日本の政治情勢(その54)(リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM、河井元法相が「無罪主張から一転」 買収を認めた理由、政治資金規正法 「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか) [国内政治]
日本の政治情勢については、2月2日に取上げた。今日は、(その54)(リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM、河井元法相が「無罪主張から一転」 買収を認めた理由、政治資金規正法 「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか)である。
先ずは、2月15日付けLITERA「リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2021/02/post-5796.html
・『愛知県の大村秀章知事のリコール署名をめぐって、本日、愛知県選挙管理委員会は被疑者不詳というかたちで地方自治法違反容疑で刑事告発する方針を決めた。 当然だろう。昨年末から運動の内部関係者より大村知事のリコール署名に不正があるという告発が相次ぎ、県選挙管理委員会が調査していたが、2月1日、その選管が提出された約43万人分の署名約83%に不正の疑いがあることを発表している。 選管によると、約36万人分の署名が無効で、そのうち筆跡などから同一人物が書いたと疑われる署名が90%、選挙人名簿に登録のない署名が48%、活動の受任者が選挙人名簿に登録されていないものが24%もあったという。 これだけ不正が多いとなると、ケアレスミスや個人の問題ではなく、組織的不正の可能性も疑われても仕方ない。民主主義を冒涜する事態であり、徹底解明が必要だ。県選管が刑事告発を決めたことは前述したが、それ以前にリコール署名運動を主導してきた高須クリニックの高須克弥院長や河村たかし・名古屋市長の説明責任が厳しく問われるべきだろう。 このリコール署名は、2019年の「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」をめぐる、ネット右翼や極右安倍応援団による“大村知事バッシング”の延長線上で始まったもの。なかでも、「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」なる団体を設立するなどして中心的役割を担ってきたのが、高須クリニックの高須院長だ。そして、河村市長は、名古屋市長という公職にありながらコロナ対策もおざなりにし、街頭演説などでリコール運動を支援してきた。その署名が不正だらけだったのだから、少なくとも2人には調査解明と説明の責任があるはずだ。 ところが、である。不正8割超という選管の発表にも、河村市長は「僕は被害者、怒りに震える」などと被害者ヅラ。高須院長にいたっては、今月1日、取材に対し「無効な署名には気付かなかった。票を増やそうとした人もいるかもしれないが、活動を妨害するため、わざと問題になる署名を書いた人がいるかもしれない」などと主張。その後も、ツイッターで選管や不正を報じるメディアを批判しまくっている。 〈一人の受任者は複数の署名を集めますから7万人しか有効な署名がなく、残りは全部不正署名だと言う選管の発表はおかしな話しだと思います〉 〈「不正署名の90%は同一人の筆跡」という発表をうけての答えです。そんな神業ができるのはこの世の人ではありません。〉 〈些細な記入記載の誤りも厳密に見つけて無効にしたに間違いありません〉(2月2日)〈選管は無効署名と発表していますが、不正署名と変換されて報道しています〉 〈悔しいです。「ほとんどが不正署名」と辱しめを受けて怒りに震えております〉(2月3日) さらに、高須院長は12日、何者かが運動を妨害するために偽の署名を紛れ込ませたなどとして、地方自治法違反容疑での告発状を名古屋地検に郵送した』、「河村市長」や「高須院長」の居直りは驚くべき破廉恥さだ。
・『高須院長が「印象操作のトリックがわかった」と言ったエクセルファイルは何の証拠にもならないもの 高須院長はもともと、昨年末に不正告発が相次いだときから、リコール潰しの策謀であるかのような主張を繰り返し、今年に入ってからも〈たぶん敵は「印象操作の刑事告発」をやってきます〉(1月29日)〈僕は大村愛知県知事リコールを統括する最高責任者です。正面から敵の攻撃と謀略を受け止め戦います。僕が全てを引き受けます〉(1月30日)と、悲劇のヒーロー気取りの闘争宣言を繰り返していた。 そして、選管が不正を発表したことで、こうした“陰謀論を駆使した闘争”をさらにエスカレートさせているということらしい。 しかし、高須院長の主張は議会襲撃を「ANTIFAの仕業だ!」と叫ぶトランプ支持者たちと同じで(そういえば、高須院長は〈愛知県は利権で繋がっている田舎のディープステートに完璧に支配されてる号泣〉ともツイートしていた)、ほとんど中身や根拠のない陰謀論だ。そのことを雄弁に物語っていたのが、4日に高須院長が開いた会見だった。 高須院長はこのところ、リコール潰し・陰謀の証拠を見つけたと言い出し、それを明らかにすると息巻いていた。 〈いま足跡を追って証拠を押さえつつあります。捕まえて刑事告訴します。〉(1月30日) 〈独自調査で大量不正署名のトリックの全貌が見えてきました。数日中に発表します。〉(2月2日) 〈調査報告のエクセルファイルを入手しました。印象操作のトリックがわかってきました。まもなく記者発表します。〉(2月3日) しかし、4日の会見では、「選管があら探しをした結果だ」「選管は無効を増やすのが仕事だと思ってやった」などと選管の調査に難癖をつけ、「誰かが、活動を傷物にしようと妨害したのだろう」「大村知事と津田大介は早くから不正が8割を超えることを知っていた」などと荒唐無稽な陰謀論を強調するだけで、「証拠」「トリックの全貌」は説得力のあるものを何ひとつ示すことができなかった。 ツイッターであれほど息巻いていた、トリックがわかったという「エクセルファイル」とやらについても、同席した自分たちの弁護士に否定される始末だった。 弁護士は「エクセルの表はですね、高須先生のツイッターを見ると、なんか秘密兵器みたいなことが書いてありますけど(笑)、そうじゃなくて」と半笑いでその重要性を否定。「受領書にある署名総数やナンバリングした番号とかを整理したもの」にすぎないと説明した。弁護士は「エクセルだから並べ替えができ」、どこの選管で多かったか傾向がわかるなどとも話していたが、高須院長はよくそんなもので「印象操作のトリックがわかってきました」などと言ったものだ』、「高須院長」は「トリックがわかったという「エクセルファイル」」、については、やがて真相がバレることは承知の上で、とりあえずその場しのぎのウソをついたようだ。
・『無効票の約4分の1は名簿に登録のない受任者が集めた署名だった しかも、会見では逆に運動事務局のずさんな実態が露わになる一幕もあった。 署名集めを担う「受任者」は自治体の選挙人名簿に登録されている必要があるが、無効票の約4分の1は名簿に登録のない受任者が集めた署名だった。同席した田中孝博事務局長によると、受任者はインターネットやはがきを通じて募集し資格の確認はしていなかったと明かしたのだ。これについても、高須院長は「リコールを成功させようと応募した人は、お互いを信じ合おうとの考えだった」と精神論でごまかすことしかできなかった。 しかも、会見の最後には、高須院長が病気を理由に撤退を宣言した後も率先して署名集めを続けていたという事務局関係者の実名をあげ、「大村知事から金をもらってる」「明確に敵」などと一方的に糾弾したのだ。 どうみても、説明責任を果たしているとはいいがたいが、しかし、今回のリコール不正をめぐっては、高須院長らの無責任な姿勢以外に問題はもうひとつある。 それは、こうしたリコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しないことだ。 地方都市のことだからと言い訳するかもしれないが、もっと小さい市町村の議員の細かい不祥事でもワイドショーはよく取り上げているし、それこそ高須院長の話題は「高須院長が全身がん告白」「高須院長がツイッターで○○にコメント」「高須院長が××を太っ腹支援」「高須院長が野党議員に抗議」などとしょっちゅう取り上げている。『バイキングMORE』(フジテレビ)や『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などは単なる近況報告のような特集をやることだってある。 しかし、この問題についてはほとんどのワイドショーやニュース番組がまったくと言っていいほど取り上げていない。そして、取り上げた数少ない報道も明らかに及び腰なのだ。 一体なぜか。ひとつはこのリコールが「あいちトリエンナーレ」の展示をめぐる歴史修正主義の動きと連動したものであることだろう。高須院長らを批判してネトウヨの攻撃を受けることを恐れている可能性もある。そして、もうひとつはやはり高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサーだからだろう』、いくら「高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサー」とはいえ、「リコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しない」という姿勢は社会の公器にあるまじきことだ。
・『『スッキリ』では高須院長に擁護的なコメントも 番組中に高須クリニックのCMが その構図が垣間見えたのが、1日放送の『スッキリ』(日本テレビ)だった。同番組はめずらしくこの問題を取り上げ、元受任者や勝手に名前を使われた地元議員の証言を紹介したのだが、同時に高須院長の「僕は不正が大嫌いですから。正々堂々と法律通りにやってる。不正とはまったく無関係」などという主張を放送。MCの加藤浩次や橋本五郎・読売新聞特別編集委員がこれを受けて「高須さんの名誉を考えたら、調べた上でちゃんとやるのが大事」「選挙管理委員会は説明が必要」などと、選管に苦言を呈したのだ。 いやいや、説明しなくてはいけないのは、高須氏のほうだろう。選管はすでに不正の告発を受け、異例の全数調査をし、その結果を発表している。いかにして不正が起きたかは刑事告発し捜査に委ねるか、署名を集めた人間のほうが説明する責任があるのは明白だ。 にもかかわらず「高須院長の名誉を守るために選管が説明しろ」という加藤や橋本。まさかこの人たちは、選管の管理のもと署名がなされたとでも勘違いしているのだろうか。あるいは選管へ提出後に不正が発覚したなどという陰謀論まがいのことが起きたとでも考えているのだろうか。 と首をひねっていたら、この日の『スッキリ』の合間にはなんと、おなじみの高須クリニックのCMが流れたのである。 この日の『スッキリ』で加藤らが高須院長に擁護的な発言をしたことが、番組中に高須クリニックのCMが流れたことと関係があるかどうかはわからないが、しかし、テレビ局がこの問題をまともに取り上げなかったり、両論併記的に高須院長の支離滅裂な言い分を垂れ流したりする背景に、高須院長がテレビ局にとって大スポンサーであるということが関係しているのは間違いないだろう。 実際、これまでも、ワイドショーは高須院長に対して、明らかに配慮しているとしか思えない報道を繰り返してきた。民進党(当時)の大西健介衆院議員が国会で美容整形CMを問題にした発言を名誉毀損で訴えた際、『ミヤネ屋』でコメンテーターが「名誉毀損に当たらない」旨の発言をしたことについて、高須院長は「明確な名誉毀損」などと猛抗議。問題のコメントはごく真っ当な指摘であり、そもそも論評にしかすぎず名誉毀損などあり得なかったにもかかわらず、『ミヤネ屋』は翌日の放送でひれ伏すように謝罪したこともある。高須院長のナチス礼賛発言が国際的な大問題になった際もまともに取り上げず、同時期に爆破予告されたことだけを取り上げたこともあった』、「『スッキリ』・・・MCの加藤浩次や橋本五郎・読売新聞特別編集委員がこれを受けて「高須さんの名誉を考えたら、調べた上でちゃんとやるのが大事」「選挙管理委員会は説明が必要」などと、選管に苦言を呈した」、みえみえの援護姿勢には驚かされる。
