SSブログ

ロボット(その3)(パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験 21年度の収益化目指す、実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ、利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ) [イノベーション]

ロボットについては、昨年4月16日に取上げた。今日は、(その3)(パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験 21年度の収益化目指す、実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ、利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ)である。

先ずは、本年1月10日付け東洋経済オンライン「パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験、21年度の収益化目指す」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/401617
・『「お先にどうぞ」「左に曲がります」「走ります」 かわいらしい顔をもつ箱型のロボットが路上を走行し、周囲の人に語りかける。 パナソニックが2020年11月から、自動配送ロボットの公道での実証実験を続けている。場所は、約2000人の住民が居住する、神奈川県藤沢市の同社工場跡地にあるスマートシティー「フジサワサスティナブルスマートタウン」(藤沢SST)。コロナ禍でネット通販や料理の宅配ニーズが増加し、配達員の不足が生じているが、その解消に役立てることが狙いだ』、「スマートシティー」とはいえ、一般の公道での実験だ。
・『最大速度は歩く速さと同じ  今回の実証実験はフェーズ1とフェーズ2の2段階に分けられている。2020年11月~12月に行われたフェーズ1では、配送ロボットが公道をきちんと自動走行できるか確認する。2021年2月~3月に予定されるフェーズ2では自動走行だけでなく、ロボットを使って利用者のもとへ商品を届ける実験を行う。 自動配送ロボットは同社が手掛ける電動の車椅子をベースに作られた、高さと長さがそれぞれ約1.1メートルの箱形ロボットで、側面に2つの扉が付いた荷物を入れるボックスが搭載されている。最大速度は人が歩く速さとほぼ同じ時速4㎞で走行する。 基本的に自動運転であるが、道路を横断する際や路上駐車中の自動車などをよける際は、監視センターにいる担当者が遠隔操作することになっている。 パナソニック・マニファクチャリングイノベーション本部ロボティクス推進室総括の安藤健氏は「道が混雑しているときには住民に気を遣ってもらわないといけないので、(ロボットの外観は)愛着をもてるつくりにしている」と話す。同社では「(フェーズ1実験における)住民の受容性、期待は想像していた以上に高く、ロボットと親しんでくれそう」と手応えを感じているようだ。 フェーズ2では、ロボットが複数店舗で商品を受け取り、利用者の自宅に届ける作業を実験する。利用者の指示通りに店舗をまわり、店舗の従業員がロボットの荷物ボックスに商品を入れ、利用者の自宅に届ける。 パナソニックは自動運転技術を着々と開発してきた。2019年からは、大阪府門真市にある本社敷地内で社員が移動する際に、自動運転ライドシェアサービスを実施していた。 同社のモビリティソリューションズ担当参与の村瀬恭通氏は「本社でのライドシェアサービスでどれだけの人が移動し、荷物を運び、時間帯によってどのルートが活用されたか、たくさんのデータが集まった」と振り返る。どのように自動運転のサービスが運用されるか蓄積を続けている』、「基本的に自動運転であるが、道路を横断する際や路上駐車中の自動車などをよける際は、監視センターにいる担当者が遠隔操作」、「どのように自動運転のサービスが運用されるか蓄積を続けている」、まだ「データ」「蓄積」の段階のようだ。
・『継続課金のビジネスモデルを目指す  今回の実証実験の目的について、村瀬氏は「藤沢SSTは子どもや高齢者も住む場所。本社エリアとは違う場所で運行することで新たなデータが集まり、さらなるアップデートにつながる」と話す。今後は人や車の往来が激しい街中で自動運転が可能なのか。また、年齢ごとの使われ方の違いや配送しやすい商品のタイプなどを探っていく考えだ。 パナソニックは創業100周年を迎えた2018年に新たな経営方針として「くらしアップデート」を掲げた。家電や住宅設備をはじめ、同社が展開する幅広い製品群とソフトウェアを組み合わせてサービスを提案。製品を単に売って終わりでなく、継続的に課金できるビジネスモデルの構築を目指している。 同社は移動に関わるモビリティ分野も人の生活圏を構成する重点ターゲットと位置づけており、自動運転は柱の1つだ。 ビジネスとしては、「2021年度中に有償でサービスを提供できるようにしたい」(安藤氏)とし、その時期を逆算すると、2020年度内には公道で走る技術を獲得する必要がある。さらに、「(単に技術的に)公道を走れるかだけでなく、(住民に)価値を感じてもらえるか」(安藤氏)も重要になる。 ビジネスとして実用化するには障壁もある。現在、自動配送ロボットの走行やサービスについて明確に規定した法制度があるわけではない。今回の実証実験も公道での走行にあたり、国土交通省による道路運送車両の保安基準の緩和措置を受けて、藤沢警察署から道路使用許可を取得している。また自動配送ロボット自体も法律的には原動機付自転車の扱いとなっている。 政府の成長戦略会議は2020年12月に新しい成長戦略案を示し、「2021年度のできるだけ早期に、(自動配送ロボットを用いたサービスが可能となるよう)関連法案の提出を行う」と明記した。法改正に向け、同社も積極的に関係省庁との意見交換を行っているが、「制度の整備時期や作られる制度の内容が現場の実態に即したものになるかは不安」(パナソニック幹部)との声もある』、「法改正に向け、同社も積極的に関係省庁との意見交換を行っている」、「同社」の思うような方向になるかは不明のようだ。
・『配送データを都市開発に活用  自動配送ロボット分野では2020年10月に日本郵便が公道上での荷物運搬実験を実施したほか、ソフトバンクグループが佐川急便やコンビニ大手のセブンーイレブン・ジャパンと組んで屋内外での配送実験を行った。 有償サービスも、自動配送サービスの利用者と店舗のどちらが利用料を支払うのか。契約形態などのビジネスモデルも定まっていない。村瀬氏は「ものを運ぶだけでビジネスが成立するとは想定しにくく、蓄積したデータの活用などいろいろなケースを考えていく」と話す。 具体的には、自動配送ロボットをデータマイニングツールとして利用し、集めたデータを活用してマネタイズすることや、自動配送ロボットで集まるデータを都市開発などに生かしていくことなどを想定している。 自動運転技術は配送サービスだけでなく、街中でのライドシェアサービスにも活用されうる。村瀬氏は「住宅街、観光地、遊園地などエリアによってマネタイズ方法も変わってくる」としている。 各社が参入して競争が激化するなか自動走行技術や収益化の方法などで他社よりも優位に立てるか、パナソニックの強さが問われている』、今後の「自動運転技術は配送サービスだけでなく、街中でのライドシェアサービスにも活用されうる」、展開を注目したい。

次に、3月16日付け東洋経済Plus「実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26457
・『ファナックの実質創業者であり名誉会長だった稲葉清右衛門氏が2020年10月2日に死去した。稲葉氏は、富士通信機製造(現富士通)で後にファナックの看板商品となる「NC装置」の開発を先導。1972年にNC装置事業が「富士通ファナック」として分離独立すると、NC装置、産業用ロボットの世界的企業へと同社を育て上げた。 2002年に出版された著書『黄色いロボット』に書かれた稲葉氏の言葉から、異色の超高収益企業を生み出した経営哲学を探る』、興味深そうだ。
・『「黄色」に込められた意志  ファナックが本社を構える山梨県忍野村に足を運ぶと、工場群の外壁、従業員の制服、社用車、ロボット、すべてが黄色に染められている。これは稲葉氏が黄色を「戦いの色」としたことに由来する』、「黄色を「戦いの色」」、としたとは初めて知った。
・『原価への強いこだわり  稲葉氏は、競争力をもつ商品になるかどうかは開発段階(≒生まれ)で決まると考えた。つまり、商品を生み出す開発段階で製造コストを抑えられる設計をしなければ、その後の製造段階(≒育ち)で工夫したとしたとしても他社を圧倒する低価格を実現できない。 ファナックで商品を開発する際には、まず「最低5年間は絶対負けない不敗の価格」を設定。そこから決められた利益を引き、残りを原価とする。研究員は、この目標原価内で商品を製造できるように、製造システムまで考えて設計をしなければならない。 この原価へのこだわりが、ファナックの高収益体質の根源だ』、「研究員は、この目標原価内で商品を製造できるように、製造システムまで考えて設計をしなければならない」、「原価」の縛りはかなり強いようだ。
・『黒字化へ選択と集中  稲葉氏は1956年から富士通の社内組織でNC装置の開発を始め、やがて販売も行うようになった。しかし、当初は赤字が続き、当時の富士通の社長から毎月のように強い叱責を受けた。 そこで、並行して開発を手がけていたプロセス制御から撤退し、NC装置に集中。さらに、受注の内容を見直し、すべて赤字となっていた特注品の受注は中止。商品を絞り、狭い領域を掘り下げていく方針に転換した。 1965年に黒字を達成すると、NC装置が搭載された工作機械の普及も進み、NC装置部門は富士通の中でも高収益部門に成長。機械技術者としてNC装置の開発に邁進してきた稲葉氏は、この赤字対策の経験で、企業経営における管理部門の重要性を認識した。稲葉氏は「この経験がファナックの経営にどれほど役立っていることか」と振り返っている』、「機械技術者としてNC装置の開発に邁進してきた稲葉氏は、この赤字対策の経験で、企業経営における管理部門の重要性を認識した」、「赤字対策の経験」を「企業経営」に活かしたのは大したものだ。
・『財務指標に透ける信念  NC装置の納入先である工作機械業界は、景気の変動に大きく左右される。だが、つねに新しい技術を生み出し競争力を高めていくためには、安定的に利益を確保する必要がある。1972年のファナック発足にあたり稲葉氏が企業像として打ち出したのは、規模は小さくても他人資本に依存せず、確実に利益を生む「小さな巨人」だ。 「小さな巨人」の条件の1つは、「売り上げが3分の1に減っても利益がでる企業体質」だ。稲葉氏は、研究開発、製造、事務管理を徹底的に合理化。製造については、単純作業をロボットに置き換え、加工対象物や部品を無人搬送車で搬送するなど、工場の自動化を進めた。 もう1つの条件は、財務の健全性だ。稲葉氏は借金を嫌い、必要な資金をすべて自己資金で賄うことを目指した。資金だけでなく、世界各地の現地法人、合弁会社の土地や建物もすべて買い取る「絶対に借りない主義」を貫いた。 財務へのこだわりは今でも続き、有利子負債は0円、自己資本比率9割近くを誇る。仮に売上高が0円になったとしても通常の運転資金を維持できる期間を示す手元流動性比率は12.5カ月にもなる』、「絶対に借りない主義」については、異論もあるが、「売り上げが3分の1に減っても利益がでる企業体質」づくりに努めたとはさすがだ。

第三に、3月18日付け東洋経済Plus「利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26477
・『かつての超優良企業が復活の兆しを見せている。 NC(数値制御)装置で世界最大手のファナックが1月27日に発表した2021年3月期の通期業績予想は、売上高5323億円(前年同期比4.7%増)、営業利益1058億円(同19.8%増)だった。 2020年4~6月期の業績が新型コロナの影響で急落したのにも関わらず、通期の業績は前期比20%近い増益となる見通しだ』、なるほど。
・『海外で需要が回復局面に  好調の要因は中国向け受注の回復だ。中国では、NC装置などのFA(工場自動化)、ロボット、ロボマシン(加工機)の各部門がIT、建機、自動車など幅広い業種向けで好調。2020年10~12月期の中国向け受注高は前年同期比167%増の598億円と大幅に増加した。 また、アメリカではロボットの受注がEVを含む自動車関連、一般産業で順調に回復している。この影響から、2020年10~12月期のロボット受注高が661億円(前年同期比42%増)と急増し、過去最高を更新した。 ファナックの山口賢治社長は、IT関連のロボドリル(小型切削加工機)の需要増加が一時的とみられることなどを懸念点に挙げる一方で、「(設備投資需要が)​回復局面にあることは間違いない」と断言した』、なるほど。
・『消え去ったスマホ特需  ファナックにとっては、待ちに待った回復局面だ。2010年以降、iPhoneの新製品が投入されるたびに、ロボマシン部門で金属製筐体を加工するロボドリルが、EMS(電子機器の受託製造)向けに大量に生産された。当時のファナックは、この「スマホ特需」によって何度も40%もの営業利益率を叩き出していた。 ただ、米中貿易摩擦を受けて2018年秋ごろから製造業の間で設備投資を様子見する動きが広がった。自動車や半導体業界の設備投資が一巡し、工作機械、ロボットなどのFA市場が急速にしぼむことで、ファナックの受注は2017年10~12月をピークに、減少傾向が続いた。 とくに工作機械メーカーに納入するNC装置は、工作機械市場の停滞の影響を大きく受け失速。加えて、スマホ向けの小型加工機が市場に浸透したため、2018年3月期以降はスマホ特需もなかった。 2019年末から2020年頭にかけて、設備投資がようやく動き出したところに、今度は新型コロナが直撃。2020年4~6月期の受注はさらに落ち込んだ』、「スマホ向けの小型加工機が市場に浸透したため」「スマホ特需」も「消え去った」のは構造的変化のようだ。
・『積極投資で膨らんだ償却費  近年は、かさむ費用も利益を下押ししてきた。ファナックは、ロボットやNC装置の将来的な需要増を見込み、山梨県忍野村の本社地区に加え、栃木県壬生工場、茨城県筑波工場で生産能力を増強。2015年以降は毎年1000億円規模の設備投資を行い、減価償却費が年々重くなっていた。 また、IoT基盤「フィールドシステム」などソフト開発を強化したことで研究開発費も増加。ソフトウェア分野のエンジニアの中途採用を増やすなど人件費も膨らんだ。 その結果、2020年3月期の営業利益率は26年ぶりに20%を切り、17.3%まで落ちた。山口社長からも「以前ほどの利益率はもう出ない」との発言が飛び出し、業界では「ファナックが普通の会社になってしまった」(市場関係者)とまで言われた』、「ソフト開発を強化」は時代の流れなのだろう。
・『中国ではロボットを作れば「すぐ売れる」  ファナックは足元の受注回復で、かつてのような高収益企業に戻れるのか。今後の成長における牽引役として最も期待されるのはロボットだ。 まず、中国の旺盛な設備投資需要が追い風となっている。あるロボットメーカーの関係者は、「中国の内需の設備投資が非常に活況で、製品を作ればすぐに売れるような状況だ」と漏らす。 自動車業界のEVシフトによって新たな需要の波が生まれている。2020年以降、EV関連への設備投資が急速に進められている。山口社長は、「EV化が進むと、バッテリーやインバーター、モーター周辺の工程でロボットを使う要素が増える可能性がある」と期待する。実際、バッテリーの組み立てに使うロボットのニーズが拡大している。 自動車業界のサプライチェーンの変化も新たな需要を生み出す可能性がある。中国では、EVの生産を受託する動きが出てきそうだ。UBS証券の水野晃アナリストは、「中国でEVの受託製造のプレーヤーが加わることで、新たな設備投資の機会が生まれる」と予測する』、「EV化」などでの「設備投資」の変化は「ロボットを使う要素が増える可能性がある」、「ロボット」メーカーの強味のようだ。
・『カギ握る「白いロボット」と効率化  さらに、従来は最大顧客として需要を下支えしてきた自動車業界ではなく、IT関連などの一般産業向けを中心に幅広い業種の自動化、省人化に向けたロボットの需要が拡大している。ただ、新たな市場が拡大するにつれ、ロボットの競争軸は高速、高精度などの性能からソフトの面も含めた使いやすさに移りつつある。 そこでファナックが投入した切り札が、「白い」ロボット・CRXシリーズだ。トレードマークだった黄色く、頑強な見た目のデザインを一新し、2020年6月に発売した。 CRXは、きゃしゃなボディが特徴で、安全柵を必要とせず、人間と同じ空間で作業ができる「協働」ロボット。産業用ロボットの導入が難しかった中小企業や食品市場の開拓を目指している。専門的なプログラミングの知識がなくてもロボットの動きを指示できるように、操作ソフトも新しく開発し、使いやすさを追求した。 CRXは、一時は生産が追いつかないほど売れ行きが好調で、生産能力を2021年1月からは当初の1.5倍に引き上げ、2022年1月には同3倍へ増強する計画だ。山口社長はCRXを「ロボットの売り上げを現状から一段上げるための1つのカギ」と位置づける。 課題は高止まりが見込まれる費用のこなし方だ。山口社長は、「次の増産を考えなければならない時期に来ている」と、需要拡大を見込んだ生産増強も見据えている。ソフトウェア開発の重要性も増す中、高収益を実現するのは容易ではない。 ファナックがかつて誇った収益力を取り戻すためには、需要を捉えて売り上げを伸ばすだけでなく、持ち前の原価低減や製造の合理化などよる費用の効率化が一層重要になる』、「CRXは、きゃしゃなボディが特徴で、安全柵を必要とせず、人間と同じ空間で作業ができる「協働」ロボット。産業用ロボットの導入が難しかった中小企業や食品市場の開拓を目指している」、なかなか興味深い進化で、今後の発展が楽しみだ。
タグ:ロボット (その3)(パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験 21年度の収益化目指す、実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ、利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ) 東洋経済オンライン 「パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験、21年度の収益化目指す」 スマートシティー「フジサワサスティナブルスマートタウン」(藤沢SST) 最大速度は歩く速さと同じ 「基本的に自動運転であるが、道路を横断する際や路上駐車中の自動車などをよける際は、監視センターにいる担当者が遠隔操作」、「どのように自動運転のサービスが運用されるか蓄積を続けている」、まだ「データ」「蓄積」の段階のようだ。 継続課金のビジネスモデルを目指す 「法改正に向け、同社も積極的に関係省庁との意見交換を行っている」、「同社」の思うような方向になるかは不明のようだ 今後の「自動運転技術は配送サービスだけでなく、街中でのライドシェアサービスにも活用されうる」、展開を注目したい 東洋経済Plus 「実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ」 著書『黄色いロボット』 稲葉清右衛門 「黄色を「戦いの色」」、としたとは初めて知った 原価への強いこだわり 「研究員は、この目標原価内で商品を製造できるように、製造システムまで考えて設計をしなければならない」、「原価」の縛りはかなり強いようだ 「機械技術者としてNC装置の開発に邁進してきた稲葉氏は、この赤字対策の経験で、企業経営における管理部門の重要性を認識した」、「赤字対策の経験」を「企業経営」に活かしたのは大したものだ 「絶対に借りない主義」については、異論もあるが、「売り上げが3分の1に減っても利益がでる企業体質」づくりに努めたとはさすがだ。 「利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ」 かつての超優良企業が復活の兆しを見せている 海外で需要が回復局面に 消え去ったスマホ特需 「スマホ向けの小型加工機が市場に浸透したため」「スマホ特需」も「消え去った」のは構造的変化のようだ 積極投資で膨らんだ償却費 「ソフト開発を強化」は時代の流れなのだろう 「EV化」などでの「設備投資」の変化は「ロボットを使う要素が増える可能性がある」、「ロボット」メーカーの強味のようだ カギ握る「白いロボット」と効率化 「CRXは、きゃしゃなボディが特徴で、安全柵を必要とせず、人間と同じ空間で作業ができる「協働」ロボット。産業用ロボットの導入が難しかった中小企業や食品市場の開拓を目指している」、なかなか興味深い進化で、今後の発展が楽しみだ
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

”ひきこもり”問題(その10)(社交的な人々は「ひきこもる力」をわかってない 大勢と集まったりしない人は何をしているのか、NHK「こもりびと」誕生秘話、発案者が語る今ひきこもりを取り上げる理由)

”ひきこもり”問題については、昨年5月16日に取上げた。今日は、(その10)(社交的な人々は「ひきこもる力」をわかってない 大勢と集まったりしない人は何をしているのか、NHK「こもりびと」誕生秘話、発案者が語る今ひきこもりを取り上げる理由)である。

先ずは、9月6日付け東洋経済オンラインが掲載した思想家・詩人・文芸批評家の吉本 隆明氏による「社交的な人々は「ひきこもる力」をわかってない 大勢と集まったりしない人は何をしているのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/372123
・『コロナ自粛の影響で、例年より短くなった子どもたちの夏休み。学校に不安を感じている子にとって、新学期のスタートはしんどい時期でもあります。自粛期間が明け、日々の出社を求められるようになった大人たちの中にも、家にこもっていられた生活のほうがよかったと感じる人が少なくないかもしれません。 「ひきこもりは悪ではない。ひとりで過ごす分断されないひとまとまりの時間にこそ価値がある」 そう説いて、多くの人を救ってきた約20年前の名著があります。思想家・吉本隆明氏の『ひきこもれ』です。 本稿では絵本作家ヨシタケシンスケさんのイラストとともによみがえった『ひきこもれ<新装版> 』より「1人でこもって過ごす時間の価値」と「第二の言語」について紹介します』、吉本 隆明氏は東工大電気化学科を1947に卒業、エンジニア出身の思想家という珍しい経歴である。詳細は下記Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E6%9C%AC%E9%9A%86%E6%98%8E
・『時間をこま切れにされることの弊害  「ひきこもり」はよくない。ひきこもっている奴は、何とかして社会に引っ張り出したほうがいい。 そうした考えに、ぼくは到底賛同することができません。ぼくだったら「ひきこもり、いいじゃないか」と言います。世の中に出張っていくことがそんなにいいこととは、どうしても思えない。 テレビなどでは「ひきこもりは問題だ」ということを前提として報道がなされています。でもそれは、テレビのキャスターなど、メディアに従事する人たちが、自分たちの職業を基準に考えている面があるからではないでしょうか。彼らはとにかく出張っていってものを言う職業であり、引っ込んでいては仕事になりません。だからコミュニケーション能力のある社交的な人がよくて、そうでない奴は駄目なんだと無意識に決めつけてしまっている。 そして「ひきこもっている人は、将来職業に就くのだって相当大変なはずだ。社会にとって役に立たない」と考えます。 でも、本当にそうでしょうか。 ぼくは決してそうは思わない。世の中の職業の大部分は、ひきこもって仕事をするものや、一度はひきこもって技術や知識を身に付けないと一人前になれない種類のものです。学者や物書き、芸術家だけではなく、職人さんや工場で働く人、設計をする人もそうですし、事務作業をする人や他人にものを教える人だってそうでしょう。 ジャーナリズムに乗っかって大勢の前に出てくるような職業など、実はほとんどない。テレビのキャスターのような仕事のほうが例外なのです。いや、テレビのキャスターだって、皆が寝静まった頃に家で1人、早口言葉か何かを練習していたりするのではないでしょうか。それをやらずに職業として成り立っていくはずがない。 家に1人でこもって誰とも顔を合わせずに長い時間を過ごす。周りからは一見無駄に見えるでしょうが、「分断されない、ひとまとまりの時間」をもつことが、どんな職業にも必ず必要なのだとぼくは思います』、「世の中の職業の大部分は、ひきこもって仕事をするものや、一度はひきこもって技術や知識を身に付けないと一人前になれない種類のものです」、「「分断されない、ひとまとまりの時間」をもつことが、どんな職業にも必ず必要」、言われてみれば、その通りだ。こんんあ考え方には初めて接した。
・『1人で過ごす時間が「価値」を生み出す  ぼくには子どもが2人いますが、子育てのときに気をつけていたのは、ほとんどひとつだけと言っていい。それは「子どもの時間を分断しないようにする」ということです。くだらない用事や何かを言いつけて子どもの時間をこま切れにすることだけはやるまいと思っていました。 勉強している間は邪魔してはいけない、というのではない。遊んでいても、ただボーッとしているのであっても、まとまった時間を子どもにもたせることは大事なのです。1人でこもって過ごす時間こそが「価値」を生むからです。 ぼくは子どもの頃、親に用事を言いつけられると、たいてい「おれ、知らないよ」と言って逃げていました。そうして表に遊びに行って、夕方まで帰らない。悪ガキでしたから、その手に限ると思っていました。 そうするとどうなるかというと、親はぼくの姉にその用事を言いつける。姉はいつも文句も言わずに従っていました。いま思っても、あれはよくなかったなあと反省します。つまり、女の子のほうが親は用事を言いつけやすい。姉本人もそういうものだと思って、あまり疑問をもたずに用足しに行ったりするわけです。 そういったことを当時のぼくはよくわかっていた。そして、うまく逃げながらも「自分が親になったら、これはちょっとやりたくないな」と思っていたのです。) ぼくの子どもは2人とも女の子です。女の子が育っていくときにいちばん大きいハンデは「時間を分断されやすい」、つまり「まとまった時間をもちにくい」ということなのではないかと思うのです。それ以外のことは、女の子でもやれば何とかなる気がするのですが、これだけは絶対に不利です。だから余計、気をつけました。 お使いを子どもに頼むくらいなら、自分で買い物かごを持っておかず屋さんにでも何でも行くようにしていました。ほかのことではだらしない、駄目な親でしたが、それは意識してやっていましたね。つまりそれだけひきこもる時間というものを大事に考えてきたということです。 自分の時間をこま切れにされていたら、人は何ものにもなることができません。ゆくゆくはこれを職業にできたらいいな、と思えるものが出てきたらなおのこと、1人で過ごすまとまった時間が必要になります。はたから見ると、何も作り出していない、意味のない時間に思えても、本人にとってはそうではないのです』、「子育てのときに気をつけていたのは、ほとんどひとつだけと言っていい。それは「子どもの時間を分断しないようにする」ということです。くだらない用事や何かを言いつけて子どもの時間をこま切れにすることだけはやるまいと思っていました」、娘さん2人はどうなったのだろう。「自分の時間をこま切れにされていたら、人は何ものにもなることができません」、「はたから見ると、何も作り出していない、意味のない時間に思えても、本人にとってはそうではないのです」、なるほど。
・『ひきこもることで育つ「第二の言語」  ひきこもりが生み出すものについて考えてみます。 1人になって自分と向き合う長い時間をもつことが何をもたらすのかについて、「第二の言語」という考え方に基づいて、説明してみようと思います。 他人とコミュニケートするための言葉ではなく、自分が発して自分自身に価値をもたらすような言葉。感覚を刺激するのではなく、内臓に響いてくるような言葉。ひきこもることによって、そんな言葉をもつことができるのではないか、という話です。 ぼくは、言語には二種類あると考えています。ひとつは他人に何かを伝えるための言語。もうひとつは、伝達ということは二の次で、自分だけに通じればいい言語です。例えば、美しい風景を目で見て「きれいだね」と誰かに言ったとします。これは、自分の視覚が感じた内容を指し示し、ほかの人に伝える言葉です。自分の心が感じた内容を表現してはいるのですが、それを他人と共有するという要素も同じくらい大きい。これが第一の言語です。 それに対して、例えば胃がキリキリ痛んで、思わず「痛い!」と口に出てしまったとする。このときの言葉は、他人に伝えることは二の次です。つまり、意味を指し示して他者とコミュニケートするためではなく、自分が自分にもたらすために発した言葉である要素が強いのです。これをぼくは、第二の言語であると考えます。 第一の言語は感覚器官と深く関わっています。感覚が受け入れた刺激が神経を通って脳に伝わり、了解されて最終的に言葉となる。つまり感覚系の言語といえるでしょう。) 一方、第二の言語は内臓の働きと関係が深い。内臓に通っている神経は、感覚器官ほど鋭敏ではありません。だから痛みにしても、例えば胃の痛みは皮膚をケガしたときに比べると鈍い。 また、他人から見て、どのくらい痛いのかをうかがい知ることも難しいといえます。例えば熱いお茶を飲んだとき、口の中ではとても熱さを感じるけれども、喉仏から下へいくとそれほど熱さを感じません。まさに「喉元過ぎれば……」ということわざのとおりです。 ぼくはそれを、下っていく間にお茶が冷めるからだと思っていたのですが、そうではなく、喉から下は感覚が半分くらいしかないのだそうです。ぼくはこのことを、解剖学者の三木成夫氏によって知りました。 内臓には、感覚的には鋭敏ではないけれども、自分自身にだけよく通じるような神経は通っている。このことは、とても興味深く、示唆に富んでいると思います。「内臓の言葉」とでもいうのでしょうか、自分のためだけの言葉、他人に伝えることは二の次である言葉の使い方があるのだということです』、「自分のためだけの言葉、他人に伝えることは二の次である言葉の使い方がある」、面白い指摘だ。
・『大勢の人と交わることは必要か  この第二の言語、あるいは内臓の働きからくる言葉とでもいうべきものを獲得するには、ひきこもる要素が必要だということなのです。 ひきこもったりしないで、大勢の人と交わったほうが楽しいし、気分が紛れるということは確かにあります。生きていくうえで、それなりの有効性があると思います。でもそれは、感覚的な有効性であり、言ってみれば脳に直結する神経にとっての有効性です。 しかし、内臓に響くような心の具合というのは、それでは絶対に治らない。人の中に出ていって、食事をしたり、冗談話をすれば助かるということはないのです。ひきこもって、何かを考えて、そこで得たものというのは、「価値」という概念にぴたりと当てはまります。価値というものは、そこでしか増殖しません。) 一方、コミュニケーション力というのは、感覚に寄りかかった能力です。感覚が鋭敏な人は、他人と感覚を調和させることがうまい。大勢の人がいる中に入っていく場合、それは確かに第一番手に必要な能力かもしれません。 しかし、それは「意味」でしかない。 「意味」が集まって物語が生まれるわけですから、そういう経験も確かに役に立ちます。けれども、「この人が言っていることは奥が深いな」とか、「黙っているけれど存在感があるな」とか、そういう感じを与える人の中では、「意味」だけではなく「価値」の増殖が起こっているのです。それは、1人でじっと自分と対話したことから生まれているはずです』、「「この人が言っていることは奥が深いな」とか、「黙っているけれど存在感があるな」とか、そういう感じを与える人の中では、「意味」だけではなく「価値」の増殖が起こっているのです。それは、1人でじっと自分と対話したことから生まれているはずです」、なるほど。
・『「暗いこと」はコンプレックスにならない  価値を生み出すためには、絶対にひきこもらなくてはならないし、ひきこもる時間が多い人は、より多くの価値を増殖させていると言えます。 でも、コミュニケーションということでいえば、ぜんぜん駄目だということになるのでしょうね。「あいつは鬱陶しくてしょうがない」と言われるでしょう。それでも、その人の内部では、豊かさが増えていっているわけです。ほかの人にはわかりにくいでしょうが、何かのときに、その豊かさが伝わるということがある。 「よくよく話してみたら、この人はいろいろなことを考えているんだな」と思ってくれる人も出てくるはずです。ひきこもりの傾向のある人は、暗いとか話が盛り上がらないとか、あいつと一緒にいても気心が知れなくて面白くないとか、そんなことを言われているかもしれません。 もし、それがコンプレックスになっている人がいたとしたら、それは決して悪いことではないのだということを覚えておいてください。 あなたは、明るくて社交的ではないかわりに、考えること、感じて自分で内密にふくらませることに関しては、人より余計にやっているのです。それは、毎日毎日、価値を生んでいるということなのです』、「あなたは、明るくて社交的ではないかわりに、考えること、感じて自分で内密にふくらませることに関しては、人より余計にやっているのです。それは、毎日毎日、価値を生んでいるということなのです」、確かにその通りなのだろう。

次に、12月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの:池上正樹氏による「NHK「こもりびと」誕生秘話、発案者が語る今ひきこもりを取り上げる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/258091
・『11月末から12月前半にかけ、NHKがひきこもり関係の番組13本を一挙放送した「#こもりびと」プロジェクトが大きな反響を呼んでいる。このプロジェクトでは、筆者も番組づくりの一端を担わせていただいた。そこで、まだ余韻の冷めやらぬ「#こもりびと」のプロジェクト発案者である、NHK報道局の松本卓臣チーフ・プロデューサーに、プロジェクトが生まれたいきさつなどの話を聞いた』、興味深そうだ。
・『引きこもる息子役の松山ケンイチさんが父親役の武田鉄矢さんに訴えた言葉  「これまでだって、十分頑張ってきたんだよ。これ以上、何を頑張れって言うのよ」 引きこもる息子の役を務めた松山ケンイチさんが、父親役の武田鉄矢さんに訴えるシーンが印象的だった、ドラマ「こもりびと」のワンシーン。11月末から12月前半にかけ、NHKがひきこもり関係の番組13本を一挙放送した「#こもりびと」プロジェクトが、大きな反響を呼んでいる。 中でも、NHKスペシャルドラマ「こもりびと」(11月23日放送)とNHKスペシャル「ある、ひきこもり死 扉の向こうの家族」(11月29日放送)は異例の高視聴率をマーク。ビデオリサーチの調べによると、関東地区の総合視聴率はそれぞれ、「こもりびと」が11.0%、「ある、ひきこもり死」が10.3%に上ったという。局には「他人事とは思えない」という声が数多く寄せられ、引きこもる本人やその家族の間で「こもりびとロス」なる言葉も生んだ。 また、今回のNHKスペシャルを見た自民党の下村博文政調会長が党内に「対策プロジェクトチーム」を立ち上げるなど、支援施策に当事者の声を反映させる流れも加速しそうだ。 このドラマのタイトルにも使われた「こもりびと」プロジェクトが始まって以来、筆者は全国のひきこもり家族会などの現場で「なぜいま、NHKがキャンペーンやっているのですか?」とよく尋ねられた。 プロジェクトを統括する松本氏によると、きっかけは2019年3月、内閣府の実態調査でひきこもり状態にある人が100万人に上ると推計されたことだったと振り返る。 「NHK局内でもきちんと伝えていかないといけないと思わせる、インパクトのある数字でした。その後、川崎市の通り魔殺傷事件や元農林水産事務次官の長男殺害事件などが『ひきこもり』と結び付けられ、本人や家族が困惑し、動揺していました」 現場のディレクターたちからは、「ひきこもり状態に置かれている人の実像を正確に伝えなければいけないのではないか」という意見が上がってきた。 同年8月には、筆者も出演した「クローズアップ現代+」で「中高年ひきこもり」をテーマに、死に至る人もいる現実を放送。やはり大きな反響が寄せられた。その後も、「ひきこもり」をテーマにした「クローズアップ現代+」が2本続けて放送されている。 声を上げられずに長い歳月を過ごした「中高年ひきこもり」の人たちが、親世代が亡くなることによって自身も亡くなってしまう厳しい現実の端緒が表れ始めている。報道番組だけでなく、NHKの他の情報番組もそれぞれの視点で「ひきこもり」について別々に伝え始めていた』、社会の関心の高まりが背景にあるのだろう。
・『「ひきこもり」というテーマはNHKが総力を挙げて発信すべき  そんな中、現場のディレクターたちの間からこんな声が挙がってきたという。 「裾野の広いテーマなので、各セクションが意見交換もしないでバラバラに伝えるより、NHKが一枚岩になって、課題や知見を集約しながら全体像を正確に発信していかないといけないのではないか」 「こもりびと」プロジェクトは、そんなボトムアップのプロジェクトだった。 「番組の放送を重ねる中で、『ひきこもり』の広がりは時代の変化と関係があるのではないかという感覚がありました。また、(ひきこもり状態にある人が関係する)事件が起きると、当事者に対する『怠けだ』『自己責任だろう』という意見も相変わらず聞こえてくる中で、『ひきこもり』という言葉の持つネガティブなニュアンスを変えられないかという声が幾つかあったのです」(松本氏) そのときすでにNHKには「ひきこもり」に関する情報発信に取り組んでいる番組があった。情報番組「あさイチ」は女性の視点から取り上げ、「プロフェッショナル 仕事の流儀」はひきこもり支援者の石川清さんを取材していた。また、さまざまな福祉情報を展開している「ハートネットTV」もあった。 松本氏が「一緒にやりませんか?」と各番組のプロデューサーやディレクターの元を訪ね歩いたら、「ぜひやりたい」ということになり、スムーズに進んだという。 「誤解を理解に変えていきたい」という思いから、同プロジェクトは元農水次官による刺殺事件から1年後となる、20年5月末の放送を目指した。松本氏は、局内を横断する形の大規模なプロジェクトの提案書を書いて各番組と連携し、企画が実現に向けて動き出した』、公共放送ならではの強味だ。
・『コロナ禍で日本中が「総ひきこもり化」 プロジェクトは一時休止  ところが、その矢先にコロナ禍に見舞われた。 3月末ごろには、ドキュメンタリ―の取材がままならなくなった。政府から緊急事態宣言も出され、ドラマ「こもりびと」の撮影も中断した。 まさに、日本中の人たちが総ひきこもり化した。こういう状況の中で、引きこもって苦しんでいる人をテーマにすること自体、やりにくいという空気も生まれた。 ただ、夏頃になると、「これから先、経済は厳しくなっていくだろう」「人との関係が断たれてしまう人が増えていく」という懸念も広がっていた。実際、仕事を失う人が目に見える形で増えていた。 「今であれば番組を受け止める側も、人とのつながりが断たれてしまう苦しさや孤立せざるを得ない状況に思いをはせてくれる人が多いのではないか。それに、新たなひきこもり層の形成につながるような事態も起きていた。むしろ今こそ、『ひきこもり』について、伝えることが大事なのではないか」 松本氏が感じていた問題意識と同じような思いを他のディレクターたちも共有していた。 また7月には、引きこもっている人を無理やり部屋や自宅から連れ出す「問題」を取り上げた『クローズアップ現代+』(筆者も出演)を放送。その番組の取材を通して、「親御さんたちがコロナ禍によって支援先とつながれなくなって苦しんでいる話を伺えたのも参考になりました」と松本氏は語る。 「ひきこもりは、時代の揺らぎや経済の打撃とも無関係ではない。その意味を他の番組の関係者とも共有できて、11月に『ひきこもりプロジェクト』の実現を目指すことになったんです」』、組織力はさすがに強いようだ。
・『「ステイホーム」で家族全員が逃げ場を失うケースも  世の中全体が「ステイホーム」の状況になり、引きこもっていた本人にとってはやましさから解放され、気持ちが楽になったという声がある。その一方で、家族全員が家の中にいて逃げ場がなく、お互いのストレスがたまり、緊張関係が高まった――。そうした話が、筆者が関わっている家族会でも相次いで報告された。 雇用についても、コロナ禍の影響で解雇や雇い止めに遭ったという相談が夏頃から届き始めていた。リーマンショックのときも少し時間が経ってから、以前の状況に戻れない新たなひきこもり層が増加したことを考えると、これから一気に問題が顕在化していく予感があった。 松本氏らは、考えを切り換えるようになった夏頃からドラマの撮影も再開。NHKスペシャルにはコロナ禍の要素も取り込んだ。 「局内も、このプロジェクトを行うことは大事なのではないかという空気に自然となっていったんです」(松本氏)』、なるほど。
・『「他人事とは思えない」「明日はわが身」 視聴者から最も多かった反響の声  プロジェクトのドラマやドキュメンタリーなどの放送後に最も多かった声は、「他人事とは思えない」「明日はわが身」などだ。厳しい状況の人たちを取材しているにもかかわらず、「特殊な世界の人」といった反応はほとんどなかったという。 「皆、多かれ少なかれ、社会や家庭内での生きづらさ、業績や効率を求められる組織の中での疎外感、将来どうなるか分からない不安を抱えている。とても多くの人が、ひきこもり当事者の方が語る言葉や、松山ケンイチさんのセリフを自分に重ねて見てくれたし、今という時代に響くテーマだったんだなと改めて感じました」 ところで、なぜプロジェクト名が、元々の「ひきこもり」ではなく「こもりびと」のネーミングになったのか。 「放送するたびに、『ひきこもりという言葉が悪い状態を指しているようでしんどくなります』といった声を耳にする機会が増え、伝え方について考えるようになりました。例えばハートネットTVでは『ひきこもり文学』に出てくるご本人たちが、深い言葉を持っている。こうして魅力的に伝える視点もあるのかと思いました。ひきこもりという言葉が、悪いことのようなレッテルになっていないかについても、プロジェクトの中で議論になったんです」 NHKでは元々「ひきこもりクライシス」というサイトで、当事者の声を紹介したり取材の情報を伝えたりしていた。一方で、「ひきこもり」が危機であるかのように受け取られかねないのではないかという議論もあったという』、NHK内で様々に取り組んできた経験の積み重ねがあったからこそ、議論になったのだろう。
・『「ひきこもり」から「こもりびと」へプロジェクト名が決まった経緯  「ドラマの制作中に神奈川県大和市で(19年10月から)『こもりびと』という呼び方をしていることも聞きました。呼称の響きが優しいことも参考になり、先にドラマのタイトルが決まったんです。今までのような伝え方のままでいいのかと自問自答しながら、ひきこもりという目線そのものも考えながら向き合っていけないかという思いで、『#こもりびとプロジェクト』に決まったんです」 中には「ひきこもりは問題なんだから、柔らかい名前でくるむな」といった視聴者の声もあり、そうした指摘も受け止めているという。ただ、大半は「温かみがある言葉」「こもりびとって、いいよね」といった反応だったそうで、特にドラマ「こもりびと」の続編を希望する声は、筆者も家族会などで数多く聞いた。 「苦しみを抱えて逃れたい人たちもいて、いろんな形で手を差し伸べなければいけない。まずは、自分たちが持っていた固定観念、目線を変えていくことも大事なのかなと思います。自分自信も番組に深く関わる以前は、ひきこもり当事者に対して『自業自得の面もあるのではないか』という思いが、心のどこかにあった。取材を通して知れば知るほど、そうではないことが分かってきたし、『ひきこもり』という言葉に違和感を覚えるという声も理解できるようになった。そうしたことも、僕らはきちんと伝えていく責任があると思いました」 従来の「ひきこもり」という言葉が持つ、外から問題視しているかのようなニュアンスを変えていきたい――。「こもりびと」というネーミングには、そんなメディアとしての思いも込められているようだ。 「現場のディレクターたちからは、継続して伝え続けていくことが大事だと言われています。『こもりびと』への反響を受けて、もっと深掘りしていきたいと思っています」(松本氏) ※この記事や引きこもり問題に関する情報や感想をお持ちの方、また、「こういうきっかけが欲しい」「こういう情報を知りたい」「こんなことを取材してほしい」といったリクエストがあれば、下記までお寄せください。Otonahiki@gmail.com(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください) なお、毎日、当事者の方を中心に数多くのメールを頂いています。本業の合間に返信させて頂くことが難しい状況になっておりますが、メールにはすべて目を通させて頂いています。また、いきなり記事の感想を書かれる方もいらっしゃるのですが、どの記事を読んでの感想なのか、タイトルも明記してくださると助かります』、「自分自信も番組に深く関わる以前は、ひきこもり当事者に対して『自業自得の面もあるのではないか』という思いが、心のどこかにあった。取材を通して知れば知るほど、そうではないことが分かってきたし、『ひきこもり』という言葉に違和感を覚えるという声も理解できるようになった」、検討の結果決まった「こもりびと」は、確かに「温かみがある言葉」で良さそうだ。

