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トランプ VS バイデン(その2)(2021年正月 米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令 ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ、日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由、バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」の破壊力) [世界情勢]

トランプ VS バイデンについては、11月19日に取上げた。今日は、(その2)(2021年正月 米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令 ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ、日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由、バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」の破壊力)である。

先ずは、11月30日付けJBPressが掲載したジャーナリストの堀田 佳男氏による「2021年正月、米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令、ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63070
・『新型コロナウイルスの感染者と死亡者が世界一多い米国。医療分野だけでも多くの問題を抱えているが、コロナに関連した深刻な社会問題も浮上してきている。 その一つが、家賃を支払えない賃借人が数百万の単位で、年明け早々に住まいを追い出されかねない問題である。 投資銀行業務やコンサルティングを手がける米スタウト社がまとめた資料によると、最大で647万世帯が住まいを退去せざるを得なくなるという。 家族を考慮すると1000万人を超えるとも言われる。どういうことかご説明したい。 コロナの感染拡大により米経済が大きな打撃を受け、春から失業者が増え始めた。4月の米失業率は14.7%にまで跳ね上がった。 以後、少しずつ改善して10月には6.9%まで落ち着いてきたが、それでもコロナ前の3%台には至っていない。 失業率が高止まりすることで再就職は簡単ではなく、解雇された人たちは収入減に見舞われた。 失職したすべての人たちが失業手当を受けられるわけではない。 首都ワシントンにある経済政策研究所(EPI)の試算では、何らかの理由で失業手当を受けられない人が、夏の段階で最大1390万人にのぼったという。 仕事を失って給与が入らなくなり、貯蓄も不十分で失業手当も受けられないと、家賃の支払いが滞る。 手持ちの限られた資金はまず食費などに当てられるため、生活は困窮する。 米国ではこうした境遇から、コロナ禍で家賃を滞納する人たちが増えてきている。日本でも家賃の滞納者はいるが、米国では日本と比較すると冷酷なまでに強制的な退去が行われたりする』、「647万世帯が住まいを退去せざるを得なくなるという。 家族を考慮すると1000万人を超えるとも言われる」、総統な規模な人々が家を失うようだ。
・『それでも米政府は滞納者にまず、定められた期限内に自主的に引っ越すように促す。それでも立ち退かない場合、裁判所に強制撤去を求めて退去命令が出される。 日本では賃借人の権利が保護されているため、家賃の支払いが数カ月滞っても追い出されることはまずない。 だが日米で法の執行に対する意識の違いと、賃借人と賃貸人の立場が違うことから、米国では強制退去が執行されてしまう。 ドナルド・トランプ政権はコロナ禍という事情を考慮して、家賃滞納者に対する強制退去の執行停止を命じるなど、方策を講じてきた。 だがそれで賃借人を一時的には救済できたとても、今度は家賃が入ってこないことで家主側は減収となり、本質的な問題解決にはいたらないのだ。 それでも、家賃を支払えない人たちの救済がまず優先されるべきとの理由から、トランプ政権の保険福祉省(HHS)内の疾病予防管理センター(CDC)は9月4日、特例措置を出した。 それは今年12月末日まで、住まいからの強制退去が猶予・禁止される(立ち退きモラトリアム)というものだった。 ここで注目したいのは、同措置を発令したのがCDCという点だ。 CDCは感染症対策の総合研究所であり、医療機関である。国交省のような役所ではない。 つまり、強制退去によって住む所を失った市民たちが増えることで、コロナ感染リスクがこれまで以上に高まるということである。 強制退去させられた人たちは、現実的には親族や知人・友人のところに移るか、シェルターや福祉施設、最悪の場合はホームレスになることもあり得る』、「立ち退きモラトリアム」を本来はお門違いの「CDC」が「発令した」のは、放置すれば、家を追い出された人々への感染拡大が懸念される以上、ある意味で当然だ。
・『医療関係者が憂慮するのは、強制退去させられた人たちが密集した場所で寝起きすることで、今以上にコロナウイルスの感染者・死亡者が増加することなので、CDCが分野違いとも言える措置を出したのだ。 幸い、年内は強制退去が執行されないので、支払いの滞った賃借人もいまの住居にいられるが、年明け早々、退去せざるを得なくなる人たちがでるのは間違いない。 11月末、米「ファスト・カンパニー」誌は「米600万世帯が1月1日に強制退去されるかもしれない」というタイトルの記事を出し、深刻な社会問題が待ち受けうけていると警鐘を鳴らした。 トランプ政権が1月1日以降にさらなるモラトリアムを出すことはありそうもない。いま米国では、バイデン新政権が別枠で温情を示せるかに焦点が移っている。 ただ新政権誕生は1月20日であり、年明けから20日間、バイデン政権は何もできない。その間に強制退去が施行されて、家を追われる人が出てしまう恐れがあるのだ。 強制退去を命じられた人たちを救うことはできるのか。同問題に詳しいウェイク・フォレスト大学法律大学院のエミリー・ベンファー教授はこう述べる。 「バイデン氏が退去を求められている人たちを救済することは十分に考えられます。年明けから3週間以内に滞納している賃貸者を追い出すかどうかは家主にかかっていますが、当面の解決策としては、政府が直接的な財政援助に動くかどうかです」 さらなる問題がある。 9月初旬にCDCが発令した強制退去の猶予・禁止は家賃の支払いを一時的に棚上げにしたが、それは逆に、過去から積み重なった滞納分を含めて、支払うべき金額が増えることにつながった。 強制退去の対象になっている数百万世帯の多くは低所得者層の人たちであるため、さらに支払いが難しくなる。 トランプ政権が今月中に新たな手立てを示さず、連邦議会も救済策の法案を通過できない場合、バイデン政権が誕生するまで州を含めた地方自治体が負担を背負うことになる可能性が高い。 米国勢調査局が11月初旬にまとめた報告書によると、約1160万人が来月の家賃・住宅ローンの支払いができない状況であるという数字がでている。 最初に示した647万世帯という数字は「最悪の場合」という設定ではあるが、バイデン政権が発足から荊の道を歩まざるを得ないことが明らかである。 米国の住宅事情とコロナ禍による感染状況は悪化の一途を辿ることになりそうだ』、新大統領就任直前の空白期間にどう対処するのか、大いに注目される。

次に、12月18日付けダイヤモンドオンラインが掲載した元日銀でトランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボード、中部大学経営情報学部教授の酒井吉廣氏による「日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256812
・『混迷を極めた米国大統領選挙。過去にない接戦の結果、バイデン勝利の確率が高まっています(トランプ陣営は負けを認めておらず、1876年以来の下院での投票に持ち込まれる可能性がわずかに残っています)。私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました。トランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボードも務め、米国人のリアルな思考を理解し、米国と世界を動かす原理原則や、彼らが実践しようとしている新しい世界のルールについて日頃から肌で感じています。これら先、世界はどう変わるのか、本連載では私の著書『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で紹介した米国と中国、世界、そして日本の2021年以降の行く末についてご紹介しましょう。連載1回目となる本記事でお伝えするのは、なぜ日本のメディアやビジネスパーソンが、米国の実情を理解できていないかという問題について。その裏側には構造的な課題があります。 私たちがこれまで生きてきた世界のルールが、根底から変わりつつある――。 今、世界の大きなうねりを肌で感じている人は、決して少なくはないはずです。 それにもかかわらず、日本ではピント外れの議論ばかりが繰り返され、なぜ米国と世界がこのように変わっているのか、明瞭に説明できる人がほとんどいないように感じています。 日本国内で報じられる情報は、リベラルな立場を支持するCNNなど、民主党寄りのメディアの翻訳ばかりです。ドナルド・トランプ第45代大統領を支持する保守的な立場のFOXニュースなど、共和党寄りのメディアがどのように米国や世界を報じているのか、ほとんど日本で語られることがありません。 つまり日本人は、米国の世論のうちの「片側」しか知らないままなのです。そんな状況で、日本人が米国や世界の本音を知ることはまずできません。 私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました。 米国人のリアルな思考を理解し、米国と世界を動かす原理原則や、彼らが実践しようとしている新しい世界のルールについて日頃から肌で感じています。 だからこそ、私に伝えられることがあるに違いないと思い至りました。 日本の政府や企業、ビジネスパーソンの多くが、世界を動かす新しいルールを知ることなく、古い価値観にとらわれたままだと、この先の国際競争に大きく劣後する可能性がある――。 そんな危機感を強く抱いています』、「ホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました」、とは日本人としては極めて珍しい存在だ。
・『米国と世界の新しいルールとは何か  なぜ、米国と世界が変わったのか。そして新しいルールとは何か。 著書『NEW RULES 米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』では、なるべく中立的な立場で解説しましたが、中にはこれまでほとんど日本で報じられることのなかった視点や切り口も多分に含まれています。そのため、読者のみなさんに戸惑いを与えてしまうかもしれません。 しかし最後まで読み進めていただければ、新しいルールで動き出した先に世界がどうなるのかがクリアに見えてくるはずです。 +なぜ米国民は、あんな下品な不動産王を世界の大国の大統領に選んでいたのか。 +米国はどうして繁栄の象徴でもあるグローバリゼーションを止めたのか。 +バラク・フセイン・オバマ第44代大統領は抑圧されてきた人々を優遇したのに、トランプ大統領は残酷だ。 +米国が自分たちの事情だけを考えて“世界の警察官”を辞めるのは都合が良すぎる。 +世界一の経済大国が、どうしてポピュリズムに転じたのか。 +欧州連合(EU)から離脱することを選んだ英国民は愚かなんじゃないか。 +EUの各国でポピュリズム政党が存在感を高めているのが理解できない。 2020年、米国や英国、EUは自国優先の経済政策を推し進めています。 トランプ大統領が米国で実践してきた所得税や法人税の大幅減税やインフラ投資の強化、大規模な規制緩和などを打ち出して強い米国を取り戻そうとする政策は、今では「トランプノミクス」と呼ばれ、世界の主要な国々も実践するようになりました。 トランプノミクスは、絶対王政時代の利益優先の経済とも共通しているということで、「新重商主義」とも表現されます。 第二次世界大戦以降、国際社会は互いに協調しながらグローバリゼーションを進め、共に発展し、米ソ冷戦の終結でそれは加速しました。 トランプノミクスは、これまで長く続いたグローバリゼーションと正反対の動きである―。トランプが大統領に就任してからは、こんな批判をよく受けます。グローバリゼーションを止めるのは世界全体の経済発展の持続性にとってマイナスである、というのです』、「トランプノミクスは、絶対王政時代の利益優先の経済とも共通しているということで、「新重商主義」とも表現されます」、「新重商主義」とは大げさな感もあるが、「利益優先の経済」であれば、やむを得ないだろう。
・『トランプノミクスが生まれた背景  過去50年間の米国と世界の中心となった経済学は「レーガノミクス」でした。 ロナルド・レーガン第40代大統領が1980年代前半に実践した経済政策で、トランプノミクスはこれを復活させようと考えたものです。 しかしレーガノミクスも、発表した当時は、のちの副大統領のブッシュ(父)でさえ、魔術的な経済学だと批判したような政策でした。レーガノミクスを立案したジャック・ケンプ元下院議員は2002年4月、私にこう打ち明けてくれました。 「レーガノミクスでは、減税をすると税収が増えます。一見すると論理矛盾があるように感じるので反対者が多いのは当然のことでした。レーガノミクスを実施する前の1979年には在イラン米国大使館人質事件などがあり、景気低迷を含めて米国全体が沈滞ムードに覆われていました。そんな状況なのにレーガノミクスを実践して国民の勤労意欲を駆り立てようとしていたのだから、夢物語と批判されるのも覚悟の上でした」 なぜトランプノミクスが生まれたのか。 背景にあったのは、国際経済学の基本でもある比較優位の原則が成立しにくくなってきたことでした。低コストの労働力を豊富に持つ国が増え、世界全体の貿易バランスを保つことが難しくなっていったのです。しかも米国のほかに、国際連合や世界銀行といった国際的な機関からも支援を受ける後進国は、それらの支援をうまく生かして先進国を追い抜くきっかけを模索するようになっていきました。米国が今、猛烈に中国を意識して批判する原点にも、このしこりが横たわっています』、「レーガノミクスも、発表した当時は、のちの副大統領のブッシュ(父)でさえ、魔術的な経済学だと批判したような政策でした」、「魔術的な経済学だと批判」は知っていたが、それを「ブッシュ(父)」が言ったとは初めて知った。
・『ファンドの台頭で加速した繁栄の終わり  こうした動きを加速させたのが、株式市場で徹底して利益を求めるファンドの台頭でした。ファンドは、世界が力を合わせて技術開発などの恩恵に浴することよりも、利益を極大化してコストダウンを突きつめることを企業に求めてきました。 この影響で、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は急成長し、従来型の製造業や小売業などは大規模化や合理化を進めていきました。人々の生活はより便利になりましたが、一方では富の偏在も加速していったのです。 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)は、私たちに新たな生活様式や働き方に変化を迫ると同時に、最新技術についていけるか否かによって、職業格差を生み出しつつあります。それも新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界を覆う変化のスピードは加速度的に速まっています。 恐らくあと30年もすれば、世界経済は今から想像もできない変化を遂げているはずです。しかもこの流れは、能力のある者とそれ以外の者を残酷に選別します。 2020年5月、米国ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が黒人のジョージ・フロイド氏を殺したことで、全米のみならず世界中に広がった人種差別の抗議活動も、急激な変化にさらされる中で常に「負け組」の側に取り残される人々の反抗と言えます。 トランプ大統領が声高に叫ぶ「米国への製造業の回帰」は、徹底したコストダウンのために国外に出ていった米国企業への対応であり、ブルーカラーと言われる人々を含めて、米国全体の経済を底上げしようと狙ったものでした。 そう考えると、「アメリカ・ファースト」は歴史の必然でもあります。米国企業が安心して自国に回帰して経営できるよう、所得税や法人税を減税しようと考えたわけです。 だからこそトランプ大統領は、かつてレーガン大統領が米国を復活させるとの思いを込めて、「Make America Great Again」と繰り返し訴えているのです』、「海外に出ていった「米国企業」が戻ってきた例はどの程度あるのだろう。
・『日本人が米国と世界を理解できないワケ  私のキャリアは、日本銀行からスタートしました。金融政策部署(営業局=現金融市場局)とプルーデンス部署(考査局=現金融機構局)などで働いた後、野村ホールディングスに転じ、ワシントンやニューヨーク、ロンドンやシンガポール、香港、北京といった世界の金融都市で働き、主に金融や証券などの事業に携わってきました。その後は日本政策投資銀行のほか、ワシントンや北京のシンクタンクや大学で、エコノミストや政治外交アナリストのような仕事をしてきました。現在も米国の政府関係などで仕事をし、世界の政治経済を分析しています。 私は幸運にも、金融経済業界を軸にしながら、世界の主要都市で幅広い業界の人々と知己を得ました。その中で、私が出会った米国人の多くが共和党員か共和党支持者であったことから、私自身も自然に共和党員に近い考え方で物事を理解するようになりました。 米国での最初の仕事は、日本銀行で不良債権の処理について、米国のかつての処理策を調べて日本に早期の直接処理を提案することでした。ここで日本と米国の考え方や商慣習の違いについて理解を深めることができました。 そして米国人の発想方法がより深く理解できるようになるほど、冒頭で触れたように、私の中での違和感が大きく膨らんでいったのです。 日本に住むみなさんに、世界を動かす人々のリアルな本音と思考方法を伝えたい。 米国や中国、そして世界の主要国が何を考え、どのようなルールに基づいて政策を決定しているのか。著書『NEW RULES 米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』では、世界を動かす新しいルールがどういったものなのか、みなさんに分かりやすくお伝えしようと試みました。 願わくは、近視眼的な観点で私の予測を評価するのではなく、大きなうねりの根底に何があるのかというところから見渡せる米国と世界、そして日本の未来をみなさんと共有できれば、これに勝る幸せはありません。 次回からは米国と中国、そして世界と日本が2021年以降、どのように変わっていくのか予測した内容を、みなさんにお伝えしていきます。 (酒井氏略歴はリンク先参照)』、惜しむらくは、「トランプ」退陣ではなく、登場の時であれば、もっと役立ったろう。
・『本書の見どころ  混迷の大統領選を経て、2021年1月には民主党のバイデン政権がスタートします。世界はこの先、未曾有の大混乱に突入していきます。日本人がこれまで尊んできた平和な世界はもう終わりました。 グローバル経済や民主主義、自由主義など、これまで世界の経済発展と平和をけん引してきたルールが変わったのです。では、新しいルールは何か。 米大統領選挙でトランプ陣営のアドバイザリーボードを務め、共和党と民主党の両陣営に詳しい著者が「米国の中枢の内側」から、新しい世界を支配するルールについて解説します』、興味深そうだ。
・『本書のポイント  (1)米国と中国、世界をめぐる「なぜ」が、どの本よりも分かりやすく理解できます。 +なぜ、あんな下品な男が大統領だったのか +なぜ、米国はグローバリゼーションを止めたのか +なぜ、世界はポピュリズムに転じるのか +なぜ、米国は中国を目の敵にするのか +EUから離脱する英国は、愚かなんじゃないか +一体、いつから世界の主要国は自分勝手になったんだ リベラル層やリベラル寄りのメディアの情報だけでは分からない、米国の中枢の思考法や意思決定について、トランプ陣営の大統領選挙選アドバイザリーボードの一員でもある著者が、「中の日本人」として分かりやすく解説します。 (2)新しい世界を動かすルールと、その原理原則が、いちはやく理解できます。 +米国VS中国、21世紀の新冷戦、2020年以降の世界を動かす原動力に +コロナ禍を踏み台に、米国経済はさらに伸びる +米国の頭脳は旧来のエスタブリッシュメントから「新たなエリート」の手にわたる +近い未来に朝鮮半島は統一し、そして米国と中国の緩衝地帯になる +気候変動でアフリカから大量の難民が欧州へわたり、欧州経済はひっ迫 +財政基盤まで統合して、ついにEUは一つの国になる +日本は「米国隷従」を続け、米国と中国の間を取りもつように』、なるほど。
・『主な目次  第1章 トランプに至る米国の必然 第2章 トランプ政権、絶大なパワーの源泉 第3章 トランプ大統領は愚者か賢者か 第4章 新しい「重商主義」に舵を切った米国 第5章 ついに始まった米中新冷戦 第6章 中国弱体化を仕掛ける米国 第7章 本格的に「一つの国」へ向かうEU 第8章 世界を動かす新しい10のルール』、ヒマが出来たら読んでみたい。

第三に、この続きを、同じ酒井吉廣氏による12月20日付けダイヤモンドオンライン「バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」の破壊力」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256824
・『過去にない大統領選挙の結果、バイデン勝利の確率が非常に高まっています  しかしトランプ陣営はまだ負けを認めておらず、1876年以来の下院での投票に持ち込まれる可能性もわずかに残っています)。私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました。トランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボードも務め、米国人のリアルな思考を理解し、米国と世界を動かす原理原則や、彼らが実践しようとしている新しい世界のルールについて日頃から肌で感じています。これら先、世界はどう変わるのか、本連載では私の著書『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で紹介した米国と中国、世界、そして日本の2021年以降の行く末についてご紹介しましょう。連載3回目となる今回は、2021年から始まるであろうバイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」が世界に与える影響についてご紹介します』、「アメリカ・ファースト」が「バイデン新政権でも続く」、とはやれやれだ。
・『米国は新しい重商主義で世界を変える  「米国支配による平和」を意味する「パックス・アメリカーナ」という言葉は、歴史的には第二次世界大戦が終わった1945年に使われ始めました。 当時の米国は戦後の復興援助計画「マーシャル・プラン」を実施して欧州を援助する一方で、太平洋戦争に負けた日本の戦後復興はアジア諸国の中でも最後に回しました。 米国が戦争で傷んだ世界各国の中から復興させる国や地域を選び、優先順位を付けて支援をしていったのです。まさに米国の力によって世界平和が保たれているということで、「パックス・アメリカーナ」という言葉が使われていました。 歴史を振り返れば、古くはジュリアス・シーザーなどが活躍したローマ時代を指して「パックス・ロマーナ」、あるいはチンギス・カンの子孫がユーラシア大陸のかなりの部分を支配したことを指して「パックス・タタリカ」と呼ばれてきました。 「パックス・アメリカーナ」とは世界史においてはローマ帝国、モンゴル帝国に続く3回目の世界の支配者が米国であるということを意識した言葉です。もっとも、その後は米国とソ連の間で冷戦構造が誕生したことで、「パックス・アメリカーナ」は形を変えていきました。 1945年に英国の作家ジョージ・オーウェル氏は『あなたと原子爆弾』という作品の中で「冷戦」という言葉を出し、1946年には英国の首相も務めたウィンストン・チャーチル氏がかの有名な「鉄のカーテン」の演説をしました。 これと前後して米外交官のジョージ・ケナン氏が勤務先のモスクワ大使館から長文の「ソ連封じ込め戦略」を打電し、その戦略がトルーマン政権内で本格的に検討されるようになりました。 1947年になると、ハリー・トルーマン第33代大統領は、第二次世界大戦で国力を消耗した英国に変わり、米国がギリシャとトルコを守ると宣言しました。同じ年には欧州の戦後復興計画「マーシャル・プラン」も発表されました。 いずれも、背景にあったのはソ連を中心とした共産主義勢力の台頭です。 最終的に1949年にソ連が核実験を成功させたところで、世界は「パックス・アメリカーナ」が終わったことを理解しました。そして「パックス・ルソ・アメリカーナ」(ソ連の存在を認めながらの米国支配による平和)という時代に入ったのです。 米ソ冷戦時代を含めたパックス・ルソ・アメリカーナ時代、米国は世界の安全保障や経済の安定に積極的に関与する強い意志を持っていました。 米国は日本の経済復興はアジア諸国の中でも最後にするという方針でしたが、1950年に始まった朝鮮動乱で状況は一変しました。日本に朝鮮特需の恩恵を与えると同時に独立国としての国連加盟を認め、日本を共産主義に対する極東の防波堤とすべく、日米安全保障条約を締結して西側陣営に組み込みました。 日本は西太平洋における米国の“代貸”となり、日本列島そのものが米軍基地の役割を果たすようになったのです。同時に米国の肝入りで経済復興を加速し、やがて世界第2位の経済大国に成長しました』、「米国は日本の経済復興はアジア諸国の中でも最後にするという方針でしたが、1950年に始まった朝鮮動乱で状況は一変しました」、「朝鮮動乱」は日本には有利に作用したようだ。
・『戦後75年続いた秩序をひっくり返す  20世紀初めに新興勢力だった米国は当時の既存勢力だった英国の覇権に挑み、そして勝利しました。背景には第一次世界大戦への米国の参戦、第一次世界大戦で主役となった英国とフランスに対する借款の棒引き、第二次世界大戦への参戦がありました。 ただ、米国の勢いは徐々に衰えています。 為替の面では1971年にドルと金の兌換停止を決め(ニクソン・ショック)、為替相場もそこからは対円でドル安が進みました。それ以降、世界は市場に価格決定機能を委ねる変動相場制に移行しました。安全保障面を見ても1989年に米ソ冷戦が終結しましたが、2001年にはテロとの戦いが始まり、結果的にそれが中国の台頭を招いてしまいました。 1975年に始まった主要国首脳会議(当時はG5サミット)は1993年の欧州連合(EU)の誕生以降、協調を強めながら世界の政治経済を運営する考え方が強まりました。EU全体は世界経済の発展は目指したものの、米国に貢献することはありませんでした。 やや前置きが長くなりましたが、「パックス・アメリカーナ」から米ソ冷戦時代の間に構築され、その後の30年間で進化した国際秩序、言い換えれば第二次世界大戦後からおよそ75年続いた世界のルールをひっくり返そうとしているのが、現在の米国です』、「テロとの戦いが始まり、結果的にそれが中国の台頭を招いてしまいました」、初めて知った。
・『米国は、もう世界を救わない  トランプ大統領はしばしば、北大西洋条約機構(NATO)に対する拠出金の削減を求めてきました。NATO加盟国が相応の防衛費の負担をしていないことでも批判を繰り返してきています。 こうした米国のNATO軽視を批判する声もあります。しかし、第二次世界大戦以降75年が経過し、NATOの役割が変わってきていることを無視してはいけません。 NATOはソ連を中心とする共産圏に対抗するための西側陣営として誕生したものです。大前提となったソ連のワルシャワ条約機構(ソ連と東欧8カ国が結成した軍事同盟)は、ソ連の解体で消滅し、東欧諸国は競ってEUとNATOに加盟しています。 米ソ冷戦終結前には、デンマークの首都コペンハーゲン近くの基地からソ連の旧都サンクトペテルブルク(冷戦当時はレニングラード)まで3000キロもあった距離が、今ではNATOに加盟するバルト三国の一つであるエストニア共和国のロシア国境沿いの都市から、サンクトペテルブルクまでの距離はたった140キロしかありません。つまりNATOはもう、中長距離ミサイルや長距離爆撃機などを前提とした軍備の必要がなくなったのです。本来なら必要な予算は見直されてもいいはずです。 現在、NATOの海軍はインド洋で海賊退治をしていますが、果たしてそれが本来のNATOの役割なのかということも再考すべきでしょう。 NATO加盟国の拡大に伴って中距離ミサイルは不要になりましたが、その結果、中距離ミサイルの開発で米国は中国やロシアに後れを取りました。対中国という観点で中距離ミサイルの開発は不可欠です。現在、米国はその後れを取り戻すために必死で中距離ミサイルを開発しています。 米国はNATO加盟国に対して経済力に応じた分担をすべきだと主張していますが、その背後には現状の予算規模に対する疑問がありました。世界の構造そのものが変わったのに、なぜ旧来通りの考え方を変えないのかと問うているわけです。 同じことは、在韓米軍の維持経費についても起こっています。米国が韓国に対して、在韓米軍に対する支出を5倍に引き上げるよう求めるのも、仮に韓国が地続きの北朝鮮と戦うことになったとしても、海軍がないに等しい北朝鮮を攻めるのに軍艦を増やす必要はなく、そんなムダ遣いをするくらいなら駐留経費を支払ってほしいと主張したまでのことです。 EUは、コロナ禍で経済が疲弊した加盟国を支援すると決めました。 恐らくEUの経済が元の状態に戻る数年後まで、EUは本格的な国際競争力を削がれた状態が続くはずです。それでも今回、米国が第二次世界大戦後のように復興支援計画を用意して欧州を支えることはないでしょう。 この先、米国は何よりも自分たちの復興と繁栄を優先させるはずです。世界をまんべんなく栄えさせるよりも、EUを離脱した英国や日本との二国間の自由貿易協定(FTA)を前提に仲間内で繁栄を分かち合うことを選ぶはずです。 そもそも今回の新型コロナウイルスは、第二次世界大戦のように欧州全土を焦土としたわけではありません。財政規律を守る北欧の国々は自力での復興に成功しつつあります。 問題は緊縮財政を取らずにEUが求めた財政赤字の対GDP比率を守らなかったポピュリズムの国々ですが、彼らを米国が助ける義理はありません。 一方でユーロ共同債の発行を決めるなど、ドイツは自国民の税金をこうした国々に使うことを決断しました。EUの盟主であり続けるための対価を支払おうと決断したわけです。 第二次世界大戦後の75年、米国は自分たちの国を最優先するよりも世界の秩序を守るために動いてきました。しかし、もう旧来型の構図は限界を迎えたようです。 これから米国が軸に据えるのは「アメリカ・ファースト」です。 その上で、米国が合意できる相手とだけ合意できる点で手を結び、新しい「パックス・アメリカーナ」を構築することになるのでしょう。先に例を挙げたNATOや韓国だけでなく、日本もこの先は米国の要求に驚くことがあるはずです。 米国の要求の根底にある思想は何なのか。米国の腹づもりが事前に分かっていれば、きっと私たち日本人が無茶な米国の要求に振り回されることは減るでしょう。 戦後75年続いた平和な時代は終わりました。 自国の事情を何よりも優先する米国とうまく交渉する胆力が求められます。 (この後は、上記記事と同じなので、省略)』、「NATOに加盟するバルト三国の一つであるエストニア共和国のロシア国境沿いの都市から、サンクトペテルブルクまでの距離はたった140キロしかありません。つまりNATOはもう、中長距離ミサイルや長距離爆撃機などを前提とした軍備の必要がなくなったのです」、確かに政治的環境が激変すれば、軍事戦略も大きく変わる筈だ。「ユーロ共同債の発行を決めるなど、ドイツは自国民の税金をこうした国々に使うことを決断しました。EUの盟主であり続けるための対価を支払おうと決断した」、「これから米国が軸に据えるのは「アメリカ・ファースト」です」、「(日本は)自国の事情を何よりも優先する米国とうまく交渉する胆力が求められます」、「日本」の外交力が問われる時代になったようだ。
タグ:「日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由」 酒井吉廣 トランプ VS バイデン ダイヤモンドオンライン 新大統領就任直前の空白期間にどう対処するのか、大いに注目される。 「立ち退きモラトリアム」を本来はお門違いの「CDC」が「発令した」のは、放置すれば、家を追い出された人々への感染拡大が懸念される以上、ある意味で当然だ トランプ政権はコロナ禍という事情を考慮して、家賃滞納者に対する強制退去の執行停止を命じるなど、方策を講じてきた 647万世帯が住まいを退去せざるを得なくなるという。 家族を考慮すると1000万人を超えるとも言われる 「2021年正月、米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令、ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ」 (その2)(2021年正月 米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令 ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ、日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由、バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」の破壊力) JBPRESS 堀田 佳男 (日本は)自国の事情を何よりも優先する米国とうまく交渉する胆力が求められます」、「日本」の外交力が問われる時代になったようだ。 これから米国が軸に据えるのは「アメリカ・ファースト」です ユーロ共同債の発行を決めるなど、ドイツは自国民の税金をこうした国々に使うことを決断しました。EUの盟主であり続けるための対価を支払おうと決断した NATOに加盟するバルト三国の一つであるエストニア共和国のロシア国境沿いの都市から、サンクトペテルブルクまでの距離はたった140キロしかありません。つまりNATOはもう、中長距離ミサイルや長距離爆撃機などを前提とした軍備の必要がなくなったのです 米国は、もう世界を救わない 「テロとの戦いが始まり、結果的にそれが中国の台頭を招いてしまいました」、初めて知った 戦後75年続いた秩序をひっくり返す 米国は日本の経済復興はアジア諸国の中でも最後にするという方針でしたが、1950年に始まった朝鮮動乱で状況は一変しました 米国は新しい重商主義で世界を変える アメリカ・ファースト」が「バイデン新政権でも続く」、とはやれやれだ 「バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」 主な目次 本書の見どころ 惜しむらくは、「トランプ」退陣ではなく、登場の時であれば、もっと役立ったろう 日本人が米国と世界を理解できないワケ 「海外に出ていった「米国企業」が戻ってきた例はどの程度あるのだろう ファンドの台頭で加速した繁栄の終わり なぜトランプノミクスが生まれたのか。 背景にあったのは、国際経済学の基本でもある比較優位の原則が成立しにくくなってきたことでした レーガノミクスも、発表した当時は、のちの副大統領のブッシュ(父)でさえ、魔術的な経済学だと批判したような政策 トランプノミクスが生まれた背景 トランプノミクスは、絶対王政時代の利益優先の経済とも共通しているということで、「新重商主義」とも表現されます 米国と世界の新しいルールとは何か ホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました トランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボードも務め
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GoTo問題(その2)(菅首相 迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」 問われる首相の器、Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」、後手に回った政治の決断 「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下、第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに) [国内政治]

GoTo問題については、12月5日に取上げたばかりだが、今日は、(その2)(菅首相 迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」 問われる首相の器、Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」、後手に回った政治の決断 「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下、第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに)である。

先ずは、12月16日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「菅首相、迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」、問われる首相の器」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/396428
・『菅義偉首相がかたくなに推し進めてきた観光支援事業「Go Toトラベル」が12月14日、全国一斉の一時停止に追い込まれた。 菅首相は、持論である「コロナ感染防止と経済活性化の両立」にいったん白旗を掲げた格好だ。その背景には自らの「ガースー発言」大炎上をきっかけとした支持率急落があるとみられる。 メディアの最新の世論調査では、Go Toトラベルの停止を求める声が圧倒的多数で、自民党内からも「このままでは政権へのダメージが大きすぎる」(幹部)という不安と不満が噴出している』、鉄壁ガースーと呼ばれながら、意外に脆かったようだ。
・『菅首相の指導力低下は不可避に  菅首相自身が官房長官時代から主導してきたGo To事業の方針大転換により、首相としての指導力低下は避けられない。野党側は「菅政権による人災」(共産党幹部)と厳しく批判しており、今後の展開次第では「トップリーダーとしての器が問われる事態」(自民長老)ともなりかねない。 政府は14日に開催した新型コロナウイルス感染症対策本部で、7月下旬以降、全国規模で実施してきたGo Toトラベル事業を、12月28日から2021年1月11日まで全国で一斉に停止することを決定した。12月27日までは、札幌、大阪両市に加えて東京都、名古屋市を目的地とする旅行が事業対象から除外される。事業を担当する国土交通省や観光業界は混乱を極めている。 菅首相は14日の対策本部で、「年末年始にかけて、これ以上の感染拡大を食い止め、医療機関などの負担を軽減し、(国民の)皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるよう、最大限の対策を講じることにする」と思い詰めたような表情で語った。 菅首相はこれまで一貫して「Go Toで感染が拡大したというエビデンス(証拠)はない」と主張してきただけに、「事実上、Go To政策運営の失敗を認めた格好」(閣僚経験者)だ。自民党内では「まさに泥縄。決断が遅すぎた」(同)との批判が相次ぎ、野党側は「Go Toトラベルによる感染拡大を政府が認めた」(立憲民主党幹部)と攻勢をかける。 菅首相の方針転換は、GoTo事業継続に対する国民世論の反対が12月中旬に拡大したことが最大の原因とされる。しかも、そのきっかけとなったのが11日の菅首相の不用意な発言だった。 菅首相は11日午後、インターネット動画の「ニコニコ生放送」に出演した際、視聴者に対し「みなさん、こんにちは。ガースーです」と笑顔であいさつした。「国民に親しみを持ってもらう狙い」(首相周辺)とみられたが、動画中継の画面には「今はそれじゃない」「余りにも無神経」など書き込みがあふれ、ネット上での大炎上となった。 菅首相の出演は、11日のコロナ分科会後に尾身茂会長が記者会見で「Go Toトラベルの見直し」を切々と訴えたのとほぼ同時進行だった。対談形式で国民に直接訴えるのが目的だったが、「完全にスベった」(民放幹部)のは間違いない。この動画は同じ時間帯の民放テレビ情報番組でも中継されていたが、居並ぶコメンテーターたちも苦笑と困惑を隠さなかった』、「ニコニコ生放送」上での「みなさん、こんにちは。ガースーです」とのあいさつは、まさに「今はそれじゃない」と言う他ない。
・『「不支持」が「支持」を初めて逆転  菅首相の出演は約30分間だったが、その中で「Go To一時停止」については「そこは考えていません。今日提言を受けたわけですから」と表情も変えずに語り、「いつの間にかGo Toが悪いことになってきちゃったんですけど、移動では感染しないという提言もいただいていた」などと「Go To悪者説」への不満もあらわにした。 この動画は瞬く間にインターネットで拡散。翌12日未明には立憲民主党の蓮舫参議院議員が「いつの間にかGo Toが」発言をツイッターに引用し、「税金で旅行を後押しする政策を力強く進めてきたのは貴方の政権です」と投稿。さらに、ドイツのメルケル首相の「クリスマスで人々の接触が増えれば、祖父母たちとの最後のクリスマスになることもある」との言葉を引用し、「胸に響きます。国民に危機意識を伝える言葉です」と菅首相の不用意な発言と対比して批判した。 4月には当時の安倍晋三首相が自宅でくつろぐ様子を「コラボ動画」として発信して大炎上し、与党内からは「今回はそれ以上の国民的反発」(自民幹部)との声も相次ぐ。野党側は「菅さんはまさに、KY(空気が読めない)の典型」(立憲民主党)と批判を強めた。 当然、世論の反応は敏感で、12日の毎日新聞の世論調査では内閣支持率が17ポイント下落の40%、不支持は13ポイント増の49%と、菅政権発足以来初めて、支持と不支持が逆転した。 さらに、14日に公表されたNHK世論調査でも内閣支持率は14ポイント下落の42%となり、菅首相に追い打ちをかけた。Go Toトラベル自体については、停止や中止を求める声が毎日調査で67%、NHK調査で79%に達した。 今回の菅首相の方針転換は「まさに世論に抗しきれなくなった結果」(自民幹部)だ。14日夜、官邸で記者団の取材に応じた菅首相は、「年末年始は集中的に対策を講じられる時期だと思い、『Go Toトラベル』を全国で一旦停止することを自ら決断した」と平静さを装った。ただ、記者団が「緊急事態宣言は検討しているか」と問いただすと「してません」とそっけなく答え、踵を返すように立ち去った』、「蓮舫参議院議員」が「メルケル首相」「の言葉を引用し」「批判した」、とはいつものことながらジャーナリスト感覚の切れには感心する。「ガースー」も「内閣支持率」の大幅「下落」は堪えたのだろう。
・自民党「観光族」の間に渦巻く不満  そもそも、政府が「勝負の3週間」と位置付けた11月下旬から、菅首相に提言する役目の分科会メンバーからは「このままGo Toを続ければ、感染拡大が止まらず、トータルでいえば経済への悪影響も大きい」(経済専門家)との声が相次いでいた。併せて、決断を委ねられた格好の都道府県知事からも政府の迷走への不満が噴出。「政府は小出しの対応でしのごうとしたが限界に達した」(閣僚経験者)のが実態とみられる。 その一方で、自民党内には「急ブレーキをかければ飲食店がバタバタつぶれる」(若手議員)と、Go To停止の決断を疑問視する声も少なくない。いわゆる「観光族」と呼ばれる議員の間では「菅首相が自分ファーストで勝手なことをした」(有力議員)との不満も渦巻く。 観光族のドンは、菅首相とタッグを組む二階俊博幹事長だ。菅首相は14日夜、その二階氏と銀座のステーキ店で会食した。しかし、プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長や有名タレントも同席し、「Go Toトラベルは誰も話題にしなかった」(出席者)とされる。「菅、二階両氏とも腫れ物には触れない」(自民長老)というわけだ。 気象庁の天気予報によると12月中旬から列島に強烈な寒波が襲来するという。多くの医療専門家は「寒波で空気も乾燥していれば、Go Toを止めても感染拡大は収まらない」と口をそろえる。菅首相は事業停止の出口となる1月12日以降の対応については口を濁すが、政府部内では「全国的な仕事始めで人の移動が活発化する12日以降のGo To再開は、リスクが大きすぎる」との不安も広がっている。 14日夜に記者団から「首相にとっての今年の漢字」を問われた菅首相は、「私自身は『国民のために働く内閣』と銘打っています。ですから働く『働』という字です」と答えたが、口の悪い野党議員は「自分のためにしか働かない」とくさす。自民党内には「年明けに事態が悪化していれば、衆院解散どころか、菅首相の早期退陣論も浮上しかねない」(長老)との声も広がっている』、「自民党「観光族」の間に渦巻く不満」、族議員の視野狭窄が改めて浮き彫りになったようだ。

