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メディア(その25)(朝日新聞「創業来の大赤字」のとてつもない難題 構造改革を難しくさせている3つの要因、ユーザー爆増の「note」「cakes」炎上 他人事ではないメディアへの教訓、共産党の伝説・野坂参三を倒した お金に全く興味がない2人の記者) [メディア]

メディアについては、昨年11月2日に取上げた。今日は、(その25)(朝日新聞「創業来の大赤字」のとてつもない難題 構造改革を難しくさせている3つの要因、ユーザー爆増の「note」「cakes」炎上 他人事ではないメディアへの教訓、共産党の伝説・野坂参三を倒した お金に全く興味がない2人の記者)である。

先ずは、11月28日付け東洋経済オンラインが掲載した経済評論家・百年コンサルティング代表の鈴木 貴博氏による「朝日新聞「創業来の大赤字」のとてつもない難題 構造改革を難しくさせている3つの要因」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/391952
・『1月25日にFACTA ONLINEが『朝日新聞が「創業以来の大赤字」/渡辺社長が来春退任/「後継は中村副社長と示唆」』との記事を配信したことが、新聞、テレビ、出版などのいわゆるメディア業界をざわつかせ、ツイッターにもトレンド入りしました。 FACTAによれば、朝日新聞社の渡辺雅隆社長が労使交渉の場で伝えた情報だということなのですが、公表データではありません』、興味深そうだ。
・『「170億円の赤字」が具体的に何を示すかは不明だが  記事中には、「2020年度決算が創業以来の約170億円の大赤字に陥る見通しになった」とあるのですが、そもそも赤字が営業赤字なのか一時的な特別損失なのかそれとも新型コロナにともなう関連会社の企業価値減少を反映した包括利益の損失なのかもはっきりしません。ですからこの報道だけでそれがどれくらい朝日新聞社の経営にとって厳しいことなのかはわからないことがまだ多い状況です。 ただ、その大赤字の詳細は今後の報道を待つとしても、経営コンサルタントの視点で眺めると朝日新聞社には構造的に経営改革が進みにくい理由があります。実際、私も若い頃は経営改革のコンサルで似たような構造の企業改革で四苦八苦した経験があります。 今回の記事ではなぜ朝日新聞社の構造が難しいのか?そして改革をするとすればどのような方向があるのか?それぞれの要点を解説したいと思います。 朝日新聞社にはその経営改革を難しくさせる3つの構造が存在します。それは、 1. 業界の中で死の谷のポジションにいること 2. 不動産業という副業で莫大な利益があがっていること 3. 民間企業でありながら「社会の公器である」ということ です。それぞれを解説しましょう。 まず「死の谷」というのは古典的で普遍的な経営戦略のコンセプトです。同じ業界で競争をする大企業同士を比較すると圧倒的なトップが儲かり、それに続く2番手、3番手の企業は収益が上がりにくい。たとえば自動車ではトヨタ自動車と比較して日産自動車、ホンダが、コンビニではセブン-イレブン(セブン&アイ・ホールディングス)と比較してファミリーマート、ローソンが死の谷のポジションにいます。 この死の谷のポジションの企業は、業界が好調のときは利益が上がるのですが、不況になるとまっさきに業績が悪くなります。そして業界が縮小して事業から撤退するのも死の谷の企業から始まります。東芝が家電事業を中国企業に売却したのもその理屈です。 興味深いことに業界のさらに下位の企業の中には好業績を上げる企業があります。トップと同じことをやっていたら勝てないことが自明なので差異化を試みて成功するのです。 新聞業界では2020年上半期時点で771万部(ABC部数、以下同じ)と部数トップの読売新聞が持ちこたえている一方で、516万部と2番手の朝日新聞が大赤字に転落したというのが今回の話です。ちなみに全国紙では3番手が225万部の毎日新聞、4番手が213万部の日本経済新聞、5番手が133万部の産経新聞ということになります(直近で3番手と4番手が僅差で入れ替わったというニュースもありますがここではこの順位のままでお話しします)』、「死の谷のポジション」とは言い得て妙だ。
