 コンビニエンスストア加盟店オーナーたちの苦境が叫ばれている。過労死のリスクにさらされながら身を粉にして働いても、人件費の高騰で収入は減少の一途。自身や従業員を社会保険に加入させられず、年金事務所に見つからないようおびえる日々を過ごす。 コンビニの店頭に並ぶのは、デパ地下にも引けを取らないクオリティーの食品だ。確かにおいしい。その裏で、日本を代表する大手食品メーカーの担当者がコンビニ本部に日参。最新技術と生産ラインを惜しげもなく差し出して低利益のPB(プライベートブランド)商品を製造し、売り上げを確保する。悪条件に耐え切れなくなった地場の食品メーカーの中には、悲惨な末路をたどった例もある。 それではコンビニ本部に勤める社員が幸福なのかといえば、必ずしもそうではない。 加盟店を担当する末端の社員もまた、上司からの厳しいノルマ達成に追い立てられている。こうして無断発注や“自爆営業”に身を投じる構図が出来上がる。 浮かび上がるのは、コンビニ本部が高い収益を上げる裏側で、加盟店だけではなく、取引先や自社の末端の社員からも、カネや資源を貪欲に吸収している実態だ。 そして、上には上がいる。コンビニ本部の上に君臨するのが、総合商社である。業界2位のファミリーマートは伊藤忠商事が、3位のローソンは三菱商事が親会社として支配する。配当金や顧客情報を得るほか、あらゆる取引をグループで囲い込み、ビジネスチャンスを物にしている。 「開いててよかった」「お客さまのニーズのために」──。最大手のセブン-イレブン・ジャパンを筆頭に、本部の美辞麗句の裏ではまさに“搾取の連鎖”の図式が構築されているのだ。 公正取引委員会が長年手を出しあぐねる中、コンビニの抱えるゆがみが次々と顕在化している。加盟店の“反乱”だけではなく、歪な“商社支配”を告発する声も本部社員から出始めた』、「加盟店とメーカーを犠牲に総合商社が潤うコンビニの実態」、業界構造を的確に指摘している。
・『業界を揺るがす 未加入事業者向け年金事務所「対応マニュアル」  24時間営業の是非を発端に、加盟店の過度な負担が注目されたコンビニエンスストア業界。しかし、業界の問題は加盟店の苦境だけではありません。食品メーカーなどの取引先や、本部で働く末端の社員たちもまた、厳しい要求やノルマにさらされています。 そして加盟店や取引先などから利益を吸い上げるコンビニ本部のバックには、親会社である大手総合商社が君臨。食物連鎖の頂点に存在するかのごとく、配当金に加えて商流の隅々に入り込み、収益を手にする「搾取の連鎖」を作っています。 また、人件費の高騰などに採算悪化に苦しむ加盟店オーナーにとって、さらなる負担になりかねない“爆弾”が存在します。それは社会保険料の支払い問題。法律で決められた義務とはいえ、社会保険料を支払えば事業はとても継続できない“社会保険廃業”リスクが高まっています。特集では社会保険を支払った場合のコンビニ加盟店の収支を独自試算。さらに、社会保険未加入事業者向けに、年金事務所からアプローチがあった際の「対応マニュアル」も用意しました。 +クビ切りマニュアルも存在!ファミマ中高年リストラの真相 +合併で業界2位に躍り出ても成長できなかったファミマ +伊藤忠出向組に向けられたファミマ生え抜き社員の怨嗟 +ローソン取締役を三菱商事出身者が独占 +店頭の棚がコンビニPBに侵食されるワケ +背に腹は代えられずPBにすがる食品メーカー +増収増益が3割しかいないコンビニ取引先〝搾取〟の現実 +“コンビニ倒産”回避のための地方メーカー生き残り策 +カリスマの負の遺産を解決できないセブン首脳たち +セブンペイ、残業手当…ガバナンス不在の複雑要因 +自爆営業、無断発注…現場の暴走を止められないセブン +セブン加盟店が時短営業で増益、崩れた本部の言い訳 +専門家が一刀両断!公取もたじろぐコンビニ独禁法違反の論点 +社会保険加入で即廃業?オーナーを追い込む時限爆弾 +徹底試算!ただでさえ少ない加盟店利益を社会保険料が圧迫 +国税情報も使って未加入事業所を捕捉する日本年金機構 +年金事務所に逆らうな!事業者向け社保完全対策マニュアル  出店競争に急ブレーキがかかり、もはや隠し通せなくなったコンビニ業界の歪みや軋みに光を当て、解決に向けた処方箋を探ります』、「搾取の連鎖」とは言い得て妙だ。「コンビニ“社会保険廃業”リスク」、確かに深刻そうだ。どう乗り切ってゆくのだろう。

第三に、3月13日付け東洋経済オンライン「セブン、米コンビニ「2兆円買収」破談にみた課題 アメリカ事業を加速する狙いだったが・・・」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/336541
・『2兆円を超える大型買収は実現しなかった――。 セブン&アイ・ホールディングス(HD)は3月5日、検討していたアメリカの石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」の買収を断念した。買収額は約220億ドル(約2兆3000億円)ともいわれる超大型案件だったが、買収額で折り合えなかった。 全米コンビニエンスストア協会によると、アメリカには15万2720店のコンビニがある(2019年12月時点、以下同)。スピードウェイは業界3位の約3900店を展開している。 スピードウェイを中心とするマラソン・ペトロリアムの小売部門は、2019年に15.8億ドル(約1650億円)の営業利益を稼いだ。だが、マラソン・ペトロリアムは石油精製事業を強化するため、スピードウェイを2020年末までに切り離す予定だと2019年10月に公表していた』、無理して高値掴みしなかったのは賢明だ。
・『米セブンが買収を主導したが・・・ 売却先候補に挙がったのが、セブン&アイHD。同社はコンビニ業態のセブン-イレブンをアメリカで9631店展開しており(2019年11月末時点)、国内だけでなくアメリカでもコンビニ業界トップの位置にいる。現地のセブンは、セブン&アイHDの完全子会社であるアメリカのセブン-イレブンが運営している。 ジョセフ・マイケル・デピント社長が率いる米セブンが買収を推進したが、セブン&アイHDの井阪隆一社長が難色を示したとみられる。 多額の借り入れが必要となるうえに、 EV/EBITDA倍率(企業価値をEBITDAで割った値)は約15倍ともいわれていた。「アメリカではコンビニを併設したガリンスタンドが行き渡っており成長は難しい。ほぼゼロ成長ならEV/EBITDA倍率が4~5倍、ごく低成長でも6~7倍程度で買収しないといけないが、成長を見込んでいる高額な買収価格だ」とM&Aに詳しい早稲田大学の服部暢達客員教授は指摘する。 「セブン&アイHDは業績不振に悩むそごう・西武も抱えている。『アメリカ事業で巨額買収を行うどころではない』と、井阪社長は経営判断したのでは」と、ある小売業界関係者はみる。 株式市場の評価もよくなかった。スピードウェイの買収を独占交渉しているという報道が2月20日に流れると、高額な買収価格を嫌気して、セブン&アイHDの株価は急落。終値は前日から9%安の3920円となった』、「EV/EBITDA倍率・・・は約15倍」、やはり余りに高過ぎたようだ。
・『重要性が増すアメリカ事業  そもそも、セブン&アイHDがスピードウェイの買収を検討した背景には、経営環境の変化がある。同社にとって、アメリカ事業は重要性を増している。2016年10月に発表した中期経営計画では、業績不振に苦しむGMS(総合スーパー)や百貨店事業を抱える中で、日米のコンビニ事業を成長柱と位置づけた。 2019年2月期のセブン&アイHDの営業収益は6兆7912億円、営業利益は4115億円。うち日本のセブンは2467億円の営業利益を稼ぐ大黒柱だ。ただ足元については、日本のセブンは1店舗あたり売上高の伸びが鈍化している。加えて、2019年2月末から2020年2月末の1年間は出店を抑制している。前年には年間616店が純増したが、 2019年11月までの9カ月間では126店の純増にとどまった(2019年11月末の店舗数は2万1002店)。 次なる成長柱の育成が求められる中で、すでに2018年に営業総収入2兆8210億円、営業利益1110億円を稼いでいる米セブンの展開を加速する構えだ。 アメリカではコンビニの市場規模がほぼ横ばいだ。首位のセブンでも店舗数のシェアは約6%にとどまるため、これまで他社を買収して規模を追求することで、物流や仕入れ面での効率性を高めてきた。2018年1月に、1030店舗を展開するコンビニチェーン「スノコ」を3452億円で取得。ほかにも、数十店~150店程度の規模のコンビニチェーンを断続的に買収してきた。 今回のスピードウェイ買収は、店舗網を一気に拡充できるチャンスだった。米セブンは本社を構えるテキサス州に1192店(2018年12月時点、以下同)を展開するものの、スピードウェイの本社があるオハイオ州には65店舗しかなかった。一方、スピードウェイは本社があるオハイオ州で500店弱、近隣のインディアナ州やミシガン州にもそれぞれ約300店もの店舗網を持つ(2019年12月時点)。 ところが、今回は買収交渉が破談。セブン&アイHDは店舗数拡大のために、今後も次なる買収案件を模索するとみられる。 『店舗数の増加だけでなく、売り上げの引き上げも課題となる。2018年の米セブンの全店平均日販は54.9万円と、2019年2月期の平均日販が65.6万円だった日本のセブンとは大きな差がある。 アメリカにおいてコンビニは、給油のついでに買い物をする場所という立ち位置で、米セブンでも売上高の約半分をガソリンが占める。だが、ガソリン販売ではセブンの強みが発揮できないうえに、「セブン&アイHDはガソリンスタンド事業が成長するとは見ていない」とセブンに詳しいコンビニ関係者は語る』、成熟したアメリカで「店舗数拡大」に果たして意味があるのだろうか。「米セブンでも売上高の約半分をガソリンが占める」、ガソリン依存度の高さには驚かされた。日本のように「弁当」文化がないなかでは、「米セブンの全店平均日販」の引き上げは容易ではなさそうだ。
・オリジナル商品の販売強化がカギ  アメリカのエネルギー情報局によると、現地で販売される自動車台数のうち、ガソリン車やそれに類する自動車は2019年に94%を占めたが、2050年にはEV(電気自動車)などの成長によって81%まで縮小すると見込まれる。 そこで現在強化するのが、比較的粗利率が高い、ホットドッグやハンバーガーなどオリジナル食品の販売だ。日本では2019年11月時点で売り上げに占める弁当やおにぎり、フライドチキンなどのオリジナル食品の構成比が30.6%にのぼるが、米セブンの場合、ホットドッグやハンバーガー、サンドイッチといったオリジナル商品の販売は2019年9月時点で14.9%にとどまる。 「米セブンと日本のセブンは、以前からあまり連携を取っていなかった」(セブン&アイグループ元社員)との指摘もある。「2005年から社長を務めるデピント氏に、米セブンの運営は一任されてきた」(同)。今後、米セブンの展開にアクセルを踏みこむためには、グループ内で強固な協力体制を築く必要があるだろう』、「強固な協力体制を築く」とはいっても、大きな日米のマーケットの相違を乗り越えていくには、相当の困難が予想される。
タグ:米セブンの展開を加速する構え 重要性が増すアメリカ事業 EV/EBITDA倍率(企業価値をEBITDAで割った値)は約15倍 米セブンが買収を主導したが・・・ アメリカの石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」の買収を断念 「セブン、米コンビニ「2兆円買収」破談にみた課題 アメリカ事業を加速する狙いだったが・・・」 東洋経済オンライン 業界を揺るがす 未加入事業者向け年金事務所「対応マニュアル」 コンビニ本部の上に君臨するのが、総合商社である 無断発注や“自爆営業” 加盟店を担当する末端の社員もまた、上司からの厳しいノルマ達成に追い立てられている 加盟店とメーカーを犠牲に総合商社が潤うコンビニの実態 「コンビニ 搾取の連鎖」 「コンビニの裏側は搾取の連鎖、商社が君臨し取引先・加盟店が泣く」 ダイヤモンド・オンライン 日本は世界から「日本を見習え」と思われるような成熟社会を目指すべきで、その在り方の模索に、ただちに取り組まなければいけないと思います セイコーマート 本来のフランチャイズ制度とは本部と加盟店は同心円状の関係なんですね。ところが、従属関係になっているように見える 重層的な利益構造がセコマの強み 製造、小売り、物流というサプライチェーンを経営していることで、重層的な利益構造になっている 自治体からの助成金 自治体が所有する土地を安く賃貸 右肩上がりで収益を上げる時代ではない 「セコマ・丸谷社長 コンビニのビジネスモデルは終焉が近い」 本部と加盟店の関係見直しが急務 地域が本当に必要とするものをやり続ける。その中でいかに効率化して、利益を出すか。利益を出せれば持続できる 必要以上の利益を追求すべきではなく、少しずつ内部留保が充実していけばよい。それがサステナブルな、現代的な経営だと考えています 日刊ゲンダイ (その7)(セコマ・丸谷社長 コンビニのビジネスモデルは終焉が近い、コンビニの裏側は搾取の連鎖 商社が君臨し取引先・加盟店が泣く、セブン 米コンビニ「2兆円買収」破談にみた課題 アメリカ事業を加速する狙いだったが・・・) コンビニ 小売業 米セブンの展開にアクセルを踏みこむためには、グループ内で強固な協力体制を築く必要があるだろう オリジナル商品の販売強化がカギ 米セブンでも売上高の約半分をガソリンが占める 今後も次なる買収案件を模索 他社を買収して規模を追求することで、物流や仕入れ面での効率性を高めてきた
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日本の政治情勢(その43)(「勤務延長 検察官は除外」 1980年の文書が見つかる 検事長定年延長、小田嶋隆氏「最大の罪は国の文化と社会を破壊したこと」、さらば安倍晋三:75年前の失敗のツケを我々の手で清算しなければ、安倍政権が「緊急事態」を宣言したとき 私たちがすべきことは何か) [国内政治]

日本の政治情勢については、2月21日に取上げた。今日は、(その43)(「勤務延長 検察官は除外」 1980年の文書が見つかる 検事長定年延長、小田嶋隆氏「最大の罪は国の文化と社会を破壊したこと」、さらば安倍晋三:75年前の失敗のツケを我々の手で清算しなければ、安倍政権が「緊急事態」を宣言したとき 私たちがすべきことは何か)である。

先ずは、2月24日付け毎日新聞「「勤務延長、検察官は除外」 1980年の文書が見つかる 検事長定年延長」を紹介しよう。
https://mainichi.jp/articles/20200224/k00/00m/010/136000c
・『東京高検の黒川弘務検事長の定年を国家公務員法(国公法)に基づいて延長した問題で、国公法改正案が国会で審議されていた1980年当時に総理府人事局が「(検察官の)勤務延長は除外される」と明記した文書が国立公文書館で発見された。立憲民主党などの統一会派に属する小西洋之参院議員(無所属)が見つけた』、「小西洋之参院議員」のお手柄だ。
・『80年10月、内閣法制局まとめた「想定問答集」に  文書は、内閣法制局がまとめた法律案審議録にとじて保管されている「国家公務員法の一部を改正する法律案(定年制度)想定問答集」と題された80年10月のもの。 文書では「検察官、大学の教員については、年齢についてのみ特例を認めたのか。それとも全く今回の定年制度からはずしたのか」という問いに、「定年、特例定年、勤務の延長及び再任用の適用は除外されることとなるが、第81条の5の定年に関する事務の調整等の規定は、検察官、大学の教員についても適用されることとなる」としている。 国公法の定年制を巡っては、というのは、は81年の衆院内閣委員会で「検察官は(検察庁法で)既に定年が定められており、今回の定年制は適用されない」と答弁していた。これに関し、森雅子法相は20日の衆院予算委員会で「立法者の意思が議事録では、必ずしもつまびらかではない」と指摘した上で、「検察庁法の所管省庁として法務省が今般、(適用できると)解釈した」と説明した。 小西氏は、取材に「政府の説明を根底から覆すものだ。今回のは『解釈変更』ではなく、『解釈捏造(ねつぞう)』だ」と述べた』、「第81条の5の定年に関する事務の調整等の規定・・・」は意味不明だが、「定年、特例定年、勤務の延長及び再任用の適用は除外されることとなる」というのは、当時の「人事院」の解釈だ。「森雅子法相は20日の衆院予算委員会で・・・「検察庁法の所管省庁として法務省が今般、(適用できると)解釈した」と説明」、しかし、そうであれば、「国公法の定年制」延長時に、「検察庁法」を改正せずに放置したのは、司法を司る「法務省」にあるまじきミスだ。国会ではこうした突っ込んだ質問がなかったとすれば、野党もだらしない。

次に、コラムニストの小田嶋隆氏が2月23日付け日刊ゲンダイの取材に応じた「小田嶋隆氏「最大の罪は国の文化と社会を破壊したこと」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/269468
・『安倍政権には言いたいことがいっぱいある。まず、対米追従&対露弱腰外交は「売国」という古い言葉を召喚してこないと形容しきれないと思っている。経済では、消費増税によって、アベノミクスの3本の矢を焚き付けの薪として炎上させてしまった。これだけでも退陣の理由としては十分だ。とはいえ、外交は相手あってのことだ。経済もまた、運不運の要素を含んでいる。なので、失策のすべてを安倍さんのせいにするつもりはない。ここは見逃してさしあげてもよい。 政権の罪は、むしろ、彼らの日常動作の中にある。たとえば、行政文書を前例通りに記録・保存するという行政の担当者としてのあたりまえの習慣を、安倍晋三氏とその追随者たちは、政権を担当したこの8年の間に完膚なきまでに破壊した。それだけではない。彼らは、自分たちの政治資金の出納をまっとうに報告するという、政治家としての最も基本的な義務すら果たしていない。 かてて加えて、安倍政権の中枢に連なるメンバーは、正確な日本語を使い、公の場でウソをつかないという、日本の大人として守るべき規範さえ、きれいにかなぐり捨ててしまっている。おかげで、わたくしどものこの日本の社会では、日本語が意味を喪失し、行政文書が紙ゴミに変貌してしまっている。でもって、血統と人脈とおべっかと忖度ばかりがものを言う、寒々とした前近代がよみがえりつつある。 結論を述べる。安倍政権は外交と経済をしくじり、政治的に失敗しただけではない。より重要なのは、彼らがこの国の文化と社会を破壊したことだ。私はそう思っている。一刻も早くこの国から消えてもらいたいと思っている』、「政権の罪は、むしろ、彼らの日常動作の中にある」、「安倍政権は外交と経済をしくじり、政治的に失敗しただけではない。より重要なのは、彼らがこの国の文化と社会を破壊したことだ」、痛烈な安部政権批判で、全面的に同意したい。

