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日本の政治情勢(その51)(「桜を見る会」騒動 「安倍前総理」起訴される可能性を元特捜部が解説、支持率急落 菅首相「鉄壁ガースー」戦略の限界 会見はメモ棒読み 紋切り型答弁で説明を回避、菅首相 言葉なき「しどろもどろ会見」で広がる絶望) [国内政治]

日本の政治情勢については、10月1日に取上げた。今日は、(その51)(「桜を見る会」騒動 「安倍前総理」起訴される可能性を元特捜部が解説、支持率急落 菅首相「鉄壁ガースー」戦略の限界 会見はメモ棒読み 紋切り型答弁で説明を回避、菅首相 言葉なき「しどろもどろ会見」で広がる絶望)である。

先ずは、12月3日付けデイリー新潮「「桜を見る会」騒動、「安倍前総理」起訴される可能性を元特捜部が解説」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/12060557/?all=1
・『「桜を見る会」騒動から1年の時を経て、その「前夜」の疑惑が新たな火種となりつつある。東京地検特捜部はすでに安倍晋三前総理の秘書にも事情聴取を敢行。検察の威信をかけた捜査は実を結ぶのか、花と散るのか。 果たして、季節外れの桜は再び永田町に舞うのか。 読売新聞の1面に、〈東京地検 安倍前首相秘書ら聴取〉〈「桜」前夜祭 会費補填巡り〉という文字が躍ったのは11月23日のこと。 桜を見る会を巡る騒動についてはまだ記憶に新しいところだが、今回取り沙汰されているのは、その“前夜祭”についてだ。 昨年4月13日に行われた桜を見る会の前日、都内のホテルニューオータニで安倍晋三後援会が主催する前夜祭が開かれた。会場には、安倍前総理の地元・山口県下関市などから後援会関係者ら約800人が集まった。会費は〈お一人様 5千円〉である。 この前夜祭に“違法行為疑惑”があるとして、今年5月21日、法曹関係者が東京地検に告発状を提出。特捜部はこれを受け、後援会の代表でもある安倍前総理の公設第1秘書や、地元の支援者に任意で事情聴取を行っているという。 告発の呼びかけ人にも名を連ねる、神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏が解説するには、 「ニューオータニのパーティープランは最低価格でも1万1千円とされ、会費の5千円は半額にも満たない。その差額分を後援会が補填したのなら、公職選挙法199条の5第1項に規定される“寄附の禁止”に違反します。また、政治資金規正法は、政治団体が会費制の催しを開いた場合、政治資金収支報告書に収支を記載することを義務づけている。同様の前夜祭は2013年から昨年まで過去7回開かれてきましたが、現在公表されている後援会の収支報告書には一切記載がありません。この2点の疑惑について、2018年分を東京地検に告発したのです」 「桜」問題が連日のように報じられていた昨年11月、安倍前総理は会見で、次のように釈明している。 前夜祭の会費はあくまでも〈ホテル側が設定した価格〉であり、〈受付で事務所職員が集金し、ホテル名義の領収書を渡した上で、集めた現金をホテル側に支払っている。支出は発生しないので政治資金規正法上の違反には全く当たらない〉。さらに、国会答弁では〈事務所側が補填したという事実は全くない〉とも述べている。 だが、上脇氏はこう言う。 「政治団体がホテルと招待客の間に介在したのは間違いなく、しかも、事務所が一旦、現金を受け取ったのなら収支報告書に記載がないとおかしい。それがない場合、政治資金規正法の不実記載罪に該当する疑いが濃くなります。仮に、勘違いなど、故意ではなく過失で報告書への記載を怠ったとすれば、不起訴となる可能性もある。しかし、前夜祭は長年にわたって常習的に不記載が続いていたわけですから、さすがに過失の弁明は通用しないでしょう」 加えて、読売の報道によると、特捜部は安倍前総理側から出納帳を、ホテル側からは明細書の提出を受けているという。 