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電子政府(その3)(ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点、新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか、厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!) [経済政策]

電子政府については、昨年10月23日に取上げた。今日は、(その3)(ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点、新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか、厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!)である。

先ずは、昨年11月16日付け文春オンライン「ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/41507
・『新型コロナの情報を国で一元管理しようと厚生労働省が5月から運用を始めた「HER-SYS(ハーシス)」。各医療機関が感染症法で提出を義務付けられている「発生届」をオンラインで入力し、保健所や自治体、国が即座に共有できるという鳴り物入りのシステムだ。だが利用している医療機関は約4割に過ぎない。「現段階では、医療機関や保健所にとって使い勝手の悪い部分もあります」そう明かすのは新宿区の吉住健一区長(48)だ。 新宿区は日本一の歓楽街・歌舞伎町を抱え、都内で最も感染者数の多い自治体。6月には小池百合子東京都知事から「夜の街」の代表例として名をあげられたことも加わり、今も風評被害に悩まされている。 10月の小池知事との意見交換会で、吉住区長は「感染者増は検査を誠実に行ったから。地元に配慮した情報発信を」とチクリ。そんな“モノ言う区長”がハーシスを懸念する理由は何か。 「入力項目が多く、氏名、症状、基礎疾患の有無、感染経路など100項目程度にも及びます。厚労省は必要最低限の入力でいいと言っていますが、パソコン画面をどんどんスクロールしないといけない。また、プリントアウトしようにも、何枚にも渡ってしまう。患者の対応等で混乱を極める状況の中で、今まで慣れてきたやり方から急に変更するのは負担が大きいと、現場からは聞いています」』、「利用している医療機関は約4割」、というのは昨年9月28日の日経新聞記事だ。「「入力項目が多く、氏名、症状、基礎疾患の有無、感染経路など100項目程度にも及びます」、とは的を絞らず、あれもこれも入力させようとするダメなシステムの典型だ。
・『むしろファックスの方がスピーディー  これまで医療機関は、A4・1枚程度の「発生届」を手書きで記入し、保健所にファックスで報告し、保健所が厚労省などにつながるシステムに入力していた。ハーシスにより脱アナログを目指したが、医療機関にすればむしろファックスの方が、手間がかからずスピーディーだったのだ。 感染者や濃厚接触者自身がスマホを使って、日々の健康状態を入力、医療機関などと共有できるのもハーシスのメリットのはずだが、 「医療機関が閲覧する際も、やはり項目が多く、知りたい情報がわかりにくい。また、患者さんは割り振られた『スマホID』を使ってログインして入力します。セキュリティがしっかりしている分、入力に誤りがあった場合、家族でもIDやパスワードを知らなければ修正できません」(同前) 報告を受ける側の保健所も、あまりメリットを享受できていないようだ。 「結局、病院からの連絡をもとに保健所側がハーシスに入力するケースもあるようです。これまでの運用との乖離があるため、システムの改善も必要だと感じています」(同前) デジタル化の掛け声勇ましい菅政権だが、こうした現場の声は届いているだろうか』、「むしろファックスの方がスピーディー」、とは不名誉なことだ。「医療機関が閲覧する際も、やはり項目が多く、知りたい情報がわかりにくい」、「報告を受ける側の保健所も、あまりメリットを享受できていないようだ」、システム設計の基本が出来てなかったようだ。

次に、2月22日付けWedge「新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか」を紹介しよう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22205
・『「感染症対策実務も踏まえ、新たな感染症が発生した時に使う新システムはほぼ完成していた。準備をしておいてという連絡も厚生労働省から関係者に来ていた。しかし、結局それは〝お蔵入り〟となり、急に『HER-SYS』(ハーシス)が開発・導入された」(国立病院機構三重病院の谷口清州臨床研究部長) 「ハーシス」とは、新型コロナウイルス患者・疑似症患者の情報を入力するシステムだ。新型コロナは感染症法上の指定感染症に指定されており、基本的にはハーシスを通じて医師が管轄の保健所に「新型コロナウイルス感染症発生届(発生届)」を提出する。 ハーシスが急ピッチで導入されたのは2020年4月、ある医師が「手書き」で発生届を書いていることをツイートし、それを河野太郎防衛大臣(当時)が「拾いあげ」たことが契機だった。1回目の緊急事態宣言の最中に開発が進められ、5月には一部自治体で導入された。 厚労省HPには「保健所等の業務負担軽減および情報共有・把握の迅速化を図るため」とあるが、複数の保健所から「多くの場合、患者の情報は医師の代行で入力することが多く、そのための人員を配置しているほど」「他の保健所が入力してくれた情報のうち、どの患者に早く対応しなければいけないのかが、時系列に並べられているだけで分かりにくい」など、使い勝手の悪さばかりを示す声が聞こえる』、「ある医師が「手書き」で発生届を書いていることをツイートし、それを河野太郎防衛大臣(当時)が「拾いあげ」たことが契機だった」、事情を詳しく知らない「防衛大臣」が乗り出したのが、今回の混乱のきっかけとは、ダメなシステム開発の典型例だ。「ほぼ完成していた」「新システム」は使われないままになったようだが、無駄の典型だ。
・『なぜこうしたシステムが開発されたのか。20年12月15日付の情報処理学会の学会誌に、ある保健所職員がその理由をこう寄稿している。 「開発チームが誰一人として、発生届が出されるのは医療機関の管轄保健所という定義を知らなかった」 つまり、現場がどう業務を行っているのかを理解しないまま開発した結果、感染者等の年齢や検査記録、発症日といった、国が感染症対策に必要な情報に加えて、患者の健康観察情報や、行動歴など、膨大な情報の入力を求めるシステムになってしまった。 谷口臨床研究部長は「濃厚接触者の情報などは中央で一元的に集める必要はなかった。現状では入力必須項目は発生届と同じ項目に絞られたが、いまだに、入力したデータがどのように用いられたのか、のフィードバックすらない」と憤る。なにより「こうした失敗は過去にもあったにもかかわらずその学びが生かされなかった」という。 過去の失敗とは「疑い症例調査支援システム」のことを指す。同システムは、ハーシスと同じように、患者を疑似症例として登録し、検査して確定例になると濃厚接触者を紐づけ、さらにその検査を行い、と情報入力を求めるものだった。こちらも09年の新型インフルエンザが発生した際、入力の手間がかかり、2カ月ほどで中止となった』、「「開発チームが誰一人として、発生届が出されるのは医療機関の管轄保健所という定義を知らなかった」 つまり、現場がどう業務を行っているのかを理解しないまま開発した結果、感染者等の年齢や検査記録、発症日といった、国が感染症対策に必要な情報に加えて、患者の健康観察情報や、行動歴など、膨大な情報の入力を求めるシステムになってしまった」、「「こうした失敗は過去にもあった(「疑い症例調査支援システム」)にもかかわらずその学びが生かされなかった」、いやになるほどお粗末の極みだ。
・『ただIT化しても機能しない  こうした経緯を踏まえて開発していたのが冒頭の〝お蔵入り〟したシステムだ。厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の佐藤康弘政策企画官は「使用の検討をしたのは事実だが、全国一律での導入を見据えてハーシスを使うことになった」と説明する。 しかし、事情に詳しい関係者は「現場の職員からすると手書きやFAXの方が素早く情報共有ができるなど使い勝手が良い面もあったのに、それが前時代的な発想として見られ政治家もそれに飛びついてしまった。本当のリーダーなら現場の声を正しく拾いあげて『ただIT化しても機能しない』と国民に毅然と説明してほしかった」と嘆く。 今回の「失敗」を踏まえ、どのようなシステムを開発すべきか。谷口臨床研究部長は「現場において地域の感染症対策に役立つシステムをまず作り、その情報の中から、中央に必要なものを報告できるようにするなど、あくまでボトムアップでシステムを作る発想が大切だ」と指摘する。 IT化=効率化・生産性向上に当てはまらないこともあるのだ』、「ボトムアップでシステムを作る発想が大切だ」、とはいっても、各地方自治体ごとに独自のシステム開発をするというこれまでのやり方も無駄だ。どこか、代表的自治体にプロトタイプを作らせ、それを全国的に展開するのも一案だろう。

第三に、4月18日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82275?imp=0
・『コロナの感染情報収集に、まだファックスが使われているようだ。接触確認アプリCOCOAは、委託を見直した結果、委託先企業数が増えてしまった。マイナンバーカード利用拡大の重要な1つである健康保険証への活用は、開始直前の土壇場になって延期になってしまった。 菅政策の最重要課題である「デジタル化」について、なぜもこうも不具合が続くのか?』、興味深そうだ。
・『まだファクス!!  「データドリブン」ということが言われる。新型コロナ対策でも、データこそ重要だ。適切な対策のためには、迅速なデータ収集が必要。そのためには、情報のデジタル化は不可欠だ。 ところが、日本では、2020年 5月末までは、コロナ感染情報の収集にファクスが使われていた 感染者を確認した医療機関が、手書きの「発生届」作成する。それをファクスで管轄の保健所に送信する。保健所が記入漏れなどを確認し、個人情報を黒塗りにするなどして都道府県にファクスで転送する。 感染者が増えてくると、ファクスが混雑してつながらなかったり、ファクスが目詰まりするなどのトラブルが続発した。入力が追いつかず、積み残しが発生した。問い合わせで、保健所の電話が鳴りやまないといった事態になってしまった。 そこで、5月になって、新システムHER-SYS(ハーシス)が稼働した、タブレットなどで必要な情報を入力し、直ちに関係機関で情報を共有できるとされた。 だが、同年7月3日時点で、保健所を設置する155自治体のうち、43自治体(28%)がHER-SYSを利用していなかった。 東京都では、8月30日になっても、1200の医療機関のうち、HER-SYSに入力できる利用登録を済ませたのは、都立病院など7カ所しかなかった。 「HER-SYSの利用が遅れている」というこのニュースを聞いた時、原因は、HER-SYSに対応できない自治体側にあると私は思った。 しかし、責任はHER-SYSの側にあったようだ。入力すべき項目が1人あたり120もあるなど、使い勝手の悪い欠陥システムだから、自治体がそっぽを向いたというのだ。 なぜ120項目も入力しなければならないのか? スピードが要求される時は、項目が多ければよいというわけでない。 ところで、こうした不都合が報道されたのは、2020年の夏頃だった。この経緯は、本欄にも書いた。それから大分時間が経ち、状況は改善されたと思っていた。 ところが、2021年の4月に、「感染者情報 なお手入力」との報道があった(「コロナ、統治の弱点露呈 政治主導・デジタル・国と地方」日本経済新聞、2021年4月7日)。 大阪では、感染者の届け出の3分の1は、いまだに保健所でHER-SYSに代行入力しているというのだ。最初は120あった入力項目を40程度に減らしても、まだ使い勝手が悪いとの不満が残るからだという。 この間にコロナ感染の第3波があり、さらに第4波に襲われた。感染者数は、20年春頃に比べてずっと多くなっている。保健所は、他の業務と並行して、感染者1人あたり40項目もの記入をしなければならないわけだ。その負担は、察するに余りある』、「東京都では、8月30日になっても、1200の医療機関のうち、HER-SYSに入力できる利用登録を済ませたのは、都立病院など7カ所しかなかった」、「入力すべき項目が1人あたり120もあるなど、使い勝手の悪い欠陥システムだから、自治体がそっぽを向いたというのだ」、「大阪では、感染者の届け出の3分の1は、いまだに保健所でHER-SYSに代行入力しているというのだ。最初は120あった入力項目を40程度に減らしても、まだ使い勝手が悪いとの不満が残るからだという」、「HER-SYS」はまだまだ問題のようだ。
・『委託を整理したら、6社が7社になってしまった!?  接触確認アプリCOCOAは、2020年6月19日から運用を開始した。ところが、運用開始初日に不具合が生じて、運用停止になってしまった。 厚生労働省は、不具合を認めて修正を進めた。通知ができるようになったのは7月3日だ。その後再び不具合が見つかり、7月13日から修正版を提供した。 ところがこれで終わったわけではなかった、COCOAの利用者のうち3割にあたる772万人のAndroid版利用者について、陽性者と濃厚接触した場合でも「接触なし」と表示されていたのだ。 しかも、その不具合が4ヵ月間放置されていたことが、2021年2月3日になって明らかになった。ということは、Android版利用者の場合、正常に使えたのは、7月中旬から9月までの2ヵ月半程度でしかなかったということだ。 国民の命に直接かかわる仕組みについて、4ヵ月も不具合が放置されていたというのは、信じられないような大問題だ。これについても本欄に書いた(2021年2月21日公開の「またも厚労省! 接触アプリ不具合が明らかにした日本ITの深い闇」) これで終わったのかと思っていたのだが、この件もまだ続きがあった。欠陥放置問題があったため、政府は委託の見直しを検討していた。そして、21年4月からは、委託先をパーソル社からエムティーアイ社に切り替えた(なお、パーソル社は、HER-SYSの委託先だ。この関係があったために、COCOAの委託先に選ばれたのだそうだ)。 ところが、エムティーアイ社は、これをさらに6社に再委託した。この結果、関係する企業数は、見直し前の6社から、7社に増えてしまった。 不都合放置事件の原因が、関係企業数が多いため責任の所在が曖昧になったことであるのは、衆目の一致する ところだ。厚生労働省も、これまでの不具合の原因を調査した結果、「どの企業の作業がどう影響したのか分からない」としている。それにもかかわらず、見直しの結果、関係企業数が増えるというのは、なぜなのだろうか? 「7は6より大きな数字だから、この見直しでは企業の数が増えてしまったて、改善になっていない」とは、幼稚園生でも分かるのだが、厚生労働省にはこれが分からないのだろうか? 今後、公務員試験では、「7と6のどちらが大きいか?」という問題を出して、不正解者は採用しないようにすべきだ』、「関係する企業数は、見直し前の6社から、7社に増えてしまった」、まるで笑い話だ、「委託」の条件に「再委託」不可とすることも可能なのではなかろうか。
・『マイナンバーカードの健康保険証利用は土壇場で延期  厚生労働省関係デジタル案件の不都合は、まだある。 「マイナンバーカードは、2021年3月から保険証として利用できるようになる」と宣伝されていた。ところが、土壇場になって、10月頃まで延期となった。保険資格の情報が「登録されていない」と表示されたり、保険証に記載された情報と一致しないなどのトラブルが相次いだためだという。 もっとも私は、延期になっても、格別不便になったとは思わない。なぜなら、マイナンバーカードを健康保険証に使えたところで、利用者にとってのメリットがどこにあるのか、分からないからだ。 それだけではない。延期になってほっとした面もある。なぜなら、マイナンバーカードの保険証利用に伴って、これまでの紙の保険証は発行停止になるという報道があったからだ。そうなると、マイナンバーカードなしでは、病院で診療を受けられなくなる。 ところが、マイナンバーカードの電子証明書は5年間しか有効でなく、更新のためには、役所に出向かなければならない。「もし歩くのが不自由になったら、どうしよう」と思っていたのだが、今回の延期措置で、この心配は暫くは遠のいた』、「マイナンバーカードの健康保険証利用」自体が「マイナンバーカード」の苦しまぎれの利用促進策だったので、私も「延期になってほっとした」。
・『「絵に描いた餅」を3回見せられた  厚生労働省関係でマイナンバーカードを使えないという事例は、ほかにもあった。それは、ワクチン接種の管理にマイナンバーカードを活用する構想だ。2021年3月14日公開の「ワクチン接種管理にも使えない『マイナンバー』、一体どこで使えるのか…?」で述べたように、2021年1月に平井卓也デジタル改革相や河野太郎ワクチン担当相が提起した。 ところが、このアイディアは、あっという間に立ち消えになった。地方自治体から「自治体の事務が増えることは非常に困る」との懸念が示されたからだ。 予防接種の実施や接種記録の管理は、市町村が担当している。ただし、その台帳は自治体独自で、入力項目も統一されていない。マイナンバーカードを使うには、行政の現場をそれに対応させる必要がある。 それなしでマイナンバーを使うといっても、現場は混乱する ばかりというのだ。 マイナンバーカードは、定額給付金の申請で使えなかった。そこでの教訓は、「自治体の現場をそれに合わせたものにしない限り使えない」と言うことだ。 それを思い知らされたのに、また同じミスでつまずいた。そしてさらに、保険証への活用でつまずいた 保険証利用は、マイナンバーカードの利用拡大として鳴り物入りで宣伝されてきたものだ。 あまりと言えばあまりの失態続き! 結局のところ、日本国民は、「絵に描いた餅」を3回見せられたことになる。すると、マイナンバーカードは、いったいどこで使えるのだろうか? デジタル化の促進は、菅内閣の看板政策である。中でも、マイナンバーカードの利用拡大は、その中の中心的政策だ。それほど重要なプロジェクトなのに、データのチェックが行われていなかったのだ。 信じられないような初歩的なミスで躓いた。 もっとも、これが延期の真の原因だったのかどうかは、疑わしい。マイナンバーカードの情報を読み込むためには、医療機関に専用の機械の設置が必要だが、3月21日時点で、医療機関からの申し込みは、全体の45%程度しかなかったというのだ』、「医療機関からの」「専用の機械の設置申し込みはまだまだのようだ。
・『このタイトルを3回使うことはないように  今回のこのタイトルは、実はすでに1度使ったタイトルである。2020年9月6日公開の「厚生労働省のITシステムは、なぜ不具合が多いのか?」だ。 そこでは、HER-SYSやCOCOAの他、雇用調整助成金のオンライン申請が2ヵ月半もストップしたままだったことなども述べた。 同じタイトルを何度も使うのは避けたいのだが、止むを得ない。このタイトルを3回使うことは何とかないように、祈りたい。 そう思っていた矢先、厚生労働省老健局の職員23人が、銀座で3月24日に深夜まで宴会をしていたと報道された。そして、4月8日には、職員ら6人が新型コロナウイルスに感染したと発表された。全員が3月末まで老健局に所属していた。 「言葉を失う」とは、こうした事態に対した場合のことだ。あまりのひどさに、コメントする意欲を失う。何も言いたくない。 今回のタイトルをまた使うことは、もうないような気がしてきた』、元大蔵官僚だった筆者が、「あまりのひどさに、コメントする意欲を失う。何も言いたくない」、よほどのことだ。「今回のタイトルをまた使うことは、もうないような気がしてきた」、残念ながら私には意味がよく分からない。
タグ:「ほぼ完成していた」「新システム」は使われないままになったようだが、無駄の典型だ。 「ある医師が「手書き」で発生届を書いていることをツイートし、それを河野太郎防衛大臣(当時)が「拾いあげ」たことが契機だった」、事情を詳しく知らない「防衛大臣」が乗り出したのが、今回の混乱のきっかけとは、ダメなシステム開発の典型例だ 「新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか」 WEDGE 「医療機関が閲覧する際も、やはり項目が多く、知りたい情報がわかりにくい」、「報告を受ける側の保健所も、あまりメリットを享受できていないようだ」、システム設計の基本が出来てなかったようだ。 「むしろファックスの方がスピーディー」、とは不名誉なことだ。 「「入力項目が多く、氏名、症状、基礎疾患の有無、感染経路など100項目程度にも及びます」、とは的を絞らず、あれもこれも入力させようとするダメなシステムの典型だ。 「ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点」 文春オンライン (その3)(ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点、新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか、厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!) 電子政府 元大蔵官僚だった筆者が、「あまりのひどさに、コメントする意欲を失う。何も言いたくない」、よほどのことだ。「今回のタイトルをまた使うことは、もうないような気がしてきた」、残念ながら私には意味がよく分からない。 「医療機関からの」「専用の機械の設置申し込みはまだまだのようだ。 「マイナンバーカードの健康保険証利用」自体が「マイナンバーカード」の苦しまぎれの利用促進策だったので、私も「延期になってほっとした」 「関係する企業数は、見直し前の6社から、7社に増えてしまった」、まるで笑い話だ、「委託」の条件に「再委託」不可とすることも可能なのではなかろうか。 「大阪では、感染者の届け出の3分の1は、いまだに保健所でHER-SYSに代行入力しているというのだ。最初は120あった入力項目を40程度に減らしても、まだ使い勝手が悪いとの不満が残るからだという」、「HER-SYS」はまだまだ問題のようだ。 「東京都では、8月30日になっても、1200の医療機関のうち、HER-SYSに入力できる利用登録を済ませたのは、都立病院など7カ所しかなかった」、「入力すべき項目が1人あたり120もあるなど、使い勝手の悪い欠陥システムだから、自治体がそっぽを向いたというのだ」 「厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!」 野口 悠紀雄 現代ビジネス 「ボトムアップでシステムを作る発想が大切だ」、とはいっても、各地方自治体ごとに独自のシステム開発をするというこれまでのやり方も無駄だ。どこか、代表的自治体にプロトタイプを作らせ、それを全国的に展開するのも一案だろう。 「「こうした失敗は過去にもあった(「疑い症例調査支援システム」)にもかかわらずその学びが生かされなかった」、いやになるほどお粗末の極みだ。 「「開発チームが誰一人として、発生届が出されるのは医療機関の管轄保健所という定義を知らなかった」 つまり、現場がどう業務を行っているのかを理解しないまま開発した結果、感染者等の年齢や検査記録、発症日といった、国が感染症対策に必要な情報に加えて、患者の健康観察情報や、行動歴など、膨大な情報の入力を求めるシステムになってしまった」、
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先ずは、3月8日付け読売新聞のyomiDr「森元首相も受ける人工透析 日本で増え続けるのはなぜ?」を紹介しよう。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20210301-OYTET50023/
・先日、「女性 蔑視べっし 発言」が原因で森喜朗・元首相(83)が東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長を辞任しました。この騒動は約2週間続きましたが、私が驚いたのは、騒動そのものではありませんでした。この間、森氏が元気で、言動に乱れがなく、かくしゃくとされていたことです。「逆ギレ会見」と言われた会見では、森氏は1人で立ったまま30分以上も記者の質問に答えていました。あの姿を見て私は、正直、とても透析患者とは言えないと思ったのです』、確かに元気そうだ。
・『前立腺がん、肺がん、透析…それでも働いた  森氏ががんを患ってきたのは、これまでの報道により、よく知られています。最初は前立腺がんで、これは2000年に見つかりました。当初、森氏は手術をせずにホルモン療法を中心に治療し、その後に摘出手術をされたと聞きます。 そして2015年には、今度は肺がんが見つかり、このときは手術を受けた後、当時、実用化されたばかりの抗がん剤「オプジーボ」による治療を受けています。副作用で肺に水がたまり、呼吸が苦しかったと本人が述べています。 そして、2019年2月から、森氏は人工透析を受けるようになりました。このことは、本人が新聞インタビューで公表し、週3回、透析のために病院に通っていると話しています。 森氏の人工透析が、がんの副作用なのかどうかはわかりませんが、腎機能が低下していることは確かです。腎機能は年を取るとともに低下するもので、ある限度を超えると人工透析が必要になります。糖尿病が悪化した場合も同じです。ただし、人工透析というのは、一種の「延命治療」です。なぜなら、いったん始めたらやめられないからです。止めれば、患者さんは確実に死亡します』、「2019年2月から、森氏は人工透析を受けるようになりました」、初めて知った。
・『人工透析は患者にとって非常につらいもの  しかも、人工透析は、患者さんにとって非常につらいものです。腕などに、動脈と静脈をつなげるシャント手術を行い、この手術で太くなった静脈に針を刺し、そこから1分間に200cc程度の血液を抜きます。その血液を、老廃物を取り除くダイアライザーという機械を通して透析し、再び体の中に戻します。これを週3回、1回3~5時間行います。 患者さんによっては、かなり強い血管痛や頭痛を起こします。また、心不全や感染症のリスクも高まります。いずれにしても、いったん始めれば、もうそれまでの日常生活には戻れないのです』、「感染症」は当然としても、「心不全」のリスクも高まるとは意外だ。「いったん始めれば、もうそれまでの日常生活には戻れない」、というのもつらい選択だろう。
・『腎不全の危険がある糖尿病だが、透析は受けないと決めた  私は現在、73歳で糖尿病を患い、血糖値を下げる薬を服用し、食事療法も行っています。いずれ腎臓の機能が低下する時が間違いなく来ると覚悟をしています。問題はそれがいつ来るのかですが、平均寿命を超えるような高齢で来たのなら、私はその時を自分の寿命と考える、つまり人工透析はやらないと決めています。 若い時は別として、透析が苦痛になって途中でやめると、さらに苦しんで死を迎えるからです。水分が一気にたまり、全身に痛みが回り、のたうち回ったりします』、「透析が苦痛になって途中でやめると」、「水分が一気にたまり、全身に痛みが回り、のたうち回ったりします」、悲惨なようだ。「糖尿病を患」っている筆者が「透析は受けないと決めた」、内情に通じた「医師」ならではの決断だ。
・『透析を拒否した先輩医師の死  私の先輩に、断固、透析を拒否した方がいます。87歳で亡くなられましたが、進行がゆっくりだったため、穏やかな死に方でした。腎機能の指標であるクレアチニン値が限界を超えたとき、家族から、なんとか説得して透析を受けさせてくださいと頼まれましたが、私はできませんでした。本人の意思が固かったからです。 様々な延命治療を続けると、最終的に体は水ぶくれで太っていき、ご遺体は丸太のように膨らみます。そういうことにならず、きれいなご遺体だったと聞きました。 私も担当医も本人の意思を尊重したのです』、「様々な延命治療を続けると、最終的に体は水ぶくれで太っていき、ご遺体は丸太のように膨らみます」、ぞっとする。
・『人工透析は病院の安定収入源  話はややそれますが、腎不全で人工透析が必要になった場合、それを積極的に勧めるのは、日本の医者だけです。日本の人工透析患者は年々増加していて、現在、33万人を超えています。患者に医療費があまりかからない制度があるからです。医療費としては月40万円ほどかかる高額な治療なのですが、患者負担は1万~2万円で済みます。また、身体障害者1級を申請すれば、様々なサポートがあります。一方、医療機関から言えば、透析患者がいれば逃げることのない安定収入が確保できるのです。 しかし、人工透析は腎不全に対する最良の治療法ではありません。欧米では透析は腎臓移植へのつなぎ医療という位置付けです。日本では、ドナーが少なく、多くが家族からの生体腎移植なので移植が広がらず、透析患者が増える一方なのです』、「腎不全で人工透析が必要になった場合、それを積極的に勧めるのは、日本の医者だけ」、「欧米では透析は腎臓移植へのつなぎ医療という位置付け」、「医師」を儲けさせる手段になっているとは、困ったことだ。
・『受けるかどうか、本人が納得の上で決める  日本透析医学会はガイドラインを定めています。医者は、透析をした場合としなかった場合どうなるかを患者さんと家族に詳しく説明するよう示しています。そうして、本人が納得した上で行うことになっています。「する」のか「しない」のか、医者に詳しい説明を求めてから決めるべきです。 ただ、終末期になると、多くの医者は自動的に透析を行います。とくに患者さんが認知症を発症している場合は、本人の意思を確かめようがありませんから、人工透析も含めた延命治療は家族が止めない限り延々と続くのです。今は、延命治療に関して、「人生会議」で本人、ご家族と医者が、事前に十分話し合うことが勧められているので、透析を行うかどうかは、最終的に本人の意思次第です(医師 富家孝)』、「医師」にとっては儲ける手段になっているのでは、「患者」に「人工透析」のデメリットを詳しく説明することはしないだろう。メリット、デメリットを詳しく解説したパンフレットに基づいて、「医師」から説明を受けるようにすべきだろう。

次に、3月12日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学商学部教授の権丈 善一氏による「コロナ禍の今、日本医療の特徴を考えてみる この国の医療の形はどのように生まれたのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/416258
・『日本の医療をほかの国々と比べた特徴が、新型コロナウイルスの影響の下で注目を浴びている。日本の医療提供体制については、目下、改革が進められている。ここ数年展開されていた提供体制の改革の青写真が描かれていた『社会保障制度改革国民会議』(2013年)の報告書には、「医療問題の日本的特徴」という項目があり、次のように書かれている』、興味深そうだ。
・『公的所有主体の欧米、私的所有主体の日本  日本の医療政策の難しさは、これが西欧や北欧のように国立や自治体立の病院等(公的所有)が中心であるのとは異なり、医師が医療法人を設立し、病院等を民間資本で経営するという形(私的所有)で整備されてきた歴史的経緯から生まれている。公的セクターが相手であれば、政府が強制力をもって改革ができ、現に欧州のいくつかの国では医療ニーズの変化に伴う改革をそうして実現してきた。 医療提供体制について、実のところ日本ほど規制緩和された市場依存型の先進国はなく、日本の場合、国や自治体などの公立の医療施設は全体のわずか14%、病床で22%しかない。ゆえに他国のように病院などが公的所有であれば体系的にできることが、日本ではなかなかできなかったのである(『社会保障制度改革国民会議』22ページ)。 この種の話では、アメリカにおいても、公的病院、および公益的な民間非営利病院は総病院数のおよそ80%、全病床数の約85%を占めているということを言うと、けっこう驚かれる。 また、2001年の総合規制改革会議における、当時、厚生労働省大臣官房審議官(医政局・保険局担当)であった中村秀一氏の「株式会社の病院というのは、世界の医療提供体制の中でごく例外的、ヨーロッパではほとんどネグリジブルでありますし、多いと言われているアメリカでも、全体の25%ということで、われわれ自身、株式会社を入れるということが、それほど医療改革につながるふうには思っておりません」という言葉も歴史に残しておきたい言葉である。官僚が忖度なく正論を言えた時代の記録でもある。 どうして日本は、医師が非営利の医療法人を設立し、病院などを民間資本で経営するという形(私的所有)で整備されてきたのか?そして、コロナ禍で注目されるようになったことだが、なぜ民間の病院は中小規模なのか? 新型コロナの感染拡大の下、医療と経済、どちらを優先するかという問いかけがなされる中、こうした問いについて、いくつかの考える材料を準備できればと思う。ただし、文字数の制限もあるので、歴史的事実を淡々と論じるにとどめておこうと思う。 日本の医療は、江戸時代に築かれた自由開業医制を基盤としてきたと評されてきた。明治に入り1887年の「医制」を機に漢方から西洋医学への転換が図られたが、それは従来医業に携わっていた人たちにも医師免許を付与して医師の総数を維持しながらという漸進的な方法で行われたために、自由開業医制の伝統は継承されていった。 明治以降に登場した日本の病院については、官立、特に公立の病院を軸に整備が進められていた。だが、松方デフレ後の財政再建を背景とする1887年の勅令により、公立病院への地方税の投入が禁じられて以降、提供体制は民間中心になっていった。しかし、第2次大戦直後の占領期から、病院を公的病院中心に再編成する動きも生まれた。戦後のそのあたりの話からはじめよう』、なるほど。
・『占領期にGHQが与えた影響  行政学者ワンデル博士を団長とする6名のアメリカ社会保障調査団が、ワンデル勧告と呼ばれる報告書を、日本政府に渡したのは、1948年7月である。ワンデル勧告は、医療は公的責任において提供すべきものであり、病院については、国・公立や公的な機関を中心にすべきであって、「公的財源による病院建設」が勧告されていた。 一方、ワンデル勧告を見たアメリカ医師会は、歴代3期に及ぶ医師会会長ら自らが日本を訪れ、アメリカ医師会の指向する医師の「自主性と企業性」を確保することを主張し、医療の提供面において医師会が主導的な役割を果たすことを強調した報告書をGHQに提出している。 つまり、戦後日本には、GHQを通じた提供体制のあり方に対する提言が、2つあったことになる。 日本が戦後継承していったのは、ワンデル勧告の流れである。 ワンデル勧告を受けて1949年に設置された社会保障制度審議会は、同年末に、「社会保障制度確立のための覚え書」を出し、「医療組織については、総合的計画の下に公的医療施設の整備拡充を図るとともに、開業医の協力しうる体制を整え、また公衆衛生活動の強化を図る必要がある」と論じていた。 社会保障制度審議会は、1950年に「社会保障制度に関する勧告」を出す。そこには、「人口2000の診療圏において、公私の医療機関のない場合には、少なくとも一診療所を有するように配置することを目標とし、都道府県は、無医地域を解消するため、自らその設置運営をなすものとする」と提言している。今の言葉で言えば、都道府県による提供体制の整備が勧告されていたわけである。 こうした動きと並行して、社会保障制度審議会の1956年勧告では、「いやしくも公的資金により開設設置される病院については、(中略)医療機関網の計画的見地から、強力に、その地理的配置、規模、設備、機能などについての規制を行うべきである」「医学、医術の進歩に伴い、精密かつ複雑な治療設備や検査設備も必要とするのであるから、その施設は単に当該病院の専有物にせず、医療機関相互の利用を認め、その有機的な連携をはかるとともに、施設設備に対する重複な投資を避けさせしめることが望ましい」との方針が提示されていた。 1948年、GHQの指示で「医療法」が制定されていた。この医療法は、20人以上の患者を入院させるための施設を病院として、病院と診療所を区分し、病院を尊重する立場に立っていた。GHQは、国・公立病院を中心に据えるワンデル勧告を考慮して、医療法で、国が自治体病院に国庫補助金を拠出できるようにした。 一方、1948年当時、日本の病院数の7割強が私的病院という戦前の状況とは大きく変わっていない現実があった。私的病院には、免税や国庫補助金のような支援制度はなく、自治体一般会計からの繰り入れもない。そして納税の義務があった。 この頃の国家財政は、1949年2月にドッジによって勧告されたドッジ・ライン下の均衡予算であることから、政府には、公的病院を拡充するための資金の余裕はなかった。そこで、医療法施行から2年後の1950年に法改正を行い、「医療法人制度」を導入している。大著『日本病院史』の著者である福永肇氏は、「このアイデアは、個人の資金を民間医療機関に出資させようとする世界に類を見ない日本独自のユニークな制度」と論じている。 民間医療機関に法人格を付することにより、銀行からの資金調達が容易になるとともに、法人であるゆえに相続税問題から解放され、私人とは異なる税の軽減などもあり、法人に対する各種の公的補助金や税制上の優遇も享受できた。これらの理由があり、医療法人は急速に普及していった』、「社会保障制度審議会の1956年勧告では、「いやしくも公的資金により開設設置される病院については・・・その施設は単に当該病院の専有物にせず、医療機関相互の利用を認め、その有機的な連携をはかるとともに、施設設備に対する重複な投資を避けさせしめることが望ましい」との方針が提示されていた」、無駄な投資抑制に向けた画期的な考え方だが、今はどうなっているのだろう。
・『独立後、高度成長期の医療政策はどうなったか  1951年9月8日、GHQによる占領が終了する。前年、1950年からの朝鮮特需で持ち直しはじめていた日本経済は、徐々に、欧米先進国の背中を見ながらキャッチアップ軌道に乗り始めていく。 高度経済成長期を迎えると、産業界の資金需要は活発となっていった。銀行は高い金利で融資を行うことができる大企業を私的病院よりも優先していくのは当然で、そうした中、1960年に、民間の診療所・病院に対して公的資金を超低利・超長期の条件で貸し付けを行う医療金融公庫が設立される。 医療金融公庫の主な資金源は、郵便貯金、簡易保険、公的年金であり、これらが国の財政投融資を通じて投入された。ただし、大蔵省資金運用部(当時)から医療金融公庫に回される資金にも制限があり、かつ、民間金融機関からは民業圧迫との声もあったため、病院は医療金融公庫から所要資金の全額を借り入れることはできない規定が設けられていた。それゆえ、一部自己資金ないしは銀行借り入れが必要であり、それが病院による規模拡張への投資の制約条件となっていく。 こうした環境の中で、1962年に医療法改正により、公的病院病床規制が導入される。目的は、都市部の病床過剰地域における公的病院の新設・増床を規制するというものであった。ちなみに、民間病院への病床規制は、23年後の1985年の第1次医療法改正により導入されることになる。 戦後は、医療の需要面を社会化する公的医療保険が整備されていき、1970年代に入ると医療費の9割弱を税・社会保険料という公的資金が占めるようになるのであるが、一方で供給面では、自由開業医制を基礎に置く民間経営の私的提供体制という日本の医療保障制度ができあがっていった』、「病床規制」「導入」は、「公的病院」先で、「民間病院」は「23年後」、どうして格差が生じたのだろう。
・『歴史的経緯が作っていった日本の医療のかたち  NHKの朝ドラで「梅ちゃん先生」が放映されていた2012年頃、このドラマの話をしながら、日本の医療の特徴の説明をしていた。第2次世界大戦末期の空襲により焦土となった東京の蒲田を物語の出発点とし、主人公が開業医として成長していく物語である。 日本では、梅ちゃん先生のようにスタートした診療所が、1961年施行の国民皆保険による患者の増加の中で、少しスペースを広げて病床を持ち、その病床もしばらくすると20床を超えて病院となって、民間中小病院へと成長していった。欧米では病院とは基本的に入院施設であって、外来部門を持たない病院も多いが、日本のほとんどの病院は大きな外来部門を持っている。日本の病院にとって、多くの標榜科を備えた外来部門は、入院患者への窓口として機能することになる。 医療金融公庫があったとはいえ、「医療法」により非営利であることが規定されているために、民間病院は借り入れによる資金調達しか許されていなかった。そうした資金面からの制約によって、病院規模は中小規模でとどまってきた。先述の福永氏によれば、「今日、300床未満の病院が日本の病院数の8割強を占めている状況は、以上の戦後の病院発展におけるファイナンス面での歴史的背景の結果である」ということになる』、「病院規模は中小規模でとどまってきた」、効率性での問題点の指摘はなかったのだろうか。
・『取り組まれている医療提供体制の改革  株式を通じた資本の供給は、医療においてはできるだけ避けておきたいという国際的にも広範囲な合意がある。ほかの先進諸国は、歴史的に、公的および慈善・宗教団体などの非営利の団体により医療提供体制が整備されてきており、医療が近代化した後も、それらが提供体制を支えてきた。 しかし日本は、非営利という条件の下に民間主体の提供体制の整備が進められた。医療法人制度、医療金融公庫という税の優遇や金利の優遇はあったが、資金は借り入れが主体となり、しかも低利借り入れの医療金融公庫には借り入れ上限もあって、大規模の病院に発展できたのはまれであった。したがって、日本では、民間の中小病院が主体の提供体制ができあがっていった。 公的医療保険と私的医療提供体制の組み合わせからなる日本では、長らく、医療改革が社会保障政策の中での最優先課題であった。繰り返し政局の混乱を引き起こしていた年金よりもはるかに重要な課題と認識されていた(「日本の医療は高齢社会向きでないという事実――『医療提供体制改革』を知っていますか?」<2018年4月21日>を参照)。 そして今の日本では、地域医療構想と地域包括ケアは「車の両輪」であるとか、地域医療構想・医療従事者の働き方改革・医師偏在対策を加えて「三位一体改革」であると言われている。 「車の両輪」、「三位一体改革」のいずれにも入る地域医療構想とは、高齢化・人口減少に伴う医療ニーズの質・量の変化や労働力人口の減少を見据えて、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するために、医療機関の機能分化・連携を行っていく改革のことである。地域包括ケアとは、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるネットワークのことである。 いわばこれらは、ニーズに見合った医療を提供し、医療の質を高めるための改革であり、この国が歴史的に形成してきた日本医療の特徴へのチャレンジであるともいえる。三位一体改革の中の医師偏在対策にしても、この国の医療政策の歴史上、ずっと手付かずのままでいた医師養成のあり方に対する大きな試みである(「日本の大学の医学部教育は何が問題なのか?――医療介護の一体改革に立ちはだかる大きな壁」<2018年12月27日>を参照)  この一連の取り組みには、地域の中での広範囲であり、かつ人口減少社会における患者減を見越した中・長期的な構想に基づいて既存の病院の選択と集中を図り、相互の連携を通じて、地域医療全体、高度急性期から在宅、さらには看取りまでのチーム医療、医療と介護を一体化した、多職種の連携による地域完結型の医療を目指そうとするビジョンがベースにある。 そうしたビジョンは、戦後形成されてきた個々の病院内で完結していた「治す医療」から、地域全体で「治し支える医療」への転換であるとも言われている。さらには、いくつもの中小の病院が競合していたのでは対応が難しい医療をそれぞれの地域で強化していく必要もある。かつての患者数、病院数の拡張期とは異なり、競争よりも協調が謳われる時代になっているのである。 今という時代は、歴史という経路に依存して形成されているものではある。歴史過程における今という時代において、根気強く継続する改革の意思が求められるゆえんでもある。だが今は、目の前の感染拡大の防止に集中しておくことが最優先されるべきなのであろう』、「地域医療構想と地域包括ケアは「車の両輪」であるとか、地域医療構想・医療従事者の働き方改革・医師偏在対策を加えて「三位一体改革」、などを着実に推進してほしいものだ。