第三に、京都精華大学人文学部専任講師(政治学・社会思想)の白井聡氏が2月29日付けYahooニュースに掲載した「さらば安倍晋三:75年前の失敗のツケを我々の手で清算しなければ」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/shiraisatoshi/20200229-00165212/
・『どんな鈍い頭の持ち主にも、いまや点と線がつながったことがわかるだろう。安倍政権の本質は、「私物化」である。私物化はモリカケ・「桜」問題だけのキーワードではない。モリカケ・「桜」問題それ自体はつまらない事件だ。だが、それはこの本質が氷山の一角としてこの上なく明瞭に可視化された案件なのだ。より重大な、アベノミクス(GDPの改竄を含む)、北方領土問題、対米従属問題(沖縄米軍基地問題やトランプ大統領への媚態等々)、朝鮮半島危機への対応など、すべてはこの一語で説明できる。ここにあるのは、世襲によって譲り受けた権力を手段を選ばず維持するという原理だ。 私物化は未来の日本人にも及ぶ。ピント外れの大学入試改革は、自らの学力と学歴に対する安倍の劣等感によって後押しされてきた。結果、入試制度そのものが、ベネッセを代表とする教育業界の政商の食い物にされ、台無しにされようとしている。 総仕上げは検察の私物化であり、国家権力の究極的私物化だ。ここまでくれば明らかだ。安倍が私物化しているのは、権力や利権の一部分ではない。国家そのもの、つまり国土と国民を好きなように処分できる私物として取り扱っている。ゆえに、新型コロナウイルス問題への悲惨な対応も全く驚くべきものではない。国民の生命や健康を守ることになど、そもそも何の関心もないのである。 国民の課題ははっきりしている。安倍を退陣させるだけでは不十分であり、しかるべき場所(牢獄)へと送り込まなければならない。そしてこの間この腐りきった権力を支えてきた政官法財学メディアの面々をリストアップし、処断せねばならない。75年前の失敗の根源は、国を破滅させた者どもを日本人が自らの手で罰しなかったことにある。その中に、あの「僕のおじいちゃん」(岸信介)もいた。そのツケをいまわれわれの手で清算しなければならないのである』、「安倍が私物化しているのは、権力や利権の一部分ではない。国家そのもの、つまり国土と国民を好きなように処分できる私物として取り扱っている。ゆえに、新型コロナウイルス問題への悲惨な対応も全く驚くべきものではない。国民の生命や健康を守ることになど、そもそも何の関心もないのである」、「安倍を退陣させるだけでは不十分であり、しかるべき場所(牢獄)へと送り込まなければならない」、「この間この腐りきった権力を支えてきた政官法財学メディアの面々をリストアップし、処断せねばならない」、全面的に同意したい。ただ、三番目は法的には問題ないケースが多いだけに、「処断」は実際には難しいだろう。

第四に、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が3月10日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「安倍政権が「緊急事態」を宣言したとき、私たちがすべきことは何か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/231211
・『安倍政権は「緊急事態宣言」を可能にする法案の成立を急いでいる。安倍政権が私権制限を含む「緊急事態法制」の成立を目指すことについて、納得できない、または不安な国民は少なくないだろう。そんな人を含めた全ての人に、法案が成立してしまった後こそ本当の「戦い」が始まることを伝えたい』、私は「緊急事態法制」には反対だったので、立憲民主党の枝野党首が党首会談で丸め込まれて賛成したのは残念だ。反対して造反したのは、山尾志桜里衆院議員だけだったようだ。
・『緊急事態宣言を可能にする法改正に 中国・韓国の「入国制限」強化  安倍晋三内閣は、全国の小学校・中学校・高校に臨時休校を要請して以降、新型コロナウイルス対策を矢継ぎ早に打ち出し始めた。「緊急事態条項」を柱とする既存の「新型インフルエンザ対策特別措置法」の改正を表明。首相は野党党首と会談し、早期成立へ協力を求めた。 また、安倍内閣は中国や韓国からの入国者に対し、宿泊施設や医療施設など検疫所長の指定する場所で2週間待機し、公共交通機関を利用しないことを要請した。発行済みの中国約280万件、韓国約1万7000件のビザ(査証)を無効とし、両国からの航空便の到着も成田国際空港と関西国際空港に限定する、「入国制限」の強化を行う。 急に動き始めた安倍内閣に対して、賛否入り乱れて百家争鳴状態となっている。首相の指導力発揮については肯定的な意見もないわけではない。しかし、これまで「対応が後手に回った」と批判されたことに焦り、首相主導をアピールしたいという狙いが露骨に見られる。専門家の意見を無視して「唐突」に決定を行ったことで、現場の混乱を招いたと、厳しく批判されている。 中国、韓国からの入国制限の強化は、既に水際対策を強化する段階が過ぎており、遅きに失したと散々な評価だ。「韓国の新型ウイルス感染者は516人増の累計5328人、数千人が入院待ち」(ロイター)といった記事を読むに、明らかに医療崩壊を起こしているようにみえる韓国からの入国制限はまだ理解できる。だが、新たな感染者の公表数が減少傾向の中国からの入国制限は、本当に意味があるのかと疑問視されている。 また、中国の習近平国家主席の来日延期が発表されたわずか3時間後に中韓からの入国制限強化を発表したことが問題視されている。中国への「忖度」(本連載第232回)が、国民の生命や健康よりも優先されていたのではないかという疑いが出ているのだ』、「これまで「対応が後手に回った」と批判されたことに焦り、首相主導をアピールしたいという狙いが露骨に見られる。専門家の意見を無視して「唐突」に決定を行ったことで、現場の混乱を招いたと、厳しく批判されている」、その通りだ。
・『全国一斉休校は「結果オーライ」「緊急事態宣言」の是非は?  筆者は、前回述べた通り、安倍内閣の新型肺炎対策は、後手に回ったのは確かだろうが概ね適切だと考えている。首相独断の全国一斉休校の決断も、その決定のプロセスは大問題だが、「結果オーライ」なのだろう(第234回)。 実際、3月8日現在の「感染者(死亡者数)」を確認すると、中国本土8万0895人(3097人)、韓国7134人(50人)、イタリア5883人(233人)、イラン5823人(145人)、フランス949人(16人)に対し、ダイヤモンド・プリンセス号を除く日本は455人(6人)だ(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について〈3月8日12時時点版〉」)。 日本は、早期から新型コロナウイルスが上陸していたにもかかわらず、感染者・死亡者が急増していない。あくまで結果論ではあるが、PCR検査実施を抑制し、医療崩壊を起こさない慎重な方針は、概ねうまく進んでいる。 また、中国からの入国制限についてだが、前回指摘したように中国からの入国は事実上ゼロに近い状態だった(第234回・P4)。だが、人工衛星が映した情報によれば、中国は工場を徐々に再稼働させつつあるという(Bloomberg Green“Satellite Pollution Data Shows China Is Getting Back to Work”)。今後、中国人の移動は活発化していくだろう。中国からの入国制限強化は妥当なタイミングだと思われる。 そして、「緊急事態宣言」を可能にする立法の是非である。安倍首相は、民主党政権時の2012年に制定された「新型インフル特措法」が今回の新型コロナウイルスには適用できないというのが政府の解釈だとした上で、「同等の措置を行うことが可能になる立法措置を早急に進める」と表明した。 「新型インフル特措法」がベースだとすると、政府が「緊急事態宣言」を発令すれば、具体的には都道府県知事が「生活の維持に必要な場合を除く、住民の外出自粛」「学校、社会福祉施設、興行場(映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸などの施設)の施設の使用制限もしくは停止」「イベント開催の制限もしくは停止」「医療品、食品など物資の売り渡し」を要請できるようになる。 また、「臨時医療施設開設のため、土地、家屋の強制使用」「国民生活との関連性が高い物資などが価格の高騰や供給不足が生じないような措置」も可能になる』、「全国一斉休校は「結果オーライ」」には違和感がある。私は副作用の方が大きいと反対である。緊急事態法制については、「「新型インフル特措法」が今回の新型コロナウイルスには適用できない」との理由が理解できない。普段は法律の拡大解釈を平然とやっているのに、今回は何故、できないのか。単に、民主党が制定した法律だから、新たに新法を主張しているようにしか思えない。立憲民主党が新法に賛成したのも解せない。
・『緊急事態宣言の焦点は「私権制限」の是非  「緊急事態宣言」を巡る議論の焦点は、「私権制限」の是非である。「有事」における「私権制限」の導入は、自民党の保守派にとって長年の主張であり「悲願」である。12年の「自民党憲法草案」に私権制限は明記されている(自民党憲法改正推進本部「日本国憲法改正草案Q&A」)。また、17年10月に行われた衆議院選挙の公約における主要4項目の1つでもある。 一方、日本社会には「私権制限」に対しては強い反発がある。かつて民主党政権で「新型インフル特措法」を成立させたことがある立憲民主党・国民民主党は審議には応じる意向だ。ただし、立憲民主党の枝野幸男代表は「現状は、緊急事態宣言の要件を満たした状況ではない。安易な緊急事態宣言は避ける必要がある」と述べ、国民民主党の玉木雄一郎代表は「現行法で対応できる」とした上で、「緊急事態宣言を出す場合の事前・事後の国会報告を担保すること」などを求めるなど、私権制限には慎重な姿勢だ。 「新型インフル特措法」の採決の際に反対していた社民党・共産党は、私権制限に対してより厳しい立場だ。社民党の福島瑞穂党首は、「基本的人権への制限が行政サイドの判断で事実上できてしまうのが最大の懸念事項だ。憲法改正の緊急事態条項の地ならし、雰囲気づくりに使われたら大変だ」と懸念を示した。 共産党の志位和夫委員長は「安倍政権のもとでの『緊急事態宣言』による私権の制限には国民に疑念や不安が広範にある」と指摘し、「たとえば、施設の使用中止の要請・指示ができるようになる。普通に集まって相談をすることもできなくなる恐れがあります。集会の自由への制約になる」と主張する(しんぶん赤旗「新型インフル特措法『改正』案 志位委員長が会見 国民の不安にこたえた徹底審議が必要 人権制約への歯止めあいまい」)。 識者からも、私権制限について慎重な意見が多く出ている。例えば、前東京都知事・元厚労相の舛添要一氏は、ツイッターで「歴史に学ばねばならない」と発信。「民主的選挙で首相となったヒトラーは、ワイマール憲法48条の非常事態の時の大統領緊急命令を使って独裁者となった」と指摘し、「乱用は禁物である」と警鐘を鳴らしている』、「舛添要一氏」の「警鐘」は深刻に考慮すべきだろう。「国民民主党の玉木雄一郎代表は「現行法で対応できる」」、との考え方を示したので、先の私の解釈も的外れではないようだ。
・『「侵略戦争を起こしたならず者国家」だった歴史を忘れてはならない  これまでも、「安全保障関連」の法案が政治課題となるとき、保守派は常に「諸外国では当たり前のことだ」と訴えてきた。確かに、さまざまな国で、戦争や内乱、大災害など、国家が存立の危機にさらされる事態にどのように対処するのかを定めた「緊急事態法制」が設けられている(防衛省 情報検索サービス「解説 諸外国の緊急事態法制」)。だから、「日本も緊急事態法制を定めて、自分の国を自分で守れる『普通の国』になるべきだ」というのが保守派の主張である。 だが、日本が「普通の国」となるには、簡単には乗り越えられない高いハードルがある。日本は「かつて侵略戦争を起こした、ならず者国家」であり、日本国憲法が制定されたのは、再び軍事的冒険に走ることがないように抑え込むためであったことを忘れてはならない(第59回)。 言い換えれば、日本国憲法で抑え込まれているから日本は「平和国家」のフリをしているのであって、戦争放棄を定めた「憲法9条」が撤廃される改憲が行われれば、再び「ならず者国家」に戻るのではないかと、近隣諸国や国内の左派勢力から疑われてきたのだ。 要するに、日本政府は先の大戦での過ちによって、基本的に他の民主主義国と比べて国内外で「信頼性」が低いということだ。かつての自民党政権の指導者は、そのことをよく自覚し、権力・権限の行使には、極めて抑制的であった。 ところが、近年の自民党は、「ならず者国家」と見なされてきたことに「無自覚」である。むしろ、「他国では当たり前」の暴力装置を自分たちにも持たせろと声高に主張する。その上、権力の私的乱用を平気で行い、批判されたら開き直ったような態度をとる。品格のかけらもなく、先人たちがコツコツと築き直してきた国内外の「信頼」を、崩し続けてきたのだ(第233回)。 だから、安倍内閣が私権制限を含む「緊急事態法制」の成立を目指すことについて、納得できない国民は少なくないと思う。安倍首相に私権制限の強力な権限を行使させるのは危険であり、不安なのだ。だが、安倍政権は衆参両院で「一強」と呼ばれる圧倒的な多数派を形成している。国民がどんなに懸念を強めても、数の力の前には無力感を持たざるを得ないように思える』、日本はいまだに太平洋戦争を自ら公式には総括してない稀有な国だ。「日本政府は先の大戦での過ちによって、基本的に他の民主主義国と比べて国内外で「信頼性」が低いということだ」、「近年の自民党は・・・先人たちがコツコツと築き直してきた国内外の「信頼」を、崩し続けてきた」、その通りだ。
・『「緊急事態法制」を持ったときに見習うべき英国のシステムとは?  だが、日本国民は安倍内閣が「緊急事態法制」を持つことに、なすすべがないわけではない。緊急事態法制を持つ国では政府が無制限に権限を行使できているかといえば、そうではないからだ。 この連載では、英国の「政権交代ある民主主義」が、権力に対する厳しいチェック機能を果たしていることを論じたことがある(第72回)。英国政治の特徴は「密室」での意思決定であり、「交代可能な独裁」だ。 英国民の民主主義に対する基本的な考え方は「選挙によってある人物なりある党に委ねた以上、原則としてその任期いっぱいは、その人物なり党の判断に任せるべき。間違っていたら、次の選挙で交代させればいい」というものだ。英国人は政治の「独裁」を認める一方で、「失政を犯した政権は交代させることができる」ということに、強い自信を持っている。そして、実際に政権を交代させた豊富な実績を持っている(第9回)。 また、英国には反権力で、非常に批判精神の強いジャーナリズムが存在していることも重要だ。英国は階級社会で、ジャーナリストは伝統的に階級が低く、社会的地位や名誉、財産のない家庭に生まれ、学歴の低い人たちだった。だから、上流階級出身の権力者に媚びることはなく徹底的な権力批判ができる。もちろん、現在ではジャーナリストも高学歴者だが、反権力の伝統は今も生きている(第72回・P3)。 例えば、英紙「ガーディアン」は、米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン元職員から内部資料の提供を受け、米国家安全保障局(NSA)と英政府通信本部(GCHQ)による通信傍受の実態をスクープした。 デービッド・キャメロン英首相(当時)は、警察を動員して英ロンドンのガーディアン本社のホストコンピューターを破壊する強硬措置に出たが、ガーディアンは「データは世界中に保存してある」と言い放ち、徹底抗戦を貫いた。 要するに、英国のジャーナリストは権力が言論統制を試みても委縮することはない。たとえ、言論弾圧で500人、1000人と逮捕されようが、会社が潰れてしまおうが、英国のジャーナリズムは権力に屈することはないということだ。 そして、英国では政権が言論封殺によってジャーナリストを抑え込もうとし、国民がそれを不当な権力乱用と見なした場合、政権は容赦なく次の選挙で敗れ、政権の座を失ってしまう。言い換えれば、政権と国民・ジャーナリズムの間で緊張関係が保たれてこそ、政権は権力・権限を適切に運用することができるのだ』、英国は成文憲法がないので、「政治の「独裁」を認める」しかないが、日本には憲法の制約がある。他方で、「英国のジャーナリズムは権力に屈することはない」、というのも大きな違いだ。このように、日英の政治風土には大きな相違がある。
・『「記者クラブ」は権力との馴れ合いを ジャーナリストは首相との会食をやめよ  衆参両院で圧倒的多数派を形成する安倍政権は、私権制限を可能にする緊急事態法制を問題なく成立させるだろう。しかし、日本のジャーナリズム・国民の戦いがこれで終わりであってはならない。 権力による情報統制がどんなに強まっても、ジャーナリズムは怯まず権力批判を続けなければならないのだ。「記者クラブ」は権力との馴れ合いをやめる必要がある。メディア各社の幹部や大物ジャーナリストが安倍首相と会食していたりもするが、こうしたこともすぐにやめるべきだ。 また、国民も「安倍一強」と弱小野党という構図によって気付いていないが、小選挙区比例代表並立制の定着により、「政権交代のある民主主義」が自らの手中にあることをしっかりと自覚することが重要だ。 安倍政権が権力の乱用を行ったら、国民は次の選挙で安倍政権を引きずり下ろして、国会で法律を廃止させることは可能なのである。国民がその厳しさを持ち続けることで政権が緊張感を失うことがなければ、民主主義は守られるのである』、「べき論」としてはその通りだが、現実を踏まえた「だろう論」では空念仏のようだ。
・『私権制限を含む緊急事態法制に筆者が賛成である理由  最後に、筆者は日本が私権制限を含む緊急事態法制を持つことに賛成であることを明確にしておきたい。それは、一般的な賛成派が語る「権力を自由に行使できるようにする」という主張とは一線を画している。 筆者は「日本が権力を抑制的に行使でき、決して私的乱用に陥らないこと」を証明するために、あえて緊急事態法制を持つべきだと考えている。 繰り返すが、日本は「ならず者国家」のレッテルを貼られているために緊急事態法制を持つことができないでいた。そのレッテルをはがすには、緊急事態法制を持ち、かつ決して権限の乱用に陥ることなく、抑制的に運用できることを50年くらい海外諸国に見せ続ける必要がある。 緊急事態法制を持つことは、「世界で最も権力を抑制的に使える民主国家」としての国際的地位を確立し、二度と国内外から言われなき批判を受けることがないようにするために行うべきだ。日本の政治家、メディア、国民がその覚悟を持てるかどうかが、何よりもまず問われるべきなのである』、「上久保」氏が「政策科学部教授」の割には、「「ならず者国家」のレッテルを・・・はがすには、緊急事態法制を持ち、かつ決して権限の乱用に陥ることなく、抑制的に運用できることを50年くらい海外諸国に見せ続ける必要がある」との願望だけで、日本のジャーナリズムを空念仏で英国に近づけたことにして、「緊急事態法制に筆者が賛成」するとは、信じられないような暴論だ。途中までの立論は筋が通っていただけに、残念でならない。
タグ:安倍政権の中枢に連なるメンバーは、正確な日本語を使い、公の場でウソをつかないという、日本の大人として守るべき規範さえ、きれいにかなぐり捨ててしまっている 自分たちの政治資金の出納をまっとうに報告するという、政治家としての最も基本的な義務すら果たしていない 行政文書を前例通りに記録・保存するという行政の担当者としてのあたりまえの習慣を、安倍晋三氏とその追随者たちは、政権を担当したこの8年の間に完膚なきまでに破壊 権の罪は、むしろ、彼らの日常動作の中にある 近年の自民党は、「ならず者国家」と見なされてきたことに「無自覚」である。むしろ、「他国では当たり前」の暴力装置を自分たちにも持たせろと声高に主張 緊急事態宣言を可能にする法改正に 中国・韓国の「入国制限」強化 「小田嶋隆氏「最大の罪は国の文化と社会を破壊したこと」」 全国一斉休校は「結果オーライ」「緊急事態宣言」の是非は? 「記者クラブ」は権力との馴れ合いを ジャーナリストは首相との会食をやめよ 安倍を退陣させるだけでは不十分であり、しかるべき場所(牢獄)へと送り込まなければならない。そしてこの間この腐りきった権力を支えてきた政官法財学メディアの面々をリストアップし、処断せねばならない。 「緊急事態法制」を持ったときに見習うべき英国のシステムとは? 日刊ゲンダイ 権力の私的乱用を平気で行い、批判されたら開き直ったような態度をとる。品格のかけらもなく、先人たちがコツコツと築き直してきた国内外の「信頼」を、崩し続けてきた 森雅子法相は20日の衆院予算委員会で「立法者の意思が議事録では、必ずしもつまびらかではない」と指摘した上で、「検察庁法の所管省庁として法務省が今般、(適用できると)解釈した」と説明 81年の衆院内閣委員会で「検察官は(検察庁法で)既に定年が定められており、今回の定年制は適用されない」と答弁 「定年、特例定年、勤務の延長及び再任用の適用は除外されることとなる 内閣法制局がまとめた法律案審議録にとじて保管されている「国家公務員法の一部を改正する法律案(定年制度)想定問答集」 内閣法制局まとめた「想定問答集」 「「勤務延長、検察官は除外」 1980年の文書が見つかる 検事長定年延長」 総仕上げは検察の私物化であり、国家権力の究極的私物化 毎日新聞 (その43)(「勤務延長 検察官は除外」 1980年の文書が見つかる 検事長定年延長、小田嶋隆氏「最大の罪は国の文化と社会を破壊したこと」、さらば安倍晋三:75年前の失敗のツケを我々の手で清算しなければ、安倍政権が「緊急事態」を宣言したとき 私たちがすべきことは何か) 日本の政治情勢 緊急事態宣言の焦点は「私権制限」の是非 英国には反権力で、非常に批判精神の強いジャーナリズムが存在 私権制限を含む緊急事態法制に筆者が賛成である理由 安倍政権の本質は、「私物化」である 「さらば安倍晋三:75年前の失敗のツケを我々の手で清算しなければ」 政治の「独裁」を認める一方で、「失政を犯した政権は交代させることができる」ということに、強い自信を持っている 日本は「かつて侵略戦争を起こした、ならず者国家」であり、日本国憲法が制定されたのは、再び軍事的冒険に走ることがないように抑え込むためであったことを忘れてはならない 「ならず者国家」のレッテルを・・・はがすには、緊急事態法制を持ち、かつ決して権限の乱用に陥ることなく、抑制的に運用できることを50年くらい海外諸国に見せ続ける必要がある yahooニュース 「安倍政権が「緊急事態」を宣言したとき、私たちがすべきことは何か」 ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人 白井聡 安倍政権は外交と経済をしくじり、政治的に失敗しただけではない。より重要なのは、彼らがこの国の文化と社会を破壊したことだ 安倍首相は、民主党政権時の2012年に制定された「新型インフル特措法」が今回の新型コロナウイルスには適用できないというのが政府の解釈 かつての自民党政権の指導者は、そのことをよく自覚し、権力・権限の行使には、極めて抑制的であった
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森友学園問題(その19)(森友学園事件で籠池被告に実刑判決 「ドタバタ劇」は第2ラウンド突入へ、籠池泰典が明かす「安倍晋三からです」と渡された100万円の真相 なぜ急に"総理案件"になったのか、近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える) [国内政治]

