金融規制・行政(その7)(【解説】 フィンセン文書 何が分かり何が問題なのか、メガバンク系証券が批判「時代遅れ規制」の行方 ファイアーウォール規制は撤廃すべきなのか、海外の機関投資家が抱く改正外為法の「疑念」 フィデリティ投信の三瓶氏に総会問題を聞く) [金融]
金融規制・行政については、2019年12月22日に取上げた。今日は、(その7)(【解説】 フィンセン文書 何が分かり何が問題なのか、メガバンク系証券が批判「時代遅れ規制」の行方 ファイアーウォール規制は撤廃すべきなのか、海外の機関投資家が抱く改正外為法の「疑念」 フィデリティ投信の三瓶氏に総会問題を聞く)である。
先ずは、2020年9月21日付けBBC NEWS「【解説】 フィンセン文書、何が分かり何が問題なのか」を紹介しよう。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-54230488
・『世界の大手金融機関が、総額2兆ドルもの不正資金のマネーロンダリング(資金洗浄)を野放しにしていたことが、米当局から流出した「フィンセン(FinCEN)文書」で明らかになった。 フィンセン文書ではこのほか、ロシアの富豪が制裁を逃れて西側諸国と取引をするために金融機関を利用していた実態も分かっている。 過去5年間で流出したさまざまな文書が明かした秘密取引や資金洗浄、金融犯罪について解説する。 「フィンセン文書」とは(「フィンセン文書」は2500件以上のファイルから成る。大部分が2000~2017年に米金融当局に送られたもので、顧客の不審な動きなどを報告している。 こうした内容は、国際的な金融機関などが最も厳格に守り、秘密にしているものだ。 金融機関はこれらの文書で疑わしい取引を報告しているが、文書そのものが犯罪や過失を証明するものではない。 フィンセン文書はまずバズフィード・ニュースが入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に共有され、分析が始まった。この分析には世界88カ国108の報道機関が関わり、BBCの報道番組「パノラマ」も参加した。 何百人ものジャーナリストが難解で技術的な文書を読み解き、金融機関が世間に知られたくないだろう内容を明らかにした』、「2016年」に明らかになった「パナマ文書」などについては、もっと後ろで解説している。
・『フィンセンとは? SARとは? ここで、フィンセン文書にまつわる2つの略語を紹介する。 まず「フィンセン」とは、アメリカ財務省の金融犯罪取締ネットワークを意味する。米ドル建ての不審な取引については、アメリカ国外でのものであってもフィンセンへの報告が義務付けられている。 SAR(不審行為報告書)は、こうした不審な取引を記録した文書を指す。金融機関は顧客が不審な動きをしていた場合にSARを作成し、当局に報告する。 フィンセン文書に含まれる2657件の文書のうち、2121件がSARだった』、「SAR」は日本では疑わしい取引として金融機関に報告が義務付けられているものだ。本来は極秘扱いの「フィンセン文書」が「流出」したのはやはり問題だ。
・『なぜ問題なのか 犯罪行為から利益を得ようとした場合、最も重要なのはどこで資金を洗浄するかという選択だ。 資金洗浄とは、薬物取引や汚職などの犯罪行為で得た金銭を、犯罪とのつながりのない銀行口座に入れることで出所を特定させなくする行為を指す。 同様の手口は、ロシアの富豪が制裁をくぐり抜けて資金を西洋諸国に移す際にも使われている。 金融機関は本来、顧客の資金洗浄や違法取引を阻止する立場にある。 法律上、金融機関は顧客の身元を知っていなくてはならない。SARを当局に提出し、捜査中に不正な資金を取り上げるだけでは不十分で、犯罪行為の証拠を見つけた場合は、現金のやり取りを止めなくてはならない。 ICIJのファーガス・シール氏は、今回流出した文書は「金融機関が世界中で起きている不正資金の流れを把握していたことを明らかにした」と説明する。 また、取引されている金額の大きさも、特筆に価する点だという。フィンセン文書には合わせて2兆ドルもの取引が記録されているが、これまでに提出されたSARのほんの一部に過ぎない』、「2兆ドルもの取引」が「ほんの一部に過ぎない」、全体では天文学的数字になるのだろう。
・『フィンセン文書で明らかになったこと イギリスの香港上海銀行(HSBC)は、自分たちが詐欺に利用されているという指摘を米捜査当局から受けた後も、世界中で数百万ドルもの不正資金の取引を看過していた 米JPモルガン は、オフショア企業の所有者を把握しないまま、ロンドンの口座への10億ドル以上の送金を認めていた。後にこの企業の所有者が、米連邦捜査局(FBI)の「10大重要指名手配犯」の1人だと判明した ロシアのウラジミール・プーチン大統領の側近の1人は、制裁によって西洋諸国の金融サービスの利用を禁じられているが、英バークレイズ銀行のロンドンの口座を使ってこれを回避している証拠が出てきた。この口座の資金の一部は芸術作品の購買に使われていた フィンセンの情報部は、イギリスをキプロスなどと同様の「高リスク区域」に指定している。これは、イギリスに登記のある多くの企業がSARで報告されているからだという。フィンセン文書に名前の出てくるイギリス企業は3000社以上と、どの国よりも多い アラブ首長国連邦(UAE)中央銀行は、対イラン制裁を破った地元企業への警告を受け取ったにも関わらず、対策しなかった ドイツ銀行は、組織犯罪やテロ組織、違法薬物の密売人などの資金洗浄の温床になっていた 英スタンダード・チャータード銀行は、10年以上にわたってテロ組織の資金源となっていた、ヨルダンのアラブ銀行への資金移動を認めていた』、「フィンセンの情報部は、イギリスをキプロスなどと同様の「高リスク区域」に指定している・・・フィンセン文書に名前の出てくるイギリス企業は3000社以上と、どの国よりも多い」、国際金融センターにはこうした闇の部分と切り離せない宿命なのかも知れない。