「特捜部が差額の補填に関する客観的な証拠を入手したのなら、秘書らが起訴されて有罪となることも十分考えられます」(同) さる司法記者も、「特捜部は安倍前総理や公設第1秘書と共に告発状に名前を記された、後援会の会計責任者の立件を視野に入れているようだ」と明かす。 当の安倍事務所は11月23日、「刑事告発されたことを受けて説明を求められたので、捜査に協力し、真摯に対応している」とのコメントを発表した。 では、検察はどこに着地点を見定めているのか』、「公職選挙法」、「政治資金規正法」、などへの違反が今頃になって出てきたのは、菅政権が安部前首相の動きを抑制するためとの見方もあるようだ。 
・『「不起訴」の可能性も  かつて東京地検特捜部で副部長を務めた、弁護士の若狭勝氏に尋ねると、 「今年5月の告発を受けて捜査を進めてきたのなら、年末までに処分がなされてもおかしくありません。ただ、政治資金規正法の不実記載は第一義的に会計責任者の責任が問われるため、具体的な関与が立証されない限り、そこから先にたどり着くのは難しい。また、政治家の責任を問うのなら公選法違反の方がやりやすいですが、前総理やその秘書を処罰すれば現在の政権にも影響を及ぼしかねません。正直なところ、いまの特捜部がそこまで腹を括れるのか疑問が残ります」 公選法違反の場合、費用を補填した目的や、誰の意図かを明らかにする必要があるためハードルは高く、徹底した捜査が求められる。 「検察審査会に申し立てをされる恐れもあるので、今後も特捜部は幅広く関係者への聴取を続けるはずです。とはいえ、前総理や秘書は不起訴処分となる可能性が高いのではないか。もし、秘書だけでも在宅起訴して罰金刑にできるなら、政治と距離を置く検察本来の秋霜烈日の姿に戻ったと、むしろ嬉しく思いますけどね」(同) 他方、国会で“桜”が返り咲くのは疑いようがない。 政治部記者によれば、 「野党にとっては願ってもないネタですよ。菅政権の発足以来、内閣支持率は50%以上で推移している。学術会議問題も支持率にはほとんど影響していません。もし年明けに衆院の解散があれば、野党は敗色濃厚のまま選挙戦に突入することになる。そのため、野党側はこの機に乗じて“桜問題”を蒸し返し、“反安倍”ムードを再燃させようとするでしょう。もちろん、安倍前総理に国会での説明を求めたところで、安倍政治の継承を掲げる菅総理がおいそれと応じるはずがありません。それでも野党側は“結局、菅政権も隠蔽体質だ!”と騒ぎ立てて支持率ダウンを狙うと思われます」 だが、昨年のような“バカ騒ぎ”が続くとは考えにくいとの指摘もある。 「安倍さん本人が起訴されるとは思えないし、前総理を追及したところで決め手に欠ける。そもそも、時系列が“逆”なのではないか」 とは政治部デスクである。 「今回の報道で特捜部がこれまで前夜祭の内偵を続けてきたことがはっきりしました。ただ、安倍さんが総理在任中からその動きを察知していたとすれば……。退陣の直接的な理由は体調問題ですが、それに加えて、検察による捜査の手が周辺に及ぶ前に職を辞したという考え方もできる。奇しくも、告発状が提出された5月21日は、“官邸の守護神”と呼ばれた黒川弘務・元東京高検検事長が、安倍前総理に辞表を出した日でもあります」 突如として浮上した検察の捜査は大輪の花を咲かせるか。はたまた形だけの徒花に終わるか……』、「検察審査会」に備えた予備的調査で、「形だけの徒花に終わる」可能性も強そうだ。

次に、12月9日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「支持率急落、菅首相「鉄壁ガースー」戦略の限界 会見はメモ棒読み、紋切り型答弁で説明を回避」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/394405