・『リコールを後押ししながら不正発覚にだんまりの百田尚樹、有本香、吉村知事 金を持っているためいくらでも裁判でも起こすことができるうえ、大スポンサーで、ネトウヨのファンもついている高須院長は、テレビにとっては一種のタブーになってしまっているのだ。 そのため、高須院長は、これまでも金の力を盾に、差別発言や歴史修正発言でも撤回も謝罪もなく開き直ってきた。 しかし高須院長は、ただの美容クリニック経営者ではなく、歴史修正主義、政権支持を盛んに発信しているきわめて政治的な存在だ。ましてや、今回のリコール運動では市民運動を率いて現実政治にコミットし、そこで前代未聞の不正が起きたのだ。言っておくが、リコールは単なるアンケートなどではなく、民主主義において選挙と同等の価値が置かれ、署名偽造には懲役刑も課される重大な違反だ。いくらスポンサーだからといって、このまま放置することは許されない。 いや、高須院長だけではない。いまは他人事を決め込んでいる百田尚樹氏、竹田恒泰氏、有本香氏らネトウヨ文化人や、吉村洋文・大阪府知事ら維新の会(ちなみに田中事務局長は維新の次期衆院選公認候補予定者でもある)など、この運動をバックアップしてきた連中の責任もきちんと追及すべきだろう』、「リコールは単なるアンケートなどではなく、民主主義において選挙と同等の価値が置かれ、署名偽造には懲役刑も課される重大な違反だ。いくらスポンサーだからといって、このまま放置することは許されない」。幸い捜査当局も捜査を開始したようだ。捜査の進展と、マスコミによる真相解明に期待したい。
次に、3月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「河井元法相が「無罪主張から一転」、買収を認めた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266751
・『2019年7月施行の参院選広島選挙区を巡る選挙違反事件で、公職選挙法違反(買収)の罪に問われた元法相の衆院議員、河井克行被告(58)は、東京地裁の公判で23日から始まった被告人質問で、これまでの無罪主張を撤回し、買収を認める姿勢に転じた。さらに「衆院議員を辞する」と表明、25日には大島理森衆院議長に辞職願を提出した。検察側の主張に対して一部に争いは残したものの、完全に白旗を上げた格好だが、狙いは何か、背景を探ってみた』、興味深そうだ。
・『選挙違反で「実刑」の前例はなし 「全般的に買収罪の事実は争わない」――。 参院選後の10月に妻の案里前参院議員(47)=辞職、有罪が確定=の秘書による疑惑が報じられ、法相を辞任。その後、自身に対する疑惑が浮上、逮捕、起訴され、公判でも一貫して買収の事実を否認していた河井被告。新聞やテレビの報道によると、被告人質問でこう述べたとされる。 20年8月25日に迎えた初公判で、案里氏とともに罪状認否で全面的に起訴内容を否認して以来、初めて自らの意思表示が可能となる被告人質問。どういうロジックで今後の公判を進めていくか、弁護人と綿密に調整してきたはずだ。その結果が、買収追認と議員辞職の表明だった。 これまでの検察側の主張を全面的に受け入れ、屈服した格好だが、これは誰の目にも、反省の意を示すことで情状酌量を取りに行ったというのは明らかだ。では、なぜここで方針転換したのだろうか。 いわゆる「識者」「評論家」と言われる方々がメディアで「実刑もあり得る」とコメントしたり、SNSなどで投稿したりしているが、実は国会議員が選挙違反事件で実刑判決を受けた例はこれまでない。 かつて当選した議員本人が選挙違反で立件されたのは、03年11月の衆院選を巡り公選法違反(買収)容疑で、愛知県警が自民党の近藤浩衆院議員(当時)、埼玉県警が新井正則衆院議員(同)をそれぞれ逮捕したぐらいだ。いずれも起訴されたが、執行猶予判決だった。筆者が調べた限り、55年にも公選法違反で有罪が確定し失職したケースはあるが、こちらも執行猶予だった(選挙違反は執行猶予でも判決確定で失職)。 日本の司法は「判例主義」と言われる。であれば前例踏襲で執行猶予となる可能性が高いのだから、判決が確定するまで国会議員としての歳費や手当を受け取り続ければいいのではないかという見方もできるが、今回は少し事情が違う』、「前例踏襲」とはいっても、買収金額がケタ違いに大きく、政治的影響力も大きいことを考慮すれば、「実刑」の可能性も否定できないだろう。
・『驚きの「仲間が欲しかった」 起訴状によると、河井被告は地元の議員や有力者100人に対し、計約2900万円を配ったとされる。筆者は全国紙社会部記者時代、国会議員に限らず政治家の選挙違反事件の解説記事などを執筆するため、過去のデータを調べたことが何度かあった。 記憶にある限り、被買収の人数と金額が「100人」「2900万円」までの数字は出てこない。そう、「判例」では判断できない「悪質さ」が審理され、判決に反映される可能性が高いのだ。識者や評論家が「実刑」の可能性に言及してもおかしくはない。 当初は河井被告が、自身の「名誉」「面子」のため、徹底抗戦の構えだったというのは理解できる。しかし、既に外堀が埋まっているのは認識しているはずであり、このまま突っ張ったら「囚人服」を着用する可能性があることを弁護人がサジェストしたかもしれない。 象徴的だったのは被告人質問2日目として報道された発言だ。 「長年、独りぼっちだった。地元政界に仲間が欲しかった」「当選7回目でも自民党広島県連会長になれず疎外感があった」「会長就任の布石として金を差し上げた」「主目的は私自身の孤立感の解消だった」 うーん、と唸った。案里氏を当選させるための「買収工作」の色を薄めるためなのか、動機を自身の広島県連における低評価や孤独に持って行った。「妻をだしに使い、申し訳なかった」とも言った。ある意味で本音の印象も受けるし、これならば「100%買収の意図」ではなく、裁判官に「自身の地位を上げるためで、選挙の意図がすべてではなかった」と訴える効果はある。 芝居がかってはいるが、親交のあるカトリックの神父から「神の前で誠実であることが大事。自分に向き合いなさい」と助言されたと語ったことも、心証としては悪くない。なかなかのテクニックと思う』、「なかなかのテクニック」とはさすが前法務大臣だ。
・『重罪も執行猶予の可能性 では、まだ続くとみられる公判だが、結論はどうなるのだろうか。 実は、河井被告が実刑になるかどうかは別として、有罪は揺るぎないとみられる。案里氏は単独行為ではなく、河井被告と共謀(共同正犯)したとして5件の罪に問われ、うち被買収とされた1人が公判で被買収の意図を否認し無罪となったが、4件については有罪とされたからだ。そして、この確定判決は河井被告の公判に反映されないはずがない。 つまり、既に詰んだのだ。 証人尋問で、金を受け取った関係者が「集票依頼と思った」「違法な金」などと述べた。被買収とされた人物が追認すれば、今回の事件は事実認定されるのだ。公判では被買収とされた100人のうち、94人が買収であったと認めた。 であれば、6件が無罪になる可能性はあるが、94件は有罪になる可能性が濃厚ということだ。 「判例」については前述した通りだが、被告人質問で買収を全面的に認める陳述をした23日、衆院議員バッジを着用していたのに、翌日24日、着けていなかったのは、情状酌量をアピールする意図があったのだろう。 では、結論として河井被告の司法的な処分は、どうなのるか。この記事を読んでいただいている方々の最大の関心だろうが、結論から言うと、筆者の予想では執行猶予が付く。 意外かもしれないが、刑事裁判というのはシンプルだ。検察側は「犯行は計画的で悪質、かつ重大で、民主主義の根幹を揺るがす行為」として懲役4年を求刑するだろう。 そして判決で裁判官は「犯行は悪質だが、反省している。議員を辞職し、既に社会的制裁を受けている」として、検察側の主張を追認し求刑通り懲役4年、執行猶予が最大の5年という流れになるはずだ。 しかし、夫妻は逮捕された20年6月以降、国会に出席していないが、毎月103万5200円と約628万円の期末手当、月額100万円の文書通信交通滞在費が支給されていた。国会議員としての職務を全うしていないのに、総額約2600万円を2人で5200万円を受領していたことになる。 日本国民には誰もが裁判を受ける権利がある。だから、この夫妻が推定無罪の上で裁判を受ける権利を有することは当然のことだ。司法の判断は「前例」を踏襲した然るべき結果になるだろう。 しかし、この1年数カ月、新型コロナウイルス感染拡大で日本国民の生活が困窮した。巨額の歳費と手当てを受け取っていたこの夫婦に、同情する日本国民がいるとは思えない』、「判決で裁判官は「犯行は悪質だが、反省している。議員を辞職し、既に社会的制裁を受けている」として、検察側の主張を追認し求刑通り懲役4年、執行猶予が最大の5年という流れになるはずだ」、「執行猶予」を得るために「議員を辞職」、とは頷ける。
第三に、2月15日付けYahooニュースが掲載した元東京地検特捜部検事で郷原総合コンプライアンス法律事務所代表弁護士の郷原信郎 氏による「政治資金規正法、「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20210215-00222620/
・『平成から令和に時代が変わっても、政治家、とりわけ国会議員の「政治とカネ」の問題は後を絶たない。「桜を見る会問題」では、安倍前首相側の地元有権者を集めた前夜祭の費用補填問題で、安倍氏の公設第一秘書が政治資金規正法違反で略式命令を受けた。河井克行元法務大臣とその妻の河井案里元参議院議員が、同議員の参議院議員選挙での、多額の現金買収で逮捕・起訴されたが、その多くは、広島県内の首長・地方議員等の政治家に渡されたものだった。 そして、その事件に関連して、鶏卵業界のドンと言われるアキタフーズ会長から、いわゆる農水族の国会議員が多額の現金を受領した事件が表面化、吉川貴盛元農水大臣は、大臣在職中に、大臣室等で500万円の現金を受領していた事件で在宅起訴された。 これらの「政治とカネ」をめぐる問題の多くで、「政治資金規正法違反」が、マスコミで取り上げられるが、実際に、法違反が処罰につながる例は少なく、そのことへの違和感が、国民の政治に対する不信を高めることにつながってきた。 私自身も、現職検事だった時代に、「政治とカネ」の問題に関する捜査に積極的に取り組んできた。1990年代末には、広島地検特別刑事部長として、県政界の政治家をめぐる事件の捜査に取り組んだ。2001年から2003年にかけての長崎地検次席検事時代も、公共工事をめぐる政治資金の流れに関する事件の捜査に取り組んだ。 その際、捜査の武器として政治資金規正法を積極的に活用してきた。しかし、この法律は、法律上の概念が曖昧である上に、法の性格や違反行為の要件が世の中に正しく理解されておらず、また、法による義務付けの内容と政治家の政治資金処理の実情とに大きな乖離があることなど、罰則適用に関して、様々な問題があった。そのような構造的な問題は、世の中に正しく理解されているとは到底言えない。 私自身の検察の現場での経験に基づき、「政治とカネ」問題の背景となっている政治資金規正法の構造的な問題を指摘し、抜本的な改革案を提示することとしたい』、「「政治とカネ」をめぐる問題の多くで・・・法違反が処罰につながる例は少なく、そのことへの違和感が、国民の政治に対する不信を高めることにつながってきた」、いつも腹立たしい思いをしてきた。
