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MaaS(その1)(MaaSって何? 国内の最前線・福岡に行ってみた、日本の「交通革命」 欧州のMaaSにはほど遠い コロナ禍でテレワークやマイカー通勤が浸透、孫正義社長の懐刀が明かす「MaaS」次の一手 モネ・テクノロジーズの宮川社長に聞く、なぜ自分が?「MaaS」生みの親が語る苦難の道筋 東急の「観光型MaaS」リーダー、2年間の「戦い」) [産業動向]

今日は、新しい交通サービス体系である、MaaS(その1)(MaaSって何? 国内の最前線・福岡に行ってみた、日本の「交通革命」 欧州のMaaSにはほど遠い コロナ禍でテレワークやマイカー通勤が浸透、孫正義社長の懐刀が明かす「MaaS」次の一手 モネ・テクノロジーズの宮川社長に聞く、なぜ自分が?「MaaS」生みの親が語る苦難の道筋 東急の「観光型MaaS」リーダー、2年間の「戦い」)を取上げよう。

先ずは、昨年4月30日付け日経ビジネスオンライン「MaaSって何? 国内の最前線・福岡に行ってみた」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00037/042400001/?P=1
・『デジタルの力で様々な交通手段を連携させて、移動の利便性を高める「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」が注目されている。海外での普及が進む中、国内でも取り組みが始まっているという。実態を探るため、国内のMaaS先進地に向かった』、興味深そうだ。
・『電車、バスに加え、シェアサイクルも  九州最大の都市・福岡市。日本最大級のバス保有台数を誇る西日本鉄道のお膝元とあって、街中では路線バスが絶え間なく発着を繰り返す。ここでは、その西鉄とトヨタ自動車が手を組んで、様々な移動手段を組み合わせたルート検索ができるアプリ「マイルート」の実証実験を2018年11月から始めている。 使い方はいたってシンプルだ。アプリを起動し、目的地を入力すると「到着が早い」「料金が安い」「乗り換えが少ない」の項目ごとに候補が表示される。ここまでは従来の乗り換えアプリと大差はないが、マイルートでは路線バスや電車に加え、シェアサイクルやレンタカーを使ったルートも表示される。 例えば、福岡市北東部にあるJR箱崎駅から約7キロ離れた城南区役所を目指すとする。「到着が早い」で初めに出てくるのはタクシーを利用する23分のルートだったが、画面をスクロールすると「JR鹿児島本線区間快速→福岡市地下鉄空港線→徒歩→サイクルシェア→徒歩」という乗り換えが表示されていた。このサイクルシェアというのはフリーマーケットアプリのメルカリグループが18年2月から福岡市で始めたシェアサイクルサービス「メルチャリ」で、市内の至るところに赤いメルチャリが置かれた「ポート」がある。 このルートで画面上の「ガイド開始」を押すと地図での案内が始まり、利用者はそれに従って乗り換えを進めていけば目的地にたどり着くことができる。かかる時間は箱崎駅出発から50分余り。時間だけを見るとタクシーの倍以上で手間もかかるが、移動費用はアプリ上では6分の1に抑えることができる。 マイルートでは西鉄バスのフリー乗車券の購入やタクシーの予約・決済もできる。これが様々な移動サービスを統合するMaaSの肝。移動ルートの検索だけでなく、予約・決済までできれば、利便性は高い。ただ、マイルートでは電車やバスの支払いをすることは「現在はできない」(西鉄未来モビリティ部企画開発課・日高悟課長)。MaaSとして普及させるには、さらなるサービス向上が課題になる』、「電車やバスの支払いをすることは「現在はできない」」、のでは単なる検索サービスだ。
