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環境問題(その6)(気候変動でオランダ最高裁が「驚くべき判決」 オーストラリアは山火事で追加利下げ?、地球温暖化CO2犯人説は眉唾?懐疑論者が語る「信憑性に欠ける証拠」、メガバンク 「脱炭素化」に大きく舵を切る理由 投融資方針を相次ぎ転換 抜け道の批判も) [世界情勢]

環境問題については、昨年10月4日に取上げた。今日は、(その6)(気候変動でオランダ最高裁が「驚くべき判決」 オーストラリアは山火事で追加利下げ?、地球温暖化CO2犯人説は眉唾?懐疑論者が語る「信憑性に欠ける証拠」、メガバンク 「脱炭素化」に大きく舵を切る理由 投融資方針を相次ぎ転換 抜け道の批判も)である。

先ずは、本年1月28日付け日経ビジネスオンラインが掲載したみずほ証券チーフMエコノミストの上野 泰也氏による「気候変動でオランダ最高裁が「驚くべき判決」 オーストラリアは山火事で追加利下げ?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00054/?P=1
・『日本のメディアはほとんど報じなかったようだが、昨年12月20日にオランダ最高裁が下した判決は、「気候変動」問題への政策対応の必要性に西欧先進国の司法機関が積極的に関与したという意味で、世の中が以前とは大きく変わってきたことを示す意義深いものになったと、筆者は受け止めている。 時事通信は「オランダ最高裁、政府に温室ガス削減命令=来年末までに25%」という表題で、判決の内容を報じていた。それによると、オランダの最高裁判所は12月20日、政府に対して2020年末までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも25%削減するよう命じる判決を下した。これは、同国の環境保護団体の訴えを認めた一、二審の判決を支持したものである。 最高裁は、科学者や国際社会に「先進国の排出量は20年までに少なくとも25~40%削減する必要があるという意見の一致がある」と認定。政府はこれを下回る目標設定に正当な理由を示していないと判断した。また、気候変動は「(市民の)生命や幸福を脅かす」と指摘。欧州人権条約や国連の気候変動枠組み条約に基づき、政府に市民保護への十分な対応を取るよう促した』、下記のように「オランダ政府の現在の温室効果ガス削減目標は20%」のに対し、「最高裁判所」が「少なくとも25%削減するよう命じる判決」、とは画期的だ。
・『司法が具体的な数値目標示したオランダ  オランダ政府の現在の温室効果ガス削減目標は20%である。今回の判決は、司法府が行政府に対して気候変動対策の強化を迫るのみならず、具体的な数値目標まで示す、画期的なものになった。ウィーベス経済・気候政策担当相はこの判決を受けて、対応策を示すと表明。「政府は25%に向け努力を続ける」とした。オランダは国土の約3分の1が海抜0メートル未満であるため、国民が気候変動の問題に特に敏感であるという。 日本の憲法学ではずいぶん前から、日本国憲法第13条が定める幸福追求権を根拠にして、基本的人権の1つとしての「環境権」、すなわち人間として良好な環境の下で生活を営む権利を国民が有することが、確立していると思われる。 だが、日本で最高裁が政府に対して気候変動対策の強化を具体的に命じるような判決を出すことは、現時点ではなかなか想定できないように思う。日本の場合、司法は今後も、個別の政策課題への対応については民意を反映して成立している政府の裁量を重視する立場を取り続けるのではないか。 オランダの隣のドイツでは昨年、発電量に占める再生可能エネルギーの比率が初めて化石燃料を逆転したという(1月4日付日本経済新聞)。また独政府は、温暖化ガス排出が少ない鉄道の利用を促進するため50キロメートル以上の長距離鉄道利用にかかる付加価値税率を19%から7%へ大幅に引き下げることを決定。これは実質的にドイツの鉄道運賃を約10%引き下げることと同じであり、その減税分を補うために航空業界の税負担を増やすことも検討されているという(2019年12月13日配信東洋経済オンライン)。 