・『12月5日の臨時国会閉幕を受けた各メディアの世論調査で、内閣支持率が急落し、菅義偉首相や与党首脳がいらだちを強めている。Go To事業の見直しに象徴されるようにコロナ対応は迷走。政権絡みの「政治と金」スキャンダルが加わり、菅首相による年末年始の政局運営が厳しさを増している。 政権発足から間もなく3カ月が経過する。いわゆる「新政権のハネムーン期間」に開かれた前の臨時国会は、コロナ対策や日本学術会議会員任命拒否問題に加え、終盤で安倍晋三前首相の「桜」疑惑が再燃するなど、「攻め所満載」(立憲民主幹部)の国会攻防となった。 これに対し、菅首相は「守り一辺倒で塹壕(ざんごう)にこもる」(同)という官房長官時代からの「鉄壁ガースー」戦略で野党の攻勢をかわし続けた。野党の内閣不信任案提出は「年明け解散説」という脅しで封じ込め、会期延長も拒否して国会を閉じた』、「「鉄壁ガースー」戦略」に基づく答弁ぶりには観ていて腹が立つ。
・『Go To継続に感染拡大批判  ただ、菅首相が自らの肝いり政策として推進しているGo Toトラベル事業については、「全国的な人の移動を促進させたことで、11月以降のコロナ感染急拡大につながった」(医療専門家)との批判が噴出。与党内からも「いったん中止して、感染が下火になったら再開するほうが経済への打撃も少ない」(閣僚経験者)と軌道修正を求める意見が相次いでいる。 菅首相は「Go Toトラベルが感染拡大につながったというエビデンス(証拠)はない」の一点張りで、Go To事業の2021年6月末まで延長することを決断した。12月中旬に感染拡大傾向が続いていても事業を続行する構えだが、その時点で内閣支持率がさらに下がれば、年明け以降の政権危機につながる可能性もある。 各メディアが7日にかけて公表した世論調査によると、内閣支持率は平均で10ポイント以上急落した。菅内閣の支持率は発足時に歴代3位とされる平均70%だった。その後、学術会議問題への批判で7~10ポイント下落したものの、その後は回復傾向を示していた。 今回の世論調査で支持率の平均は50%台半ばとなった。3カ月以内で支持率が20ポイント近く下落するのは異例のことだ。加えて、極めて低かった不支持率が急上昇しているのも不安材料となっている。もっとも、歴代内閣に比べれば支持率はなお高く、与党内でも「一喜一憂する必要はない」(自民幹部)と余裕の声も漏れる。 しかし、世論調査結果を分析すると、いずれの調査でも政府のコロナ対応は「評価しない」が「評価する」を大きく上回り、菅首相が主張する「感染防止と経済活動の両立」についても感染防止優先が圧倒的多数となっている。 さらに、前臨時国会終盤で再燃した桜を見る会をめぐる疑惑でも、当事者である安倍前首相の明確な説明を求める声が8割超となった。安倍前首相の国会招致や政府の再調査を求める声も6割前後となり、官房長官として安倍前首相の答弁内容をそのまま繰り返した菅首相への不信感もにじむ』、「Go Toトラベルが感染拡大につながったというエビデンス(証拠)はない」、に対しては反証も徐々に出てきたようだ。
・『記者会見は棒読みに終始  こうした状況について立憲民主党幹部は「コロナ対策はほぼ無為無策で、Go To事業(の見直し)対応も不十分なのが最大の理由」と指摘。共産党は「首相の指導力がないどころか、右往左往、迷走ばかり」(幹部)と酷評している。 菅首相が感染防止策で国民の自衛ばかりを求め、Go Toの運用見直しも都道府県知事に丸投げしていることについて与党内でも不満が相次ぐ。しかし、菅首相はこうした声も無視する形で、具体策を講じずに「国民の命と暮らしを守るため、全力を尽くす」と繰り返すだけだ。 こうした菅首相の「頑迷固陋(ころう)な姿勢」(閣僚経験者)を浮き彫りにしたのが、国会が事実上閉幕した4日夕の記者会見だった。首相官邸における本格記者会見は、就任時の9月16日以来、2度目となる。 まず冒頭発言で約18分間、政権発足以来の内政・外交の成果を語ったが、安倍氏と違ってプロンプター(発言補助装置)を使わず、カメラ目線なしで手元の応答メモの棒読みに終始した。 しかも、その内容は「3大スガ案件」とされる携帯電話料金値下げとデジタル庁の創設、不妊治療の保険適用ばかりを強調するもの。