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医療問題(その28)(精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し 患者には評価できない、引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕、東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由) [生活]

医療問題については、本年1月17日に取上げた。今日は、(その28)(精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し 患者には評価できない、引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕、東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由)である。

先ずは、昨年12月28日付け東洋経済オンライン「精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し、患者には評価できない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/398941
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第8回』、「精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占める」、全く歪な姿だ。
・『情報公開に積極的な精神科病院は少数派  東京・東村山市にある「多摩あおば病院」は、206床の入院病床を持つ精神科病院だ。東村山市とその周辺地域を中心に、他県からも多くの患者が訪れる、地域精神医療の拠点である。 診療内容は幅広く、統合失調症や発達障害、気分障害のほか認知症、アルコールや薬物依存症プログラム、児童思春期の問題にも対応している。患者は10代から90代まで、疾患にかかわらず精神科の治療を必要とする人たちだ。 同院では、病院ホームページに「患者統計」として、治療を行った患者に関する統計データを公開している(https://sinsinkai.com/about/statistics/)。主な項目は以下の通りだ。 +年間入退院数 +平均在院日数 +病院の回転率 +1年後残存率 +入院患者の退院先 +外来数 +デイケア数 副院長の中島直(なおし)医師は、「情報公開は当然のこと」と語る。しかし、実際に自ら、こうした統計データを公開している病院は少数派だ。 東京都内の私立の精神科病院団体である「東京精神科病院協会」に所属する63病院のホームページを調べたところ、スタッフ数の内訳や患者の治療状況がわかるデータを公開していたのはわずか6病院のみだった。多摩あおば病院のような詳細なデータに至っては、開示している病院はほぼ皆無だ。 本連載『精神医療を問う』でも報じてきたように、精神科病院は「精神保健福祉法」に基づき、患者が拒否しても医師の診断と家族の同意で強制的に入院させる権限や、病棟の入り口が常時施錠される閉鎖病棟を持つ。 入院患者には「携帯電話を持ち込めない」「面会を制限する」「外部とのやりとりは手紙だけ」などのルールが主治医の判断で課されることもあり、患者が病院内から情報を発信することも極めて難しい。そうした状況下で、根拠なく長期入院を強いられているケースや、看護師など病院スタッフによる虐待で患者が亡くなる事件が相次いできた。 そのため精神科病院には、通常の病院よりも自主的かつ積極的な情報開示が求められるはずだが、冒頭で見たとおり、その姿勢には乏しいのが現実だ。大多数の精神科病院の内情は、今もブラックボックス状態にある。) それでは公的に行われる情報開示についてはどうか。全国の精神科病院の現状を知る手段の1つに、毎年厚生労働省が各都道府県を通じて実施する「精神医療保健資料」という調査がある。毎年6月30日時点の精神科医療機関の実態を把握する目的で行われ、通称「630調査(ロクサンマル調査)」と呼ばれる。 調査の対象は精神科病院、病床を持たないクリニック、訪問看護ステーションだ。医師などのスタッフ数や病床数、隔離病棟の数、入院料などの病院自体の情報に加え、患者の年代、診断名、在院期間、身体拘束人数、隔離措置人数といった質問項目もある。 ただし公開されているのは、病院の設立区分や都道府県ごとに集計された数値にとどまる。本来、患者や家族が知りたいのは個別病院のデータのはずだが、そうした要望に応えるものにはなっていない。 この調査を活用して、患者たちの要望に応える取り組みを行ってきたのが、全国で当事者の権利擁護を目的に活動する、精神医療人権センターなどの市民団体だ。彼らは集計前の個別病院の実態がわかる個票を、情報公開制度を利用して集め、当事者が病院を選ぶときの参考にできる『精神病院事情』という冊子を各地域で作成してきた。冊子は病院に配布したり希望者に販売したりしている』、「精神科病院」はもともと閉鎖的になりやすいだけに、「公開されているのは、病院の設立区分や都道府県ごとに集計された数値にとどまる。本来、患者や家族が知りたいのは個別病院のデータのはずだが、そうした要望に応えるものにはなっていない」、やはり要開示項目を増やすべきだろう。
・『病院ごとの個別の事情を知ることが大切  「病院ごとに治療方針や患者の待遇が大きく異なるため、個別の事情を知ることが大切です」。精神科病院での長期入院や、身体拘束の問題に長年取り組んできた市民団体、「東京都地域精神医療業務研究会(地業研)」のメンバーで看護師の飯田文子氏は、冊子を作る意義をこう説明する。 実際に地業研が刊行する『東京精神病院事情2015年版』を見てみると、東京都内の70病院について、それぞれの病床数とレーダーチャートによる評価が記載されている。レーダーチャートの評価項目は「5年以上入院者率」「1年未満入院者率」「平均在院日数」「常勤医1人当たりの患者数」「常勤看護者1人当たりの患者数」「常勤コメディカル(ソーシャルワーカーや臨床心理技術者、作業療法士など)1人当たりの患者数」の6項目。 それぞれ5段階で点数化しており、高得点であるほうが、スタッフ数が多く活動性の高い「望ましい病院」としている。 統計データを踏まえた各院の特徴には、「平均在院日数は2424日(都平均230日)と断トツで都内最長。統合失調症の平均在院日数は何と3650日(同329日)に及ぶ」「死亡退院率が65%で群を抜いている」といった、驚きの記述もある。