昨年12月に就任したフォンデアライエン欧州委員長(ドイツ出身)が主要政策に位置付ける「欧州グリーンディール」の一環で、「(50年に実質ゼロの)実現の道筋を示せれば、EUが世界を引っ張ることができる」と、同委員長は訴えている。 「石炭など化石燃料に依存する国々の再生可能エネルギーへの転換などを支援するのが主な目的だ。欧州委は『脱化石燃料』に向けた一歩としたい考えで、同分野での技術革新などを通じ、新たな成長戦略とする構えだ」という(1月15日付日本経済新聞)。 欧州各国で先導的に急速に進んでいる気候変動対策の展開は、日本の政策担当者も金融市場関係者も、よく見ておく必要があるように思う。 さらに、ドイツの隣のオーストリアでは1月1日、中道右派政党である国民党のクルツ党首が緑の党と連立を組むことで合意した(緑の党のコグラー党首は副首相に就任)。オーストリアで緑の党が政権入りするのは初めてのことである。気候変動対策を求める声が強まる中で、欧州ではスウェーデンやフィンランドでも緑の党が政権入りを果たしている』、「オランダは国土の約3分の1が海抜0メートル未満であるため、国民が気候変動の問題に特に敏感」、「最高裁判所」までが踏み込んだ背景が理解できた。「独政府は、温暖化ガス排出が少ない鉄道の利用を促進するため50キロメートル以上の長距離鉄道利用にかかる付加価値税率を19%から7%へ大幅に引き下げる」、というのも画期的だ。「欧州委員長」が「欧州グリーンディール」で、「(50年に実質ゼロの)実現の道筋を示せれば、EUが世界を引っ張ることができる」というのも意欲的だ。
・『この間、南半球のオーストラリアでは、2019年9⽉頃から続く⼤規模な森林火災がいっこうに鎮火する気配を見せず、国の経済全体への悪影響が危惧されるようになっている。連邦政府の対応が後手に回る中で、中央銀行が追加利下げに踏み切る必要性ありと市場が見なすようになっている。 家屋の焼失、コアラをはじめとする野生動物の被害などが話題になったが、1月に入るとメルボルンで大気汚染が深刻化し、テニス全豪オープンで棄権する選手が出るなど、影響はさらに拡大。農業や観光業へのダメージ、消費マインドへの下押し圧力を含めて、オーストラリア経済全体への悪影響を真剣に考える必要が増大している。 そこで森林火災がオーストラリア経済にもたらしている深刻な影響が、中央銀行の背中を押すのではないかと考える向きが多くなっている。具体的には、経済⾒通しが再評価される2⽉4⽇の次回理事会、あるいは3月以降のいずれかの理事会で、今回の山火事が直接のきっかけになり、オーストラリア準備銀行(RBA)が追加利下げに動くのではないかという見方である。 19年6・7・10月に計3回利下げしつつ、将来の量的緩和にも含みを持たせることで、RBAは、同年5月にニュージーランドから始まった先進国中央銀行による「緩和競争」の中で、かなりの存在感を発揮してきた。政策金利であるキャッシュレートは過去最低の0.75%になっている<図1>。 ■図1:オーストラリアとニュージーランドの政策金利(リンク先参照) ロイターが集計して1月14日に報じたエコノミスト調査では、20年の同国の成長率予想は前年比+2.3%、21年は同+2.5%にとどまった。長期平均が+2.75%とされるこの国では、弱めの数字の並びである。しかも、19年7~9月期までの物価指標はインフレ目標対比で弱い』、「オーストラリア準備銀行」は5月になって2回にわたり合計0.5%利下げし、過去最低の0.25%としたようだ。
