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アベノミクス(スガノミクス)(その36)(安倍首相辞任 アベノミクスの2つの大罪、アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価、弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった、ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く) [国内政治]

アベノミクスについては、8月28日に取上げた。今日は(スガノミクス)も加えて、(その36)(安倍首相辞任 アベノミクスの2つの大罪、アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価、弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった、ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く)である。

先ずは、8月26日付けNewsweek日本版が掲載した財務省出身で慶応義塾大学準教授の小幡 績氏による「安倍首相辞任、アベノミクスの2つの大罪」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2020/08/2_1.php
・『<アベノミクスはイメージ的には大成功を収めたが、経済的には突出して異常な金融緩和と新型コロナ対策のバラマキで日本の将来に大きな禍根を残した> 安倍首相が辞任を発表した。7年8カ月にわたる政権が変わることから、経済政策も大きく変わる可能性があり、ここで、これまでの安倍政権の経済政策の総括と今後の見通しを議論してみたい。 安倍政権の経済政策は、アベノミクスと呼ばれ、政権の最大のセールスポイントとなった。セールスポイントとなったからには、何らかの成功を収めたと言えるだろう。では何に成功したのか? それは、人々が、それなりに成功した、と思っていることだ。つまり、成功した、と思わせることに成功した、ということだ。 実は、政策の成功については、評価基準がない。ベンチマークもない。唯一ある数字は、支持率だが、支持率は、スキャンダルの影響など、政策評価から見れば、雑音の影響が大きすぎて、支持率では評価できない。結局、印象論、評判に過ぎないのである。アベノミクスに関しては、少なくとも短期的には経済は良くなったよね、という評価が定着している。これがすべてだ』、「成功した、と思わせることに成功した」、いかにも「小幡」氏らしい。
・『ネーミングが全て  では、なぜ、人々は、成功したと思っているのであろうか。 第一に、アベノミクス、というネーミング、マーケティングの勝利である。アベノミクスという言葉は、日本国内で流行語大賞に選ばれただけでなく、世界中で広まった。中身はどうであれ、有名になったもの勝ちである。 第二に、株価を上げた。有名になったアベノミクス。株価が上がった。これで成功確定である。とりわけ、世界の評判では、国内の経済の状況はよくわからない。日本はもともと失業率は低いし、平和である。目に見える一番の数字は株価である。世界中が、アベノミクスは成功したのだと認識した。 これがアベノミクスのすべてだ。 成功だ、と人々に思わせることに成功した。だから成功なのだ。 その手段は株価上昇に的を絞り、とにかく株価を上げることを優先した。そして、それにも成功した。 いみじくも、安倍氏は、辞任の記者会見で、政治は結果を出すことがすべて、と言った。少なくとも、株価という意味では結果を出し、そして、人々に、少なくとも短期的には成功だと思わせる、という結果を出した。 別の言い方をすれば、民主党政権も、自民党の他の政権も、そして、日本だけでなく、今や世界中のほぼすべての政権はポピュリズムだ。どうせポピュリズムなら、ポピュラーになる、人気が出る、支持率を得る、選挙で勝つ、その結果が出たほうが望ましい。その前の民主党政権は、その意味で最悪の結末に終わった。ポピュリズムでありながら人気が最低になって政権を失った。その意味で、小泉政権、第二次安倍政権は優れていた、と言えるだろう。逆に言えば、アベノミクスの成功はそれにつきる。 中身にも少し触れよう。 アベノミクスの三本の矢だが、成長戦略は成功しなかった、というよりも実質的には何もなかった。しかし、ほかのすべての政権も成長戦略はなかったし、成功したことももちろんなかったので、特に非難すべきことでもない。 財政政策は、基本的にバラマキ政策であるが、その割には、安倍政権の望みではなかったかもしれないが、結局消費税を5%から10%に引き上げた。他の政権だったとしても、増税は嫌がっていたはずなので、それに比べればましだったと言えるかもしれない。軽減税率は導入しなかった方がよかったが(これは経済学者、エコノミストのコンセンサス。今後12%に上げるよりは軽減税率を廃止した方がましだ、とすべての経済学者が思っている)、これは公明党の強い主張であり、また国民も強く望んだことなので、ほかの政権であっても同じであっただろうから、プラスの評価はできないが、特に非難すべきことでもない』、「軽減税率は導入しなかった方がよかったが・・・特に非難すべきことでもない」、確かにその通りだ。