短期間での首脳外交の成果も自賛し、「自己宣伝オンリー」(立憲民主幹部)だった。 その後の記者団との質疑も、幹事社の質問には菅首相のメモ棒読みが続き、自由質問になってようやく緊張したやり取りとなった。学術会議会員の任命拒否問題について、「これだけの反発を予想していたか」との質問にはメモを見ずに顔を上げ、「かなりなるんではないかと思っていた」と、やや得意そうに答えた。 会見時間は約50分間で質問者は12人。司会役の内閣広報官が指名したが、政治スキャンダルを取り上げたのはフランス人の特派員だけだったため、「事前に仕組まれた通りの首相会見」(有力地方紙幹部)との不満も相次いだ』、外国人記者にも門戸が開かれていることを示すために、「フランス人の特派員」を指名したのだろう。
・『首相失格の菅流答弁術  しかも、多くの記者が挙手を続ける中、次の日程を理由に会見を打ち切ったあたりは、安倍前首相の記者会見対応とまったく同じで、「前例打破どころか、悪しき前例踏襲」(大手紙幹部)とも見える。 安倍氏は記者団の追及に時折感情的な言葉で反論する場面もあったが、菅首相の場合は学術会議問題を薄笑いでかわした以外は、表情も変えずに応答メモを読み続ける姿勢に徹していた。このため、会見全体も平板だった。 こうした「菅流答弁術」は、7年8カ月にわたった官房長官時代の定例会見で、批判的な質問を「指摘は当たらない」「問題ない」との紋切り型で否定してきた手法をそのまま継続しているように見える。 ただ、首相就任後も「鉄壁ガースー」の答弁スタイルのままでは、「国民への説明責任を果たしていない。トップリーダーとしては失格」(自民長老)との批判は避けられない。 学術会議問題で最大のポイントの任命拒否の理由については、国会答弁と記者会見で「人事のことは答えられない」と繰り返すだけだ。「桜」と共に浮上した吉川貴盛元農水相への鶏卵業者からの現金供与疑惑についても、「捜査中の問題はコメントを控える」の一点張りで、政治家としての説明責任も「議員個人の問題」と素知らぬ顔だ。 菅首相自身は、国会が閉会した5日夜の側近議員らとの会食で「(国会論戦には)徐々に落ち着いて対応できるようになった」と胸を張ったとされる。これに対し、野党第1党のリーダーとして論戦を挑んだ立憲民主党の枝野幸男代表は7日のインターネット番組で、「一貫して塹壕の中で、守り一辺倒だった。これではまったく議論が深まらない」と、菅首相の答弁スタイルを厳しく指弾した』、「首相就任後も「鉄壁ガースー」の答弁スタイルのままでは、「国民への説明責任を果たしていない。トップリーダーとしては失格」、同感だ。
・『菅首相の強気を支える野党の弱体ぶり  国会閉幕を受けて政府は2020年度第3次補正予算案と2021年度予算案の編成作業に全力を挙げる構えだ。菅首相は両予算案を一体化した15カ月予算とする考えで、菅首相は8日午前の政府・与党政策懇談会において、事業規模を73・6兆円とし、財政支出は40兆円とする追加経済対策の策定を表明した。政府与党はこれを踏まえて、12月中旬にも第3次補正案を、続いて22日に2021年度予算案を閣議決定する段取りだ。 前臨時国会の会期末に立憲民主など野党側が内閣不信任案提出を見送ったのは、「菅首相に衆院解散のきっかけを与えたくなかった」(立憲民主幹部)というのが理由とされる。与党内では、こうした野党の弱体ぶりが、「菅政権の強気を支えており、年末年始も政局混乱はありえない」(公明幹部)との声も広がる。 しかし、12月第3週になっても感染拡大が続いていれば、菅首相の無策への国民的批判はさらに拡大するのは確実だ。その際、Go Toトラベルをいったん中止することになれば、菅首相が自ら失敗を認めたことになる。逆に強引に事業を続ければ、国民の恐怖感も拡大し、大規模な年末年始の旅行キャンセルなどが経済を痛撃する。年明け以降も「出口の見えない闇」(財界幹部)が続くことになりかねない。 菅首相は6日に72歳の誕生日を迎えた。そして24日のクリスマスイブには政権発足100日という節目の日を迎える。