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日本の外交政策(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果) [外交]

日本の外交政策については、昨年10月16日に取上げた。今日は、(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果)である。

先ずは、本年3月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した立命館アジア太平洋大学(APU)学長の 出口 治明氏による「出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は、世界に3つだけ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/022500177/
・『「知の巨人」と呼ばれる出口治明さんが、「教養としての地政学」を、分かりやすい言葉で説き起こすシリーズ連載。 第1回の前々回と、第2回の前回は、「地政学」の定義と枠組みを振り返った。 今回からは、日本が今、国際社会のなかで置かれている現実を、出口さんが地政学的に解説する。日本列島の地理的な特殊性に、経済規模などを加味すると、「日本が実効性のある軍事同盟を結べる国は、世界に3つしかない」と喝破する。その3カ国とはどこ? そして、なぜ? 出口さんの新刊『教養としての「地政学」入門』の刊行を記念した企画。 日本は島国です。そのため陸上の国境で接している隣国はありません。海を経て接しているのは、太平洋を挟んで遠い向こう側にあるアメリカとカナダを除けば、ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾という、四カ国とひとつの地域です。 このうち、北朝鮮とは正式の国交が成立していません。加えて残りすべての国や地域と領土上の懸案を抱えています。ロシアとは北方領土、韓国とは竹島、中国や台湾とは尖閣諸島です。 日本の置かれている現状は、住宅地に家を買ったけれど、向こう三軒両隣との境界線争いを同時に背負い込んでしまった。そういう状況です。これでは落ち着けませんよね。 世界史的に見れば、周囲の国とトラブルを抱えていたら、せめて一カ国か二カ国とは仲良くしようと考えるのが普通です。それが常識的な発想です。 けれど、日本は五軒のお隣さんと角(つの)を突き合わせているのに、平然としているように見えます。 それはなぜなのか? おそらく少し離れてはいるけれど太平洋の向こう側にアメリカという世界最強国家があって、そこと軍事同盟を結んでいるから、そのことが大きな安心材料になっているのでしょう』、「日本」が隣接する北朝鮮を除く三カ国とひとつの地域と「領土上の懸案を抱えています」、確かに不安定だが、海が隔てているのがせめてもの幸いだ。ただ、陸で接している多くの国は、隣の国とは国境問題を抱えるケースは多いのではなかろうか。
・『隣国すべてと火種を抱える日本は、異常である  しかし周囲のすべての国と火種を抱えている現実は、ただならぬ事態だと、まともに受け止める必要があります。アメリカの存在に頼りすぎて、現実のトラブルを軽視するのは危険ですし、そもそもアメリカが永遠に強力な同盟相手であり続けるのかどうかは、神のみぞ知ることですから。 そのことをクールに認識することから、今日の日本における地政学は始まるのだ、と考えざるを得ません。 世界地図を南半球を上にして、ユーラシア大陸と日本列島、そして太平洋との位置関係を眺めてみてください。 ロシアや中国の立場に立ってみると、海路で太平洋に出ようとしたら、日本列島がとてつもなく邪魔な存在になっていることが一目瞭然です。日本列島から沖縄まで続く南西諸島が、連続して太平洋への出口をふさいでいる形となっています。 このような場所に存在することが、日本の地政学的な特徴を形成してきました』、確かにロシアや中国にとっては、「日本」は太平洋に出る際の邪魔な存在なのだろう。
・『日本列島は実に絶妙な位置にある  ロシアや中国を封じ込めようとしたら、日本列島の有する戦略的な位置は絶妙です。 東西対立から冷戦の時代、まさに日本列島が西側の不沈空母の役割を果たしていたのは記憶に新しいところです。日本列島に資源と呼ぶべきものは、ほとんどありません。例えば産業革命の三要素と呼ばれている化石燃料も鉄もゴムもありません。日本の特徴といえるのは、ユーラシア大陸の東側に障害物のように存在する列島である――それがすべてです。 ですから日本という国を、地政学的な現実だけから定義づけると、次のようになるのではないでしょうか。 「周辺の国々のすべてとトラブルの火種を抱えている歴史上稀(まれ)な国で、ロシア、中国という大陸の二大国家が太平洋に出ていく障害となる、絶妙な位置に列島が連なっている島国である」 日本は国内総生産(GDP)で見れば、世界三位もしくは四位の経済大国です。四位というのは購買力平価で計算するとインドに負けているからです。名目では三位です。 このように日本は経済的にはとても大きな国です。ということは、潜在的には軍事大国になる可能性を持っているのですね。自衛隊は高性能の航空機や艦艇をたくさん所有しています。その軍事力は相当に強大です。 ローマ時代の政治家であり哲学者だったキケロ(BC106―BC43)は、「戦争とは金だ」と一言でその本質を喝破しています。総力戦の時代に入った今日では、長い目で見ると経済力に勝る国が戦争に勝ちます。兵士に食べさせる食料も、一丁の小銃も、すべてお金がなければ買えません。 それでは日本が、どこかの国と軍事同盟を結ぶとしたら、可能性のある国はどこでしょうか』、「戦争とは金だ」とは言い得て妙だ。