・『実態は「クロダノミクス」  問題は、三本の矢の、一本目、金融政策である。これがアベノミクスのすべてであり、アベノミクスとは、中身は、異常な金融緩和による、円安、株高政策だったと要約してしまってもよい。だから、私は、アベノミクスではなく、日銀黒田総裁によるクロダノミクスだ、と呼んでいる。そして、これが株価の上昇をもたらし、成功という評価をもたらしたが、同時に、長期的には、日本経済にもっともダメージを与える政策であり、これがアベノミクスの最大の罪である。 今後、必ず、金融市場は破綻し、金融市場が破綻すれば、日本経済も大きく落ち込む。このリスクとコストを先送りして、短期的に株価を上げて、目先の支持率を上げたのがアベノミクスであった。 確かに、日銀の異次元緩和と同様に、米国も欧州も量的緩和を行った。しかし、日銀と彼らが決定的に異なったのは、米国も欧州も量的緩和の出口を準備したうえで、緩和を行ったことであり、実際に、米国は出口を一回出たし、欧州も出口への道筋を明確に示した。日銀だけが、出口の議論は時期尚早と言って、一切、公式に議論しないばかりか、理論的にも出口のないほどの異常な緩和を行ってきた。そして、それは今も続いている。これがアベノミクスの最大の罪だ』、「今後、必ず、金融市場は破綻し、金融市場が破綻すれば、日本経済も大きく落ち込む。このリスクとコストを先送りして、短期的に株価を上げて、目先の支持率を上げたのがアベノミクスであった」、「日銀だけが、出口の議論は時期尚早と言って、一切、公式に議論しないばかりか、理論的にも出口のないほどの異常な緩和を行ってきた」、全く同感である。
・『そして、今年に入って、もう一つ、罪を犯した。それは、新型コロナ対策と称して、財政のバラマキを行ったことである。これが日本政府財政の破綻を決定づけたし、それによる日本経済の停滞のリスクを高めた。 日本の新型コロナの流行は、欧米諸国と比べ物にならないくらい小規模だった。なおかつ、経済的な行動制限も、ニューヨークやロンドン、北イタリアでは、完全な外出禁止であり、そうであれば、カネを市民に配ることは正当化されたが、日本では、自粛といいつつも、外出しようと思えば、いつでもどこにでも出かけられた。それでも感染が広がらなかったのは、そもそも感染の広がりが、欧米に比べれば、存在しなかったと言っていいくらいの小規模なものだったことにより、いずれにせよ、感染は広がらなかったのだ。死者が少なかったのは、外出の自粛ではなく、介護施設などでの自衛が欧米に比べて非常に上手くいった、個々の施設が努力し、優秀だったことに尽きる。 いずれにせよ、コロナ感染の被害は欧米に比べれば、はるかに小さかったのに、ばらまきは欧米並みだった。したがって、今後、感染が今まで広がらなかった分、第二波、第三波、そして、他の感染症の流行を含め、危機がやってくる可能性は欧米以上に高い。しかし、今回のコロナ対応で、バラマキを大盤振る舞いしてしまったために、次の危機ではばらまきたくでもカネがなく、感染を抑えられないか、または行動を制限できずに、危機が深まるリスクが高まってしまう。 これがアベノミクスの第二の罪だ。つまり、過度なバラマキを今回行ってしまったために、国民が甘えてしまい、自粛にはカネを政府に要求するという悪い政府へのたかり構造を作ってしまってことが、アベノミクスの第二の罪なのだ。 第一と第二の罪、金融緩和、財政バラマキによって、次の政権では財政破綻リスクが実現してしまう可能性を極めて高くしてしまったこと。それがアベノミクスの最大の罪である』、説得力溢れた鋭い主張である。

次に、9月5日付け米雑誌Forbes「アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/36843/1/1/1
・『約8年におよぶ長期政権を率いてきた安倍晋三首相が8月28日、体調などを理由に辞意を表明し、誰が「ポスト安倍」の座に着くのか注目が集まっている。 石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長に続いて、有力候補の一人である菅義偉官房長官は9月2日、自民党総裁選への出馬を表明した。新型コロナウイルス対策を最優先課題と位置付けた上で、経済政策に関しては「アベノミクスをしっかりと責任持って引き継いで、さらに前に進めていきたい」と明言した。 消費税増税の影響が残るなかで、新型コロナ危機による経済収縮が直撃し、日本経済は深い景気後退局面に入った。そんな中で、これから日本は経済の舵をどのように切っていくべきなのか、もう一度見直すべき時期に来ているのではないだろうか。 「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の「3本の矢」を標榜し、安倍政権の代名詞であった「アベノミクス」について、海外の主要メディアはどう報じたのか。安倍首相の辞任表明以降の報道をまとめた』、興味深そうだ。