本日紹介する記事は以上だが、このブログの3月18日、「医療問題(その28)」で紹介した記事のなかに、東洋経済オンライン「引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕 就職支援施設から強制連行されたのはなぜか」、があった。これもひきこもりを扱っているので、まだ読んでいない方には、一読をお勧めしたい。
タグ:大勢の人と交わることは必要か 「自分のためだけの言葉、他人に伝えることは二の次である言葉の使い方がある」、面白い指摘だ 「自分の時間をこま切れにされていたら、人は何ものにもなることができません」、「はたから見ると、何も作り出していない、意味のない時間に思えても、本人にとってはそうではないのです」、なるほど 「世の中の職業の大部分は、ひきこもって仕事をするものや、一度はひきこもって技術や知識を身に付けないと一人前になれない種類のものです」、「「分断されない、ひとまとまりの時間」をもつことが、どんな職業にも必ず必要」、言われてみれば、その通りだ。こんんあ考え方には初めて接した。 吉本 隆明氏は東工大電気化学科を1947に卒業、エンジニア出身の思想家という珍しい経歴 「社交的な人々は「ひきこもる力」をわかってない 大勢と集まったりしない人は何をしているのか」 (その10)(社交的な人々は「ひきこもる力」をわかってない 大勢と集まったりしない人は何をしているのか、NHK「こもりびと」誕生秘話、発案者が語る今ひきこもりを取り上げる理由) ひきこもることで育つ「第二の言語」 「子育てのときに気をつけていたのは、ほとんどひとつだけと言っていい。それは「子どもの時間を分断しないようにする」ということです。くだらない用事や何かを言いつけて子どもの時間をこま切れにすることだけはやるまいと思っていました」、娘さん2人はどうなったのだろう 時間をこま切れにされることの弊害 吉本 隆明 東洋経済オンライン ”ひきこもり”問題 「「この人が言っていることは奥が深いな」とか、「黙っているけれど存在感があるな」とか、そういう感じを与える人の中では、「意味」だけではなく「価値」の増殖が起こっているのです。それは、1人でじっと自分と対話したことから生まれているはずです」、なるほど。 「あなたは、明るくて社交的ではないかわりに、考えること、感じて自分で内密にふくらませることに関しては、人より余計にやっているのです。それは、毎日毎日、価値を生んでいるということなのです」、確かにその通りなのだろう ダイヤモンド・オンライン 池上正樹 「NHK「こもりびと」誕生秘話、発案者が語る今ひきこもりを取り上げる理由」 引きこもる息子役の松山ケンイチさんが父親役の武田鉄矢さんに訴えた言葉 社会の関心の高まりが背景にあるのだろう 「ひきこもり」というテーマはNHKが総力を挙げて発信すべき 公共放送ならではの強味だ コロナ禍で日本中が「総ひきこもり化」 組織力はさすがに強いようだ。 「ステイホーム」で家族全員が逃げ場を失うケースも 「他人事とは思えない」「明日はわが身」 視聴者から最も多かった反響の声 NHK内で様々に取り組んできた経験の積み重ねがあったからこそ、議論になったのだろう。 「ひきこもり」から「こもりびと」へプロジェクト名が決まった経緯 「自分自信も番組に深く関わる以前は、ひきこもり当事者に対して『自業自得の面もあるのではないか』という思いが、心のどこかにあった。取材を通して知れば知るほど、そうではないことが分かってきたし、『ひきこもり』という言葉に違和感を覚えるという声も理解できるようになった」、検討の結果決まった「こもりびと」は、確かに「温かみがある言葉」で良さそうだ このブログの3月18日、「医療問題(その28)」 「引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕 就職支援施設から強制連行されたのはなぜか」
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

尖閣諸島問題(その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由) [外交]

尖閣諸島問題については、昨年12月11日に取上げた。今日は、(その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由)である。

先ずは、3月18日付け日経ビジネスオンライン「中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00179/031600044/
・『Q:中国が2月、海警局に「武器使用」を認めたことに耳目が集まる。日本政府は与党に対し、海警局が尖閣諸島への上陸を強行するなら、兇悪犯罪と見なして危害射撃を加える場合があると説明した。「やられたら、やり返す」と聞こえる。これに対して、日本の防衛政策や現場に詳しい香田洋二・元自衛艦隊司令官(海将)は、「国際法をないがしろにしかねない。竹島や北方領土の周辺を航行する海上保安庁の巡視船や、南シナ海で航行の自由作戦を展開する米海軍の艦船を危険にさらす恐れさえある」と指摘する。果たしてそれはなぜか。 中国が海警法を2月1日に施行しました。海上警備に当たる海警局に武器使用を認めたことが注目されています。例えば第22条で「国家の主権、主権及び管轄権が不法に侵害され、または不法に侵害される危険が差し迫っているとき」は「その侵害を停止し、危険を除去するために、武器の使用を含むあらゆる必要な措置を講ずる権利を有する」との趣旨を定めています。 例えば海警船が以下の行動に出る懸念が浮上してきました。 ケース1:尖閣諸島周辺の日本の領海内で操業している漁船に対し、違法操業だとして停船命令を出す。拿捕(だほ)されることを恐れて、網やロープを流し、あるいは船体を破損する強度の装備品などを海警船の進路上に投入するなどして追跡を妨害しながら逃げようとする漁船に対して武器を使用する。 ケース2:日本の海上保安庁の巡視船に対して強制退去を命じる。 海警法第21条は、外国の軍艦もしくは公船が中国の法令に違反した場合、退去させるための必要な措置を取れるとし、さらに、退去を拒否する場合は強制撤去、強制えい航の措置が取れると定めている。「武器使用が可能」と明記してはいない、「強制撤去」は武器使用を含むと解釈できる。この場合、武器使用のための要件解釈と決断をするのは中国であり、海警局が日本側の言い分や都合に合わせて武器使用の判断をすることはない。 香田:私は日本政府やメディアをはじめとする人々の目が武器使用にのみ集まっていることを強く危惧しています。中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです。このことを理解し、尖閣諸島をいかにして守るのかをきちんと考えるべきです。 武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています。言及されたケース1もケース2も、同法が正当防衛、緊急避難のための危害射撃を許しているので、これを適用すれば事足りる話です。武器使用の規定があることをもって海警法を非難したり、恐れたりすることは問題の本質を見失います。武器使用について申し上げれば、その問題は、海警法が定める武器使用の条件と程度が警察官職務執行法のそれと同等か否かです。 (武器の使用)第七条 警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。(後略) 関連してお話しすると、「中国海警局の船が軍艦並みの武器を備え始めている」と懸念する声も、現時点においては公平を欠くと思います。76mm速射砲を装備するといわれる海警局の船は最近建造されたタイプです。海上保安庁の発表によく出てくる、尖閣諸島周辺で一団となって行動する4隻からなるグループの多くはそれ以前の無武装タイプであり、武装しているのは1隻というケースがほとんどです。中国はこのグループを3~4セット配備して、尖閣諸島周辺の海域を交代制で24時間365日航行する体勢を取っているものとみられます。 これに対して海上保安庁は沖縄県石垣島に尖閣諸島専従として10隻の巡視船を配備しています。それぞれの性能は世界最高水準でいずれも20~40mmの機関砲を装備しています。将来は分かりませんが、現時点においては、隻数ではやや劣るものの全体として中国にひけを取るものではありません。 よって、中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです』、「中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです」、「武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています」、「中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです」、さすがプロらしい適格な指摘だ。
・『海警局による尖閣諸島への上陸強行も  Q:「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動として、具体的にはどのような行動があり得るのでしょうか。 香田:海警の船が尖閣諸島への「近接」「上陸」「占拠」「奪還」という行為に及ぶ恐れがあります。 中国共産党は海警法の施行のほかにもその布石を打ってきました。例えば海警局はもともと政府の下にある法執行機関でした。海上保安庁と同じ存在だったわけです。しかし2018年の組織改正で政府を離れ、中国共産党中央軍事委員会の指導下に入りました。軍事行動の先兵になり得るということです。 最近でも、中国共産党ナンバー3の栗戦書(リー・ジャンシュー)全国人民代表大会(全人代)常務委員長(日本の国会議長に相当)が海警法の狙いを「習近平(シー・ジンピン)強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」ことと説明して世界の耳目を集めました』、「「習近平強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」、穏やかではなさそうだ。
・『「侵略」を「犯罪」とする対処案、対応誤れば国際法違反  香田:これに対して日本政府は、国内の政治事情にとらわれており適切な対応を取れていません。自民党の国防部会・安全保障調査会に対し、外国公船が尖閣諸島への上陸を強行したなら「兇悪犯罪と認定して武器使用により相手の抵抗を抑える『危害射撃』が可能になる場合がある」と説明しました。 政府によるこの説明は2つの大きな問題をはらんでいます。1つは、危害射撃が可能とするその理由です。 先ほど触れた警察官職務執行法第7条には続きがあり、「兇悪な罪」に臨んだときには武器を使用して危害を加えることを容認しています。 一 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。 政府の説明はこの条項を使って、海警局の艦船が尖閣諸島への上陸を強行するなら「兇悪な罪」と見なすということです。果たして中国が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行為は、日本の法律で裁くことができる犯罪なのでしょうか。 Q:私も政府の説明を知って、海警局の艦船がどんな行動を取ったら刑法の何条に違反するのだろうと疑問に思っていました。「国家の意志に基づいて中国が主張する自国の領土である尖閣諸島を奪取する」行為は日本の刑法が定める「犯罪」ではなく、日本にとっては「主権(領土)侵害」すなわち「侵略」です。 香田:そうなのです。外国による国家の意志に基づく行動に対して、刑法という日本の国内法を適用することは不適切です。関連していうと、軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります。今回の説明がそれほど重大な意味を持つことに政府は気づいていないのでしょうか。恐らく専門家が検討したのでしょうが、今ここで述べた点に言及できない背景があったと考えざるを得ません。 加えて、海警船による尖閣諸島への強行上陸を犯罪と見なすということは、政府がこれを「一過性」の事態とみていることを示します。果たして一過性ですむでしょうか。「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」という国家の任務を遂行するのですから、海上保安庁による抵抗が強く計画通りの奪還作戦ができない場合、海警局が後詰めの部隊を連続して投入してくることは戦理の常です。上陸行動を波状的に繰り返すことも考えられるでしょう。 海上保安庁の人員に被害が生じる可能性も覚悟する必要があります。先ほど言及したように、尖閣諸島周辺の海域における海上保安庁の装備は、現時点においては、中国海警局の装備に見劣りするものではありません。しかし、「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」任務行動ですから、当然、海上保安庁の抵抗を排除し得る性能の装備を拡充して臨んでくることを想定しなければなりません。 海警局はこれまでも着々と装備を拡充していますね。2010~20年に大型船を約60隻から130隻以上に拡充したと報じられています。1万トン級の大型船の配備も進んでおり、尖閣諸島周辺の海域に長期間居座ることができるようになりました。海上保安庁の関係者が「中国海警局の艦船がロケットランチャーを装備したら対応できない」と発言したと聞いたことがあります』、「軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります」、日本政府の現在の解釈は、国際法からみても極めて問題が多いようだ。
・『航行の自由作戦を遂行する米軍が撃たれる  日本政府の説明がはらむもう1つの問題は、第1の問題と密接に関連します。兇悪な罪に関わるとする外国の公船や軍艦を危害射撃の対象としたことです。国際法上、平時には警告しか認められていません。外国公船や軍艦への危害射撃(攻撃)は通常、戦闘行為を意味します。この解釈に至る検討は相当に慎重であるべきでした。結果的に、我が国政府による今回の説明は同盟国である米国の軍事行動にも負の影響を与えかねません。 Q:米国の軍事行動にも影響するのですか。 香田:そうです。例えば米海軍は南シナ海において航行の自由作戦を展開しています。これにはいくつかケースがありますが、米国による航行の自由作戦そのものを認めない中国がこの米艦の活動を国内法違反と強弁することは十分にあり得ます。日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります。 最悪の場合、中国海警船が米艦のスキを突いて不意の危害射撃をする事態があり得るのです。先にも申しましたように、国内法違反の有無と武器使用の判断をするのは中国なのですから。米国が注意を促しても、あるいは抗議をしても、中国は「米国が最も信頼する同盟国である日本が同様の主張をしている」とさらに反論するでしょう。 結果的であるにせよ、米国の行動の選択肢を狭め、米軍を危機にさらすリスクが増大することは事実です。日本政府がこのような状況をつくるのは賢明ではありません。 航行の自由作戦は、中国が領海と主張する海域を米海軍の艦船が航行することで「中国の主張を認めない」との意志を示す行動ですね。米イージス巡洋艦「ラッセン」が南シナ海にあるスビ礁の周辺12カイリ内を2015年10月に航行したときから注目を集めるようになりました。 中国は同礁を自国の領土と見なしており周辺12カイリを領海と主張しています。もともと低潮高地であった同礁を埋め立てて人工島を形成し、滑走路などの軍事施設を建設しました。しかし、国連海洋法条約は低潮高地に対して領海を認めていません。よって米国はこの海域を中国の領海ではなく公海と見なしラッセンを航行させました。加えて中国はその領海法で「外国の軍艦が中国領海内を航行する場合には事前に許可を得る」と定めていますが、これも無視しました。 香田:よって、ラッセンが取った行為は、中国からすれば領海法という中国の国内法に違反する行為に当たります。米艦船が今後行う同様の行為に対して中国海警船が危害射撃を加えてもかまわないと主張する根拠というか「お墨付き」を、今回の日本政府の主張により中国に与えることになってしまったのです』、「日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります」、日本政府の法解釈は余りにお粗末だ。
・『竹島や北方領土で海保の巡視船が撃たれかねない  Q:竹島や北方領土の状況にも影響が及びそうですね。 香田:その通りです。例えば、韓国政府が日本政府による今回の説明を援用すればどうなるでしょうか。竹島周辺の排他的経済水域(EEZ)を航行する海上保安庁の巡視船が韓国国内法に違反しているとして、韓国海洋警察庁の船艇が発砲する事態が起こり得るのです。 韓国の国内法にどのような規定があるのか、そのすべてを我々は知っているわけではありません。また、この場合も判断は韓国側が実施することから、日本側には何がどうなっているのか全く分からないまま事態が進行することがあり得るのです。よって、こうした懸念やリスクが存在することは、日本の行動をしばるとともに韓国の行動の選択肢を広げることにつながります。 EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます。 海上において海員は、(1)国連海洋法条約、(2)海上衝突予防法、(3)国際信号書さえ知っていればどこでも航行できるというのが現行の国際ルールの大原則です。これらに加えてさらに周辺国の国内法の規定まで知っていなければ安全な航行ができない、という環境を、国の生存を海洋に大きく依存する日本がつくるべきではありません』、「EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます」、確かに「国連海洋法条約」「の範囲内で解決を図るべき」。
・『本来なら防衛出動を発令し自衛隊が対処すべきだが…  Q:日本政府はなぜ、ご指摘のような問題をはらむ説明をしたのでしょう。「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」侵略行動に対しては、自衛隊が対処すべきではありませんか。 香田:これが冒頭述べた政府解釈の背景に関連するものです。1つには、憲法9条の解釈をめぐる長年の問題が影響していると考えます。ご指摘のように、主権(領土)侵害行為すなわち侵略に対しては、政府が防衛出動を発令し自衛隊が克服すべきです 。しかし、これまでの経緯から防衛出動の発令には厳しい条件が課されており、発令のハードルは非常に高いのが現状です。 Q:武力行使の新三要件ですね。 (1)わが国に対する武力攻撃が発生したこと、又はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(存立危機事態) (2)これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと (3)必要最小限度の実力行使にとどまること  香田:政府は(1)の「武力攻撃」について、「一般に、一国に対する組織的計画的な武力の行使をいう」と国会で答弁しています。政府は、海警船による尖閣諸島への強行上陸をこの武力行使と判断するでしょうか。これまで国会でなされてきた論議に鑑みると、非常に難しい気がします。 加えて、中国が海警法で「海上警察機関」と表現する海警局の艦船に対して、日本が海上自衛隊の護衛艦を出動させれば、中国は「日本が先に武力行使に踏み切った」と言い立てる懸念があります。 Q:政府はこうした材料を中国に与えかねないことも考慮しているようですね。 香田:その通りです。しかし、こうした環境であっても目の前の現実に対処しなければなりません。そこで、今までの政府の立場の延長に立つ理屈として、海警局の行為を兇悪な罪と見なし、海上保安庁に対処させようと考えたのだと思います。 この対応は、先ほどお話ししたように、中国による九段線の主張と変わるところがありません。憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです。 また、海上自衛隊部隊の投入に対するためらいは、中国の行動の本質が我が国の主権侵害であるという事実を、我が国政府が世界に堂々と発信することにより対処すべきです。自衛隊の投入遅れにより尖閣諸島を奪取されることがあってはなりません。そして、我が国のこの措置は、時宜を得た明確なものであれば、多くの国に理解されると考えます。もちろん、政府の広報戦への備えが必要なことは言うまでもありません』、「憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです」、困ったことだ。
・『海上保安庁に「防衛」の任務を付与する  Q:政府の今回の説明が適切でないならば、日本はどうしたらよいでしょう。 香田:3つの案があります。これらをすべて実行することが望ましいと考えます。中国が海軍および海警局の装備を急速に拡充している現状に鑑みて、海上保安庁と自衛隊が持つアセット、つまり我が国の海洋力を総合的にフル活用して事に当たる体勢を整える案です。 第1は、防衛出動を発令する要件を緩和すること。その論拠としている国連憲章との関係も考慮すれば「一般に、一国に対する組織的計画的な武力の行使をいう」という表現を変えるのは難しいでしょう。しかし、「組織的」「計画的」をゆるくとらえ、ハードルを下げることは可能ではないでしょうか。 主権侵害に対処する任務を一義的に付与されているのは自衛隊です。自衛隊が事態に遅れることなくその任務を果たせるよう環境を整えるのが、政府の本来あるべき姿であり、施策だと考えます。 国民感情などを踏まえるとこれは容易ではないかもしれません。ただ、我が国政府には今までの政府解釈の墨守だけでなく、我が国を取り巻く安全保障環境の激変に対応した実利的な検討をする責任があることも事実です。これを実施しなかった結果として尖閣諸島を喪失する事態など決して許してはなりません。 といっても、防衛出動を発令する要件の緩和には時間がかかることも事実でしょうから、第2として、海上保安庁法を改正し、防衛出動が発動されるまで現場にいる海上保安庁の巡視船と海上保安官が自衛隊の代わりに主権を守るための防衛行動を取れると明記するのです。) 海上保安庁の現在の任務は、海上保安庁法第2条が以下と定めています。(1)海難救助、(2)海洋汚染等の防止、(3)海上における船舶の航行の秩序の維持、(4)海上における犯罪の予防及び鎮圧、(5)海上における犯人の捜査及び逮捕、(6)海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他。同庁は「主権等を確保するための領海警備等」に取り組んでいると言いますが、第2条はそれを明示していません。 また海上保安庁法は第25条で「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と定め、軍隊として行動することを禁じています。この条文は、日本がまだ占領下にあった1948年に海上保安庁が活動を始める際、「大戦中に暴れまくった連合艦隊を再びつくるものではない」という意志を国内外に示すために挿入した条文です。今日ではその役割を既に終えています。 よって、この第2条と第25条を改正し、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動に出たときには例外的に、海上保安庁が防衛組織として領域の警備に当たれるようにすると明記するのです。ただし、海上保安庁の国防組織としての任務がこのような事態に厳格に限られることは当然です。通常の海上法執行機関としての海上保安庁の活動のほとんどは今まで通りとなります。 第3は、海上自衛隊が平時において警戒監視の任務を担えるようにすることです。これを自衛隊法に明記する必要があります。 巡視船をはじめとする海上保安庁の装備は、世界トップの中国海警に次ぐ優秀さを備えています。特に海上保安官は世界一の任務遂行能力を有しているといえます。しかし、パラシュート部隊が空から降下して尖閣諸島に上陸するとか、ダイバーが潜航して尖閣諸島に近づき夜間に上陸するといった行動に対処する装備と能力は保有していません。 現在の特殊パラシュートは機能が高く、西風が強いときに尖閣諸島西方上空で降下すれば数十km飛ぶことができます。仮に50人の特殊要員がこれに取り組めば、到達率50%でも25人が探知されずに上陸・占拠できます。水中のダイバーが、尖閣諸島の10カイリほど沖で潜水艦から水中航行機器を使用して近接する場合、潜ったまま近づいて来れば巡視船は探知することはできません。朝、目が覚めたら、尖閣諸島に中国の国旗である五星紅旗が翻っていたということがあり得るのです。 これは荒唐無稽な話ではありません。去る2月11日に特殊部隊展開能力を有する米海軍原子力潜水艦「オハイオ」が沖縄近海を航行しました。これはその種の訓練を実施したものと推察されます。中国も同等の能力を持ちつつある、あるいは既に保有していると考えるべきなのです。 海上保安庁が尖閣諸島の「主権等を確保するための領海警備等」を現行法と体制で実施可能としているのは、海警船に対して「のみ」ということです。我が国政府がなすべきは、あらゆる種類の尖閣諸島奪還活動への備えです。その意味において、我が国は現在、想定される事態の一部に対する備えしかないのです。 一方、海上自衛隊はこれらに対処する十分な対空・対潜警戒能力を備えています。なので、自衛隊が警戒監視に当たってこうした脅威の兆候をいち早く察知し、海上保安庁の巡視船はもちろん、警察など関係機関に知らせ、必要な行動が迅速に取れるようにする。例えば警察特殊部隊をヘリで尖閣諸島に運び中国海警局の要員による上陸に備えることができるでしょう。現在持っているアセットをフルに生かすのです。自衛隊の投入が可能な場合には陸上自衛隊部隊の緊急空輸もなされるべきです。 現在の自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていないという瑕疵(かし)があります(関連記事「自衛隊の中東派遣をめぐる議論が示した安保法制の瑕疵」)。これを改めることは、尖閣諸島を守るための必須要件です。情報収集を含む「警戒・監視」はすべての防衛行動の基礎となるものですから』、「自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていない」のは、警察の任務だからで、あえて「自衛隊」が乗り出す必要はない。
・『法律論では、尖閣を中国の奪還作戦から守れない  警察官もしくは海上保安官、陸上自衛隊の部隊を尖閣諸島に常駐させる案が時々浮上します。実現できれば尖閣諸島防衛の確実度を高めることができますが、その半面、中国を強く刺激する懸念があります。中国が海警法第20条で「外国が中国の管轄区域で承認を得ることなく建築物を建設した場合は撤去を命じることができ、それを拒むときには強制的に撤去できる」との趣旨を定めたのは、日本がこうした措置を取るのを予想してのことだと考えられます。 仮に、我が国が施設を作り、政府職員、警察官あるいは陸上自衛隊の部隊を常駐させるとするなら、予測される中国の熾烈(しれつ)な奪還作戦に対処する防衛出動をいつでも出す覚悟と制度の整備をもって取り組む必要があるでしょう。この体制を採らない、この案は実施時を失してしまったということです。 繰り返しになりますが、中国が“自国の領土”を奪還すべく海警局を先兵として尖閣諸島に侵攻するシナリオは荒唐無稽な話ではありません。そして、いったん着手すれば、その意志を放棄する可能性は極めて小さいでしょう。我々は憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべきです。 憲法解釈を含む法律論で、尖閣諸島を中国の奪還作戦から守ることはできません。中国の具体的な活動に対処する体制をわが国の総力を挙げて整備する、加えて、政府と国民が確固たる防衛意志を持つことこそ、中国を抑止する原点です。この原点がしっかりしていれば、不幸にして抑止が崩れた場合でも、我が国の力により中国の奪回作戦を排除することができる。そして米国は、我が国のこの取り組みを見て初めて我が国を真の同盟相手と認知し、必要な際に安保条約5条を発動するのです。 この記事はシリーズ「森 永輔の世界の今・日本の将来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべき」、その通りだ。

次に、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「中国「海警法」への過剰反応が、かえって武力衝突リスクを高める理由」を紹介しよう。
・『尖閣問題で懸念高まる海保の武器使用拡大の声  中国は2月1日、海上警備に当たる海警局を従来の国家海洋局から分離し、中央軍事委員会傘下の武装警察部隊に編入し、既存の国際法にはない中国独自の線引きをした「管轄下の海域(管轄海域)」で、「主権、主権的権利が侵害されれば武器を含めた全ての必要な措置を取る」などの内容の海警法を施行した。 中国は尖閣諸島を自国領と主張しているから、その付近を「管轄海域」とし、そこでの権益を“侵害”する日本の艦船に対して武器使用をする構えを示したと、日本では受け止める向きが多い。 自民党内などで、「海上保安庁の武器使用の要件を拡大すべきだ」との声が出るのはある意味、当然の動きだ。 だがここは冷静に考えたほうがいい。大騒ぎするほど、むしろ本当の武力衝突につながりかねない危険が強まる』、どうすればいいのだろう。
・『海警局の巡視船に武器使用を含む強力な権限  海警法は習近平体制の下で態勢が強化されてきた海警局の役割と権限を改めて明確にしたものだ。 22条では、「国家主権、主権的権利や管轄権が……違法に侵害された場合、または窮迫した違法な侵害に直面した場合、……武器を含む全ての必要な措置をとる」として、海警局の巡視船などに武器使用を含む強力な権限を与えた。 外国軍艦・公船にも退去命令や必要に応じて強制措置が取れるとされ、防衛活動にも参加できる準軍事組織との位置づけだ。 さら「管轄海域」という定義の曖昧な用語で境界を引き支配が及ぶとした。 国連海洋法条約では、海域を「領海」や「接続水域」、「排他的経済水域」などに分類し、沿岸国の権利や航行のルールなどが決められているが、「管轄海域」という曖昧な言い方が多用され、中国に都合のいい恣意的な運用が行われる可能性がある。 尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入が繰り返される状況で、日本でも「危機感」が強まるのはやむを得まい。 だが何が本当は危険なのかを考える必要がある』、「何が本当は危険なのか」、どういうことだろう。
・『すでに海上保安庁は自衛隊との共同訓練も  日本ではすでに1954年制定の自衛隊法80条で、自衛隊が防衛出動、治安出動するような有事の際には防衛大臣が海上保安庁を指揮するよう、総理大臣が命じることができるようになっている。 だが他方、48年に制定された海上保安庁法第25条では、「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と定めている。 海上保安庁が生まれた48年は戦後3年、憲法施行の翌年だった。 当時の米国は日本の「再軍備」を封じようとしていたが、戦争中に米軍が投下した機雷の除去や密輸の阻止、密航者によるコレラの蔓延防止などに海上警備は不可欠だったから、小型で低速の船艇による海上保安庁の設立を認め、それが海軍に発展することがないようこの条文を入れたのだ。 ところが50年に朝鮮戦争が勃発すると、米国は態度を一転、警察予備隊を急ぎ作らせ、それが54年に陸・海・空自衛隊に発展した。 米国の沿岸警備隊が米海軍の補助部隊であるのと同様に、有事の際には海上保安庁を防衛庁長官の指揮下に動員できる条文を自衛隊法に入れたのだ。 米軍は海上保安庁に中古の3インチ(76ミリ)砲を多数供与し、巡視船を武装させた。 こうして、海上保安庁法と自衛隊法には矛盾が生じ、憲法9条と自衛隊との不整合のミニチュア版のような形となった。 それだけではなく、先にできた海上保安庁と、後に生まれて急速に拡大した海上自衛隊の間には感情的な対立も生じた。 だが近年日本近海への朝鮮の工作船の出没や尖閣諸島を巡る中国海軍や海警局の艦船の行動に共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ。 今では海上自衛隊と海上保安庁は密接に情報を交換し、共同訓練をする仲になり「軍隊として訓練されてはならない」という海上保安庁法の第25条は半ば死文と化した感がある』、「海上保安庁」と「海上自衛隊」は「共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ」、結構なことだ。
・『軍隊と区別する「知恵」 過剰な対応は新たな火種に  海警法を警戒する論者からはこの際、「25条を削除すればよい」という声も出てきそうだが、海上保安庁自身がそれには激しく抵抗するだろう。 独自性を失い、事実上、海上自衛隊の補助部隊化することになってしまうからだ。 海上保安庁を管轄する国土交通省も賛成しないだろう。 欧州の大陸諸国は陸軍とは別に軽装備の国境警備隊を設けていることが多い。 国境付近に戦車や砲兵などを備えた陸軍部隊を展開すれば、相手も陸軍を出して対抗し、小さな事案が重大な結果を招きかねないからだ。 国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう』、「国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう」、同感である。
・『一定の武器使用も可能に 北朝鮮工作船事件を機に法改正  武器使用についても、2001年に海上保安庁法20条が改正され、外国船(軍艦、公船を除く)が日本領海内で、無害航行が疑われたり、重大凶悪犯罪を行っている疑いがあったりする場合には、その船を停止させるため武器使用が認められている。 それまでは人に危害を与える武器使用は警察官職務執行法の規定を準用する形で、正当防衛、緊急避難、凶悪犯の抵抗などの場合に限られていた。 だが99年3月、能登半島沖(佐渡島の西方18キロの日本領海内)にいた北朝鮮の工作船2隻を海上自衛隊の護衛艦と海上保安庁の巡視船が追跡、威嚇射撃をしたが、高速の工作船に逃げ切られた事件があり、海上保安庁法を改正し武器使用を定めた。 国連海洋法条約では、どこの国の船舶も他国の「領海」を通過する権利が認められているが、武力による威嚇や武力行使、兵器を使う訓練、沿岸国の防衛・安全を害する情報収集や測量、通関の法令に反する物品や軍事機器の積み降ろし、漁業などの行為は禁じられている。 こうした有害な行為を防止するために沿岸国は自国の「領海」内で必要な措置を取ることができる。 ただし海洋法条約は軍艦が沿岸国の法令を守らず、順守の要請を無視した場合には「沿岸国はその軍艦に対し領海から直ちに退去することを要求できる」と定められているだけだ。 軍艦を拿捕すれば戦争になる公算が高いためだろう。 海上保安庁の武器使用や執行権限もこうした海洋法条約に準じて定められている』、なるほど。
・『「国際法違反」だが中国側に反論の余地なくもない  一方で海警法の場合は、軍艦に対しても「退去の命令」だけでなく必要に応じ「強制措置」をとることができると解釈される。 さらに、中国の「管轄海域」は、「領海」内だけでなく、陸地から200海里の「排他的経済水域」内や、中国(当初は蒋介石治下の中華民国)が管轄権を主張してきた、南シナ海ほぼ全域で、中国国内法で違法となる行為に対して武器使用をする可能性もある。 こうしたことから「中国の海警法は国際法違反」と日本を含めて多くの国では受け止められている。 だが、2001年に起きた九州西方海域での北朝鮮工作船撃沈事件では、海上保安庁も国際法違反と批判されてもおかしくないことをしている。 この時には、北朝鮮の工作船は日本の領海には全く入っておらず、海上保安庁は工作船の発見当初から「漁網を積んでいない。不審船だ」と発表し、巡視船は追跡して射撃し、相手が反撃すると「正当防衛」として、20ミリ機関砲弾187発を撃ち込んだ。工作船は自沈、約20人の乗組員全員が死亡した。 政府は「日本の排他的水域内で漁業をしている漁業法違反の疑いがあるため停船を命じたが、逃走したため船体射撃を行った」と説明した。 だが初めから「漁船ではない」と言いながら、追跡して公海上で射撃、撃沈したのは、国連海洋法条約と海上保安庁法に違反する疑いがある行動だった。 おそらく中国側は、仮に海警法の下で「管轄地域」を航行する日本の船舶を、武器を使用して拿捕しても、「貴国もかつて同じことをし、合法と言ったではないか」と反論するのではないか』、「北朝鮮工作船撃沈事件
」はこの記事で思い出したが、確かに日本側の行動には行き過ぎもあったようだ。「中国側」が正当化の根拠に引用する口実を与えたのは、まずかった。
・『巡視船の「強弱」を論じる無意味 戦いになれば軍隊の出番  2010年9月尖閣諸島海域での中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突は、事件以降、日中関係は悪化し、巡視船の建造競争の様相を呈している。 中国海警局が保有する船艇は大小合わせて523隻で、うち外洋用巡視船は87隻(12隻は海軍から払い下げの中古)、海上保安庁は大小373隻でうち外洋用巡視船は57隻だ。 米国の沿岸警備隊は大小340隻で外洋用の巡視船は25隻しかない。海上自衛隊の護衛艦は48隻だ。中国と日本は他国とは段違いの規模の海上警察隊を持つことになっている状況だ。 建造される巡視船は次々と大型化し、中国の最新型2隻は米海軍の「タイコンデロガ」級巡洋艦(満載1万117トン)をしのぐ1万2500トンの巨大巡視船だ。 日本も6000トンないし7300トン級の新鋭大型巡視船を6隻持ち、さらに3隻を建造中だ。 中国の大型巡視船は射程10キロの3インチ(76ミリ)砲1門を装備している。それを日本では新たな脅威のように言う人もいるが、日本の大型巡視船はそれに匹敵するスウェーデン製の40ミリ機関砲2門と20ミリ機関砲2門を装備している。 40ミリ機関砲の有効射程は10キロで、1分間に330発を発射できる。目標の動きを追って砲が自動的に目標に向かい、命中弾を浴びせ続ける火器管制システムもあるから、76ミリ砲1門の中国の超大型巡視船と優劣はつけがたい。 中国が巡視船を超大型化しても砲1門では東シナ海での戦力バランスを大きく変える実効はありそうにない。 超大型巡視船を建造したのは、大量の燃料などを積んでソマリア沖の海賊対処など遠隔地に派遣して世界に力を誇示するためかと思われる。) そもそも日中が巡視船の増強をしても、万が一、日中の巡視船が交戦する事態になれば、中国側は海軍や空軍が、日本側は海・空自衛隊が出動するだろう。場合によっては日米安保条約(5条)によって米軍が加わる可能性もある。 日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ』、「日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ」、その通りだ。
・『重要なのは日中で紛争拡大を防ぐ取り組み  日中の軍と軍が衝突する事態となれば、日中ともが大きな打撃を受ける。 世界最大の貿易国である中国にとり、太平洋・インド洋の航行の自由はまさに「死活的利益」であり、その確保のためには日本、米国との軍事衝突は避けたいのが本音だろう。 14年11月10日、当時の安倍首相は北京で習近平国家主席と会談した。 その3日前に尖閣諸島を巡って双方が「異なる見解」を持つのを認め合う合意事項を発表、玉虫色の表現で事実上の棚上げをし、「戦略的互恵関係」に戻ることで合意した。 東シナ海で日中の巡視船や艦船の偶発的な衝突が起きるなどの不測の事態に備え「海上連絡メカニズム」の運用開始を進めることも決まった。 だがいまだにそれは完成していない。そうした紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ。 中国と日本が巡視船の増強を競い、強硬な法令を制定し合って対立を激化させるのは、お互いの安全保障にも逆行すると案じざるを得ない』、「海上連絡メカニズム」のような「紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ」、同感である。
タグ:尖閣諸島問題 (その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由) 日経ビジネスオンライン 「中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的」 香田洋二・元自衛艦隊司令官(海将) 「中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです」、 「武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています」、 「中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです」、さすがプロらしい適格な指摘だ 「習近平強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」、穏やかではなさそうだ。 「軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります」、日本政府の現在の解釈は、国際法からみても極めて問題が多いようだ 「日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります」、日本政府の法解釈は余りにお粗末だ 「EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます」、確かに「国連海洋法条約」「の範囲内で解決を図るべき」 「憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです」、困ったことだ 「自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていない」のは、警察の任務だからで、あえて「自衛隊」が乗り出す必要はない 「憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべき」、その通りだ ダイヤモンド・オンライン 田岡俊次 「中国「海警法」への過剰反応が、かえって武力衝突リスクを高める理由」 「何が本当は危険なのか」、どういうことだろう。 「海上保安庁」と「海上自衛隊」は「共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ」、結構なことだ。 「国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう」、同感である 「北朝鮮工作船撃沈事件 」はこの記事で思い出したが、確かに日本側の行動には行き過ぎもあったようだ。「中国側」が正当化の根拠に引用する口実を与えたのは、まずかった。 「日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ」、その通りだ。 「海上連絡メカニズム」のような「紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ」、同感である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