・『今後も続く異常気象  オーストラリアの気象局によると、19年は観測史上で最も気温が高く、最も湿度が低い年になり、これが山火事の拡大につながった。 世界気象機関(WMO)は1月15日、19年は世界の平均気温が観測史上2番目に高かったと発表した。15~19年の5年間、10~19年の10年間の平均気温はいずれも過去最高。10年間の平均気温は80年代以降、過去最高を更新し続けており、地球温暖化の進展を裏付けている。WMOのターラス事務局長はオーストラリアの大規模な山火事に言及し、「残念ながら今年も今後数十年間も異常気象に直面することになるとみられる」と述べて危機感を表明した。 1月23日に発表された昨年12月のオーストラリアの雇用統計が市場予想よりも強い内容になったため、2月にすぐ追加利下げがあるという読み筋はいったん後退を余儀なくされた。だがその一方で、この国の経済と密接なつながりがある中国で新型肺炎が流行し始めたという、新たな景気の悪材料も出てきている。 いずれにせよRBAの追加利下げは時間の問題だろう。それが現実になれば、気候変動(地球温暖化)がもたらす経済的悪影響が先進国の政策金利引き下げにつながった、恐らく初の事例として、歴史に残るものになるかもしれない』、ただ、5月の追加利下げは、新型コロナウィルスによる「悪材料」への対応といった面の方が強そうだ。

次に、3月22日付けダイヤモンド・オンライン「地球温暖化CO2犯人説は眉唾?懐疑論者が語る「信憑性に欠ける証拠」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/231987
・『スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが国連で行ったスピーチが話題になり、再び注目を集めている地球温暖化問題。ただし、対策を真面目に考えているのは日本だけだ。2030年までに総額100兆円も使う予定だが、その実効はほとんど期待できない。そもそも人為起源CO2を温暖化の主因と見る前提そのものが大いに疑わしい。著書に『「地球温暖化」狂騒曲』(丸善出版)と訳書『「地球温暖化」の不都合な真実』(日本評論社)がある東京大学名誉教授の渡辺正氏に話を聞いた』、「懐疑論者」の最右翼はトランプ大統領だが、日本にもいたようなので、参考までに紹介した次第である。「対策を真面目に考えているのは日本だけ」、というのは「渡辺正氏」の決めつけだ。
・『地球温暖化脅威論の発端は1988年  地球温暖化はデータから見ると不自然な点も少なくありません。「人為起源CO2が地球を暖めている」という言説が世界に広まったのは1988年のこと。国連傘下の組織「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が報告書でそう指摘した。報告書は、温暖化を自明の事実とみた上、「温室効果ガスをこのまま大気に排出し続けると、生態系や人類に重大な影響を及ぼす気候変動が進む」と警告し、それが広く注目を集めた。 1997年12月、地球温暖化に対する国際的取り決めのための会議(COP3)が京都で開かれ、名高い「京都議定書」が採択された。 京都議定書は先進国に、「2008~2012年に温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンなど)を1990年比で約5%削減せよ」と要求した。国ごとの排出削減目標として、EUは8%、アメリカは7%、カナダと日本は6%の削減を課せられた。 日本は排出量取引などの「数字合わせ」で目標を達成したが、アメリカは2001年3月末に議定書から離脱し、カナダも2007年4月に「6%削減の断念」を発表(2011年12月に離脱を表明)するなど、世界全体の足並みはそろっていなかった。 国連の意図は、温暖化問題を口実に、先進国から途上国への財政支援を促すことにあった(前掲の訳書に詳しい)。京都議定書の中で中国は、排出削減義務のない「途上国」に分類された。1980年代の排出量は少なかったが、日本の8倍もCO2を出して世界最大の排出国になった現在、もはや国連のもくろみは破綻している』、「中国」が「「途上国」に分類され」たのは確かに片手落ちだった。