次に、12月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/257474
・『「Go To」だけではない善意が事態を悪化させる政策  ヨーロッパの有名なことわざに、「地獄への道は善意で舗装されている」というものがある。 これにはいろいろな解釈があるが、世の中を良くしようとか、弱者を助けようとか、善意から行われたことがかえって事態を悪化させてしまい、結果として「地獄」のように悲惨な結果を招いてしまうという、皮肉な状況を指すこともある。ニュアンスとしては、日本の「ありがた迷惑」「無用の親切」という言葉が近いかもしれない。 では、具体的にどんな状況かというと、全国一斉停止が決まった「Go Toトラベル」がわかりやすい。 コロナで大打撃を被った観光業を救うとともに、冷え切った地方経済を循環させるという名目で、感染が拡大する中でもギリギリまで継続したことによって、「旅行=コロナを撒き散らす」というネガティブイメージを国民の間に定着させてしまった。良かれと思ってやった「善意の政策」が、皮肉にも地方経済と観光業を「地獄」へつき落としてしまった格好なのだ。 実は、日本ではこういう「地獄への道は善意で舗装されている」ということがちょくちょく起きる。 GoToがここまでゴリ押しされた背景に、「観光族のドン」である二階俊博氏がいるという指摘があるように、この国の政策は基本、有力政治家にパイプを持つ産業界の陳情で決まる。一見すると世の中を良くするように見える政策も、実はその裏には特定業界を利するような意図が隠されているのだ。 当たり前の話だが、こういう社会全体のメリットを考えていない政策はさまざまな問題を引き起こし、最悪の場合、国民生活に「害」をもたらす。 つまり、日本の国民は「何かよくわからないけど、えらい政治家センセイたちが必要というから必要な政策なんだろ」と思っているうちに、知らない間に「地獄への道」をアクセル全開でつき進むゴーカートに乗せられている、というパターンが非常に多いのだ』、「地獄への道は善意で舗装されている」、とはなかなかよく出来た「ことわざ」だ。太平洋戦争突入もこの典型例だろう。
・『「入管法改正」で本当に日本は良くなったか  「そんな大袈裟な」と思う人もいるかもしれないが、こういう例を出したらキリがない。まだ記憶に新しいところで言えば、「外国人労働者の受け入れ拡大」などというものも典型的なパターンだ。 今でこそマスコミは、連日「コロナの感染拡大が止まらない」と大騒ぎだが、実は2年ほど前は「人手不足で日本が滅びる!」と大騒ぎしていた。政府が入管法改正を進め、人手不足業界を救済するため、「外国人労働者の受け入れ拡大」を進めていくとぶちまけたからだ。 当時のマスコミの論調は、日本は深刻な人手不足で待ったなしの状況だし、多様性のある社会ということでは、外国人労働者の受け入れ拡大はいたしかない。ただ、働かせるだけではなく、彼らが日本でしっかりと生活もできるような支援もすべきだ――。などと言っていた。 要するに、「世の中が良くなる政策」だからしょうがないと、大きな批判をすることもなくスルーしていたのだ。「モリだ、カケだ」と大騒ぎをして、それどころじゃないという状況もあった。 では、政治もマスコミも軽くスルーした「外国人労働者の受け入れ拡大」で、果たして日本は良くなったのか。 入管法改正で新設された「特定技能」の受け入れは、目標に届かずスベっているが、「外国人労働者の受け入れ拡大」自体は、政府の後押しもあって着々と進んでいる。 厚生労働省が発表した『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』によると、2019年10月時点の外国人労働者の総数は165万8804人と、過去最多となっている。 中でも近年急速に増えているのが、日本への技能実習生送り出しに積極的なベトナムである。これまで、外国人労働者と言えば中国人というイメージだったが、19年10月時点の国籍別外国人労働者の割合を見ると、中国人の41万8327人(25.2%)に迫る勢いで、ベトナム人が40万1326人(24.2%)も日本で働いているのだ。 では、これだけの「外国人労働者」が増えているわけだから、日本の「人手不足」は解消されたのかというと、ご存じのようにそんなことは全くない。 なぜ、社会をより良くするはずの政策が機能していないのかというと、外国人労働者は増えているが、そのぶん失踪する人も増えているからだ。法務省によれば、2018年に失踪した技能実習生は9052人ということだったが、これが2020年7月1日時点で、受け入れ企業から失踪するなど不法在留状態で日本に滞在する元技能実習生の数は1万2457人となっている。 もちろん、役所が把握している失踪外国人など氷山の一角に過ぎない。職場から忽然と姿を消して不法滞在をしている元・外国人労働者は、もっとたくさんいるはずだ』、「当時のマスコミの論調は・・・」は、実際には官庁が自らやりたい政策の必要性をPRするため、事前に「マスコミ」を誘導して書かせているケースが多いようだ。「失踪する人も増えている」、深刻な問題だ。
・『日本で働く外国人が姿をくらます本当の理由  では、なぜ彼らは姿をくらませるのか。いろいろな事情があるだろうが、1つには「低賃金」の問題が大きい。 法務省が不法残留などで検挙された外国人労働者2892人を対象に調査をした『失踪技能実習生の現状』によれば、彼らが日本で経験した不正行為を尋ねたところ、「低賃金」と答えた人が67.2%にものぼった。 実は、これが日本の「人手不足」問題の正体である。人手不足の業界で足りないのは人手ではなく賃金であって、これが日本の若者などの国内労働者から敬遠されている。そこで、外国人だったら低賃金でも文句を言わずに、ありがたがって働くだろうということで、「外国人材の活用」をぶちまけたわけだ。 ただ、これは大きな勘違いだ。中国やベトナムも経済発展が著しい。確かに、まだ日本で働きたいという人はたくさんいるが、生活水準も向上している中で、低賃金や長時間労働を強いられたら、すぐに職場に嫌気が差して失踪してしまう。日本人が嫌がるような低賃金重労働は、中国人もベトナム人も嫌がるに決まっているのだ。 では、そのような低賃金労働から逃げ出した外国人はどうなるか。別の仕事に就いたり、そのまま日本に失望して祖国へ帰るという人もいるが、中には当然、「もっと稼げる仕事があるよ」という悪い仲間からの誘いに乗ってしまう人も多い。何もしないでプラプラしている若者が、地元の悪い先輩に誘われて、オレオレ詐欺の出し子になるように、犯罪に手を染めるのだ。 警察庁によれば、2019年に摘発した来日外国人は、前年比573人増の1万1655人だった。内訳で最も多いのはベトナム人で3365人(28.9%)、ついで中国人2948人(25.3%)と、外国人労働者とほとんど同じバランスになっている。ちなみに、ベトナム人犯罪は化粧品の万引きなどの窃盗が多く、中国人犯罪は在留カードを偽造したり、不正入手したスマホの決済サービスで大量の商品を騙し取ったりすることが多いという』、「人手不足の業界で足りないのは人手ではなく賃金であって、これが日本の若者などの国内労働者から敬遠されている。そこで、外国人だったら低賃金でも文句を言わずに、ありがたがって働くだろうということで、「外国人材の活用」をぶちまけたわけだ」、「日本人が嫌がるような低賃金重労働は、中国人もベトナム人も嫌がるに決まっているのだ」、その通りだ。
・『人手不足の業界が巡り巡って痛めつけられる外国人材の活用  さて、ここまで説明すれば、この「外国人労働者の受け入れ拡大」という政策が「地獄への道は善意で舗装されている」ということの典型パターンだと申し上げた理由が、わかっていただけただろうか。 「人手不足の業界を救うため、外国人労働者を活用!」「これからの日本は、外国人と一緒に働く多様性のある社会に」というのは一見すると、社会をより良くするための「善意」のある話に見える。 しかし、先ほども述べたように、日本の「人手不足」は労働者の絶対数が足りないという話ではなく、特定の産業で低賃金・重労働が常態化してしまったことで、国内労働者がそっぽを向いた「雇用ミスマッチ」が主な原因である。そういう根本的な問題を解決せずに、ベトナムなどの外国人労働者を甘い言葉で誘い込んでも、人手不足が解消されるわけがないのだ。 しかも、そのような低賃金・重労働というブラックな環境を改善しないで、外国人労働者の受け入れを増やすということは、職場から逃げ出す不法滞在外国人を増やすことに他ならない。そうなれば、アンダーグラウンドな世界で外国人ネットワークが構築され、組織的な犯罪が増える。 そこで被害に遭うのは、万引きされたり、不正なスマホ決済サービスで商品を騙し取られたりする小売店。そして、家畜や野菜を盗まれる農家などである。これらが深刻な人手不足に悩む業種だということは、説明の必要がないだろう。 つまり、人手不足の業界を救済するという善意が回り回って、人手不足業界を苦しめる悪循環を生み出してしまうという、何とも皮肉な結果となっているのだ』、「人手不足の業界を救済するという善意が回り回って、人手不足業界を苦しめる悪循環を生み出してしまうという、何とも皮肉な結果となっている」、同感だ。「ベトナム人」によるブタ盗難事件も記憶に新しいところだ。
・『「GAFA規制」にも見える政治家と特定業界との癒着  こういう過去の事例を踏まえて、次にこのパターンに陥るのではないか、と筆者が心配している「善意の政策」がある。それは、「GAFA規制」である。 ご存じの方も多いだろうが、今世界的にGAFAの力を抑えようという潮流がある。つい先日もEUで、巨大IT企業が自社サイトで同業他社に対して自社のサービスなどを優先的に扱うことを厳しく制限するほか、ユーザーごとに表示されるオンライン広告の基準の開示などを義務づけるという規制案を発表。これに違反した場合、年間売り上げの最大10%を制裁金として科すという。 こうした欧州のムードを受けて、日本でも2020年5月、巨大IT企業に取引の透明性向上や情報開示を求める「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が成立している。現在、2021年春の施行を目指し、要件の詳細などが議論されている段階だ。 「いいことじゃないか」という声が聞こえてきそうだ。もちろん、巨大企業が優位的な立場を生かして、自由な競争を阻害するようなことは許されない。特にGAFAなどは社会的な影響力も強いので、公平性や透明性がより求められるというのも全く異論はない。 ただ日本の場合、これまで見てきたように、有力政治家とパイプのある特定の業界を利する政策がつくられるというパターンが圧倒的に多い。国内産業保護が過度に優先されたり、菅義偉首相など政権幹部に近い企業や業界の利益を守るような規制になりかねないのである。 そうなったとき、「巨大企業の市場独占を抑える」という一見社会のためになる政策のもとで、「地獄への道は善意で舗装されている」といういつもの負けパターンに陥ってしまう恐れがあるのだ。 少し前、その危険性を示唆するような調査が出た。慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授の試算レポート『対デジタルプラットフォーマー規制強化に伴う地方企業への悪影響』によれば、デジタルプラットフォーマーへの過度な規制強化が行われた場合、地方企業のデジタル広告経由の売り上げが、5年間で最大6.47兆円毀損される可能性があるという。 ご存じのように、グーグルやフェイスブックなどデジタルプラットフォーマーへの広告は、テレビや新聞などのマス広告に比べて、かなり少額から出稿できる。そして、影響力がある。地方企業が全国ネットでテレビCMを流したり、全国紙に出稿したりすることはかなりハードルが高いが、デジタルならば手軽に全国の客にリーチできるというメリットがあるのだ。 しかし、これが規制の対象となると、デジタルプラットフォーマー側もその対応でコストが上がるので、それが広告費の値上げにつながって、結果として地方の中小企業や小規模事業者を苦しめる恐れがある、とこのレポートでは指摘しているのだ』、「岩本隆特任教授の試算レポート」の指摘はその通りなのだろうが、この研究が「デジタルプラットフォーマー」から資金援助されてない中立なものであってほしい。
・『「日本のためになる」という思い込みで突き進む地獄への道  もちろん、これはあくまで最もネガティブなシナリオにおける試算であって、必ずしもこれが現実になるとは限らない。ただ、これまでの「外国人労働者の受け入れ拡大」「Go Toトラベルのゴリ押し」のように、やることなすこと裏目に出ているという「実績」を踏まえると、そこまで荒唐無稽な話ではないような気もしている。 太平洋戦争の時代まで遡って日本の近代史を学べば、政府とマスコミが「これが日本のためになるベストな政策なのだ」と胸を張っているときほど、立ち止まって慎重に検証をしなくてはいけないというのは明らかである。「我々は絶対に間違っていない」と叫びながら「地獄への道」を突き進むというのが、日本の典型的な負けパターンだからだ。 菅首相も、仲の良い人たちや、チヤホヤしてくれる人たちと「密」になって忘年会をするのも結構だが、そろそろ自分の政策に対して厳しい批判をするような人たちの声に、真摯に耳を傾けた方がよろしいのではないか』、「菅首相」は言うまでもないが、各省庁も審議会などを隠れ蓑にして政策実現を図っているが、その運営ももっと開かれたものにしてゆくべきだろう。

第三に、12月17日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「後手に回った政治の決断、「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78420?imp=0
・『専門家は11月には停止の声  後手後手に回った結果、最悪のタイミングになった。「GoToトラベル」の「一時停止」である。 菅義偉首相は12月14日、「GoToトラベル」を12月28日から1月11日まで全国一斉に「一時停止」することを表明した。ようやくの「政治決断」である。 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は12月9日、衆議院の厚生労働委員会で立憲民主党の山井和則議員の質問に答えて、「分科会はステージ3相当の地域は、感染のこの状況を打開するには、GoToを含めて人の動き、接触を控える時期だと思う」と発言。「ステージ3ということは東京を含めて一時停止すべきか」との重ねて問われたのに対して、「分科会はそう思っています」と明確に答えた。 実は、分科会の議論では11月の早い段階から、「GoToトラベルの一時停止」を求める声がメンバーから出されていた。 しかし「GoToトラベル」という政府の政策に関する決定は「政治家の仕事」で、専門家はその材料を提言するにとどめるべきだという考えがあった。結局、11月中に尾身会長が直接「一時停止」に触れることはなかった。それを翻して国会質問で踏み込んだのは、政治が決断しない状況が続いたからだった。 尾身会長が踏み込んでも菅義偉首相は「一時停止」の決断をためらった。尾身会長は12月11日に記者会見し、同日開いた分科会の結論として感染拡大地域の「GoToトラベル」を一時停止するよう正式に求めた。にもかかわらず、菅首相は決断をまだ躊躇していた。 同日夜に出演した「ニコニコ生放送」で、GoToトラベルの一時停止を問われると、「まだそこは考えてません。考えていないというか、きょう提言を受けたわけですから」と答えていた』、「尾身会長が踏み込んでも菅義偉首相は「一時停止」の決断をためらった」、確かに「政府の政策に関する決定は「政治家の仕事」」、とは言っても、理由をきちんと説明すべきで、「ニコニコ生放送」で油を売るなどもってのほかだ。
・『世論調査に押されてやっと  そうした姿勢を180度、菅首相が変えたのは、分科会の専門家から受けた厳しい提言を熟考したからだろうか。どうもそうではない。 一時停止を表明した12月14日にNHKが発表した世論調査で、菅内閣の支持率が42%と、11月の調査から14ポイントも低下した。「支持しない」と答えた人も17ポイント上昇して36%となった。支持と不支持の逆転こそ起きなかったが、支持率の急低下が鮮明になった。 同じ調査で、「新型コロナをめぐる政府への対応」について「まったく評価しない」が16%、「あまり評価しない」が40%に達したほか、「GoToトラベル」について「いったん停止すべき」と答えた人が79%にのぼり、「続けるべき」とした人の12%を大きく上回った。 実は、その2日前の12月12日には毎日新聞の世論調査結果が公表され、内閣支持率が40%、不支持率が49%と不支持が支持を上回っていた。永田町に動揺が走ったが、毎日新聞はもともと菅内閣に批判的で、政府に厳しい結果が出がちだとの見方もあった。 それが、政権に比較的近いと見られているNHKの調査でも支持率が急落したため、菅官邸は何らかの手を打たざるを得なくなったとみられている。つまり、専門家の声を聞いたからではなく、支持率が急低下したから、決断したということのようなのだ』、「世論調査結果」は、反政府的な「毎日新聞」ではなく、「政権に比較的近いと見られているNHK」が決め手になったとは、最後の望みも絶たれたということなのだろう。
・『年末年始シーズンはこれで台無し  結果をみれば、菅首相の決断は遅過ぎた。11月の上旬に感染拡大が懸念されていた地域だけでも「一時停止」を決めていれば、12月に入ってここまで感染拡大は起きず、年末年始の「書き入れ時」に人の動きを止めずに済んだかもしれない。最悪のタイミングでの「一時停止」を避けることが出来たかもしれないのだ。 何せ11月21~23日の3連休は各地の観光地で猛烈な人出となった。紅葉が見頃を迎えた京都嵐山では、昨年11月の休日平均に比べて、最大で1.6倍を記録していた。凄まじい人出だったのだ。 それにもかかわらず、GoToトラベルと新型コロナ拡大の因果関係があるとは「我々は見ておりません」と菅首相は言い続けた。 菅首相が「一時停止」をなかなか決断できなかったのは、それだけ「GoToトラベル」の効果が大きかったこともある。 7月22日から11月15日までの利用者数は、少なくとも5260万人泊、割引支援額は少なくとも3080億円にのぼった。地域共通クーポン券を除いた宿泊旅行代金の補助だけで2509億円に達しており、自己負担分も含めると7000億円以上のお金が宿泊業を中心とする旅行業者に落ちたことになる。まさに「GoTo特需」だったわけだ。 年末年始の「一時停止」によって、旅館やホテルなどには予約のキャンセルが殺到しているという。 旅行者にキャンセル料はかからないうえ、事業者にも旅行代金の50%が補償金として国から払われる。ひとり1泊2万円の上限があるので、高級旅館・ホテルなどはコスト回収は難しいが、一定の助成によって、事業者は壊滅的な打撃を受けなくても済む、というのが政府の見方だ』、「7月22日から11月15日までの利用者数は、少なくとも5260万人泊、割引支援額は少なくとも3080億円・・・自己負担分も含めると7000億円以上のお金が宿泊業を中心とする旅行業者に落ちた」、確かに効果も大きかったが、副作用も大きかったようだ。
・『一番脆弱な雇用を痛撃  もっとも、最大の稼ぎ時である年末年始の利用客が減れば、パート従業員やアルバイトなどの仕事が減ることになりかねない。「宿泊業・飲食サービス業」の就業者数は10月段階で前年同月比10%近く減っているが、年末年始の雇用情勢が大きく悪化することになりかねない。 こうした雇用対策も含め、もう少し早く政治決断していれば、対応の仕方があったのにと悔やまれる。 菅内閣が発足して3カ月、国民への説明力が乏しいという菅評が定着しつつある。そこに「優柔不断」「決断できない」と言ったマイナス評価が加わるのを避けようと、「全国一斉」に「GoToトラベル」の一時停止を広げたようにも見える。 専門家は「感染拡大地域」の一時停止を求めていたが、その意見にはまともに向き合わなかったということだ。 大きな犠牲を払って人の動きを止める今回の措置が成果をあげ、新型コロナの感染拡大が止まることを祈るばかりだ』、「鉄壁ガースー」も二階幹事長に遠慮するの余り、賭けは裏目にばかり出ているようだ。

第四に、12月19日付け日刊ゲンダイ「第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/282905
・『「感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない」――。肝いりの「Go To トラベル」をめぐる批判に、こう繰り返してきた菅首相だが、「言い逃れ」はもはや通用しない。新型コロナウイルスの感染拡大とトラベル事業の因果関係を示す「エビデンス」が示されたからだ。 注目を集めているのが国立感染症研究所が発表した「新型コロナウイルスSARS―CoV―2のゲノム分子疫学調査」と題されたリポート。新型コロナのゲノム配列を分析したもので、4月と8月の調査と合わせて3回発表されている。その目的は、ウイルスのゲノム情報を分析し、分かりやすい形で「ウイルス同士の関連を可視化」すること。ウイルスの由来や感染の広がり方をゲノム分析を通じて調査しているのだ。 足元の感染再拡大に言及しているのが、今月11日に発表された3回目のリポートだ。今年10月末までのクラスター発生やウイルスの変異について説明していて、1回目と2回目の調査と突き合わせると、トラベル事業と感染拡大の間に重大な「エビデンス」が浮かび上がる。 医師で参院議員(国民民主党)の足立信也氏がこう解説する。 「全てのリポートを読むと、第3波がどんなウイルスによるものなのかを推測できます。日本国内では中国・武漢由来のウイルスの流行がひとまず終息した後、欧州型のウイルスが流入。3月から5月にかけて第1波が発生しました。収束の兆しが見えたものの、6月に経済活動が再開され、無症状者に感染する中で変異したウイルスが東京都や首都圏を中心に広がりました。夏の第2波の要因となったのは欧州型が変異したもので、いわば『東京型』だった。第2波が収まらないうちに『東京型』が拡散し、第3波へとつながっているのです」』、「感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない」との「菅首相」発言は、実は真相を知った上での嘘だった可能性もあるようだ。
・『国会の閉会を待って公表か  第2波を生んだ「東京型」が現在も流行中との指摘の根拠は、リポートに掲載された「ハプロタイプ・ネットワーク図」。簡単に言えば、ゲノム情報の変異に基づいて描かれたウイルスの“親子関係”を表す相関図のようなものだ。円形や楕円のクラスターが赤やオレンジに着色されている。 2回目のリポートの「ハプロタイプ・ネットワーク図」では、〈欧州系統の全国同時多発〉由来の〈国内クラスター群〉(第1波)がオレンジで描かれ、それとは別に〈6月中旬より“突然顕在化”したクラスター〉群(第2波)が赤で描かれている。そして3回目の報告書の図では、7月から10月末までに国内で検出されたウイルスによるクラスターは赤色で表記。つまり、「東京型」に由来するクラスターだと分析されているのだ。 トラベル事業は、感染がくすぶる東京都を除外して7月22日に前倒しスタート。10月1日に人口1400万人を抱える東京が追加されて以降、感染がみるみる深刻化した。 この図は、トラベル事業によって『東京型』が全国にバラまかれた傍証です。収束しかけた第2波の『東京型』が再燃していると言ってもいいでしょう。リポート発表のタイミングが不自然なのも気になります。3回目の調査は〈10月26日現在〉と書かれていますが、発表されたのは臨時国会閉会から1週間ほど経った12月11日。1回目と2回目は調査から2~3週間で発表された。3回目はかなり間が空いているのです。閉会を待って発表されたのではないか」(足立信也氏) 酒類を提供する飲食店の時短営業やトラベル事業の全国中止が実を結び、「東京型」の流行が一服したとしても、海外との往来緩和で欧州由来のウイルスが再流入する懸念もぬぐえない。科学的知見に目もくれず、専門家の意見にも耳を傾けない菅政権の下で、一体いくつの「波」に襲われることになるのか』、「10月1日に人口1400万人を抱える東京が追加されて以降、感染がみるみる深刻化した。 この図は、トラベル事業によって『東京型』が全国にバラまかれた傍証です。収束しかけた第2波の『東京型』が再燃していると言ってもいいでしょう」、「閉会を待って発表されたのではないか」、極めて悪質だ。これでは、菅政権の基盤も一段と弱まりそうだ。
タグ:実際には官庁が自らやりたい政策の必要性をPRするため、事前に「マスコミ」を誘導して書かせているケースが多いようだ 10月1日に人口1400万人を抱える東京が追加されて以降、感染がみるみる深刻化した。 この図は、トラベル事業によって『東京型』が全国にバラまかれた傍証です。収束しかけた第2波の『東京型』が再燃していると言ってもいいでしょう 日刊ゲンダイ 現代ビジネス 「閉会を待って発表されたのではないか」、極めて悪質だ。これでは、菅政権の基盤も一段と弱まりそうだ 「尾身会長が踏み込んでも菅義偉首相は「一時停止」の決断をためらった」、確かに「政府の政策に関する決定は「政治家の仕事」」、とは言っても、理由をきちんと説明すべきで、「ニコニコ生放送」で油を売るなどもってのほかだ。 「第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに」 「日本のためになる」という思い込みで突き進む地獄への道 「不支持」が「支持」を初めて逆転 「菅首相」は言うまでもないが、各省庁も審議会などを隠れ蓑にして政策実現を図っているが、その運営ももっと開かれたものにしてゆくべきだろう 国会の閉会を待って公表か 「菅首相」発言は、実は真相を知った上での嘘だった可能性も 感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない 鉄壁ガースー」も二階幹事長に遠慮するの余り、賭けは裏目にばかり出ているようだ 年末年始シーズンはこれで台無し 「ベトナム人」によるブタ盗難事件も記憶に新しいところだ 一番脆弱な雇用を痛撃 自己負担分も含めると7000億円以上のお金が宿泊業を中心とする旅行業者に落ちた」、確かに効果も大きかったが、副作用も大きかったようだ 7月22日から11月15日までの利用者数は、少なくとも5260万人泊、割引支援額は少なくとも3080億円 「世論調査結果」は、反政府的な「毎日新聞」ではなく、「政権に比較的近いと見られているNHK」が決め手になったとは、最後の望みも絶たれたということなのだろう 世論調査に押されてやっと 専門家は11月には停止の声 「後手に回った政治の決断、「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下」 磯山 友幸 「岩本隆特任教授の試算レポート」の指摘はその通りなのだろうが、この研究が「デジタルプラットフォーマー」から資金援助されてない中立なものであってほしい 「GAFA規制」にも見える政治家と特定業界との癒着 人手不足の業界を救済するという善意が回り回って、人手不足業界を苦しめる悪循環を生み出してしまうという、何とも皮肉な結果となっている 人手不足の業界が巡り巡って痛めつけられる外国人材の活用 日本人が嫌がるような低賃金重労働は、中国人もベトナム人も嫌がるに決まっているのだ 人手不足の業界で足りないのは人手ではなく賃金であって、これが日本の若者などの国内労働者から敬遠されている。そこで、外国人だったら低賃金でも文句を言わずに、ありがたがって働くだろうということで、「外国人材の活用」をぶちまけたわけだ 日本で働く外国人が姿をくらます本当の理由 「失踪する人も増えている」、深刻な問題だ 当時のマスコミの論調は 「入管法改正」で本当に日本は良くなったか 太平洋戦争突入もこの典型例 ヨーロッパの有名なことわざに、「地獄への道は善意で舗装されている」というものがある 「Go To」だけではない善意が事態を悪化させる政策 「Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」」 窪田順生 ダイヤモンド・オンライン 「自民党「観光族」の間に渦巻く不満」、族議員の視野狭窄が改めて浮き彫りになったようだ 自民党「観光族」の間に渦巻く不満 「ガースー」も「内閣支持率」の大幅「下落」は堪えたのだろう 言葉を引用し、「胸に響きます。国民に危機意識を伝える言葉です」と菅首相の不用意な発言と対比して批判した メルケル首相の 蓮舫参議院議員 「ニコニコ生放送」上での「みなさん、こんにちは。ガースーです」とのあいさつは、まさに「今はそれじゃない」と言う他ない 菅首相の指導力低下は不可避に 「菅首相、迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」、問われる首相の器」 泉 宏 東洋経済オンライン (その2)(菅首相 迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」 問われる首相の器、Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」、後手に回った政治の決断 「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下、第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに) GoTo問題
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RCEP(東アジア地域包括的経済連携)(その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ) [外交]

今日は、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)(その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ)を取上げよう。

先ずは、11月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・ジャーナリストぼ莫 邦富氏による「RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破、米国に対抗する「次の一手」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254732
・『世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生、中国はどう見たか  先日、「東アジア地域包括的経済連携(=RCEP)」の首脳会議が開かれ、日本や中国をはじめ15カ国がこの「RCEP」の協定に署名した。新型コロナウイルスによって世界経済が大きな打撃を受けて四苦八苦している2020年で、最も素晴らしい経済関連のニュースと言っていいと思う。 世界の人口やGDPのおよそ3割もカバーするこの協定は、世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生として受け止められ、大きく注目されているが、中国での評価は一味も二味も違う。 まず、李克強首相は「RCEPの署名は多国間主義と自由貿易の勝利であり(中略)、人々に曇りの中で光明と希望を見いださせた」と評価した。「勝利」「光明」「希望」という3つの言葉は中国側の興奮と喜びを余すことなく表している。 中国国内では、「ある意味では、他の14カ国と一緒にRCEPに署名することは、中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ」と受け止める専門家が多い』、「中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ」、とは大げさな感じもするが、正直な感想なのだろう。
・『脅威だったTPP包囲網を突破できた中国  オバマ政権が推し進めていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、米国の12カ国間を束ねた経済連携協定だが、このグループの最大の特徴は、環太平洋地域国なら、中国以外のどの国でも参加できるとしていることだ。 このTPPが実現すれば、経済規模は世界の40%を占め、アメリカ合衆国とヨーロッパ連合を結ばせた北大西洋版TPPともいえるTTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)を加えると、2つのグループが世界経済の60%以上を占めるほどの勢力圏を誇ることになる。 つまりTPPが実現すれば、中国を残りの40%という世界経済圏の中に孤立させることに成功することを意味していた。 このTPPは明らかに中国を包囲するための経済協定だと、中国は警戒していた。しかし、蚊帳の外に置かれた中国には、その包囲網を打ち破る方法はない。予想外なことにトランプ政権時代の2017年1月、アメリカ合衆国は自らの意思でTPPを離脱した。オバマ政権時代、アメリカがあれだけ苦労して敷いた中国包囲網は、こうしてトランプ政権に軽々と破って捨てられたのだ。 しかし、バイデン政権が誕生したら、米国が再びTPPを担ぎ出す恐れがある。そのバイデン政権が誕生する直前に、米国を蚊帳の外に置くことに成功したRCEP協定の成立は、中国にとっては中国包囲網を突破した一大勝利だけではなく、米国に対抗するには欠かせないツールの一つでもあると見ていい』、「オバマ政権時代、アメリカがあれだけ苦労して敷いた中国包囲網は、こうしてトランプ政権に軽々と破って捨てられたのだ。 しかし、バイデン政権が誕生したら、米国が再びTPPを担ぎ出す恐れがある」、「トランプ」は何でも「オバマ」の成果を否定することを優先するの余り、「中国」を結果的に利したとはお粗末だ。
・『中国が次に目指すのは「日中韓自由貿易圏」  中国の世論では、将来、米国が主導するTPPに対抗するには、RCEP1つだけでは不十分との声もある。RCEPは15カ国の集合体なので、中国のような人口大国もあれば、ブルネイのような小国もあり、日本のような先進国もあれば、カンボジアのような貧しい国もある。これらの国々を束ねるには、言うまでもなくさまざまな妥協と譲歩が必要だ。 その意味では、日中韓自由貿易圏の成立はより大きな実益につながる。日本と韓国にとって、中国は最大の貿易国である。そして中国にとって、日本と韓国はそれぞれ第2位と第3位の貿易パートナーであり、第1位と第2位の輸入相手国でもある。 また3カ国間の貿易往来も頻繁だ。日本は豊富な資本と先端科学技術を有しており、韓国は半導体分野で優位性をもっている。一方、中国は製造大国だ。その3カ国の産業と経済は相互補完関係にあり、産業融合度も高い。自由貿易圏を構築することで、互いにウィンウィンの関係を実現することができる。日中韓自由貿易圏が形成されると、この3カ国も世界の他の大国との交渉により多くのカードを使えることになり、その意義は計り知れない。 だから、日中韓自由貿易圏、ヨーロッパと中国の自由貿易圏も早急に成立しなければならないと中国国内の世論は推しているのだ』、「日中韓自由貿易圏」はどうなっているのだろう。
・『米国とのバランスをどう取るか  2002年に、すでに日中韓自由貿易圏構想が出来上がり、当事者3カ国もその成立を期待している。しかし、これまで16回の交渉が行われてきたが、まだ着地できていない。いつも協定の機運が高まったところで、何らかの国際紛争が発生し、その協議が一時停止に追いやられてしまう。尖閣諸島(中国名は釣魚島)国有化事件、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備事件、日韓貿易戦争などがその典型例だ。3カ国の異なる国益が3者協議の決着を阻んでいる。 今回のRCEPの締結は、アジア太平洋自由貿易圏の枠組みの形成に大きな一歩を踏み出したと評価していいだろうが、もう一つ、強調しなければならないポイントがある。日本、中国、韓国にとっては東アジアで初の自由貿易協定(FTA)となるため、3カ国間をまたいで事業展開する企業にとってのインパクトはもちろん大きいとみられるが、日中韓自由貿易圏の成立にも重要な推進力になるだろう。特に日中韓自由貿易圏が成立すれば、山東省や遼寧省などが最大の受益者となり、経済成長が困難に陥っている東北地域には大きな励ましになる。東北地域と山東省が寄せる関心は並々ならぬものがある。 米国と日本は最近、しきりに「インド太平洋時代」をアピールしている。中国は表向きには、それに対して反対または批判の声を上げていないが、内心は穏やかでない。しかし、今回のRCEPに対して、インドは自ら参加を断った。中国国内からは「正直に言うと、むしろほっとした。これで中国がリーダーシップをより取りやすいアジア太平洋時代を迎えられる」という声が聞こえてきている。 ニューズウィーク誌は、次のように報道している。「アジア太平洋圏でのアメリカの立場は、TPPがアメリカ抜きで批准された時点で既に打撃を受けている。(中略)トランプ政権はアメリカと中国の経済を切り離し、製造業の多国籍企業を中国から撤退させようとしている。だがRCEPはアジア域内の経済統合を促進し、アジアを経済的にも戦略的にも今まで以上にアメリカから隔絶するものになりそうだ」(「アジア版自由貿易協定『RCEP』の長所と短所」より) RCEPを見る米国の複雑な心境を語ったこの記事の指摘のように、米国とのバランスをどう取るべきかというのは、RCEPの参加国、特に中国と日本にとっては大きな課題だ』、「日中韓自由貿易圏構想」については、「日中韓FTA交渉は、RCEPを上回る付加価値をどれだけ付与できるかが焦点」(外務省)のようだ。バイデン次期大統領がどう出てくるか、注目したい。

次に、11月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」、日本はどう振る舞うべきか」を紹介しよう。
・『わが国を含め15カ国がRCEP協定に署名  11月15日、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、およびアセアン10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の計15カ国が「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」に署名した。 インドは国内事情から参加しなかったものの、世界のGDPの約30%を占める大貿易圏構想が形になったことの意義は大きい。特に、わが国にとって最大の輸出先である中国、第3位の韓国を含む大型の自由貿易協定(FTA)が合意に至ったことは重要だ。 今回のRCEP形成の陰には中国の思惑が強く影響している。国際社会において孤立が目立つ中国は、RCEPを一つのきっかけにアジア地域での存在感を高め、米国に対抗する力をつけたいと考えているはずだ。中国にとってRCEPは自国経済の成長を目指し、共産党政権の体制を強化する有力な手段だ。 また、経済面で中国を重視してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって、中国が関税撤廃を重視することは都合がよい。韓国はTPPには参加せず、中国が重視するRCEPには参加する。RCEP署名によって文政権は、米中に対してうまく振る舞い、より有利なポジション取りを華南が得ているのだろう。韓国にはRCEPを通してわが国に接近する意図もあるだろう。 今後、わが国に求められることは、RCEPを足掛かりにして世界経済の成長の源泉として重要性高まるアジア新興国との関係を強化することだ。それは、わが国が、RCEP参加を見送ったEUや米国、インドとの経済連携を強化するために欠かせない。中長期的に考えた場合、わが国が自力で親日国を増やし経済連携の強化を目指すことが国益に合致する』、その通りだ。
・『RCEPの全体像と署名成立の重要性  わが国をはじめ中韓など15カ国が参加するRCEPの意義は、アジア地域に世界最大規模の自由貿易経済圏が誕生することだ。まず、その全体像を把握しよう。RCEPはGDPだけでなく、貿易総額や人口の約3割、わが国の貿易総額のうち約5割を占める地域をカバーする。その規模は世界のGDPの約13%をカバーする「TPP11」を上回る。わが国の工業製品の輸出に関して、14カ国で約92%の品目の関税が段階的に撤廃される。 米国とEUはRCEP参加を見送った。その一方、わが国は米国とはFTAを、EUとはEPA(経済連携協定)を結んでいる。RCEP署名によって、わが国には世界の自由貿易を促進する“ハブ”としての機能を発揮することへの期待が高まったといってよい。英国の経済学者であったリカードは比較優位の理論を提唱して自由貿易の促進が経済成長に資すると説いた。その理論に基づいて世界経済は成長してきた。わが国はより多くの国・地域を巻き込んだFTAおよびEPAを目指すべきだ。 足元の世界経済の環境を踏まえると、米中対立が激化し、米国の大統領選挙が終了したタイミングでRCEP署名が行われたインパクトは大きい。 そう考える要因の一つとして、米国のトランプ政権の政策がある。2017年1月20日にドナルド・トランプ氏が米国の大統領に就任した後、米国は対中制裁関税などを発動し、世界のサプライチェーンは混乱し、貿易量は減少した。また、トランプ大統領は点数稼ぎ(トランプ・ファーストの政策)のために中東政策を重視し、アジア地域を軽視したといえる。 2020年11月の米大統領選挙で国際協調を重視する民主党のジョー・バイデン氏が当選を確実とした直後のタイミングでのRCEP署名は、今後の米国の通商政策に無視できない影響を与えるだろう。バイデン氏はインド太平洋地域の安定を重視し、アジア政策を強化するとみられる。そして制裁関税とは異なる方策(人権問題や知的財産と技術の保護強化)などによって、対中強硬姿勢を強めるだろう。安全保障や経済運営面で、米国にとってアジア地域の重要性は高まる。バイデン氏がTPP復帰に言及していない中、RCEPが米国の外交・通商政策とどのような化学反応を起こすかが注目される』、同感である。
・『RCEPに込められた中国と韓国の思惑  また、わが国とFTAを締結してこなかった中国と韓国がRCEPに参加することも重要だ。これまで、中国は貿易の自由化に積極的ではなかった。本来であれば中国は、関税引き下げが伴う自由貿易よりも、補助金政策などの強化によって自国産業を保護し、その競争力の向上を優先しなければならない。 しかし、足元の中国は、米中対立に加えて、インド、台湾、オーストラリア、EUなどとの関係の冷え込みに直面し、国際社会から孤立している。中国は関税引き下げを受け入れることでRCEP参加国にある意味で譲歩し、孤立を食い止め、アジア地域での存在感を高めたい。中国のRCEP参加は、共産党指導部の焦りの裏返しといえる。 中国のメガFTA参加は、国際通商体制が大きな転換点を迎えたことを意味する。RCEPによって、わが国の工業製品の対中輸出にかかる関税の86%が撤廃される見込みだ。アジア地域における中国経済の重要性は一段と高まるだろう。 それと引き換えに、中国は様々な要求を参加国に突き付け、アジア地域での足場を固めようとするはずだ。長めの目線で考えると、RCEP加盟国の一部において中国の“デジタル人民元”を用いた資金の決済が行われるなどし、米ドルの信認に支えられた国際通貨体制に揺らぎが生じる展開は排除できない。国家資本主義体制を強化して一党支配体制をつづけるために、共産党政権がRCEPをどう活用するかは重要な論点だ。対中輸出の増加は重要な一方で、RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない。 経済面で中国との関係を重視してきた、韓国の文在寅大統領にとってRCEPの意義は大きい。それによって文大統領は、中小企業などに対中輸出増加の活路を提供したいだろう。また、韓国はわが国との貿易に関しては産業への打撃を警戒し、自動車や機械の関税撤廃は見送った。その一方で、韓国にはRCEPによってわが国の高純度素材などを輸入しやすくなるとの目論見もあるだろう。そう考えると、RCEPは韓国が経済面での中国への依存を一段と高めるとともに、わが国に近づく重要な契機になる可能性がある。わが国は韓国に対して引き続き毅然とした態度で臨めばよい』、「RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない」、その通りだ。
・『自由貿易推進に向けたわが国の役割期待  ワクチンの国際供給体制の確立を含めコロナショックから世界経済が立ち直るために、FTAやEPA推進の重要性は高まっている。それによって各国は自国の得意な分野を伸ばし、雇用の創出などを目指すことができる。 わが国はTPP11、日米貿易協定、日・EU、日印のEPA、さらにはRCEPなどを通して、直接的、間接的に各国と国際貿易体制の強化に取り組んでいる。自由貿易の推進によって経済の安定と成長を目指すという点において、国際社会の中でわが国の立場は相対的に良いといえる。RCEPが署名された今、自由貿易推進の旗手としてのわが国の役割、期待は高まっていると考えるべきだ。 今後、わが国に求められるのは、中国の進出に直面するアジア新興国との連携強化だ。公衆衛生や環境、安全な上水道の整備といったインフラ整備支援などをわが国は迅速に実行し、アジア新興国の信頼を獲得しなければならない。そのためには、着実な実行力が欠かせない。インドとの関係強化も重要だ。経済成長の限界を迎え労働コストが上昇する中国からインドなどに生産拠点を移す各国企業は増えている。 このように、世界経済のダイナミズムの源泉として、アジア新興国地域の重要性は一段と高まっている。わが国がアジア新興国との関係を強化することは、わが国と欧州各国との関係強化に不可欠だ。それができれば、わが国が米国のバイデン次期政権にTPP復帰を促すことも可能だろう。 つまり、わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ。突き詰めて考えれば、それが、わが国が自力で自国経済の安定を目指し、国家資本主義体制の強化のために海外進出を目指す中国への包囲網を形成することにつながる。 わが国政府は国内企業の強み(精密な製造技術や高品位の素材開発力)の向上をより積極的にサポートし、アジア新興国や米中から必要とされる存在を目指すべきだ。政府がRCEP署名成立をアジア新興国向けの経済外交の推進に生かすことを期待したい』、「わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ」、同感である。