・『フィンセン文書、何が特別なのか ここ数年、金融情報の流出が相次いでいる。 +パラダイス文書(2017年):オフショア投資で重要な顧客を抱える法律事務所「アップルビー」などから流出。 世界の権力者や大富豪たちが人目に触れずに多額の資産をタックスヘイブン(租税回避地)に置いている実態が明らかになった +パナマ文書(2016年)2016 Panama Papers :租税回避地として知られるパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した「パナマ文書」からは、各国首脳や著名人に関連した秘密裡に行われる資産運用の内容が明らかになった。 +HSBCの脱税ほう助疑惑(2015年):HSBCのプライベートバンキング部門が富裕顧客に巨額脱税を指南していたと示す口座情報が流出した +ルクスリークス(2014年): 国際会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)から流出した文書では、多くの多国籍企業がルクセンブルクの税務当局との取り決めの下で税制優遇措置を受けていた これに対しフィンセン文書は、いくつかの企業ではなく、多数の金融機関についての情報が含まれている点が特徴だ。 フィンセン文書にはさまざまな企業や個人が関わった疑わしい取引が記されており、なぜ金融機関がこうした疑惑を知りながら対処しなかったのかという疑問が浮上する。 FinCENは、今回の情報流出はアメリカの国家安全保障に関わる問題で、捜査妨害に当たるほか、報告書を提出した機関や個人の安全を危険にさらすものだと指摘した。 一方で先週には、反資金洗浄プログラムを刷新すると発表している。 イギリス政府も、詐欺や資金洗浄の取り締まりのために、企業の登記方法を改革する計画を明らかにしている』、これにより日本の企業や個人の違法取引、脱税などの摘発につながることを期待したい。
次に、11月6日付け東洋経済オンライン「メガバンク系証券が批判「時代遅れ規制」の行方 ファイアーウォール規制は撤廃すべきなのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/386512
・『日本の金融業界の大きな転換点となるのか。今、規制緩和の議論で「ファイアーウォール規制」が大きな注目を集めている。これは、同一グループ傘下の銀行と証券は、同意なしに顧客の情報を共有してはいけないという規制だ。 きっかけは2020年6月に自民党政務調査会の金融調査会がとりまとめた提言だった。そこで「外国法人顧客に関する情報の銀証間ファイアーウォール規制の対象からの除外等について」として取り上げられた。 さらに7月に閣議決定された政府の成長戦略フォローアップには、「国内顧客を含めたファイアーウォール規制の必要についても公正な競争環境に留意しつつ検討」と検討範囲を広げる形で記された。現在、金融庁の金融審議会で議論が続いている。 ファイアーウォール規制を緩和する議論が浮上した背景には、メガバンク各行からの「強い要望」(複数の証券会社幹部)があったとされる。なぜ規制緩和が必要なのか。ファイアーウォール規制の緩和もしくは撤廃で顧客にデメリットはないのか。メガバンク系証券の一角、三菱UFJ証券ホールディングスの荒木三郎社長を直撃した(Qは聞き手の質問、Aは荒木氏の回答)』、興味深そうだ。
・『金融を取り巻く環境は激変した Q:銀行と証券のファイアーウォールの緩和や撤廃について、どのように考えていますか。 A:悲願だね。ファイアーウォールは、1993年に業態別子会社で銀行が証券に参入できるとなったときにつくられた規制だ。当時はアメリカもファイアーウォールが残っていて、それに倣った。銀行が証券業務をやるというので、独立系の証券会社から相当な抵抗があった。 当時の銀行は今の銀行とは違う。就職先としての人気も10位内に入っただろうし、時価総額も10位内に何行かが入っていた。我が世の春というか、とにかく銀行は、日本においては相当な重みをもって受け止められていた時代だよね。間接金融が非常に幅を利かせていた。 そこでは銀行の優越的地位の濫用とか、利益相反とか、そりゃ心配になるよね。(例えば)銀行が「うちの証券会社、使えよ」と圧力をかけるとか、いろんな弊害が考えられたから、厳しいファイアーウォール規制が敷かれた。 昔は人も山ほど企業に派遣したり、あるいは(株式の)持ち合いをしていたから、そういう意味での企業に対する力はあったと思う。ただ、もう4半世紀以上経っている。この間、金融を取り巻く環境は激変した。 今は持ち合いもだいぶ解消した。(融資先に)役員を出そうにも、「独立社外役員にならないから駄目だ」とか言って断られつつある。そういう意味での影響力は、昔に比べると相当程度減った。 Q:間接金融が中心と言われてきた日本の金融は変化し、銀行の影響力は低下している、と。 A:間接金融から直接金融への流れというのが、1990年代から比べると、今は相当程度進んでいる。エクイティ・ファイナンス、ハイブリッド・ファイナンス含め、あるいは社債など資金調達手段が多様化して、必ずしも銀行のローンに頼らなくてもなんとかやっていけますよ、と。しかも企業は金余りになっちゃった。これも大きな変化だ。 中小企業も(借金がない)非債法人がどんどん増えてきて、6割ぐらいが非債になったんじゃないかな。(銀行は)お金を借りてくれるところを探すのが大変。(お金を借りてくれる企業を)やっと見つけたと思ったら、(ほかの)銀行が群がるもんだから、(金利の)ダンピング競争になって、それで銀行はどんどん体力が低下しているわけです』、お手本にした「アメリカ」ではもうないこと、銀行の力の弱まり、顧客にとってもサービス低下になること、などから撤廃すべきだろう。