・『AIが最適ルートを導く  「乗り合いタクシーをご予約された方はいませんか?」。伊豆半島の先端付近にある静岡県下田市の伊豆急下田駅で、到着したワゴン車から降りてきた男性が声を張る。観光地として知られるこの地では、東京急行電鉄やJR東日本が「観光型MaaS」の実証実験を4月から始めている。 使うのは「Izuko(イズコ)」という専用アプリ。現在地から目的地までの交通手段の検索をしたり、鉄道やバスのフリーパスや、観光施設の入場券を購入したりできるほか、地元タクシー会社が運行する乗り合いタクシーを呼べる。冒頭の男性はイズコで呼ばれた乗り合いタクシーの運転手だ。 観光客の8割が自動車を利用しているという伊豆では、鉄道など公共交通機関で訪れる観光客の掘り起こしが課題。そのためには、最寄り駅に到着してから観光地を巡る二次交通の整備がカギとなっている。特に、江戸時代に日米和親条約の付帯協定が結ばれた了仙寺や、そこに至るペリーロードなどがある旧市街地は最寄駅から離れており、移動手段の確保が欠かせない。そこで導入されたのが、この乗り合いタクシーだ。 4月5日にマスコミ各社を集めて行われた実証実験の体験会。乗り合いタクシーはイズコで目的地を入力して呼び出すと10分ほどで到着した。実際に乗って動き出すと、乗り合いタクシーが通る旧市街地の道路は狭いことに気づく。運転手は「旧市街地は観光スポットは多いのですが、道幅が狭くバスでは入れないところも少なくない」と説明してくれた。 この日に乗車したのは記者やカメラマンばかりで、乗車時に途中乗車する旅行客の姿はなかったが、あらかじめ決められた市内16カ所の乗降スポットでは乗り降りが可能だ。路線バスや周遊バスなどとは異なり、人工知能(AI)が乗り合わせた人の行き先などから最適なルートを導き出して、利用者に快適な移動を提供するのだという。 一方で、伊豆での実証実験でも課題は見受けられた。まずは福岡市のマイルートと同様に、アプリを使っての料金の支払いはまだ限定的な面が多い。実証実験では乗り合いタクシーの利用は無料だが、事業化にあたっては料金設定も必要になってくる。「課題は山積しているが、地域のあるべき交通の姿を実現するために、ITで世直しをしていきたい」と東急電鉄の森田創・事業開発室課長。利用者の不便を解消し、いかに利便性を高めていくか。 4月29日・5月6日号の日経ビジネス特集「移動革命 MaaS 世界が狙う新市場」では、世界各地で取り組みが進むMaaSについて取り上げている。MaaS先進地の米国ではどこまで便利になっているのか。ビジネスチャンスはどこにあるのか。普及に向けた日本の課題は何か。多方面から探った』、「福岡」、「伊豆」はあくまで「実証実験」のようであるが、いずれも「検索」が中心で、画期的なサービスはないようだ。

次に、7月2日付け東洋経済オンラインが掲載したモビリティジャーナリストの森口 将之氏による「日本の「交通革命」、欧州のMaaSにはほど遠い コロナ禍でテレワークやマイカー通勤が浸透」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/358482
・『新型コロナウイルスは、私たちの生活に不可欠だった「移動」そのものを控えなければいけないという難問を突きつけた。しばらくはウィズコロナの生活が続くことになる。 5月25日に国の緊急事態宣言が全面的に解除されたのに続き、6月19日には移動自粛も全面解除となり、国内に限れば自由な往来が可能になった。しかしいくつかの理由から、移動が完全に元に戻ることはないと予想している』、興味深そうだ。
・『都市部ではテレワークが進んだ  1つは大都市を中心に急速に普及したテレワークだ。東京では大企業だけでなく中小企業でも導入が進んでいる。6月に東京商工会議所が発表した数字によると、東京の中小企業のテレワーク実施率は3月の26%から倍以上増えた67.3%にもなっている。しかも日本生産性本部の5月の調査によれば、テレワークで働いた人の6割近くが、収束後もこの働き方を続けたいという。 緊急事態宣言が終了したことで以前の勤務スタイルに戻す会社もある。しかし一方で、テレワークを前提としてオフィスの縮小や廃止に踏み切った会社も多い。経費節減にもつながるので当然だろう。 例えば、菓子大手のカルビーは本社や営業拠点の社員約800人を対象に、原則在宅勤務などのテレワークとし、フレックス勤務のコアタイムを廃止するといった新しい働き方を7月1日から始めた。結果的に30%前後の出社率を目安とするという。通勤定期代の支給を止め、出社日数に応じた交通費を通勤手当とする。このほか、業務に支障がないと会社が認めれば、単身赴任も解除する。 大都市に対して地方では工場などの職場が多いこともあり、テレワークは進んでいないが、もともと普及が進んでいたマイカー移動が感染予防に有効という意見が多く出ており、事業者側がこれまで以上にマイカー通勤を促す動きもある。 観光需要について海外では、スイス政府など多くの組織や団体が、完全に回復するのは2022年という数字を出している。治療薬やワクチンの供給が始まったとしても、マインド面で旅行を控えておこうという人が残るためだろう。