医療問題(その28)(精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し 患者には評価できない、引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕、東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由) [生活]

医療問題については、本年1月17日に取上げた。今日は、(その28)(精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し 患者には評価できない、引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕、東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由)である。

先ずは、昨年12月28日付け東洋経済オンライン「精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し、患者には評価できない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/398941
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第8回』、「精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占める」、全く歪な姿だ。
・『情報公開に積極的な精神科病院は少数派  東京・東村山市にある「多摩あおば病院」は、206床の入院病床を持つ精神科病院だ。東村山市とその周辺地域を中心に、他県からも多くの患者が訪れる、地域精神医療の拠点である。 診療内容は幅広く、統合失調症や発達障害、気分障害のほか認知症、アルコールや薬物依存症プログラム、児童思春期の問題にも対応している。患者は10代から90代まで、疾患にかかわらず精神科の治療を必要とする人たちだ。 同院では、病院ホームページに「患者統計」として、治療を行った患者に関する統計データを公開している(https://sinsinkai.com/about/statistics/)。主な項目は以下の通りだ。 +年間入退院数 +平均在院日数 +病院の回転率 +1年後残存率 +入院患者の退院先 +外来数 +デイケア数 副院長の中島直(なおし)医師は、「情報公開は当然のこと」と語る。しかし、実際に自ら、こうした統計データを公開している病院は少数派だ。 東京都内の私立の精神科病院団体である「東京精神科病院協会」に所属する63病院のホームページを調べたところ、スタッフ数の内訳や患者の治療状況がわかるデータを公開していたのはわずか6病院のみだった。多摩あおば病院のような詳細なデータに至っては、開示している病院はほぼ皆無だ。 本連載『精神医療を問う』でも報じてきたように、精神科病院は「精神保健福祉法」に基づき、患者が拒否しても医師の診断と家族の同意で強制的に入院させる権限や、病棟の入り口が常時施錠される閉鎖病棟を持つ。 入院患者には「携帯電話を持ち込めない」「面会を制限する」「外部とのやりとりは手紙だけ」などのルールが主治医の判断で課されることもあり、患者が病院内から情報を発信することも極めて難しい。そうした状況下で、根拠なく長期入院を強いられているケースや、看護師など病院スタッフによる虐待で患者が亡くなる事件が相次いできた。 そのため精神科病院には、通常の病院よりも自主的かつ積極的な情報開示が求められるはずだが、冒頭で見たとおり、その姿勢には乏しいのが現実だ。大多数の精神科病院の内情は、今もブラックボックス状態にある。) それでは公的に行われる情報開示についてはどうか。全国の精神科病院の現状を知る手段の1つに、毎年厚生労働省が各都道府県を通じて実施する「精神医療保健資料」という調査がある。毎年6月30日時点の精神科医療機関の実態を把握する目的で行われ、通称「630調査(ロクサンマル調査)」と呼ばれる。 調査の対象は精神科病院、病床を持たないクリニック、訪問看護ステーションだ。医師などのスタッフ数や病床数、隔離病棟の数、入院料などの病院自体の情報に加え、患者の年代、診断名、在院期間、身体拘束人数、隔離措置人数といった質問項目もある。 ただし公開されているのは、病院の設立区分や都道府県ごとに集計された数値にとどまる。本来、患者や家族が知りたいのは個別病院のデータのはずだが、そうした要望に応えるものにはなっていない。 この調査を活用して、患者たちの要望に応える取り組みを行ってきたのが、全国で当事者の権利擁護を目的に活動する、精神医療人権センターなどの市民団体だ。彼らは集計前の個別病院の実態がわかる個票を、情報公開制度を利用して集め、当事者が病院を選ぶときの参考にできる『精神病院事情』という冊子を各地域で作成してきた。冊子は病院に配布したり希望者に販売したりしている』、「精神科病院」はもともと閉鎖的になりやすいだけに、「公開されているのは、病院の設立区分や都道府県ごとに集計された数値にとどまる。本来、患者や家族が知りたいのは個別病院のデータのはずだが、そうした要望に応えるものにはなっていない」、やはり要開示項目を増やすべきだろう。
・『病院ごとの個別の事情を知ることが大切  「病院ごとに治療方針や患者の待遇が大きく異なるため、個別の事情を知ることが大切です」。精神科病院での長期入院や、身体拘束の問題に長年取り組んできた市民団体、「東京都地域精神医療業務研究会(地業研)」のメンバーで看護師の飯田文子氏は、冊子を作る意義をこう説明する。 実際に地業研が刊行する『東京精神病院事情2015年版』を見てみると、東京都内の70病院について、それぞれの病床数とレーダーチャートによる評価が記載されている。レーダーチャートの評価項目は「5年以上入院者率」「1年未満入院者率」「平均在院日数」「常勤医1人当たりの患者数」「常勤看護者1人当たりの患者数」「常勤コメディカル(ソーシャルワーカーや臨床心理技術者、作業療法士など)1人当たりの患者数」の6項目。 それぞれ5段階で点数化しており、高得点であるほうが、スタッフ数が多く活動性の高い「望ましい病院」としている。 統計データを踏まえた各院の特徴には、「平均在院日数は2424日(都平均230日)と断トツで都内最長。統合失調症の平均在院日数は何と3650日(同329日)に及ぶ」「死亡退院率が65%で群を抜いている」といった、驚きの記述もある。点数が高くても、身体拘束率などが高い場合もあり、特徴とチャート図を併せて見ることが大切だ。) こうした個別病院を評価する判断材料が少ない中、患者や家族は病院選びに苦心している。 東京都内で開かれた精神障害者の家族会に参加した女性は、統合失調症を患い入退院を繰り返す娘の病院選びに悩んできたという。「精神科の場合、歯医者などと違って近所の人に『どこの病院がいいですか』と気軽に聞くこともできません」。 また同じ家族会に参加した統合失調症の息子を持つ女性も、「病院のホームページの情報だけではあてにならないと思い、これまで保健所に紹介された病院や、ケースワーカーから話を聞いた病院に入院してきました。でも入ってみると看護師が少なくケアが不十分だったり、本人が合わなくて暴れてしまったりもする。どうしたらいいかわかりません」と悩みを打ち明けた。 この女性に地業研の作成した先の冊子について話すと、メモをとり「そうしたものがあるとは知らなかった。ぜひ読んでみたいです」と話し、会場を後にした』、「地業研が刊行する『東京精神病院事情2015年版』」、は数少ない情報源のようだ。
・『「速やかに破棄」を指示  ところが、こうした冊子の作成に欠かせないロクサンマル調査の個票の情報公開が、一時、全国で相次いで非開示となった。2017年度と2018年度のデータを中心に、個人情報の保護などを理由として、15の自治体が非開示や一部開示とした。そこには、それ以前までは全面的に開示をしてきた北海道、埼玉県、神奈川県、大阪府も含まれた。 ロクサンマル調査はここ3年で2度、調査・集計方式が大きく変更されている。1度目は、2017年度と2018年度分の調査だ。これまで紙ベースで集計していたものを、各医療機関がウェブ上から調査票をダウンロードし、1人の患者ごとに1行ずつのデータを入力してそのまま厚労省に送信する方式とした。 2度目は2019年度調査からで、この1行ずつの患者データを病院内で集計し、個別のデータはわからない状態で厚労省に送信する方式になっている。 このように、全面的に開示されてきた2016年度以前から集計方法が変わっているとはいえ、患者情報はすべて匿名であり、個人情報保護法上の「特定の個人を識別できるもの」は存在していない。 突然非開示となった本当の理由はわからないが、厚労省や病院団体が市民団体によるロクサンマル調査のこうした活用法について、「苦言」を呈したのも同時期である。 2018年7月、厚労省精神・障害保健課長名義で各都道府県や政令指定都市の精神保健福祉担当部局長宛に、ロクサンマル調査の依頼協力を求める文書が送られた。 同文書の別紙では、「調査票の取扱い」として「個人情報保護の観点から、定められた保存期間の経過後に速やかに廃棄する」よう指示している。さらに「精神科医療機関の個々の調査票の内容の公表は予定しておらず」、各自治体が医療機関に調査依頼を行う際は、この点を明示すべきとする文言が付記された。) 同年10月には精神科の私立病院団体である日本精神科病院協会(日精協)が、山崎學会長名で声明文を発表した。ロクサンマル調査は「個人情報保護の観点から問題の多いものであると認識していた」とし、声明文発表の2カ月前に毎日新聞が、50年以上入院する患者が全国に1700人以上いると報じた記事に触れ、「まさにわれわれの危惧が現実となったものである」と批判した。 調査主体である厚労省が個人情報保護のための必要な措置を行わない場合は、「ロクサンマル調査への協力について再検討せざるを得ない」と、調査の存続危機をも思わせる声明となっている。 こうした情報公開に逆行するような動きに、当事者たちからは反発の声が湧き起こった。非開示や一部開示決定について不服を申し立てる審査請求の実施、日精協の声明文への批判、反対集会の開催など強い抵抗もあってか、2019年度の調査協力依頼文からは調査票の扱いを制限する文言はなくなっている。ただし、各市民団体が行った情報公開請求の結果をみると、身体拘束数などの一部のデータは依然として非開示のままだ。 前出の地業研の飯田氏は、「これまでの情報開示も、簡単に達成できたことではありませんでした。東京都や京都府でロクサンマル調査結果の情報公開を求める裁判を起こし、1999年に京都地裁が開示を認めた判決をもとに、活動に取り組んできました」と、現在に至るまでの経緯を語る。 全国的には大幅な情報の非開示は改善されてきた中、例外的に2019年度分のデータさえも全面的に開示を拒んだのがさいたま市だ』、「日精協」が「声明文発表の2カ月前に毎日新聞が、50年以上入院する患者が全国に1700人以上いると報じた記事」に触れ、「まさにわれわれの危惧が現実となったものである」と批判」したのは、不都合な事実を「個人情報保護」とは本来、無関係なのに、強引にそれを大義名分に抑制しようとするものだ。
・『今も続く非公開  埼玉県の精神医療を考える会は、さいたま市内の7つの精神科病院についてロクサンマル調査結果の情報公開請求をしていた。2020年9月にさいたま市から送られてきた「行政情報一部開示決定通知書」は、48項目に及ぶ全調査票のうち、47項目が一部または全面的に非開示とされていた。 さいたま市が非開示とした理由は、主に2つ。1つは個人を特定できる可能性があるため、もう1つは病院の運営上の正当な利益を害するおそれがあるためである。 だが、同会が埼玉県に対して行った同じ2019年度のロクサンマル調査の情報公開請求では、当時県側にデータが提出されていなかった1病院を除き、市内の6病院分のデータがすでに得られている。まったく同じ情報にもかかわらず、なぜ市は開示できないのか。 さいたま市の健康増進課の職員は取材に対し、「あくまで市の情報公開条例に基づいて判断している。埼玉県や他の自治体が開示しているかどうかは知らず、考慮していない」と回答した。同会はこの結果を不当だとして、市に対し情報の開示を求める審査請求を行っている。 同会メンバーの女性は「困ったら病院に入れるのがゴールだと安易に思ったり、精神疾患を持つ患者が社会に出てきたら困ると思い込んだりしている私たち自身の偏見に向き合うためにも、ロクサンマル調査でわかるデータは行政や病院が抱え込むものではなく、市民にとってオープンであってほしい」と話す』、「困ったら病院に入れるのがゴールだと安易に思ったり、精神疾患を持つ患者が社会に出てきたら困ると思い込んだりしている私たち自身の偏見に向き合うためにも、ロクサンマル調査でわかるデータは行政や病院が抱え込むものではなく、市民にとってオープンであってほしい」、その通りだ。
・『「恥であっても、現実」  多摩あおば病院が患者の統計を公開し始めたのは、2006年頃からだ。 中島副院長は、「ロクサンマル調査はあくまで1つの指標であり、すべてがわかるわけではありません。自分たちもどうしたら病院や患者の状況が外に伝わるか試行錯誤しています」と、院内の情報公開の方針を語る。 例えば多摩あおば病院の場合、患者が他の精神科病院に転院することはなるべく避けている。治療を途中で他の病院に丸投げすることになるからだ。ホームページ上にある、「入院患者の退院先」のデータを見るとそのことがわかる。 「ロクサンマル調査にあるような情報は、出すか出さないかではなく出すのが当たり前。長期入院などの問題は恥であったとしても、現実ですから。精神疾患を持つ人の受け皿をどう見つけていくかは、病院だけの責任ではない。そういう人がどれだけいて、みんなでどう支援していくかは社会の問題です。別に隠す必要はないんです」(中島副院長) 精神科病院に入院する当事者や家族が情報公開を求めるのは、治療や病院のあり方に対する疑問が根強いためだ。 2020年5月に設立された神奈川県精神医療人権センター(KP)の相談窓口には、電話での相談が全国から寄せられている。家族が退院できなくて困っている、テレホンカードを購入させてもらえず病院の外と連絡が取れない、院内が清潔でない、など内容はさまざまだ。弁護士と連携し、退院支援などを行っている。 さらにKPが特徴的なのは、精神障害当事者がピアスタッフとしてイベントを仕掛けたり、病院選択の情報を発信したりしていることだ。長年精神医療の実態を報じてきた、ジャーナリストの佐藤光展さんも活動に加わっている。 「精神医療の世界では、これまで患者自身が声を上げる機会は乏しかった。それゆえ、危険な存在だと見下されているのが実態です。病院の情報開示はもちろんのこと、患者自身がもっと声を上げていくことが必要だと思っています」(佐藤さん)』、「病院の情報開示はもちろんのこと、患者自身がもっと声を上げていくことが必要」、同感である。

次に、本年3月16日付け東洋経済オンライン「引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/415829
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第10回』、「人権上の問題が山積」とは見逃せない。
・『自立研修センターから病院へ強制連行  「今からあなたを『病院』に連れていきます。これは強制です」 2018年5月上旬、30代男性のAさんは9日間にわたり監禁状態に置かれた施設の職員にそう告げられた。施設の名は東京・新宿区にある「あけぼのばし自立研修センター」、ひきこもりの自立支援をうたう民間事業者が運営していた。いやがる当事者を自宅から無理やり連れ出し、施設に監禁・軟禁するなどで社会問題化した、いわゆる「引き出し屋」だ。 Aさんは大学卒業後、就職せず両親と同居し独学していた。親心からAさんの将来を心配し、就労することを希望していた両親は、Aさんの就職を支援するというセンターと契約し、約700万円を支払った。 職員に監視され、ドアには外からカギがかけられるなど監禁状態だったセンターの地下部屋から、職員とともにAさんを連れ出したのが、その8日前に両親と住む自宅から無理やり施設に連行した「民間救急会社」の男性たちだ(民間救急会社については、連載第4回「ある朝、精神病院に強制連行された男の凶体験」2020年9月25日配信で詳報)。 黒いジャンパーと手袋で身なりを固めた強靭な体躯の男性2人に両脇を固められ、Aさんを乗せた車は出発した。 Aさんはセンター入所後、抗議の意を込めてほとんど食事を取っておらず体力も著しく落ちていたので、それ以前にも職員から病院で点滴する必要があると告げられていた。そのため、具体的な行き先を告げられることはなかったが、「点滴をするため、近くの内科クリニックにでも連れていかれるのだろう」と思っていた。 だが車は近場では止まらなかった。到着したのは施設のある新宿区からは離れた病院の、救急搬送口だった。施設職員に連れられ建物に入ると、救急外来用の診察室へと通された。 「ここの病院は何科ですか?」。控室のような殺風景な小部屋の雰囲気に不安を覚えたAさんはセンターの職員に尋ねた。「精神科だ」。職員はそう手短に答えた。Aさんはそのとき初めて自らが連れてこられたのが精神科病院だと知らされた。 「点滴か健康診断かと思っていたので、まさか精神科病院に連れてこられるとは思わず、想定外の事態に心中ではそうとう動揺していた」(Aさん) 強い不安の中、10分ほど小部屋で待っていると、白衣を着た医師が現れた。「どうしてここに来たんですか?」、医師からそう問われたとき、Aさんは、「ああ、これで今までのことをきちんと説明すれば助けてもらえるだろう」と安堵。センター職員の同席にも構わず、医師に自らの置かれた状況を一気に打ち明けた。 「自宅にいたら無理やりセンターに連れてこられて、9日間も監禁されていました。人道的な見地から助けてください」 決死の訴えに対して医師は、「今日からここに入院してもらいます」とのみ告げた。驚いたAさんが再度「人道的な見地から助けてください」と懇願するも、「もう決まったことだから」などと言い(病院側は「診療録の生活歴・現病歴に記載されている経過を尋ね、精神科における入院治療の必要性を伝えた」と民事訴訟における準備書面で主張)、母親から同意を得て、本人の意に反した「医療保護入院」が決定された』、「両親は、Aさんの就職を支援するというセンターと契約し、約700万円を支払った」、そのあげく僅か7日間で、「センター」から「精神病院」に入院させたとは、「両親」は知っているのだろうか。
・『Aさんに精神疾患の既往歴はなかった  医療保護入院は精神科特有の制度で、本人が同意しなくても、家族など1人の同意に加え、1人の精神保健指定医の診断があれば強制入院させられる。ちなみにAさんには精神疾患の既往歴はいっさいない。 医師が話を打ち切ると、小部屋の隣の扉が開き複数の屈強な男性看護師たちに取り囲まれた。とっさに両手を挙げて、「先生、よくわかりません、助けてください!」と叫んだが無視され、隔離室へと連行された。 施錠された隔離室に入れられて数時間後、女性を含む4人の看護師が入ってきて、Aさんに服を脱ぐよう指示した。こんな入院はおかしいと反発すると、ベッドへと誘導され身体拘束され、あっという間に上半身、ついで下半身と順に裸にさせられた。) Aさんは看護師たちにおむつを履かされ甚平のような服を着せられた。手と胴がベッドに拘束されたことで、ほとんど身動きが取れなくなった。 この間、Aさんは身体的な抵抗はいっさいしなかった。「暴れたりしたら精神疾患だと受け取られかねないと、意識的に冷静に対応するよう努めた。それに実際9日間何も食べてないので、抵抗したり暴れたりする体力も気力もなかった」。 仰向けにベッドに固定され、寝返りを打つこともできないまま3日間過ごすことになった。なにより屈辱を感じたのは、トイレに行くことが許されず、おむつへの排泄を強要されたことだ。 「結局、大便も小便もおむつにするしかなかったが、おむつ交換の回数は限られ、不快感が強く、衛生的にもどうかと思った。これを看護師に交換されるというのも、とても屈辱的だった」(Aさん) 3日間の身体拘束が終わったのちも、Aさんは閉鎖病棟での日々が続いた。 2018年5月下旬、主治医から病名は発達障害の疑いだと告げられた。その診断理由を尋ねると、「あなたは今まで10年間教会のミサに通い続けていたよね。それは社会の一般通念からずれている。それが根拠です」と説明されたとAさんは話す(民事訴訟における準備書面で、病院側は説明内容を否定)。当然承服できないと反論したが、「それはあなたに病識がないからだ」と一蹴されたという。 翌月の6月に入ると退院調整が図られるようになったが、病院側は自立研修センターへの退院を強く求めた。退院時にはセンターの職員に連れて行ってもらうことになるが、もしこれを拒否したら、再度別の病院で入院になることが予想されると説明された。 Aさんは強く反発したが、結局、センターへの退院を了承した。閉鎖病棟での生活は50日間にわたった』、「仰向けにベッドに固定され、寝返りを打つこともできないまま3日間過ごすことになった。なにより屈辱を感じたのは、トイレに行くことが許されず、おむつへの排泄を強要されたことだ」、人権侵害の極致だ。「あなたは今まで10年間教会のミサに通い続けていたよね。それは社会の一般通念からずれている。それが根拠です」と説明された」、こんなのが「発達障害の疑い」の根拠とは聞いて呆れる。
・『誓約書を強要  退院するや否や、Aさんはセンターから「誓約書」(写真)へのサインを強要された。 ① 医師の診断に従い、通院・服薬を続けること ② 実家に帰らない、家族に連絡を取らないこと ③ (センターの)カリキュラムは全参加すること という内容だ。誓約書の文末には下記の一文があった。 「上記ルールを守れない場合は、再度入院する事に同意致します。」 少なくともセンター側が、身体拘束の恐怖や強制入院の理不尽といったAさんの心身に刻まれた精神科病院でのトラウマを、指示に従わせる「道具」として活用しようとしたことは明白だ。 Aさんはその後、弁護士らの援助でセンターを抜け出し、センターと病院の職員・医師らを逮捕監禁罪などで刑事告訴。別途、民事訴訟でも損害賠償を求めて争っている。センターの運営会社は2019年末に破産した。病院への刑事告訴は正式に受理されて、現在捜査中だ。 Aさんの代理人の1人で、同センターのほかの被害者からも相談を受けている、代々木総合法律事務所の林治弁護士は、「被害者たちはみな、センターの職員から言うことを聞かないと精神科病院に入れられ、身体拘束もされると脅されていた。Aさんが身体拘束されておむつで排泄していたことはみな知っていた。精神科病院への入院が引き出し屋によって、いわば見せしめ的に使われている」と実情を語る。 内閣府によれば、ひきこもりの人数は15~39歳で54万1000人(2016年発表)、40~64歳は61万3000人(2019年発表)と推計されている。総数は100万人を超えるとみられている。ひきこもりが長期化・高齢化しているとも報告され、本人や支える家族の不安や悩みは大きい。 そうした悩みにつけこんで、「半年で自立させる」などと甘言を用いて、両親など家族から高額な費用を巻き上げる引き出し屋は、決してこのセンターだけではない』、「センターの運営会社は2019年末に破産」、「700万円」はその前に返還されたのだろうか。「本人や支える家族の不安や悩みは大きい。 そうした悩みにつけこんで、「半年で自立させる」などと甘言を用いて、両親など家族から高額な費用を巻き上げる引き出し屋は、決してこのセンターだけではない」、全く悪質極まりないビジネスだ。これと手を組んでいる筈の「精神病院」も問題がある。
・『病院が著名教授を提訴  こうした悪質業者の手先ともいえる役割を、結果的に精神科病院が果たしてしまっていることについて、当の病院側はどう考えているのか。 取材に対して、病院側は「本件は現在係争中であり、また守秘義務もありお答えできない」としている。 ちなみに病院は、民事訴訟の準備書面において、「原告(Aさん)はあたかも被告病院が研修センターと一蓮托生であるかのごとき主張をするが、まったく研修センターと被告病院とは関係はなく、連携等もおこなっていない」「研修センターへの誓約書記載の入所条件については、原告と研修センターとの問題であり、被告病院が積極的に関与したものではない」などと主張している。 なおこの病院は昨年、ひきこもり問題の第一人者で筑波大学教授の斎藤環医師を名誉棄損であるとして、300万円の損害賠償を求め提訴した。斎藤教授がAさんの刑事告訴と民事訴訟に関する報道を引用して、ツイッターでコメントしたことがその理由だ。 取材に応じた斎藤教授は「近年、統合失調症への薬物治療が進んだことなどで、精神科病院への新規入院件数は減少傾向にある。そのため多くの病院はできるだけ多様な入院ニーズを確保したい。この病院が直接それにあたるかは別にして、引き出し屋と結託すれば相応の患者数を定期的に受け入れられると考える精神科病院があっても不思議ではない」と警鐘を鳴らす』、「精神科病院への新規入院件数は減少傾向にある。そのため多くの病院はできるだけ多様な入院ニーズを確保したい。この病院が直接それにあたるかは別にして、引き出し屋と結託すれば相応の患者数を定期的に受け入れられると考える精神科病院があっても不思議ではない」、医師がこんないかさまビジネスの片棒を担ぐとは世も末だ。
・『「拷問に等しい犯罪行為」  実際、ひきこもり状態にあったところ、精神科病院に強制入院させられたケースはAさんだけではない。 「身体拘束されて隔離室に入れられたときは、閉塞感と圧迫感で絶望的な気持ちになった」。埼玉県在住の30代男性のBさんは、精神科病院への入院体験を振り返る。 男性はいじめによる強迫性障害が原因で、高校1年からひきこもり状態となった。20代後半となったある日、寝ている間に父親と親戚など5人前後の男性に養生テープで簀(す)巻きにされ、そのまま車で大学病院へと搬送された。 隔離室でテープは剥がされたものの、搬送時に口中に砂が入り服薬をためらっていると、医師に投薬拒否と判断され、室内のベッドにそのまま拘束された。 万歳した状態で、手足と胴の「5点拘束」され、投薬、食事とも経鼻経管で行われた。BさんもAさんと同じく、拘束中はトイレにも行かせてもらえず、用便はおむつでの対応を余儀なくされた。 「交換は1日2回と決められており、隔離室前を通る看護師に交換をお願いしても無視され続けた」(Bさん) Bさんは退院後に大検に合格し、今は通信制の大学で学び、福祉系の資格を取得して働こうと考えている。フルタイムで事務職のアルバイトもしている。 ただ、当時の精神科病院での体験は確実にトラウマとなっていると振り返る。「今でも隔離室でされたことは拷問に等しい犯罪行為だと思っている」(Bさん)。 成人男性ですら、何年たっても深いトラウマとして心身に刻み込まれる精神科病院での身体拘束。こうした行為が未成年の少女に、驚くべきほど長期間実施されていたケースすらある。(第11回に続く)』、親や船籍にとっては、厄介者払い的な色彩もあるだろうが、ここまで酷い人権侵害が起きていることまでは知らない筈だ。「引き出し屋」がまだ営業を続けているのであれば、刑事告発したり、民事で損害倍書訴訟をしていくことにより、息の根を止めるべきだろう。