第三に、11月30日付けNewsweek日本版が掲載した韓国経済研究所学術研究部長のカイル・フェリア氏による「RCEPが日韓の関係改善を後押し、日韓貿易の83%で関税撤廃へ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/post-95098_1.php
・<東アジア地域包括的経済連携への加盟で特に大きな恩恵を受けるのは、歴史問題が経済交渉に影を落とす日韓両国だ> 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉が成功したことは、日本と韓国にとって大きな前進となった。日韓関係が歴史問題で膠着している最中に、両国が初めて同じ自由貿易協定(FTA)に参加することは、少なくともこれ以上の関係悪化を防ぐ手助けになるかもしれない。 この数十年、日本と韓国は歴史問題をめぐり見解の衝突を繰り返してきた。それでもいわゆる徴用工問題がこじれるまでは、政治的緊張が高まっても経済活動や消費者の行動に大きな影響はなかったと、メーン大学のクリスティン・ベカシとデラウェア大学のジウォン・ナムは指摘する。 しかし、近年の政治的緊張は、2003年末に始まった日韓FTAの交渉が膠着状態に陥っている理由の1つであり、2015年に日韓通貨スワップ協定が終了し、再開に向けた協議も打ち切られた直接の原因でもある。 RCEPが多国間の枠組みであることは、日韓双方にとって、同じ貿易協定に参加する上で重要な要素になったと思われる。この経済統合がさらに拡大する可能性は、日韓双方が政治的緊張に懲罰的な貿易措置で対応することをためらわせるきっかけになるだろう。 世界のGDPの約30%を占めるRCEP加盟15カ国の中でも、日本と韓国は特に恩恵を受けるとみられる。その大きな理由は、互いの経済へのアクセス拡大だ。 経済学者のピーター・ペトリとマイケル・プラマーの予測によると、RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる。 2017年1月にアメリカがTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱した後、日本はより野心的な貿易や投資のルールを盛り込もうと取り組んだ。さらには包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP、いわゆるTPP11)を実質的に先導してきた。韓国はCPTPPに加盟していないが、日本がアメリカ抜きでも協定を推進してきた理由と同じ視点から、加盟に関心を示している。より安定した日韓関係は、日中韓FTAの今後の可能性と同様に、CPTPPへの加盟についても韓国を後押しするはずだ』、「RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる」、「2030年までに1%増加」とは意外に少ないようだ。
・『中国との交渉で協調も  中国はRCEPの締結が、近年停滞している日中韓FTAの交渉を結実させる機運になると期待している。ただし、日本と韓国は、それぞれ中国との交渉で同じ懸念を抱いている可能性が高い。 韓国は既に中国と貿易協定を結んでいるが、貿易の自由化に対する中国の遅々とした漸進的なアプローチのせいで、その範囲はかなり限定的だ。同じ問題が日中の貿易交渉の進展も阻んでいる。 知的財産権の保護や、中国の巨大国有企業の輸出を規制するルールなど、中国経済へのアクセスを可能な限り確保することは日韓共通の利益になる。これらの問題について両国が緊密に協力できれば、より大きな成果につながるだろう。 もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない。 大した前進には思えないかもしれない。しかし、日韓関係の緊張が続く今、ほんの少しでも役に立つのではないだろうか』、「知的財産権の保護や、中国の巨大国有企業の輸出を規制するルールなど、中国経済へのアクセスを可能な限り確保することは日韓共通の利益になる。これらの問題について両国が緊密に協力できれば、より大きな成果につながるだろう」、「もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない」、現実的な見方だ。
タグ:RCEP ダイヤモンド・オンライン もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない 中国との交渉で協調も 「2030年までに1%増加」とは意外に少ないようだ RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる 東アジア地域包括的経済連携への加盟で特に大きな恩恵を受けるのは、歴史問題が経済交渉に影を落とす日韓両国だ 「RCEPが日韓の関係改善を後押し、日韓貿易の83%で関税撤廃へ」 カイル・フェリア Newsweek日本版 わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ 自由貿易推進に向けたわが国の役割期待 RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない RCEPに込められた中国と韓国の思惑 バイデン氏がTPP復帰に言及していない中、RCEPが米国の外交・通商政策とどのような化学反応を起こすかが注目される RCEPの全体像と署名成立の重要性 中長期的に考えた場合、わが国が自力で親日国を増やし経済連携の強化を目指すことが国益に合致する わが国を含め15カ国がRCEP協定に署名 「中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」、日本はどう振る舞うべきか」 真壁昭夫 バイデン次期大統領がどう出てくるか、注目したい 日中韓FTA交渉は、RCEPを上回る付加価値をどれだけ付与できるかが焦点」(外務省) 日中韓自由貿易圏構想 米国とのバランスをどう取るか 中国が次に目指すのは「日中韓自由貿易圏」 「トランプ」は何でも「オバマ」の成果を否定することを優先するの余り、「中国」を結果的に利したとはお粗末だ 脅威だったTPP包囲網を突破できた中国 中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ 世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生、中国はどう見たか 「RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破、米国に対抗する「次の一手」とは」 莫 邦富 (東アジア地域包括的経済連携) (その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ)
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健康(その12)(「赤ワインが健康に良い」という不可思議なブームが終わった理由、やる気が出ない人が疑うべき「ある病気」の正体 「最近TVドラマが退屈になった人」ほど要注意、精神科医が実践 1日誰とも話さなくても心健やかにいられる方法) [生活]

健康については、11月10日に取上げた。今日は、 (その12)(「赤ワインが健康に良い」という不可思議なブームが終わった理由、やる気が出ない人が疑うべき「ある病気」の正体 「最近TVドラマが退屈になった人」ほど要注意、精神科医が実践 1日誰とも話さなくても心健やかにいられる方法)である。

先ずは、11月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したサイエンスライターの川口友万氏による「「赤ワインが健康に良い」という不可思議なブームが終わった理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254663
・『11月19日はボージョレ・ヌーボーの解禁日。かつては赤ワインが健康にいいといわれたものだが、最近はすっかり耳にしなくなった。百薬の長ともいわれるお酒だが、実際はどうなのだろうか。本当に適量を飲めば健康になるのだろうか。ワインと健康の関係を最新の研究から紹介する』、世間ではまだ誤解も強いので、スッキリ晴らしてもらいたいものだ。
・『赤ワインを飲めば心臓病の予防になる?  今年もボージョレ・ヌーボーの季節がやってきた。日本への輸出が始まったのは1985年。時差の関係から欧米よりも早く解禁日を迎える日本では、輸出開始とバブル期が重なったこともあり、空前のお祭り騒ぎとなった。 ボージョレ・ヌーボーブームに続いて赤ワインが健康にいいと言われ始め、中高年男性諸氏がこぞって赤ワインを飲み始めたのが90年代のことだ。忘れている方のために復習するとブームの始まりは「フレンチ・パラドックス」からだった。 フランス人は乳製品をよく食べる。国際酪農連盟日本国内委員会(JIDF)の「世界の酪農情況2019」によると、フランス人の1人あたりチーズ消費量は年間26.5キロで世界第2位(1位はデンマークで28.9キロ)。日本は2.84キロなので、10倍近い差がある。 チーズや肉には飽和脂肪酸が含まれており、LDLコレステロールを細胞が処理する邪魔をする。LDLコレステロールは悪玉コレステロールといわれ、血中に増えると酸化して過酸化脂質になる。そして血管壁にへばりつき、血管細胞の細胞膜を劣化させて動脈硬化を引き起こす。 血液の中のLDLコレステロールは細胞が吸収して血中量を調整している。飽和脂肪酸が増えると細胞はLDLコレステロールを吸収できなくなり、血中に増加、動脈硬化が始まり、生活習慣病のリスクが跳ね上がる(なお不飽和脂肪酸がLDLコレステロールの材料というのは間違いだ)。 フランス人の血中LDLコレステロール量はアメリカ人やイギリス人と変わらないのに、なぜか虚血性心疾患(いわゆる心臓まひ)での死亡率が圧倒的に低い。 1987年の人口10万人あたりの虚血性心疾患による死亡率を見ると、イギリスやデンマークなど欧州各国が軒並み200人を超えており、これを乳脂肪の摂取量と関連づけるとキレイな直線に並ぶ。乳脂肪(チーズなど乳製品)を取る国ほど死亡率は高く、乳製品をあまり食べないスペインやポルトガルは低い。ところがフランスだけがこの直線から外れるのだ。 フランスの乳脂肪摂取量はドイツをやや上回る。ところが虚血性心疾患で死ぬドイツ人は10万人あたり約160人だが、フランス人は約60人と圧倒的に少ない。同じ量の乳製品を食べ、血中LDLコレステロールも同じなのに、フランス人は他国の3分の1しか心臓まひにならない。これがフレンチ・パラドックスである。 その理由が赤ワインじゃないかという。国際ブドウ・ワイン機構によると2015年の1人あたりのワイン消費量のトップはポルトガルで54L、ついでフランスが51.8L、イタリアが41.5L。乳脂肪摂取量と虚血性心疾患の死亡率にワイン消費量を加えて補正すると、これが見事に直線上に並ぶ。ワインを飲む国ほど虚血性心疾患の死亡率が低いのだ。 この情報が日本に上陸、赤ワインブームを巻き起こしたわけだ』、「フレンチ・パラドックス」については、初めて知ったが、確かに不思議だ。
・『フレンチ・パラドックスの原因はいまだ解明されてない  なぜ赤ワインが虚血性心疾患を防ぐのか? 赤ワインの赤い色はブドウの種や皮に含まれるポリフェノールという色素の働きだとされた。ポリフェノールには抗酸化作用があるため、LDLコレステロールが酸化して過酸化脂質になるのを防ぎ、動脈硬化を引き起こす率を下げるという。 レスター王立病院のサイモン・マクスウェル医学博士らが1994年、学生にワインを飲ませ、血液中の抗酸化度を測った実験では6時間以上にわたり、抗酸化作用が持続した。さらに、同じく1994年に国立健康・栄養研究所の近藤和雄・臨床栄養部臨床栄養指導室長(当時)らが行った実験では、被験者にワイン500mlを2週間飲んでもらったところ、血中の酸化LDLコレステロールが有意に減少した。LDLコレステロールが酸化するまでの時間が延びていることもわかった。 また、山梨大学ワイン科学研究センターでも1996年に佐藤充克客員教授が、活性酸素(体内で発生する強力な酸素分子で細胞を破壊し、老化の一因とされる)の量と赤ワインのポリフェノールの量に明らかな関係があり、ポリフェノールを加えると活性酸素系での活性酸素が減ることを世界に先駆けて確認した。 こうした数々の実験結果などから疑う余地がないかに見えた赤ワインの効果だが、アバディーン大学・ローワン健康栄養研究所の化学者メアリー・ベリッツイらが、1970~1987年にさかのぼり、虚血性心疾患の死亡率とワイン消費量の関係を調べたところ、関係ないことがわかった。フランスではこの期間にワイン消費量が大幅に低下したが、虚血性心疾患の死亡率に変化がなかったのだ。 このため、ベリッツイらは、赤ワインではなくビタミンEに含まれるα-トコフェロールの消費量の多さが虚血性心疾患を抑えているのではないかという「ヨーロッパ・パラドックス」を主張している。 そうなるとα-トコフェロールの摂取量が少ない日本人の虚血性心疾患の死亡率が低いのはなぜかという新たな疑問も起きる。「ジャパニーズパラドックスではないか」などの声も上がっているが、いずれにせよ、何が正しいのかはいまだ解明されていない』、「化学者メアリー・ベリッツイらが、1970~1987年にさかのぼり、虚血性心疾患の死亡率とワイン消費量の関係を調べたところ、関係ないことがわかった」、「ベリッツイらは、赤ワインではなくビタミンEに含まれるα-トコフェロールの消費量の多さが虚血性心疾患を抑えているのではないかという「ヨーロッパ・パラドックス」を主張している。 そうなるとα-トコフェロールの摂取量が少ない日本人の虚血性心疾患の死亡率が低いのはなぜかという新たな疑問も起きる。「ジャパニーズパラドックスではないか」などの声も上がっているが、いずれにせよ、何が正しいのかはいまだ解明されていない」、確かに考えるほど不思議だ。
・『赤ワインも白ワインも抗酸化力は変わらない  さらにややこしいことに「白ワインの方が体にいい」という説まで出てきた。これまではポリフェノールの抗酸化作用が健康に役立つと考えられていたため、ポリフェノールが少ない白ワインは健康に関係しないと思われていた。 ところが1998年に新潟県立看護短期大学の石沢信人研究員らが赤ワインと白ワインの抗酸化力を比較したところ、両者に差はなく、むしろ一部の白ワインは赤ワインを上回る値を示した。 ポリフェノールの量自体は赤ワインが1100~2900mg/Lに対して、白ワインは250~340mg/Lと大きく異なるが抗酸化力は変わらない理由はポリフェノールの分子サイズにあるようだ。 山梨大学ワイン科学研究センターによると白ワインのポリフェノールは分子構造が小さいため、細胞の吸収率が高いという。ポリフェノールの量が少なくても白ワインに高い抗酸化力があるのはそのためのようだ。 なお、赤ワインにはポリフェノール以外にも、レスベラトロールという物質が10mg/L程度含まれている。一部の研究によれば、この物質には寿命延長作用があるらしいとの報告もある。酵母菌や線虫、小魚などで寿命延長効果が発見され、2008年には高脂肪食を食べさせたマウスにレスベラトロールを与えると普通のマウスと同じ期間生きることがわかったというのだ。 とはいえ、赤ワインを飲めば寿命が延びると喜ぶのは早計だ。 山梨大学ワイン科学研究センター客員教授の佐藤充克氏は『ポリフェノールと健康について』という文章でレスベラトロールに触れ、人間が赤ワインで必要な量のレスベラトロールを取ろうとすると1日1L以上になり、アルコールによって寿命が縮まると書いている。 結局のところ、赤ワインには抗酸化作用もあるし、もしかしたら寿命を延ばす効果もあるかもしれない。しかし、赤ワインを飲むだけでは心臓病の予防にはつながらないということだ。おそらく赤ワインを含むフランスの食事や生活習慣が作用しあって、フランス人の虚血性心疾患を抑えているのではないか。 飽和脂肪酸の原因としてやり玉に挙げられた乳製品にしても、厚生労働省の大規模調査では、乳製品のカルシウムをたくさん取った人は脳卒中、脳梗塞などの発症リスクが低下することもわかっている。単純に1つの食べ物を取り上げて、体に良い悪いとは言い切れないのだ。 栄養素は複雑に絡み合って体に影響する。「○○だけ飲めば健康になる」という話は眉に唾して聞いた方がいい。赤ワインによる健康ブームが過去のこととなったのは、多くの人たちがそれに気づいたからだろうか。今年はそんなことを考えつつ、ボージョレ・ヌーボーを抜栓したい』、「栄養素は複雑に絡み合って体に影響する。「○○だけ飲めば健康になる」という話は眉に唾して聞いた方がいい」、「赤ワイン」「白ワイン」ともおいしければいいのではなかろうか。

次に、12月14日付け東洋経済オンラインが掲載したメモリークリニックお茶の水理事長・院長の朝田 隆氏による「やる気が出ない人が疑うべき「ある病気」の正体 「最近TVドラマが退屈になった人」ほど要注意」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/392736
・『歳を取ると、「物忘れ」や「めんどうくさいと思うこと」が増えてくるもの。その原因は単に年齢によるものの場合もありますが、人によっては「ある病気の前触れ」である場合も。以前よりもやる気を出しづらくなった人を襲う病とは? 医学博士の朝田隆氏による新書『認知症グレーゾーン』より一部抜粋・再構成してお届けします。 最近、どうも人の名前や物の名前がすっと出てこないなぁ。そう感じている50代、60代の方は多いのではないでしょうか。もしかしたら、ご夫婦で会話をしているとき、次のような場面が増えているかもしれません。 本人:そういえば、前に新宿で会ったあの人、海外に転勤になったらしいよ。 奥さん:誰のことです? 本人:ほら、新宿のデパートで会った、あの人だよ、お前もよく知っているあの人! 奥さん:あの人って言われてもわかりませんよ』、私も「人の名前や物の名前がすっと出てこないなぁ」、と悩まされている。
・『「ど忘れ=認知症」というわけではない  本人としては、それが誰かわかっていて、頭の中ではちゃんと顔も浮かんでいます。その人には子どもが2人いて、ネコを飼っていることもわかっている。でも、どうしても名前だけが出てこない。 このような、いわゆる「ど忘れ」は50代、60代にもなれば、誰でも起こってくるものです。頭の中に記憶は残っているものの、どうしても名前をうまく引き出せない、もどかしい、といった感じでしょうか。同じように、物の名前も出てこなくなりがちです。それでついつい、人の名前も、物の名前も全部、「あれ」とか「これ」で済ませてしまうようになるのです。 人や物の名前だけではありません。時系列、つまり出来事の順番を間違えたり、混乱したりする場面も増えてきてはいないでしょうか。たとえば、自分の子どもが結婚した順番や、孫の生まれた順番を間違えるケースがよくあります。子どもは必ずしも年の順に結婚するわけではないですし、結婚した順に孫が生まれるわけでもありません。孫の年齢が近かったりすると、どこの孫が最初に生まれて、2番目、3番目は誰で、といった時系列が混乱しがちです。 それでも、子どもの結婚や孫の誕生というのは、人生において一大イベントです。覚えていて当然なのに、最近どうもあやしくなってきた。 なんか、ど忘れが増えてきたなぁ。まさか、これって認知症じゃないよな」 そんな不安を感じている人も少なくないのではないでしょうか。ですが、このレベルのもの忘れであれば、まだ認知症ではありません。認知症になると、子どもが結婚したことや孫が生まれたこと、そのエピソード自体を丸ごと忘れてしまうからです。 「なんだ、じゃあ自分のど忘れは単なる年のせいか」 そんなふうに安心するのもちょっと待ってください。もしかしたら、そのど忘れは認知症の前段階である「MCI(軽度認知障害)」の初期症状かもしれないからです。 MCIというのは認知症につながるプロセスの期間で、言うなればグレーゾーンの段階です。その初期症状が出てきたということは、認知症に向かってカウントダウンが始まったと言っていいでしょう。MCIが始まってから本格的な認知症に移行するまで、平均7年と言われています。 とはいえ、進行の度合いには個人差があり、1年後に12%、4年後には約50%が認知症を発症するとも言われています。その一方で、この段階で気づき、適切な対応がなされれば、健常な状態に戻ることもできるのです。 本記事では、一般の方にもわかりやすいように、MCIのことを健常と認知症の間の状態という意味で「認知症グレーゾーン」と表現することにします』、私の場合は、「MCI」が30年近く続いていることになる。「適切な対応がなされれば」、どうすればいいのだろう。
・『「めんどうくさい」はとても危険な兆候  認知症グレーゾーンの人には、固有名詞が出てこない、時系列が混乱するといったこと以外に、もう一つ特徴的な変化が見られます。それは気力の減退です。 今まで当たり前のようにきちんとやっていたことを、なんでも「めんどうくさい」と感じるようになり、「次でいいか」と考えてサボったり、先送りしたりするようになる。もともとそういう性格の人は別として、50代、60代で急に「めんどうくさい」「今度でいいか」が増えてくることは、実はとても危険な兆候です。 認知症は記憶が失われてしまう病気ですが、その入り口は“やる気”が失われることから始まります。この時期がまさに認知症グレーゾーンの初期段階で、そのまま放っておけば、認知症に向かって一直線に進んでしまいます。 もちろん、40〜50代になると、体力的にも精神的にも衰えてきます。一方で仕事は忙しく、子どもの進路や親の介護の問題なども出てくる時期ですから、めんどうくさい気持ちは起こりやすくなります。 しかし、通常は疲れやストレスの原因が一段落したり、休養を十分に取ったりすると、気力・体力は回復します。一方、認知症グレーゾーンの特徴として見られる無気力は、もっと病的なものです。 たとえば、長年続けていた趣味を、急にやらなくなった、というのは要注意です。あくまで、長年というところが肝心で、去年から始めたとか、定年後に人からすすめられて渋々始めたものをやめたのであれば、さほど心配はいりません。 一方、20年も続けて師範にもなっていた生け花をあっさりやめてしまったり、日曜日になると毎回早起きをして出かけていた釣りに、ぱったり行かなくなったり、長年大切に育ててきた庭のバラがすっかり枯れてしまっても、水をやろうともしない。そんな変化が見られたら、認知症グレーゾーンの疑いが濃厚です。 認知症の兆候というと、人の名前が出てこないといったもの忘ればかりが注目されますが、「めんどうくさい」に由来する行動上の変化は、記憶力の低下と同じくらい重要なキーワード。もの忘れは周囲が気づきやすいのに対し、「めんどうくさい」はわかりにくい。 わかっても認知症と結び付けて考える人はほとんどいません。ふつうに暮らしているあなたや、あなたの家族の中にも、認知症グレーゾーンが潜んでいる可能性が十分にあるということです』、私もかつては、よくガーデンセンターまでドライブしたものだが、最近はクルマはホコリを被ったままである。やはり「認知症グレーゾーン」にあるようだ。
・『「TVドラマ」がつまらなくなったら要注意  認知症グレーゾーンの時期に見られる「めんどうくさい」は、日常生活のさまざまな場面で表れてきます。たとえば、私が診ている患者さんの中には、「以前はNHKの朝ドラや大河ドラマを欠かさず観ていたのに、最近はつまらなくなって観るのをやめました。でも、歌番組や大相撲は楽しく観ています」と話す方がいらっしゃいます。 連続もののドラマは、3カ月、半年といった一定期間、ストーリーをずっと記憶して追い続けるところに醍醐味があります。毎回ドラマの最後で流れる次回のあらすじを観て、「来週はどんなふうに展開するのだろう」とワクワクし、次の放送時には前回の内容の記憶がぱっと蘇り、新しい展開にのめり込んでいく。 ところが、認知症グレーゾーンになると、先週までのストーリーや、登場人物の役どころや名前をしっかり覚えられなくなったり、覚えておくことがおっくうになったりします。つまり、連続ドラマが面白くなくなるのは、ストーリーがつまらないからではなく、記憶力や気力の低下によって、興味を保ち続けことができなくなることが原因である可能性があるわけです。他方、歌番組なら、自分の記憶に残っている昔の歌が流れてきたら、「わあ、懐かしい」「これ、知っている」ということで楽しめます。 スポーツは、その場の勝ち負けでシンプルに楽しめます。とくに、わずか数分で勝負がつく相撲は、認知症の高齢者の間でも人気があります。私の患者さんの中にも相撲ファンはたくさんいます。テレビ番組の好みが変わったのは、こうしたことが原因かもしれないのです』、私は「TVドラマ」では、日本ものは半沢直樹ぐらいで、あとは欧米ものが中心だ』、「わずか数分で勝負がつく相撲は、認知症の高齢者の間でも人気があります」、その通りだろう。私もさまざまな出来事に好奇心を失わず、このブログも更新していくたい。

第三に、12月14日付けダイヤモンド・オンライン「精神科医が実践、1日誰とも話さなくても心健やかにいられる方法」を紹介しよう
https://diamond.jp/articles/-/256995
・『レビュー  新型コロナウイルスの流行で、突如として始まった在宅勤務。誰とも直接話ができない「ステイホーム」で、予想外にストレスを抱えてしまったという方も多いのではないだろうか。 本書『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』の著者は、現役の精神科医だ。メンタルの専門家である著者でさえも、誰とも口をきかずに過ごしているうちに孤独を強く感じてしまい、「このままではいけない」と危機感を覚えたそうだ。本書は、著者自身が試行錯誤しながら実践し、効果があると感じた対処法を集めたものである。 専門家としての視点からの解説も含まれているが、文体はやわらかく親しみやすい。専門家である著者でもすべてを投げ出したくなったり、疲れたり、コンプレックスを感じたりする。そんな著者が「効果あり」と感じている対処法は、難しいものでも特別なものでもない。紹介されているコツは、どれも気軽に取り入れられそうなものばかりだ。だからこそ、忙しい日常にもすぐに始めることができるだろうと思わせてくれる。 現在のような感染症の流行時だけでなく、今後も在宅ワークが必要になり、ひとりで過ごさなければならない日々が続くことは大いにあり得る。たとえひとりぼっちで1日誰とも話さなくても、心身ともに健やかに過ごしたいものだ。そんな時に、本書の「楽に生きるコツ」は心を落ち着けるヒントをくれることだろう。暗い気持ちになりがちな現在のような状況であっても、肩の力を抜いて穏やかに生きていける、そんな明るい気持ちにさせてくれる一冊だ』、興味深そうだ。
・『本書の要点  (1)ステイホーム以来、1日誰とも話さない日々に孤独を感じてメンタルに不調を訴える人が増加した。本書では、そんな中でも楽に生きるためのコツを精神科医の著者が紹介していく。 (2)朝起きたら日光を浴びて、体内時計を整えるとともに、幸せホルモンの分泌をうながそう。 (3)コインの裏表のように、物事の見え方は見る角度によって変わる。三日坊主も見方を変えれば「経験豊富」だ。 (4)決断力が鈍ったら、ストレスが溜まっているサインだ。好きなことをして自分をリセットし、自分の「オール」を取り戻そう』、特に(2)や(3)を中心に面白そうだ。
・『要約本文  ◆ステイホームで増加した、孤独を感じる人々 ◇1日誰とも話さなくても、楽に生きていく  2020年、新型コロナウイルスの流行の影響を受けて、これまでは精神科とは縁遠かった人たちの受診が急増している。特に、「ステイホーム」が叫ばれ出してからは、ひとり暮らしの人の受診が目立って多くなっているのだという。突然自宅待機でリモートワークを強いられ、あらゆる行動が制限されている中で、大きなストレスを感じたのだろう。特に一人暮らしの人は、誰かと直接言葉を交わす機会のない日々で孤独を感じやすかったに違いない。メンタル専門の現役精神科医である著者ですら、誰とも面と向かって話をしていない日々を続けているうちに、毎日がつまらなく感じ、空っぽで虚しく、叫び出したくなる気持ちになったのだという。 私たちはこれからもウイルスと共存していかなければならず、また災害などの感染症以外の理由で、今後も「巣ごもり」状態を強いられる可能性がないとも限らない。しかし、そんな状況であっても、人生に絶望しないですむ方法はあるはずだ。そう考えた著者は、1日誰とも話さなくとも猫のように楽に生きていくためのコツを本書に集めた。著者が実際に試して効くと感じた方法ばかりだ。5つのステップにわけて紹介されているコツのうち、本要約では一部を扱う。 ◆ひとりぼっちな1日を楽しむための朝の過ごし方  ◇起きたら何時でも、カーテンを開ける(朝でも昼でも、目が覚めたらとにかくカーテンを開けよう。太陽の光を部屋いっぱいに取り込めば、人間の体はビタミンDの生成作業を開始する。カルシウムの吸収を助けて骨を強くするほか、免疫力を高めて風邪やがんの予防効果が期待できる。) さらに、太陽光を浴びることで、体内時計を調整することができる。体温やホルモン分泌などの調整をになう体内時計(概日リズム)は、1日およそ25時間のサイクルになっている。私たちの体は日光を浴びることでこれを調整している。そのため、日の光を浴びない生活をしていると、半月もしないうちに昼夜が逆転してしまうことになる。 また、太陽光は「幸せホルモン」のひとつであるセロトニンの分泌をうながす。ストレスホルモンの抑止力があり、心のバランスを整える作用もある。 日が沈むと、セロトニンはメラトニンという睡眠ホルモンに変化する。昼のうちにたくさんセロトニンが出れば、夜にたくさんメラトニンができて、ぐっすり眠ることができる。起きたら、とにもかくにもカーテンを開けよう』、「体内時計」は知っていたが、「ビタミンDの生成作業を開始・・・免疫力を高めて風邪やがんの予防効果が期待」、「セロトニンの分泌をうながす。ストレスホルモンの抑止力があり、心のバランスを整える作用も」、などこ効果もあるとは初めて知った。
・『◇朝の「ブルーライト」は魔法の光(朝、スッキリと起きられず、困っている人は多いものだ。頭がボーッとしてなかなか起き出せないのは、体が「もっと寝させて」と訴えているからである。これは専門用語で「睡眠慣性」と呼ばれ、肉体的疲労やストレス、もしくはその両方で心身に疲労がたまっている時に感じやすくなる。 カーテンを開けるために窓に行くことすらできない、そんな朝にはリモコンやスマホを使って、自室を「長距離フライトの飛行機の中」のような状態にしてしまおう。飛行機の中は、寝る時間になると暗くなり、起きる時間には明るくなる。朝になると乗客が起き出して朝食が用意され、次第にあたりはガヤガヤし始める。これと似た状況を部屋の中に作り出すのだ。 起きたら手を伸ばしてテレビと照明のリモコンをオンにする。光を浴びながらテレビの音を聞いていると、だんだん目が覚めていくはずだ。 著者の知人の多忙なITエンジニアは、短時間睡眠の際はスマホを利用して起きているのだという。スマホから出るブルーライトは強烈で、脳を一気に覚醒させるほどの力がある。朝のアラームが鳴ったら、スマホを手に取りニュースを読む。すると、短時間しか寝ていなくても案外すんなりと起きられるそうだ』、「スマホから出るブルーライトは強烈で、脳を一気に覚醒させるほどの力がある」、初めて知った。目ざめが悪い時にはよさそうだ。
・『◆クタクタの自分を甘く優しくケアする方法  ◇疲れた時の「ご褒美タイム」  世間の荒波に揉まれて、クタクタに疲れてしまったら、迷わず自分を甘やかしてあげよう。ここでは、自分をいたわるためのセルフケアについて紹介する。 「頑張っているのに報われない」「最近ツイてないなあ……」と感じたら、「ご褒美タイム」を取り入れてみよう。スイーツ、アロマ、ハーブティー、買い物など、自分が癒され、ご機嫌になれるなら何でもいい。「ご褒美タイム」の活用で負のオーラを撃退できる。 ちなみに、疲れた時にスイーツに手が伸びがちになるのには、理由がある。スイーツに含まれる糖質は、脳を刺激して、「幸せホルモン」であるセロトニンなどの神経伝達物質を分泌させる。また、疲れてくると血糖値が下がり、脳がすぐにエネルギー源になる糖分を欲する。だから、疲れた時に、甘いものはもってこいなのだ。 ご褒美は頑張る大人の特権だ。疲れた時は存分に自分を甘やかしてあげよう』、私は比較的自分に厳しい方だが、「スイーツに含まれる糖質は、脳を刺激して、「幸せホルモン」であるセロトニンなどの神経伝達物質を分泌させる。また、疲れてくると血糖値が下がり、脳がすぐにエネルギー源になる糖分を欲する。だから、疲れた時に、甘いものはもってこいなのだ」、太らない程度に、甘やかすことにした。
・『◇ハードな大学病院勤務を乗り切った、「膝をよしよし」(優雅に見えるかもしれないが、医者という職業は過酷である。何十時間もの長時間労働に加えて、人の命がかかっているから指導医の先生からの容赦のないお叱りも当たり前だ。医者の世界は体育会系だ。疲労が蓄積してくればすべてが嫌になってしまうし、理不尽に他人のストレスのはけ口にされれば爆発しそうにもなる。 大学病院での精神科医1年目の時に、著者が同僚から教えてもらった自分をケアする技が「膝をよしよし」だ。まず、椅子に座ったままの姿勢や体育座りで、膝頭を手のひらで10秒ほどゆっくり撫でる。膝がじんわりと温かくなり、手のひらにぬくもりが伝わってくるだろう。そうしたら、次はふくらはぎを足先から心臓のほうへやさしく撫で上げよう。心地よさを感じてきたら「幸せホルモン」のオキシトシンが出ている証拠だ。 この方法は「スージングタッチ」と呼ばれ、自分のぬくもりで自分を癒すセルフケアとして注目を浴びている。撫でる部位は膝でなくても、自分がしっくりくる部位で構わない。 著者はこれをやりながら、同僚と一緒に大学病院勤務を乗り切ったのだという。疲れ切ってしまった時、ぜひお試しいただきたい』、簡単な「膝をよしよし」にも想像以上の効果がありそうなので、早速やってみたい。
・『◆明るい未来を掴む思考法  ◇「良いぞ!?」で物事を別の角度から見る(結婚式を控えたある女性は、この春の挙式に向けて1年も前から入念に準備をしてきた。しかし、折り悪くコロナウイルスの蔓延によって、無期延期を余儀なくされた。女性は放心状態になり、号泣していた。) そんな彼女に、父親は笑顔で声をかけた。「そうか、そうか。マキちゃん、これは、良いぞ!?」と。父親はさらに「マキちゃん、楽しみがずっと続くな。ずっと花嫁の父でいられるから、お父さんも嬉しいな。良いぞ!?」と続けた。 物事には必ず「陰と陽」がある。同じコインでも見る角度によって裏にも表にもなるように、同じ出来事も見方や受け取り方によって、良くも悪くもなる。 著者に披露宴の延期を伝えてくれた時の彼女は、笑顔だった。実はダイエットが間に合っていなかったのだという彼女は、来年の挙式までにキレイに痩せると決意したようだ。こうして、本番前の楽しい時間が続くことになった。「良いぞ!?」はハッピーが続くおまじないだ』、「父親」の機転の利いた言葉には感服した。
・『◇飽きっぽさも、見方を変えれば「経験豊富」(小学生の頃からめんどくさがり屋な著者は、夏休みの宿題は休みが終わるギリギリに焦って帳尻を合わせるタイプだった。面倒なことは気合いを入れないと手がつかないのに、興味を持ったことには何でもすぐに手を出したがるたちでもある。漫画を描くことやギター、将棋、囲碁、ランニングなど、いろいろやってはすぐに挫折してきた。 何をやっても長続きしないということが、著者にとっては長年コンプレックスだった。自分は挫折だらけだと思っていたが、ある時、人から「『経験豊富』なのね」と言われて驚いた。 飽きっぽくていつも計画倒れに終わる自分。そんな自分も考えようによっては「あれこれやったことのある経験豊富な自分」になる。 考え方を変えた今では、開き直って少しでも興味のあることにはどんどんチャレンジすることにしている。たとえそれをものにすることができなかったとしても、気軽に凹んで、気軽にチャレンジすればいい。そう考えたら、著者は生きることがずっと楽になったのだという』、「飽きっぽくていつも計画倒れに終わる自分。そんな自分も考えようによっては「あれこれやったことのある経験豊富な自分」になる。 考え方を変えた今では、開き直って少しでも興味のあることにはどんどんチャレンジすることにしている」、確かに「気軽に凹んで、気軽にチャレンジすればいい。そう考えたら、著者は生きることがずっと楽になった」、考え方を転換するのも人生の知恵だ。
・『【必読ポイント!】  ◇人生をゆったり楽に生きる方法(◆決断力が鈍ったら、自分の「好き」を思い出す(「人生は選択の連続である」はシェイクスピアの名言だ。ある日のお昼時、診療の合間を縫って駆け込んだコンビニで、著者は「うどんか蕎麦か、それが問題だ」とばかりに時間を費やして悩んでいた。) そこに颯爽と現れたスーツ姿の男性がいた。悩む著者の脇をすり抜け、男性はサッと冷やし中華に手を伸ばし、去っていった。決断力と自信にあふれた背中を見送った後、著者は気づけば冷やし中華を手にレジへ向かっていた。 たかが昼飯なのだから、好きなものを食べれば良いはずだ。そう思っていても、決められないことがある。こういうことは、自分の道を見失っている時に起きやすいのではないだろうか。自分を見失っている時には決断に迷いがない人が眩しく見えてしまう。この日の著者の目には、冷やし中華を選んだ男性がそう映ったのだろう。 著者は、決断力が鈍ってしまうのは自分を見失っているサインだと捉えることにしている。この状態を解決するためには、「自分に正直であろう」と思い直すことだ。そんな時にこそ少しでも現実を忘れる時間を取るのだ。著者の場合はカブトムシの世話であるが、「こういうことをしている自分が楽しい」という気持ちを思い出せたら、自分の人生の「オール」を取り戻すことができる』、「決断力が鈍ってしまうのは自分を見失っているサインだと捉えることにしている。この状態を解決するためには、「自分に正直であろう」と思い直すことだ・・・「こういうことをしている自分が楽しい」という気持ちを思い出せたら、自分の人生の「オール」を取り戻すことができる」、なるほど。
・『◇迷いも苦しみも全部「気のせい」にしてしまう(ストレスの多い現代社会では、気づかないうちにいろんなものを溜め込んでしまいがちだ。いっぱいいっぱいになって、「もういっそ、すべてを手放してスッキリしたい!」という心の叫びが、昨今の断捨離や禅修行ブームとなって表れているのかもしれない。 著者が勤める病院では、レクリエーションとして書道やペン習字ができる。写経が一番好きという患者さんに聞いた話では、たった262文字の般若心経は「生きるも死ぬも気のせい」という意味だそうだ。般若心経の意味を聞き、著者は「つまり、すべて気のせい」というふうに理解した。気のせいなら、悩んでも仕方がないという気持ちになる。 般若心経のような教えがあるということは、みんな同じで、同じ悩みを抱えているということだ。私たちはひとりだが、決してひとりぼっちではないのである』、「般若心経は「生きるも死ぬも気のせい」という意味だそうだ・・・気のせいなら、悩んでも仕方がないという気持ちになる」、確かにその通りだが、現実にはその割り切りは難しいようだ。
・『▽一読のすすめ  精神科受診の増加が示すように、コロナショックによって突然始まった自宅待機やリモートワークは、私たちに予想以上のストレスを与えているようだ。今、「なんとなく疲れた」と感じている人にとって、本書は元気を取り戻すための処方箋になることだろう。メンタルの専門家である著者が紹介しているものでありながら、普段使いできる技の数々は、読んだ人の生活を上向きにしてくれるに違いない。これからも続きそうな自宅中心の生活のストレスに悩んでいる方には、ぜひ本書を手にとっていただきたい。きっと、不安が軽くなることだろう。 評点以下は省略』、なかなか有用なアドバイスが満載で、読みでがあるいい記事だった。
タグ:(4)決断力が鈍ったら、ストレスが溜まっているサインだ。好きなことをして自分をリセットし、自分の「オール」を取り戻そう こういうことをしている自分が楽しい」という気持ちを思い出せたら、自分の人生の「オール」を取り戻すことができる スイーツに含まれる糖質は、脳を刺激して、「幸せホルモン」であるセロトニンなどの神経伝達物質を分泌させる。また、疲れてくると血糖値が下がり、脳がすぐにエネルギー源になる糖分を欲する。だから、疲れた時に、甘いものはもってこいなのだ 健康 ベリッツイらは、赤ワインではなくビタミンEに含まれるα-トコフェロールの消費量の多さが虚血性心疾患を抑えているのではないかという「ヨーロッパ・パラドックス」を主張している。 そうなるとα-トコフェロールの摂取量が少ない日本人の虚血性心疾患の死亡率が低いのはなぜかという新たな疑問も起きる。「ジャパニーズパラドックスではないか」などの声も上がっているが、いずれにせよ、何が正しいのかはいまだ解明されていない 化学者メアリー・ベリッツイらが、1970~1987年にさかのぼり、虚血性心疾患の死亡率とワイン消費量の関係を調べたところ、関係ないことがわかった フレンチ・パラドックスの原因はいまだ解明されてない フランス人の血中LDLコレステロール量はアメリカ人やイギリス人と変わらないのに、なぜか虚血性心疾患(いわゆる心臓まひ)での死亡率が圧倒的に低い 認知症グレーゾーン フレンチ・パラドックス ビタミンDの生成作業を開始 なかなか有用なアドバイスが満載で、読みでがあるいい記事だった 東洋経済オンライン 「やる気が出ない人が疑うべき「ある病気」の正体 「最近TVドラマが退屈になった人」ほど要注意」 本書の要点 めんどうくさい」はとても危険な兆候 「「赤ワインが健康に良い」という不可思議なブームが終わった理由」 (3)コインの裏表のように、物事の見え方は見る角度によって変わる。三日坊主も見方を変えれば「経験豊富」だ ダイヤモンド・オンライン 川口友万 起きたら何時でも、カーテンを開ける ひとりぼっちな1日を楽しむための朝の過ごし方 1日誰とも話さなくても、楽に生きていく 朝の「ブルーライト」は魔法の光 疲れた時の「ご褒美タイム」 「良いぞ!?」で物事を別の角度から見る 自分に正直であろう」と思い直すことだ 迷いも苦しみも全部「気のせい」にしてしまう 明るい未来を掴む思考法 気軽に凹んで、気軽にチャレンジすればいい。そう考えたら、著者は生きることがずっと楽になった 私の場合は、「MCI」が30年近く続いていることになる。「適切な対応がなされれば」、どうすればいいのだろう ハードな大学病院勤務を乗り切った、「膝をよしよし」 セロトニンの分泌をうながす。ストレスホルモンの抑止力があり、心のバランスを整える作用も」、などこ効果もあるとは初めて知った 朝田 隆 「楽に生きるコツ」 クタクタの自分を甘く優しくケアする方法 「精神科医が実践、1日誰とも話さなくても心健やかにいられる方法」 疫力を高めて風邪やがんの予防効果が期待 レビュー 赤ワインを飲めば心臓病の予防になる? 飽きっぽくていつも計画倒れに終わる自分。そんな自分も考えようによっては「あれこれやったことのある経験豊富な自分」になる。 考え方を変えた今では、開き直って少しでも興味のあることにはどんどんチャレンジすることにしている 人生をゆったり楽に生きる方法 「TVドラマ」がつまらなくなったら要注意 飽きっぽさも、見方を変えれば「経験豊富」 【必読ポイント!】 「ど忘れ=認知症」というわけではない ◆決断力が鈍ったら、自分の「好き」を思い出す ステイホームで増加した、孤独を感じる人々 要約本文 私も「人の名前や物の名前がすっと出てこないなぁ」、と悩まされている (2)朝起きたら日光を浴びて、体内時計を整えるとともに、幸せホルモンの分泌をうながそう。 (1)ステイホーム以来、1日誰とも話さない日々に孤独を感じてメンタルに不調を訴える人が増加した。本書では、そんな中でも楽に生きるためのコツを精神科医の著者が紹介していく。 赤ワインも白ワインも抗酸化力は変わらない (その12)(「赤ワインが健康に良い」という不可思議なブームが終わった理由、やる気が出ない人が疑うべき「ある病気」の正体 「最近TVドラマが退屈になった人」ほど要注意、精神科医が実践 1日誰とも話さなくても心健やかにいられる方法)
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環境問題(その8)(政府が「2030年ガソリン車禁止」を打ち出した訳 方針急転換でメーカーの戦略修正は必須に、「2030年ガソリン車禁止」政府が探る落とし所 政府基本案のたたき台から読めた日本の方針、「水素」「EV」で急速に国策が動き出したワケ 橘川教授が語る「日本版脱炭素化の見取り図」) [世界情勢]