・『自分より貧しい国に、助けを求めるのか?  経済的にも軍事的にも、日本は小国ではありません。かなり大きい国です。大きい国を守るのですから、同盟相手の国は日本より小さい国では不可能です。日本より貧しい国に「守ってくれ」といったらどうなるか。「じゃあ、お金をくれ」という話になるしかありません。発展途上国や日本より小さい国との同盟で、日本の安全保障を求めることは難しいのです。 そのように考えていくと、実効性のある軍事同盟を結べる国は、世界に三つしかないということがわかります。 アメリカ、中国、欧州連合(EU)です。 EUを構成する国々は小さいのですが、全体としての経済規模は、さほどアメリカに劣りません。また、日本は日英同盟の経験がありますから、ヨーロッパと同盟関係を結ぶことも決して唐突ではありません。 経済力と軍事力において自国と同等以上の水準を有する国をパートナーに選ばないと、安全保障条約を結んでも実効性を欠くことになりがちです。大国になると、理想的なパートナーを探すことはかなり難しくなってくるのです』、小国からみれば贅沢な悩みなのかも知れない。

次に、4月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「ミャンマー、ウイグル、香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応」を紹介しよう。
・『「対話と協力」が基本の日本 「制裁」アプローチには一線画す  ミャンマーでは軍事クーデターに対する抗議デモへの治安当局の発砲などの呵責なき弾圧で数百人が死亡し、新疆ウイグル自治区では、米国が「ジェノサイド(集団殺害)」と呼ぶウイグル族への弾圧に国際社会の批判が高まっている。 香港では「一国二制度」の下で認められてきた高度な自治が損なわれ、自由が抑圧される「香港の中国化」が進んでいる。 米国のバイデン大統領は民主党の伝統的な人権外交を進め、日米首脳会談でも日本に中国の人権問題に対する協調を求めた。 日本はこれまで、欧米諸国の「制裁」アプローチとは一線を画し、ODA(政府開発援助)などを使って「対話と協力」で相手国政府に向き合うことを基本にしてきた。 人権の侵害に対して国家としてどう対処するか、改めて日本社会でも議論を深める必要がある』、「改めて日本社会でも議論を深める必要がある」、今さら「議論を深める」のではなく、行動が求められている筈だ。
・『戦後、対照的な道を歩んだ日独 日本の人権外交の背景にあるもの  人権の侵害にどう対応するかでは、ともに第二次世界大戦の敗戦国であり、人権の侵害で厳しく糾弾されたドイツと日本では対照的な道をたどった。 1990年代後半、ドイツが憲法の解釈を変更し、敗戦後初めて、連邦軍の海外派遣を決定したきっかけは、ユーゴ紛争だった。 コソボでアルバニア系の人々がセルビアにより虐殺された問題で、ドイツは初めてNATOの空爆に参加した。NATOの介入は国連の決議なく行われ、先導した米国のクリントン大統領は「人道的介入」と呼んだ。 ドイツはその後もアフガニスタンなどにNATOの一員として軍の派遣に参加している。 ドイツにとっては、ナチスの非人道的な行為に対する反省に立てば、近隣のコソボで人道に対する犯罪が行われているのに、黙視するわけにはいかないという意識が、長い間、海外で軍事的役割を果たすことに慎重だったドイツの殻を破ったといえる。 一方で日本は、戦闘目的での自衛隊の海外派遣は認められないとの憲法解釈を堅持し、もともと他国の人権問題に口を出すことには相当慎重な態度をとってきた。 特に中国など近隣諸国の人権問題には慎重だ。 これにはいくつかの理由が挙げられる。第一には、やはり戦前の日本軍の行動が中国や韓国、東南アジアの国々に爪痕を残し、日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある。 国際社会が協調して制裁を科す場合には同調することは多いが、制裁が問題を解決するとは考えているわけではないこともある。 従って制裁よりも対話による解決を目指してきた。中国の天安門事件の後、真っ先に制裁解除に踏み切ったのは日本だった。 国際社会でも、著しい人権侵害があり人道上の危機に際してどういう行動をとるべきかについては、これまでもさまざまな議論が行われてきた。 国連では、自国民を保護する責任はその国家が負うべきものだが、その責任を果たせない国家については、国際社会がそれらの人々を「保護する責任」が国連決議でも成立している。 しかし、コソボ紛争やソマリア内戦でも多くの犠牲者を出したように、いかに人道的介入といっても紛争解決をもたらすのは容易なことではない。 むしろ泥沼化する危険性を秘めており、国際社会が「保護する責任」を具体化するのは容易ではない』、「日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある」、言い訳に過ぎないと思う。
・『北朝鮮には圧力と対話 ミャンマーは粘り強く説得を  日本は具体的な人権問題にどう行動するのか。 北朝鮮による日本人拉致事件は、日本の国家主権が侵害され個人の人権が著しく侵害された事例だ。 だがこの問題は対話のみで解決が図れるわけではない。 北朝鮮が拉致を認め謝罪し、被害者を帰国させた背景には米国などの強い圧力があったことも事実だろう。 2001年に発足した米国ブッシュ政権は「ネオコン」と呼ばれた保守勢力の力が強く、イラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、アフガニスタンのアルカイダ勢力の掃討に乗り出すなど、「ならず者国家は武力で崩壊させる」ことを実践していった。 北朝鮮は自国が攻撃される危機と考え米国の緊密な同盟国である日本との関係改善に利益を見いだしたのだろう。 さらに日朝の交渉で日本との関係正常化に伴う経済援助など、拉致問題解決が北朝鮮にも利益をもたらす「ウィン・ウィン」の絵を描いたことが、北朝鮮を動かしたのだと思う。 対北朝鮮の問題では背後に圧力があるという形が対話で結果を生みやすいといえるかもしれない。 一方でミャンマーで日本が一貫して追求してきたのは、90年の選挙で勝利した国民民主連盟(NLD)と国軍との関係の橋渡しだ。 