・『ブルームバーグ アベノミクスは「途中まで成功」  米の金融メディアであるブルームバーグは「Abenomics Era Ends With Japan’s Economy Back at Square One」のなかで、アベノミクスは「途中までは成功」と評価した。 黒田日銀総裁のもとで行われた超低金利政策と国債買い入れにより、長年のデフレからの脱却を果たすなど、アベノミクスは当初は成功していたと評価。また、消費意欲を高めるために、労働者の賃金上昇に積極的に取り組んだ点なども功績だとした。労働力の高齢化が進む中で、景気は緩やかながらも拡大を続け、観光業も円安や規制緩和に助けられ好況であったと振り返った。 しかしながら、インフレ率を目標の2%まで押し上げるには至らず、2016年の日銀によるマイナス金利政策の採用を転機に、金融緩和の影響も弱まっていったと分析。また、2019年10月に行われた2度目の消費増税については「非常にタイミングが悪かった」と指摘した。増税後にすぐさま大規模な台風が発生し、さらにその後、新型コロナ危機にも見舞われ一転して不景気に。約8年間のアベノミクスの時代が終わり「日本経済は振り出しに戻った」と総括した。 「今後の課題は、次期首相がアベノミクスの残りの改革課題に取り組めるかどうか。また、日本をデフレから一挙に脱却させることができるかどうかである」と述べたゴールドマン・サックス証券のキャシー松井副会長の言葉を紹介し、次の展開を注意深く見守る必要があることを示した』、「日本経済は振り出しに戻った」とは言い得て妙だ。
・『フィナンシャル・タイムズ アベノミクスは「成功しなかった」  英の経済紙フィナンシャル・タイムズは「Six Abenomics lessons for a world struggling with ‘Japanification’」のなかで、「アベノミクスは成功したのか」という問いに対してはっきりと「ノー」と答えている。理由としては、アベノミクスの中心的な目標はインフレ率を2%にまで引き上げることだったが、実際には1%程度にしか到達しなかったことが挙げられている。 とはいえ、アベノミクスが行ってきた金融緩和に関しては一定の評価を与えた。特に日銀が大量の資産買い入れに乗り出した2013年当初の「黒田バズーカ」は極めて効果的だったと指摘している。円安が日本の産業界に恩恵を与え、融資は増加し、日本は安倍首相時代に記録的な就業率を達成したと分析した。 問題点としては、まず消費増税が挙げられている。「アベノミクスが失敗したのは、2014年春に日本の消費税が5%から8%に引き上げられた日だった」と振り返り、2019年の10%への増税も含めて、安倍首相は日本を不況に陥れた責任があると批判。刺激を約束しておきながら、抑制をもたらしてしまったことが、アベノミクスが失敗した理由だと振り返った。 また抜本的な構造改革が果たされなかったことも失敗の原因として挙げられている。電力市場の自由化や、農協改革などを通じて一定の成果は見せたが、人口減少傾向にある日本社会の経済を拡大させるような改革には至らなかった。仮に「大規模な移民流入」に踏み切っていれば経済拡大の可能性もあったが、そのような選択肢も現実的ではなかった。安倍首相はアベノミクスの第三の矢として「成長戦略」を掲げていたが、実際には有効な戦略などなかったのではないかと疑問を呈している』、「フィナンシャル・タイムズ」は日経新聞の傘下に入ったが、編集権は独立しており、辛口の評価をしたようだ。
・『ニューヨーク・タイムズ アベノミクスの「現状維持」は危険?  ニューヨーク・タイムズは、「As Japan’s Abe Leaves, ‘Abenomics’ Will Remain, for Good or Ill」のなかで、アベノミクスは「数十年に及ぶ経済の停滞から日本を揺り動かすのに役立った」と評価しつつも、パンデミック以後もアベノミクス路線に何の変化も起きていないことに、多くの人が疑問を抱くのではないかと指摘。長期的な構造改革への努力が必要であるとした。 具体的には、長きにわたる経済停滞から脱却し、失業率の低下にも部分的に貢献した点などがプラスの面として評価できる一方、二度の消費税増税が再び景気を悪化させた点や、規制改革が女性の地位向上に実質的にはほとんど貢献しなかった点で課題が残ったという。 新型コロナウイルスの感染拡大が懸念され始めた時点で、日本は既に2四半期連続のマイナス成長を記録しており、景気は極めて厳しい状況にあったが、アベノミクスへの代案は未だでてきていないと指摘。おそらくは今後も「現状維持」の政策が続くことが予想されるが、パンデミックの影響を大きく受けた人々にとってそれは死活問題だと懸念を示す。 「このような状況になった今、安倍政権はいつも市民を置き去りにしてきたように感じます」という、東京で飲食店を経営する日本人の言葉を紹介し、コロナ禍以後の経済対策の不十分さを指摘した』、「二度の消費税増税が再び景気を悪化させた点や、規制改革が女性の地位向上に実質的にはほとんど貢献しなかった点で課題が残った」、その通りだ。
・『フランス24 アベノミクスは「企業優先の政策だった」  仏メディアのフランス24は「Le Premier ministre japonais Shinzo Abe démissionne, mais que reste-t-il des "Abenomics"?」のなかで、アベノミクスは「実を結ばなかった」と評価し、そのうちの半分は「失敗だった」と振り返った。 日本がデフレから脱却することに苦労した理由としては、大規模な金融緩和にもかかわらず、多くの企業が投資よりも貯蓄することを好んだという点、そして第3の矢の「成長戦略」の部分で、人口減少傾向による経済停滞を食い止めるほどの構造改革が進まなかったことなどを指摘している。 また重要な論点として、アベノミクスは全体として「第1に企業を対象とし、第2に購買力の高い消費者を対象とした施策」であったと分析。1980年代のバブル以降に生まれた格差は、アベノミクスでも拡大する傾向にあったと主張した。次の首相はアベノミクスからの変化を打ち出していくことも必要になるが、「日本にそのような機運は見られない」と懸念を示した・・・』、「アベノミクスは全体として「第1に企業を対象とし、第2に購買力の高い消費者を対象とした施策」であった」、的確な分析だ。

