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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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共通テーマ:日記・雑感

中国情勢(軍事・外交)(その8)(岩田 太郎氏3題:「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然、中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある、仮面を捨てた中国 世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、7月26日に取上げた。今日は、(その8)(岩田 太郎氏3題:「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然、中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある、仮面を捨てた中国 世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配)である。

先ずは、7月27日付けJBPressが掲載した在米ジャーナリストの岩田 太郎氏による「「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61435
・『日本の敗戦をピタリと予測した石原莞爾 「大ばくち もとも子もなく すってんてん」  国力をはるかに超えた無謀な戦争を米英蘭支に仕掛け、明治以来、獲得したすべての海外領土・占領地を失ったばかりか、数百万の国民を死なせ、灰燼(かいじん)に帰した皇土が敵国の欲するままに支配され、自立や独立さえ失う運命となった敗戦国日本。その喜劇的でさえある愚かさを詠んだ、満洲映画協会理事長の甘粕正彦の辞世の句である。 この句が満洲国の首都新京で詠まれた昭和20年(1945年)8月20日を遡ること数年前、大東亜戦争が華々しく幕を開ける以前から、こうした結末を繰り返し、ピタリと言い当てていた陸軍の戦略家がいた。日本の敗戦とともに消滅した満洲国の建国の青写真を描いた石原莞爾その人である。彼は次のように予言してはばからなかった。 「支那亊變をこのままにして、さらに手を壙げて(ひろげて)新たな戰爭を始めたら必ず國を滅ぼす」 「日本はこれから大變なことになります。まるで糸の切れた風船玉のやうに、風の吹くまゝにフワリフワリ動いて居ります。國に確り(しっかり)した方針といふものがありません。今に大きな失敗を仕出かして中國から、台灣から、朝鮮から、世界中から日本人が此の狹い本土に引揚げなければならない樣な運命になります」 「殘念ながらもう日本も駄目だ。朝鮮、樺太、台灣など皆捨てて一日も早く明治維新前の本土にかへり、ここを必死に守つたなら何とかならぬこともあるまいが、今の儘(まま)では絶對に勝利の見込はない」』、「石原莞爾」氏の見方は「日本の敗戦をピタリと予測」したもので、さすがだ。
・『「日本切腹中国介錯論」とは何か  こうした見解は、昭和12年(1937年)7月の盧溝橋事件で日中戦争が起こる数年前の昭和9年(1934年)7月、当時の敵国であった中華民国(当時の一般的表記は支那)の指導者である蔣介石が「廬山軍官訓練団演説」で示した確信と戦略が原型になっている。 すなわち、日本は中国侵略のために米国およびソ連を敵に回して戦い、必ず自滅する。中国は日本をそのような立場に追い込むために、国際社会を味方にして引きずり込む「以夷制夷(いいせいい)」戦略を追求するというものだ。蔣は次のように述べた。 「第二次(世界)大戦はいまや1937年(昭和12年)までに起る可能性あるほど切迫して来た。(中略)その大戦において日本陸軍はソ連を敵とし、日本海軍は米国を敵とするが故に、結局日本は敗戦すべく、その際が満洲・華北の失地を回復し中国の統一を完整する機会である。(中略)もしこれに先だって日本との単独戦争に入ることとなるならば、長期戦に訴えてその間の国際情勢の変化を待つ」 その後の歴史の展開では、列国が実際の支那事変に即座に介入してこなかったことが蔣には大きな誤算となった。しかし、蔣のビジョンは、昭和10年(1935年)に中国の社会思想家である胡適(昭和13年[1938年]に駐米中国大使に任命、米国の対日政策に大きな影響力を行使)が唱えた外交戦略論である「日本切腹中国介錯論」へと昇華されてゆく。 胡は、「中国は数年間の単独の苦戦による絶大な領土・人的犠牲を決心し、日本の切腹(対米ソ敗戦)の介錯人となるべきだ」と論じたのである。 果たして、蔣の廬山軍官訓練団演説の7年後、胡の日本切腹中国介錯論の完成から6年後の昭和16年(1941年)12月8日、日本は米領ハワイの真珠湾攻撃に踏み切った。その翌日に蔣は、「(日本の行動は、中国の対日)抗戦4年半以来の最大の効果であり、また唯一の目的であった(ことが実現した)」と記している。 こうして、蔣の戦略にはまった日本は米国の圧倒的な生産力と火力に立ち向かえず、自壊することとなる。広島と長崎に原子爆弾が投下され、昭和20年(1945年)8月9日からはソ連にも背後の満洲・朝鮮を突かれ、敗戦を迎えて「元も子もなくすってんてん」になったのだ。蔣・胡・石原の予言はここに成就した』、「真珠湾攻撃」の「翌日」に「蔣」が「(日本の行動は、中国の対日)抗戦4年半以来の最大の効果であり、また唯一の目的であった」、と看破したとは、敵ながらアッパレである。
・『ソ連と中共が黒幕だった「日本切腹中国介錯論」  意外なことに、日本切腹の展開の引き金となった日中戦争は、国民党軍の犠牲と疲弊を招く「肉を切らせて骨を断つ」戦略であるゆえに、蔣介石自身が強く望んだことではなかった。 事実、日中戦争を背後から煽ったソ連最高権力者ヨシフ・スターリン指揮下の国際共産主義運動の指導組織コミンテルン、その命令で動いた中国共産党が日本の敗戦後に漁夫の利を得ている。蔣の国民党政権は昭和24年(1949年)に敗北し、土地改革で農民(特に貧農)の支持を得た中国共産党が大陸部に新中国王朝を樹立したからだ。 スターリンは昭和13年(1938年)2月、日中戦争に深入りを始めた日本を評して、「歴史はふざけることが好きだ。ときには歴史の進行を追い立てる鞭(むち)として、間抜けを選ぶ」と述べ、早くもソ連や米国の対日戦勝を予期していた。これよりさらに遡る大正9年(1920年)には、ソ連の初代最高指導者のウラジミール・レーニンが、「世界共産化を進めるため米国を利用して日本に対抗し、日米の対立を煽るべきだ」と主張している。 加えて、米陸軍情報部と英情報機関が解読したソ連と米国内の暗号電文の集大成である「ヴェノナ文書」の公開により、ソ連・コミンテルンが米政権中枢に、フランクリン・ルーズベルト大統領の側近となったアルジャー・ヒスやハリー・デクスター・ホワイト財務省通貨調査局長(在米日本資産凍結の提案者、かつ悪名高い対日最後通告「ハル・ノート」の起草者)などの工作員を送り込み、さらに有力なキリスト教団体やヘレン・ケラーなど社会的信用があるリベラル派知識人を使って米世論を操作することで、日米開戦とソ連の対日参戦の流れを確実な形で作り出していったことも判明している。 また、昭和12年(1937年)7月からの日本との戦いや、昭和21年(1946年)6月に本格化した国共内戦で疲弊した国民党政権を台湾に追い出し、大陸の漢人支配地域である「中華人民共和国」で覇者となった中国共産党の最高指導者である毛沢東は、昭和39年(1964年)7月に以下のように回想している。 「日本の資本家である南郷三郎氏は私に『申し訳ない、日本は中国を侵略した』と話した。私は『いいえ、もし日本帝国主義が大規模な侵略を起こし、中国の大半を占領しなかったら中国人民は団結して帝国主義に反抗することはできなかったし、中国共産党も勝利を得ることができなかった』と答えた。(中略)彼ら(日本)は蔣介石を弱めた。第二に、われわれは共産党が支配する根拠地と軍隊を発展させることができた」』、「スターリン」が「日中戦争に深入りを始めた日本を評して、「歴史はふざけることが好きだ。ときには歴史の進行を追い立てる鞭(むち)として、間抜けを選ぶ」」と評したとはさすが戦略家の面目躍如だ。「毛沢東」が「もし日本帝国主義が大規模な侵略を起こし、中国の大半を占領しなかったら中国人民は団結して帝国主義に反抗することはできなかったし、中国共産党も勝利を得ることができなかった」、のも中国革命を成功させた戦略家らしい見方だ。
・『今回は中共が米露やインドまで敵に回す  ところが、日本切腹中国介錯の最終的な勝者である中国共産党が今、戦前・戦中の日本の「八紘一宇」「大東亜共栄圏」を彷彿(ほうふつ)とさせる「一帯一路」「人類運命共同体」「アジア運命共同体」「中国夢」などの構想を掲げ、域外覇権国の米国をアジアから排除して、西太平洋地域やユーラシア大陸の大半を中国共産党帝国の版図に組み込もうと画策している。 平成25年(2013年)3月に国家主席に就任した習近平氏の影響下にある国営の中国新聞網は同年7月、今後50年間に中国が戦うべき「6つの不可避の戦争」として(1)台湾「統一」戦争(2020-2025年)、(2)南シナ海の様々な諸島の領土「回復」戦争(2025-2030年)、(3)チベット南部の領土「回復」戦争(2035-2040年)、(4)釣魚島(魚釣島を含む尖閣諸島)及び琉球諸島(沖縄)の「回復」戦争(2040-2045年)、(5)外蒙古(モンゴル国)「統一」戦争(2045-2050年)、(6)ロシアに奪取された領土の「回復」戦争(2055-2060年)を挙げた。この構想は、平成29年(2017年)10月の中国共産党大会に合わせて北京で開催された政府系シンクタンク主催のシンポジウムでも再び発表されている。党中央の暗黙のお墨付きということだ。 日本のアジア征服計画とされる「田中上奏文」(昭和4年[1929年]に中国が宣伝を始めた偽書)の中国版であり、その究極の目的は、米国をアジアから追い出して、漢人による西太平洋地域やアジアの完全支配を実現することだ。中国共産党の軍隊である人民解放軍の強硬派の想定であり、実際の戦闘の順番や時期には変更があり得る。一気に数か所をまとめて片付けることも考えられる。 いずれにせよ、仮想敵国として超大国である米国をはじめ、台湾・日本・ベトナム・フィリピン・マレーシア・ブルネイ・インド・モンゴル・ロシアなど、主要近隣国や関係国をほぼすべて含む極めて野心的なものだ。それぞれの想定戦争時期は違うものの、世界を敵に戦(いくさ)を仕掛ける中国の自信と決心が表れている。事実、7月23日に満洲吉林省の空軍航空大学を視察した習主席は、「どんな敵も恐れない気概を持たなければならない」「実戦をイメージして戦争に勝つための訓練や人材育成を行うべきだ」とハッパをかけている。 皮肉なのは、蔣介石や毛沢東の中国が「よそもの」の米国と組み、アジアから米国を駆逐せんとする日本を叩きのめしたのに対し、現代日本は過去に自ら排除を試みた域外国の米国と組んで、アジアから「部外者」の米国を追い出そうと画策する中国共産党に対抗しようとしていることだ。 さらに皮肉なのは、日本を切腹させた介錯人の中国が、今や日本の敗因であった「政治と戦略の乖離(かいり)」「国内矛盾解決のための冒険主義」「国家理念や戦略の欠如」「国際的孤立」など類似要因に突き動かされ、戦前の日本のような自滅の道を歩み始めているように見えることだ。 中国の国土の広さ、資源の豊富さ、国力・戦力の充実など、戦前の日本とは単純に比較できない面も多いが、国際公約である香港の一国二制度の残り27年を待ちきれずに放棄したり、東シナ海や南シナ海で公然と地政学上の現状変更を推進するなど、最近の「国際協調よりも共産党支配護持」「国益より党益」「世界を敵に回す覚悟」などの傾向は、戦前の日本のような自壊的ともいえる政戦略の乖離を示している』、「今後50年間に中国が戦うべき「6つの不可避の戦争」」、を見ると、確かに、現在の中国は戦前の日本の失敗をなぞろうとしているかのようだ。
・『大日本帝国と同じ愚を繰り返す中国共産党  中国の国力が米国を完全に上回るまでは米国に牙を剥かないという、元最高指導者・鄧小平の「韜光養晦(とうこうようかい)」の教えが守り切れなくなるリスクを冒すほどに、習近平国家主席に指導される中国共産党はなりふり構わぬ対外覇権拡張の道を東シナ海や南シナ海、さらにはインド洋においても歩み始めている。 そのため、蔣介石をして日本を自滅させて漁夫の利を得た中国共産党が、自らの内部矛盾に耐えられなくなる形で「中国が戦うべき6つの戦争」により世界に覇を唱え、日本をはじめ西太平洋地域やユーラシア大陸の大半への侵略拡大により、かつての対日戦線で組んだ米国とロシアの警戒を高め、遂には静謐保持(せいひつほじ)の大国インドまでを潜在的に敵に回す愚を犯している。 このままでは、中国が数十年のうちに亡びる可能性も無きにしも非ずだ。なぜなら、中国が台湾や尖閣諸島を侵略すれば、それに対抗する外部勢力の反撃・反攻はさらに強まり、それを撃退するためにより広範な地域を占領・支配下に置く必要性が生まれ、侵略や拡張が止められなくなる自縄自縛に陥るからだ。他国を侵すほどに現地での抵抗は高まり、友好国や中立国、同盟国でさえ「次は自国ではないか」と警戒して敵に変わってゆくのである。 「自存自衛のため」朝鮮半島を支配下においた日本が、「朝鮮を守る」ため満蒙(満洲および内蒙古)の奪取が必要となり、その「満蒙を死守する」ため北支(華北)や中支(華中)にまで手を伸ばし、国際的な孤立を深める中で敵を増やし、さらには仏印(現在のベトナム・ラオス・カンボジア)や蘭印(インドネシア)、昭南(英領シンガポール)やマレー半島、比島(フィリピン)、ビルマ(ミャンマー)、果てにはソロモン諸島やニューギニアなどの南太平洋諸島まで勢力下に収めなければならないという際限のない「自己防衛のための侵略」に進んだ愚かさを、中国共産党がまさに繰り返そうとしているのである』、「「自存自衛のため」朝鮮半島を支配下においた日本が」、戦線を拡大していった「際限のない「自己防衛のための侵略」に進んだ愚かさ」、は改めて勢いで進む戦争の「愚かさ」を示している。
・『中国切腹日本介錯のいつか来た道  よく知られていることだが、中国共産党は日本の戦略上の過ちを徹底的に研究し、教訓をしっかりと学んでいる。また、日本を屈服させた米国の軍事力や金融制裁・経済封鎖の総合的な破壊力も知り尽くしている。だからこそ、戦前の日本のような国際的な孤立を避けるべく米国主導の戦後国際秩序に従うふりを続け、主敵たる米国を国力の上で凌駕できるまでは爪を隠すという「韜光養晦」を実践してきたのだ。 それは大成功を収め、世界は中国への警戒を解き、中国は世界第二位の経済大国に上り詰めることができた。だが、あまりの成功に中国共産党は慢心し、海外資源を手に入れるため途上国向けの借金漬け外交を展開し、米国を圧倒できる力を得る前に、東シナ海や南シナ海、香港などにおける攻撃的な行動に出て、世界から「中国は危険だ」と認識されるようになってしまった。おまけに、中国国内の価値観を外国に押し付ける場面も目立ち、反感を買っている。 一方、香港や東トルキスタン(新疆)、チベットなどの外地における支配不徹底、国内の経済矛盾やそれに連動する中国共産党の正統性問題などが重なり、それらを「解決」するための攻撃的かつ強権的な体質が隠せなくなってきた。国益よりも、中国共産党の組織を守る選択を続けて、政治と戦略が合致しなくなってきたのである。 恐らく、多くの漢人知識層や中国共産党の政策立案者は、この矛盾に早くから気付き、是正が必要だと感じている。しかし、文化大革命時代の毛沢東の独裁的指導スタイルに回帰しようとする習近平氏を批判することができないため、党中央の「中国切腹」への歩みを止められないでいるのだ。戦前の日本での石原莞爾の軍部暴走批判や、総理大臣直属の機関として設立された「模擬内閣」の総力戦研究所が昭和16年(1941年)8月に導き出した「日本必敗」予測が無視されたように。 現在のところ、習近平氏は従来からの国際協調の発展やグローバル化の推進を口では唱えているが、その手はアジア各地で着々と戦争準備を行っており、領土的な野心は隠せないものとなっている。そして、限定的な局地戦の意図をもって開始した台湾や尖閣諸島に対する侵略は想定外の反撃を招き、やがて日本を含むアジア太平洋地域全体を巻き込む第三次世界大戦に拡大するリスクをはらむ』、「鄧小平の「韜光養晦」を捨て去った「習近平」の愚かさは理解不能だ。「文化大革命時代の毛沢東の独裁的指導スタイルに回帰しようとする習近平氏を批判することができないため、党中央の「中国切腹」への歩みを止められないでいるのだ」。「やがて日本を含むアジア太平洋地域全体を巻き込む第三次世界大戦に拡大するリスクをはらむ」、中国内で「習近平」へのブレーキ役が登場してほしいものだ。
・『自滅する中国を介錯するのは日本か  「中国夢」のコンセプトを発明した中共の石原莞爾こと劉明福・元国防大学教授は、「米中戦争は、中国が西太平洋を支配する『中国夢』を実現できれば回避できる」とするが、現在の米国のアジア関与の低下は、必ずしもアジア撤退を意味しない。ミシェル・フロノイ元米国防次官が6月18日付の米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』電子版で指摘したように、「米国の抑止力低下で、中国が誤算するリスクが高まる」のみなのだ。 習近平氏にとり最悪のシナリオは、アジアや西太平洋地域へは不介入を貫くと思われた内向きの米国が積極的に対中戦や同盟国支援を遂行し、中国にとっての理想である短期即決の電光的決戦が泥沼化・長期化をしてしまうことだ。日本が、「真珠湾を叩けば米国が戦意を喪失する」と誤算したように、中国が「最新兵器で日本や米国を効果的に叩けば戦意がなくなる」とそろばんをはじいても、実際には徹底抗戦を招く恐れがある。 その状況をコントロールしようと中国人民解放軍が地政学的な版図を拡大するほど、ロシアやインド、さらには遠く欧州の警戒を高め、日米露印欧が対中包囲網を築くことを助けてしまう。 その中国切腹を、「中露離間」「中印離間」「中欧離間」の外交や情報戦推進で介錯するのが、日本になる可能性がある。国際社会を味方にして対中戦に引きずり込む「以夷制夷」戦略である。中国の国策が「中国夢」に象徴される領土拡張である限り、それは歴史的な必然となる。 好戦的な日本人が敗戦で内地に戻されたように、世界を敵に回した好戦的な漢人も思わぬ敗戦で「中原」に戻され、チベットも蒙古も満洲も東トルキスタンも失うだろう。 中国共産党の大ばくちは、「中華人民共和国」建国100周年の2049年までに、「元も子もなくすってんてん」になって終わる。「中国切腹日本介錯」は、実現すれば歴史の究極の皮肉となろう。 この先数回にわたり、中国切腹日本介錯において、 「なぜ中国は韜光養晦の完了前に先制攻撃をする可能性が高いのか」 「中国が緒戦で大勝利を収める理由」 「中国はどのような具体的方法で国際秩序を改変しようとするか」 「なぜ中国は海外帝国建設に失敗するか」 「中国切腹日本介錯で生まれる国際新秩序で日本がどのように生まれ変わるか」 を詳細に論じていきたい。(続く)』、続きが楽しみだ。

次に、この続きを、8月3日付けJBPress「中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61522
・『対中楽観論は歴史の教訓を無視している  世界史では、「なぜそのような無謀なことを」「なぜそのようなくだらない理由で」と思わせるような、理性を欠くあまたの戦争が決断されてきた。 特に前世紀には、「すぐに終わる」はずの戦争が広域化・泥沼化した第一次世界大戦、アドルフ・ヒトラーが、「まさかそのようなことはしないだろう」という予想の裏をかく形で仕掛けた対ソ戦、国力をはるかに超える相手の戦意を誤算した日本の真珠湾攻撃、米国の南鮮防衛の意思を見誤った北朝鮮による南侵奇襲など、教訓とすべき例に事欠かない。 指導者たちの思い違いは過去に起こったことであるし、将来にも起こる。なぜなら、彼らのコンプレックスや業績づくりへの渇望、それに基づく誤算、政治体制の機能不全などでリスクやコストの計算が疎かにされ、大戦争などいとも簡単に起こってしまうからだ。さらに、各国の国内問題や矛盾は、容易に潜在敵国に対する強硬論や主戦論へと形を変える。現在のように、世界の覇権や秩序のバランスが崩れる局面ではなおさらだ。 つまり、「中国が現在の国際秩序の破壊者となることは自殺行為であり、自分が最も利益を受けてきた仕組みを壊そうとする者はいない」「習近平は戦争を仕掛けるような愚かなことはすまい」「核兵器による相互確証破壊が存在するから大国同士の戦争は起こらない」という考えは、歴史の教訓に学ばない楽観論に過ぎないのである』、「指導者たちの思い違いは過去に起こったことであるし、将来にも起こる。なぜなら、彼らのコンプレックスや業績づくりへの渇望、それに基づく誤算、政治体制の機能不全などでリスクやコストの計算が疎かにされ、大戦争などいとも簡単に起こってしまうからだ」、「「習近平は戦争を仕掛けるような愚かなことはすまい」・・・歴史の教訓に学ばない楽観論に過ぎない」、確かに判断ミスも織り込んでみるべきだ。
・『戦争をするため主席になった習近平  中国共産党中央軍事委員会の主席であり、任期制限が撤廃された中華人民共和国の「終身国家主席」ともいうべき地位にある習近平氏は、「中国は永遠に覇を唱えず永遠に拡張しない」「中国の台頭は平和的だ」と唱えて敵の眠りを誘う一方で、党専属の軍である人民解放軍をして「一帯一路」「中国夢」「人類運命共同体」など、覇権主義的かつルサンチマン(注)的な目標を実現する戦争を仕掛けるためにリーダーの地位に就いたような男だ。 中国共産党の「核心」たる習主席が党内の権力をすべて自分に集中させ、党と人民の絶対の忠誠を確保し、人民解放軍を完全に掌握し、異論を許さず、人民の監視と統制を強化する目的はただひとつ、「戦争指導」であると捉えることができる。 カリスマ性に欠ける「皇帝見習い」の習主席にとって、自身の正当性を証明できるのは絶対的な権力を行使した戦争の勝利だけであり、「中華民族の偉大な復興」を実現してこそ、仰ぎ見る毛沢東のような本物の「漢(おとこ)」「皇帝」になれるからだ。 それゆえに、中国の最高指導者に選ばれた平成24年(2012年)以来、習主席は「いかに中国を戦争ができる国に改造するか」という点に注力し、国を統率してきた。中国共産党が平成30年(2018年)に習氏を”終身主席”としたのも、彼を任期に邪魔されない、戦争指導に集中できるリーダーにするためだと考えられる。 習主席が就任後に、私利私欲に走り、軍の持つ特権で商売や収賄を行っていた腐敗軍人を徹底的に取り締まったのは、日本メディアの中国政治分析で強調されがちな「習氏個人の権威を高めるため」だけでない。腐敗追放の最も重要な目的は、金儲けに走って平和ボケしていたグダグダの人民解放軍を精鋭化し、習近平氏のビジョンである「中国夢」「中華民族の偉大な復興」に基づく対外戦争を可能にするための準備であったように見える。それは、以下の一連の事象をつなげると、はっきりとする』、粛軍が「金儲けに走って平和ボケしていたグダグダの人民解放軍を精鋭化し、習近平氏のビジョンである「中国夢」「中華民族の偉大な復興」に基づく対外戦争を可能にするための準備であった」、なるほど。
(注)ルサンチマン:、弱者が強者に対して抱く「恨み」や「嫉妬心」(weblio辞書)
・『習近平体制下の過剰な軍備増強の狙い  まず、習主席は人民解放軍の近代的な統合作戦能力を強化するため、中央内部や地方に分散していた軍のすべての権力を中央軍事委員会、すなわち習氏自身に集中させる改革を断行した。具体的には、作戦指揮に重大な影響を持っていた総参謀部などの力を取り上げ、平時体制の全国「七大軍区」を廃止して、自らが直接指揮する戦時体制の「五大戦区」を創設した。 さらに、準軍事組織である人民武装警察を中央軍事委員会に指揮下に置き、非軍事組織の中国国家海洋局の下部組織であった中国海警局(日本の海上保安庁に相当)を人民武装警察の下部組織に付け替えた。これらの改革により、すべての武装組織が戦時・有事体制に移行し、海上民兵なども加わって、一元的に作戦行動をとる即応的な戦争遂行マシーンと化したのである。 習近平主席の指導の下、人民解放軍は南シナ海を領海化・要塞化するだけでなく、他国の空域を一方的に中国の防空識別圏に指定、多核弾頭搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)や中短距離ミサイルを大量配備し、極超音速滑空兵器で日米に脅威を与え始めた。また、自主開発の中国版GPSである北斗衛星測位システムを使って、動く標的を直撃する対艦弾道ミサイルの射程や命中精度を向上させた。さらに、ステルス機を開発するなど、サイバー戦や宇宙戦・ドローン戦などの能力で敵を凌駕し、空母を建造する一方、海軍力でも日米を圧倒できる体制を構築するなど、近未来の実戦に向けて着実に準備を重ねている。 習主席が主張するように中国の台頭が真に平和的なものであるならば、平和的自衛の範疇をはるかに超えるこれらの過剰な軍備増強、軍事行動や組織改編、戦時体制は必要がない。中国に戦争を仕掛けようとする国は存在せず、逆に諸国は圧倒的な軍事力を誇示する中国の侵略を恐れているからだ。それゆえに、中国の一連の行動が大規模な侵略と戦争のための備えだとすれば、習氏の言行不一致はきれいに説明がつく。 「中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張しない」と唱える習氏は、「自己防衛のため」「憲法上の権利だ」と称してミリタリー級の武器を次々と購入し、ついには公共の場で乱射大量虐殺事件を起こす米国人たちを想起させなくもない。  いずれにせよ、習主席が打ち出した「中国夢」「中華民族の偉大な復興」などの抽象的な構想に軍事的準備の裏付けが伴うようになったことは特筆すべきことだ。中国共産党の結党100周年である令和3年(2021年)を前にほぼ完成させたこの大成果こそ、習氏に求められていたものだ。彼は次の「本番」の段階である戦争に向けて確実に結果を出している』、「全国「七大軍区」を廃止して、自らが直接指揮する戦時体制の「五大戦区」を創設」、かつての軍閥に近かった「七大軍区」を廃止、自らが直接指揮する戦時体制」に再編成したとは剛腕だ。「習主席が打ち出した「中国夢」「中華民族の偉大な復興」などの抽象的な構想に軍事的準備の裏付けが伴うようになった」、中国の軍事費の増加は他国を圧倒している。
・『すべての民生政策は戦争に通ず  同じように、一見戦争とは関係のない貧困撲滅や社会インフラ整備、減税や内需拡大なども、社会システムを将来の戦争に備えるためだ。中国が世界を技術や標準でリードする商用5G戦略や人工知能(AI)・ロボット開発も、将来の総力戦の基盤整備に他ならない。民生部門における戦力を、軍拡と同時に養っているわけだ。 実際に習主席は、国家安全にかかわる領域を政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核、海外権益、生物安全の13項目に整理した。その上で、中国のデータ管理および中国式アルゴリズムで世界を支配する戦略と、現実的かつシナジー効果の高い産業支援策という戦術を打ち出した。ここにおいて、民生と軍事の境界線は消滅し、両者は融合している。 たとえば、中国の産業計画である「中国製造2025」においては、令和7年(2025年)までに国内の全世帯・事業所の80%に、ワイヤレスの5G機器やサービスの利用に不可欠な光ケーブル通信を普及させる計画を実行し、広大な国土の高速データ化を急ピッチで進めている(参考資料)。コンサルティングの米デロイトによれば、平成27年(2015年)以来の中国の5Gインフラ投資は、米国の投資額を240億ドルも上回り、さらに4000億ドル相当の投資を行うとされる(参考資料)。一方、5G分野の代替の効かない技術特許出願数は中国が34%と、14%の米国を引き離している(参考資料)。 習主席の指導の下、国家による計画・統制と、「中国の特色ある社会主義(社会主義市場経済)」ならではの効率性が所期の相乗効果を生み出しており、「政治・経済・社会のすべてを党の統制下に置く」という習氏の大方針が、いかに中国の戦時への備えを高めているかがわかる。目を見張る経済と産業の成果は軍事と融合し、国そのものが「皇帝習近平」の号令ひとつで総力戦を実行できる体制が構築されている』、確かに「中国」の「総力戦体制」は相当なものだろう。
・『習近平の「戦争夢」を支える人民の愛国心  一方、平成の最期の10年間である2010年代になって、「抗日神劇(エンタメ化したありえない抗日ドラマ)」が花盛りの中、中国で愛国心が高揚し、軍事ファーストの習近平氏が権力の座に就いたのは、「声なき多数派」、つまり中国版サイレントマジョリティーの意向が体現されたものだ。 自由な言論も民主的な選挙も思想の自由も存在しない「中華人民共和国」のような国であっても、君主あるいは天子(共産党中央軍事委員会主席)の権力や意思は、天の声(民の支持)なしには存在も実現しない。中国戦国時代の思想家・孟子の講義録である『盡心章句』(下)の一節で、「民を貴しと為し、社稷(しゃしょく、国家の意)之に次ぎ、君を軽しと為す(民為貴、社稷次之、君為輕)」、つまり「最初に民があり、民があっての国家であり、次いで主君がある」と指摘される通りだ。 習主席の過去8年にわたる権力固めは、彼の対外強硬路線や戦争路線に漢人の支持がある証左である。それは、覇権的な「中国夢」という国家目標の下で、愛国心が高まっていることに見て取れる。中国共産党のエリート青年党員からなる中国共産主義青年団と、その機関紙である『中国青年報』が平成30年(2018年)に実施した世論調査によれば、96.1%の回答者が「自分は中国人であることを誇りに思う」と答えている。また、米リサーチ大手エデルマンの5月の調査でも、中国政府のコロナ対応に対する人民の信頼度は1月の数字から5ポイント上昇して95%にも達している。 この「ほぼ全員が支持」の結果を、単なる党中央宣伝部のプロパガンダだと解釈するのは短絡的だ。急発展する経済・軍事大国としての自信をつけた漢人の愛国心や政府への信頼は本物であり、その愛国心は容易に戦争への支持へと昇華され得るからである。 習氏の唱える「中華民族の偉大な復興」「一帯一路」「中国夢」「人類運命共同体」は、本質的な部分において漢人大衆の強い望みを掬い上げたものであり、その支持があるからこそ推進されているポピュリズム的な政策である。あのヒトラーもドイツ大衆の広範で熱狂的な支持を得たからこそ、大規模な産業振興と戦争準備、それに続く開戦に邁進できた。 同じように、戦前の日本の満洲事変や支那事変、さらに大東亜戦争も、必ずしも軍部のみが暴走して国民を道連れにしたのではなく、国民の生活上の不満や対支那・対米強硬世論が底流に存在したからこそ、国全体が戦争に突き進んだのである。 「爾後(じご)国民政府を対手とせず」。そう宣言して日本の選択肢を決定的に狭めた、運命の近衛声明に至る昭和12年(1937年)の支那事変の対応に関して、当時の河邊虎四郎参謀本部作戦課長が、「国民が一番強気で、次が政府であり、(戦争を指導する)参謀本部が国家全般を憂慮して最も弱気であった」と回想するほどだ。また、さらに遡れば明治38年(1905年)の日露講和で政府の「弱腰」に激高した大衆が引き起こした暴動の日比谷焼き打ち事件があった。 このような大衆が作り出す「空気」や集団意識は、時に権力層をも支配し、動かしてゆく。しかも、それが必ずしも為政者の望み通りの方向、あるいはコントロールできるものであるとは限らないところが奥深い。 中国の例を挙げれば、日本政府の尖閣国有化を受けて起こった平成24年(2012年)の官製反日大暴動は終盤において、共産党中央の人民扇動の思惑を超え、国内の経済格差への不満のはけ口へと変質を始めた。一連の反日で精神が高揚した漢人大衆の憤りが制御困難となり、矛先が危うく日本から中国共産党に向かいかけたわけだ。 近い将来、尖閣諸島や台湾で戦争を始めた習主席が、「作戦の目的は成し遂げたから、ここで一旦止めておこう」と思っても、「中国夢の実現を中途半端なまま終わらせるな」「暴日膺懲」などの強硬論の台頭や、中国共産党の統治への不満に引きずられる形で暴走が始まり、戦いが思わぬタイミングで消耗戦や、習近平氏が意図しない袋小路の方向にエスカレートする可能性を、われわれは念頭に置いておくべきだろう。 戦争は、実際に始まると想定通りには進まないことが多い。日中戦争において日本の「支那は一撃を加えれば屈服する」という一撃論の前提が誤りであったように、台湾や日本とその同盟国も、短期決戦を望む人民解放軍を持久戦に引きずり込むかも知れないのだ』、確かに「大衆」動員につきもののリスクだ。
・『台湾・尖閣諸島に対する先制攻撃の蓋然性  これまで見てきたように、中国人民解放軍の規律を引き締め、軍備を最新かつ最強レベルに増強し、総力戦が遂行できる経済や産業を育てた習近平国家軍事委員長は、覇権的な中華帝国建設を望んだが果たせなかった皇帝の毛沢東や鄧小平の「中国夢」の実現に踏み出さんとしている。民意も味方につけ、準備は万端整った。 だが、いくら習近平氏が終身国家主席の地位を確保したとはいえ、すでに齢67歳であり、いつまでも時間が残されているわけではない。おそらく、あと15年間ほどで「中華民族の偉大な復興」のビジョンの基礎部分を完成させたいはずだ。そこに焦りが生まれる可能性が高い。 そうした中、「中国夢」に対してライバルの米国から横槍が入り、世界における友好的な対中感情は萎み始めた。コロナ禍に襲われた中国経済も厳しい。企業負債の膨張や大量失業など、国内問題のプレッシャーは高まるばかりである。 何よりも、「中国夢」がいつまでも実体のない画餅のままでは、漢人世論が納得しない。こうして、対外戦争の勝利によって「中華民族の偉大な復興」を実現したい習近平氏と、不満のはけ口を求める漢人大衆の利益はますます合致するようになっていく。 分離独立に走りかねない蔡英文総統に率いられた「中国の核心的利益」である台湾や、「日本に不法占拠される中国固有の領土」である尖閣諸島を「解放」する実績を作ることは、習主席が名実ともに「皇帝」の地位を得るために不可欠だと言える。そのための軍事的な準備や民生面でのサポート体制は、ほぼ完成している。一方、米国は口先で中国を非難するものの、習主席のような対米・対日局地戦争の決意に欠ける。ここに、中国による先制攻撃の蓋然性が満ちるのである。 奇襲により、敵国の油断やコロナ対応のどさくさに紛れて相手の主戦力へ一撃を加え、戦意を喪失させ、数週間の短期決戦で事態を片付けることができれば、中国に勝機があるのは明らかだ。米国の戦意が低ければ、同国を国力で完全に凌駕するための忍耐である韜光養晦(とうこうようかい)を必ずしも完了している必要はない。 尖閣諸島においては、わが関東軍が昭和6年(1931年)9月18日の柳条湖事件のでっち上げで満洲奪取の火蓋を切った仕返しをしてくるかも知れない。すなわち、「日本の海上保安庁・海上自衛隊が、中央軍事委員会指揮下の中国海警を先に攻撃した」との嘘、あるいは誇張を口実に陸海空軍およびロケット軍(通常ミサイル精密打撃)が局部的な総攻撃を加え、日本から周辺の制空権と制海権を奪い、短期間で島を要塞化する。そして米軍が介入しないタイミングで間髪を入れずに、台湾を尖閣と大陸側から挟み撃ちにして早期陥落を狙う可能性がある。 また、「まさか習近平はそこまでやるまい」と考える楽観的な厭戦論者が多い日本や米国と比較して、すでに臨戦態勢に突入した人民解放軍の準備周到さ、統合的運用、最新兵器システムにおける先行など、中国側には有利な条件が多い。緒戦で大勝利を収める可能性が高まる。 世界の台湾に対する無関心、日米の厭戦と平和ボケ、コロナによる米国経済の弱体化、在グアムの戦略爆撃機の米本土撤収、在韓米軍撤退と連動した北朝鮮主導の南北統一の動き、ドイツ・シリア・アフガニスタンなど米軍の世界規模の後退、米経済力の落ち込みや米国の相対的な国力低下、西側諸国の団結の低下、米国の指導力の衰退、さらに日米安保条約の適用範囲に関する日米の結束の乱れなどは、習近平主席にとっての天祐なのである。(続く)』、現在の情勢が「習近平主席にとっての天祐」、とは困ったことだ。