それが長い時間をかけ、スー・チー国家最高顧問を事実上の長とするNLD政権という民主主義的な手続きによる政権誕生につながった。 日本は民主化を支援する最大の援助国であり、民間直接投資も急増した。今回の軍事政権のクーデターや人権抑圧に対しても、日本は欧米諸国のように正面切った制裁のアプローチをとるのではなく、ODAの新規供与は控えつつ、国軍との対話を模索し民主化の軌道に戻す道筋をつけようとしているのだろう。 ミャンマーを巡っては、関係諸国の思惑は異なり、国際社会が一致して国軍に圧力をかけるという姿にはなりにくい。 米欧にとってミャンマーは地理的だけではなく政治的にも経済的にも遠い国だ。一定の制裁は実施しても自らが主導して問題解決に乗り出すわけではない。 中国はミャンマーを抜けベンガル湾に至る石油ガスパイプラインがマラッカ海峡を通らずに済む戦略的重要性を持つので、このパイプラインを守ることを第一と考えている。 必ずしも国軍の統治が好ましいと思っているわけではないが、NLDを支援することはない。 ASEANも一枚岩ではない。度々軍によるクーデターで政権が作られてきたタイなどはミャンマー情勢に介入しようとは考えないだろう。 日本はASEANの中では民主主義が定着しているインドネシアやミャンマーに多額の投資をしているシンガポールとよく協議しつつ、一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう。 ミャンマーの軍事政権も新型コロナ感染問題による経済停滞に加え、海外からの投資の激減による経済停滞に長く耐えられるわけではない』、日本が強い態度に出れば、軍部も聞かざるを得ない筈なのに、「一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう」、と極めて慎重だ。
・『新疆ウイグル、香港問題は対中戦略全体の中で解決を模索  新疆ウイグルや香港の人権問題は、急速に国力を高めている中国を相手にするだけに、さらに難しい要素を内包している。 新疆ウイグルは共産党支配の下、漢族を超える人口を持つウイグル族への弾圧が激しい。中国は「核心的利益」として外国の介入は許さないとする。 この問題で、欧米諸国はウイグル族への人権抑圧に責任がある当局者に対し資産凍結などの制裁を科し、中国はそれへの報復として欧米の当局者へ制裁を科した。 制裁という強いアプローチは中国の報復を招き、事態が改善されているわけではない。 同様のことが香港問題についてもいえる。 香港の民主化に対する中国の弾圧に対して、米国は香港優遇措置を停止するとともに、香港政府や国の当局者に対して制裁を科している。 しかし、これらの制裁措置は立場の明確な表明という意味はあるが、実効的な効果を上げているわけではない。 むしろその後、中国は香港に国家安全維持法導入に続いて、選挙法を改定して「愛国者」という概念の下に親中国派を立法会選挙の候補者とするような仕組みを導入しようとしている。高度な自治と自由な資本主義を認める「一国二制度」は崩壊したといえる。 新疆ウイグル問題も香港問題も人権など民主主義的価値が大きく損なわれているが、問題の解決は中国との関係への全般的アプローチの中で考えていかざるを得ない。 中国に対して問題の改善に向けて強い圧力をかけられるとすれば、おそらくG7、さらにはQUAD(日米豪印戦略対話)の枠組みだろう。 しかし中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国だ。G7といえども従来持っていたような強力なてこがあるわけではない。 米国は同盟国と連携して中国に圧力をかけていくアプローチをとるが、中国も「一帯一路」やワクチン外交などを通じて特に途上国への影響力は飛躍的に拡大している。 事態が早急に改善する見通しは持ちにくいが、米国はハイテク分野などで中国との市場分離(デカップリング)を進めているし、今は外国企業も中国国内への投資を増やすことを躊躇している状況もある。 このような動きが中国の経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はあるのだろう。 政治的自由が制約されている共産党体制では経済成長が人々の不満を吸収している。いわば共産党統治の安定と直結しているので、経済成長が続くのかどうかは、新疆ウイグルや香港の人権問題の今後の動きを左右する大きな要素だ』、「「一国二制度」は崩壊した」、というよりも、中国はその国際公約を破ったという方が、実態に近い。ただ、「中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国」、なので、「経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はある」、のに僅かに期待するほかないようだ。
・『「ESG」や「SRI」は企業に真剣な検討を求めている  現状ではミャンマーや新疆ウイグル、香港の問題で人権外交が解決に向けて早急に成果を上げられることはなかなか見通せない。 ただその中で、民間企業の間でも、投資の評価基準として「ESG(環境・社会・ガバナンス)」や「SRI(社会的責任投資)」といった概念が強まっていることは注目される。 企業にとっても直接投資や取引の相手が人権問題にどう絡んでいるかは無視できない要素となっているからだ。 今後、企業はESGやSRIの観点からもミャンマーや新疆ウイグル、香港での活動には改めて長短両面から検討をせざるを得ないのだろう。 ミャンマーでの国軍関連企業との取引は企業価値を損ないかねない。香港の民主化支援企業との取引は中国本国で製品購入のボイコットを生みかねないが、一方でSRIを重視する投資家から支持されるだろう。 中国政府がウイグル自治区の少数民族に強制労働で作らせているとされている「新疆綿」の使用している企業は、人権侵害を容認、助長していると批判を受け、企業価値を損ないかねないし、逆に使用を停止すれば中国政府からなんらかの制裁をされる可能性がある。だがそれを覚悟で人権問題を優先するのか。 企業も今後は人権問題に対してどう振る舞うべきか、企業ガバナンスの観点から真剣な検討が必要になるだろう』、「「ESG」や「SRI」」が「企業に真剣な検討を求めている」ようになったのはいいことだ。「真剣」に「検討」してほしいものだ。我々も投資家の立場で、企業を厳しく評価してゆくべきだ。