第三に、9月15日付けエコノミストOnlineが掲載した同志社大学大学院ビジネス研究科教授・エコノミストの浜矩子氏による「弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった(浜矩子)」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200915/se1/00m/020/045000c
・『筆者は、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に功はなく、その全てが罪だと考える。それゆえと評してきた。なぜなら、安倍政権の経済運営は下心政治に基づくものだったからだ。安倍氏が追求してきたのは「戦後レジーム(政治体制)からの脱却」だった。安倍氏本人がそう言い続けてきた。戦後が嫌なら、戦前に戻るほかはない。戦前は大日本帝国の世界だった。つまり、安倍氏の目指すところは「21世紀版大日本帝国」の構築であり、それが彼の政治的下心であった。 経済運営も政治的下心にひもづいていた。21世紀版大日本帝国を支える強くて大きな経済基盤づくり。それが、安倍政権が目指すところだった。このような政治的野望を持ったリーダーが指揮する経済運営に功はない。そもそも政治的動機のために経済政策を手段化すること自体が大罪だ。 経済政策には本来、二つの使命がある。一に「均衡の保持と回復」。二に「弱者救済」である。経済活動のバランスが崩れると、弱者が窮地に陥る。だからこそ、経済政策はその第一の使命として、バランスの取れた経済活動の姿を保つことに常に最大の注意を払っていなければならない。 ところが、安倍政権の経済運営は、これらの使命からは遠くかけ離れたところで展開されてきた。 金融政策は安倍政権の放恣(ほうし)な政策運営を支えるための「財政ファイナンス(中央銀行による財政赤字の穴埋め)」に徹した。働き方改革は、これまで労働法制によって守られていた労働者を、「柔軟で多様な働き方」の名の下に、身分と収入が不安定なフリーランサーへと追いやる企みだ。 安倍氏は首相になってすぐ、「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と宣言した。労働コストを抑え込み、賃金上昇を伴わない生産性上昇効果を手に入れる。企業にとってそれが可能になるような環境整備。そのために働き方改革が構想された。「世界で一番企業が活動しやすい国」は21世紀版大日本帝国の「強い経済基盤」構築に直結するとの考えからだ』、「安倍氏の目指すところは「21世紀版大日本帝国」の構築であり、それが彼の政治的下心であった」、「経済政策には本来、二つの使命がある。一に「均衡の保持と回復」。二に「弱者救済」である・・・安倍政権の経済運営は、これらの使命からは遠くかけ離れたところで展開されてきた」、「アホノミクス」と揶揄される所以だ。
・『経済的国家主義  「政府と日銀は親会社と子会社みたいなもの。連結決算で考えてもいいんじゃないか」という安倍氏の発言は恐ろしい。中央銀行が政府の“下部機構”と化して独立性を失う。これは国民よりも国家を第一に考える「経済的国家主義」にほかならない。 経済政策を担う者は、国民の痛みが分かる者たちでなければいけない。だが、安倍政権の面々は他者のために流す涙を持ち合わせていない。「GoToキャンペーン」をめぐる迷走をはじめ問題が続出した政府の新型コロナ対応を見て、それを確認した。つまり、自分たちの得失点ばかり考えているから、場当たり的で真摯(しんし)さに欠く対策しか出てこない。アベノミクスの正体は「功なき大罪」の塊である』、「アベノミクスの正体は「功なき大罪」の塊である」とは言い得て妙だ。

第四に、9月18日付け東洋経済オンライン「ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/376063
・『新型コロナウイルスの流行でアメリカの128カ月続いた景気拡張が終わりを告げた。日本は2012年11月からの景気拡張がすでに2018年10月に終了していたが、2020年は5%台のマイナス成長と予想されている。折しも、日本では戦後最長となった安倍晋三政権が幕を閉じ、菅義偉政権が16日に発足した。新政権の直面する経済面での課題は何か、また、新型コロナをきっかけに中長期で経済はどう変わるのか。BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏は、「パンデミック危機は何かを変えるというよりも、今ある問題を加速させる」と話す(Qは聞き手の質問、Aは河野氏の回答)』、興味深そうだ。