点数が高くても、身体拘束率などが高い場合もあり、特徴とチャート図を併せて見ることが大切だ。) こうした個別病院を評価する判断材料が少ない中、患者や家族は病院選びに苦心している。 東京都内で開かれた精神障害者の家族会に参加した女性は、統合失調症を患い入退院を繰り返す娘の病院選びに悩んできたという。「精神科の場合、歯医者などと違って近所の人に『どこの病院がいいですか』と気軽に聞くこともできません」。 また同じ家族会に参加した統合失調症の息子を持つ女性も、「病院のホームページの情報だけではあてにならないと思い、これまで保健所に紹介された病院や、ケースワーカーから話を聞いた病院に入院してきました。でも入ってみると看護師が少なくケアが不十分だったり、本人が合わなくて暴れてしまったりもする。どうしたらいいかわかりません」と悩みを打ち明けた。 この女性に地業研の作成した先の冊子について話すと、メモをとり「そうしたものがあるとは知らなかった。ぜひ読んでみたいです」と話し、会場を後にした』、「地業研が刊行する『東京精神病院事情2015年版』」、は数少ない情報源のようだ。
・『「速やかに破棄」を指示  ところが、こうした冊子の作成に欠かせないロクサンマル調査の個票の情報公開が、一時、全国で相次いで非開示となった。2017年度と2018年度のデータを中心に、個人情報の保護などを理由として、15の自治体が非開示や一部開示とした。そこには、それ以前までは全面的に開示をしてきた北海道、埼玉県、神奈川県、大阪府も含まれた。 ロクサンマル調査はここ3年で2度、調査・集計方式が大きく変更されている。1度目は、2017年度と2018年度分の調査だ。これまで紙ベースで集計していたものを、各医療機関がウェブ上から調査票をダウンロードし、1人の患者ごとに1行ずつのデータを入力してそのまま厚労省に送信する方式とした。 2度目は2019年度調査からで、この1行ずつの患者データを病院内で集計し、個別のデータはわからない状態で厚労省に送信する方式になっている。 このように、全面的に開示されてきた2016年度以前から集計方法が変わっているとはいえ、患者情報はすべて匿名であり、個人情報保護法上の「特定の個人を識別できるもの」は存在していない。 突然非開示となった本当の理由はわからないが、厚労省や病院団体が市民団体によるロクサンマル調査のこうした活用法について、「苦言」を呈したのも同時期である。 2018年7月、厚労省精神・障害保健課長名義で各都道府県や政令指定都市の精神保健福祉担当部局長宛に、ロクサンマル調査の依頼協力を求める文書が送られた。 同文書の別紙では、「調査票の取扱い」として「個人情報保護の観点から、定められた保存期間の経過後に速やかに廃棄する」よう指示している。さらに「精神科医療機関の個々の調査票の内容の公表は予定しておらず」、各自治体が医療機関に調査依頼を行う際は、この点を明示すべきとする文言が付記された。) 同年10月には精神科の私立病院団体である日本精神科病院協会(日精協)が、山崎學会長名で声明文を発表した。ロクサンマル調査は「個人情報保護の観点から問題の多いものであると認識していた」とし、声明文発表の2カ月前に毎日新聞が、50年以上入院する患者が全国に1700人以上いると報じた記事に触れ、「まさにわれわれの危惧が現実となったものである」と批判した。 調査主体である厚労省が個人情報保護のための必要な措置を行わない場合は、「ロクサンマル調査への協力について再検討せざるを得ない」と、調査の存続危機をも思わせる声明となっている。 こうした情報公開に逆行するような動きに、当事者たちからは反発の声が湧き起こった。非開示や一部開示決定について不服を申し立てる審査請求の実施、日精協の声明文への批判、反対集会の開催など強い抵抗もあってか、2019年度の調査協力依頼文からは調査票の扱いを制限する文言はなくなっている。ただし、各市民団体が行った情報公開請求の結果をみると、身体拘束数などの一部のデータは依然として非開示のままだ。 前出の地業研の飯田氏は、「これまでの情報開示も、簡単に達成できたことではありませんでした。東京都や京都府でロクサンマル調査結果の情報公開を求める裁判を起こし、1999年に京都地裁が開示を認めた判決をもとに、活動に取り組んできました」と、現在に至るまでの経緯を語る。 全国的には大幅な情報の非開示は改善されてきた中、例外的に2019年度分のデータさえも全面的に開示を拒んだのがさいたま市だ』、「日精協」が「声明文発表の2カ月前に毎日新聞が、50年以上入院する患者が全国に1700人以上いると報じた記事」に触れ、「まさにわれわれの危惧が現実となったものである」と批判」したのは、不都合な事実を「個人情報保護」とは本来、無関係なのに、強引にそれを大義名分に抑制しようとするものだ。
・『今も続く非公開  埼玉県の精神医療を考える会は、さいたま市内の7つの精神科病院についてロクサンマル調査結果の情報公開請求をしていた。2020年9月にさいたま市から送られてきた「行政情報一部開示決定通知書」は、48項目に及ぶ全調査票のうち、47項目が一部または全面的に非開示とされていた。 さいたま市が非開示とした理由は、主に2つ。1つは個人を特定できる可能性があるため、もう1つは病院の運営上の正当な利益を害するおそれがあるためである。 だが、同会が埼玉県に対して行った同じ2019年度のロクサンマル調査の情報公開請求では、当時県側にデータが提出されていなかった1病院を除き、市内の6病院分のデータがすでに得られている。まったく同じ情報にもかかわらず、なぜ市は開示できないのか。 さいたま市の健康増進課の職員は取材に対し、「あくまで市の情報公開条例に基づいて判断している。埼玉県や他の自治体が開示しているかどうかは知らず、考慮していない」と回答した。同会はこの結果を不当だとして、市に対し情報の開示を求める審査請求を行っている。 同会メンバーの女性は「困ったら病院に入れるのがゴールだと安易に思ったり、精神疾患を持つ患者が社会に出てきたら困ると思い込んだりしている私たち自身の偏見に向き合うためにも、ロクサンマル調査でわかるデータは行政や病院が抱え込むものではなく、市民にとってオープンであってほしい」と話す』、「困ったら病院に入れるのがゴールだと安易に思ったり、精神疾患を持つ患者が社会に出てきたら困ると思い込んだりしている私たち自身の偏見に向き合うためにも、ロクサンマル調査でわかるデータは行政や病院が抱え込むものではなく、市民にとってオープンであってほしい」、その通りだ。