・『毎日、産経はすでに縮小経営を進めている  読売新聞も10年前まではだいたい1000万部の部数近辺で安定推移していたのが、2014年頃から急落を始めました。この上半期が771万部というと「かなり減ってきたな」というのが正直な印象です。ここ数年は新聞業界全体では毎年200万部ペースで発行部数が減少しています。 こういう長期凋落傾向の経営環境になってしまうと、業界トップの読売と同じやり方で対抗しようとする2番手の朝日の業績が大きく沈んでしまうのは、経営戦略のセオリー通りの現象だといえるのです。同様に毎日や産経も苦しく、希望退職を募るなど縮小経営を進めてきています。 一方、4番手の日経新聞は経済情報にフォーカスすることで逆に存在感を増しています。昨年度の日本経済新聞社の連結売上高は3568億円で、朝日新聞社が3536億円ですから、発行部数では半分以下でも経営手法で抜き去っている。この「下位企業は差異化によって死の谷から抜け出すことができる」というセオリーを具現化しているのが日経新聞社ということです。 いずれにしても朝日新聞社は「死の谷」のポジションにいる2番手企業だというのが構造的に朝日新聞社の経営改革を難しくしている1番目の条件です。) 次に2番目の理由をみたいと思います。朝日新聞社が公表している財務データを見ると、朝日新聞社という企業は新聞社でありながら、不動産事業で安定した利益を上げていることがわかります。 具体的に2020年3月期の決算データでは連結従業員数6174人が関わるメディア・コンテンツ事業(新聞はこの中に含まれます)の売上は3345億円、セグメント利益は19億円となっています。 一方で不動産事業は売上高385億円、セグメント利益は68億円です。コロナでオフィス需要が今後どうなるのか不安な昨今ではありますが、一般論でいえば朝日新聞社が行っているオフィスビルの賃貸事業は長期安定ビジネスです。構造的にはメディア・コンテンツ事業の長期凋落に対して、不動産事業の安定利益が下支えしていることになります。 そしてこれは経営学的には暴論なのですが、社内論理的には「メディア事業が68億円の赤字になるまではうちの会社の経営は耐えられる」という誤った認識が広まりやすい。この点で、不動産事業で莫大な安定収入が見込めるという構造は朝日新聞社の改革を進めにくくするのです』、「不動産事業」の「セグメント利益は68億円」もあると、経営陣や一般社員の気が緩みがちになる。
・『民間企業でありながら社会の公器である難しさ  さて3番目の理由が「新聞社は民間企業でありながら社会の公器である」という認識です。業界が縮小して経営者は大きな危機感を持つ環境下でも、社員である「記者」は「そんなことはジャーナリストとしての矜持の前にはたいした問題ではない」という意識を持ちがちです。 これはかつて日本航空の改革が進まなかったことと同じです。企業である前に安全運航を手掛ける公器であるがゆえに、経営環境が悪くなり赤字が嵩んだとしても現場はコストカットに協力する気を起こしにくいものです。本当はそうではないのですが、経営がコストカットというと「じゃあ安全をないがしろにするのか?」という反論が起き、結局「これまでとやり方を変えないことがいちばんいいのだ」という話に議論が落ち着きがちです。 このように3つの構造要因、つまり死の谷にあって業界が沈むと真っ先に業績が悪化する構造下で、不動産事業という安定した収益補填源があり、かつ公器であるがゆえに記者たち社員の協力が得にくいという構造によって、朝日新聞社はどうしても経営改革が進みにくい、言い換えると沈みやすい企業なのです。 そこで冒頭の話に戻ります。朝日新聞社が170億円の創業以来の大赤字となり、渡辺雅隆社長が来春で責任をとって退任すると労使交渉の場で伝えたというニュースです。公的な発表ではないのでその詳細は明らかではありませんが、それでも毎年200万部ペースで業界全体の需要が減少している新聞業界ですから、早晩朝日新聞社が日本航空のような大改革を必要とするタイミングがくることは避けられないでしょう。 しかし渡辺社長の代ではそれができなかった。自分が引責辞任する前に労組との会合でこのことを伝えたということは、深読みすれば次の社長は労使関係に踏み込んで改革せざるをえないことを事前通告したとも読み取れます。 では朝日新聞社にはどのような改革の道があるのでしょうか。細部はともかく大きな方向性としては茨の道がありえます。記者をはじめ現場の社員がのめるかどうか難しい問題ではありますが、朝日新聞に生き残る道がないわけではありません』、どうすればいいのだろう。。
