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日中関係(その4)(習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由 魂胆は「天皇の政治利用」、新型肺炎から垣間見えた 対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか、大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に) [外交]

日中関係については、2018年11月6日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その4)(習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由 魂胆は「天皇の政治利用」、新型肺炎から垣間見えた 対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか、大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に)である。

先ずは、昨年11月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際関係アナリストの北野幸伯氏による「習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は「天皇の政治利用」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/221300
・『来春に予定されている習近平の「国賓訪日」に、反対の声が上がっている。佐藤正久前外務副大臣は11月11日、「香港問題」「邦人拘束問題」「尖閣問題」「日本食品の輸入規制問題」を挙げ、「4つのトゲを抜かないと国賓というわけにはいかない」と述べた。40人の自民党議員が参加する「日本の尊厳と国益を護る会」(代表幹事・青山繁晴参議院議員)も、同じ理由で反対を表明した。筆者も、習近平の国賓訪日に反対している。なぜなら、中国は天皇を政治利用した過去があるからだ』、当初は桜の咲く頃としていた「国賓訪日」は、新型コロナウィルス感染拡大により、年内は困難になったようだ。
・『米中戦争の最中に中国に接近する日本  筆者が習近平の国賓訪日に反対する理由は4つある。 1番目の理由は、中国への過度の接近が、同盟国である米国との関係を破壊するからだ。日本人はほとんど意識していないが、世界は2018年から「米中覇権戦争の時代」に突入している。トランプは2018年7月、8月、9月と、連続して中国製品への関税を引き上げた。これで、世界は「米中貿易戦争が始まった」と認識した。 そして、同年10月、ペンス大統領がハドソン研究所で行った「反中演説」後、「米中新冷戦」という用語が世界中で使われるようになった。 問題は日本政府の動きだ。安倍首相は2015年4月、米国における議会演説で、以下のように演説した。(太線筆者、以下同) <米国国民を代表する皆様。私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。米国と日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。希望の同盟――。一緒でなら、きっとできます。> 非常に感動的なスピーチで、結果、日米関係は劇的に改善された。しかし、今となっては、「口だけ」と批判されても仕方ない状況になっている。というのも、米国が中国に「宣戦布告」した直後から、日中関係は「劇的」といっていいほど改善されている。 戦争の最中に、同盟国が敵国に接近する行為を一般的に何というだろう?そう、「裏切り」である。日本は中国に急接近することで、同盟国米国を「裏切って」いるのだ。 それで、米国の日本への態度も変わり始めた。トランプは、大統領就任後封印していた「日米同盟破棄論」や「同盟不平等論」を、再び主張し始めている』、「米国が中国に「宣戦布告」した直後から、日中関係は「劇的」といっていいほど改善されている」、「中国」からすれば当然の行動だ。それにいい気になって、トランプを怒らせたのであれば、如何にもまずい。