環境問題については、10月20日に取上げた。今日は、(その8)(政府が「2030年ガソリン車禁止」を打ち出した訳 方針急転換でメーカーの戦略修正は必須に、「2030年ガソリン車禁止」政府が探る落とし所 政府基本案のたたき台から読めた日本の方針、「水素」「EV」で急速に国策が動き出したワケ 橘川教授が語る「日本版脱炭素化の見取り図」)である。

先ずは、12月8日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの桃田 健史氏による「政府が「2030年ガソリン車禁止」を打ち出した訳 方針急転換でメーカーの戦略修正は必須に」を紹介しよう。
・『-2030年前半、ガソリン車販売禁止- 日本人にとって衝撃的なニュースが、2020年12月3日に流れた。これは、政府が進める「2050年カーボンニュートラル」の一環だ。 しかし、これは政府が正式に発表したものではなく、先に開催された第5回成長戦略会議を受けて、経済産業省を中心とした自動車産業変革の施策の一部がメディアに漏れたというのが事実のようだ。 2030年前半ではなく「半ば」をめどとするとの情報もあり、それについて小泉進次郎環境大臣が閣議後の会見で「2035年と明記するべき」という持論を述べている。 どちらにしても、日本が世界の潮流に乗って、自動車の電動化に関する規制強化を加速させていくことに間違いはないだろう。 海外での電動車関連の規定では、1990年施行のアメリカ・カリフォルニア州ZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法)における「2035年までにICE(内燃機関車)新車販売禁止」を筆頭に、中国のNEV(新エネルギー車)政策、そしてCO2規制を念頭としたヨーロッパ各国でも電動車シフト政策がある』、「2030年前半、ガソリン車販売禁止」のニュースには、いきなりだったこともあって驚かされた。
・『「達成目標」から「義務」へ  日本の電動車を含む次世代車の普及目標については、経済産業省が2018年に産学官の有識者による自動車新時代戦略会議として取りまとめている。 それによると、2030年は従来車(ガソリン車、ディーゼル車)が市場全体の30~50%。残りの50~70%が次世代車となっている。 次世代車の内訳は、市場全体の30~40%がHV(ハイブリッド車)、20~30%がEV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)が3%程度、そしてクリーンディーゼル車が5~10%とみる。 ただし、未達の場合でも自動車メーカーにペナルティを課すような規制ではなく、あくまでも達成目標にすぎない。 これに対して、今回進める2035年までのガソリン車廃止を規制として義務化すれば、従来車が完全になくなるため、次世代車の普及台数は一気に倍増する計算だ。 一連の報道では「ガソリン車禁止」という表現が多いが、これはディーセル車を含む内燃機関車を指す可能性が高い。2020年9月にカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事の発言での「インターナルコンバッションエンジン(ICE:内燃機関)」を多くのメディアが日本語で「ガソリン車」と訳したからだ。 では、2018年の達成目標設定を、なぜ今になって規制化する必要があるのか。背景にあるのは、世界的なESG(環境、社会性、ガバナンス)投資の急激な拡大だ。 従来、多くの自動車開発者が描いてきたクルマの電動化の将来像は、ガソリン車やディーゼル車からHV、PHEV、EV……と、搭載する駆動用バッテリーの大きさが徐々に増えていき、最終的には長距離移動向けの究極の次世代車として、FCVに到達するというイメージを描いてきた』、「世界的なESG・・・投資の急激な拡大」は事実としても、いきなり「義務化」とは何か理由があったのだろう。
・『日本政府が電動化対応をしてこなかった訳  その中で、EVの普及を前倒ししたのが、日産だ。2010年市場導入の「リーフ」は、自動車産業史において大手メーカーによる初めての大量生産型EVとなった。 また、フォルクスワーゲングループは、2016年に発表した中期経営計画「トゥギャザー・ストラテジー2025」で、大々的なEVシフトを掲げた。前年に発覚したディーゼル車制御装置の違法によって失墜したブランドイメージを、V字回復させるための事業戦略である。 このほか、世界各国の富裕層に対して、テスラがプレミアムEV市場を拡大していった。こうした各社の電動化戦略に対して、一喜一憂するような対応を日本政府はこれまでとってこなかった。 なぜならば、前述の自動車新時代戦略会議での議論でも、電動化の基盤となるHVの普及比率は、2017年時点で日本が31.6%と、アメリカの4.0%、ドイツの3.0%、フランスの4.8%、タイの2.7%、インドの0.03%と比べて圧倒的に高かったからだ。 ところが、この2年間ほどの間に、ESG投資という文脈で電動化に関する潮流が一気に変わり、そこに各国政府の施策として規制強化につながった。急激な市場変化について警戒する声もある。 スズキの鈴木俊宏社長は新型「ソリオ」のオンライン会見で、筆者からの電動化戦略の現状と今後の方針に関する質問に対して「(ソリオに搭載の)マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、そしてEVへとステップを踏むべきだが、昨今のEV化(の潮流)については、スピードが加速気味かと思う」と答えている。 そのうえで、将来的にはEV化は当然であり、現行車と比べてのコスト上昇、充電インフラ整備や電池の再利用など、社会全体として考えるべき課題として、スズキ社内で冷静な姿勢で協議を進めるべきだとの考えを示した。 さらには、コストメリットを考えて「トヨタから電動化部品の供給を受けて、スズキ独自の電動車開発をする可能性もある」という発言もあった。 また、マツダの丸本明社長にもオンライン会見で、筆者が電動化戦略の今後を聞いたが「国や地域によってエネルギー供給体制など社会背景は大きく違う。それぞれの社会環境にあったソリューションを提供していく」として、マツダが進める各種SKYACTIVユニットの仕向け地別の最適化を強調した』、「HVの普及比率は、2017年時点で日本が31.6%と、アメリカの4.0%、ドイツの3.0%、フランスの4.8%、タイの2.7%、インドの0.03%と比べて圧倒的に高かった」、これにあぐらをかいていたのは事実だ。
・『トヨタの舵取りはいかに?  前出の“従来車”の実情を考えると、スズキのほか、スバルとマツダの電動車比率が低い。これら各社はトヨタとの各領域で協業をすでに行っており、今後はトヨタと電動化における関係が一気に深まりそうだ。 そのトヨタも、2017年12月に「電動車普及のマイルストーン」としてグラフ化しているが、その後に「計画(2017年12月)を上回るペースで電動化が加速」として、計画を前倒ししている。今回の政府による「2030年代での規制強化」に合わせて、同計画のさらなる大幅な前倒しは必須だ。周知の通り、日本の自動車産業界におけるトヨタの発言力と実行力が他メーカーを大きく凌ぐというのが実情である。 トヨタが今期末の決算発表あたりに、大胆な電動車シフト戦略を公表する可能性は十分にあり、それにより日本自動車産業界が全体として大きく電動化シフトに舵を取ることになるのではないだろうか』、さてガリバー「トヨタ」はどう出るのだろうか。

次に、同じ桃田 健史氏による12月12日付け東洋経済オンライン「「2030年ガソリン車禁止」政府が探る落とし所 政府基本案のたたき台から読めた日本の方針」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/395473
・『日本での「クルマの電動化シフト」が今、大きな局面を迎えている。 2020年12月2日、「2030年代半ばメドにガソリン車禁止で政府が最終調整」というニュースが流れ、また12月8日には東京都の小池百合子知事が都議会での代表質問を受けて「2030年に“純ガソリン車”100%禁止」を打ち出した。 このタイミングで、政府による“クルマの電動化シフト”の動きが活発化している背景については、「政府が『2030年ガソリン車禁止』を打ち出した訳」に詳しい。 同記事が公開された2日後の2020年12月10日。経済産業省は、「第3回 モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会」を開催した』、なるほど。
・『「2050年に目指すべき姿」を議論  この中で同省が提示した事務局参考資料では、政府方式が“ほぼ固まった”状態で記載されており、検討会に参加した有識者による“ダメ出し”を踏まえて、年内には正式な政府方針として公表される予定だ。 この参考資料、および事務局資料(議論用)では、議論の目的を「2050年に目指すべき姿」としている。これは、2020年12月1日開催の「第5回成長戦略会議」を受けて公表された2050年カーボンニュートラルを目指した「グリーン成長戦略の実行計画の早期策定」に直結する。 今回、公表された参考資料でも「電動化推進のための取組について」との題目の冒頭、グリーン成長戦略の実行計画について、以下のように下線を引いた記載がある。 カーボンニュートラルを目指す上で不可欠な、水素、自動車・蓄電池、カーボンリサイクル、洋上風力、半導体・情報通信などの分野について、①年限を明確化した目標、②研究開発・実証、③規制改革・標準化などの制度整備、④国際協調などを盛り込んだグリーン成長戦略の実行計画を早期に策定し、関係省庁が一体となって、全政府的に取組を拡大する(本文ママ) ①の年限については、12月初旬の一部報道で「2030年代前半」といわれ、本稿執筆時点(12月11日)では「2030年代半ば」という報道が主流だが、小池都知事の「2030年発言」を受けて、最終的に2030年、または2035年とするのかが自動車産業界にとって、また一般ユーザーにとっても極めて重要なポイントだ。 ③の規制改革等の制度整備については、ゼロベースで新規法案とするのではなく、まずは省エネ法・グリーン購入法・温対法など既存の法律の一部改正によって対応する可能性を示唆している。早期の実効性という意味ではベターチョイスに思える。 市場拡大に向けた補助金制度についても、既存のCEV補助金制度などの改定によって、早期の実効性を担保できるはずだ。そして、④の国際協調という名の世界における“日本の立ち位置”または“東京の立ち位置”をどのように“落とし込むのか”が、大きなポイントとなりそうだ。 資料の中でイギリス、フランス、中国、ドイツ、アメリカ、そして日本それぞれについて「内燃機関の扱い」「電動車義務化」「燃費規制」「乗り入り規制」「BEV/PHEV/FCEV導入目標」という5つの項目で比較一覧としている。 ここで重要なのは「電動車義務化」で、ここには「義務付ける」「規制はなし」という表記があり、中国(NEV規制)とアメリカ・カリフォルニア州(ZEV規制)で「販売を義務化」と分類している点だ』、アメリカ大統領がバイデンに代わることで、アメリカの規制も強化される方向だ。
・『各国政策を踏まえての“落としどころ”  こうした一覧表を改めて眺めていると、年内という短いスパンで日本政府(経済産業省)が方針を取りまとめることを考えると、今回の発表では日本版のZEV規制法やNEV規制法ではなく、イギリス、フランス、ドイツに近い形で、内燃機関の扱いを“2030年、または2035年”とする政策になる可能性が高いと思われる。 イギリスでは、ガソリン車を2030年販売禁止とすると同時にハイブリッド車も2035年販売禁止としているが、日本は直近でハイブリッド車の販売比率が約3割と欧米と比べて高いこともあり、ハイブリッド車以外を考慮した“備考”という“落としどころ”を探ることも考えられる。 また、化石燃料や電気の原材料の採取、製造、使用、廃棄に至るLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の観点についても同資料では強調しており、ここに日本のグリーン成長戦略の特長を持たせることも重要だ。 そのほか、東京都の立ち位置については、同資料の一覧表にある「乗り入れ規制」という項目の判断を応用する形で、政府目標を前提としながら東京都がロンドン、パリ、ベルリンなどと“よきバランス”を取ることが想定される。 こうして今、世間で大きな話題となっている政府による電動化シフト政策だが、現実的な目的はグローバルにおける日本の産業力強化にある。つまり、運輸・電機・エネルギー・ITなどの企業目線での議論が主体だ。 一方で、社会全体を考えた、これからのクルマや交通のあり方を同時に考えていく必要がある。というより、社会全体の動きを優先し、その一部でクルマの電動化を“活用する”ことが、これからの日本を考えるうえでの議論のあるべき姿だと思う』、その通りだ。
・『変わるべきはクルマだけではない  今回の検討会・参考資料では、最初に「移動制約ゼロのための取組について」として、地域交通の現状と今後について紹介している。その次が「電動化」の記載である。 また、検討会の事務局資料(議論用)で、「『世界中の誰もが、便利で快適に、カーボンフリーのモビリティサービスを享受できる社会』を目指すには、以下の2つの変化が重要」として、「社会の変化」と「自動車の変化」を挙げている。 自動車というハードウェア・ソフトウェアについては、技術革新や規制対応などの目標が定まれば、日本がこれまで培ってきた知見や人材をフル活用することが可能であろう。他方、社会の変化については、地域社会の担い手不足や、継続な事業として成立させることの難しさなどあり、政府が目標と定めたからといって順調に社会課題が解決できるとは限らない。 実際、筆者は福井県永平寺町の政策の協議に関わる永平寺町エボリューション大使という立場で、経済産業省の施策「スマートモビリティチャレンジ」や同省および国土交通省による「ラストマイル自動走行」の社会実証や社会実装を主として、国、県、周辺自治体、地元の企業や各種団体、そして住民の皆さんと社会変化について議論を進めているが、社会変化の現状と、これから町として進むべき道に関する情報共有をすることは、とても難しいと実感している。 今、日本で大きく動きだした、クルマの電動化シフト。社会全体の中での電動化のあるべき姿を、国民ひとりひとりが他人事ではなく、“わたくし事”として捉えることが大切だと強く思う』、「国民ひとりひとりが他人事ではなく、“わたくし事”として捉えることが大切だ」、理念的にはその通りだが、判断材料となるデータも示さずに、要求するのは筋違いだ。

第三に、12月11日付け東洋経済オンライン「「水素」「EV」で急速に国策が動き出したワケ 橘川教授が語る「日本版脱炭素化の見取り図」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/395122
・『政府が打ち出した2030年代半ばの純ガソリン車の新車販売禁止方針、水素を燃料とした新エネルギー戦略――。政官財が連動した脱炭素化のニュースが連日のように飛び出している。 脱炭素化や水素戦略が急速に国策化した裏には何があるのか。欧州に遅ればせながら、ようやく日本でも起こりそうなグリーン革命の見取り図はどうなっているのか。関連業界や投資家にとって不可欠な情報を、エネルギー政策に詳しい国際大学大学院の橘川武郎教授に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは橘川氏の回答)』、興味深そうだ。
・『Q:菅義偉首相は10月26日の所信表明演説で、2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル宣言」を行いました。それ以降、脱炭素化に向けて政官財が一気に動き出した感があります。 A:日本がカーボンニュートラル宣言を出したのはギリギリのタイミングだった。すでに中国は2060年までのカーボンニュートラル宣言を出していたし、グリーンニューディール政策を掲げるアメリカ・バイデン政権の誕生が確実になった11月以降に日本が宣言を行っていたら、「世界の後追いだ」と言われて評価されなかっただろう』、「日本がカーボンニュートラル宣言を出したのはギリギリのタイミングだった」、なるほど納得できた。
・『急に動き出した最大の要因は「アンモニア火力発電」  しかもこれが最も重要な部分だが、菅政権は苦しまぎれでカーボンニュートラル宣言を出したのではない。2050年までの実質排出ゼロは単なる絵空事ではない。菅首相の演説の直前、10月13日に火力発電最大手のJERA(東京電力と中部電力の火力発電事業統合会社)がアンモニアを活用して火力発電でも二酸化炭素(CO2)を実質排出させないロードマップを打ち出している。この動きこそが、菅首相のカーボンニュートラル宣言に現実味を持たせ、状況を察知した産業界の多くがどっと動き出す要因になった。 Q:確かに、蓄電池などの技術開発は漸進的でこの間にブレークスルーがあったわけではありません。今回のゲームチェンジャーは、火力発電のカーボンニュートラル化なのですね。 A:そうだ。JERAはすでにNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの受託事業として、アンモニア混焼の火力発電のフィージビリティスタディを行っている。2030年代前半にアンモニアの混焼率を20%程度とし、その後混焼率を拡大させて、2040年代にはアンモニア100%の専焼化に移行、それによってCO2排出をゼロにするというロードマップを打ち出している(アンモニアはNH3のため、燃やしてもCO2を発生しない)。 JERAと同様、水素とCO2を合成してメタンガス(天然ガスの主成分)を作る技術などを活用したカーボンニュートラル構想は昨年11月に東京ガスが発表していた。内閣府が所管する国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)でアンモニア直接燃焼の研究が進められてきたという経緯もある。もともとこの技術はトヨタ自動車発だといわれている。 Q:火力発電がCO2フリー化すると、電力全体の構造はどう変わりますか。 電力の脱炭素化の基盤となるのは、もちろん再生可能エネルギーで、こちらも今後間違いなく拡大する。ただ、再エネの発電は天候や時間帯に左右される。それをバックアップし、安定した電力を供給する調整用電源が必要になる。蓄電池はその候補だが、容量拡大やコストなど技術的課題を突破できる時期は見通せない。火力発電はこれまでも調整用電源を担っていたが、CO2を排出するため、バツが付いていた。しかし、アンモニアの活用により、火力発電はCO2フリーの調整用電源としての裏付けができた。 一部には、菅政権のカーボンニュートラル宣言は原子力発電の復活を狙っているとの声があるが、それは違う。菅政権は依然としてリプレース(建て替え)は行わないなど原発に対しては踏み込んでおらず、逆に火力発電の脱炭素化が実現するなら、CO2を出さない電源としての原発の必要性は薄れる。菅政権は安倍晋三政権時代と同様に原発をそっとしておくつもりだと思う』、「10月13日に火力発電最大手のJERA(東京電力と中部電力の火力発電事業統合会社)がアンモニアを活用して火力発電でも二酸化炭素(CO2)を実質排出させないロードマップを打ち出している。この動きこそが、菅首相のカーボンニュートラル宣言に現実味を持たせ、状況を察知した産業界の多くがどっと動き出す要因になった」、「アンモニアの活用により、火力発電はCO2フリーの調整用電源としての裏付けができた」、これらが技術的根拠になったようだ。
・『CO2の回収・貯留が最大の課題  Q:ただ、脱炭素化で先頭を走る欧州は、再生可能エネルギーで水を電気分解した水素・アンモニアを「グリーン」、天然ガスなど化石燃料から取り出した水素・アンモニアを「ブルー」と呼んで、後者の脱炭素化への効果に懐疑的な声を上げています。天然ガスから水素・アンモニアを作る過程で生じるCO2はどうするのでしょうか。 A:最終的な方向としてはもちろん、日本も再エネ由来の水素・アンモニアになるのだろう。しかし、再エネ価格が大幅に低下し、コストメリットで再エネ導入が進む欧州と、まだまだ再エネのコストメリットが見いだしにくい日本では事情が違う。現在の政府や民間のロードマップを見ても、日本はまず移行期として天然ガス由来の水素・アンモニアを想定している。 この部分は、非常に大きな課題だ。というのも、天然ガスから水素・アンモニアを作るときに発生するCO2を分離回収・貯留するCCS(二酸化炭素回収・貯留)の技術や装置で日本のメーカーは競争力を持つものの、CO2の貯留場所をいかに確保していくかについてはいまだ不確実なところがあるからだ。 天然ガス由来の水素やアンモニアを日本にどう持ちこむかについては、①資源国の設備において天然ガスから水素・アンモニアを作って、それを日本へ輸入するやり方と、②資源国からLNG(液化天然ガス)の形で輸入して、日本国内で水素・アンモニアを取り出すやり方の2つが想定されている。その際、資源国や日本国内でCO2を安全に貯留できる場所を確保する必要がある。 Q:CCSは容易ではない? A:世界を見ても、CCSを商用稼働しているのはアメリカ、オーストラリア、ノルウェイだけだ。海外では、枯渇してきた油田にCO2を押し込んで、その圧力で石油を取り出す形で利用されることが多い。石油生産の経済性を増すため、CO2は「商品」となっている。だが原油価格が一定以下に下落すると、不採算になるため、将来的な持続可能性は不明だ。 スウェーデンとノルウェイのエネルギー会社が主導するオランダの水素火力発電は2025年の稼働を予定し、既存の天然ガス火力発電から水素へ転換するものだ。天然ガスから水素を作るときに発生するCO2は、船舶でノルウェイへ送り、同国でCCSを行う方法が計画されている。ちなみにこの水素火力発電のタービンは三菱パワー製だ。日本勢はこうしたプロジェクトも参考にして、日本向けの構想を練っている』、「水素火力発電のタービンは三菱パワー製だ」、しかし全体としてのシステム構築は遅れているようだ。
・『水素社会は水素とアンモニアのすみ分けに  Q:政府の発表や報道では、「水素」という言葉が使われており、一般の人たちはアンモニアと水素の違いなどで頭が混乱しやすいと思います。全体を整理すると、どうなりますか。 A:水素と空気中の窒素を合成すればアンモニアができるし、アンモニアを水素化することもできる。水素とアンモニアが近い関係にあることは事実だ。 ただし、経済産業省の中にも、燃料電池自動車(FCV)などを念頭に水素を中心に考えるグループと、電力を念頭にアンモニアを中心に考えるグループに分かれているようだ。水素とアンモニアをまとめて「水素社会」と呼んでごまかしているところはある。だが、当面はそれでもあまりまずいことにはならないだろう。 おおざっぱに言うと、日本の電力業界はみんなアンモニアによる火力発電へ突き進んでいる。アンモニアは毒性(強い刺激性)があり、コンシューマ用途には向かないが、工業や肥料用などで長年使用されてきたため、発電所や工場などではハンドリングしやすい。 一方、水素にはFCVに代表される自動車分野や家庭用のエネファームなどの用途があるが、貯蔵・運搬面で技術的課題がある。運搬方法では大きく2つの候補があり、1つはマイナス253℃まで水素を冷却して液化する方法、もう1つは水素にトルエンを混ぜてメチルシクロヘキサン(MCH)にして輸送・貯蔵する方法だ。MCHなら普通のコンテナで運ぶことができ、低コストだが、最後に水素を分離する際に約400℃の熱を加える必要がある。液体水素、MCHともに冷却や加熱によるコストの課題などを抱える。 Q:なるほど。発電はアンモニア、自動車など輸送機器は水素というすみ分けですね。しかし、発電所自体がアンモニア活用でCO2フリーになるなら、自動車業界が長年力説してきた「Well to Wheel」(油井から車輪まで)で見ても、全部EVでいいということになりますね』、なるほど。
・『自家用車はEV、大型など商用車はFCV  EVは電池容量の関係で航続距離が短いこと、充電に30分以上かかることがネックとしてあるが、一般的な自家用車の利用としては問題ない。一方、トラックやバスなど大型車やフォークリフトといった商用分野では、航続距離や充時間(水素なら約3分)という要素が重要であり、水素が活用されるだろう。つまり、自家用車はEV、商用車はFCVというすみ分けだ。 インテグラル(すり合わせ)型に強い日本車メーカーは、モジュラー型(組み合わせ型)のEVに消極的だといわれてきた。しかし、実際にはトヨタなどは火力発電のCO2フリーというゲームチェンジャー登場を受けて、EVとFCVにがぜん力を入れ始めていると思う。 歴史を見るまでもなく、エネルギー政策は、安全保障と不可分一体です。日本が水素社会の方向へ舵を切るとすれば、外交にも影響は及びそうですね。 日本の外交戦略である「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)は、日米とインド、オーストラリアがカギを握るといわれている。こうした中で、水素戦略によって日本で大幅な需要拡大が予想される水素・アンモニアの調達先としては、オーストラリアが注目されている。米中対立の余波を受けて、中国がオーストラリアからの輸入を減らす方向だが、代わりに日本がオーストラリアからの天然ガスないし水素・アンモニアの輸入を増やすことはFOIPにとってもプラスという考え方だ。 日本はLNG(液化天然ガス)などの貿易や物流のノウハウで強みを持っている。その強みを発揮して、アジア地域での水素社会化やエネルギー輸送などで主導権を発揮することが期待される。また、CO2フリーの火力発電建設の輸出も期待できる。一方、中国も水素関連技術に強い関心を持っており、対中政策でも交渉カードの1つになるかもしれない』、「中国がオーストラリアからの輸入を減らす方向だが、代わりに日本がオーストラリアからの天然ガスないし水素・アンモニアの輸入を増やすことはFOIPにとってもプラスという考え方だ」、「日本」、「オーストラリア」両国にとってWinWinのいいアイデアだ。さらに「対中政策でも交渉カードの1つになるかもしれない」、とのおまけまでついてくるとは、対中政策でも交渉カードの1つになるかもしれない申し分なさそうだ。
タグ:しかし全体としてのシステム構築は遅れている 投資の急激な拡大」は事実としても、いきなり「義務化」とは何か理由があったのだろう 「日本がカーボンニュートラル宣言を出したのはギリギリのタイミングだった」、なるほど納得できた 「「水素」「EV」で急速に国策が動き出したワケ 橘川教授が語る「日本版脱炭素化の見取り図」」 水素火力発電のタービンは三菱パワー製だ 橘川武郎 「国民ひとりひとりが他人事ではなく、“わたくし事”として捉えることが大切だ」、理念的にはその通りだが、判断材料となるデータも示さずに、要求するのは筋違いだ アメリカ大統領がバイデンに代わることで、アメリカの規制も強化される方向だ 「2050年に目指すべき姿」を議論 変わるべきはクルマだけではない トヨタの舵取りはいかに? 「「2030年ガソリン車禁止」政府が探る落とし所 政府基本案のたたき台から読めた日本の方針」 HVの普及比率は、2017年時点で日本が31.6%と、アメリカの4.0%、ドイツの3.0%、フランスの4.8%、タイの2.7%、インドの0.03%と比べて圧倒的に高かった」、これにあぐらをかいていた 各国政策を踏まえての“落としどころ (その8)(政府が「2030年ガソリン車禁止」を打ち出した訳 方針急転換でメーカーの戦略修正は必須に、「2030年ガソリン車禁止」政府が探る落とし所 政府基本案のたたき台から読めた日本の方針、「水素」「EV」で急速に国策が動き出したワケ 橘川教授が語る「日本版脱炭素化の見取り図」) アンモニアの活用により、火力発電はCO2フリーの調整用電源としての裏付けができた 日本政府が電動化対応をしてこなかった訳 世界的なESG 「2030年前半、ガソリン車販売禁止」のニュース さらに「対中政策でも交渉カードの1つになるかもしれない」、とのおまけまでついてくるとは、対中政策でも交渉カードの1つになるかもしれない申し分なさそうだ 環境問題 桃田 健史 東洋経済オンライン 「達成目標」から「義務」へ CO2の回収・貯留が最大の課題 急に動き出した最大の要因は「アンモニア火力発電」 10月13日に火力発電最大手のJERA(東京電力と中部電力の火力発電事業統合会社)がアンモニアを活用して火力発電でも二酸化炭素(CO2)を実質排出させないロードマップを打ち出している。この動きこそが、菅首相のカーボンニュートラル宣言に現実味を持たせ、状況を察知した産業界の多くがどっと動き出す要因になった 水素社会は水素とアンモニアのすみ分けに 「中国がオーストラリアからの輸入を減らす方向だが、代わりに日本がオーストラリアからの天然ガスないし水素・アンモニアの輸入を増やすことはFOIPにとってもプラスという考え方だ」、「日本」、「オーストラリア」両国にとってWinWinのいいアイデアだ 自家用車はEV、大型など商用車はFCV 「政府が「2030年ガソリン車禁止」を打ち出した訳 方針急転換でメーカーの戦略修正は必須に」
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大学(その7)(批判殺到 東大総長選“消された音声データ”の恥ずべき中身、コロナ禍が変えた学校と教育 「大学爆破予告」急増の背景にあるものとは、2ちゃん創設者が論破する「学歴不要論」のウソ 海外に出たいなら なおさら「学歴」は必要だ) [社会]

大学については、7月15日に取上げた。今日は、(その7)(批判殺到 東大総長選“消された音声データ”の恥ずべき中身、コロナ禍が変えた学校と教育 「大学爆破予告」急増の背景にあるものとは、2ちゃん創設者が論破する「学歴不要論」のウソ 海外に出たいなら なおさら「学歴」は必要だ)である。

先ずは、10月13日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの伊藤博敏氏による「批判殺到 東大総長選“消された音声データ”の恥ずべき中身」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/279867
・『太った豚になるよりは、痩せたソクラテスになれ――。1964年3月、大河内一男東大総長が、卒業式で述べたというこの言葉は、日本アカデミズムの頂点に立つ東大の気概を示す名言として記憶されている。が、56年を経た今、東大の権威の失墜と統治の劣化を象徴する出来事が、10月2日選出の総長選で起きた。 経緯はこうだ。 五神真総長が来年3月、6年の任期満了で退任するのに伴い、4月28日、総長選の開始が告示された。7月7日、代議員会で11人の1次候補者が選ばれ、同9日、経営協議会が1人を推薦。学内の教員8人と経営協議会の8人で構成される総長選考会議が、9月2日と4日に面接・審査を行い、7日に選考会議を開き、藤井輝夫副学長・元生産技術研究所長、染谷隆夫工学系研究科長、永井良三自治医科大学学長・元東大医学部付属病院長の3人の2次候補者を選んだ。30日、有資格者による意向投票が行われ、藤井氏を選出。そのまま第31代総長に就任することになった。 問題となったのは、9月7日の総長選考会議である。それまでも、第1次候補者の氏名を公表しないなど不透明な選考過程に不満は強かったが、小宮山宏議長(28代総長)による強引な議事進行、怪文書を利用した特定候補の排除、文系や女性を排し、理系3人に絞るなど偏った選考だとして、元理事、学部長、研究所長らからの質問状や要望書が相次いだ。 むしろ筆者が驚かされたのは、これ以降の大学及び小宮山議長の対応である。学内外からの要望書や取材要請に対し、小宮山氏は「2日の総長選出後の記者会見で明らかにする」と、答えていた。が、当日、小宮山氏は「総長選考の在り方について改善と検証に取り組みます」と、通り一遍の言葉でお茶を濁した。また、会見は記者クラブに限り、場所と時間は「機密事項につき教えられない」とのこと。あまつさえ、議事録は残しておらず、会議の模様を録音した音声データは、大学事務局が消去していた。 何を消したかったのか』、「総長」選挙でこんな不正がまかり通っていたとは、心底驚いた。「会見は記者クラブに限り、場所と時間は「機密事項につき教えられない」、「議事録は残しておらず、会議の模様を録音した音声データは、大学事務局が消去」、ここまで秘密主義に走るとは開いた口が塞がらない
・『筆者は音声データの反訳(テープ起こし)を入手した。そこでは、小宮山議長主導の候補者の絞り込み(辞退2人を除き10人を3人に)が延々と行われ、学内で不満の強かった多様性(文系と女性)の排除、匿名文書を利用した小宮山氏主導による特定候補の除外過程が明らかだった。プライバシーに触れる部分もあり、全過程を公開する必要はあるまい。だが、説明責任を果たさずデータを消去。逃げに徹して恥じないのはなぜか。 反訳には、録音の有無の確認、議事録を「うまくまとめろ」という小宮山氏の指示もあるが、最後の選択は何も残さないこと……。行政文書を破棄して恥じない文化は、官僚を輩出する東京大学で培われている』、最後の皮肉は同感である。やはり「小宮山議長」は、きちんと説明すべきだろう。