・『高い給与水準を見直せばコストは下がるが  ひとつは給与カットによるリストラです。朝日新聞社は上場していませんが、有価証券報告書の提出企業で、上場企業と同じく従業員の給与水準を公開しています。それによれば朝日単体では従業員3966人の45.4歳の平均給与が1229万円(2020年3月31日現在)と、一般企業よりもかなり待遇がいいことがわかります。 細かくは申し上げませんが、これは朝日新聞だけでなく大手新聞社や大手テレビ局の社員の平均的な給与水準です。そもそもメディア業界が潤っていた当時からの業界標準だったのですが、新聞は販売部数の減少に加えて、テレビと同じく広告収入にも長期凋落傾向がはっきりしていて、いつまでもこの高給待遇の構造が維持できないことは自明です。 新聞業界においてはすでに地方紙と毎日、産経のような下位企業でこの従業員給与の見直しが進んでいます。毎日、産経ともに最近はデータを公表していませんが、5年前ぐらいの最後の公表数値では両社とも平均的な40代社員の年収は800万円前後。もともと朝日新聞の3分の2ぐらいの給与水準で、さらに下がっていると推測されます。 子会社の給与水準がわからないので、あくまで単体ベースについて単純計算ですが、朝日新聞において本社の従業員の年収が1200万円から800万円に、つまり平均で400万円下がれば会社のコストがそれだけで150億~160億円ぐらい下がります。 よく「朝日新聞の従業員の給与がトヨタ並みになれば朝日新聞社は圧倒的な黒字企業になる」と揶揄されます。財務的に言えばまさにそのとおりなのですが、それを成し遂げるには大きな痛みが伴うため、一筋縄ではいかない難しさがこの先の同社を苦しめることになるでしょう。それは同じく沈んでいる毎日、産経などのほか、ブロック紙、地方紙、専門紙などを含めた新聞業界全体の大きな課題がいよいよ顕在化していることを示しています』、「朝日新聞」は痩せても、枯れてもやはりリベラルの旗手なので、出来ることは限られるだろう。

次に、12月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「ユーザー爆増の「note」「cakes」炎上、他人事ではないメディアへの教訓」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/257605
:国内月間アクティブユーザー数が6300万を超えたとも言われ、国内でもっとも人気のあるWebサービスのひとつとしての地位を確立しつつあるnote。しかし、運営元ではここ数カ月間、「炎上騒ぎ」が続いている。一体何があったのか』、興味深そうだ。
・『今年に入って急伸、文藝春秋とも資本提携  ツイッターやフェイスブックで話題となっている記事をクリックすると、左上にエメラルドグリーンの四角いアイコンとアルファベット4文字「note」が表示される、という経験をしたことがある人は多いはずだ。 noteは、ここ数年急成長したWebサービスのひとつで、ブログのように誰でも情報発信ができる。2020年6月には国内の月間アクディブユーザー(月に1回以上アクセスしたユーザー数の合計でMAUともいう)が6300万を突破したことを発表した(会員登録者数は260万人)。2019年9月時点のMAUは2000万で、数カ月で急激に増加した理由について、運営するnote株式会社(以下、note社)はコロナ禍において専門性や知識に基づいた、医療やビジネス記事が多く拡散されたことなどを挙げている。 