今春、4コマ連載漫画「100日後に死ぬワニ」(100ワニ)が大人気となったが、菅首相は「イブの100日目」をどんな状況で迎えるのか。「菅サンタの国民へのクリスマスプレゼントがコロナ感染拡大だったら、支持率はさらに急落して『100ワニ』ならぬ、『100スガ』にもなりかねない」(閣僚経験者)との意地悪な声も聞こえてくる』、「12月第3週になっても感染拡大が続いていれば、菅首相の無策への国民的批判はさらに拡大するのは確実だ。その際、Go Toトラベルをいったん中止することになれば、菅首相が自ら失敗を認めたことになる。逆に強引に事業を続ければ、国民の恐怖感も拡大し、大規模な年末年始の旅行キャンセルなどが経済を痛撃する」、さてどうなることやら。「『100ワニ』ならぬ、『100スガ』にもなりかねない」、その通りなのかも知れない。

第三に、12月8日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「菅首相、言葉なき「しどろもどろ会見」で広がる絶望」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00106/?P=1
・『この問題には触れないでおこうと思っていた。が、100日のハネムーン期間をすぎてもなお、目に余り、少々耐え難いので、今回取り上げようと思う。 テーマは「自分の言葉で話すことができないリーダー」についてだ。 私は常々、「リーダーの言葉」の重要性を訴えてきた。 ところが、どういうわけかこの国のリーダーたちは“言葉”を持っていない。 はい、そうです。現在の“リーダー”菅義偉首相もその1人で、とにもかくにも「言葉のなさ」にがっかりされっぱなしなのだ』、河合氏が政治問題を取上げるのは珍しいが、「この国のリーダーたちは“言葉”を持っていない」、同感である。
・『リーダーの武器は「言葉の力」のはず…  国会では、常に原稿を棒読みし、ぶら下がり取材でさえ原稿を読み上げる始末だ。数日前から前を向いて話すようになったが、そこに「自分の言葉」はない。 「もともと、言葉ではなく行動で示すタイプ」だの、「新型コロナウイルス対策については、担当大臣が頻繁に会見しているので、自分がわざわざ目立たなくてもいいと考えている」だの首相の周辺の人たちは擁護しているようだが、リーダーが持つ言葉には、どんなにナンバー2が持とうとしても持てない重みがある。 リーダーの言葉で、部下は「ちゃんと自分たちのことを分かってくれている」「自分たちのやっていることを見てくれている」と安心し、「頑張ろう」と希望をもち、ためらわずに前進する勇気を持つことができる。 この「言葉の力」こそが、リーダーというポジションについた人だけが手に入れることができる、最高の武器だ。日本のリーダーである総理は、1億3000万人の国民に「勇気と安心と希望」を与える力を手にすることができるポジションである。 なのに「自分の言葉」がない。 「9月16日~12月1日の間、記者団によるぶら下がり要請は少なくとも33回あり、うち首相が応じたのは『就任1カ月の受け止め』など20回だった」(12月3付西日本新聞より)というけど、一度も「自分の言葉」で語らなかった。 国会閉幕前の12月4日の記者会見も、「私たちはやっている」「専門家の意見を聞いている」といった自己弁護まがいの発信ばかり。しかも、答えにつまると「その件については答弁を差し控えたい」と繰り返すだけ。一方的に、コミュニケーションを拒否している。 大抵、コミュニケーションを拒否するのは、都合の悪いことがあるときか、相手が眼中にないときだ。 今こそ求められているコミュニケーションの機会を、自ら率先して逃してどうするというのだろうか。 「皆さんに静かなマスク会食をお願いしたい。私も今日から徹底をしたい」と語ったときの「私」という言葉にさえ、“温度”が感じられなかった』、「記者団によるぶら下がり要請は少なくとも33回あり、うち首相が応じたのは・・・20回だった」、応じないのが3分の1もあるようだ。