第三に、4月12日付け東洋経済オンライン「ソフトバンクがオンライン診療に勝算見込む訳 孫正義氏が巨額を投じた中国企業と合弁設立」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/422294
・『コロナ禍で広がりつつあるオンライン診療で、新規参入が相次いでいる。通信大手のソフトバンクが2021年度上半期中にオンライン診療事業を始めることがわかった。手がけるのは、医療サービス子会社のヘルスケアテクノロジーズだ。 同社は昨年7月に健康医療相談アプリ「HELPO(ヘルポ)」の提供を開始。現在は診察ではなく一般的な医療情報をチャット相談の形式で提供しており、自社で採用した数十名規模の医師や看護師、薬剤師が24時間対応する。ユーザーが相談を書き込むと、30秒以内に返信が来る仕組みだ。 4月12日発売の『週刊東洋経済』は「沸騰!医療テックベンチャー」を特集。投資額が10年前の5倍に膨らみ、米中のIT大手なども参入する医療テックベンチャーの最前線を追っている。 「病院に行くほどではないが、グーグルで検索しても的確な答えが見つからないということはよくある。何でも相談を投げ込んでもらって、医療従事者の知見とノウハウを提供するのが狙いだ」。ヘルスケアテクノロジーズの大石怜史社長はそう話す』、興味深いサービスだ。
・『医薬品の即日配達も  ドラッグストアで購入できる一般用医薬品のネット販売や病院検索機能も提供し、相談内容に応じて薬の購入や病院での診察を促す。薬の配達地域は東京23区内のみだが、物流ベンチャーと提携し、夕方17時までに注文すればその日の夜21時までに届く。病院検索では「女性の医師がいる」「クレジットカード決済ができる」といった項目でフィルタリングが可能だ。また、ソフトバンクグループ内の検査会社と連携し、新型コロナウイルスのPCR検査も提供している。 現在は法人や自治体を顧客とし、法人では従業員の福利厚生の一環として、自治体では国民健康保険の加入者への健康指導などとして使われている。サービス開始前にはソフトバンクの社員に実証実験を行い、7割が継続的な利用意向を示した。現在のヘルポの利用者数は非公開だが、2021年度中には数十万人規模を目指すという。「将来的には一般消費者への提供も計画している」(大石怜史社長)。 今後展開するオンライン診療の事業は、独自にビデオ通話などのツールを開発するのではなく、医療機関に導入済みのシステムに接続する形になる計画だ。大石氏は、「クリニックごとにオンライン診療アプリを入れるのは不便。患者がヘルポのアプリを開けばワンストップで診察を受けられるようにしたい」と説明する。事前のチャット相談の内容を問診票として医療機関と共有し、診察時間を予測して予約を取りやすくするシステムも開発を進めている。) コロナ禍での特例措置として、昨年4月に「初診」でのオンライン診療が解禁されてから1年が経過した。初めての診察や新たな症状・疾患の診察の場合、従来は対面が原則だった。だが新型コロナウイルスの院内感染などを防ぐため、厚生労働省は時限措置として規制緩和に踏み切った。コロナ禍でデジタル政策が加速したことを受け、厚労省は初診からのオンライン診療の恒久化に向けた検討を進めており、今秋の指針改定を目指す。これを商機とみる企業は増えている。 実はヘルスケアテクノロジーズは、ソフトバンクグループの孫正義社長率いるソフトバンク・ビジョン・ファンドが400億円超を出資していた中国のヘルスケア企業、平安好医生(ピンアン・グッド・ドクター)との合弁事業だ。 中国ではオンライン診療や薬のネット販売が急速に広がっている。「平安はヘルスケアのテック企業としてパイオニア。事業のノウハウ面で協力を得ている」(大石氏)。ちなみにへルポのデータはすべて日本国内のサーバーに保管され、平安側がアクセスできない体制を取っているという』、「へルポのデータはすべて日本国内のサーバーに保管され、平安側がアクセスできない体制を取っているという」、のであれば、合弁先の「平安好医生」の影響は遮断されているようだ。
・『さまざまな企業との提携で事業拡大へ  将来的には健康診断のデータを活用した生活習慣病の予測や、ウェアラブル機器との連携、フィットネス動画の配信なども計画する。「すべてを自分たちではやらない。ベンチャーも含めてさまざまなソリューションを持つ企業と共創したい」と大石氏は話す。 ソフトバンクは2017年に新規事業開発を担う「デジタルトランスフォーメーション本部」という部門を設立。ヘルスケアテクノロジーズもこの中から生まれた新規事業の1つだ。河西慎太郎本部長は組織の狙いについて、「ソフトバンクにとって次の柱になるものを育てたい。単にベンチャー投資をやるということではなく、パートナー企業を探して社会課題を解決できるような事業を一緒に作っていく」と説明する。 「社内のハイパフォーマーを集めた」(河西氏)という本部のメンバーは、発足時に120人だったのが直近で240人まで増えた。そのうち半分がエンジニア、もう半分が事業企画やバックオフィスの人員が占めるという。ヘルスケア以外にも、物流やスマートシティなどの分野で事業提携や合弁設立などを進めている。 データやテクノロジーの力で医療やヘルスケアが大きく変わろうとしている。激しい競争の中でソフトバンクはどこまで存在感を示せるか』、「ソフトバンク」にとって、実業に近い部分で「次の柱」に育つとすれば、安定的基盤を若干なりとも強化することにつながるだろう。

第四に、4月18日付けPRESIDENT Onlineが掲載した東京大学名誉教授の養老 孟司氏による「養老孟司「生死をさまよい、娑婆に戻ってきた」病院嫌いが心筋梗塞になって考えたこと 健康診断も医療も避け続けた理由」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/45071
・『447万部の大ベストセラー『バカの壁』の著者として知られる解剖学者・養老孟司氏が、82歳で心筋梗塞に。長年健康診断も一切受けず、かねて避けてきた現代医療。しかし25年ぶりに東大病院にかかり入院することに……。そして考えた、医療との関わり方、人生と死への向き合い方。体験をもとに、教え子であり主治医の中川恵一医師とまとめた『養老先生、病院へ行く』を上梓。同書より第1章を2回に分けて特別公開する──。(第1回/全2回) ※本稿は、養老孟司、中川恵一『養老先生、病院へ行く』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『病気はコロナだけじゃなかった  2020年2月後半、新型コロナウイルス(以下「新型コロナ」や「コロナ」とも表記)の感染者が急増してから、外出できなくなってしまい、鎌倉の自宅に缶詰状態になってしまいました。 取材や打ち合わせは鎌倉の家に来てもらって行うので、外出するのは自転車に乗ってタバコを買いに行くくらい。公衆衛生の観点でいうと、感染症は人にうつさないことが基本ですから、自分なりに人との接触は避けていました。 それでも感染するのは仕方のないことです。感染症は感染するかしないかのどちらかですから。感染しないつもりでいても、感染するときはします。高齢者ですから、重症化して亡くなることもあるでしょう。 同年3月26日に、このたび刊行した『養老先生、病院へ行く』の共著者で東京大学の後輩でもある医師の中川恵一さんと「猫的視点でがんについて考える」(『医者にがんと言われたら最初に読む本』所収)という対談を行ったときも、そんなお話しをしたのを覚えています。 ところが、病気はコロナだけではありませんでした。6月に入ってから、私自身が別の病気で倒れてしまったのです』、医者の不養生の典型の「養老」氏では何が飛び出しても驚かない。
・『「身体の声」に背中を押されて…  私はよっぽどのことがなければ、自分から病院に行くことはありません。ただ家内が心配するので、仕方なしに病院に行くことはあります。自分だけで生きているわけではないので、家族に無用な心配をかけるわけにはいきません。 ところが今回は様子がかなり違っていました。6月4日の「虫の日」に、北鎌倉の建長寺で虫塚法要を終えるまでは何でもなかったのが、10日くらいから体調が悪いと感じるようになりました。 在宅生活が続いたことによる「コロナうつ」かとも思いましたが、「身体の声」は病院に行くことを勧めているようでした。 身体の声というのは、自分の身体から発せられるメッセージのことです。例えば、昼に何か食べて、その日の夜、あるいは次の日の朝でも、「なんだか調子が悪いな」と思ったら、昼食に食べたものが悪いとわかります。このとき自分の身体は、いつもの状態と違う何かを伝えていると考えています』、さすが、解剖学の大家ならではの感覚だ。
・『現代の医療システムに巻き込まれたくない  家内も早く病院に行きなさいと催促しています。長年、健康診断の類いは一切受けていなかったこともあり、仕方なしに病院に行って検査してもらおうと決心したのです。 なぜ病院に行くのに決心がいるのかというと、現代の医療システムに巻き込まれたくないからです。このシステムに巻き込まれたら最後、タバコをやめなさいとか、甘いものは控えなさいとか、自分の行動が制限されてしまいます。コロナで自粛しているのに、さらなる自粛が「強制」されるようなものです。 なぜ医療システムに巻き込まれることにこれほど悩むのかについては、『養老先生、病院へ行く』の中で詳しく述べましたが、そのことで家内と対立するのも大人げないので、病院に行くことを決心したのです。 いったん医療システムに巻き込まれることになったら、つまり病院に行ったら、あとは「俎まないたの鯉こい」です。すべてを委ゆだねるしかありません。それは覚悟していました』、「現代の医療システムに巻き込まれたくないからです。このシステムに巻き込まれたら最後、タバコをやめなさいとか、甘いものは控えなさいとか、自分の行動が制限されてしまいます。コロナで自粛しているのに、さらなる自粛が「強制」されるようなものです」、なるほど理解できた。
・『25年ぶりに東大病院を受診する  受診の相談をしたのは、中川恵一さんです。東京大学医学部附属病院勤務で、がんの放射線治療が専門ですが、終末医療の造詣ぞうけいも深く、『自分を生きる 日本のがん治療と死生観』という本を一緒に書いたこともあります。 82歳の年寄りですから、重大な病気があれば、そのまま終末医療に入れるかもしれません。それはそれで好都合です。 また、中川さんは私のような「医療界の変人」への対処法もよくわかっています。その安心感もありました。そこで6月12日、中川さんに連絡を入れてみることにしたのです。 そのときの私の症状は、1年間で約15kgの体重減少、あとはなんだか調子が悪い、元気がない、やる気が出ないといった不定愁訴ふていしゅうそだけです。体重がなぜ10kg以上も減ったのか、理由はわかりません。 6月中は何かと忙しく、そのときは緊急性があると思っていなかったので、少し暇ができる7月に入ってから受診できるかどうか相談しました。 ところが、その直後、7月以降の予定がいくつも入ってしまい、身動きがとれなくなってしまったのです。そこで、6月20日過ぎに改めて受診の調整をしてもらい、6月26日に東大病院で中川医師の予約をとりました。東大病院を受診するのは25年ぶりのことでした。 今から思うと、この日に診てもらわなければ、自力で病院にたどり着くことは不可能だったかもしれません。というのは、受診日の直前3日間はやたらと眠くて、猫のようにほとんど寝てばかりだったからです』、眠気と心臓病は関係あるのだろうか。
・『まさかの心筋梗塞  6月26日、友人の運転で鎌倉から本郷の東大病院まで連れていってもらいました。中川医師の指示で心電図と血液検査を受けました。心電図をとってくれた検査技師は、特に何も言わず、表情も変えていないので、特に心臓に異変はないのだろうと、そのときは思っていました。 それから中川医師の部屋に行き、問診を受けました。血液検査は糖尿病の数値が高かったくらいだったので、次の受診の予約をとり、家内や秘書らとともに病院の待合室で待機していました。 東大病院のある本郷から近いので、御茶ノ水の山の上ホテルにある老舗天ぷら屋(てんぷらと和食 山の上)に行って、食事をしようかなどと話していたくらいで、今日はそのまま帰れると思っていたのです。 そこへ、中川医師が急ぎ足でやってきました。「養老先生、心筋梗塞です。循環器内科の医師にもう声をかけてありますから、ここを動かないでください」と言われ、そのまま心臓カテーテル治療を受けることになりました。その前後のことは、半分寝ているようだったのでよく覚えていません』、「心筋梗塞」で緊急手術とは、よほど切迫した病状だったのだろう。
・『生死をさまよい、娑婆に戻ってきた  カテーテル治療後は、ICU(集中治療室)で2日ほど過ごし、循環器内科の一般病棟に移りました。カテーテル治療の前後やICUにいたときは、意識がぼんやりしていて、お地蔵さんのような幻覚も見えました。お地蔵さんは、阿弥陀あみだ様だったのかもしれません。 病院から出るには2つの出口があります。1つは阿弥陀様から「お迎え」が来て、他界へと抜け出ます。もう1つは、娑婆しゃばに戻ります。現在の病院は後者の機能が大きくなっています。前者はホスピスと呼ばれる終末医療です。昔の病院がお寺や教会に属していたのは、この機能が大きかったからでしょう。 しかし、阿弥陀様には見放されたらしく、とりあえず私が出たのは娑婆の出口のほうでした。 成人してから2週間も入院したのはこれが初めてです。子どもの頃、赤痢(赤痢菌による感染症)で入院したことがあります。終戦の前でしたが、その頃、神奈川県津久井郡中野町(現在は相模原市緑区)に住んでいました。 そこは母の実家で、祖父母と叔母がいました。実家は山の中腹にあり、水道がないので山から水を引いていました。そのため、赤痢が流行し祖父母も叔母も赤痢で亡くなりました。 そのとき私も一緒に赤痢にかかり、鎌倉に戻って母の知り合いの女医さんの病院に1人で入院して、生き延びました。小さい頃から、感染症があたりまえの環境で暮らしていたのです。 退院したのがいつだったかはっきり覚えていませんが、昭和19年(1944年)の春だったと思います』、「病院から出るには2つの出口があります。1つは阿弥陀様から「お迎え」が来て、他界へと抜け出ます。もう1つは、娑婆しゃばに戻ります。現在の病院は後者の機能が大きくなっています」、面白い表現だ。
・『いつ死んでもおかしくなかった  赤痢で入院していたことを考えると、いつ死んでもおかしくないと思っています。今回、主治医の中川さんは、15kgやせたと聞いて糖尿病かがんを疑ったようです。検査の結果、体重減少の原因は糖尿病のようで、全身をくまなく調べても、がんは見つかりませんでした。 がんは年齢とともに発症率が高くなる病気です。今までがん検診を受けたことがありませんから、82歳ならがんの2つや3つあっても不思議はありません。 でも検査を受けなければ、病院に行かなければ、がんがあるかどうかはわかりません。中川さんは私よりずっと若いのに、膀胱ぼうこうがんが判明して大きなショックを受けたと言っています。だから私のような病院嫌いは、検査を受けないほうがいいと思っていたのです。 もしも、がんが見つかっていたら、それはそれで面倒なことになります。今回の入院で、いろんな検査をしましたが、大腸内視鏡検査では大腸ポリープが見つかりました。がん化する可能性があると言われましたが、放置することにしました』、「今までがん検診を受けたことがありませんから、82歳ならがんの2つや3つあっても不思議はありません」、医学的なことは全て承知している患者というのは、医師や看護士も騙すことができないので、やり難いのだろうか。
・『医者選びの基準は「相性」  がんであれば、家族は放置を認めないでしょうから、放射線治療くらいはやるかもしれません。手術はストレスが大きいので選ばないでしょう。抗がん剤もストレスが強ければやらないと思います。 だから、担当の医者が「がんは取れる限り取りましょう」というタイプだと困ってしまいます。もちろん、患者には治療法を選ぶ権利がありますが、主治医と患者で意見がずれてしまうと、ただでさえ楽ではない治療に余計なストレスがかかります。ですから、医者選びは大事なのです。 医者選びの基準は「相性」です。現在の医療は標準化が進んでいますから、基本的に誰が主治医になっても同じ治療が行われます。 一方、人には好き嫌いがあるので、相性が重要です。夫婦や、教師と生徒の関係にも似ています。 もう1つ、医者選びは自分と価値観が似ているかどうかも重要です。例えば、もう延命は望まないと思っているのに、主治医が延命を勧めたら、ストレスになってしまいます。 もう治療はここまでという私に対し、じゃあこのくらいにして、あとは様子を見ましょう、と言ってくれる医者でなくてはいけないのです。 こんな私と相性や価値観の似た医者というのはあまりいないのですが、中川さんはその期待に応えてくれたと思います。大変、お世話になりました』、「養老」氏と「相性や価値観の似た医者というのはあまりいない」。しかし。「養老」氏の強味は教え子のなかからよりどりに選べることだ。
・『医療のIT化が進むことで失われるもの  相性のよい中川さんに診てもらったことで、大きなストレスを抱えることなく、病院にいることができました。また中川さん以外の医師や看護師の対応もよかったと思います。 しかし、できることなら病院に行きたくないという思いは変わりません。中川さんに対しては意地悪な言い方になるかもしれませんが、先述したように、現代医療を受けるということは、現代医療のシステム全体に組み込まざるをえないからです。 現代医療は統計が支配する世界です。例えば、がんの5年生存率という言い方があります。5年生存率は、がんが治ったと見なされる数字です。患者さんから集められたこうした数字をデータとして集め、情報化するのが現代医療です。いわゆる医療のIT(インフォメーション・テクノロジー)化、そして目指すのは医療のAI(人工知能)化でしょう。 私が東大医学部にいた頃は、そうではなかったので、医療は経験に頼らざるをえませんでした。だから聴診器で胸の音を聴いたり、顔色を見たりすることが重要だったわけです。 その時代の医療から、情報化された医療に変わってきたのは、1970年代あたりからではないかと思っています。 医療のIT化が進むことによって失われるものがあります。患者の生き物としての身体よりも、医療データのほうが重視されるようになることです。それを突き進めると、われわれの身体がぜんぶ管理されてしまうことになります。そんなことを、私は25年くらい前に東大で講義した記憶があります』、「医療のIT化が進むことによって失われるものがあります。患者の生き物としての身体よりも、医療データのほうが重視されるようになることです」、確かにその通りだろう。
・『現代医療が扱うのは人工身体  その講義で話した通り、医療の情報化はどんどん進んできました。す。今の医者はパソコンの画面しか見ないとか言う人もいますが、それは当然なのです。データ化されていない、胸の音とか顔色がどうとかいうのは診療の邪魔になりま 逆にいえば、人間の観察力を信用していないということです。それでいて、数字に基づく理屈を信用しているのが不思議です。その理屈も人間の頭が考えているのですから。 医学や生物学を始め、いろんな学問は、私がやっていた解剖学の手法がベースになっています。その元になったのは何かというと、「物を見る」ということです。具体的に物を見るというのはいったいどういうことなのでしょうか? 情報化される前の医学は、ヒトそのものを見ることが重要視されていました。それで思い出したのが、東大病院で学生に口述試験を行ったときのことです。 頭の骨を2個、机の上に置いて、学生に「この2つの骨の違いを言いなさい」というのが試験内容でした。 するとある学生が、1分ぐらい黙って考えた末に、「先生、こっちの骨のほうが大きいです」と答えたのです。 ヒトの骨は1つとして同じものはありません。その学生には、大きさ以外の差は目に入っていなかったというか、目の前にある物を見て考える習慣がゼロだったということです。当時であれば、医者の資質に欠けているといっても過言ではありません。しかし、現在では、こういう学生も医者になれるのかもしれません』、「医学や生物学を始め、いろんな学問は、私がやっていた解剖学の手法がベースになっています。その元になったのは何かというと、「物を見る」ということです」、初耳だが、言われてみればそんな気もする。
・『現代医療が切り捨てる、生身の生き物の「ノイズ」  以前の医療が扱っていたのは現実の身体でしたが、今の医療が扱うのは人工身体です。現実の身体はもともとあるものです。これに対して、「人工」というのは頭の中で組み立てたものです。人工身体ばかりを見ていると、現実の身体というのはノイズだらけに見えてきます。 医療のIT化が進むと、ノイズは徹底的に排除され、統計的なデータに基づく確率に支配されていきます。病名を特定するときは、より確率の高いものから調べていきますし、治療法もより確率の高い治療法を選びます。 今回、病院に行ったときも、中川さんはまず15kgの体重減少という症状から、糖尿病かがんを疑いました。心筋梗塞が見つかったのは念のためにとった心電図の異常な波形を見たからだそうです。心筋梗塞は普通、激しい胸の痛みがあるのに、私はまったく痛みを感じませんでした。もしかしたら見逃されていた可能性があります。 このように、統計的データを重視する医療は、確率の低いケースを、ないものと見なすことにもつながっていくのです』、「医療のIT化が進むと、ノイズは徹底的に排除され、統計的なデータに基づく確率に支配されていきます。病名を特定するときは、より確率の高いものから調べていきますし、治療法もより確率の高い治療法を選びます」、ここまでくると医学というより、統計的処理の進歩で、何となく味気ない。
タグ:医療問題 (その29)(森元首相も受ける人工透析 日本で増え続けるのはなぜ?、コロナ禍の今 日本医療の特徴を考えてみる この国の医療の形はどのように生まれたのか、ソフトバンクがオンライン診療に勝算見込む訳 孫正義氏が巨額を投じた中国企業と合弁設立、養老孟司「生死をさまよい 娑婆に戻ってきた」病院嫌いが心筋梗塞になって考えたこと 健康診断も医療も避け続けた理由) 読売新聞のyomiDr 「森元首相も受ける人工透析 日本で増え続けるのはなぜ?」 「2019年2月から、森氏は人工透析を受けるようになりました」、初めて知った。 「感染症」は当然としても、「心不全」のリスクも高まるとは意外だ。「いったん始めれば、もうそれまでの日常生活には戻れない」、というのもつらい選択だろう。 腎不全の危険がある糖尿病だが、透析は受けないと決めた 「透析が苦痛になって途中でやめると」、「水分が一気にたまり、全身に痛みが回り、のたうち回ったりします」、悲惨なようだ。「糖尿病を患」っている筆者が「透析は受けないと決めた」、内情に通じた「医師」ならではの決断だ 「様々な延命治療を続けると、最終的に体は水ぶくれで太っていき、ご遺体は丸太のように膨らみます」、ぞっとする 「腎不全で人工透析が必要になった場合、それを積極的に勧めるのは、日本の医者だけ」、「欧米では透析は腎臓移植へのつなぎ医療という位置付け」、「医師」を儲けさせる手段になっているとは、困ったことだ 「医師」にとっては儲ける手段になっているのでは、「患者」に「人工透析」のデメリットを詳しく説明することはしないだろう。メリット、デメリットを詳しく解説したパンフレットに基づいて、「医師」から説明を受けるようにすべきだろう 東洋経済オンライン 権丈 善一 「コロナ禍の今、日本医療の特徴を考えてみる この国の医療の形はどのように生まれたのか」 『社会保障制度改革国民会議』(2013年)の報告書には、「医療問題の日本的特徴」という項目 公的所有主体の欧米、私的所有主体の日本 占領期にGHQが与えた影響 「社会保障制度審議会の1956年勧告では、「いやしくも公的資金により開設設置される病院については その施設は単に当該病院の専有物にせず、医療機関相互の利用を認め、その有機的な連携をはかるとともに、施設設備に対する重複な投資を避けさせしめることが望ましい」との方針が提示されていた」、無駄な投資抑制に向けた画期的な考え方だが、今はどうなっているのだろう 「病床規制」「導入」は、「公的病院」先で、「民間病院」は「23年後」、どうして格差が生じたのだろう 歴史的経緯が作っていった日本の医療のかたち 「病院規模は中小規模でとどまってきた」、効率性での問題点の指摘はなかったのだろうか。 「地域医療構想と地域包括ケアは「車の両輪」であるとか、地域医療構想・医療従事者の働き方改革・医師偏在対策を加えて「三位一体改革」、などを着実に推進してほしいものだ。 「ソフトバンクがオンライン診療に勝算見込む訳 孫正義氏が巨額を投じた中国企業と合弁設立」 「へルポのデータはすべて日本国内のサーバーに保管され、平安側がアクセスできない体制を取っているという」、のであれば、合弁先の「平安好医生」の影響は遮断されているようだ。 「ソフトバンク」にとって、実業に近い部分で「次の柱」に育つとすれば、安定的基盤を若干なりとも強化することにつながるだろう PRESIDENT ONLINE 養老 孟司 養老孟司「生死をさまよい、娑婆に戻ってきた」病院嫌いが心筋梗塞になって考えたこと 健康診断も医療も避け続けた理由」 養老孟司、中川恵一『養老先生、病院へ行く』 医者の不養生の典型の「養老」氏では何が飛び出しても驚かない。 さすが、解剖学の大家ならではの感覚だ。 「現代の医療システムに巻き込まれたくないからです。このシステムに巻き込まれたら最後、タバコをやめなさいとか、甘いものは控えなさいとか、自分の行動が制限されてしまいます。コロナで自粛しているのに、さらなる自粛が「強制」されるようなものです」、なるほど理解できた。 眠気と心臓病は関係あるのだろうか。 「心筋梗塞」で緊急手術とは、よほど切迫した病状だったのだろう。 生死をさまよい、娑婆に戻ってきた 「病院から出るには2つの出口があります。1つは阿弥陀様から「お迎え」が来て、他界へと抜け出ます。もう1つは、娑婆しゃばに戻ります。現在の病院は後者の機能が大きくなっています」、面白い表現だ 「今までがん検診を受けたことがありませんから、82歳ならがんの2つや3つあっても不思議はありません」、医学的なことは全て承知している患者というのは、医師や看護士も騙すことができないので、やり難いのだろうか 「養老」氏と「相性や価値観の似た医者というのはあまりいない」。しかし。「養老」氏の強味は教え子のなかからよりどりに選べることだ。 「医療のIT化が進むことによって失われるものがあります。患者の生き物としての身体よりも、医療データのほうが重視されるようになることです」、確かにその通りだろう。 「医学や生物学を始め、いろんな学問は、私がやっていた解剖学の手法がベースになっています。その元になったのは何かというと、「物を見る」ということです」、初耳だが、言われてみればそんな気もする 「医療のIT化が進むと、ノイズは徹底的に排除され、統計的なデータに基づく確率に支配されていきます。病名を特定するときは、より確率の高いものから調べていきますし、治療法もより確率の高い治療法を選びます」、ここまでくると医学というより、統計的処理の進歩で、何となく味気ない。
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投資(商品販売・手法)(その1)(1300万人がハマる投資アプリ「ロビンフッド」の魅力と落とし穴、ロボアドバイザーでの資産運用に反対する4つの理由、絶対に近寄ってはいけない「4つの金融の儲け」 投資家を狙う落とし穴とは?) [金融]

今日は、投資(商品販売・手法)(その1)(1300万人がハマる投資アプリ「ロビンフッド」の魅力と落とし穴、ロボアドバイザーでの資産運用に反対する4つの理由、絶対に近寄ってはいけない「4つの金融の儲け」 投資家を狙う落とし穴とは?)を取上げよう。

先ずは、本年1月10日付けNewsweek日本版が掲載したビジネスライターのダニエル・グロス氏による「1300万人がハマる投資アプリ「ロビンフッド」の魅力と落とし穴」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2021/01/1300-9_1.php
・『<米証券業界に「革命を起こした」と評判のロビンフッド。売買手数料は無料、数百ドルしか手元になくても気軽に株式投資ができる。利益相反なども指摘されるが、快進撃はどこまで続くのか>(※本誌「2021年に始める 投資超入門」特集より) 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に揺れた金融市場の最も意外な勝者の1つは、ミレニアル世代(2000年代に成人または社会人になった世代)がターゲットのスマートフォンアプリ「ロビンフッド」だ。 ユーザー数は1300万人。「金融市場を一般の人々がアクセス可能なものに変え、証券業界に革命を起こした」と、米有力ベンチャーキャピタル、セコイア・キャピタルのアンドリュー・リードは語る。 言うまでもなく、ロビン・フッド伝説は貧しい人々を助けるために金持ちから盗む義賊の物語。だが今では、庶民を金持ちと対等な立場に引き上げる試みの意味になった。それこそカリフォルニアを拠点とするロビンフッド・マーケッツの企業理念だ。 裕福な個人が相手の証券会社と違い、ロビンフッドには最低取引単位がない。株取引の売買手数料は基本的に無料。数百ドルしか手元に資金がなくても、アマゾン株(現時点で1株=3000ドル以上)を1単元株未満で購入できる。 共同創業者で共同CEOのバイジュ・バットとブラド・テネフは、スタンフォード大学で出会い、ヘッジファンドに取引ツールを売っていたが、すぐにミレニアル世代が簡単に株式市場にアクセスできるアプリの開発に方向転換。2015年にアプリ「ロビンフッド」を正式にリリースした。 ゴールドマン・サックスのような既存の金融大手はもちろん、Eトレードのようなネット証券から見ても魅力的な顧客とは言い難い超小口の個人投資家にとって、ロビンフッドは天からの贈り物だった。 ほとんどの投資アドバイザーが株価指数と連動するインデックス投資を推奨する時代に、あえて個別株で勝負したい投資家にも歓迎された。 「私たちは数百万人の人々、特に新しい世代が投資の扉を開くのを後押ししてきた」と、2人の創業者は胸を張る』、「2015年にアプリ「ロビンフッド」」「を正式にリリース」、「最低取引単位がない。株取引の売買手数料は基本的に無料」、現在では「ユーザー数は1300万人」、とは革命的だ。
・『利益相反の疑いあり  2019年までに、ロビンフッドは「ユニコーン」(企業評価額が10億ドル超で未上場の新興企業)の1つに成長した。2019年7月には3億2300万ドルを資金調達し、評価額は70億ドルを突破。年末までに1000万人のユーザーを獲得した。 そして2020年、パンデミックの襲来を受けてプロスポーツが活動を停止すると、サッカーやバスケットの試合を対象とする賭けに熱中していた人々が株取引に殺到。この年を通じて、ロビンフッドは米株式市場と共に急成長した。 経済専門ケーブルテレビ局CNBCによると、2020年第2四半期に同社の顧客が行った取引数は対前期比で2倍に増え、ユーザー数は1300万人以上に膨れ上がった。 2020年5月には2億8000万ドルの資金調達を行い、評価額は83億ドルに。9月にはさらに6億6000万ドルを調達し、評価額は117億ドルとなった。次の一手はIPO(新規株式公開)だと言われている。 急成長の一方で、問題も浮上した。株式市場が最も不安定だった3月初旬にはシステム障害が発生。顧客は自分の口座にアクセス不能になった。 ロビンフッドの主な収入源は、マーケットメーカー(値付け業者)に顧客の売買注文を流すのと引き換えに受け取る、一種のリベートだ。こうしたデータの売買は業界の一般的慣習だが、消費者擁護団体と規制当局は利益相反になるとみている。 しかし、より大きな問題は株式市場が長期下落トレンドに突入したらどうなるかだ。2000年のITバブル崩壊や2008年の金融危機のように投資家が大やけどを負った場合、手数料無料の魅力だけではユーザーをつなぎ留められないかもしれない。 <2021年1月12日号「2021年に始める 投資超入門」特集より>』、「ロビンフッドの主な収入源は、マーケットメーカー・・・に顧客の売買注文を流すのと引き換えに受け取る、一種のリベートだ。こうしたデータの売買は業界の一般的慣習だが、消費者擁護団体と規制当局は利益相反になるとみている」、「より大きな問題は株式市場が長期下落トレンドに突入したらどうなるかだ」、注目したい。