第三に、この続きを、8月12日付けJBPress「仮面を捨てた中国、世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61641
・『大日本帝国の失敗を反面教師にするが・・・  「ミイラ取りがミイラになる」という表現がある。ミイラ採取に行った者が倒れてしまい、結局自分がミイラと化してしまうような結末を皮肉ったことわざだ。 これは、大東亜共栄圏構想に見られる日本帝国主義の失敗を反面教師にするはずが、いつの間にか日本のアジア帝国建設のビジョンや手法の一部を内面化し、「中国夢」「中華民族の偉大な復興」「一帯一路」「人類運命共同体」などの構想を持ち出すことで、同様の帝国建設に乗り出した中国共産党にも当てはまる。 中国では、各地の档案館(公文書館)に残る戦前・戦中の日本の一次史料に基づいた研究が盛んだ。2020年に入ってからも、『日本帝国主義中国侵略資料選集』と題された全20巻シリーズが刊行され、「日本がどのように拡張したか」が熱心に学ばれている。 戦前の日本の新国際秩序構想や戦略、具体的な帝国建設手法を研究することは、その模倣や応用をも可能とする。さらに、それらに内包されている構造的な欠陥や失敗まで取り込んでしまう皮肉が生まれる。 「中国夢」「中華民族の偉大な復興」「一帯一路」「人類運命共同体」という構想を見ても、大東亜共栄圏で日本が既存の国際秩序を改変するために用いた戦略が、あるものは日本の失敗に学んで「改良」された形で現れており、あるものはそっくりそのままの形で再現されている。その意味において、まさに「ミイラ取りがミイラになる」である。 それでは、中国はどのような順序と方法で国際秩序を変えていくのだろうか。既に現れ始めたパターンである。(1)既存国際秩序の使い倒し・乗っ取り、(2)欧米発の普遍的価値観の否定、(3)国際法の換骨奪胎や代替地域経済秩序の提唱という道筋を分析し、この先数年の具体的な中華帝国建設の展開を予想する』、「ミイラ取りがミイラになる」とは言い得て妙だ。
・『「韜光養晦」の陰で国際秩序を使い倒す中国  今世紀中に国力で米国を凌駕できるまでは爪を隠して牙を剥かない──。中国共産党は、元最高指導者・鄧小平が示した「韜光養晦(とうこうようかい)」という教えを守ってきた。それには、既存国際秩序の尊重や国際協調も含まれる。なぜなら、日本の破滅的な失敗をしっかりと観察していたからだ。 満洲国建国のきっかけを作った昭和6年(1931年)9月の柳条湖事件を皮切りに、日本は国際的孤立を深めた。昭和12年(1937年)7月の盧溝橋事件以降は、「日本と米国を対立させる」というソ連や中国共産党の罠にはまり、国力で圧倒的に差のある米国に戦争を仕掛け、壊滅的な敗戦を迎えている。 そのため、中国は米国が樹立して主導的に運営してきた戦後国際秩序の中で静謐保持(せいひつほじ)と韜光養晦を重ね、国際連合や世界貿易機関(WTO)などの国際機関および多国間主義という国際秩序を使い倒しながら経済力や軍事力を養ってきた。ここが、国際的な孤立を厭わずに広域帝国建設の無謀な戦争に突入した日本との最大の違いであり、戦略上の大成功と言えよう。 また、国力増大のために、党是である社会主義に反する資本主義的な「社会主義市場経済」を採用し、世界第2位の経済大国に上り詰めた。国民総生産(GDP)で日本を抜き去った平成22年(2010年)以降は、既存秩序の枠組みの中、表面上はルールに従いながらも、中国標準を欧米標準に置き換える戦術を採用している。 これは、既存の仕組みのルールに則って合法的に行う「乗っ取り」であり、他国は異議を唱えにくい。だが、中国標準が国際的に採用されれば、中国がグローバルな基幹技術の方向性や運営方法を決定できるようになる。結果的に、日米欧などの外国企業は中国標準に対応するコストが増え、認証のために技術情報を開示させられるなど、多大なリスクを抱える。そして、顧客だったはずの中国は、いつの間にか、敵わないライバルへと変身してしまった』、「静謐保持と韜光養晦を重ね、国際連合や世界貿易機関(WTO)などの国際機関および多国間主義という国際秩序を使い倒しながら経済力や軍事力を養ってきた」、確かにこの頃までは巧みだった。「顧客だったはずの中国は、いつの間にか、敵わないライバルへと変身してしまった」、も言い得て妙だ。
・『国際的制度を合法的に乗っ取る中国  中国が自国標準を、事実上の国際標準にすることが成功したケースは増える一方だ。第5世代移動通信システム(5G)においては、代替の効かない技術特許の数や、価格競争力でライバルの追随を許さない通信機器システム群、他国を額で圧倒するインフラ投資などで主導権を確保した。 また、次世代都市スマートシティー分野においても、中国は感染症防止を目的に、都市を監視する仕組みなどを盛り込んだ規格を国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)の技術委員会に提案しており、採用の可能性が高まる。 この他にも、工業品標準、人工知能(AI)分野など最先端技術のテクノロジー標準、人気動画共有アプリのTikTokなどのサービス標準において中国標準は着実に地歩を固めている(なお、デファクト標準となったTikTokは米国で1億人以上ものユーザーを獲得し、データ安全保障上の懸念から米国化あるいは撤退を求められる事態となった)。加えて、国際標準機関における議長や幹事のポストを狙い、あらゆる方法で中国標準を国際標準にしようとしている。 また、トランプ政権下における米国の孤立主義を利用して、米国が関与に関心を示さなくなった世界保健機関(WHO)などの国際組織で、運営を中国に都合よく改変しようとしている。加えて、米国は安全保障上の理由から、米国式のオープンでグローバルな「共有地」というインターネットの概念を捨て、中国式の分断された「サイバー主権」採用の方向へと舵を切った。中国スタンダードの哲学的な勝利である。 さらに中国は、基軸通貨である米ドルを通して国際決済を完全に抑え、ドル決済を通じて他国の息の根を止めることも可能な米国に対抗するため、「デジタル人民元決済」の開発と国際化を急ぎ、中国中心の金融秩序を少しずつでも拡大しようと努力している。国際金融の覇権奪取と「一帯一路」構想の財政的裏付けを目的とする、アジアインフラ投資銀行(AIIB)も設立した。 だが、こうした「合法的な乗っ取り」は既存の米国式の自由主義秩序を根源から覆すものではなく、過渡的な戦術に過ぎない。既存国際秩序を使い倒し、乗っ取った先には、普遍的な価値観の否定と代替となる地域秩序の強要、武力行使による新しい国際秩序の樹立と普及が控えている。この部分において、中国の帝国建設は戦前の日本のそれを忠実に模倣している』、「既存国際秩序を使い倒し、乗っ取った先には、普遍的な価値観の否定と代替となる地域秩序の強要、武力行使による新しい国際秩序の樹立と普及が控えている」、警戒しておくべきだろう。
・『地政学的な現状変更に必要な都合のいい「物語」  およそ現代の新興覇権国家が既存の覇権国家に軍事的に挑戦する「トゥキディデス(ツキジデス)の罠」の枠組みにおいては、実際の地政学的な現状変更に先立って、世界の意味を語り、その物語を決する権限や権力、すなわち中国語で「話語権」や「話語体系」とも呼ばれるナラティブ制御を巡る争いと危機が起こる。 日中戦争突入直前の昭和12年(1937年)1月に、有力財界人であった村田省蔵・大阪商船社長が、「旧大国と新興国の利害は対立する。世界各地の危機や経済不安は、この新情勢を適当に顧慮(こりょ)せざるによる」と述べ、トゥキディデスの罠の新興国側である日本と、既存の覇権国家である欧米列強との物語(言い分)の争いを看破した通りだ。 大東亜戦争に突入する直前の日本では、昭和16年(1941年)3月に、大政翼賛会へと連なる一国一党主義の「近衛新体制運動」の旗振り役であった元衆議院議員の亀井貫一郎が『大東亜民族の途 共栄圏の目標』という著書を出版している。 その中で、「英米仏中心の自由主義的世界秩序の桎梏(しっこく)を打破せんとする我が国は、国際会議のあらゆる機会に於いて、恰も(あたかも)列強に裁判せらるる被告の如き観を呈した」と、欧米の制度の普遍性を認めてきた従来の日本の防御的な立場への不満を表明。そのような現状を打ち破る解決策として、亀井は「(米英などが)世界を掠奪する一手段であるデモクラシー」に代わる、家父長主義に基づいた大東亜共栄圏や「アジアの解放」「東亜の再建」を、日本の新たな話語権のナラティブを使って挑戦的に打ち出すべきだと述べた。構想に説得力があるかないかが問題ではなく、ビジョンを打ち出し実行に移すことが重要であった。 今の中国はどうか。西洋思想の普遍性と正統性を否定する中国共産党は、「世界の難局において注目される中国の治」というテーマを掲げ、道徳的・社会的・政治的に破綻をきたしたように見える、衰退著しい欧米の制度に代わるものだと主張し始めた。「中国が世界に先駆けてコロナを克服した」「中国が世界を救済した」などという主張がそれに当たる。世界を納得させられるかは重要ではなく、ひたすら中国の統治の優秀さを「話語権」を使って強調しているのが特徴だ。 中国共産党の高級幹部を養成する機関である「中央党校」で政治学と法学の教鞭を執る孫培軍准教授は、従来の中国の「民主や法治の良し悪しを西側の概念で測るのは間違っている」という防御的な姿勢を超越し、「中国共産党が考える民主や法治の概念を新しいスタンダードとして積極的に発信していくべきだ」との挑戦的な主張していると、一橋大学法学研究科の但見亮教授が分析している。 日本貿易振興機構アジア経済研究所の江藤名保子研究員も、中国は「自国の議論や言説に含まれる概念、論理、価値観、イデオロギーによって生み出される影響力(話語権)」を行使し、「西洋の普遍的価値に代わる価値基準を世界に浸透させることが、遠大な最終目標だ」との見解を示した。 そうしたスキームに基づき孫准教授はまず、「西側民主は『話語』覇権を握ったかのようであるが、歴史的・時代的に限定されたものに過ぎない」と斬り捨て、中国国務院の新聞弁公室も、「西側の『普遍的価値』が裏に含む政治的立場はマルクス主義、社会主義と共産党の領導を誹謗するものである」と敵意をむき出しにしている。 前述の亀井が、民族的・政治的・社会的平等を追求する中華民国の政治理念である三民主義が、「(自由と平等と独立を掲げることで)個人主義的世界観の一翼」をなし、「重慶(蔣介石が指導する中華民国の臨時首都)-ニウヨーク(ニューヨーク)―ロンドンの線につながる(民主主義的な価値観に基づく)思想」であると拒絶・排除したように』、「「中国が世界に先駆けてコロナを克服した」「中国が世界を救済した」などという主張がそれに当たる。世界を納得させられるかは重要ではなく、ひたすら中国の統治の優秀さを「話語権」を使って強調しているのが特徴だ」、世界の笑いものになると思っていたが、繰り返すことに意味があるようだ。
・『地政学的な現状変更に必要な都合のいい「物語」  およそ現代の新興覇権国家が既存の覇権国家に軍事的に挑戦する「トゥキディデス(ツキジデス)の罠」の枠組みにおいては、実際の地政学的な現状変更に先立って、世界の意味を語り、その物語を決する権限や権力、すなわち中国語で「話語権」や「話語体系」とも呼ばれるナラティブ制御を巡る争いと危機が起こる。 日中戦争突入直前の昭和12年(1937年)1月に、有力財界人であった村田省蔵・大阪商船社長が、「旧大国と新興国の利害は対立する。世界各地の危機や経済不安は、この新情勢を適当に顧慮(こりょ)せざるによる」と述べ、トゥキディデスの罠の新興国側である日本と、既存の覇権国家である欧米列強との物語(言い分)の争いを看破した通りだ。 大東亜戦争に突入する直前の日本では、昭和16年(1941年)3月に、大政翼賛会へと連なる一国一党主義の「近衛新体制運動」の旗振り役であった元衆議院議員の亀井貫一郎が『大東亜民族の途 共栄圏の目標』という著書を出版している。 その中で、「英米仏中心の自由主義的世界秩序の桎梏(しっこく)を打破せんとする我が国は、国際会議のあらゆる機会に於いて、恰も(あたかも)列強に裁判せらるる被告の如き観を呈した」と、欧米の制度の普遍性を認めてきた従来の日本の防御的な立場への不満を表明。そのような現状を打ち破る解決策として、亀井は「(米英などが)世界を掠奪する一手段であるデモクラシー」に代わる、家父長主義に基づいた大東亜共栄圏や「アジアの解放」「東亜の再建」を、日本の新たな話語権のナラティブを使って挑戦的に打ち出すべきだと述べた。構想に説得力があるかないかが問題ではなく、ビジョンを打ち出し実行に移すことが重要であった。 今の中国はどうか。西洋思想の普遍性と正統性を否定する中国共産党は、「世界の難局において注目される中国の治」というテーマを掲げ、道徳的・社会的・政治的に破綻をきたしたように見える、衰退著しい欧米の制度に代わるものだと主張し始めた。「中国が世界に先駆けてコロナを克服した」「中国が世界を救済した」などという主張がそれに当たる。世界を納得させられるかは重要ではなく、ひたすら中国の統治の優秀さを「話語権」を使って強調しているのが特徴だ。 中国共産党の高級幹部を養成する機関である「中央党校」で政治学と法学の教鞭を執る孫培軍准教授は、従来の中国の「民主や法治の良し悪しを西側の概念で測るのは間違っている」という防御的な姿勢を超越し、「中国共産党が考える民主や法治の概念を新しいスタンダードとして積極的に発信していくべきだ」との挑戦的な主張していると、一橋大学法学研究科の但見亮教授が分析している。 日本貿易振興機構アジア経済研究所の江藤名保子研究員も、中国は「自国の議論や言説に含まれる概念、論理、価値観、イデオロギーによって生み出される影響力(話語権)」を行使し、「西洋の普遍的価値に代わる価値基準を世界に浸透させることが、遠大な最終目標だ」との見解を示した。 そうしたスキームに基づき孫准教授はまず、「西側民主は『話語』覇権を握ったかのようであるが、歴史的・時代的に限定されたものに過ぎない」と斬り捨て、中国国務院の新聞弁公室も、「西側の『普遍的価値』が裏に含む政治的立場はマルクス主義、社会主義と共産党の領導を誹謗するものである」と敵意をむき出しにしている。 前述の亀井が、民族的・政治的・社会的平等を追求する中華民国の政治理念である三民主義が、「(自由と平等と独立を掲げることで)個人主義的世界観の一翼」をなし、「重慶(蔣介石が指導する中華民国の臨時首都)-ニウヨーク(ニューヨーク)―ロンドンの線につながる(民主主義的な価値観に基づく)思想」であると拒絶・排除したように』、「家父長主義に基づいた大東亜共栄圏や「アジアの解放」「東亜の再建」を、日本の新たな話語権のナラティブを使って挑戦的に打ち出すべきだと述べた。構想に説得力があるかないかが問題ではなく、ビジョンを打ち出し実行に移すことが重要であった」、「ナラティブ」とはそういうもののようだ。
・『新しい秩序の物語を他地域に展開する必然  より重要なのは、欧米の思想の普遍性や正統性を否定した新しい秩序の物語が、新興覇権国が排他的に支配する新たな地域圏内に展開されなければならないという必然性が説かれることだ。 戦前の日本では、昭和15~16年(1940~41年)に外務大臣を務めた松岡洋右が在任中に、「米国は(中略)最近の日本の国防は西太平洋支配の方向に向かって進んでいると称して我が国を非難しているが、(中略)我が国が大東亜新秩序建設のために西太平洋を支配せんとする意図があることは隠す必要がない」と述べ、西洋の普遍性を否定する日本がアジアと西太平洋を支配する「歴史的使命」を強調したのであった(亀井、32ページ)。 中国も同じだ。平成19年(2007年)5月当時に米太平洋軍司令官であったティモシー・キーティング海軍大将は訪中時に、人民解放軍国防大学・戦略研究所長も務めた中国海軍の楊毅少将から、「ハワイを基点として太平洋を二分し、米国は東太平洋を、中国が西太平洋を取る」太平洋分割案の提案を受けた。 習近平国家主席のブレーンであり、「中国の新たな歴史的使命」「中国夢」「中華民族の偉大な復興」の提唱者である劉明福・元国防大学教授も同時期から、「米中間の戦争は、中国が西太平洋を支配する『中国夢』を実現できれば回避できる」と論じ続けている。逆に言えば、米国が中国に西太平洋を取ることを許さない場合には、米中戦争の可能性が高まるということだ。 これ以降の中国は、松岡外相の使った「西太平洋の支配意図を隠す必要なし」という露骨すぎる表現は避けるものの、習主席がオバマ前大統領やトランプ現大統領に対して繰り返し、「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」、つまり「西太平洋を中国によこせ」と持ち掛けている。日本の大東亜共栄圏建設に深く学んだ中国共産党と、その軍隊である人民解放軍は、「話語権」奪回(再構築)の新フェーズに入っているのだ。 中国にとり、その新たなストーリーを積極的に対外発信することは、西太平洋の排他的な支配の進展と切り離せない。令和元年(2019年)11月に、中国で最大の外国語出版組織である中国外国語出版局の指導の下、中国翻訳協会が主催したフォーラムにおいては、「対外話語体系建設を強化し、国際的な広報力の質とレベルを高めよ」との党の方針が繰り返し確認された。 最近の「いかなる国や人物も、中華民族が偉大な復興を実現する歴史的な歩みを阻むことはできない」という中国の主張の強硬性は、国際秩序の変更意図を世界に周知し、たとえ国際社会を敵に回しても、現状からの離脱を推進する決意を物語っている。 松岡外相が、「アングロサクソン中心の世界文明の崩壊」を揶揄(やゆ)し、「我が国の方針は八紘一宇の輩国精神を以て新東亜建設の基礎とする点に些(いささか)の変化もない」「日本は日本の信ずるところに向かって邁進するの外ない」との不退転の決意を対外的に披露した如くである(亀井、31ページ)』、「最近の「いかなる国や人物も、中華民族が偉大な復興を実現する歴史的な歩みを阻むことはできない」という中国の主張の強硬性は、国際秩序の変更意図を世界に周知し、たとえ国際社会を敵に回しても、現状からの離脱を推進する決意を物語っている」、恐ろしいような独善性だ。
・『「話語権」が地政学的・経済的な現実に  中国の新しい「話語権」による支配は、徐々に地政学的な現実にも反映され始めている。それは、(1)国際法の否定、(2)軍事的な既成事実の積み重ねによる既成秩序の突き崩し、(3)中国を中心とする経済システムの構築、(4)圧力と工作で外国の意見を繰ろうとする「シャープパワー」の行使、などで実行される。 たとえば、中国近海においてグローバルなルールや国際法は適用されないとの「例外主義」の主張に基づいて改変した「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」の概念や、中国が自国に都合よくルールを決めた「防空識別圏は領空と同じ」という主張が好例だ。そうした勝手な設定を、既成事実を積み重ねるサラミ戦術で少しずつ現実化しているのである。 特に中国が「南シナ海」に代わる「南中国海」という新しい日本語表記で呼ぶ海域において、特殊な区画線を持ち出し、その国連海洋法条約上の根拠を示さないままに、「中国の『管轄権及び主権的権利』が及ぶ海域」と主張し、島嶼(とうしょ)を占領して他国の漁船や艦船を寄せ付けない状態だ。 同様に、令和元年(2019年)9月に習近平国家主席がフィリピンのドゥテルテ大統領と会談した際には、南シナ海での中国の排他的な「歴史的権利」を退けたハーグ常設仲裁裁判所の判断をフィリピン側が無視することを条件に、同海域でのガス共同開発の権益の過半数をフィリピンに譲渡するとの提案を行った。 自国が国際法に意図的に違反するだけではなく、他のステークホルダーにも違反をさせることで、国際法(普遍性の象徴)を無効化させる狙いがある。戦前・戦中の日本が大東亜共栄圏内における普遍的な国際法の適用を否定し、新たな地域法である「共栄圏国際法」を提唱する一方、国家対等の原則に基づくアジア各国の主権を無力化する「国境を超越した統一法」が必要だと主張したことが想起される。またわが国は、「アジア内に外交なし」と唱え、国際法に縛りを受けない国家間の関係の必要性を強調した。 さらに、中国は国際法だけでなく、友好国の法制を「中国標準」に改変する試みを続けている。たとえば、インターネット規制や標準設定において、中国式の監視モデルがウガンダ、タンザニア、タイ、エジプト、トルコ、ロシア、カザフスタンなど一帯一路参加国やその他の国で採用されている。こうした「仲間」が増えれば、現行のオープンな米国式モデルが少数派となっていこう。 さらに、一帯一路共栄圏ではカネ(金融)と資源と中央集権的な権力が中国に集中する「ハブアンドスポーク方式」が採用されている。結果として、参加国が中国の築いたシステムに依存するほどに、参加国同士の二国間関係が持ちにくくなり、すべての取引が中国を介さなければ成立しなくなっていく。 そして、参加国が中国の分断統治により弱体化する中で、近代国際法の基礎となる対等な国同士の関係という建前さえも、「ハブアンドスポーク方式」による一帯一路共栄圏を通して瓦解していくだろう。中国の地政学的拡張の露払いである』、「インターネット規制や標準設定において、中国式の監視モデルが・・・一帯一路参加国やその他の国で採用されている。こうした「仲間」が増えれば、現行のオープンな米国式モデルが少数派となっていこう」、参加国が多くなるほど、デファクト化していくだけに、困ったことだ。
・『「中華民族の偉大な復興」に内包される構造的欠陥  こうした現状変更を、中国のシャープパワーが後押しする。たとえば、企業のウェブサイトなどで台湾を国扱いしようものなら、中国でビジネスができなくなるようにする脅しが好例だ。萎縮する日米欧の有力企業が次々と北京の軍門に下っている。香港国家安全法の制定では反中国の発言を中国域外で行った外国人でさえ罪に問われる恐れから、世界中の人々が中国のやり方に異論を唱えなくなる。 このようにして、中国の新しい「話語権」による支配は、最終段階である戦争の準備段階として機能する。だが実際に軍事力をもって「中華民族の偉大な復興」に乗り出す時、中国共産党は日本の轍を踏み、海外帝国建設に失敗する可能性が高い。「中国夢」や「中華民族の偉大な復興」には、大東亜共栄圏に見られたような構造的なイデオロギーの欠陥が内包されているからだ。次回は、その理由を分析する』、「構造的なイデオロギーの欠陥」とは面白そうだ。次回が楽しみだ。
タグ:国際的制度を合法的に乗っ取る中国 ソ連と中共が黒幕だった「日本切腹中国介錯論」 「話語権」が地政学的・経済的な現実に (軍事・外交) 大日本帝国の失敗を反面教師にするが・・・ 岩田 太郎 「中華民族の偉大な復興」に内包される構造的欠陥 新しい秩序の物語を他地域に展開する必然 中国切腹日本介錯のいつか来た道 自滅する中国を介錯するのは日本か 今回は中共が米露やインドまで敵に回す 中国情勢 地政学的な現状変更に必要な都合のいい「物語」 「韜光養晦」の陰で国際秩序を使い倒す中国 「仮面を捨てた中国、世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配」 台湾・尖閣諸島に対する先制攻撃の蓋然性 習近平の「戦争夢」を支える人民の愛国心 すべての民生政策は戦争に通ず 習近平体制下の過剰な軍備増強の狙い 戦争をするため主席になった習近平 対中楽観論は歴史の教訓を無視している 「中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある」 大日本帝国と同じ愚を繰り返す中国共産党 「日本切腹中国介錯論」とは何か 日本の敗戦をピタリと予測した石原莞爾 「大ばくち もとも子もなく すってんてん」 「「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然」 JBPRESS (その8)(岩田 太郎氏3題:「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然、中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある、仮面を捨てた中国 世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配)
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安倍政権の教育改革(その12)(茂木健一郎氏 知識や洞察力のない人による教育改革は悲劇茂木健一郎氏 知識や洞察力のない人による教育改革は悲劇、共通テスト 検討会議の英語の専門家はたった1人 テスト開発の専門家集団の組織化が不可欠〈AERA〉、「本が読めない人」を育てる日本 2022年度から始まる衝撃の国語教育) [国内政治]

安倍政権の教育改革については、昨年12月21日に取上げた。今日は、(その12)(茂木健一郎氏 知識や洞察力のない人による教育改革は悲劇茂木健一郎氏 知識や洞察力のない人による教育改革は悲劇、共通テスト 検討会議の英語の専門家はたった1人 テスト開発の専門家集団の組織化が不可欠〈AERA〉、「本が読めない人」を育てる日本 2022年度から始まる衝撃の国語教育)である。

先ずは、本年2月10日付け日刊ゲンダイが掲載したソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員の茂木健一郎氏による「茂木健一郎氏 知識や洞察力のない人による教育改革は悲劇」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/268715
・『英語民間試験や記述式問題の導入が頓挫し、大学入試改革に赤信号がともっている。安倍政権が進める教育再生の先には、どんな社会が待っているのか――。世界の教育事情を知る脳科学者の茂木健一郎氏(57)が小手先の教育改革をぶった斬る(Qは聞き手の質問、Aは茂木氏の回答)』、「茂木氏」はどんな形で「ぶった斬る」のだろう。
・『生ぬるく甘ったるい“個性重視”  Q:大学入試改革の迷走をどう見ていますか。 A:今回の政府の入試改革案は、日本の将来を託す子供たちを育てるという意味においては、まったく話になりません。あんな小手先の改革で済むと思っている時点で、文科省には当事者能力がないんだなと強く感じました。例えば、導入が見送られた記述式問題。受験生は10枚、100枚とたっぷり記述し、採点する教師の側も自らの価値観が表に出る。主観と主観のぶつかり合いが記述式です。入試改革では、ちょっと書かせて「記述式」だと称しているだけ。大学も選考に対する自信や眼力がないのでしょう。とても根は深い。 Q:小手先の改革は安倍政権らしい。理念や哲学がない。 A:安倍首相の最大の特徴は縁故主義。これが最も残念なところです。お仲間優先が強すぎて、日本国内のベスト・アンド・ブライテストを集めていない気がします。必ずしも安倍首相の思想に共感しない人や考え方が違う人も、オールジャパンやワンチームで教育改革をするという雰囲気があれば、世界的な水準と比べてもう少しマトモな教育改革ができているはず。世界の教育についての知識や洞察力のない方々が政策を担っているのは、非常に悲劇的なことです。 Q:世界の教育はどう違うのでしょう。 A:僕は象徴的に「ハーバード大学はFランクの大学だ」と言っています。偏差値で見れば、低い人でも入れるし、高いから必ず入れるわけでもない。この学生を入学させたらハーバードが発展するのかどうか、必死になって個性を見極める。そういう入試を実践しています』、「安倍首相の」「縁故主義」で、「世界の教育についての知識や洞察力のない方々が政策を担っているのは、非常に悲劇的なことです」、手厳しい批判だ。
・『Q:ハーバードはどういう学生が欲しいのですか。  A:選考プロセスが公開されていませんが、情報はある。例えば、理想的な志願者の一例として、ゴツゴツした路面で一輪車に乗る競技を自分で思いついて、小学校の時からずーっとその記録を取っている。“ゴツゴツ一輪車乗り”の記録の履歴を示して、「年齢を重ねるに連れてこんなに伸びました」というリポートを書いてくるような学生をハーバード大学は欲しい。自分で開発しちゃうような学生です。だけど、次の年、ゴツゴツ一輪車乗りをやって合格するかというと、もう駄目なんだよね。 Q:とても難しい選考方法ですね。 A:日本は戦国時代、それをやっていた。織田、豊臣、徳川。誰についていくべきか。自分の出世どころか、一族郎党の命が決まってしまうわけですから、必死になって、個性を見極めていたのです。  Q:安倍政権の教育改革も個性重視をうたっている。 A:日本でいう個性はほんとに生ぬるいというか、甘ったるいというか、人間の存在の幅が狭すぎる。狭い幅の中で、「あの子は思いやりがあって、やさしい子だ」「やる気があって目が輝いている」みたいなレベルで言っている。そんなもの何の役にも立たないですよね。 Q:英語、国数記述式の民間導入は頓挫しましたが、民間の「eポートフォリオ」導入が検討されています。高校生活全期間の活動を記録させ、入試の評価につなげるという構想です。 A:終わってますね。eポートフォリオでボランティア活動などを点数化するなんてくだらない。eポートフォリオに書けるようなものは個性じゃない。標準化というものが根本的に違うんですよ。原則自由で標準化しないというのが多様性を担保するのには大事なことなのです』、「eポートフォリオでボランティア活動などを点数化するなんてくだらない。eポートフォリオに書けるようなものは個性じゃない。標準化というものが根本的に違うんですよ。原則自由で標準化しないというのが多様性を担保するのには大事なことなのです」、こんな問題だらけの「改革」を検討しているとは、飛んでもないことだ。
・『若者のリアリズムに希望  Q:若者と話す機会が多いようですね。 A:今は、子供から学ぶ時代ですね。中高生としゃべっていると、アニメやゲームは彼らの方がはるかに進んでいるので、常識が通用しないんですよ。大人たちが持っている価値のヒエラルキーとは全く違うところで子供たちのリアリティーがある。しかも、アニメとか漫画はグローバルにつながっているから、グローバルカルチャー。日本は、アニメや漫画のコンテンツを作る力は、中国などに比べてまだまだ強い。子供たちの世代は日本も期待できるところがあると思う。でも、大人がクールジャパンとか言い出すと、結局ムダ金を使って、台無しにしてしまう。 Q:若者は大人をどう見ているのですか。 A:中央省庁がシュレッダーで公文書を破棄したと言っているような国です。政治家など偉そうにして大人たちは威張っているけど、どうせ次の世代は自分たちの持ってるリアリティーが世界の中心になるということを知っている。無駄な軋轢を起こさないというのが若い世代の特徴である気がします。そういう子供たちを拾えるような体制になっていたら、日本はもう少し発展する機会が増えるんじゃないかと思う。 Q:“古い大人”は何も言わない方がいいですね。 A:日本の課題や、やるべきことをリアルに見る時代が来ていると思う。明治維新はよかったと言っているフェーズは終わった感じがします。リアリズムから見たら、日本の教育、高齢化、少子化対策は待ったなしです。少子化対策について、諸外国を見ると、古い家族制度にこだわっていると、子供は増えないというのがほぼエビデンスで示されている。一部の方が夫婦別姓に反対したり、従来からの家族観に固執して家族を限定的にとらえるのは、もはやファンタジーなんでしょう。リアリズムで、いかにシングルマザーの人を支えるかとか、いろいろな家族形態を認めるか考えた方がいいですよ』、「日本は、アニメや漫画のコンテンツを作る力は、中国などに比べてまだまだ強い。子供たちの世代は日本も期待できるところがあると思う。でも、大人がクールジャパンとか言い出すと、結局ムダ金を使って、台無しにしてしまう」、「クールジャパン」のような税金の無駄遣いは止めるべきだ。「明治維新はよかったと言っているフェーズは終わった感じがします。リアリズムから見たら、日本の教育、高齢化、少子化対策は待ったなしです。少子化対策について、諸外国を見ると、古い家族制度にこだわっていると、子供は増えないというのがほぼエビデンスで示されている・・・いろいろな家族形態を認めるか考えた方がいい」、同感である。
・『いろいろな出会いの組み合わせが天才を生む  Q:外国ではリアリズムで語られているのですか。 A:ある有名な文化人がゲイカップルに育てられた。お父さんが2人。米国でも収入の男女格差があるので、父―母より、父―父の世帯の方が所得が高くなり、有利だという議論があります。父―母がいて家族だというのがファンタジーだとしたら、ゲイカップルの方が経済的に実は有利だというのがリアリズムの議論です。日本で、そういう議論は一部ではあるのでしょうが、永田町や特に自民党では全く行われていないように思う。その辺が時代に合わなくなっている気がします。政権交代の可能性が常にあるという状況でなければ、政治家は堕落するし、油断する。仲間内でいろいろやろうとしちゃうんじゃないですか。それでいいと思っている日本人は大丈夫なのかというのが実感です。 Q:天才を誕生させるのは、後天的に教育で脳を発達させることが重要なのか、それとも遺伝的な要素で先天的に決まってしまうのか。脳科学の観点からどうですか。) 天才は遺伝しない。アインシュタインの息子も研究者になりましたが、「ウィキペディア」には、要するに「いい人だった」と書いてある。モーツァルトの息子も2世として売ろうとしたが、ダメだった。逆に、アインシュタインのお父さんは平凡な人だったし、モーツァルトのお父さんも普通の音楽教師。天才は凡人から生まれ、子供をまた凡人に変える。IQ(知能指数)は50%、身長は70%遺伝しますが、天才は遺伝しないのです。個人の資質と時代が出会った時に、天才という事象が生まれる。偏差値で輪切りにして、この大学に行きなさいみたいなやり方が一番最悪です。現状の日本は、成績がいい人が東大に行くとか、行き先が狭く定まっている。こういう融通のない社会は、いろいろな出会いの組み合わせが起こらない。いろいろな人が、いろいろなことを試すことができるというのは、結局、組み合わせを通しての天才が誕生するきっかけになっていくんだろうと思います。だからハーバード大学は、勉強のできない子も入学させるんですよ。ペーパーテストができない人もいるから、多様な出会いができて、いろいろと試すきっかけになるのです』、「天才は遺伝しないのです。個人の資質と時代が出会った時に、天才という事象が生まれる」、「偏差値で輪切りにして、この大学に行きなさいみたいなやり方が一番最悪です。現状の日本は、成績がいい人が東大に行くとか、行き先が狭く定まっている。こういう融通のない社会は、いろいろな出会いの組み合わせが起こらない。いろいろな人が、いろいろなことを試すことができるというのは、結局、組み合わせを通しての天才が誕生するきっかけになっていくんだろうと思います」、「いろいろな人が、いろいろなことを試すことができる」ような柔軟な社会を作り上げてゆくことが、「天才が誕生するきっかけに」もなってゆくようだ。

次に、3月18日付けAERAdot「共通テスト、検討会議の英語の専門家はたった1人 テスト開発の専門家集団の組織化が不可欠〈AERA〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2020031700058.html?page=1
・『来年1月から実施される大学入学共通テストでは、「英語民間試験」「国語・数学の記述式問題」の2本柱の導入が昨年土壇場になって見送られた。今後の新テストのあり方を議論する検討会議が今年1月から1年間の予定で始まったが、18人の委員のうち英語の専門家はただひとり。日本言語テスト学会会長を務める、上智大学の渡部良典教授(外国語教育)だ。第4回の検討会議が19日に開かれるのを前に、専門家として共通テストの英語についてどう考えているかを聞いた。 「大学入試のあり方に関する検討会議」では、最初に二つのことを伝えました。第一に、入試に英語の4技能試験を導入することと民間試験を活用することはイコールではないこと。第二に、テストには大きく分けて2種類あることです。将来の課題に対処する能力を測る「熟達度テスト」と、学んだことがどれだけ身についているかを測る「到達度テスト」です。前者が将来を見据えたテストなのに対し、後者は過去を見るテストです。例えば民間試験のうち、TOEFL iBTやIELTSなど留学のためのテストは熟達度テストで、英検やGTECなどは到達度テストです。同じ民間試験でも意味が全く違うのに、大学入学共通テストではこれらが区別されることなく一緒に導入されようとしていました。専門の立場から見ると、テスト研究の基本的な知識が欠如していると言わざるを得ません。 私が会長を務める日本言語テスト学会では2017年1月、共通テストへの民間試験導入の方針が打ち出されて間もない時期に提言書を日本語と英語で公にしました。当時の文部科学大臣にも提出しました。地域・経済格差など想定される課題の提示に加え、学会として専門的な見地から協力する旨も伝えました。ところが、文部科学省からはなんの反応もなく、実施に向けどんどん進み、結局、昨年11月の見送りの騒ぎです。 提言には「テストを変えるだけでは教育は変わらない」ことも伝えていました。ところが今回の入試改革では、「入試を変えることで、教育を変える」という考えが強固に貫かれました。1990年代から日本を含めた世界各国で、大規模なテストの波及効果に関する研究が行われてきました。しかし、そのどれもがテストを変えることによって得られる教育効果は極めて限定的であることを示しています。高校でクリエイティブ・ライティングの指導を促進するため入試に導入したところ、実際には生徒は受験対策としてパターンを暗記して準備するようになったという報告もあります』、「18人の委員のうち英語の専門家はただひとり」、余りに偏った人選だ。「日本言語テスト学会では2017年1月、・・・提言書を・・・当時の文部科学大臣にも提出しました。・・・文部科学省からはなんの反応もなく、実施に向けどんどん進み、結局、昨年11月の見送りの騒ぎです。 提言には「テストを変えるだけでは教育は変わらない」ことも伝えていました。ところが今回の入試改革では、「入試を変えることで、教育を変える」という考えが強固に貫かれました」、文科省の専門家軽視の姿勢は目に余る。
・『改革では、他の国の例から学んだ形跡がないのも気になります。韓国では10年ほど前、入試に英語の4技能試験の導入を計画。波及効果が注目されましたが、実現せず頓挫しました。いま中国でも大規模な入試改革が進んでいますが、スピーキングを入れるという話は聞きません。 今回の入試改革で、とりわけ重きがおかれているのがスピーキング・テストの導入です。その前提となっているのは、スピーキングのテストを入れることによって、日本人が英語を流暢に話せるようになるという期待です。しかし、テストを変えたくらいで流暢に話せるようになるわけがありません。そもそも、薄っぺらな内容を話すことに意味がありません。とつとつとしたしゃべり方でも、内容がきちんと伝わることのほうがよほど大事であり、実現可能で意味のある学校教育の目標です。 また、「話せるだけの英語力」などというものもありません。聞いたり、読んだりして理解できているのに、全く話せない、全く書けないなんてありえないのです。全く話せないのだとしたら、読んだり聞いたりの理解ができていない可能性が高いと判断すべきです。 英語の4技能は、それぞれ切り分けられるものでなく互いに関連しています。読んだ文章の内容理解を測るために、要約させたり、言い換えをさせたりすることがありますが、応答を口頭で行えばスピーキング・テストになりますし、筆記にすればライティング・テストになります。大事なのは「話す」「書く」といった便宜上の区別にとらわれるのではなく、「何を測りたいのか」。まずは、その目的を明確にしたうえでテストを設計することです。 スピーキングの能力は、対話の能力、理解して発表する能力、発話の能力などが複合して成り立っています。民間試験には、試験官や受験生同士が対話する形があれば、コンピューターに吹き込む形式もあります。測る内容も、音読して内容に関する質問に答えさせたり、読んで聞いた内容を統合して話す力や対話の力を試したりと、実に多様です。 そう考えれば、50万人にスピーキング・テストを一律に課すことがいかに無理の多いことか、おわかりいただけるかと思います。必要だと思う大学が、必要だと思う適切なスピーキングの力を個別に測るのが妥当だというべきです。 それでも、一律に課すことが必要ならば、大学入試センターがシステムを開発し、実施するのが適正です。リスニング・テストは公平性を担保できるまで実験を重ね、構想から実現まで何年もの時間をかけました。スピーキング・テストの開発にはもっと時間がかかることを覚悟したうえ、基礎研究から始め、我が国独自のテストを開発することには大きな意味があります。入試の大前提となるのは、実行可能性、公平性、信頼性の三つです。これらは絶対に外せない条件です。リスニング・テストはICプレーヤーの登場によって実現しましたが、スピーキングではAIが鍵を握るのではないかと思います。 多くの受験生が受けることになったであろう、民間試験のスピーキング・テストを見ると、コンピューターを使った音読とわずか数問の質問に対する短文の回答です。この程度の内容であれば、授業でも既に行われており、受験生に余計な負担をかけてまで受けさせる必要があるのか疑問です。高校に卒業試験を導入し、必要に応じてその証明を大学に提出するのもひとつの方法かもしれません。 教育は百年の計ですから、1年で結論を出し見切り発車すべきでありません。文部科学省の主導で、実施運営などの政策に関わる専門家集団と、国家規模のテストを開発する専門家集団を組織し、協力関係を保ちながら進める必要があります。今回はまたとない貴重な機会になるはずです。 本気でスピーキング力を上げたいのであれば、入試よりも必要なリソースを割いた授業改革のほうが先に着手すべき課題だと私は思っています。加えて、今回の高大接続の教育改革では、大学に進学しない生徒たちのことが全く考慮されておらず、私には大いに不満です。 検討会議は、昨年までの議論や経緯を見直し、いったん白紙に戻す前提で始まっています。将来を見据えた新たな出発点にすべきだと考えています』、説得力溢れる主張で、同感である。