・『“温度”が感じられない首相の言葉  新型コロナの感染拡大で医療現場が逼迫し、外出自粛で次々と企業が倒産し、たくさんの人たちが仕事を失い、10月の全国の自殺者数は2153人で、同月までの新型コロナ感染による死亡者数1770人を上回った(同時期の累計)。介護業界では訪問介護のヘルパーさんが続々と離職して9月時点の有効求人倍率が15倍になり、施設の倒産件数も過去最多だ。 医療現場の医師たちが忙しい中、連日のようにメディアの取材に答え、医師や看護師たちが再び“戦場”と化した現場の厳しい状況を伝え、「このままでは救える命が救えなくなる」と訴えている。 GoToトラベルが一時停止されたり、時短営業を要請されたり、「もう持たない」という不安の声が、観光業界や飲食店の人たちから相次いでいる。 この不安な状況で、今、メッセージを伝えなくていつ伝えるのか? 厳しい状況であればあるほど誠意あるコミュニケーションが求められるのに、「国民目線」という言語明瞭意味不明の言葉の「国民」が、誰をさしているのかさえわからない。 ……悲しいかな、我が国の“リーダー”には、「私」たちが見えていないのだ。 8年間“リーダー”だった安倍晋三前首相のときも、「安倍さんほど言葉に温度のない人は見たことがない」と常々感じていたけど、たった1回だけ安倍前首相の「言葉」が胸に刺さったことがある。 それは北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさんの父親である横田滋さんが他界されたときの言葉だ。 「帰国された拉致被害者の方々は、御家族の皆さんと抱き合って喜びをかみしめておられた。その場を、写真に撮っておられた、滋さんの目から本当に涙が流れていたことを、今でも思い出します」という言葉は、現場を共にした安倍さんにしか語れない言葉だった。 その言葉があまりにも切なく、現場に寄り添ったものだったので、「安倍さんはいつもこうやって話してくれればいいのに」と思ったほどだった』、「安倍晋三前首相」の「横田滋さんが他界されたときの言葉」は、「帰国された拉致被害者の方々」は自分たちの努力で「帰国」させること出来たとの自慢気なニュアンスもありそうで、河合氏が率直に褒めるのには違和感がある。
・『言葉は「思いを乗せる船」  もっとも、安倍前首相はリーダーとして、「滋さんが(妻の)早紀江さんと共にその手でめぐみさんを抱きしめることができる日」を実現できなかった。だが、リーダーに問われるのは「行動」であって、「行動」だけではない。 リーダー自身が「自分のやるべき役割」に徹しながらも、メンバーと“共にいる”ことが必要なのだ。 リーダーがリーダーシップを発揮するには、「このリーダーと共に戦おう」とメンバーが心を寄せないと無理。どんなに「お願い」されたところで、そのお願いに従う気にならない。 「言葉ではなく行動で示すタイプ」だの「自分がわざわざ目立たなくてもいい」だの言ってる場合じゃない。そこに「言葉」がなければ届かない。 そもそも「言葉」とは、心の中の思いを乗せる船のようなもの。人はその思いを伝えたいから、いちばん自分の思いに近い船を探し、メッセージを送るのだ。 逆説的に言えば、伝えたい思いがなければ船を探すこともない。それ以前に、共にいなければ伝えたい思いも沸き立たない。 ある有名な中小企業のトップとして業績を上げたものの、部下たちのクーデターで辞任に追い込まれた経験を持つ男性が、自戒を込めてこう話してくれたことがある。 「僕が前職で失敗したのは、用事があるときだけ部下を呼びつけ、物理的に関係を遮断していたからなんだ」と。 「社長も人の子。人は人との関わりがなくなると周囲が見えなくなる。自分のことも、社員のことも見えなくなって、数字だけを追うようになっていくんです。経営者は孤独とよくいうけど、物理的に孤立していることが問題なの。孤立してれば孤独だろうし、孤立してちゃ経営はできない」――。 こう男性は苦い経験を振り返った』、「そもそも「言葉」とは、心の中の思いを乗せる船のようなもの。人はその思いを伝えたいから、いちばん自分の思いに近い船を探し、メッセージを送るのだ」、なかなか上手い表現だ。