次に、1月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「ロボアドバイザーでの資産運用に反対する4つの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/258984
・『資産運用の世界で徐々に普及が進んでいるロボアドバイザーは個人投資家にとって役に立つのだろうか?筆者は現段階の実用性に対して否定的だ。その四つの理由をお伝えしたい』、世間では「ロボアドバイザー」をもてはやす論調が多いが、これを否定するとは興味深そうだ。
・『ウェルスナビの新規上場など徐々に普及するロボアドバイザー  いわゆるフィンテックビジネスの一つとして数えられることのあるロボアドバイザーの普及が進んでいる。昨年12月には、運用残高で最大のロボアドバイザー運用会社であるウェルスナビが東京証券取引所マザーズ市場への新規上場を果たした。 ロボアドバイザーは役に立つのだろうか? 筆者は、現段階でのロボアドバイザーの実用性に対して否定的だ。実は、このタイミングでロボアドバイザーについて論じるのは、ウェルスナビのIPO(新規株式公開)の邪魔をしたくなかったからだ(筆者ごときの意見がIPOに影響するとは思えないが、気持ちの問題だ)。現状のロボアドバイザーに不満があるとしても、テクノロジーを使った個人の資産運用のサポートには今後大いに期待したいと思っている。 ロボアドバイザーの大まかな機能を運用の観点からまとめると以下の通りだ。 まず(1)幾つかの質問の答えによって投資家の「リスク拒否度」を推定する。次に、(2)各資産クラスのリスク・リターンの推定値とリスク拒否度を使ってアセットアロケーション(資産配分)を決定する。そして、(3)資産クラスごとに運用商品の組み合わせを決定する。全体として、人間が行うラップ運用を、コンピューターのプログラムによって行うサービスだと思えばいいだろう。費用は、運用資産残高に対して年率1%前後のものが多い。 上記のようなロボアドバイザーが役に立たないと筆者が思う理由が四つある』、どういうことだろう。
・『ロボアドが役に立たない理由(1)「資産全体」の問題を解決できない  ロボアドバイザーは、個人の資産運用の問題の最重要部分を解決できない。 率直にいって、ロボアドバイザーに運用できる全財産の運用を任せる人はまれだろう。積立運用の場合も含めて、資産の一部をロボアドバイザーに任せることになる。 ところが個人にとっては、ロボアドバイザーに任せた部分以外を含む運用資産全体の運用状態がどうなっているかが問題だ。 ロボアドバイザーは個人の資産の総額や収入などの情報を収集しようとするが、この情報収集には限界がある。そして、他の運用資産がどのような状態で運用されているかが分からないと、ロボアドバイザーの運用部分を個人にとって最適な状態として決定することはできないはずだ。 投資家個人の側から考えると、ロボアドバイザーに任せた運用部分を前提に、残りの資産の運用を考えなければならない。ところが、そもそも資産の運用の仕方が分からなくてロボアドバイザーを利用したはずの個人は、より複雑化した形で元と同じ問題に直面することになる。 個人の運用の問題を解決するというよりは、さらに複雑化している』、「「資産全体」の問題を解決できない」、確かにその通りだが、「資産全体」を委ねればいいのではなかろうか。
・『ロボアドが役に立たない理由(2)「リスク拒否度」を決めるアプローチが個人になじまない  例えば、企業年金の積立金のような定型化された資産の運用の場合、リスクに対してどういったペナルティーを科するかを数値化した「リスク拒否度」を決めることによってアセットアロケーションを決めるアプローチがそれなりに納得的に機能する。 しかし個人の場合は事情が違ってくる。 経済状況をバランスシートで考えるとして、まず資産側は人的資本の占める割合が大きいが、人的資本は本人が将来の稼ぎ方を変更することや勤務先の経済的事情の変化などによって大きく変動する。さらに負債の側も、将来の生活の拡大縮小が可能であり伸縮的だ。 つまり積立金と将来の掛け金が予想可能で資産側が計算でき、将来の支払い予定から負債が計算できる年金運用の世界とは違うわけだ。個人が資産運用をするに当たって適切なリスク拒否度を決める条件は、複雑であると同時に変動が大きい。 率直にいって筆者は、リスク拒否度を決めて個人の資産運用方針を決める簡易版の個人資産の運用法を作る試みを過去に何度も行ったが、うまくいかなかった。 リスク拒否度を決めて最適化計算を行うアプローチは、個人の資産運用にあっても一定の有効性・合理性があると思う。ただ、現実の個人の運用にあっては、少なくとも損をするかもしれない額と損をした場合の対応をセットで考え、確認した上で、当面の資産運用で取るべきリスクの額を決める必要がある。 ロボアドバイザーのアンケート的質問がこの問題を解決できるとは思えない』、その通りなのかも知れない。
・『ロボアドが役に立たない理由(3)「バランスファンドの無駄」問題  ロボアドバイザーは投資家個人のリスク拒否度の大きさに応じて、例えば国内外の株式50%、債券が50%といった具合に資産配分を行い、投資を実行する。 特に今のようなゼロ金利の時代には分かりやすいが、果たして債券での運用に対して年率1%近い運用手数料を支払う意味があるだろうか。 仮に50万円分だけ株式で運用してもらえるサービスが年率1%で存在するなら(実際には年率0.2%以下で存在するが)、このサービスを利用して残りの50万円を自分で行う債券投資、あるいは債券で運用してくれる安価なサービスに資金を振り分ける方が、上記のようなロボアドバイザーに100万円運用してもらうよりも費用面で明らかに合理的だ。 ロボアドバイザーに支払う手数料1%は、実際に行われる運用の内容を考えるとかなり割高だと判断できる場合が少なくない。 これは、投資信託のバランスファンド(株式・債券両方の資産クラスに投資する投信)にあっても発生する無駄だが、ロボアドバイザーの顧客もこの問題に対して自覚的になることで運用を確実に合理化できる。 ロボアドバイザーもバランスファンドもやめて、自分で株式と債券のそれぞれに投資する方がずっといいのだ。 「初心者は自分でアセットアロケーションができないので、ロボアドバイザーやバランスファンドが存在することに意味がある」との言い分を聞くことがある。ところが実際に両商品がやっていることは異なる。投資家の資産の一部を非効率的な形で抱え込んで、「自分の運用全体の最適化」という重要な問題を抱える投資家に対して問題をより複雑にして返しつつ、無駄に高い費用を取っているだけのことだ。 「初心者に優しい」のは見かけ(=宣伝のイメージ)だけだ。 ロボアドバイザー業者側から、「ロボアドバイザーがなければ運用に関わることがなかったはずの初心者に対して、運用を始めるきっかけを与えることには価値があるのではないか」との反論を受けたことがある。それに対して筆者は、「よりダメな状態の誰かを想定して、自分を正当化することはやめなさい」と答えた』、「ロボアドバイザーもバランスファンドもやめて、自分で株式と債券のそれぞれに投資する方がずっといいのだ」、その通りのようだ。
・『ロボアドが役に立たない理由(4)時間に比例する費用の不合理性  仮に、ロボアドバイザーが行う資産配分や商品選択に何らかの価値があるとしよう。だが、この価値に対する対価を「運用資産額×運用期間」に比例して支払うことは合理的だろうか? 「個人の事情に合わせたアセットアロケーション」や「アセットクラスごとの商品の選択」は、運用期間の初期にあって重要な決定だが、いったん決めてしまえば時間の経過とともに運用初期と同じだけの努力の投入が必要な行為ではない。 時間の経過に伴って生じる資産配分の変化を元の比率に戻す「リバランス」に価値があると、ことさらに強調する向きもある。とはいえ、リバランスは頻繁に細かく行う必要はないし、必要な程度のバランス修正は個人でも十分にできるので、これに費用を払う合理性は乏しい。 投資家にとっての運用のメリットは確かに時間の経過によって得られるものなのだが、運用の内容は運用の初期の努力で大半が決定できる。 前者は投資家自身の資金提供と忍耐の成果であり、アドバイザーの主な貢献は後者の段階にある。であるのだから、運用期間に比例して漫然と手数料を払い続けることは、顧客である投資家側にとって合理的ではない。 例えば、人間のアドバイザーに相談して自分の資産全体の運用方針を一度決めてしまえば、その後は自分で運用を管理すればいい。 仮に1000万円を1年間ロボアドバイザーで運用するのに10万円掛かる状態と比較してみよう。アドバイザーに数万円支払って運用方針を決め、年間2万円以下(運用管理費用0.2%以下)の運用商品で運用すると、1年でアドバイスの元が取れる計算であるし、2年目以降の差はもっと大きく開く。 ロボアドバイザー業者も長期運用の効用を説くが、運用が長期に及ぶほど期間に比例する手数料の影響は大きい』、「「個人の事情に合わせたアセットアロケーション」や「アセットクラスごとの商品の選択」は、運用期間の初期にあって重要な決定だが、いったん決めてしまえば時間の経過とともに運用初期と同じだけの努力の投入が必要な行為ではない」、「運用期間に比例して漫然と手数料を払い続けることは、顧客である投資家側にとって合理的ではない」、「例えば、人間のアドバイザーに相談して自分の資産全体の運用方針を一度決めてしまえば、その後は自分で運用を管理すればいい」、その通りだ。
・『必要なら人間に相談して自分で決めるべし  以上、現在のロボアドバイザーの利用に賛成できない理由を挙げた。それでは、個人はどのように資産運用をすればいいかというと、「自分で考えたらいい」。運用プロセスで最も重要な決定である「リスクテイクの大きさ」に関連する情報を最も豊富に持っているのは投資家本人だからだ。 運用方針の決め方は、率直にいってそれほど難しいものではない。適切な本を1冊読むと十分一人でできるようになる程度の問題だ。仮に不安があるなら、今の段階では人間のアドバイザーに1回ないし数回相談して、その都度対価を支払う方が合理的だし、何よりも「自分で分かるようになる」ことの価値が大きい。 筆者は、あるロボアドバイザー運用会社の経営者に、顧客の資産の一部を運用するロボアドバイザーよりも、顧客の運用全体の問題解決に貢献できるフィンテックサービスを開発・提供することの価値の方が大きいのではないか、と言ったことがある。その経営者は頭のいい人なので、「ぜひやりたい」と返答した(「必ずやります」だったかもしれない)。 では、そうしたサービスができたとしたら、読者はロボアドバイザーを利用するだろうか。「要らない!」と筆者は思う』、運用のプロである山崎氏ならそうだろうが、素人にとってはそうもいかず、任せ切りにしたい人も多いだろう。

第三に、この続きを、4月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「絶対に近寄ってはいけない「4つの金融の儲け」、投資家を狙う落とし穴とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/268350
・『読者自身が今後もうけるため、あるいは、悪い金融話に引っ掛かって損しないようにするために、本稿では典型的な「金融のもうけ」の4パターンを見てみよう。それらがはらむリスクや不利について、投資家は気がつかない場合が少なくない。大いに気をつけて、遠ざかる心構えを持ってほしい』、確かに銀行や証券会社、生命保険会社などの営業マンが手ぐすねを引いているので、注意が必要だ。
・『悪い金融話に引っ掛からないように遠ざかるべき「4パターン」  新型コロナウイルスによる危機に対応した金融緩和と財政出動を背景として、株式などの資産価格が高騰。あちこちにお金持ちが生まれている。コロナは間違いなく貧富の格差を拡大している。 ただしお金持ちの中には、株式を大量に保有する創業経営者のように、もともと資産があってその資産が膨らんだ「自然なお金持ち」も存在する。一方で、先頃破綻して内外の金融機関に大きな損をもたらすことになった米ファミリーオフィス(個人の資産運用会社)のアルケゴス・キャピタル・マネジメントのような、関わると「実は危ないお金持ち」も混じっている。 「危ない」の中には、「市場のリスク」が危ない場合もあるし、法的・倫理的にスレスレの、「危ない」よりも「汚い」に分類したくなるようなリスクもある。そして、金融的なもうけにはいくつかの典型的なパターンがある。 はっきり言って、もうかる投資先を次々と当てて連戦連勝するような「相場の当たり」を続けて大金持ちになる人はごく少ない。集中投資がたまたま当たり、それを長期にも保有することになった創業経営者のような「幸運な人」が時々存在する程度だ。それ以外の金融のもうけは、よく見ると意外にチープな仕掛けから生じている。 読者自身が今後もうけるためでも、あるいは、悪い金融話に引っ掛からないようにするためでもいいのだが、本稿ではいくつかの「金融のもうけ」のパターンを見てみよう』、「パターン」別に整理してくれるとは、理解しやすい。
・『絶対に近寄ってはいけない「もうけその1」レバレッジでもうかった  個人のお金持ちからヘッジファンドの経営者に至るまで、レバレッジを掛けた投資、すなわち実質的に借り入れを伴う投資が結果的に成功して大金持ちになった人は数多い。もっとも、後に触れるが、ヘッジファンドの場合はレバレッジ以外に別の「仕掛け」の役割が大きい。 個人のお金持ちには、不動産で財をなした人が少なくない。不動産は担保物権が具体的なので個人でも比較的低利の借金を利用しやすく、大きな金額の借金と投資ができてお金持ちになるパターンがある。 安易なマネー本や不動産のセールスマンが言うように、「家賃利回り>借入金利」なら不動産は利益をもたらすプラスの資産なのだ、というほど話は単純ではない。しかし、次々にローンを借りて不動産投資を膨らましただけの「欲張り父さん」のような人が、「結果的に」お金持ちになることはある。 その過程では大きなリスクと無駄な手数料の支払いがあったはずなので、うらやましがってまねをしてはいけない。真に着実にもうかるのは、一見もうけ話らしき案件を売り歩くセールスマンだ。 借金も、(1)良い利回りを見込める資金の使い道があって、(2)十分返せる規模で、(3)金利が高くないものであれば、利用していけないというものではない。 (2)については、普通の人は返済の算段を心配する方がいいが、野心的な事業家の場合「借金とは、借り手が心配するものではなく、貸し手が心配するものだ」というくらいに考える人もいる。その度胸は時に功を奏する。 しかし、今般話題になったアルケゴスの場合は、集中投資の行き先がまずかったようだ。「相場を当て続けることはできない」という原則と、「レバレッジによるリスク拡大」が悪く重なった例だった。 素晴らしいテクノロジーで大もうけしているように見えて、実際には数十倍のレバレッジでリスクを取っていたと後からもうけの「種」が分かるようなケースもある。かつてノーベル賞受賞学者などを巻き込んで設立され、後に破綻した米ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)がその典型だ。 うますぎるもうけ話の裏には「大きなレバレッジが隠れていないか?」という疑いが欠かせない』、確かに「LTCM」は「ノーベル賞」の意味も考え直させるインパクトがあった。
・『絶対に近寄ってはいけない「もうけその2」 信用リスクのある高利回り投資  一般に素人は配当や分配金などのインカムゲインに釣られる傾向があるが、見かけのインカム利回りはプロの運用者にとっても魅力的な場合がある。 特に損失を抱えたファンドマネージャーが、インカム利回りの高いポートフォリオを組んで損を取り返そうとするケースは少なくない。 この場合、信用リスクがあって利回りが高い債券を組み入れて、デフォルトがないことを「祈る」パターンになる。ここにレバレッジが組み合わせられるケースもある。金融機関や運用会社の経営者は、自社の運用者がこうしたパターンの運用をしていないか、常に気を配っておきたい。 いつ、どの会社で、誰が、までは書かないが、筆者が過去に勤めた会社で、損失を隠蔽したファンドマネージャーがやっていたのもこの手口だった。しかし、投資した債券の中にデフォルトするものが生じて、もろもろの不都合が明るみに出た。 ファンドの計理(会計)をごまかして損失を隠蔽していなくても、利回りを求めて信用リスクの高い債券に投資する運用は歯止めが掛かりにくい。 政府・中央銀行の経済対策やコロナワクチン接種の普及に伴う経済回復などの期待から、現在米国の社債市場では、低格付けの銘柄と国債との利回り格差が縮小する傾向にあるが、いずれ問題が生じるだろう。低格付けの銘柄を証券化商品というオブラートにくるんでも根本的な問題が解消しないのは、かつてのサブプライムローン問題で経験済みだ』、「信用リスクのある高利回り投資」、も大いに気を付けるべきだろう。
・『絶対に近寄ってはいけない「もうけその3」フロントランニング  証券会社で、顧客の売買注文の前に自己勘定の注文を割り込ませて、顧客の注文を利用して利益を得る行為を「フロントランニング」と呼ぶ。もちろん、不正であり、違法行為だ。 しかし、かつて(と言っておく)証券会社の自己売買にあって、フロントランニング的な行為は時々存在した。顧客の注文を受ける部署と自己売買部門の物理的・人的な距離があまりに近かったのだ。 現在は、かつてのような単純なフロントランニングは難しくなっているが、自己売買部門に代わってフロントランニングを行っているのが、いわゆる高速取引業者だ。 煩雑になるので詳しい説明は省くが、彼らは投資家の注文をキャッチして、取引所にその注文が流れるよりも速く注文を執行して利益を得る。そしてその一部を、注文を流してくれた証券会社にキックバックする。1社で行うと不正になるフロントランニングだが、分業することによって規制をすり抜けている。 先般、主に米インターネット証券のロビンフッド・マーケッツを使った個人投資家による米ゲームソフト販売大手のゲームストップ株の売買が米国で話題になった。 SNSで連携した個人投資家たちとヘッジファンドは相場で勝負をしているのだから、どちらがもうけても(損をしても)構わない。ただ、全体の構図の中で、取引を仲介したロビンフッドと高速取引業者が確実にもうけているのが気になった。「違法ではないが、質の悪いもうけを得ている」との印象だ。一般投資家は関わらない方がいい。 顧客の買い(売り)注文の鼻先をかすめて先に注文を執行し、ほんの少し上(下)のオーダーを出して顧客の注文と付き合わせると、見かけ上の出来高が2倍に膨れ上がるが、実質的な流動性は増していない。市場の機能は少しも改善していないし、顧客から見えにくい場所で実質的な取引手数料が生まれるような仕組みは不健全だ。 なお、インデックスの銘柄入れ替えや銘柄のウェイト変更を、高速取引業者を含む市場参加者に利用されることで発生するインデックスファンドの損も、性格としては投資家がフロントランニングにやられている状態に近い』、「高速取引業者」が「フロントランニングを行っている」、とは初めて知った 予めルールを示し合わせているのだろう。
・『絶対に近寄ってはいけない「もうけその4」オプションとしての成功報酬  ヘッジファンドのマネージャーが大金持ちになれる「仕掛け」が成功報酬だ。 ファンド運用の成功報酬は、ファンド資産額を原資産とするコールオプション(買う権利)の性質を持っている。例えば、値上がり益の2割といったヘッジファンドの典型的な成功報酬条件は「法外に」と言っていいくらい、マネージャー側に有利だ。) オプションの価値は主に原資産のボラティリティー(価格変動の大きさ)で決まる。仮にボラティリティーが20%(日経平均株価のボラティリティーくらいだ)なら、期間1年間のコールオプションの価値は資産額の8%くらいだ(※金利はゼロで計算)。とすると、「値上がり益の2割」の経済的価値はざっと1.6%になる。 これだけでも大きな手数料だが、ヘッジファンドの場合、マネージャーはレバレッジを利用して「自分で」ファンドのボラティリティーを上げることができる。そして、成功報酬の経済価値を何倍にもできる。これは、半ば詐欺に近い有利な仕組みなのだが、「もうけに対して手数料を払うならフェアだ」と思う素朴で愚昧な投資家たち(一昔前の年金基金の運用担当者がそうだった)は、こうした条件で資金を出してくれる。 「オプションとしての成功報酬」を確保して、顧客(自分の勤める会社の株主が実質的に顧客になる場合もある。資本家も時に搾取される!)にリスクを取らせて、自分は成功報酬を得る――。この種のパターンは、金融業にあっては半ば普遍的な「個人のビジネスモデル」であり、同時にバブルの根源的な原因だ。 金融機関のトレーダーもセールスマンも、こうした仕組みを利用してもうける場合が少なくない。 加えて、近年は、企業の経営者たちが、自分で自社のストックオプションを持ち、自社株を買ったり、バランスシートのレバレッジを上げたりするような手口で富を増やすことを覚えた。「CEO(最高経営責任者)の金融マン化」が顕著だ』、「CEO・・・の金融マン化」とは情けない感じもするが、これが現実なのだろう。
・『「金融ビジネス側のもうけ」から遠ざかる心構えを持つ  金融ビジネスでのもうけには、ここで挙げたもの以外にも、営業マンのマンパワー(やはり軽視できない。つい付け込まれてしまう)で稼ぐ手数料ビジネスでのもうけもあるし、ネズミ講に近い詐欺的なもうけなどもある。いずれも相手にしない方がいいのだが、これらはある程度個人の注意によって防ぐことができる(他人に勧められたもうけ話の全てを疑う習慣を持つべきだ)。 しかし、本稿で挙げた、「レバレッジ」「信用リスク」「フロントランニング」「成功報酬」などの仕組みのリスクや不利には、顧客側で気がつかない場合が少なくない。大いに気をつけて、金融ビジネス側のもうけから遠ざかる心構えを持ってほしい』、山崎氏の助言を噛み締めて、「金融ビジネス側の」カモにならないよう気を付けてほしいものだ。
タグ:投資 (商品販売・手法) (その1)(1300万人がハマる投資アプリ「ロビンフッド」の魅力と落とし穴、ロボアドバイザーでの資産運用に反対する4つの理由、絶対に近寄ってはいけない「4つの金融の儲け」 投資家を狙う落とし穴とは?) Newsweek日本版 ダニエル・グロス 「1300万人がハマる投資アプリ「ロビンフッド」の魅力と落とし穴」 「2015年にアプリ「ロビンフッド」」「を正式にリリース」、「最低取引単位がない。株取引の売買手数料は基本的に無料」、現在では「ユーザー数は1300万人」、とは革命的だ 「ロビンフッドの主な収入源は、マーケットメーカー・・・に顧客の売買注文を流すのと引き換えに受け取る、一種のリベートだ。こうしたデータの売買は業界の一般的慣習だが、消費者擁護団体と規制当局は利益相反になるとみている」、「より大きな問題は株式市場が長期下落トレンドに突入したらどうなるかだ」、注目したい ダイヤモンド・オンライン 山崎 元 「ロボアドバイザーでの資産運用に反対する4つの理由」 世間では「ロボアドバイザー」をもてはやす論調が多いが、これを否定するとは興味深そうだ。 ロボアドが役に立たない理由(1)「資産全体」の問題を解決できない 「「資産全体」の問題を解決できない」、確かにその通りだが、「資産全体」を委ねればいいのではなかろうか ロボアドが役に立たない理由(2)「リスク拒否度」を決めるアプローチが個人になじまない ロボアドが役に立たない理由(3)「バランスファンドの無駄」問題 「ロボアドバイザーもバランスファンドもやめて、自分で株式と債券のそれぞれに投資する方がずっといいのだ」、その通りのようだ ロボアドが役に立たない理由(4)時間に比例する費用の不合理性 「「個人の事情に合わせたアセットアロケーション」や「アセットクラスごとの商品の選択」は、運用期間の初期にあって重要な決定だが、いったん決めてしまえば時間の経過とともに運用初期と同じだけの努力の投入が必要な行為ではない」 「運用期間に比例して漫然と手数料を払い続けることは、顧客である投資家側にとって合理的ではない」、「例えば、人間のアドバイザーに相談して自分の資産全体の運用方針を一度決めてしまえば、その後は自分で運用を管理すればいい」、その通りだ。 運用のプロである山崎氏ならそうだろうが、素人にとってはそうもいかず、任せ切りにしたい人も多いだろう 「絶対に近寄ってはいけない「4つの金融の儲け」、投資家を狙う落とし穴とは?」 確かに銀行や証券会社、生命保険会社などの営業マンが手ぐすねを引いているので、注意が必要だ。 「パターン」別に整理してくれるとは、理解しやすい 絶対に近寄ってはいけない「もうけその1」レバレッジでもうかった 確かに「LTCM」は「ノーベル賞」の意味も考え直させるインパクトがあった。 絶対に近寄ってはいけない「もうけその2」 信用リスクのある高利回り投資 「信用リスクのある高利回り投資」、も大いに気を付けるべきだろう 絶対に近寄ってはいけない「もうけその3」フロントランニング 「高速取引業者」が「フロントランニングを行っている」、とは初めて知った 予めルールを示し合わせているのだろう 絶対に近寄ってはいけない「もうけその4」オプションとしての成功報酬 「CEO・・・の金融マン化」とは情けない感じもするが、これが現実なのだろう 「金融ビジネス側のもうけ」から遠ざかる心構えを持つ 山崎氏の助言を噛み締めて、「金融ビジネス側の」カモにならないよう気を付けてほしいものだ。
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教育(その24)(萩生田文科大臣「人権・人格を否定する校則は望ましくない」 校則のHP公開にも前向きな姿勢、男性教師による女子生徒の下着チェックは犯罪の可能性が、千代田区の名門公立中学校で通知表に「1」を連発した新校長の主張) [社会]

教育については、3月1日に取上げた。今日は、(その24)(萩生田文科大臣「人権・人格を否定する校則は望ましくない」 校則のHP公開にも前向きな姿勢、男性教師による女子生徒の下着チェックは犯罪の可能性が、千代田区の名門公立中学校で通知表に「1」を連発した新校長の主張)である。

先ずは、3月21日付けYahooニュース「萩生田文科大臣「人権・人格を否定する校則は望ましくない」。校則のHP公開にも前向きな姿勢」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/murohashiyuki/20210321-00228000/
・『社会的な関心の高まりを受けて、いわゆる「ブラック校則」と呼ばれる、人権侵害にも近い理不尽な校則の見直しが急速に進んでいる。 鹿児島市教育委員会によると、新年度中の2022年3月までに、鹿児島市内のすべての市立小中学校で、下着の色を白に限定している校則が見直される。(毎日新聞) 長野県では、長野県高等学校長会が昨年9月、県内の公立と私立の高校あわせて106校の校長などを対象に調査を行い、3割を超える高校が校則をすでに見直したか見直しを進める予定だと回答。 校長会は「県内は制服がない高校が多く、厳しすぎる校則はないと思われるが、今後、生徒も交えた議論の場を設け、校長だけではなく、みんなで校則について考えていきたい」としている。(NHK NEWS WEB)』、「ブラック校則」には腹が立つが、文科相と共産党議員の論議とは興味深そうだ。
・『校則などが原因で不登校になった児童生徒の数は合計5572人  3月16日には、参議院・文教科学委員会で日本共産党の吉良よし子議員が理不尽な校則問題を取り上げ質問。 (以下、参議院インターネット審議中継より文字起こし) 吉良よし子参院議員:昨日の朝、日本テレビの情報番組、『スッキリ』という番組で、一部の小学校で体操服の下の肌着着用が禁止されていて、男性教師が女子児童の胸の成長をチェックしてOKを出せば着用が認められると報道がされました。かなり衝撃が広がっています。 この肌着禁止ルール、なおかつ男性教師による身体のチェック、あまりにひどいと思うんですが、いかがでしょうか。 萩生田光一文科大臣:小学校ですか?首を傾げる次第です。 吉良議員:首を傾げる、本当にひどい事態だと思います。こうした肌着禁止のみならず、下着の色を指定してしまう、髪型、髪の色まで細かく指定するような、人権侵害とも言える理不尽な校則、巷では「ブラック校則」などとも言われている校則について今日は取り上げたいと思います。 先月大阪府立高校の黒染め強要の大阪地裁判決が出されました。ここでは黒染めを強要した学校側の校則や指導は適法とされました。この判決にも衝撃が広がっているわけですが、髪の色は黒だと決めつける校則や黒染めを強要する指導というのはどちらも理不尽だし、人権侵害だと思います。 ただこういう、髪の色を黒と決めつける指導はかなり他(の学校)でも見られるわけで、2020年3月に我が党都議団が都立高校全191校の校則について情報公開請求で調査したところ、全日制177校中、頭髪に関する規定がある学校は155校、84.7%にも上ります。学校がふさわしくないと判断した頭髪はNG、ドライヤーによる色落ちを禁止している学校までありました。 さらに、髪の色の制限に関わって話題になっているのが「地毛証明書」です。黒髪ストレートではない生徒については保護者のサインや押印を添えて、生まれつき癖毛とか髪の色が明るいと証明させる、届出させるというものです。これを我が党都議団が調査したところ、全日制都立高校の45%、約半数で提出を求めていて、一つ一つ見たところ、中にはカラースケール5を超えている入学予定者は入学まで改善をして来いと、黒染めを強要するものもありました。 問題はこれらの校則や地毛証明書というのは生徒たちの生来の髪の毛が黒髪ストレートだと前提にしてしまっていることだと思うんです。それ以外の髪だと普通じゃないんだと言ってしまう。これは差別人権侵害だと思うし、この多様化の時代に黒髪ストレート以外は排除しますというようなことはあってはならないんじゃないかと思うんです。以前、2017年に当時の林文科大臣に確認したところ、『生徒指導において生まれ持った個性を尊重することは当然だ』という答弁がありました。これは今も認識変わらないでしょうか?生まれ持った個性を尊重することは当然、ということでよろしいですね? 萩生田大臣:生徒指導では一人一人の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら社会的資質やご努力を高める教育活動だと思います。また生徒指導にあたっては、児童生徒の持つそれぞれの特徴や傾向をよく理解し、把握するといった深い児童生徒理解が不可欠であると考えております。 このような人格の尊重や深い児童生徒理解の重要性に鑑みれば、一般論として生まれ持った個性を尊重することは当然のことだと考えております。 吉良議員:当然だというご答弁でした。頭髪に関する校則について引き続き申し上げますが、髪の色だけじゃないんですね。髪型についても細かく決める校則が多数あるわけです。中には、髪を伸ばす場合は結びなさい、ただし2つ結びは禁止とか。合理性のないものもかなりあるんです。昨年3月、ツーブロックと呼ばれる髪型を禁止する校則について我が党の池川都議がなぜダメなのか質した際に、都の教育長はツーブロックは事件、事故に巻き込まれる可能性があるからだと。これはとても合理的な理由だと私は思えない。むしろタイなどではツーブロックは普通の髪型で、タイから日本に来た学生が学校でダメだと言われて戸惑ったという話も聞いています。 校則だけでなく、それに伴う指導もあって、その指導も問題だと思います。黒染め指導がその代表ですが、昨年9月、我が党の千葉県議団が行った調査では、千葉県内の県立高校138校のうち、黒染め指導が行われたのは105校、違反した生徒にその場で黒スプレーを吹きかける指導を行った学校が25校、指導対象となった生徒は210人です。相談をした当時、高校1年生の女子生徒は学校の指導に従って黒染めして行ったのに、黒染めが不十分だと教師4人に囲まれて、ビニールを被せられ、黒スプレーを噴霧される指導を受けて、彼女は恐怖で学校に行かれなくなったと話しています。 ここで確認したいんですが、小中高の不登校生徒のうち、その要因として、校則や学校の決まりが含まれている児童生徒の数、合計数を教えてください。 瀧本初等中等教育局長:文部科学省において行われました、令和元年度の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査によれば、小中高の不登校生徒のうち、不登校の主たる要因として、または、主たる要因以外の要因で、学校の決まり等をめぐる問題として挙げている児童生徒の数は合計で5572名となっております』、「これらの校則や地毛証明書というのは生徒たちの生来の髪の毛が黒髪ストレートだと前提にしてしまっていることだと思うんです。それ以外の髪だと普通じゃないんだと言ってしまう。これは差別人権侵害だと思うし、この多様化の時代に黒髪ストレート以外は排除しますというようなことはあってはならないんじゃないかと思うんです」、その通りだ。「高校1年生の女子生徒は学校の指導に従って黒染めして行ったのに、黒染めが不十分だと教師4人に囲まれて、ビニールを被せられ、黒スプレーを噴霧される指導を受けて、彼女は恐怖で学校に行かれなくなったと話しています」、学校による明確な人権侵害だ。「小中高の不登校生徒のうち、不登校の主たる要因として、または、主たる要因以外の要因で、学校の決まり等をめぐる問題として挙げている児童生徒の数は合計で5572名」、こんなにも犠牲者が多いとは心底驚いた。
・『「校則って見直せるものなんだよ」と周知していただきたい  吉良議員:5572人と、かなりいるわけです。ちなみにこの調査は子どもたち本人による回答ではなく、学校側がこうだろうと思って回答したものなので、本人が回答したらもっと増える可能性もあります。 こうやって子どもたちを精神的に追い詰める、不登校につながるような指導はあってはならないと思います。千葉だけでなく、不登校の生徒がせっかく登校してきて、服装違反で学校に入れてもらえなかった、コロナで学校に行けずやっと行けたのに、すぐに女子生徒が男性の教師から下着の色を指摘されてそれ以来学校に行けなくなったという事例もあります。 大臣、このように不登校になるように精神的に追い詰める、自尊感情の低下を招くような指導あってはならないと思いますが、いかがでしょうか。 萩生田大臣:児童生徒への指導にあたり、例えば体罰や不適切な言動が許されないのは当然ですが、それらに至らなくとも児童生徒の特性や発達の段階を十分に考慮することなく、厳しい指導を行うことは児童生徒の自尊感情の低下などを招き、児童生徒を精神的に追い詰めることにつながりかねないと考えます。このため、校則による指導も含め、生徒指導にあたっては、児童生徒の持つそれぞれの特徴や傾向をよく理解し、個々の児童生徒の特性や発達の段階に応じた指導を行うことが必要であると認識しています。 吉良議員:やはり、児童生徒の事情に応じて、自尊感情を低下させない指導というのは欠かせないと思います。同時に、やっぱり理不尽な校則そのものの見直しも必要だと思います。先ほどのツーブロックしかり、2つ結びがダメというのもしかり、合理的な説明ができないようなもの、人権侵害につながるようなものは、見直さなきゃいけないと。これも2018年当時の林大臣に聞いたんですが、その際にも学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況の変化に応じて絶えず積極的に見直す必要があると。見直しの際には、児童生徒、保護者が何らかの形で参加した上で、決定していくことが望ましい。そういう答弁もいただいております。その後、この間、こうした理不尽な校則について全国的に見直す動きが広がっているわけです。 事例を紹介します。長崎県教育委員会。教師が一人一人の下着の色をチェックするような人権侵害にあたる校則や指導は見直すように、と通知を出しました。 また佐賀県教育委員会は2020年3月に県立学校に対して、校則を見直す際に、児童生徒保護者らに意見を求めるように、と通知を出しています。 熊本市教育委員会では、教職員、児童生徒、保護者へのアンケートを取って、社会環境や人権の観点から、校則の見直しを進めるよう、HPで周知を進めております。 このように、生徒や保護者の声を反映しながら、校則の見直しを進めていくことは良いことですし、大いに全国に進めていくべきと思いますが、大臣いかがでしょうか? 瀧本局長:一般的に校則については各学校がそれぞれの教育目標を達成するために、学校や地域の実態に応じて必要かつ合理的な範囲で定めるものと考えております。また校則に基づき、具体的にどのような手段を用いて指導を行うかについても各学校で必要かつ合理的な範囲で適切に判断されるものと考えております。他方、校則の内容については、学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況の変化に応じて絶えず積極的に見直す必要があると考えております。 校則の見直しは最終的には校長の権限において適切に判断されるべき事柄ではありますが、見直しの際には児童生徒が話し合う機会を設けたり、保護者からの意見を聴取したりするなど、児童生徒や保護者が何らかの形で参加する例もございます。この点に関して昨今の、委員からもご紹介がありましたが、各地での校則の見直しに関する取り組み、あるいは報道についても承知しています。こうした校則の見直しに関する考え方は、生徒指導担当者向けの会議等において周知を行ってきているところであります。文部科学省としては引き続き、さまざまな機会を捉えてその周知徹底に努めてまいりたいと思います。 吉良議員:積極的に見直していくべきだということでしたが、ぜひ大臣にも答弁頂きたいです。全国で見直しの動きが広がっていること、それ自体は良い流れだとご認識でしょうか? 萩生田大臣:実は文科省の記者会見でも度々この校則のことが出ます。私がこの校則は良いとか悪いとか言うのはなるべく控えているんですけれど、先生がいみじくも仰ったように、時代や社会の変化で、率直に申し上げて、下着の色を確認するというのはあり得ない、と思います。したがって、そういった時代の変化や価値観の変化によって、見直しをそれぞれの学校が行っていくことは決して悪いことじゃないと思っています。 一度決めたからと言って、一語一句変えない、と言うのは今の民主主義に合わないと思います。それは国際ルールも憲法も同じだと思っていまして、それぞれの学校の判断で行って頂ければどうかなと思います。 吉良議員:見直すことは悪いことじゃないと、言っていただきました。ちなみに見直しが進んでいる学校がある一方で、いまだに生徒会等で生徒が話し合おうとしたら、「いや校則の議論はしてはいけないんだ」とか「触れてはいけない」と言われたり、校則について意見を言った瞬間、内申に響くぞ、と脅されたりする学校もまだまだあると聞いています。やはり、先ほど大臣仰っていましたが、校則を見直すことは悪いことじゃないと、むしろ積極的に見直していく必要のあるものだと、先ほど局長答弁されました。そのことをぜひ周知していただきたいと思うんですが、改めてどうでしょうか? 瀧本局長:校則の見直しについてはこれまでも通知あるいは先ほど申し上げたように、毎年開催しております生徒指導の担当者の会議等においても、繰り返し見直しについては呼びかけているところでございますし、あるいは委員からご紹介いただいたような、校則の見直しの他にも、自治体によってさまざまな見直しの取り組みが行われている事例がございますので、そうした取り組みについてもある意味で横展開を図りながら、それぞれの自治体におきます、見直しの参考としてご提供するなど、校則の見直しを促しているところであります。 吉良議員:自治体に周知は取り組んでいるということでしたが、もっと子どもたち、児童生徒自身にも、「校則って見直せるものなんだよ」と周知していただきたい。この学校に入ったら、この校則に従わないといけないんだと、この(黒)髪の色に染めなきゃいけないんだと、思い込まされる、というのはやはりツラいものだと思います。 おかしいなと思ったら意見して良いし、変えられるんだ、とぜひ学校現場の子どもたちに伝えていただきたいと思うんですが、大臣いかがでしょうか? 萩生田大臣:なかなか入学前に自分が受験する志望校の校則まで見て判断することってなかなかないんだと思います。だから入ってみたら、理想と違う窮屈な思いがあって、これは自分が考えてた学生生活と違う思いもきっとあると思うので、そういう意味では各学校があらかじめ校則を公開しておく、というのは受験生が学校を選択する上でも、悪いことじゃないんじゃないかと思います。 他方、私立のように建学の精神があったりすると、一般的な価値観じゃなくて、例えば創設者の信仰ですとか、そういったものでそれぞれ学校のルールが違ってなんでそんなものが校則になるんだろうなと、他所から見るとすごい違和感を感じるんだけど、その学校の中では非常に大事な価値観というのもきっとあるんだと思うので、一概に文部科学省が間に入って「変えていいんですよ」と言うことよりも、それぞれの現場の判断で行うことが望ましいんじゃないかと私は思います。 決して、否定はしませんけれど、通知を出して積極的に校則改正をするように文部科学大臣通知みたいのは、馴染まないと思いますので、まさにこれトレンドで、時代に合っていないおかしな校則を変えようよと、高校生や中学生が声を上げることは私は学校の中で良いことだと思いますので、それを見守りたいなと思います』、(校則を)「いまだに生徒会等で生徒が話し合おうとしたら、「いや校則の議論はしてはいけないんだ」とか「触れてはいけない」と言われたり、校則について意見を言った瞬間、内申に響くぞ、と脅されたりする学校もまだまだあると聞いています」、いまどきこんな学校があること自体が驚きだ。
・『萩生田文科大臣「人権・人格を否定する校則は望ましくない」  吉良議員:次に聞きたいこともご答弁頂いたんですけれど、校則の見直しを進めるために校則の公開がかなり効果的でして、岐阜県では全ての県立高校の校則をHPで公開したことをきっかけとなって、在校生のみならず受験生や保護者、また地域の人々の間での議論が広がって、結果、岐阜県教育委員会が下着の色を指定するとか生活上の旅行の許可制を見直すことになりました。やはり公開はかなり重要なことですし、大臣仰ったように、入学前にこの学校の校則なあにと知らないというのも問題ですので、一覧できるように各学校で公開進めるようにぜひ大臣からも言って頂きたいし、加えて、先ほど問いたかったのは、単純に学校現場だけじゃなくて、文科省のHPそのほかの方法で子どもたちに向けて、校則というのは変わっちゃいけないものじゃないんだと、見直しができるものなんだと、周知してはいかがか、ということなんですけれど、そこいかがでしょうか? 瀧本局長:まず公開の点についてお答え申し上げます。ご指摘の通り、各学校におきます、校則の公開も見直しにあたって児童生徒や保護者からの意見聴取を行うなど、児童生徒や保護者が何らかの形で参加するプロセスの一つの手段と考えられます。校則の見直しは最終的には校長の権限において適切に判断されるべき事柄ではありますが、見直しの際には児童生徒が話し合う機会を設けたり、あるいは保護者から意見を聴取したりするなど、何らかの形で参加する例もございます。 このことについては先ほど申し上げた通り、生徒指導担当者向けの会議において周知を行っているところでございますが、引き続き様々な機会を捉えて周知徹底に努めてまいりたいと思います。 また校則の内容、あるいは、必要性について、児童生徒本人や保護者との間で共通理解を持つことが重要でございますので、入学時までにあらかじめ校則を周知していく必要があろうかと思っております。 また先ほど委員から岐阜県の取り組みがご紹介ございましたが、校則の見直しに関して、校則を各県立高等学校のHPに掲載することなど周知をし、それに基づいて見直しの取り組みが進んでいる、あるいは再点検を行うということを私どもも把握しているところでございます。こうした取り組み事例を含め、全国の生徒指導担当者向けの会議等においてこうした事例があることについてはご紹介してまいりたいと思います。 吉良議員:ぜひ積極的に周知して頂きたいと思います。このコロナ禍で、毎日洗濯できない制服の衛生面を気にする生徒への配慮から、制服と私服の選択制にする学校も増えています。そのもとで、#学校ゆるくていいじゃんという声がネット上で広がっていて、制服と私服の選択制という署名が立ち上がったら2万件近く署名が集まっているようです。それから佐賀県弁護士会、福岡弁護士会なども独自に校則を調査して提言を出すなど、本当に全国で校則、学校のあり方の見直しが進んでいるので、ぜひそれを止めない、むしろ進めて頂きたいと重ねて申し上げたいと思います。 そしてこの校則問題で確認したいのは、先ほど来、大臣、文科省はこの校則の見直しについて、社会環境の変化等に合わせて見直すようにと仰っているんですが、それだけじゃなくて、何よりもまず校則によって、人権侵害をしてはならない、人権侵害の校則は見直しの対象だと言うべきじゃないかと思うんです。下着の色もそうですし、頭髪、服装の自由を制限するということも基本的に人権の制限につながるものであるわけです。学校長の権限で校則決められると言いますが、憲法で守られている基本的な人権を校則で侵害して良いということには絶対ならないと思います。ぜひ大臣、改めて基本的な人権侵害の校則はあってはならないとはっきり仰っていただけないでしょうか? 萩生田大臣:児童生徒への指導に当たり、先ほど申し上げた体罰等は当然許されないわけですけど、児童生徒の特性や発達の段階を十分に考慮することなく、厳しい指導、児童生徒の自尊感情の低下などを招き、児童生徒を精神的に追い詰めるような指導はあってはならないと思います。すなわち、人権、人格を否定するような校則は望ましいものではないと思います。他方、それを文科大臣が変えろというのはなかなか建て付けとして難しいものもありますので、各学校でぜひ考えて頂きたいなと思っています。 昨年の11月に大学が対面授業を何%やっているのか公表しまして、ずいぶん私立大学の関係者には怒られたんですが、高校3年生からは自分が受験しようと思っている学校がこういう時にどういう対応をするのかがよくわかったというお返事を随分頂きまして、公表してよかったと私個人では思っています。 すなわち、校則も学校の個性の一つだと思いますので、入学前にチェックできるような仕組み、例えば制服が気に入ってその学校に行くという子もいる。そういうのと同じように、学校の個性であると思いますので、そういう意味では公開を前提にしたらより学校が皆さんからわかりやすく入ってもらえるし、入った後にこんなはずじゃなかったとなる子が減ることにもつながりますので、そこは大いに考えていきたいと思います。 吉良議員:人権、人格を否定するような校則は望ましいものではない、と答弁ありました。これは大事な答弁だと思います。また校則の公開についても前向きなご答弁を頂いたわけですから、ぜひこの機会に多様性、人権尊重する学校現場にしていくように心から強くお願い申しまして質問を終わります』、「萩生田大臣:児童生徒への指導に当たり、先ほど申し上げた体罰等は当然許されないわけですけど、児童生徒の特性や発達の段階を十分に考慮することなく、厳しい指導、児童生徒の自尊感情の低下などを招き、児童生徒を精神的に追い詰めるような指導はあってはならないと思います・・・他方、それを文科大臣が変えろというのはなかなか建て付けとして難しいものもありますので、各学校でぜひ考えて頂きたいなと思っています」、「文科大臣が変えろというのはなかなか建て付けとして難しいものもあります」、と一歩引いた立場に身を置いているのは、教育の国家統制を避けるのが背景にあるのだろうか。もっと積極的な姿勢を示してもよいのではなかろうか。