ツイッターのMAUが4500万、インスタグラムが3300万(どちらも国内)なので、ユーザー数だけを見れば、noteが後発のWebサービスとしていかに善戦しているかがわかる。 note社の設立は2011年。ダイヤモンド社の書籍編集者として「もしドラ」こと 『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海著)などのヒット作を手がけていた加藤貞顕氏が立ち上げた。設立時の名称は「株式会社ピースオブケイク」で、2014年にメディアプラットフォームとしてスタートした「note」の拡大を受け、2020年4月に「note株式会社」に社名変更している。 2019年8月にはテレビ東京ホールディングスと資本業務提携、そして2020年12月10日には、文藝春秋が同社に出資し、資本業務提携したことを発表した。 noteは文章、画像、音声、動画を誰でも投稿でき、さらに有料販売できることがクリエイターの利用者が多い理由と言われている。さらに、法人が「公式ブログ」として利用しているケースが多く(同社発表では1600件)、それが「信頼性のあるプラットフォーム」の印象に一役買っている。 利便性と信頼性の両面でユーザーを獲得してきており、メディア・IT業界における成功例として注目株だったことは間違いない』、「note」「cakes」とも、ちょっと見ただけでは、それほど魅力があるとも思えないが・・・。しかし、「MAU」の多さ、一流のマスコミが出資・提携していることなどから、将来性はあるのかも知れない。
・『ユーザーに「特定」の恐怖を与えたIPアドレス漏洩問題  しかし、そのnoteの評判がここ数カ月で傾きつつある。 始まりは2020年8月。ユーザーのIPアドレスが第三者から確認可能な状態になっていることが明らかになり、「IPアドレス漏洩問題」と騒がれた。 IPアドレスの一致は、「同じ場所から書き込まれた」ことを意味するため、匿名掲示板に書き込まれたコメントのIPアドレスと有名人のnoteのIPアドレスを照合する人たちまで現れた。 noteで数万人のフォロワーがいる筆者の知人はこの時期にフォロワー数が100人ほど減ったといい、「漏洩で怖くなってアカウントを消したユーザーがそれなりにいたのではないか」と話していた。 ネット上では素性を隠して発信をする人も多い。著名人が匿名で書き込みを行うこともある。匿名のいちユーザーのつもりで交流を楽しんでいたのに、急に「特定」される可能性が持ち上がった。この恐怖は十分理解できる』、「IPアドレス漏洩問題」、とは深刻だ。
・『人気の写真家による人生相談 DV被害を「ウソ」と決めつけて炎上  また、10月後半からはnote社が運営する「cakes」での「炎上」が相次いだ。cakesは、コラムニストや漫画家らが連載を持つ有料のコンテンツ配信サイトだ。 最初に炎上したのは、写真家・幡野広志氏が連載していた人生相談「幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう」。夫との関係を相談した女性に対し、「大袈裟もウソも信用を失うから結果として損するよ」というタイトルをつけて、「あなたの話はどこまで真実でどこまでウソなのか、どれくらい大袈裟にいってるのか、ぼくにはわからないの。細かいことはわからないけど、でもあなたが大袈裟に言ってることだけははっきりわかるの」などと言い立てる内容だった。 読者からは、DVやモラハラにあたるような内容を伝えている相談者に対して酷な回答であると批判が殺到。ウソだと思うなら取り上げなければいい、などの意見が上がった。また、批判が上がり始めた段階で、編集部が無料公開部分を大幅に減らし、「隠蔽しようとしている」という印象を与えたこと(*)や、編集部がツイッターの告知で女性の文章を「違和感のある相談文」と紹介していたことも火に油を注いだ(*後日のインタビューで、無料箇所の変更は他記事でも行っており、「特別な意図はございません」と釈明)。 この後、幡野氏と編集部はそれぞれ謝罪。幡野氏は相談者の女性と直接連絡を取って謝罪したことを明らかにしている。 個人的には、モラハラなどで追い詰められた人に適切な相談相手がおらず、適切ではない相手に相談した結果、二次被害に遭うケースに見えて心が痛かった』、「相談」ではトラブルと紙一重だ。