第三に、3月11日付け東洋経済オンラインが掲載した東京大学名誉教授の北岡 伸一氏による「「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413415
・『第2次安倍内閣は2012年12月に成立し、2020年9月まで2822日、7年8カ月あまり続いた。これは1964年から1972年にかけての佐藤榮作内閣の2798日を超える憲政史上最長記録であり、また第1次と合わせて通算3188日(8年8カ月あまり)というのは、明治大正期における桂太郎の三度の内閣を超える最長記録である。 この安倍政権の成果を、外交安保政策について振り返り、評価することが、本稿の課題である。経済、社会などの政策や、政治運営の手法などは対象としない。 あらかじめ述べておけば、私は、安倍政権の最大の成果は、2015年の平和安全保障法制と戦後70年談話、および2016年における自由で開かれたインド太平洋構想の提唱であって、それは近年の日本外交の中でも特筆すべきものだと考える。 筆者は、このうちとくに最初の2つに深く関与していたので、十分客観的な評価が可能かどうか、疑問がないわけではない。しかし、関与したゆえに知りえたこともあり、それを差し支えない範囲で明らかにすることは、義務でもあろうと思う』、確かに当事者だったのであれば、客観性は期待できない。
・『NSCから安保法制へ 特定秘密保護法  安倍内閣は、特定秘密保護法を2013年10月の国会に提出し、12月、これを成立させた。日本は秘密漏洩に対する処罰が緩く、かつてスパイ天国と言われたものであった。同盟国、友好国との安全保障上の提携を強化するためには、こうした法律が必要だった。 しかし、野党とメディアの多くは、この法案を民衆の権利を弾圧するものとして批判した。そのため安倍内閣の支持率は10ポイントほど下がり、50%を切ったが、安倍首相は、ためらうことなく立法を進めた。のちに、内閣に対する支持は回復した』、私もこれらの法制には反対した。
・NSCとNSS  また、この2013年には、国家安全保障会議(NSC)とその事務局(NSS:National Security Secretariat)が作られた。NSCは、2007年、第1次安倍内閣で着手され、首相の辞職によって中断されていた。安倍内閣はあらためて立法に着手し、NSC/NSSを成立させたのである。それまでは、国防会議という名目的な会議体しかなかったのが、ようやく外交と防衛を総合的に担当する組織が成立したのである。 このNSCについては、それくらいでは日本の縦割り行政は解消されないとか、情報収集機関が不十分なので役に立たないなどというシニカルな批判が、専門家の間にも見られたが、成立以後、肯定的な評価が定着している。 他方で、これが十分だというわけではない。日本独自の情報機関という課題は残っているし、近年の米中貿易紛争を見ても、経済安全保障についての役割がさらに期待されている。) 国家安全保障戦略:National Security Strategy(また2013年12月には、国家安全保障戦略の策定がなされた。日本の基本的な安全保障戦略を策定することは、対外的な安定性の点でも、国内の啓蒙、政策的統一のために、きわめて必要なものであるが、日本にはそれがなかった。 わずかに、1957年5月、岸内閣策定にかかる国防の基本方針があったが、かなり古く、また極めて簡潔なもので、政策指針としては十分ではなかった。戦前の日本でも、外交と軍部の対立は根深く、陸軍と海軍の対立も深刻だった。その意味で、外交と防衛をカバーする国家安全保障戦略の制定は、日本にとって画期的なものだった。 その中心は、自由で安定した国際秩序の維持が日本の基本的な国益であり、その維持強化のために、日本は積極的な役割を果たすべきだということであり、これを積極的平和主義と呼んだ。具体的には、自衛力の強化、日米安保の強化のみならず、国際平和活動、ODA(政府開発援助)、外交による平和構築にも、より積極的に取り組むべきだという内容だった。 これに対しても、一部から、政府は世界中に自衛隊を進出させようとしているという批判があったが、これらは、まったく事実無根であって、以下に述べるとおり、安倍内閣はPKOなどについてはきわめて慎重で、むしろ臆病なほどであった』、確かに「国家安全保障戦略の制定」は画期的だった。
・『防衛装備品輸出三原則  2014年4月、国家安全保障戦略に基づいて、防衛装備品輸出三原則が定められた。元来、日本は武器の輸出を極めて厳格に制限していた。1970年代半ばまでは、共産主義国、国連で制裁を受けている国、紛争当事国には武器を輸出しないという方針だったが、1974年、三木内閣において、原則として武器は輸出しないという方針に転じた。 のち、1983年、中曽根内閣は方針を転換し、同盟国アメリカへの武器技術輸出は可能だとしたが、それ以外は依然として原則的に禁止だった。 もちろん、他国を侵略したり、国内で国民を弾圧したりするような国には、武器を輸出すべきではない。しかし世界には他国の脅威にさらされて防衛力を強化しようとしている国もある。そういう国々に対しては、日本は資金等の援助などをすることがある。) それゆえ、そうした国々に対しては、武器の輸出は一切禁止とするのではなく、一定の範囲で防衛装備品の輸出は可能とすべきだとして、新しい原則が立てられたのである。 これまで、武器輸出三原則(事実上の禁止)の結果、日本の防衛産業は海外に市場を持たず、国内の自衛隊だけを顧客とせざるをえなかった。 その結果、日本の武器産業は高価で競争力を持たなくなった。また、現代の武器はきわめて高価で、国際共同生産となることが多いが、この原則により、国際共同生産に参加することもできなかった。そうした禁止をなくしたことは、より柔軟な防衛政策が可能となることを意味した。 ただ、すぐにこれが効果をあげたわけではない。オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗したが、経験不足は否めなかった。しかし、日本の武器が求められ、それが防衛用に使われ、日本の防衛産業が一息つけるなら、今後とも進められるだろう』、「オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗」、失敗したのは残念だが、コストが高目だったのではなかろうか。