・『「恥であっても、現実」  多摩あおば病院が患者の統計を公開し始めたのは、2006年頃からだ。 中島副院長は、「ロクサンマル調査はあくまで1つの指標であり、すべてがわかるわけではありません。自分たちもどうしたら病院や患者の状況が外に伝わるか試行錯誤しています」と、院内の情報公開の方針を語る。 例えば多摩あおば病院の場合、患者が他の精神科病院に転院することはなるべく避けている。治療を途中で他の病院に丸投げすることになるからだ。ホームページ上にある、「入院患者の退院先」のデータを見るとそのことがわかる。 「ロクサンマル調査にあるような情報は、出すか出さないかではなく出すのが当たり前。長期入院などの問題は恥であったとしても、現実ですから。精神疾患を持つ人の受け皿をどう見つけていくかは、病院だけの責任ではない。そういう人がどれだけいて、みんなでどう支援していくかは社会の問題です。別に隠す必要はないんです」(中島副院長) 精神科病院に入院する当事者や家族が情報公開を求めるのは、治療や病院のあり方に対する疑問が根強いためだ。 2020年5月に設立された神奈川県精神医療人権センター(KP)の相談窓口には、電話での相談が全国から寄せられている。家族が退院できなくて困っている、テレホンカードを購入させてもらえず病院の外と連絡が取れない、院内が清潔でない、など内容はさまざまだ。弁護士と連携し、退院支援などを行っている。 さらにKPが特徴的なのは、精神障害当事者がピアスタッフとしてイベントを仕掛けたり、病院選択の情報を発信したりしていることだ。長年精神医療の実態を報じてきた、ジャーナリストの佐藤光展さんも活動に加わっている。 「精神医療の世界では、これまで患者自身が声を上げる機会は乏しかった。それゆえ、危険な存在だと見下されているのが実態です。病院の情報開示はもちろんのこと、患者自身がもっと声を上げていくことが必要だと思っています」(佐藤さん)』、「病院の情報開示はもちろんのこと、患者自身がもっと声を上げていくことが必要」、同感である。

次に、本年3月16日付け東洋経済オンライン「引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/415829
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第10回』、「人権上の問題が山積」とは見逃せない。
・『自立研修センターから病院へ強制連行  「今からあなたを『病院』に連れていきます。これは強制です」 2018年5月上旬、30代男性のAさんは9日間にわたり監禁状態に置かれた施設の職員にそう告げられた。施設の名は東京・新宿区にある「あけぼのばし自立研修センター」、ひきこもりの自立支援をうたう民間事業者が運営していた。いやがる当事者を自宅から無理やり連れ出し、施設に監禁・軟禁するなどで社会問題化した、いわゆる「引き出し屋」だ。 Aさんは大学卒業後、就職せず両親と同居し独学していた。親心からAさんの将来を心配し、就労することを希望していた両親は、Aさんの就職を支援するというセンターと契約し、約700万円を支払った。 職員に監視され、ドアには外からカギがかけられるなど監禁状態だったセンターの地下部屋から、職員とともにAさんを連れ出したのが、その8日前に両親と住む自宅から無理やり施設に連行した「民間救急会社」の男性たちだ(民間救急会社については、連載第4回「ある朝、精神病院に強制連行された男の凶体験」2020年9月25日配信で詳報)。 黒いジャンパーと手袋で身なりを固めた強靭な体躯の男性2人に両脇を固められ、Aさんを乗せた車は出発した。 Aさんはセンター入所後、抗議の意を込めてほとんど食事を取っておらず体力も著しく落ちていたので、それ以前にも職員から病院で点滴する必要があると告げられていた。そのため、具体的な行き先を告げられることはなかったが、「点滴をするため、近くの内科クリニックにでも連れていかれるのだろう」と思っていた。 だが車は近場では止まらなかった。到着したのは施設のある新宿区からは離れた病院の、救急搬送口だった。施設職員に連れられ建物に入ると、救急外来用の診察室へと通された。 「ここの病院は何科ですか?」。控室のような殺風景な小部屋の雰囲気に不安を覚えたAさんはセンターの職員に尋ねた。「精神科だ」。職員はそう手短に答えた。Aさんはそのとき初めて自らが連れてこられたのが精神科病院だと知らされた。 「点滴か健康診断かと思っていたので、まさか精神科病院に連れてこられるとは思わず、想定外の事態に心中ではそうとう動揺していた」(Aさん) 強い不安の中、10分ほど小部屋で待っていると、白衣を着た医師が現れた。「どうしてここに来たんですか?」、医師からそう問われたとき、Aさんは、「ああ、これで今までのことをきちんと説明すれば助けてもらえるだろう」と安堵。センター職員の同席にも構わず、医師に自らの置かれた状況を一気に打ち明けた。 「自宅にいたら無理やりセンターに連れてこられて、9日間も監禁されていました。人道的な見地から助けてください」 決死の訴えに対して医師は、「今日からここに入院してもらいます」とのみ告げた。驚いたAさんが再度「人道的な見地から助けてください」と懇願するも、「もう決まったことだから」などと言い(病院側は「診療録の生活歴・現病歴に記載されている経過を尋ね、精神科における入院治療の必要性を伝えた」と民事訴訟における準備書面で主張)、母親から同意を得て、本人の意に反した「医療保護入院」が決定された』、「両親は、Aさんの就職を支援するというセンターと契約し、約700万円を支払った」、そのあげく僅か7日間で、「センター」から「精神病院」に入院させたとは、「両親」は知っているのだろうか。
・『Aさんに精神疾患の既往歴はなかった  医療保護入院は精神科特有の制度で、本人が同意しなくても、家族など1人の同意に加え、1人の精神保健指定医の診断があれば強制入院させられる。ちなみにAさんには精神疾患の既往歴はいっさいない。 医師が話を打ち切ると、小部屋の隣の扉が開き複数の屈強な男性看護師たちに取り囲まれた。とっさに両手を挙げて、「先生、よくわかりません、助けてください!」と叫んだが無視され、隔離室へと連行された。 施錠された隔離室に入れられて数時間後、女性を含む4人の看護師が入ってきて、Aさんに服を脱ぐよう指示した。こんな入院はおかしいと反発すると、ベッドへと誘導され身体拘束され、あっという間に上半身、ついで下半身と順に裸にさせられた。) Aさんは看護師たちにおむつを履かされ甚平のような服を着せられた。手と胴がベッドに拘束されたことで、ほとんど身動きが取れなくなった。 この間、Aさんは身体的な抵抗はいっさいしなかった。「暴れたりしたら精神疾患だと受け取られかねないと、意識的に冷静に対応するよう努めた。それに実際9日間何も食べてないので、抵抗したり暴れたりする体力も気力もなかった」。 仰向けにベッドに固定され、寝返りを打つこともできないまま3日間過ごすことになった。