また国内旅行でいえば地方の通勤同様、感染リスクを避けるために公共交通の利用を控え、マイカーやレンタカーでの移動を選ぶ人が出てきそうだ。 訪日外国人観光客(インバウンド)については、IATA(国際航空運送協会)が5月、2019年の水準に回復するのは2024年になるとの見通しを示している。IATAによれば入国時の隔離措置などを敬遠している人が多いという。 いずれにせよ、大都市か地方かによらず、しばらくは公共交通の利用者が回復する見込みは薄い。とりわけ地方のバスやタクシーは、地域交通だけでは経営が成り立たないことから、インバウンドを含めた観光需要を収益の柱にしていたところが多かった。しかし日本政府観光局によれば、4月と5月の訪日外客数はいずれも前年同月比マイナス99.9%であり、苦境に陥っている事業者は多い。 日本モビリティ・マネジメント会議は、今回のコロナ禍で公共交通は最低でも総額3.5兆円の減収と試算しており、8月中旬までに事業者半数が倒産の危機と発表している』、「インバウンド」が殆どなくなった下では、「地域交通」「事業者」の苦境は深刻だろう。
・『欧米では公的支援も  こうした状況下で、必要とされるのは国の支援だろう。欧米諸国はいち早く動いており、自動車中心社会とみられがちなアメリカでも4月2日、感染拡大で深刻な影響を受けている公共交通機関に対し、総額250億ドルの緊急支援金を交付するとしている。 日本では4月20日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定し、地方公共団体が地域に必要な支援をきめ細かく実施できるよう、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を創設した。ただしこの交付金は地域経済全般にわたる対策で、交通限定ではない。 しかもこれだけでは到底足りないという意見が多く出たことから、6月12日に成立した第2次補正予算では、前述の交付金が2兆円上積みされるとともに、地域の鉄道やバス、離島などへの航路や航空路を対象とした「地域公共交通における感染拡大防止対策」として138億円が盛り込まれた。 こうした交付金や補助金は、地方公共団体が自発的に申請して、初めて受け取れるものである。筆者が先日記事にした長野県上田市のように積極的に申請を行う自治体もあるが(2020年6月16日付記事「橋崩落の上田電鉄別所線『市民パワー』で復活へ」参照)、地域交通の実情を把握していない自治体では申請が行われず、最悪の結果に行き着くおそれもある。 またこうした交付金や補助金は、未来永劫に続くものではない。つまり交通事業者は交付金や補助金で苦境を凌ぎつつ、移動の変化に見合ったサービスに組み替えて行くことが求められる。 大都市の鉄道については、テレワーク普及による利用者数減少に合わせた、効率的な運行を目指すことになろう。その場合、首都圏は京阪神、京阪神は中京や札幌や福岡など、輸送規模の小さい都市圏の対応が参考になると考えている。利用者数に対してインフラに余裕がある状況なので、有料座席指定車両の組み込みがしやすくなるなど、これまで困難だったサービスの実現も可能になろう。 一方以前から経営合理化を徹底しており、必要に応じて補助金も受けていた地方の交通事業者は、マイカー移動への流出もあって限界的状況にあると想像する・・・』、なるほど。
・『流行語「MaaS」の今後は?  もう1つ、「MaaS(Mobility as a Service=サービスとしての移動)」も重要なツールになると筆者は考えている。 昨年、MaaSは流行語のような立ち位置にあった。経済メディアには「MaaS関連銘柄はこれだ」などといった文言が踊り、買い材料に乏しい小規模な上場企業がこの4文字に言及さえすれば、期待先行で株価が上がるなどという例が見られた。しかしコロナ禍で移動そのものが激減すると、MaaSの話題も潮が引くように聞かれなくなった。 でもそれは悪いことではない。浮ついた気持ちで参入した人々が姿を消したからだ。MaaSにおいては新型コロナウイルスがマスクの役目を果たし、本気で都市や地方のモビリティをよくしたいと考える事業者が残った。 事実、3月25日には東京メトロが「my! 東京MaaS」の開始、5月20日にはJR東日本が「MaaS・Suica推進本部」の新設を発表するなど、最近は大手交通事業者の動きが目立っている。小田急電鉄はMaaSアプリ「EMot(エモット)」の実証実験を12月末まで延長する。 