第三に、8月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した心理学博士でMP人間科学研究所代表の榎本博明氏による「「本が読めない人」を育てる日本、2022年度から始まる衝撃の国語教育」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/245339
・『今、教育の現場では、あらゆる学習において、社会に出てからの実用性を重視する実学志向が強まっている。だが、基礎知識や教養、物事を深く考える習慣を身につけさせないのであれば、先の読めない変化の激しい時代を柔軟に生きることは困難だ。『教育現場は困ってる――薄っぺらな大人をつくる実学志向』(平凡社新書)の著者・榎本博明氏は、学校教育の在り方に警鐘を鳴らす。今回はシリーズ5回目で、「実学重視に走る教育の危うさ」について問題提起する』、興味深そうだ。
・『小説・評論から実用文にシフトする国語教育  学校の勉強は社会に出てから何の役にも立たない、もっと役に立つ内容を教えるべきだ。そんな声が強まり、学校教育が実用性を重視する方向にどこまでも進んでいくことに対して、榎本氏は教育の危機を感じるとしている。 このような教育改革の動きに対して、2019年1月、榎本氏も加盟している日本文藝家協会により、「高校・大学接続『国語』改革についての声明」が出された。これは、2022年度から施行される新学習指導要領による国語科の大幅な改定に対する危機感の表明である。 簡単に説明すると、「大学入試および高等学校指導要領の『国語』改革」において、高校で文学の勉強をせずに、もっぱら実用文に重きを置いた教育をすることになったのである。 日本文藝家協会の出久根達郎理事長は、「文科省は本気でそのような教科書を作るようなので、今のうちに大きな反対ののろしをあげなければいけない。駐車場の契約書などの実用文が正しく読める教育が必要で文学は無駄であるという考えのようだ」と懸念を示している。さらに「まだマスコミでも大きくは取り上げておらず、一般には周知されていないと思われるが、文部科学省の方針に大反対をしていこうと考えている」(文藝家協会ニュース2019年1月号)としている。 この声明が出されてからすでに1年以上が経過したが、このような文科省主導の教育改革の動きについては、いまだにメディアでほとんど取り上げられることがなく、多くの国民は何も知らないのではないだろうか』、こんな「『国語』改革」が進んでいるとは、恥ずかしながら全く知らなかった。「マスコミ」もこんな重要なことを取上げないとは、センスを疑う。
・『「国語」改革に、教育現場からも驚きの声  国語の授業で実用文の学習に重きを置くといっても、具体的にどういうことなのかわからないという人が多いかもしれないので、もう少し説明しておきたい。 2021年から「大学入学共通テスト」が実施され、それに合わせて高校の国語の改革も行われることになった。そして、この新しい大学入学共通テストのモデル問題が2017年に示された。そこでは、国語に関しては、生徒会の規約、自治体の広報、駐車場の契約書が問題文として出題されたのである。たとえば、架空の高校の生徒会規約を生徒たちが話し合う会話文を読ませるような問題が出題された。これには教育現場にいる教員たちから驚きの声が上がった。 2022年度からは、このような問題を解けるようにするための国語の授業を全国の高校で行うようになるわけである。これまで指導要領をいくらいじっても高校も教科書会社も動かなかったため、文科省は大学入試を変えることで、高校の授業や教科書を無理やり変えざるを得なくするという手段をとったのだ。 こうした動きに関して、日本文藝家協会による「高校・大学接続『国語』改革についての表明」では、次のように懸念が表明されている。  「あたかも実用文を読み、情報処理の正確さ、速さを競うための設問といった印象も受けます。この点に関しても、複数の識者たちから疑問の声が出されています。 このように、とくに高校と大学と接続した教育現場でこの数年で起きることはおそらく戦後最大といってもいい大改革であり、日本の将来にとって大変に重要な問題をはらんだ喫緊の課題です」(文藝家協会ニュース2019年1月号) この改革により実用文中心の教科書が作成されることになる。手元にある現行の「現代文」の教科書には夏目漱石、芥川龍之介、宮沢賢治、中島敦など文豪の作品が載っているが、「現代文」が「論理国語」(実用文中心)と「文学国語」(文学中心)に分かれ、そのいずれかを学ぶことになる。そうした文豪たちの作品は当然のことながら「文学国語」に入るはずだ。入試動向に合わせて多くの学校は「論理国語」を選ばざるを得ないだろう。その結果、多くの学校の生徒たちは、文学でなく実用文中心の国語の教科書で学ぶことになる(形式上、文学を含む教科書も残るが、現実には入試対策の必要上、その教科書を採用する学校は少なくなることが推測される)。 これに関して、作家の三田誠広氏は、ある会議において、学力問題と絡めながら、次のように懸念を示している。 「(前略)大学入試の共通試験の問題例が出た。駐車場の契約書、レポート、統計グラフ、取扱説明書が読めるようになることが、文部科学省が考えている国語力だ」(文藝家協会ニュース2019年11月号) 「小説を読むと地頭がよくなると、進学校はみなわかっている。私立の進学校は大量の読書をさせて、議論をさせる。ところが文部科学省が考えているのは中から下、二人に一人が大学に進学する時代になり、簡単なレポートも書けない大学生がいるので、ちゃんと実用的な論理国語を学ばせる方針だ」(同)』、大学入試の問題まで、「文学国語」よりも「論理国語」が中心になるのだろうか。大学入試は「大学」の判断になるので、安易に「論理国語」中心の問題にする筈はないのではなかろうか。ただ、受験生集めに苦労するような大学は、「論理国語」中心になるのかも知れない。
・『危惧される教養人と非教養人との二極化  国語の授業で、駐車場の契約書や会議の議事録の読み方、商品の取扱説明書の読み方を学ぶ――。そんな時代がやって来るとは思いもしなかったと榎本氏は述べるが、2022年度から現実にそうなることになっている。 今の中学生や高校生、あるいは大学生の読解力が悲惨な状況にあり、かつてなら、容易に読めたであろう簡単な説明文の理解ができない者があまりに多いことは、榎本氏の著書の中で示されている。だから実用文を学ばせるといった発想になっているのだろうが、それはわざわざ中学や高校の授業でやるべきことなのだろうか。 進学校の生徒たちは本をよく読み、読解力を身につけているため、実用文の勉強など改めてやる必要はないし、新しい学習指導要領に切り替わっても、私立進学校の生徒たちは、国語の授業や自分自身の趣味あるいは学習として小説も評論も積極的に読むだろう。 一方で、もともと本を読まず、読解力の乏しい生徒たちは、国語の授業で実用文の読み方を学ぶようになる。先述のように現行の「現代文」から「論理国語」へという移行により、これまでは教科書で著名な小説や評論といった実用文でない文章に触れることができたのだが、今後は文学作品に触れることがほとんどない生徒たちが大量に出てくることが予想される。 これにより、文学や評論に親しむ教養人と実用文しか読まない非教養人の二極化が進むに違いない。知的階層形成を公教育においても進めていこうとする政策に、平等な扱いを好む日本国民は果たして納得できるのだろうか。このように大きな問題をはらむ教育改革に国民はしっかりと目を向け、その妥当性について本気で考えてみるべきではないだろうか。これは、今後の子どもや若者の人生を大きく左右するような出来事なのである。 訂正 記事初出時からの訂正の説明は省略』、「文学や評論に親しむ教養人と実用文しか読まない非教養人の二極化が進む」、こんな弊害がある「国語改革」には強く反対したい。
タグ:eポートフォリオでボランティア活動などを点数化するなんてくだらない。eポートフォリオに書けるようなものは個性じゃない。標準化というものが根本的に違うんですよ。原則自由で標準化しないというのが多様性を担保するのには大事なことなのです アニメや漫画のコンテンツを作る力は、中国などに比べてまだまだ強い。子供たちの世代は日本も期待できるところがあると思う。でも、大人がクールジャパンとか言い出すと、結局ムダ金を使って、台無しにしてしまう 民間の「eポートフォリオ」導入が検討 世界の教育についての知識や洞察力のない方々が政策を担っているのは、非常に悲劇的なことです 生ぬるく甘ったるい“個性重視” (その12)(茂木健一郎氏 知識や洞察力のない人による教育改革は悲劇茂木健一郎氏 知識や洞察力のない人による教育改革は悲劇、共通テスト 検討会議の英語の専門家はたった1人 テスト開発の専門家集団の組織化が不可欠〈AERA〉、「本が読めない人」を育てる日本 2022年度から始まる衝撃の国語教育) 安倍首相の最大の特徴は縁故主義 日刊ゲンダイ 若者のリアリズムに希望 安倍政権の教育改革 茂木健一郎氏 知識や洞察力のない人による教育改革は悲劇 危惧される教養人と非教養人との二極化 大学入試の共通試験の問題例が出た。駐車場の契約書、レポート、統計グラフ、取扱説明書が読めるようになることが、文部科学省が考えている国語力だ 「文学国語」(文学中心) 「論理国語」(実用文中心) 「国語」改革に、教育現場からも驚きの声 小説・評論から実用文にシフトする国語教育 『教育現場は困ってる――薄っぺらな大人をつくる実学志向』(平凡社新書) 社会に出てからの実用性を重視する実学志向が強まっている 「「本が読めない人」を育てる日本、2022年度から始まる衝撃の国語教育」 榎本博明 ダイヤモンド・オンライン 教育は百年の計ですから、1年で結論を出し見切り発車すべきでありません 他の国の例から学んだ形跡がないのも気になります 文部科学省からはなんの反応もなく、実施に向けどんどん進み、結局、昨年11月の見送りの騒ぎです。 提言には「テストを変えるだけでは教育は変わらない」ことも伝えていました。ところが今回の入試改革では、「入試を変えることで、教育を変える」という考えが強固に貫かれました 当時の文部科学大臣にも提出しました 提言書を 日本言語テスト学会では2017年1月 日本言語テスト学会会長を務める、上智大学の渡部良典教授(外国語教育)だ 18人の委員のうち英語の専門家はただひとり 「共通テスト、検討会議の英語の専門家はたった1人 テスト開発の専門家集団の組織化が不可欠〈AERA〉」 AERAdot 偏差値で輪切りにして、この大学に行きなさいみたいなやり方が一番最悪です。現状の日本は、成績がいい人が東大に行くとか、行き先が狭く定まっている。こういう融通のない社会は、いろいろな出会いの組み合わせが起こらない。いろいろな人が、いろいろなことを試すことができるというのは、結局、組み合わせを通しての天才が誕生するきっかけになっていくんだろうと思います 天才は遺伝しないのです。個人の資質と時代が出会った時に、天才という事象が生まれる いろいろな出会いの組み合わせが天才を生む いろいろな家族形態を認めるか考えた方がいい 明治維新はよかったと言っているフェーズは終わった感じがします。リアリズムから見たら、日本の教育、高齢化、少子化対策は待ったなしです。少子化対策について、諸外国を見ると、古い家族制度にこだわっていると、子供は増えないというのがほぼエビデンスで示されている
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原発問題(その14)(「福島第一原発3号機は核爆発だった」原発設計技術者が東電 政府を批判、福島県の情報漏洩疑惑、「お手盛り調査」の実態 疑い持たれた部署が調査や文案作成を担当、日本の原発の「是非」今こそ議論の必要がある訳 グリーン・リカバリーのビジョンを描くために) [国内政治]

原発問題については、3月9日に取上げた。今日は、(その14)(「福島第一原発3号機は核爆発だった」原発設計技術者が東電 政府を批判、福島県の情報漏洩疑惑、「お手盛り調査」の実態 疑い持たれた部署が調査や文案作成を担当、日本の原発の「是非」今こそ議論の必要がある訳 グリーン・リカバリーのビジョンを描くために)である。

先ずは、3月9日付けAERAdot「「福島第一原発3号機は核爆発だった」原発設計技術者が東電、政府を批判」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2020030600008.html?page=1
・『東日本大震災から9年の月日が経った今も福島第一原発の事故には疑惑が残っている。ジャーナリストの桐島瞬氏が取材した。 福島第一原発の事故では1、3、4号機が水素爆発を起こし、大量の放射性物質が大気中に拡散した。だが、3号機は核爆発だったのではないかとの疑惑がある。実際、3号機が爆発した瞬間には黒煙が舞い上がり、白煙が立ち上った1号機とは様相が違った。 「3号機で核爆発が起きた」と主張する原発技術者は何人かいる。そのなかで最も詳しく解説しているのが、三菱重工業で原発の設計技術者を務めた藤原節男氏(70)だ。 「3号機の爆発では原子炉建屋南側で一瞬オレンジ色に光り、黒いキノコ雲状の煙が上空600メートルまで立ち上りました。これは温度が1万度以上の高温になる核爆発の特徴です。大きな被害が出なかったのは、爆発の規模が原爆の1万分の1から10万分の1程度と小さかったからです」 藤原氏は3号機が核爆発した証拠として13個の根拠を挙げている。以下が主なものだ。 +屋根フレームの鉄骨が飴細工のように曲がった。爆発で建屋のスレート屋根が吹き飛び、圧力が外部に逃げたにもかかわらず曲がっているのは、核爆発で局所的に超高温部が発生したために起きた現象。 +使用済み燃料プールのある建屋南部を中心に屋根が破壊された。水素爆発なら最上階の5階に充満した水素が爆発するため、屋根はある程度均等に破壊される。 +5階の床付近に置かれていたクレーン用モーターなど大型瓦礫(がれき)がキノコ雲から落下したようだ。5階空間での水素爆発なら、5階の床付近に置かれたものを上空高く吹き飛ばすことはできない。 +プルトニウムが福島県飯舘村や米国まで飛散しているが、これは使用済み燃料プールの燃料の金属成分が蒸発したもの。水素爆発ならプルトニウムの発生源は格納容器内の炉心溶融物(コリウム)に限定されるが、その場合のプルトニウムは二酸化物のままの状態を保っていることから蒸発飛散しない。 +福島第一原発事故では、セシウムを含んだガラス質で、微小な球形をしたセシウムボールができた。これは高温高圧下で物質が蒸気とプラズマになり、冷える過程でできたもの。水素爆発ではできない』、確かにこれだけの「核爆発」の証拠を示されると、素人の私は信じるしかなさそうだ。
・『では、どうして核爆発が起きたのか。藤原氏によると、最初に3号機上部で水素爆発が発生し、それから使用済み燃料プールで核爆発が起きたという。 「まず全ての電源が失われたことで、使用済み燃料を冷やしている燃料プール内の水が沸騰を始めました。このとき、水中のボイド(気泡)が一定量に増えたことで安定した『遅発臨界状態』に達しました。本来、プール内で臨界が起きてはいけませんが、ここまでは原子炉の固有の安全性(自己制御)が機能している状態でした」 水の中にどれだけの気泡が含まれるかを示すボイド率は、核分裂制御と密接な関係にある。うまく調整できれば安定臨界状態を保つが、少しでも狂うと原子炉が暴走してしまう。このときの使用済み燃料プールも臨界したとはいえ、安定した状態を保っていたという。だが、ここで思いも寄らぬ事態が起きた。 「3号機の5階に大量にたまっていた水素ガスが爆発したことで急激な圧力が使用済み燃料プール水面にかかり、水中のボイドが消滅したのです。急速にボイドが減ると激しい核分裂反応が起き、危険な『即発臨界状態』になる。自己制御が利かなくなり、ついには核爆発が起きたのです」 使用済み燃料プールの水は本来、燃料の冷却のために使われる。だが、安定して臨界状態を保っていたボイド率が一定以上低下すると、中性子の速度を抑える減速材としての役割が増加し、核分裂を促進してしまう。ほんのわずかな反応度の違いで、即発臨界点に達してしまうのだ。3号機はプルトニウムを再処理で取り出した(プルトニウムとウランを混ぜた)MOX燃料を使う原子炉だったことも、核爆発を起こしやすくしたという』、こうしたメカニズムの説明もなるほどと思わせる。
・『一方、こうした核爆発説への異論も少なくない。 例えば、東京電力が公表した3号機の写真には使用済み燃料プールの燃料ラック(収納棚)が写っている。爆発したのなら残っているはずがないとの見方だ。また、原発で使う核燃料はウラン濃縮度が低いため、核爆発が起きないのではとの指摘もある。 藤原氏の反論はこうだ。 「核爆発したのは局所的な場所で、被害のない部分を写真として公開しています。また、低濃縮ウランで核爆発が起きないというのは安全神話にすぎず、実際に爆発を起こした実験結果が米国にあります」 その上で、3号機は水素爆発だと言い続ける東電や政府をこう批判する。 「小規模な核爆発だからといって、事実を隠していいことにはなりません。環境中に放射性物質をまき散らしたのだから、飛散した破損燃料や爆発時の環境中性子線の数値など核爆発の証拠となるデータを明らかにすべきです」』、政府や東電はこうした疑惑を晴らすためにも、全ての「データ」を公開すべきだろう。

次に、8月10日付け東洋経済オンライン「福島県の情報漏洩疑惑、「お手盛り調査」の実態 疑い持たれた部署が調査や文案作成を担当」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/366992
・『東洋経済オンラインは6月25日に「Jヴィレッジ除染めぐる東電と福島県の隠し事」と題した記事を配信した。その中で、サッカーナショナルトレーニング施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町および広野町)の原状回復工事に関して、福島県に情報公開請求をしたフリージャーナリスト・おしどりマコ氏の氏名を、東京電力が社内文書に記録していた事実について報じた。 この問題に関して福島県は、情報公開請求者の氏名を第三者である東電に伝えていた事実は確認されなかったとする回答文書をまとめ、おしどり氏宛てに送付。福島県知事名の文書がおしどり氏の代理人弁護士に7月17日付で届いた。 東洋経済が入手した東電の社内記録(5月13日付、原子力・立地本部広報グループ)には、福島県職員からの情報提供の内容が次のように記されていた。 「Jヴィレッジの原状回復工事に関して、東洋経済岡田記者が福島県に問い合わせを入れたとのこと。岡田氏は事実関係の確認に加えて、福島県に当社の公表を止めているのではないかといった質問を当ててきたようで、福島県としても、早期の公表に向けて県庁内で調整を行いたいとの話が〈当社の〉立地地域部にあった」(編集部注:〈〉は説明のために加筆、以下同)』、「福島県は、情報公開請求者の氏名を第三者である東電に伝えていた事実は確認されなかったとする回答文書をまとめ、おしどり氏宛てに送付」、しかし「おしどりマコ氏の氏名を、東京電力が社内文書に記録していた」のであれば、情報漏洩先はやはり「福島県」と考えざるを得ない。
・『県の個人情報提供を物語る東電社内記録  東洋経済はこの社内記録が作成された直前に、福島県エネルギー課にJヴィレッジの原状回復工事で発生した廃棄物の保管状況について電話で問い合わせていた。上記の内容は、その直後にエネルギー課から東電に取材内容に関する情報提供があった事実を物語っている。同じ日の東電の社内記録には、次のような記述もあった。 「本日〈5月13日〉夕方、福島県の担当課長と話し合いを行うことになっているが、福島県としては、おしどり〈マコ〉氏から5月14日期限で情報公開請求を受けており、5月14日に公表の調整となる見通し」 おしどり氏は、原発事故が発生して以降、2018年6月まで東電が事故収束作業の拠点として使用していたJヴィレッジの原状回復工事に際して発生した汚染土壌の処分や放射性物質を含んだ廃棄物の管理の実態について取材を続けていた。 東電の社内記録の日付から、Jヴィレッジを所管する福島県エネルギー課が当時、東電との間で2~3日に1度の頻度で情報のやりとりを続けていたこともわかった。) おしどり氏はこのことを問題にした。福島県知事宛てに事実関係について回答を求める文書を送付。福島県の県政記者クラブで会見を開いて申し入れ書の内容について説明した。 それに対して福島県は調査を行ったとしたうえで、7月17日付でおしどり氏の代理人弁護士宛てに「開示請求者〈=おしどりマコ氏〉の氏名については、提供した事実は確認されませんでした」との文書を送付した。おしどり氏の情報公開請求に関して、福島県は申請者の氏名を東電側に伝えた事実は確認されなかったと言い切ったのだ。 しかしながら、福島県が実施した内部調査には、根本的な問題があることがわかった。情報漏洩の疑いを持たれているエネルギー課の職員らの聴取を、同課の課長らが実施していたのである。 さらに、「事実関係が確認されなかった」という知事名の文案を、疑いを持たれていた同課の職員自らが作成していた。おしどり氏の問い合わせにエネルギー課の職員が回答し、東洋経済も担当職員からその事実を確認した。 県知事名の回答文書に記された問い合わせ先についても、疑いを持たれている同課職員の氏名が「事務担当」として記されている。福島県は、「Jヴィレッジを所管している」という理由で、エネルギー課に調査を委ねたのだ』、「情報漏洩の疑いを持たれているエネルギー課の職員らの聴取を、同課の課長らが実施していたのである。 さらに、「「事実関係が確認されなかった」という知事名の文案を、疑いを持たれていた同課の職員自らが作成していた」、これでは「福島県」の主張には、誠実さの欠けらもないと判断せざるを得ない。
・『敷地内で高濃度廃棄物を極秘保管  そもそも、Jヴィレッジの問題が持ち上がったのは2019年10月。国際環境NGOグリーンピースの現地調査により、Jヴィレッジに隣接する楢葉町営駐車場脇で高い放射線量を示すホットスポットが見つかったことがきっかけだった。 その後の環境省や東電による調査により、東電による除染がきちんと実施されていなかったことが判明。東電は汚染土壌を撤去し、福島第二原発の構内に運び込んで暫定保管している。 しかし、新たに判明した問題はそれだけにとどまらなかった。Jヴィレッジの敷地で放射性物質を含む土壌や廃棄物の撤去作業に従事した作業員の被ばく線量管理が行われていなかった事実が取材によって明るみに出た。 のみならず、原状回復工事で発生した放射性物質を含んだ土壌を、東電が「再生利用」と称してひそかに土地造成工事で活用していたことも判明した。その総量について東電は約5万1000立方メートルであるとニュースリリースで明らかにしていたが、8月3日の記者会見で約5万4000立方メートルが正しいと口頭のみの説明で修正した。) ほかにも重大な事実が明らかになった。東洋経済が入手した東電の社内記録から、1キログラム当たり8000ベクレルを超える高濃度の放射能汚染のある廃棄物が、ひそかにJヴィレッジの敷地内に保管されている事実が判明したのである。8月3日の東電の公式発表によれば、その中身は廃プラスチックと汚泥であり、総量は72立方メートル。廃プラスチックと汚泥に含まれる放射性物質の濃度は1キログラム当たり2万5900ベクレル、1万4400ベクレルに上る。ただし、その保管場所について、東電は「管理上の理由」から開示を拒んでいる。 これらについては除染特措法に基づいて「指定廃棄物」として申請し、中間貯蔵施設で適切に管理されるべきものだが、東電がJヴィレッジの施設を福島県側に返還して2年が経過した今年7月末にようやくその手続きが終了した。 これまでJヴィレッジは、敷地内の高濃度の放射性物質を含む廃棄物を保管している事実を公表しないまま、宿泊客を誘致し、青少年によるサッカーの合宿や練習試合も行われていた。さらに、東京オリンピックの聖火リレーのスタート地点にも予定されていた』、「Jヴィレッジは、敷地内の高濃度の放射性物質を含む廃棄物を保管している事実を公表しないまま、宿泊客を誘致し、青少年によるサッカーの合宿や練習試合も行われていた。さらに、東京オリンピックの聖火リレーのスタート地点にも予定されていた」、隠蔽体質もここまでくると、犯罪行為といえる。
・『利害関係のない部署が調査すべき  そもそもの問題の発端は、放射性物質を含む廃棄物を東電が撤去せずに施設とともに福島県側に引き渡したことにある。福島県はそのことを問題にしていたが、Jヴィレッジに保管しているという事実については隠し通すように東電に求めていた。 福島県は東電に対し、「廃棄物の処理は東電が責任を持って実施すべき。県の了解なしに〈Jヴィレッジ内で保管されている事実について〉メディアに回答を行うことは許さない」(4月23日付の東電社内記録)などと強い態度を示した。 また、5月8日の東電の社内記録では「福島県から現在、Jヴィレッジで保管している8000ベクレル/㎏超の廃棄物の指定廃棄物申請が完了しなければ公表は受け入れられないとの回答が〈東電の〉立地地域部にあった」との記述もある。福島県は風評被害を招く恐れがあることを理由に東電に口止めしていたことも、東電の社内記録で判明した。 福島県から東電への個人情報の漏洩疑惑は、こうしたやりとりのさなかに持ち上がった。福島県個人情報保護条例は、入手した個人情報を目的外で使用してはならないと定めているが、情報公開請求をしていたおしどり氏の氏名が東電の記録に残っていた。 振り返ってみれば、Jヴィレッジの歴史とはすなわち、福島県と東電との密接な関係の歴史でもある。1990年代に東電は福島第一原発の7、8号機やプルトニウム燃料を利用した発電を計画。東電はJヴィレッジを建設したうえで「地域貢献」の名目で福島県に寄贈し、県エネルギー課が所管する「福島県電源地域振興財団」が土地建物を所有した。また、現在もエネルギー課の職員の多くが、同財団の職員を兼務している。 一方で、東電は原発事故を引き起こした加害者であり、福島県は県の全域を放射能で汚染されたうえ、今なお数万人の県民が避難生活を余儀なくされているという点で被害者の立場だ。しかし、両社の間にはもたれ合いとも言える関係が存在している。 福島県が潔白を主張するのであれば、東電とのつながりが深いうえに疑惑を持たれているエネー課とは別の独立した組織による徹底した真相究明が必要だ』、「Jヴィレッジの歴史とはすなわち、福島県と東電との密接な関係の歴史でもある」、とはいえ、「福島県が潔白を主張するのであれば、東電とのつながりが深いうえに疑惑を持たれているエネー課とは別の独立した組織による徹底した真相究明が必要だ」、同感である。

第三に、8月10日付け東洋経済オンラインが掲載した独立したグローバルなシンクタンクのAPI地経学ブリーフィングによる「日本の原発の「是非」今こそ議論の必要がある訳 グリーン・リカバリーのビジョンを描くために」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/367550
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく』、興味深そうだ。
・『コロナ後の経済回復は、「グリーン・リカバリー」  小泉進次郎環境大臣は、2020年6月、気候変動対策の官民ネットワークとビデオ会議を行い、新型コロナウイルス危機後の経済回復の在り方について指針を共有した。そこで示された方向性が「グリーン・リカバリー」であった。 新型コロナウイルス後の経済復興の核に気候変動対策を据えるグリーン・リカバリーは、欧州を中心に世界経済の潮流となりつつある。7月21日、欧州連合(EU)首脳会議は、EU予算とは別に7500億ユーロ(約92兆円)を調達し、「次世代EU(Next Generation EU)」復興基金を創設する案に合意した。 復興基金の約3分の1は気候変動対策に充てられ、EU次期7カ年中期予算と合わせると過去最大規模の環境投資を伴う刺激策となる。EUは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「グリーン移行」を促進しながら、経済を刺激し雇用を創出するという成長戦略を掲げるが、それを復興の中心に据え、勢いを維持、加速することが狙いである。 気候変動対策重視の経済回復案は欧州にとどまらない。カナダは、石油・ガス産業の雇用を守りつつ、メタン(温暖化ガスの一つ)排出を抑える投資資金を融資し、中国では電気自動車などの購入補助を2022年末まで延長するなどの策がとられる。アメリカでは、現時点では具体的な経済対策として具現化してはいないものの、民主党陣営は電気自動車関連で大規模な雇用を創出する計画を打ち出している』、EUの「グリーン・リカバリー」は確かに意欲的だ。
・『日本においては、ここまでの緊急経済対策にグリーン・リカバリーの内容を明確に打ち出してはきていない。また以前より、日本は気候変動対策に長期的な戦略を持たず、消極的であるとして国際社会からしばしば批判を浴びてきた。これから、日本はどのようにグリーン・リカバリーを成し遂げることができるのだろうか。 気候変動対策は、エネルギー政策と切り離すことはできない。2013年度の日本の温室効果ガス排出総量は約14億トン、そのうち約88%をエネルギー起源のCO2が占める。日本のようにエネルギー自給率の著しく低い国においては、気候変動対策とあわせて、エネルギー安全保障とどう向き合うかということも、構造的かつ現実的課題である。 冒頭のビデオ会議で、環境省は脱炭素に向け再生可能エネルギーの需要促進に強く関与していくことを宣言した。また、エネルギー政策を所管する経産省は、新型コロナウイルス後の経済・社会には「医療・健康」「デジタル」とあわせ「グリーン」への取り組み強化が必須であるとし、以前より推進する「3E+S」「エネルギーミックス」を軸に、ゼロ・エミッション電力と呼ばれる、発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギー、原子力エネルギーの重要性を強く主張している。 +3E+S:安全性(Safety)を大前提に、安定供給(Energy Security)、経済効率向上 (Economic Efficiency)、温室効果ガス排出削減(Environment)を追求する。 +エネルギーミックス:2030年までにエネルギー電源構成比率を再エネ22-24%、原子力20-22%、化石燃料56%とすることを目指す方針。 (参考2010年度(震災前)再エネ7%、原子力11%、化石燃料82%→2016年度(震災後)再エネ10%、原子力1%、化石燃料89%)』、「エネルギーミックス:2030年までにエネルギー電源構成比率を再エネ22-24%、原子力20-22%、化石燃料56%とすることを目指す方針」、は原発事故後、経産省が苦し紛れに決めたものだ。
・『障壁となる原子力  しかし、この政策の推進には大きな課題が残る。今後の原子力発電の不透明
である。2020年現在稼働している原発は9基にとどまり、原子力発電が電源構成に占める割合はわずか3%、20~22%という目標を大幅に下回っている。 発電時にCO2を排出しない原子力は、日本の脱炭素化にとっては非常に重要な意味を持つ。また原子力は燃料の備蓄性が高く、少量の燃料で大きなエネルギーを生産できるため、化石燃料を持たない日本にとって、エネルギー自給率の向上に寄与できる貴重なエネルギーである。にもかかわらず、福島原発事故後、原子力への国民の信頼は依然失われたまま、原子力発電の稼働率は大きく落ち込み戻っていない。その結果、原発事故前に20%あったエネルギー自給率は現在10%を下回る。 福島原発事故後、「日本はエネルギー政策について広く国民的議論をすべき」との意見は各所で繰り返されてきたが、原発の今後については、事故後10年近くが経ってもいまだに決着がついていない。小泉環境大臣は、2019年9月の大臣就任当時「どうやったら(原発を)残せるかではなく、どうやったらなくせるかを考えたい」と語るなど、脱原発寄りの姿勢を示していたが、最近は明言を避けている。 原発について明確な方向性を出せない背景には、原子力エネルギーの特殊性が挙げられる。前述の通り、原子力は発電時にCO2を排出せず、またエネルギー自給率にも寄与しうる貴重な安定的エネルギー源である。一方、ひとたび原子力災害が起きれば、莫大な人的、社会的、経済的被害をもたらす。これは、福島原発事故後、事業者にとっては賠償や廃炉の巨額費用、近隣住民にとっては、故郷の喪失やコミュニティの分断、人的資源の流出、今なお続く風評被害の形で表出した。 また、事故後明らかになったいくつかの重要な問題も、いまだに解決していない。例えば、事業者の企業体質は抜本的に改善されているとは言えず、トリチウム水の放出についても、いまだに落としどころが見つかっていない。事故が発生した場合の近隣住民の避難の在り方について、福島原発事故で多くの関連死を招いてしまった反省を踏まえ、一定の改善が進んだものの、議論が十分に深まったとは言えない。 バックエンド事業と呼ばれる、使用済み燃料の再処理や放射性廃棄物の最終処分には、超長期の時間を要し、今後何らかの不確実性が生じる恐れも否定できない。これらの要素を考慮すると、原子力の再稼働への障壁は高い』、「原子力の再稼働への障壁は高い」のはやむを得ない。
・『今後のビジョン  これらの複合リスクを抱えてまで、日本は原子力発電の利用を続けるべきだろうか。この問題に答えるのは、容易ではない。 しかし、低炭素かつ安定的な電源を大量に供給する手段は、原子力以外にはいまだ開発されていないのが現状である。火力発電は炭素集約型であり、再エネ発電は、広大な敷地が必要で、現時点ではまだコストが高い。長期的には原発への依存度を下げつつも、少なくとも短期的には、原発の一定程度の再稼働実現を目指すことが、現実的な選択肢である。) 原発の再稼働のためには、安全性という大前提のもと、改めて国民の理解を求めなければいけない。福島原発事故は、日本の国体を揺るがすほど深刻な影響を及ぼし、原子力発電への国民の不信感を高めた。 日本原子力文化財団の世論調査によると、原子力を「信頼できない」と考える回答者は、2010年の10.2%から最大20%増加し2015年には30.0%を占めた(2019年は24.4%)。原子力が「必要」と考える回答者は、2010年の35.4%から最大20%近く減少し、2013年には14.8%となった。(2019年24.3%)。メディア各社の世論調査でも、原発の再稼働について「反対」が「賛成」を上回る結果が継続し、全体的に原発への国民の評価は低迷が続く』、「原発への国民の評価は低迷が続く」のも当然だろう。
・『10年の局面を迎える今こそ  福島原発事故後、民間や国会、政府、学会などの事故調がそれぞれ事故の原因を調査・検証し、提言を出してきた。発災後10年間で、事業者や政府、規制機関をはじめとする関係者たちがそれらの提言をどれほど活用し、実際の公共政策や運用に還元してきたか、10年の局面を迎える今こそ改めて俎上に載せ、国民に提示し、合意を得る努力をする必要がある。 加えて、原子力の低炭素価値を改めて評価することによって、原子力の価格競争力を高める制度は、検討の価値がある。原子力の低炭素価値を評価する動きは、日本国内ではほとんど盛り上がっていないが、例えばニューヨーク州やイリノイ州では、2016年「ゼロ・エミッション証書(Zero Emission Credits)(ZEC)」制度を創設し、原発の運転継続を支援する措置を取った。 この制度により、原発はゼロ・エミッション電源としての対価を電気料金の中から受け取ることができる。行政が原子力の特殊性をカバーする政策的措置、すなわち低炭素電源の価値を経済的に評価する制度を導入したことで、原子力の市場競争力を高め、運転を継続することができた。 気候変動は先送りできない問題であり、新型コロナウイルスからの経済復興と同時並行で取り組まなければならない。そのためには、今こそ原子力の価値を評価し、向き合うことが求められる。日本にとっての原子力の位置づけを明確にしてこそ、日本のグリーン・リカバリーの長期的なビジョンが描かれよう』、「ニューヨーク州やイリノイ州」の「ゼロ・エミッション証書制度を創設」は、逆に言えば、そこまでしないと原発のラニングコストが競争力を失ったことを意味するともいえる。私はそこまでする必要はなく、脱原発の方向を目指すべきと考える。
タグ:福島県が潔白を主張するのであれば、東電とのつながりが深いうえに疑惑を持たれているエネー課とは別の独立した組織による徹底した真相究明が必要だ API地経学ブリーフィング 原発問題 三菱重工業で原発の設計技術者を務めた藤原節男氏 (その14)(「福島第一原発3号機は核爆発だった」原発設計技術者が東電 政府を批判、福島県の情報漏洩疑惑、「お手盛り調査」の実態 疑い持たれた部署が調査や文案作成を担当、日本の原発の「是非」今こそ議論の必要がある訳 グリーン・リカバリーのビジョンを描くために) AERAdot 「「福島第一原発3号機は核爆発だった」原発設計技術者が東電、政府を批判」 最初に3号機上部で水素爆発が発生し、それから使用済み燃料プールで核爆発が起きたという 爆発の規模が原爆の1万分の1から10万分の1程度と小さかった 脱原発の方向を目指すべき 3号機はプルトニウムを再処理で取り出した(プルトニウムとウランを混ぜた)MOX燃料を使う原子炉だったことも、核爆発を起こしやすくした 核爆発説への異論も少なくない 「3号機で核爆発が起きた」と主張する原発技術者は何人かいる。そのなかで最も詳しく解説しているのが 10年の局面を迎える今こそ 「日本の原発の「是非」今こそ議論の必要がある訳 グリーン・リカバリーのビジョンを描くために」 障壁となる原子力 利害関係のない部署が調査すべき Jヴィレッジは、敷地内の高濃度の放射性物質を含む廃棄物を保管している事実を公表しないまま、宿泊客を誘致し、青少年によるサッカーの合宿や練習試合も行われていた。さらに、東京オリンピックの聖火リレーのスタート地点にも予定されていた 飛散した破損燃料や爆発時の環境中性子線の数値など核爆発の証拠となるデータを明らかにすべきです 敷地内で高濃度廃棄物を極秘保管 犯罪行為 おしどりマコ氏の氏名を、東京電力が社内文書に記録していた 県の個人情報提供を物語る東電社内記録 東洋経済オンライン そこまでしないと原発のラニングコストが競争力を失ったことを意味 「事実関係が確認されなかった」という知事名の文案を、疑いを持たれていた同課の職員自らが作成していた」 福島県は、情報公開請求者の氏名を第三者である東電に伝えていた事実は確認されなかったとする回答文書をまとめ、おしどり氏宛てに送付 「福島県の情報漏洩疑惑、「お手盛り調査」の実態 疑い持たれた部署が調査や文案作成を担当」 グリーン・リカバリーは、欧州を中心に世界経済の潮流となりつつある 今後のビジョン コロナ後の経済回復は、「グリーン・リカバリー」 原発への国民の評価は低迷が続く 「ゼロ・エミッション証書制度を創設」 ニューヨーク州やイリノイ州
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政府財政問題(その3)(MMT理論の致命的破綻と日本がMMT理論にもっともふさわしくない理由、「MMTの導入」で高齢者の暮らしは「インフレ税」破綻する=岩村充×小林慶一郎【週刊エコノミストOnline】) [経済政策]