・『優秀作を受賞したホームレス「観察」レポートが炎上  さらに11月に入ってからは、cakesのクリエイターコンテスト優秀作を受賞した作品が炎上。これは、ホームレスを3年間取材し続けた夫婦ユニット「ばぃちぃ」による写真入りのレポート記事だった。タイトルは「ホームレスを3年間取材し続けたら、意外な一面にびっくりした」。 この記事については、「ホームレスの人を動物のような“観察対象”、“異文化扱い”にしている」「剥き出しの差別だ」といった批判のほか、優秀作に選ぶ編集部のスタンスにも批判が集まった。一方で、「異文化扱いしてはいけないのか」「タブーにするより興味関心を持った方がいい」などの擁護意見もあった。 ただ、「ばぃちぃ」が過去に、交流のあるホームレスの人が作った食事を「ホームレス飯」と名付けてレシピサイトに投稿していたことや、「ホームレス人生ゲーム」の制作を企画し、その境遇を面白がっているとも取れるスタンスだったことが明らかになると、擁護の声は少なくなっていった。 ミュージシャンのロマン優光氏は自身の連載の中でこの炎上を取り上げ、この記事について「単純に失礼な感じ」「対象に対して失礼でしかないみたいな文章が多い」「文章が雑なせい、下手なせいで余計に変に見えてる部分もあるとは思います」と分析している。 この分析にもあるように、そもそも記事のクオリティに疑問を持った読者も多く、優秀作品に選んだ編集部の運営に疑問の声が上がった』、「編集部の運営に疑問の声が上がった」、これは避けられない宿命なのではなかろうか。
・『2回の炎上、余波で関係のない書き手が「連載消滅」  そして12月に入り、3回目の炎上があった。12月9日に声優の浅野真澄氏が「あさのますみ」名義でnoteにアップした記事のタイトルは「cakes炎上と、消滅した連載」。 浅野氏の記事が炎上したのではない。前述した10月と11月の2回の炎上により、cakesで予定されていた浅野氏の連載がなくなった、というものだ。 浅野氏は、友人が自死を選んだことをきっかけに生じた自身の葛藤を2020年3月に「逝ってしまった君へ」という文章にして発表。cakesクリエイターコンテストに入選し、連載の権利を得ていたという。 しかしその後の炎上を受け、cakes編集部からは「刺激が強い部分はマイルドに書き直してほしい」「フィクションってことにしませんか」などの提案があり、浅野氏は大きなショックを受けた。また、掲載できないが、支払うとされた原稿料は「1本あたり7000円」だったという。 これについてネットでは「ひどすぎて言葉にならん」「編集がだめすぎる」などの声があふれた。 ただ、その後12月14日に浅野氏はnoteを更新して、編集部と和解したことを報告している。 また、12月10日にはcakesで連載を持っていた佐伯ポインティ氏が「2年間続けていたcakesでの連載が打ち切りとなりました」という記事を公開し、編集部都合により連載打ち切りの提案があり、その提案に不信感を覚えたことをつづっている』、「クリエイター」と「編集部」の関係はもともと難しいものなのだろう。
・『代表・加藤氏のお詫び文も炎上  残念ながらまだ終わらない。cakesは2回の炎上を受けて11月末に編集長を大熊信氏から榎本紗智氏に交代。また浅野氏の告発を受けて、お詫び文を掲載していた。 榎本氏名義のお詫び文は体制の見直しなどを発表し、再発防止に努めることを約束するもので、ツイッターで検索すると中には厳しい言及もあるものの、比較的受け入れられている。 一方で新たな火種となってしまったのが、12月15日に発表された、CEOである加藤氏のお詫び文「cakes一連の件についてのお詫び」だ。 ピースオブケイク立ち上げ前、20年間編集者を続けてきた加藤氏が、子どもの頃から「コンテンツに救われた経験」があったこと、そして編集者は「クリエイターの想いを、世の中に届ける手伝いをする仕事」という理念、さらに「ネット全体の創作のインフラ」を作るつもりでnoteを始めたことなどが語られている。 そして、度重なる炎上について、「メディアのような存在になっていったのに、既存のメディアのような厳格なチェック機構がなかったことです」と説明。cakesの初代編集長だった加藤氏の方針には「悪口禁止」があったが、その後に編集長を引き継いだ際に、「より責任あるメディアの方向に体制をシフトしなかったことが、いまの問題を引き起こしています」としている』、ネット・メディアにとっては、「より責任あるメディアの方向に体制をシフト」することは、極めてハードルが高そうだ。