・『気温が上がっているのは都市部だけという事実  2015年12月には、地球温暖化対策の新ルール「パリ協定」が発効した。京都議定書が先進国だけに温室効果ガス削減を求めたのに対し、パリ協定は途上国を含むすべての締約国が対策を実施することとなった。ただし、今なお「途上国」に分類される中国は、「2030年まで実質的な排出削減はしない」という趣旨の発言をしている。 日本は、2013~30年の18年間で、CO2を13年度比で26%(内訳は『エネルギー起源CO2』が21.9%、『その他温室効果ガス』が1.5%、『吸収源対策』が2.6%)の削減を目標に掲げる。 しかし、そもそも地球の気温と大気中のCO2濃度に相関関係はほとんどない、と渡辺氏は断言する。 「地球温暖化脅威論者は、『気温上昇の主因は人為的CO2の増加』と主張しますが、いろいろな気温データを見るかぎり、とてもそうとは思えません。人為的なCO2の排出が激増したのは1940年代以降ですが、過去150年ほどの気温は、1940年代より前にも、昇降を繰り返してきました。つまり地球の気温を変える要因として、人為的CO2以外(主に都市化と自然変動)が随分大きいのです」 「たとえば、1910~40年には最近とほぼ同じ勢いの昇温が起きたし、1940~70年代の地球は寒冷化し、氷河期の再来を警告する科学者が随分いました。それだけでも、CO2と地球温暖化の相関関係は小さいとわかります」 年配者は、「子ども時代の夏はもっと過ごしやすかった」と語る向きも少なくない。しかし渡辺氏によれば、それは主に都市部で起きた現象にすぎず、非都市部(田舎)には気温がほぼ横ばいの場所も多いという。 「走行中の乗用車1台は30キロワットのヒーターですから、これほど車が増えた東京なら暑くなって当然。また、東京の気温は100年以上、大手町のビル街、気象庁の構内に置いた1本の温度計で測ってきました。ビルの建設が風通しを悪くし、周囲を走る車も増えたため、温度計の読みが上がっても当然です。その証拠に、2014年の暮れに温度計を北の丸公園へ移したところ、年平均気温が1.4℃も下がりました。同じ東京都でも、三宅島の気温はほぼ横ばいですから、やはり都市化の寄与はそうとう大きいでしょう」 「ちなみに、種々の世界気温データを総合すると、温暖化が問題にされ始めた1988年から30年余の温度上昇はせいぜい0.3℃しかなく、10年あたりなら0.1℃です。体感もできないその昇温が、異常気象を引き起こすとは思えませんね」』、「地球の気温を変える要因として、人為的CO2以外・・・が随分大きい」、のは事実だろうが、気象庁のホームページで世界の年平均気温偏差の経年変化(1891〜2019年)をみると(下記)、100年あたり0.74℃の割合で上昇しているようだ。「気温が上がっているのは都市部だけ」には首を傾げざるを得ない。
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_wld.html
・『日本政府は100兆円投じるが効果は微々たるもの  CO2増加と地球の気温上昇に直接の関係はない…と語るデータが多いのに、渡辺氏によると、日本政府は温暖化対策の名目で現在、国税・地方税などもろもろ合わせて年間5兆円以上(ほぼ防衛費並み)も使っているという。 「CO2地球温暖化説は、妄想やファンタジーです。研究者の内輪話なら何も言いません。けれど、CO2削減策だと称し、京都議定書時代の2006年から、パリ協定時代の2030年へと至る25年間に、日本は100兆円も使うことになるのです。その100兆円には、2012年の民主党政権が導入した『再生可能エネルギー発電促進賦課金』が40兆~50兆円ほど含まれます。家庭が払う電気料金の約1割に上り、昨年の実績だと年2兆8000億円に上りました」 100兆円を使ったとしても地球はまったく冷えないというから、驚くほかない。 「2014年のIPCC第5次評価報告書が正しいなら、2013~30年の18年間で地球の気温は0.27℃上がります。自然変動や都市化の影響もあるため、人為起源CO2の効果は、多めに見て0.27℃の半分、つまり0.15℃としましょう。すると、世界の3.5%しかCO2を出さない日本が、人間活動による21.9%を減らした場合、0.15℃×0.035×0.219という計算から、たったの0.001℃しか地球を冷やさないわけです。むろん、気温上昇の大部分が都市化や自然変動のせいなら、その0.001℃すら過大評価だということになりますね」 年間の国家予算に近い100兆円という大金のムダづかいを国民が認識するようになれば、地球温暖化騒動も幕引きに向かうのではないだろうか。