・『人権侵害国家のトップと天皇陛下の談笑シーンは悪夢だ  10月22日に行われた天皇陛下の「即位礼正殿の儀」には、世界各国から国王、王妃、大統領、首相などが集結した。しかし、米国が派遣したのは「運輸長官」だった。 もともとペンス副大統領が出席する予定だったが、意図的に「格下」の大臣を送ってきたのだ。日本政府は、米国政府の「シグナル」に気がついて、中国への接近を止めなければならない。 2つ目の理由は、「ウイグル問題」だ。中国は昔から「人権侵害超大国」だった。しかし、米国はこれまで、この国の人権を問題視することはほとんどなかった。「チャイナマネー」が欲しかったからだろう。だが、「米中覇権戦争」が始まったので、中国の人権問題がクローズアップされるようになってきた。 その最たるものが「ウイグル問題」だ。具体的には、中国政府がウイグル人約100万人を強制収容所に拘束していること。これは、米国の対中「情報戦」に利用されているが、「事実」でもある。 <国連、中国政府がウイグル人100万人拘束と批判 BBC NEWS JAPAN 2018年09月11日 中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人を約100万人、テロ取り締まりを「口実」に拘束していると、国連は懸念を強めている。国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した。 8月半ばにスイス・ジュネーブで開かれた同委員会の会合では、信頼できる報告をもとに中国政府が「ウイグル自治区を、大規模な収容キャンプのようにしてしまった」と委員たちが批判。> 日本政府は、21世紀の現在、中国でナチスドイツやスターリン時代のソ連のような人権侵害が行われていることを問題視すべきだ。 習近平が訪日する頃、この問題は、もっと盛り上がっているだろう。そして、天皇陛下が、100万人を拘束する国の独裁者と談笑する映像が、世界に配信される。「日本国の天皇は、独裁者と歓談している」と非難されることは容易に想像できる。そうなった時、天皇陛下にはもちろん何の非もない。非難されるべきは、会談を設定した日本政府だ』、「人権侵害国家のトップと天皇陛下の談笑シーンは悪夢だ」、その通りだ。
・『中国政府は昔から天皇を政治利用してきた  しかし、国際社会は、そのようには受け取らず、「天皇が自らの意思で独裁者と談笑している」と理解するだろう。なぜなら、外国人は普通、「天皇に政治的決定権は一切ない」という知識を持ち合わせていないからだ。 第3の理由は「香港問題」だ。習近平は11月4日、上海で、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と会談した。彼は、「中国中央政府は林鄭氏に高度の信頼を寄せている。この暴動を止めること、そして秩序を回復することが、依然として香港で最も重要な任務だ」と述べ、彼女を激励した。 林鄭月娥は、国家主席から直々に「暴動を止めろ」「秩序を回復しろ」と言われ、「どんな手段を使ってもデモを鎮圧する」と決意したことだろう。 この会談後、香港警察はデモ隊鎮圧に実弾を使用するようになり、この原稿を書いている時点で2人の死者が出たと報じられている。習近平が訪日する頃、香港情勢はさらに悪化しているだろう。そして、力を使ってデモを弾圧する中国への風当たりは、さらに強くなっているはずだ。 そんな時期に、天皇陛下は「民主化デモを武力で弾圧する国のトップ」と会談させられる。日本政府は、国際社会がこれをどう受け取るか、熟考するべきだろう。 第4の理由は、中国政府が天皇陛下を政治利用するからだ。これは、にわかには信じがたい話かもしれないから、少し過去を振り返ってみる必要がある。 米中関係は、1970年代にニクソンと毛沢東が和解した後、ずっと良好だった。毛の後を継いだ鄧小平は、日本、米国から資金と技術を思う存分受け取り、中国経済を奇跡的成長に導いた。