第三に、2月19日付けYahooニュースが転載した幻冬舎OLD ONLINE「東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/92101662413bbc6756ddac0d52dc691e8c6398e6?page=1
・『灘高→東大理3→東大医学部卒。それは、日本の偏差値トップの子どもだけが許された、誰もがうらやむ超・エリートコースである。しかし、東大医学部卒の医師が、名医や素晴らしい研究者となり、成功した人生を歩むとは限らないのも事実。自らが灘高、東大医学部卒業した精神科医の和田秀樹氏と、医療問題を抉り続ける気鋭の医療ジャーナリストの鳥集徹氏が「東大医学部」について語る。本連載は和田秀樹・鳥集徹著『東大医学部』(ブックマン社)から一部を抜粋し、再編集したものです』、興味深そうだ。
・『大学病院よりも一般病院での研修をする研修医が増えた  「新臨床研修制度」がもたらしたものとは? 鳥集 2004年には、「新臨床研修制度」が導入されました。この制度が導入された背景には、1990年代以降、医局人事を握る教授への賄賂や権威主義を背景にした医療事故の隠蔽などが、メディアの告発によって表沙汰となったこともあります。 また、1998年に関西医科大学で月額6万円の奨学金と、1回あたり1万円の宿直手当だけで土日も休みなく働かされていた研修医が、急性心筋梗塞で過労死するという事件が起きたことで、大学病院における若い研修医の奴隷のような働かせ方が社会問題となりました。これも、「新臨床研修制度」導入の後押しになったと言われています。 和田 もう一つは、当時、『ブラックジャックによろしく』*という漫画作品がベストセラーとなったことも影響していると思いますね。妻夫木聡さんが主演でドラマ化もされて人気を博しました。その漫画がヒットしていた頃、私は、「大学病院の今後のあり方」といったテーマのシンポジウムに登壇したことがあったのですが、同じシンポジウムに登壇していた厚生省(当時)の役人が、『ブラックジャックによろしく』を取り上げて、「今は情報化社会です。大学の名前にあぐらをかいて、何をやってもいいわけではない」という話をしたのです。ようやく厚生省が重い腰を上げたのかと驚いた記憶があります。 『ブラックジャック~』の舞台は大学病院で、主人公は研修医です。大学の医局の医者が、いかに臨床ができなくて実験ばかりに手を出しているか、たとえば教授はミミズの解剖はしたことがあるけれど、人間の解剖はしたことがなくて、助教授がいつも尻拭いをしているというようなリアルなエピソードがたくさん出てくるのです。あの作品は、一般市民に、大学の医局の実態とともに、病気を診るが人間を診ない、診られない医師がたくさんいることを知らしめたことになります』、「新臨床研修制度」により「大学病院よりも一般病院での研修をする研修医が増えた」、のは結構なことだ。
・『◆『ブラック・ジャックによろしく』(佐藤秀峰著、2002年、講談社刊。主人公は超一流私大附属病院に勤務する1年目研修医。理想とかけ離れた日本の医療の矛盾に苦悩しつつ、病院・医師ごとの技術レベルの違い、終末期医療と医療費問題、研修医のアルバイト問題、がん治療と緩和ケアなど、現在の大学病院のさまざまな問題に直面しながら、一人前の医師へと成長していく物語。連載早々大反響を巻き起こした衝撃の医療ドラマ。) 鳥集 「新臨床研修医制度」は、こうした医局講座制の悪しき慣習を一掃する形で制度設計されたと聞いています。変革の目玉は3つありました。 最大の目玉は、2年以上の臨床研修が必修化されたことです。いわゆる専門バカを生む徒弟制度を改めて、新米医師全員にまともな臨床教育を受けさせるようにしたのです。この初期研修を終えなければ、医師は事実上臨床に従事することができなくなりました。また、この期間は研修に集中してもらうため、アルバイトは原則禁止とし、研修医が生活するのに十分な給料を病院が支払うように決められたのです。 2つ目の目玉は、アメリカで行われている「スーパーローテート」という研修方式を採り入れたことです。初期研修医たちは、この方式によって2年の間に内科や外科だけでなく、救急、地域医療、小児科、産婦人科、精神科などを6ヵ月から1ヵ月単位でくまなく回ることも義務づけられました。これ以上、専門バカを量産させないようにするためです。 3つ目の目玉は、研修病院の選択に、「マッチング」という方式を採り入れたところです。医学生たちは6年になると、病院の面接や試験を受けて、研修先の希望順位を、厚労省の下にある機関〈医師臨床研修マッチング協会〉に提出することになりました。一方、病院側も採用したい学生の希望順位を協議会に提出します。それをコンピューターにかけて、順位の高いもの同士を優先して研修先を決められるようになりました。 和田 この制度によって、何が変わったかといえば、大学病院での研修よりも一般病院での研修を希望する研修医が増えたことです。医局が手薄になった大学病院が続出しています。そのため、この制度を批判する教授も少なくありません。 たとえば、岩手医科大学の学長(当時)の小川彰氏もそうです。 要するに岩手だとか山形、秋田など、過疎地と呼ばれる地域の大学にも、昨今の医学部人気によって東京の進学校からたくさん生徒が進学してきていた。彼らは、その生徒たちがいずれ自分の大学病院で働いてくれるものと思って大事に育てていた。しかし、このマッチング制によって、ほとんど東京に帰ってしまう。それで、田舎の医者不足が深刻になった。過疎地の病院を追い込むようなこの制度を廃止しろと政府に要望書を提出したのです。 鳥集 確かにこの制度が実施される前までは、医学部を卒業した後、約7割が自分の大学の医局に入局していました。しかしこれにより、半数以上の研修医が自分の大学以外の臨床研修病院に集まるようになりました。このマッチング結果は、「医師臨床研修マッチング協議会」のHPで誰でも見ることができます。 和田 だから、岩手医科大学の要望は一見、正論に見えるかもしれません。しかしちゃんと調べてみると驚くべきことがわかったのです。岩手県全体では、臨床研修が必修化された結果、臨床研修に訪れる研修医が倍近くまで増えていたのです。 岩手医大と同じ盛岡市にある岩手県立中央病院には、定員19名のところ、平成25年度の研修第一希望者は25名でした。岩手県立中央病院は臨床を一生懸命やる病院として、研修医の間でもよく知られていたからです。つまり、岩手医科大学附属病院に研修医が3人しか集まらなかったのは研修医が東京に行ってしまうことが理由ではなく、すぐ近くの県立病院に行っていたからなのです。実際、東京都の研修医はこの制度が採用されてから2割も減りました。厚労省が発表しているデータを見ればすぐにわかる嘘を言う小川氏も小川氏なら、調べもしないで小川氏の要望を擁護する大新聞の記者たちの無能ぶりもよくわかる話ですが』、「岩手医科大学附属病院に研修医が3人しか集まらなかったのは研修医が東京に行ってしまうことが理由ではなく、すぐ近くの県立病院に行っていたからなのです」、まるで笑い話だ。
・『東大医学部が「医師国家試験」の合格率55位の理由  鳥集 これは大きな地殻変動ですよね。協議会のHPを見る限り、研修医の大学病院離れはどんどん進んでいます。ただし、彼らがそのまま研修先の病院にとどまるとは限りません。2年間の初期研修を終えた後は、自分で決めた専門分野で学ぶために同じ病院や他の病院で専門的な後期研修を受ける者もいれば、大学院生として出身大学や有名大学の医局に入り直して、博士号を取るための研究を行う医師もいます。 とはいえ、徐々にではありますが、こうしてバラエティに富んだ研修医の存在が、相撲部屋然としていた医局制度のあり方に風穴を開けていくことは間違いありません。 和田 新制度の施行以来、大学の医局は慢性的な人手不足に悩まされています。今、ほとんどの大学病院で研修医は定員割れです。東大病院も定員割れですよ。 さらに東大病院においては、2019年度のデータを見ると、大学病院における自大学出身者の比率が2割程度ととても低いことがわかります。先の役人の言葉を借りれば、「この情報化時代に、大学の名前にあぐらをかいてはいけない」ということでしょう。 その一方で、たとえば、千葉の鴨川という、決して都会とは言えない立地の亀田総合病院*の倍率は、毎年2倍前後になっています。臨床をちゃんとやっている病院には、研修医はちゃんと集まるのです。いずれ患者の集まり具合も、単なるブランド志向ではなく、同じように変わっていくことでしょう。亀田総合病院の外来の待合室の賑わいを覗けば、もはやそういう流れになっていることがわかります。くだらない病院ランキングより、研修医の集まり具合を見るほうが、臨床の質がわかると思います』、「臨床をちゃんとやっている病院には、研修医はちゃんと集まるのです。いずれ患者の集まり具合も、単なるブランド志向ではなく、同じように変わっていくことでしょう」、「くだらない病院ランキングより、研修医の集まり具合を見るほうが、臨床の質がわかる」のは確かだ。
・『◆亀田総合病院 1948 年設立。千葉県鴨川市を中心に、各地に展開する亀田メディカルセンターの中核として機能する私立病院。95年より世界に先駆けて電子カルテシステムの本格運用を開始するなど、時代に先駆けた取り組みをすることで知られる。
・『東大医学部が、国家試験の合格率55位の謎  鳥集 教授の支配力が弱まったとはいえ、医局講座制による権力構造が完全に崩れるのは、まだまだ時間がかかるでしょう。しかし伝統校を出なくても、本人の努力次第で、就職差別的な医局の壁を打ち破れる可能性が出てきたのは事実です。今後、医師は「どこの大学を出たか」ではなく、臨床技術や研究者としての実力で評価される傾向がより強くなるでしょう。 それに関連することですが、私は、2019年文春オンラインに、〈なぜ日本最難関の東大医学部が、医師国家試験*で合格率「55位」なのか〉という記事を書きました。 全大学・全学部のなかで最高の英才たちが集まる東大医学部の合格率が全国平均と同じ、普通レベルになってしまうのです。順位も中の下で55位。受験が最も得意なはずの東大医学部の人たちは何をしているのだろう? どうして国試ではこんなにもふるわないのだろう? と誰もが不思議に思うでしょう。それには、いろいろな理由が考えられると思います。 まず、東大をはじめとする旧七帝大*のような伝統ある大学では、国試対策の授業やテストをほとんど行いません。旧七帝大は事実上、医学研究者や教育者、学会リーダーの育成機関としての役割を担ってきました。なので、国試を前提とした教育には力を入れてこなかったのです。 現役時代から国試予備校に通うような人も、プライドの高い旧七帝大の学生では少ないはずです。そんな予備校に通わなくても、自分の力で受かるはずだと思っているでしょうから。つまり、ほとんど自助努力で国試に挑むことになるために、一定数が落ちてしまうと考えられます。 和田 さらに言えば、旧七帝大は伝統という名のプライドからか、カリキュラム自体が旧態依然としているところがあります。偉い教授の意向を反映しがちなので、授業内容にその教授の専門分野だけというような偏りが出るのです。アメリカではかなり統一したカリキュラムがあります。日本でもコア・カリキュラム(以下コアカリ)ができましたが、アメリカのものと比べるとまだまだだと感じます』、「現役時代から国試予備校に通うような人も、プライドの高い旧七帝大の学生では少ないはずです」、納得した。
・『◆医師国家試験(医師になるためには、医師国家試験をパスし、厚生労働大臣から医師としての免許を受ける必要がある。医師国家試験に合格すると、医籍に登録されて、医師免許証が交付される。 ◆旧七帝大(旧七帝大とは、戦前、日本の国立総合大学だった北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の7校をまとめた大学群のこと。旧帝國大学、七帝大などの呼ばれ方をしている』、
・『試験問題は臨床をろくに知らない教授が作っている  鳥集 また、臓器、器官、骨、神経、血管、組織等の名前を細かく記憶しなければならない解剖学が典型ですが、医学というのは、大量暗記を求められることの多い学問です。難しい問題を工夫して自力で解くことに快感を覚えるような高偏差値の人のなかには、大量暗記を馬鹿らしく思ってしまう学生もいるのではないかと。東大生や京大生でも、国試浪人したのに再度落ちてしまう人が毎年一定数います。あげく医師になれないで終わる人がいるのです。 和田 その見方は正しいでしょうね。国家試験の合格率が高い医学部は、きちんと大学が対策をしてくれているわけです。国家試験だって、入試と同じで過去問をやらなければ合格は難しいのです。しかし、その国家試験自体に、問題があると私は思っています。 海外の医師国家試験は、ほぼ臨床をやっているドクターが問題を作っていますが、日本においては、未だに国家試験というのはそのほとんどが、臨床をろくに知らない医学部の教授が重箱の隅をつつくような試験問題を作っているわけです。本当は、がんの問題ならばがんセンターの部長とか、循環器の問題ならば循環器病センターの人が、リアルな内容の問題を作成すればいいはずです。だけど日本では、そういうことは許されていません。だから、実際に医者になったときに、役に立たない問題がたくさんありました。現在は、臨床のリアルな症例に基づいたD問題とかE問題とかが出てきて改善されつつありますが。 私が受けた当時の国家試験というのは、先述の通り、要するに過去問を愚直にやっている奴は受かるし、やっていない奴は落ちるという、ただそれだけの試験だったのです。しかし、その事実にさえ、遊び過ぎていた私は気がつかなかった。今思えば不思議なもので、人間というのは、優等生のときは優等生の発想ができるんです。灘の高3の頃は、理3は440点満点で290点を取ればいいんだという発想ができたのに、劣等生になると、そういう発想ができなくなっていた。ただただ、朝倉書店の「内科学」*を一生懸命読むとかね。医師国家試験を前にして私は、馬鹿な受験生そのものでしたから……。 ここは誤解されたくないので恥を忍んで言っておきましょう。灘高に入ったときから頭がいいという自覚もなかった私は、東大生になっても真面目に授業も出ずに、サブカル系雑誌ライターの仕事や映画の現場の使い走りなど、勉強以外に精を出していたため、気づけば、医師国家試験の不合格が確実視されていました。 東大理3は、毎年3~4人が医師国家試験に落ちています。たいていが心の病気が理由で不合格になっているのですが、私の場合は、遊びが過ぎたという情けない理由で、国家試験の模試で不合格判定されたのです。そのときに灘の同級生で一番の秀才だった伊佐正*氏が「和田、お前、このままじゃ落ちるで」と言って、勉強会に誘ってくれたのです、そこで過去問をやる意味を認識させられた。ありがたかったですね』、「難しい問題を工夫して自力で解くことに快感を覚えるような高偏差値の人のなかには、大量暗記を馬鹿らしく思ってしまう学生もいるのではないかと。東大生や京大生でも、国試浪人したのに再度落ちてしまう人が毎年一定数います。あげく医師になれないで終わる人がいるのです」、もったいない話だ。現在は受験指導もしている「和田」氏も「灘の同級生で一番の秀才だった」友人が「勉強会に誘ってくれた」ので、「国家試験」に合格したとは初めて知った。
・『◆朝倉書店の『内科学』(現在第11版を重ねる、医師国家試験問題基準の内科関連項目を網羅する参考書。 ◆伊佐正(いさ ただし。灘高卒、1985年東京大学医学部卒。医学博士。専門は運動制御の中枢機構、意識・注意の脳内メカニズム、脳・脊髄損傷からの機能回復機構など。京都大学大学院医学研究科医学専攻教授、京都大学医学研究科脳機能総合研究センター長、京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点副拠点長など歴任』、。
・『鳥集 高3のときは自ら戦術的な勉強法を生み出した和田さんが……。またもや同級生のノートで助けられたということですか。 和田 そうなんです。その勉強会に出てみると、みんなで過去問ばかりをひたすら解いているのがわかりました。特別に高度な勉強法をやっているかと思いきや、ただ、ひたすらに。そして、勉強するのは問題に出たところの周囲の知識ばかり。それを知って、私も勉強法がわかって、無事に国家試験に合格することができました。 鳥集 追い詰められるほど、周囲が見えなくなってしまうのでしょうね。しかしこれは和田さんに限ったことではなく、東大理3の入試の段階で日本一偏差値が高かったはずなのに、国試で苦労するという人も少なからずいるわけですよね。 和田 確かに理3の人間には、今さら丸暗記の勉強なんて馬鹿馬鹿しくてやってられないよ、と考える人もいるでしょう。 鳥集 もっとも、国家試験合格率の高さと優秀な医師を輩出している大学というのはイコールとは限りません。以前、ある合格率が高い私立大医学部の名誉教授がこう話してくれました。「合格率が高いのは、早々と臨床実習を切り上げて、6年生になったら国試対策ばかりをやっているからだ。でも、本当にこれが医師になるための教育? と疑問に思う。実際の臨床は座学では教えられません。医師を育てるための本来の教育が欠けているように感じる」と。 国試合格率が7割を切ると、補助金(大学院高度化推進特別経費)がカットされる恐れもありますから、特に歴史の浅い私立大学では学生に国試対策の勉強ばかりさせて、試験も国試の形式で出すそうです。そして、国試に受かりそうにない学生は卒業させず、国試を受けさせない。成績のいい学生だけに絞って国試を受けさせるので、見かけの合格率が一定以上に維持できているのです。私立大学のなかには、100人単位で「国試浪人」が溜た まっているところもあると聞きました。 和田 一方の東大は、マニアックな研究をしている教授が多いため、国試対策どころか、趣味的な講義しかしない教授も多かったのです。つまり、講義自体が国家試験に対応できていないのです。当時はコアカリがなかったので、かなり偏っていましたよ。それはそれで、先程も申し上げたように刺激的ではありましたがね。 鳥集 コアカリというのは、2001年に文科省が出した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」のことですね。それまでは、医学部によって教える内容にバラつきがありました。たとえば、国立大学では座学が中心で臨床教育を軽視しているという批判がある一方で、一部の大学では医学生にお産を手伝わせるようなこともあったといいます。 また、先の話でも出たように、歴史の浅い私大では臨床実習をほどほどにして国試対策にばかり力を入れるところも多かったのです。こうした状況を打破するため、どの大学の医学部を出ても最低限必要な知識・技能・倫理を身につけられるように医学教育の内容を標準化しようというのが目的でした。さらに、コアカリは「よき臨床医」を育てることに主眼を置いています。今までこうした取り組みがなかったのが不思議なほどです。 これにより、医学部がより「職業訓練校」と化したと批判する向きもあるようです。確かに各大学には「良医を育てる」「医学のリーダーを養成する」といった理念の違いがあります。東大医学部のHPには、このように書かれています。 〈東京大学医学部の目的は生命科学・医学・医療の分野の発展に寄与し、国際的指導者になる人材を育成することにある。すなわち、これらの分野における問題の的確な把握と解決のために創造的研究を遂行し、臨床においては、その成果に基づいた全人的医療を実践しうる能力の涵かん養ようを目指す〉 つまり、東大医学部生は、国家試験は自助努力でなんとかしなさい、東大生なら自分たちでできるでしょ? ということなのでしょう』、「特に歴史の浅い私立大学では学生に国試対策の勉強ばかりさせて、試験も国試の形式で出すそうです。そして、国試に受かりそうにない学生は卒業させず、国試を受けさせない。成績のいい学生だけに絞って国試を受けさせるので、見かけの合格率が一定以上に維持できているのです」、「臨床実習をほどほどにして国試対策にばかり力を入れるところも多かった」、確かに見かけ上の合格率だけでは判断できないようだ。
タグ:医療問題 (その28)(精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し 患者には評価できない、引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕、東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由) 東洋経済オンライン 「精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し、患者には評価できない」 「精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占める」、全く歪な姿だ 「精神科病院」はもともと閉鎖的になりやすいだけに、「公開されているのは、病院の設立区分や都道府県ごとに集計された数値にとどまる。本来、患者や家族が知りたいのは個別病院のデータのはずだが、そうした要望に応えるものにはなっていない」、やはり要開示項目を増やすべきだろう 「地業研が刊行する『東京精神病院事情2015年版』」、は数少ない情報源のようだ。 「日精協」が「声明文発表の2カ月前に毎日新聞が、50年以上入院する患者が全国に1700人以上いると報じた記事」に触れ、「まさにわれわれの危惧が現実となったものである」と批判」したのは、不都合な事実を「個人情報保護」とは本来、無関係なのに、強引にそれを大義名分に抑制しようとするものだ 困ったら病院に入れるのがゴールだと安易に思ったり、精神疾患を持つ患者が社会に出てきたら困ると思い込んだりしている私たち自身の偏見に向き合うためにも、ロクサンマル調査でわかるデータは行政や病院が抱え込むものではなく、市民にとってオープンであってほしい」、その通りだ 「病院の情報開示はもちろんのこと、患者自身がもっと声を上げていくことが必要」、同感である。 「引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕」 「人権上の問題が山積」とは見逃せない 「両親は、Aさんの就職を支援するというセンターと契約し、約700万円を支払った」、そのあげく僅か7日間で、「センター」から「精神病院」に入院させたとは、「両親」は知っているのだろうか。 「仰向けにベッドに固定され、寝返りを打つこともできないまま3日間過ごすことになった。なにより屈辱を感じたのは、トイレに行くことが許されず、おむつへの排泄を強要されたことだ」、人権侵害の極致だ。「あなたは今まで10年間教会のミサに通い続けていたよね。それは社会の一般通念からずれている。それが根拠です」と説明された」、こんなのが「発達障害の疑い」の根拠とは聞いて呆れる 「センターの運営会社は2019年末に破産」、「700万円」はその前に返還されたのだろうか。「本人や支える家族の不安や悩みは大きい。 そうした悩みにつけこんで、「半年で自立させる」などと甘言を用いて、両親など家族から高額な費用を巻き上げる引き出し屋は、決してこのセンターだけではない」、全く悪質極まりないビジネスだ。これと手を組んでいる筈の「精神病院」も問題がある 「精神科病院への新規入院件数は減少傾向にある。そのため多くの病院はできるだけ多様な入院ニーズを確保したい。この病院が直接それにあたるかは別にして、引き出し屋と結託すれば相応の患者数を定期的に受け入れられると考える精神科病院があっても不思議ではない」、医師がこんないかさまビジネスの片棒を担ぐとは世も末だ 親や船籍にとっては、厄介者払い的な色彩もあるだろうが、ここまで酷い人権侵害が起きていることまでは知らない筈だ。「引き出し屋」がまだ営業を続けているのであれば、刑事告発したり、民事で損害倍書訴訟をしていくことにより、息の根を止めるべきだろう yahooニュース 幻冬舎OLD ONLINE 「東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由」 和田秀樹・鳥集徹著『東大医学部』(ブックマン社) 「新臨床研修制度」により「大学病院よりも一般病院での研修をする研修医が増えた」、のは結構なことだ ブラック・ジャックによろしく 「岩手医科大学附属病院に研修医が3人しか集まらなかったのは研修医が東京に行ってしまうことが理由ではなく、すぐ近くの県立病院に行っていたからなのです」、まるで笑い話だ 「臨床をちゃんとやっている病院には、研修医はちゃんと集まるのです。いずれ患者の集まり具合も、単なるブランド志向ではなく、同じように変わっていくことでしょう」、「くだらない病院ランキングより、研修医の集まり具合を見るほうが、臨床の質がわかる」のは確かだ 「現役時代から国試予備校に通うような人も、プライドの高い旧七帝大の学生では少ないはずです」、納得した 「難しい問題を工夫して自力で解くことに快感を覚えるような高偏差値の人のなかには、大量暗記を馬鹿らしく思ってしまう学生もいるのではないかと。東大生や京大生でも、国試浪人したのに再度落ちてしまう人が毎年一定数います。あげく医師になれないで終わる人がいるのです」、もったいない話だ 現在は受験指導もしている「和田」氏も「灘の同級生で一番の秀才だった」友人が「勉強会に誘ってくれた」ので、「国家試験」に合格したとは初めて知った 「特に歴史の浅い私立大学では学生に国試対策の勉強ばかりさせて、試験も国試の形式で出すそうです。そして、国試に受かりそうにない学生は卒業させず、国試を受けさせない。成績のいい学生だけに絞って国試を受けさせるので、見かけの合格率が一定以上に維持できているのです」、「臨床実習をほどほどにして国試対策にばかり力を入れるところも多かった」、確かに見かけ上の合格率だけでは判断できないようだ
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

小池都知事問題(その5)(小池百合子都知事が緊急事態宣言前に放った“悪手”…東京都の感染者が減らない本当の理由、小池百合子都知事は「コロナと共にある」宣言? こんなにあった知事の“思いつき発言”(一部)、島根・丸山知事は小池女帝もバッサリ 管理監督無能と批判、首都4知事に「不協和音」生んだ小池知事の独善 軋轢の遠因となった4知事の経歴と個人的関係) [国内政治]

小池都知事問題については、昨年9月19日に取上げた。今日は、(その5)(小池百合子都知事が緊急事態宣言前に放った“悪手”…東京都の感染者が減らない本当の理由、小池百合子都知事は「コロナと共にある」宣言? こんなにあった知事の“思いつき発言”(一部)、島根・丸山知事は小池女帝もバッサリ 管理監督無能と批判、首都4知事に「不協和音」生んだ小池知事の独善 軋轢の遠因となった4知事の経歴と個人的関係)である。

先ずは、本年1月10日付け文春オンライン「小池百合子都知事が緊急事態宣言前に放った“悪手”…東京都の感染者が減らない本当の理由」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/42720
・『1月7日夜、菅義偉首相が2度目となる緊急事態宣言を発出した。小池百合子都知事はじめ1都3県の知事が2日に政府に緊急事態宣言の検討を要請したのを受けたかたちだ。飲食店などには営業時間の短縮も要請。正月明け早々、世間は自粛ムードに包まれた。 新規感染者の急拡大を前に「もうこれしかない」と歓迎する世論と、渋々、宣言を発出した菅義偉首相——一連の経過はそんな構図で捉えられたふしがある。確かに、菅氏と小池氏が意地を張り合う中で時間が浪費されてきた。だが、その端緒に、流行の中心、東京都の小池知事が放った“悪手”があったことが忘れられていないか。 改めて「調整なし」の一手で仕掛け、感染拡大に手を焼く菅官邸に打開の道をしめす「救世主」であるかのごとくふるまう小池氏自身が、足元の感染拡大をゆるした現場責任者ではないのか。 「東京都」と「全国」で第3波の感染者数の推移を見ると、波形は概ね一致する。東京都で初めて500人を超えたのは11月19日、600人超えは12月10日、1000人超えが大晦日である。対する全国では、初めて2000人を超えたのは11月18日のこと。12月12日に3000人を超え、大晦日に4000人を超えた。 一方、東京都と対照的なのは、12月上旬から減少に転じた北海道と大阪府だ。11月20日に最多の304人を記録した北海道の1月2日の感染者数は77人、11月22日に490人の過去最多を記録した大阪府も下がり切ってはいないとはいえ、258人だった』、「小池知事が放った“悪手”があった」、どういうことなのだろう。
・『「増えた」東京都と、「減った」北海道・大阪府の違い  増える東京都と減った北海道、大阪府の違いについて政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーである専門家に訊ねると、ちょうどその1週間から2週間前、クリスマスパーティーや忘年会について、住民が「取りやめる行動(行動変容)」を取ったか否かが寄与している、と分析した。 北海道や大阪府では多くの住民に「取りやめる行動」が見られ、東京都では見られなかった——と。 あたりまえだが、自粛しなかった人々を責める話ではない。たまには仲間と外で食事をしたい、クリスマスや忘年会ぐらいは楽しくやろう、と思うのは人情だし、まじめに感染対策に勤しんでも瀬戸際まで追い詰められた店主の立場なら、給与が減らない役人から言われたぐらいで応じてたまるかと憤るのがふつうの感覚だ。 だからこそ国民に語りかけて説得し、「受け入れ難いけれど、そこまでいうなら協力するか」と思ってもらうことができるか——政治家が国民の行動を変える、心に響くメッセージを放つことができたのかという文脈で語られるべき事柄なのだ』、政治家の「メッセージ」は時と場合によっては重要な役割を果たすようだ。
・『東京が「失敗」した2つの理由  なぜ東京では、人々の説得に失敗したのか——。私は2つの理由があると思う。 第1の理由は「行政はできる環境整備をやっていない」という点だ。 北海道の鈴木直道知事は11月26日、営業時間の短縮だけでなく、札幌市内の接待を伴う飲食店に2週間の休業を要請し(後にさらに2週間延長して12月25日まで)、大阪府の吉村洋文知事も飲食店などに11月27日から夜9時までの時短の徹底を求めた(継続中)。病床の逼迫を示す地元の惨状が連日報じられるのと相まって、これが一定の効果を発揮した(今月に入って再び感染者が反転、急増した大阪府は8日、京都府、兵庫県とともに国に緊急事態宣言の要請を決めた)。 一方、小池都知事はどうか。酒を出す飲食店の営業時間を夜10時までとするにとどまっていた都の時短要請について、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会から夜8時までの深掘りを求められてきたが、小池氏は「現実は厳しい」と前向きではなかった。 しかし、今回の「要請」に出るまでは、どれだけ打開の努力を払ったというのか。協力を渋る飲食店を翻意させるのに、これまでより充実した協力金が必要だというのは一理ある。だが国内の自治体で最も豊かな財源を抱える自治体は東京都だ。 都の貯金(財政調整基金)が底をつきかけたと報じられているが、コロナの影響で行われなかった公共工事の資金などで剰余が生まれ、年度末には1700億円まで回復する見通しだ。 百歩譲って、それでも足りないなら、「まだ使っていない予備費からこっちに回せ」という直談判は、緊急事態宣言を持ち出さずとも、もっと早くからできたはずだ。 汗をかかず、動かなかった小池氏がいきなり、都内全域の飲食店全てに、8時まで時短要請する方針に転じた。そもそも不人気の政策を自らの主導ではやりたくない、追い込まれて判断するぐらいなら、攻めの構図にすり替える——そんな小池氏らしいやり口が透けて見える。 第2に、「メッセージが見えなかった」ことだ。危機の重大局面でも小池氏は、政府と協調するどころか、政治的な駆け引きに持ち込んだ。その姿は、足並みの乱れとして報じられ、国民へのメッセージはあいまいになり、時には非科学的な内容でも平然と打ち出した。 その例がGoToトラベルキャンペーンをめぐる小池氏の仕掛けだ』、「東京都」は「できる環境整備をやっていない」、「危機の重大局面でも小池氏は、政府と協調するどころか、政治的な駆け引きに持ち込んだ。その姿は、足並みの乱れとして報じられ、国民へのメッセージはあいまいになり」、というのは明らかな「失敗」だ。
・『なぜGoTo全国一斉一時停止に時間を要したのか  菅首相がGoToトラベルキャンペーンの全国一斉一時停止を決めたのは12月14日のこと。分科会が、感染拡大地域について「一部地域の除外」を最初に求めた11月20日から、約1か月も経過していた。 なぜ時間を要したのか――決定から間もない昨年12月下旬、私は政府に助言している分科会の尾身茂会長へのインタビューの機会を得た。その詳細は1月9日発売の「文藝春秋」2月号に寄稿したが、時間を要した理由について尾身氏は2つの点を挙げた。 1つは、菅首相の経済の打撃に対する強い思いが込められた政策を止める判断を深く考え抜くのに時間を要したこと。もう1つは、大規模流行の中心地である東京都は真っ先に「除外」の対象となるべきなのに、国と都が「両すくみ」に陥って議論が進まなかったことだった。 分科会の提言を受け菅首相が「まずは知事に判断していただく」と述べると、大阪府や北海道は即座に停止に応じた。これに対して東京都の小池知事は「国が判断すべき」と繰り返し、政府に決めさせる構図にこだわった。 小池知事と菅首相のトップ会談となったのは12月1日。当日の決定を、尾身氏はこう振り返った。 「2人の会談の直後に『65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人に利用自粛を呼びかける』という合意がなされたと聞いた時は、『え?』と言葉を失いました。私たちの具申をわかってくれていなかったのか、と強い違和感があったのです」 分科会で明らかにされた解析によれば、国内2万5000もの感染例のうち、旅行を含めた移動歴のある人が2次感染を起こす頻度は25.2%、これに対して移動歴のない人は21.8%で、移動歴のある人の方が4ポイント近くも高く、また、移動に伴って感染を広げているのは、90%が10代から50代の人、つまり若い人の移動が感染を拡大する要因になっている。 つまり、さして移動もせず2次感染を起こしてもいない高齢者を止めるのは、原因と結果を取り違えた選択だったというのだ』、「大規模流行の中心地である東京都は真っ先に「除外」の対象となるべきなのに、国と都が「両すくみ」に陥って議論が進まなかった」、つまらぬメンツ争いで「GoTo全国一斉一時停止に時間を要した」、困ったことだ。
・『菅首相も小池知事もメッセージが見えてこない  では、なぜ、専門家が首を傾げるような非科学的な案に落ち着いたのか。合意翌日の新聞は「都が高齢者や基礎疾患のある人の『一時停止』か『自粛』を提案し、国が一時停止案を退けた」という趣旨の裏事情を書いた。 少し想像すればわかることだが、申請を受けた旅行代理店が、旅行者に持病があるかどうかをチェックするのは簡単ではない。その二択を差し出したのだとすれば、政府にとって「自粛」一択になることを見越した“仕掛け”だったとしか考えられない。 官邸側も甘い見通しに基づいていた。「第2波ではGoToを運用しながらでも感染者を減らすことができた、という“成功体験”の再現を期待しているようだった」と証言する分科会の専門家もいる。 都を含めたGoTo一時停止の判断に至るのに、さらに2週間を要した。トンチンカンな選択で時間を浪費した責任について、菅首相も小池氏もその後、一言も触れていない。しわ寄せを食ったのは、まじめに感染対策に協力してきた多くの国民だった。 これまでに亡くなった国内のコロナ感染者は3572人(1月2日現在)。小池・菅合意が行われた12月1日までの1週間の平均では1日あたりの死亡は25人。ところが、1か月経った現在、そのペースは48人と2倍の速さになっている。 繰り返すが、「緊急事態宣言」を出せば感染が抑制される、というほどことは単純ではない。できるだけ多くの国民が痛みを伴う行動を受け入れるかどうか。そのためのメッセージを、政府トップの菅首相と現場トップの小池知事が連携して打ち出すことができるのかどうか。メッセージを無に帰するような政局劇を再現した時、「受け入れ難いけれど協力する」と納得する国民が増えるはずはない。 自らの「失点隠し」のためなら国民の健康や生活でさえ演出の「舞台装置」に平然と利用する。そんなやり方に、騙されてはいけない』、「都を含めたGoTo一時停止の判断に至るのに、さらに2週間を要した。トンチンカンな選択で時間を浪費した責任について、菅首相も小池氏もその後、一言も触れていない。しわ寄せを食ったのは、まじめに感染対策に協力してきた多くの国民だった」、一般のマスコミも「菅政権」や「小池知事」を忖度して、両氏への批判を抑えているのも嘆かわしい限りだ。

次に、1月22日付け文春オンライン「小池百合子都知事は「コロナと共にある」宣言? こんなにあった知事の“思いつき発言”」のごく一部を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/42968
・『コロナ対策の陣頭に立つはずの東京都知事の小池百合子さん、大阪府知事の吉村洋文さんは、なぜおかしな発言ばかりが目立つのでしょうか。引き続き、この1年間にクソ会見を乱発した知事の姿を振り返っていきたいと思います。(全2回の2回め/前編を読む) (9)2020年5月29日 都知事・小池さん、「ウィズコロナ宣言」とか言い出す(東京都・小池知事が「ウィズ コロナ宣言」 映画館・スポーツジムなどの休止要請は6月1日から緩和へ(Yahooニュース)https://news.yahoo.co.jp/articles/bb6683194d136f8f62432b2c0b65a58a8df7d24d  緊急事態宣言が終わろうかというタイミングで、今度は小池さん「ウィズコロナ宣言」とかいう新たな標語をぶっ放します。普通に直訳すれば「コロナと共にある」という意味であって、女帝なにいい始めてんだよ。 コロナ根絶よりもコロナ共存という意味にも取れる不思議な宣言であるため、東京都民の頭の上に数々の「?」が乱舞したのは言うまでもありません。海外から東京に来ておられる方々からは「東京のガバナーはコロナ敗北宣言を出したそうだが本当か」と連絡が相次ぎました。 思いつきで適当な標語をぶちかますのはやめましょう』、確かに「ウィズコロナ宣言」には私も頭を傾げた。
・『(10)2020年6月2日 都知事・小池さん、東京に感染者が34人出たので「東京アラート」を発動する(「東京アラート」発動 都、新たに34人の感染確認(日本経済新聞)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59875410S0A600C2000000  7月5日に東京都知事選の投開票日を控える小池百合子さん、東京でコロナ感染者が34人となったため「東京アラート」を発動。東京都庁がまるで炎上したかのような赤いライトアップで彩られてしまい、むしろ観光名所となって密を回避させるはずが観光名所として人がごった返すという不始末をやらかします。 1月7日の東京都の感染者数は2,447人(発表ベース)になってしまいましたが、都知事選後にこの「東京アラート」は一度も発動していないんですよね。小池さん、このパフォーマンスに飽きちゃったんでしょうか。 思いつきで東京都庁を赤く染めるのはやめましょう。(以下は省略)』、いくら元テレビ・キャスターとはいえ、新しい横文字言葉で人を惑わすのもほどほどにzしてほしいものだ。

第三に、2月19日付け日刊ゲンダイ「島根・丸山知事は小池女帝もバッサリ 管理監督無能と批判」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/285449
・『「東京都でオリンピックを開いてもらっては困る。資格がない」――。17日、県内の聖火リレー中止を検討すると表明した島根県の丸山達也知事(50)。実は10日の定例会見でも五輪開催にキッパリ反対していた。 主な理由は、都が新型コロナ感染経路を追跡する「積極的疫学調査」を縮小したこと。今月3日、厚労省に全国的な縮小状況の調査と情報提供を求めてもゼロ回答。さらに、都が先月22日に縮小を通知する前から都内保健所が事実上、調査できない状況だったと知り、不信感を募らせた。 怒りの矛先は小池都知事の「管理監督能力のなさ」に向かう。特に問題視したのは、緊急事態宣言下の千代田区長選(1月24日告示、31日投開票)で“愛弟子”候補の応援にフル回転したこと。会見では舌鋒鋭く、小池知事をこう批判した。 「お仲間の当選のためにこういう行動をされていることも信じがたい。これが大きな問題になっていないことも二重に信じがたい」 「(当選後)リモートで万歳されていましたよ。(自宅・宿泊施設で待機中に)10人近い方が亡くなっている中で法律上許されるとしても、政治的に許されるのか」 「トップが自分の仲間を増やすことを優先されている。都議選は6月(25日告示、7月4日投開票)でしょう。同じことをされるのですか」 「感染が(再び)拡大した時に同じことを繰り返さないのか。オリンピックの時に感染が拡大しない保証は誰にもない」 「(感染防止の)基本は都民、住民への呼びかけ。都知事のようななされようだと『自分が好き勝手やっといて』と聞いてくれないと思います」』、「都が新型コロナ感染経路を追跡する「積極的疫学調査」を縮小した」、初めて知った。「千代田区長選で“愛弟子”候補の応援にフル回転」、これでは都民に自粛を呼び掛けても訴える力は出てこない。
・『主要メディアはヒタ隠し  ところが、この猛批判を主要メディアは一言も伝えない。 丸山知事は「都に対する社会的チェックが全く利いていないことをメディアは反省すべき」 「私がこんなことをやったら袋だたき。大きなイベント(=五輪)の主要主催者だから、(メディアに)許されているとしか思えません」とも語っていた。 “女帝”批判をヒタ隠すメディアは、御説ごもっともの腑抜けぶりだ』、全く同感である。

第四に、3月12日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「首都4知事に「不協和音」生んだ小池知事の独善 軋轢の遠因となった4知事の経歴と個人的関係」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/416430
・『コロナ禍での緊急事態宣言への対応をめぐり、小池百合子都知事を中心とする首都圏4知事の間の不協和音が表面化している。 「ワンチーム」と「ワンボイス」を旗印に、政府のコロナ対応への影響力を誇示してきた4知事の仲間割れに、菅義偉首相らの反応も複雑だ。 政界では「首都の女帝とよばれる小池氏の独善的行動に対する他3知事の不信感が原因」(自民幹部)との見方が支配的だ。その背景には宿敵とされる菅首相と小池氏の主導権争いがあるとみられており、感染リバウンドに怯える国民の不安も拡大させている』、「4知事の仲間割れ」をもたらした「小池氏の独善的行動」も困ったものだ。
・『黒岩知事が暴露した小池知事とのやりとり  騒ぎの発端は3月7日の神奈川県の黒岩祐治知事の発言だった。同日午前の民放報道番組に出演した黒岩氏は、緊急事態宣言再延長をめぐる小池氏とのやり取りの詳細を暴露した。 黒岩氏によると、3月1日に小池氏から「延長せざるをえない」との電話があったが、黒岩氏は「もうちょっと数字が見たい」と態度を留保した。しかし、2日に小池氏が「2週間の延長要請」を記載した文書を示して「他の知事も賛成している」と通告。千葉県の森田健作、埼玉県の大野元裕両知事に個別に電話確認したところ、「黒岩さんが賛成だからと言われて賛成した」と答えたという。 黒岩氏が3日の4知事オンライン会議で、「こういうことをやられると信頼関係が薄れる。こういうのはダメだ。おかしい」と直接抗議すると、小池氏は「ちょっと先走って、ごめんなさい」と謝罪したという。 小池氏は3日のオンライン会議後、「国としっかり連携し、1都3県で連携しながら進めていきたい」と4知事の結束を力説。8日には「私は森田知事には直接連絡はしていない」と指摘したうえで、「準備段階の中でいろいろあり、事務方も含めてやり取りをしていた。そういう中で信義則は守っていきたいと思う」などと述べ、黒岩氏を暗に批判した。 一方、埼玉県の大野氏は、2日に黒岩氏から問い合わせがあったことを認め、「『(宣言延長の要請について政府に)お話しするという話は知りません』などと答えた」と説明。小池氏が強引に、1都3県知事による2週間延長要請を決めようとしたことが浮き彫りとなった。政界では「まるで出来の悪いコントだ」(自民幹部)などと揶揄されている。 そうした中、菅首相は小池氏に先手を打つ形で、3日夜に2週間程度の緊急事態宣言の延長を明言し、そのまま5日に2週間延長を正式決定した。官邸サイドは「菅首相が小池氏の動きを事前に察知し、黒岩氏が再延長に慎重なら対応は決まらないと判断して素早く動いた結果だ」(政府高官)と明かした。 菅首相には1月7日の緊急事態宣言の再発令が、小池氏ら4知事の要請に屈した格好となって後手批判を拡大させたというトラウマがある。今回の宣言再延長でも、「菅首相は最後まで慎重」(側近)とされたが、首都圏4知事が小池氏主導での宣言再延長を要請すれば、「1月と同じ構図になるとの焦りから、急きょ方針転換した」(同)とみられている』、「緊急事態宣言再延長」での「小池氏の工作は本当に腹黒いやり方で驚かされた。
・『注目された4知事の個人的関係  2020年末以来の小池氏の対応について、政府諮問委員会の尾身茂会長は5日、「政府と自治体が一体となったメッセージが重要」などと提言した。永田町では「駆け引きを優先する小池氏への批判」(官邸筋)というのが大方の受け止めだ。 そこで注目されたのが、4知事の個人的関係と政治家としての経歴だ。小池、黒岩両氏は民放テレビ番組のキャスター出身で、ともに1988年にキャスターとしてデビューした。小池氏は女性キャスターの草分けだが、黒岩氏も若くして民放テレビの報道記者からキャスターに転身して注目された。 また、森田氏は歌手、俳優に司会もこなすマルチタレントとして、1992年の参院選東京選挙区に無所属で出馬して初当選。日本新党比例代表で参院議員に当選した小池氏とは当選同期で、どちらもタレント議員としての政界入りだ。その後、森田氏は旧民社党を経て自民党に入り、時期は違うが、小池氏も衆院に転身後、保守新党などを経て自民党入りした。 一方、外交官出身の大野氏は、2010年参院選埼玉選挙区で旧民主党公認として初当選。民主党政権崩壊後は中東外交専門家としてテレビのコメンテーターとして活動し、当選2期目の2019年夏に埼玉県知事選に出馬、自民候補を僅差で破って当選した。 元官僚の大野氏以外は、テレビ出演などでの知名度を利用して政界入りした点で共通する。もともと1都3県の知事選は「巨大な無党派層の支持を得るためのタレント性がカギ」(選挙アナリスト)とされ、小池、黒岩、森田3氏は「知事としては同類」(同)ともみられている。 ただ、47都道府県知事の構成をみると、官僚出身が目立つ。地方自治も含め行政の実務経験を有権者が評価していることが背景にある。今回、緊急事態宣言の対象となった10都府県をみても、首都圏以外の6知事のうち5人が官僚出身だ。このため、「首都圏知事は4人中3人がタレント出身なので、対応もパフォーマンス優先になる」(政府筋)との指摘もある。 一方、4知事と菅首相の個人的関係はバラバラだ。5年前の都知事選以来、「菅、小池両氏の敵対関係は隠しようがない」(自民幹部)が、黒岩、森田両氏は菅首相との関係の深さが目立つ。特に黒岩氏は、菅首相の選挙区が神奈川2区のため「神奈川連合として、常時連絡を取り合う親密な関係」(神奈川県幹部)とされる。 残る大野氏は、参院選、知事選でいずれも自民党候補と対決して来た経緯もあり、菅首相とは一定の距離がある。このため、菅首相をめぐる4知事の立場は「『小池・大野VS黒岩・森田』の構図」(政府筋)とされ、「それが今回の宣言延長をめぐる不協和音につながった」(同)との見方にもつながる。 ただ、今回の4知事の不協和音騒ぎは「国民にとってどうでもいい話」(閣僚経験者)でもある。政府与党内からは「小池氏のやり方も悪いが、わざわざ舞台裏を暴露した黒岩氏も大人げない」(公明幹部)との声が噴き出す』、「黒岩氏も大人げない」との批判はいかにも「公明党」らしい。
・『感染再拡大なら菅首相の政治責任  さらに、森田、大野両氏についても「自分の意見はないのか」(同)との批判が相次ぐ。「(4知事の不協和音は)出来の悪いコントをみるようで、菅首相はもとより、関係者全員にとってマイナスばかり」(首相経験者)との指摘も出る。 再延長された緊急事態宣言の期限は21日。ここにきて1都3県の新規感染者数は下げ止まりが目立つ。諮問委員会の尾身会長も「状況次第で再々延長もありうる」と国会答弁するなど危機感を隠さない。 苛立つ菅首相は「ずるずると再々延長するわけにはいかない」と周辺に漏らしているとされるが、「期限どおり解除して、数週間後に感染再拡大となれば、今度こそ政治責任を問われる」(自民長老)のは避けられない。 小池氏も「次は簡単に再々延長要請などできない」(自民幹部)とみられている。政府部内では「そもそも、小池氏が感染拡大防止策を徹底しきれなかったのが感染下げ止まりの原因」(政府諮問委メンバー)との批判が渦巻いているからだ。 しかも、21日には森田氏の後任となる千葉県新知事が選出される。政府は17日か18日の対策本部で4都県の宣言解除か再々延長かを決定する予定だが、菅首相が解除のカギと位置づける「病床の逼迫度」が一番高いのは千葉県で、知事交代の影響も考慮せざるをえない。 東京での桜の開花宣言の予想は14日か15日。「21日に宣言解除となれば、満開の桜のお花見や卒業式などの年度末行事で、首都圏の人出は倍増必至」(都幹部)。国民の間でも宣言解除による感染再拡大への不安は募る。 それだけに、「今度こそ、政府と4都県が本当のワンチームとなって対応を決めるしかない」(自民長老)。共に今夏の東京五輪開催を目指す菅首相と小池氏にとって、今後の1週間は「主導権争いどころか、トップリーダーとしての器が試される局面が続く」(同)ことになる』、今夕のテレビ報道によれば、「菅首相」は「緊急事態宣言」を「期限」通り「解除」する方針を固め、明日、専門家の意見を聞いた上で、最終決定するようだ。東京都の新規感染数は409人と増勢にあるが、増勢が続くようであれば、「菅首相」の立場は苦しくなるだろう。その場合、「解除」について姿勢を明らかにしてない「小池知事」は、「菅首相」批判の先陣を切ることだろう。
タグ:感染再拡大なら菅首相の政治責任 「黒岩氏も大人げない」との批判はいかにも「公明党」らしい。 「都が新型コロナ感染経路を追跡する「積極的疫学調査」を縮小した」、初めて知った。 小池都知事問題 「小池百合子都知事は「コロナと共にある」宣言? こんなにあった知事の“思いつき発言”」 なぜGoTo全国一斉一時停止に時間を要したのか “女帝”批判をヒタ隠すメディアは、御説ごもっともの腑抜けぶりだ』、全く同感である 日刊ゲンダイ 「増えた」東京都と、「減った」北海道・大阪府の違い 「小池百合子都知事が緊急事態宣言前に放った“悪手”…東京都の感染者が減らない本当の理由」 「東京アラート」を発動 「小池知事が放った“悪手”があった」 (その5)(小池百合子都知事が緊急事態宣言前に放った“悪手”…東京都の感染者が減らない本当の理由、小池百合子都知事は「コロナと共にある」宣言? こんなにあった知事の“思いつき発言”(一部)、島根・丸山知事は小池女帝もバッサリ 管理監督無能と批判、首都4知事に「不協和音」生んだ小池知事の独善 軋轢の遠因となった4知事の経歴と個人的関係) 文春オンライン 政治家の「メッセージ」は時と場合によっては重要な役割を果たすようだ 「緊急事態宣言再延長」での「小池氏の工作は本当に腹黒いやり方で驚かされた。 東京が「失敗」した2つの理由 思いつきで適当な標語をぶちかますのはやめましょう 「島根・丸山知事は小池女帝もバッサリ 管理監督無能と批判」 「千代田区長選で“愛弟子”候補の応援にフル回転」、これでは都民に自粛を呼び掛けても訴える力は出てこない 「ウィズコロナ宣言」 菅首相も小池知事もメッセージが見えてこない 「首都4知事に「不協和音」生んだ小池知事の独善 軋轢の遠因となった4知事の経歴と個人的関係」 「4知事の仲間割れ」をもたらした「小池氏の独善的行動」も困ったものだ。 泉 宏 東洋経済オンライン いくら元テレビ・キャスターとはいえ、新しい横文字言葉で人を惑わすのもほどほどにzしてほしいものだ 「大規模流行の中心地である東京都は真っ先に「除外」の対象となるべきなのに、国と都が「両すくみ」に陥って議論が進まなかった」、つまらぬメンツ争いで「GoTo全国一斉一時停止に時間を要した」、困ったことだ。 「都を含めたGoTo一時停止の判断に至るのに、さらに2週間を要した。トンチンカンな選択で時間を浪費した責任について、菅首相も小池氏もその後、一言も触れていない。しわ寄せを食ったのは、まじめに感染対策に協力してきた多くの国民だった」、一般のマスコミも「菅政権」や「小池知事」を忖度して、両氏への批判を抑えているのも嘆かわしい限りだ 「東京都」は「できる環境整備をやっていない」、「危機の重大局面でも小池氏は、政府と協調するどころか、政治的な駆け引きに持ち込んだ。その姿は、足並みの乱れとして報じられ、国民へのメッセージはあいまいになり」、というのは明らかな「失敗」だ 黒岩知事が暴露した小池知事とのやりとり 主要メディアはヒタ隠し 今夕のテレビ報道によれば、「菅首相」は「緊急事態宣言」を「期限」通り「解除」する方針を固め、明日、専門家の意見を聞いた上で、最終決定するようだ。 東京都の新規感染数は409人と増勢にあるが、増勢が続くようであれば、「菅首相」の立場は苦しくなるだろう。その場合、「解除」について姿勢を明らかにしてない「小池知事」は、「菅首相」批判の先陣を切ることだろう
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