コロナ禍でのMaaSの役割は、ソフトウェアだからこそできる、乗りたくなる仕組みの構築だと考えている。 大都市では、感染防止の観点から利用が増えている自転車などのパーソナルモビリティとの連携が大切になりそうだ。雨の日は鉄道に切り替えたりする人々を着実に取り込むためである。また経路検索時に駅や列車の混雑状況案内を連携させれば、状況に応じて移動手段を変えたりできる。こうしたサービスも利用促進につながるはずだ。 ただし日本の大都市は複数の交通事業者が競合する状態で、東京23区では鉄道事業者だけでも10以上に分かれる。MaaSにしても個々の事業者の周辺のモビリティの統合に留まっており、市内の鉄道、バス、タクシー、自転車シェアリングなどあらゆる交通をシームレスにつないだフィンランドの首都ヘルシンキの「Whim」の足元にも及ばない。 理想は欧米の多くの都市が実践している1都市1事業者への統合であり、現状維持の中でデジタル化したモビリティサービスを導入し、それをMaaSと呼び続けるのであれば、利用者や都市環境のことを第一に考えた真のMaaSは永遠に手にできないのではないかと思えてくる。 一方、地方はマイカー移動になびいた地域住民を公共交通に呼び戻すのに効果があると思っている。そもそもMaaSはマイカー並みのシームレスな移動を提供することで、公共交通の利用率を高め、環境問題や都市問題を解消するために生まれたからだ。 地方は鉄道やバスの事業者数が少ないので、統合は楽である。地域の商店や飲食店なども取り込むことができれば、大都市から移住してきた人も満足できるサービスが実現できる。損得勘定を抜きで考えれば、MaaSは地方に向いているのである。 さらに大都市を含めて、MaaS導入によって移動データの取得が可能になることにも注目したい。もちろん個人情報には留意する必要はあるが、「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」の移動計画が立てやすくなるというメリットがある』、「日本の大都市は複数の交通事業者が競合する状態で、東京23区では鉄道事業者だけでも10以上に分かれる。MaaSにしても個々の事業者の周辺のモビリティの統合に留まっており、市内の鉄道、バス、タクシー、自転車シェアリングなどあらゆる交通をシームレスにつないだフィンランドの首都ヘルシンキの「Whim」の足元にも及ばない。 理想は欧米の多くの都市が実践している1都市1事業者への統合であり、現状維持の中でデジタル化したモビリティサービスを導入し、それをMaaSと呼び続けるのであれば、利用者や都市環境のことを第一に考えた真のMaaSは永遠に手にできないのではないかと思えてくる。地方はマイカー移動になびいた地域住民を公共交通に呼び戻すのに効果があると思っている」、その通りなのかも知れない。
・『デジタル対応はやはり鈍い  課題がないわけではない。1つはこの国のデジタル対応の鈍さだ。日本はデジタルに人も金もかけたがらない。その結果、使い勝手から安全性まで不完全なシステムが構築され、トラブルが発生したりハッカーの侵入を受けたりしている、という指摘もある。 しかもこの国は、現状を変えたくないという保守的な風潮が根強い。たとえば働き方では、昨年の上陸時も、計画運休が発表されていたにもかかわらず、多くの通勤者が運転再開を待って長蛇の列を作るなど、会社に行くことが仕事と考える人が多く見られた。今回テレワークが広がったのは感染という身の危険があったからであり、このような重大な変化がない限り社会を変えるのは難しい。 逆に言えば、今の日本はMaaSのようなデジタルテクノロジーは、改革の余地が十分に残されていることになる。テレワークの一段の浸透など、きっかけさえあれば、公共交通の経営改革を前進させる助けになるのではないかと考える』、「きっかけさえあれば、公共交通の経営改革を前進させる助けになるのではないか」、僅かな望みにすがるしかないのは、残念至極である。

第三に、8月3日付け東洋経済オンライン「孫正義社長の懐刀が明かす「MaaS」次の一手 モネ・テクノロジーズの宮川社長に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/366330