政府財政問題については、昨年4月24日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(小幡 績MMT理論の致命的破綻と日本がMMT理論にもっともふさわしくない理由、「MMTの導入」で高齢者の暮らしは「インフレ税」破綻する=岩村充×小林慶一郎【週刊エコノミストOnline】)である。

先ずは、昨年7月25日付けNewsweek日本版が掲載した財務省出身で慶応義塾大学準教授の小幡 績氏による「MMT理論の致命的破綻と日本がMMT理論にもっともふさわしくない理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2019/07/mmt-1_1.php
・『<MMT理論が肯定的に評価される日本だが、インフレの起きない日本経済との相性はむしろ最悪だ>  世界的に、いまだにMMT理論が話題になっているのは日本だけだ。そしてそれ以上に日本が特殊なのは、MMT理論に対して一定の肯定的な評価があることである。 日本がMMTにもっとも相応しくない経済である(社会、政治的状況ではなく、「経済」が、である)にも関わらず、このような現象が起きているのは極めて危険だ。 サマーズもスティグリッツも日本に関心がないからこの問題に気づいていないし、ケルトン(注)は理解力不足でMMT理論の本質を理解していないから、問題を正反対に捉えている。 つまり、日本人たちをせせら笑うように、インフレが20年間も起こせなかった日本で、インフレの心配ばかりの質問を受けるとは、と皮肉った。 ケルトンは何もわかっていない。インフレが起きない国でこそ、MMT理論はもっとも危険なのだ』、「MMT理論」の「主唱者」を「理解力不足でMMT理論の本質を理解していない」とは、ずいぶん思い切って批判したものだ。
(注)ケルトン:ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授で、MMT(現代貨幣)理論の主唱者(Wikipedia)。
・『財政赤字を気にしない日本人  インフレが起こる国であれば、MMT理論(というよりは現在の論者が提唱する財政支出の大規模な拡大)は問題ない。支出が多すぎれば、インフレをもたらし、すぐに財政支出の拡大が経済に悪影響をもたらすことが認知され、財政支出が極端に過度になる前に止まる。 しかし、インフレが起きにくいとしたらどうだろう。 財政支出は無限に膨らみかねない。だから、日本でMMTは危険なのだ。 日本ではインフレが起きにくい。だから、財政支出が課題となっても、現在世代の人々はそれが経済を傷めていることに気づかない。 これがMMT理論の最大の問題点である。 MMTの問題点はインフレになることではない。インフレにならない場合に起こる、過剰な財政支出による資源の浪費(経済学的に言えば、非効率な配分)なのだ。 インフレが起きるのはむしろ歓迎だ。ハイパーインフレにならないほうがいいが、まったくインフレが起きず、永遠に無駄遣いが続き、日本経済がゼロになってしまうよりは、早くハイパーインフレで財政支出ができなくなり、政府の倒産(デフォルト)という形で、日本経済が完全になくなる前に再スタートが切れたほうがよい。企業が最後まで無理をして、破産するよりも生きているうちに倒産して、新しい経営者の下で再生を図ったほうが良いのと同じである。 したがって、インフレになる、という批判はMMTに対してまったく的外れであり、むしろ彼らの主張を正当化するものであるから、サマーズやステグリッツも、日本の批判者もケルトンをやっつけ切れないのである。ましてやハイパーインフレでも実は意味がある可能性があるから、まったく理論的にも彼らは破綻しない。 しかし、彼ら、つまりMMTを主張する人々が気づいていないのは、インフレになるかどうかではなく、その財政支出が効率的なものであるかどうか、財政支出をするべきかどうか、というところが最大のポイントだということだ。しかも、其の点においてMMT理論は理論的に破綻していることに気づいていない。 ケルトンは、日本ではインフレが起きないのだから心配することはない、と言っていることから、彼女こそがMMT理論をもっとも理解していないことは明らかだが、MMT理論自体はそれほどおかしくない、と言っている人々も間違っており、MMT理論には根本的な欠陥がある。 すなわち、MMT理論から出てくる財政支出を拡大すべきだ、という主張は、その支出が有効なものか立証されていない。MMT理論は正しくないという指摘に対し、それは財政支出が効率的になればよいと言って反論するだろうが、実は、MMT理論自体が、財政支出が効率的な水準になることを阻害するどころか、そのメカニズムを破壊するところから理論をはじめているところに致命的な欠陥がある。すなわち、国債は中央銀行が引き受けるメカニズムになっており、国債市場が機能しないようになっているところである。 この金利が上昇することを無視するか、上昇しないという前提では、現在の支出が過度に膨らみ、将来の資源を奪うことになるのである。つまり、異常な低金利で無駄な投資が行われ、資本が残っていれば、将来のもっと有効な技術に投資され、もっと大きなリターンが得られた投資が行われる機会を奪うのである』、「インフレになる、という批判はMMTに対してまったく的外れであり、むしろ彼らの主張を正当化するものであるから、サマーズやステグリッツも、日本の批判者もケルトンをやっつけ切れないのである」、「サマーズやステグリッツ」も論拠が間違っていると正面から批判するとは、いかにも「小幡」氏らしい。「国債は中央銀行が引き受けるメカニズムになっており、国債市場が機能しないようになっているところである。 この金利が上昇することを無視するか、上昇しないという前提では、現在の支出が過度に膨らみ、将来の資源を奪うことになる」、これは分かり易い批判だ。
・『ポピュリストが支持する訳  異常な低金利で財政支出を過度にすることは、現在の民間投資を阻害するクラウディングアウトを起こすのであるが、さらに深刻な問題は、異時点間の資源配分を阻害し、将来の投資機会を奪うことにあるのである。金利とは現在と将来の資本の相対価格であるから、この金利市場の価格付け機能を破壊、あるいは無視すれば、そうなることは必然であり、無駄な支出が現在過度に行われることになるのである。 もっと理論的に厳密に言えば、国債金利を内生化していないために、貨幣量は内生化されていると主張しているが、金利が内生化されれば、内生化された貨幣量はもっと低い水準に決まるはずである、ということになる。 したがって、MMT理論は金利市場を無視、あるいは意図的に消去し、あるいは破壊することによって、理論的にさえ破綻しているのである。 しかし、だからこそ、金利市場を破壊して、将来の投資機会や資本を現在使ってしまおうとするポピュリズムエコノミストに支持されるのである』、「さらに深刻な問題は、異時点間の資源配分を阻害し、将来の投資機会を奪うことにあるのである。金利とは現在と将来の資本の相対価格であるから、この金利市場の価格付け機能を破壊、あるいは無視すれば、そうなることは必然であり、無駄な支出が現在過度に行われることになる」、その通りなのだろう。

次に、6月17日付けエコノミストOnline「「MMTの導入」で高齢者の暮らしは「インフレ税」破綻する=岩村充×小林慶一郎【週刊エコノミストOnline】を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190625/se1/00m/020/060000c
・『「現代貨幣理論(MMT)」に対しては批判も巻き起こる。既存の理論との相違点はどこにあるのか。金融論を専門に物価と財政との関係を論じる岩村充・早稲田大学大学院経営管理研究科教授と、マクロ経済学が専門で財政の持続可能性を論じてきた小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹が意見を交わした。(司会=藤枝克治・本誌編集長/構成=黒崎亜弓・ジャーナリスト)(Qは司会者の質問)』、小幡氏とは違って、より詳しくみていくようだ。
・『成長率と金利、逆転の謎  Q:日本でMMTは「インフレが起きていなければ、財政赤字は問題ない」とする点が注目されている。国の借金が膨らんでも本当に問題ないのか。 小林 日本の場合、国と地方を合わせた公的債務残高の対国内総生産(GDP)比率は約240%だが、どの水準に達すると危機が起こるのか、その上限は理論的に分かっていない。 岩村 経験的には、インフレによらず収束できたのは、19世紀のイギリスにおける同比250%が最大値ではないか。100年かけて4分の1に減らした。ただし、途中でインドを併合したことで分母のGDPが増えている。財政再建の努力だけではなく、「銃口で生み出したのだ」とも言える。 小林 債務残高比率がどのように推移するのかは、名目金利と名目経済成長率との関係によって変わる。分子の債務残高は名目金利で増え、分母のGDPは名目成長率で増えるからだ。 理論的には、名目金利が名目経済成長率を上回る。定常状態で名目金利は、名目経済成長率と時間選好率、すなわち将来の消費より現在の消費を好む程度との和になるからだ。その結果、プライマリーバランス(借り入れ以外の歳入から債務返済以外の歳出を差し引いた収支)が均衡していても、債務残高がGDPよりも拡大するので、債務残高比率が高まっていく。 ただ、歴史的には名目成長率と名目金利の相対関係は時によって入れ替わっている。英米の過去200年を見ても、名目金利が名目成長率よりも低い状態が長く続いている時があった。金利が成長率より低く、プライマリーバランスが均衡していれば、債務残高比率は下がっていく。 金利が成長率よりも低い状態がなぜ続くのか、その影響はどうか、について国際通貨基金(IMF)でも研究を開始するという。日本も低金利国の一つに挙げられている』、「金利が成長率よりも低い状態がなぜ続くのか、その影響はどうか」について、「IMF」が「研究を開始」、その成果が楽しみだ。
・『日本の現状は「バブル」  Q:日本では日銀が国債を買い入れることで、金利を低く抑えているのではないか。MMTの提唱者であるニューヨーク州立大のケルトン教授は、日本は膨大な債務を抱えながら低金利でインフレが起きていないことから「MMTの有益な実例だ」と述べている。 小林 意図してやっているわけではないだろうが、結果としては低金利のもとで政府債務が膨らみ続けている。私は、何らかのバブルによって、謎の状態が起きているのだと思う。 日銀が国債を買い続けたとしても、それを上回って民間の投資家が売れば金利は上がる(債券価格は下がる)はずだ。日銀が全部買って市場から国債がなくなったとすれば、今度は貨幣の価値が下がる、つまり物価水準が上がるはずだが、そういうことも起きていない。 それは人々が国債の価値を高く思い込んでいるか、あるいは将来的に大幅な増税や歳出削減が行われると考えているか、いずれかでしか説明がつかない。 合理的ではないバブル的な予想が広く共有されることは起こりうる。国債のバブルか、財政行動についてのバブルか。いずれにしてもバブルだから、崩壊する可能性を抱え続けている』、「国債のバブルか、財政行動についてのバブルか。いずれにしてもバブルだから、崩壊する可能性を抱え続けている」、その通りなのだろう。
・『低金利で富は株主へ  岩村 経済が成長している以上、その果実は誰かのものにはなっているはずだ。成長率が多少ともプラスであるにもかかわらず、借入金利がゼロあるいはマイナスだとしたら、それは株式投資を有利なものにしているはずだ。 理論的に株価収益率は、金利に市場リスクを上乗せした水準になるが、日本で株主資本利益率(ROE)の目標に掲げられている8%は高すぎるのではないか。総資産利益率(ROA)が上がる以上にROEを上げようとすることは、負債への配当が均衡よりも低くなるという予想を作り出し、金利を押し下げることにつながる。 株式の高収益率の背後にある低金利が、一方で財政を維持可能なものにしているとしたら皮肉な話だ。今の政策は預金者や年金生活者から株主への富の移転を起こそうとしているという面があるわけだ。ちなみに、株主たちの半数近くは外国人である。どうやら安倍政権と黒田日銀は外国人に優しい政策がお好きなようだ』、「今の政策は預金者や年金生活者から株主への富の移転を起こそうとしているという面がある」、「株主たちの半数近くは外国人である。どうやら安倍政権と黒田日銀は外国人に優しい政策がお好きなようだ」、なるほど。
・『倒産しない政府の行く末  Q:MMTでは債務残高の問題の前に、財政破綻の可能性自体を否定している。 岩村 MMTは「自国通貨建てで資金調達している国は財政破綻しない」というが、これは当たり前のことだ。「自己資本比率100%の会社は絶対に倒産しない」ことと本質的に同じだ。 MMTが貨幣を「政府が納税の際に受け取ってくれるから貨幣である」と位置づけ、「政府と中央銀行の財務を区別することに意味はない」と言うのもその通りだ。 そこで、政府と中央銀行を連結した統合政府のバランスシート(貸借対照表)を見ると、自国通貨建て債務である貨幣や市中発行の国債は、会社の株式にあたる。非自国通貨建て債務は会社の外部借り入れと同等だ。 会社が「借金さえしなければつぶれない」と言ってどんどん株券を刷れば、その分、お金が入ってきてモノが買える。だが、会社の事業活動の中身が変わらなければ、株価は下がり、刷った株券で買えるモノの量は減っていく。 最初は増資した分、お金が入ってくるのでうまくいくような気がするが、それは既存の株主から分け与えられた富を無償で得たかのように錯覚しているだけだ。最後に株価がゼロになってしまえば、会社は倒産しないが、何も活動できなくなる。 統合政府でも同じことだ。株券ならぬ貨幣をどんどん発行しても、世の人々が長期的な問題に気付かなければ、貨幣と実物財との交換比率である物価はしばらく動くまい。だが、いつかは気付かれ物価も動き出すだろう。株価が下落するのと同様に、貨幣価値が下がっていくことになる。貨幣価値がゼロになっても、MMTが言う通り政府は確かに破綻しないが、何も仕事をできなくなり、その存在自体が無意味になるだろう』、「いつかは気付かれ物価も動き出すだろう・・・貨幣価値がゼロになっても、MMTが言う通り政府は確かに破綻しないが、何も仕事をできなくなり、その存在自体が無意味になるだろう」、この際の「物価」の動きは政策でのコントロールは出来ないだろう。
・『資産と債務は相殺できない  小林 関連した論点を挙げると、政府が持つ資産と比較して、債務は「問題ない」とも言われる。つまり、政府は借金もあるが、道路やダムといった実物資産を多く持っているから、差し引きの債務は実は小さいという議論だ。 IMFが昨年、財政報告書で各国の債務と資産を示している。これによると、確かに日本は国と地方が持つ資産と債務がほぼ一致している。ただし、政府の持つ実物資産の価値とは、将来にわたって生み出す行政サービスの現在価値であって、借金を返すために資産を売ろうとすれば、この価格では売れない。債務の返済可能性を考えるうえでは不適切な評価額だ。IMFもそう注記している。 岩村 行政サービスに必要な資産を売ってしまったら、政府が政府でなくなってしまう。 債務が過大かどうかは、将来にわたって生み出すと予想されるキャッシュフロー(収入と支出の差)とのバランスを実質的に見て判断されるものだ。政府と中央銀行を連結した統合政府において、将来にかけてのキャッシュフローに対する予想と債務が均衡するように、現在から将来にかけての物価水準が決まる。これが「物価水準の財政理論(FTPL)」の考え方だ(図)。 重要なのは、貨幣量で示された名目値ではなく、実質的な価値でバランスを見ることだ。実質価値で見れば、成長経済と非成長経済では、何%の債務が許容されるのかという数字は当然異なる。 実質的な経済成長を左右するのは人口動態と技術革新が主だが、たとえば今、政府がお金を借りて保育園を作り、経済規模が半分になった時点で返そうとすれば、経済に占める相対的な価値は2倍になってしまう。そこまで増税するというのは無理な話だろう。成長率を大きく引き上げることになるような政府の活動分野をMMT論者たちが「発見」したというのなら話は別だが、そんな分野があるのなら通常の財政政策で対応した方がよい。 Q:MMTではインフレが一定水準を超えたら、政府は支出を減らしたり、増税したりして貨幣を減らせばいいという。 小林 懸念されるのは、急激な予想の変化だ。今の物価水準は国債あるいは財政行動へのバブル的予想によって保たれているのだから、予想が急激に変われば、皆が早く貨幣を手放そうとする。景気の過熱がなくても、物価や金利が急に上がることは当然起こりうる。その時になって財政緊縮を行っても手遅れだ。消費税を50%にするなど、よほど極端な対策を打たなければ、国民や市場の予想の変化を止めることはできなくなってしまうだろう。 急に予想が変化した時に、物価をソフトランディングさせる方法は分かっていない。MMT論者はインフレを抑えることができると言うだけであって、どうすればコントロールできるのか具体的な方法は示していない』、「急に予想が変化した時に、物価をソフトランディングさせる方法は分かっていない」、重要なMMT理論の欠陥だ。
・『広がる金融財政拡張論  岩村 インフレはコントロールはできないし、予想も外れるものだから、行きすぎた時には戻ることのできるような仕組みを考えた上で政策を行った方がいい。 MMT論者は、貨幣を政府の債務だと認識しているのに、インフレの可能性について聞かれると、「貨幣を吸収すれば物価は調整できる」と言い逃れる。合理的期待論に論破された素朴派ケインジアン財政政策論と、貨幣量の操作だけで物価を動かすことができないことを証明してくれたリフレ論との、無原則なゴッタ煮というほかはない。 小林 MMTで「需要不足の時にインフレの心配はいらない」と主張している点は、日本は拡張的な金融財政政策をすべきだと主張するケインジアンの経済学者らとも共通する。ただ、彼らは財政再建は需要不足が解消された後で行えばいいとして、長期的に財政を均衡させること自体の必要性は認めている。 岩村 MMTは財政を「打ち出の小づち」のように言うが、結局のところ、インフレによって債務は軽減されるというインフレ税論なのだと思う。 彼らは、すぐにインフレが起こるわけではないと言っているようだが、それはインフレ税の負担を後世代に転嫁したいと言うのと同じだ』、「MMT」論者は、「すぐにインフレが起こるわけではないと言っているようだが、それはインフレ税の負担を後世代に転嫁したいと言うのと同じだ」、重要な欠陥の1つだ。
・『「インフレ税」で苦しむ人  小林 インフレ税は、債権者から政府など債務者への大規模な所得移転だ。債権者とは、主に金融資産を取り崩して生活する高齢者で、彼らの生活を破綻させる。社会の厚生と公平さの観点から大きな問題だ。 インフレ税に苦しむ将来の高齢者とは我々自身のことかもしれないし、目の前にいる私の子供かもしれない。そういう想像力と覚悟を持った議論になっているのか、ということが問題なのだ。 (本誌初出 対談 岩村充×小林慶一郎 「国の借金は本当に問題ないのか」2019年6月25日)』、「インフレ税に苦しむ将来の高齢者とは我々自身のことかもしれないし、目の前にいる私の子供かもしれない。そういう想像力と覚悟を持った議論になっているのか、ということが問題なのだ」、その通りなのだろう。「小幡」氏の批判とは違うが、相違を同一平面に分割することは、残念ながら小生の能力を超えているようだ。
タグ:インフレ税に苦しむ将来の高齢者とは我々自身のことかもしれないし、目の前にいる私の子供かもしれない。そういう想像力と覚悟を持った議論になっているのか、ということが問題なのだ 「インフレ税」で苦しむ人 すぐにインフレが起こるわけではないと言っているようだが、それはインフレ税の負担を後世代に転嫁したいと言うのと同じだ 広がる金融財政拡張論 急に予想が変化した時に、物価をソフトランディングさせる方法は分かっていない 資産と債務は相殺できない 倒産しない政府の行く末 株主たちの半数近くは外国人である。どうやら安倍政権と黒田日銀は外国人に優しい政策がお好きなようだ 今の政策は預金者や年金生活者から株主への富の移転を起こそうとしているという面がある 低金利で富は株主へ 国債のバブルか、財政行動についてのバブルか。いずれにしてもバブルだから、崩壊する可能性を抱え続けている 日本の現状は「バブル」 金利が成長率よりも低い状態がなぜ続くのか、その影響はどうか」について、「IMF」が「研究を開始 成長率と金利、逆転の謎 小林慶一郎 岩村充 「「MMTの導入」で高齢者の暮らしは「インフレ税」破綻する=岩村充×小林慶一郎【週刊エコノミストOnline】 エコノミストOnline さらに深刻な問題は、異時点間の資源配分を阻害し、将来の投資機会を奪うことにあるのである。金利とは現在と将来の資本の相対価格であるから、この金利市場の価格付け機能を破壊、あるいは無視すれば、そうなることは必然であり、無駄な支出が現在過度に行われることになる ポピュリストが支持する訳 国債は中央銀行が引き受けるメカニズムになっており、国債市場が機能しないようになっているところである。 この金利が上昇することを無視するか、上昇しないという前提では、現在の支出が過度に膨らみ、将来の資源を奪うことになる インフレになる、という批判はMMTに対してまったく的外れであり、むしろ彼らの主張を正当化するものであるから、サマーズやステグリッツも、日本の批判者もケルトンをやっつけ切れないのである 財政赤字を気にしない日本人 MMT理論が肯定的に評価される日本だが、インフレの起きない日本経済との相性はむしろ最悪だ 「MMT理論の致命的破綻と日本がMMT理論にもっともふさわしくない理由」 小幡 績 Newsweek日本版 (その3)(MMT理論の致命的破綻と日本がMMT理論にもっともふさわしくない理由、「MMTの導入」で高齢者の暮らしは「インフレ税」破綻する=岩村充×小林慶一郎【週刊エコノミストOnline】) 政府財政問題
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NHK問題(その3)(NHK新会長に安倍人脈の前田晃伸みずほFG元会長が抜擢された裏! 官邸が前任の上田会長を「政権批判番組へのグリップ弱い」と首すげ替え、《議事録全文入手》森下NHK経営委員長に放送法違反 国会虚偽答弁の疑い、「NHKの黒人の描き方」がまるで話にならない訳 「人種描写がステレオタイプ」以前の問題、荒井一博のブログ:NHKの受信料制度はどうあるべきか) [メディア]

NHK問題については、昨年10月31日に取上げた。今日は、(その3)(NHK新会長に安倍人脈の前田晃伸みずほFG元会長が抜擢された裏! 官邸が前任の上田会長を「政権批判番組へのグリップ弱い」と首すげ替え、《議事録全文入手》森下NHK経営委員長に放送法違反 国会虚偽答弁の疑い、「NHKの黒人の描き方」がまるで話にならない訳 「人種描写がステレオタイプ」以前の問題、荒井一博のブログ:NHKの受信料制度はどうあるべきか)である。

先ずは、昨年12月13日付けLITERA「NHK新会長に安倍人脈の前田晃伸みずほFG元会長が抜擢された裏! 官邸が前任の上田会長を「政権批判番組へのグリップ弱い」と首すげ替え」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2019/12/post-5142.html
・『NHKが再び籾井時代のような“安倍さまのための放送局”に戻ってしまうのか──。今月9日、NHK経営委員会は上田良一会長の退任と、新たに元みずほフィナンシャルグループ会長である前田晃伸氏を後任とする人事を決定したからだ。 この前田氏、「安倍首相の後見人」とも呼ばれるJR東海の葛西敬之名誉会長が主催する、安倍首相を後押しする経済人による「四季の会」のメンバーだったのだ。 安倍首相がNHKに介入をはじめたのは第一次政権時だが、安倍首相はこのとき経営委員会委員長として「四季の会」メンバーである古森重隆・富士フイルムホールディングス社長(当時)を送り込んでいる。じつはこの古森氏の後任人事で名前が出たのが前田氏だったのだが、当時の麻生政権はねじれ国会で野党がこの人事案を利害関係があるとして認めず、経営委員長の座を逃した過去がある。つまり、前田新会長は「正統派」の安倍人脈の人物なのである。 これはあきらかに官邸の意向が働いているとしか考えられない。実際、毎日新聞10日付記事でも、「首相官邸は『上田会長は野党に気を使いすぎだし、政権批判の番組へのグリップが弱い』と不満を持っていた」と複数の関係者が証言。〈自民党幹部は「官邸主導の人事」と話し、「官邸がコントロールしやすい人材をおいたのだろう」と話す〉と報じている。 上田氏が籾井勝人氏の後任としてNHK会長に就任したのは、2017年1月。ご存知のとおり籾井体制下では『クローズアップ現代』のキャスターを23年間にわたって務めた国谷裕子氏を降板させるなど露骨なまでに政権批判を封じ込める動きが加速したが、上田会長就任後は、政治部から横槍を入れられながらも森友・加計問題でスクープを飛ばしたり、最近も「桜を見る会」問題をめぐる報道でホテル側への独自取材をしたり、下村博文・元文科相が英語民間試験をめぐって東京大学の五神真総長らに圧力をかけていた音声を放送するなど、わずかながらも風穴を開けようとする現場の奮闘も見られた。その背景には、上田会長の「放送、ジャーナリズムが国家権力に追随するような形というのは、必ずしも望ましい形ではない」という姿勢があったとも言われてきた。 そして、この上田会長に安倍官邸は苛立ちを募らせていたわけだが、一方、上田会長はネット上でテレビ番組を同時に流す常時同時配信を可能にする放送法改正に漕ぎ着けるなど、その手腕を評価する声は大きかった。上田会長を1期で退任させる、その理由が必要だったなかで発覚したのが、かんぽ生命保険をめぐる報道圧力問題だった。 簡単に振り返ると、『クローズアップ現代+』は昨年4月24日の放送でかんぽ生命の不正販売の実態を報じ、さらにネット動画で情報提供を関係者に呼びかけるなど続編の制作に取り組んでいたが、その動画に対して日本郵政側が上田会長宛てで削除を要請。その後、番組の幹部が日本郵政側に「会長は番組制作に関与しない」などと説明をすると、郵政側は「放送法で番組制作・編集の最終責任者は会長であることは明らかで、NHKでガバナンスが全く利いていないことの表れ」と主張し、説明を求める文書を上田会長に送付。さらに、日本郵政側から「ガバナンス体制の検証」などを求める文書を受け取った経営委員会が、これを汲んで上田会長に「厳重注意」をおこない、そのことを郵政側に報告。上田会長も事実上の謝罪文書を郵政側に送った。 結果として上田会長が謝罪をおこなったことは問題だと言わざるを得ないが、しかし重要なのは、正当な取材活動・報道に対して「ガバナンスの問題」に話をすり替えて圧力をかけようとする郵政側と同調し、上田会長に恫喝をかけた経営委員会の姿勢だ。放送法32条では経営委員会が個別の番組に介入することを禁じており、この経営委員会の言動は放送法違反にあたる可能性が非常に高いものだ』、どうみても「上田会長」には何の問題もない筈なのに、「郵政側と同調し、上田会長に恫喝をかけた経営委員会の姿勢だ・・・この経営委員会の言動は放送法違反にあたる可能性が非常に高いものだ」、「上田会長」は退任させられ、「経営委員会」は不問というのは、安部政権の意向を反映したものだろう。「前田氏」はみずほFG時代はさんざんに叩かれたので過去の人と思っていたが、「安倍首相を後押しする経済人による「四季の会」のメンバー」だったことが幸いして復活できたようだ。
・『会長交代の前から始まっていたNHK締め付け復活、国谷裕子を追放うした板野裕爾が専務理事に復帰  だが、前田新会長を発表したNHK経営委員会の石原進委員長(JR九州相談役)の会見では、上田会長について「評価が高かった」と言いながらも、退任にいたった原因についてこう語ったのだ。 「やはりガバナンスの問題とか、経費コストの見直しとか。問題があるんじゃないかという意見もあった」「(ガバナンスの問題には)かんぽ問題も当然含まれる。私は大変な問題だったと思っている」 「大変な問題だった」って、大変な問題を起こしたのは石原委員長を筆頭とする経営委員会のほうなのだが、このようにすべての責任を上田会長に転嫁させ、官邸の意向を汲んだ新たな会長を選出することを成功させたのである。ちなみに石原氏は3期9年という異例の長期間にわたって経営委員を務めたが、10日に委員長を退任。これは任期満了にともなうもので、かんぽ問題は関係していないとされている。 経営委員会の番組介入という深刻な問題は不問に付され、安倍官邸が気に食わぬ会長の首をすげ替え、安倍首相に近い人物を新会長に据える──。この露骨な人事を見ると、NHKが籾井体制時のような萎縮しきった報道に戻ってしまうのではないかと危惧を抱かざるを得ないだろう。 実際、安倍官邸によるNHK監視体制の動きは強まっている。今年4月には板野裕爾・NHKエンタープライズ社長を専務理事に復帰させたが、板野氏は『クローズアップ現代』の国谷キャスターを降板させた張本人と言われる人物。2016年に刊行された『安倍政治と言論統制』(金曜日)では、板野氏の背後に官邸のある人物の存在があると指摘し、NHK幹部職員は〈板野のカウンターパートは杉田和博官房副長官〉〈ダイレクトに官邸からの指示が板野を通じて伝えられるようになっていった〉と証言をおこなっている。 さらに前述したように、報道現場では社会部が奮闘する一方で、報道局上層部や政治部が横槍を入れてきた。森友問題では近畿財務局が森友学園側と国有地の購入価格の上限を聞き出していたというスクープに対し、政治部出身で安倍官邸とも強いパイプを持つとされる小池英夫報道局長が「将来はないと思え」と恫喝したことを元NHK記者の相澤冬樹氏が告発。加計問題でも文科省の内部文書をスクープできたというのに、肝心の「官邸の最高レベルが言っている」などの部分を黒塗りにしてストレートニュース内で消化するという“忖度”報道をおこなったが、これも小池報道局長の指示によるものだと言われている。その一方、何かにつけて政治部の岩田明子記者を報道番組に投入し、安倍首相の礼賛を解説として垂れ流しているのだ。 そして、ここにきての安倍人脈の新会長選出──。「安倍4選」が取り沙汰されるなか、今後さらに官邸は直接的にNHKの報道に介入し、現場の萎縮はさらに進んでゆくことになるのは間違いないだろう』、「板野裕爾・・・を専務理事に復帰させたが・・・板野のカウンターパートは杉田和博官房副長官〉〈ダイレクトに官邸からの指示が板野を通じて伝えられるようになっていった」、安部政権による支配がますます盤石になったようだ。

次に、本年8月5日付け文春オンライン「《議事録全文入手》森下NHK経営委員長に放送法違反、国会虚偽答弁の疑い」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/39521
・『NHK経営委員会の森下俊三委員長(75)が、経営委員会でNHKの番組制作に干渉する放送法違反が疑われる発言をし、また、そのことを今年3月に国会で質問された際に虚偽の答弁をした疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。森下氏の発言を記録した経営委員会の議事録を入手した。 「週刊文春」が入手した議事録は、「経営委員会(委員のみの会)平成30年10月23日」と題された文書。この議事録には、当日の発言が書き起こされており、森下氏は「この番組の取材も含めて、要するに、僕は今回、極めてつくり方に問題があると思う」などと述べていた。森下氏は、この会で番組編集に干渉する発言を繰り返していたことになる。 この議事録を巡っては、今年5月、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が、“速やかな全面開示”を求め、前田晃伸NHK会長も6月の会見で開示を促しているが、森下氏が公開を拒んでいる。 森下氏が槍玉にあげたのは、2018年4月24日放送の『クローズアップ現代+』。かんぽ生命が保険商品を、顧客に虚偽の説明をして契約していたことをいち早くスクープした番組だ。だが、当時はまだ不正が明白になっておらず、同年7月、続編のために情報を募る動画を番組側がSNSに上げると、日本郵政グループは猛反発。上田良一NHK会長(当時)に抗議文書を送った。 10月23日、経営委員会のうち、NHK執行部を外し、経営委員のみで行う通称「のみの会」でこの問題が話し合われた。今回、小誌が関係者から入手したのはこの日のやり取りを全て書き起こした議事録だ。A4用紙で35ページにわたり、「のみの会」に呼び出されて参加した上田会長と経営委員とのやり取りが分かる。 森下氏はこの席で『クローズアップ現代+』について次のような発言をしている。 「今回の番組の取材も含めて、極めて稚拙」「現場を取材していないわけです。これ、オープン・ジャーナリズムと言っているんですけれど、インターネットを使う情報というのは極めて偏っているわけですよ」「この番組の取材も含めて、要するに、僕は今回、極めてつくり方に問題があると思う」 だが、実際には、番組はSNSでの情報募集にとどまらず、複数の情報提供者に直接話を聞き、裏取りもしていた。事実誤認の批判である上に、番組編集に干渉する森下氏の発言は放送法に抵触する恐れがある』、「NHK経営委員会の森下俊三委員長」は、元NTT西日本社長だが、「経営委員会(委員のみの会)」の「議事録」の「公開を拒んでいる」とは飛んでもないことだ。「放送法」もよく理解せずに、雑感的に番組を批判するとは、お粗末極まれりだ。
・『「今後の番組の具体的な制作手法などを指示した事実はございません」  この件に関して、森下氏は今年3月17日、衆議院総務委員会に参考人招致されたが、「番組に関する意見や感想も出ましたが、今後の番組の具体的な制作手法などを指示した事実はございません」と明言した。だが議事録に記されている森下氏の発言は、インターネットによる取材を危惧し、現場取材を強く要請するなど「制作手法の指示」に等しい発言が多く、虚偽答弁の疑いがある。 立教大学の砂川浩慶教授(メディア論・放送制度論)はこう指摘する。 「この議事録の通りなら、森下氏の発言は明らかに番組への口出しを禁じる放送法第32条第2項違反です。また、国会での答弁も虚偽答弁にあたります」 経営委員会を通じてこれらの疑惑について森下氏に尋ねると、次のように回答した。 「番組に関する意見や感想も出ましたが、番組の編集の自由を損なう事実はございません」 NHKの予算やガバナンスを監督し、会長の任免権を持つ経営委員会のトップに、放送法違反や国会虚偽答弁の疑いが浮上したことで、議事録の全面開示や森下氏の説明を求める声が高まりそうだ。 8月6日(木)発売の「週刊文春」では、森下氏が語った番組批判発言の詳細、経営委員会が議事録を開示しない裏側、森下氏と元総務事務次官である日本郵政の鈴木康雄上級副社長(当時)との関係などについて詳報する』、安部政権が野党の「国会再開」を拒否している以上、追及の場はないが、秋の国会では是非、追及してほしいところだ。

第三に、6月13日付け東洋経済オンラインが掲載した L.A.在住映画ジャーナリストの猿渡 由紀氏による「「NHKの黒人の描き方」がまるで話にならない訳 「人種描写がステレオタイプ」以前の問題」を紹介しよう。
・『NHKの国際ニュース番組「これでわかった!世界のいま」の公式Twitterに掲載された動画が物議を醸している。 「アメリカで黒人が今置かれている状況」について解説するアニメ動画で、警官による黒人男性暴行死事件への抗議デモの原因は「白人と黒人間の格差」にあるというもの。だが、その内容と実態がかけ離れたものであったため多数の批判を招き、NHKは6月9日に動画を削除、謝罪することになった。 このニュースは、早速アメリカでも報道されてしまった。報道の多くは、NHKはすでにこの動画を削除したと述べているが、コメント欄に「まだYouTubeで見られますよ」との投稿があったため、探してみると、そのとおり、まだアップされている。実際見てみると、とんでもない内容だった。すべてにおいてダメだらけで、何から指摘していいか混乱するほどである』、どういうことだろう。
・『「問題の動画」はどういう内容だったか  第1にダメなのは、これが世界のニュースを解説するために作られているにもかかわらず、最低限語らなければいけない部分を語っていないことだ。そもそも、この抗議デモが起きた原因がまったく的外れである。 動画は、「俺たちが怒るその背景には、俺たち黒人と白人の貧富の格差があるんだ!」というセリフで始まる。そこにはご丁寧に「黒人と白人の貧富の格差」というテロップも出ている。 次に、そこへ来て新型コロナの流行があり、黒人がその影響を大きく受けたと説明される。そして「こんな怒りがあちこちで吹き出したんだ」と黒人男性が語る。1分20秒の動画はそれでおしまいだ。 もちろん、これらの要素は今回のことと関係はある。しかし、抗議デモの発端となったのは、ミネアポリスでジョージ・フロイドという名の黒人男性が白人警察によって殺された事件である。 フロイド氏は、警察に対してまったく抵抗していないにもかかわらず、日中、周囲の一般人やセキュリティビデオが見守る中で、無残にも殺されてしまったのだ。しかも、警察は当初、これらの警官を起訴することに躊躇を見せた。それもまた人々の不満を募らせたのである。 今回のように罪のない黒人が殺害される事件は、過去にも数多くあった。1992年のL.A.暴動の発端となったロドニー・キング事件もそのひとつ。当時、キング氏に暴力をふるった警官は無罪となっている。映画『フルートベール駅で』でも描かれた、2008年大晦日から新年にかけての夜、オークランドでオスカー・グラント氏が殺された事件でも同様だ。 殺害まではいかなくとも無実の黒人が根拠なく容疑をかけられることはしょっちゅうある。そのせいで黒人の多くはたとえ何も悪いことをしていなくても、警察による暴力を恐れている。 つまり、今回の暴動は、フロイド氏の件だけについて起こったものではない。警察が持つ人種偏見と、黒人の命を尊重しない態度について、「もうたくさん!堪忍袋の尾が切れた!」という思いによって起きたのである。 だから、この動画の中に「警察の暴力」という言葉が出てこないのは、NHKが事件のことをまったく把握していない証拠だ』、これだけの大事件を、おそらく外注に出してピント外れの「動画」に仕立て上げてしまうとは、番組のプロデューサーたちは何をしているのだろう。
・『立て続けに起きる「黒人差別」  フロイド氏の事件の直前、ほかの人種差別事件がふたつ起こったことにも触れておきたい。ひとつは、ジョージア州でジョギング中の黒人男性アマド・オーブリー氏が射殺された事件。これは2月に起きた事件だが、先月になって、白人によるヘイトクライムだったことがわかっている。 ふたつめは、ニューヨークのセントラルパークで、犬の散歩をしていた白人女性に黒人男性が「ルールどおりに犬は鎖に繋いでください」と注意したところ、白人女性が警察に電話をしたという事件。この一部始終はビデオ録画されており、白人女性は世間から大バッシングを受けたうえ、仕事もクビになった。 だから、このデモは、何をおいてもまず「黒人差別」についてのものなのだ。昔からある差別は、収入面や教育面、健康保険などの面でも格差を生み出し、それが新型コロナの感染率や失業率にもつながっている。 コロナや失業に対する不安も一緒に吹き出したというのは、もちろん正しい。これについて深く語るのであれば、もちろん差別についても語られるべきで、改革はそこからなされないといけない。しかし、1分20秒ではそこまではとてもたどりつけない。 と、まずはこの動画に肝心の部分が抜けていることを指摘したが、次に、なぜNHKの動画が差別を助長するのかに触れたい。 ひとつは、動画のバックグラウンドにある、略奪、暴動と思しき描写だ。抗議デモが始まってすぐの頃、ショップやレストランで略奪や放火といった犯罪行為が起きたのは事実である。筆者の近所もひどい被害に遭った。しかし、抗議デモに参加する人の大多数は略奪を行わず、平和的な抗議デモを行っている。一方で略奪を行う人々は、警察が手薄になるチャンスを狙ってやっているだけの便乗犯であり、抗議デモに参加はしていない。 ニューヨークのクオモ州知事にしろ、L.A.のガーセッティ市長にしろ、そこをしつこいほど強調している。これをごっちゃにしてしまうと、平等を主張する人たちが悪者になってしまうからだ。トランプの場合、恣意的にデモの参加者と便乗犯を混同しているが、NHKの動画は無意識のうちにそれをやっている』、「NHKの動画は無意識のうちに」「デモの参加者と便乗犯を混同している」、結果的に「差別を助長」しているとは、呆れ果てた。
・『NHKの「ステレオタイプ」な人種描写  そして、もうひとつは、言うまでもなく、ステレオタイプな人種描写だ。これは、いつだって、絶対にやってはいけないこと。それをわざわざ人種のステレオタイプを崩そうというこの時期にやるとは、無神経、無知にもほどがある。 しかも、なんと日本の公共放送であるNHKがやったというのだから、理解の範囲を超える。このアニメを制作するだけの時間があったのなら、何が正しいのか、知識のある人に聞くくらいの暇はあったのではないか。 そもそもアニメにする必要はなかったのだ。いや、アニメでやってはいけなかった。アニメだと、どうしても特徴を強調した描写になりがちだからだ。すでに山のようにあるはずのニュース映像を使ってやればいい。映像ならば嘘をつかないし、不必要な誇張はしなくてすむ。 最後にもうひとつ、今回の件について、アジア人である私たちの立ち位置を意識しておこうと提案したい。私たちに必要なのは、黒人の話を聞き、黒人を支持することだ。彼らをサポートする発言、態度は積極的にやってもいいが、それ以外の余計なコメントはしないほうがいい。 もちろん、人種差別は黒人だけに対してではない。アジア人も、コロナでずいぶん差別を受けた。だが、それはそれ。今は「Black Lives Matter」を語るときである。日本のメディアもとくに慎重な態度と配慮をもって、この問題に挑んでほしいと思う』、全く同感である。