監査法人・公認会計士(その1)(大手監査法人PWCを巡る3つの大問題:泥沼パワハラ、顧客情報を故意に漏洩、PwC全体に膨張する危険な法的リスク)) [コンプライアンス]

今日は、監査法人・公認会計士(その1)(大手監査法人PWCを巡る3つの大問題:泥沼パワハラ、顧客情報を故意に漏洩、PwC全体に膨張する危険な法的リスク))を取上げよう。

先ずは、昨年6月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの山口 義正氏とチーム「ストイカ」による「泥沼パワハラ」にフタをする大手監査法人と大手法律事務所の暗い結託 「パワハラ防止法」は施行されたが…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/36599
・『コンプライアンスの守護神であるはずの大手監査法人  6月1日、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)が施行された。だが、企業のコンプライアンス(法律遵守)の守護神であるはずの大手監査法人の足元でパワハラの泥沼トラブルが起き、大手法律事務所とタッグを組んで、当事者の女子社員に対し6月8日に解雇を通知した。灯台下暗し——口と腹が真逆を向いていることがバレてしまっては、この先、彼らはどんな顔をしてクライアントと向き合うのだろうか。 経営幹部の不正を指摘した女性社員との間で泥沼の争いを演じているのは、会計監査や経営コンサルティング大手のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)グループである。PwCが英国を拠点として企業経営や監査といった分野で世界的な会計事務所であることは改めて説明する必要はないだろう。 日本では監査部門ではPwCあらたやPwC京都といった監査法人を傘下に従え、M&Aや法令順守、危機対応などのコンサルティング企業も抱えている。他の監査法人がそうであるように、企業に対してESG(環境・社会・ガバナンスといった社会的責任)投資やSDGs(持続可能な開発目標)、D&I(組織の多様性促進)の助言も行っている』、「PwC」は世界4大会計事務所の一角で、他には、ピート・マーウィック(KPMG)、デロイト・トーウシュ・トーマス(DTT)、アーンスト・アンド・ヤング(EY)がある。
・『米国へ出張した際の旅費精算に、部下が疑いを持った  問題はPwCグループの人事・総務・経理といったバックオフィス部門を統括するPwC Japan合同会社で起きた。PwCコンサルティング合同会社のパートナーである堤裕次郎常務執行役らが2019年1月に米国へ出張した際の旅費精算に、部下が疑いを持ったことだった。 堤氏らは米金融機関が企業や投資家向けにサンフランシスコで開いたミーティングに参加したことになっていたが、このミーティングに参加資格がなく、実際に参加もしていなかったことが発覚。週末バカンスを米国で楽しむための「出張旅行」だった疑いが持ち上がった。 これを指摘した女性社員のAさんに対して、堤氏は「会社が週末の経費を負担するかどうかは、どうでもいいことだ」と怒り、出張報告書の提出さえ拒んだ。PwCでのAさんに対する嫌がらせはここから始まった。人事評価の取りまとめ役として新しくAさんの上司となった永妻恭彦ディレクターは、Aさんが人事部から催促されていた業績目標設定に応じようとせず、昨年3月にAさんはPwCから退職勧奨を受けてしまう』、海外へのカラ出張とは、よくそんなバレることを仕組んだものだ。「出張報告書の提出さえ拒んだ」、さすがにバレたので、私費にしたのだろう。
・『労働審判ではAさんの訴えが認められ、PwCは“敗訴”  裁判資料によると、PwCが挙げた退職勧奨の理由は、①AさんがPwCの企業文化に合わない、②過去の上司と相性が悪かった、③(インフルエンザで学級閉鎖となったため、やむを得ず)当時小学生だった子どもを社内に連れてきた、④PwCのパートナーでもないのに、イベントに顧客を招待した――といった曖昧だったり、事実と食い違ったりする内容ばかりだった。早い話が、PwC側は合理的な説明ができていない。 事は労働審判に持ち込まれた。その審判の場で、永妻氏が「Aさんが堤氏らの不正な旅費請求を指摘したことで堤氏の反感を買い、堤氏がAさんとの仕事を望まなくなった」と証言したのだ。正直というか、支離滅裂というか、先の退職勧奨理由を事実上、否定したことになる。出張旅費の不正な請求が、Aさんに対する嫌がらせの理由であることがこれではっきりしたと言っていい。 PwCはAさんに対して“兵糧攻め”に出た。永妻氏は、理由を示さないままAさんの業績を5段階の最低レベルと評価。昨年7月にマネジャーとしての最高位から一気に3段階降格という処分を打ち出し、これに伴って年棒も大幅に引き下げた。前後の脈絡から考えて、パワハラととられてもおかしくない処遇である』、こんなミエミエの処分を恥ずかしげもなくするのには驚かされた。
・『英紙FTも「四大監査法人の隠れた不祥事」の一例として報道  労働審判は昨年12月にAさんの訴えが認められ、PwCは“敗訴”した。ところが、PwCは審判結果に不服を申し立て、争いの場は東京地裁での民事裁判に移った。Aさんは原告として今年2月に訴えを起こし、労働審判と同じく地位の確認や本来受け取るはずだった給与や賞与の支払い、私物の返却を求めることにした。 6月1日のパワハラ防止法施行など、PwCはどこ吹く風で、同8日にAさんに対して解雇通知を突きつけ、「排除の論理」を貫こうとしている。この件は昨年11月20日付の英経済紙フィナンシャル・タイムズでも、「四大監査法人の隠れた不祥事」の事例のひとつとして報じられた(タイトルはBetrayed by the big four : whistleblowers speak out)。 PwCの元幹部は筆者の取材に対し、こう言って眉をひそめる。 「近年PwCではグローバル・チェアマンのボブ・モリッツ氏や木村浩一郎 PwC Japan代表執行役のもとでESG、SDGsやD&Iなど、理念としては美しいメッセージをメディアに向けて活発に発信しているが、対外的なメッセージと実態の乖離かいりが大きくなりすぎ、PwC社内では困惑の声が多く聞かれる。これでは監査法人としてガバナンス、内部統制や法令順守などの問題を、クライアントに対してけん制することが難しくなってしまう」 経営幹部の不正をただすこともせずに、公益通報者の口を封じ、パワハラまがいの降格や解雇に出たのだから、そうした懸念も当然だろう』、FTが「「四大監査法人の隠れた不祥事」の一例として報道」、したのは、「PwC」にとっては誤算だった筈だ。
・『弁護士たちは「中立的な立場で調査している」と説明したが…  苦笑せずにいられないのは、PwCはHP上に「社会と環境に及ぼす影響を配慮し、“Do the right thing”(正しいことをする)の組織文化に基づき、倫理観や誠実さをもってビジネスを遂行します」と高らかにうたい、その行動規範には「(正しくないと感じる状況に遭遇した場合は)声を上げましょう」とも書かれていることだ。社内でやっていることと、顧客に助言している内容とが正反対であろう。 日本で企業統治が機能不全を起こしたままなかなか改善せず、内部統制も形だけのお題目に過ぎないのは、その一因として会計事務所のこうした体たらくが横たわっているからであろう。彼らが企業統治やESG、SDGs、D&Iについて顧客企業に助言したところで、空々しいだけで説得力を持つまい。 さらに問題を根深くしているのは、森・濱田松本法律事務所と高谷知佐子、吉田瑞穂、武田彩香、松本亮孝弁護士らの存在だ。武田・松本の両弁護士は当初、Aさんに対して「PwC Japan合同会社から独立し、中立的な立場で調査している」と説明し、個人情報を引き出しておきながら、Aさんが労働審判を申し立てるとPwCの代理人に転じてAさんを攻撃し始めた。 しかも通報内容についての調査報告書をAさんには開示せず、高谷・吉田両弁護士も労働審判ではPwC側に回って答弁書を提出。不信の念を募らせたAさんは3月に第二東京弁護士会に対して弁護士4人と森・濱田松本について懲戒請求書を提出し、受理された』、「当初、Aさんに対して「PwC Japan合同会社から独立し、中立的な立場で調査している」と説明し、個人情報を引き出しておきながら、Aさんが労働審判を申し立てるとPwCの代理人に転じてAさんを攻撃し始めた」、開いた口が塞がらない。「第二東京弁護士会」は「懲戒」処分を下すべきだ。
・『5月にはAさんが金融庁に「公益通報」を提出  PwCの木村代表執行役についても日本公認会計士協会が懲戒請求書を受理しており、5月にはAさんが自身に対するPwCの業績評価には問題が多いとして、金融庁に公益通報を提出している。大手会計事務所と大手法律事務所が結託して問題にふたをするという構図にメスが入る可能性が高まってきたのだ。 筆者の取材に対してPwCは「係争中のため、現時点では詳細なコメントは控えますが、本人(筆者注:Aさんを指す)の主張は著しく事実と隔たりがあり、かつ降格や解雇事由とは無関係ですので、弊社としても困惑しております。裁判において事実関係と当方の主張を明らかにしていきます」と説明する。 会計監査に加えて、コンサルタント業務を手掛けるPwCグループにとって、この件は業務の根幹や信頼を揺るがす失点になりかねない。加担する森・濱田の「パワハラ」ビジネスも含めて、今後さらに詳細を暴露していこう。資料は山とある』、「今後さらに詳細を暴露」することに大いに期待したい。

次に、10月28日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの山口 義正氏とチーム「ストイカ」による「顧客情報を故意に漏洩」4京円市場に食いつくPwCジャパンの暗部 LIBOR関連の情報を邦銀らに漏洩か」を紹介しよう』、
https://president.jp/articles/-/39815
・『PwCが抱えるパワハラよりもはるかに大きく深刻な問題  壊さなければ止まらないものなら、思い切って壊してやろう……とも考えていたが、PwCジャパンはすでにその必要がないほどぶっ壊れていた。 大手会計事務所プライス・ウォーターハウス・クーパース(PwC)の日本法人に深刻なパワハラがあることを伝える「【続報】『泥沼パワハラ』に怒るPwC社員たちから来た内部通報の嵐」をプレジデントオンラインに掲載したのは3カ月前だった。その後も内部通報の嵐はやまず、最近はむしろエスカレートしている。 詳細はここでは触れないが、ひとつ書くとすれば、パワハラに悩まされた現役社員やOB・OGは、PwCを相手取った集団訴訟の準備を進めている。PwCジャパンは知らないだろうが、パワハラ問題に正面から向き合おうとしない木村浩一郎代表に対する反旗が公然と翻ろうとしているのだ。組織が内側から崩壊するときはこんなものかもしれない。 それはここでいったんおくとしよう。実はこの3カ月間、PwCが抱える別の問題――パワハラよりもはるかに大きく、深刻な問題――について慎重に取材を進めてきた。筆者とチームストイカは、PwCジャパンを丸裸にする用意がある』、「内部通報の嵐はやまず、最近はむしろエスカレートしている」、内実は酷いのだろう。
・『海外金融機関の内部情報が国内大手に提供されていた  「これは大問題になるのではないか」――。 金融関係者や公認会計士らは、この話を聞いて一様に驚く。なにしろ世界でも指折りの大手会計事務所が一種の産業スパイとしてそのお先棒を担いでいたのだから。 問題の概要はこうだ。PwCジャパンのコンサルタント部門であるPwCコンサルティングが顧客金融機関の内部情報を他の金融機関に漏洩していた。筆者とチームストイカの取材によると、情報の漏洩には複数の経営幹部が関わっているうえ、海外の有力金融機関の内部情報が国内の大手金融機関に提供されていたことから、組織的でグローバルな不正である可能性が高い。 事態を重くみた金融庁と日本公認会計士協会はこの問題の調査をすでに始めている』、「コンサルティング」部門は、「監査部門」と利益相反関係にあるので、疑われても当然だ。
・『2021年末に事実上廃止となる「LIBOR」に関する内部情報  漏洩していたのは、顧客金融機関のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に関する内部情報である。LIBORは金融取引で国際的な指標として用いられる金利で、米ドルとユーロ、英ポンド、スイスフラン、日本円の5通貨を対象としている。世界的に業務展開している日米欧の大手銀行20行が日々、自行が無担保で調達できる金利を呈示して決められる。 LIBORを用いる金融取引は370兆ドル(4京円)という途方もない規模で、世界最大の米国債市場が17兆ドルであるのと比較すると、その巨大さがわかる。まさに国際金融のインフラなのだ。 しかし2008年のリーマン・ショック以降、金融機関ごとの信用力に格差が生じていたにもかかわらず、銀行が金利を低く操作していた疑いが浮上。2012年にはスイスの連邦競争委員会が捜査を始め、不正が明るみに出た。 これを境にLIBORの指標性が低下してしまい、英国の金融行動監視機構が銀行に対して2021年末以降はレートの呈示を求めない方針を示したことから、来年末に事実上廃止となる』、ただ、最新情報ではボリューが大きいドル建ての廃止は延期されるようだ。
・『「LIBOR廃止後の指標金利をどうするか」の情報が流出  問題はその後だ。4京円もの取引の根幹となる指標がなくなることで、次の指標を決めなければならないし、新しい金融商品の開発も進めなければならない。LIBORを参照する取り決めになっている既存の金融契約もあらためなければならないほか、会計上あるいは、税務上の対応も必要になる。金融機関はどこも取り組みが遅れており、他の銀行や証券会社がどう対応するのか、出方を探り出したいところだ。 PwCコンサルティングが漏らしたのは、これらに関する顧客の内部情報だった。海外の銀行がLIBOR廃止後の指標金利をどれにしようとしているか、あるいは新指標を用いた新しい金融商品の中身はどうなっているか。これらは、国内銀行にとって重大な関心事であり、こうした情報が不正に提供された。筆者が入手したPwCの資料では契約のひな形になる適格金融契約をどうするかについて、個別の金融機関の取り組み状況が記されており、こうした情報も漏れた。 米投資銀行モルガン・スタンレーの内部情報が三菱UFJ銀行に漏洩しているほか、米シティバンクの情報はみずほ銀行や農林中央金庫、あおぞら銀行に渡った。LIBOR関連以外でも、海外投資銀行の内部情報が国内証券会社に流れたもようだ』、全銀協もLIBOR廃止について。以下のような特設ページで解説している。
https://www.zenginkyo.or.jp/libor/#c39796
・『「追加料金を請求できるような付加価値が必要だった」  PwCではLIBOR廃止後をにらんだコンサル営業を「LIBORプロジェクト」と呼び、顧客情報をグローバルに共有しようと毎週会議を開いている。日本ではPwCコンサルティングだけでなく、PwCあらた監査法人の会計士も交えて情報を共有している(ただし、この情報漏洩にはPwCあらたは関与しておらず、PwCコンサルティングが単独で漏洩していたという)。 情報漏洩には金融サービス事業部を担当するパートナーと呼ばれる経営幹部らが関わっていた。日本法人のパートナーや日本に赴任している米国法人のパートナーのほか、米国公認会計士資格を持つマネジャー職の男性社員も関わっている。「米国人パートナーは情報の管理に慎重だった」(関係者)との指摘もあるが、海外金融機関の情報についてはこの人物が中継局のような役割になっており、日本人スタッフが情報を引き出して顧客に漏らしていたとみられる。 PwCジャパンは、ロンドンのPwC本部に支払う諸経費の負担が重いうえ、PwCコンサルティングでは「正規のコンサルティング料金だけでは経営幹部の報酬を賄いきれず、追加料金を請求できるような付加価値が必要だった」(関係者)。そのため社内で「プライオリティ・アカウント」と呼ばれる再(注:正しくは「最」)優良顧客をつなぎ止めたり、受け取るコンサルティング料にオプション料金を上積みしてもらうために情報を漏洩していたようだ。こうした無理な営業姿勢が社員の長時間労働やパワハラの温床になっていたとの指摘がある』、「こうした無理な営業姿勢が社員の長時間労働やパワハラの温床になっていたとの指摘がある」、大いにありそうなシナリオだ。
・『事態を重くみた会計士協会や金融庁はすでに調査を開始  PwCジャパンに情報漏洩の有無を質すと「そうした事実は確認できていない」とコメントした。一方、三菱UFJ銀行とあおぞら銀行は「そうした事実はない」、みずほ銀行と農林中央金庫は「コメントは差し控える」と回答している。 PwCから情報を受け取っていた窓口は経営企画部であり、われわれの質問にコメントを寄せた広報室は、経営企画部に属していることが少なくない。金融機関がこんな回答をするしかないのは、こうした内部事情があるからかもしれない。 しかしどう言い繕おうとも、会計士協会や金融庁が調査を始めた決定的な証拠がある。会計士協会はこの件について沈黙し、金融庁はノーコメントだったが、今年7月、会計士協会の自主規制本部事務局が関係者に対して「本格的な調査を始める」と伝えるメールを筆者は入手しており、すでに外堀を埋める調査は終えているもようだ。 会計事務所に関しては、米国で監査部門とコンサルティング部門の分離が実施され、英国でも大手会計事務所に対して同様の措置を求めている。今回の問題を受けて、日本でもこうした議論が活発化するのは間違いない。また、一義的な責任はPwC側にあるとしても、情報を受け取っていた銀行の責任を不問に付すことはできないだろう。 さあ、PwC内で何が起きていたのか、そして不正の温床には何があったのか。筆者はさらに深く暗部に分け入っていこう』、「米国で監査部門とコンサルティング部門の分離が実施され、英国でも大手会計事務所に対して同様の措置を求めている」、「日本でもこうした議論が活発化するのは間違いない」、「PwC内で何が起きていたのか」、「筆者はさらに深く暗部に分け入っていこう」、大いに期待できそうだ。

第三に、本年2月3日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの山口 義正氏とチーム「ストイカ」による「「英国本部と日米責任者が対応協議」PwC全体に膨張する危険な法的リスク 「社員から訴えられる可能性がある」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/42933
・『ミーティングの招集通知には“Libor Matter”とあった  昨年10月28日に「顧客情報を故意に漏洩 4京円市場に食いつくPwCジャパンの暗部」を配信して、3カ月がたった。それは米モルガン・スタンレーやシティバンクの内部情報を、PwCジャパンがみずほフィナンシャルグループや三菱UFJフィナンシャルグループ、農林中金、あおぞら銀行などに漏らしていたという内容である。情報漏洩には日米のパートナーが関わっており、国際的で組織的な不正である可能性を指摘した。 よほど触れられたくない不祥事を突かれたせいか、PwCジャパンはもちろん、情報を得ていた金融機関からも苦情や訂正要求は一切来ていない。しかしこれがいかに深刻な不祥事であるかは、PwCグループ内での対応が証明している。 この記事が掲載される1カ月も前の昨年9月24日午前10時から、英国本部と日米の法務最高責任者が鳩首会談を催していたのだ。ミーティングの招集通知をみると、表題が“Libor Matter”となっているから、筆者が送った質問状を見て慌てて対応を協議したに違いない』、「英国本部と日米の法務最高責任者が鳩首会談を催していた」、のは当然だろう。
・『情報漏洩を主導していた日本人パートナーは金融庁出身  会議を招集したのは、米国法人の主席弁護士を務めるEliza Nagle氏で、Andrew Oosterbaan氏は米国法人の法務担当マネージングディレクター。Steve Hamilton氏も米国法人のリスク・品質責任者である。 Laurie Endesley氏はPwCグローバルの最高コンプライアンス・倫理責任者兼グローバル副法律顧問で、日本法人では法務最高責任者の谷口洋一郎氏と、最高リスク責任者のRoss Kerley氏に参加要請があった。彼らはいずれもPwCグループの社内弁護士である。これだけの面々がそろっているのだ。すでにPwCではLIBOR問題が日本法人だけの問題ではなく、PwCグループ全体を揺るがす問題になっているのではないか。 顧客情報の漏洩を主導していた日本人パートナーは金融庁出身で、顧客に対して常々「金融庁とはつながりが深く、その内部事情はよくわかる」と言い放っていたことが方々から聞こえてくる。金融庁もこの迷惑行為にはほとほと困り抜いていることだろう』、「金融庁」勤務はハク付けだったのかも知れない。
・『三菱重工の受注案件を「3密状態の部屋」で作業  昨年10月の記事では、PwCジャパンに内部情報を漏らされた金融機関としてモルガン・スタンレーとシティバンクの名を挙げたが、実はそれだけではない。筆者は取材の段階で、それらの一部から匿名で「内部情報の漏洩は認識している」とのコメントを得ており、PwCジャパンはどう申し開きをするのだろう。大手の会計事務所は有限責任法人になっているが、一部の役職は無限連帯責任を負っているはずだから損害賠償でも請求されたら大変だ。 コンプライアンス上の問題として、社内では三菱重工業の基幹システムの受注案件が昨夏から浮上していることも明らかになった。 複数の情報提供者の話によると、システム開発の技量が素人レベルの社員をこの案件に数多く投入し、数十億円の報酬を得ているうえ、社員を新型コロナウイルスへの感染が危ぶまれる3密状態の部屋で仕事をさせていた。「これを社員が労働基準監督署に訴え、労基は劣悪な労働環境を改善し、残業代を支払うよう指導したにも関わらず、PwCジャパンはなにもしない」(PwC関係者)という。 PwCジャパンは筆者の取材にこうコメントした。 「著しく事実と異なる内容が含まれていますが、顧客が存在する個別のプロジェクトについてはお答えすることはできません。一般に、PwCでは、システム開発プロジェクトを受注する際、プロジェクトの内容や規模に応じて必要なスキルと知識を持った人材を適正人数配置し、適切な管理運営に努めております。また、プロジェクトにおいて課題に直面した場合や、顧客やプロジェクトメンバーからプロジェクトの進め方等について意見が寄せられた場合には、課題を解決し、プロダクトやサービスの質を高めるため、それらに真摯に対応しております」』、三菱重工の受注案件を「3密状態の部屋」で作業させたのは問題だが、「システム開発の技量が素人レベルの社員をこの案件に数多く投入し、数十億円の報酬を得ている」、というのは「三菱重工」も素人ではないので、特に問題ではないと思う。
・『「どうせクライアントはバカだからバレはしない」  しかし、頭隠して尻隠さず。LIBOR問題を話し合っている最高法務責任者の谷口氏は三菱重工の件でも社内で懸念をあらわにしており、やはり前出のRoss Kerley氏に「社員から訴えられる可能性がある」とメールで相談。そこではPO(当プレジデントオンラインをPwCではこう呼ぶ)に「ぞっとするような記事」が出ることを心配していることも書き記している。最高法務責任者が強く懸念しているにも関わらず、こうした状況が改善されないのは、PwCジャパンの経営全体に問題があるからだろう。 三菱重工と言えば、三菱リージョナルジェット(MRJ)の開発が凍結されたことが記憶に新しい。基幹システムの刷新とMRJの開発中止に直接の因果関係はあるまいが、PwCジャパンは日本企業にパラサイトして競争力を殺いでいるのではないか。 LIBOR問題でも三菱重工の件でも、PwC関係者から共通して伝わってくるのは「どうせクライアントはバカだからバレはしない」という上層部の発言だ』、そういう姿勢はやがてボロを出すので、持続的とはいえない。
・『複数の会社が「会食に参加した社員はいなかった」と回答  こうしたPwCジャパンの不誠実な体質は法廷でさえ改まらない。 昨夏から追及しているパワハラ問題(昨年6月29日付「『泥沼パワハラ』にフタをする大手監査法人と大手法律事務所の暗い結託」を参照)の訴訟で、PwCジャパン側は当初、パワハラ上司が米金融機関の主催する会議に参加していたと主張していた。 しかしPwCジャパンはこの会議に招待されておらず、参加していなかったことを指摘されると、今度は製薬会社などの実名を挙げ、「企業側担当者とサンフランシスコのホテルで会食しており、出張には正当な目的があった」と主張し始めた。 ところがこれもウソ。名前の挙がった企業のうち、筆者がいくつかを選んで確認したところ、複数の会社が「係争中の案件であるため、コメントは差し控えたい」としながら「会食に参加した社員はいなかった」と回答した。するとPwCジャパンはまた説明を変え……、と言った具合だ。公認会計士がクライアントの饗応に応じたり、誘ったりするのはそれ自体問題があるだろうに。 全社員に「マスコミの取材に応じるな」と口を封じているが…パワハラだけではなく、現役パートナーによるセクハラも横行している。それらには泣き寝入りさせられたケースがいくつもあり、刑事事件に発展してもおかしくないような深刻な事案が含まれていることも複数の被害者から情報が寄せられた。 PwCジャパンでは「ご指摘の事実は確認されておりません。PwCは、いかなるハラスメントも許容しません。なお、PwCでは、職場におけるハラスメントの存在を認識した場合には、事実確認を行ったうえで厳正に対処しております」と説明している。 昨年末から「コンプライアンス研修」と称して全社員に「マスコミの取材に応じるな」と口を封じているからといって、ウソをついてはダメだ。われわれチームストイカは事実や内情を確認するため、PwCジャパンの社員から協力を得てリモート会議のもようをウェブカメラの死角から見学することだってできるのだから』、一流の監査法人のお粗末な対応には、心底驚かされた。PwCの今後の対応が注目される。
タグ:・公認会計士 監査法人 (その1)(大手監査法人PWCを巡る3つの大問題:泥沼パワハラ、顧客情報を故意に漏洩、PwC全体に膨張する危険な法的リスク)) PRESIDENT ONLINE 山口 義正 チーム「ストイカ」 「泥沼パワハラ」にフタをする大手監査法人と大手法律事務所の暗い結託 「パワハラ防止法」は施行されたが…」 コンプライアンスの守護神であるはずの大手監査法人 「PwC」は世界4大会計事務所の一角 米国へ出張した際の旅費精算に、部下が疑いを持った 海外へのカラ出張とは、よくそんなバレることを仕組んだものだ。「出張報告書の提出さえ拒んだ」、さすがにバレたので、私費にしたのだろう 労働審判ではAさんの訴えが認められ、PwCは“敗訴” こんなミエミエの処分を恥ずかしげもなくするのには驚かされた。 英紙FTも「四大監査法人の隠れた不祥事」の一例として報道 、FTが「「四大監査法人の隠れた不祥事」の一例として報道」、したのは、「PwC」にとっては誤算だった筈だ。 弁護士たちは「中立的な立場で調査している」と説明したが… 「当初、Aさんに対して「PwC Japan合同会社から独立し、中立的な立場で調査している」と説明し、個人情報を引き出しておきながら、Aさんが労働審判を申し立てるとPwCの代理人に転じてAさんを攻撃し始めた」、開いた口が塞がらない。「第二東京弁護士会」は「懲戒」処分を下すべきだ 5月にはAさんが金融庁に「公益通報」を提出 「今後さらに詳細を暴露」することに大いに期待したい 「顧客情報を故意に漏洩」4京円市場に食いつくPwCジャパンの暗部 LIBOR関連の情報を邦銀らに漏洩か」 PwCが抱えるパワハラよりもはるかに大きく深刻な問題 「内部通報の嵐はやまず、最近はむしろエスカレートしている」、内実は酷いのだろう。 海外金融機関の内部情報が国内大手に提供されていた 「コンサルティング」部門は、「監査部門」と利益相反関係にあるので、疑われても当然だ。 2021年末に事実上廃止となる「LIBOR」に関する内部情報 ボリューが大きいドル建ての廃止は延期されるようだ 最新情報ではボリューが大きいドル建ての廃止は延期されるようだ 「LIBOR廃止後の指標金利をどうするか」の情報が流出 全銀協もLIBOR廃止について。以下のような特設ページで解説 「追加料金を請求できるような付加価値が必要だった」 「こうした無理な営業姿勢が社員の長時間労働やパワハラの温床になっていたとの指摘がある」、大いにありそうなシナリオだ。 事態を重くみた会計士協会や金融庁はすでに調査を開始 「米国で監査部門とコンサルティング部門の分離が実施され、英国でも大手会計事務所に対して同様の措置を求めている」、「日本でもこうした議論が活発化するのは間違いない」、「PwC内で何が起きていたのか」 「筆者はさらに深く暗部に分け入っていこう」、大いに期待できそうだ。 「「英国本部と日米責任者が対応協議」PwC全体に膨張する危険な法的リスク 「社員から訴えられる可能性がある」」 ミーティングの招集通知には“Libor Matter”とあった 「英国本部と日米の法務最高責任者が鳩首会談を催していた」、のは当然だろう 情報漏洩を主導していた日本人パートナーは金融庁出身 「金融庁」勤務はハク付けだったのかも知れない。 三菱重工の受注案件を「3密状態の部屋」で作業 三菱重工の受注案件を「3密状態の部屋」で作業させたのは問題だが、「システム開発の技量が素人レベルの社員をこの案件に数多く投入し、数十億円の報酬を得ている」、というのは「三菱重工」も素人ではないので、特に問題ではないと思う 「どうせクライアントはバカだからバレはしない」 そういう姿勢はやがてボロを出すので、持続的とはいえない。 複数の会社が「会食に参加した社員はいなかった」と回答 一流の監査法人のお粗末な対応には、心底驚かされた。PwCの今後の対応が注目される。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

原発問題(その16)(細野豪志氏が緊急寄稿 「震災10年目の証言」による福島復興の本当の課題、日本の敗戦「フクシマ」と「コロナ」 走り出したら止まれない“この国の病理、原発視察は必要だったしよかった…菅直人元首相に問う 震災・原発事故後10年の検証) [国内政治]

昨日に続いて、原発問題(その16)(細野豪志氏が緊急寄稿 「震災10年目の証言」による福島復興の本当の課題、日本の敗戦「フクシマ」と「コロナ」 走り出したら止まれない“この国の病理、原発視察は必要だったしよかった…菅直人元首相に問う 震災・原発事故後10年の検証)を取上げよう。

先ずは、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元原発事故収束担当大臣の細野豪志氏による「細野豪志氏が緊急寄稿、「震災10年目の証言」による福島復興の本当の課題」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/264432
・『東京電力福島第一原発の事故から10年。原発事故収束担当大臣として指揮した細野豪志氏が、改めて当時の関係者たちを取材し、3.11からの10年を検証した『東電福島原発事故 自己調査報告』を上梓した。政策形成の中枢に関わった人たちの注目すべき発言や、これからの課題などについて、細野氏が緊急寄稿した』、興味深そうだ。
・『福島県浜通りの忘れがたい三つの場所  福島県浜通りには、私にとって忘れがたい場所が三つある。 第一に、東京電力福島第一原発(以下、「いちえふ」と称す)への前線基地となったJヴィレッジだ。装甲車や消防車で埋め尽くされ、自衛隊によって管理されていたあの場所が、10年後にサッカー場として若者の集う場所としてよみがえる姿を当時は想像できなかった。 第二に、原発のある大熊町だ。閣僚として「いちえふ」を訪れる度に、人の住まない大熊町の荒涼たる姿に胸が痛んだ。事故後すぐに「大川原地区を再生の拠点としたい」と言い切った渡辺利綱大熊町長の静かだがドスンと腹に響く言葉に、私を含めた政府関係者の中で自信をもってうなずけた者が何人いただろうか。今や大川原地区は、原発事故収束の拠点として再生している。 第三に、原発事故後に広野町に設立されたふたば未来学園だ。学園が設立された6年前、果たして浜通りの新設校に生徒が集まるのかという疑問の声が上がったが、今や地域課題に取り組む「未来創造探究」が定着し、全国の教育関係者が視察に訪れる学園に成長している。卒業生の中から、間もなく福島の未来を担う傑出した人材が出てくるだろう。あの原発事故から10年、福島はよくここまで来たと思う。 他方、福島には残された重大な問題があるのもまた事実である。総理補佐官として東電本店で原発事故に対応し、閣僚となってからは多くの政策決定に関わった政治家として、過去の政策判断の検証から逃げることは許されない。過日、『東電福島原発事故 自己調査報告』(徳間書店)を出版したのは、残された課題の解決策を示すためだ。本稿では、拙著で対談した関係者の発言を引用しながら原発事故を検証し、残された課題を明らかにする』、「ふたば未来学園」、については初めて知ったが、県立の中高一貫校で今後の成長が楽しみなようだ。
https://futabamiraigakuen-h.fcs.ed.jp/
・『原発事故に対応した専門家の中でリーダーシップを発揮した2人の委員長 ≪田中俊一初代原子力規制委員会委員長≫  厳しい言い方ですけど、やっぱり科学的な裏付けについては専門家がもっときちっとしたことを言わなきゃいけないと思うし、当時も私は、保健物理学会とか原子力学会が大事な時に何も言わない、役目を果たさないことに随分文句を言ったんです。やっぱり、いざという時に科学者が社会的責任を果たせないようじゃダメですよ。 ≪近藤駿介原子力委員会元委員長≫ 総理官邸に呼ばれて、菅総理から「最悪のシナリオ」を作成できないかと言われた(中略)。私は反射的に、「今起きていることが最悪ですよ」と申し上げたんですが、当時起きていたこと以外にも心配なことがなかったわけではないし、(中略)「一週間くださるならやってみましょう」と申し上げて退出したのです』、「2人の委員長」のことは以下のように評価しているようだ。
・『今なお残された課題  原発事故の対応にあたった専門家の中で、いち早く原発の専門家として国民に謝罪し自ら除染に取り組んだ田中俊一氏と、リスクを取って原発事故による「最悪のシナリオ」を作成した近藤駿介氏のリーダーシップは突出していた。危機管理において登用されるべき専門家には、虚栄心がなく重要な判断から逃げない胆力、そして行政組織を動かすマネージメント能力が欠かせない。わが国は新型コロナウイルスという新たな危機に直面している。危機管理に対応できる専門家の育成は、今なお残る国家的課題だ』、なるほど。
・『原発事故という国家的危機で日米同盟は瀬戸際に立たされた ≪磯部晃一第37代東部方面総監/陸将≫ (細野)原発事故でものすごく大きなダメージではあったんだけれども、日本として事故に対応できたからよかったのであって、本当にできていなければ、国家として半ば崩壊していた…。 (磯部)原発がコントロールできていないとすると、瀬戸際だったかもしれませんね。 (細野)そうすると米国は次に様々なことを考えた可能性はありますね。 (磯部)当然考えていたと思います。 (細野)考えざるを得なかったと言えるかもしれない。 (磯部)米軍は常に最悪のことを全て考えるということでいたと思います』、日本側はその場の対応に追われて、「最悪のこと」を考える余裕もなかったのだろう。
・『今なお残された課題  わが国外交の基軸は日米同盟だ。原発事故という国家的危機にあって同盟国である米国は手厚い支援の手を差し伸べてくれた。しかし、国家としての軸足の定まらなかった最初の数日、米国が我々に投げかけてきた視線は厳しかった。この状況を改善すべく開催された『日米合同調整会議』で私は日本側の代表を務めた。政府の各部局が集まる中で自衛隊を代表してこの会議に参加した磯部晃一氏は、当時を振り返り「同盟国は行動を共にしてくれるが、運命は共にはしてくれない」というド・ゴールの言葉を引用して当時を振り返った。あの時、日米同盟は瀬戸際に立たされていたことを我々は決して忘れてはならない』、「国家としての軸足の定まらなかった最初の数日、米国が我々に投げかけてきた視線は厳しかった」、やはりそうだったのか。「同盟国は行動を共にしてくれるが、運命は共にはしてくれない」との「ド・ゴールの言葉」は言い得て妙だ。
・『除染目標を明示したことが復興を遅らせた可能性も  ≪佐藤雄平前福島県知事≫ (佐藤)(除染の1mSvの目標について)あのときは本当に悪いけど、県民の安全と安心をとにかく全力で守るためなら、これは本当に無理だなと思うことまで含め全部言わせていただいた。今まさに非常事態に苦しんでいる県民の不安や障害、強く要望されたことを、きっちりと政府に伝える責務が県にはある。あとになってからなら何とでも言えるかもしれないが、当時は違う。それが必要とされるような世論であり、状況だった。県がそういう姿勢を尽くすことが、当時の多くの県民の安心にもつながったんだよ。 (細野)やっぱり子どもの存在は大きかったですか。 (佐藤)大きい。なんていったって子どもらが大事だから。 ≪竜田一人『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』作者≫ こういっちゃうとあれですけど、「線量1ミリ(追加被曝線量を年間1mSv)まで下げる」っていう当初の約束は、あれって正直言いすぎたと思ってらっしゃるんじゃないですか』、「除染目標を明示したことが復興を遅らせた可能性も」、難しい問題だ。
・『今なお残された課題  「あの時、1mSvという除染目標を明示しない方法はなかったか」 これまで何度も自問自答してきた。除染目標1mSvは、私の意に反して帰還の基準や安全基準と混同され、ひとり歩きすることになってしまった。目標を明示しなければ福島との合意はできず、除染の開始も遅れることになった。福島県の強い要請や汚染者負担原則など、年間1mSvを決めた理由を挙げることはできるが、あの時の判断が結果として浜通りの復興を遅らせたのではないかとの思いは捨てきれない。しかし、時計の針を戻すことはできない。あの時、果たすことのできなかった責任を全うするために、福島のこれからのために政治家として全力を尽くす覚悟だ』、「目標を明示しなければ福島との合意はできず、除染の開始も遅れることになった」、やむを得なかったようだ。
・『福島の最大の課題は浜通りの新たなまちづくり  ≪渡辺利綱前大熊町長≫ 相馬藩には野馬追に象徴されるように1100年の歴史があって、6万石ほどの小さな藩だけれどもずっと残ってきた。千年の歴史の中でお互い協力しあった積み重ねがあって初めて文化が栄えるわけなんですよ。そんなに簡単に「人が一緒に住めば町ですよ」っていうのは妄想だっていうのを私は言ったんですけど。 ≪遠藤雄幸川内村村長≫(被災者の意識をどう自立の意識に変えていくかです。やはり自分の人生設計の中で、いつまでも被災者だという不幸に甘んじるわけにはいかない。どこかでやはり震災前のような生活、自分で判断して行動できるような、そういう生活パターンをきちんと確立していかなければいけないんだろうと思います。 ≪遠藤秀文(株)ふたば代表取締役社長≫  ここ(中間貯蔵施設)は東京から2時間ちょっとで来られて、あれだけ広大なフィールドもあるわけです。周辺にまだ住民がいない状況もありますが、視点を変えれば、「騒音などの影響をある程度軽減できるフィールド」という利点にも変わります。日本の基幹産業として育てるべき宇宙航空産業のフィールドとしての活用というのはあるかな』、「相馬藩には野馬追に象徴されるように1100年の歴史があって、6万石ほどの小さな藩だけれどもずっと残ってきた」、「「人が一緒に住めば町ですよ」っていうのは妄想だっていうのを私は言ったんですけど」、確かに町・村づくりは一朝一夕に出来ることではなさそうだ。
・『今なお残された課題  福島の最大の課題は浜通りの市町村のこれからのまちづくりだ。他の地域で生活基盤が確立した人の多くは、故郷への思いを残していたとしても、これから住民として戻ってくることは考えにくい。やがては震災・原子力災害対応の予算も減少し、地元自治体の自立的な財政運営が求められる時代が来る。積み重ねてきた歴史を大切にしながら、以前の街を取り戻すという発想ではなく、新たなまちのかたちを明確にしていくことが求められる。次の10年は、浜通りで始まっているイノベーションコースト構想や中間貯蔵施設の将来構想に地元の企業の参加を募り、具体的なプロジェクトを推進することで自立的な地域づくりを目指すべきだ』、なるほど。
・『事故10年で決断が求められる福島の若者への甲状腺検査  ≪大川勝正大川魚店社長  福島の漁業関係、水産関係の方はみんな(処理水を)流してほしくないと言っています。僕もそうですね。それは自分たちの立場からすればデメリットばかりで何のメリットもないですから、流してほしくはない。原発事故後からここまで、皆さん何とか積み上げてきた10年があるので、それを壊してほしくないと思うんです。ただ、例えば原発の廃炉を進めるにあたって、やっぱり水は何とか処理しなきゃいけないっていうところはあります。 ≪緑川早苗元福島県立医科大学内分泌代謝専門医≫  過剰診断は非常に大きな不利益だと思います。実際、福島の子どもたちも手術をすれば一律に「がん患者」扱いとされてしまいますので、生命保険やがん保険の加入に大きな不利が生じますし、残念ながら将来の進路選択に影響することもあり得ます。また、本当はあってはならないのですが、結婚や就職の際にがんサバイバーの人たちが経験するような不利益を、本当は治療どころか見つける必要すらなかった病気によって受ける可能性があることは、皆さんに知っていただき真剣に考えていただく必要がある大きな問題だと思っています』、「甲状腺検査」が「過剰診断」との立場にあるようだが、これについては、見方が分かれる。
・『新たな10年、福島が前に進むために  「いちえふ」にたまり続ける処理水、福島県内で学齢期の若者については(対象をすべて検査する)悉皆(しっかい)検査に近い形で行われている甲状腺検査など、10年が経過する中で決断が求められている問題はほかにもある。新型コロナウイルスで社会が騒然とする中で、今こそ福島を国民に問うべきだと信じ、拙著を世に送り出すことにした。手に取ってくださった皆さんが、一つでも福島のためにできることを見つけてくだされば望外の喜びである』、立場上、ことさら楽観的な考え方になっている可能性がありそうだ。