次に、10月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したダイヤモンド社教育情報 森上教育研究所による「コロナ禍が変えた学校と教育、「大学爆破予告」急増の背景にあるものとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/251893
・『新型コロナウイルス禍は学校と教育に大きな影響を与えた。それまで遅々として進まなかった教育の情報通信技術(ICT)化が、遠隔授業の実施などを通していや応なしに進み、学校内の情報環境も急速に整えられようとしている。現場でいったい何が起きているのか、新しく開始する連載記事の中で、順次その現状をご紹介していく。今回はコロナ禍がもたらした負の側面として、この夏から急増した「爆破予告」が、教育機関、中でも大学に対して多く発生している現状を見ておこう』、「「爆破予告」が、教育機関、中でも大学に対して多く発生」、とは穏やかではない。どういうことだろうか。
・『時代の節目を襲ったコロナ禍で変わったこと  2020年は、世界中が新型コロナウイルスとの戦いに明け暮れた年として歴史に刻まれることになりそうだ。1月に最後の大学入試センター試験が行われ、翌年からは新たに大学入学共通テストが始まるという大学入試改革の節目の年をコロナ禍が直撃した。 それまでは通信制高校でもっぱら行われていた動画による遠隔授業などが、一般の中高でも慌ただしく4月以降開始され、Wi-Fiの整備など校内での情報環境が急速に整えられた。私立中高一貫校を中心に、自らの端末を持ち込むBYOD(注1)も含めて、1人1台の端末を利用した授業などが現在では日常的に行われるようになっている。 早い学校では2019年からクロームブックやiPadを持たせるなどして、このような取り組みは始まっていたが、コロナ禍がその後押しをした側面も否めない。それは改訂された学習指導要領に「新しい時代を生きる子どもたちに必要な力」として提示された資質・能力の3つの柱(学びに向かう力、知識および技能、思考力・判断力・表現力)の実現に寄与するものでもある。 これまで十分な予算がつかなかったこともあり、遅々として進まなかったGIGAスクール構想(注2)も急速に進展しそうである。もっとも、現場は文部科学省が考えるようには必ずしも対応してはいない。 また、プログラミングを始めとしたICT(情報通信技術)からAI(人工知能)へとトレンドが変化する教育への取り組みも、地域によるかなりの温度差を伴いながら進んでいる。保護者の時代にはなかったこうした新たな教育の現状についても、毎週木曜日に予定している新たな連載の中で、順次、取り上げていきたい。 全国の公立学校での導入が進むGIGAスクール構想が、現場でどのような状況に陥っているのか。あまり報道されることのないその実態などについては、豊福晋平・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の指摘に耳を傾けていきたい。 10年ひと昔とはいうが、ICTの進展に合わせて子どもたちを取り巻く環境にも変化している。2000年代はデジタルネイティブ世代だったが、2010年代はスマホネイティブ、2020年代はクラウドネイティブとでも名付けた方がいいような世代に移行しようとしている。こうした時代に即したICTやAI教育のあり方について、讃井康智・ライフイズテック取締役(最高教育戦略責任者)の取り組みをご紹介していく。 ところでスマホネイティブ世代は、情報の検索をGoogleやYahoo!といった検索サイトではなく、ツイッターやインスタグラム、ユーチューブやフェイスブックといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で行う傾向がある。 Spectee(スペクティ)は、公開されているSNSの情報をAIにより解析、リアルタイムで危機管理情報を提供する、そうした時代の流れに沿った新進気鋭の企業である。台風のような災害時には24時間休むことなく情報を発信し、日常的な事故や事件も速やかに発するため、官公庁やマスコミ、サプライチェーンを持つ企業などを顧客に持つ。同社は、コロナ禍で自粛が続いたこの夏、社会のある異変をとらえていた』、「スマホネイティブ世代は、情報の検索をGoogleやYahoo!といった検索サイトではなく、ツイッターやインスタグラム、ユーチューブやフェイスブックといったSNS・・・で行う傾向がある」、なるほど。
(注1)BYOD:Bring your own device(Wikipedia)
(注2)GIGAスクール構想:「児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子どもたちを誰一人取り残すことのなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想」(Education通信)
・『大学への「爆破予告」が相次ぐ  4月7日、政府によって「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」が、まずは1カ月間発令された。新学期を迎えたばかりの各地の大学は、これを受けてキャンパスが閉鎖され、学生は遠隔授業を余儀なくされた。京都の私大で発生したクラスターが、学生の帰省に伴い各地に拡散したことも事態を深刻化させた。5月25日、緊急事態の終了が宣言されたが、大学のキャンパスは引き続き閉じられたままだった。 スペクティでは、AIによりリアルタイムで事件・事故情報を収集し、最後は人間の目でその情報の確度を判断している。その責任者である根来諭・同社取締役COOは、6月から「爆破予告」が急速に増加していることに気がついていた。 上のグラフのように、この1年間を見ても、2020年5月までは「爆破予告」は月に数件発生する程度だった。大学に対する脅迫は、2019年11月に東京と名古屋の女子大が、12月に東京都心の私大キャンパスが、2020年2月に神奈川にある東京の私大のキャンパスがその対象となったくらいで、むしろ中学・高校への脅迫の方が多いくらいだったのだ。 6月は、東京、大阪、茨城で市役所への予告が相次ぎ、出入国管理局や警察署も対象になっている。一方、大学では、東京と大阪の公立校へのものが発生したくらいだった。大阪の場合は府立と市立の大学統合に絡めた脅迫と捉えられたものの、まだ件数的には少なかったのだ。 例年なら夏休みに入る7月から、様相が一変する。あまり全国的には報道されていないが、福岡・大阪・京都・静岡で中高などへの予告があった一方で、大学への脅迫が急増している。福岡で国立・私立の複数の大学が、長崎・熊本・島根・兵庫・愛知・静岡・岩手・北海道では国公立の大学が対象となり、一気に全国に拡大した。京都では有名私大2校も標的にされている。 8月には爆破予告の合計が45件となり、教育機関がその半分を占めるほどになった。今年は休校期間中の授業の遅れを取り戻すため、中高では夏休みが短縮されている。その点、キャンパスが閉じられたままの大学に対する脅迫は20件も発生している。 高知・島根・兵庫・京都・岐阜の国公立大に加えて、神奈川や東京の国立大も標的になることで、首都圏にも被害が拡大してきた。また、広島・大阪・京都・名古屋の私大も対象にされ、2度目の脅迫で東京に設けたキャンパスを一時閉鎖もする私大も現れている』、確かに「グラフ」では7月以降の大学への「爆破予告」の増加は顕著だ。
・『10月になっても衰えない発生件数  2学期が始まり、多くの小中高で通常の対面事業が再開した9月には、特定の市内で複数の学校や施設に対する爆破予告が一挙に拡大している。このように教育機関が狙われる傾向が鮮明になり、沖縄の私大、東京の美大、愛媛・岡山・千葉の国立大でも発生、大阪では私立の5大学が狙われた。 中でも早稲田大学への脅迫は大きく報じられた。3年前の11月にも同様の爆破予告を受け、その時は3限目まで休講となっている。産経新聞が報じたように、「9月4日に主要建造物を爆破する」というメールが大学に届き、今回は全国の大学キャンパスや付属校も対象になり施設は全て閉鎖されるなど格段に対応レベルが上がっている。 爆破予告が行われると、対象となった大学はキャンパスの閉鎖や入場制限を行い、警備員の巡回を強める。警察に被害届を出す一方、被った損害に対する賠償請求にも備えている。刑事的には法定刑が3年以下の懲役である威力業務妨害罪に問われる。3年前、競艇場に爆破予告した被告に対して、検察は懲役2年6カ月を求刑、初犯であったのにもかかわらず、執行猶予なしの懲役1年6カ月の判決が地裁で言い渡されている。 学校関係に詳しい弁護士は、刑事上の責任もさることながら、民事上の損害賠償請求が巨額のものになることが予想され、文字通り身の破滅となることを指摘する。メールや掲示板の書き込みという気軽な行為で、コロナ禍のうっ憤晴らしをしたのかもしれないが、その代償はかなり高くつくことになる。 こうした爆破予告は、かつてならば電話や手紙で告げられていたが、昨今では掲示板への書き込みや大学へのメールで行われている。なぜ、この夏に急増したのかは、犯人の検挙に至っていないため、その動機も含め詳細は分からない。 問題は、10月上旬に30件以上の「爆破予告」が発生しており、19の大学が脅迫されるなど、発生件数のペースが落ちていないことにある。大学に対する大量の「爆破予告」も2020年のコロナ禍の歴史に刻まれることになりそうだが、迷惑極まりないこうした行為を止めるには、やはり犯人の検挙が最も効果的となるのだろう。 「ダイヤモンド社教育情報」では、twitterとfacebookで中高一貫校を中心に、学校・教育・入試に関する多彩な話題をお届けします』、「爆破予告が行われると、対象となった大学はキャンパスの閉鎖や入場制限を行い、警備員の巡回を強める。警察に被害届を出す一方、被った損害に対する賠償請求にも備えている。刑事的には法定刑が3年以下の懲役である威力業務妨害罪に問われる」、「刑事上の責任もさることながら、民事上の損害賠償請求が巨額のものになることが予想され、文字通り身の破滅となることを指摘する」、無論、「爆破予告」は犯罪であるが、これだけ増えている背景には大学側の責任もありそうだ。コロナ禍で大学の講義はオンライン形式のみで、対面形式がないので、1年生は友人も出来ず、孤立しているのは問題である。友人を作るのも、大学生活には不可欠の要素だ。大学としても、学生の相談に乗るなど親身の対応が必要な筈だ。

第三に、12月11日付け東洋経済オンラインが掲載した元2ちゃんねる管理人のひろゆき氏による「2ちゃん創設者が論破する「学歴不要論」のウソ 海外に出たいなら、なおさら「学歴」は必要だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/393560
・『インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」創設者でコメンテーターとしても活躍するひろゆき氏が『叩かれるから今まで黙っておいた「世の中の真実」』を上梓しました。同書では社会・仕事・教育・政治・人間関係について、忖度(そんたく)抜きで持論を展開しています。本稿では、その一部を抜粋しお届けします』、「ひろゆき氏」の見解とは興味深そうだ。
・『「大卒に意味はない!」のウソ  最近、大学へわざわざ高い学費を払って通う必要はないという風潮があります。 「大学不要論」を掲げる人たちはよく「大学に行かなくても大抵のことは学べる」と主張します。確かにこれは一理あります。ネット全盛期のこの時代、本人に学ぶ意欲さえあれば、大学に行かなくても学ぶことはできます。 ただ、僕は「大学はとりあえず卒業しておく価値がある」と思っています。 高卒の男性の生涯賃金(退職金を含まない)は平均で2億1000万円。一方、大卒・大学院卒の男性は2億7000万円。その差6000万円は家1軒分にあたる金額を優に超えています。女性の場合も、高卒と大卒・大学院卒の差は7000万円と大きな開きがあります。 しかも、高卒は大卒よりも最低4年は早く働き始めているわけですから、時給に直せばかなりの開きがあることになります。 日本の大学で教えていることは、一部の専門的な分野を除いて、社会に出てからあまり役に立ちません。 大学で学んだことが企業で生かされていないとすると、高卒の人と大卒の人で仕事内容はそれほど大きく変わらないはずです。にもかかわらず、生涯賃金に6000万円もの開きがある。 これは、日本企業が「大学で何を学んだか」ではなく、「大卒である」ことに価値を見いだしていることの表れでしょう。 もちろん、ビル・ゲイツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏、日本では堀江貴文さんのように大学を中退して成功している人はいます。でも、それはごく一握りの超優秀な人たちです。一般的には、大卒という肩書きは持っておいて損はないのです。もっと言えば、高い学歴を持っておくのに越したことはありません。 というのも、学歴が高い人たちは、的確な目標を設定し、計画どおりに努力を重ね、成果を挙げてきているという「実績」があるからです。そういう能力だけは最低限、周りから評価してもらえます。 一方、学歴という目安がないと、そもそもの信用が得られにくいのです。 学歴もなく、実績もない若者に、大きな仕事を任せてくれる人は誰もいません。まずは下積み的な仕事を経て、少しずつ信用を積み重ねていく必要があります。これは時間がかかりますし、下積みを重ねたところで、大きな仕事を振ってもらえる保証はどこにもありません。 一度、仕事で実績をつくれば、それをアピールしていくことができますが、最初のゼロを1にするのにとても苦労します。 また、海外で働くためにも学歴は大事です。就労ビザの条件として、一定以上の学歴を求めている国はいくつもあります。 タイ、インド、韓国など学歴を問わない国もありますが、カナダ、ベトナムは大卒以上、マレーシアは大卒か短大卒以上などと、高卒ではビザが取れない国がかなり多いのです。 それに、価値観も異なる海外では、国内以上に「その人となりを見る」ことは困難。どうしても、学歴のようなわかりやすい基準に頼ることが多くなります。 「日本みたいに不自由な国を飛び出して海外で活躍するから、学歴なんて必要ない」というのは、実は大きな勘違いです。海外に出たいと思っているならなおさら、学歴を軽視してはダメなのです』、「高卒の人と大卒の人で仕事内容はそれほど大きく変わらないはずです。にもかかわらず、生涯賃金に6000万円もの開きがある」、そんなに差があるとは初めて知った。かつての「高卒」には優秀な人も多かったが、最近ではそうでもないとすれば、この差はもっと大きくなっている可能性がある。「海外に出たいと思っているならなおさら、学歴を軽視してはダメなのです」、その通りだ。
・『デジタルネイティブ世代の「意外な特徴」  「デジタルネイティブ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。学生時代からインターネットがある環境で育ってきた世代のことを指します。日本では1990年以降に生まれた人が該当します。今の大学生もデジタルネイティブ世代です。 この世代の人たちは、それ以前の生まれの人よりデジタル機器の扱いに慣れているので、彼らが社会に出ることで、仕事のデジタル化が急速に進んでいくのではないかと期待されていました。その流れに乗り遅れないように、必死でパソコンスキルを学んだおじさんたちも多いのではないでしょうか。 しかし、実際にデジタルネイティブ世代が会社に入ってくると、彼らは「スマホデジタル世代」であって、「パソコンデジタル世代」ではないことが明らかになってきました』、意外だが、よくよく考えるとそうなのだろう。
・『多くの大学生がパソコンを使いこなせていない  2016年に行われたNECパーソナルコンピュータの調査によると、大学1年生から3年生の75.7%、4年生の70.7%が「PCスキルに自信がない」と回答しています。 また、新卒採用に関わったことがある社会人に、新入社員のパソコンスキルに不安を感じるかどうか問うた答えは、「感じる」「やや感じる」が合計で57.2%となっています。 その一方で、44.3%の企業が、採用の際にパソコンスキルの有無を重視すると答えています。 ということは、企業が望んでいるにもかかわらず、多くの大学生がパソコンを使いこなせていない現実があるのです。 高校生までの子どもであれば、パソコンに触れる時間が少ないのもわかります。ただ、大学生はレポートを書いたり、発表資料をつくったりするので、パソコンを使う機会はありそうなものです。なぜ、7割以上もの大学生がパソコンスキルに自信がないのでしょうか。 フリーライターの地主恵亮さんが、スマホとパソコンの利用実態について大学生に取材をした記事(『最近の大学生はレポートをスマホで書く?おじさんライターが聞いてみた』)があります。この記事によると、大学生はレポート作成や動画編集など、ありとあらゆる作業をスマホで行っているようです。 例えば、ある学生は、レポートをスマホのメモ帳に書き、それを大学の研究室のパソコンにメールをし、ワードにコピペして提出しています。 そんな回りくどいことをするくらいなら最初からパソコンで書けばいいのにと思ってしまいますが、パソコンのタイピング入力より、スマホのフリック入力のほうが早く書けるのだそうです。 また、動画の編集やチラシのデザインも全部スマホのアプリを使ってやっていて、大学生活を「スマホ1台」で乗り切っています。 こういう話を聞くと、大学生や若手社会人がパソコンスキルに不安がある理由がわかります。彼らはそもそもパソコンを使う機会がないのです。 NECパーソナルコンピュータの調査では、学生たちのパソコンスキルは、普段の利用時間と比例していることもわかっています。長い時間使っている学生ほどパソコンスキルに自信がある傾向が見られるようです』、「大学生はレポート作成や動画編集など、ありとあらゆる作業をスマホで行っているようです」、「パソコンのタイピング入力より、スマホのフリック入力のほうが早く書ける」、のであれば、「大学生や若手社会人がパソコンスキルに不安がある」、のは当然だ。
・『社会人になると「スマホだけでは不十分」な環境に  だったら、どんどんパソコンに触れればいいのですが、多くの学生がそれをしません。なぜなら、「大学生活はスマホがあれば十分」だからです。 しかし、社会人になるといきなり「スマホだけでは不十分」な環境になります。 確かに、スマホにもいろいろな機能やアプリはあるものの、パソコンとは比較になりません。簡単な文章を書くくらいならスマホで十分かもしれませんが、複数枚にわたるプレゼン資料を作成するときやプログラムを書くときには、パソコンでなければ効率が悪いでしょう。 将来的には、スマホがパソコンレベルのスペックを有するようになる可能性はあります。となれば、職場からパソコンは消えてしまうかもしれません。 しかし、今はまだその時期ではありません。デジタルネイティブ世代の登場に期待していたのに、ふたを開けてみると自分たちよりパソコンスキルがない人たちばかりだったというのはなんとも皮肉な現実です。 僕らの世代は、スマホよりも先にパソコンがありました。だから、パソコン主体でスマホはサブという使い分けができています。 一方で、大学生になったときにはすでにスマホがあった世代は、あえてパソコンを必要としてこなかったのでしょう。 もっと若い人たちも同様です。総務省が行った「通信利用動向調査」で、13歳から19歳までの人がインターネットを利用するときに使う機器について聞いたところ(複数回答あり)、次のような結果が出ています。 2013年の段階では、パソコン(自宅)73.8%、パソコン(自宅外)18.8%、タブレット15.1%、スマホ64.1%でした。 これが、5年後の2018年になると、パソコン41.3%、タブレット24.4%、スマホ76.6%と、パソコン利用派が大きく減っています。 となれば、今後ますますパソコンスキルに自信のない若者は増えていくでしょう』、「デジタルネイティブ世代の登場に期待していたのに、ふたを開けてみると自分たちよりパソコンスキルがない人たちばかりだったというのはなんとも皮肉な現実です」、その通りだ。「今後ますますパソコンスキルに自信のない若者は増えていくでしょう」、情けないけどこれが現実のようだ。
・『まずはパソコンを与えるべき  僕は、幼い子どもであっても、スマホやタブレットではなく、まずはパソコンを与えるべきだと思っています。 僕が子どもの頃、ファミコンを欲しがったら、親は代わりにパソコンを買ってくれました。このことには今も感謝しています。 ファミコンはファミコンとしてしか使えないため、僕はファミコン利用者にしかなれませんが、パソコンがあることで僕は「生産者」的な立ち位置にいることができました。 これはスマートフォンも同様です。スマホでもデザインや文書作成ができるアプリは出てきていますが、ビジネスの場で使えるレベルには至っていません。やはり、現時点では、スマホを使っている限り、あくまで「消費者」なのです。 「パソコンの扱いなんてお手の物だろう」と期待する会社側と、「パソコンなんてほとんど触ったことがない」と不安を抱える新入社員たち。そうした悲しいギャップは当分なくなりそうもありません』、「そうした悲しいギャップは当分なくなりそうもありません」、寂しい現実だ。打破するには、大学でのレポート提出で、パソコンでなければ出来ないようなものを出すとかの工夫も必要なのではなかろうか。
タグ:元理事、学部長、研究所長らからの質問状や要望書が相次いだ 時代の節目を襲ったコロナ禍で変わったこと (その7)(批判殺到 東大総長選“消された音声データ”の恥ずべき中身、コロナ禍が変えた学校と教育 「大学爆破予告」急増の背景にあるものとは、2ちゃん創設者が論破する「学歴不要論」のウソ 海外に出たいなら なおさら「学歴」は必要だ) この夏から急増した「爆破予告」が、教育機関、中でも大学に対して多く発生 打破するには、大学でのレポート提出で、パソコンでなければ出来ないようなものを出すとかの工夫も必要 大学への「爆破予告」が相次ぐ そうした悲しいギャップは当分なくなりそうもありません で行う傾向がある スマホネイティブ世代は、情報の検索をGoogleやYahoo!といった検索サイトではなく、ツイッターやインスタグラム、ユーチューブやフェイスブックといったSNS 小宮山宏議長(28代総長)による強引な議事進行、怪文書を利用した特定候補の排除、文系や女性を排し、理系3人に絞るなど偏った選考 「コロナ禍が変えた学校と教育、「大学爆破予告」急増の背景にあるものとは」 まずはパソコンを与えるべき 今後ますますパソコンスキルに自信のない若者は増えていくでしょう ダイヤモンド・オンライン 大学 デジタルネイティブ世代の登場に期待していたのに、ふたを開けてみると自分たちよりパソコンスキルがない人たちばかりだったというのはなんとも皮肉な現実です やはり「小宮山議長」は、説明責任を果たすべきだろう 行政文書を破棄して恥じない文化は、官僚を輩出する東京大学で培われている 社会人になると「スマホだけでは不十分」な環境に 大学生や若手社会人がパソコンスキルに不安がある パソコンのタイピング入力より、スマホのフリック入力のほうが早く書ける 大学生はレポート作成や動画編集など、ありとあらゆる作業をスマホで行っているようです 多くの大学生がパソコンを使いこなせていない 実際にデジタルネイティブ世代が会社に入ってくると、彼らは「スマホデジタル世代」であって、「パソコンデジタル世代」ではないことが明らかになってきました デジタルネイティブ世代の「意外な特徴」 「議事録は残しておらず、会議の模様を録音した音声データは、大学事務局が消去 海外に出たいと思っているならなおさら、学歴を軽視してはダメなのです」、その通りだ 会見は記者クラブに限り、場所と時間は「機密事項につき教えられない」 高卒の人と大卒の人で仕事内容はそれほど大きく変わらないはずです。にもかかわらず、生涯賃金に6000万円もの開きがある 「大卒に意味はない!」のウソ 2ちゃん創設者が論破する「学歴不要論」のウソ 海外に出たいなら、なおさら「学歴」は必要だ 伊藤博敏 ひろゆき 東洋経済オンライン 大学としても、学生の相談に乗るなど親身の対応が必要 コロナ禍で大学の講義はオンライン形式のみで、対面形式がないので、1年生は友人も出来ず、孤立しているのは問題 大学側の責任も 9月7日の総長選考会議 刑事上の責任もさることながら、民事上の損害賠償請求が巨額のものになることが予想され、文字通り身の破滅となることを指摘する 爆破予告が行われると、対象となった大学はキャンパスの閉鎖や入場制限を行い、警備員の巡回を強める。警察に被害届を出す一方、被った損害に対する賠償請求にも備えている。刑事的には法定刑が3年以下の懲役である威力業務妨害罪に問われる 10月になっても衰えない発生件数 「批判殺到 東大総長選“消された音声データ”の恥ずべき中身」 有資格者による意向投票が行われ、藤井氏を選出。そのまま第31代総長に就任することになった 日刊ゲンダイ 藤井輝夫副学長・元生産技術研究所長
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医療問題(その26)(ある朝 精神病院に強制連行された男の凶体験 「まるでSF小説」が蔓延する精神科移送業の実態、心を病む人を「薬漬け」にする精神医療への懐疑 患者や家族への副作用やリスクの説明は消極的、うつが「すぐ治る人」「重症化する人」の決定的差 15人に1人がかかる「心の骨折」との付き合い方) [生活]

医療問題については、9月24日に取上げた。今日は、(その26)(ある朝 精神病院に強制連行された男の凶体験 「まるでSF小説」が蔓延する精神科移送業の実態、心を病む人を「薬漬け」にする精神医療への懐疑 患者や家族への副作用やリスクの説明は消極的、うつが「すぐ治る人」「重症化する人」の決定的差 15人に1人がかかる「心の骨折」との付き合い方)である。

先ずは、9月25日付け東洋経済オンライン「ある朝、精神病院に強制連行された男の凶体験 「まるでSF小説」が蔓延する精神科移送業の実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/376169
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第4回』、「精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占める」、まさに異常な「精神病院天国」だ。
・『いきなり見知らぬ男たちに連れて行かれた  「本当に怖かったですよ。それこそ普通に誘拐じゃないですか。まるでSF小説のような出来事が、まさか現在の日本であるとは信じられませんでした」 都内在住の元大学教員Aさん(52歳男性)は、今でもそのときのショックが忘れられない。2012年12月、たまたま実家に泊まった翌朝8時過ぎ、階下が騒がしく目を覚まして寝間着のまま階段を降りかけると、駆け上がってきた見知らぬ男2人に、両脇と足を押さえられ、家から無理やり連れ出されそうになった。 恐怖からAさんは柱や玄関の開口部を手でつかんで必死に抵抗したが、もう1人の男も加わり3人に引きはがされて抱えられたまま、家の前に停められたワゴン車に押し込められた。 「名乗りもせず、連れ出した理由もどこに行くのかも、まったく伝えられませんでした。車から降りて初めて、精神科病院に連れてこられたとわかりました」 移動中の1時間超の間も解放するよう求めて必死に抵抗したが、男たちに腕や腰を押さえつけられた。その結果、病院の診断書によれば、「加療2週間の頚部打撲および頸椎捻挫、全治3日間の頭部外傷および顔面外傷、眼球打撲傷」の傷害を負った。 事の発端は思いもかけないことだった。実はAさんの様子を心配した親族がよかれと思って病院に相談したところ、こんな事態になってしまったのだ。その後、Aさんは精神疾患ではなく、電磁波過敏症と診断されている。 家を出る時点では無傷だったのに、病院には顔と体が傷だらけで到着したと知ったAさんの父親が、この業者に詳しい報告を求めると、届けられた報告書にはこう結論付けられていた。 「弊社としては、本件については正当な業務行為であり、対応としても安全などの確保の観点から必要最小限の対応をしたものであると認識しております」 連れて行かれた精神科病院でのAさんのカルテには、この業者のことを「民間救急」「民救」と表現していた。本連載の第3回「夫の策略で『強制入院3カ月』妻が味わった悪夢」(2020年4月1日配信)でも触れたが精神科病院への移送を担うこれらの業者は、いったい何者なのだろうか。 精神科特有の強制入院の1つ「医療保護入院」(同制度については、連載第2回「精神病院から出られない医療保護入院の深い闇」【2020年3月1日配信】で詳報)のための患者の移送については、1999年の精神保健福祉法の改正で、都道府県知事が公的責任において行う制度が新設された。Aさんのように家族等の依頼を受けた民間警備会社が強制的に行うなど、人権上問題視される事例が発生していたためだ。 ところが、この公的移送制度は活用されていない。厚生労働省の調査によれば、施行された2000年度から2014年度までの15年間で、公的移送件数は1260件にとどまっている。年間18万件を超える医療保護入院の届出数(2018年度)からすると、ほとんど機能していない。 厚労省は実績の少ない理由として、適用の判断の難しさ、実施体制の確保の難しさなどを挙げるが、移送の実行までに自治体による事前調査や精神保健指定医の診察を要するなど、要は入院をさせたい側にとって使い勝手が悪いためだ。 その結果、法改正で排除を狙ったはずの警備会社などの民間移送業者が、今も精神科病院への移送のメインプレーヤーとして利用されている』、せっかくの「公的移送制度」は殆ど利用されず、「民間移送業者が、今も精神科病院への移送のメインプレーヤーとして利用」、というのはやはり問題だ。使い勝手をよくするなどの工夫の余地があるのではないだろうか。
・『移送の中心担うのは警察官OB  「自分が行った精神科病院への移送のうち、明らかに精神疾患のある方は2割ぐらいで、あとは何らかの家族内でのトラブルが原因のように感じられた」 元警備会社勤務の40代の男性はそう振り返る。男性は10年間でおよそ200人の移送を経験した。案件の内容によって3~5人でチームを組み、同社ではチームのリーダーは警察OBが担うことがほとんどだったという。 「精神科への移送業務には、警察官のノウハウが満載だ。移送は決まって早朝に行われたが、抵抗されにくい寝起きを狙うのは警察のガサ(家宅捜索)と一緒。硬軟織り交ぜて説得するのも取り調べ経験からお手の物だし、元警察官2人に両脇を抱えられたら身動きが取れないのも当然だ」(男性) 移送は移動時の安全確保を目的とした身辺警備(第4号警備業務)の1つという位置づけだ。そのため、「『きっちり契約書を取り交わしており、警備業法で規定のある業務である』と言われると、たとえ警察を呼ばれても問題となりにくいのでは。また警察官はOBに弱い。実際10年間で一度も警察沙汰になるようなことはなかった」(男性)とされる。 先のAさんも連れ去られるときに110番通報して警察官も到着したが、必死に抵抗して「助けてくれ」と頼んでも何もしてくれなかったという。 男性によれば、精神科移送業務の料金は警備員1人当たり1日5万円程度が相場だという。Aさんのケースでも父親は計21万円を支払っている。高額な分だけ融通が利くというわけだ。 その一方、公的移送制度と異なり条件の制約などもないため、悪用されるケースも当然少なくない』、「「自分が行った精神科病院への移送のうち、明らかに精神疾患のある方は2割ぐらいで、あとは何らかの家族内でのトラブルが原因のように感じられた」 元警備会社勤務の40代の男性」、「精神疾患のある方は2割ぐらい」、少なさに驚かされた。「精神科移送業務の料金は警備員1人当たり1日5万円程度が相場」、結構おいしい商売のようだ。
・『財産目当てで精神科病院送りに  「見知らぬ男たちに羽交い締めにされて、宇都宮ナンバーのワゴン車に連れ込まれた。財布や携帯電話などもまったく持ち出せなかった」 北陸地方で介護関連施設を経営していた70代男性のBさんは、精神科移送業者の対応について憤りをあらわにして語った。Bさんに精神疾患の既往歴は一切ない。 元警察官のBさんは定年退職後、退職金を元手に看護師の妻と一緒に介護事業を立ち上げた。経営が軌道に乗り出した頃、それまで20年近くほぼ音信不通だった長男から、自分も介護施設を経営したいと打診された。Bさんの会社名義で銀行から融資を受けたが、長男の事業構想は暗礁に乗り上げてしまった。「事件」が起きたのはそんなさなかだった。 2018年12月ある日の午前6時45分。Bさんがいつものように施設で利用者の朝食を準備していると、長男が男4人を連れて厨房に踏み込んできた。「認知症だからこれから病院に連れていく」と告げると、精神科移送業者の男たちは有無を言わせず、足と脇を抱えてBさんを引きずっていった。 やり取りを目にした施設利用者が騒ぎ出し、妻は「お父さんには認知症なんてない」「看護師だからわかるが、認知症と診断されるわけはない」と強く主張したが、問答無用とばかり妻に行き先も告げないままワゴン車は施設から走り去った。 「車中では5時間半の間、ジャンパー姿の屈強な男たちに囲まれて連れていかれた。パーキングエリアでトイレ休憩した際も、自分だけは外出が許されず尿瓶の利用を強要された」(Bさん) 結局Bさんは、自宅から遠く離れた栃木県宇都宮市内の精神科病院で1カ月強の入院を余儀なくされた。 Bさん同様、遠方からの「患者」を多数受け入れている、この宇都宮市内の精神科病院で起きていることについては、今後の連載で取り上げる予定だ。 「精神科病院に入院させてしまえば、肩代わりした事業資金のこともうやむやにできるとでも考えたのだろう。それにしても、本当に認知症で大変なら妻から病院に相談があるはず。それにまったく取り合わず、一緒に住んでもいない長男の言い分のみで、こんな拉致・監禁がまかり通るとは」(Bさん) その後、長男とは再度、音信不通状態だという』、「問答無用とばかり妻に行き先も告げないままワゴン車は施設から走り去った」、息子に指示されたとはいえ、配偶者にまで「行き先も告げない」、というのはやはり問題だ。
・『難しい責任追及  実際、こうした精神科移送業者の行為に対し、賠償責任が認められたケースもある。2013年、大阪地方裁判所は離婚訴訟を有利に進めるために、医師に虚偽の説明をして元妻を精神科病院に強制入院させた元夫に損害賠償の支払いを命じた。同時に元妻の意に反する移送をしたうえ、加療を要する傷害を負わせたとして、移送業者も損害賠償責任を負うとした。 だが、精神科移送業者が表立って責任を問われることは極めてまれだ。こうした相談を何件も受けたことがあるという、内田明弁護士は「通常は被害にあっても業者すら特定できないケースがほとんどで、証拠が乏しく責任追及することは現実的には難しい」と話す。 冒頭のAさんの言葉を借りれば、「まるでSF小説のような出来事」がまかり通っているのが、現代日本の精神医療の現実だ。(第5回に続く)』、「通常は被害にあっても業者すら特定できないケースがほとんど」、少なくとも「業者」には家族に対し、連絡先を通知するよう義務づけるべきだ。

次に、12月11日付け東洋経済オンライン「心を病む人を「薬漬け」にする精神医療への懐疑 患者や家族への副作用やリスクの説明は消極的」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/393818
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第7回』、興味深そうだ。
・『統合失調症と診断された彼が服用していた薬  曜日ごとに服用する薬が入れられたピルケースは、「水曜日」の分までが空になっていた――。このピルケースを使っていたのは、プロボクサーの武藤通隆さん(享年28)だ。通隆さんは2016年4月14日の木曜日、自宅のマンションから飛び降りて亡くなった。残されたピルケースは、通隆さんが亡くなる前日まで医師の指示通りにきちんと薬を飲んでいたことを物語っていた。 それまで一度も精神科病院にかかったことがなかった通隆さんは、統合失調症と診断されてわずか2カ月後に亡くなった。精神科病院を退院し自宅で療養中のことだった。 連載第6回「自殺した28歳ボクサーの父が精神病院と闘う訳」(2020年11月20日配信)で報じたとおり、退院前日に身体拘束を受けるほどの興奮状態にあった通隆さんだが、主治医の判断で当初の予定通り退院した。退院後、入院前にはなかった衝動的な言動が多くなり、父親や通隆さんが病院に再入院を求めたが、主治医からは「病院の経営上の理由」として認められなかった。 父親は、退院時に十分な検討を怠り、再入院を認めなかったとして病院を提訴。裁判で開示された病院のカルテによって、通隆さんが入院中に受けていた治療が初めて明らかになった。退院前日、暴れた通隆さんは入院中で最大量の薬が投与されていた。これは父親も知らされていない事実だった。 統合失調症は、自殺に至るリスクが高い病気として知られている。裁判では、退院のタイミングと、再入院をさせてもらえなかった点が争点になっている。しかし、通隆さんの父親は「本当の(自殺の)原因は薬だったのではないか」という疑問を拭えない。 通隆さんは2016年2月、記憶がなくなったり、同じ動作を繰り返したりする異変が起こり、精神科病院を受診した。主治医からは統合失調症の可能性があると告げられ、即日入院となった。診察室で、統合失調症の治療薬である抗精神病薬であるセレネースの筋肉注射を受けた。その日から抗精神病薬のロナセンの服薬も始まった。 父親は言う。 「統合失調症の主症状は妄想や幻聴だという知識はありましたが、息子にはそんな症状は一切ありませんでした。症状について尋ねようとすると、『統合失調症はなんでもありだから、個々の症状はあまり意味がない』と質問を遮られました。患者の具体的な症状を軽視するような態度に違和感を持ちましたが、専門家の判断に任せるしかないと思いました」 病院のカルテによると、入院中、通隆さんの薬の量は徐々に増加していた。ロナセンが増加される一方、同じ系統の抗精神病薬であるリスパダールも状態が悪化したときに使われていた。入院5日目からはベンゾジアゼピン系睡眠薬のレンドルミンも常用していた。 そして退院前日、薬の投与量は急激に増加した。身体拘束を受けた通隆さんは、普段飲んでいた抗精神病薬や睡眠薬に加え、入院時に打たれた抗精神病薬のセレネースの筋肉注射を再度受けた。さらに、抗不安薬のワイパックスと抗パーキンソン病薬のアキネトンが投与された。ただ、翌日の退院当日は、ロナセンとレンドルミンのみの服用に戻っていた』、本来は問診、カウンセリングから始まる筈だが、いきなり投薬というのは乱暴な薬漬けだ。
・『薬剤師「一気に薬が抜けると離脱症状が起こる」  埼玉県の精神科病院に勤務する薬剤師は、「退院前日に薬の量が急激に増えている。体が薬に適応した状態から、一気に薬が抜けると離脱症状(薬が急に減ることによる症状)が起こる。薬を減らすならば経過を慎重に見る必要があった」と指摘する。 通隆さんは退院後、再び抗精神病薬の量が増加されていった。退院から5日後の3月1日、「死にたい」と言うなどの通隆さんの興奮状態を心配した父親が電話で主治医に相談すると、抗精神病薬のロナセンを増量するように指示された。3月3日に通院した際には、診察中に退院前日と同じセレネースを注射された。さらに、服用として同系統の抗精神病薬のリスパダールも追加された。 抗精神病薬の多剤併用処方が問題になっている日本では、抗精神病薬の量が適正かどうかの目安を知るために「クロルプロマジン換算」という方法がある。クロルプロマジンという最も古い抗精神病薬に、さまざまな抗精神病薬を換算することで、その人が内服しているおおよその抗精神病薬の量を把握する方法だ。 この換算によると、通隆さんが3月3日の通院時に投与された1日の抗精神病薬の量は900mgになる。クロルプロマジン換算では300~600mgが適正な量とされるため、通隆さんの投与量は適正量を超えていた可能性がある。 父親は、通隆さんの様子を正確に医師に伝えるために、通隆さんが入院する直前から症状や服薬量について詳細なメモをとっている。メモによれば、通隆さんは退院後、入院前にはなかった「死にたい」という発言や、ベランダから飛び降りようとするなど、衝動的な行動を取るようになったという。父親は退院後の通隆さんの様子についてこう話す。 「午前中はいつもボーとしていて、意識があるのかないのか、わからないような状態でした。午後になると、足がむずかゆいと言って部屋中を歩き回り、苦しそうに足踏みを繰り返していました」 この足踏みを繰り返す動作は、「アカシジア」と呼ばれる抗精神病薬の副作用の一種だ。じっとしてはいられない焦燥感に襲われ、足踏みをしたり動き回ったりする症状が表れる。厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」には、アカシジアについて「あまりに苦しくて衝動的に自分を傷つけたり、自殺したいとさえ感じ危険な行為に及ぶ場合さえもあります」と記されている』、「退院」前後の投薬は信じられないような増減が目立つ。
・『「死にたい願望のある患者への投与」への注意書き  薬の添付文書によると、抗精神病薬のロナセンとリスパダールは、重要な使用上の注意として、「自殺念慮(死にたいという願望)のある患者への投与は、症状を悪化される恐れがある」と記されている。 また、入院直後から服用し続けていた睡眠薬のレンドルミンは、依存性があるのに加え、添付文書には副作用として、「不穏や興奮が生じることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止する等適切な処置を行うこと」と記されている。 厚生労働省は2017年発行の「医薬品・医療機器等安全性情報」で、レンドルミンを含むベンゾジアゼピン受容体作動薬について、「連用により薬物依存を生じることがあるので、漫然とした継続投与による長期使用を避けること」「異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと」と、注意喚起を行った。 しかし、こうした薬の副作用について父親は病院から説明を受けていなかった。 「統合失調症には自殺のリスクがあることや、処方した薬の副作用を家族である私に教えてくれていていれば、自殺を防げていたのではないでしょうか」。父親は無念でならないという。そしてこう続ける。 「入院中のカルテを見ると薬は処方しているけど、カウンセリングなどの心理社会的療法をした形跡がありません。退院後の診察でも、医師が本人の気持ちは聞こうとはしませんでした。薬を出すことだけが精神科医の治療だとすれば、治療をしていると言えるのでしょうが……」。 父親の代理人である大前治弁護士はこう話す。「精神科の治療は薬物療法だけではなく、カウンセリングや生活技能訓練、さらには家族および地域社会を含めた支援体制の構築などの心理社会的療法も重要となってくる。生活上の悩みを聞くことも治療の本体部分だ。精神科治療の現場で薬剤処方ばかりが偏重されていないか、点検が必要だ」 病院側は裁判の中で、薬の副作用(アカシジア)に対しては、「アキネトン(錐体外路症状止め)の薬を追加投与するなど、対処していた」としている』、「カルテを見ると薬は処方しているけど、カウンセリングなどの心理社会的療法をした形跡がありません。退院後の診察でも、医師が本人の気持ちは聞こうとはしませんでした。薬を出すことだけが精神科医の治療だとすれば、治療をしていると言えるのでしょうが……」、薬漬けに対する痛烈な批判だ。
・『処方した薬を飲むしかない  抗精神病薬や睡眠薬など、向精神薬の副作用に苦しむ患者は多い。通隆さんのように、抗精神病薬だけでも2種類以上を併用されるケースはざらにある。日本は、単剤ではなく複数の薬を併用する傾向が国際的にみて高いことはかねて指摘されてきた。多剤併用は大量処方にもつながりやすく、治療効果よりも副作用が強まる可能性も高い。しかし、こうした薬の副作用やリスクについて、患者や家族への情報提供は積極的に進められてはいない。 精神障害の当事者と支援者で作る「YPS横浜ピアスタッフ協会」に所属する当事者の堀合研二郎さんは、「医療者側が薬物療法以外の選択肢を持っていないため、それに頼りがちになっている」と訴える。堀合さんは、20代のとき統合失調症と診断され、向精神薬の副作用に苦しんだ経験がある。 「患者は、何かしらの心理的な要因や環境的な問題があって心を病んでいる。しかし、医師はそちらへの働きかけをしないまま、薬によって解決しようとする。副作用が出るとそれを止める薬は出してくれるが、その薬にも副作用がある。医師は病気の再発を防ぐことを優先して減薬しようとしない。飲まなくなったら、同じ状態になると脅される。もっと個々人の副作用や当事者の生活に目を向けてほしい」 堀合さんは、症状が安定していた時期にもかかわらず、医師に薬を飲んでいないという疑いをかけられ、再び入院をさせられた経験がある。「処方された薬を飲むしかないため、患者側には自由はない」(堀合さん)。 病院への収容か、大量処方された薬を飲むか――。どちらも患者の意思は置き去りにされたままだ。(第8回に続く)』、「患者は、何かしらの心理的な要因や環境的な問題があって心を病んでいる。しかし、医師はそちらへの働きかけをしないまま、薬によって解決しようとする。副作用が出るとそれを止める薬は出してくれるが、その薬にも副作用がある。医師は病気の再発を防ぐことを優先して減薬しようとしない。飲まなくなったら、同じ状態になると脅される。もっと個々人の副作用や当事者の生活に目を向けてほしい」、厚労省は精神科医や医薬品業界に忖度して、こうした日本の精神医療の問題点を放置して
いるのだろうか。精神科医も恥を知るべきだ。