第四に、一橋大学名誉教授の「荒井一博のブログ」が2019年8月以降に掲載した「NHKの受信料制度はどうあるべきか」を紹介しよう。
https://araikazuhiro.blogspot.com/2019/09/nhk.html
・『2019年8月23日に、以下のような文章を日本経済新聞の経済教室欄用に投稿したら、掲載を拒否されました。今後NHKの受信料制度に関する議論がわが国で高まると予想され、今まで無言だった日本経済新聞も何らかの見解を表明せざるをえなくなると推察されます。以下の文章は経済理論的に正当だと考えられるので、NHKの受信料制度に関する日本経済新聞の今後の論理展開に注目していきたいと思います。なお2年余り前には、大学教育費の卒業後所得に応じた負担に関する私の文章が掲載拒否され、その後似た内容の他者の評論が掲載されたことがありました。 NHKの受信料制度はどうあるべきか 現在、NHKの受信料制度に不満を抱いている人たちがきわめて多い。深刻なトラブルの発生も多いようだ。その原因は、NHKの番組を見ないテレビ受信機所有者でも支払わされる高額受信料にある。われわれの経済は基本的に受益者負担原則によって成り立つ。消費者がスーパーで購入する肉や野菜の代金の支払いに不満を抱かないのは、その消費によって自ら利益を得るからだ。現行のNHKの受信料制度はこの受益者負担原則から大きく乖離しているため、それに対する不満は正当といえる。 当然ながら、NHKの番組を見ないのは、それが他の機会と比べて面白く感じられないためでもあろう。今日はNHKがテレビ放送を開始した当時とまったく事情が異なっていて、多数のテレビ・チャンネルだけでなく、無数のユーチューブ動画や有料配信される映像や音楽も楽しむことが可能だ。テレビ放送開始当時の理念でNHKを運営すると問題を引き起こす。 それでは、なぜ現行のような受信料制度が存在してきたのか。理由はテレビ電波の持つ特殊な性質にある。テレビ放送は肉や野菜と違って、排除不可能性という性質を持つ(正確には「持っていた」というべきだが、この点に関しては後に論じる)。 特定の肉や野菜は、その代金を支払った個人のみが消費可能だ。換言すれば、代金を支払わない個人の消費を排除できる。排除可能性が成立するのだ。 それに対して、テレビ放送はいったん放送電波が供給されると、受信料を支払わない個人も受信可能になる。つまり、受信料を支払わない個人の消費を排除できない。これが排除不可能性である。この性質があるため、テレビ放送は受信料の支払いを強制しないと供給できない可能性が生じるのだ。NHKの現行の受信料制度は、これが存在理由になっているといえよう。 一言でいえば、テレビ放送は公共財とみなせる。一般に、排除不可能性の性質を有する財は公共財と呼ばれ、税収を基に政府によって供給されるものが多い。国防や一般道路はその例である。そうした公共財の場合、肉や野菜と違って、個人は利益を享受するたびごとに料金を支払うわけではない。今日のNHK受信料が税金に近い性質を有するのは、放送電波に公共財の性質があるためだ。 しかし直ちに気づくように、民放は公共財である放送電波を供給しているにもかかわらず、受信料を徴収していない。広告収入によって放送の費用を賄うことができるからだ。そのため、テレビ放送の供給においてNHKのように強制性の高い受信料制度を設定するのは、一つの方法にすぎないといえる。 このような事情があるので、NHKの受信料問題を解決する方法として、経済理論的にまず考えられるのは、NHKを民放にすることだ。国鉄の民営化に近いだろう。これは現実的にきわめて大きな改革だが、経済理論的な正当性は高い。民放にする際は、最初に入札などで組織全体を私企業に売却し、売却益を国民に還元する必要がある。その後は、広告収入などによって放送を継続することになろう。この場合、当然ながら公共放送としての制約からは解放される。 広告収入によって放送することは一つの方法だが、今日ではそうしない経営も技術的に可能になっている。受信料を支払う者のみにテレビ放送を提供する技術が開発されたからだ。スクランブル放送はその例である。かつては排除不可能性の性質を有した放送電波が、技術革新によって今日では排除可能性の性質を獲得しているのだ。 スクランブル放送などの有料放送においても、いくつかの異なった受信料支払い制度が考えられる。経済学的に最善なのは、番組ごとに料金を設定し、視聴した番組に応じて支払う制度だ。それが不可能ならば、次善の策として視聴時間に応じて支払う制度が考えられる。いずれも不可能な場合は固定料金制ということになろう。今日話題になっているスクランブル放送では、固定料金制が想定されているようだ。 NHKの受信料問題を解決するもう一つの方法は私の推すもので、NHKを「純粋公共放送」にすることである。「純粋」という修飾語を付けたのは、すぐ後で述べる理由により、今日のNHKが真の意味の公共放送といえないからだ。純粋公共放送は税金またはそれに近いもの(以下では税金と呼ぶ)によって運営されることになる。つまり、NHK放送をまったく見ない個人も、放送費用を分担しなければならない。 税金で提供される純粋公共放送は、次のような厳しい条件を満たす必要がある。すなわち、民放その他の媒体で提供可能な内容を放送してはならない。ドラマや歌謡ショーやプロ野球は民放でも放送可能なので、純粋公共放送で提供する根拠に欠ける。現在のNHKが力を入れている天気予報も同様だ。災害などに関する緊急情報さえ純粋公共放送が提供しなければならない根拠は弱い。その他多くの現在のNHK番組も純粋公共放送に相応しくないだろう。この意味で現状のNHKは真の意味の公共放送といえないのである』、「荒井」氏はミクロ経済学が専門なだけあって、さすが分析は鋭い。「日本経済新聞の経済教室欄用に投稿したら、掲載を拒否」、「掲載を拒否」の理由を知りたいところだ。
・『ならば、純粋公共放送はどんな番組を放送すべきだろうか。NHKが強調する生活の基本情報の番組も必要だろうが、私はここで科学・歴史・芸術・海外事情などに関する上質な教養番組の必要性を強調したい。ときどきNHKで放送されるBBCの番組がそのイメージに近く、少数ながら現在のNHKにもそのような番組がある。それ以上に上質な番組であれば、さらに好ましい。それらは国民を啓蒙し、その知識や能力や品性を高める番組である。こうした番組の製作は広告収入で採算を合わせるのが困難なので、普通は純粋公共放送でなければ提供不可能だろう。 歴史・芸術・海外事情などに関する番組は、主観を完全に除くことが不可能な場合もあるかもしれない。そのため純粋公共放送としては、可能な限り客観的な内容を目指すだけでなく、異なる見解が存在する場合に、主要なものを同時に紹介する必要があろう。さらに、日本を世界で称賛される国にしようという精神が、番組製作の際に必要である。 こうした条件を満たす純粋公共放送は、一つのチャンネルによる放送で十分だ。現在のNHKの余分な部分は私企業に売却され、前述の第一の方法で運営される必要がある。その結果、予算は現在のNHKのものよりずっと少なくてすむ。一家計当りの費用負担額が月三百円ほどであれば、純粋公共放送の存在が支持されやすいであろう。高くても月五百円程度にするのが好ましい。上質番組が低費用で提供されれば、公共放送の支持者は多くなるであろう。 しかしながら、こうした公共放送の番組さえ見たくない人たちもいるに違いない。そのような人たちにも、税金として費用負担を強制する根拠は何か。大学教育や科学研究や宇宙探査などが税金で支援されるのと同じである。例えば、日本の宇宙探査事業を支持しない人たちも、税金でその費用を負担しているのが現状だ。指導的国民が文化的に優れていると考える事業には、税金を投入して輝かしい社会を実現するのである。純粋公共放送に税金を投入して、国民の知識や能力や品性を高めるのだ。それが文化であり、一国の方針が文化的な影響を受けることは回避されるべきでない。 多額の税金が投入された番組の映像を、一回の放映でお払い箱にすることは資源の浪費である。見逃す人も多いので、過去二十年ほどの番組は各自の望むときに見ることができるようにすべきだ。また上質な映像ならば海外で販売することも可能なので、そのようにして収入の足しにすべきである 純粋公共放送に関しては、次のような条件を満たすことも必要だろう。放送内容に関して視聴者の意見を聞くことである。放送内容を多数決で決めるということではなく、一定の文化的基準を満たす意見を参考にすべきなのだ。どのような意見が出されているかを全国民に知らせることも必要である。今日のNHKにはこれが欠けているといえよう。NHK職員の現在の給与が高すぎるという批判も強い。税金で支えられる場合は公務員並みにしないと、純粋公共放送に対する支持が得られないだろう。また職員の採用には専門的で公正な試験が必要になる』、「科学・歴史・芸術・海外事情などに関する上質な教養番組」に限定した「公共放送」とし、「一家計当りの費用負担額が月三百円・・・高くても月五百円程度」、「給与」は「公務員並み」などの提案には大賛成である。NHKにとっては現在の枠組み維持が至上命題なので、受け入れ難いだろうが、中長期的課題として、真剣に検討すべきだろう。ただ、タイミング的には、NHKへのコントロール強化を狙う安部政権が終了してからとすべきだ。
タグ:給与」は「公務員並み」 一家計当りの費用負担額が月三百円・・・高くても月五百円程度 純粋公共放送は、一つのチャンネルによる放送で十分だ。現在のNHKの余分な部分は私企業に売却され、前述の第一の方法で運営される必要 科学・歴史・芸術・海外事情などに関する上質な教養番組の必要性 民放その他の媒体で提供可能な内容を放送してはならない 厳しい条件を満たす必要 もう一つの方法は私の推すもので、NHKを「純粋公共放送」にすること スクランブル放送などの有料放送においても、いくつかの異なった受信料支払い制度が考えられる。経済学的に最善なのは、番組ごとに料金を設定し、視聴した番組に応じて支払う制度だ 経済理論的にまず考えられるのは、NHKを民放にすること 広告収入によって放送の費用を賄うことができる 民放 一般に、排除不可能性の性質を有する財は公共財と呼ばれ、税収を基に政府によって供給されるものが多い 受信料を支払わない個人も受信可能になる。つまり、受信料を支払わない個人の消費を排除できない。これが排除不可能性 排除不可能性 日本経済新聞の経済教室欄用に投稿したら、掲載を拒否 「NHKの受信料制度はどうあるべきか」 荒井一博のブログ HKの「ステレオタイプ」な人種描写 デモの参加者と便乗犯を混同している NHKの動画は無意識のうちに 立て続けに起きる「黒人差別」 警察が持つ人種偏見と、黒人の命を尊重しない態度について、「もうたくさん!堪忍袋の尾が切れた!」という思いによって起きた 抗議デモが起きた原因がまったく的外れ 「問題の動画」はどういう内容だったか 多数の批判を招き、NHKは6月9日に動画を削除、謝罪 警官による黒人男性暴行死事件への抗議デモの原因は「白人と黒人間の格差」にあるというもの NHKの国際ニュース番組「これでわかった!世界のいま」の公式Twitterに掲載された動画 「「NHKの黒人の描き方」がまるで話にならない訳 「人種描写がステレオタイプ」以前の問題」 猿渡 由紀 東洋経済オンライン 今後の番組の具体的な制作手法などを指示した事実はございません 「議事録」の「公開を拒んでいる」とは飛んでもないことだ 森下俊三委員長 「《議事録全文入手》森下NHK経営委員長に放送法違反、国会虚偽答弁の疑い」 文春オンライン ダイレクトに官邸からの指示が板野を通じて伝えられるようになっていった 板野のカウンターパートは杉田和博官房副長官 専務理事に復帰 板野裕爾 会長交代の前から始まっていたNHK締め付け復活、国谷裕子を追放うした板野裕爾が専務理事に復帰 この経営委員会の言動は放送法違反にあたる可能性が非常に高い 要なのは、正当な取材活動・報道に対して「ガバナンスの問題」に話をすり替えて圧力をかけようとする郵政側と同調し、上田会長に恫喝をかけた経営委員会の姿勢 上田会長に安倍官邸は苛立ちを募らせていた 上田会長の「放送、ジャーナリズムが国家権力に追随するような形というのは、必ずしも望ましい形ではない」という姿勢 下村博文・元文科相が英語民間試験をめぐって東京大学の五神真総長らに圧力をかけていた音声を放送 「桜を見る会」問題をめぐる報道でホテル側への独自取材 森友・加計問題でスクープ 安倍首相を後押しする経済人による「四季の会」のメンバー る前田晃伸氏を後任とする人事を決定 上田良一会長の退任 「NHK新会長に安倍人脈の前田晃伸みずほFG元会長が抜擢された裏! 官邸が前任の上田会長を「政権批判番組へのグリップ弱い」と首すげ替え」 litera (その3)(NHK新会長に安倍人脈の前田晃伸みずほFG元会長が抜擢された裏! 官邸が前任の上田会長を「政権批判番組へのグリップ弱い」と首すげ替え、《議事録全文入手》森下NHK経営委員長に放送法違反 国会虚偽答弁の疑い、「NHKの黒人の描き方」がまるで話にならない訳 「人種描写がステレオタイプ」以前の問題、荒井一博のブログ:NHKの受信料制度はどうあるべきか) NHK問題
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日本型経営・組織の問題点(その10)(日本企業で出世する人たち じつは「超低学歴」ばかりになっていた…!、コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは、日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば 経済復活への道が開ける) [経済政治動向]

日本型経営・組織の問題点については、2月23日に取上げた。今日は、(その10)(日本企業で出世する人たち じつは「超低学歴」ばかりになっていた…!、コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは、日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば 経済復活への道が開ける)である。

先ずは、5月10日付け現代ビジネスが掲載した作家の小野 一起氏と経営共創基盤代表取締役CEOの 冨山 和彦氏による対談「日本企業で出世する人たち、じつは「超低学歴」ばかりになっていた…!」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71570?imp=0
・『かつては世界から称賛された「日本的経営」だが、もはや時代遅れの産物と化している。それにもかかわらず、多くの経営者はいまだ過去の成功体験にすがりつき、大きく会社を変化させることをできずにいる。日本企業はいまや世界の時価総額トップランキングに入れないほどに凋落したが、その原因は会社の上層部で決断できずにいる「だらしない」トップたち、社長や役員など幹部たちにあると指摘する声は多い。 いま日本のトップ層たちが直面している本質的な問題とはなにか。では、日本企業はいま本当はどんな改革に踏み出すべきなのか――。 今回、経営共創基盤代表取締役CEO(最高経営責任者)として様々な企業の再生や成長支援に取り組む日本を代表する経営コンサルタントで、新著『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』を上梓したばかりの冨山和彦氏と、新作小説『よこどり 小説メガバンク人事抗争』でメガバンクの未来や組織の在りようなどを独自の視点で描き出した作家の小野一起氏が緊急対談を敢行。日本企業に蔓延する「偉い人たちのおかしさ」について語り尽くした』、「日本企業に蔓延する「偉い人たちのおかしさ」」とは興味深そうだ。
・『「時代劇化」した日本企業  小野 日本的経営での成功体験がアダになって、バブル崩壊とともに経営危機が顕在化した代表例がカネボウやダイエーですね。冨山さんは、政府系の産業再生機構のCOO(最高執行責任者)として、日本的な経営の無残な失敗とリアルに向き合うことになりました。 冨山 特にカネボウは最も強固な日本的経営の会社で、日本的経営をつくった原型のひとつでもあるわけです。運命共同体みたいに日本型経営を信じていたので、新しい時代には不適合な会社だったわけです。 しかし、もっとも強烈に変革の波にさらされたのは三種の神器(白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機)や3C(自動車、カラーテレビ、クーラー)でかつて成功体験を味わったエレクトロニクス産業でしょう。半導体で日本が世界を席巻したのも成功体験になっていると思いますが、せいぜい1990年代の話です。もう時代劇の世界ですよ。 小野 そうした危機に直面したエレクトロニクス産業の中には変革の波に乗れないところも出てきていますが、一方、日立製作所などは中西宏明会長らのイニシアディブで強烈な改革が始まっていますね。中西さんは冨山さんとの共著『社長の条件』の中で日立の人事改革に言及されていますが、典型的な日本的大企業と思われていた日立で大胆な組織改革がここまで進んでいたのかと驚きました。 グローバル化に対応するために年功序列を廃止し、トップの選定も社外取締役が主導して、30代を含む50人近い候補者とやり取りしながら選定作業をしているという話は刺激的でした。 逆に言えば、日立のような企業でもこのくらいの改革に取り組まなければ生き残れないということですね』、確かに「日立」での「大胆な組織改革」は、これまでの「日本的経営」との決別だ。
・『社長が「次の社長」を決めるというムラ社  冨山 遅ればせながら、だと思います。こうした日本的経営の問題点については気づく人は気づき、分かっている人は分かっていました。たとえばスタンフォード大学名誉教授の故・青木昌彦さんは、以前から課題を指摘していた。それなのに、たとえばカネボウの経営が傾いたときなど、日本の経済界では「あれは変な経営者がいたからだ」と説明してしまう人が大半だったんです。 小野 日本的な経営が構造的な問題を抱えているとは考えずに、カネボウが個別に経営問題を抱えていると説明されてしまった。 冨山 日本的経営の普遍的な病理について経済界全体が認め始めたのは、本当にごく最近のことです。安倍晋三政権になってからようやく企業統治(コーポレート・ガバナンス)改革が本格的に始まりましたが、それまではすべて人のせいにしていた。 そもそも日本企業の低迷は、世界の時価総額ランキングをみると明らかです。平成元年はかなりの数の日本企業が上位50社に入っていました。でも平成の終わりには、せいぜいトヨタ自動車ぐらいじゃないですか。この平成の大敗北で、さすがに自覚が生まれた。 小野 「平成最後の時価総額ランキング。日本と世界その差を生んだ30年とは?」(https://media.startup-db.com/research/marketcap-global)によると平成元年(1989年)は、世界の時価総額ランキングで、トップ50の中に、日本企業は32社入っていて、トップはNTTでした。しかし、平成31年4月(2019年4月)になると、トップ50に入った日本企業はトヨタ自動車のみです。トップ3は、アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムというデジタル革命の勝ち組のアメリカ企業ですね。 こうした危機感に直面してやっと、日本企業の中からコーポレートガバナンス改革で独立社会取締役を導入する企業も出てきました。そして社外取締役で構成される指名委員会でトップを決める仕組みにした会社も出始めています。これは、社長が次の社長を決めるというムラ社会の掟の心臓部を変える改革です。ただ、こうした制度を入れている大企業は、まだ少数ですね。 冨山 一桁パーセントでしょうね』、「カネボウの経営が傾いたときなど、日本の経済界では「あれは変な経営者がいたからだ」と説明してしまう人が大半だった」、最近にって「危機感に直面してやっと・・・社長が次の社長を決めるというムラ社会の掟の心臓部を変える改革です。ただ、こうした制度を入れている大企業は、まだ少数ですね」、やはり変化には時間を要するようだ。
・『日本のリーダーが「おかしな」理由  小野 日本企業にとって「社外取締役の導入」や「指名委員会の設置」が進むことは重要な動きですが、ここからはきちんと定着することが大切になってくるのだと思います。その点、せっかく仕組みを取り入れたにもかかわらず、きちんと機能していない企業も多いようです。 よくよく聞いてみると、社外取締役がみなさん社長の「お友達」みたいなケースがありますよね。形式は整っているけど、魂が入っていない。導入した企業の中にはそういう企業が多い印象があります。 冨山 最初は仕方がないでしょうね。まずは形式を先行させて、実質を整えていく。長い目で見れば実質が変わった会社だけが生き残り、実質が変わらない会社は消えていくということでしょう。 そもそもリーダーシップが必要というのは、いまや大半の経営者が口にしています。しかし、本質的に問題となるのはリーダーシップの中身であり、リーダーの在りようでしょう。古き良き日本のリーダー像ってありますよね。人望があって、みんなの気持ちがよくわかって、それで現場の状況を理解して……という良き上司像です。もちろんいまでもそうした上司像は否定されませんが、それだけで良いのか、ということが問われているわけです。 小野 日本企業のリーダーシップについて、ほかに冨山さんが問題だと思っていることはなんでしょうか。 冨山 日本の経営者がよく使う言葉に「現場主義」というのがありますが、これが本当の意味での現場主義でなく、「現場迎合主義」になっていることが多い。 たとえばある業界で破壊的イノベーションがやってくるとします。テレビを作っていればこれまで儲かっていたエレクトロニクス産業で、もはや新興国企業が台頭してきてテレビを組み立てていても儲からなくなるというようなケースです。その時に、テレビの製造現場の人たちに「テレビの組み立てを止めようか」と聞いたら、誰も「そうですね、止めましょう」とは言いませんよね。紙の新聞が売れないからと言って、「紙の新聞を止めるか」と言っても、紙の新聞を作っている人は誰も止めようとは言わないでしょう。こういう現場の声を重視する経営者は、現場主義とは言いません、単なる現場迎合主義です。 小野 苦しくても、現場の反対があっても、より収益の高いところに戦略的に事業をシフトしていく判断をするのが経営者。それができないのならば、会社は消滅へと向かいます。 冨山 そうです。しかし、日本企業にはそういう決断ができない経営者が多い。現場というのは、言い換えると競争の最前線です。最前線で何が起きているかをリアルに認識することが大事なのは当たり前です。それと現場の思いに引きずられて決断ができないことはまったく違う』、現場出身の「日本の経営者」が・・・「現場迎合主義」に陥ってしまうのは、必然でもあるが、より高いリターンを要求する機関投資家の姿勢がまだ弱いことも一因だろう。
・『「一億総玉砕」しないために  冨山 たとえば戦場を見に行って、海戦の状況を確認して、飛行機を導入すれば勝てると考えるのは現場主義です。一方で長年苦労している水夫さん、一生懸命に機銃操作している兵士の気持ちになって作戦を継続するのが現場迎合主義です。これは本当の現場主義ではありません。「現場主義」と「現場迎合主義」を混同している経営者が日本的大企業には、やたらと多いんですよ。 小野 終身雇用と年功序列を前提にすると、経営者は現場にいるひとの人生を背負っている気分になりますよね。現場迎合主義では、その瞬間はいい上司のようにふるまえるかもしれませんが、長期的には雇用を守ることはできません。 冨山 ずっと苦労して頑張っていることを知っているわけですから尚更なんでしょうね。現場の人たちの貢献で日露戦争に勝った、現場の人たちのおかげで高度成長に貢献した……。その思いはわかりますよ。成功体験があるので、それを支えた現場の気持ちに寄り添ってしまう。ただ、ビジネスという戦争の現実はもっと厳しい。そういう現場の情念を合理が超えていくのです。 中途半端に現場の情念に寄り添うと悲劇が起こります。だから、戦局が変われば水兵さんたちを船から降ろしてあげればいいわけでしょう。やる気と能力がある人には、パイロットになれよって言ってあげればいいわけです。 いま多くの日本企業がこうした課題に直面しているわけですが、まだおカネに余裕がある段階で早く組織転換をしたほうがいいと思います。改革しようとすると、その瞬間はすごく現場にストレスがかかります。しかし、それを恐れていては手遅れになってしまうのだから、タイミングは早ければ早いほうがいい。心を鬼にして、むしろ早すぎるくらいのタイミングで転換を図れるようなリーダーじゃないと、結果的により多くの人を失業に追い込んでしまう。最後は絶対に一億総玉砕になりますから。 実は日本企業はそんな一億億総玉砕を何度も繰り返しているんです。「半導体玉砕」、「液晶玉砕」、「テレビ玉砕」……。さすがに、これ以上は無理でしょう。 小野 確かにそうですね。例えば東芝は半導体と原子力で玉砕しています。日立が、必死になるのは当然とも言えます』、「「現場主義」と「現場迎合主義」を混同している経営者が日本的大企業には、やたらと多い」、「心を鬼にして、むしろ早すぎるくらいのタイミングで転換を図れるようなリーダーじゃないと、結果的により多くの人を失業に追い込んでしまう。最後は絶対に一億総玉砕になりますから。 実は日本企業はそんな一億億総玉砕を何度も繰り返しているんです」、同感だ。
・『「本当の学力」が評価されないニッポン  冨山 リーダーシップのモデルが、高度成長期からガラリと変わっているんです。いまは大きな変革期ですから、リーダーは「自分が言ったこと」を「やってもらわない」といけない。つまり、いまのリーダーは社員への影響力が重要なんです。 しかも、人事権を振りかざす、いわゆる「ハードパワー」だけでは組織は動きません。ソフトパワーとしての人望や人間性もまたとても大切です。そのソフトパワー的なものと、合理性をどう両立させるかがポイントです。 リーダーは必要な時は合理的で冷徹な決断をできなければいけない。ただ、人望がないと「この野郎!」って恨まれて、本能寺の変で暗殺されちゃう。だから、人望も必要です。この両立ができないといまの時代のリーダー務まらない。要は組織の中でリーダーをどう育成するか、どう選ぶかが重要になってくるわけです。 小野 リーダーの育成は、高等教育とセットで考える必要がありますよね。現状では「学歴主義」というより「学校名主義」になっています。 冨山 そうですね。合格歴ですよね。濁点が違っています。「高学歴」じゃなくて「合格歴主義」(笑)。 小野 社会学者の小熊英二さんは『日本社会のしくみ』という本の中で、学歴について非常に興味深い指摘をしています。いわく、日本的経営は「学歴抑制効果」が働いている、と。 本来なら高学歴といえば、博士号や修士号を取得していることです。日本の場合、特に文系だと修士号や博士号を取得していると、逆に出世できなくなるケースすらある。ムラ社会だと修士号や博士号を持っていると「異端」に位置づけられて、「本流」から外されてしまうわけです。 欧米の場合、経営者を目指す人には必要な学位を求めますよね。修士号とか博士号です。そこで培われた知識やスキルが、仕事に必要だと考えられているからです。東大卒や京大卒という学校歴、合格歴が求められることはありません。 一方で、日本の終身雇用、年功序列だと、まずはムラ社会のメンバーに入ることが重要。経営陣を目指す人も、みな現場のオペレーショナルな業務から入って、少しずつステップアップしていくしか道がない』、「日本的経営は「学歴抑制効果」が働いている」、言い得て妙だ。
・『早慶卒、体育会系出身が「最強」という現実  小野 日本企業で求められるのは潜在力を担保する有名大学の合格歴になるわけです。余計な知的な能力は必要ない。ムラの中で必要な知識や掟は、ムラに入ってから叩き込んでやるというわけです(笑)。 だから今のムラから別のムラに移る転職も難しく、会社が傾くと総玉砕に向かってしまうのではないでしょうか。 冨山 そうですね。この話は結局、全部つながっていますよ。産業の構造が比較的固定的で、オペレーションの優劣で業績の優劣が決まる時はそれで良かった。極論を言えば、一つの工場の中で、ずっとその仕事のオペレーションを高度化して合理化していくことが企業全体の競争力に直結していたわけです。一本のネジの完成度を高め、作業工程を一つずつ見直して合理化することが大切だったのです。 ただ、いまは産業構造がガラガラ変わる、競争構造もガラガラ変わる。要するに産業や社会がダイナミックに変化するようになればなるほど、特定の業務の中で作られるノウハウはすぐ陳腐化するのです。 日本の歴史を振り返ると、様々な組織の中で似たようなことが起こりやすい。 たとえば軍です。日本の軍隊というのは非常にスペシャリスト化、専門家していますが、わりと初期の段階ではみなジェネラリストで、何でも屋さんだったんです。まだ明治維新の名残があった明治期は特にそうでした。それが、どんどん機能特化していき、機能特化で技能を磨いていく人たちがそのまま偉くなっちゃう。そういう仕組みを日本人は作りやすい。 大学ということでいえば、典型的に就職に強かったのは体育会でしょ。早稲田、慶応に入れるだけの能力がありました。その上、「ラグビー部です」「野球部です」と言えば、日本的経営の企業であればどこでも内定がもらえるわけです。要するに地頭いい、体力がある、これが要件。それに加えて、上下の秩序にちゃんと従って行動できる。最高じゃないですか。オペレーショナルな業務を磨く、ムラ社会の一員としては……ということになるわけです。 小野 有名大学の体育会系の人材は、終身雇用、年功序列のムラ社会に、もっとも都合の良い人材と認められるわけですね。 冨山 そういう人材の良さをすべて否定するわけではありませんが、そういう人材有名大学の体育会系の人材は、終身雇用、年功序列のムラ社会に、もっとも都合の良い人材と認められるわけですね。 冨山 そういう人材の良さをすべて否定するわけではありませんが、そういう人材だけで構成されている組織は極めて脆いですよ。ちょうど平成に入ったころに、ベルリンの壁が壊れ、完全なグローバルな世界に突入しました。インターネットの普及で、デジタル革命も始まって、産業の変化のスピードが爆発的に変化した。オペレーショナルな業務を磨くだけのムラ社会型の会社では、変化に対応できなくなったのです』、「有名大学の体育会系の人材・・・そういう人材だけで構成されている組織は極めて脆いですよ」、「インターネットの普及で、デジタル革命も始まって、産業の変化のスピードが爆発的に変化した。オペレーショナルな業務を磨くだけのムラ社会型の会社では、変化に対応できなくなった」、その通りだ。
・『国際的に驚くほど「低学歴」な日本企業の経営陣たち  冨山 有名企業の経営者など経済界の人たちが集まる宴会で、大学時代の話になると、みな不思議なくらい自分がいかに勉強をしなかったかという自慢話になるわけです(笑)。俺は大学に行かずに麻雀ばかりやっていかとか、運動しかしていなかったとか、みな滔々と語るわけです。それでいて「最近の若い連中は、勉強していない」とか上から目線で言うから意味不明です(笑)。 ただ、そういう人材育成モデルがある段階まで機能して、実際に有名企業の経営陣まで登れたので成功モデルになってしまったのでしょうね。 残念ながら、日本社会の構造がこうした変化に対応できない経営者を生み出したといえるでしょう。なので、日本の政治家も官僚も経済人も、国際的にみると驚くほど低学歴になったしまったわけです。 小野 学力のピークが有名大学に合格した18歳というような人たちが、日本の政治や経済をリードしているわけですね(笑)。 冨山 いろんな組み換えや変化が起きる時、大事なことはものごとの中で何が一般、普遍的原理原則を持つか、何が普遍性を持たないかを区別することなのです。これがちゃんと自分の頭の中で整理できないと、急激な変化に対応できません。 つまり、自分が積み上げてきた個別的な体験だけで経営のかじ取りをしようとすると失敗します。少なくとも自分の経験の中で、普遍的に通用するものと通用しないものぐらいは仕分けできないと経営者失格です。 飛行機の性能にたとえれば、早く飛びたいのか、それともクルクルと回るのがいいのか。それともパイロットの命を守ることが最優先なのか。それを判断できないといけません。つまり、物事を一般化、抽象化して普遍の原理原則から演繹する思考法が、訓練されてないと、変化に対応できません。だからこそ、高い学歴が価値を持つのです。18歳の時に答えを丸暗記して対応できる試験に合格した、そのアプローチだけでは通用しなくなっている。高校までは、それでいいんです。日本は、そこまではむしろ教育がうまく機能している。 問題は、大学からです。一般原理原則から、新しく発生したできごとを演繹して考える。あるいは、いろいろな物事を組み合わせて創造する。そういう思考訓練をきちんとできないといけない。いま危ないと思うのは、そういう思考力を評価する仕組みが日本社会全体にないことです』、「一般原理原則から、新しく発生したできごとを演繹して考える。あるいは、いろいろな物事を組み合わせて創造する。そういう思考訓練をきちんとできないといけない。いま危ないと思うのは、そういう思考力を評価する仕組みが日本社会全体にないことです」、同感である。
・『「徹夜で麻雀できる人」が出世する社会  小野 実際に某メガバンクで、土日に頑張って論文を書いて博士号を取得して、そのことを人事部に報告した直後から昇進が止まったという話を聞いたことがあります(笑)。 冨山 結局、自分の頭で考える人はめんどくさい、と思われているんですよ。部下として使いにくい、と。 変化の時代に対応するために思考力を評価して、エリートを選抜しようとすると、それに見合った学力を付けなければいけない。これが、年功序列の仕組みと矛盾するわけです。 これまでの日本型経営のモデルでは、みんな一緒に横一線で競争する建前になっています。少なくとも正社員は、組織内の階級的格差なしで競争して、ちょっとした差でだんだん選抜をしていくのが、基本です。これが、組織全体のモチベーション維持にもうまく作用していた。 こうした組織に、高学歴の人が活躍できる舞台をつくるのは難しい。だから、だいたいアメリカの大学院で学んだことなんて、すべて捨てろ、忘れろ、経営陣から言われるわけです。それで徹夜で麻雀に付き合えと。そうしないと本当に出世できなかったわけです(笑)。(この後の、小野一起氏による『よこどり 小説メガバンク人事抗争』のPRは省略)』、「某メガバンクで、土日に頑張って論文を書いて博士号を取得して、そのことを人事部に報告した直後から昇進が止まったという話を聞いたことがあります」、大いにありそうな話だ。「アメリカの大学院で学んだことなんて、すべて捨てろ、忘れろ、経営陣から言われるわけです。それで徹夜で麻雀に付き合えと。そうしないと本当に出世できなかったわけです」、なんとも無駄な出世競争を繰り広げさせられたものだ。