・『2018年に発表されたトヨタ自動車とソフトバンクという異業種大手の提携は日本の産業界を驚かせた。そして両者の共同出資で、自動配送や移動店舗など、次世代移動サービスの「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の開発のために設立されたのが、モネ・テクノロジーズだ。 モネにはその後、日野自動車やホンダ、SUBARUやマツダなど国内自動車メーカー7社が出資し、連合を拡大。新サービス開発に取り組む事業者による「MONETコンソーシアム」も設立し、既に580社以上の企業が加盟(2020年7月現在)。今年4月から、モネはデータプラットフォームの本格運用を始め、移動データの管理や分析、課金や顧客管理、モビリティサービスに必要な機能を提供している。 モネを率いる宮川潤一社長はソフトバンクグループの孫正義社長の懐刀として、長らく日米で通信事業に携わってきた。コロナ禍で々の生活様式が大きく変わる中、モネは何を目指しているのか。宮川社長を直撃した(Qは聞き手の質問、Aは宮川氏の回答)』、「モネ」の実態とは興味深そうだ。
・『われわれにとってチャンスばかり  Q:モネが複数の自治体と行っているオンデマンドバス(専用アプリで予約し、指定した時間にバスに来てもらうサービス)などの実証実験は新型コロナの影響を受けたのでしょうか? A:地方の交通弱者を対象にしたオンデマンドバスの実証実験は導入に向けての話し合いが5月から6月にかけて1カ月ぐらい停まった。サービスを利用した人の数は緊急事態宣言が4月に発表されたときは2~3割減ったが、またすぐに回復している。 コロナ禍で相乗りを敬遠する動きがあると思っていたが、利用する人数が戻ったのだから、もう「生活の足」として定着しているということ。近所のよく顔の知った人たちばかりの相乗りだから、あまり影響を受けなかったという印象だ。 Q:とはいえ、シェアリングやライドシェア(相乗り)にはコロナ禍で逆風が吹いています。 A:個人的には厳しくなると思う。車両やサービスも従来とは違うものが求められている。実は、モネは新型コロナの感染防止策を取った車両の開発を進めている。 まだ試作段階だが、ドライバーと乗客の間に間仕切りをするだけでなく、換気システムを設置することで、空気が交わらないようにする。それは、病院同士をつなぐ車として使うことを想定している。 シェアードビジネスにとっては嫌な時期が来たのは事実だが、モネにとってはビジネスチャンスばかりだ。モネコンソーシアムの会員企業にアンケートをしたら、9割が(業績の)影響を受けているという。 それでも、35%の会員企業が2021年度中に(移動を絡めた)サービスを開始したいと。急に言い出した感じだ。 Q:これまでMaaSに関しては様子見の企業が多かったように思います。企業の考え方がなぜ変わったのでしょうか。 A:みんな自粛して巣ごもりが嫌だったんじゃないのかな。外出できるとしたらどんな方法があるんだろうと考えたのかもしれない。移動手段として感染症対策ができた車の配車があったらよいという人もいた。 今回のコロナ禍ではフードデリバリーばかりがクローズアップされたが、われわれへの問い合わせでいちばん多かったのは医療MaaSだった』、確かに「医療MaaS」のニーズも強そうだ。
・『「PCRカー」もつくりたい  長野県伊那市で看護師を乗せた車両で患者のところに行き、病院にいるドクターが遠隔で診察する実証実験をやっている。そういった車両を導入できないかという自治体からの問い合わせはものすごくあった。高齢者が病院まで行くのは感染リスクがあるから、診察をする車が来てくれたらベターというわけ。 自治体からは行政サービスを“移動させたい”という要望もたくさんもらった。住民票や印鑑証明書を出張サービスで発行したいと。テクノロジー的には十分可能なので後は行政自身がデジタル化してくれたらいい。 本当は(新型コロナの感染を検査する)「PCRカー」を作りたいと思っている。なかなか許可をもらえないだろうなと思いながら。 Q:モネはもともと、地方での移動手段の提供などMaaSによる社会課題の解決を掲げていました。新型コロナで貢献できる領域が増えたわけですね。 A:まさにそれを痛感している。 「たられば」を言ってもしょうがないが、もし自動運転車があって、この新型コロナを迎えていたら、われわれはもっと社会の役に立つ会社だったと思う。ドライバーの感染リスクもなくなるし、滅菌システムを搭載することで乗客の降車後に消毒もできるのだから。 「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「孫正義氏と豊田章男氏の共通点と相違点」「ソフトバンクとトヨタの企業文化の違い」「モネ・テクノロジーーズによるサービス拡大のシナリオ」「海外展開の考え方」などを率直かつ詳細に語っている』、「モネはもともと、地方での移動手段の提供などMaaSによる社会課題の解決を掲げていました。新型コロナで貢献できる領域が増えたわけですね」、「高齢者が病院まで行くのは感染リスクがあるから、診察をする車が来てくれたらベターというわけ」、その通りなのだろう。