第三に、12月6日付け東洋経済オンラインが掲載した精神科医・作家の樺沢 紫苑氏による「うつが「すぐ治る人」「重症化する人」の決定的差 15人に1人がかかる「心の骨折」との付き合い方 」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/382852
・『日本では現在、100万人以上の人がうつ病で治療を受けています。うつ病(気分障害を含める)の生涯有病率は6.7%。つまり、15人に1人はうつ病になる可能性があるわけです。 ここに追い打ちをかけて、新型コロナウイルス感染症に伴い、メンタル疾患の患者が激増しています。「大切なのは、うつ病の手前の段階で症状を食い止めること」と精神科医でベストセラー作家の樺沢紫苑氏は言います。 今回は、著書『ブレイン メンタル 強化大全』から、科学的にうつを予防する方法を紹介します。 うつ病は、「心の風邪」といいますが、それは早期発見、早期治療した場合の話。こじらせると非常にやっかいで、職場復帰、社会復帰するのに数年かかる場合も珍しくありません。心の風邪というよりは、「心の骨折」。再発率は約50%ともいわれ、一度かかると極めてやっかいな病気です。 健康だった人が、ある日突然、うつ病になるということはありません。「前うつ」「軽うつ」と呼ばれる「予備軍」の状態を経て、数カ月かけて、うつ病に至ります。 うつ予備軍の状態であれば、生活習慣を整え、ストレスを減らし、きちんと休養をとるだけで1~2週間で治ります。しかし、いったんうつ病になってしまうと、最低でも数カ月、場合によっては数年もかかる。極めて治りづらい状態に陥ります』、「日本では・・・15人に1人はうつ病になる可能性がある」、予想以上に割合は高いようだ。「うつ予備軍の状態であれば、生活習慣を整え、ストレスを減らし、きちんと休養をとるだけで1~2週間で治ります。しかし、いったんうつ病になってしまうと、最低でも数カ月、場合によっては数年もかかる。極めて治りづらい状態に陥ります」、「うつ予備軍」の段階で「治す」のが重要なようだ。
・『大事なのは「うつ予備軍の状態」で治すこと  「うつ予備軍」とは「風船がはちきれそうな状態」で、「うつ病」とは「風船が破裂した状態」。予備軍の段階で膨らんだ風船の空気を抜くのは簡単ですが、破裂した風船を完全に修復してもとに戻すのは極めて難しいのです。 つまり、予備軍の段階で、きちんと対応すればうつ病には進行しません。うつ病は、予備軍の状態で必ず治す。これだけは、覚えておいてほしいです。 うつ病の予防法は、「睡眠・運動・朝散歩」です。私は、「睡眠・運動・朝散歩」こそが、「究極のうつ病予防」であり、「すべてのメンタル疾患の予防法」と考えます。ですから、元気なときから、つまりメンタル的になんの問題もないときから、「睡眠・運動・朝散歩」を当たり前の習慣にしてほしいのです。 うつ予備軍の状態から、健康の状態に戻す方法もまた、「睡眠・運動・朝散歩」です。「飲酒・喫煙」も重要なメンタルの悪化因子。そして、「休養」「ストレス解消」も必須です。「休養」とは、頭の中を空っぽにすることです。 家に帰っても、「会社での失敗」「会社での人間関係」「不安なこと」を考えていては、休養にもリラックスにもなりません。「睡眠」「運動」「朝散歩」「禁煙・節酒」「休養」「ストレス解消」を、普段からの習慣にしてください』、私は、「「睡眠」「運動」「朝散歩」「禁煙・節酒」「休養」「ストレス解消」」のうち、「禁煙」も最近踏み切ったので、全てやっていることになる。
・『「うつ予備軍」の3つの兆候  明らかにうつ病になる前に、うつ予備軍の状態で発見したい。私の経験から導かれた、予備軍の兆候を3つお伝えします。 ①ミスが増える(「ミスが増える」というのは、非常に多いです。会議の予定をすっぽかす。書類の提出を忘れていた。電車の棚にカバンや荷物を置き忘れる、というのも多いです。 ミスが増えるというのは、うつの兆候というよりは、脳が疲れている「脳疲労」の兆候です。ここで、きちんと睡眠、休息をとって脳の疲れを回復すれば、うつ病への進行を食い止められます。 ②朝、起きるのがつらい(朝、起きるのがつらい。午前中の調子、気分が悪い。これらの兆候は、セロトニンが低下している兆候です。これが何カ月も続くと、うつ病に進行する可能性もあります。また、「ぐっすり眠れない」「寝付きが悪い」「途中で目が覚める」という睡眠障害も、うつ病の前兆の可能性があります。 ③全身倦怠感などの身体症状(身体が重だるい。全身倦怠感。睡眠で疲れがとれない。慢性的に疲労がたまった感じがするのも同様です。それらが局所的に現れると、頭痛、頭重感、肩こり、首のこりという訴えも多い。 うつ病患者の6割は、最初に精神科ではなく内科などの身体科を受診します。そこで一通り検査をして異常がない場合は、メンタルが疑われます。 うつ病というのは「精神症状」への影響がメインと思われるかもしれませんが、「精神症状」と「身体症状」が半々で、後者が初発症状として出る場合が多いのです) 以上の3つの症状に当てはまる人は、非常に多いのではないでしょうか。いずれも脳疲労や身体的疲労がたまっている状態で、うつ病に限らず、多くのメンタル疾患や生活習慣病の予備軍の症状にも通じます。 ということで、これらの兆候が見られた方は、「睡眠、運動、朝散歩、節酒・禁煙、休養、ストレス発散」。6つの生活習慣改善を徹底して行ってください』、現役時代は、「朝散歩」「禁煙」は出来てなかったので、「予備軍の兆候」のうち、①、②が時々出現した。ただ、「予備軍」のままで終わったのはラッキーだった。
・『「朝15分の散歩」をするだけで予防できる  睡眠や運動などの生活習慣を変えるのは大変かもしれませんが、最もてっとり早く取り入れられておすすめなのが「朝15分の散歩」です。 朝、太陽の光を浴びながら散歩をすると、セロトニンが活性化します。セロトニンは、私たちの心と身体の健康のために不可欠な脳内物質です。 セロトニンは、「心の安定」「癒やし」「やすらぎ」のもととなる静かな幸福物質。脳内物質の指揮者ともいわれ、ドーパミンやノルアドレナリンなどを調整し、気分や感情を安定させます。ストレスに対する緩和作用もあり、セロトニンが十分に出ていれば、多少のストレスで動じることもありません。ノルアドレナリンとともに集中力にも深く関与しており、集中力やパフォーマンスを高めて、バリバリ仕事をするためにも必須の物質です。 「本当にたった15分の散歩で、そんなに効果があるの?」と半信半疑の方も多いと思います。しかし私の元には +適応障害がよくなり再就職できた +仕事のパフォーマンスが2倍になった +うつ病が改善した +朝散歩で劇的に体調が変わった などの体験談が多く寄せられています。 医師としてのこれまでの経験から、薬を飲んでもうつ症状がよくならない人には「夜型生活」「昼夜逆転の生活」を送っている人が非常に多いことがわかっています。 朝起きて、しっかり朝日を浴びて、近所を散歩する。たったこれだけでうつを予防できると思えば安いものです。だまされたと思って試してみてください。数日続けると、体と心が軽くなっていくのが実感できるはず。 もしそれでも効果がなく、「気分の落ち込み」「何をしても楽しくない」「意欲の低下」などうつ病の症状が見られる場合は、すぐに精神科を受診してください』、「朝起きて、しっかり朝日を浴びて、近所を散歩する。たったこれだけでうつを予防できると思えば安いものです」、同感だ。体内時計も「朝日」でセットされるので、夜中には眠くなるのだろう。
タグ:①ミスが増える ③全身倦怠感などの身体症状 排除を狙ったはずの警備会社などの民間移送業者が、今も精神科病院への移送のメインプレーヤーとして利用されている 15人に1人はうつ病になる可能性がある 「朝15分の散歩」をするだけで予防できる 大事なのは「うつ予備軍の状態」で治すこと うつ予備軍の状態であれば、生活習慣を整え、ストレスを減らし、きちんと休養をとるだけで1~2週間で治ります。しかし、いったんうつ病になってしまうと、最低でも数カ月、場合によっては数年もかかる。極めて治りづらい状態に陥ります 「睡眠」「運動」「朝散歩」「禁煙・節酒」「休養」「ストレス解消」 ブレイン メンタル 強化大全 「うつが「すぐ治る人」「重症化する人」の決定的差 15人に1人がかかる「心の骨折」との付き合い方 」 いきなり見知らぬ男たちに連れて行かれた 都道府県知事が公的責任において行う制度が新設 実はAさんの様子を心配した親族がよかれと思って病院に相談したところ、こんな事態になってしまったのだ 移送の中心担うのは警察官OB 施行された2000年度から2014年度までの15年間で、公的移送件数は1260件にとどまっている 民間警備会社が強制的に行うなど、人権上問題視される事例が発生していたため その後、Aさんは精神疾患ではなく、電磁波過敏症と診断 1999年の精神保健福祉法の改正 精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占める 入院をさせたい側にとって使い勝手が悪いためだ 朝起きて、しっかり朝日を浴びて、近所を散歩する。たったこれだけでうつを予防できると思えば安いものです 本来は問診、カウンセリングから始まる筈だが、いきなり投薬というのは乱暴な薬漬けだ 「通常は被害にあっても業者すら特定できないケースがほとんど」、少なくとも「業者」には家族に対し、連絡先を通知するよう義務づけるべきだ 統合失調症と診断された彼が服用していた薬 難しい責任追及 精神科移送業務の料金は警備員1人当たり1日5万円程度が相場」、結構おいしい商売のようだ 財産目当てで精神科病院送りに 「死にたい願望のある患者への投与」への注意書き 「退院」前後の投薬は信じられないような増減が目立つ 薬剤師「一気に薬が抜けると離脱症状が起こる」 「心を病む人を「薬漬け」にする精神医療への懐疑 患者や家族への副作用やリスクの説明は消極的」 精神科移送業務の料金は警備員1人当たり1日5万円程度が相場 カルテを見ると薬は処方しているけど、カウンセリングなどの心理社会的療法をした形跡がありません。退院後の診察でも、医師が本人の気持ちは聞こうとはしませんでした。薬を出すことだけが精神科医の治療だとすれば、治療をしていると言えるのでしょうが…… 処方した薬を飲むしかない 「問答無用とばかり妻に行き先も告げないままワゴン車は施設から走り去った」、息子に指示されたとはいえ、配偶者にまで「行き先も告げない」、というのはやはり問題だ 自分が行った精神科病院への移送のうち、明らかに精神疾患のある方は2割ぐらいで、あとは何らかの家族内でのトラブルが原因のように感じられた 患者は、何かしらの心理的な要因や環境的な問題があって心を病んでいる。しかし、医師はそちらへの働きかけをしないまま、薬によって解決しようとする。副作用が出るとそれを止める薬は出してくれるが、その薬にも副作用がある。医師は病気の再発を防ぐことを優先して減薬しようとしない。飲まなくなったら、同じ状態になると脅される。もっと個々人の副作用や当事者の生活に目を向けてほしい 樺沢 紫苑 厚労省は精神科医や医薬品業界に忖度して、こうした日本の精神医療の問題点を放置して いるのだろうか。精神科医も恥を知るべきだ ②朝、起きるのがつら 「うつ予備軍」の3つの兆候 医療問題 (その26)(ある朝 精神病院に強制連行された男の凶体験 「まるでSF小説」が蔓延する精神科移送業の実態、心を病む人を「薬漬け」にする精神医療への懐疑 患者や家族への副作用やリスクの説明は消極的、うつが「すぐ治る人」「重症化する人」の決定的差 15人に1人がかかる「心の骨折」との付き合い方) 「ある朝、精神病院に強制連行された男の凶体験 「まるでSF小説」が蔓延する精神科移送業の実態」 東洋経済オンライン
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パンデミック(医学的視点)(その17)(「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要、意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由、「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない) [国内政治]

パンデミック(医学的視点)については、9月16日に取上げた。今日は、(その17)(「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要、意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由、「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない)である。

先ずは、12月11日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの沙鴎 一歩氏による「「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/41327
・『来年12月までにイギリス国民の3割に接種する計画  イギリスで12月8日、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの接種がスタートした。ワクチンはアメリカのファイザーとドイツのビオンテックが共同で開発したもので、国民への大規模な接種は先進国ではイギリスが初めてだ。アメリカも近く接種を始める。同じワクチンは日本へも供給される。 報道によると、イギリスでの接種は重症化しやすい80歳以上の高齢者のほか医療関係者らが優先され、来年12月までに4000万回分(2回接種で2000万人分)の供給を受け、イギリス国民の3割に接種する。この12月中に500万回分が供給される。 イギリスの感染死は6万人に達している。このため政府が早期接種の実現を目指して12月2日にワクチンを緊急承認し、その6日後に接種を始めた。ジョンソン首相は「来年4月のイースター(キリスト教の復活祭)のころには、社会・経済活動の制限から抜け出せる。ワクチンを開発した科学者に感謝したい」と語っていたが、ジョンソン氏の思惑通りにことが運ぶとは限らない。 ワクチンに期待を寄せるのは当然だろう。しかし、ワクチンは人間の体にとって異物だ。多くの人が接種すれば、必ず副反応の訴えが出てくる』、日本での接種については、12月9日付け東京新聞によれば、厚労省幹部は「本年度中にも(高齢者や基礎疾患のある人などに)接種していきたい」、とのことだ。
・『人体にもたらす作用がすべて解明されているわけではない  とくに今回のワクチンは、人工合成した新型コロナウイルスの遺伝子の一部を使う初めてのワクチンで、人体にもたらす作用がすべて解明されているわけではない。しかも常温だとすぐに効果が失われてしまうため、氷点下70度という超低温での冷凍保存が欠かせない。超低温保存でも保管の有効期限は半年しかない。有効な獲得免疫を得るために接種が2回必要になる。 安全性と有効性を見極め、輸送と保存の冷凍施設をどう確保するか。ワクチン供給という問題はこれからが正念場である。 今回のワクチンは「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」と呼ばれる遺伝子ワクチンである。製造方法などがこれまでのワクチンとはまったく違う新しいタイプのワクチンだ。 病原体のウイルスを複製するメッセンジャーRNAの断片を人体に投与することで、ウイルスの一部のタンパク質(抗体)が細胞内で合成され、発症や重篤化を防ぐ免疫が獲得できる。 製造・開発に5年ほどかかる既存のワクチンと違い、遺伝子ワクチンは製造・開発時間が極めて早く、効き目も高いとされている。インフルエンザやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)といった感染症、がん、アルツハイマー型認知症の予防と治療への応用などが期待されている。しかし、これまで遺伝子ワクチンが承認され、実用化に踏み切った例はなかった。今回のイギリスが最初になる』、「遺伝子ワクチン」は今回が「最初になる」、ので分からない部分も多いのだろう。
・『英国では2人が、接種直後に「アナフィラキシー」に  注目すべきニュースがある。英メディアによると、12月8日、高齢者らとともに接種したNHS(国民保健サービス)のスタッフ2人が、接種の直後に「アナフィラキシー」と呼ばれる激しいアレルギー反応を示したという。2人は過去にも強いアレルギー反応が出たことがあり、症状を抑える注射薬を所持していた。2人は手当てを受けて回復した。 イギリスの規制当局は「臨床試験(治験)ではアナフィラキシーなどは出なかった」としながらも、医療関係者にこれまでにワクチンや薬、食物でアナフィラキシー症状が出たことがある人には、「ワクチンを投与しない」と一時的な勧告を出した。 なお、ここでは人体の抗原抗体反応を利用するワクチンには「副反応」、ワクチン以外の薬剤には「副作用」という表現を用いる』、「2人が、接種の直後に「アナフィラキシー」と呼ばれる激しいアレルギー反応を示した」ので、「これまでにワクチンや薬、食物でアナフィラキシー症状が出たことがある人には、「ワクチンを投与しない」と一時的な勧告を出した」、なるほど。
・『ウイルス自体が大きく変異すると、ワクチンの効き目はなくなる  ファイザーとビオンテックが共同で開発した今回のワクチンは世界各国で臨床試験が実施され、「95%の有効性が見られた」との結果が示される一方で、副反応として倦怠感、頭痛、局所の腫れ、筋肉痛、関節痛などがみられた。臨床試験と違い、今後、接種が進むと世界で何十億人がワクチンの投与を受けることになり、その過程でこれまで見えなかった副反応が出るかもしれない。 新型コロナとウイルス構造がほぼ同じSARS(サーズ)のワクチンは、マウスへの投与で重い副反応が現れて失敗した。それにウイルス自体が大きく変異してしまうと、ワクチンの効き目はなくなる。このためコロナウイルスのワクチン製造は難しいとされてきた。 日本では過去には麻疹、おたふく風邪、風疹の三種混合のMMRワクチンで重度の副反応を引きこした失敗例がある。近年では子宮頸がんワクチンで一部の接種者に重い副反応が出たことから、厚生労働省の「積極的推奨」が中断されたままになっている。 子宮頸がんワクチンは、筋肉に届くように垂直に針を深く刺す筋肉内注射の痛みから神経障害などが出るとの見解もある。今回の新型コロナワクチンも同じ筋肉内注射で投与されるため、厚生労働省は同様の障害を懸念している』、この程度の「副反応」であれば我慢するしかないのだろうか。
・『世界で140以上の製薬会社が研究開発を行うワケ  WHO(世界保健機関)によれば、世界で140以上の製薬会社が新型コロナワクチンの研究開発を行っている。これだけ多くの製薬会社がワクチン開発に乗り出すのは、「成功すれば儲かる」という判断があるからだ。製薬では利益よりも安全を優先することが欠かせない。過去の薬害事件はその苦い歴史である。 沙鴎一歩はワクチンがすべて問題だとは考えない。安全で有効なワクチンも多い。しかし、今回の新型コロナのワクチンには未知の部分が多く、どうしても不安が残る。 新型コロナウイルスは日本では8割以上の感染者が他人に感染させていないし、感染しても80%以上が無症状あるいは軽症で治癒している。どのような患者が重症化するのかはわかってきており、重症化を防ぐ治療方法も確立しつつある。しかも日本の人口100万人あたりの感染死者数は欧米の数十分の1~100分の1以下とかなり低い。 こうした観点から見ると、日本に本当に新型コロナのワクチンが必要なのだろうかと思う。 ワクチンは薬と同じく両刃の剣である。役立つ反面、危険なところもある。バランスを取ることが大切だ。日本は欧米の接種動向とそれにともなう副反応の出現を注意深く見ながら、新型コロナに対する今後のワクチン政策を行っていくべきである。ワクチン接種で重い副反応が多く出るようならそれこそ、本末転倒だ』、「日本は欧米の接種動向とそれにともなう副反応の出現を注意深く見ながら、新型コロナに対する今後のワクチン政策を行っていくべきである」、その通りだ。
・『朝日社説はワクチンのリスクに正面から触れていない  12月10日付の朝日新聞の社説は「ワクチン接種 国の貧富問わず供給を」の見出しを付け、「暗闇の中にほの見えた光は、世界中の人をあまねく照らさなければなるまい」と書き出す。 通常、社説は冒頭で読者を引き込む必要がある。それだけにこの朝日社説を書いた論説委員は熟慮したのだろうが、見出しも書き出しもこれではいただけない。まるでワクチン礼賛の社説である。なぜ、ワクチンのリスクに正面から触れようとしないのか。 朝日社説は書く。「新型コロナウイルスの感染者は6800万人を超え、150万人以上の命が奪われた」 「異例の早さで承認されたことから、効果や安全性に対する疑問の声もある。それでも、感染拡大を食い止める切り札となることへの期待は大きい」 感染の拡大を防いで死者の数を減らせれば、副反応は二の次ということなのか。沙鴎一歩にはこの朝日社説が納得できない』、「社説」であれば、功罪をきちんと書き分けるべきだ。「朝日」も困ったものだ。
・『東京社説は「英ワクチン承認 安全性の確認を慎重に」  東京新聞は朝日社説よりも3日早く、12月7日付の社説で「英ワクチン承認 安全性の確認を慎重に」との見出しを立てた社説を掲載している。 その書きぶりはワクチンを礼賛する朝日社説とは違う。東京社説は日本のワクチン政策についてこう解説する。 「日本政府は、6千万人分の供給を受けることでファイザー社と合意している。今月2日には新型コロナのワクチンの費用を国が全額負担する改正予防接種法が成立した。早ければ年度内にも承認、接種が始まる可能性がある」 「ファイザー社は日本で160人を対象に初期段階の治験を実施している。数万人を対象に最終段階の治験を行うが、欧米に比べ感染者が少なく、十分なデータが集まらない場合、海外の治験結果と合わせ承認申請する方針という」 日本はワクチンの供給を受け、接種を待つばかりの状況ではあるが、問題の副反応への対応はどうなのか。 東京社説は書く。「厚生労働省は本格的な接種を始める前に、医療従事者ら約1万人を対象として接種後、健康状態を報告してもらう安全調査を実施する予定だが、副作用への不安はぬぐえない。来年に延期された東京五輪開催をにらみ、ワクチン承認に前のめりになりがちだが、英米などの先行例を十分分析し、有効性や安全性を慎重に見極めたい」 その通りだ。日本は英米などの先行例を十分分析してからでも遅くないはずだ』、同感である。
・『世界中で多くの人がワクチンを肯定的に捉えているが…  ところで、スイスでダボス会議を主催する非営利財団の「世界経済フォーラム」などが10月に日本やアメリカなど計15カ国1万8000人に対し、新型コロナワクチンについての意識調査を行ったところ、ワクチン接種に「同意する」と答えた人は15カ国の平均で73%、「同意しない」とした人は27%だった。世界の多くの人々がワクチンを肯定的に捉えている。 ワクチン接種に同意すると答えた人の国別の割合ではインドが87%で、これに中国85%、イギリス79%、日本69%、アメリカ64%、フランス54%だった。 同意しない理由として34%の人が「副反応への懸念」を挙げていた。副反応に対する不安解消は、欠かせない大きな課題である』、「ワクチン接種に同意すると答えた人」が「日本69%」とは意外に少ないようだ。背景には、厚労省のワクチン行政への不信があるのかも知れない。

次に、12月14日付けJBPressが掲載したステラ・メディックス代表取締役/編集者 獣医師の星 良孝氏による「意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63250
・『世界は、新型コロナウイルス感染症のワクチンの話題で持ちきりだ。そうした中で、さほど注目されていないが、一つ、筆者が気になるニュースがあった。 アストラゼネカが、ロシアのガマレヤ国立疫学微生物学研究所とワクチンで協力するというニュースだ。自社製ワクチンとロシア製ワクチンを組み合わせた臨床試験を始める。2020年の中頃は拙速な承認だと欧米諸国から批判を受けたロシアだが、ここに来てのアストラゼネカの協業は、ロシアのワクチンを評価するような動きにも見える。 かねて筆者はロシアのワクチンに対するアプローチが、ワクチンの弱点とされる点をうまくカバーしていると考えていた。今回、アストラゼネカがロシアの研究所と協業した背景とも関係しており、ワクチンの有効性を考える参考になると思い、その辺りについて考察する』、「ロシアのワクチンに対するアプローチが、ワクチンの弱点とされる点をうまくカバーしていると考えていた」、意外に進んでいるようだ。
・『「フェーズ3」を飛ばして承認したロシア  ロシアや中国は2020年の夏にいち早くワクチンを承認および緊急的に接種を開始したが、社会主義国家特有の強引さに対する偏見もあるのか、「有効性や安全性の検証がおろそかであり、あまりに拙速だ」と批判を浴びた。 確かに、ロシアは、1万人を超える健常者を対象とするような最終段階の臨床試験、フェーズ3をスキップして承認に踏み切った。リスクがあるので、そこは批判を浴びても仕方がない。中国も同様だ。 さらに言えば、欧米の中だけではなく、ロシア国内でもワクチンのフェーズ3を飛ばしたことは禍根を残している。 12月9日、ロシアの独立系英語メディアであるモスクワタイムズは、ロシアでは医療従事者などのエッセンシャルワーカーを対象にワクチン接種を進めていると報じた。 この記事では、ワクチン接種について医師らの不信感も募っている状況も示されている。医師らはワクチン接種を拒否している状況というのだ。「ワクチン接種を拒絶すれば、上司からクビを宣告されるかもしれない」と不安のコメントも載せている。 医師が接種に積極的になれない理由はフェーズ3の情報がないからだ。ワクチンに期待を抱いている一方で、様子見したい気持ちが強いようだ。こうした状況を見ると、通常を上回るペースでの開発プロセスは世界共通であり、欧米や日本でもワクチン忌避が課題になるのは間違いない。 ロシア国内も含め、ロシア産ワクチンには疑いの目がいまだに強いが、筆者からすると、社会主義国のワクチン開発は正々堂々としている面もあると、以前から感じていた』、「正々堂々としている面」とはどういうことだろう。
・『ワクチンの情報公開はしっかりしている中露  その理由は論文発表での情報公開の姿勢だ。特に中国だが、欧米で先行するアストラゼネカ&オックスフォード大学、ビオンテック&ファイザー、モデルナといった企業と比べて、早い段階から研究の詳細を中立的な論文で発表していた。 中国がフェーズ1の最初の論文報告したのは2020年5月のこと。中国から感染症が出たとされるので当たり前かもしれないが、欧米などから論文が出始めたのは2020年8月以降なので随分と早いという印象を持った。ロシアのガマレヤ研究所も拙速な承認だと批判されながら、フェーズ1/2の論文を9月に発表している。 こうした論文もまゆつばではないかと言われるかもしれないが、査読を経た論文であることは確か。論文発表後に、それに対する反論が発表される場合もあり、実際に出ていたが、ロシアのグループは誌上で疑問に対して回答を寄せている。 これらの情報公開がなかったら、中国やロシアへの風当たりはもっと強かっただろう。 2020年11月に、ロシアのグループはロシア製ワクチン「スプートニクV」が92%の有効性を示したと中間報告した。アストラゼネカとの協業につながったことからも分かるように、ある程度、それが欧米諸国から受け入れられたように見えるのは、9月の論文発表で科学的なデータを示した経緯があったからであるように思われる。ロシアのグループは現在4万人のボランティアを対象として、スプートニクV、あるいはプラセボを接種して、感染者の発生に差が出るかを調べている。20人のケースが出たところで、今回の有効性の結果を得たと説明している。 ロシアのワクチンについては、他国のワクチンにはない、特徴的な優位性がある。ロシアのワクチンは、1回目の接種と2回目の接種でワクチンを体内に届ける「運び屋」を変えている点だ。だからこそ、アストラゼネカはロシアとの提携に動いたという面があると見ている』、「ロシアのワクチンは、1回目の接種と2回目の接種でワクチンを体内に届ける「運び屋」を変えている」、とは確かに「特徴的な優位性」だ。
・『「運び屋」の弱点を補うロシア製ワクチン  どういうことかというと、ロシアのグループはワクチンの病原体の一部を、アデノウイルスという風邪のウイルスによって運ばせている。このアデノウイルスの中に新型コロナウイルスの遺伝情報を組み込んでいるが、1回目と2回目で、運び屋になるアデノウイルスの型が異なっているのだ。 わざわざ型を変えているのは、ワクチンの懸念点とかねて言われていた点をクリアするための設計思想が背景にあると考えられる。ロシアの研究グループは、論文の中で明確にその狙いを説明している。 そもそもワクチンとは、病原体の一部をあらかじめ免疫細胞に記憶させるという医療行為だ。新型コロナウイルスの一部が体に入ることで、それを異物と認識できるようになる。その結果として、ウイルスが本当に体内に侵入した時に抵抗することが可能になるのだ。 そのためには、何らかの方法で病原体の一部を体に送り込む必要がある。その方法として、たんぱく質の一部を断片として送り込む、病原体の一部を設計図としてDNAやRNAといった化合物に組み込んで送り込む、アデノウイルスのようなウイルスに設計図を組み込んで送り込む。このように送り込むワクチンを媒介するのが運び屋だ。英語ではベクター(vector)と呼ばれている。 問題は、運び屋に対して免疫反応が発動する場合があることだ。例えば、運び屋の一つであるアデノウイルスは風邪のウイルスなので、必然的に、体はこれに免疫反応を引き起こす。この反応が強くなると、ワクチンの本体となる新型コロナウイルスの病原体の一部を体内にうまく送り込めなくなる恐れがある。荷物を運ぶトラックが壊され、積み荷まで破壊されるようなイメージだ。そうなると、ワクチンの効果が下がる可能性があるわけだ。 ロシアのワクチンの優れたところは、運び屋を2回で別の型に分けていることだ。免疫反応は、以前に出合ったものに強く出るので、最初に接種した運び屋に対して体が備える免疫反応を避けることができる。2回目のワクチンのアデノウイルスは異なるので、備えたアデノウイルスに対する免疫反応が発動しづらくなる。 ロシアの9月の論文では、こうしたワクチンの設計を巡る背景を指摘している。 ワクチンの懸念点としてたびたび指摘されるのは、免疫反応ができることで感染を悪化させる「抗体依存性感染増強(ADE)」だ。このADEほどではないが、運び屋であるベクター自体に対する免疫反応も懸念の一つに数えられる。ロシアのワクチンはベクターに対する免疫反応を意識した作りになっている。こうしたワクチンはなかなか他にない。 このたびアストラゼネカがロシアと組むという方針が明らかになったが、アストラゼネカが採用しているベクターはチンパンジーのアデノウイルスで、ロシアのグループが採用している2種類のアデノウイルスともまた異なっている。ベクターが内包する課題を回避するような新しい設計を組めるわけだ。 世界がロシアのワクチンに注目する理由は、この設計思想にあると考える』、「ロシアのワクチンの優れたところは、運び屋を2回で別の型に分けていることだ」、「世界がロシアのワクチンに注目する」わけだ。
・『複数ワクチンの組み合わせに可能性  ロシアも感染症の押さえ込みには苦労している。米ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、累計感染者は250万人を超えており、死亡者は4万5000人に達している。日本の10倍超の水準で、大きな第2波に見舞われている。ワクチン承認が拙速だと批判されたが、それだけ状況が緊迫しているということだろう。 ワクチン開発では、世界各国が従来以上に緊密な連携を取ることが重要だ。ワクチンを巡っては、ワクチンの供給を通して覇権を競うような見方もあるが、ロシアのワクチンを見ると、組み合わせていく方にこそ妙があるとも言える。 英国ではアストラゼネカとファイザーのワクチンの組み合わせが今後、検証される予定だ。ファイザーのワクチンはRNAという化合物を使っており、また別の運び屋が用いられている。ロシアのワクチンとの組み合わせを検証しつつ、他の組み合わせも確かめる意図があると推定される。有効性の向上につながる組み合わせを模索する余地は今後、開発されるワクチンの数だけある。小規模な企業のワクチンを、先行する世界的な製薬企業のワクチンを主に、それと組み合わせるような、コバンザメのような利用価値も出てくるかもしれない。 欧米のワクチンも有効性の疑問やアレルギーのリスクなど、依然として問題は残っている。日本でもワクチン開発は進められ、欧米と比べて遅れているとの指摘もあるが、単独での使用に加えて、他社のワクチンとの組み合わせも含め、存在価値を探る余地はまだまだ大きいと見える』、「組み合わせていく方にこそ妙があるとも言える。 英国ではアストラゼネカとファイザーのワクチンの組み合わせが今後、検証される予定」、なるほど。中国製の「ワクチン」にこの記事では触れられてないが、中国は途上国外交上のテコとして「ワクチン」を大々的に活用。ただ、ペルーでは被験者に神経症の症状が出たとして、治験を中止。他方で、アラブ首長国連邦(UAE)は9日、臨床試験で86%の有効性が確認されたと発表。「外交上のテコとして「ワクチン」を大々的に活用」、という「中国」のやり方も困ったものだ。