次に、4月11日付け日刊ゲンダイが掲載した髙橋裕樹弁護士による「男性教師による女子生徒の下着チェックは犯罪の可能性が」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/287771
・『「女子生徒が廊下に1列に並ばされて、シャツの胸を開けて下着をチェックされる」「男女一緒の体育館で下着の色をチェックされる」「違反した生徒は学校で下着を脱がされる」「男性教師が女子の下着のチェックをする」……。 これは福岡県弁護士会がこのほど発表した調査結果です。市立中学校の校則調査のため、昨年、生徒や保護者からヒアリングしたら、こんな驚くべきことが明らかになったというのです。 男性教師が女子生徒の下着を確認しているという配慮のなさだけでなく、そもそも何のための校則なのかなど突っ込みどころ満載のため、この記事に対する驚きの声がニュースのコメント欄やSNSに数多く投稿されました。 この記事の内容が事実であれば、その男性教師の行為は、場合によっては準強制わいせつ罪(刑法178条)や監護者わいせつ罪(刑法179条1項)、各都道府県の青少年健全育成条例違反(みだらな性交等の禁止)などに該当する可能性もあります』、「市立中学校」で「男性教師が女子の下着のチェックをする」、とはまさに犯罪的行為だ。女性教師も誰も声を上げないとは情けない。よく父兄から文句が出なかったものだ。
・『また男性教師の下着チェックにより不登校になった女子生徒もいたとのことです。生徒がPTSDやうつ病などの精神疾患を患ってしまった場合には、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をすることもできます。男性教師が学校の関与なく独断で下着チェックを行っていたとは通常考えにくいので、男性教師だけでなく、下着チェックをさせた、もしくは黙認していた学校(公立中学校なら県や市、私立中学校なら学校法人)に対しても損害賠償請求ができる可能性があります。 学校側は、校則を盾にして「下着のチェックに違法性はない」などと反論するかもしれません。しかし、下着のチェックは、髪形や服装以上に規制の必要性も相当性もありません。時代錯誤のホコリをかぶった校則に正当性が認められる可能性は低いのではないでしょうか。 女子生徒に限らず、男子生徒に対する下着チェックなども当然違法になり得ます。生徒に対するわいせつな意図を持った教師の職業動機となり得る校則は、できる限り排除されるべきです。 このような下着チェックのような時代錯誤の校則が、子供の学校にないか、実行されていないか、チェックする必要があります』、「男性教師の下着チェックにより不登校になった女子生徒もいた」、「下着チェックをさせた、もしくは黙認していた学校」だけでなく、教育委員会も責任重大だ。

第三に、4月13日付けNEWSポストセブン「千代田区の名門公立中学校で通知表に「1」を連発した新校長の主張」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20210413_1649683.html?DETAIL
・『「髪型も服装も自由」「宿題なし」「中間・期末テスト廃止」──こんな改革を行なう公立中学がある。都内の千代田区立麹町中学校だ。先進的な教育を行なう同校に、ある異変が起きている。 「これまでの通知表は『3』や『4』が並んでいたのに、校長が変わると『1』ばかりに……」「ずっと『5』を取っていた科目が『2』になったので驚きました」 そう困惑するのは、3月まで麹町中に子供を通わせていた保護者たちだ。 永田町や霞が関に近い麹町中は古くから名門として知られ、麹町中から都立屈指の進学校・日比谷高校へと進むのが“エリートコース”とされていた。OBには岸田文雄・元外相やアナウンサーの露木茂氏などがいる。 そんな麹町中に革命をもたらしたのが、2014年に赴任した工藤勇一・前校長だ。 それまで都や区の教育委員会の職員だった工藤前校長は、赴任するや担任制度や宿題、定期テストを廃止。生徒の自主性を重んじる改革を断行し、一躍“教育界の風雲児”に。4冊の著書を出版したほか「教育再生実行会議」の有識者メンバーにも名を連ねている。 中でも注目されたのが、「単元テスト」の導入だ。 麹町中では宿題や定期テストの代わりに、授業の進捗ごとに単元テストと呼ばれる小テストを受ける。点数が低ければ、納得のいく点数に到達するまで何度でも再テストを受けることができる。 この方式は、「通知表の評価が上がりやすい」とある教育関係者が言う。 「ほかの公立中学は一発勝負の中間・期末テストの成績で判断されますが、麹町中は繰り返し再テストを受けて好成績を収めれば高評価が得やすい。 都の教育委員会は毎年、各公立中学の成績割合を公開しており、2019年の麹町中は生徒の45%が数学で『5』を、英語を除く他教科でも生徒の50%超が『4』以上を取っていた。工藤氏は雑誌のインタビューなどでも『生徒全員に5を付けて何が悪いのか』と公言しており、わざわざ住民票を学区内に移す“越境入学者”も絶えなかった」(同前) だが、冒頭の保護者のひとりは、「昨年3月に工藤先生が退任してから学校の印象は一変した」と話す』、「工藤勇一・前校長」による「改革」は確かに画期的だ。
・『署名運動の動きも  工藤前校長の退任後、2020年4月に新校長に就任したのは、元新宿区教育委員会職員の長田和義氏。工藤前校長とは旧知の間柄で、宿題や定期テスト廃止など工藤体制下で行なわれた改革路線を引き継いだが、生徒の通知表には変化があった。 「2020年の1学期から、『1』が複数付くようになりました。子供に理由を尋ねたら、『授業態度で成績を決められたみたい』と言っていた」(同前) 別の保護者もこう語る。「いままではどんなに苦手な科目でも『3』でしたが、昨年は複数科目で『2』が付いたので、目を疑いましたね。単元テストの結果が悪いわけでもなく、学校側に理由を聞きに行ったら、『授業に対する積極性や関心度を考慮した』と説明されて……。子供はきちんと授業に出ていたし、工藤校長時代はこんな成績が付くことはなかった。内申点が下がって志望校を変更した生徒さんも少なくなかったと聞きます」 工藤校長はいわゆる“やんちゃ”な子ほど目にかけるタイプで、校長室に呼んで親身に相談にのっていたという。 「でも、新校長は生徒と距離があった。成績についても、工藤校長は頑張れば頑張った分評価する“加点式”でしたが、いまは“減点式”というか、生徒の素行や態度が成績に直結する印象です。そういう学校ではないから入学させた保護者も多く、昨年末には不満を持つ保護者の間で署名運動を起こそうという動きがありました。コロナで立ち消えになっちゃいましたけど」(別の保護者) こうした声をどう受け止めるか。現在は横浜創英中学・高校で校長を務める工藤前校長に聞いた。 「後任の長田校長は新宿区教育委員会時代の部下で信頼しているし、僕の改革路線をしっかり継承していると聞いています。生徒の成績は基本的には単元テストを元にして、関心度や積極性など授業態度はプラスαの部分。生徒の学び合いを促進するなど、授業に積極的な姿勢があれば加点されることはありますが、態度が悪いからマイナスというのは考えられない」) 現職の長田校長もこう反論する。 「基本的に工藤校長時代のやり方を踏襲しています。単元テストが良ければ、それなりに成績に反映される仕組みです。恣意的な判断で『1』を付けることはないし、成績評価は公平を期している」 通知表に「1」や「2」が増えた点について問うと、こう答えた。 「うーん、個別のものになりますので何とも状況が……。即答はできないですね」(同前) 新学期の始まりとともに深まる対立を横目に、成績評価の“変化”にはさまざまな意見があるようだが、ある在校生の保護者はこう話した。 「確かに、うちの子も成績は下がった。ただ、工藤先生時代がちょっと異常だったというか、新校長になって、“普通の学校”に戻りつつあるだけなのかもしれません」 この通知表騒動に“正答”はあるのか。 取材協力/赤石晋一郎(ジャーナリスト)』、「長田校長」からは「「1」や「2」が増えた点について」、明確な回答はなかったようだ。「工藤前校長」も後輩をかばっているだけだ。内申書に影響するだけに見逃せないが、「不満を持つ保護者の間で署名運動を起こそうという動きがありました。コロナで立ち消えになっちゃいました」、「コロナで立ち消えに」というのであれば、それほど深刻な問題ではなかったようだ。
タグ:教育 (その24)(萩生田文科大臣「人権・人格を否定する校則は望ましくない」 校則のHP公開にも前向きな姿勢、男性教師による女子生徒の下着チェックは犯罪の可能性が、千代田区の名門公立中学校で通知表に「1」を連発した新校長の主張) yahooニュース 「萩生田文科大臣「人権・人格を否定する校則は望ましくない」。校則のHP公開にも前向きな姿勢」 「ブラック校則」には腹が立つが、文科相と共産党議員の論議とは興味深そうだ。 「これらの校則や地毛証明書というのは生徒たちの生来の髪の毛が黒髪ストレートだと前提にしてしまっていることだと思うんです。それ以外の髪だと普通じゃないんだと言ってしまう。これは差別人権侵害だと思うし、この多様化の時代に黒髪ストレート以外は排除しますというようなことはあってはならないんじゃないかと思うんです」、その通りだ 「高校1年生の女子生徒は学校の指導に従って黒染めして行ったのに、黒染めが不十分だと教師4人に囲まれて、ビニールを被せられ、黒スプレーを噴霧される指導を受けて、彼女は恐怖で学校に行かれなくなったと話しています」、学校による明確な人権侵害だ 「小中高の不登校生徒のうち、不登校の主たる要因として、または、主たる要因以外の要因で、学校の決まり等をめぐる問題として挙げている児童生徒の数は合計で5572名」、こんなにも犠牲者が多いとは心底驚いた (校則を)「いまだに生徒会等で生徒が話し合おうとしたら、「いや校則の議論はしてはいけないんだ」とか「触れてはいけない」と言われたり、校則について意見を言った瞬間、内申に響くぞ、と脅されたりする学校もまだまだあると聞いています」、いまどきこんな学校があること自体が驚きだ。 「萩生田大臣:児童生徒への指導に当たり、先ほど申し上げた体罰等は当然許されないわけですけど、児童生徒の特性や発達の段階を十分に考慮することなく、厳しい指導、児童生徒の自尊感情の低下などを招き、児童生徒を精神的に追い詰めるような指導はあってはならないと思います 他方、それを文科大臣が変えろというのはなかなか建て付けとして難しいものもありますので、各学校でぜひ考えて頂きたいなと思っています 「文科大臣が変えろというのはなかなか建て付けとして難しいものもあります」、と一歩引いた立場に身を置いているのは、教育の国家統制を避けるのが背景にあるのだろうか。もっと積極的な姿勢を示してもよいのではなかろうか。 日刊ゲンダイ 髙橋裕樹弁護士 「男性教師による女子生徒の下着チェックは犯罪の可能性が」 「市立中学校」で「男性教師が女子の下着のチェックをする」、とは酷い話だ。よく父兄から文句が出なかったものだ。 「男性教師の下着チェックにより不登校になった女子生徒もいた」、「下着チェックをさせた、もしくは黙認していた学校」だけでなく、教育委員会も責任重大だ。 Newsポストセブン 「千代田区の名門公立中学校で通知表に「1」を連発した新校長の主張」 「髪型も服装も自由」「宿題なし」「中間・期末テスト廃止」 麹町中学校 工藤勇一・前校長 中でも注目されたのが、「単元テスト」の導入 新校長に就任したのは、元新宿区教育委員会職員の長田和義氏。工藤前校長とは旧知の間柄 「2020年の1学期から、『1』が複数付くようになりました。子供に理由を尋ねたら、『授業態度で成績を決められたみたい』と言っていた」(同前) 現職の長田校長 基本的に工藤校長時代のやり方を踏襲 通知表に「1」や「2」が増えた点について問うと、こう答えた。 「うーん、個別のものになりますので何とも状況が……。即答はできないですね」 「長田校長」からは「「1」や「2」が増えた点について」、明確な回答はなかったようだ。「工藤前校長」も後輩をかばっているだけだ。内申書に影響するだけに見逃せないが、「不満を持つ保護者の間で署名運動を起こそうという動きがありました。コロナで立ち消えになっちゃいました」、「コロナで立ち消えに」というのであれば、それほど深刻な問題ではなかったようだ
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スガノミクス(その7)(日本人が全然知らなかった菅義偉「家の事情」…決して姿を見せない妻と突如浮上した“問題長男”、「東北新社はNGで、フジテレビはOK」恣意的な判断が許される日本社会のヤバさ 立法の趣旨が平気で無視されている、前代未聞の「法案ミス」問題 菅政権になってから続出した理由) [国内政治]

スガノミクスについては、3月11日に取上げた。今日は、(その7)(日本人が全然知らなかった菅義偉「家の事情」…決して姿を見せない妻と突如浮上した“問題長男”、「東北新社はNGで、フジテレビはOK」恣意的な判断が許される日本社会のヤバさ 立法の趣旨が平気で無視されている、前代未聞の「法案ミス」問題 菅政権になってから続出した理由)である。

先ずは、4月5日付け現代ビジネス「日本人が全然知らなかった菅義偉「家の事情」…決して姿を見せない妻と突如浮上した“問題長男”」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81894?imp=0
・『「叩き上げ」の一語には、菅義偉という男の業と欲望が、菅を支えた妻の忍耐が、そして父の背中を求めた息子の葛藤が刻まれていた。国民に衝撃を与えた不祥事の「淵源」を、総力取材で明らかにする』、興味深そうだ。
・『家族は話題にしたくない  横浜港と「みなとみらい」を一望するタワーマンション。その上層階の一室で、総理夫人・菅真理子は起居している。 赤坂の議員宿舎住まいを続ける菅総理が、この私邸に戻ることはめったにない。そして真理子が政府や自民党関係者の前に姿を見せることも、公務を除いて一切ない。 「去年の総裁選で、総理を支持する議員が『奥さんも前面に出たほうがいい』と真理子さんを担ぎ出そうとした。 しかし選対幹部は『菅さんの奥さんはタブーなんだ。総理になってからも表に出ないことになっているから、総裁選の最中も絶対に話題に出すな。これは菅さんの意向だ』と諭したのです」(自民党関係者) 真理子自身、決して積極的に人前へ出たがる性格ではない。しかし現職の総理が自らの妻を、まるでその存在すら秘するかのように扱うのは、いささか異様と言っていい。 菅と真理子の長男・正剛が関与した、東北新社による総務省幹部接待疑惑が2月に発覚してから、菅内閣の支持率は低迷を続けている。 「総理の息子」がその威光を利用し、まして中央省庁に便宜供与を求めるなど、前代未聞の不祥事である。 なぜ事件は起きたのか。問題のありかは、ただ接待の中身や顔ぶればかりを追及してもわからない。 菅義偉という政治家の半生と、これまで決して書かれてこなかった、菅の家族が抱える「家の事情」を考察しなければ、真の原因は見えてこない。 真理子の住むマンションから南へ進むと、横浜最大の問屋街、そしてかつては「青線地帯」として知られた日ノ出町がある。46年前、菅は政治家としての第一歩をこの下町で踏み出した。 「菅義偉です。よろしくお願いいたします……」 '75年春、俯き加減で神妙に話す菅の姿を、ある横浜市政関係者は鮮明に覚えている。一帯を地盤とする衆議院議員・小此木彦三郎の私設秘書として挨拶にやってきたのだ。 「当時、小此木事務所には『秘書』の肩書で出入りする若者が男女10人近くいて、菅さんは後ろから数えて2番目くらいの末席でした。当時は、地味で暗い奴だな、という印象だったね」 秋田からの上京物語は、すでに多くのメディアで菅が自ら語っている。板橋の段ボール工場や喫茶店でのアルバイトを2年ほど転々とし、法政大学法学部に入学。 卒業後はいったん一般企業に就職するが、一念発起し議員秘書に志願した。大学時代をともに過ごした、同級生の寺田修一氏が言う。 「ある時、ヨシ(当時の菅の愛称)が突然『なあ、小此木彦三郎って知ってる?』と言い出したんです。 もちろんウチは横浜だから知ってるよ、と言ったら『俺、そこの秘書になったよ』って。政治家になりたいなんて、聞いたこともなかったのに」』、「現職の総理が自らの妻を、まるでその存在すら秘するかのように扱うのは、いささか異様と言っていい」、安部前首相夫人とは好対照だ。「衆議院議員・小此木彦三郎の私設秘書・・・『秘書』の肩書で出入りする若者が男女10人近くいて、菅さんは後ろから数えて2番目くらいの末席」だったようだ。
・『女房を三歩下がらせて  法政大の学生課を介して小此木事務所入りした菅は、秘書たちの最下層に組み込まれ、雑巾掛けの日々を送った。 小此木事務所の一角にある3畳間で寝起きし、来る日も来る日も雑用をこなす。 鞄や荷物持ち、車の運転、屋敷の掃除に郵便整理、出前の受け取り……。車の後部座席に座る小此木に足蹴にされ、「出ていけ!」と怒鳴られることもしばしばだった。 だが、つらい日々の中にも唯一、救いがあった。菅の後に事務所入りした、5歳年下の女性との出会いである。 小此木家の家事をしたり、当時小学生だった彦三郎の息子・八郎(現在は衆院議員・国家公安委員長)らの面倒を見ていたこの女性こそ、真理子である。 当時の小此木家は、秘書らも揃って朝食をとる慣わしだった。真理子はその朝食作りを担当するようになった。 独身男の胃袋に、熱い味噌汁が沁みた。アプローチをかけたのは菅のほうだったという。当時を知る横浜自民党関係者が語る。 「真理子さんは余計なことは言わず、朝一番に事務所に来て黙々と働いているような清楚な人だった。秋田弁が抜けずに口下手な菅さんにも、優しく接していた」 出会いから3年ほどが経った'80年5月、菅と真理子は結婚する。だが当時、小此木事務所の内部や横浜の自民党関係者らの間では、こんな噂が立つようにもなっていた。 「真理子さんは再婚らしい」) 本誌は真理子が生まれ育った静岡市清水区(旧清水市)を訪ねた。以下は真理子の実兄・隆さん(仮名)との一問一答だ。 Q:そもそも真理子さんは、なぜ小此木事務所に入ったのですか。 A:「最初のきっかけは偶然です。母と真理子、妹の久美(仮名、末の妹)が、久美の就職先探しをかねて横浜へ旅行しました。 その時、元町で開催されていたバザーに立ち寄ったら、小此木彦三郎さんの義理のお母さんが露店を開いていたんです。 立ち話をしているうち、『うちは孫がたくさんいて大変なんです。よかったら面倒を見てくれませんか』と言われ、久美が小此木さんの世話になることになりました。その後、真理子も呼んでもらったわけです」 Q:真理子さんは横浜に行く前、地元で結婚していたとも聞きました。それは本当でしょうか。 A:「若い頃のことですから……向こう(前の夫の家)にも迷惑がかかるし、話したくないですね」 Q:大学を出て、すぐに嫁いだのですか。 A:「ええ。就職はしていません。いずれにしてもこの件は、真理子も『先方に迷惑をかけてはいけない』と心配しているので(勘弁してほしい)」 隆さんや事情を知る地元住民の話を総合すると、真理子は'75~'76年ごろ、いちごの名産地として知られる、駿河湾沿いの久能街道近くのいちご農家に嫁いだ。 しかし、姑や夫の姉妹との折り合いが悪く、半年ほどで実家へ戻ったという。) '53年、清水市内の食料品卸店に生まれた真理子は、県内有数の進学校・清水東高校に進んだのち、静岡女子大学を卒業している。 大卒女性が農家に嫁入りすること自体が異例の当時、「農家の金目当てで結婚して失敗した」と言いふらす、口さがない人もいた。 横浜という新天地で得た菅との出会いは、彼女にとっても大きな励みとなっただろう。 真理子の目に菅はどう映っていたのか。少なくとも彼女が選んだ伴侶は、平凡な議員秘書で終わるのをよしとしない、権力を渇望する男だった。 菅は小此木事務所の先輩秘書らをごぼう抜きし、小此木が通産大臣に就任すると、'84年に大臣秘書官の座を射止める。以後、'87年の横浜市議選で初出馬初当選、'96年には国政に打って出た。 「女房と手を繋いで歩くなんて、男じゃねえ。女房は三歩下がらせて歩かせるんだ」 議員バッジを得た菅は、自民党の市会議員らにそう言うようになったという。 選挙となれば、一日に数百軒の挨拶回りをこなし、あらゆる家の郵便受けに一筆加えた名刺を入れるのが菅流だ。 しかし菅が真理子に要求したのは、自身の傍らで笑顔を振りまくのではなく、ひたすら陰で地道に菅を支える役割だった。 「真理子さんが朝早く選挙事務所で掃除をしているのにスタッフが誰も気が付かないとか、一般のスタッフだと勘違いされて買い出しに行かされる、ということもありました。 それでも不満は一切口にしないし、とにかく目立たない。菅さんのためなら『無私』になれる、真理子さんはそういう人です」(自民党神奈川県連の関係者)』、「法政大の学生課を介して小此木事務所入りした」、とは初耳だが、驚かされた。「真理子さんは余計なことは言わず、朝一番に事務所に来て黙々と働いているような清楚な人だった。秋田弁が抜けずに口下手な菅さんにも、優しく接していた」、「口下手な菅」にとっては救いの女神だったに違いない。「不満は一切口にしないし、とにかく目立たない。菅さんのためなら『無私』になれる、真理子さんはそういう人です」、「菅」にとってまさに理想の妻だったのだろう。
・『長男・正剛がこぼした言葉  政治家となってからの菅は、真理子を極力目立つ場所に置かないようにしてきた。そして総理となった現在でも、冒頭で見たように、議員らに真理子を「禁忌」扱いさせている。 その背景には、真理子と家庭を築くまでの、こうした「複雑な事情」があったのだ。 そしてその事情は、菅家にまつわる、また別の憶測を招くことにもなった。国政を揺るがした長男・正剛は、菅と真理子の子ではない―具体的には真理子の連れ子である、というものだった。 菅をよく知る関係者によれば、噂の発端は正剛自身の言葉だったという。 「正剛さんの弟にあたる次男は東大を出て三井物産、三男は大成建設に入社して立派に社会人をやっている。 一方、正剛さんは明治学院大学を卒業するとバンド活動に明け暮れ、事実上フリーターとなり、見かねた菅さんが総務大臣秘書官をやらせた。 それで自虐を込めてでしょうか、正剛さんが『俺は(弟達とは)親が違うから』と口走ることがあったのです」 菅夫妻の間には、'81年に長男の正剛が、'84年に次男が、そして'86年には三男が生まれている。とりわけ正剛は、父である菅が秘書から市議へ、そして市議から代議士へと地歩を固めていく渦中に、多感な時期を過ごした。 正剛誕生のあと、菅は本格的に小此木事務所の「番頭」への道を歩み始めていた。愛車のトヨタ・マーク2で早朝出かけ、深夜に戻る。 昼も夜も土日もなく働き、いつも両目は充血していた。身を粉にして働く菅を小此木も重用した。前出と別の横浜市政関係者が言う。 「当時、こんな話を聞きました。小此木事務所の秘書たちは、夜は各担当地区の会合に顔を出して、そのまま直帰していた。 でも菅さんは必ず夜中に事務所に戻り、ひとりで灯りをつけて座っていた。小此木さんのスケジュールを把握して、帰宅時間を見計らっていたんです。 それを見て小此木さんは『遅くまでよくやってるな』と感心するんですが、他の秘書は『あの野郎、点数稼ぎしやがって』とこぼしていた」 一方、仕事にのめり込む菅を横目に、真理子はひとり正剛のお守りをする日々を送った。) 当時、実家が所有するアパートを格安で菅一家に貸していたという、前出の友人・寺田氏が証言する。 「正剛くんはよく泣く子で、夜泣きも多かったので、真理子さんが育児ノイローゼにならないか心配でした。 ヨシのお姉さんが訪ねてきた時、『ヨシも小さい時はよく泣いてた。菅家の血ね』と言っていたのを覚えています」』、「菅さんは必ず夜中に事務所に戻り、ひとりで灯りをつけて座っていた。小此木さんのスケジュールを把握して、帰宅時間を見計らっていたんです」、使い勝手のいい有能な秘書だったようだ。「正剛くんはよく泣く子で、夜泣きも多かった」、「ヨシも小さい時はよく泣いてた。菅家の血ね」、微笑ましい。
・『因果な商売のツケ  そして三男が誕生した直後の'87年、横浜市議選で菅は初当選を果たす。3人息子をほぼ女手ひとつで育てることになった真理子は、子どもたちを連れて清水の実家に身を寄せることもあった。 成長した正剛は、地元の少年野球チームに入った。だが、菅が練習に付き合ったり、試合を見に来たりすることはなかった。横浜市議の清水富雄氏が証言する。 「最初の市議選で選挙戦をお手伝いしてからご縁が続いていますが、当時の真理子さんは子育てで大変そうでしたね。 『明日、正剛の少年野球の試合があるんだけど、お父さんがいないからキャッチボールしてあげてくれませんか?』と言われて、相手をしたことも何度かあります」 自身の野望のために、家庭を顧みようとしない父の姿は、少年・正剛の心に傷を刻んだ。) 家庭を、母を、自分を軽んずる父への反発だろうか。名門の逗子開成中高に進学した正剛は、「政治家の息子」として扱われることに強い嫌悪を示すようになったという。 こうして積み重なった菅への不信と疎外感が、正剛に「俺は親父の子じゃない」という思いを抱かせたのかもしれない。 今回、前出の真理子の兄・隆さんをはじめ、事情を知る清水や横浜の関係者を取材した限りでは、正剛が菅の実子ではない、真理子の連れ子である可能性は低い。 真理子は大学を出てすぐの'75~'76年に前夫と結婚したが、遅くとも'77年までには実家に戻っている。正剛は'81年生まれなので、時期が合わない。 菅は正剛の接待疑惑が報じられたあと、国会で「(息子は)完全に別人格」と述べた。 しかし菅はこれまで、前述のように正剛を自身の大臣秘書官にし、正剛が東北新社で「総理の息子」の威光を利用することも黙認してきた。 それは菅の中に「家族を打ち捨て出世に邁進した結果、わが子の人生を台無しにしてしまった」という罪の意識があったからではないか。その贖罪のために、菅は大人になった正剛を甘やかしてきたのではないか。 かつて、菅の母・タツは横浜のある支援者に、こうこぼしたという。 「義偉は、因果な商売についてしまったねぇ」 叩き上げを謳い、「底辺」から「頂点」へ成り上がるには、他人を蹴落とすだけでなく、家族をも犠牲にしなければならなかった。 その「因果」が、いま巡り巡って菅自身にはね返って来ている―。そして総理の抱える業は、最後は国民が引き受けることになる。(文中一部敬称略)』、「「底辺」から「頂点」へ成り上がるには、他人を蹴落とすだけでなく、家族をも犠牲にしなければならなかった。 その「因果」が、いま巡り巡って菅自身にはね返って来ている―。そして総理の抱える業は、最後は国民が引き受けることになる」、「業」を「引き受け」させられるとは、困ったことだ。

次に、4月12日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「「東北新社はNGで、フジテレビはOK」恣意的な判断が許される日本社会のヤバさ 立法の趣旨が平気で無視されている」を紹介しよう。
・『フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス(HD)が、過去に放送法の外資規制に違反していた問題で、4月9日、武田良太総務相は認定取り消しはできないという認識を示した。経済評論家の加谷珪一氏は「東北新社の外資規制違反では、衛星放送事業の認定が取り消されている。これはダブルスタンダードの可能性が否定できず、総務省の法律運用には問題がある」という――』、興味深そうだ。
・『東北新社に端を発した「外資規制違反」問題  フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス(HD)が、過去に放送法の外資規制に違反していた問題で、4月9日、武田良太総務相は認定取り消しはできないという認識を示した。 総務省は、同じく外資規制に違反したとして東北新社の衛星放送事業の認定取り消しを発表したばかりだ。同じ理屈でいけばフジ・メディアHDも持株会社認定を取り消さなければならない。フジについては、その必要はないと判断したということだが、これはダブルスタンダードの可能性がある。 日本社会は法の運用が十分に成熟しておらず、杓子定規な解釈が横行したり、逆に恣意的な運用が行われることも多い。今回の一件をきっかけに、なぜ法規制を行うのか、その運用方法はどうあるべきなのか、あらためて議論する必要があるだろう。 フジ・メディアHDは2021年4月8日、2012年9月末から2014年3月末までにかけて、放送法が定める外国人議決権比率の制限である20%を超えていたと発表した。 放送法では外国人株主による報道機関の支配を防止するという観点から、持株会社や基幹放送事業者における外国人株主の議決権比率を20%未満にするよう求めている。規制の対象となるのは保有株数ではなく議決権数なので、単純に株数で計算することはできない。 いわゆる株式の持ち合いという形で相互に株式を保有している場合、互いに議決権を行使することができてしまうため、株式会社のガバナンスが適切に運用されない可能性がある。このため持ち合い分については議決権から控除しなければならない』、「議決権数」でやるのは当然だ。
・『なぜフジテレビは見逃されたのか  同社は、制作会社であるネクステップを2012年4月に完全子会社化しているが、ネクステップの関連会社であるディ・コンプレックスがフジ・メディア(HD)の株式を保有していた。本来であれば、完全子会社化に伴って議決権を控除する必要があったが、同社は一連の状況について完全に把握できていなかったという。 ディ・コンプレックスが持つ議決権を除外すると、当時の外国人議決権比率は20%を超えてしまう。法律上、外国人比率が20%を超えた場合には持株会社の認定を取り消す必要があり、実際、総務省は放送法の外資規制に違反したとして東北新社の衛星放送事業の認定取り消しを発表している。 フジ・メディアHDは、2014年秋に違法状態に気付き、同年12月に総務省に報告したと説明している。総務省は同社を口頭で厳重注意したが、報告を受けた時点ではすでに違法状態が解消されていたことから、認定を取り消すという判断はしなかったという。 現実問題としてキー局を傘下に抱える同社の持株会社認定を取り消すことの影響は大きく、ごくわずかでも規制を超えれば問答無用で認定取り消しということになると、業界が大混乱に陥るのは確実である。したがって、当時の総務省の判断にはそれなりに妥当性があったと考えてよいだろう』、その通りだ。
・『総務省の対応はダブルスタンダードなのか  一方で、東北新社は外資規制違反を理由にあっけなく認定が取り消されている。フジ・メディアHDと東北新社の違いは、過去に違反があったか、申請時に違反があったかでしかなく、フジ・メディアHDには現実的な対応が行われ、東北新社には杓子定規な対応ということでは、まさにダブルスタンダードとなってしまう。 こうした曖昧な法の運用というのは日本社会では特段珍しいことではなく、これを放置する社会風潮が、いわゆるグローバルスタンダードとの摩擦を生み出す原因にもなっている。 日本社会は法の運用について、条文に書いてあることや、行政府による解釈がすべてであるとする価値観が極めて強い。 法学の世界では形式的法治主義とも言われるが、これは現代民主国家における法の運用としては適切とは言えない。法律には条文以前の話として、その法律が示す理念や価値観というものがある。法の条文がいかなる時も、現実と合致するとは限らないので、現実との乖離が生じた場合には、法が持つ根本的な理念(あるいは憲法など上位に位置する法)にしたがって解釈する必要がある』、同感である。
・『重要なのは議決権比率だけではない  フジ・メディアHDと東北新社で対応が違ったことについて、武田総務大臣は1981年の内閣法制局の見解を根拠に説明を行っている。 政府は法運用の根拠として内閣法制局の見解を持ち出すことが多く、メディアも同局について「法の番人」など、国民に誤解を生じさせる報道を行っているが、内閣法制局はあくまで行政組織の一部であって司法ではない。 いくら行政組織として独立性が高いと説明したところで、日本が民主国家である以上、行政組織が法解釈に妥当性を与えることは原理的に不可能である。放送法が示す理念は、「報道を外国に支配されないようにする」ということであり、理由の如何を問わず、議決権が20%未満かどうか、あるいはいつの時点で発覚したのかという時系列の問題ではない。 同じ20%超えという違反行為があった場合でも、経営陣が意図的にそれを放置あるいは受け入れたケースと、計算ミスなどによって一時的に違反が発生したケースでは本質的な意味が異なる。 実は放送法には、外国人議決権比率が20%を超えた場合でも、会社側が該当する外国人株主の株主名簿への記載を拒否できる(つまり外国人株主の議決権行使を事実上、拒否できる)という規定もある。つまり会社側がその気になれば、20%未満の状態を維持するのは簡単なことなのだ。 要するにこの法律は、「会社側に外資を排除するという意思がある限り、放送事業者を外国人投資家が買収することはできない」という趣旨と判断してよい。そうなってくると、重要なのは会社側に意図的に外国人支配を受け入れる意思があったかどうかである』、「放送法には、外国人議決権比率が20%を超えた場合でも、会社側が該当する外国人株主の株主名簿への記載を拒否できる・・・という規定もある。つまり会社側がその気になれば、20%未満の状態を維持するのは簡単なことなのだ」、初めて知った。フジ・メディアHDの場合は、会社側の怠慢だ。
・『東北新社の認定取り消しは妥当ではない  東北新社は、外資規制に抵触しているという状況を認識していなかったと説明しており、額面通りに受け取れば単純ミスの可能性が高い。また、東北新社側に積極的に外国人の支配を受け入れようとの意思があったとは到底、思えない。一連の放送法の趣旨を考えた場合、東北新社についてもフジと同様、厳重注意で済ませるのが妥当ではないだろうか。 ところが東北新社については厳しい対応が行われ、しかも同社と総務省との間では意見の食い違いまで生じている。同社は2017年に外資規制に抵触していることに気付き、幹部が総務省の担当者と会い、状況を報告したと説明しているが、当時の総務省担当者は「報告を受けた記憶はまったくない」と完全否定しているのだ。 もし東北新社の説明が正しければ、総務省は放送法違反の事実を知っていたことになる。 それでも同社が問答無用で認定を取り消されるというのであれば、まったく不可解なことであり、この対応を是とするならばフジ・メディアHDにも同じ対応を取らない限り、行政としての整合性が確保できなくなる。逆に東北新社が虚偽の説明をしているのであれば、公共の電波を利用する事業者として、到底、許されることではない。 多くの人は、すでに認識していると思うが、東北新社の認定取り消しには別の理由が存在している可能性が否定できない。別の目的を達成するために、当該問題とは直接関係ない法律を適用するというのは、本来あってはならないことであり、もしそれが事実であれば、法の恣意的な運用にあたる』、「当時の総務省担当者は「報告を受けた記憶はまったくない」と完全否定している」、役人が都合が悪くなると否定するのはいつものことだ。「東北新社の認定取り消しには別の理由が存在している可能性が否定できない」、どういうことだろう。
・『外資規制違反で明らかになった総務省の恣意的な法律運用  単純ミスだから良いという話にはならないものの、今回の一件で議決権比率が一時、20%を超えていたこと自体はそれほど重大なことではない。 放送法の規定上、仮に外国人投資家が経営に介入した場合には、即座に株主名簿の書き換えを拒否すればよく、会社側に意図がない限り、現実問題として放送会社が外国に支配されることはあり得ないからである。 むしろ、一連の事案において注目すべきなのは、メディア業界を管掌する総務省が、放送法をどのように運用してきたのかという部分だろう。 特に、東北新社と総務省の見解が食い違っていることは注目に値する。法がどのような趣旨で存在し、その運用はどうあるべきなのか、しっかりとしたコンセンサスを得た上で、行政府が明確な説明責任を果たさない限り、法によって国益を守ることはできない。総務省は、東北新社の認定取り消しについて、詳細を明らかにすべきだろう』、強く同意する。