・『開発協力大綱改定と「国益」 開発協力大綱(2015年2月には開発協力大綱が改定された。 そこで大きな話題となったのは、まず、国益という言葉が登場したことである。これは確かにODAの世界ではあまり見かけない言葉である。 しかし、途上国の発展に貢献する中で、援助国の側の利益をも目指すことは、これまでも普通に行われていた。この開発協力大綱に言う国益は、国家安全保障戦略が、日本にとって、平和的国際環境の維持が最も重要な国益であると述べていることを踏まえたものである。 このように国益を定義すれば、国税を使って支援をする以上、開発協力が日本の利益を目指すのは自然なことである。 また、この大綱において、軍に対する協力も、非軍事的なものならば可能となった。例えば、軍人の留学生を受け入れることが可能となった。戦前の日本では、軍人に対する教育が偏狭なものであったことが致命的だった。 それゆえ現在の防衛大学校では、幅広い見識と視野を持つ人材育成を目指している。外国の軍人に対しても、こうした教育を提供することは、国際協力の範囲で考えて構わないだろう。) 安保法制懇談会報告と平和安全法制(こうした政策の延長上に行われたのが、2014年5月の安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)の再開と報告書の提出、この報告書に基づく7月の閣議決定、そして2015年9月の平和安保法制の成立である。 まず、安保法制懇は、第1次安倍内閣において活動していた懇談会(2007年5月設立)を、ほぼ同一のメンバーで再度立ち上げた。座長は柳井俊二国際海洋裁判所判事が、座長代理は私が務めた。 その提言は、日本国憲法9条2項は必要最小限度の自衛力までも禁止はしていないという1954年解釈と、これを支持した1959年最高裁判所の判決に基づき、現代においては集団的自衛権の部分的行使は必要最小限度のうちに入ると考えるべきであって、集団的自衛権行使を不可とした1972年法制局解釈を修正すべきだとした。 それ以外に9条1項の「武力の行使による国際紛争解決の禁止」は、日本を当事者にする国際紛争に関するものであって、日本が当事者でないPKOなどにおいて、武力の行使ならぬ「武器の使用」まで禁止されているという従前の解釈は国際常識に反するとして、改めるように提言した』、なるほど。
・『2015年安保法制の成立と海外の反応  これに対し政府は、日本周辺における米軍などとの共同活動について、集団的自衛権の行使は可能と判断したが、憲法9条1項に関する懇談会の提言については受け入れず、これを7月の閣議決定とした。 これを盛り込んだ法律は2015年に提出され、異例の長い審議を経て、成立した。日本の憲法学者の多くは反対し、国会審議に際しては、多くのデモが国会を取り囲んだ。 しかし、日本の憲法学者の多数派の議論はきわめて特異なものであることには留意が必要である。そもそも憲法は国家の運用のルールであり、国家が国際競争の中で活動することを前提としているのにもかかわらず、日本の憲法学者は国際法や国際政治にほとんど関心を持たず、ただ成文憲法に合致しているかどうかだけを判断するのである。 2015年安保法制の成立は、海外の多くの国々によって歓迎された。かつて日本が安全保障政策を強化すると、野党やメディアの一部はこれに反対し、アジア諸国は不安を覚えると言うことが普通だった。しかし、今回は、中国、韓国、北朝鮮からも強い反対はなく、東南アジア諸国は安保法制の成立を歓迎した。彼らは中国の脅威にさらされているのであって、当然の反応だった。) さらに興味深いことに、安保法制成立から5年を経た今、反対論は著しく後退している。反対論の拠点であった朝日新聞の2020年12月18日の記事によれば、安保法制を支持する人は反対論を明白に上回っている。 ここで想起したいのは、トランプ大統領が繰り返し、「米兵が日本を守るために血を流して戦い、日本人はそれをソニーのテレビで見る。アンフェアーだ」と言っていたことである。このトランプ発言は、現在では誤りであって、日本の防衛のために行動している米軍が危険に遭遇したときは、日本はともに戦うことになっている。しかし、安保法制が成立するまでは、トランプ発言のとおりの状態だったのである。 事実として、安保法制成立以後、日本とアメリカの間では飛躍的に情報の共有が進んでいる。ともに危険を負担する間でなければ機微な情報を共有しないのは当然のことであって、安保法制はその意味でも大きかったのである』、「飛躍的に情報の共有が進んでいる」、のは確かにプラスの効果だ。