森友学園問題については、2018年4月11日に取り上げた。大阪地裁判決を踏まえた今日は、(その19)(森友学園事件で籠池被告に実刑判決 「ドタバタ劇」は第2ラウンド突入へ、籠池泰典が明かす「安倍晋三からです」と渡された100万円の真相 なぜ急に"総理案件"になったのか、近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える)である。

先ずは、事件ジャーナリストの戸田一法氏が本年2月20日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「森友学園事件で籠池被告に実刑判決、「ドタバタ劇」は第2ラウンド突入へ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/229282
・『国や大阪府、大阪市から補助金計約1億7000万円をだまし取ったなどとして、詐欺と詐欺未遂の罪に問われた学校法人森友学園の前理事長籠池泰典被告(67)と妻の諄子被告(63)の判決公判が19日、大阪地裁で開かれ、野口卓志裁判長は籠池被告に懲役5年(求刑・同7年)、諄子被告に懲役3年、執行猶予5年(求刑・同7年)を言い渡した。両被告は控訴するとみられる』、「事件ジャーナリスト」はどんな切り口で解説するのだろう。
・『「国策捜査を許さない」と被告  判決は起訴内容通り、籠池被告が2011~17年、大阪府豊中市の国有地に開校を予定していた小学校の建設費を水増しして国の補助金5000万円余りを、さらに教員の数を偽るなどして大阪府や大阪市の補助金計約1億2000万円をそれぞれ詐取したと認定した。 まずは初公判の様子から順に追っていきたい。 初公判が開かれたのは昨年3月6日。籠池被告は起訴内容の一部は認めたものの、大半を否認。諄子被告は無罪を主張した。 検察側は冒頭陳述で、籠池被告は学園の業務全般を統括し、諄子被告は経理を担当していたと指摘。 国の補助金は「上限額を受領できるように設計会社などと共謀し、虚偽の請負契約書などを作成した」、大阪府と大阪市の補助金は「幼稚園で要支援児ではないのに診断書を偽造したり、特別支援担当の教員がいるように装ったりしていた」と手口を明らかにした。 一方、籠池被告は意見陳述で「国策捜査を絶対に許さない」「官邸への意向と忖度(そんたく)で財務省が動いた重大事件から国民の目をそらさせる別件逮捕」と検察批判を展開した。 弁護側は両被告の関与を認めた設計会社関係者らの供述について「不起訴の合意と引き換えで違法に収集した証拠で排除すべき」と主張。大阪府と大阪市の補助金の一部は虚偽申請だったと認めた上で、罪の軽い補助金適正化法違反罪の適用を求めた』、確かに「設計会社関係者らの供述」には問題がありそうだ。
・『業者「安倍晋三小学校」と証言  昨年5月31日の公判では、学園の代理で国の補助金を申請した設計事務所の代表が証人として出廷。 証人尋問で、両被告から「補助金を多めにもらっといて」などと言われ、詐欺だとは思ったが施工主の依頼は断れないと考え、小学校の建設費を水増ししたと証言した。 さらに籠池被告から「名前を『安倍晋三小学校』にする」「首相の名前(が付いている)だから、業者も資材を安く提供する」と言われたと明らかにした。 昨年8月28日の公判では、籠池被告の被告人質問が行われた。弁護人の質問に、幼稚園で教育勅語を導入し、教育方針に賛同する政治家と付き合うようになったと説明。 首相夫人とは11年ごろ知り合ったとし、校名に首相の名前を使いたいと相談して許可を受けて開校準備を進めたが、14年に「首相の名前は使えなくなった」と謝罪を受けたと述べた。 15年には首相夫人に名誉校長への就任を打診して承諾され、その際に「安倍晋三からです」と現金100万円を渡されたと声を大きくした』、安部首相は「現金100万円」を渡したことを否定しているが、籠池夫妻が「現金100万円」をそのまま銀行口座に入金していれば、傍証にはなった筈だ。恐らく学校の金庫の中でごちゃ混ぜになってしまったのだろう。
・『意見陳述を得意の一句で結ぶ  19年10月30日の論告求刑公判では、検察側は両被告が補助金申請を代行した小学校の設計業者に「国からぼったくって」「多めにもろておいて」などと指示しており「詐欺を主導したのは明らか」と指摘。 さらに「税金で賄われるさまざまな補助金をほしいままにむさぼった」と非難した上で「あたかも権力の被害者であるような発言に終始し、反省は見られない」と指弾した。 籠池被告の弁護側は最終弁論で「国の補助金申請は設計業者が行い、金額の算定などはすべて業者が主導した」と反論。 そして「検察側が両被告を訴追する目的で、業者を逮捕せず司法取引した疑いがある」などと主張した。 最終意見陳述で、籠池被告は「次世代の教育のため精進してきた。金もうけを考えたことはない」「大阪地検特捜部による安倍晋三首相への忖度(そんたく)」「財務官僚ら役人の責任が不問にされ、問題の幕引きが図られた」と主張。 最後に「秋錦 令和の武士(もののふ) ここにあり」「黄金の 夫婦(めおと)道中 日本晴」と芝居がかった口調で得意の句を詠んだ。 諄子被告は「口封じのため300日も拘置所に入れられた。この国は冤(えん)罪だらけ」と述べ、両被告とも無罪を主張して結審していた』、「300日も拘置所に入れられた」、罪状を否認していたとはいえ、やはり「口封じ」の色彩が濃い。
・『問題の発端は度が過ぎた忖度  この事件を巡っての所感だが、背後にさまざまな不正があり、国を揺るがす大問題にまで発展したが、教育勅語を標榜する自称・教育者が政官界を泥沼に引きずり込んだ「ドタバタ劇」にしか見えなかった。 常識のある方なら同意してもらえると思うが、まず両被告が便宜を期待して政治家や首相夫人に近付いたのが発端だろう。 そして首相夫人の信頼を得て、その威光を笠に着て行政に有形無形の圧力をかけ、不正に手を染めることに成功。 不正発覚後、首相夫人らに取り計らいを依頼するも問題が大きくなるにつれて突き放され、両被告が逆切れした――という流れが真相ではないだろうか。 ただ、大阪地検特捜部も腰が引けていた印象は受けた。 市民団体らが、決裁文書を改ざんした虚偽公文書作成や国有地を不当に安く売却したとする背任などの容疑で、佐川宣寿元国税庁長官や財務省職員ら計38人を告発したが、全員が不起訴処分となった。 検察が確実に有罪を取れる事件しか起訴しないのは常識だが、この問題は国民が有罪・無罪の結果ではなく「真実はどうだったのか」を知りたかったはずだ。 有罪・無罪を問わず、捜査で積み重ねた証拠を基に「事実関係」をつまびらかにし、裁判所の判断を仰いでもよかったのではないだろうか。 こうした経緯が、両被告の主張にある意味で“信憑(ぴょう)性”を生じさせたのではないかという気がする。 そして流行語にもなった「忖度」というキーワードの出所は霞が関といわれている。 官僚の仕事というのは、政治家や上司の意向を先回りして読み、指示される前に準備しておくのが「優秀」と評価される、まさに忖度の世界だ。 不起訴にはなったが、官僚が政権に過剰な忖度をした結果、度が過ぎて違法行為まで公然と行われていたというのは紛(まぎ)れもない事実だ。 国民の関心は時間の経過とともに薄れてきてはいるが、第2ラウンドは大阪高裁へと舞台を移す。ドタバタ劇はまだまだ続きそうだ』、「市民団体らが・・・佐川宣寿元国税庁長官や財務省職員ら計38人を告発したが、全員が不起訴処分となった」、肝心の国有地の安価払い下げというより深刻な問題に蓋をした検察の姿勢は、正義の番人の役割を放棄したことになり、誠に問題だ。