・『お客様は「今が当たり前」と思っている Q:顧客の側に、銀行と証券の機能をパッケージで提供してほしいというニーズがあり、銀行グループとして規制緩和が必要だと声をあげているということでしょうか。 A:もちろんそういうことを望んでいる企業はあると思います。それが大きな声(ニーズ)になっているかという質問だとしたら、それはどうかな。 お客様はそういう規制緩和があるとも思ってないし、今が当たり前だと思っているから、「ぜひこうやってほしい」と声に出す機会もない。ちょうどいい機会だから、金融審で議論している中で、そういうお客様のニーズを調べることになると思うが、ぜひ調べていただきたい。 (銀行と証券が)一緒にやって、自由に提案できるようになったら、もっと提案の質が上がる。そうなったとき、「なんで昔こんなことだったんだろう」とお客様は思うだろう。現状でお客様がある程度満足しているのは、銀行は銀行、証券は証券だと思っているからだ。 Q:ファイアーウォールがなくなることで企業の側にはどのようなメリットがあるのですか。 A:企業が実際に事業戦略なり、財務戦略なりを考えるときには、銀行だけから話を聞けばいいというわけではない。すべてのことがつながっていて、M&Aのためにお金借りなきゃいけない、借りた後、パーマネント(ローン、長期貸し出し)をどうするのか、そういうシナリオがないと買収できない。) 買収して財務が悪くなったら、それをどうやってリカバリーするのか。中長期的な財務の建て直しとか、投資家への還元とか、合わせ技で考えないと、戦略が練れない。 そうしたときに証券からだけ話を聞く、銀行からだけ話を聞くのでは、はっきり言って全然話にならない。欧米では、初期段階から相手の経営陣とブレストを通じて、(金融機関が)相手の潜在的なニーズを探り当てようとしている。(企業側が)初めから「ここを買う」と決めているようなディールはない。 それ(ニーズ)に対してわれわれが提供できるもの、銀行あるいは証券、直接金融、間接金融から、どういう機能が提供できるのかというのを、ちゃんとご説明しないと、ストーリーが描けない。 その意味で今の規制は非常に時代遅れだし、企業にとって非常に非効率、かつそういう初期段階でのまともな提案がもらえない仕組みになっている。これは非常に日本経済にとって、由々しきことではないか。 アメリカの企業は銀証一体となって、トータルパッケージでやるから話が早い。だからM&A市場が1990年代よりも今のほうが何倍も大きくなっている。日本の金融市場でもそれをやっていかないと、どんどん国際競争から立ち遅れてしまう。それでいいんですかということだ』、その通りだ。
・『規制緩和は「十分」という意見も Q:しかし、現状でも銀行と証券の営業員が一緒に営業できるようになっています。法人向けでは、拒絶されない限りは情報を共有できる「オプトアウト」も認められており、緩和は十分という意見もあります。 A:やっぱりルールはルールだから、厳格に運用しているわけです。 グループで営業やっていると、銀行と証券の人たちで集まって、いろんな相談をする。ただし、同意書がない企業の話になると、話し合いから抜けなきゃいけない。10社で協議しようとなったとき、数社で「同意書がありません」となったら、その話(顧客情報を共有する話)になった瞬間に「悪いけど、(同意書のない)証券は出ていけ」となる。これって、ものすごい面倒くさい。 しかも、それを記録化しないといけない。ちゃんとこういうふうにやりました、打ち合わせしました、誰それが参加していました、こういう話のときは誰それさんが何時何分に退出しました、とか。 そこまで記録を取らないと、あとで「お前ら、秘かにやっていたんじゃないか」と(当局から)嫌疑をかけられる。ファイアーウォールは金融検査の中で一番重い検査だから、資料を持っておかないと、何か嫌疑がかかったときのために、そういうアリバイづくりに、ものすごく労力をかけている。) コストもかかる。いつ(金融庁の検査が)来るかわからない。「そのときにどんな打ち合わせしたんですか」「ちゃんと中身がわかるんですか」「どういうことを話して、誰が参加していたか記録はありますか」と言われるんだから。 Q:費用や収益の面で、三菱UFJ証券やグループ全体にとってはメリットがあるわけですね。 A:(収益も)もちろん上がる。トータルで総合提案できるんだから。ファイナンスはこうします、M&Aはこんなサービスを提供できます、決済はこうします、為替はこうします、ヘッジします、余ったお金はこうやって運用しますなど、トータルパッケージでバーンと提案できるようになる。 ▽徹底的なルールの順守と厳罰化が必要(Q:銀証のファイアーウォールがなくなると、銀行による優越的地位の濫用や、利益相反が顕在化するのではないかと危惧する声もあります。顧客は本当に不利益を被る可能性がないのでしょうか。 A:考えられる不都合は、優越的地位の濫用と利益相反、あとは情報が漏洩するリスクが高まること、この3つかな。