日米は、中国に「金と技術を無尽蔵に恵んでくれる存在」なので当然、日中、米中関係も良好だった。 しかし、1980年代末から1990年代初めにかけて、2つの理由で米中関係は悪化する。 1つ目の理由は1989年6月4日に起きた「天安門事件」。人民解放軍はこの日、デモを武力で鎮圧した。中国共産党は、犠牲者の数を319人としているが、英国政府は1万人以上としている。これで、中国は国際的に孤立した。 2つ目の理由は、1991年12月の「ソ連崩壊」。そもそも米国が中国と組んだのは、ソ連に対抗するためだった。しかし、その敵は、崩壊した。それで当然、「なぜ我々は、中国のような一党独裁国家と仲良くし続ける必要があるのか」という疑問が、米国内から出てきた』、今日の夕刊によれば、全人代常務委員会は「香港国家安全維持法案」を異例のスピードで可決。香港政府は毎年民主化を求めてデモが起きる香港返還記念日の7月1日にも施行する方針のようだ。
・『天皇訪中に助けられた後 日本を裏切った中国  さて、中国は、この苦境をどう克服したのか? ナイーブな日本政府に接近したのだ。江沢民は1992年4月に訪日し、天皇皇后両陛下(現上皇上皇后両陛下)を中国に招待した。そして1992年10月、天皇皇后両陛下が訪中された。 これを見た欧米諸国は、「日本は、中国市場を独占するつもりではないか」と焦りを感じるようになる。 中国の賃金水準は当時、日米欧の数十分の一であり、将来世界一の市場になることも確実視されていた。だから、欧米は、「金もうけと人権」の間で揺れていたのだ。 中国は、天皇陛下を政治利用することで、日米欧を分断させ、日本だけでなく欧米の態度を和らげることに成功した。 これは、筆者の想像ではない。1988年から10年間外交部長(外務大臣)を務めた銭其シンは、その回顧録の中で、天皇訪中が西側諸国による対中制裁の突破口であったことを明かしている。 話がここで終われば、「中国に一本取られた」程度だった。しかし、問題はここからだ。日本と天皇陛下に救われた江沢民は、恩をあだで返した。どういうことか? 中国政府は1994年、「愛国主義教育実施要綱」を制定。1995年から、徹底した「反日教育」を行うようになった。そして、中国は、世界における「反日プロパガンダ」を強化していく。アイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』が大ベストセラーになり、「南京大虐殺」が世界中で知られるようになったのは1997年のことだ。同年、江沢民は真珠湾を訪問し、日本の中国侵略と、真珠湾攻撃を非難した。 この動きは一体何だろうか?なぜ、日本に救われた江沢民は、「反日教育」「反日プロパガンダ」を強力に推進したのか?日本を「悪魔化」するためだろう。日本を悪魔化すると、米中関係はよくなる』、「中国は、天皇陛下を政治利用することで、日米欧を分断させ、日本だけでなく欧米の態度を和らげることに成功した」、しかし「日本と天皇陛下に救われた江沢民は、恩をあだで返した」、もう忘れかけていたが、今一度、思い返すべきだ。
・『クリントン政権の本音は「米中で日本を共同支配」  2度の世界大戦の前と戦中、米中関係(当時は中華民国だった)は、日本という「共通の敵」がいて良好だった。そして、1970年代から1980年代末までは、ソ連という「共通の敵」がいて、やはり良好だった。しかし、天安門事件とソ連崩壊後、中国が米国の主敵になる可能性が出てきた。 そこで中国は、「日本を米中共通の敵にしよう」と決意したのだ。 そして、中国の工作は成功した。クリントン時代の過酷な日本バッシングを覚えている人も多いだろう。この件に関連して、米国在住国際政治アナリスト伊藤貫氏の『中国の「核」が世界を制す』(PHP研究所)に驚きの話が紹介されている。 伊藤氏は1994年、当時米国防総省の日本部長だったポール・ジアラ氏と会った。ジアラ氏いわく、<「クリントン政権の対日政策の基礎は、日本封じ込め政策だ。> <クリントン政権のアジア政策は米中関係を最重要視するものであり、日米同盟は、日本に独立した外交、国防政策を行う能力を与えないことを主要な任務として運用されている。