渡辺氏が続ける。 「要するに温暖化対策は、竹やりでB29爆撃機に立ち向かうようなもの。いや、それだけなら笑い話で済みますが、巨費を防災や感染症対策など大事な用途に回せなくなるわけだから、勢い余って竹やりで戦友を刺し殺すような自滅行為、というのが素顔ですね」』、「2030年へと至る25年間に、日本は100兆円も使う」、「『再生可能エネルギー発電促進賦課金』が40兆~50兆円ほど含まれます」、財政支出と、電力料金への賦課金とは全く違う概念なのに、内訳とするのは信じられないような暴論だ。
・『CO2増加は食物や緑を豊かにする  大気中のCO2増加と地球温暖化にきれいな相関がないのは、素人目にも明らかだ。メディアはCO2を悪者扱いにするが、CO2増加のメリットは計り知れないと渡辺氏は言う。 「植物は光合成でCO2を物質に変えます。少し考えてみればわかるとおり、私たちの食卓に上るもののうち光合成と縁がないのは、水と食塩の2つだけ。増えるCO2が植物の生育を促す結果、作物の収量が増えて緑化も進み…と、いいことずくめです。そのプラス面をメディアがまったく報じないのは不思議ですね。脅威論を叫ぶ人々も、この話には口をつぐみます。到底科学者とは思えません」 実際ここしばらく、農作物の収量は全世界で増え続けている。米国農務省が発表したデータでも、2000年度に18.5億トンだった世界の穀物生産量が、2019年度には26.6億トンまで増えた。 もちろん農耕技術や肥料、農薬などの進歩も大きいとはいえ、大気に増え続けるCO2がかなり効いていると考えてもおかしくはない。 北京大学の朱再春ほか31人が2016年4月の『ネイチャー・クライメート・チェンジ』誌に出した論文によると、1982~2012年の32年間に及ぶ衛星観測の結果、「地球全体で植物の量は10%ほど増え」、「緑を増やした要因のうち、大気に増えるCO2がほぼ7割と推定される」という。 メディアは「CO2=悪」のイメージを国民の心に植え付けてきた。しかし、気温や気象など多彩な科学データを見るかぎり、人為起源CO2が地球温暖化の主因だと断定できる段階ではない。CO2排出削減を目玉とする「温暖化対策」に100兆円ものお金を使おうとしている(うち約40兆円は支出済み)日本政府の行いは、非科学の極みだといえよう』、「CO2増加は食物や緑を豊かにする」のは事実だが、「渡辺氏」の主張とは違って温暖化が異常気象、海面上昇などのマイナス効果をもたらすとすれば、効より罪の方が大きいのではなかろうか。

第三に、5月16日付け東洋経済オンライン「メガバンク、「脱炭素化」に大きく舵を切る理由 投融資方針を相次ぎ転換、抜け道の批判も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/350494
・『日本のメガバンクが気候変動対策を相次いで強化している。 みずほフィナンシャルグループは4月15日、石炭火力発電所の新規建設を資金使途とする投融資を今後行わない方針を表明した。石炭火力発電所向け与信残高を現在の約3000億円から減らしていき、2050年度までにゼロにする。森林破壊や先住民への人権侵害が問題になっているパーム油や木材・紙パルプ分野では、新規融資時のみならず、融資実行後のチェックも厳格化する』、遅ればせながら漸く重い腰を上げたようだ。
・『みずほの対応をNGOは評価  一方、三井住友フィナンシャルグループは4月16日、「ESG(環境・社会・ガバナンス)に関するリスクの考え方」と題した方針を発表し、新設の石炭火力への支援について「原則として実行しない」と明記した。水力発電や石油・ガス開発など環境負荷や地域社会への影響が大きい分野については、投融資に際して環境・社会リスク評価などを行っていく考えを示した。 三菱UFJフィナンシャル・グループも5月13日付で環境・社会配慮に関する方針改定を表明。石油・ガス開発や大規模水力発電に関してリスク評価のプロセスを明確にしていく。 メガバンクはこれまで、二酸化炭素排出の多い石炭火力発電に多額の融資をしてきたとして、環境NGOによる厳しい批判にさらされてきた。