第三に、4月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「前代未聞の「法案ミス」問題、菅政権になってから続出した理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/268274
・『政権の目玉政策であるデジタル化の推進や中小企業再編、地方銀行再編のためのデジタル改革関連法案や産業競争力強化法等改正案、銀行法改正案について、法律案と併せて作成される要綱、新旧対照表および参照条文に多くの誤記が見つかったことに端を発した、いわゆる「法案ミス」問題。3法案1条約の12カ所で条文にも誤記が見つかるに至り、霞が関・永田町における静かな大問題となっている。ちなみに法文以外での誤記などがあったのは22法案122カ所である。これほどの法案ミスがなぜ起きたのか。元官僚である筆者が解説する』、私も不思議に思っていたので、興味深そうだ。
・『ここまでの法案ミスは前代未聞  ここまでの誤記などの法案ミス続出は、まさに前代未聞であり、与党側は陳謝する一方、野党側は一時的に審議拒否に出た。 これについては、「審議拒否なんて!」と批判する向きもあるようだが、法文も含めこれだけ多くの誤記などが見つかったということは、法案である以上「単なる誤字脱字の範囲」では済まされるものではないのだから、対象となる法案がないに等しく、審議自体ができないのであって、審議拒否もありうべしである。 政府側は再発防止策うんぬんとは言うが、これまで発生したことがない大規模な「法案ミス」、単なる再発防止体制整備でどうにかなる話ではないだろう。 そもそも改正案も含め、法案作成過程はいくえにもわたる審査体制が整備されている。私の経験に基づき、少々単純化して解説すると、まず法令はそれぞれ所管府省があるが、各府省内においても所管部局があり、法令改正を例に取ると、改正案は所管部局の個別の法令の担当課が作成する。 論点整理から始まって、さまざまな観点から検討が加えられ案が作成されるわけであるが、改正の方向性を取りまとめるために研究会を設置して検討を行う場合もある。また改正する法令の中の改正する条文を引用している他の法令についても機械的な改正案が作成されるが、引用条文に漏れがないか、e-Govの法令検索システムも活用して丁寧な確認が行われる。 その後、部局内で審査が行われ、部局として案を決定、府省の官房総務課(役所によっては文書課)で審査が行われ、府省としての改正案が決定される。この途中で、関係府省との連絡会議のようなものを開催し、意見聴取、調整等が行われることがほとんどである。また、関係審議会へ諮問する場合もある。 その上で、内閣法制局の審査を受ける。閣議に付される前には必ず審査を受けるので、この段階での審査は予備審査である(といっても実質的には本審査である)。この審査、担当するのは法制局に設置された第一部から第三部の参事官である。 府省によって担当の部は分かれており、参事官は各府省からの出向者である。非常に厳しい審査で、参事官によっては非常に細かく審査が行われる場合もある(筆者の経験・記憶で言うと、例えば警察庁からの参事官は、上司が「まるで取調べだ」というぐらい細かく、厳しかった)。 当然、差し戻しはあり、その度に修文が行われる。何度も法制局に出向かなければならないということもありうる。 法制局の予備審査が終了すると各府省への協議(法令協議)にかけられ、質問や意見という形でやりとりが行われ、改正法案が確定する。そして閣議に付すための閣議請議が行われ、閣議前の法制局審査が行われる。 筆者の経験した法案作成過程を、記憶をたどりながら、単純化して記載しているので、現行の手続き等とは多少異なるところもあるかもしれない。それはご容赦いただくとして、いずれにせよ、これだけ重層的な過程、手続きを経て法案は作成されるので、まず「法案ミス」のようなことは考えられないはずなのである。 繰り返しとなるが、今回の一件がいかに「前代未聞であるか」ということがご理解いただけたのではないだろうか』、このような厳重な手続きを踏んでいれば、「法案ミス」が起こるとは考え難い。
・『なぜ今回のような「法案ミス」が発生したのか  問題は、なぜ今回のような「法案ミス」が発生したのかである。 考えられるのは、(1)このような厚い体制をも機能不全にさせるほどに法案の作成を急がせた可能性、(2)法案の検討段階で十分な時間を確保する余裕が与えられなかった可能性、(3)一時的なものも含めた職員の能力の低下の可能性、(4)政治の側の法案作成に対する理解度が低下している可能性、といったものである。 筆者の推測では、今回の一件は、(1)と(4)が複合的に絡み合って起きた可能性が高い。 具体的には、まず、官邸がとにかく法案の作成を急かす一方、全体の方針や改正の重要な部分についての考え方が右往左往するか、「伝言ゲーム」のように正確に伝わらず、細部にわたる確認・審査がおろそかになったことが考えられる。 次に、官邸、特に総理や総理周辺の意向をおもんばかるあまり、政務レベルが法案作成に過剰に介入し、法案作成現場を混乱させたことが考えられる。 これは別の言い方をすれば、政と官の上手な役割分担がゆがめられて、政が官の領域に入り込みすぎた、知見もないのに官の領域に口を出しすぎた、しかし政からの干渉に正面から抵抗することもできず、表面上は唯々諾々と従わざるを得ず、余計な労力が割かれてしまう。その一方、肝腎要な法案審査がおろそかになってしまった…ということではないだろうか。 各府省の長は確かに大臣であるし、それを政務として直接的に支えるのは副大臣であり政務官であるが、この政務三役を、上手な役割分担で支えるのが事務方である各府省の職員、いわゆる官僚である。 この役割分担は両者の信頼関係がなければ成り立たないが、交替が頻繁にある政務三役をはなから信頼しろというのは無理な話。官僚の側は政務のクセを調査し、それに合わせるしかない。従って、政務の方こそ官僚を信頼し、信任することが重要なのである。なんといってもその府省の所管事項に関しては、余程のことがない限り、政務よりは長けているのであるから…』、なるほど。
・『菅政権になって「法案ミス」が続出した理由  良くも悪くも安倍政権は、経産省内閣と言われたほどに経産省が官邸を仕切り、霞が関を仕切っていた。安倍前首相もそれを信任していたというか、それに頼っていたわけだが、そこでは今回のような大規模な「法案ミス」は発生していない。 これも良くも悪くもその方向では政策の企画立案、法案作成はうまく回っていたということだろう。 菅政権でそれがなくなり、今度は財務省内閣と言われてはいるが、財務省はこれまでの経産省ほどに細部にわたる政策の企画立案にまで口も手も出さない。 その一方、幹部人事権を振りかざして霞が関の人事を意のままにするのは上手だが、政策の企画立案は不得手な菅首相は、ある種ワンマンに物事を決めようとする傾向が強いようであり、それも「法案ミス」を生む大きな原因となったのだろう。 かつて田中角栄大蔵大臣(当時)が、大臣就任時に大蔵省幹部を前にして、信頼関係の重要性を説き、「できることはやるが、できないことはやらない。全ての責任は自分が負う」と言ったそうだ。 政の側は政の側としての「分」をわきまえること、そして任せるべきことは官の側に任せること、今回の一件の再発防止には、この認識を新たにすることがまず求められるのではないか』、「政策の企画立案は不得手な菅首相は、ある種ワンマンに物事を決めようとする傾向が強いようであり、それも「法案ミス」を生む大きな原因となったのだろう」、ありそうなシナリオで、謎が解けた。
タグ:PRESIDENT ONLINE 「菅さんは必ず夜中に事務所に戻り、ひとりで灯りをつけて座っていた。小此木さんのスケジュールを把握して、帰宅時間を見計らっていたんです」、使い勝手のいい有能な秘書だったようだ。「正剛くんはよく泣く子で、夜泣きも多かった」、「ヨシも小さい時はよく泣いてた。菅家の血ね」、微笑ましい。 「「東北新社はNGで、フジテレビはOK」恣意的な判断が許される日本社会のヤバさ 立法の趣旨が平気で無視されている」 東北新社に端を発した「外資規制違反」問題 加谷 珪一 「議決権数」でやるのは当然だ 「「底辺」から「頂点」へ成り上がるには、他人を蹴落とすだけでなく、家族をも犠牲にしなければならなかった。 その「因果」が、いま巡り巡って菅自身にはね返って来ている―。そして総理の抱える業は、最後は国民が引き受けることになる」、「業」を「引き受け」させられるとは、困ったことだ。 「法政大の学生課を介して小此木事務所入りした」、とは初耳だが、驚かされた。 「真理子さんは余計なことは言わず、朝一番に事務所に来て黙々と働いているような清楚な人だった。秋田弁が抜けずに口下手な菅さんにも、優しく接していた」、「口下手な菅」にとっては救いの女神だったに違いない なぜフジテレビは見逃されたのか 「不満は一切口にしないし、とにかく目立たない。菅さんのためなら『無私』になれる、真理子さんはそういう人です」、「菅」にとってまさに理想の妻だったのだろう。 女房を三歩下がらせて 「衆議院議員・小此木彦三郎の私設秘書・・・『秘書』の肩書で出入りする若者が男女10人近くいて、菅さんは後ろから数えて2番目くらいの末席」だったようだ。 「現職の総理が自らの妻を、まるでその存在すら秘するかのように扱うのは、いささか異様と言っていい」、安部前首相夫人とは好対照だ 家族は話題にしたくない 「日本人が全然知らなかった菅義偉「家の事情」…決して姿を見せない妻と突如浮上した“問題長男”」 現代ビジネス (その7)(日本人が全然知らなかった菅義偉「家の事情」…決して姿を見せない妻と突如浮上した“問題長男”、「東北新社はNGで、フジテレビはOK」恣意的な判断が許される日本社会のヤバさ 立法の趣旨が平気で無視されている、前代未聞の「法案ミス」問題 菅政権になってから続出した理由) スガノミクス 総務省の対応はダブルスタンダードなのか 法の条文がいかなる時も、現実と合致するとは限らないので、現実との乖離が生じた場合には、法が持つ根本的な理念(あるいは憲法など上位に位置する法)にしたがって解釈する必要がある』、同感である 重要なのは議決権比率だけではない 「放送法には、外国人議決権比率が20%を超えた場合でも、会社側が該当する外国人株主の株主名簿への記載を拒否できる という規定もある。つまり会社側がその気になれば、20%未満の状態を維持するのは簡単なことなのだ」、初めて知った。フジ・メディアHDの場合は、会社側の怠慢だ 東北新社の認定取り消しは妥当ではない 「当時の総務省担当者は「報告を受けた記憶はまったくない」と完全否定している」、役人が都合が悪くなると否定するのはいつものことだ 「東北新社の認定取り消しには別の理由が存在している可能性が否定できない」、どういうことだろう。 外資規制違反で明らかになった総務省の恣意的な法律運用 法がどのような趣旨で存在し、その運用はどうあるべきなのか、しっかりとしたコンセンサスを得た上で、行政府が明確な説明責任を果たさない限り、法によって国益を守ることはできない。総務省は、東北新社の認定取り消しについて、詳細を明らかにすべきだろう』、強く同意する。 ダイヤモンド・オンライン 室伏謙一 「前代未聞の「法案ミス」問題、菅政権になってから続出した理由」 ここまでの法案ミスは前代未聞 このような厳重な手続きを踏んでいれば、「法案ミス」が起こるとは考え難い。 なぜ今回のような「法案ミス」が発生したのか (1)このような厚い体制をも機能不全にさせるほどに法案の作成を急がせた可能性 (2)法案の検討段階で十分な時間を確保する余裕が与えられなかった可能性 (3)一時的なものも含めた職員の能力の低下の可能性 (4)政治の側の法案作成に対する理解度が低下している可能性 今回の一件は、(1)と(4)が複合的に絡み合って起きた可能性が高い 菅政権になって「法案ミス」が続出した理由 「政策の企画立案は不得手な菅首相は、ある種ワンマンに物事を決めようとする傾向が強いようであり、それも「法案ミス」を生む大きな原因となったのだろう」、ありそうなシナリオで、謎が解けた。
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健康(その14)(精神科医が語る「うっせぇわ現象」の読み解き方 若者をメンタル不調からどう守れるか、精神科医が「絶対にやるべきだ」と断言する朝のベスト習慣) [生活]

健康については、1月31日に取上げた。今日は、(その14)(精神科医が語る「うっせぇわ現象」の読み解き方 若者をメンタル不調からどう守れるか、精神科医が「絶対にやるべきだ」と断言する朝のベスト習慣)である。

先ずは、3月16日付け東洋経済オンラインが掲載した国際ジャーナリストの高橋 浩祐氏による「精神科医が語る「うっせぇわ現象」の読み解き方 若者をメンタル不調からどう守れるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/416734
・『世界でメンタルヘルス(心の健康)の問題が深刻化している。世界保健機関(WHO)によると、世界では毎年約80万人が自殺している。これは40秒ごとに1人が自ら命を絶っている計算になる。いうまでもないことではあるが、自殺は家族や友人、コミュニティーに深い悲しみと計り知れない衝撃をもたらす。 WHOはさらに若者の死亡の主要な要因の1つが自殺と指摘している。日本ではコロナ禍で子供たちの自殺が大幅に増加している。2020年に自殺した小中高校生は479人に達し、過去最多となった。 アメリカでもコロナ禍で若者がうつ病になるリスクが増えている。ウォール・ストリート・ジャーナルの2020年8月12日付の記事によると、アメリカ大学保健管理協会(ACHA)などが昨年3月末から5月にかけて学生1万8764人を対象に実施した調査では、大学生の約41%がうつの症状を報告した。自殺のリスクも2019年秋の25%から27.2%に上昇したという。 筆者は昨年1月から2月にかけ、日本人約120人を含む、世界11カ国の青年約240人が参加する内閣府主催の「世界青年の船」に日本ナショナルリーダー(NL)として参加し、客船「にっぽん丸」に乗船した。その際、船上でもメンタルヘルス問題がグローバルな課題として大いに議論された。 大切な命を救い、そして、若者の精神衛生を支えるために、私たちはいったい何をどうすればよいのか。現代社会の若者のメンタルヘルスや自殺の動向を見極め、対策を考えるために、精神科医の木村好珠さんに話を聞いた。木村さんはJリーグアカデミーなどのメンタルアドバイザーを務めている。 木村さんは、今はやりのAdoさんの曲「うっせぇわ」と尾崎豊さんの1980年代のヒット曲「15の夜」とを対比し、今どきの若者は鬱憤の晴らし方がより内側にこもり出していると指摘した(Qは聞き手の質問、Aは木村氏の回答)』、厚労省の自殺白書によれば、15~39歳の各年代の死因の第1位は自殺、この世代で死因の第1位が自殺となっているのは、先進国(G7)では日本のみのようだ。「Adoさんの曲「うっせぇわ」」は初耳なので、YouTubeで観てみたら、衝撃的な内容だ。確かに「鬱憤の晴らし方がより内側にこもり出している」のかも知れない。
https://www.youtube.com/watch?v=Qp3b-RXtz4w
・『自己主張を苦手とする日本人の気質  Q:日本は、東アジアでは韓国に次ぎ、自殺が多い国となっています。まず、この要因についてどのようにご覧になっていますか。 A:日本人の気質によるものがいちばん大きいと思います。性格的な面で完璧主義であったり、なかなか人に物も言えなかったりする社会の雰囲気があります。自分の意見を言うことがすごく難しくなっています。 本当は自分の意見を言うことは全然間違っていることではないし、人に批判されることでもない。しかし、自分の意見を言うことがなかなかできない人が多い。「言うと嫌われるのではないか」と思い、自己主張を苦手にしている。そうすると、心の中にどんどんと(ストレスや鬱憤が)たまっていってしまう。 若者の間に「うっせぇわ」という曲がとてもはやっています。現役女子高生シンガーAdoさんが歌っており、中高生や子どもたちの間で大ヒットしています。毒々しい歌詞と社会ルールに反抗する過激さが表されています。でも、もともと「うっせぇわ」という言葉自体は上品ではないし、今すごく問題になっています。「うっせぇわ」と叫び続けていることもよくないです。 ただ、私は、この曲が日本の若者たちが抱えている、心の叫びの1つなのだろうなと思っています。曲の内容は、簡単に言ってしまうと、もともと優等生で、気がついたらそのまま大人になっていた。ルールとかマナーとかそんなの糞くらえだ!みたいな感じの曲です』、「うっせぇわ」は、「もともと優等生で、気がついたらそのまま大人になっていた。ルールとかマナーとかそんなの糞くらえだ!みたいな感じの曲」、確かに「毒々しい歌詞と社会ルールに反抗する過激さが表されています」。
・『精神科医の木村好珠さん  先日Noteにも書いてまとめたのですが、昔の尾崎豊さんの時代なら、バイクを盗んで走り出すといったように行動に表すことができた。しかし、今は、親に言われるがまま優等生のように育って、自分の本音を吐き出すことが苦手な人も多い、と私は考えています。 親など大人に何かを自分から言ったとしても、結局、「それはダメだから」とか「何とかしなさい」と言われて終わってしまう。そして、「自分がどうしたいから、これをやったのか」とか「なんでこれをしたのか」といった理由には触れずじまいになる。結果として、自己主張することがすごく苦手になってしまいます。 ですので、そのまま大人になって、急に自己の意見を出せと言われても、それは無理な話です。なかなか人には伝えられない、自己主張できなくなっているんです。 そんな中で、SNSという空間では、相手が不特定なので自分自身を吐き出すことができる。SNSは匿名性があるので、そういう人がますます集まってくるわけです。そうすると、心理学的に「リスキーシフト」という言葉があるのですが、匿名性がある中で、どんどん考えが偏っていく。そして、「私みたいな人がこんなにたくさんいる」と同調し、気持ちがさらに膨らんでいく。こうしたことが若者のメンタルにも影響していると思います』、「SNSは匿名性があるので、そういう人がますます集まってくるわけです。そうすると」、「どんどん考えが偏っていく(心理学的に「リスキーシフト」)。そして、「私みたいな人がこんなにたくさんいる」と同調し、気持ちがさらに膨らんでいく。こうしたことが若者のメンタルにも影響」、極めて危険な社会現象で、日常的に発生している。
・『自分の長所も見つけられなくなっていく  Q:「ネットいじめ」の問題もそうした背景があるように感じます。私がかつて留学していたアメリカでは、みんなの前で自己主張ができる若者を育てるために、スピーチやディベートの教育を実践していたことを思い出しました。日本も早い段階からその実践教育をやるといいでしょうか。 A:大事だと思います。日頃スポーツメンタルの分野にも関わっているのですが、子どもたちには最初に「自分の長所と短所を言って」と聞くようにしています。 すると日本人は長所が言えないんです。自慢していると周囲に思われるから、遠慮して言えないんです。自分のアピールをすることがすごく苦手。日本は謙遜の文化で、自分の長所を言ったら「出る杭は打たれる」というような雰囲気があり、これは子どもの世界にもあります。 無理してアピールする必要はないかもしれませんが、自分の長所という事実があるのであれば、それはありのままの自分ですから、隠す必要もないと思います。 そうしていく弊害は、自分のよい部分も見つけようともしなくなることです。悪いことばかり気にかける。そういう日本の文化には問題があるように思います。若者が「私っていう存在がいてもいいんだ。私ってこんなすごいことがあるんだ」というふうに思えなくなりかねない、1つの原因かなと思います。 Q:確かに私もアメリカでは自分の長所を隠すどころか、Sell yourself!(自分を売り込め!)の精神を教わりました。あと、日本では人と違ったことをすると、「人様に迷惑をかけるからやめなさい」と親に言われることが多いと思うのですが、英語のmake a difference(違いを見せる)は人と違ったことをしてよいといったポジティブな意味があります。大きな違いですね。 A:そうですね。日本では個性的という言葉がよい意味で使われないことが多いですよね』、「自分の長所という事実があるのであれば、それはありのままの自分ですから、隠す必要もないと思います。 そうしていく弊害は、自分のよい部分も見つけようともしなくなることです。悪いことばかり気にかける。そういう日本の文化には問題があるように思います」、同感である。
・『優等生でいても、自分のやりたいことがわからない  Q:コロナによる影響もあると思われる中、若者はメンタルヘルスをどのように良好に改善していったらいいのでしょうか。長期と短期でいろいろと対策があるとは思うのですが。 A:長期的な面でいえば、やはり自分の意見をきちんと言える子どもたちを育てることが重要だと思います。私の患者さんは結構10代が多いのです。彼ら彼女らは「生きている意味がわからない」とよく言っています。 Q:その子たちの家庭の状況はどうなのでしょうか。 A:とくにそうした問題はない家庭のお子さんも多いのです。以前でしたら、家庭が崩壊している子が多かったのですが、最近はそうでもありません。 先ほどの「うっせぇわ」の曲のように、優等生でいた子は、あれしなさい、これしなさいと言われて生きてきた結果、自分が何をしたいかということに向き合わないできた子がとても多くいます。優等生で褒められて生きてきた分、なんとなく自分は何でもできると思っている場合もあります。 でも、実際には自分が何をやりたいのかが見つかっていない人が多くいます。いざ大学に入って、そのことに気づく。そして、「自分は何をしたいだろう。生きている意味って何だろう」と考えこんでしまう子が一定数いるのです。大人もそこに焦点を絞った質問をしっかりと聞いてこなかったのでしょう。 そうして、大学受験に落ちたり挫折に直面すると、どうしていいかわからなくなってしまうのです。もともと親に言われたように生きてきて、何かできると思っていたのに、失敗したときにどう改善すればよいのかがわからない。ここで、うつ病になってしまう子もいます。 Q:大学生に聞いても、将来何がやりたいかが見つかっていない子はかなりいるように感じます。 A:私の患者さんの中には10代の発達障害の子もいます。彼らの悩みの1つは、コロナでリモート環境になり、いきなり自分で予定を立てなくてはならなくなったことです。 大学に通学していれば、授業がコマになっているし、友達がいるので「次の授業は一緒に受けようね」といったふうになる。授業を決めるときも友達と相談しながら、決められる。 でも、いざリモートになると、人と相談もできず、全部自分で選択し、計画も立てないといけない。それが苦しいというんです。 それを急になんとかせよといっても難しい面があります。そこで一緒にスケジュールを立てたりしています。そうしたところから、やっていくことなのかなと思います』、「自分が何をやりたいのかが見つかっていない人が多くいます。いざ大学に入って、そのことに気づく。そして、「自分は何をしたいだろう。生きている意味って何だろう」と考えこんでしまう子が一定数いるのです・・・大学受験に落ちたり挫折に直面すると、どうしていいかわからなくなってしまうのです」、困ったことだ。
・『インタビューを終えて  現役医師で、キッズ・ジュニア年代のサッカー選手のメンタルアドバイザーも務められる木村好珠さん。話をうかがい、若者のメンタルヘルスを健全に保つためには、若い頃からしっかりと自己表現や自己主張ができ、長所を伸ばす教育が今の日本には必要だと感じた。子どもたちが伸び伸びと育ち、将来の夢や目的意識をしっかりと持てるような社会環境を整えていくのは、大人たちの役割だろう。 また、心が病む人々を社会で支える環境整備が重要だろう。精神科医の樺沢紫苑さんは筆者の取材に対し、「自殺の原因は心理的『孤立』『孤独』です。家族と住んでいても、あるいは遊び友達がいても、心を打ち明けられなければ『孤立』『孤独』の状態です」と指摘する。 さらに、「自殺の予防は『孤立』『孤独』の逆。つまり、『つながり』と『コミュニケーション』です。『相談』というとハードルが高くなるので、とにかく『話す』こと。それが、『ガス抜き』となり、自殺のエネルギーを減らします。今のコロナ禍で、リアルのコミュニケーション量が大きく減っている。自殺の増加につながってくるのは当然です。意識的に、人とつながっていくことが重要。SNSでのメンタル疾患の予防効果は限定的なので、特にリアルコミュニケーションによるガス抜きが重要と考えます」と話す。 コロナ禍の外出自粛下、いかにリアルなコミュニケーションの機会を確保していくか。孤立・孤独からの解放のアイデアが問われている。 
NPO法人自殺対策支援センターライフリンクいのちSOS 0120-061-338
公的な相談機関につながる「こころの健康相談統一ダイヤル」 0570-064-556
24時間対応の「よりそいホットライン」 0120-279-338
「いのちの電話」 0570-783-556
18歳までの子どもを対象とした「チャイルドライン」 0120-99-7777
子ども向けの相談窓口の「24時間子供SOSダイヤル」(年中無休) 0120-0-78310(なやみ言おう)
文部科学省が子どもの相談先の一覧をまとめたホームページ https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
厚生労働省が設けているさまざまな相談機関を検索できるサイト http://shienjoho.go.jp/』、
「若者のメンタルヘルスを健全に保つためには、若い頃からしっかりと自己表現や自己主張ができ、長所を伸ばす教育が今の日本には必要だと感じた」、「自殺の予防は『孤立』『孤独』の逆。つまり、『つながり』と『コミュニケーション』です・・・『話す』こと。それが、『ガス抜き』となり、自殺のエネルギーを減らします』、同感である。

次に、4月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した精神科医、作家の樺沢 紫苑氏による「精神科医が「絶対にやるべきだ」と断言する朝のベスト習慣」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/267831
・『コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じています。 ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまいます。 19万部を突破した『ストレスフリー超大全』で、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を、「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介した。 「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る――(この記事は2020年7月3日付け記事を再構成したものです)』、「ストレスフリーの本質に迫る」、とは興味深そうだ。
・『「朝の30分」で人生が変わる  いま、YouTubeなどで有名人によるモーニングルーティンが話題ですが、精神科医としておすすめの最高のモーニングルーティンがあります。 それが、「朝散歩」です。 方法は簡単です。朝起きてから1時間以内に15~30分の散歩をするだけです。それだけで、セロトニンが活性化し、体内時計がリセットされ、「副交感神経」から「交感神経」への切り替えがうまくいき、自律神経が整えられます。 ストレスフリーを目指すのに、こんなに効果的な健康習慣はありません』、「朝起きてから1時間以内に15~30分の散歩をするだけです。それだけで、セロトニンが活性化し、体内時計がリセットされ、「副交感神経」から「交感神経」への切り替えがうまくいき、自律神経が整えられます」、ずいぶん簡単なようだ。
・『朝散歩の科学的根拠とは  私は25年間以上、精神科医として、メンタル疾患が治りやすい人と治りにくい人の特徴を観察してきました。メンタル疾患が治りにくい人の特徴は、「昼まで寝ている」ことです。 実際に「昼まで寝ている」という患者さんが、「朝散歩」をはじめた途端に、症状が急激に改善する事例を多数観察し、現在では一般の人にも「朝散歩」をおすすめしています。何年も治らなかったうつ病やパニック障害などのメンタル疾患が、朝散歩をするようになってから「ものすごくよくなった」という報告をたくさんいただいています。 メンタル疾患がない人でも「朝散歩」をすることで、午前中の仕事のパフォーマンスがアップし、睡眠も深くなる効果が得られます。 朝散歩は健康になるためのすべての要素を含んでいます。朝散歩は、メンタルにおける最強の健康法といっていいのです。 朝散歩が効果的である科学的な理由を3つ紹介しましょう』、「何年も治らなかったうつ病やパニック障害などのメンタル疾患が、朝散歩をするようになってから「ものすごくよくなった」という報告をたくさんいただいています」、確かに効き目はバツグンのようだ。
・『(1)セロトニンの活性化 セロトニンは、「朝日を浴びる」「リズム運動」「咀嚼」によって活性化します。朝の散歩は、「朝日を浴びる」「リズム運動」(ウォーキングなどの規則的なリズムを刻む運動)の2つを兼ねているので、セロトニンを十分に活性化することができます。 セロトニンは、覚醒、気分、意欲と関連した脳内物質で、セロトニンが低下するとうつ的になります。セロトニンが活性化すると、清々しい気分となり、意欲がアップし、集中力の高い仕事ができます。 そして、セロトニンを材料に夕方から睡眠物質のメラトニンが作られます。セロトニンが十分に分泌されることで、結果、夜の睡眠が深まるのです。 普通の人でも、仕事が忙しくてストレスフルな生活をしていると、セロトニンを分泌するセロトニン神経が弱ってきます。朝散歩によって、毎日、セロトニン神経をしっかり活性化することで、ストレスを受け流し、脳の疲労を回復できます』、「セロトニンが活性化すると、清々しい気分となり、意欲がアップし、集中力の高い仕事ができます。 そして、セロトニンを材料に夕方から睡眠物質のメラトニンが作られます。セロトニンが十分に分泌されることで、結果、夜の睡眠が深まるのです」、万能の有難い物質のようだ。
・『(2)体内時計のリセット 人間には体内時計があり、平均24時間10分前後といいます。体内時計をリセットしないと、毎日10分ずつ寝つきの時間が遅くなり、昼夜逆転生活となってしまうのです。 体内時計をもとに、睡眠、覚醒、体温、ホルモン、代謝、循環、細胞分裂などがコントロールされているので、体内時計がズレると、「指揮者のいないオーケストラ」のように体内がバラバラの状態になり、高血圧、糖尿病、がん、睡眠障害、うつ病など、さまざまな病気の原因となります。 体内時計をリセットするには、太陽の光(2500ルクス以上)を5分浴びるのが効果的です。だからこそ、朝に外に出ることがいいのです』、「体内時計がズレると、「指揮者のいないオーケストラ」のように体内がバラバラの状態になり、高血圧、糖尿病、がん、睡眠障害、うつ病など、さまざまな病気の原因となります」、「太陽の光」できちんと「リセット」するのが大切なようだ。
・『(3)ビタミンD生成 ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にするホルモンです。ビタミンDは、非常に欠乏しやすい栄養素として知られ、日本人の8割がビタミンD不足ぎみで、4割で欠乏していると言われます。 ビタミンDが欠乏すると、骨粗鬆症になります。骨粗鬆症になると、ちょっとした転倒で簡単に骨折します。骨折するとしばらく安静が必要なため、一気に筋肉が衰えます。高齢者の場合は、それがきっかけで「要介護」「寝たきり」になる人も多いのです。 ビタミンDは食事から摂取もできますが、必要量の半分は自分で生成することができます。原料は「紫外線」です。皮膚に日光(紫外線)が当たると、ビタミンDが生成されます。 15~30分の朝散歩をすれば、1日に必要な量のビタミンDの生成が行われます。紫外線が気になる女性も多いでしょうが、だからこそ日差しの強い昼ではなく、日光が比較的弱い朝がベストなのです』、「ビタミンDは食事から摂取もできますが、必要量の半分は自分で生成することができます・・・皮膚に日光(紫外線)が当たると、ビタミンDが生成されます。 15~30分の朝散歩をすれば、1日に必要な量のビタミンDの生成が行われます。 以上をまとめると、メンタル疾患のある人から、夜の寝つきが悪い人、仕事でパフォーマンスを上げたい人まで、すべての人に朝散歩がおすすめです。少しでも身体的・メンタル的に不調がある人は、必ず習慣として取り入れてください」、重要なことだ。
・『具体的な朝散歩の方法(基本的な方法は、「起床後1時間以内に、15~30分の散歩を行う」です。午前中(できれば10時まで)に行いましょう。雨の日でも効果があります。サングラスはかけず、紫外線を防御しすぎないのがポイントです。 健康な人であれば、15分ほどでセロトニンが活性化します。「メンタル疾患のある人」「メンタルが弱っている人」「睡眠に問題がある人」などであれば、セロトニン神経が弱っている可能性が高いので、30分を目安にしてください。 ただし、30分を超えるとセロトニン神経が疲れてしまい、逆効果になるので注意しましょう。 また、起きて3時間以上が経ってから朝散歩をすると、体内時計が後ろに3時間ズレてしまうので逆効果です。必ず、起きて1時間以内に行ってください。 健康な人の場合は、室内でも日光の入る明るい部屋にいれば、ある程度体内時計はリセットされます。しかし、体調の悪い人、メンタル不調の人は室内では不十分ですので、起床後、1時間以内に屋外に出るべきです。 朝散歩の後には朝食を食べましょう。朝食を食べることで、さらに「脳の体内時計」と「体の体内時計」のズレが補正されます。 また、よく噛んで朝ご飯を食べましょう。「咀嚼」もリズム運動なので、それだけでセロトニン神経を活性化します。 「リズム運動」であれば、セロトニンは活性化するので、悪天候で外に出られないときは、室内で「ラジオ体操」で代用してもいいでしょう』、私も「朝散歩」を実践しているが、「30分を超えるとセロトニン神経が疲れてしまい、逆効果になるので注意しましょう」、はショックだ。というのも、私の時間は1時間半と長すぎ、朝食後なのも、推奨の形とは違っている。私は午後の散歩と合わせて1万歩を目標にしているので、とりあえず、このままでいくつもりだ。
・『さらに効果的な方法  朝散歩なので、ジョギングをする必要はありません。歩くときの「リズム」が重要なので、「ワン、ツー、ワン、ツー」と同じテンポでリズミカルに歩きましょう。体力に余裕のある人は、「早歩き」で軽快に歩くといいでしょう。 先ほど、午前中(できれば10時まで)にすべきだと書きましたが、それは午後に散歩しても、セロトニン活性効果が小さいからです。 体内時計がリセットされてから、15~16時間後にメラトニンが分泌されて「眠気」が出ます。逆算すると、午前7時に体内時計をリセットすると、22~23時に眠気が出るということです。午前8時に体内時計をリセットすると、23~24時に眠気が出ます。だから、午前11時に朝散歩をすると、体内時計のリセットが遅れてしまいます。 サングラスをかけるのがNGなのは、セロトニン神経が活性化するためには、ある程度の明るさの光が「網膜」から入らないといけないからです。 また、肌を覆う紫外線対策(UVクリームなども含む)をすると、ビタミンDは活性化しません。注意しましょう』、なるほど。
・『まずはハードルを下げて習慣化しよう  朝散歩をするといっても、「朝5時に起きなさい」ということはありません。「朝の調子が悪い人」「お疲れモードの人」「メンタル疾患の人」が、無理して早起きをすると、逆に調子を崩す可能性があります。最初は、自分に無理のない時間に起きて、その時間から朝散歩をすれば十分です。 毎日するのがベストですが、週1~2回でも、やっただけ効果があります。不定期でも、徐々に朝の目覚めがスッキリと改善していきます。 テンポよく「リズム」に集中するために、音楽を聴きながら歩くのもいいでしょう。好きな音楽であれば、寝起きの気分も上がるでしょう。 どうしても歩くのがしんどい場合、ベランダや庭に出て日向ぼっこをすることからはじめましょう。そこから、5分の散歩、10分の散歩、15分の散歩……と、少しずつハードルを上げていけばOKです。やればやっただけ効果が出ます。(樺沢紫苑略歴はリンク先参照)』、それにしても、「30分を超えるとセロトニン神経が疲れてしまい、逆効果になる」、というのはやはり気になる。もっと他の意見も調べてみるつもりだ。場合によって、改めて取上げるかも知れない。
タグ:「Adoさんの曲「うっせぇわ」」は初耳なので、YouTubeで観てみたら、衝撃的な内容だ。確かに「鬱憤の晴らし方がより内側にこもり出している」のかも知れない。 「精神科医が語る「うっせぇわ現象」の読み解き方 若者をメンタル不調からどう守れるか」 東洋経済オンライン (その14)(精神科医が語る「うっせぇわ現象」の読み解き方 若者をメンタル不調からどう守れるか、精神科医が「絶対にやるべきだ」と断言する朝のベスト習慣) 高橋 浩祐 「うっせぇわ」は、「もともと優等生で、気がついたらそのまま大人になっていた。ルールとかマナーとかそんなの糞くらえだ!みたいな感じの曲」、確かに「毒々しい歌詞と社会ルールに反抗する過激さが表されています 「SNSは匿名性があるので、そういう人がますます集まってくるわけです。そうすると」、「どんどん考えが偏っていく(心理学的に「リスキーシフト」)。そして、「私みたいな人がこんなにたくさんいる」と同調し、気持ちがさらに膨らんでいく。こうしたことが若者のメンタルにも影響」、極めて危険な社会現象で、日常的に発生している 厚労省の自殺白書によれば、15~39歳の各年代の死因の第1位は自殺、この世代で死因の第1位が自殺となっているのは、先進国(G7)では日本のみのようだ。 それにしても、「30分を超えるとセロトニン神経が疲れてしまい、逆効果になる」、というのはやはり気になる。もっと他の意見も調べてみるつもりだ。場合によって、改めて取上げるかも知れない 私も「朝散歩」を実践しているが、「30分を超えるとセロトニン神経が疲れてしまい、逆効果になるので注意しましょう」、はショックだ。というのも、私の時間は1時間半と長すぎ、朝食後なのも、推奨の形とは違っている。私は午後の散歩と合わせて1万歩を目標にしているので、とりあえず、このままでいくつもりだ 自分が何をやりたいのかが見つかっていない人が多くいます。いざ大学に入って、そのことに気づく。そして、「自分は何をしたいだろう。生きている意味って何だろう」と考えこんでしまう子が一定数いるのです (1)セロトニンの活性化 (2)体内時計のリセット 「体内時計がズレると、「指揮者のいないオーケストラ」のように体内がバラバラの状態になり、高血圧、糖尿病、がん、睡眠障害、うつ病など、さまざまな病気の原因となります」、「太陽の光」できちんと「リセット」するのが大切なようだ 「何年も治らなかったうつ病やパニック障害などのメンタル疾患が、朝散歩をするようになってから「ものすごくよくなった」という報告をたくさんいただいています」、確かに効き目はバツグンのようだ 「セロトニンが活性化すると、清々しい気分となり、意欲がアップし、集中力の高い仕事ができます。 そして、セロトニンを材料に夕方から睡眠物質のメラトニンが作られます。セロトニンが十分に分泌されることで、結果、夜の睡眠が深まるのです」、万能の有難い物質のようだ 「朝起きてから1時間以内に15~30分の散歩をするだけです。それだけで、セロトニンが活性化し、体内時計がリセットされ、「副交感神経」から「交感神経」への切り替えがうまくいき、自律神経が整えられます」、ずいぶん簡単なようだ 「ストレスフリーの本質に迫る」、とは興味深そうだ 「精神科医が「絶対にやるべきだ」と断言する朝のベスト習慣」 「ビタミンDは食事から摂取もできますが、必要量の半分は自分で生成することができます (3)ビタミンD生成 ダイヤモンド・オンライン 『話す』こと。それが、『ガス抜き』となり、自殺のエネルギーを減らします』、同感である。 樺沢 紫苑 「若者のメンタルヘルスを健全に保つためには、若い頃からしっかりと自己表現や自己主張ができ、長所を伸ばす教育が今の日本には必要だと感じた」、「自殺の予防は『孤立』『孤独』の逆。つまり、『つながり』と『コミュニケーション』です 大学受験に落ちたり挫折に直面すると、どうしていいかわからなくなってしまうのです」、困ったことだ 皮膚に日光(紫外線)が当たると、ビタミンDが生成されます。 15~30分の朝散歩をすれば、1日に必要な量のビタミンDの生成が行われます。 以上をまとめると、メンタル疾患のある人から、夜の寝つきが悪い人、仕事でパフォーマンスを上げたい人まで、すべての人に朝散歩がおすすめです。少しでも身体的・メンタル的に不調がある人は、必ず習慣として取り入れてください」、重要なことだ 「自分の長所という事実があるのであれば、それはありのままの自分ですから、隠す必要もないと思います。 そうしていく弊害は、自分のよい部分も見つけようともしなくなることです。悪いことばかり気にかける。そういう日本の文化には問題があるように思います」、同感である 健康
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ESG(その1)(ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす、ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会、誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い) [企業経営]