・『ちょい悪風アイコンで謝罪 にじみ出る危機管理の甘さ  はてなブックマークでこの記事についたコメントで支持を集めているのは、「普通顛末と再発防止策書くでしょ。なんにも書かれてなくてただの回顧録だった」「社員を批判するな、編集者としての自分の来歴、会社の設立、感謝、ミッションという章立てですが、お詫びの体裁が成立していないのでどなたかプロの編集者の方に添削してもらうとよいのではないでしょうか」「言いたいことだけ言い放っておしまい、というのがとてもcakesっぽくて一貫性を感じる」などで、ネットユーザーの受け止めは総じて厳しい。 ちなみに、ツイッターで記事をシェアした際に表示される加藤氏の似顔絵アイコンがちょい悪風で、お詫び文にそぐわない。この部分だけでもどうにかしたほうがよかったのではないかと思わざるを得ない。広報は機能しているのだろうか』、普通のメディアのような「広報」など、はなから存在しなかったのではなかろうか。
・『すべてのメディアは人ごとではない 指針や倫理観を失った編集部  ただしツイッターの反応では「応援しています」「読んでよかった」などの意見も散見され、noteの躍進を知るメディアやIT企業関係者の一部は、成長に伴う摩擦にすぎないと見なしている様子がうかがえる。 実際、不満があっても利便性が高ければユーザーは利用を続けるし、利用するユーザーに罪はないので、書いてある内容が面白ければ読者はnoteやcakesの記事を拡散し続けるだろう。編集部にとって本当に怖いのは、一時期の炎上や編集部への信頼低下よりも、コンテンツがつまらないと判断されることだ。ユーザーが関心を持たなくなり、忘れられ、新規顧客がいなくなることの方が怖い。 炎上を繰り返すブロガーやユーチューバーが、炎上しているうちは安泰であるのと似ている。 加藤氏はお詫び文の中で、「インターネットは、仕組み上、悪口があふれがち」「悪口というのは、かんたんに言えて、(残念なことですが)おもしろくて、結果、ページビューも増えるので、ネットのエンジンでもある広告と、非常に相性がいい」と書き、そのような既存のインターネットと別の世界を作ることが目標だったと書いている。 しかし、炎上した幡野氏の文章は悪口どころか相談者に対する公開いじめめいていたし、現在のnoteは、ネットで簡単にページビューの増える炎上で話題になり注目を集めている。 炎上ブロガーやユーチューバーに共通するのは、「読まれれば(見られれば)なんでもいい」という節操のなさだ。 ユーザー数獲得の目標ありきの中で、編集部は指針や倫理観を失っていったのではないか。人気のある書き手には何も言えない、そうではない書き手には不適切なマネジメントをする。続いた炎上は、すべてこれが原因だ。 指針を失った編集部。これはnoteに限らず、貧すれば鈍するを体現するような出版社や新聞社、テレビ局にも言えることだが、次世代のコンテンツプラットフォームとして注目を集めていたnoteにさえその影を見るのは悲しさしかない』、「人気のある書き手には何も言えない、そうではない書き手には不適切なマネジメントをする。続いた炎上は、すべてこれが原因だ」、「noteやcakes」の人気も限界が出てきたようだ。

第三に、1月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長・岐阜女子大学副学長の木俣正剛氏による「共産党の伝説・野坂参三を倒した、お金に全く興味がない2人の記者」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/258982