これらはまさに、もし解禁になったら、金融機関が本当に歯を食いしばって徹底的に順守しなきゃいけない。 自分からもう一度点検して、ルール決めて、それが履行されているかどうか、自己規律を最大限高めないといけない。今もやっているけど、もっとそこのところは厳格に運用するようにしなければいけない。あるいは全国銀行協会なり日本証券業協会の中で、そういう仕組みづくりをやるということだ。 あとは厳罰化だ。もしも優越的地位の濫用があったり、利益相反があったりすれば、(当局としては)業務停止命令出すぐらいの、そういった措置をやりますよ、ということにすればよい』、「もし解禁になったら、金融機関が本当に歯を食いしばって徹底的に順守しなきゃいけない」、「あとは厳罰化だ。もしも優越的地位の濫用があったり、利益相反があったりすれば、(当局としては)業務停止命令出すぐらいの、そういった措置をやりますよ、ということにすればよい」、同感である。
第三に、11月11日付け東洋経済オンライン「海外の機関投資家が抱く改正外為法の「疑念」 フィデリティ投信の三瓶氏に総会問題を聞く」を紹介しよう。
https://www.msn.com/ja-jp/news/money/%E6%B5%B7%E5%A4%96%E3%81%AE%E6%A9%9F%E9%96%A2%E6%8A%95%E8%B3%87%E5%AE%B6%E3%81%8C%E6%8A%B1%E3%81%8F%E6%94%B9%E6%AD%A3%E5%A4%96%E7%82%BA%E6%B3%95%E3%81%AE%EF%BD%A2%E7%96%91%E5%BF%B5%EF%BD%A3-%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%87%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E6%8A%95%E4%BF%A1%E3%81%AE%E4%B8%89%E7%93%B6%E6%B0%8F%E3%81%AB%E7%B7%8F%E4%BC%9A%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%82%92%E8%81%9E%E3%81%8F/ar-BB1aTj9j
・『今年9月、上場企業の株主名簿管理人である信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという前代未聞の事態が明らかになった。 問題発覚の直後こそ大きく報じられたものの、早々にトーンダウした。だが、今回の問題を単に信託銀行の事務処理ミスと片付けていいのか。 海外の機関投資家の事情に詳しいフィデリティ投信の三瓶裕喜ヘッド・オブ・エンゲージメントに聞いた(Qは聞き手の質問、Aは三瓶氏の回答)』、確かに不可解な出来事だった。どういう背景があったのだろうか。
・『Q:株主総会前日に配達された議決権行使書で、実際には届いているにもかかわらず、翌日扱いとして集計から外すことが20年以上続いていました。このことを聞いてどのように感じられましたか。 A:カウントミスではないだろうという印象を受ける。問題が発覚した事案は7月末の総会で繁忙期ではない。郵送した日を考えると、総会前日に届いたというのは理解できない。 Q:何らかの操作がされたということでしょうか。 A:それはわからないが、投資家からそうした疑念が出ている。ただし、カウントが洩れたことより、なぜ議決権行使が期限ギリギリになったのか、ということが問題だ。 Q:その疑念とは? A:発覚の契機となった(東芝に対して株主提案を行った)アクティビストファンドはプロフェッショナルであり、議決権行使のスケジュールを知っている。通常はギリギリの行使にはならない。ギリギリになったのは、待たされたからではないか、と。 アクティビストファンドが行っていた株主提案が、改正外為法(外国為替及び外国貿易法)の事前審査の対象になっていた。その審査結果がなかなか出なかったため、議決権行使を待たざるをえなかったのではないか、と多くの投資家が感じている』、「東芝に対して株主提案を行ったアクティビストファンド」への「審査結果がなかなか出なかったため、議決権行使を待たざるをえなかった」、とは初めて知った。恣意的な運用は避けるべきだ。
・『グレーな部分が濃いグレーになった Q:―改正外為法にはもともと経済産業省によるアクティビストの締め出しが狙いではないか、という懸念の声がありました。 A:そうした懸念があったことは事実だが、アクティビストの締め出しではなく、国の安全保障等のためだと説明があって、全体の流れや事前届出の条件などが明確になったので安堵した。 ところが、一番グレーだと思われていたところが、もっと濃いグレーになった、と今回の件で特に海外投資家は感じている。 Q:つまり、議決権のカウントよりも改正外為法の不透明さについて憂慮されているのですね。 A:そうだ。まず事前届出の審査結果が公表されない。 どういうときに「○」で、どういうときに「×」なのかわからないので、恣意的な審査が可能になる。公表されているプロセスでは、国の安全等の観点から問題のない場合は5営業日以内に審査通過を通知するとなっているが、今回、5営業日で審査通過の通知はなかったようだ。 結果的にファンドは自ら株主提案した議案の議決権を行使しているので最終的にはOKが出たはずだ。ではなぜOKなのにそんなに時間がかかったのかがわからない。今後も恣意的に時間をかけるのではないか――。そのように海外投資家が受け取ったことが問題だ』、こんなに不透明なのではまるで中国と同じだ。「事前届出の審査結果」も当然公表すべきだ。「今後も恣意的に時間をかけるのではないか――。そのように海外投資家が受け取ったことが問題だ」、先進国として恥ずかしいことだ。