第二に、7月22日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/07/post-94021_1.php
・『<日本企業が何年も放置してきた課題がコロナ禍で顕在化──今こそ生産性向上と復活を果たすべきときだ。本誌「コロナで変わる 日本的経営」特集より> ※日本的経営の7つの課題を指摘する加谷珪一氏によるコラムを2回に分けて掲載します。 新型コロナウイルス危機は、いわゆる日本的経営が抱える問題点を浮き彫りにした。バブル崩壊以降、30年にわたって世界で日本だけが成長から取り残されてしまったが、最大の理由は、安価な工業製品を大量生産する昭和型モデルから脱却できず、ビジネスのIT化やオープン化といったパラダイムシフトに対応できなかったことにある。 ペストやスペイン風邪の歴史からも分かるように、感染症の流行は変化のスピードを加速させる作用を持っており、コロナ危機によって、10年かかると思われていた変化が3~4年で実現する可能性も指摘されている。このタイミングで日本が変われなければ、諸外国との格差は致命的なものとなるだろう。 日本の労働生産性は先進諸外国の中では常に最下位だったが、特にその差が顕著になったのは90年代以降のことである。この時代は全世界的に産業のIT化が本格化するとともに、中国をはじめとする新興国への製造業シフトが一気に進んだ。ところが日本は一連の変化にうまく対応できず、諸外国との格差を広げてしまった。 コロナ危機をきっかけに、日本の企業社会には変化が求められているが、一斉出社や長時間残業、ハンコに代表されるIT化の遅れ、過当競争など、議論されているテーマのほとんどは、変化の必要性が叫ばれていたものばかりである。以下では日本企業が乗り越えるべき課題について主に7つの観点から議論していく』、「感染症の流行は変化のスピードを加速させる作用を持っており、コロナ危機によって、10年かかると思われていた変化が3~4年で実現する可能性も指摘」、興味深そうだ。
・『1. 需要変化への対応  新型コロナウイルスをきっかけとした「新しい生活」によって消費者の行動変化が予想されており、多くの業界においてビジネスモデルの転換が必須となっている。外食産業では店内のレイアウトを変更したり、店舗網を縮小するといった動きが活発になっているが、一連の変化は基本的に売上高の減少を伴う。最終的に高付加価値モデルにシフトできなければ、新しい時代を生き抜くことはできないだろう。 日本の外食産業は市場規模に対して店舗が過剰となっており、過当競争に陥っていると指摘されてきた。日本人の実質賃金が下がっていることから、値下げ競争が常態化しており、これが企業の低収益と従業員の過重労働の原因となっている。外食産業に限らず、過当競争からの脱却は時代の必然であり、コロナはきっかけにすぎないと解釈すべきだ』、「外食産業に限らず、過当競争からの脱却は時代の必然であり、コロナはきっかけにすぎないと解釈すべきだ」、そうなればいいが、筆者の願望に過ぎない可能性もある。
・『2. デジタルシフト  需要変化の多くはデジタルシフトを伴う。外食産業は店舗網の縮小と同時にデリバリーシフトが進んでいるが、この動きはコロナ前から顕著であった。アメリカでは数年前から外食のデリバリー化が進み、レストランの廃業が相次いだが、背景となっているのは業務のIT化である。 スマートフォンが普及したことで業務のIT化とパーソナル化が加速。皆で連れ立ってランチやディナーに行く回数が減ったことがデリバリーの利用を後押しした。つまり、デリバリーシフトは構造的なものであり、コロナ危機が終息すれば元に戻るという話ではないのだ。 日本企業におけるハンコ文化が無意味であることは、以前から指摘されてきたが、テレワークの拡大によってようやくその弊害の大きさが認知されるようになった。先進諸外国と比較して日本企業のIT化が遅れているのは事実であり、コロナはこれを変えるきっかけとなるだろう』、「デリバリーシフトは構造的なもの」は確かだろう。「ハンコ文化・・・テレワークの拡大によってようやくその弊害の大きさが認知されるようになった」、「ハンコ文化」がこれを機に変われば望ましいことだ。
・『3. ムラ社会的組織の終焉  IT化が進んだ企業の業務プロセスと、ムラ社会的な組織運営は相性が悪い。日本企業はチーム全員が一斉に出社し、お互いの様子を見ながら「あうん」の呼吸で業務を進めるという組織文化だった。責任の所在を事前に明確化する必要がなく、突発的な事態にも対応できるというメリットがあるが、こうした曖昧な業務プロセスはITシステムに移管しにくい。日本企業がIT化を進められないことには、こうした組織文化が深く関係している。 ムラ社会的な組織を維持するためには同質性が強く求められるので、メンバーも画一化する必要がある。新卒一括採用や年功序列といった日本型雇用はその結果として生まれたものと見なせるし、逆に日本型雇用が一連の硬直化した組織の原因と考えることも可能だ。 日本企業は1970年代以降、ひたすら管理職比率を増大させてきたが、管理職が肥大化した組織がうまく機能しないのは自明の理である。日本の企業社会には、会社に勤務していながら実質的に仕事がないという、いわゆる社内失業者が400万人も存在しているが、コロナによるテレワークへのシフトは、実質的に仕事をしていない社員をあぶり出す結果となってしまった』、「IT化が進んだ企業の業務プロセスと、ムラ社会的な組織運営は相性が悪い」、「コロナによるテレワークへのシフトは、実質的に仕事をしていない社員をあぶり出す結果となってしまった」、その通りなのかも知れない。
・『4. 下請けと中抜き  企業の組織形態と産業構造には密接な関係があり、ムラ社会的な組織運営を行う企業が多いと、産業全体の合理化も進まない。統計の取り方にもよるが、日本における人口当たりの企業数はアメリカよりも多く、全体的に経営規模が小さいという特徴が見られる。中小企業が多いのはドイツも同じだが、問題なのは日本の中小企業の収益性が著しく低いことである。 重層的な下請け構造や薄利多売のビジネスモデル、IT化の遅れなど複数の要因が考えられるが、最も影響が大きいのは下請け構造による中抜きだろう。 各種給付金などコロナ対策の政府事業を受託した組織が、外部企業に業務を丸投げするという「再委託」が問題となっているが、政府案件に限らず、日本の産業界にはこうした丸投げと中抜きという商習慣が蔓延している。中抜きされる企業が生み出す付加価値は低く、当然、そこで働く従業員の賃金は安くならざるを得ない。本来であれば、その労働力は別の生産に投入されるべきものであり、日本全体のGDPにもマイナスの影響を与えている』、ただ、「下請けと中抜き」がこれまで存続したのには、相応の理由があった筈で、それがどう変わるかを見る必要がありそうだ。

第三に、この続きを、7月23日付けNewsweek日本版「日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば、経済復活への道が開ける」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/07/post-94026_1.php
・『<日本企業が克服すべき課題、そしてその先にある日本経済の復活への道筋とは。本誌「コロナで変わる 日本的経営」特集より> 
・『5. 不十分な設備投資  一連の非効率な産業構造は生産性を引き下げ、最終的にはマクロ経済の成長鈍化という形で顕在化してくる。過去20年で日本の名目GDPは約6%しか増えていないが、GDPの2割を占める政府支出は約30%も増加するなど税金からの支出に依存する状況が続く。本来は企業の設備投資が経済を牽引し、消費を伸ばしていく必要があるが、企業の設備投資が成長に結び付いていない。 日本の輸出がGDPに占める割合はドイツと比べると圧倒的に低く、日本はもはや輸出立国ではない。だが産業構造は輸出主導型のままであり、国内需要を拡大させるための設備投資が十分に行われているとは言い難い。 国内向けの設備投資が不十分というのは企業の側にも自覚があるようで、あえて投資を絞っていると考えられる。その証拠に、実質金利の低下を通じて設備投資を増やす政策だった量的緩和策に対して企業は全く無反応であった。設備投資を有効活用するためには、産業構造の転換が不可欠であり、企業自身の体質転換が進まなければ、投資を増やすことはできない』、安部政権は企業減税をしたが、それは「設備投資」増加につながらず、内部留保の増加だけに終わったようだ。
・『6. サプライチェーンの縮小  産業の合理化が進み、企業の生産性が高まると、同じ付加価値を得るために必要な労働者数が減少する。余剰となった労働力を新しい製品やサービスの生産に振り向ければGDPの絶対値を増やすことができる。 今回のコロナ危機では、各企業のサプライチェーンが寸断され、一部では物資の調達が滞るという事態が発生した。企業は拡大したサプライチェーンの縮小を検討しており、一部製品の製造を国内に回帰させる可能性がある。国内で生産するには追加の労働力が必要となり、高いコストを負担するためには消費者の購買力を増やさなければならない(つまり賃金上昇)。産業合理化による労働力の捻出と賃金上昇を実現できなければ、国内回帰は机上の空論となってしまうだろう』、「サプライチェーン」の再編は、かなり時間をかけて行われる可能性がある。
・『7. 「異常な」住宅政策  コロナ後の社会はサプライチェーンが縮小し、全世界的に地産地消化が進むと考えられる。こうした時代において持続的な成長を実現するには、日本国内で製品やサービスを開発し、日本人自身の需要でこれらを消費するという内需型経済への転換が必須となる。 内需経済のカギを握るのは住宅の整備であり、内需経済が活発な国はほぼ例外なく住宅政策が充実している。日本はこれまで建設業界などからの強い要望もあり、新築物件の建設を最優先する政策を続けてきた。このため安価で粗悪な新築物件が大量供給され、造っては壊すという資源の浪費を繰り返す結果となった。日本は本格的な人口減少が始まっているにもかかわらず、流通する住宅の8割以上が新築物件という異常な市場環境である。 在宅勤務するビジネスパーソンが増えたことから、住環境の問題が改めて認識されているが、家の環境というのは政策でいくらでも変えることができる。内需で経済を回すためには、良質な中古住宅の流通を増やすと同時に、一生涯賃貸でも問題のないよう、都市部を中心に優良賃貸物件の整備を積極的に進める必要があるだろう』、「日本はこれまで建設業界などからの強い要望もあり、新築物件の建設を最優先する政策を続けてきた。このため安価で粗悪な新築物件が大量供給され、造っては壊すという資源の浪費を繰り返す結果となった」、「新築物件の建設を最優先」は必ずしも「建設業界などからの強い要望」に基づいたものではなく、「建設業界」にとっても儲かる筈だったからだ。「良質な中古住宅の流通を増やす」、「優良賃貸物件の整備を積極的に進める」、などは放っておいても、業界自らが取り組むだろう。
・『一連の課題が解決されれば、日本経済はどのような姿になるのか。組織の合理化やIT化が進めば、企業の生産性が向上するので、より少ない社員数で同じ付加価値を得られる。人員の再配置は必要だろうが、余剰となった社員が新しい製品やサービスの生産に従事することで付加価値の絶対額が増え、最終的には賃金の上昇につながる。これは実質GDPの増大を伴う賃金上昇なので、労働者の購買力を拡大させる結果となるだろう(つまり生活が豊かになる)。 企業における社員の評価も労働時間ではなく成果が基準となるので、社員が提供した職務に対して対価を支払うという、いわゆるジョブ型の組織形態へシフトする。採用された時期や採用形態によって、同じ職務でも賃金が異なるというアンフェアな状況は改善される可能性が高い。組織に忠誠を示す必要がなくなるので、強制転勤や単身赴任といった慣習も消滅するだろう。 生活にゆとりが生じ、家にいる時間も相対的に長くなるため、自分と向き合う時間や家族との時間が増える。結果として住設機器や家具、家庭用品、趣味、デジタルコンテンツといった消費が拡大し、これが新しい時代における成長の原動力となる。 もっともジョブ型の組織形態は、終身雇用、年功序列、新卒一括採用に代表される、いわゆる日本型雇用制度とは相いれない。ジョブ型の組織形態に移行するということは、日本型雇用との決別を意味していると考えるべきだろう。 一部の人は不安に思うかもしれないが、従来は一つの会社にしがみつくしか人生の選択肢がなく、こうした硬直的な制度の存在がプライベートな生活を犠牲にし、豊かな消費社会の形成を阻害してきた。一定のスキルさえ身に付ければ、自身のライフスタイルに合わせていくらでも勤務先を変えられるほうが、総合的な満足度は高いのではないだろうか。 今、日本が向かおうとしている新しい社会は、いわゆるグローバルスタンダードそのものである。日本では英語を話したり、外国で活躍することをグローバルスタンダードと見なす雰囲気があるが、それはグローバル社会のごく一面を切り取ったものにすぎない。長時間労働しなくても一定の賃金を稼ぐことができ、相応の豊かな生活を送れることこそが、本当の意味でのグローバルスタンダードであり、これは決して特別なことではないのだ』、「ジョブ型の組織形態に移行」、は時代の流れなのだろうが、日本の労働組合が弱すぎ、チェック役を果たせるのか、いささか心もとないのが心配だ。
タグ:(その10)(日本企業で出世する人たち じつは「超低学歴」ばかりになっていた…!、コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは、日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば 経済復活への道が開ける) 日本のリーダーが「おかしな」理由 日本型経営・組織の問題点 「現場迎合主義」に陥ってしまう 一般原理原則から、新しく発生したできごとを演繹して考える。あるいは、いろいろな物事を組み合わせて創造する。そういう思考訓練をきちんとできないといけない。いま危ないと思うのは、そういう思考力を評価する仕組みが日本社会全体にないことです 「徹夜で麻雀できる人」が出世する社会 7. 「異常な」住宅政策 Newsweek日本版 国際的に驚くほど「低学歴」な日本企業の経営陣たち インターネットの普及で、デジタル革命も始まって、産業の変化のスピードが爆発的に変化した。オペレーショナルな業務を磨くだけのムラ社会型の会社では、変化に対応できなくなった 2. デジタルシフト アメリカの大学院で学んだことなんて、すべて捨てろ、忘れろ、経営陣から言われるわけです。それで徹夜で麻雀に付き合えと。そうしないと本当に出世できなかったわけです 社長が次の社長を決めるというムラ社会の掟の心臓部を変える改革です。ただ、こうした制度を入れている大企業は、まだ少数ですね 心を鬼にして、むしろ早すぎるくらいのタイミングで転換を図れるようなリーダーじゃないと、結果的により多くの人を失業に追い込んでしまう。最後は絶対に一億総玉砕になりますから 3. ムラ社会的組織の終焉 「本当の学力」が評価されないニッポン 4. 下請けと中抜き ジョブ型の組織形態に移行 社長が「次の社長」を決めるというムラ社 現代ビジネス 「日本企業で出世する人たち、じつは「超低学歴」ばかりになっていた…!」 感染症の流行は変化のスピードを加速させる作用を持っており、コロナ危機によって、10年かかると思われていた変化が3~4年で実現する可能性も指摘 6. サプライチェーンの縮小 1. 需要変化への対応 対談 「一億総玉砕」しないために 日本の労働組合が弱すぎ、チェック役を果たせるのか、いささか心もとないのが心配だ 「コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは」 「時代劇化」した日本企業 冨山 和彦 小野 一起 日本的経営は「学歴抑制効果」が働いている 日本企業はそんな一億億総玉砕を何度も繰り返しているんです。「半導体玉砕」、「液晶玉砕」、「テレビ玉砕」 「現場主義」と「現場迎合主義」を混同している経営者が日本的大企業には、やたらと多い 日本企業に蔓延する「偉い人たちのおかしさ」 「日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば、経済復活への道が開ける」 加谷珪一 早慶卒、体育会系出身が「最強」という現実 5. 不十分な設備投資
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日韓関係(その11)(韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?、輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下 韓国への企業誘致進む、日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ) [外交]

昨日の韓国(文在寅大統領)に続いて、日韓関係(その11)(韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?、輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下 韓国への企業誘致進む、日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ)を取上げよう。なお、前回は7月11日に取上げた。

先ずは、7月15日付けNewsweek日本版が掲載した広告プランナー兼コピーライターの佐々木和義氏による「韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/1-159_1.php
・『<日本政府が韓国向け輸出規制を実施してから1年余り、文在寅大統領は、官民の協力で核心素材を国産化し危機を克服して、「日本とは違う道歩む」と強調した......> 日本政府が韓国向け輸出規制を実施してから1年余りが経過し、2020年7月9日、文在寅大統領は訪問した京畿道利川のSKハイニックスで、日本政府の輸出規制のなか、官民の協力で核心素材を国産化したとし、また、1件の生産支障もなく危機を克服して、「日本とは違う道歩む」と強調した』、「日本政府の輸出規制」は裏目に出ているようだ。
・『半導体関連工場を抱える京畿道は、「脱日本技術独立」を宣言  朝鮮日報は、半導体の重要素材である気体フッ化水素を生産する日本の昭和電工の1年間の営業利益が59%減少した一方、韓国のラムテクノロジーは営業利益が74%増加したなどとして、輸出規制による被害は日本企業の方が大きいと報じた。 同紙はまた韓国の半導体企業が、素材の国産化や調達先の多角化に取り組み、大きな打撃もなく持ちこたえることができたと評価するが、業界は衝撃を最小化できたに過ぎないとみる。 2019年7月1日、日本政府が韓国向け輸出規制を発表すると、韓国の半導体とディスプレイ産業が大きな影響を受けるという見方が広がった。域内に多くの半導体関連工場を抱える京畿道は、「脱日本技術独立」を宣言して道内企業の研究開発支援に着手した。300億ウォン以上の技術開発費を支援し、19年10月からは1500億ウォンの特例保証を行って200社以上の設備や運転資金を支援した。今後5年間でさらに2000億ウォンを投じる予定だ』、「脱日本技術独立」に向け「技術開発費」や「設備や運転資金」を「支援」するとは中期的にも日本へ影響を与えるだろう。
・『日本製フッ化水素は12.5%まで低下  日本政府が最初に輸出を規制したフッ化水素、フォトレジスト(感光液)、フッ化ポリイミドは半導体とディスプレイの核心素材で、日本依存が90%に達していた。また、日本政府が韓国をグループA(旧ホワイト国)から除外して審査が強化された品目のうち、日本の輸出額が100万ドルを超え、かつ韓国の日本依存度が70%以上の品目の56.7%を半導体・ディスプレイ関連が占めている。 半導体メーカーのサムスン電子やSKハイニックス、ディスプレイメーカーのLGディスプレイやサムスンディスプレイが打撃を受けるとみられていたが、1年を振り返ってみて、いずれも大きな支障はなかった。 韓国貿易協会によると、19年1月から4月に輸入されたフッ化水素は日本製が44.7%を占めていたが、20年は12.5%まで低下した。ディスプレイメーカーは、液体フッ化水素を100%韓国製に切り替え、半導体は韓国製や中国から輸入して精製したフッ化水素の使用割合を増やし、日本製は重要な工程のみの使用に切り替えた。また、気体フッ化水素の一部をアメリカ製に替える多角化で対応した。 一方、日本依存が高まった品目も多い。半導体材料のシリコンウエハーは日本製の割合が前年の34.6%から40.7%に上昇した。炭素部品も規制前47.8%だった日本依存が56.7%に上昇するなど、韓国企業が日本から輸入している上位100品目のうち、34品目で日本依存の割合が上昇していた』、「1年を振り返ってみて、いずれも大きな支障はなかった」、「輸出規制」を打ち出した経産省にとっては、拍子抜けだろう。
・『実質的な輸出規制につながらないケースが多かった  経済団体の全国経済人連合会(全経連)は、調査会社に依頼して、金融業を除く売上高上位1000社のうち、日本から素材や部品、装備等を輸入している韓国企業を対象に、輸出規制強化後1年間の変化に関するアンケートを実施した。 23.5%が日本からの輸入で苦労したと答えたが、45.6%が苦労はなかったと回答した。また、68.5%が日本からの輸入を継続し、31.5%は国産など供給元の変更を試みたと回答したが、輸入額ベースでの供給元の変更は3.35%に過ぎなかった。 全経連は日本の措置が実質的な輸出規制につながらないケースが多かったと分析し、韓国貿易協会は輸出規制の実効力が小さいと見る日本政府の追加規制を危惧する。 韓国には日本企業とサムスンやLG等が合弁で設立した工場が多い。半導体素材企業の東京応化工業(TOK)は、サムスン物産と合弁で仁川に設立した工場で、サムスン電子向けフォトレジスト(感光液)を少量生産していたが、7月から本格生産を開始した。サムスン電子が調達先を拡大し、規制前0.4%だったベルギー製の割合が5.8%まで増加した。さらに米デュポン社が韓国工場を建設すると発表したため韓国工場の生産量を増やすことにした。 外国企業の出資割合が50%を超える現地法人の工場は税制優遇を受けられる上、安定供給が容易になる。ま た日本企業は核心技術を渡すことなく、売上げを維持できる。日本企業が韓国に設立した合弁工場は、日本から輸出する原料が規制を受けるが、生産自体は規制を受けないため供給への支障は小さく、数字上は韓国製にカウントされることになる』、「輸入額ベースでの供給元の変更は3.35%に過ぎなかった」、「日本の措置が実質的な輸出規制につながらないケースが多かった」、なるほど。

次に、7月30日付け東洋経済オンライン「輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下、韓国への企業誘致進む」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/365754
・『日本政府が韓国に対し、輸出管理で優遇措置を与えていた「ホワイト国」(グループA)指定から除外し、さらに半導体関連部材を包括輸出許可から個別の許可に切り替えてから1年が経った。これに対し韓国は強く反発し、国民の間では強力な「日本製品不買運動」も起きた。日本政府はこのような措置をとった理由として、1)輸出管理制度を運営するうえで、前提となる日韓間の信頼が喪失したこと、2)韓国の輸出管理で不適切な事案が発生したことを挙げたが、韓国側は元徴用工への賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決をはじめとする徴用工問題への報復と捉えている。この1年間、日韓の貿易はどう変わったのか。韓国経済に詳しい日本総合研究所調査部の向山英彦・上席主任研究員にその変化の軌跡を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは向山氏の回答)』、専門家の見解とは貴重だ。
・『韓国の「脱日本」の動きがはっきりと  Q:2019年の輸出管理措置の変更で、日韓では経済問題が外交問題となり、また国民の間で感情的な対立も生じてしまいました。その中で、日本では「輸出管理強化は韓国企業にダメージを与える」とする見方が多く、これに対抗して韓国政府は「国産化を進めて脱日本を図る」と主張してきました。 A:日本では韓国企業がダメージを受けるという見方が多くあった。輸出管理強化後の動きを、まずはデータで確認してみたい。日本側が包括許可から個別許可に切り替えた品目のうち、フォトレジストとフッ化水素の韓国の対日輸入額を見てみる。 フォトレジストの中で個別許可の対象になったのは微細化に必要なEUV(極端紫外線)向けだが、統計上は区別されない。19年前半のフォトレジストの輸入額は3000万ドル前後で推移していたが、7月の輸出管理強化の直前に駆け込み需要が発生して5000万ドルまで増加した。その後、いったんは2000万ドル超にまで減少したが、同年8月に最初の輸出許可が下り、12月に日韓の特定企業同士の取引に限り、最長3年間の許可を一括して得られるようになったため、現在では措置前の3000万ドル水準に戻ってきている。 Q:フォトレジストは日本企業が世界市場の約9割を占めている品目ですね。 A:そのとおりだ。フォトレジストに関しては、日本企業への依存が依然として続いていると言えるが、注意したいのは「脱日本」の動きが見られることだ。 1つは、サムスン電子が、日本企業であるJSRとベルギー企業との合弁会社からの調達を増やしたことが挙げられる。もう1つは、アメリカからの輸入先だったデュポンが2020年1月、韓国でEUV向けフォトレジストを生産する計画を発表した点が注目される。 顧客の近くで生産することでシェアを増やす狙いがあると思う。こうした状況下、シェアを奪われないために、東京応化工業が最近、仁川工場でEUV向けフォトレジストの量産を開始した』、「フォトレジスト」は「措置前の3000万ドル水準に戻ってきている」とはいえ、「サムスン電子が、JSRとベルギー企業との合弁会社からの調達を増やした」、「」、など今後は競合も激化しそうだ。
・『戻らないフッ化水素の輸入額、韓国の国産化が進む  Q:フッ化水素も、日本が世界で高シェアを占している品目です。またその品質や純度については、日本側から「韓国は絶対に超高純度品をつくれない」という声も聞かれました。 A:韓国にとってフッ化水素の輸入先は、中国が1位、日本が2位だ。半導体製造には500以上もの工程があり、その中でフッ化水素を使用する工程は10%程度を占める。工程ごとに使用する純度が違っており、超高純度のものの多くは日本から輸入していた。日本ではステラケミファと森田化学工業が主要メーカーだ。 データを見てみたい。韓国の輸入額は、輸出管理強化前は月600万~750万ドル規模で推移していたが、規制が本格化した8月以降は100万ドルを切り、現在でも100万ドル前後で推移している。日本企業には輸出許可が19年末に下りたにもかかわらず、フォトレジストとは対照的に、元の水準には到底及ばないレベルだ。 Q:韓国が言う「国産化」の影響でしょうか。 A:その影響がある。輸出管理強化後、韓国は国産化と輸入先の多角化を急ピッチで進め、昨年秋口あたりから国産品への代替が始まった。ディスプレイでは半導体ほど高純度のものを必要としないため、まずLGディスプレイが国産のフッ化水素に切り替えた。サムスン電子も19年9月、半導体製造工程の一部に国産品を投入し始めたと発表した。日本からの調達が難しくなったため、国内企業と協力して国産化に取り組んだ。 従来、日本から輸入していた高純度の液体フッ化水素を用いてエッチング剤を精製していたソルブレインなどの企業が、中国や台湾から液体フッ化水素を輸入し、生産に乗り出した。確かに、純度は日本製よりは低いと思われるが、半導体の生産に支障が出ていないことを考えれば、かなり高純度のものになっていると言える』、「フッ化水素」の「韓国の輸入額は・・・フォトレジストとは対照的に、元の水準には到底及ばないレベルだ」、もはや「高純度」も切り札ではなくなったようだ。
・『官民一体の取り組みで予想以上の成果  Q:韓国政府は、国産化支援や輸入先多角化、海外企業の誘致などの策を相次いで打ち出しました。その効果はどうでしょうか。 A:日本で予想していた以上の成果を上げていると思う。注目したいのは、半導体産業の強化に向けて、官民一体の取り組み体制ができつつあることだ。 市況の波が激しいとはいえ、半導体が将来の成長産業の1つであることは間違いない。中国の急速なキャッチアップに対抗するため、サムスン電子は近年、微細化水準の高いメモリ開発を進める一方、プロセッサやイメージセンサー、システム半導体などの非メモリ事業に力を入れ始めた。また今年6月には、ソウルから南へ1時間ほどの場所にある平澤(ピョンテク)工場にNAND型フラッシュメモリの生産ラインを建設すると発表した。アメリカの経済制裁で中国企業の生産が思うように進まない間に、圧倒的に優位な立場に立つ狙いがあると考えられる。 韓国政府も「システム半導体ビジョンと戦略」を打ち出し、自動車やバイオ・医療、IoTなどの分野で需要創出を図るほか、ファブレス企業の育成や人材育成、研究開発などを支援する計画だ。半導体産業の強化に向けて官民一体の体制が整備されつつある。 Q:韓国の経済構造は財閥をはじめ大企業中心です。日本のような中小企業への裾野拡大が半導体産業で進むのでしょうか。 A:その可能性はある。大企業主導の経済は韓国経済を確かに成長させたが、その弊害も多く生まれた。韓国の歴代政権は中小企業の育成を公約として掲げてきたが、構造問題を解消できず、大企業主導のままだ。ところが、輸出管理強化を契機に国産化が急務となり、大企業と中小企業が協力して開発を進める動きが始まった。この動きが本格化するかどうかは注視すべきことだが、韓国産業界でこれまであまり見られなかった関係が創出されている。この動きを軽視してはいけないと思う。 半導体産業の一段の成長が見込まれる中で、海外企業の韓国での生産も活発になっている。シリコンウエハでは台湾系企業が韓国で増産し、前述したデュポンの動きもある。日本企業でも、東京応化工業や関東電化工業などが現地生産を進めているほか、東京エレクトロンも技術支援センターを設立している』、「韓国」では「半導体産業の強化に向けて、官民一体の取り組み体制ができつつある」、「大企業と中小企業が協力して開発を進める動きが始まった」、など結果的には「韓国産業界」の競争力強化につながってしまったようだ。
・『日韓経済の分業体制は崩れるのか  Q:慰安婦や徴用工問題などの歴史問題で日韓関係が揺れる中、経済面では日韓は緊密な関係を構築・維持し、国際分業ではウィンウィンの関係にあると評価されてきました。そのような関係が崩れるのでしょうか。 A:日韓の経済関係を見ると、企業活動を通じて緊密なサプライチェーンが築かれ、ウィンウィンの関係が構築されてきていた。それが今回の輸出管理強化で揺らいだ。こうした状況下、日本企業は日本からの輸出に加えて、第三国からの韓国への輸出、韓国での現地生産拡大など、サプライチェーンの再編成を進めているのが現状だと言える。 韓国の半導体産業が発展していくのに伴い、今後、日韓だけでなく台湾や中国企業との協業が進む可能性もある。こうした環境変化の中で、日韓の企業は国家間の対立を乗り越えて、より高いレベルでの分業体制へと進んでいくことが予想される』、日本の経産省は韓国への武器になると思って振り回した輸出規制策が、裏目に出たことを真摯に反省するべきだろう。

第三に、8月6日付けプレジデント Digitalが掲載した政経ジャーナリストの麹町 文子氏による「日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/37657
・『GSOMIA失効も迫る8月  史上最悪の関係に冷え込んだ日本と韓国がいよいよ「8月開戦」を迎える。元徴用工への賠償に絡み、新日鉄住金(現日本製鉄)に資産差し押さえの通知が届いたとみなす公示送達の効力が8月4日に発生し、資産売却(現金化)手続きに入ることが可能になるためだ。 安倍晋三政権は繰り返し「現金化は深刻な状況を招く」と警告しているが、韓国の文在寅大統領はここぞとばかりに歴史問題を持ち出し、日本への一斉攻撃を仕掛けている。昨年は自ら拳を振り上げておきながら直前に日和ったGSOMIA(日韓軍事情報保護協定)の「失効リミット」も8月24日に迫る中、今年の夏は「恥知らずな大統領」とのあまりにもダルすぎる戦いを余儀なくされそうだ。 なぜ、かくも愚かで同じ過ちを繰り返すのか不思議でならない。現金化は、韓国の最高裁にあたる大法院が2018年10月に賠償を命じたことに基づき、韓国の裁判所が差し押さえた資産を強制的に売却・賠償する命令を出すことができるというものだが、少なくとも日本人の多くは1965年の日韓請求権協定で「解決済み」であることを知っている。日本政府が「明確な国際法違反だ」と憤るのは当然だろう。 にもかかわらず、韓国政府は「歴史を歪曲している」と反日カードを巧みに操り、国際世論を誘導することを好むようだ。さらに「ここが勝負時!」と見ているのか、最近の動きは常軌を逸している』、「韓国」の「国際世論を誘導」は誠に巧みで、日本政府は一体、何をやっているのだろうと腹が立つ。
・『軍艦島の世界遺産取り消し問題も勃発  「歴史的事実を歪曲し、犠牲者を再び傷つけている」 7月29日、ソウルで開催された世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に関する討論会で、文政権の朴良雨(パク・ヤンウ)文化体育観光相は長崎市の端島(通称・軍艦島)などの展示について、このように非難した。同観光相は米ブルームバーグ通信が7月24日配信したインタビューでも、展示内容について「全くのウソだ」「歴史の歪曲だ」と強調した。 「明治日本の産業革命遺産」は、2015年7月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録され、幕末の1850年代から明治初期の1910年までの23資産で構成。飛躍的な経済発展や文化交流などをうかがうことのできる集合体だ。だが、韓国は軍艦島での朝鮮人労働者への「差別的待遇」が十分に触れられていないとして反発し、遺産登録取り消しを求めている。韓国の大学教授も海外メディアに関連報道を求める書簡を送るなど、その動きは加速している。歴史問題を「国際舞台」にのせていくのは韓国の常とう手段だが、歴史的事実に照らしても国際法上も明らかにわが国固有の領土である竹島を不法占拠しておきながら、「歴史」を持ち出す姿勢には呆れてしまう』、私は「軍艦島の世界遺産」登録は、安部首相の復古趣味を満たすだけで、寝た子を起こすとして反対だった。
・『遺産は「1850年~1910年代」で構成  韓国側の理屈は、2015年の遺産登録の際に「犠牲者を記憶にとどめるための措置」として日本側が「情報センター」の設置を約束したにもかかわらず、6月から東京で一般公開された展示には朝鮮人労働者への「差別的待遇」を否定する証言と資料が含まれている、というものだ。 同観光相は「日本が国際社会との約束を放棄し、強制労働の真実を隠そうとし続けるなら世界遺産の精神と趣旨を否定、毀損きそんするものだ」と非難している。だが、先に触れたように同遺産は「1850年代~1910年」で構成されており、先の大戦とは直接の関係がないものであるのは明らかだ。せめて、人気テレビドラマ「コンフィデンスマンJP」の主人公「ダー子」のようにきれいな展開を見せてから言ってほしい。 日本政府の毅然きぜんとしない対応にも問題がある。菅義偉官房長官は「日本は世界遺産委員会の決議や勧告を真摯しんしに受け止め、約束した措置を誠実に履行している」と説明しているが、こうした「国際世論戦」を挑んでくる相手には配慮は不要で、反論すべきは強く出ていくべきだろう。なにかあるたびに「遺憾砲」ばかりを発するだけで終わりとするから、韓国のみならず中国や北朝鮮などになめられてしまう』、「遺産は「1850年~1910年代」で構成」との日本側の主張は、形式論に過ぎず、国際的にも通用しないだろう。その後の戦中の問題も踏まえて解説すべきだ。
・『暴走する文在寅と鈍感な安倍  実際、文政権による攻勢はエスカレートしている。日本政府は昨年7月、「安全保障上必要」として韓国への半導体材料など3品目の輸出管理厳格化に踏み切ったが、これに反発した韓国は国際的な貿易ルールに違反しているとして世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会の設置を求めて提訴。WTOは7月29日、小委員会設置を承認した。今後は国際機関での対立が続くことになるが、昨年4月には韓国による福島県などからの水産物輸入禁止措置をWTOが容認する判決が出ている。加えて、対日批判を繰り返してきた韓国高官はWTOの次期事務局長選に出馬しており、韓国を「何をしてくるのか分からない国家」として見た場合、貿易摩擦の先行きも怪しい。 最近では、韓国・江原道平昌にある「韓国自生植物園」に慰安婦像の前でひざまずいて謝罪する安倍総理を模した像が設置され、日本国民の感情を逆なでしている。菅官房長官は7月28日の記者会見で「国際儀礼上許されない。日韓関係に決定的な影響を与える」と反発したが、そんなことを言っている場合ではないだろう。2015年12月に朴槿恵政権との間で「最終的かつ不可逆的な合意」に署名したのは、他ならぬ安倍政権ではないか。もはや「地球儀を俯瞰する外交」と称して、強い外交をうたっていた政権とは思えないレベルにあると感じてしまう。巨額の税金を投入して布マスクを配布したり、新型コロナウイルスの感染再拡大時に観光需要喚起策として「Go Toトラベルキャンペーン」を前倒し実施したり、国民の不安や不満にあまりにも鈍感すぎる』、「輸出管理厳格化・・・に反発した韓国は国際的な貿易ルールに違反しているとして世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会の設置を求めて提訴。WTOは7月29日、小委員会設置を承認」、日本は門前払いを期待していただけに、既に一敗である。「韓国高官はWTOの次期事務局長選に出馬」、というほど影響力が強いのであれば、「小委員会」の結論も楽観できない。「韓国」は国連事務総長を出すほど、外交力は日本より遥かに強いようだ。
・『文在寅「焦り」の原因  ここで頭に入れておかなければいけないことがある。それは文大統領の「焦り」だ。1つは国内世論で、韓国の世論調査会社「リアルメーター」が7月30日発表した調査結果によると、文大統領の支持率は10週ぶりに上昇したとはいえ45.6%にとどまり、不支持率は50.1%に上っている。あれだけ時間と費用をかけて、似合わない「ほほ笑み」を浴びせ続けてきたにもかかわらず、北朝鮮実質ナンバー2の金与正朝鮮労働党第1副部長から完全にフラれてしまい、対北朝鮮政策は座礁に乗り上げている。新型コロナウイルス対策も吹聴しているようには奏功していないのが現実だ。 もう1つは、国際世論にある。米国のドナルド・トランプ大統領は5月、先進7カ国(G7)首脳会議が「時代遅れ」として、G7に韓国やロシア、豪州、インドを招待する意向を表明した。中国との摩擦が激しさを増し、対中共闘で手を組むことをにらんだ動きで、米国のマイク・ポンぺオ国務長官も7月末に「欧州全域のパートナー、インド、日本、韓国、豪州」の名を挙げている。韓国にとって「世界を導くリーダー国の仲間入り」をすることは誇らしいことであり、是が非でも参加したい一大イベントになることは間違いない。その舞台として検討されているのが8月下旬の米国での拡大会合だ』、「G7首脳会議」の議長国は米国だが、日本は欧州と手を組んで「枠組みを維持」に注力すべきだ。
・『“8月戦争”を日本政府はどう乗り切るか  だが、日本政府は「G7そのものの枠組みを維持することは極めて重要だ」(菅官房長官)と韓国の参加には否定的だ。G7の正式メンバーになるためには全参加国の同意が必要で、現状のままなら韓国は「不合格」となる。このため、韓国の青瓦台(大統領府)高官は「隣国に害を与えることになれた日本の一貫して反省しない態度にはもう驚きもしない」「恥知らず」と強く批判したと報じられている。安倍政権と同様に「外交」を売りにしてきた文大統領が対北朝鮮だけでなく、この「一大イベント」で失敗すれば韓国内の失望は計り知れないものになるだろう。 さまざまなことが集中する8月に入り、もはや焦りを隠せない文政権を相手に安倍政権は油断も躊躇も配慮もすることなく、毅然として国際世論戦で勝ち残っていくだけの発信力をつけなければならない。それが国益を守ることであり、「ポスト安倍」の条件にもなることは言うまでもない』、「日本」の「外交」力のなさは本当に情けない。「外交」の世界では「沈黙は負け」である。国際会議の場で、ビジョンを持って、弁舌さわやかに主張できるような人材がいないのも寂しい限りだ。
タグ:“8月戦争”を日本政府はどう乗り切るか 文在寅「焦り」の原因 韓国高官はWTOの次期事務局長選に出馬 世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会の設置を求めて提訴。WTOは7月29日、小委員会設置を承認 暴走する文在寅と鈍感な安倍 「遺産は「1850年~1910年代」で構成」との日本側の主張は、形式論に過ぎず、国際的にも通用しないだろう 遺産は「1850年~1910年代」で構成 私は「軍艦島の世界遺産」登録は、安部首相の復古趣味を満たすだけで、寝た子を起こすとして反対 軍艦島の世界遺産取り消し問題も勃発 「韓国」の「国際世論を誘導」は誠に巧みで、日本政府は一体、何をやっているのだろうと腹が立つ 元徴用工への賠償に絡み、新日鉄住金(現日本製鉄)に資産差し押さえの通知が届いたとみなす公示送達の効力が8月4日に発生し、資産売却(現金化)手続きに入ることが可能になる GSOMIA失効も迫る8月 「日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ」 麹町 文子 プレジデント Digital 日韓経済の分業体制は崩れるのか 結果的には「韓国産業界」の競争力強化につながってしまった 輸出管理強化を契機に国産化が急務となり、大企業と中小企業が協力して開発を進める動きが始まった 半導体産業の強化に向けて、官民一体の取り組み体制ができつつある 日本で予想していた以上の成果を上げていると思う 官民一体の取り組みで予想以上の成果 戻らないフッ化水素の輸入額、韓国の国産化が進む デュポンが」「韓国でEUV向けフォトレジストを生産する計画を発表した サムスン電子が、JSRとベルギー企業との合弁会社からの調達を増やした フォトレジスト 韓国の「脱日本」の動きがはっきりと 日本総合研究所調査部の向山英彦・上席主任研究員 「輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下、韓国への企業誘致進む」 東洋経済オンライン 日本の措置が実質的な輸出規制につながらないケースが多かった 輸入額ベースでの供給元の変更は3.35%に過ぎなかった 実質的な輸出規制につながらないケースが多かった 1年を振り返ってみて、いずれも大きな支障はなかった 日本製フッ化水素は12.5%まで低下 「脱日本技術独立」に向け「技術開発費」や「設備や運転資金」を「支援」 半導体関連工場を抱える京畿道は、「脱日本技術独立」を宣言 文在寅大統領は、官民の協力で核心素材を国産化し危機を克服して、「日本とは違う道歩む」と強調した 「韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?」 佐々木和義 Newsweek日本版 (その11)(韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?、輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下 韓国への企業誘致進む、日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ) 日韓関係
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韓国(文在寅大統領)(その5)(韓国大統領の有力候補 ソウル市長が自殺に追い込まれた本当の理由、韓国憤然 外交官のセクハラ事件で国際的恥さらし 韓国が直面した「もう一つのセクハラ事件」 NZとの外交問題に、ベトナム民間人虐殺 韓国政府提訴へ 「村人を1カ所に集めては手榴弾を……」残虐な加害の実態、韓国・文大統領の意味不明な「自画自賛」が示す 経済悪化の深刻さ) [世界情勢]