次に、3月14日付け文春オンラインが掲載したジャーナリストの船橋 洋一氏による「日本の敗戦「フクシマ」と「コロナ」 走り出したら止まれない“この国の病理”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/43933
・『フクシマとコロナの2つの危機は私たちに同じことを告げている。 日本は国民の安全と健康に重大な危害を及ぼす脅威に対する「備え」に真正面から向かい合っていない、そして政府はそのリスクの存在を認識していながら、備えに真剣に取り組んでいない、という点である。 福島第一原発事故の最大の教訓は、全交流電源喪失(SBO)などの原発の重大事故に対する備えをすること自体が住民に「不必要な不安と誤解を与える」という倒錯した論理の下、東京電力も原子力規制当局もそのリスクを「想定外」に棚上げし、備えを空洞化させた「絶対安全神話の罠」だった。実際、東京電力が地震と津波、なかでも津波に対する備えを怠ったことが命取りになった。 新型コロナウイルス感染症の場合も備えは不十分だった。検査体制も医療体制も増加する感染者の対応に追いつかなかったし、いまも追いついていない。それらの必要性は、2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1)の後、設置された対策総括会議の報告書で指摘されていたにもかかわらず、政府はその後10年、それを放置した。 いずれの場合も、備え(prepared-ness)が不十分だったことが、危機の際の対応(response)の選択肢の幅を狭めた。有事の備えに対する政府の不作為、というその一点で両者は共通する。 コロナ危機において、私たちは再び、フクシマを戦っている。コロナの戦いの中でいまなお『フクシマ戦記』が繰り広げられている』、「原発の重大事故に対する備えをすること自体が住民に「不必要な不安と誤解を与える」という倒錯した論理の下、東京電力も原子力規制当局もそのリスクを「想定外」に棚上げし、備えを空洞化させた「絶対安全神話の罠」だった」、適格な指摘だ。
・『訓練を見ると本気度がわかる  私は、福島第一原発事故の後、事故と危機の検証を行い、その後10年、当事者と関係者への取材を続けてきた。このほど刊行した『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』(文藝春秋)がその報告だが、この間、何度もぶち当たったのが、なぜ日本は危機管理がこうも苦手なのか、どうして有事の備えに正面から取り組むことができないのか、というテーマだった。 たとえば、原子力災害に備えての訓練の本気度の欠如である。 福島原発危機の中で吉田昌郎所長が最も衝撃を受けた瞬間は、3号機建屋が爆発した後、総務班から「40人以上が安否不明」という報告を受けたときだった(後にそれは誤報だと知る)。「腹を切ろうと思っていた」と吉田は政府事故調の聴取で述べているが、ここで多くの死傷者が出た場合、その後の現場の対応はまったく異なる展開となっていただろう。 この点を質したところ、東電の幹部はこんな風に言った。 「私たちは兵士じゃないですから、隣でついさっきまで鉄砲を撃っていたやつがぱたっと倒れるという経験をしていません。そういう状況に置かれたときには激しく動揺しますよね。仲間を失った時でも平静を保てる訓練をしなければいけない。その部門は人を大幅に入れ替えなきゃいけないかもしれないし……」 福島の事故対応では、警察、消防、自衛隊がファーストリスポンダーとして現地に赴き、3号機の使用済み燃料プールへの放水作業を行った。政府が全力を挙げてプラント内で危機対応をしたことの意味は大きかったが、吉田所長が、自衛隊の放水を「セミの小便」と形容したように、実際、それらの放水作業の効果は疑問であった(もっとも、これらの放水の効果についての検証は行われていない)。ファーストリスポンダーのオンサイトでの作業の下準備や道案内のため1時間、2時間と現地で作業した東電の社員のほとんどが年間の緊急時線量上限の100ミリシーベルト以上被ばくした。放射性被ばくの法定限度に従えば、彼らはその後、現場で働けなくなってしまう。 福島原発事故から3年ほどしたころのことだが、新たに設置された原子力規制庁の幹部は、原発の事業者(電力会社)は「猫も杓子も電源喪失シナリオの下で訓練を行っている。想像力というものをまるで感じられない」と語ったものである。たしかに、電力会社は電源車にしてもバッテリーにしても防潮堤にしてもハード面では過剰なほど備えの手当をしてきた。しかし、「40人以上の仲間の死」に見舞われたときや線量過多で従業員が戦線を離脱しなければならないとき、のシナリオが訓練に組み込まれたという話は聞かない。危機のさなか、原子力安全・保安院の検査官たちは福島第一からオフサイトセンターに一方的に避難してしまったし、保安院はそれを黙認した。このような戦線離脱があったことも覚えておく必要がある』、「自衛隊の放水を「セミの小便」」、確かにテレビ画面でも効果は乏しそうだった。「「私たちは兵士じゃないですから、隣でついさっきまで鉄砲を撃っていたやつがぱたっと倒れるという経験をしていません。そういう状況に置かれたときには激しく動揺しますよね」、確かにその通りだ。「原子力安全・保安院の検査官たちは福島第一からオフサイトセンターに一方的に避難」、いまだに腹が立つ。
・『避難計画を再稼働の要件にせず  そもそも日本では、重大事故の際の住民避難をはじめ住民の安全確保のあり方(防災計画)について「政府一丸」と「社会一丸」で臨む態勢がいまなおできていない。原子力規制委員会は発足した後、「原子力災害対策指針」をまとめ、半径5キロ圏内を「予防的防護措置準備区域」(PAZ)、それより外側の半径30キロ圏内を「緊急時防護措置準備区域」(UPZ)とし、30キロ圏内の自治体には避難計画の策定を義務付けた。 実は、2012年6月に参議院環境委員会で原子力規制委員会設置法が可決された際、避難計画については「妥当性、実効可能性を確認する仕組みを検討すること」とする付帯決議がつけられた。これは「原発を動かすには、安全に逃げることのできる避難計画が必要だ。自治体に丸投げする仕組みでいいのか」との疑念を議員たちが抱いていたことを物語っている。 福島第一原発事故の教訓の一つは、直接の被ばくによる死でなく住民避難と防災の不整備による関連死が多かったことである。それだけに避難計画の「妥当性、実効可能性」を真摯に検討しなければならないはずなのだが、その双方とも心もとない。政府は「しっかりした避難計画が作れない中で再稼働を進めることはない」(菅義偉首相、衆院予算委員会=2020年11月4日)との立場を強調するが、法的には避難計画は再稼働の要件とされていない』、「法的には避難計画は再稼働の要件」、としたら「再稼働」できる原発は1つも出てこない。
・『「イザというときは杉田副長官にお願いすることを考えている」  原子力規制委員会は「原子力災害対策指針」で30キロ圏の自治体に「地域防災計画」を策定するように義務付けたが、地方自治体は規制委員会が避難計画を再稼働の要件にしないことを“責任逃れ”と見て、不信感を表明した。政府は最終的に、発電所の事故対応(オンサイト対応)と避難対応(オフサイト対応)を分離させ、オンサイトは原子力規制庁が所掌し、オフサイトは内閣府原子力防災が調整することとした。この背景には、原子力規制委員会と規制庁が各省の総合調整を果たすのは難しいという判断があった。そこで内閣府原子力防災担当(大臣)を設置し、原子力防災の総合調整を担わせることにしたのである。 しかし、「実際問題として、あそこ(内閣府)では警察、消防、自衛隊を動員する執行力がないため、イザというときは杉田副長官にお願いすることを考えている」(政府幹部)のが実態である。安倍政権から菅義偉政権を通じて内閣官房副長官を務め、“危機管理の鬼”と言われる杉田和博官房副長官のことである。要するに、有事の際は法律通りには動かないだろうことを政府中枢が半ば認めているも同然なのである』、「杉田和博官房副長官」であれば可能なのだろうが、退任した場合はどうするかを考えておくべきだ。

第三に、3月15日付けFNNプライムオンライン「原発視察は必要だったしよかった…菅直人元首相に問う、震災・原発事故後10年の検証」を紹介しよう。
https://www.fnn.jp/articles/-/155407
・『未曾有の被害を出した東日本大震災、そして福島第1原発の事故から丸10年が過ぎた。東北全体の復興が進む中、福島県の東部ではいまだ帰還困難区域を解除する目処が立たず、原発の事故処理も大幅に遅れている。 放送3000回という節目を迎えた今回は、当時の菅直人元首相、全村避難を余儀なくされた前福島県飯舘村長の菅野典雄氏、福島原発事故10年検証委員会の座長として最終報告書を取りまとめた鈴木一人氏を迎え、当時の危機管理を再検証した上で日本の政治や社会が学ぶべき教訓を議論した』、「菅直人元首相」も出るとは興味深そうだ。
・『原発事故を食い止める何度もの機会を逸した  福島第1原発事故の発生から最初の7日間に何が起きたのか。3月11日に津波で福島第1原発の電源が喪失。翌12日早朝、菅直人首相が自衛隊のヘリで福島第1原発を視察。午後、格納容器の減圧に成功したものの水素爆発が発生し建屋が破損。14日には菅首相が東電本店へ直接出向き政府と東電の統合対策本部設置が決定。 鈴木さん、改めて当時の政府や省庁の初動をどうご覧になりますか。 鈴木一人 東京大学公共政策大学院 教授:まず準備がなかったことが一番の問題。事故の展開を止められるチャンスがいろんなところにありながら、そのために必要なモノや措置がなかった。もうひとつは情報の伝達。何が起きているのかが官邸に届かず適切な指示ができなかった。これを解決したのが15日の統合対策本部の設置だが、こうした超法規的措置を取らざるを得なかった。 反町理キャスター:時系列上ではどこに止めるチャンスがあり、なぜ逃したのか。 鈴木一人 東京大学公共政策大学院 教授:最初の電源喪失が最大の痛手。電源が地下になければ水没せず、この危機は回避できた。ベントを行う判断も遅かった。そして12日の朝に菅総理が現場に行ったこと。現場が対応に時間を取られた。 反町理キャスター:ご指摘は最初の11日〜13日の話。一方、英断とされる統合対策本部の設置は15日。短期間に政府の学習効果が見られたと言ってよいか。 鈴木一人 東京大学公共政策大学院 教授:はい。15日に菅総理が東電に乗り込みどれだけの情報があるかわかった。それまで不明だったこと自体が異常だが、ともかく統合対策本部の設置は英断。問題解決に向かって進めるようになった。 長野美郷キャスター:菅野さんは、当時の政府や省庁の初動についてどう振り返られますか。 菅野典雄 前福島県飯館村長菅野典雄 前福島県飯館村長:ほとんど情報が入ってこなかった。入ってくるのはマスコミを通じてのみ。住民から説明を求められても答えようがなかった。マイクロシーベルト、ベクレルといった単位がどういうものなのか、当時はわからない。「正しく怖がる」ということができない』、「15日に菅総理が東電に乗り込みどれだけの情報があるかわかった。それまで不明だったこと自体が異常だが、ともかく統合対策本部の設置は英断」、その通りだ。
・『文科省”試算値は出さない”判断で、首相にも現場にもSPEEDI届かず  長野美郷キャスター:SPEEDIは、放射性物質の拡散範囲を推定しどの地域の住民に避難が必要かという指標となるはずのもの。後に実際に計測された値と比べると、被害範囲や方向などはほぼ正確に計算されていた。 菅直人 元首相 立憲民主党最高顧問:私が菅野元村長に非常に申し訳なく思っているのが、SPEEDIという存在の認識が遅かったこと。文科省が持っていたが、存在を知らなかった。 反町理キャスター:SPEEDIの情報提供の点でどういう問題があったか。 鈴木一人 東京大学公共政策大学院 教授:文科省が間違っているかもしれない試算値は出さないという判断をした結果、首相にも飯館村にも情報が行かなかった。最終的な数字が地図の形で出てきたのが4月になってから。 菅野典雄 前福島県飯館村長:発表になるまではSPEEDIのデータは全く知りませんでした。ただ、遅れたことでこの避難の準備時間ができたということもあった。首相官邸から岐阜や長野など提示された避難先をお断りし、村民の暮らしのため、村から車で1時間以内のところに避難先を独自に探した。 反町理キャスター:不幸中の幸いというにはあまりにもひどい話と見えるが……。 鈴木一人 東京大学公共政策大学院 教授:日本の危機管理の大きな特徴は現場がすごく頑張ること。国レベルできちんと機能しなくても村レベルできちんと機能する』、「菅直人 元首相」が「私が菅野元村長に非常に申し訳なく思っているのが、SPEEDIという存在の認識が遅かったこと。文科省が持っていたが、存在を知らなかった」、「文科省」が「”試算値は出さない”判断で、首相にも現場にもSPEEDI届かず」、いまだに「文科省」の姿勢には腹が立つ。
・『菅直人元首相「福島視察は東電本店から情報が来なかったため」  反町理キャスター:準備不足、想定の甘さの話はいつも語られるが、では時の政権には何ができたのか、何をしなかったかという検証をしたい。 菅直人 元首相 立憲民主党最高顧問:準備については、ハード面ではなくソフト面も悪かった。原子力の安全規制を行っていたのは原子力安全・保安院。原発を推進する経済産業省の外局、資源エネルギー庁の中にある機関。そのトップを原発の専門家でない人が務めていた。そうした準備の不足を事故後初日から感じた。 反町理キャスター:それが翌日の福島視察につながっている? 電話で済ませられなかった? 菅直人 元首相 立憲民主党最高顧問:東電本店から情報が来なかったため。東電から来ている原子力の専門家で副社長を経験した方にベントが進まない理由を尋ねてもわからない。直接現場の人の話を聞く必要があると考えた。電源がなく人力で行わねばならず、決死隊を作ってでもやるという吉田所長の説明により理解できたし、その後の統合対策本部設置につながった点もよかった。 鈴木一人 東京大学公共政策大学院 教授:東電に乗り込み統合対策本部を作った15日の判断は、言い方は変だが結果オーライと言わざるを得ない』、「東電から来ている原子力の専門家で副社長を経験した方にベントが進まない理由を尋ねてもわからない。直接現場の人の話を聞く必要があると考えた」、「東電」の社内連絡体制が事実上機能しなくなっているのであれば、「福島視察」は当然だ。これを批判したマスコミは「菅氏」の失脚を狙ったのかも知れない。
・『政府は非常事態に死を覚悟すべき命令をできるのか  長野美郷キャスター:吉田所長からの「決死隊を作ってでも」という話もあった。深刻な非常事態に際して死を覚悟しなければならない命令を下すことについて、政府はどのような形で責任を取るべきとお考えですか。 菅直人 元首相 立憲民主党最高顧問:非常に難しい問題。自衛隊や消防や警察はある程度のリスクを前提とするが、命を落とすことがほぼ確実な状況での命令というものはない。 ただ当時、15日に東電本店に行って話したときに私が考えたのは、もし東電が全部撤退したら、4つの原発が全部メルトダウンして日本の少なくとも半分は人が住めない状況になる。そうならないために、危険なことはわかっているが何とかギリギリ頑張ってもらいたいという要請。命令はできませんが。 反町理キャスター:「つぶれるぞ」って言いました? 菅直人 元首相 立憲民主党最高顧問:東電がつぶれるぞとはもちろん言ったが、それどころではなく日本が国家としてダメになるぞと。 反町理キャスター:そうすると是非論は別として、要請よりは強いですよね。 菅直人 元首相 立憲民主党最高顧問:総理大臣は、もちろん一人ひとりの方のことも考えなければならないが、日本という国が成り立つかどうかを考えなければ。 反町理キャスター:この場合における時の総理の一私企業への「要請」。鈴木さんはどうご覧になりますか。 鈴木一人 東京大学公共政策大学院 教授:原発の事故に関しては一義的には電力会社、事業者の責任。ただ手に負えない状況になった場合のことは当時も準備ができていなかったし、10年経った現在もそれを議論する場がない。最終的に自衛隊が国家維持のため国民の負託に応えるという政治判断もあり得る。ならばその準備も必要。 危機管理において行政のリーダーシップには覚悟が必要だが、それだけではなく、法律や電源車などのモノ、リソースが必要』、「危機管理において行政のリーダーシップには覚悟が必要だが、それだけではなく、法律や電源車などのモノ、リソースが必要」、その通りだ。
・『原発事故の教訓はコロナ対策に生かされず  長野美郷キャスター:現在のコロナ禍で、政治は原発事故から学んだ教訓を生かせているとご覧になりますか。 鈴木一人 東京大学公共政策大学院 教授:なかなか生かせていない。PCR検査が、保健所の数が足りないといった準備不足が共通している。原発事故でいう原子力安全・保安院のような、本来動かなければならない内閣官房の新型インフルエンザ等対策室(当時)も最初のうち動かなかった。平時の仕組みがそのまま非常時にスライドすることでうまくいかなくなる。 ただコロナ危機では、国民への情報開示やコミュニケーションは原発事故時に比べうまくいっているのでは。 反町理キャスター:原発事故の後、菅首相から野田首相になったが、以来民主党・立憲民主党は政権から離れっぱなし。原発事故以降、民主党政権に対する信頼は非常に大きくダウンしたことは支持率にも表れていたが。 菅直人 元首相 立憲民主党最高顧問:今の立憲民主党の枝野代表は、原発事故でナンバー2だった当時の官房長官。ナンバー3の官房副長官だったのは福山幹事長。経験がある。現在の菅首相からは、最悪の事態を想定してその対応をする話が全く聞こえない。次の選挙で枝野政権が選ばれうると思っています。 BSフジLIVE「プライムニュース」3月11日放送』、「コロナ危機では、国民への情報開示やコミュニケーションは原発事故時に比べうまくいっているのでは」、およそ「原発事故時」と比べることに無理がある。「発事故時に比べうまくいっている」のは当然である。さすが現政権に近いフジTVらしい捉え方だ。
タグ:原発問題 (その16)(細野豪志氏が緊急寄稿 「震災10年目の証言」による福島復興の本当の課題、日本の敗戦「フクシマ」と「コロナ」 走り出したら止まれない“この国の病理、原発視察は必要だったしよかった…菅直人元首相に問う 震災・原発事故後10年の検証) ダイヤモンド・オンライン 「細野豪志氏が緊急寄稿、「震災10年目の証言」による福島復興の本当の課題」 福島県浜通りの忘れがたい三つの場所 Jヴィレッジ 大熊町だ 原発事故後に広野町に設立されたふたば未来学園 「ふたば未来学園」、については初めて知ったが、県立の中高一貫校で今後の成長が楽しみなようだ 原発事故に対応した専門家の中でリーダーシップを発揮した2人の委員長 今なお残された課題 原発事故という国家的危機で日米同盟は瀬戸際に立たされた 日本側はその場の対応に追われて、「最悪のこと」を考える余裕もなかったのだろう 「国家としての軸足の定まらなかった最初の数日、米国が我々に投げかけてきた視線は厳しかった」、やはりそうだったのか 「同盟国は行動を共にしてくれるが、運命は共にはしてくれない」との「ド・ゴールの言葉」は言い得て妙だ 除染目標を明示したことが復興を遅らせた可能性も 「除染目標を明示したことが復興を遅らせた可能性も」、難しい問題だ。 「目標を明示しなければ福島との合意はできず、除染の開始も遅れることになった」、やむを得なかったようだ 福島の最大の課題は浜通りの新たなまちづくり 「相馬藩には野馬追に象徴されるように1100年の歴史があって、6万石ほどの小さな藩だけれどもずっと残ってきた」 「「人が一緒に住めば町ですよ」っていうのは妄想だっていうのを私は言ったんですけど」、確かに町・村づくりは一朝一夕に出来ることではなさそうだ 事故10年で決断が求められる福島の若者への甲状腺検査 「甲状腺検査」が「過剰診断」との立場にあるようだが、これについては、見方が分かれる。 新たな10年、福島が前に進むために 立場上、ことさら楽観的な考え方になっている可能性がありそうだ 文春オンライン 船橋 洋一 「日本の敗戦「フクシマ」と「コロナ」 走り出したら止まれない“この国の病理”」 「原発の重大事故に対する備えをすること自体が住民に「不必要な不安と誤解を与える」という倒錯した論理の下、東京電力も原子力規制当局もそのリスクを「想定外」に棚上げし、備えを空洞化させた「絶対安全神話の罠」だった」、適格な指摘だ 「自衛隊の放水を「セミの小便」」、確かにテレビ画面でも効果は乏しそうだった。 「「私たちは兵士じゃないですから、隣でついさっきまで鉄砲を撃っていたやつがぱたっと倒れるという経験をしていません。そういう状況に置かれたときには激しく動揺しますよね」、確かにその通りだ 「原子力安全・保安院の検査官たちは福島第一からオフサイトセンターに一方的に避難」、いまだに腹が立つ 避難計画を再稼働の要件にせず 「法的には避難計画は再稼働の要件」、としたら「再稼働」できる原発は1つも出てこない 「イザというときは杉田副長官にお願いすることを考えている」 「杉田和博官房副長官」であれば可能なのだろうが、退任した場合はどうするかを考えておくべきだ。 FNNプライムオンライン 「原発視察は必要だったしよかった…菅直人元首相に問う、震災・原発事故後10年の検証」 原発事故を食い止める何度もの機会を逸した 「15日に菅総理が東電に乗り込みどれだけの情報があるかわかった。それまで不明だったこと自体が異常だが、ともかく統合対策本部の設置は英断」、その通りだ 文科省”試算値は出さない”判断で、首相にも現場にもSPEEDI届かず 「菅直人 元首相」が「私が菅野元村長に非常に申し訳なく思っているのが、SPEEDIという存在の認識が遅かったこと。文科省が持っていたが、存在を知らなかった」、「文科省」が「”試算値は出さない”判断で、首相にも現場にもSPEEDI届かず」、いまだに「文科省」の姿勢には腹が立つ 「東電から来ている原子力の専門家で副社長を経験した方にベントが進まない理由を尋ねてもわからない。直接現場の人の話を聞く必要があると考えた」、「東電」の社内連絡体制が事実上機能しなくなっているのであれば、「福島視察」は当然だ。これを批判したマスコミは「菅氏」の失脚を狙ったのかも知れない 「危機管理において行政のリーダーシップには覚悟が必要だが、それだけではなく、法律や電源車などのモノ、リソースが必要」、その通りだ 「コロナ危機では、国民への情報開示やコミュニケーションは原発事故時に比べうまくいっているのでは」、およそ「原発事故時」と比べることに無理がある。「発事故時に比べうまくいっている」のは当然である。さすが現政権に近いフジTVらしい捉え方だ
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

原発問題(その15)(「ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか」3題:(上)、(中)、(下)) [国内政治]

原発問題については、昨年8月18日に取上げた。今日は、(その15)(「ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか」3題:(上)、(中)、(下))である。

先ずは、本年3月8日付けForesight「ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか(上)」を紹介しよう。
https://www.fsight.jp/articles/-/47787
・『2011年3月11日に発生した東日本大震災・福島第1原発事故による大混乱の最中、イギリス大使館は放射性物質の飛散リスクなどについて的確な情報を発信し続け、外国人のみならず日本人にとっても信頼できる貴重な情報ソースとなった。その指揮を執ったデビッド・ウォレン元駐日大使への直接取材で再現する、危機対応とパブリック・ディプロマシー(広報文化外交)のケーススタディー。  2年前の3月21日、ロンドンの日本大使公邸。多くの日英関係者が居並ぶなか、鶴岡公二駐英大使(当時)はデビッド・ウォレン氏に旭日大綬章を授与した。駐日大使(2008年~12年)を含め計3回通算13年の日本勤務と、英外務省を退職後、文化交流団体ジャパン・ソサエティ(本部・ロンドン)の会長(12年~18年)として日英関係に多大な貢献をしたとの理由だが、特筆されたのが東日本大震災での対応だった。震災に合わせた3月にわざわざ授与式をもったのもそのためだった。  鶴岡駐英大使はこう祝辞を述べた。 「ウォレン大使は震災2日後に被災地に入り、英国人の安否確認をするだけでなく、日本人被災者を励ましました。さらに英政府が立ち上げた緊急時科学助言グループ(SAGE)の客観データーをもとに、英国大使館を東京から移したり、英国人を東京から脱出させたりする必要はないと決定しました。英国のこの日本に対する揺るぎない友好的な姿勢は2015年のウィリアム王子の被災地訪問に結びつきました」 3・11では欧州を中心に少なくない在京大使館が放射性汚染を恐れ、大使館の機能を関西に移した。自国民を特別機で日本から大量脱出させ、また外国人の幹部や従業員が我先に帰国して、企業活動がマヒしたところも多々あった。後日、「申し訳なかった」と自国民の行動を謝罪した大使もいる。 そうした中、最も冷静かつ的確に対応したのが英国だった。ブレることのなかったその姿勢は、応援部隊を含め200人を超える大使館スタッフを率いたウォレン氏の指導力と、同氏と本国の連携に負うところが大きい。 同氏はジャパン・ソサエティの会長職にある時、3・11の経験を文章にまとめている。昨年、東京で詳しく話を聞く約束だったが、新型コロナウイルス問題で来日がかなわず、電話で取材した。同氏の行動を中心に英国の対応を振り返る』、驚くべき冷静な対応だ。
・『被災地の英国人は600人、誰とも連絡がつかなかった   3・11のこの日、ウォレン氏は昼、帝国ホテルでもたれたホテル創設120周年の記念昼食会に出席した。終わると、大使館に戻り、経済部の日本人スタッフ1人を連れて大使車で横浜に向かった。午後3時に日産自動車本社で英国人役員と対英投資について意見交換する約束があったからだ。英国への投資誘致は英大使の重要な仕事だった。 大使車が同社の玄関に着き、降りようとしたその時、「ジシン!」と運転手が叫んだ。 「日本に通算13年暮らした私も経験したことのない激しい揺れだった」 日産の役員との携帯電話はつながらない。大使館に戻ろうと運転手に告げた。大使車のテレビは尋常ならざる事態を伝えていた。しかし道は大渋滞し、東京に入ったのは夜だった。最後は動かない車を乗り捨て、皇居のお堀伝いに歩いた。歩道も帰宅する人で溢れていた。同氏が千代田区一番町の英大使館にたどり着いたのは午後9時だった。 大使館内に入るやウィリアム・ヘイグ英外相(当時)から電話が入った。大使館スタッフの全員無事を確認した外相は、東京の状況を尋ね、津波に襲われた福島第1原発がどうなるか仔細にフォローするよう指示した。容易ならざる事態と認識した英政府も、関係省庁が参加する危機管理委員会(COBRA)を立ち上げていた。大使がベッドにもぐりこんだのは午前1時半を回っていた。公邸の寝室は、落下した本などで足の踏み場もなかった。 このような大災害・大事故の時に出先の大使館の仕事は大きく3つ。日本にいる自国民の安否確認と保護。対日支援。そして信頼ある情報発信、だ。  英国大使館は大阪の総領事館と合わせて計130人のスタッフがおり、このうち英外交官は約30人。英外務省はロンドンと各国の英大使館からスタッフを東京に送り込み、80人の増援部隊が到着した。ウォレン氏は200人超のスタッフを3班に分け、3交代8時間勤務の24時間体制を敷いた。英外務省とは4時間ごとに電話協議を持った。 英国からは日本にいる家族や親せきの安否の問い合わせが殺到していた。これを捌くため、安否確認の電話は大阪の英総領事館に自動転送するよう回線設定された。 「約1万5000人の英国人から在留届が出ていて、被災地には約600人が暮らしているとみられた。連絡網を作っていたが、誰とも連絡がつかなかった」』、「容易ならざる事態と認識した英政府も、関係省庁が参加する危機管理委員会(COBRA)を立ち上げていた」、「英外務省はロンドンと各国の英大使館からスタッフを東京に送り込み、80人の増援部隊が到着した」、東京川からの余生を待たずに手配する手際の良さには驚かされた。
・「東京の大使館はナンバー2が指揮できる」  日本政府に支援の打診も行った。水や食料や物資、それに救助犬を連れた緊急援助隊を日本に送り込みたいが、どこの空港が受け入れてくれるのか。首相官邸が情報を一元化していたが、福島原発問題に忙殺されていて、問い合わせに「後で返事する」と繰り返すだけだった。業を煮やしたウォレン氏は12日朝、こう伝えた。 「救援機がマンチェスターで待機している。日本政府の許可がいらず、被災地にも近くて足場がいい米軍の三沢空軍基地(青森県)に飛ばしたい」 大使の電話に、首相官邸の担当者は(「我々もそうしてほしいと思っていた」 と後付けの返答をした。  13日夜、英救援機が三沢空軍基地に到着。救助犬と緊急援助隊の英チームは岩手県大船渡市に展開し、米、中国チームとともに1週間、捜索に当たった。これ以後、三沢空軍基地は英国から水や食料、放射能検査機器などを運び込む拠点となった。 被災地に住む英国人と依然として連絡はとれなかった。「避難所に外国人がいる」との情報もあったが、東京からではいかんともしがたかった。安否確認には被災地に入らなければならない。大使は現地に入ることを決めた。  震災3日目の3月13日朝、5人のスタッフと、スポーツタイプの大型車に同乗して仙台に向けて出発した。事前に日本政府から、緊急車両以外は通行止めとなっていた東北自動車道の通行許可をとった。ドライブインでは車に詰められるだけ食料や燃料、水、防災グッズを買い込んだ。 「大使は東京にとどまって指揮をとり、現地は部下に任す考えはなかったのですか」と聞くと、こう返ってきた。 「こういう時はトップが被災地に姿を見せることが大事なのだ。英国は自国民を見捨てないというシグナルであり、困難な状況にある日本人被災者に『英国は日本人と共にここにいる』と、勇気づけるメッセージにもなる。東京の大使館はナンバー2が指揮できる」』、「「こういう時はトップが被災地に姿を見せることが大事なのだ。英国は自国民を見捨てないというシグナルであり、困難な状況にある日本人被災者に『英国は日本人と共にここにいる』と、勇気づけるメッセージにもなる。東京の大使館はナンバー2が指揮できる」、日本とは真逆の対応だ。
・『被災地入りの決断を支えた「SAGE」の助言   当時、福島第1原発はすでに危機的状況にあった。前日の12日午後に、1号機が水素爆発。後に明らかになったが、13日早朝には3号機の炉心溶融が始まり、14日朝には核燃料の大部分が圧力容器の底を突き破って、格納容器へ溶け落ちていた。2号機も放射性物質を放出し始めていた。大使は放射線リスクをどう見ていたのか。 「本国政府を通じてSAGEの見解が随時入っていて、日本政府同様、福島第1原発から20キロ圏外であればリスクはほとんどないというのがSAGEの判断だった」 1号機の水素爆発が起きた12日夜、日本政府は第1原発から20 キロ圏内に暮らす住民に避難指示を出していた。ウォレン氏が他の大使に先駆けて被災地に入れたのも、SAGEの助言があったればこそだった。 SAGE=緊急時科学助言グループは、緊急時に科学的知見に基づいた助言を得るための英政府の組織で、各省庁の科学顧問や外部の専門家で構成されている。3・11の前は2010年のアイスランドの火山爆発の時に招集されている(新型コロナウイルス問題で日本政府の専門家会議はこのSAGEを下敷きにした。これについては後述する)。 仙台には7時間かけて午後3時半に着いた。一行は英大使館が押さえた仙台市内のビジネスホテルに入り、二手に分かれて、1チームは病院と避難所を回って英国人の消息をあたり、大使のチームは宮城県庁で県幹部に面会した。 「お悔やみを伝えると、大変な状況下でも皆、驚くほど親切で、こちらが恐縮するほどだった」「本来、取り乱していてもいい状況なのに、誰もが強靭かつ冷静な態度を保っていた」 翌日、米CNNテレビが大部隊でホテルに入り、追い出された大使一行は別のホテルに移り、そこを前線基地とした。ホテル入口の大広間に「英国人支援デスク」と大書し、英国旗ユニオンジャックを立てた。在留届を手掛かりに、被災地の英国人の家や避難所を回っているチームからも英国人の情報が入りはじめた。 大使チームは2日目、3日目と宮城県内の南三陸町、多賀城市、気仙沼市などの避難所に足を伸ばした。連絡が取れなかった英国人にも出会え、食料も手渡した。その間も余震が続き、その度、「避難の必要のあるなし」の連絡が大使館から入った。 「津波の惨状と、避難所の人々の静かで秩序だった態度の対照に私は心揺さぶられた」 避難所を回っている最中も、情報発信の観点から英メディアの電話取材に応じた。大使が力を入れて伝えたのは3点。「英国人支援デスク」の電話番号を広く報じてくれるよう頼み、日本政府が最大限の努力をして原発事故を抑え込もうとしていること、また避難所で会った日本人の驚くべき秩序正しさと冷静さに感動していると繰り返し話した。 大使は3泊し、16日夕、東京に戻った。この後、交代で5チームが仙台に入って、大使館に届け出がありながら、連絡がとれない英国人の家を回った。最終的に英国人170人が支援デスクを訪れ、大使館チャーターのバスで東京に運ばれた。 日本人の伴侶と家庭を持っていて、「このまま被災地に居続けたい」 という英国人も少なくなかった。同氏が被災直後の現地を3泊4日にわたって見て回ったことは、英国人の安否情報の早期確認に大いに役立った。また英本国にとっても被災地の様子を詳しく知る手助けになったはずである。最終的にウォレン氏の危惧は杞憂で終わり、英国人には犠牲者はいなかった。 ウォレン氏につづいて被災地に入った駐日大使は、3月23日に米国のジョン・ルース大使(当時)夫妻が石巻市に、同26日にフランスのフィリップ・フォール大使(同)が仙台市に入った。しかし被災地に3泊もした大使はいない。(続く)』、「ウォレン氏が他の大使に先駆けて被災地に入れたのも、SAGEの助言があったればこそだった。 SAGE=緊急時科学助言グループは、緊急時に科学的知見に基づいた助言を得るための英政府の組織で、各省庁の科学顧問や外部の専門家で構成されている」、うらやましいほど整った支援体制だ。「被災直後の現地を3泊4日にわたって見て回ったことは、英国人の安否情報の早期確認に大いに役立った。また英本国にとっても被災地の様子を詳しく知る手助けになったはずである」、その通りなのだろう。