先ずは、2020年9月21日付けBBC NEWS「【解説】 フィンセン文書、何が分かり何が問題なのか」を紹介しよう。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-54230488
・『世界の大手金融機関が、総額2兆ドルもの不正資金のマネーロンダリング(資金洗浄)を野放しにしていたことが、米当局から流出した「フィンセン(FinCEN)文書」で明らかになった。 フィンセン文書ではこのほか、ロシアの富豪が制裁を逃れて西側諸国と取引をするために金融機関を利用していた実態も分かっている。 過去5年間で流出したさまざまな文書が明かした秘密取引や資金洗浄、金融犯罪について解説する。 「フィンセン文書」とは(「フィンセン文書」は2500件以上のファイルから成る。大部分が2000~2017年に米金融当局に送られたもので、顧客の不審な動きなどを報告している。 こうした内容は、国際的な金融機関などが最も厳格に守り、秘密にしているものだ。 金融機関はこれらの文書で疑わしい取引を報告しているが、文書そのものが犯罪や過失を証明するものではない。 フィンセン文書はまずバズフィード・ニュースが入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に共有され、分析が始まった。この分析には世界88カ国108の報道機関が関わり、BBCの報道番組「パノラマ」も参加した。 何百人ものジャーナリストが難解で技術的な文書を読み解き、金融機関が世間に知られたくないだろう内容を明らかにした』、「2016年」に明らかになった「パナマ文書」などについては、もっと後ろで解説している。
・『フィンセンとは? SARとは? ここで、フィンセン文書にまつわる2つの略語を紹介する。 まず「フィンセン」とは、アメリカ財務省の金融犯罪取締ネットワークを意味する。米ドル建ての不審な取引については、アメリカ国外でのものであってもフィンセンへの報告が義務付けられている。 SAR(不審行為報告書)は、こうした不審な取引を記録した文書を指す。金融機関は顧客が不審な動きをしていた場合にSARを作成し、当局に報告する。 フィンセン文書に含まれる2657件の文書のうち、2121件がSARだった』、「SAR」は日本では疑わしい取引として金融機関に報告が義務付けられているものだ。本来は極秘扱いの「フィンセン文書」が「流出」したのはやはり問題だ。
・『なぜ問題なのか 犯罪行為から利益を得ようとした場合、最も重要なのはどこで資金を洗浄するかという選択だ。 資金洗浄とは、薬物取引や汚職などの犯罪行為で得た金銭を、犯罪とのつながりのない銀行口座に入れることで出所を特定させなくする行為を指す。 同様の手口は、ロシアの富豪が制裁をくぐり抜けて資金を西洋諸国に移す際にも使われている。 金融機関は本来、顧客の資金洗浄や違法取引を阻止する立場にある。 法律上、金融機関は顧客の身元を知っていなくてはならない。SARを当局に提出し、捜査中に不正な資金を取り上げるだけでは不十分で、犯罪行為の証拠を見つけた場合は、現金のやり取りを止めなくてはならない。 ICIJのファーガス・シール氏は、今回流出した文書は「金融機関が世界中で起きている不正資金の流れを把握していたことを明らかにした」と説明する。 また、取引されている金額の大きさも、特筆に価する点だという。フィンセン文書には合わせて2兆ドルもの取引が記録されているが、これまでに提出されたSARのほんの一部に過ぎない』、「2兆ドルもの取引」が「ほんの一部に過ぎない」、全体では天文学的数字になるのだろう。
・『フィンセン文書で明らかになったこと イギリスの香港上海銀行(HSBC)は、自分たちが詐欺に利用されているという指摘を米捜査当局から受けた後も、世界中で数百万ドルもの不正資金の取引を看過していた 米JPモルガン は、オフショア企業の所有者を把握しないまま、ロンドンの口座への10億ドル以上の送金を認めていた。後にこの企業の所有者が、米連邦捜査局(FBI)の「10大重要指名手配犯」の1人だと判明した ロシアのウラジミール・プーチン大統領の側近の1人は、制裁によって西洋諸国の金融サービスの利用を禁じられているが、英バークレイズ銀行のロンドンの口座を使ってこれを回避している証拠が出てきた。この口座の資金の一部は芸術作品の購買に使われていた フィンセンの情報部は、イギリスをキプロスなどと同様の「高リスク区域」に指定している。これは、イギリスに登記のある多くの企業がSARで報告されているからだという。フィンセン文書に名前の出てくるイギリス企業は3000社以上と、どの国よりも多い アラブ首長国連邦(UAE)中央銀行は、対イラン制裁を破った地元企業への警告を受け取ったにも関わらず、対策しなかった ドイツ銀行は、組織犯罪やテロ組織、違法薬物の密売人などの資金洗浄の温床になっていた 英スタンダード・チャータード銀行は、10年以上にわたってテロ組織の資金源となっていた、ヨルダンのアラブ銀行への資金移動を認めていた』、「フィンセンの情報部は、イギリスをキプロスなどと同様の「高リスク区域」に指定している・・・フィンセン文書に名前の出てくるイギリス企業は3000社以上と、どの国よりも多い」、国際金融センターにはこうした闇の部分と切り離せない宿命なのかも知れない。