また、森林関連分野への投融資についても、人権や環境影響に関するチェックの甘さが問題視されてきた。 「みずほの新たな投融資方針では、投融資先企業に『森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ』の順守など、環境・社会への配慮を求めていることが注目される。また、FPIC原則(地域住民の『自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意』の尊重)に基づく対応を求めていくとしたことも画期的だ。森林分野にかかわる産業全体にわたってこうした方針を盛り込んだのは、アジア地域の銀行ではみずほが初めてだ」 国際環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)のハナ・ハイネケン氏は、みずほの方針をこう評価する。 インドネシアやマレーシアなどでは、現地の大手財閥グループがパーム油や木材・紙パルプ生産を推進。メタンなどの温室効果ガスを大量に排出する泥炭地の開発が続いているうえ、先住民の強制立ち退きや労働法違反がたびたび発生し、大きな社会問題となってきた。メガバンク各社はこれらの財閥グループに多額の融資を実施してきた。 RANなどの国際環境NGOはそうした企業による森林破壊や人権侵害の実態を詳細に調査したうえで、メガバンクの貸し手としての責任を追及するキャンペーン活動を世界規模で展開。その一方でメガバンクと対話も続けてきた』、欧米の機関投資家がESG投資を重視している以上、「メガバンク」もそれに従ってゆく必要がある。
・『「責任ある銀行原則」が後押し  みずほは石炭火力発電所向け投融資方針も大幅に見直した。従来は発電効率が最も高い超々臨界圧方式の石炭火力であれば投融資を実行するとしてきたが、今回の方針変更ではこうした高効率の石炭火力発電所であっても新規の投融資を行わないとした。 こうした動きについて、環境NGO「気候ネットワーク」の平田仁子理事は、「脱石炭火力発電という点において、みずほは日本の金融機関の中において、最も前向きな方針を示した。石炭火力の推進を掲げる政府の方針の枠外に一歩出ようとするものであり、ビジネス界に与える影響は大きい」と高く評価する。 ではなぜ、メガバンクはこうした動きに舵を切ったのか。企業の脱炭素化への取り組みに詳しい東京大学の高村ゆかり教授は「『責任ある銀行原則』に署名したことによる影響が大きい」と指摘する。 国連環境計画・金融イニシアティブが主導する同原則は、2019年9月にニューヨークで開催された国連サミットに合わせて正式に発足し、日本のメガバンクも欧米やアジアの有力銀行とともに名前を連ねた。高村氏は「同原則の特徴は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)や地球温暖化対策の新たな枠組みであるパリ協定に、自社のビジネスを整合させることを銀行に求めている点にある。メガバンクの署名により、間接金融においてもパリ協定との整合性を踏まえた脱炭素化の機運が高まっている」と指摘する。 メガバンクはG20の金融安定理事会が設立した「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に基づく、気候変動リスクの分析や情報開示も進めている。 この分野で先行したのが三井住友FGだ。同社は気候変動が原因で発生するとみられる災害による想定損失額を試算し、開示している。世界で最も早くTCFD最終報告書の趣旨を踏まえた試算結果を開示したことをきっかけに、「サステナビリティをめぐる投資家などとの面談の回数が、2019年には前年比で10倍にも増加している」(末廣孝信・サステナビリティ推進室長)という。 環境分野に関する銀行の取り組みは、世界規模で加速している。 2015年12月にパリ協定が合意されて以降、EU内の大手銀行の多くが石炭火力発電向け融資を取りやめている。アメリカではゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどが、2019年末以降、石炭火力発電や北極圏での石油・ガス開発への新規投融資を取りやめると相次いで宣言した』、「EU内の大手銀行」の動きはさすが早かったようだ。