なにより屈辱を感じたのは、トイレに行くことが許されず、おむつへの排泄を強要されたことだ。 「結局、大便も小便もおむつにするしかなかったが、おむつ交換の回数は限られ、不快感が強く、衛生的にもどうかと思った。これを看護師に交換されるというのも、とても屈辱的だった」(Aさん) 3日間の身体拘束が終わったのちも、Aさんは閉鎖病棟での日々が続いた。 2018年5月下旬、主治医から病名は発達障害の疑いだと告げられた。その診断理由を尋ねると、「あなたは今まで10年間教会のミサに通い続けていたよね。それは社会の一般通念からずれている。それが根拠です」と説明されたとAさんは話す(民事訴訟における準備書面で、病院側は説明内容を否定)。当然承服できないと反論したが、「それはあなたに病識がないからだ」と一蹴されたという。 翌月の6月に入ると退院調整が図られるようになったが、病院側は自立研修センターへの退院を強く求めた。退院時にはセンターの職員に連れて行ってもらうことになるが、もしこれを拒否したら、再度別の病院で入院になることが予想されると説明された。 Aさんは強く反発したが、結局、センターへの退院を了承した。閉鎖病棟での生活は50日間にわたった』、「仰向けにベッドに固定され、寝返りを打つこともできないまま3日間過ごすことになった。なにより屈辱を感じたのは、トイレに行くことが許されず、おむつへの排泄を強要されたことだ」、人権侵害の極致だ。「あなたは今まで10年間教会のミサに通い続けていたよね。それは社会の一般通念からずれている。それが根拠です」と説明された」、こんなのが「発達障害の疑い」の根拠とは聞いて呆れる。
・『誓約書を強要  退院するや否や、Aさんはセンターから「誓約書」(写真)へのサインを強要された。 ① 医師の診断に従い、通院・服薬を続けること ② 実家に帰らない、家族に連絡を取らないこと ③ (センターの)カリキュラムは全参加すること という内容だ。誓約書の文末には下記の一文があった。 「上記ルールを守れない場合は、再度入院する事に同意致します。」 少なくともセンター側が、身体拘束の恐怖や強制入院の理不尽といったAさんの心身に刻まれた精神科病院でのトラウマを、指示に従わせる「道具」として活用しようとしたことは明白だ。 Aさんはその後、弁護士らの援助でセンターを抜け出し、センターと病院の職員・医師らを逮捕監禁罪などで刑事告訴。別途、民事訴訟でも損害賠償を求めて争っている。センターの運営会社は2019年末に破産した。病院への刑事告訴は正式に受理されて、現在捜査中だ。 Aさんの代理人の1人で、同センターのほかの被害者からも相談を受けている、代々木総合法律事務所の林治弁護士は、「被害者たちはみな、センターの職員から言うことを聞かないと精神科病院に入れられ、身体拘束もされると脅されていた。Aさんが身体拘束されておむつで排泄していたことはみな知っていた。精神科病院への入院が引き出し屋によって、いわば見せしめ的に使われている」と実情を語る。 内閣府によれば、ひきこもりの人数は15~39歳で54万1000人(2016年発表)、40~64歳は61万3000人(2019年発表)と推計されている。総数は100万人を超えるとみられている。ひきこもりが長期化・高齢化しているとも報告され、本人や支える家族の不安や悩みは大きい。 そうした悩みにつけこんで、「半年で自立させる」などと甘言を用いて、両親など家族から高額な費用を巻き上げる引き出し屋は、決してこのセンターだけではない』、「センターの運営会社は2019年末に破産」、「700万円」はその前に返還されたのだろうか。「本人や支える家族の不安や悩みは大きい。 そうした悩みにつけこんで、「半年で自立させる」などと甘言を用いて、両親など家族から高額な費用を巻き上げる引き出し屋は、決してこのセンターだけではない」、全く悪質極まりないビジネスだ。これと手を組んでいる筈の「精神病院」も問題がある。
・『病院が著名教授を提訴  こうした悪質業者の手先ともいえる役割を、結果的に精神科病院が果たしてしまっていることについて、当の病院側はどう考えているのか。 取材に対して、病院側は「本件は現在係争中であり、また守秘義務もありお答えできない」としている。 ちなみに病院は、民事訴訟の準備書面において、「原告(Aさん)はあたかも被告病院が研修センターと一蓮托生であるかのごとき主張をするが、まったく研修センターと被告病院とは関係はなく、連携等もおこなっていない」「研修センターへの誓約書記載の入所条件については、原告と研修センターとの問題であり、被告病院が積極的に関与したものではない」などと主張している。 なおこの病院は昨年、ひきこもり問題の第一人者で筑波大学教授の斎藤環医師を名誉棄損であるとして、300万円の損害賠償を求め提訴した。斎藤教授がAさんの刑事告訴と民事訴訟に関する報道を引用して、ツイッターでコメントしたことがその理由だ。 取材に応じた斎藤教授は「近年、統合失調症への薬物治療が進んだことなどで、精神科病院への新規入院件数は減少傾向にある。そのため多くの病院はできるだけ多様な入院ニーズを確保したい。この病院が直接それにあたるかは別にして、引き出し屋と結託すれば相応の患者数を定期的に受け入れられると考える精神科病院があっても不思議ではない」と警鐘を鳴らす』、「精神科病院への新規入院件数は減少傾向にある。そのため多くの病院はできるだけ多様な入院ニーズを確保したい。この病院が直接それにあたるかは別にして、引き出し屋と結託すれば相応の患者数を定期的に受け入れられると考える精神科病院があっても不思議ではない」、医師がこんないかさまビジネスの片棒を担ぐとは世も末だ。
・『「拷問に等しい犯罪行為」  実際、ひきこもり状態にあったところ、精神科病院に強制入院させられたケースはAさんだけではない。 「身体拘束されて隔離室に入れられたときは、閉塞感と圧迫感で絶望的な気持ちになった」。埼玉県在住の30代男性のBさんは、精神科病院への入院体験を振り返る。 男性はいじめによる強迫性障害が原因で、高校1年からひきこもり状態となった。20代後半となったある日、寝ている間に父親と親戚など5人前後の男性に養生テープで簀(す)巻きにされ、そのまま車で大学病院へと搬送された。 隔離室でテープは剥がされたものの、搬送時に口中に砂が入り服薬をためらっていると、医師に投薬拒否と判断され、室内のベッドにそのまま拘束された。 万歳した状態で、手足と胴の「5点拘束」され、投薬、食事とも経鼻経管で行われた。BさんもAさんと同じく、拘束中はトイレにも行かせてもらえず、用便はおむつでの対応を余儀なくされた。 「交換は1日2回と決められており、隔離室前を通る看護師に交換をお願いしても無視され続けた」(Bさん) Bさんは退院後に大検に合格し、今は通信制の大学で学び、福祉系の資格を取得して働こうと考えている。フルタイムで事務職のアルバイトもしている。 ただ、当時の精神科病院での体験は確実にトラウマとなっていると振り返る。「今でも隔離室でされたことは拷問に等しい犯罪行為だと思っている」(Bさん)。 成人男性ですら、何年たっても深いトラウマとして心身に刻み込まれる精神科病院での身体拘束。こうした行為が未成年の少女に、驚くべきほど長期間実施されていたケースすらある。(第11回に続く)』、親や船籍にとっては、厄介者払い的な色彩もあるだろうが、ここまで酷い人権侵害が起きていることまでは知らない筈だ。「引き出し屋」がまだ営業を続けているのであれば、刑事告発したり、民事で損害倍書訴訟をしていくことにより、息の根を止めるべきだろう。