>(200ページ) 伊藤氏は、米国の政策について、以下のように結論づけている。 <米中両国は東アジア地域において、日本にだけは核を持たせず、日本が自主防衛できないように抑えつけておき、米中両国の利益になるように日本を共同支配すればよい」と考えている。>(113ページ) ここまでをまとめてみよう。 ・1989年、中国は天安門事件で国際的に孤立した。 ・中国は、ナイーブな日本政府に接近する。 ・1992年、天皇皇后両陛下(当時)が訪中された。 ・日本が中国市場を独占することを恐れた欧米は態度を軟化。中国の「天皇利用作戦」は成功した。 ・天皇陛下を利用して包囲網を突破した中国は、「日本悪魔化工作」を開始。 ・日本は、米中「共通の敵」にされてしまい、日米関係は悪化。 ・逆に米中関係は、大いに改善された』、「日本」は「米中」にいいようにやられたようだ。
・『ナイーブな政府が日本を滅ぼす  平成は、1989年1月8日に始まった。同年6月4日に「天安門事件」が起き、中国は世界的に孤立した。 令和は、30年後の2019年5月1日に始まった。中国は今、ウイグル問題、香港問題で孤立している。香港問題を語る際、しばしば「第二の天安門は起こるか?」といった表現が使われている。 30年前、中国は日本政府を操り、天皇陛下を政治利用することで危機を乗り越えた。そして30年後、中国は再び日本に接近し、天皇陛下を政治利用することで、危機を乗り越えようとしている。習近平が来春「国賓訪日」すれば、天皇陛下に「近い将来の訪中」を要請する可能性は極めて高い。天皇陛下は立場上、これを拒否できないだろう。 習近平の国賓訪日に続く天皇陛下の訪中で、日米の亀裂は、さらに深まる。日米同盟を破壊することで、中国は現在の危機を乗り越えるだけでなく、覇権に向かって大きく前進することになるだろう。 日本政府はどうすればいいのか?これは簡単で、平成の間違いを繰り返さないことだ。つまり、習近平の国賓訪日を断り、天皇陛下の訪中、つまり政治利用の可能性を事前に根絶する。口実は、何とでもなる。「邦人拘束問題、尖閣問題、ウイグル問題、香港問題などで、保守派議員の反発が激しい」と言えばいいだろう。 人も国家も間違いを犯す。しかし、優れた指導者は過去の間違いから学び、同じ過ちを2度と繰り返さない。日本政府は今、無意識のうちに30年前の過ちを繰り返そうとしている。安倍内閣が、過去の教訓から学び、賢明な判断を下すことを心から望む』、「国賓訪日」が、新型コロナウィルス感染拡大により、年内は困難になったのは、一安心だ。新型コロナウィルス感染拡大が思わぬ贈り物をもたらしたようだ。

次に、本年2月12日付け日経ビジネスオンラインが掲載した中部大学特任教授(元・経済産業省貿易管理部長)の細川昌彦氏による「新型肺炎から垣間見えた、対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00029/?P=1
・『中国の新型肺炎の感染が拡大して、経済への深刻な影響が懸念されている。とりわけ発生源である中国・武漢市は自動車産業の一大集積地で、自動車業界のサプライチェーン(部品供給網)への大きな影響にメディアの関心も注がれている。中国での自動車生産への部品供給や中国からの自動車部品の輸入など、世界の自動車生産体制への広範な影響が懸念されるのは当然のことだ。 しかし、もう一つ忘れてはならないのが半導体産業だ。 半導体産業は「中国製造2025」の最重点産業で、2025年までに自給率7割を目標としている。武漢はその中核拠点と位置付けられ、海外技術を基に巨大工場の建設を進めている。台湾から大量の技術者を引き抜くなどして、中国半導体大手の紫光集団は中国メーカーとしては初めて3次元NAND型フラッシュメモリーの量産に乗り出した。 「中国製造2025」は単なる産業政策ではない。目的に「軍民融合」を掲げて、産業競争力のみならず軍事力の高度化も目指している。米国が強い懸念を有するゆえんだ。中国も海外からの警戒感を避けるために、最近は爪を隠して、この言葉に言及しない方針である。しかし実態は何ら変わっていない。 先日、武漢からチャーター便で日本人数百人が帰国した。そのうち約半数は自動車関連の従事者であったが、残りの大半は半導体関連の従事者だった。日本の半導体製造装置メーカーの技術者がそうした工場の建設とメンテナンスに関わっているのだ。もちろん中国市場を開拓するビジネスとして取り組むのは当然である。現時点でこのこと自体が問題になるものではない。 ただし、今後も同じだと考えていては危険だ。一層の注意を要する。現在、半導体産業がいわゆる“米中テクノ冷戦の主戦場”となっているからだ』、確かに「“米中テクノ冷戦」で流れ弾に当たらないよう細心の注意が必要だ。