第四に、8月18日付け東洋経済オンライン「なぜ自分が?「MaaS」生みの親が語る苦難の道筋 東急の「観光型MaaS」リーダー、2年間の「戦い」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/369737
・『近年、交通関係のキーワードとして話題にのぼることの多い「MaaS(マース)」。スマートフォンなどIT技術を活用して鉄道やバス、タクシー、自転車などさまざまな交通手段を1つのサービスとして結び付け、スムーズな移動を可能にしようという取り組みだ。 東急やJR東日本などは2018年4月から今年3月まで、伊豆半島で2回にわたり観光型MaaS「Izuko(イズコ)」の実証実験を展開した。同プロジェクトのリーダーを務めた東急の交通インフラ事業部課長、森田創氏は7月、事業の立ち上げから実証実験までの舞台裏を描いたドキュメンタリー『MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る』(講談社)を出版した。 森田氏はこれまでに2冊の著書があるノンフィクション作家としての顔も持つ。MaaSプロジェクトの裏側と、自らがリーダーを務める事業を題材とした作品への思いについて聞いた(Qは聞き手の質問、Aは森田氏の回答)』、仕事をしながら、「事業の立ち上げから実証実験までの舞台裏を描いたドキュメンタリー『MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る』を出版した」、とは感心した。
・『MaaSと聞いて「ムースですか?」  Q:2018年春に広報課長から新設のMaaS担当部署に異動されたのが、今回の「Izuko」のプロジェクトの始まりですね。MaaSについてはもともと関心があったのでしょうか。 A:知らなかったです。最初にMaaSをやれと言われたときはムースと聞こえたので、「お菓子ですか?」と言ったら社長に「バカかお前は」と(笑)。すぐに「モビリティ・アズ・ア・サービス」で検索したんですが、そのとき(2018年3月)は日本語で体系化されたレポートはまだなくて、日本では言葉としてもまだ広まっていませんでした。 Q:野本弘文社長(当時。現・東急会長)にMaaS担当部署への異動を告げられる際、「場所は北海道がよさそうな気もするが、それも含めて自分で考えろ」と言われる場面が出てきます。当初から伊豆を念頭にスタートしたプロジェクトではなかったのですね。 A:そうなんです。伊豆を選んだきっかけは2018年の5月下旬、スマホをいじっているときにJRが翌年4月から「静岡デスティネーションキャンペーン(DC)」を行うというのを見つけて、これはいけるんじゃないかと思ったことですね。伊豆は伊豆急行をはじめ東急グループが展開する重要拠点ですし、実証実験で頻繁に現場に行くことを考えると、(会社のある)東京から行きやすいメリットもある。そして静岡DCが追い風になるなと。この3点で、伊豆を舞台にしようと決めました。 Q:MaaS担当を命じられた当初は「まったく乗り気ではなかった」と。かなり落胆されたようですね。 A:そもそも僕は異動で違う仕事をするはずだったんです。そこで「何で自分がMaaSなんだよ」というのもありましたし、自分は過去に交通事業の経験がゼロでしたから、自信がないというのもありました。交通はしがらみがあるというイメージもあって。鉄道は鉄道、バスはバス、と厳然とした垣根があるところをシームレスにするような仕事だなと思うと、漠然とこれは猛反発を受けるのではないか、自分にできるのだろうかと。 Q:プロジェクトチームは森田さんと3人の部下でスタートしています。チームのメンバーはかなり個性的な方々だったようですね。 A:個性的すぎましたね。1人は英語が母国語の不思議な奴、1人は一言も話さない、そして1人は「僕はマグロだから泳ぎ続けないと死んでしまう」といって来ない。最初はやったこともないことをこのメンバーとどうやって進めていくのか、本当に手探りでした。 他社との協力を進めるときも、どこにいけば誰がいるのか、いろいろな人に聞いて会いに行って仲間を増やして……という感じで。ヘンテコなメンバー3人を引き連れてトコトコ歩いていくという、なんだか「ドラクエ」みたいですね。呪文とか魔法は使えないんですけど(笑)。 でも今回本を書いて、彼らに本当に助けられたんだなと改めて素直に感謝できました。本当にありがたいことだなと思っています』、「ヘンテコなメンバー3人を引き連れて」、当初は大変だろうが、「チーム」の多様性が発揮されて成功につながったのかも知れない。