・『「ザル法」の真ん中に空いた“大穴” 「政治とカネ」の重大問題が発生する度に、政治家が世の中の批判を受け、政治家や政党自身が「その場凌ぎ」的に、議員立法で改正を繰り返してきたのが政治資金規正法だ。そのため、罰則は相当重い(最大で「禁錮5年以下」)が、実際に政治家に同法の罰則を適用して処罰することは容易ではない。それが「ザル法」と言われてきた所以である。 しかし、実は、政治資金規正法は、単に「ザル法」だというだけでなく、ザルの真ん中に「大穴」が空いているというのが現実だ。 「政治とカネ」の典型例が、政治家が、業者等から直接「ヤミ献金」を受け取る事例である。それは「水戸黄門」のドラマで、悪代官が悪徳商人から、「越後屋、おぬしも悪よのう」などと言いながら「小判」の入った菓子折りを受け取るシーンを連想させるものであり、まさに政治家の腐敗の象徴である。 しかし、国会議員の政治家の場合、「ヤミ献金」を贈収賄罪に問うのは容易ではない。そこでは、国会議員の職務権限との関係が問題となる。国会議員の法律上の権限は、国会での質問・評決、国政調査権の行使等に限られている。与党議員の場合、いわゆる族議員としての「政治的権力」を背景に、各省庁や自治体等に何らかの「口利き」をすることが多いが、その場合、「ヤミ献金」のやり取りがあっても、職務権限に関連しているとは言えず、贈収賄罪の適用は困難だ。 だからこそ政治資金規正法という法律があり、政治家が業者から直接現金で受領する「ヤミ献金」こそ、政治資金規正法の罰則で重く処罰されるのが当然と思われるであろう。しかし、実際には、そういう「ヤミ献金」の殆どは、政治資金規正法の罰則の適用対象とはならない。「ザル法」と言われる政治資金規正法の真ん中に「大穴」が空いているのである。 政治資金規正法は、政治団体や政党の会計責任者等に、政治資金収支報告書への記載等の政治資金の処理・公開に関する義務を課すことを中心としている。ヤミ献金の授受が行われた場合も、その「授受」そのものが犯罪なのではない。献金を受領しながら政治資金収支報告書に記載しないこと、つまり、そのヤミ献金受領の事実を記載しない収支報告書を作成・提出する行為が不記載罪・虚偽記入罪等の犯罪とされ、処罰の対象とされているのである。 国会議員の場合、個人の資金管理団体のほかに、代表を務める政党支部があり、そのほかにも後援会など複数の政治団体があるのが一般的だ。このような政治家が、企業側から直接、現金で政治献金を受け取ったのに、領収書も渡さず、政治資金収支報告書にもまったく記載しなかったという場合に、政治資金規正法の罰則を適用するためには、どの政治団体・政党支部宛ての献金かが特定されないと、どの「政治資金収支報告書」に記載すべきなのかがわからない。 もし、その献金が政治家「個人」に宛てた「寄附」だとすれば、「公職の候補者」本人に対する寄附は政治資金規正法で禁止されているので(21条の2)、その規定に違反して寄附をした側も、寄附を受け取った政治家本人も処罰の対象となる。しかし、国会議員たる政治家の場合、資金管理団体・政党支部等の複数の「政治資金の財布」がある。その献金がそれらに宛てた寄附だとすれば、その団体や政党支部の政治資金収支報告書に記載しないことが犯罪となる。いずれにせよ、ヤミ献金を政治資金規正法違反に問うためには、その「宛先」を特定することが不可欠なのである。 しかし、政治家が直接現金で受け取る「ヤミ献金」というのは、「裏金」でやり取りされ、領収書も交わさないものだからこそ「ヤミ献金」なのであり、受け取った側が、「・・・宛ての政治資金として受け取りました」と自白しない限り、「宛先」が特定できない。「ヤミ献金」というのは、それを「表」に出すことなく、裏金として使うために受け取るのであるから、政治家個人宛てのお金か、どの団体宛てかなどということは、通常、考えていない。結局、どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが「ヤミ献金」である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できず、刑事責任が問えないことになるのだ』、「どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが「ヤミ献金」である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できず、刑事責任が問えないことになるのだ」というのでは、確かに「「ザル法」の真ん中に空いた“大穴”」というのは言い得て妙だ。
・『「金丸5億円ヤミ献金問題」での「上申書決着」 平成に入って間もない90年代初頭、検察に対する世の中の不満が爆発したのが、1992年の東京佐川急便事件だった。この事件では、東京佐川急便から多数の政治家に巨額の金が流れたことが報道され、同社の社長が特別背任罪で逮捕されたことで大規模な疑獄事件に発展するものとの期待が高まった。しかし、いくら巨額の資金が政治家に流れていても、国会議員の職務権限に関連する金銭の授受は明らかにならず、結局、政治家の贈収賄事件の摘発は全くなかった。 そして、佐川側から5億円のヤミ献金を受領したことが報道され、衆議院議員辞職に追い込まれた自民党経世会会長の金丸信氏が政治資金規正法違反に問われたが、東京地検特捜部は、その容疑に関して金丸氏に上申書を提出させ、事情聴取すらせずに罰金20万円の略式命令で決着させた。 検察庁合同庁舎前で背広姿の中年の男が、突然、「検察庁に正義はあるのか」などと叫んで、ペンキの入った小瓶を建物に投げ、検察庁の表札が黄色く染まるという事件があったが、それは多くの国民の声を代表するものだった。東京佐川急便事件における金丸氏の事件の決着は、国民から多くの批判を浴び、「検察の危機」と言われる事態にまで発展した。 しかし、政治家本人が巨額の「ヤミ献金」を受領したという金丸氏の事件も、政治資金規正法の罰則を適用して重く処罰すること自体が、もともと困難だった。 当時は、政治家本人に対する政治資金の寄附自体が禁止されているのではなく、政治家個人への寄附の量的制限が設けられているだけだった。しかも、その法定刑は「罰金20万円以下」という極めて低いものであった。しかも、そのヤミ献金が「政治家本人に対する寄附」であることを、本人が認めないと、その罰金20万円以下の罰則すら適用できない。そのような微罪で政治家を逮捕することは到底無理であり、任意で呼び出しても出頭を拒否されたら打つ手がない。そこで、弁護人と話をつけて、金丸氏本人に、自分個人への寄附であることを認める上申書を提出させて、略式命令で法定刑の上限の罰金20万円という処分に持ち込んだのであった。 検察の行ったことは何も間違ってはいなかった。政治資金収支報告書の作成の義務がない政治家本人への献金の問題について極めて軽い罰則しか定められていなかった以上、検察が当時、法律上行えることは、その程度のものでしかなかった。しかも、それを行うことについて、本人の上申書が不可欠だったのである。 金丸ヤミ献金事件の後、政治資金規正法が改正されて、「政治家本人への寄附」が禁止され、「一年以下の禁錮」の罰則の対象となった。しかし、政治家本人が直接受領したヤミ献金については、違法な個人あての献金か、あるいは団体・政党支部宛ての献金かが特定できないと、政治資金規正法違反としての犯罪事実も特定できず、適用する罰則も特定できないという、「政治資金規正法の大穴」は解消されておらず、その後も、政治家個人が「ヤミ献金」で処罰された例はない。 2009年3月、民主党小沢一郎代表の公設第一秘書が、収支報告書に記載された「表」の献金に関する政治資金規正法違反(他人名義の寄附)の容疑で東京地検特捜部に逮捕された際に、西松建設の社長が、自民党の二階俊博議員側に「ヤミ献金」をしていたこと、そのうちの一部は二階氏に直接手渡されていたという「年間500万円の裏金供与疑惑」が報じられた。しかし、刑事事件としての立件には至らなかった。 また、吉川元農水大臣の事件でも、アキタフーズ会長から、農水大臣在任中に500万円を受領したほかに、大臣在任中以外の期間にも合計1300万円の現金を受領していた事実が報じられている。これも、政治家本人が直接受領した「ヤミ献金」のはずだが、刑事事件として立件され、起訴されたのは、大臣在任中の500万円だけであり、それ以外は刑事立件すらされていない。 それは、政治家側に直接裏金による政治献金が渡った場合に、政治資金規正法違反で立件・処罰することができないという、「政治資金規正法の大穴」によるものなのである』、「政治資金規正法」は議員立法で、議員たちがアリバイ作りのためにお茶を濁したものらしい。
・『「ヤミ献金」が刑事事件化された事例 一方、ヤミ献金が刑事事件として立件され処罰された事例がある。 その初の事例となったのが、私が長崎地検次席検事として捜査を指揮した2003年の「自民党長崎県連事件」(拙著【検察の正義】(ちくま新書)「最終章 長崎の奇跡」)である。 この事件では、自民党長崎県連の幹事長と事務局長が、ゼネコン各社から、県の公共工事の受注額に応じた金額の寄附を受け取っていた。そして、幹事長の判断で、一部の寄附については、領収書を交付して「表の献金」として収支報告書に記載して処理し、一部は「裏の献金」として、領収書を交付せず、政治資金収支報告書にも記載しなかった(この「裏の献金」が、幹事長が自由に使える「裏金」に回されていた)。 この事件では、正規に処理される「表の献金」と同じような形態で「裏の献金」が授受されていたので、「自民党長崎県連宛ての寄附」として収支報告書に記載すべき寄附であるのに、その記載をしなかったことの立証が容易だった。「ヤミ献金」事件を、初めて政治資金収支報告書の虚偽記入罪(裏献金分、収入が過少記載されていた事実)で正式起訴することが可能だったのである。 2004年7月には、日本歯科医師会から平成研究会(橋本派)に対する1億円の政治献金に対して、橋本派側が幹部会で領収書を出さず収支報告書に記載しないことを決めた事実について、政治資金規正法違反(収支報告書の虚偽記入)の罰則を適用され、村岡兼造元官房長官と平成研の事務局長が起訴された。この事件も、平成研という政治団体に対する寄附であることが外形上明白で、それについて領収書を交付するかどうかが検討された末に、領収書を交付しないで「裏の献金」で処理することが決定されたからこそ、政治資金規正法違反の罰則適用が可能だったのである。 これらのように、「ヤミ献金」を政治資金規正法違反に問い得る事例というのは稀であり、政治家本人が直接現金を受け取るような事例には、政治資金規正法の罰則は全く歯が立たないという深刻な現実を理解する必要がある』、「「ヤミ献金」を政治資金規正法違反に問い得る事例というのは稀であり、政治家本人が直接現金を受け取るような事例には、政治資金規正法の罰則は全く歯が立たないという深刻な現実を理解する必要がある」、なるほど。
・『政治資金の逐次処理の実効性に関する問題 もう一つの問題は、政治資金についての収入・支出の透明化に関して、政治資金規正法上は、「会計帳簿の作成・備付け」と「7日以内の明細書の作成・提出」が義務付けられ、政治資金処理の迅速性が求められているが、ルールが形骸化しているということである。 政治資金規正法は、政治団体・政党等の会計責任者等に、各年分の政治資金収支報告書の作成・提出を義務付けているが、それに関して、収支報告書とほぼ同一の記載事項について、会計帳簿の作成・備付けを会計責任者等に義務付けるとともに、「政治団体の代表者若しくは会計責任者と意思を通じて当該政治団体のために寄附を受け、又は支出をした者」に対して、会計責任者への明細書の提出を義務付けている。 つまり、会計責任者は年に1回、政治資金収支報告書を作成・提出するだけでなく、その記載の根拠となる会計帳簿を、政治団体・政党等の事務所に常時備え付けている。これは、記載事項となる政治資金の収支が発生する都度、会計帳簿に記載することを前提としている。そして、会計責任者が知らないところで収支が発生することがないよう、政治団体の代表者等が、寄附を受けたり、支出をしたりした場合に、7日以内に明細書を作成して会計責任者に提出することを義務付けていて、会計責任者等が、その明細書に基づいて会計帳簿への記載をすることができるようにしている。 これは、政治資金の収支を発生の都度、逐次処理することを求める規定なのであるが、実際には、このような明細書の作成・提出の期限に関するルールは形骸化し、会計帳簿の記載、明細書の作成は、収支報告書の作成の時期にまとめて行われているようである。 逐次・迅速に収支を把握して処理する政治資金規正法のルールは、その記録化についてのルールがないために、収支報告書の作成・提出と併せてまとめて会計帳簿、明細書の処理をしても、提出する収支報告書上は証拠が残らず、明細書の提出義務違反等で処罰されることもない。それが、逐次・迅速処理のルールの形骸化につながっているのである』、由々しい問題だ。