次に、2月27日付けPRESIDENT Onlineが文春オンライン記事を転載した「籠池泰典が明かす「安倍晋三からです」と渡された100万円の真相 なぜ急に"総理案件"になったのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/33287
・『籠池泰典が初めて明かした「100万円事件」の真相と「昭恵さん」のこと  「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年2月27日号) 8億円を上回る国有地の値引きがスクープされてから3年が経った。だが国有地を巡って時の首相夫人の関与が囁かれた一大疑獄は、いつの間にか理事長夫妻による補助金詐取に取って代わられた。地裁の判決直前、籠池氏が語り尽くした昭恵夫人による「神風」とは』、「夫妻」へのインタビューとは興味深そうだ。
・『2週間後に判決を控えた心境は「不動心」  2月上旬某日、新大阪駅付近のとあるホテルの一室で籠池泰典氏(67)は、小誌を含むマスコミ各社の取材に臨んでいた。ストライプ柄の黒の背広に水色のネクタイという出で立ち。隣にはピンク色のメガネをかけた妻・諄子氏(63)の姿もある。 森友学園への補助金を詐取した疑いで詐欺罪などに問われた籠池夫妻には、懲役7年が求刑された。この日の二人は、約2週間後の2月19日に大阪地裁での判決を控える身。だが記者が、現在の心境を問うと、 「別に普段と変わりはなくてですね。不動心。うん。まさにそんな感じ」 と、事も無げに言い放つ。続く諄子氏も「楽しみです!」と笑顔を浮かべている。 発覚から3年――。森友事件は大阪府豊中市の国有地売却をめぐる巨額の値引き疑惑が発火点だ。当初は「森友学園」という一学校法人の問題に過ぎなかったはずが、その後、政治家の口利き、財務省による公文書改ざん、そして近畿財務局職員の自殺など数々の疑惑が噴出し、いつの間にか日本中の注目を浴びる一大疑獄へと発展したのだった』、「一大疑獄」を「補助金を詐取」事件に矮小化した検察の手際は敵ながら見事だ。もっとも、その不当性を追求しなかったメディアの責任も大きい。
・『反省の傍ら、常軌を逸した政府の対応を糾弾  約300日に及ぶ大阪拘置所での勾留生活を経て18年5月に保釈された籠池夫妻にとって、森友事件にはまだ隠された事実があり、判決を前に語り尽くしておきたい気持ちが強くあった。 冒頭の日も籠池氏は、「国家の犯罪を暴露しないといけない!」と、大きな声で息巻くと、記者たちを前に自身の考えを滔々と語っていた。 2月13日には『国策不捜査 「森友事件」の全貌』(文藝春秋刊)を出版。作家の赤澤竜也氏の3年に及ぶ密着インタビューに応じ、約500ページ分もの“独白”をしている。 その中で籠池氏は起訴事実である詐欺罪について、国の補助金詐取については全面的に否認しているが、大阪府と大阪市からの補助金詐取については、 「一部の事実については公判で認めている。よからぬ方法で補助金のかさ上げをした点について、あらためてここに陳謝したい」と反省の弁を述べている。 一方で、「国有地売却における8億円値引きの背任容疑」と「公文書改ざんでの有印公文書変造・同行使容疑」に問われた財務省幹部ら38人が不起訴となったことは「国策不捜査」であったと断じ、「検察庁は政治権力の意向に沿って森友事件の矮小化に奔走した。『国策不捜査』を貫き真相究明の任を放棄した」と糾弾しているのだ。 「国有地の8億円値引き」、「財務省による公文書改ざん」……政府による常軌を逸した対応はすべてある人物に端を発している――首相夫人の安倍昭恵氏だ』、「国策不捜査」とは言い得て妙だ。「昭恵」夫人との具体的なやり取りは興味深い。
・『「『昭恵さん』と呼んでください」と言われ……  事件発覚当初から彼女は疑惑の渦中にあった。建設予定だった「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長に就いていたことや、「塚本幼稚園」の園長室で籠池氏に100万円を手渡したことなどが報じられ、その度ごとに世間に波紋を広げていた。 だが一方で、籠池氏自身も『国策不捜査』で、「家内と昭恵夫人とのつながり。この一点だけがボクたちの希望だった」と述懐し、事件の最中も昭恵氏が唯一の拠り所であったことを認めている。 『国策不捜査』で赤澤氏は、籠池氏から昭恵氏に関する数々の詳細なコメントを引き出し、丹念に記録している。そこからは両者がいかに親密であったかがよく分かり、昭恵氏の存在こそが森友事件の核心であると改めて理解できる(※以下、籠池氏の発言は『国策不捜査』をもとに構成した)。 籠池氏が昭恵氏と連絡を取り合うようになったのは11年10月頃からだ。森友学園のPTAの紹介だった。初めて直接会ったのは14年3月14日、場所は「ホテルオークラ東京」の老舗割烹「山里」だった。 籠池氏が語る。 「ボクたち夫婦と安倍さん夫妻の4人の席を予約していたのだが、安倍さんは急用ができたとのことでドタキャンだった。昭恵夫人は午後6時くらいにお越しになり、懇談を始めたのだが、初対面とは思えないほど話が弾んだ」 最初は「昭恵先生」と呼んでいたが、本人から、「『昭恵さん』と呼んでください」と言われ、そう呼ぶようにしたという。話題は教育、政治、果ては夫婦関係におよび、大いに盛り上がった』、「森友学園のPTAの紹介」で「連絡を取り合うようになった」とは初耳だ。
・『「安倍晋三記念小学校」はまずいのではないか  だが途中で昭恵氏が、「主人は現役の首相になってしまっているので、まずいのではないかと思っている」と切り出したという。 実はこの頃、建設予定だった小学校を「安倍晋三記念小学校」と命名しようと籠池氏は考えていた。この案を考えついた時期は民主党政権下で、自民党は野党。安倍首相も当時は一衆院議員に過ぎなかった。しかし保守主義の思想を持ち、日本会議のメンバーにも名を連ねていた籠池氏にとって「安倍晋三」という政治家は特別な存在だったのだ。 12年に入ると昭恵氏に連絡を入れ、学校名の許可を取り付けたという。それが一転して、この会合のときに昭恵氏が断りを入れてきたというわけだ。首相夫人の頼みとあり、籠池氏は即座に承諾したという。 そんな最中、突然、昭恵氏の携帯が鳴った。安倍首相からだった。 「いつ帰るのか心配になった安倍さんから電話が入ったのだ。時計を見るとすでに午後10時過ぎ。これはさすがにまずいと思い、『お開きにしましょう』と申し上げた。すると昭恵夫人は畳に手をついて『今日はありがとうございました』と言ってくださった」(籠池氏)』、「午後10時過ぎ」にお開きにしたとは、ずいぶん盛り上がったようだ。
・『「神風」を吹かせたスリーショットを撮影  山里での会食から約1カ月後の4月25日に昭恵氏は初めて塚本幼稚園を訪問。「タイトな短いスカートのツーピースという出で立ち。お美しい方だと心から思った。園児に紹介するときも自然に『昭恵さま』という言葉が口をつく」(同前)ほど感激したという。 同じ日に小学校の建設予定地も訪れ、空き地を見た昭恵氏の「いい田んぼができそうですね」との発言が「瑞穂の國記念小學院」という校名の由来になった。さらに、この時は首相夫人付き職員の谷査恵子氏も同行し、籠池夫妻と昭恵氏のスリーショットも撮っている。 一方で当時の籠池氏は、小学校建設のために奔走する日々を送っていたが、苦戦を強いられていた。 大阪府からは学校の設置認可が下りず、近畿財務局(財務省の下部組織で国側の窓口)とは国有地の賃借契約を巡って話がまとまらない。籠池氏自身も「大阪府と近畿財務局を行ったり来たり、という状態だった。本当に辛かった」と述懐している』、「籠池氏」は当初、「大阪府」や「近畿財務局」との交渉で、「苦戦を強いられていた」、これも初めて知った。
・『学園の件は「財務省本省案件」に  事態が動いたのは、昭恵氏と小学校予定地を訪問してから3日後の4月28日。この日、近畿財務局の担当者に籠池氏は、昭恵氏が予定地を視察した旨を告げている。途端に担当者の顔色が変わった。 「写真とかあるんですか」 そう聞かれ、すかさず前述のスリーショットを見せたという。すると担当者は「コピーさせてもらってもいいですか。局長にも見せておかないといけないんで」と尋常ではないほど、興味を示してきた。 「写真を見せてからギアが3段くらい上がったのである。まさにこの日こそ神風が吹くキッカケの第1弾だった。スリーショット写真の提示以降、何もかもがスムーズに進むようになった。あまりにも近畿財務局の態度が変わったので、本当に驚いたものだ」(籠池氏) そしてこの頃から学園の件は、「財務省本省案件になった」というのだ。 以後、破格の値引き問題が発覚する17年まで、籠池夫妻と昭恵氏は、引き続き蜜月関係にあった。 山里での会合で、昭恵氏はとりわけ諄子氏と気が合ったという。その証拠に2人は頻繁にメールのやり取りをする仲になり、データが残っている16年6月から17年3月までの間だけでも昭恵夫人から34通、諄子氏から49通送られたことが確認されている』、「写真を見せてからギアが3段くらい上がったのである。まさにこの日こそ神風が吹くキッカケの第1弾だった。スリーショット写真の提示以降、何もかもがスムーズに進むようになった」、やはり「昭恵氏」の威力は相当なもののようだ。
・『「文書にしてほしい」と伝えられ送ったファックス  「園長室で2人で話していると、昭恵夫人がカバンから封筒を取り出された。中を見ると金子が入っている。ボクが『いいんでしょうか』と聞くと、『安倍晋三からです』とお答えになった。さらに、幼稚園をあとにされてからは電話で『100万円の件は内密に』と念を押されたのだ」 14年12月6日に昭恵氏は塚本幼稚園に2度目の訪問をし「ファーストレディとして」とのタイトルで講演を行った。3度目の訪問となる15年9月5日に昭恵氏から100万円を渡され、瑞穂の國記念小學院の名誉校長就任の依頼も了承されたと籠池氏は語る。 同じ頃には、籠池氏が証人喚問で暴露し話題になった、ファックスの端緒となる出来事も起きている。 ファックスとは前述の夫人付き職員の谷氏が、籠池氏に宛てて送ったとされる文書のこと。 〈財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得ました。(略)引き続き、当方としても見守ってまいりたい(略)。本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております〉 昭恵氏への「報告」を明記した衝撃の内容だった。 当時、国有地の賃借契約は結んだものの、学園運営の資金繰りに困っていた籠池氏。そこで、 「昭恵夫人に助けてもらおうと思い立ち、携帯に連絡を入れたところ、留守番電話となっていたため、『ちょっと急ぎます』と申し添え、用件を吹き込んだ」 すると谷氏から折り返しの電話があり「昭恵夫人から『籠池さんがお急ぎのようなので連絡してほしい』と頼まれたので代わりにお掛けしました。大切なことなので文書にしてほしい」と伝えられたという。籠池氏は慌てて手紙に「国有地の賃借期間の延長」、「賃料の引き下げ」、「ゴミの撤去費用の立て替え分の早期の返還」などの要望を書きつけ10月26日に送付。それに対する回答が、前述の谷氏のファックスだった。 『国策不捜査』に書かれた籠池氏の告白を読み進めると、こうした昭恵氏の振舞いこそが、森友事件の火種を生んでいたことがよく分かる』、「谷氏」は真相を隠すためイタリア大使館に異例の異動になったのは記憶に新しいところだ。「昭恵氏の振舞いこそが、森友事件の火種を生んでいた」、その通りなのだろう。
・『「昭恵夫人の写真とコメントを削除してください」  では、17年2月、朝日新聞の初報によって森友事件が表面化して以降、籠池夫妻と昭恵氏との関係はどのように変化していったのか。 『国策不捜査』では、それを象徴する、新たな2つの逸話が明かされている。 朝日報道をきっかけに全マスコミを巻き込む騒動となってから2週間が経った2月23日。籠池夫妻は財務省からの指示で大阪を離れ、京都に身を隠していた。 そこに突然「安倍晋三事務所」の初村滝一郎秘書からの着信があり、2人の間ではこんな会話が交わされたという。 「おたくの『瑞穂の國記念小學院』のホームページに載っている昭恵夫人の写真とコメントを削除してください」 「急に外せと言われても……。昭恵夫人はどうおっしゃっているんですか」 「昭恵夫人も了解済みです。即刻、外してください。いいですね」 記事を削除した籠池氏はこう明かしている。 「のちほど昭恵夫人と電話でやり取りしたのだが、やはり名誉校長退任を事前に聞かされてはいなかった。昭恵夫人は『私は今でも心の中では名誉校長なんです』と取り繕ってはくれたのだが、その言葉はむなしく響くだけだった」』、「森友事件が表面化」して、官邸は急遽、不都合な証拠隠しに奔走したようだ。
・『安倍首相の評価がコロっと変わり、批判的な答弁  翌24日には、安倍首相が国会で「安倍晋三記念小学校」の校名について問われると、籠池氏を指して「非常にしつこい中において、非常に何回も何回も熱心に言ってこられる中にあって」と批判的な答弁をしている。つい1週間前、2月17日の国会では「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいという話を聞いております」と褒めそやす答弁をしたばかりだった。 当時の心境を籠池氏が語る。 「ボクに対する安倍さんの評価がコロっと変わったのである。まさに手のひら返しが行われてしまった。一体何が起こってしまったんだ? ボクのなかで感じたことのない疑念が噴き上がってきた」』、「安倍首相」の見事な「手のひら返し」には、「籠池氏」もさぞかし驚いただろう。
・『昭恵夫人の記録が残った決裁文書が改ざんされたのは……  確かに、この頃から籠池氏をめぐる状況は、加速度的に変化していった。共著者の赤澤氏が語る。 「この年の2月22日に官邸で菅義偉官房長官が安倍首相の指示を受け、会議を行っています。後に国会で明かされた参加者は、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)、太田充官房総括審議官(同)、中村稔総務課長(同)。私はこの日を起点に、森友事件を巡る政府の動きが本格的に始まったと考えています。財務省が18年に公開した『改ざん調査報告書』をつぶさに読み込めば、理財局の幹部が昭恵夫人の記録が残った決裁文書の改ざんに踏み切ったのも、22日以降と考えられる。 この見方を採れば、なぜ翌23日に初村秘書が籠池氏に電話をかけてきたのか、さらには24日に安倍首相が、籠池氏への急な手のひら返しとも取れる答弁をしたのか、すべて説明がつきます。ただ昭恵氏本人は、こうした政府の動きは知らなかったはずです」』、「2月22日に官邸で菅義偉官房長官が安倍首相の指示を受け、会議を行っています。後に国会で明かされた参加者は、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)、太田充官房総括審議官(同)、中村稔総務課長(同)。私はこの日を起点に、森友事件を巡る政府の動きが本格的に始まった」、「理財局の幹部が昭恵夫人の記録が残った決裁文書の改ざんに踏み切ったのも、22日以降と考えられる」、なるほど。
・『「そんな……」と絶句した昭恵氏  3月15日の夜、東京から帰阪した籠池夫妻のもとに、昭恵氏から電話がかかってきた。 「私もわからなかったんです。知らなかったんです」 「でも、学校はだめになってしまいました」(籠池氏) 「頑張ってほしい、頑張って続けてほしかったけど無理だったんです。もう遅いんです」 「終わったことですからしかたないですね」(籠池氏) 「私は知らなかったんです。こういうことになっていくとは知らなかったんです。主人が、主人が……」 そこで籠池氏が「もうこれ以上は守り切れません。もう守れません」と通告し、100万円を昭恵夫人から受領したことも表で言わざるを得ないと告げると「そんな……」と絶句したという。これが籠池氏と昭恵氏との最後の会話になった』、確かに「昭恵氏」は、この団塊ではツンボ桟敷に置かれていたのだろう。
・『籠池氏は「刑事事件については裁きを受け容れるつもり」  ちなみに籠池氏は、後にこの100万円を昭恵氏に返却しに行ったが、その札束が上下の2万円以外はただの紙切れで、そのカラクリを撮られてしまう、という珍事も起きた。やはり怪しい人物だ、と思わせる場面だったが、籠池氏は反論する。 「(当時、広報兼アドバイザーのようになっていた)著述家の菅野完氏から『寸分の狂いもないものだから。本物と両方持っていくように』と言われたのだが、ボクは取り出すまで冗談だと思っていたので驚いた。本物のほうは、別のポケットに入っていたのだった」 森友事件を単なる補助金詐取事件に矮小化することなく、財務省が組織的に公文書を改ざんし、自殺者まで出した一大事件として真相を究明すべきだと訴える籠池氏は、最後にこう綴っている。 「(自身の)刑事事件については裁きを受け容れるつもりだ。残された人生を少しでも世の中の役に立つことに使いたい。森友事件の真相解明についても、微力ながら尽くしていきたい。そのためにも、もう一度、ボクを国会の証人喚問に呼んでいただけないだろうか。佐川元理財局長も一緒に証言台に立てばいい。もちろん昭恵夫人にも来てもらいたい」』、「菅野完氏」が何故、お粗末なアドバイスをしたのかは不明だ。安部政権下では、「国会の証人喚問」など残念ながら夢のまた夢だろう。

第三に、大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者)の相澤冬樹氏が3月9日付けYahooニュースに掲載した「近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える」を紹介しよう。
・『実刑判決、収監、そして保釈。籠池氏の闘争宣言  世間の耳目を集めた森友学園、籠池夫妻の補助金詐欺事件。その一審判決から一夜明けた2月20日の昼さがり。大阪拘置所に近いファミレスの一角に籠池泰典前理事長の妻、諄子さんの姿があった。実刑判決を受け、即日、大阪拘置所に収容された夫が保釈されてくるのを待っていた。 「お父さん立派やったわ。人間社会、現世ではいろんな人がいろんな絵を描くから有罪かもしれんけど、私の心の中、神様の世界では無罪やから。『(判決後の)記者会見頼むわ』と言って、10人くらいの事務官に囲まれて拘置所に行ったの。『行ってらっしゃい』と言ったら軽くうなずいてたわ」 しかし諄子さんには気がかりなことがあった。夫婦そろって検察に逮捕され約300日間勾留されていたから、拘置所内の様子をよく知っているのだ。 「あそこは寒いのよねえ。きのうは冷え込んだでしょ。寒かったやろな。すぐに出てくると思ったから何も差し入れなかったけど、あそこで一夜を明かすんやったらフリースを差し入れたらよかった」 ところがいくら待っても夫は出てこない。そのうち弁護士から連絡が入り、いったん大阪地裁で認められた保釈を、検察が高裁に抗告して止めたことがわかった。諄子さんは思わずつぶやいた。「また検察の嫌がらせだわ。でもきっと良くなる。前向きに考えるわ」 翌2月21日の夜8時過ぎ、籠池泰典前理事長は判決から2日ぶりに保釈された。拘置所前で「お帰りなさい」と出迎える諄子さん。籠池氏は集まった報道陣に「3連休明けまで出して頂けないかと思っていました」とおどけた後で表情を引き締めた。「判決はまさに国策捜査の筋書きに沿ったものだと思います。もちろん控訴します。最高裁まで闘います」』、相澤氏はNHKで森友問題担当だったが、閑職に飛ばされ、大阪日日新聞に転職した人物である。
・『二審では完全無罪を主張へ  「ベリーグッド!おいしいわ、ここ」籠池前理事長が声を上げた。横にはむろん諄子さん。保釈から数日後の昼下がり。近所の人に教わった喫茶店で手作りのケーキをほおばった籠池氏の第一声だ。私は尋ねた。「甘いものはお好きですか?」「好きですよ。お酒も飲むけど最近はあまり飲まないからね」 この店に来たのは控訴審での方針をじっくり聞くためだ。一審は籠池前理事長が懲役5年の実刑。諄子さんは起訴された内容の一部が無罪になり、執行猶予のついた懲役3年の判決だった。夫妻はすでに控訴している。どう闘うのか?籠池氏は明言した。「全面無罪。それでいきます」 元特捜検事の郷原信郎弁護士に相談したところ、「量刑がより軽い補助金適正化法違反にすべき話」として、詐欺に問うべきではないという考えを示されたという。 しかし籠池氏は一審では起訴内容の一部を認めていた。幼稚園の運営を巡る大阪府などの補助金について、一部に書類を書きかえるなどの不正があったと認めた上で、ほかの部分の無罪を主張していた。だから籠池氏は一審では完全無罪はありえなかった。 これについて籠池氏は語った。 「(申請に必要な)診断書をいじくった。それは認めるけど、保護者によっては発行日が適切でない診断書を出す方もいる。取り直してもらうのも何だから手を加えたことはある。補助金ですべきこと(教員の配置など)はしていたんですよ。でも弁護士から『診断書を変えるのは罪。そこは認めた方が裁判官の心証がいい』と言われて従った。 だから判決を聞いて思ったね。甘い!…あ、これはケーキのことじゃないからね。弁護団のことね」 もっともこれは籠池夫妻の受けとめ方であって、弁護団には弁護団の考え方がある。詳細には明らかにできないが、夫妻との間で様々な行き違いがあった。第三者が一方的に弁護団を非難するのは適切ではない』、被告と「弁護団」の関係は確かに一筋縄ではいかないようだ。
・『検察の控訴は「懲役5年では足りぬ」  一方、検察も判決を不服として控訴した。一部無罪の諄子さんについて控訴するのは当然予想されたが、起訴された内容のすべてが認められ実刑判決になった籠池氏についても控訴した。これは「懲役5年では足りぬ」と、より重い刑を求める検察の姿勢を示している。 その検察の控訴申立人は大阪地検の山本真千子次席検事。籠池夫妻を逮捕起訴した時の大阪地検特捜部長だ。そして、財務省の背任・公文書改ざん事件を不起訴にした時の特捜部長でもある。まさに因縁であろう』、「検察」はよくぞ「控訴」したものだ。
・『近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える  籠池夫妻の法廷闘争は第2ラウンドで更に激しさを増しそうだ。しかし、この裁判で何が解明されたというのだろう? 一審の裁判をずっと傍聴してきて私が感じたのは、「とにかく何が何でも夫妻を有罪にしたい。特に籠池前理事長を実刑にしたい」という検察の強い意向だ。判決はまさにその通りになった。 森友学園の小学校建設の補助金申請に深く関わった設計業者や建設業者は詐欺の共犯とされたが起訴猶予となり、逮捕も捜索もされなかった。籠池夫妻だけが逮捕され、約300日間にわたって拘置所に身柄を勾留された。この点を籠池氏は「口封じのための国策捜査だ」と法廷で訴えた。 何の口封じか?森友事件の本丸である国有地の不当な値引きだ。小学校の用地として財務省近畿財務局が学園に売った国有地は8億円も値引きされていた。財務省は「地中3メートル以下の深さにあるごみの撤去費用だ」と説明したが、そんなごみが本当に地中の奥深くにある証拠はどこにもない。そしてこの土地に建つ小学校の名誉校長は安倍昭恵氏、つまり安倍首相の妻が就任していた。「そこの経緯をしゃべられたくないから別件で逮捕したのだ」と籠池氏は訴えた。 不当な値引きを行った近畿財務局による背任。その土地取引の経緯を記した公文書の改ざんを指示した財務省の佐川宣寿理財局長(当時)ら。安倍昭恵首相夫人の名前は公文書からすべて消された。こうした森友事件の本丸にあたる不正の刑事責任は一切問われていない。裁判にならないから真相は解明されないままだ。 そして、改ざんを上司に強要された近畿財務局の職員は、精神的に追い詰められて自ら命を絶った。それがおととしの3月7日のこと。今年の3月7日はこの職員の三回忌だった。事件の犠牲者のことを忘れてはならない』、「森友事件の本丸にあたる不正の刑事責任は一切問われていない。裁判にならないから真相は解明されないままだ」、これでは自殺した「近畿財務局の職員」も浮かばれないだろう。
・『国有地値引きと公文書改ざんの真相究明を報道と市民の力で  籠池夫妻については、安倍首相批判に回って以降、政権に批判的な人々の間で一種もてはやすような空気がある。 一方で、教育勅語の暗唱などかつての教育方針や差別的言動などから「この夫妻のことは容認できない」という人々もいる。 私はいずれの立場も取らない。私が注目しているのは籠池夫妻への捜査や裁判が本当に公正なものと言えるかどうかだ。そのために裁判を傍聴しているし、夫妻への取材も続けている。夫妻のこれまでの言動が容認できないとしても、不当な捜査、不当な裁判が行われてよいということにはならない。これについては二審でも争われることになるだろう。 だが最も大切なことは、国有地の不当な値引きと、土地取引の経緯を記した公文書の改ざんだ。改ざんによって安倍昭恵首相夫人の名前は消えた。そして改ざんを強要された職員が命を絶った。これこそ森友事件の本丸であり、犠牲者が出ているのだ。 籠池夫妻の詐欺事件は、これら本丸から世間の目をそらす効果があった。だから“国策捜査”を訴える籠池氏の主張にも一理ある。籠池夫妻の裁判は、森友事件の本丸とはまったく無関係だ。 国有地の値引きと公文書改ざんの真相究明は本来なら検察の役目だが、大阪地検特捜部はすべてを不起訴にしてその役割を放棄した。だからこそ市民が声を上げ続けることが大切だ。さらには報道の出番だろう。私も記者としてこれからも取材にあたる。犠牲になった近畿財務局職員の無念を晴らすためにも。三回忌にあたり決意を新たにした』、「最も大切なことは、国有地の不当な値引きと、土地取引の経緯を記した公文書の改ざんだ」、全く同感だ。「相澤氏」の今後の活動に大いに期待したい。
タグ:最も大切なことは、国有地の不当な値引きと、土地取引の経緯を記した公文書の改ざんだ 国有地値引きと公文書改ざんの真相究明を報道と市民の力で こうした森友事件の本丸にあたる不正の刑事責任は一切問われていない 不当な値引きを行った近畿財務局による背任。その土地取引の経緯を記した公文書の改ざんを指示した財務省の佐川宣寿理財局長(当時)ら。安倍昭恵首相夫人の名前は公文書からすべて消された 近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える 検察の控訴は「懲役5年では足りぬ」 二審では完全無罪を主張へ 実刑判決、収監、そして保釈。籠池氏の闘争宣言 「近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える」 yahooニュース 相澤冬樹 籠池氏は「刑事事件については裁きを受け容れるつもり」 「そんな……」と絶句した昭恵氏 理財局の幹部が昭恵夫人の記録が残った決裁文書の改ざんに踏み切ったのも、22日以降と考えられる 昭恵夫人の記録が残った決裁文書が改ざんされたのは… 安倍首相の評価がコロっと変わり、批判的な答弁 おたくの『瑞穂の國記念小學院』のホームページに載っている昭恵夫人の写真とコメントを削除してください 「安倍晋三事務所」の初村滝一郎秘書 朝日新聞の初報によって森友事件が表面化 「昭恵夫人の写真とコメントを削除してください」 昭恵氏の振舞いこそが、森友事件の火種を生んでいた 「文書にしてほしい」と伝えられ送ったファックス 写真を見せてからギアが3段くらい上がったのである。まさにこの日こそ神風が吹くキッカケの第1弾だった。スリーショット写真の提示以降、何もかもがスムーズに進むようになった。 昭恵氏が予定地を視察した旨を告げている。途端に担当者の顔色が変わった 学園の件は「財務省本省案件」に 首相夫人付き職員の谷査恵子氏も同行し、籠池夫妻と昭恵氏のスリーショットも撮っている 昭恵氏は初めて塚本幼稚園を訪問 「神風」を吹かせたスリーショットを撮影 「安倍晋三記念小学校」はまずいのではないか 「ホテルオークラ東京」の老舗割烹「山里」 『昭恵さん』と呼んでください」と言われ… 国策不捜査 反省の傍ら、常軌を逸した政府の対応を糾弾 2週間後に判決を控えた心境は「不動心」 籠池泰典が初めて明かした「100万円事件」の真相と「昭恵さん」のこと 「籠池泰典が明かす「安倍晋三からです」と渡された100万円の真相 なぜ急に"総理案件"になったのか」 文春オンライン PRESIDENT ONLINE 市民団体らが、決裁文書を改ざんした虚偽公文書作成や国有地を不当に安く売却したとする背任などの容疑で、佐川宣寿元国税庁長官や財務省職員ら計38人を告発したが、全員が不起訴処分 問題の発端は度が過ぎた忖度 300日も拘置所に入れられた 意見陳述を得意の一句で結ぶ 「安倍晋三からです」と現金100万円を渡された 業者「安倍晋三小学校」と証言 「国策捜査を許さない」と被告 「森友学園事件で籠池被告に実刑判決、「ドタバタ劇」は第2ラウンド突入へ」 ダイヤモンド・オンライン 戸田一法 (その19)(森友学園事件で籠池被告に実刑判決 「ドタバタ劇」は第2ラウンド突入へ、籠池泰典が明かす「安倍晋三からです」と渡された100万円の真相 なぜ急に"総理案件"になったのか、近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える) 森友学園問題
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積水ハウス事件(その3)(積水ハウス詐欺被害「封印された報告書」の驚愕 公開拒んできた「通常起こりえないこと」の真相、積水ハウス内紛で前会長が反攻  三菱UFJ巻き込み「マネロン手口」追及も 和田勇・積水ハウス前会長兼CEOらインタビュー【前編】、【後編】、積水ハウスの"元天皇"が「会社に戻りたい」と訴えるワケ 「会社は誰のものかと深く考えた」) [企業経営]