今日は、ESG(その1)(ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす、ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会、誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い)を取上げよう。

先ずは、2月1日付け東洋経済オンライン「ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/408511
・『「世界的な流れを力に、民間企業に眠る240兆円の現預金、さらには3000兆円ともいわれる海外の環境投資を呼び込む」 1月18日の施政方針演説で菅義偉首相はそう述べ、国内外の巨額マネーを誘導しグリーン成長戦略を実現する考えを表明した』、なるほど。
・『世界のESG投資残高は4000兆円規模に  「環境投資3000兆円」というのは、国際的なESG(環境・社会・企業統治)投資の調査機関であるGSIA(世界持続可能投資連合)の報告書を基にしている。それによると、2017年度末の世界のESG投資残高は30.7兆ドル(約3200兆円)で2年前から34%増えた。ESG投資の定義がかなり幅広く、E(環境)に限った投資ではないが、2020年には40兆ドルに近づいたとみられる。 『週刊東洋経済』2月1日発売号は「脱炭素サバイバル水素、EVめぐり大乱戦」を特集。世界各国が将来のグリーン戦略を示すなか、菅首相も「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロに」と表明。日本でも脱炭素への大変革が始まった。特集では、日本の脱炭素戦略のポイント解説、日本モデルの問題点、グリーンマネーのうねり、アメリカ、欧州、中国の動向、日本の強み・ハイブリッド車のジレンマ、トヨタ自動車の燃料電池車の成否、アップルも参入するEV覇権争いの行方、鉄鋼・商社・重工業といった各産業の課題、EV・水素・再生可能エネルギーの注目70銘柄など、脱炭素で変わる世界と日本企業の実情に迫った。 直近のESG投資の勢いを実証するのが、ESG関連ETF(上場投資信託)への資金流入の急増だ。昨夏以降、世界全体の純流入額は急増。コロナ禍の中、再生可能エネルギーへの投資など気候変動対策を経済再生につなげる「グリーンリカバリー」が欧州を中心に世界的潮流となったことと軌を一にする。 日本国内でもESG投資熱は顕著だ。象徴的事例が、大手資産運用会社アセットマネジメントOneが2020年7月に運用を開始した追加型投信「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」の絶大な人気だ。当初設定額で国内歴代2位の3830億円を集め、直近の純資産総額は9200億円まで膨らんだ。 個人投資家の参入も顕著だが、グリーンマネーの主役は何といってもグローバルな大手機関投資家だ。単に株や社債に投資するだけではない。企業に対してさまざまな形で脱炭素を迫る彼らの圧力は日に日に強まっている。 世界の500以上の機関投資家が加盟する投資家団体「クライメート・アクション100プラス」は、温室効果ガス排出量の多い世界167の企業とのエンゲージメント(対話)を通じ、2050年までの排出ゼロへ向けた目標設定と対策を求めている。 その団体にも加盟する世界最大の資産運用会社であるアメリカのブラックロック。同社のラリー・フィンクCEO(最高経営責任者)は気候変動リスクを先取りした形で「大規模な資本の再配分が起きる」との認識を示し、投資先企業に対して気候変動リスクの情報開示や対策の要求圧力を強める。同社は昨年、そうした対応が不十分だとして53社の株主総会で取締役選任案に反対票を投じるなどした。 HSBCグローバル・アセット・マネジメントの機関投資家ビジネス部門でESGリーダーを務めるサンドラ・カーライル氏は、「気候変動による現実のリスクが増大し、再エネなどのビジネス機会も増える中でESGが資本の流れを変えた」と話す。そして、環境政策を柱とするバイデン政権の誕生で、「カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)などの進歩的な投資家に限らず、(世界最大規模の)アメリカマネーの脱炭素シフトが本格化する」とみる』、確かに「バイデン政権の誕生」は大きな追い風のようだ。
・『日本の機関投資家も脱酸(正しくは「炭」)素を軸に選別  日本の機関投資家の間でも脱炭素を軸とした企業選別が進む。野村アセットマネジメントはカーボンプライシング(炭素の価格づけ)の仕組みを活用して企業の二酸化炭素(CO2)排出量をコストに換算し、財務情報に組み込んで投資判断に活用する。CO2はESG評価会社の推計値も使ってサプライチェーン全体の分も評価する。「今年1月から大手300社ほどを対象に始め、順次対象を広げる方針」(同社総合企画部)だ。 日本生命保険は今年4月から投融資全体にESG評価を導入する。国債や国内融資、不動産にもカバー範囲を広げ、気候変動をテーマとする企業対話も強化する。国内運用会社として最も早くESG評価を開始したニッセイアセットマネジメントのノウハウを活用した独自評価を行う。 SOMPOホールディングスは2020年9月、国内の石炭火力発電所の新規建設について保険引き受け・投融資は原則として行わないと発表。取引先の立地条件などから例外規定を残すものの、脱炭素への重要な一歩となる。「自然災害が増えていけば保険料が高騰し、損害保険という金融インフラの機能を果たせなくなる危惧がある。金融機能を使って影響力を行使し、気候変動問題の改善に貢献したい」と堀幸夫CSR室課長は話す。) 取締役選任への反対投票や株主提案を増やすなど、大手機関投資家は、今や「環境アクティビスト(物言う株主)」へ変容しつつあるといっても過言ではない。そうした流れに便乗するヘッジファンドなどの新興投資家や環境団体も増え、企業への圧力は増すばかりだ。 アメリカでは世界最大の石油・ガス開発会社のエクソン・モービルに対し、気候変動リスクへの対応の遅れで10兆円以上の株主価値が失われたとしてヘッジファンドが改革を要求している。エクソンに対しては、ブラックロックなども2020年の株主総会で会社側の取締役選任議案に反対票を投じた。 日本国内では昨年、環境NPOの気候ネットワークがみずほフィナンシャルグループに対し、脱炭素の行動計画を年次報告書で開示するよう定款変更を求める株主提案を行った。6月の株主総会で否決されたものの、海外の大手議決権行使助言会社が賛成を推奨し、野村アセットや農林中央金庫系運用会社を含む国内外株主の34.5%の支持を得た。 気候ネットワークの平田仁子理事はこう語る。「巨額の投融資を行う金融機関が資金の振り向け先をどうするかは決定的に重要だ。みずほの件で株主提案にはものすごい波及効果があるとわかった。今後も脱炭素に向けた金融の“うねり”の中で何ができるか考えたい」。ほかの環境団体と連携し、石炭火力発電を続ける企業の主要株主にダイベストメント(投資撤退)を求める要請書も送付している。 今後はEU(欧州連合)が導入を予定する「EUタクソノミー」の影響も注目される。何がグリーンな経済活動かを分類する基準となるもので、EUに拠点を置く機関投資家はその基準に従って運用状況を開示するよう求められる。彼らの投資先の日本企業や、彼らの資金を預かる国内運用会社への影響は避けられず、投資家による企業選別が加速する可能性は高い』、「大手機関投資家は、今や「環境アクティビスト(物言う株主)」へ変容しつつあるといっても過言ではない」、そこまできたかといささか驚かされた。「石炭火力発電」は日本だけが推進してきたが、ESGの観点から見直しも進みつつある。
・『日本企業の対応は待ったなし  日本企業の対応は待ったなしだ。大和総研でESG投資動向を分析する田中大介研究員は、「グリーン投資の拡大に伴い、環境対策や情報開示が従来と同じままでは企業の資金調達は難しくなる」と語る。そのうえで、化石燃料関連など脱炭素が短期的に難しい企業に対して資金を誘導する「トランジション(移行)ファイナンスの重要性も高まる」と指摘する。そうした企業の改善がない限り、社会全体の脱炭素達成は不可能だからだ。 政府がグリーン成長戦略の旗を明確に振り、企業が能動的に変革を進め、投資家が企業の成長への確信を強めてマネーを投じれば、脱炭素へ向けた歯車の回転は加速する。日本でその流れが本格化していくか。官民の本気度が問われることになる』、「日本で」「脱炭素へ向けた」「流れが本格化して」もらいたいものだ。

次に、2月6日付け東洋経済オンライン「ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/409463
・『世界的な気候変動リスクへの関心の高まりと各国政府の脱炭素宣言もあって、環境・社会・企業統治を考慮したESG投資は全世界で急速に拡大している。中心的な担い手は、世界展開する欧米の大手機関投資家だ。 その1社であるHSBCグローバル・アセット・マネジメントで機関投資家ビジネス部門のESGリーダーを務めるサンドラ・カーライル氏は、ESGに関する資産運用業界のスポークスパーソン的存在であり、責任投資原則(PRI)のボードメンバーを務めた経験も持つ。同氏に、世界のESG投資の動向や日本企業のESG活動の評価などについて聞いた(Qは聞き手の質問、Aはカーライル氏の回答)』、「ESGに関する資産運用業界のスポークスパーソン的存在」の見解とは興味深そうだ。
・『ESGは資本の流れを変えた  Q:主要各国が2050年までのカーボン・ニュートラル達成方針を宣言したことを受け、世界のESG投資にはどんな変化が見られますか。 A:ESGは資本の流れに大きな変化を与えた。ESGは今や投資分析の重要な要素となった。気候変動はますます現実のリスクを生み出すと同時にビジネス機会をもたらしている。投資家は世界をESGの「レンズ」を通して見るようになり、それがビジネスへの資本の流れを変えている。 例えば、日本は1980年代以来、太陽光発電の技術でリーダーだった。ただ、1990年代に入っても太陽光技術の価値はあまり高く評価されなかった。でも今は、そうした技術を持つ企業が高く評価されるようになっている。 投資家はクリーンエネルギーやヘルスケアのようなESGの解決策に資金を投じるようになった。特定のESG関連指数に投資する投資家もいるし、ポートフォリオをゼロカーボンに近づけようとする投資家もいる。HSBCが取り組んでいるようなナチュラル・キャピタル(水資源や森林などの自然資本)のファンドに資金を投じる投資家もいる。 Q:気候変動対策に積極的なバイデン政権に転換したことで、アメリカの投資家の姿勢はどう変わるでしょうか。 A:アメリカの投資家の中でもカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)など一部の機関投資家はESGに関して非常に進歩的な考え方をしている。日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と同様だ。一方で、ほかの多くの投資家ははるかに遅れており、ESGをまったく配慮しない投資家もいる。 バイデン大統領は気候変動対策と環境正義(Environmental Justice)を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう。 アメリカの投資家は欧州やアジアの投資家に比べて投資のスタンダードや枠組みをより重視しており、アメリカのSASB(サステイナビリティ会計基準審議会)のルールをESG投資の際の参照基準としている』、「投資家は世界をESGの「レンズ」を通して見るようになり、それがビジネスへの資本の流れを変えている」、「投資家はクリーンエネルギーやヘルスケアのようなESGの解決策に資金を投じるようになった」、「バイデン大統領は気候変動対策と環境正義・・・を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう」、なるほど。
・『ESG投資はリターンに結びつくのか  Q:ESG投資は必ずしも市場平均以上の投資リターンには結びつかないと言われてきました。 A:ESGを組み込んだ投資や財務分析は必ずしも投資パフォーマンスにつながるとはいえない。ESGはパフォーマンスを生み出す1つの要素にすぎないからだ。しかし、中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げるとわれわれは考えている。 Q:グリーンな経済活動を分類するEU(欧州連合)のタクソノミー規則が市場に導入された場合の影響をどう考えますか。 A:2021年3月に欧州のアセットマネジメント(資産運用)会社に対するディスクロージャー(情報開示)規則が施行される。欧州以外の誰もがその規則がどう機能し、何が開示されるかに注目している。 ほかの国々は必ずしもEUと同じタクソノミーを導入しないだろう。EUタクソノミーはかなり制限的であるためで、部分的に自国に合うものを取り入れることになろう。重要なのは、ローカル市場を反映した規則であることだ。スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードと同様に、他の地域とまったく同じものである必要はない。 日本は2022年にかけてEUタクソノミーの導入状況と欧州の投資家の反応を見たうえで将来、日本国内の投資家のための規則をつくることになるかもしれない。ただ、何がサステイナブル(持続可能)な事業活動かを投資家により多く情報開示することは、EU方式かEU以外の方式かにかかわらず、非常に重要な原則だ』、「中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げる」、「日本は2022年にかけてEUタクソノミーの導入状況と欧州の投資家の反応を見たうえで将来、日本国内の投資家のための規則をつくることになるかもしれない」、なるほど。
・『日本企業のESG活動の強みは  Q:HSBCが本社を置くイギリスはEUから離脱しましたが、HSBCはEUタクソノミーにどう対応していますか。 A:HSBCの顧客はグローバルであり、EU域内のフランスやドイツなどでも大きなビジネスを行っている。われわれは規則に従ってEUタクソノミーを適用することになるし、グローバルな顧客のために何がいいかを考えている。顧客は5年ぐらい前からESG情報を求めるようになっており、われわれは世界各地域で非常に多くの情報開示を行っている。 Q:日本企業のESG活動における長所と短所についてどう見ていますか。 A:日本企業の長所として感じるのは、ESGに関する情報開示と説明の必要性を強く認識していることだ。日本でスチュワードシップ・コードが導入されたことが大きな契機となった。日本企業のSDGs(持続可能な開発目標)に関する行動方針をまとめたステートメントは非常に実践的なもので、それは日本に行って企業と対話するたびに感じる。 また、日本企業はSDGsを国際的に考え、それが日本企業にとって何を意味するかをよく考えている。ジェンダー・ダイバーシティ(女性の活躍推進)など社会問題に焦点を当てた取り組みも大きな強みだ。 一方、日本企業の課題と思われるのは、国際的な投資家として期待するレベルの対話を行うことが英米の企業に比べて依然難しいことだ。そのため、投資家として情報を得ることが比較的難しい。一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない。 もちろん、過去10年間の変化は常にポジティブなものだった。投資家との対話や議論が増え、ESGに焦点を当てた取り組みが増えたのは確かだ。 Q:文化的な違いというのは言語を含めてですか。 A:言語は常に障壁になっている。これは日本に限ったことではない。言語の違いも含め、投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない。ただ、そうした文化は変化してきており、ESG重視によって大きな前進が見られる』、「一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない」、「投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない」、やはり課題も多そうだ。
・『重要なのは脱炭素化の「証拠」  Q:石油・ガス業界など化石燃料関連の企業にはどう対応していますか。 A:われわれは気候変動リスクの観点からあらゆる産業の企業を分析する。投資先企業については、CO2排出原単位(carbon intensity)を見るために、ビジネスモデルのカーボン・フットプリント(商品・サービスのライフサイクル全体で排出された温室効果ガスをCO2排出量に換算して「見える化」する仕組み)を調べる。 もちろん化石燃料関連の企業はCO2排出原単位が高いので、より厳密に分析する。そうした企業に対して脱炭素化のプランを尋ねる。ネットゼロ達成に向けて、期間はどれくらいを想定しているのか。目標達成に向けてどのような課題があり、どのような技術を用いるのか。 さらに、非常に実務的な質問として、経営陣の報酬を脱炭素化の取り組みに連動させているかといったことも聞く。そうした分析を通じて脱炭素へ向けた勝者と敗者を判断し、ポートフォリオの低カーボン化を進めている。重要なのは、脱炭素化へのトランジション(移行)を確信できる証拠があるかどうかだ。 Q:ダイベストメント(投資撤退)の対象となる企業とは。 A:投資家の一部はすでに石炭や石油・ガスの関連企業の株式を売ったり、投資対象から外したりしている。だが、われわれは異なるアプローチをしている。企業との話し合いやエンゲージメント(建設的対話)を重視する。2021年の現在、どの業界のどの企業が将来的にトランジションに成功するか失敗するかを正確に見通すことはできないからだ。 そのため、原則としてわれわれはダイベストメントを行わない。投資を続け、エンゲージメントを行う。もしくは、リスク調整後リターンで見てリスクが非常に高い場合には新たな投資は行わない。 Q:ESG投資についてはすでに「バブル」との見方も一部にあります。 A:市場でブーム&バスト(バブルとその崩壊)が起こるのは、あるタイプの投資やESGストーリーに投資家が一斉に群がり、市場価格が上昇して過剰評価の状態になるためだ。これに対し、ESGを財務分析の1つの要素と考え、ROEやレバレッジ、資産価格なども踏まえて投資を行えば、ブーム&バストにはつながりにくい』、「ESGを財務分析の1つの要素と考え、ROEやレバレッジ、資産価格なども踏まえて投資を行えば、ブーム&バストにはつながりにくい」、確かにその通りなのかも知れない。
・『コロナ禍がグリーンスワンかもしれない  Q:BIS(国際決済銀行)が報告書で警告した気候変動発の金融危機「グリーンスワン」についてはどう考えますか。 A:気候変動には未知のことが多い。2020年は地球の平均気温が過去最高の気温を記録した年となり、地球温暖化が進んでいるのは事実だ。昨年は(台風などの)熱帯性暴風雨も過去最多となったが、こうした気候変動がこの先、われわれにどう影響するかは見通せない。グリーンスワンのようなことが発生する可能性は否定できないだろう。 人類が自然への侵害、開発を増やしていけばグローバル・パンデミックを引き起こすという科学的証拠も指摘されている。もしかしたら今(のコロナ禍)がまさにその状況であり、グリーンスワン的な出来事と言えるかもしれない。 グリーンスワンを防ぐには、気候変動リスクを考え、それに対応していくことだ。グリーンスワンを待つことはやめよう。課題を理解し、対応策を考えていけば、リスクに対処できるだろう。われわれはポートフォリオの見直しを通じて、リスクに対応していく。 Q:HSBCグローバル・アセット・マネジメントは合弁で「自然資本」に投資する会社を設立しました。 A:自然資本としては例えば農地や農業、林業・山林管理、海洋保全、マングローブ林やサンゴ礁の保全などが対象となる。太陽光発電や風力発電事業などは対象とならない。今のところリスクの少ない先進国が対象だ。 投資家は自然保護の必要性を理解しており、われわれが創設した自然資本ファンドへの関心は非常に強い。現在のファンドの規模は小さいため、機関投資家のためのより大規模なファンドを設定する予定だ』、「自然資本ファンド」のリターンは、農産物や材木、海産物などなのだろうが、誰が管理・栽培するのかにより大きな違いが出てくるので、果たして「ファンド」ビジネスが成り立つのだろうか。

第三に、4月5日付け東洋経済オンラインが掲載した日銀出身で前早稲田大学教授、現在、(社)自律分散社会フォーラム代表理事の岩村 充氏による「誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い」を紹介しよう。これはかなり理論的だが、経済システムの問題もをキレイに解き明かしている好論文だ。
https://toyokeizai.net/articles/-/420597
・『ESG経営あるいはESG投資といった議論が盛んになってきた。Eは環境、Sは社会、そしてGは企業統治だが資本主義下では株主ガバナンスといってよい。これらの観点を経営管理あるいは投資の軸に据えることで、企業は発展し、環境や社会全体、ほかのステークホルダー(顧客、従業員、取引先など)などにもよい影響を与えるはずとする議論である。 しかし、この議論、そもそも筋がおかしくないだろうか。EとSは多くの人が賛同する「目標」だが、Gは目標達成のための「手段」にすぎない。そのGをEやSと同格の目標であるかのように扱うのは、議論のすり替えでありただの政治的アジテーションではないか。浅い考えでGの強化を叫ぶことは、EやSをよくするどころか、かえって損なう要因になりかねない』、冒頭から岩村氏らしい理論的なパンチだ。
・『株主ガバナンス強化論はなぜ間違いなのか  そのことを、今や経済学の基本定理といえる「コースの定理」の考え方を用いて整理しよう。図にするとわかりやすいので次ページに掲載した(「図」はリンク先参照)。 横軸に企業の新しい可能性に対するチャレンジ度をとり、縦軸に企業のステークホルダーである株主と従業員に生じる変化に対する限界的な(単位当たりの)利益と損失をとることにする。 企業経営のチャレンジ度が上がることで株主に生じる限界的な利益を図示すると、それは一般的には右下がりの軌跡となる。なぜなら、企業が新たな機会に挑戦して得られる追加的なリターンは最初のうちこそ大きいが、その程度を上げていくうちに、持てる経営資源の限界に制約され徐々に低下するはずだからだ。 一方、チャレンジ度の増加が従業員にもたらす単位当たりの損失は右上がりの直線である。企業が新しいことに挑戦すると、従業員たちが蓄えていた業務に関する知識や経験は、新しい状況に応じて改めて作り直されなければならない。また、企業がチャレンジ度を上げるにしたがって倒産可能性も増加する。株主は分散投資によって倒産による損失をコントロールできるのに対し、従業員にはそれができないからだ。 この図を見ていくと、2014年に経済産業省の研究会の成果として公表された『伊藤レポート』に代表される、株主ガバナンス強化論の大きな問題点が明らかになる。 企業活動水準について見ると、企業がまったくリスクに挑戦しないXは確かに過小だが、株主利益が最大化されるYは従業員に生じる負担という点で明らかに過大である。では最適点はどこなのだろうか。それは、株主利益を示す右上がり直線と従業員損失を示す右下がり直線の交点Zである。 この図では、企業のステークホルダーたちに生じた利益や損失の大きさが、面積として表現されている。それをAからDまでの4つの三角形に分けて確認しておこう。まずAの部分、これは株主に生じた金銭的利益から、従業員に生じた社会的損失を差し引いたネットベースでの社会的サープラス(余剰)である。この部分を黄色に塗っておくことにする。 次はBとCだが、ここはマクロでみればゼロサムの部分だ。株主に生じた利益と従業員に生じた損失とが打ち消し合って、経済価値の移転、従業員から株主への移転だけが生じているだけの部分だからだ。 問題はDの部分だ。ここは、株主利益が存在しないのに社会的損失だけが生じていることを示す部分である。これを放置する国家や経済は衰え、やがては消滅の日を迎えるかもしれない。この部分、わかりやすくするために青で塗っておくことにしよう。 こう説明すれば、日本経済全体にとって中間点Zの合理性は明らかだろう。企業が水準Zを選択してくれれば、CとDの部分は関係者に意識はされても現実には存在しなくなるから、企業活動はネットベースではAの大きさに相当する富を作り出してくれることになる。では、どういう方法で企業決定をZに導いたらよいだろうか』、この「コースの定理」に基づいた「図」は、難しいが、かなり高度なことが盛り込まれているようだ。
・『社会とって最適なZで合意することは可能だ  そこで想起するのが「コースの定理」である。コースの考えによれば、この図でZと表記した最適な企業活動水準は、当事者同士が交渉して合意し、その合意を遵守すれば実現可能である。最適水準Zが選ばれるかどうかは、企業経営の主導権を株主が握っているのか、従業員が持っているのかには関係なく、両者の交渉と合意により実現できるはずだというのである。どうしてそうなるのか。 まず、企業がどの活動水準を選ぶか、それを決める権限を株主あるいは株主の代理人である経営陣が持っているとしよう。そのとき経営陣は活動水準として当然のようにYを選ぶだろうか。彼らが賢く、かつ従業員から誠実さにおいて信頼されているとすれば、もっとよい方法がある。Yよりも自重した水準であるZを選び、Yを選んでほしくないと考える従業員たちに相応の見返りを求めるという戦略が存在するのだ。 ちなみに、ここで従業員に求める見返りの大きさはCの面積よりは大きく、CとDを合わせた面積よりも小さなものでなければならない。Cの面積よりは大きくないと株主に利益がないし、CとDの合計より大きくなると従業員の賛成を得られないからだ。 やや具体的なイメージで言えば、彼ら経営陣としては、従業員に対して、「企業活動レベルを水準Zまで自制自重するから、その代わり、会社に忠誠心を持って参加してくれ、賃金は少なめでも頑張ってくれ、自分の会社での役割を意識して切磋琢磨してくれ」などと説くわけだ。何の合意もなく株主ガバナンス論を振りかざして水準Yを選ぶのではなく、従業員との合意の上でZを選んだほうが、株主にとっても従業員にとっても好ましい状態になる。 これに気づけば、単純な株主ガバナンス強化論が見落としていることは明らかだろう。問答無用型の株主ガバナンスは、従業員たちと経営陣との交渉あるいは合意形成への努力を無意味化することにより、日本全体に大きな外部不経済をもたらしかねないのだ。 ところで、この水準Zは、企業の意思決定を従業員が完全に握っていて、株主は企業の株式を持つか売るかの自由しかないときでも、同様に実現しうる。 この場合は、株主から従業員にBよりは大きくAとBの合計よりは小さい価値移転が生じる。結果として株主に残るのはAの面積の一部でしかないものの、企業がまったく新しいことに挑戦しないで何も得られない状態よりは、株主にとって好ましい状況を作り出せる。従業員たちも何のチャレンジもせずに水準Xにとどまっているより大きな報酬が得られるはずだ』、「何の合意もなく株主ガバナンス論を振りかざして水準Yを選ぶのではなく、従業員との合意の上でZを選んだほうが、株主にとっても従業員にとっても好ましい状態になる」、「問答無用型の株主ガバナンスは、従業員たちと経営陣との交渉あるいは合意形成への努力を無意味化することにより、日本全体に大きな外部不経済をもたらしかねない」、「株主ガバナンス論」を完膚なきまで叩きのめしたのはさすがだ。
・『同じZでも株主支配か従業員支配かで分配は変わる  しかし、ここで注意したいことがある。それは、企業活動水準として社会的最適点であるZを選ぶことに変わりはないのに、株主に支配されている場合と従業員に支配されている場合とでは、企業活動の成果の「分配」は大きく変わっているということである。 株主が企業を支配している場合には、株主に本来の帰属利益であるA+Bに加えてCとDの一部を合わせた大きさの従業員からの移転利益が生じる。従業員には本来の帰属損失Bに加えてCとDの一部を合わせた大きさの株主への移転損失が生じる。これに対し、従業員が企業を支配している場合には、従業員にAの一部の大きさの利益が生じて、株主にはAの残余部分に相当する利益しか生じないであろう。 つまり、企業経営が社会全体にとって最適な選択をするかどうかには関係なく、企業支配における株主の立場を強化することは、富める者をより富ませ、貧しいものをより貧しさせる効果があるわけだ。 そして、これはGの強化により日本経済全体の高い成長を実現できるなどと口にする政治家たちの思考不足をあざ笑うものでもある。なぜなら、一般に富裕層の消費性向は低く貧困層の消費性向は高い。だから、貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、いわゆる総需要の伸び悩みをも通じて国民経済成長の足を引っ張るのである。株主ガバナンス論は、長期的には日本を貧しくしかねないのである。 そこまで考えれば、第2次大戦後の公職追放の結果として従業員出身取締役に支配されていたとされる日本企業についても見方が変わってくるだろう。アングロサクソン型経営が世界標準となる中で、従業員に軸足を置きすぎと批判されるようになった日本的経営こそが、あの「高度経済成長」の理由の一つだったかもしれないという気がしてくるからである。そして似たような話がありそうなのは日本だけではない。重要な意思決定には従業員代表の同意が必要だとする「共同決定法」という法律の下にあった旧西ドイツがそれだ。 日本の企業経営に活力が失われた理由も、冷戦終了後のドイツの企業から輝きが消えていった理由も、国際的資本移動自由化の下で株主優遇を競い合うというという意味での「底辺への競争」に呑み込まれ、結果として株主以外のステークホルダー、とりわけ従業員たちとの合意を重視しなくなったことに関係があるだろうと筆者は考えている』、「貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、いわゆる総需要の伸び悩みをも通じて国民経済成長の足を引っ張るのである。株主ガバナンス論は、長期的には日本を貧しくしかねないのである」、「従業員に軸足を置きすぎと批判されるようになった日本的経営こそが、あの「高度経済成長」の理由の一つだったかもしれないという気がしてくるからである。そして似たような話がありそうなのは日本だけではない。重要な意思決定には従業員代表の同意が必要だとする「共同決定法」という法律の下にあった旧西ドイツがそれだ」、こうした経済システムの問題まで「コースの定理」に基づいた図で解き明かすとは、さすがだ。
・『環境や社会への影響を専門に見る取締役が必要  そうしたなか、もう2年近く前になる2019年8月に、筆者が衝撃を受けたニュースがあった。アメリカのトップ企業経営者たちが作るフォーラムであるビジネスラウンドテーブルが、これからの企業経営について、株主だけを重視するのではなく、従業員や地域住民などの広範なステークホルダーたちとの対話と合意を尊重すべきと提言したのである。 提言に関する日本メディアの伝え方には、これは大企業が格差拡大による批判を怖れたからだ、そこまでアメリカにおける分配の不平等は深刻なのだ、というニュアンスのものが多かった。しかし、コースの定理に沿って考えれば、この提言は株主利益のかさ上げにも使えることは明らかである。強力な株主主権の下で株主代表である経営陣が従業員その他のステークホルダーたちと交渉すれば、前掲の図のDの大部分は株主に帰属し、貧富の格差はさらに拡大する可能性だってありうるのだ。そのことを突いた論説が展開されることがなかったのは、わが国の知的貧困であると思う。 本当はどうすればよいのか。企業ガバナンスを改革して格差是正につなげる、本当にSを実現するためにGを変える。それにはどうすればよいのだろうか。旧西ドイツ流の「共同決定法」はもはや答えにならないと思う。いわゆる資本移動の自由化によって生まれた国家間での資本誘致競争、いわゆる底辺への競争のもとでは、一国だけがそんな法律を作っても無意味だからだ。 筆者が状況を改善するアイデアになりうると思っているのは、株式会社の経営陣ラインアップに、株主利益への奉仕ではなく、自由にEやSのために、社会の持続可能性のためだけに奉仕する役割を付託された取締役を設置する運動を始めることなのだ。それについては場を改めて語りたい』、この提案はまだいささか唐突だ。「場を改めて語りたい」、待ちどおしい。
タグ:「ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす」 東洋経済オンライン (その1)(ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす、ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会、誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い) ESG 確かに「バイデン政権の誕生」は大きな追い風のようだ。 世界のESG投資残高は4000兆円規模に 「大手機関投資家は、今や「環境アクティビスト(物言う株主)」へ変容しつつあるといっても過言ではない」、そこまできたかといささか驚かされた。「石炭火力発電」は日本だけが推進してきたが、ESGの観点から見直しも進みつつある。 「日本で」「脱炭素へ向けた」「流れが本格化して」もらいたいものだ 「ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会」 「ESGに関する資産運用業界のスポークスパーソン的存在」の見解とは興味深そうだ 「投資家は世界をESGの「レンズ」を通して見るようになり、それがビジネスへの資本の流れを変えている」、「投資家はクリーンエネルギーやヘルスケアのようなESGの解決策に資金を投じるようになった」 「バイデン大統領は気候変動対策と環境正義 を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう」、なるほど。 「中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げる」 「日本は2022年にかけてEUタクソノミーの導入状況と欧州の投資家の反応を見たうえで将来、日本国内の投資家のための規則をつくることになるかもしれない」、なるほど。 「一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない」、「投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない」、やはり課題も多そうだ。 「ESGを財務分析の1つの要素と考え、ROEやレバレッジ、資産価格なども踏まえて投資を行えば、ブーム&バストにはつながりにくい」、確かにその通りなのかも知れない。 「自然資本ファンド」のリターンは、農産物や材木、海産物などなのだろうが、誰が管理・栽培するのかにより大きな違いが出てくるので、果たして「ファンド」ビジネスが成り立つのだろうか。 岩村 充 「誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い」 EとSは多くの人が賛同する「目標」だが、Gは目標達成のための「手段」にすぎない。そのGをEやSと同格の目標であるかのように扱うのは、議論のすり替えでありただの政治的アジテーションではないか。 冒頭から岩村氏らしい理論的なパンチだ 株主ガバナンス強化論はなぜ間違いなのか この「コースの定理」に基づいた「図」は、難しいが、かなり高度なことが盛り込まれているようだ。 「何の合意もなく株主ガバナンス論を振りかざして水準Yを選ぶのではなく、従業員との合意の上でZを選んだほうが、株主にとっても従業員にとっても好ましい状態になる」、「問答無用型の株主ガバナンスは、従業員たちと経営陣との交渉あるいは合意形成への努力を無意味化することにより、日本全体に大きな外部不経済をもたらしかねない」、「株主ガバナンス論」を完膚なきまで叩きのめしたのはさすがだ。 同じZでも株主支配か従業員支配かで分配は変わる 「貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、いわゆる総需要の伸び悩みをも通じて国民経済成長の足を引っ張るのである。株主ガバナンス論は、長期的には日本を貧しくしかねないのである」、 「従業員に軸足を置きすぎと批判されるようになった日本的経営こそが、あの「高度経済成長」の理由の一つだったかもしれないという気がしてくるからである。そして似たような話がありそうなのは日本だけではない。重要な意思決定には従業員代表の同意が必要だとする「共同決定法」という法律の下にあった旧西ドイツがそれだ」、こうした経済システムの問題まで「コースの定理」に基づいた図で解き明かすとは、さすがだ。 この提案はまだいささか唐突だ。「場を改めて語りたい」、待ちどおしい。
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政府財政問題(その4)(「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ、日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える) [経済政策]

政府財政問題については、昨年8月17日に取上げた。今日は、(その4)(「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ、日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える)である。