・』PKOの現状とその他の課題  PKOの現状(しかし、憲法9条1項に関する懇談会提言を受け入れなかったように、安倍内閣の国際平和協力に対する姿勢は十分ではなかった。2016年、南スーダンのジュバで内戦が起こったあと、政府は、PKOに参加している他国の部隊や一般市民が襲撃を受けたときは、自衛隊が助けに行けるよう、「駆け付け警護」という世界に例のない法律を作った。 国連平和維持活動においては、そうした友軍支援や市民保護は、明文に規定していなくても、当然の義務であるが、自衛隊は法的根拠を必要とした。しかし、それから間もなく、南スーダンの自衛隊は引き上げてしまったのである。 その他の課題(ともあれ、PKOを別として、安倍内閣のもとで安全保障政策は強化された。それでも、中国の軍事的膨張は急速であり、尖閣諸島周辺での行動も一段と活発化しており、海上警察の組織や役割も変更して強化している。日本の安全保障がこれで十分であるとは到底言えない状況である。 その1つは、ミサイル防衛の不備である。2019年、陸上イージスの配備が中止されることとなった。それは、ミサイルからの落下物の安全が保障されていないという理由であったが、ミサイル防衛の限界を示したものだった。 中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である。しかも、性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い。) いずれにせよ、ミサイル防衛を中心とする防衛政策や、その基底にある専守防衛という原則自体が、不可能になりつつあるが、まだ有効な対処はなされていない。 2020年には新型コロナが世界を直撃した。日本の感染者は相対的に少なかったが、検査の数にせよ、病院の準備にせよ、ワクチンの開発にせよ、資金の給付にせよ、多くの欠陥が明らかになった。パンデミックは、いわゆる非伝統的安全保障と呼ばれるものの1つであるが、これにおいて日本の対応は失敗だった。有事において政府が強い権限を行使し、国民の安全と福祉を守るという仕組みが、根付いていないことが明らかになったのである』、「陸上イージス・・・性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い」、お粗末な騒動だった。「中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である:、その通りだ。
・『歴史認識問題  次に、いわゆる歴史認識の問題に移りたい。これも、外交の大きな制約要因になりうるので、外交安全保障政策の一環だと考えるべきである。 安倍首相が2013年12月末に靖国神社を訪問すると、中国、韓国は激しくこれを批判し、同盟国のアメリカまで、失望したというコメントを発表した。 これは、同盟国としては、やや行きすぎた反応だったと思う。なぜなら、歴代の首相は、日本は侵略したことを認め、A級戦犯には責任があると述べ、しかし祖国のために生命をささげた一般兵士のために参拝すると言ってきた。今回も同様だった。これに対して中国や韓国が批判するのはそれなりの意図があってのことであり、ある程度は理解できるが、アメリカが批判するのは行きすぎだと私は考える。 しかし安倍は右翼だとする論調が欧米、とくにアメリカのリベラル系の学者に多かったことは事実である。 2014年にはマグロウヒル社の教科書に、「日本軍は14〜20歳の女性を、20万人も強制的に徴用し、……『慰安所』……で働かせた」と記されていることが判明し、日本の外務省が訂正を求めたところ、2015年5月、アメリカの学者グループはこれを歴史に対する検閲であるとして抗議書簡を発出した。) しかし、今日明らかになっているところでは、「慰安婦」のほとんどは成人であり、その中には日本人が多く、朝鮮人が多数ではなかった。また朝鮮では新聞広告や業者の勧誘によって応募した女性が多く、強制的に徴用した証拠は見つかっていない(強制的に慰安婦にされた人は、旧オランダ領インド〈現在のインドネシア〉における少数のオランダ人女性などがあった。しかし、朝鮮半島においては、強制連行されたという証拠は見つかっておらず、大部分は新聞記事を見たり、ブローカーの紹介によって応募した成人女性だった。かつて朝鮮半島で強制連行があったと報道した朝日新聞は、2014年8月、誤りであったとして取り消し、謝罪した。なお、上記オランダ人元慰安婦に対しては、日本政府は謝罪補償を行っている)。 また慰安婦の総数についても、日本の中で最も韓国側に近い立場の研究者でも4万5000人という数字をあげており、20万人というのが甚だ誇張されたものであることは明らかである。さらに、日本の外務省はアメリカの学者や出版社に対して何らの権力を有しておらず、事実に反するとの指摘や訂正の要求が検閲というのは、これまた荒唐無稽な話であった。 日本ではこの問題に対し、慰安婦問題を専門とする学者を代表して、2名の有力教授が共同で記者会見をした。その1人、左派と目されている大沼教授すら、アメリカの学者の動きを批判して、自分がそういう指摘を受け取ったら、自分の誤りを気づかせてくれたかもしれないので、まずお礼の手紙を書くと述べた。 しかし、アメリカの世論はそのようなものではなく、事実に即さない感情的なものだった。ちなみに、こうした行きすぎたリベラルに対するアメリカ国内の反感が、2016年におけるトランプ候補の大統領当選の大きな背景だったように思われる。 70年談話の焦点(安倍首相はこうした背景に、アメリカの理解を得ることが最も重要だと考え、2014年、オーストラリアのキャンベラにおけるスピーチで、率直に戦争について謝罪して、歓迎を受けた。それから、2015年4月、ワシントンにおいて、連邦上下両院議員合同会議で演説を行い、大喝采を浴びた。 国内では、20世紀における日本のあり方を考え、21世紀の世界と日本を考える懇談会(21世紀構想懇談会)を組織した。座長が西室泰三東芝相談役、私が座長代理を務めた。世間の関心は侵略という言葉を使うかどうかに収斂していた。) 懇談会報告は、20世紀初頭の世界から説き起こし、世界が植民地主義に覆われていて、日本もその一員であったこと、しかし第1次大戦後、国際協調体制が成立していたのにもかかわらず、それに最初に大きな打撃を与えたのは満州事変であって、日本の責任はとくに重いとして、その責任を改めて想起し、戦後の日本は国際協調体制の推進に力を入れてきたことを述べている。 また、日本は戦争と植民地統治について何度も謝罪し、相当の補償も行っているのであり、これ以上、国民が謝り続ける必要はない、ただ、こういう歴史があったことを忘れないという責任のみが残っている、という趣旨を述べた。 安倍首相の談話は基本的にこの線で書かれた。その結果、侵略という言葉を使うことに反対していた右派(例えば渡部昇一上智大学名誉教授)もこれを支持し、侵略という言葉を使うことを強く求めていた左派の知識人およびメディアも、一部の例外を除いて、おおむね賛成ないし黙認するに至った。 これで、ともあれ、長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった。懇談会は当然の事実を述べたにすぎない。しかしこれを70年談話という注目度の高いところで述べたことが、広く納得を得たのである』、「長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった」、のはいいことだ。