積水ハウス事件については、2018年3月11日に取上げた。新たに驚くような展開が見られた今日は、(その3)(積水ハウス詐欺被害「封印された報告書」の驚愕 公開拒んできた「通常起こりえないこと」の真相、積水ハウス内紛で前会長が反攻  三菱UFJ巻き込み「マネロン手口」追及も 和田勇・積水ハウス前会長兼CEOらインタビュー【前編】、【後編】、積水ハウスの"元天皇"が「会社に戻りたい」と訴えるワケ 「会社は誰のものかと深く考えた」)である。

先ずは、昨年10月11日付け東洋経済オンライン「積水ハウス詐欺被害「封印された報告書」の驚愕 公開拒んできた「通常起こりえないこと」の真相」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/307901
・『積水ハウスが2017年に東京都品川区の老舗旅館「海喜館」の土地購入に際して、詐欺師集団「地面師グループ」に計55億円をだまし取られた事件をめぐって、積水ハウスが第三者の協力を得て事実関係を調べ上げていながら、詳細をひた隠しにしてきた「調査報告書」の全容が『週刊東洋経済』の取材でわかった。 同事件は詐欺の被害額としては史上空前の規模で、マスコミは大きく取り扱った。 当時、事態を重くみた積水ハウスは弁護士や公認会計士による調査対策委員会を発足させ、「なぜ、こういう事件が起きてしまったのか」を綿密に調べた上で調査報告書を完成させた。ところがその報告書は、2018年1月24日の取締役会に提出されたのみで、社外に公表されたのは2ページ半の「概要」のみ。1年9カ月が経った現在も、積水ハウスは全文公開を拒んでいる』、「調査対策委員会」による「調査報告書」の「全文公開」を拒否し続けているとは、公開企業にはあるまじき行為だ。よほど都合が悪いことが書かれているのだろう。
・『積水ハウス地面師事件は株主代表訴訟に発展  積水ハウス地面師事件において、阿部俊則会長(事件当時は社長)をはじめとする経営陣に善管注意義務違反を問う株主代表訴訟が起きていることは、ほとんど報道されず、知られていない。その株主代表訴訟が今、大きな岐路にさしかかっている。調査報告書が一般公開されるか否かの瀬戸際にあるのだ。 きっかけは今年4月、大阪地方裁判所が積水ハウスに「調査報告書を提出せよ」と命じる判決を出したことだった。この判決に積水ハウスは反発し、即時抗告。「(調査報告書は)外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりする」(積水ハウス側の意見書)といった理屈からだ。 だが大阪高等裁判所は7月、積水ハウスの抗告棄却を決定。ついに積水ハウスは調査報告書を裁判所に提出することとなった。ただ同時に、積水ハウスは「閲覧制限」をかけるよう裁判所に申請し、あくまでも公開を限定的にするよう求めた。10月11日現在も、報告書は閲覧できない状態が続いている。 積水ハウスが報告書の公開を頑なに拒むのは、そこに現経営陣が知られたくない事実が記されているからである。そこには何が書かれているのか。『週刊東洋経済』は調査報告書の全文を独自入手。裁判資料との照合と関係者への取材を通して事実関係を押さえた。 〈通常起こりえないこと〉。調査報告書は冒頭、事件をこう評す。普通の会社が、常識的な判断をしていれば起こりえない事件だった、という意味だ。 事件の経緯を知る、積水ハウスのある関係者は東洋経済の取材にこう話した。「地面師グループが狡猾で手口も巧妙だったため積水はそれを見破れず、騙されてしまった・・・世間はそう思ったかもしれない。だが、この事件はそんな単純なものではない。調査報告書には、積水の経営陣にとって何が何でも知られまいとする事実が克明に記されている」』、高裁からの提出命令に対し、「公開を限定的にするよう求めた」とは、「経営陣にとって」よほど不都合な記載があるのだろう。
・『決済日当日まで書類以外の本人確認を怠っていた  たとえば不動産売買において、売り主が本物であるかどうかの「本人確認」をすることは基本中の基本だ。高額取引であればあるほど、パスポートや公正証書といった書類確認ではなく、知人や近隣住民による生の目で本人確認を実施する。にもかかわらず本件で積水ハウスは、決裁日当日まで書類以外の本人確認を怠っていた。 打ち合わせの途中で、偽地主が自分の住所や誕生日、干支を間違えるといった不自然な挙措を見せてもなお、本人確認を実施していなかったのだ。 「通常起こりえないこと」が、なぜ起きてしまったのか。そして、なぜ積水ハウスの経営陣は報告書の公開に抵抗するのか。『週刊東洋経済』10月12日(土)発売号はスペシャルリポート「積水ハウス地面師事件「封印された報告書」の全貌」で、調査報告書に記された驚くべき事実を報じている。なお、同記事は『週刊東洋経済プラス』でも全文公開している』、残念ながら『週刊東洋経済』は手元にないので、他の雑誌記事で見てみよう。

次に、本年2月21日付けダイヤモンド・オンライン「積水ハウス内紛で前会長が反攻、三菱UFJ巻き込み「マネロン手口」追及も 和田勇・積水ハウス前会長兼CEOらインタビュー【前編】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/229577
・『大手住宅メーカーである積水ハウスの和田勇前会長兼CEO(最高経営責任者)らは2月中旬、同社の経営陣刷新を求める株主提案を行った。同社では「地面師」と呼ばれる地主になりすます詐欺師に約55億円をだまし取られたことが2017年に発覚。その責任を巡って和田氏と阿部俊則会長(当時社長)が対立して互いを解任させようとする事態になり、18年に和田氏が阿部一派の手によって辞任へ追い込まれた。“クーデター”から2年を経て、和田氏は自身を含む11人の取締役候補の一括選任を4月の定時株主総会で求める。和田氏に加え、株主提案側の取締役候補に名を連ねた勝呂文康取締役専務執行役員(現職)、マネーロンダリングに詳しいクリストファー・ダグラス・ブレディ氏とESGの専門家であるパメラ・フェネル・ジェイコブズ氏がダイヤモンド編集部の単独インタビューに応じた。インタビューを通じて、彼らは積水ハウスへの株主提案書だけではなく、地面師事件に関連して三菱UFJ銀行にも書簡を送っていることが分かった』、そうそうたる専門家2名を「株主提案側の取締役候補」にするとは、かなり本気のようだ。
・『地面師事件後のクーデター オリンパス事件に似ている(Qは聞き手の質問)  Q:株主提案通りに取締役の全面入れ替えができた場合、阿部俊則会長(当時社長)らが取引の当事者だった地面師事件を調べ直すと宣言しています。阿部氏らを刑事告訴するつもりがあるということですか。 和田氏 会社は地面師だけを訴えています。積水ハウスは被害者だから何が悪いのと思われるかもしれないが、この事件はもっと真相を追求しないといけない。だから、第三者委員会をもう一度立ち上げます。 警察も動きようがないですよね、会社から(地面師を訴える以外の)被害届が出ないと。刑事事件になるかどうかは、調べてみないと分からないですよ。 (編集部注:株主提案では、偽の所有者と土地の売買契約を結び約55億円を騙し取られた地面師事件での「不正取引」、事件発覚後に作成された調査報告書の開示を拒む「重要情報の隠蔽」、不正取引の責任から解職すべきとの判断を無視して会社を支配する「ガバナンス不全」を理由に、阿部俊則会長、稲垣士郎副会長、仲井嘉浩社長、内田隆副社長を中心とした現経営陣は不適任であるとした。なお、上記の代表取締役4人は株主代表訴訟で善管注意義務違反に問われている) Q:積水ハウス側に、単純なミスとは思えない見逃しの連鎖が起きたんですよね? 和田氏 (社外役員からなる調査対策委員会が2018年に出した)「調査報告書」は読んだ? Q:読みました。地面師グループに預金小切手で代金を支払ったこと、売買決済の前に本物の所有者から内容証明が何回も届いて警告が発せられていたのにこれをスルーしていたことなどが判明し、被害金は裏社会に流れたと推定されるとありました。また、阿部氏の重い責任を指摘していました。 和田氏 誰が読んでもおかしいでしょう?こんなのを読んだら、(阿部会長は)被害者じゃないでしょう?加害者とは言わないが、それに近いよね。だから私は「不正取引」だと言っている。 Q:少なくとも、内容証明が届けば、法務部門が一度ストップをかけて本人確認を再度やるものではないですか。 和田氏 普通はね。ありえない話。 社長案件になっていたからでしょうね。10回くらい信号でストップかかっているのに平気で乗り越えて、赤信号でもどんどん入ってしまった。 Q:当時、東京・五反田の土地を売るというのは詐欺話だと、他の同業者は気づいていたと聞きます。 和田氏 先に話が持ち込まれた大和ハウスは断り、その後にうちがすぐ飛びついたらしいです。 Q:国内事業は阿部氏、海外事業が和田さんの担当だったとはいえ、CEOだった和田さんの睨みはきかなかったんですか。 和田氏 私が全く知らないうちにやっていた。ある面でガバナンスが効いていなかったということです。 Q:そこは自らが反省すべきところ? 和田氏 反省するところ。社内に100億円以下のものは取締役会を通さなくてもいいというルールがあったので、暗黙のうちに進んでしまったんだと思います。 Q:発覚してからは、和田会長は阿部会長を問い詰めたんですか。 和田氏 やったから、(事実上の解任というかたちで)梯子を外されたんですよ。私は委員会を立ち上げてこの事件の問題を調査し、調査結果を世の中に発表するように言いました。 罪が恐くて、隠し通そうとしたんでしょう。 ブレディ氏 現経営陣は、(株主代表訴訟を受け)裁判所から調査報告書を提出するよう命令されても抵抗しました。 この件は、かつてオリンパスで起こったこと(巨額損失隠し事件)とよく似ていて、米国でも注目されています。警告を出した者が結局、追い出されてしまう。取締役会に独立性がないと、こうしたことが起こってしまうんですよ』、「地面師グループに預金小切手で代金を支払ったこと、売買決済の前に本物の所有者から内容証明が何回も届いて警告が発せられていたのにこれをスルーしていたことなどが判明し、被害金は裏社会に流れたと推定される」、振込ではなく、わざわざ「預金小切手で代金を支払った」のは不自然だ。「内容証明が届けば、法務部門が一度ストップをかけて本人確認を再度やる」のが普通なのに、「社長案件になっていたから」ストップがかからなかったというのも、信じられないような話だ。
・『地面師事件にマネロンの兆候 三菱UFJに質問の書簡を送った  Q:地面師グループの主犯格が捕まって、騙されたカネは特別損失計上され、積水ハウスの問題としてはもう過ぎたものという認識が日本では一般的なようにも思います。米国の投資家や専門家などは、この問題をまだ気にしているんでしょうか。 ジェイコブズ氏(略歴はリンク先参照) コーポレートガバナンスは今、世界的に最も重要な問題となってきています。多くの企業が適正な基準でもって仕事をし、パフォーマンスを出していくことが期待されている。テロにもマネーロンダリングにも関与してはならず、そうした問題は米国では非常に大きなレッドフラッグになります。  Q:マネロン問題に詳しいブレディさんは2月17日に開かれた株主提案側の会見で、この事件はマネロンの兆候が見られ、この件に関して米国の情報機関と動いていると言及しました。(編集部注:高額な不動産取引は銀行振り込みが一般的だが、この事件では預金小切手で代金が支払われた。小切手はカネの流れの記録が残りにくいため、マネロンに利用されやすい) ブレディ氏(略歴はリンク先参照) 当時は内部にいなかったので、調査を手伝うことはできませんでした。いれば、もっと簡単だったんですけど。 Q:ブレディさんは、小切手を現金化した三菱UFJ銀行にも問題があると指摘しています。この件で三菱UFJとすでに話はしているのですか。 ブレディ氏 質問するための書簡を書きました。 Q:いつ送りましたか。 ブレディ氏 1月9日。 Q:返事は? ブレディ氏 まだです。三菱UFJは良い銀行だと思いますし、積水ハウスとも良い関係を持ってきました。今後私たちが取締役になったときも協力関係を維持していきたい。書簡には、私たちは銀行と協力していったい何が起こったのかつまびらかにしたいと書きました。 Q:調査をするとなったら、三菱UFJとも手を組みながらやっていくのがベスト? ブレディ氏 もちろんそうです。その必要があります。 Q:三菱UFJフィナンシャル・グループ全体で見ると19年に積水ハウスの株式保有比率が増えて、8%を超える大株主になっています(19年8月時点)。ということは問題視していないんでしょうか。 ブレディ氏 分からないですけど、積水ハウスそのものはね、良い会社だと思います。>>後編・・・に続く』、「マネロン」では今年、海外監督当局による査察があるので、当然、問題視されるだろう。「19年に積水ハウスの株式保有比率が増えて、8%を超える大株主になっています」、「MUFG」が5%を超えて株式を買い増したのは、実質的には支援の意思があることなのかも知れない。こんなガバナンスに問題がある企業に支援とは、解せない行動だ。

第三に、上記の続き、2月21日付けダイヤモンド・オンライン「積水ハウス取締役ポスト争奪、「ESG銘柄のガバナンス不全」に投資家動く 和田勇・積水ハウス前会長兼CEOらインタビュー【後編】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/229582
・『大手住宅メーカーである積水ハウスの和田勇前会長兼CEO(最高経営責任者)らは2月中旬、同社の経営陣刷新を求める株主提案を行った。自身を含む11人の取締役候補の一括選任を4月の定時株主総会で求めるものだ。他の株主からすれば、株主提案によって業績や株価が上がるか否かが通常の関心どころ。和田氏らは「ガバナンス不全」を指摘し、ガバナンスを強固にすることを目的としており、儲けを確信する判断材料としては弱い。ただ、近年は年金基金などを中心にESG(環境、社会、ガバナンス)の観点で投資先を選ぶ機関投資家が増えている。その観点を第一としたときに、堅調な業績を出している現経営陣、ガバナンス不全を訴える株主提案側のどちらを支持するか――。前編に続き、和田氏に加えて、株主提案側の取締役候補に名を連ねた勝呂文康取締役専務執行役員(現職)、マネーロンダリングに詳しいクリストファー・ダグラス・ブレディ氏とESGの専門家であるパメラ・フェネル・ジェイコブズ氏が応じたダイヤモンド編集部との単独インタビューをお送りする(Qは聞き手の質問)』、早く真相を知りたいものだ。
・『ESG観点の投資家と接触 「もっと知りたい」の声  Q:今回の株主提案について、どういった人たちに働きかけていくのでしょうか。 ブレイディ氏 積水ハウスの株主の約20%を占める米国、海外投資家のことを私たちはよく知っていますし、加えて日本の機関投資家と話していきます。 Q:日本の大株主には、年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人。GPIF資料に基づく2019年3月末時点の状況)がいます。GPIFは投資運用先について、非財務情報であるESG(環境、社会、ガバナンス)要素を考慮している。積水ハウスはESGを重視する経営であることを強調してきたのに、株主提案は「ガバナンス不全」と断じた。ESGのG(ガバナンス)は偽りの状態ということですか。 ジェイコブズ氏 その通り。ESGのE(環境)については良い。S(社会)についてはちょっとまだ定かではないですが、積水ハウスのエコフレンドリーな建物、環境の尊重、地域に関与して仕事をしていく姿勢などは、高く評価できる。対して、G(ガバナンス)はかなり問題を抱えていると認識しています。ガバナンスが足を引っ張っているというのは残念です。 (編集部注:株主提案では、積水ハウスの人事・報酬諮問委員会は地面師事件の責任に関し、阿部俊則会長〈当時社長〉を解任すべきと判断したが、これが無視され現経営陣による会社支配が続いていること、事件の調査報告書の全面公表に抵抗する情報隠蔽行為により、「ガバナンス不全」に陥っていると断じた) Q:今の経営体制を継続すると、ESGの観点で選んできた投資家たちは離れていくのでしょうか。)(P2以降は有料)』、「人事・報酬諮問委員会は地面師事件の責任に関し、阿部俊則会長〈当時社長〉を解任すべきと判断したが、これが無視され現経営陣による会社支配が続いている」、これでは「ガバナンス」は0点どころか、マイナス点だ。「P2以降は有料」、なので紹介できないのが、残念だが、次の記事に期待しよう。