・『フィンセン文書、何が特別なのか ここ数年、金融情報の流出が相次いでいる。 +パラダイス文書(2017年):オフショア投資で重要な顧客を抱える法律事務所「アップルビー」などから流出。 世界の権力者や大富豪たちが人目に触れずに多額の資産をタックスヘイブン(租税回避地)に置いている実態が明らかになった +パナマ文書(2016年)2016 Panama Papers :租税回避地として知られるパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した「パナマ文書」からは、各国首脳や著名人に関連した秘密裡に行われる資産運用の内容が明らかになった。 +HSBCの脱税ほう助疑惑(2015年):HSBCのプライベートバンキング部門が富裕顧客に巨額脱税を指南していたと示す口座情報が流出した +ルクスリークス(2014年): 国際会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)から流出した文書では、多くの多国籍企業がルクセンブルクの税務当局との取り決めの下で税制優遇措置を受けていた これに対しフィンセン文書は、いくつかの企業ではなく、多数の金融機関についての情報が含まれている点が特徴だ。 フィンセン文書にはさまざまな企業や個人が関わった疑わしい取引が記されており、なぜ金融機関がこうした疑惑を知りながら対処しなかったのかという疑問が浮上する。 FinCENは、今回の情報流出はアメリカの国家安全保障に関わる問題で、捜査妨害に当たるほか、報告書を提出した機関や個人の安全を危険にさらすものだと指摘した。 一方で先週には、反資金洗浄プログラムを刷新すると発表している。 イギリス政府も、詐欺や資金洗浄の取り締まりのために、企業の登記方法を改革する計画を明らかにしている』、これにより日本の企業や個人の違法取引、脱税などの摘発につながることを期待したい。
次に、11月6日付け東洋経済オンライン「メガバンク系証券が批判「時代遅れ規制」の行方 ファイアーウォール規制は撤廃すべきなのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/386512
・『日本の金融業界の大きな転換点となるのか。今、規制緩和の議論で「ファイアーウォール規制」が大きな注目を集めている。これは、同一グループ傘下の銀行と証券は、同意なしに顧客の情報を共有してはいけないという規制だ。 きっかけは2020年6月に自民党政務調査会の金融調査会がとりまとめた提言だった。そこで「外国法人顧客に関する情報の銀証間ファイアーウォール規制の対象からの除外等について」として取り上げられた。 さらに7月に閣議決定された政府の成長戦略フォローアップには、「国内顧客を含めたファイアーウォール規制の必要についても公正な競争環境に留意しつつ検討」と検討範囲を広げる形で記された。現在、金融庁の金融審議会で議論が続いている。 ファイアーウォール規制を緩和する議論が浮上した背景には、メガバンク各行からの「強い要望」(複数の証券会社幹部)があったとされる。なぜ規制緩和が必要なのか。ファイアーウォール規制の緩和もしくは撤廃で顧客にデメリットはないのか。メガバンク系証券の一角、三菱UFJ証券ホールディングスの荒木三郎社長を直撃した(Qは聞き手の質問、Aは荒木氏の回答)』、興味深そうだ。
・『金融を取り巻く環境は激変した Q:銀行と証券のファイアーウォールの緩和や撤廃について、どのように考えていますか。 A:悲願だね。ファイアーウォールは、1993年に業態別子会社で銀行が証券に参入できるとなったときにつくられた規制だ。当時はアメリカもファイアーウォールが残っていて、それに倣った。銀行が証券業務をやるというので、独立系の証券会社から相当な抵抗があった。 当時の銀行は今の銀行とは違う。就職先としての人気も10位内に入っただろうし、時価総額も10位内に何行かが入っていた。我が世の春というか、とにかく銀行は、日本においては相当な重みをもって受け止められていた時代だよね。間接金融が非常に幅を利かせていた。 そこでは銀行の優越的地位の濫用とか、利益相反とか、そりゃ心配になるよね。(例えば)銀行が「うちの証券会社、使えよ」と圧力をかけるとか、いろんな弊害が考えられたから、厳しいファイアーウォール規制が敷かれた。 昔は人も山ほど企業に派遣したり、あるいは(株式の)持ち合いをしていたから、そういう意味での企業に対する力はあったと思う。ただ、もう4半世紀以上経っている。この間、金融を取り巻く環境は激変した。 今は持ち合いもだいぶ解消した。(融資先に)役員を出そうにも、「独立社外役員にならないから駄目だ」とか言って断られつつある。そういう意味での影響力は、昔に比べると相当程度減った。 Q:間接金融が中心と言われてきた日本の金融は変化し、銀行の影響力は低下している、と。 A:間接金融から直接金融への流れというのが、1990年代から比べると、今は相当程度進んでいる。エクイティ・ファイナンス、ハイブリッド・ファイナンス含め、あるいは社債など資金調達手段が多様化して、必ずしも銀行のローンに頼らなくてもなんとかやっていけますよ、と。しかも企業は金余りになっちゃった。これも大きな変化だ。 中小企業も(借金がない)非債法人がどんどん増えてきて、6割ぐらいが非債になったんじゃないかな。(銀行は)お金を借りてくれるところを探すのが大変。(お金を借りてくれる企業を)やっと見つけたと思ったら、(ほかの)銀行が群がるもんだから、(金利の)ダンピング競争になって、それで銀行はどんどん体力が低下しているわけです』、お手本にした「アメリカ」ではもうないこと、銀行の力の弱まり、顧客にとってもサービス低下になること、などから撤廃すべきだろう。