第三に、12月13日付けPRESIDENT Onlineが掲載した順天堂大学医学部教授の小林 弘幸氏による「「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/41221
・『日本で新型コロナの重傷者や死者が少ない要因を、京都大学の山中伸弥教授は「ファクターX」と名づけた。その正体はなにか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「さまざまな研究からファクターXは2つに絞られた」という——。 ※本稿は、小林弘幸著、玉谷卓也監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『アジア諸国と他地域の死者数の差  今回の新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックでは、アジアと欧米で大きく被害状況に差が出ました。欧米諸国の肥満率の高さなど健康水準のちがいが指摘されていますが、それだけでは説明できません。 日本では、中国のように強権的なロックダウンを行ったわけでも、台湾のように各国から賞賛される国家レベルの対策を打ったわけでもありません。 2020年4月の緊急事態宣言の発出によって感染の広がりをある程度抑えられたことは確かですが、欧米に比べ1カ月近く中国からの入国制限は遅れ、宣言発出まで満員電車は変わらずに走り続け、すでにかなりの数の国民に感染していることは明白でした。 しかし、PCR検査の体制が整わず、発症した患者にしか検査が行われなかったため、その実態も見えないままに時が経っていったのです。 それでも、世界、とくに欧米と比較すれば奇跡のように少ない発症者数、死亡者数で今日まで推移しています。国民の健康水準だけでなく、感染または発症を防いだ、なんらかの外的要因があったことは間違いないでしょう。 日本において被害が抑えられた未知の要因を、京都大学の山中伸弥教授は「ファクターX」と名づけ、その解明が進められています。ここでは、日本に限らず広くアジアの範囲で「ファクターX」について考えてみましょう』、「日本に限らず広くアジアの範囲で」、というのは「日本」だけよりも分析が深まる筈だ。
・『示唆的な「BCGワクチン」と「交差免疫」  まずは、新型コロナウイルス感染症による被害状況をデータで見てみましょう。以下の表は、2020年10月1日時点での新型コロナウイルスの流行状況のデータです。 (図表1はリンク先参照) 「感染者数における死亡率」を見ると、感染症の被害が甚大だった欧米、中南米と日本・中国・韓国の数値に大きな差はないように見えます。しかし、実際のところ「感染者数」は各国の検査体制に左右されるため、あまり参考になりません。 そこで、注目すべきは「人口100万人あたりの死亡者数」です。アメリカやブラジルでは100万人あたりで500人以上が死亡。同等かそれ以上の死者が、欧州や南米地域で出ています。 一方、日本、中国、韓国のほか、この表にはない東南アジア諸国を含むアジア全体で、100万人あたりの死者数は低い数値を示しています。また、死者数だけでなく、100万人あたりの感染者数も少ない傾向にあります。 結論からお伝えしましょう。 アジア諸国の被害の少なさの要因であるファクターXは、「BCGワクチン」と「交差免疫」の存在なのではないかと考えられています』、具体的な例証をみてみよう。
・『BCGワクチン接種国と比較的少ない感染者数・死亡者数の相関性  BCGワクチンは子どもの結核予防で接種するワクチンで、日本では1949年から接種が法制化されています。二の腕に痕が残る、あの注射ですね。 ちなみに、かつては乳幼児、小学生、中学生の計3回接種が行われましたが、現在では乳児期に1回接種するだけに変わっています。 BCGワクチンによる新型コロナウイルスの感染・重症化の抑制には懐疑論もありますが、実際に接種を行っている国では感染者数・死亡者数ともに驚くほどはっきりと抑えられているのが事実です。 例えば、スペインとポルトガルは同じイベリア半島にあり、人の行き来も多く、人種や食文化は似ています。 しかし、BCG接種国であるポルトガルの感染者数・死亡者数はスペインよりもずっと低いのです。人口100万人あたりの死亡者数(2020年10月1日時点)では、スペイン687人に対し、ポルトガル192人。3分の1以上の被害状況の開きがあります。 アジア圏のほとんどの国では、BCG接種が義務づけられています』、「BCG接種国であるポルトガルの・・・人口100万人あたりの死亡者数(2020年10月1日時点)では、スペイン687人に対し、ポルトガル192人。3分の1以上の被害状況の開きがあります」、隣の国でこんな開きがあるとは驚かされた。
・『BCGワクチンによる訓練免疫の効果  それに対し、新型コロナウイルスによる甚大な被害を受けているアメリカやイタリアでは、BCG接種を義務づけてきませんでした。また、欧州では多くの国が1970年代以降、BCGの接種を中止していたのです。 118カ国のBCG接種状況と新型コロナウイルスの被害状況との関連性を調べた、昭和大学の大森亨准教授の研究によれば、感染者数の増加速度で約1.7倍、死亡者数の増加速度で約2.4倍の差が生じていることがわかっています。 BCGが新型コロナウイルスを抑えるメカニズムは明確になっていません。しかし、以前からBCGが免疫力を強化し、とくに乳幼児では結核以外の病気に対する耐性を高め、死亡率を半分にしていることがあきらかになっています。 また高齢者に対しても、呼吸器への感染を減少させる効果があることが報告されています。 さまざまな研究から、BCGには免疫系を訓練して、活性化しやすい状態にする効果があると考えられているのです』、「118カ国のBCG接種状況と新型コロナウイルスの被害状況との関連性を調べた・・・感染者数の増加速度で約1.7倍、死亡者数の増加速度で約2.4倍の差が生じている」、「BCGには免疫系を訓練して、活性化しやすい状態にする効果がある」、「BCG」にこんな効用があったとは初めて知った。「新型コロナウイルス」用の「ワクチン」接種よりも有効なのかも知れない。
・『「メモリーT細胞」の存在  もうひとつのアジア圏におけるファクターXは、「交差免疫」です。 アジア圏では、過去にも別種のコロナウイルスに感染した経験のある人が多く、新型コロナウイルスに対して獲得免疫が機能したのではないか、と考えられています。 このように、近縁のウイルスで得た獲得免疫が機能することを「交差免疫」といいます。近年に確認されたコロナウイルスは7種類あります。 ・新型コロナウイルス ・SARS(重症急性呼吸器症候群)……2002年に中国で発生 ・MERS(中東呼吸器症候群)……2012年にアラビア半島で発生 ・そのほか、4種類の普通の鼻風邪ウイルス これらはすべて、コロナウイルスの仲間たちです。前半の3種類は下気道(気管・気管支・肺)に感染し、肺炎などの重篤な症状をもたらすコロナウイルスですが、あとの4種のコロナウイルスは上気道(鼻・口・咽頭)に軽い風邪の症状を起こすだけ。 日本の風邪のなかではライノウイルスに次いで2番目に感染が多い、ありふれた鼻風邪のウイルスです。おそらく、多くの方に感染の経験があるはずです。 新型コロナウイルスも、SARS、MERS、鼻風邪のウイルスも、同じコロナウイルスである以上、遺伝子の構造は似通っています。 そのため、別のコロナウイルスの情報を記憶した「メモリーB細胞」や「メモリーT細胞」などの免疫細胞が、新型コロナウイルスにも共通する目印を見つけて対処したのではないかと考えられています』、なるほど。
・『近縁のウイルスで得た獲得免疫が機能しているのか  実際に、アメリカでは新型コロナウイルスの症状がない健康な人の4割から6割が、新型コロナウイルスに反応するT細胞を持っていたことがわかっています。 SARSは中国で発生してアジアに広がり、MERSも中東から発生して中国にも広がったように、コロナウイルスの中心地はアジアといえます。 そのため、アジアではアメリカ以上に、交差免疫による新型コロナウイルスにも反応するT細胞を持つ人の割合が高い可能性があるのです。 まだまだ検証段階ではありますが、これが実証されれば、PCR検査や抗体検査だけではなく、T細胞の検査によって感染リスクを測ることが、新型コロナウイルス感染症の拡大抑止に重要な役割を果たすでしょう。 さらに、新型コロナウイルスに対する免疫の状態だけではなく、感染・重症化リスクの遺伝要因および環境要因が研究で明らかになってきています。 このような研究をもとに、新型コロナウイルス感染症の感染・重症化リスクを判定する検査も受けられるようになってきています(筆者プロフィールにリンクあり)。こうした検査によって自分のリスクを把握することで、適切な新型コロナウイルス感染症への対策が可能となります』、「ウイルス」に関する我々の知識はまだまだのようだ。もっとも、「ウイルス」自体が進化していくので、研究もいたちごっこにならざるを得ないのだろう。
タグ:「意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由」 星 良孝 JBPRESS アラブ首長国連邦(UAE)は9日、臨床試験で86%の有効性が確認された さまざまな研究からファクターXは2つに絞られた (医学的視点) パンデミック ワクチンの情報公開はしっかりしている中露 世界がロシアのワクチンに注目する (その17)(「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要、意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由、「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない) BCGには免疫系を訓練して、活性化しやすい状態にする効果がある 感染者数の増加速度で約1.7倍、死亡者数の増加速度で約2.4倍の差が生じている 「ワクチン接種に同意すると答えた人」が「日本69%」とは意外に少ないようだ。背景には、厚労省のワクチン行政への不信があるのかも知れない 沙鴎 一歩 PRESIDENT ONLINE 中国は途上国外交上のテコとして「ワクチン」を大々的に活用 組み合わせていく方にこそ妙があるとも言える。 英国ではアストラゼネカとファイザーのワクチンの組み合わせが今後、検証される予定 「メモリーT細胞」の存在 山中伸弥教授は「ファクターX」 「「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない」 小林 弘幸 世界中で多くの人がワクチンを肯定的に捉えているが… ペルーでは被験者に神経症の症状が出たとして、治験を中止 複数ワクチンの組み合わせに可能性 ロシアのワクチンの優れたところは、運び屋を2回で別の型に分けていることだ ロシアのワクチンに対するアプローチが、ワクチンの弱点とされる点をうまくカバーしていると考えていた BCGワクチン接種国と比較的少ない感染者数・死亡者数の相関性 示唆的な「BCGワクチン」と「交差免疫」 東京社説は「英ワクチン承認 安全性の確認を慎重に」 「ロシアのワクチンは、1回目の接種と2回目の接種でワクチンを体内に届ける「運び屋」を変えている」、とは確かに「特徴的な優位性」 「ウイルス」に関する我々の知識はまだまだのようだ。もっとも、「ウイルス」自体が進化していくので、研究もいたちごっこにならざるを得ないのだろう 近縁のウイルスで得た獲得免疫が機能しているのか 「運び屋」の弱点を補うロシア製ワクチン 近縁のウイルスで得た獲得免疫が機能することを「交差免疫」 社会主義国のワクチン開発は正々堂々としている面もある 「フェーズ3」を飛ばして承認したロシア 朝日社説はワクチンのリスクに正面から触れていない 日本は欧米の接種動向とそれにともなう副反応の出現を注意深く見ながら、新型コロナに対する今後のワクチン政策を行っていくべきである 世界で140以上の製薬会社が研究開発を行うワケ 118カ国のBCG接種状況と新型コロナウイルスの被害状況との関連性を調べた BCGワクチンによる訓練免疫の効果 BCG接種国であるポルトガルの感染者数・死亡者数はスペインよりもずっと低いのです。人口100万人あたりの死亡者数(2020年10月1日時点)では、スペイン687人に対し、ポルトガル192人。3分の1以上の被害状況の開きがあります ウイルス自体が大きく変異すると、ワクチンの効き目はなくなる 英国では2人が、接種直後に「アナフィラキシー」に 「遺伝子ワクチン」は今回が「最初になる」、ので分からない部分も多いのだろう 人体にもたらす作用がすべて解明されているわけではない 日本での接種については、12月9日付け東京新聞によれば、厚労省幹部は「本年度中にも(高齢者や基礎疾患のある人などに)接種していきたい」、とのことだ 日本に限らず広くアジアの範囲で「ファクターX」について考えてみましょう 来年12月までにイギリス国民の3割に接種する計画 アジア諸国と他地域の死者数の差 「「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要」
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中小企業(その1)(中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘、成長戦略会議での日商発言に感じる 「低賃金国家」日本の遠い夜明け、菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている) [経済政策]

今日は、中小企業(その1)(中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘、成長戦略会議での日商発言に感じる 「低賃金国家」日本の遠い夜明け、菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている)を取上げよう。日本で中小企業政策は、聖域化され、新銀行東京、日本振興銀行、東京都証券化、中小企業金融円滑化法など、失敗の連続だった。

最近のところでは、先ずは、11月22日付け日刊ゲンダイ「中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/281302
・『山口義行氏(立教大学名誉教授)インタビュー  菅政権は中小企業再編を主張するデービッド・アトキンソン氏やかつて不良債権処理を手掛けた竹中平蔵氏を成長戦略会議の民間議員に起用した。地方銀行再編ももくろむスガノミクスは時代に逆行していると、長年、中小企業支援をしてきたプロである山口義行氏(立教大学名誉教授)は指摘する。 中小企業と言っても業種も大きさも違いますが、全体としてコロナの影響で経営が厳しいことは間違いない。今年前半の政策もあって資金的には非常に緩い状況にありますが、売り上げが伸びないので依然として経営は厳しいままです。 経済の現状を、私は「8割経済」と表現しています。売り上げが8割まで戻ってきているが、そこで止まってしまっている。中小企業は売り上げが14%減ると赤字になると言われています(大企業は30%)。多くの中小企業が赤字です。それでもやっていられるのは今のところは銀行借り入れを増やした結果、資金的には余裕があるからです』、「多くの中小企業が赤字です。それでもやっていられるのは今のところは銀行借り入れを増やした結果、資金的には余裕があるから」、その通りだろう。
・『厳しい飲食と製造業  中小企業でもとくに飲食や小売りが厳しいのはみなさんご存じでしょうが、地方都市の、地域密着型の店は前年比プラスのお店が多いんです。リモートワークになり、また人混みが嫌気され、都心ではなく地元で消費することが増えたからです。他方、都心型のお店はガタガタです。売り上げが落ちてくるとテナント料が払えないということで、渋谷などでも前年比2倍くらいのテナント募集があるくらいです。 たとえば地域密着でやってきた老舗の和菓子屋さんなどはいいのですが、全国販売を目指して都心の百貨店などに入ってきたお菓子屋さんはガタガタです。消費の構造に大きな変化が起きて、向かい風のお店と追い風のお店で二極化している。ただ、全体としては非常に景況が悪い。 あと製造業が悪くて、雇用をどんどん減らしています。輸出が伸びないからです。自動車産業も8月くらいから生産調整を戻したと言っていますが、いいのはトヨタ自動車くらい。トヨタ以外の下請けは依然として前年比3割減くらいが続いている。欧州も悪くなっているし、米国も個人消費が伸びていないため再び生産調整が来るという不安もある。先行きを警戒している状態です』、「製造業が悪くて、雇用をどんどん減らしています。輸出が伸びないからです」、厳しそうだ。
・『地銀再編論は的外れ  その中で菅政権では地方銀行の再編、中小企業の再編を促す動きがあります。地方の金融機関の経営が厳しいことは事実です。それをなんとかするのに、金融機関の数を減らすという発想なのですが、これは単純な需給均衡論で、現実にまったくそぐわない発想です。 第一に、金融機関の数を減らしても需給は均衡しません。たとえばレストランが3つあるがどうも多すぎるというので、2つに減らしたとする。この場合には、供給が減りますから、確かに需給バランスがよくなる。しかし金融機関の場合、3行を2行にするとどうなるか。預金の切り捨てはできませんから、吸収された金融機関の預金を残りの金融機関が引き受けることになる。ですから資金の供給過多、カネ余り状態は変わらないわけです。結果として、金融機関の苦しい経営状態も変わりません。 もうひとつはバンカー機能が低下します。資金需給のバランス回復には資金需要を増やすことが必要です。そのためには金融機関は率先して企業の事業創造のお手伝いをしなければなりません。ところが金融機関を減らせば結果的には支店を減らし、行員の数を減らすことになります。すると行員1人当たりが受け持つ企業の数が増え、行員は企業の面倒をますます見られなくなる。いわゆるバンカー機能はむしろ低下するわけです。こうなった場合に地銀はどうするか。金が余っていますから、外国の債券などを買うことで利益を得る方向に走る。そんなことをしていても地域経済は強くなりません。政府はまったくナンセンスな議論をしています』、「支店を減らし、行員の数を減らす」結果、企業向けの貸出が減って、「外国の債券などを買う」、というのは確かに「地域経済」にはマイナスだ。
・『大企業こそが行き詰まっている  バンカー機能復活のための議論を  確かに金融機関は全体的に資金需要が少ない中で稼げなくなっています。これまで国債運用でなんとかやっていたが、国債がゼロ金利になりマイナス金利になり、国債を買っても運用差益が出ない。金融機関が利益を稼ぐ場面がなくなってしまった。そこで地域企業の事業を大きく育てようという方向にいけばいいのだけど、なかなかできていない。これを変えるためには、たとえば人事の評価のあり方を変える必要があります。貸し出しを増やしたから給料を上げるのではなく、事業創造や企業の面倒を見るのにどれだけがんばったのか、そういう種まきの機能をきちんと評価する制度にする必要があります。今のやり方だと懸命に企業の面倒を見て、2、3年経ってなんとか資金需要が生まれるくらいに事業が育ったところで担当者が異動となり、すべての努力が後任者の評価になってしまう。そうした金融機関の運営上の問題をもっと議論しなければいけないはずです。ところがそうではなく金融機関の数を減らせばいい、と。そういうバカバカしい議論にくみしているところに菅さんの限界が出ています。 さらに中小企業自体も生産性が低いからと減らし、再編して大きくすべきだと言っています。中小企業の利益率が低いのは小規模な中小企業が多いからだという発想です。しかし企業規模と利益率は必ずしも相関しない。たとえば大手自動車メーカーの下請けは非常に低い利益率で経営しています。利益が出ても親会社から設備投資をしろなどと言われ借り入れをすることになる。断れば下請けの仕事がなくなるためやらざるを得ない。そういうカツカツの利益で中小企業がやっているから日本の大企業はもっている。こういう構造を問題にしないで中小企業の数を減らせばいいと言うのは、これもまた単純な議論です。 愛知県の社員50人くらいのある会社がトヨタの下請けをやめたんです。自動車関係の仕事をやめると仕事の量が確保できないため社員が10人ほどに減りましたが、いまは宇宙産業や医療関係の仕事をやっていて利益率は以前よりはるかに高い。結局、従業員をたくさん抱えていると利益よりも仕事の量を確保しなければならなくなり、親会社の言いなりになってしまう。そこから脱却したのが良かったんです。規模はむしろ小さくなった。 コロナ禍でリモートワークも広がって今後は消費が地方に分散していく傾向にある。結果として、市場が細分化していきます。大企業が細分化した市場を相手にすると、コストがかかりすぎます。ずうたいの小さい中小企業の方が適している。 たとえばイタリアの小規模な時計屋の時計はたくさん売れないけど、1個数十万円、数百万円でも売れる。ところが、日本の大企業の時計は性能が良くても値段はソコソコ。そのかわり大量に売ることができる。会社の規模の大きさに応じてビジネスモデルが違うわけです。これからの日本は、高付加価値な商品を提供できる中小企業をたくさん輩出することが重要なんです。 規模を大きくして生産性を高めるというのは、効率的な生産をして同じモノを同じ時間でより大量に作れるようにすることです。しかし大量に作っても今の時代売れません。マーケットが急拡大していれば別ですが、経済が成熟期にありますから、そんなにマーケットも伸びないわけです。その意味で、いま行き詰まっているのは実は大企業の方です。それなのに中小企業を整理して大きくしようという発想は理解できません』、「人事の評価のあり方を変える必要・・・貸し出しを増やしたから給料を上げるのではなく、事業創造や企業の面倒を見るのにどれだけがんばったのか、そういう種まきの機能をきちんと評価する制度にする必要」、そうした項目を基盤項目として評価する動きはだいぶ以前からある。「高付加価値な商品を提供できる中小企業をたくさん輩出することが重要」、その通りだが、極めて難しい課題だ。
・『財務省の狙い  政府は中小企業を今まで守りすぎたという議論を持ち出すことで、財政支出を伴う中小企業支援策を縮小することを正当化したいのではないでしょうか。 民主党連立政権時代には緊縮財政と言っていた財務省が、(第2次安倍政権後)ころっと変わってバラマキを容認し始めましたよね。ある時、財務官僚に「これでいいのか」と聞いたら、「これは消費税を上げるための戦略だ」と言いました。消費税はもう10%に上がってしまった。さらにコロナで大量にお金を使ってしまった。財務省はこれからは財政支出を抑えるしかないと考えている。 この考え自体は国を心配してのことなんでしょうが、正直に「国はこれ以上お金を出せない。勘弁してくれ」とは言わない。これまで中小企業を守りすぎた。これからは数を減らして再編すべきなんだという理屈を持ち出す。しかしこれは現実にそぐわない理屈です。 中小企業は政府の再編誘導策に乗せられないで、むしろ「小さいこと」に誇りをもち、その優位性を発揮していくべきです』、「中小企業は政府の再編誘導策に乗せられないで、むしろ「小さいこと」に誇りをもち、その優位性を発揮していくべきです」、同感である。
・『中小企業を救う永久劣後ローンとは  三井住友信託銀行名誉顧問の高橋温氏が今年4月、全国186万社の中小企業の売り上げが3分の2になれば23兆円の損失が生じるから5兆円の劣後ローンを実施せよと日経新聞紙上で提案した。劣後ローンは毎月の返済、返済期限がなく、ほかの融資に劣後する。山口義行氏も4月に永久劣後ローンを緊急提言した。詳細はスモールサンのHPで』、「永久劣後ローン」は株式に近いもので、自己資本比率を算出する際には自己資本と見做される。取引金融機関が同意してくれるのであれば、大いに発行すべきだ。

次に、11月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「成長戦略会議での日商発言に感じる、「低賃金国家」日本の遠い夜明け」を紹介しよう。
・『日商会頭の口から飛び出した「珍説」の信憑性とは  先日、政府の成長戦略会議の中で、日本商工会議所(以下、日商)の三村明夫会頭の口から、耳を疑うようなダイナミックな「珍説」が飛び出した。 「小規模企業の減少は都市への雇用流出に繋がり、地方の衰退を加速させている」(成長戦略会議ご参考資料 中小企業政策の考え方について 2020年11月19日 日本商工会議所) 「小規模事業者」とは、国の定義では、製造業で従業員20人以下、商業・サービス業では5人以下だが、小規模事業者の平均従業員は3.4人ということなので、家族経営で「社長1人、社員2人」のようないわゆる零細企業をイメージしていただくといいかもしれない。 近年、そのような零細企業の数と、そこで働く従業員の数が減っている。特に地方では顕著で、三村会頭が会議に提出した資料にも、2012年から16年にかけて地方の大企業の従業員は5万人増え、中規模企業は58.8万人増しているに対して、小規模事業者は109.2万人減っているという表が掲載されていた。 この零細企業の衰退が、地方衰退の背中を押している――。驚くことに、日商は資料の中でそのように「断定」している。地方の雇用の受け皿となっている零細企業が消え、いたしかたなく故郷を離れて東京などの大都市で就職する人が増え、それが結果として地方を衰退させているというわけだが、これはかなりユニークな「珍説」だと言わざるを得ない。 と聞くと、「何が珍説だ!ド正論じゃないか」と日商にエールを送りたくなる小規模事業者の皆さんも多いだろうが、これが通るのなら日本の経済政策を根本から見直さなくてはいけない。これまでの「常識」では、地方の労働力流出に関係しているのは、「賃金」という結論になっているからだ。 わかりやすいのが、内閣府の「平成27年度年次経済財政報告」の中に、「人口流出入と賃金格差」という図と共にある以下のような記述だ。 「地方ほど人手不足感の高まりが大きくなっているが、地方への労働力の移動はどうなっているだろうか。地方の経済成長にとっても、人手不足が供給面の制約とならないためには、労働力の確保がより重要な課題である。しかしながら、むしろ地方からの人口の流出が続いている。この点に関して、賃金と人口の流出率の関係をみると、賃金水準が低い地域ほど人口の流出率が高くなるという、はっきりとした関係がみられている」』、「賃金水準が低い地域ほど人口の流出率が高くなるという、はっきりとした関係がみられている」、経済合理性に沿った動きだ。
・『地方から人が出て行くのは都会よりも賃金が低いため  地方からどんどん若者や労働者が出ていっているのは、「都会よりも賃金が低い」という要因が大きいというのである。つまり、零細企業が減ったので労働者が東京に流れたと日商は主張するが、順番が逆で、都市部との賃金格差で労働者が東京に流れたことにより、零細企業が減っている可能性もあるのだ。 これは、何も政府だけが主張をしているような話ではなく、かなり一般的な分析である。たとえば、秋田県の人口が100万人を割った2017年、同県の雇用流出の深刻度を取材した日本経済新聞の記事を引用しよう。 『県内の高校を卒業した生徒の半数以上が進学や就職のために秋田を離れ、多くはそのまま県外で就職する。「若者の県内定着」の旗を振る行政や企業の幹部の子供が、首都圏に出たまま戻らないケースも少なくない。大きな要因が賃金を含めて魅力的な仕事を提示できないこと。厚生労働省の都道府県別現金給与総額によると、秋田県の2015年の平均給与は25万9,800円。全国で下から4番目に低く、東京の6割の水準だった。16年度の最低賃金も716円で全国最低ラインだ』(日本経済新聞 2017年5月15日) この記事に限らず、地方衰退の文脈で出てくるのは「都市部との賃金格差」というのがお約束で、「零細企業が減ったから」という解釈が出てくることは極めて稀だ。海外の話でもほとんど聞いたことがない。 もちろん、世の中は広いので、どうしても子供の頃から働きたかった地元の零細企業が潰れてしまったので、泣く泣く故郷を離れたという人もいらっしゃるかもしれない。そのような意味では百歩譲って、「零細企業の減少だって、地方衰退の要因の1つという可能性もある!」という主張ならば、わからないでもない。 しかし、日商に違和感を覚えるのは、地方の小規模事業者で働く従業員が4年間で109.2万人減少しているというデータの一本足打法で、「小規模企業の減少が地方の衰退を加速させている」という結論に結びつけている点だ。「都市部との賃金格差が地方衰退を加速させている」という数多の言説がある中で、この荒技は経済団体としての信用を失墜しかねないのではないか。 何やら日商や三村会頭を批判しているように聞こえるかもしれないが、そんなつもりはまったくない。むしろ、日商の立場としてはこのような方向性の主張をしたいという気持ちは痛いほどよくわかる。 ただ、「中小企業経営者の利益を守らねば」という気持ちが前面に出すぎているのが、気にかかるのだ。特に、政府の成長戦略会議という国益を考える場において、地方の活性化や労働者の利益があまりにも頭からスコーンと抜けてしまっているのが、「ちょっと露骨すぎやしませんか?」と言いたいだけである』、その通りだ。
・『中小企業経営者の利益を最優先して社会や労働者は二の次、三の次  というと、「おかしな言いがかりをつけるな!日商は地方経済や、零細企業で働く人たちの利益などを総合的に考えて、零細企業保護を訴えているのだ!」と、唇をワナワナと震わせて反論してくる方も多いかもしれないが、それはさすがに建前がすぎる。 日商というのは、全国の商工会議所の会員124万人を束ねている、中小企業経営者の団体だ。もちろん、公共法人なので、社会課題など公共性を持って取り組まなくてはいけないということになってはいるが、どうしても「中小企業経営者の利益」を最優先して、社会や労働者は二の次、三の次になってしまいがちなのだ。 このような会社が増えれば都市部との賃金格差も埋まるので、地方の衰退も食い止められるかもしれない。 しかし一方で、この統合劇によって滅茶苦茶不利益を被る人たちも、どうしても出てきてしまう。それは中小企業の経営者と日商だ。 零細企業10社が中堅企業1社になってしまうということは、零細企業経営者9名がその立場を失うということだ。このようなことが全国で起きれば、商工会議所の会員は激減する。会員数が減れば、日商の活動資金はもちろん、政治的影響力も低下するというのは自明の理だ。 つまり、日商が菅総理肝煎りの中小企業改革に反対する際に、「地方が」「雇用が」といろいろな理由が飛び出してくるが、何よりも自分たちの団体と会員である経営者の既得権益を死守するということが、最大の目的なのだ』、国民経済よりも「自分たちの団体と会員である経営者の既得権益を死守する」のを優先するのは、「日商」にとってはやむを得ないことだ。
・『中小企業政策で経営者団体の主張がそのまま通ってしまう理由  繰り返しになるが、それが悪いと言っているわけではない。自分の業界に利益を誘導しない業界団体など存在意義がない。ただ、1つの問題は、このような政府の会議に参加する際に「ブレーキ役」がいないということだ。 大企業経営者の団体である経団連(日本経済団体連合会)が、成長戦略会議などに招かれる場合、連合(日本労働組合総連合会)も対で招かれることが多い。経団連は大企業経営者の立場で政策提言し、連合は大企業労働者の立場で政策提言する。立場が真逆の人たちにそれぞれ意見を言わせて、バランスをとっているのだ。 しかし中小企業政策では、日商のような中小企業経営者の団体のみしか招かれない。全国の中小企業で働く人たちの立場を代弁できるような、大きな労働系の団体がないため、日商などの「経営者団体」の主張が、そのまま国の中小企業政策として通ってしまうのだ。 これは、中小企業経営者の皆さんにとってはとてもハッピーなことだが、それが日本社会全体のハッピーではないということは、今さら説明の必要はないだろう。 「最低賃金を引き上げたら、中小企業がバタバタ倒れて日本はおしまいだ!」という声に従うまま、日本政府は半世紀、中小企業保護を続けてきた。結果、日本人の7割は中小企業で働くという中小企業大国になったが、一方でその産業構造を支えるため、中小企業労働者の利益は極限まで削られた。 気が付けば、日本は先進国の中で最低ラインの低賃金重労働国家になった。 また、零細企業が多くて労働者が東京に流れているという、今の日本の地方の現状というのは、厳しい言い方をすれば、零細企業が賃金もそれなりで魅力のある中堅企業に成長できなかったから、労働者にそっぽを向かれてしまっているということでもある。 だから、菅総理は地方に賃金もそれなりで魅力のある中堅企業を増やすため、中小企業の統合や再編を促し、これに日商は反対をしている。果たして、それで本当に地方の労働者がハッピーになれるのかというのは甚だ疑問だ。 しかし、そんな日商の「改革潰し」は何となくそのまま通ってしまいそうだ。前述のように、成長戦略会議で日商のブレーキ役になる団体はいないからだ。 唯一、中小企業再編を主張し続け、菅総理の政策にも影響を与えたというデービッド・アトキンソン氏がいるが、「元ゴールドマン・サックス」「菅総理のブレーン」というイメージもあって、新自由主義の権化のように勘違いされている。 アトキンソン氏が主張しているような「全国一律賃金」や「最低賃金の引き上げ」などということは、労働組合や赤旗が主張することで、そんなことを新自由主義者が唱えたら仲間から袋叩きとなる。 にもかかわらず日本のマスコミは、アトキンソン氏を新自由主義者扱いし、主張が対立している日商側を労働者の味方のように勘違いしている。このあたりの誤解は、日本医師会に対する誤解を見ればわかりやすい』、「「最低賃金を引き上げたら、中小企業がバタバタ倒れて日本はおしまいだ!」という声に従うまま、日本政府は半世紀、中小企業保護を続けてきた。結果、日本人の7割は中小企業で働くという中小企業大国になったが、一方でその産業構造を支えるため、中小企業労働者の利益は極限まで削られた。 気が付けば、日本は先進国の中で最低ラインの低賃金重労働国家になった」、「また、零細企業が多くて労働者が東京に流れているという、今の日本の地方の現状というのは、厳しい言い方をすれば、零細企業が賃金もそれなりで魅力のある中堅企業に成長できなかったから、労働者にそっぽを向かれてしまっているということでもある」、「成長戦略会議で日商のブレーキ役になる団体はいない」ことが、日本に大きな歪みをもたらしたようだ。
・『「経営者の天国、労働者の地獄」という状況は終わりそうにない  マスコミは日本医師会の主張を「医療現場の声を代弁している」と持ち上げるが、この団体は開業医が中心となっている。つまり日商と同じで、「経営者の団体」なのだ。今、コロナ禍の医療現場で必死に戦っている公立病院、日赤、地域の急性期病院などで働いている「勤務医」の皆さんも、「B会員」として入会できなくはないが、その数は開業医に比べて圧倒的に少ないので、影響力は非常に小さい。 私の友人で、救急医療を担当する勤務医も、「日本医師会は開業医の利益を守る団体だから、我々のことなど二の次、三の次ですよ」と語っていた。この構図は、日商と中小企業で働く従業員にもそのままあてはまるが、世間では日医は「医師の団体」、日商は「中小企業で働く人々の団体」だと勘違いされている。 こういう誤解が広まっているからか、この国では、反権力を掲げるマスコミが、低賃金で労働者を働かせる経営者の応援をする、という極めて珍しい現象が起きている。 感染者の急増に伴って、マスコミはああだこうだと政権批判を始め、「とにかく雇用を守れ」という声も強まってきた。ということは、「地方の雇用を守っているのは我々だ」という日商の主張が、すんなりと受け入れられやすい土壌は整いつつあるということだ。 菅政権がいつまで続くのかは不透明だが、「経営者の天国、労働者の地獄」という日本の状況は、まだまだ終わることはなさそうだ』、「こういう誤解が広まっているからか、この国では、反権力を掲げるマスコミが、低賃金で労働者を働かせる経営者の応援をする、という極めて珍しい現象が起きている」、確かに奇妙な現象だ。そろそろ、「マスコミ」には矛盾に気付いて、姿勢を変えてもらいたいところだ。

第三に、12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256479
・『菅内閣は経済・産業対策で中小企業再編策を着々と進めている。しかし、この内容をよくよく見れば、「再編」の名のもとに、中小企業を「淘汰」するもので、「中小企業つぶし」に他ならない。中小企業再編策の理由として「中小企業は過保護だ」とも言われているが、それは「根拠なきイメージ」に過ぎない』、興味深そうだ。
・『初の国会での論戦に臨んだ菅首相 内容は「お粗末なもの」  10月26日、第203回国会(臨時会)が招集され、12月5日までの41日間、開かれた。9月16日に発足した菅内閣としては、初めての国会となった。 初めての国会での論戦に臨んだ菅首相、その中身はと言えば…実に「お粗末なもの」であった。答弁のお粗末さについては、既に報道などを通じてご承知のことと思う。 そもそもの所信表明演説が、日本の社会経済の実像、新型コロナウイルスの感染拡大の前から変化しつつあったものが、その世界的感染拡大をきっかけに、加速化した世界情勢などを全く無視したものである。それだけでなく、「特定の利権、利益が儲(もう)けられるようにします」と宣言したような内容で、この国はどこぞの開発途上国、開発独裁国家に変質してしまったのではないかと思わざるをえない内容だ。 本稿ではそれらを細かく見ていくことはしないが、「自助、共助、公助」や「行政の縦割り、既得権益、そして、悪しき前例主義を打破し、規制改革を全力で進めます」とともに、自民党総裁選においては、あれだけ「中小企業の数が多すぎる」「生産性向上のために中小企業再編」「賃上げのために中小企業再編」と繰り返していたのに、肝心な所信表明演説では「中小企業」という言葉ができたのは3カ所のみで、中小企業の再編に真正面からは触れずに、以下のとおり述べている。 「新型コロナウイルスとの闘いの中で、地方の良さが見直される一方で、産業や企業をめぐる環境は激変しております。こうした状況を踏まえ、都会から地方へ、また、ほかの会社との間で、さらには中小企業やベンチャーへの新たな人の流れをつくり、次なる成長の突破口を開きます。 大企業にも中小企業にも、それぞれの会社に素晴らしい人材がいます。大企業で経験を積んだ方々を、政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取り組みを、まずは銀行を対象に年内にスタートします」 要は「中小企業再編への地ならし」ということだろう』、「大企業」の余剰人員を「政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する」、給与の違いはどうするのだろう。こんな安易な案が上手くいく筈はない。
・『中小企業の再編による「基盤の強化」はまさに中小企業淘汰  菅首相がぶち上げた中小企業再編に対する中小企業者、専門家などからの反発が強く、表向きはトーンダウンしたように見せたのかもしれないが、実態としては着々と進められているようで、中小企業政策を所管する梶山経済産業大臣に対しては、以下のとおり指示があったと、9月18日の閣議後記者会見において梶山大臣は述べている。 「ポストコロナを見据えて、中小企業の再編促進など、中小企業の生産性を向上させ、足腰を強くする仕組みを検討することなどについて(菅総理から)御指示がありました」(カッコ内は筆者追記) 「中小企業の再編促進」に関し菅首相から指示があったことを明確に認めているわけであるが、それにもかかわらず、所信表明では一言もそれに触れないとはなんと姑息なことか。 本件に関連して11月18日の衆院経産委員会で質疑に立った、立憲民主党の落合議員の質問に対しては、次のように答弁している(いずれも筆者が衆議院インターネット中継動画より関係部分を書き起こし。各文末は読みやすさの観点から常体に修正。その他の部分も含めた詳細な質疑の内容については、同中継動画を参照されたい)。) 落合議員:(消費税増税、キャッシュレス対応、働き方改革、新型コロナ等による影響を踏まえ)こんな大変な時に「中小企業淘汰論」というものが出てきた。(中略)菅総理のブレインの方の雑誌のインタビュー記事の見出しが「中小企業は数は半分でいい」「中小企業の半数は消えていい」と、そんなことが見出しになるようなインタビューもされている。これを機に財務省も中小企業支援の支出を絞りたいというような声があがっていると聞く。これだけ厳しい状況で、わざわざ淘汰論のような積極的な声が出てくるというのは非常に危険な状況である。中小企業淘汰論などというのは特にこのような状況であってはならないし、政府の方針にしてはならない、大臣そうはっきりおっしゃっていただきたい。 梶山大臣:政府でそういったテーマで議論されている事実はない。中小企業の基盤強化をしっかりしていくのだ、そして中小企業は多種多様であり、それぞれに地域によって役割の在り方も違うので、しっかりと中小企業をこれまで以上に支えていく、そうしたことが中小企業対策の柱になっていくはずである。私自身も気になったので総理に問うてみたところ、総理は中小企業の基盤強化をしていくのだ、そして小さな企業が中堅企業になっていく、場合によっては大きな企業になっていく、そして海外でも太刀打ちできるような企業になっていく支援をしてほしいということであったので、そういう方向でしっかりと対応して参りたい。  この答弁からは、一瞬梶山大臣は反対しているように見えたかもしれないが、繰り返し使われている「基盤の強化」とは、とりもなおさず中小企業の再編による「基盤の強化」であり、まさに中小企業淘汰に他ならない。 従って、「小さな企業が中堅企業に~」というのは中小企業の再編によって実現することが想定されているということである。しかし、政府としては「中小企業淘汰」という表現を用いていないことから、答弁においてははぐらかされる結果となったが、要は手を替え品を替え、そして表現を変えて是が非でも進めようとしているということだろう。そのことは最近の経済財政諮問会議において、中小企業基盤強化の美名の下の再編、つまりは淘汰政策が議論されていることからも明らかである』、「中小企業基盤強化の美名の下の再編、つまりは淘汰政策が議論されている」、このような欺瞞がまかり通っているのは、マスコミの不作為のためだ。
・『「中小企業再編」という名のもとに行われる「選択と集中」の問題点  さて、そもそもこの中小企業再編、もとい「中小企業淘汰」政策は、中小企業の賃金が上がらないのは中小企業の生産性が低いからであり、賃上げのためには生産性を上げること、そのためには中小企業の再編が必要であるというものであり、中小企業基本法を改正して国の支援の対象となる中小企業を絞り再編を通じた体力強化、基盤強化を図ることを目指すというものであったが、中小企業の賃金が低いこと、わが国全体として実質賃金が下がり続けている理由・背景は何であろうか? 中小企業のみならずわが国の賃金が上がらない、実質賃金が下がり続けている理由は、1にデフレ、2にコーポレートガバナンス改革に代表される構造改革、そして3に過剰なグローバル化である。従って、中小企業の規模や数の問題ではない。 これらの問題を解決しなければ賃金は上がらないわけであるが、もし中小企業を再編の大義名分の下で潰していけば雇用は奪われ、地域経済は衰退の一途をたどることになる。雇用が奪われればその地域でモノを買う購買力が著しく低下することになる。 つまり、需要が大幅に収縮していくので、 「作ってもモノは売れない」→「買ってもらうためには価格を下げる」→「そのためにはコストを下げる」→「コストの大きな部分を占める人件費、すなわち賃金を下げる」→「購買力が落ちる」 という悪循環に陥ることになる。 また、中小企業、特に下請け企業を苦しめているのは消費税であり、これをなくせば大幅な負担軽減につながり賃金増も可能となる。 「中小企業再編」という名のもとに行われるであろう「選択と集中」は、株主資本主義、株主配当重視主義、人件費や設備投資・研究開発投資を減らしてでも株主配当を増やす慣行、それらの下では、短期主義に基づくものであることが容易に想定される(現状で実際にそうなっているし、菅首相が所信表明で述べた「大企業で経験を積んだ方々を、政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取り組み」とはまさにそのためのものであろう)。 日本企業が持つ優良な技術や事業が失われるか、二束三文で外資に奪われることになりかねない。つまり、イノベーションの芽を摘み取ることになりかねないということである』、「中小企業を再編の大義名分の下で潰していけば雇用は奪われ、地域経済は衰退の一途をたどる」、現在のような需要不足のなかで、こうしたハードランディング路線を採ることには反対だ、「特に下請け企業を苦しめているのは消費税であり、これをなくせば大幅な負担軽減につながり賃金増も可能となる」、これには異論がある。
・『「生産性の向上」という大義名分 そもそも中小企業の生産性が低い原因は何か  「生産性の向上」も大義名分として使われているが、中小企業の生産性が低い原因は、コーポレートガバナンス改革、そして需要が減少していることである。つまり、デフレ状態では生産性向上のための投資は行われない傾向があるのである。 そもそも、作っても売れない中で「生産性向上」をしても意味がなく、投資が回収できないのであるから当然である。よって、生産性を向上させたいのなら、一にも二にもデフレからの脱却が急務であり、それには、まず国の財政支出を拡大させること、それによって有効需要を創出することである。 中小企業は日本企業の99%を占める地域経済の担い手であり、雇用の担い手であり、技術革新、イノベーション、ものづくりの担い手であり、日本経済を支えているのは彼らであると言っても過言ではない。 また彼らが元気に操業を続けてきたからこそ、地域の伝統や文化は支えられ、維持されてきた。その数が減れば、地域の衰退につながり、ひいては日本のさらなる衰退につながるであろうことぐらい、容易に想像がついてしかるべきである。一方で地方創生、地方における仕事の創出や確保を言いながら、他方でその担い手を潰すことになる政策を推進しようとは大いなる本末転倒であり、支離滅裂そのものである。 そして、菅政権の中小企業再編、もとい「淘汰」政策に関しては、「中小企業は過保護だ」ということも、その理由として挙げられているが、それは「根拠なきイメージ」に過ぎない。地域経済の担い手であり雇用創出の担い手である中小企業を保護するのは当たり前であり、「過保護」言説に便乗して批判するのはただの「鬱憤(うっぷん)ばらし」、ressentiment(ルサンチマン)に過ぎない(そんなことをしても、批判者自らが抱える問題の解決にはならない)。 本気で中小企業を含めた賃金の引上げや生産性の向上を目指すのであれば、なすべきことは脱構造改革、脱新自由主義、消費税ゼロを含めた脱緊縮財政、脱グローバルである。 すなわち、菅政権が目指す方向性と「真逆のこと」をやるべきということである』、私は「過保護」論に立つが、現在の需要不足下では、「保護策」をいきなり外すべきではなく、徐々に外してゆくべきだと思う。
タグ:「最低賃金を引き上げたら、中小企業がバタバタ倒れて日本はおしまいだ!」という声に従うまま、日本政府は半世紀、中小企業保護を続けてきた。結果、日本人の7割は中小企業で働くという中小企業大国になったが、一方でその産業構造を支えるため、中小企業労働者の利益は極限まで削られた。 気が付けば、日本は先進国の中で最低ラインの低賃金重労働国家になった 「中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘」 多くの中小企業が赤字です。それでもやっていられるのは今のところは銀行借り入れを増やした結果、資金的には余裕があるから 厳しい飲食と製造業 製造業が悪くて、雇用をどんどん減らしています。輸出が伸びないからです 中小企業政策で経営者団体の主張がそのまま通ってしまう理由 「支店を減らし、行員の数を減らす」結果、企業向けの貸出が減って、「外国の債券などを買う」、というのは確かに「地域経済」にはマイナスだ 中小企業経営者の利益を最優先して社会や労働者は二の次、三の次 政府の成長戦略会議という国益を考える場において、地方の活性化や労働者の利益があまりにも頭からスコーンと抜けてしまっているのが、「ちょっと露骨すぎやしませんか?」と言いたいだけである 地方から人が出て行くのは都会よりも賃金が低いため 山口義行氏(立教大学名誉教授)インタビュー 「賃金水準が低い地域ほど人口の流出率が高くなるという、はっきりとした関係がみられている」、経済合理性に沿った動きだ 地銀再編論は的外れ 日商会頭の口から飛び出した「珍説」の信憑性とは 「成長戦略会議での日商発言に感じる、「低賃金国家」日本の遠い夜明け」 窪田順生 ダイヤモンド・オンライン 永久劣後ローン」は株式に近いもので、自己資本比率を算出する際には自己資本と見做される。取引金融機関が同意してくれるのであれば、大いに発行すべきだ 中小企業を救う永久劣後ローンとは 中小企業は政府の再編誘導策に乗せられないで、むしろ「小さいこと」に誇りをもち、その優位性を発揮していくべきです 「大企業」の余剰人員を「政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する」、給与の違いはどうするのだろう。こんな安易な案が上手くいく筈はない 中小企業の再編による「基盤の強化」はまさに中小企業淘汰 中小企業基盤強化の美名の下の再編、つまりは淘汰政策が議論されている」、このような欺瞞がまかり通っているのは、マスコミの不作為のためだ 財務省の狙い 高付加価値な商品を提供できる中小企業をたくさん輩出することが重要」、その通りだが、極めて難しい課題だ そうした項目を基盤項目として評価する動きはだいぶ以前からある 貸し出しを増やしたから給料を上げるのではなく、事業創造や企業の面倒を見るのにどれだけがんばったのか、そういう種まきの機能をきちんと評価する制度にする必要 人事の評価のあり方を変える必要 大企業こそが行き詰まっている 私は「過保護」論に立つが、現在の需要不足下では、「保護策」をいきなり外すべきではなく、徐々に外してゆくべきだと思う 「生産性の向上」という大義名分 そもそも中小企業の生産性が低い原因は何か 初の国会での論戦に臨んだ菅首相 内容は「お粗末なもの」 「特に下請け企業を苦しめているのは消費税であり、これをなくせば大幅な負担軽減につながり賃金増も可能となる」、これには異論がある 中小企業再編」という名のもとに行われる「選択と集中」の問題点 日刊ゲンダイ (その1)(中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘、成長戦略会議での日商発言に感じる 「低賃金国家」日本の遠い夜明け、菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている) 中小企業 「菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている」 日本に大きな歪みをもたらしたようだ 成長戦略会議で日商のブレーキ役になる団体はいない また、零細企業が多くて労働者が東京に流れているという、今の日本の地方の現状というのは、厳しい言い方をすれば、零細企業が賃金もそれなりで魅力のある中堅企業に成長できなかったから、労働者にそっぽを向かれてしまっているということでもある 室伏謙一 こういう誤解が広まっているからか、この国では、反権力を掲げるマスコミが、低賃金で労働者を働かせる経営者の応援をする、という極めて珍しい現象が起きている」、確かに奇妙な現象だ。そろそろ、「マスコミ」には矛盾に気付いて、姿勢を変えてもらいたいところだ 「経営者の天国、労働者の地獄」という状況は終わりそうにない
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米中経済戦争(その14)(バイデン政権で極めて微妙な新米中関係 中国メディア「3つの予測」、米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省 SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに、米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に) [世界情勢]