第四に、3月11日付けPRESIDENT Online「積水ハウスの"元天皇"が「会社に戻りたい」と訴えるワケ 「会社は誰のものかと深く考えた」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/33574
・『土地取引で約55億円を騙し取られた詐欺事件をめぐり、積水ハウスから事実上解任された和田 勇前会長が、自身を含めた取締役候補の選任を求める株主提案を同社に起こしている。「復権を目指す気はさらさらない」と言う和田氏を直撃し、その意図を聞いた――』、面白そうだ。
・『「クーデター」による会長解任から2年  3月4日、東京・丸の内で物珍しい勉強会が開かれた。中身は日本コーポレートガバナンス研究所(JCGR)代表理事を務める若杉敬明東京大学名誉教授が日本のコーポレートガバナンス(企業統治)について話すという至って普通の勉強会なのだが、これを物珍しいというのは若杉名誉教授の横に積水ハウス前会長の和田勇氏が座っていたからだ。 和田氏と言えば同社取締役を26年務め、社長を10年、会長に10年続けた積水ハウスの「天皇」だった人。長期間にわたって同一人物がトップに君臨する企業を、人は健全なコーポレートガバナンスが働いていない会社と思うだろう。そんな会社のトップにいた張本人が勉強会で熱心に耳を傾け、挨拶で「私は若杉先生の弟子になってコーポレートガバナンスを勉強したい」などと言っているのである。誰もが不思議に思うだろう。 和田氏は2018年に会長から相談役に退いたが、これは勇退ではなく、事実上の解任だった。さまざまなメディアがその経緯を書いているが、改めて簡単におさらいしておく』、確かに「積水ハウスの「天皇」だった人」が、今になって「コーポレートガバナンスを勉強したい」、というのは裏がありそうだ。
・『約55億円を騙し取られた「地面師詐欺事件」  2017年、東京・西五反田にある土地の取引を巡って、積水ハウスは地面師と呼ばれる連中の詐欺に遭い、約55億円を騙し取られた。 問題の土地は海老澤佐妃子という人が所有するもので、その知人と称する人物が土地売買を積水ハウスに持ちかけたことに始まる。積水ハウスはこの知人が経営する会社から転売されるという形で西五反田の土地を買うことにした。そこで海老澤と知人の会社の間で60億円の売買契約が結ばれ、知人の会社と積水ハウスの間で70億円の売買契約が結ばれ、手付金の支払いと所有権の仮登記が完了した。 ところがその後、積水ハウスに土地売却を持ちかけた「海老澤」は偽物だった。会社には本物の海老澤から「真の所有者は自分であり、売買予約をしたり、仮登記を行ったりしたことはないので、仮登記の抹消を要求する」という内容証明郵便が複数届いた。 他にもリスク情報が寄せられたため、弁護士などは、「会社に現れた海老澤が本人なのか、海老澤の知人などによる確認が必要」と指摘したものの、これが実行されなかった。さらに積水ハウスは寄せられるリスク情報はブローカー的人物が関与しようとしているものと判断し、残余金の支払いを約2カ月前倒し、2017年6月1日、詐欺師集団に巨額のお金を支払った。6日、法務局より本登記申請が却下され、9日には通知が届いたことで詐欺に気づいた』、「積水ハウスは寄せられるリスク情報はブローカー的人物が関与しようとしているものと判断し、残余金の支払いを約2カ月前倒し、2017年6月1日、詐欺師集団に巨額のお金を支払った」、わざわざ「残余金の支払いを約2カ月前倒し」たとは不自然だ。
・『社長をクビにしようとして返り討ちに  これを受けて社外監査役と社外取締役で構成する調査委員会による調査が始まり、2018年1月に報告書がまとまった。そこには一連の取引で当時社長だった阿部俊則氏(現会長)が物件を内覧し、早々に社長決裁をしたことも書かれていたため、1月24日の取締役会で和田氏が当時社長だった阿部俊則氏(現会長)の社長解職動議を提案すると、当事者である阿部氏を除く取締役の賛否は5対5の真っ二つに割れた。 その後、阿部氏が席に戻ったところで取締役会議長交代の緊急動議が出され、これが6対4で可決。新たな議長が出した和田氏解任動議が可決され、和田氏は自らの意志で退く辞任を決めた。 この経緯を見る限り、一連の事件は天皇だった和田氏が巨額詐欺事件に関わっていた阿部氏をクビにしようとしたところ、返り討ちに遭ったというもので、企業によくある会長と社長の暗闘、「主殺し」と思える。 2020年2月14日、その和田氏と積水ハウス取締役で専務執行役員の勝呂文康氏などが2人を含む11人の取締役候補の選任を求める株主提案をした。 2018年1月24日付調査対策委員会報告書によれば、地面師事件では阿部氏のほか当時副社長だった稲垣士郎氏(現副会長)、専務だった内田隆氏(現副社長)、常務だった仲井嘉浩氏(現社長)にも責任があるとされている。その4人が中心となっている現経営陣が不正取引の責任を取らず、調査報告書の開示を拒んでいる』、「現経営陣が不正取引の責任を取らず、調査報告書の開示を拒んでいる」、上場企業経営者にあるまじきことだ。
・『和田氏が語ったねらいとは  「今の積水ハウスのガバナンス不全は明らか。体制刷新をするしかない」。和田氏らは株主提案をした後の2月17日に開いた記者会見で、そう主張した。 正直言って違和感がある。先述したが和田氏は社長を10年、会長を10年続けた積水ハウスの絶対君主だった人。おそらく在職中にはコーポレートガバナンスなどそっちのけの経営をしていたに違いない。その人が「今の積水ハウスはガバナンスがなっていない」と叫んでも、それは復権を目指した方便でしかないような気がする。 そこで和田氏本人を直撃、疑問をぶつけてみることにした。 インタビューに応じると言って都内のとある会議室に現れた和田氏は「まだお昼を食べてませんのや」と言い、自分で買ってきたというコンビニ弁当を目の前で広げた。「すまんけれど、食べながらでいいですか?」。そういう和田氏に「こちらこそお忙しいところすみません」などと返しながら単刀直入に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは和田氏の回答)。 Q:和田さんは積水ハウスの「天皇」として、ご自身の一存で会社を動かしていた。その人がここにきてコーポレートガバナンスは大事だと言っても信じる人は少ないのではないですか。 コンビニ弁当を食べながら聞いていた和田氏は箸を止め、穏やかな顔で少しびっくりするほど率直に話し始めた』、確かに「和田氏」本人の考え方を確認する意味はある。
・『「会社は誰のものか」を深く考えるようになった  A:「いま世間でESGって言いますやろ。僕が社長や会長だった時にE(環境)とS(社会)は頑張ったんやけど、G(ガバナンス)は、いま思えばあかんかったかもしらんね。ガバナンスは大事やと口では言っとったけど、本当のところが分かってへんかった。だから(コーポレートガバナンスを専門とする)若杉先生の弟子になろうと思ったんや」 なぜ心変わりしたのか詳しく聞くと、和田氏はこんなことを言い出した。1年ほど前、米国に遊びに行った。そこで知人の紹介で米レーガン政権とその後のパパ・ブッシュ政権で財務長官を務めたニコラス・ブレイディ財務長官の子息であり、米チャート・グループ会長兼CEOのクリストファー・ダグラス・ブレイディ氏に会った。場所はブレイディ氏の自宅であるニュージャージー州の農場だ。 「ブレイディさんはいろいろ話してくれたけれど、中でも印象に残ったのは『海外から日本に投資資金が思うように入ってこない原因の一つは、コーポレートガバナンスが未熟だからです』という話。そう言われて会社は誰のものかということを深く考えるようになった。株式会社は株主から『頼んまっせ』と言われて経営するもんやということがこの歳になって身に染みた。面白いもんやね。仕事漬けだった会長を辞めて頭に余裕ができていた。そこにブレイディさんの話が入ってくるもんやから、ものすごい勢いで吸収したわ」 帰国後、和田氏はこれまた人の紹介で若杉名誉教授と面会し、コーポレートガバナンスに目覚めたのだという』、「和田氏」にコーポレートガバナンスを攻め口にしろとアドバイスした人物が、一連の面談もセットしたのだろう。
・『「復権を目指しているのでは?」と聞くと……  Q:コーポレートガバナンスの重要性に気づいたということは分かりました。しかし株主提案でご自身も名前を連ねている。詰まるところ復権を目指しているのではないですか。 A:「ちゃうちゃう。会長を辞めてから2年がたつけれど、社員や取引先企業から『積水ハウスがどんどんおかしくなっている』という声が寄せられていて、心を痛めとった。そうした時に(和田氏とともに株主提案で取締役候補に名前を連ねている)勝呂くんから『いま立ち上がらないと、会社がおかしなことになる』と言われた。今年の1月やったかな。その勝呂くんが『取締役候補の数が足りないので入ってくれないか』というので、『ええよ』と言っただけ。復権なんてさらさら考えてへんわ。若杉先生の弟子になるつもりやし」 コーポレートガバナンス改革の礎になると言いながら、その実、何もしていない経営者を何人も見てきた立場からすると、和田氏の改心は本当なのだろうかという疑いは消えない。すでに一度経営から身を引いており、固辞する選択肢もあったはずだが「ブレイディさんや若杉先生から教わったことを実践してみようと思って引き受けることにした」と、あくまで組織の浄化が目的だという。そこでこんなことを聞いてみた』、「和田氏の改心は本当なのだろうかという疑いは消えない」、同感だ。
・『「『逆襲だ』と言われてもやめない」  Q:株主提案が多くの賛同を得て和田さんたちが取締役に復帰したら、積水ハウスはコーポレートガバナンス改革を積極的に進めるでしょう。しかし、仮に賛同を得られなかったら和田さんはどうするのですか。それでもコーポレートガバナンス改革の必要性を訴え続け、例えば若杉先生の活動にポケットマネーを出すつもりはありますか? 「当たり前やないですか。僕は取締役に復帰するためにコーポレートガバナンスの重要性を唱えているんやない。今度の株主総会で負けたら『はい知りません』なんてできる訳がない。そんなことをしたらブレイディさんたちに申し訳が立ちませんから」「もうやめとき。何を言っても『逆襲だ、復讐だ』と言われるだけなんやから」。和田氏は奥さんにそう言われているという。しかし「この戦いはやめられない。この歳になって僕は生まれ変わろうと思っているのやから」。教授の活動に拠出するポケットマネーの具体的な金額については明言しなかったが、かつての絶対君主は、どうやら「コーポレートガバナンス教」の信者になったようである』、株主総会が注目点だが、三菱UFJ銀行が現経営陣側についているようなので、和田氏側の苦戦が予想される。
タグ:地面師事件にマネロンの兆候 三菱UFJに質問の書簡を送った 経営陣刷新を求める株主提案 決裁日当日まで書類以外の本人確認を怠っていた 地面師グループに預金小切手で代金を支払った オリンパスで起こったこと(巨額損失隠し事件)とよく似ていて、米国でも注目されています。警告を出した者が結局、追い出されてしまう 社内に100億円以下のものは取締役会を通さなくてもいいというルールがあったので、暗黙のうちに進んでしまった 「積水ハウス内紛で前会長が反攻、三菱UFJ巻き込み「マネロン手口」追及も 和田勇・積水ハウス前会長兼CEOらインタビュー【前編】」 普通の会社が、常識的な判断をしていれば起こりえない事件 弁護士や公認会計士による調査対策委員会 社長案件になっていたからでしょうね 売り主が本物であるかどうかの「本人確認」をすることは基本中の基本 55億円をだまし取られた事件 内容証明が届けば、法務部門が一度ストップをかけて本人確認を再度やる 被害金は裏社会に流れたと推定される 売買決済の前に本物の所有者から内容証明が何回も届いて警告が発せられていたのにこれをスルーしていたことなどが判明 地面師事件後のクーデター 和田勇前会長兼CEO ESGの専門家であるパメラ・フェネル・ジェイコブズ氏 積水ハウス地面師事件は株主代表訴訟に発展 積水ハウス事件 「『逆襲だ』と言われてもやめない」 (その3)(積水ハウス詐欺被害「封印された報告書」の驚愕 公開拒んできた「通常起こりえないこと」の真相、積水ハウス内紛で前会長が反攻  三菱UFJ巻き込み「マネロン手口」追及も 和田勇・積水ハウス前会長兼CEOらインタビュー【前編】、【後編】、積水ハウスの"元天皇"が「会社に戻りたい」と訴えるワケ 「会社は誰のものかと深く考えた」) 和田氏の改心は本当なのだろうかという疑いは消えない 「復権を目指しているのでは?」と聞くと…… 地面師グループ 「会社は誰のものか」を深く考えるようになった おそらく在職中にはコーポレートガバナンスなどそっちのけの経営をしていたに違いない 和田氏は社長を10年、会長を10年続けた積水ハウスの絶対君主 和田氏が語ったねらいとは 社長をクビにしようとして返り討ちに マネーロンダリングに詳しいクリストファー・ダグラス・ブレディ氏 積水ハウスは寄せられるリスク情報はブローカー的人物が関与しようとしているものと判断し、残余金の支払いを約2カ月前倒し、2017年6月1日、詐欺師集団に巨額のお金を支払った ダイヤモンド・オンライン 積水ハウスは全文公開を拒んでいる 会社には本物の海老澤から「真の所有者は自分であり、売買予約をしたり、仮登記を行ったりしたことはないので、仮登記の抹消を要求する」という内容証明郵便が複数届いた 西五反田 約55億円を騙し取られた「地面師詐欺事件」 和田氏と言えば同社取締役を26年務め、社長を10年、会長に10年続けた積水ハウスの「天皇」だった人 若杉名誉教授の横に積水ハウス前会長の和田勇氏が座っていた 日本コーポレートガバナンス研究所(JCGR)代表理事を務める若杉敬明東京大学名誉教授が日本のコーポレートガバナンス(企業統治)について話すという至って普通の勉強会 「クーデター」による会長解任から2年 「積水ハウスの"元天皇"が「会社に戻りたい」と訴えるワケ 「会社は誰のものかと深く考えた」」 PRESIDENT ONLINE 人事・報酬諮問委員会は地面師事件の責任に関し、阿部俊則会長〈当時社長〉を解任すべきと判断したが、これが無視され現経営陣による会社支配が続いている 東洋経済オンライン ESG観点の投資家と接触 調査報告書 「積水ハウス取締役ポスト争奪、「ESG銘柄のガバナンス不全」に投資家動く 和田勇・積水ハウス前会長兼CEOらインタビュー【後編】」 三菱UFJフィナンシャル・グループ全体で見ると19年に積水ハウスの株式保有比率が増えて、8%を超える大株主になっています 海喜館 「積水ハウス詐欺被害「封印された報告書」の驚愕 公開拒んできた「通常起こりえないこと」の真相」 決済日当日まで書類以外の本人確認を怠っていた 偽地主が自分の住所や誕生日、干支を間違えるといった不自然な挙措を見せてもなお、本人確認を実施していなかった 小切手はカネの流れの記録が残りにくいため、マネロンに利用されやすい 和田氏が阿部一派の手によって辞任へ追い込まれた。“クーデター”から2年を経て、和田氏は自身を含む11人の取締役候補の一括選任を4月の定時株主総会で求める
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外国人問題(その3)(壮絶…日本で外国人の子供が「ギャング化」その厳しすぎる現実 社会から見捨てられた結果…、留学生に違法就労を強いる30万人計画の無責任 研究者たちはなぜ声を上げないのか、群馬の小さな町が直面し続ける移民流入の現実 大泉町、日本屈指の外国人タウンが歩んだ30年) [社会]

外国人問題については、昨年10月11日に取上げた。今日は、(その3)(壮絶…日本で外国人の子供が「ギャング化」その厳しすぎる現実 社会から見捨てられた結果…、留学生に違法就労を強いる30万人計画の無責任 研究者たちはなぜ声を上げないのか、群馬の小さな町が直面し続ける移民流入の現実 大泉町、日本屈指の外国人タウンが歩んだ30年)である。