・『お客様は「今が当たり前」と思っている Q:顧客の側に、銀行と証券の機能をパッケージで提供してほしいというニーズがあり、銀行グループとして規制緩和が必要だと声をあげているということでしょうか。 A:もちろんそういうことを望んでいる企業はあると思います。それが大きな声(ニーズ)になっているかという質問だとしたら、それはどうかな。 お客様はそういう規制緩和があるとも思ってないし、今が当たり前だと思っているから、「ぜひこうやってほしい」と声に出す機会もない。ちょうどいい機会だから、金融審で議論している中で、そういうお客様のニーズを調べることになると思うが、ぜひ調べていただきたい。 (銀行と証券が)一緒にやって、自由に提案できるようになったら、もっと提案の質が上がる。そうなったとき、「なんで昔こんなことだったんだろう」とお客様は思うだろう。現状でお客様がある程度満足しているのは、銀行は銀行、証券は証券だと思っているからだ。 Q:ファイアーウォールがなくなることで企業の側にはどのようなメリットがあるのですか。 A:企業が実際に事業戦略なり、財務戦略なりを考えるときには、銀行だけから話を聞けばいいというわけではない。すべてのことがつながっていて、M&Aのためにお金借りなきゃいけない、借りた後、パーマネント(ローン、長期貸し出し)をどうするのか、そういうシナリオがないと買収できない。) 買収して財務が悪くなったら、それをどうやってリカバリーするのか。中長期的な財務の建て直しとか、投資家への還元とか、合わせ技で考えないと、戦略が練れない。 そうしたときに証券からだけ話を聞く、銀行からだけ話を聞くのでは、はっきり言って全然話にならない。欧米では、初期段階から相手の経営陣とブレストを通じて、(金融機関が)相手の潜在的なニーズを探り当てようとしている。(企業側が)初めから「ここを買う」と決めているようなディールはない。 それ(ニーズ)に対してわれわれが提供できるもの、銀行あるいは証券、直接金融、間接金融から、どういう機能が提供できるのかというのを、ちゃんとご説明しないと、ストーリーが描けない。 その意味で今の規制は非常に時代遅れだし、企業にとって非常に非効率、かつそういう初期段階でのまともな提案がもらえない仕組みになっている。これは非常に日本経済にとって、由々しきことではないか。 アメリカの企業は銀証一体となって、トータルパッケージでやるから話が早い。だからM&A市場が1990年代よりも今のほうが何倍も大きくなっている。日本の金融市場でもそれをやっていかないと、どんどん国際競争から立ち遅れてしまう。それでいいんですかということだ』、その通りだ。
・『規制緩和は「十分」という意見も Q:しかし、現状でも銀行と証券の営業員が一緒に営業できるようになっています。法人向けでは、拒絶されない限りは情報を共有できる「オプトアウト」も認められており、緩和は十分という意見もあります。 A:やっぱりルールはルールだから、厳格に運用しているわけです。 グループで営業やっていると、銀行と証券の人たちで集まって、いろんな相談をする。ただし、同意書がない企業の話になると、話し合いから抜けなきゃいけない。10社で協議しようとなったとき、数社で「同意書がありません」となったら、その話(顧客情報を共有する話)になった瞬間に「悪いけど、(同意書のない)証券は出ていけ」となる。これって、ものすごい面倒くさい。 しかも、それを記録化しないといけない。ちゃんとこういうふうにやりました、打ち合わせしました、誰それが参加していました、こういう話のときは誰それさんが何時何分に退出しました、とか。 そこまで記録を取らないと、あとで「お前ら、秘かにやっていたんじゃないか」と(当局から)嫌疑をかけられる。ファイアーウォールは金融検査の中で一番重い検査だから、資料を持っておかないと、何か嫌疑がかかったときのために、そういうアリバイづくりに、ものすごく労力をかけている。) コストもかかる。いつ(金融庁の検査が)来るかわからない。「そのときにどんな打ち合わせしたんですか」「ちゃんと中身がわかるんですか」「どういうことを話して、誰が参加していたか記録はありますか」と言われるんだから。 Q:費用や収益の面で、三菱UFJ証券やグループ全体にとってはメリットがあるわけですね。 A:(収益も)もちろん上がる。トータルで総合提案できるんだから。ファイナンスはこうします、M&Aはこんなサービスを提供できます、決済はこうします、為替はこうします、ヘッジします、余ったお金はこうやって運用しますなど、トータルパッケージでバーンと提案できるようになる。 ▽徹底的なルールの順守と厳罰化が必要(Q:銀証のファイアーウォールがなくなると、銀行による優越的地位の濫用や、利益相反が顕在化するのではないかと危惧する声もあります。顧客は本当に不利益を被る可能性がないのでしょうか。 A:考えられる不都合は、優越的地位の濫用と利益相反、あとは情報が漏洩するリスクが高まること、この3つかな。これらはまさに、もし解禁になったら、金融機関が本当に歯を食いしばって徹底的に順守しなきゃいけない。 自分からもう一度点検して、ルール決めて、それが履行されているかどうか、自己規律を最大限高めないといけない。今もやっているけど、もっとそこのところは厳格に運用するようにしなければいけない。あるいは全国銀行協会なり日本証券業協会の中で、そういう仕組みづくりをやるということだ。 あとは厳罰化だ。もしも優越的地位の濫用があったり、利益相反があったりすれば、(当局としては)業務停止命令出すぐらいの、そういった措置をやりますよ、ということにすればよい』、「もし解禁になったら、金融機関が本当に歯を食いしばって徹底的に順守しなきゃいけない」、「あとは厳罰化だ。もしも優越的地位の濫用があったり、利益相反があったりすれば、(当局としては)業務停止命令出すぐらいの、そういった措置をやりますよ、ということにすればよい」、同感である。