・『米中テクノ冷戦の主戦場・半導体  先月、米中貿易交渉の第1段階の合意が署名されたが、こうしたトランプ大統領による関税合戦での取引は表層的なものだ。米議会を中心とする深層部分でのテクノ冷戦(技術覇権争い)はますます激しくなり、中国資本による米国企業への投資規制の強化に続いて、対中輸出管理も抜本的に強化しようとしている。その重要なターゲットの一つが半導体分野である。 半導体は軍事産業の生産基盤となる技術である「基盤技術」の代表格とみなされている。米国の国防権限法においても安全保障上中核的な産業分野として半導体産業が特記されたことは要注意だ。 一方、中国はそうした半導体産業を猛然と育成しようとしている。 2018年4月、中国通信機器大手のZTEが米国の制裁発動によって、米国のインテルとクアルコムなどから半導体の供給を受けられなくなって、主力事業の停止に追い込まれ悲鳴を上げた苦い経験から、中国は半導体の内製化に一層アクセルを踏んだ。 さらに同年10月、中国の国策半導体メーカー福建省晋華集成電路(JHICC)が米国の制裁発動によって半導体製造装置の輸出規制を受けて大打撃となったことに懲りたようだ。 2014年からの第1期には2兆円の基金で半導体チップに投資し、2019年10月に発表した第2期計画では3.2兆円の基金で半導体製造装置に投資する。こうした資金力を武器に技術と人材の取り込みを加速している。高度な半導体人材を抱える台湾からは3000人を超える技術者が流出して歯止めがかからないという。 今後も中長期で米中対立が続くことを前提に、中国は米国依存を脱却するために自前生産に躍起となっているのだ。 これに対して、米国が半導体製造に関する技術流出に警戒するのも当然だ。そしてその製造装置は日欧企業が主たるプレーヤーであることから、その協力が不可欠としている。 最近、半導体の性能を高める次世代装置(EUV露光装置)を独占的に供給しているオランダの装置メーカーASMLが中国政府系半導体メーカーSMICへの供給をストップしたのも米国の圧力があったからだといわれている。 また台湾の半導体大手TSMCに対して、米中それぞれが圧力をかけて米国生産、中国生産をさせようと綱引きが過熱しているのもその象徴的出来事だ。TSMCに部材供給している日本企業もその余波を受けるだろう』、「TSMC」は米国の圧力に屈して、「米国生産」を選択したようだ。
・『米国が志向する「部分的な分離」戦略  今、ワシントンでは「部分的な分離(Partial Disengagement)」がキーワードになっている。 米中対立の激化で、世界が米国圏と中国圏に「分断(デカップリング)」されるのではないかとの懸念が広がっている。しかし経済全般の「分断」はもはや不可能で非現実的だ。グローバルな相互依存の経済構造が既に出来上がっているからだ。他方で、安全保障上の対中懸念の現実を考えれば、むしろ安全保障の視点で機微な分野を特定して、部分的に中国を分離していく。それが米国の志向する「部分的な分離」戦略だ。 メディアは制裁関税の影響によるサプライチェーンの揺らぎにばかり注目しているようだ。しかし問題の本質はそこではない。 制裁関税の発動によるコスト増が中国から他のアジア諸国に生産拠点を移管する動きを招き、サプライチェーン再編の波が押し寄せているのは事実だ。こうした現状でどう経営判断するかはもちろん極めて重要である。しかしトランプ大統領による制裁関税は自然災害同様、予測不可能だ。新型肺炎によるサプライチェーンの分断もそうだ。自動車産業を中心に世界経済に深刻な影響を与えているが、これも予測困難だ。そうしたリスクに対して企業はコスト増でもリスク分散して柔軟に対応できるように手を打つしかない。 むしろ安全保障の観点での機微な分野での「部分的な分離」は着実に進展しつつある。しかも中長期的な視点でだ。 日本企業も安全保障のアンテナを高くして、社内の事業分野ごとに仕分けをする作業が必要だ。そして、こうした特定分野における技術の観点で、サプライチェーンの分断を経営リスクと捉える必要があるだろう』、同感だが、こうした感度が鈍い「日本企業」には、よほどの努力が必要だろう。