第三に、2月19日付けYahooニュースが転載した幻冬舎OLD ONLINE「東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/92101662413bbc6756ddac0d52dc691e8c6398e6?page=1
・『灘高→東大理3→東大医学部卒。それは、日本の偏差値トップの子どもだけが許された、誰もがうらやむ超・エリートコースである。しかし、東大医学部卒の医師が、名医や素晴らしい研究者となり、成功した人生を歩むとは限らないのも事実。自らが灘高、東大医学部卒業した精神科医の和田秀樹氏と、医療問題を抉り続ける気鋭の医療ジャーナリストの鳥集徹氏が「東大医学部」について語る。本連載は和田秀樹・鳥集徹著『東大医学部』(ブックマン社)から一部を抜粋し、再編集したものです』、興味深そうだ。
・『大学病院よりも一般病院での研修をする研修医が増えた  「新臨床研修制度」がもたらしたものとは? 鳥集 2004年には、「新臨床研修制度」が導入されました。この制度が導入された背景には、1990年代以降、医局人事を握る教授への賄賂や権威主義を背景にした医療事故の隠蔽などが、メディアの告発によって表沙汰となったこともあります。 また、1998年に関西医科大学で月額6万円の奨学金と、1回あたり1万円の宿直手当だけで土日も休みなく働かされていた研修医が、急性心筋梗塞で過労死するという事件が起きたことで、大学病院における若い研修医の奴隷のような働かせ方が社会問題となりました。これも、「新臨床研修制度」導入の後押しになったと言われています。 和田 もう一つは、当時、『ブラックジャックによろしく』*という漫画作品がベストセラーとなったことも影響していると思いますね。妻夫木聡さんが主演でドラマ化もされて人気を博しました。その漫画がヒットしていた頃、私は、「大学病院の今後のあり方」といったテーマのシンポジウムに登壇したことがあったのですが、同じシンポジウムに登壇していた厚生省(当時)の役人が、『ブラックジャックによろしく』を取り上げて、「今は情報化社会です。大学の名前にあぐらをかいて、何をやってもいいわけではない」という話をしたのです。ようやく厚生省が重い腰を上げたのかと驚いた記憶があります。 『ブラックジャック~』の舞台は大学病院で、主人公は研修医です。大学の医局の医者が、いかに臨床ができなくて実験ばかりに手を出しているか、たとえば教授はミミズの解剖はしたことがあるけれど、人間の解剖はしたことがなくて、助教授がいつも尻拭いをしているというようなリアルなエピソードがたくさん出てくるのです。あの作品は、一般市民に、大学の医局の実態とともに、病気を診るが人間を診ない、診られない医師がたくさんいることを知らしめたことになります』、「新臨床研修制度」により「大学病院よりも一般病院での研修をする研修医が増えた」、のは結構なことだ。
・『◆『ブラック・ジャックによろしく』(佐藤秀峰著、2002年、講談社刊。主人公は超一流私大附属病院に勤務する1年目研修医。理想とかけ離れた日本の医療の矛盾に苦悩しつつ、病院・医師ごとの技術レベルの違い、終末期医療と医療費問題、研修医のアルバイト問題、がん治療と緩和ケアなど、現在の大学病院のさまざまな問題に直面しながら、一人前の医師へと成長していく物語。連載早々大反響を巻き起こした衝撃の医療ドラマ。) 鳥集 「新臨床研修医制度」は、こうした医局講座制の悪しき慣習を一掃する形で制度設計されたと聞いています。変革の目玉は3つありました。 最大の目玉は、2年以上の臨床研修が必修化されたことです。いわゆる専門バカを生む徒弟制度を改めて、新米医師全員にまともな臨床教育を受けさせるようにしたのです。この初期研修を終えなければ、医師は事実上臨床に従事することができなくなりました。また、この期間は研修に集中してもらうため、アルバイトは原則禁止とし、研修医が生活するのに十分な給料を病院が支払うように決められたのです。 2つ目の目玉は、アメリカで行われている「スーパーローテート」という研修方式を採り入れたことです。初期研修医たちは、この方式によって2年の間に内科や外科だけでなく、救急、地域医療、小児科、産婦人科、精神科などを6ヵ月から1ヵ月単位でくまなく回ることも義務づけられました。これ以上、専門バカを量産させないようにするためです。 3つ目の目玉は、研修病院の選択に、「マッチング」という方式を採り入れたところです。医学生たちは6年になると、病院の面接や試験を受けて、研修先の希望順位を、厚労省の下にある機関〈医師臨床研修マッチング協会〉に提出することになりました。一方、病院側も採用したい学生の希望順位を協議会に提出します。それをコンピューターにかけて、順位の高いもの同士を優先して研修先を決められるようになりました。 和田 この制度によって、何が変わったかといえば、大学病院での研修よりも一般病院での研修を希望する研修医が増えたことです。医局が手薄になった大学病院が続出しています。そのため、この制度を批判する教授も少なくありません。 たとえば、岩手医科大学の学長(当時)の小川彰氏もそうです。 要するに岩手だとか山形、秋田など、過疎地と呼ばれる地域の大学にも、昨今の医学部人気によって東京の進学校からたくさん生徒が進学してきていた。彼らは、その生徒たちがいずれ自分の大学病院で働いてくれるものと思って大事に育てていた。しかし、このマッチング制によって、ほとんど東京に帰ってしまう。それで、田舎の医者不足が深刻になった。過疎地の病院を追い込むようなこの制度を廃止しろと政府に要望書を提出したのです。 鳥集 確かにこの制度が実施される前までは、医学部を卒業した後、約7割が自分の大学の医局に入局していました。しかしこれにより、半数以上の研修医が自分の大学以外の臨床研修病院に集まるようになりました。