・『安倍事務所における政治資金と個人資金の混同 安倍晋三前首相は、「桜を見る会」前夜祭での費用補填問題に関して、 私の預金からおろしたものを、例えば食費、会合費、交通費、宿泊費、私的なものですね。私だけじゃなくて妻のものもそうなんですが、公租公課等も含めてそうした支出一般について事務所に請求書がまいります。そして事務所で支払いを行いますので、そうした手持ち資金としてですね、事務所に私が合わせているものの中から、支出をしたということであります。 つまり、安倍事務所では、安倍氏の個人預金から一定金額を預かって、安倍夫妻の個人的な支出についても支払をしており、そのような個人預金から、後援会が主催する前夜祭の費用補填の資金を捻出したと説明したのである。 しかし、安倍氏の個人預金が補填の原資だと説明すると、安倍氏個人による公職選挙法の寄附の禁止に違反することになりかねない。そこで、補填は、秘書が無断で行ったと弁解するとともに、もう一つの補填の正当化事由として「専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会に関し必要やむを得ない実費の補償」は、公選法が禁止する寄附に当たらないという理屈を持ち出してきたのである。 会場費の支出が寄附に当たらないとすると、「政治上の主義」や「政治教育」のためということになるので、当然、「政治資金としての支出」のはずだ。それを、安倍氏個人の資金から支出していたということは、安倍事務所においては、政治資金と安倍氏個人の資金が混同して処理されていたということなのである。 政治資金規正法の会計帳簿と明細書に関するルールから言えば、本来、政治献金や党からの交付金等の政治に関する収入と、安倍氏の個人資金とは明確に区別すべきであり、政治資金としての支出をした場合には、7日以内に会計責任者に明細書を提出し、それについて会計帳簿の記載が行われることになるはずだ。 ところが、前首相の安倍氏の事務所においてすら、政治資金の逐次・迅速処理のルールは守られず、政治資金と個人資金が混同されて処理されていた。おそらく、多くの国会議員の政治家が同様の政治資金処理を行っているのであろう。 このようなことがまかり通るのは、政治資金規正法で、会計帳簿の備付・記載と明細書の作成・提出が義務付けられているのに、開示されるのが年に1回提出される政治資金収支報告書だけなので、法の趣旨どおりに逐次記載されているのか、収支報告書提出時にまとめて記載しているのかを、証拠上確認する手立てがないからである』、「前首相の安倍氏の事務所においてすら、政治資金の逐次・迅速処理のルールは守られず、政治資金と個人資金が混同されて処理されていた」、恐るべきズサンさだ。
・『河井夫妻多額現金買収事件における政治資金と選挙資金の混同 河井夫妻が買収(公選法違反)とされて逮捕・起訴された事実の多くは、2019年4月頃、つまり、選挙の3か月前頃から、広島県内の議員や首長などの有力者に、参議院選挙での案里氏への支持を呼び掛けて多額の現金を渡していたというものだ。 従来は、公選法違反としての買収罪の適用は、選挙運動期間中やその直近に、直接的に投票や選挙運動の対価として金銭等を供与する行為が中心であり、選挙の公示・告示から離れた時期の金銭の供与が買収罪として摘発されることはあまりなかった。 このような「選挙期間から離れた時期の支持拡大に向けての活動」というのは、選挙運動というより、政治活動の性格が強く、それに関して金銭が授受されても、政治資金収支報告書に記載されていれば、それによって「政治資金の寄附」として法律上扱われ、公選法の罰則は適用しないというのが一般的な考え方であった。 しかし、公選法上は、「当選を得る(得しめる)目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益を供与する」ことで違反が成立する。県政界有力者も「選挙人」であり、「案里氏を当選させる目的」で「供与」した以上、形式的には違反が成立することは否定できないように思える。問題は、形式的には違反に該当しても、「政治資金の寄附」として合法化される余地があるかどうかだ。ここで重要なのは、河井夫妻の場合、現金で供与したから買収になるように言われているが、そうではないということだ。仮に、銀行振込であったとしても、使途を限定せずに提供するのであれば「供与」であることに違いはない。 結局、問題は、その「供与」が「政治活動」のためか、「選挙運動」のためか、ということである。事後的に、政治資金か選挙資金かが問題にならないようにするためには、政治活動とそのための政治資金の支出が、政治資金の処理を通じて明確に区別され、収支が発生した時点で、明細書や会計帳簿に政治資金として記載されることが必要だ。しかし、既に述べているように、会計帳簿の備付・記載、明細書の提出という、政治資金の逐次処理のルールは形骸化しており、年に1回の政治資金収支報告書の提出の時点までは、選挙資金と政治資金とが明確に区別されないまま処理されることがあり得る。 実際に、河井夫妻の公選法違反事件では、家宅捜索等の強制捜査が行われたのは、2020年1月であり、この時点では、2019年分の政治資金の収支については、政治資金収支報告書の提出期限の前だった。河井夫妻から現金を受領した広島県内の首長・議員の中には、家宅捜索を受けた後に提出した政治資金収支報告書に、河井夫妻からの寄附の受領を記載した者もいるようだ。 政治資金の1年分一括処理が事実上許されていることが、政治資金と選挙資金の区別を曖昧にし、それが、政治活動と選挙運動の境目が不明確になることの背景にもなっている』、なるほど。
・『「政治とカネ」問題根絶のための“2つの提言” 以上述べてきたように、現行の政治資金規正法には、政治資金透明化という法目的に著しく反する政治家個人が直接受領する「ヤミ献金」に対して罰則適用できないこと、政治資金の逐次処理のルールが形骸化していること、という二つの大きな問題があり、それが「政治とカネ」の問題が後を絶たないことの背景となっている。 そこで、このような状況を抜本的に是正する方法として、国会議員についての政治資金収支報告書の「総括化」と、会計帳簿・明細書のデジタルデータの「法的保存義務化」を導入してはどうか。 まず、政治資金規正法は、国会議員について、「国会議員関係政治団体」、すなわち、従来の資金管理団体・政党支部等の国会議員と密接な関係を有する政治団体について、1万円以上の支出の使途の公開、登録政治資金監査人による監査の義務付け、1円以上の領収書の開示が義務付けられているが(19条の7)、「国会議員関係政治団体」を含めて、当該国会議員の政治活動に関連する政治資金の収支を総括する「国会議員政治資金収支総括報告書」の作成提出を、義務付けるのである。それによって、当該国会議員たる政治家が、業者から、特定の団体・政党支部への紐づけが明確になっていない献金を受領した場合も、その総括報告書には記載しなければならないことになる。 政治資金収支総括報告書の作成・提出については、当該国会議員が、「総括会計責任者」を選任し、総括報告書を作成・提出させる。国会議員が、政治資金の寄附を受けた際には、7日以内に、その旨を記載した明細書を総括会計責任者に対して提出しなければならないと規定するのである。 これにより、政治家本人が「政治資金」と認識して受領したのに、会計責任者に明細書を提出せず、総括報告書に記載しない場合であれば、政治資金収支総括報告書不記載罪の罰則が適用できることになる。それによって、国家議員たる政治家個人が直接「ヤミ献金」を受領した場合に、政治家個人宛てか団体、政党支部宛てかが特定できないために処罰することができないという「政治資金規正法の大穴」は塞がれることになる。 もう一つは、政治資金規正法上の備付けを義務付けられた会計帳簿と、7日以内の作成・提出を義務付けられている明細書について、データの作成日が記録されたデジタルデータの保存と政治資金収支報告書に添付して提出することを義務付けることである。それによって、政治資金の収入、支出について、7日以内には必ず明細書を提出し、会計帳簿に記載しなければならないことになり、処理を未定にしておいて、政治資金収支報告書を作成・提出する時期に、政治資金と個人資金の振り分けや、政治資金と選挙資金等の振り分けを決める一括処理は違法となる。 もっとも、実際の政治資金の収支の中には、発生した時点では、どの団体・政党支部に帰属させるかが判然としないものも少なくないものと思われる。そこで、従来の各団体・政党支部ごとの会計帳簿とは別に、当該国会議員に関連する政治資金の収支であることは間違いないが、帰属先が定まっていない収支を含めて記載する「総括会計帳簿」の備付け・記載を会計責任者に義務付けることにする。「総括会計帳簿」に記載しておけば、収支の具体的な帰属先は、個別の政治資金収支報告書の作成・提出時までに確定させればよいことにする。それでも、政治資金としての収支であることは、収支が発生した時点で、個人の収支や、選挙に関する収支とは区別して、総括会計帳簿に明確に記載されることになる。 それによって、政治資金の処理が、迅速に収支の都度逐次行われることになり、政治資金・選挙資金・個人資金の相互の関係を明確にすることも可能となる』、「総括会計責任者」、「総括会計帳簿」はいいアイデアだ。
・『真の「政治資金の透明化」を 政治資金規正法が基本理念とする「政治資金の収支の公開」は、健全な政治活動と民主主義の基盤を確保していくために不可欠なものである。しかし、法律のルールと現実の政治資金処理の実態との間に大きな乖離があって「違法行為」が恒常化している場合、その中の特定の違法行為だけが取り上げられると、「魔女狩り」的な不毛な中傷・告発合戦の常態化を招くことになる。 現実的に可能な政治資金処理のルールを構築することで、通常の政治資金の処理を行っていれば「政治とカネ」の問題で騒がれることがなく、意図的に政治資金処理のルールに反して政治資金を不透明化したり、私物化したりした事例だけが厳正な処罰の対象になるということにしていく必要がある。 まず、国会議員について、政治資金規正法における政治資金処理のルールを、現実的かつ実効性のあるものに改善する必要がある。それが「政治とカネ」の問題を根絶し、真の「政治資金の透明化」を実現することにつながるのではないだろうか』、議員立法である限り、自分たちの自由を束縛するものは避けようとするだろう。法務省の所管にして、法制審議会などに委ねるのが最も有効なのではあるまいか。
先ずは、2月15日付けLITERA「リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2021/02/post-5796.html