・『メガバンクの方針に「抜け道」との指摘も  世界最大手の資産運用会社ブラックロックは、投資先の経営者に宛てた2020年の年頭書簡の中で、サステナビリティに関連した情報開示で十分な進展を示せない企業について、株主総会で経営陣と取締役の選任に反対票を投じる考えを表明した。 ヨーロッパとは異なり、アメリカの金融機関は石油・ガスなど化石燃料分野への投融資額が大きく、脱炭素化に消極的な姿勢を示す企業が多かった。それだけに、今回の方針策定に関わったみずほの幹部が「米銀の姿勢の変化も横目に見ながら方針の強化を検討してきた」と明らかにするように、アメリカの金融機関の姿勢の変化は日本のメガバンクにも影響を与えている。 もっとも、「メガバンクの方針には抜け道が少なくない」との指摘もあり、メガバンクが真価を問われるのはこれからだ。 「『環境・持続社会』研究センター」(JACSES)の田辺有輝理事は、みずほの石炭火力発電に関する新方針にある「運用開始日(6月1日)以前に支援意思表明済みの案件は除く」との記述を問題視する。 田辺氏は、「政府間の合意があることを理由として、みずほなどと国際協力銀行は、5月中にベトナムのブンアン2石炭火力発電事業に支援表明をする可能性がある」と予測する。ブンアン2石炭火力発電所については、日本のインフラ輸出戦略の一環として官民での支援が検討されている。) 新たな方針を実施する6月1日を待たずに、石炭火力発電プロジェクトへの新規融資を決めることになれば、みずほは厳しい批判にさらされる可能性が高い。 気候ネットワークは3月16日、「気候関連リスクおよびパリ協定の目標に整合した投資を行うための計画の開示」を求める株主提案をみずほに提出した。気候ネットワークは、その後のみずほによる石炭火力発電への投融資厳格化を評価しつつも、「パリ協定との整合性が不明確であること」を理由に、株主提案を取り下げない方針だ』、「運用開始日(6月1日)以前に支援意思表明済みの案件は除く」、との条項はこうしたプロジェクト融資案件では、どうしても必要なので、やむを得ない。
・『欧州はグリーンリカバリーの流れに  冒頭に触れたように、みずほは現在、約3000億円かかるとされる石炭火力発電所向けの与信残高を2030年度までに半減させ、2050年度までにゼロとする方針だ。しかし、パリ協定で盛り込まれた世界の平均気温上昇を2℃以内に抑える目標を達成するには「2050年度まで残高が残るという選択肢はありえない」(平田氏)。 しかも、みずほが開示した石炭火力発電所向け与信残高は、石炭火力発電に使途を限定したプロジェクトファイナンスの残高であり、そこには資金使途を限定しない電力会社向けの通常の融資や電力債の引き受けは含まれていない。そうした形態での投融資については石炭火力発電向けの金額算定が難しいこともあり、みずほは削減目標を示していない。 RANのハイネケン氏は、三井住友が示した投融資方針について、「森林や石油・ガスなど各セクターでどのようなリスクがあるかを示したことは評価できるが、『森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ』の遵守までは求めておらず、石油・ガスセクターではどのような場合に投融資を行わないかが明示されていない」と指摘する。 【2020年5月16日18時30分追記】初出時のハイネケン氏のコメントを表記のように追加・修正いたします。 三菱UFJの新方針についても、石炭火力発電に関する対応方針に変化が見られないことなどを理由に、国際環境NGOからは「失望を禁じえない」(NGO350.org JAPANの横山隆美代表)といった声があがっている。 現在、金融界は新型コロナ対応にかかりきりだが、経済復興の過程において、CO2排出量の多いエネルギー使用を再び増やすことは脱炭素化の方向性と相容れない。パリ協定を重視するヨーロッパなどでは、「グリーンリカバリー」(化石燃料中心のエネルギーから、再生可能エネルギーなど温室効果ガス排出を伴わないエネルギーへのシフトを通じた経済復興)の必要性が提唱されている。 日本がコロナ後を見据えて、脱炭素化を視野に入れた経済改革を進めるうえで、メガバンクの役割と責任はきわめて大きい』、「日本がコロナ後を見据えて、脱炭素化を視野に入れた経済改革を進めるうえで、メガバンクの役割と責任はきわめて大きい」、同感である。