・『生産性上昇率の低下、潜在成長率の低迷が問題  Q:菅義偉政権が16日に発足しました。コロナ前の完全雇用の下でも日本経済は停滞していると感じていた人が多いと思います。問題はどこにあるのでしょうか。 A:生産性上昇率が低下傾向を続けてきたことだ。労働投入は増えたが、資本投入と、技術進歩などがかかわるTFP(全要素生産性)は下がってしまった。普通は景気回復が長期化すると生産性が高まるとか、潜在成長率が上昇することを期待するだろう。しかし、そうはならなかった。 アベノミクスは景気拡大を長期化させた一方で、完全雇用に到達した後も、金融緩和と財政拡大のマクロ安定化政策を続け、その結果、資源配分が歪み、採算の低い企業や事業が生き延びられたので、生産性上昇率が下がってしまった。そのため、賃金も上がらず、インフレ率も上がらなかった。 不況期に失業が増えないように、マクロ安定化政策を行うわけだが、完全雇用に到達すれば、これをやめて、生産性の上昇を促すような政策をとらなくてはならない。安倍政権下では超人手不足になったにもかかわらず、マクロ安定化政策を続けたため、企業は生産性を高めるようなIT投資や人的投資も行わず、潜在成長率が下がってしまった。生産性も上がらなかったから、賃上げもできなかった。 Q:最近は、欧州やアメリカも低金利政策が長引くことになり、「日本化(ジャパニフィケーション)」が言われています。河野さんは早くからこの問題を指摘しています。あらためて、「日本化」を定義してください。 A:将来の成長に期待が持てないので、企業が儲かってもお金を使わない。すなわち、設備投資や賃上げを行わない。一国全体で貯蓄が増えてしまい、貯蓄が増えるから貯蓄と投資をバランスさせる自然利子率が下がってしまう。そうすると金融政策も効かないから、景気刺激もできず、インフレ率も高まらない。 本来は、潜在成長率を引き上げる政策が必要だが、成長率も低いしインフレ率も低いから金融緩和が止められない。自然利子率がマイナスの領域に入って金融緩和は効かないままだから、財政出動を繰り返す。それによって、さらに資源配分の歪みを助長し、いっそう生産性が下がり、潜在成長率も下がる。低成長、低インフレ、低金利が続き、膨張した公的債務だけが残る、というものだ。 Q:そうした中で、新型コロナウイルスの流行が起きました。 A:今回のパンデミック危機で、結果的にお金を貯め込んでいた企業が生き延びた。アメリカではまだ、果敢に投資を行ってきた企業があるが、債務の大きいところは、破綻リスクが高いと見なされて2~3月に株価の大幅な下落に見舞われた。したがって、日本企業は内部留保を貯め込んでいてよかったという成功体験ができてしまい、ますます、投資をしなくなるのではないかと危惧している。アメリカ企業も今、債務返済を優先し、今後は投資に慎重になっていくのではないか。 Q:金融政策を見ているとECB(欧州中央銀行)もFRB(連邦準備制度理事会)も本当に日本銀行の後を追っているという感じです。財政はどうでしょうか。 A:日本と欧米は少し違うけれども、近づいてきているとも言える。 金融政策が効かなくなってきているので、財政出動に頼らざるをえない。国債発行の増加を放置して金利が上がるとマクロ経済の不安定化、金融システムの不安定化が起きるので、金利の上昇を抑え込まざるをえない。中央銀行が金利を抑え込むと、財政拡張のコストはゼロであるかのように見えてしまうので、ますます財政の中央銀行への依存度が高まる。とくに、パンデミック危機の下では、どこの国の国民も追加財政に反対しないので、こうしたことが続きやすくなる』、「本来は、潜在成長率を引き上げる政策が必要だが、成長率も低いしインフレ率も低いから金融緩和が止められない。自然利子率がマイナスの領域に入って金融緩和は効かないままだから、財政出動を繰り返す。それによって、さらに資源配分の歪みを助長し、いっそう生産性が下がり、潜在成長率も下がる。低成長、低インフレ、低金利が続き、膨張した公的債務だけが残る」、悪循環だ。「中央銀行が金利を抑え込むと、財政拡張のコストはゼロであるかのように見えてしまうので、ますます財政の中央銀行への依存度が高まる。とくに、パンデミック危機の下では、どこの国の国民も追加財政に反対しないので、こうしたことが続きやすくなる」、大いに懸念される点だ。
・『欧米はまだ財政の際限なき膨張には至らない  欧州では、従来は北の国々は厳しくて財政拡張をやらない方針だったが、南欧の国々のサポートをしなければならないということで、今回、欧州復興基金を設定して欧州共同債を発行することになった。だが、気候変動対策や5G投資など賢い使い方をしましょうというコンセンサスがある。また、後の世代にツケを残さないという考え方で、炭素税やオンライン課税、各国からの出資で回収しようという議論になっている。独仏もパンデミックに要した費用は20年程度で返済する方針を示している。 アメリカでも民主党は気候変動対策への投資(グリーンニューディール)を主張しているが、大統領候補のバイデンも副大統領候補のハリスも中道派で、MMT(現代貨幣理論)に与(くみ)しているわけではなく、法人税増税を行うと言っている。また、トランプ大統領に乗っ取られた感のある共和党も、トランプ後は元の「小さな政府」を主張する党に戻る可能性もある。 短期的には各国とも中銀ファイナンスで追加財政を賄っているのは事実ではあるが、今回のパンデミック危機下の公的債務膨張の先に、日本と同様に財政規律が弛緩し、制御不能な水準まで膨張していくリスクがあるかと言えば、そこまではいかないと思っている。 Q:菅政権はどのような経済政策を採ると思われますか。 A:当面はパンデミック対応で財政を膨張させ、金融政策による低金利でこれを支えることに変わりはない。しかし、菅さんはリフレ派とは距離を置いているし、「自助、共助、公助」とスローガンに掲げている。この言葉は、オールドケインジアンとは違う。時間が経つと政権のカラーが変わる可能性はあるのではないか。 Q:もっと構造改革的な政策になるのでしょうか。 A:差別化が図られるのはミクロの政策だと思う。