・『愛知県の大村秀章知事のリコール署名をめぐって、本日、愛知県選挙管理委員会は被疑者不詳というかたちで地方自治法違反容疑で刑事告発する方針を決めた。 当然だろう。昨年末から運動の内部関係者より大村知事のリコール署名に不正があるという告発が相次ぎ、県選挙管理委員会が調査していたが、2月1日、その選管が提出された約43万人分の署名約83%に不正の疑いがあることを発表している。 選管によると、約36万人分の署名が無効で、そのうち筆跡などから同一人物が書いたと疑われる署名が90%、選挙人名簿に登録のない署名が48%、活動の受任者が選挙人名簿に登録されていないものが24%もあったという。 これだけ不正が多いとなると、ケアレスミスや個人の問題ではなく、組織的不正の可能性も疑われても仕方ない。民主主義を冒涜する事態であり、徹底解明が必要だ。県選管が刑事告発を決めたことは前述したが、それ以前にリコール署名運動を主導してきた高須クリニックの高須克弥院長や河村たかし・名古屋市長の説明責任が厳しく問われるべきだろう。 このリコール署名は、2019年の「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」をめぐる、ネット右翼や極右安倍応援団による“大村知事バッシング”の延長線上で始まったもの。なかでも、「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」なる団体を設立するなどして中心的役割を担ってきたのが、高須クリニックの高須院長だ。そして、河村市長は、名古屋市長という公職にありながらコロナ対策もおざなりにし、街頭演説などでリコール運動を支援してきた。その署名が不正だらけだったのだから、少なくとも2人には調査解明と説明の責任があるはずだ。 ところが、である。不正8割超という選管の発表にも、河村市長は「僕は被害者、怒りに震える」などと被害者ヅラ。高須院長にいたっては、今月1日、取材に対し「無効な署名には気付かなかった。票を増やそうとした人もいるかもしれないが、活動を妨害するため、わざと問題になる署名を書いた人がいるかもしれない」などと主張。その後も、ツイッターで選管や不正を報じるメディアを批判しまくっている。 〈一人の受任者は複数の署名を集めますから7万人しか有効な署名がなく、残りは全部不正署名だと言う選管の発表はおかしな話しだと思います〉 〈「不正署名の90%は同一人の筆跡」という発表をうけての答えです。そんな神業ができるのはこの世の人ではありません。〉 〈些細な記入記載の誤りも厳密に見つけて無効にしたに間違いありません〉(2月2日)〈選管は無効署名と発表していますが、不正署名と変換されて報道しています〉 〈悔しいです。「ほとんどが不正署名」と辱しめを受けて怒りに震えております〉(2月3日) さらに、高須院長は12日、何者かが運動を妨害するために偽の署名を紛れ込ませたなどとして、地方自治法違反容疑での告発状を名古屋地検に郵送した』、「河村市長」や「高須院長」の居直りは驚くべき破廉恥さだ。
・『高須院長が「印象操作のトリックがわかった」と言ったエクセルファイルは何の証拠にもならないもの 高須院長はもともと、昨年末に不正告発が相次いだときから、リコール潰しの策謀であるかのような主張を繰り返し、今年に入ってからも〈たぶん敵は「印象操作の刑事告発」をやってきます〉(1月29日)〈僕は大村愛知県知事リコールを統括する最高責任者です。正面から敵の攻撃と謀略を受け止め戦います。僕が全てを引き受けます〉(1月30日)と、悲劇のヒーロー気取りの闘争宣言を繰り返していた。 そして、選管が不正を発表したことで、こうした“陰謀論を駆使した闘争”をさらにエスカレートさせているということらしい。 しかし、高須院長の主張は議会襲撃を「ANTIFAの仕業だ!」と叫ぶトランプ支持者たちと同じで(そういえば、高須院長は〈愛知県は利権で繋がっている田舎のディープステートに完璧に支配されてる号泣〉ともツイートしていた)、ほとんど中身や根拠のない陰謀論だ。そのことを雄弁に物語っていたのが、4日に高須院長が開いた会見だった。 高須院長はこのところ、リコール潰し・陰謀の証拠を見つけたと言い出し、それを明らかにすると息巻いていた。 〈いま足跡を追って証拠を押さえつつあります。捕まえて刑事告訴します。〉(1月30日) 〈独自調査で大量不正署名のトリックの全貌が見えてきました。数日中に発表します。〉(2月2日) 〈調査報告のエクセルファイルを入手しました。印象操作のトリックがわかってきました。まもなく記者発表します。〉(2月3日) しかし、4日の会見では、「選管があら探しをした結果だ」「選管は無効を増やすのが仕事だと思ってやった」などと選管の調査に難癖をつけ、「誰かが、活動を傷物にしようと妨害したのだろう」「大村知事と津田大介は早くから不正が8割を超えることを知っていた」などと荒唐無稽な陰謀論を強調するだけで、「証拠」「トリックの全貌」は説得力のあるものを何ひとつ示すことができなかった。 ツイッターであれほど息巻いていた、トリックがわかったという「エクセルファイル」とやらについても、同席した自分たちの弁護士に否定される始末だった。 弁護士は「エクセルの表はですね、高須先生のツイッターを見ると、なんか秘密兵器みたいなことが書いてありますけど(笑)、そうじゃなくて」と半笑いでその重要性を否定。「受領書にある署名総数やナンバリングした番号とかを整理したもの」にすぎないと説明した。弁護士は「エクセルだから並べ替えができ」、どこの選管で多かったか傾向がわかるなどとも話していたが、高須院長はよくそんなもので「印象操作のトリックがわかってきました」などと言ったものだ』、「高須院長」は「トリックがわかったという「エクセルファイル」」、については、やがて真相がバレることは承知の上で、とりあえずその場しのぎのウソをついたようだ。
・『無効票の約4分の1は名簿に登録のない受任者が集めた署名だった しかも、会見では逆に運動事務局のずさんな実態が露わになる一幕もあった。 署名集めを担う「受任者」は自治体の選挙人名簿に登録されている必要があるが、無効票の約4分の1は名簿に登録のない受任者が集めた署名だった。同席した田中孝博事務局長によると、受任者はインターネットやはがきを通じて募集し資格の確認はしていなかったと明かしたのだ。これについても、高須院長は「リコールを成功させようと応募した人は、お互いを信じ合おうとの考えだった」と精神論でごまかすことしかできなかった。 しかも、会見の最後には、高須院長が病気を理由に撤退を宣言した後も率先して署名集めを続けていたという事務局関係者の実名をあげ、「大村知事から金をもらってる」「明確に敵」などと一方的に糾弾したのだ。 どうみても、説明責任を果たしているとはいいがたいが、しかし、今回のリコール不正をめぐっては、高須院長らの無責任な姿勢以外に問題はもうひとつある。 それは、こうしたリコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しないことだ。 地方都市のことだからと言い訳するかもしれないが、もっと小さい市町村の議員の細かい不祥事でもワイドショーはよく取り上げているし、それこそ高須院長の話題は「高須院長が全身がん告白」「高須院長がツイッターで○○にコメント」「高須院長が××を太っ腹支援」「高須院長が野党議員に抗議」などとしょっちゅう取り上げている。『バイキングMORE』(フジテレビ)や『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などは単なる近況報告のような特集をやることだってある。 しかし、この問題についてはほとんどのワイドショーやニュース番組がまったくと言っていいほど取り上げていない。そして、取り上げた数少ない報道も明らかに及び腰なのだ。 一体なぜか。ひとつはこのリコールが「あいちトリエンナーレ」の展示をめぐる歴史修正主義の動きと連動したものであることだろう。高須院長らを批判してネトウヨの攻撃を受けることを恐れている可能性もある。そして、もうひとつはやはり高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサーだからだろう』、いくら「高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサー」とはいえ、「リコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しない」という姿勢は社会の公器にあるまじきことだ。
・『『スッキリ』では高須院長に擁護的なコメントも 番組中に高須クリニックのCMが その構図が垣間見えたのが、1日放送の『スッキリ』(日本テレビ)だった。同番組はめずらしくこの問題を取り上げ、元受任者や勝手に名前を使われた地元議員の証言を紹介したのだが、同時に高須院長の「僕は不正が大嫌いですから。正々堂々と法律通りにやってる。不正とはまったく無関係」などという主張を放送。MCの加藤浩次や橋本五郎・読売新聞特別編集委員がこれを受けて「高須さんの名誉を考えたら、調べた上でちゃんとやるのが大事」「選挙管理委員会は説明が必要」などと、選管に苦言を呈したのだ。 いやいや、説明しなくてはいけないのは、高須氏のほうだろう。選管はすでに不正の告発を受け、異例の全数調査をし、その結果を発表している。いかにして不正が起きたかは刑事告発し捜査に委ねるか、署名を集めた人間のほうが説明する責任があるのは明白だ。 にもかかわらず「高須院長の名誉を守るために選管が説明しろ」という加藤や橋本。まさかこの人たちは、選管の管理のもと署名がなされたとでも勘違いしているのだろうか。あるいは選管へ提出後に不正が発覚したなどという陰謀論まがいのことが起きたとでも考えているのだろうか。 と首をひねっていたら、この日の『スッキリ』の合間にはなんと、おなじみの高須クリニックのCMが流れたのである。 この日の『スッキリ』で加藤らが高須院長に擁護的な発言をしたことが、番組中に高須クリニックのCMが流れたことと関係があるかどうかはわからないが、しかし、テレビ局がこの問題をまともに取り上げなかったり、両論併記的に高須院長の支離滅裂な言い分を垂れ流したりする背景に、高須院長がテレビ局にとって大スポンサーであるということが関係しているのは間違いないだろう。 実際、これまでも、ワイドショーは高須院長に対して、明らかに配慮しているとしか思えない報道を繰り返してきた。民進党(当時)の大西健介衆院議員が国会で美容整形CMを問題にした発言を名誉毀損で訴えた際、『ミヤネ屋』でコメンテーターが「名誉毀損に当たらない」旨の発言をしたことについて、高須院長は「明確な名誉毀損」などと猛抗議。問題のコメントはごく真っ当な指摘であり、そもそも論評にしかすぎず名誉毀損などあり得なかったにもかかわらず、『ミヤネ屋』は翌日の放送でひれ伏すように謝罪したこともある。高須院長のナチス礼賛発言が国際的な大問題になった際もまともに取り上げず、同時期に爆破予告されたことだけを取り上げたこともあった』、「『スッキリ』・・・MCの加藤浩次や橋本五郎・読売新聞特別編集委員がこれを受けて「高須さんの名誉を考えたら、調べた上でちゃんとやるのが大事」「選挙管理委員会は説明が必要」などと、選管に苦言を呈した」、みえみえの援護姿勢には驚かされる。
・『リコールを後押ししながら不正発覚にだんまりの百田尚樹、有本香、吉村知事 金を持っているためいくらでも裁判でも起こすことができるうえ、大スポンサーで、ネトウヨのファンもついている高須院長は、テレビにとっては一種のタブーになってしまっているのだ。 そのため、高須院長は、これまでも金の力を盾に、差別発言や歴史修正発言でも撤回も謝罪もなく開き直ってきた。 しかし高須院長は、ただの美容クリニック経営者ではなく、歴史修正主義、政権支持を盛んに発信しているきわめて政治的な存在だ。ましてや、今回のリコール運動では市民運動を率いて現実政治にコミットし、そこで前代未聞の不正が起きたのだ。言っておくが、リコールは単なるアンケートなどではなく、民主主義において選挙と同等の価値が置かれ、署名偽造には懲役刑も課される重大な違反だ。いくらスポンサーだからといって、このまま放置することは許されない。 いや、高須院長だけではない。いまは他人事を決め込んでいる百田尚樹氏、竹田恒泰氏、有本香氏らネトウヨ文化人や、吉村洋文・大阪府知事ら維新の会(ちなみに田中事務局長は維新の次期衆院選公認候補予定者でもある)など、この運動をバックアップしてきた連中の責任もきちんと追及すべきだろう』、「リコールは単なるアンケートなどではなく、民主主義において選挙と同等の価値が置かれ、署名偽造には懲役刑も課される重大な違反だ。いくらスポンサーだからといって、このまま放置することは許されない」。幸い捜査当局も捜査を開始したようだ。捜査の進展と、マスコミによる真相解明に期待したい。
次に、3月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「河井元法相が「無罪主張から一転」、買収を認めた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266751
・『2019年7月施行の参院選広島選挙区を巡る選挙違反事件で、公職選挙法違反(買収)の罪に問われた元法相の衆院議員、河井克行被告(58)は、東京地裁の公判で23日から始まった被告人質問で、これまでの無罪主張を撤回し、買収を認める姿勢に転じた。さらに「衆院議員を辞する」と表明、25日には大島理森衆院議長に辞職願を提出した。検察側の主張に対して一部に争いは残したものの、完全に白旗を上げた格好だが、狙いは何か、背景を探ってみた』、興味深そうだ。