・『手探りで続いた改善  Q:「Izuko」の実証実験は2019年4月1日~6月30日の「フェーズ1」と、同年12月10日~2020年3月10日の「フェーズ2」の2期に分けて行われました。最初は不安も多く手探りだったとのことですが、「これでいける」と自信が持てたのはいつ頃ですか。 A:今年の2月ですね。それまでは本当に不安だらけでした。フェーズ1はとにかく静岡DCに合わせて立ち上げるんだということで、最初の1年間は正直なところそれだけで必死だったんです。フェーズ2はサービスの見直しを図り、スマホのアプリからブラウザ上でウェブサービスを使う形に切り替えて、使いやすさは大幅に向上しました。 でも、フェーズ2を開始してしばらくはそれほど利用が増えなかった。いけるなと思えるようになったのは伊豆にとって繁忙期の2月に入ってからです。フェーズ2では管理画面でどんなお客様がどの商品をいつ買ったか、どの商品がどこで売れているかといった傾向が見られるので、お客様に合わせた提案の仕方や宣伝の方法などのコツを完全につかんできたんですね。 ところが2月後半になると新型コロナの影響が表れてきて……。不完全燃焼ではないですが、こんなはずじゃなかったという思いは多少なりともありました。ただ、画面を見せるだけで交通機関などを利用できるMaaSは対人接触を避けたい今の行動様式に適していますし、まさに出番なのではないかと思います。 今秋からフェーズ3を再開しますが、次は実証実験を超えて、本当に伊豆のためになるサービスになれるかどうかが試されると思っています。 Q:紙のフリーパスなどと違う、デジタルサービスの「Izuko」の強みは何ですか。 A:移動データが取れて、商品を最適化できることです。伊豆は季節波動が大きいので、一瞬の繁忙期に合わせて人員計画は組めませんし、人手が少ないのでアルバイトを集めるのも難しい。季節ごとや曜日ごとの傾向などがあらかじめわかっていれば対策が取れます。これは、地域全体で人が減っていく中でどのように最適化して(観光客への対応などを)回していけるかを考えるうえで、極めて重要だと思います』、「デジタルサービスの「Izuko」の強みは・・・移動データが取れて、商品を最適化できることです」、確かに強味のようだ。
・『自分のプロジェクトを題材にした理由  Q:森田さんはすでにノンフィクション作品の著書2作があり、今回が3作目です。自らがリーダーを務めるMaaSプロジェクトをテーマにしようと思った理由は? A:昨年2月に編集者の方と話をしたとき、別の題材で3作目の提案をしたんですが、「ところで今、仕事では何をやっているんですか」と聞かれて。それで、MaaSをやれと言われたものの自分はIT音痴で部下は不思議ちゃんばっかりで泣きそう、という話をしたんです。そうしたら「それだ」と。 僕は2013年まで「渋谷ヒカリエ」内の劇場「東急シアターオーブ」の立ち上げを担当していました。劇場で世界中から選んだ作品をかけるという仕事は本当に大変だったんですが、初日に観客のスタンディング・オベーションを見た瞬間にすべての苦労が報われる幸福感は本当に大きくて、自分のキャリアの中で一番熱い時代でした。 著書の1作目、2作目は、その「魂の居場所」というか、表現の場を失ったことに対する「代償行為」の面があったんです。でも今作は、苦労や失敗を重ねつつ日々迷いながらやってきた、リアルな自分の生きた証しだと思います。 あの熱い時代は戻ってこない、別の形で自己表現を――と思って書く活動を始めたんですが、もう断絶したと思っていた劇場時代の「ショー・マスト・ゴー・オン」という精神が、この2年間夢中で走り続けてきた中でちゃんと(自分の中に)生きていたんだと、書くことを通じて再認識できたのがとてもうれしかったですね。 Q:「ショー・マスト・ゴー・オン」。文中では「ショーは続けなくてはならない」という直訳から転じて、「『人生に何が起きたとしても、毎日は続いていく。