先ずは、昨年12月7日付けPRESIDENT Onlineが掲載した日本総合研究所調査部主席研究員の河村 小百合氏による「「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ」を紹介しよう。なお、リンク先のP3以降は会員限定(登録無料)である。
https://president.jp/articles/-/41077
・『政府は新型コロナで冷え込む経済対策のため財政支出を急拡大させている。このまま財政拡張路線を取りつづけて大丈夫なのか。日本総研の河村小百合主席研究員は「実体経済が悪いにもかかわらず、株式相場が堅調なのは、行き場のない資金が流入しているからだ。MMT理論の影響で危機感が乏しいが、このままでは日本経済は大変なことになる」と指摘する——。(第1回/全3回)』、興味深そうだ。
・『自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない?  2020年春先以降の新型コロナウィルス感染症の拡大によって、経済と社会の両面で大きな打撃を受けたわが国は、4月に第1次、6月に第2次補正予算を立て続けに組み、2020(令和2)年度一般会計の歳出規模を当初予算から60兆円近く積み増した(図表1)。(図表1はリンク先参照) これほど大規模な予算が組まれたことは、リーマン・ショック後にも東日本大震災後にもなく、わが国にとって極めて異例の事態と言える。その原資の大部分は当座、国債の増発によって手当てされており、そのコストを最終的に、国民の誰がいつどのようにして負担するかという議論には未だに着手すらできていない。 そして足許では、2021(令和3)年度の予算編成と並行して、総額15兆円ないしは30兆円規模などと囁かれている令和2020年度の第3次補正予算の検討が進められている状況にある。 もともと世界最悪の財政事情にあったわが国が、コロナ禍でこれほどまでに財政事情が悪化しているにもかかわらず、国全体として危機感にはおよそ乏しいのが現実だろう。その背景には、近年、巷でもてはやされている“MMT(Modern Monetary Theory)理論”の影響があるように思えてならない。 財政運営はインフレ率に基づいて調整すべきとするMMT理論に立脚する論者は、中央銀行を政府と一体のものとして捉え、「政府債務は自国通貨建てで発行する限りデフォルト(債務不履行)することはないため、デフレ時には財政赤字や債務残高等を考慮せずに財政政策を拡張すべき」、「インフレのリスクが大きくならない限り、財政赤字はどこまでも拡大可能」、「仮にインフレが進行した場合にも、中央銀行に頼らない財政政策面等でのインフレ抑制策があり得る」といった主張をすることが多いようだ。しかしながら、このMMT理論には、大きな問題点と落とし穴がある』、「MMT理論」の「大きな問題点と落とし穴」とは何なのだろう。
・『2つに大別される政府の借金の踏み倒し方  まず、MMT理論の大きな問題点は、その「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」という点に関するものだ。 一国の財政運営が行き詰まり、万策尽きた後の最後の手段としては大別して、①外国勢が国債の相当程度を保有している場合に実施される対外債務調整(対外デフォルト)と、②国内の主体が国債の大半を保有している場合に実施される国内債務調整(国内デフォルト)の2通りがある。 ①の対外デフォルトの実態や顛末は、欧州債務危機時の2012年にギリシャの2度にわたる事例等があることもあり、比較的よく知られている。歴史的な事例をみても、それが外国勢に対する“債務の踏み倒し”を含むゆえ、英語で書かれた詳細な資料が、当該国内のみならず外国にも残されていることが多い。 他方、②の国内債務調整とは、もはや外国勢は当該国の国債を保有していないため債務調整の利害関係者とはなり得ず、債務調整の負担のすべてを自国内で、自国民が被らざるを得なくなった場合に行われるものである。これは具体的な手法としては必ずしも内国債の債務不履行(デフォルト)に限られるものではなく、国民に対する極端な増税や、政府が支払いを約束していた歳出を突然カットする等の形で実施されることもある。併せて預金封鎖や通貨交換が実施されることも多い。 これらはまさに「自国通貨建て政府債務のデフォルト事例」に相当し、歴史的には相当な件数が存在するにもかかわらず、各国ともそうした不都合かつ不名誉な事実は対外的に秘匿したがる傾向があるのが現実のようだ。 資料が残されているとしても国内で、自国語で書かれたものに限られ、外国勢には読解し切れない場合も多く、対外的には、詳細があまり明らかにされていないことも多い。米国の学者を中心とするMMT論者が「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」と主張する背景にはこうした事情も影響しているものとみられる』、「MMT論者」がよく調べもせずに「「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」と主張」したとは、驚くべき不誠実さだ。
・『国民の財産に課税して財政の穴を埋めた終戦直後の日本  第2次世界大戦の敗戦国であったドイツおよびオーストリア、そしてわが国における財政破綻は、まさにこうした国内債務調整の典型例であった(※1)。わが国においては1945年8月の終戦後、戦費で急膨張していた財政運営は完全に行き詰まり(図表2)、翌46年2月にまず、預金封鎖が、国民にとっては突然の形で実施され、財政資金の大幅な不足を埋めるべく、国民の課税資産が先に差し押さえられた。 ((図表2)戦後直後の混乱期すら上回るわが国の債務残高比率は(リンク先参照) 同時に新円切り替えも実施され、いわゆる“タンス預金”による抜け道も完全にふさがれた。そして半年以上が経過した同年11月、政府は国民から幅広く「財産税」を徴収することを決定し、その支払いには封鎖預金も充当された。 簡単に言えば、預金を引き出させなくして国民の資産を把握するとともに差し押さえ、新円しか使えなくなることでお金を自分で保管(タンス預金)しておくことを封じたうえで、平常時なら実施しない預金等の幅広い「財産」に課税したのである。 (※1)その詳細は拙論「財政再建にどう取り組むか-国内外の重債務国の歴史的経験を踏まえたわが国財政の立ち位置と今後の課題-」『JRIレビュー』Vol.8、No.9、2013年8月を参照)  さらに国は、戦争遂行目的で軍が調達した物品等にかかる戦時補償請求権を有していた企業や国民に対して、同額(100%)の「戦時補償特別税」を課す形で戦時補償の支払いを打ち切った。さらには、敗戦まで日銀が多額の国債を引き受けていたゆえ、当時はハイパーインフレも進行しており、これらがすべて相まって、敗戦の痛手を被っていた国民に、さらなる重い負担を強いることになったのである。 当時の政府は、内国債の債務不履行(デフォルト)という手段も選択肢の一つには挙がっていたものの、多額の国債を保有していた金融機関の連鎖的な破綻につながることを恐れ、実際にはこのやり方を選択することはせず、こうした数々の手荒なやり方で、国民の資産を破綻した財政の穴埋めに無理やり充当した。 確かに当時、他になす術はなかったと考えられ、同様の手法はドイツをはじめとする他の国でもとられている。国際的にも、こうした手法による国内債務調整を、財政破綻の1パターンとして理解するのが一般的になっている。 ちなみにわが国の場合、こうした一連の経緯は、当時の財政当局および客観的な第三者である専門家(財政学者)の手による記録(『昭和財政史 終戦から講和まで』シリーズ<東洋経済新報社刊>)が、国民の誰もが読める形で残されているが、米国の学者には読解不能ゆえ、「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」などという主張がまかり通っているものと推察される』、「MMT論者」は英語化された文書以外は読んでないようだ。
・『わずか0.2%の金利引き上げで日銀は逆ざやに  そしてMMT理論にはもう一つ、“危険な落とし穴”がある。極端な財政拡張を容認しながら、政府と中央銀行を一体化して捉え、とりわけ国際間での資金移動が完全に自由な今日の“開放経済”下において、極端な財政拡張に伴い多額の国債を買い入れる中央銀行の先行きの金融政策遂行能力が、いかなる影響を受けることになるのかを一切考慮していないのだ。 主要中銀の中でも突出して資産規模を膨らませ、“事実上の財政ファイナンス”を行っている日銀を例にみてみよう。日銀のバランス・シート(以下BS)は、異次元緩和によって大幅に拡大しているが(図表3)、日銀に民間銀行から預けられた当座預金の大きさは、短期金融市場でいかに巨額の資金が“余り金”となっているかを示す。市場で金利が形成されるのは、市場にお金が余っている参加者と足りない参加者がいて、お金の貸し借りの取引が起こるからだ。 ((図表3)異次元金融緩和で急膨張した日銀のバランスシート(2000年末、2005年末と2020年10月末の比較)はリンク先参照) 市場全体に日銀から供給されている資金量が全体としてちょうど必要なくらいに調節されている世界であれば、中央銀行が少額の公開市場オペを実施して資金を吸収しさえすれば、市場全体としてのお金の不足の度合いは強まり、お金の貸し借りの取引につく金利は上昇する。通常、中央銀行はそうやって、市場金利を上げ下げすべく誘導し、金融政策運営を行っている。 ところが、誰もが巨額の“余り金”を抱えている現在、もはや、量的緩和を実施する前(同図表の一番左)のように、少額の公開市場オペで市場から資金を吸収したところで、市場に“お金が足りない人”は生まれず、市場全体としてのお金の不足の度合いが強まることもなく、中央銀行は短期金利の引き上げ誘導をすることはできない。 日銀も米Fed(連邦準備制度)が行ってきたのと同様、異次元緩和を正常化するプロセスでは、BSの負債サイド(右側)にある当座預金に付利し、超カネ余り状態のなかで市場参加者が細々と行う取引につく金利の下限として機能させることを通じて、短期金利の引き上げ誘導を行うよりほかにない。日銀は、そうした説明を積極的に行ってはいないが、国会での参考人質疑等を通じてそれを認めている。 しかも日銀の場合は、欧米の中央銀行とは異なり、大規模に買い入れた国債はすでに超低金利となった時代以降に発行されたものばかりであるうえ、10年国債より低いクーポンしかつかない中・短期国債も多く買い入れている。そえゆえ、日銀が保有する資産(BSの左側)の加重平均利回りは2020年度上半期決算時点でわずか0.2%にも満たない。つまり日銀は今後、短期金利をわずか0.2%に引き上げるだけで“逆ざや”に陥ることになる』、「わずか0.2%の金利引き上げで日銀は逆ざやに」、深刻な事態だ。
・『“逆ざや”幅の1%拡大で年度あたり5兆円弱の損失  日銀の当座預金の規模がすでに489兆円(2020年10月末)にまで拡大している現在、“逆ざや”の幅が1%ポイント拡大するごとに、日銀は年度あたり5兆円弱の損失を被ることになる。日銀の自己資本が、引当金まで合わせても9.7兆円しかないこと(図表4)、また、金利の引き上げが必要な局面の期間が短く済むという保証はなく、長引く可能性もあることを考えてみれば、この“逆ざや”による負担は日銀にとって相当に重いものとなる。 日銀の資産規模がすでに700兆円近くにまで膨張しているにもかかわらず、自己資本が少額しかないことからすれば、日銀がひとたび“逆ざや”となれば、おそらくほどなく債務超過に転落する可能性が高い。その状態が放置されれば、債務超過幅が数十兆円レベルにまで膨張する可能性も否定できない(※2) 。 過去の国会の質疑でこの点を問われた黒田総裁は、日銀が債務超過に転落する可能性もあることを認めている。中央銀行の債務超過は、国が国民の税金を原資に補填しない限り、埋めることはできない。元来、世界最悪の財政事情にあったわが国において、異次元緩和という“事実上の財政ファイナンス”に手を染めた結果、目下のところは一見、平穏が保たれているように見えても、私たち国民は、さらなる重い負担を負わされる潜在リスクを抱えているのである』、「“逆ざや”幅の1%拡大で年度あたり5兆円弱の損失」、「日銀の自己資本が、引当金まで合わせても9.7兆円」を食い潰すのは必至だ。「異次元緩和という“事実上の財政ファイナンス”に手を染めた結果、目下のところは一見、平穏が保たれているように見えても、私たち国民は、さらなる重い負担を負わされる潜在リスクを抱えているのである」、「異次元緩和」の恐ろしさだ。
・『金利を上げられない中央銀行の帰結  では日銀はもう、金利など上げなければよいではないか、そうすれば債務超過に陥ることもなく、国民の税金で負担しなければならなくなることもないはずだ、と思われるかもしれない。 確かに今のような低成長・低インフレ状態、そして円の外国為替相場も安定している状態が永遠に続くのであればそうかもしれない。しかしながら、現実はそれほど甘くはないだろう。2016年6月の国民投票以降、“Brexit”(英国の欧州連合からの離脱)をめぐる混乱に見舞われた英国の経験は、いかに国内経済が弱く、デフレ懸念が強まっているようななかでも、為替相場の動向次第では、輸入物価の上昇を通じて国内物価もあっさりと上昇に転じ得ることを如実に示した(図表5)。 (英消費者物価上昇率(前年比)の要因別推移(2014~19年)の図表5はリンク先参照) 中央銀行のBSの負債サイド(右側)で当座預金が極端に大きく膨張している(前掲・図表3)のは、日銀に限らず、リーマン・ショック以降大規模な資産買い入れに踏み切った欧米の主要中央銀行に共通する事態だ。巨額の当座預金は、それを中央銀行に預けている民間銀行側からすれば“余り金”であり、今でこそ他に持って行き場がないからと自国の中央銀行に預けているが、今後の経済・金融情勢の展開次第では、いつ何時、民間銀行によって引き出されるかもしれない、という筋合いのものである。(※2)実際、これまでにも、そうした試算が日本経済研究センターや東京経済研究センター等から複数示されている』、確かに「英国の経験は、いかに国内経済が弱く、デフレ懸念が強まっているようななかでも、為替相場の動向次第では、輸入物価の上昇を通じて国内物価もあっさりと上昇に転じ得ることを如実に示した」、その通りだ。
・『物価上昇率が政策金利を大きく上回ったら  仮に物価上昇率が、中央銀行の政策金利(当座預金への付利の水準)を大きく上回るような事態になってしまった場合に何が起こるのか、 単純化のために、価格が比較的大きく変動することが多い地価を例に考えてみよう。例えば当座預金への付利が2%でしかないときに、全国の地価の上昇率が前年比10%を超えるようになってしまったと想定する。民間銀行にはおそらく、不動産業者からの借入れの申し込みが殺到するだろう。地価が年率10%で上昇し続けるなかで、不動産業者が民間銀行から仮に3%の金利で借り入れできるのなら、その資金を元手に土地を仕入れておき、1年後に1割増しの価格で売却できれば、不動産業者としては確実に7%相当のサヤが抜け、儲けることができる。 民間銀行としても、そうした貸出しの申し込みが次々と寄せられるのであれば、余り金を中央銀行の当座預金に2%の金利で預けっぱなしにするのはやめて引き出し、それを3%の金利で不動産業者等に貸し出せばもっと儲けられるので、中央銀行に預けていた当座預金は次々と引き出され、市中向けの貸出しを加速することになるであろう。 このように、その時々の経済・金融情勢に応じて適切な金融政策運営ができなければ、本来、物価の中長期的な安定が使命であるはずの中央銀行が先々のインフレを抑制するどころか、逆に“火に油を注ぐ”事態に陥るのである。 ちなみに先述の英国の事例をもう少し詳しくみると、健全財政志向の極めて強い同国は、金融危機の震源国の一つであったにもかかわらず、国民の負担増も辞さない財政再建策を講じてきていた。そしてBOEも一時は0.75%まで政策金利を問題なく引き上げることができていたがゆえに、“Brexit”の国民投票後も国内からの大規模な資金流出は起こらず、為替や物価も何とかオーバーシュートせずに済んだものとみられる。 わが国の場合、今後、もっとも懸念されるのは外国為替相場の動向だ。何よりもまず、財政事情が世界最悪と極端に悪い。加えて日銀が国債やETF等を古今東西他におよそ例がないほどの規模で買い入れ、恐ろしいまでのリスクを抱え込んでいる。この先、何らかの契機でそうした問題点があらわになれば、円があっという間に“通貨の信認”を失い、大幅な円安が進展して、国内債務調整が差し迫っていることを察知した富裕層や企業による国内からの大規模な資金流出が発生しかねない』、「円があっという間に“通貨の信認”を失い、大幅な円安が進展して、国内債務調整が差し迫っていることを察知した富裕層や企業による国内からの大規模な資金流出が発生しかねない」、恐ろしいが、大いにありそうなシナリオだ。
・『株式バブルが崩壊すれば日銀債務超過・円安という悪夢  では何がその契機となり得るのか。目下のところ、わが国では、地価が全国レベルで目立って上昇しているわけではなく、消費者物価も足許は伸びを低めており、インフレが懸念される状態にはおよそない。こうしたなか、懸念されるのは、昨今の株式市場の過熱状態であろう。 コロナ危機でわが国をはじめとする実体経済が相当な打撃を受けているのとは裏腹に、各国の株式市況は高値の更新が続くなど足許は堅調そのものだ。そこにはおそらく、上述のように地価を例に説明したのと同様のメカニズムで、各国の中央銀行の供給した過剰流動性が流入し、相場を押し上げているであろうことは想像に難くない。その株式市場が今後いずれかの時点で変調に見舞われた際、もっとも深刻な打撃を被るのは、主要中銀の中で唯一、リスク性資産であるETFを、しかも巨額な規模で買い入れている日銀であろう。 株式市況の調整の幅と期間次第では、日銀が一気に債務超過に転落し、その状態が長引く可能性も否定できない。それが円の信認の喪失につながったとき、おそらく、大幅な円安が進展し、円安に起因する高インフレが加速することになる。その時、日銀はもはや、政策金利を引き上げて自国通貨を防衛し、インフレを制御する能力を持ち合わせていないことがあからさまになるのだ。 河村小百合『中央銀行の危険な賭け 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会)河村小百合『中央銀行の危険な賭け 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会) MMT理論の危険な落とし穴は、財政運営の大幅な拡張に伴うこうした中銀の先行きの金融政策運営の遂行能力の問題に正面から向き合わず、何らの解決策も提示してはいない点にある。それはまた、いわゆる“リフレ派”の考え方に共通する問題点でもある。 そして現在の日銀には、金融政策決定会合において、出口戦略やその局面での国民による財政負担の可能性、先行きの金融政策運営の遂行能力の問題を検討している形跡が一切認められない。対外的な説明もおよそ行われていない。にもかかわらず、黒田総裁はじめ日銀関係者がMMT理論を批判する側に回っていることには強い違和感を禁じ得ない。 海外の主要中央銀行は、金融危機後に大規模な資産買い入れを実施してきたなかで、上記に見たような危険な事態に至るようなことが決してないように、様々な工夫を重ね、大規模な金融緩和からの出口も見据えて極めて慎重な政策運営を行ってきた。その詳細は次回、みることにしたい』、「株式市況の調整の幅と期間次第では、日銀が一気に債務超過に転落し、その状態が長引く可能性も否定できない。それが円の信認の喪失につながったとき、おそらく、大幅な円安が進展し、円安に起因する高インフレが加速することになる。その時、日銀はもはや、政策金利を引き上げて自国通貨を防衛し、インフレを制御する能力を持ち合わせていないことがあからさまになるのだ」、まさに悪夢のシナリオだ。異次元緩和に踏み切った黒田総裁、安部前首相の罪は深い。

次に、本年4月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した投資家・自由人の遠藤 洋氏による「日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/264799
・『(冒頭のPRは省略)『日本の預金封鎖と財産没収の過去  歴史を振り返ると、過去にさまざまな国で幾度となく「預金封鎖」が行われてきました。 昨日まで当たり前のように使えていた銀行口座が使えなくなってしまい、銀行預金などの金融資産の引き出しが制限されてしまうのです。 預金封鎖の目的は、銀行に預金している資産に課税することです。 〔これまでの預金封鎖〕
+1933年3月4日 アメリカ ルーズベルト大統領がバンクホリデー(全国銀行の強制休業)を実施  +1946年2月17日 日本 インフレ防止の金融緊急措置令として、預金の一般引き出しを禁止  
+1990年3月15日 ブラジル 一定額を超える銀行預金の封鎖措置
+2001年12月1日 アルゼンチン 銀行業務の停止措置  
+2002年7月30日 ウルグアイ 銀行業務の停止措置  
+2013年3月16日 キプロス 預金への課税処置のため預金封鎖・ネット上の資金移動の制限
 あまり知られていないかもしれませんが、日本でも1946年に預金封鎖が起きているのです。 1946年2月16日夕刻に発令された「金融緊急措置令」とともに、国民は「国家財政の敗戦」を知らされたといいます。 強烈なインフレによって市中に出回った過剰なお金を吸収する「預金封鎖」という荒治療の始まりでした。 2月17日以降、預金の引き出しを制限し、10円以上の日本銀行券(旧円)は3月2日で無効となり、それまでに使うか預金するしか選択肢はなくなりました。 3月3日からは新しく発行した日本銀行券(新円)のみ使用可能となりましたが、1人100円を上限に旧円と新円を1対1で交換する措置もとられました。 生活防衛のため、月給500円までは新円で支給するものの、それ以上は封鎖された預金に振り込まれました。 大卒の初任給が400~500円だった時代、封鎖預金から引き出せるのは、1ヵ月に1人100円(世帯主は300円)までに制限されたのです。 さらに3月3日を基準に預金など金融資産に関する調査を行って、10万円を超える財産に対して、金額に応じて税率25%から最高税率90%の財産税を課しました。 このように、極めて一方的な預金封鎖と事実上の資産没収が、日本政府によって行われた過去があることは知っておくべきです』、「日本」の場合、こうした各種措置の他にも、狂乱インフレが資産価値を大幅に減価させた。
・『最悪の事態を想定して自分の財産を守る  これは戦後の昔話というわけではなく、預金封鎖のリスクは、財政赤字が膨らむ現代の日本でも決して無視できないことなのです。 日本政府の借金である国債の発行残高は約900兆円、地方地自体の借金である地方債の発行残高は約200兆円と、合計約1100兆円にも達します。 新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急財政出動が、国の財政に追い打ちをかけ、借金がどんどん膨れ上がっています。 日本政府は財政赤字を解消する最終手段として、「預金封鎖=事実上の財産没収」というカードを持っています。 さらに政府は、私たちの税金を使って日本株を買い込んでいます。 もし株価が暴落して大損したり、国の借金が返せなくなったら、最終的には私たち国民に、そのツケが回ってくることになります。 ある日突然やってくるかもしれない預金封鎖から自分の資産を守るためには、日本という国以外に、米国やEU諸国へ投資先(資産)を分散させたり、仮想通貨のような特定の国に依存しない次世代の通貨を持つことかも有効でしょう。 2013年のキプロスでの預金封鎖では、仮想通貨で資産を持っていた人たちは没収を免れたといいます。 いろいろと不安を煽るような話になりましたが、これからの日本では自分の頭でしっかりと考え、資産を守っていく必要があるのです。(P3はPRのため紹介省略)』、「これからの日本では自分の頭でしっかりと考え、資産を守っていく必要がある」、同感だが、私自身はまだ殆どできてないのが実情である。
タグ:政府財政問題 (その4)(「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ、日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える) PRESIDENT ONLINE 河村 小百合 「「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ」 「MMT理論」の「大きな問題点と落とし穴」とは何なのだろう 「MMT論者」がよく調べもせずに「「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」と主張」したとは、驚くべき不誠実さだ。 「MMT論者」は英語化された文書以外は読んでないようだ。 「わずか0.2%の金利引き上げで日銀は逆ざやに」、深刻な事態だ。 「日銀の自己資本が、引当金まで合わせても9.7兆円」を食い潰すのは必至だ。「異次元緩和という“事実上の財政ファイナンス”に手を染めた結果、目下のところは一見、平穏が保たれているように見えても、私たち国民は、さらなる重い負担を負わされる潜在リスクを抱えているのである」、「異次元緩和」の恐ろしさだ。 確かに「英国の経験は、いかに国内経済が弱く、デフレ懸念が強まっているようななかでも、為替相場の動向次第では、輸入物価の上昇を通じて国内物価もあっさりと上昇に転じ得ることを如実に示した」、その通りだ 「円があっという間に“通貨の信認”を失い、大幅な円安が進展して、国内債務調整が差し迫っていることを察知した富裕層や企業による国内からの大規模な資金流出が発生しかねない」、恐ろしいが、大いにありそうなシナリオだ 「株式市況の調整の幅と期間次第では、日銀が一気に債務超過に転落し、その状態が長引く可能性も否定できない。それが円の信認の喪失につながったとき、おそらく、大幅な円安が進展し、円安に起因する高インフレが加速することになる。その時、日銀はもはや、政策金利を引き上げて自国通貨を防衛し、インフレを制御する能力を持ち合わせていないことがあからさまになるのだ」、まさに悪夢のシナリオだ。異次元緩和に踏み切った黒田総裁、安部前首相の罪は深い。 ダイヤモンド・オンライン 遠藤 洋 「日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える」 これまでの預金封鎖 「日本」の場合、こうした各種措置の他にも、狂乱インフレが資産価値を大幅に減価させた 「これからの日本では自分の頭でしっかりと考え、資産を守っていく必要がある」、同感だが、私自身はまだ殆どできてないのが実情である
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SNS(ソーシャルメディア)(その9)(フェイスブックを使うほど「孤独感」が増す訳 私たちは人生の数年をFB利用に費やしている、トランプのSNSアカウント停止に アメリカ国内で異論が出ない理由、クラブハウス誕生前からあった音声SNS「ダベル」 日本人開発者はどう戦うか) [メディア]

SNS(ソーシャルメディア)については、昨年12月23日に取上げた。今日は、(その9)(フェイスブックを使うほど「孤独感」が増す訳 私たちは人生の数年をFB利用に費やしている、トランプのSNSアカウント停止に アメリカ国内で異論が出ない理由、クラブハウス誕生前からあった音声SNS「ダベル」 日本人開発者はどう戦うか)である。なお、今回からタイトルにSNSを入れた。

先ずは、本年1月8日付け東洋経済オンラインが掲載した精神科医のアンデシュ・ハンセン氏による「フェイスブックを使うほど「孤独感」が増す訳 私たちは人生の数年をFB利用に費やしている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/394424
・『フェイスブックの登場は、私たちの生活を大きく一変させました。便利で快適な世の中になった一方、フェイスブックの利用で心を病んでしまう人たちもいます。精神科医のアンデシュ・ハンセン氏が上梓した『スマホ脳』を一部抜粋・再構成し、SNSが心理面に与える影響を紐解きます。 2004年2月、当時19歳のマーク・ザッカーバーグは、インターネットを使った社交(ソーシャル)ネットワーク「ザ・フェイスブック」を、ハーバード大学のクラスメートのために立ち上げた。 間もなく大勢の学生が参加するようになり、別の大学の学生たち、さらには一般にまで開かれるようになった。世間の関心は尽きることがなく、14年後、名前から「ザ」を外したフェイスブックの総ユーザー数は20億人を超えている。 地球上の人間の約3人に1人がフェイスブック上にいる。全大陸のほぼすべての国のあらゆる世代が、みんなフェイスブックを使っているのだ。そして私たちはフェイスブックをよく使う。 平均すると、写真を眺めたり、更新された情報を読んでシェアしたり、デジタルな親指を集めたりすることに1日30分以上もかけている。同じだけの時間を今後も費やすなら、現在の20歳が80歳になる頃には、人生の5年間をSNSに費やす計算になり、そのうちの3年近くがフェイスブックに充てられる』、SNSに「平均すると」「1日30分以上もかけている」、「現在の20歳が80歳になる頃には、人生の5年間をSNSに費やす計算」、とはやはり多いようだ。
・『私たちは自分のことを話したい  20億人もの人が毎日半時間以上使う製品──これまでにそんな成功を収めた企業はない。マーク・ザッカーバーグは、「自分の周囲の人のことを知っておきたい」という人間の欲求をネットワーク化することに成功した。 しかし、成功の秘訣はそれだけでは終わらない。常に周囲のことを知っておきたいという以外に、もうひとつフェイスブックを成功に導いたことがある。人間に根差す「自分のことを話したい」という欲求だ。 自分のことを話しているとき、脳の中では何が起きているのだろうか。ある研究グループがそれに答えるべく、被験者を集め、自分のことを話しているときの脳の状態を調べた。 スキーについてどう思うかと訊かれ、被験者は例えば「スキーは最高だよ」と言う。それから、他の人がスキーについてどう思っているかも言わされる。 自分のことを話しているときのほうが、他人の話をしているときに比べて、被験者の脳の複数箇所で活動が活発になっていた。特に前頭葉の一部、目の奥に位置する内側前頭前皮質(medial prefrontal cortex)で。ここは主観的な経験にとって大事な領域なので、驚くことではない。しかし、もう1つ別の箇所でも活動が活発になっていた。 俗に報酬中枢と呼ばれる側坐核(nucleus accumbens)だ。セックス、食事、人との交流に反応する領域が、私たちが大好きな話題──つまり自分自身のことを話しているときにも活性化するのだ。 つまり人間は先天的に、自分のことを話すと報酬をもらえるようになっている。なぜだろうか。それは、周りの人との絆を強め、他者と協力して何かをする可能性を高めるためだ。しかも、周りが自分の振舞いをどう思っているかを知るための良い機会にもなる。 自分の発言に対する他者の反応を見れば、自分の行動を改善することができる。この先天的な報酬のせいで、発話として私たちの口から出てくる言葉の半分近くが、主観的な経験に基づいた内容になる。 人類の進化の期間のほとんど、聴衆は1人~数人程度だった。現在はSNSのおかげで、思いもよらない可能性を与えられた。数百人から数千人に自分のことを語れるのだ。ただ、たいていの人は自分のことを話すのに夢中だとは言っても、どれくらい夢中かということになると、当然個人差がある』、「人間は先天的に、自分のことを話すと報酬をもらえるようになっている・・・自分の発言に対する他者の反応を見れば、自分の行動を改善することができる。この先天的な報酬」、なるほど。「人類の進化の期間のほとんど、聴衆は1人~数人程度だった。現在はSNSのおかげで、思いもよらない可能性を与えられた:、確かに影響力は潜在的には大きくなったようだ。
・『人間は本当にFBで社交的になったのか?  先ほどの、自分と他人のことを話す実験では、被験者の脳では報酬中枢の活動が確かに全員活発になっていたが、その程度には違いがあった。興味深いことに、いちばん活発になったのはフェイスブックをよく使っている人たちだった。自分のことを話して賞賛され、報酬中枢が活性化するほど、SNSでも積極的になるのだ。 ボタンひとつで20億人のユーザーと繋がるSNSは、人と連絡を取り合うのに非常に便利な道具だ。でも私たちは本当に、フェイスブックなどのSNSによって社交的になったのだろうか。そういうわけでもないらしい。 2000人近くのアメリカ人を調査したところ、SNSを熱心に利用している人たちのほうが孤独を感じていることがわかった。この人たちが実際に孤独かどうかは別問題だ。おわかりだろうが、孤独というのは、友達やチャット、着信の数で数値化できるものではない。体感するものだ。そしてまさに、彼らは孤独を体感しているようなのだ。 私たちは人と会うと、それがインターネット上にしても現実(リアル)にしても、気持ちに影響が出る。5000人以上を対象にした実験では、身体の健康状態から人生の質、精神状態、時間の使い方まで様々な質問に答えてもらった。 そこにはフェイスブックをどれくらい使うかという質問も含まれていた。その結果、本当の人間関係に時間を使うほど、つまり「現実(リアル)に」人と会う人ほど幸福感が増していた。 一方で、フェイスブックに時間を使うほど幸福感が減っていた。「私たちはSNSによって、自分は社交的だ、意義深い社交をしていると思いがちだ。しかしそれは現実の社交の代わりにはならない」研究者たちはそう結論づけている。 だがなぜ孤独になり落ち込むのだろうか。パソコンの前に座っているせいで、友人に会う時間がなくなるからだろうか。別の可能性としては、皆がどれほど幸せかという情報を大量に浴びせかけられて、自分は損をしている、孤独な人間だと感じてしまうことだ』、「フェイスブックに時間を使うほど幸福感が減っていた。「私たちはSNSによって、自分は社交的だ、意義深い社交をしていると思いがちだ。しかしそれは現実の社交の代わりにはならない」、やはり「本当の人間関係」には及ばないようだ。
・『群れのボスはセロトニンの量が多い  SNSが幸福感に与える影響を分析するとき、ヒエラルキーの中でのその人の位置は重要な要因だ。その仕組みを理解するために、また別の脳の伝達物質について見ていこう。ドーパミンのように私たちの気分に影響を与える伝達物質、セロトニンだ。 セロトニンはこれまで、心の平安、バランス、精神力に関わるとされてきた。気分に影響するだけでなく、集団の中での地位にも影響するようだ。サバンナザルの群れを複数調査したところ、群れのボスはセロトニン量が多く、支配的でない個体と比べるとおよそ2倍もあった。ボスが自分の社会的地位の高さを認識していることの表れだろう。つまりボスザルは自分に強い自信があるのだ。 セロトニンは人間にも同じような影響を与えているようだ。アメリカの学生寮に住む大学生を調査したところ、長く寮に住むリーダー的存在の学生は、新顔の学生に比べてセロトニンの量が多かった。ちょっとしたジョークで、教授と研究助手らのセロトニン量も測定してみた(脳を測定するのは難しいので、血中量を測定)。その結果は?もちろん、教授のセロトニン量がいちばん多かった。) 私が子供の頃は、自分を比べる相手はクラスメートくらいだった。憧れの存在といえば、手の届かない怪しげなロックスターくらいで。今の子供や若者は、クラスメートがアップする写真に連続砲撃を受けるだけではない。インスタグラマーが完璧に修正してアップした画像も見せられる。 そのせいで、「よい人生とはこうあるべきだ」という基準が手の届かない位置に設定されてしまい、その結果、自分は最下層にいると感じる。 私が育った80年代よりもっと前に時間を巻き戻すと、比較対象はさらに変わる。人間の祖先も部族内で競い合ってはいたが、ライバルはせいぜい20~30人程度だった。それ以外の人は歳を取り過ぎているか若過ぎた。 一方で、現在の私たちは何百万人もの相手と張り合っている。何をしても、自分より上手だったり、賢かったり、かっこよかったり、リッチだったり、より成功していたりする人がいる』、「人間の祖先も部族内で競い合ってはいたが、ライバルはせいぜい20~30人程度だった・・・現在の私たちは何百万人もの相手と張り合っている」、SNSで世界が広がったことのマイナス面だ。
・『常に周りと比較してしまう  SNSを通じて常に周りと比較することが、自信を無くさせているのではないか。まさにそうなのだ。フェイスブックとツイッターのユーザーの3分の2が「自分なんかダメだ」と感じている。何をやってもダメだ──。だって、自分より賢い人や成功している人がいるという情報を常に差し出されるのだから。特に、見かけは。 10代を含む若者1500人を対象にした調査では、7割が「インスタグラムのせいで自分の容姿に対するイメージが悪くなった」と感じている。 20代が対象の別の調査では、半数近くが「SNSのせいで自分は魅力的ではないと感じるようになった」と答えている。同じことが10代にも当てはまる。あるアンケートでは、12~16歳の回答者の半数近くが「SNSを利用したあと、自分の容姿に不満を感じる」という。男子に比べ、女子の方がさらに自信が揺らぐようだ。 ヒエラルキーにおける地位が精神状態に影響するなら、この接続(コネクト)された新しい世界──あらゆる次元で常にお互いを比べ合っている世界が、私たちの精神に影響を及ぼすのはおかしなことではないのだ』、「若者1500人を対象にした調査では、7割が「インスタグラムのせいで自分の容姿に対するイメージが悪くなった」と感じている」、「常に周りと比較してしまう」マイナス面は無視できないようだ。

次に、1月14日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「トランプのSNSアカウント停止に、アメリカ国内で異論が出ない理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2021/01/sns_1.php
・『<トランプ派の暴動は首都ワシントンだけでなく、全米各州の「差し迫った」危機となっている> 先週6日に発生した、米連邦議会の議事堂に暴徒が乱入した事件では、トランプ大統領に対する連邦下院の弾劾決議が可決されました。議会への「進軍」を扇動したことが「内乱扇動罪」であるとして、民主党議員の全員に加えて共和党議員からも10人の賛成が出た結果です。 弾劾案は上院に送られ、上院は最高裁判所長官を裁判長とする弾劾裁判所を開くことになりますが、現時点では早い時点での審議が行われるかどうかは不透明です。また上院(弾劾裁判所)での有罪の評決には100議席中の67票の賛成が必要ですが、共和党議員17人の賛成を得る見通しは立っていません。 現時点では、弾劾裁判の再開は「バイデン新政権が軌道に乗った後」に、「過去の大統領の犯罪を審理して、有罪にして将来の立候補資格を剥奪するかを決する」という可能性が取り沙汰されています。その一方で、20日の新大統領就任を前にトランプ派による深刻な暴力の兆候が出ているので、緊急避難的に大統領の権力を1日でも早く停止する必要が出た場合には共和党も審議に応じるかもしれません。 現時点でのアメリカの政局は、とにかく「今ここにある危機」であるトランプ派の暴力を、いかにして押さえ込むかが焦点となっています。一部には、17日の日曜日に「武装総決起」が行われるという情報もあり、20日に就任式が行われる首都ワシントンだけでなく、全国各州の州政府庁舎は厳戒態勢となっています。 トランプ個人に対する一連の「SNSアカウント停止」の措置に関しては、このように切迫した状況が背景にあります』、「トランプ」前「大統領」はフロリダの別荘に移って、次期大統領選挙を狙っているようだ。
・『「穏健」メッセージはスルーされる  2017年の就任以来、トランプは白人至上主義者のテロへの賛否など、自分の立ち位置を問われる事態においては、プロンプターを使って原稿を読み上げる演説では「建前」を、そしてツイッターなどのSNSでは「ホンネ」をというように、メッセージ発信を使い分けてきました。 その結果として、ツイッターのメッセージについては、全国の過激なトランプ派が「真に受けて」直接行動に走ってしまう一方で、テレビ会見などで「穏健な」メッセージを喋っても、「あれは建前を言わされているだけ」だとして「スルー」してしまうという傾向が見えています。 そんななかで、この1月17日、そして20日に向かって、トランプが何らかのメッセージを発信すると「どんな些細な表現であっても、暴力を誘発する」可能性は否定できない状況となっています。ですから、SNSを運営する各社は、切迫した暴力の可能性を避けるために、「緊急避難的に」トランプのSNSを停止する措置に出たのです。 例えばですが、すでにペンス副大統領の議事進行により、上下両院が憲法の規定に基づいて「バイデン当選」を承認していますが、それにもかかわらず、仮にトランプが「選挙は盗まれた。奪われた政権を奪還せよ」というツイートをしたとします。1月6日以前であれば、一方的に「もう一つの真実」を語っているだけという評価も可能でした。 ですが、こうした表現が暴力を誘発することが証明された現状では、仮にこうしたツイートがされた場合、他に手段がないなかで「暴力による新大統領就任の妨害」を扇動していると判断せざるを得ないわけです。それは、「政権を奪還せよ」という言葉に刺激されて、武装蜂起するようなグループが全国に存在することが証明されたからです。 このSNSのアカウント停止という措置については、民間企業による言論の自由の否定だという意見が、アメリカ国外では議論されているようです。ですが、この点に関しては、アメリカでは多数意見としては大きな異論は出ていません。その理由は4点指摘できます』、どういう理由なのだろう。
・『民間主導の危機管理  1点目は、ここまでお話してきたような、切迫した危険を回避するという緊急避難的な措置という意味合いです。 2点目は、この種の暴力誘発ツイートを国家権力によって禁止する道を残すと、それこそ言論の自由を国家が規制することになります。民間が自己規制することは、国家による言論統制を防止するという意味合いもあると思われます。 3点目は、国家による統制を懸念する以前に、規制すべき対象が大統領職にあり、現時点では規制する権限を有しているというパラドックスの中では、民間主導で危機管理をするしかないという状況があります。 4点目に、アメリカ社会の慣行として、社会的な広がりをもった紛争についても、民事の枠組みで処理するという伝統があります。例えば、60年代末から大きな問題となった産業公害については、国の規制と同時に、個々のケースについては民事裁判で処理してきています。 もちろん問題はあります。確かにGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)やツイッター社など巨大化したテック企業が、文化や政治に関する事実上の規制を行えるというのは、弊害も多くあるでしょう。ですが、今回の判断については、何よりも緊急避難措置として、しかし徹底した対応として取られたものだということで、アメリカでは理解されているのです』、特に「2点目」の「民間が自己規制することは、国家による言論統制を防止するという意味合いもある」、というのは絶妙なやり方だ。