総務相をやっていたので、携帯料金の引き下げはよく言われるが、官房長官という仕事柄、各省庁をまたぐ案件を解決するのは他の人よりも得意。安倍政権でのインバウンド、農産物輸出、外国人労働の活用なども菅さんの政策だ。安倍政権は成長戦略と言いつつ、痛みを伴う競争政策などから距離を置いていた。菅氏は小泉純一郎政権の時代、総務副大臣として竹中平蔵総務相の薫陶を受けていた。小泉流の新自由主義的な構造改革路線と親和性が高いように思われる。 今回、3つをすでに上げている。デジタル庁、厚生労働省の再編、地域金融機関の再編と。デジタル庁は当然やるべき案件だ。日本ではあらゆる申請がデジタルでできないことが問題になっていたが、とくに、今回のコロナ危機で明らかになった。オンライン教育、オンライン診療などすべて遅れている。 パンデミック危機で困窮する人に手厚いサポートを行うという政策が本来は必要だが、政府が所得のデジタルデータを持っていないため、結局、11年前と同様に、ゆとりのある人を含め、国民すべてに一律に現金給付することになった。10年に1度は経済危機が訪れるのだから、適切で迅速な政策を遂行するには、デジタルデータで国民の所得や資産を捕捉する必要がある』、「欧米はまだ財政の際限なき膨張には至らない」、やはり日本のリスクは突出しているようだ。「菅氏は小泉純一郎政権の時代、総務副大臣として竹中平蔵総務相の薫陶を受けていた。小泉流の新自由主義的な構造改革路線と親和性が高いように思われる」、ますます「新自由主義的な」路線を強めるとはやれやれだ。
・『菅さんは行政改革が国民の利益になるという発想  厚生労働省はパンデミック危機への備えが不十分で初期対応で検査態勢など立ち上がりが悪かったと言われる。省庁再編のときに担当分野が広くなりすぎ、政治がうまくコントロールできていないと解釈されているのかもしれない。医療・介護と労働・年金を分けるという議論が以前からあった。 政治的な文脈で言うならアメリカのレーガン政権のころから、行政運営がうまくいかないのは非効率な役所のせいであり、行政改革を行うことで国民の利益につながる、という発想がある。小泉政権下の道路公団や郵政の改革と同じで、行政改革を進めることで、求心力を高めることもできる。 金融機関の再編も人口が減少し、フィンテックが広がる中で、取り組まなければならない問題だ。マイナス金利政策もあって金融機関の体力はすでに落ちている。パンデミックが長引けば、不良債権問題を抱えるところも出てくる。ただ、弱い金融機関同士がくっついても効果はないし、新たな収益モデルを見出すことも容易ではない。当面は、強い金融機関を作るといったプロアクティブな話ではなく、弱った金融機関を合併などで混乱なく退出させるといったリアクティブな政策になるのかもしれない。 安倍首相は毎年、スローガンのように政策を打ち出したが、菅政権では限られた案件をじっくりと解決するといったスタイルになる可能性がある。 Q:日本銀行の金融政策の見直しはあるでしょうか。 A:2013年1月に政府と日銀がアコードを結んでから、2%の物価目標を掲げて金融緩和を続けてきたけれど、無理だった。パンデミックがなくても、2%到達は見通せなかったはずなので、このことについての総括は必要だ。現状では利上げなどはとうていできないけれども、2%インフレ目標の位置付けの見直しや、ウィズコロナ、アフターコロナにおける財政金融政策の整理など、いずれアコードの見直しを行わなければならない。 Q:財政の健全化はかなりハードルが高いです。 A:今後も財政健全化どころか、パンデミック危機が収束するまでは、追加財政を繰り返さざるをえないだろう。まず、パンデミック危機にかかった費用についてどうするかが問題だ。東日本大震災のときと同じように、区分会計を行って、負担を比較的ゆとりのある企業や家計にお願いする必要がある。 パンデミック危機以前からのプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字は高齢化に伴って膨張し、財源を手当てできていない。これは消費増税で対応するしかない。しかし、安倍政権下の2回の増税のあと、個人消費が大きく落ち込んだ。政治家はもうこりごりだと思っているだろう。潜在成長率が2010年代には0.6%まで低迷しているのだから、3ポイントや2ポイントも一度に上げると消費がダメージを受けるのは当然だ。1ポイントの増税でも1年間の実質所得の増加はすべて吹っ飛んでしまう』、「消費増税で対応するしかない」には違和感がある。自民党政権の制約を抜きに考えれば、設備投資に結びつかなかった法人税減税を元に戻す、資産課税を検討する余地もある筈だ。
・『「2年に1度0.5%の消費税率引き上げ」を提案  したがって、実質所得の増加を可能にするには2年に1度の0.5%の増税を行ってはどうか。1回でまとまった増税をすると、そのたびに景気の落ち込みをカバーするべく大規模な財政支出を行ったり、税収増の一部を新たな歳出に振り向けるので、いっこうに帳尻が合わない。0.5%の増税なら、そうしたことをしなくてもよい。キャッシュレス化が進んでいるので、企業の対応も可能だと思う。 10%ポイントを引き上げるに40年かかるのでは金融市場が納得しないと思われるかもしれないが、景気への悪影響が小さく途中で挫折しないということで、好意的に受け止める可能性が高いのではないか。不況でも挫折しない財政健全化プランが整っていれば、不況期に追加財政を行うことも容易になる。 また、社会保障給付の増加ペースは速いので、年金の支給開始年齢が65歳のままだと危うい。