あきらめずに生きていけ』という、逆境に置かれた人を励ます言葉」として登場します。 A:今は会社も伊豆もチームも苦しい時期ですけど、でも明日があると思っている限り明日はあると。その明日を拓くために、僕は地元の人たちとがんばって伊豆に貢献していきたいですし、日本を代表するMaaSの事例となったIzukoを参考にしてもっといいMaaSが展開していけば、日本全体が良くなっていくと思っています。 異動の時、最初に野本(社長)からMaaSは「『東急のため』でなく日本のためにやれ」と言われたんですね。志を高く持ってやり続けるということが大事だと思います。やっぱり、たどり着く境地は「ショー・マスト・ゴー・オン」なんです』、「たどり着く境地は「ショー・マスト・ゴー・オン」なんです」、なかなかカッコイイ仕事ぶりのようだが、「MaaS」とは距離が離れてしまったようだ。
タグ:手探りで続いた改善 デジタルサービスの「Izuko」の強みは 当初は大変だろうが、「チーム」の多様性が発揮されて成功につながったのかも知れない ヘンテコなメンバー3人を引き連れて MaaSと聞いて「ムースですか?」 たどり着く境地は「ショー・マスト・ゴー・オン」なんです 自分のプロジェクトを題材にした理由 事業の立ち上げから実証実験までの舞台裏を描いたドキュメンタリー『MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る』を出版した 「なぜ自分が?「MaaS」生みの親が語る苦難の道筋 東急の「観光型MaaS」リーダー、2年間の「戦い」」 高齢者が病院まで行くのは感染リスクがあるから、診察をする車が来てくれたらベターというわけ モネはもともと、地方での移動手段の提供などMaaSによる社会課題の解決を掲げていました。新型コロナで貢献できる領域が増えたわけですね 「PCRカー」もつくりたい 「医療MaaS」のニーズも強そうだ われわれにとってチャンスばかり データプラットフォームの本格運用を始め、移動データの管理や分析、課金や顧客管理、モビリティサービスに必要な機能を提供 既に580社以上の企業が加盟 モネ・テクノロジーズ トヨタ自動車とソフトバンクという異業種大手の提携 「孫正義社長の懐刀が明かす「MaaS」次の一手 モネ・テクノロジーズの宮川社長に聞く」 僅かな望みにすがるしかないのは、残念至極である きっかけさえあれば、公共交通の経営改革を前進させる助けになるのではないか デジタル対応はやはり鈍い 日本の大都市は複数の交通事業者が競合する状態で、東京23区では鉄道事業者だけでも10以上に分かれる。MaaSにしても個々の事業者の周辺のモビリティの統合に留まっており、市内の鉄道、バス、タクシー、自転車シェアリングなどあらゆる交通をシームレスにつないだフィンランドの首都ヘルシンキの「Whim」の足元にも及ばない。 理想は欧米の多くの都市が実践している1都市1事業者への統合であり、現状維持の中でデジタル化したモビリティサービスを導入し、それをMaaSと呼び続けるのであれば、利用者や都市環境のことを第一に考え 流行語「MaaS」の今後は? 欧米では公的支援も 「インバウンド」が殆どなくなった下では、「地域交通」「事業者」の苦境は深刻だろう 都市部ではテレワークが進んだ 「日本の「交通革命」、欧州のMaaSにはほど遠い コロナ禍でテレワークやマイカー通勤が浸透」 移動データが取れて、商品を最適化できることです 森口 将之 東洋経済オンライン 「福岡」、「伊豆」はあくまで「実証実験」のようであるが、いずれも「検索」が中心で、画期的なサービスはないようだ AIが最適ルートを導く 電車、バスに加え、シェアサイクルも MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス) 「MaaSって何? 国内の最前線・福岡に行ってみた」 日経ビジネスオンライン (その1)(MaaSって何? 国内の最前線・福岡に行ってみた、日本の「交通革命」 欧州のMaaSにはほど遠い コロナ禍でテレワークやマイカー通勤が浸透、孫正義社長の懐刀が明かす「MaaS」次の一手 モネ・テクノロジーズの宮川社長に聞く、なぜ自分が?「MaaS」生みの親が語る苦難の道筋 東急の「観光型MaaS」リーダー、2年間の「戦い」) MAAS
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