第三に、11月11日付け東洋経済オンライン「海外の機関投資家が抱く改正外為法の「疑念」 フィデリティ投信の三瓶氏に総会問題を聞く」を紹介しよう。
https://www.msn.com/ja-jp/news/money/%E6%B5%B7%E5%A4%96%E3%81%AE%E6%A9%9F%E9%96%A2%E6%8A%95%E8%B3%87%E5%AE%B6%E3%81%8C%E6%8A%B1%E3%81%8F%E6%94%B9%E6%AD%A3%E5%A4%96%E7%82%BA%E6%B3%95%E3%81%AE%EF%BD%A2%E7%96%91%E5%BF%B5%EF%BD%A3-%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%87%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E6%8A%95%E4%BF%A1%E3%81%AE%E4%B8%89%E7%93%B6%E6%B0%8F%E3%81%AB%E7%B7%8F%E4%BC%9A%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%82%92%E8%81%9E%E3%81%8F/ar-BB1aTj9j
・『今年9月、上場企業の株主名簿管理人である信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという前代未聞の事態が明らかになった。 問題発覚の直後こそ大きく報じられたものの、早々にトーンダウした。だが、今回の問題を単に信託銀行の事務処理ミスと片付けていいのか。 海外の機関投資家の事情に詳しいフィデリティ投信の三瓶裕喜ヘッド・オブ・エンゲージメントに聞いた(Qは聞き手の質問、Aは三瓶氏の回答)』、確かに不可解な出来事だった。どういう背景があったのだろうか。
・『Q:株主総会前日に配達された議決権行使書で、実際には届いているにもかかわらず、翌日扱いとして集計から外すことが20年以上続いていました。このことを聞いてどのように感じられましたか。 A:カウントミスではないだろうという印象を受ける。問題が発覚した事案は7月末の総会で繁忙期ではない。郵送した日を考えると、総会前日に届いたというのは理解できない。 Q:何らかの操作がされたということでしょうか。 A:それはわからないが、投資家からそうした疑念が出ている。ただし、カウントが洩れたことより、なぜ議決権行使が期限ギリギリになったのか、ということが問題だ。 Q:その疑念とは? A:発覚の契機となった(東芝に対して株主提案を行った)アクティビストファンドはプロフェッショナルであり、議決権行使のスケジュールを知っている。通常はギリギリの行使にはならない。ギリギリになったのは、待たされたからではないか、と。 アクティビストファンドが行っていた株主提案が、改正外為法(外国為替及び外国貿易法)の事前審査の対象になっていた。その審査結果がなかなか出なかったため、議決権行使を待たざるをえなかったのではないか、と多くの投資家が感じている』、「東芝に対して株主提案を行ったアクティビストファンド」への「審査結果がなかなか出なかったため、議決権行使を待たざるをえなかった」、とは初めて知った。恣意的な運用は避けるべきだ。
・『グレーな部分が濃いグレーになった Q:―改正外為法にはもともと経済産業省によるアクティビストの締め出しが狙いではないか、という懸念の声がありました。 A:そうした懸念があったことは事実だが、アクティビストの締め出しではなく、国の安全保障等のためだと説明があって、全体の流れや事前届出の条件などが明確になったので安堵した。 ところが、一番グレーだと思われていたところが、もっと濃いグレーになった、と今回の件で特に海外投資家は感じている。 Q:つまり、議決権のカウントよりも改正外為法の不透明さについて憂慮されているのですね。 A:そうだ。まず事前届出の審査結果が公表されない。 どういうときに「○」で、どういうときに「×」なのかわからないので、恣意的な審査が可能になる。公表されているプロセスでは、国の安全等の観点から問題のない場合は5営業日以内に審査通過を通知するとなっているが、今回、5営業日で審査通過の通知はなかったようだ。 結果的にファンドは自ら株主提案した議案の議決権を行使しているので最終的にはOKが出たはずだ。ではなぜOKなのにそんなに時間がかかったのかがわからない。今後も恣意的に時間をかけるのではないか――。そのように海外投資家が受け取ったことが問題だ』、こんなに不透明なのではまるで中国と同じだ。「事前届出の審査結果」も当然公表すべきだ。「今後も恣意的に時間をかけるのではないか――。そのように海外投資家が受け取ったことが問題だ」、先進国として恥ずかしいことだ。
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