・『日韓慰安婦に関する合意が成立したが  そして、その延長線上に、12月、日韓慰安婦に関する最終合意が成立した。 そもそも、慰安婦問題については、1995年に村山首相当時、政府と民間の合同でアジア女性基金が作られ、首相の謝罪の手紙と償い金を渡した。朝鮮以外の元慰安婦はこれを受け取り、韓国で認定されていた200名あまりの元慰安婦のうち、61名は、これを受け取った。 それ以上に、2015年12月には、日本の拠出によって韓国に新たな基金を作り、これを持って慰安婦問題は終わりとするという合意が、両国の間に成立したのである。生存している元慰安婦のうち46人のうち36人がこれを承認し、資金を受け取った。 ところが、朴槿恵大統領のあとに大統領となった文大統領は、この合意は元慰安婦の声を十分反映していないとして、問題を蒸し返した。) あわせて、戦時中のいわゆる徴用工に対する補償問題が蒸し返され、韓国の裁判所は請求権を認める判決を下している。 しかし、徴用工の請求権は1965年の日韓基本条約において、明示的に、解決されている。韓国の政策は、従来の基本的合意を一方的に変更するもので、日本としては受け入れることができない。これは日本では、野党もメディアも一致するところである。外交安全保障上、隣国との関係が順調でないのは遺憾なことであるが、すべては韓国の責任である。 その後、慰安婦問題で影響力を持っていた団体が、資金の不正使用をしてきたことが明らかになっており、また事実に即した研究も少しずつ増えてきていて、いわゆる慰安婦問題はやや下火になっている。しかし、韓国でまた火が付く可能性はないとは言えない。中国とアメリカとの関係が厳しくなっている現在、なお懸念の残る問題である』、「韓国」が反日を政権浮揚の手段にしているのは、困ったことだ。
・自由で開かれたインド太平洋(FOIP)  TPP11(TPPは2005年に結ばれたシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドによる環太平洋戦略的経済連携協定に始まる。 これに2008年、日米などが協議に参加し、2015年10月、上記4カ国に、オーストラリア、カナダ、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、アメリカ、ベトナムが加わった12カ国が、環太平洋パートナーシップ(TPP)の締結について、大筋合意に至り、翌2016年2月、署名するに至った。これは高い水準の野心的、包括的な経済連携協定で、事実上は中国に対抗する意味を持つものと思われていた。 2017年1月、トランプ大統領は、政権発足と同時にTPPからの脱退を宣言した。しかし残り11カ国は内容を修正して新たな協定(TPP11)を締結し、2018年末、協定は発効した。このTPP11を実現するにあたって、安倍首相のリーダーシップは大きかった。 FOIPの提唱(2016年8月には、安倍首相はケニアのナイロビで開かれたTICADⅥ(第6回アフリカ開発会議)において、自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP、のちに自由で開かれたインド太平洋「構想」と言い換えている)を提唱した。) FOIPは、2013年に中国が提唱した一帯一路と対抗するもののように言う人がいる。しかし、むしろ逆である。日本の戦後の復興と発展は、東南アジアからインドに及び、また日本は1970年代からODAなどで中東にも関与するようになっていた。そして1993年からTICADを開催している。つまり、日本の発展が自由で開かれたインド太平洋の成立を促してきたのであって、むしろ、そこに挑戦してきたのが中国の一帯一路だったのである。 FOIPは、それは単に経済連携の構想ではなく、法の支配や航海の自由という普遍的原則と不可分であり、民主主義という価値とも結び付いている。 FOIPの不可欠の一部が、例えば集団的自衛権の部分的行使容認を含む日米関係の強化だった。また、安倍首相はインドのモディ首相ととくに親しい関係を結び、これがFOIPの骨格となっていることはあらためていうまでもない』、「FOIP」は中国が覇権主義的性格を強めているなかで、1つの対抗手段だ。TPPに米国を復帰させるのも重要な課題だ。
・『大阪G20で合意されたインフラ投資原則  2017年6月5日、しかし安倍首相は日経新聞の会議で講演し、中国の一帯一路とむやみに対立するのではなく、事業に開放性、透明性、経済性があり、また対象国の債務健全性に配慮するものならば、協力が可能だと述べた。 これは、2018年大阪におけるG20の成果文書に取り入れられた。やや異なった表現ではあるが、インフラ建設において以上の4原則、それに環境配慮などの原則を守ることが合意された。中国はG20の一員であるから、この原則にコミットすることになったのである。 FOIPという言葉は、その後、アメリカも使うようになった。トランプ政権の間に日米印豪の間の安全保障協力(QUAD)が進むようになったが、これもFOIPの一部をなすと考えられる。中国の南シナ海支配に抗議する航海の自由作戦も、その一部である。) FOIPの内容に、日米の間で完全な合意があるわけではない。バイデン政権のコミットについても、まだ不明なことも多い。しかし、安倍政権が自由で開かれたインド太平洋構想を打ち出し、広めていったことには、誰も異論のないところであろう』、「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は、中国への一定の歯止めになる可能性もあり、確かに成果だ。