このマッチング結果は、「医師臨床研修マッチング協議会」のHPで誰でも見ることができます。 和田 だから、岩手医科大学の要望は一見、正論に見えるかもしれません。しかしちゃんと調べてみると驚くべきことがわかったのです。岩手県全体では、臨床研修が必修化された結果、臨床研修に訪れる研修医が倍近くまで増えていたのです。 岩手医大と同じ盛岡市にある岩手県立中央病院には、定員19名のところ、平成25年度の研修第一希望者は25名でした。岩手県立中央病院は臨床を一生懸命やる病院として、研修医の間でもよく知られていたからです。つまり、岩手医科大学附属病院に研修医が3人しか集まらなかったのは研修医が東京に行ってしまうことが理由ではなく、すぐ近くの県立病院に行っていたからなのです。実際、東京都の研修医はこの制度が採用されてから2割も減りました。厚労省が発表しているデータを見ればすぐにわかる嘘を言う小川氏も小川氏なら、調べもしないで小川氏の要望を擁護する大新聞の記者たちの無能ぶりもよくわかる話ですが』、「岩手医科大学附属病院に研修医が3人しか集まらなかったのは研修医が東京に行ってしまうことが理由ではなく、すぐ近くの県立病院に行っていたからなのです」、まるで笑い話だ。
・『東大医学部が「医師国家試験」の合格率55位の理由  鳥集 これは大きな地殻変動ですよね。協議会のHPを見る限り、研修医の大学病院離れはどんどん進んでいます。ただし、彼らがそのまま研修先の病院にとどまるとは限りません。2年間の初期研修を終えた後は、自分で決めた専門分野で学ぶために同じ病院や他の病院で専門的な後期研修を受ける者もいれば、大学院生として出身大学や有名大学の医局に入り直して、博士号を取るための研究を行う医師もいます。 とはいえ、徐々にではありますが、こうしてバラエティに富んだ研修医の存在が、相撲部屋然としていた医局制度のあり方に風穴を開けていくことは間違いありません。 和田 新制度の施行以来、大学の医局は慢性的な人手不足に悩まされています。今、ほとんどの大学病院で研修医は定員割れです。東大病院も定員割れですよ。 さらに東大病院においては、2019年度のデータを見ると、大学病院における自大学出身者の比率が2割程度ととても低いことがわかります。先の役人の言葉を借りれば、「この情報化時代に、大学の名前にあぐらをかいてはいけない」ということでしょう。 その一方で、たとえば、千葉の鴨川という、決して都会とは言えない立地の亀田総合病院*の倍率は、毎年2倍前後になっています。臨床をちゃんとやっている病院には、研修医はちゃんと集まるのです。いずれ患者の集まり具合も、単なるブランド志向ではなく、同じように変わっていくことでしょう。亀田総合病院の外来の待合室の賑わいを覗けば、もはやそういう流れになっていることがわかります。くだらない病院ランキングより、研修医の集まり具合を見るほうが、臨床の質がわかると思います』、「臨床をちゃんとやっている病院には、研修医はちゃんと集まるのです。いずれ患者の集まり具合も、単なるブランド志向ではなく、同じように変わっていくことでしょう」、「くだらない病院ランキングより、研修医の集まり具合を見るほうが、臨床の質がわかる」のは確かだ。
・『◆亀田総合病院 1948 年設立。千葉県鴨川市を中心に、各地に展開する亀田メディカルセンターの中核として機能する私立病院。95年より世界に先駆けて電子カルテシステムの本格運用を開始するなど、時代に先駆けた取り組みをすることで知られる。
・『東大医学部が、国家試験の合格率55位の謎  鳥集 教授の支配力が弱まったとはいえ、医局講座制による権力構造が完全に崩れるのは、まだまだ時間がかかるでしょう。しかし伝統校を出なくても、本人の努力次第で、就職差別的な医局の壁を打ち破れる可能性が出てきたのは事実です。今後、医師は「どこの大学を出たか」ではなく、臨床技術や研究者としての実力で評価される傾向がより強くなるでしょう。 それに関連することですが、私は、2019年文春オンラインに、〈なぜ日本最難関の東大医学部が、医師国家試験*で合格率「55位」なのか〉という記事を書きました。 全大学・全学部のなかで最高の英才たちが集まる東大医学部の合格率が全国平均と同じ、普通レベルになってしまうのです。順位も中の下で55位。受験が最も得意なはずの東大医学部の人たちは何をしているのだろう? どうして国試ではこんなにもふるわないのだろう? と誰もが不思議に思うでしょう。それには、いろいろな理由が考えられると思います。 まず、東大をはじめとする旧七帝大*のような伝統ある大学では、国試対策の授業やテストをほとんど行いません。旧七帝大は事実上、医学研究者や教育者、学会リーダーの育成機関としての役割を担ってきました。なので、国試を前提とした教育には力を入れてこなかったのです。 現役時代から国試予備校に通うような人も、プライドの高い旧七帝大の学生では少ないはずです。そんな予備校に通わなくても、自分の力で受かるはずだと思っているでしょうから。つまり、ほとんど自助努力で国試に挑むことになるために、一定数が落ちてしまうと考えられます。 和田 さらに言えば、旧七帝大は伝統という名のプライドからか、カリキュラム自体が旧態依然としているところがあります。偉い教授の意向を反映しがちなので、授業内容にその教授の専門分野だけというような偏りが出るのです。アメリカではかなり統一したカリキュラムがあります。日本でもコア・カリキュラム(以下コアカリ)ができましたが、アメリカのものと比べるとまだまだだと感じます』、「現役時代から国試予備校に通うような人も、プライドの高い旧七帝大の学生では少ないはずです」、納得した。
・『◆医師国家試験(医師になるためには、医師国家試験をパスし、厚生労働大臣から医師としての免許を受ける必要がある。医師国家試験に合格すると、医籍に登録されて、医師免許証が交付される。 ◆旧七帝大(旧七帝大とは、戦前、日本の国立総合大学だった北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の7校をまとめた大学群のこと。旧帝國大学、七帝大などの呼ばれ方をしている』、