第三に、2月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したダベルCEOの 井口尊仁氏による「クラブハウス誕生前からあった音声SNS「ダベル」、日本人開発者はどう戦うか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263520
・『日本で爆発的にユーザーを増やしているクラブハウス(Clubhouse)だが、クラブハウスが生まれるおよそ1年前から、私は声のソーシャルアプリ「ダベル」を公開していた。アプリの機能はほぼ同じ「クラブハウス」と「ダベル」だが、どう対抗していくのか。そして、今の音声ビジネス業界全体が抱える課題と今後の展望を伝えたい』、興味深そうだ。
・『ダベル開発の動機は「とにかく寂しいから誰かとしゃべりたい!」  私はかつて2009年に一般公開したAR(拡張現実)アプリ「セカイカメラ」や、2013年のウェアラブル機器「Telepathy One」と言う呼称の眼鏡型コンピューターなどを世に送り出してきた。連続起業家としてグローバル市場で戦い、何度もGAFAとはぶつかってきたことがある。 そして、今、オーディオソーシャルの世界市場でクラブハウスが爆発的な人気となっているが、クラブハウスがローンチする約1年前の2019年1月に「ダベル(Dabel)」を公開していた。機能はほぼ同じで、声のソーシャルアプリだ。 当初から多人数で同時にライブで雑談することができるアプリとしてデビューしており、その後アメリカ市場で、特に視覚障害者のユーザーたちから熱烈に支持され普及していった。 日本では2020年6月頃、日本語化と日本市場での本格的普及が始まった。今ではウイークリーで1万人ほどが日々雑談を楽しむ、本格的な声のソーシャルアプリとして世界市場シェアの一角を担っている。 とは言え、2020年3月に創業してから間もなく100億円の時価総額となり、先だっては1000億円と言われる時価総額(推定)で100億円前後の資金調達を成功させ、一説には既に200万アクティブユーザーを軽々超えていると言われているクラブハウスに比べるなら、ダベルはまだまだマイナー勢力であり、現状は単なるニッチ製品にすぎない。 だが、今後数兆円規模に成長するだろうと推定されている音声テクノロジーの領域で、しかも最も成長分野と目されている、音声ソーシャルアプリの領域で世界市場にデビューを果たした以上、私もクラブハウスに対抗する何らかの競争戦略を巡らすべきだろう。 そもそも、相変わらず急成長を遂げているクラブハウスの盤石とも言える戦略には、一切死角は無いのだろうか?』、「連続起業家としてグローバル市場で戦い、何度もGAFAとはぶつかってきたことがある」、「ダベル」が「アメリカ市場で、特に視覚障害者のユーザーたちから熱烈に支持され普及していった」、とは大したものだ。「井口氏」は「クラブハウスに対抗する何らかの競争戦略」をどのように打ち出すのだろうか。
・『話す行為そのものに疲れ切ってしまう人はどれだけ話し続けられるのか?  音声ソーシャルのそもそもの宿命として「話す」という行為が無い限り何も起こらない。しかし、インターネットとパソコンの普及によって人が電話を利用する機会は極めて減少し、テキストでメッセージをやり取りするチャット文化はもはや当たり前になった。 だからこそ、クラブハウスの温故知新的な音声対話の新鮮な驚きと感動があったといえる。 だが、その一方「果たして人はずっと話し続けられるのだろうか?」という根本的な課題がある。これはクラブハウスに限らず、全ての音声ソーシャルが抱えている深刻な課題だ。 ひたすら話し続けることを求められるクラブハウスの精神的苦痛をも伴う「労働作業」のような雑談時間の疲労・疲弊は大きな課題と言える。そこで、最近では「Roadtrip」というアプリが登場した。これは、参加メンバーが音楽を聴きながら時々喋るようにしていて、ライブ空間そのものは雑談可能とはいえ、音楽再生を中心に据えることで雑談し続けることの苦痛や疲労感を大幅に軽減しているのだ。 ダベルでもBGMやASMR(人が聴覚への刺激によって感じる心地良い音を指し、咀嚼音などが人気)などを背景音として流しながら雑談を楽しめる機能を開発しているのだが、それはまさにずっとしゃべり続ける大変さ、参加者の疲労度を考えての施策なのだ』、「ひたすら話し続けることを求められるクラブハウスの精神的苦痛をも伴う「労働作業」のような雑談時間の疲労・疲弊」への対策として、「「Roadtrip」というアプリが登場」、そこまでやるのか、と驚かされた。
・『スピーカーとリスナーで分断するか、しないか  クラブハウスの普及は、その招待制と「FOMO」と呼ばれる射幸心をあおる仕組みが存在しているためだと、多くの人たちが指摘している。 「FOMO」とはFear of Missing Momentの省略形(要するに「参加し損ねることへの恐怖心」)だが、例えば、「ライブで交わされているセレブ同士のレアな雑談に参加したい!それを聞き逃したくない!」というような気持ちを生む。初期クラブハウスは、人を惹きつける「FOMO」のメカニズムを見事に利用していて、普及に火を付けたと言える。 だが、多くの人たちが指摘しているように、その「FOMO」のメカニズムは大きな声を持っているスピーカーとリスナーたちの間に解消しがたい人の格差と分断をもたらしかねない。 一方、我々が開発するダベルでは、話者と聞き手の間の分断はほぼ存在しない。 なぜなら少人数で語り合う「グローバルな井戸端会議」として設計開発されているダベルでは、話し手と聞き手の距離が極めて近いのだ。それは放課後の部室とか、オフィスでは給湯室とかたばこ部屋のような解放区なのだ。 セミナー会場やカンファレンスホールにいるビジネス感覚のクラブハウスと、ファミレスやカフェ、それこそ銭湯でくつろいでいるようなアットホーム感覚のダベル。機能セットは一見よく似通っていても滞在中の感覚は相当違う』、「クラブハウス」の「FOMO」は一時的効果だけで、持続性はなさそうだ。私としては「ダベル」の方に魅力を感じる。
・『実名性の息苦しさに耐えきれず、沈黙するほかない人たち   クラブハウスは基本的に実名性を奨励している。だからこそ、SMSで招待するという仕組みをとり、アプリ利用直後から、現実社会のつながりに則った、ユーザーがユーザーを育成する(同僚同士とか先輩後輩とか上司部下のような関係性を生かした)といった導線が綿密に張り巡らされている。そして、そのことが驚異的な最初のユーザー体験に結実している。 例えば、あなたが会社の先輩のAさんに招待された場合、アプリに参加する際にその参加の通知がAさんに届くだけでなく、ほぼ自動的に、Aさんと最初の雑談ができるルームまでが作成されるのだ。この初期導入の仕組みはクラブハウスの醍醐味でもある。 ただ、だからこそ声という人の人格をそのまま体現しているとも言える音声ソーシャルネットでは、実名性の前提はあまりに生々しくて、重すぎると言えなくもない。 例えば、会議でも発言の際に目上・目下や上司・部下などの関係性を強く意識せざるを得ない日本のビジネス社会では、それは特に重い行動の足かせになるとも言えるだろう。 気軽に人の悪口を言うようなことは現実社会でも当然災いを呼びやすいが、クラブハウスではそのインパクトはより広まりやすいし、強い。どこで誰が聞いているのかということが分かりにくいので、思わぬ失言で予想できないようなトラブルが起こるかもしれない。現実にアメリカでは、ニューヨークタイムス記者も巻き込んだ一連のスキャンダルにまで発展してしまったことが、2020年にニュースになっている(参照)。 一方、ダベルは実名制を採用せず、匿名でも使い続けられる。要するに音声ソーシャルの空間内だけで別人格を演じることも、本人がやろうとすれば出来る。その自由さや開放的な気分はダベルの持ち味の一つだと考えている』、「クラブハウス」では「実名性の息苦しさに耐えきれず、沈黙するほかない人たち」がいると問題視しているが、私はネット空間での「匿名性」に疑問を持っているので、この点では「クラブハウス」の方を支持する 。
・『クラブハウス以前の時代に戻りたいと強く願っている人たち  あれだけ電話を嫌がっていた人たちが、一度クラブハウスにハマると改めて人と生声で交流できる楽しさにどっぷり浸かっている。しかし、それも度を越してしまうと健康を損ねかねない程の粘着性がある。 海外の記事を読んでも、その利用時間(アプリ開発業界ではエンゲージメントという言い方をする)はかなり長い。クラブハウスもダベルも、平均利用時間は、1日につき50分から2時間程度だ。通常のSNS環境ではせいぜい平均1日あたり10〜40分程度が当たり前だったことを考えると、その時間の溶け方は尋常ではない。 私はクラブハウス内で「クラブハウス以前の時代に戻りたい」という発言を何度か聞いているのだが、それはうなずける。クラブハウスの時間の溶け方は凄いからだ。 音声ソーシャルメディアでの滞在時間の長さとどう向かい合うのかは、クラブハウスにとっても、ダベルにとっても今後ますます大きな課題になるだろう』、「クラブハウスもダベルも、平均利用時間は、1日につき50分から2時間程度だ。通常のSNS環境ではせいぜい平均1日あたり10〜40分程度が当たり前」、それだけ魅力がある一方で、「時間の溶け方は尋常ではない」のも問題だ。
・『新しい人間関係を作り出せる、声の時代は始まったばかり  とはいえ、今回クラブハウスが拓いた、人と声で交流できるセレンディピティの世界を多くの人は否定できないし、そこから完全に抜け出すは、その快楽と中毒性が高いことを認めざるを得ないだろう。 コロナ時代だからこそ感じる、人の声の温もりの再発見とも言えるかもしれない。 ダベルは人の孤独を癒やし、決して一人でポツンと生きている訳ではないことを感じ取れるアプリであり続けたいし、それをよりスムーズに楽しめる体験価値こそ提供したいと思って開発している。 そろそろ大きく変化を遂げた新しいバージョン(通称「ダベル V2」)もβテスト開始を控えて開発も佳境を迎えつつある。 クラブハウスのセレブリティー中心のカンファレンスホール空間に対し、ダベルは日本の茶の湯や健康ランドのような世界観をどれだけグローバルに届けられるのか…ということに挑戦している。その可否は2021年に改めて試されるだろう。 「とにかく寂しいから、誰かとしゃべりたい!」という自分自身の動機付けから始まったダベルは、その存在意義として、寂しさの解消にひたすらに向き合い続ける。それは結果として、マウント合戦や実名制プレッシャーにさらされやすいクラブハウスとは、一線を画した、独自の存在価値をやがて発揮すると確信している』、「「ダベル V2」もβテスト開始を控えて開発も佳境を迎えつつある」、どのような反響があるか、楽しみだ。
タグ:SNS (ソーシャルメディア) (その9)(フェイスブックを使うほど「孤独感」が増す訳 私たちは人生の数年をFB利用に費やしている、トランプのSNSアカウント停止に アメリカ国内で異論が出ない理由、クラブハウス誕生前からあった音声SNS「ダベル」 日本人開発者はどう戦うか) 東洋経済オンライン アンデシュ・ハンセン 「フェイスブックを使うほど「孤独感」が増す訳 私たちは人生の数年をFB利用に費やしている」 SNSに「平均すると」「1日30分以上もかけている」、「現在の20歳が80歳になる頃には、人生の5年間をSNSに費やす計算」、とはやはり多いようだ 「人間は先天的に、自分のことを話すと報酬をもらえるようになっている 自分の発言に対する他者の反応を見れば、自分の行動を改善することができる。この先天的な報酬」、なるほど 「人類の進化の期間のほとんど、聴衆は1人~数人程度だった。現在はSNSのおかげで、思いもよらない可能性を与えられた:、確かに影響力は潜在的には大きくなったようだ 「フェイスブックに時間を使うほど幸福感が減っていた。「私たちはSNSによって、自分は社交的だ、意義深い社交をしていると思いがちだ。しかしそれは現実の社交の代わりにはならない」、やはり「本当の人間関係」には及ばないようだ 「人間の祖先も部族内で競い合ってはいたが、ライバルはせいぜい20~30人程度だった 現在の私たちは何百万人もの相手と張り合っている」、SNSで世界が広がったことのマイナス面だ 「若者1500人を対象にした調査では、7割が「インスタグラムのせいで自分の容姿に対するイメージが悪くなった」と感じている」、「常に周りと比較してしまう」マイナス面は無視できないようだ Newsweek日本版 冷泉彰彦 「トランプのSNSアカウント停止に、アメリカ国内で異論が出ない理由」 「トランプ」前「大統領」はフロリダの別荘に移って、次期大統領選挙を狙っているようだ。 特に「2点目」の「民間が自己規制することは、国家による言論統制を防止するという意味合いもある」、というのは絶妙なやり方だ ダイヤモンド・オンライン 井口尊仁 「クラブハウス誕生前からあった音声SNS「ダベル」、日本人開発者はどう戦うか」 「連続起業家としてグローバル市場で戦い、何度もGAFAとはぶつかってきたことがある」 「ダベル」が「アメリカ市場で、特に視覚障害者のユーザーたちから熱烈に支持され普及していった」、とは大したものだ 「井口氏」は「クラブハウスに対抗する何らかの競争戦略」をどのように打ち出すのだろうか 「ひたすら話し続けることを求められるクラブハウスの精神的苦痛をも伴う「労働作業」のような雑談時間の疲労・疲弊」への対策として、「「Roadtrip」というアプリが登場」、そこまでやるのか、と驚かされた 「クラブハウス」の「FOMO」は一時的効果だけで、持続性はなさそうだ。私としては「ダベル」の方に魅力を感じる 「クラブハウス」では「実名性の息苦しさに耐えきれず、沈黙するほかない人たち」がいると問題視しているが、私はネット空間での「匿名性」に疑問を持っているので、この点では「クラブハウス」の方を支持する 「クラブハウスもダベルも、平均利用時間は、1日につき50分から2時間程度だ。通常のSNS環境ではせいぜい平均1日あたり10〜40分程度が当たり前」、それだけ魅力がある一方で、「時間の溶け方は尋常ではない」のも問題だ 「「ダベル V2」もβテスト開始を控えて開発も佳境を迎えつつある」、どのような反響があるか、楽しみだ
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鉄道(その7)(終電繰り上げ 人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない、乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが、世界2大鉄道メーカー 小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も) [産業動向]

鉄道については、2019年11月20日に取上げたままだった。今日は、(その7)(終電繰り上げ 人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない、乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが、世界2大鉄道メーカー 小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も)である。

先ずは、本年1月22日付け東洋経済オンライン「終電繰り上げ、人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/405692
・『新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況を受け、1月7日に東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県に発令された緊急事態宣言。1月13日には栃木や愛知、大阪、福岡など7府県にも対象が広がった。首都圏の鉄道各社は、「夜間の外出自粛」を強く呼びかける国や自治体の要請を受け、1月20日から終電の時刻を繰り上げた。 終電の繰り上げは、夜間の保守作業時間確保などを目的に都市部のJR各線や大手私鉄各社が今春のダイヤ改正から予定している。それだけに、今回の緊急事態宣言に伴う繰り上げは「前倒し」での実施のように見えるが、内容は別物だ。 単に春からの新ダイヤと時刻が違うだけではない。繰り上がった「終電」の後も、電車そのものは走るケースが少なくないのだ』、「国や自治体の要請」に従ったフリをしただけのようだ。
・『基本のダイヤは変えずに対応  今回、首都圏で終電を繰り上げたのは、JR東日本や大手私鉄各社をはじめ、1都3県の計25事業者。今春のダイヤ改正では繰り上げを行わない予定の路線も含まれる。 JR東日本は山手線や中央線快速、京浜東北・根岸線など、首都圏の計11線区で終電時刻を繰り上げた。山手線外回りの池袋―品川間は14分程度、中央線快速の東京―武蔵小金井間は30分程度と、各線でおおむね10~30分早まっている。「要請があった1都3県の路線で、終電時刻が遅い路線を対象にした」とJRの広報担当者は話す。 20日からの終電繰り上げは、基本となるダイヤは変えずに深夜の電車を運休したり、運転区間を短縮したりすることで対応している。例えば、中央線快速の下りは東京駅0時10分発以降の4本を運休し、終電を0時06分発に繰り上げた。池袋発の山手線品川方面行きは0時38分発が最後だったが、同列車を池袋止まりにすることで0時26分発が終電になった。 ただ、運休や運転区間の短縮によって終電時刻は繰り上がるものの、「運休となった部分も『回送』として電車自体は走る」(同社広報)ケースがあるという。「翌朝の列車を走らせるために(本来の終点に)回送しなければならない」ためだ。 私鉄も同様だ。例えば、首都圏の大手私鉄の中でも終電時刻が比較的遅い西武鉄道は、本来の終電を含め深夜帯の電車を運休する形で対応するが、運休となる列車も「基本的には回送として走る」(西武鉄道広報部)。「要請への対応で急を要するため、やむをえずこのような(回送する)形になった」という。 ほかの鉄道も「すべてではないが、現行ダイヤの一部を回送として運用するものがある」(東京メトロ)、「列車によって異なるがそういった(回送する)場合もある」(京王電鉄)など、客を乗せる営業列車としては運休しても、回送として電車を走らせるケースは少なくない』、「客を乗せる営業列車としては運休しても、回送として電車を走らせるケースは少なくない」、無駄に思えるが、「夜間の外出自粛」に寄与していることは確かだ。
・『作業時間確保には効果なし  鉄道のダイヤは乗務員のシフトや車両の運用などさまざまな要素が複雑に関連しており、ダイヤ改正の準備には長期間を要する。一方、今回の終電繰り上げは緊急事態宣言発令による国や自治体の要請を受けて急きょ実施したため、車両などの運用まで変えるのは難しい。運休による終電時刻の前倒しと「運休列車の回送」は、要請に対応するための苦肉の策といえる。 鉄道各社が今春のダイヤ改正で実施する予定の終電繰り上げは、夜間の保線作業や工事の時間確保、現場の労働負荷の軽減などが大きな狙いだ。 だが、今回の繰り上げは「要請を受けた急きょの対応なので、そもそもその点は想定していない」(ある大手私鉄)。終電後に回送電車が走るケースもあり、「作業時間を確保するなどの効果はない」と複数の鉄道会社関係者はいう。 さらに、発表から実施までの期間が約1週間と短かったため、利用客への周知も課題となった。各社は駅へのポスター掲示や車内の案内放送などで告知したが、「JRなどエリアの広い鉄道は相当大変では」(大手私鉄の広報担当者)。今回の終電繰り上げは、負荷軽減どころか「苦労はむしろ増えている」と、ある私鉄社員は漏らす。 今回、国や自治体が終電の繰り上げを要請したのは、深夜の人出を減らし、コロナの蔓延を防ぐことが狙いだ。東京都の小池百合子知事は緊急事態宣言が発令された1月7日の記者会見で、都民に外出自粛などを求めるとともに「人流を抑える具体的な対策」として、鉄道各社に終電時刻の繰り上げなどを要請すると述べた。 だが、深夜の電車はコロナ感染が広まった昨年春以来、大幅に利用が減っている。 とくに減っているのが終電間際の時間帯だ。JR東日本が公開しているデータによると、昨年10月の山手線終電付近(0時台)の利用者は、コロナ禍以前の前年と比較して40%減少。ほかの鉄道も同様で、東急は23時以降に渋谷を発車する電車の混雑率がコロナ禍前と比べて東横線で49%、田園都市線で46%減少している』、「深夜の電車はコロナ感染が広まった昨年春以来、大幅に利用が減っている。とくに減っているのが終電間際の時間帯だ」、こんなにも「利用」が急減したとは初めて知った。
・『感染抑制の効果はあるのか  緊急事態宣言の発令後はさらに減っているとみられる。終電繰り上げを控えた平日、東京駅を0時06分に発車する中央線快速電車に乗ってみると、発車時点で乗客は各車両に3~4人ほど。新宿駅からは乗客が増えるものの、それでも立客の姿はほとんど見られなかった。コロナ禍以前は満員だった0時台の田園都市線下り電車も、渋谷駅発車時点で最も人の多い車両でも1人おきにシートに座れるほどだった。 深夜の人出がすでに激減している中、終電繰り上げが感染拡大防止につながるのかは疑問符が付く。 しかし、鉄道側としては国や自治体の要請を受けないわけにもいかないのが実情だ。ある鉄道関係者は「各社が終電繰り上げのダイヤ改正を予定していたから『前倒し』要請ということになったのだろうが、ダイヤ改正は簡単に前倒しできるものではない」と語る。 緊急事態宣言の期間は2月7日までだが、終電の繰り上げ期間は今のところ「当面の間」だ。迷走するコロナ対策に、ライフラインである鉄道も振り回されてる』、「深夜の人出がすでに激減している中、終電繰り上げが感染拡大防止につながるのかは疑問符が付く」、確かだが、「国や自治体の要請を受けないわけにもいかないのが実情」、大人の対応のようだ。

次に、3月17日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/417127
・『国と欧州大陸を結ぶ国際高速列車ユーロスターが、コロナ禍による移動需要の蒸発で破綻の危機にさらされている。コロナ以前のユーロスターはビジネス需要も観光利用も極めて好調で、平均の乗車率は80%を超えていたが、新型コロナの影響により乗車率が1%まで落ちる大打撃を受けている。 欧州の鉄道会社はコロナ禍で軒並み事業環境が悪化し、救済のための政府支援が積極的に行われた。例えば、英国国内の鉄道各線は一時的に「国有化」される形となったほか、フランス政府は国鉄(SNCF)に対し、コロナ禍による利用減少だけでなくSDGs (持続可能な開発目標)を見越した財政支援を行っている。 その中で、なぜユーロスターが破綻の危機に陥っているのか。それは、運行会社のユーロスター社が会社としては英国の企業であるものの、複数国を結ぶ国際高速列車であることなどから、一筋縄ではいかない事情を抱えているためだ』、「乗車率が1%まで落ちる大打撃」、で「消滅リスク」に瀕しているのに、どういうことだろう。
・『「支援なければ消滅リスク」  コロナ禍以前のユーロスターは、ロンドンとパリ、ブリュッセル、アムステルダムをつなぐ列車を1日当たり片道約50本運行。ロンドン―パリ間は早朝から夕方まで毎時1本程度走っていた。 ところがコロナ感染拡大を受けて各国が厳しいロックダウン措置を取る中、国際間の人の動きが激減。今やロンドン―パリ便1往復と、ロンドン―ブリュッセル―アムステルダム便1往復のみまで減便された。 この状況を受け、ユーロスター社は今年1月下旬、自ら「現状は極めて深刻で、政府からの支援がなければ、ユーロスターは消滅リスクに直面する」と述べ、英政府に対し「航空会社に与えられた政府支援の融資をわれわれにも適用してほしいと改めて求めたい」と窮状を訴えた。 ユーロスターの現状については、フランス国鉄の旅客運行部門SNCF Voyageursのクリストフ・ファニシェ(Christophe Fanichet)最高経営責任者(CEO)も「非常に危機的な状況」だと認めている。しかし目下のところ、英政府の動きは重い。 法人としてのユーロスター社の登記先はロンドンにあり、れっきとした英国企業である。だが、英政府の支援が得られず立ち往生している理由として大きなポイントは2つあると筆者は考えている。 1つは、現状では英国政府や鉄道会社の資本がまったく入っていないことだ。 ここでユーロスター社の資本関係について解説しておこう。会社の設立当初は、列車が乗り入れている3カ国が応分出資しており、その割合はフランス国鉄(SNCF)が55%、英運輸省が出資するロンドン&コンチネンタル鉄道(LCR)が40%、そしてベルギー国鉄(SNCB)が5%となっていた。 ところが2014年、英政府はLCR保有のユーロスター株の民間放出を決めた』、なるほど。
・『英ではフランスの企業扱い?  その結果、英政府の保有分はカナダ・ケベック州の政府系基金が30%、アメリカのインフラ投資ファンドであるヘルメス・インフラストラクチャーが10%をそれぞれ買収。英国が拠点でありながらも、英国関連の出資者はいなくなってしまった。 英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、「ユーロスター社は、英国においては英国の支援を受けていないフランスの企業と見なされる一方、フランスではフランスの支援を受けていない英国を拠点とする企業と見なされている」と説明。どういう根拠で支援を進めていいかさえも決まっていない状況が見え隠れする。 そしてもう1つは、英国の鉄道として「国内間列車」としての機能を持たないため、そもそも「鉄道フランチャイズ制度」の枠から外れていることだ。英国ではコロナ禍での鉄道事業の苦境を受け、実質的に運営を国有化する救済措置が講じられているが(2020年7月16日付記事「『日本式』がベスト?岐路に立つ英鉄道の民営化」参照)、ユーロスターは国際列車のため、この救済の枠に入らなかった。 英国ではコロナ禍によるロックダウンが合計3回行われたが、最初の実施からまもなく1年が経つ。ユーロスターの需要はそれ以来、「ほぼゼロ」まで収縮してしまった。運輸関係のアナリストの間では、「ユーロスターのキャッシュフローはこの夏まで持たないのではないか」とする声も聞こえてきている。 一方、「政府による救済の必要はない」と訴える英国民も少なくない。彼らの多くは「経営が厳しいのは理解できるが、株主がその責を負うべきだ」と主張する。 しかし、このまま政府支援など新たな動きがなければ、破綻手続きに入るという懸念も生まれてきている。コロナ禍という想定外の問題であるとともに、そもそも公共性の高い交通インフラをこのまま見殺しにするのは正しい道なのだろうか。 目下の最悪のシナリオは、政府支援もなく新たな出資者も出てこないというものだ。通常の破綻処理は投資銀行などが管財人となり、企業や事業の新たな買い手を探すわけだが、それが振るわない場合は資産を現金に換えて清算を進めることとなる。もっとも懸念されるのは、管財人が車両売却を進めてしまい「英国と欧州大陸を結ぶ国際高速列車サービス」が消滅してしまうことだ』、「ユーロスター社は、英国においては英国の支援を受けていないフランスの企業と見なされる一方、フランスではフランスの支援を受けていない英国を拠点とする企業と見なされている」、「ユーロスター」はなんとも難しい立場に追い込まれてしまったようだ。「目下の最悪のシナリオは、政府支援もなく新たな出資者も出てこないというものだ・・・もっとも懸念されるのは、管財人が車両売却を進めてしまい「英国と欧州大陸を結ぶ国際高速列車サービス」が消滅してしまうことだ」、こうした「最悪のシナリオ」も現実味を帯びてきたようだ。
・『最悪シナリオは車両売却  現在ユーロスターで使われている車両は、開業時に導入された「e300」(仏アルストム製11編成)と、ドイツを走る高速列車ICE3と基本設計が同じ「e320」(独シーメンス製17編成)の2タイプがある。e300は20両編成、e320は16両編成と、欧州の高速列車としては長い編成で、全長は両タイプとも約390mだ。 現在の乗車率なら編成両数を減らしてもよさそうだが、車両の構造上の問題だけでなく、ユーロスターはそれができない規程がある。英仏海峡トンネル内部の非常口への避難を前提に編成長が決まっているためだ。 トンネルの非常口は375mごとに設けてあり、編成の長さを非常口の設置間隔以上にすることで、万が一の際、編成中のどこかのドアからより早く非常口にアクセスできることが求められている。このため、需要に応じて編成を短縮するわけにもいかない。 だが、英仏海峡トンネルを通って英国―欧州大陸間を営業運転できる車両は現在、ユーロスター用に使われているものしか存在しないという。関係のない路線に車両が売却されてしまうことは避けたい事態だ。 英国と欧州大陸を結ぶ高速列車がなくなるという事態を避けるため、仮に破綻手続きが始まったとして、管財人は新規出資者を探す際に「英国―欧州大陸間を結ぶ鉄道サービスを提供できることという条件を付けるべき」(英国の鉄道アナリスト)という考え方もある。 現状ではあまり想像したくないオプションではあるが、それでも欧州ではすでに「ユーロスター」の売却先に関する予想があれこれと語られている。 目下有力視されているのはドイツ鉄道(DB)だ。何度となくドイツとロンドンとの直結を求め、さらにICEの試験車両をロンドン・セントパンクラス駅まで乗り入れるなど、さまざまな仕掛けに及んだが、現在まで実現していない。現在のユーロスターの主力車両はドイツ・シーメンス製で、DBにとっては親和性が高い』、確かに「ドイツ鉄道(DB)」は有力な候補になりそうだ。
・『貴重な国際交通をどう維持する?  これは筆者の想像だが、ダークホース的な出資者の候補として香港MTRC(香港鉄路)の名を挙げておきたい。同社は、英国の高速鉄道新線「HS2」の運行オペレーターとしてフランチャイズ獲得に向け、中国の広深鉄路公司とコンソーシアムを組み入札したが、最終候補選出の際に落選した。しかし、MTRCはすでに中国本土から乗り入れる高速鉄道の香港領内での運営、および長年にわたって広州市―九龍半島間を結ぶ直通列車の運行に携わっており、「国際列車」の経験は豊富だ。 ユーロスターの運行がなくなってしまうことは、国際交通インフラ維持の観点から見て由々しき問題だ。それに加え、欧州では環境保護の観点から500~600km程度の移動は航空機でなく列車を利用することが奨励されている。SDGsへの考慮が世界的に叫ばれる中、「島国・イギリス」への鉄道アクセスは残しておくべき貴重な交通インフラのひとつであることは疑いない。 コロナ禍の収束、あるいはワクチン接種の進展など、旅客需要回復までの道のりの予想がつけば、より短期間の融資や支援で延命できる可能性もある。破綻や売却という形での結論は見たくない、というのが大方の意見だ。はたしてどんな格好で生き延びるのだろうか』、「香港MTRC」の場合は、「中国」との関係がネックになる可能性もあろそうだ。「はたしてどんな格好で生き延びるのだろうか」、大いに注目されるところだ。

第三に、3月31日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「世界2大鉄道メーカー、小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/419791
・『アルストムによるボンバルディアの鉄道部門、ボンバルディア・トランスポーテーションの買収は、欧州委員会(EC)の承認を得たことで順調に進み、2021年1月29日に正式に完了した。買収額は5.5億ユーロ(約711億7500万円)で、これは昨年2月に公表されていた5.8~6.2億ユーロよりはるかに低い額となった。 買収が完了したことで、かつて欧州鉄道メーカーのビッグ3としてしのぎを削った2社は同じ会社となり、70か国で約7万5000人の従業員を抱える巨大企業となった』、興味深そうだ。
・『弱みを相互補完  アルストムは今回のボンバルディア買収により、それまでお互いが弱いとされていた地域を相互補完でき、商業的に高いアドバンテージを持つことになったと自信を見せる。アルストムは地元フランス以外に、イタリア、スペイン、インド、東南アジア、ブラジルに拠点を確立しており、一方のボンバルディアは英国、ドイツ、北欧、中国、北米の市場を開拓している。両社が合併したことで、これらの地域すべてに商業的基盤を持つことになった。 両社の合併は、現在世界シェア1位で、近い将来に自分たちの基盤であるヨーロッパや北米市場において脅威となりかねない中国中車(CRRC)への対抗であることはよく知られている。欧州委員会からの承認を得ることができず破談になったものの、2019年に合併寸前まで至ったアルストムとシーメンスの合併話も、裏ではドイツおよびフランス政府の強力なバックアップがあったからこそと言われている。 アルストムとシーメンスの合併が破談となったのは、とりわけ信号システムと高速列車の2つの分野で市場を独占しかねない、という大きな懸念があったためだ。両社はその対応に奔走することとなったが、結局最後まで欧州委員会を納得させるだけの条件を提示することはできず、合併を諦めざるをえなかった。 欧州委員会は域内における市場の寡占を避けるため、今回の合併にもいくつかの注文を付けている。 対等合併だったシーメンスのときとは異なり、今回はアルストムがボンバルディアを買収する吸収合併だったこと、またシーメンスと違い、ボンバルディアは高速列車の技術プラットフォームは保有しているものの、製品としてラインナップはしていないため、高速列車分野における市場寡占化はないと判断されたことは大きかった。 とはいえ、競合する鉄道メーカー同士であれば、同種の製品を保有しているのは自然なことである。当然、それらのうちいくつかの技術は手放さなければならなかった』、今回の合併が認められた背景の1つに、「中国中車(CRRC)への対抗」がありそうだ
・『高速列車技術はどうなる?  では、合併後に手を離れることになったのは何か。 アルストムが基幹製品である高速列車TGVを手放すはずはない。代わりにボンバルディアの高速列車プラットフォーム「ゼフィーロ」の知的財産などは手放さなければならなくなった。 「ゼフィーロ」プラットフォームは、日立製作所のイタリア法人である日立レールS.p.Aによって製造される高速列車「ETR400型」で採用されている。現在はイタリア鉄道がフランスおよびスペイン国内での営業へ向けて追加編成を注文するなど、今も非常に関係が深いことから、日立製作所が譲渡先の筆頭候補になることは間違いないが、現時点では日立側からも特にアナウンスはされていない。 一方で、「ゼフィーロ」プラットフォームは譲渡されることなく廃止という話もある。もし日立がその技術を入手した場合、高速列車市場ではアルストムのライバルとなることから、その可能性も完全には否定できない。そうなると日立は独自の技術でETR400型の後継車種を構築する必要が出てくる。 欧州ではシーメンスと並んで多数の納入実績がある、ボンバルディアの汎用型機関車TRAXXシリーズも残され、今後は「アルストムTRAXXシリーズ」として販売されることになる。一方で、アルストムにも同様の機関車シリーズ「プリマ」がある。欧州ではまったく鳴かず飛ばずであったが、アゼルバイジャンやインド、モロッコなど、他の地域ではそれなりに販売実績があるため、その処遇は気になるところだ。 近郊列車用連接車両のボンバルディア「タレント3」とアルストム「コラディア・ポリヴァレント」は、ともに工場ごと他社へ譲渡することを決定しているが、譲渡先としてチェコのシュコダの名前が浮上している。同社は低床連接式車両の技術を獲得することで、ドイツおよびフランス市場へ本格参入したい意向だ。 とくにアルストム・コラディアに関しては欧州で注目を集める水素燃料車両の技術も含まれており、もし実現すればシュコダは次世代型低公害車両メーカーとして一躍名を馳せることになる。水素燃料車両については、アルストムはすでにフランス国鉄と最初の契約を締結しており、技術と工場が譲渡された場合、シュコダがその契約を引き継ぐことになる。 トラム車両も、両社それぞれが製品を保有していたので、いずれこれらも整理されていくことになるだろうが、現時点では具体的な情報は入ってこない。 ただし、2020年12月15日の段階で117編成の新型車両を供給する契約をボンバルディアと交わしていたベルリン交通局は、3月16日にそのデザインを公表したが、外見からはボンバルディアの製品であるFlexityをベースしているようだ。これが同シリーズの最後の契約となるのか、今後も製造が続けられるのかが注目される』、「譲渡先」候補の「チェコのシュコダ」は、「次世代型低公害車両メーカーとして一躍名を馳せることになる」、どうなるのだろう。
・『合併でやっかいな問題も  しかし一方で、すでに交わされた契約の中にはややこしい問題が発生している案件もある。パリ市内を走る高速地下鉄RER-B線は、車両老朽化に伴う置き換えを計画しており、2018年に行われた入札で(アルストムとの合併が浮上する前の)ボンバルディアとスペインのCAFによる連合が146編成+最大34編成分の追加オプションという契約を獲得した。 しかしアルストムは、新型コロナの影響による需要の変動を想定した車両導入計画、および購入後の一時的な車両保管に対して柔軟性を求める内容が契約条件に後付けで加えられたことに異議を唱え、入札を実施したフランス国鉄SNCFとパリ交通局RATPを提訴した。 アルストムとしては、いったん受注し製造した車両を需要変動によって一時的に保管しなければならなかったり、製造の途中で仕様が変更されたりする可能性があるのはリスクが高いうえ、ボンバルディアとCAFが提示した金額では十分な柔軟性を確保できず、メーカーがリスクを背負わなければならない、というのが言い分だ。 パリ司法裁判所はSNCFとRATPに対し、こうした契約後の調達条件変更などを停止するよう命じたが、それに対し両者が控訴するなど問題は複雑な方向へ向かっていた。 アルストムによるボンバルディア買収が完了したことで、状況はさらに複雑化することになった。ボンバルディアの契約はそのままアルストムが引き継ぐことになったが、契約書を確認した後、アルストム側は改めて、この契約については再交渉したいと申し出た。その理由は前述の価格面に加え、技術面においても大きな懸念があるというものだった。 アルストムの会長兼CEOのアンリ・プーパルト=ラファージュ氏は、「契約金額は、ボンバルディアが損失を出している(2021年末の営業を目指してテスト中の新型車両)RER-NGよりもさらに20%も低い」「CAFが提供する予定の台車は技術的問題を抱え、すでに供給されたブラジルの地下鉄では2年間の運転休止を伴う大問題となった」と語っており、再契約は譲れない姿勢を示した。アルストム側はSNCFとRATPに対し、CAF抜きで会議の場を設けたいと打診しており、価格面に加えて技術的に不安のあるCAF製品を排除し、すべて自社製に切り替えたい意向を示すものと考えられる。 対してSNCFとRATPは、ボンバルディア=CAFコンソーシアムに対する契約は継続されていることを確認し、「ボンバルディアを買収したアルストムは、本契約とコミットメントをすべて引き継いでいる」と譲らない姿勢だが、車両の老朽化が進んでいることから速やかな問題解決を必要としている。新型車両への置き換えは2024年には開始される予定であったが、この期限内には不可能になるとRATPは述べており、問題が長引けば納入はさらに遅れることになる』、こうしたややこしい問題は、ある意味で「合併」につきものではある。
・『世界メーカー3位に日立が浮上  さて、2社が合併した後の各鉄道メーカーの年間売り上げの最新シェアについて、現地ニュースが興味深いデータを掲載した。1位のCRRCは揺るがないものの、アルストム+ボンバルディアが2位に浮上した。ここまでは容易に想像できるが、3位にはシーメンス・モビリティと並び、なんと日立製作所が急浮上したのだ。 つまり2021年のビッグ3ならぬ「新ビッグ4」とは、「CRRC・新生アルストム・シーメンスおよび日立」ということになる。上位3社の顔触れは基本的に変わらないが、ついにそこへ肩を並べるに至った日立製作所の今後にも大いに期待したい』、「世界メーカー3位に日立が浮上」とは喜ばしいことだ。「日立」の「今後にも大いに期待したい」、同感だ。
タグ:鉄道 (その7)(終電繰り上げ 人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない、乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが、世界2大鉄道メーカー 小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も) 東洋経済オンライン 「終電繰り上げ、人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない」 「国や自治体の要請」に従ったフリをしただけのようだ。 「客を乗せる営業列車としては運休しても、回送として電車を走らせるケースは少なくない」、無駄に思えるが、「夜間の外出自粛」に寄与していることは確かだ 「深夜の電車はコロナ感染が広まった昨年春以来、大幅に利用が減っている。とくに減っているのが終電間際の時間帯だ」、こんなにも「利用」が急減したとは初めて知った。 「深夜の人出がすでに激減している中、終電繰り上げが感染拡大防止につながるのかは疑問符が付く」、確かだが、「国や自治体の要請を受けないわけにもいかないのが実情」、大人の対応のようだ。 さかい もとみ 「乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが」 「乗車率が1%まで落ちる大打撃」、で「消滅リスク」に瀕しているのに、どういうことだろう。 「ユーロスター社は、英国においては英国の支援を受けていないフランスの企業と見なされる一方、フランスではフランスの支援を受けていない英国を拠点とする企業と見なされている」、「ユーロスター」はなんとも難しい立場に追い込まれてしまったようだ 「目下の最悪のシナリオは、政府支援もなく新たな出資者も出てこないというものだ もっとも懸念されるのは、管財人が車両売却を進めてしまい「英国と欧州大陸を結ぶ国際高速列車サービス」が消滅してしまうことだ」、こうした「最悪のシナリオ」も現実味を帯びてきたようだ 確かに「ドイツ鉄道(DB)」は有力な候補になりそうだ。 「香港MTRC」の場合は、「中国」との関係がネックになる可能性もあろそうだ。「はたしてどんな格好で生き延びるのだろうか」、大いに注目されるところだ。 橋爪 智之 「世界2大鉄道メーカー、小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も」 今回の合併が認められた背景の1つに、「中国中車(CRRC)への対抗」がありそうだ 「譲渡先」候補の「チェコのシュコダ」は、「次世代型低公害車両メーカーとして一躍名を馳せることになる」、なるほど どうなるのだろう こうしたややこしい問題は、ある意味で「合併」につきものではある。 「世界メーカー3位に日立が浮上」とは喜ばしいことだ。「日立」の「今後にも大いに期待したい」、同感だ
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