・『安倍内閣の外交安保における成果  広く外交安保に関係するもので、安倍首相が重要政策として挙げたもののうち、憲法改正には手が届かなかったし、日露領土問題でも拉致問題でも前進はなかった。 しかし、憲法改正について言えば、安倍首相の打ち出した現行の9条を維持して第3項を付け加えるというやり方は、戦力不保持を定めた第2項を維持するということであり、どれほど日本の安全に寄与しうるかは、やや疑問の残るところである。日本の安全にただちに役に立つという点では、安保法制のほうが、明らかに意味があった。 また、拉致問題が解決しなかったことは遺憾だったが、もし解決しても北朝鮮の核とミサイルの脅威まで除去はできなかっただろう。ロシア問題については、交渉の内実が明らかになっていないので、コメントは控えておきたい。 安倍首相の外交安保における成果は、本稿冒頭で在任期間を比較した佐藤榮作の沖縄返還や、桂太郎の日露戦争などとは、比べられるようなものではない。 しかし、中国の経済的・軍事的膨張と、強圧的な対外政策を前に、日本に根深い原理主義的な平和主義を考えるとき、相当の成果を挙げたと言って過言ではないだろう。 同盟国のアメリカでは、オバマ政権からトランプ政権へと大きな転換があった。その中で安倍首相はワシントンの連邦議会で演説(2015年4月)し、オバマ大統領の広島訪問(2016年5月)を実現させ、さらに真珠湾を訪問(2016年12月)し、かつ、トランプ大統領との間で信頼関係を築いた。これは、重要な成果であったと言ってよいだろう。 ただ、安倍内閣の成果が本当に実のあるものとして定着するには、これからの歴代政府の努力にかかっていると言ってよいであろう』、「北岡」氏安部外交への評価は、当事者だっただけに、予想通り異常に高い。それでも、安部外交を締めくくる意味でも、取上げた次第である。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 出口 治明 田中 均 日本の外交政策(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果) 「出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は、世界に3つだけ」 『教養としての「地政学」入門』 確かにロシアや中国にとっては、「日本」は太平洋に出る際の邪魔な存在なのだろう。 「戦争とは金だ」とは言い得て妙だ。 小国からみれば贅沢な悩みなのかも知れない。 「ミャンマー、ウイグル、香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応」 「改めて日本社会でも議論を深める必要がある」、今さら「議論を深める」のではなく、行動が求められている筈だ。 「日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある」、言い訳に過ぎないと思う。 日本が強い態度に出れば、軍部も聞かざるを得ない筈なのに、「一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう」、と極めて慎重だ。 「「一国二制度」は崩壊した」、というよりも、中国はその国際公約を破ったという方が、実態に近い。ただ、「中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国」、なので、「経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はある」、のに僅かに期待するほかないようだ。 「「ESG」や「SRI」」が「企業に真剣な検討を求めている」ようになったのはいいことだ。「真剣」に「検討」してほしいものだ。我々も投資家の立場で、企業を厳しく評価してゆくべきだ。 北岡 伸一 「「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果」 確かに当事者だったのであれば、客観性は期待できない。 私もこれらの法制には反対した 確かに「国家安全保障戦略の制定」は画期的だった 「オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗」、失敗したのは残念だが、コストが高目だったのではなかろうか。 「飛躍的に情報の共有が進んでいる」、のは確かにプラスの効果だ。 「陸上イージス・・・性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い」、お粗末な騒動だった 「中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である:、その通りだ。 「長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった」、のはいいことだ。 「韓国」が反日を政権浮揚の手段にしているのは、困ったことだ 「FOIP」は中国が覇権主義的性格を強めているなかで、1つの対抗手段だ。TPPに米国を復帰させるのも重要な課題だ 「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は確かに大きな成果だ。 「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は、中国への一定の歯止めになる可能性もあり、確かに成果だ 「北岡」氏安部外交への評価は、当事者だっただけに、予想通り異常に高い。それでも、安部外交を締めくくる意味でも、取上げた次第である。
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