・『試験問題は臨床をろくに知らない教授が作っている  鳥集 また、臓器、器官、骨、神経、血管、組織等の名前を細かく記憶しなければならない解剖学が典型ですが、医学というのは、大量暗記を求められることの多い学問です。難しい問題を工夫して自力で解くことに快感を覚えるような高偏差値の人のなかには、大量暗記を馬鹿らしく思ってしまう学生もいるのではないかと。東大生や京大生でも、国試浪人したのに再度落ちてしまう人が毎年一定数います。あげく医師になれないで終わる人がいるのです。 和田 その見方は正しいでしょうね。国家試験の合格率が高い医学部は、きちんと大学が対策をしてくれているわけです。国家試験だって、入試と同じで過去問をやらなければ合格は難しいのです。しかし、その国家試験自体に、問題があると私は思っています。 海外の医師国家試験は、ほぼ臨床をやっているドクターが問題を作っていますが、日本においては、未だに国家試験というのはそのほとんどが、臨床をろくに知らない医学部の教授が重箱の隅をつつくような試験問題を作っているわけです。本当は、がんの問題ならばがんセンターの部長とか、循環器の問題ならば循環器病センターの人が、リアルな内容の問題を作成すればいいはずです。だけど日本では、そういうことは許されていません。だから、実際に医者になったときに、役に立たない問題がたくさんありました。現在は、臨床のリアルな症例に基づいたD問題とかE問題とかが出てきて改善されつつありますが。 私が受けた当時の国家試験というのは、先述の通り、要するに過去問を愚直にやっている奴は受かるし、やっていない奴は落ちるという、ただそれだけの試験だったのです。しかし、その事実にさえ、遊び過ぎていた私は気がつかなかった。今思えば不思議なもので、人間というのは、優等生のときは優等生の発想ができるんです。灘の高3の頃は、理3は440点満点で290点を取ればいいんだという発想ができたのに、劣等生になると、そういう発想ができなくなっていた。ただただ、朝倉書店の「内科学」*を一生懸命読むとかね。医師国家試験を前にして私は、馬鹿な受験生そのものでしたから……。 ここは誤解されたくないので恥を忍んで言っておきましょう。灘高に入ったときから頭がいいという自覚もなかった私は、東大生になっても真面目に授業も出ずに、サブカル系雑誌ライターの仕事や映画の現場の使い走りなど、勉強以外に精を出していたため、気づけば、医師国家試験の不合格が確実視されていました。 東大理3は、毎年3~4人が医師国家試験に落ちています。たいていが心の病気が理由で不合格になっているのですが、私の場合は、遊びが過ぎたという情けない理由で、国家試験の模試で不合格判定されたのです。そのときに灘の同級生で一番の秀才だった伊佐正*氏が「和田、お前、このままじゃ落ちるで」と言って、勉強会に誘ってくれたのです、そこで過去問をやる意味を認識させられた。ありがたかったですね』、「難しい問題を工夫して自力で解くことに快感を覚えるような高偏差値の人のなかには、大量暗記を馬鹿らしく思ってしまう学生もいるのではないかと。東大生や京大生でも、国試浪人したのに再度落ちてしまう人が毎年一定数います。あげく医師になれないで終わる人がいるのです」、もったいない話だ。現在は受験指導もしている「和田」氏も「灘の同級生で一番の秀才だった」友人が「勉強会に誘ってくれた」ので、「国家試験」に合格したとは初めて知った。
・『◆朝倉書店の『内科学』(現在第11版を重ねる、医師国家試験問題基準の内科関連項目を網羅する参考書。 ◆伊佐正(いさ ただし。灘高卒、1985年東京大学医学部卒。医学博士。専門は運動制御の中枢機構、意識・注意の脳内メカニズム、脳・脊髄損傷からの機能回復機構など。京都大学大学院医学研究科医学専攻教授、京都大学医学研究科脳機能総合研究センター長、京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点副拠点長など歴任』、。
・『鳥集 高3のときは自ら戦術的な勉強法を生み出した和田さんが……。またもや同級生のノートで助けられたということですか。 和田 そうなんです。その勉強会に出てみると、みんなで過去問ばかりをひたすら解いているのがわかりました。特別に高度な勉強法をやっているかと思いきや、ただ、ひたすらに。そして、勉強するのは問題に出たところの周囲の知識ばかり。それを知って、私も勉強法がわかって、無事に国家試験に合格することができました。 鳥集 追い詰められるほど、周囲が見えなくなってしまうのでしょうね。しかしこれは和田さんに限ったことではなく、東大理3の入試の段階で日本一偏差値が高かったはずなのに、国試で苦労するという人も少なからずいるわけですよね。 和田 確かに理3の人間には、今さら丸暗記の勉強なんて馬鹿馬鹿しくてやってられないよ、と考える人もいるでしょう。 鳥集 もっとも、国家試験合格率の高さと優秀な医師を輩出している大学というのはイコールとは限りません。以前、ある合格率が高い私立大医学部の名誉教授がこう話してくれました。「合格率が高いのは、早々と臨床実習を切り上げて、6年生になったら国試対策ばかりをやっているからだ。でも、本当にこれが医師になるための教育? と疑問に思う。実際の臨床は座学では教えられません。医師を育てるための本来の教育が欠けているように感じる」と。 国試合格率が7割を切ると、補助金(大学院高度化推進特別経費)がカットされる恐れもありますから、特に歴史の浅い私立大学では学生に国試対策の勉強ばかりさせて、試験も国試の形式で出すそうです。そして、国試に受かりそうにない学生は卒業させず、国試を受けさせない。成績のいい学生だけに絞って国試を受けさせるので、見かけの合格率が一定以上に維持できているのです。私立大学のなかには、100人単位で「国試浪人」が溜た まっているところもあると聞きました。 和田 一方の東大は、マニアックな研究をしている教授が多いため、国試対策どころか、趣味的な講義しかしない教授も多かったのです。つまり、講義自体が国家試験に対応できていないのです。当時はコアカリがなかったので、かなり偏っていましたよ。それはそれで、先程も申し上げたように刺激的ではありましたがね。 鳥集 コアカリというのは、2001年に文科省が出した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」のことですね。それまでは、医学部によって教える内容にバラつきがありました。たとえば、国立大学では座学が中心で臨床教育を軽視しているという批判がある一方で、一部の大学では医学生にお産を手伝わせるようなこともあったといいます。 また、先の話でも出たように、歴史の浅い私大では臨床実習をほどほどにして国試対策にばかり力を入れるところも多かったのです。こうした状況を打破するため、どの大学の医学部を出ても最低限必要な知識・技能・倫理を身につけられるように医学教育の内容を標準化しようというのが目的でした。さらに、コアカリは「よき臨床医」を育てることに主眼を置いています。今までこうした取り組みがなかったのが不思議なほどです。 これにより、医学部がより「職業訓練校」と化したと批判する向きもあるようです。確かに各大学には「良医を育てる」「医学のリーダーを養成する」といった理念の違いがあります。東大医学部のHPには、このように書かれています。 〈東京大学医学部の目的は生命科学・医学・医療の分野の発展に寄与し、国際的指導者になる人材を育成することにある。すなわち、これらの分野における問題の的確な把握と解決のために創造的研究を遂行し、臨床においては、その成果に基づいた全人的医療を実践しうる能力の涵かん養ようを目指す〉 つまり、東大医学部生は、国家試験は自助努力でなんとかしなさい、東大生なら自分たちでできるでしょ? ということなのでしょう』、「特に歴史の浅い私立大学では学生に国試対策の勉強ばかりさせて、試験も国試の形式で出すそうです。そして、国試に受かりそうにない学生は卒業させず、国試を受けさせない。成績のいい学生だけに絞って国試を受けさせるので、見かけの合格率が一定以上に維持できているのです」、「臨床実習をほどほどにして国試対策にばかり力を入れるところも多かった」、確かに見かけ上の合格率だけでは判断できないようだ。