次に、この続きを、3月9日付けForesight「ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか(中)」を紹介しよう。
・『福島第1原発の事態は、チェルノブイリ並みの深刻度「レベル7」も指摘された。フランスが発した避難勧告を皮切りに、各国外国人コミュニティーに動揺が広がって行く。しかしイギリス大使館は「首都圏から避難の必要なし」と結論を出した。 英国以外の国の3・11での対応はどうだったか。 福島第1原発の原子炉の冷却が見通せないなか、多くの国は「東京も危ないのではないか」と疑心暗鬼になり、さまざまに浮足立った行動へと走り出す。 1つの契機は、世界の核関連活動を監視する米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)の発表だった。2011年3月15日、福島第1原発の事故の深刻さを国際評価尺度で上から2番目の「レベル6」に近いとし、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じ最悪の「レベル7」に達する可能性もあると指摘した』、確かに「ISIS」の「発表」を、通常の国は慌てふためくだろう。
・『日本脱出の動きが広がる中で  主要国でフランスが最初に自国民に首都圏から避難するよう勧告した。また日本からの脱出を希望する自国民のため、特別機を羽田空港や成田空港に送り込んだ国はフランス、チェコ、フィリピン、キルギスなど10カ国を超えた。パニックになった外資系企業の外国人の幹部と従業員が挙って日本を離れ、企業活動がマヒするところもあった。 大使館機能を東京から関西に移し、大使以下、大挙、東京を離れた国も、震災2週間の時点で私が数えると25カ国に上った。ドイツ、スイス、フィンランド、オーストリアなど原発問題に敏感な欧州を中心に、パナマ、ベネズエラ、グアテマラ、アラブ首長国連邦(UAE)などの国も。日本語を話すドイツの知日派大使のフォルカー・シュタンツェル氏は大使館機能を関西に移すことに強く反対したといわれる。しかし独政府の指示に折れざるを得なかった。 「大使は本国の決定に怒っていた」と知り合いの駐日外交官は私に語っていたが、ドイツ国内の反原発の世論を政府も無視できなかった。 一方、イタリア、カナダ、スペインのように、メディアを通じて東京での業務継続を正式表明した国もあった。イタリア大使館のヴィンチェンツォ・ペトローネ大使は 「友好国が困難な時に、我々は東京に残って連帯を表明する」「在日のイタリア企業は日本経済を助けるため、業務を中止しないでほしい」との声明を出した。スペイン大使館は 「自国民と日本国民のあらゆる支援の要望に応えるため業務を継続する」と表明した。イタリア、スペイン大使館は3日間にわたって半旗を掲げた。 日本外務省の大使OBは、 「東京にとどまって日本に連帯を示すのが出先の大使館の役割だ。私は関西に逃げた国を忘れない」と怒った。後日、フランスのフィリップ・フォール大使は日本の新聞とのインタビューで、フランス人が日本を大量脱出して企業の業務を停滞させたことに、 「大使館は一切、日本からの脱出を指示してないが、混乱を招いたことをお詫びしたい」と謝罪することになる』、「日本語を話すドイツの知日派大使のフォルカー・シュタンツェル氏は大使館機能を関西に移すことに強く反対したといわれる。しかし独政府の指示に折れざるを得なかった。 「大使は本国の決定に怒っていた」と知り合いの駐日外交官は私に語っていたが、ドイツ国内の反原発の世論を政府も無視できなかった」、「知日派大使」が反対しても、「大使館機能を関西に移す」、「ドイツ」らしい。
・『想定し得る最悪の事態を明示  こうした各国のドタバタのなかで、英国がブレなかったのは駐日大使のウォレン氏と、本国の緊急時科学助言グループ(SAGE)の存在が大きかった。SAGEは英政府の首席科学顧問を務めていたサー・ジョン・ベディントン教授を委員長に、刻々と変わる放射線濃度、風速、天候などのデーターを分析し、一般人の放射能汚染リスクについて、「原発20キロ圏外であれば人体に問題ない」と、英政府の危機管理委員会(COBRA)に報告していた。日本政府の「20キロ圏外への避難」の指示を妥当なものとしたのだ。ただ日本政府が科学的、論理的な根拠を明示しなかったのに対し、SAGEは「想定しうる最悪の事態(Reasonable Worst Case Scenario)」も示した。これはデビッド・キャメンロン首相から、 「在日英国人を東京から避難させる必要があるだろうか」との質問を受けてSAGEが導き出した。 ベディントン教授はSAGEの専門家たちと、放射線量の増加により福島第1原発への人の介入が不可能な状態になり、原発が全機メルトダウンを起こすという悲観的な局面に追い込まれ、かつ東京方面に風が吹き続けるという最悪の想定をして検討した。しかしそのような状況においても東京の放射線量は極めて小さく、東京から英国人を避難させる必要はないとの結論に達し、首相に伝えられた。 この報告は在英大使館のホームページに全文掲載されるとともに、ベディントン教授は3月15日を皮切りに計4回、オンラインで英大使館とつなぎ、在日英国人コミュニティーと対話する機会をもった。これらの記録や議事録も即時にソーシャルメディアなどを通じ共有された。日本の首相官邸もこれをリツィートしている』、「東京から英国人を避難させる必要はないとの結論」、「この報告は在英大使館のホームページに全文掲載」、日本のマスコミが伝えた記憶はない。駐在記者の怠慢のようだ。
・『「科学的知見」と「政治判断」の衝突  「想定しうる最悪の事態」が示されたことで、一般の人々にとっても最悪の場合、どう行動すべきかを判断する材料となった。在日外国人ばかりでなく、日本人にとっても大いに役立った。当時、私も英大使館のホームページを参照していたが、科学的かつ論理的で信頼性があった。情報が錯綜し、メディアで伝えられる事柄に対する信頼が揺らいでいた時である。「東京は安全で避難は不必要」「窓を閉めて家の中にいれば大丈夫」との同教授の説明はどれほど心強かったか知れない。 ただ科学的知見と、これを踏まえてどう政治判断するかは別の問題だ。原発の冷却が見通せず、原子炉内の圧力が高まっていた3月16、17日、キャメロン英首相がウォレン氏に、「英国民を首都圏から避難させるべきではないか」と連絡してきた。本国ではメディアが、 「他の欧州の国が自国民を日本から避難させているのに、英国はなぜ動かないのか」と突き上げていた。ウォレン氏は、「科学的な根拠もなく、慌てて自国民を首都圏から避難させることに私は否定的だった」と言い、首相や外相にも意見具申した。しかし本国との調整の上で、次のような含みをもった告知を大使館のサイトにアップした。 「積極的には勧告しないが、英国民は東京を離れることを念頭においてもいい」 それでもウォレン氏は個人的には「東京から避難する必要はない」との立場だった。3月20日、大使はBBCテレビのインタビューを、「東京は安全」とのメッセージを込めて大使館の庭で受けた。英政府は「日本を離れたい人のために」とチャーター機を日本から香港に飛ばしたが、乗った人は少数だった。英大使館が発信し続けたSAGEの科学的知見を、多くの英国人が参照した効果だとウォレン氏は見ている』、「日本の世論に直接働きかけるパブリック・ディプロマシーで英国は出色だった」、さすがだ。「キャメロン英首相がウォレン氏に、「英国民を首都圏から避難させるべきではないか」と連絡してきた」、「「科学的な根拠もなく、慌てて自国民を首都圏から避難させることに私は否定的だった」と言い、首相や外相にも意見具申した。しかし本国との調整の上で、次のような含みをもった告知を大使館のサイトにアップした」、本国からの圧力を巧に逸らす手際はさすがだ。
・『20日で25回のインタビュー  原発の危機が遠のいた3月末、大使は英政府と協議し、緊急事態を解除した。3・11からの20日間に、ウォレン氏がこなしたメディアとのインタビューは25回を数えた。 3・11から4年目の2015年3月、英国のウィリアム王子が来日し、4日間の滞在中、2日間にわたって宮城県石巻市、女川町、福島県内などの被災地を訪問し、被災者と交流。郡山市の磐梯熱海温泉の旅館に1泊した。安倍晋三首相も王子の宿泊先で歓迎夕食会をもち、感謝の意を表わした。被災地を日帰りで訪れた外国要人はいるが、1泊した要人は初めてだった。しかも王子は王位継承第2位である。 2019年3月にロンドンの日本大使公邸でウォレン氏に対する叙勲式が行われた時、鶴岡公二駐英大使は3・11での英国の日本に対する揺るぎない友好的な姿勢がウィリアム王子の被災地訪問に結びついたと指摘した。今日、日英両国は政治、経済、安全保障の分野で「新・日英同盟」と形容されるほど緊密な関係を築いている。3・11がこのスプリングボードの役割を少なからず果たしたと見てもさして間違いではない。(肩書は当時/続く)』、「20日で25回のインタビュー」、「2015年3月、英国のウィリアム王子が来日し、4日間の滞在中、2日間にわたって宮城県石巻市、女川町、福島県内などの被災地を訪問し、被災者と交流」、「ウォレン氏」の活躍なくしては実現しなかっただろう。

第三に、この続きを、3月10日付けForesight「ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか(下)」を紹介しよう。
https://www.fsight.jp/articles/-/47797
・『火山爆発、伝染病、テロ対策、金融危機、そして気候変動――政治における「専門家」の役割が問われている。イギリス大使館の判断を支えたSAGEは、ブレア政権時代にその体制が整備された。新型コロナウイルス感染という新たな非常事態に臨む中で、いま浮上している課題と日本が生かすべき教訓とは。 3・11から2カ月後の2011年5月末、英政府の首席科学顧問として緊急時科学助言グループ(SAGE)の委員長を務めたサー・ジョン・ベディントン教授が来日し、3・11の経緯を振り返るシンポジウムに出席した。 講演に立った同氏はこう述べた。 「科学的助言の信頼性を保つには透明性と独立性が不可欠です。そのため3・11でSAGEは政府に助言を行うにとどまらず、SAGEの議論と結論をすみやかにインターネットを通じて公開し、また在日英国人のコミュニティーとオンラインで対話し、原発事故のリスクも含めて率直に明らかにしたのです」 SAGEの透明性ある情報公開は在日の英国人など外国人だけでなく、日本人にも広く参照され、「東京は安全で避難は不必要」「窓を閉めて家の中にいれば神経質になることはない」との分析は大いに役立った。 しかしベディントン教授は科学的知見と政府との関係、さらに科学的知見を絶対視することのリスクも含め、幾つか指摘することも忘れなかった。3点あった。 1.政府が決定を行う際には、科学的助言だけでなく、経済的、政治的、倫理的な要素も考慮され、科学的知見だけで決定されるわけではない 1.統一的な科学的助言を提供することが難しい場合もあることを理解すべきである 1.科学者の知見はあらゆる人々から批判も含め、さまざまな指摘を受ける余地を残した上で活用されるべきである  同教授は最後に、「この世の中で確かなことは『確実なものなど何もない』ということだけである」 との警句を引いて講演を締めくくった。同教授には2014年、日英の科学技術交流推進に著しく貢献したとして、旭日中綬章が授与された』、「「この世の中で確かなことは『確実なものなど何もない』ということだけである」 との警句」、はまさに言い得て妙だ。
・『日本に欠けている「法的根拠」  英国では政府内に首席科学顧問を置いて、科学的助言を受ける仕組みが第2次大戦直後にスタートした。これは各省のさまざまな分野に精通した科学顧問や外部の専門家の力を結集したSAGEに発展し、首席科学顧問が委員長を務める仕組みとなった。 火山爆発、伝染病、テロ対策、金融危機、そして近年では気候変動など、科学的知見を必要とする数多くの政策課題が生まれる中で、ブレア政権時代の2001年に政府側の体制も整えられた。それまで非常事態の事務局は内務省が担っていたが、内閣府に市民非常事態部局(CCS=Civil Contingencies Secretariat)が常設された。 ひとたび非常事態が起こると、CCSの下に省庁横断的な危機管理委員会(COBRA)が立ち上がる。2004年には非常事態法が制定され、錯綜する関連法体系を1つにまとめた。これによって非常事態にあってもSAGEと政府側の意思疎通がスムーズ、迅速になった。 英政府の3・11での対応は、「平常時だけでなく、緊急時に際しても適切な科学的助言を迅速に得るための仕組み作り」を日本政府に痛感させた。翌2012年6月に出された「科学技術の振興に関する年次報告」にはそのことが教訓として盛られた。 その点で、新型コロナウイルス問題は3・11の教訓をどう生かしたかが問われた最大の機会でもあった。この1年余の対応を中間総括すると、政府も科学者グループも手探りしながらやってきたというのが実態に近い。 日本政府はクルーズ船での集団感染の対応に追われていた昨年2月、感染症や公衆衛生の専門家ら12人を集めて専門家会議を立ち上げた。英国のような緊急時科学助言グループ(SAGE)がなく、しかも新型コロナ対応の改正特別措置法が成立する前だったため、法的な根拠を欠いたままの出発だった。 専門家会議メンバーの間ではこのままでは感染爆発的に拡大するとの危機感が強く、政府への提言にとどまらず、外に向かっても積極的に発言した。政府には感染状況の分析、検査体制拡充、「3密」の回避、在宅勤務――などの対策を求めつつ、市民には行動変容のお願いを呼びかけるなど、従来のパターン化された諮問・答申の関係を超えた役割を担った。 一例が昨年4月の緊急事態宣言の時だった。専門家会議にオブザーバーとして出席した京都大学の西浦博教授は、人と人との接触を8割削減する必要性を主張した。しかし政府はこの目標は国民に受け入れられないと、「最低7割、極力8割」と目標を弱めて国民に提示。西浦氏はツイッターで「7割は政治側が勝手に言っていること」と投稿した。リスクを国民に説明する「リスクコミュニケーション」でも、政府でなく専門家会議が前面に出ることも少なくなかった。 専門家会議が前のめりになった理由について、座長を務めた国立感染症研究所の脇田隆字所長は、 「政府の諮問に答えるだけでなく、対策も必要があると考えた」と語っているが、法的根拠を欠いて権限や責任が明確でない分、自由に動けたという側面もあった。ただこれによって専門家会議への期待を必要以上に抱かせた一方、「専門家会議がすべてを決めている」とのイメージを強めた。 本来、専門家会議の役割は科学的知見に基づきさまざまな選択肢を示し、併せてそれぞれの効果と問題点を提示することで、政府はそれを踏まえて対策を決め、理由を説明し、結果責任を負う。この役割分担があいまいで、時に逆転した印象を与えた。 透明性という点でも不十分だった。専門家会議では議事録概要にとどめ、議事録は作成されていなかったことが判明したが、メンバーから「発言を探られたくない」との声が出て、本人の希望で発言を削除できる仕組みにされたことが分かった。 政府は6月下旬、専門家会議を解消し、特措法に基づく新たな会議体「新型コロナ分科会」(略称)を設置。感染防止と社会経済活動の両立を図るため、発足時のメンバー18人には感染症の専門家のほか、経済学者や知事、情報発信の専門家らが加わった。これには政府が主導権を取り戻す狙いもあったともみられた。 しかし感染が拡大して医療崩壊の危機が叫ばれる中で、経済の専門家の声は小さくなっていかざるを得なかった。昨年末の観光支援事業「Go To トラベル」の扱いはその象徴で、感染症の専門家が主導権を握った分科会と政府の間で溝が生じ、最終的に政府は一時停止に追い込まれた』、「本来、専門家会議の役割は科学的知見に基づきさまざまな選択肢を示し、併せてそれぞれの効果と問題点を提示することで、政府はそれを踏まえて対策を決め、理由を説明し、結果責任を負う。この役割分担があいまいで、時に逆転した印象を与えた」、「透明性という点でも不十分だった。専門家会議では議事録概要にとどめ、議事録は作成されていなかったことが判明したが、メンバーから「発言を探られたくない」との声が出て、本人の希望で発言を削除できる仕組みにされたことが分かった」、「発言を探られたくない」との声は責任回避で、そんな勝手まで許すべきではない。
・『「政策の正当性」「結果責任」を誰に求めるか  では英国はどうだったかというと、被害の大きさもあって日本以上に対応は混乱した。今年3月初め時点で、英国は感染者421万人、死者も12万4000人に上っている。 感染が広がり始めた昨年3月、欧州各国が厳しい外出制限を設ける中、英国は国民にレストランなどに集まらないよう呼び掛けるにとどめた。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が電話でボリス・ジョンソン英首相に「感染拡大の抑制策を強化しなければ、英国からのフランス入国を禁止する措置を取ると」と述べたのを受け、やっと3月23日から厳格な外出制限に踏み切った。その後、ジョンソン首相も感染し、一時は集中治療室に入る重篤な状態に陥ったが、それまで首相が問題の深刻さを過小評価していたのは間違いない。 英政府はSAGEの構成員や議事録を非公開にしていたが、世論の批判を受けて5月に公開した。これによるとSAGEの助言をそれなりに取り入れて政策が決定されたことがうかがえるが、この時点で約4万人の死者が出ていたこともあって、政府内には逆にSAGEの責任を問う声も上がった。 ジョンソン首相は昨年7月、『BBC』のインタビューで、「最初の数週間や数カ月間、ウイルスを十分に理解していなかった」「(初期対応で)違うやり方ができたかもしれない」と反省の弁を口にした。 ただ「政策決定権はあくまで政府にある」とする同首相は、SAGEの提言は提言として、独自に判断を下そうという姿勢は基本的に変わらなかった。これに不満を抱くSAGEメンバーが「首相は科学的知見を無視している」とメディアに舞台裏を明かし、メディアが政府を叩くという混乱も度々起きた。 一例がクリスマス休暇の対応だった。英政府は11月下旬、3世帯まで一緒に過ごせるように規制を緩和すると発表したが、SAGEはその数日後に、 「気分が高揚するクリスマスに規制を緩和すると、感染者は急増する」という内容の提言を公表した。実際、そのようになり、英政府は再び感染抑止策を強化しなければならなかった。また今年1月初めから英国は3度目のロックダウンに踏み切ることになったが、同首相は、「私の考えでは学校は安全で、教育は最優先課題だ」と、学校閉鎖を伴わなければロックダウンの効果が薄れるとのSAGEの提言を入れなかった。しかしロックダウンに踏み切る直前、家庭でのリモート教育に転換した。 日英の政府と科学助言グループの関係を比べると、日本は政府が自らの政策決定の正当性と根拠を専門家会議、分科会に求めようとする傾向が強いのに対して、英国は政府としての独自性を打ち出そうとする姿勢が目立つ。その分、「結果責任は政府が負う」という自負が強い。 英国では昨年12月初旬にワクチン接種が始まり、人口比では主要国の中で最も進んでいる。遅くとも今年9月に全成人の接種が終わる見通しだ。もっとも変異ウイルスが急拡大しており、ワクチン効果が続くのかなど不透明さはまだまだ残る。10年前に来日したベディントン教授は「この世の中で確かなことは『確実なものなど何もない』ということだ」と述べたが、ウイルスとの戦いはこの言葉を胸に、シニシズム(冷笑)やニヒリズム(虚無)に陥ることなく「解」を模索していかねばならない。(了)』、「日本は政府が自らの政策決定の正当性と根拠を専門家会議、分科会に求めようとする傾向が強いのに対して、英国は政府としての独自性を打ち出そうとする姿勢が目立つ。その分、「結果責任は政府が負う」という自負が強い」、日本のやり方は役割分担が不明で、私は英国のやり方の方がいいと感じる。この(下)は原発問題とは大きく離れてしまい、本来は「パンデミック」で取り上げるべきだが、大使館の流れを重視して「原発問題」に強引に潜り込ませたことをお詫びしたい。
タグ:原発問題 (その15)(「ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか」3題:(上)、(中)、(下)) Foresight 「ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか(上)」 驚くべき冷静な対応だ 被災地の英国人は600人、誰とも連絡がつかなかった 「容易ならざる事態と認識した英政府も、関係省庁が参加する危機管理委員会(COBRA)を立ち上げていた」 「英外務省はロンドンと各国の英大使館からスタッフを東京に送り込み、80人の増援部隊が到着した」、東京川からの余生を待たずに手配する手際の良さには驚かされた。 東京の大使館はナンバー2が指揮できる」 「「こういう時はトップが被災地に姿を見せることが大事なのだ。英国は自国民を見捨てないというシグナルであり、困難な状況にある日本人被災者に『英国は日本人と共にここにいる』と、勇気づけるメッセージにもなる。東京の大使館はナンバー2が指揮できる」、日本とは真逆の対応だ 被災地入りの決断を支えた「SAGE」の助言 「ウォレン氏が他の大使に先駆けて被災地に入れたのも、SAGEの助言があったればこそだった。 SAGE=緊急時科学助言グループは、緊急時に科学的知見に基づいた助言を得るための英政府の組織で、各省庁の科学顧問や外部の専門家で構成されている」、うらやましいほど整った支援体制だ。 「被災直後の現地を3泊4日にわたって見て回ったことは、英国人の安否情報の早期確認に大いに役立った。また英本国にとっても被災地の様子を詳しく知る手助けになったはずである」、その通りなのだろう 「ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか(中)」 確かに「ISIS」の「発表」を、通常の国は慌てふためくだろう。 日本脱出の動きが広がる中で 「日本語を話すドイツの知日派大使のフォルカー・シュタンツェル氏は大使館機能を関西に移すことに強く反対したといわれる。しかし独政府の指示に折れざるを得なかった。 「大使は本国の決定に怒っていた」と知り合いの駐日外交官は私に語っていたが、ドイツ国内の反原発の世論を政府も無視できなかった」、「知日派大使」が反対しても、「大使館機能を関西に移す」、「ドイツ」らしい 想定し得る最悪の事態を明示 「東京から英国人を避難させる必要はないとの結論」、「この報告は在英大使館のホームページに全文掲載」、日本のマスコミが伝えた記憶はない。駐在記者の怠慢のようだ。 「科学的知見」と「政治判断」の衝突 「日本の世論に直接働きかけるパブリック・ディプロマシーで英国は出色だった」、さすがだ。 「キャメロン英首相がウォレン氏に、「英国民を首都圏から避難させるべきではないか」と連絡してきた」、「「科学的な根拠もなく、慌てて自国民を首都圏から避難させることに私は否定的だった」と言い、首相や外相にも意見具申した。しかし本国との調整の上で、次のような含みをもった告知を大使館のサイトにアップした」、本国からの圧力を巧に逸らす手際はさすがだ 20日で25回のインタビュー 「2015年3月、英国のウィリアム王子が来日し、4日間の滞在中、2日間にわたって宮城県石巻市、女川町、福島県内などの被災地を訪問し、被災者と交流」、「ウォレン氏」の活躍なくしては実現しなかっただろう 「ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか(下)」 「「この世の中で確かなことは『確実なものなど何もない』ということだけである」 との警句」、はまさに言い得て妙だ 日本に欠けている「法的根拠」 「本来、専門家会議の役割は科学的知見に基づきさまざまな選択肢を示し、併せてそれぞれの効果と問題点を提示することで、政府はそれを踏まえて対策を決め、理由を説明し、結果責任を負う。この役割分担があいまいで、時に逆転した印象を与えた」 「透明性という点でも不十分だった。専門家会議では議事録概要にとどめ、議事録は作成されていなかったことが判明したが、メンバーから「発言を探られたくない」との声が出て、本人の希望で発言を削除できる仕組みにされたことが分かった」、「発言を探られたくない」との声は責任回避で、そんな勝手まで許すべきではない 「政策の正当性」「結果責任」を誰に求めるか 「日本は政府が自らの政策決定の正当性と根拠を専門家会議、分科会に求めようとする傾向が強いのに対して、英国は政府としての独自性を打ち出そうとする姿勢が目立つ。その分、「結果責任は政府が負う」という自負が強い」、日本のやり方は役割分担が不明で、私は英国のやり方の方がいいと感じる この(下)は原発問題とは大きく離れてしまい、本来は「パンデミック」で取り上げるべきだが、大使館の流れを重視して「原発問題」に強引に潜り込ませたことをお詫びしたい。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

自殺(その3)(コロナ脳のマスコミが無視する「自殺率急増」という不都合な真実、日本人女性の自殺がコロナ禍で増えている背景 経済的、精神的な影響が女性たちを襲っている、「心が追い込まれるとき」人が抱える4つの感覚 なぜ自殺急増?自衛隊メンタル教官が分析する) [社会]

自殺については、昨年10月13日に取上げた。今日は、(その3)(コロナ脳のマスコミが無視する「自殺率急増」という不都合な真実、日本人女性の自殺がコロナ禍で増えている背景 経済的、精神的な影響が女性たちを襲っている、「心が追い込まれるとき」人が抱える4つの感覚 なぜ自殺急増?自衛隊メンタル教官が分析する)である。

先ずは、本年2月13日付けエコノミストOnlineが掲載した漫画家の小林よしのり氏による「コロナ脳のマスコミが無視する「自殺率急増」という不都合な真実(小林よしのり)」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210209/se1/00m/020/002000c
・『日本国内で初めて新型コロナ感染者が確認されたのは昨年1月16日。新コロは「上陸1年」を迎えた。 マスコミは今も新コロの感染者(正確には陽性者)と死者の数をこの日からの「累計」で報じ続けているが、それはおかしい。 1年たったのだから「年間」の数字を確定させ、それ以降は「2年目」の数字として別に集計しなければ、インフルエンザなどとの正確な比較ができなくなってしまう。 今回確定した、日本の新コロ年間感染者数は31万3844人、死者4379人だ。 インフルエンザの年間推計患者数約1000万人、間接死込みの死者数約1万人に比べて、あまりにも少ない。 しかもインフルは症状が出て医療機関を受診した「患者数」であるのに対して、新コロの「感染者」は検査を拡大できるだけ拡大し、無症状者まで徹底的にあぶり出した数字で、死者も「死因を問わず」死亡時に検査陽性であれば全て「コロナ死」に計上しており、水増しに水増しを重ねた数字なのに、それでもインフルとは比較にならないほど少ないのだ。 その一方で、恐るべきニュースがあった。東京都健康長寿医療センターなどの調査によると、昨年7月から10月までのいわゆる「第2波」の間、自殺率が前年同期比で16%増加。特に女性は37%の増加で男性の5倍、20歳未満の子供は49%も増えたという。 新型コロナウイルス感染症では、いまだに20歳未満の子供は一人も死んでいないのに、子供の自殺率は49%も上昇していたのである! いわゆる「コロナ禍」とは「ウイルス禍」ではなく、殊更に恐怖をあおり立てた「マスコミ禍」「専門家禍」であり、定見もなくこれに流された「政治禍」だったことが、これだけでも明らかである』、「20歳未満の子供は一人も死んでいないのに、子供の自殺率は49%も上昇」、確かに不思議だ。「マスコミ禍」「専門家禍」の可能性もあるが、子供の場合は親が自宅にいるようになった、お祭りなど発散する機会が少なくなった、など要因は様々だろう。

次に、3月1日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「日本人女性の自殺がコロナ禍で増えている背景 経済的、精神的な影響が女性たちを襲っている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/414038
・『昨年の春に日本が新型コロナウイルスへの対抗策を強化してから間もなく、橋本なずなさんはパニック発作に苦しめられるようになった。橋本さんが個人トレーナーとして働いていた大阪のスポーツジムは業務を停止し、友人たちは政府の要請に従ってステイホームしていた。 孤独になることをおそれて、橋本さんは付き合ってほんの数カ月の男性に電話をして、来てくれるよう頼んだ。そのときでさえ、橋本さんは涙が止まらないことがあった。橋本さんはその年の初めに鬱の診断を受けており、そのことも悪循環となった。「私はもともと小さな世界に住んでいましたが」と、橋本さんは語る。「さらに小さくなってしまったと感じました」。 7月になる頃までには、橋本さんはほかにどうしようもないと感じ、自殺を試みた。恋人が橋本さんを発見して救急車を呼び、一命を取り留めた。今、橋本さんは自分の経験を公に話している。日本でメンタルヘルスについて語ることに付きまとう悪いイメージを払拭したいと望んでいるのだ』、勤務先の「大阪のスポーツジムは業務を停止」、「その年の初めに鬱の診断を受けており」、「自殺を試みた。恋人が橋本さんを発見して救急車を呼び、一命を取り留めた」、これだけは幸運だったようだ。
・『女性の自殺件数は深刻なほど上昇  パンデミックが日本の多くの地域を襲う中、女性に対するプレッシャーが強まっている。多くの国でそうであるように、この国でもより多くの女性が職を失っている。 東京では、約5人に1人の女性が一人暮らしをしており、外出を自粛し、高齢家族を訪れてはいけない、という強い要請が孤独感をより加速させている。家庭を持つ女性も、家事や子育てにおける根深い不平等に苦労したり、DVや性的暴行の増加に苦しめられたりしている。 パンデミックの精神的および身体的な苦痛により、日本人女性の自殺件数は深刻なほど急増している。昨年、日本では6976人の女性が自ら命を絶っており、2019年に比べ約15%増えた。10年以上ぶりとなる前年比増加だ。 それぞれの自殺や自殺未遂の背景には一人ひとりの複雑に絡み合う事情に根ざした悲劇がある。しかし、女性の自殺者数は昨年7カ月連続で拡大しており、世界最高レベルの自殺率の減少に努めてきた政府関係者やメンタルヘルスの専門家の懸念するところとなっている(昨年の自殺者の数は男性のほうが多かったが、男性の自殺者数は2019年からは減少している。男女合わせると、自殺者数は4%弱の増加となった)。 この状況は日本にとっての長年の課題をさらに強めている。「我慢すること」が美とされる社会の中、メンタルヘルスの問題について語ることは依然として難しい。 社会的結束にもとづく文化や、マスク着用・政府要請に対する社会的プレッシャーが強い文化は、コロナ禍ストレスを増幅させる要因にもなっている。老人や子どもの世話をするのはまず女性であると見なされがちで、これができなかったり、コロナウイルスに感染してしまった場合、世間体が悪くなるおそれもある。 「女性がウイルス予防の重荷を背負っている」と、特定非営利活動法人メンタルケア協議会の西村由紀理事は語る。「女性は家族の健康の面倒を見なければならず、清潔面の管理もしなければならず、それができない場合は恥をかく可能性がある」』、「社会的結束にもとづく文化や、マスク着用・政府要請に対する社会的プレッシャーが強い文化は、コロナ禍ストレスを増幅させる要因にもなっている」、困ったことだ。「「女性は家族の健康の面倒を見なければならず、清潔面の管理もしなければならず、それができない場合は恥をかく可能性がある」、確かにその通りだ。
・『感染者が責められやすい風潮  広く報道された情報によると、30代の女性がコロナウイルス感染からの回復後に自宅で命を絶ったという。日本のメディアは彼女の書き置きに飛びついた。そこには他人に感染させて迷惑をかけてしまった可能性に対する苦悩がつづられていた。一方、専門家は恥辱感が彼女の絶望を後押ししていたのかについては、疑問を投げかけている。 「残念なことだが、現在の風潮では被害者を責めがちだ」と、早稲田大学で自殺の研究をしている実証政治経済学の上田路子准教授は語る。上田准教授は昨年の調査で、40%の回答者がウイルスに感染してしまった場合の社会的なプレッシャーを心配しているということを見い出した。 「もしあなたが "私たちの一員" でないのであれば、私たちは基本的にあなたをサポートはしないし、メンタルヘルスの問題を抱えている人は私たちの一員ではない、ということなのです」と上田准教授は指摘する。 専門家たちは命を絶つ芸能人や映画が昨年相次いだことが、模倣的な自殺の連続に拍車を掛けたのではないかとも懸念している。受賞歴のある人気女優の竹内結子さんが9月下旬に亡くなった後、その後数カ月の間に自らの命を絶った女性の数は前年比90%近く急増している。 竹内さんの死後間もなく、ナオさん(30)はブログの執筆を始めた。彼女は長きにわたって鬱や摂食障害と闘っており、その歴史をつづるためだ。ナオさんは3年前の自身の自殺未遂について率直に書いた。 メンタルヘルスの苦悩についてこのようにオープンに語ることは、依然として日本では比較的珍しいことである。芸能人の自殺によってナオさん(名字は本人の希望によりプライバシー保護のため非公表)は、パンデミックの最中に、感情的に最悪の状態に陥ったら自分はどういう反応をするだろうか、と考えたという。 「家で、1人で過ごしていると、社会から疎外されていると強く感じます。そしてその感覚は本当に苦しいものです」と、ナオさんは語る。「もし自分が今そういう状況にいたら、と想像してみると、自殺未遂はもっと早期に発生していたと思います。そしておそらく、自殺に成功してしまっていただろうと思います」』、「専門家たちは命を絶つ芸能人や映画が昨年相次いだことが、模倣的な自殺の連続に拍車を掛けたのではないかとも懸念」、私には理解し難い行動だ。「もしあなたが "私たちの一員" でないのであれば、私たちは基本的にあなたをサポートはしないし、メンタルヘルスの問題を抱えている人は私たちの一員ではない、ということなのです」、予想以上に冷淡なようだ。
・『「心の病」につきまとうタブー  自身の体験についてつづったナオさんは、今では結婚しているが、絶望を感じている誰かの助けになりたかったのだと語る。多くの人たちが友人や仕事仲間から隔離されている時期であれば特にそうだ。 「誰かが自分と同じような状況を経験したことがある、あるいは、経験中であることを知り、そして専門家の助けを求めて実際に役立ったということがわかれば、自分も同じようにしよう、と励ませると思ったのです」と、ナオさんは話す。日本で心の病につきまとうタブーを取り除く手助けをしたいとナオさんは言う。 ナオさんの夫はコンサルタント会社で初めて彼女と出会ったとき、ナオさんがいかに長時間労働や過酷な職場の風潮に苦しんできたかを見ていた。その後ナオさんは仕事を辞め、浮き草のようになってしまったと感じた。 コロナ禍で女性のほうが不釣り合いに仕事を失い、苦しんでいる。こうした女性たちの多くは、レストランやバー、ホテルといった新型コロナの影響を最も受けている業界の従業員である。 働く女性の約半数がパートタイムや契約社員であり、事業が停滞しているときには企業は真っ先にそうした従業員を解雇する。昨年1?9月までに約144万人のそうした人々が職を失った。半数以上が女性だ。 ナオさんは治療を受けるために、自らコンサルティング会社を辞めたが、今後は家賃が払えなくなる、といった不安にさいなまれたことを覚えている。ナオさんと現在は夫である婚約者が結婚の計画を前倒しにすると決めた時、ナオさんの父親は彼女が「わがままだ」と責めた。「すべてを失ったと感じました」とナオさんは振り返る。 そうした感覚が鬱の引き金となり、自殺未遂につながったと言う。精神病院でしばらく過ごして治療を継続した後、ナオさんは自信を取り戻し、週4日間の仕事を見つけた。出版社のデジタル部門の仕事だ。そして現在は、仕事量をコントロールすることができているという。 過去にも日本の自殺率は、経済危機時に急増している。1990年代のバブルの崩壊後や、2008年の世界的景気後退後もそうだった。 過去の経済危機では、職を失うなどの影響を最も受けたのは男性で、男性の自殺が増えていた。歴史的に見ると、日本では男性の自殺件数は女性の件数を上回っており、その比率は少なくとも2対1となっている。「彼らは仕事や財産を失ったことに絶望を感じていた」と、社会疫学を専門とする大阪大学国際公共政策研究科の松林哲也教授は語る』、「過去の経済危機では、職を失うなどの影響を最も受けたのは男性で、男性の自殺が増えていた。歴史的に見ると、日本では男性の自殺件数は女性の件数を上回っており、その比率は少なくとも2対1」、なるほど。
・『命を絶った女性の3分の2以上が失業中  松林教授によると、昨年失業率が最高となった都道府県では、40歳以下の女性の自殺の増加が最も多かったという。2020年に命を絶った女性の3分の2以上が失業中だった。 40歳以下の女性では、自殺は昨年25%近く上昇した。また昨年、命を絶った女子高生の数は2倍に上っている。 冒頭の橋本さんの場合、恋人に経済的に依存しているという不安が絶望感につながっていた。個人トレーナーとして勤務していたジムが営業を再開したとき、橋本さんは復職できるほど感情的に安定しているとは感じていなかった。そして、感情的、経済的に恋人に依存していることに罪悪感を感じたという。 橋本さんは勤務先で、建設業界で働く男性(23)と出会った。男性は橋本さんの顧客だった。自分の鬱がどうにもならなくなってきていることを打ち明けたのは、2人が付き合い始めてからわずか3カ月後のことだった。治療費を払うことができず、ひどい不安発作にも苦しめられた。 自殺未遂をしたとき橋本さんは、これで恋人が自分の世話をする責任から解放できる、としか考えることができなかった。「彼の重荷を取り除きたかったのです」と橋本さんは言う。 失職していない人であっても、多くのストレスに見舞われる可能性がある。パンデミックが起きる前は、在宅勤務は日本ではめずらしかった。それが突然、遠く離れた上司のご機嫌をとるだけでなく、子どもたちの安全や衛生対策を考えなければならなくなった。子どもたちもウイルスに弱い、高齢の両親を守ることを考えなければいけないケースもある。 「人とかかわることができなかったり、ストレスを共有することができなかったりすれば(プレッシャーを感じたり、うつ状態になることは)驚きに値しない」と、京都外国語大学社会学部の根本宮美子教授は語る』、なるほど。
・『女性や若年層が助けを求められるように  自殺未遂を乗り越えた橋本さんは今、ほかの人が自らの感情的な問題を語ることを学んだり、専門家につなげる手助けをしたいと考えている。橋本さんの恋人は、彼女がオープンに鬱のことを話してくれたことを感謝していると言う。 「彼女は自分が必要としていることや、何が間違っているのかを本当に打ち明けてくれるタイプの人です。なので、彼女を支えることはとても容易なことです。彼女自身が必要としていることを声に出してくれるからです」 2人は共同で「Bloste(ブロステ)」という名前のアプリを開発した(「ストレスを発散する」=「blow off steam」の略)。このアプリでは、カウンセリングを求めている人と、セラピストをマッチングができる。 橋本さんはキャリアの長いセラピストだけでなく、キャリアを始めたばかりの人の双方を採用しようと考えている。若い依頼者が支払いやすい料金を設定する可能性が高い人を求めているからだ。最終的には、橋本さん自身も特に女性を対象としたセラピストとして訓練を受けたいと考えている。 「日本では主に女性のキャリアアップや経済面での福祉に焦点が置かれていますが、私は女性のメンタルヘルスを重視したいと考えています」』、「2人は共同で「Bloste(ブロステ)」という名前のアプリを開発した」、大したものだ。今後も自らの体験をもとに「セラピスト」活動を展開してほしいものだ。