韓国(文在寅大統領)については、6月19日に取上げた。今日は、(その5)(韓国大統領の有力候補 ソウル市長が自殺に追い込まれた本当の理由、韓国憤然 外交官のセクハラ事件で国際的恥さらし 韓国が直面した「もう一つのセクハラ事件」 NZとの外交問題に、ベトナム民間人虐殺 韓国政府提訴へ 「村人を1カ所に集めては手榴弾を……」残虐な加害の実態、韓国・文大統領の意味不明な「自画自賛」が示す 経済悪化の深刻さ)である。

先ずは、7月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際政治評論家・翻訳家の白川 司氏による「韓国大統領の有力候補、ソウル市長が自殺に追い込まれた本当の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/243091
・『韓国の朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が7月10日、市内の山中で遺体として発見され、その後、韓国警察により自殺と断定された。次期大統領の有力候補であった朴氏は、なぜ自殺しなければならなかったのか』、「次期大統領の有力候補であった朴氏」が「セクハラ」疑惑で自殺とは衝撃的だ。
・『「ポスト文在寅」と目されていた朴市長  元秘書女性から「2017年からセクハラの被害を受けてきた」と告訴された朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が、その2日後の7月10日に亡くなったことが報じられて、韓国社会に衝撃が走った。 朴市長は告訴された翌日の7月9日の公務をすべてキャンセルして、遺書らしきメッセージを家族に残して失踪。ソウル市内の山中で遺体として発見された。韓国警察は自殺と断定した。ソウル市の運営は徐正協(ソ・ジョンヒョプ)副市長が来年4月の補欠選挙まで受け持つこととなった。 朴市長は文在寅大統領の「共に民主党」に所属し、人権弁護士として名をはせた市民運動家出身の政治家である。 朴氏の名前を世に知らしめたのが、1993年の「ソウル大学ウ助教セクハラ事件」である。この事件はソウル大学に勤める女性の助教が、教授から受けていたセクハラを訴えたもの。朴氏はその弁護を無料で引き受けて、6年もの法廷闘争の末勝訴を勝ち取った。これは韓国で初めてセクハラ被害が認められた契機となった。朴氏は韓国社会に「セクハラ」の概念を普及させた功労者だったわけである。 その後、朴氏はフェミニズムに理解のある人権派弁護士として名を成し、女性団体などから熱烈な支持を受けたことが、現在までの出世に寄与したといえるだろう。 ソウル市長は、韓国では大統領に次ぐ重職だと考えられている。ソウル市長から大統領になった人物としては李明博(イ・ミョンバク)氏がいるが、朴市長もポスト文在寅の有力候補だと目されていた人物だった。 朴市長は2011年からソウル市長に就任しており、今期で3期目。弱者救済や環境保護の観点からの政策をいくつも実現して、評価は高かった。本人が大統領職に対して公に意欲を示したことはなかったようだが、「次は大統領選挙に出るだろう」と思っていた人は多く、与党内での支持もあった』、「朴氏は韓国社会に「セクハラ」の概念を普及させた功労者だった」、のが自ら「セクハラ」をしていたとは皮肉だ。
・『#MeToo運動が盛り上がる韓国  アメリカ発の#MeToo運動が世界的な盛り上がりを見せたが、アジア圏でも例外的なほどの盛り上がりを見せたのが韓国だった。 #MeToo運動は、セクハラやパワハラに声を上げられない女性が、勇気ある女性の発言に追随する形で被害を告発して、社会を変えていこうという運動である。なかなか声を上げることができない弱い立場にある女性のための連帯運動だと言っていいだろう。 典型的には、ツイッターでセクハラ被害を告白した投稿に対して、自分も同じような経験したことを#MeTooというハッシュタグでリツイートして、自らの被害も告白するという形になる。 私の体感では、日本では他国ほどは盛り上がらず、2017年にブロガーのはあちゅう氏が電通時代のパワハラを告白したことや、2018年に財務次官セクハラ疑惑で野党政治家がハリウッドをまねて黒い服を着て抗議したことなどが記憶に残るくらいだ。 それに対して、韓国では2018年に秘書女性への性的暴行を告発された安熙正(アン・ヒジョン)忠清南道知事が実刑判決を受け、2020年4月に釜山市の呉巨敦(オ・ゴドン)市長が女性職員からセクハラ被害を告発されて辞職するなど、#MeToo運動が大きなうねりになっている。 それだけに、フェミニズム運動の中心人物として高名な朴市長がセクハラで告訴されたことは、本人にはもちろん、関係団体や支持者にもダメージを与えたことは想像にかたくない。 ただ、朴市長はもともとセクハラ体質の強い人物で、しかも悪質だったと報じている韓国メディアもある。被害を告白した元秘書の女性によれば、性的なメッセージを何度も送り、ボディータッチも頻繁に行っていたとある。「朴市長自身の卑猥な画像を送って、相手の卑猥画像を要求していた」という報道もあり、それが事実であれば儒教社会の韓国では壊滅的なイメージダウンになったはずである。 韓国は、特に女性は実力以上に容姿が重視されて、女性らしさを過度に求められる典型的な男性上位社会だといわれることがある。そのために、美容整形手術が一般レベルに浸透していることは日本でも知られている。 以前、ダイヤモンド・オンラインに寄稿した『韓国の自殺率はなぜOECD加盟国でトップになったのか』でも書いたように、1997年のアジア通貨危機で韓国経済は壊滅的なダメージを受けて、労働者に過剰なサービス残業を強いる超ストレス社会になっている。日本より貧富の差が激しく、日本以上に企業への忠誠心が求められる。 韓国はもともと儒教の影響が根強く年上の発言力が強いので、企業においても上下関係にはかなり厳しい。それだけに、上司の言うことに逆らえない雰囲気があるといわれる。 また、儒教的な教えを自分に課すだけでなく、ネット時代からは相手に儒教的な態度を求める傾向が強まっている。 特に標的になっているのが政治家やタレントなどの著名人たちだ。「反日が倫理」の韓国では、本人たちが気づかない程度の親日的な言動をしたとか、女性としてちょっと奔放な発言をしたといっただけでも、大バッシングに発展することがある。日本でも女子プロレスラーの木村花さんが自殺した事件があったが、韓国では同じような自殺が頻繁に起きている』、「韓国は、特に女性は実力以上に容姿が重視されて、女性らしさを過度に求められる典型的な男性上位社会」、「儒教の影響が根強く年上の発言力が強いので、企業においても上下関係にはかなり厳しい。それだけに、上司の言うことに逆らえない雰囲気があるといわれる」、背景には社会構造もあるようだ。
・『通貨危機が招いた保守の弱体化  韓国政治は保守派と革新派が拮抗(きっこう)して成り立っているが、通貨危機以前の韓国は、保守派が力を持っていた。政権を担っている保守派に、革新派が立ち向かっていくという構図があった。もともと労働組合の力が強く、ストライキも頻繁に起こっていた。 ところが、1997年の通貨危機で、国際通貨基金(IMF)の指導を受けてからは保守派の力が急速に衰えた。IMF指導はいまだに韓国国民からは「恥辱の歴史」として語られることが多い。リストラや労働強化による超ストレス社会になってからは、革新系の影響力が増して革新政党が躍進した。 1998年には革新系の金大中(キム・デジュン)氏が大統領になり、それを引き継ぐ形で2003年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏が大統領になった。この2つの政権が、現在の文在寅政権の土台を作ったと言っていいだろう。 保守派が強く、それを革新派が攻撃するという構図であれば革新派がストッパーの役割をして「チェック・アンド・バランス」が働くが、革新派が政権に就くと「反日」という手段が使えない保守派は、政権にまともに対抗できない。現在がまさにその状態である。 文政権下で保守である朴槿恵前大統領が社会的に抹殺されようとしており、文在寅大統領は「司法改革」などでさらに独裁色を強めて、保守派はさらに追い詰められている。 革新与党に対してストッパーが効かないという現在の状態こそが、政治家の暴走を許す要因になっているのだと考えている。文政権ではいくつもの不祥事が起きているが、処分が曖昧なままやり過ごされることが少なくない。保守派には厳しいが身内にはとことん甘いことが、現政権の特徴だ』、「革新派が政権に就くと「反日」という手段が使えない保守派は、政権にまともに対抗できない。現在がまさにその状態である」、「革新与党に対してストッパーが効かないという現在の状態こそが、政治家の暴走を許す要因になっている」、困った状態だ。
・『7月に起きたもう1つの自殺  7月は実はもう1つの自殺が話題になっていた。7月2日、22歳の女子トライアスロン選手のチェ・スクヒョン氏の自殺である。 チェ選手が監督やドクターや先輩選手からかなり激しいいじめを受け続けて、自殺前には母親に「お母さん、愛してる。あの人たちの罪を明らかにして」とメッセージを送ったと報じられている。 遺族によると「お前は毎日、殴られなければならない」などと言いながらコーチなどから20分もの暴行を受けたり、頬を20回以上たたかれた揚げ句に胸や腹を蹴ったり頭をつかんで壁に押しつけられるなどの暴行を受けそうだ。 ほかにも、選手3人に20万ウォンのパンを買わされ、すべて食べさせられるといういじめも受けていたとも。遺族は警察、検察、トライアスロン協会などにチェ選手へのいじめを告発したが、まともに対処してもらえなかったという。 この自殺は韓国社会に大きな衝撃を与えて、コーチやドクターらは大バッシングを受けており、加害者2人が永久除名、1人が10年資格停止など懲戒を受けている。ただし、本人たちはいじめを否定しており、これからは裁判で争われる。 組織と選手の対立はどんな国でも珍しくないが、壮絶ないじめが行われていたことがわかっても対処しないというのは、組織内で権限のある者を調査・処分するのが難しいことの表れだろう。組織内の監視体制が整っていないのだと考えられる。 もちろんこれはスポーツに限ったことではなく、だからこそ立場の弱い女性たちがそれに対抗するには#MeToo運動が必要になるということなのだろう』、「女子トライアスロン選手のチェ・スクヒョン氏の自殺」、「遺族は警察、検察、トライアスロン協会などにチェ選手へのいじめを告発したが、まともに対処してもらえなかったという」、驚くべき隠蔽体質だ。
・『告訴した被害者がバッシングの対象に  元秘書のセクハラ告訴の捜査は、朴市長の自殺で終了となった。韓国では基本的に死んだ者は罪に問われないので、自殺は自分の悪評を防ぎ、家族を守るための方策という面もある。 実は、朴市長の自殺をきっかけに、セクハラで告訴した元秘書に対するバッシングが起こっている。「身元を暴き出して制裁を加えろ」といった趣旨の過激なネットの書き込みもあって、かなりの賛同を受け、問題となっている。 現在はこういった書き込みはすべて削除されている。 だが、セクハラを「小さいこと」ととらえて、告発者をバッシングするという風潮も根強く、被害者が責められることから、怖くて告発できないという面もあるようだ。今回も勇気を出して告訴しても、結局、相手の自殺によって自分がまた危ない目に遭うという二重の被害を受けたことになっている。 朴市長の自殺によって、肝心のセクハラ疑惑は宙に浮くことになった。セクハラの告発から、権力者の自殺、被害者バッシングと、本事件は韓国社会が抱えるいくつもの問題点が凝縮されている』、「セクハラを「小さいこと」ととらえて、告発者をバッシングするという風潮も根強く、被害者が責められることから、怖くて告発できないという面もあるようだ」、「韓国」で「セクハラ」体質が是正されるには、まだ時間がかかりそうだ。

次に、8月5日付けJBPressが掲載したジャーナリストの李 正宣氏による「韓国憤然、外交官のセクハラ事件で国際的恥さらし 韓国が直面した「もう一つのセクハラ事件」、NZとの外交問題に」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61571
・『次期大統領の有力候補だった朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長のセクハラ疑惑と自殺事件が国民に大きな衝撃を与えている韓国で、3年前に韓国の外交官が犯したセクハラ事件が外交問題にまで発展している。 7月28日、韓国の大統領府は、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領とジャシンダ・アーダーン・ニュージーランド首相との電話会談が行われたと発表した。大統領府によると、この日の主な議題はWTO事務総長選挙とコロナへの対応に関する両国間の協力事項だった。文大統領はアーダーン首相にWTO事務総長に出馬した柳明桓(ユ・ミョンヒ)氏に対する支持を要請し、アーダーン首相は「貿易を重視する国であるニュージーランドはWTO事務総長選出に関心が高い」、「柳氏が非常に優れた資質を備えたと聞いており、関心を持って見守っている」と答えた。コロナ・ワクチン開発および生産、公正な供給などコロナ対応にも協力することも論議されたそうだ。大統領府は、全体的にアーダーン首相の発言は「徳談(幸運と成功を祈る話)ばかりだった」と自評した。 しかし、実はこの日の電話会談は、「徳談ばかり」とは言い難い、“深刻な”議題が含まれていた。3年前、駐ニュージーランド韓国大使館で発生した韓国外交官のセクハラ事件について、ニュージーランド側から問題提起があったのだ。韓国の大統領府では「両首脳が韓国外交官のセクハラ疑惑についても意見を交わした」と簡単に言及しただけだったが、ニュージーランドの現地メディアはこの問題について特筆大書し、韓国政府の非協力的な態度を非難する事態となった』、「駐ニュージーランド韓国大使館で発生した韓国外交官のセクハラ事件について、ニュージーランド側から問題提起があった」、驚くべき事件だ。
・『現地の男性職員にセクハラ  2017年12月、駐ニュージーランド韓国大使館に勤務するニュージーランド人男性が、A公使参事官からセクハラを受けたと問題を提起した。A氏が尻や胸などに不適切に接触してきたという内容だった。被害者はA氏に問題を提起したが、その後も大使館のエレベーターの中でA氏に股間などを触られたと主張した。 韓国外交部によると、A氏は接触した事実は認めながらもセクハラの意図はなかった、と否認したという。だが、韓国外交部はA氏を2018年2月にフィリピン大使館に異動させた。 その後、2018年10月に外交部がニュージーランド大使館に対する定期監査を行った際、被害者がA氏によるセクハラ事件を再び問題提起。外交部は再調査後、2019年2月にA氏に対して「1カ月減給」のペナルティを課した。 しかし、被害者はこれに納得できないとし、現地警察に被害事実を届け出、2019年9月からニュージーランド警察が事件捜査を開始していた。ニュージーランド警察は韓国大使館内のCCTV(防犯カメラ)や内部文書の確認を要請。さらに韓国外交官たちを参考人として取り調べることを求めた。これに対して、韓国外交部は「免責特権」を主張し、ニュージーランド警察の要請を黙殺してきた。今年2月に、ニュージーランドの裁判所がA氏に対する逮捕状を発付してからも、だ』、こんな破廉恥事件に対しては、「免責特権」など主張できない筈だ。「ニュージーランドの裁判所がA氏に対する逮捕状を発付してからも」、「警察の要請を黙殺」、とは驚くべき対応だ。
・『ニュージーランドは首相、副首相、外交部が相次ぎ韓国批判  この問題が再び浮上し始めたのは、7月10日の朴元淳氏の自殺後だった。ニュージーランドのマスコミは朴氏事件とともにA氏事件を扱い、韓国社会の性犯罪の実態にスポットを当てる報道を相次いで掲載しはじめたのだ。 ついには7月25日、ニュージーランドの某放送局がA氏の名前と顔を公開するに至った。こうして外交官によるセクハラ事件は外交問題にまで飛び火することになった。番組では「A外交官は最大で懲役7年に値するセクハラ行為を計3回犯した疑いが持たれている」「しかし韓国はニュージーランドの裁判所が出したA氏に対する逮捕状執行、事件発生当時に撮影された韓国大使館CCTV資料提供を拒否している」と報道した。この番組に出演したニュージーランドの教授は「韓国政府の捜査協力拒否は“正義に対する拒否”と思われる」と指摘した。 そうした中で行われたのが、7月28日の文在寅大統領とアーダーン首相との電話会談だ。アーダーン首相は電話会談の中で、この問題に対する韓国政府の協力を強く要請したが、その時の文大統領の反応はアーダーン首相を満足させるものではなかったのだろう。電話会談から2日後の30日、ニュージーランド外交部は、アーダーン首相が文大統領との電話会談で「韓国政府の対応に失望を表現した」と明らかにした。 ニュージーランドの批判はこれだけにとどまらなかった。8月1日にはピータース・ニュージーランド副総理兼外交部長官が番組に出演、「この問題はもう最高位まで上り詰め、文大統領も知っている事案」「韓国政府はA氏に外交官免責特権を放棄させ、ニュージーランドに返すべき」と要求した。さらに2日にはニュージーランド外交部スポークスマンが「昨年の9月、韓国大使館に対する警察の証拠調査が行われるように韓国政府に外交官免責特権放棄を要請したが拒否された」「がっかりする決定だ」と重ねて明らかにした。ニュージーランドの首相、副首相、外交部まで乗り出して韓国政府を猛非難したのだ。 これには韓国政府も黙っていられなかった』、通常であればこうした問題は、事務方で処理されるのに、「首相」までが乗り出したというのは「韓国」側の誠意のなさを反映したものだろう。
・『3年も放置したことで問題が大きく  韓国外交部は3日、フィリップ・ターナー駐韓ニュージーランド大使を呼びつけ、「両国間の公式的な司法手続きを活用せず、マスコミを通じてのみ問題を提起するのは外交慣例上非常に異例のことだ」「望ましくない」という立場を伝えたと発表した。つまり、ニュージーランドに対して「言論プレー」を警告したものだと韓国メディアは伝えた。 韓国内の政権寄りのメディアも援護射撃をした。 聯合ニュースは「ニュージーランド政府が今年9月の総選挙を控え、国内政治の目的のために『韓国叩き』に出たのではないかという見方も存在する」という疑惑を報じた。またやはり政府寄りのKBS放送は、韓国の外交部関係者の話として、「2020年初め、A氏と被害者が仲裁を図った」と明らかにした。「当時、被害者の主な要求は金銭的なものだった」「被害者は精神的、経済的被害補償を望んだが、条件が合わず(仲裁が)決裂した」という内容も伝えた。 だが、韓国政府もニュージーランド政府の要求に「ゼロ回答」を貫き通すことは難しいと判断したようだ。韓国外交部は、ニュージーランド大使を呼んで抗議した3日に、「A氏に対し、本日付で直ちに帰任するよう発令を出し、最短時間内に帰国するよう措置した。ニュージーランド側から公式な要請がある場合、刑事司法協力と容疑者引き渡しなどの手続きに沿って協力する」と明らかにしたのだ。 韓国内では、朴元淳市長事件の影響もあって、外交官の行為や韓国政府のこれまでの対応について、非難する声が日ごとに大きくなっていた。政府や外交部もその声に抗し切れなくなり、外交官A氏を差し出さざるを得なくなったのだろう。 ただ、3年間も蓋をしてきたことが、外交官のセクハラ事件を外交問題にまで発展させたと言える。メディアでは、この事件を「国際的恥さらし」とまで評している。改めて韓国国民は、韓国外交の無能さを感じているに違いない』、「韓国内では、朴元淳市長事件の影響もあって、外交官の行為や韓国政府のこれまでの対応について、非難する声が日ごとに大きくなっていた。政府や外交部もその声に抗し切れなくなり、外交官A氏を差し出さざるを得なくなったのだろう」、確かに「国際的恥さらし」だ。今後の韓国側の幕引きを注目したい。

第三に、8月10日付け文春オンラインが掲載したジャーナリストの赤石 晋一郎氏による「ベトナム民間人虐殺、韓国政府提訴へ 「村人を1カ所に集めては手榴弾を……」残虐な加害の実態――2020上半期BEST5 韓国政府に突きつけられる歴史問題」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/39481
・『2020年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。国際部門の第2位は、こちら!(初公開日 2020年4月30日)。 4月15日に行われた韓国総選挙で与党・共に民主党が過半数を上回る議席を獲得して勝利した。経済政策や北朝鮮問題で暗礁に乗り上げていた文在寅政権は、総選挙を受けて再浮上。文政権の失政を覆い隠したのが、コロナ禍であり、選挙戦で喧伝された「100年親日清算」などの反日スローガンであった。 国民の信任を得る形となった文政権下では、再び反日的な政策が推し進められそうな雲行きとなっている。 そうなれば慰安婦問題や徴用工問題など歴史問題が過熱することは必至である。 だが韓国政府には新たな歴史問題が突きつけられようとしていることが先日、明らかになった。それは、韓国軍の罪が問われる「ベトナム戦争」という歴史問題だ』、「韓国軍」による「ベトナム民間人虐殺」については、私は昔から知っていたが、ようやく問題化したようだ。
・『「ベトナム民間人虐殺」で韓国政府を初提訴  4月21日付の朝鮮日報オンライン版が〈「民弁「ベトナム民間人虐殺について賠償せよ」、韓国政府を初提訴」という記事を配信したのだ。 以下、記事を引用する。 〈ベトナム戦争の際に生き残った女性が、韓国軍に虐殺の被害を受けたとして大韓民国政府を相手取って訴訟を起こした。民主社会のための弁護士会(民弁)の「ベトナム戦争時期の韓国軍による民間人虐殺の真相究明のためのタスクフォース(民弁ベトナムTF)」は21日午前、ソウル中央地裁前で記者会見を開き、グエン・ティ・タンさん(60)=女性=を原告とする訴状を提出したと明らかにした。ベトナム戦争での民間人虐殺の被害を主張して韓国政府を訴えた初のケースとなる。 グエン・ティ・タンさんは8歳だった1968年12月、韓国軍に銃撃されて母親や姉、弟、伯母、いとこなどが犠牲になったとして訴訟を起こした。グエンさんと民弁TFによると、当時ベトナムのクアンナム省ポンニ村で韓国軍青竜部隊に所属する軍人らによる銃撃が発生し、非武装地帯の民間人74人が虐殺されたという〉 慰安婦問題や徴用工問題が太平洋戦争時の論争であるのに対して、ベトナム戦争はより新しい問題であるといえる。日韓歴史問題においては補償についての議論が度々行われてきたが、ベトナム戦争下における韓国軍の蛮行については、未だ公式な補償が行われていない。 この韓国軍によるベトナム人虐殺については、拙著「韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち」(小学館新書)でも詳述していた。 韓国軍の蛮行は韓国人女性ジャーナリストであるク・スジョン氏の調査によって1999年、初めて韓国内でも知られるようになった。 私はあるきっかけでベトナム戦争においての、韓国軍の所業を知ることになった。私が取材でホーチミンを訪れることになったきっかけや、ク・スジョン氏との出会いについて拙著の一節を紹介しよう。 『韓国人、韓国を叱る: 日韓歴史問題の新証言者たち』(赤石 晋一郎 著)小学館新書 「朝日新聞と同じ事が自国でもできないか」〈2014年にホーチミンに来たことには訳があった。  ソウルである韓国人大学教授とインタビュー後の雑談をしていたときに、こんな情報を耳にしたのだ。  「日本も悪いが、韓国も無罪ではない。朝日新聞が日本軍の罪を掘り下げたことに対して、韓国知識層はある種の憧れをもっている。自国でも同じ事が出来ないか、じつはそれを試みたこともあった。きみは『ハンギョレ21』のベトナム戦争の記事を知っているか?」  私はその記事を知らなかった。『ハンギョレ21』は左派メディアであるハンギョレ新聞が発行する週刊誌だった。ネットなどで調べると、『ハンギョレ21』でベトナム戦争についての記事が書かれていることがわかった。筆者は、ホーチミン在住のク・スジョンという女性だった。  さっそくeメールを送ると、「ベトナムに来てくれるなら、取材に応じてもいい」と返信が来た。これは話を聞くしかないと決意して、ソウルからホーチミンに飛ぶことにした。  ベトナムの強い日差しと活気ある街の風景は、気分を明るくしてくれる。自分が歴史問題について取材しているという、どこか暗い気持ちにさせられる感情も和らいだ。  だが街角でふと我に返らされた。よく見ると古い戦闘や戦車が、オブジェのように置かれている。ここホーチミンも、そう遠くない昔にベトナム戦争という修羅の時間を経験しているのだ。  ク・スジョン氏とはホテルマジェスティックで待ち合わせをすることになった。 サイゴン川の畔に建つホテルマジェスティックは、1925年に開業したヨーロッパ調の建物で有名なホテルだ。ベトナム戦争時には各国の記者や通信員が宿泊したホテルとしても知られている。作家の開高健氏やジャーナリストの近藤紘一氏も、新聞社の特派員として同ホテルを拠点にしていた。ミーハーな私は、少し心を躍らせながら取材に向かっていた』、どんな証言が得られるのだろうか。
・『「はたして日本人だけが悪いと言えるのでしょうか」  ロビーカフェに現れたク・スジョン氏は、真っ黒に日焼けし、優しい笑みたたえた女性だった。 彼女は自分の肩書きを「平和活動家」と自己紹介をした。彼女が日本メディアのインタビューを受けるのは初めてだという。 ク氏は開口一番、こう話を始めた。  「はたして日本人だけが悪いと言えるのでしょうか。韓国人も過去、ベトナム戦争で凄惨な行為をしていました。しかしその事実を、韓国社会はいまだに受け入れようとしないのです。  私がベトナム戦争での韓国軍の虐殺問題を知った契機は、1997年に手に入れた一通の資料でした。当時、私はホーチミン大学に留学しており、修士論文のテーマを探していた。そこでベトナム共産政府の政治局・戦争調査委員会がまとめた『南ベトナムでの南朝鮮(韓国)軍の罪』という報告書を見つけました。資料には韓国軍が5000人あまりの民間人を虐殺したと書かれていたのです。 私は韓国人として信じられない思いでした。この資料をどうすべきか、最初の数年間は悩みました。やがて私は、資料にまだ書かれていない事実があるかもしれないと思うようになり、行動を始めました。まずは大量の高麗人参茶を買い、ワゴン車に積み込みました。自分で調べよう、お茶を配りながら、虐殺の被害にあったという村の人々を訪ねてみようと決意を固めたのです。現地調査を重ねていくと、それ以上の事実が次々と明らかになったのです」) ク・スジョン氏は留学を終えてもベトナムに留まり続けた。ベトナム戦争における韓国軍の「犯罪」について緻密な調査を続けた。祖国の罪から目を背けることが出来なかったのだ』、「ク・スジョン氏」は韓国人ながら、「留学を終えてもベトナムに留まり続けた」、自分の国の恥部を調べようとは勇気ある行動だ。
・『「村人を一カ所に集めては手榴弾を投げつけられた」  韓国がベトナム戦争に参戦したのは、朴正煕政権時代のことだ。内戦に介入していた米国が北爆を開始し、ベトナム戦争が本格化。1964年から支援部隊を送っていた韓国も本格的な派兵を決める。南ベトナム政府からの要請という名目で1965年に集団的自衛権を行使し、朴大統領は延べ32万人もの兵士を投入したのである。 派兵されたのは「猛虎隊」、「青龍隊」、「白馬隊」と呼ばれる3部隊だった。大規模な虐殺が行われていたのは、主にフーイエン、ビンディン、クワンガイ、クワンナムの4か所。いずれも韓国軍駐屯地の周辺だった。  韓国軍はベトナム人から「ダイハン(大韓)」、「朴正煕の兵士達」と呼ばれ、怖れられていたという。  ク・スジョン氏が生々しい証言について語る。  「生き残った方々の証言から、村人を一カ所に集めては手榴弾を投げつけられた、生まれたばかりの乳児が40人以上も殺された、などという凄惨な話が次々と出てきました。機関銃で殺したり、洞窟に逃げ込んだ村民を催涙ガスで燻りだして銃殺するケースもあった。  なぜ虐殺が起きたのかといえば、韓国軍が基地を作るためでした。基地を作りたい場所の周辺に村があると、敵が潜伏する隠れ家になりやすい。そこで村人を戦略村(事実上の収容所)に送ろうとしたのですが、ほとんどの村人は村を離れようとしなかった。『私は1mmもここから離れません』と標語を掲げたり、木にしがみ付いて戦略村送りを拒否する村人が多かった。 そこで韓国軍が選んだ方法が虐殺だったのです。虐殺の85%は1966年に集中していますが、ほとんどは基地設営のためでした〉』、「虐殺の85%は1966年に集中していますが、ほとんどは基地設営のためでした」、なるほど。
・『戦争に関わった国すべてに問われるべき「歴史問題」  虐殺は「まるでウサギ狩りでもするかのように行われた」とク・スジョン氏は嘆いた。彼女は90年代から現在に至るまでベトナム戦争における韓国軍の問題の調査を続け、問題提起を続けてきた。  だがク・スジョン氏の正義感は裏目に出る。詳しくは拙著で確認して頂きたいが、彼女は行動を起こしたことによって韓国社会から非情ともいえる仕打ちを受けるーー。  戦争という厄災にどう決着をつけるのか。それは日本だけが問われる問題ではなく、数多ある戦争に関わった国すべてに問われるべき問題だ。  文政権が日韓歴史問題を声高に叫べば叫ぶほど、韓国もまたベトナム戦争という「歴史問題」に向き合うことが求められることになる』、「ク・スジョン氏・・・彼女は行動を起こしたことによって韓国社会から非情ともいえる仕打ちを受ける」、ありそうな話だ。冒頭の 「ベトナム戦争時期の韓国軍による民間人虐殺の真相究明のためのタスクフォース(民弁ベトナムTF)」による「「ベトナム民間人虐殺」で韓国政府を初提訴」の行方はどうなるのだろう。多分、「韓国政府」側の勝利に終わるのだろうが、注目したい。

第四に、8月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「韓国・文大統領の意味不明な「自画自賛」が示す、経済悪化の深刻さ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/244841
・『韓国の世論は「事の重大さ」に気づくべき  韓国経済が一段と厳しい環境を迎えている。4~6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率(速報値)は前期比3.3%減だった。韓国経済のGDP成長率は2四半期続けてマイナスに陥った。成長率の落ち込み幅は1998年の“アジア通貨危機”以来22年ぶりだ。GDPの4割程度を占める輸出が同16.6%減と、過去最大の落ち込みとなった影響は大きい。問題は、なかなか回復への道が見えてこないことだ。 それにもかかわらず、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は自国経済を「奇跡のように持ちこたえた」と主張した。景気後退局面で同氏が何を言いたいかがよくわからない。文氏の発言と異なり、韓国国内の経済環境は厳しさを増している。それは、文氏の支持率が9週連続で低下して44.4%をつけ、不支持率(52.2%)を下回ったことから見ても分かる。 今後、同氏は国内の不満をそらすため、わが国への強硬姿勢をこれまで以上に強めるだろう。そうした同氏の姿勢に国内からも批判の声が出始めているという。これからも文氏がわが国に対して強硬な姿勢をとり続けると、おそらく、日韓両国の関係はさらに悪化することが懸念される。それは両国の国民にとって決して好ましいことではない。文氏の過度な強硬姿勢にブレーキをかけられるのは韓国の世論だけだ。そろそろ、韓国の世論は「事の重大さ」に気が付いてほしいものだ』、「韓国の」産業界は「文氏」への影響力はないのだろうか。
・『未曽有の苦境を迎えている韓国経済  足元の韓国経済は、朝鮮戦争が休戦して以降、最も厳しい状況を迎えているといっても過言ではないだろう。特に、世界経済の低迷によって、韓国経済の成長を支えてきた輸出が減少基調を脱していない。 外需依存度の高い韓国では、輸出の動向が経済全体の活動を大きく左右する。過去の景気循環を振り返ると、輸出が増加する場合、韓国国内ではサムスン電子などが設備投資を積み増した。それは、雇用の維持と創出を支えただけでなく、建設投資の増加にも重要な役割を果たした。韓国経済にとって輸出が減少基調にあることは、まさに死活問題だ。 4~6月期の輸出減少に続き、7月に入ってからも韓国の輸出は減少している。7月1日から20日までの輸出を品目別にみると、これまで増勢を保ってきた半導体の輸出までもが減少し始めた。足元、米国の制裁強化に対応するため中国のファーウェイが、台湾のTSMCからの半導体在庫の確保を優先している影響は大きい。自動車、石油化学、鉄鋼など、韓国経済を支えてきた多くの産業が需要低迷に直面している。カタールからの発注に支えられて造船業界はある程度の活力を維持しているが、韓国全体の景況感の改善を支えるだけの力はないとみられる。 韓国の輸出が短期間で減少トレンドを脱する展開は想定しづらい。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降の世界経済を振り返ると、4月の上旬から中旬にかけてが底だった。それ以降、5月、6月と米国の緊急経済対策などが支えとなり、世界経済は徐々に、かつ緩やかに底を打ち、上向いた。 7月以降、世界的に感染が再拡大している。それによって、経済環境は再び悪化しつつある。米中対立の先鋭化も各国経済に重石だ。デジタル化など成長を支える動きも進んではいるものの、基礎資材や耐久消費財を中心に世界の需要が低迷し、貿易取引は下押し圧力にさらされている。当面、韓国の輸出は減少傾向をたどる可能性がある。それに加えて、韓国は中国への半導体供給を見直すよう米国から圧力をかけられている』、確かに八方塞がりのようだ。
・『失業率上昇や不動産価格の高騰などへの不満膨張  輸出が伸びない以上、韓国経済が安定を維持し、成長を目指すことは難しい。その状況下、韓国国内では生活の苦しさが増し、文政権への批判や不満が膨張している。韓国国内の経済環境を見渡すと、国民が不満を高める要因は少なくない。 まず、所得・雇用環境の悪化が鮮明だ。これまで文政権は、労働組合の支持獲得を狙って最低賃金を無理やりに引き上げた。それが若年層を中心に雇用機会を喪失させた。文大統領は人手不足が深刻化する中で労働時間の短縮を実施し、企業の収益力を追加的に削いだ。それに加えて、新型コロナウイルスの影響で韓国の観光、航空、小売りなどの収益は減少し、雇用情勢の悪化に拍車がかかっている。 また、首都圏を中心に不動産価格が高騰している。その背景には、人口問題、低金利、価格上昇への過度な期待などが複合的に絡み合っている。2019年、韓国の合計特殊出生率は0.92だった。韓国の人口問題はわが国以上に深刻だ。より多くのチャンスを求め大企業や官庁が集まるソウルを中心に人口が流入し、首都圏の人口は全体の半分を超える見通しだ。 ソウルへの一極集中と世界的な低金利環境が続く中、朴槿恵(パク・クネ)前大統領は景気刺激のために不動産開発規制を緩和した。その結果、富裕層などの投資(投機)資金がソウルのマンション市場などに流入し、“価格が上がるから買う、買うから上がる”という強気心理が連鎖した。マンション価格は市民の手が届かない水準まで高騰している。景気後退が進む中で家計の債務残高も増加し、人々が先行きに希望を持つことが難しくなっている。 経済の悪化にもかかわらず、文氏は自国経済を「奇跡のように持ちこたえた」と主張するなど、自らの成果を誇示する発言を繰り返している。経済環境が厳しさを増していることを考えると、経済運営を自画自賛する文氏の言動は信用できない。文氏の発言は、人々の心理を逆なでし、不支持率が支持率を上回った一因になっただろう。見方を変えれば、文氏は事実に背を向けて、政策の正当性を訴えなければならないほど苦しい状況に追い込まれているとみるべきだ』、「事実に背を向けて、政策の正当性を訴えなければならないほど苦しい状況に追い込まれているとみるべきだ」、これは「文氏」だけでなく、安部首相も似たような状況だ。
・『韓国政権に期待したい真摯で前向きな姿勢  外需依存度が高い一方で、内需の厚みを欠く韓国経済が自力で安定を目指すことは難しいだろう。韓国国内では文政権への不満が追加的に上昇する可能性が高い。それは、わが国をはじめとする国際世論にとって無視できないリスク要因だ。 懸念されるのは、文大統領が膨張する不満のはけ口として、これまで以上に、より強い調子で反日姿勢を強める展開だ。8月4日には、元徴用工への賠償問題に関して、韓国の裁判所が日本製鉄の資産売却を命じる可能性がある。文大統領は、日韓の国交正常化と韓国経済復興の礎となった1965年の日韓請求権協定を無視し、自国の司法判断を尊重する構えをとり続けている。 先行きは見通しづらいが、韓国が本当に政府間の最終的かつ不可逆的な合意を反故にして、日本企業に実害が発生する可能性は過小評価できなくなっている。わが国政府が、韓国へのビザ発給条件の厳格化や駐韓大使の一時帰国など報復措置の検討を進めているのは、文政権が一線を越えてしまう恐れが高まっているからだろう。 日韓関係が修復困難な状況に陥るリスクを高める文政権に関して、主要国の中からも懸念が出始めたようだ。ドイツはわが国に続いて韓国のG7参加に公式に反対した。ドイツがG7拡大に反対する表向きの理由は、ロシアの影響力拡大を食い止めることだ。それに加えて、ドイツが国家間の合意遵守という国際社会の常識を無視する、韓国への憂慮を強め始めた可能性は軽視できない。 言い換えれば、国際社会において韓国は相手にされなくなり始めている。足元、米国も中国も、国内の感染対策と覇権国争いに必死だ。欧州各国もアジアの新興国も感染拡大から自国民を守らなければならない。かつてないほどに各国の協調が求められている。そう考えると、韓国の過度に強硬な主張への批判は増えるだろう。 今、韓国に求められることは、わが国をはじめ近隣諸国と真摯に向き合うことができるか否かだ。文大統領が国内外の情勢に真摯に向き合うことができなければ、韓国は一段と難しい状況を迎えるだろう。わが国としては国際世論を味方にして、自国企業を守る万全の体制を整備しなければならない』、「わが国政府が、韓国へのビザ発給条件の厳格化や駐韓大使の一時帰国など報復措置の検討を進めている」、「報復措置」には実効性を欠くようだ。「駐韓大使の一時帰国」もかつてやったが、結局うやむやに終わった記憶がある。
タグ:文在寅大統領 韓国 わが国政府が、韓国へのビザ発給条件の厳格化や駐韓大使の一時帰国など報復措置の検討を進めている 韓国政権に期待したい真摯で前向きな姿勢 事実に背を向けて、政策の正当性を訴えなければならないほど苦しい状況に追い込まれているとみるべきだ 『失業率上昇や不動産価格の高騰などへの不満膨張 未曽有の苦境を迎えている韓国経済 韓国の世論は「事の重大さ」に気づくべき 「韓国・文大統領の意味不明な「自画自賛」が示す、経済悪化の深刻さ」 真壁昭夫 戦争に関わった国すべてに問われるべき「歴史問題」 虐殺の85%は1966年に集中していますが、ほとんどは基地設営のためでした 「村人を一カ所に集めては手榴弾を投げつけられた」 韓国人も過去、ベトナム戦争で凄惨な行為をしていました。しかしその事実を、韓国社会はいまだに受け入れようとしないのです。 「はたして日本人だけが悪いと言えるのでしょうか」 ベトナム戦争での民間人虐殺の被害を主張して韓国政府を訴えた初のケース 「ベトナム戦争時期の韓国軍による民間人虐殺の真相究明のためのタスクフォース(民弁ベトナムTF) 「ベトナム民間人虐殺」で韓国政府を初提訴 「ベトナム民間人虐殺、韓国政府提訴へ 「村人を1カ所に集めては手榴弾を……」残虐な加害の実態――2020上半期BEST5 韓国政府に突きつけられる歴史問題」 赤石 晋一郎 文春オンライン 国際的恥さらし 3年も放置したことで問題が大きく ニュージーランドは首相、副首相、外交部が相次ぎ韓国批判 「ニュージーランドの裁判所がA氏に対する逮捕状を発付してからも」、「警察の要請を黙殺」 破廉恥事件に対しては、「免責特権」など主張できない筈だ 現地の男性職員にセクハラ 駐ニュージーランド韓国大使館で発生した韓国外交官のセクハラ事件について、ニュージーランド側から問題提起があった 「韓国憤然、外交官のセクハラ事件で国際的恥さらし 韓国が直面した「もう一つのセクハラ事件」、NZとの外交問題に」 李 正宣 JBPRESS セクハラを「小さいこと」ととらえて、告発者をバッシングするという風潮も根強く、被害者が責められることから、怖くて告発できないという面もあるようだ 告訴した被害者がバッシングの対象に 遺族は警察、検察、トライアスロン協会などにチェ選手へのいじめを告発したが、まともに対処してもらえなかったという 女子トライアスロン選手のチェ・スクヒョン氏の自殺 7月に起きたもう1つの自殺 革新与党に対してストッパーが効かないという現在の状態こそが、政治家の暴走を許す要因になっている 革新派が政権に就くと「反日」という手段が使えない保守派は、政権にまともに対抗できない。現在がまさにその状態である 通貨危機が招いた保守の弱体化 儒教の影響が根強く年上の発言力が強いので、企業においても上下関係にはかなり厳しい。それだけに、上司の言うことに逆らえない雰囲気があるといわれる 韓国は、特に女性は実力以上に容姿が重視されて、女性らしさを過度に求められる典型的な男性上位社会 #MeToo運動が盛り上がる韓国 朴氏は韓国社会に「セクハラ」の概念を普及させた功労者だった 「ポスト文在寅」と目されていた朴市長 「次期大統領の有力候補であった朴氏」が「セクハラ」疑惑で自殺とは衝撃的だ。 「韓国大統領の有力候補、ソウル市長が自殺に追い込まれた本当の理由」 白川 司 ダイヤモンド・オンライン (その5)(韓国大統領の有力候補 ソウル市長が自殺に追い込まれた本当の理由、韓国憤然 外交官のセクハラ事件で国際的恥さらし 韓国が直面した「もう一つのセクハラ事件」 NZとの外交問題に、ベトナム民間人虐殺 韓国政府提訴へ 「村人を1カ所に集めては手榴弾を……」残虐な加害の実態、韓国・文大統領の意味不明な「自画自賛」が示す 経済悪化の深刻さ)
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発達障害(その1)(29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった、発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない、これほど違う自閉症の現れ方 3歳男児と4歳女児の例) [生活]