タグ:医療問題 (その28)(精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し 患者には評価できない、引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕、東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由) 東洋経済オンライン 「精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問 公的にも自主的にも隠し、患者には評価できない」 「精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占める」、全く歪な姿だ 「精神科病院」はもともと閉鎖的になりやすいだけに、「公開されているのは、病院の設立区分や都道府県ごとに集計された数値にとどまる。本来、患者や家族が知りたいのは個別病院のデータのはずだが、そうした要望に応えるものにはなっていない」、やはり要開示項目を増やすべきだろう 「地業研が刊行する『東京精神病院事情2015年版』」、は数少ない情報源のようだ。 「日精協」が「声明文発表の2カ月前に毎日新聞が、50年以上入院する患者が全国に1700人以上いると報じた記事」に触れ、「まさにわれわれの危惧が現実となったものである」と批判」したのは、不都合な事実を「個人情報保護」とは本来、無関係なのに、強引にそれを大義名分に抑制しようとするものだ 困ったら病院に入れるのがゴールだと安易に思ったり、精神疾患を持つ患者が社会に出てきたら困ると思い込んだりしている私たち自身の偏見に向き合うためにも、ロクサンマル調査でわかるデータは行政や病院が抱え込むものではなく、市民にとってオープンであってほしい」、その通りだ 「病院の情報開示はもちろんのこと、患者自身がもっと声を上げていくことが必要」、同感である。 「引きこもりの彼が精神病院で受けた辱めの驚愕」 「人権上の問題が山積」とは見逃せない 「両親は、Aさんの就職を支援するというセンターと契約し、約700万円を支払った」、そのあげく僅か7日間で、「センター」から「精神病院」に入院させたとは、「両親」は知っているのだろうか。 「仰向けにベッドに固定され、寝返りを打つこともできないまま3日間過ごすことになった。なにより屈辱を感じたのは、トイレに行くことが許されず、おむつへの排泄を強要されたことだ」、人権侵害の極致だ。「あなたは今まで10年間教会のミサに通い続けていたよね。それは社会の一般通念からずれている。それが根拠です」と説明された」、こんなのが「発達障害の疑い」の根拠とは聞いて呆れる 「センターの運営会社は2019年末に破産」、「700万円」はその前に返還されたのだろうか。「本人や支える家族の不安や悩みは大きい。 そうした悩みにつけこんで、「半年で自立させる」などと甘言を用いて、両親など家族から高額な費用を巻き上げる引き出し屋は、決してこのセンターだけではない」、全く悪質極まりないビジネスだ。これと手を組んでいる筈の「精神病院」も問題がある 「精神科病院への新規入院件数は減少傾向にある。そのため多くの病院はできるだけ多様な入院ニーズを確保したい。この病院が直接それにあたるかは別にして、引き出し屋と結託すれば相応の患者数を定期的に受け入れられると考える精神科病院があっても不思議ではない」、医師がこんないかさまビジネスの片棒を担ぐとは世も末だ 親や船籍にとっては、厄介者払い的な色彩もあるだろうが、ここまで酷い人権侵害が起きていることまでは知らない筈だ。「引き出し屋」がまだ営業を続けているのであれば、刑事告発したり、民事で損害倍書訴訟をしていくことにより、息の根を止めるべきだろう yahooニュース 幻冬舎OLD ONLINE 「東大医学部が医師国家試験の合格率で55位の下位に沈む理由」 和田秀樹・鳥集徹著『東大医学部』(ブックマン社) 「新臨床研修制度」により「大学病院よりも一般病院での研修をする研修医が増えた」、のは結構なことだ ブラック・ジャックによろしく 「岩手医科大学附属病院に研修医が3人しか集まらなかったのは研修医が東京に行ってしまうことが理由ではなく、すぐ近くの県立病院に行っていたからなのです」、まるで笑い話だ 「臨床をちゃんとやっている病院には、研修医はちゃんと集まるのです。いずれ患者の集まり具合も、単なるブランド志向ではなく、同じように変わっていくことでしょう」、「くだらない病院ランキングより、研修医の集まり具合を見るほうが、臨床の質がわかる」のは確かだ 「現役時代から国試予備校に通うような人も、プライドの高い旧七帝大の学生では少ないはずです」、納得した 「難しい問題を工夫して自力で解くことに快感を覚えるような高偏差値の人のなかには、大量暗記を馬鹿らしく思ってしまう学生もいるのではないかと。東大生や京大生でも、国試浪人したのに再度落ちてしまう人が毎年一定数います。あげく医師になれないで終わる人がいるのです」、もったいない話だ 現在は受験指導もしている「和田」氏も「灘の同級生で一番の秀才だった」友人が「勉強会に誘ってくれた」ので、「国家試験」に合格したとは初めて知った 「特に歴史の浅い私立大学では学生に国試対策の勉強ばかりさせて、試験も国試の形式で出すそうです。そして、国試に受かりそうにない学生は卒業させず、国試を受けさせない。成績のいい学生だけに絞って国試を受けさせるので、見かけの合格率が一定以上に維持できているのです」、「臨床実習をほどほどにして国試対策にばかり力を入れるところも多かった」、確かに見かけ上の合格率だけでは判断できないようだ
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