第三に、3月4日付け東洋経済オンラインが掲載した心理カウンセラー・メンタルレスキュー協会理事長の下園 壮太氏による「「心が追い込まれるとき」人が抱える4つの感覚 なぜ自殺急増?自衛隊メンタル教官が分析する」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/414025
・『厚生労働省は1月22日、2020年は自殺者数が11年ぶりに増え、2万919人(速報値)だったと発表した。とくに女性は6976人で前年より885人(14.5%)も増加した。新型コロナウイルスによる生活の変化が自殺増加の背景にあるとみられている。 コロナ禍による生活困窮など経済的な原因が大きいと考えられているが、精神面での要因を指摘するのが、自衛隊で長年メンタル教官を務めてきた下園壮太氏。ロングセラー『自衛隊メンタル教官が教える心の疲れをとる技術』の著書もある下園氏に、長引くコロナ禍がメンタルに及ぼす影響とその対処法について話を伺った』、興味深そうだ。
・『うつになる要素が今あふれている  まずお話ししたいのは、コロナ禍がもたらした生活の変化は、うつになりやすい要素があふれている、ということです。そのことについて、順を追って説明していきましょう。 (1)コロナ禍は「ステルス疲労」をもたらす  コロナ禍による生活の変化により、「本人にとって自覚しづらい疲労=ステルス疲労」がたまっていくことがあります。 たとえば、テレワーク。「新しい生活様式」という言葉も使われ、通勤時間が減って楽になった、嫌いな上司にも直接会わなくていいから気楽だ、といったプラスの面が強調され、いいことずくめのように感じられます。 ところが実際は、初めてのテレワークではオンライン会議への準備や慣れるまでエネルギーを使いますし、通勤がなくなり、よいことばかりのように感じられても、外出しないことによるストレスも感じています。 そもそも、人間にとってあらゆる「変化」はストレスです。結婚、引っ越し、異動、転勤、転職など、あらゆる変化は、たとえそれがプラスの変化であっても、新しいことに対応して慣れるためにエネルギーを使うという意味で、疲れるのです。 ただ、転勤といった1つだけの要素であれば、通常は2~3カ月で慣れて、疲労も取れて新生活になじむことができます。ところがコロナ禍によって、この1年は新たな変化の連続でした。突然の緊急事態宣言、学校や保育園の休校・休園、テレワーク、マスクやトイレットペーパーの品切れ、自粛警察……などなど。 緊急事態宣言が解除されたと思ったら、今度はGO TO TRAVELやGO TO EATの推奨。そしてまた、再度の緊急事態宣言……。ブレーキとアクセルを次々と踏みかえるような、まさしく変化にあふれた1年で、気づかないうちに、多くの人に自分では自覚しにくいステルス疲労がたまっています』、「コロナ禍は「ステルス疲労」をもたらす」とは言い得て妙だ。
・『(2)「生命直結の不安」という特徴  新型コロナウイルスは生命に直結する「不安」をもたらします。高齢者や持病を持っていない人でも、感染に関する恐怖はあり、その不安はさまざまな報道によって、日々、大きくなったり、小さくなったり揺れ動いています。 明日のプレゼンで失敗するかも、といった不安とは質の違う、自分や家族の生命に関する不安に1年間さらされ続けるというのも、疲労を蓄積させます。) (3)「我慢」がエネルギーを消耗させる  緊急事態宣言にともなう「自粛」の要請により、これまで好きだったことを「我慢」しなければなりません。人間は「我慢」することにも、精神的エネルギーを多く使います。 (4)「不安の感受性」の個人差  コロナ禍では、感染への不安の強弱が人によって大きく異なります。「不安の感受性」の個人差が大きいからこそ、周りの人はどう思っているのか、余計に気を遣って観察したり、話をしたりしないといけません。他者の考え方、行動にこれまで以上に気を遣わなければならず、その結果、疲労がじわじわとたまっていきます。 (5)みんな同じつらさを抱えているのに、というプレッシャー  コロナ禍は日本中、世界中の人に降りかかっている災禍です。医療従事者をはじめ、多くの人が頑張っているのに、自分みたいに恵まれている立場の人間が疲れたなんて言っていられない。そのように感じる人も多いのです。 疲れやつらさを感じていても、それを口に出しにくい、出しているような状況ではない、と自分の心にふたをしてしまうことで、ますますつらさは増していきます。 (1)から(5)まで見てきましたが、ステルス疲労は新型コロナウイルスの症状の特徴として言われている「ハッピー・ハイポキシア(幸せな低酸素状態)」に似ていると思います。 「ハッピー・ハイポキシア」とは、血液中の酸素濃度が96~98%あるのが正常な状態のところ、70%を切るような濃度でも苦しさを感じずに話をできる状態の患者さんを指す言葉です。つまり、酸素濃度が足りていなくても自覚症状がないのです。しかし、この間に病状は進行して、急激に重症化するケースも多いのです。 「ステルス疲労」も見えず、感じず、自覚していないうちに心の中で疲労が蓄積して、うつ病になったり、最悪の場合、自殺に至ってしまうという意味で、非常に注意を要するものです』、「ステルス疲労は新型コロナウイルスの症状の特徴として言われている「ハッピー・ハイポキシア」に似ている」、恐ろしいことだ。
・『雑談の減少の影響  新型コロナウイルスによる生活の変化が負担感をもたらすものの一つに「雑談の減少」があります。女性は1日に約2万語の単語を発し、その量が6000語に減るとストレスを感じるという研究結果もあります(男性は1日に約7000語。アメリカ、メリーランド大学)。 テレワークが進むと必然的に雑談の量は減ります。Zoomなどのオンラインの打ち合わせや会議は、目的を持って行うもので、雑談はなかなかしにくいものです。発言がかぶってしまうと、聞こえなくなったりもします。そうなると、どうしても言葉を発する量が減ってしまいます。 私はうつ病になりやすい、「4つの痛いところ」があると思っています。 (1)負担感、(2)無力感、(3)自責感、(4)不安感 です。新型コロナウイルスはステルス疲労で(1)負担感を高めます。そして、長引くウイルスの流行は自分や人間社会が頑張ってもウイルスにはなかなか勝てないという(2)無力感を強め、自分が無自覚に病気を人にうつしているかもしれないという(3)自責感も刺激します。 そして、雇用や収入などへの(4)不安感も、コロナウイルス終息の先行きが不透明なことから、強まっていきます。 (1)から(4)の「4つの痛いところ」が揃ったとき、これから先、生きていてもよいことなんてないし、自分は誰にも貢献できないし、誰にも構ってもらえない。私なんかいないほうがいい、という「死にたい気持ち」が出てきてしまいやすいのです』、「女性は1日に約2万語の単語を発し・・・男性は1日に約7000語」、やはり「女性」のおしゃべりは万国共通のようだ。
・『コロナ禍を生き抜くためにやってほしい3つのこと  これからも続くコロナ禍を生き抜くためには、まずこれまで述べてきたメカニズムを理解し、自分が疲労している、ということを知っておくことが大事です。疲労していて当たり前なんだと、まず自分の疲労を自覚してください。自覚してはじめて、「疲労をとろう、自分を労わろう」という気持ちが生まれてきます。 疲労を自覚したうえで、(1)休む、(2)不安情報から離れる、(3)体を動かすの3つを心がけてください。 疲れたら(1)休むのが一番です。普段より1時間、睡眠を長くとるようにするとか、何もしないぼーっとする時間を増やすとか、好きな映画を見るとか、心身を意識して休ませるようにしてください。 コロナ禍で高まる不安を鎮めるためには、(2)不安情報からも離れましょう。テレビのワイドショーを1日中つけていると、ずっと不安な気持ちになってしまいます。ネットでコロナ情報を検索し続けるのもよくないです。情報は新聞からとか、このニュース番組だけ見ると決めて、不安情報に接する時間を減らしてください。 コロナ禍で外出自粛が増えると、家にこもりがちになります。人間は動物、動くものですので、動かなくなると、どうしてもうつっぽい気分になりやすくなります。ですから、無理のない範囲で、毎日散歩するとか、スーパーに買い物に行くなど、(3)外に出て体を動かすことを心がけてください。 疲労を自覚し、(1)から(3)の対策を実行する人が増えることで、コロナ禍によるメンタルクライシスを乗り越える人が増えると信じています』、確かに「(1)から(3)の対策」は有効なようだ。「メンタルクライシス」に陥っていなくてもお勧めしたい。
タグ:自殺 (その3)(コロナ脳のマスコミが無視する「自殺率急増」という不都合な真実、日本人女性の自殺がコロナ禍で増えている背景 経済的、精神的な影響が女性たちを襲っている、「心が追い込まれるとき」人が抱える4つの感覚 なぜ自殺急増?自衛隊メンタル教官が分析する) エコノミストOnline 小林よしのり 「コロナ脳のマスコミが無視する「自殺率急増」という不都合な真実(小林よしのり)」 「20歳未満の子供は一人も死んでいないのに、子供の自殺率は49%も上昇」、確かに不思議だ。「マスコミ禍」「専門家禍」の可能性もあるが、子供の場合は親が自宅にいるようになった、お祭りなど発散する機会が少なくなった、など要因は様々だろう 東洋経済オンライン The New York Times 「日本人女性の自殺がコロナ禍で増えている背景 経済的、精神的な影響が女性たちを襲っている」 勤務先の「大阪のスポーツジムは業務を停止」、「その年の初めに鬱の診断を受けており」、「自殺を試みた。恋人が橋本さんを発見して救急車を呼び、一命を取り留めた」、これだけは幸運だったようだ。 女性の自殺件数は深刻なほど上昇 「社会的結束にもとづく文化や、マスク着用・政府要請に対する社会的プレッシャーが強い文化は、コロナ禍ストレスを増幅させる要因にもなっている」、困ったことだ 「「女性は家族の健康の面倒を見なければならず、清潔面の管理もしなければならず、それができない場合は恥をかく可能性がある」、確かにその通りだ 感染者が責められやすい風潮 「専門家たちは命を絶つ芸能人や映画が昨年相次いだことが、模倣的な自殺の連続に拍車を掛けたのではないかとも懸念」、私には理解し難い行動だ 「もしあなたが "私たちの一員" でないのであれば、私たちは基本的にあなたをサポートはしないし、メンタルヘルスの問題を抱えている人は私たちの一員ではない、ということなのです」、予想以上に冷淡なようだ 「心の病」につきまとうタブー 「過去の経済危機では、職を失うなどの影響を最も受けたのは男性で、男性の自殺が増えていた。歴史的に見ると、日本では男性の自殺件数は女性の件数を上回っており、その比率は少なくとも2対1」、なるほど 命を絶った女性の3分の2以上が失業中 女性や若年層が助けを求められるように 「2人は共同で「Bloste(ブロステ)」という名前のアプリを開発した」、大したものだ。今後も自らの体験をもとに「セラピスト」活動を展開してほしいものだ 下園 壮太 「「心が追い込まれるとき」人が抱える4つの感覚 なぜ自殺急増?自衛隊メンタル教官が分析する」 うつになる要素が今あふれている 「コロナ禍は「ステルス疲労」をもたらす」とは言い得て妙だ。 (2)「生命直結の不安」という特徴 (3)「我慢」がエネルギーを消耗させる (4)「不安の感受性」の個人差 (5)みんな同じつらさを抱えているのに、というプレッシャー 「ステルス疲労は新型コロナウイルスの症状の特徴として言われている「ハッピー・ハイポキシア」に似ている」、恐ろしいことだ 雑談の減少の影響 「女性は1日に約2万語の単語を発し・・・男性は1日に約7000語」、やはり「女性」のおしゃべりは万国共通のようだ コロナ禍を生き抜くためにやってほしい3つのこと (1)休む (2)不安情報から離れる (3)体を動かす 確かに「(1)から(3)の対策」は有効なようだ。「メンタルクライシス」に陥っていなくてもお勧めしたい
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

韓国(文在寅大統領)(その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論) [外交]

韓国(文在寅大統領)については、昨年12月26日に取上げた。今日は、(その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論)である。

先ずは、本年2月3日付け東洋経済オンラインが転載したソウル新聞「韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/409182
・『1997年3月。韓国海軍が日本と対等な軍事力を持つために野心を持って準備していた「韓国型航空母艦」導入計画は、韓国国防省と合同参謀本部の反対に直面した。当時の金泳三大統領は、韓国の海軍戦力が日本の10%にすぎないため、基準排水量で2万トン級の軽空母と6隻の駆逐艦からなる空母戦団を編成するよう指示していた(日本の海上自衛隊護衛艦「いずも型」の基準排水量は1万9950トン)。 合同参謀本部などが空母建造に反対した表面的な理由は、「周辺国の軍備増強を引き起こし、地域の安全保障を揺るがしかねない」というものだった。ところが、軍首脳部のホンネは、陸軍中心の合同参謀本部は「当面は北朝鮮に対応する方向で軍事力建設を集中すべき」だった。そのため、空母建造に強く反対した。このとき出たのが、「朝鮮半島不沈空母論」だった』、「韓国型航空母艦」導入計画が「1997年」に出ていたとは初めて知った。「朝鮮半島不沈空母論」とは何なのだろう。
・『23年前の「不沈空母論」が開発のネックに  一方、中国と日本は周辺国が反対するにもかかわらず、空母建造計画を進めていた。とくに中国は、「遼寧」(基準排水量5万3000トン)「山東」(同推定5万5000トン)の2隻の空母を建造し、今や3隻目の空母を準備中だ。これまでアメリカが支配していた太平洋において、力の均衡を崩そうというものだ。中国はアメリカと対等な軍事力を確保するため、4つの空母戦団を編成する方針だ。 2020年12月11日、韓国国会の国防委員会予算審査小委員会。韓国型空母の設計費101億ウォン(約9億4500万円)の代わりに、着手金10億ウォン(約9400万円)だけを確保してほしいとする海軍と防衛事業庁の要請に野党側が強く反対した。「高い維持費に見合うだけの北朝鮮に対する抑止力を持たない」「朝鮮半島は不沈空母だ」という論理が出されたのだ。23年前と同じ論理が出されたことになる。 さらには、「韓国を取り巻く安全保障の現実からいえば必要がない」という意見まで出た。これには海軍が衝撃を受けた。与党内でも一部反対の声が出てしまい、結局、2021年の空母関連予算は1億ウォン(約940万円)にまで減額されてしまった。 ところが、状況は一気に反転する。合同参謀本部は2020年12月30日に合同参謀会議を開き、韓国型空母建造事業について研究開発、または購入するという決定を下した。軍首脳部は軽空母を建造するという計画について「安保上のリスクに対応する未来の合同戦力」と評価し、事業推進を決めた。) これにより、2021~2025年の国防中期計画に韓国型空母建造事業が含まれる可能性が高まった。2021年、防衛事業庁はこの事業の妥当性の分析を、海軍は空母建造と艦載機となるF35B導入に対する細部計画を準備する。事業が順調に進めば、来年2022年に基本設計が始められる。 海軍は23年前の経験を踏まえ、合同参謀本部をどのように説得したのだろうか。海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論した。一人は儒学者の李珥(イ・イ、1536~1584年)、もう一人は李朝の宰相だった柳成龍(リュ・ソンリョン、1542~1607年)だ。 李は1592年の文禄の役(~1593年)が始まる10年前に、「10万人の兵士を育成すべきだ」と主張した人物だった。しかし、「国がこれだけ平和なのに戦争なんて起きるものか」と大批判を受けた。また柳は豊臣軍に抵抗して戦功をなした人物であり、その史書「懲毖録」(ちょうひろく)で「事前に戦争を防ぐことができなかったことを反省すべきだ」と書いている』、「海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論」、歴史sw反論するとは巧みだ。
・『史実を利用して開発計画を承認させた海軍  中国と日本の海軍力は韓国より優位に立つ。海軍首脳部は「周辺大国レベルまで到達するのは難しいが、少なくとも抑止力は保有すべき」と訴えた。20年超の空母建造反対の理由とされていた「朝鮮半島不沈空母論」も、積極的に賛成理由として利用したという。1950年の朝鮮戦争の経験を取り上げたという。 戦争当初、韓国での飛行場運用は事実上不可能な状況であり、空軍戦闘機は日本から出撃していた。しかし、1時間超の時間をかけて対馬海峡を越えてきた戦闘機の作戦時間は、わずか15分だった。一方、アメリカ海軍の空母から出撃した戦闘機は出撃して5~10分で地上軍支援が可能だった。 韓国のF15K戦闘機の作戦時間は、竹島(韓国名・独島)の上空まで30分、中韓で所有権を争う離於(イオ)島(中国名・蘇岩礁)で20分だ。KF16戦闘機の場合、それぞれ10分と5分にすぎない。空中給油機を導入した場合、F15Kであれば竹島上空での作戦時間が90分程度に増え、最新戦闘機となるF35Aの導入も決定されているが、これ以上の空中戦力の追加は限界がある。これを補うことができる未来の戦力が空母なのだと海軍は主張した。 韓国政界では、原子力潜水艦を導入せよとの声が高まっている。しかし、これには韓米原子力協定が先決条件となり、軽空母とは作戦上の性格が違うと海軍は説明する。例えば戦車と自走砲の性格が違うように、原子力潜水艦と空母は目標がまったく違うということだ。とくに空母は、存在自体が戦争抑止力と外交力の確保につながるのだと海軍は説明する。 一方で、韓国の国力に軽空母は浪費と反対する声もある。しかし、韓国より軍事力や経済力が低いとされるイタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有している。海軍は合同参謀本部に「空母建造には10年以上かかる。建造費を分散させれば、国防予算内で十分に支援できる」と積極的に説明しているようだ。(韓国「ソウル新聞」2021年1月29日)』、無駄な装備の典型で、軍人のおもちゃだ。しかし、「イタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有」というのが、保有論への後押しとなるのだろう。「空母」の仮想敵国は、日本なのではあるまいか。自衛隊にはヘリコプター空母であり護衛艦として、ひゅうが型、いずも型があるが、戦闘機搭載可能に改装するのだろうか。日本にとっても、無駄だ。

次に、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/265163
・『約5年ぶりに米韓2+2が実現  米国のトニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官は3月15~17日の日程で訪日した後、17日から1泊2日の日程で韓国を訪問することで日程調整しているという。韓国では鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相、徐旭(ソ・ウク)国防相と「2+2(外務・国防相)会議」が実現する見込みである。米韓による2+2は2016年10月にワシントンで開催されたのが最後であり、約5年ぶりのことである。 中国や北朝鮮などの「レッドチーム」入りを言われている韓国は、これまで日本ばかりでなく米国からもスルーされてきており、日米豪印の4カ国首脳会談にも参加しない見通しである。そうした中で、2+2が開かれる見込みとなったことで、文在寅政権はホッと胸をなで下ろしていることであろう。) 米韓関係では、さらに良いニュースが飛び込んできた。米国務省のプライス報道官は8日の定例会見で「昨日、米国と韓国との交渉団は6年分の新たな防衛費分担金特別協定(SMA)の草案に対して合意に至った」と発表した。同報道官は、米国はトランプ政権の時のような要求はしないのかと問われ、「韓国はわれわれの同盟、過酷な要求はしない」と述べた。 国防総省のカービー報道官も分担金交渉の妥結が「同盟と共同防衛を強化するものと期待する」と述べた。さらに「今回の合意は自由で開かれたインド太平洋地域と北東アジアで、米韓同盟が平和と安保、安定の核心軸(linchpin)であるという事実を再確認するものだ」と述べ、この合意を歓迎した。 しかし、米韓関係が平穏な方向に向かっているように思われる出来事は、むしろ米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップだと考えていいのではないか。 それはカービー報道官の「米韓同盟がインド太平洋と北東アジアの平和と安保、安定の核心軸」という言葉に反映されている』、「米韓による2+2は・・・約5年ぶり」、とはずいぶん冷え切っていたようだ。「米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップ」、とはさすが深い読みだ。
・『米国の北朝鮮政策の再検討に 文政権はついていけない  米バイデン政権は北朝鮮への対応の再検討を行っている。これまでの対応では北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制することはできなかった。これまで手をこまねいている間に北朝鮮の核・ミサイル開発は後戻りできないほどに進んでしまった。そうした北朝鮮に対して、いかに圧力を高めていくか極めて難しい選択になるだろう。 半面、北朝鮮の経済は極めて困難な状況にある。1995年前後に100万人ともいわれる餓死者が出た状況に酷似しているとさえいわれる。北朝鮮経済が正常化するためには核・ミサイル開発を放棄し、劣悪な国内の人道問題を改善することで、国際社会の支援を引き出す以外ない。 北朝鮮のひっ迫した状況は、外部からの圧力に対する抵抗力を弱めているであろう。したがって日米韓はそこに問題解決の可能性を見いだしたい。同時に金正恩総書記は政権の崩壊を恐れ、外部からの圧力の強化にどのような形で反発してくるか、予測が難しく、軍事的衝突に発展する可能性も排除できないかもしれない。こうした命題に対処し、北朝鮮の行動を抑制するためには、日米韓の極めて緊密な連携と協力が必要である。 しかし、韓国は相変わらず、北朝鮮は非核化する意思がある、などと非現実的なことを言い、世界を惑わしている。また、トランプ大統領と金正恩総書記が行ったシンガポール首脳会談の状況に立ち戻り、米朝関係を再構築することを求めている。だが、シンガポール会談は、北朝鮮に核・ミサイル開発の時間稼ぎをさせただけで、失敗であった。 それでも韓国としては、北朝鮮を支援することで、当面の衝突を回避し、あわよくば両国の協力関係を強化することを狙っているようだ。 こうしたデリケートな問題を、今回の米韓2+2でどこまで議論できるか。おそらく韓国には米国の求める方向での議論の用意はできていない可能性が高い。特に文政権は、今年4月のソウル市長選挙はじめ国内の腐敗、土地政策、雇用問題にかかりっきりであり、北朝鮮が強く反発する問題に応じることはできないであろう。 こうした韓国の姿勢に米国はどこまで我慢ができるのだろうか』、「バイデン政権」は「トランプ」よりは忍耐強いだろうが、それでも限界がある筈だ。
・『米韓関係は軍事的にも手詰まり感  米韓連合軍は8日から今年上半期の合同演習を開始した。しかし、今年も実際の兵力や装備を大掛かりに動員する野外演習(FTX)ではなく、コンピューターシミュレーションによる指揮所訓練(CPX)となる。韓国軍は、訓練が始まったことは公表したが、「同盟」などの言葉が含まれた訓練の正式名称を含む具体的な進行状況などについては一切公表せず、関連する写真も配布しなかった。 これとは対照的に米国と日本は大規模機動訓練の頻度を大幅に増やしている。米国のインド太平洋軍によると、米海軍の空母「セオドア・ルーズベルト」を中心とする空母艦隊は、グアム沖合の西太平洋で日本の海上自衛隊と機動訓練を行った。自衛隊は1年で合計38回、延べ日数としては406日間米軍と共同訓練を行った。 韓国軍は訓練規模が縮小した理由としてコロナを挙げているが、日米の訓練を見るとそれはあくまでも口実にすぎないことがよくわかる。韓国統一部は「韓米合同訓練が柔軟かつ最小限の形で行われているだけに、北朝鮮もわれわれのこのような努力に相応する態度を示してほしい」と述べ、これが北朝鮮の顔色をうかがったものであることを明らかにしている。 米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない。韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年であることから、既に米韓連合軍の実戦能力が低下していることは避けられないだろう。韓国の態度は米国が求める「北東アジアで米韓同盟が平和と安保、安定の核心軸」にはとても及ばない。 米韓は合同訓練を調整する過程では終盤まで隔たりがあり、先週半ばには全体の日程を確定できなかったほどだという。 先述の通り、今年上半期の合同演習が指揮所訓練方式で行われることになり、韓国軍の米韓合同軍の指揮能力に対する評価が今年下半期に延期された。これによって文在寅大統領の任期である来年5月までに戦時作戦統制権の韓国軍への移管手続きを終えることが現実的に不可能になったとして、8日付中央日報は、「文政権での戦時作戦統制権の移管が事実上白紙になった」と報じている』、「韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年」、「米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない」、とすると、現在の米韓軍は「大規模な合同野外演習」、を全く経験してないことになり、戦力低下したことになる。
・『弱腰の韓国に中国は一層の圧力  バイデン政権はインド太平洋で対中ミサイル網の構築を進めている。これは対中包囲網が軍事分野にも本格的に拡大されることを意味する。専門家は、「中国のけん制のため日米韓協力が強調されており、米国のミサイル包囲網に韓国の参加を公式要請する可能性がある」という見方を示している。この場合、中国の反発は、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備した時よりもはるかに強いものになるだろう。 中国は1980年代から太平洋上の島と島を結ぶ「列島線」を引いて段階的に米軍などの活動領域を狭めようとする戦略「接近阻止・領域拒否」を進めてきた。第1列島線は沖縄-フィリピン-マラッカ海峡を、第2列島線はグアム-サイパン-パプアニューギニアを結ぶ線である。 中国は2020年代初頭までに第2列島線までを事実上「自分たちの庭」にしようとしてきた。米軍は第2列島線までの中国の進出を制止するため、第1列島線に沿って中国に対する精密攻撃ネットワークを構築しようとしている。 ブリンケン国務長官は「中国は21世紀最大の地政学上の宿題」と語り、「持ちうるすべての手段の動員」を公言した。2+2の会合時に対中ミサイル網への参加問題に焦点が当たる可能性もある。 文政権は中国から「三不政策」を約束させられている。「米国のミサイル防衛網への参加、THAAD追加配備、日米韓軍事同盟を行わない」というものである。中国とすれば、日米韓が一体となって対中包囲網を構築することは防ぎたい。そのため、最も弱い柱である韓国に集中的に圧力を加えてくる可能性が高い。 これまで、米中の間で方向性の定まらない態度を示した韓国。米国の対中政策の硬化は一層強い難題を突き付けることになった』、「文政権は中国から「三不政策」を約束させられている」、先ずはこの「約束」をホゴにさせることから始める必要がありそうだ。
・『米国は日本に対し日韓関係の改善を要求  米国の国務長官、国防長官が日本に次いで韓国を訪問するのは、日米韓の協力体制を立て直そうとする意図が背景にあるだろう。日韓では茂木敏充外相はいまだに鄭義溶外相と電話会談すら行っておらず、姜昌一(カン・チャンイル)新駐日大使は菅義偉首相ばかりか茂木外相とも面会していない。 こうした状況で一気に日米韓外相会談、国防相会談を行う機は熟していないが、今回米国側は日韓の橋渡し役を果たそうとするであろう。日本は米国と緊密に協力しているのに対し、韓国はふらふらしている。米国はまず日本に関係の立て直しを求めてくるだろう。そしてその返答をもって韓国の説得に当たるだろう。 日本としては、韓国の現在の国際法違反の状況を受け入れることはできず、歴史問題は韓国国内で処理するよう求めていくことを、改めて米国に伝えるべきであろう。ただ、米国の求める日米韓協力に対してゼロ回答もできないのではないか。 その場合、韓国が北朝鮮への無見識な歩み寄り姿勢を改め、日米韓協力に前向きであれば、日本は韓国と歴史問題でも話し合いを行う用意があることを米側に伝えることが一案として考えられるかもしれない。 日本にとって最悪なシナリオは、韓国が困窮極まりない北朝鮮に助け舟を出すことで生き返らせ、核・ミサイル開発を一層進めることである。日本は米国と共に、このような韓国の姿勢を改めさせるべきであり、それこそが国益にかなうと考える。 日本としては、中国、北朝鮮という2大脅威にいかに向き合っていくか、ということが地政学上の最大の課題である。韓国に対して、無意味な譲歩はすべきではないが、日本の置かれた状況を冷静に分析し対応することが求められている。それは日米韓協力に韓国をコミットさせることである』、「韓国」との関係を含め全面的に同意したい。

第三に、3月9日付けJBPressが掲載したフリージャーナリストの金 愛氏による「レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64395
・『文在寅政権後の有力な次期大統領候補の1人である与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン)代表が、3月5日、江原道春川(チュンチョン)市の中央市場で、卵を投げつけられた。このニュースに接した国民はSNSで文政権と李代表を嘲笑い、「ざまを見ろ」「痛快だ」という反応を見せた。 2022年3月に大統領選挙を控える韓国。文大統領は任期最後の年に、国政掌握に失敗した「レームダック(死に体)化」をさらしている。世論調査で文大統領と共に民主党の支持率はかろうじて30%を超える程度で、文大統領を支持してきた30~40代の政権離れが顕著である。 支持率低下に対応するため、文大統領は外に向かって反日を叫び、国内では抗日を掲げて政権を掌握しようとしている。一方、日韓関係改善の「出口戦略」を目指す文大統領は今年になって日本への対話を申し入れると同時に、共に民主党は「親日派の所有する土地を没収する」という手口で「親日派狩り」を続けている。「二枚舌」と「嘘」を直す気は毛頭ないらしい。 李洛淵代表は、3月5日午後4時29分頃、春川市中央路にある中央市場に入った途端、待ち構えていた「春川中島遺跡保護本部」の女性会員Aさん(50代)に卵を投げつけられた。李代表の白いマスクに卵黄がべたりと付き、着ていたスーツにも卵液が飛び散った。李代表は足を止めてハンカチで卵液を拭くと、マスクを替え、上着を着替えた。 李代表に卵を投げたAさんは、「古代遺跡のある土地に観光地を作る」という計画に反対する団体に所属していることが明らかになった。Aさんは李代表が処罰を望まなかったため現行犯逮捕を免れた。韓国メディアがこのニュースを報道すると、国民はSNSで「ダチョウの卵を投げつけてほしかった」「文大統領に当たればよかったのに」「久しぶりに国民の鬱憤が晴れた」などの反応を見せた。おおむね「卵投げつけ事件」を歓迎するムードである』、なるほど。
・『文在寅政権が犯した失政の数々  李代表は韓国国会300議席中180近い議席を有する与党の代表で、有力な次期大統領候補でもある。李代表は元記者で東京特派員を経験し、国会議員時代には長年、日韓議員連盟で活動した。日本語を流暢に話し、日韓議員連盟の副会長を歴任するなど、“知日派”議員として知られている。2019年には文大統領が、李代表を対日特使に任命、悪化の一途をたどる対日関係の改善を直々に頼んでいる。その李代表に対する「卵投げつけ事件」が国民の注目を浴びている理由は何か。 現在、文政権に対する国民の怒りは極限に達していると言っても過言ではない。2021年3月、世論調査機関リアルメーター(Realmeter)は、文大統領の支持率が史上最低の34.1%と発表した。共に民主党の政党支持率も28.7%で最低値を更新。国民の心はすでに冷え、現政権を見限ろうとしているのだ』、「文大統領の支持率が史上最低の34.1%」、とは想像以上に底堅いようだ。
・『文政権が誕生して以降、韓国人の生活はより一層厳しさを増した。文大統領は2017年5月10日の大統領就任の辞で「国らしい国、一度も経験したことのない国を作る」と公約し、さらに「機会は平等、過程は公正、結果は正義の側に寄る」と宣言した。しかし、何ひとつ実現していない。 国民は経済的に貧窮し、公正や正義は高官たちの不正腐敗で跡形もなく消えた。新型コロナウイルスの拡散を防ぐ名目で、小さな店舗にも営業時間の短縮を強制し、自営業者を廃業に追い込んだ。また「積弊」と名付けた、朴槿恵前政権の時に日韓関係の改善を進めた人々に対する厳格な捜査を行った。 現に、徴用工訴訟の判決を引き延ばした容疑などでヤン・スンテ前最高裁判所長官を、慰安婦合意を主導した李丙琪(イ・ビョンギ)元駐日大使等を次々と逮捕した。さらに、釈放を求める世論が勢いを増しているが、反文在寅を掲げる保守党の李明博元大統領と朴槿恵前大統領をいまだ収監したままである。 ほかにも以下の失策が挙げられる。 ▲左派の雇用を無理やり創出、新規採用枠が激減し、20年ぶりに1カ月の失業者数が過去最高の157万人を記録  ▲憲法違反ではないかと批判を浴びている月城(ウォルソン)原子力発電所1号機の早期閉鎖と、産業通商資源部の「北朝鮮地域での原発建設推進方案」ファイルの削除  ▲文政権発足の一翼を担った活動家や左派たちが独占する太陽光事業  ▲所得主導型成長戦略とは真逆の最低水準となった所得分配と、経済二極化の加速  ▲税金増額につながると懸念されている共産主義的な医療政策「健康保険の保障性強化対策」、いわゆる「文在寅ケア」  ▲北朝鮮に過度な「屈辱外交」を行い、次の段階で徹底的に無視される  ▲24回にも及ぶ不動産対策を打ち出して不動産市場の混乱が加速、全国的な不動産価格が高騰』、これでは支持率低下は当然だ。
・『既成事実化しているコリア・パッシング  日韓関係に加えて、米韓同盟も危機に瀕している。外交関係者らの中には、当事者であるはずの韓国が議論から外される「コリア・パッシング(Korea passing)」が既成事実化していると考える人が多いようだ。 文政権は発足後、「2015年の慰安婦問題韓日合意破棄」「2018年韓国大法院(最高裁判所)のいわゆる元徴用工への賠償命令判決」「2019年日本製品不買運動」「2020年ソウル中央地方法院(裁判所)の元慰安婦への賠償命令判決」などで立て続けに日本を挑発し、「親日派のあぶり出し」と「親日派狩り」を続けてきた。菅義偉政権はこうした文政権を徹底的に無視している。 2021年に大統領に就任したジョー・バイデンと米国政府も北朝鮮と中国におもねる韓国を外して、日本との外交や安全保障協力、太平洋戦略の再編に注力している。日本が提唱し、米国が主導した「日米豪印戦略対話(クアッド)」の中国包囲網から韓国を除外した事実もコリア・パッシングを示していると言えるだろう。 韓国では、日米韓同盟関係が悪化の一途を辿れば、駐韓米軍の撤収という最悪のシナリオにつながりかねない懸念が広がっている。米韓同盟をないがしろにし、北朝鮮が望む「終戦協定」と「在韓国連軍の解体」に賛同してきた文政権を米国は無視しているのだ。 日米との関係を回復するため、どれほどの努力をしても足りない状況だが、その文政権の「親日派狩り」はとどまるところを知らない。3月1日には親日派の子孫たちが所有する土地を没収すると脅しをかけた。一方、韓国ではおよそ数万人の公務員が土地投機をした疑惑が持ち上がっているが、これに対するお咎めはない。親日派狩りで反日を煽る一方、身内が私腹を肥やすのは黙認する。ここにも文政権の二面性が垣間見られる』、「親日派の子孫たちが所有する土地を没収」、韓国の法律ではそんあことが可能なのだろうか。
・『文在寅政権は災いそのもの  「一度も経験したことのない国」。今、韓国人は文政権に対する挫折感と憤りで溢れている。ある国民は「文政権は、問題解決策を提案するどころか災いそのものだ」と非難する。 文政権は、大衆を反日に扇動し、北朝鮮や中国にすり寄って韓国を左傾化させながら、国内経済を破綻に導き、経済の二極化を加速させた。そして、これらの結果はすべてコロナのせい、前の保守政権のせい、親日派と日本のせいだと、「人のせい」にし続けている。李洛淵代表への「卵投げつけ事件」を歓迎する韓国人の姿を見ても、いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっているといえそうだ』、「いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっている」、事実であれば、喜ばしいことだ。
タグ:韓国 (文在寅大統領) (その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論) 東洋経済オンライン ソウル新聞 「韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ」 「韓国型航空母艦」導入計画 「韓国型航空母艦」導入計画が「1997年」に出ていたとは初めて知った。「朝鮮半島不沈空母論」とは何なのだろう 23年前の「不沈空母論」が開発のネックに 「海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論」、歴史sw反論するとは巧みだ 史実を利用して開発計画を承認させた海軍 無駄な装備の典型で、軍人のおもちゃだ。しかし、「イタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有」というのが、保有論への後押しとなるのだろう 「空母」の仮想敵国は、日本なのではあるまいか。自衛隊にはヘリコプター空母であり護衛艦として、ひゅうが型、いずも型があるが、戦闘機搭載可能に改装するのだろうか。日本にとっても、無駄だ ダイヤモンド・オンライン 武藤正敏 「韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練、元駐韓大使が解説」 「米韓による2+2は・・・約5年ぶり」、とはずいぶん冷え切っていたようだ 「米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップ」、とはさすが深い読みだ 米国の北朝鮮政策の再検討に 文政権はついていけない 「バイデン政権」は「トランプ」よりは忍耐強いだろうが、それでも限界がある筈だ。 米韓関係は軍事的にも手詰まり感 「韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年」、 「米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない」、とすると、現在の米韓軍は「大規模な合同野外演習」、を全く経験してないことになり、戦力低下したことになる 弱腰の韓国に中国は一層の圧力 「文政権は中国から「三不政策」を約束させられている」、先ずはこの「約束」をホゴにさせることから始める必要がありそうだ 米国は日本に対し日韓関係の改善を要求 「韓国」との関係を含め全面的に同意したい JBPRESS 金 愛 「レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論」 文在寅政権が犯した失政の数々 「文大統領の支持率が史上最低の34.1%」、とは想像以上に底堅いようだ これでは支持率低下は当然だ 既成事実化しているコリア・パッシング 「親日派の子孫たちが所有する土地を没収」、韓国の法律ではそんあことが可能なのだろうか。 文在寅政権は災いそのもの 「いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっている」、事実であれば、喜ばしいことだ
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感