今日は、発達障害(その1)(29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった、発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない、これほど違う自閉症の現れ方 3歳男児と4歳女児の例)を取上げよう。

先ずは、昨年3月28日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの藤田 和恵氏による「29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/271725
・『現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。 今回紹介するのは「大学院を卒業し一般枠で正社員として就労しているものの、適応障害を発症し勤怠が不安定で何度も休職しています。転職して障害者枠に落ち着くべきか悩んでいます」と編集部にメールをくれた、29歳の独身男性だ』、どういう事情があったのだろう。
・『聞いたそばから忘れてしまう…  「物理の面白さですか?物ごとの理(ことわり)を知ること、でしょうか。もっと具体的に?そうですね――。例えば、コップに注いだ水の温度は時間がたつと、周囲と同じになりますよね。物理を学べば、その理屈を知ることができます。すべての自然現象の根底。それが物理だと言ってもいいでしょう」 東京大学大学院で物理を専攻していたフユキさん(29歳、仮名)に言わせると、数多くある三角関数の公式も「sin2θ+cos2θ=1」と「tanθ=sinθ/cosθ」さえ覚えていれば十分なのだという。 「そのほかの公式は、計算すれば導き出せるので、覚える必要はないんです」 一方で、フユキさんは買い物や飲食店などでの会計時に、金額を伝えられても、払うことができない。発達障害の1つ、自閉症スペクトラムで、耳から聞いた言葉をそのまま記憶する能力「聴覚的短期記憶」が低いからだ。金額を口頭で言われただけでは、聞いたそばから忘れてしまうのだという。 「それ以外にも、繰り上がりがあるような足し算もダメですね。『800+200は?』と聞かれても、すぐには答えられない。耳から入ってきた情報を、頭の中で処理したり、文字に書き起こそうとすると、ラグが生じるようなイメージです」 学生時代、ノートを取ったことがないという。というより、教師が話したことを、文字にして書き記すという作業ができない。自宅に戻ってから、教師が話した、大まかな内容を思い出しながら、教科書や参考書を読んで確認する――。これが、フユキさんの勉強方法だった。それでも、成績はいつもトップクラスだったという。 「幼い頃から、自分はヘンな人間だという自覚はありました」とフユキさん。集団で行動することが苦痛で、自室で独り、動植物の図鑑などを読んでいるほうが好きだった。心配した母親からよく「ほかの子と遊んできなさい!」と言われたことを、覚えているという。 「いじめに遭ったこともありました。クラスの中心にいるような、活発な子が苦手だったのは、そうした経験の影響だったようにも思います。いつも限られた友達2、3人と一緒にいる、おとなしいタイプの子どもでした」 将来の夢は研究者になることで、そのために大学院に進んだ。しかし、全国から優秀な学生が集まる最高学府において、早々に「自分の能力では、研究者として生き残るのは厳しい」と悟ったという。このため、卒業後の進路を就職へと変更。理工系出身者のニーズが高いとされる金融機関のリスク管理などを担当する部門などを目指すことにした』、「「聴覚的短期記憶」が低いからだ。金額を口頭で言われただけでは、聞いたそばから忘れてしまう」、というのでは、研究者はどう考えても無理だろう。
・『就職活動で内定を得られなかった原因とは  ところが、いざふたを開けてみると、就職活動は難航した。ほとんどが書類選考で落ちてしまうのだ。中堅と言われる規模の会社や、金融以外の職種にもエントリー先を広げたが、結果は同じ。80社近く応募して、1社も内定を得られなかった。 原因は、適性検査の一部である性格検査にあったのではないかと、フユキさんは言う。現在、多くの企業は面接前の選考過程で、さまざまな適性検査を実施している。主に基礎学力などを測る能力検査と、その人の考え方や行動パターンなどをチェックする性格検査で構成され、このうち性格検査は、200問以上の設問に短時間で答えることが求められる。 「能力検査は、できたという手応えがありました。となると、性格検査の結果に問題があったとしか考えられないんです」。正直に答えたつもりだが、ストレス耐性や協調性に難ありとみなされたのではないかと、フユキさんは考えている。 不採用が続く中、次第にうつ状態に陥り、医療機関で向精神薬などの処方を受けながら、就職活動を続けた。秋頃には、数日間にわたって食事も水も処方薬も喉を通らなくなり、さらに処方薬を断ったことによる離脱症状に襲われる――、といった状態を繰り返すようになり、やむなくその年の就職を諦めたという。 医療機関に通う際、フユキさんは同時に「自分は発達障害なのではないか」という相談も持ちかけていた。当初、臨床心理士からは、発達障害に特徴的なコミュニケーションにおける問題は見られないと言われたが、念のために専門の検査を受けた。 その結果、「計算力」「長期記憶」などの項目が平均水準をはるかに上回ったのに対し、「聴覚的短期記憶」「結果を予測する力」などは平均以下であることが判明。得意なことと、不得意なことの差が大きいのは、発達障害の特徴の1つである。 「検査の中でも、4、5枚のイラストをストーリー順に並べ替えよ、という問題がまったくできませんでした。(結果を示す)折れ線グラフが、とにかく凹凸の激しい形状だったことを覚えています」 翌年、フユキさんは服薬治療とカウンセリングを受けながら、再び就職活動に挑戦。今度は、ほぼ希望どおりの会社への採用が決まった。しかし、一難去ってまた一難。卒業前、臨床心理士から「学歴が高いので、周囲からの期待も高い。それに伴うストレスもまた大きいでしょう」と言われていたのだが、その予想が、入社後、見事に的中したのだ』、合格した会社では、「性格検査」がなかったのかも知れない。
・『仕事の失敗が重なると不調を来し、休職しがちに  会社組織において、新入社員に任されがちなのは、会議録の作成と電話応対。しかし、フユキさんは、この2つがまったくと言っていいほどできない。「聴覚的短期記憶」が低いので、会議中にメモを取ることはほぼ不可能。かといって、いったん録音したものをメモに書き起こすような時間的な余裕もない。電話の相手から、会社名や名前、用件などを伝えられても、受話器を置いたときにはほとんど忘れてしまっている。 未完成の会議録を提出するたび、上司はあきれたような、戸惑ったような複雑な表情を見せたという。電話応対にいたっては、「まともに取り次げたことがない」。 「もとから眠りは浅いほうだったのですが、就職してからは、作業に追われたり、得体のしれない怪物に追われたり、『何かに追われる』という悪夢を、毎日見るようになりました」とフユキさん。 仕事の失敗が重なると、「自分は欠陥人間」「存在価値などない」と思い詰め、さらには食欲不振や頭痛など身体にも不調を来し、そのたびに休職。休職期間は2、3週間と比較的短いものの、すでにこうしたことを何度も繰り返しているという。 会社では、怒鳴らたり、パワハラを受けたりしたことはない。人事部などには発達障害のことは報告しており、フユキさんの勤怠が不安定になると、担当者のほうから休職してはどうかと促してくる。最近は、電話応対の少ない部署への異動もなされた。 会社は決して障害への理解がないわけではないように見えるが、フユキさんに言わせると、「理解してくれているというよりは、見逃してくれているという感じ。人事部の対応もごく事務的なもので、そろそろ(解雇や退職勧奨などについて)何か言われるのではないかと恐れています」といった受け止めになる。 不安がピークに達したある日、いっそ障害者枠で働いたほうがよいのではと考え、専門の転職サイトに登録してみた。しかし、担当者からはきっぱりと「収入は間違いなく下がります。今の会社から支援を受けられるなら、転職は勧めません」と言われたという。 現在、フユキさんの年収は約400万円。自分でも調べたが、障害者枠で転職した場合、収入は悪ければ半減、そもそも正規雇用の求人がほとんどないことがわかった。非正規雇用では、つねに雇い止めの不安におびえなくてはならない。 「社内には居場所がないと感じます。かといって、転職しても、(雇い止めの恐れがある)非正規雇用では、かえってメンタルは悪化するでしょう」。会社にとどまるのも苦痛、転職しても待っているのは貧困――。そう考えると、絶望感しかないという。 フユキさんの話しぶりは終始、穏やかだった。物理や三角関数の説明をするときも、典型的な文系人間の私が、ちゃんと話についてきているかを確認しながら、ゆっくりと話を進めてくれた。臨床心理士の見立てと同じく、私もフユキさんからは、発達障害のある人特有のコミュニケーションの取りづらさは、まったく感じなかった』、せっかく「正社員」として入社、「人事部などには発達障害のことは報告」しているのであれば、能力に見合った仕事を「人事部など」と相談しながら探していくほかないようだ。
・『他人ができることを自分ができないつらさ  最後に、会社の同僚や上司たちに望むことはありますか、と尋ねると、フユキさんは「広い心を持ってほしい。みんなが同じことを、同じだけできるわけじゃないことを理解してほしいです。私の場合は、(人並み以上に)得意な分野もあります」という。 これに対し、私が「会議録の作成や電話対応が不得手だと、打ち明けたのですか」と聞くと、話していないという。理由は、「たぶん、理解してもらえない。『え?そんなこともできないの』と言われてしまうと思うから」。 広い心を持ってほしいと言いながら、自分ができないことを伝えないのは、少し矛盾しているのではないか――。そう言いかけ、私は取材中の自分のある振る舞いを思い出した。 レジで金額が記憶できない、会議録の作成や電話応対ができないというフユキさんに対し、私は繰り返し「一瞬でも記憶できないのですか」「意味がわからなくても、とりあえずメモするということも難しいですか」「(電話相手の)名前だけでも覚えていられないのですか」と尋ねたのだ。 このとき、フユキさんは、大学ノートにメモを取る私の手元を見つめながら、「みんなが普通にできることを、自分はできないんだなって思います」と言ってため息をついていた。 自分が当たり前にできることを、他人ができないということを理解することは意外に難しい。そして、自分はできないことを、多くの人が当たり前にできていることを目の当たりすることのしんどさを思った。 本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください』、「私が「会議録の作成や電話対応が不得手だと、打ち明けたのですか」と聞くと、話していないという。理由は、「たぶん、理解してもらえない。『え?そんなこともできないの』と言われてしまうと思うから」、難しいだろうが、正直に打ち明け、会社と一緒になって能力を発揮できる職務を探していくほかなさそうだ。

次に、本年8月4日付け東洋経済オンラインが掲載した精神科医の岩波 明氏による「発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/363663
・『近年注目を集める「発達障害」。実は医師による「誤診」も少なくないという。発達障害の患者が誤診によって受ける被害の実態とは?精神科医の岩波明氏による新書『医者も親も気づかない 女子の発達障害』から抜粋・再構成してお届けします。 実のところ、著名な精神科医や発達障害の専門医であっても誤診がまれではありません。例えば「うつ病と診断したけれども、発達障害だった」「ASD(注1)だと診断したが、本当はADHD(注2)だった」などということは、しばしば見られています。 もちろん、私たち自身の診断が絶対に正しいということはありませんし、誤った判断もあることでしょう。 ただ、私たちの外来に紹介されて受診する患者さんを見ていると、多くの先生方には、発達障害の基本的な点が浸透していないように思えます』、なるほど。
(注1)ASD:自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群。自閉スペクトラム症は多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる生まれつきの脳機能障害で、人口の1%に及んでいるとも言われています(e-ヘルスネット)。
(注2)ADHD:注意欠如・多動症は、「不注意」と「多動・衝動性」を主な特徴とする発達障害の概念のひとつです。ADHDを持つ小児は家庭・学校生活で様々な困難をきたすため、環境や行動への介入や薬物療法が試みられています(e-ヘルスネット)。
・『「誤診」で発達障害が見逃されたケース  発達障害に関する誤診には、いくつかの理由があります。1つは、うつ病をはじめとして、対人恐怖症(社交不安障害)やパニック障害などの不安障害、躁うつ病など、発達障害が原因で起こるさまざまなトラブルをきっかけに生じる、2次障害との関連が問題となります。 このような場合、そうした2次障害に対する診断と治療が先行してしまい、根本的な原因である発達障害が見逃されがちです。こうなると、適切な治療が難しくなることが珍しくありません。 例えば、うつ病と診断されて抗うつ薬を飲み続けたが症状が改善されない、ADHDの治療薬に切り替えたら劇的に改善した、といったケースが実際に存在しています。「うつ病と診断されたものの、実は発達障害だった」ということは、よくある話です。 患者本人が「私はADHDだと思いますが、どうなのでしょうか?」と主治医に言っているにもかかわらず、「いえ、うつ病であることは確実です」「発達障害というのは考えすぎ」などと言って、正しい診断に行き着かない例が後を絶たないのが現状です。 また、ADHDとASDの区別も、非常に曖昧で難しい面があります。ADHDなら多動・衝動性と不注意、ASDなら対人関係のトラブルとこだわりの症状など、それぞれ典型的な特性があるのは確かですが、臨床の場面では、両方を同時に示すようなケースにも頻繁に出合います。 例えば「話し出したら止まらない」のは、ADHDにもASDにも見られる症状です。ADHDの場合は「思いついたことを言わずにいられない」衝動性が原因であるのに対して、ASDの場合は「他人に対する無関心、配慮のなさ」が原因ですが、見かけの症状は同じなのです。 さらに付け加えるなら、子どもの場合は両親からの虐待が引き金になり、「愛着障害」といって、ADHDやASDによく似た症状が表れるケースも見られます。 医師の側の問題もあります。もともと発達障害の専門医の多くは、自閉症やアスペルガー症候群などのASDを専門としていました。そのため、診断もASD寄りになる傾向があるのですが、実際にはASDよりもADHDのほうが何倍も症例が多いのです。 しかし、これはある程度やむをえない面があるのかもしれません。というのは、これまでの児童精神科において治療の対象としていた発達障害は、ASDの中でも最も重症の自閉症であり、さらにその多くが知的障害を伴うケースだったからです。 これに対して現在、成人の女性の発達障害においては、主な疾患はADHDであることに加えて、知的レベルは正常かそれ以上の例が大部分です。つまり、対象としている患者層が、以前とはまったく異なっているのです』、「患者本人が「私はADHDだと思いますが、どうなのでしょうか?」と主治医に言っているにもかかわらず、「いえ、うつ病であることは確実です」「発達障害というのは考えすぎ」などと言って、正しい診断に行き着かない例が後を絶たないのが現状です」、「もともと発達障害の専門医の多くは、自閉症やアスペルガー症候群などのASDを専門としていました。そのため、診断もASD寄りになる傾向があるのですが、実際にはASDよりもADHDのほうが何倍も症例が多いのです」、なかなか難しい問題のようだ。
・『「グレーゾーン」の患者も多くいる  さらに厄介なことに、「発達障害か、そうでないか」についても、線引きが曖昧です。そもそも精神科の診断には、白黒はっきりつけがたい「グレーゾーン」が多く含まれています。 発達障害も、発達障害という確定的な診断はつかないにしても、発達障害的な特性によって、日常生活に問題を抱えているケースがよくあります。つまり、ASDもADHDも、「スペクトラム」なのです。 例えば、ADHDと断定はできないけれども落ち着きがなくて忘れ物が多い人、ASDと診断するほどではなくても空気が読めずに人の輪に入れない人などは、たくさんいます。 発達障害とそうでない人の間には明確な区別が存在しているわけではなく、さまざまなグラデーションが存在しています。そのため、「この一線を超えたら発達障害」という線引きは、医師ごと、病院ごとに委ねられています。 ある病院では「発達障害でない」と言われ、別の病院では「発達障害だ」と言われるケースも少なくありません。 しかし、発達障害に限らず、ほとんどの精神科の疾患には数値で表せる明確な指標は存在していません。血液検査の数値など、なんらかの検査で白黒つけられるわけではないのです。 それでも、現在の症状とこれまでの経過について多くの「情報」が手に入るなら、ほぼ間違いのない診断が下せると思います。しかし、それには本人の子ども時代にまでさかのぼって、話を聞かなくてはなりません。本人の記憶が曖昧なことも多いし、本人は「私は普通の子だった」と思っていても、周囲は「すごく変わった子だった」と思っているケースも多く、なかなか簡単なことではありません』、「発達障害とそうでない人の間には明確な区別が存在しているわけではなく、さまざまなグラデーションが存在しています。そのため、「この一線を超えたら発達障害」という線引きは、医師ごと、病院ごとに委ねられています」、確かに診断がばらつくのは不可避のようだ。
・『家族が当てにならない問題も  現実には、情報不足によりグレーゾーンとして扱わなければいけないケースであっても、情報がそろったことで、後になってから発達障害だと確定するケースがあることは、十分に考えられます。 さらに、情報を得るにあたって、親などの近親者が必ずしも当てにならないことも、大きな問題です。非常に熱心な家族も存在している一方で、子ども時代のことはよく覚えていないという親や、そもそも発達障害の存在そのものを頭から否定する人も存在しているからです。 繰り返しになりますが、発達障害は生まれつきのものですから、「治す」という言い方は適切ではありません。しかし、本人にその意志があるなら、日常生活で問題が起こらないように、問題となる部分をカバーすることは可能です。 それにはまず、自分の特性を理解することが大切です。さまざまなトラブルは、その自らの特性が原因で起きている、ということを知る。そのうえで、どうしたらトラブルを防げるか、具体的に考えていくことになります。) 例えば「上司の指示をすぐ忘れてしまう」なら、すぐに「メモを取る」。「マルチタスクが苦手」なら、「複数の仕事を同時に進めるのではなく、1つの仕事を終えてから次の仕事にとりかかる」習慣をつける。 自分が上司の立場なら、ASDの人に出す指示は、できる限り具体的にします。例えば、期日はいつなのか、ほかの仕事より優先するべきなのか。「適当にやっておいて」は、ASDの人には厳禁です。文字どおりに解釈して、「いい加減に」仕事をしてしまうかもしれません。 こうした工夫そのものが難しい環境であるなら、今度は環境を変えることを考えます。極端な話ですが、対人関係が苦手なASDの人も、「研究室にこもりきりで、他人と交流しなくていい」といった環境で働けるのであれば、問題は顕在化しないかもしれません。実際、高名な科学者や研究者において、ASDの特徴を持つ人は少なくありません。 ASDでもADHDでも、多くの場合、理解力自体は普通に持っています。何が問題で、どうすれば解決できるのかさえ理解できれば、対処できる場合が大半です』、「多くの場合、理解力自体は普通に持っています。何が問題で、どうすれば解決できるのかさえ理解できれば、対処できる場合が大半です」、とはいうものの、現実には「何が問題で、どうすれば解決できるのかさえ理解できれば」、が難しいのだろう。
・『「変えようがない人間」もいる  一方で、こんなケースもあります。ADHDの人には、わからないというより、アドバイスを「受け入れたくない」人が全体の2?3割はいます。 アドバイスの内容そのものは理解できでも、やりたくない、やろうとしない。人の言うことを聞きたくないのです。これには自分の意志を押し通そうとする傾向が強いこともありますが、そもそも他の人の話を聞くことが得意ではないのです。 ASDの人は、変えたくても、「変えようがない」ケースもあります。いくら能力が高くても、「マイルール」へのこだわりが強いと、変えたほうがいいとわかっていても、なかなか変えられません。 あるASDの女性は、非常に高い能力がありました。大学を卒業して10年以上のブランクのある主婦だったのですが、大学の研究室でアルバイトを始めると、英語論文を書いて海外の雑誌に掲載されるほどになりました。 しかし、対人関係がまるで苦手でした。研究室のトップに理解があるため長く勤めていられるのですが、対人関係が改善する様子は見られません。 「こうしてみたら」と私がアドバイスをしているのですが、なかなか周囲との関係を変えることができません。そのため、研究成果を上げてはいますが、彼女はほとんど1人で仕事をしています』、「アドバイスを「受け入れたくない」人が全体の2?3割はいます」、「あるASDの女性」の例は「研究室のトップに理解がある」という幸運に恵まれた稀有な例なのだろう。

第三に、6月9日付け日経ビジネスオンラインが掲載した文筆家の川端 裕人氏による「これほど違う自閉症の現れ方、3歳男児と4歳女児の例」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00112/00039/?P=1
・『発達障害である自閉症は、人口の2%に及び、“グレーゾーン”も入れると1割を超すという。現在の診断名は「自閉スペクトラム症」で、かつてのアスペルガー症候群も含め、その現れ方は様々だ。そんな自閉症への理解を深めるために、日本の研究と治療と支援をリードしてきた医師、神尾陽子先生の研究室に行ってみた!その2回目。 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所で発達障害をめぐる研究と行政への提案を行い支援の社会実装を主導してきた神尾陽子さん(現・発達障害クリニック附属発達研究所・所長)に自閉スペクトラム症について伺っている。前回は、やや抽象的な議論に終わってしまった感があるので、今回は、自閉スペクトラム症を持つ子どもたちに、それがどんなふうに現れるかもっと具体的に教えてもらおう。 「実はすごく説明しにくいんです。自閉スペクトラム症の人って、知能に遅れのある人から、とても知能の高い人までいて、『こういう行動をする』って一言では記載はできません。おまけに、同じ人でも1歳のときから亡くなるまで、年齢によっても症状は違います。だから、具体的に説明するとしたら、やっぱり発達水準、性別、年齢などを想定しないといけないんです」 神尾陽子さんは、発達障害の研究はもちろん、行政への提案や支援の社会実装を主導してきた。 そこで「人と年齢」を設定する。「3歳の知的な遅れのある男の子」と「遅れのない4歳の幼稚園に行っている女の子」の2ケースだ。 「3歳で遅れのあるお子さんは、一番典型的です。3歳になると普通のお子さんはいっぱいしゃべるようになりますけど、まず言葉が遅れるので気づかれやすいんです。そして、言葉が出てきても、特徴的なのはおうむ返しといって、誰かが言ったのをそのまんま返すので、会話にならなかったりします。単語はたくさん覚えるけれども、あんまり人の動作や状態にかかわるようなことを言いません。『おなかすいた』『食べる』『飲む』という、自分がしたいことを伝えることがあんまりできないんです」 こういう言葉の出方を「機能的ではない言語」というそうだ。語彙が多くても、言葉の最大の「機能」であるコミュニケーションのためにうまく使えない。喉がかわいてジュースを飲みたいときにも、「ジュースを飲みたい」と言うかわりに自分で冷蔵庫に行って勝手に飲むようなイメージだ。 「子どもは、言葉を獲得していく中で自分の要求が伝わるようになったり、『あ、ブーブー』とか言うと、お母さんがそっちを見て『ああ、ブーブーだね』って一緒に喜んでくれたりして、共有する喜びを知るわけです。そういったことが対人関係の一番基礎ですよね。でも、遅れがある場合は、言葉が出てきてもそういうことに使わず、一人で黙々と本読んでいるとか、基本的には一人遊びが好きです。お母さんが一緒に何かしようと思って、子どもが遊んでいるものに手を触れたらパッと手を払っちゃう。たとえば何かを自分で楽しく並べていたとしたら、崩されるのがいやだから一人遊びの方がいいと、こだわりの部分もかかわっています。お母さんはすごい悲しいし、何とかして遊ぼうと思ってかかわると、子どもは余計嫌がって泣いたり怒ったりするんです」』、「自閉症は、人口の2%に及び、“グレーゾーン”も入れると1割を超す」、そんなに多いとは改めて驚かされた。「遅れがある場合は、言葉が出てきてもそういうことに使わず、一人で黙々と本読んでいるとか、基本的には一人遊びが好きです。お母さんが一緒に何かしようと思って、子どもが遊んでいるものに手を触れたらパッと手を払っちゃう。たとえば何かを自分で楽しく並べていたとしたら、崩されるのがいやだから一人遊びの方がいいと、こだわりの部分もかかわっています。お母さんはすごい悲しいし、何とかして遊ぼうと思ってかかわると、子どもは余計嫌がって泣いたり怒ったりするんです」、親の対応もなかなか難しそうだ。
・『自閉症という言葉は、Autismという英語の訳だ。接頭辞のAut(o)は「自動的」「自律的」を意味するもので、それを「閉じている」と訳すのが適切なのかどうか分からないが、自分で完結しているというようなニュアンスなら、今紹介してもらったような事例にはよく当てはまるかもしれない。それにしても、親が「愛情」の表出である共感を持って接しようとしても、それが本人にとっては不快なことが多いとしたら、いろいろ悲しいことが起きそうだ。特に、自閉スペクトラム症が母親の育て方の問題だとされたりすると、母親は必死に関わろうとするあまり子どもが嫌がることをしてしまうことになる。 また、自閉スペクトラム症特有の「こだわり」や「感覚過敏」が日常生活の中でもしばしば大きな困難に発展することがある。 「その子を連れてどこか買い物に行こうとすると、いつもの道で工事をしていたとします。じゃあ、違う道から行こうっていったら、もうパニックです。そこでひっくり返って、泣いたり怒ったり。だから、もう予定していた外出が全然できないとか、もう外出自体がお母さんのストレスになっちゃって、2人でこもりっきりっていう方もいらっしゃいます。味や臭いについて感覚過敏で偏食がすごいから生きてくために何とか食べさせようとするけど食べないとか、ちょっとした刺激ですぐに目覚めてしまってぜんぜん寝ないっていう人もいます。いったん寝付いても、ちょっと物音がするとすぐ起きちゃうんです」 では、もう一つのシナリオ、「遅れのない4歳で、幼稚園に行っている女の子」の場合はどうだろう。 「そういう子は、見かけは遅れがないからわりと見逃されますが、とにかく幼稚園みたいな場になじめません。家の中でよく知った環境ではそれほど困らなくても、幼稚園に行くといろんな子どもたちがいるでしょう。子どもって一番予測できない人たちだから、自分がこれで遊ぼうと思っても他の子が来て取ったりされるし、一緒に遊ぶのもあんまり楽しくないし。それでワーッと泣く子もいれば、泣かないでじっと耐えて、だんだん耐えられなくなってくると、行きしぶります。そうすると、親は無理やり連れていって悪循環になってしまいがちです。何で嫌なのか、どういうふうにしたら楽しくなるのかというのを、わりと見逃されているのが多いんですね」 遅れがないがゆえに問題が見えにくくなることは皮肉なことである。これもまた親だけでなく、社会の問題でもある』、「子どもって一番予測できない人たちだから、自分がこれで遊ぼうと思っても他の子が来て取ったりされるし、一緒に遊ぶのもあんまり楽しくないし。それでワーッと泣く子もいれば、泣かないでじっと耐えて、だんだん耐えられなくなってくると、行きしぶります。そうすると、親は無理やり連れていって悪循環になってしまいがちです」、普通はあきらめて、別の遊びに切り替えるのに、こだわりが強くあきらめられないのだろうか。
・『「幼稚園や保育園によっては『いや、この子は、全然、遅れはないし、発達障害じゃない』と言われたり、やっぱりお母さんが気にしすぎだとか、ちょっと過保護だってスルーされちゃうことも多いんです。結局、小学校に行ったらもっと問題が大きくなるので、そういうパターンもあり得るということを幼稚園や保育園でも知っていただいて、合うような環境で対応していってほしいんですが」 さらにもう一点、神尾さんは「不安」について付け加えた。 「不安というのは、よくある精神障害ですけど、自閉スペクトラム症にもこの合併が多いんです。子どもの不安って、恐怖に近いから、さっきまで普通にしていても、あるときに爆発的に出たりします。不安がある子はそういう場を徹底的に避けるようになるので、見えないだけで。本人は本当に生きづらくて、世界が怖くて、場合によっては怒りとかまで感じて、やっぱり自分の中にためていくので、親も含めてそこで悪いループに入っていくわけです」 ほんとうに様々なケースがある中で、それらを早めに見つけて早めに対処するというのが神尾さんの立場だ。古典的な知的な遅れを伴う自閉スペクトラム症も、この2、30年のうちにクローズアップされた、知的な遅れを伴わない「高機能」な自閉スペクトラム症も、放置しておくとのちのち大変なことになることがある。それこそ、つらい場所に置かれ続けて、本来伸ばし得たはずの様々な特徴をスポイルされた上で、うつや不眠や不安など、ありとあらゆる穏やかならざる合併に悩まされ、本来、過ごせるはずだったかもしれない豊かな生き方が想像できなくなるほどの深みに落ち込んでしまうことだってありうる。やがて重たい精神症状を合併して、精神病院で隔離されて一生を終えるというようなことも、20世紀にはありえたのである。 自閉スペクトラム症に早いうちから対処できれば、重い合併症を防げ、伸ばし得る特徴を伸ばしやすいという。 今、この問題にかかわる世界中の専門家たちは、適切な診断に基づいた治療や支援を早期から始めたり、それ以前のところで良い環境(発達障害の子も定型発達の子も、ともにメンタルヘルスを保ちやすい環境)を作ることで事態を改善できると信じ、努力をしている。神尾さんも、その流れに棹さす一人だ。 そして、そのためには、今、わたしたちの社会の中で、自閉スペクトラム症の子どもたちがどれくらいいて、診断や治療や支援や環境の改善を必要としているか知らなければならない。臨床の現場からは、一歩引いて、いわゆる疫学的な調査が大事になる局面だ。 国立の研究機関にいた神尾さんは、その点でも、時代を画する研究を行っているので次回以降の議論で教えてもらおう。(づづく)』、「知的な遅れを伴わない「高機能」な自閉スペクトラム症も、放置しておくとのちのち大変なことになることがある。それこそ、つらい場所に置かれ続けて、本来伸ばし得たはずの様々な特徴をスポイルされた上で、うつや不眠や不安など、ありとあらゆる穏やかならざる合併に悩まされ、本来、過ごせるはずだったかもしれない豊かな生き方が想像できなくなるほどの深みに落ち込んでしまうことだってありうる。やがて重たい精神症状を合併して、精神病院で隔離されて一生を終えるというようなことも、20世紀にはありえた」、現在ではそんな最悪の事態に辿り着く前に、「精神科医」の治療があるということなのだろうが、「精神科医療」の重要性を再認識した。
タグ:知的な遅れを伴わない「高機能」な自閉スペクトラム症も、放置しておくとのちのち大変なことになることがある。それこそ、つらい場所に置かれ続けて、本来伸ばし得たはずの様々な特徴をスポイルされた上で、うつや不眠や不安など、ありとあらゆる穏やかならざる合併に悩まされ、本来、過ごせるはずだったかもしれない豊かな生き方が想像できなくなるほどの深みに落ち込んでしまうことだってありうる。やがて重たい精神症状を合併して、精神病院で隔離されて一生を終えるというようなことも、20世紀にはありえた 子どもって一番予測できない人たちだから、自分がこれで遊ぼうと思っても他の子が来て取ったりされるし、一緒に遊ぶのもあんまり楽しくないし。それでワーッと泣く子もいれば、泣かないでじっと耐えて、だんだん耐えられなくなってくると、行きしぶります。そうすると、親は無理やり連れていって悪循環になってしまいがちです 遅れがある場合は、言葉が出てきてもそういうことに使わず、一人で黙々と本読んでいるとか、基本的には一人遊びが好きです。お母さんが一緒に何かしようと思って、子どもが遊んでいるものに手を触れたらパッと手を払っちゃう。たとえば何かを自分で楽しく並べていたとしたら、崩されるのがいやだから一人遊びの方がいいと、こだわりの部分もかかわっています。お母さんはすごい悲しいし、何とかして遊ぼうと思ってかかわると、子どもは余計嫌がって泣いたり怒ったりするんです 発達障害である自閉症は、人口の2%に及び、“グレーゾーン”も入れると1割を超すという 「これほど違う自閉症の現れ方、3歳男児と4歳女児の例」 川端 裕人 日経ビジネスオンライン アドバイスを「受け入れたくない」人が全体の2?3割はいます 「変えようがない人間」もいる 多くの場合、理解力自体は普通に持っています。何が問題で、どうすれば解決できるのかさえ理解できれば、対処できる場合が大半です 家族が当てにならない問題も 「この一線を超えたら発達障害」という線引きは、医師ごと、病院ごとに委ねられています」 発達障害とそうでない人の間には明確な区別が存在しているわけではなく、さまざまなグラデーションが存在しています 「グレーゾーン」の患者も多くいる もともと発達障害の専門医の多くは、自閉症やアスペルガー症候群などのASDを専門としていました。そのため、診断もASD寄りになる傾向があるのですが、実際にはASDよりもADHDのほうが何倍も症例が多いのです 患者本人が「私はADHDだと思いますが、どうなのでしょうか?」と主治医に言っているにもかかわらず、「いえ、うつ病であることは確実です」「発達障害というのは考えすぎ」などと言って、正しい診断に行き着かない例が後を絶たないのが現状 「うつ病と診断されたものの、実は発達障害だった」ということは、よくある話です 「誤診」で発達障害が見逃されたケース ADHD AsD 「発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない」 岩波 明 私が「会議録の作成や電話対応が不得手だと、打ち明けたのですか」と聞くと、話していないという。理由は、「たぶん、理解してもらえない。『え?そんなこともできないの』と言われてしまうと思うから」 他人ができることを自分ができないつらさ 人事部などには発達障害のことは報告 「聴覚的短期記憶」が低いので、会議中にメモを取ることはほぼ不可能 仕事の失敗が重なると不調を来し、休職しがちに 「性格検査」 就職活動で内定を得られなかった原因とは 発達障害の1つ、自閉症スペクトラムで、耳から聞いた言葉をそのまま記憶する能力「聴覚的短期記憶」が低いからだ。金額を口頭で言われただけでは、聞いたそばから忘れてしまう 東京大学大学院で物理を専攻 聞いたそばから忘れてしまう 「29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった」 藤田 和恵 東洋経済オンライン (その1)(29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった、発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない、これほど違う自閉症の現れ方 3歳男児と4歳女児の例) 発達障害
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