・『五感を共有する「場」が必要だ  どんなに高い知性と、先見性と、並外れた能力を持っているトップでも、“人”。 人は誰しも過ちを犯す。感情的になることもあれば、傲慢になったり、保身に走ったりすることもある。その弱さを克服するために、人は他者とつながり、他者と協力することで生き延びてきた。信頼という関係性を築くことで、愚かになったり、自分勝手になったりする際の保険を掛ける。 他者とつながるにはその場の空気、すなわち視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を共有できる“場”が必要不可欠だ。 企業のリーダーであれ、一国のリーダーであれ、同じだ。「経営と政治は違う」だの「企業の話を国の話に用いるのはおかしい」だのと言う人がいるけど、そこに“人”がいる以上同じだ。 リーダーの言葉は、メンバーたちの声でもあり、リーダーには、メンバーの代弁者にもなる「言葉」が必要なのだ。 世界中から注目を浴び、称賛されたニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相の「言葉」を思い出してほしい。 アーダーン首相はいち早く国民につながる“場”をつくり、一貫して国民と「共」に居続け、「自分の言葉」でメッセージを送り続けた。 非常事態が宣言された3月25日の記者会見では、「あなたは一人ではありません。私たちはあなたの声を聞きます」「あなたは働かなくなるかもしれません。でも、仕事がなくなったという意味ではありません。あなたの仕事は命を救うことです」「人に優しく。家にいましょう。そして、感染の連鎖を断ち切りましょう」 と、“あなた”に語りかけ、「私たちが指示することは、常に完璧ではないでしょう。でも、私たちがしていることは、基本的に正しいものです」と、自分の役割を訴えた。 イースターのときに、子どもの抜けた歯を硬貨と交換してくれる「歯の妖精」も、外出制限によって活動できないのではないかと心配する子どもたちに、「歯の妖精も、イースターのうさぎもエッセンシャルワーカーです。でも、この状況では、自分たちの家庭のことで忙しいかもしれません。だから、各地を訪れるのは難しいということを理解してあげないといけませんね」と、“あなた”=子どもに答えた。 ……なんてすてきなんだろう。 アーダーン首相は、「どうか強く、そしてお互いに優しくしてください」と繰り返していたけど、その“メッセージ”がきちんと伝わるよう、透明性のある情報と科学的な予測をつまびらかにし、「何を根拠に、そういった決定がなされたのか?」を分かりやすく、すべての人が理解できる自分の言葉に置き換えた。 論理だけじゃだめ、感情だけじゃ物足りない。論理と感情が誠実さで結びついたとき、初めて相手に届くメッセージが生まれるのだ』、「アーダーン首相」は2017に37歳で最年少の首相に就任、翌年に産休を60日間取った(Wikipedia)ことでも有名だ。
・『都度、最善策にアップデートする  特に、今回のコロナのような緊急事態では、マメに透明性のあるメッセージを発信することが大切だが、アーダーン首相はときにジャージー姿でSNSを使い、スピーチではなくメッセージを発信し続けた。ついつい私たちは現状を過小評価したり、見たい情報だけ見たりして自分の正当性を主張したくなるものだが、アーダーン首相にはそれがなかった。 その即時性と客観性も、多くの人たちからの「信頼」につながったのだろう。 そしてもう1つ、緊急時に最もリーダーが気をつけなくてはいけないのは、「リーダーたるもの、決めたことを覆してはならない」という大いなる誤解だ。 次々と事態が変化するときには、その都度最善の選択にアップデートすることが、メンバーから信頼を得るのに必要不可欠だ。そのためリーダーには不測の事態の中でもあらゆるルートでエビデンスを積み上げ、最悪のシナリオに基づく「勇気ある決断」が求められる。 ……“第3波”がくるのは分かっていたことなのに、我がリーダーにはその備えもなかった。え?ちゃんとある、って? 国民に伝わってないだけだって? 伝わらなければ意味がない。それは「ない」ってことと同じだ。だからこそのリーダーなのだ。 と、ここまで書いていて、「ん?これって以前にも、同じようなことがあったような気がする」とデジャブに襲われ、過去の原稿を検索したところ……、はいはい、ありました! 東日本大震災のあと、“菅直人首相”のときに書いた原稿である。 「かん」と「すが」。どちらも「菅」だった!!』、「次々と事態が変化するときには、その都度最善の選択にアップデートすることが、メンバーから信頼を得るのに必要不可欠だ。そのためリーダーには不測の事態の中でもあらゆるルートでエビデンスを積み上げ、最悪のシナリオに基づく「勇気ある決断」が求められる」、「国民に伝わってないだけだって? 伝わらなければ意味がない。それは「ない」ってことと同じだ。だからこそのリーダーなのだ」、その通りなのだろう。最後のオチも頷ける。
タグ:国民に伝わってないだけだって? 伝わらなければ意味がない。それは「ない」ってことと同じだ。だからこそのリーダーなのだ 次々と事態が変化するときには、その都度最善の選択にアップデートすることが、メンバーから信頼を得るのに必要不可欠だ。そのためリーダーには不測の事態の中でもあらゆるルートでエビデンスを積み上げ、最悪のシナリオに基づく「勇気ある決断」が求められる 都度、最善策にアップデートする アーダーン首相 五感を共有する「場」が必要だ そもそも「言葉」とは、心の中の思いを乗せる船のようなもの。人はその思いを伝えたいから、いちばん自分の思いに近い船を探し、メッセージを送るのだ 言葉は「思いを乗せる船」 “温度”が感じられない首相の言葉 記者団によるぶら下がり要請は少なくとも33回あり、うち首相が応じたのは・・・20回だった リーダーの武器は「言葉の力」のはず… この国のリーダーたちは“言葉”を持っていない 「菅首相、言葉なき「しどろもどろ会見」で広がる絶望」 河合 薫 日経ビジネスオンライン 『100ワニ』ならぬ、『100スガ』にもなりかねない 12月第3週になっても感染拡大が続いていれば、菅首相の無策への国民的批判はさらに拡大するのは確実だ。その際、Go Toトラベルをいったん中止することになれば、菅首相が自ら失敗を認めたことになる。逆に強引に事業を続ければ、国民の恐怖感も拡大し、大規模な年末年始の旅行キャンセルなどが経済を痛撃する 菅首相の強気を支える野党の弱体ぶり 首相就任後も「鉄壁ガースー」の答弁スタイルのままでは、「国民への説明責任を果たしていない。トップリーダーとしては失格 首相失格の菅流答弁術 外国人記者にも門戸が開かれていることを示すために、「フランス人の特派員」を指名したのだろう 記者会見は棒読みに終始 「Go Toトラベルが感染拡大につながったというエビデンス(証拠)はない」、に対しては反証も徐々に出てきたようだ Go To継続に感染拡大批判 「鉄壁ガースー」戦略」 「支持率急落、菅首相「鉄壁ガースー」戦略の限界 会見はメモ棒読み、紋切り型答弁で説明を回避」 泉 宏 東洋経済オンライン 「検察審査会」に備えた予備的調査で、「形だけの徒花に終わる」可能性も強そうだ 「不起訴」の可能性も 菅政権が安部前首相の動きを抑制するためとの見方もある 「公職選挙法」、「政治資金規正法」、などへの違反 「桜を見る会」騒動から1年の時を経て、その「前夜」の疑惑が新たな火種となりつつある 「「桜を見る会」騒動、「安倍前総理」起訴される可能性を元特捜部が解説」 デイリー新潮 (その51)(「桜を見る会」騒動 「安倍前総理」起訴される可能性を元特捜部が解説、支持率急落 菅首相「鉄壁ガースー」戦略の限界 会見はメモ棒読み 紋切り型答弁で説明を回避、菅首相 言葉なき「しどろもどろ会見」で広がる絶望) 日本の政治情勢
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