男性の平均寿命が81歳、女性が87歳になっており、年金は長生きリスクへの対応であることを考えると、支給開始年齢の引き上げを考えるべきだ。保険だけでなく、国費の半分がつぎ込まれているので、所得の多い人の給付を下げることも考えるべき。世代にかかわらず困窮者を救済するのが狙いなのであれば、ゆとりのある高齢者には負担をお願いしないといけない。 医療保険においては、後期高齢者の負担を1割から2割に引き上げることは評価できるが、疾病の内容で変えるべきだと思う。重篤な病であれば保険料を引き下げ、生活の質を上げるためのものであれば自己負担を引き上げるべきではないか。 Q:ポストコロナの経済面での変化についてお尋ねします。まず、ますますデジタル化が加速しそうですが、中国が先行して中央銀行デジタル通貨の研究が進みそうです。そうなった場合、ドルの位置づけはどうなるでしょうか。 A:むしろ、新型コロナの流行の当初に世界中でドルの需要が拡大した。そこで、各国の中央銀行が、主要国のみならず新興国もドルの手当てができるように協力した。先進国の金融緩和や、IMF・世界銀行の協力、日本が主導するチェンマイイニシアティブなどで、新興国の資金繰りをサポートし、新興国からの資金流出の危機を回避した。ドルの重要性は基本的には変わっていない。一般論で言うと中銀デジタル通貨の導入を進めることになったら、ドルの利用がもっと広がる可能性もある。 米中新冷戦で、情報通信や医療関係、食料などの安全保障分野を中心に部分デカップリングが進む中、国際金融は基本的にドルで動いているので、中国はアメリカの優位性を覆そうと、人民元の国際金融面での利用を広げていこうとするだろう。中国国内のみならず、権威主義的な国家には浸透しやすい。アメリカと政治的に対立するところは従来、ドルで決済していることによりアメリカから金融的な制裁をかけられやすいという問題を抱えているため、ドルに代わる国際的な通貨を作ればメリットがある。 ただし、中国も資本逃避の問題を抱えている。現在の社会システムが持続可能ではないと考えて、富裕層が資金を国外に流出させており、人民元の自由化を進めて、広く国際的に使ってもらおうとすると、その動きが止められなくなる。米中とも微妙で、難しいところがある』、「中国も資本逃避の問題を抱えている」ので、「人民元の自由化」のハードルは高そうだ。
・『アメリカ社会の不安定化も深刻だ  Q:米中対立はどちらにも弱みがあり、綱引きが続くということでしょうか。 A:アメリカは今のところ民主党政権になる可能性が高いが、中道派のバイデンやハリスで、現在の社会の分断を止められるのか疑問だ。ここ30年、アメリカではIT分野を中心にイノベーションは起きてきたけれども、アイデアの出し手ばかりに所得増加が集中する構造だった。公的医療保険すら整わない状態なのに、選挙資金法による規制は改正されて政治を金で買える状況になっている。 パンデミックのリスクも平等ではなく、ホワイトカラーはテレワークなどで感染リスクを避けられるが、所得の低い人は感染リスクの高い仕事につかざるをえず、有色人種の被害が大きい。アメリカは自由の国をうたって、中国の新疆・ウイグル自治区などの問題を指摘するが、自国が誇れる状況なのか。 現状程度の支持率の差だと大統領選挙は接戦になり、トランプ大統領が郵便投票は不正だと主張しホワイトハウスに居座り続けたら、治安維持部隊と民主党支持者の間で暴力沙汰が広がり、内乱のようなことも起きかねない。アメリカも大きな問題を抱えている。 パンデミック危機は何かを変えるというよりも、今ある問題を加速させると見ている。「日本化」問題も、米中対立も、デジタル化の問題も、社会の分断も。 Q:先ほどもお話に出た、IT化、デジタル革命で、所得格差がますます進むという問題。これはどうなりますか。所得再分配の機運が高まるのか……。 A:単に高所得者から低所得者に社会保障制度の拡充を通じて所得移転を行うという話ではないだろう。本質は、知識経済化が進む中、アイデアが生み出す付加価値の帰属について、われわれが考え方を変えることができるかどうか、というところにかかっている。 GAFAの儲けの源泉はわれわれが喜んでせっせと入力している個人情報。これに対価を払え、といって実現できるかどうか。過去の例で言えば、スタンダードオイルとかUSスティールの解体に匹敵する。物的資本の生み出す利益は所有者に帰属するのが明らかだが、無形資産の生み出す付加価値の帰属は社会規範が決めるので、変わる可能性がある。 個人情報は誰のものか。欧州では議論になっているが、ITの巨人はアメリカ企業なので、議論が進んでいない。したがって、アメリカにおける社会の不安定化が最終的に変革につながる可能性がある』、「アメリカにおける社会の不安定化が最終的に変革につながる可能性がある」、他力本願的だが、いたしかたなさそうだ。