・『選挙違反で「実刑」の前例はなし 「全般的に買収罪の事実は争わない」――。 参院選後の10月に妻の案里前参院議員(47)=辞職、有罪が確定=の秘書による疑惑が報じられ、法相を辞任。その後、自身に対する疑惑が浮上、逮捕、起訴され、公判でも一貫して買収の事実を否認していた河井被告。新聞やテレビの報道によると、被告人質問でこう述べたとされる。 20年8月25日に迎えた初公判で、案里氏とともに罪状認否で全面的に起訴内容を否認して以来、初めて自らの意思表示が可能となる被告人質問。どういうロジックで今後の公判を進めていくか、弁護人と綿密に調整してきたはずだ。その結果が、買収追認と議員辞職の表明だった。 これまでの検察側の主張を全面的に受け入れ、屈服した格好だが、これは誰の目にも、反省の意を示すことで情状酌量を取りに行ったというのは明らかだ。では、なぜここで方針転換したのだろうか。 いわゆる「識者」「評論家」と言われる方々がメディアで「実刑もあり得る」とコメントしたり、SNSなどで投稿したりしているが、実は国会議員が選挙違反事件で実刑判決を受けた例はこれまでない。 かつて当選した議員本人が選挙違反で立件されたのは、03年11月の衆院選を巡り公選法違反(買収)容疑で、愛知県警が自民党の近藤浩衆院議員(当時)、埼玉県警が新井正則衆院議員(同)をそれぞれ逮捕したぐらいだ。いずれも起訴されたが、執行猶予判決だった。筆者が調べた限り、55年にも公選法違反で有罪が確定し失職したケースはあるが、こちらも執行猶予だった(選挙違反は執行猶予でも判決確定で失職)。 日本の司法は「判例主義」と言われる。であれば前例踏襲で執行猶予となる可能性が高いのだから、判決が確定するまで国会議員としての歳費や手当を受け取り続ければいいのではないかという見方もできるが、今回は少し事情が違う』、「前例踏襲」とはいっても、買収金額がケタ違いに大きく、政治的影響力も大きいことを考慮すれば、「実刑」の可能性も否定できないだろう。
・『驚きの「仲間が欲しかった」 起訴状によると、河井被告は地元の議員や有力者100人に対し、計約2900万円を配ったとされる。筆者は全国紙社会部記者時代、国会議員に限らず政治家の選挙違反事件の解説記事などを執筆するため、過去のデータを調べたことが何度かあった。 記憶にある限り、被買収の人数と金額が「100人」「2900万円」までの数字は出てこない。そう、「判例」では判断できない「悪質さ」が審理され、判決に反映される可能性が高いのだ。識者や評論家が「実刑」の可能性に言及してもおかしくはない。 当初は河井被告が、自身の「名誉」「面子」のため、徹底抗戦の構えだったというのは理解できる。しかし、既に外堀が埋まっているのは認識しているはずであり、このまま突っ張ったら「囚人服」を着用する可能性があることを弁護人がサジェストしたかもしれない。 象徴的だったのは被告人質問2日目として報道された発言だ。 「長年、独りぼっちだった。地元政界に仲間が欲しかった」「当選7回目でも自民党広島県連会長になれず疎外感があった」「会長就任の布石として金を差し上げた」「主目的は私自身の孤立感の解消だった」 うーん、と唸った。案里氏を当選させるための「買収工作」の色を薄めるためなのか、動機を自身の広島県連における低評価や孤独に持って行った。「妻をだしに使い、申し訳なかった」とも言った。ある意味で本音の印象も受けるし、これならば「100%買収の意図」ではなく、裁判官に「自身の地位を上げるためで、選挙の意図がすべてではなかった」と訴える効果はある。 芝居がかってはいるが、親交のあるカトリックの神父から「神の前で誠実であることが大事。自分に向き合いなさい」と助言されたと語ったことも、心証としては悪くない。なかなかのテクニックと思う』、「なかなかのテクニック」とはさすが前法務大臣だ。
・『重罪も執行猶予の可能性 では、まだ続くとみられる公判だが、結論はどうなるのだろうか。 実は、河井被告が実刑になるかどうかは別として、有罪は揺るぎないとみられる。案里氏は単独行為ではなく、河井被告と共謀(共同正犯)したとして5件の罪に問われ、うち被買収とされた1人が公判で被買収の意図を否認し無罪となったが、4件については有罪とされたからだ。そして、この確定判決は河井被告の公判に反映されないはずがない。 つまり、既に詰んだのだ。 証人尋問で、金を受け取った関係者が「集票依頼と思った」「違法な金」などと述べた。被買収とされた人物が追認すれば、今回の事件は事実認定されるのだ。公判では被買収とされた100人のうち、94人が買収であったと認めた。 であれば、6件が無罪になる可能性はあるが、94件は有罪になる可能性が濃厚ということだ。 「判例」については前述した通りだが、被告人質問で買収を全面的に認める陳述をした23日、衆院議員バッジを着用していたのに、翌日24日、着けていなかったのは、情状酌量をアピールする意図があったのだろう。 では、結論として河井被告の司法的な処分は、どうなのるか。この記事を読んでいただいている方々の最大の関心だろうが、結論から言うと、筆者の予想では執行猶予が付く。 意外かもしれないが、刑事裁判というのはシンプルだ。検察側は「犯行は計画的で悪質、かつ重大で、民主主義の根幹を揺るがす行為」として懲役4年を求刑するだろう。 そして判決で裁判官は「犯行は悪質だが、反省している。議員を辞職し、既に社会的制裁を受けている」として、検察側の主張を追認し求刑通り懲役4年、執行猶予が最大の5年という流れになるはずだ。 しかし、夫妻は逮捕された20年6月以降、国会に出席していないが、毎月103万5200円と約628万円の期末手当、月額100万円の文書通信交通滞在費が支給されていた。国会議員としての職務を全うしていないのに、総額約2600万円を2人で5200万円を受領していたことになる。 日本国民には誰もが裁判を受ける権利がある。だから、この夫妻が推定無罪の上で裁判を受ける権利を有することは当然のことだ。司法の判断は「前例」を踏襲した然るべき結果になるだろう。 しかし、この1年数カ月、新型コロナウイルス感染拡大で日本国民の生活が困窮した。巨額の歳費と手当てを受け取っていたこの夫婦に、同情する日本国民がいるとは思えない』、「判決で裁判官は「犯行は悪質だが、反省している。議員を辞職し、既に社会的制裁を受けている」として、検察側の主張を追認し求刑通り懲役4年、執行猶予が最大の5年という流れになるはずだ」、「執行猶予」を得るために「議員を辞職」、とは頷ける。
第三に、2月15日付けYahooニュースが掲載した元東京地検特捜部検事で郷原総合コンプライアンス法律事務所代表弁護士の郷原信郎 氏による「政治資金規正法、「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20210215-00222620/
・『平成から令和に時代が変わっても、政治家、とりわけ国会議員の「政治とカネ」の問題は後を絶たない。「桜を見る会問題」では、安倍前首相側の地元有権者を集めた前夜祭の費用補填問題で、安倍氏の公設第一秘書が政治資金規正法違反で略式命令を受けた。河井克行元法務大臣とその妻の河井案里元参議院議員が、同議員の参議院議員選挙での、多額の現金買収で逮捕・起訴されたが、その多くは、広島県内の首長・地方議員等の政治家に渡されたものだった。 そして、その事件に関連して、鶏卵業界のドンと言われるアキタフーズ会長から、いわゆる農水族の国会議員が多額の現金を受領した事件が表面化、吉川貴盛元農水大臣は、大臣在職中に、大臣室等で500万円の現金を受領していた事件で在宅起訴された。 これらの「政治とカネ」をめぐる問題の多くで、「政治資金規正法違反」が、マスコミで取り上げられるが、実際に、法違反が処罰につながる例は少なく、そのことへの違和感が、国民の政治に対する不信を高めることにつながってきた。 私自身も、現職検事だった時代に、「政治とカネ」の問題に関する捜査に積極的に取り組んできた。1990年代末には、広島地検特別刑事部長として、県政界の政治家をめぐる事件の捜査に取り組んだ。2001年から2003年にかけての長崎地検次席検事時代も、公共工事をめぐる政治資金の流れに関する事件の捜査に取り組んだ。 その際、捜査の武器として政治資金規正法を積極的に活用してきた。しかし、この法律は、法律上の概念が曖昧である上に、法の性格や違反行為の要件が世の中に正しく理解されておらず、また、法による義務付けの内容と政治家の政治資金処理の実情とに大きな乖離があることなど、罰則適用に関して、様々な問題があった。そのような構造的な問題は、世の中に正しく理解されているとは到底言えない。 私自身の検察の現場での経験に基づき、「政治とカネ」問題の背景となっている政治資金規正法の構造的な問題を指摘し、抜本的な改革案を提示することとしたい』、「「政治とカネ」をめぐる問題の多くで・・・法違反が処罰につながる例は少なく、そのことへの違和感が、国民の政治に対する不信を高めることにつながってきた」、いつも腹立たしい思いをしてきた。
・『「ザル法」の真ん中に空いた“大穴” 「政治とカネ」の重大問題が発生する度に、政治家が世の中の批判を受け、政治家や政党自身が「その場凌ぎ」的に、議員立法で改正を繰り返してきたのが政治資金規正法だ。そのため、罰則は相当重い(最大で「禁錮5年以下」)が、実際に政治家に同法の罰則を適用して処罰することは容易ではない。それが「ザル法」と言われてきた所以である。 しかし、実は、政治資金規正法は、単に「ザル法」だというだけでなく、ザルの真ん中に「大穴」が空いているというのが現実だ。 「政治とカネ」の典型例が、政治家が、業者等から直接「ヤミ献金」を受け取る事例である。それは「水戸黄門」のドラマで、悪代官が悪徳商人から、「越後屋、おぬしも悪よのう」などと言いながら「小判」の入った菓子折りを受け取るシーンを連想させるものであり、まさに政治家の腐敗の象徴である。 しかし、国会議員の政治家の場合、「ヤミ献金」を贈収賄罪に問うのは容易ではない。そこでは、国会議員の職務権限との関係が問題となる。国会議員の法律上の権限は、国会での質問・評決、国政調査権の行使等に限られている。与党議員の場合、いわゆる族議員としての「政治的権力」を背景に、各省庁や自治体等に何らかの「口利き」をすることが多いが、その場合、「ヤミ献金」のやり取りがあっても、職務権限に関連しているとは言えず、贈収賄罪の適用は困難だ。 だからこそ政治資金規正法という法律があり、政治家が業者から直接現金で受領する「ヤミ献金」こそ、政治資金規正法の罰則で重く処罰されるのが当然と思われるであろう。しかし、実際には、そういう「ヤミ献金」の殆どは、政治資金規正法の罰則の適用対象とはならない。「ザル法」と言われる政治資金規正法の真ん中に「大穴」が空いているのである。 政治資金規正法は、政治団体や政党の会計責任者等に、政治資金収支報告書への記載等の政治資金の処理・公開に関する義務を課すことを中心としている。ヤミ献金の授受が行われた場合も、その「授受」そのものが犯罪なのではない。献金を受領しながら政治資金収支報告書に記載しないこと、つまり、そのヤミ献金受領の事実を記載しない収支報告書を作成・提出する行為が不記載罪・虚偽記入罪等の犯罪とされ、処罰の対象とされているのである。 国会議員の場合、個人の資金管理団体のほかに、代表を務める政党支部があり、そのほかにも後援会など複数の政治団体があるのが一般的だ。このような政治家が、企業側から直接、現金で政治献金を受け取ったのに、領収書も渡さず、政治資金収支報告書にもまったく記載しなかったという場合に、政治資金規正法の罰則を適用するためには、どの政治団体・政党支部宛ての献金かが特定されないと、どの「政治資金収支報告書」に記載すべきなのかがわからない。 もし、その献金が政治家「個人」に宛てた「寄附」だとすれば、「公職の候補者」本人に対する寄附は政治資金規正法で禁止されているので(21条の2)、その規定に違反して寄附をした側も、寄附を受け取った政治家本人も処罰の対象となる。しかし、国会議員たる政治家の場合、資金管理団体・政党支部等の複数の「政治資金の財布」がある。その献金がそれらに宛てた寄附だとすれば、その団体や政党支部の政治資金収支報告書に記載しないことが犯罪となる。いずれにせよ、ヤミ献金を政治資金規正法違反に問うためには、その「宛先」を特定することが不可欠なのである。 しかし、政治家が直接現金で受け取る「ヤミ献金」というのは、「裏金」でやり取りされ、領収書も交わさないものだからこそ「ヤミ献金」なのであり、受け取った側が、「・・・宛ての政治資金として受け取りました」と自白しない限り、「宛先」が特定できない。「ヤミ献金」というのは、それを「表」に出すことなく、裏金として使うために受け取るのであるから、政治家個人宛てのお金か、どの団体宛てかなどということは、通常、考えていない。結局、どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが「ヤミ献金」である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できず、刑事責任が問えないことになるのだ』、「どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが「ヤミ献金」である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できず、刑事責任が問えないことになるのだ」というのでは、確かに「「ザル法」の真ん中に空いた“大穴”」というのは言い得て妙だ。