タグ:新設の石炭火力への支援について「原則として実行しない」 三菱UFJフィナンシャル・グループも5月13日付で環境・社会配慮に関する方針改定を表明。石油・ガス開発や大規模水力発電に関してリスク評価のプロセスを明確にしていく 「地球温暖化CO2犯人説は眉唾?懐疑論者が語る「信憑性に欠ける証拠」」 「地球温暖化」狂騒曲』(丸善出版) 国連環境計画・金融イニシアティブが主導 独政府は、温暖化ガス排出が少ない鉄道の利用を促進するため50キロメートル以上の長距離鉄道利用にかかる付加価値税率を19%から7%へ大幅に引き下げる 5月になって2回にわたり合計0.5%利下げ オーストラリア 今後も続く異常気象 オーストラリア準備銀行 ⼤規模な森林火災 「欧州グリーンディール」 「(50年に実質ゼロの)実現の道筋を示せれば、EUが世界を引っ張ることができる」 オランダは国土の約3分の1が海抜0メートル未満であるため、国民が気候変動の問題に特に敏感 司法が具体的な数値目標示したオランダ オランダの最高裁判所は12月20日、政府に対して2020年末までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも25%削減するよう命じる判決 「気候変動でオランダ最高裁が「驚くべき判決」 オーストラリアは山火事で追加利下げ?」 日経ビジネスオンライン 上野 泰也 (その6)(気候変動でオランダ最高裁が「驚くべき判決」 オーストラリアは山火事で追加利下げ?、地球温暖化CO2犯人説は眉唾?懐疑論者が語る「信憑性に欠ける証拠」、メガバンク 「脱炭素化」に大きく舵を切る理由 投融資方針を相次ぎ転換 抜け道の批判も) 環境問題 日本のメガバンクも欧米やアジアの有力銀行とともに名前を連ねた 「気候関連財務情報開示タスクフォース」 気候変動リスクの分析や情報開示も進めている 運用開始日(6月1日)以前に支援意思表明済みの案件は除く メガバンクの方針に「抜け道」との指摘も 日本がコロナ後を見据えて、脱炭素化を視野に入れた経済改革を進めるうえで、メガバンクの役割と責任はきわめて大きい 東京大学名誉教授の渡辺正 アメリカではゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどが、2019年末以降、石炭火力発電や北極圏での石油・ガス開発への新規投融資を取りやめると相次いで宣言 パリ協定が合意されて以降、EU内の大手銀行の多くが石炭火力発電向け融資を取りやめている 欧州はグリーンリカバリーの流れに ダイヤモンド・オンライン 「責任ある銀行原則」が後押し 日本政府は100兆円投じるが効果は微々たるもの その100兆円には、2012年の民主党政権が導入した『再生可能エネルギー発電促進賦課金』が40兆~50兆円ほど含まれます CO2増加は食物や緑を豊かにする 気温が上がっているのは都市部だけという事実 財政支出と、電力料金への賦課金とは全く違う概念 気象庁 100年あたり0.74℃の割合で上昇し 世界の年平均気温偏差の経年変化(1891〜2019年) 地球温暖化脅威論の発端は1988年 三井住友フィナンシャルグループ 東洋経済オンライン パーム油や木材・紙パルプ分野では、新規融資時のみならず、融資実行後のチェックも厳格 みずほ 石炭火力発電所の新規建設を資金使途とする投融資を今後行わない方針を表明 「メガバンク、「脱炭素化」に大きく舵を切る理由 投融資方針を相次ぎ転換、抜け道の批判も」 みずほの対応をNGOは評価 ESG
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