・『文芸春秋に入社して2018年に退社するまで40年間。『週刊文春』『文芸春秋』編集長を務め、週刊誌報道の一線に身を置いてきた筆者が語る「あの事件の舞台裏」。今では忘れられた共産党の大スターだった野坂参三。彼の巨大な闇を暴いたジャーナリストたちの執念をお話します』、興味深そうだ。
・『ジャーナリズムの真骨頂 大宅賞受賞の「野坂参三伝」  文芸春秋が芥川賞・直木賞を主宰していることは、みなさんもご存じでしょう。しかし、大宅壮一ノンフィクション賞となると、知らない人も多いかもしれません。 名前の通り、芥川賞が純文学、直木賞が大衆文学の新人賞で、大宅賞はノンフィクションの新人賞です。ただし社内でも、実際に選考委員が加わった選考会でも、「一体ノンフィクションとは何か」という議論が繰り返され、定義が決まらないまま今日に至っています。 たとえば、今までの受賞作を振り返ってみましょう。第2回の受賞者は、イザヤ・ベンダサンの『日本人とユダヤ人』。公然の秘密ですが、山本七平さんが外国人名で書いたエッセイです。 第3回では、早くもこの賞が孕む矛盾が出ています。受賞者は2人で、1人は桐島洋子さんのエッセイ『淋しいアメリカ人』。もう1人は柳田邦男さんの『マッハの恐怖』で、本格的ノンフィクションです。完全なノンフィクションを賞の対象にすべきなのか、フィクション(小説)以外のエッセイや手記などすべてのジャンルを包括すべきなのか。今に至るもこの問題が解決できずに、右往左往しているのが現状というべきでしょうか。 これは書籍を受賞対象にする以上、無理からぬところもあります。いわゆる雑誌ジャーナリズムのスクープは、どんなに長くても10ページから20ページ程度の作品です。書籍にするために再取材、書き足しをしているうちに鮮度が落ちて書籍としての意味がなくなってしまうからです。 そんな中で、第25回大宅賞(平成6年)に輝いたのが、スクープ系の最右翼受賞作『闇の男 野坂参三の百年』でした。野坂参三はもはや過去の人となり、多くの人から忘れられてしまいましたが、1990年代までは伝説の偉人でした。 日本共産党員としてあの無謀な戦争に断固反対し、地下に潜り、中国に逃亡してまで、日本の滅亡を予言。中国戦線の日本兵に「脱走しなさい」とビラを配布したり、日本人捕虜に再教育を行ったりした共産党の英雄でした。日本の敗戦後は帰国を果たし、日比谷公園で参加者3万人による大歓迎会が開催されたほどです。 もともとが慶応大学出身というインテリ。その後、宮本顕治らと日本共産党内部で対立し、北京に亡命したあと、帰国。参議院議員を4期務め、名誉議長となっています。当時の日本のインテリたちにとって、公安警察と戦い投獄され、外国にまで逃げて日本の軍国主義と戦った共産党員には、明らかに引け目がありました』、「共産党の英雄」が「雑誌ジャーナリズムのスクープ」で権威を失うとはメディアの力も大きかったようだ。
・『隠された遺体を探しに北方領土へ潜入取材  しかし、『闇の男 野坂参三の百年』は野坂の偶像破壊をやってのけました。野坂参三はアメリカに滞在していたときコミンテルンに対し、ソ連にいた日本人の同志・山本懸蔵ら数名を密告して粛清したことが、当時のソ連側の資料で明らかになってしまったのです。当時のインテリ層には大きなショックだったと思います。 いわば、日本の進歩的文化人のレゾンデートルを叩き潰したのが『闇の男 野坂参三の百年』でした。そして実は、この記事はまだスキャンダル雑誌としか見られていなかった週刊文春に連載されていました。 担当していたのは私。筆者の加藤昭さん、小林峻一さんの組み合わせを考えたのは、当時の花田紀凱編集長でした。 加藤昭さんは、ある意味記者の鏡のような人でした。とにかく取材にこだわる。収入にこだわらない。自分の身に危険が及ぶことを恐れない。なかなかいる人材ではありません。 そうした彼の取材姿勢を知ったのは、1983年、大韓航空機撃墜事件の取材をお願いしたときのことです(1987年に、金賢姫が大韓航空機を爆破しようとした事件とは別)。ソ連軍が大韓航空の旅客機を米軍の偵察機と誤断してミサイルで撃墜した事件は、世界的な批判を浴びました。 しかし、当時のソ連は秘密主義の国。