先ずは、ノンフィクション作家の石井 光太氏が昨年12月8日付け現代ビジネスに掲載した「壮絶…日本で外国人の子供が「ギャング化」その厳しすぎる現実 社会から見捨てられた結果…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68984
・『ギャング化する外国籍の子供たち  今年9月、文部科学省は、日本に住む外国籍の子供のうち、15.8%に当たる約2万人が不就学になっている可能性があると発表した。不就学とは、不登校と異なり、学校に籍がない状態を示す。 日本には、工場や建設業の仕事を求めて来日してくる外国人が年々増加しており、その中には子供を連れてくるケースも少なくない。 こうした子供たちは家庭環境や日本語の壁にぶつかり、学校へ入学しないか、入学しても途中で辞めてしまうことがある。外国人は「義務教育」ではないので、学校を辞めて社会とのつながりが断ち切れるということが起きてしまうのだ。 彼らは学校へ行かなくなることで社会福祉や地域とつながりがなくなり、漂流していってしまうことが多い。児童労働に取り込まれたり、非行化してギャングとなって事件を起こしたりするケースもある。 日本が労働力を外国人に頼らざるを得えない状況の中で、こうした子供たちに光を当てるのは間違いではないだろう。 ここでは、日本の教育からこぼれ落ちた二人の南米出身の日系人の子供に光を当ててみたい』、「日本に住む外国籍の子供のうち、15.8%に当たる約2万人が不就学になっている可能性」、とは驚かされた。
・『池長ミツヨシ  池長は日本に来て20年になる。全身にタトゥーを入れ、建築の仕事をしながら、家庭を持って子供も育てている。だが、ほとんどと言っていいほど日本語をしゃべることができない。日本人の子供に例えれば、4歳前後のボキャブラリーだろう。その原因が、彼の「不就学」にあるのは明らかだ。 池長はブラジルの貧しい町で生まれ育った。父親はいろんなところに女をつくり、子供を生ませていた。池長もそうして生まれた子供の一人であり、物心ついた時には父親は離婚していなくなっていた。父親はブラジルで生活が成り立たなくなり、日系人だった母親を頼って日本へ行ってしまっていたのである。 母親の元で池長は小学5年生まで過ごすが、家は貧しく生活もギリギリだった。そのため、日本で暮らす父親のところへ預けられることになった。 日本で父親は契約社員として肉体労働をしていたが、女性をつくって遊び歩いており、池長はネグレクト状態に置かれた。池長はご飯さえ食べられない日々がつづいたが、日本語ができない上、学校にも行っていなかったので、助けを求めることさえできない。 小学6年のある日、父親に殴られたのをきっかけに、池長は家出をした。だが、彼には行先も、助けを求めるだけの語学力もなく、汚い橋の下で暮らしはじめた。12歳でホームレスになったのだ』、「日本に来て20年になる」が、「ほとんどと言っていいほど日本語をしゃべることができない」、「12歳でホームレスになった」、父親の「ネグレクト」もさることながら、日本人の学童ではあり得ない悲劇だ。
・『池長の言葉である。「橋の下で生活したのは、寒いから。あと捕まるのが怖いから。痛いし、怖い。でも、家よりいい。(父親は自分のことを)捜してくれなかった。邪魔だったと思う」 下水の臭いが漂う橋の下で、拾ってきた段ボールを敷いてベッドにし、布団替わりに汚れたタオルに身を包んだという。 池長は公園の水を飲んだり、コンビニのゴミ箱を漁ったりして飢えをしのいだ。風邪をひいたこともあっただろうが、そんなことに気づく余裕もなかったという。 驚くことに、ホームレス生活は3年に及んだ。もし池長が日本人であれば、このようなことは起きなかったはずだ。家庭が荒んでいても、学校や親戚が気づいて捜索願を出していただろうし、地元の人々も日本人が橋の下で寝泊まりしていれば手を差し伸べたはずだ。「外国人」だからこそ、人々の無関心の下でこうしたことが起きてしまうのである。 15歳の時、池長はようやくホームレス生活に終止符を打つことができた。建設業のオーナーに声を掛けられ、働かせてもらえることになったのだ。違法な児童労働であり、日当も低かった。だが、3年も橋の下で暮らしていた池長にしてみれば、天から下りてきた蜘蛛の糸のようなものだった。彼はその会社で働き、屋根の下で生きていくことができるようになった。 池長は言う。「あそこで仕事してなかったら、死んでた。親方、助けてくれた人」 皮肉にも、学校も地域も救ってくれなかった中で、建設業の親方だけが「児童労働」という形で池長に手を差し伸べたのである。 この親方の会社では、同じような境遇の日系ブラジル人の子供たちがたくさん働いていた。ほとんどが学校にも行けず、家庭にもいられず、町をさまよっていた子供たちだった。 彼らは生きるために無我夢中で働き、夜は夜で鬱憤を晴らすように酒を飲み、ドラッグに手を出し、日本人相手に暴力を振るった。それしかストレス解消の術がなかったのだろう。 そして彼らは自分たちのルーツである南米のギャングを真似して、全身にタトゥーを入れた。特徴的なのは、それぞれの体に市外局番のタトゥーが入れられていることだ。南米のギャングは自らが生まれ育ったストリートをギャング名にしてタトゥーにすることが多く、それを真似たのだ。 池長は言う。「俺の地元はブラジルじゃない。ここ(可児市)。だから、この番号を入れた」 彼らは、可兒こそ自分たちの生きる場所だと思っているのだ』、「建設業の親方だけが「児童労働」という形で池長に手を差し伸べたのである。 この親方の会社では、同じような境遇の日系ブラジル人の子供たちがたくさん働いていた。ほとんどが学校にも行けず、家庭にもいられず、町をさまよっていた子供たちだった」、きっと低賃金でこき使ったのだろうが、他に救いの手がないなかではやむを得ないのかも知れない。しかし、「夜は夜で鬱憤を晴らすように酒を飲み、ドラッグに手を出し、日本人相手に暴力を振るった。それしかストレス解消の術がなかったのだろう」、というのは残念なことだ。
・『アチャ  アチャが暮らす静岡県磐田市もブラジル人労働者の多い町として知られている。 磐田市には、かつて"スラム"と呼ばれていたT団地がある。リーマンショック前は住民の多くがブラジル人労働者だった。 アチャはブラジル人ではなく、日系ペルー人だ。両親が出稼ぎ目的で日本に来ていたため、ここで生まれ育ち、小学校へも入学した。だが、内気な性格がたたったのか、日本語がしゃべれるのに、言葉がうまく出ていないと判断され、まったく日本語ができない子供たちのための教室へ送られ、それが嫌で不登校になった。 当時の団地にはあちらこちらにカラースプレーの落書きがあり、外国人たちがドラッグをやっていたり、酒を飲んで暴れていたりしていた。酔って刃物をふり回すような人たちもおり、日本の暴走族さえ近づかなかったという。 アチャは不登校になったことで、そういう若者や大人たちとつるむようになった。学校へ行けば先生から「日本語が下手」と言われ、同級生からは外国人ということでいじめにあう。居場所は団地の外国人の不良たちのたまり場にしかなかったのだ。 アチャは言う。「本当は真面目にやりたかった。でも、日本の学校がそうさせてくれなかった。あの頃は団地にはそんな人たちがあふれ返っていて、学校へ行かなければ、そういう人たちの輪に入るしかなかった。外を歩けば声を掛けられて誘われるんだから仕方ないじゃん。 今考えれば、本当にスラムみたいな団地だったと思う。俺の住んでいる棟だって、うちの上と下の部屋に住んでいた人が自殺してる。社会に溶け込めなかったんだろうね。そんなふうに死ぬくらいなら、不良とつるんでいた方がずっとかっこよかった。それ以外に選べなかったんだよ」』、「日本語がしゃべれるのに、言葉がうまく出ていないと判断され、まったく日本語ができない子供たちのための教室へ送られ、それが嫌で不登校になった」、学校側の対応にも問題がありそうだ。「不登校」の理由を本人と話し合うようなことをしたのだろうか。
・『親からは不良の外国人と付き合うなと言われていた。ドラッグをやっている人たちと一緒にいるくらいなら家に引きこもってくれていた方がよかったのだろう。 だが、当時彼の団地の2LDKの家には、きょうだいや甥っ子など十人が暮らしており、幼子の世話も押し付けられていた。アチャはこうしたプライバシーのまったくない家に留まるつもりはなかった。 団地の環境が変わったのは、2009年のリーマンショックだった。大不況により、工場はブラジル人労働者たちに一家族につき30万円の帰国費用を支払うことを条件に退職を強いた。事実上のリストラである。これによって、団地に暮らしていた大勢の外国人たちが日本を去っていった。 アチャの両親も仕事を失い、一時帰国することを決めた。だが、アチャは日本に残ることを選んだ。 アチャは日本生まれだし、両親が暮らしていた町はペルーでも屈指の治安の悪いスラムだった。一度だけ実家に帰った時、家を出た瞬間に強盗に銃を突きつけられて殺される寸前の体験をした。友達もいない、そんな危険な国へ行くという選択肢はなかったのだ。 両親がペルーへ帰ったため、アチャは団地に一人で取り残された。何があったのか、すぐに仕送りが止まり、アチャは生活に困窮するようになる。家の電気、ガス、水道はすべて強制的に止められ、真っ暗な部屋で空腹に苦しんだ。 アチャは言う。「金がないから、コンビニから盗んだものを食べたり、公園で水を飲んで腹を膨らましたりしてた。すげえ孤独で頭が壊れそうだった。誰も助けてくれないし、誰に助けを求めていいかわからない。 それで手を出したのがパウダー(危険ドラッグ)だった。盗んだり、奪ったりして金を手に入れれば、すぐに浜松の店に飛んで行って買った。パウダーをやったら、全身が射精する感じになって、嫌なことを全部忘れられるんだ。家に帰るまで我慢できず、くせえ公衆便所でパウダーやっておかしくなってたこともあった」 こんなアチャに手を差し伸べてくれたのが、同じ団地に暮らす不良やその親だった。食べる物がないと聞けばパンを分けてくれたり、小遣いをくれたりした。 アチャは言う。「団地のみんなに助けてもらって、ここが俺の生きる場所だって思ったね。宝物だよ。この仲間たちと生きて生きたいと思った」 彼は今、その仲間たちとともにラップをやっている。その仲間の体にも、可児市の池長と同じく市外局番のタトゥーが刻み込まれている。彼らにとって、T団地は「異国」ではなく「地元」なのだ』、「こんなアチャに手を差し伸べてくれたのが、同じ団地に暮らす不良やその親だった。食べる物がないと聞けばパンを分けてくれたり、小遣いをくれたりした」、他にまともな救いの手がないなかでは、やむを得ないことだったのだろう。
・『「外国人」であるがゆえに…  池長とアチャの例からわかるのは、彼らが「外国人」であることから、日本の子供ではありえないような状況に陥っていることだ。 日本人の子供が、池長のように12歳から3年間も橋の下でホームレスとして生きていくことがありえるだろうか。 あるいは、アチャのようなに、ライフラインの止まった団地の部屋に置き去りにされてしまうことがありえるだろうか。 ほとんどのことが、「外国人」であるがゆえに、子供たちが社会から見捨てられた結果として起きていることなのだ。 冒頭に述べたように、今の日本は外国人による労働力に未来を託そうとしている。ならば、外国人の子供に対してそれに見合った支援をしていく必要があるだろう。 池長やアチャは国籍こそ外国かもしれないが、体に地元の市外局番のタトゥーを掘り、そこで定住しようとている。家族も友人もみんなそこにいる。 そう考えた時、私たちは彼らを「外国の子供」ではなく、「日本に暮らす子供」として受け止め、何をすべきかを考えていく必要があるのではないだろうか』、最後の部分はその通りで、全面的に同意する。

次に、ジャーナリストの出井 康博氏が11月20日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「留学生に違法就労を強いる30万人計画の無責任 研究者たちはなぜ声を上げないのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/31381
・『政府は全国の日本語学校約750校に対し、在籍する留学生に一定レベルの語学力を身につけさせるよう定めた。だがその基準は低く、「悪質校」が減る見込みは薄い。日本語教育に関わる専門家たちは、なぜこうした状況を黙認しているのか。ジャーナリストの出井康博氏が解説する??』、日本語学校の一部が、「学校」とは名ばかりで、実態は出稼ぎ労働者の受け皿になっていたのを受けた動きなのだろう。
・『産廃処理業者が日本語学校を運営していた  11月、北海道旭川市の「旭川日本語学校」経営者らが、留学生を違法就労させたとして入管難民法違反(不法就労助長)容疑で逮捕された。経営者は同校を運営するタクシー会社の会長で、自らが他に経営していた産業廃棄物処理場などにおいて、留学生を「週28時間以内」の就労制限を超えて働かせていた。 なぜ「旭川」のような地方の町に日本語学校があって、「産廃処理場」の経営者が学校運営に乗り出しているのか。また、勉強目的に来日しているはずの留学生たちが、なぜ違法に長時間働いているのか??。そんな疑問を抱く読者も少なくないだろう。だが、この事件には、近年急増した留学生と日本語学校のゆがんだ関係が象徴されている。 法務省出入国在留管理庁によれば、留学生の数は2018年末で33万7000人を数え、12年末からの6年間で16万人近く増えた。政府が08年に「留学生30万人計画」を策定し、留学生を増やそうと努めてきた結果である。その過程で留学ビザの発給基準が緩み、出稼ぎ目的の留学生たちがアジアの新興国から大量に流入した。 違法就労をしていた旭川日本語学校の留学生はベトナム人で、同校は他にもネパールやウズベキスタンなどの出身者を受け入れていたという。いずれも出稼ぎ目的の留学生の送り出しが多い国ばかりだ』、「産廃処理業者が日本語学校を運営」、どう考えても、そうした「日本語学校」は名目だけなのがミエミエなのに、認可を与えていた地方出入国在留管理局の責任は重大だ。「留学生30万人計画」も見直すべきだろう。
・『「30万人計画」の裏テーマは労働者の供給  現在、日本は未曾有みぞうの人手不足に直面している。とりわけ日本人が嫌がる職種で外国人頼みが著しい。そうした職種に「留学生」という労働者を供給することが、「30万人計画」の“裏テーマ”になっているのだ。 留学生の受け入れ先となる日本語学校も過去10年で約2倍に増え、全国で約750校を数えるまでになった。人手不足に直面する業界の関係者や人材派遣業者などが経営する学校も少なくない。その動きは都市部から地方へと広がり、過疎地では廃校になった小学校などを転用するようなケースも増えている。留学生から学費を吸い上げつつ、労働力として利用しようとしてのことだ。 今回のような日本語学校の不祥事が起きると、新聞など大手メディアは「一部の日本語学校」に問題があるとのスタンスで報じる。では、「一部」とは具体的にどの程度の割合なのか。その問題に関し、筆者は今年4月、本サイトで拙著『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)の一部抜粋記事「8割以上の日本語学校は“偽装留学生”頼み)を発表した。 多くの日本語学校で、出稼ぎ目的の“偽装留学生”が受け入れられている疑いについて、現在は一橋大学で特別研究員を務める井上徹氏の論文「日本語教育の危機とその構造:「1990年体制」の枠組みの中で)を基に分析した記事だ。 ちなみに“偽装留学生”という表現に関し、筆者は「留学ビザ取得に必要な経済力を示すための書類を捏造ねつぞうし、留学費用を借金に頼り、出稼ぎ目的で来日する外国人」と定義している。彼らは来日後、借金返済と学費の支払いのため、「週28時間以内」を超えて働くしかない状況に追い込まれる』、「8割以上の日本語学校は“偽装留学生”頼み」、事実であれば、由々しいことだ。
・『「不正確な情報でもっともらしく書かれた」と批判  本サイトに一部抜粋記事が載ると、翌5月に日本語教育分野の著名な研究者から「note」という投稿サイトで批判があった。(日本語学校の質保証とCEFRのA2について(1))私の記事が〈不正確な情報を引用して、もっともらしく書かれた「うそではない記事」〉だというのである。 著者の神吉宇一・武蔵野大学准教授は、日本語教育に携わる研究者でつくる公益社団法人「日本語教育学会」副会長だ。6月に「日本語教育推進法」が国会で成立した際には、早期成立を求めて署名活動に尽力し、自民党から共産党まで超党派の国会議員が加わった「日本語教育推進議員連盟」にも成立を働きかけていた。 神吉氏は拙稿によって〈誤解と偏見に満ちた世論が作られていく〉とも述べる。学会の権威である神吉氏からの批判は重いが、その根拠は「note」記事では触れられていない。万が一、私の取材や認識に誤りがあるなら、率直に認めて改めなければならない。私は連載「『人手不足』と外国人」を執筆している新潮社のネットメディア「フォーサイト」編集部を通じ、神吉氏に取材を申し込んだ。 申請文と一緒に送った質問に対し、神吉氏から文書で回答があった。ただし、回答はごく一部しか「フォーサイト」では使うことができなかった。回答の引用に際し、神吉氏は前後の文脈までの確認を求めたが、筆者が応じなかったからだ。コメント自体の確認は可能だが、文脈までは取材先に提供できない。それはジャーナリズムの原則である。 神吉氏は他媒体を通じた私の取材も受けないという。従って本稿では、「フォーサイト」へ送られた回答を含めコメントは使えない』、「神吉氏」は「学会の権威」なのかも知れないが、「日本語学校」の利益代表とも言えそうだ。だからこそ、「筆者」が承諾できないような条件を付けてきたのだろう。
・『日本語教育の研究者が異例の“内部告発”  神吉氏の指摘した〈不正確な情報〉が、井上氏の論文を指すことは誰でも分かる。“偽装留学生”で成り立つ日本語学校がどれほどの割合なのかという問題は、日本語学校全体の実態を知るうえで重要なポイントである。その点に関し、井上論文は貴重な示唆を与えてくれる。日本語教育分野の研究者から、日本語学校の現状について批判的な見解が示されること自体が異例で、まさに画期的な調査と言える。 筆者は、井上氏と神吉氏という2人の研究者の論点を記事として公開しようと考えていた。見解の異なる両氏の議論を目にすれば、日本語学校の置かれた実態がよりリアルに読者に伝わったことだろう。しかし、神吉氏に取材に応じていただけなかったので、残念ながら記事上での議論は成立しない。 実は、神吉氏が「note」記事のタイトルでも使った「CEFRのA2」という語学力の基準は最近、日本語学校関係者の間で話題となっている。政府が日本語学校の「質」を測るための基準として導入したからだ。 「教育機関」とは呼べないような日本語学校が増えていることは、行政も十分に認識している。日本語学校を監督する立場にある入管庁は今年8月、学校運営への監視強化の方針を打ち出した。在籍する留学生の授業への出席率、また卒業生が身につけた日本語能力などが不十分な場合、日本語学校は留学生の受け入れが認められなくなる。そして語学力の基準として導入されたのが「CEFRのA2」なのである』、「入管庁は今年8月、学校運営への監視強化の方針を打ち出した」、余りに遅すぎる対応だ。
・『文科省が決めた「CEFRのA2」とはなにか  「CEFR」とは「Common European Framework of Reference for Languages」の略で、「ヨーロッパ言語共通参照枠」と訳される。日本ではなじみのない基準だ。その「CEFR」で「A2」レベル以上の卒業生が、専門学校や大学に進学、もしくは就職した者と合わせて7割以上となるよう日本語学校は求められる。 この方針に関し、大手紙の多くは<日本語学校を厳格化 9月から新基準 悪質校を排除>(2019年8月1日 日本経済新聞電子版)といった具合に、〈厳格化〉という言葉を使って報じた。しかし中身を分析すると、〈厳格化〉など見せかけにすぎないことが分かる。 「CEFRのA2」という基準からしてそうだ。その判定は6つの外部試験によってなされ、最も一般的な「日本語能力試験」の場合、「N4」合格が「CEFRのA2」に相当する。) 日本語学校への入学には、日本語能力試験で初歩レベルの「N5」が条件となる。その1つ上のレベルが「N4」で、決して高度な語学力ではない。外国人の初心者で「300時間」の学習が到達の目安とされている。一方、留学生は通常、日本語学校に1年半から2年にわたって在籍し、1年間に「760時間」以上の授業を受ける。 つまり、半年以下の授業で到達可能な「N4」が、日本語学校の「質」を判断する基準となったわけだ。これで行政のお墨付きが得られるなら、真面目に教育に取り組んでいる日本語学校までも、逆に「悪質校」と混同されかねない』、「半年以下の授業で到達可能な「N4」が、日本語学校の「質」を判断する基準となった」、余りに甘い基準だ。
・『日本語能力検定があるのになぜCEFRも必要なのか  専門学校や大学の授業を理解するのは、最低でも「N4」より2ランク上の「N2」が必要とされる。また、「経済連携協定」(EPA)でベトナムから受け入れられる介護士や看護師の場合、1年間に及ぶ現地での語学研修で「N3」を取得しなければ来日が認められていない。「CEFRのA2」という基準の甘さが分かってもらえるだろう。 付け加えれば、現在でも日本語学校の卒業生は全体で4人に3人が進学している。学費さえ払えば日本語能力を問わず入学できる学校が、全国各地で増えている影響だ。従って進学者の数も、日本語学校の「質」を判断する材料にはなり得ない。 それにしても、なぜ「CEFR」だったのか。いきなり欧州の基準など持ち出さなくても、「N4」相当以上としても何ら問題ない。にもかかわらず、あえて「N4」を避けたのは、〈厳格化〉の中身のなさを覆い隠したかったからではないかと勘繰ってしまう。 「CEFRのA2」の導入は、文部科学省の有識者会議を経て決まった。会議の5人のメンバーは、日本語学校経営者と日本語教育を専門とする大学名誉教授が2人ずつ、残りの1人が文科省傘下の独立行政法人「日本学生支援機構」(JASSO)の幹部という構成だった。皆、日本語学校の「身内」と呼べる存在で、かつ「留学生30万人計画」の現状肯定派ばかりだ。そもそも文科省自体が、同計画の旗振り役なのである。 そして神吉氏も前述「note」で「CEFRのA2」に言及し、〈トータルとしてその教育機関の評価を行うのであれば、A2レベルにとどめておくしかないのではないか〉と評価している』、「入管庁」だけでなく、「文科省」も「留学生30万人計画」の「旗振り役」なのであれば、「神吉氏」が行政寄りの姿勢を示すのも頷ける。
・『「留学」を隠れみのに働くしかない状況に追い込んでいる  日本語学校とは本来、さまざまな目的を持った外国人の受け入れ先となるべき存在だ。日本での進学や就職を目指していない外国人も受け入れ対象となる。海外の語学学校に留学する日本人にも、遊学目的の人がいるのと同じである。そう考えれば、日本語学校の運営基準に卒業生の日本語能力や進学率などを課すこと自体おかしい。それなのに、わざわざ低レベルの基準を導入して〈厳格化〉をアピールするのは、単に「アリバイ作り」が目的だとしか思えない。 筆者は何も日本語学校が“偽装留学生”問題の元凶だと言いたいわけではない。日本語学校は単に「30万人計画」という国策に便乗している存在にすぎない。「悪質校」が増えているとすれば、同計画で大量に流入した“偽装留学生”の受け入れ先が必要だからなのだ。 問題を根本から解決するためには、政府が同計画の旗を降ろすしかない。底辺労働者が必要なのであれば、正直にそう宣言し、「留学生」とは別の方法で受け入れればよい。途上国の若者を借金漬けで「留学」させ、違法就労するしかない状況に追い込み、しかも学費まで吸い上げるというシステムはあまりにエグい』、「途上国の若者を借金漬けで「留学」させ、違法就労するしかない状況に追い込み、しかも学費まで吸い上げるというシステムはあまりにエグい」、その通りだ。
・『教育界の研究者はなぜ声を上げないのか  一方、「30万人計画」や日本語学校の内情は、日本語教育や留学生政策に関わる研究者たちは熟知している。それなのになぜ、彼らは現状を正すべくもっと声を上げないのか。そのことが筆者には理解できない。「学問の自由」を発揮してこそのアカデミズムなのである。 今年に入って以降、留学生の増加には歯止めがかかっている。一部のアジア新興国出身者に対し、入管当局が留学ビザ審査を厳しくした影響だ。過去数年間のような“偽装留学生”の急増こそ、今後は起きないかもしれない。 とはいえ、形ばかりの日本語学校〈厳格化〉という方針ひとつ取っても、政府の本気度は疑わざるを得ない。冒頭で紹介したような日本語学校の不祥事にしろ、いつ再び問題となっても不思議ではない。それは何より、日本語学校業界や日本語教育分野にとって不幸なことである』、「教育界の研究者」は見て見ぬふりをしているのだろうが、情けないことだ。