・『反グローバリゼーションの流れは明確に  Q:今回の危機ではグーグルの移動データをさまざまな分析で活用している人が多いですが、1私企業がこうしたデータをすべて握っているのも不気味です。 A:重要な点だ。日本人は国に情報を握られるのが嫌だと言う人が多く、マイナンバーの登録がなかなか普及しないが、私企業に持たれているほうが大きな問題だろう。例えば、今後、スマートシティが実現して、あらゆる建物で発電が再生エネルギーで行われ、町自体が、IoTによって動くといったことが実現したら、そのシステムを誰が管理するのか。グーグルのトロントで計画したスマートシティにも異論が出た。 Q:民主的な管理の仕組みを議論することになるんでしょうね。 A:マンションの管理組合みたいな、第三者機関による管理ということになるのだろう。協同組合といった発想が重要になるのかもしれない。 Q:パンデミック危機をきっかけにグローバリゼーションからナショナリズムへ、という動きが加速するのでしょうか。 A:1980年代から続いてきたグローバリゼーションは、反グローバリゼーションに流れがはっきりと変わったといえる。金融グローバリゼーションの行きすぎで、ウォール街関係者が途方もない所得を手に入れたという問題だけではない。自由貿易は必要なはずだが、われわれは一国の社会規範や社会慣行の領域に手を入れるほどのグローバリゼーションを推し進めたため、各国で政治的分断や権威主義勢力の台頭が生じた。 パンデミック危機解決のためには世界が協力しないといけないはずだが、グローバリゼーションの恩恵を最も受けた中国の台頭の結果、米中の新冷戦など対立も強まっている。経済を語る際も、つねに安全保障上の話をしなければならなくなるのだろう。ダニ・ロドリック教授が主張しているような、「グローバリゼーションより国家主権や民主主義が重要」という流れになるのではないか』、「国家主権」重視になると対立が深まる懸念もある。民主党の大統領に変われば、国際協調への動きが復活するだろうが、大統領選挙の行方はまだ予断を許さないようだ。
タグ:「国家主権」重視になると対立が深まる懸念もある 反グローバリゼーションの流れは明確に アメリカにおける社会の不安定化が最終的に変革につながる可能性がある アメリカ社会の不安定化も深刻だ 「人民元の自由化」のハードルは高そうだ 中国も資本逃避の問題を抱えている 「2年に1度0.5%の消費税率引き上げ」を提案 「消費増税で対応するしかない」には違和感 菅さんは行政改革が国民の利益になるという発想 菅氏は小泉純一郎政権の時代、総務副大臣として竹中平蔵総務相の薫陶を受けていた。小泉流の新自由主義的な構造改革路線と親和性が高いように思われる 欧米はまだ財政の際限なき膨張には至らない 中央銀行が金利を抑え込むと、財政拡張のコストはゼロであるかのように見えてしまうので、ますます財政の中央銀行への依存度が高まる。とくに、パンデミック危機の下では、どこの国の国民も追加財政に反対しないので、こうしたことが続きやすくなる 本来は、潜在成長率を引き上げる政策が必要だが、成長率も低いしインフレ率も低いから金融緩和が止められない。自然利子率がマイナスの領域に入って金融緩和は効かないままだから、財政出動を繰り返す。それによって、さらに資源配分の歪みを助長し、いっそう生産性が下がり、潜在成長率も下がる。低成長、低インフレ、低金利が続き、膨張した公的債務だけが残る 生産性上昇率の低下、潜在成長率の低迷が問題 「ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く」 東洋経済オンライン アベノミクスの正体は「功なき大罪」の塊である 経済的国家主義 安倍政権の経済運営は、これらの使命からは遠くかけ離れたところで展開されてきた 経済政策には本来、二つの使命がある。一に「均衡の保持と回復」。二に「弱者救済」である 安倍氏の目指すところは「21世紀版大日本帝国」の構築であり、それが彼の政治的下心であった 「弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった(浜矩子)」 浜矩子 エコノミストOnline フランス24 アベノミクスは「企業優先の政策だった」 ニューヨーク・タイムズ アベノミクスの「現状維持」は危険? フィナンシャル・タイムズ アベノミクスは「成功しなかった」 日本経済は振り出しに戻った ブルームバーグ アベノミクスは「途中まで成功」 「アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価」 Forbes 第一と第二の罪、金融緩和、財政バラマキによって、次の政権では財政破綻リスクが実現してしまう可能性を極めて高くしてしまったこと。それがアベノミクスの最大の罪である 日銀だけが、出口の議論は時期尚早と言って、一切、公式に議論しないばかりか、理論的にも出口のないほどの異常な緩和を行ってきた 今後、必ず、金融市場は破綻し、金融市場が破綻すれば、日本経済も大きく落ち込む。このリスクとコストを先送りして、短期的に株価を上げて、目先の支持率を上げたのがアベノミクスであった 実態は「クロダノミクス」 特に非難すべきことでもない 軽減税率は導入しなかった方がよかったが ネーミングが全て 成功した、と思わせることに成功した アベノミクスはイメージ的には大成功を収めたが、経済的には突出して異常な金融緩和と新型コロナ対策のバラマキで日本の将来に大きな禍根を残した 「安倍首相辞任、アベノミクスの2つの大罪」 小幡 績 Newsweek日本版 (その36)(安倍首相辞任 アベノミクスの2つの大罪、アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価、弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった、ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く) (スガノミクス) アベノミクス
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