遺体はほとんど回収されなかったと公表され、事実関係もわからないままになっていました。加藤昭さんは、北方領土に住む住民たちにだけ許されている墓参団に紛れてサハリンに潜入。「遺体がどこかに隠されているだろうから、調べたい」と言い出したのです。 取材のリスク、いや墓参団自体への迷惑など、色々問題点を申し上げましたが、一歩も引きません。それどころか、「文春の記者である証明書さえくれれば、取材費も要りません」と言い出す始末です。確かに、万一のことがあった場合、相手がいくらソ連でも「日本人の記者証」があれば、いきなり極刑に処されることはないでしょうが、何年も抑留されることは十分あり得ます。それでも彼は墓参団とともに出発しました。 潜入取材は成功し、遺体は海に流され消えたのではなく、住民たちが埋めたという証言もたっぷり聞いて、録音テープを持って帰国してきました』、「墓参団に紛れてサハリンに潜入」「潜入取材は成功」、すごいジャーナリスト魂だ。
・『共産党の闇を暴いたのはオカネに興味のない記者たち  無事、原稿が掲載され、原稿料の振込先を聞いたときのセリフにしびれました。 「好きなことをしてオカネをもらうなんて、いいんですか?」 一方、小林峻一さんは仙人のような記者でした。戦後の日本共産党史に詳しく『日本共産党スパイM 謀略の極限を生きた男』(鈴木隆一氏との共著)は、共産党の秘史を見事に暴いた作品ですが、寡作の人でした。あれだけしか原稿を書かないで、どうして食べているのかと周囲に尋ねると、「実家が山林王で、時々実家に帰って山を売って暮らしている」との噂。 なんだか金銭に興味のない、資本主義の逆をゆくような2人のコンビが、日本共産党の秘密を暴いたのも皮肉な話です。) この取材を開始した1990年代は、ソ連が崩壊し、KGBの史料がどんどんオカネで買える時代となっていました。編集部は持ち運びし得る現金を加藤さんに託し、加藤さんがモスクワで元KGBや現役KGBと交渉し、次々と史料が手に入ります。モスクワから送られてくる翻訳された史料をもとに、小林峻一さんが原稿を書き、私がチェックした上でタイトルをつけて入稿していた作業を、今も覚えています。 正直、週刊誌としては地味な記事でしたが、一定の業界に強い反応があったことは認識していました。そして連載の真っ最中に、野坂名誉議長は解任され、共産党を除名。党からの年金支給まで打ち切られました。 ただの週刊誌記事、無名の2人の記者が伝説の男を倒したのです』、「ただの週刊誌記事、無名の2人の記者が伝説の男を倒した」、ジャーナリスト冥利に尽きる成果だ。
・『大きな仕事を経験した編集者が滅多にメディアへ出ない理由  その後も、ソ連から様々な資料が持ち出されました。中川一郎氏の死の真相や北朝鮮の核問題など、KGBから見た興味深い事実が発掘されました。ただ、ひとこと言っておきたいのは、オカネがあったからそれらが簡単に入手できたわけではありません。凍てつくモスクワの朝、犬の散歩をするとわかっているKGB将軍の家の前で張り込むという、多分ロシア人ジャーナリストは絶対しないであろう努力を加藤さんが毎日したからこそ、次々と文春がニュースを発掘できたのだと思います。 あるとき、某編集長が「ソ連にいってカネを払えば、どんどん資料が手に入る」と講演でしゃべり、それが雑誌に掲載されたとき、加藤さんは激怒しました。当たり前です。編集者は気配りが商売なので、ついつい場を盛り上げようとしゃべりすぎてしまいます。 私が現役時代、講演やメディアへの露出を控えめにしていたのは、こうした経験があったからで、これは今でも同じでしょう。テレビや講演によく出る編集長は、それが雑誌の宣伝になると必ず言います。雑誌が売れない時代ですから、その気持ちはよくわかりますが、実は、宣伝よりマイナスの方が大きい。それは、大きな仕事を現場でした経験者ならわかるはずです』、「テレビや講演によく出る編集長は、それが雑誌の宣伝になると必ず言います。雑誌が売れない時代ですから、その気持ちはよくわかりますが、実は、宣伝よりマイナスの方が大きい」、こうした「宣伝」も難しいようだ。 
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