・『「金丸5億円ヤミ献金問題」での「上申書決着」 平成に入って間もない90年代初頭、検察に対する世の中の不満が爆発したのが、1992年の東京佐川急便事件だった。この事件では、東京佐川急便から多数の政治家に巨額の金が流れたことが報道され、同社の社長が特別背任罪で逮捕されたことで大規模な疑獄事件に発展するものとの期待が高まった。しかし、いくら巨額の資金が政治家に流れていても、国会議員の職務権限に関連する金銭の授受は明らかにならず、結局、政治家の贈収賄事件の摘発は全くなかった。 そして、佐川側から5億円のヤミ献金を受領したことが報道され、衆議院議員辞職に追い込まれた自民党経世会会長の金丸信氏が政治資金規正法違反に問われたが、東京地検特捜部は、その容疑に関して金丸氏に上申書を提出させ、事情聴取すらせずに罰金20万円の略式命令で決着させた。 検察庁合同庁舎前で背広姿の中年の男が、突然、「検察庁に正義はあるのか」などと叫んで、ペンキの入った小瓶を建物に投げ、検察庁の表札が黄色く染まるという事件があったが、それは多くの国民の声を代表するものだった。東京佐川急便事件における金丸氏の事件の決着は、国民から多くの批判を浴び、「検察の危機」と言われる事態にまで発展した。 しかし、政治家本人が巨額の「ヤミ献金」を受領したという金丸氏の事件も、政治資金規正法の罰則を適用して重く処罰すること自体が、もともと困難だった。 当時は、政治家本人に対する政治資金の寄附自体が禁止されているのではなく、政治家個人への寄附の量的制限が設けられているだけだった。しかも、その法定刑は「罰金20万円以下」という極めて低いものであった。しかも、そのヤミ献金が「政治家本人に対する寄附」であることを、本人が認めないと、その罰金20万円以下の罰則すら適用できない。そのような微罪で政治家を逮捕することは到底無理であり、任意で呼び出しても出頭を拒否されたら打つ手がない。そこで、弁護人と話をつけて、金丸氏本人に、自分個人への寄附であることを認める上申書を提出させて、略式命令で法定刑の上限の罰金20万円という処分に持ち込んだのであった。 検察の行ったことは何も間違ってはいなかった。政治資金収支報告書の作成の義務がない政治家本人への献金の問題について極めて軽い罰則しか定められていなかった以上、検察が当時、法律上行えることは、その程度のものでしかなかった。しかも、それを行うことについて、本人の上申書が不可欠だったのである。 金丸ヤミ献金事件の後、政治資金規正法が改正されて、「政治家本人への寄附」が禁止され、「一年以下の禁錮」の罰則の対象となった。しかし、政治家本人が直接受領したヤミ献金については、違法な個人あての献金か、あるいは団体・政党支部宛ての献金かが特定できないと、政治資金規正法違反としての犯罪事実も特定できず、適用する罰則も特定できないという、「政治資金規正法の大穴」は解消されておらず、その後も、政治家個人が「ヤミ献金」で処罰された例はない。 2009年3月、民主党小沢一郎代表の公設第一秘書が、収支報告書に記載された「表」の献金に関する政治資金規正法違反(他人名義の寄附)の容疑で東京地検特捜部に逮捕された際に、西松建設の社長が、自民党の二階俊博議員側に「ヤミ献金」をしていたこと、そのうちの一部は二階氏に直接手渡されていたという「年間500万円の裏金供与疑惑」が報じられた。しかし、刑事事件としての立件には至らなかった。 また、吉川元農水大臣の事件でも、アキタフーズ会長から、農水大臣在任中に500万円を受領したほかに、大臣在任中以外の期間にも合計1300万円の現金を受領していた事実が報じられている。これも、政治家本人が直接受領した「ヤミ献金」のはずだが、刑事事件として立件され、起訴されたのは、大臣在任中の500万円だけであり、それ以外は刑事立件すらされていない。 それは、政治家側に直接裏金による政治献金が渡った場合に、政治資金規正法違反で立件・処罰することができないという、「政治資金規正法の大穴」によるものなのである』、「政治資金規正法」は議員立法で、議員たちがアリバイ作りのためにお茶を濁したものらしい。
・『「ヤミ献金」が刑事事件化された事例 一方、ヤミ献金が刑事事件として立件され処罰された事例がある。 その初の事例となったのが、私が長崎地検次席検事として捜査を指揮した2003年の「自民党長崎県連事件」(拙著【検察の正義】(ちくま新書)「最終章 長崎の奇跡」)である。 この事件では、自民党長崎県連の幹事長と事務局長が、ゼネコン各社から、県の公共工事の受注額に応じた金額の寄附を受け取っていた。そして、幹事長の判断で、一部の寄附については、領収書を交付して「表の献金」として収支報告書に記載して処理し、一部は「裏の献金」として、領収書を交付せず、政治資金収支報告書にも記載しなかった(この「裏の献金」が、幹事長が自由に使える「裏金」に回されていた)。 この事件では、正規に処理される「表の献金」と同じような形態で「裏の献金」が授受されていたので、「自民党長崎県連宛ての寄附」として収支報告書に記載すべき寄附であるのに、その記載をしなかったことの立証が容易だった。「ヤミ献金」事件を、初めて政治資金収支報告書の虚偽記入罪(裏献金分、収入が過少記載されていた事実)で正式起訴することが可能だったのである。 2004年7月には、日本歯科医師会から平成研究会(橋本派)に対する1億円の政治献金に対して、橋本派側が幹部会で領収書を出さず収支報告書に記載しないことを決めた事実について、政治資金規正法違反(収支報告書の虚偽記入)の罰則を適用され、村岡兼造元官房長官と平成研の事務局長が起訴された。この事件も、平成研という政治団体に対する寄附であることが外形上明白で、それについて領収書を交付するかどうかが検討された末に、領収書を交付しないで「裏の献金」で処理することが決定されたからこそ、政治資金規正法違反の罰則適用が可能だったのである。 これらのように、「ヤミ献金」を政治資金規正法違反に問い得る事例というのは稀であり、政治家本人が直接現金を受け取るような事例には、政治資金規正法の罰則は全く歯が立たないという深刻な現実を理解する必要がある』、「「ヤミ献金」を政治資金規正法違反に問い得る事例というのは稀であり、政治家本人が直接現金を受け取るような事例には、政治資金規正法の罰則は全く歯が立たないという深刻な現実を理解する必要がある」、なるほど。
・『政治資金の逐次処理の実効性に関する問題 もう一つの問題は、政治資金についての収入・支出の透明化に関して、政治資金規正法上は、「会計帳簿の作成・備付け」と「7日以内の明細書の作成・提出」が義務付けられ、政治資金処理の迅速性が求められているが、ルールが形骸化しているということである。 政治資金規正法は、政治団体・政党等の会計責任者等に、各年分の政治資金収支報告書の作成・提出を義務付けているが、それに関して、収支報告書とほぼ同一の記載事項について、会計帳簿の作成・備付けを会計責任者等に義務付けるとともに、「政治団体の代表者若しくは会計責任者と意思を通じて当該政治団体のために寄附を受け、又は支出をした者」に対して、会計責任者への明細書の提出を義務付けている。 つまり、会計責任者は年に1回、政治資金収支報告書を作成・提出するだけでなく、その記載の根拠となる会計帳簿を、政治団体・政党等の事務所に常時備え付けている。これは、記載事項となる政治資金の収支が発生する都度、会計帳簿に記載することを前提としている。そして、会計責任者が知らないところで収支が発生することがないよう、政治団体の代表者等が、寄附を受けたり、支出をしたりした場合に、7日以内に明細書を作成して会計責任者に提出することを義務付けていて、会計責任者等が、その明細書に基づいて会計帳簿への記載をすることができるようにしている。 これは、政治資金の収支を発生の都度、逐次処理することを求める規定なのであるが、実際には、このような明細書の作成・提出の期限に関するルールは形骸化し、会計帳簿の記載、明細書の作成は、収支報告書の作成の時期にまとめて行われているようである。 逐次・迅速に収支を把握して処理する政治資金規正法のルールは、その記録化についてのルールがないために、収支報告書の作成・提出と併せてまとめて会計帳簿、明細書の処理をしても、提出する収支報告書上は証拠が残らず、明細書の提出義務違反等で処罰されることもない。それが、逐次・迅速処理のルールの形骸化につながっているのである』、由々しい問題だ。
・『安倍事務所における政治資金と個人資金の混同 安倍晋三前首相は、「桜を見る会」前夜祭での費用補填問題に関して、 私の預金からおろしたものを、例えば食費、会合費、交通費、宿泊費、私的なものですね。私だけじゃなくて妻のものもそうなんですが、公租公課等も含めてそうした支出一般について事務所に請求書がまいります。そして事務所で支払いを行いますので、そうした手持ち資金としてですね、事務所に私が合わせているものの中から、支出をしたということであります。 つまり、安倍事務所では、安倍氏の個人預金から一定金額を預かって、安倍夫妻の個人的な支出についても支払をしており、そのような個人預金から、後援会が主催する前夜祭の費用補填の資金を捻出したと説明したのである。 しかし、安倍氏の個人預金が補填の原資だと説明すると、安倍氏個人による公職選挙法の寄附の禁止に違反することになりかねない。そこで、補填は、秘書が無断で行ったと弁解するとともに、もう一つの補填の正当化事由として「専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会に関し必要やむを得ない実費の補償」は、公選法が禁止する寄附に当たらないという理屈を持ち出してきたのである。 会場費の支出が寄附に当たらないとすると、「政治上の主義」や「政治教育」のためということになるので、当然、「政治資金としての支出」のはずだ。それを、安倍氏個人の資金から支出していたということは、安倍事務所においては、政治資金と安倍氏個人の資金が混同して処理されていたということなのである。 政治資金規正法の会計帳簿と明細書に関するルールから言えば、本来、政治献金や党からの交付金等の政治に関する収入と、安倍氏の個人資金とは明確に区別すべきであり、政治資金としての支出をした場合には、7日以内に会計責任者に明細書を提出し、それについて会計帳簿の記載が行われることになるはずだ。 ところが、前首相の安倍氏の事務所においてすら、政治資金の逐次・迅速処理のルールは守られず、政治資金と個人資金が混同されて処理されていた。おそらく、多くの国会議員の政治家が同様の政治資金処理を行っているのであろう。 このようなことがまかり通るのは、政治資金規正法で、会計帳簿の備付・記載と明細書の作成・提出が義務付けられているのに、開示されるのが年に1回提出される政治資金収支報告書だけなので、法の趣旨どおりに逐次記載されているのか、収支報告書提出時にまとめて記載しているのかを、証拠上確認する手立てがないからである』、「前首相の安倍氏の事務所においてすら、政治資金の逐次・迅速処理のルールは守られず、政治資金と個人資金が混同されて処理されていた」、恐るべきズサンさだ。