・『日本企業も要注意、米国主導の“新型の対中ココム”  米国は中国への技術流出を阻止すべく輸出管理の抜本的な強化をしようとしている。輸出管理改革法(ECRA)に基づき、中国を念頭に置いて規制対象範囲を拡大しようとしている。いわば“新型の対中ココム”ともいえるものだ(政府は対外的にこうした呼称を用いることを当然否定するだろうが)。そのうちの1つが、上述の「基盤技術」といわれるもので、半導体製造技術がその焦点になっている。 それと同時に、米国だけが独自に規制しても効果が限定されるため、同盟国との国際連携が必要とされている。日本にも同調が求められるのは明らかだ。そうなると日本企業の企業活動も多大の影響を受けることになる。 また、事実上の禁輸措置につながるエンティティ―・リストへの掲載が相次いでいる。この1年半の間だけでも有名なファーウェイ以外に監視カメラ、スーパーコンピューター、原発関連企業など200社近くがリストに追加されている。こうした企業にも米国は半導体を含む部材供給をストップする。 「買わない」、「使わない」から「売らない」、「造らせない」までに及んでいるのだ』、「「買わない」、「使わない」から「売らない」、「造らせない」までに及んでいる」、ずいぶん徹底しているようだ。
・『日本企業も“利敵行為”は許されない  ここで注意しなければならないのは、日本企業であってもこのエンティティー・リストへの掲載は決して無縁ではないということだ。日本から中国へ輸出する場合であっても米国からの部材などを25%以上組み込んだ場合に、米国の再輸出規制がかかることは大方の日本企業は理解しているが、問題はそれだけではない。 仮に「米中対立はビジネスチャンスだ」として「漁夫の利」を得ようとすれば、違法行為でなくても、米国からは利敵行為とみなされて制裁対象にもなり得るのだ。 日本企業は最低限、法律的なチェックはしているだろうが、それだけでは十分ではない。エンティティー・リスト掲載企業との取引は慎重にすべきであることを経営層は理解しておく必要がある。 米中両国とビジネスで付き合う日本企業にとって、機微な分野の見極めが重要になってくる。AI(人工知能)、量子技術、5G、ドローン、監視カメラのような特定分野については、米国の動きを踏まえた慎重な対応が必要だ。虎の尾を踏むわけにはいかないのは、1987年の東芝機械ココム違反事件を思い出せば明らかである。 日本企業もこうした安全保障の動きへのアンテナを高くしておかなければ、経営の根幹を揺るがしかねない。半導体関連はそうした機微な分野として特に要注意であることを、新型肺炎を巡る動きで思い起こさせられた』、「日本企業もこうした安全保障の動きへのアンテナを高くしておかなければ、経営の根幹を揺るがしかねない。半導体関連はそうした機微な分野として特に要注意」、説得力溢れた主張で、同感である。

第三に、6月20日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/357296
・『日本の外交にとって、中国を相手にすることほど複雑でやっかいなものはないだろう。 アメリカとの間には日米安保条約という強固な基盤があり、時に「対米追随外交」と批判されながら、アメリカに歩調を合わせることで安定した関係を維持してきた。 イギリスやフランス、ドイツなどヨーロッパ主要国との間にはそもそも国家関係を揺るがすような深刻な問題がない。一方で韓国や北朝鮮、ロシアのように、歴史問題や領土問題などをめぐって真正面から主張が対立している場合は、外交交渉そのものが成り立ちにくいため、自国の主張を繰り返していればいい』、「「大国化した中国に日本はどう向き合うべきか」、確かに悩ましい課題だ。