米中経済戦争については、8月24日に取上げた。今日は、(その14)(バイデン政権で極めて微妙な新米中関係 中国メディア「3つの予測」、米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省 SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに、米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に)である。

先ずは、11月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「バイデン政権で極めて微妙な新米中関係、中国メディア「3つの予測」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254089
・『米国の大統領選挙で共和党から民主党への政権交代がほぼ確実となった。すでに中国では、バイデン政権下の米中関係をめぐるさまざまな臆測が飛び交っている。中国メディアの報道を取りまとめると、「好転はするが対中政策の基本路線は変わらない」という、極めて微妙な米中関係が見えてくる』、興味深そうだ。
・『バイデン政権で米中関係はどうなる?  共和党によるトランプ政権の4年間は、全米が反中スローガンに沸いた。2017年にトランプ氏が大統領に就任すると、タカ派の政治戦略家たちがブレーンに起用され、中国は同政権にとっての最大の敵となった。さらに、大統領選を控えた今年は、新型コロナウイルスを「チャイナウイルスだ」と連呼し、「世界は2つに割れるのか」といわれるほど対立がエスカレートした。 2020年11月9日、中国外交部の定例記者会でスポークスマンの汪文斌氏は「対話を強化し、相互に尊重し、協力を拡大し、健全で安定した発展を促進することは常に中国が主張してきたことであり、米国の新政府には同じ目標に向かって歩み寄ることを希望する」と述べ、すべては米国次第だというニュアンスをにじませた。 米中関係が歴史的な冷え込みをたどる中で、中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」も淡々と選挙過程を伝えるにとどまったが、電子メディアを中心に、中国ではバイデン政権下の米中関係についてさまざまな予想が報じられている。  中国の経済紙「21世紀経済報道」は8日、「米国の対中政策は、強硬路線からだいぶ緩まるのではないか」と報じた。その理由の1つが、「中国チームの顔触れ」だ。トランプ政権の発足時、首席戦略官にはスティーブン・バノン氏が、政策アドバイザーにはピーター・ナヴァロ氏が就任し、主要なポストはタカ派で固められた。それに対して、バイデン氏の対中チームはアントニー・ブリンケン氏、カート・キャンベル氏、ジェイク・サリバン氏など「比較的理性的な顔触れになる」と伝えている。 バイデン氏のシニア外交顧問であり、また大統領選挙キャンペーンの外交政策顧問であるアントニー・ブリンケン氏は、9月22日に開催された米国商工会議所のイベントで「中国との完全なデカップリング(切り離し)は非現実的で、結果的には逆効果だ」と述べ、バイデン氏の施策については「不公正な慣行を取り締まり、米国の貿易法を執行しながら、中国との経済的関係と技術的関係をリセットするだろう」と語った。 また、東アジア・太平洋担当国務次官補を経験した外交官のカート・キャンベル氏も「冷戦思想は米国の長期的競争力を失わせ、中国の封じ込めには効果がない」と指摘した』、「アントニー・ブリンケン氏
」は国務長官の候補といわれている。
・『中国台頭の抑え込みは変わらない  中国は封じ込めるべき最大の競争相手だとみなす一方で、ロシアとの関係緩和を目指すトランプ氏とは対照的に、バイデン氏はロシアこそが米国第一の脅威だと強調している。バイデン政権下では、「米中の直接的な対立は緩和され、これまで取られた強硬政策もソフトなものになるだろう」というのが、中国のメディアに共通する現時点の見解だ。  「だからといって油断はできない」という論調も、中国の各メディアに共通している。「民主党、共和党ともに米国の対中政策の基本は共通しており、これまでトランプ氏が行ってきた対中政策が否定されることは現実的ではない」とシビアに受け止めているのだ。中国のメディア報道をまとめると、バイデン政権下で予測される米中関係は、およそ以下の3点に集約される。 (1)米国は西側先進諸国と連携を強化し、透明性の高い、ルールある市場を形成しようという動きをより強める (2)貿易面では緩和が期待できるが、中国の技術面、産業面での台頭を抑え込むという方向性は変わらず、依然として対中強硬策を取る (3)気候変動、核不拡散、反テロ活動、ウイルス対策などの国際的な共通課題については、中国と協調して動く  中国の地方紙「新京報」は11月8日、「中米関係はトランプ政権時代より緩和されるかもしれないが、多国間の枠組みにおいては、貿易ルールをめぐり西側諸国が連携を強める」と報じた。 バイデン氏は9月の米国商工会議所のイベントで「同盟国との関係再構築やテクノロジーに関する国際標準の設定などを通じ、米国の戦略的影響の拡大に注力していく」と述べているが、ここから読み取れるのは、オバマ政権時代のアジアのリバランス戦略(注)やインド太平洋戦略という2つの主要な戦略を統合して、日本、オーストラリア、インドその他の同盟国の役割を強調し、携帯電話の国際規格も中国には譲らないという可能性だ。 中国の民間シンクタンクのアナリストは、「軍事、地政学、外交、イデオロギーなどの分野において、米国と摩擦が起こる可能性があり、米国は東アジア地域での軍事力配備を強化し、中国と周辺国との関係を激化させる可能性がある」としている。 ちなみに、民主党の外交政策は「民主主義や人権の尊重などを価値として共有する国家と関係強化をしよう」という価値観外交を継承している』、「中国台頭の抑え込みは変わらない」、一安心だ。
(注)アジアのリバランス戦略:アジア重視の戦略(産経新聞2006年1月30日)
・『製造業の米国内回帰も進める  2点目の、中国の技術面、産業面での台頭を抑え込む動きは、中国が最も注目するところだが、これについてはどのような観測があるのだろうか。 自由貿易の思想を持つ民主党の方針のもと、バイデン氏は「政権発足後に対中関税を撤廃させる」と主張している。一方で、バイデン氏は7月に「米国人を雇い、米国の商品を買う」という経済政策スピーチを行っている。 復旦大学米国研究センターの研究者は「トランプ政権が関税で中国経済に圧力をかけたのとは異なり、バイデン政権では多種多様な手段で米中関係を調整するだろう。サプライチェーンのセキュリティを重視するバイデン氏は、中国への依存を減らすための新たな対策を講じるはずだ」としている。 主要国間の先端技術産業の競争激化に伴い、トランプ政権は国家安全保障の名の下に「サプライチェーンのセキュリティ」という名目で、ファーウェイに圧力を加えるなど戦略的管理を強化したが、バイデン政権もやり方は異なれど、そこへの対策は取り続けるという見方だ。 また、前出のアナリストは「バイデン政権発足後、中米関係は転換を迎えるだろうが、バイデン氏にとっても製造業の労働者がその票田であるため、製造業を国内回帰させることを積極的に主張している」という。 その一方で、政策によるサプライチェーンの分断は現実的ではないことが見えてきた。米中は2018~19年にかけて激しい貿易戦争を繰り広げたが、米コンサルティングファームのATカーニーは、「結果として2019年は中国を含むアジア14カ国の低コスト生産国からの対米輸入額は7570億ドル(約80.6兆円)となり、前年の8160億ドル(約86.9兆円)から7.2%、金額にして590億ドル(約6.4兆円)が減少し、中国からの総輸入額は900億ドル(約9.7兆円)が減少した」としている。 しかし、ATカーニーが「米中貿易戦争で、米国企業はアジアやメキシコからの輸入を増やして中国からの輸入を急激に減らしたが、貿易戦争が終われば元に戻るともささやかれていた」とレポートしているように、そこにはかなりの無理があったことがうかがえる。コロナ禍での米中貿易でも、脱中国を激しく主張するトランプ政権の意に反し、医療用品を中心に中国からの輸入を急伸させた。 中国の政治学者である鄭永年氏は、米大統領選が中国に与える危機として、中国メディアのインタビューに以下のように回答している。 「バイデン氏が最終的に米大統領に就任しても、米国の対中強硬の大きな傾向は変化しない。対中関係において、トランプ氏は非合理的な強硬を示し、バイデン氏は理性的な強硬を示すだろう」 米中関係には南シナ海への海洋進出問題や台湾問題のほか、香港問題や中印国境問題など、いくつもの火種が存在する。現時点ではっきり言えるのは、「4年前のトランプ政権以前の米中関係に戻ることは難しい」ということだ』、「トランプ政権が関税で中国経済に圧力をかけたのとは異なり、バイデン政権では多種多様な手段で米中関係を調整するだろう」、「対中関係において、トランプ氏は非合理的な強硬を示し、バイデン氏は理性的な強硬を示すだろう」、さて、「バイデン政権」が現実にどう出てくるのか、要注目だ。

次に、12月8日付けJBPressが掲載した技術経営コンサルタントの湯之上 隆氏による「米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省、SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63137
・『とうとう軍事企業に指定されたSMIC  米国防総省は2020年12月3日、中国人民解放軍と関係が深い中国企業として、半導体製造専門のファンドリー(受託生産)である中国SMICを指定すると発表した(ロイター、12月4日)。米投資家の株式購入の禁止対象となるほか、同社と米企業の取引も禁止されることになる。 SMICについては、米商務省がすでに9月25日付の書簡で、同社にApplied Materials(AMAT)、Lam Research(以下、Lam)、KLAなど米国製の製造装置を輸出する場合は、同省に申請することを義務化していた(ブルームバーグ、9月27日)。 そのSMICが、とうとう中国人民解放軍の軍事企業に指定された。SMICは、中国が半導体の自給率を向上するための国家政策「中国製造2025」の中核的な半導体メーカーである。そのSMICが軍事企業に指定されたため、半導体の自給率を2020年に40%(推定20%弱で未達)、2025年に70%に向上させるという目標は、ほぼ不可能になった。 これに対してSMICは、ブラックリスト入りを見越して、米製の製造装置を使わずに、2020年中に40nm、2023年までに28nmの量産を計画していた。これらについては、日本と欧州が協力すれば実現できるかもしれないということを本コラムで解説した(「中国製造業を根底から壊す米国のファーウェイ攻撃」、2020年10月3日)。 しかし、SMICが軍事企業に指定されたため、事態はもっと深刻になる。まず、SMICは半導体工場を拡張したり新設する場合、米製の製造装置を入手できない。それだけでなく、現在稼働している工場においても、既存装置のメンテナンスが受けられなくなる。 本稿では、まず、軍事企業に指定されたSMICが、(前掲拙著記事の復習になるが)半導体工場を拡張したり新設することが不可能になることを説明する。その上で、SMICが、現在稼働中の全ての半導体工場が停止する危機に直面していることを論じる』、「SMIC」が「とうとう軍事企業に指定された」、とは大変なことのようだ。
・『SMICの半導体工場の月産キャパシティ  図1に、SMICの半導体工場の月産キャパシティを示す。2015年5月に国家政策「中国製造2025」が制定された後に、8インチも12インチも、その月産キャパシティが急拡大していることが分かる。恐らく、中国政府からの助成金を得て、工場を拡張したのだろう。そして、2020年第2四半期時点で、8インチが月産23.4枚、12インチが月産24.6枚のキャパシティを持つに至っている。 (図1 SMICの8インチと12インチの月産キャパシティ(~2020年Q2)リンク先参照) 8インチについては、図2に示す通り、主力が上海(Shanghai)メガファブで月産約11.5万枚、加えて、天津(Tianjin)ファブが約7.3万枚、深圳(Shenzhen)ファブが4.6万枚となっている(月産キャパシティは2020年第2四半期時点)。一方、約4万枚のキャパシティがあったイタリアのAvezzanoファブは、2019年第3四半期以降、決算報告書から姿を消している。 (図2 SMICの8インチ工場の月産キャパシティ(~2020年Q2)リンク先参照)) この結果、8インチは、上海、天津、深圳の3つの工場合計で23.4万枚の月産キャパシティがあり、これらのファブで、0.35~0.11μmの半導体を製造している(図3)。 (図3 SMICの微細化別の出荷額の割合(~2020年Q1) リンク先参照)) 一方、12インチでは図4に示す通り、2020年第2四半期時点で、北京(Beijing)メガファブが11.7万枚、北京の子会社(Beijing Majority-Owned)のファブが11.3万枚の2拠点が主力である。他には、上海工場が最盛期に4.5万枚あったが、2020年第2四半期に3000枚まで月産キャパシティが低下している。また、2017年第4四半期以降、7000枚の月産キャパシティがあった深圳ファブは、2019年第4四半期以降、姿を消した。 (図4 SMICの12インチ工場の月産キャパシテイ(~2020年Q2)リンク先参照)) これに対して、上海の子会社の工場が2019年第4四半期以降、立ち上がってきており、2020年第2四半期には1.4万枚の月産キャパシティとなっている。この上海の子会社を除けば、12インチの主要な拠点は、北京に集中している。そして12インチの合計キャパシティは24.6万枚であり、これらの工場で90~14nmの半導体を量産していると考えられる』、なるほど。
・『SMICが半導体工場を拡張・新設する場合の障害  SMICが8インチ工場を拡張したり新設する場合は、もしかしたら、中国製の製造装置だけで何とかなるかもしれない。というのは、露光装置では、中国のSMEE(Shanghai Micro Electronics Equipment Co. Ltd.)が、既にi線、KrF、ArFドライの露光装置を販売している。また、NAURAが、ドライエッチング装置、成膜のCVD装置やスパッタ装置、熱処理装置、洗浄装置を販売している。加えて、AMATに在籍していた中国人が創業したAMECが、ドライエッチング装置とCVD装置をリリースしている。 SMEEは、恐らくASMLの露光装置をデッドコピーしており、NAURAやAMECは、AMAT、Lam、東京エレクトロン(TEL)などの装置をデッドコピーしていると考えられる。半導体プロセスは、ハードウエアをコピーしただけでは実現できないが、100nmレベルまでの半導体ならば、なんとか製造が可能かもしれない。 しかし、12インチ用の装置で90nm以降の微細性の半導体を製造するのは、ハードウエアをデッドコピーしただけの中国製の装置では困難だと思われる。したがって、12インチ工場を拡張したり新設する場合は、日米欧の装置の導入がどうしても必要である(図5)。 (図5 半導体製造装置の企業別シェア(2019年)/黄色:欧州、緑:米国、青:日本 (図はリンク先参照)) ここで、軍事企業に指定されたSMICに対しては、米製の装置の導入が禁止されるが、日本と欧州が協力すれば、40nmの半導体の製造も、相当苦しい分野はあるが不可能ではない。したがって、SMICが米製の装置を使わずに2023年までに28nmを量産すると計画したのは良い読みと言える。 ところが、米商務省がSMICに対する米製の装置の輸出申請を義務づけた9月末以降、TEL、SCREEN、Nikonなど日本の装置メーカーがSMICへの装置輸出にブレーキをかけ始めた気配がある。これは、米政府が日本政府に対して何らかの圧力をかけたのかもしれないし、または、日本の装置メーカーが米政府に睨まれたくないために忖度しているのかもしれない。 いずれにせよ、軍事企業に指定されたSMICは、米製の装置の輸出が禁止される上に、日本や欧州の装置も出荷停止になる可能性がある。したがって、SMICは、12インチの工場を拡張したり新設することが極めて困難になる』、「軍事企業に指定されたSMICは、米製の装置の輸出が禁止される上に、日本や欧州の装置も出荷停止になる可能性がある。したがって、SMICは、12インチの工場を拡張したり新設することが極めて困難になる」、日欧も「出荷停止になる可能性がある」、とすれば影響は深刻だ。
・『現在稼働中のSMICの半導体工場はどうなる?  ここまで述べたように、SMICは、12インチ工場を拡張したり新設することが難しくなった。しかし、SMICが直面している事態はもっと深刻である。というのは、SMICは、8インチも12インチも、全ての工場が停止する危機に直面することになってしまったからだ。その理由を以下で説明する。 各種の半導体製造装置は、工場に導入した後、定期的にメンテナンスを行う必要がある上、消耗部品を交換しなくてはならない。しかし、軍事企業に指定されたSMICは、米製の装置の消耗部品を交換できなくなる。 まず、ASMLがトップシェアの露光装置では、KrFやArFのエキシマレーザー光源を定期的にメンテナンスしなくてはならない。その光源メーカーには、米サイマーと日本のギガフォトンの2社がある。もし、米サイマー製の光源の場合は、SMICからサイマーに光源を搬送し、そこで必要なメンテナンスを受けることになる。場合によっては、光源をそっくり取り換えることもある。しかし、SMICが軍事企業に指定されたため、このようなメンテナンスや交換ができなくなる可能性が高い。そこで、サイマー製の光源をギガフォトンに交換する手段が考えられる。これは、不可能ではないが、相当の手間とコストがかかる。その上、米政府が同盟国の日本政府に圧力をかけ、このような代替案を禁止させる可能性が高い。 次に、LamやAMATのドライエッチング装置およびCVD装置については、それぞれ、ウエハが載るステージとして、静電チャックおよびセラミックヒーターが搭載されており、定期的にメンテナンスしたり、交換が必要な重要部品となっている。これらの部品は日本製が多いが、メンテナンスや交換はLamやAMATの技術者が行う。たとえSMICの技術者が行うとしても、その部品はLamおよびAMATがSMICに販売する。ところが、軍事企業に指定されたSMICに対しては、この部品の販売が禁止されることになる』、「SMICが軍事企業に指定されたため、このようなメンテナンスや交換ができなくなる可能性が高い」、深刻だ。
・『SMICの全ての半導体工場が停止する  露光装置、ドライエッチング装置、CVD装置の保守メンテナンスや部品の交換が不可能になることを説明したが、この事情は、AMATのスパッタ装置やCMP装置、KLAの各種検査装置など、他の装置でも同じである。加えて、12インチ用だけでなく、8インチ用の装置でも、事情は変わらない。 つまり、軍事企業に指定されたSMICは、工場の拡張・新設が困難になるだけでなく、現在稼働している月産23.4万枚の8インチ工場および月産24.6万枚の12インチ工場も、全て停止する危機に直面していることになる。。 過去には、2018年10月29日に、中国でDRAMを製造しようとしていたJHICCがELに掲載された。その後、JHICCは6000億円を投じたDRAM工場が2019年3月に停止し、同社は解散(倒産?)した。また、2018年5月16日にELに掲載されたファーウェイが窮地に陥っているのは、ご承知の通りである。 しかし、SMICが軍事企業に指定されたことのインパクトは、JHICCやファーウェイの比ではない。中国のエレクトロニクス産業にとって、そして中国政府にとって、想像を絶する甚大なダメージを与えることになる。 懸念されるのは、中国政府による対抗措置である。したがって、米国がSMICを軍事企業に指定したことは、新たな、そしてより過激化した米中ハイテク戦争の幕開けに他ならない。 (追記) 筆者が以上の原稿を書き終えてから、SMICが米国のブラックリストに掲載された翌日(12月4日)、中国政府系ファンドと共同出資会社を設立し、76億ドル(約7900億円)を投じて、12インチで月産10万枚の半導体工場を北京に建設すると発表した(日経新聞、12月4日)。しかし筆者は、このSMICの新工場は、米製の製造装置を導入することができず、日欧の装置の導入も難しいと思われるため、実質的に製造ラインを構築することができないと考えている』、「軍事企業に指定されたSMICは、工場の拡張・新設が困難になるだけでなく、現在稼働している月産23.4万枚の8インチ工場および月産24.6万枚の12インチ工場も、全て停止する危機に直面している」、影響は致命的だ。アメリカもいいところに目を付けたものだ。

第三に、12月8日付けJBPressが掲載した作家の黒木 亮氏による「米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63167
・『さる12月2日、米下院で「外国企業説明責任法(The Holding Foreign Companies Accountable Act)」が全会一致で可決された。これは、外国政府によってコントロールされるような額の出資を受けているか、役員に中国共産党のメンバーがいるかなどの情報を企業に求めるほか、米当局による会計監査状況の調査を3年連続で拒否した会社を上場廃止にするものだ。 法案には「外国企業」と名がついているが、実質的には「中国企業」を狙い撃ちにしたもの。法律が施行されれば、米国で上場している217社のうち少なくない数の中国企業が上場廃止となり、米国市場から追い出されるとも言われている。 すでに上院は5月に全会一致で可決しており、近々、トランプ大統領がサインして法律となる見通しである。 法案は一見すると、トランプ政権の対中強硬策の一環に思える。しかし、それだけではない根深い長年の問題がある。それゆえ、民主党が過半数を占める下院でも全会一致で可決されたのだ。問題を一言でいうと、中国企業が10年以上にわたって、米国の証券市場で滅茶苦茶をやってきたことである』、「中国企業が10年以上にわたって、米国の証券市場で滅茶苦茶をやってきた」、とはどういうことだろう。
・『リバース・テークオーバーと裏口上場  話は2005年前後にさかのぼる。この頃から中国企業は、体力の弱った米国の上場企業をリバース・テークオーバー(逆買収)して、米国での上場ステータスを手に入れる「裏口上場(back door listing)」を盛んにやった。中国企業であれば、上海や深圳の証券取引所に上場するのが普通だが、中国の上場審査が厳しく、かつ手続きも遅く、最長で2年半を要していた。これに対し、裏口上場なら手続きは半年程度で済み、米国での上場審査もバイパスできる。こうして2012年頃までに300を超える中国企業が米国の上場企業になった。 米国のほうでも中国企業を歓迎した。買収を仲介する投資銀行には巨額のアドバイザー手数料が入るし、米国市場で株式を発行した際には引受手数料も入る。やればやるほど儲かるので、資金調達をしたい中国企業や金持ちになりたい中国企業の経営者にアプローチし、「裏口上場という手があるよ」と囁いた。案件に関わる法律事務所や会計事務所も儲かった。米国の投資家も、急成長する中国の企業に投資したい一心で、こぞって株を買った。 米国の証券取引所も中国企業の上場に積極的に手を貸した。米国では、上場企業数が1996年のピーク時の8090社から半分程度に減ったので、取引所は手数料収入の減少に頭を悩ませていた。上場企業減少の原因は、上場しなくてもベンチャーキャピタルから容易に資金を調達できるようになったことや、エンロン事件を契機に制定されたサーベンス・オクスリー法が上場企業に厳格な財務内容の開示や内部統制を求めたため、企業が嫌がったことが挙げられる』、「裏口上場」は、当該の「中国企業」、「米国」の「投資銀行」などの関係者や「証券取引所」にはメリットがあったが、投資家はババを掴まされたことになる。規制は遅きに失したきらいがある。
・『米国市場で不正のオンパレード  こうして米国の上場企業となった中国企業は何をしたか? 売り上げや利益を水増しし、米国の投資家を騙して資金調達をした。そうやって私腹を肥やした経営者は、事件が発覚すると中国で雲隠れした。 たとえば、大連市に本社を置く、廃水・排煙処理設備の製造・サービス提供会社である「リノ・インターナショナル」(ナスダック上場)は、米国のカラ売り専業ファンド「マディ・ウォーターズ」から、架空の取引先を捏造して売り上げを膨らませていることや、中国当局に対して売り上げは1100万ドルと報告する一方、米国の有価証券報告書では約18倍の1億9260万ドルと報告していること、会社が1億ドルの資金調達をした日に、会社幹部がその金で350万ドル(約3億6000万円)の家を購入したことなど、様々な不正を指摘された。同社は2010年12月に上場廃止となった。 北京に本社を置く、水や廃水処理装置メーカー「デュオヤン・グローバル・ウォーター」(多元環球水務、ニューヨーク証券取引所上場)は、同じくマディ・ウォーターズから、売り上げは1億5400万ドルではなく約200分の1の80万ドルで、2009年の監査報告書は偽造されたものであると指摘された。また同ファンドは5回にわたって工場を観察し、製品の搬出も材料の搬入もまったくないことや、デュオヤン社が同社の会長が所有している北京の印刷会社に不正な支払いを行っていることなども指摘した。同社の株式は2011年10月に上場廃止になった。 その他、売り上げや現預金の額を水増ししていた、ソフトウェア開発会社「ロングトップ・フィナンシャル・テクノロジーズ」(2011年、上場廃止)、売り上げを水増ししていた肥料製造会社「チャイナ・グリーン・アグリカルチャー」(株価が200ドル台から2ドル台まで下落)、売り上げや現預金の額を水増しし、会計士に賄賂を渡してそれを隠ぺいしようとした広告会社「チャイナ・メディア・エクスプレス」(2011年、上場廃止)、売り上げを水増しした目論見書で資金調達をしていた旅行会社「ユニバーサル・トラベル・グループ」(2012年、廃業)、二重帳簿を作成し、豚の販売頭数や売り上げを膨らませていた家畜用飼料と豚の生産会社「アグフィード・インダストリーズ」(2012年、上場廃止)など、不正は枚挙にいとまがない。 かくして、2012年までに実に52の中国企業がカラ売り専業ファンドから不正を指摘され、そのうち32社が上場廃止になり、6社がSEC(米証券取引委員会)の登録抹消(株主数や取引量が極端に少なくなった時の扱いで、上場廃止に近い)となった。 その後も毎年のように複数の中国企業が不正会計で上場廃止となっており、累計すると100社を超えるまでになっている。今年に入ってからも、スターバックスの向こうを張って急成長し、中国全土に6912の店舗網を張り巡らし、一時は127億ドル(約1兆3208億円)の時価総額を誇った「ラッキン・コーヒー」(瑞幸珈琲)が、売り上げ水増しの発覚で、ナスダックに上場してから1年1カ月で上場廃止となっている。 当然のことながら、これらの会社や経営者は、検察、SEC、投資家などから刑事、民事で訴えられた。しかし、上場廃止になるような会社には資産らしい資産は残っていないので、民事ではほとんど何も取れないし、そもそも会社が中国にあるので、強制執行も容易ではない。経営者のほうも最初から中国にいる中国人で、米中間には犯罪人引渡条約がないので、米国に引き渡されることはない。レバノンに逃亡したカルロス・ゴーンのようなものだ』、確かに信じられないような「米国市場で不正のオンパレード」だ。
・『誰も監督しない“無法地帯”  株が上場廃止になって無価値になり、多大な損害をこうむった米国の投資家からは、「SECは何をやっているんだ」という怒りの声が上がった。 しかし、それら中国企業は、米国に上場してはいるが、会社も経営者も最初から最後まで中国にいるし、米国のSECが中国に乗り込んで行って監督するなどということは不可能である。また中国は企業の経営や財務に関する情報を国家機密に近いものとみなし、関係書類を国外に持ち出すことを禁じているので、中国企業は、中国の法律を盾にして書類の提出を拒否する。 一方で、中国当局はといえば、中国企業から税金くらいは徴収するが、上場は米国なので、米国の投資家保護など知ったことではなく、中国の上場企業に対して行うような監督をするつもりはさらさらない。 かくしてこれら中国企業は、米国のSECからも中国当局からも監督されない“無法地帯”にいるのをよいことに、やりたい放題をやったのである』、「これら中国企業は、米国のSECからも中国当局からも監督されない“無法地帯”にいるのをよいことに、やりたい放題をやったのである」、外国企業の「証券取引所」「上場」には投資家にとって想像以上のリスクがあるようだ。
・『板挟みになる監査法人  先に述べたロングトップ・フィナンシャル・テクノロジーズのケースでは、SECは同社の監査を行ったデロイト・トウシュ・トーマツの上海法人「デロイト・トウシュ・トーマツCPA Ltd.」(略称・D&T上海)に、「監査関係の書類を提出しないのは、サーベンス・オクスリー法と証券取引法違反である」として、米連邦裁判所に訴えた。 しかし、D&T上海は、「文書を提出すると中国の国家機密法違反になるので、両国政府で話し合ってほしい」と裁判で主張。裁判は2年近く続き、最終的にSECは、D&T上海から満足のいく書類が提出されたとして、2014年に訴えを取り下げた。 またSECは、別の複数の中国企業のケースに関し、D&T上海を含む世界4大会計事務所の各中国法人を連邦裁判所で訴え、2015年に裁判所の支持を得て、それぞれに50万ドルの罰金を科し、監査関係書類を提出させた。 このように連邦裁判所に訴えれば、監査書類は何とか出てくることは出てくるが、毎回監査法人に中国の法律を盾に抵抗され、しかも2年くらいの時間がかかって手遅れになることもある。こんな状態ではかなわんということで、今般の法案提出がなされたわけだ』、「D&T上海は、「文書を提出すると中国の国家機密法違反になるので、両国政府で話し合ってほしい」と裁判で主張」、「中国企業」にとっては、「中国の国家機密法」がガードしてくれていることになるようだ。
・『法案は中国を利するだけ?  今回の法案によって、米国での上場を取りやめる中国企業が少なからず出てくる可能性がある。特に、国有企業で株式の一部を米国に上場している、チャイナ・モバイル(中国移動通信)、ペトロチャイナ(中国石油天然気)、シノペック(中国石油化工)など、国家の中枢に関与している企業は、財務の詳細や政府との関係の実態を知られるのを嫌うはずだ。 すでに米中対立や今回の法案の影響を見越し、アリババ集団、ネットイース(網易)、JD.com(京東商城)などの大手企業が、香港市場に重複上場を済ませている。昨年11月以来、米国に上場している中国企業で新たに香港に重複上場した会社は10社に上る。 今後、上海、深圳を含め、中国市場に重複上場ないしは、米国を撤退して中国市場だけに上場する中国企業が増えることも予想される。 これまで中国企業に騙されてきた米国の投資家にとって朗報かもしれないが、米国の株式市場からみれば、巨額の時価総額が消失する可能性も意味する。 それとは逆に、自国の証券市場を強化していきたい中国政府はそうした動きを歓迎している。今般の法案で、米国の投資家保護が高まるのは間違いないが、皮肉なことに、中国を利することになるのかもしれない』、しかし、「中国企業」にとっては、資金調達の場が狭まるといったデメリットもありそうだ。
タグ:「好転はするが対中政策の基本路線は変わらない」 「中国企業」にとっては、資金調達の場が狭まるといったデメリットもありそうだ 法案は中国を利するだけ? 「中国企業」にとっては、「中国の国家機密法」がガードしてくれていることに D&T上海は、「文書を提出すると中国の国家機密法違反になるので、両国政府で話し合ってほしい」と裁判で主張 「バイデン政権で極めて微妙な新米中関係、中国メディア「3つの予測」」 姫田小夏 ダイヤモンド・オンライン (その14)(バイデン政権で極めて微妙な新米中関係 中国メディア「3つの予測」、米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省 SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに、米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に) 米中経済戦争 板挟みになる監査法人 外国企業の「証券取引所」「上場」には投資家にとって想像以上のリスクがあるようだ これら中国企業は、米国のSECからも中国当局からも監督されない“無法地帯”にいるのをよいことに、やりたい放題をやったのである 誰も監督しない“無法地帯” 米国市場で不正のオンパレード 裏口上場」は、当該の「中国企業」、「米国」の「投資銀行」などの関係者や「証券取引所」にはメリットがあったが、投資家はババを掴まされたことになる。規制は遅きに失したきらいがある 米国の証券取引所も中国企業の上場に積極的に手を貸した 引受手数料も入る。やればやるほど儲かる 買収を仲介する投資銀行には巨額のアドバイザー手数料が入る 中国企業は、体力の弱った米国の上場企業をリバース・テークオーバー(逆買収)して、米国での上場ステータスを手に入れる「裏口上場(back door listing)」を盛んにやった リバース・テークオーバーと裏口上場 中国企業が10年以上にわたって、米国の証券市場で滅茶苦茶をやってきた 外国政府によってコントロールされるような額の出資を受けているか、役員に中国共産党のメンバーがいるかなどの情報を企業に求めるほか、米当局による会計監査状況の調査を3年連続で拒否した会社を上場廃止にするもの 外国企業説明責任法 「米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に」 黒木 亮 軍事企業に指定されたSMICは、工場の拡張・新設が困難になるだけでなく、現在稼働している月産23.4万枚の8インチ工場および月産24.6万枚の12インチ工場も、全て停止する危機に直面している」、影響は致命的だ SMICの全ての半導体工場が停止する SMICが軍事企業に指定されたため、このようなメンテナンスや交換ができなくなる可能性が高い」、深刻だ 現在稼働中のSMICの半導体工場はどうなる? 日欧も「出荷停止になる可能性がある 軍事企業に指定されたSMICは、米製の装置の輸出が禁止される上に、日本や欧州の装置も出荷停止になる可能性がある。したがって、SMICは、12インチの工場を拡張したり新設することが極めて困難になる SMICが半導体工場を拡張・新設する場合の障害 「中国製造2025」 SMICの半導体工場の月産キャパシティ 中国台頭の抑え込みは変わらない 製造業の米国内回帰も進める 対中関係において、トランプ氏は非合理的な強硬を示し、バイデン氏は理性的な強硬を示すだろう トランプ政権が関税で中国経済に圧力をかけたのとは異なり、バイデン政権では多種多様な手段で米中関係を調整するだろう アントニー・ブリンケン氏 」は国務長官の候補といわれている 湯之上 隆 JBPRESS 「バイデン政権」が現実にどう出てくるのか、要注目だ とうとう軍事企業に指定されたSMIC バイデン政権で米中関係はどうなる? 「米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省、SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに」
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