・『河井夫妻多額現金買収事件における政治資金と選挙資金の混同 河井夫妻が買収(公選法違反)とされて逮捕・起訴された事実の多くは、2019年4月頃、つまり、選挙の3か月前頃から、広島県内の議員や首長などの有力者に、参議院選挙での案里氏への支持を呼び掛けて多額の現金を渡していたというものだ。 従来は、公選法違反としての買収罪の適用は、選挙運動期間中やその直近に、直接的に投票や選挙運動の対価として金銭等を供与する行為が中心であり、選挙の公示・告示から離れた時期の金銭の供与が買収罪として摘発されることはあまりなかった。 このような「選挙期間から離れた時期の支持拡大に向けての活動」というのは、選挙運動というより、政治活動の性格が強く、それに関して金銭が授受されても、政治資金収支報告書に記載されていれば、それによって「政治資金の寄附」として法律上扱われ、公選法の罰則は適用しないというのが一般的な考え方であった。 しかし、公選法上は、「当選を得る(得しめる)目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益を供与する」ことで違反が成立する。県政界有力者も「選挙人」であり、「案里氏を当選させる目的」で「供与」した以上、形式的には違反が成立することは否定できないように思える。問題は、形式的には違反に該当しても、「政治資金の寄附」として合法化される余地があるかどうかだ。ここで重要なのは、河井夫妻の場合、現金で供与したから買収になるように言われているが、そうではないということだ。仮に、銀行振込であったとしても、使途を限定せずに提供するのであれば「供与」であることに違いはない。 結局、問題は、その「供与」が「政治活動」のためか、「選挙運動」のためか、ということである。事後的に、政治資金か選挙資金かが問題にならないようにするためには、政治活動とそのための政治資金の支出が、政治資金の処理を通じて明確に区別され、収支が発生した時点で、明細書や会計帳簿に政治資金として記載されることが必要だ。しかし、既に述べているように、会計帳簿の備付・記載、明細書の提出という、政治資金の逐次処理のルールは形骸化しており、年に1回の政治資金収支報告書の提出の時点までは、選挙資金と政治資金とが明確に区別されないまま処理されることがあり得る。 実際に、河井夫妻の公選法違反事件では、家宅捜索等の強制捜査が行われたのは、2020年1月であり、この時点では、2019年分の政治資金の収支については、政治資金収支報告書の提出期限の前だった。河井夫妻から現金を受領した広島県内の首長・議員の中には、家宅捜索を受けた後に提出した政治資金収支報告書に、河井夫妻からの寄附の受領を記載した者もいるようだ。 政治資金の1年分一括処理が事実上許されていることが、政治資金と選挙資金の区別を曖昧にし、それが、政治活動と選挙運動の境目が不明確になることの背景にもなっている』、なるほど。
・『「政治とカネ」問題根絶のための“2つの提言” 以上述べてきたように、現行の政治資金規正法には、政治資金透明化という法目的に著しく反する政治家個人が直接受領する「ヤミ献金」に対して罰則適用できないこと、政治資金の逐次処理のルールが形骸化していること、という二つの大きな問題があり、それが「政治とカネ」の問題が後を絶たないことの背景となっている。 そこで、このような状況を抜本的に是正する方法として、国会議員についての政治資金収支報告書の「総括化」と、会計帳簿・明細書のデジタルデータの「法的保存義務化」を導入してはどうか。 まず、政治資金規正法は、国会議員について、「国会議員関係政治団体」、すなわち、従来の資金管理団体・政党支部等の国会議員と密接な関係を有する政治団体について、1万円以上の支出の使途の公開、登録政治資金監査人による監査の義務付け、1円以上の領収書の開示が義務付けられているが(19条の7)、「国会議員関係政治団体」を含めて、当該国会議員の政治活動に関連する政治資金の収支を総括する「国会議員政治資金収支総括報告書」の作成提出を、義務付けるのである。それによって、当該国会議員たる政治家が、業者から、特定の団体・政党支部への紐づけが明確になっていない献金を受領した場合も、その総括報告書には記載しなければならないことになる。 政治資金収支総括報告書の作成・提出については、当該国会議員が、「総括会計責任者」を選任し、総括報告書を作成・提出させる。国会議員が、政治資金の寄附を受けた際には、7日以内に、その旨を記載した明細書を総括会計責任者に対して提出しなければならないと規定するのである。 これにより、政治家本人が「政治資金」と認識して受領したのに、会計責任者に明細書を提出せず、総括報告書に記載しない場合であれば、政治資金収支総括報告書不記載罪の罰則が適用できることになる。それによって、国家議員たる政治家個人が直接「ヤミ献金」を受領した場合に、政治家個人宛てか団体、政党支部宛てかが特定できないために処罰することができないという「政治資金規正法の大穴」は塞がれることになる。 もう一つは、政治資金規正法上の備付けを義務付けられた会計帳簿と、7日以内の作成・提出を義務付けられている明細書について、データの作成日が記録されたデジタルデータの保存と政治資金収支報告書に添付して提出することを義務付けることである。それによって、政治資金の収入、支出について、7日以内には必ず明細書を提出し、会計帳簿に記載しなければならないことになり、処理を未定にしておいて、政治資金収支報告書を作成・提出する時期に、政治資金と個人資金の振り分けや、政治資金と選挙資金等の振り分けを決める一括処理は違法となる。 もっとも、実際の政治資金の収支の中には、発生した時点では、どの団体・政党支部に帰属させるかが判然としないものも少なくないものと思われる。そこで、従来の各団体・政党支部ごとの会計帳簿とは別に、当該国会議員に関連する政治資金の収支であることは間違いないが、帰属先が定まっていない収支を含めて記載する「総括会計帳簿」の備付け・記載を会計責任者に義務付けることにする。「総括会計帳簿」に記載しておけば、収支の具体的な帰属先は、個別の政治資金収支報告書の作成・提出時までに確定させればよいことにする。それでも、政治資金としての収支であることは、収支が発生した時点で、個人の収支や、選挙に関する収支とは区別して、総括会計帳簿に明確に記載されることになる。 それによって、政治資金の処理が、迅速に収支の都度逐次行われることになり、政治資金・選挙資金・個人資金の相互の関係を明確にすることも可能となる』、「総括会計責任者」、「総括会計帳簿」はいいアイデアだ。
・『真の「政治資金の透明化」を 政治資金規正法が基本理念とする「政治資金の収支の公開」は、健全な政治活動と民主主義の基盤を確保していくために不可欠なものである。しかし、法律のルールと現実の政治資金処理の実態との間に大きな乖離があって「違法行為」が恒常化している場合、その中の特定の違法行為だけが取り上げられると、「魔女狩り」的な不毛な中傷・告発合戦の常態化を招くことになる。 現実的に可能な政治資金処理のルールを構築することで、通常の政治資金の処理を行っていれば「政治とカネ」の問題で騒がれることがなく、意図的に政治資金処理のルールに反して政治資金を不透明化したり、私物化したりした事例だけが厳正な処罰の対象になるということにしていく必要がある。 まず、国会議員について、政治資金規正法における政治資金処理のルールを、現実的かつ実効性のあるものに改善する必要がある。それが「政治とカネ」の問題を根絶し、真の「政治資金の透明化」を実現することにつながるのではないだろうか』、議員立法である限り、自分たちの自由を束縛するものは避けようとするだろう。法務省の所管にして、法制審議会などに委ねるのが最も有効なのではあるまいか。
タグ:日本の政治情勢 (その54)(リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM、河井元法相が「無罪主張から一転」 買収を認めた理由、政治資金規正法 「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか) litera 「リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM」 愛知県の大村秀章知事のリコール署名 約43万人分の署名約83%に不正の疑い 「河村市長」や「高須院長」の居直りは驚くべき破廉恥さだ。 「高須院長」は「トリックがわかったという「エクセルファイル」」、については、やがて真相がバレることは承知の上で、とりあえずその場しのぎのウソをついたようだ。 いくら「高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサー」とはいえ、「リコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しない」という姿勢は社会の公器にあるまじきことだ 「『スッキリ』 MCの加藤浩次や橋本五郎・読売新聞特別編集委員がこれを受けて「高須さんの名誉を考えたら、調べた上でちゃんとやるのが大事」「選挙管理委員会は説明が必要」などと、選管に苦言を呈した」、みえみえの援護姿勢には驚かされる 「リコールは単なるアンケートなどではなく、民主主義において選挙と同等の価値が置かれ、署名偽造には懲役刑も課される重大な違反だ。いくらスポンサーだからといって、このまま放置することは許されない」。幸い捜査当局も捜査を開始したようだ。捜査の進展と、マスコミによる真相解明に期待したい ダイヤモンド・オンライン 戸田一法 「河井元法相が「無罪主張から一転」、買収を認めた理由」 「前例踏襲」とはいっても、買収金額がケタ違いに大きく、政治的影響力も大きいことを考慮すれば、「実刑」の可能性も否定できないだろう 「なかなかのテクニック」とはさすが前法務大臣だ 「判決で裁判官は「犯行は悪質だが、反省している。議員を辞職し、既に社会的制裁を受けている」として、検察側の主張を追認し求刑通り懲役4年、執行猶予が最大の5年という流れになるはずだ」、「執行猶予」を得るために「議員を辞職」、とは頷ける yahooニュース 郷原信郎 「政治資金規正法、「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか」 「政治とカネ」をめぐる問題の多くで 法違反が処罰につながる例は少なく、そのことへの違和感が、国民の政治に対する不信を高めることにつながってきた」、いつも腹立たしい思いをしてきた。 「どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが「ヤミ献金」である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できず、刑事責任が問えないことになるのだ」というのでは、確かに「「ザル法」の真ん中に空いた“大穴”」というのは言い得て妙だ 「政治資金規正法」は議員立法で、議員たちがアリバイ作りのためにお茶を濁したものらしい。 「「ヤミ献金」を政治資金規正法違反に問い得る事例というのは稀であり、政治家本人が直接現金を受け取るような事例には、政治資金規正法の罰則は全く歯が立たないという深刻な現実を理解する必要がある 政治資金の逐次処理の実効性に関する問題 「前首相の安倍氏の事務所においてすら、政治資金の逐次・迅速処理のルールは守られず、政治資金と個人資金が混同されて処理されていた」、恐るべきズサンさだ 「政治とカネ」問題根絶のための“2つの提言” 「総括会計責任者」、「総括会計帳簿」はいいアイデアだ 真の「政治資金の透明化」を 議員立法である限り、自分たちの自由を束縛するものは避けようとするだろう。法務省の所管にして、法制審議会などに委ねるのが最も有効なのではあるまいか。