・『新たな対中外交戦略の時代に  しかし、日中関係はそれほど単純ではない。1972年の国交正常化以降、歴史問題をはじめ何らかの問題を抱えながらも、それなりに良好な関係を維持していかなければならない宿命にあった。 ところが今回、中国が打ち出した香港の国家安全法制定は、これまで両国が維持してきた日中関係を大きく変えてしまいそうな根本的な問題をはらんでいる。中国が大国化したことで日本が個別に中国に向き合って問題を解決できる時代は終わった。国際社会と連携した、新たな外交戦略が必要になったようだ。 国交正常化からの約半世紀を振り返ると、日中関係は劇的に変化してきた。正常化後は日本国内に日中友好ムードが高まり、日中関係は一気に改善した。1980年代には日本が歴史教科書問題や中曽根康弘首相の靖国神社公式参拝などの問題を引き起こし、中国でも1989年に天安門事件が起きた。 このころの日本のGDPは中国の約5倍、国民1人当たりの所得は約30倍で、経済力では中国を圧倒していた。安全保障の面でも自衛隊と在日米軍やアメリカ第7艦隊を合わせた軍事力は、中国の人民解放軍の力が及びもつかないものだった。 こうした状況もあって、日中間の問題に対して日本政府は寛大さを見せる余裕を持っていた。教科書問題では中国の要求を受け入れ、教科書の検定基準を見直した。中曽根首相の靖国神社参拝は中国への配慮から1年で終わった。天安門事件で中国が欧米諸国の批判を浴びて国際的に孤立すると、日本はいち早く円借款の凍結解除を打ち出すなど、関係改善に積極的に取り組んだ。 中国の姿勢も今とはまったく異なっていた。当時の最高指導者である鄧小平が打ち出したのは改革開放路線であり、西側の市場経済システムを積極的に取り入れて中国の経済発展を推し進めた。それを象徴するのが「韜光養晦」という言葉だった。 「才能を隠して、内に力を蓄える」というような意味であり、イデオロギーなどにこだわらず低姿勢で西側諸国に接し、その技術などを導入するという徹底したプラグマティズムだった。実際、1978年の訪日時、鄧小平は「これからは日本を見習わなくてはならない」という言葉を残している。現在の習近平体制の振る舞いとは対極にあった』、確かに「現在の習近平体制の振る舞い」には目に余るものがある。
・『「寛容の外交」から「原則重視の外交」へ  1990年代後半以降になると、経済力を増してきた中国の振舞いは徐々に変化してきた。日本の排他的経済水域(EEZ)内で中国の調査船による違法な海洋調査が頻繁に行われるようになった。海底資源探査や潜水艦の航路開拓などが目的とされており、日本政府はその都度、中国側に抗議を繰り返していた。 日本周辺での中国海軍の活動が活発化し始めたのも同じころだった。さらに、1995年と1996年には核実験を繰り返した。日中関係は次第にぎくしゃくし始め、日本政府の対応は「余裕と寛容」から「原理原則の重視」に転換していった。 2001年春、台湾の総統を退任した李登輝氏が病気治療を理由に訪日ビザを申請してきた。李登輝氏を台湾独立派とみなしていた中国政府は、李氏訪日を政治活動だとして日本政府にビザを発給しないよう強く求めてきた。 外務省は局長以上を集めた会議で対応を協議したが、驚くことに1人の局長を除き、すべての幹部がビザを発給すべきという意見だった。中国の主張には理がないというのである。森喜朗首相の退陣直前というタイミングだったが、首相官邸は外務省の判断も踏まえて最終的にビザ発給にゴーサインを出した。 森政権ではこのほかに歴史教科書問題が再び起きたが、中国の修正要求を日本政府は「内政問題である」として突っぱねた。1980年代とは様変わりの対応だった。 2010年、日本のGDPはついに中国に追い抜かれ、2019年は3倍にまで差が開いた。中国の軍事費も増え続け、今やアメリカに次いで世界第2位の軍事大国だ。その額は日本の5倍を超えている。習近平国家主席の登場で、鄧小平氏の「韜光養晦」は消え去り、代わりに打ち出されたのは「一帯一路」であり、「中華民族の偉大なる復興」である』、「「寛容の外交」から「原則重視の外交」へ」、力関係の変化を踏まえれば当然の選択だ。