第三に、ライターの栗田 シメイ氏が本年3月9日付け東洋経済オンラインに掲載した「群馬の小さな町が直面し続ける移民流入の現実 大泉町、日本屈指の外国人タウンが歩んだ30年」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/331370
・『群馬県でいちばん小さな町「大泉町」に住む外国人の数は7997人  大泉町調べ・令和2年1月31日時点)。人口わずか4万2000人ほどの町民のうち、およそ5人に1人が外国人だ。日本有数の外国人タウン、といっても決して大げさではないだろう。 時代をさかのぼると、1986年時点では、町内の外国人居住者の数はわずか222人だった。現在は外国人居住者の大半を占める4580人のブラジル人も当時は0人だった』、「5人に1人が外国人」とは確かに多いようだ。
・『製造現場の担い手としてブラジル人が多数移住  町が一変するのは1990年を迎えてからだ。SUBARUや三洋電機(現・Panasonic)、味の素といった大手企業の製造現場において深刻な人材難が生じた。1990年に入管法が改定され、定住者への在留資格が創設された影響で、1992年には一気に2304人の外国人が移住をしてきている。 そのうちブラジル人は1528人を数え、大泉町は“日本のブラジル”と呼ばれるほど南米系のコミュニティーが強くなったのだ。母国よりお金が稼げるいわゆる“出稼ぎ”労働者と、労働力を求める自治体の意図が合致したことで、多くの南米からの移民がこの地を目指した。 そして、この勢いは一時的なものでは終わらなかった。2008年のリーマンショックでは一時的に約80%の日系人は解雇に至っている。全国約32万人の日系ブラジル人の数が、約16万人に減少したあおりを受けるように、多くの居住者はこの町を離れた。それでも不思議なことに、数年後には彼らは再び大泉町に戻ってきていた。 ブラジルタウンであった大泉町に新たな変化が生じたのは、この数年のことだ。 移民政策へと舵を取った日本政府の政策の影響で、日本人は減少傾向にもかかわらず、外国人の定住者の数は増え続けており、5年前と比較しても実に1200人以上が増加。とくにアジアからの移民の増加が顕著で、10年間で1000人近いアジア系の移民がこの町に移り住んでいる。 今何が起きているのか。変化の時を迎えている大泉町を歩いた。 「10年くらい前まではね、ポルトガル語とせいぜいスペイン語の表記があれば事足りた。それが今ではアジア系の言語の表記も必要になったから大変です。いまだにこの町では日本語を読める外国人の割合は圧倒的に少ないですから」 大泉町で日用品の個人商店を営む日系人の女性は、複雑な表情を浮かべながらこうぼやいた。 以前、筆者が大泉町を訪れたのは5年前。最寄り駅の「西小泉駅」から下車すると、かつて滞在したブラジルと重なる熱気と混沌を感じたことが強く記憶に残っている。一方で当時からアジア系の移民が増えている、というような話もよく聞いていた。 改めて町内のメインストリートである、グリーンロードを歩くと明らかに南アジア系の店舗が増加していることが目につく。近くに飲食店を構える篠原晃さん(60)も、町内の変化を感じ取っていた。 「かつてのブラジル人を凌駕する勢いで、アジア人の進出が目立つようになりました。この通りでは、ネパール、ベトナム、カンボジアといった国の人たちを最も見るくらいですから。面白いのは、各地域にコミュニティーがあり、彼らはほかの地域のコミュニティーとは決して交わらないということです。私も自分の飲食店が国籍を問わず垣根なく集える場所にしたくいろいろ試みましたが、結果的には頓挫しています」 とくに増加が激しいのがネパール出身者だという。2011年時点で82名だった移住者は、2018年には671人に急増した。ネパールから日本に来て9年。隣接する太田市在住だが、わざわざ大泉町に店舗を構えたというのはギタ・べトワールさん(32)。グリーンロードに食料品店を営むギタさんは、店舗の状況についてこう話す。 「ネパール人はもちろん、ベトナムやカンボジア、タイ人が主なお客様です。ブラジル人や南米系の人は来ませんし、日本人もほとんど来ない。言語の問題はありますが、ほかの国の人たちとの接点はほとんどないです。 つまりこのお店は、アジア系のコミュニティーだけで成り立っていることになります。ネパール人がなぜこの地域に多いのか?それは大泉町が住みやすい、という話を同胞から聞き集まってくる人が多いからでしょうね」』、「ブラジルタウンであった大泉町に新たな変化」、「10年間で1000人近いアジア系の移民がこの町に移り住んでいる」、アジア系の場合、言語が多いので、対応は苦労するだろう。
・『3Kの仕事を担うアジア系移民  大泉町に住む外国人とひとくくりにしても、大きく分けて3つに分類される。1つはブラジルやペルーを中心とした南米からの定住者。インドネシアやベトナムといった東南アジア圏の国からの技術実習生に代表されるような、一時的にこの町を訪ねた人々。そして、ネパールや中国を中心とした、日本の別の地域からこの町に流れてきた層だ。 大泉町観光協会副会長である小野修一氏は、彼らの違いについてこう分析する。 「この町では、もはやかつてのブラジル人に代表されるような「デカセギ」という言葉は死語です。家を購入する定住者も多い中で、さらにインドネシアやベトナム、タイといった国から技術実習生の受け入れ準備も進めています。そのほかでも、留学や短期の労働者と思われるアジア人も流れてくるようになってきている。 私見ですが、アジア系の労働者は2、3年で移ることが多いので、これ以上大幅にアジア人が増えることはないでしょう。ただ同じ水準で今後もこの町に働き口を探しに来る人はいると見ている。ブラジル人より安く使えるアジア人は重宝される傾向にある。彼らが従事するのは、日本人が嫌ういわゆる『3K』の仕事。慢性的な人手不足であるこの町では、彼らの労働力に頼っている面が大きいのです」) その一方では受け入れ体制を進め、労働条件に関しては改善されつつあるという指摘も聞こえてきた。日系人を中心とした同町内の人材派遣業会社の従業員が明かす。 「労働条件に関しては、一昔前よりもだいぶよくなりました。正社員で働くよりも派遣で働くほうが稼げる金額が多いくらいの水準まできています。求人件数も増加傾向です。群馬県は基本的にモノづくりの県であり、近年ではとくに慢性的な人材不足に陥っていて、県全体でも、もはや外国人の労働力なしでは成り立たないところまで来ています。 一方で、企業からの要求は年々高くなっており、『日本人と同程度の日本語レベルが欲しい』と言われることが多いので、働き手とのギャップも生じています。日系ブラジル人の方は仕事を選ぶ傾向にあり、なかなか長期での雇用につながっていないという問題もあります」 語学や家庭教育の問題で、日本で働く素養がない移住者が増えていることも事実だ。教育や労働現場でも問題が顕在化している。さらに行政面でも、住民税や健康保険料といった納税、教育費といった財源面で苦悩しているのも現実だ。 大泉町の町長である村山俊明氏は、『文藝春秋』(2018年11月号)(「外国人比率トップ群馬県大泉町の悲鳴」著:高橋幸春)の中で、町の財政状況に関してこのように述べている。 「ブラジル人をはじめとした定住者を取り巻く問題は教育や納税、社会福祉など多岐にわたります。現行制度のままでは、地方自治体だけの対応で外国人労働者を受け入れることは、もはや限界です。大泉町の努力だけでは、『共生』は進まない状況にあるのです」 村山氏が定義する問題の1つには、外国人居住者の生活保護受給率の高さも挙げられるだろう。大泉町の生活保護所轄課によれば、大泉町全体の生活保護受給者は375人。その内外国人が締める割合は94人で、実に全体の25.1%を占める(数字は2018年末時点)。 担当者は筆者の取材に対して、「人口的にも外国人の割合が多く、それに伴い、外国人の生活保護受給割合も他市町村と比較すると高くなっているものと考えている」と答えている』、「「ブラジル人をはじめとした定住者を取り巻く問題は教育や納税、社会福祉など多岐にわたります。現行制度のままでは、地方自治体だけの対応で外国人労働者を受け入れることは、もはや限界です。大泉町の努力だけでは、『共生』は進まない状況にあるのです」、確かに地方自治体任せにしておくのは、政府として無責任過ぎる。
・『なぜ生活保護を受ける外国人が多いのか  さらに取材を進めた結果、生活保護を受けている層は急増したアジア系の人々ではなく、基本的には南米系の移住者の層が多いことも見えてきた。 この町で生活保護を受給する日系ブラジル人の男性は嘆く。 「仕事を転々としてきたが、体を壊してしまい働けなくなった。私が日本語をうまく話せないから、子供も日本語が話せなくて、学校を不登校になってしまい、ポルトガル語も日本語も十分に話せないから仕事探しに困った。ブラジルに帰ることも考えましたが、帰国の費用もない。今後は日系4世も増えてくるでしょうが、私たちが解決すべき問題は多いんです」 また、名古屋から大泉町に移り住んだ日系ブラジル人のグランベル・仙台さん(38)は、流暢な日本語で町の事情について明かしてくれた。 「合う合わないはありますが、私にはこの町が合わなかった。名古屋ではブラジル人らしく、個々の生き方を重視するライフスタイルでしたが、この町では同じブラジル人の中でもいくつかコミュニティーがあり息苦しさを感じました。日本に長く住んでいる人が多いため、考え方まで日本人のように染まっていました。 そして、生活保護を受けている同胞が多いという理由で、ブラジル人=怠け者という目で見られることも耐えがたかった。ブラジル人の中には、アジア人に仕事を盗られているという認識を持つ人もあり、そういう感覚も理解できなかった。そんな経緯もあり、春からは名古屋に戻る予定です」 もっとも行政の対応が不十分かといえば、必ずしもそうではない。外国籍の児童には就学義務はないが、公立の義務教育は希望すれば全員受けることができる。 クラスの約4分の1を外国人の子供が占めるこの地域では、ほかではない取り組みも実施されている。例えば、教師のほかに通訳がつき、不登校児のための学習支援を行い、日系人の子供への日本語教育費用も町が負担している。 外国人児童へ向けたフォロー体制は整っているともいえるだろう。事実、町内で日本人の声を拾っても「行政にできることは限られている」という声が大半だった。その一方では、学力的な問題やいじめといった事情で中学すら卒業できない子供も珍しくない。 そういった学習難民の救済のために、町にはブラジル人学校も点在している。1991年に開校し、現在約120名の生徒が在籍する日伯学園代表を勤める高野祥子さん(75)が言う。 「小、中学生で不就学になる日系ブラジル人の子供たちに共通しているのは、授業についていけないことで学校を楽しめていないということです。語学上の問題で、自分を落ちこぼれだと思い込む生徒が多い。 学校で通訳はつきますが、通訳の内容事態(注:正しくは「自体」)がわからないこともあり、学校教育の前の家庭教育の時点での言語習得がうまくいってないケースが多いんです。 保護者の大半は工場などでの肉体労働者の方。教育水準の理解も違い、教育に無関心で、学校に通わないことを問題視してない方もいらっしゃる。それほど、日本の学校になじめない子供がたくさんいることも現実です。日本語もポルトガル語も中途半端というのがいちばん問題ですが、そういう子も中にはいます。子供たちの未来を考えるなら、教育の分野での環境整備を進めないと、同じような苦労をする子供は今後も出てくるでしょう」』、「生活保護を受けている同胞が多いという理由で、ブラジル人=怠け者という目で見られることも耐えがたかった」、日本人の悪い癖だ。「学校で通訳はつきますが・・・学校教育の前の家庭教育の時点での言語習得がうまくいってないケースが多い」、のであれば通訳しようがないことになる。まして、多様なアジア人が増えてくると、通訳での対応も困難だろう。「日本の学校になじめない子供がたくさんいることも現実です。日本語もポルトガル語も中途半端というのがいちばん問題ですが、そういう子も中にはいます。子供たちの未来を考えるなら、教育の分野での環境整備を進めないと、同じような苦労をする子供は今後も出てくるでしょう」、一口に「環境整備」といっても実際には難しそうだ。
・『これは大泉町だけの問題ではない  今後も外国人移住者の所得格差が進んでいくことが予測されるだけに、大泉町が抱える教育、労働、税収といった多角的な問題の本質は根深い。労働力不足で移民が増えることが確実な日本では、これは単なるイチ地方自治体で終わる話ではなく、近い将来全国的な問題として普及していくだろう。 受け入れ体制が進んでいる大泉町ですら、問題は山積みである。だが一方で、試行錯誤を重ねながら共生への道を探り続けた大泉町の存在は、多くの市町村にとってモデルケースとなる可能性を秘めているといえるだろう』、私の持論は、安易に外国人労働力に頼るのは反対だが、受け入れた外国人には「共生」できる環境を、困難を乗り切って整備すべきというものだ。キレイ事過ぎるとの批判は甘受する。
タグ:製造現場の担い手としてブラジル人が多数移住 「大泉町」に住む外国人の数は7997人 「留学生30万人計画」 ブラジル人より安く使えるアジア人は重宝される傾向 現代ビジネス アジアからの移民の増加が顕著で、10年間で1000人近いアジア系の移民がこの町に移り住んでいる 「留学」を隠れみのに働くしかない状況に追い込んでいる 全国約32万人の日系ブラジル人の数が、約16万人に減少したあおりを受けるように、多くの居住者はこの町を離れた。それでも不思議なことに、数年後には彼らは再び大泉町に戻ってきていた 「壮絶…日本で外国人の子供が「ギャング化」その厳しすぎる現実 社会から見捨てられた結果…」 「30万人計画」の裏テーマは労働者の供給 石井 光太 (その3)(壮絶…日本で外国人の子供が「ギャング化」その厳しすぎる現実 社会から見捨てられた結果…、留学生に違法就労を強いる30万人計画の無責任 研究者たちはなぜ声を上げないのか、群馬の小さな町が直面し続ける移民流入の現実 大泉町、日本屈指の外国人タウンが歩んだ30年) ブラジル人=怠け者という目で見られることも耐えがたかった ギャング化する外国籍の子供たち クラスの約4分の1を外国人の子供が占める リーマンショック 3Kの仕事を担うアジア系移民 学校教育の前の家庭教育の時点での言語習得がうまくいってないケースが多い 「群馬の小さな町が直面し続ける移民流入の現実 大泉町、日本屈指の外国人タウンが歩んだ30年」 『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』 んなアチャに手を差し伸べてくれたのが、同じ団地に暮らす不良やその親だった。食べる物がないと聞けばパンを分けてくれたり、小遣いをくれたりした 日本の学校になじめない子供がたくさんいることも現実です。日本語もポルトガル語も中途半端というのがいちばん問題ですが、そういう子も中にはいます。子供たちの未来を考えるなら、教育の分野での環境整備を進めないと、同じような苦労をする子供は今後も出てくるでしょう 産廃処理業者が日本語学校を運営していた 文科省が決めた「CEFRのA2」とはなにか 半年以下の授業で到達可能な「N4」が、日本語学校の「質」を判断する基準となった 「外国人」であるがゆえに… アチャ 日本語がしゃべれるのに、言葉がうまく出ていないと判断され、まったく日本語ができない子供たちのための教室へ送られ、それが嫌で不登校になった 日本語教育費用も町が負担 多くの日本語学校で、出稼ぎ目的の“偽装留学生”が受け入れられている疑い 栗田 シメイ 東洋経済オンライン 教育界の研究者はなぜ声を上げないのか アジア系の労働者は2、3年で移ることが多い ブラジル人をはじめとした定住者を取り巻く問題は教育や納税、社会福祉など多岐にわたります。現行制度のままでは、地方自治体だけの対応で外国人労働者を受け入れることは、もはや限界です。大泉町の努力だけでは、『共生』は進まない状況にあるのです 出井 康博 なぜ生活保護を受ける外国人が多いのか これは大泉町だけの問題ではない 5人に1人が外国人 「留学生に違法就労を強いる30万人計画の無責任 研究者たちはなぜ声を上げないのか」 途上国の若者を借金漬けで「留学」させ、違法就労するしかない状況に追い込み、しかも学費まで吸い上げるというシステムはあまりにエグい 「不正確な情報でもっともらしく書かれた」と批判 入管庁は今年8月、学校運営への監視強化の方針を打ち出した 私たちは彼らを「外国の子供」ではなく、「日本に暮らす子供」として受け止め、何をすべきかを考えていく必要があるのではないだろうか 日本語能力検定があるのになぜCEFRも必要なのか PRESIDENT ONLINE 建設業の親方だけが「児童労働」という形で池長に手を差し伸べたのである。 この親方の会社では、同じような境遇の日系ブラジル人の子供たちがたくさん働いていた。ほとんどが学校にも行けず、家庭にもいられず、町をさまよっていた子供たちだった 12歳でホームレスになった 夜は夜で鬱憤を晴らすように酒を飲み、ドラッグに手を出し、日本人相手に暴力を振るった。それしかストレス解消の術がなかったのだろう ほとんどと言っていいほど日本語をしゃべることができない 日本に来て20年になる 池長ミツヨシ 日本の教育からこぼれ落ちた二人の南米出身の日系人の子供 日本に住む外国籍の子供のうち、15.8%に当たる約2万人が不就学になっている可能性 8割以上の日本語学校は“偽装留学生”頼み 外国人問題
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