・『多国間枠組みを生かした対中抑え込み  こうしたなか、日本では一時、対中強硬論がもてはやされたが、問題の解決に資することはなかった。日本政府が打ち出したのは、さまざまな国際機関やASEANをはじめとした地域の多国間の枠組みなどを動かし、中国を抑え込むとともに問題を解決していく戦略だった。 日本が前面に出て中国と向き合ったところで交渉進展は期待できない。そこで多くの国を関与させる手法にかじを切ったのだ。 中国が南シナ海の岩礁を埋め立てて領有権を主張するとともに軍事基地化していった問題では、中国に批判的な国に働きかけてこの問題をASEAN首脳会議などで取り上げさせた。中国に批判的なフィリピンが常設仲裁裁判所に仲裁を要請し、2011年に「中国の主張は国際法に反する」という判断が出された。この動きに日本政府も深く関与した。 さらに日米、インド、オーストラリアの4カ国が連携して、他のアジア諸国を巻き込んで地域的な連携の枠組みを作る「インド太平洋戦略」構想も日本がアメリカに働きかけたものだった。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)締結で積極的役割を果たしたことも含め、いずれも中国を強く意識した戦略だった。 ぎらつかない手法での対中政策は、必ずしも十分な成果を上げたとは言い切れないが、中国問題はもはや日本一国で抱えきれる問題ではなくなった以上、やむをえない対応であろう。 そこで今回問題となるのは、香港の国家安全法だ。中国にとって香港の民主化運動は香港独立を目指すテロ行為でしかなく、封じ込めなければ台湾やウイグルなどへ飛び火しかねない。しかし、日本を含む欧米諸国からすれば、自由と民主主義という大原則が崩れてしまう本質的な問題である。 ここで日本政府はどう立ち回ろうとしているのだろうか。 6月18日未明、「香港に関するG7外相声明」が公表されたが、その内容は中国に対してかなり厳しい表現となっている。国家安全法について,「一国二制度の原則や香港の高度の自治を深刻に損なうおそれがある」と批判。さらに、「開かれた討議、利害関係者との協議、そして香港において保護される権利や自由の尊重が不可欠である」と強調したうえで、「中国政府がこの決定を再考するよう強く求める」と要求している』、「多国間枠組みを生かした対中抑え込み」、しか手はないようだ。
・『香港・国家安全法が問う根本問題  外相レベルとはいえ、G7各国が歩調を合わせ、中国の対応を明確に批判した意味は大きい。関係者によると、今回の声明の発表に関して日本政府は水面下でかなり積極的に動いたという。 香港問題は、単純化すれば「自由・民主主義体制」か「権威主義体制」かの選択の問題であり、国家の根本問題でもある。2020年秋に予定されている立法院選挙に向けて香港情勢は緊迫し、昨年同様の混乱は避けられないだろう。また11月の大統領選を控え、トランプ大統領の中国批判がエスカレートし、米中関係も緊張を高めそうだ。 そこで日本がどういう対応をするかは、これまでの領有権問題などとは比較にならない重みを持っている。そこであいまいな態度をとれば、国際社会での日本の存在感はなくなり、当の中国からも軽く見られるであろう。かといって単独で突出した中国批判を展開しても、反発を買うだけで成果を得ることは難しい。 外交には原理原則とともに、いかに問題を解決し、国益を実現するかというプラグマティズムも不可欠であり、両者のバランスをうまくとっていくプロの技が重要だ。 日本に今できることは、TPP構想やインド太平洋戦略構想を提起した時と同様、多くの国を巻き込んだ戦略的取り組みを実現させることであろう。例えば、外相レベルの共同声明に続き、次は香港問題にテーマを絞ったG7首脳によるテレビ会談を呼びかけ、中国にメッセージを発信するという手もある。 中国の姿勢はかたくなで、動きは早い。残された時間はあまりないようだ』、しかし、「中国」は「国家安全法」を前述のように異例のスピードで成立させてしまった。「残された」手はまだあるのだろうか。
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